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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成15ネ514特許権侵害差止請求控訴事件 判例 特許
平成15ネ2235特許権侵害差止等請求控訴事件 判例 特許
平成12ネ1016特許権侵害差止請求控訴事件 判例 特許
平成14ネ2776特許権侵害差止等,特許権侵害差止請求控訴事件 判例 特許
平成14ネ2331特許権侵害差止等請求控訴事件 判例 特許
関連ワード 技術的思想 /  製造方法 /  新規性 /  公然実施(29条1項2号) /  進歩性(29条2項) /  技術的範囲 /  試行錯誤 /  発明の詳細な説明 /  援用権(援用) /  権利の濫用(権利濫用) /  特許発明 /  実施 /  構成要件 /  差止請求(差止) /  侵害 /  実施権 /  専用実施権 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 14年 (ネ) 1693号 特許権侵害差止等請求控訴事件
控訴人(1審被告) ハタノヤ株式会社 (以下「被告」という。)
訴訟代理人弁護士 五藤昭雄
補佐人弁理士 小林正治
被控訴人(1審原告) 日本繊食有限会社 (以下「原告日本繊食」という。)
被控訴人(1審原告) B(以下「原告B」という。)
上記両名訴訟代理人弁護士 小林淳郎
裁判所 大阪高等裁判所
判決言渡日 2004/05/28
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 本件控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は、被告(控訴人)の負担とする。
事実及び理由
控訴の趣旨
1 原判決中、被告(控訴人)敗訴部分を取り消す。
2 原告ら(被控訴人ら)の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は、1、2審とも原告ら(被控訴人ら)の負担とする。
事案の概要
1 本件は、「筋組織状こんにゃくの製造方法及びそれに用いる製造装置」の特許発明に係る特許権者である原告B及び専用実施権者である原告日本繊食が、被告に対し、被告の販売するこんにゃく製造用目皿は、第1次的には、上記特許発明技術的範囲に属するとして、第2次的には、上記特許発明実施にのみ用いられるものであるとして、上記目皿の生産等の差止め等と損害賠償(仮保護の権利に基づくものを含む。)を請求した事案である。
原審は,原告らの請求につき、それぞれその一部を認容したので、これを不服として、被告が控訴を提起した。
2 争いのない事実等,争点及び争点に関する当事者の主張は,次のとおり付加,訂正するほかは,原判決「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」1、2及び「第3 争点に関する当事者の主張」に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1) 2頁19行目の「原告B(以下「原告B」という。)」を「原告B」と、
同22行目の「原告日本繊食有限会社(以下「原告日本繊食」という。)」を「原告日本繊食」と各改める。
(2) 4頁15行目末尾の次に改行の上、次のとおり加え、同16行目冒頭の「(5)」を「(6)」と改める。
「(5) 本件特許権等に基づく請求は、明白な無効理由(新規性又は進歩性の欠如)が存在し、権利の濫用に当たり許されないか〔当審における新主張〕。」 (3) 5頁25行目末尾の次に改行の上、次のとおり加える。
「 なお、本件発明の「筋組織状こんにゃく」は、本件明細書の特許請求の範囲における請求項1及び2における製造方法及び製造装置の構成とともに特定されており、本件明細書4欄13行ないし15行にも、「押出孔は丸孔に限らず角孔等の異形のものも含まれる。更に、スリット状の平行な押出し孔も同様に含まれる。」と述べて、「筋組織状こんにゃく」が各種形状となることが明らかにされている。」 (4) 6頁17行目末尾の次に改行の上、次のとおり加える。
