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事件 平成 28年 (ワ) 13239号 特許権侵害差止請求事件
5原告 ヴァレオ・エキプマン・エレ クトリクモトゥール
同訴訟代理人弁護士 北原潤一 佐志原将吾 10 同訴訟代理人弁理士 黒川恵
被告三菱電機株式会社
同訴訟代理人弁護士 近藤惠嗣 15 前田将貴
同訴訟代理人弁理士 加藤恒 大家泉
同補佐人弁理士 木挽謙一 中山晴貴 20 倉谷泰孝
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2017/08/31
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定め25 る。
- 1 -事 実 及 び 理 由第1 請求1 被告は,モータジェネレータ(以下「被告製品」という。)を製造し,販売し,輸出し又は販売の申出をしてはならない。
5 2 被告は,被告製品を廃棄せよ。
第2 事案の概要1 事案の要旨本件は,発明の名称を「オルタネータ,またはオルタネータ/スタータの後部に一体化された電力電子装置を冷却する装置」とする特許権及び「パワーモ10 ジュールおよびパワーモジュールアセンブリ」とする特許権を有する原告が,被告による被告製品の製造,販売,輸出又は販売の申出が上記各特許権を侵害すると主張して,特許法100条1項及び2項に基づき,被告製品の製造等の差止め及び廃棄を求める事案である。
2 前提事実15 以下の事実は,当事者間に争いがないか,括弧内の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる。
? 当事者原告は,自動車電気機器の製造・販売を業とするフランス共和国法人である。被告は,重電システム,産業メカトロニクス,情報通信システム,電子20 デバイス,家庭電気などの製造,販売を業とする株式会社である。
? 本件各特許権ア 「352号特許権」といい,その特許出願の願書に添付された明細書及び図面を「本件明細書1」という。)及「714号特許権」といい,その特許出願の願25 書に添付された明細書及び図面を「本件明細書2」という。)を有している(甲2,5)。
- 2 -特許番号 第4392352号発明の名称 オルタネータ,またはオルタネータ/スタータの後部に一体化された電力電子装置を冷却する装置出願日 平成15年10月28日(特願2004−547740)5 優先日 平成14年10月28日登録日 平成21年10月16日特許番号 第4634714号発明の名称 パワーモジュールおよびパワーモジュールアセンブリ出願日 平成14年12月12日(特願2003−552035)10 優先日 平成13年12月13日登録日 平成22年11月26日イ 352号特許権に係る特許請求の範囲の請求項1 とおりであり,請求項11(以下,この発明を「本件発明1」といい,その特許を「本件特許1」という。)の記載 のとおりである。714号15 特許権に係る特許請求の範囲の請求項1(以下,この発明を「本件発明2」という。)の記載は のとおりである。
352号特許権の請求項1「回転電気機械であって,1.半径方向の冷却流体排出スロット(4a)(4d)を有する後部軸20 受け(4)と,2.少なくとも前記後部軸受け(4)によって支持された回転シャフト(2)上に中心が位置して固定されたロータ(1)と,3.前記ロータ(1)を取り囲み,回転電気機械の相を構成する巻線を有するアーマチュア巻線(7)を含むステータ(3)と,25 4.前記ステータ(3)相の巻線に接続された電力電子回路(15)と,5.前記電力電子回路(15)を搭載した上面と,上面と反対側で前記- 3 -後部軸受け(4)の方を向く底面を有する熱放散ブリッジ(16)と,を備えていて,前記底面は,冷却流体通路(17)の長手方向壁を形成し,冷却流体通路(17)の他方の長手方向壁は,前記ステータ(3)を支持している前記後部軸受け(4)により形成されている回転電気機5 械であって,イ.前記熱放散ブリッジ(16)の底面は,前記流体通路(17)内に配置された複数個の冷却フィン(18)を有すること,ロ.前記熱放散ブリッジ(16)は,少なくとも2個の固定スタッド(21)によって後部軸受け(4)に固定されていること,10 ハ.前記熱放散ブリッジ(16)に固定された複数個の冷却フィン(18)の全ての軸方向端部は,後部軸受け(4)から所定の間隔を置いた位置にあること,を特徴とする回転電気機械。」352号特許権の請求項11(本件発明1)「前記ロータ(3)の回転シャフト(2)と熱放散ブリッジ(16)の15 間に,軸方向流体通路を形成する少なくとも1つの空間が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の回転電気機械。」714号特許権の請求項1(本件発明2)「少なくとも2つのパワーモジュール(12)を含んでいるパワーモジュールアセンブリであって,各パワーモジュール(12)は一体型であ20 り,各パワーモジュール(12)が,少なくとも一つの切り抜き金属パターン(14)と,切り抜き金属パターンに電気的に接続される少なくとも一つのパワー電子部品(16)と,パワーモジュールの結合を行う電気絶縁材(30;56)と,当該モジュールの外部冷却手段と直接接するように構成され且つ少なくとも25 一部が前記切り抜き金属パターンを含む冷却面(28)と,切り欠き金属パターン(14)を当該モジュールの外部素子に電気的に接続する第- 4 -1の接続手段とを有しており,アセンブリが,パワーモジュールのためのケース(42)を有しており,ケースが各パワーモジュールの前記冷却面を含む複合底を有しており,5 各パワーモジュールにおいて,電気絶縁材(56)が,切り抜き金属パターン(14)およびパワー電子部品(16)の周囲に一体成形されるブロックを形成することを特徴とする,パワーモジュールアセンブリ。」ウ 本件発明1及び2は,それぞれ次の構成要件に分説される(以下,個別10 の構成要件をそれぞれの符号に従い「構成要件1A」などという。 。
)本件発明11A 回転電気機械であって,1B 1.半径方向の冷却流体排出スロット(4a)(4d)を有する後部軸受け(4)と,15 1C 2.少なくとも前記後部軸受け(4)によって支持された回転シャフト(2)上に中心が位置して固定されたロータ(1)と,1D 3.前記ロータ(1)を取り囲み,回転電気機械の相を構成する巻線を有するアーマチュア巻線(7)を含むステータ(3)と,1E 4.前記ステータ(3)相の巻線に接続された電力電子回路(120 5)と,1F 5.前記電力電子回路(15)を搭載した上面と,上面と反対側で前記後部軸受け(4)の方を向く底面を有する熱放散ブリッジ(16)と,を備えていて,1G 前記底面は,冷却流体通路(17)の長手方向壁を形成し,冷却25 流体通路(17)の他方の長手方向壁は,前記ステータ(3)を支持している前記後部軸受け(4)により形成されている回転電気機- 5 -械であって,1H イ.前記熱放散ブリッジ(16)の底面は,前記流体通路(17)内に配置された複数個の冷却フィン(18)を有すること,1I ロ.前記熱放散ブリッジ(16)は,少なくとも2個の固定スタ5 ッド(21)によって後部軸受け(4)に固定されていること,1J ハ.前記熱放散ブリッジ(16)に固定された複数個の冷却フィン(18)の全ての軸方向端部は,後部軸受け(4)から所定の間隔を置いた位置にあること,を特徴とする1K 回転電気機械。
10 1L 前記ロータ(3)の回転シャフト(2)と熱放散ブリッジ(16)の間に,軸方向流体通路を形成する少なくとも1つの空間が設けられていることを特徴とする本件発明22A 少なくとも2つのパワーモジュール(12)を含んでいるパワー15 モジュールアセンブリであって,2B 各パワーモジュール(12)は一体型であり,2C 各パワーモジュール(12)が,2C1 少なくとも一つの切り抜き金属パターン(14)と,2C2 切り抜き金属パターンに電気的に接続される少なくとも一つの20 パワー電子部品(16)と,2C3 パワーモジュールの結合を行う電気絶縁材(30;56)と,2C4 当該モジュールの外部冷却手段と直接接するように構成され且つ少なくとも一部が前記切り抜き金属パターンを含む冷却面(28)と,25 2C5 切り欠き金属パターン(14)を当該モジュールの外部素子に電気的に接続する第1の接続手段とを有しており,- 6 -2D アセンブリが,パワーモジュールのためのケース(42)を有しており,ケースが各パワーモジュールの前記冷却面を含む複合底を有しており,2E 各パワーモジュールにおいて,電気絶縁材(56)が,切り抜き5 金属パターン(14)およびパワー電子部品(16)の周囲に一体成形されるブロックを形成することを特徴とする,2F パワーモジュールアセンブリ。
? 被告の行為被告は,被告製品の製造,販売,輸出及び販売の申出を行っている。
