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関連審決 無効2014-800131
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事件 平成 27年 (行ケ) 10175号 審決取消請求事件

原告X
訴訟代理人弁理士谷口俊彦
同 坪内哲也
被告シャープ株式会社
訴訟代理人弁理士原謙三
同 福井清
同 今野信二
同 村上尚
同 小池隆彌
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2016/10/27
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が無効2014-800131号事件について平成27年7月27日にした審決を取り消す。
事案の概要(認定の根拠を掲げない事実は争いがないか弁論の全趣旨により
容易に認定できる事実である。) 1 特許庁における手続の経緯等 1 被告は,平成25年10月7日,発明の名称を「照明装置」とする発明につき特許出願(特願2013-210015号(平成21年12月25日(以下「原出願日」という。)にした特許出願(特願2009-295589)の一部を分割した特許出願))をし,平成26年4月11日,特許第5520411号(請求項の数は4である。)として特許権の設定登録を受けた(甲4。以下,この特許を「本件特許」という。。
) 原告は,平成26年7月31日,本件特許の請求項1ないし請求項4に係る発明を無効とすることを求めて無効審判(無効2014-800131号。以下「本件審判」という。)を請求した(甲10) 。これに対し,被告は,平成27年4月13日,本件特許の特許請求の範囲及び明細書の訂正を請求した(甲19)。
特許庁は,同年7月27日,本件審判につき,上記訂正を認めた上,審判請求は成り立たない旨の審決をしたことから,原告は,同年9月3日,本件審決取消訴訟を提起した。
2 特許請求の範囲の記載(甲19) 本件特許の上記訂正後の請求項1ないし4の特許請求の範囲の記載は,次のとおりである(以下,上記訂正請求後の請求項1ないし4に係る発明をその区分に応じて「本件発明1」ないし「本件発明4」といい,これらを併せて「本件発明」という。また,本件特許の明細書及び図面を併せて「本件明細書」という。。
)「【請求項1】 被取付部材に取り付けるための天井取付部を有する保持体と, 前記天井取付部の周囲を囲むように配された複数のLEDと, 前記複数のLEDが実装された面が前面側に向けられ,裏面が前記保持体の一面に固定されたLED基板と, 前記保持体の一面から離れた状態で前記保持体の一面に設けられ,前記複数のLEDに電力を供給する電源部と, 前記LED基板と前記電源部との間において前記保持体に固定された縁部を有し, 2 前記電源部を覆う電源カバーと, を備えたことを特徴とする照明装置。
【請求項2】 前記LED基板は,前記電源部の外周側に前記電源部と重なり合わないように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】 前記電源部は,支持部材を介して前記保持体の一面に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の照明装置。
【請求項4】 前記支持部材は,基板アングルであることを特徴とする請求項3に記載の照明装置。」 3 審決の理由 審決の理由は,別紙審決書(写し)に記載のとおりである。その要旨は,次のとおりである(以下,審決が引用する刊行物のうち,特開2008-300203号公報(甲1)は, 「甲1公報」と,特開2003-86006号公報(甲1の1)は,「甲1の1公報」 登録実用新案第3154761号公報 と, (甲2) 「甲2公報」 は,と,特開2002-270026号公報(甲2の1)は, 「甲2の1公報」と,登録実用新案第3146641号公報(甲2の2)は, 「甲2の2公報」と,特開2008-204692号公報(甲2の4)は, 「甲2の4公報」と,電気用品安全法施行令別表第八に係る附表第二(甲3)は, 「甲3刊行物」と,特開平11-329051号公報(甲3の1)は, 「甲3の1公報」と,特開2007-227181号公報(甲3の2) 「甲3の2公報」 特開2008-98116号公報 は, と, (甲3の3)は, 「甲3の3公報」 通商産業省資源エネルギー庁公益事業部電力技術課編集 と, 「電気用品の技術基準の解説」社団法人日本電気協会(平成10年7月25日第9版発行)401頁,408頁ないし411頁及び702頁ないし705頁(甲3の4)は,「甲3の4刊行物」と,それぞれいう。。
) 3 本件発明は,@甲1公報に記載された発明(以下「甲1発明」という。 について, )甲2公報ないし甲2の2公報,甲3刊行物,甲3の1公報ないし甲3の4刊行物に記載された事項を適用することによって当業者が容易に発明することができたものとはいえず,また,A甲1の1公報に記載された発明(以下「甲1の1発明」という。 について, ) 甲3の1公報ないし甲3の4刊行物に記載された事項を適用することによって当業者が容易に発明することができたものとはいえず,B甲2公報に記載された発明(以下「甲2発明」という。)について,甲2の4公報に記載された事項及び周知の事項を適用することによって当業者が容易に発明することができたものとはいえなから,特許法29条2項の規定に違反するものではなく,また,C本件発明1は,請求項の記載が不明確であるとはいえず,これを引用する請求項2ないし4も不明確であるとはいえないから,特許法36条6項2号の規定に違反するものではなく,無効とすべきものではない。
審決が認定した甲1発明,甲1の1発明及び甲2発明の内容,本件発明1と甲1発明,甲1の1発明及び甲2発明の一致点及び相違点は,次のとおりである。なお,当審において相違点4以外の各相違点については,当事者間に争いがない。
(1) 甲1発明の内容 「略中央部に天井等の器具取付面Aに設置された引掛シーリング11に着脱可能に設置されるアダプタ12を設け,その周囲の空間部に光源体20を点灯するための点灯装置13を取り付けた器具本体10と, 光源体20は複数個のLED21を配置した発光素子基板22からなり,発光部である各LED21が対向するようにして器具本体10の対向する辺の外縁部14,15に設けられた設置部16,17に1本ずつ配設され, 各設置部16,17に立設された支持板24に,複数個のLED21を実装した面を中央に向けて取り付けて支持された発光素子基板22と, 複数個のLED21の光出射方向に対向して配置され,複数個のLED21の光を主として平行方向に制御するレンズ体30と, 4 複数個のLED21に対向し中間部分から器具本体10の略中央部に向かって傾斜させ,器具本体10の略中央部に固定された反射体40と, 複数個のLED21および反射体40を覆い外縁部から中央部にいくに従い透過率が高くなるようにしたグローブ50とを具備する照明器具。」 (2) 本件発明1と甲1発明の一致点 「被取付部材に取り付けるための天井取付部を有する保持体と, 前記天井取付部の周囲に配された複数のLEDと, 前記複数のLEDが実装された面と裏面とを有したLED基板と, 前記保持体の一面に設けられ,前記複数のLEDに電力を供給する電源部と, を備えた照明装置。」 (3) 本件発明1と甲1発明の相違点 ア 相違点1 本件発明1は,複数のLEDが天井取付部の「周囲を囲むように」配されているのに対して,甲1発明の複数のLED21は,そのような特定がなされていない点。
