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事件 平成 25年 (ワ) 10958号 特許権侵害差止等請求事件

原告株式会社横山基礎工事
同 訴訟代理人弁護士小林幸夫
同 弓削田
同 河部康弘
同訴訟復代理人弁護士 藤沼光太
同 訴訟代理人弁理士久保司
同 補佐人弁理士尾関眞里子
被告株式会社高知丸高
同訴訟代理人弁護士 三山峻司
同訴訟復代理人弁護士 清原直己
同訴訟代理人弁理士 清原義博
同 補佐人弁理士北本友彦
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2017/05/17
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告は,別紙被告装置3目録記載の装置を製造し,販売し,又は使用してはならない。
2 被告は,別紙被告装置3目録記載の装置を廃棄せよ。
3 被告は,原告に対し,1377万9000円及びこれに対する平成25年5月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
5 訴訟費用は,これを2分し,その1を原告の,その余を被告の各負担とする。
6 この判決は,第1項及び第3項に限り,仮に執行することができる。
1事 実 及 び 理 由第1 請求1 被告は,別紙被告装置2目録及び別紙被告装置3目録記載の各装置を製造し,販売し,又は使用してはならない。
2 被告は,前項の各装置を廃棄せよ。
3 被告は,原告に対し,2億7170万7951円及びこれに対する平成25年5月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 訴訟費用は被告の負担とする。
5 仮執行宣言第2 事案の概要1 事案の概要本件は,発明の名称を,それぞれ「掘削装置」とする特許権(特許第2981164号。以下「本件特許権1」又は「本件特許1」という。),「穿孔工法用回転反力支持装置」とする特許権(特許第3640371号。以下「本件特許権3」又は「本件特許3」という。),「掘削土飛散防止装置」とする特許権(特許第4553629号。以下「本件特許権4」又は「本件特許4」といい,本件特許権1,3及び4を総称して「本件各特許権」という。)を有する原告が,被告がその工事に使用する「鋼管杭キャップ工法」に用いる掘削装置(以下「被告装置1」という。),「ダウンザホールハンマー(拡径ビット)工法」に用いる穿孔工法用回転反力支持装置(別紙被告装置2目録記載の各装置。以下「被告装置2」という。)及び同工法に用いる掘削土飛散防止装置(別紙被告装置3目録記載の装置。以下「被告装置3」といい,以下これらの各装置を総称して「被告各装置」という。)が,本件特許権1の特許請求の範囲請求項1又は2に係る各発明,本件特許権3の特許請求の範囲請求項1に係る発明もしくは本件特許権4の特許請求の範囲請求項1に係る発明の技術的範囲に属すると主張して,原告が被告に対し,特許法100条1項及び2項に基2づき,被告各装置の製造・販売等の差止め及び廃棄を求めるとともに,民法709条及び特許法102条2項に基づき,損害賠償金2億7170万7951円及びこれに対する不法行為の後の日である平成25年5月18日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
2 争いのない事実等(当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)(1) 当事者ア 原告は,土木工事業,とび・土木工事業,舗装工事業,しゅんせつ工事業を業として行う株式会社である。
イ 被告は,特殊基礎工事,橋梁・鋼鉄造物や建設機械の設計,構造計算,製作施工一般土木,機械器具設置工事等を業として行う株式会社である。
(2) 本件各特許権ア 原告は,次の本件特許権1を有している(以下,その特許請求の範囲請求項1の発明を「本件発明1の1」,請求項2の発明を「本件発明1の2」という。また,本件特許1に係る明細書及び図面〔甲1の1〕を「本件明細書等1」という。本件特許1の特許公報を末尾に添付する。)。
特 許 番 号 特許第2981164号発明の名称 掘削装置出 願 日 平成8年1月18日登 録 日 平成11年9月17日イ 原告は,次の本件特許権3を有している(以下,その特許請求の範囲請求項1の発明を「本件発明3」という。また,本件特許3に係る明細書及び図面〔甲5〕を「本件明細書等3」という。本件特許3の特許公報を末尾に添付する。)。
特 許 番 号 特許第3640371号3発明の名称 穿孔工法用回転反力支持装置出 願 日 平成10年9月7日登 録 日 平成17年1月28日ウ 原告は,次の本件特許権4を有している(以下,その特許請求の範囲請求項1の発明を「本件発明4」という。また,本件特許4に係る明細書及び図面〔甲7〕を「本件明細書等4」という。本件特許4の特許公報を末尾に添付する。)。
特 許 番 号 特許第4553629号発明の名称 掘削土飛散防止装置出 願 日 平成16年5月12日登 録 日 平成22年7月23日(3) 特許請求の範囲及び構成要件の分説ア 本件発明1の1及び本件発明1の2本件特許権1の特許請求の範囲請求項1及び2の記載は,次のとおりである。なお,その請求項1(本件発明1の1)については,原告から訂正審判請求(訂正2004−39229)がされ,平成16年11月24日付け審決において訂正が認められて同審決が確定した結果,その技術的範囲は次のとおり減縮された(以下,訂正後の本件発明1の1を「本件訂正発明1の1」という。)。同審決で認められた訂正部分に下線を付す(後記イも同じ。)。(甲1の2,甲2)また,本件発明1の2は,本件発明1の1の従属項であるため,本件発明1の1の訂正に伴い,その技術的範囲も同様に減縮された(以下,訂正後の本件発明1の2を「本件訂正発明1の2」という。)。
(ア) 本件訂正発明1の1「昇降可能に支持される回転駆動装置と,先端に掘削ビットを有し,回転駆動装置下部の回転駆動軸に一体回転可能に連結される掘削軸部材と,4掘削軸部材に套嵌されると共に,回転駆動装置の機枠に一体的に垂下連結される固定ケーシングと,掘削地盤上の掘孔箇所を挟んでその両側に水平に敷設された長尺状の横向きH形鋼からなる一対の支持部材上に載設固定され,固定ケーシングを上下方向に自由に挿通させるが該固定ケーシングの回転を阻止することができるケーシング挿通孔を有するケーシング回り止め部材と,からなる掘削装置。」(イ) 本件訂正発明1の2「固定ケーシングは円筒状のケーシングからなり,この円筒状固定ケーシングの外周面に係合用突条部が長手方向全長に亘って条設されており,ケーシング回り止め部材は,前記円筒状固定ケーシングが挿通可能な円形孔部と,この円形孔部の内周部に凹設されていて前記係合用突条部が挿通可能な係合用凹部とからなるケーシング挿通孔を備えてなる請求項1に記載の掘削装置。」イ 本件訂正発明1の1及び本件訂正発明1の2の構成要件を分説すると,それぞれ次のとおりである(参考のために模式図を付す。)。
(ア) 本件訂正発明1の1A 昇降可能に支持される回転駆動装置と,B 先端に掘削ビットを有し,回転駆動装置下部の回転駆動軸に一体回転可能に連結される掘削軸部材と,C 掘削軸部材に套嵌されると共に,回転駆動装置の機枠に一体的に垂下連結される固定ケーシングと,D 掘削地盤上の掘孔箇所を挟んでその両側に水平に敷設された長尺状の横向きH形鋼からなる一対の支持部材上に載設固定され,固定ケーシングを上下方向に自由に挿通させるが該固定ケーシングの回転5を阻止することができるケーシング挿通孔を有するケーシング回り止め部材と,E からなる掘削装置。
(イ) 本件訂正発明1の2F 固定ケーシングは円筒状のケーシングからなり,G この円筒状固定ケーシングの外周面に係合用突条部が長手方向全長に亘って条設されており,H ケーシング回り止め部材は,前記円筒状固定ケーシングが挿通可能な円形孔部と,この円形孔部の内周部に凹設されていて前記係合用突条部が挿通可能な係合用凹部とからなるケーシング挿通孔を備えてなる,I 請求項1に記載の掘削装置。
ウ 本件発明3(ア) 本件特許権3の特許請求の範囲請求項1は,次のとおりである。
「先端に掘削ビットを挿着したインナーロッドを回転駆動装置に連結し,重機のブーム先端から懸垂状態で当該回転駆動装置を吊下げ,上記インナーロッドの外周側に設けたアウターケーシングの回転を拘束しながら,当該回転駆動装置の回転力を用いて掘削を行う穿孔工法に用いる回転反力支持装置において,上記回転駆動装置に連結されたインナーロッドの外周に,着脱自在に併設したアウターケーシングと,6上記アウターケーシングの外側面であって軸方向に固設された第1の反力プレートと,上記回転駆動装置に設けられ,上記アウターケーシングの第1の反力プレートに対して干渉するようになっている第2の反力プレートと,穿孔芯を確保するための枠組み状のガイドフレームに設けられ,上記アウターケーシングの径に相当するスパンを介して当該ガイドフレームに固設されている反力アームと,を有しており,上記アウターケーシングと上記回転駆動装置とは,互いに固定連結されておらず,上記アウターケーシングに設けられた第1の反力プレートに対しては,上記回転駆動装置側に設けた第2の反力プレートが,上記インナーロッドの回転方向において自在に係合するようになっており,上記回転駆動装置によって上記インナーロッドに回転力を付与し始めた際に,当該回転駆動装置の第2の反力プレートが,上記アウターケーシングの第1の反力プレートに対して係合し,上記回転駆動装置によって上記インナーロッドに回転力を付与している間,上記アウターケーシングの第1の反力プレートを,穿孔芯を確保する上記ガイドフレームに固設された反力アームに係合させ,それによって上記回転駆動装置の反力を確保するようになっていることを特徴とする穿孔工法用回転反力支持装置。」(イ) 本件発明3の構成要件を分説すると,次のとおりである(参考のために模式図を付す。)。
A 先端に掘削ビットを挿着したインナーロッドを回転駆動装置に連結し,重機のブーム先端から懸垂状態で当該回転駆動装置を吊下げ,上記インナーロッドの外周側に設けたアウターケーシングの回転を拘束しながら,当該回転駆動装置の回転力を用いて掘削を行う穿孔7工法に用いる回転反力支持装置において,B 上記回転駆動装置に連結されたインナーロッド の 外 周に,着脱自在に併設したアウターケーシングと,C 上記アウターケーシングの外側面であって軸方向に固設された第1の反力プレートと,D 上記回転駆動装置に設けられ,上記アウターケーシングの第1の反力プレートに対して干渉するようになっている第2の反力プレートと,E 穿孔芯を確保するための枠組み状のガイドフレームに設けられ,上記アウターケーシングの径に相当するスパンを介して当該ガイドフレームに固設されている反力アームと,を有しており,F 上記アウターケーシングと上記回転駆動装置とは,互いに固定連結されておらず,G 上記アウターケーシングに設けられた第1の反力プレートに対しては,上記回転駆動装置側に設けた第2の反力プレートが,上記イン8ナーロッドの回転方向において自在に係合するようになっており,H 上記回転駆動装置によって上記インナーロッドに回転力を付与し始めた際に,当該回転駆動装置の第2の反力プレートが,上記アウターケーシングの第1の反力プレートに対して係合し,I 上記回転駆動装置によって上記インナーロッドに回転力を付与している間,上記アウターケーシングの第1の反力プレートを,穿孔芯を確保する上記ガイドフレームに固設された反力アームに係合させ,それによって上記回転駆動装置の反力を確保するようになっているJ ことを特徴とする穿孔工法用回転反力支持装置。
エ 本件発明4(ア) 本件特許権4の特許請求の範囲請求項1は,次のとおりである。なお,その請求項1(本件発明4)については,無効審判請求(無効2013−800233)において訂正請求がされ,訂正を認める審決が後記(4)ウのとおり確定し結果,その技術的範囲は次のとおり減縮された(以下訂正後の本件発明4を「本件訂正発明4」という。)。同訂正による訂正部分に下線を付す(後記(イ)も同じ。)。
「地盤を掘削するための掘削ビットをハンマシャフトの先端に備えたダウンザホールハンマと,前記ハンマシャフトの一端が連結され,前記ダウンザホールハンマを回転駆動するための回転駆動装置と,前記回転駆動装置から垂下し,前記ダウンザホールハンマを囲繞するように設けられ,下端側から前記ダウンザホールハンマの掘削ビットが突き出るように形成されたケーシングと,前記ダウンザホールハンマの掘削ビットによって削り出される掘削土が吹き上げられた際に通過するようになっており,前記ケーシングの内壁と前記ダウンザホールハンマとの間に形成された通路と,9前記ケーシングに形成され,前記通路を通り抜けて吹き上げられた掘削土を前記ケーシングの外側に排出するための排土口と,を有する掘削装置を用いた掘削施工において排出される前記掘削土が,当該掘削装置の周囲に飛散するのを防止するための掘削土飛散防止装置であって,前記掘削土飛散防止装置は前記ケーシングの少なくとも一部を囲繞するように,前記回転駆動装置から前記ハンマシャフトに沿って垂下した状態で取り付け可能に構成された筒状部を含んでおり,筒状部は蛇腹状の側壁を有するように形成され,自在に伸縮できるように構成され,また,前記掘削土飛散防止装置は前記排土口を介して前記ケーシングの外側へ排出された前記掘削土が衝突するようになっている衝突部を含んでおり,前記排土口から所定距離離隔した状態で,前記衝突部が前記ケーシングの外側から前記排土口を臨むように設けられ,前記掘削土飛散防止装置は,さらに,蛇腹状の側壁を有する前記筒状部の下端近傍に,その一端が連結されたワイヤーと,少なくとも掘削作業中において,垂下された状態の前記筒状部の上端から下端までの長さを調整するために,前記ワイヤーを自在に巻き取りまたは繰り出すことができるように構成されており,前記ワイヤーの他端が連結されている巻き取り装置と,を有しており,前記巻き取り装置によって前記ワイヤーが巻き取られた際には,巻き取りに伴って前記筒状部が縮退し,前記巻き取り装置によって前記ワイヤーが繰り出された際には,繰り出しに伴って前記筒状部が排土口のみならずケーシングを取り囲むことができる筒状部が伸展するようになっていて,サイレンサーとして機能するようにもした,10前記衝突部に衝突した前記掘削土は,当該掘削装置の周囲に飛散することなく,前記衝突部と前記排土口との間の間隙を介して,自重によって前記衝突部の下方へ向かって落下するようになっていることを特徴とする掘削土飛散防止装置。」(イ) 本件訂正発明4の構成要件を分説すると,次のとおりである(参考のために模式図を付す。)。
A 地盤を掘削するための掘削ビットをハンマシャフトの先端に備えたダウンザホールハンマと,B 前記ハンマシャフトの一端が連結され,前記ダウンザホールハンマを回転駆動するための回転駆動装置と,C 前記回転駆動装置から垂下し,前記ダウンザホールハンマを囲繞するように設けられ,下端側から前記ダウンザホールハンマの掘削ビットが突き出るように形成されたケーシングと,D 前記ダウンザホールハンマの掘削ビットによって削り出される掘削土が吹き上げられた際に通過するようになっており,前記ケーシングの内壁と前記ダウンザホールハンマとの間に形成された通路と,E 前記ケーシングに形成され,前記通路を通り抜けて吹き上げられた11掘削土を前記ケーシングの外側に排出するための排土口と,を有する掘削装置を用いた掘削施工において排出される前記掘削土が,当該掘削装置の周囲に飛散するのを防止するための掘削土飛散防止装置であって,F 前記掘削土飛散防止装置は前記ケーシングの少なくとも一部を囲繞するように,前記回転駆動装置から前記ハンマシャフトに沿って垂下した状態で取り付け可能に構成された筒状部を含んでおり,筒状部は蛇腹状の側壁を有するように形成され,自在に伸縮できるように構成され,G また,前記掘削土飛散防止装置は前記排土口を介して前記ケーシングの外側へ排出された前記掘削土が衝突するようになっている衝突部を含んでおり,H 前記排土口から所定距離離隔した状態で,前記衝突部が前記ケーシングの外側から前記排土口を臨むように設けられ,I 前記掘削土飛散防止装置は,さらに,蛇腹状の側壁を有する前記筒状部の下端近傍に,その一端が連結されたワイヤーと,少なくとも掘削作業中において,垂下された状態の前記筒状部の上端から下端までの長さを調整するために,前記ワイヤーを自在に巻き取りまたは繰り出すことができるように構成されており,前記ワイヤーの他端が連結されている巻き取り装置と,を有しており,J 前記巻き取り装置によって前記ワイヤーが巻き取られた際には,巻き取りに伴って前記筒状部が縮退し,前記巻き取り装置によって前記ワイヤーが繰り出された際には,繰り出しに伴って前記筒状部が排土口のみならずケーシングを取り囲むことができる筒状部が伸展するようになっていて,サイレンサーとして機能するようにもした,K 前記衝突部に衝突した前記掘削土は,当該掘削装置の周囲に飛散す12ることなく,前記衝突部と前記排土口との間の間隙を介して,自重によって前記衝突部の下方へ向かって落下するようになっているL ことを特徴とする掘削土飛散防止装置。
(4) 無効審判請求ア 本件特許権1について(ア) 被告は,本件特許権1の特許請求の範囲請求項1ないし5に係る発明について,進歩性欠如の無効理由があると主張して,無効審判請求(無効2013−800230)をしたが,特許庁は,平成27年1月9日,不成立とする審決をした。(甲65)(イ) 被告は,上記審決について不服があるとして審決取消訴訟を提起したが,知的財産高等裁判所は,平成27年10月29日,棄却判決をし,同判決はその後確定した。(甲82,弁論の全趣旨)イ 本件特許権3について(ア) 被告は,本件特許権3の特許請求の範囲請求項1ないし3に係る発明について,進歩性欠如の無効理由があると主張して,無効審判請求(無効2013−800231)をしたが,特許庁は,平成27年1月9日,不成立とする審決をした。(甲66)(イ) 被告は,上記審決について不服があるとして審決取消訴訟を提起したが,知的財産高等裁判所は,平成27年10月29日,棄却判決をし,同判決はその後確定した。(甲83,弁論の全趣旨)ウ 本件特許権4について(ア) 被告は,本件特許権4の特許請求の範囲請求項1ないし6に係る発明について,新規性欠如ないし進歩性欠如の無効理由があると主張して,無効審判請求(無効2013−800233)をし,原告は,平成27年6月12日,同審判手続において訂正請求をした(同年7月8日付け手続補正書及び同年10月20日付け手続補正書により補正。)。特許13庁は,同年12月8日,上記訂正を認めた上で,請求項1(本件訂正発明4),5及び6に係る発明について不成立とする審決をした。なお,請求項2ないし4については上記訂正により削除されたため,同各請求項記載の発明に係る審判請求は却下された。(甲84)(イ) 被告は,上記審決について不服があるとして審決取消訴訟を提起したが,知的財産高等裁判所は,平成28年12月7日,被告の上記請求を棄却する旨の判決をし,同判決はその後確定した。(甲99,弁論の全趣旨)エ 原告によるその他の請求原告は,当初,発明の名称を「ケーシングの打設方法」とする特許(第3708795号)を本件特許権2として,同特許の特許請求の範囲請求項1ないし3に係る発明に基づく請求もしていたが,その後,上記各発明に係る特許を無効とする審決が確定したため,上記請求を取り下げた。
