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関連審決 不服2016-7464
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事件 平成 29年 (行ケ) 10057号 審決取消請求事件

原告株式会社コーアツ
訴訟代理人弁理士 森治
被告特許庁長官
指定代理人佐々木芳枝 槙原進 長馬望 金子尚人 西山智宏
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2017/11/29
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の求めた裁判
特許庁が不服2016-7464号事件について平成29年1月25日にした審決を取り消す。
事案の概要
本件は,特許出願に対する拒絶査定不服審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。争点は,進歩性の有無である。
1 特許庁における手続の経緯 原告は,名称を「ガス系消火設備用の消音機能を有する噴射ヘッド」とする発明につき,平成22年4月30日を出願日とする特許出願(特願2010-105342号。先の出願に基づく優先権主張[出願日 平成21年11月2日,同月18日]。以下「本願優先日」という。)の一部を分割して平成26年10月16日に新たに特許出願し(甲5,7),平成27年4月3日及び同年6月5日に手続補正をした(甲8,9。以下,これらを併せて「本件補正」という。)が,平成28年2月18日付けで拒絶査定を受けた(甲11)。
原告は,平成28年5月23日,拒絶査定不服審判の請求をしたところ(甲12),特許庁は,上記請求について,不服2016-7464号事件として審理し,平成29年1月25日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,同審決謄本は,同年2月8日,原告に送達された。
2 本願発明の要旨 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は,以下のとおりである(甲7〜9。以下「本願発明」という。また,本願発明に係る本件補正後の明細書及び図面を「本願明細書」という。。
) 「消火剤ガスを使用するガス系消火設備において消火対象区画に消火剤ガスを放出するために設置される消音手段を備えた噴射ヘッドであって,前記消音手段を,消火剤ガスが供給される配管に螺合して接続された噴射ヘッドに備えた,オリフィスと,該オリフィスの出口部に配設されることによって,消火剤ガスが一方の端面から流入し,他方の端面から大気中に放出されるようにした形状保持性能を有する円柱状の多孔性の気流の乱れをなくす材料とからなり,該多孔性の気流の乱れをな くす材料が,噴射ヘッドを構成する円筒状の筐体内に収容されるとともに,その他方の端面が,中心部に円形の開口部を形成した筐体の蓋部の環状の外周縁のみによって保持されるようにしたことを特徴とするガス系消火設備用の消音機能を有する噴射ヘッド。」 3 審決の理由の要点 本願発明は,以下のとおり,欧州特許出願公開第1151800号明細書(甲1。以下「引用文献1」という。)に記載された発明(以下「引用発明」という。)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法29条2項に該当し,特許を受けることができないものである。
(1) 引用発明の認定 「消火ガスを使用するガス系消火システムにおいて,工場内に消火ガスを放出するために取付けられる消火ガス放出用消音ノズル200であって,消音手段を,消火ガスが供給される消火ガス分配管に接続された消火ガス放出用消音ノズル200に形成した,開口207と,該開口207の出口部に配設されることによって,消火ガスが上面から流入し,下面から大気中に放出されるようにした,消火ガスが流通可能な金属ワイヤを圧縮して成形した円盤形状の空気変動を抑制する少なくとも1つの焼結フィルタ32又は31とからなり,該少なくとも1つの焼結フィルタ32又は31が,カバー203の円筒状ボディ205のチャンバ208に挿入されて配置されるとともに,その下面が,複数の孔21が形成されたベースボディ202によって保持されるようにしたガス系消火システム用の消火ガス放出用消音ノズル。」 (2) 一致点の認定 本願発明と引用発明とを対比すると,次の点で一致する。
「消火剤ガスを使用するガス系消火設備において,消火対象区画に消火剤ガスを放出するために設置される消音手段を備えた噴射ヘッドであって,前記消音手段を, 消火剤ガスが供給される配管に接続された噴射ヘッドに備えたオリフィスと,該オリフィスの出口部に配設されることによって,消火剤ガスが一方の端面から流入し,他方の端面から大気中に放出されるようにした円柱状の多孔性の気流の乱れをなくす材料とからなり,該多孔性の気流の乱れをなくす材料が,噴射ヘッドを構成する円筒状の筐体内に収容されるとともに,その他方の端面が,保持されるようにしたガス系消火設備用の消音機能を有する噴射ヘッド。」 (3) 相違点の認定 本願発明と引用発明とを対比すると,次の点が相違する。
ア 相違点1 「前記消音手段を,消火剤ガスが供給される配管に接続された噴射ヘッドに備えた,オリフィス」に関し,本願発明は「螺合して」接続されたのに対し,引用発明は接続手段が不明である点 イ 相違点2 本願発明における「多孔性の気流の乱れをなくす材料」は, 「形状保持性能」を有するものであるのに対し,引用発明における「少なくとも1つの焼結フィルタ32又は31」は,形状保持性能を有するものか否か不明である点 ウ 相違点3 「その他方の端面が,保持されるようにした」に関し,本願発明においては「その他方の端面が,中心部に円形の開口部を形成した筐体の蓋部の環状の外周縁のみによって保持されるようにした」のに対し,引用発明においては「その下面が,複数の孔21が形成されたベースボディ202によって保持されるようにした」点 (4) 相違点の判断 ア 引用文献に記載された事項 実願昭57-408号(実開昭58-103100号)のマイクロフィルム(甲2。以下「引用文献2」という。)には,次の事項が記載されている。
「出口部として環状のキャップ4のみが設けられた消音器。(以下「引用文献2 」 記載技術」という。) 米国特許第3949828号明細書(甲3。以下「引用文献3」という。)には,次の事項が記載されている。
「消音器において,接続部8に,排気パイプとの接続のためのねじ山9を設ける技術。(以下「引用文献3記載技術」という。
」 ) 独国特許出願公開第19719535号明細書(甲4。以下「引用文献4」という。)には,次の事項が記載されている。
「消音器2の接合管7にねじ山8を設け,排気管1と結合する技術。(以下「引 」用文献4記載技術」という。) イ 相違点1について 引用文献3記載技術又は引用文献4記載技術等に示されるように,消音器と排気管とを螺合して接続する技術は,本願優先日前に周知技術(以下「周知技術」という。)である。また,引用発明において,消火ガス分配管とノズルとを接続する接続手段を要することは自明の事項である。
そうすると,引用発明において,当該接続手段として周知技術を採用し,相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到できたことである。