イ 相違点2 本件発明1は,LED基板が「複数のLEDが実装された面が前面側に向けられ,裏面が保持体の一面に固定された」ものであるのに対して,甲1発明は,発光素子基板22が器具本体10に立設した支持板24に取り付けられ,LED21を実装した面を中央に向けて取り付けて支持されているものである点。
ウ 相違点3 本件発明1は,電源部が「保持体の一面から離れた状態で」設けられているのに対して,甲1発明は,点灯装置13にそのような特定がなされていない点。
エ 相違点4 本件発明1は,LED基板と電源部との間において保持体に固定された縁部を有 「し,電源部を覆う電源カバー」を有しているのに対して,甲1発明は,そのような事項を有していない点。
5 (4) 甲1の1発明の内容 「天井面7に取り付けるLED照明装置であって, 複数個の大電流型LED4と, 前記大電流型LED4を点灯制御する点灯装置3と, 略中央部が取付ネジ6により天井面7にネジ止めされる円盤状のベース板1と,を具備し, ベース板1の一方の面の略中央部に給電部2が取付けられ,ベース板1の他方の面の略中央部には点灯装置3が取付けられるとともに,点灯装置3と略同一面内であって点灯装置3の周囲に等間隔で間欠的に位置する複数個の大電流型LED4が配置された LED照明装置。」(5) 本件発明1と甲1の1発明の一致点 「被取付部材に取り付けるための天井取付部を有する保持体と, 前記天井取付部の周囲を囲むように配された複数のLEDと, 前記保持体の一面に設けられ,前記複数のLEDに電力を供給する電源部と, を備えた照明装置。」(6) 本件発明1と甲1の1発明の相違点 ア 相違点5 本件発明1は, 「複数のLEDが実装された面が前面側に向けられ,裏面が保持体の一面に固定されたLED基板」を備えているのに対して,甲1の1発明のLED4は,そのような構成を有しているのか明らかでない点。
イ 相違点6 本件発明1は,電源部が「保持体の一面から離れた状態で」設けられているのに対して,甲1の1発明は,点灯装置3にそのような特定がなされていない点。
ウ 相違点7 本件発明1は,LED基板と電源部との間において保持体に固定された縁部を有 「 6 し,電源部を覆う電源カバー」を有しているのに対して,甲1の1発明は,そのような事項を有していない点。
(7) 甲2発明の内容 「灯座10と,灯笠20と,LED発光モジュール30と,電源制御回路板40と,検出センサ50と,飾りリング60とから構成されたLED灯具であって, 灯座10は,アルミニウム金属材質からなり,ほぼディスク状で,底板11と底板11の周縁に沿って中央が上へ突出するリング状突縁111が形成され,底板11が天井に取り付けられ, LED発光モジュール30は,複数設けられており,灯座10の底板11のリング状突縁111に設置され,それぞれに,基板31と外蓋32及び放熱弾性ゴム33が備えられ, 基板31は,底板11のリング状突縁111に対応して,扇形になり,リング状突縁111の上に設置され,他のLED発光モジュール30と,リング状に囲み, それぞれの基板31に,複数のLED311が配列され,その一側に,差込口金312が設けられ, 基板31の底部に,放熱弾性ゴム33が設置され,LED311による熱エネルギーが底板11に伝達され, 電源制御回路板40は,灯座10の底板11の中心に固定されており,LED発光モジュール30に対応して,LED発光モジュール30にある差込口金312が差し込まれる複数の差込ソケット41が設置された LED灯具。」(8) 本件発明1と甲2発明の一致点 「被取付部材に取り付けるための天井取付部を有する保持体と, 複数のLEDが実装された面が前面側に向けられ,裏面が保持体の一面に固定されたLED基板と, 前記複数のLEDに電力を供給する電源部と,を備えた照明装置。」 7 (9) 本件発明1と甲2発明の相違点 ア 相違点8 本件発明1は,複数のLEDが保持体の「天井取付部の周囲を囲むように配された」との構成を有しているのに対して,甲2発明はそのような特定がなされていない点。
イ 相違点9 本件発明1は,電源部が「保持体の一面から離れた状態で保持体の一面に設けられ」との構成を有しているのに対して,甲2発明はそのような特定がなされていない点。
ウ 相違点10 本件発明1は,LED基板と電源部との間において保持体に固定された縁部を有 「し,電源部を覆う電源カバー」を有しているのに対して,甲2発明は,そのような事項を有していない点。
取消事由に関する原告の主張
審決には,相違点4に係る認定の誤りがあるほか,相違点2ないし7及び10に係る容易想到性の各判断の誤りがあり,これらは審決の結論に影響を及ぼすものであるから,審決は,違法として取り消されるべきである。
1 取消事由1-1ないし1-3について (1) 取消事由1-1(相違点2に係る容易想到性の判断の誤り) 甲1公報(【0004】)には, 「特許文献1および2に示されるような環形蛍光ランプを光源とするシーリングライトの場合には,住宅用としてやわらかい光が好まれる。このために発光面となるグローブの輝度ムラ,特に環形蛍光ランプに伴うリング状の明るいイメージおよび中心部分に生じる暗部を抑えることから,グローブに光の拡散性が高くて透過率の低い材料を使用する。その結果,一般的に器具効率(器具光束/ランプ光束)は50%程度で低くなっている。このため,光源として発光ダイオードをそのまま使用した場合,発光面に対して発光ダイオードを万遍な 8 く配置させても,発光ダイオード自体の輝度が高いために,グローブにイメージが発生して輝度ムラが生じ,やはりグローブに光り拡散性が高くて透過率の低い材料を使用せざるを得ない。との記載がある。
」 このような記載によれば,甲1公報には,従来技術として,LEDを器具本体の前面に向けて配置する構成が開示されているから,甲1発明の各LEDを器具本体の前面に向けて配置することについて,当業者において動機付けがないとした審決の判断には誤りがある。
(2) 取消事由1-2(相違点3に係る認定及び容易想到性の判断の誤り) 甲1発明では,点灯装置13が器具本体に設けられている以上,安全性を確保するために絶縁距離を設けることは技術常識であるから,点灯装置13を器具本体から離間して配置すべきことは当然のことである。そうすると,甲1公報には,点灯装置13の構成が記載されていないものの,甲1発明において器具本体に接して設けられているボックス状の点灯装置に対して,当業者において器具本体から点灯装置を離間して配置する構成を適用する動機付けがないとした審決の判断には誤りがある。
(3) 取消事由1-3(相違点4に係る容易想到性の判断の誤り) 甲1発明の反射体40は,点灯装置13をカバーするものであるから,本件発明1にいう電源カバーであると認定するのが相当である。そうすると,反射体40が光源体20からの光を反射するものであり,本件発明1の電源カバーに相当するものとはいえないと認定した審決の判断には誤りがある。また,反射対40をどのように固定するかは,そもそも設計事項にすぎない上,縁部を有する電源カバーという相違点4に係る構成は,特開2007-27072号公報(甲5の1。以下「甲5の1公報」という。,特開2001-118421号公報(甲5の2。以下「甲 )5の2公報」という。,特開2008-262861号公報(甲5の3。以下「甲 )5の3公報」という。,登録実用新案第3070423号公報(甲5の4。以下「甲 )5の4公報」という。,特開平11-306850号公報(甲5の5。以下「甲5 )の5公報」という。)に開示されており,周知の事項である。そうすると,反射体4 9 0が電源カバーであるとしても,反射体40の両端部の器具本体との関係が甲1公報の記載から明らかではないとした審決の判断には誤りがある。