(甲98,乙92,弁論の全趣旨)(5) 被告による工事等ア 被告は,次の各工事(以下,各工事の現場ないし各現場で行われた工事を「現場@」などという。)を実施した。
@ 平成20年度那土国道195号那賀町出合道路改良工事(発注者:徳島県)工期:平成21年4月30日から同年6月20日までA 平成21年度奈半利川橋耐震補強工事(発注者:国土交通省)工期:平成21年10月13日から平成22年3月30日までB 平成21年度僧津山改良工事(発注者:国土交通省)工期:平成22年1月19日から同年3月25日までC 山清路防災1号橋仮桟橋工事(発注者:関東地方整備局)工期:平成24年7月23日から同年10月31日まで14D 平成22年度中部横断身延IC工事用道路設置工事(発注者:国土交通省)工期:平成23年9月22日から平成24年1月31日までE 公庄地区上流乗越道路工事(発注者:近畿地方整備局)工期:平成24年4月24日から平成25年11月30日までF 長安口ダム貯水池内仮設構台設置工事工期T:平成22年10月20日から平成23年3月20日まで工期U:平成23年10月1日から平成24年3月31日まで工期V:平成24年2月10日から同年5月21日までイ 被告による掘削装置等の使用被告は,現場@ないしFにおいて杭打ち工事を実施し,いずれの現場においても掘削装置(被告装置1)及び穿孔工法用回転反力支持装置(被告装置2)を使用しており,また,現場BEFにおいては掘削土飛散防止装置(被告装置3)を使用した。
ウ 被告各装置の構成要件充足性被告装置1は,本件訂正発明1の1の構成要件A,B及びEを充足し,被告装置2は本件発明3の構成要件B,C及びFを充足し,被告装置3は本件訂正発明4の構成要件AないしDを充足する。
3 争点(1) 被告装置1は本件訂正発明1の1及び1の2の技術的範囲に属するかア 本件訂正発明1の1及び1の2に対応した被告装置1の構成イ 本件訂正発明1の1(構成要件C及びDの充足性)(ア) 構成要件Cにつき,「掘削軸部材に套嵌されると共に,回転駆動装置の機枠に一体的に垂下連結される固定ケーシング」の充足性(イ) 構成要件Dにつきa 「ケーシング回り止め部材」の充足性15b 現場Fについて「掘削地盤上の掘孔箇所を挟んでその両側に水平に敷設された長尺状の横向きH形鋼」の充足性c 均等侵害の有無ウ 本件訂正発明1の2(構成要件F,G,H及びIの充足性)(ア) 構成要件Fにつき,「固定ケーシング」の充足性(イ) 構成要件Gにつき,a 「長手方向全長に亘って」の充足性b 均等侵害の有無(ウ) 構成要件Hにつき,「前記係合用突条部が挿通可能な」の充足性(エ) 構成要件Iの充足性(2) 被告装置2は本件発明3の技術的範囲に属するかア 本件発明3に対応した被告装置2の構成イ 構成要件Aにつき,「穿孔工法に用いる・・・装置」の充足性ウ 構成要件Dにつき(ア) 現場@ないしB及びFにつき,「第2の反力プレート」の充足性(イ) 現場CないしEにつき,「干渉」の充足性エ 構成要件Eにつき,(ア) 「反力アーム」の充足性(イ) 均等侵害の有無オ 構成要件Hにつき,「第1の反力プレート」及び「第2の反力プレート」の充足性カ 構成要件Iにつき,「第1の反力プレートを・・・反力アームに係合」の充足性(3) 被告装置3は本件訂正発明4の技術的範囲に属するかア 本件訂正発明4に対応した被告装置3の構成イ 構成要件E,G,H,J及びKにつき,「排土口」の充足性16ウ 構成要件G,H及びKにつき,「衝突部」の充足性エ 構成要件I及びJにつき,「ワイヤー」の充足性(4) 損害発生の有無及びその額ア 特許法102条2項の適用の可否イ 原告の損害額第3 争点に関する当事者の主張1 争点(1)ア(本件訂正発明1の1及び1の2に対応した被告装置1の構成)について〔原告の主張〕(1) 現場@における被告装置1の構成には複数のものがあり,上部で, 角鉄と切り欠きを係合させるもの, ボルトで留めるものがあり,また,下部を,リング状回転止め装置によって係合させるもの, H形鋼2本によって係合させるもの, H形鋼1本によって係合させるもの,?プレート2枚によって係合させるものがある。被告装置1の構成を本件訂正発明1の1及び1の2に対応させて特定すると,以下のアないしオのとおりである。
なお,原告は,後記3〔原告の主張〕(4)のとおり,現場@の構成のうち「下部/H形鋼」のものについては,本件訂正発明1の2の技術的範囲に含まれる旨の主張をしない。
ところで,被告は,現場@の被告装置1について,下部にリング状回転止め装置を使用していないなどとして,下部をリング状回転止め装置によって係合させる構成を別紙「被告による被告各装置特定一覧表」の特許1の欄に記載していないが,被告装置1の構成は主要事実であるところ,被告は,「下部/リング状回転止め装置」の構成を,平成25年11月21日付け「被告第1準備書面」において主張していたのであり,自白の撤回は許されない。
ア 上部/角鉄と切り欠き,下部/リング状回転止めによる被告装置117a クレーンのブーム先端から垂らされたワイヤロープによって昇降可能に支持される回転駆動装置と,b 先端に掘削ビットを有し,回転駆動装置下部の回転駆動軸と一体回転可能に連結されるインナーロッドと,c インナーロッドに套嵌されると共に,回転駆動装置の下部に連結された中空スリーブに設けられた下向きに切りかかれたスリット状の切り欠きとケーシング外周面軸方向に固設された角鉄とを係合させることにより,該中空スリーブと着脱自在に係合されるケーシングと,d1 掘削地盤上の掘孔箇所を挟んでその両側に水平に敷設された長尺状の横向きH形鋼からなる一対の桁材上に載設固定されたリング状回転止め装置からなり,d2 前記リング状回転止め装置は,一対の半円状の締付具の一端をピンにより軸支して他端を開閉可能としたリング状であって,前記ケーシングを軸方向に挿通させることができるケーシング挿通孔と,該ケーシング挿通孔の周方向に沿って前記リング状回転止め装置側面部に周方向に等間隔で配設された四つの鼓形のガイドローラからなるe 掘削装置であって,f ケーシングは円筒状のケーシングからなり,g この円筒状ケーシングの外周面の軸方向にケーシング側長手方向突条部が固設されており,該突条部はケーシング下端の手前から上方向に向かって前記中空スリーブの手前の高さまでの間に条設されており,h 前記リング状回転止め装置は,前記ガイドローラに設けられた溝部またはガイドローラとガイドローラの間の空間に前記突条部を挿通させ,て前記突条部とガイドローラを係合させることでケーシングの回転を阻止する構成を備えた,i 掘削装置。
18イ 上部/角鉄と切り欠き,下部/H形鋼2本による被告装置1a クレーンのブーム先端から垂らされたワイヤロープによって昇降可能に支持される回転駆動装置と,b 先端に掘削ビットを有し,回転駆動装置下部の回転駆動軸と一体回転可能に連結されるインナーロッドと,c インナーロッドに套嵌されると共に,回転駆動装置の下部に連結された中空スリーブに設けられた下向きに切りかかれたスリット状の切り欠きとケーシング外周面軸方向に固設された角鉄とを係合させることにより,該中空スリーブと着脱自在に係合されるケーシングと,d 掘削地盤上の掘孔箇所を挟んでその両側に水平に敷設された長尺状の横向きH形鋼からなる一対の支持部材上に載設固定され,ケーシングを上下方向には自由に挿通させるが回転を阻止することができる切り欠きを有する2本のH形鋼とe からなる掘削装置であって,f ケーシングは円筒状のケーシングからなり,g この円筒状ケーシングの外周面の軸方向にケーシング側長手方向突条部が固設されており,該突条部はケーシング下端の手前から上方向に向かって前記中空スリーブの手前の高さまでの間に条設されており,h 前記凹部(判決注:「前記H形鋼の切り欠き」の誤記と認める。)は,前記突条部と係合することによりケーシングの回転を阻止する構成を備えたi 掘削装置。
ウ 上部/角鉄と切り欠き,下部/プレート2枚による被告装置1a クレーンのブーム先端から垂らされたワイヤロープによって昇降可能に支持される回転駆動装置と,b 先端に掘削ビットを有し,回転駆動装置下部の回転駆動軸と一体回転19可能に連結されるインナーロッドと,c インナーロッドに套嵌されると共に,回転駆動装置の下部に連結された中空スリーブに設けられた下向きに切りかかれたスリット状の切り欠きとケーシング外周面軸方向に固設された角鉄とを係合させることにより,該中空スリーブと着脱自在に係合されるケーシングと,d 掘削地盤上の掘孔箇所を挟んでその両側に水平に敷設された長尺状の横向きH形鋼からなる一対の支持部材上に載設固定され,ケーシングを上下方向には自由に挿通させるが回転を阻止することができる円形孔部及び凹部を有する2枚のプレートとe からなる掘削装置であって,f ケーシングは円筒状のケーシングからなり,g この円筒状ケーシングの外周面の軸方向にケーシング側長手方向突条部が固設されており,該突条部はケーシング下端の手前から上方向に向かって前記中空スリーブの手前の高さまでの間に条設されており,h 前記凹部は,前記突条部と係合することによりケーシングの回転を阻止する構成を備えた前記凹部は,前記突条部と係合することによりケーシングの回転を阻止する構成を備えたi 掘削装置。
エ 上部/ボルト,下部/1本のH形鋼による被告装置1a クレーンのブーム先端から垂らされたワイヤロープによって昇降可能に支持される回転駆動装置と,b 先端に掘削ビットを有し,回転駆動装置下部の回転駆動軸と一体回転可能に連結されるインナーロッドと,c 回転駆動装置の下部に設けられたフランジと,ケーシング上部に設けられたフランジをボルトとナットで固定するケーシングと,d1 掘削地盤上の掘孔箇所を挟んでその片側に水平に敷設された長尺状20の横向きH形鋼からなる一対の支持部材上に前記ケーシングと当接するように載設固定された1本のH形鋼からなりd2 前記ケーシングと当接するように載設固定された1本のH形鋼は,前記ケーシングの外周面の軸方向に設けられたケーシング側長手方向突条部を係合する凹部を備えたe 掘削装置であって,f ケーシングは円筒状のケーシングからなり,g この円筒状ケーシングの外周面の軸方向にケーシング側長手方向突条部が固設されており,該突条部はケーシング下端の手前から上方向に向かって前記フランジの手前の高さまでの間に条設されており,h 前記凹部は,前記突条部と係合することによりケーシングの回転を阻止する構成を備えたi 掘削装置。
オ 上部/ボルト,下部/2本のH形鋼による被告装置1a クレーンのブーム先端から垂らされたワイヤロープによって昇降可能に支持される回転駆動装置と,b 先端に掘削ビットを有し,回転駆動装置下部の回転駆動軸と一体回転可能に連結されるインナーロッドと,c 回転駆動装置の下部に設けられたフランジと,ケーシング上部に設けられたフランジをボルトとナットで固定するケーシングと,d 掘削地盤上の掘孔箇所を挟んでその両側に水平に敷設された長尺状の横向きH形鋼からなる一対の支持部材上に載設固定され,ケーシングを上下方向には自由に挿通させるが回転を阻止することができる切り欠きを有する2本のH形鋼とe からなる掘削装置であって,f ケーシングは円筒状のケーシングからなり,21g この円筒状ケーシングの外周面の軸方向にケーシング側長手方向突条部が固設されており,該突条部はケーシング下端の手前から上方向に向かって前記フランジの手前の高さまでの間に条設されており,h 前記凹部(判決注:「前記H形鋼の切り欠き」の誤記と認める。)は,前記突条部と係合することによりケーシングの回転を阻止する構成を備えたi 掘削装置。
(2) 現場A及びBにおける被告装置1の構成を,本件訂正発明1の1及び1の2に対応させて特定すると次のとおりである。
a クレーンのブーム先端から垂らされたワイヤロープによって昇降可能に支持される回転駆動装置と,b 先端に掘削ビットを有し,回転駆動装置下部の回転駆動軸と一体回転可能に連結されるインナーロッドと,c インナーロッドに套嵌されると共に,回転駆動装置の下部に連結された中空スリーブに設けられた下向きに切りかかれたスリット状の切り欠きとケーシング外周面軸方向に固設された角鉄とを係合させることにより,該中空スリーブと着脱自在に係合されるケーシングと,d1 掘削地盤上の掘孔箇所を挟んでその両側に水平に敷設された長尺状の横向きH形鋼からなる一対の桁材上に載設固定されたリング状回転止め装置からなり,d2 前記リング状回転止め装置は,一対の半円状の締付具の一端をピンにより軸支して他端を開閉可能としたリング状であって,前記ケーシングを軸方向に挿通させることができるケーシング挿通孔と,該ケーシング挿通孔の周方向に沿って前記リング状回転止め装置側面部に周方向に等間隔で配設された四つの鼓形のガイドローラからなるe 掘削装置であって,22f ケーシングは円筒状のケーシングからなり,g この円筒状ケーシングの外周面の軸方向にケーシング側長手方向突条部が固設されており,該突条部はケーシング下端の手前から上方向に向かって前記中空スリーブの手前の高さまで条設されており,h 前記リング状回転止め装置は,前記ガイドローラに設けられた溝部又はガイドローラとガイドローラの間の空間に前記ケーシング側長手方向突条部を挿通させ,又はガイドローラとガイドローラの間に設けられた2本の突条部の間の凹部に前記ケーシング側長手方向突条部を挿通させ,前記ケーシング側長手方向突条部と前記ガイドローラ又は前記凹部を係合させることでケーシングの回転を阻止する構成を備えた,i 掘削装置。
(3) 現場CないしEにおける被告装置1の構成を,本件訂正発明1の1及び1の2に対応させて特定すると次のとおりである。
a クレーンのブーム先端から垂らされたワイヤロープによって昇降可能に支持される回転駆動装置と,b 先端に掘削ビットを有し,回転駆動装置下部の回転駆動軸と一体回転可能に連結されるインナーロッドと,c インナーロッドに套嵌されると共に,回転駆動装置の下部に連結された中空スリーブ内周面に固設されたスリーブ内壁側突条部とケーシング外周面軸方向に固設された角鉄とを係合させることにより,該中空スリーブと着脱自在に係合されるケーシングと,d1 掘削地盤上の掘孔箇所を挟んでその両側に水平に敷設された長尺状の横向きH形鋼からなる一対の桁材上に載設固定されたリング状回転止め装置からなり,d2 前記リング状回転止め装置は,一対の半円状の締付具の一端をピンにより軸支して他端を開閉可能としたリング状であって,前記ケーシングを23軸方向に挿通させることができるケーシング挿通孔と,該ケーシング挿通孔の周方向に沿って前記リング状回転止め装置側面部に周方向に等間隔で配設された四つの鼓形のガイドローラからなるe 掘削装置であって,f ケーシングは円筒状のケーシングからなり,g この円筒状ケーシングの外周面の軸方向にケーシング側長手方向突条部が固設されており,該突条部はケーシング下端の手前から上方向に向かって前記中空スリーブの手前の高さまで条設されており,h 前記リング状回転止め装置は,前記ガイドローラに設けられた溝部又はガイドローラとガイドローラの間の空間に前記ケーシング側長手方向突条部を挿通させ,又はガイドローラとガイドローラの間に設けられた2本の突条部の間の凹部に前記ケーシング側長手方向突条部を挿通させ,前記ケーシング側長手方向突条部と前記ガイドローラ又は前記凹部を係合させることでケーシングの回転を阻止する構成を備えた,i 掘削装置。
(4) 現場Fにおける被告装置1の構成を,本件訂正発明1の1及び1の2に対応させて特定すると次のとおりである。
a クレーンのブーム先端から垂らされたワイヤロープによって昇降可能に支持される回転駆動装置と,b 先端に掘削ビットを有し,回転駆動装置下部の回転駆動軸と一体回転可能に連結されるインナーロッドと,c インナーロッドに套嵌されると共に,回転駆動装置の下部に連結された中空スリーブ内周面に固設されたスリーブ内壁側突条部とケーシング外周面軸方向に固設された角鉄とを係合させることにより,該中空スリーブと着脱自在に係合されるケーシングと,d1 掘削地盤上の掘孔箇所を挟んでその両側に水平に敷設された長尺状の24横向きH形鋼からなる一対の桁材上に載設固定された掘削土受け箱に載設固定されたリング状回転止め装置からなり,d2 前記リング状回転止め装置は,一対の半円状の締付具の一端をピンにより軸支して他端を開閉可能としたリング状であって,前記ケーシングを軸方向に挿通させることができるケーシング挿通孔と,該ケーシング挿通孔の周方向に沿って前記リング状回転止め装置側面部に周方向に等間隔で配設された四つの鼓形のガイドローラからなるe 掘削装置であって,f ケーシングは円筒状のケーシングからなり,g この円筒状ケーシングの外周面の軸方向にケーシング側長手方向突条部が固設されており,該突条部はケーシング下端の手前から上方向に向かって前記中空スリーブの手前の高さまで条設されており,h 前記リング状回転止め装置は,前記ガイドローラに設けられた溝部又はガイドローラとガイドローラの間の空間に前記ケーシング側長手方向突条部を挿通させ,又はガイドローラとガイドローラの間に設けられた2本の突条部の間の凹部に前記ケーシング側長手方向突条部を挿通させ,前記ケーシング側長手方向突条部と前記ガイドローラ又は前記凹部を係合させることでケーシングの回転を阻止する構成を備えた,i 掘削装置。
〔被告の主張〕被告装置1の構成を本件訂正発明1の1及び1の2に対応させて特定すると,別紙「被告による被告各装置特定一覧表」の特許1の欄に記載のとおりである。
