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事件 |
平成
27年
(ワ)
7147号
特許権侵害差止等請求事件
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原告 P1 同訴訟代理人弁護士 浜口廣久 同補佐人弁理士 井関勝守 同 金子修平 被告 ラオックス株式会社 被告 神田無線電機株式会社 上記2名訴訟代理人弁護士 山田威一郎 同代理人弁理士 鶴本祥文 同補佐人弁理士 西内盛二 同 林浩 同 杉山周平 |
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裁判所 | 大阪地方裁判所 |
判決言渡日 | 2016/09/15 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。 |
事実及び理由 | |
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請求
1 1 被告らは,別紙被告製品目録記載の製品を生産し,譲渡し,貸し渡し,若 しくは輸入し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。 2 被告らは,前項記載の製品及びこれらの半製品(前項記載の製品の構造を備 えているが製品として完成するに至っていないもの)を廃棄せよ。 3 被告らは,原告に対し,連帯して,220万1307円及びこれに対する 平成27年8月6日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 4 被告ラオックス株式会社は,原告に対し,11万1256円及びこれに対す る平成27年8月6日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 |
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事案の概要等
本件は,発明の名称を「家庭用おかゆ調理器およびそれを用いたおかゆの調理方法」とする特許権を有する原告が,被告ら(一部は,被告ラオックス株式会社単独)による別紙被告製品目録記載の製品(以下,「被告製品」という。)の展示,販売行為が当該特許権の間接侵害(特許法101条5号)に当たる行為であると主張して,特許法100条1項に基づき,被告らに対して被告製品の輸入販売等の差止め,同条2項に基づき同製品(半製品を含む。)の廃棄を求めるとともに,特許権侵害の不法行為に基づき,被告らの共同不法行為部分については,被告らに対して損害賠償として,220万1307円及びこれに対する不法行為の日の後の日である平成27年8月6日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の連帯支払を,被告ラオックス株式会社単独の不法行為部分については,同被告に対して損害賠償として,11万1256円及びこれに対する不法行為の日の後の日である同日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 判断の基礎となる事実(後掲の各証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実及び当事者間に争いがない事実) (1) 当事者 ア 原告は,韓国に居住する後記本件特許権の特許権者である。 2 イ 被告ラオックス株式会社(以下,「被告ラオックス」という。)は,家庭用電化製品等の輸入販売を業とする株式会社である。 ウ 被告神田無線電機株式会社は,被告ラオックスの100%子会社の家庭用電化製品等の輸入販売等を業とする株式会社であり,代表取締役を含む取締役は全て被告ラオックスの取締役が兼務している(甲1)。 (2) 原告の特許権 原告は,以下の特許(以下,「本件特許」といい,本件特許のうち特許請求の範囲請求項8に係る発明を「本件発明」という。また,その特許出願の願書に添付された明細書及び図面を「本件明細書」という。)に係る特許権(以下,「本件特許権」という。)を有している。 ア 特許番号 特許第3651685号 イ 発明の名称 家庭用おかゆ調理器およびそれを用いたおかゆの調理方法 ウ 出願日 平成16年4月14日 エ 出願番号 特願2004-118716号 オ 登録日 平成17年3月4日 カ 特許請求の範囲【請求項1】 所定量の水およびおかゆの原料が投入され,上側が開放された円柱状に形成され,一側に移動のための容器取っ手が設けられ,上側開口部の両端にフック装置が設けられる容器部と; 前記容器部の上側開口部に対応する形状でその下面が形成され,外側両端にフック装置に対応する位置にフック装置によって加圧されるフック受け金具が形成され,下面に容器部の内側に挿入されるように回転軸の端部に粉砕刃が設けられたモーターが内設され,前記粉砕刃の外側には水を加熱するヒーターが設けられ,内側にはモーターおよびヒーターを制御する制御部を備える駆動部と; が設けられた家庭用おかゆ調理器。 3【請求項3】 前記駆動部は,下面が開放されて上側に段差が形成された半球状の外形を形成し,上面に駆動部を移動させるための取っ手が形成され,内側に制御部が装着され,外側に制御部を調節する調節パネルと,制御部,モーターおよびヒーターに電源を供給する電源供給部とが形成された上部ハウジングと; 前記上部ハウジングの下部開放側の形状に対応する形状で上面が開放され,下側に段差部を形成し突出してモーターが装着される円柱状のモーター装着部が形成され,前記モーター装着部にモーターの回転軸が下向きに延長されて設けられる下部ハウジングと; で構成される請求項1記載の家庭用おかゆ調理器。 【請求項8】 前記調節パネルを操作しておかゆ調理器を作動させることにより,前記制御部で容器部内における水の有無を感知し,水があれば次段階に進み,水がない場合は警告音を鳴らして初期段階に転換される感知段階と; 前記感知段階の後,前記水の温度を測定し,水の温度が設定された温度以上である場合は,設定された待機時間を有するふやかし段階と; 前記感知段階において容器部内に水がある場合,電源供給部に供給されるヒーターに印加して水を加熱する加熱段階と; 前記ヒーターが作動されることによってお湯が沸きながら発生する泡と,水の温度を感知して前記制御部に伝送し,前記制御部はヒーターの作動時間をカウントすると共にヒーターの作動を制御するヒーター制御段階と; 前記ヒーター制御段階の以降,ヒーターの作動が終了した後に,設定された時間が経過されるまで待機状態を維持する待機段階と; 前記待機段階の以降,制御部においてモーターに電源を印加してモーターの回転軸に設けられた粉砕刃を用いておかゆの原料を約15〜25秒間粉砕し,約2分ほどの待機時間を有する第1の粉砕段階と; 4 前記第1の粉砕段階の以降,約15〜25秒間モーターを作動しておかゆの原料を粉砕し,約5〜15秒間の待機時間を繰り返して約4〜6回行う第2の粉砕段階と; 前記第2の粉砕段階の以降,粉砕されたおかゆの原料が熟成するように約4〜5分の待機時間を有する熟成段階と;を備える家庭用おかゆ調理器を用いたおかゆの調理方法。 (3) 本件発明の構成要件の分説 本件発明の構成要件は,次のとおり分説することができる(以下,それぞれを「構成要件AないしI」という。)。 