2 取消事由2-1ないし取消事由2-3について (1) 取消事由2-1(相違点5に係る容易想到性の判断の誤り) 甲1の1公報の【図1】には,LED4の光が前方に照射した状態が示され,ボックス状の形状をしているLED4の裏面側がベース板1に支持されている構成が記載されているから,LEDを搭載する基板の裏面側が保持体であるベース板1に固定されていると考えることは,当業者にとって極めて自然な発想である。そうすると,LEDを基板に搭載することが技術常識であるとしても,大電流型LED4として示されているボックス状の構造の中で,基板がベース板1にどのように支持されるのかについて記載も示唆もされていないとした審決の判断には誤りがある。
(2) 取消事由2-2(相違点6に係る容易想到性の判断の誤り) 上記1(2)における取消事由1-2に係る主張と同様に,安全性を確保するために絶縁距離を設けることは当業者における技術常識であり,器具本体との絶縁距離を確保するように器具本体から点灯装置を離間させる構成とすることは,甲2の4に記載の事項及び周知の事項に基づいて,当業者が容易に想到し得ることである。そうすると,甲1の1公報によれば,点灯装置3はボックス状に示されているのみであり,整流回路,保護用素子等の配置までは明らかではないとして,当業者において器具本体から点灯装置を離間して配置する構成を適用する動機付けがないとした審決の判断には誤りがある。
(3) 取消事由2-3(相違点7に係る容易想到性の判断の誤り) 仮に甲1の1公報に電源カバーが開示されていないとしても,安全性を考慮して電源カバーを採用することは,周知の事項である。そうすると,甲1の1公報の【図1】には,ボックス状の点灯装置が記載されているものの,その構造は明らかではなく電源カバーを有しているとまでは認められないとした審決の判断には誤りがある。
10 3 取消事由3(相違点10に係る容易想到性の判断の誤り) 甲2発明における電源制御回路板40のような電源部と,LED基板とはそれぞれ独立したユニットで構成することは技術常識にすぎず,そのためには両者を電気的に接続するために接続コードが必要となり,差込ソケットと差込口金による接続形態を採用することもごく一般的な技術であり,本件発明1のような電源カバーを有する照明装置においても,上記と異なるところはない。そうすると,甲2発明の差込ソケット41への差込口金312の抜差しを妨げるという理由から,当業者において甲2発明には電源カバーを設ける動機付けがないとした審決の判断には誤りがある。
取消事由に関する被告の反論
1 取消事由1-1ないし取消事由1-3について (1) 取消事由1-1(相違点2に係る容易想到性の判断の誤り) 甲1公報の【0002】ないし【0004】には,甲1発明の課題として示された従来技術が記載されており,この従来技術は,甲1発明を創作する過程で除外された技術である。そうすると,この従来技術と,これを改良した甲1発明とを組み合わせて両立させることは不可能であるから,この従来技術をもって動機付けがあるとはいえない。しかも,この従来技術は「光源として発光ダイオードをそのまま使用した場合」と記載されているところ, 「そのまま使用する」とはどのように使用するのか不明であり,その使用の態様につき甲1公報にも何ら記載されていないから,相違点2に係る構成が開示されているとはいえない。したがって,審決の判断に違法はなく,原告の主張は理由がない。
(2) 取消事由1-2(相違点3に係る容易想到性の判断の誤り) 甲1公報には,器具本体に接して設けられているボックス状のものが, 【図1】等に点灯装置13として記載されているのみであり,点灯装置13の構造について何ら記載されておらず,点灯装置13を構成する部材及びそれらの配置は,甲1公報の記載から一切読み取れない。そうすると,点灯装置13の構造が不明である以上, 11 当業者において甲1発明の点灯装置13に対して甲3の1公報ないし甲3の3公報に記載されている事項を適用しようと試みることはないというのが自然である。のみならず,点灯装置を器具本体から離間して配置することは,LED照明装置において当然のことではない。そうすると,甲1発明において,器具本体に接して設けられているボックス状の点灯装置に対して,当業者において器具本体から点灯装置を離間して配置する甲3の1公報ないし甲3の3公報に記載されている事項を適用する動機付けがないとした審決の判断には誤りはない。したがって,審決の判断に違法はなく,原告の主張は理由がない。
(3) 取消事由1-3(相違点4に係る容易想到性の判断の誤り) 甲1発明の反射体40は,光源体20からの光を反射するためのものであるから,点灯装置13をカバーすることを意図して設けられたものではなく,甲1公報に接した当業者がそのように認識することもないから,電源カバーに相当するとはいえない。また,甲1発明の反射体40の両端部と器具本体10との関係は,甲1公報の記載から読み取れず,特に反射体40の両端部と器具本体10とが固定されているとは読み取れないから,甲1発明の反射体40について, 「LED基板と電源部との間において保持体に固定された縁部を有し」たものであるとは,甲1公報から読み取ることはできない。したがって,審決の判断に違法はなく,原告の主張は理由がない。
2 取消事由2-1ないし取消事由2-3について (1) 取消事由2-1(相違点5に係る容易想到性の判断の誤り) 甲1の1公報には,本件発明1の「LED基板」に相当するものが開示されていないし,甲1の1の「LED4」が本件発明1の「LED基板」に相当するものを備えると仮定しても,甲1の1公報の図面に示される円柱状のLED4のどの部分にLED基板が設けられているかは,甲1の1公報に一切記載されていないから,「LED基板の裏面がベース板1に固定されている」ことは到底読み取れず,かえってこれを読み取ることは当業者にとって極めて不自然なものである。したがって, 12 審決の判断に違法はなく,原告の主張は理由がない。
(2) 取消事由2-2(相違点6に係る容易想到性の判断の誤り) 甲1の1公報には,ボックス状の点灯装置3がベース板1に接して設けられていることが記載されるにとどまり,点灯装置3の構造(整流回路,保護用素子等の配置等)までは明らかではない。そうすると,甲1の1発明において,ベース板1に接して設けられているボックス状の点灯装置3に対して,器具本体から電源部を離間して配置する構成を適用する動機付けはないことは明らかであり,保持体と電源部とを離間して配置すべきことが当業者における技術常識ともいえない。したがって,審決の判断に違法はなく,原告の主張には理由がない。
(3) 取消事由2-3(相違点7に係る容易想到性の判断の誤り) 甲5の1公報ないし甲5の5公報は,LED基板と電源部との間において保持体 「に固定された縁部を有する電源カバー」を一切開示も示唆もしていない。また,甲5の1公報ないし甲5の5公報には, 「安全性」について何ら記載されていない。そうすると,安全性を考慮して電源カバーを採用することは,甲5の1公報ないし甲5の5公報から周知の事項であるという原告の主張は,その前提を欠くものである。
したがって,審決の判断に違法はなく,原告の主張は理由がない。
3 取消事由3(相違点10に係る容易想到性の判断の誤り) 甲2発明が解決しようとする課題は,簡単に交換でき…修理可能な…LED灯具 「を提供する」【0003】 ( )ことであって,当該課題を解決するため,甲2発明は,電源制御回路板40を覆う固定枠13の2本のスタンド133の間から,電源制御回路板40の差込ソケット41にLED発光モジュール30の差込口金312を抜き差しできるという構成を採用し(【0017】【0022】【0023】【002 , , ,6】【図2】【図3】,当該構成によって初めて,差込ソケット41にLED発光 , , )モジュール30の差込口金312を抜き差しでき,一つのLEDモジュールが故障 「した場合でも,一つのLEDモジュールの交換のみで対応することができる。 【0 」 (014】)という効果を奏するのである。それにもかかわらず,甲2発明のLED灯 13 具に対して,電源制御回路板40をカバーで覆うことは,2本のスタンド133の間を閉塞し,差込ソケット41への差込口金312の抜差しを妨げることになるから,電源制御回路板40をカバーで覆わない場合に比べて,差込ソケット41への差込口金312の抜差しが困難となるか又は不可能となり,その結果,LEDモジュールの交換が困難となるか又は不可能となる。そうすると,甲2発明のLED灯具において,電源制御回路板40を覆う「カバー」を設ける構成を適用することには,明白な阻害要因が存在する。したがって,審決の判断に違法はなく,原告の主張は理由がない。
