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関連審決 訂正2016-390014
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成27ワ8736 特許権侵害行為差止等請求事件 判例 特許
平成28ワ41720 損害賠償請求事件 判例 特許
平成28ワ27057 特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成28ワ29320 特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成29ワ40193 損害賠償請求事件 判例 特許
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事件 平成 28年 (ワ) 44244号 特許権侵害差止等請求事件
5 当事者の表示別紙当事者目録のとおり
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2018/04/11
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は,補助参加によって生じた費用も含め,原告の負担とする。
10 事 実 及 び 理 由第1 請求1 被告は,別紙物件目録記載の製品を製造し,譲渡し,又は譲渡の申出をしてはならない。
2 被告は,前項の製品を廃棄せよ。
15 3 被告は,原告に対し,1億円及びこれに対する平成29年1月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要等1 事案の要旨本件は,発明の名称を「ウォームギヤの転造加工方法」とする特許第3873020 56号の特許権(以下「本件特許権」といい,その特許を「本件特許」という。)を有する原告が,別紙物件目録記載のステアリングコラム(以下「被告製品」という。)を製造,販売している被告に対し,被告製品の製造方法(以下「被告方法」という。)は,本件特許の願書に添付したとみなされる明細書(特許庁が訂正2016−390014号事件について平成28年5月13日にした審決〔以下「本件25 審決」という。〕による訂正後のもの。以下,図面と併せて「本件明細書」という。
なお,本件特許は平成15年6月30日以前にされた出願に係るので,その明細書1は特許請求の範囲を含む〔平成14年法律第24号附則1条2号3条1項,平成15年政令第214号〕。)の特許請求の範囲(以下「本件特許請求の範囲」という。)の請求項2記載の発明(以下「本件発明」という。)の技術的範囲に属するから,被告が被告製品の製造,譲渡又は譲渡の申出(以下,これらの行為を一括し5 て「製造譲渡等」という。)をすることは本件特許権を侵害する行為であると主張して,特許法100条1項に基づく被告製品の製造譲渡等の差止め,並びに同条2項に基づく被告製品の廃棄を求めるとともに,特許権侵害不法行為(対象期間は,平成25年6月1日から平成28年11月30日までであると解される。)による損害賠償として,1億0043万6000円(特許法102条3項に基づく算定)10 のうち1億円及びこれに対する不法行為後の日である平成29年1月21日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
2 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)15 ? 当事者ア 原告は,転造機の製造及び販売,転造部品の加工等を業とする株式会社である。
イ 被告は,自動車部品の製造及び販売等を業とする株式会社である。
ウ 被告補助参加人は,CNC精密転造盤R17NC−Uを製造し,被告に納入20 している株式会社である(以下,被告及び被告補助参加人を「被告ら」という。)。
? 本件特許権ア 原告は,以下の事項により特定される本件特許権を有している。
特 許 番 号 特許第3873056号発 明 の 名 称 ウォームギヤの転造加工方法25 登 録 日 平成18年10月27日出 願 日 平成14年6月20日2出 願 番 号 特願2003−506673国際出願番号 PCT/JP2002/006150優 先 日 平成13年6月21日(以下「本件優先日」という。)優先権主張番号 特願2001−1878605 優先権主張国 日本国イ 本件特許については,原告により訂正審判請求(訂正2016−390014。以下「本件訂正審判請求」という。)がされ,平成28年5月13日付け審決(本件審決)において訂正が認められた。本件審決は同月23日に確定し,その結果,本件特許請求の範囲の記載は,別紙特許請求の範囲のとおりとなった。(以上10 につき,甲4,5)? 構成要件の分説本件発明は,次のとおり,構成要件AないしJに分説することができる(以下,分説に係る各構成要件を符号に対応して「構成要件A」などという。なお,下線部分は本件審決による訂正部分である。)。
15 A 円筒状の素材を中心に配置して転造加工するための円筒状の複数のダイスと,B 前記ダイスの各々を回転駆動するためのサーボモータであるダイス回転駆動手段と,C 前記素材を回転自在に支持するための素材支持手段と,D 前記ダイスを互いに接近させて押し込むための押込み手段と20 E を備えたCNC装置で制御されるCNC転造機によるウォームギヤ転造加工方法において,F 前記ダイスを同一方向に同期回転させながら前記素材に向かって互いに押込み送りをして転造加工する第1ステップ,及びG 前記第1ステップの終了後,前記ダイスの回転方向を逆回転させて,前記素25 材を転造加工する第2ステップとH を交互に繰り返してウォームギヤを転造により加工し,3I 前記ダイスを前記押込み送り方向と逆方向に後退させて待避させた後,再度押し込み前記第2ステップを行うJ ことを特徴とするウォームギヤ転造加工方法
? 被告の行為5 ア 被告は,被告方法により,被告補助参加人の製造に係るCNC精密転造盤R17NC−Uを用いてウォームギアを転造加工して製造している。
イ 被告は,被告方法によって製造したウォームギアを組み込んだEPSのステアリングコラムを,三菱自動車工業株式会社に販売しているほか,「C−EPS」の名称で販売及び販売の申出をしている(甲6,弁論の全趣旨)。
10 3 争点? 被告方法は,文言上,本件発明の技術的範囲に属するか(争点1)ア 被告方法は構成要件D,F,Iを充足するか(具体的には,構成要件D,F,Iに,二つのダイスの一方は移動するが他方は移動しない構成が含まれるかが争われている。争点1−1)15 イ 被告方法は構成要件I(後退させて待避)を充足するか(具体的には,構成要件Iに,ダイスの後退時にダイスと素材の接触が維持される構成が含まれるかが争われている。争点1−2)? 被告方法は,本件発明と均等なものとして,その技術的範囲に属するか(争点2)20 ア 第1要件(非本質的部分)を充足するか(争点2−1)イ 第2要件(置換可能性)を充足するか(争点2−2)ウ 第4要件(公知技術等)を充足するか(争点2−3)エ 第5要件(意識的除外等)を充足するか(争点2−4)? 本件発明についての特許は特許無効審判により無効とされるべきものと認め25 られるか(争点3)ア 乙10に基づく進歩性欠如は認められるか(争点3−1)4イ 乙18に基づく進歩性欠如は認められるか(争点3−2)? 被告製品の製造譲渡等の差止めは認められるか(争点4)? 原告が受けた損害の額(争点5)第3 争点に対する当事者の主張5 1 争点1(被告方法は,文言上,本件発明の技術的範囲に属するか)? 争点1−1(被告方法は構成要件D,F,Iを充足するか)【原告の主張】ア 構成要件D,F,Iは,二つのダイスの一方は移動するが他方は移動しない構成(片送り)を排するものではない。その理由は次のとおりである。
10 すなわち,二つのダイスの相互間の距離が近づきさえすれば,二つのダイスは素材に押し込まれ,素材は二つのダイスに挟まれて転造加工されることは技術常識であるから,構成要件Dの「押込み手段」が,二つのダイスの相互間の距離を近づければよいものであることは明らかである。
また,構成要件Fの「第1ステップ」は,構成要件Dの押込み手段により二つの15 ダイスを押込み送りするものであるから,構成要件Fは,構成要件Dの押込み手段により二つのダイスの相互間の距離を近づけて二つのダイスが素材に押し込まれ,素材が二つのダイスに挟まれて転造加工されることを意味することは明らかである。
さらに,構成要件Iも,構成要件Dの押込み手段により二つのダイスの後退,押込みを行うのであるから,当業者は,その「後退」について,二つのダイスの相互20 間の距離を遠ざけることの意と理解する。
これに対し,明細書は発明の実施形態の好ましい例を示すものにすぎず,CNC転造機において二つのダイスの一方を移動させるもの(片送り)も,双方を移動させるもの(両送り)も,本件特許の出願日より前から当業者に知られていたから,本件明細書の段落【0034】等の記載をもって,当業者が,二つのダイスの両方25 が移動する構成(両送り)に限定されると考えることはあり得ない。
イ 被告方法は,別紙被告方法説明書(原告)のとおり特定されるべきところ,5同別紙記載d,f,iのとおり,二つのダイスの一方(右主軸ロールダイス)は移動するが他方(左主軸ロールダイス)は移動しない構成(片送り)を有しており,構成要件D,F,Iを充足する。
【被告らの主張】5 ア 本件構成要件D,F,Iには,一方のダイスが固定され片方のダイスのみが移動する片送りのものは含まれないと解される。その理由は次のとおりである。