10 ? 被告製品の構成被告製品は,少なくとも別紙被告製品構成書記載のとおりの構成を有しており(以下,個別の構成をその符号に従い「構成1a」などという。ただし,下線部は原告の主張する構成であり,被告は同下線部の直後の[]内のとおりの構成であると主張して争っている。当該被告の主張中,少なくとも波線15 部は当事者間に争いがない。,上側ベアリング上面側の状態は別紙被告製品)写真記載写真1(以下「被告製品写真1」という。)のとおりであり,熱放散部材の底面側の状態は同記載写真2(以下「被告製品写真2」という。)のとおりであり,パワーモジュールアセンブリ(パワーモジュールユニット)及び熱放散部材の切断面の状態は同記載写真3(以下「被告製品写真3」と20 いう。)のとおりである。
3 争点? 被告製品の構成要件充足性(なお,被告は以下のア〜オ以外の構成要件の充足性を争っていない。)ア 構成要件1G「冷却流体通路(17)」の充足性25 イ 構成要件1H「前記流体通路(17)内に配置された複数個の冷却フィン(18)」の充足性(文言侵害均等侵害)- 7 -ウ 構成要件2F「パワーモジュールアセンブリ」の充足性エ 構成要件2C4「当該モジュールの外部冷却手段と直接接するように構成され・・・冷却面(28)」の充足性オ 構成要件2D「複合底」の充足性5 ? 本件特許1の無効理由の有無(乙1文献(特開平6−46547号公報をいう。以下同じ。)に基づく本件発明1の進歩性欠如)4 争点についての当事者の主張? 争点?(被告製品の構成要件充足性)についてア 構成要件1G「冷却流体通路(17)」の充足性10 (原告の主張)「冷却流体通路(17)」は,熱放散ブリッジと後部軸受けの間の空間であり,冷却流体が横(長手)方向に流れる空間をいうと解すべきである。このことは,@冷却流体通路とは冷却流体の通り道を通常意味すると考えられること,A本件明細書1において,開口部(19)から熱15 放散ブリッジの底面及び後部軸受けの間の空間に導入される冷却空気が回転シャフトに向かって横(長手)方向に流れ,後部軸受けの開口部の上部の空間内に達し,当該空間に存在するフィンを冷却する機能を有することが示されており(【図2】の符号17の矢印及び破線),当該空間が横方向の冷却流体の通り道として予め想定されていること,横方向の20 冷却空気の通路(17)は軸方向の冷却空気の通路(22)と連通し,上記各通路が合流するとされていること(段落【0061】【0072】,〜【0074】)から明らかである。
被告は,冷却流体通路の範囲を2つの長手方向壁(「前記底面」が形成するもの及び「前記ステータ(3)を支持している前記後部軸受け25 (4)」が形成するもの)が厳密に対向する空間のみをいうと主張する。
しかし,本件発明1は,可逆的回転電気機械の後部と一体化された電力- 8 -電子装置を冷却する従来型の装置においては電力電子装置の冷却不十分となる課題があったところ(本件明細書1の段落【0025】〜【0028】,後部軸受けと熱放散ブリッジとの間の空間に横(長手)方向の)冷却空気の流れを生じさせる構成(段落【0029】)と,回転シャフ5 トと熱放散ブリッジの間の空間に軸方向の冷却空気の流れを生じさせる構成(段落【0073】〜【0075】)を組み合わせたものを採用し,横方向と軸方向の冷却流体の流れを利用して電力電子装置等を良好に冷却することができるという効果を奏するものである。このことに照らせば,上記の2つの長手方向壁は空気の流れを横に方向付ける機能的な観10 点から規定されたものであって当該通路とその周囲の通路でない部分との境界を厳密に確定するものとはいえないから,上記主張は失当である。
また,冷却流体通路の長手方向壁を形成する「後部軸受け(4)」は,壁を構成する物体に別の物が貼られていても当該物体を壁とみるのが通常であることや本件明細書1の記載(段落【0094】)に照らせば,15 その上に電気絶縁材料の層が固定された構成を含むと解すべきである。
被告製品は,「後部軸受け(4)」に相当する上側ベアリングの外表部につき構成1g並びに被告製品写真1及び2のとおり@熱放散部材底面側のプレートに対応する部分,AC字状部材で覆われた部分,BC字状部材不存在かつプレート非対応部分,Cブリッジ部,Dプレートに対応20 しない開口部がある。そのうち上記A〜Dの部分と熱放散ブリッジの間は,横方向の冷却流体の通り道として想定された空間であるから,被告製品は構成要件1Gの「冷却流体通路」を充足する。
(被告の主張)「冷却流体通路(17)」は,特許請求の範囲の記載上,熱放散ブリ25 ッジの底面を一方の長手方向壁とし,後部軸受けを他方の長手方向壁として物理的に区画された空間のみをいうと解すべきである。原告は,- 9 -「通路」が通り道を意味することから冷却空気が通過する場所を全て冷却流体通路に該当すると主張するが,特許請求の範囲の記載からかけ離れていること,通路は通り道とすることを目的として特定の構造により物理的に区画された特定の部分をいうのであって,本件明細書1上も5 「通路」を壁があって形を把握できるものとして,「経路」を冷却空気が通過する道筋を指すものとしてそれぞれ用いていること(段落【0015】【0048】【0059】【0076】等)などからすれば,失, , ,当である。
被告製品の熱放散部材の底面に対向しているのは,前記(原告の主張)10 @につき熱放散部材底面側のプレートであり,AにつきC字状部材であり,Dにつき開口部であって,いずれも「後部軸受け(4)」に相当する上側ベアリングでない。Aに関し,上側ベアリングに電気絶縁材料の層(きわめて薄く,それ自体は壁として機能しないものをいう。)が固定された構成であれば,それを冷却流体通路の長手方向壁を構成す15 る「後部軸受け(4)」ということができるが,C字状部材は,絶縁するためのものでない上,そのように薄いものでなく,これを上記「後部軸受け(4)」ということはできない。
同B及びCにつき,熱放散部材の底面と上側ベアリングの外表部の間を冷却空気が流れるが,被告製品はC字状部材やプレートと熱放散部材20 の間から流入した冷却空気を開口部に流入させるように設計されているから,周縁部の全周の約140分の1に相当するBの部分及びCの部分は,被告製品の冷却のためには無意味な構造である上,横方向の空気が流れないから,本件発明1の作用効果と無関係である。
したがって,上記@〜Dはいずれも「冷却流体通路(17)の他方の25 長手方向壁」に相当せず,被告製品は構成要件1Gの「冷却流体通路」を充足しない。
- 10 -イ 構成要件1H「前記流体通路(17)内に配置された複数個の冷却フィン(18)」の充足性(文言侵害均等侵害)(原告の主張)5 熱放散ブリッジと後部軸受けの間の空間であり,冷却流体が横(長手)方向に流れる空間をいうと解すべきであり,被告製品における熱放散部材底面側のプレートと対応しない開口部であってその上部に空間がある部分も,上記冷却流体が流れる空間である以上,「冷却流体通路(17)」に該当する。そうすると,被告製品において,熱放散部材の底面に設け10 られた冷却フィンは,上側ベアリングの開口部と熱放散部材の底面のうち上側ベアリングの開口部と対向している部分によって挟まれる空間に存在しているから,被告製品は,熱放散ブリッジの底面において,「前記流体通路(17)内に配置」された複数個の冷却フィン(18)を有する。
15 仮にそうでなく,被告製品のフィンが「前記流体通路(17)内に配置」されておらず,この点で本件発明1の構成要件1H と相違するとしても,本件は以下の均等の第1要件から第3要件までを満たし,第4要件(被告製品の構成が従来技術から容易想到でないこと)及び第5要件(被告製品の構成を意識的に除外するその他の特段の事情がないこと)20 を否定する事情がないから,被告製品は本件発明1の構成と均等なものとして,本件発明1の技術的範囲に属する。
a 第1要件(相違点の本質的部分非該当性)本件発明1の解決課題は,従来型の自動車のオルタネータ/スタータなどの可逆的回転電気機械の後部と一体化された電力電子装置を冷25 却する装置においては冷却フィンを有する後部軸受けに熱放散ブリッジを押し当てることで電力電子装置の冷却を行っていたが,熱放散ブ- 11 -リッジと後部軸受けの表面との間に何らかの空気ギャップが存在すると電力電子装置の冷却が不十分となり,また,後部軸受けが非常に高温である場合に熱放散ブリッジを対流で冷却することが困難であったことにある(本件明細書1の段落【0025】〜【0028】。この)5 課題の解決手段として,熱放散ブリッジと後部軸受けとの間に横方向に導入される冷却流体が循環することを可能にする長手方向の冷却流体通路を設けるとともに(段落【0029】 ,回転シャフトと熱放散)ブリッジの間に横方向に導入される冷却流体が循環することを可能にする軸方向の冷却流体通路を設け(段落【0073】〜【0075】 ,)10 それらの組合せにより,横方向及び軸方向の冷却流体の流れを利用して回転電気機械に含まれる電力電子装置やその他の内部部品を良好に冷却できるという効果を奏するものである。こうした課題,解決手段及び効果に照らせば,本件発明1の本質的部分は,後部軸受けと熱放散ブリッジの間に長手方向の冷却流体通路を備え,回転シャフトと熱15 放散ブリッジの間に軸方向の冷却流体通路を備えた点にある。
