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関連審決 無効2015-800035
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事件 平成 28年 (行ケ) 10036号 審決取消請求事件

原告株式会社ハナヤマ
訴訟代理人弁護士鳥海哲郎 塩月秀平 松山智恵 栗林知広 稲葉大輔
訴訟代理人弁理士金田周二
被告Y
訴訟代理人弁理士豊岡静男 伊藤正和 原裕子
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2016/11/28
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の求めた裁判
特許庁が無効2015-800035号事件について平成27年12月28日にした審決を取り消す。
事案の概要
本件は,特許無効審判請求に対する不成立審決の取消訴訟である。争点は,@分割要件違反に伴う新規性判断の誤りの有無,A補正要件の判断の誤りの有無,B訂正要件の判断の誤りの有無,Cサポート要件の判断の誤りの有無,D実施可能要件の判断の誤りの有無,E進歩性判断の誤りの有無である。
1 特許庁における手続の経緯 被告は,名称を「ブルニアンリンク作成デバイスおよびキット」とする発明について,平成23年6月23日にした国際出願(本件原出願。特願2013-537663号,パリ条約に基づく優先権主張,優先日・平成22年11月5日,優先権主張国・米国。甲1,12,13)の分割出願として,平成26年1月29日,特許出願をし(本件分割出願。特願2014-14615号。甲11,12),同月30日,特許請求の範囲を補正する手続補正をし(本件補正1。甲22),同年6月4日,特許請求の範囲を補正する手続補正をし(本件補正2。甲23),同年7月11日,その特許権(特許第5575340号。請求項の数16)の設定登録を受けた(本件特許。甲12)。
原告が,平成27年2月23日に本件特許の請求項1,3,6〜8,10及び11に係る発明についての特許無効審判請求(無効2015-800035号)をしたところ,被告は,同年6月5日付けで訂正請求をした(本件訂正)。
特許庁は,平成27年12月28日, 「請求のとおり訂正を認める。本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は,平成28年1月7日,原告に送達された。
2 本件訂正発明,本件発明及び本件当初発明1の要旨 本件訂正後の請求項1,3,6〜8,10,11に係る発明(以下,請求項の番号に従って「本件訂正発明1」のようにいい,併せて「本件訂正発明」という。)並びに本件訂正前の本件特許の請求項1,3,6〜8,10,11に係る発明(以下,請求項の番号に従って「本件発明1」のようにいい,併せて「本件発明」という。)及び本件補正1前の本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件当初発明1」という。)の各特許請求の範囲の記載は,次のとおりである。なお,下線は,本件訂正による訂正箇所を示す。
(1) 本件訂正発明 ア 本件訂正発明1「【請求項1】 一連のリンクからなるアイテムを作成するための装置であって, 前記リンクはブルニアンリンクであり,前記アイテムはブルニアンリンクアイテムであり, ベースと, ベース上にサポートされた複数のピンと,を備え, 前記複数のピンの各々は,リンクを望ましい向きに保持するための上部部分と,当該複数のピンの各々の,ピンの列の方向の前面側の開口部とを有し,複数のピンは,複数の列に配置され,相互に離間され,且つ,前記ベースから上方に伸びている装置。」 イ 本件訂正発明3「【請求項3】 上部部分が,複数のピンの少なくとも1つの上でリンクをその場に保持するためのフレアー状部分を含む,請求項1記載の装置。」 ウ 本件訂正発明6「【請求項6】 一連のリンクからなるアイテムを作成するためのキットであって, 前記リンクはブルニアンリンクであり,前記アイテムはブルニアンリンクアイテムであり, リンクを望ましい向きに保持するための上部部分と,複数のピンの各々の,ピンの列の方向の前面側の開口部を含み,ベースによりお互いに対してサポートされた複数のピンを備え, 前記複数のピンは,複数の列に配置され,相互に離間され,且つ,前記ベースから上方に伸びている,キット。」 エ 本件訂正発明7「【請求項7】 望ましい向きに保持されたリンクを,複数のピンの少なくとも1つの上で操作するためのフックツールを含む,請求項6記載のキット。」 オ 本件訂正発明8「【請求項8】 一連のリンクの端部を接続するための少なくとも1つのクリップを含み,該クリップは,各リンクをクリップの内側エリア内に捕捉するための内向きに面した端部を含む,請求項6記載のキット。」 カ 本件訂正発明10「【請求項10】 開口部が,複数のピンの各々の少なくとも1つのサイドに沿って配置されたアクセス溝である,請求項6記載のキット。」 キ 本件訂正発明11「【請求項11】 上部部分が,複数のピンの少なくとも1つの上でリンクをその場に保持するためのフレアー状部分を含む,請求項6記載のキット。」 (2) 本件発明(甲12) ア 本件発明1「【請求項1】 一連のリンクからなるアイテムを作成するための装置であって, ベースと, ベース上にサポートされた複数のピンと,を備え, 前記複数のピンの各々は,リンクを望ましい向きに保持するための上部部分と,当該複数のピンの各々の前面側の開口部とを有し,複数のピンは,複数の列に配置され,相互に離間され,且つ,前記ベースから上方に伸びている装置。」 イ 本件発明3「【請求項3】 上部部分が,複数のピンの少なくとも1つ上でリンクをその場に保持するためのフレアー状部分を含む,請求項1記載の装置。」 ウ 本件発明6「【請求項6】 一連のリンクからなるアイテムを作成するためのキットであって, リンクを望ましい向きに保持するための上部部分と,複数のピンの各々の前面側の開口部を含み,ベースによりお互いに対してサポートされた複数のピンを備え, 前記複数のピンは,複数の列に配置され,相互に離間され,且つ,前記ベースから上方に伸びている,キット。」 エ 本件発明7「【請求項7】 望ましい向きに保持されたリンクを,複数のピンの少なくとも1つの上で操作するためのフックツールを含む,請求項6記載のキット。」 オ 本件発明8「【請求項8】 一連のリンクの端部を接続するための少なくとも1つのクリップを含み,該クリップは,各リンクをクリップの内側エリア内に捕捉するための内向きに面した端部を含む,請求項6記載のキット。」 カ 本件発明10「【請求項10】 開口部が,複数のピンの各々の少なくとも1つのサイドに沿って配置されたアクセス溝である,請求項6記載のキット。」 キ 本件発明11「【請求項11】 上部部分が,複数のピンの少なくとも1つ上でリンクをその場に保持するためのフレアー状部分を含む,請求項6記載のキット。」 (3) 本件当初発明1(甲11)「【請求項1】 一連のリンクからなるアイテムを作成するためのキットであって, ベースと, ベース上にサポートされた少なくとも1つのピンバーであって,ピンバーは,各々がリンクを望ましい向きに保持するための上部フレアー状部分を含んだ複数のピンと,複数のピンの各々の前面上の開口部を含むものと,を含むキット。」 3 審判における請求人(原告)の主張 (1) 無効理由1(新規性欠如) 本件分割出願は,分割要件を欠く違法なものであり,出願日は遡及しない。本件訂正発明は,現実の出願日前に公開された甲1(特表2013-544587号公 報)に記載された発明(甲1発明)であるから,新規性を欠く。
(2) 無効理由3(進歩性欠如) 本 件 訂 正 発 明 は , 甲 2 ( Knitty : Spring 2007 」 と 題 す る ウ ェ ブ ペ ー ジ 「(http://www.knitty.com/ISSUEspring07/FEATloomknitting.html)をプリントアウトしたもの)に記載された発明(甲2発明),甲2及び甲3(米国特許第5,231,742号公報)に記載された発明,又は,甲2発明と周知慣用技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,進歩性を欠く。
(3) 無効理由5(進歩性欠如) 本件訂正発明は,甲10(英国特許出願公開2147918号公報)に記載された発明(甲10発明),甲10及び甲3に記載された発明,又は,甲10発明と周知慣用技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,進歩性を欠く。
(4) 無効理由6(新規事項追加) 本件分割出願の請求項1及び6について,本件補正1及び2(以下,併せて「本件補正」という。)は,本件特許の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(本件出願当初明細書等)に記載した事項の範囲内でなされたものではなく,新規事項の追加に該当する。
(5) 無効理由7(記載要件) ア 本件訂正後の本件特許の請求項1〜16に係る発明(本件訂正発明〔全部〕)は,本件特許に係る明細書(本件明細書)の発明の詳細な説明に記載したものではないから,その特許請求の範囲の記載は,サポート要件を満たしていない(ただし,審判で特許の無効を求めるのは,本件訂正発明についてである。 。
) イ 本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,当業者が本件訂正発明〔全部〕を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから,実施可能要件を満たしていない(ただし,審判で特許の無効を求めるのは,本件訂正発明についてである。。
) 4 審決の理由の要点 (1) 本件訂正の適否の判断(訂正事項1,2,7,8関連) ア 訂正事項1,2,7,8(下線部は,訂正部分を示す。) (ア) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「一連のリンクからなるアイテムを作成するための装置であって,ベースと,」とあるのを,「一連のリンクからなるアイテムを作成するための装置であって,前記リンクはブルニアンリンクであり,前記アイテムはブルニアンリンクアイテムであり,ベースと,」に訂正する。