「 なお、当業界においてはもちろん、一般的にも「筋組織状こんにゃく」なるこんにゃくは存在しないところ、本件発明における「筋組織状こんにゃく」は、形状構造もその構成要件であるのに、本件明細書には、束状こんにゃく及び多層構造のこんにゃく以外の形状構造は具体的に特定されておらず、発明の詳細な説明(特許法第36条3項3号)を欠くものである。」 (5) 6頁末行の「同志」を「同士」と改め、11頁末行末尾の次に「連通孔付目皿の場合は「糸状こんにゃくのりが吐出直後の圧力開放による膨張によって外力を加えることなく一体化する」という技術的思想は一切存在しないのであり、この点は孔間隙が1o以下の場合であっても異ならない。」を加え、12頁7行目の「乙2添付資料9考案」を「乙2資料9考案」と改める。
(6) 13頁19行目末尾の次に改行の上、次のとおり加え、同20行目の「5 争点(5)」を「6 争点(6)」と改める。
「5 争点(5)(権利濫用(新規性又は進歩性の欠如)の成否)について 〔被告の主張〕 (1) カネマタ食品工業株式会社(以下「カネマタ食品」という。)は、各種こんにゃく製品の開発製造及び販売を日的とする会社であるが、昭和55年10月ころ、同会社のC(現専務取締役)に対し、販売先の株式会社川口屋スーパーチェンのDから、当時、カネマタ食品が開発して製造、販売していた「きしめん風こんにゃく」ではタレののりが悪かったことなどから、新たなこんにゃく製品開発の提案がなされた。
(2) これに対し、Cは、既製品の帯状きしめん風こんにゃくに縦に凹凸の筋状を形成してなる薄肉こんにゃくを思いつき、これの形成方法として、当時、こんにゃく業界では常識であった、目皿の孔から吐出後の糸こんにゃくのりが吐出直後に膨張する原理を利用し、糸こんにゃくの目皿の孔と孔とを出来るだけ近接して開孔し、個々の孔から吐出する糸状こんにゃくのり同士を横方向に接合させて、縦方向に凹凸の筋状を有する新規の薄肉こんにゃく製品を考えた。
(3) Cは、松田機械工業株式会杜(以下「松田機械」という。)から、昭和56年5月、目皿製作の材料となる巣板(商品名は「砲金切板」と称する円形状青銅鋳物)を買い付け、同年11月ころにかけて、この巣板に目見当で0.4〜0.5o程度の間隔で孔を開け、目皿を製作した(なお、カネマタ食品が、当時、
松田機械から買い付けた巣板は合計11枚であり(昭和56年5月11目に4枚、
同年9月2日に4枚、同年10月30日に3枚)、この11枚中、しゃぶしゃぶ用こんにゃく用の目皿として使用したのは、試作品を含めて4枚であった(乙13、
14、31、32の各1・2、検乙6の目皿、36の1・2、検乙7の目皿〔以下、上記2枚の目皿を総称して「カネマタ目皿」という。〕等)。
(4) カネマタ食品では、昭和56年11月ころから、カネマタ目皿を使用して、しゃぶしゃぶ用こんにゃくである筋状薄肉こんにゃくの試作を開始したが、
同こんにゃくは、全体としては帯状からなり、糸状こんにゃく部分が凸、糸状こんにゃくと糸状こんにゃくとの接着部分が凹となった、新規な薄肉こんにゃくであった。そして、昭和57年4月ころから旧工場において筋状薄肉こんにゃくの量産化を開始するとともに、在庫として残っていた「きしめん風こんにゃく」の包装袋に入れて、株式会社川口屋スーパーチェンに納品した。そして、昭和58年11月24日には、「高級料亭の味 しゃぶしゃぶ用こんにゃく」と印刷した包装袋を三星セロハン株式会社に製作依頼して納品して貰い、そのころから株式会社川口屋スーパーチェンの以外の量販店の名鉄ストアー、株式会社ニチイ羽島店、株式会社島屋、株式会社ヤナゲンなどに納品して現在に至っている。
(5) カネマタ食品でのこんにゃく製造工程は、旧工場に出入りする者は誰でも見聞可能な状況におかれていた。また、しゃぶしゃぶ用こんにゃくの製造に用いる目皿も工場に来た者は誰でもが見聞可能であった。
(6) したがって、本件発明には、新規性又は進歩性がなく、明らかな無効理由が存在するから、本件特許権(仮保護の権利を含む。)に基づく請求は、権利の濫用に当たり許されない。
〔原告らの主張〕 (1) 被告は、本件特許出願前から、カネマタ食品において、本件発明における目皿と同様の構成を有するカネマタ目皿を使用していた旨主張するが、何ら客観的な証拠は存在しない。また、同目皿によって製造されたこんにゃくが、被告主張の「きしめん風こんにゃく」又は「高級料亭の味 しゃぶしゃぶ用こんにゃく」であったかどうかの確証もない。カネマタ食品が、せっかく新規のこんにゃくを開発したのであれば、当初は「きしめん風こんにゃく」の包装袋に入れて販売していたというのも不自然である。