すなわち,構成要件D,Fの「前記ダイス」は「複数のダイス」(構成要件A)であり,「互いに」は,「双方が同じことをするさま。また ,同じ状態にあるさま。」を意味するから,まず,構成要件Fが,複数のダイスのいずれもが素材に接10 近する方向に向かって押込み手段によって押込み送りされることを特定事項としていることは明らかである。
また,構成要件Dでは,「前記ダイス」(複数のダイス)のいずれもが素材に向かって押し込む方向に移動するように動作する押込み手段が規定されており,この押込み手段により,「前記ダイス」(複数のダイス)は,いずれも他のダイスに 接15 近するように移動することが規定されている。
さらに,構成要件Iでは,「前記ダイス」(複数のダイス)のいずれも押込み送り方向と逆方向に移動することが規定されている。
加えて,本件明細書の段落【0034】等を参酌する限り,ワーク(工作物)の移動を伴うがゆえに中心軸線を一定位置に一致させられない実施形態(ダイスの一20 方が固定であり,他方のダイスが移動するというもの)は,本件発明の特有の作用効果が得られないものとして排除されていると解すべきである。
イ 被告方法は,別紙被告方法説明書(被告ら)のとおり特定されるべきところ(なお,被告方法では,センター台の動作は確定しており,右主軸台の移動量が0.05mmのとき,センター台はこれに追随して正確に0.025mm移動するから,25 原告が主張するように曖昧に特定することは誤りである。),同別紙記載d,f,iのとおり,右主軸ロールダイスのみが移動し,左主軸ロールダイスは固定された6まま移動しない構成(片送り)を有しているから,構成要件D,F,Iを充足しない。
? 争点1−2(被告方法は構成要件I〔後退させて待避〕を充足するか)【原告の主張】5 ア 構成要件Iの「後退させて待避」は,ダイスの後退時にダイスと素材の接触が維持される構成を排するものではない。その理由は次のとおりである。
(ア) 構成要件Iは,ダイスを押し込まれていた位置から待避させればよいことを規定するだけで,ダイスを素材と非接触となるまで後退させなければならないなどとは規定していない。
10 (イ) 本件明細書の段落【0070】に記載されているような「0.2mm程度の後退」では,(ダイスが素材の塑性変形領域からは脱するが弾性変形領域からは脱せず)ダイスと素材が非接触に至らない。「後退」の技術的意義は,段落【0070】に記載されているとおり,「転造の押付け圧力が除かれる」ようにすることにある。
15 (ウ) そもそも,本件発明の発明者にも,「非接触」が構成要件になるという認識はなく,「非接触」はウォームギヤの転造を実現する上で技術的なポイントでない。
(エ) 原告は,本件訂正審判請求に係る面接時に,特許庁審判官から,ダイスと素材が完全に隙間を持って待避するように(発明を)限定すれば西独国特許第917966号明細書(乙10。以下「乙10明細書」という。)に記載された転造加工20 方法とは異なると思うと言われており,このことは,同審判官が(本件審決による訂正前の)「前記ダイスを前記押込み送り方向と逆方向に待避させた後」との記載に「非接触」の意が含まれていないと理解していたことを示している。
(オ) 原告は,発明を「非接触」に限定することが不本意であったため,上記審判官の発言に応じず,ダイスと素材が完全に隙間を持って待避するように(ダイスを25 素材と非接触となるまで後退させて待避するように)発明を限定しなかった。
(カ) 訂正拒絶理由通知書(甲30)には,「後退により素材と接触しなくなるこ7とも,請求項2には一切特定されていない」と明記されていたほか,本件明細書の段落【0071】の「後退により各ダイスと素材Mとが接触しなくなる」との記載が「実施例として」記載されているにすぎないことが明示されていた。
イ 被告方法は,別紙被告方法説明書(原告)記載iのとおり,右主軸ロールダ5 イスを押込み送り方向と逆方向に移動させている間も,二つのダイス(左主軸ロールダイス,右主軸ロールダイス)と素材との接触が維持される構成を有しており,構成要件Iを充足する。
【被告らの主張】ア 構成要件Iの「後退させて待避」は,ダイスの後退時にダイスと素材が非接10 触となる構成に限定していると解すべきである。その理由は次のとおりである。
(ア) 「待避」とは,普通の意味において,「わきにさけて事の過ぎるのを待つこと」を意味する。本件発明において,避けるべき対象物は素材であり,転造ダイスがこれを避けるのである。転造ダイスがわきに避けるのであるから,転造ダイスは素材から避けるようにこれとは接触しない位置まで後退しているという意味としか15 解釈し得ない。
(イ) 本件明細書の段落【0070】には「転造の押し付け圧力が除かれる程度の後退」に関する記載があるが,本件審決による訂正前の「前記ダイスを前記押込み送り方向と逆方向に待避させた後」の「待避」が,「転造の押し付け圧力が除かれる程度の後退」であると理解することはできない。段落【0071】には「この後20 退は,素材Mの弾性変形分と転造機の機械系の弾性変形分を解放して,第1転造ダイス100,及び第2転造ダイス101と素材Mとを接触をさせないための後退動作である」ことが開示されており,この開示から「後退させて待避」がワークとの接触を避けられた位置までの移動を意味することは明らかである。
(ウ) 本件審決においても,「後退させて待避」について,上記(ア),(イ)の解釈に25 整合的な判断が示されている。
イ 被告方法は,別紙被告方法説明書(被告ら)記載iのとおり,右主軸ロール8ダイスを押込み送り方向と逆方向に移動させている間も,素材と左主軸ロールダイス及び右主軸ロールダイスとは相互に接触したままであるから,構成要件Iを充足しない。
2 争点2(被告方法は,本件発明と均等なものとして,その技術的範囲に属す5 るか)【原告の主張】仮に,構成要件D,F,Iが,二つのダイスの一方は移動するが他方は移動しない構成(片送り)を排すると解釈される場合,また,仮に,構成要件Iが,ダイスの後退時にダイスと素材の接触が維持される構成を排すると解釈される場合,被告10 方法は,これらの構成を有している点で本件発明と相違するが,以下のとおり,本件発明と均等なものとしてその技術的範囲に属する。
? 争点2−1(第1要件〔非本質的部分〕を充足するか)本件発明の目的は,切削・熱処理・研削による加工よりも加工工程を減少させてコストを低減させることができる転造加工で,ウォームギヤの精度を十分確保する15 というもので,その本質的部分は,ダイスを正転させる第1ステップからダイスを反転させる第2ステップに移行する前にダイスを押込み送り方向と逆方向に後退させて待避させる点にある。
一方で,被告方法のうち,二つのダイスの一方は移動するが他方は移動しない点は,本件特許の出願日前から知られていた「片送り」のCNC転造機を用いたとい20 うだけのことであり,本件発明の本質的部分とは関係がない。
また,ダイスを押込み送り方向と逆方向に後退させて待避させる際に,ダイスと素材が非接触となるか否かにかかわらず,切削・熱処理・研削による加工よりも加工工程を減少させてコストを低減させることができる転造加工で,ウォームギヤの精度を十分確保するという本件発明の目的を達することができるから,被告方法の25 うち,双方のダイスを素材から離す際にダイスと素材の接触が維持される点は,本件発明の本質的部分とは関係がない。
9したがって,第1要件を充足する。
? 争点2−2(第2要件〔置換可能性〕を充足するか)本件発明のうち,二つのダイスの双方が移動する構成(両送り),ダイスの後退時にダイスと素材が非接触となる構成を,それぞれ,二つのダイスの一方は移動す5 るが他方は移動しない構成(片送り),ダイスの後退時にダイスと素材の接触が維持される構成に置き換えても,ダイスを正転させる第1ステップからダイスを反転させる第2ステップに移行する前にダイスを押込み送り方向と逆方向に後退させて待避させるCNC制御を行えば,切削・熱処理・研削による加工よりも加工工程を減少させてコストを低減させることができる転造加工で,ウォームギヤの精度を十10 分確保するという本件発明と同一の目的を達成することができるから,本件発明と同一の作用効果を奏する。
したがって,第2要件を充足する。
? 争点2−3(第4要件〔公知技術等〕を充足するか)被告らは,被告方法は,乙10明細書に記載された発明(以下「乙10発明」と15 いう。)又は被告補助参加人作成の「25形転造盤 取扱説明書」(乙18。以下「乙18文献」という。)に記載された発明(以下「乙18発明」という。)から容易に想到できた旨主張するが,争う。
この点に関する原告の主張は,争点3−1及び3−2の【原告の主張】において,進歩性欠如の無効理由について後述する内容と同様である。
20 ? 争点2−4(第5要件〔意識的除外等〕を充足するか)被告らは,被告方法に係る構成が本件発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情がある旨主張するが,争う。
【被告らの主張】25 以下のとおり,被告方法は,本件発明と均等なものとしてその技術的範囲に属するものではない。
10? 争点2−1(第1要件〔非本質的部分〕を充足するか)本件発明は,複数のダイスを互いに押込み送りをする両送りの構成(構成要件F)を採用することにより,「一定位置にワーク(工作物)の中心軸線を一致させ」,「ワークの加工精度が向上すると共に,転造機1へのワークの供給,及び排除等が5 容易となる」との作用効果を奏する(段落【0034】)が,この作用効果は「ギヤ精度を十分確保しながらコストを低減させたウォームギヤの転造加工方法を提供する」との本件発明の課題(段落【0009】)に対応するから,被告方法の片送りの構成は,本件発明の本質的部分を置換するものである。