A 前記調節パネルを操作しておかゆ調理器を作動させることにより,前記制御部で容器部内における水の有無を感知し,水があれば次段階に進み,水がない場合は警告音を鳴らして初期段階に転換される感知段階と B 前記感知段階の後,前記水の温度を測定し,水の温度が設定された温度以上である場合は,設定された待機時間を有するふやかし段階と C 前記感知段階において容器部内に水がある場合,電源供給部に供給されるヒーターに印加して水を加熱する加熱段階と D 前記ヒーターが作動されることによってお湯が沸きながら発生する泡と,水の温度を感知して前記制御部に伝送し,前記制御部はヒーターの作動時間をカウントすると共にヒーターの作動を制御するヒーター制御段階と E 前記ヒーター制御段階の以降,ヒーターの作動が終了した後に,設定された時間が経過されるまで待機状態を維持する待機段階と F 前記待機段階の以降,制御部においてモーターに電源を印加してモーターの回転軸に設けられた粉砕刃を用いておかゆの原料を約15〜25秒間粉砕し,約2分ほどの待機時間を有する第1の粉砕段階と G 前記第1の粉砕段階の以降,約15〜25秒間モーターを作動しておかゆの原料を粉砕し,約5〜15秒間の待機時間を繰り返して約4〜6回行う第2の粉砕 5段階と H 前記第2の粉砕段階の以降,粉砕されたおかゆの原料が熟成するように約4〜5分の待機時間を有する熟成段階とを備える I 家庭用おかゆ調理器を用いたおかゆの調理方法。 (4) 被告らの行為 被告らは,被告製品を業として販売し,又は販売の申し出をしている。 (5) 被告製品の動作 被告製品には,「特濃豆乳」,「豆乳」,「スープ」,「穀物豆乳」,「ジュース」,「豆乳茶」,「すすぎ」,「急速豆乳」の動作モードが設定されているが,そのうち「急速豆乳」モードを用いて米90グラム,水600ミリリットルを調理した場合における動作は,別紙被告方法@(以下,「被告方法@」という。)及び別紙被告方法A(以下,「被告方法A」という。)のとおりである(甲4,甲12,甲15)。 2 争点及び当事者の主張 (1) 被告方法は,本件発明の技術的範囲に属するか(文言侵害の成否)(原告の主張) 被告製品において使用される方法は別紙被告方法記載のとおりであり,その構成は別紙対比表の原告主張被告方法の構成欄記載(以下,「原告主張に係る被告方法」ということがある。)のとおりである。また米90グラムと水600ミリリットルを「急速豆乳モード」で調理した場合の具体的内容は,被告方法@,Aのとおりである(以下,原告主張に係る被告方法,被告方法@及び被告方法Aを併せて,単に「被告方法」ということがある。)。 以下のとおり,被告方法は,本件発明の構成要件をすべて充足し,その技術的範囲に属する。 ア 構成要件A 構成要件Aは,「前記調節パネルを操作しておかゆ調理器を作動させることによ 6り,前記制御部で容器部内における水の有無を感知し,水があれば次段階に進み,水がない場合は警告音を鳴らして初期段階に転換される感知段階」であるところ,原告主張に係る被告方法の構成aは同要件を充足する。 なお,ここにいう「前記調節パネル」とは,本件特許の特許請求の範囲請求項3に係る発明でいうところの「制御部を調節する調節パネル」であり,被告製品が係る調節パネルを具備している。また「前記制御部」とは,本件特許の特許請求の範囲請求項1に係る発明でいうところの「モーターおよびヒーターを制御する制御部」であり,被告製品がモーター及びヒーターを制御して作動していることは明らかであるから,被告製品が係る制御部を具備していることも明らかである。 イ 構成要件B (ア)構成要件Bは,「前記感知段階の後,前記水の温度を測定し,水の温度が設定された温度以上である場合は,設定された待機時間を有するふやかし段階」であるところ,原告主張に係る被告方法の構成bは同要件を充足する。 より具体的には被告方法@,Aの工程1ないし5が,この「ふやかし段階」に該当するものである。 (イ)被告らは,原告の主張するふやかし段階(被告方法@,Aの工程1ないし5)は「最初の加熱プロセス」であって,これが本件発明の「ふやかし段階」に該当することを争う。 しかし,「ふやかし段階」の目的は材料の「ふやかし」であって,当然ながら,「ふやかし段階」は,その目的である「ふやかし」を達成する,あるいは「ふやかし」を効率よく行うプロセスをも含む概念であるから,「ふやかし」のための加熱も「ふやかし段階」に含まれるものであり,少なくとも,「ふやかし」のために加熱が行われたとしても,これが構成要件Bにいう「ふやかし段階」であるとすることは妨げられない。 また,「ふやかし段階中」に短時間モーターが作動しているが,その目的が「ふやかし」であることなどから,当該短時間の作動は,粉砕というよりも,むしろ, 7「ふやかし」をより効率化するための撹拌というべきであり,やはり,このモーターの作動が加わっても,構成要件Bにいう「ふやかし段階」であるとすることは妨げられない。 ウ 構成要件C (ア)構成要件Cは,「前記感知段階において容器部内に水がある場合,電源供給部に供給されるヒーターに印加して水を加熱する加熱段階と」であるところ,原告主張に係る被告方法の構成cがこれを充足する。 より具体的には,「前記感知段階」を具備することは上記アのとおりであり,被告方法@においては,工程6及び22で2度の加熱段階を有し,被告方法Aにおいては工程6の加熱段階を有することで,いずれも構成要件Cを充足する。 (イ)被告らは,被告方法@に第2加熱段階(工程22)があることで構成要件Cの充足を争うが,加熱段階の回数は特に規定されておらず,むしろ本件明細書【0055】の記載は,加熱段階は繰り返し行われることが前提とされているところであるから,上記の点によって構成要件Cの充足を妨げられない。 エ 構成要件D (ア)構成要件Dは,「前記ヒーターが作動されることによってお湯が沸きながら発生する泡と,水の温度を感知して前記制御部に伝送し,前記制御部はヒーターの作動時間をカウントすると共にヒーターの作動を制御するヒーター制御段階」であるところ,原告主張に係る被告方法の構成dがこの要件を充足する。 より具体的には,被告方法@,Aの工程6が「第1の加熱段階」に該当し,これらが構成要件Dを充足する。 (イ)被告らは,被告方法@,Aが構成要件Dでいうところの,ヒーターの「作動時間をカウントする」工程を有していないとして争う。 しかし,被告製品がヒーターの作動時間をカウントしていることは,取扱説明書(甲4)の19頁において,「加熱時間が過剰に過ぎている」場合に異常電子音が鳴るとされていることから明らかであり,被告らの主張は失当である。 8 オ 構成要件E (ア)構成要件Eは,「前記ヒーター制御段階の以降,ヒーターの作動が終了した後に,設定された時間が経過されるまで待機状態を維持する待機段階」であるところ,原告主張に係る被告方法の構成eがこの要件を充足する。 より具体的には,被告方法@,Aの工程7がここにいう「待機段階」に該当し,構成要件Eを充足する。 (イ)被告らは,被告方法@,Aは,フル出力で加熱した後,直ちに,約12秒間粉砕する工程が行われるものであり,工程7の約1秒間という時間は加熱から粉砕に移行するための時間であるとして,これが構成要件Eでいうところの,ヒーターの「設定時間が経過されるまで待機状態を維持する待機段階」との工程であることを争う。 しかし,被告方法@,Aの工程7で,ヒーターの作動後に待機状態となっている時間は,より正確には約1.25秒であるが(甲15の左端「Store No.1097〜1101」),長時間ではないとしても,ヒータ作動後,現実に待機している以上,被告らのいうように,加熱後「直ちに」粉砕工程が行われているわけではなく,これを待機状態と評価することは何ら不合理ではない。 したがって,被告方法は構成要件Eを充足する。 カ 構成要件F (ア)構成要件Fは,「前記待機段階の以降,制御部においてモーターに電源を印加してモーターの回転軸に設けられた粉砕刃を用いておかゆの原料を約15〜25秒間粉砕し,約2分ほどの待機時間を有する第1の粉砕段階と」であるところ,原告主張に係る被告方法の構成fがこの要件を充足する。 