関連審決 | 無効2015-800021 |
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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成26ワ20319 特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成27ワ28698 特許権侵害差止請求事件 | 判例 | 特許 |
平成27ワ28468 特許権侵害差止請求事件 | 判例 | 特許 |
平成27ワ11434 特許権侵害行為の差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成27ワ5869 特許権侵害行為差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
元本PDF | 裁判所収録の全文PDFを見る |
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事件 |
平成
27年
(ワ)
18593号
特許権侵害差止等請求事件
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原告ウシオ電機株式会社 同訴訟代理人弁護士 松尾和子 同 相良由里子 同 松野仁彦 同訴訟代理人弁理士 大塚文昭 同 補佐人弁理士谷口信行 同 岸慶憲 被告 株式会社ブイ・テクノロジー 同訴訟代理人弁護士 赤尾直人 同 鈴木一徳 同 補佐人弁理士岩ア孝治 同 小橋立昌 同 白坂一 |
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裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 2017/02/09 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求
1 被告は,別紙物件目録記載の光配向用偏光光照射装置を製造し,販売し,又は販売のための展示その他の販売の申出をしてはならない。 2 被告は,前項の光配向用偏光光照射装置を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,10億7600万円及びこれに対する平成27年7月 123日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 |
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事案の概要等
1 事案の要旨 本件は,発明の名称を「光配向用偏光光照射装置及び光配向用偏光光照射方法」とする特許第5344105号の特許権(以下「本件特許権」といい,その特許を「本件特許」という。)を有する原告が,別紙物件目録記載の光配向用偏光光照射装置(以下「被告製品」という。なお,その基本的な構成は,別紙被告製品説明書記載のとおりである。)の製造,販売及び販売のための展示その他の販売の申出(以下,これらの行為をまとめて「製造販売等」ということがある。)をしている被告に対し,被告製品は,本件特許の願書に添付した特許請求の範囲(以下「本件特許請求の範囲」又は単に「特許請求の範囲」ということがある。)の請求項1ないし4(以下,単に「請求項1」などということがある。)記載の各発明(以下,請求項の番号に応じて「本件発明1」などといい, これらをまとめて「本件各発明」という。また,本件特許のうち本件各発明にかかるものを「本件発明1についての特許」などということがある。)の技術的範囲に属するから,被告が被告製品を製造販売等することは本件特許権を侵害する行為であると主張して,特許法100条1項に基づく被告製品の製造販売等の差止め,並びに同条2項に基づく被告製品の廃棄を求めるとともに,特許権侵害の不法行為(対象期間・行為は,訴状33,35頁〔なお,これらの頁に「2014年度」とあるのは,「2014年」の趣旨と理解される(甲19)。〕における原告の主張に照らし,平成26年1月1日以降,本件訴訟の提起の日である平成27年7月3日までの被告製品の販売と解される。)による損害賠償として10億7600万円(特許法102条1項により算定される損害額)及びこれに対する不法行為後の日である平成27年7月23日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実等(当事者間に争いがないか,後掲の証拠等により容易に認められ 2る事実等) (1) 当事者 ア 原告は,産業用放電灯を含む,各種光源,管球及び電子機器部品並びに完成品,各種医療用光源及び器具,その他各種電気機器の製造及び販売等を業とする株式会社である。 イ 被告は,フラットパネルディスプレイ用製造装置,検査装置,測定装置,観察装置及び修正装置の開発・製造・販売・サービス,並びに太陽電池・LED向け装置の開発・販売を主たる事業とする株式会社である。 (2) 本件特許権 原告は,以下の事項により特定される本件特許権の特許権者である。 ア 発明の名称 光配向用偏光光照射装置及び光配向用偏光光照射方法 イ 出 願 日 平成25年3月8日 ウ 出願番号 特願2013-47350 エ 登 録 日 平成25年8月23日 オ 登録番号 特許第5344105号 (3) 特許請求の範囲の記載 本件特許請求の範囲の記載は,別紙特許公報(写し)の【特許請求の範囲】のとおりである。なお,請求項2及び4の各末尾に「光配光用偏光光照射装置」(下線は裁判所が付した。)とあるのは,請求項1及び3の各末尾の記載のほか,本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)及び図面(以下,これと本件明細書を併せて「本件明細書等」という。)の記載に照らし,いずれも「光配向用偏光光照射装置」(下線は裁判所が付した。)と記載すべきところを誤記したものと解されるので,後記(5)では,これを前提として,本件各発明の構成要件の分説を行う。 (以上につき,甲2,36〔25,35頁〕,乙23〔18,25頁〕) (4) 本件特許に対する特許無効審判の経緯 3 被告は,平成27年2月2日,本件特許の請求項1ないし5に係る発明についての特許を無効とすることを求めて,特許無効審判(無効2015-800021 号事件。以下「本件無効審判」という。)を請求した。 本件無効審判の手続では,平成27年4月20日付け訂正請求,同年7月7日付け無効理由通知,同年8月10日付け訂正請求,同年10月26日付け無効理由通知,同年12月2日付け訂正請求を経て,平成28年5月26日付け審決の予告(以下「本件審決予告」という。)がされた。 そこで,原告は,本件特許の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲をそれぞれ別紙明細書及び別紙特許請求の範囲(以下,それぞれ「訂正明細書」,「訂正特許請求の範囲」という。)のとおり訂正することを内容とする平成28年7月28日付け訂正請求(以下「本件訂正請求」という。同請求に含まれる訂正事項のうち,請求項1ないし4に係るものを請求項の番号に応じて「本件訂正1」などといい,これらをまとめて「本件訂正」という。また, 本件訂正後の請求項1ないし4記載の各発明を請求項の番号に応じて「本件訂正発明1」などとい い,これらをまとめて「本件各訂正発明」という。)をした。なお,平成27年4月20日付け訂正請求,同年8月10日付け訂正請求及び同年12月2日付け訂正請求は,いずれも取り下げたものとみなされた(特許法134条の2第6項)。 特許庁は,平成28年10月17日,「特許第5344105号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。特許第5344105号の請求項1ないし5に係る発明についての特許を無効とする。」との審決(以下「本件審決」という。)をした(なお,本件口頭弁論終結の時点において,本件審決は未確定である。)。 (以上につき,甲8,15,28,30,34,36,乙8,15,23) (5) 本件各発明の構成要件の分説 ア 本件発明1 本件発明1は,次のとおり(以下,分説に係る各構成要件を符号に対応して「構 4成要件A」などという。),構成要件A,B,C,B1,C1,C2,C3及びDに分説することができる。 A 設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニットと, B 基板が載置されるステージと, C 照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構とを備えており, B1 ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており, C1 ステージ移動機構は,照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させるものであるとともに,照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させるものであり, C2 ステージ移動機構は,第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに,第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり, C3 第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には,第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され,第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には,第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されている D ことを特徴とする光配向用偏光光照射装置。 イ 本件発明2 本件発明2は,構成要件A,B,C,B1,C1,C2,C3及びD(本件発明1の構成要件)と,次の構成要件A1に分説することができる。 A1 前記照射ユニットは,前記第一第二の各ステージが往路移動する際と復路移動する際の双方において各ステージ上の基板に偏光光を照射するものである ウ 本件発明3 本件発明3は,構成要件A,B,C,B1,C1,C2,C3及びD(本件発明 51の構成要件)又は構成要件A,B,C,B1,C1,C2,C3,D及びA1(本件発明2の構成要件)と,次の構成要件B2に分説することができる。 B2 前記第一第二の各ステージには,搭載された基板の向きを,照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きにする基板アライナーが設けられている エ 本件発明4 本件発明4は,構成要件A,B,C,B1,C1,C2,C3及びD(本件発明1の構成要件),構成要件A,B,C,B1,C1,C2,C3,D及びA1(本件発明2の構成要件),構成要件A,B,C,B1,C1,C2,C3,D及びB2(本件発明3のうち,本件発明1を引用するものの構成要件)又は構成要件A,B,C,B1,C1,C2,C3,D,A1及びB2(本件発明3のうち,本件発明2を引用するものの構成要件)と,次の構成要件C4に分説することができる。 C4 前記ステージ移動機構は,前記第一第二のステージの移動方向に沿ってガイド部材を備えており,このガイド部材は,前記第一のステージの移動のガイドと前記第二のステージの移動のガイドとに兼用されるものである (6) 本件各訂正発明の分説 ア 本件訂正発明1 本件訂正発明1は,以下のとおり,構成要件A,B´,C,B1,C1´,C2,C2´-2,C3´,C5´及びDに分説することができる。 A 設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニットと, B´ 光配向用膜材付きの基板が載置されるステージと, C 照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構とを備えており, B1 ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており, C1´ ステージ移動機構は,照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ,前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに,照射領域の他方の側 6に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ,前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり, C2 ステージ移動機構は,第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに,第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり, C2´-2 かつ,前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ,前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり, C3´ 第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には,第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され,第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には,第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されており, C5´ 前記第一第二ステージの各々は,基板を吸着するための吸着孔を有する,一体的に移動可能な複数のピンを含む D ことを特徴とする光配向用偏光光照射装置。 イ 本件訂正発明2 本件訂正発明2は,次のとおり,構成要件A,B´,C,B1,C1´,C2,C2´-2,C3´,A1´及びDに分説することができる。 A 設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニットと, B´ 光配向用膜材付きの基板が載置されるステージと, C 照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構とを備えており, B1 ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており, C1´ ステージ移動機構は,照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ,前記照射ユニットにより偏光光が 7照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに,照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ,前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり, C2 ステージ移動機構は,第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに,第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり, C2´-2 かつ,前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ,前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり, C3´ 第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には,第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され,第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には,第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されており, A1´ 前記照射ユニットは,前記第一第二の各ステージが往路移動する際と復路移動する際の双方において各ステージ上の基板に対し,偏光子からの偏光光を直接照射して,往路における照射による露光量と復路における照射による露光量とが積算されるようにする D ことを特徴とする光配向用偏光光照射装置。 ウ 本件訂正発明3 本件訂正発明3は,次のとおり,構成要件A,B2´,C´,E´,B1,B3´,C1´,C2,C6´及びDに分説することができる。 A 設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニットと, B2´ アライメントマークを有し,光配向用膜材付きの基板が載置されるステージと, C´ 照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射 8されるようにするステージ移動機構と, E´ 前記ステージに載置された前記基板上の前記アライメントマークを検出するアライメントセンサとを備えており, B1 ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており, B3´ 前記第一第二の各ステージには,前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて,搭載された基板の向きを,照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する基板アライナーが設けられ, C1´ ステージ移動機構は,照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ,前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに,照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ,前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり, C2 ステージ移動機構は,第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに,第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり, C6´ 第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には,第二のステージに搭載された基板の向きを前記基板アライナーにより調整した後の該第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され,第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には,第一のステージに搭載された基板の向きを前記基板アライナーにより調整した後の該第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されている D ことを特徴とする光配向用偏光光照射装置。 