• この表をプリントする
  • ポートフォリオ機能


追加

関連審決 補正2001-50044
関連ワード 当業者に自明な事項 /  実施 /  構成要件 /  発明の範囲 /  請求の範囲 /  変更 / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 14年 (行ケ) 124号 審決取消請求事件
原告 株式会社三洋物産
訴訟代理人弁理士 川口光男,山田強
被告 特許庁長官今井康夫
指定代理人 村山隆,久保竜一,大野克人,涌井幸一,立川功
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2004/05/26
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の求めた裁判
「特許庁が補正2001-50044号事件について平成14年1月18日にした審決を取り消す。」との判決。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯 原告は,本件特許出願(平成3年特許願第340199号「パチンコ機」。平成3年11月28日出願)において,平成12年7月10日付けで,願書に添付した明細書の補正をしたが(本件補正),平成13年3月27日(起案日)をもって補正却下決定があったので,同年5月7日,この決定に対し不服審判を請求した。
特許庁は,この審判請求事件(補正2001-50044号)につき,平成14年1月18日に請求不成立の審決をし,その謄本は同年2月12日原告に送達された。
原告は,本訴において,この審決の取消しを求めている。
2 本願発明の要旨 (1) 当初明細書に記載の特許請求の範囲【請求項1】図柄表示装置の表示結果が大当たり図柄を表示したことに基づいて大当たり遊技状態を出現することが可能であって,前記大当たり図柄の出現確率を所定の範囲内で設定変更可能な確率設定手段を備えたパチンコ機において, 正規操作によって前記確率設定手段で設定した出現確率を記憶する設定確率記憶手段と, 遊技中において,前記設定確率記憶手段に記憶された値と前記確率設定手段の設定値又は前記確率設定手段によって設定し得る範囲内の値とを比較する比較手段と, 該比較手段の比較結果が一致しないときに,前記設定確率記憶手段の記憶値を前記確率設定手段によって設定し得る範囲内のいずれかの値に更新する更新手段と, を備えたことを特徴とするパチンコ機。
(2) 平成12年7月10日付け手続補正書に記載の特許請求の範囲【請求項1】変動図柄を表示する図柄表示装置と,始動手段が打球を検出したときに前記図柄表示装置の図柄を所定時間変動させる変動表示制御手段と,前記図柄表示装置の変動後の図柄が大当たり図柄となったことに基づいて遊技者に有利な大当たり遊技状態を発生する大当たり発生手段と,を備えたパチンコ機において, 前記大当たり図柄が出現する大当たりの発生確率を複数段階に選択的に設定する確率設定手段と,所定の条件が成立したときに前記発生確率を所定確率に戻す解除手段と,を備えたことを特徴とするパチンコ機。
【請求項2】〜【請求項4】(新たに追加。記載は省略) 3 審決の理由の要点 (1) 補正却下決定の理由は,「本件補正は,請求項1に「所定の条件が成立したときに前記発生確率を所定確率に戻す解除手段」を追加するとともに,詳細な説明の欄の記載を対応して補正するものである。
そこで,本件補正について検討すると,願書に最初に添付した明細書又は図面(当初明細書)には,本件補正に関係すると認められる事項として,その【0005】には「設定確率記憶手段に記憶された値と確率設定手段の設定値又は確率設定手段によって設定し得る範囲内の値とを比較手段で比較しており,その比較結果が一致しないときには,更新手段によって設定確率記憶手段の記憶値が確率設定手段によって設定し得る範囲内のいずれかの値に更新される」ことが記載されている。
この記載からは,発生確率を所定確率に戻す条件として,「設定確率記憶手段に記憶された値と確率設定手段の設定値又は確率設定手段によって設定し得る範囲内の値とを比較手段で比較しており,その比較結果が一致しないとき」という条件が記載されていることは認められる。
しかしながら,ここから,「所定の条件が成立したとき」という,一般的に,遊技内容等をも含む所定の条件という広い概念の条件が成立したときに,発生確率を所定の確率に更新することが記載されているということはできず,さらに,このことが,当業者にとって自明な事項とも認められない。
また,当初明細書におけるその他の記載事項が,この点を意味あるいは示唆しているとも認められない。
よって,本件補正によって請求項1に記載された技術事項は当初明細書に記載された事項の範囲内でないものとなる。
したがって,本件補正は明細書の要旨を変更するものと認められ,特許法53条1項の規定により却下すべきものである。」というものである。