2 争点(1)イ(本件訂正発明1の1〔構成要件C及びDの充足性〕)について〔原告の主張〕(1) 構成要件Cにつき,「掘削軸部材に套嵌されると共に,回転駆動装置の機枠に一体的に垂下連結される固定ケーシング」の充足性25ア 「套嵌」とは覆い嵌めることをいうが,被告装置1では,ケーシングとインナーロッドの双方が長い円筒状の形状をしている上,ケーシングの内径がインナーロッドの外径よりも大きくなっており,インナーロッドにケーシングを覆い嵌めているといえる(甲13の1・写真J)。
したがって,被告装置1のケーシングは,本件訂正発明1の1の構成要件Cの「掘削軸部材に套嵌される」及び「固定ケーシング」に当たる。
また,ケーシングは回転駆動装置に連結されており,その連結方向は縦方向である(甲13の1・写真A)から,「回転駆動装置の機枠に一体的に垂下連結される固定ケーシング」である。
よって,被告装置1は本件訂正発明1の1の構成要件Cを充足する。
イ 本件訂正発明1の1は掘削装置に関する発明であり,ケーシングを回転させないように固定してケーシングが地盤から回転反力を確保し,回転駆動装置がケーシングから回転反力を取ることで,リーダを不要にすることを目的とする(本件明細書等1の段落【0001】,【0003】及び【0004】)。
その前提として,回転駆動装置がケーシングから回転反力を取れる状態にあることが要求されるから,構成要件Cの「一体的に垂下連結される」との文言は,「回転駆動装置がケーシングから回転反力を取れる状態にあること」を要求するものである。そして,回転反力の確保という技術的意義からすれば,「一体的に垂下連結される」ことは,掘削時に要求されることになるから,掘削前や掘削後の回転駆動装置とケーシングとの連結関係は不問とされる。
(2) 構成要件Dにつき,「ケーシング回り止め部材」の充足性ア 被告装置1においては,ケーシング回り止め部材が,掘削地盤上の掘孔箇所を挟んでその両側に水平に敷設された長尺状の横向きH形鋼からなる一対の支持部材上に設置されているから(甲13の1・写真F),ケーシ26ング回り止め部材が「掘削地盤上の掘孔箇所を挟んでその両側に水平に敷設された長尺状の横向きH形鋼からなる一対の支持部材上に敷設固定されて」いることは明らかである。
そして,ケーシング回り止め部材には,縦方向に回転するローラーが設置され,ケーシングの上下方向の移動を補助しており,「上下方向に自由に挿通させる」といえ,また,ケーシング回り止め部材はケーシングの「回転を阻止することができる」構造になっている。
したがって,被告装置1のケーシング回り止め部材は,構成要件Dの「ケーシング回り止め部材」に該当する。
イ この点に関して被告は,「ケーシング挿通孔」について,「一定の枠で囲まれていること」が必要であるとし,H形鋼に切り欠きを設けたものは構成要件Dを充足しないと主張する。
しかし,本件訂正発明1の2の構成要件Hは,「ケーシング回り止め部材は,前記円筒状固定ケーシングが挿通可能な円形孔部と,この円形孔部の内周部に凹設されていて前記係合用突条部が挿通可能な係合用凹部とからなるケーシング挿通孔を有する」としており,本件訂正発明1の2では「ケーシング回り止め部材」及び「円形孔部」の存在が要求されているが,このことから,本件訂正発明1の1では,「円形孔部」の存在が要求されていないことは明らかである。
(3) 構成要件Dにつき,現場Fについて「掘削地盤上の掘孔箇所を挟んでその両側に水平に敷設された長尺状の横向きH形鋼」の充足性本件訂正発明1の1及び1の2の最大の目的は,ケーシング下部分について,地盤から回転反力を得ることである。被告装置1は,地盤→導材→ベッセル→「一対の支持部材」→「リング状回転止め装置」→ケーシングというように回転反力を取っている(甲75・写真C)。
このように,ベッセルは「一対の支持部材」に載設固定され,また「リン27グ状回転止め装置」を載設固定することによって,回転反力を供給しており,回転反力の確保という観点からも,リング状回転止め装置は,「掘削地盤上の掘孔箇所を挟んでその両側に水平に敷設された長尺状の横向きH形鋼からなる一対の支持部材上に載設固定」されているというべきである。
また,H形鋼からなる一対の支持部材上に載設固定されたベッセル上に載設固定されたリング状回転止め装置も,位置関係でいえば「支持部材上」に該当するし,「一対の支持部材上」に「載設固定された」といえる。
仮にベッセルを介在させた場合に構成要件の充足性を認めないとすると,論理的には,例えば本件訂正発明1の1及び1の2の作用効果と何ら関係のない薄い紙を一枚介在させた場合でも特許権侵害を回避できるということになり,著しく妥当性を欠く。
(4) 構成要件Dにつき,仮に文言侵害に該当しないとしても,ベッセルのように着脱自在な構成としつつ回転反力を取るという部分は,本件訂正発明1の1及び1の2の本質的部分と全く関係がないから,均等侵害が成立するというべきである。
〔被告の主張〕(1) 構成要件Cにつき,「掘削軸部材に套嵌されると共に,回転駆動装置の機枠に一体的に垂下連結される固定ケーシング」の充足性についてア 構成要件Cにおける「…回転駆動装置の機枠に一体的に垂下連結される固定ケーシング」における「一体的に垂下連結」とは,「容易に着脱できないように垂下連結」することを意味すると解すべきである。「一体的」との文言は,「複数のものが一つに,または不可分になっているさま。一体となっている様子。」(実用日本語表現辞典)を意味し,「連結」とは,「つらねむすぶこと。むすびあわせること。」(広辞苑)を意味するから,辞書的な意味からすれば,「回転駆動装置の機枠」と「固定ケーシング」は不可分になっていることを要する。このことは本件明細書等1の28記載とも合致する。
イ 原告は,本件特許3の出願経過において,本件発明3は回転駆動装置とケーシングとが着脱自在である点に技術的特徴があり,本件発明1の1の構成では,掘削装置の引き上げ時において回転駆動装置とケーシングとを一体的に引き上げなければならない態様である点が異なる旨主張し,その結果,本件発明3は特許されたのであるから,本件発明3の特許後になって,本件発明1の1に関する原告の上記主張を覆すことは,信義則上許されない。
ウ そして,被告装置1においては,ケーシングが「回転駆動装置の機枠に着脱可能に係合される」ものであるから(別紙「被告による被告各装置特定一覧表」特許1の欄の構成c参照),構成要件Cを充足しない。
エ また,本件明細書等1(段落【0006】,【0012】,【0014】【0015】,【0022】,【0025】,【0028】及び【0035】)の記載をみると,構成要件Cには,固定ケーシングを垂下した状態で,ケーシング回り止め部材のケーシング挿通孔に挿入し,固定ケーシングを挿入孔に挿入して掘削した後に再びケーシングを引き抜く構成が示されていることがわかる。
この構成は,重機のブームの先端を介して掘削装置を吊り下げケーシング挿通孔に挿入し,掘削穿孔が終了すれば,ブームを介して掘削装置をケーシングと共に地中から引き上げる構成が前提となっているのであり,掘削ビットを縮径・拡径させて,ケーシングの内空部にインナーロッドを挿通させ,ケーシングの内空部を引き抜く構成のもの(縮径拡径ビット杭建て工法)ではない。
オ 上記エに関し,被告装置1についてみると,現場@の「先行削孔穴あけ工法」による被告装置の一部(道路沿いの山側の被告装置/甲55の写真BC及び乙56・乙57/甲55の写真D及び乙56・乙58)を除い29て,現場@の被告装置1(水辺寄りの甲55の写真AF)と他の現場AないしFの被告装置1は,構成要件Cの「回転駆動装置の機枠に一体的に垂下連結される」固定ケーシングとの要件を充足しない。
(2) 構成要件Dにつき,「ケーシング回り止め部材」の充足性についてア 本件明細書等1(段落【0016】,【0029】及び【0033】)の記載には,ケーシング回り止め部材は,平板からなるもの以外に,支持部材と一体に形成された構成が示唆されている。もっとも,「支持部材」は,「掘削地盤上の掘孔箇所を挟んでその両側に水平に敷設された長尺状の横向きH形鋼からなる一対の支持部材」と訂正審判により訂正され,限定されている(甲1の2)。
以上からすると,本件訂正発明1の1における「ケーシング回り止め部材」は,平板によって形成されたものには限定されないものの,ケーシングの外周面に軸方向に沿って設けられた突条部があることを前提として,該突条部に相当する係合用凹部を有することにより,凹部が突条部の回転を阻止し,その結果としてケーシングの回転を阻止する構成であるということになる。本件明細書等1には,これ以外の構成を示唆する記載はない。
イ この点に関して原告は,本件特許3の拒絶査定を受けた後,不服審判請求の審判請求書の補正として特許庁に提出した平成16年4月15日付け「手続補正書」(乙6・4頁)において,「アウターケーシングを回転駆動装置に対して固定した状態(すなわち着脱自在でない状態)」という表現を用いている。本件特許1と本件特許3に係る発明は同一の技術分野に属するものであるところ,上記表現からすれば,原告が本件特許1における「固定」を「着脱自在でない状態」を意味すると理解していたことは明らかである。
よって,「固定」は回転しないとの意義であるとの原告主張は,上記出願経過における主張と明らかに矛盾するもので,信義則ないし禁反言に反30し,許されない。
ウ 現場@について(ア)「先行削孔穴あけ工法」に用いられるH鋼材の部材被告装置1では,ケーシングの外周面に設置された係合用突起部は一つであり,本件明細書等1に記載のある構成のようにケーシングの外周面に突条部が二つ設置され,それに応じて,円形孔部の内周面に係合用凹部が対向位置に対になって2箇所で係合するような構成にはなっていない。
(イ)「縮径拡径ビット杭建て工法」に用いられるプレートの部材甲55の写真F,甲67の写真@には,H形鋼ではなくプレート2枚が使用されているものがみられるが,ケーシングの外周面に設置された係合用突起部は一つである。
本件明細書等1に記載のある構成のようにケーシングの外周面に突条部が二つ設置され,それに応じて,円形孔部の内周面に係合用凹部が対向位置に対になって2箇所で係合するような構成にはなっていない。
そして,ケーシング外周面に設けられた一つの係合用突起部に対応した円形孔部の係合用凹部も一つである。
(ウ) したがって,現場@の被告装置1のH鋼材の部材及びプレートの部材は,いずれも,「ケーシング回り止め部材」に当たらず,現場@の被告装置1は構成要件Dを充足しない。
エ 現場AないしFについてケーシングの外周面に設けられた係合用突条部とケーシング挿通孔の係合用凹部が係合する構成ではなく,「一対の半円形状の締付具の一端をピンにより軸支して他端を開閉可能としたリング状であって,該ケーシング挿通孔の周方向に沿って等間隔で前記リング状回転止め装置側面部に周方向に等間隔で四つの鼓形のガイドローラが配設されており,該ガイドローラは,前31記ケーシングの外周面に対して圧接されることによりケーシングの回転を阻止する構成」であり,万が一,ケーシングが回転した場合であっても,該突条部がガイドローラに当接することによって,それ以上の回転を阻止するにすぎないから,いずれも構成要件Dの「ケーシング回り止め部材」に当たらない。なお,現場Bの「リング状回転止め装置」には,突出片があるが,ごく一部で,大部分は突出片のない「リング状回転止め装置」であると思料される。
また,ケーシングの外周面に設置された係合用突起部は一つである。
よって,現場AないしFの被告装置1は,構成要件Dを充足しない。
(3) 構成要件Dにつき,現場Fについて「掘削地盤上の掘孔箇所を挟んでその両側に水平に敷設された長尺状の横向きH形鋼」の充足性についてケーシング回り止め部材は,「掘削地盤上の掘孔箇所を挟んでその両側に水平に敷設された長尺状の横向きH形鋼からなる一対の支持部材上に載設固定され」る構成である。
しかし,現場Fのリング状回転止め装置は,掘削地盤上の掘孔箇所を挟んでその両側に水平に敷設された長尺状の横向きH形鋼からなる一対の支持部材上に載設固定されておらず,ベッセルに設けられている(右図参照)。ベッセル(甲60の1の写真@の状態)は,掘削地盤上の掘孔箇所を挟んでその両側に水平に敷設された長尺状の横向きH形鋼からなる一対の支持部材ではない。
したがって,現場Fの被告装置1は,構成要件Dを充足しない。
3 争点(1)ウ(本件訂正発明1の2〔構成要件F,G,H及びIの充足性〕)について〔原告の主張〕(1) 構成要件Fにつき,「固定ケーシング」の充足性32被告装置1のケーシングは円筒状であるから(甲13の1・写真D),被告装置1は本件訂正発明1の2の構成要件Fを充足する。
この点に関して被告は,「固定」の意義について,回転駆動装置との連結を意味するなどと主張するが,そのような技術常識は存在しない。構成要件Fの「固定」は,回転の対義語として用いられているものにすぎない。
(2) 構成要件Gにつき,「長手方向全長に亘って」の充足性ア 被告装置1のケーシングの外周面には,第1突起部が設けられている。
当該第1突起部は,ケーシング回り止め部材の係合用凹部に係合するように設けられているから,「係合用突条部」に該当する。
また,第1突起部は上下方向全長,すなわちケーシングの長手方向全長に設けられているから,第1突起部がケーシングの「長手方向全長に亘って条設されて」いるといえる。
イ ケーシングに係合用凹部と係合する係合用突条部を設けるのは,回転反力を得て効率的に掘削を進めるためである。掘削という目的を達成するために必要なのは掘削長の全長に及んでいることであって,ケーシング上端及び下端まで係合用突条部を設ける必要はない。そこで,「全長」とは,ケーシング全長ではなく,掘削長に対する全長を意味すると解すべきである。
ウ したがって,被告装置1は本件訂正発明1の2の構成要件Gを充足する。
(3) 構成要件Gにつき,均等侵害の有無仮に,「長手方向全長」がケーシング全長を意味し,被告装置1のケーシングの突条部がケーシング全長に及んでいないことが本件訂正発明1の2と相違する(以下「相違部分」という。)としても,均等の要件を充足するから,均等侵害が認められる。
ア 本件訂正発明1の1の効果は,ケーシング回り止め部材によって回転駆動装置の回転反力を受支することで,リーダを使用することなく地盤の掘33削を行うことを可能とすることにあり,本件訂正発明1の2の効果は,地盤への固定ケーシングの打ち込み及び引き抜きが容易となること及び円筒状ケーシングの方が角筒状ケーシングに比べ安価となることにある。
そして,ケーシングの突条部の長さが掘削長全長分あれば,回転反力を取るという目的は達することができ,リーダ使用の必要はなくなり,また,ケーシングの打ち込み及び引き抜きが容易となる,ケーシングが安価となる点は,円筒状ケーシングを用いることによるメリットであり,相違部分とは関係がない。
したがって,相違部分は,発明の本質的部分ではない。
イ 相違部分を本件訂正発明1の2の構成と置き換えても,上記アの本件訂正発明1の1及び1の2の作用効果を奏する。
ウ 相違部分への置き換え容易に想到できる。
エ 本件訂正発明1の2には進歩性があり,本件訂正発明1の2とその構成をほとんど同じくする被告装置1を,本件特許1の出願時に容易に想到し得なかった。
出願経過に照らしても,被告装置1の構成は本件訂正発明1の2の出願手続において意識的除外されたものであるといった事情はない。
(4) 構成要件Hにつき,「前記係合用突条部が挿通可能な」の充足性被告装置1のケーシング回り止め部材には,ケーシングが挿通可能な円形空洞部が設けられており,これは本件訂正発明1の2の構成要件Hの「円形孔部」に該当する。また,被告装置1のケーシング回り止め部材には,複数の第1突起部を挿通させるのに適した係合用凹部があり(甲13の1・写真E),これらは本件訂正発明1の2の構成要件Hの「係合用凹部」に該当する。
原告は,現場@の構成のうち,H形鋼の切り欠きとケーシング側長手方向突条部を係合させる構成(前記1〔原告の主張〕(1)で下部がH形鋼のもの)34については,本件訂正発明1の2の技術的範囲に含まれる旨の主張はしないが,これを除く被告装置1は本件訂正発明1の2の構成要件Hを充足する。
(5) 構成要件Iの充足性被告装置1は掘削装置であり,前記2〔原告の主張〕のとおり,本件訂正発明1の1の構成要件をすべて充足しているから,本件訂正発明1の2の構成要件Iを充足する。
〔被告の主張〕(1) 構成要件Fの「固定ケーシング」の充足性について「固定ケーシング」とは,機枠を通じて回転駆動装置と容易に着脱できないように連結する構成を備えるケーシングを指すところ,被告装置1のケーシングは,中空スリーブと着脱可能に係合されているから,「固定ケーシング」に当たらない。
よって,被告装置1は,構成要件Fを充足しない。
(2) 構成要件Gの「長手方向全長に亘って」の充足性についてア 構成要件Gにおける「長手方向全長に亘って」は,文字どおり「長手方向全長に亘って欠けることなく」との構成を意味すると解すべきである。
「先行削孔穴あけ工法」でのケーシングのケーシング挿通孔への挿入とケーシングを地中から引き上げる場合を想定すると,仮にケーシングの係合用突条部が長手方向の「全長に亘って」条設されていない場合は,ケーシングの挿通孔への挿入と引き上げの際にスムーズな係合に支障が生じる。
すなわち,ケーシングの外周面に係合用突条部が長手方向全長に亘って条設されているのには,意味がある。
イ ところで,被告装置1は,ケーシング外周の長手方向に突条部を有するが,当該突条は,長手方向全長に亘って条設されているのではない。すなわち,鉛直方向下部の,地表面からリング状回転止め装置までの高さに相当する部分については突条が存在しない。また,ケーシング上部の外壁方35向に突き出た角鉄は,ケーシング側長手方向突条部の全長上にはなく,該突条部から90度方向の二方に設けられている。
よって,被告装置1は,構成要件Gを充足しない。
(3) 構成要件Gにつき,均等侵害の有無均等侵害の主張はいずれも争う。
ア 円筒状のケーシングの外周面に係合用突条部が「長手方向全長」に亘って条設されている構成には,技術的な構成としての意味があり,相違部分には本質的部分に当たる(第1要件)。
イ 昭和63年9月13日公開の公開特許公報(乙17)記載の発明における「突出リブ19」を長手方向全長に亘って設けることは,当業者にとって容易に想到し得るものであり,被告装置1は,本件特許1の出願時において当業者が容易に推考できたものであるから,第4要件を充足しない。
