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関連審決 不服2000-8116
関連ワード 特許を受ける権利 /  技術的思想 /  アクセス /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  一致点の認定 /  周知技術 /  慣用技術 /  技術常識 /  発明の詳細な説明 /  優先権 /  分割出願 /  共有 /  着想 /  参酌 /  技術的意義 /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  交換 /  構成要件 /  請求の範囲 /  変更 / 
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事件 平成 15年 (行ケ) 69号 審決取消請求参加事件
参加人 エルジー・エレクトロニクス・インコーポレ ーテッド
訴訟代理人弁護士 鈴木修
同 深井俊至
同 弁理士 中西基晴 被参加事件原告(脱退) インタランド・コーポレーション
被告 特許庁長官今井康夫
指定代理人 小川謙
同 佐藤聡史
同 高橋泰史
同 涌井幸一
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2004/05/26
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 参加人の請求を棄却する。
訴訟費用は参加人の負担とする。
この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2000-8116号事件について平成14年7月16日にした審決を取り消す。
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯等 (1) 被参加事件原告は,昭和62年10月3日にした特許出願(特願昭和62-250562号,優先権主張1986年〔昭和61年〕10月3日・アメリカ合衆国)の一部を,平成9年5月14日に分割出願して,名称を「一体化したマルチ・ディスプレイ型のオーバーレイ制御式通信ワークステーション」(後に「イメージ処理通信システム」と補正)とする新たな特許出願(特願平9-124320号,以下「本件出願」という。)をしたが,平成12年2月28日に拒絶の査定を受けたので,同年6月1日,これに対する不服の審判の請求をし,さらに,平成13年7月19日,願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載等を補正した(以下,この補正に係る明細書を,願書に添付した図面と併せて「本件明細書」といい,その特許請求の範囲の請求項1記載の発明を「本願発明」という。)。
特許庁は,上記請求を,不服2000-8116号事件として審理した結果,平成14年7月16日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は,同月26日,被参加事件原告に送達された。
(2) 参加人は,被参加事件原告から,A社,B社(C社に商号変更),D社,E社(F社に商号変更)を経て,本件出願に係る特許を受ける権利を譲り受け,平成15年2月20日,その旨の出願名義人変更届がされ,被参加事件原告は本件訴訟から脱退した。
2 本願発明の要旨 イメージ情報を通信するために,ネットワークに接続された,少なくとも第1と第2のイメージ処理システムを含むイメージ処理通信システムにおいて, 前記少なくとも第1と第2のイメージ処理システムの各々が, (a)前記ネットワークから受信されたイメージ情報を表示することが可能な,少なくとも1つのイメージを表示するディスプレイ手段と, (b)透明な導電面と座標計算ユニットとを有するユーザ・インターフェース・ユニットであって,前記座標計算ユニットが,前記透明な導電面に関してポインティング位置の座標位置を計算し,前記透明な導電面が前記ディスプレイ手段上に配置された,ユーザ・インターフェース・ユニットと, (c)前記ネットワークにイメージ情報を結合し且つそれからイメージ情報を受ける通信ユニットであって,前記ネットワークに結合された前記第2のイメージ処理システムからイメージ情報を受信することが可能な通信ユニットと, (d)CPUとメモリ・ユニットとを含み,前記ディスプレイ手段,前記ユーザ・インターフェース・ユニットおよび前記通信ユニットを制御する制御ユニットであって,前記メモリ・ユニットが,共通作業空間メモリと個人作業空間メモリとを含み,前記イメージ処理システムの各々が,前記イメージ処理システムの全ての前記共通作業空間メモリをアクセスし,且つ前記イメージ処理システムの各々が,他の前記イメージ処理システムの前記個人作業空間メモリではなくそれ自身の個人作業空間メモリのみをアクセスするように制御する,前記制御ユニットと, を含むこと, 前記イメージ処理システムの各々の前記制御ユニットの制御の下で, 共通のイメージが,前記ネットワークを介して,前記イメージ処理システムの各々に結合され,前記イメージ処理システムの各々の前記ディスプレイ手段に共通に表示され,前記イメージ処理システムの各々の前記共通作業空間メモリに記憶され,及び, 共通のイメージが,イメージ情報が前記イメージ処理システムの各々の前記ディスプレイ手段に共通に表示されている間に,前記第1および第2のイメージ処理システムの各々で実質上同時に編集されること, を特徴とするイメージ処理通信システム。
3 審決の理由 審決は,別添審決謄本写し記載のとおり,本願発明は,特開昭61-79360号公報(甲4,以下「引用例1」という。)に記載された発明(以下「引用発明1」という。)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとした。
参加人主張の審決取消事由
審決は,本願発明と引用発明1との相違点を看過した(取消事由1)のみならず,認定に係る相違点2及び3に関する判断をも誤った(取消事由2,3)ものであるから,違法として取り消されるべきである。
1 取消事由1(相違点の看過) (1) 審決は,本願発明と引用発明1との一致点の認定に際し,「引用例1の『複数の装置』と,本願発明の『少なくとも第1と第2のイメージ処理システム』とは,ネットワークにより結合されたイメージ処理システムである点で差異はな」い(審決謄本3頁最終段落〜4頁初行)とした上,両者は,「(c)前記ネットワークにイメージ情報を結合し且つそれからイメージ情報を受ける通信ユニットであって,前記ネットワークに結合された前記第2のイメージ処理システムからイメージ情報を受信することが可能な通信ユニット」(同4頁(c)の項)を含む点で一致すると認定したが,誤りである。
(2) 本願発明においては,イメージ処理システムAとイメージ処理システムB(イメージ処理システムの数は二つに限定されないが,二つの場合を例に説明する。)が共通のイメージを編集する場合,イメージ処理システムAがイメージを編集すると,イメージ処理システムA及びB各々のディスプレイに編集されたイメージが表示され,イメージ処理システムA及びB各々の共通作業空間メモリに記憶され,イメージ編集がイメージ処理システムA及びB各々で実質上同時に行われる。
このように,本願発明では,共通のイメージが,ネットワークを介して,イメージ処理システムA及びB各々に「結合」されているのであって,この実質上同時に編集されるイメージが記憶される空間が「共通作業空間」である。
本願発明の上記構成は,本件明細書(甲1)の発明の詳細な説明において,「イメージ・メモリを,共通に見える空間(通信リンクされた全てのステーション-全ての“出席者”により見られる)と,個人的に見える空間(個々のワークステーションによってのみ見られる)と,に文字通りまたは(ソフトウェアによって)仮想的に区分する」(段落【0018】),「イメージは,個人的に見える空間かまたは共通に見える空間のいずれかにある。この区別は,物理的または仮想的のいずれでも可能である。CPU及びそのソフトウェアは,メモリを共通可視空間と個人可視空間とに分ける。共通可視空間は,リンクされたワークステーションの全てが見ることのできるイメージを含んでいる。個人可視空間が含むイメージは,これらが記憶されたワークステーションだけが見ることのできるものである」(段落【0072】),「2つまたはそれ以上のシステムがリンクして,完全対話式のリアルタイムの分散会議及び編集をできるようにし,分散したユーザは全ての者が見ているイメージに協同して働きかけることができる。例えば,異なった場所のユーザは,その同じイメージを協同して操っている間,そのイメージに働きかけたりまた同時に見ることができ,イメージに対し1つのワークステーションで行った変更を全てのワークステーションのユーザが瞬時に見ることができる」(段落【0035】)と説明されている。
また,本願発明においては,ネットワークを通じて送信されるのは,編集コマンドであり,編集されたイメージ全体ではない。編集されたイメージ全体を送信する場合には送信される情報量が多いが,本願発明では,編集コマンドのみが送信されるので,送信される情報量が少ないという利点がある。イメージのごく一部だけを修正するような編集では,この利点は極めて大きい。
(3) これに対し,引用発明1においては,イメージは,ネットワークを介して,各々のシステムに「結合」されていないし,実質上同時にイメージが編集される空間である「共通作業空間」もない。
すなわち,引用発明1では,一つのシステムが画像を修正しても,それを相手方システムに送信するまでは,他のシステムは当該修正画像を見ることはできないし,また,あるシステムが画像を修正して当該画像を相手方システムに送信すると,自動的に受信モードに移り,相手方に画像が移っているときはその画像について修正することができないのであって,共通の画像が一方のシステムと相手方システム各々に「結合」されることはなく,全く反対に「分離」されているということができる。一方のシステムと相手方システムが実質上同時に共通の画像を修正していくための共通画像が記録される「共通作業空間メモリ」も存在しない。
