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事件 |
平成
27年
(行ケ)
10259号
審決取消請求事件
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原告X 被告美和ロック株式会社 同訴訟代理人弁理士 三浦光康 栢原崇行 皆川由佳 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2016/09/28 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求
特許庁が無効2015-800032号事件について平成27年11月25日にした審決を取り消す。 |
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事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等 ? 被告は,平成14年8月5日(優先権主張:平成13年10月15日,日本国)発明の名称を , 「ロータリーディスクタンブラー錠及び鍵」とする特許出願をし,平成19年9月7日,設定の登録を受けた(特許第4008302号。請求項の数3。甲27。以下,この特許を「本件特許」という。。 ) ? 被告は,平成23年10月27日,訂正審判を請求し,特許庁は,これを,訂正2011-390118号事件として審理した。特許庁は,同年12月20日,上記請求を認めるとの審決をし,同審決は,確定した(以下「本件訂正」という。 甲28)。 ? 原告は,平成27年2月20日,本件特許の特許請求の範囲請求項2に係る発明について特許無効審判を請求した。 ? 特許庁は,上記審判請求を無効2015-800032号事件として審理し,平成27年11月25日, 「本件審判の請求は,成り立たない。 との別紙審決書 」 (写し)記載の審決(以下「本件審決」という。)をし,同年12月3日,その謄本が原告に送達された。 ? 原告は,平成27年12月28日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。 2 特許請求の範囲の記載 本件訂正後の特許請求の範囲請求項2の記載は,次のとおりのものである(甲28)。以下,この請求項に記載された発明を「本件発明」といい,その明細書(甲27,28)を「本件明細書」という。 【請求項2】内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外筒と,この外筒に回転自在に嵌合し,間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に,中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた内筒と,この内筒の母線に沿って延在し,内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に,上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し,上記仕切板の間の各スロットに,中央部に前記内筒の中心軸線に関して点対称に形成された鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔26を形成した環状ロータリーディスクタンブラーを挿設し,その実体部の1ヵ所を,内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に,鍵挿通孔を挟んで上記支軸と対峙するロータリーディスクタンブラーの実体部であり,円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成し,一方,鍵挿通孔の開口端縁に,先端の移動軌跡が鍵孔に挿入されたリバーシブルである合鍵のブレードの平面部と干渉する係合突起を一体に突設し,各ロータリーディスクタンブラーをこの係合突起が合鍵に近接する方向に付勢すると共に,常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止し,他方,これらのタンブラー群の係合突起の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにしたロータリーディスクタンブラー錠の合鍵であって,鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの突出量が一定である前記係合突起の先端と整合するブレードの平面部に,有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪みを形成し,この窪みが対応する前記係合突起と係合したとき,該タンブラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし,以て,合鍵と一体的に内筒を回動させたさせたとき(判決注:ママ),カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ,内筒を外筒に対し相対回動できるようにしたことを特徴とするロータリーディスクタンブラー錠用の鍵。 3 本件審決の理由の要旨 ? 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。要するに,本件発明は,@下記アの引用例1に記載された発明(以下「引用発明1」という。)並びに下記イ,エからカ及びクの引用例ないし周知例に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない,A下記イの引用例2に記載された発明(以下「引用発明2」という。)並びに下記ア,ウ及びカからツの引用例ないし周知例に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない,B下記ウの引用例3に記載された発明(以下「引用発明3」という。)並びに下記ア,イ,エからシ,セ及びソの引用例ないし周知例に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない,としたものである。 ア 引用例1(甲1):英国特許出願公告第1417054号明細書 イ 引用例2(甲2):特開平9-144398号公報 ウ 引用例3(甲5):米国特許第3928992号明細書 エ 周知例1(甲3)実願昭54-27530号 : (実開昭55-128848号)のマイクロフィルム オ 周知例2(甲4):特公昭60-6432号公報 カ 周知例3(甲6):実公平6-28616号公報 キ 周知例4(甲7):実公昭55-32998号公報 ク 周知例5(甲8):意匠登録第965697号公報 ケ 周知例6(甲9):意匠登録第1110356号公報 コ 周知例7(甲10) :実願昭57-149628号(実開昭59-51958号)のマイクロフィルム サ 周知例8(甲11) :実願平4-89007号(実開平6-51443号)のCD-ROM シ 周知例9(甲12):実公昭51-15730号公報 ス 周知例10(甲13):特開2000-96889号公報 セ 周知例11(甲14):特開昭62-194374号公報 ソ 周知例12(甲15):実願平5-42779号(実開平7-14041号)のCD-ROM タ 周知例13(甲16):特開昭62-189269号公報 チ 周知例14(甲17):特開平6-346639号公報 ツ 周知例15(甲18):特開平9-41742号公報 ? 本件審決が認定した引用発明1から3は,次のとおりである。なお,文中の「/」は,原文の改行箇所を示す(以下,同じ。。 ) ア 引用発明1 その壁の長手方向に延びるリセス11を有する実質的に円筒形の空洞を形成するボディ10と,空洞を占める中空の略円筒状でその壁の長手方向に延びるスロットを有するバレル13と,バレル13とボディ10との相対的な回転方向運動を防ぐために通常はリセス11とスロットを専有する長手方向に延びるロッキングバー14と,リセス11内にロッキングバー14を引き込む手段と,バレル13内に配置されている複数の円盤状のセキュリティ・メンバー21と,バレル13と各メンバー21の相対的な回転方向運動を制限する停止手段と,バレル13内での各メンバー21の回転方向運動の一つのリミットに向けて各メンバー21を付勢する弾性手段とからなり,各メンバー21には中央開口があり,その中に鍵16のシャンクの側壁の窪み25内に係合するための実質的に円周方向に延びる突起24を有し,各メンバー21はまた,その実体部であり,円弧の一部をなす外周縁に,突起24が鍵16の適切な深さの窪み25に係合すると,バレル13内のスロットに位置合わせされるノッチ21bを有し,このような配置において,適切な鍵16がすべてのメンバー21の中央開口を通して正しく挿入されると弾性手段の影響を受けて突起24はすべて,適切な深さの窪み25に係合され,複数のメンバー21のノッチ21bとバレル13のスロットは位置合わせされ,回転方向運動が鍵16に付与されるとロッキングバー14はボディ10のリセス11からバレル13のスロットと複数メンバー21の複数のノッチ21bの収納されるべき位置に移動し,バレル13とメンバー21がボディ10に対して角度移動可能となり,/リセス11の壁は,ベルマウス開口部を形成するように傾斜又は湾曲しており,/バレル13の前面には,矩形の開口15があり,これを通して,鍵16の対応する矩形のシャンクを挿入することができ,/複数の円盤状のセキュリティ・メンバー21の各々は,等しい数のキャリア22のーつと組み合わせられ,/各キャリア22は,組み合わされたメンバー21がその周りを回転方向に移動可能であるように,切欠き部分のある中空のボス22aを持っており,/各キャリア22は,鍵16のシャンクを受け入れるのに適した形状の開口23を持っており,開口23はバレル13の中心軸に沿って貫通し,中心軸に関して点対称に形成されており,/各セキュリティ・メンバー21は,その組み合わされるキャリア22のボス部22aの周りに軸支される中央開口を有している鍵操作可能な錠に用いる鍵16であって,/鍵16のシャンクには,周囲を傾斜面で囲まれた円形の底面を有し,大きさの異なる複数の窪み25が設けられ,/窪み25は,3つの深さを選択できるようになっており,/正しい鍵16が錠の中に挿入されたときには,各セキュリティ・メンバー21のノッチ21bは,そのキャリア22のスロット22cに整列する鍵16 イ 引用発明2 内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝21を形成した外筒22と,/この外筒22に回転自在に嵌合し,間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板23を設けると共に,中心軸線に沿って鍵孔24を貫通させた内筒部25と,/この内筒部25の母線に沿って延在し,内筒部25の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に,上記カム溝21と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバー27とを有し,/上記仕切板23の間の各スロットに,中央部に点対称に形成された鍵孔24を包囲し得る大きさの鍵挿通切欠を形成したC字状のレバータンブラー29を挿設し,/その実体部の1ヵ所を,内筒部25を軸線方向に貫通する支軸31に揺動可能に軸支すると共に,鍵挿通切欠を挟んで上記支軸31と対峙するレバータンブラー29の実体部であり,円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠き28を形成し,/一方,鍵挿通切欠の開口端縁に,先端の移動軌跡が鍵孔24に挿入されたリバーシブルである合鍵のキー本体12の端縁部と干渉する係合縁部を設け,/各レバータンブラー29をこの係合縁部が合鍵に近接する方向にタンブラーばね32で付勢すると共に,常態では内筒部25を軸線方向に貫通するバックアップピン33に係止し,/他方,これらのレバータンブラー29群の係合縁部の夫々が鍵孔24に挿通された合鍵のキー本体12の端縁部に谷の底部3,3aを内に凸の曲面の傾斜面として形成された刻みと係合したとき,当該刻みに対応して各レバータンブラー29の揺動角度が変わって解錠切欠き28がロッキングバー27の内側縁と整合するようにしたレバータンブラー錠用の合鍵であって,/鍵孔24に挿入されたときレバータンブラー29の係合縁部と整合するキー本体12の部位に,谷の底部3,3aを内に凸の曲面の傾斜面として形成された刻みを形成し,この刻みが係合縁部と係合したとき,各レバータンブラー29の解錠切欠き28がロッキングバー27の内側縁と整合するようにし,/以て,合鍵と一体的に内筒部25を回動させたとき,カム溝21とロッキングバー27との間に生じる楔作用によりロッキングバー27を内筒部25中心軸方向に移動させ,内筒部25を外筒22に対し相対回動できるようにしたレバータンブラー錠用の鍵 ウ 引用発明3 それを貫通する実質的に筒状の穴を有する外側ハウジング14,その中に実質的に筒状の穴を有し,前記外側ハウジング14の前記穴で受けられる前記外側ハウジング14に対して回転可能なロックシリンダー16,ロックシリンダー16の穴に受け入れられて,それに対して回転可能であるスペーサ60によって分離された複数のロッキングディスク58,及びロッキングバー40を含み,/外側ハウジング14には,縦に延びるリセス42が設けられ,リセス42は,ロックシリンダー16の回転でロッキングバー40に係合するカム表面を形成する傾斜した壁52を有し,/ロックシリンダー16には,縦のスロット44が設けられ,錠を作動させるために鍵を受け入れるための鍵穴24が中心軸線に沿って貫通されて設けられ,/各ロッキングディスク58は,複数のゲイティングノッチ50及び鍵のシャンクを受け入れるための中央に形成された開口74を有しており,鍵が直線的に錠に挿入されるときに鍵と係合するために面取りされた表面78を有し,突出量が一定である突起76が前記開口74内へ実質的に半径の方向に延び,/ロッキングディスク58の周囲に形成した第2の肩72が,ロックシリンダー16の周辺に設けられたリセス70に受け入れられた縦に延びるサポートメンバー68に接触しており,鍵の挿入の前に,お互いに対してディスクの整列を引き起こし,/スプリング62は,各々のロッキングディスク58の突起76を鍵に近接する方向に付勢し,/ロッキングバー40は,リセス42のベース48の中に取り付けられた永久磁石46によって,引き付けられ,ロッキングバー40が,通常,リセス42を占めて縦のスロット44内に延び,ロックシリンダー16を外側ハウジング14に連結して,ロックシリンダー16の回転を防ぎ,/前記突起76の面取りされた表面78は,鍵のシャンクが開口74に挿入されたときに,ロッキングディスク58とカム係合し,ロッキングディスク58の回転を引き起こし,/適切な鍵が錠10に差し込まれたとき,各ゲイティングノッチ50は,他の全てのゲイティングノッチ50に対して整列し,鍵が回されると,ロッキングバー40は,リセス42から,縦のスロット44に整列した複数のゲイティングノッチ50の中へとカム案内され,ロックシリンダー16を,複数のロッキングディスク58と共に,外側ハウジング14に対して回転させる,錠10に用いられる鍵であって,/シャンク上に有底の擂り鉢形の窪み82を有し,窪み82は異なった深さと大きさを有しており,鍵が錠10に完全に挿入されたときにロッキングディスク58上の突起76と場所が一致するように,鍵のシャンクの上に間をおいて配置され,各窪み82の深さは,ロックシリンダー16に対して,ロッキングディスク58の異なった角運動をもたらし,その結果,ロッキングディスク58外周のゲイティングノッチ50の位置は,突起76に係合することになっている窪み82の深さによって決定される鍵 ? 