ウ 相違点2について 引用発明における「少なくとも1つの焼結フィルタ32又は31」は,圧縮成形され,焼結されたものであるから,自然に変形するものではなく,消火ガス分配管からの風圧に抗して潰れない程度にはその形状が保持されるものである。
そうすると,引用発明における焼結フィルタも少なからず形状保持性能を備えているといえる。
したがって,相違点2は実質的な相違点ではない。
エ 相違点3について 吸音材の出口部に,環状のキャップ4のみを配置した消音器は,引用文献2記載 技術に開示されているところ,当該環状のキャップ4及びノズル2は螺合によりケース1と結合し,環状のキャップ4,ノズル2及びケース1で吸音材7が配置かつ保持される空間を形成するものであるから,吸音材7は環状のキャップ4,ノズル2及びケース1により消音器内に保持されるものである。そうすると,環状のキャップ4は,吸音材7を保持する保持機能を備えているものである。
ところで,引用発明は発生音を抑制することを課題としているから,引用発明において消火ガスを放出する開口の面積を,発生音が増大しないよう設計することは当然の事項である。
そして,引用発明において,消火ガス放出用ノズルのベースボディ202の孔を設計するに当たり,発生音が増大しない範囲において,複数の小孔を設けることで消火ガスの拡散性を向上させるよう設計するか,あるいは,1つの開口とすることで消火ガスの噴流に指向性を持たせるよう設計するかは,消火ガスの拡散性や指向性を考慮しつつ,消火ガス放出用ノズルを備える各ガス系消火システムのガス放出範囲に応じて当業者が適宜に設計し得た事項である。
そうすると,引用発明において,ベースボディ202の構造として,消音器という共通の技術分野に属し,吸音材を保持するという同一の機能を有する引用文献2記載技術の構造を採用し,中央が開口した環状の形状で外周縁のみによって少なくとも1つの焼結フィルタ32又は31を保持するようにして相違点3に係る本願発明の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到できたことである。
そして,本願発明は,全体としてみても,引用発明,引用文献2記載技術及び周知技術から当業者が予測できる作用効果以上の格別な作用効果を奏するものではない。
オ 結論 本願発明は,引用発明,引用文献2記載技術及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
原告主張の審決取消事由
1 取消事由1(引用文献2記載技術の認定の誤り) 引用文献2には,「吸音材7としては,ガラス繊維や石綿等が好適である。」(明細書4頁1行〜2行)と記載されているのみで,整流板8を省略する場合に剛性の高い吸音材を使用することについての記載や示唆はない。整流板8を設けずに出力部として環状に形成されたキャップ4のみを設けて吸音材7を保持するようにすると,引用文献2において吸音材7として用いられるガラス繊維や石綿が吹き飛ばされてしまうことから,到底そのような構成を採用できるものではない。そうすると,引用文献2に記載された発明において,整流板8を省略する場合には,出力部側に位置する,キャップ4の開口より小さい透孔や切欠部を形成した仕切板を,環状に形成されたキャップ4によって直接支持するようにすることが示唆されていると解釈するのが妥当である。
したがって,引用文献2には,「出口部として環状のキャップ4のみが設けられた消音器。」が記載されているとした審決の認定には誤りがある。
なお,本願発明の「形状保持性能を有する円柱状の多孔性の気流の乱れをなくす材料」とは,「形状保持性能を有する円柱状」の修飾語からして,多孔性の気流の乱れをなくす材料が,円柱状をした単一の部材(又はそれらを組み合わせた部材)のみからなると解釈すべきものであって,被告が主張するように,「カバー部材を併用したものを含む」ものではない。
2 取消事由2(相違点2の判断の誤り) 引用文献1に記載された焼結フィルタは,一定の形状保持性能を備えているといえるものであるが,当該焼結フィルタが,短時間で極めて大量の消火剤ガスを放出する必要のあるガス系消火設備用の噴射ヘッドに適用した場合に,中心部に円形の開口部を形成した筐体の蓋部の環状の外周縁のみによって保持し得る剛性を有するものであるかどうかは不明であり,むしろ,引用文献1において,敢えて,複数の 孔21が形成されたベースボディ202によって保持されている点を勘案すれば,当該焼結フィルタは,そのようにするための十分な剛性を有するものではないと解釈するのが妥当である。
したがって,相違点2は実質的な相違点ではないとした審決の判断には誤りがある。
3 取消事由3(相違点3の判断の誤り) 仮に,引用文献2に記載された空気パージ用消音器の技術分野において,「出口部として環状のキャップ4のみが設けられた消音器。」のように構成することが可能であるとしても,それは,空気パージ用消音器の技術分野に限られることであって,短時間で極めて大量の消火剤ガスを放出する必要のあるガス系消火設備用の噴射ヘッドには,到底適用できるものではないことから,上記構成をガス系消火設備用の噴射ヘッドにまで普遍化できるものではない。
また,引用文献1においても,焼結フィルタが,敢えて,複数の孔21が形成されたベースボディ202によって保持されている点を勘案すれば,当該焼結フィルタは,そのようにするための十分な剛性を有するものではないと解釈するのが妥当である。
そして,審決が認定したように,「引用発明は発生音を抑制することを課題としているから,引用発明において消火ガスを放出する開口の面積を,発生音が増大しないよう設計することは当然の事項である。」としても,1つの開口とすることで消火ガスを放出する開口の面積を大きくすることで,発生音が増大しないようにすることは,審決が提示するいずれの引用文献にも,記載も示唆もされていないといえる。
被告が主張するように,消火剤ガスの放出量と電子機器を冷却する際の空気量とに大きな差がないとしても,噴射ヘッドと電子機器の冷却装置の出口の流速には,両者の設置数や開口面積に基づく大きな差がある。すなわち,噴射ヘッドにおける 消火剤ガスの流速は,音速に近く,一方,電子機器の冷却装置の出口の流速は,ファンの性能からしても音速近くになることはなく,実際の設備における設計値においても,噴射ヘッドと電子機器の冷却装置の出口の流速には,約6000倍の差がある。したがって,引用文献2記載技術は,短時間で極めて大量の消火剤ガスを放出する必要のあるガス系消火設備用の噴射ヘッドには到底適用できるものではない。
したがって,相違点3は当業者が容易に想到できたことであるとした審決の判断には誤りがある。
4 取消事由4(作用効果に関する判断の誤り) 本願発明は,「前記消音手段を,消火剤ガスが供給される配管に螺合して接続された噴射ヘッドに備えた,オリフィスと,該オリフィスの出口部に配設されることによって,消火剤ガスが一方の端面から流入し,他方の端面から大気中に放出されるようにした形状保持性能を有する円柱状の多孔性の気流の乱れをなくす材料とからなり,該多孔性の気流の乱れをなくす材料が,噴射ヘッドを構成する円筒状の筐体内に収容されるとともに,その他方の端面が,中心部に円形の開口部を形成した筐体の蓋部の環状の外周縁のみによって保持されるようにした」ことを構成要件とすることにより,本願明細書に記載された「消音手段を簡易な構造とし,噴射ヘッドをコンパクトに構成でき,既存の設備にもそのまま適用することができる。」という作用効果,より具体的には,円柱状の多孔性の材料を筐体内に確実に保持するようにしながら,大気中に消火剤を放出する際の消火剤の出口となるその他方の端面の大気に開放される面積を大きく取ることができ,短時間で極めて大量の消火剤ガスを放出する際の障害や騒音の発生要因をなくすことができるという,引用発明,引用文献2記載技術及び周知技術から当業者が予測できる作用効果以上の格別な作用効果を奏するものであるといえる。