そして,引用例1(甲4)の第5図からも明らかなように,引用発明1においては,画像が修正された場合,修正に必要な情報のみが送信されるのではなく,修正された画像そのものが送信される。要するに,引用発明1は,遠隔地者間で画像をやり取りする場合,画像を紙上に描くか,又は磁気媒体に記録し,それを郵便等で受信者に発送していたという従来方法に換えて,電話回線を通じて画像を送信することにより画像をやり取りすることにしたというだけのものにすぎない。
技術的思想としては「画像のやり取り」であり,「遠隔地者間でユーザーが協同して実質上同時に共通の画像を修正する」という本願発明における技術的思想は全く見られない。
(4) 被告は,本願発明において編集コマンドが送信されるとの点は本件明細書の記載に基づかないものである旨主張する。しかしながら,本件明細書(甲1,3)によれば,本願発明は,「共通のイメージが・・・前記イメージ処理システムの各々の前記ディスプレイ手段に共通に表示され,前記イメージ処理システムの各々の前記共通作業空間メモリに記憶され」,「共通のイメージが,イメージ情報が前記イメージ処理システムの各々の前記ディスプレイ手段に共通に表示されている間に,前記第1および第2のイメージ処理システムの各々で実質上同時に編集される」(特許請求の範囲)ものであり,発明の詳細な説明にも,「本発明は,種々のワークステーション位置で同時に見ることができる電子黒板として使用することができる」(段落【0025】,「イメージに対し1つのワークステーションで行った変更を全てのワークステーションのユーザが瞬時に見ることができる」(段落【0035】)等と記載されている。すなわち,本願発明においては,システムAとシステムBの各共通作業空間メモリに記憶された共通のイメージが実質上同時に編集されていくのであるから,編集に必要な情報のみが送信される,すなわち,編集コマンド(編集指令)が送信されるものと当業者は当然に理解する。実質上同時に各々のシステムの共通作業空間メモリに記憶された共通のイメージが編集されていくというシステムにおいて,修正されない部分についての情報をも送信すること,すなわち,編集されたイメージ全体を送信することは全く無駄であるばかりでなく,送信情報量が極めて多くなるという不都合が生じる。したがって,上記のとおりの本願発明の構成から,当業者は,当然,本願発明においては,編集コマンド(編集指令)が送信され,それに応じて,各システムの共通作業空間メモリに記憶されている共通のイメージが実質上同時に編集されていくと理解する。引用発明1のシステムにおいても,システムA(又はシステムB)が相手方に修正された全画像を送信する前に,自己のシステム内で画像を編集していくプロセス(例えば,引用例1〔甲4〕の第5図において,画像作成装置Aの上から2番目の平行四辺形から上から3番目の台形にする修正)においては,システムAにおいて編集コマンド(編集指令)が生成されそれに応じて当該画像の修正がされるはずである。引用例1には,「編集コマンド(編集指令)」が生成されてそれに応じて画像が修正されるということは記載されていないが,そのような記載がなくとも,使用者の操作に応じて画像が修正されていく場合は,編集コマンド(編集指令)が生成されそれに応じて画像が修正されるようにすると当業者は当然理解するので,そのような記載はされていないのである。
これに対し,引用発明1のシステムにおいて,編集された画像を相手方に送信する場合は,編集コマンド(編集指令)が送信されるのではなく,編集された全画像が送信されることについては当事者間に争いがないが,その理由は,引用発明1においては,編集プロセスを相手方に見せるという技術的思想が全くなく,その技術的思想は「編集し終わった画像全体のやり取り」ということだからである。
以上のように,本願発明において,その特許請求の範囲の記載及び発明の詳細な説明の記載から,当業者は,当然に,編集コマンド(編集指令)が送信されると理解するので,本件明細書には編集コマンドが送信されることの記載がないとする被告の上記反論は失当である。
(5) また,被告は,本願発明においても,一方のシステムでの編集結果が,通信ユニットを介してネットワークを通って相手方のイメージ処理システムに送られるのであるから,相手方のシステムに送信されるまでは,相手方のシステムで編集画像を見ることができないことは引用発明1と同様である旨主張する。
しかしながら,本願発明においては,一方のシステムの編集作業が終わって初めてその編集結果を相手方システムに送るのではなく,編集コマンドにより実質上同時に相手方システムの共通作業空間メモリに記憶されている共通のイメージが編集されていくのである。本願発明においては,一方のシステムの使用者と他方のシステムの使用者は実質上同時に編集過程をも含めて編集画像を見ることができる。なお,引用発明1に関しては,「一方のシステムでの編集結果が,通信ユニットを介してネットワークを通って相手方のイメージシステムに送られるのであるから,相手方のシステムに送信されるまでは,相手方のシステムでは編集画像を見ることはできない」との被告の理解は正しく,この点において争いはない。
(6) さらに,被告は,引用発明1も,遠隔地者間でユーザーが協同して対話式に共通の画像を修正するものである旨主張する。
しかしながら,上記のとおり,引用発明1においては,「一方のシステムでの編集結果が,通信ユニットを介してネットワークを通って相手方のイメージ処理システムに送られるのであるから,相手方のシステムに送信されるまでは,相手方のシステムでは編集画像を見ることはできない」のであるから,引用発明1においては,編集の終わった全画像が相手方に送信されるのであって,相手方はその編集プロセスも分からず,ただ,その結果を受け取るだけである。要するに,引用発明1においては,修正の終わった全画像が相手方に送信されて,送信直後には送信側と相手方とで同一の画像が表示されるということでしかない。対話といっても,編集された全画像のやり取りということにすぎず,一方通行であって,本願発明のような実質上同時の対話はされていない。引用例1(甲4)に,「従来はCAD等によって作成した図形を紙上に描くか又は磁気媒体に記録し,それを郵便等で受信者に発送していた。受信者はその図形に修正を加えて返送し,双方とも修正がなくなるまでこれを繰り返す,という作業を繰り返していた」(1頁右下欄「(b)発明の背景」の項)と記載されているように,引用発明1は,郵便等を使った従来技術に替え,電話回線を使って電子的に画像をやり取りするようにしたというにすぎない。
(7) 以上によれば,引用例1が,ネットワークにイメージ情報を結合することを開示していないことは明らかであるから,審決の上記一致点の認定は誤りであり,審決には,本願発明と引用発明1との相違点を看過した違法がある。
2 取消理由2(相違点2の判断の誤り) (1) 審決は,相違点2として認定した,「メモリシステムの構成とそれに対するアクセスが,本願発明は,メモリ・ユニットが,共通作業空間メモリと個人作業空間メモリとを含み,イメージ処理システムの各々が,前記イメージ処理システムの全ての前記共通作業空間メモリをアクセスし,且つ前記イメージ処理システムの各々が,他の前記イメージ処理システムの前記個人作業空間メモリではなくそれ自身の個人作業空間メモリのみをアクセスするように制御するのに対して,引用例1記載の発明(注,引用発明1)のものには,メモリの構成,アクセスについては特段記載されていない点」(審決謄本5頁第1段落)について,@「引用例1のものも・・・対話形式で双方向に画像修正を行うのであるから,該画像が記憶されているメモリ空間は共に共有しているに等しいものと認められ」る(同頁最終段落),A「メモリを共通作業空間メモリと個人作業空間メモリとで構成し,共用するメモリは他装置からアクセスも可能にするようにすることは一般的に周知であ」る(同),B「遠隔画像会議システムにおいてもメモリをコモンファイル(共通作業空間メモリ)とワークファイル(個人作業空間メモリ)とで構成することは周知のことである」(同6頁第1段落)と判断したが,いずれの判断も誤りである。
(2) まず,上記@の判断については,上記1のとおり,引用発明1における作成ないし修正した画像の送信・受信の構成と,本願発明における各イメージ処理システムが共通作業空間メモリを有し,ここにイメージを記憶し,かつ,当該イメージをネットワークに結合する構成とは明確に異なるものである。したがって,この両者を「等しいもの」とした審決の上記判断の誤りは明らかである。
(3) 次に,上記A及びBの判断に関し,審決は,前者につき,特開昭58-33766号公報(甲6,以下「甲6公報」という。)及び特開昭58-48159号公報(甲7,以下「甲7公報」という。)を引用し,また,後者につき,特開昭60-1987号公報(甲8,以下「甲8公報」という。)を引用して,「周知」であるとの結論を導いている。しかしながら,そもそも,一つないし二つの公報から周知であると認定すること自体が妥当性を欠く上,以下のとおり,引用された上記各公報からは,審決が「周知」であるとした技術内容を導き出すこともできない。
ア 甲6公報記載の発明(以下「甲6発明」という。)においては,メモリを共通作業空間メモリと個人作業空間メモリとで構成することも,甲6発明の「共用メモリ」を自ユニットと他ユニットから実質上同時編集可能にアクセスすることもしていない。