(イ) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に「当該複数のピンの各々の前面側の開口部」とあるのを,「当該複数のピンの各々の,ピンの列の方向の前面側の開口部」に訂正する。
(ウ) 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項6に「一連のリンクからなるアイテムを作成するためのキットであって,リンクを望ましい向きに保持するための上部部分と,とあるのを, 」「一連のリンクからなるアイテムを作成するためのキットであって,前記リンクはブルニアンリンクであり,前記アイテムはブルニアンリンクアイテムであり,リンクを望ましい向きに保持するための上部部分と,」に訂正する。
(エ) 訂正事項8 特許請求の範囲の請求項6に「複数のピンの各々の前面側の開口部」とあるのを,「複数のピンの各々の,ピンの列の方向の前面側の開口部」に訂正する。
イ 判断 (ア) 訂正事項1及び7は,それぞれ, 「リンク」が「ブルニアンリンク」であり, 「アイテム」が「ブルニアンリンクアイテム」であることを特定することにより,訂正事項2及び8は,それぞれ, 「前面」が「ピンの列の方向の前面」であることを特定することにより,いずれも,不明瞭となっている記載が正され,その本来 の意が明らかにされているから,特許法134条の2第1項ただし書第3号の明瞭でない記載釈明を目的とするものに該当する。
(イ) また,訂正事項1,2,7及び8は,いずれも,本件特許の願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内で行われたものであり,実質上特許請求の範囲拡張し,又は変更するものでもない。
(2) 無効理由1(新規性欠如)について ア 本件原出願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(本件原出願明細書等)に記載した事項から,本件原出願明細書等に記載された発明(本件原出願発明)のうち「キット」の発明として,個人の技量に依存することのない「ブルニアンリンク」作成方法たる,段落【0020】【0021】及び図14A ,〜Cに記載された作成方法(本件作成方法)を「提供」するために,列に配置された「複数のピン」「ベース」「上部部分」 , , ,及び「複数のピンの各々」の「ピンの列の方向」の前面側の「開口部」の構成を全て併せ持つ装置であって,更に「ベース上にサポートされた」「ピンバー」を持つ装置の発明(本件原出願発明A)の群と,更に「ベース上にサポートされた複数のピン」 (本件技術的事項)を有する装置の発明(本件原出願発明B)の群の2つの発明群を導き出すことができる。
そうすると,本件原出願明細書等には,本件原出願発明A及びBの発明の群が開示されているが,本件原出願発明Bの群を分割出願に係る発明としたものが本件分割出願であり,本件訂正発明は,本件原出願発明Bの群に含まれる。
したがって,本件分割出願は,適法な分割出願であり,本件原出願の出願日である平成23年6月23日に出願されたものとみなされる。
イ 平成25年12月19日に公表された甲1を出願日前に公知となった文献として主張する無効理由1は,前提に誤りがあり,理由がない。
(3) 無効理由6(新規事項追加)について 本件出願当初明細書等に記載した事項は,本件原出願明細書等に記載した事項と同一であるから,前記(2)アと同様の理由により,本件補正は,本件出願当初明細書 等に記載した事項の範囲内でなされたものであり,新規事項の追加に該当しない。
(4) 無効理由7(記載要件)について ア 本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,本件原出願明細書等の明細書の発明の詳細な説明の記載と同一であるから,前記(2)アと同様の理由により,本件明細書の発明の詳細な説明には,本件技術的事項を有する本件原出願発明Bと同じ発明(本件特許明細書発明)の群が開示されている。
本件技術的事項を有する本件訂正発明〔全部〕は,本件特許明細書発明の群に含まれるから,本件特許に係る特許請求の範囲の記載は,サポート要件に適合する。
イ 本件技術的事項を有する本件訂正発明〔全部〕は, 「ブルニアンリンクアイテム」の作成は個人の技量に依存するという問題を解決し,個人の技量に依存することなく,さまざまな技量レベルの人々に, 「ブルニアンリンクアイテム」を簡単に作成するキットを提供するという課題(本件課題)を解決するために,個人の技量に依存することのない「ブルニアンリンク」作成方法を「提供」するところにその本質があるが,かかる「ブルニアンリンク」作成方法である本件作成方法は,段落【0020】【0021】及び図14A〜Cに,当業者が実施することができる ,程度に明確かつ十分に記載されている。また,ベース,ピンといった,本件作成方法を「提供」する装置の各構成についても,本件明細書に当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されている。
そうすると,本件技術的事項たる「ベース上にサポートされた複数のピン」の構造についても,本件明細書の記載と技術常識を踏まえて,当業者がその実施をすることができるものであるから,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,実施可能要件に適合する。
(5) 無効理由3(進歩性欠如)について ア 甲2発明の認定 甲2発明は,以下のとおりである。
「編み物を作成するための編み機であって, ベースと, ベース上に2列に並べられた複数のペグと,を備え, 複数の各ペグは,編み目がペグから外れるのを防止するための,他の部分よりも径が大きくなった上端部と,ベースの隙間とは反対側のペグの面側にペグの直立方向に沿って形成された溝であって,かぎ針を挿入して,ペグに掛けられた編み目を引っ掛けることができる溝とを有し,複数の各ペグは,ベースから上方に直立している, 編み機。」 イ 本件訂正発明1について (ア) 一致点の認定 本件訂正発明1と甲2発明とを対比すると,次の点で一致する。
「一連のリンクからなるアイテムを作成するための装置であって, ベースと, ベース上にサポートされた複数のピンと,を備え, 前記複数のピンの各々は,リンクを望ましい向きに保持するための上部部分と,当該複数のピンの各々の開口部とを有し,複数のピンは,複数の列に配置され,相互に離間され,且つ,前記ベースから上方に伸びている 装置。」 (イ) 相違点の認定 本件訂正発明1と甲2発明とを対比すると,次の点が相違する。
a 相違点1 本件訂正発明1は,「ブルニアンリンク」からなる「ブルニアンリンクアイテム」を作成するための装置であるのに対し,甲2発明は,編み物を作成するための編み機である点。
b 相違点2 本件訂正発明1の開口部は,ピンの列の方向の前面側にあるのに対し,甲2発明 の溝は,ベースの隙間とは反対側のペグの面側にある点。
(ウ) 相違点1及び2についての判断 a 相違点2において, 「開口部」の位置を「ピンの列の方向の前面」とした理由は,次のとおり考えるのが合理的である。
すなわち, 「ピンの列の方向」に「保持」された弾性バンドの装着を外して掛け戻していくステップ(FIG.14A)において,各ピンの表面であって「ピンの列の方向の前面」側の部分には,装着された2本の弾性バンドのうち,装着を外す弾性バンドのみが位置している(FIG.14A)。したがって,開口部の位置が「ピンの列の方向の前面」にある方が,当該ステップにおいて,開口部の間隙にフックを挿入する際に,本来,装着を外すことのない弾性バンドを誤って「開放」することを起こし難く,技量の乏しい者であっても,容易に「ブルニアンリンク」を作成することができるためである。
つまり,相違点2に係る「開口部」の位置は,個人の技量に依存することなく,様々な技量レベルの人々に「ブルニアンリンクアイテム」を簡単に作成する装置を提供するという,本件課題を解決するために最適なものである。
b 甲2には, 「ブルニアンリンク」に関する記載も示唆もなく,本件課題である,様々な技量レベルの人々に「ブルニアンリンクアイテム」を簡単に作成する装置を提供することを解決するために,甲2発明の溝の位置を最適化すること,すなわち, 「ピンの列の方向の前面」とすることを示唆するものも見当たらない。そうすると,甲2には,相違点1及び2に係る本件訂正発明1の発明特定事項に至る動機となるものはないから,甲2発明に基づいて,相違点1及び2に係る本件訂正発明1の発明特定事項に想到することが容易であるとはいえない。
c 甲3〜6のいずれにも,相違点1及び2に係る本件訂正発明1の発明特定事項は開示されておらず,動機となるものもないことから,甲2発明と甲3〜6に記載のものをどのように組み合わせても,相違点1及び2に係る本件訂正発明1の発明特定事項に想到することが容易であるとはいえない。
ウ 本件訂正発明6について (ア) 一致点の認定 本件訂正発明6と甲2発明とを対比すると,次の点で一致する。
「一連のリンクからなるアイテムを作成するためのキットであって, リンクを望ましい向きに保持するための上部部分と,複数のピンの各々の開口部を含み,ベースによりお互いに対してサポートされた複数のピンを備え, 前記複数のピンは,複数の列に配置され,相互に離間され,且つ,前記ベースから上方に伸びている, キット。」 (イ) 相違点の認定 本件訂正発明6と甲2発明とを対比すると,次の点が相違する。
a 相違点3 本件訂正発明6は,「ブルニアンリンク」からなる「ブルニアンリンクアイテム」を作成するためのキットであるのに対し,甲2発明は,編み物を作成するための編み機である点。
b 相違点4 本件訂正発明6の開口部は,ピンの列の方向の前面側にあるのに対し,甲2発明の溝は,ベースの隙間とは反対側のペグの面側にある点。
(ウ) 相違点3及び4についての判断 相違点3及び4は,実質的に相違点1及び2と同じものであるから,相違点1及び2と同様の理由により,相違点3及び4を想到容易とすることはできない。
エ 本件訂正発明3,7,8,10及び11について 本件訂正発明3は,本件訂正発明1を引用するものであり,本件訂正発明7,8,10及び11は,それぞれ本件訂正発明6を引用するものであるから,本件訂正発明3,7,8,10及び11に係る特許も,無効理由3によっては無効にすることはできない。