したがって,本願発明は格別な作用効果を奏するものではないとした審決の判断には誤りがある。
被告の主張
1 取消事由1(引用文献2記載技術の認定の誤り)について 引用文献2には, 「整流板8」が吸音材7を保持する押さえ部材として機能することが開示又は示唆されておらず,これを必要に応じて用いればよいものであるから,「整流板8」は必須の部材でもない。さらに,キャップ4と一体不可分に出口部を構成する旨の記載も示唆も一切ない。したがって,引用文献2の「整流板8」は,吸音材7を保持する押さえ部材としての機能を期待して設けられたものとする合理的な理由はない。
次に,引用文献2において,必要に応じて用いればよい「整流板8」は,空気の流れを平均化するものであって,本願明細書の段落【0051】に記載された,必要に応じて用いるとされる, 「パンチングメタル・・・からなるカバー部材」に対応するものといえるから,本願発明において,気流の乱れをなくす材料に含まれるといえる。そして,引用文献2に「出力部として環状に形成されたキヤツプ4」と記載されているように,上記キャップ4は出力部となるものであり,引用文献2において,必要に応じて用いればよいものである「整流板8」を用いた場合は,キャップ4の手前に配置され,空気は吸音材7及び「整流板8」を通り,その流れが均一化され,出力部としての環状のキャップ4から出力されることとなる。一方, 「整流板8」を用いない場合は,空気は吸音材7を通り,出力部としての環状のキャップ4から出力されるものである。
したがって,引用文献2に記載された必要に応じて用いればよい「整流板8」を用いない場合においては,出口部には環状のキャップ4のみが設けられることとなり,また,「整流板8」を用いた場合においても,これは,上記のように,「気流の乱れをなくす材料」の一部として,本願明細書において,「必要に応じて」「併用する」整流器からなるカバー部材に相当するものであるから,出口部には環状のキャップ4のみが設けられていることに変わりはない。
よって,引用文献2記載技術について, 「出口部として環状のキャップ4のみが設けられた消音器。 が記載されているとした審決の認定に誤りはなく, 」 取消事由1は理由がない。
2 取消事由2(相違点2の判断の誤り)について 引用発明の「少なくとも1つの焼結フィルタ32又は31」は,少なからず「形状保持性能」を有し,本願発明における「形状保持性能を有する円柱状の多孔性の気流の乱れをなくす材料」に相当するものである。そして,本願発明において, 「形状保持性能」が,どの程度の性能であるか,すなわち性能の高低について,特にどの程度の剛性を有するものであるかについての特定は一切ない。したがって,本願発明の「形状保持性能を有する多孔性の気流の乱れをなくす材料」の剛性は不明であるから,原告の主張は,その前提において誤りがある。
また,引用発明の「少なくとも1つの焼結フィルタ32又は31」は,その構造機能又は技術的意義からみて,本願発明の「形状保持性能を有する円柱状の多孔性の気流の乱れをなくす材料」に相当するから,相違点2が実質的相違点ではないとした審決の判断に誤りはなく,取消事由2は理由がない。
3 取消事由3(相違点3の判断の誤り)について 引用発明は,ガス系消火システムに係る発明であるところ,ガス系消火システムは消防設備であるから,その実施に当たっては,消防法,同法の規定に基づく政令,又は,同法及び政令に基づく省令による規定を満たす必要があることは,本願優先日前において,常識又は技術常識である。
上記技術常識を考慮すると,引用発明におけるガス系消火システムにおいては,消火剤ガスの種類に応じて,防護区画1?当たり,毎秒6.82〜7.76Lの消火剤ガスの放出を行うものを包含するといえる。
引用文献2においても,電子機器の消費電力に応じて,毎秒10〜755L程度 の空気を冷却のために要するといえるから,引用文献2記載技術における消音器は,電子機器の冷却のため,電子機器の消費電力に応じて,電子機器を冷却する際必要となる毎秒10〜755L程度の空気量を放出させ得るものであるといえる。
毎秒755L程度の空気量は,概ね100?の防護区画に対する消火剤ガスの放出量に対応するところ,引用文献2記載技術は,電子機器の冷却という,引用発明におけるガス系消火システムの噴射ヘッドにおける消音器と同程度の量の空気を通過させる消音器であるから,引用発明における消火ガス放出用消音ノズルと同程度の機能を有するものである。
したがって,引用文献2記載技術が,短時間で極めて大量の消火剤ガスを放出する必要のあるガス系消火設備用の噴射ヘッドには到底適用できるものではないとの原告の主張は失当であり,引用文献2記載技術を引用発明のガス系消火設備用の噴射ヘッドに適用する場合に,ガス流量の違いによる阻害要因はないといえる。
そして,引用発明において,消音器という共通の技術分野に属し,吸音材を保持するという同一の機能を有する引用文献2記載技術の構造を採用し,中央が開口した環状の形状で外周縁のみによって少なくとも1つの焼結フィルタ32又は31を保持するようにして,相違点3に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことであるから,審決の相違点3の判断に誤りはなく,取消事由3は理由がない。
4 取消事由4(作用効果に関する認定の誤り)について 本願発明の「消音手段を簡易な構造とし,噴射ヘッドをコンパクトに構成でき,既存の設備にもそのまま適用することができる」という作用効果は,引用発明,引用文献2記載技術及び周知技術から当業者が予測し得たものであるから,この点についての審決の判断に誤りはない。
なお,原告の主張のうち, 「円柱状の多孔性の材料を筐体内に確実に保持するようにしながら,大気中に消火剤を放出する際の消火剤の出口となるその他方の端面の 大気に開放される面積を大きく取ることができ,短時間で極めて大量の消火剤ガスを放出する際の障害や騒音の発生要因をなくすことができる」との主張は,本願明細書に記載がなく,本願発明の奏する作用効果とは解することができない。また,引用発明は,ガス系消火システムの消音ノズルに係る発明であり,上記の作用効果は,引用発明に引用文献2記載技術の構造を採用した際,必然的に奏する作用効果にすぎず,当業者が予測し得たものである。
したがって,審決の本願発明の進歩性の判断には誤りはなく,取消事由4は理由がない。
当裁判所の判断
1 本願発明について (1) 本願明細書(甲7〜9)の記載によると,本願発明の概要は,以下のとおりであると認められる。
ア 発明の属する技術分野 本願発明は,二酸化炭素,窒素,フッ素化合物等の消火剤ガスを使用するガス系消火設備において,消火対象区画に消火剤ガスを放出するために天井や壁面等に設置される噴射ヘッドに関し,特に,消火剤ガスが放出される際に発生する騒音を低減できるようにしたガス系消火設備用の消音機能を有する噴射ヘッドに関するものである。【0001】 ( ) イ 発明が解決しようとする課題 二酸化炭素,窒素,フッ素化合物等の消火剤ガスを使用するガス系消火設備において,消火の際にガス系消火設備が作動すると,約1分間以内(フッ素化合物の消火剤ガスの場合は10秒)で消火対象区画の消火剤ガス濃度が消火濃度に達するように,消火剤ガスが放出される。