甲6発明は,マルチマイクロコンピュータという一つのコンピュータ内の構成に関する発明であり,また,その「共用メモリ」は,本願発明における「共通作業空間メモリ」とは全く異なるものである。甲6公報に,「(ハ) マイクロコンピュータが設定する自ユニット又は他ユニットの共用メモリを指定する番号と各ユニットについて定められた固有のユニット番号とを常時比較して,前記共用メモリ指定番号及び比較結果などにより開閉されるゲート回路を有するバス交換回路を備えて,(ニ) 前記共用メモリ指定番号及び前記メモリアドレスに基いて前記バス変換回路によりマイクロコンピュータ用バスを前記共用メモリもしくは前記システムバスに結合させ,又は前記システムバスを前記共用メモリに結合させるように構成したことを特徴とするマルチマイクロコンピュータ」(特許請求の範囲),「共用メモリには原則的には自ユニットのMPU1iがアクセスするが,自ユニットの共用メモリのみでは記憶容量が不足の場合や,他ユニットとデータを交換する場合に他のユニットの共用メモリを利用する」(3頁左下欄第2段落),「共用メモリ4biがシステムバス2及び第2ゲート回路12を介して他ユニットのMPU1jによりアクセス中でない場合は,第1ゲート回路11が開き,MPUバスが共用メモリ4biと接続されるので,MPU1iは待たされることなく,共用メモリ4biをアクセスすることができる。これに対して,共用メモリ4biがシステムバス2を経由して他ユニットからアクセス中であって第2ゲート回路12が開いているときは,第1ゲート回路11が閉じられているため,システムバスからのアクセスが終了するまで,MPU1iは共用メモリ4biのアクセスを待たされる」(4頁左下欄〜右下欄第1段落),「システムバスが他ユニットのMPU1jにより使用されている場合,又は使用されておらずユニット番号とバンク番号が一致したユニット5kの共用メモリ4bkがそのユニットMPU1kによりアクセス中である場合は,MPU1jによるシステムバスの使用,又は,MPU1kによるアクセスが終了するまで,MPUliは共用メモリ4bkのアクセスを待たされる」(5頁左上欄最終段落〜右上欄第1段落)と記載されているとおり,甲6発明においては,バスによって各ユニットが接続されたマルチマイクロコンピュータという一つのシステムしか存在せず,その一つのシステム中のどのメモリに情報をどのように記録するかに関する発明である。
確かに,甲6発明においては,「共用メモリ」という語が使用されてはいるが,あるユニットの共用メモリに他のユニットのMPUがアクセスしている間は,当該共用メモリのユニットのMPUは当該共用メモリにアクセスできない。したがって,他のユニットのMPUが自ユニットの共用メモリにアクセス可能といっても,自ユニットのMPUと他ユニットのMPUが実質上同時編集可能に共用メモリにアクセスして協同して共通のデータを修正するということもできないし,自ユニットの共用メモリと他のユニットの共用メモリにデータの修正に従い実質上同時に共通のデータが記録されていくということもない。共用メモリの目的も,上記のとおり,「自ユニットの共用メモリのみでは記憶容量が不足の場合や,他ユニットとデータを交換する場合に他のユニットの共用メモリを利用する」(3頁左下欄第2段落)ことにあり,共用メモリに記録されているデータに,自ユニットと他ユニットが実質上同時編集可能にアクセスして協同してデータを修正していくという技術的思想は全く見られない。
以上のように,甲6発明の「共用メモリ」と本願発明の「共通作業空間メモリ」は全く異なるものである。甲6発明には,共通作業空間メモリは存在しないから,甲6公報には,メモリを共通作業区空間メモリと個人作業空間メモリとで構成することについて,開示や示唆は全くないし,また,共用メモリを自ユニットと他ユニットから実質上同時編集可能にアクセスすることも示唆されていない。
イ 甲7公報記載の発明(以下「甲7発明」という。)においても,メモリを共通作業空間メモリと個人作業空間メモリとで構成することも,甲7の発明の「共用メモリ」を一方のプロセッサと他方のプロセッサ20から実質上同時編集可能にアクセスすることもしていない。
甲7発明も,マルチプロセッサシステムという一つのコンピュータシステム内の構成に関する発明であり,また,その「共用メモリ」とは本願発明における「共通作業空間メモリ」とは全く異なるものである。甲7公報に,「前記複数のプロセッサのうち少なくとも1つのプロセッサは前記主記憶の一部を共用メモリとして割付け前記中央処理装置および前記インタフェイス制御部からアクセスする手段と,前記プロセッサは前記主記憶と前記共用メモリとの間でデータ移送を制御する手段と,前記主記憶と他のプロセッサの前記共用メモリとの間で前記インタフェイスを介してデータ移送を制御する手段とを有することを特徴とするマルチプロセッサシステム」(特許請求の範囲),「このように異なったプロセッサ間でファイルを共有するようなシステムにおいて共有ファイルアクセスに関してプロセッサ10と20との間で排他制御が必要となるため,両プロセッサ間での通信機能が必要となる」(3頁右上欄第2段落),「メインメモリ11から共用メモリ26へのデータ転送時には,MADRS300Dで示されるメインメモリアドレスのデータが,CMADRS300Eで示される共用メモリアドレスにTALLY300Cで指定されるバイト数だけ移送される。共用メモリ26からメインメモリ11への転送時には,逆にCMADRS300Eで示される共用メモリアドレスのデータが,MADRS300Dで示されるメインメモリアドレスにTALLY300Cで指定されるバイト数だけ移送される」(同頁左下欄第2段落),「以上のようにプロセッサ10と20とは共用メモリ26を共通にアクセスすることができ,両プロセッサ間の通信を共用メモリ26へのデータ移送命令を使用することにより実現できる」(4頁左下欄第3段落),「本発明には他プロセッサヘの通信データを高速で移送することができ,高性能かつ通信オーバーヘッドの少ない高効率な処理ができるという効果がある」(5頁左上欄最終段落)と記載されているとおり,甲7発明においては,接続ラインによって各プロセッサが接続されたマルチプロセッサシステムという一つのシステムしか存在せず,その一つのシステム中で,一つのプロセッサ中のデータを他のプロセッサ中にどのように移送するかに関する発明である。
確かに,甲7発明においては,「共用メモリ」という語が使用され,プロセッサ10と20とは共用メモリ26を共通にアクセスすることができると記載されているが,その意味は,プロセッサ10と20が実質上同時編集可能に共用メモリ26にアクセスするということではなく,プロセッサ10からプロセッサ20の共用メモリ26にデータを転送することができるということにすぎない。プロセッサ10のCPUとプロセッサ20のCPUが実質上同時編集可能に共用メモリ26にアクセスして協同して共通のデータを修正するということもできない。共用メモリは,上記のとおり,「他プロセッサヘの通信データを高速で移送する」(5頁左上欄最終段落)ために使用されるだけであり,共用メモリに記録されているデータにプロセッサ10とプロセッサ20が実質上同時編集可能にアクセスして協同してデータを修正していくという技術的思想は全く見られない。
以上のように,甲7発明の「共用メモリ」と本願発明の構成における「共通作業空間メモリ」は全く異なるものである。甲7発明には,共通作業空間メモリは存在しないから,甲7公報には,メモリを共通作業区空間メモリと個人作業空間メモリとで構成することについて,開示や示唆は全くないし,共用メモリをプロセッサ10とプロセッサ20から実質上同時編集可能にアクセスすることも示唆されていない。
ウ 甲8公報記載の発明(以下「甲8発明」という。)においても,メモリを共通作業空間メモリと個人作業空間メモリとで構成することも,甲8発明の「コモンファイル」を当該地点のCPUと他の地点のCPUから実質上同時編集可能にアクセスすることもしていない。
甲8公報に,「(α)他地点へ画像を転送する場合 1例としてワークファイル,ワークディスプレイなどからコモンディスプレイヘ画像を転送する場合のシーケンスを第4図に示す」(3頁右下欄最終段落),「(β)他の地点ヘコモンファイルとコモンディスプレイ間の画像転送命令を発する場合 1例としてコモンファイルからコモンディスプレイヘ画像を転送する場合のシーケンスを第5図に示す」(4頁左上欄第2段落),「(γ)他地点へ通信を一切行なわない場合 1例としてコモンディスプレイからワークファイルヘ画像を転送する場合のシーケンスを第6図に示す」(同頁左上欄最終段落〜右上欄初行),「(B)コモンディスプレイ画像の修正加筆 すでに各地点のコモンディスプレイに画像が表示されているとき,この画像の修正加筆を任意の地点で行なうとその地点のコントローラは自分自身のコモンディスプレイの画像に修正加筆を行なうとともに修正内容を他の全地点に発信する。各地点のコントローラは伝送路からコモンディスプレイ修正,加筆情報を受信するとコモンディスプレイの表示内容を修正加筆する。第7図にこの修正加筆のシーケンスを示す」(同頁右上欄第2段落)と記載されているとおり,甲8発明においては,上記すべての場合において,行われている処理は画像の「転送」である。
確かに,甲8発明においては,「コモンファイル」という語が使用されているが,ある地点のCPUと他の地点のCPUが実質上同時編集可能に当該コモンファイルにアクセスするということではないし,ある地点のCPUと他の地点のCPUが実質上同時に当該コモンファイルにアクセスして協同して共通の画像を修正するということもできない。そこでは,コモンファイルに記録されている画像にある地点のCPUと他の地点のCPUが実質上同時編集可能にアクセスして協同して画像を修正していくという技術的思想は全く見られない。
以上のように,甲8発明の「コモンファイル」と本願発明の構成における「共通作業空間メモリ」は全く異なるものである。甲8発明には,共通作業空間メモリは存在しないから,甲8公報には,メモリを共通作業区空間メモリと個人作業空間メモリとで構成することについて,開示や示唆は全くない。コモンファイルをある地点のCPUと他の地点のCPUから実質上同時編集可能にアクセスすることも示唆されていない。すなわち,甲8発明は,「遠隔静止画像会議システム」といっても,要するに,画像の同時転送システムを開示しているにすぎず,実質上同時編集可能に他の地点からも共通の画像にアクセスし当該画像を修正できるという意味での完全対話式のリアルタイムの分散会議システムなど開示していない。
(4) 以上によれば,相違点2に関する審決の上記各判断は,いずれも誤りである。