(2) これに対し,審判請求書における請求人(原告)の主張の概要は,「本件補正によって,「所定の条件」として,「設定確率記憶手段に記憶された値と確率設定手段の設定値又は確率設定手段によって設定し得る範囲内の値とを比較手段で比較しており,その比較結果が一致しないとき」という条件以外の条件を含む旨の記載は一切加入されていない。換言するならば,「所定の条件」として,本件補正においては,新たな条件を含む旨の記載は加入していないので,請求項1に記載される「所定の条件」という記載が願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内にないものを含むと解することができない」というものである。
(3) そこで,検討する。
願書に最初に添付した明細書(当初明細書)をみると,当初明細書には,特許請求の範囲の請求項1及び【0004】に「前記設定確率記憶手段に記憶された値と前記確率設定手段の設定値又は前記確率設定手段によって設定し得る範囲内の値とを比較する比較手段と,該比較手段の比較結果が一致しないときに,前記設定確率記憶手段の記憶値を前記確率設定手段によって設定し得る範囲内のいずれかの値に更新する」,【0005】及び【0034】に「設定確率記憶手段に記憶された値と確率設定手段の設定値又は確率設定手段によって設定し得る範囲内の値とを比較手段で比較しており,その比較結果が一致しないときには,更新手段によって設定確率記憶手段の記憶値が確率設定手段によって設定し得る範囲内のいずれかの値に更新される」,【0018】に「ステップ200で設定確率メモリ38に記憶された値が確率設定スイッチ45によって設定し得る範囲内の上限値,中央値,下限値のいずれかと一致しているか否かが判定される・・・しかして,一致していない場合には,ステップ202で設定確率メモリ38に中央値を格納し」並びに【0032】に「ステップ174で確率設定スイッチ45の設定値が読み込まれ,ステップ176でその読み込まれた値と設定確率メモリ38に格納された値とが同じであるか否かが判別される・・・しかして,同じでない場合には,ステップ178で設定確率メモリ38に中央値を格納し」という各記載が認められ,したがって,当初明細書には,「設定確率記憶手段の記憶値を確率設定手段によって設定し得る範囲内のいずれかの値に更新する」ことが「比較手段の比較結果が一致しないとき」であるという記載があるものと認められる。
しかし,「設定確率記憶手段の記憶値を確率設定手段によって設定し得る範囲内のいずれかの値に更新する」ことが「所定の条件が成立したとき」であるという記載は,当初明細書のどこにも認められない。
次に,本件補正をみると,その【0018】に「ステップ200で設定確率メモリ38に記憶された値が確率設定スイッチ45によって設定し得る範囲内の上限値,中央値,下限値のいずれかと一致しているか否かが判定される・・・しかして,一致していない場合には,ステップ202で設定確率メモリ38に中央値を格納し」及びその【0032】に「ステップ174で確率設定スイッチ45の設定値が読み込まれ,ステップ176でその読み込まれた値と設定確率メモリ38に格納された値とが同じであるか否かが判別される・・・しかして,同じでない場合には,ステップ178で設定確率メモリ38に中央値を格納し」という当初明細書にもある各記載からみて,本件補正には,「発生確率を所定確率に戻す」,すなわち,「設定確率記憶手段の記憶値を確率設定手段によって設定し得る範囲内のいずれかの値に更新する」ことが「比較手段の比較結果が一致しないとき」であるという当初明細書と同じ記載があるものと認められる。
しかし,本件補正には,これらの記載の外に,特許請求の範囲の請求項1及び【0004】に「所定の条件が成立したときに前記発生確率を所定確率に戻す解除手段」,【0003】に「所定条件が成立したときに,所定確率で遊技を継続することができる」並びに【0005】及び【0034】に「所定の条件が成立したとき,解除手段によって所定確率に戻される」という当初明細書にはない各記載があることからみて,本件補正には,当初明細書と同じ記載の外に,「発生確率を所定確率に戻す」ことが「所定の条件が成立したとき」であるという当初明細書のどこにも認められない新たな記載があるものと認められる。
そうすると,本件補正によって,当初明細書に記載されていない事項が加わったことは明らかであるから,本件補正は,当初明細書の要旨を変更するものであり,してみれば,本件補正を特許法53条1項の規定によって却下した補正却下決定は,妥当なものというほかはない。
原告主張の審決取消事由
審決は,補正後の特許請求の範囲における「所定の条件が成立したとき」の記載をもって,当初明細書にない新たな記載であると認定判断したが,誤りである。