ウ ケーシングに突条部を設ける構成は,遅くとも本件特許1の出願時において周知であった。また,係合用突条の設置位置,設置箇所及び設置長さについては,種々の構成が周知であった。
ところが,本件発明1の2は,あえてそのクレームにおいて「長手方向全長」と記載し,図面にも文言どおり突条部を「長手方向全長」に設ける構成のみを記載しているから,被告装置1は,特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たり,特段の事情が認められ,第5要件を充たさない。
(4) 構成要件Hの「前記係合用突条部が挿通可能な」に充足性についてア 構成要件Hは,「ケーシング回り止め部材は…この円形孔部の内周部に凹設されていて前記係合用突条部が挿通可能な係合用凹部とからなるケーシング挿通孔を備えてなる」との構成であり,この文言から分かるように,構成要件Hは,単に円形孔部内周面に凹部を備えるだけでなく,該凹部は,「前記係合用突条部が挿通可能な」係合用凹部でなければならな36い。
これに対し,被告装置1が有するリング状回転止め装置は,基本構成として,その内周部に周方向に等間隔で4個のガイドローラを配設し,当該ローラがケーシングを軸方向に移動させることをガイドするとともに,ケーシング外周面を圧接して周方向の回転を阻止する機能をも併有しており(基本タイプ),上記機能により回転は阻止される。これに加え,リング状回転止め装置には,該装置上部である平坦面に2個の回転止め部分(突出片)を形成しているもの(複合型タイプ)も一部存在する。
このように,被告装置1は,基本的には内周部に設けられたガイドローラによって,補助的には該装置上部である平坦面に固設された回転止め部分である突出片によって,ケーシングの回転を阻止する構成を備えており,内周部に係合用凹部を備える構成とはなっていない。
よって,被告装置1は,構成要件Hを充足しない。
イ また,現場@のH形鋼を利用した部材は,孔部が「円形」ではなく,構成要件Hに含まれない形状である。また,現場AないしFの被告装置1は,一対の半円形状の締付具の一端をピンにより軸支して他端を開閉可能としたリング状であって,該ケーシング挿通孔の周方向に沿って等間隔で前記リング状回転止め装置側面部に周方向に等間隔で四つの鼓形のガイドローラが配設されており,該ガイドローラは,前記ケーシングの外周面に対して圧接されることによりケーシングの回転を阻止する構成を有しているから,いずれも構成要件Hを充足しない。
(5) 構成要件Iの充足性前記2〔被告の主張〕のとおり,被告装置1の構成は本件訂正発明1の1の技術的範囲に属しないから,構成要件Iを充足しない。
4 争点(2)(被告装置2は本件発明3の技術的範囲に属するか)について〔原告の主張〕37(1) 本件発明3に対応した被告装置2の構成被告装置2の構成を本件発明3に対応させて特定すると,別紙「被告装置2目録」記載の被告装置2−1ないし2−5のとおりである。被告装置2−1は現場@ないしBのもの(甲72「撮影箇所:No.7」及び甲55・写真E,甲56,57),被告装置2−2は現場@のもの(甲55・写真DE),被告装置2−3は現場@のもの(甲55・写真EF),被告装置2−4は現場CないしFのもの(甲13,58,59,60の2),被告装置2−5は現場Fのもの(甲34)である。
なお,原告は,現場@の「上部/ボルト」の構成については,本件発明3に基づく主張を行わない。また,「下部/1本のH形鋼」の構成については,「反力アーム」が一対ではないため,本件発明3に基づく主張を行わない。
そこで,本件発明3に係る主張においては,上記各構成を除く被告装置2を,「被告装置2」と呼ぶものとする。
(2) 構成要件Aにつき,「穿孔工法に用いる・・・装置」の充足性ア 被告装置2は,「先端に掘削ビットを挿着したインナーロッドを回転駆動装置に連結し,クレーンのブーム先端から懸垂状態で当該回転駆動装置を吊下げ」たものであり,また,「インナーロッドの外周側に設けたケーシングの回転を拘束しながら,当該回転駆動装置の回転力を用いて掘削を行う穿孔工法に用いる回転反力支持装置」であるから,本件発明3の構成要件Aを充足する。
イ この点に関して被告は,本件発明3における「掘削装置」は,「回転駆動装置」と「インナーロッド(先端ビットが設けられている)」と「アウターケーシング」を含む装置をまとめたものであり,アウターケーシングを含めてブームで吊り下げたり引き上げたりする掘削装置であって,ケーシングだけを地中に残すような装置ではないなどと主張しているが,本件明細書等3には,アウターケーシングが掘削装置であるなどという記載は38存在しない。
本件特許3の手続補正書(乙6)には,「補正された請求項1に記載の本願発明においては,アウターケーシングは回転駆動装置に固定して設けられているのではなく,あくまでも,回転駆動装置に連結されたインナーロッドの外周において,着脱自在に設けられるようになっている。このような態様であれば,アウターケーシングは回転駆動装置に対して固定されていないので,削孔終了時においては,アウターケーシングだけが地中に存置されることとなる。このように,削孔終了後においてアウターケーシングを孔壁保護管として地中に存置することにより,削孔後における孔壁の崩壊を確実に防止することができるといった格別の効果が達成される。」と記載されており,本件発明3は,これを前提に特許されている。したがって,本件発明3が掘削終了と同時にケーシングを地中から引き抜く発明であるなどという被告の主張に理由がないことは明らかである。
(3) 構成要件Dの充足性ア 被告装置2には,回転駆動装置に第2突起部が設けられており(甲14),これが第1突起部に対して干渉するようになっているから,被告装置2は本件発明3の構成要件Dを充足する。
イ この点に関して被告は,現場@ないしB及びFの被告装置2においては角鉄と切り欠きが係合するのであるから,「第2の反力プレート」がないと主張する。
しかし,現場@ないしBの被告装置2の構成は,切り欠きを構成する回転駆動装置下部全体が「第2の反力プレート」であり,現場Fの被告装置2の構成は,回転駆動装置側のスリーブ内壁側突条部とケーシング側の少し縦長の角鉄が係合するというものであるから,現場@ないしB及びFにおいても,被告装置2には「第2の反力プレート」が存在する。
被告は,特段の理由を示すことなく,「第2の反力プレート」が実施例39の記載に限定される旨主張するが,「第1の反力プレート」と「第2の反力プレート」の係合関係によって回転反力を得ることが記載されていれば,当業者であれば,必ずしも実施例記載の方法に限られず,「第2の反力プレート」に切り欠きを設けて「第1の反力プレート」と係合させることは十分に想定できる。
ウ また,被告は,「干渉」は「2つ以上の波が一点で出あうとき,その点での振動が個々の波(成分波)の振動の和で表されること。」を意味するところ,現場CないしEの被告装置では「干渉」していないなどと主張する。
しかし,「干渉」の語は,機械設備の領域で「回転を阻止すること」の意味でも用いられており,本件発明3の構成要件Dの「係合」を意味する。
したがって,被告装置2は,構成要件Dを充足する。
(4) 構成要件Eにつき,「反力アーム」の充足性ア 被告装置2では,ケーシング回り止め部材及びその下の長尺状の横向きH形鋼によって本件発明3の構成要件Eの「反力アーム」を形成している。
構成要件Eにおける「反力アーム」の「反力」は回転反力を指し,「反力アーム」が回転反力を取るために設けられているという機能を端的に表している。文言上,「反力アーム」について,回転反力を取ることができること以上の限定はない。
仮にケーシング側長手方向突条部及び係合用凹部が1箇所だとしても,H形鋼2本の構成,プレート2枚の構成及びリング状回転止め装置の構成は,一対の「反力アーム」に該当する。
なぜなら,係合用凹部を有しない又はケーシング側長手方向突条部が存在しない方のアームにも,ダウンザホールハンマが岩盤等を砕く際の反動によってケーシングが振動し,ケーシングが係合する側のアームと反対方40向に逃げて回転反力を確保できなくなることを防ぐ役割(作用効果)があるからである。
ウ 「アウターケーシングの径に相当するスパンを介して」とは,「ケーシングの直径に相当する距離分だけ離れて」という意味である。
そして,被告装置2のリング状回転止め装置は,一対の半円状の部材からなるが,掘削時には半円状の全ての点が,掘削時には対になる部材の一点とケーシングの径に相当するスパンを介していることになる。
エ 本件明細書等3の記載によれば,「反力アーム」には「一対」であることが求められている。そして,被告装置2のリング状回転止め装置の構成は,「一対の半円状の締付け具の一端をピン(ヒンジ)により軸支」するものであって,二つの部材をピンで留めているもので「一対」の部材である。また,H形鋼も一対となっており(甲13の2),現場@ないしEの被告装置2において「反力アーム」は「一対」である。さらに,ベッセルも二つに分けられるものであるから,リング状回転止め装置,ベッセル及びベッセルが設置されたH形鋼が「反力アーム」に該当する現場Fにおいても,「反力アーム」は一対である。
オ この点に関して被告は,被告装置2はベッセルの上に「リング状回転止め装置」を設けているものであって「ガイドフレーム」に設けられているものではない旨主張する。
しかし,被告の上記主張によると,ガイドフレームと反力アームの間に何かを配置しさえすれば特許請求の技術的範囲に属しないことになってしまい妥当でない。すなわち,ベッセルのように着脱自在な構成としつつ回転反力を取るという本件発明3の本質的部分と全く関係がないものを介在させただけで技術的範囲に属しないとするのは妥当ではなく,ガイドフレーム上に反力アームが存在すれば,本件発明3の技術的範囲に属するというべきである。
41カ 仮に文言侵害に該当しないとしても,ベッセルのように着脱自在な構成としつつ回転反力を取るという部分は,本件発明3の本質的部分と全く関係がないから,均等侵害が成立するというべきである。
(5) 構成要件Hにつき,「第1の反力プレート」及び「第2の反力プレート」の充足性ア 被告装置2では,回転駆動装置とケーシングの接合部分では,ケーシングに第1突起部,回転駆動装置側に第2突起部が設けられている。回転駆動装置にケーシングを接続し,回転駆動装置を回転させれば,この二つの突起部は係合する。この際,固定されているケーシングは動かないから,ケーシングにより固定されている第1突起部によって,第2突起部及び回転駆動装置が固定される。すなわち,回転駆動装置はケーシングから回転反力を得ている。そして,第1突起部が第1の反力プレート,第2突起部が第2の反力プレートに当たるから,被告装置2は本件発明3の構成要件Hを充足する。
イ 現場@ないしFの全ての現場において,被告装置2は「第2の反力プレート」を備えている。
被告は,現場@ないしB及びFの被告装置2には「第2の反力プレート」がないなどと主張するが,現場@ないしBの被告装置2において,切り欠きを構成する回転駆動装置下部全体が「第2の反力プレート」であり,これが「第1の反力プレート」たる角鉄と係合する。現場Fについては,回転駆動装置とケーシングが連結しており(甲34の写真B),角鉄と切り欠きによって係合しているものではないから,被告による装置の特定に誤りがある。
(6) 構成要件Iにつき,「第1の反力プレートを・・・反力アームに係合」の充足性被告装置2には「第1の反力プレート」と「反力アーム」があり,それら42が係合しているから,構成要件Iを充足する。
〔被告の主張〕(1) 本件発明3に対応した被告装置2の構成について被告装置2の構成を本件発明3に対応させて特定すると,別紙「被告による被告各装置特定一覧表」の特許3の欄に記載のとおりである。
(2) 構成要件Aにつき,「穿孔工法に用いる・・装置」充足性について本件発明3における「掘削装置」は,「回転駆動装置」と「インナーロッド(先端ビットが設けられている)」と「アウターケーシング」を含む装置をまとめたものであり,本件明細書等3の【図1】は,そのことを明確にしている。つまり,ブームで吊り下げたり引き上げたりするのは,アウターケーシングを含む掘削装置であって,本件発明3の「装置」は,ケーシングだけを地中に残すような装置ではない。
ところが,現場@の「先行削孔穴あけ工法」による被告装置2の一部(道路沿いの山側の被告装置/甲55の写真BC及び乙56・乙57/甲55の写真D及び乙56・乙58)を除いて,現場@の被告装置2と他の現場AないしFの被告装置2は,掘削穿孔が終了すれば,重機のブームの先端を介して「掘削装置」を引き上げる構成の装置ではなく,ケーシングは地中に残置される。したがって,現場@の被告装置2の一部を除いて,被告装置2は,構成要件Aを充足しない。
(3) 構成要件Dの構成要件充足性についてア 構成要件Gによれば「第2の反力プレート」は回転駆動装置側に設けられている。また,本件明細書等3の記載を併せて考慮すれば,「第2の反力プレート」は,回転駆動装置側のスリーブ内壁側に設けられている突条部を意味すると解される。
ところが,現場@ないしB及び現場F(工期T及び工期U並びに工期Vの一部)の被告装置2は,角鉄と切り欠きの係合であって,「第2の反力43プレート」がないため,構成要件Dを充足しない。また,現場Fの工期Vの一部についてスリーブ内壁側突条部が存在するものの,「干渉」していないため,構成要件Dを充足しない。
イ 現場CないしEの被告装置2は,「干渉」していないため,構成要件Dを充足しない。
「干渉」の語義は,「2つ以上の波が一点で出あうとき,その点での振動が個々の波(成分波)の振動の和で表されること。」(岩波理化学辞典)である。原告は,「干渉」の語は,機械設備の領域で「回転を阻止する」の意味でも用いられているなどと主張するが,回転を阻止する手段は多様である。また,「干渉」との用語には,物理的に当てて止めるという意味はない。
(4) 構成要件Eにつき,「反力アーム」の充足性についてア 「アーム」とは「腕状の形をしたもの」(乙11)と解釈されるから,「リング状」である被告の回転止め装置は,文言解釈上「反力アーム」に相当しない。
イ 本件特許3は,本件特許1の公開公報を引用文献とする拒絶査定を受け,当該拒絶査定では,「引用文献の『半割円板7,7a』が特許発明3の『反力アーム』に相当する」旨の認定を受けた。そこで,原告は,当該拒絶査定に対して審判を請求し,「反力アーム」に関して,「アウターケーシングの径に相当するスパンを介して」との構成を付加する補正を行い,この構成が特許発明3の第1の特徴であると主張して登録を受けた。
上記経緯からすると,禁反言の法理より,本件発明3において「アウターケーシングの径に相当するスパンを介して」との構成は,本件特許1における「半割円板7,7a」のような「ケーシングの外周の全周に亘ってリング状に囲繞する」構成を含まず,同様の構成である被告装置の「リング状回転止め装置」も含まないと解釈すべきである。
44ウ 構成要件Eには「上記アウターケーシングの径に相当するスパンを介して当該ガイドフレームに固設されている反力アーム」とあるが,これについて,本件明細書等3(段落【0014】)において,「予め切り欠きを凹設してある一対の反力アームを,ガイドフレームのビームの所定部位に,所定スパン(アウターケーシングの径相当)を介して固設する」と説明されているから,反力アームは,一対であって,「アウターケーシングの径に相当するスパンを介してガイドフレームに固設されている」ものである。
ところが,現場@の被告装置2のうち,甲55の写真BCの構成(下部/1本のH形鋼)では,アウターケーシングの一方にだけアームがあるから,反力アームが「アウターケーシングの径に相当するスパンを介してガイドフレームに固設されて」いない。また,甲55の写真Dの構成(下部/2本のH形鋼)では,H形鋼2本の1本のみに切り欠きを設けてあって,アウターケーシングに対向して一対のアームに切り欠きを設けているものではないから,構成要件Eの「反力アーム」に当たらない。さらに,甲55の写真Fの構成(下部/2枚のプレート)では,プレート2枚の1枚のみに切り欠きを設けたものであって,同様に構成要件Eの「反力アーム」に当たらない。
また,現場AないしFの被告装置2についてみても,1箇所に設けられたケーシング側長手方向突条部に対応した「切り欠き」はなく,構成要件Eの「反力アーム」に該当しない。「リング状回転止め装置」には,突出片のあるものが1箇所にある装置があるが(甲57),切り欠きを凹設してある「対」をなす「反力アーム」ではない。なお,現場Bの突出片がある「リング状回転止め装置」の写真は一枚のみ提出されているが(甲57の写真@),このような構成はごく一部で,多部分は突出片のない 「リング状回転止め装置」であると思料される。
エ 本件明細書等3の段落【0042】には,「アウターケーシング7の側45部に付設する第1反力プレート12は,2枚に限らず,1枚又は3枚以上に複数枚設置してもよい。また,反力アーム18のフランジ19の切り欠き20を凹設する数も2つに限らず,1つであってもよい。」と記載されているが,同記載は,本件特許3の特許請求の範囲請求項1の「上記アウターケーシングの径に相当するスパンを介して当該ガイドフレームに固設されている反力アーム」である構成(構成要件E)の限定よりも広く,本件発明3の特許請求の範囲に含まれない。
オ 現場F工期Tの被告装置2の「リング状回転止め装置」(甲60の1・写真@A)は,桁材の上部のベッセルに設置され,「ガイドフレーム(穿孔芯を確保するための枠組み状)に設けられ」ているわけではないから,「ガイドフレームに固設されている反力アーム」に当たらない。
カ 原告の均等侵害の主張は,争う。
(5) 構成要件Hにつき,「第1の反力プレート」及び「第2の反力プレート」の充足性について現場@ないしB及びFの被告装置2については,前記(3)のとおり,「第2の反力プレート」がないため構成要件Hを充足しない。
さらに現場CないしEの被告装置2については,「第1の反力プレート」は,回転駆動装置に設けられたアウターケーシングの第2の反力プレートと干渉するようになっていると同時に,ガイドフレームの反力アームに係合させる「第1の反力プレート」は,同じ「第1の反力プレート」であることが前提となっている。しかし,被告装置2の構成においては,「角鉄」と「ケーシング側長手方向突条部」は別個の部材であるから,構成要件Hにいう「第1の反力プレート」の要件を充足しない。