3 取消理由3(相違点3の判断の誤り) (1) 審決は,相違点3として認定した,「イメージの記憶と,表示と,編集について,本願発明は,共通のイメージが,イメージ処理システムの各々の前記共通作業空間メモリに記憶され,及び,イメージ情報が前記イメージ処理システムの各々の前記ディスプレイ手段に共通に表示されている間に,前記第1および第2のイメージ処理システムの各々で実質上同時に編集されるのに対して,引用例1記載の発明(注,引用発明1)のものには,共通イメージについて特段の記載はなく,画像等はRAM2に記憶され,編集は交互に行われる点」(審決謄本5頁第2段落)について,「利用者同士が対話形式で同じ作業をする場合に作業対象物である共通の画像を共通に表示させるようにすることは,引用例1の『相手方に画像が移っているときにはその画像について修正出来なくなるようにしている。このため,双方で同時に画像修正を行うことが可能になる画像生成/修正モードの同時設定が防止され,トラブルの発生をなくすことができる。』という記載・・・からも窺えるように,従来から行われていることであるから,上記相違点3における本願発明の構成にも格別困難な点は見いだせず,当業者が容易に考えることができることである。
また,上記引用例1の記載からは,トラブルの発生を気にしなければ,同時設定ができることが読みとれ,同時に表示されているイメージの編集を同時に行うようにすることは当業者が容易に考えられることと認められる」(同6頁第2段落〜第3段落)と判断したが,誤りである。
(2) 引用例1(甲4)の上記「相手方に画像が移っているときにはその画像について修正出来なくなるようにしている。このため,双方で同時に画像修正を行うことが可能になる画像生成/修正モードの同時設定が防止され,トラブルの発生をなくすことができる」との記載(3頁右上欄第2段落,以下「本件記載部分」という。)からは,双方で同時に画像修正を行おうとして画像生成/修正モードの同時設定をするとトラブルが発生するから,従来,利用者同士が対話形式で同じ作業をする場合に,作業対象物である共通の画像を共通に表示させるようにすることはなかったと認定するのが合理的である。審決は,本件記載部分を根拠に逆の結論を導いているが,トラブルが発生すると記載されているのに,「同時設定ができる」と認定する理由は不明というほかはないし,当業者が「トラブルの発生を気にしない」という前提も不合理である。
この点について,被告は,引用発明1においても,設定を適宜変えることにより双方で同時に修正することが可能である旨主張するが,引用例1においては,適宜設定を変えるなどという記載も,相手方に画像が移っても修正できるようにするとの記載も全くない。引用例1には,どのようにすればそれが可能になるかの記載もない。そもそも,引用発明1の技術的思想は,修正された全画像のやり取りということでしかなく,実質上同時修正という着想は全くない。着想が全く異なるから,引用発明1を基にして,実質上同時修正という本願発明の構成を容易に推考することなどできない。
(3) また,本願発明においては,イメージ処理システムA(以下「システムA」という。)とイメージ処理システムB(以下「システムB」という。)が共通のイメージを編集する場合,システムAがイメージを編集すると,システムA及びB各々のディスプレイに編集されたイメージが表示され,システムA及びB各々の共通作業空間メモリに記憶され,イメージ編集がシステムA及びB各々で実質上同時に行われる。
例えば,システムAのユーザがシステムAのディスプレイを見ながらイメージを編集する場合,システムAのユーザのスタイラス(甲1の図1の実施例では5a)の操作に応じて編集コマンドが発生し,当該編集コマンドにより,システムAの共通作業空間メモリに記憶されたイメージが編集されると共にシステムAのディスプレイに編集されたイメージが表示される。さらに,システムAのユーザによるスタイラスの操作によって発生した編集コマンドは,システムAとネットワークによって接続されたシステムBに,当該ネットワークを通じて送信される。そして,当該編集コマンドにより,システムBの共通作業空間メモリに記憶されたイメージが編集されるとともにシステムBのディスプレイに編集されたイメージが表示される。このようにして,システムAとBの各々で実質上同時に共通のイメージが編集される。システムBのユーザは,システムAのユーザが行う編集をシステムBのディスプレイ上で実質上同時に見ることができる。さらに,システムBのユーザは,システムAのユーザが編集作業をしている間であっても,システムBのスタイラスを操作することにより,編集コマンドを発生させ,当該編集コマンドにより,システムA及びBの共通作業空間メモリに記憶されたイメージを編集すると共にシステムA及びBのディスプレイに編集されたイメージを表示させることができる。
これに対し,引用発明1の構成及び特徴は,システムAが画像を修正してもそれをシステムBに送信するまではシステムBのユーザはそれを見ることができないし,システムAが画像を修正している間はシステムBはそれを修正することもできない。システムAが画像を修正し,当該画像をシステムBに送信すると自動的にシステムAは受信モードに移るようになっている。さらに,引用発明1では,相手方システムに送信されるのは,甲4の第5図からも明らかなとおり,編集が終わった画像全体である。本願発明における編集の場合と比較して,編集作業の効率が極めて悪く,さらに,画像全体が常に送信されることから送信される情報量も多くなるという不都合も生ずる。
以上のとおり,本願発明では編集コマンドだけが送信され,システムAの行った編集過程をシステムBのユーザは実質上同時に見ることができる上,送信される情報量も少ない。これに対し,引用発明1では,編集された画像全体が送信され,システムAの行った編集過程をシステムBのユーザは見ることができない上,送信される情報量は大きい。このように,本願発明と引用発明1とは,発明の構成及び技術的思想が全く異なっており,しかも,本願発明では引用発明1では得られない顕著な効果が得られるという相違もある。
(4) 被告は,本願発明においては,同時編集に対するトラブルに対して対処法は記載されておらず,同時編集を行うとトラブルが発生するおそれがある旨主張する。
しかしながら,本願発明においては,システムA又はシステムBからの編集コマンドによる編集は実質上同時にシステムA及びシステムBにおいて実行され,それに応じてイメージが編集され,システムA及びシステムBの使用者が実質上同時に編集過程を見ることができるので,実際の作業において,矛盾する編集コマンドを同時にシステムAの使用者とシステムBの使用者が生成するという事態は起こり難い。先に生成された編集コマンドが次々と実行されてイメージが編集されていくのである。実際上の可能性はほとんどないが,システムAの使用者とシステムBの使用者が矛盾する編集コマンドを生成しそれがCPUに同時に到着したというような場合はトラブルが発生するかもしれない。しかし,そのような可能性があり,本願発明においてトラブルが発生するかもしれないかどうかは,本件とは無関係である。本件における争点は,引用発明1に基づいて本願発明を容易に想到し得たかどうかであって,本願発明に全く欠点がないかどうかということではない。
(5) 以上によれば,当業者が,引用発明1に基づいて,相違点3に係る本願発明の構成を容易に想到することはできないというべきであるから,審決の上記判断は誤りである。
被告の反論
審決の認定判断は正当であり,参加人主張の取消事由はいずれも理由がない。
1 取消事由1(相違点の看過)について (1) 本件明細書(甲1,3)の特許請求の範囲の請求項1には,「共通のイメージが,前記ネットワ一クを介して,前記イメージ処理システムの各々に結合され,前記イメージ処理システムの各々の前記ディスプレイ手段に共通に表示され,前記イメージ処理システムの各々の前記共通作業空間メモリに記憶され,及び,共通のイメージが,イメージ情報が前記イメージ処理システムの各々の前記ディスプレイ手段に共通に表示されている間に,前記第1および第2のイメージ処理システムの各々で実質上同時に編集される」と記載されているのみであり,特許請求の範囲には,参加人が主張するような,「イメージ処理システムAがイメージを編集すると,イメージ処理システムA及びB各々のディスプレイに編集されたイメージが表示され,イメージ処理システムA及びB各々の共通作業空間メモリに記憶され」るとの構成は記載されていない。
また,上記請求項1には,「前記メモリユニットが,共通作業空間メモリと個人作業空間メモリとを含み」と記載されているだけであり,「共通作業空間メモリ」は,メモリユニットに設けられているものである。これに対し,参加人は,「共通作業空間メモリ」を「共通作業空間」と表現し,あたかも「共通作業空間」がメモリユニットにではなく,他のどこかに存在するような主張をしているが,誤りである。
さらに,参加人は,本願発明においては「編集コマンド」のみが送信される旨主張しているが,上記請求項1には,「イメージ情報を通信する」,「ネットワークから受信されたイメージ情報」,「イメージ情報を受ける通信ユニット」,「第2のイメージ処理システムからイメージ情報を受信する」と記載されており,「編集コマンド」のみが送信されることは,本件明細書の特許請求の範囲にも,発明の詳細な説明にも記載されていない。この点について,参加人は,編集コマンドを送信することは,当該技術分野において,本件出願当時,周知の技術であったから,本件明細書に記載されていなくとも,記載されていたに等しい旨主張するが,たとえ,編集コマンドを送信することが,参加人主張のように周知慣用技術であったとしても,参加人の上記主張は,本件明細書の記載に基づかない主張であるから,失当というべきである。
(2) 参加人は,引用発明1では,一つのシステムが画像を修正してもそれを相手方システムに送信するまでは他のシステムは当該修正画像を見ることはできないとして,殊更,引用発明1と本願発明とが相違するかのような主張をしているが,本願発明においても,一方のシステムでの編集結果が,通信ユニットを介してネットワークを通って相手方のイメージ処理システムに送られるのであるから,相手方のシステムに送信されるまでは,相手方のシステムで編集画像を見ることができないことは引用発明1と同様である。