(2) カネマタ食品が販売したとする「高級料亭の味 しゃぶしゃぶ用こんにゃく」の包装袋には、「製法特許出願中」と記載されている。カネマタ食品は「板コンニャク切込装置」の発明につき昭和57年10月30日に特許出願し、登録を得ているが(特許第1487034号。甲66、67)、同特許公報記載の発明は、板コンニャクの長手に沿って切込みを互い違いに設ける装置に関するものであって、本件発明の装置とは全く異なる。カネマタ食品が昭和57年ころから本件発明と同一装置等を用いてこんにゃくの製造・販売を開始したとするならば、必ずその特許出願をしたはずであるが、実際には、その特許出願しないばかりでなく、
かえって、上記「板コンニャク切込装置」の特許出願をしているものである。
(3)ア 被告は、カネマタ目皿は、カネマタ食品が松田機械から購入した11枚の「巣板」から製作したというのであるが、カネマタ目皿が、上記11枚の「巣板」から製作されたものとは考えられない。すなわち、
(ア) 乙35(公正証書)の別紙1の松田機械のカネマタ食品に対する売掛台帳には、次の事項が記載されている。
(昭和56年) 日付 品名 数量 売上金額 5月 6日 スネークポンプ付大型連続機 1台 2,000,000 5月ll日 巣板 4枚 32,000 9月 2日 巣板 4枚 32,000 10月 9日 スネークポンプ付小型連続機 1台 1,750,000 10月30日 巣板 3枚 24,000 (イ) 「巣板」という言葉は,孔の開いた状態の板を指し,孔の開いた板(目皿)を簀板(すいた)とも呼ぶところ、Cも、「機械を買うと目皿は付いてくる」、「孔の開いたものが巣板である」旨の供述をしている(乙44の3)。
他方、前記売掛台帳には「砲金切板」又はムクの板であるとの記載は全くない。また、上記公正証書中には松田のカタログが添付されず,白銅株式会社(東京都中央区所在)のカタログ(別紙4)が添付されているから、そもそも、松田機械は「砲金切板」を製造していないものと推測される。
(ウ) 以上によれば、カネマタ食品は、昭和56年の、5月6日に大型連続機を買った数日後の同月ll日に巣板4枚を買い,さらに10月9日に小型連続機を買った後の同月30日に巣板3枚を買っているところ、これら7枚の巣板は、既に孔の開いた目皿であったことが明白である(9月2日の4枚の巣板は、5月6日購入の大型連続機の目皿の予備として購入したとも,又はそれより以前に購入した機械のために目皿を追加購入したとも考えられる。)。
イ また、次の事情からしても、カネマタ食品が、本件特許出願前にこんにゃく製造にカネマタ目皿を使用していたとは考えがたい。
(ア) 別件である原告らと日本食研株式会社外1名間の大阪高等裁判所平成14年(ネ)第3649号特許権侵害差止事件の原審において、同事件被告らは、本件特許出願前の公然実施に係る証拠であるとして,カネマタ食品が製作したと主張する目皿(検乙7の目皿)の写真(本件の甲74と同一のもの)を提出し、
その後、昭和61年ころから目皿の孔を大きくしたものであるとして、本件の甲77と同一の目皿の写真を提出した。
(イ) 同事件被告らは、上記甲77と同一の目皿の写真を提出した当初、同目皿には、スリット(連通孔)が入っていないと主張していたが、後に、同目皿にはスリット(連通孔)が入っていることが明らかとなった。
(ウ) Cは、甲85の陳述書中で,孔を大きくしたのは,こんにゃくのりが詰まるからであると述べているが、そうであれば、孔を大きくすれば足りるもので、わざわざスリットを入れる必要はない。また、孔を大きくした時期は、昭和61年ころではなく平成7年ころであると考えられる。けだし、本件特許の出願公告日は平成6年5月18日であり,別件実用新案の出願公告日は平成7年2月1日であるところ,単独孔目皿を製造、販売していた被告は平成7年2月に単独孔目皿の製造をやめて,同年3月ころからスリットの入った連通孔付目皿の製造に切り替えたところ、こんにゃく業界の情報の伝播の速度からして、カネマタ食品もまた、被告の動きを知って直ちに単独孔目皿をスリット(連通孔)付目皿(甲77の写真の目皿)に切り替えたものと考えられるからである。 (エ) カネマタ食品が上記時期に目皿を切り替えた理由は、本件特許権の侵害を恐れたためとしか考えられない。」 (7) 13頁23行目の「平成8年4月22日」の次に「(本件特許権に係る専用実施権設定日)」を、14頁4行目の「平成6年5月18日」の次に「(本件特許権に係る出願公告日)」を各加える。