(6) 構成要件Iにつき,「第1の反力プレートを・・・反力アームに係合」の充足性について前記(5)のとおり,本件発明3において,ガイドフレームの「反力アーム」46に係合させる「第1の反力プレート」は,構成要件Hにおけるものと同じ「第1の反力プレート」であることが前提となっているが,被告装置2の構成においては,「角鉄」と「ケーシング側長手方向突条部」は別個の部材であるから,構成要件Iにいう「第1の反力プレート」の要件を充足しない。
また,被告装置2には,「反力アーム」はなく,「反力アーム」によって反力を確保するようにもなっていないから,構成要件Iを充足しない。
5 争点(3)(被告装置3は本件訂正発明4の技術的範囲に属するか)について〔原告の主張〕(1) 本件訂正発明4に対応した被告装置3の構成被告装置3の構成を本件訂正発明4に対応させて特定すると,別紙被告装置3目録記載のとおりである。
なお,原告は,現場B,E及びFの被告装置3については本件訂正発明4の技術的範囲に属すると主張するものの,その余の現場については主張しない。
したがって,本件訂正発明4に関する主張においては,現場B,E及びFにおける装置を被告装置3と呼ぶものである。
(2) 構成要件E,G,H,J及びKにつき,「排土口」の充足性ア 被告装置3においては,掘削土がケーシングの外側を伝って流れ出ている(甲13の1・写真N)。このように掘削土がケーシングの外側を伝って流れ出るためには,構成要件Dの「通路」を通り抜けて吹き上げられた掘削土をケーシング上部のどこかでその外側に排出するための出口が形成されている必要があるから,被告装置3のケーシングには「排土口」が形成されているはずである。
イ 「排土」とは,「不要な土を取り除くこと。また,取り除かれた土砂。」をいう(コトバンク。甲35)。また,「口(コウ)」とは,「外部に開いた通路。出入りするところ。」をいう(広辞苑第五版。甲36)。この47ような字義からは,「排土口」は「(掘削によって)取り除かれた不要な土砂が出入りするところ。」であり,ケーシング自体に存在する穴も当然に「排土口」に該当する。
そして,クレームの文言上も,ケーシング側面に形成されていると限定すべき理由はない。
この点に関して被告は,「形成され」の文言から,「排土口」は「もともとは存在しないものだが,前記目的や機能させるために特別に設けられた」ものであることが要求されるなどと主張する。
しかし,本件訂正発明4の構成要件C及びDでは「形成され」の文言が,当然に備えている構成について使われているから,被告の上記主張には理由がない。
また,ケーシング上部にもともと存在する穴を「排土口」と捉えた場合でも,掘削土の飛散や騒音の問題は存在するし,「吹き上げられた掘削土をケーシングの外側に排出する」という機能を有しているから,ケーシング上部にもともと存在する穴を「排土口」から除外する理由はない。
(3) 構成要件G,H及びKにつき,「衝突部」の充足性ア 文言上,「衝突部」とは「衝突する部分」を意味するから,「衝突部」とは,単に「掘削土が衝突する部分」という意味に解釈することができる。
構成要件Hの「ケーシングの外側から排土口を臨むように設けられている」という部分は,本件訂正発明4の飛散防止装置の構成上論理必然的な位置関係を記載しているにすぎず,「衝突部」の意味を限定するものではない。
したがって,被告の掘削土飛散防止装置のどの部分に「衝突部」が設けられていたとしても,「衝突部」に当たる。
イ そして,被告装置3では,ケーシングと回転駆動装置とは結合されており,掘削土が吹き上げられて排土口からケーシングの外側に排出されれば,48回転駆動装置の下部に衝突することになるが,かかる部分が,「衝突部」に該当する。
(4) 構成要件I及びJにつき,「ワイヤー」の充足性被告装置3においては,甲34の写真Aから巻き取り装置とワイヤーの存在が確認できるから,被告装置3は「ワイヤー」を有している。
〔被告の主張〕(1) 本件訂正発明4に対応した被告装置3の構成について被告装置3の構成を本件訂正発明4に対応させて特定すると,別紙「被告による被告各装置特定一覧表」の特許4の欄に記載のとおりである。なお,現場Eの4工区については,写真が一枚もなく構成が不明であるから,同工事における被告装置3の特定に関する原告の主張については否認ないし争う。
(2) 構成要件E,G,H,J及びKの「排土口」の充足性についてア クレームの文言上,「排土口」は「ケーシングに形成され」とあるから,もともとは存在しないものだが,特定の目的や機能させるために特別に設けられた排土口を意味する。
そして,本件訂正発明4において解決すべき課題のうちの一つは,ケーシングに排土する開口があっても,排土の排出を目的として特別に形成した排土口を設けることを前提として,該排土口から掘削土が周囲に飛散することを防止することであり,その解決手段としてケーシングの外周に飛散防止装置を設置するというのであるから,ケーシングの上端に単に開口があり,その間隙の開口から排土されるという場合と特別に設けられた排土口がある場合とでは,排土効率,排土の飛散距離及び範囲が異なるから,単にケーシング上端の外周に間隙の開口があるからといって本件訂正発明4における課題がそのまま妥当するものではない。
したがって,「排土口」とは,排土を目的としてケーシング側面部に設けられた穴,窓をいうと解すべきである。
49イ ところが,被告装置3には,ケーシングに排土を目的として設けられた側面部の穴は存在しないから,上記の「排土口」は存しない。
したがって,被告装置3は「排土口」を充足しない。
(3) 構成要件G,H及びKの「衝突部」の充足性についてア 「掘削土が衝突するようになっている衝突部」とのクレームの表現及び本件訂正発明4の作用効果からすれば,単に飛散防止装置の一部に掘削土が排出される際に衝突するというだけでは足りず,排土口から排出された掘削土を受け止めるために設けられた特別の部分が存在すると解するのが自然である。
また,本件明細書等4(段落【0034】)には,「円筒部11は,当該円筒部の一部から成る衝突部13を内壁側に含んでいる。」という記載があるから,衝突部と飛散防止装置の内壁とは,別の部材により構成されており,単に内壁の特定箇所を「衝突部」と称しているのではない。そして,「衝突部13が,…ケーシング70の外側から排土口73を臨むようになっている。」との記載(段落【0035】)から,衝突部はケーシング外周面に設けられた排土口と対応する位置関係にあることが分かる。そうすると,衝突部は排土を受け止めるために,排土口の位置関係から所定の位置に特別に設けられた部分であることは明らかである。また,「衝突部」は「排土口」を臨むようになっており,常に排土が衝突することから,破れないように特別な補強が必要である。
したがって,「衝突部」とは,排土口の存在を前提として,これに対応するように設けられた排土口から排出される排土を衝突させる目的で特別に設けられた部分をいうと解すべきである。
イ ところが,現場B,E及びFの被告装置3には,いずれにおいてもそのような特別な部分は設けられていない。
したがって,被告装置3は「衝突部」を充足しない。
50(4) 構成要件I及びJの「ワイヤー」の充足性について現場Bの被告装置3においては,ワイヤーを使用したものとはいえないので,構成要件I及びJの「ワイヤー」を充足しない。
6 争点(4)(損害発生の有無及びその額)について〔原告の主張〕(1) 特許法102条2項の適用の可否について本件では,特許法102条2項の適用により,後記(2)のとおり損害額が推定される。
この点に関して被告は,損害の発生の主張立証がされない限り,同項適用の前提を欠くなどと主張する。
しかし,特許権侵害行為により損害を受けたことは,特許権者が自ら特許発明実施していたことを主張立証すれば,事実上推定されるから(東京高等裁判所平成16年(ネ)第1367号及び第1436号事件判決参照),被告の上記主張は失当である。
そして,原告は,本件各特許権の発明を実施している(甲24)。
(2) 原告の損害額ア 被告が,現場@ないしFの工事により受けた売上額は13億5853万9757円である。ここで,売上額の内訳は,現場@ないしEについては1平方メートル当たりの単価を16万7072円として,次のとおりと推定される。また,現場Fの売上額は次のとおりである。
現場@ 1503万6480円現場A 3億2077万8240円現場B 8428万7824円現場C 1億3950万5120円現場D 1億5871万8400円現場E 1億7108万1728円51現場F 4億6913万1965円イ 被告の利益率を20%として算出すると被告の受けた利益額は2億7170万7951円(1円未満切り捨て)である。もっとも,原告は,被告の利益率が18%であることについて争わない。
ウ したがって,特許法102条2項の規定により,原告の損害額は,2億7170万7951円である。
(3) 被告の主張に対する反論ア 現場@について(ア) 被告は,現場@について「先行削孔砂置換工」のみを基礎として損害額を算定すべきである旨主張するが,例えば「重機材運搬組立・解体費」は発注者に利益をもたらすものではなく,発注者が被告に請負代金を支払うべきであると考えた価値の源泉ではない。
損害額の算定に当たっては,本件訂正発明1の1及び1の2がどれだけの貢献をして,発注者が被告に対し発注をしたのかという全体像を捉える必要があり,請負代金全額を基礎に,寄与率を乗じるべきである。
なお,被告は,現場Eや現場Fにおいて「支持杭打ち込み」がダウンザホールハンマを用いる工事である旨主張していることからすれば,現場@における「場所打杭工」もダウンザホールハンマを用いる工事である可能性が高い。国土交通省土木工事積算基準の章立ても,場所打杭工の下にダウンザホールハンマ工が位置づけられている(甲97)。
したがって,仮に原告の上記主張が受け入れられないとしても,少なくとも,「先行削孔砂置換工」だけでなく,「場所打杭工」の金額も損害額に含めるべきである。
(イ) 被告は,下方が井桁状でない3本(山〔崖〕側に位置するケーシング)については除かれるべきと主張するが,本件訂正発明1の1及び1の2は,下方が井桁状である旨の限定はしていないから,被告の上記主張は52失当である。
(ウ) また,被告は,少なくとも3本が井桁状ではない旨主張するが,その根拠となる3枚の写真(甲55のBC及び乙57)をみると,いずれも同一のケーシングを別の角度から撮影したものにすぎないから,「山(崖)側に位置するケーシング」は,多くとも1本である。
イ 現場E及びFについて(ア) 被告は,本件訂正発明4の実施による利益について,請負代金全体には「鋼材費」や「経費」が含まれているから,「支持杭打ち込み」などのダウンザホールハンマを使用した工事部分の代金額のみを対象とすべきであると主張する。
しかし,建設業界において,「鋼材費」の費目には,利益が上乗せされているのが通例である。したがって,鋼材費は,実費相当額を除けば特に利益に貢献していないものであって,これらに上乗せされている利益は,実際に利益を生み出している工事によって得たものであると考えるべきである。また,その他の費目についてもこれを控除することについては疑問がある。
(イ) 被告は,工事に要した時間のうち掘削の時間の割合を考慮すべきであると主張するが,発注者は掘削時間に金銭を払っているわけではないから,杭打ち作業時間の時間単価を計算する被告の主張は,掘削工事の価値の源泉を無視したものであり失当である。
〔被告の主張〕(1) 特許法102条2項の適用の可否について原告は,特許法102条2項を前提に主張を構成している。特許法102条2項は,損害の発生までは推定されず,権利者側が損害の発生を主張立証しなければならないものである。
被告が得た利益は,契約を前提にするものである。すなわち,本件訂正発53明1の1及び本件訂正発明4を被告が実施しなかったとすれば,被告が当該契約を締結できずに,原告が契約を締結できたという関係に立たなければ,原告に逸失利益としての損害の発生を観念できない。
以上から,本件において,原告による損害の発生に関する主張立証がされない限り,特許法102条2項の適用の前提を欠く。
(2) 原告の損害額についてア 原告の損害額に係る主張は争う。
イ 現場@,E及びFの工事代金(ア) 現場@(本件訂正発明1の1について)a 現場@の全体工事の金額及びそのうち本件訂正発明1の1の実施される工程の「先行削孔砂置換工(DH削孔費)」の金額は,次のとおりである(乙105)。
工事全体金額 630万円先行削孔砂置換工(DH削孔費)の金額 150万円b 本件訂正発明1の1の実施に関係がある売上額は先行削孔砂置換工の金額であるが,その内訳は,単価10万円の工事を15本分である。
ところで,現場@における本杭(本管)の中で,山(崖)側に位置するケーシングは,ケーシング下部で井桁状を組むことが困難である。
したがって,本件訂正発明1の1の充足性との関係では,少なくとも山(崖)側に位置するケーシング又は本杭(本管)は15本から除かれるべきである。そして,山(崖)側に位置するケーシングは少なくとも3本確認できる(甲55の写真B,C,乙57)から,少なくとも3本分(30万円)は先行削孔砂置換工(DH削孔費)の金額から控除すべきである。
c 原告は,現場@の工事のうち,「先行削孔砂置換工」のほかに,「場所打杭工」もダウンザホールハンマを用いる工事である可能性が54高いなどと主張する。
しかし,被告においてダウンザホールハンマを用いる施工では,必ずダウンザホールハンマという項目を表記して明らかにしている。そして,現場@の「場所打杭工」は,回転させながら圧入する回転機による削孔方法をとっていたので,ダウンザホールハンマの項目とは別に「場所打杭工」と項目分けされた記載で区分けされているものであり,「場所打杭工」にはダウンザホールハンマを使用していない。
(イ) 現場E3工区(本件訂正発明4について)a 現場Eには1ないし4の四つの工区があるが,1工区,2工区ではダウンザホールハンマを使用する工事を行っていない。そこで,ここでは3工区及び4工区の工事代金について述べる。
b 現場E3工区の全体工事の金額及びそのうち本件訂正発明4の実施される工程の「支持杭打込(ダウンザホールハンマ工法)」の金額は,次のとおりである(乙135)。
工事全体金額 8695万0096円支持杭打込(ダウンザホールハンマ工法)の金額 2025万円(ウ) 現場E4工区(本件訂正発明4について)現場E4工区の全体工事の金額及びそのうち本件訂正発明4の実施される工程の「支持杭打込(ダウンザホールハンマ工法)」の金額は,次のとおりである(乙135)。
工事全体金額 2828万6996円支持杭打込(ダウンザホールハンマ工法)の金額 630万円(エ) 現場F工期T(本件訂正発明4について)現場F工期Tの全体工事の金額及びそのうち本件訂正発明4の実施される工程の「掘削」に関する「鋼管支持杭(拡径ビット)」の金額は,次のとおりである(乙108)。
55工事全体金額 1億0500万円鋼管支持杭(拡径ビット)の金額 910万円(オ) 現場F工期U(本件訂正発明4について)現場F工期Uの全体工事の金額及びそのうち本件訂正発明4の実施される工程の「鋼管杭工」の金額は,次のとおりである(乙109)。
工事全体金額 1億0500万円鋼管杭工の金額 1880万円(但し,道路側8本,河川側12本を合わせた額)(カ) 現場F工期V(本件訂正発明4について)現場F工期Vの全体工事の金額及びそのうち本件訂正発明4の実施される工程の「鋼管支持杭工(拡径ビットDH工法)」の金額は,下記のとおりである(乙110)。
工事全体金額 7350万円鋼管支持杭工(拡径ビットDH工法)の金額 2070万円ウ 本件訂正発明1の1及び本件訂正発明4の寄与率(ア) 本件訂正発明1の1本件訂正発明1の1の寄与率は,代替技術のある点や山(崖)側のケーシングの態様(下部/1本のH形鋼)で行うことにも支障がない点等を踏まえると,相当低い。
また,現場@の「先行削孔穴あけ工法」では,「掘削基本時間」は「掘削時間」「準備時間」「排土埋戻し時間」の合計となり,このうちの「掘削時間」が,回転駆動装置を使用する時間であるから,各杭の「掘削長×掘削基本時間」の単価計算から求められたものに[「掘削時間」/「掘削時間」+「準備時間」+「排土埋戻し時間」]を乗じたものが,掘削に対しての時間の割り出し単価となる。
(イ) 本件訂正発明456a 現場E及びFにおいて,掘削土飛散防止装置を用いるのは掘削の時間帯のみであるから,本件訂正発明4の実施に関係がある売上額は,上記イ(イ)ないし(カ)の支持杭打込(ダウンザホールハンマ工法),鋼管支持杭(拡径ビット),鋼管杭工及び鋼管支持杭工(拡径ビットDH工法)の売上額のうち,これらの工事に要した時間に対する掘削の時間の割合を乗じた額であり,具体的には次のとおりであって,合計額は2102万9008円である。
現場Eの「3工区」「掘削土飛散防止装置」の評価金額=ウ日付等 数量 単価 金額 金額インチ・ジャバラ使用の掘削単価H24・7・20 3 450,000 1,350,000日付別に削孔単価はH24・8・20 15 450,000 6,750,000 出ない。削孔場所のH24・9・20 24 450,000 10,800,000 順序が不明な為である。
H24・10・20 3 450,000 1,350,000計 20,250,000 計 \7,917,017現場Eの4工区支持杭打込(ダウンザホールハンマ工法)の金額(630万円)に占める本件訂正発明4の実施に関係のある売上額の割合を3工区と同じ39%であるとすると,その額は245万7000円となる。
57現場F「掘削土飛散防止装置」の評価金額=ウ日付等 数量 単価 金額 金額インチ・ジャバラ使用の掘削単価H23 ・ 3 ・ 15 ( 工14 650,000 9,100,000 \100,276〜\177,602 \1,979,576期T)H23・12・31(工8 1,000,000 8,000,000 \192,384〜\211,885 \2,460,925期U/道路側)H23・12・31(工12 900,000 10,800,000 \142,322〜\294,052 \1,619,269期U/河川側)H24 ・ 3 ・ 31 ( 工23 900,000 20,700,000 \158,663〜\239,992 \4,595,221期V)計 48,600,000 計 \10,654,991b そして,本件訂正発明4の「掘削土飛散防止装置」は,回転駆動装置の附帯物であるにすぎず,掘削に必須なものではない。また,本件訂正発明4に代わる方法によって掘削作業は行える(水中の汚濁防止には汚濁防止膜[シルトフェンス]があり,ウィンチのない幌様のもので代替して使用されている。)。さらに,ダウンザホールハンマを囲繞するように筒状部が蛇腹状の側壁を有するように形成された蛇腹の構成は,本件特許4の出願前において周知・慣用技術であり,ありふれた技術である。これらの事情を考慮すると,本件訂正発明4の寄与度は極めて低いというべきであり,3分の1以下である。