このとき,消火剤ガスは,消火対象区画に消火剤ガスを放出するために天井や壁面等に設置される噴射ヘッドから放出されるが,従来のガス系消火設備用噴射ヘッ ドは,噴射ヘッドから消火剤ガスが放出される際に,高レベルの騒音(具体的には,120db以上の騒音)が発生することが知られていた。
ところで,ガス系消火設備の作動時には,消火対象区画内に人が存在しないことが前提となっているため,噴射ヘッドから消火剤ガスが放出される際に発生する騒音に対しては,従来全く問題視されず,何の対策も取られていなかった。
しかしながら,ガス系消火設備の作動時に消火対象区画内に逃げ遅れた人がいた場合の対処,更には,噴射ヘッドから消火剤ガスが放出される際に発生する騒音が周囲のいる人に悪影響を及ぼすおそれがあることなどの知見に基づき,消火剤ガスが放出される際に発生する騒音を低減する必要があるとの結論に達した。
本願発明は,上記従来のガス系消火設備用噴射ヘッドにおいて全く問題視されず,何の対策も取られていなかった消火剤ガスが放出される際に発生する騒音を低減できるようにしたガス系消火設備用の消音機能を有する噴射ヘッドを提供することを目的とする。【0002】〜【0007】 ( ) ウ 課題を解決するための手段 本願発明のガス系消火設備用の消音機能を有する噴射ヘッドは,消火剤ガスを使用するガス系消火設備において消火対象区画に消火剤ガスを放出するために設置される消音手段を備えた噴射ヘッドであって,前記消音手段を,消火剤ガスが供給される配管に螺合して接続された噴射ヘッドに備えた,オリフィスと,該オリフィスの出口部に配設されることによって,消火剤ガスが一方の端面から流入し,他方の端面から大気中に放出されるようにした形状保持性能を有する円柱状の多孔性の気流の乱れをなくす材料とからなり,該多孔性の気流の乱れをなくす材料が,噴射ヘッドを構成する円筒状の筐体内に収容されるとともに,その他方の端面が,中心部に円形の開口部を形成した筐体の蓋部の環状の外周縁のみによって保持されるようにしたことを特徴とする。
具体的には,図7に示すように,噴射ヘッド1I,1Jのオリフィス2の出口部に気体が流通可能な多孔性の気流の乱れをなくす材料7を配設することにより,オ リフィス2を通過した消火剤ガスが,気体が流通可能な多孔性の気流の乱れをなくす材料7を通過する間に徐々に膨張することによって,大気中に放出される際に急激に膨張することを緩和し,消火剤ガスが膨張することによって生じる衝撃波を弱めて,消火剤ガスが放出される際に発生する騒音を低減することができるものであり,図7(b)に示す噴射ヘッド1Jは,1個のオリフィス2に連なる下方向の開口を備えたものである。気体が流通可能な多孔性の気流の乱れをなくす材料7には,特に,形状保持性能の高い無機材料(金属,金属の酸化物,金属の水酸化物を含む。)の焼結体からなる多孔体を,その材質等に応じて,必要に応じて,パンチングメタル,エキスパンドメタル,焼結金属製の板材,ハニカム構造の整流器等からなるカバー部材を併用することによって,好適に用いることができる。
このように,消音手段を,オリフィス2の出口部に配設した気体が流通可能な多孔性の気流の乱れをなくす材料7で構成することにより,消音手段を簡易な構造とし,噴射ヘッドをコンパクトに構成でき,既存の設備にもそのまま適用することができる。【0008】【0050】〜【0052】 ( , ) 【図7】 エ 発明の効果 本願発明のガス系消火設備用の消音機能を有する噴射ヘッドによれば,消火剤ガスを使用するガス系消火設備において消火対象区画に消火剤ガスを放出するために 設置される噴射ヘッドに消音手段を備えることにより,消火剤ガスが放出される際に発生する騒音を低減でき,ガス系消火設備の作動時に消火対象区画内に逃げ遅れた人がいた場合でも,消火剤ガスが放出される際に発生する騒音によってパニックを起こしたり,避難を促す放送が聞こえにくくなることを防止することができ,更には,噴射ヘッドから消火剤ガスが放出される際に発生する騒音が周囲のいる人に悪影響を及ぼすことなどを防止することができる。
また,前記消音手段を,オリフィスの出口部に配設した気体が流通可能な多孔性の材料で構成することにより,消音手段を簡易な構造とし,噴射ヘッドをコンパクトに構成でき,既存の設備にもそのまま適用することができる。 【0013】【0 ( ,016】) (2) 本願発明の特徴 上記(1)によれば,本願発明は,@消火剤ガスを使用するガス系消火設備において天井や壁面等に設置される噴射ヘッドについての発明であり,A噴射ヘッドから消火剤ガスが放出される際に発生する騒音を低減するという課題を解決するため,B消火剤ガスが供給される配管に螺合して接続された噴射ヘッドの内部にオリフィスを形成するとともに,オリフィスの出口部に消火剤ガスが流通可能な,形状保持性能を有する円柱状の多孔性の気流の乱れをなくす材料を,消火剤ガスが大気中に放出される上記オリフィスの出口部と反対側の端面が,中心部に円形の開口部を形成した筐体の蓋部の環状の外周縁のみによって保持されるように配設して構成したことを特徴とするものであると認められる。
2 引用発明について (1) 引用文献1の記載事項 引用文献1(甲1)には,消火ガス放出用消音ノズルに関し,以下の記載がある。
[0001] この発明は消火ガス放出用消音ノズルに関し,特にガス系消火システムへの応用に適する。
[0003] 従来技術では,消火システムの放出ノズルは,深刻な欠点を有する。
これら公知の放出ノズルは,高圧消火ガスを放出する際,極めて大きな騒音を発する。
[0004] 従来技術では,ノズルが消火ガスを放出する間,騒音レベルは最大で130ないし140dB辺りにまで達し,平均騒音レベルは100dBを超えるまでに達する。
[0005] 労働環境で測定される騒音の許容最大値は90dBである。可燃性の製品を扱う工場のような,火災リスクのある労働環境では,消火システムのノズルからのガス放出が,誤って起きるかもしれない;その結果,全ての作業員が,ノズルから発生する耐えられない騒音のため,仕事場を放棄せざるを得なくされる。
[0013] この発明の目的は,従来技術のこれらの欠点をなくすことであり,低騒音,特に放出時の騒音レベルを90dB未満に抑え得る消火ガス放出用ノズルを提供することである。
[0017] この発明の消火ガス放出用ノズルは、少なくとも1つの焼結フィルタを覆う金属ボディのベース及びカバーを有する。前記焼結フィルタは高フィルタ領域を有し,消火ガスの放出による空気変動を抑制し,ノズルの騒音を著しく減少させる。
[0023] ノズル1は,本質的には3つの要素:ベースボディ2,カバー3及びベースボディ2とカバー3の間に含まれる焼結フィルタの組立体4からなる。
[0025] カバー3は,直径約83mmの円筒状のタング5からなり,端部に直径約100mmの円形フランジ6が形成されている。円筒状のタング5の上面には軸方向の孔7が形成され,消火ガスの入口となる。
[0026] 孔7は,消火ガス分配器用アタッチメントの通常のサイズである,30mmという直径を備える。