本件発明と引用発明1との一致点及び相違点 ア 一致点 内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外筒と,/この外筒に回転自在に嵌合し,間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に,中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた内筒と,/この内筒の母線に沿って延在し,内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に,上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し, /上記仕切板の間の各スロットに,中央部に前記内筒の中心軸線に関して点対称に形成された鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔26を形成した環状ロータリーディスクタンブラーを挿設し,/環状ロータリーディスクタンブラーの実体部であり,円弧の一部をなす外周縁に解錠切欠を形成し,/一方,鍵挿通孔の開口端縁に,先端の移動軌跡が鍵孔に挿入された合鍵のブレードの平面部と干渉する係合突起を一体に突設し,各ロータリーディスクタンブラーをこの係合突起が合鍵に近接する方向に付勢すると共に,各ロータリーディスクタンブラーの回転方向運動を制限し,/他方,これらのタンブラー群の係合突起の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにしたロータリーディスクタンブラー錠の合鍵であって,/鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの前記係合突起の先端と整合するブレードの平面部に,有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪みを形成し,/この窪みが対応する前記係合突起と係合したとき,該タンブラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さに対応して回動角度が変わることにより,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし,/以て,合鍵と一体的に内筒を回動させたとき,カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ,内筒を外筒に対し相対回動できるようにしたロータリーディスクタンブラー錠用の鍵である点 イ 相違点1 環状ロータリーディスクタンブラーの回動機構並びに回動軸と係合突起及び解錠切欠の突設位置に関し,@本件発明においては,環状ロータリーディスクタンブラーの実体部の1か所を,内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支するとともに,鍵挿通孔の開口端縁に合鍵のブレードの平面部と干渉する係合突起を一体に突設し,鍵挿通孔を挟んで支軸と対峙するロータリーディスクタンブラーの実体部であり,円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成したのに対し,A引用発明1においては,セキュリティ・メンバー21は,その組み合わされるキャリア22のボス部22aの周りに回転方向に移動可能に軸支される中央開口を有し,中央開口の中に鍵16のシャンクの側壁の窪み25内に係合するための実質的に円周方向に延びる突起24を有し,セキュリティ・メンバー21の実体部であり,円弧の一部をなす外周縁にノッチ21bを有する点 ウ 相違点2 環状ロータリーディスクタンブラーの回転方向運動を制限する手段に関し,@本件発明においては,各環状ロータリーディスクタンブラーを,常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止するのに対し,A引用発明1においては,具体的な構成が不明である点 エ 相違点3 合鍵の構造に関し,本件発明においては,リバーシブルであるのに対し,引用発明1においては,リバーシブルであるか否か不明である点 オ 相違点4 合鍵の窪みに関し,本件発明においては,窪みは,ロータリーディスクタンブラーの突出量が一定である係合突起と係合したとき,タンブラー群が窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わるものであるのに対し,引用発明1においては,窪み25は,突起24が係合したとき,各セキュリティ・メンバー21が窪みの深さに対応して回動角度が変わるものである点 カ なお,本件審決は,相違点1及び4につき,鍵の構成として,「鍵の窪みの深さとブレードの幅方向の位置が,本件発明においては,係合突起と係合する窪みの位置と深さは,支軸を中心とする円弧に沿ったものであるのに対し,引用発明1においては,鍵のシャンクに設けられた複数の窪み25のシャンクの幅方向の位置と深さの関係が不明である点」(以下「相違点A」という。)と言い換えることができるとした。 ? 本件発明と引用発明2との一致点及び相違点 ア 一致点 内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外筒と,/この外筒に回転自在に嵌合し,間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に,中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた内筒と,/この内筒の母線に沿って延在し,内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に,上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し,/上記仕切板の間の各スロットに,中央部に点対称に形成された鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通部を形成したロータリータンブラーを挿設し,/その実体部の1ヵ所を,内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に,鍵挿通部を挟んで上記支軸と対峙するロータリータンブラーの実体部であり,円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成し,/一方,鍵挿通部の開口端縁に,先端の移動軌跡が鍵孔に挿入されたリバーシブルである合鍵のブレードと干渉する係合部を一体的に突設し,/各ロータリータンブラーをこの係合部が合鍵に近接する方向に付勢すると共に,常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止し,/他方,これらのタンブラー群の係合部の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき,各ロータリータンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにしたロータリータンブラー錠の合鍵であって,/鍵孔に挿入されたときロータリータンブラーの係合部と整合するブレードに対応する窪みを形成し,この窪みが対応する係合部と係合したとき,各ロータリータンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし,/以て,合鍵と一体的に内筒を回動させたとき,カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ,内筒を外筒に対し相対回動できるようにした/ロータリータンブラー錠用の鍵である点 イ 相違点5 本件発明は,内筒の中心軸線に関して点対称に形成されている鍵孔を有する錠用の鍵であるのに対し,引用発明2は,そのような鍵孔を有しない錠用の鍵である点 ウ 相違点6 本件発明は,鍵挿通部が鍵挿通孔であって,この鍵挿通孔を中央部に形成したロータリータンブラーが環状ロータリーディスクタンブラーである錠用の鍵であるのに対して,引用発明2は,鍵挿通部が鍵挿通切欠であって,この鍵挿通切欠を中央部に形成したロータリータンブラーがC字状のレバータンブラーである錠用の鍵である点 エ 相違点7 ロータリータンブラーの解錠切欠とロッキングバーの内側縁とを整合させるための構成について,@本件発明においては,ロータリーディスクタンブラーの開口端縁に一体に突出量が一定に突設した係合突起の,その先端と,合鍵のブレード平面部に形成された有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪みとの係合により,タンブラー群が摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより上記整合を行うものであるのに対して,A引用発明2においては,C字状のレバータンブラーの開口端縁に一体に突設した係合縁部と,合鍵のブレードの端縁部と干渉して,当該端縁部に形成された対応する「キー本体12の端縁部に谷の底部3,3aを内に凸の曲面の傾斜面として形成された刻み」との係合により, 「当該刻みに対応して各レバータンブラー29の揺動角度が変わって」上記整合を行うものである点 オ なお,本件審決は,相違点7の本件発明に係る構成は,鍵としては,?「合鍵」の「ブレードの平面部に,有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪み」が形成されている,?さらに, 「ロータリーディスクタンブラー」の開口端縁に一体に「突出量が一定」に突設した「係合突起」の,その先端と係合する,合鍵のブレード「平面部」に形成された「有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪み」を有するから, 「鍵の窪みは,その深さとブレードの幅方向の位置が,揺動による円弧に沿ったものである」との構成と解され,引用発明2は,これらの構成を備えていない点において相違していると判断した。 ? 本件発明と引用発明3との一致点及び相違点 ア 一致点 内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外筒と,/この外筒に回転自在に嵌合し,間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に,中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた内筒と,/この内筒の母線に沿って延在し,内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に,上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し,/上記仕切板の間の各スロットに,中央部に鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔26を形成した環状ロータリーディスクタンブラーを挿設し,/環状ロータリーディスクタンブラーの外周に解錠切欠を形成し,/一方,鍵挿通孔の開口端縁に,先端の移動軌跡が鍵孔に挿入された合鍵のブレードの平面部と干渉する係合突起を一体に突設し,各ロータリーディスクタンブラーをこの係合突起が合鍵に近接する方向に付勢すると共に,常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止し,/他方,これらのタンブラー群の係合突起の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにしたロータリーディスクタンブラー錠の合鍵であって,/鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの突出量が一定である前記係合突起の先端と整合するブレードの平面部に,有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪みを形成し,/この窪みが対応する前記係合突起と係合したとき,該タンブラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さに対応して回動角度が変わることにより,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし,/以て,合鍵と一体的に内筒を回動させたとき,カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ,内筒を外筒に対し相対回動できるようにしたロータリーディスクタンブラー錠用の鍵である点 イ 相違点8 環状ロータリーディスクタンブラーの回動機構並びに回動軸と係合突起及び解錠切欠の突設位置に関し,@本件発明においては,環状ロータリーディスクタンブラーの実体部の1か所を,内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支するとともに,鍵挿通孔の開口端縁に合鍵のブレードの平面部と干渉する係合突起を一体に突設し,鍵挿通孔を挟んで支軸と対峙するロータリーディスクタンブラーの実体部であり,円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成したのに対し,A引用発明3においては,ロッキングディスク58は,ロックシリンダー16に対して回転可能であり,鍵と係合する突起76が,ロッキングディスク58の中央に形成された開口74内へ実質的に半径の方向に延び,ロッキングディスク58の外周にゲイティングノッチ50を有する点 ウ 相違点9 鍵穴の構成に関し,本件発明においては,内筒の中心軸線に対して点対称に形成されている鍵孔を有するのに対し,引用発明3においては,そのような構成を有するか否か不明である点 エ 相違点10 合鍵の構造に関し,本件発明においては,リバーシブルであるのに対し,引用発明3においては,リバーシブルであるか否か不明である点 オ 相違点11合鍵の窪みに関し,@本件発明においては,窪みが対応する係合突起と係合したとき,タンブラー群が摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わるのに対し,A引用発明3においては,窪み82が対応する突起76と係合したとき,ロッキングディスク58は,窪み82の深さに対応して回動角度が変わるが,窪み82のシャンクの幅方向の位置に対応して回動角度が変わるか否かは不明である点 カ なお,本件審決は,相違点8及び11につき,鍵の構成として, 「鍵の窪みの深さとブレードの幅方向の位置が,本件発明においては,係合突起と係合する窪みの位置と深さは,支軸を中心とする円弧に沿ったものであるのに対し,引用発明3においては,突起76と係合する窪み82の位置と深さは,ロックシリンダー16の中心軸線を中心とする円弧に沿ったものである点」(以下「相違点B」という。)と言い換えることができるとした。 4 取消事由 ? 引用発明1を主引用例とする容易想到性の判断の誤り(取消事由1) ? 引用発明2を主引用例とする容易想到性の判断の誤り(取消事由2) ? 引用発明3を主引用例とする容易想到性の判断の誤り(取消事由3) |
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当事者の主張