また,本件発明は,いずれも押込み動作及び後退動作をする複数のダイスと移動10 しない素材支持手段とを備えたCNC転造機を用いた転造加工方法であって,第1ステップによる両ダイスの正回転による転造加工の後,第2ステップによる両ダイスの逆回転による転造加工に移行する前に,両ダイスをいずれも第1ステップの送り方向と逆方向に後退させて素材と接触をしない位置まで待避させる点が本質的部分であるから,被告方法のダイスを素材と接触させたままで待避しない構成は本件15 発明の本質的部分を置換するものである。
したがって,第1要件を充足しない。
? 争点2−2(第2要件〔置換可能性〕を充足するか)本件発明は,構成要件F(ダイスを互いに押し込む両送りの構成)によって「一定位置にワーク(工作物)の中心軸線を一致させ」,「ワークの加工精度が向上す20 ると共に,転造機1へのワークの供給,及び排除等が容易となる」(段落【0034】)との作用効果を奏するのに対し,被告方法は片送りであるから,本件発明と同一の作用効果を奏し得ない。
また,本件発明は,第1ステップによる両ダイスの正回転による転造加工の後,第2ステップによる両ダイスの逆回転による転造加工に移行する前に,両ダイスを25 いずれも第1ステップの押込み送り方向と逆方向に後退させて素材と接触をしない位置まで待避させることにより,素材の弾性変形分と転造機の機械系の弾性変形分11が完全に解放されるのに対して,被告方法は素材と両ダイスとは常に接触したままであり,素材の弾性変形分と転造機の機械系の弾性変形分は完全には解放されないから,本件発明と同一の作用効果を奏し得ない。
したがって,第2要件を充足しない。
5 ? 争点2−3(第4要件〔公知技術等〕を充足するか)被告方法の片送りの構成及びダイスを素材と接触させたままで待避しない構成は,いずれも,乙10発明又は乙18発明から容易に想到することができたから,第4要件を充足しない。
この点に関する被告らの主張は,争点3−1及び3−2の【被告らの主張】にお10 いて,進歩性欠如の無効理由について後述するのと同様である。
? 争点2−4(第5要件〔意識的除外等〕を充足するか)原告は,本件特許の出願時に,「両送り」と「片送り」の互換性を自ら公知化(特開2002−59236号公報。乙21)していながら,片送りの構成を特許請求の範囲に記載しておらず,片送りの構成を特許請求の範囲にあえて記載しなか15 った旨を表示している以上,被告方法の構成が特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情がある。
また,ダイスと素材を接触させたままで待避しない構成は,本件特許の出願時に乙10発明及び乙18発明によって公知であり,原告も,容易に想到することができたにもかかわらず,特許請求の範囲に「待避」と規定し,明細書に,その意味を20 「接触をさせないための後退動作」であると定義したのであるから,ダイスを素材と接触させたままで待避しない構成を特許請求の範囲にあえて記載しないことを明らかにしたということができ,被告方法の構成が特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情がある。
したがって,第5要件を充足しない。
25 3 争点3(本件発明についての特許は特許無効審判により無効とされるべきものと認められるか)12【被告らの主張】構成要件D,F,Iが,片送りによる転造加工方法を包含するとの解釈,構成要件Iの「後退させて待避」が,ダイスと素材とが接触している場合を包含するとの解釈を仮に肯定すると,以下のとおり,本件発明は乙10発明又は乙18発明から5 容易に発明することができたものであり,本件特許には進歩性欠如の無効理由があるから,原告は,特許法104条の3により,本件特許権を行使することができない。
? 争点3−1(乙10に基づく進歩性欠如は認められるか)ア 乙10発明の内容10 本件優先日前に頒布された刊行物である乙10明細書には,次の発明(乙10発明)が開示されている。
乙10a 円筒状のワークピース3を中心に配置して転造加工するための固定丸ダイス1,及び,可動丸ダイス1′と,乙10b 前記ダイス1,1′の各々を回転駆動するための駆動モーター8から15 なるダイス回転駆動手段と,乙10c 前記ワークピース3を回転自在に支持し,前記可動丸ダイスの移動方向に追随して移動する手段を備えるセンター10,11と,乙10d 前記可動丸ダイス1′を固定丸ダイス1に向けて前記ワークピース3を両ダイス間で押し込むための油圧駆動装置及び可動台板15と20 乙10e を備えた機械式に制御される転造装置によるウォームの歯の転造加工方法において,乙10f 前記丸ダイス1,1′を同一方向に同期回転させながら前記可動丸ダイス1’を前記ワークピース3に向かって押込み送りを開始し,これに追随して前記センター10,11は,前記固定丸ダイス1の方向に移動して,前記ワークピー25 ス3を前記固定丸ダイス1及び可動丸ダイス1’により転造加工する第1ステップ,及び13乙10g 前記第1ステップの終了後,前記丸ダイス1,1′の回転方向を逆回転させて,前記ワークピース3を転造加工する第2ステップと,乙10h を交互に繰り返してウォームの歯を転造により加工し,乙10i コック・プラグ29の調整により,ドレーン・パイプ32が次第に開5 き始め,転造圧がほぼ0にまで低下することにより,前記ワークピース3及び転造装置の転造圧による弾性変形の復元力によって前記可動丸ダイス1′を固定丸ダイス1から僅かながら前記押込み送り方向と逆方向に移動させ ,前記両ダイス1,1′は前記ワークピース3と接触していて,前記ワークピース3と離反することはないように動作し,その後,再度押し込み前記第2ステップを行う(以下「構成乙10 10i」という。)乙10j ウォームの歯の転造加工方法
イ 本件発明と乙10発明の相違点(ア) 本件発明と乙10発明とは,次の点で相違し,その余の点で一致する。
a 本件発明は,ダイス回転駆動手段がサーボモータであるのに対し,乙10発15 明は,ダイス回転駆動手段が駆動モータであって,当該駆動モータの種類がサーボモータであるか不明である点(以下「相違点1」という。)。
b 本件発明は,CNC装置で制御されるCNC転造装置であるのに対し,乙10発明は,機械式制御装置で制御される転造装置である点(以下「相違点2」という。)。
20 (イ) これに対し,原告は,構成乙10iは乙10明細書に記載されていないと主張するが,乙10明細書(訳文2頁)には「回転方向の変更の前にまず転造圧がほぼ0にまで低下し」と記載されており(以下「記載10−1」という。),第1ステップと第2ステップの間に,ワークピース3及び機械系の弾性変形を解放する方向にダイスを押し戻していること(後退していること)が開示されている。すなわ25 ち,転造加工を一旦中止した時点では,ダイスは転造加工時の押圧力で素材を押圧し続けており,素材及び機械系の弾性変形はそのまま維持されているのに対し, 転14造圧がゼロになるということは,素材及び機械系の弾性変形がこの転造圧に応じた程度に復元していることを意味する。
ウ 相違点1転造装置において,ロールダイスが取り付けられた主軸の回転モータは,同期回5 転する必要があるから,通常,サーボモータを用いるものであり(乙11ないし15,20,21),相違点1は実質的相違点ではない。
エ 相違点2転造装置における機械式制御をCNC制御に置換することは,乙10発明に,周知慣用技術を適用することにより,当業者は容易に想到することができた(乙1110 ないし17)。
オ 小括したがって,本件特許には乙10発明を主引例とする進歩性欠如の無効理由がある。
? 争点3−2(乙18に基づく進歩性欠如は認められるか)15 ア 乙18発明の内容本件優先日前に頒布された刊行物である乙18文献には,次の発明(乙18発明)が開示されている。
乙18a 円筒状の素材を中心に配置して転造加工するための左主軸ロールダイス,及び,右主軸ロールダイスと,20 乙18b 前記左右主軸ロールダイスの各々を回転駆動するための駆動モータからなる主軸駆動モータと,乙18c 前記素材を回転自在に支持する手段を備える強力形S形センタ台と,乙18d 前記右主軸ロールダイスを左主軸ロールダイスに向けて前記素材を左右両ロールダイス間で押し込むための右主軸台駆動油圧装置と25 乙18e を備えた転造装置によるウォームの歯の転造加工方法において,乙18f 前記左右両ロールダイスを同一方向に同期回転させながら前記右主軸15ロールダイスを前記素材に向かって押込み送りを開始し,前記素材を前記左主軸ロールダイス及び右主軸ロールダイスにより転造加工する第1ステップ,及び乙18g 前記第1ステップの終了後,前記左右両ロールダイスの回転方向を逆回転させて,前記素材を転造加工する第2ステップと,5 乙18h を交互に繰り返してウォームの歯を転造により加工し,乙18i 前記第1ステップの終了後,転造圧が0になるように手動で主軸正逆転用レバーを切ることにより,前記素材及び転造装置の転造圧による弾性変形の復元力によって前記右主軸ロールダイスを左主軸ロールダイスから僅かながら前記押込み送り方向と逆方向に移動させ,前記左右両ロールダイスは,前記素材と接触し10 ていて,前記素材と離反することはないように動作し,その後,再度押し込み前記第2ステップを行う(以下「構成乙18i」という。)乙18j ウォームの歯の転造加工方法
イ 本件発明と乙18発明の相違点(ア) 本件発明と乙18発明とは,次の点で相違し,その余の点で一致する。
15 a 本件発明は,ダイス回転駆動手段がサーボモータであるのに対し,乙18発明は,ダイス回転駆動手段が主軸駆動モータであって,当該主軸駆動モータの種類がサーボモータではない点(以下「相違点4」という。)。
b 本件発明は,CNC装置で制御されるCNC転造装置であるのに対し,乙18発明は,手動により制御される転造装置である点(以下「相違点5」という。)。