参加人は,引用発明1では,あるシステムが画像を修正し,当該画像を相手方システムに送信すると自動的に受信モードに移り,相手方に画像が移っているときはその画像について修正できない旨主張するが,引用例1(甲4)の関係部分は,「本実施例では」との語に続けて記載されている(3頁右上欄第2段落)とおり,一つの実施例において,双方で同時に修正を行うことにより同時設定を防止するために,相手方に画像が移っているときには修正できないようにしているものであり,引用発明1においても,設定を適宜変えることにより双方で同時に修正することが可能である。本願発明のものも,双方で同時に修正が行われて混乱が生じるおそれは否定することができない。
また,参加人は,引用発明1においては,共通の画像が一方のシステムと相手方システム各々に「結合」されることはなく,全く反対に「分離」されている旨主張する。しかしながら,引用発明1では,一方の画像処理装置は他方の画像処理装置と電話回線を介して接続され,引用例1の第5図においては,画像処理装置A,Bに示される,生成された図形と生成後送信された図形,修正された図形と修正後送信された図形とはそれぞれ同一のものとなっており,画像処理装置A,Bには同一の図形が表示されている。したがって,引用発明1のものが結合されておらず分離されているという参加人の主張は失当である。
なお,参加人は,引用発明1には,一方のシステムと相手方システムが実質上同時に共通の画像を修正していくための共通画像が記録される「共通作業空間メモリ」も存在しないとも主張しているが,「共通作業空間メモリ」の点については,審決では,相違点1として認定した上で,それに対する判断を示しているから,相違点の看過に当たらない。
さらに,参加人は,引用発明においては,画像が修正された場合,修正に必要な情報のみが送信されるのではなく,修正された画像そのものが送信される旨主張するが,本願発明においても,修正に必要な情報のみが送信されるとはされていないことは,上記(1)のとおりであり,参加人の主張は,特許請求の範囲の記載に基づかないものである。
参加人は,引用発明1の技術的思想は「画像のやり取り」であり,「遠隔地者間でユーザーが協同して実質上同時に共通の画像を修正する」という本願発明の技術的思想は全く見られない旨主張するが,引用発明1も,遠隔地者間でユーザーが協同して対話式に共通の画像を修正するものであるから,参加人の主張は失当である。
(3) 以上のとおり,本願発明では,第1と第2のイメージ処理システムがネットワークを介して接続され,イメージ情報を送受信しており,引用発明においても,画像作成装置Aと画像処理装置Bとが電話回線を介して接続され,画像を送受信し,同一の画像を表示しているから,審決が,「引用例1の『複数の装置』と,本願発明の『少なくとも第1と第2のイメージ処理システム』とは,ネットワークにより結合されたイメージ処理システムである点で差異はな」い(審決謄本3頁最終段落〜4頁初行)とした上,両者は,「(c)前記ネットワークにイメージ情報を結合し且つそれからイメージ情報を受ける通信ユニットであって,前記ネットワークに結合された前記第2のイメージ処理システムからイメージ情報を受信することが可能な通信ユニット」(同4頁(c)の項)とを含む点で一致すると認定したことに誤りはない。
2 取消理由2(相違点2の判断の誤り)について (1) 引用例1(甲4)には「画像等を記憶するRAM2」(2頁左下欄第2段落)の記載があり,引用発明1において,画像がメモリに記憶されることは明らかである。また,ディスプレイ上に画像を表示することは,メモリに記憶された画像をディスプレイ上に表示することであり,また,画像データを送受信することは,メモリに記憶された画像データを送受信することである。引用発明1に係る画像作成装置Aと画像作成装置Bとは電話回線を介して接続され,引用例1の第5図に示されるとおり,同じ画像がそれぞれのCRTに同時に表示されるのであるから,それぞれの画像作成装置A,Bのメモリには,回線を介して送受信された同じ画像が記憶されているのである。
この点では,本願発明においても,第1と第2のイメージ処理システムのそれぞれの共通作業空間メモリには,イメージ情報のネットワークを介した送受信により,同じイメージが記憶されており,それぞれの共通作業空間メモリに同じイメージを記憶しているのである。
審決は,以上の点を考慮して,相違点2について,「引用例1のものも,作成した画像をメモリに記憶し,記憶した画像を電話回線を介して他の画像作成装置に送り,他の画像作成装置がその画像について修正し,対話形式で双方向に画像修正を行うのであるから,該画像が記憶されているメモリ空間は共に共有しているに等しいものと認められ」る(審決謄本5頁最終段落)と判断したものであり,この判断に誤りはない。
(2) 審決においては,「メモリを共通作業空間メモリと個人作業空間メモリとで構成し,共用するメモリは他装置からのアクセスも可能にすること」が,一般的に周知であることを示すために,周知例(甲6公報,甲7公報及び甲8公報)を示したのであり,これらの周知例は,メモリを共通作業空間メモリと個人作業空間メモリとで構成し,共用するメモリは他装置からのアクセスも可能であることを示している。
さらに,甲8公報には,遠隔画像会議システムにおいても,「メモリを共通作業空間メモリと個人作業空間メモリとで構成し,共用するメモリは他装置からのアクセスも可能にする」ものが示されている。なお,甲8公報には,修正内容を他の全地点に発信することも記載されている(4頁右上欄第2段落)。
このように,甲6公報,甲7公報及び甲8公報は,審決の摘示に係る周知技術を示しているから,審決が,「メモリを共通作業空間メモリと個人作業空間メモリとで構成し,共用するメモリは他装置からアクセスも可能とするようにすることは一般的に周知であ」る(審決謄本5頁最終段落),「遠隔画像会議システムにおいてもメモリとコモンファイル(共通作業空間メモリ)とワークファイル(個人作業空間メモリ)とで構成することは周知のことである」(同6頁第1段落)と判断したことに誤りはない。
3 取消理由3(相違点3の判断の誤り)について (1) 参加人は,引用例1(甲4)の本件記載部分からは,双方で同時修正を行おうとして画像生成/修正モードの同時設定をするとトラブルが発生するから,従来,利用者同士が対話形式で同じ作業をする場合に,作業対象物である共通の画像を共通に表示させるようにすることはなかったと認定するのが合理的であるとして,審決の相違点3に関する判断は誤りである旨主張する。
しかしながら,「相手方に画像が移っているときにはその画像について修正出来なくなるようにしている」のであるから,相手方に画像が移っても修正できるようにすれば,引用例1の第5図からも分かるように,CRTに表示された同じ画像に対して,それぞれの画像作成装置で同時に修正を行うことができることは明白である。参加人の上記主張は失当である。
なお,本願発明においては,特許請求の範囲に,「共通のイメージが,各々のディスプレイ手段に共通に表示されている間に,第1および第2のイメージ処理システムの各々で実質上同時に編集される」と記載されているだけであって,同時編集に対するトラブルに対して対処法は記載されていないから,同時編集を行うとトラブルが発生するおそれがある。
(2) 審決が引用例1(甲4)の本件記載部分についていう「相手方に画像が移っているときにはその画像」(審決謄本6頁第2段落)とは,引用例1の第5図からも明らかなように,画像作成装置A,B双方のメモリに記憶され,CRTに表示された共通の画像のことを指す。
また,審決は,引用例1には本件記載部分がある上,さらに,共通のイメージを表示して同時に編集して,完全対話式のリアルタイムの分散会議ができるようにすることが周知である例として,甲8公報を示しており,他の周知例としては,例えば,特開昭60-128769号公報(乙4)等がある。
以上によれば,引用発明1に基づいて,本願発明のように,共通のイメージが,イメージ処理システムの各々の前記共通作業空間メモリに記憶され,及び,イメージ情報が前記イメージ処理システムの各々の前記ディスプレイ手段に共通に表示されている間に,前記第1および第2のイメージ処理システムの各々で実質上同時に編集される構成にすることは,当業者が容易に想到し得ることであり,審決の相違点3に関する判断に誤りはない。
当裁判所の判断
1 取消理由1(相違点の看過)について (1) 審決は,本願発明と引用発明1との一致点の認定に際し,「引用例1の『複数の装置』と,本願発明の『少なくとも第1と第2のイメージ処理システム』とは,ネットワークにより結合されたイメージ処理システムである点で差異はな」い(審決謄本3頁最終段落〜4頁初行)とした上,両者は,「(c)前記ネットワークにイメージ情報を結合し且つそれからイメージ情報を受ける通信ユニットであって,前記ネットワークに結合された前記第2のイメージ処理システムからイメージ情報を受信することが可能な通信ユニット」(同4頁(c)の項)を含む点で一致すると認定した。これに対し,参加人は,引用発明1においては,イメージは,ネットワークを介して,各々のシステムに「結合」されていないし,実質上同時にイメージが編集される空間である「共通作業空間」もないとして,審決の上記一致点の認定は誤りであり,審決には相違点を看過した誤りがある旨主張する。
(2) 本願発明の要旨は,上記第2の2記載のとおりであるところ,参加人の主張は,上記のとおり,本願発明の「(c)前記ネットワークにイメージを結合し且つそれからイメージ情報を受ける通信ユニットであって,前記ネットワークに結合された前記第2のイメージ処理システムからイメージ情報を受信することが可能な通信ユニット」との構成要件(以下「構成要件(c)」という。)のうち,「ネットワークにイメージ情報を結合する」こと及び「ネットワークに結合された・・・イメージ処理システム」との構成(以下「本件特定構成」という。)について,特に,そこで規定する「結合」の語に着目して,引用発明1には,これらに相当する構成がない旨主張するものである。