1 取消事由1(引用発明1を主引用例とする容易想到性の判断の誤り)について〔原告の主張〕 ? 相違点4の認定の誤りについて ア 本件発明のロータリーディスクタンブラーに相当する引用発明1のセキュリティ・メンバー21に設けられた突起24は,円軌跡を描くのであるから,それと係合する鍵16の窪み25の位置や具体的形態によっては,窪み25の深さや幅方向の位置に応じてセキュリティ メンバー21の回転角度は変わり得るものであり, ・この点においては,本件発明と同様である。したがって,本件審決が,本件発明においては,タンブラー群が窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わるものであるのに対し,引用発明1においては,各セキュリティ・メンバー21が窪みの深さに対応して回動角度が変わるものであると認定したことは,誤りである。 イ @引用例1がノッチ21bの角度方向位置を決定する要素として窪み25の深さのみを挙げていることから,その他の要素である突起24の突出量は一定である旨を読み取れること,Aタンブラー錠において錠違いを得る方法は,係合突起の突出量の変更又は解錠切欠の角度位置の変更のいずれかであり,引用例1においては,解錠切欠であるノッチ21bの角度位置を変えているのであるから,係合突起24の突出量は一定のままとしているものと解されることなどに鑑みれば,引用発明1の突起24の突出量も,本件発明の係合突起の突出量と同様に,一定である。 したがって,本件審決が,本件発明の係合突起の突出量が一定であることを,引用発明1との相違点として認定したことは,誤りである。 ? 相違点Aの認定の誤りについて ア 本件審決は,相違点Aの認定に当たり,本件発明につき,鍵の窪みの位置と深さが鍵のブレードの中心に寄るものほど深くなる旨を認定したが,これは,本件明細書の【図10】の実施例のみに妥当することである。本件明細書の【図13】においては,係合突起の回転軌跡が鍵幅の中心よりも支軸から遠い部位を通る場合は,窪みの深さが鍵の厚さの半分に至るまでは,鍵の幅方向の中心に近いものほど浅いものとなり,その深さが鍵の厚さの半分を超えると,鍵の幅方向の中心に近いものほど深いものとなる。係合突起の回転軌跡が鍵幅の中心よりも支軸に近い部位を通る場合は,窪みの深さが鍵の厚さの半分に至るまでは,鍵の幅方向の中心に近いものほど深くなり,窪みの深さが鍵の厚さの半分を超えると,鍵の幅方向の中心に近いものほど浅くなる。 イ 引用発明1の突起24の先端の回転軌跡と窪み25の位置についてみると,窪み25は,その深さが鍵16の厚さの半分に至るまでは,鍵の幅方向の中心に近いものほど浅いものとなり,その深さが鍵16の厚さの半分を超えると,鍵の幅方向の中心に近いものほど深いものとなる。よって,引用発明1においても,鍵16のシャンクに設けられた複数の窪み25の深さとシャンク幅方向(鍵の幅方向)の位置は,その中心をボス22aの中心とする円弧に沿うものということができ,相違点Aは,正しくは,鍵の窪みが沿う円弧の中心位置の相違にとどまる。 ? 相違点1及び4に係る容易想到性の判断の誤りについて ア 前記?イのとおり,相違点Aは,正しくは,鍵の窪みが沿う円弧の中心位置の相違にとどまるところ,本件発明は,鍵の発明であり,一般に,鍵の構成から鍵の窪みが沿う円弧の中心位置を知ることは困難なことであるから,本件発明の鍵と引用発明1の鍵とを区別することはできず,したがって,相違点Aは,実質的な相違点ではない。 イ 仮に,前記アの正しく認定した相違点Aが実質的な相違点であるとしても,本件特許出願当時,ロータリーディスクタンブラー錠において,中心回動式のタンブラー及び揺動式(振り子式)のタンブラーは,いずれも既に当業者間に周知されていたのであるから,引用発明1の中心回動式のタンブラーに代えて揺動式(振り子式)のタンブラーを採用することは,当業者が容易に行うことのできる設計変更にすぎない。 ウ 本件発明において,係合突起はロータリーディスクタンブラーの内側である鍵挿通孔の開口端縁,解錠切欠はロータリーディスクタンブラーの外側端縁にあり,係合突起と解錠切欠との位置関係は,引用発明1と同じである。よって,係合突起と解錠切欠との位置関係が異なることを理由の1つとして相違点1及び4が容易に想到できるものではないとした本件審決の判断は,誤りである。 エ 引用発明2において,合鍵のキー本体12の刻みは,本件発明に係る鍵のブレードの平面部に相当する平板面14にも彫り込むように形成されている。また,「干渉」とは, 「無理を押して入る」ことを意味するところ,引用発明2のレバータンブラー29の係合縁部は,前記のとおりキー本体12の平板面14に彫り込むように形成された刻みに「無理を押して入る」状態となっているから,キー本体の平面部と干渉するものということができる。そして,引用発明2の鍵には,谷の底部3,3aを内に凸の曲面とし,平板面14の両側に誘導斜面として形成された刻みがある。すなわち,引用発明2の鍵には,レバータンブラー29の係合縁部と干渉する平板面に刻みが形成されている。よって,本件審決が,原告において引用発明1に適用し得る周知技術の根拠の1つとして挙げた引用発明2の鍵につき,タンブラーに突設した係合突起と係合する窪みをブレードの平面部に形成したものではない旨認定し,これを理由の1つとして相違点1及び4が容易に想到できるものではないと判断したことは,誤りである。 〔被告の主張〕 ? 相違点4の認定の誤りについて ア 本件発明の揺動障害子27(ロータリーディスクタンブラー27)の揺動角度は,鍵の窪みの深さのみによって決まる引用発明1の回動障害子(セキュリティ・メンバー21)の回動角度とは異なり,鍵の窪みの大小及び形状並びに窪みの深さに対応するブレードの幅方向の位置によって決まるものであり,このことは,本件明細書の記載から明らかである。 イ 引用発明1の鍵の窪みがシャンクの一側面の上段側とその下段側にあるのは(FIG.7.参照),突起24の突出量を一定にして複数個の窪みに係合突起させることによってセキュリティ・メンバー21の回動角度を微妙に変化させるというよりは,むしろ,キャリア22の代替的な形態で示された位置に対して180度にセキュリティ・メンバー21を取り付けて,鍵の一側面の上段側の2つの窪み25のみならず,その反対側面である下段側の3つの窪み25にも係合させることによって,ピッキング対策(鍵違いの増大化)を図っているものと考えられる。 ? 相違点Aの認定の誤りについて ア 本件審決は,本件特許の特許請求の範囲請求項2記載の文言(技術的思想)をサポートする本件明細書の【図10】と引用発明1とを対比して両者の相違点を把握しているのであるから,何ら問題はない。 イ 引用例1のFIG.7.において,鍵の窪みの深さは,その幅方向中心(鍵厚の中心)を超えていない。本件審決は,鍵の側面図である引用例1のFIG.4.を見ても,窪み25のシャンク幅方向の位置と深さの関係は不明であることから,相違点Aのとおり判断したものと考えられる。 ? 相違点1及び4に係る容易想到性の判断の誤りについて 本件発明は,ロータリーディスクタンブラー錠用の鍵に関し,従来技術(引用発明2)においては,鍵溝を鍵のブレードの側端縁に形成するために形成箇所を多くすることができず,鍵違いの数にも限界があるという点を解決すべき課題として捉えたものである。他方,引用例1からは,錠本体の回動障害子であるセキュリティ・メンバー21の組合せ方法によって錠のピッキングを困難にするというような課題を見いだすことはできるものの,セキュリティ・メンバー21に代えて揺動障害子を採用する,鍵のブレードの平面部の窪みの深さや幅方向の位置に対応して,セキュリティ・メンバー21の回動角度を変えることによって鍵違いを大きくするという本件発明の課題を読み取ることはできない。よって,本件発明と引用発明1とは,課題において著しく相違する。 そして,本件発明は,支軸23に揺動自在に軸支された揺動障害子(各ロータリーディスクタンブラー)27を用いて従来技術の問題点を解決しようとするものであり,その基本的な解決原理は, 「支軸に軸支された振り子式」である。これに対し,引用発明1は,中心軸(ボス)22aに支承された回転する回動障害子(セキュリティー・メンバー)21を用いて発明の課題を解決しようとするものであり,その基本的な解決原理は, 「中心軸に支承された回動式」である。このように,本件発明と引用発明1とは,構成及び課題に対する基本的な解決原理においても相違する。 さらに,本件発明の鍵本体の窪みは,その深さに応じて中心位置が変化(横ずれ)しており,これにより,錠本体のタンブラー群(環状の揺動障害子)の揺動角度が,摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して変わることから,錠本体と組み合わせる合鍵は, (その中心位置を求める加工) 複製 が困難なものとなる。 他方,引用発明1の鍵においては,複数の窪みがブレードの挿入方向に芯出したように整然と二列に並んでおり,各窪み25は,各突起24の突出量(長さ)に対し,少なくとも各穴の芯は幅広の平面部の幅方向に変化(横ずれ)するように形成されていない。よって,各突起24の突出量(長さ)は,窪みの深さに適宜に対応するものとなる。このように,引用発明1の作用・効果は,上記の本件発明の作用・効果と異なり,複製が困難な合鍵を得ることができない。 以上のとおり,引用発明1は,本件発明の課題を示唆しておらず,本件発明とは構成及び作用・効果が著しく相違するので,そもそも主引用例に適するものではなく,周知事項を適用しても,容易に本件発明の構成に想到するものではない。 2 取消事由2(引用発明2を主引用例とする容易想到性の判断の誤り)について〔原告の主張〕 ? 相違点7の認定の誤りについて ア 前記1〔原告の主張〕?エのとおり,引用発明2の鍵には,レバータンブラー29の係合縁部と干渉する平板面に刻みが形成されており,これは,本件発明の鍵において,ロータリーディスクタンブラーの係合突起と係合するブレード平面部に窪みが形成されているのと同様である。したがって,本件審決が,引用発明2においてキー本体12の端縁部に刻みが形成されていることをもって本件発明との相違点と認定したことは,誤りである。 イ @引用例2【0017】によれば,本件発明2における錠は,周知例1記載の錠と同等の構造・機能を備えたものであるところ,周知例1記載の錠は,係合縁部の突出量が一定であるものと解されること,A引用例2の【図5】からも,錠の係合縁部の突出量が一定であるといえることから,引用発明2における錠も,本件発明における錠と同様に,係合縁部の突出量は一定である。したがって,本件審決が,本件発明の係合突起の突出量が一定であることをもって,引用発明2との相違点と認定したことは,誤りである。 ウ 引用発明2の鍵に形成された刻みの深さ及び大きさは複数種類あり,レバータンブラー29の係合縁部がキー本体12に形成された複数種類の深さの刻みと係合したとき,各レバータンブラー29の各揺動角度は,上記刻みの深奥部の厚さ方向位置(深さに対応するもの)や幅方向の位置に応じてそれぞれ定まり,各レバータンブラー29に設けられた各解錠切欠28がロッキングバー27の内側縁と整合する。よって,引用発明2の鍵においても,刻みの深さ・大きさ・幅方向の位置を観念することができ,これらに対応してレバータンブラー29の揺動角度も変わるものということができる。したがって,本件審決が,本件発明のタンブラー群が窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることをもって,引用発明2との相違点と認定したことは,誤りである。 エ 前記1〔原告の主張〕?によれば,引用発明2において,突出量が一定の係合縁部と係合するキー本体12の平面部に形成された複数種類の深さを有する有底の刻みは,その深さとブレードの幅方向の位置が,揺動による円弧すなわち支軸を中心とする円弧に沿っている。 前記1〔原告の主張〕?アと併せ考えれば,本件審決が認定した相違点7の本件発明に係る鍵としての構成??のうち,真の相違点は,本件発明のブレード平面部に形成されているのが摺り鉢形の窪みであるのに対し,引用発明2のキー本体12の平面部に形成されているのが内に凸の曲面の傾斜面として形成された刻みであるという,鍵の係合凹部の形状の違いのみである。 ? 相違点7に係る容易想到性の判断の誤りについて ア 本件発明における錠と引用発明2における錠は,技術思想を同じくする。また,本件発明の鍵の「摺り鉢形の窪み」において, 「窪みの底の係合突起との当接点」よりも端の部分をそぎ落として「窪み」を「刻み」に変化させても,ロータリータンブラーの鍵当接時の揺動角度さえ変わらなければ,錠は開くのであるから,鍵の本質的機能である開錠の機能に変わりはない。加えて,本件特許出願当時,鍵のブレードの平面部に形成された摺り鉢形の窪みを有する鍵(ディンプルキー)は,周知技術であり(周知例3〜9),この鍵を振り子式タンブラー錠に採用することは,当業者が当然に考えることであった。 イ 引用例1及び3の鍵・錠においては,回転運動するタンブラーの係合突起が鍵の平面部に形成された摺り鉢型の窪みと係合しており,この組合せは,鍵の技術分野において周知又は公知である。同組合せを引用発明2に適用すれば,相違点7に係る本件発明の構成になる。 ウ 知的財産高等裁判所平成24年(行ケ)第10339号事件同25年5月23日判決(甲29)は,周知例3から9に,円弧軌道上に位置する窪みが存在しないことから,鍵の窪みの深さやブレードの幅方向の位置が,係合突起が揺動する円弧軌道上に位置するなどという本件発明の構成についての記載や示唆はない旨判断した。しかし,本件審決は,引用発明3の鍵につき,円弧軌道上に位置する窪みを有する旨を認定しており,引用発明1の鍵についても同様に解すべきであるから,引用例1及び3に本件発明の構成に係る示唆があるものというべきである。 エ 前記1〔原告の主張〕?イのとおり,本件特許出願当時,中心回動式のタンブラー及び揺動式のタンブラーがいずれも既に当業者間に周知されていたという状況において,引用発明1及び3に係る錠と本件発明に係る錠とは,回転運動するタンブラーの係合突起と鍵の複数種類の摺り鉢形窪みとの係合によるタンブラー錠の整列開錠という錠としての作用の点においても共通していることによれば,引用発明1及び3から「タンブラーの係合突起と鍵ブレードの窪みとの係合」という技術思想を取り出して引用発明2に適用することは,当業者が容易に想到し得たものであった。そして,部品を一定の角度回転運動させる場合,その回転軸を部品が揺動する位置とするか部品が回動する位置とするかは,当業者の設計事項である。 オ 前記1〔原告の主張〕?ウと同様の理由により,本件発明の係合突起と解錠切欠との位置関係は,引用発明1及び3と同じである。よって,本件発明と引用発明1及び3が,係合突起と解錠切欠との位置関係において異なることを理由の1つとして相違点7が容易に想到できるものではないとした本件審決の判断は,誤りである。 〔被告の主張〕 ? 相違点7の認定の誤りについて ア 前記1〔被告の主張〕?のとおり,本件発明は,鍵溝を鍵のブレードの側端縁に形成することから,鍵違いの数にも限界があるという引用発明2の課題を解決する手段として,鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの係合突起の先端と整合する鍵のブレードの平面部に,複数種類の大きさと深さを備えた摺り鉢形の有底の窪みを形成し,この窪みが対応する前記係合突起と係合したとき,該タンブラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するとの構成を採用した発明である。これに対して,引用発明2は,従来のリバーシブルキーにおいて,平板状のキー本体12の両側辺で対をなす刻みの谷の底部の形成等により,鍵違い数の減少が余儀なくされるという課題を解決する手段として,キー本体12の両側辺における対を成す刻みの谷の底部をキー本体の厚さ方向に傾斜させ,一対の谷の底部の傾斜を,キー本体12の平板面と直角とし,かつ,キー本体12の中心軸線を含む平面に関して互いに逆向きにするとの構成を採用したものである。このように,本件発明は,引用発明2と構成において全く異なり,引用発明2のキー本体12の端縁部に形成された「刻み」を発展させて,本件発明のように「ブレードの平面部」に形成された「摺り鉢形の窪み」とすることが引用例2に示唆されているとは認められない。 「ブレードの端縁部の刻み」と「ブレードの平面部の摺り鉢形の窪み」とは,社会通念上も,また,当業者間においても,概念的に明確に区別されている。 イ 引用例2において,レバータンブラー29の係合縁部の突出量が一定である旨の記載はなく,引用例3においても同様である。 ウ 前記アによれば,相違点7の本件発明に係る鍵としての構成??のうち,真の相違点は,鍵の係合凹部の形状の違いのみである旨の原告の主張は,不当である。 ? 相違点7に係る容易想到性の判断の誤りについて 本件審決は,本件発明について,ロータリーディスクタンブラーを軸支するという発明の解決原理との関係で,ブレードの平面部に形成した複数種類の大きさと深さを備える摺り鉢形の有底の窪みを有効活用している点に進歩性がある旨認定しており,この認定に誤りはない。 3 取消事由3(引用発明3を主引用例とする容易想到性の判断の誤り)について〔原告の主張〕 ? 相違点11の認定の誤りについて 本件発明のロータリーディスクタンブラーに相当する引用発明3のロッキングディスク58に設けられた突起76は,円軌跡を描くのであるから,それと係合する鍵の窪み82の位置や具体的形態によっては,窪み82の深さや幅方向の位置に応じてロッキングディスク58の回転角度は変わり得るものであり,この点においては,本件発明と同様である。したがって,本件審決が,本件発明においては,タンブラー群が窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わるものであるのに対し,引用発明3においては,各ロッキングディスク58が窪み82の深さに対応して回動角度が変わるものであると認定したことは,誤りである。 ? 相違点Bの認定の誤りについて 前記1〔原告の主張〕?アと同様である。 ? 相違点8及び11に係る容易想到性について ア 本件発明の鍵及び引用発明3の鍵は,共に,窪みの深さに応じてその鍵幅方向の位置が変わる,すなわち,横ずれが存在する。 引用発明3の鍵において,窪みは,その深さが鍵の厚さの半分に至るまでは,鍵の幅方向の中心に寄るほど浅くなり,その深さが鍵の厚さの半分を超えると,鍵の幅方向中心に寄るほど深くなる。本件発明の鍵においては,係合突起の回転軌跡が鍵幅の中心よりも支軸から遠い部位を通る場合の窪みの深さ等は,引用発明3の鍵と同様である。