20 (イ) これに対し,原告は,構成乙18iは乙18文献に記載されていないと主張するが,乙18文献の図27には,レバー切替スイッチが図示され,その「切」の位置は「空気抜き(転造力ゼロ)」と記載されており,主軸正逆転用レバーの操作の間に,レバー切替スイッチを「切」の位置に操作すると転造圧はゼロになり,これに伴って素材及び機械系の弾性変形分を解放するようにダイスを押し戻している25 こと(後退していること)が開示されている。
ウ 相違点416相違点4が実質的な相違点ではないことは,相違点1と同様である。
エ 相違点5CNC装置による制御は,所望の動作をコンピュータ数値制御によって自動化するものであり,手動で所望の動作をしている場合にこれをCNC装置による制御に5 置換することは,当業者が容易に想到することができた。
オ 小括したがって,本件特許には乙18発明を主引例とする進歩性欠如の無効理由がある。
【原告の主張】10 以下のとおり,本件発明は乙10発明又は乙18発明から容易に発明できたものではなく,本件特許に進歩性欠如の無効理由は認められない。
? 争点3−1(乙10に基づく進歩性欠如は認められるか)ア 本件発明と乙10発明との間に,相違点1及び2があることは認めるが,相違点1が実質的相違点ではないとする被告らの主張については争う。
15 イ また,被告らは,相違点2は周知慣用技術の適用により当業者が容易に想到することができたと主張するが,乙10明細書に記載された転造機におけるアナログ油圧制御による不確かな(精度の低い)ダイスの押込み動作,押込み量は,精緻なデジタル数値に置換することができず,CNC制御を行うことは困難であるから,被告らの主張は失当である。
20 ウ さらに,乙10明細書には,少なくとも,構成乙10iは記載されていないから,本件発明と乙10発明は,本件発明は,ダイスを押込み送り方向と逆方向に後退させて待避させた後,再度押し込み第2ステップを行うのに対し,乙10発明は,第2ステップを行う前にダイスを押込み送り方向と逆方向に後退させて待避させない点(以下「相違点3」という。)でも相違している。
25 なお,乙10明細書(訳文)において,「コック・プラグ」との関係で転造圧の「0」を説明するのは,「コック・プラグ59」と「転造圧は次第に0まで低下」17との記載(以下「記載10−2」という。)であり,記載10−1ではない。被告らの主張するコック・プラグ29の調整によりドレーン・パイプ32が次第に開き始め転造圧がほぼ0にまで低下する過程については,場面の異なる記載10−1と記載10−2を組み合わせても導出し得るものではない。
5 また,記載10−1は,塑性加工の進行に伴いダイスがワークピースから受ける反力が減少し,転造圧が低下していくという転造理論上の周知事実を意味すると思われるから,これを「後退」に直結させることは誤りである。
エ 以上のとおり,本件発明と乙10発明には,相違点1ないし3があり,特に,相違点3は本件発明の特徴的構成に関するものであって,相違点3を補うような構10 成について,本件優先日当時に当業者が容易に想到できたとはいえない。
したがって,本件特許に乙10発明を主引例とする進歩性欠如の無効理由は認められない。
? 争点3−2(乙18に基づく進歩性欠如は認められるか)ア 本件発明と乙18発明との間に,相違点4及び5があることは認めるが,相15 違点4が実質的相違点ではないとする被告らの主張については争う。
イ また,被告らは,相違点5は周知慣用技術の適用により当業者が容易に想到することができたと主張するが,そもそも作業者が製品の仕上り具合を確認しながら加工を行うことを想定している手動制御の転造機にCNCによる自動制御を適用すること自体に矛盾があるから,被告らの主張は失当である。
20 ウ さらに,乙18文献には,少なくとも,構成乙18iは記載されていないから,本件発明と乙18発明は,本件発明は,ダイスを押込み送り方向と逆方向に後退させて待避させた後,再度押し込み第2ステップを行うのに対し,乙18発明は,第2ステップを行う前にダイスを押込み送り方向と逆方向に後退させて待避させない点(以下「相違点6」という。)でも相違している。
25 なお,乙18文献の記載によると,主軸正逆転用レバーは,通常,油圧中の空気を抜くために用いられるもので,そのレバー操作は,間を置きつつ,手動で慎重に18なされるから,本件発明のように,第1ステップと第2ステップを次々と交互に繰り返して転造するような加工を行うことはおよそ不可能である。
また,被告らが引用する乙18文献の図27の「空気抜き(転造力ゼロ)」との記載は,転造加工が終わり,主軸正逆転用レバーを「切」の位置にしてダイスの回5 転を停止させたときに,作動油から空気が抜けるが,その際の油圧が大気解放されてゼロになるという意味であるから,これを「後退」に直結させることは誤りである。
エ 以上のとおり,本件発明と乙18発明には,相違点4ないし6があり,特に,相違点6は本件発明の特徴的構成に関するものであって,相違点6を補うような構10 成について,本件優先日当時に当業者が容易に想到できたとはいえない。
したがって,本件特許に乙18発明を主引例とする進歩性欠如の無効理由は認められない。
4 争点4(被告製品の製造譲渡等の差止めは認められるか)【原告の主張】15 本件発明は,構成要件Jにおいて,形式的には「ウォームギヤ転造加工方法」と特定されているが,構成要件AないしIに従って転造加工を行えばウォームギヤが製造(生産)されるから,実質的には「物を生産する方法の発明」(特許法2条3項3号)である。
したがって,本件発明の方法の使用のみならず,その方法により製造した物の譲20 渡や譲渡の申出も本件特許権の侵害となる。
よって,原告は,被告に対し,被告製品の製造譲渡等の差止めを求める。
【被告らの主張】争う。本件発明は,方法の発明であり,物の生産方法の発明ではない。
5 争点5(原告が受けた損害の額)25 【原告の主張】被告は,平成25年6月から平成28年11月までの間に,被告方法により製造19したウォームギアを組み込んだ被告製品を合計12万5545個販売しており,その販売単価は8万円を下らないから,その販売総額は少なくとも100億4360万円である。そして,特許法102条3項による実施料率を販売総額の1パーセントであるとすると,原告が受けた損害の額は1億0043万6000円である。
5 【被告らの主張】否認ないし争う。
第4 当裁判所の判断1 認定事実? 本件明細書の記載10 本件明細書の発明の詳細な説明には,次の記載がある(甲5。なお,各項目末尾の【】は,発明の詳細な説明の段落番号を指す。)。
ア 技術分野「本発明は,ウォームギヤの転造加工方法に関し,更に詳しくは,転造加工によって,自動車のハンドル駆動用のウォームギヤ等を転造により加工するためのウォ15 ームギヤの転造加工方法に関する。」【0001】イ 背景技術「車両の電動式パワーステアリング装置として,電動モータの回転出力をウォームギヤ機構を介して減速し,ステアリングホイールに連結された出力軸をアシスト駆動するタイプのものが知られている。大きな負荷がかからない軽自動車用のパ ワ20 ーステアリング装置においては,金属製の円筒ウォームギヤと樹脂製のウォームホイールとを組み合わせてウォームギヤ機構として用いたタイプが知られている(例えば,特許文献1)。」【0002】「この金属製のウォームギヤは,精度が要求されるので焼入れ鋼を旋盤加工の後,熱処理し研削仕上げ加工加工により製造されている。旋盤で加工する場合,バイト25 で切削されるが,生産性を上げるときは円錐形のフライスを使用し,このフライスの軸線をウォーム軸に対してγ(ウォームギヤのピッチ線における進み角)だけ傾20けてネジ加工の要領で切削する。」【0003】「しかしながら,このウォームギヤの製作工程は,少なくとも切削,熱処理,研削と大きくは3工程が必要である。また,このための設備も旋盤,熱処理設備,研削盤の少なくとも3台が必要となる。このために加工コストが増大し樹脂製のウォ5 ームホイールの利点が十分に発揮できていなかった。」【0004】「また,雄ネジ,ウォームギヤ等を転造するとき,対向して配置された第1転造ダイス,及び第2転造ダイスが互いに接近して押し込み送りを行う。このとき,ウォームギヤの進み角が大きくて,かつ仕上がり直径と素材直径の差が大きいとき,転造加工の進行中に,進み角が変化する現象が「歩み」と呼ばれている。この歩み10 が発生すると,歩みによるワークの移動方向のネジ山のフランク面と反対側のフランク面との間で丸ダイスの接触が異なり,転造面の仕上がり精度が悪くなる問題がある。この歩みを防ぐために,通常は目視等により第1転造ダイス,又は第2転造ダイスの軸線方向の位相位置を変えることにより補正をすることがある。」【0005】15 「しかしながら,この補正方法は,雄ネジ,又はウォームギヤの両側に雄ネジ,又はウォームギヤの直径より大きな軸があるような部品の場合,この部分に転造ダイスが干渉するので歩みを防ぐための補正は困難である。又このようなとき,ダイスを正転,又は逆転させて転造させることも行われているが,バックラッシュ等の発生により製品精度の高いものはできないし,生産性も悪い。本出願人は,この歩20 みを第1転造ダイス,及び第2転造ダイスの回転軸線と直交する軸線の周りで回動する主軸傾斜機構を提案した(特許文献2)。」【0006】「しかしながら,この主軸傾斜機構を用いたものでも,加工開始から加工終了までの径の変化が大きいウォームギヤ等のようなワークでは,歩みの発生を完全には防ぐことができず,これが加工誤差となって現れる。」