エ 本件訂正発明4 本件訂正発明4は,次のとおり,構成要件A,B2´,C´,E´,B1,B3´,C1´,C2,C2´-2,C3´,C4´及びDに分説することができる。 9 A 設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニットと, B2´ アライメントマークを有し,光配向用膜材付きの基板が載置されるステージと, C´ 照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構と, E´ 前記ステージに載置された前記基板上の前記アライメントマークを検出するアライメントセンサとを備えており, B1 ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており, B3´ 前記第一第二の各ステージには,前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて,搭載された基板の向きを,照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する基板アライナーが設けられ, C1´ ステージ移動機構は,照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ,前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに,照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ,前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり, C2 ステージ移動機構は,第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに,第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり, C2´-2 かつ,前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ,前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照 射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり, C3´ 第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には,第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され,第二の 10基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には,第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されており, C4´ 前記ステージ移動機構は,前記第一第二のステージの移動方向に沿ってガイド部材を備えており,このガイド部材は,前記第一のステージの移動のガイドと前記第二のステージの移動のガイドとに兼用された, D ことを特徴とする光配向用偏光光照射装置。 (7) 被告の行為 ア 被告は,平成26年中に,原告の日本国内における取引先一か所に被告製品2台(いずれも基板サイズ730mm×920mm用のもの)を販売した。被告は,平成27年に入ってから,原告の中国における取引先一か所に被告製品3台(いずれも基板サイズ2200mm×2500mm用のもの)を,原告の中国における別の取引先一か所に被告製品1台(基板サイズ1500mm×1850mm用のもの)を,それぞれ販売した。 イ 被告は,現在も被告製品を製造販売等している。 ウ 被告製品は,受注生産品であるため,その詳細な仕様は顧客ごとに異なるところがある(甲5)が,いずれもその基本的な構成として別紙被告製品説明書記載の各構成(以下,同説明書記載の符号に従い,「構成a」などという。)を有している。 被告製品の上記基本的な構成に照らせば,被告製品は,本件各発明及び本件各訂正発明の構成要件のうち,被告が充足性を争っている構成要件C,C1,C2,C3,B2,C4,C1´,C2´-2,C3´,C´,B3´及びC4´以外のものをいずれも充足すると認められる(なお,被告の主張中には,構成要件Dの充足性を争うようにみえる部分があるが,被告製品が光配向用偏光光照射装置であることは当事者間に争いがないから,同構成要件の充足性については,実質的な争いはないものといえる。)。 3 争点 11 (1) 被告製品は本件各発明の技術的範囲に属するか(争点1) (2) 本件各発明についての特許は特許無効審判により無効とされるべきものと認められるか(争点2) ア 本件各発明につき甲第9号証又は甲第13号証を主引例とする進歩性欠如が認められるか(争点2-1) イ 本件各発明につき甲第26号証を主引例とする進歩性欠如が認められるか(争点2-2) (3) 訂正の対抗主張は認められるか(争点3) ア 本件訂正は訂正要件を満たすか(争点3-1) イ 本件訂正により無効理由が解消するか(争点3-2) ウ 被告製品は本件各訂正発明の技術的範囲に属するか(争点3-3) (4) 原告が受けた損害の額(争点4) |
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争点に対する当事者の主張
1 争点1(被告製品は本件各発明の技術的範囲に属するか)について 【原告の主張】 (1) 構成要件C,C1,C2及びC3について 被告製品の構成cは本件各発明の構成要件Cに,構成c1は本件各発明の構成要件C1に,構成c2は本件各発明の構成要件C2に,構成c3は本件各発明の構成要件C3にそれぞれ該当するから,被告製品は,これらの構成要件をいずれも充足する。 (2) 構成要件B2について 被告製品の構成b3´は,本件発明3の構成要件B2に該当するから,被告製品は,同構成要件を充足する。 (3) 構成要件C4について 被告製品の構成c4´は,本件発明4の構成要件C4に該当するから,被告製品は,同構成要件を充足する。 12 (4) 被告の主張について 被告は,構成要件C,C1,C2,C3,B2及びC4の充足性を争うが,本件特許請求の範囲の記載からも,本件明細書等の記載からも,本件各発明にお ける「基板搭載位置」が必ず長さ方向に位置しなければならないとする根拠はないし,本件各発明における「ステージ移動機構」や本件発明4における「ガイド部材」につき細かな構造上の限定が付されているものでもない。また,本件明細書等の図5によれば,本件発明3における「基板アライナー」の構成要素となり得る「アライメントセンサ61」が「ステージ」上にないことも,当然に予定されているところである。被告の主張は,要するに,本件特許請求の範囲や本件明細書等の記載に基づかない限定解釈を試みるものにすぎず,いずれも失当である。 (5) 小括 上記(1)ないし(4)及び前記前提事実(7)ウによれば,被告製品は,本件発明1ないし4の構成要件をいずれも全て充足するといえるから,本件発明1ないし4の技術的範囲に属する。 【被告の主張】 (1) 構成要件C,C1,C2及びC3について ア 構成要件C,C1,C2及びC3の「ステージ移動機構」は,「ステージを移動させる」ものであり,その移動方向は,「ステージ上の基板が照射領域を通過し」あるいは「ステージ」を「戻す」方向(長さ方向)である(構成要件C1,C2)。本件明細書等の記載に照らしても,本件各発明には,「ステージ」を「基板搭載位置」から長さ方向と直行する方向に「移動させる」という技術思想が存在しないことが明らかである。 また,本件各発明が上記技術思想を欠くことからすれば,構成要件C1及びC3における「第一の各基板搭載位置」及び「第二の各基板搭載位置」は,長さ方向に存在するものであって,「ステージ移動機構」による「第一のステージ」及び「第二のステージ」の移動開始位置であることを必須とするものと解するべきである。 13 さらに,構成要件C3において,「第二のステージ上の基板が照射領域を通過する距離相当分以上のスペースが確保され」ているのは,「第一の基板搭載位置と照射領域」という長さ方向であり,「第一のステージ上の基板が照射領域を通過する距離相当分以上のスペースが確保されている」のも,「第二の基板搭載位置と照射領域との間」という長さ方向であるといえる。 イ これに対し,被告製品の構成cのシフト部移動機構と台車部移動機構との結合構成は,ステージ17を移動させるものではなく,ステージと共に移動するものであり,構成cのシフト部移動機構は,長さ方向(X方向)と直行する方向(Y方向)にシフト部19の往復移動を可能とするものである。 また,構成c1における「第一の各基板搭載位置」及び「第二の各基板搭載位置」は,長さ方向に直交する方向(Y方向)に配置されるものである。 さらに,構成c2において,台車部移動機構によって「第一のステージが戻る位置」及び「第二のステージが戻る位置」は,いずれも「基板搭載位置」ではないから,各ステージは,シフト部19により「基板搭載位置」に戻るものであることが不可欠である。 加えて,構成c3において,第一・第二の各ステージ上の基板が照射領域を通過する距離相当分以上のスペースが確保されているのは,長さ方向(X方向)に沿った第一のステージ17と照射領域の間及び第二のステージ17と照射領域の間であり,第一・第二の各基板搭載位置と照射領域との間ではない。 ウ したがって,構成c,c1,c2及びc3は,それぞれ構成要件C,C1,C2及びC3に該当するものとはいえない。 (2) 構成要件B2について 被告製品の構成b3´における「基板アライナー」は,「シフト部19」に設けられているものであり,「シフト部19」を「ステージ17」と同視することはできないから,本件発明3の構成要件B2における「各ステージ」に設けられている「基板アライナー」に該当しない。 14 (3) 構成要件C4について ア 被告製品の構成c4´における「台車移動機構」は,上記(1)と同様の理由により,本件発明4の構成要件C4にいう「ステージ移動機構」に該当しない。 イ 仮に,上記アの点を措いて,構成c4´の「台車部移動機構」が構成要件C4の「ステージ移動機構」に該当するものとすれば,「台車部移動機構」の構成要素である「ガイド部材12a」が「第一の台車部16の移動のガイドと第二の台車部16の移動のガイドとに兼用され」る一方で,本来,第一・第二のシフト部移動機構19及び各ステージ17の移動及びそのガイドを行っているところの「台車部移動機構」が,自らの構成要素である「台車部16」を「ガイド部材12a」を介して「ガイド」していることに帰するところ,ガイドの対象物が各シフト部移動機構19及び各ステージ17であると共に,台車部16であるというによる論理矛盾,台車部移動機構が自らの構成要素である台車部16を「ガイド」するという論理矛盾が生ずる。 したがって,構成c4´は,構成要件C4に該当するものとはいえない。 (4) 小括 上記(1)ないし(3)によれば,被告製品は,本件各発明の構成要件C,C1,C2及びC3を充足せず,本件発明3の構成要件B2を充足せず,本件発明4の構成要件C4を充足しないから,本件発明1ないし4の技術的範囲のいずれにも属しない。 2 争点2(本件各発明についての特許は特許無効審判により無効とされるべきものと認められるか)について (1) 本件各発明につき甲第9号証又は甲第13号証を主引例とする進歩性欠如が認められるか(争点2-1)について 【被告の主張】 ア 本件発明1について (ア) 本件特許の出願前に日本国内で頒布された刊行物である特開2009-265290号公報(甲9。本件審決にいう甲第1号証と同じ。以下「甲9公報(審判 15甲1)」という。)に記載された「光配向用偏光光照射装置」に関する発明(以下「甲9(審判甲1)発明」という。)は,本件各発明の構成要件A,B,C及びDに該当する構成を開示している。 同じく,本件特許の出願前に日本国内で頒布された刊行物である特許第5105567号公報(甲13。本件審決にいう甲第5号証と同じ。以下「甲13公報(審判甲5)」という。)に記載された「光配向照射装置」に関する発明(以下「甲13(審判甲5)発明」という。)は,本件発明1の構成要件A,B,C及びDに該当する構成を開示している。 (イ) 本件特許の出願前に日本国内で頒布された刊行物である特開2009-295950号公報(甲10。本件審決にいう甲第2号証と同じ。以下「甲10公報(審判甲2)」という。)に記載された「スキャン露光装置およびスキャン露光方法」に関する発明(以下「甲10(審判甲2)発明」という。)は,本件各発明の構成要件B,B1,C1,C2及びC3に該当する構成を開示している。 同じく,本件特許の出願前に日本国内で頒布された刊行物である特開2010-72615号公報(甲11。本件審決にいう甲第3号証と同じ。以下「甲11公報(審判甲3)」という。)に記載された「スキャン露光装置およびスキャン露光装置の基板搬送方法」に関する発明(以下「甲11(審判甲3)発明」という。)は,本件各発明の構成要件B,B1,C1,C2及びC3に該当する構成を開示している。 同じく,本件特許の出願前に日本国内で頒布された刊行物である特開2010-54849号公報(甲12。本件審決にいう甲第4号証と同じ。以下「甲12公報(審判甲4)」という。)に記載された「スキャン露光装置およびスキャン露光方法」に関する発明(以下「甲12(審判甲4)発明」という。)は,本件各発明の構成要件B,B1,C1,C2及びC3に該当する構成を開示している。 (ウ) そうすると,本件発明1は,構成要件A,B,C,B1,C1,C2及びDからなるところ,スキャン露光装置を光配向用偏光光照射装置と共用することは, 16一般的に行われていること(乙4,5),上記(イ)については周知技術というべきことからすれば,本件発明1は,@甲9(審判甲1)発明又は甲13(審判甲5)発明に対して,A甲10(審判甲2)発明,甲11(審判甲3)発明又は甲12(審判甲4)発明に開示された構成要件B,B1,C1,C2及びC3に該当する構成を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができたものであり,進歩性を欠く。 したがって,本件発明1についての特許は,特許無効審判により無効とされるべきものである。 イ 本件発明2について (ア) 本件発明2は,構成要件A,B,C,B1,C1,C2及びD(本件発明1の構成要件)に構成要件A1を付加したものである。 (イ) 甲10(審判甲2)発明,甲11(審判甲3)発明又は甲12(審判甲4)発明において,「第一第二の各ステージが往路移動する際と復路移動する際の双方において,各ステージの基板に露光用光を照射する」ことは当然予定されているところである。 (ウ) そうすると,本件発明2は,@甲9(審判甲1)発明又は甲13(審判甲5)発明に対して,A甲10(審判甲2)発明,甲11(審判甲3)発明又は甲12(審判甲4)発明に開示された構成を組み合わせるに際し て,A「露光用光」を「偏光光」に置換して,構成要件A1に該当する構成を併せて付加することにより,当業者が容易に発明をすることができたものであり,進歩性を欠く。 したがって,本件発明2についての特許は,特許無効審判により無効とされるべきものである。 ウ 本件発明3 (ア) 本件発明3は,構成要件A,B,C,B1,C1,C2及びD(本件発明1の構成要件)に構成要件B2を付加したものである。 (イ) 甲13(審判甲5)発明は,構成要件B2に該当する基板搭載位置から移動 17している基板に対する基板アライメントの構成についても開示している(甲13公報(審判甲5)の【0078】,図24)。 (ウ) そうすると,本件発明3は,@甲13(審判甲5)発明に対して,A甲10(審判甲2)発明,甲11(審判甲3)発明又は甲12(審判甲4)発明に開示された構成要件B,B1,C1,C2及びC3に該当する構成を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができたものであり,進歩性を欠く。 したがって,本件発明3についての特許は,特許無効審判により無効とされるべきものである。 エ 本件発明4について (ア) 本件発明4は,構成要件A,B,C,B1,C1,C2及びD(本件発明1構成要件)に構成要件C4を付加したものである。 (イ) 甲10(審判甲2)発明は,構成要件C4 に該当する構成を開示している(甲10公報(審判甲2)の【0013】,図2)。 同じく,甲11(審判甲3)発明は,構成要件C4に該当する構成を開示している(甲11公報(審判甲3)の【0017】,【0018】)。 同じく,甲12(審判甲4)発明は,構成要件C4に該当する構成を開示している(甲12公報(審判甲4)の【0013】,【0014】)。 (ウ) そうすると,本件発明4は,@甲9(審判甲1)発明又は甲13(審判甲5)発明に対して,A甲10(審判甲2)発明,甲11(審判甲3)発明又は甲12(審判甲4)発明に開示された構成要件B,B1,C1,C2及びC3に該当する構成を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができたものであり,進歩性を欠く。 したがって,本件発明4についての特許は,特許無効審判により無効とされるべきものである。 【原告の主張】 ア 本件発明1について 18 (ア) 甲10(審判甲2)発明,甲11(審判甲3)発明及び甲12(審判甲4)発明は,本件発明1における「基板を載置するステージ」及び「ステージ移動機構」を開示も示唆もしていない。 (イ) 光配向用偏光光照射装置とスキャン装置は,技術的に全く異なるから,@甲9(審判甲1)発明又は甲13(審判甲5)発明に対して,A甲10(審判甲2)発明,甲11(審判甲3)発明又は甲12(審判甲4)発明に開示された構成要件B,B1,C1,C2及びC3に該当する構成を組み合わせることは,容易でない。 (ウ) 甲10(審判甲2)発明,甲11(審判甲3)発明及び甲12(審判甲4)発明は,いずれも同一の出願人による同時期の出願に係るものであり,周知技術ではない。 (エ) 甲9(審判甲1)発明及び甲13(審判甲5)発明では,基板を搭載するステージを同じ軌道上で往復移動する必要性がない。そうすると,甲10(審判甲2)発明,甲11(審判甲3)発明及び甲12(審判甲4)発明が,ある基板に対する照射中に別の基板を回収又は載置する構成によりスループットを向上させることを開示しているとしても,あえてこれらの発明におけるステージを往復移動させる構成を甲9(審判甲1)発明又は甲13(審判甲5)発明に適用しようと考える理由がない。 (オ) 以上より,本件発明1は,被告主張の理由により進歩性を欠くものとはいえない。 イ 本件発明2について 上記アで主張したところのほか,甲10(審判甲2)発明,甲11(審判甲3)発明及び甲12(審判甲4)発明が「スキャン露光装置」に関するものであって,「各ステージ上の基板に偏光光を照射」しておらず,構成要件A1に該当する構成を開示するものでないことからすれば,本件発明2は,被告主張の理由により進歩性を欠くものとはいえない。 ウ 本件発明3について 19 上記アで主張したところのほか,甲13(審判甲5)発明が構成要件B2に該当する構成を開示するものでないことからすれば,本件発明3は,被告主張の理由により進歩性を欠くものとはいえない。 エ 本件発明4について 上記アで主張したところのほか,甲10(審判甲2)発明,甲11(審判甲3)発明及び甲12(審判甲4)発明が構成要件C4に該当する構成を開示するものでないことからすれば,本件発明4は,被告主張の理由により進歩性を欠くものとはいえない。 (2) 本件各発明につき甲第26号証を主引例とする進歩性欠如が認められるか(争点2-2) 【被告の主張】 ア 本件発明1について 本件発明1は,前記(1)で主張したところに加え,本件審決予告及び本件審決において特許庁の判断が実質的に示されているとおり,本件特許の出願前に日本国内で頒布された刊行物である特開平2007-114647号公報(甲26。本件審決にいう「参考資料3」と同じ。以下「甲26公報(参考資料3)」という。)に記載された「光配向用偏光光照射装置」に関する発明(以下「甲26(参考資料3)発明」という。この発明は,ステージを一つとするものであるが,本件発明1がステージを二つとすることにより有する構成を除き,同発明の構成に相当するものを開示している。また,同発明においても,スループットの向上は当然の課題である。)及び甲10(審判甲2)発明その他の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,進歩性を欠く。 したがって,本件発明1についての特許は,特許無効審判により無効とされるべきものである。 イ 本件発明2について 本件発明2は,上記ア及び前記(1)で主張したところに加え,本件審決予告及び 20本件審決において特許庁の判断が実質的に示されているとおり,甲26(参考資料3)発明及び甲10(審判甲2)発明その他の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,進歩性を欠く。 したがって,本件発明2についての特許は,特許無効審判により無効とされる べきものである。 ウ 本件発明3について 本件発明3は,上記ア及び前記(1)で主張したところに加え,本件審決予告及び本件審決において特許庁の判断が実質的に示されているとおり,甲26(参考資料3)発明,甲10(審判甲2)発明その他の周知技術及び甲13(審判甲5)発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,進歩性を欠く。 したがって,本件発明3についての特許は,特許無効審判により無効とされるべきものである。 エ 本件発明4について 本件発明4は,上記ア及び前記(1)で主張したところに加え,本件審決予告及び本件審決において特許庁の判断が実質的に示されているとおり,甲26(参考資料3)発明,甲10(審判甲2)発明その他の周知技術及び甲13(審判甲5)発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,進歩性を欠く。 したがって,本件発明4についての特許は,特許無効審判により無効とされるべきものである。 【原告の主張】 前記(1)で主張したところに加え,後記3(2)において本件各訂正発明について主張するところによれば,被告主張の理由により,本件各発明が進歩性を欠くとはいえないし,仮に,そうでないとしても,本件訂正により当該無効理由は解消するものである。 3 争点3(訂正の対抗主張は認められるか)について (1) 争点3-1(本件訂正は訂正要件を満たすか)について 21 【原告の主張】 ア 本件訂正1について 本件訂正1は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,本件明細書等及び本件特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって(本件明細書の【0002】,【0009】,【0041】【0043】,【0050】参照),実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しない。 イ 本件訂正2について 本件訂正2は,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること,特許請求の範囲の減縮及び誤記の訂正を目的とするものであり,本件明細書等及び本件特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって(本件明細書の【0002】,【0006】,【0009】,【0013】,【0041】,【0043】及び【0045】参照),実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しない。 ウ 本件訂正3について 本件訂正3は,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,本件明細書等及び本件特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって(本件明細書等の【0002】,【0009】,【0028】ないし【0032】,【0036】及び【0041】並びに図6(2)及び(4)参照),実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しない。 エ 本件訂正4について 本件訂正4は,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること,特許請求の範囲の減縮及び誤記の訂正を目的とするものであり,本件明細書等及び本件特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって(本件明細書の【0002】,【0009】,【0028】ないし【0032】及び【0041】,本件特許請求の範囲の請求項3参照),実 22質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しない。 【被告の主張】 争う。 (2) 争点3-2(本件訂正により無効理由が解消するか)について 【原告の主張】 ア 本件訂正発明1について 本件訂正発明1は,「前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ,前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり,」との構成(構成要件C2´-2),すなわち,ステージ移動機構が,一方のステージの復路移動に続くように,他方のステージの往路移動を行わせるようにするとの構成を,本件発明1に付加した発明である。そして,本件訂正発明1は,一方のステージの復路移動に続くように他方のステージの往路移動を行うことによって,一方のステージが復路移動を行う間に,他方のステージの往路移動を行うことができ,その結果,一方のステージの復路移動の時間と,他方のステージの往路移動の時間とが重なり,タクトタイムを削減することができるという効果を奏する。 本件審決予告では,本件発明1は,甲26(参考資料3)発明に,甲10(審判甲2)発明及び周知技術を組み合わせることによって,容易に想到できるものであるとの判断が示された(乙15)。 しかし,本件訂正発明1において付加された上記構成(構成要件C2´-2)は,本件審決予告が指摘したいずれの先行技術文献にも開示されていない。 したがって,甲26(参考資料3)発明,甲10(審判甲2)発明及び周知技術に関する先行技術文献に基づき,本件訂正発明1に想到することは,当業者といえども容易ではなかった。 してみると,仮に,本件発明1が上記先行技術文献との関係で進歩性を欠くもの 23であったとしても,本件訂正1により当該無効理由は解消されたものといえる。 イ 本件訂正発明2について 本件訂正発明2は,「ステージ移動機構は,・・・前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ,前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり ,」との構成(構成要件C2´-2)を本件発明2に付加したものである。 したがって,本件訂正発明1と同様に,甲26(参考資料3)発明,甲10(審判甲2)発明及び周知技術に関する先行技術文献に基づき,本件訂正発明2に想到することは,当業者といえども容易ではなかった。 してみると,仮に,本件発明2が上記先行技術文献との関係で進歩性を欠くものであったとしても,本件訂正2により当該無効理由は解消されたものである。 ウ 本件訂正発明3について (ア) 本件訂正発明3は,「アライメントマークを有し,」,「前記ステージに載置された前記基板上の前記アライメントマークを検出するアライメントセンサ」及び「前記第一第二の各ステージには,前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて,搭載された基板の向きを,照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する基板アライナーが設けられ」というアライナーに関する構成を本件発明3により付加したものである。そして,本件訂正発明3では,基板が,アライメントマークを有するところ,光配向用偏光光照射装置が,ステージに載置された基板のアライメントマークを検出するアライメントセンサを備え,このアライメントセンサによって検出されたアライメントマークの位置情報に基づいて,偏光光の光軸に対して基板の向きを所定の方向に円周方向に調整する。かかる調整の目的は,ステージに載置された状態にある基板のアライメントマークの位置情報を基に基板を調整することから明らかなように,ステージに載置された基板の向きが,偏光光の光軸に対して所定の向きになるよう 24に,基板の向きを円周方向に調整することである。シングルステージの場合には,アライメントにより,アライメント時間だけ,タクトタイムが増加するところ,訂正明細書の【0037】に記載されるように,一方のステージ上の基板のアライメントを他方のステージ上の基板の移動時間に含めることで,タクトタイムの短縮とアライメントによる偏光光の偏光軸に対する基板の向きの高精度化を両立するという特段の効果を奏する。 また,本件訂正発明3では ,円周方向に基板を調整することを特定し,「第一(二)の基板搭載位置に位置した第一(二)のステージと照射領域の間には,第二(一)のステージに搭載された基板の向きを前記基板アライナーにより調整した後の該第二(一)のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され,」との構成に関して,円周方向に調整された基板が通過する分以上のスペースが,基板搭載位置に位置したステージと照射領域との間に存在することを明確にした。光配向用偏光光照射装置では,基板の向きは,その一辺が必ずしも進行方向に対して平行にはならないため,本件訂正発明3においては,基板搭載位置と照射領域との間のスペースは,基板の一辺よりも長くなる。 (イ) 本件審決予告では,本件発明3に記載された「アライナー」が,甲13(審判甲5)発明に開示される「ステージ4」,「可動台55」及び「回転部54」に一致するとした上で,光方向を変化させるような回転ずれが,画像のムラを生じさせるとの課題を解決することを動機付けとして,甲10(審判甲2)発明を適用した甲26(参考資料3)発明に,甲13(審判甲5)発明の構成を考慮すれば,本件発明3に容易に想到できるとされた(乙15)。 しかし,本件訂正発明3において追加された,アライメントに関する構成及び照射領域と基板搭載位置に位置するステージとの間のスペースを確保する構成は,本件審決予告が指摘するいずれの先行技術文献にも開示されていない。 (ウ) したがって,甲26(参考資料3)発明,甲10(審判甲2)発明,甲13(審判甲5)発明及び周知技術に関する先行技術文献に基づき,本件訂正発明3に 25想到することは,当業者といえども容易ではなかった。 してみると,仮に,本件発明3が上記先行技術文献との関係で進歩性を欠くものであったとしても,本件訂正3により当該無効理由は解消されたものといえる。 エ 本件訂正発明4について 本件訂正発明4は,本件訂正発明1及び3で付加された構成と同様の構成を本件発明4に付加したものである。 したがって,本件訂正発明1及び本件訂正発明3と同様に,甲26(参考資料3)発明,甲10(審判甲2)発明及び周知技術に関する先行技術文献に基づいても,また,甲26(参考資料3)発明,甲10(審判甲2)発明及び甲13(審判甲5)発明に基づいても,本件訂正発明4に想到することは,当業者といえども容易ではなかった。 してみると,仮に,本件発明4が上記先行技術文献との関係で進歩性を欠くものであったとしても,本件訂正4により当該無効理由は解消されたものといえる。 【被告の主張】 ア 本件訂正発明1について 甲10(審判甲2)発明においては,基板Wにおいて,復路移動を開始する前に側方への移動が行われ,基板Wの復路移動と基板W´の往路移動とは,側方における配置領域に偏差が生じているが,甲26(参考資料3)発明をベースとして,甲10(審判甲2)発明の露光装置における2個の基板及びステージの移動方式を光配向用偏光光照射装置に転用した場合,基板Wの側方への移動は不要であり,当業者において,側方への移動を伴わない基板Wを載置する第一のステージ及び基板W´を載置する第二のステージにつき,側方における配置領域に偏差を伴わずに ,前者の復路移動と後者の往路移動,前者の往路移動と後者の復路移動とを同時に実現し得ることは,容易に想到し得た。 したがって,本件訂正発明1は,甲26(参考資料3)発明と甲10(審判甲2)発明その他の周知技術に基づいて当業者容易に発明をすることができたものであり, 26進歩性を欠く。 イ 本件訂正発明2について 本件訂正発明2も,本件訂正発明1と同様,構成要件C2´-2が追加されているにすぎない。 したがって,本件訂正発明1と同様に,本件訂正発明2も,甲26(参考資料3)発明及び甲10(審判甲2)発明その他の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,進歩性を欠く。 ウ 本件訂正発明3について (ア) 甲10(審判甲2)発明は,構成要件E´の全て,構成要件B2´及びB3´を開示しているか,明瞭に示唆している。一方で,甲10(審判甲2)発明と構成要件B2´及びB3´とは,対象とする基板の種類及び基板アライメントにおける角度基準が相違するものの,甲26(参考資料3)発明に甲10(審判甲2)発明を組み合わせるに当たり,乙第21号証の1ないし3及び乙第22号証の1ないし6に示される周知技術を斟酌し,かつ,基板アライナーを,甲13(審判甲5)発明及び乙第22号証の1ないし6に示される周知技術のように,偏光方向を基準とした場合,当該相違は解消されるから,構成要件B2´,E´及びB3´は,本件訂正発明3の進歩性を裏付けるものではない。 (イ) 甲26(参考資料3)発明と甲10(審判甲2)発明の結合を前提とし,基板アライメントに関する甲13(審判甲5)発明につき,基板におけるアライメントマークをアライメントセンサーにより検出することは,乙第22号証の1ないし6の周知技術を採用し,当業者は容易に想到することができる。上記結合を前提とした上で,甲13(審判甲5)発明を採用すれば,必然的に基板アライメントの対象は,光配向膜付きの基板となり,当該基板におけるアライメントマーク及びアライメントセンサーについて,乙第22号証の1ないし6の周知技術を採用することに何らの困難性も存在しない。 (ウ) したがって,本件訂正発明3も,本件審決が説示するとおり,甲26(参考 27資料3)発明,甲10(審判甲2)発明その他の周知技術及び甲13(審判甲5)発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって,進歩性を欠く。 エ 本件訂正発明4について 構成要件B2´,E´,B3´,C2´-2が技術内容として進歩性を基礎付けるものでない以上,これらの構成要件を付加した本件訂正発明4も,甲26(参考資料3)発明,甲10(審判甲2)発明その他の周知技術及び甲13(審判甲5)発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,進歩性を欠く。 (3) 争点3-3(被告製品は本件各訂正発明の技術的範囲に属するか)について 【原告の主張】 ア 本件訂正発明1及び2について (ア) 構成要件C及びC2について 前記1において主張したとおり,被告製品は,構成要件C及びC2を充足する。 (イ) 構成要件C3´について 構成要件C3´は,構成要件C3と同内容であるから,前記1において主張したところと同じ理由により,被告製品は,構成要件C3´を充足する。 (ウ) 構成要件C1´について 被告製品の構成c1は構成要件C1´に該当するから,被告製品は,同構成要件を充足する。 被告は,被告製品が構成要件C1及びC2を充足しないとした上で,これと同じ理由により構成要件C1´の充足性を争うが,被告の同主張に理由がないことは,前記1において主張したとおりである。 (エ) 構成要件C2´-2について 被告製品の構成c2-2´は,構成要件C2´-2に該当する。 なお,被告製品の仕様書(甲3)では,往復照射が必要なツインステージの製品において,ワークサイズ1,500×1,850mm,搬送速度140mm/s, 28Robotによる基板交換時間10秒,照射エリア2,232×1,160mmという条件の下,基板1枚を処理するのにかかる時間を計算すると,基板を斜めにせず短辺方向に移動させたとしても59秒かかるにもかかわらず,「タクトタイム」(1枚の基板を処理するのにかかる時間)が「42秒」と規定されている。