(6) 無効理由5(進歩性欠如)について ア 甲10発明の認定 甲10発明は,以下のとおりである。
「編み物製品を作成するための手編み用の編み機であって, フレーム部材1と, フレーム部材1上にサポートされた複数のピン5と,を有し, 複数のピン5の各々は,糸を保持するための平板状の部分9と,複数のピン5の各々の,ピン5の外側に面している側面側の溝7とを有し,複数のピン5は,2列に配置され,相互に離間され,且つ,フレーム部材1から上方に伸びている 編み機。」 イ 本件訂正発明1について (ア) 一致点の認定 本件訂正発明1と甲10発明とを対比すると,次の点で一致する。
「一連のリンクからなるアイテムを作成するための装置であって, ベースと, ベース上にサポートされた複数のピンと,を備え, 前記複数のピンの各々は,リンクを望ましい向きに保持するための上部部分と,当該複数のピンの各々の開口部とを有し,複数のピンは,複数の列に配置され,相互に離間され,且つ,前記ベースから上方に伸びている 装置。」 (イ) 相違点の認定 本件訂正発明1と甲10発明とを対比すると,次の点で相違する。
a 相違点5 本件訂正発明1は,「ブルニアンリンク」からなる「ブルニアンリンクアイテム」を作成するための装置であるのに対し,甲10発明は,編み物製品を作成するための手編み用の編み機である点。
b 相違点6 本件訂正発明1の開口部は,ピンの列の方向の前面側にあるのに対し,甲10発明の溝7は,ピン5の外側に面している側面側にある点。
(ウ) 相違点5及び6についての判断 甲10には,甲2と同様に, 「ブルニアンリンク」に関する記載も示唆もなく,甲10発明の溝7の向きを変更することを示唆するものも見当たらない。そうすると,甲10には,相違点5及び6に係る本件訂正発明1の発明特定事項に至る動機となるものはないから,甲10発明に基づいて,相違点5及び6を想到容易とすることはできない。
また,相違点5及び6は,実質的に相違点1及び2と同じものであるから,相違点1及び2と同様の理由により,相違点5及び6を想到容易とすることはできない。
ウ 本件訂正発明6について (ア) 一致点の認定 本件訂正発明6と甲10発明とを対比すると,次の点で一致する。
「一連のリンクからなるアイテムを作成するためのキットであって, リンクを望ましい向きに保持するための上部部分と,複数のピンの各々の開口部を含み,ベースによりお互いに対してサポートされた複数のピンを備え, 前記複数のピンは,複数の列に配置され,相互に離間され,且つ,前記ベースから上方に伸びている, キット。」 (イ) 相違点の認定 本件訂正発明6と甲10発明とを対比すると,次の点で相違する。
a 相違点7 本件訂正発明6は,「ブルニアンリンク」からなる「ブルニアンリンクアイテム」を作成するためのキットであるのに対し,甲10発明は,編み物製品を作成するための手編み用の編み機である点。
b 相違点8 本件訂正発明6の開口部は,ピンの列の方向の前面側にあるのに対し,甲10発明の溝7は,ピン5の外側に面している側面側にある点。
(ウ) 相違点7及び8についての判断 相違点7及び8は,実質的に相違点1及び2と同じものであるから,相違点1及び2と同様の理由により,相違点7及び8を想到容易とすることはできない。
エ 本件訂正発明3,7,8,10及び11について 本件訂正発明3は,本件訂正発明1を引用するものであり,本件訂正発明7,8,10及び11は,それぞれ本件訂正発明6を引用するものであるから,本件訂正発明3,7,8,10及び11に係る特許も,無効理由5によっては無効にすることはできない。
原告主張の審決取消事由
1 取消事由1(分割要件違反に伴う新規性判断の誤り) (1) 審決の誤り 審決は,本件分割出願が特許法44条1項所定の分割要件を欠くものではなく,本件分割出願に係る出願日が本件原出願の出願日に遡及する結果,本件訂正発明は本件原出願の公表特許公報(甲1)により新規性を喪失することはないと判断したが,誤りである。
すなわち,本件分割出願に係る発明である本件訂正発明は, 「ベース」上に「ピンバー」が存在せず, 「ベース」上に直接ピンが存在する編み機の発明,すなわち, 「ベース」に対しピンが不動であるような編み機も含む発明である。
しかし,本件原出願明細書等(甲13)には, 「ベース」と「ピンバー」が別体として存在し, 「ベース」と「ピンバー」が様々な向きに組合せ可能な編み機のみが記載され,「ベース」上に直接ピンが存在する編み機(あたかも,「ベース」と「ピンバー」が一体となったような編み機)については一切記載されておらず,また,記 載から当業者にとってこのような編み機が自明であったともいえない。
そうすると,本件分割出願は,特許法44条1項所定の分割要件に違反するものであり,本件分割出願の出願日は,本件原出願の出願日に遡及することはなく,現実の出願日である平成26年1月29日である。
したがって,本件訂正発明は,平成25年12月19日に公表された甲1発明により新規性が認められない。
(2) 被告の主張に対し 乙1の「標準ベース12」及び「台形の滑り部材16」は,それぞれを様々な向き及び組合せに組み立てることができるという本件原出願明細書等に記載されている編み機の本質的な構成を備えるものではないから,本件原出願明細書等における「ベース」及び「ピンバー」には相当しない。
また, 「ベース」と「ピンバー」を様々な向き及び組合せに組み立てることができる構成であるからこそ無尽のバリエーションの編み物製品を容易に作成することができるのであり,甲48のとおり, 「ピン」をサポートした複数の「ベース」を縦方向又は横方向に追加することでは,無尽のバリエーションの編み物製品を容易に作 「成することができる編み機の提供」という技術的課題の解決には全く不十分である。
2 取消事由2(補正要件の判断の誤り) 審決は,本件補正が新規事項の追加には該当しないと判断したが,誤りである。
すなわち,本件原出願明細書等の記載と,本件出願当初明細書等の記載は同一であるから,前記1と同様に,本件出願当初明細書等には,「ベース」と「ピンバー」が別体として存在する編み機のみが記載され, 「ピンバー」が存在しない編み機については一切記載されていない。
にもかかわらず,本件補正は,請求項から「ピンバー」の構成を削除するものであり,本件補正によって本件訂正発明1及び6は「ピンバー」が存在しない編み機に関する発明となるから,新規事項の追加に該当し,許されない。
3 取消事由3(訂正要件の判断の誤り) 審決は,本件訂正発明〔全部〕の課題を「個人の技量に依存することなく,様々な技量レベルの人々に, 『ブルニアンリンクアイテム』を簡単に作成するキットを提供することにある」とし,かかる「課題を解決するために,個人の技量に依存することのない『ブルニアンリンク』作成方法を『提供』するところ」に発明の本質があると認定した。
本件訂正の前後を問わず,本件発明及び本件訂正発明〔全部〕の本質は, 「ベースとピンバーを様々な向きに組み合わせることにより,無尽のバリエーションの編み物製品を容易に作成することができる編み機を提供すること」にあるから,審決の上記認定は誤りであるが,仮に本件訂正後の発明の本質が審決認定のとおりであれば,本件訂正により,発明の本質が「ベースとピンバーを様々な向きに組み合わせることにより,無尽のバリエーションの編み物製品を容易に作成することができる編み機を提供すること」から, 「個人の技量に依存することのない『ブルニアンリンク』作成方法を『提供』する」ことに変更されているといえるから,本件訂正は特許請求の範囲を実質的に変更するものであり,本件訂正を認めた審決の判断は,誤りである。
4 取消事由4(サポート要件の判断の誤り) 審決は,本件明細書には「ベース」上に「ピンバー」が存在せず, 「ベース」上に直接ピンが存在する編み機が開示されているとして,サポート要件を充足すると判断したが,誤りである。
すなわち,本件明細書の記載と,本件原出願明細書等の記載は同一であるから,前記1と同様に,本件明細書には,「ベース」上に「ピンバー」が存在せず,「ベース」上に直接ピンが存在する編み機は開示されていないから,本件訂正発明に係る特許請求の範囲の記載は,サポート要件を満たしていない。
5 取消事由5(実施可能要件の判断の誤り) 審決は,本件明細書には「ベース」上に「ピンバー」が存在せず, 「ベース」上に直接ピンが存在する編み機が開示されているとして,実施可能要件を充足すると判断したが,誤りである。
すなわち,前記4と同様に,本件明細書の記載と,本件原出願明細書等の記載は同一であり,本件明細書には,「ベース」上に「ピンバー」が存在せず,「ベース」上に直接ピンが存在する編み機は開示されていないから,本件明細書の記載は,当業者が「ベース」上に「ピンバー」が存在せず, 「ベース」上に直接ピンが存在する編み機の発明である本件訂正発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではなく,実施可能要件を満たしていない。
6 取消事由6(進歩性判断の誤り) (1) 相違点1,3,5及び7の判断の誤り 審決は,相違点1について,いわゆる用途限定であり,本件訂正発明1に開示されている「『複数のピン』『ベース』『上部部分』及び『複数のピンの各々の,ピン , ,の列の方向の前面側の開口部』の構成を全て併せ持つ装置であって, 『ベース上にサポートされた複数のピン』の技術的事項を持つ装置」は, 「個人の技量に依存することのない『ブルニアンリンク』作成方法たる本件作成方法を『提供』する」という技術的課題の解決のために特に適した構造であるから,相違点1は発明特定事項となると判断しているが,誤りである。また,相違点3,5及び7についても,相違点1と同様の判断をしているから,同様に誤りである。
すなわち, 「ブルニアンリンク作成用」という用途限定は,明細書,図面及び出願時の技術常識等を考慮しても,ブルニアンリンクなるものを作成するために用いるのに特に適した何らかの形状,構造,組成等を暗に意味しているとは到底考えられない。また,ブルニアンリンクアイテムの作成方法は,一列に並んだピンの列方向 にリンクを編んでいく方法のみならず,様々な向きに編んでいく方法が想定されるのであり, 「複数の閉じたループないしリンクからなる『単一の列から形成されたチェイン』」とする誤った解釈を前提として「ブルニアンリンクアイテム作成用」の意味を解釈している点も誤りである。さらに,後記(2)のとおり,ピンの列の側面にアクセス溝が設けられている構造の編み機を用いてもブルニアンリンクアイテムを容易に作成できるのであるから,『複数のピン』『ベース』『上部部分』及び『複数 「 , ,のピンの各々の,ピンの列の方向の前面側の開口部』の構成を全て併せ持つ装置であって, 『ベース上にサポートされた複数のピン』の技術的事項を持」っていることをもって,ブルニアンリンクアイテムの作成に特に適した構成とはいえない。