本件明細書の【図13】のとおり,係合突起の回転軌跡が鍵幅の中心よりも支軸に近い部位を通る場合は,窪みの深さが鍵の厚さの半分に至るまでは,鍵の幅方向の中心に寄るほど深くなり,窪みの深さが鍵の厚さの半分を超えると,鍵の幅方向の中心に寄るほど浅くなる。このように,本件発明の鍵及び引用発明3の鍵は,窪みの深さが鍵の厚さの半分以下か半分を超えるかによって横ずれの方向性が変わってくるという点においても共通している。 以上のとおり,本件発明の鍵及び引用発明3の鍵の窪みが沿う円弧の中心位置(相違点B)は,重なり合うか,異なるとしても微差にすぎず,そもそも鍵の構成から上記中心位置を知ることは一般的には困難であるから,上記中心位置の相違は,実質的な相違点ではない。 イ 仮に,本件発明と引用発明3とは,鍵の窪みが沿う円弧の中心位置が実質的に相違するとしても,本件特許出願当時,ロータリーディスクタンブラー錠において,中心回動式のタンブラー及び揺動式(振り子式)のタンブラーは,いずれも既に当業者間に周知されており,また,引用発明3における錠と本件発明における錠は,回転運動するタンブラーの係合突起と鍵の複数種類の摺り鉢形窪みとの係合によるタンブラー錠の整列開錠という錠としての作用の点においても共通しているのであるから,引用発明3の中心回動式のタンブラーに代えて揺動式(振り子式)のタンブラーを採用することは,当業者が容易に行うことのできる設計変更にすぎない。 ウ 前記1〔原告の主張〕?ウと同様の理由により,本件発明の係合突起と解錠切欠との位置関係は,引用発明3と同じである。よって,本件発明と引用発明3が,係合突起と解錠突起との位置関係において異なることを理由の1つとして相違点8及び11が容易に想到できるものではないとした本件審決の判断は,誤りである。 エ 前記1〔原告の主張〕?エと同様の理由により,本件審決が,引用発明2の鍵につき,タンブラーに突設した係合突起と係合する窪みをブレードの平面部に形成したものではない旨認定し,これを理由の1つとして相違点8及び11が容易に想到できるものではないとした本件審決の判断は,誤りである。 〔被告の主張〕 ? 相違点11の認定の誤りについて ア 前記1〔被告の主張〕?アと同じ。 イ 引用発明3において,本件発明のロータリーディスクタンブラーに相当するロッキングディスク58の中央開口内に設けられた各突起76は,正規の鍵80が同中央開口に挿入されたとき,鍵80の複数個の窪み82の適切な深さに対応して係合し,これにより,ロッキングディスク58を含むロックシリンダー16(本件発明の内筒に相当する。)が外側ハウジング14(本件発明の外筒に相当する。)に対して角度移動(回転)可能になる。引用例3には,鍵80の複数個の窪み82の底面が各深さに対応してシャンクの幅方向に微妙に変化すること,正規の鍵80と密接不可分の係合関係にあるロッキングディスク58が,窪み82の深さと位置によって微妙に角度移動(回転)することについては,記載も示唆もされていない。 ? 相違点Bの認定の誤りについて 前記1〔被告の主張〕?アと同じ。 ? 相違点8及び11に係る容易想到性の判断の誤りについて 本件発明は,ロータリーディスクタンブラー錠用の鍵に関し,従来技術においては,鍵溝を鍵のブレードの側端縁に形成するために形成箇所を多くすることができず,鍵違いの数にも限界があるという点を解決すべき課題とするものである。他方,引用発明3の課題は,錠本体の回動障害子の組合せ角度を変えていわゆるピッキング耐性の強化を図ることである。 そして,本件発明は,支軸23に揺動自在に軸支された振動障害子(ロータリーディスクタンブラー)27を用いて従来技術の問題点を解決しようとするものであり,その基本的な解決原理は,「支軸に軸支された振り子式」である。これに対し,引用発明3は,その外周縁が真円上の線に位置する回動障害子(ロッキングディスク)58を採用した,いわゆるディスク型である。すなわち,引用発明3は,内筒の中心軸線を基準にして回転する回動障害子を用いて上記課題を解決しようとするものであり,その基本的な解決原理は, 「中心軸を基準にして回転する内筒の回転中心型」である。 本件発明と引用発明3との間における上記の課題及び構成の差異から,効果についても相違が生じる。すなわち,本件発明においては,揺動障害子であるロータリーディスクタンブラーの角度を微妙に回転させることにより,非常に複製が困難な合鍵を得ることができるのに対し,引用発明3は,そのような効果を奏しない。 以上のとおり,引用発明3は,本件発明とは,課題,その解決原理としての構成及び効果において著しく相違することから,周知事項を適用しても,容易に本件発明の構成に想到するものではない。 |
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当裁判所の判断
1 本件発明について ? 本件発明に係る特許請求の範囲は,前記第2の2【請求項2】のとおりであるところ,本件明細書の発明の詳細な説明には,おおむね,次の記載がある(甲27,28。下記記載中に引用する図面については,別紙1参照)。 ア 発明の属する技術分野 この発明は,新規なロータリーディスクタンブラー錠に関する(【0001】。 ) イ 従来の技術 シリンダ錠には種々の型式のものがあるが,本出願人(判決注:被告)の主力製品であり,比較的安全性が高いと認められているシリンダ錠に,レバータンブラー錠がある(【0002】。 ) このレバータンブラー錠は, 【図1】及び【図2】に示すように,@内周面の母線に沿ってカム溝1を形成した外筒2と,Aこの外筒に回転自在に嵌合し,間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板3,3を設けるとともに,B中心軸線に沿って鍵孔4を貫通させた内筒5と,Cこの内筒5の母線に沿って延在し,内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されるとともに,上記カム溝1と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバー6とを有している(【0003】。 ) また,仕切板の間の各スロット7に,レバータンブラー11が挿設されている。 レバータンブラー11は,全体の形状が略C字形であり,一端部を揺動自在に軸支され,自由端部外側端縁には,ロッキングバー6の内側縁を受け入れる解錠切欠9が形成されている。レバータンブラー11は,鍵孔に挿入された鍵の側端縁と干渉する方向に付勢され,常態では,内筒を軸線方向に貫通するバックアップピン8に係止されている(【0004】。 ) そして,これらのタンブラー群のそれぞれが鍵孔に挿通された合鍵の対応する鍵溝と係合したとき,各レバータンブラー11の解錠切欠9がロッキングバー6の内側縁と整合する(図示せず)ように構成されている(【0005】。 ) したがって,合鍵を鍵孔4に挿入して内筒5を外筒2内で相対的に回動させると,カム溝1とロッキングバー6との間に楔作用が生じ,これによって,ロッキングバー6が内筒中心軸方向に移動できるようになり,すなわち,シリンダ錠が解錠状態となって,内筒5が解錠方向に回動する(【0006】。 ) 通常のレバータンブラー錠においては,@複数の仕切板3,3,Aキーガイド12及びBテールピース13を装着したテールプラグ14 【図1】 ( 参照) 【図 を,3】に示す第1リテーナー15及びこれと面対称となる第2リテーナー(図示せず)を介して一体に結合して内筒5を構成する(【0007】。 ) すなわち,リテーナー15は,円筒(内筒5)の一部を成すものであり,前端に抜け止めのフランジ16が形成され,かつ,その母線に沿って複数個の縦長の矩形の受入れ孔17,17が形成された板状体である。 フランジ16に最も近いものと遠いものを除く各受入れ孔17には,仕切板3の外周部に形成された挿入片18(【図4】)を挿入し,反対側の図示しない第2リテーナーと共に,これら複数の仕切板3,3を一体的に結合する。なお, 【図4】の22は,ロッキングバー6用の案内溝である フランジ16に最も近い受入れ孔17には,キーガイド12の外周面に形成された挿入片18と同様の挿入片(図示せず)を挿入する。同様に,リテーナー15の内端(【図3】の右端。フランジ16から最も遠い受入れ孔17が位置する。)にテールプラグ14(【図1】参照)を装着する。 以上のように構成された内筒5を外筒2と嵌合させることにより,内筒5が分解しないように包持する。なお,内筒5の内端には,リテーナー15のフランジ16と同様の抜け止めの機能を有する蛇の目状のストッパー板19が装着され,止め輪21で固定されている(【0008】〜【0011】。 ) ウ 発明が解決しようとする課題 前記イのように構成されたレバータンブラー錠は,所期の機能を発揮し,特にロッキングバー6が内筒の回動時にクリック感を呈するので使用感に優れ,また,ピッキングが困難であることから,住宅の扉口用の錠前として多用されている 【0 (012】。 ) しかし,一方では,レバータンブラー11の形状が略C字形であることから,剛性が比較的小さく,強い力で異鍵を回すと変形する場合が絶無であるとはいえない(【0013】。 ) また,鍵孔内に挿入される合鍵の本体部(以下「ブレード」という。)の側端縁に鍵溝を形成することから,鍵溝の形成箇所を多くすることができず,したがって,鍵違いの数にも限界がある(【0014】。 ) さらに,鍵の断面形状が上下非対称であることから,ブレードの裏表に関係なく鍵孔に挿入できるリバーシブルの鍵を作れないなど,いまだ改良の余地がある 【0 (015】。 ) そこで,この発明は,タンブラーの剛性が大きくて丈夫であり,リバーシブルの鍵が可能であって,しかも鍵違いも大きい,新規のロータリーディスクタンブラー錠及びその鍵を提供することを目的としている(【0016】。 ) エ 課題を解決するための手段 請求項2に記載の発明は,前記ウの課題を解決するためのものである(【0018】。 ) オ 実施例 【図1】から【図4】に示す従来のレバータンブラー錠と,この発明によるロータリーディスクタンブラー錠との大きな違いは,@タンブラーの形状が環状であること及びA合鍵において,ブレードの側端縁に鍵溝を形成するのではなく,平面部及び端縁部に窪みを形成したことの2点である(【0019】。 ) 【図5】は,この発明の一実施例によるロータリーディスクタンブラー錠のスロット7を示し,このスロット7は,従来のレバータンブラー錠におけるスロットと同様に,フランジ16が付いたリテーナー15によって相互に結合された複数の仕切板3,3間に形成されている(【0020】。 ) また, 【図5】においては,内筒の中心軸線に沿って形成された鍵孔4を間に挟むようにして,上方には支軸23が,下方にはバックアップピン8が,それぞれ内筒5を鍵孔に平行に貫通するように設けられている(【図1】参照。【0021】。 ) 鍵孔4(合鍵24)の断面形状を内筒5の中心軸線に関して点対称としたのは,合鍵の裏表に関係なく,合鍵を鍵孔4に挿入できるリバーシブルキーにするためである(【0025】。 ) そして,この発明によるロータリーディスクタンブラー錠の施解錠操作に用いられる合鍵24は, 【図6】及び【図7】に示すように,鍵孔4に挿入される本体部(ブレード)の先端が円弧状に成形され,かつ面取りされるとともに, 【図6】に示す平面部及び【図7】に示す端縁部の所定の箇所に窪み25が形成されている(【0026】。 ) この窪み25の断面形状は,例えば【図5】の合鍵24の断面形状において点線で示すように,また, 【図6】及び【図7】に示すように,有底の逆台形であり,複数種類の深さ(図示の実施例では4種類)がある(【0027】。 ) 他方, 【図1】及び【図2】に示す従来のレバータンブラー錠等においては,ブレードの側端縁に,窪みではなく,V字形の鍵溝が形成されていることは,周知のとおりである(【0029】。 ) 各スロット7,7には, 【図8】に示すように,中央部に鍵孔4を包囲し得る大きさの鍵挿通孔26を形成した環状のロータリーディスクタンブラー27が挿設されている。上記「環状」とは,鍵挿通孔26を包囲するロータリーディスクタンブラー27の実体部が閉曲線を成すことを意味しており,ロータリーディスクタンブラー27の外形は,図示のように略円形である(【0031】【0032】。 , ) 各ロータリーディスクタンブラー27は,その実体部の1ヵ所(図示の実施例では上端部)を支軸23(判決注:「支軸22」は,明白な誤記。以下同様。)によって揺動可能に軸支されており,自由端部(【図8】で下端部)の内側縁及び外側縁の双方とも支軸23を中心とする円弧状に成形されている【0033】 0034】。 ( 【 , ) ロータリーディスクタンブラー27の自由端部外側縁の所定の角度位置には,例えば矩形の解錠切欠9が形成されている 【0035】。 ( ) この解錠切欠9の形成角度位置は,前記合鍵の窪み25の深さに応じて,例えば4種類あり,これによってロータリーディスクタンブラー錠の鍵違いを得るようにしている(【0036】。 ) ロータリーディスクタンブラー27の自由端部内側縁は,バックアップピン8の下端をかすめるように形成され,その【図8】における左端部には係止段部28が形成されている(【0037】。 ) 一方,鍵挿通孔26の開口端縁には, 【図8】に示すように,先端の移動軌跡が合鍵24のブレードの平面部と干渉する係合突起29が一体に突設されている【00 (39】。 ) そして,各ロータリーディスクタンブラー27は,従来のレバータンブラー錠と同様に,薄い板ばねによるタンブラーばね31の弾力により,その係合突起29が合鍵24に近接する方向に付勢されている(【0041】。 ) 【図8】に示すように,鍵孔4に合鍵24が挿入されていない場合には,各ロータリーディスクタンブラー27の係止段部28がバックアップピン8に弾接するように係止され,各ロータリーディスクタンブラー27は, 【図8】に示す角度位置に係止される(【0042】。 ) 鍵孔4に合鍵24が挿入され,各ロータリーディスクタンブラー27の係合突起29が対応する合鍵の窪み25に係入したとき, 【図10】に示すように,全ロータリーディスクタンブラー27,27の解錠切欠9,9がロッキングバー6の内側縁と整合するように,係合突起29の突出量,窪み25の深さ及び解錠切欠9の角度位置が設定されている(【0043】。 ) 図示の実施例では,係合突起29の突出量を一定にしておき,換言すれば,支軸23の中心に関し係合突起29の先端の位置を一定にしておき,係合突起29の先端が合鍵のブレードの窪み25に係入してその底面に当接したとき,窪み25の深さに応じてロータリーディスクタンブラー27の揺動角度を変化させ, 【図8】に示す複数の解錠切欠9,9の内選択されたものをロッキングバー6の内側縁に整合させるようにしている(【0044】。 ) 上記のように構成されたこの発明の一実施例によるロータリーディスクタンブラー錠は,鍵孔4に合鍵24を挿入していない場合,あるいは合鍵とは異なる異鍵を鍵孔4に挿入した場合,少なくとも1枚のロータリーディスクタンブラー27の解錠切欠9がロッキングバー6の内側縁と角度的にずれる 【図8】 ( 参照。0047】。 【 ) この状態で内筒5を回そうとすると,ロッキングバー6とカム溝1との間に生じる楔作用により,ロッキングバー6がカム溝1から押し出されようとするが,その動きはロータリーディスクタンブラー27の自由端部外側縁に阻止されて内筒5を回すことはできない。すなわち,このロータリーディスクタンブラー錠は解錠されない(【0048】。 ) 鍵孔4に合鍵24が挿入された場合には, 【図10】に示すように,全ロータリーディスクタンブラー27,27の解錠切欠9,9がロッキングバーの内側縁と整合する(【0049】。 ) この状態で内筒を回すと,従来のレバータンブラー錠と同様に,内筒5と外筒2との相互回動によって,ロッキングバー6の内筒中心軸線方向の移動が可能になり,このロータリーディスクタンブラー錠は解錠されることになる(【0050】。 ) カ 発明の効果 以上の説明から明らかなように,この発明は,タンブラーの形状を環状にしたので,従来のレバータンブラー錠と比較してタンブラーの剛性を格段に向上させることができ,錠前としての強度及び安全性を向上させることができる(【0070】。 ) また,従来のレバータンブラー錠における合鍵と異なり,ブレードの端縁部に形成されたV字形の鍵溝ではなく,窪みの深さによって鍵違いを得るようにしたので,一の窪み25と隣接する他の窪み25の間隔を従来の鍵溝間のそれより短くすることができる(【0071】。 ) 換言すれば,規格によって外形寸法に制約がある内筒においてタンブラーの数を増大させることができ,その分鍵違いを多くすることができる。例えば,従来のレバータンブラー錠には高々7枚のタンブラーしか入らなかったが,この発明によるロータリーディスクタンブラー錠においては11枚入る【図6】 ( 参照。0072】。 