当裁判所の判断
当裁判所は,審決には結論においてこれを取り消すべき違法はないものと判断する。その理由は,次のとおりである。
1 取消事由1-1(相違点2に係る容易想到性の判断の誤り)ないし取消事由1-3(相違点4に係る容易想到性の判断の誤り)について (1) 本件発明の要旨 本件明細書によれば,本件発明1の内容は,次のとおりであると認められる(甲4,甲19)。
ア 近年,発光ダイオード(以下「LED」という)の高輝度化に伴い,従来の光源に代えて,例えば下記イ記載の特許文献1のように,小型,低消費電力,長寿命等の特性を有するLEDを光源として備える照明装置が種々提案されている。このような中にあって,本件発明は,LEDの光源と,光源に電力を供給する電源部と,光源及び電源部を保持する保持体とを備える照明装置に関するものであり,光源であるLEDで発生した熱が保持体に伝達され,保持体に伝達された熱を効率よく放熱することができる薄型の照明装置を提供するものである。【0001】【0 ( ,002】【0006】【0010】 , , ) イ 特許文献1(特開2003-86006号公報)に開示されたLED照明装置は,光源であるLEDと,LEDを点灯する点灯装置とを備え,LEDと点灯装 14 置とを略同一面内に配置し,LED及び点灯装置をその一面に取付けられるベース板302を有している。ベース板302の他面の側の略中央には,外部電源からの給電を受ける部分として引掛刃311を備えた引掛シーシングキャップ301が設けられている。そして,LED照明装置は,天井面に設けられた引掛シーリングボディの引掛刃受け穴に引掛刃311を嵌合させることにより天井面への取付けが行われるように構成されている。【0003】 ( ) ウ 特許文献1に係る照明装置においては,点灯装置とLEDとを略同一面内に配置して,LEDの光出射方向である上下方向に重なり合わないように配置するため,点灯装置とLEDを上下方向に重なり合う配置を採用した照明装置と比較して,天井面からの突設高さを低減することができ,薄型化することができる。しかしながら,引掛シーリングキャップ301の引掛刃311がベース板302の他面の側(LED及び点灯装置が配置される一面と反対側)に突出しており,また,引掛シーリングキャップとLED又は点灯装置とが上下方向に一部が重なり合う配置となっているため,これらの分だけ上下方向の厚み,換言すると天井面からの突設高さが増してしまうという問題があった。【0005】 ( ) エ 本件発明の実施の形態に係る照明装置100のシャーシ2には,電源基板4を有する電源部をその内部に収容する電源収容部としての電源カバー6が設けられている。電源カバー6は,熱伝導体であり,例えば,金属製であり,放熱体を兼ね 15 ている。電源カバー6は,中央に円穴を有する円板状の固定部61と,固定部61の外周縁に立設された内周壁62と,内周壁62に連設され,固定部61と平行をなす天板部63と,天板部63の外周縁に連設され,内周壁62と同心をなして対向する外周壁64と,外周壁64の天板部63の反対側に周設された縁部65とを有している。この電源カバー6は,固定部61をシャーシ2の天井取付部21に,縁部65をシャーシ2の突条部23に,それぞれ整合させて,ネジ等により固定されている。この電源カバー6のシャーシ2への取付けにより,電源基板4を有する電源部,制御基板5を有する制御部及び調光回路部が,シャーシ2と電源カバー6により形成される空洞内に収容され,同時に,電源カバー6がシャーシ2に熱的に接続される。このように,熱伝導体の電源カバー6をシャーシ2に固定して熱的に接続してあるため,照明モジュール3,電源部41等により発生した熱がシャーシ2に伝達され,シャーシ2に伝達された熱が,電源カバー6から照明装置100のセンタカバー8の側に伝達されることから,照明装置100の周囲の空気へ放散することができる。【0023】【0037】 ( , ) 16 オ 電源部41は,電源基板4のほか,電源基板4に実装されてAC電源から供給された電流を整流する整流回路,整流された電圧を所定の電圧に変換するトランス,一定電流を供給する定電流供給回路等の電子部品を有するものであり,照明装置100のシャーシ2の基板保持部22に設けてある 【0029】。
( ) このように構成された照明装置100においては,取付部であるアダプタ1の周囲に電源基板4(電源基板4を備える電源部41)が配置されており,電源基板4の周囲に照明モジュール3が配置されているから,アダプタ1,電源部41及び照明モジュール3が被取付部材と直角をなす方向,換言すると被取付部材からの突設高さ方向には重なり合わないように配置されている。そのため,被取付部材からのアダプタ1,電源部41及び照明モジュール3の突設高さを低減することができ,照明装置100を薄型化することができる。そして,板状をなすシャーシ2の一面側に,アダプタ1,電源部41及び照明モジュール3が重なり合わないように配置されているから, 17 天井等の被取付部材からの照明装置100の突設高さを更に低減することができ,照明装置100を更に薄型化することができる。
(2) 甲1発明の要旨 甲1公報によれば,甲1発明の内容は,次のとおりであると認められる(甲1)。
ア 甲1発明は,発光ダイオード等の半導体発光素子を光源としたシーリングライト等の照明器具に関するものであり,輝度ムラを低減して器具効率を向上させることができ,かつ,部品を共通化してコスト的にも有利な照明器具を提供しようとするものである(【0001】【0008】。
, ) イ 従来,住宅用シーリングライト等の照明器具の光源を発光ダイオード等の半導体発光素子にする場合には,発光面であるグローブの輝度ムラを低減して器具効率を向上させるとともに,機種ごとの反射面の設計変更を不用にしてコスト的に問題の生じない照明器具をいかに実現するかが重要な課題となっていた。
すなわち,環形蛍光ランプを光源とするシーリングライトの場合には,住宅用としてやわらかい光が好まれるため,発光面となるグローブの輝度ムラ,特に環形蛍光ランプに伴うリング状の明るいイメージ及び中心部分に生じる暗部を抑える必要があることから,グローブに光の拡散性が高くて透過率の低い材料を使用する。そのため,一般的に器具効率(器具光束/ランプ光束)は50%程度で低くなっていることから,光源として発光ダイオードをそのまま使用した場合,発光面に対して発光ダイオードを万遍なく配置させても,発光ダイオード自体の輝度が高いために,グローブにイメージが発生して輝度ムラが生ずるため,グローブに光拡散性が高くて透過率の低い材料を使用せざるを得ない。【0004】 ( ) ウ また,中空サイドライト方式にした場合には,比較的容易に表示面の輝度の均斉度を高めることが可能となるが,住宅用のシーリングライトは,剥き出しの反射面に光源を取り付けて,全体を曲面形状のグローブで覆っている構造になっているため,中空サイドライト方式のように光源部分をハウジングで隠すことができず,特に光源部付近に明暗の輝度ムラが生じやすくなり,グローブに光拡散性が高くて 18 透過率の低い材料を使用せざるを得なくなり,器具効率が低下してしまう。また,中空サイドライト方式の反射面は,出射面の輝度均斉度を高めるために,その形状や反射特性が設計されているが,出射部の形状が変わった場合には,それに応じた反射面の設計変更も必要となる。他方,住宅用シーリングライトの場合には,部屋の雰囲気に合わせた数多くのグローブ形状の機種,ラインナップがあり,中空サイドライト方式をシーリングライトにそのまま採用すると,それぞれの機種ごとに異なる反射面が必要となり,開発コスト,部品コスト等が高騰するという問題がある。