(2) 相違点2,4,6及び8の判断の誤り 審決は,相違点2,4,6及び8について,開口部の向きは設計事項ではないと判断したが,誤りである。
すなわち,甲44〜47のとおり,編み機のベース上に列状に配置されたピンについて,ピンの列方向又はピンの列に対して斜めの方向に向かって穴や溝状の構造を設けるという技術的思想は,本件原出願の優先日である平成22年11月5日以前に,数多くの編み機において公に実施されており,当業者に一般的に知られているものであった。また,甲29,31及び32のとおり,アクセス溝が外側を向いていようが,ピンの列の方向の前面上に位置させようが,容易にブルニアンリンクアイテムを作成できることに違いはない。そうすると,アクセス溝の位置がいずれの向きであるかは,当業者が編み機を製造するに当たり適宜選択する事項であり,単なる設計事項にすぎない。
被告の反論
1 取消事由1に対し 審決は,本件原出願発明の本質は,個人の技量に依存することのない「ブルニアンリンク」作成方法を「提供」することであるところ,当該作成方法を提供する発 明としては,列に配置された「複数のピン」「ベース」「上部部分」 , , ,及び「複数のピンの各々」の「ピンの列の方向」の前面側の「開口部」の構成を全て併せ持つ装置であって, 「複数のピンが列になって並んで相互に不動の関係にある」構成要件を備える装置の発明であればよいのであり,複数のピンが列になって並んで相互に不 「動の関係にある」構成要件を備える装置の発明としては,@本件原出願明細書等に明示的に記載されている,「ベース上にサポートされた」「ピンバー」を持つ装置の発明(本件原出願発明A)と,A明示的には記載されていないが,当業者であれば,本件原出願明細書の段落【0011】から自明事項として導き出される, 「ベース上にサポートされた複数のピン」という技術的事項を備え, 「ピンバー」を持たない発明(本件原出願発明B)の2つの発明が開示されていると判断したが,妥当である。
本件原出願より前の出願である乙1(米国特許第3,678,709号公報)には,ループ編み装置として,標準ベース12及び鉛直ペグ20を直立固定位置に保持するための台形の滑り部材16を備えた装置(図1〜3)と,固定ベース12Aに鉛直ペグ20を直立固定位置に保持した装置(図4〜6)が記載されており,本件原出願当時, 「複数のピンが列になって並んで相互に不動の関係にある」構成要件を備えるには, 「ピンバー」の存在は必須でなく,ベース上に直接ピンをサポートしてもよいことは自明である。また,無尽のバリエーションの編み物製品を作成するには,本件明細書の図12,17〜20などに示されるとおり,ピンをサポートしたベースを縦方向又は横方向に追加すればよく,「ピンバー」は,「無尽のバリエーションの編み物製品を,容易に作成することができる編み機の提供」という技術的課題を解決するために必須の構成でもない。
このように,本件原出願当初明細書等にピンバーを持たない発明も開示されていることは,当業者にとって自明であるから,本件訂正発明に係る特許請求の範囲に「ピンバー」の構成要件がないことは,本件分割出願が分割要件に違反する理由にならない。本件分割出願は適法であり,出願日は本件原出願の出願日に遡及するから,本件訂正発明が甲1発明により新規性を欠くという原告の主張は,誤りである。
2 取消事由2に対し 前記1のとおり,当業者であれば, 「ピンバー」を持たない発明も,本件出願当初明細書等に開示されているのは自明であると認識するから,本件補正により,請求項から「ピンバー」の構成がなくなったことは,新規事項の追加には当たらない。
3 取消事由3に対し 本件分割出願の発明の本質は,本件訂正の前後を問わず,個人の技量に依存することのない「ブルニアンリンク」作成方法を「提供」することであり,本件訂正により特許請求の範囲は実質的に変更されていないから,本件訂正を認めた審決の判断に誤りはない。
4 取消事由4に対し 前記1のとおり,当業者であれば, 「ピンバー」を持たない発明も,本件明細書に開示されているのは自明であると認識するから,本件訂正発明に係る特許請求の範囲がサポート要件を満たしていない旨の原告の主張は,前提を欠くものである。
5 取消事由5に対し 前記1のとおり,当業者であれば, 「ピンバー」を持たない発明も,本件明細書に開示されているのは自明であると認識するから,本件明細書の記載が実施可能要件を満たしていない旨の原告の主張は,前提を欠くものである。
6 取消事由6に対し (1) 相違点1,3,5及び7の判断の誤りに対し 審決は,特許・実用新案審査基準の理解を誤ったものではなく,また,相違点1に係る「『ブルニアンリンク』からなる『ブルニアンリンクアイテム』を作成するた めのキット」との用途限定が付された物が,その用途に特に適した物を意味すると解される場合に相当するから,その物は用途限定が意味する構造等を有する物であると解したのであり,本件訂正発明1と甲2発明との間には,実質的にも,相違点1が存在するとの審決の認定に誤りはない。
また,本件明細書の【0010】のとおり, 「ブルニアンリンク」とは,1つのリンクを取り除くと全てのリンクがお互いからはずれるようになるものであるから,「単一の列から形成されたチェイン」と解され,審決の認定・判断に誤りはない。
(2) 相違点2,4,6及び8の判断の誤りに対し 甲2発明の編み機は,編み糸を編んで靴下や帽子などの編み物を作る編み機であり,本件訂正発明のような「ブルニアンリンク」からなる「ブルニアンリンクアイテム」を作成するための装置ではないし,甲2には, 「ブルニアンリンク」に関する記載も示唆もなければ,様々な技量レベルの人々に「ブルニアンリンクアイテム」を簡単に作成する装置を提供するという本件課題を解決するために,甲2発明の溝の位置を「ピンの列の方向の前面」とすることを示唆するものも見当たらない。また,甲44〜47に示された編み機は, 「ブルニアンリンクアイテム」を作成するための編み機ではない上,ピンの穴は,編み物を作成する際に,何ら使用されておらず,編み物を簡単に作成するという課題解決に寄与するものではない。そうすると,たとえ,甲44〜47によって,毛糸などを使用して編み物を作成する編み機のピンについて,ピンの列方向又はピンの列に対して斜めの方向に向かって穴や溝状の構造を設けることが知られているとしても,本件課題を解決するために甲2発明の開口部の位置を変更しようとする動機付けはなく,甲2発明に基づいて相違点2に係る本件訂正発明1の構成を想到することは容易とはいえない。
さらに,弾性バンドを編む方向と直角の方向に開口部が存在している場合, 「ブルニアンリンク」を編むことは可能であるとしても,開口部が前面に存在している場合と比較すると,編むことが困難なことは明らかであるから,開口部の位置がいずれの向きであるかは,何ら技術的意義もなく,単なる設計事項にすぎないというこ とはできない。
当裁判所の判断
1 取消事由3(訂正要件の判断の誤り)について (1) 本件明細書の記載 本件明細書(甲12)には,以下の記載がある(なお,特に重要と思われる部分に,下線を付した。。
) ア 技術分野【0002】 この開示は全体的に,リンクされたアイテムを作成するための方法とデバイスに関する。より特定には,この開示は,リンクされた装着可能なアイテムを弾性バンドから作成するための方法とデバイスに関する。
イ 背景技術【0003】 独自に色付けされたブレスレットまたはネックレスを作るための材料を含むキットは,常にいくらかの人気を博してきた。しかしながら,そのようなキットは通常,異なる色に色付けされた糸およびビーズのような原材料を含むだけで,使用可能で望ましいアイテムを構築することは個人の技量と才能に依存する。従って,独自の装着可能なアイテムを作成するための材料を提供するのみでなく,望ましく耐久性のある装着可能なアイテムを成功裡に作成することを多くの技量および芸術的レベルの人々にとって容易するするように構築を簡略化もするキットについての必要と願望がある。
発明の概要【0004】ブルニアンリンク(Brunnian link)とは,チェインを形成するために,別の閉じたループを捕捉 するようにそれ自体上で二重化された閉じたループから形成されたリンクである。そのようなリンクを望ましいやり方で形成するのに,弾性バンドが利用されることができる。例示的キットおよびデバイスは,複雑な構成のブルニアンリンク物品の作成を提供する。しかも,例示的キットは,ブルニアンリンク組み立て技術を使って独自の装着可能な物品の成功する作成を提供する。
【0005】 例示的キットは,少なくとも1つのベースによって望ましい特別な向きにサポートされたいくつかのピンバーを含む。望ましい特別な方向は,完成品の望ましいリンクされた構成に依存する。ベースとピンバーは,完成されたリンクの向きの無尽のバリエーションを提供するように,様々な組み合わせおよび向きに組み立てられ得る。しかも,可能な完成品の作成を更に拡張するために,追加のベースとピンバーが追加されることができる。
【0006】 ピンバーの各々は,弾性バンドをその場に保持するためのフランジ状の上部部分と,前方アクセス溝を含む。前方アクセス溝は,ブルニアンリンクを形成するために,より下のバンドが掴まれて隣接するバンドの上で引っ張られることができるように,一番上の弾性バンドの下にフックが挿入されることを提供する。開示されたキットは,隣接するピンの多くの可能な向きと,従って完成されたリンクされた物品についての異なる向きおよびデザインを提供する。
エ 発明を実施するための形態【0009】 図1を参照すると,図2に示されたブレスレット,ネックレスおよびその他の装着可能なまたは装飾的なアイテムのようなブルニアンリンクアイテムを作成するための例示的キットが10で指し示されている。