【0007】25 「【特許文献1】特開平9−24855号公報【特許文献2】特開平11−285766号公報」【0008】21ウ 発明が解決しようとする課題「本発明の目的は,ギヤ精度を十分確保しながら加工工程を減少させたウォームギヤの転造加工方法を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は,ギヤ精度を十分確保しながらコストを低減させたウォーム5 ギヤの転造加工方法を提供することにある。」【0009】エ 発明の効果「本発明のウォームギヤの転造方法の効果(本発明の利点)は,横転位された薄歯のウォームギヤが転造加工により高精度で加工が可能になったので,従来のウォームギヤより加工工程数が少なくでき,しかも加工コストも大幅に低下させること10 ができる,ものである。」【0016】オ 発明を実施するための最良の形態「以下,本発明を具体化した実施の形態を説明する。…」【0017】「[ダイス送り装置49]図6は,ダイス送り装置の概略機構を示す転造機の略平面図である。以上の説明15 で理解されるように,第2ダイス移動台25は,第2案内レール26と4本の連結軸40に案内されて,第1ダイス移動台6に対して相対的に接近,又は離反移動が可能である。連結軸40の他端は,圧力プレート45に連結固定されている。圧力プレート45には,油圧シリンダから構成される油圧シリンダ50が固定されている。油圧シリンダ50は,ピストンの伸長位置を高精度で制御できるサーボバルブ20 を備えたものである。油圧シリンダ50の出力軸であるピストンロッド51の先端は,第2ダイス移動台25の背面52に固定されている。」【0030】22【図6】「油圧シリンダ50に油圧を導入して駆動すると,ピストンロッド51が伸長する。油圧シリンダ50は圧力プレート45とに固定され,かつ圧力プレート45と第1ダイス移動台6は連結軸40により互いに連結されているので,ピストンロッ5 ド51の伸長により第1ダイス移動台6と第2ダイス移動台25とは互いに接近する。」【0031】「ラック90とラック91は,ピニオン93に噛み合っている。ピニオン93のピニオン軸94は,ベッド2に回転自在に設けられている。結局,油圧シリンダ50を駆動すると,ピストンロッド51が伸長する。油圧シリンダ50は圧力プレー10 ト45とに固定され,かつ圧力プレート45と第1ダイス移動台6は連結軸40により互いに連結されているので,ピストンロッド51の伸長により第1ダイス移動台6と第2ダイス移動台25とは互いに接近又は離反する。」【0033】「このとき,ピニオン軸94はベッド2に回転自在支持されているので回転はするが移動しない。この結果,第1ダイス移動台6と第2ダイス移動台25の間の間15 隔の中心位置は,常にベッド2上の一定位置に位置されることになる。この一定位置にワーク(工作物)の中心軸線を一致させると,ワークの加工精度が向上すると共に,転造機1へのワークの供給,及び排除等が容易となる。」【0034】「[ウォームギアの転造加工方法1]以上のような転造機1,及びワーク送り装置において,車両の電動式パワーステ20 アリング装置のアシストのためのウォームギヤ機構で使用されるウォームギヤを例23にして,その転造加工方法を説明する。…」【0063】「図10(a)ないし図12(f)は,ウォームギヤの転造加工の工程順序を示すものである。中実で円筒状のワークWの素材Mのチャッキング位置で,チャック用空圧シリンダ69を作動させて,素材Mをセンタ62と回転センタ66との間で5 挟んで保持する。第1転造ダイス100,及び第2転造ダイス101との回転を停止中に,サーボモータ76を起動して,送りネジ73を回転させてスライド板55を駆動し,第1転造ダイス100,及び第2転造ダイス101側に送り(図10(a)参照),更に加工開始位置まで送る(図10(b)参照)。」【0067】24「第1転造ダイス100,及び第2転造ダイス101は,所定位置に位置決めされている。第1転造ダイス100,及び第2転造ダイス101を同一回転方向に回転するように起動させ,かつ互いに同期回転させる。第1転造ダイス100,及び第2転造ダイス101が互いに同期回転しながら,油圧シリンダ50を駆動させて,5 互いに接近するように押込みを行う。この押し込みにより,転造加工が開始される。」【0068】25「転造加工が進んで,スライド板55が歩みにより所定量送られると,センサードッグ63が前進位置検出センサ79により検知される。又は,歩みによるワークWの前進位置の検知は,リニアスケール99により検知しても良い。これが検知されると,第1転造ダイス100,及び第2転造ダイス101は,回転を停止し,か5 つ油圧シリンダ50による押込み動作が停止される。更に,第1転造ダイス100,及び第2転造ダイス101は,互いに押込み方向とは逆方向に後退する。本例では,約0.05〜0.2mm程度の後退させて,即ち転造の押し付け圧力が除かれる程度の後退させて解除する。」【0070】「この後退は,素材Mの弾性変形分と転造機の機械系の弾性変形分を解放して,10 第1転造ダイス100,及び第2転造ダイス101と素材Mとを接触をさせないための後退動作である(以下,「スプリングバック」とも言う。)。この後,第1転造ダイス100,及び第2転造ダイス101を転造加工位置まで再度押し込み(切込み動作),逆回転を開始する(図11(d)参照)。…」【0071】「この逆回転による転造加工により,歩みによる加工誤差をも補正することにな15 る。この誤差の補正原理の詳細なメカニズムは不明であるが,ワークWとダイスとの接触を均一化するためとも推定される。…」【0072】「次に,第1転造ダイス100,及び第2転造ダイス101の回転を停止させて,かつ油圧シリンダ50を駆動して,ワークWから第1転造ダイス100,及び第2転造ダイス101を引き離して待避位置まで後退する(図12(e)参照)。サー20 ボモータ76を起動して,送りネジ73を逆回転させて送り台53を駆動し,第1転造ダイス100,及び第2転造ダイス101から離れる方向に送り,元の加工開始位置まで送る(図10(f)参照)。…」【0073】? 本件訂正審判請求及び本件審決の内容等ア 本件特許の登録時の特許請求の範囲の記載25 本件特許の登録時の特許請求の範囲(請求項1,2)の記載は次のとおりである(甲4)。
26「【請求項1】円筒状の素材を中心に配置して転造加工するための円筒状の複数のダイスと,前記ダイスを回転駆動するためのダイス回転駆動手段と,前記素材を回転自在に支持するための素材支持手段と,5 前記ダイスを互いに接近させて押し込むための押込み手段とを備えた転造機によるウォームギヤ転造加工方法において,前記ダイスを同一方向に同期回転させながら前記素材に向かって互いに押込み送りをして転造加工する第1ステップ,及び前記第1ステップの終了後,前記ダイスの回転方向を逆回転させて,前記素材を10 転造加工する第2ステップとを交互に繰り返してウォームギヤを転造により加工することを特徴とするウォームギヤ転造加工方法
【請求項2】請求項1において,15 前記ダイスを前記押込み送り方向と逆方向に待避させた後,前記第2ステップを行うことを特徴とするウォームギアの転造加工方法。」イ 本件訂正審判請求原告は,平成28年1月25日,上記の請求項1を削除し,同請求項2を前記前提事実?のとおりとすることを内容とする本件訂正審判請求をした。
20 なお,原告は,審判請求書において,上記の請求項1を削除する理由として,先行技術である乙10明細書の存在を記載していた。(以上につき,乙4)ウ 本件審決その後,平成28年3月14日付け訂正拒絶理由通知,同年4月15日の意見書提出を経て,同年5月13日,本件審決がされた(甲5)。
25 本件審決では,請求項2に係る訂正について,独立特許要件を検討し,本件発明と引用発明である乙10発明とを比較して,「第1ステップと逆方向にダイスを回27転させて転造加工をする第2ステップの前に,本件訂正発明は,ダイスを押込み送り方向と逆方向に後退させて退避させた後,再度押し込むものであるのに対し,引用発明は,回転方向の変更前に全転造圧がほぼ0にまで低下し,それから転造圧が全動作圧まで上昇するものであって,後退させて待避することに関して不明である5 点」という相違点(相違点5)を認定の上,本件発明の「待避」とは非接触状態になることであるということができるのに対し,引用発明には非接触になることについては記載されていないなどとして,本件発明と引用発明はこの点で相違し,当該相違点は,当業者といえども容易に想到し得るものではないから,請求項2に係る訂正は,独立特許要件を満たすものであると認められるなどとして,上記訂正を認10 める旨の判断が示されている。
なお,本件審決では,構成要件Iの「前記ダイスを前記押込み送り方向と逆方向に待避させた後」を「前記ダイスを前記押込み送り方向と逆方向に後退させて待避させた後」とする訂正については,技術的不明確な記載を明確にするものであるから「明瞭でない記載釈明」を目的とするものであると認められると判断されてい15 る。
? 被告方法ア 証拠(甲28,乙9)及び弁論の全趣旨に照らし,被告方法を本件発明と対比させて分説すると,次のとおり記述することができる(以下,符号に従い,「構成a」などという。)。