(【0006】【0007】 , ) エ 甲1発明によれば,半導体発光素子の光出射方向に対向して配置され,半導体発光素子の光を主として平行方向に制御するレンズ体と,半導体発光素子に対向し器具本体の略中央部に向かって傾斜させた反射体と,半導体発光素子及び反射体を覆い外縁部から中央部にいくに従い透過率が高くなるようにしたグローブにより,輝度ムラ対策の必要な部分のみグローブの拡散性を上げ,必要のない部分の透過率を上げることができる。また,反射体の形状や反射特性を,典型的なグローブ形状に対して均斉度が得られるように設計し,グローブ形状を変更した機種に対しては,グローブの透過率を制御して輝度ムラを低減することが可能となり,反射体を共通化することができる。【0010】 ( ) オ 甲1発明の実施例の照明器具は,器具取付面Aに設置される器具本体10, 19 半導体発光素子からなる光源体20,レンズ体30,反射体40及びグローブ50で構成する。
器具本体10は,鉄板等の金属に白色塗装を施した一辺が約500mmの正方形をなすシャーシーとして構成され,シャーシーの略中央部には天井等の器具取付面Aに設置された引掛シーリング11に着脱可能に設置されるアダプタ12を設ける。
さらに,アダプタ12の周囲の空間部に光源体20を点灯するための点灯装置13を取り付け,対向する辺の外縁部14,15に光源体20を設置するための設置部16,17を設ける。【0029】 ( ) 光源体20は,半導体発光素子,本実施例では発光ダイオード21(LED)で構成し,複数個のLED21を発光素子基板22に配置した直線状の長さが約100mmの線状の発光モジュール23として構成し,必要な個数,本実施例では5本の発光モジュールが選択されて1本の長尺な光源体20を構成する。この長尺な光 20 源体20を2本用意して,器具本体10の対向する辺の外縁部14,15に設けられた設置部16,17に1本ずつ,発光部である各LED21がそれぞれ対向するようにして器具本体の外縁部に配設される。すなわち,器具本体のそれぞれの設置部16,17にはシャーシーから一体に形成された支持板24が立設され,支持板に各発光モジュールの発光素子基板22を取り付けて支持する。 【0030】 ( ) レンズ体30は,各LED21の光出射方向に対向し近接して配置され,LEDからの光を平行光にして広がりを持って出射させる長尺な凸レンズで構成し,支持板24に別途の支持具により取り付けられる。【0031】 ( ) 反射体40は,鉄板等の金属に白色塗装を施した平板状をなし,両端部を2本のそれぞれの光源体20における各LED21に対向し,中間部分から器具本体の略中央部に向かって連続的に徐々に傾斜させた傾斜部41を形成する。反射体は,器具本体10を構成するシャーシーの略中央部に,ネジ,スポット溶接等の手段で固定される。【0032】 ( ) グローブ50は,透光性を有する乳白色の半透明な合成樹脂で構成し,浅い皿状の球面状をなす発光部51と,器具本体10の外縁部14,15に対応する部分に外周部を残して上面を開口することにより形成した開口部52とを一体に形成し,器具本体の下方から被せることにより,光源体20及び反射体40を覆うように器具本体の下面全体を囲むようにして取り付けられる。グローブ50は,その肉厚を器具本体10の外縁部14,15に対応するグローブの外周部から中央部にいくに従い薄くなるようにして成形し,外縁部から中央部にいくに従い透過率が高くなるように構成する カ 上記に設置された照明器具を点灯すると,光源体20の各LED21が発光し,LEDから放射された光はレンズ体30により,略平行な方向,すなわち,反射体40の傾斜部41に向かって放射され,さらに反射体で反射してグローブ50を内面側から照射し,部屋全体にわたり略均一な明るさで照明する。この際,光源体20が器具本体10の外縁部14,15に配設され,従来のように環形蛍光ラン 21 プが器具本体の中央部に存在しない。そのため,ランプイメージがグローブの照射中心部に現れずに均斉度が向上する。また,グローブ50は,その肉厚を器具本体10の外縁部14,15に対応するグローブの外周部から中央部にいくに従い薄くなるようにして成形し,外縁部から中央部にいくに従い透過率が高くなるように構成してあるので,輝度ムラ対策の必要な部分のみグローブの拡散性を上げ,必要のない部分の透過率を上げることができる。
(3) 取消事由1-1(相違点2に係る容易想到性の判断の誤り)について ア 相違点2に係る容易想到性の判断について 前記認定事実(2)によれば,甲1発明は,LEDを光源とする照明器具においては,LED自体の輝度が高いためグローブに輝度ムラが生ずるという課題を解決し,輝度ムラを低減して器具効率を向上させる照明器具を提供するものである。すなわち,甲1発明は,上記課題を解決するために,器具本体の外縁部に配設されるLEDと,LEDの光出射方向に対向して配置され,LEDの光を主として平行方向に制御するレンズ体と,LEDに対向し器具本体の略中央部に向かって傾斜させた反射体と,LED及び反射体を覆い外縁部から中央部方向に透過率が高くなるようにしたグローブとを具備する構成を採用し,輝度ムラ対策の必要な部分のみグローブの拡散性を上げるとともに,必要のない部分の透過率を上げて,全体として輝度ムラを低減し,かつ,器具効率を向上させるものである。
そうすると,甲1発明においては,輝度ムラを低減させるために,LEDを器具本体の前面に向けて配置せず,LEDを実装した面を中央に向けてその光の出射方向を器具本体の中央部にすることは,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると認めるのが相当である。したがって,甲1発明においては,LEDを器具本体の前面に向けて配置するという相違点2の構成を採用することは,上記特徴的部分を欠くことになり,甲1発明の技術的思想に反することになるから,当業者が上記構成を適用する動機付けを認めることはできない。
以上によれば,当業者が相違点2に係る構成を容易に想到することはできないと 22 した審決の判断に誤りはない。
イ 原告の主張に対する判断 原告は,甲1公報には,LEDを器具本体の前面に取り付ける構成も従来技術として開示されているのであるから,当該構成を採用する動機付けを欠くとした審決の判断には誤りがある旨主張する。しかしながら,原告が指摘する甲1公報の【0004】は, 「光源として発光ダイオードをそのまま使用した場合」と記載するにとどまり,当該発光ダイオードの構成を具体的に明らかにするものではなく,原告の上記主張はその前提を欠く。仮に甲1公報に従来技術としてLEDを器具本体の前面に取り付ける構成が開示されているとしても,前記アのとおり,当該構成を適用すれば,甲1発明の上記特徴的部分を欠くことになり,甲1発明の技術的思想に反することになるから,甲1発明に上記構成を備える従来技術を適用することはできないというべきである。したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