【 ) また,ロータリーディスクタンブラーの係合突起の突出量を一定にする場合でも,あるいは変化させる場合でも,窪みの深さに応じてその中心位置をブレードの幅方向,あるいはブレードの端縁部の幅方向において微妙に変化させなくてはならないので,合鍵の複製が困難になり,錠前としての安全性が向上するなど,種々の効果を奏する(【0074】。 ) ? 本件発明の特徴 前記?によれば,本件発明の特徴は,以下のとおりである。 ア 本件発明は,新規なロータリーディスクタンブラー錠に関するものである(【0001】。 ) イ 従来,レバータンブラー錠は,比較的安全性が高いものと認められてきたシリンダ錠であり 【0002】, ( ) 特にロッキングバー6が内筒の回動時にクリック感を呈するので使用感に優れ,また,ピッキングが困難であることから,住宅の扉口用の錠前として多用されてきた(【0012】。 ) ウ しかし,従来技術には,@レバータンブラー11の形状が略C字形であることから,剛性が比較的小さく,強い力で異鍵を回すと変形する場合が絶無であるとはいえない(【0013】,A鍵孔内に挿入される合鍵の本体部(ブレード)の側端 )縁に鍵溝を形成することから,鍵溝の形成箇所を多くすることができず,したがって,鍵違いの数にも限界がある(【0014】,B鍵の断面形状が上下非対称である )ことから,ブレードの裏表に関係なく鍵孔に挿入できるリバーシブルの鍵を作れない(【0015】)などの問題点があった。 そこで,本件発明は,タンブラーの剛性が大きくて丈夫であり,リバーシブルの鍵が可能であって,しかも鍵違いも大きい,新規のロータリーディスクタンブラー錠及びその鍵を提供することを目的としている(【0016】。 ) エ 本件発明は,前記ウの課題を解決するための手段として,特許請求の範囲請求項2に記載の構成を採用した(【0018】。 ) オ 本件発明は,@タンブラーの形状を環状にしたので,従来のレバータンブラー錠と比較してタンブラーの剛性を格段に向上させることができ,錠前としての強度及び安全性を向上させることができる 【0070】, ( ) A従来のレバータンブラー錠における合鍵と異なり,ブレードの端縁部に形成されたV字形の鍵溝ではなく,窪みの深さによって鍵違いを得るようにしたので,一の窪み25と隣接する他の窪み25の間隔を従来の鍵溝間のそれより短くすることができ,したがって,タンブラーの数を増大させ,その分鍵違いを多くすることができる(【0071】【007 ,2】,Bロータリーディスクタンブラーの係合突起の突出量を一定にする場合,窪 )みの深さに応じてその中心位置をブレードの幅方向,あるいはブレードの端縁部の幅方向において微妙に変化させなくてはならないので,合鍵の複製が困難になり,錠前としての安全性が向上するなど,種々の効果を奏する(【0074】。 ) 2 取消事由1(引用発明1を主引用例とする容易想到性の判断の誤り)について ? 引用発明1の認定 ア 引用例1(甲1)には,おおむね,以下のとおり記載されている(下記記載中に引用する図面については,別紙2参照)。 発明の課題 この発明の目的は,鍵操作可能な錠を使いやすい形態で提供することである(1頁左欄11〜12行)。 課題解決のための手段 本発明による鍵操作可能な錠は,@その壁の長手方向に延びるリセスを有する実質的に円筒形の空洞を形成するボディ,A空洞を占める中空の略円筒状でその壁の長手方向に延びるスロットを有するバレル,Bバレルとボディとの相対的な回転方向運動を防ぐために通常はリセスとスロットを占有する長手方向に延びるロッキングバー,Cリセス内にロッキングバーを引き込む手段,Dバレル内に配置されている複数の円盤状のセキュリティ・メンバー,Eバレルと各セキュリティ・メンバーの相対的な回転方向運動を制限する停止手段,Fバレル内での各セキュリティ・メンバーの回転方向運動の1つのリミットに向けて各セキュリティ・メンバーを付勢する弾性手段とから成る。 各セキュリティ・メンバーには中央開口があり,その中に,鍵のシャンクの側壁の窪み内に係合するための,実質的に円周方向に延びる突起を有する。また,各セキュリティ・メンバーは,その突起が鍵の適切な深さの窪みに係合すると,バレル内のスロットに位置合わせされるノッチを有する。このような配置において,適切な鍵が全てのセキュリティ・メンバーの開口部を通して正しく挿入されると,弾性手段の影響を受けて突起は全て適切な深さの窪みに係合され,複数のセキュリティ・メンバーのノッチとバレルのスロットが位置合わせされる。そして,回転方向運動が鍵に付与されると,ロッキングバーは,ボディのリセスからバレルのスロットと複数のセキュリティ メンバーの複数のノッチの収納されるべき位置に移動し, ・バレルとセキュリティ・メンバーがボディに対して角度移動可能となる(1頁左欄13行〜右欄54行)。 実施例 a 図1は,鍵操作可能な錠に適用される本発明の実施例の分解側面図である。 …図4は,図示の錠において使用する典型的な鍵の側面図である。図5は,鍵を取り去った状態における,組み立てられた錠の拡大断面図である。図6は,図5の6-6線上の断面側面図であるが,隣接のセキュリティ・メンバーとキャリアは,明瞭化のために省略してある。図7は,図5と同様の図であるが,挿入された鍵と少し回されたバレルを表示してある(1頁右欄55〜76行)。 b ボディ10は,実質的に円筒形の空洞が形成されたものであり,その壁に長手方向に延びるリセス11を有する。リセス11の底部の近くには,帯状磁石12がボディ10に埋設されている。さらに,リセス11の壁は,ベルマウス開口部を形成するように傾斜又は湾曲している。 ボディ10内の空洞の中に,中空略円筒状のバレル13がある。バレル13は,その表面に形成された長手方向に延びるスロットを有する。スロットを占有するのは,長手方向に延びる鉄製ロッキングバー14であり,それは,通常は,図5に示すように,磁石12の影響下でリセス11を占有している。 このような位置関係において,ロッキングバー14の半径方向の深さは,リセス11の底部からバレル13の内周まで延びていて,それは半径方向内側に移動することができず,バレルとボディとの間の相対的な回動を防止する(1頁右欄77行〜2頁左欄2行)。 c バレル13の前面には,矩形の開口15があり,これを通して,鍵16の対応する矩形のシャンクを挿入することができ,開口15の側面は,開口への案内を形成するために面取りされている(2頁左欄3〜8行)。 バレル13内には,複数のディスク状のセキュリティ・メンバー21があり,それらの各々は,等しい数のキャリア22の1つと組み合わせられる(2頁左欄15〜18行)。 d 各キャリア22は,組み合わされたセキュリティ・メンバー21がその周りを回転方向に移動可能であるように,切欠き部分のある中空のボス22aを持っており,また,鍵のシャンクを受け入れるのに適した形状の開口23を持っている(2頁左欄23〜26行,31〜33行)。 e 各セキュリティ・メンバー21は,その組み合わされるキャリアのボス22aの周りに軸支される中央部開口を有している。さらに,中央部開口内に入り込んで,実質的に周方向に延びる,また,キャリア22の部分的切欠きの領域で延びる一体の突起24があり,それは,鍵16のシャンクの側壁に形成された複数の窪み25のうちの1つに係合するように組み合わされる。突起24は,案内を形成するために面取りされており,それによって,鍵が開口23を通して挿入される時に,内側端部に面取り部16aを有する鍵のシャンク16が,セキュリティ・メンバー21を,角度を付けながらカム案内できる(2頁左欄34〜48行)。 f 各セキュリティ・メンバー21は,そのキャリア22に対して角度方向にバネ荷重が付加されている。加えて,キャリア22,さらにはバレル13に対するセキュリティ・メンバー21の角度の移動は,切欠き部分の周りのキャリアの肩部と突起24との当接によって制限され,これらの肩部は停止手段として作用する(2頁左欄49〜61行)。 g 図5で,セキュリティ・メンバー21には,時計回り方向にバネ荷重が付加されており,鍵が開口23内に挿入されるときに,シャンクの端部の面取り部16aが,セキュリティ・メンバー21を反時計回り方向にカム案内するような配置になっている。さらに,正しい鍵が挿入されたときに,突起24は,そのような深さの窪み25内に位置して,ノッチ21b(ノッチ21aと径方向反対側)はキャリア22内のスロット22cと整列する。この位置において,図7に示すように鍵が回されると,ロッキングバー14は,リセス11のベルマウス開口部によって内側にカム案内され,鍵が,キャリア22とバレル13と一緒に,セキュリティ・メンバー21を回すことができるようになる(2頁左欄62行〜右欄78行)。 h 鍵16のシャンクの窪み25は,3つの深さを選択できるようになっており,正しい鍵が錠の中に挿入されたときには,各セキュリティ・メンバー21のノッチ21bが,そのキャリア22のスロット22cに整列する。しかしながら,いずれかの突起24が適切な深さの窪みに配置されていない場合には,鍵を回そうと試みても,ロッキングバー14が径方向内側に移動するのを防止することができ,その結果,錠を作動させることができない。ここで,ノッチ21bの角度方向位置は,セキュリティ・メンバー21の突起24が係合されるべき鍵の適切な窪み25の深さによって決定されることが理解されるであろう(2頁右欄79〜95行)。 効果 a 鍵が,セキュリティ・メンバー21の周縁部よりも中央寄りで突起24に作用するということにより,結果としてのセキュリティ・メンバー21の回転方向運動が,セキュリティ・メンバー21の周縁部のより大きな動きを引き起こし,それによって,窪み25の深さの比較的小さなバリエーションに対して,ノッチ21b,21aの位置決めにおいて適切なバリエーションを可能にする(2頁右欄127行〜3頁左欄5行)。 b 鍵のシャンクの窪みは,4つの代替的な位置のいずれかに配置することができ,また,例えば3つの代替的な深さのいずれかとすることができるという事実により,所定サイズの錠について,極めて多数の違いを取得することができる(3頁左欄13〜18行)。 イ 前記アによれば,引用例1には,本件審決が認定したとおりの引用発明1(前記第2の3?ア)が記載されているものと認められる。 そして,引用例1には,引用発明1につき,以下のとおり開示されているものと認められる。 引用発明1は,使いやすい形態を備えた鍵操作可能な錠の鍵に係るものである。 引用発明1における錠は,@その壁の長手方向に延びるリセスを有する実質的に円筒形の空洞を形成するボディ,A空洞を占める中空の略円筒状でその壁の長手方向に延びるスロットを有するバレル,Bバレルとボディとの相対的な回転方向運動を防ぐために通常はリセスとスロットを占有する長手方向に延びるロッキングバー,Cバレル内に配置されている複数の円盤状のセキュリティ・メンバー等から成る。 バレル13内には,複数のディスク上のセキュリティ・メンバー21及び同数のキャリア22があり,各セキュリティ・メンバー21は,各キャリア22と組み合わせられる。キャリア22は,切欠き部分のある中空のボス22a及び鍵16のシャンクを受け入れるのに適した形状の開口23を備えている。セキュリティ・メンバー21は,組み合わされるキャリア22の中空のボス22aの周りに軸支される中央部開口を有しており,その中に,実質的に円周方向に延びる突起24がある。 また,セキュリティ・メンバー21は,ノッチ21a,bを備えている。 鍵16には,シャンクの側壁に複数の窪み25が形成されており,窪み25については,3つの深さを選択できる。 正しい鍵16がキャリア22の開口23を通して挿入されると,セキュリティ・メンバー21の突起24が鍵16の窪み25に当接し,セキュリティ・メンバー21のノッチ21bとバレル13のスロット22cが位置合わせされて整列する。 この状態で鍵が回されると,ロッキングバー14がボディ10のリセス11から外れ,セキュリティ・メンバー21は,キャリア22及びバレル13と共に,キャリア22のボス22aの周り,すなわち,ボス22aの中心軸線の周りを回動する。 鍵16の窪み25が,セキュリティ・メンバー21の中央部開口に設けられた突起24と当接する,すなわち,鍵16が,セキュリティ・メンバー21の周縁部よりも中央寄りで突起24に作用することにより,結果としてのセキュリティ・メンバー21の回転方向運動が,その周縁部のより大きな動きを引き起こし,それによって,窪み25の深さの比較的小さなバリエーションに対して,ノッチ21b,21aの位置決めにおいて適切なバリエーションを可能にする。 また,鍵16の窪み25を3つの代替的な深さのいずれかとすることができることにより,所定サイズの錠について,極めて多数の違いを取得することができる。 ? 本件発明と引用発明1との相違点について ア 本件発明と引用発明1との間には,本件審決が認定したとおりの相違点1から4(前記第2の3?イ〜オ)が存在するものと認められる。 イ 相違点Aについて 相違点1の環状ロータリーディスクタンブラーの回動機構及び回動軸についてみると,本件発明においては,環状ロータリーディスクタンブラーの実体部の1か所を,内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支していることから,環状ロータリーディスクタンブラーは,支軸を中心に揺動するものである。他方,引用発明1においては,環状ロータリーディスクタンブラーであるセキュリティ・メンバー21がその組み合わされるキャリア22(本件発明の仕切板に相当する。 のボ )ス22aの周りに回転方向に移動可能に軸支される中央開口を有していることから,セキュリティ・メンバー21(環状ロータリーディスクタンブラー)は,ボス22aの中心軸線の周りを回動する(前記?イ 。 次に,相違点1の係合突起及び解錠切欠の突設位置についてみると,本件発明においては,環状ロータリーディスクタンブラーの鍵挿通孔の開口端縁に係合突起を一体に突設し,鍵挿通孔を挟んで支軸と対峙する自由端部外側端縁に解錠切欠を形成した。他方,引用発明1においては,セキュリティ・メンバー21(環状ロータリーディスクタンブラー)の中央開口の中に突起24を有し,外周縁に,解錠切欠であるノッチ21bを有している。 相違点4の合鍵の窪みに関する構成についてみると,本件発明においては,合鍵のブレードの平面部に形成された複数種類の大きさと深さを備える有底の窪みが環状ロータリーディスクタンブラーの突出量が一定である係合突起と係合したとき,タンブラー群が窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わる。そして,前記 その実体部を軸支する支軸を中心に揺動することから,環状ロータリーディスクタンブラーの鍵挿通孔の開口端縁に突設された係合突起と係合する合鍵の窪みは,鍵の幅方向の中心に近いものほど深くなる。さらに,係合突起の突出量が一定であることから,係合突起の先端と支軸の中心との距離が一定であり,それによって,タンブラー群の係合突起と係合する合鍵の窪みの位置と深さ,すなわち,各環状ロータリータンブラーの各係合突起と係合する合鍵の各窪みの位置と深さの軌跡は,支軸を中心とする円弧に沿ったものとなる。 他方,引用発明1においては,鍵16(合鍵)の窪み25は,突起24が係合したとき,各セキュリティ メンバー21が窪みの深さに対応して回転角度が変わる。 ・ その組み合わされるキャリア22(仕切板)のボス22aの中心軸線の周りを回動することから,ボス22aの周りに軸支されるセキュリティ・メンバー21の中央開口の中にある突起24と係合する鍵16の窪み25は,鍵の幅方向中心に近いものほど浅く,幅方向端部に近いものほど深くなる。突起24の突出量が一定であれば,突起24の先端とセキュリティ・メンバー21の回転軸であるボス22aの中心軸線との距離が一定になることから,引用発明1に設けられた複数のセキュリティ・メンバー21の突起24と係合する鍵16の複数の窪み25の位置と深さ(本件発明のタンブラー群の係合突起と係合する合鍵の窪みの位置と深さに対応する。,すなわち,各セキュ )リティ・メンバー21の各突起24と係合する鍵16の各窪み25の位置と深さの軌跡は,ボス22aの中心軸線を中心とする円弧に沿ったものとなる。しかし,引用例1には,突起24の突出量については開示されておらず,したがって,突起24の突出量が一定であるか否かは不明であるから,引用発明1に設けられた複数のセキュリティ・メンバー21の突起24と係合する鍵16の複数の窪みの位置と深さの関係は,不明であるといわざるを得ない。 以上によれば,本件審決が相違点1及び4を鍵の構成として言い換えた相違点A(前記第2の3?カ)についても,本件審決の認定に誤りはない。 