[0027] 円筒状のタング5の外径より幾分小さい直径に形成され,ガスを拡散させる軸方向の孔8はフランジ6の下面に形成される。この形態では,孔8は円筒状のタング5の内部へも続き,円筒状のタング5の上面のみを占める孔7に連通する。孔8の直径は,どのような場合であれ,消火ガス導入用の孔7の直径より大きく形成される。
[0032] ベースボディの下面には台座20と連通する消火ガス放出用の複数の孔21(直径およそ5mm,17の孔が例として示される)が形成される。
[0034] フィルタ組立体4は,亜鉛コートした金属ワイヤが金型で好適に圧 縮され,カバー3の孔8と等しい直径か,あるいは幾分小さくされた円板形状のフィルタボディとした2つの焼結フィルタ31及び32を備える。フィルタ31及び32は,拡散熱処理されて機械的強度が増し,高圧かつ高温(およそ500℃)で用いた場合でも長寿命を保証する。フィルタ31及び32はさらに,とても高いフィルタリングフィールド(10-50ミクロン)を有し,この場合,消火ガス放出に起因する空気変動に伴う騒音の相当な減衰を保証する。
[0036] バッフル33を間に挟んだ焼結フィルタ31及び32を含むフィルタ組立体4は,カバーの孔8内に配置され,フィルタ31の底の端部はベースボディの台座20に配置される。そして,ボルト11が孔10と22に差し込まれ,ベースボディから下向きに突き出た各ボルト11の軸端にねじって取付けられるナット25で締結される。
[0038] 組み立てられると,ノズル1は消火システムの消火ガス分配器に据付けられ得る。分配器から放たれた消火ガスは,ガス導入孔7をとおってノズル1に導入され,孔8へ拡散してフィルタ組立体4を通過し,ノズル1の上面の放出孔9をとおって上方へ放出され,ノズルの下面の放出孔21をとおって下方へ放出され,カバーされていないフィルタ組立体4の側面から側方へ放出される。
[0042] ノズル200はベースボディ202,カバー203及び第1実施例で説明されたものと実質的に等しいフィルタアセンブリ4からなる。
[0044] 円筒状ボディ205の上面には,外部に開き,ガス分配ラインを受け入れる台座234を有するコップ状の口233が備えられる。台座234は開口207を備え,チャンバ208と連通する。
[0046] 円筒ボディ205の下部は,ベースボディ202に形成された外部ねじ241と結合する内部ねじ240を有する。ベースボディ202は円筒状プレートであり,複数,一例として第1実施例と同様17,の軸方向孔21を備える。
[0047] ノズル200を組み立てるには,カバー203のチャンバ208内にフィルタ組立体4を挿入し,カバー203の底端にベースボディ202をねじ込めばよい。
[0048] ガス分配ラインは台座234の口233に配置され,それゆえ,開口 207をとおして伝えられたガスは,チャンバ208で膨張し,空気変動がフィルタ4で抑制される。そして,第1実施例と同様,消火ガスは孔9から上方に,スロット230から側方に,そして孔21から下方に,放出される。
(2) 引用発明の認定 上記(1)によれば,引用文献1は,@工場内に消火ガスを放出するためのガス系消火システムにおける消音ノズルについての発明であり,A消火ガスを放出する際に発生する騒音を軽減するという課題を解決するため,B消音ノズルの内部に開口207を形成するとともに,開口207の出口部に,空気変動を抑制する焼結フィルタ32及び31を配設し,焼結フィルタ31の外面がベースボディ202に形成された孔21を介して大気に開放されるように配設した構成を開示するものであるから,引用発明は,審決が認定したとおり, 「消火ガスを使用するガス系消火システムにおいて,工場内に消火ガスを放出するために取付けられる消火ガス放出用消音ノズル200であって,消音手段を,消火ガスが供給される消火ガス分配管に接続された消火ガス放出用消音ノズル200に形成した,開口207と,該開口207の出口部に配設されることによって,消火ガスが上面から流入し,下面から大気中に放出されるようにした,消火ガスが流通可能な金属ワイヤを圧縮して成形した円盤形状の空気変動を抑制する少なくとも1つの焼結フィルタ32又は31とからなり,該少なくとも1つの焼結フィルタ32又は31が,カバー203の円筒状ボディ205のチャンバ208に挿入されて配置されるとともに,その下面が,複数の孔21が形成されたベースボディ202によって保持されるようにしたガス系消火システム用の消火ガス放出用消音ノズル。」であると認められる。
そして,本願発明と引用発明との一致点及び相違点は,前記第2の3(2)及び(3)で審決が認定したとおりであると認められる。
3 取消事由1(引用文献2記載技術の認定の誤り)について (1) 引用文献2の記載事項 引用文献2(甲2)には,以下の記載がある。
ア 「本考案は,空気パージ用消音器に関するものであつて,比較的簡単な構成で優れた消音効果を発揮する新規な消音器を提供するものである。
電子機器を好ましくない雰囲気で使用するのにあたつて,電子機器内に清浄空気を入力して内圧を高め,電子機器内への有害雰囲気の侵入を防止する空気パージが行われている。
ところで,このような空気パージと共に,機器の冷却を行うこともある。この場合には,相当量の空気が必要となるが,空気流量に比例して入力空気による騒音も大きくなる傾向がある。このような騒音は,オペレータによる操作頻度が高い装置では,操作阻害要因の一つとなり,好ましくない。」 (明細書1頁14行〜2頁7行) イ 「第1図は,本考案の一実施例を示す構成説明図であつて,1はケース,2はノズル,3はスペーサ,4はキヤツプ,5,6は仕切板,7は吸音材,8は整流板,9は取付部材,10は機器本体である。(明細書2頁17行〜3頁1行) 」 ウ 「本実施例では,入力部としてノズル2が設けられ,出力部として環状に形成されたキヤツプ4が設けられている。これらノズル2およびキヤツプ4は,それぞれケース1の端部内周にねじ結合されている。(明細書3頁4行〜9行) 」 エ 「吸音材7は,通気性を有するものであつて,仕切板5,6間に充填されている。このような吸音材7としては,ガラス繊維や石綿等が好適である。整流板8はキヤツプ4から出力される空気の流れを平均化するものであつて,多数の径の等しい透孔が形成されている。(明細書3頁20行〜4頁5行) 」 オ 「また,スペーサおよび整流板は,必要に応じて用いればよい。
以上説明したように,本考案によれば,比較的簡単な構成で,消音効果の優れた消音器が実現でき,各種の空気パージ用消音器として好適である。(明細書5頁1 」0行〜14行) また,引用文献2の下記第1図には,空気パージ用消音器のケース1の内部に,吸音材7,スペーサ3,仕切板5,6が設けられ,その外端部(出口部)において は,吸音材7の外端側に整流板8が配置され,ケース1に螺合するキャップ4により整流板8の外周が保持された構成が開示されている。
第1図 (2) 引用文献2記載技術の特徴 上記(1)によれば,引用文献2に記載された消音器においては,電子機器を好ましくない雰囲気で使用するに当たって,電子機器内に清浄空気を入力して内圧を高め,電子機器内への有害雰囲気の侵入を防止する空気パージが行われていること,このような空気パージと共に,機器の冷却を行うこともあり,その場合には,相当量の空気が必要となるところ,空気流量に比例して入力空気による騒音も大きくなる傾向があることが認められる。このような騒音は,オペレータによる操作頻度が高い装置では,操作阻害要因の1つとなり,好ましくないことから,引用文献2記載技術は,空気を消音器の出口部から放出することで,消音効果を得ようとするものであるといえる。