20 a 円筒状の素材を中心に配置して転造加工するための左主軸ロールダイス及び右主軸ロールダイスと,b 左主軸ロールダイス及び右主軸ロールダイスの各々を回転駆動するためのサーボモータからなる主軸駆動モータと,c 素材を回転自在に支持するためのセンター台と,25 d 右主軸ロールダイスを左主軸ロールダイスに向けて移動させ,素材を左主軸ロールダイス及び右主軸ロールダイス間で押し込むための右主軸台駆動モータと28e を備えたCNC装置で制御されるCNC転造機によるウォームギヤの転造加工方法において,f 左主軸ロールダイス及び右主軸ロールダイスを同一方向に同期回転させながら右主軸ロールダイスを素材に向かって移動させるとともに,これに追随してセン5 ター台を左主軸ロールダイスに向かって移動させ,素材を二つのダイスにより転造加工する第一のステップ,及びg 第一のステップの終了後,左主軸ロールダイス及び右主軸ロールダイスの回転方向を逆回転させて,素材を転造加工する第二のステップh を交互に繰り返してウォームギヤを転造により加工し,10 i 右主軸ロールダイスを押込み送り方向と逆方向に移動させるとともに,これに追随してセンター台を押込み送り方向と逆方向に移動させ,その間,左主軸ロールダイス及び右主軸ロールダイスと素材との接触を維持していて,その後,再度押し込み第二のステップを行うj ウォームギヤの転造加工方法
15 イ なお,構成c,iについて,センター台の移動距離が右主軸ロールダイスの移動量の「半分」の「0.025mm」であるか「約半分」の「約0.025mm」であるかに争いがあるが,被告方法を本件発明と対比する上で,センター台の移動距離を厳密に認定する必要があるとは認められないから,上記のとおり認定するにとどめた。
20 また,構成e,h,jについて,被告らは,「ウォームギア」ではなく「ウォームの歯」の転造加工方法等として特定されるべきである旨主張するが,被告方法と本件発明とで転造加工される対象は異ならないと考えられるから,本件発明と同様に「ウォームギア」の転造加工方法等として特定するのが相当である。
2 争点1(被告方法は,文言上,本件発明の技術的範囲に属するか)25 ? 争点1−1(被告方法は構成要件D,F,Iを充足するか)ア 構成要件Dは「前記ダイスを互いに接近させて押し込むための押込み手段29と」,構成要件Fは「前記ダイスを同一方向に同期回転させながら前記素材に向かって互いに押込み送りをして転造加工する第1ステップ,及び 」,構成要件Iは「前記ダイスを前記押込み送り方向と逆方向に後退させて待避させた後,再度押し込み前記第2ステップを行う」というものであり,構成要件D,F,Iに,二つの5 ダイスの一方は移動するが他方は移動しない構成(片送り)が含まれるかが争われている。
イ そこで検討すると,構成要件D,F,Iの「前記ダイス」が「複数のダイス」(構成要件A)を指すことは本件特許請求の範囲の文言から明らかであるところ,「互いに」に「双方が同じことをするさま。また,同じ状態にあるさま。」(広辞10 苑第六版〔乙1〕)という意味があることにも照らすと,少なくとも,構成要件Fの「前記ダイスを…前記素材に向かって互いに押込み送りをして」は,その文言上,複数のダイスをいずれも素材に向かって移動(押込み送り)させることを意味するものと解さざるを得ず,そうすると,構成要件Dの「前記ダイスを互いに接近させて押し込むための押込み手段」は,複数のダイスをいずれも移動させて接近させる15 押込み手段を意味するものと解され,また,構成要件Iの「前記ダイスを前記押込み送り方向と逆方向に後退させて」も,複数のダイスをいずれも押込み送り方向と逆方向に移動(後退)させることを意味すると解するのが相当である。
加えて,本件明細書の発明の詳細な説明にも,「第1ダイス移動台6と第2ダイス移動台25とは互いに接近又は離反する。…この結果,第1ダイス移動台6と第20 2ダイス移動台25の間の間隔の中心位置は,常にベッド2上の一定位置に位置されることになる。…」(段落【0033】,【0034】)などと,二つのダイスそれぞれが移動し,接近・押し込みを行う実施例が開示されており,上記の構成要件D,F,Iの解釈と整合するということができる。
したがって,構成要件D,F,Iは,二つのダイスそれぞれが移動し,接近・押25 し込みを行う構成(両送り)を意味するものと解すべきであり,そこには,二つのダイスの一方は移動するが他方は移動しない構成(片送り)は含まれないと解する30のが相当である。
ウ これに対して,原告は,二つのダイスの相互間の距離が近づきさえすれば,二つのダイスは素材に押し込まれ,素材は二つのダイスに挟まれて転造加工されることは技術常識であるから,構成要件Dの「押込み手段」が,二つのダイスの相互5 間の距離を近づければよいものであることは明らかであり,また,構成要件F,Iについても,二つのダイスの相互間の距離を近づけたり,遠ざけたりすることを意味するなどとして,構成要件D,F,Iには片送りの構成が含まれる旨主張する。
しかしながら,原告の主張は,本件特許請求の範囲の文言の解釈として説得的なものであるとはいい難く,いずれも採用することができない。むしろ,証拠(甲210 2)及び弁論の全趣旨によると,本件特許の出願前の時点で,ローラーダイスを用いる転造装置について,二つのダイスの一方を移動させるもの(片送り)と双方を移動させるもの(両送り)のいずれの構成についても当業者に知られていたと認められ,そのような中で,上記のとおりの本件特許請求の範囲の文言が選択されたことからすると,構成要件D,F,Iは,二つのダイスの双方を移動させるもの(両15 送り)として規定されていると見るのが自然である。
エ 前記認定事実?のとおり,被告方法は,二つのダイスの一方(右主軸ロールダイス)は移動するが他方(左主軸ロールダイス)は移動しないもの(片送り)であるから(構成d,f,i),構成要件D,F,Iを充足しない。
? 争点1−2(被告方法は構成要件I〔後退させて待避〕を充足するか)20 ア また,構成要件Iの「後退させて待避」については,ダイスの後退時にダイスと素材の接触が維持される構成が含まれるかが争われている。
イ そこで検討すると,確かに,構成要件Iは,「前記ダイスを前記押込み送り方向と逆方向に後退させて待避させた後,再度押し込み前記第2ステップを行う 」というものであり,ダイスと素材が非接触の状態になることを端的に規定するもの25 ではないものの,第1ステップ及び第2ステップの過程では,ダイスはいずれも素材に押し込まれ素材と接触した状態にあると考えられるところ,「待避」に「わき31にさけて事の過ぎるのを待つこと」(広辞苑第六版〔乙3〕)という意味があること,単なる「後退」ではなく「後退させて待避」と規定されており,「待避」はダイスを後退させた結果として生じる状態を意味すると理解できることからすると,構成要件Iの「後退させて待避」という文言を,ダイスをいずれも後退させ,素材5 から引き離して非接触の状態になることを意味するものと解釈することは可能であるといえる。
また,本件明細書の発明の詳細な説明にも,構成要件Iの「待避」の定義や技術的意義に関する端的な記載は見当たらないものの,「後退」については,段落【0070】に「更に,第1転造ダイス100,及び第2転造ダイス101は,互いに10 押込み方向とは逆方向に後退する。本例では,約0.05〜0.2mm程度の後退させて,即ち転造の押し付け圧力が除かれる程度の後退させて解除する。」と記載され,段落【0071】に「この後退は,素材Mの弾性変形分と転造機の機械系の弾性変形分を解放して,第1転造ダイス100,及び第2転造ダイス101と素材Mとを接触をさせないための後退動作である(以下,「スプリングバック」とも言15 う。)」と記載されており,「後退」の技術的意義に関するものと考えられるような記載はこれら以外に見当たらない。さらに,段落【0073】には,「第1転造ダイス100,及び第2転造ダイス101の回転を停止させて,かつ油圧シリンダ50を駆動して,ワークWから第1転造ダイス100,及び第2転造ダイス101を引き離して待避位置まで後退する(図12(e)参照)」と記載され,図1220 (e)に,ダイスが待避位置まで後退して素材と接触しない状態になっている実施例が開示されている。
そうすると,本件明細書の記載によれば,構成要件Iの「後退」は,転造の押し付け圧力を除くものであり,それは素材及び機械系の弾性変形を解放してダイスと素材とを接触させないための動作であると理解することができる。また,上記のと25 おり,「待避」は,ダイスを後退させた結果として生じる状態を意味すると理解できるから,ダイスの後退によって転造の押し付け圧力を除き,素材及び機械系の弾32性変形を解放した結果,ダイスと素材とが接触しない状態を意味すると解するのが相当である。
したがって,構成要件Iの「後退させて待避」は,ダイスの後退時にダイスと素材とが接触しない状態になることを意味すると解すべきであり,ダイスと素材の接5 触が維持される構成は含まれないものと解するのが相当である。
ウ これに対し,原告は,構成要件Iの「後退させて待避」は,ダイスの後退時にダイスと素材の接触が維持される構成を排するものではない旨主張し,その理由として,@本件明細書の段落【0070】に記載されているような「0.2mm程度の後退」ではダイスと素材が非接触に至らないこと,また,同段落に記載されて10 いるとおり,「後退」の技術的意義は「転造の押付け圧力が除かれる」ようにすることにあること,A本件発明の発明者に,「非接触」が構成要件になるという認識はなく,「非接触」はウォームギヤの転造を実現する上で技術的なポイントでないこと,B原告は,本件訂正審判請求に係る面接時に,特許庁審判官から,ダイスと素材が完全に隙間を持って待避するように(発明を)限定すれば乙10明細書に記15 載された転造加工方法とは異なると思うと言われており,このことは,同審判官が(本件審決による訂正前の)「前記ダイスを前記押込み送り方向と逆方向に待避させた後」との記載に「非接触」の意が含まれていないと理解していたことを示していること,C原告は,発明を「非接触」に限定することが不本意であったため,上記審判官の発言に応じず,ダイスと素材が完全に隙間を持って待避するように(ダ20 イスを素材と非接触となるまで後退させて待避するように)発明を限定しなかったこと,D訂正拒絶理由通知書(甲30)には,「後退により素材と接触しなくなることも,請求項2には一切特定されていない」と明記されていたほか,本件明細書の段落【0071】の上記記載が「実施例として」記載されているにすぎないことが明示されていたことなどを挙げる。