【図1】ブルニアンリンク物品を作成するための例示的キットの斜視図【0010】 図3を参照すると,ブルニアンリンク20が,実際の結び目を形成することなく,連続的なループ状構造から形成されている。いくつかのリンクが,円形構造を形成するようにチェインに形成されている。端部がそれからしっかり留められて,耐久性のある装着可能なアイテムが作成される。この例では,3つの閉じたループ状のゴムバンドのような弾性アイテム20が単一のチェインを形成しているのが示されている。各リンクは,系列中の別のループ構造の中央部分24で1つのループ構造の端部22を捕捉することによって形成される。各リンクは,望ましい形状と一体性を維持することを前および後続のリンクに依存する。1つのリンク20を取り除くことは,全てのリンクがお互いからはずれるようになることに結果としてなる。
【図3】一連のブルニアンリンクの概略図 【0011】 図1を参照すると,例示的キット10は,その各々が複数のピン26を含むピンバー14をサポートするベース12を含む。フックツール16が,バンドを1つのピン26から別のものへ掴んで動かすために含まれている。クリップ18は,リンクされたアイテムを完成してしっかり留めるために完成したリンクの端部を受け取る。ピンバー14と対応するピン26を望ましい揃えでサポートするために,示されたように1つまたはいくつかのピンバー14がいくつかのベース12に載置されている。この例では,中央のピンバー14が,2つの最も外側のピンバー14から1つ先にされている。この揃えは,望ましいリンクされたアイテムの作成を提供する。この例では,ピンバー14を望ましい相対的な向きにサポートするために,3つのベース12が利用されている。
【0012】 引き続き図1を参照しながら,図4,5A-Bを参照すると,ベース12は,ピンバー14の各ピン26の底部において規定された対応する開口部30内に受け取られる複数の直立に伸長する円筒28を含む。ベース12の円筒28と円筒28を受け取っている開口部30は,ピンバー14をその場に保持するための僅かな干渉フィットを規定する嵌合特徴である。3つのベース12がこの例では示されているが,追加の数のピンバー14をサポートするのにより少なくかまたはより多くが利用されることができる。
【図4】例示的ピンバーの斜視図 【図5A】例示的ベースと例示的ピンバーのインターフェース表面の斜視図【図5B】例示的ベースに載置されたピンバーの斜視図【0013】 ベース12は,円筒28の間に配置された,ピンバー14上に規定された対応するスロット34内にフィットするタブ32を含む。タブ32とスロット34の間のインターフェースが,揃えを提供し,ピンバー14の直立した向きを維持する。ピン26の各々は,ベース12の円筒28の間に規定されたボス37を受け取る前方スロット36を含む。前方スロット36とボス37のインターフェースは,ピンバー14をベース12上に更に揃えてサポートする。
【0014】 ピンバー14は,単一の列に規定された複数のピン26を有する一体構造である。ピン26の各々は等距離Aの間隔を空けられている。ピン26の各々は,フランジ状上部38と前方アクセス溝40を含む。
【0015】 図6,7,8および9を参照すると,各ピン26は,バー部分42から上向きに伸長し,ゴムバンドを保持して間隔を空けるための特徴を含む。各ピン26は,リンクの作成中にゴムバンドの誤った開放を防止するために外向きにフレアー状になったフランジ状上部38を含む。
アクセス溝40は,ピン26の中心に向けて内向きに伸長する縦方向の溝である。アクセス溝 40は,バー部分42からフランジ状上部38との開放端まで伸長する。溝40は,ピン26の間でゴムバンドの端部を動かすために利用されるフックツール16(図1)の挿入のための間隙を提供する。
【図6】例示的ピンバーの1つのピンの斜視図【0019】 図12および13を参照すると,ベース12が,望ましいパターンといくつかのピンバー14の間の均等な間隔を設定するのに利用される。従って,ベース12の各々は,1つまたはいくつかのピンバー14と係合することができる。ベース12は,縦方向に3つのピンバー14と係合し受け取ることができ,および/または1つのベース12によって提供された3つを超えて追加のピンバーを追加するように,ピンバーのグループのサイドに追加されても良い。図12は,3つのベースが3つのピンバー12をサポートし,2つの追加のベース12が1つの列だけで現行のピンバー14と係合されて,円筒28の2つの列が追加のピンバー14を受け取るように横方向に伸長するようになっている構成を描いている。図13は,図12に示されるように横方向に伸長されている追加のベース12によって提供される5つのピンバー14が横並びに揃えられている構成を描いている。分かる通り,追加のベースおよびピンバー14が追加できる程度と可能な構成は,開示されたキットのユーザの望みによってのみ制限される。
ピンバー14の追加は,キットのユーザの想像力によってのみ制限される,より独自で込み入ったデザインを提供する。
【図12】いくつかのピンバーに組み立てられたいくつかのベースの組み立て図【図13】1つの望ましい特別な向きにお互いに対して載置されたいくつかのピンバーの組み立て図【0020】 図14A-Cを参照すると,例示的キットによって提供されるブルニアンリンクを形成する方法は,弾性バンドを隣接するピン26上に装填する最初のステップを含む。この例では,一番右の端部で始まって各ゴムバンドが隣接するピンに渡って引き伸ばされ中央部分において保持される。第1の弾性バンド52が,隣接するピン26の第1のペアの間に置かれる。第2の弾性バンド54がそれから,前に組み立てられた第1の弾性バンド52の一端の上に置かれ,それから第3の弾性バンド56等々,望ましい数のゴムバンドが対応するピンバー14上に置かれるまで,となる。これらの例では,3つの弾性バンド52,54および56のみが説明の目的で示されているが,実際には,完成品の望ましい長さを提供するために多くの弾性バンドが利用され得ることに注意されたい。
【図14A】ブルニアンリンクされた物品を作成するための組み立てステップの斜視図【図14B】ブルニアンリンクされた物品を作成するための組み立てステップの斜視図【図14C】ブルニアンリンクされた物品を作成するための組み立てステップの斜視図【0021】 一旦弾性バンド52,54および56がピン26の各々の上に置かれると,フック16が,アクセス溝40中に挿入され,一番上の弾性バンド56を通り過ぎて下向きに動かされる。フック16はそれから,弾性バンド54の一端がフック端中に捕捉されることを許容するのに十分な距離だけ矢印58によって指し示された方向に溝から外向きに動かされる。更なる持ち上 げは,図14Bに示されるように別の隣接するピン26上での組み立てのために第3の弾性バンド56の端部を通して60によって指し示された方向に第2の弾性バンド54の捕捉された端部を引っ張り上げる。捕捉された端部は,フランジ状上部38の上を越えて引っ張り上げられ,隣接するピン上に引っ張り戻されて,単一のリンクを形成する。弾性バンド54の捕捉された端部はそれから,隣接するピン26と係合するように開放される。このプロセスが,望ましい長さのリンクのチェインが得られるまで繰り返される。
【0022】 図14A,14Bおよび14Cに描かれた例は,リンクの単一の列から形成されたチェインを描いている。リンク構成および組み合わせの幅広い種類を形成するように,例示的ベーステンプレート12は多くのピンバー14をサポートするように配列されることができ,従ってリンクは隣接するピンバー14に跨って縦方向および横方向に形成されることができる。
【0024】 図17-20を参照すると,6つのピンバー14を望ましい向きに保持するための例示的ベーステンプレート66が示されている。例示的ピンバー14の各々は,規定されたサイズの開口部30を含み,ベーステンプレート66は,ピンバー14がベーステンプレート66の溝70内でその場に留められるように,ピンバー14中の開口部30と望ましいきつさの干渉フィットを提供するようなサイズとされた複数の円形ボス68を含む。ピンバー14とベーステンプレート66のボスの間の干渉フィットは,望ましい装着可能なアイテムの使用および構築中の分離を防止するために,ベースへの積極的な載置および取り付けを確かにする。
【図17】望ましい特別な向きにピンバーを保持するための例示的ベーステンプレートの斜視図 【図18】例示的ベーステンプレートの底面図【図19】2つのベーステンプレートの横並びの取り付けの斜視図【図20】2つのベーステンプレートのエンドツーエンドの取り付けの斜視図【0025】 図18,19および20を参照すると,ベーステンプレート66は,第1および第2の端部72,74と,第1および第2の端部72,74の間の第1および第2のサイド76,78を含む。第1の端部72が雄ジョイント82を含み,第2の端部74が対応する雌ジョイント80を含む。第1のサイド76が雄ジョイント82を含み,第2のサイド78が雌ジョイント8 0を含む。拡張された能力を提供するように,交番するサイドがいくつかのベーステンプレート66のお互いとの取り付けを提供する。
【0026】 図19は,ジョイント84によって横並びの構成にお互いに接続された2つのベーステンプレート66を描いている。図20は,ジョイント84によってエンドツーエンドの構成にお互いに接続された2つのベーステンプレート66を描いている。分かる通り,多くの異なる望ましい構成を形成するように,あらゆる数のベーステンプレート66がお互いにしっかり取り付けられることができる。異なる構成は,装着可能なアイテムの異なる形状および構成を作成するための多くのオプションを提供する。
【0027】 従って,例示的キットおよび方法は,ブレスレット,ネックレスおよびその他の装着可能なアイテムの作成のためにブルニアンリンクの多くの異なる組み合わせおよび構成の作成を提供する。しかも,例示的キットは,潜在的なブルニアンリンク作成の能力を更に作り出して拡張するために拡張可能である。更には,例示的キットは,そのようなリンクおよびアイテムの簡単なやり方での作成を提供して,様々な技量レベルの人々に独自の装着可能なアイテムを成功裡に作成することを許容する。