より具体的には,被告方法@,Aの工程8ないし18が構成要件Fの「第1の粉砕段階」に,被告方法@においては工程19ないし25が,被告方法Aにおいては工程19ないし23が構成要件Fの「第1の粉砕後の待機時間」に該当するものであり,要するに,被告方法@,Aは,「第1の粉砕段階として,12〜15秒間の 9粉砕を繰り返し,その後,約3分の待機時間を有している」というものであり,第1の粉砕段階で粉砕と待機を繰り返して行うものとして,構成要件Fを充足する。 (イ)被告らは,構成要件Fにおいて粉砕を複数回に分けて行うことは全く想定されていないとする。 構成要件Fに係る第1の粉砕段階では特に繰り返して行うといった規定はないが,それぞれの第1の粉砕段階は,材料を粉砕することを目的とするものであり,粉砕工程を繰り返して行うことで材料を効率よく粉砕することは当然に行われることである。また,本件明細書の【0055】に記載のとおり,第1粉砕段階はおかゆの原料に応じて繰り返して行われ得ることは当然に想定されているところであり,これらを考慮すると,本件特許の構成要件Fにおける粉砕工程と被告方法における粉砕工程とは実質的に同一であると解される。 また被告らは,被告方法@の19ないし25の工程は,被告らのいうところの「2回目の加熱プロセス」に該当し,粉砕後の約3分間の待機時間であることを争う。 しかしながら,構成要件Fに定める粉砕後の待機時間が約2分間(約1ないし3分間)であることからすると,待機時間中に水温が低下されることは容易に想定されるところであり,当該待機時間において,水温の低下を防ぐべく1/2出力での保温が行われることは殊更に禁止されるところではないから,このような保温のための加熱がされても「待機時間」というに妨げない。なお,フル出力での作動が行われることについても同様であるが,被告方法としては,これが行われない被告方法Aも含まれている。 さらに被告らは,約3分の待機時間が,構成要件Fで言うところの「約2分ほどの待機時間」との要件を充足することを争う。 しかし,構成要件Fでは,「約2分」の範囲よりも広いものと解釈される「約2分ほど」との文言が使用されており,これと,本件明細書の【0053】の「約1〜3分ほどの待機時間を有し」の記載を参照すれば,被告方法@,Aにおける待機 10時間の約3分は,構成要件Fにおける「約2分ほどの待機時間」の範囲内に含まれると解釈できる。 したがって,被告らの主張を踏まえても,被告方法は構成要件Fを充足するというべきである。 キ 構成要件G (ア) 構成要件Gは,「前記第1の粉砕段階の以降,約15〜25秒間モーターを作動しておかゆの原料を粉砕し,約5〜15秒間の待機時間を繰り返して約4〜6回行う第2の粉砕段階」であるところ,原告主張に係る被告方法の構成gがこの要件を充足する。 より具体的には,被告方法@においては工程26ないし35が,被告方法Aにおいては工程24ないし33が,第2の粉砕段階に該当し,それぞれ構成要件Gを充足する。 (イ) 被告方法@,Aにおける粉砕時間及び待機時間の範囲は,構成要件Gにおける粉砕時間及び待機時間の範囲に完全には含まれていないが,第2の粉砕段階では材料を細かく粉砕することを目的としており,当然に用いる材料ごとに所要時間は変わるものであることを考慮すると,それらは実質的に同一であると解され,被告方法@,Aであっても,構成要件Gを充足するということができる。 ク 構成要件H 構成要件Hは,「前記第2の粉砕段階の以降,粉砕されたおかゆの原料が熟成するように約4〜5分の待機時間を有する熟成段階と;を備える」であるところ,原告主張に係る被告方法の構成hがこの要件を充足する。 より具体的には,被告方法@においては工程36ないし43が,被告方法Aにおいては工程34ないし41が,それぞれ「熟成段階」に該当する。 なお,被告方法@,Aでは待機又は加温を行っているが,ここでの加温は低い電力で行うものであり温度を上げることを意図するものでなく,保温のためであって粉砕されたおかゆの原料の熟成を促進することを目的としており,熟成のために保 11温することは熟成のための待機に含まれると解される。 また被告方法@,Aに係る熟成段階の時間は,最後の62秒を含めれば5分強,含めなくとも4分強であるから,構成要件Hに係る熟成段階の待機時間の範囲内に含まれる。 したがって,被告方法は構成要件Hを充足する。 ケ 構成要件I 構成要件Iは,「家庭用おかゆ調理器を用いたおかゆの調理方法」であるところ,被告方法は,被告方法@,Aを含み,「豆乳調理器を用いた豆乳調理方法」である。 おかゆとは,通常,米や粟等の穀類,豆類,芋類等を多めの水で柔らかく煮た料理として認識されるものである。ここで,被告方法の「豆乳調理方法」は,豆を粉砕すると共に煮る方法である。また,被告製品に添付されている取扱説明書及びレシピには,豆を材料とする豆乳調理方法以外にも,米や芋等を材料として用いたおかゆの調理方法も記載されており,これらを考慮すると被告方法@,Aはおかゆの調理方法に含まれ,被告方法は構成要件Iを充足する。 (被告らの主張) ア 構成要件Aについて 構成要件Aは,「前記調節パネルを操作しておかゆ調理器を作動させることにより,前記制御部で容器部内における水の有無を感知し,水があれば次段階に進み,水がない場合は警告音を鳴らして初期段階に転換される感知段階と」という構成であるが,構成要件Aにおける「前記調節パネル」は,本件特許の特許請求の範囲請求項3にいう「調節パネル」を,「前記制御部」は本件特許の特許請求の範囲請求項1にいう「制御部」を指している。 そのため,構成要件Aの「前記調節パネル」及び「前記制御部」は,前者が本件特許の特許請求の範囲請求項3の「調節パネル」の,後者が本件特許の特許請求の範囲請求項1の「制御部」の構成要件を具備するものと解釈されるべきであるが,被告製品はそもそも「おかゆ調理器」ではなく,被告方法@,Aも「前記調節パネ 12ルを操作しておかゆ調理器を作動させることにより,前記制御部で容器部内における水の有無を感知」する工程を有していない。 したがって,被告方法は,構成要件Aを充足しない。 イ 構成要件Bについて 構成要件Bは,「前記感知段階の後,前記水の温度を測定し,水の温度が設定された温度以上である場合は,設定された待機時間を有するふやかし段階と」という構成であるが,被告製品は,「ピピッ」と電子音が鳴り,対応するランプが点灯した後,直ちにフル出力(800W)で約60秒間加熱するようになっているものであり,「前記水の温度を測定し,水の温度が設定された温度以上である場合は,設定された待機時間を有するふやかし段階」との工程は存在しない。 この点,原告は,被告方法@,Aにおいては工程1ないし5が,「ふやかし段階」に該当すると主張しているが,これらの工程は,材料を加熱する「最初の加熱プロセス」の前半の工程であり,材料をふやかすための工程ではない。本件発明では,構成要件Bの「ふやかし段階」の後に,構成要件Cの「加熱段階」が続くとされており,「ふやかし段階」と「加熱段階」は明確に区別されているものであり,水を加熱している工程1ないし4を「ふやかし段階」と解釈する余地はない。 そのため,被告方法@,Aにおいて,「ふやかし段階」に該当するとされている上記の工程1ないし5が,構成要件Bを充足するものでないことは明らかである。 本件明細書【0048】には,図7のフローチャートに基づき,以下の説明がなされており,構成要件Bの「ふやかし段階」は,水の温度が設定温度以上であった場合に,加熱を行わずに待機し,その間に材料をふやかすための段階であることが明示されているが,被告方法@,Aには,加熱を行わずに待機する工程は存在しないから,被告方法が,構成要件Bを充足しないことは明らかである。 ウ 構成要件Cについて 構成要件Cは,「前記感知段階において容器部内に水がある場合,電源供給部に供給されるヒーターに印加して水を加熱する加熱段階と」という構成であるが,構 13成要件Aに関して述べたように,被告方法@,Aにおいては,「前記感知段階」が存在しない以上,被告方法はかかる構成も具備しない。 