そこで,本願発明の本件特定構成の意義についてみると,本件明細書(甲1,3)には,上記「結合」の技術的意義について,特段の定義や説明はされていないところ,広辞苑第五版によれば,「結合」とは,「結び合うこと。結び合せて一つにすること。その結びつき」を意味するものとされている。
他方,引用例1(甲4)には,「この発明は画像の伝送システムに関し,特には複数の装置間で交互に画像の伝送と修正を行うシステムに関する」(1頁右下欄「(a)技術分野」の項),「第3図は上記画像作成装置のブロック図である。CPU1には画像等を記憶するRAM2,プログラム等を記憶しているROM3,画像の送受信を制御する伝送制御部4,周辺機器のインターフェイス5が接続されている。伝送制御部4にはモデム6が接続され,このモデム6は切換器7を介して電話回線に接続されている。切換器7には電話機8が接続され,この電話機8によって他の画像作成装置との電話回線を設定したのち,切換器7によってこの回線を画像作成装置本体側に切り換える」(2頁左下欄第2段落),「電話機8によって,予めどちら側が送信側になるかを決めておき,送信側は生成/修正キー92aを操作し,受信側は受信キー92bを操作する。送信側では,n4でキーボード9,ライトペン12,マウス13等を使用して画像の生成又は修正を行い(第5図参照),n5で送信モードの設定がされるまで待機する。送信モードキー92bが押され送信モードが設定されると,n6で送信先の画像作成装置に向けて送信を行い,送信が完了するとn7で自動的に受信モードに設定される」(同頁右下欄)との記載があり,これらの記載によれば,引用発明1においても,複数の画像作成装置がそれぞれ画像の送受信を制御する伝送制御部を有し,伝送制御部にはモデムが接続され,モデムは電話回線に接続されていること,一方の画像作成装置が画像の生成又は修正を行い,他方の画像作成装置に送信するものであることは明らかである。
そうすると,引用発明1の「複数の画像作成装置」は「ネットワークに結び合わされたイメージ処理システム」に相当するものであり,当該ネットワークに結び合わされた画像作成装置によって画像の生成,修正を行うことは,すなわち,「ネットワークにイメージ情報を結び合わせること」であるということができるから,引用発明1も,「結合」という語の通常の意味において,本件特定構成に相当する構成を有するものであると認めるのが相当である。
(3) これに対し,参加人は,本願発明においては,イメージ処理システムAとイメージ処理システムBが共通のイメージを編集する場合,イメージ処理システムAがイメージを編集すると,イメージ処理システムA及びB各々のディスプレイに編集されたイメージが表示され,イメージ処理システムA及びB各々の共通作業空間メモリに記憶され,イメージ編集がイメージ処理システムA及びB各々で実質上同時に行われるとした上,このようにして,共通のイメージが,ネットワークを介して,イメージ処理システムA及びB各々に「結合」されているのであって,この実質上同時に編集されるイメージが記憶される空間が「共通作業空間」である旨主張しており,こうした参加人の主張は,本件特定構成にいう「結合」の意味を限定的に解すべきであるとするものであると理解される。
しかしながら,本件明細書中には,本件特定構成にいう「結合」の技術的意義について特段の定義や説明がされていないことは上記のとおりである上,参加人主張の点は,本願発明において,構成要件(c)とは別の構成要件として,「(d)・・・前記メモリ・ユニットが,共通作業空間メモリと個人作業空間メモリとを含み,前記イメージ処理システムの各々が,前記イメージ処理システムの全ての前記共通作業空間メモリをアクセスし,且つ前記イメージ処理システムの各々が,他の前記イメージ処理システムの前記個人作業空間メモリではなくそれ自身の個人作業空間メモリのみをアクセスするように制御する・・・」,「前記イメージ処理システムの各々の前記制御ユニットの制御の下で,共通のイメージが,前記ネットワークを介して,前記イメージ処理システムの各々に結合され,前記イメージ処理システムの各々の前記ディスプレイ手段に共通に表示され,前記イメージ処理システムの各々の前記共通作業空間メモリに記憶され,及び,共通のイメージが,イメージ情報が前記イメージ処理システムの各々の前記ディスプレイ手段に共通に表示されている間に,前記第1および第2のイメージ処理システムの各々で実質上同時に編集されること」(以下「構成要件(d)」という。)と規定されているところであるから,これをあえて構成要件(c)に取り込むべき必要はないことも明らかである。そうすると,本件特定構成にいう「結合」の意味については,その語の通常の意味に解すれば足りるというべきであるから,参加人の上記主張は採用の限りではない。
(4) なお,参加人は,引用発明1には,実質上同時にイメージが編集される空間である「共通作業空間」がないとも主張するが,審決は,参加人主張に係る「実質上同時にイメージを編集すること」ないし「共通作業空間」の点については,別途,相違点2ないし相違点3として認定した上,それに対する判断を加えているから,この点が相違点の看過に当たらないことは明らかである。
(5) 以上によれば,審決の上記一致点の認定に誤りはないというべきであるから,その余の参加人の主張について判断するまでもなく,参加人の取消事由1の主張は理由がない。
2 取消理由2(相違点2についての判断の誤り)について (1) 審決は,相違点2として認定した,「メモリシステムの構成とそれに対するアクセスが,本願発明は,メモリ・ユニットが,共通作業空間メモリと個人作業空間メモリとを含み,イメージ処理システムの各々が,前記イメージ処理システムの全ての前記共通作業空間メモリをアクセスし,且つ前記イメージ処理システムの各々が,他の前記イメージ処理システムの前記個人作業空間メモリではなくそれ自身の個人作業空間メモリのみをアクセスするように制御するのに対して,引用例1記載の発明(注,引用発明1)のものには,メモリの構成,アクセスについては特段記載されていない点」(審決謄本5頁第1段落)について,@「引用例1のものも・・・対話形式で双方向に画像修正を行うのであるから,該画像が記憶されているメモリ空間は共に共有しているに等しいものと認められ」る(同頁最終段落),A「メモリを共通作業空間メモリと個人作業空間メモリとで構成し,共用するメモリは他装置からアクセスも可能とするようにすることは一般的に周知であ」る(同),B「遠隔画像会議システムにおいてもメモリをコモンファイル(共通作業空間メモリ)とワークファイル(個人作業空間メモリ)とで構成することは周知のことである」(同6頁第1段落)と判断した。
(2) これに対し,参加人は,引用発明1における作成ないし修正した画像の送信・受信の構成と,本願発明における各イメージ処理システムが共通作業空間メモリを有し,ここにイメージを記憶し,かつ,当該イメージをネットワークに結合する構成とは明確に異なるものであるとして,審決の上記(1)@の判断は誤りであると主張する。
そこで検討すると,まず,審決の上記(1)@の判断にいう「メモリ」とは,引用例1(甲4)にいう「画像等を記憶するRAM2」(2頁左下欄第2段落)を指すことは明らかである。そして,引用発明1の画像処理システムが,「遠隔地の利用者同士が対話形式で一つの画像を作成することが出来ることを特徴とする双方向画像伝送対話システム」(審決謄本3頁下から第2段落)であることは当事者間に争いがなく,また,同システムにおいては,引用例1の第5図等に記載されるように,画像作成装置Aで生成した画像が画像作成装置Bに送信されて画像作成装置Bで表示され,画像作成装置Bで修正された画像が画像作成装置Aに送信されて,画像作成装置Aで表示されるものであるから,一方の画像作成装置で生成あるいは修正された画像が他方の画像作成装置に送られて表示された場合は,同一の画像が両方の画像作成装置のメモリに記憶されることとなる。
他方,本願発明においても,第1と第2のイメージ処理システムのそれぞれの共通作業空間メモリには,イメージ情報のネットワークを介した送受信によって,同一のイメージが記憶されていることは明らかであるから,本願発明と引用発明とは,各イメージ処理システムないし画像作成装置が備えるメモリにおいて,送受信に係る同一のイメージないし画像が記憶されている点において共通しているものと認められる。
ところで,参加人の主張する「各イメージ処理システムが共通作業空間メモリを有し,ここにイメージを記憶し,かつ,当該イメージをネットワークに結合する」構成とは,審決が相違点3として認定した,「共通のイメージが,イメージ処理システムの各々の前記共通作業空間メモリに記憶され,及び,イメージ情報が前記イメージ処理システムの各々の前記ディスプレイ手段に共通に表示されている間に,前記第1および第2のイメージ処理システムの各々で実質上同時に編集される」(審決謄本5頁第2段落)構成を指すものと解されるが,当該構成が引用例1に記載されていないものであることは,参加人主張のとおりである。しかしながら,審決は,その点を,相違点3として別途認定しているのであるから,相違点2について,審決が,「引用例1のものも,作成した画像をメモリに記憶し,記憶した画像を電話回線を介して他の画像作成装置に送り,他の画像作成装置がその画像について修正し,対話形式で双方向に画像修正を行うのであるから,該画像が記憶されているメモリ空間は共に共有しているに等しいものと認められ」る(審決謄本5頁最終段落)と説示した趣旨は,各イメージ処理システムないし画像作成装置が備えるメモリの機能ないし役割という角度から,単に,引用発明1における双方の画像作成装置のメモリに共通の画像が記憶されていることをとらえて,「引用例1のものも・・・画像が記憶されているメモリ空間は共に共有しているに等しいものと認められ」るとしたものにすぎず,引用発明1が参加人主張に係る構成を備えていると認定したものでないことは明らかである。