第4 当裁判所の判断1 本件各発明の意義(1) 本件訂正発明1の1及び1の2ア 本件明細書等1には次の各記載がある。
【発明の属する技術分野】・「本発明は,基礎杭等の造成にあたって地盤を掘削する掘削装置に関する。」(段落【0001】)【従来の技術】58・「この種の掘削装置として一般に使用されるアースオーガ装置では,クローラクレーンによってリーダを鉛直に立設し,このリーダに回転駆動手段たるオーガマシンを昇降可能に装備し,このオーガマシンに,先端に掘削ビットを備えた掘削軸部材を垂下連結し,しかして掘削軸部材をオーガマシンにより回転させて地盤の掘削を行うようにしている。」(段落【0002】)【発明が解決しようとする課題】・「上記アースオーガ装置のような掘削装置では,オーガマシンの駆動時の回転反力を受支するために必ずリーダが必要となる。しかして,リーダの長さが長くなると,施工現場内でのリーダの移動作業や,現場へのリーダの搬入及び現場からの搬出作業に非常な手間と時間を要する。また,傾斜地での地盤掘削にあっては,クローラクレーンの接地面とリーダの接地面との段差が大きい場合にリーダの長さを長くとれず,掘削深さが制限されることになる。」(段落【0003】)・「本発明は,上記の課題に鑑み,リーダを使用せずに地盤の掘削を行うことができて作業能率を向上でき,また傾斜地での地盤掘削においてクレーンの接地面とリーダの接地面との間に可成りの段差がある場合でも,リーダを十分に長くできて必要な深さまで掘削を行える掘削装置を提供することを目的とする。」(段落【0004】)【課題を解決するための手段】・「請求項1に係る発明の掘削装置は,昇降可能に支持される回転駆動装置1と,先端に掘削ビット27を有し,回転駆動装置1下部の回転駆動軸3に一体回転可能に連結される掘削軸部材2と,掘削軸部材2に套嵌されると共に,回転駆動装置1の機枠6に一体的に垂下連結される固定ケーシング5と,掘削すべき地盤上の所定箇所に水平に設置され,固定ケーシング5を上下方向に自由に挿通させるが該固定ケーシング5の回59転を阻止することができるケーシング挿通孔8を有するケーシング回り止め部材7と,からなるものである。」(段落【0005】)・「この掘削装置の使用にあっては,クレーンブームMから昇降操作用ワイヤーWを介して回転駆動装置1を吊支し,この回転駆動装置1の下部から固定ケーシング5及び掘削軸部材2を垂下した状態で,固定ケーシング5を,地盤上の所定箇所(掘孔箇所18)に固定されているケーシング回り止め部材7のケーシング挿通孔8に挿入させる。こうして固定ケーシング5をケーシング回り止め部材7のケーシング挿通孔8に挿入することにより,固定ケーシング5は,上下方向に移動可能であるがその回転が阻止される。つまり,回転駆動装置1の回転反力はケーシング回り止め部材7によって受支されることになる。しかして,昇降操作用ワイヤーWを繰り出しつつ,回転駆動装置1を作動させて掘削軸部材2を回転させながら地盤を掘削する。」(段落【0006】)・「上記のように,この発明の掘削装置は,掘削すべき地盤上の所定箇所に水平に設置され,固定ケーシング5を上下方向に自由に挿通させるが当該固定ケーシング5の回転を阻止するケーシング挿通孔8を形成してなるケーシング回り止め部材7を備えているから,このケーシング回り止め部材7によって回転駆動装置1の回転反力を受支させることができる。従って,従来装置のようにリーダを使用することなく,地盤の掘削を行うことができる。」(段落【0007】)・「請求項2に係る発明は,請求項1に記載の掘削装置において,固定ケーシング5は円筒状のケーシングからなり,この円筒状固定ケーシング5の外周面に係合用突条部17が長手方向全長に亘って条設されており,ケーシング回り止め部材7は,前記円筒状固定ケーシング5が挿通可能な円形孔部8aと,この円形孔部8aの内周部に凹設されていて前記係合用突条部17が挿通可能な係合用凹部8bとからなるケーシング挿通60孔8を備えてなるものである。」(段落【0008】)【発明の実施の形態】・「図1は,本発明に係る掘削装置の全体を概略的に示し,図2はその一部を拡大して示している。これらの図において1は,クレーン車KのブームM先端から垂下される昇降操作用ワイヤーWによって昇降可能に吊支された回転駆動装置,2は,回転駆動装置1の下部に突出した回転駆動軸3に一体回転可能に垂下連結された掘削軸部材で,この掘削軸部材2の下部にはダウンザホールハンマー4が連設されている。5は,掘削軸部材2に套嵌されると共に,回転駆動装置1の機枠6に一体的に垂下連結された固定ケーシングであり,7は,掘削すべき地盤上の所定箇所に水平に設置されたケーシング回り止め部材で,固定ケーシング5を上下方向に自由に挿通させるが該固定ケーシング5の回転を阻止することのできるケーシング挿通孔8(図4,図7参照)を備えている。」(段落【0012】)・「回転駆動装置1は,アースオーガ装置のオーガマシンと同様なもので,機枠6に油圧または電動モーター等を内蔵しており,この機枠6の下部には,図2に示すようにスカート状のブラケット9が一体的に突設され,このブラケット9内に前記回転駆動軸3が同心状に突設されている。また,機枠6の頂部には昇降操作用ワイヤーWを掛装する滑車10が設けられている。この回転駆動装置1には,アースオーガ装置のオーガマシンをそのまま使用してもよい。」(段落【0013】)・「掘削軸部材2は,例えば継ぎ足し可能な複数本の円筒状ケーシング部材11からなるもので,上段側ケーシング部材11の上部に中空状の回転軸部材12が同軸状に連結され,この回転軸部材12の上端フランジ部12aが前記回転駆動軸3のフランジ部3aに接合されており,この回転軸部材12の下部にダウンザホールハンマー4が同軸状に連設され61ている。また回転軸部材12内には,図3(A)に示すようにエア導入路13が形成してあって,このエア導入路13は,回転軸部材12に外嵌装備されたエアスイベル14を介して外部のエア導入管15に連通連結されると共に,図2及び図3(B)に示すように前記各ケーシング部材11内に同軸状に配管されたエア供給管16に接続され,このエア供給管16によってダウンザホールハンマー4に駆動用のエアが供給される。」(段落【0014】)・「前記固定ケーシング5は,円筒状のケーシングからなるもので,図1〜図3に示すように,その外周面に例えば2条の係合用突条部17,17が周方向に一定間隔でそれぞれ長手方向全長に亘って一体または一体的に条設されている。この係合用突条部17は1条でもよいし,複数条でもよい。そして,固定ケーシング5の上端フランジ部5aが,前記機枠6下部に突設されたスカート状ブラケット9の下端フランジ部9aに接合され,それによって固定ケーシング5が回転駆動装置1の機枠6に一体的に固定される。この固定ケーシング5は,全長にわたり一体に形成された所謂1本ものでもよいが,好ましくは,地盤の掘削長さに応じて継ぎ足しできるように互いに連結可能な複数の固定ケーシング部材からなるものがよい。」(段落【0015】)・「次に,ケーシング回り止め部材7について図4〜図7を参照して説明すると,ケーシング回り止め部材7は,例えば厚板状の鉄板によって形成されたもので,前記円筒状固定ケーシング5の外径よりわずかに大きい内径を有して当該ケーシング5が挿通可能な円形孔部8aと,この円形孔部8aの内周部の直径方向対向位置に凹設されて,前記両係合用突条部17,17がそれぞれ挿通可能な係合用凹部8b,8bとからなるケーシング挿通孔8を備えている。そして,このケーシング回り止め部材7は,図4及び図7に示すように,掘削地盤上の掘孔箇所18(図462参照)を挟んでその両側に水平に敷設された長尺状の横向きH形鋼からなる一対の支持部材19,19上に載設固定されるようになっている。」(段落【0016】)・「上述したような構成よりなる掘削装置を使用して,地盤を掘削し基礎杭を造成するには,先ず,クレーンブームMの先端から昇降操作用ワイヤーWを介して回転駆動装置1を吊支し,この回転駆動装置1の下部から固定ケーシング5と掘削軸部材2及びダウンザホールハンマー4を垂下した状態で,固定ケーシング5を,一対の支持部材19,19上の所定位置に固定されているケーシング回り止め部材7のケーシング挿通孔8に挿入させる。」(段落【0022】)・「所定深度まで掘削したならば,エアの供給を停止してダウンザホールハンマー4の作動を停止させた後,昇降操作用ワイヤーWを巻取り操作して,固定ケーシング5を掘削軸部材2及びダウンザホールハンマー4と共に引き上げ,その後掘孔内に,グラウト圧送ポンプに接続されたグラウトホースを引き入れてセメントミルク等のグラウトを注入する。尚,この場合,前記回転軸部材12にグラウト導入路を設けると共に,このグラウト導入路に連通するグラウト供給管を,掘削軸部材2内に前記エア供給管16と平行して配管し,更にグラウトスイベルによって上記グラウト導入路に外部からグラウトを導入するように構成しておけば,上記のように固定ケーシング5を引き上げてしまわなくても,掘削終了後直ちにグラウトを掘孔内に注入することができる。グラウトの注入を終えたならば,このグラウトが注入充填された掘孔内にH型鋼等の鉄筋,その他所要の杭を建て込んで,基礎杭を造成する。」(段落【0025】)・「尚,上述した実施の形態では,固定ケーシング5が円筒状のケーシングからなり,その外周面に係合用突条部17が長手方向に条設されてお63り,そしてケーシング回り止め部材7が,上記円筒状固定ケーシング5が挿通可能な円形孔部8aと,この円形孔部8aの内周部に凹設されて係合用突条部17が挿通可能な係合用凹部8bとからなるケーシング挿通孔8を備えたものとしたが,固定ケーシングとして角筒状ケーシングを使用し,ケーシング回り止め部材に,その角筒状ケーシングの外形に対応るす角孔状のケーシング挿通孔を設けるようにしてもよい。この実施の形態のような構成とした場合には,固定ケーシング5が円筒状ケーシングからなるため,地盤への固定ケーシング5の打ち込み及び引き抜きが容易となり,またケーシングの材料コストも,円筒状ケーシングの方が角筒状ケーシングより安価である。」(段落【0028】)・「そして,前記ケーシング回り止め部材7は,平板状に形成されたものであるため,鉄板等によって簡単容易に製作することができる上,取り扱いや運搬に便利である。また,ケーシング回り止め部材7は,掘削地盤上の掘孔箇所18を挟んでその両側に水平に敷設された長尺状の横向きH形鋼からなる一対の支持部材19,19上に載設固定されるようになっているため,多数の基礎杭を縦または横列状に順次造成してゆく場合に,両支持部材19,19を縦または横列状の掘孔箇所18に沿って敷設しておくことによって,1つの掘孔箇所18での基礎杭の造成を終えた後,ケーシング回り止め部材7を両支持部材19,19に沿って所要ピッチ移動させてセットし,その位置に固定ケーシング5を位置決めでき,以降も同様に位置決めでき,従って基礎杭の造成作業をきわめて能率良く行うことができると共に,縦または横列状の複数の基礎杭の芯合わせを容易に行うことができる。」(段落【0029】)・「また,ケーシング回り止め部材7としては,上述した平板状に形成されたものに限らず,ケーシング回り止め部材7を地盤上に水平に支持する支持部がこの回り止め部材7と一体に形成された構造のものでもよ64い。」(段落【0033】)・「請求項2に係る発明によれば,固定ケーシングが円筒状ケーシングからなるため,地盤への固定ケーシングの打ち込み及び引き抜きが容易となり,またケーシングの材料コストも,円筒状ケーシングの方が角筒状ケーシングに比べ安価となる。」(段落【0035】)イ 本件訂正発明1の1及び1の2の意義上記各記載によれば,本件訂正発明1の1及び1の2は,基礎杭等の造成にあたって地盤を掘削する掘削装置に関するものであって,この種の掘削装置として一般に使用されるアースオーガ装置では,オーガマシンの駆動時の回転反力を受支するために必ずリーダが必要となるが,リーダの長さが長くなると,施工現場内でのリーダの移動作業や,現場へのリーダの搬入及び現場からの搬出作業に非常な手間と時間を要するという課題及び傾斜地での地盤掘削にあっては,クローラクレーンの接地面とリーダの接地面との段差が大きい場合にリーダの長さを長くとれず,掘削深さが制限されるという課題があることから,本件訂正発明1の1及び1の2は,これらの課題を解決するために,掘削装置について,掘削すべき地盤上の所定箇所に水平に設置し,固定ケーシングを上下方向に自由に挿通させるが,当該固定ケーシングの回転を阻止するケーシング挿通孔を形成してなるケーシング回り止め部材を備えるものとして,リーダではなく,ケーシング回り止め部材によって回転駆動装置の回転反力を受支するものとした発明である,と認められる。
(2) 本件発明3ア 本件明細書等3には次の各記載がある。
【発明の属する技術分野】・「開示技術は,先端に掘削ビットを挿着したインナーロッドを回転駆動装置に連結し,重機のブーム先端から懸垂状態で当該回転駆動装置を吊65下げ,上記インナーロッドの外周側に設けたアウターケーシングの回転を拘束しながら,前記回転駆動装置の回転力を用いて掘削を行う穿孔工法に用いられる装置の技術分野に属する。」(段落【0001】)【発明が解決しようとする課題】・「この出願の発明の目的は上述従来技術に基づく地盤の改良工事や橋梁の橋脚の施工における掘削装置の直進性を保持するべくインナーロッドに対する回転付与の際に回転反力の支持が施工初期から施工中に充分に保持出来ない問題点を解決すべき技術的課題とし,掘削駆動装置が所定に搬入セットされる場所でさえあれば,極めて簡単な装置構造ながら,確実に施工初期からのインナーロッドの回転穿孔の際の該インナーロッドの回転に対するアウターケーシングの回転反力支持がセットされる地盤の性状や強度の大小に関わらず確実に図れ,設計通りの穿孔が初期から充分に図れるようにして建設産業における土木技術利用分野に益する優れた穿孔工法用回転反力支持装置を提供せんとするものである。」(段落【0009】)【発明の効果】・「以上,この出願の発明によれば,施工初期からインナーロッドに振動打撃作用と回転作用を同時に付与しても,インナーロッドに回転力を付与するために必要な回転反力をアウターケーシングに対して直ちに確保することができる。したがって,在来態様の如く施工初期において,インナーロッドに振動打撃に作用のみを与えて回転を付与するタイミングを図る所定深度を計測するという煩瑣な手間が省け,最初からインナーロッドに回転作用を付与し設計通りの掘削穿孔が出来るという優れた効果が奏される。」(段落【0043】)イ 本件発明3の意義上記各記載によれば,本件発明3は,先端に掘削ビットを挿着したイン66ナーロッドを回転駆動装置に連結し,重機のブーム先端から懸垂状態で当該回転駆動装置を吊り下げ,上記インナーロッドの外周側に設けたアウターケーシングの回転を拘束しながら,前記回転駆動装置の回転力を用いて掘削を行う穿孔工法に用いられる装置の技術分野に属するものであって,従来技術における地盤の改良工事や橋梁の橋脚の施工における掘削装置の直進性を保持するべくインナーロッドに対する回転付与の際に回転反力の支持が施工初期から施工中に充分に保持出来ないという問題点を解決するために,本件発明3の穿孔工法用回転反力支持装置を用いることで,最初からインナーロッドに回転作用を付与し設計どおりの掘削穿孔が出来るという効果を奏する発明である,と認められる。
(3) 本件訂正発明4ア 本件明細書等4には次の各記載がある。
【技術分野】・「本発明は,ダウンザホールハンマを用いた掘削施工において排出される掘削土が,当該掘削装置の周囲に飛散するのを防止するための掘削土飛散防止装置に関する。」(段落【0001】)【背景技術】・「硬質地盤や岩盤等を掘削する上で優れた掘削能力を備えているという観点から,従来より,削孔機械としてダウンザホールハンマが広く一般的に用いられている。」(段落【0002】)・「ダウンザホールハンマを用いた従来の掘削作業においては,打撃破砕による掘削となる施工原理から発生するくり粉状の掘削土が,ケーシングに形成された排土口を介して,施工現場の周囲に飛散するようになっている。したがって,ダウンザホールハンマ自体は硬質地盤や岩盤に対して優れた掘削能力を備えてはいるものの,施工現場の周辺環境を,飛散した掘削土によって汚染してしまうという問題点があった。」(段落67【0008】)・「また,ケーシングには排土口が形成されているため,ダウンザホールハンマの打撃作用によって生じる打撃音は,当該排土口を通じて周囲に響き渡ることとなる。しかも,ケーシングやハンマシャフト等は金属製である(或いは金属製部品を多く含む)ため,掘削ビットを連続して打撃する際に生じる打撃音は緩和されることなく,金属製部品を介して周囲に響き渡ってしまう。そのため,騒音問題や上記汚染問題を考慮すると,優れた掘削能力を備えているにも関わらず,ダウンザホールハンマを利用した掘削作業は,都市部(たとえば住宅密集地やオフィスビルの密集地など)においては積極的に起用し難いという問題点があった。」(段落【0009】)【発明が解決しようとする課題】・「そこで,上述した問題点に鑑み,本発明の目的は,ダウンザホールハンマによる掘削によって排出されるくり粉状の掘削土が施工現場の周囲に飛散することを防止するとともに,従来と比較してダウンザホールハンマ使用時における騒音を緩和することを可能にする装置を提供することによって,優れた掘削能力を備えたダウンザホールハンマの適用範囲を拡大することにある。」(段落【0010】)・「また,本発明の他の目的は,ダウンザホールハンマによる掘削によって排出されるくり粉状の掘削土が施工現場の周囲に飛散することを防止し,且つ,従来と比較してダウンザホールハンマ使用時における騒音を緩和することを可能にする掘削方法を提供することにある。」(段落【0011】)【課題を解決するための手段】・「(1)上記目的を達成するために,本発明に係る掘削土飛散防止装置は,68地盤を掘削するための掘削ビットをハンマシャフトの先端に備えたダウンザホールハンマと,前記ハンマシャフトの一端が連結され,前記ダウンザホールハンマを回転駆動するための回転駆動装置と,前記回転駆動装置から垂下し,前記ダウンザホールハンマを囲繞するように設けられ,下端側から前記ダウンザホールハンマの掘削ビットが突き出るように形成されたケーシングと,前記ダウンザホールハンマの掘削ビットによって削り出される掘削土が吹き上げられた際に通過するようになっており,前記ケーシングの内壁と前記ダウンザホールハンマとの間に形成された通路と,前記ケーシングに形成され,前記通路を通り抜けて吹き上げられた掘削土を前記ケーシングの外側に排出するための排土口と,を有する掘削装置を用いた掘削施工において排出される前記掘削土が,当該掘削装置の周囲に飛散するのを防止するための装置であって,前記排土口を介して前記ケーシングの外側へ排出された前記掘削土が衝突するようになっている衝突部を含んでおり,前記排土口から所定距離離隔した状態で,前記衝突部が前記ケーシングの外側から前記排土口を臨むように設けられ,前記衝突部に衝突した前記掘削土は,当該掘削装置の周囲に飛散することなく,前記衝突部と前記排土口との間の間隙を介して,自重によって前記衝突部の下方へ向かって落下するようになっている。」(段落【0012】)【発明の効果】・「上記(1)に記載の本発明によれば,掘削土飛散防止装置の衝突部には,排土口を介してケーシングの外側へ排出された掘削土が衝突するよ69うになっている。そして,衝突部に衝突した掘削土は,衝突部と排土口との間の間隙を通って,自重によって下方へ落下するようになっている。