(4) 取消事由1-2(相違点3に係る容易想到性の判断の誤り)について ア 甲3の1公報ないし甲3の4刊行物に記載された事項 甲3の1公報によれば,点灯装置20が絶縁板21(19の誤記と認められる)を介して器具本体1に取り付けられ,甲3の2公報によれば,動作電源を生成する回路ブロック3が中板22を介してボディ20に取り付けられ,甲3の3公報によれば,点灯回路基板5が絶縁板50を介して器具本体3に取り付けられている。そうすると,甲3の1公報ないし甲3の3公報に記載された照明器具は,光源をLEDとするものではないものの,電源部が保持体に直に接することなく保持体の一面に設けられているものと認められる。また,甲3の4刊行物には,電気用品の空間距離を一定以上にする事項が記載されており,これは,電気的絶縁の観点から,空間距離を一定以上にして電気用品の安全を図るものであり,電源部が保持体に直に接することなく設けられる構成を十分に示唆するものといえる。
イ 相違点3に係る容易想到性の判断について 前記アの認定事実によれば,甲3の1公報ないし甲3の4刊行物には,電源部が 23 保持体に直に接することなく保持体の一面に設けるという相違点3に係る構成がいずれも開示されており,当業者において当該構成は周知な事項であると認められるから,甲3の4刊行物にいう安全配慮の観点からすれば,当業者は当該構成を容易に想到することができたものと認められる。そうすると,当業者は,甲1発明に対し,甲3の1公報ないし甲3の4刊行物記載の上記周知の事項を適用して,電源部が保持体に直に接することなく保持体の一面に設けるという相違点3に係る構成を,容易に想到することができたと認めるのが相当である。したがって,甲1発明において,器具本体に接して設けられているボックス状の点灯装置に対して,器具本体から点灯装置を離間して配置する甲3の1公報ないし甲3の4刊行物に記載されている事項を適用する動機付けはないとした審決の判断には誤りがあるというべきである。よって,取消事由1-2は理由があるものと認められる。
ウ 被告の主張に対する判断について 被告は,甲3の4刊行物においては,LEDが政令指令されておらず,LED照明装置には甲3の4刊行物にいう空間距離の順守義務がないから,点灯装置を器具本体から離間して配置することは,LED照明装置において当然ことではなく,周知の事項であるとはいえないなどと主張する。しかしながら,被告の主張のとおり,LEDが政令指令されておらず,甲3の4刊行物にいう空間距離の順守義務がないとしても,照明器具における安全配慮の観点からすれば,LED照明装置もその他照明器具と異なるところはないというべきであり,上記遵守義務の不存在が点灯装置を器具本体から離すことの阻害要因になるものと認めることはできない。そうすると,LED照明装置の場合であっても安全配慮の観点から空間距離を一定以上にすることは,当業者が容易に想到し得たものと認められる。したがって,被告の上記主張は,LED照明器具における安全配慮の重要性を看過するに帰するものであり,採用することができない。
(5) 取消事由1-3(相違点4に係る容易想到性の判断の誤り)について ア 相違点4に係る容易想到性の判断について 24 前記認定事実1(2)によれば,甲1発明は,LEDを光源とする照明器具においては,LED自体の輝度が高いためグローブに輝度ムラが生ずるという課題を解決し,輝度ムラを低減して器具効率を向上させる照明器具を提供するものであって,上記課題を解決するために,LEDに対向し器具本体の略中央部に向かって傾斜させた反射体に対し,LEDから放射された光を反射させることによって,全体として輝度ムラを低減させるものである。そうすると,甲1発明にいう反射体は,文字どおりLEDの光を反射させるための部材であって,上記反射体を本件発明にいう「電源カバー」であると認めることはできない。のみならず,甲1公報は,反射体と器具本体との関係すら明らかにするものではなく,上記反射体の縁部が開示されているとも認められない。したがって,甲1公報は, 「LED基板と電源部との間において保持体に固定された縁部を有し,電源部を覆う電源カバー」を開示するものと認めることはできない。
以上によれば,当業者が相違点4に係る構成を容易に想到することはできないとした審決の判断に誤りはない。
イ 原告の主張に対する判断について 原告は,縁部を有する電源カバーという相違点4に係る構成は,甲5の1公報ないし甲5の5公報に開示されている周知の事項であって,当業者は甲1発明に対し上記周知の事項を適用して相違点4に係る構成を容易に想到し得る旨主張する。しかしながら,そもそも甲5の1公報,甲5の2公報及び甲5の5公報は,反射板を開示するものにすぎず当該反射板を電源カバーと認めるに足りず,甲5の3公報は放電灯点灯装置210の周囲が複数の直線によって囲われているもののこれを電源カバーと認めるに足りる記載はなく,甲5の4公報は,甲5の2公報及び甲5の5公報と同様に,そもそも光源はLEDではなく蛍光ランプにすぎないものであり,しかも,甲5の1公報ないし甲5の5公報は,いずれも本件発明にいう縁部を開示するものでもない。そうすると,LED基板と電源部との間において保持体に固定された縁部を有し,電源部を覆う電源カバーが周知の事項であるとはいえず,これ 25 を前提とする原告の主張は,その前提を欠く。したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
(6) まとめ 以上によれば,本件発明1は,甲1発明について,甲2公報ないし甲2の2公報,甲3刊行物,甲3の1公報ないし甲3の4刊行物に記載された事項を適用することによって,当事者が容易に発明をすることができたものとはいえないとした審決の判断に誤りはない。
2 取消事由2-1(相違点5に係る容易想到性の判断の誤り)ないし取消事由2-3(相違点7に係る容易想到性の判断の誤り)について (1) 甲1の1発明の要旨 甲1の1公報によれば,甲1の1発明の内容は,次のとおりであると認められる(甲1の1)。
ア 甲1の1発明は,光源としてLEDを使用したLED照明装置に関するものであり,屋内通路等の天井面に明り取り用として取り付ける照明装置であって,天井面に大きな穴をあけることなく天井面に直接取り付けることができ,しかも,天井面から下向きに突出する寸法を小さくすることができるLED照明装置を提供するものである(【0001】【0005】。
, ) イ 甲1の1発明の点灯装置は,交流電流を直流電流に変換する整流回路,保護用素子としてのコンデンサ,抵抗等を含む装置を意味する。点灯装置とLEDとが,LEDからの光の放射方向である上下方向に重ね合わない配置状態となることから,このLED照明装置は薄型化される。そのため,このLED照明装置を屋内通路などの天井面に取付けて明取り用として使用する場合,天井面に直接取り付けても下向きに突出する寸法が小さくなり,天井部分の美観を損ねることがない。また,天井面には,給電用の電源線などを通す小さい穴を開けるだけでよく,天井面への穴開け加工の手間をかけず容易に行うことができる。【0007】【0008】 ( , ) ウ 甲1の1発明の実施の形態であるLED照明装置は,円盤状のベース板1の 26 一方の面の略中央部に給電部2が取付けられ,ベース板1の他方の面の略中央部には点灯装置3が取り付けられている。さらに,ベース板1の他方の面には,点灯装置3と略同一面内であって点灯装置3の周囲に等間隔で間欠的に位置する複数個のLEDである大電流型LED4が配置されている。給電部2は,電源線5が接続されて大電流型LED4を点灯させるために必要な電力が供給される部分であり,点灯装置3には大電流型LED4を点灯させるために必要な回路や素子,例えば,交流電流を直流電流に変換する整流回路,保護用素子としてのコンデンサや抵抗などが含まれている。【0023】 ( ) 27 エ このLED照明装置は,点灯装置3と同一面であってその周囲に複数個の大電流型LED4が配置され,点灯装置3と大電流型LED4とは上下方向で重ならない配置状態となり,薄型化されている。そのため,このLED照明装置を屋内通路などの天井面7に取り付けて明取り用として使用した場合,天井面7に直接取付けても下向きに突出する寸法が小さくなり,天井部分の美観を損ねることがない。