25 しかしながら,原告の主張は採用できるものではない。その理由は次のとおりである。
33(ア) @について原告の主張は,本件明細書の段落【0070】の「本例では,約0.05〜0.2mm程度の後退させて,即ち転造の押し付け圧力が除かれる程度の後退させて解除する。」との記載に基づくものであるが,段落【0071】には,上記記載に続5 けて,「この後退は,…第1転造ダイス100,及び第2転造ダイス101と素材Mとを接触をさせないための後退動作である」と記載されており,「この後退」が段落【0070】の後退を指すことは明らかであるから,これらの記載に照らすと,段落【0070】の後退は,二つのダイスと素材とを接触させないための動作として記載されていると理解され,「約0.05〜0.2mm程度の後退」はその一例10 を示すものであると解するのが相当である。
そうすると,CNC転造機を用いて,素材に転造圧をかけた状態からダイスを後退させて荷重変化を測定したところ,ダイス軸間距離を0.2mmまで拡げてもダイスと素材の接触は維持されていたとする原告の実験結果(甲31)があることを踏まえても,本件明細書の発明の詳細な説明の記載,とりわけ,上記の段落【0015 70】,【0071】の記載に照らすと,「後退」が,二つのダイスと素材とを接触させないための動作であるとの上記認定,判断を覆すに足りない。
(イ) Aについて原告の主張は,本件特許請求の範囲の解釈に関する発明者の主観的な認識をいうにとどまっており,本件特許の出願当時の技術常識に基づき,ダイス後退時に素材20 と非接触になることがウォームギヤの転造を実現する上で技術的なポイントでないことを主張立証するものでもないから,「後退させて待避」の解釈を基礎付ける事情として採用することはできない。
(ウ) BないしDについて原告の主張の趣旨は必ずしも明確でないが,「後退させて待避」に関する特許庁25 審判官の解釈については,前記認定事実?ウのとおり,最終的に,本件審決において,ダイスと素材とが非接触状態となることであると説示されており,原告が,そ34れまでの手続における審判官の発言等の趣旨を忖度して,ダイスと素材とが非接触となることを明示するように特許請求の範囲の記載を訂正しなかったというだけでは,「後退させて待避」に関する解釈を基礎付けるに十分なものとはいえない。
なお,原告は,訂正拒絶理由通知書(甲30)において,上記の段落【0071】5 の記載が「実施例」として記載されているにすぎないと記載されていることをも主張するが,本件明細書の発明の詳細な説明において,「後退」の技術的意義に関するものと考えられるような記載は上記の段落【0070】,【0071】の記載以外に見当たらないことは上記のとおりであるから,「後退させて待避」の意味内容を解釈するに当たって,それらの記載が考慮されるのは当然である。
10 エ 前記認定事実?のとおり,被告方法は,右主軸ロールダイスを押込み送り方向と逆方向に移動させるとともに,これに追随して素材を支持するセンター台も同方向に移動させるものの,その間,左主軸ロールダイス及び右主軸ロールダイスと素材との接触は維持されていているから(構成i),構成要件Iの「後退させて待避」を充足しない。
15 3 争点2(被告方法は,本件発明と均等なものとして,その技術的範囲に属するか)? 争点2−1(第1要件〔非本質的部分〕を充足するか)ア 特許発明における本質的部分とは,当該特許発明に係る特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると20 解すべきであり,特許請求の範囲及び明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて,特許発明の課題及び解決手段とその作用効果を把握した上で,特許発明に係る特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が何であるかを確定することによって認定されるべきである。
イ 本件明細書の発明の詳細な説明の記載に照らすと,本件発明は,ウォームギ25 ヤの転造加工方法に関するものであり(段落【0001】),それまで知られていた特許文献1(特開平9−24855号公報)に記載された金属製のウォームギア35を旋盤で加工する方法では,少なくとも,切削,熱処理,研削の3工程が必要であるという課題があり(段落【0003】,【0004】),また,対向して配置された二つのダイスを互いに接近させて押込み送りを行う方法も知られていたが,転造加工の進行中に進み角が変化する「歩み」と呼ばれる現象が発生すると,転造面5 の仕上がり精度が悪くなるという問題があるため,目視等によりダイスの軸線方向の位相位置を変えることにより補正をする方法や,ダイスを正転,又は逆転させて転造させる方法,特許文献2(特開平11−285766号公報〔乙14〕)に記載された主軸傾斜機構を用いた方法によっても,歩みの発生を完全には防ぐことができないなど精度の高いものはできないという課題があった(段落【0005】な10 いし【0008】)。
また,証拠(乙14)及び弁論の全趣旨によると,上記の特許文献2は,対向して配置された二つのダイスを互いに接近させて押込み送りを行う方法について,ダイスの移動量,移動速度等をコンピュータによって数値で制御するCNC装置による制御を行い,ダイスの回転駆動手段をサーボモータとする構成を採用したものを15 開示していると認められる。
そこで,本件発明は,従来技術の上記課題を踏まえ,「ギヤ精度を十分確保しながら加工工程を減少させたウォームギヤの転造加工方法を提供すること」,「ギヤ精度を十分確保しながらコストを低減させたウォームギヤの転造加工方法を提供すること」を目的として(段落【0009】),本件特許請求の範囲記載の構成,具20 体的には,複数のダイスのそれぞれを互いに接近させて押込み送りをする方法のうち,CNC装置による制御を行い,ダイスの回転駆動手段をサーボモータとして,ダイスを正転,逆転させる第1,第2ステップとを交互に繰り返す構成を採用した上で,さらに,第2ステップに移行する前にダイスを押込み送り方向と逆方向に後退させて待避させる構成を採用するものであり,詳細なメカニズムは不明なるも,25 ダイスの後退によって素材及び機械系の弾性変形分を解放してダイスと素材を非接触とした上で逆回転を開始することで,歩みによる加工誤差を補正し(段落【003670】ないし【0072】),「横転位された薄歯のウォームギヤが転造加工により高精度で加工が可能になったので,従来のウォームギヤより加工工程数が少なくでき,しかも加工コストも大幅に低下させることができる」(段落【0016】)という作用効果を奏するものであると認められる。
5 そうすると,本件明細書の発明の詳細な説明の記載に照らすと,本件特許請求の範囲の記載のうち,少なくとも,ダイスを押込み送り方向と逆方向に後退させて待避させる構成,すなわち,ダイスを押込み送り方向と逆方向に後退させて素材と接触しない状態にする構成は,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する本件発明の特徴的部分であるといえる。
10 ウ(ア) これに対し,原告は,本件発明の本質的部分は,ダイスを正転させる第1ステップからダイスを反転させる第2ステップに移行する前にダイスを押込み送り方向と逆方向に後退させて待避させる点にあるが,ダイスを押込み送り方向と逆方向に後退させて待避させる際に,ダイスと素材が非接触となるか否かにかかわらず,切削・熱処理・研削による加工よりも加工工程を減少させてコストを低減させるこ15 とができる転造加工で,ウォームギヤの精度を十分確保するという本件発明の目的を達することができるから,被告方法のうち,双方のダイスを素材から離す際にダイスと素材の接触が維持される点は,本件発明の本質的部分とは関係がなく,均等の第1要件を充足する旨主張する。
(イ) しかしながら,本件明細書の発明の詳細な説明の記載,とりわけ,段落【020 070】ないし【0072】の記載に照らすと,本件発明における「後退させて待避」の技術的意義は,転造の押し付け圧力を除き,素材及び機械系の弾性変形を解放してダイスと素材とを接触させないことにあり,詳細なメカニズムは不明なるも,ダイスと素材を非接触とした上で逆回転を開始することで,歩みによる加工誤差が補正されることは上記のとおりであり,これらはウォームギアの精度を十分確保す25 るという本件発明の課題を解決するために採用された構成であると解される。また,ダイスを押込み送り方向と逆方向に後退させる際に,ダイスと素材の接触が維持さ37れるか否かにかかわらず,ウォームギアの精度を十分確保することができることが本件特許の出願当時の技術常識であったと認めるに足りる証拠もない。
(ウ) むしろ,証拠(乙10)及び弁論の全趣旨によると,本件特許の出願前に頒布された刊行物である乙10明細書には,二つのダイス(ダイス1,1´)うちの5 一つ(ダイス1´)を移動させて押込み送りをする片送りの構成を採用する方法ではあるものの,二つのダイスを正転,逆転させる第1,第2ステップとを交互に繰り返す方法について,第2ステップに移行する前にダイスを押込み送り方向と逆方向に後退させる構成,具体的には,コック・プラグ29の調整により,ドレーン・パイプ32が次第に開き始め,転造圧がほぼ0にまで低下することにより,ワーク10 ピース3及び転造装置の転造圧による弾性変形の復元力によってダイス1′を押込み送り方向と逆方向に後退させる構成が開示されていると認められる。