1 当初明細書(甲2)の【0004】には「前記設定確率記憶手段に記憶された値と前記確率設定手段の設定値又は前記確率設定手段によって設定し得る範囲内の値とを比較する比較手段と,該比較手段の比較結果が一致しないときに,前記設定確率記憶手段の記憶値を前記確率設定手段によって設定し得る範囲内のいずれかの値に更新する」,【0005】及び【0034】には「設定確率記憶手段に記憶された値と確率設定手段の設定値又は確率設定手段によって設定し得る範囲内の値とを比較手段で比較しており,その比較結果が一致しないときには,更新手段によって設定確率記憶手段の記憶値が確率設定手段によって設定し得る範囲内のいずれかの値に更新される」,【0018】「ステップ200で設定確率メモリ38に記憶された値が確率設定スイッチ45によって設定し得る範囲内の上限値,中央値,下限値のいずれかと一致しているか否かが判定される・・・しかして,一致していない場合には,ステップ202で設定確率メモリ38に中央値を格納し」並びに【0032】「ステップ174で確率設定スイッチ45の設定値が読み込まれ,ステップ176でその読み込まれた値と設定確率メモリ38に格納された値とが同じであるか否かが判別される・・・しかして,同じでない場合には,ステップ178で設定確率メモリ38に中央値を格納し」との記載がある。
その結果,当初明細書には,「設定確率記憶手段の記憶値を確率設定手段によって設定し得る範囲内のいずれかの値に更新する」ことが「比較手段の比較結果が一致しないとき」であるという記載がある。かかる「比較手段の比較結果が一致しないとき」という条件が,正に「所定の条件が成立したとき」である。
したがって,当初明細書には,「比較手段の比較結果が一致しない」という「所定の条件」が記載されている。
2 当初明細書に明示された条件と形式的に比べると,「所定の条件」すなわち「定めてある条件」というのが広い概念である点は否定しない。
しかしながら,本件補正後の特許請求の範囲では,「大当たり図柄が出現する大当たりの発生確率を複数段階に選択的に設定する確率設定手段」を備えたパチンコ機において,「所定の条件が成立したとき」「前記発生確率を所定確率に戻す解除手段」を備えたことを特徴とするものであり,「所定の条件」とは,発生確率を所定確率に戻す「きっかけ」が存在することを特定したにすぎないものであり,その例としての条件が「設定確率記憶手段に記憶された値と確率設定手段の設定値又は確率設定手段によって設定し得る範囲内の値とを比較手段で行っており,その比較結果が一致しないとき」として記載されていたからといって,かかる条件のみに限定されるべき理由はない。
当初明細書(願書添付図面を含む。)からすれば,「大当たり図柄が出現する大当たりの発生確率を複数段階に選択的に設定する確率設定手段」を備え,かつ「前記発生確率を所定確率に戻す解除手段」を備えたことについては記載されているといえるのであり,大当たり発生確率をある条件を契機に所定確率に戻すことが記載されていることは疑いの余地がなく,「設定確率記憶手段に記憶された値と確率設定手段の設定値又は確率設定手段によって設定し得る範囲内の値とを比較手段で行っており,その比較結果が一致しないとき」との例に常に拘束されるべき理由はない。
補正後の記載が明細書の要旨を変更するか否かは,形式的に概念が大きくなったように記載されているか否かによって判断されるのではなく,実際に出願当初に開示した発明の範囲を逸脱するものか否かをもって判断されるべき性質のものである。
3 そもそも,「設定確率記憶手段に記憶された値と確率設定手段の設定値又は確率設定手段によって設定し得る範囲内の値とを比較手段で行っており,その比較結果が一致しないとき」以外の条件であっても,「大当たり図柄が出現する大当たりの発生確率を複数段階に選択的に設定する確率設定手段」と,「前記発生確率を所定確率に戻す解除手段」とからなる発明が成立することは当初明細書の記載から当業者に自明である。
補正前の「設定確率記憶手段に記憶された値と確率設定手段の設定値又は確率設定手段によって設定し得る範囲内の値とを比較手段で行っており,その比較結果が一致しないとき」を条件とする発明と,補正後の「大当たり図柄が出現する大当たりの発生確率を複数段階に選択的に設定する確率設定手段と,所定条件が成立したときに前記発生確率を所定確率に戻す解除手段とを備えた」とする発明は,重畳的に開示されている。
かかる具体的条件に拘束されるとすれば,「大当たり図柄が出現する大当たりの発生確率を複数段階に選択的に設定する確率設定手段」を備えたこと,及び「前記発生確率を所定確率に戻す解除手段」を備えたことを開示したにもかかわらず,その所定確率に戻す条件として比較手段の比較結果が一致しないときという条件以外の条件については何人も本件に拘束されずに実施することができることになり,発明開示の代償とその結果得られるべき特許出願人の利益(独占権)との均衡を失するものとなってしまう。