被告製品は,上記の長手方向及び軸方向の冷却流体通路を備えているから,本件発明1と本質的部分において共通し,前記の相違点は本件発明1の本質的部分でない。
b 第2要件(相違点の置換可能性)20 被告製品においても,熱放散部材の底面と上側ベアリングの間の空間(長手方向の冷却流体通路)に横方向に導入される冷却空気は連続的に冷却フィンに到達,接触し,それにより冷却フィンと熱的に接続された電力電子部品の熱が放熱され,冷却効果が奏される。この効果は,フィンが上側ベアリングの外表部と熱放散部材の底面とが厳密に25 対向して挟まれる空間になかったとしても,熱放散部材と上側ベアリングとの間の空間を流れる冷却流体が連続的に到達する場所にあれば- 12 -奏されるから,前記相違点に係る構成を被告製品における構成と置き換えても本件発明1の作用効果を達することができる。
c 第3要件(相違点の置換容易性)本件明細書1の記載(【図2】)によれば,熱放散ブリッジと後部軸5 受けの間の空間に横方向に導入された冷却流体が後部軸受けの開口部(中央スロット(4b) (4c), )の上方の空間に到達し,当該開口部から上側ベアリングの内部(下方)に流入すること,冷却フィンが後部軸受けの外表部と熱放散ブリッジの底面のうち当該外表部と厳密に対向している部分に挟まれた空間のみならず当該開口部の上方の空10 間にも位置しており,冷却流体が上記空間に位置する冷却フィン部分に到達,接触して冷却効果を奏することが明らかである。したがって,当業者にとって,後部軸受けの開口部の上に冷却フィンを配置する構成に想到することは容易である。
(被告の主張)15 前記ア(被告の主張)のとおり,「冷却流体通路(17)」は,特許請求の範囲の記載上,熱放散ブリッジの底面を一方の長手方向壁とし,後部軸受けを他方の長手方向壁として物理的に区画された空間のみをいい,特に開口部は横方向の空気が流れない以上,上記の空間に該当しないというべきである。被告製品の冷却フィンは,構成1hのとおり,熱放散20 部材の底面と上側ベアリングの外表部によって画される区画には存在しない。
したがって,被告製品は構成要件1Hの「前記流体通路(17)内に配置された複数個の冷却フィン(18)」を充足しない。
また,次のとおり,均等の要件を満たさないから,被告製品は本件発25 明1の構成と均等でない。
a 第1要件- 13 -本件明細書1に記載された従来例及び後記?(被告の主張)アの乙1文献記載の発明(以下「乙1発明」という。)と本件発明1を対比すると,本件発明1は,明細書に記載された従来例の軸方向の冷却空気通路と乙1文献に記載された半径方向の冷却空気通路を単純に組み5 合わせたものにすぎない。また,本件発明1の軸方向の冷却空気は補助的なものであって,横方向と軸方向の冷却空気を組み合わせたことによる特別な効果はない。その組合せも当業者が設計変更の範囲内で自由に行い得る。そうすると,本件発明1の本質的要素は特許請求の範囲の記載とほぼ同義であって,冷却流体通路内に冷却フィンを設け10 る構成も,冷却空気によって奏される良好な冷却効果を得るという本件発明1の作用効果を奏するために必須の構成であるから,本質的部分に含まれる。
被告製品の冷却フィンの構成は,本件発明1の本質的部分である構成要件1Hと異なるから,第1要件を充足しない。
15 b 第2要件及び第3要件冷却フィンによる冷却の効果を高めるためには冷却フィンにより多くの空気を接触させる必要があるところ,被告製品においては,半径方向に導入された空気が開口部で直ちに軸方向に流れ込み,冷却フィンのシャフト側に流入する空気はごく僅かである。したがって,被告20 製品の構成は,本件発明1と同一の作用効果を奏することはないから,第2要件及び第3要件を充足しない。
c 第4要件乙1発明は,後記?(被告の主張)アのとおり,352号特許権の請求項1の発明(構成要件1A〜1J)と同一であり,軸方向の冷却25 流体通路がないが,この通路は当業者が設計変更の範囲内で設けることができる。その一方で,乙1発明の第2の冷却フィンがリアフレー- 14 -ムと対向する点で,開口部にのみ冷却フィンが設けられている被告製品の構成と異なる。
しかし,仮に,原告が主張するように,冷却流体が開口部の上部に位置する冷却フィンに到達,接触しさえすれば本件発明1と同じ冷却5 効果が奏されると当業者が考えるのであれば,当業者は乙1文献の記載(【図1】)に基づき,乙1発明の開口部の上部にのみ冷却フィンを備えた構成であっても同様の冷却効果を奏することができると考えるはずである。したがって,仮に第2要件及び第3要件を充足するのであれば,被告製品の構成自体が公知技術に基づいて容易に相当し得た10 こととなり,第4要件によって均等侵害が否定される。
ウ 2F「パワーモジュールアセンブリ」の充足性(原告の主張)「パワーモジュールアセンブリ」は,複数のパワーモジュール,枠体,樹脂等を組み合わせたものを意味し,中間製品として独立して存在し得る15 ことを意味しない。このことは,@特許請求の範囲の記載上「少なくとも2つのパワーモジュール(12)を含んでいる」「ケース(42)を有し,て」と規定されるのみであること,「アセンブリ」は「(物の)集まり」を通常意味することに加え,A被告製品(パワーモジュールユニット)の製造方法が熱放散部材に枠体及びパワーモジュールを直接接着して樹脂を流20 し込む方法であることは,切り抜き金属パターンと外部冷却手段との間の熱伝達経路の短縮という本件発明2の効果との関係で,「パワーモジュールアセンブリ」が中間製品として独立して存在する場合と差異を生じさせないこと,B本件明細書2においてもパワーモジュール集合体を外部冷却手段と組み合わせてパワーモジュールユニットとして用いることを当然に25 予定していることから明らかである。
(被告の主張)- 15 -本件発明2は外部冷却手段と組み合わせてパワーモジュールユニットとすることができる中間製品としてのパワーモジュールアセンブリの発明であるから,構成要件2Fの「アセンブリ」は複数の部品を組み合わせて一体化した中間製品的な部品を意味する。被告製品のパワーモジュールユニ5 ットは,パワーモジュール及び枠体を熱放散部材の上に接着し,樹脂を流し込むことによって製造されており,その製造過程においてパワーモジュールユニットを製造するために外部冷却手段と組み合わせることが予定されたものは存在しない。したがって,被告製品は構成要件2Fの「パワーモジュールアセンブリ」を充足しない。
10 エ 構成要件2C4「当該モジュールの外部冷却手段と直接接するように構成され・・・冷却面(28)」の充足性(原告の主張)構成要件2C4の「直接接する」は,「外部冷却手段」と「冷却面(28)」が実際に接触していることまでは意味しない一方で,「切り抜き金属15 パターンを含む冷却面(28)」と「外部冷却手段」との間の熱伝達経路が短縮されるようにパワーモジュールの底において切り抜き金属パターンが露出している構造を意味する,具体的には,エッチング金属パターン(第1層),電気絶縁材のプレート(第2層。絶縁層)及び金属プレート(第3層。放熱層)の3層からなる従来の基板の構造のうち上記第2層及20 び第3層を排して上記第1層の切り抜き金属パターンが露出している構造を意味すると解釈される。
このことは,構成要件2C4に係る特許請求の範囲上,「直接接するように構成され」と規定していること,本件明細書2において切り抜き金属パターンと外部冷却手段とが直接接するので熱の経路が著しく短縮される25 ことが本件発明2の効果とされていること(段落【0010】)に照らして明らかである。
- 16 -被告製品は,パワーモジュールの切り抜き金属パターンを含む冷却面が露出しているから,構成要件2C4「当該モジュールの外部冷却手段と直接接するように構成され・・・冷却面(28)」を充足する。このことは,仮に被告製品のパワーモジュールユニットを「パワーモジュールアセンブ5 リ」に相当するものと解しても変わりない。
この点につき,被告は,被告製品では上記切り抜き金属パターンと熱放散部材の間に@樹脂スペーサー及びA絶縁層兼接着層が介在しており,直接接していないと主張する。しかし,被告製品において少なくとも樹脂スペーサーが設けられていない部分において切り抜き金属パターンが露出し10 ているところ,被告製品に用いられている基板は3層構造を有する従来の基板の第2層及び第3層を有していない上,接着剤は上記冷却面と熱放散部材との間に存在する空気を排して熱伝導率を高め,両者の熱的接触をもたらすものであって,物理的に直接接しているということができる。したがって,被告の主張は失当である。
15 (被告の主張)構成要件2C4の記載上,「外部冷却手段」と「冷却面(28)」が実際に直接接することは要しないが,「直接接するように」することが必要である。ところが,被告製品のパワーモジュールにおける切り抜き金属パターンはパワー電子部品や外部金属端子に接続されているから,ショートし20 て誤作動や故障の原因となってはならないところ,被告製品の熱放散部材は導電性の高いアルミニウムであることから,これらの間に接着剤からなる絶縁層兼接着層を介在させ,この接着剤の塗布量にかかわらず離間を確保するために,切り抜き金属パターンより0.1mm突出するように樹脂スペーサーが設けられ,切り抜き金属パターンと熱放散部材が直接接する25 ことができない構成(構成2d3)となっている。