(8) 20頁4行目及び同8行目の各「同士」をいずれも「同志」と改める。
当裁判所の判断
1 当裁判所も,原告らの被告に対する請求は、いずれも、原判決主文掲記の限度で理由があり、その余の請求はいずれも理由がないものと判断する。
その理由は,次のとおり付加,訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第4 争点に対する判断」1ないし5に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1) 18頁20行目末尾の次に改行の上、次のとおり加える。
「 なお、被告は、本件発明における「筋組織状こんにゃく」は、形状構造もその構成要件であるのに、本件明細書には、その形状構造が明らかにされていないなどと主張しているが、「筋組織状こんにゃく」との用語が当業者等の間で慣用されていないとしても、その形状構造は、本件明細書において、製造装置等の構成と実施例の記載により特定されているものというべきであるし、その具体的な構成を、一実施例にすぎない束状及び多層構造のものに限定すべき理由もない。」 (2) 19頁3行目の「意見書」の次に「(同添附資料10)」を加え、28頁20行目の「同志」を「同士」と、29頁13行目の「糸状こんにゃく同士」を「糸状こんにゃくのり同志」と各改める。
(3) 30頁24行目末尾の次に改行の上、次のとおり加える。
「カ 被告は、連通孔付目皿の場合は「糸状こんにゃくのりが吐出直後の圧力開放による膨張によつて外力を加えることなく一体化する」という技術的思想は一切存在せず、この点は孔間隙が1o以下の場合であっても異ならない旨主張するが、既にみたとおり、連通孔付目皿においても、主孔から吐出された糸状こんにゃくのりが膨張して互いに接触する部分で接着することにより糸状こんにゃくのり同士が一体化するものであると認められる以上、この点について異なる前提に立つ上記被告の主張は採用できない。」 (4) 33頁16行目の「ものであり、」の次に「また、同考案は、糸状こんにゃくのり同士の接着に、吐出直後の圧力開放によるこんにゃくのりの膨張を利用するものでもなく、」を加える。
(5) 33頁22行目末尾の次に改行の上、次のとおり加え、同23行目の「5 争点(5)」を「6 争点(6)」と改める。
「5 争点(5)(権利濫用(新規性又は進歩性の欠如)の成否)について (1) 被告は、カネマタ食品は、本件特許出願前である昭和56年に、同会社のC(現専務取締役)において、同年に松田機械から購入した11枚の巣板を用いて、カネマタ目皿を製作し、これを用いたこんにゃくを試作した上、昭和57年秋からカネマタ目皿を使用して製造したこんにゃくを販売しており、これを、当初は、それ以前から使用していた「きしめん風こんにゃく」の包装袋を用いて、その名称で販売し、昭和58年末ころからは、「高級料亭の味 しゃぶしゃぶ用こんにゃく」の名称で、同名称の表示された包装袋を用いて販売している旨主張する。
(2) そして、証拠(甲63〜65、乙13、16、19、23の1〜13、24〜27、44の2〜5・7、弁論の全趣旨。なお、乙28の1〜3には「製法特許出願中」なる表示はない。)によれば、カネマタ食品は、昭和57年4月ころ、「きしめん風こんにゃく」の包装袋に入れられた商品を株式会社川口屋スーパーチェン等に納品したことがあること、昭和58年12月ころからは「高級料亭の味 しゃぶしゃぶ用こんにゃく」と印刷した包装袋を用いた商品を株式会社川口屋スーパーチェンの以外の量販店の名鉄ストアー、株式会社ニチイ羽島店、株式会社島屋、株式会社ヤナゲンなどに納品して現在に至っていること、上記「高級料亭の味 しゃぶしゃぶ用こんにゃく」のラベルには「製法特許出願中」と表示されていたことが、それぞれ認められる。
(3) しかし、上記(2)の事実のみでは、「高級料亭の味 しゃぶしゃぶ用こんにゃく」との商品名の製品が販売されていたことを示すにすぎず、昭和57年ころ当時の製品の製造方法・製品形状等を客観的に示すものではないところ、その関係で、被告は、カネマタ目皿を、現実に前記販売に係るこんにゃくの製造に使用した目皿として提出し、同目皿が、Cによって、昭和56年に松田機械から購入した巣板から同年中に製作されたものである旨主張している。