(2) 検討 ア 前記(1)によれば,本件明細書には,@技術分野につき,【0002】には, 「この開示は全体的に,リンクされたアイテムを作成するための方法とデバイスに関する。より特定には,この開示は,リンクされた装着可能なアイテムを弾性バンドから作成するための方法とデバイスに関する。 と記載され, 」 A背景技術につき,【0003】には, 「独自に色付けされたブレスレットまたはネックレスを作るための材料を含むキットは,常にいくらかの人気を博してきた。しかしながら,そのようなキットは通常,異なる色に色付けされた糸およびビーズのような原材料を含むだけで,使用可能で望ましいアイテムを構築することは個人の技量と才能に依存す る。従って,独自の装着可能なアイテムを作成するための材料を提供するのみでなく,望ましく耐久性のある装着可能なアイテムを成功裡に作成することを多くの技量および芸術的レベルの人々にとって容易するする (原文ママ) ように構築を簡略化もするキットについての必要と願望がある。 と記載され, 」 そして,これに対応して,B発明の概要として,【0004】には,「ブルニアンリンク(Brunnian link)とは,チェインを形成するために,別の閉じたループを捕捉するようにそれ自体上で二重化された閉じたループから形成されたリンクである。そのようなリンクを望ましいやり方で形成するのに,弾性バンドが利用されることができる。例示的キットおよびデバイスは,複雑な構成のブルニアンリンク物品の作成を提供する。しかも,例示的キットは,ブルニアンリンク組み立て技術を使って独自の装着可能な物品の成功する作成を提供する。 と記載されるとともに, 」 C発明を実施するための形態の説明の総括として,【0027】には,「従って,例示的キットおよび方法は,ブレスレット,ネックレスおよびその他の装着可能なアイテムの作成のためにブルニアンリンクの多くの異なる組み合わせおよび構成の作成を提供する。しかも,例示的キットは,潜在的なブルニアンリンク作成の能力を更に作り出して拡張するために拡張可能である。更には,例示的キットは,そのようなリンクおよびアイテムの簡単なやり方での作成を提供して,様々な技量レベルの人々に独自の装着可能なアイテムを成功裡に作成することを許容する。」と記載されている。
これらの記載によれば,本件明細書には,ブレスレットやネックレスなどの「独自の装着可能なアイテム」を作成するキットは,通常,異なる色に色付けされた糸及びビーズのような原材料を含むだけであり,アイテムを構築することは個人の技量と才能に依存するため,このように材料を提供するのみでなく,アイテムを成功裡に作成することを多くの技量及び芸術的レベルの人々にとって容易にするように構築を簡略化もするキットについての必要と願望があったことに鑑み,アイテムをブルニアンリンクアイテムとし,ブルニアンリンク組み立て技術を使ってブルニアンリンクアイテムを簡単な方法で作成し,様々な技量レベルの人々にブルニアンリ ンクアイテムを成功裡に作成することを許容するキットを提供することが記載されていると認められる。
イ また,本件明細書において,発明を実施するための形態として,次の(ア)〜(エ)といった複数のキットが記載されているととともに,前記アのとおり,いずれのキットによっても,ブルニアンリンクアイテムを簡単な方法で作成し,様々な技量レベルの人々にブルニアンリンクアイテムを成功裡に作成することを許容することが記載されている(【0027】) (ア) 単一の列に規定された複数のピン26を有し,各ピン26に,リンクの作成中にゴムバンドの誤った開放を防止するために外向きにフレアー状になったフランジ状上部38と,ピン26の間でゴムバンドの端部を動かすために利用されるフックツール16の挿入のための間隙を提供する前方アクセス溝40が形成されたピンバー14を,3つ横並びに揃えてベース12上にサポートさせて一体構造としたキット(【0009】〜【0015】【0020】〜【0022】 , ) (イ) (ア)のキットに対しピンバー14を追加して,例えば5つのピンバー14を横並びに揃えてベース12上にサポートさせて一体構造としたキット【001 (9】) (ウ) 6つのピンバー14を横並びに揃えてベーステンプレート66上にサポートさせて一体構造としたキット(【0024】) (エ) ベーステンプレート66のサイドに形成されたジョイント80,82を用いて,例えば2つの(ウ)のキットを縦方向あるいは横方向に連結させて一体構造としたキット(【0025】及び【0026】) ウ そして,いずれのキットも,複数のピンバー14をベース12ないしベーステンプレート66上にサポートさせて一体構造としたものは,ピンバー14及びベース12ないしベーステンプレート66が一体をなして複数のピン26をサポートする構造にほかならず,このことは,段落【0011】に, 「ピン26を望ましい揃えでサポートするために, ・・・1つまたはいくつかのピンバー14がいくつか のベース12に載置されている。」との記載,すなわち,「ピン26」をサポート対象とする旨の記載があることからも明らかである。そして,ベーステンプレート66も「ベース」の概念であると認められることから,いずれのキットも,複数のピンバー14をベース12ないしベーステンプレート66上にサポートさせて一体構造としたものは,ブルニアンリンクアイテムを簡単な方法で作成し,様々な技量レベルの人々にブルニアンリンクアイテムを成功裡に作成するための,複数のピンが(ピンバーの本体部を介して)ベースに(間接的に)サポートされた構造のものであると理解できる。
そうすると,いずれのキットも,特に「ピンバー」の限定がない,本件発明1の「一連のリンクからなるアイテムを作成するための装置であって,/ベースと,/ベース上にサポートされた複数のピンと,を備え,/前記複数のピンの各々は,リンクを望ましい向きに保持するための上部部分と,当該複数のピンの各々の前面側の開口部とを有し,複数のピンは,複数の列に配置され,相互に離間され,且つ,前記ベースから上方に伸びている/装置。 ,又は,本件発明6の「一連のリンクか 」らなるアイテムを作成するためのキットであって,/リンクを望ましい向きに保持するための上部部分と,複数のピンの各々の前面側の開口部を含み,ベースによりお互いに対してサポートされた複数のピンを備え,/前記複数のピンは,複数の列に配置され,相互に離間され,且つ,前記ベースから上方に伸びている,/キット。」の構成を充足するものであり,いずれのキットも本件発明の実施形態であると認められる。
エ 以上によれば,本件発明の課題は,審決が認定するとおり,個人の技量に依存することなく,様々な技量レベルの人々に, 「ブルニアンリンクアイテム」を簡単に作成するキットを提供することにあると認められる。
オ そして,本件訂正により,本件明細書は訂正されておらず,前記ア〜エに記載の点は,本件訂正発明についても該当するものと認められる。
したがって,本件訂正によって本件発明の課題が変更されたとは認められないか ら,これを根拠とする原告の主張は理由がない。
カ これに対し,原告は,本件訂正の前後を問わず,本件発明及び本件訂正発明〔全部〕の本質は,ベースとピンバーを様々な向きに組み合わせることにより, 「無尽のバリエーションの編み物製品を容易に作成することができる編み機を提供すること」にあるが,仮に,本件訂正後の発明の本質が審決認定のとおり「個人の技量に依存することのない『ブルニアンリンク』作成方法を『提供』する」ことに発明の本質があるのであれば,本件訂正により発明の本質が変更され,特許請求の範囲を実質的に変更するものであると主張する。
しかしながら,前記のとおり,本件明細書の背景技術(【0003】)には, 「独自に色付けされたブレスレットまたはネックレスを作るための材料を含むキットは, ・・・原材料を含むだけで,使用可能で望ましいアイテムを構築することは個人の技量と才能に依存する」という課題があり, 「望ましく耐久性のある装着可能なアイテムを成功裡に作成することを多くの技量および芸術的レベルの人々にとって容易」となるように, 「構築を簡略化もするキットについての必要と願望がある」ことのみが記載されており,原告主張の編み物製品のバリエーションに関する課題(バリエーションに乏しいこと)は記載されていない。また,発明の概要についてみても,その冒頭(【0004】)には,ブルニアンリンクの説明や,その作成に弾性バンドが利用可能であることに続けて, 「例示的キットは,ブルニアンリンク組み立て技術を使って独自の装着可能な物品の成功する作成を提供する。」として,「原材料を含むだけで,使用可能で望ましいアイテムを構築することは個人の技量と才能に依存する」という前記課題を解決したことが記載され,原告主張の編み物製品のバリエーションについて記載されているものではない。
そうすると,本件明細書には,発明の概要に「ベースとピンバーは,完成されたリンクの向きの無尽のバリエーションを提供するように,様々な組み合わせおよび向きに組み立てられ得る。」と記載され(【0005】,また,ベース12ないしベ )ーステンプレート66とピンバー14との組合せにより,前記イ(ア)〜(エ)のいず れのキットをも構成し得ることが記載されていることを考慮しても,これらは拡張的な機能であって,ベース12とピンバー14を様々な向きに組み合わせることにより,無尽のバリエーションを提供することは,本件明細書において必須の技術事項であるとは認められない。
よって,原告の主張は,理由がない。
2 取消事由1(分割要件違反に伴う新規性判断の誤り)について (1) 前記1(2)のとおり,本件明細書には,個人の技量に依存することなく,様々な技量レベルの人々に, 「ブルニアンリンクアイテム」を簡単に作成するキットを提供するという発明の課題が記載され,そして,その課題を解決するための,複数のピンが(ピンバーの本体部を介して)ベースに(間接的に)サポートされた構造の複数のキット(前記1(2)イ(ア)〜(エ)のキット)が記載されていると認められる。
そして,本件明細書(甲12)の記載と本件出願当初明細書等(甲11)の記載と本件原出願明細書等(甲13)の記載は同じであることから,本件原出願明細書等にも,これらのことが記載されているものと認められる。