したがって,切り抜き金属パターンと熱放散部材が「直接接するように」- 17 -構成されているとはいえない。
原告は,被告製品の接着剤が熱伝導率を高めて熱的接触をもたらすから物理的に直接接していると主張するが,本件明細書2において,本件発明2が熱的に接触しているが熱の経路が長い従来技術の構成を直接接する構5 成とすることで効率のよい冷却の実現という課題を解決しているとされていること(段落【0006】〜【0008】 ,) 「直接接する」 「直接接触,可能にする」ことが記載されていること,切り抜き金属パターンと冷却手段との間に絶縁層及び放熱層がないことも記載されていること(段落【0010】)から,「直接接する」が物理的に直接接触する構成に限られるこ10 とが明らかである。原告の上記主張は失当である。
構成要件2D「複合底」の充足性(原告の主張)「複合底」は,ケースの内側に複合底が位置していることを意味していると解釈される。このことは,本件発明2の特許請求の範囲の記載上「ケ15 ースが・・・複合底を有しており」と規定されている一方,本件発明2の従属項である714号特許権に係る特許請求の範囲の請求項2の「ケース(42)が少なくとも各パワーモジュールの冷却面の一部を構成する複合底を有するハウジング(26)を含んでいることを特徴とする」という記載がケースの内側に複合底を有するハウジングが位置することをいうと解20 されること,本件明細書2において複合底がケースの一部であることを示す記載は皆無であって,むしろ,ケースの内側においてパワーモジュールの複合底が当該モジュールの外部冷却手段に対して露出するように位置することが記載されていること(段落【0019】 【0020】 【図1】, , )から明らかである。
25 被告製品は,パワーモジュールアセンブリにおけるパワーモジュールを収容する枠体の内側に冷却面を含む切り抜き金属パターン及び切り抜き部- 18 -分(隙間)に充填された第1の樹脂からなる複合底が位置しているから,構成要件2Dの「複合底」を充足する。
被告は,「複合底」はケースに設けられた開口部にパワーモジュールの底が係合することによって形成される,充填剤を漏らさない機密性を備え5 た底であると解釈されることを前提に被告製品の枠体(ケース)が底を有していないと主張する。しかし,被告が根拠とする本件明細書2の記載は実施例にすぎない上,充填剤を漏らさない機密性を備えるという限定を付する根拠はない。加えて,被告製品の枠体の断面を見ると,最下部に水平な部分が存在する。被告製品の一部のパワーモジュールは,金属の接続部10 が枠体のフレームと干渉する以上,被告の解釈によるとしても,被告製品は構成要件2D の「複合底」を充足する。
(被告の主張)「複合底」は,「ケースに設けられた開口部にパワーモジュールの底が係合することによって形成される充填剤を漏らさない密封性を備えた底」15 であって,パワーモジュールの冷却面を構成要素の1つとして含むことを意味していると解すべきである。このことは,構成要件2Dの記載上,「ケースが各パワーモジュールの前記冷却面を含む複合底を有しており」とされていることや本件明細書2の記載(段落【0043】【0051】,〜【0053】)に照らし,明らかである。
20 原告は,ケースの内側に複合底が位置していると解すべきと主張するが,その根拠とする上記請求項2の「複合底」は本件発明2の「複合底」に含まれるパワーモジュールの冷却面の一部を構成するハウジングの底を意味し,本件発明2の「複合底」と異なること,本件明細書2の記載(段落【0019】 【0020】, )はハウジングの底の複合構造に関する記載で25 あって本件発明2の「複合底」に関する記載でないことから,失当である。
被告製品においては,枠体は枠にすぎず,「底」を有していないし,上- 19 -記の「複合底」の意義に当てはまり得る部分がない。したがって,被告製品は構成要件2Dの「複合底」を充足しない。
なお,構成要件2C4及び2Dについての原告の主張に従えば,本件発明2が周知技術(乙4,5)の組合せにすぎないこととなるから,この点5 においても原告の主張は失当である。
? 争点?(本件特許1の無効理由の有無(乙1文献に基づく本件発明1の進歩性欠如))について(被告の主張)ア 乙1文献には,@車輌用交流発電機であって(構成要件1Aに相当),10 A半径方向に開けられた窓(冷却風排出用窓)を有するリアフレームと(構成要件1Bに相当),Bリアフレームによって支持された回転シャフト上に中心が位置して固定されたロータと(構成要件1Cに相当),Cロータを取り囲み,車輌用交流発電機の相を構成する巻線を有するステータと(構成要件1Dに相当),Dステータの巻線に接続された整流器と(構15 成要件1Eに相当),E整流器を登載した上面と,当該正面と反対側でリアフレームの方を向く底面を有する第2の冷却フィンとを備えていて(構成要件1Fに相当),F第2の冷却フィンの底面は,冷却風通風路の長手方向壁を形成し,冷却風通風路の他方の長手方向壁はステータを支持しているリアフレームにより形成されている車輌用交流発電機であって(構成20 要件1Gに相当),G第2の冷却フィンの底面は冷却風通風路内に配置された複数の放熱リブを有し(構成要件1Hに相当),H第2の冷却フィンに固定された複数個の放熱リブの全ての軸方向端部はリアフレームから所定の間隔を置いた位置にある(構成要件1Iに相当),I車両用交流発電機(構成要件1Kに相当),Jロータのシャフトと第2の冷却フィンの間25 に空間が存在するが,当該空間には軸方向流体通路が形成されていないという構成を有する乙1発明が開示されている。
- 20 -乙1発明は,回転シャフトと熱放散ブリッジとの間に軸方向流体通路を形成する少なくとも1つの空間が設けられていない点(上記J)で本件発明1と相違する。
イ もっとも,乙1文献において従来技術として引用されている乙2公報5 (特開昭56−86052号公報をいう。以下同じ。,本件明細書1の従)来技術に関する記載及び乙6公報(特表2001−511999号公報をいう。以下同じ。)には回転シャフトと熱放散ブリッジとの間に軸方向流体通路を形成する少なくとも1つの空間を設けることが開示されており,本件発明1の特許出願前に公開された刊行物である乙3公報(特開昭6110 −39837号公報をいう。以下同じ。)及び乙6公報には半径方向の冷却風通路に加えて軸方向の冷却風通路を併用することが開示されていて,これらの技術は本件発明1に係る特許出願時に当業者にとって周知であった。そうすると,当業者は乙1発明における半径方向の冷却風通風路に加えて軸方向の冷却風通風路を設けることは容易に選択し得たから,上記ア15 の相違点につき乙1発明の構成から本件発明1の構成を想到することは容易であった。
したがって,本件発明1は,乙1発明に基づいて容易に発明をすることができたもの(特許法29条2項)である。
(原告の主張)20 ア 乙1発明は,被告が主張する相違点のほかに,全ての放熱リブの軸方向端部がリアフレームと所定の間隔を置いた位置にある構成を備えているとはいえず,構成要件1Jに係る構成を備えていない点でも本件発明1と相違する。
イ 被告が主張する相違点についても,乙1発明は,電気部品を覆うリアカ25 バーに開けられた吸入窓から外部の冷却風が軸方向に吸入される内部通風により当該電気部品の冷却を行う従来技術においては水が進入し,また,- 21 -冷却フィンが通風抵抗となって風量が減少するという課題に対し,リアカバーに冷却風を吸入する窓を設けない構成によって通風抵抗の減少による風量の増加,電気部品内部への被水の抑制を図って耐環境性,高冷却性を確保したものである。電気部品の冷却に関する課題は解決されており,追5 加的な冷却空気流を設ける動機付けがない。
また,乙2公報記載の発明は,リアカバーに冷却風吸入窓を設け,内部通風により電気部品を冷却する構成であって乙1発明と互いに排斥し合うから,これを乙1発明に適用することには阻害要因がある。仮に適用することができたとしても,「第2の冷却フィンのインロー部の一部を切り欠10 く」構成を採用する必要があり,前記相違点を克服できない。
加えて,乙1発明に乙3公報記載の発明を適用して軸方向の冷却風通路を形成するためには,乙1発明におけるリアカバーに冷却風吸入窓を設ける必要があるところ,上記で述べたところと同様の理由により,そうすることには阻害要因がある。仮に適用することができたとしても,乙3公報15 記載の発明は,回転シャフトと熱放散ブリッジの間の軸方向流体通路を開示していないから,前記相違点を克服することができない。乙6公報記載の発明についても,乙2公報及び乙3公報に記載の各発明と異なる軸方向の流体通路を開示している上,その技術思想は乙2公報記載の発明と共通しており,これを適用するには阻害要因がある。
20 したがって,本件発明1は乙1発明に基づいて容易に発明をすることができたものでない。
第3 当裁判所の判断事案に鑑み,まず,本件発明1及び2の技術的意義を明らかにした上,争点?ア,イ及びエにつき判断する。