また,原告は,被告方法@の工程6と22が「加熱工程」に該当すると主張しているが,本件発明では各工程の順序が規定されている以上,原告が主張する「第1の粉砕段階」の途中で行われる工程22を構成要件Cの「加熱段階」に該当すると解釈することはできない。 したがって,被告方法は,構成要件Cを充足しない。 エ 構成要件Dについて 構成要件Dは,「前記ヒーターが作動されることによってお湯が沸きながら発生する泡と,水の温度を感知して前記制御部に伝送し,前記制御部はヒーターの作動時間をカウントすると共にヒーターの作動を制御するヒーター制御段階と」という構成であるが,被告製品は,ヒーターの制御を作動時間ではなく,水の温度によって行っており,「作動時間をカウントする」工程を有していない。 この点,原告は,被告方法@,Aの工程6が,「第1の加熱段階」に該当すると主張しているが,同工程においては,内部に設けられた温度センサーにより水の温度を感知し,水の温度が所定の温度になると,加熱をストップする制御がなされているにすぎず,ヒーターを作動時間のカウントし,それに基づき加熱を制御することはされていない。 被告製品における加熱時間のカウントは,温度センサー等の部品に異常が生じた場合等の異常電子音を鳴らすためになされているものにすぎず,加熱を調整するための「ヒーター制御」に関する構成要件Dとは無関係な動作にすぎない。被告製品の加熱工程では,水温が80度に達したか否かによって加熱をストップする制御がなされているが,温度センサーが故障した場合や温度センサーと制御器間の通信に問題が発生した場合には,加熱がずっと継続することとなってしまい,危険が生じることになる。原告が指摘する「加熱時間が過剰に過ぎている」場合の異常電子音は,部品の安全に対するもので豆乳の煮込みプロセスに関するものではない。 14 したがって,被告方法は,構成要件Dを充足しない。 オ 構成要件Eについて 構成要件Eは,「前記ヒーター制御段階の以降,ヒーターの作動が終了した後に,設定された時間が経過されるまで待機状態を維持する待機段階と」という構成であるが,被告製品においては,フル出力(800W)で所定の温度まで加熱した後,直ちに,約12秒間粉砕する工程が行われるものであり,「設定された時間が経過されるまで待機状態を維持する待機段階」との工程は存在しない。 本件明細書【0051】には,構成要件Eの「待機段階」は,加熱開始を起点にして設定した一定時間(図7のフローチャートでは25分)が経過する前に,水の温度が設定温度に達し,加熱が停止した場合に,当該設定時間が経過するまで,加熱や粉砕処理を行わずに待機するとの流れが記載されているように,構成要件Eの待機段階とはこのようにして設定された時間までの間,加熱,粉砕処理を行わない状態を指している。 この点,原告は,被告方法@,Aの工程6の加熱から,工程8の粉砕に移る合間の約1秒の時間が「待機段階」に該当すると主張するが,かかる合間の時間は,加熱から粉砕に移行するための時間にすぎず,待機時間として設定されたものでもない。 そのため,被告方法@,Aにおいては,ヒーターの作動が終了した後に「設定された時間が経過されるまで待機状態を維持する待機段階」の工程は存在しないというべきであり,被告方法が,構成要件Eを充足しないことは明らかである。 カ 構成要件Fについて 構成要件Fは,「前記待機段階の以降,制御部においてモーターに電源を印加してモーターの回転軸に設けられた粉砕刃を用いておかゆの原料を約15〜25秒間粉砕し,約2分ほどの待機時間を有する第1の粉砕段階と」という構成であるが,次のとおり,被告方法@,Aにおいては,かかる工程は存在せず,被告方法が構成要件Fを充足しないことは明らかである。 15 (ア) 構成要件Fは粉砕を複数回に分けて行うことを想定していないこと 被告方法@に記載の工程では,被告製品の最初の粉砕プロセスでは,最初に約12秒間粉砕が行われ,その後約4秒間停止した後,約15秒間の粉砕,約3秒間の停止,約10秒間の1/2出力(500W)での加熱,約3秒間の停止との工程が3回繰り返される。そして,その後,2回目の加熱プロセスに移行し,フル出力(800W)での加熱が水の温度が所定の温度になるまで続き,その後,ふきこぼれの有無に応じ,0〜60秒間待機するようになっている。この待機時間の後,ふきこぼれの有無を感知しながら,1/2出力(500W)での加熱が行われ,さらに,その後,ふきこぼれの有無に応じ,5〜60秒間待機するようになっている。 原告は,かかる工程における,最初の粉砕プロセスの個々の粉砕工程の時間をもとに「12〜15秒間の粉砕を繰り返し」との主張をしているが,構成要件Fでは粉砕を複数回に分けて行うことは想定されておらず(このことは複数回の粉砕を前提とした構成要件Gとの対比からも明らかである。),4回の粉砕のうちの1回の粉砕時間を取り出し,構成要件Fと対比することは妥当でない。 そのため,複数回の粉砕を繰り返し行っている被告製品の最初の粉砕プロセスの工程が,構成要件Fを充足するものでないことは明らかである。 なお,原告は,この点に関し,それぞれの第1の粉砕段階は,材料を粉砕することを目的とするものであり,本件明細書【0055】に記載のとおり,第1粉砕段階はおかゆの原料に応じて繰り返して行われ得るから,これらを考慮すると,本件特許の構成要件Fにおける粉砕工程と被告方法の粉砕工程とは実質的に同一であると解されると主張するが,かかる主張は明らかに不合理な主張というほかない。本件明細書【0055】には「ここで,前記加熱段階(段階:S610)と前記第1,2次粉砕段階(段階:S622,S624)とは,おかゆの原料に応じてその作動の手順の前後が変わったり,繰り返して行われることもある。」との記載がなされているが,構成要件Fは,「おかゆの原料を約15〜25秒間粉砕し,約2分ほどの待機時間を有する第1の粉砕段階」と規定され,粉砕は1回しか行わないことが 16明確に規定されている。構成要件Fが粉砕を複数回に分けて行うことを全く想定していないことは,構成要件Gにおいて,「約5〜15秒間の待機時間を繰り返して約4〜6回行う第2の粉砕段階」という複数回の粉砕を前提としていることと対比すれば明らかであり,原告の上記主張は失当である。 (イ) 原告が主張する粉砕時間と待機時間とは,それぞれ別のプロセスの時間であること 原告は,被告方法は,第1の粉砕段階として,12〜15秒間の粉砕を繰り返し,その後,約3分の待機時間を有していると主張しているが,原告の主張は,被告製品の最初の粉砕プロセスの個々の粉砕工程の時間をもとに「12〜15秒間の粉砕を繰り返し」と述べ,2回目の加熱プロセスの最後の停止時間(被告方法@の工程23ないし25)をもとに「約3分の待機時間を有している」と主張する。 しかしながら,粉砕とは全く別の工程22の加熱工程の後の時間をもって,粉砕後の待機時間といえないことは明らかであり,原告の主張は極めて不自然かつ不合理である。 また原告は,粉砕後の待機時間が約2分間(約1〜3分間)であるところからすると,待機時間中の水温の低下を防ぐべく1/2出力での保温が行われることは殊更に禁止されるものではないと主張しているが,かかる原告の主張は,本件明細書の記載に合致しない主張であるし,被告製品の動作の解釈も誤った主張というほかない。 本件明細書によると,構成要件Fの第1粉砕段階は,加熱段階が終了し,ヒーターが停止した後の工程であり,第1粉砕段階の待機時間中に加熱を行うことは全く想定されていない。 また,被告方法@の工程24では,1/2出力(500W)での加熱が行われているものであり,かかる工程を「待機時間」ということはできない。 したがって,被告方法@は,かかる点から見ても,構成要件Fを充足するものではない。 17 (ウ) 最初の粉砕プロセスの粉砕時間のカウント方法 仮に被告製品の最初の粉砕プロセスの粉砕時間と構成要件Fの粉砕時間との対比を行うのであれば,最初の粉砕プロセスの粉砕時間を合算した時間を対象として対比を行うべきである。 