そうすると,本件原出願明細書等には,上記発明の課題を解決することができる技術思想として,本件当初発明1の「一連のリンクからなるアイテムを作成するためのキットであって,/ベースと,/ベース上にサポートされた少なくとも1つのピンバーであって,ピンバーは,各々がリンクを望ましい向きに保持するための上部フレアー状部分を含んだ複数のピンと,複数のピンの各々の前面上の開口部を含むものと,/を含むキット。」のみならず,特に「ピンバー」の限定がない発明として,本件発明1の「一連のリンクからなるアイテムを作成するための装置であって,/ベースと,/ベース上にサポートされた複数のピンと,を備え,/前記複数のピンの各々は,リンクを望ましい向きに保持するための上部部分と,当該複数のピンの各々の前面側の開口部とを有し,複数のピンは,複数の列に配置され,相互に離間され,且つ,前記ベースから上方に伸びている/装置。,本件発明6の「一連の 」 リンクからなるアイテムを作成するためのキットであって,/リンクを望ましい向きに保持するための上部部分と,複数のピンの各々の前面側の開口部を含み,ベースによりお互いに対してサポートされた複数のピンを備え,/前記複数のピンは,複数の列に配置され,相互に離間され,且つ,前記ベースから上方に伸びている,/キット。」や,本件訂正発明1の「一連のリンクからなるアイテムを作成するための装置であって,/前記リンクはブルニアンリンクであり,前記アイテムはブルニアンリンクアイテムであり,/ベースと,/ベース上にサポートされた複数のピンと,を備え,/前記複数のピンの各々は,リンクを望ましい向きに保持するための上部部分と,当該複数のピンの各々の,ピンの列の方向の前面側の開口部とを有し,複数のピンは,複数の列に配置され,相互に離間され,且つ,前記ベースから上方に伸びている/装置。,本件訂正発明6の「一連のリンクからなるアイテムを作成 」するためのキットであって,/前記リンクはブルニアンリンクであり,前記アイテムはブルニアンリンクアイテムであり,/リンクを望ましい向きに保持するための上部部分と,複数のピンの各々の,ピンの列の方向の前面側の開口部を含み,ベースによりお互いに対してサポートされた複数のピンを備え,/前記複数のピンは,複数の列に配置され,相互に離間され,且つ,前記ベースから上方に伸びている,/キット。」も記載されているものと認められる。
(2) 以上によれば,本件分割出願は,適法な分割出願であるから,特許法29条1項3号の適用については,本件分割出願は,本件原出願の出願日に出願されたものとみなされ,それより後に公表された甲1により,本件訂正発明が新規性を欠くものということはできない。これと同旨の審決の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由1は,理由がない。
3 取消事由2(補正要件の判断の誤り)について (1) 前記1(2)のとおり,本件明細書には,個人の技量に依存することなく,様々な技量レベルの人々に, 「ブルニアンリンクアイテム」を簡単に作成するキットを提 供するという発明の課題が記載され,そして,その課題を解決するための,複数のピンが(ピンバーの本体部を介して)ベースに(間接的に)サポートされた構造の複数のキット(前記1(2)イ(ア)〜(エ)のキット)が記載されていると認められる。
そして,本件明細書(甲12)の記載と本件出願当初明細書等(甲11)の記載と本件原出願明細書等(甲13)の記載は同じであることから,本件出願当初明細書等にも,これらのことが記載されているものと認められる。
そうすると,本件出願当初明細書等には,上記発明の課題を解決することができる技術思想として,特に「ピンバー」の限定がない発明として,本件補正1に係る発明の「一連のリンクからなるアイテムを作成するための装置であって,/ベースと,/ベース上にサポートされた複数のピンであって,複数のピンの各々が,リンクを望ましい向きに保持するための上部部分と,複数のピンの各々の少なくとも1つのサイド上の開口部を含み,複数のピンが,ベースから離されて上向きに伸びているオフセットピンの列を含むものと,/を含む装置。」ないし「一連のリンクからなるアイテムを作成するためのキットであって,/リンクを望ましい向きに保持するための上部部分と,複数のピンの各々の少なくとも1つの面上の開口部を含み,お互いに対してサポートされた複数のピンであって,/複数のピンが,ベースから離されて上向きに伸びているオフセットピンの列を含むもの,/を含むキット。や, 」本件補正2に係る発明,すなわち,本件発明1の「一連のリンクからなるアイテムを作成するための装置であって,/ベースと,/ベース上にサポートされた複数のピンと,を備え,/前記複数のピンの各々は,リンクを望ましい向きに保持するための上部部分と,当該複数のピンの各々の前面側の開口部とを有し,複数のピンは,複数の列に配置され,相互に離間され,且つ,前記ベースから上方に伸びている/装置。,本件発明6の「一連のリンクからなるアイテムを作成するためのキットで 」あって,/リンクを望ましい向きに保持するための上部部分と,複数のピンの各々の前面側の開口部を含み,ベースによりお互いに対してサポートされた複数のピンを備え,/前記複数のピンは,複数の列に配置され,相互に離間され,且つ,前記 ベースから上方に伸びている,/キット。」が記載されているものと認められる。
(2) 以上によれば,本件補正は,本件出願当初明細書等に記載した事項の範囲内でされたものであり,新規事項の追加に該当するものではない。これと同旨の審決の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由2は,理由がない。
4 取消事由4(サポート要件の判断の誤り)について (1) 前記1(2)のとおり,本件明細書には,個人の技量に依存することなく,様々な技量レベルの人々に, 「ブルニアンリンクアイテム」を簡単に作成するキットを提供するという発明の課題が記載され,そして,その課題を解決するための,複数のピンが(ピンバーの本体部を介して)ベースに(間接的に)サポートされた構造の複数のキット(前記1(2)イ(ア)〜(エ)のキット)が記載されており,これらのキットは,本件訂正発明の構成を充足するものであり,本件訂正発明の実施形態であると認められる。
そうすると,本件訂正発明は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明で,同記載により当業者が本件訂正発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
(2) 以上によれば,本件訂正発明に係る特許請求の範囲の記載は,特許法36条6項1号が規定するサポート要件に適合する。これと同旨の審決の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由4は,理由がない。
5 取消事由5(実施可能要件の判断の誤り)について (1) 前記1(2)のとおり,本件明細書には,個人の技量に依存することなく,様々な技量レベルの人々に, 「ブルニアンリンクアイテム」を簡単に作成するキットを提供するという発明の課題が記載され,そして,その課題を解決するための,複数のピンが(ピンバーの本体部を介して)ベースに(間接的に)サポートされた構造の複数のキット(前記1(2)イ(ア)〜(エ)のキット)が記載されており,これらのキットは, 本件訂正発明の構成を充足するものであり,本件訂正発明の実施形態であると認められる。
そうすると,当業者は,本件明細書の発明の詳細な説明の記載から,本件訂正発明の「装置」や「キット」を製造し,使用することができるといえる。
(2) 以上によれば,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,特許法36条4項1号が規定する実施可能要件に適合する。これと同旨の審決の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由5は,理由がない。
6 取消事由6(進歩性判断の誤り)について (1) 甲2発明について ア 甲2には,以下の記載がある。
「『編み物用編み機』という用語は,丸型,片面レーキ,編みボードという市販されている3つ のタイプの編み機を含む広義の名称です。(1頁の下から2段落目) 」「けれども,編み機編みの世界の一つとして, 『片面レーキ』もあります。これは,一列に敷き 詰められたペグで,特に,平らなパネル状のものを作るために使われます。(2頁4段落) 」「『編みボード』も仲間の一つですが,非常に面白い編み地を作り出します。この編み機には, ペグがお互いに向かい合うように2列に敷き詰められています。2つの『片面レーキ』がお 互いに向かい合い,その中心にはわずかな隙間があって,編んだものがそこを通ることがで きる様子を思い描いてください。編みボードは,両面レーキ,編み物用フレーム,あるいは 単にフレームなど,様々な名称で知られています。編みボードからは,裏面のない両面編み 地ができます。ボードの片側からもう片方へと糸をかけることで編み目ができます。(2頁 」 5段落)「編み具:編み具は,ペグからループを持ち上げて外し,編み目を作るために使われます。金 属製の細長いもので,かぎ針と同様の曲がった先端部分があります。(2頁6段落) 」 「 」(2頁) イ 前記アの記載によれば,甲2には,審決認定のとおり,以下の甲2発明が記載されているものと認められる。
「編み物を作成するための編み機であって, ベースと, ベース上に2列に並べられた複数のペグと,を備え, 複数の各ペグは,編み目がペグから外れるのを防止するための,他の部分よりも径が大きくなった上端部と,ベースの隙間とは反対側のペグの面側にペグの直立方向に沿って形成された溝であって,かぎ針を挿入して,ペグに掛けられた編み目を引っ掛けることができる溝とを有し,複数の各ペグは,ベースから上方に直立している, 編み機。」 ウ 前記認定によれば,本件訂正発明1と甲2発明とは,少なくとも,前記第2の4(5)イ(ア)の点で一致し,同(イ)bの相違点2において相違する。
また,本件訂正発明6と甲2発明とは,少なくとも,前記第2の4(5)ウ(ア)の点で一致し,同(イ)bの相違点4において相違する。
(2) 甲10発明について ア 甲10には,以下の記載がある。
「手編み用の装置は,フレーム1上に2つの離間された平行列に配置されたフック状ピン5を含み,当該フレーム1は,当該列間に,編み物材料の通過のためのスロット3を有する。ピン5には溝7が形成され,当該溝は,編み物用かぎ針を受け取り,当該かぎ針の溝への侵入を容易にする。フレームの傾斜面11には,導入溝3が形成される。代替実施形態では,導入溝を形成するベース部材を含むピンは,フレームの長手方向バーに独立して且つ取り外し可能にクリップされる。フレームは旋回軸15周りに選択可能な制止子位置を有してもよい。(要約) 」「本発明は,編み機,特に手編み用の編み機に関する。