25 1 本件発明1の技術的意義? 本件発明1に係る特許請求の範囲の記載は前記- 22 -おりであり,本件明細書1(甲2)の発明の詳細な説明の欄には以下の記載がある。
ア 背景技術(段落【0002】〜【0028】)自動車のサーマルエンジンによって駆動される誘導ロータの回転運動を5 多層ステータのアーマチュア巻線内に誘導される電流に変換するオルタネータにおけるブリッジ整流器は約150Wのエネルギーを放散しているので,同整流器が備えているダイオードの過熱を防ぐためにこれを冷却しなければならない。従来,ブリッジ整流器の正ダイオードが熱エネルギーを放散する熱放散ブリッジに取り付けられ,同ブリッジにスロット(開口部)10 を設けることでその内部を冷却空気が循環するようにし,また,同ブリッジの上面にフィンを設けることで同ブリッジの冷却を助けることとする構成が知られていた。
ところが,可逆オルタネータ(オルタネータ/スタータ)のブリッジ整流器は電力用トランジスタ及び制御装置を備えており,当該制御装置は比15 較的かさ高であることから,電力用トランジスタ及び制御装置を同ブリッジ上に取り付けると,スロットを設けるための空間が全く残らない。この空間の問題を解決するために,熱放散ブリッジが外側後面に冷却フィンを有する後部軸受けに押し当てられている構成を有するオルタネータ/スタータの電力電子装置を冷却する装置が開示されており,この装置では,空20 気が側方又は半径方向に到達して,最初にフィンを担持している後部軸受けを,次に電力電子装置を取り付けた熱放散ブリッジを対流で冷却し,さらに,熱放散ブリッジは,それが機械的に接触している後部軸受け上のフィンにより対流で冷却される。
しかし,このような装置では,熱放散ブリッジ又は基部を,軸受けにし25 っかり押し当てて,電力電子装置の冷却を行うことができるようにする必要があり,また,後部軸受けが非常に高温である場合に,熱放散ブリッジ- 23 -を対流で冷却することが困難であった。
イ 発明が解決しようとする課題「本発明の1つの目的は,以上の文献に開示されている技術の欠点を解決することであり,自動車のオルタネータ,またはオルタネータ/スタータ5 の電力電子装置を冷却するための改良型でより信頼できる装置であって,冷却流体が,機械の後部に横方向に導入されて,熱放散ブリッジおよびオルタネータの後部軸受け間に形成された流体流通路内を循環するようにした装置を提供するものである。(段落【0029】」 )ウ 課題を解決するための手段10 「この目的のために,本発明は,自動車用の回転電気機械,特にオルタネータまたはオルタネータ/スタータであって,後部軸受け,および少なくとも後部軸受けによって支持された回転シャフト上に中心が位置して,それに固定されたロータを備え,15 後部軸受けは,半径方向冷却流体排出スロットを有し,さらに,ロータを取り囲むステータを備え,ステータは,電気機械の相を構成する巻線を有するアーマチュア巻線を有し,さらに,ステータ相の巻線に接続された電力電子回路,および20 一方では,電力電子回路を取り付けた第1面を,他方では,この第1面と反対側で,後部軸受けの方を向く第2面を有する熱放散ブリッジを備え,この第2面は,冷却流体流通路の長手方向壁を形成し,この通路の別の長手方向壁は,ステータを支持している後部軸受けによって形成されており,25 熱放散ブリッジの第2面は,流体流通路内に配置された冷却手段を有する,回転電気機械を提供するものである。(段落【0030】」 )- 24 -「1つの実施形態では,冷却手段は,フィンである。 (段落【0031】」 )「したがって,冷却手段は,後部軸受けに固定されるのではなく,電力電子装置を支持しているブリッジに機械的に固定され,後部軸受けによって,どのような熱が発生しても,電力電子装置の冷却が保証される。これは,5 本発明による装置では,後部軸受けおよび熱放散ブリッジ間の熱的分離を達成することができ,それにより,熱が伝導によって伝播することができないからである。同様に,本発明によれば,熱放散ブリッジの第2面の対流による冷却に伴い,多くの電子構成部品を備える電力電子装置が冷却される。(段落【0037】【0038】」 , )10 ? また,本件明細書1においては,発明を実施するための最良の形態が次のとおり説明されている。
ア 「本発明によれば,この熱放散ブリッジ16の,軸方向において電気機械の後部軸受け4の方を向く,第2面と呼ばれる底面が,オルタネータ/スタータ内で冷却流体を流す長手方向または半径方向通路17の壁を形成15 している。したがって,この通路17のその他の壁は,後述する後部軸受け4の上面によって形成されている。本発明によれば,保護カバーは,流体通路17と向き合う位置に開口19を有する。この開口は,通路17の外周と連通している。冷却流体,特に空気は,これらの開口19を通って,オルタネータ/スタータの後部に導入され,それから,熱放散ブリッジ120 6の下方で通路17内を循環して,電力電子装置15を冷却する。 (段落」【0048】【0049】。
, )「このように作られた熱放散ブリッジ16は,後部軸受け4の上方に,中二階を形成する。・・・本発明によれば,熱放散ブリッジ16の底面には,冷却手段18が設けられている。言い換えると,ブリッジ16の底面は,25 冷却手段18を形成するように構成されている。この冷却手段は,通路17内に配置されて,選択された通路に冷却流体を流す。すなわち,流体は,- 25 -回転シャフトにできる限り近い位置に入り,それにより,熱放散ブリッジの底面を最良状態に掃引する。したがって,熱放散ブリッジの底面は,熱放散ブリッジの外周とシャフトに近い内周との間に位置する半径方向長さ全体にわたって冷却される。(段落【0051】〜【0054】」 )5 イ 「図2および図3において,冷却手段は,冷却フィン18からなっている。隣接したフィンは,通路22と連通している通路17内の冷却流体を案内する半径方向チャネルを形成している。これらのチャネルは,熱放散器16の内周からその外周まで,扇形に開いて延びている。熱放散器16のこれらの内周および外周は,後部軸受け4と協働して通路17を画定し10 ている。・・・したがって,これらのチャネルは,後部軸受けによって形成される底面と,2つの隣接フィンの2つの向き合った側部と,2つの隣接フィン間に形成された熱放散ブリッジのU字形底部160とを有する。・・・」(段落【0060】〜【0063】)「したがって,本発明では,空気(または任意の他の冷却流体)が,オル15 タネータ/スタータの開口19を通って横方向に吸い込まれ,軸受け4の中央スロット4bおよび4cの方に流れる一方,熱放散ブリッジの冷却部材,すなわち,フィン18を,それらの全長にわたって掃引した後,軸受け4の側部スロット4aおよび4dを通って排出される。したがって,熱放散ブリッジ16の冷却後,電力電子装置15,さらに正確には,その構20 成部品は,本例では,フィン18の形をした冷却手段18を介して,伝導によって冷却される。 (段落【0072】」 )「本発明の1つの実施形態によれば,中央スロット23aおよび23bが,保護カバー11に設けられている。そのため,空気は,これらのスロット23aおよび23bを通って,オルタネータ/スタータ内に吸い込まれ,25 それから,回転シャフト2に沿って空間22内を流れ,熱放散ブリッジ16の下側の流通路17と再合流する。このように,電力電子装置は,一方- 26 -では,通路17によって横方向に,他方では,空間22によって軸方向に冷却される。(段落【0074】」 )? 以上によれば,従来のオルタネータにおいてはブリッジ整流器が備える正ダイオードを冷却するためにこれを熱放散ブリッジに取り付け,同ブリッジ5 にスロット(開口部)を設けることでその内部を冷却空気が循環するようにし,同ブリッジの上面にフィンを設けることで同ブリッジの冷却を助けることとしていたのに対し,電力用トランジスタ及びかさ高の制御装置を備えるブリッジ整流器があるオルタネータ/スタータにおいては,同ブリッジにスロットを設けるための空間を確保できない問題に対応するため,同ブリッジ10 が外側後面に冷却フィンを有する後部軸受けに押し当てられる構成が知られていた。しかし,この構成においては,後部軸受けに熱放散ブリッジ又は基部をしっかりと押し当てる必要があり,また,後部軸受けが非常に高温になると対流で冷却できなくなるという課題があった。本件発明1は,冷却流体が機械の後部に横方向に導入され,熱放散ブリッジ及びオルタネータの後部15 軸受け間に形成された流体流通路内を循環する目的のために熱放散ブリッジの後部軸受け側の面を通路の長手方向壁,後部軸受けを上記通路の別の長手方向壁とし,冷却手段としてフィンを上記通路内に配置する構成を採用した点に技術的意義があるということができる。
2 本件発明2の技術的意義20 ? 本件発明2に係る特許請求の範囲の記載は前記あり,本件明細書2(甲5)の発明の詳細な説明の欄には以下の趣旨の記載がある。