4 審決は,形式的に対応関係の有無だけをみて判断しており,「比較手段の比較結果が一致しないとき」という明示の記載がある場合において,その記載を含む当初明細書の記載からして,「所定の条件」とすることが当業者に自明な事項といえるか否かについては,一切判断していない。
当裁判所の判断
1 当初明細書(甲2)には本願発明に関し,以下の記載がある。
【0001】【産業上の技術分野】「本発明は,図柄表示装置の表示結果が大当たり図柄を表示したことに基づいて大当たり遊技状態を出現することが可能であって,前記大当たり図柄の出現確率を所定の範囲内で設定変更可能な確率設定手段を備えたパチンコ機に関するものである。」【0002】【従来の技術】「従来,図柄表示装置の表示結果が大当たり図柄を表示したことに基づいて大当たり遊技状態を出現させ,短期間に多量の入賞玉を獲得できるようにしたパチンコ機が市場に多数提供されている。そして,近年,この種のパチンコ機において,出玉率等の管理を行い易くするため,大当たり図柄の出現確率を所定の範囲内で設定変更できるものがわずかではあるが提案されている。
【0003】【発明が解決しようとする課題】「上記した大当たり図柄の出現確率を変更できるパチンコ機においては,設定した確率を正規操作時,例えば,営業を開始する際の電源投入時に制御回路基板に設けられるRAM内に記憶させ,その記憶値に基づいて図柄表示装置の表示結果が制御されることになるが,何らかの原因でプログラムが暴走したときやノイズ等の発生によりその記憶値が異なったものになったり,あるいは遊技中の不正行為により設定値を意図的に変更されたりする虞があった。そして,従来のパチンコ機においては,それらに対する防御が全く行われていなかった。本発明は,上記した問題点に鑑みなされたもので,その目的とするところは,事故や不正により設定確率が変化しても,正常な出現確率で遊技を継続することができるパチンコ機を提供することにある。」【0005】【作用】「遊技中においては,設定確率記憶手段に記憶された値と確率設定手段の設定値又は確率設定手段によって設定し得る範囲内の値とを比較手段で比較しており,その比較結果が一致しないときには,更新手段によって設定確率記憶手段の記憶値が確率設定手段によって設定し得る範囲内のいずれかの値に更新されるので,プログラムの暴走やノイズ等の事故により設定確率の記憶値が変化したり,あるいは正規操作時と異なる確率を不正に設定しようとした場合でも,確率設定手段によって設定し得る範囲内のいずれかの値に設定されて遊技を継続することができ,遊技場に損害を与えたり,あるいは遊技者との間のトラブルを防止することができる。」【0034】【発明の効果】「以上,説明したところから明らかなように,本発明においては,遊技中においては,設定確率記憶手段に記憶された値と確率設定手段の設定値又は確率設定手段によって設定し得る範囲内の値とを比較手段で比較しており,その比較結果が一致しないときには,更新手段によって設定確率記憶手段の記憶値が確率設定手段によって設定し得る範囲内のいずれかの値に更新されるので,プログラムの暴走やノイズ等の事故により設定確率の記憶値が変化したり,あるいは正規操作時と異なる確率を不正に設定しようとした場合でも,確率設定手段によって設定し得る範囲内のいずれかの値に設定されて遊技を継続することができ,遊技場に損害を与えたり,あるいは遊技者との間のトラブルを防止することができる。」 2 これに対して,本件補正書(甲4)には,以下のような補正記載がある。
【0001】【発明の属する技術分野】「本発明は,変動図柄を表示する図柄表示装置と,始動手段が打球を検出したときに前記図柄表示装置の図柄を所定時間変動させる変動表示制御手段と,前記図柄表示装置の変動後の図柄が大当たり図柄となったことに基づいて遊技者に有利な大当たり遊技状態を発生する大当たり発生手段と,を備えたパチンコ機に関するものである。」【0002】【従来の技術】「従来,図柄表示装置の表示結果が大当たり図柄を表示したことに基づいて大当たり遊技状態を出現させ,短時間に多量の入賞玉を獲得できるようにしたパチンコ機が市場に多数提供されている。そして,近年,この種のパチンコ機において,出玉率等の管理を行い易くするため,大当たり図柄の出現確率を所定の範囲内で設定変更できるものがわずかではあるが提案されている。」【0003】【発明が解決しようとする課題】「上記した大当たりの図柄の出現確率を変更できるパチンコ機においては,設定した確率を正規操作時,例えば,営業を開始する際の電源投入時に制御回路基板に設けられるRAM内に記憶させ,その記憶値に基づいて図柄表示装置の表示結果が制御されることになるが,例えば,何らかの原因でプログラムが暴走したときやノイズ等の発生によりその記憶値が異なったものになったり,あるいは遊技中の不正行為により設定値を意図的に変更されたりする虞があった。