この仕様に鑑みれば,被告製品においても,基板2枚が同時に照射エリアに入っている時間があることになる。すなわち,被告製品においても,第一のステージ17の第一の側への復路移動に続くように第二のステージ17の照射ユニット方向への往路移動が行われ,第二のステージ17の復路移動に続くように第一のステージ17の照射ユニット方向への往路移動が行われているものといえる。 したがって,被告製品は,構成要件C2´-2を充足する。 イ 本件訂正発明3について (ア) 構成要件C2について 前記1において主張したとおり,被告製品は,構成要件C2を充足する。 (イ) 構成要件C´について 構成要件C´は,構成要件Cと同内容であるから,前記1において主張したところと同じ理由により,被告製品は,構成要件C´を充足する。 (ウ) 構成要件C1´について 上記アで主張したとおり,被告製品は構成要件C1´を充足する。 (エ) 構成要件B3´について 被告製品の構成b3´は,構成要件B3´に該当する。 なお,被告の主張に理由がないことは,前記1において主張したとおりである。 したがって,被告製品は,構成要件B3´を充足する。 ウ 本件訂正発明4について (ア) 構成要件C2について 前記1において主張したとおり,被告製品は,構成要件C2を充足する。 (イ) 構成要件C1´及びC2´-2について 29 前記アで主張したとおり,被告製品は構成要件C1´及びC2´-2を充足する。 (ウ) 構成要件C´及びB3´について 上記イにおいて主張したとおり,被告製品は構成要件C´及びB3´を充足する。 (エ) 構成要件C4´について 構成要件C4´は,構成要件C4と同内容であるから,前記1において主張したところと同じ理由により,被告製品は,同構成要件を充足する。 エ 小括 上記アないしウ及び前記前提事実(7)ウによれば,被告製品は,本件訂正発明1ないし4の構成要件をいずれも全て充足するといえるから,本件訂正発明1ないし4の技術的範囲に属する。 【被告の主張】 ア 本件訂正発明1及び2について (ア) 構成要件C及びC2について 前記1において主張したとおり,被告製品は,構成要件C及びC2を充足しない。 (イ) 構成要件C3´について 構成要件C3´は,構成要件C3と同内容であるから,前記1において主張したところと同じ理由により,被告製品は,構成要件C3´を充足しない。 (ウ) 構成要件C1´について 構成要件C1´は,構成要件C1におけるステージ移動機構が各基板搭載位置から各ステージを照射領域に「移動させる」という要件に,各ステージにつき「前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させ」るという要件を付加しているところ,この付加された要件は,構成要件A及びC2の技術内容にすぎない。 そうすると,前記1において主張した理由により被告製品の構成c1及びc2が構成要件C1及びC2に該当しない以上,構成c1が構成要件C1´を充足することはない。 30 (エ) 構成要件C2´-2について 構成要件C2´-2の各ステージによる「復路移動」,「往路移動」は,共に,側方において同一の配置領域であることを必要不可欠としており,双方の配置領域に偏差(ズレ)は存在しない。そして,「続く」とは,「後に従う」の趣旨であり(乙20),構成要件C2´-2の「復路移動に続くように・・・往路移動を行わせ」の「続く」とは,側方における同一の配置領域を考慮するならば,単に「復路移動が終了する前に往路移動を行わせ」るという時間的関係を表すだけでなく ,「復路移動に対し同一の配置領域にて往路移動を行わせ」るという空間上の関係をも裏付けるものである。 これに対し,被告製品における各ステージの「復路移動」及び「往路移動」は,別紙被告製品説明書の図4に示すように,各ステージにおける往路の配置領域と,復路の配置領域とに偏差が生じていることを原因として,同別紙の図2に示すように,一方のステージの復路移動と他方のステージの往路移動とは,側方における配置領域に偏差が発生していることから,構成要件C2´-2の「続く」という要件を充足していないといえる。 なお,原告は,タクトタイムが59秒と算定され得るところ,仕様書において42秒と記載されていることを指摘するが,そのことから,当然に2枚の基板が同時に照射エリアに入っている時間があることになるものではなく,原告の主張は,根拠を欠くものである。 したがって,構成c2-2´は,構成要件C´-2に該当するものではない。 (オ) 以上のとおり,被告製品は,構成要件C´,C1´,C2´,C3´,C2-2´のいずれも充足しない。 イ 本件訂正発明3について (ア) 構成要件C2について 前記1において主張したとおり,被告製品は,構成要件C2を充足しない。 (イ) 構成要件C´について 31 構成要件C´は,構成要件Cと同内容であるから,前記1において主張したところと同じ理由により,被告製品は,構成要件C´を充足しない。 (ウ) 構成要件C1´について 上記アで主張したとおり,被告製品は構成要件C1´を充足しない。 (エ) 構成要件B3´について 前記1において主張したとおり,被告製品の構成b3´における「基板アライナー」は,「シフト部19」に設けられているものであり,「シフト部19」を「ステージ17」と同視することはできないから,構成要件B3´における「各ステージ」に設けられている「基板アライナー」に該当しない。 また,構成要件B3´は,構成要件B2の「前記第一第二の各ステージには・・・所定の向きにする基板アライナーが設けられている」との構成に由来し,基板アライナーであるXYθ移動機構62がステージのうちの固定ベース20A上に設けられているという実施形態の構成(本件明細書等の図5及び【0028】)に立脚しているところ,被告製品における各ステージ17は,上記実施形態のように固定ベース20Aと可動ベース20Bに分割されておらず,構成要件B3´につき,特許法36条6項1号のサポート要件を考慮して技術的範囲を規定するならば,被告製品のb3´は,構成要件B3´に該当し得ない。 したがって,被告製品が構成要件B3´を充足する余地はない。 ウ 本件訂正発明4について (ア) 構成要件C2について 前記1において主張したとおり,被告製品は,構成要件C2を充足しない。 (イ) 構成要件C1´及びC2´-2について 前記アで主張したとおり,被告製品は構成要件C1´及びC2´-2を充足しない。 (ウ) 構成要件C´及びB3´について 上記イにおいて主張したとおり,被告製品は構成要件C´及びB3´を充足しな 32い。 (エ) 構成要件C4´について 構成要件C4´は,構成要件C4と同内容であるから,前記1において主張したところと同じ理由により,被告製品は,同構成要件を充足しない。 エ 小括 上記アないしウによれば,被告製品は,本件訂正発明1及び2の構成要件C,C1´,C2,C2´-2及びC3´を充足せず,本件訂正発明3の構成要件C´,B3´,C1´及びC2を充足せず,本件訂正発明4の構成要件C´,B3´,C1´,C2,C2´-2,C3´及びC4´を充足しないから,本件訂正発明1ないし4のいずれの技術的範囲にも属しない。 4 争点4(原告が受けた損害の額)について 【原告の主張】 (1) 特許法102条1項による算定(主位的主張) 原告は,本件各発明の実施品である光配向用偏光光照射装置(以下「原告製品」という。)を製造販売し,同種装置の市場において80%を下らないシェアを有している。世界において,光配向用偏光光照射装置の需要者は,液晶基板を取り扱う大規模な会社に限定されており,世界でも3社程度しか存在しない。そのため,被告が被告製品を前記前提事実2(7)アのとおり販売したことにより,原告は原告製品の販売機会を喪失し,原告製品を販売することにより得ることができたはずの利益を得られなかった。 基板サイズ730mm×920mm用の原告製品の販売による原告の利益は,1台当たり7000万円を下らず,基板サイズ2200mm×2500mm用の原告製品の販売による原告の利益は,3台で8億5600万円を下らず,基板サイズ1500mm×1850mm用の原告製品の販売による原告の利益は,1台当たり8000万円を下らない。 したがって,被告による前記前提事実(7)アの被告製品の販売により原告が受け 33た損害の額は,特許法102条1項により,10億7600万円を下らないものと算定される。 (2) 特許法102条3項に基づく算定(予備的主張) 基板サイズ730mm×920mm用の被告製品の販売価格は,1台当たり1億8900万円であり,基板サイズ2200mm×2500mm用の被告製品の販売価格は,1台当たり5億1000万円であり,基板サイズ1500mm×1850mm用の被告製品の販売価格は,1台当たり2億9000万円である。そうすると,被告による上記アの被告製品の売上高は,11億7800万円である。 原告が被告に本件特許権について実施許諾をするとすれば,その実施料相当額は,被告製品の売上高の10%を下ることはない。 したがって,仮に上記(1)の算定によらないとしても,被告による前記前提事実(7)アの被告製品の販売により原告が受けた損害の額は,特許法102条3項により,少なくとも1億1780万円を下らないものと算定される。 (3) 小括 以上より,原告は,被告に対し,特許権侵害の不法行為(民法709条)に基づく損害賠償金10億7600万円(少なくとも1億1780万円)及びこれに対する不法行為後の日(訴状送達の日の翌日)である平成27年7月23日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 【被告の主張】 原告製品の販売による原告の利益の額は不知,その余は否認し又は争う。 |
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当裁判所の判断
1 争点2-2(本件各発明につき甲第26号証を主引例とする進歩性欠如が認められるか)及び争点3-2(本件訂正により無効理由が解消するか)について (1) 主引例その他の公知技術について ア 甲26(参考資料3)発明について (ア) 本件特許の出願前に日本国内で頒布された刊行物である甲26(参考資料3) 34公報には,次の記載がある。 a 技術分野 「本発明は,液晶素子の配向膜や視野角補償フィルムの配向層などの配向膜の光配向を行なう偏光光照射装置に関する。」(【0001】) b 発明を実施するための最良の形態 「図1に本発明の第1の実施例の偏光光照射装置の構成を示す。光照射部20A,20Bには,線状の光源である,高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等の棒状のランプ21と,ランプ21からの光を反射する断面が楕円形の樋状集光鏡22が内蔵されている。光照射部20A,20Bは,ランプ21の長手方向が,ワーク50上に形成された光配向膜51の幅方向(搬送方向に対して直交方向)になるように配置されている。・・・」(【0013】) 「光照射部20A,20Bのランプ21の長手方向の両側には,ブロック23が取り付けられ,このブロック23を介して支柱24が取り付けられている。光配向膜51が形成されたワーク50は,上記2本の支柱の24間を搬送される。・・・」(【0015】) 「ワーク50が搬送されると,光配向膜51は,まず,光照射部20Bからの偏光光が照射され,次に光照射部20Aからの偏光光が照射される。・・・光照射部 3520Aと20Bの両方の下を通過して偏光光が照射された光配向 膜51は,図2(c)に示すように両者の照度分布が積算され,結果として均一なエネルギー分布で偏光光が照射されることになる。・・・」(【0016】) 「ワーク50は,ロールに巻かれた長尺帯状のワークであってもよいし,また,光配向膜51が形成された例えば液晶パネルの大きさに整形された矩形状のワークであってもよい。ワーク50が矩形状の場合,ワーク50は図示しないワークステージ上に載置され,光照射部20A,20Bから偏光光を照射しながらワークステージを直線移動させて,光配向膜の光配向処理をする。なお,ワーク50の光配向膜51に偏光光を照射し,光配向処理を行なう際,偏光光を照射しながらワーク50を連続的に移動させてもよいし,ワークを間歇的に移動させながら偏光光を照射してもよい。・・・また,一方向だけでなくワーク50を往復移動させて,例えば光照射部20B→20A→20A→20Bのように偏光光を照射するようにしても良い。」(【0017】) (イ) 上記(ア)によれば,甲26(参考資料3)発明は,次のとおりのものと認められる。 「設定された照射領域へ偏光光を出射する光照射部20A,20Bが配置され, 光配向膜51が形成された矩形状のワーク50がワークステージ上に載置され,前記ワークステージを直線移動させるステージ移動機構,を備え, 前記光照射部20A,20Bから偏光光を照射しながら前記ワークステージを直線移動させて,前記光照射部20Aと20Bの両方の下を通過させ,前記光配向膜51の光配向処理をするものであって, 前記ワーク50を往復移動させて,光照射部20B→20A→20A→20Bのように偏光光を照射するようにした,前記光配向膜51の光配向を行なう,液晶素子の製造に関するスキャン照射する偏光光照射装置。」 イ 甲10(審判甲2)発明について (ア) 本件特許の出願前に日本国内で頒布された刊行物である甲10(審判甲2) 36公報には,次の記載がある。 a 技術分野 「本発明は,スキャン露光装置およびスキャン露光方法に関し,より詳細には,液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等の大型のフラットパネルディスプレイの基板上にマスクのマスクパターンを露光転写するのに好適なスキャン露光装置およびスキャン露光方法に関する。」(【0001】) b 背景技術 「大型の薄形テレビ等に用いられる液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等の大型のフラットパネルディスプレイは,基板上にマスクのパターンを分割逐次露光方式で近接露光転写することで製造されている。この種の分割逐次露光方法としては,例えば,パネルと同寸のマスクを用い,該マスクをマスクステージで保持すると共に基板をワークステージで保持して両者を近接して対向配置する。そして ,ワークステージをマスクに対してステップ移動させる毎にマスク側から基板にパターン露光用の光を照射して,複数のマスクパターンを基板上に露光転写する(例えば,特許文献1参照。)。特許文献1に記載の露光装置では,露光位置に対して左右両側にチャックに対してガラス基板のロード/アンロードを行うロード/アンロード位置が配置され,一方のチャック上のガラス基板で露光が行われている間に,他方のガラス基板でロード/アンロードを行ってスループットを向上させることが提案されている。」(【0002】。なお,特許文献1は,特開2005-140935号公報である。) 「また,他の露光方法として,マスクを細分化して,これらマスクを保持する複数のマスク保持部を千鳥状に配置し,基板を一方向に移動させながら露光を行うスキャン露光方式が知られている(例えば,特許文献2参照。)。この露光方式では,基板に形成されるパターンに,ある程度繰り返される部位があることを前提として,これをつなぎ合わせることで大きなパターンを形成できることを利用したものである。この場合,マスクは,パネルに合わせて大きくする必要がなく,比較的安価な 37マスクを用いることができる。」(【0003】。なお,特許文献2は,特開2007-165821号公報である。) c 発明が解決しようとする課題 「・・・特許文献1に記載の露光装置では,スループットの向上は図られているものの,パネルの大型化に伴ってマスクが大型化し,製造コストが嵩むという問題がある。」(【0004】) 「また,特許文献2に記載の露光装置は,全露光領域を隙間なくカバーできるように,基板の搬送方向と直交する方向に沿って千鳥状にマスク保持部,および照射部を配置しなければならず,従って多数のマスク保持部,および照射部が必要となる。近年のフラットパネルディスプレイの大型化に伴い,全露光領域を隙間なくカバーするためのマスク保持部,および照射部の数量はますます多くなり,露光装置の製造コスト上昇の一因となっていた。」(【0005】) 「本発明は,前述した課題に鑑みてなされたものであり,その目的は,マスク保持部,および照射部の数量を削減してコストダウンを図ることができるとともに,スループットを向上することができるスキャン露光装置およびスキャン露光方法を提供することにある。」(【0006】) d 発明の効果 「本発明のスキャン露光装置及びスキャン露光方法によれば,基板を露光領域に対して往復して搬送することで,必要となるマスク保持部および照射部の数量を削減することができ,スキャン露光装置の製造コストを大幅に低減することができる。 また,2つの基板交換領域を2つの基板保持領域の露光領域と反対側にそれぞれ設けて,基板の露光動作と,基板の搬出・搬入動作とを行うタイミングを少なくともオーバーラップするようにしたので,スループットを向上することができる。 また,本発明のスキャン露光方法によれば,第1の転写パターン形成後に第2の転写パターンを形成する前の移動工程において,所定の方向と反対方向(即ち,露光時の搬送方向と反対方向)への搬送と,直交方向への移動は同時に行なわれるので, 38スループットを向上することができる。」(【0008】) e 発明を実施するための最良の形態 「図2及び図3に示すように,露光機本体2は,基板Wを浮上させて支持すると共に,所定の方向であるX方向および該所定の方向と直交する方向であるY方向に搬送する基板搬送機構14と,Y方向に沿って並んでそれぞれ配置され,複数のマスクMをそれぞれ保持する複数(図1に示す実施形態において6個)のマスク保持部11と,マスク保持部11をそれぞれ駆動する複数のマスク駆動部12と,複数のマスク保持部11の上部にそれぞれ配置されて露光用光を照射する複数の照射部13と,を主に備える。」(【0011】) 39 「基板搬送機構14は,浮上ユニット15a,15bと,基板WのY方向一側(図1において上辺)を保持してX方向に搬送可能,且つY方向に移動可能な第1及び第2の基板駆動ユニット16,17とを備える。」(【0012】) 「第1及び第2の基板駆動ユニット16,17は,図2に示すように,X方向搬送機構50,51と,これらX方向搬送機構50,51によってX方向に沿って往復搬送される移動基台52,53と,各移動基台52,53上に配設されるY方向搬送機構54,55と,これらY方向搬送機構54,55によってY方向に沿って往復搬送される吸着パッド56,57をそれぞれ備える。」(【0013】) f スキャン露光装置1の動作 「・・・図5のフローチャート及び図6の動作説明図を用いて説明する。・・・」(【0026】) 40 「まず,第1の基板駆動ユニット16が第1の基板交換領域C1に移動した状態で(ステップS1a),基板搬送ロボット5によって第1の基板交換領域C1に基板Wの搬入が行われる(ステップS2a)。