ウ 原告の主張について 原告は,引用発明1のセキュリティ メンバー21に設けられた突起24は, ・円軌跡を描くのであるから,それと係合する鍵16の窪み25の位置や具体的形態によっては,窪み25の深さや幅方向の位置に応じてセキュリティ・メンバー21の回転角度は変わり得るものであり,この点においては本件発明と同様であるとして,本件審決による相違点4の認定は誤りである旨主張する。 しかし,前記イのとおり,本件発明においては,係合突起の突出量が一定であることから,係合突起の先端と支軸の中心との距離が一定であり,それによって,タンブラー群の係合突起と係合する合鍵の窪みの位置と深さ,すなわち,各環状ロータリータンブラーの各係合突起と係合する合鍵の各窪みの位置と深さの軌跡が,支軸を中心とする円弧に沿ったものとなる。他方,引用発明1において,本件発明のタンブラー群の係合突起と係合する合鍵の窪みの位置と深さに対応するのは,複数のセキュリティ・メンバー21の突起24と係合する鍵16の複数の窪みの位置と深さであり,これは,各セキュリティ・メンバー21の各突起24と係合する鍵16の各窪み25の位置と深さの軌跡を指す。しかし,本件発明と異なり,引用例1には,突起24の突出量については開示されておらず,したがって,突起24の突出量が一定であるか否かは不明であり,複数のセキュリティ・メンバー21の間で同突出量が異なれば,それに応じて各セキュリティ・メンバー21の各突起24と係合すべき鍵16の各窪み25の位置と深さも変わってくるから,上記軌跡において,鍵16の各窪み25の位置と深さの関係は,不明になるといわざるを得ない。 よって,原告の前記主張は,採用できない。 原告は,引用発明1の突起24の突出量も,本件発明の係合突起の突出量と同様に,一定であるから,本件審決による相違点4の認定は,誤りである旨主張する。 しかし,引用例1には,突起24の突出量は開示されていない。そして,前記?アのとおり,引用例1には,ノッチ21b(解錠切欠)の角度方向位置は,鍵の窪み25の深さによって決定される旨が記載されているものの,同深さのみによって決定されるとは記載されておらず,仮に,そのような趣旨であったとしても,この記載のみをもって,突起24の突出量が一定であると読み取ることはできない。また,一般に,タンブラー錠において鍵違いを得る方法は,係合突起の突出量の変更又は解錠切欠の角度位置の変更に限られるものではなく,例えば,これら両者を共に変更することも考えられるから,引用例1において,ノッチ21bの角度位置を変更する旨が記載されているからといって,必ずしも係合突起の突出量が一定であるということはできない。 原告は,本件審決は,相違点Aの認定に当たり,本件発明につき,鍵の窪みの位置と深さが鍵のブレードの中心に寄るものほど深くなる旨を認定したが,これは,本件明細書の【図10】の実施例のみに妥当するものであり,本件明細書の【図13】においては,係合突起の回転軌跡が鍵幅の中心よりも支軸から遠い部位を通る場合は,窪みの深さが鍵の厚さの半分に至るまでは,鍵の幅方向の中心に近いものほど浅いものとなり,深さが鍵の厚さの半分を超えると,鍵の幅方向の中心に近いものほど深いものとなるなどと主張する。 しかし,前記イのとおり,合鍵の窪みが鍵の幅方向の中心に近いものほど深くなるという事実は,環状ロータリーディスクタンブラーがその実体部を軸支する支軸を中心に揺動するという回動機構及び回動軸の構成,係合突起の位置等によるものであるから,本件発明の一実施例である本件明細書の【図10】に限らず, 【図13】も含め,本件発明一般について該当することである。そして,鍵にその厚さの半分を超える窪みを設けることは,鍵の強度の点から問題があるものといえる上, 【図13】においては,バックアップピン8によってロータリーディスクタンブラー27の揺動が規制されており,この状態において上記のような深い窪みを設けることは,構造上も想定し難いものである。 原告は,引用発明1においても,窪み25の深さが鍵16の厚さの半分を超えると,鍵の幅方向の中心に近いものほど深いものとなるなどとして,複数の窪み25の深さとシャンク幅方向(鍵の幅方向)の位置は,その中心をボス22aの中心とする円弧に沿うものであるから,相違点Aは,正しくは,鍵の窪みが沿う円弧の中心位置の相違にとどまる旨主張する。 しかし,鍵にその厚さの半分を超える窪みを設けることは,鍵の強度の点から問題があるものといえ,少なくとも鍵16に複数設けられた窪み25が全て鍵16の厚さの半分を超えるものであるという状態は,現実的に想定し難い。さらに,前記 のとおり,引用発明1においては,突起24の突出量が一定であるか否かは不明であるから,引用発明1における錠に設けられた複数のセキュリティ・メンバー21の各突起24と係合する鍵16の複数の各窪み25の位置と深さの関係は,不明であり,したがって,上記位置と深さの軌跡が,必ずしも円弧に沿うものということはできない。 ? 相違点1及び4に係る容易想到性について ア 相違点1は,錠の構成の相違であり,前記?イのとおり,本件発明における錠は,環状ロータリーディスクタンブラーが,その実体部の1か所を軸支する支軸を中心に揺動するというものであるのに対し,引用発明1における錠は,セキュリティ・メンバー21(環状ロータリーディスクタンブラー)が,その組み合わされるキャリア(仕切板)のボス22aの中心軸線の周りを回動するというものであり,両者の錠は,明らかに動作機構を異にする。そして,本件発明及び引用発明1は,それぞれの錠に対応する合鍵に係るものであるから,環状ロータリーディスクタンブラー(セキュリティ・メンバー21)に設けられた係合突起(突起24)に係合することによって解錠する合鍵の窪みに関する相違点4も,前記動作機構の相違に対応するものということができる。 引用例1には,引用発明1における上記動作機構の錠及びこれに対応する鍵16についての課題は,記載も示唆もされていない。証拠上,本件特許出願当時,上記錠ないしこれに対応する鍵16についての課題に関する技術常識が存在したとは認めるに足りない。 したがって,本件特許出願当時,当業者が,引用発明1において,明らかに動作機構を異にする本件発明における錠及びこれに対応する合鍵に係る構成を採用する動機付けの存在は認めるに足りないから,上記採用により相違点1及び4に係る本件発明の構成を容易に想到し得たということはできない。 イ 原告の主張について 原告は,相違点Aが,鍵の窪みが沿う円弧の中心位置の相違にとどまることを前提として,本件発明は,鍵の発明であり,一般に,鍵の構成から鍵の窪みが沿う円弧の中心位置を知ることは困難なことであるから,本件発明の鍵と引用発明1の鍵とを区別することはできず,したがって,相違点Aは,実質的な相違点ではない旨を主張する。 しかし,前記?ウ のとおり,引用発明1における錠に設けられた複数のセキュリティ メンバー21の各突起24と係合する鍵16の窪みの位置と深さの関係は, ・不明であり,したがって,上記位置と深さの軌跡が必ずしも円弧に沿うものということはできず,原告の上記主張は,前提において誤りがある。 また,本件発明及び引用発明1は,いずれも鍵の発明ではあるものの,それぞれの錠に対応する合鍵としての発明であるから,容易想到性の判断に当たり,前記アのとおり明らかに動作機構を異にする各錠の相違を捨象して,鍵の窪みそのものの形状のみを対比して考えるべきではない。 原告は,仮に,鍵の窪みが沿う円弧の中心位置の相違が実質的な相違点であるとしても,本件特許出願当時,ロータリーディスクタンブラー錠において,中心回動式のタンブラー及び揺動式のタンブラーは,いずれも既に当業者間に周知されていたのであるから,引用発明1の中心回動式のタンブラーに代えて揺動式のタンブラーを採用することは,当業者が容易に行うことのできる設計変更にすぎない旨主張する。 しかし,前記アのとおり,中心回動式のタンブラーと揺動式のタンブラーは,明らかに動作機構を異にするものであり,同動作機構は,錠全体の仕組みに関わるものである。したがって,引用発明1の中心回動式のタンブラーを,本件特許出願当時において既に当業者間に周知されていたという揺動式のタンブラーに代えることは,単なるタンブラーの種類の変更にとどまらず,錠全体の仕組みを大きく変えることとなり,これに伴って錠に対応する合鍵である鍵の構成も変更することになる。 よって,原告が主張するとおり引用発明1のタンブラーを揺動式のタンブラーとすることは,錠の合鍵としての引用発明1の内容を全体的に変えることとなるから,当業者が容易に行うことのできる設計変更の域にとどまるものではない。 原告は,本件発明において,係合突起はロータリーディスクタンブラーの内側である鍵挿通孔の開口端縁,解錠切欠はロータリーディスクタンブラーの外側端縁にあり,係合突起と解錠切欠との位置関係は,引用発明1と同じであるとして,上記位置関係の相違を理由の1つとして相違点1及び4が容易に想到できるものではないとした本件審決の判断は,誤りである旨主張する。 しかし,本件審決は,単に係合突起と解錠切欠がロータリーディスクタンブラーのどの部分に設けられているかを問題としているわけではなく,係合突起と解錠切欠それぞれの,ロータリーディスクタンブラーの揺動ないし回動の軸との位置関係の相違,すなわち,本件発明における支軸との位置関係及び引用発明1におけるボス22aの中心軸線との位置関係を捉えて,これらの位置関係の相違を容易想到性の判断に当たって考慮したものと解される。よって,原告の上記主張は,本件審決を正解したものではない。 原告は,本件審決が,原告において引用発明1に適用し得る周知技術の根拠の1つとして挙げた引用発明2の鍵につき,タンブラーに突設した係合突起と係合する窪みをブレードの平面部に形成したものではない旨認定し,これを理由の1つとして相違点1及び4が容易に想到できるものではないと判断したことは,誤りである旨主張する。 そもそも,引用例2(甲2)に開示された鍵の形状は, 「刻みを,平板状のキー本体の両側辺に設けた」【請求項1】【請求項3】【0002】【0008】【00 ( , , , ,10】【図1】【図2】等)もののみであり,これをもって,窪みをブレードの平 , ,面部に形成したものということはできない。加えて,仮に,タンブラーに突設した係合突起と係合する窪みをブレードの平面部に形成した鍵が,本件特許出願当時に 発明及び引用発明1は,動作機構を異にするそれぞれの錠に対応する合鍵としての発明であるから,引用発明1の鍵を,ブレードの平面部に窪みを形成した鍵に変更したとしても,本件発明における錠とは異なる動作機構を有する錠に対応する合鍵である限り,相違点1及び4に係る本件発明の構成には至らない。 ? 小括 以上によれば,原告主張の取消事由1は,理由がない。 3 取消事由2(引用発明2を主引用例とする容易想到性の判断の誤り)について ? 引用発明2の認定 ア 引用例2(甲2)の特許請求の範囲には,以下のとおり記載されている。 【請求項1】任意数のC字状のレバータンブラーに当接して各レバータンブラーを解錠位置に整合変位させるための選択された深さの刻みを,平板状のキー本体の両側辺に設けたレバータンブラー錠用のリバーシブルキーにおいて,キー本体の両側辺における対をなす刻みの谷の底部はキー本体の厚さ方向でともに傾斜させてあり,一対の谷の底部の傾斜は,キー本体の平板面と直角をなしかつキー本体の中心軸線を含む平面に関し互に逆向きにしてあることを特徴とするリバーシブルキー。 イ 引用例2の発明の詳細な説明には,おおむね,以下のとおり記載されている(下記記載中に引用する【図1】〜【図5】については,別紙3参照)。 発明の属する技術分野 この発明は,レバータンブラー錠用のリバーシブルキー及びその製作方法に関するものである(【0001】。 ) 従来の技術 従来のレバータンブラー錠用のリバーシブルキーには,キー本体の両側辺で対をなす刻みの形状等のため,ならい鍵切り機等により複製が不正に行われやすいこと,レバータンブラー錠でC字状のレバータンブラーを裏表逆に入れても,同じリバーシブルキーによって施解錠可能であるから,鍵違いの数の減少が余儀なくされることなどの課題があった(【0004】【0005】。 , ) 発明が解決しようとする課題 この発明は,キー本体の刻みの形状を新規なものに変えることによって複製をしにくくし,かつ,鍵違い数の減少を排除することを目的とする(【0006】。 ) 課題を解決するための手段 この発明は,上記 の課題を解決するために,特許請求の範囲請求項1記載の構成を採用した(【0008】。 ) 発明の実施の形態 a この発明のリバーシブルキー1が差し込まれて用いられるレバータンブラー錠2は, 【図3】〜【図5】に示すように,@内周面の母線に沿ってカム溝21を形成した外筒22と,Aその外筒22に回転自在に嵌合し,間隙を隔てて列設された複数の仕切板23を備えるとともに,B前後方向に鍵孔24を貫通させた内筒部25と,Cその内筒部25の母線に沿って延在し,内筒部25の半径方向に移動可能に装着されるとともに,押しばね26により外方に向け付勢されたロッキングバー27とを有する(【0012】。 ) b 仕切板23が形成する複数のスロット内に,それぞれの先端部分にロッキングバー27を選択的に受け入れる解錠切欠28を形成したC字状のレバータンブラー29を支軸31で枢着し,各レバータンブラー29は,鍵孔24に差し込まれるキーの側辺部と干渉する方向にタンブラーばね32で付勢される(【0013】。 ) レバータンブラー錠は,合鍵が鍵孔24に挿入されたとき,これらのタンブラー群29のそれぞれが鍵孔24に挿通された合鍵の対応する刻みと係合し,各タンブラーの解錠切欠28がロッキングバー27の内側縁と整合するようにしてある【0 (014】。 ) その状態で合鍵を回すと,カム溝21とロッキングバー27との間に生じる楔作用によりロッキングバー27が内筒半径方向に移動するので,バックアップピン33を含み,前方のキーガイド34,仕切板23,周囲を囲むリテーナ35及び後方の尾栓36等からなる内筒部25が,全体として解錠方向又は施錠方向に回動することができる(【0015】。 ) c 【図1】は,つまみ11及び平板状のキー本体12から成るリバーシブルキーである(【0011】。 ) この発明に係るリバーシブルキーの特徴は,キー本体12の両側辺に共に設けた刻みにある 【0018】。 ( ) キー本体12の両側辺において中心軸線lと直角をなす平面上で対をなすようにして設けた刻みの谷の底部3,3aは, 【図2】に明示するように,キー本体12の厚さ方向でともに傾斜させてあり,一対の谷の底部3,3aの傾斜は, 【図2】に示す平面P,すなわち,キー本体12の平面板14,14と直角をなし,かつ,キー本体12の中心軸線1を含む平面に関し,互いに逆向きにしてある 【0019】。 ( ) さらに,図示例では,傾斜させた各谷の底部3(3a)は,内に凸の曲面に形成してある。底部3(3a)の傾斜面をこのように曲面にすると,キーの不正な複製を一層難しくするが,その傾斜面は平面としてもよい(【0021】。 ) d キー本体12の各刻みにおける底部3(3a)の傾斜面は,それが対応するタンブラー29の正面形の違いに応じて形成される。例えば,図2】 【 に示すように,切削前のキー本体に対し,ある定点Aを通る直線がその定点Aを中心として角度を変えたとき,キー本体(12)の一側辺の稜線とぶつかる直線AOを基準として,角度を変える直線がキー本体(12)をよぎる角度的深さd1,d2,…dnを対応するタンブラー29の種類に応じて選択し,その深さdnの刻みを切削する。 【図2】で示す谷の底部3,3aの深さはd2である(【0022】。 ) e 【図5】に示すレバータンブラー29は,C字状をなすように装着されており,また, 【図6】に示すレバータンブラー29は,同じ列で正面形が同じものを表裏を逆にして逆C字状をなすようにして装着してある。 【図5】のC字状のタンブラー29は,本発明のキーにおける長さ方向の所定位置の刻みで押されて解錠切欠28が解錠位置に至っているが, 【図6】の逆C字状のタンブラー29は,同じキーを用いても,傾斜している刻みの底部3aの浅い部分が衝接することになる。そのために,従来のリバーシブルキーとは異なり,解錠切欠28は解錠位置を占めることにはならず,内筒部25は外筒22に対し回動不能である。このことは,本発明のキーがリバーシブルであるにもかかわらず,鍵違い数の減少を排除していることを示している(【0024】〜【0026】。 ) 発明の効果 この発明のリバーシブルキーによれば,両側辺の刻みにおける対をなす谷の底部を互いに逆向き傾斜面に形成してあるから,不正な複製を困難にするほか,リバーシブルにしたことによる鍵違いの数の減少を排除できる効果を奏する。また,前記底部の斜面を曲面としたものは,不正な複製を更に難しいものとする 【0037】 ( ,【0038】。 ) ウ 前記ア及びイによれば,引用例2には,本件審決が認定したとおりの引用発明2(前記第2の3?イ)が記載されているものと認められる。 そして,引用例2には,引用発明2につき,以下のとおり開示されているものと認められる。 