(3) そして,引用文献2の空気パージ用消音器には,ケース1内にガラス繊維や石綿等による吸音材7が,仕切板5,6間に設けられ,出口部において,吸音材7が仕切板と整流板8の間に設けられ,環状に形成されたキャップ4がケース1の端部内周にねじ結合された構成が記載されているものと認められる。また,引用文 献2には,整流板は必要に応じて用いればよいとの記載があるから,出口部には,整流板を有しない,キャップ4のみを有する構成も示唆されているといえる。
そうすると,審決が,引用文献2の記載に基づいて,引用文献2記載技術を「出口部として環状のキャップ4のみが設けられた消音器。 と認定したこと自体に, 」 誤りはないと認められる。
(4) 原告の主張について ア 原告は,引用文献2には,「吸音材7としては,ガラス繊維や石綿等が好適である。」と記載されているのみで,整流板8を省略する場合に剛性の高い吸音材を使用することについての記載や示唆はなく,整流板8を設けずに出力部として環状に形成されたキャップ4のみを設けて吸音材7を保持するようにすると,引用文献2において吸音材7として用いられるガラス繊維や石綿が吹き飛ばされてしまうことから,到底そのような構成を採用できるものではなく,したがって,引用文献2に記載された発明において,整流板8を省略する場合には,出力部側に位置する,キャップ4の開口より小さい透孔や切欠部を形成した仕切板を,環状に形成されたキャップ4によって直接支持するようにすることが示唆されていると解釈するのが妥当であると主張する。
しかしながら,引用文献2には,整流板は必要に応じて設ければよいとの記載があり,この記載に従って,整流板を省略すれば,吸音材は,環状のキャップ4により保持される構成となることは明らかであるから,引用文献2の記載に基づいて,引用文献2記載技術を「出口部として環状のキャップ4のみが設けられた消音器。」と認定した審決に誤りはないことは前記認定のとおりである。また,吸音材の挙動は,ガスの流量や放射圧力にも関連するものであるけれども,引用文献2に記載された消音器は,大流量や高圧下で使用されるものに限られるわけではないから,原告が主張するように,必ずしも吸音材が吹き飛ばされることになるとはいえない。
なお,「注解消防関係法規集2009年版」(乙1)によれば,ガス系消火設備における消火剤ガスの放出量は,消火剤ガスの種類に応じて,防護区画1m3当たり, 毎秒6.82ないし7.76Lの消火剤ガスの放出を行う程度のものであること,消火設備における噴射ヘッドの放射圧力は,使用する消火ガスの種類によって,0.1MPa以上(消火ガスが,ハロン2402の場合),ないし1.9MPa以上(消火ガスが,IG-541の場合)と大きな幅があり,必ずしも高圧下で用いられるもののみに限られないことが認められる。そして,本願発明には,消火ガスの種類や放射圧力についての特定はなく,本願明細書にも,その放射圧力等についての具体的な記載はないから,本願発明の噴射ヘッドについても,必ずしも高圧下で用いられるものに限られるものではないということができる。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
イ 原告は,高圧下での使用を前提として,本願発明の「形状保持性能を有する円柱状の多孔性の気流の乱れをなくす材料」とは,「形状保持性能を有する円柱状」の修飾語からして,多孔性の気流の乱れをなくす材料が,円柱状をした単一の部材(又はそれらを組み合わせた部材)のみからなると解釈すべきものであって,被告が主張するように,「カバー部材を併用したものを含む」ものではなく,それ自体で形状保持性能を有するものである旨主張する。
しかしながら,仮に,原告がいうように本願発明が高圧下での使用を前提とするとしても,以下のとおり,原告の上記主張は採用することができない。
すなわち,本願の請求項1には, 「消火剤ガスが一方の端面から流入し,他方の端面から大気中に放出されるようにした形状保持性能を有する円柱状の多孔性の気流の乱れをなくす材料」との記載があるところ, 「形状保持性能を有する円柱状の多孔性の気流の乱れをなくす材料」については,上記の他, 「該多孔性の気流の乱れをなくす材料が,噴射ヘッドを構成する円筒状の筐体内に収容されるとともに,その他方の端面が,中心部に円形の開口部を形成した筐体の蓋部の環状の外周縁のみによって保持されるようにした」と特定されているのみであり,その構造について,特段の限定はない。そして,本願明細書の段落【0051】には, 「気体が流通可能な繊維状又は多孔性の気流の乱れをなくす材料7には,特に,グラスウール,ロック ウール,スチールウール等の金属製ウールや形状保持性能の高い無機材料(金属,金属の酸化物,金属の水酸化物を含む。)の焼結体からなる多孔体を,その材質等に応じて,必要に応じて,パンチングメタル,エキスパンドメタル,焼結金属製の板材,ハニカム構造の整流器等からなるカバー部材を併用することによって,好適に用いることができる。 との記載がある。
」 本願発明の気流の乱れをなくす材料は, 「多孔性」であると特定されているから,上記記載のうち,グラスウール,ロックウール,スチールウール等の金属製ウールのような繊維状の材料は除かれていることは明らかであるものの, 「必要に応じて,パンチングメタル,エキスパンドメタル,焼結金属製の板材,ハニカム構造の整流器等からなるカバー部材を併用すること」については排除されていないものと認められる。
そうすると,本願発明の「形状保持性能を有する円柱状の多孔性の気流の乱れをなくす材料」には,それ自体が形状保持性能を有する多孔性の材料の他,多孔性の材料に,パンチングメタル,エキスパンドメタル,焼結金属製の板材,ハニカム構造の整流器等からなるカバー部材を併用することで形状保持性能を有するようにしたものも,その構成に含まれるものとして開示されているということができる。
このように,本願発明の「形状保持性能を有する円柱状の多孔性の気流の乱れをなくす材料」は,多孔性の材料に,ハニカム構造の整流板等からなるカバー部材を併用することで形状保持性能を有するようにしたものも含むものであるところ,引用文献2の整流板は,本願発明のカバー部材に相当するといえるから,引用文献2の「吸音材」及び「整流板」は,本願発明の「気流の乱れをなくす材料」に相当するものといえる。
そうすると,引用文献2の実施例である第1図の整流板を用いるものでは,環状のキャップで, 「吸音材」及び「整流板」を保持する構成が記載されており,本願発明の「気流の乱れをなくす材料」に相当する部材である「吸音材」及び「整流板」を,環状のキャップによって,その外周のみで支持する構成が開示されているといえる。
したがって,整流板を設ける場合であっても,引用文献2には, 「出口部として環状のキャップ4のみが設けられた消音器」が記載されているといえるから,いずれにしても,原告の上記主張は,引用文献2記載技術についての前記認定を左右するものではないといわざるを得ない。
以上によれば,原告の上記主張は採用することができない。
4 取消事由2(相違点2の判断の誤り)について (1) 相違点2について 相違点2は,本願発明における「多孔性の気流の乱れをなくす材料」は, 「形状保持性能」を有するものであるのに対し,引用発明における「少なくとも1つの焼結フィルタ32又は31」 形状保持性能を有するものか否か不明である点である。