ア 技術分野,背景技術(段落【0001】〜【0007】)本件発明2は,少なくとも一つの切り抜き金属パターンと,切り抜き金25 属パターンに電気的に接続される少なくとも一つのパワー電子部品と,パワーモジュールの結合を行う電気絶縁材とを含む,一体型のパワーモジュ- 27 -ールのアセンブリに関する発明である。
一般に,上記のタイプのパワーモジュールは,基板に蝋付けされるか貼り合わされる少なくとも一つのパワー電子部品を含む。使用される基板がDBCタイプの基板である場合,パワーモジュールは,剛性であって,強5 いパワーに耐えるが,原価は高い。使用される基板がIMSタイプの基板の場合,切り抜き金属パターンをいっそう複雑化することができ,さらに多数のパワー電子部品を配置できるが,パワーモジュールは強い力に弱く,厳しい環境における応力に弱い。そして,いずれの場合にも,少なくとも基板の第1の金属パターンからなる層,第2の中間層,第3の放熱層の各10 層を通ることが必要であるため,パワー電子部品と,パワーモジュールの外部冷却手段との間の熱の経路が長くなっていた。
イ 発明が解決しようとする課題「本発明は,製造コストが安く,外部冷却手段により有効な冷却が可能な構造を備えたパワーモジュールを提供することにより,従来のパワーモジ15 ュールの不都合を解消することをめざしている。(段落【0008】」 )ウ 課題を解決するための手段「従って,本発明は,冷却面の少なくとも一部が切り抜き金属パターンを含むことを特徴とする上記のタイプのパワーモジュールを目的とする。そのため,切り抜き金属パターンと外部冷却手段とが直接接するので,熱の20 経路が著しく短縮される。しかも,切り抜き金属パターンと冷却手段との間に絶縁層および放熱層がないので,製造コストを抑えることができる。」(段落【0009】【0010】, )? 以上によれば,本件発明2は,切り抜き金属パターンとパワー電子部品のほかにパワーモジュールの結合を行う電気絶縁材を含む,いわゆる一体型の25 パワーモジュールにつき,パワー電子部品とパワーモジュールの外部冷却手段との間の熱の経路が長くなるという課題を解決するために,冷却面の少な- 28 -くとも一部が切り抜き金属パターンを含み,その切り抜き金属パターンと外部冷却手段とが直接接するという構成を採用した発明である。本件発明2は,このような構成を採用したことで,切り抜き金属パターンと冷却手段との間に絶縁層及び放熱層がないため,熱の経路を著しく短縮し,製造コストが安5 く,外部冷却手段により有効な冷却が可能とする効果を奏するという技術的意義を有するものであるということができる。
3 争点?ア(構成要件1G「冷却流体通路(17)」の充足性)について? 原告は,構成要件1Gの「冷却流体通路(17)」は,熱放散ブリッジと後部軸受けの間の空間であり,冷却流体が横(長手)方向に流れる空間をい10 うと主張するのに対し,被告は,「冷却流体通路(17)」は,熱放散ブリッジの底面を一方の長手方向壁とし,後部軸受を他方の長手方向壁として物理的に区画された空間をいうと主張する。
? そこでまず,「冷却流体通路(17)」の意義を検討する。
ア 「流体」は「液体と気体との総称」という意味を一般的に有し,本件明15 細書1(甲2)において空気又は任意の他の冷却流体が想定されている(段落【0072】。前記1?イ) 「通路」は「通行用の道路。とおりみ。
ち」(広辞苑〔第六版〕1856頁) 「一般に通行するための道路,通り,道,出入り道」(大辞林〔第二版新装版〕1684頁)という意味を一般的に有する語である。そうすると,「冷却流体通路(17)」は,空気を含20 む冷却された液体又は気体の通り道を指すと解される。
本件発明1の特許請求の範囲の記載を見ると,そのような「冷却流体」又は「流体」が通ることが定められているものとして,@「冷却流体スロット(4a)(4d) ,A「冷却流体通路(17)」 」及びB「軸方向流体通路」がある。そして,特許請求の範囲の記載において,上記@は半径方向25 であって後部軸受けに設けられることが,Aは熱放散ブリッジの後部軸受けの方を向く底面を一方の長手方向壁とし後部軸受けを他方の各長手方向- 29 -壁とするものであることが,Bはロータの回転シャフト(2)と熱放散ブリッジ(16)との間の空間によることがそれぞれ規定されている。そうすると,特許請求の範囲の記載において,本件発明1には,流体の通り道として複数の部分が存在することが定められ,そのうち,上記Aの「冷却5 流体通路(17)」は,上記の各長手方向壁が対向する空間をいうことが定められているといえる。
イ 本件明細書1(甲2)を見ると,前記1?アのとおり,従前,熱放散ブリッジが外側後面に冷却フィンを有する後部軸受けに押し当てられる構成が知られていたが,この構成では,後部軸受けに熱放散ブリッジ又は基部10 をしっかりと押し当てる必要があり,また,後部軸受けが非常に高温になると対流で冷却できなくなるという課題があった。本件発明1は,この課題を解決するため,冷却流体が機械の後部に横方向に導入されて,熱放散ブリッジ及びオルタネータの後部軸受け間に形成された流体流通路内を循環するようにした装置を提供することを一つの目的とし(段落【00215 9】。同イ),この目的のため,後部軸受けの方を向く面も有する熱放散ブリッジを備え,その熱放散ブリッジの後部軸受け側の面が冷却流体通路の長手方向壁を形成し,後部軸受けが上記通路の別の長手方向壁を形成するものとし,上記通路内に冷却手段として熱放散ブリッジに固定されたフィンを配置する構成を採用した(段落【0030】 【0031】 【003, ,20 7】【0038】, 。同ウ)。これらの記載によれば,本件発明1は,冷却流体が機械の後部に横方向に導入されて,熱放散ブリッジ及びオルタネータの後部軸受け間に形成された流体流通路内を循環する装置の提供を目的とするものであるところ,その目的のために,熱放散ブリッジの後部軸受け側の面を通路の長手方向壁とし,後部軸受けを上記通路の別の長手方向壁25 として,冷却手段として熱放散ブリッジに固定されたフィンを上記通路内に配置する構成を採用したものである。したがって,本件発明1は,その- 30 -ような冷却流体が流れる通路及びフィンの配置に技術的意義があるものであり,当該通路及びフィンが配置される部分を特定するためにフィンが配置される通路が上記の2つの長手方向壁を有するものであることを定めたと解することができる。
5 発明を実施するための最良の形態の説明においても,冷却流体を流す通路の壁として,熱放散ブリッジの軸方向において後部軸受けの方を向く底面が長手方向又は半径方向通路17の壁を形成し,その他の壁は後部軸受けの上面によって形成されるとされ(段落【0048】 【0068】, 。前記1?ア),図面(【図2】 【図3】, 。別紙図面のとおり)上も上記の2つ10 の壁が対向する部分が当該通路17に当たることが示されており,他の部分がこれに当たることを示唆する記載は見当たらない。
これらによれば,発明の詳細な説明の記載等を見ても,「冷却流体通路(17)」は,熱放散ブリッジの後部軸受けの方を向く底面を一方の長手方向壁とし,後部軸受けを他方の長手方向壁とする空間をいい,冷却流体15 が流れるその他の空間は含まれないと解するのが相当であり,前記アの解釈に符合するということができる。
? 次に,「他方の長手方向壁」を形成する「後部軸受け」の意義につき検討する。
当該「後部軸受け」につき,特許請求の範囲の記載上その構成部材は特定20 されていない。
そこで本件明細書1を見ると,後部軸受け自体の構成部材を特定する記載はない。一方,本件発明1の実施の形態として,熱放散ブリッジの底面と後部軸受けとの間に,これらの2つの部品間の電気接触の危険性を排除する電気絶縁材料の層を有してもよく,この絶縁材料層は後部軸受けの外面に固定25 され,冷却流体が通過できるように後部軸受けのスロットと向き合った空気通路スロットを有するのが好ましいとの記載があり(段落【0094】 ,本)- 31 -件発明1の実施において後部軸受けの外面に固定された層を設けることができることが記載されている。そして,前記?において説示した本件発明1の意義に照らすと横方向の冷却流体通路を形成する後部軸受け側は壁面であれば足りると解される。
5 上記に照らすと,本件発明1における「後部軸受け」は,これに固定された部材が存在する構成を含むものと解するのが相当である。
? 以上を前提に被告製品に「冷却流体通路(17)」が存在するか否かについて検討する。
被告製品は,「後部軸受け(4)」に相当する上側ベアリングの外表部につ10 き,前記前提事実?(構成1g,被告製品写真1及び2)のとおり@「熱放散ブリッジ(16)」に相当する熱放散部材の底面に設置されたプレートと対応する部分,A上記プレートと対応せず,上側ベアリングに固定されたC字状部材で覆われた部分,BC字状部材不存在かつプレート非対応部分,Cブリッジ部,Dプレートと対応しない開口部がある。
15 そのうち,@の部分は,熱放散部材と上側ベアリングの外表部の間に熱放散部材の底面に設置されたプレートが存在するのであるから,熱放散部材と@の部分の上側ベアリングをそれぞれ長手方向壁とする冷却流体通路が存在することはないといえる。