そうすると,被告製品の最初の粉砕プロセスにおける粉砕時間は合計57秒となるから,被告製品の最初の粉砕プロセスにおける粉砕時間が「約15〜25秒間」とはいえないことは明らかである。 (エ) 原告の主張を前提としても,その粉砕時間及び待機時間は,構成要件Fの要件を充足しないこと 構成要件Fに関する原告の主張は極めて不合理な点を多数含むが,仮に,第1の粉砕段階として,12〜15秒間の粉砕を繰り返し,その後,約3分の待機時間を有しているとの原告の主張を前提に考えたとしても,「12〜15秒間の粉砕は構成要件Fの「約15〜25秒間粉砕し」との要件を充足せず,「約3分の待機時間」が構成要件Fの「約2分ほどの待機時間を有する」との要件を充足しないことは文言上明らかである。 キ 構成要件Gについて 構成要件Gは,「前記第1の粉砕段階の以降,約15〜25秒間モーターを作動しておかゆの原料を粉砕し,約5〜15秒間の待機時間を繰り返して約4〜6回行う第2の粉砕段階と」という構成であるが,原告主張に係る被告方法では,第2の粉砕段階においては,15秒〜40秒間の粉砕と9秒〜20秒間の待機が繰り返して5回行われているものであり,被告方法@,Aも同様である。 原告は,それらは実質的に同一であると主張するが,構成要件Gが粉砕及び待機に要する時間を必須の構成とする構成要件であることはその文言上明らかであり,かかる特許請求の範囲で特定された数値範囲から明らかに外れた被告方法を実質的同一であると論じる余地はない。 したがって,被告方法が,構成要件Gを充足しないことは明らかである。 18 ク 構成要件Hについて 構成要件Hは,「前記第2の粉砕段階の以降,粉砕されたおかゆの原料が熟成するように約4〜5分の待機時間を有する熟成段階と;を備える」という構成であるが,被告製品においては,原料を熟成させる工程は存在しない。 この点,原告は,被告方法@の工程36ないし43,被告方法Aの工程34ないし41が,「熟成段階」に該当すると主張しているが,このうち,被告方法@の工程36と37,被告方法Aの工程34と35は3回目の加熱工程であり,被告方法@の工程38ないし42,被告方法Aの工程36ないし40も1/3出力(400W)で仕上げの加熱を行う工程であり,保温をしているわけではない。また,被告方法@の工程43,被告方法Aの工程41は調理が完了した後の時間にすぎない。 そのため,かかる工程は,「熟成段階」に該当するものではなく,被告方法@,Aに「熟成段階」が存しないことは明らかであり,被告方法が構成要件Hを充足しないことは明らかである。 ケ 構成要件Iについて 構成要件Iは,「家庭用おかゆ調理器を用いたおかゆの調理方法」という構成であるが,被告製品に使用される調理方法は「おかゆ」の調理方法ではない。 したがって,被告製品を使用した調理方法は,構成要件Iを充足しない。 (2) 被告方法は,本件発明の技術的範囲に属するか(均等侵害の成否)(原告の主張) 被告方法が,構成要件F及び構成要件Gの部分で異なる方法を採るものであったとしても,以下のとおり,被告方法は,本件発明と均等なものとして,その技術的範囲に属するものである。 ア 本件発明の本質的部分について 本件発明の構成要件Fにおける粉砕方式及び粉砕時間及び構成要件Gにおける粉砕時間及び待機時間は,いずれも本件発明の本質的部分ではない。 すなわち,本件発明は,おかゆの原料の粉砕と加熱とを組み合わせることにより 19短時間で簡便におかゆを調理することができるという作用効果を奏するものである。 その本質的部分は,おかゆの原料を効率よく柔らかく煮ることにあり,その原料を粉砕するための粉砕方式や粉砕時間(構成要件F)あるいは粉砕時間及び待機時間(構成要件G)は,本件発明の本質的部分ではない。 本件明細書【0055】にも,第2粉砕段階は,おかゆの原料に応じて作動の手順が変わったり,繰り返して行われたりすることが想定されているところである。 したがって,上記相違点は本件発明の非本質的部分である。 イ 置換可能性について 本件発明の構成要件F,Gを被告方法の構成に置き換えても,特許発明の目的を達成することができ,同一の作用効果を奏する。 すなわち,本件発明の「前記待機段階の以降,制御部においてモーターに電源を印加してモーターの回転軸に設けられた粉砕刃を用いておかゆの原料を約15〜25秒間粉砕し,約2分ほどの待機時間を有する第1の粉砕段階」を,被告方法の構成と置き換え,本件発明の構成要件Gを被告方法の「15〜40秒間の粉砕と9〜20秒間の待機が繰り返して5回行われる」という構成と置き換えても,おかゆの原料を粉砕できて,効率よく柔らかく煮ることができる。 したがって,上記のように置き換えても同一の作用効果を奏するから,これらは置き換えが可能である。 ウ 置換容易性について 被告らが被告製品を輸入販売した時点において,本件発明の構成要件F,Gを被告方法の構成に置き換えることは,当業者が,容易に想到することができたものである。 すなわち,本件発明の本質的部分は,おかゆの原料を効率よく柔らかく煮ることにあり,そのために,おかゆの原料に応じて,適当な粉砕時間,待機時間及び粉砕方式を選択することは,当業者が容易に想到することができたものであるから,本件発明の構成要件F及び構成要件Gを上記の被告方法の構成に置き換えることは, 20当業者が,容易に想到することができたものである。 (被告らの主張) 原告の主張は争う。 原告は,被告方法が構成要件F及びGを文言上充足しないことだけを前提に均等侵害を主張しているが,被告方法は構成要件F及びGのみならず,構成要件AないしE,構成要件H,Iも充足しないものである。 加えて,本件発明において,少なくとも@材料をふやかす「ふやかし段階」(構成要件B),Aヒーターの作動が終了した後に材料を粉砕する「粉砕段階」の具体的な時間と待機時間(構成要件F,G),Bおかゆの原料を熟成するための約4,5分の熟成段階(構成要件H)は,おかゆを調理するという本件発明の作用効果を実現するための要素であり,本件発明の本質的部分であるから,この部分で相違する以上,均等侵害は成立しない。 (3) 被告製品の製造販売が,本件特許権の間接侵害行為となるか (原告の主張) ア 被告製品が本件発明に係る方法の使用に用いる物であること 被告製品は,被告方法の使用に用いる物であり,したがって,被告製品は,本件発明の技術的範囲に属する方法の使用に用いる物である。 イ 被告製品が本件発明による課題の解決に不可欠なものであること 本件発明が解決しようとする課題は,より簡便におかゆを調理できるようにし,従来に比べ,調理時間を短縮することができるおかゆの調理方法を提供することにある。上記課題の解決は,被告製品を,上述の感知段階,ふやかし段階,加熱段階,ヒーター制御段階,待機段階,第1の粉砕段階,第2の粉砕段階及び熟成段階を実行できるように構成し,これを用いることによって初めて実現されるものであるから,被告製品は,本件発明による課題の解決に不可欠なものである。 ウ 被告らが悪意で被告製品を販売等したこと 被告らは,遅くとも,原告から警告書を受けた平成26年9月19日には,本件 21発明が原告の特許発明であること及び被告製品がその発明の実施に用いられることを知ったから,被告らは,上記の点につき悪意で被告製品を販売等したといえる。 エ 以上のとおり,被告製品は,「家庭用おかゆ調理器」に該当し,「家庭用おかゆ調理器を用いたおかゆの調理方法の使用に用いる物」に該当することは明らかであり,被告らの悪意も認められるから,被告らによる被告製品の輸入,販売等の行為は,本件特許権に対する特許法101条5号の間接侵害となる。 (被告らの主張) 被告製品が「おかゆ」の調理に用いられることは想定し難いから,被告製品は「家庭用おかゆ調理器を用いたおかゆの調理方法」の使用に用いる物に該当しない。 