引用発明2は,レバータンブラー錠用のリバーシブルキーに関するものである(【0001】。 ) 従来のレバータンブラー錠用のリバーシブルキーには,キー本体の両側辺で対をなす刻みの形状等のため,ならい鍵切り機等により複製が不正に行われやすいこと,レバータンブラー錠でC字状のレバータンブラーを裏表逆に入れても,同じリバーシブルキーによって施解錠可能であるから,鍵違いの数の減少が余儀なくされることなどの課題がある(【0004】【0005】。 , ) 引用発明2は,キー本体の刻みの形状を新規なものに変えることによって複製をしにくくし,かつ,鍵違いの数の減少を排除することを目的とする【0006】。 ( ) 引用発明2は,上記 の課題を解決するために,支軸31で揺動可能に枢着されたC字状のレバータンブラー29等を備えた錠の合鍵として,キー本体12の端縁部に谷の底部3,3aを内に曲面の傾斜面として形成された刻みを形成するなどの構成とし,合鍵が鍵孔24に挿入されたとき,各レバータンブラー29が,対応する上記各刻みと係合することにより,各刻みの底部までの長さに応じて揺動角度を変えて揺動することによって,各タンブラーの解錠切欠28とロッキングバー27の内側縁とを整合させて解錠することができるようにしたものである【請求項 (1】【0008】【0011】〜【0015】【0018】【0019】【002 , , , , ,1】【0022】。 , )とによる鍵違いの数の減少を排除できるなどの効果を奏する(【0024】〜【0026】【0037】【0038】。 , , ) ? 本件発明と引用発明2との相違点について ア 本件発明と引用発明2との間には,本件審決が認定したとおりの相違点5から7(前記第2の3?イ〜エ)が存在するものと認められる。 また,前記1及び2?イによれば,本件発明は,前記第2の3?オのとおりの構成,すなわち,?「合鍵」の「ブレードの平面部に,有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪み」が形成されている,?さらに, 「ロータリーディスクタンブラー」の開口端縁に一体に「突出量が一定」に突設した「係合突起」の,その先端と係合する,合鍵のブレード「平面部」に形成された「有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪み」を有するから, 「鍵の窪みは,その深さとブレードの幅方向の位置が,揺動による円弧に沿ったものである」との構成を備えている。 前記?によれば,引用発明2においては,ロータリータンブラーであるC字状のレバータンブラー29の実体部の1か所を,内筒部25を軸線方向に貫通する支軸31に揺動可能に軸支していることから,C字状のレバータンブラー29は,支軸を中心に揺動する。合鍵と係合する係合縁部は,C字状のレバータンブラー29に設けられた鍵挿通切欠の開口端縁に設けられており,解錠切欠28は,鍵挿通切欠を挟んで支軸31と対峙する自由端部外側端縁に形成されている。 他方,合鍵の構成についてみると,合鍵のキー本体12の端縁部に谷の底部3,3aを内に凸の曲面の傾斜面として形成された刻みが,C字状のレバータンブラー29の係合縁部と係合したとき,刻みに対応して揺動角度が変わる。 しかし,本件発明と異なり,レバータンブラー29の係合縁部と係合する合鍵の刻みがキー本体12の端縁部に設けられており,また,係合縁部の突出量は不明であるから,合鍵の複数の刻みの位置と深さの関係は,不明といわざるを得ない。 以上によれば,引用発明審決による相違点の認定に誤りはない。 ウ 原告の主張について 原告は,引用発明2の鍵には,レバータンブラー29の係合縁部と干渉する平板面に刻みが形成されている旨主張する。 しかし,前記?ウのとおり,レバータンブラー29の係合縁部と係合するのは,キー本体12の側縁部に設けられた刻みであり,平板面ではない。 原告は,引用発明2における錠は,周知例1記載の錠と同等の構造・機能を備えたものであるところ,周知例1記載の錠は,係合縁部の突出量が一定であるものと解されること,引用例2の【図5】からも,錠の係合縁部の突出量が一定であるといえることから,引用発明2における錠も,係合縁部の突出量は一定である旨主張する。 しかし,周知例1(甲3)には,係合縁部の突出量に関する記載はない。仮に,周知例1記載の錠において,係合縁部の突出量が一定であったとしても,そのことをもって直ちに,引用発明2における錠も係合縁部の突出量が一定であるということはできない。また,引用例2にも,係合縁部の突出量についての記載はない。 以上によれば,引用発明2における錠につき,係合縁部の突出量が一定であるとは認められない。 原告は,引用発明2においても,鍵の刻みの深さ・大きさ・幅方向の位置に対応してレバータンブラー29の揺動角度も変わるのであるから,本件審決が,本件発明のタンブラー群が窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることをもって,引用発明2との相違点と認定したことは,誤りである旨主張する。 しかし,前記1のとおり,本件発明における錠は,環状のロータリーディスクタンブラーに形成された係合突起が,合鍵のブレードの平面部に形成された摺り鉢形の窪みに係合されるように設けられたものであるのに対し,引用発明2における錠は,C字状のレバータンブラー29に形成された係合縁部が,合鍵のブレードの端縁部に形成された内に凸の曲面の傾斜面として形成された刻みに係合されるように設けられたものである。このように,本件発明における錠と引用発明2における錠は,具体的構成において異なるものであるから,タンブラーの揺動角度の変化も異なるものであるということができる。そして,これらの各錠に対応する本件発明に係る鍵及び引用発明2に係る鍵も,刻み(窪み)の深さ,大きさ,幅方向の位置は異なるものとなる。 以上のとおり,本件発明と引用発明2は,錠及びそれに対応する鍵の具体的構成が異なるものであるから,タンブラー群が刻み(窪み)の深さ等に応じて揺動角度を変えるという点においては共通しているとしても,上記のとおり前提となる錠及び鍵の具体的構成が異なる以上,一致点と認めることはできない。よって,本件審決による相違点7の認定に誤りはない。 原告は,@本件審決は,本件発明につき,鍵の窪みの位置と深さが鍵のブレードの中心に寄るものほど深くなる旨を認定したが,これは,本件明細書の【図10】の実施例のみに妥当するものであること,A引用発明2において突出量が一定の係合縁部と係合するキー本体の刻みは,支軸を中心とする円弧に沿っていることから,本件審決が認定した相違点7の本件発明に係る鍵としての構成??のうち真の相違点は,鍵の係合凹部の形状の違いのみである旨主張する。 しかし,前記2?ウ 本件発明において,合鍵の窪みが鍵の幅方向の中心に近いものほど深くなるという事実は,本件発明の一実施例である本件明細書の【図10】に限らず,本件発明のとおり,引用発明2における錠につき,その係合縁部の突出量が一定であるとは認められない。 よって,原告の上記主張は,前提において誤りがあり,採用できない。 ? 相違点7に係る容易想到性について ア 本件審決は,相違点7に係る本件発明の構成について,前記第2の3?のとおり,引用発明2並びに引用例1,3及び周知例3から15に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないと判断した。 引用発明2における錠は,C字状のレバータンブラー29が,その実体部の1か所を軸支する支軸31を中心に揺動するというものであるのに対し,引用発明1における錠は,前記2?アのとおり,環状ロータリーディスクタンブラーであるセキュリティ・メンバー21が,その組み合わされるキャリア22のボス22aの中心軸線の周りを回動するもの,引用発明3における錠は,後記4?イのとおり,環状ロータリーディスクタンブラーであるロッキングディスク58が,これを受け入れるロックシリンダー16の中心軸線の周りを回動するというものである。このように,引用発明1及び3における各錠の動作機構は,各環状ロータリーディスクタンブラーを軸支する支軸を備えておらず,よって,そのような支軸を中心に揺動するものではなく,ボス22aないしロックシリンダー16の中心軸線の周りを回動するという点において,引用発明2における錠の動作機構とは,大きく異なるものである。そして,引用発明1から3は,いずれも各錠に対する合鍵に係るものであるから,各錠の動作機構の相違に応じて各鍵の構成も異なってくる。 上記のとおり,引用発明1及び3は,各錠の動作機構において引用発明2と大きく異なり,この相違に応じて鍵の構成も異なるものと考えられるから,引用発明1及び3を引用発明2に適用することは,それ自体,当業者において想定し難いものというべきである。 また,周知例3から15に,本件審決が認定した相違点7の本件発明に係る鍵としての構成??が開示されているとは認められない。 以上によれば,前記審決の判断に誤りはない。 イ 原告の主張について 原告は,本件発明における錠と引用発明2における錠は,技術思想を同じくする,本件発明の鍵の「摺り鉢形の窪み」の一部をそぎ落として「刻み」に変化させても,鍵の本質的機能である解錠の機能に変わりはない,本件特許出願当時,鍵のブレードの平面部に形成された摺り鉢形の窪みを有する鍵は,周知技術であり(周知例3〜9) この鍵を振り子式タンブラー錠に採用することは, , 当業者が当然に考えることであった旨主張する。 しかし,本件発明と引用発明2は,いずれも各錠に対応する合鍵に係る発明であり,鍵に設けられる窪みないし刻みは,それに対応する錠を解錠させるためのものとして錠の動作機構と密接に関連するものであるから,錠の動作機構を捨象して,鍵の窪みないし形状のみによって容易想到性を判断することはできない。 そして, 本件発明と引用発明2は,錠の具体的構成が異なるものであるから,動作機構も異なり,この相違を捨象して,鍵の形状のみによって容易想到性を判断することはできない。 また,周知例3から9には,それぞれ「摺り鉢形の窪み」を有する鍵が開示されているものの,いずれの鍵に対応する錠についても,引用発明2における錠とは異なる動作機構が示されている。よって,引用発明2における錠に,周知例3から9に開示される鍵を適用することは,それ自体,当業者において想定し難いものである。 原告は,引用例1及び3の鍵・錠においては,回転運動するタンブラーの係合突起が鍵の平面部に形成された摺り鉢形の窪みと係合しているところ,この組合せは,鍵の技術分野において周知又は公知であり,これを引用発明2に適用すれば,相違点7に係る本件発明の構成になる旨主張する。 しかし,前記アのとおり,引用発明1及び3は,各錠の動作機構において引用発明2と大きく異なり,この相違に応じて鍵の構成も異なるものと考えられるから,引用発明1及び3の錠と鍵の組合せに係る原告主張の技術を引用発明2に適用することは,それ自体,当業者において想定し難いものというべきである。 原告は,引用発明1及び3の鍵につき,円弧軌道上に位置する窪みを有することから,引用例1及び3に本件発明の構成に係る示唆がある旨主張するが,前記 と同様に,引用発明1及び3を構成する技術の一部を引用発明2に適用することは,それ自体,当業者において想定し難いものである。 原告は,引用発明1及び3から「タンブラーの係合突起と鍵ブレードの窪みとの係合」という技術思想を取り出して引用発明2に適用することは,当業者が容易に想到し得たものであり,部品を一定の角度回転運動させる場合,その回転軸を部品が揺動する位置とするか部品が回動する位置とするかは,当業者の設計事項である旨主張するが,前記 と同様に,引用発明1及び3を構成する技術の一部を引用発明2に適用することは,それ自体,当業者において想定し難いものである。 原告は,本件発明の係合突起と解錠切欠との位置関係は,引用発明1及び3と同じであるから,本件発明と引用発明1及び3が,係合突起と解錠切欠との位置関係において異なることを理由の1つとして相違点7が容易に想到できるものではないとした本件審決の判断は,誤りである旨主張する。 及び後記4 のとおり,原告の上記主張は,本件審決を正解しないものであり,採用できない。 ? 小括 以上によれば,原告主張の取消事由2は,理由がない。 4 取消事由3(引用発明3を主引用例とする容易想到性の判断の誤り)について ? 引用発明3の認定 ア 引用例3(甲5)には,おおむね,以下のとおり記載されている(下記記載中に引用する図面については,別紙4参照)。 本発明の分野 この発明は,ロッキングバーとロッキングディスクの積層体とを用い,ピッキングを困難にしたことを特徴とする高セキュリティ錠に関するものである(1欄2〜9行)。 従来技術の説明 錠のピッキング耐性は,非常に重要な特性である。この点に関し,ロータリーディスクタンブラー錠は,開錠するために所定の様式でタンブラーを整列させるためには,鍵が錠に挿入され,次いで,回転されなければならない。しかし,この錠のピッキング耐性は,特に設計された鍵の上の突起を収容するために必要となる大きい鍵孔及び錠のフェイスに設けられた鍵のための開口部に対するロータリーディスクのオーバーラップの不足によって減殺される。同オーバーラップは,キーが存在しないときには鍵穴を閉じてピッキングを妨害する。ロータリータンブラー錠は,前記のとおり大きい鍵孔を要し,また,上記オーバーラップの不足のために鍵孔がいつも開いているので,容易にピッキング工具を錠に挿入することができ,したがって,ピッキング耐性が減殺されることになる。 現在,利用可能な錠はピッキング耐性が不足しているので,ピッキング耐性が高く,かつ,製造コストを最小にする構造の錠を得ることが望ましくなっている(1欄10〜11,21〜44行)。 発明の概要 a 本発明は,妥当なコストでピッキング耐性の問題の解決法を提供する。開示された錠は,ピッキング耐性があるとともに,その構造が比較的簡単であることから,製造と運用コストを最小にする(1欄45〜50行)。 b 本発明は,ハウジング,ロックシリンダー,複数のロッキングメンバー及びロッキングバーを含む錠を提供する。掛け金装置は,ロックシリンダーに作動的に接続され,そして,ロックシリンダーの回転は,ロック及びアンロック位置の間で,掛け金装置の動きに作用する。各ロッキングメンバーには,その外周のゲイティングノッチと,錠に挿入されるときに鍵に係合するカム表面とが設けられている。ロッキングバーは,通常,ロックシリンダーをハウジングと結合する第1ポジションを占める。適切なキーの直線的な挿入がロッキングメンバーを移動させ,ゲイティングノッチは所定の様式で整列される。この整列は,ロッキングバーをゲイティングノッチ内に受容させ,ロッキング手段をロックシリンダーに結合させ,ロックシリンダーをハウジングから切り離し,掛け金装置のロック状態とアンロック状態との間の移動を許容する(1欄67行〜2欄16行)。 好適な実施例 a 本発明の好ましい形態においては,錠10は,フェイスプレート12,外側ハウジング14及びロックシリンダー16を有している。掛け金の作動棒18は,作動的にロックシリンダー16に取り付けられて一緒に回転可能になっており,そして,スナップリング20が,外側ハウジング14の中でロックシリンダー16を保持するために備えられている。 フェイスプレート12は,ロックシリンダー16を受け取るための開口22を有しており,ロックシリンダー16は,鍵穴24を有している(2欄43〜54行)。 b 図6のとおり,外側ハウジング14は,それを貫通する,実質的に筒状の穴34を有する。穴34は,フェイスプレート12に設けられた開口22に連通しており,同心である。ロックシリンダー16は,外側ハウジング14の穴34とフェイスプレート12の開口22に受け入れられて,外側ハウジング14とフェイスプレート12に対して回転可能である(2欄64行〜3欄2行)。 c ロックシリンダー16は,アンロック状態においては,上記のとおり外側ハウジング14に対して回転可能であり,ロック状態においては,外側ハウジング14と結合される。ロックシリンダー16が回転を許されているか,それとも禁止されているかは,ロックシリンダー16に対するロッキングバー40の位置に依存している。ロッキングバー40は,ロック状態においては,図4に示されているように,外側ハウジング14に設けられた縦に延びるリセス42とロックシリンダー16に設けられた縦のスロット44を占め,これによって,外側ハウジング14に対するロックシリンダー16の回転を防ぐ。ロッキングバー40は,リセス42のベース48の中に取り付けられた永久磁石46によって,リセス42内に保持される(3欄15〜34行)。 ロッキングバー40は,図5及び6のとおり,アンロック状態において,ロックシリンダー16に設けられた縦のスロット44と複数のゲイティングノッチ50を占める。