しかしながら、乙35(公正証書)の別紙1の売掛台帳には被告の主張に沿う記載はあるものの、いずれも「巣板」と記載されているものであり、原告らも主張するとおり、「巣板」とは、一般には「孔の開いた板」のことを指すものと考えられることや(乙44の2・3参照)、「巣板」購入の直前に「巣板」を要する連続機が購入されている事実等に照らすと、これによって、上記売掛台帳の記載とカネマタ目皿とを直接関連づけることはできない。
また、乙44の3には、Cが、上記「巣板」からカネマタ目皿等を製作した旨の供述記載があるものの、上記供述記載によっても、目皿に開ける孔を、カネマタ目皿のような新規な構成にすることをどのようなきっかけで思いついたのかについて必ずしも明らかではないといわざるを得ないし、最初の試作品(Cらは、
それが検乙6の目皿であると供述している。)を製作するについても、当該目皿に開ける孔の孔径や孔間隙等をどのようにするか、当該目皿を用いてこんにゃくを製造する際のポンプの回転速度や押出しの速度等の条件をどのようにするかについて試行錯誤した形跡もうかがわれないこと等に照らすと、乙44の3におけるCの供述記載は、にわかに採用しがたいものというほかない。
そして、後記のとおり、昭和57年ころ以降に薄肉帯状のこんにゃくの形状を見たなどとする乙44の4ないし7の各供述記載によっても、カネマタ目皿の製作時期等に関する被告の主張を認めるに足りないし、ほかにこの点を認めるに足りる証拠はない。
(4) また、乙13、14、19、44の2・3には、Cは、昭和57年秋から目皿の穴を斜めに開けることによって、押し出された糸こんにゃくを帯状に一体化する技術を思いつき、この方法によって製造した商品を販売したこと、当初、旧製品の「きしめん風こんにゃく」の包装袋が残っていたので、これを使用して販売し、昭和58年末からは、「高級料亭の味 しゃぶしゃぶ用こんにゃく」という商品名で、新しい包装袋を使用して販売するようになったこと等の記載があり、また、乙16〜18、27、44の4〜7にも、昭和59年ないし60年ころから、
カネマタ食品において波条の凹凸の筋がある薄い帯状のこんにゃくが製造されていることや、これに用いる目皿を目撃した旨の記載があるが、これらはいずれも客観的な証拠とはいいがたく、直ちに前記被告の主張を認めるには足りない。
加えて、前記(2)の「高級料亭の味 しゃぶしゃぶ用こんにゃく」のラベルに表示された「製法特許出願中」なる記載につき、カネマタ食品は、昭和57年10月30日に「板コンニャク切込装置」の特許出願(特公昭63-31177号特許公報。これは、既に形成された板こんにゃくに刃物を用いて切込みを入れる装置に係る発明であり、本件発明とは全く構成を異にする。甲66)をしながら、上記ラベルに「製法特許出願中」との記載をしているにもかかわらず、被告主張の製造方法等については特許出願をしていないのは、不自然であるし、カネマタ食品が、新規のこんにゃくを開発しながら、当初は「きしめん風こんにゃく」の包装袋(乙12の7、24)に入れて販売していたというのも不自然であること(これらの点は、乙44の2・3におけるCらの弁明によっても、十分には了解しがたい。)等を考慮すると、本件全証拠によっても、被告が主張する本件特許出願前の公然実施の事実を認めるには足りないものといわざるを得ない。
(5) 以上によれば、権利濫用に関する被告の主張は採用できない。」 2 その他,原審及び当審における当事者提出の各準備書面記載の主張に照らし,原審及び当審で提出,援用された全証拠を改めて精査しても,引用に係る原判決を含め,当審の認定,判断を左右するほどのものはない。
結論
以上の次第で,原告らの請求は,原判決主文掲記の限度で理由があり、その余の請求は理由がないものというべきところ、これと同旨の原判決は相当であって、本件控訴はいずれも理由がない。
よって,主文のとおり判決する。
(平成16年3月26日口頭弁論終結)
裁判長裁判官 竹原俊一
裁判官 小野洋一
裁判官 中村心
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