また,被告製品が「おかゆ」の調理に用いられることは被告製品の販売時において全く想定されていなかったものであるから,被告らに悪意がないことも明らかである。 したがって,被告製品を輸入,販売等する行為は,本件特許権に対する特許法101条5号の間接侵害を構成しない。 (4) 本件特許は,特許無効審判により無効とされるべきものと認められるか。 (被告らの主張) 本件特許は,以下の点で特許無効審判により無効とされるべきものと認められるから,特許法104条の3第1項により,原告は,その権利を行使することができない。 ア 構成要件B,D,Eの記載は不明確であり,明確性要件(特許法36条6項2号)に違反する。 (ア) 構成要件B「設定された待機時間」 原料をその後の調理に適した状態にふやかすには,原料の種類や量に対し,適切な待機時間が必要である。しかし,構成要件Bには,「設定された待機時間」と定義されるのみで,本件明細書にも具体的な時間は規定されていない。 (イ) 構成要件D「ヒーターの作動時間をカウントすると共にヒーターの作動を制 22御するヒーター制御段階」 おかゆを調理するためには,おかゆの原料をどの程度の温度まで加熱するかについて規定が不可欠である。しかし,構成要件Dには,「ヒーターの作動時間をカウントする」とあるものの,肝心の「ヒーターの作動時間」が記載されていない。 (ウ) 構成要件E「設定された時間が経過されるまで待機状態を維持する」 おかゆをおいしく調理するためには,粉砕までにおかゆの材料がほどよく加熱され,ふっくらと炊きあがっていることが必要であるから,構成要件Eの「待機段階」でどの程度の時間待機させるかは重要な構成である。しかし,構成要件Eには,「設定された時間」とのみ定義されており,具体的な時間は規定されていない。 イ 本件明細書の発明の詳細な記載は,以下の点で当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえず,本件特許は実施可能要件(特許法36条4項1号)に違反する。 (ア) 「粉砕段階」が不明確であること 本件発明は,第1の粉砕段階,第2の粉砕段階として,それぞれ「モーターの回転軸に設けられた粉砕刃を用いておかゆ原料を約15〜25秒間粉砕し」,「約15〜25秒間モーターを作動しておかゆ原料を粉砕し」と規定する。 おかゆを粉砕するのは「破砕刃」であり,原料の粉砕力は破砕刃の大きさや粉砕性能,モーターの回転速度などに依存するところ,本件明細書には,破砕刃について「おかゆの原料を所定の大きさに粉砕する破砕刃127が設けられる」(本件明細書【0027】)との説明があるだけで,具体的な大きさや粉砕性能は開示されておらず,また,モーターの回転速度に関する記述もない。 (イ) 粉砕時間と待機時間が不明確であること 本件発明においては,粉砕時間と待機時間とに幅を持たせているところ,この時間の幅は,おかゆの原料や量により変動するものと想像されるが,本件明細書には,当業者が粉砕や待機の時間を選定するための情報はない。また,本件発明の実施例には,おかゆ原料の種類や量はおろか,水の量の記載すらない。 23 (原告の主張) ア 明確性要件違反について (ア) 構成要件B「設定された待機時間」について 上記のとおり,本件発明は,「家庭用おかゆ調理器を用いたおかゆの調理方法」であって,家庭用おかゆ調理器を用いる以上,各調理器には「設定された待機時間」が存在するため,本件発明では,その家庭用おかゆ調理器に「設定された待機時間」に従ってふやかし段階を行うことは明らかである。 したがって,当該特許請求の範囲の記載は不明確ではない。 (イ) 構成要件D「ヒーターの作動時間をカウントすると共にヒーターの作動を制御するヒーター制御段階」について おかゆの調理のために,おかゆの原料をどの程度加熱するのかは重要であるが,「ヒーターの作動時間」は,最初の水の温度によって当然に変わるものであり,通常,ヒーターはおかゆ調理器内の水の温度が設定された温度に達するまで作動するのは明らかである(例えば本件明細書【0051】等を参照)。 したがって,当該特許請求の範囲の記載は不明確ではない。 (ウ) 構成要件E「設定された時間が経過されるまで待機時間を維持する」について 本件発明の目的は,短時間でおかゆを調理することであり,おかゆを美味しく調理することではなく,構成要件Eの待機段階の時間は重要な構成ではない。さらに,本件発明は,「家庭用おかゆ調理器を用いたおかゆの調理方法」であって,家庭用おかゆ調理器を用いる以上,各調理器には当然に「設定された待機時間」が存在するため,本件発明では,その家庭用おかゆ調理器に「設定された待機時間」に従ってふやかし段階を行うことは明らかである。 したがって,当該特許請求の範囲の記載は不明確ではない。 イ 実施可能要件違反について (ア) 「粉砕段階」について 24 本件発明は,「家庭用おかゆ調理器を用いたおかゆの調理方法」であって,家庭用おかゆ調理器の粉砕刃の大きさやモーターの回転速度には大きな差はなく,粉砕性能は概ね同等である。本件明細書に具体的な粉砕刃の大きさ等の記載がなくとも,当業者に試行錯誤を強いることはない。 (イ) 粉砕時間と待機時間について 本件発明は,「家庭用おかゆ調理器を用いたおかゆの調理方法」であって,家庭用おかゆ調理器を用いる以上,おかゆの原料及び量の範囲は必然的に決まる。当然に,おかゆの原料及び量の違いで多少の差異は生じるが,本件発明では,粉砕時間及び待機時間はある程度の幅を持って規定されており,当業者は過度の試行錯誤の必要がなく,それらの時間の調整が可能である。 (6) 損害額 (原告の主張) ア 被告製品の販売数 (ア) 被告らは,共同して,平成26年9月19日以降現在まで,少なくとも1062個(月平均112.5個)の被告製品を販売した。 (イ) 被告ラオックスは,単独で,平成26年9月19日以降現在まで,少なくとも118個(月平均12.5個)の被告製品を販売した。 イ 被告らの売上高 (ア) 被告製品の販売額は,少なくとも1個1万8857円(税抜き)であるから,被告らの上記ア(ア)の販売による売上高は,少なくとも2002万6134円を下回らない。 (イ) 被告製品の販売額は,少なくとも1個1万8857円(税抜き)であるから,被告ラオックス単独の上記ア(イ)の販売による売上高は少なくとも222万5126円を下回らない。 ウ 相当実施料率 本件発明の実施に対する相当な実施料率は,小売価格の5%を下回るものではな 25い。 エ 損害額 以上により,上記ア(ア)の被告らの本件特許権侵害行為により原告の受けた損害の額は100万1307円を下回らない。 また,原告は上記ア(イ)の被告ラオックス単独の本件特許権侵害行為により原告の受けた損害の額は11万1256円を下回らない。 オ 弁護士費用 被告らに対する本件訴訟追行に当たって相当な弁護士費用は,120万円を下回らない。 (被告らの主張) 原告の主張は否認ないし争う。 |
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当裁判所の判断