細長いフレーム部材を含む(特に子供による使用のための)編み機を提供することが知られている。当該フレーム部材は,好都合にはプラスチック材料で形成され,当該フレーム部材の縦方向に延在するスロットを有し(当該スロットは,フレーム部材を貫通して延在する),フレーム部材には,スロットの両側に沿って,等間隔の場所に,フレーム部材から上方向に延在するように配置された2列のピンが設けられている。各ピンは,スロットとは反対の場所に,ピンに沿って延在する溝を有し,ピンは,フック状構造を有し,各フックは,各ピンの溝部の頂上を覆う小さい板状の部材によって形成されている。既知の装置を使用する場合,編み動作において使用される毛糸(又は他のひも状材料)が,まず,その2列のうちの必要な数の直立ピンの周りに2回通され(毛糸の自由端は,例えばピンのうちの1つに固定される),適切な手持ち式かぎ針によって,第2のより糸が,各ピンのフック状部上に上げられ,これにより,各ピンの周りに編み目ループが形成される。次に,毛糸は,再びピンの周りに置かれ,ループは新しく置かれたより糸の上に持ち上げられる。このプロセスは繰り返され,動作が進むにつれてスロットを下方向に通り抜ける編地が形成される。直立ピンは,当該ピンの幅にほぼ等しい空間によって互いから離間されていることが好都合である。(1頁5行〜39行) 」「図1において見られるように,当該装置は,好適にはダイカストアルミニウムでできている細長いフレーム部材1を含み,当該フレーム部材は,当該フレーム部材の縦方向に延在するス ロット3を有し,当該溝は,フレーム部材を貫通して延在している。スロット3の両側において,ピンの外側に面している側面に,ピンの縦方向(即ち,高さ方向)に延在する溝7を有する2列の離間されたピン5が,フレーム部材から直立している。ピンは,図面に示されるように,フック状にされ,フック状構造は,溝7の上端を覆う小さい平板状の部分9によって提供される。フレーム部材1には,傾斜上面11(即ち,フレーム部材の深度,即ち,厚さは,その外側の縁からスロット3へと増加する)が設けられ,傾斜上面には,ピン5の対応する溝7につながる溝13が形成されている。(2頁11行〜29行) 」「 図1 」「図2及び図3から明らかなように,各フック5’は,上方向に延在する部分39を含み,当該上方向に延在する部分39は,上部の平板状の張出部32において終端し,当該張出部32は,手持ち式の編み物用かぎ針(図示せず)を操ることによる編み動作の間に,フックから持ち上げられるまで毛糸をフックに保持するのに適したフックを提供する。手持ち式の編み物用かぎ針をガイドするために,各フック5’には,直立部39に沿って延在する溝7が設けられる一方で,各フックのベース部34には,図1に関連して上で説明した目的のために,溝7につながる導入ガイド溝13を有する。(2頁114行〜127行) 」 「 図2 図3 」「装置で作られる編み物製品の異なるサイズの編み目に対応するために,異なるピッチの歯のセットが提供されてもよい。歯は,交互に又は対向する関係で,2つの支持バーにクリップされてよい。異なる編み目パターンに容易に対応できるように,必要に応じて,隣接する歯の間には,間隙が残されてもよい。(1頁116行〜123行) 」 イ 前記アの記載によれば,甲10には,審決認定のとおり,以下の甲10発明が記載されているものと認められる。
「編み物製品を作成するための手編み用の編み機であって, フレーム部材1と, フレーム部材1上にサポートされた複数のピン5と,を有し, 複数のピン5の各々は,糸を保持するための平板状の部分9と,複数のピン5の各々の,ピン5の外側に面している側面側の溝7とを有し,複数のピン5は,2列に配置され,相互に離間され,且つ,フレーム部材1から上方に伸びている 編み機。」 ウ 前記認定によれば,本件訂正発明1と甲10発明とは,少なくとも,前記第2の4(6)イ(ア)の点で一致し,同(イ)bの相違点6において相違する。
また,本件訂正発明6と甲10発明とは,少なくとも,前記第2の4(6)ウ(ア)の点 で一致し,同(イ)bの相違点8において相違する。
(3) 相違点2,4,6及び8の判断の誤りの有無について ア 相違点2,4,6及び8に係る「複数のピンの各々の,ピンの列の方向の前面側の開口部」の技術的意義について 前記1(1)の本件明細書(特に,【0004】 【0006】 【0010】 【001 , , ,4】【0015】 , , 【0020】〜【0022】 の記載によれば, ) 本件訂正発明の「装置」や「キット」は,ピンの列の方向において隣接する一対のピンに,ブルニアンリンクアイテムを例えば弾性バンドで作成する場合の当該弾性バンドを掛け渡し,それから,ピンの列の方向に一つずれた隣接する一対のピンに別の弾性バンドを掛け渡し,ピンの列の方向に更に一つずれた隣接する一対のピンに更に別の弾性バンドを掛け渡し,これを完成品の望ましい長さに対応した弾性バンドの数だけ繰り返した後,フックをピンのアクセス溝(開口部)に挿入し,ピンに掛けられた上側の弾性バンドを通り過ぎて下側の弾性バンドの端部を弾性バンドの内側から捕捉し,捕捉した弾性バンドの端部をフックで引っ張り上げてピンから外し,隣接するピンに引掛けて,単一のリンクを形成し,これを望ましい長さのリンクのチェインとなるまで繰り返すことにより,弾性バンドの閉じたループの中央部分が隣の弾性バンドの閉じたループの端部で捕捉された構造の一連のブルニアンリンクからなるブルニアンリンクアイテムを作成するという方法を基本とした使い方とするものである。
また,この方法を複数のピンの列に展開してリンクを縦方向及び横方向に形成することで,リンクの構成及び組合せの幅広い種類のブルニアンリンクアイテムを作成するという方法も採り得るものである。
このため,本件訂正発明の「複数のピンの各々の,ピンの列の方向の前面側の開口部」 (本件構成)は,ピンに掛けられた弾性バンドのうち下側の弾性バンドの端部を弾性バンドの内側からフックで捕捉するためのフック挿入用であって,捕捉した弾性バンドの端部をフックで引っ張り上げてピンから外し,隣接するピンに引掛けるという,ピンの列の方向に連続したリンクを形成していくフックの操作を円滑に し得るようにするために「ピンの列の方向の前面側」に設けたものであると認められる。
イ 相違点2,4,6及び8の容易想到性について 甲2発明は, 「編み物を作成するための編み機」であり,編みの性格上,かぎ針(フック)の操作方向は,ペグ(ピン)の列の方向と交差する方向となり,そのため,甲2発明のペグの溝は,ベースの隙間とは反対側のペグの面側,すなわち,ペグの列の方向と交差する方向に形成されている。
甲10発明も,同様に,編み物製品を作成するための手編み用の編み機」 「 であり,編みの性格上,フックの操作方向は,ピンの列の方向と交差する方向となり,そのため,甲10発明のピンの溝は,ピンの外側に面している側面側,すなわち,ピンの列の方向と交差する方向に形成されている。
そして,これらは,編み物用の編み機である以上,本件訂正発明のように,ピンの列の方向に連続したリンクを形成していくためにフックをピンの列の方向に操作するという使い方を想定していない。
また,甲2及び甲10以外の証拠を検討しても,編み物用の編み機である甲2発明又は甲10発明について,ピンの列の方向に連続したリンクを形成していくためにフックをピンの列の方向に操作すること,そのためにフック挿入用の「開口部」を「ピンの列の方向の前面側」に設けることを開示ないし示唆する証拠は見当たらない。
そうすると,甲2発明において,相違点2に係る本件訂正発明1の構成又は相違点4に係る本件訂正発明6の構成とすること,あるいは,甲10発明において,相違点6に係る本件訂正発明1の構成又は相違点8に係る本件訂正発明6の構成とすることは,いずれも動機付けがなく,当業者が容易になし得ることとは認められない。
ウ 原告の主張について (ア) 原告は,アクセス溝が外側を向いていようが,ピンの列の方向の前面 上に位置させようが,容易にブルニアンリンクアイテムを作成できることに違いはないのであるから,アクセス溝の位置がいずれの向きであるかは,当業者が編み機を製造するに当たり適宜選択する事項であり,単なる設計事項にすぎないと主張する。
しかしながら,甲2発明及び甲10発明は,編み物を作成するための編み機であるところ,甲2及び甲10には,ブルニアンリンクに関する記載や示唆はなく,この編み機をブルニアンリンクを作成するために利用することの記載や示唆もないというべきであるから,仮に,アクセス溝の向きに関わらず,容易にブルニアンリンクを作成できることが事実であったとしても,そのようなブルニアンリンクの作成に係る事実が,編み物を作成するための編み機である甲2発明及び甲10発明の開口部の向きを変更する動機付けになるということはできない。
原告の主張は,理由がない。
(イ) 原告は,甲44〜47によれば,編み機のベース上に列状に配置されたピンについて,ピンの列方向又はピンの列に対して斜めの方向に向かって穴や溝状の構造を設けることは,当業者にとってありふれた設計事項にすぎないと主張する。
しかしながら,甲44〜47に記載されているものは,いずれも編み機であり,ブルニアンリンクアイテムを作成するための装置ないしキットではないし,そもそも甲44〜47記載の編み機の穴や溝がフック挿入用であるかどうかも明らかではないから,これらの編み機により,甲2発明及び甲10発明の開口部の向きを変更する動機付けがあるということはできない。
原告の主張は,理由がない。
エ 小括 以上によれば,相違点2, 6及び8に係る本件訂正発明の構成とすることは, 4,当業者が容易になし得るものとは認められないから,その余の点について判断するまでもなく,甲2発明及び甲10発明を主引例として進歩性欠如を肯定することは できないとした審決の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由6は,理由がない。
7 結論 以上によれば,原告主張の取消事由は,いずれも理由がない。
よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 清水節
裁判官 片岡早苗
裁判官 古庄研
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