は, 引用発明の「少なくとも1つの焼結フィルタ32又は31」は,金属ワイヤを圧縮して成形した円盤形状のものであるところ,引用文献の段落[0034]には,亜鉛コートした金属ワイヤが金型で好適に圧縮され,拡散熱処理されて機械的強度が増し,高圧かつ高温で用いた場合でも長寿命が保証されたものであることが記載されている。また,引用文献1の段落[0038]の記載及び第1実施例(図1)によれば,焼結フィルタによるフィルタ組立体4の側面はカバーがされておらず,外気に露出した構成となっていることが認められる。そして,引用発明は,本願発明と同様にガス系消火設備用の噴射ヘッドであるから,その「少なくとも1つの焼結フィルタ32又は31」は,当然に,消火剤ガスの放出によっても,その形状を維持できるようにされたものと認められる。
そうすると,引用発明の「少なくとも1つの焼結フィルタ32又は31」は,金属ワイヤが金型で好適に圧縮され,拡散熱処理されて機械的強度が増したものであるから,一定の剛性を有するものと解される上,同じ焼結フィルタを用いたものであって,その側面が外気に大きく露出している第1実施例も示されているところ,このような焼結フィルタの支持条件においても,消火剤ガスの放出圧力の下で,形 状保持性能を有するものなのであるから,引用発明の「少なくとも1つの焼結フィルタ32又は31」は,形状保持性能を具備するものと認められる。
したがって,相違点2は実質的な相違点ではないとした審決の判断に誤りはない。
(2) 原告の主張について 原告は,引用文献1に記載された焼結フィルタは,一定の形状保持性能を備えているといえるものであるが,これを短時間で極めて大量の消火剤ガスを放出する必要のあるガス系消火設備用の噴射ヘッドに適用した場合に,中心部に円形の開口部を形成した筐体の蓋部の環状の外周縁のみによって保持し得る剛性を有するものであるかどうかは不明であり,むしろ,引用文献1において,敢えて,複数の孔21が形成されたベースボディ202によって保持されている点を勘案すれば,当該焼結フィルタは,そのようにするための十分な剛性を有するものではないと解釈するのが妥当であると主張する。
しかしながら,消火設備における噴射ヘッドの放射圧力は,使用する消火ガスの種類によって, 1MPa以上 0. (消火ガスが,ハロン2402の場合) ないし1. ,9MPa以上(消火ガスが,IG-541の場合)と大きな幅があるところ,本願発明の噴射ヘッドが,必ずしも高圧下で用いられるものに限られるわけではないことは前記認定のとおりである。そうすると,高圧下で使用されることを前提として,引用発明の焼結フィルタについて十分な剛性があるかは明らかではない(形状保持性能を有しない)という原告の主張は,その前提を欠くものである。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
5 取消事由3(相違点3の判断の誤り)について (1) 相違点3について ア 相違点3は, 「その他方の端面が,保持されるようにした」に関し,本願発明においては「その他方の端面が,中心部に円形の開口部を形成した筐体の蓋部の環状の外周縁のみによって保持されるようにした」のに対し,引用発明において は「その下面が,複数の孔21が形成されたベースボディ202によって保持されるようにした」点である。
イ そこで,相違点3について検討するに,引用発明は,本願発明のオリフィスに相当する開口207の出口部の反対側の,本願発明の気流の乱れをなくす材料に相当する焼結フィルタ31の外面(底面)が,ベースボディ202に形成された複数の孔21を介して大気に開放される構成となっている。もっとも,引用文献1の記載によれば,図1〜4に示される第1実施例は,カバーがされていない側面から側方全周にわたってガスを放出する構成のものであり([0038],また,図 )6〜8に示される第2実施例は,スロット230から側方にガスが放出されるものであり [0048], ( ) 限られた開口からその開口の向きにガスが放出される構成であることが認められる。このように,出口の形態が異なれば,ガスの放出の形態も異なるものとなることは明らかであるから,消火ガスを放出する際の指向性(方向)や拡散の度合いを考慮して,出口の孔の数やその大きさを調整することは,当業者の技術常識であると認められる。
引用発明の消火ガス放出用消音ノズルのベースボディ202に設けられた複数の孔21は,下方に向けて消火ガスを放出するものであるところ([0038],当業 )者であれば,低騒音の消火ガス放出用ノズルを提供するという引用発明の目的の範囲で,消火ガスを放出する際の指向性や拡散の度合いを考慮して,必要に応じて,孔の数やその大きさを適宜設計し得るものと認められる。
ウ 引用文献2記載技術は,前記3のとおり, 「出口部として環状のキャップ4のみが設けられた消音器。」であり,大きな流量の空気(ガス)が出口部から噴出する際の騒音を低減しようとするものであるから,空気パージに特有の問題に対処するための技術であるとはいえず,大きな流量のガスが噴出する出口部を有するものに共通する技術であると認められる。そして,引用発明は,ガス系消火システムの消音ノズルに関する発明であり,消火ガスを放出する際に発生する騒音の軽減を課題とするものであるから,その技術分野及び解決すべき課題は,引用文献2記載 技術と共通しているものと認められる。
また,電子機器の冷却に要する空気量についてみると,特開2009-104650号公報(乙4)に,データセンタの設備機器(電子設備機器)の冷却に関して,「上げ床構造は,一般的に・・・約200cfmから約500cfmの冷気を供給するように構成される。最高10,000ワット以上を消費し,約1,600cfmの空気の流れを要求するハイパワー設備機器のラックは,・・・」(段落【0006】)との記載があることから,電子設備機器の冷却に要する空気量は,設備機器における消費電力により増減し,電子設備機器の冷却のためには, 「約200cfmから約500cfm」又は「1,600cfm」の冷気,すなわち,毎秒約94.4〜236L又は毎秒755.2Lの冷気の供給を要するものと把握することができる(なお,100cfmは約2832L/分である。。これに対し,消火剤ガスの )放出量は,前記3(4)アのとおり,消火剤ガスの種類に応じて,防護区画1m 3当たり毎秒6.82〜7.76L程度であるから,電子機器の冷却に要する755L程度の空気量は,前記消火剤ガスの放出量で換算すると,概ね,毎秒100m 3の防護区画に対する消火剤ガスの放出量に相当することが認められる。
そうすると,ガス系消火設備用の噴射ヘッドに要する単位時間当たりのガスの流量と電子機器冷却用の消音器に要する単位時間当たりのガスの流量に差があるとはいえないから,ガスの流量を考慮したとしても,引用文献2記載技術を,騒音の軽減の観点から,引用発明のガス系消火設備用の消音ノズルに適用することに格別の困難はないということができる。
さらに,本願発明には,消火ガスの種類や放射圧力についての特定はなく,本願明細書にも,その放射圧力等についての具体的な記載はないから,本願発明の噴射ヘッドは,必ずしも高圧下で用いられるものに限られるとはいえない。