1 争点(1)(被告方法は,本件発明の技術的範囲に属するか(文言侵害の成否))について (1) 被告方法は,少なくとも構成要件F,Gを充足しないことが明らかであるので,本件発明の技術的範囲に属するものとは認められない。 (2) すなわち,構成要件F,Gは,「前記待機段階の以降,制御部においてモーターに電源を印加してモーターの回転軸に設けられた粉砕刃を用いておかゆの原料を約15〜25秒間粉砕し,約2分ほどの待機時間を有する第1の粉砕段階と;」(構成要件F),「前記第1の粉砕段階の以降,約15〜25秒間モーターを作動しておかゆの原料を粉砕し,約5〜15秒間の待機時間を繰り返して約4〜6回行う第2の粉砕段階と」(構成要件G)というものであり,いずれも,ある程度調理が進んだおかゆの原料を,粉砕刃を用いてする粉砕と待機を繰り返す工程であるが,他の待機時間より明らかに長時間の「約2分ほど」の待機時間によって,第1の粉砕段階と第2の粉砕段階が区別されているものである。そして第1の粉砕段階である構成要件Fでは,粉砕と待機の回数に触れられていないのに対し,構成要件Gでは, 26粉砕と待機が「4〜6回行う」とされていることからすると,第1の粉砕段階である構成要件Fでは,所定の時間の粉砕と所定の時間の待機が1回だけ行われているものと解すべきものである。 これに対し,原告主張に係る被告方法の構成fは,「待機段階以降,粉砕刃を用いて,13〜16秒の粉砕と3〜17秒の待機又は加温とを4回繰り返して,おかゆの原料を粉砕し,その後,約3分の待機又は加温時間を有する第1の粉砕段階」というものであり,長時間の待機時間(約3分)により第2の粉砕段階と区別されるものであるが,待機時間が所定時間を超過する点をさておいても,本件発明では1回だけと規定された粉砕工程が,短時間の粉砕と待機を4回繰り返されるという点で,構成要件Fと明らかに異なっているものである。 このことは,米90グラムと水600ミリリットルを急速豆乳モードで調理するという具体的条件下での試験結果(甲12,甲15)に基づき,原告主張に係る被告方法を具体化した被告方法@,Aであっても同様であって(被告方法@につき工程8ないし25,被告方法Aにつき工程8ないし23),結局,被告方法は,構成要件Fを充足しないというほかない。 なお,第1の粉砕段階と第2の粉砕段階を区切る前の粉砕時間中の待機時間を無視できるとしても,その場合だと,被告方法@では粉砕の合計時間が57秒,被告方法Aでは粉砕の合計時間が57秒となり,いずれも構成要件Fの設定時間である「約15〜25秒間」の粉砕時間を大幅に超えることが明らかであるから,これを実質的に同一の粉砕と見ることは到底できない。 (3) また原告主張に係る被告方法の構成gは,「第1の粉砕段階の後,15〜40秒の粉砕と,9〜20秒の待機とを5回繰り返す第2の粉砕段階」というものであるが,粉砕と待機を繰り返す回数は,構成要件Gの要件を充足するものであるものの,粉砕時間は「15〜25秒間」とされた構成要件Gの要件を超過するものであり,また待機時間も「約5〜15秒間」とされた構成要件Gの要件を超過するものである。 27 そして,このことは,米90グラムと水600ミリリットルを急速豆乳モードで調理するという具体的条件下での試験結果(甲12,甲15)に基づき,原告主張に係る被告方法を具体化した被告方法@,Aであっても同様であって,その粉砕時間及び待機時間をみると,別紙のとおり,被告方法@には,40秒の粉砕が2回,17秒の待機が1回,20秒の待機が1回含まれており,被告方法Aには,42秒の粉砕が2回,17秒の待機が1回,20秒の待機が1回含まれており,いずれも構成要件Gにおいて設定された時間である「約15〜25秒間」の粉砕時間及び「5〜15秒間の待機時間」を上回る粉砕及び待機が行われており,いずれにせよ,被告方法は,構成要件Gを充足しないというほかない。 (4) 原告は,被告方法と本件発明の構成要件F,Gとの前記差異につき,実質的同一である旨主張し,本件明細書【0055】に「ここで,前記加熱段階(段階:S610)と前記第1,2次粉砕段階(段階:S622,S624)とは,おかゆの原料に応じてその作動の手順の前後が変わったり,繰り返して行われることもある。」との記載がある点を指摘する。 しかし,本件発明の各構成要件の時間的前後関係を規定した文言を素直に理解する限り,加熱段階(構成要件C)は,ヒーターの制御段階(構成要件D),待機段階(構成要件E)と連続した一体の動作であり,また第1の粉砕段階(構成要件F)と第2の粉砕段階(構成要件G)も連続した一体の動作であると理解されるから,上記の実施例に関する記載は,加熱段階に関連する動作と,粉砕段階における動作をそれぞれ一かたまりの動作として,その「前後が変わったり,繰り返して行われること」ができる旨を明らかにしたものにすぎず,この記載を手掛かりとして,構成要件F,Gとして,所定の時間及び回数を定めて一かたまりの動作として特定した粉砕段階における動作内容が,被告方法のように変更できると解される余地はなく,したがって,被告方法が本件発明と実質的に同一であるとする原告の主張は失当である。 また原告は,第2の粉砕段階では,材料を細かく粉砕することを目的としている 28ことから,その目的に資するためなら粉砕時間及び待機時間が構成要件Gにおいて指定された粉砕及び待機時間と異なっても,実質的に同一であると主張するが,後記2(3)でも論じるように,もともとおかゆの調理方法として,粉砕や加熱の動作を適宜組み合わせることは周知であり(本件明細書【0005】),そのなかで本件発明は,各動作段階における数値及び各動作段階を組み合わせた一連の流れを特定したものにつき特許を受けたものであるから,本件発明で特定された,加熱,粉砕,待機の具体的な時間設定や順序こそがその本質的部分というべきであり,これと異なる順序,時間,回数を経る調理方法が本件発明と実質的に同一であると解する余地はない。 2 争点(2)(被告方法は,本件発明の技術的範囲に属するか(均等侵害の成否))について (1) 特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品又は用いる方法(以下,「対象製品等」という。)の構成と異なる部分が存在する場合であっても,@その部分が当該発明の本質的部分ではなく(第1要件),Aその部分を対象製品等におけるものと置き換えても,当該発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであって(第2要件),Bそのように置き換えることに当業者が対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり(第3要件),C対象製品等が当該発明の出願時における公知技術と同一又は当業者がその出願時に容易に推考できたものでなく(第4要件),D対象製品等が考案の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないとき(第5要件)は,当該対象製品等は,当該特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,その技術的範囲に属すると解される。 (2) 被告方法は,上記1(2),(3)のとおり,第1の粉砕段階では,おかゆの原料の粉砕及び待機は各1回行うこととされている構成要件Fと異なり,おかゆの原料の粉砕と待機とが繰り返し行われ,その結果,構成要件Fの設定時間である「約15〜25秒間」の粉砕と,「約2分ほどの待機時間」の範囲から大きく外れるもの 29となっており,また「約15〜25秒間」の粉砕時間及び「5〜15秒間の待機時間」とされている構成要件Gと異なり,これを上回る粉砕及び待機動作が行われているもので,少なくともこれらの点で本件発明の構成と異なっている。 原告は,以上の相違点を前提に均等侵害の主張をしているが,次に述べるとおり,被告方法の本件発明とのこの相違点は,本件発明と本質的部分における相違点であるというべきであるから均等侵害が認められるための第1要件を充足せず,均等侵害をいう原告の主張はその余の点に及ぶまでもなく理由がないというべきである。 (3) すなわち均等侵害が認められるためには,本件発明と被告方法の構成に異なる部分が存在する場合であっても,その部分が本件発明の本質的部分ではないことが要件となるところ,ここでいう特許発明における本質的部分とは,当該特許発明の特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解すべきであり,上記本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載に基づいて,特許発明の課題及び解決手段(特許法36条4項,特許法施行規則24条の2参照)とその効果(目的及び構成とその効果。