そして,上述したように,搬入された基板Wのプリアライメントが行われた後(ステップS3a),基板Wが第1の基板駆動ユニット16の吸着バッド56によって吸着・保持される(ステップS4a)。」(【0027】) 「その後,第1の基板駆動ユニット16を駆動して,浮上ユニット15a,15bからの空気流によって浮上支持された状態で一定の速度でX方向に搬送され,基板Wは,図6(a)に示すように,第1の基板保持領域B1へ移動する(ステップS5a)。このとき,第2の基板駆動ユニット17は,第2の基板交換領域C2へ移動する(ステップS1b)。」(【0028】) 41 「さらに,基板Wは,一定の速度でX方向に搬送され,マスクパターン61,62を形成した面を下にしてマスク保持部11に保持されるマスクMと近接対向する露光領域A内に進入する。」(【0029】) 「図6(b)に示すように,第1の基板駆動ユニット16によってX方向に搬送される基板Wが,第1検知位置SP1に達すると,撮像手段35が基板WとマスクMの相対位置を検知し,この位置データに基づいて制御部から出力される指令信号によってマスク駆動部12が作動してマスク保持部11を移動させることにより ,基板Wへのマスクパターン61の露光転写に先立って,基板WとマスクMとの位置誤差が修正される。」(【0030】) 「位置誤差が修正されて搬送される基板Wには,それぞれのマスクMを介して照射部13から露光用光ELが照射されてマスクパターン61が露光転写される。これにより,露光領域Aを通過して第2の基板保持領域B2に位置する基板Wには,Y方向に所定の間隔Gずつ離れた複数(図3に示す実施例では6本)の第1の転写パターン83が形成される(ステップS6a)。なお,隣接する第1の転写パターン83間の部分は未露光部である。」(【0031】) 「次に,第1の転写パターン83形成後,露光領域Aを越えた基板Wを保持する第2の基板保持領域B2では,図6(c)に示すように,第1の基板駆動ユニット16のY方向搬送機構54によって,基板Wを保持する吸着パッド56をマスク保持部11に対してY方向に所定の距離Lだけ移動させる(ステップS7a)。具体的に,各マスクパターン61,62のY方向における中心位置が一致している本実施形態においては,所定の距離Lは,隣接するマスクMのマスクパターン61,62のY方向における中心間距離Dの略1/2である。」(【0032】) 「また,同時に,図示しない駆動装置を作動させて,撮像手段35を第1検知位置SP1から第2検知位置SP2に移動させる。これにより,基板Wの往路搬送および復路搬送のいずれの搬送時にも,基板WがマスクMの下方に位置する前に,即ち,マスクパターンの露光転写に先立って,基板WとマスクMとの相対位置を検知 42して位置誤差を修正することができる。」(【0033】) 「第1の基板駆動ユニット16は,X方向搬送機構50は基板Wの搬送方向をX方向と逆方向に切り替えて,第2の基板保持領域B2に保持されていた基板Wを,X方向と逆方向に搬送する。そして,基板Wが第2検知位置SP2に達すると,撮像手段35が基板WとマスクMの相対位置を検知し,マスク駆動部12がマスク保持部11を移動させて基板WとマスクMとの位置誤差を修正する。そして,照射部13からの露光用光ELを,それぞれのマスクMを介して照射して,第1の転写パターン83間の未露光部にマスクパターン62を露光転写して第2の転写パターン84を形成する(ステップS8a)。」(【0035】) 「この一連のステップS6a〜S8aの露光動作中に,第2の基板交換領域C2では,基板W´の搬入(ステップS2b),基板W´のプリアライメント(ステップS3b),第2の基板駆動ユニット17の吸着バッド57による吸着・保持が行われる(ステップS4b)。(【0036】) 「図6(e)に示すように,第1の基板駆動ユニット16によって保持された露光済みの基板Wが,第1の基板保持領域B1から第1の基板交換領域C1へ移動する(ステップS1a)際に,同時に,第2の基板駆動ユニット17によって保持された未露光の基板W´が第2の基板保持領域B2へ露光動作時の速度より速い速度で移動される(ステップS5b)。」(【0037】) 「第1の基板交換領域C1では,露光済み基板Wの搬出と,未露光基板Wの搬入(ステップS2a),未露光基板Wのプリアライメント(ステップS3a),未露光基板Wの吸着保持が行われる。一方,この間に,第2の駆動ユニット51によって保持された基板W´も上述した同様の露光動作によって,往路によるスキャン露光(ステップS6b)によって第1の転写パターン83が露光され,次に,第1の基板保持領域B1に保持された基板W´に対してY方向への基板Wの移動(ステップS7b)を行い,復路によるスキャン露光(ステップS8b)によって第2の転写パターン84が露光される。その後,上記と同様の動作が繰り返される。(【00 4339】) 「本実施形態のスキャン露光装置1は,基板搬送機構14の第1及び第2の基板駆動ユニット16,17は,複数のマスクMと基板WとがY方向に所定の距離L,即ち,隣接するマスクMのマスクパターン61,62のY方向における中心間距離Dの略1/2だけ移動するように構成されている。そして,基板Wの往路搬送時に,所定の間隔Gずつ離れた第1の転写パターン83を露光させ,基板搬送機構14により基板Wを所定の間隔Lだけ移動させた後,基板Wを復路搬送して,往路搬送時に露光した第1の転写パターン83間に形成された未露光部に第2の転写パターン84を隙間なく露光させることができる。(【0040】) 「これにより,必要となるマスク保持部11および照射部13の数量が削減され,スキャン露光装置1の製造費用が大幅に低減する。」(【0041】) 「スキャン露光装置1は,露光領域Aと,第1及び第2の基板保持領域B1,B2と,第1及び第2の基板交換領域C1,C2と,を設けて,基板搬送機構14は,露光領域A,第1及び第2の基板保持領域B1,B2,及び第1の基板交換領域C1間で基板WをX方向に沿って往復移動可能な第1の基板駆動ユニット16と,露光領域A,第1及び第2の基板保持領域B1,B2,及び第2の基板交換領域C2間で基板WをX方向に沿って往復移動可能な第2の基板駆動ユニット17と,を備えるようにしている。これにより,基板Wの露光動作,すなわち,第1の転写パターン83の形成工程,Y方向への基板Wの移動工程,及び第2の転写パターン84の形成工程と,基板Wの搬出工程及び搬入工程とを行うタイミングを少なくともオーバーラップさせて行うことができ,スループットを向上することができる。」(【0042】) 「第1及び第2の基板交換領域B1,B2(判決注:「C1,C2」の誤記と認められる。)では,基板のプリアライメントが行われるので,第1の転写パターン83の形成工程,Y方向への基板Wの移動工程,及び第2の転写パターン84の形成工程と,搬出工程,搬入工程,及びプリアライメント工程とを行うタイミングを 44略一致して行なうことができ ,スループットをさらに向上することができる。 」(【0043】) 「本実施形態においては,基板搬送機構14は,浮上ユニット15a,15bと第1及び第2基板駆動ユニット16,17によって基板Wを浮上して保持しながら搬送する場合について述べたが,・・・基板Wを上面に載置しながら保持及び搬送するものであってもよい。」(【0074】) (イ) 上記(ア)によれば,甲10(審判甲2)発明は,次のとおりのものと認められる。 「基板W,W′を,所定の方向である]方向および該所定の方向と直交する方向であるY方向に搬送する基板搬送機構14と,Y方向に沿って並んでそれぞれ配置され,複数のマスクMをそれぞれ保持する複数のマスク保持部11と,マスク保持部11をそれぞれ駆動する複数のマスク駆動部12と,複数のマスク保持部11の上部にそれぞれ配置されて露光用光を照射する複数の照射部13と,を備え, 前記基板搬送機構14は,基板W,W′をそれぞれ上面に載置する第1及び第2の浮上ユニット(第1及び第2の部材)15a及び15b並びに第1及び第2の浮上ユニットをそれぞれ移動する第1及び第2の基板駆動ユニット16及び17(第1及び第2の機構)を備え, 前記基板Wが,第1の基板交換領域C1に搬入され,搬入された前記基板Wのプリアライメントが行われた後,前記第1の部材によって保持され,前記基板Wを上面に載置した前記第1の部材を第1の機構によって,前記基板Wを一定の速度で]方向に搬送させて,第1の基板保持領域B1へ移動し,また,前記基板Wは,一定の速度で]方向に搬送されて,露光領域A内に進入し,それぞれのマスクMを介して照射部13から露光用光ELが照射されてマスクパターン61が露光転写され,露光領域Aを通過して第2の基板保持領域B2に位置する基板Wには,第1の転写パターン83が形成され, 前記第1の転写パターン83形成後,基板Wを上面に載置した前記第1の部材を, 45第1の機構によって,基板WをY方向に所定の距離Lだけ移動させ,第1の機構の,基板Wの搬送方向を]方向と逆方向に切り替えて,第2の基板保持領域B2に保持されていた基板Wを,]方向と逆方向に搬送し, 前記照射部13からの露光用光ELを,それぞれのマスクMを介して照射して,未露光部にマスクパターン62を露光転写して第2の転写パターン84を形成し,この一連の露光動作中に,第2の基板交換領域C2では,基板W′の搬入,基板W′のプリアライメント,基板W′の第2の部材による保持が行われ, 前記第1の部材によって保持された露光済みの基板Wが,第1の基板保持領域B1から第1の基板交換領域C1へ移動する際に,同時に,第2の部材によって保持された未露光の基板W′が第2の基板保持領域B2へ露光動作時の速度より速い速度で搬送され, 前記第1の基板交換領域C1では,露光済み基板Wの搬出と,未露光基板Wの搬入,未露光基板Wのプリアライメント,未露光基板Wの保持が行われ,一方,この間に,第2の部材によって保持された基板W′も上述した同様の露光動作によって,往路によるスキャン露光によって第1の転写パターン83が露光され,第1の基板保持領域B1に保持された基板W′に対してY方向への基板W′の移動を行い,復路によるスキャン露光によって第2の転写パターン84が露光されるものであって,前記基板搬送機構14の第1及び第2の部材は,それぞれ複数のマスクMと基板W及びW′とがY方向に所定の距離L,即ち,隣接するマスクMのマスクパターン61,62のY方向における中心間距離Dの略1/2だけ移動するように構成され, 前記基板Wの往路搬送時に,所定の間隔Gずつ離れた第1の転写パターン83を露光させ,基板搬送機構14により基板Wを所定の間隔Lだけ移動させた後,基板Wを復路搬送して,往路搬送時に露光した第1の転写パターン83間に形成された未露光部に第2の転写パターン84を隙間なく露光させることにより,必要となるマスタ保持部11および照射部13の数量が削減され,スキャン露光装置1の製造費用が大幅に低減し, 46 前記露光領域Aと,第1及び第2の基板保持領域B1,B2と,第1及び第2の基板交換領域C1,C2と,を設けて,基板搬送機構14は,露光領域A,第1及び第2の基板保持領域B1,B2,及び第1の基板交換領域C1間で基板Wを]方向に沿って往復移動可能な第1の部材と,露光領域A,第1及び第2の基板保持領域B1,B2,及び第2の基板交換領域C2間で基板Wを]方向に沿って往復移動可能な第2の部材と,を備えるようにしていることにより,前記基板Wの露光動作,すなわち,第1の転写パターン83の形成工程,Y方向への基板Wの移動工程及び第2の転写パターン84の形成工程と,基板Wの搬出工程及び搬入工程とを行うタイミングを少なくともオーバーラップさせて行うことができ,スループットを向上することができ, 前記基板W,W′上に前記マスクMの前記マスクパターン61,62を露光転写する,液晶装置の製造に関してマスタパターンを露光転写するスキャン露光装置。」 ウ 甲13(審判甲5)発明について (ア) 本件特許の出願前に日本国内で頒布された刊行物である甲13(審判甲5)公報には,次の記載がある。 a 技術分野 「本発明は,液晶表示板製造分野にて使用されるものであって,特に,液晶表示装置に用いられる基板上において,液晶分子が望ましい角度と方向に整列するよう配向膜に配向性を付与するための光配向照射装置に関するものである。(【0001】) b 発明を実施するための形態 「図1は,本発明の実施形態に係る光配向照射装置の構成を示す図である。本実施形態の光配向照射装置1は,偏光光照射手段2,走査手段を主な構成要素として有する。偏光光照射手段2は,基板9の表面に形成された配向膜に対して紫外線のビームを照射することで,配向膜に配向特性を付与する手段であって,本実施形態では,反射鏡21a,紫外線照射光源21bを有する紫外線照射手段21と,偏光 47手段3を備えて構成されている。なお,本実施形態では,照射光として紫外線を使用しているが,他の波長帯の照射光を使用することとしてもよい。その場合,使用する波長帯に応じた照射光源が用いられる。」(【0029】) 「図2には,本発明の実施形態に係る光配向照射装置の側断面図が,図3には本発明の実施形態に係る光配向照射装置の上面図が示されている。走査手段は,ステージ4を所定の移動方向(図ではY軸方向)に移動させることで,偏光光照射手段2から照射されるビームを基板9上に走査させる手段である。本実施形態の走査手段は,ステージ4,可動台55,ボールネジ52,LMガイド51,回転部54を有して構成されている。可動台55は,回転部54を介してステージ4と機械的に結合されている。また,可動台55は,LMガイド51にて走査方向に移動可能とされている。このLMガイド51は,LMレール51a,51b上を,LMブロック51c,51dが摺動可能とされている。LMブロック51c,51dには可動台55が固定されている。本実施形態では,図3に示すように2本のLMガイド51a,51bによって可動台55を移動可能としている。」(【0030】) 「・・・可動台55には,上面に回転部54が設けられている。この回転部54は,図に示されるXY平面内における回転を実行可能としており,偏光光照射手段2にて照射される偏光光の偏光方向の調整,そして,走査手段による各走査位置での回転ずれ(「軸走り」と呼ばれる現象)の補正などに使用される。」(【0031】) c 偏光手段の構成 「図5には,本発明の実施形態に係る偏光手段の構成が示されている。図5は,偏光手段3を下方,すなわち,図1〜図3に示されるZ軸の正の方向から眺めた図となっている。本実施形態の偏光手段3は,隣接方向33に沿って隣接配置された複数の単位偏光子31a〜31fを有して構成されている。」(【0036】) d 偏光方向検知手段 「図4には,この偏光手段3による紫外線照射の状況が模式的に示されてい 48る。・・・本実施形態のように複数の単位偏光子31a〜31fで構成した場合 ,各単位偏光子31a〜31fの偏光方向を一致させておかないと,基板9を液晶表示装置として使用した際,映像ムラとして観察される。」(【0040】) 「このような液晶表示装置における映像ムラ発生を抑制するため,・・・本実施形態の光配向照射装置では,各単位偏光子31a〜31fから出射された偏光紫外線の偏光方向を検知する偏光方向検知手段を設けることとしている。」(【0041】) 「この偏光方向検知手段は,1乃至複数の偏光センサー6を使用して構成することが可能である。」(【0042】) e 偏光方向確認処理 「本実施形態の光配向照射装置では,偏光方向確認処理を実行することで,各単位偏光子31a〜31fの偏光方向の確認を行うこととしている。また,本実施形態の偏光方向確認処理では,確認した偏光方向に基づいて,回転部54を回転させ偏光方向が適正となる補正処理も行うこととしている。」(【0048】)「図10は,本発明の実施形態に係る偏光方向確認処理を示すフロー図である。」(【0049】) 「この偏光方向確認処理は,ステージ4に基板9を載置する前の状態で実行される。」(【0050】) f 偏光センサーの配置 「図14には,本発明の他の実施形態に係る光配向照射装置の上面図が示されている。この実施形態においては,ステージ4外に偏光センサー6a〜6fを配置している。」(【0062】) 「ステージ4に基板9を設置した状態であっても,偏光方向確認処理を実行することが可能となる。」(【0063】) 495051 (イ) 上記記載によれば,甲13(審判甲5)発明は,次のとおりのものと認められる。 「液晶表示装置に用いられる基板上において,液晶分子が望ましい角度と方向に整列するよう配向膜に配向性を付与するための光配向照射装置であって,前記光配向照射装置は,偏光光照射手段2,走査手段を主な構成要素として有し, 前記偏光光照射手段2は,基板9の表面に形成された配向膜に対して紫外線のビームを照射することで,配向膜に配向特性を付与する手段であり,反射鏡21a,紫外線照射光源21bを有する紫外線照射手段21と,偏光手段3を備えて構成され, 前記走査手段は,ステージ4を所定の移動方向に移動させることで,偏光光照射手段2から照射されるビームを基板9上に走査させる手段であり,ステージ4,可動台55,ボールネジ52,LMガイド51,回転部54を有して構成され,前記可動台55は,回転部54を介してステージ4と機械的に結合され,LMガイド51にて走査方向に移動可能とされ, 前記LMガイド51は,LMレール51a,51b上を,LMブロック51C,51dが摺動可能とされ,前記LMブロック51c,51dには可動台55が固定され,2本のLMガイド51a,51bによって可動台55を移動可能とし, 52前記可動台55は,上面に回転部54が設けられ,前記回転部54は,回転を実行可能としており,偏光光照射手段2にて照射される偏光光の偏光方向の調整に使用され,前記偏光手段3は,隣接方向33に沿って隣接配置された複数の単位偏光子31a〜31fを有して構成され, 偏光方向確認処理を実行することで,各単位偏光手31a〜31fの偏光方向の確認を行うと共に,確認した偏光方向に基づいて,回転部54を回転させ偏光方向が適正となる補正処理も行い,偏光方向検知手段は,1乃至複数の偏光センサー6を使用して構成し,ステージ4外に偏光センサー6a〜6fを配置し,ステージ4に基板9を設置した状態であっても,偏光方向確認処理を実行することを可能とした,液晶表示板製造分野にて使用される液晶表示装置に用いられる基板上において配向膜に配向性を付与するための光配向照射装置。」 (2) 本件訂正発明1の進歩性について ア 本件訂正発明1と甲26(参考資料3)発明との一致点及び相違点 (ア) 本件訂正発明1と甲26(参考資料3)発明との対比 甲26(参考資料3)発明を本件訂正発明1と対すると,甲26(参考資料3)発明の「設定された照射領域へ偏光光を出射する光照射部20A,20B」は本件訂正発明1の「設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニット」に,甲26(参考資料3)発明の「光配向膜51が形成された矩形状のワーク」は本件訂正発明1の「光配向膜材付きの基板」に,甲26(参考資料3)発明の「光配向膜51が形成された矩形状のワークが・・・上に載置され」る「ワークステージ」は本件訂正発明1の「光配向膜材付きの基板が載置されるステージ」に,甲26(参考資料3)発明の「ステージ移動機構」は本件訂正発明1の「ステージ移動機構」に,甲26(参考資料3)発明の「配向膜の光配向を行う偏光光照射装置」は本件訂正発明1の「光配向用偏光光照射装置」にそれぞれ相当する。 