なお,乙10明細書に第2ステップに移行する前にダイスを押込み送り方向と逆方向に後退させる構成が記載されているかについては争いがあるが,乙10明細書(訳文2頁)には「回転方向の変更の前にまず全転造圧がほぼ0にまで低下」する15 と記載されており,もとより,金属からなる部材や機械装置に大きな力が加えられた場合にその部材や機械装置の構造に応じて弾性変形することや,その力の低減に伴って弾性変形が解放されることは技術常識として認められるから(弁論の全趣旨),転造圧がほぼゼロにまで低下してダイスが素材を押圧する力が減少すると,素材及び機械装置の弾性変形が解放され,その復元力によってダイスが素材から後20 退することは当然であり,その点についても乙10明細書によって開示されていると認めた。
また,原告が指摘する乙10明細書(訳文6頁)の「コック・プラグ59」や「転造圧は次第に0まで低下する」との記載(記載10−2)は,「最初に述べた遮断と逆転回転方向における再接続の過程はウォームの最終寸法になるまで反復さ25 れる。この時,調整可能な当接片15’を有する可動台板15が固定された当接片15”に当接して可動台板はそれ以上移動しなくなる。この時というのは…」(下38線引用者)に続く記載であることから明らかなように,ダイスの正回転と逆回転が繰り返される転造加工の工程が終了した後のコック・プラグ59の動作に関するものであるから,上記の転造工程に係る記載と関係するものとはいえない。
(エ) したがって,被告方法のうち,ダイスを素材から離す際に,ダイスと素材の5 接触が維持される点が本件発明の本質的部分と関係がないという原告の主張を採用することはできない。
エ 前記認定事実?のとおり,被告方法は,右主軸ロールダイスを押込み送り方向と逆方向に移動させ,これに追随して素材を支持するセンター台も同方向に移動させるものの,その間,右主軸ロールダイス及び左主軸ロールダイスと素材の接触10 が維持される構成(構成i)を有している点において,構成要件Iの「後退させて待避」の文言を充足しないから,本件発明とはその本質的部分において相違し,均等の第1要件を充足しない。
? 小括(争点2について)以上によれば,その余の要件について検討するまでもなく,被告方法は,本件発15 明と均等なものとして,その技術的範囲に属するとはいえない。
4 結論よって,その余の争点について判断するまでもなく,原告の本件請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第29部20 裁判長裁判官嶋 末 和 秀39裁判官天 野 研 司裁判官5西 山 芳 樹40(別紙)当事者目録原 告 株 式 会 社 ニ ッ セ ー同訴訟代理人弁護士 浜 四 津 尚 文5 同 松 田 純 一同 兼 定 尚 幸同 西 村 公 芳同訴訟代理人弁理士 富 崎 元 成同 飯 村 重 樹10 同 野 田 薫 央同 補 佐 人 弁 理 士 町 田 光 信被 告 株 式 会 社 ジ ェ イ テク ト同訴訟代理人弁護士 岩 坪 哲同 速 見 禎 祥15 同 溝 内 伸 治 郎被 告 補 助 参 加 人 株 式 会 社 ツ ガ ミ同訴訟代理人弁護士 飯 田 秀 郷同 大 友 良 浩同 隈 部 泰 正20 同 森 山 航 洋同 奥 津 啓 太同 清 水 紘 武同 保 志 周 作41(別紙)物件目録三菱自動車工業株式会社の製造に係るeKワゴン又はeKカスタム(型式:DBA−B11W)用のステアリングコラム42(別紙)特許請求の範囲【請求項1】(削除)【請求項2】5 円筒状の素材を中心に配置して転造加工するための円筒状の複数のダイスと,前記ダイスの各々を回転駆動するためのサーボモータであるダイス回転駆動手段と,前記素材を回転自在に支持するための素材支持手段と,前記ダイスを互いに接近させて押し込むための押込み手段と10 を備えたCNC装置で制御されるCNC転造機によるウォームギヤ転造加工方法において,前記ダイスを同一方向に同期回転させながら前記素材に向かって互いに押込み送りをして転造加工する第1ステップ,及び前記第1ステップの終了後,前記ダイスの回転方向を逆回転させて,前記素材を15 転造加工する第2ステップとを交互に繰り返してウォームギヤを転造により加工し,前記ダイスを前記押込み送り方向と逆方向に後退させて待避させた後,再度押し込み前記第2ステップを行うことを特徴とするウォームギヤ転造加工方法
20 【請求項3】請求項2において,前記ダイスを前記押込み送りを停止させた状態で,前記第1ステップ,及び前記2ステップを交互に行って,前記ウォームギヤの転造加工を行うことを特徴とするウォームギヤ転造加工方法
25 【請求項4】43請求項2において,前記転造機は,4本の連結軸(40)が,互いに平行になるように配置され,かつ第1案内レール(3),及び第2案内レール(26)と互いに平行になるように配置されており,5 前記第1案内レール(3)には,第1転造ダイス(100)を搭載した第1ダイス移動台(6)が移動自在に配置されており,前記ダイスは,第1転造ダイス(100)及び第2転造ダイス(101)の2台とからなり,前記第2案内レール(26)には,第2転造ダイス(101)を搭載した第2ダ10 イス移動台(25)が移動自在に配置されており,前記第1転造ダイス(100)と前記第2転造ダイス(101)は,前記4本の前記連結軸(40)の略中心に配置されたものであり,かつ前記第1転造ダイス(100)及び前記第2転造ダイス(101)の回転軸線が互いに平行して配置されている15 ことを特徴とするウォームギヤ転造加工方法
【請求項5】請求項2において,前記転造加工中に,前記素材の直径の変化により前記ウォームギヤの進み角が変化して,前記ウォームギヤが軸線方向に移動する歩みが発生するのを,前記素材の20 移動から検知し,前記移動が設定された範囲を越えたとき,前記ダイスの回転方向を逆回転させ前記歩みの方向を逆方向にする前記第2ステップを行うことを特徴とするウォームギヤ転造加工方法
【請求項6】25 請求項5において,前記転造機は,前記ダイスの回転軸線と直交する軸線を中心に回動する主軸傾斜44手段とを備えたものであり,前記歩みを解消するために前記主軸傾斜手段の補正回動角度を演算して,前記主軸傾斜手段で,前記ダイスを前記補正回動角度量だけ回動させて前記歩みを解消する5 ことを特徴とするウォームギヤ転造加工方法
45(別紙)被告方法説明書(原告)a 円筒状の素材を中心に配置して転造加工するための二つの円筒状のダイス(左主軸ロールダイス,右主軸ロールダイス)と,5 b 二つのダイス(左主軸ロールダイス,右主軸ロールダイス)の各々を回転駆動するためのサーボモータからなるダイス回転駆動手段(主軸駆動モータ)と,c 素材を回転自在に支持し,一方のダイス(右主軸ロールダイス)の移動量の約半分の量を一方のダイスの移動方向に追随して移動する素材支持手段(センター台)と,10 d 一方のダイス(右主軸ロールダイス)を他方のダイス(左主軸ロールダイス)に向かって移動させ,素材を二つのダイス(左主軸ロールダイス,右主軸ロールダイス)間で押し込むための押込み手段(右主軸台駆動モータ)とe を備えたCNC装置で制御されるCNC転造機によるウォームギヤ転造加工方法において,15 f 二つのダイス(左主軸ロールダイス,右主軸ロールダイス)を同一方向に同期回転させながら一方のダイス(右主軸ロールダイス)を素材に向かって移動させるとともに,これに追随して素材支持手段(センター台)を他方のダイス(左主軸ロールダイス)に向かって移動させ,素材を二つのダイスにより転造加工する第一のステップ,及び20 g 第一のステップの終了後,二つのダイス(左主軸ロールダイス,右主軸ロールダイス)の回転方向を逆回転させて,素材を転造加工する第二のステップh を交互に繰り返してウォームギヤを転造により加工し,i 一方のダイス(右主軸ロールダイス)を押込み送り方向と逆方向に0.05mm移動させるとともに,これに追随して素材支持手段(センター台)を同方向に25 約0.025mm移動させ,その間,二つのダイス(左主軸ロールダイス,右主軸46ロールダイス)と素材との接触を維持した後,再度押し込み第二のステップを行うj ウォームギヤの転造加工方法
47(別紙)被告方法説明書(被告ら)a 円筒状の素材を中心に配置して転造加工するための左主軸ロールダイス,及び,右主軸ロールダイスと,5 b 前記左右主軸ロールダイスの各々を回転駆動するためのサーボ駆動モータからなる主軸駆動モータと,c 前記の素材を回転自在に支持し,前記右主軸ロールダイスの移動量の半分量を前記右主軸ロールダイスの移動方向に追随して移動する手段を備えるセンター台と,10 d 前記右主軸ロールダイスを左主軸ロールダイスに向けて前記素材を左右両ロールダイス間で押し込むための右主軸台駆動モータとe を備えたCNC装置で制御されるCNC転造装置によるウォームの歯の転造加工方法において,f 前記左右両ロールダイスを同一方向に同期回転させながら前記右主軸ロール15 ダイスを前記素材に向かって押込み送りを開始し,これに追随して前記センター台は前記右主軸ロールダイスの押し込み量の半分量前記左主軸ロールダイスの方向に移動して,前記素材を前記左主軸ロールダイス及び右主軸ロールダイスにより転造加工する第1ステップ,及びg 前記第1ステップの終了後,前記左右両ロールダイスの回転方向を逆回転20 させて,前記素材を転造加工する第2ステップと,h を交互に繰り返してウォームの歯を転造により加工し,i 前記右主軸ロールダイスは左主軸ロールダイスから前記押込み送り方向と逆方向に移動させ,これに追随して前記センター台は当該移動量の半分量分前記押込み送り方向と逆方向に移動し,前記左右両ロールダイスは,前記素材と常に接触し25 ていて,前記素材と離反することはないように動作し,その後,再度押し込み前記48第2ステップを行うj ウォームの歯の転造加工方法
49
事実及び理由
全容