そして,各イメージ処理システムないし画像作成装置が備えるメモリにおいて,送受信に係る同一のイメージないし画像が記憶されている点において,本願発明と引用発明1とが共通することは,上記認定のとおりであるから,審決の上記(1)@の判断を誤りということはできず,参加人の上記主張は採用の限りではない。
(3) また,参加人は,審決の上記(1)Aの判断に対して,甲6公報〜甲8公報からは,審決が周知であるとした「メモリを共通作業空間メモリと個人作業空間メモリとで構成し,共用するメモリは他装置からアクセスも可能とするようにすること」及び「遠隔画像会議システムにおいてもメモリをコモンファイル(共通作業空間メモリ)とワークファイル(個人作業空間メモリ)とで構成すること」は導き出すことはできないと主張する。
しかしながら,甲6公報には,マルチマイクロコンピュータに関して,「各ユニットにおけるメモリ4i(i=1〜n)を自ユニット専用のメモリ4aと,自ユニットを含めていずれのユニットにも共用されるメモリ4bとに分割構成するとともに,自ユニット専用メモリはMPUバス6経由で自ユニットのMPUによってのみアクセス可能とし,かつ,共用メモリ4bは各ユニットに備えられたバス交換回路7の作用によりMPUバス経由で自ユニットのMPU1iにより,又はシステムバス経由で他ユニットのMPU1j(j≠i)によってアクセス可能としたものである」(2頁左下欄第1段落)と,甲7公報には,マルチプロセッサシステムに関し,「MM21は共用メモリ部26と本来のプロセッサ20内ソフトウェア処理に使用されるメインメモリ部29とに分割され」(2頁右下欄第3段落)と記載されているから,甲6公報及び甲7公報には,複数の処理装置を有するシステムにおいて,各処理装置のメモリを,自装置専用のメモリ空間と他装置からアクセス可能な共用メモリ空間とすることが記載されているということができる。
また,甲8公報には,「遠隔静止画像会議システム」(1頁,発明の名称及び特許請求の範囲)に関する発明が記載され,「この目的は本発明によれば互に離れた各地点に静止画像表示装置,静止画像入出力装置,静止画像作成装置,電話機等を備え,前記各地点間を伝送路で結合することにより遠隔会議を行なうシステムにおいて,前記各地点に画像通信制御装置(以下コントローラと称す)を設け,該コントローラに2機の画像表示装置(一方をコモンディスプレイ,他方をワークディスプレイと称す)および画像を記憶するための2個の補助記憶装置(一方をコモンファイル,他方をワークファイルと称す)を設け,会議進行中に任意の地点Aの会議参加者が前記コモンファイルまたはコモンディスプレイの画像に関する修正,加筆画像転送などの操作を行なうと全地点のコモンファイルおよびコモンディスプレイの内容も前記地点Aのコモンファイルおよびコモンディスプレイの内容と同じになるように前記全地点のコントローラ同志で自動的に通信を行ない,一方前記全地点ではワークファイルおよびワークディスプレイの内容を独自に操作し,コモンファイルおよびコモンディスプレイとの間で画像転送を行なうことを特徴とする遠隔静止画像会議システムを提供することによって達成される」(2頁左上欄第3段落〜同頁右上欄第1段落),「すでに各地点のコモンディスプレイに画像が表示されているとき,この画像の修正加筆を任意の地点で行なうとその地点のコントローラは自分自身のコモンディスプレイの画像に修正加筆を行なうとともに修正内容を他の全地点に発信する。各地点のコントローラは伝送路からコモンディスプレイ修正,加筆情報を受信するとコモンディスプレイの表示内容を修正加筆する」(4頁右上欄第2段落)と記載されている。これらの記載によれば,甲8発明においては,「遠隔画像会議システム」において,自装置専用のメモリ空間と他装置からアクセス可能な共用メモリ空間とすることが記載されているということができる。また,甲8発明においては,全地点のコモンファイルあるいはコモンディスプレイが,すべて同じ内容となるように通信が行われているから,甲8発明のコモンファイルとワークファイルとは,実質的に,本願発明の共通作業空間メモリと個人作業空間メモリと同様のものであると認められる。
以上によれば,甲6公報〜甲8公報には,「メモリを共通作業空間メモリと個人作業空間メモリとで構成し,共用するメモリは他装置からアクセスも可能とするようにすること」及び「遠隔画像会議システムにおいてもメモリをコモンファイル(共通作業空間メモリ)とワークファイル(個人作業空間メモリ)とで構成すること」が開示されているということができるから,審決の上記(1)Aの判断に誤りはない。
これに対し,参加人は,甲6発明〜甲8発明においては,共用メモリを実質上同時編集可能にアクセスすることをしていない旨主張する。しかしながら,審決は,「メモリシステムの構成とそれに対するアクセス」(審決謄本5頁初行)について相違点(2)を抽出したものであって,「実質上同時編集可能」かどうかについては,別途,相違点3として認定した上で,それに対する判断を加えていることが明らかであるから,審決が,相違点(2)に関する判断に際し,「実質上同時編集可能」か否かを考慮していないとしても,そのことを誤りということはできない(なお,引用発明1に基づいて,「実質上同時編集可能」な構成とすることの容易想到性については,後記3で判示するとおりである。)。
また,参加人は,審決が一つないし二つの公報から周知であると認定したこと自体が妥当性を欠くとも主張するが,審決において甲6公報〜甲8公報が摘示されたのは,単に例示にすぎないことは明らかであるから,摘示された公報の個数のみをとらえて審決を論難することは,そもそも当を得ないものというべきであるし,また仮に,甲6公報〜甲8公報に記載された技術が「周知」とまではいえなかったとしても,甲6公報〜甲8公報に当該技術が公開されている以上,その適用を阻害する事情等の見当たらない本件において,審決の結論に影響を及ぼさないことも明らかであるから,参加人の上記主張も採用の限りではない。
(4) 以上によれば,審決の相違点2に関する上記判断に誤りはないというべきであるから,参加人の取消事由2の主張はいずれも理由がない。
3 取消理由3(相違点3の判断の誤り)について (1) 審決は,相違点3として認定した,「イメージの記憶と,表示と,編集について,本願発明は,共通のイメージが,イメージ処理システムの各々の前記共通作業空間メモリに記憶され,及び,イメージ情報が前記イメージ処理システムの各々の前記ディスプレイ手段に共通に表示されている間に,前記第1および第2のイメージ処理システムの各々で実質上同時に編集されるのに対して,引用例1記載の発明(注,引用発明1)のものには,共通イメージについて特段の記載はなく,画像等はRAM2に記憶され,編集は交互に行われる点」(審決謄本5頁第2段落)について,「利用者同士が対話形式で同じ作業をする場合に作業対象物である共通の画像を共通に表示させるようにすることは,引用例1の『相手方に画像が移っているときにはその画像について修正出来なくなるようにしている。このため,双方で同時に画像修正を行うことが可能になる画像生成/修正モードの同時設定が防止され,トラブルの発生をなくすことができる。』という記載(注,本件記載部分)・・・からも窺えるように,従来から行われていることであるから,上記相違点3における本願発明の構成にも格別困難な点は見いだせず,当業者が容易に考えることができることである。また,上記引用例1の記載からは,トラブルの発生を気にしなければ,同時設定ができることが読み取れ,同時に表示されているイメージの編集を同時に行うようにすることは当業者が容易に考えられることと認められる」(同6頁第2段落〜第3段落)と判断した。
(2) これに対し,参加人は,引用例1(甲4)の上記の本件記載部分からは,双方で同時に画像修正を行おうとして画像生成/修正モードの同時設定をするとトラブルが発生するから,従来,利用者同士が対話形式で同じ作業をする場合に,作業対象物である共通の画像を共通に表示させるようにすることはなかったと認定するのが合理的であるとして,審決の上記判断は誤りである旨主張する。
しかしながら,引用例1の本件記載部分は,「相手方に画像が移っているときにその画像について修正できなくなるようにしている」というものであり,相手方に画像が移っているときに表示できなくなるようにしているものではないから,本件記載部分を根拠に,従来,利用者同士が対話形式で同じ作業をする場合に,作業対象物である共通の画像を共通に「表示」させるようにすることはなかったと認定するのが合理的であるとする参加人の主張は,そもそも理解し難い面があるというべきである。
そして,甲8公報に,「この目的は本発明によれば互いに離れた各地点に静止画像表示装置,静止画像入出力装置,静止画像作成装置,電話機等を備え,前記各地点間を伝送路で結合することにより遠隔会議を行なうシステムにおいて,前記各地点に画像通信制御装置(以下コントローラと称す)を設け,該コントローラに2機の画像表示装置(一方をコモンディスプレイ,他方をワークディスプレイと称す)および画像を記憶するための2個の補助記憶装置(一方をコモンファイル,他方をワークファイルと称す)を設け,会議進行中に任意の地点Aの会議参加者が前記コモンファイルまたはコモンディスプレイの画像に関する修正,加筆画像転送などの操作を行なうと全地点のコモンファイルおよびコモンディスプレイの内容も前記地点Aのコモンファイルおよびコモンディスプレイの内容と同じになるように前記全地点のコントローラ同志で自動的に通信を行ない,一方前記全地点ではワークファイルおよびワークディスプレイの内容を独自で操作し,コモンファイルおよびコモンディスプレイとの間で画像転送を行なうことを特徴とする遠隔静止画像会議システムを提供することによって達成される」(2頁左上欄第3段落〜同頁右上欄第1段落)と記載されているとおり,対話式で画像処理を行う場合に,画像処理の対象となるイメージを複数のイメージ処理装置に共通に表示させることは,本件出願当時の技術常識に属する事項であったと認められることからすれば,引用例1の本件記載部分から,同様の技術内容をうかがい知ることができるとした審決の判断に誤りはないというべきである。