これに対し,上記A〜Dの部分は,熱放散部材の底面が冷却流体通路の一20 方の「長手方向壁」を形成している。これらの部分の他方の「長手方向壁」の有無等についてみると,上記Aの部分は,その位置から冷却流体の他方の「長手方向壁」を形成しており,C字状部材が上側ベアリングに固定されていることからすると,これは「後部軸受け(4)」に含まれるといえる部分であり(前記?),同部分は,「後部軸受け(4)」が「冷却流体通路(17)25 の他方の長手方向壁」となっているといえる。また,上記B及びCの部分は「後部軸受け(4)」に相当する上側ベアリング自体が露出した部分であり,- 32 -かつ,構造上それらの部分において横方向の冷却流体の流れがないわけではないから,これらもいずれも「後部軸受け(4)」が「冷却流体通路(17)の他方の長手方向壁」になっているといえる。他方,上記Dの部分は,開口部である以上,上側ベアリングの構成部材によって長手方向壁を形成してい5 るといえず,前記?に照らし,「冷却流体通路(17)」といえる部分ではない。
?ア 原告は,?「冷却流体通路(17)」は一般的に冷却通路の通り道全般を指すこと,?本件明細書1の【図2】の符号17の矢印及び破線の記載や段落【0061】【0072】〜【0074】の記載,?本件発明1の,10 課題とその解決手段に関する記載からすると,長手方向壁は空気の流れを横に方向付ける機能的な観点から規定したものであって通路の境界を画する趣旨でないことなどから,前記Dの部分も「冷却流体通路(17)」に当たると主張する。
しかし,上記?,?のうち本件明細書1の【図2】の符号17及び?に15 ついては,前記?のとおり,特許請求の範囲の記載及び発明の詳細な説明の記載等を見れば,「冷却流体通路(17)」は,熱放散ブリッジの後部軸受けの方を向く底面を一方の長手方向壁とし,後部軸受けを他方の長手方向壁とする空間をいい,冷却流体が流れるその他の空間は含まず,2つの長手方向壁は機能的な意義を越えて通路の特定のための要素とみるのが相20 当であるから,上記原告の主張は採用することができない。上記?の破線及び各段落の記載については,本件発明1において冷却流体が「冷却流体通路(17)」を流れ,その後,軸方向通路を流れるとしても,「冷却流体通路(17)」として特定される部分は,前記?のとおりと解されるから,原告の指摘は,前記?の判断を左右するものではない。
25 イ 被告は,前記Aの部分は絶縁目的を有さず,薄いものでないC字状部材が固定されていること,前記B及びCは被告製品の冷却のために無意味な- 33 -構造であって横方向の空気が流れないことを挙げて,それぞれ「冷却流体通路(17)」に当たらないと主張する。
しかし,前記Aの部分については,前記?のとおり,本件発明1における「後部軸受け」は,これに固定された部材が存在する構成を含むものと5 解するのが相当である。前記B及びCの部分について,これを前記Aの部分と一体としてみればいずれも熱放散部材の底面と上側ベアリングを長手方向壁とし,これに画された部分である上,それらの部分に横方向の空気の流れがないわけではなく,被告製品の冷却のために無意味な構造であるということはできない。したがって,被告の主張は採用することができな10 い。
4 争点?イ(構成要件1H「前記流体通路(17)内に配置された複数個の冷却フィン(18)」の充足性(文言侵害均等侵害))について? 文言侵害についてア 構成要件1Hの「冷却フィン(18)」は,本件発明1の特許請求の範15 囲の記載上,@「熱放散ブリッジ(16)」の底面にあること,A「前記流体通路(17)」内に配置されていることが必要である。上記Aに関し,「前記流体通路(17)」は,「前記」と記載され,これ以前の「流体通路」に相当するものを引用していること,構成要件1Gの「冷却流体通路(17)」と同じ番号が付されていることに照らすと,当該「冷却流体通路20 (17)」を指すものと解される。そして,その意義は,前記3?のとおり,熱放散ブリッジの後部軸受けの方を向く底面を一方の長手方向壁とし,後部軸受けを他方の各長手方向壁とする空間であり,冷却流体が流れるその他の空間は含まれない。そうすると,「冷却フィン(18)」は,「熱放散ブリッジ(16)」に形成されて「冷却流体通路(17)」に配置される25 必要があると解される。
イ 上記「冷却フィン(18)」に相当する被告製品の冷却フィンは,前記- 34 -前提事実?(構成1h,被告製品写真1及び2)のとおり,「熱放散ブリッジ(16)」に相当する熱放散部材に形成され,上側ベアリングの開口部に対応した部分に配置されている。しかし,被告製品の上側ベアリングの開口部は,前記3?のとおり,「冷却流体通路(17)」に当たらない。
5 したがって,被告製品の冷却フィンは構成要件1Hの「前記流体通路(17)内に配置された」を充足しない。
? 均等侵害についてア 原告は,被告製品のフィンが「前記流体通路(17)内に配置」されていないという相違点があるとしても,被告製品は本件発明1の構成と均等10 なものとして,本件発明1の技術的範囲に属するというべきであると主張する。被告製品が本件発明1の構成と均等であるというためには,特許請求の範囲に記載された構成中被告製品と異なる部分が特許発明の本質的部分でないことが必要である。
イ そこで本件発明1の本質的部分につき検討する。
15 本件明細書1における背景技術,発明が解決しようとする課題及び課題を解決するための手段の記載(前記1?)を参酌すると,前記1?のとおり,本件発明1は,熱放散ブリッジにフィンを設け,これに冷却空気を触れさせて電気部品の冷却を図る構成につき,熱放散ブリッジと後部軸受けの間に冷却流体通路を設けて冷却空気を循環させることとし,当該通路内20 に冷却フィンを設けるオルタネータ/スタータの構成とすることによって,熱放散ブリッジにスロットが設けられない場合であっても十分に熱放散ブリッジを冷却させることができる効果を生じさせることとしたというものである。このことに照らすと,冷却流体の通路及び冷却フィンの配置について上記構成を採用したことに本件発明1の意義があるということができ25 るから,冷却フィンがどこに配置されるかを含めたその配置は,本件発明1の本質的要素に含まれると解するのが相当である。
- 35 -そうすると,被告製品において冷却フィンが冷却流体通路でなく,熱放散部材の底面であって上側ベアリングの開口部と対応する部分に配置されている構成は,本件発明1と本質的部分において相違するというべきである。したがって,被告製品が本件発明1の構成と均等であるということは5 できない。
ウ これに対し,原告は,本件発明1の本質的部分は後部軸受けと熱放散ブリッジの間に長手方向の,回転シャフトと熱放散ブリッジの間に軸方向の各冷却流体通路を備えた点にあると主張する。
しかし,上記イのとおり,本件明細書1は熱放散ブリッジにフィンを設10 け,これに冷却空気を触れさせて電気部品の冷却を図る構成を従来技術として明示しており,フィンによって熱放散ブリッジと冷却空気が触れる表面積を増やし,これによって冷却効果を図る構成を採用することが前提とされていること,フィンの配置は冷却効果の程度に影響すると解されることに照らすと,当該配置も本件発明1の意義に含まれるというべきである。
15 したがって,原告の主張は採用できない。
5 争点?エ(構成要件2C4「当該モジュールの外部冷却手段と直接接するように構成され・・・冷却面(28)」の充足性)について? 本件発明2に係る特許請求の範囲の記載によれば,本件発明2のパワーモジュールアセンブリの「冷却面(28)」は,少なくとも一部が切り抜き金20 属パターンを含み,かつ,パワーモジュールの外部冷却手段と直接接するように構成されることが規定されている。「直接」は「中間に隔てるものがなく,じかに接すること」(広辞苑〔第六版〕1839頁。大辞林〔第二版新装版〕1667頁も同旨) 「接する」は「互いに隔てなくつながる」, (広辞苑〔第六版〕1575頁) 「二つの物が間をおかずに隣り合う」, (大辞林25 〔第二版新装版〕1409頁)といった意味を一般的に有する。そうすると,構成要件2C4においては,冷却面(28)中に切り抜き金属パターンが含- 36 -まれ,かつ,その切り抜き金属パターンとパワーモジュールの外部冷却手段が,互いに,中間に隔てるものなく直につながる構成が定められていると解される。
? この点について本件明細書2(甲5)の記載を見ると,前記2?のとおり5 であり,同?のとおり,本件発明2は,いわゆる一体型のパワーモジュールにつき,パワー電子部品とパワーモジュールの外部冷却手段との間の熱の経路が長くなるという課題を解決し,かつ,安く製造するために,冷却面の少なくとも一部が切り抜き金属パターンを含むようにし,その切り抜き金属パターンと外部冷却手段とが直接接するという構成を採用したものであり,そ10 のことにより,熱の経路を著しく短縮して外部冷却手段により有効な冷却を可能とし,また,切り抜き金属パターンと冷却手段との間に絶縁層及び放熱層がないために製造コストが安くなるとの効果を奏するという発明であるということができる。こうした意義に照らすと,「直接接するように」との構成においては,切り抜き金属パターンとパワーモジュールの外部冷却手段と15 の距離を狭めるようにすることが求められているというべきであり,また,その間に絶縁層及び放熱層がないことが想定されているといえる。したがって,本件明細書2の記載は,前記?の解釈と符合するものである。