このように,引用発明と引用文献2記載技術は,いずれもガスを放出するノズルに関するものであり,ガスを放出する際に発生する騒音を軽減するという課題を達成しようという点で,課題を共通にし,引用発明に引用文献2記載技術を適用する ことについて格別の困難はないといえるから,引用発明及び引用文献2記載技術に接した当業者は,引用発明において引用文献2記載技術を適用することを試みるものと認められる。
エ 以上のとおり,上記イの技術常識を踏まえ,消火ガスを放出する際の指向性や拡散の度合いを調整するために,引用発明の目的の範囲内で,出口における孔の数やその大きさを適宜変更し,引用発明において,引用文献2記載技術のように,消火ガス放出用消音ノズルの焼結フィルタをベースボディの外周縁のみで保持するようにし,ガスの下方への出口を1つの孔とするという相違点3に係る本願発明の構成とすることは,当業者であれば容易に想到し得たものということができる。
(2) 原告の主張について ア 原告は,仮に,引用文献2に係る空気パージ用消音器の技術分野において,「出口部として環状のキャップ4のみ」を設けるように構成することが可能であるとしても,それは,空気パージ用消音器の技術分野に限られることであって,短時間で極めて大量の消火剤ガスを放出する必要のあるガス系消火設備用の噴射ヘッドには,到底適用できるものではないことから,上記構成をガス系消火設備用の噴射ヘッドにまで普遍化できるものではなく,また,引用文献1においても,焼結フィルタを,敢えて,複数の孔21が形成されたベースボディ202によって保持されている点を勘案すれば,当該焼結フィルタは,そのようにするための十分な剛性を有するものではないと解釈するのが妥当である旨主張する。
しかしながら,引用文献2記載技術は,空気パージ用消音器の技術分野のみに限られるものでなく,引用発明のガス系消火設備用の消音ノズルに適用することに格別の困難はないこと,本願発明の噴射ヘッドについても,必ずしも高圧下で用いるものに限られるとまではいえないことは,前記認定のとおりである。
また,前記認定のとおり,引用発明の「少なくとも1つの焼結フィルタ32又は31」は,金属ワイヤが金型で好適に圧縮され,拡散熱処理されて機械的強度が増したものであるから,一定の剛性を有するもの解される上,同じ焼結フィルタを用 いたものであって,その側面が外気に大きく露出している第1実施例も示されているところ,このような焼結フィルタの支持条件においても,消火剤ガスの放出圧力の下で,形状保持性能を有するものであるから,引用発明の「少なくとも1つの焼結フィルタ32又は31」は,形状保持性能を具備するものと認められる。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
イ 原告は,審決が認定したように,「引用発明は発生音を抑制することを課題としているから,引用発明において消火ガスを放出する開口の面積を,発生音が増大しないよう設計することは当然の事項である。」としても,1つの開口とすることで消火ガスを放出する開口の面積を大きくし,発生音が増大しないようにすることは,審決が提示するいずれの引用文献にも,記載も示唆もされていないといえる旨主張する。
確かに,本願発明は, 「多孔性の気流の乱れをなくす材料が,噴射ヘッドを構成する円筒状の筐体内に収容されるとともに,その他方の端面が,中心部に円形の開口部を形成した筐体の蓋部の環状の外周縁のみによって保持されるようにした」ものであるから,これによって,下方の出口は1つの開口となる。
しかしながら,本願の請求項1において,多孔性の気流の乱れをなくす材料の下方における開口面積や外周縁の範囲については何ら特定されていないから,1つの開口とすることで「消火ガスを放出する開口の面積を大きくする」という原告の上記主張は,特許請求の範囲の記載に基づくものではないといわざるを得ない。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
ウ 原告は,被告が主張するように,消火剤ガスの放出量と電子機器を冷却する際の空気量とには大きな差がないとしても,噴射ヘッドと電子機器の冷却装置の出口の流速には,両者の設置数や開口面積に基づく大きな差がある(噴射ヘッドにおける消火剤ガスの流速は,音速に近いのに対し,電子機器の冷却装置の出口の流速は,ファンの性能からしても音速近くになることはなく,実際の設備における設計値においても,噴射ヘッドと電子機器の冷却装置の出口の流速には,約600 0倍の差がある。)から,引用文献2記載技術は,短時間で極めて大量の消火剤ガスを放出する必要のあるガス系消火設備用の噴射ヘッドには到底適用できるものではないと主張する。
しかしながら,噴射ヘッドと電子機器の冷却装置の出口の流速は,放出量と開口面積との相関関係で定まるものであり,前記認定事実によっても,引用発明と引用文献2記載技術の開口面積に著しい差異があることまで認めるに足りない以上,出口の流速の差異に基づく原告の上記主張は,その前提を欠くものである。そして,引用文献2記載技術を,引用発明のガス系消火設備用の消音ノズルに適用することに格別の困難はないことは,前記認定のとおりである。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
6 取消事由4(作用効果に関する認定の誤り)について 原告は,本願発明は,本願発明の構成とすることにより,本願明細書に記載された「消音手段を簡易な構造とし,噴射ヘッドをコンパクトに構成でき,既存の設備にもそのまま適用することができる。」という作用効果,より具体的には,円柱状の多孔性の材料を筐体内に確実に保持するようにしながら,大気中に消火剤を放出する際の消火剤の出口となるその他方の端面の大気に開放される面積を大きく取ることができ,短時間で極めて大量の消火剤ガスを放出する際の障害や騒音の発生要因をなくすことができるという,引用発明,引用文献2記載技術及び周知技術から当業者が予測できる作用効果以上の格別な作用効果を奏するものであるといえると主張する。
しかしながら,引用発明において,低騒音の消火ガス放出用ノズルを提供するという目的を損なわないようにした上で,引用文献2記載技術を適用できることは明らかであるから,引用発明と引用文献2記載技術に基づいて,引用発明の焼結フィルタ31の外面(底面)が,ベースボディ202に形成された複数の孔21を介して大気に開放されるようになっているものに換えて,中心部に円形の開口部を形成 した筐体の蓋部の環状の外周縁のみによって保持する構成にした場合に,本願明細書に記載された「消音手段を簡易な構造とし,噴射ヘッドをコンパクトに構成でき,既存の設備にもそのまま適用することができる。 という効果を奏することは, 」 当業者であれば当然に予測し得ることである。本願発明の効果については,引用発明と引用文献2記載技術等に基づいて,当然に生じるものであって,当業者が予測できるものであるといわざるを得ない。
なお,大気中に消火剤を放出する際の消火剤の出口となるその他方の端面について,「大気に開放される面積を大きく取る」旨の原告の主張は,特許請求の範囲の記載に基づくものではないことは前記認定のとおりである。
したがって,原告の上記主張は採用することができず,取消事由4は理由がない。
結論
以上のとおり,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 清水節
裁判官 中島基至
裁判官 岡田慎吾
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