また,天井面には,給電用の電源線などを通す小さい穴をあけるだけでよく,天井面への穴あけ加工の手間をかけず容易に行うことができる。【0029】【004 ( ,0】) (2) 取消事由2-1(相違点5に係る容易想到性の判断)について ア 相違点5に係る容易想到性の判断について 前記認定事実(1)によれば,甲1の1発明は,LED照明装置が天井から下向きに突出する寸法を小さくするために,点灯装置とLEDを上下方向に重なり合わないように配置することが従来技術にはない特徴的部分であると認められ,甲1の1発明にいうLED自体の具体的構造については開示するものではない。すなわち,通常,LEDの構造は,基板とLEDチップからなる比較的薄い板状のものであるところ,甲1の1発明にいう大型電流LED4は,基板とLEDチップの関係その他のLEDの具体的構成が明らかではない上,大電流型LED4の形状は,全体として円柱状であり,ベース板1に取り付けられる面と,ベース板1の反対側の円状の面であって光が前面に照射される面との間には,上記円柱状にいう円柱の高さに相当する比較的大きな距離があるため,大型電流LED4は,基板とLEDチップからなる比較的薄い板状の通常のLEDの構造とは明らかに異なるものである。そうすると,甲1の1発明は,本件発明にいう「複数のLEDが実装された面が前面側に向けられ,裏面が保持体の一面に固定されたLED基板」を有しているものはいえず,LED4の上記の特徴的な形状に照らしても,これを容易に想到し得るとも認めることはできない。したがって,当業者が相違点5に係る構成を容易に想到することはできないとした審決の判断に誤りはない。
28 イ 原告の主張に対する判断について 甲1の1公報の【図1】には,LED4の光が前方に照射した状態が示され,ボックス状の形状をしているLED4の裏面側がベース板1に支持されている構成が記載されているから,LED4を搭載する基板の裏面側が保持体であるベース板1に固定されていると考えることは極めて自然な発想であるにもかかわらず,大電流型LED4として示されているボックス状の構造の中で,基板がベース板1にどのように支持されるのかについて記載も示唆もされていないとして相違点5に係る容易想到性を否定した審決の判断には誤りがあるなどと主張する。
しかしながら,前記アのとおり,甲1の1公報にはLED4の具体的構成が開示されていない上,取付面と照射面との間には比較的大きな距離があり,基板とLEDチップからなる比較的薄い板状の通常のLEDとは,その構造において明らかに異なるものであると認められるから,原告主張に係る構成は,その根拠を欠くものである。したがって,原告の主張は,甲1の1公報の記載内容に照らし,憶測の域を出るものではなく,採用することができない。
(3) 取消事由2-2(相違点6に係る容易想到性の判断の誤り) ア 相違点6に係る容易想到性の判断について 前記1(4)アの認定事実によれば,甲3の1公報ないし甲3の3公報には,電源部が保持体に直に接することなく保持体の一面に設けるという相違点6に係る構成が開示され,当該構成は周知な事項であると認められるから,前記1(4)イで説示したところと同様に,当業者は,甲3の4刊行物にいう安全配慮の観点から,甲2発明に対し,甲3の1公報ないし甲3の3公報記載の周知の事項を適用し,電源部が保持体に直に接することなく保持体の一面に設けるという相違点6に係る構成を,容易に想到することができたものと認めるのが相当である。
したがって,甲2発明において,器具本体に接して設けられているボックス状の点灯装置に対して,器具本体から点灯装置を離間して配置する甲3の1公報ないし甲3の4刊行物に記載されている事項を適用する動機付けはないとした審決の判断 29 には誤りがあるというべきである。よって,取消事由2-2は理由があるものと認められる。
イ 被告の主張に対する判断について 被告は,甲3の4刊行物においては,LEDが政令指令されておらず,LED照明装置には甲3の4刊行物にいう空間距離の順守義務がないから,点灯装置を器具本体から離間して配置することは,LED照明装置において当然ことではなく,周知の事項であるとはいえないなどと主張する。しかしながら,前記1(4)ウにおいて説示したところと同様に,LEDが政令指令されておらず,甲3の4刊行物にいう空間距離の順守義務がないとしても,照明器具における安全配慮の観点からすれば,LED照明装置もその他照明器具と異なるところはなく,上記遵守義務の不存在が点灯装置を器具本体から離すことの阻害要因になるものと認めることはできない。
そうすると,LED照明装置の場合であっても安全配慮の観点から空間距離を一定以上にすることは,当業者が容易に想到し得たものと認められる。したがって,被告の上記主張は,LED照明器具における安全配慮の重要性を看過するに帰するものであり,採用することができない。
(4) 取消事由2-3(相違点7に係る容易想到性の判断の誤り)について ア 相違点7に係る容易想到性の判断について 前記2(1)の認定事実によれば,甲1の1発明は,LED照明装置が天井から下向きに突出する寸法を小さくするために,点灯装置とLEDを上下方向に重なり合わないように配置することが従来技術にはない特徴的部分であると認められ,甲1の1発明にいう点灯装置自体の具体的構造についてまで開示するものではない。
すなわち,点灯装置3は,ベース板1の他方の面の略中央部に取り付けられ,大電流型LED4を点灯させるために必要な回路や素子,交流電流を直流電流に変換する整流回路,保護用素子としてのコンデンサ,抵抗灯等の部品が含まれているものであって,外形形状が円柱形であることまでは認められるものの,これを超えて,電源カバーの存否,形状,上記部品との位置関係等は明らかではない。そうすると, 30 甲1の1公報は,LED基板と電源部との間において保持体に固定された縁部を有し電源部を覆う電源カバーを開示するものと認めることはできず,縁部を有する電源カバーという相違点7の構成が当業者に周知な事項であるとも認めるに足りない。
したがって,当業者において相違点7に係る本件発明1の構成を容易に想到することができないとした審決の判断に誤りはない。
イ 原告の主張に対する判断について 原告は,縁部を有する電源カバーという相違点7に係る構成は,甲5の1公報ないし甲5の5公報に開示されている周知の事項であって,当業者が甲1の1発明に対し上記周知の事項を適用して相違点7に係る構成を容易に想到することができるなどと主張する。しかしながら,そもそも甲5の1公報,甲5の2公報及び甲5の5公報は,反射板を開示するものであってこれを電源カバーと認めるに足りず,甲5の3公報は放電灯点灯装置210の周囲が複数の直線によって覆われているものの,これを電源カバーと認めるに足りる記載はなく,甲5の4公報は,甲5の2公報及び甲5の5公報と同様に,そもそも光源はLEDではなく蛍光ランプにすぎないものであり,しかも甲5の1公報ないし甲5の5公報は,いずれも本件発明にいう縁部を開示するものでもない。そうすると,LED基板と電源部との間において保持体に固定された縁部を有し,電源部を覆う電源カバーが周知の事項であるとはいえず,これを前提とする原告の主張は,その前提を欠く。したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
(5) まとめ 以上によれば,甲1の1発明について,甲3の1公報ないし甲3の4刊行物に記載された事項を適用することによって当業者が容易に発明することができたものとはいえないとした審決の判断に誤りはない。