したがって,掘削装置の排土口から排出される掘削土は,掘削装置の周囲に飛散することない。その結果,本発明によれば,施工現場周辺の環境が掘削土で汚染されるという事態が生じるのを効果的に防止することが可能になる。」(段落【0018】)【発明を実施するための最良の形態】・「排土口73は,ケーシング70の上端近傍に形成されている。通路80を介して吹き上げられた掘削土は,この排土口73を介してケーシング70の外側に排出されるようになっている。」(段落【0032】)・「掘削土飛散防止装置1aは,略円筒状に形成された円筒部(筒状部)11を有している。円筒部11は,当該円筒部の一部から成る衝突部13を内壁側に含んでいる。この衝突部13には,排土口73を介してケーシング70の外側へ排出された掘削土が衝突するようになっている。
また,上記円筒部11は,図示(判決注:図2に図示)するように側壁が蛇腹形状を成すように形成され,自在に伸縮できるように構成されている。」(段落【0034】)・「上述した構成を有する掘削土飛散防止装置1aは,回転駆動装置60からハンマシャフト53に沿って垂下した状態(すなわちハンマシャフト53とほぼ並行に垂下した状態で)で,ケーシング70を囲繞するように取り付けられる。当該掘削土飛散防止装置1aを掘削装置5に取り付けた状態においては,衝突部13が,排土口73から所定距離離隔した状態で,ケーシング70の外側から排土口73を臨むようになっている。」(段落【0035】)70・【図2】イ 本件訂正発明4の意義上記各記載によれば,本件訂正発明4は,ダウンザホールハンマを用いた掘削施工において排出される掘削土が,当該掘削装置の周囲に飛散するのを防止するための掘削土飛散防止装置に関するものであって,従来技術における(i)施工現場の周辺環境を,飛散した掘削土によって汚染してしまうという問題点及び(A)ダウンザホールハンマの打撃作用によって生じる打撃音が,ケーシングに形成されている排土口を通じて周囲に響き渡るため,ダウンザホールハンマを利用した掘削作業は,都市部(例えば住宅密集地やオフィスビルの密集地など)においては積極的に起用し難いという問題点を解決することを目的としたものであり,そのために,ケーシングの少なくとも一部を囲繞するように略円筒状に形成された円筒部(筒状部)を設け,掘削土飛散防止装置の衝突部に,排土口を介してケーシングの外側へ排出された掘削土が衝突して,自重により落下するようにすることで,71掘削土が掘削装置の周囲に飛散することを防止し,施工現場周辺の環境が掘削土で汚染されるという事態が生じるのを効果的に防止することを可能とするという発明である,と認められる。
2 争点(1)(被告装置1は本件訂正発明1の1及び1の2の技術的範囲に属するか)について(1) 本件訂正発明1の1の構成要件Cの充足性についてア 構成要件Cの「一体的に垂下連結される固定ケーシング」の意義本件明細書等1には次の各記載がある。
(ア)「この機枠6の下部には,図2に示すようにスカート状のブラケット9が一体的に突設され,このブラケット9内に前記回転駆動軸3が同心状に突設されている。」(段落【0013】)(イ)「前記固定ケーシング5は,〔中略〕外周面に例えば2条の係合用突条部17,17が周方向に一定間隔でそれぞれ長手方向全長に亘って一体または一体的に条設されている。」「固定ケーシング5の上端フランジ部5aが,前記機枠6下部に突設されたスカート状ブラケット9の下端フランジ部9aに接合され,それによって固定ケーシング5が回転駆動装置1の機枠6に一体的に固定される。」(段落【0015】)(ウ)「所定深度まで掘削したならば,エアの供給を停止してダウンザホールハンマー4の作動を停止させた後,昇降操作用ワイヤーWを巻取り操作して,固定ケーシング5を掘削軸部材2及びダウンザホールハンマー4と共に引き上げ,その後掘孔内に,グラウト圧送ポンプに接続されたグラウトホースを引き入れてセメントミルク等のグラウトを注入する。」(段落【0025】)(エ)「固定ケーシング5が円筒状ケーシングからなるため,地盤への固定ケーシング5の打ち込み及び引き抜きが容易となり,またケーシングの材料コストも,円筒状ケーシングの方が角筒状ケーシングより安価であ72る。」(段落【0028】)イ 上記アの本件明細書等1の各記載をみると,段落【0015】には「一体または一体的に条設されている。」という表現があることから,本件明細書等1においては,「一体」と「一体的」は異なる意義を有する用語として用いられているといえるものの,「一体的」という用語が「一体」と並列して記載される程度に連結していることを意味する用語として用いられていることが推測される。
このことに前記アの各記載のとおり,「固定ケーシングが回転駆動装置の機枠に一体的に固定される」ものとされ,「固定ケーシングを掘削軸部材及びダウンザホールハンマとともに引き上げる」ことや「固定ケーシングの打ち込み及び引き抜き」をすることが記載されていることを併せて考慮すれば,「固定ケーシング」とは,回転駆動装置の機枠に,「一体」である場合と同様に考えられる程度に強固に連結されているものをいうと解するのが相当である。
ウ さらに,原告が,本件特許3の拒絶査定を受けた後の不服審判請求(不服2004−5391)において提出した「手続補正書」(乙6)をみると,本件発明3と引用文献1(特開平09−195655号公報。本件特許1の公開特許公報)記載の発明との相違点について,「アウターケーシングの構成が,本願発明では『回転駆動装置に対して固定連結されておらず,着脱自在である』のに対し,引用文献1に記載の発明では『固定ケーシング5が回転駆動装置1の機枠6に一体的に固定』されている点で明らかに相違している。」と記載されており,原告も本件訂正発明1の1の構成要件Cの「一体的に垂下連結される固定ケーシング」は着脱可能ではないものをいうと認識していたものと認められる。
エ 以上からすると,「一体的に垂下連結される固定ケーシング」とは,「一体」である場合と同様に考えられる程度に強固に連結されているもの73を指し,着脱可能なものは「固定ケーシング」に当たらないというべきである。
オ この点に関して被告装置1につき検討すると,現場@の被告装置1には,中空スリーブに設けられた切り欠きとケーシングに固設された角鉄を係合させることにより,ケーシングが中空スリーブに着脱可能に係合されるもの(上部/角鉄と切り欠き)と,回転駆動装置の下部に設けられたフランジとケーシング上部に設けられたフランジとをボルトとナットで固定するもの(上部/ボルト)が存在することについては当事者間に争いがなく,また,現場AないしFについては,ケーシングと中空スリーブの関係について現場@の「上部/角鉄と切り欠き」と同じ構成であることについて当事者間に争いがない。
そして,着脱可能なものは構成要件Cの「固定ケーシング」に当たらないから,現場@の被告装置1のうち,「上部/角鉄と切り欠き」の被告装置1及び現場AないしFの被告装置1は,いずれも構成要件Cを充足しないと認めるのが相当である。
したがって,これらの被告装置1は,本件訂正発明1の1の技術的範囲に属しない。
カ 他方で,現場@の被告装置1のうち,「上部/ボルト」の被告装置1は,ケーシングが回転駆動装置にボルトとナットにより固定されており,「一体」である場合と同様に考えられる程度に強固に連結されているものということができるから,構成要件Cの「固定ケーシング」を充足すると認めるのが相当である。
(2) 本件訂正発明1の 1の構成要件Dの充足性についてア 次に,上記現場@の「上部/ボルト」の被告装置1が構成要件Dを充足するか検討する。
イ 現場@の「上部/ボルト」の被告装置1には,「下部/2本のH形鋼」74のものと「下部/1本のH形鋼」のものがあることについては当事者間に争いがない。そして,被告装置1の写真(甲55・写真BCD及び乙56ないし58)によれば,被告装置1の下部の構成は,下図のとおりであると認められる。下図の茶色部分はH形鋼からなる一対の支持部材ないし桁材であり,灰色部分は,左図では「1本のH形鋼」,右図では「2本のH形鋼」である。
下部/1本のH形鋼 下部/2本のH形鋼ウ 構成要件Dのケーシング回り止め部材は,「固定ケーシングを上下方向に自由に挿通させるが該固定ケーシングの回転を阻止することができるケーシング挿通孔を有する」ものであるところ,上図の赤線で囲まれた突条部を有する円形部分が固定ケーシングに当たる。そして,「ケーシング挿通孔」にいう「孔」は,「あな。中空のすきま。」(漢字源改訂第五版。
乙78)を意味するところ,「下部/1本のH形鋼」の被告装置1では,固定ケーシングが支持部材ないし桁材及びH形鋼で囲まれておらず,固定ケーシングの周囲の部材が「あな。中空のすきま。」を形成しているということはできないから,「下部/1本のH形鋼」の被告装置1には,「ケーシング挿通孔」が存在しないと認めるのが相当である。
したがって,「下部/1本のH形鋼」の被告装置1は,構成要件Dを充足しない。
エ 次に,「下部/2本のH形鋼」については,上図の茶色部分と灰色部分に囲まれた部分が「孔」に当たるということができる。そして,ケーシングに赤線で囲まれた突条部が存在し,この突条部が灰色部分のH形鋼の切75り欠きないし凹部と係合することによって,ケーシングの回転が阻止されるといえるから,「下部/2本のH形鋼」の被告装置1は,構成要件Dの「ケーシング回り止め部材」を有すると認めるのが相当である。
オ 被告の主張に対する判断この点に関して被告は,「ケーシング挿通孔」が円形孔部を意味するとか,ケーシングの外周面に突条部が二つ設置され,2箇所で係合する必要があるなどと主張するが,本件特許1の特許請求の範囲請求項1には「孔」が円形であることや,突条部を二つ要する旨の文言はない。また,一般に,「孔」は「中空のすきま。」という意味を有するにすぎず,「円形」であることまでを意味しない。さらに,本件明細書等1の記載をみても,被告の上記主張のとおりに解すべき理由はない。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
カ 以上のとおり,その余の点について判断するまでもなく,被告装置1のうち,現場@の「上部/ボルト,下部/2本のH形鋼」の被告装置1は本件訂正発明1の1の技術的範囲に属するが,その余の被告装置1は,いずれも本件訂正発明1の1の技術的範囲に属しない。
(3) 本件訂正発明1の2の充足性について本件訂正発明1の2の構成要件Iは,「請求項1に記載の掘削装置」というものであり,本件訂正発明1の1を充足するものであることを要件とする。
そして,前記(2)のとおり,被告装置1のうち,本件訂正発明1の1を充足するのは,現場@の「上部/ボルト,下部/2本のH形鋼」の被告装置1のみであるが,原告は,「下部/2本のH形鋼」の被告装置1については,本件訂正発明1の2の技術的範囲に属する旨の主張をしていない。
したがって,その余の点について判断するまでもなく,被告装置1はいずれも本件訂正発明1の2の技術的範囲に属しない。
3 争点(2)(被告装置2は本件発明3の技術的範囲に属するか)について76事案に鑑み,争点(2)オ,カにおける構成要件H及びIの「第1の反力プレート」の充足性について判断する。
(1) 構成要件H及びIの「第1の反力プレート」の意義本件発明3の構成要件Hには,「当該回転駆動装置の第2の反力プレートが,上記アウターケーシングの第1の反力プレートに対して係合し,」とあるから,構成要件Hの「第1の反力プレート」は,「第2の反力プレート」に係合しているものである。そして,構成要件Iには,「上記アウターケーシングの第1の反力プレートを,穿孔芯を確保する上記ガイドフレームに固設された反力アームに係合させ,」とあるから,構成要件Iの「第1の反力プレート」は,「反力アーム」に係合するものである。
そして,構成要件Hの「第1の反力プレート」と構成要件Iの「第1の反力プレート」は同一の名称を用いていることからして,同一の部材を指すものと解するほかない。
(2) 被告装置2の「第1の反力プレート」の充足性一方,原告の主張する被告装置2の構成をみると,被告装置2−1ないし2−5のいずれにおいても,構成要件Hの「第1の反力プレート」に当たるものは中空スリーブの「角鉄」のみであり,構成要件Iの「第1の反力プレート」に当たるものはケーシングの「長手方向突条部」のみであるから,構成要件Hの「第1の反力プレート」に当たる「角鉄」と構成要件Iの「第1の反力プレート」に当たる「長手方向突条部」は別個の部材ということになる。
この点,原告が,平成29年3月9日付け訴状訂正申立書兼訴えの取下書において,被告装置2の構成を裏付けるものとして指摘する写真(甲34の@B,甲55のE,甲58のB,甲60の2のA)をみても,角鉄と長手方向突条部は別個の部材であることが認められる。
したがって,仮に被告装置2の構成が原告の主張するとおりであると認め77られたとしても,被告装置2には,構成要件Hの「第1の反力プレート」と構成要件Iの「第1の反力プレート」を同時に充たす部材が存在しないというほかない。
(3) 以上のとおり,被告装置2には,いずれも,構成要件H及びIの「第1の反力プレート」が存在しないから,その余の点について判断するまでもなく,被告装置2は,本件発明3の技術的範囲に属しない。
4 争点(3)(被告装置3は本件訂正発明4の技術的範囲に属するか)について(1) 現場Bの被告装置3における「ワイヤー」の有無について本件訂正発明4はその構成に「ワイヤー」を含むところ(構成要件I及びJ),被告は,現場Bの被告装置3については「ワイヤー」を使用していないと主張する。
そこで検討するに,現場Bの被告装置3の写真(甲57)にはワイヤーが撮影されておらず,他に本件全証拠を精査しても,現場Bの被告装置3について「ワイヤー」が存在することを認めるに足りる証拠がない。
この点に関して原告は,ワイヤーの存在を裏付ける証拠として写真(甲34のA)を指摘する。
しかし,上記写真は,現場Fの被告装置3を撮影したものであると認められるから(甲34の@),同写真によって現場Bの被告装置3について「ワイヤー」が存在すると認めることはできない。
したがって,現場Bの被告装置3については,その余の点について判断するまでもなく,本件訂正発明4の技術的範囲に属しない。
(2) そこで,以下では,現場E及びFの被告装置3が,本件訂正発明4の技術的範囲に属するか検討する。
ア 現場E及びFの被告装置3の構造被告の主張によれば,現場E及びFの被告装置3の構造は次の図(青色及び赤色の着色部分及び文字は除く。)のとおりであり,この点について78は原告も明確に否定しておらず,他にこれに反する証拠もないから,上記構造を否定すべき理由はない。
構成要件E,G,H,J及びKの「排土口」の充足性について(ア) 構成要件D及びEによれば,「排土口」は「ケーシングに形成され」たものであって,ケーシングの内壁とダウンザホールハンマとの間に形成された「通路を通り抜けて吹き上げられた掘削土をケーシングの外側に排出するため」のものであるとされている。
ここで,「排土」は「不要な土砂を取り除くこと。また,取り除かれた土砂。」を意味し(デジタル大辞泉。甲35),「口(こう)」は,「外部に開いた通路。出入りするところ。」を意味するから(広辞苑第五版。甲36),「排土口」は,「(掘削により)取り除かれた土砂が出入りするところ」を意味すると認められる。そして,上図の赤字で「開口部」と示した部分は,ケーシングの内壁とダウンザホールハンマとの間の通路を通り抜けて吹き上げられた掘削土をケーシングの外側に79出すところであるといえるから,「排土口」に当たる。
(イ) この点に関して被告は,ケーシングに「形成され」という表現がされていることをもって,ケーシングには本来存在しないもので,排土の排出という目的のために特別に設けられたものを意味すると主張する。
しかし,「形成」とは,「形ができ上がること。形づくること。」を意味するにすぎず(広辞苑第六版),「形成された」という表現は「形づくられた状態にある」程度の意味を有するものと解するのが自然であって,それ以上に,特定の目的のために特別に設けられたものであることまでを意味するというべき理由はなく,また,その他の特許請求の範囲請求項1の文言をみても,被告の主張する意味に解すべき理由はない。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
(ウ) よって,現場E及びFの被告装置3は「排土口」を充足する。
構成要件G,H及びKの「衝突部」の充足性について(ア) 構成要件G及びHによれば,本件訂正発明4における「衝突部」は,排土口を介してケーシングの外側へ排出された掘削土が衝突するようになっているもので,排土口からは所定距離離隔した状態で,排土口を臨むように設けられているものである。なお,「臨む」とは「目の前にする。面する。」という意味である(広辞苑第六版)。
そして,現場E及びFの被告装置3の構造は上記ア記載の図のとおりであるところ,被告装置3では,排土口からケーシングの外側へ排出された掘削土は,中空スリーブの上部内面(同図に青色で示した部分及びその周辺)に衝突して,下方に落下する。そして,中空スリーブの天板部分は,排土口に面する位置に存在しており,排土口を臨むように設けられているといえる。そうすると,中空スリーブの天板部分が,本件訂正発明4の「衝突部」に当たると認めるのが相当である。