(3) また,参加人は,審決の「上記引用例1の記載(注,本件記載部分)からは,トラブルの発生を気にしなければ,同時設定ができることが読み取れ,同時に表示されているイメージの編集を同時に行うようにすることは当業者が容易に考えられることと認められる」との判断に対し,トラブルが発生すると記載されているのに「同時設定ができる」とする理由が不明であり,当業者が「トラブルの発生を気にしない」という前提も不合理であるとして,審決の判断は誤りである旨主張する。
ア そこで検討すると,引用例1(甲4)の本件記載部分は,これに先立つ部分を含めて見ると,「本実施例では送信後自動的に受信モードに移り,相手方に画像が移っているときにはその画像について修正出来なくなるようにしている。このため,双方で同時に画像修正を行うことが可能になる画像生成/修正モードの同時設定が防止され,トラブルの発生をなくすことができる」(3頁右上欄第2段落)というものであるから,ここでいう「トラブル」とは,画像生成/修正モードの同時設定を可能にすると,双方で同時に画像修正を行った場合,二つ以上の異なった修正画像が生じ,これが同時に送信された場合の処理が困難になるといったトラブルを指すものと解される。
しかしながら,一方が画像の生成/修正を行って送信した後,何らかの理由で続けて修正を行う必要があることも十分に予想されることであるところ,上記のようなトラブルは,画像生成/修正モードの同時設定を不可とする方法以外の方法(例えば,修正開始時点の前後によって,画像を修正する順序をあらかじめ決定しておく方法など)によって回避することも可能であると考えられるから,「送信後自動的に受信モードに移り,相手方に画像が移っているときにはその画像について修正出来なくなるように」するという引用例1記載の解決方法が,必ずしも唯一かつ最善の上記トラブルの解決方法ではなく,画像生成/修正の同時設定を可能とした上で,別途の解決方法を講じることも,当業者が容易に想到し得る事項であるというべきである。
参加人は,トラブルが発生すると記載されているのに「同時設定ができる」とする理由が不明であるとも主張するが,本願発明のシステムにおいても,複数のユーザの同時編集に起因するトラブルが生じ得ることは,参加人も自認するところである。そうとすれば,当業者は,正に本願発明と同様の意味においてトラブルの発生を気にしなければ,引用例1の本件記載部分から,同時設定ができることを読み取り得るというべきであるから,この点に関する審決の判断にも格別不合理な点は認められない。
イ また,参加人は,引用発明1の技術的思想は,修正された全画像のやり取りということでしかなく,実質上同時修正という本願発明の技術的思想とは発想が全く異なるとして,引用発明1から本願発明の構成を容易に推考することはできない旨主張する。
参加人の上記主張は,本願発明の規定する構成要件(d)のうち,「共通のイメージが・・・イメージ処理システムの各々の前記共通作業空間メモリに記憶され,及び,共通のイメージが,イメージ情報が前記イメージ処理システムの各々の前記ディスプレイ手段に共通に表示されている間に,前記第1および第2のイメージ処理システムの各々で実質上同時に編集される」との構成に基づくものであることは明らかであるところ,この構成については,本件明細書(甲1)の発明の詳細な説明には,「2つまたはそれ以上のシステムがリンクして,完全対話式のリアルタイムの分散会議及び編集をできるようにし,分散したユーザは全ての者が見ているイメージに協同して働きかけることができる。例えば,異なった場所のユーザは,その同じイメージを協同して操っている間,そのイメージに働きかけたりまた同時に見ることができ,イメージに対し1つのワークステーションで行った変更を全てのワークステーションのユーザが瞬時に見ることができる」(段落【0035】),「イメージは,個人的に見える空間かまたは共通に見える空間のいずれかにある。この区別は,物理的または仮想的のいずれでも可能である。CPU及びそのソフトウェアは,メモリを共通可視空間と個人可視空間とに分ける。共通可視空間は,リンクされたワークステーションの全てが見ることのできるイメージを含んでいる。個人可視空間が含むイメージは,これらが記憶されたワークステーションだけが見ることのできるものである」(段落【0072】)と記載されているものの,「実質上同時に編集」することの技術的意義について,上記以上の詳細な構成等は記載されていない。
他方,引用発明1のシステムにおいても,生成/修正モードの同時設定を行い,複数の画像生成装置のいずれもが次の修正を行うことができるようにすれば,複数の画像作成装置のすべてから,すべての者が見ている画像の修正を行うことができるようになるから,「分散したユーザは全ての者が見ているイメージに協同して働きかけることができ」るといえるし,修正した画像を送信すれば,「イメージに対し1つのワークステーションで行った変更を全てのワークステーションのユーザが瞬時に見ることができる」ことも明らかである。さらに,「異なった場所のユーザは,その同じイメージを協同して操っている間,そのイメージに働きかけたりまた同時に見ることができ」るという点についても,引用発明1のシステムにおいて,生成/修正モードの同時設定を行った上で,複数のユーザが,互いに画像の修正,送信を繰り返している状況を想定すれば,「異なった場所のユーザは,その同じイメージを協同して操っている間,そのイメージに働きかけたりまた同時に見ることができ」るということができる。
以上のとおり,引用発明1のシステムにおいても,生成/修正モードの同時設定を行えば,「実質上同時編集」ないし「実質上同時修正」が可能であるということができるから,参加人の上記主張は採用することができない。
(4) さらに,参加人は,本願発明では編集コマンドだけが送信され,システムAの行った編集過程をシステムBのユーザは実質上同時に見ることができる上,送信される情報量も少ないのに対し,引用発明1では,編集された画像全体が送信され,システムAの行った編集過程をシステムBのユーザは見ることができない上,送信される情報量は大きいから,本願発明と引用発明1では,発明の構成及び技術的思想が全く異なっており,しかも,本願発明では引用発明1では得られない顕著な効果が得られるという相違もある旨主張する。
ア 参加人の上記主張は,本願発明が,「編集コマンドだけが送信される」との構成を採るものであることを前提とするものであるが,本件明細書(甲1,3)の特許請求の範囲においては,構成要件(d)が,「共通のイメージが,イメージ情報が前記イメージ処理システムの各々の前記ディスプレイ手段に共通に表示されている間に,前記第1及び第2のイメージ処理システムの各々で実質上同時に編集される」と規定するのみであり,さらに,本件明細書の発明の詳細な説明にも,上記(3)イのとおり,「イメージに対し1つのワークステーションが行った変更を全てのワークステーションのユーザが瞬時に見ることができる」(段落【0035】)と記載されているにすぎない。特許出願に係る発明の要旨の認定は,特段の事情のない限り,願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきものである(最高裁平成3年3月8日第二小法廷判決・民集45巻3号123頁)ところ,以上のような本件明細書の記載からすれば,上記「編集コマンドだけが送信される」との構成は,本件明細書(甲1,3)の特許請求の範囲の記載から直ちに導けるものでないことはもとより,発明の詳細な説明の記載を参酌しても,容易に認め難いものというほかはない。
さらに,審決が相違点3について引用する甲8公報には,「すでに各地点のコモンディスプレイに画像が表示されているとき,この画像の修正加筆を任意の地点で行なうとその地点のコントローラは自分自身のコモンディスプレイの画像に修正加筆を行なうとともに修正内容を他の全地点に発信する。各地点のコントローラは伝送路からコモンディスプレイ修正,加筆情報を受信するとコモンディスプレイの表示内容を修正加筆する。第7図にこの修正加筆のシーケンスを示す。第7図においては当該地点のCSMA/CDコントローラから他の全地点のCSMA/CDコントローラに対して修正加筆要求パケットP8を出し他の全地点から修正加筆可パケットP9の到着をまって当該地点より他の全地点に対して修正加筆情報P 10を転送する」(4頁右上欄第2段落)と記載されているとおり,「修正加筆情報」のみが送信されることが明記されている。したがって,仮に,上記「編集コマンドだけが送信される」との構成を本願発明の要旨として認定し得るとしても,本件出願当時,当該構成に係る技術は,周知ないし公知の技術であったというべきである。
そして,参加人も自認するとおり,引用発明1においても,画像の生成ないし修正を行うときには編集コマンドが生じるのであるから,これに,上記技術を適用する程度のことは,当業者が容易に想到し得ることであることは明らかである。
イ また,参加人の上記主張のうち,本願発明では,システムAの行った編集過程をシステムBのユーザは実質上同時に見ることができるとの点については,生成/修正モードの同時設定を行えば,引用発明1のシステムでも同様であることは,上記(3)イで判示したとおりである。
さらに,参加人は,本願発明の顕著な効果についても主張するが,主張されている効果は,「編集コマンドだけが送信される」との構成を採ったことによる自明ないし当然の効果にすぎないから,格別,顕著なものであるということはできない。
ウ したがって,参加人の上記主張は,採用の限りではない。 (5) 以上によれば,審決の相違点3に関する上記判断に誤りはないというべきであるから,その余の点について判断するまでもなく,参加人の取消事由3の主張はいずれも理由がない。
4 以上のとおり,参加人主張の取消事由はいずれも理由がなく,他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって,参加人の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 古城春実
裁判官 早田尚貴