そして,従来のパチンコ機においては,それらに対する防御が全く行われていなかった。本発明は,上記した問題点に鑑みてなされたもので,その目的とするところは,所定の条件が成立したときに,所定確率で遊技を継続することができるパチンコ機を提供することにある。」【0005】【作用】「遊技中において所定の条件が成立したとき,解除手段によって所定確率に戻されるので,所定確率に設定されて遊技を継続することができ,遊技場に損害を与えたり,あるいは遊技者との間のトラブルを防止することができる。」【0034】【発明の効果】「以上,説明したところから明らかなように,本発明においては,遊技中において所定の条件が成立したとき,解除手段によって所定確率に戻されるので,所定確率に設定されて遊技を継続することができ,遊技場に損害を与えたり,あるいは遊技者との間のトラブルを防止することができる。」 3 してみると,当初明細書においては, 従来,市場に多数提供されている,図柄表示装置の表示結果が大当たり図柄を表示したことに基づいて大当たり遊技状態を出現させ,短期間に入賞玉を獲得できるようにしたパチンコ機において,わずかではあるが提案されている,出球率等の管理を行い易くするため,大当たりの図柄の出現確率を所定の範囲内で設定変更できるものを対象とすること, このような,大当たりの図柄の出現確率を変更できるパチンコ機においては,設定した確率を正規操作時,例えば,営業を開始する際の電源投入時に制御回路基板に設けられるRAM内に記憶させ,その記憶値に基づいて図柄表示装置の表示結果が制御されるものであること, 等を前提として,正規操作で設定された確率が所定の範囲内でないことを,「設定確率記憶手段に記憶された値と確率設定手段の設定値又は確率設定手段によって設定し得る範囲内の値とを比較手段で比較」して,「その比較結果が一致しないとき」という条件で検出することが明記され, 特許請求の範囲では,本願発明が前記条件設定において,「設定確率記憶手段」に設定された確率値を正規範囲の確率値に再度設定するように構成された,「設定確率記憶手段」,「比較手段」及び「更新手段」からなるパチンコ機であることを特定したものとなっていた。
そして,当初明細書をみる限り,正規操作で設定された確率値が所定の範囲内でないことの検知手法と,正規の値でない場合の値書換手段との組合せが,本願発明であるものとして把握されるものである。
これに対して,本件補正では,対象とするパチンコ機及びそれが大当たりの図柄の出現確率を変更できるパチンコ機であることの前提は維持されているものの,確率が変更されたことを検出する条件について,「所定の条件が成立したとき」と補正されるとともに,出願当初の特許請求の範囲では,「設定確率記憶手段」,「比較手段」及び「更新手段」からなるとされていた構成要件を,「確率設定手段」及び「解除手段」から構成されたものであることを特定するものに補正されている。
4 当初明細書と本件補正による明細書における【産業上の利用分野】及び【発明の属する技術分野】を対比するに,本願発明が「確率設定手段」を備えるものであることは明らかである。
そして,本件補正に係る特許請求の範囲に記載の「解除手段」は,当初明細書記載の特許請求の範囲における「設定確率記憶手段」,「比較手段」及び「更新手段」とどのような関係にあるのかは必ずしも明確ではないものの,いずれにおいても,「設定確率記憶手段」に設定される「確率値」をある条件設定において書き換える手段として,「更新手段」あるいは「解除手段」が備えられているものであることからすると,具体的な「確率値」書換手段において異なる発明を構成するものではない。
しかしながら,本件補正に係る特許請求の範囲の補正のうち,単に,確率が変更されたことを検出する条件について,「所定の条件が成立したとき」と補正した点については,当初明細書に記載される条件でないものを含み得るものとなったことは,その文意からして明らかである。「所定の条件が成立したとき」が,当初明細書に明示された条件に比較して広い概念であること自体は,原告自身の自認するところでもある。したがって,本件補正によって,当初明細書に記載のない事項が加わったから,本件補正は,当初明細書の要旨を変更するものであるとした審決の認定判断に誤りはない。
5 原告が審決の誤りとして主張するところは,すべて,補正後の特許請求の範囲における「所定の条件が成立したとき」の記載が当初明細書になかった新たな記載であるとした審決の認定判断の誤りを前提とするものであり,審決のこの認定判断に誤りがない以上,審決に取り消すべき違法があるということはできない。
結論
以上のとおり,原告主張の審決取消事由は理由がないので,原告の請求は棄却されるべきである。
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官 塩月秀平
裁判官 野輝久
  • この表をプリントする