平成6年法律第116号による改正前の特許法36条4項参照)を把握した上で,特許発明の特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が何であるかを確定することによって認定されるべきである(知財高裁平成28年3月25日特別部判決)。 (4) 本件明細書には,次の記載がある。 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は,おかゆ調理器に係り,家庭でもおかゆを調理できるようにおかゆの原材料である米などの各種の穀物と各種の野菜を粉砕する粉砕手段および加熱手段を一体に形成してより便利におかゆを炊くことのできる,家庭用おかゆ調理器およびそれを用いたおかゆの調理方法に関する。 30 【0005】 以下,従来のおかゆの作り方を簡単に説明する。まず,穀物の約6〜7倍程度の水を入れて加熱し,穀物がパラパラとするように沸かすのが特徴であり,緑豆,小豆などを煮込んでからふるいで瀘し,得られたろ液に米を入れて炊いたり,豆をゆでて粉末にした後,これもふるいで瀘し,得られたろ液に同じく米を入れて炊く。 また,各種の果実粥は実をきれいに砕いて米粉と交ぜて水に溶いて炊く。肉粥は肉を切り刻んで味付けして炒めながら水と米とを入れて炊いたり,予めじっくり煮込んだおつゆに米を入れて肉を細かく取り離して入れて炊く。 【0006】 しかし,このような従来のおかゆの調理方法は,穀物または野菜などの材料をふやかすのに相当の時間が所要され,また,おかゆを炊くときにおかゆが焦げ付かないようにするためには継続して掻きまぜなければならなかったという不便な点があった。なお,穀物をふやかす時間を間違えて調節したり,水の量を間違えて調節した場合は,おかゆの元々の味が出ないという問題点があった。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 したがって,本発明の目的は,おかゆを調理するときに,より簡便で便利におかゆを調理できるようにし,従来のおかゆの調理方法に比べ,おかゆの調理時間を短縮することができる,家庭用おかゆ調理器およびそれを用いたおかゆの調理方法を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明の実施例によると,所定量の水およびおかゆの原料が投入され,上側が開放された円柱状に形成され,一側に移動のための容器取っ手が設けられ,上側開口部の両端にフック装置が設けられる容器部と; 前記容器部の上側開口部に対応す 31る形状でその下面が形成され,外側両端にフック装置に対応する位置にフック装置によって加圧されるフック受け金具が形成され,下面に容器部の内側に挿入されるように回転軸の端部に粉砕刃が設けられたモーターが内設され,前記粉砕刃の外側には水を加熱するヒーターが設けられ,内側にはモーターおよびヒーターを制御する制御部を備える駆動部と; が設けられた家庭用おかゆ調理器が提供される。 【0010】 又,前記駆動部は,下面が開放されて上側に段差が形成された半球状の外形を形成し,上面に駆動部を移動させるための取っ手が形成され,内側に制御部が装着され,外側に制御部を調節する調節パネルと,制御部,モーターおよびヒーターに電源を供給する電源供給部とが形成された上部ハウジングと; 前記上部ハウジングの下部開放側の形状に対応する形状で上面が開放され,下側に段差部を形成し突出してモーターが装着される円柱状のモーター装着部が形成され,前記モーター装着部にモーターの回転軸が下向きに延長されて設けられる下部ハウジングと; で構成される 。 【0015】 このようなおかゆ調理器の前記調節パネルを操作しておかゆ調理器を作動させることにより,前記制御部で容器部内における水の有無を感知し,水があれば次段階に進み,水がない場合は警告音を鳴らして初期段階に転換される感知段階と;前記感知段階の後,前記水の温度を測定し,水の温度が設定された温度以上である場合は,設定された待機時間を有するふやかし段階と;前記感知段階において容器部内に水がある場合,電源供給部に供給されるヒーターに印加して水を加熱する加熱段階と;前記ヒーターが作動されることによってお湯が沸きながら発生する泡と,水の温度を感知して前記制御部に伝送し,前記制御部はヒーターの作動時間をカウントすると共にヒーターの作動を制御するヒーター制御段階と;前記ヒーター制御段階の以降,ヒーターの作動が終了した後に,設定された時間が経過されるまで待機状態を維持する待機段階と;前記待機段階の以降,制御部においてモーターに電源 32を印加してモーターの回転軸に設けられた粉砕刃を用いておかゆの原料を約15〜25秒間粉砕し,約2分ほどの待機時間を有する第1の粉砕段階と;前記第1の粉砕段階の以降,約15〜25秒間モーターを作動しておかゆの原料を粉砕し,約5〜15秒間の待機時間を繰り返して約4〜6回行う第2の粉砕段階と;前記第2の粉砕段階の以降,粉砕されたおかゆの原料が熟成するように約4〜5分の待機時間を有する熟成段階と;を備える家庭用おかゆ調理器を用いたおかゆの調理方法が提供される。 【発明の効果】 【0017】 本発明によれば,家庭でおかゆを炊くときに,より簡便で便利におかゆを調理することができ,従来のおかゆの調理方法に比べておかゆの調理時間を短縮することのできる,家庭用おかゆ調理器が提供される。 (5) 本件発明の上記課題及び解決手段とその効果に照らすと,本件発明は,本件特許の特許請求の範囲請求項1の発明に係るおかゆ調理器を用いたおかゆの調理方法として,「粉砕段階」,「加熱段階」を含む複数の動作段階を設定し,それら動作段階の一部についてはその順序,時間,回数等を具体的に指定し,穀物の粉砕手段及び加熱手段を一体化した組合せとすることにより,通常のおかゆの調理方法において時間を要していたふやかしの時間及び全体の調理時間の短縮を図り,また,通常の調理方法においてはかきまぜの継続によって解消していたおかゆの焦げ付きも防止するなど,より簡便,迅速に本来の風味を有するおかゆの調理ができるようにしたものであると認められる。 ところでおかゆの調理方法として,加熱や粉砕の動作を適宜組合せることは,周知であるから(本件明細書の【0005】),本件特許の特許請求の範囲請求項1の発明に係るおかゆ調理器を用いたおかゆの調理方法である本件発明における本質的部分とは,調理方法を決定するところの「粉砕段階」,「加熱段階」,「待機段階」という一連の動作段階の設定,及び各動作段階において具体的に規定された粉 33砕及び加熱の動作並びに待機の順序,各動作及び待機の時間,各動作及び待機の回数等を一体化した組合せそのものにあると認められる。 (6) これに対し,被告方法は,既述のとおり,少なくとも,その第1及び第2の粉砕段階において,本件発明の構成要件として規定された粉砕と待機とは異なる時間,回数の粉砕と待機がなされるものであるから,動作等の組合せにおいて,本件発明の一体化した組合せとは異なっており,この相違部分は本件発明の本質的部分に存するものといわなければならない, したがって,被告方法は,均等の第1要件を充足するとは認められない。 4 以上によれば,被告方法は,文言侵害,均等侵害のいずれの観点で検討してみても本件発明の技術的範囲に属するとは認められないから,原告の被告らに対する請求は,その余の点につき検討するまでもなくいずれも理由がないというべきである。 よって,原告の請求をいずれも棄却することとし,訴訟費用の負担について民事訴訟法61条を適用して主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 森崎英二 |
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裁判官 | 田原美奈子 |