そうすると,本件訂正発明1と甲26(参考資料3)発明とは,次の(イ)の点で 53一致し,後記(ウ)の各点で相違するものと認められる。 (イ) 一致点 「設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニットと, 光配向用膜材付きの基板が載置されるステージと, 照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構とを備えており, ステージ移動機構は,照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置からステージを照射領域に移動させ,前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり, ステージ移動機構は,ステージ上の基板が照射領域を通過した後にステージを戻すものである光配向用偏光光照射装置。」 (ウ) 相違点 a 相違点1-1及び1-2 本件訂正発明1では,「ステージとして第一第二の二つのステージが設けられて」いることから,「ステージ移動機構は,照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ,前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに,照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり,ステージ移動機構は,第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに,第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり,かつ,前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ,前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり,第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には,第二 54のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され,第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には,第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されて」いる のに対し,甲26(参考資料3)発明では,ステージの個数が一つであることから,@ステージ移動機構は,第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに,第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり,かつ,前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ,前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせる構成を有していない点(相違点1-1),及び,A第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には,第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され,第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には,第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保される構成を有していない点(相違点1-2)。 b 相違点2 本件訂正発明1では,「第一第二のステージの各々」が「基板を吸着するための吸着孔を有する,一体的に移動可能な複数のピンを含む」のに対し,甲26(参考資料3)発明では,「ワークステージ」が「光配向膜51が形成された矩形状のワーク50」を「ワークステージ上に載置」するための詳細な構成が特定されていない点(相違点2)。 イ 相違点に係る本件訂正発明1の構成の容易想到性について (ア) 相違点1-1及び1-2について a 甲26(参考資料3)発明は,液晶素子を製造するために用いられる偏光光照射装置に関するものであるところ,液晶素子を製造する装置の技術分野において,スループットを向上させることは ,当然の課題であると考えられるから,甲26 55(参考資料3)発明に接した当業者であれば,同発明についてもスループットを向上させることを課題として認識し得たものといえる。 一方,甲10(審判甲2)発明は,液晶ディスプレイ等の基板上にマスクパターンを露光転写するためのスキャン露光装置に関するものであり,マスク保持部及び照射部の数量を削減してコストダウンを図ること及びスループットの向上を目的とするところ,甲26(参考資料3)発明と甲10(審判甲2)発明とは,液晶素子を製造するために用いられる往復移動可能なスキャン照射(露光)装置である点において共通するから,スループットを向上させるために,甲26(参考資料3)発明に対して,甲10(審判甲2)発明におけるスループット向上に関する構成を組み合せることについては,動機付けがあるというべきである。 b そして,甲10(審判甲2)発明におけるスキャン露光の動作について,同発明の「所定の距離L,即ち,隣接するマスクMのマスクパターン61,62のY方向における中心間距離Dの略1/2だけ移動」を「動作A」と,「基板Wの往路搬送」を「動作B」と,「基板Wの復路搬送」を「動作C」とすると,次のように説明することができる。 「前記基板搬送機構14の第1及び第2の部材は,それぞれ複数のマスクMと基板W及びW′とがY方向に所定の距離L,即ち,隣接するマスクMのマスクパターン61,62のY方向における中心間距離Dの略1/2だけ移動(動作A)するように構成され, 前記基板Wの往路搬送(動作B)時に,所定の間隔Gずつ離れた第1の転写パターン83を露光させ,基板搬送機構14により基板Wを所定の間隔Lだけ移動させた後,基板Wを復路搬送(動作C)して,往路搬送時に露光した第1の転写パターン83間に形成された未露光部に第2の転写パターン84を隙間なく露光させることにより,必要となるマスタ保持部11および照射部13の数量が削減され,スキャン露光装置1の製造費用が大幅に低減し, 前記露光領域Aと,第1及び第2の基板保持領域B1,B2と,第1及び第2の 56基板交換領域C1,C2と,を設けて,基板搬送機構14は,露光領域A,第1及び第2の基板保持領域B1,B2,及び第1の基板交換領域C1間で基板Wを]方向に沿って往復移動(動作B及び動作C)可能な第1の部材と,露光領域A,第1及び第2の基板保持領域B1,B2,及び第2の基板交換領域C2間で基板Wを]方向に沿って往復移動(動作B及び動作C)可能な第2の部材と,を備えるようにしていることにより,前記基板Wの露光動作,すなわち,第1の転写パターン83の形成工程(動作B),Y方向への基板Wの移動工程(動作A)及び第2の転写パターン84の形成工程(動作C)と,基板Wの搬出工程及び搬入工程とを行うタイミングを少なくともオーバーラップさせて行うことができ,スループットを向上する。」 上記の動作のうち,基板の露光動作に関する「動作B→動作A→動作C」は,マスク保持部11及び照射部13の数量が減少されたにもかかわらず,隙間のない露光を可能とするための一連の動作であり,動作Aは,隙間のない露光を可能とするという技術的意義を有する動作であるといえる。 一方,甲10(審判甲2)発明は,「基板搬送機構14は,露光領域A,第1及び第2の基板保持領域B1,B2,及び第1の基板交換領域C1間で基板Wを]方向に沿って往復移動(動作B及び動作C)可能な第1の部材と,露光領域A,第1及び第2の基板保持領域B1,B2,及び第2の基板交換領域C2間で基板Wを]方向に沿って往復移動(動作B及び動作C)可能な第2の部材とを備える」ことにより,基板の露光動作と,基板の搬出工程及び搬入工程とを行うタイミングとを少なくともオーバーラップさせて行うことができ,スループットを向上することが可能となる旨開示していることからすれば,動作Aはスループットの向上に直接必要なものではなく,動作B及び動作C(往復移動)によりスループットの向上が図られているものと理解することができる。つまり,動作B及び動作Cについては,動作Aとの組合せにより隙間のない露光を可能にするという技術的意義を有するのみならず,動作B及び動作Cが可能な第1及び第2の部材を備えることにより,スル 57ープットを向上させることが可能になるという点においても技術的意義を有する動作であるといえる。 そして,隙間のない露光を可能とすることとスループットの向上とは,技術上の目的を異にするものであるから,隙間のない露光を可能とするための動作Aの存在があることは,甲26(参考資料3)発明に対して甲10(審判甲2)発明における動作B及び動作Cを実現するための構成を組み合わせることの阻害要因となることはない。 したがって,甲26(参考資料3)発明について,スループットを向上させるという課題を解決しようとする当業者であれば,甲10(審判甲2)発明のうち,スループットを向上させることに係る動作B及び動作Cを実現するための構成に着目し,当該構成を甲26(参考資料3)発明に組み合わせることも容易であったというべきである。 c ところで,甲10(審判甲2)発明において,「基板W」は,第1の基板交換領域C1から第1の基板保持領域B1を経て露光領域Aを通過して第2の基板保持領域B2に移動(動作B)した後,基板Wの搬送方向をX方向と逆方向に切り替え,第2の基板保持領域B2から露光領域Aを通過して第1の基板保持領域B1を経て第1の基板交換領域C1に移動(動作C)し,「基板W´」は,第2の基板交換領域C2から第2の基板保持領域B2を経て露光領域Aを通過して,第1の基板保持領域B1に移動(動作B)した後,基板W´の搬送方向を逆方向に切り替えて,第1の基板交換領域B1から露光領域Aを通過して第2の基板保持領域B2を経て第2の基板交換領域C2に移動(動作C)を行うところ,上記の第2の基板保持領域B2は,露光領域Aと第2の基板交換領域C2との間の領域であって,露光領域Aを通過した基板Wを保持する領域であり,第1の基板保持領域B1は,露光領域Aと第1の基板交換領域C1との間の領域であって,露光領域Aを通過 した基板W´を保持する領域であるから,第2の基板保持領域B2及び第1の基板保持領域B1は,それぞれ基板W及び基板W´が露光領域Aを通過する分以上のスペースを 58有する構成であることが認められる。 さらに,基板Wを第1の基板交換領域C1から動作B及び動作Cを経て,第1の基板交換領域C1に戻し(動作イ),また,基板W´を第2の基板交換領域C2から動作B及び動作Cを経て第2の基板交換領域C2に戻す(動作ロ)目的は,基板Wの露光動作と基板W´の搬出工程及び搬入工程とを行うタイミングを少なくともオーバーラップさせて行うことにより,スループットを向上させることにあり,動作イに続けて動作ロを行い,さらに動作ロに続けて,交換された別の基板について動作イを行う構成であることも認められる。 d 以上からすると,甲26(参考資料3)発明において,スループットの向上をはかるという技術的課題を解決するため,甲10(審判甲2)発明における「基板Wを保持及び搬送する第1,第2のステージ及び第1,第2のステージ移動機構」及び,基板の露光動作と基板の搬出工程及び搬入工程をオーバーラップさせる構成を適用し,相違点1-1及び相違点1-2に係る本件訂正発明1の構成を得ることは,当業者が容易になし得たものといえる。 (イ) 相違点2について 相違点2に係る本件訂正発明1の構成に関し,訂正明細書には,「尚,本願発明に,おいて,『ステージ』の用語は通常より広く解釈される必要がある。即ち,真空吸着のような吸着孔を有する複数のピンの上に基板Sを載置してこれら複数のピン上に基板を吸着し,複数のピンを一体に移動させることで基板Sが照射領域を通過するようにする場合がある。従って,『ステージ』は,基板を保持しながら基板を移動させることができる部材であれば足り,必ずしも台状の部材に限られない。」(【0050】)などと記載されているにとどまることからすれば,当該構成は,訂正明細書において,当業者が技術常識に基づいて適宜設計することができる構成と位置付けられているものであり,また,本件訂正発明1の光配向用偏光光照射装置のその余の構成と不可分な技術的関連性がある構成でなく,適宜付加される構成にすぎないものと理解される。 59 そうとすれば,甲26(参考資料3)発明の「ワークステージ」の詳細な構成が特定されていないとしても,矩形状のワーク50がワークステージ上に載置される構成については,当業者であれば,技術常識に基づいて適宜設計し得るものというべきである(なお,基板搬送技術の分野において,「基板を吸着するための吸着孔を有する,一体的に移動可能な複数のピン」を含むステージは,周知技術であることが認められる〔乙23,弁論の全趣旨〕。)から,甲26(参考資料3)発明における「ワークステージ」について,相違点2に係る本件訂正発明1の構成を採用することは,当業者が容易になし得たこというべきである。 (ウ) 本件訂正発明1の効果について 本件訂正発明1は,往復移動する二つのステージが照射領域を交互に続いて通過することで,各ステージ上の基板に対し偏光光が照射され,タクトタイムが削減され,生産性の高い光配向プロセスを実現することができるとの効果を奏するものであるが,本件訂正発明1における基板を吸着するための吸着孔を有する一体的に移動可能な複数のピンを含むとの構成については,上記(イ)のとおり,適宜付加される構成であって,これにより格別の効果が得られるものではない。 してみると,本件訂正発明1により,甲26(参考資料3)発明に甲10(審判甲2)発明を適用したものによって得られるスループットの向上という課題を解決することに比して,格別の効果が得られるものとはいえない。 (エ) 以上からすると,本件訂正発明1は,甲26(参考資料3)発明,甲10(審判甲2)発明及び上述した周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって,進歩性を欠くというべきである。 ウ 原告の主張について (ア) 原告は,@甲26(参考資料3)発明と甲10(審判甲2)発明とは,技術分野が異なるから,両発明を組み合わせることはできない,A甲10(審判甲2)発明において,ステージをY方向に移動(動作A)させる構成は必須であり,二つのステージをオーバーラップさせるから,同発明から往復移動(動作B及び動作C) 60させる構成のみを抽出することはできない,B甲10(審判甲2)発明は断続的な移動を前提とし,甲26(参考資料3)発明は連続的な移動を前提とするもので あるから,両発明を組み合わせることはできないなどと主張する。 しかし,上記@については,甲10(審判甲2)発明は,液晶装置を製造するために用いられるところの,矩形状のワークをワークステージに載置して照射領域に対して往復移動させるスキャン露光装置に関するものであって,液晶素子を製造するために用いられるところの,スキャン照射する装置に関する甲26(参考資料3)発明とは,光の照射によって移動する基板を対象として所定の光学上の効果を発生させるとの点,及びステージ上に基板を載置したうえで照射領域に移動させるという点において,技術内容を共通にするものであり,共通の技術分野に属するといえる。 また,上記Aについては,甲10(審判甲2)発明において,スループットの向上は,隙間のない露光とは区別して把握することができ,当業者は,前者の観点から動作B及び動作Cを実現するための構成を把握することができるところ,スループットの向上は,液晶素子の製造に係る技術分野における当然の課題であるから,当業者にとって,甲26(参考資料3)発明に対し,スループット向上のために,甲10(審判甲2)発明における動作B及び動作Cを行う二つのステージに係る構成を組み合わせることは,容易であったというべきである。 さらに,上記Bについては,甲26(参考資料3)発明においても,連続的とするか,間歇的とするかは,選択可能であることを前提としていること(甲26(参考資料3)公報の【0017】),また,露光時に,断続的な移動を前提とするか,連続的な移動をするかは,当業者が適宜選択できる事項であって,この点は,二つのステージを往復移動することとは,独立した技術事項であることからすれば,甲26(参考資料3)発明に対して甲10(審判甲2)発明の構成を組み合わせることの妨げとなるものではないというべきである。 したがって,原告の上記主張は,いずれも採用することができない。 61 (イ) 原告は,甲10(審判甲2)発明は,本件訂正発明1における,一方のステージの復路移動に続くように他方のステージの往路移動を行わせる構成について ,開示も示唆もしていない旨の主張もする。 原告の上記主張の趣旨は,訂正明細書の【0043】の記載のほか,「続く」という用語が「後に続く。すぐ後に来る。」という意味を有すること(乙20)から,本件訂正発明1における「復路移動に続くように」との構成(構成要件C2´-2)は,ステージの前進到達位置(訂正明細書の【0024】では,「第一のステージ21が前進して後退に転じる際の位置を第一の前進到達位置と呼び,第二のステージ22が前進して後退に転じる際の位置を第二の前進到達位置と呼ぶ。」とされている。)からの復路移動に続く必要があることを規定したものであるのに対し,甲10(審判甲2)発明では,図6(C)の状態になって初めて一方の復路移動に続くように他方の往路移動を開始するものであるから,本件訂正発明1における「復路移動に続くように」との構成(構成要件C2´-2)を開示していないというものと解される。 しかし,訂正特許請求の範囲の「前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ,前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせる」との文言は,一方のステージの復路移動の開始に引き続いて,他方のステージの往路運動が開始することを意味すると解するのが素直であり,一方のステージの復路移動の開始後,すぐに(あまり時間を置かずに)他方のステージの往路運動が開始すること排除している(換言すると,一方のステージの往路移動の開始と他方のステージの復路移動の開始とが同時であることに限定している)とはいい難い。