? 以上を前提に被告製品につき,「切り抜き金属パターン」と「パワーモジュールの外部冷却手段」が「直接接するように構成」されているか否かにつ20 いて検討する。
前記前提事実?(構成2d1及び2d4,被告製品写真3)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品の熱放散部材が「パワーモジュールの外部冷却手段」に相当すること,被告製品においては,パワーモジュール底面の切り抜き金属パターンの周縁部に,同パターンより約0.1mm突出する樹脂である樹25 脂スペーサーが複数個設置されていること,これにより,切り抜き金属パターンと熱放散部材が0.1mm程度離れるように構成され,その離れた部分- 37 -に被告がショートによる誤作動等を防ぐための絶縁層兼接着層と主張する樹脂が充填されていることが認められる。
以上によれば,被告製品は,切り抜き金属パターンと熱放散部材に意図的に一定の間隔を設け,かつ,その間隔に樹脂の層が存在するようにしたもの5 である。そうすると,被告製品は,切り抜き金属パターンとパワーモジュールの外部冷却手段が,互いに中間に隔てるものなく直につながることとは逆の方向を指向する構成を有するもので,上記の層の存在により,これらが中間に隔てるものなく直につながっているとはいえない。これらによれば,被告製品は,上記スペーサーの存在により,構成要件2C4の「直接接する」10 を充足しない。
? これに対し,原告は,@構成要件2C4の「直接接する」は,「切り抜き金属パターンを含む冷却面(28)」と「外部冷却手段」との間の熱伝達経路が短縮されるようにパワーモジュールの底面において切り抜き金属パターンが露出している構造を意味する,A被告製品における切り抜き金属パター15 ンと熱放散部材の間に樹脂の層があっても,少なくとも樹脂スペーサーが設けられていない部分において切り抜き金属パターンが露出しており,当該層は上記冷却面と熱放散部材との間に存在する空気を排して熱伝導率を高め,両者の熱的接触をもたらすから物理的に直接接していると主張する。
上記@につき,構成要件2C4において「冷却面(28)」は「少なくと20 も一部が前記切り抜き金属パターンを含む」とされていて,切り抜き金属パターンが「冷却面(28)」となることが定められているといえる。しかし,上記構成要件は,その冷却面について,「外部冷却手段と直接接するように構成され」ると定めているといえ,それが外部冷却手段と「直接接する」ことを別の要件として定めているといえるのであるから,単に切り抜き金属パ25 ターンが露出して冷却面となることによって,直ちにそれが外部冷却手段と直接接していると解することはできない。また,上記Aについては,前記?- 38 -のとおり,本件発明2は,従前の構成においても熱的接触があったことを前提として,それでは熱の経路が長くなるという課題を解決するために,切り抜き金属パターンと外部冷却手段とが直接接するという構成を採用したものである。このような本件発明2の課題とその解決手段に照らせば,原告の上5 記主張は採用することができず,被告製品が構成要件2C4を充足すると認めることはできない。
6 結論以上によれば,その余の点について判断するまでもなく原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
10 東京地方裁判所民事第46部裁判長裁判官 柴 田 義 明15 裁判官 萩 原 孝 基裁判官 林 雅 子- 39 -(別紙)被 告 製 品 構 成 書1a モータジェネレータであって,5 1b 半径方向の複数の冷却空気排出開口を有している上側ベアリングと,1c 上側ベアリングによって支持された回転シャフト上に中心が位置して固定されたロータと,1d ロータを取り囲み,モータジェネレータの相を構成する巻線を有するアーマチュア巻線を含むステータと,10 1e ステータ相の巻線に接続された電力電子回路と,1f 電力電子回路を搭載した上面と,上面と反対側で上側ベアリングの方を向く底面を有する熱放散部材と,を備えていて,1g 上側ベアリングの上面は,回転シャフトが挿通する軸受部,その周囲を取り囲む開口部,開口部の外側に位置する周縁部及び周縁部と軸受け部を架橋15 するブリッジ部を含み,周縁部の約3分の2を占める部分は上側ベアリングに固定されたC字状部材に覆われている。熱放散部材の底面側には,該上面の周縁部の前記C字状部材に覆われていない部分に対向してプレートが設けられているが,C字状部材不存在かつプレート非対応部分(C字状部材に覆われておらず,かつ,プレートに対応していない部分をいう。以下同じ。)20 が該上面の周縁部の全周の約140分の1に存在し,当該部分の円周方向の最短直線距離,すなわち,プレートを該上面に投影した領域とC字状部材との最短直線距離は,約4.2mm[約2.4mm]である。該上面の周縁部の前記約3分の2を占める部分においては冷却空気通路の一方の壁は熱放散部材の底面によって直接構成され他方の壁はC字状部材によって直接構成さ25 れており,該上面の周縁部の残りの約3分の1を占める部分においては冷却空気通路の一方の壁は熱放散部材の底面によって直接構成され,他方の壁は- 40 -プレートによって直接構成されている,また,C字状部材不存在かつプレート非対応部分及びブリッジ部においては冷却空気通路の一方の壁は熱放散部材の底面によって直接構成され,他方の壁は上側ベアリングによって直接構成されていること,5 1h 熱放散部材の底面には複数の冷却フィンが設けられ,冷却フィンの一部は熱放散部材に設けられた前記プレートと熱放散部材の底面に挟まれる空間に存在し,それ以外の冷却フィンは上側ベアリングの開口部と熱放散部材の底面のうち上側ベアリングの開口部と厳密に対向している部分によって挟まれる空間にのみ存在しており,上側ベアリングの周縁部及びブリッジ部と熱放10 散部材の底面のうちそれらと厳密に対向している部分によって挟まれる空間には冷却フィンは存在しないこと,1i 熱放散部材は複数のスタッドによって上側ベアリングに固定されていること,1j 熱放散部材に固定された複数の冷却フィンの全ての軸方向端部は,上側ベ15 アリングから所定の間隔を置いた位置にあること,を特徴とする,1k モータジェネレータであり,さらに,1l ロータの回転シャフトと熱放散部材との間に,軸方向の空気通路を形成する空間が設けられていることを特徴とする。
20 2a 複数のパワーモジュールを含んでいるパワーモジュールアセンブリ[パワーモジュールユニット]であって,2b 各パワーモジュールは一体化されており,2c 各パワーモジュールが,2c1 切り抜き金属パターンと,25 2c2 切り抜き金属パターンに接続される複数のパワー電子部品と,2c3 パワーモジュールの結合を行う第1の樹脂と,- 41 -2c4 パワーモジュールの外部に位置する熱放散部材と直接接する切り抜き金属パターンを含む冷却面と,[絶縁層兼接着層及びパワーモジュール底面に設けられた切り抜き金属パターンよりも0.1mm突出している樹脂スペーサーによって熱放散部材と直接接することがないように離間された複数の切り5 抜き金属パターンを含む冷却面と,]2c5 切り抜き金属パターンをパワーモジュールの外部金属端子に接続するリード部とを有しており,2d パワーモジュールアセンブリが,パワーモジュールを収容する枠体を有しており,当該枠体の内側に,各パワーモジュールの冷却面を含む切り抜き金10 属パターン及び切り抜き部分(隙間)に充填された第1の樹脂からなる複合底が位置しており,[2d1 パワーモジュールユニットがパワーモジュールを収容する枠体を有しており,当該枠体はパワーモジュールを配置するための開口部を有しており,当該開口部がパワーモジュールよりも一回り以上大きく,パワーモジュール15 を当該開口部に配置してもパワーモジュールの底面は枠体と係合せず,2d2 当該枠体及び複数のパワーモジュールは,熱放散部材に接着されており,2d3 パワーモジュールと熱放散部材との間には,切り抜き金属パターンと熱放散部材とを離間するに十分な絶縁層兼接着層があるとともに,パワーモジュールの底面には絶縁層兼接着層の厚みにかかわらず切り抜き金属パタ20 ーンと熱放散部材が直接接することのないようにこれらの離間を確保するために0.1mmの樹脂スペーサーが設けられており,2d4 当該枠体と熱放散部材とで画された空間に第2の樹脂が充填されており,]2e 各パワーモジュールにおいて,第1の樹脂が,切り抜き金属パターン及び25 パワー電子部品の周囲に一体成形されるブロックを形成する,2f パワーモジュールアセンブリ[パワーモジュールユニット]。
- 42 -(別紙)被 告 製 品 写 真(写真1)(写真2)- 43 -(写真3)- 44 -(別紙)図 面【図2】【図3】- 45 -
事実及び理由
全容
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