3 取消事由3(相違点10に係る容易想到性の判断の誤り) (1) 甲2発明の要旨 甲2公報によれば,甲2発明の内容は,次のとおりであると認められる(甲2)。
31 ア 甲2発明は,LED灯具に関するものであり,修理可能な環境保全多機能モジュール式LED灯具に関するものである。甲2発明の主な課題は,簡単に交換でき廃棄物を増加させることなど環境に負荷を与えることがなく,環境保全の面からも好ましく,また,省エネルギーの利点が得られる修理可能な環境保全多機能モジュール式LED灯具を提供することにある。【0001】【0003】 ( , ) イ 甲2発明に係るLED灯具は,複数のLED発光モジュールと,電源制御回路板と,検出センサと,飾りリングを着脱自在にしたものであり,一つのLEDが故障した場合でも,一つのLEDモジュールの交換のみで対応することができる。
また,灯笠,電源制御回路板,検出センサ,飾りリング等もそれぞれ簡単に交換することができるため,廃棄物量を低減させることができる。また,検出センサについてもユーザーのニーズに応じて所定機能を付与することができるため,照明と合わせて使用することにより著しく顕著な使用効果を奏する。 【0014】 ( ) ウ 甲2発明に係るLED灯具は,灯座10と,灯笠20と,LED発光モジュール30と,電源制御回路板40と,検出センサ50と,飾りリング60とから構成されている。
灯座10は,放熱しやすいアルミニウム金属材質からなり,ほぼディスク状で,底板11と底板11の周縁から上へ伸びる周壁12がある。また,底板11において,周縁に沿って,一体的にプレスされて,中央が上へ突出するリング状突縁111が形成されている。
LED発光モジュール30は,複数設けられており,灯座10の底板11のリング状突縁111に設置され,それぞれに,基板31と外蓋32及び放熱弾性ゴム33が備えられる。上記基板31が,上記底板11のリング状突縁111に対応して扇形になり,基板31が,リング状突縁111の上に設置され,他のLED発光モジュール30とリング状に囲み,また,それぞれの基板31に複数のLED311が配列され,基板31の一側にともに,差込口金312が設けられている。【00 (16】【0017】【0019】 , , ) 32 エ 基板31の底部に,上記放熱弾性ゴム33が設置され,LED311による熱エネルギーが,放熱弾性ゴム33を介して直接に,アルミニウム金属からなる底板11に伝達されて,放熱の効果が得られる。
電源制御回路板40は,灯座10の底板11の中心に固定されてあり,LED発光モジュール30に対応して,LED発光モジュール30にある差込口金312が差し込まれる複数の差込ソケット41が設置され,また,一側に更に充電式電池42が設置されている。
検出センサ50は筒体であり,その上段が上記固定枠13のバイアホール132を通してリング状シート131に固定され,その上段の外周に螺条51が設けられ,灯笠20の開口21を通してロック蓋22と螺着され,その上端が灯笠20から露出でき,外部の環境を検出できる。【0021】【0022】【0023】 ( , , ) オ LED311が故障した場合,LED発光モジュール30の外蓋32に固定するネジを弛め,故障した発光モジュール30の差込口金312を,電源制御回路板40の差込ソケット41から抜き出して,故障したLED発光モジュール30だけを上記灯座10から直接に取り外して,新しいLED発光モジュール30を実装すればよい。また,上記灯具の他のパーツも,例えば,灯笠20や電源制御回路板40,検出センサ50及び飾りリング60等も,簡単に交換できる。【0026】 ( ) 33 (2) 相違点10に係る容易想到性の判断について 前記(1)の認定事実によれば,甲2発明は,LEDモジュールを簡単に交換でき廃棄物を増加させず環境に負荷を与えることがないLED灯具を提供することを課題とするものであり,当該課題を解決するために,固定枠13のリング状シート131の両側から,下に向かって二つのスタンド133が設けられ,固定枠13が,当該各スタンド133によって底板11に固定される構成を採用している。当該構成によれば,二つのスタンド133が固定枠13と底板11を連結して支えつつ,差込口金312を差込ソケット41に差し込むことができる空間を確保している。当該空間が存在することによって,LED311が故障した場合であっても,故障した発光モジュール30の差込口金312を,電源制御回路板40の差込ソケット41から抜き出し,故障したLED発光モジュール30のみを灯座10から直接取り 34 外し,新しいLED発光モジュール30を実装することができるため,一つのLEDが故障した場合でも,一つのLEDモジュールの交換のみで対応することができ,LEDモジュールを簡単に交換することができることになる。
そうすると,甲2発明において,上記空間の存在は,LEDモジュールを簡単に交換することができるという,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると認めるのが相当である。それにもかかわらず,甲2発明において,電源制御回路板40を覆う電源カバーを設けるという相違点10の構成を採用すれば,かえって上記空間を閉塞させ,差込ソケット41への差込口金312の抜差しを妨げることになるから,上記特徴的部分を欠くことになり,甲2発明の技術的思想に反することになる。したがって,当業者が甲2発明に対し上記構成を適用することは,動機付けを欠くものと認められる。のみならず,仮に相違点10の構成を採用して電源カバーを設けようとしたとしても,前記(1)の認定事実によれば,電源制御回路板40の周辺には,スタンド133,検出センサ50等があるのであって,薄型化が要求されているLED灯具において,電源カバーを設ける空間があるとは直ちに認めることはできない。
以上によれば,当業者が相違点10に係る構成を容易に想到することはできないとした審決の判断に誤りはない。
(3) 原告の主張に対する判断について 原告は,電源カバーを有する照明器具であっても差込ソケットと差込口金との接続形態を採用することは技術常識であるから,甲2発明において,電源カバーを設けたとしても,差込ソケットと差込口金との接続を妨げるような阻害要因にはならないなどと主張する。しかしながら,前記(2)のとおり,甲2発明において,LEDモジュールを簡単に交換するために,差込口金312による差込ソケット41への抜差しを妨げない空間を確保することは,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であるから,当業者が甲2発明特有の技術的思想に反する相違点10の構成を採用することは,その動機付けを欠くというほかない。したがっ 35 て,原告の上記主張は,甲2発明特有の技術的思想を構成する特徴的部分を正解しないものに帰するものであり,採用することができない。
(4) まとめ 以上によれば,甲2発明について,甲2の4公報に記載された事項及び周知の事項を適用することによって当業者が容易に発明することができたものとはいえないとした審決の判断に誤りはない。
4 本件発明2ないし4について 以上1ないし3によれば,当業者において本件発明1を容易に想到し得たものとは認められないのであるから,本件発明1の全ての構成を備えた本件発明2ないし4も同様に,当業者が容易に想到し得たものとは認められず,これと同旨をいう審決の判断には,結論において誤りはない。
5 小括 そのほかに原告の当審における主張を改めて十分検討しても,原告の主張は,独自の見解に立って審決を非難するにものにすぎず,上記判断を左右するに至らない。
したがって,審決は,結論においてこれを取り消すべき違法はないものと認められる。
結論
以上によれば,原告の本訴請求は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 設樂一