そして,訂正明細書の「一方のステージ21,22からの基板Sの回収に要する時間をT L 1 ,一方のステージ21,22への基板Sの搭載に要する時間をT L 2 ,搭載された基板Sのアライメントに要する時間をT L 3 とし,他方のステージ21,22の基板搭載回収位置から前進 62到達位置までの移動に要する時間をT E 1 ,他方の前進到達位置から基板搭載回収位置に戻るまでの時間をT E 2 」と定義した上で,「但し,一方のステージ21,22が復路移動(前進到達位置から基板搭載回収位置に戻る移動)に続くようにして他のステージ21,22の往路移動(基板搭載位置から前進到達位置までの移動)を行うようにしても良く,この場合には,T L1 +T L 2 +T L3 ≦T E1 ということになる。」(【0043】)との記載及び「上記の例は,一方のステージ21,22についての基板Sの回収及び搭載が行われる時間帯の全部が,他方のステージ21,22の移動が行われている時間帯に重なっていた」(【0044】)との記載を参酌しても,上記各記載は,一方のステージについての基板の準備に要する時間が他方のステージの往路移動に要する時間と同じか,それより短いということを意味するにすぎず,一方のステージの復路移動の開始と他方のステージの往路移動の開始とが同時であることまでをも意味するとはいえない(一方のステージの復路移動の開始と他方のステージの往路移動の開始を同時に行うために,上記各記載に沿うことが必要であるとしても,これらを充たすというだけでは,当然には,一方のステージの復路移動の開始と他方のステージの往路移動の開始が同時であるとはいえない。)。結局,一方のステージの復路移動の開始から他方のステージの往路移動の開始までの間に,どの程度の時間の経過が許容されるのかについて,訂正特許請求の範囲及び訂正明細書に具体的な記載が見当たらないことからすれば,一方のステージの往路移動が他方のステージの復路移動の継続中に開始される(一方のステージの復路移動の時間帯と他方のステージの往路移動の時間帯が一部重なり合う)という関係があれば,足りると解するのが合理的である。 一方,甲10(審判甲2)公報の「基板Wが,第1の基板保持領域B1から第1の基板交換領域C1へ移動する(ステップS1a)際に,・・・基板W´が第2の基板保持領域B2へ・・・移動される」(【0037】)との記載並びに図6(d)及び(e)によれば,甲10(審判甲2)発明は,第1の基板Wが第1の基板保持領域B1から第1の基板交換領域C1へ復路移動することに引き続いて,未露光状 63態にある第2の基板W´が第2の基板保持領域B2に往路移動すること(前者の復路移動の開始後,すぐに(あまり時間を置かずに)後者の往路移動が開始すること,換言すると,前者の復路移動が終わらないうちに後者の往路移動が始まり,両移動の時間帯が一部重なり合うこと)が認められるから,同動作は,本件訂正発明1の「前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ,前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり,」に相当するというべきである(なお,仮に,原告が本件訂正発明1における「復路移動に続くように」との構成について,更に限定的に解釈すべきである旨主張するのであれば,当該解釈に基づいて,被告製品が構成要件C2´-2を充足することの立証がないことになろう。)。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 エ 小括 上記検討したところによれば,本件訂正発明1は,甲26(参考資料3)発明,甲10(審判甲2)発明及び上述した周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって,進歩性を欠くというべきである。 また,本件訂正発明1は,本件発明1を減縮したものであることが認められるから,本件発明1も,同様に進歩性を欠くというべきである。 (3) 本件訂正発明2の進歩性について ア 本件訂正発明1と甲26(参考資料3)発明との対比 (ア) 本件訂正発明2と甲26(参考資料3)発明との一致点及び相違点 本件訂正発明2は,本件訂正発明1の「前記第一第二ステージの各々は,基板を吸着するための吸着孔を有する,一体的に移動可能な複数のピンを含む」との構成に代えて,「偏光子からの偏光光を直接照射して,往路における照射による露光量と復路における照射による露光量とが積算されるようにする」との構成を付加したものである。 64 そうすると,本件訂正発明2と甲26(参考資料3)発明との一致点は,本件訂正発明1と甲26(参考資料3)発明との一致点と同じであり,本件訂正発明2と甲26(参考資料3)発明との相違点は,訂正発明1と甲26(参考資料3)発明との相違点1-1及び相違点1-2のほか,次の相違点3(この点が実質的な相違点であるか否かは,後述する。)であると認められる。 本件訂正発明2の照射ユニットは,「偏光子からの偏光光を直接照射して,往路における照射による露光量と復路における照射による露光量とが積算されるようにする」ものであるのに対し,甲26(参考資料3)発明における光照射部20A,20Bは,このような特定がされていない点(相違点3)。 イ 相違点に係る本件訂正発明2の構成の容易想到性について (ア) 相違点1-1及び1-2について 前記(2)イ(ア)において説示したとおり,甲26(参考資料3)発明に甲10(審判甲2)発明の構成を適用し,相違点1-1及び相違点1-2に係る本件訂正発明2の構成を得ることは,当業者が容易になし得たものといえる。 (イ) 相違点3について 甲26(参考資料3)公報には,「光照射部20Aと20Bの両方の下を通過して偏光光が照射された光配向膜51は,図2(c)に示すように両者の照度分布が積算され,結果として均一なエネルギー分布で偏光光が照射されることになる。 」(【0016】)との記載があるから,甲26(参考資料3)発明において,光配向膜51は,往路において光照射部20A及び20Bで照射され,復路において光照射部20A及び20Bで照射されるものであり,光照射部20A及び20Bの両方の下を通過して偏光光が照射された光配向膜51は,両者の照度分布が積算されることになることは明らかであり,相違点3に係る本件訂正発明2の構成に相当する構成を実質的に開示しているものといえる。 したがって,相違点3は,実質的なものとはいえない。 (ウ) 本件訂正発明2の効果について 65 本件訂正発明2は,「第一第二の各ステージ上の基板が,往路と復路の双方で光照射されるので,エネルギーの無駄無く効率よく光配向処理ができ,移動速度を速くすることでより生産性を高めることができる。」(訂正明細書【0007】)との効果を有するとされているものである が,甲26(参考資料3)発明に甲10(審判甲2)発明を適用したものと比して,格別の効果を有するとはいえない。 ウ 小括 上記検討したところによれば,本件訂正発明2は,甲26(参考資料3)発明及び甲10(審判甲2)発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって,進歩性を欠くというべきである。 また,本件訂正発明2は,請求項の引用関係の解消及び誤記の訂正を伴うものの,実質的には本件発明2を減縮したものであることが認められるから,本件発明2も,同様に進歩性を欠くというべきである。 (4) 本件訂正発明3について ア 本件訂正発明3と甲26(参考資料3)発明との一致点及び相違点 本件訂正発明3は,本件訂正発明1の構成から「前記第一第二ステージの各々は,基板を吸着するための吸着孔を有する,一体的に移動可能な複数のピンを含む」との構成及び「前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ,前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり,」との構成を除き,「アライメントマークを有し,」,「前記ステージに載置された前記基板上の前記アライメントマークを検出するアライメントセンサとを備えており,」,「前記第一第二の各ステージには,前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて,搭載された基板の向きを,照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する基板アライナーが設けられ,」との各構成を付加し,さらに,第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には,「第 66二のステージに搭載された基板の向きを前記基板アライナーにより調整した後の該」第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され,第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には,「第一のステージに搭載された基板の向きを前記基板アライナーにより調整した後の該」第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されているとの構成を付加したものである。 そうすると,本件訂正発明3と甲26(参考資料3)発明とは,次の点において相違し,その余の点において一致するものと認められる。 本件訂正発明3では,「ステージ移動機構は,照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ,前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに,照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり,ステージ移動機構は,第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに,第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり,第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には,第二のステージに搭載された基板の向きを前記基板アライナーにより調整した後の該第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され,第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には,第一のステージに搭載された基板の向きを前記基板アライナーにより調整した後の該第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されて」いるのに対し,甲26(参考資料3)発明では,@ステージ移動機構は,第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに,第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻す構成を有していない点(相違点1-1´),及び,A第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には,第二 67のステージに搭載された基板の向きを前記基板アライナーにより調整した後の該 第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され,第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には,第一のステージに搭載された基板の向きを前記基板アライナーにより調整した後の該第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保される構成を有していない点(相違点1-2´)。 本件訂正発明3では,第一第二の各ステージは,「アライメントマークを有し,」,「前記ステージに載置された前記基板上の前記アライメントマークを検出するアライメントセンサとを備えており,」,「前記第一第二の各ステージには,前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて,搭載された基板の向きを,照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する基板アライナーが設けられ,」ているのに対し,甲26(参考資料3)発明では,そのような構成が特定されていない点(相違点4)。 イ 相違点に係る本件訂正発明3の構成の容易想到性について (ア) 相違点1-1´について 相違点1-1´に係る本件訂正発明3の構成は,相違点1-1に係る本件訂正発明1又は2の構成から,「前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ,前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり」との構成を除いたものであるところ,前記(2)イ(ア)において説示したところによれば,甲26(参考資料3)発明に甲10(審判甲2)発明の構成を適用し,相違点1-1´に係る本件訂正発明3の構成を得ることは,当業者が容易になし得たものといえる。 (イ) 相違点1-2´について 相違点1-2´に係る本件訂正発明3の構成は,相違点1-2に係る本件訂正発明1又は2の構成に,「第一第二の各ステージに搭載された基板の向きを基板アラ 68イナーにより調整した後の各ステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されている」との構成を付加したものであるところ,配向膜付きの基板アライメントについてツイン方式を採用し,アライメントに支障がないように,基板アライナーにより調整した後の基板が通過する以上のスペースを確保して,照射に支障が生じないようにすべきことは,当業者には自明ともいうべきことであるから,上記スペースの確保は,当業者が適宜定め得る設計事項にすぎないものというべきである。 このことと,前記(2)イ(ア)において説示したところによれば,甲26(参考資料3)発明に甲10(審判甲2)発明の構成を適用し,その際,アライメントに支障がないように,基板アライナーにより調整した後の基板が通過する以上のスペースを確保して,照射に支障が生じないよう設計することにより,相違点1-2´に係る本件訂正発明3の構成を得ることは,当業者が容易になし得たものといえる。 (ウ) 相違点4について a 甲26(参考資料3)発明は,光配向膜51の光配向を行う液晶素子の製造に関する光照射装置である以上,光配向膜51と光照射部20A,20Bの偏光方向との精度が同発明の実施に際して重要となることは自明であり,光配向膜51と光照射部20A,20Bの偏光方向との精度は,同発明における当然の課題というべきである。 一方,甲13(審判甲5)発明は,甲26(参考資料3)発明と同じ技術分野に属し,「液晶表示板製造分野にて使用される液晶表示装置に用いられる基板上において配向膜に配向性を付与するための光配向照射装置」であって,「光方向を変化させるような回転ずれは,製造する液晶表示装置の画像品質において問題となる。 具体的には,一部の石英基板からの照射光の偏光方向に回転ずれが生じた場合,その部分では表示する画像がムラとして現れることとなる。」との課題を解決する発明である。 そうすると,光配向膜51と光照射部20A,20Bの偏光方向との精度の課題 69を解決するため,甲13(審判甲5)発明の構成を甲26(参考資料3)発明に適用することには,動機付けがあるといえる。 そして,甲13(審判甲5)発明における「ステージ4に基板9を設置した状態で」,「偏光方向確認処理を実行」した構成は,「偏光方向に基づいて,」,「基板9を設置した」,「ステージ」及び「可動台55」に結合した「回転部54を回転させ偏光方向が適正となる補正処理」を行う構成であって,その機械的駆動部である「ステージ4」,「可動台55」及び「回転部54」等を備えた走査手段は,本件訂正発明3の「搭載された基板の向きを,照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する基板アライナー」に相当する。 なお,甲13(審判甲5)発明では,照射される偏光光の偏光軸とステージに設置された基板の向きとの関係情報を照射される偏光光の偏光方向を検知する「偏光センサー」によって得ているが,基板にアライメントマークを設けて,アライメントマークの位置情報によって,設定された方向と基板の向きとの関係情報を得ることは,配向処理を行う際の基板方向の調整における周知技術であることが認められる(乙22の2ないし5)。 したがって,甲26(参考資料3)発明における「ワークステージ」として,甲13(審判甲5)発明の機械的駆動部である「ステージ4」,「可動台55」及び「回転部54」を備えた走査手段を適用し,併せて,基板にアライメントマークを設け,アラインメントマークの位置情報によって設定された方向と基板の向きとの関係情報を得るという配向処理を行う際の基板方向調整における周知技術を付加することは,当業者が容易に想到し得たことというべきである。 b 本件訂正発明3は,「基板アライナーを備えているので,偏光光の偏光軸に対して基板が所定の向きに向いた状態で精度良く偏光光が照射される。このため,光配向処理の精度や品質を高く維持できる。」(訂正明細書【0007】)との効果を有するとされているが,甲26(参考資料3)発明に甲10(審判甲2)発明を適用し,甲26(参考資料3)発明が有する課題を解決するために,甲13(審 70判甲5)発明の構成を適用することによって得られる効果に比して,格別の効果を有するものでもない。 ウ 原告の主張について 原告は,@甲13(審判甲5)発明は,偏光センサーを用いて紫外線照射光源からの光の偏光方向を検出し,かかる偏光方向と関連する偏光子の回転ずれに基づいて基板を調整するものであり,アライメントセンサによりステージに搭載された基板のアライメントマークを検出し,検出したアライメントマークの位置情報に基づいて基板の向きを調整している本件訂正発明3とは異なる,A甲13(審判甲5)発明は光配向用偏光光照射装置に関するものであり,当該装置に関する技術に当たらない周知技術を組み合わせることは不適切である,B甲13(審判甲5)発明はシングルステージに関する発明であり,一方のステージ上の基板のアライメントに要する時間を他方の基板の往路時間及び復路時間に含めることにより,タクトタイムを大幅に又は全く増加させることなく,アライメントにより光配向処理の品質を向上させるというツインステージ特有の効果については,開示も示唆もしていないから,本件訂正発明3は,甲13(審判甲5)発明の開示によっては予期できない特段の効果を奏するなどと主張する。 (ア) 上記@の主張について 甲26(参考資料3)発明は,光配向用偏光光照射装置に関するものであるから,これに甲10(審判甲2)発明の構成を組み合わせた場合,当該装置におけるアライメントは,必然的に偏光軸の偏光方向を基準とするものとなる。ここでは,光配向基板に対するアライメントが現実に行われることを確認するため,甲13(審判甲5)発明及び周知の技術を斟酌するにすぎず,構成として組み合わせるものではないから,原告の主張は採用することができない。 なお,原告は,光配向用偏光光照射装置に関する発明である甲26(参考資料3)発明にスキャン露光装置に関する発明である甲10(審判甲2)発明の構成を組み合わせることは,両発明が技術的に異なるものである以上,困難である旨も主張す 71るが,上記(2)ウ(ア)で述べたとおり,甲10(審判甲2)発明は,液晶装置を製造するために用いられる装置に関するものであり,矩形状のワークをワークステージ上に載置して照射領域に対して往復移動させるスキャン露光装置である点で,液晶素子の製造に用いられるスキャン照射する装置に関する甲26(参考資料3)発明と共通するものであることは明らかであるから,原告の主張は採用することができない。 (イ) 上記Aの主張について 乙第22号証の2には,「アライメントマーク38B,38Cを基準にして,アクティブマトリクス基板30の位置や向きを合わせる」(【0046】)と記載されているとおり,配向膜を有する液晶の向きを揃えることを前提とするアライメント処理が行われることが開示されている。乙第22号証の3には,【0091】及び【図9】のフローチャートステップS28のとおり,ラビングの前に,液晶基板に表示されたアライメントマーク96,97が目的とする向きに撮像されるように台105(ステージ105)を水平方向に移動又は回転させ,基板アライメントが行われることが開示されている。乙第22号証の4には,【0064】ないし【0070】並びに【図6】及び【図7】のとおり,ラビングの前に,配向膜を有する基板に表示されたアライメントマークMを検出し,当該マークMをM1と設定したうえで,M1の対角線上にあるアライメントマークを結ぶ直線と,原点を通る基準線とのずれ角θを検出したうえで,ずれ角θに対する補正によるアライメントが行われることが開示されている。乙第22号証の5には,【0039】及び【0041】のとおり,配向膜基板11を構成するガラス基板に予め形成したアライメントマークが掲げられ,アライメント光学系15によって,アライメント用遮蔽板13(アライメント用マスク13)のアライメントマーク14を基準として,ガラス基板11上のアライメントマークの位置ずれを検出し,前記検出に基づいて,ガラス基板11を支えているXYθステージ34の作動によって,偏向光の照射領域を液晶パネル領域の規定誤差内とすることなど基板アライメントの技術が開示されている。 72 なお,原告は,乙第22号証の5について,同号証記載の発明はステップアンドリピート方式を採用していることから,照射動作と基板調整動作とをオーバーラップさせることはできないとして,同号証に記載された技術を甲13(審判甲5)発明に適用することには,阻害要因がある旨の主張もする。しかし,乙第22号証の5には,「照射領域の端がパネル分の端と一致するように位置合わせ(アライメント)してから偏光の照射を行う」(【0039】)との順序が記載されているから,照射後に基板の位置を調整するものではない上,照射領域においてアライメントが行われたとしても,基板の位置情報の典型例がアライメントマークであることの根拠として,乙第22号証の5に記載された技術を斟酌することは可能である。 以上のとおり,乙第22号証の2ないし5に開示された技術は,基板にアライメントマークを設けて,アライメントマークの位置情報により,設定された方向と基板の向きとの関係情報を得るという技術であり,配向処理を行う際の基板方向を調整する際の技術であって,これらの周知技術を,光配向用偏光光照射装置に採用することについて,阻害要因はなく,原告の主張は採用することができない。 (ウ) 上記Bの主張について 上述のとおり,甲13(審判甲5)発明は,「液晶表示装置に用いられる基板上において,液晶分子が望ましい角度と方向に整列するよう配向膜に配向性を付与するための光配向照射装置に関するもの」(甲13公報(審判甲5)【0001】)であり,そのために,液晶表示における映像ムラ発生を抑制するための偏光紫外線の偏光方向を検知する偏光方向検知手段を設けるという技術を採用したものであって,光配向処理の精度や品質を維持することを目的とする。そうすると,本件訂正発明3の効果とされる「基板アライナーを備えているので,偏光光の偏光軸に対して基板が所定の向きに向いた状態で精度よく偏光光が照射される。このため,光配向処理の精度や品質を高く維持できる。」との点は,甲13(審判甲5)発明の効果に比して,格別のものとは認められない。 なお,原告主張のツインステージに特有の効果については,甲10(審判甲2) 73発明の構成を適用することにより達成することができるものであって,当該効果や光配向処理の精度等の効果について,甲13公報(審判甲5)において,発明の効果として開示されていなければならないものではない。 したがって,原告の主張は採用することができない。 エ 小括 上記検討したところによれば,本件訂正発明3は,甲26(参考資料3)発明,甲10(審判甲2)発明,甲13(審判甲5)発明及び上述した周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって,進歩性を欠くというべきである。 また,本件訂正発明3は,請求項の引用関係の解消を伴うものの,実質的には本件発明3を減縮したものであることが認められるから,本件発明3も,同様に進歩性を欠くというべきである。 (5) 本件訂正発明4について ア 本件訂正発明4と甲26(参考資料3)発明との一致点及び相違点 本件訂正発明4は,本件訂正発明1の構成に,「アライメントマークを有し,」,「前記ステージに載置された前記基板上の前記アライメントマークを検出するアライメントセンサとを備えており,」,「前記第一第二の各ステージには,前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて,搭載された基板の向きを,照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する基板アライナーが設けられ,」との各構成(本件訂正発明3において本件訂正発明1に付加された構成と同一である。)を付加し,さらに,「前記ステージ移動機構は,前記第一第二のステージの移動方向に沿ってガイド部材を備えており,このガイド部材は,前記第一のステージの移動のガイドと前記第二のステージの移動のガイドとに兼用された」との構成を付加したものである。 そうすると,本件訂正発明4と甲26(参考資料3)発明とは,本件訂正発明1と甲26(参考資料3)発明との相違点1-1及び相違点1-2,本件訂正発明3 74と甲26(参考資料3)発明との相違点4のほか,次の相違点5において相違し,その余の点で一致する。 本件訂正発明4においては,「前記ステージ移動機構は,前記第一第二のステージの移動方向に沿ってガイド部材を備えており,このガイド部材は,前記第一のステージの移動のガイドと前記第二のステージの移動のガイドとに兼用された」との構成が開示されているのに対し,甲26(参考資料3)発明においては,このような構成が開示されていない点(相違点5)。 イ 相違点に係る本件訂正発明4の構成の容易想到性について (ア) 相違点1-1及び相違点1-2並びに相違点4について 前記(2)イ及び(4)イで説示したとおり,相違点1-1及び相違点1-2並びに相違点4に係る本件訂正発明4の構成は,いずれも当業者が容易に想到し得たものといえる。 (イ) 相違点5について a 甲26(参考資料3)発明及び甲10(審判甲2)発明の構成において,ガイド部材が備えられているかどうかは不明であるところ,ステージ移動機構がステージの移動方向に沿ってガイド部材を備える技術は,周知技術である(甲13,乙23,弁論の全趣旨)から,甲26(参考資料3)発明に,これを適用し,相違点5に係る本件訂正発明4の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものといえる。 b なお,本件訂正発明4は,「ガイド部材が第一第二のステージの移動に兼用されるので,ステージ移動機構の構成がシンプルになり,また装置のコストも安価にできる。」との効果(訂正明細書【0007】)を有するとされているが,これは,甲26(参考資料3)発明,甲10(審判甲2)発明及び上述した周知技術と比して,格別の効果であるとはいえない。 ウ 小括 したがって,本件訂正発明4は,甲26(参考資料3)発明,甲10(審判甲2) 75発明及び上述した周知技術に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものであって,進歩性を欠くというべきである。 また,本件訂正発明4は,請求項の引用関係の解消及び誤記の訂正を伴うものの,実質的には本件発明4を減縮したものであることが認められるから,本件発明4も,同様に進歩性を欠くというべきである。 2 以上によれば,本件発明1ないし4はいずれも進歩性を欠くところ,訂正の対抗主張は,成り立たないというべきである(本件訂正発明1ないし4はいずれも進歩性を欠くから,本件訂正により無効理由が解消するとは認められない。なお,本件訂正発明1,2及び4の構成要件C2´-2にいう「復路移動に続くように」についての原告の解釈は,採用することができないが,仮に,原告の解釈によるとすれば,被告製品が本件訂正発明1,2及び4の構成要件C2´-2を充足する旨の立証がないことに帰する。)から,本件発明1ないし4についての特許は,いずれも特許無効審判により無効にされるべきものと認められる。 したがって,原告は,被告に対し,本件特許権を行使することができない(特許法104条の3第1項)。 |
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結論
よって,その余の争点について判断するまでもなく,原告の本件請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 |
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追加 | |
76裁判官鈴木千帆裁判官笹本哲朗77別紙物件目録商品名「AEGIS-IPS」に係る,ツインステージの光配向用偏光光照射装置。 78別紙被告製品説明書一図面の説明1図1:対象物件の平面図図2:対象物件のX方向(長さ方向)と直交する方向の側面図図3:対象物件のX方向(長さ方向)に沿った側面図図4:ステージの中心位置が移動する軌跡を示す平面図ただし,参照の便宜上,2個のステージのうちの1個のステージの中心位置が移動する場合を示す。 2各図面における符号12a:ガイド部材16:台車部17:ステージ19:シフト部16b:ピニオン12b:ラック二構成の説明下記の構成及び特徴点を有する光配向用偏光光照射装置。 (図1に示すように)(a)設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニットと,(b)光配向用膜材付きの基板が載置されるステージ17と,(図2,3に示すように)(c)@駆動モータ並びに長さ方向と直交する側方に沿ったボールねじによる駆動及びガイド部材12cのガイドに基づき,上記側方に位置するように設計されて79いる基板搭載位置と上記長さ方向の位置との間にて,ステージ17を載置しているシフト部19の往復移動を可能としているシフト部移動機構と,(図1,2,3に示すように),A上側にシフト部19を取り付けている台車部16が,当該台車部16内に配置されている駆動モータ,並びにピニオン16b及び長さ方向に沿ったラック12bによる駆動に基づき,シフト部19の上側に取り付けられているステージ17と共に照射領域に移動することを可能としている台車部移動機構とを備えており,(図1に示すように)(b1)ステージとして第一・第二の二つのステージ17が設けられており,(図1,2に示すように)(c1)シフト部移動機構における第一のシフト部19が第一の基板搭載位置から基板を載置している第一のステージ17と共に照射領域の一方の側の位置にある第一の台車部16の上側に到来した後,台車部移動機構においては,第一の台車部16が,第一のシフト部19及び当該シフト部19上のステージ17と共に前記一方の側から長さ方向に沿って照射領域に移動するように設計されているとともに,シフト部移動機構における第二のシフト部19が第二の基板搭載位置から基板を載置している第二のステージ17と共に照射領域の他方の側の位置にある第二の台車部16の上側に到来した後,台車部移動機構における第二の台車部16が,第二のシフト部19及び当該シフト部19上のステージ17と共に前記他方の側から長さ方向に沿って照射領域に移動するように設計されているものであり,(図4に示すように)(c2)台車部移動機構及びシフト部移動機構においては,第一のステージ17上の基板が照射領域を通過した後に,第一のステージが第一の台車部16の更なる長さ方向に沿った移動及びその後の停止に伴って,第一のシフト部19によって側方に移動してから,第一の台車部16が第一のシフト部19及び当該シフト部19上の第一のステージ17と共に前記一方の側に長さ方向に沿って移動することによ80って基板が照射領域を通過した後に,第一のステージが第一の台車部16の更なる一方の側への移動及び第一のシフト部19の側方への移動に基づいて,第一の基板搭載位置に戻るとともに,第二のステージ17上の基板が照射領域を通過した後に,第二のステージが第二の台車部16の更なる長さ方向に沿った移動及びその後の停止に伴って,第二のシフト部19によって側方に移動してから,第二の台車部16が第二のシフト部19及び当該シフト部19上の第二のステージ17と共に前記他方の側に長さ方向に沿って移動することによって基板が照射領域を通過した後に,第二のステージが第二の台車部16の更なる他方の側への移動及び第二のシフト部19の側方への移動に基づいて,第二の基板搭載位置に戻るものであり,(c3)前記一方の側に位置した第一のステージ17と照射領域の間には,第二のステージ17上の基板が照射領域を通過する距離相当分以上の長さ方向に沿ったスペースが確保され,前記他方の側に位置した第二のステージ17と照射領域の間には,第一のステージ17の基板が照射領域を通過する距離相当分以上の長さ方向に沿ったスペースが確保されている,(d)ことを基本構成とする光配向用偏光光照射装置であって,(c2-2´)かつ,前記第一のステージ17及び第一のシフト部19の前記一方の側への復路移動が終了する前に,前記第二のステージ17及び第二のシフト部19の前記照射ユニット方向への往路移動を,前記復路移動の配置領域に対して前記第二のシフト部19の側方への移動を原因として側方に偏位した配置領域にて行わせ,前記第二のステージ17及び第二のシフト部19の前記他方の側への復路移動が終了する前に,前記第一のステージ17及び第一のシフト部19の前記照射ユニット方向への往路移動を,前記復路移動の配置領域に対して前記第一のシフト部19の側方への移動を原因として側方に偏位した配置領域にて行わせるものであり,(図2,3に示すように)(c5´)前記第一・第二ステージ17の各々は,基板を吸着するための吸着孔を有しており,基板と一体的に移動可能な複数のピンを含むことを特徴とし,81(a1´)前記照射ユニットは,前記第一・第二の各ステージ17が往路移動する際と復路移動する際の双方において各ステージ17上の基板に対し,偏光子からの偏光光を直接照射して,往路における照射による露光量と復路における照射による露光量とが積算されるようにすることを特徴とし,(b2´)アライメントマークを有し,光配向用膜材付きの基板が載置されるステージ17と,(図2,3に示すように)(e´)前記ステージ17に載置された前記基板上の前記アライメントマークを検出するアライメントセンサを備えており,(b3´)前記第一第二の各シフト部19においては,各ステージ17の上側に配置されている前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて,搭載された基板の向きを,照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整し,かつ前記第一第二の各ステージ17を下方から支持する基板回転軸20を備えた基板アライナーが設けられ,(c6´)前記一方の側に位置した第一のステージと照射領域の間には,第二のステージに搭載された基板の向きを前記基板アライナーにより約15度以内のアライメント角度にて調整した後の該第二のステージ上の基板が照射領域を通過する場合に,該第二のステージの長さ方向幅分以上のスペースが確保されており,前記他方の側に位置した第二のステージと照射領域の間には,第一のステージに搭載された基板の向きを前記基板アライナーにより約15度以内のアライメント角度にて調整した後の該第一のステージ上の基板が照射領域を通過する場合に,該第一のステージの長さ方向幅分以上のスペースが確保されていることを特徴とし,(c4´)台車部移動機構は,前記第一・第二の各台車部16の移動方向に沿っているガイド部材12aを備えており,このガイド部材12aは,第一の台車部16の移動のガイドと第二の台車部16の移動のガイドとに兼用され,(図4に示すように)82(c7´)前記台車部移動機構及びシフト部移動機構は,第一の台車部16が第一のステージ17と共に前進することによって,第一のステージ17上の基板は,照射領域を通過した後に前進到達位置において第一の台車部16の停止に伴って,第一のシフト部19によって側方に移動してから,後退に転じて第一のステージ17と共に前記一方の側に移動し,照射領域を通過した後に,第一の台車部16の更なる第一の側への移動及び第一のシフト部19の側方への移動に基づいて第一の基板搭載位置に戻るとともに,第二の台車部16が第二のステージと共に前進することによって第二のステージ上の基板は,照射領域を通過した後に前進到達位置において第二の台車部16の停止に伴って,第二のシフト部19によって側方に移動してから,後退に転じて第二のステージと共に前記他方の側に移動し,照射領域を通過した後に,第二の台車部16の更なる第二の側への移動及び第二のシフト部19の側方への移動に基づいて第二の基板搭載位置に戻るものであることを特徴としている。 83 |
裁判長裁判官 | 嶋末和秀 |
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