80(イ) この点に関して被告は,「掘削土が衝突するようになっている衝突部」との表現及び本件訂正発明4の作用効果からすると,「掘削土」を受け止めるために設けられた特別の部分が存在することを要すると解するべきであると主張するが,「掘削土が衝突するようになっている」という表現から直ちに「掘削土が衝突する」ために設けられた特別の部分を意味するとまで読み取ることはできず,また,本件訂正発明4の特許請求の範囲請求項1の文言をみても,被告が主張するとおりに解すべき理由はない。
また,被告は,本件明細書等4の「円筒部11は,当該円筒部の一部から成る衝突部13を内壁側に含んでいる。」(段落【0034】)という記載を指摘して,本件訂正発明4における「衝突部」は飛散防止装置の内壁とは別の部材であると主張する。
しかし,構成要件Gは「飛散防止装置は・・・衝突部を含んでおり」というのみであるから,「飛散防止装置」の内壁と「衝突部」が別の部材であることまでを要求しているということはできない。そもそも,本件明細書等4の段落【0034】の円筒部11を図示した【図2】をみると,衝突部13は円筒部11の内壁の一部であることが示されており,円筒部11は飛散防止装置の一部であるから,衝突部と飛散防止装置の内壁は別の部材ではないことが示されている。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
(ウ) よって,現場E及びFの被告装置3は「排土口」を充足する。
エ そして,その余の構成要件については,被告は明らかには争っていない。
したがって,現場E及びFの被告装置3は,本件訂正発明4の技術的範囲に属すると認めるのが相当である。
5 争点(4)(損害発生の有無及びその額)について81(1) 特許法102条2項の適用の可否ア 特許法102条2項は,民法の原則の下では,特許権侵害によって特許権者が被った損害の賠償を求めるためには,特許権者において,損害の発生及び額,これと特許権侵害行為との間の因果関係を主張,立証しなければならないところ,その立証等には困難が伴い,その結果,妥当な損害の填補がされないという不都合が生じ得ることに照らして,侵害者が侵害行為によって利益を受けているときは,その利益額を特許権者の損害額と推定するとして,立証の困難性の軽減を図った規定である。そして,特許権者に,侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には,特許法102条2項の適用が認められると解すべきである。(知的財産高等裁判所平成25年2月1日特別部判決・平成24年(ネ)第10015号事件参照)イ これを本件についてみると,原告従業員作成にかかる平成25年3月15日撮影の写真帳(甲24)によれば,原告は本件訂正発明1の1及び本件訂正発明4を実施していることが認められるから,原告には損害が発生していると事実上推定され,被告による特許権侵害行為がなかったならば,原告が本件訂正発明1の1及び本件訂正発明4を実施することで利益が得られたであろうという事情が存在することは明らかである。
したがって,本件では,特許法102条2項を適用する前提があるから,同条項によって,原告の損害額を算定することができるというべきである。
(2) 本件訂正発明1の1に係る損害ア 被告の売上額(ア) 前記2のとおり,現場@の「上部/ボルト 下部/2本のH形鋼」の被告装置1が本件訂正発明1の1の技術的範囲に属する。そこで,現場@の工事について,被告の利益額を検討する。
被告作成の見積書(乙95の1・2,乙105)によれば,現場@の82工事全体の代金額は630万円,そのうち,本件訂正発明1の1を実施する工程である先行削孔砂置換工(DH削孔費)の代金は,単価が10万円で,数量が15本の計150万円であることが認められる。
(イ) ところで,被告は,15本のうち少なくとも3本についてはケーシング下部で井桁状を組むことが困難であるから3本分は控除すべきであると主張するので検討するに,被告が指摘する3枚の写真(甲55のBC及び乙57)はいずれも,「下部/1本のH形鋼」の被告装置1を撮影したものであることが認められるので,上記3枚の写真に撮影された被告装置1は本件訂正発明1の1の技術的範囲に属しないというほかない。
もっとも,上記3枚の写真をみるに,甲55の写真B及びCは,国土交通省作成の写真帳(甲93)に掲載されているものと同一であるところ,同写真帳には,上記写真B及びCの撮影箇所について,いずれも「先行掘削A」と記載されており,同一箇所を撮影した写真であると認められる(甲55,93)。また,甲55の写真Cと乙57の写真を比較すると,その周囲の土や植物の様子,梯子や他のケーシングの位置などから,同一のケーシングを異なる角度から撮影した写真であると認められる。
したがって,被告が指摘する3枚の写真は,いずれも同一のケーシングを撮影したものと認めるのが相当である。
そうすると,被告の先行削孔砂置換工15本のうち,本件訂正発明1の1の技術的範囲に属しないのは1本のみであるから,その分を上記(ア)で算定した金額から控除すると,本件訂正発明1の1の実施による先行削孔砂置換工(DH削孔費)の代金は140万円である。
(ウ) 原告は,「場所打杭工」も本件訂正発明1の1を実施する工程に当たると主張するのに対し,被告は,「場所打杭工」には本件訂正発明1の1を実施しておらず,回転させながら圧入する回転機による削孔方法をとっていることから,ダウンザホールハンマの項目とは別に「場所打杭83工」として項目分けしていると主張する。
そこで検討するに,被告作成の工事@の見積もり内容を記載した平成21年3月24日付け「内訳明細書」(乙105)をみると,「先行削孔砂置換工」についてはその内訳として「DH削孔費」という名称が記載されているのに対し,場所打杭工の内訳には,名称にも摘要にも「DH」の記載はないから,「内訳明細書」の記載は被告の上記主張に整合しているということができ,そして,そのほかに被告の同主張を否定すべき理由はない。
したがって,現場@の「場所打杭工」の工程において,本件訂正発明1の1が実施されていると認めることはできない。
(エ) 原告は,本件訂正発明1の1の実施による被告の利益を算定するに当たっては,本件発訂正明1の1を実施した工程の代金のみならず,請負代金額の全額を基礎とすべきと主張する。
しかし,本件訂正発明1の1は,掘削装置に関する発明であり,掘削工事以外の工程には使用されない。そして,前記「内訳明細書」(乙105)によれば,被告は,現場@について,本件訂正発明1の1を実施した掘削工事である「先行削孔砂置換工」のみを受注したものではなく,「道路改良工事」を受注し,上記掘削工事の他,本件訂正発明1の1を実施していない工事である「場所打杭工」,「鋼矢板工」及び「桟橋盛替工」の各工事を行っており,これらの工事の代金(直接工事費)については,本件訂正発明1の1を実施していないのであるから,本件訂正発明1の1の実施があったためにその余の工事の受注ができたなどの特段の事情がない限り,本件訂正発明1の1を実施したことにより被告が受けた利益に当たるということはできない。そして,本件において,上記事情を認めるに足りる証拠はない。
また,被告は,現場@の工事について,上記直接工事費のほかに,間84接工事費として「重機組解回送費」,「重機回送費」及び「経費」の支払を受けているが,これらについても本件訂正発明1の1の実施により受けた利益に当たると認めるべき証拠がない。
したがって,被告が,本件訂正発明1の1を実施したことにより受領した額は,本件訂正発明1の1の実施による先行削孔砂置換工(DH削孔費)の14本分の代金140万円である。
イ 利益率被告の利益率が18%であることについて当事者間に争いがない。
したがって,本件訂正発明1の1を実施したことにより被告が得た利益額は,25万2000円(=140万円×0.18)である。
ウ 寄与率被告は,本件訂正発明1の1の売上に対する寄与率は低いなどと主張するので検討するに,特許法102条2項は,損害が発生している場合でも,その損害額を立証することが極めて困難であることに鑑みて定められた推定規定であるから,当該特許権の対象製品に占める技術的価値,市場における競合品・代替品の存在,被疑侵害者の営業努力,被疑侵害品の付加的性能の存在,特許権者の特許実施品と被疑侵害品との市場の非同一性などに関し,その推定を覆滅させる事由が立証された場合には,それらの事情に応じた一定の割合(寄与率)を乗じて損害額を算定することができるというべきである。
本件では,たしかに,前記アのとおり,現場@において,15本のうち1本のケーシングについては,本件訂正発明1の1を実施しない形態(下部/1本のH形鋼)が用いられていることが認められるものの,これは,被告の主張によれば,山(崖)側に位置するケーシングでは,下部で井桁状を組むことが困難であることから「下部/2本のH形鋼」ではなく「下部/1本のH形鋼」の構成が用いられているというのであって,「下部/852本のH形鋼」の構成により,「下部/1本のH形鋼」の構成と同等ないしより優れた効果が得られるためではない。また,上記イで算出した利益の額は,本件訂正発明1の1の技術的範囲に属する被告装置1を用いて行った工事である先行削孔砂置換工(DH削孔費)により被告が得た利益額そのものであり,それ以外の工事による利益の額は含まれていない。
さらに,被告は,各杭の「掘削長×掘削基本時間」の単価計算から求められたものに(「掘削時間」/〔「掘削時間」+「準備時間」+「排土埋戻し時間」〕)を乗じたものが,掘削に対しての時間の割り出し単価となるなどと主張しており,工事費用について時間当たりの単価を算出して,現実に掘削に要した時間に相当する分についてのみ本件訂正発明1の1が寄与しているかのような主張をしているが,被告が「先行削孔砂置換工」のうちの掘削作業のみを受注しているものではなく,また,一般に掘削作業のみを受注する形態が考えにくいこと,掘削作業が「先行削孔砂置換工」の重要部分を占めると考えられること,発注者は準備時間や排土埋戻しのために被告に工事を発注しているものでなく,準備や排土埋戻しの作業が利益をあげているとはいえないことなどからすると,被告の上記主張は採用することができない。
そうすると,代替技術の存在を考慮に入れたとしても,上記額が原告の損害であるという推定を覆滅させるに足りる証拠がないというほかないから,被告の寄与率に係る主張は理由がない。
損害額したがって,本件訂正発明1の1に関し,原告の損害額は25万2000円である。
(3) 本件訂正発明4に係る損害ア 被告の売上額(ア) 前記4のとおり,現場E及びFの被告装置3は,本件訂正発明4の技86術的範囲に属する。そこで,現場E及びFの工事について,被告の利益額を検討する。
(イ) 現場E被告が平成24年12月頃作成した出来高調書(乙135)によれば,現場Eの3工区における工事全体の代金額は8695万0096円であり,そのうち,本件訂正発明4を実施する工程であるダウンザホールハンマを用いた支持杭打込みの代金は,2025万円であること及び現場Eの4工区における工事全体の代金額は2828万6996円であり,そのうち,本件訂正発明4を実施する工程であるダウンザホールハンマを用いた支持杭打込みの代金は,630万円であることが認められる。
なお,1工区及び2工区については,被告はダウンザホールハンマを用いた工事を行っていないと主張しているところ,本件全証拠を精査しても,1工区及び2工区の工事については,本件訂正発明4を実施していることの立証がないといわざるを得ないから,1工区及び2工区に係る工事については原告に損害が生じたものと認めることはできない。
(ウ) 現場F被告作成の見積書の内訳明細書(乙108)及び被告の取引先が作成した注文書(乙109,110)によれば,現場Fの工期Tにおける工事全体の代金額は1億0500万円であり,そのうち,本件訂正発明4を実施する工程である鋼管支持杭(拡径ビット)の代金額は910万円であること,工期Uにおける工事全体の代金額は1億0500万円であり,本件訂正発明4を実施する工程である鋼管杭工(DH拡径式工法道路側及び河川側)の代金額は1880万円であること及び工期Vにおける工事全体の代金額は7000万円であり,そのうち,本件訂正発明4を実施する工程である鋼管支持杭工(拡径ビットDH工法)の代金額は2070万円であることが認められる。
87(エ) この点に関して原告は,被告の利益を算定するに当たって,本件訂正発明4を実施した工程の代金のみならず,工事の請負代金の全額を基礎とすべきである旨主張する。
しかし,本件訂正発明4は,ダウンザホールハンマ工法における掘削土飛散防止装置に関する発明であり,ダウンザホールハンマを用いた掘削工事以外の工程には使用されない。そして,見積書,注文書及び出来高調書(乙107ないし110,135)によれば,被告は,現場E及びFについて,本件訂正発明4を実施した掘削工事であるダウンザホールハンマを用いた「支持杭打込み」,「鋼管支持杭」又は「鋼管杭」の各工事(以下「支持杭打込み等」という。)のみを受注したものではなく,現場Eについては道路工事として,現場Fについては仮設構台設置工事として受注しており,上記ダウンザホールハンマを用いた掘削工事のほかに,現場Eでは,本件訂正発明4を実施していない工事である「鋼矢板工」,「桟橋盛替工」などの工事を行った上,工事全体の代金の2分の1以上の額を鋼材費として受領している。また,現場Fでは,本件訂正発明4を実施していない工事である「H鋼支持杭」,「陸上橋脚設置」,「水上橋脚設置」などの工事を行った上,工期U及びVについては,橋脚材料や鋼管材などの材料費も受領している。そして,これらの工事や鋼材・材料の販売については,本件訂正発明4の実施には当たらないから,その代金が,本件訂正発明4を実施したことにより被告が受けた利益に当たるということはできない。
また,被告は,現場E及びFの工事全体の代金に,「経費」や「一般管理費」の費目での支払を受けているが,これらについても本件訂正発明4の実施により受けた利益に当たると認めるべき証拠がない。
したがって,被告が,本件訂正発明4を実施したことにより受けた金額は,本件訂正発明4の実施によるダウンザホールハンマを用いた支持88杭打込み等の各工事の代金であると認めるのが相当であり,その額は,7515万円(=2025万円+630万円+910万円+1880万円+2070万円)である。
イ 利益率被告の利益率は18%であることに争いはないから,本件訂正発明4を実施したことにより被告が得た利益額は,1352万7000円(=7515万円×0.18)である。
ウ 寄与率(ア) 被告は,本件訂正発明4に関係する工程である支持杭打込み等の工事に要した時間に対する掘削作業に要した時間の割合を乗じた額についてのみ,被告の利益算定の根拠とすべきである旨主張する。
そこで検討するに,被告の技術開発部A作成の報告書(乙101)によればダウンザホールハンマの杭打ち作業の施工フローは次のとおりであり,本件訂正発明4が実施される作業部分は,同フローの「掘削」の部分であることが認められる。
89そして,同報告書によれば,現場E及びFにおいて本件訂正発明4を実施した工事である支持杭打込み等は,「縮径拡径ビット杭立て工法」?溶接時間を合計すると,杭1本あたりの施工時間になることが認められる。
この点に関して被告は,支持杭打込み等の代金について,施工時間全訂正発明4を実施したことによる被告の売上額に当たるというべきであると主張するが,被告が支持杭打込み等のうちの掘削作業のみを受注しているものではなく,また,一般に掘削作業のみを受注する形態が考えにくいこと,掘削作業が支持杭打込み等の重要部分を占めると考えられること,発注者は準備時間や孔内洗浄を目的として被告に工事を発注しているものでなく,掘削以外の作業が利益をあげているとはいえないことなどからすると,被告の上記主張は採用することはできない。
(イ) 次に,被告は,本件訂正発明4は,「掘削土飛散防止装置」に関するもので,掘削に必須なものではないことや,代替方法があること,蛇腹の構成がありふれた技術であることなどから,本件訂正発明4の寄与率は3分の1以下である旨主張する。
しかし,本件訂正発明4の実施による利益額としては,支持杭打込み等の売上による利益のみであると認められるところ,これらの工事の主要部分は掘削作業であり,掘削作業の全体において本件訂正発明4が実施されていること,本件訂正発明4は蛇腹状の側壁の構成のみならず,蛇腹部分に連結されたワイヤーでの巻き取りにより長さが調節できることなどもその技術的な特徴とするところ,被告の提出した各証拠(乙115ないし134)をみても,ワイヤーの存在が明確に認められるもの90がなく,ワイヤーの存在が明確に撮影されている日本テクノ株式会社の写真(乙122)については,同写真に撮影されているものは,ダウンザホールハンマ工法のものとは認められないから,結局のところ,ダウンザホールハンマ工法について,蛇腹状の側壁を設け,蛇腹部分に連結されたワイヤーでの巻き取りにより長さが調節できるような構造が,本件特許4出願時に,周知・慣用技術であったと認めるに足りる証拠はない。そして,そのほかに,支持杭打込み等の利益が,本件訂正発明4の侵害により原告に生じた損害であるという推定を覆滅させるに足りる証拠はない。
そうすると,寄与率に関する被告の上記主張は理由がない。
損害額したがって,本件訂正発明4に関し,原告の損害額は1352万7000円である。
(4) 原告の損害額前記(2)及び(3)から,原告の損害額は,合計1377万9000円である。
6 結論以上によれば,原告の請求は,被告に対し,別紙被告装置3目録記載の装置について,その製造,販売及び使用の差止め並びに廃棄を求め,併せて,1377万9000円及びこれに対する平成25年5月18日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからその限度で認容し,その余の請求は理由がないからこれらを棄却することとし,主文第2項については,仮執行宣言を付すのは相当でないから,これを付さないこととして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第40部91裁判長裁判官東 海 林 保裁判官瀬 孝裁判官勝 又 来 未 子92
事実及び理由
全容
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