外側ハウジング14のリセス42から複数のゲイティングノッチ50への半径方向のロッキングバー40の動きは,外側ハウジング14に対するロックシリンダー16の回転を許容する。リセス42は,ロックシリンダー16の回転でロッキングバー40に係合するカム表面を形成する傾斜した壁52を有し,リセス42から複数のゲイティングノッチ50にロッキングバー40を駆動する(3欄40〜54行)。 d 図6のとおり,ロックシリンダー16は,実質的に筒状の同心の穴54を有し,その中の片端でフランジ56を形成している。スペーサ60によって分離された複数のロッキングディスク58が,ロックシリンダー・ボア54に受け入れられて,それに対して回転可能である(3欄55〜60行)。 図4及び5のとおり,各ロッキングディスク58は,圧縮スプリング62によって回転角方向に付勢されており,その圧縮スプリング62は,ロッキングディスクの周辺に設けられたリセス64に受け入れられている。スプリング62の片端は,リセス64までに,ロッキングディスク58の周辺で形成した最初の肩66に接触している。スプリング62のもう一方の端は,ロックシリンダー16の周辺に設けられたリセス70に受け入れられた縦に延びるサポートメンバー68に接触している。スプリング62は,図4に示されているように,それらの各々のロッキングディスク58を時計周りに付勢しており,ロッキングディスク58の周囲に,リセス64までに,形成した第2の肩72がサポートメンバー68に接触しており,鍵の挿入の前に,お互いに対してディスクの整列を引き起こす(3欄63行〜4欄9行)。 各ロッキングディスク58は,鍵のシャンクを受け入れるための開口74を有している。鍵が直線的に錠に挿入されるときに鍵と係合するために面取りされた表面78を有する突起76が,開口74内へ実質的に半径の方向に延びている。面取りされた表面78は,鍵のシャンクが開口74に挿入されたときに,ロッキングディスク58とカム係合し,ロッキングディスク58の回転を引き起こす。適切な鍵が錠10に差し込まれたとき,各ロッキングディスク58の角度方向運動は,ゲイティングノッチ50が相互に整列され,その中へロッキングバー40の受け入れを許容し,ロッキングディスク58をロックシリンダー16に結合し,図5に示されているように,ロックシリンダー16を外側ハウジング14から分離させる。結合されると,ロックシリンダー16は,ロッキングディスク58が回転したときに,回転する(4欄10〜28行)。 e 図7のとおり,錠10は,シャンク上に窪み82を有する鍵80によって操作される。窪み82は,異なった深さを有しており,鍵80が錠10に完全に挿入されたときにロッキングディスク58上の突起76と場所が一致するように,鍵80のシャンクの上に間をおいて配置されている。各窪みの深さは,ロックシリンダー16に対して,ロッキングディスク58の異なった角運動をもたらし,そして,その結果,ロッキングディスク58外周のゲイティングノッチ50の位置は,突起76に係合することになっている窪みの深さによって決定される。ゲイティングノッチ50は,ロッキングディスク58の外周に位置しているので,ロッキングディスク58の上の突起76に係合する窪み82が適切な深さのものであれば,ロックシリンダー16の縦のスロット44に整列される。かくして,適切な鍵が錠10に差し込まれたなら,各ロッキングディスクの回転は,各ゲイティングノッチ50が他の全てのゲイティングノッチと整列するようなものとなり,その中にロッキングバーを受け入れることなどを可能にする(4欄29〜49行)。 次に,鍵が回されると,ロッキングバー40は,リセス42から,縦のスロット44に整列した複数のゲイティングノッチ50の中へとカム案内され,ロックシリンダー16を,複数のロッキングディスク58と共に,外側ハウジング14に対して回転させる(4欄65行〜5欄6行)。 f お互いに対して様々なオリエンテーションに多数のロッキングディスクが利用でき,そして,鍵のシャンクにおける窪みを様々な深さのものにでき,また,窪みの欠乏を追加深さであると考えることができるので,非常に多くの異なった錠組合せが,この錠で可能である(5欄43〜49行)。 また,ロッキングディスク上の突起が,ロックシリンダーに設けられた鍵孔を横切って延びているとともに,お互いに重なるように設計され,付勢されていることから,標準のピッキングテクニックによってロッキングディスクを整列させることが難しくなっている(5欄59〜63行)。 イ 前記アによれば,引用例3には,本件審決が認定したとおりの引用発明3(前記第2の3?ウ)が記載されているものと認められる。 そして,引用例3には,引用発明3につき,以下のとおり開示されているものと認められる。 引用発明3は,ロッキングバーとロッキングディスクの積層体とを用い,ピッキングを困難にしたことを特徴とする高セキュリティ錠に関するものである。 錠のピッキング耐性は,非常に重要な特性であるところ,従来のロータリーディスクタンブラー錠については,特に設計された鍵の上の突起を収容するために必要となる大きい鍵孔及び錠のフェイスに設けられた鍵のための開口部に対するロータリーディスクのオーバーラップの不足によって,ピッキング耐性が減殺されるという問題があった。そして,現在,利用可能な錠はピッキング耐性が不足しているので,ピッキング耐性が高く,かつ,製造コストを最小にする構造の錠を得ることが望ましくなっている。 引用発明3は,妥当なコストでピッキング耐性の問題の解決法を提供する。 開示された錠は,ピッキング耐性があるとともに,その構造が比較的簡単であることから,製造と運用コストを最小にする。 引用発明3は,錠10に用いられる鍵であるところ,錠10は,フェイスプレート12,外側ハウジング14及びロックシリンダー16を有している。 フェイスプレート12は,ロックシリンダー16を受け取るための開口22を有している。 外側ハウジング14は,それを貫通する,実質的に筒状の穴34を有する。穴34は,フェイスプレート12に設けられた開口22に連通しており,同心である。 ロックシリンダー16は,鍵穴24を有しており,外側ハウジング14の穴34とフェイスプレート12の開口22に受け入れられている。 ロック状態においては,ロッキングバー40が,外側ハウジング14に設けられた縦に延びるリセス42とロックシリンダー16に設けられた縦のスロット44を占め,これによって,ロックシリンダー16は,外側ハウジング14と結合され,回転できない状態になる。 アンロック状態においては,ロッキングバー40が,リセス42から外れ,ロックシリンダー16に設けられた縦のスロット44と複数のゲイティングノッチ50を占め,これによって,ロックシリンダー16は,外側ハウジング14とフェイスプレート12に対して回転できるようになる。 ロックシリンダー16は,実質的に筒状の同心の穴54(ロックシリンダー・ボア54)を有し,スペーサ60によって分離された複数のロッキングディスク58が,ロックシリンダー・ボア54に受け入れられて,それに対して回転可能である。 各ロッキングディスク58は,鍵のシャンクを受け入れるための開口74を有している。鍵が直線的に錠に挿入されるときに鍵と係合する突起76が,開口74内へ実質的に半径の方向に延びている。 適切な鍵80が錠10に差し込まれると,鍵80のシャンクが各ロッキングディスク58の開口74に挿入され,れた窪み82と係合するとともに,突起76の面取りされた表面78がロッキングディスク58とカム係合してその回転を引き起こし,それによって,ゲイティングノッチ50が相互に整列して,その中へロッキングバー40を受け入れることができる状態となる。鍵が回されると,ロッキングバー40がリセス42から外れてゲイティングノッチ50に収納され,ロックシリンダー16は,複数のロッキングディスク58と共に,外側ハウジング14に対して回転する。すなわち,複数のロッキングディスク58は,ロックシリンダー16の中心軸線の周りを回動することになる。 鍵80は,シャンク上に窪み82を有する。窪み82は,異なった深さを有しており,鍵80が錠10に完全に挿入されたときにロッキングディスク58上の突起76と場所が一致するように,鍵80のシャンクの上に間をおいて配置されている。各窪み82の深さは,ロックシリンダー16に対して,ロッキングディスク58の異なった角運動をもたらし,そして,その結果,ロッキングディスク58外周のゲイティングノッチ50の位置は,突起76に係合することになっている窪み82の深さによって決定される。 お互いに対して様々なオリエンテーションに多数のロッキングディスクが利用でき,そして,鍵のシャンクにおける窪みを様々な深さのものにでき,また,窪みの欠乏を追加深さであると考えることができるので,非常に多くの異なった錠組み合わせが,この錠で可能である。 また,ロッキングディスク上の突起が,ロックシリンダーに設けられた鍵孔を横切って延びているとともに,お互いに重なるように設計され,付勢されていることから,標準のピッキングテクニックによってロッキングディスクを整列させることが難しくなっている。 ? 本件発明と引用発明3との相違点について ア 本件発明と引用発明3との間には,本件審決が認定したとおりの相違点8から11(前記第2の3?イ〜オ)が存在するものと認められる。 イ 相違点Bについて 相違点8の環状ロータリーディスクタンブラーの回動機構及び回動軸についてみると,本件発明においては,前記2 発明3においては,環状ロータリーディスクタンブラーであるロッキングディスク58が,ロックシリンダー16の穴(ロックシリンダー・ボア54)に受け入れられ,ロックシリンダー16に対して回転可能であることから,ロッキングディスク58(環状ロータリーディスクタンブラー)は,ロックシリンダー16の中心軸線の周りを回動する(前記?イ )。 次に,相違点8の係合突起及び解錠切欠の突設位置についてみると,本件発明においては,前記 のとおりである。他方,引用発明3においては,突起76が,ロッキングディスク58の中央に開口された開口74へ実質的に半径の方向に延び,解錠切欠であるゲイティングノッチ50は,ロッキングディスク58の外周に設けられている。 相違点11の合鍵の窪みに関する構成についてみると,本件発明においては,前記2?イ のとおり,タンブラー群の係合突起と係合する合鍵の窪みの位置と深さは,支軸を中心とする円弧に沿ったものとなる。 他方,引用発明3においては,鍵80(合鍵)の窪み82は,突起76と係合したとき,各ロッキングディスク58が窪み82の深さに対応して回転角度が変わる。 の中心軸線の周りを回動することから,ロックシリンダー16の穴に受け入れられたロッキングディスク58の中央の開口74に設けられた突起76と係合する鍵80の窪み82は,鍵の幅方向中心に近いものほど浅く,幅方向端部に近いものほど深くなる。突起76の突出量が一定であれば,突起76の先端とロッキングディスク58の回転軸であるロックシリンダー16の中心軸線との距離が一定になることから,引用発明3に設けられた複数のロッキングディスク58の突起76と係合する鍵80の複数の窪み82の位置と深さ(本件発明のタンブラー群の係合突起と係合する合鍵の窪みの位置と深さに対応する。,すなわち,各ロッキングディスク5 )8の各突起76と係合する鍵80の各窪み82の位置と深さの軌跡は,ロックシリンダー16の中心軸線を中心とする円弧に沿ったものとなる。しかし,引用例3には,突起76の突出量については開示されておらず,したがって,突起76の突出量が一定であるか否かは不明であるから,引用発明3に設けられた複数のロッキングディスク58の突起76と係合する鍵80の複数の窪み82の位置と深さの関係は,不明であるといわざるを得ない。 以上によれば,本件審決が相違点8及び11を鍵の構成として言い換えた相違点B(前記第2の3?カ)についても,本件審決の認定に誤りはない。 ウ 原告の主張について 原告は,引用発明3のロッキングディスク58に設けられた突起76は,円軌跡を描くのであるから,それと係合する鍵の窪み82の位置や具体的形態によっては,窪み82の深さや幅方向の位置に応じてロッキングディスク58の回転角度は変わり得るものであり,この点においては,本件発明と同様であるとして,本件審決による相違点11の認定は誤りである旨主張する。 しかし,前記2?ウ 本件発明においては,係合突起の突出量が一定であることから,タンブラー群の係合突起と係合する合鍵の窪みの位置と深さ,すなわち,各環状ロータリータンブラーの各係合突起と係合する合鍵の各窪みの位置と深さの軌跡が,支軸を中心とする円弧に沿ったものとなる。他方,引用発明3において,本件発明のタンブラー群の係合突起と係合する合鍵の窪みの位置と深さに対応するのは,複数のロッキングディスク58の突起76と係合する鍵80の複数の窪み82の位置と深さであり,これは,各ロッキングディスク58の各突起76と係合する鍵80の各窪み82の位置と深さの軌跡を指す。しかし,本件発明と異なり,引用例3には,突起76の突出量については開示されておらず,したがって,突起76の突出量が一定であるか否かは不明であり,複数のロッキングディスク58の間で同突出量が異なれば,それに応じて各ロッキングディスク58の各突起76と係合すべき鍵80の各窪み82の位置と深さも変わってくるから,上記軌跡において,鍵80の各窪み82の位置と深さの関係は,不明になるといわざるを得ない。 よって,原告の前記主張は,採用できない。 原告は,本件審決は,相違点Bの認定に当たり,本件発明につき,鍵の窪みの位置と深さが鍵のブレードの中心に寄るものほど深くなる旨を認定したが,これは,本件明細書の【図10】の実施例のみに妥当するものである旨主張するが,前記2?ウ ? 相違点8及び11に係る容易想到性について ア 相違点8は,錠の構成の相違であり,前記?イのとおり,本件発明における錠は,環状ロータリーディスクタンブラーが,その実体部の1か所を軸支する支軸を中心に揺動するというものであるのに対し,引用発明3における錠は,ロッキングディスク58(環状ロータリーディスクタンブラー)が,これを受け入れるロックシリンダー16の中心軸線の周りを回動するというものであり,両者の錠は,明らかに動作機構を異にする。そして,本件発明及び引用発明3は,それぞれの錠に対応する合鍵に係るものであるから,環状ロータリーディスクタンブラー(ロッキングディスク58)に設けられた係合突起(突起76)に係合することによって解錠する合鍵の窪みに関する相違点11も,前記動作機構の相違に対応するものということができる。 引用例3には,引用発明3における上記動作機構の錠及びこれに対応する鍵80についての課題は,記載も示唆もされていない。証拠上,本件特許出願当時,上記錠ないしこれに対応する鍵80についての課題に関する技術常識が存在したとは認めるに足りない。 したがって,本件特許出願当時,当業者が,引用発明3において,明らかに動作機構を異にする本件発明における錠及びこれに対応する合鍵に係る構成を採用する動機付けの存在は認めるに足りないから,上記採用により相違点8及び11に係る本件発明の構成を容易に想到し得たということはできない。 イ 原告の主張について 原告は,本件発明の鍵及び引用発明3の鍵の窪みが沿う円弧の中心位置(相違点B)は,重なり合うか,重なるにしても誤差にすぎず,そもそも鍵の構成から上記中心位置を知ることは,一般的には困難であるから,上記中心位置の相違は,実質的な相違点ではない旨主張する。 しかし,前記 のとおり,引用発明3における錠に設けられた複数のロッキングディスク58の突起76と係合する鍵80の窪み82の位置と深さの関係は,不明であり,上記位置と深さの軌跡が必ずしも円弧に沿うものということはできず,原告の上記主張は,前提において誤りがある。 また,本件発明及び引用発明3は,いずれも鍵の発明ではあるものの,それぞれの錠に対応する合鍵としての発明であるから,容易想到性の判断に当たり,前記アのとおり明らかに動作機構を異にする各錠の相違を捨象して,鍵の窪みそのものの形状のみを対比して考えるべきではない。 原告は,仮に,本件発明と引用発明3とは,鍵の窪みが沿う円弧の中心位置が実質的に相違するとしても,本件特許出願当時,ロータリーディスクタンブラー錠において,中心回動式のタンブラー及び揺動式のタンブラーは,いずれも既に当業者間に周知されていたのであるから,引用発明3の中心回動式のタンブラーに代えて揺動式のタンブラーを採用することは,当業者が容易に行うことのできる設計変更にすぎない旨主張する。 しかし,前記アのとおり,中心回動式のタンブラーと揺動式のタンブラーは,明らかに動作機構を異にするものであり,同動作機構は,錠全体の仕組みに関わるものである。したがって,引用発明3の中心回動式のタンブラーを,本件特許出願当時において既に当業者間に周知されていたという揺動式のタンブラーに替えることは,単なるタンブラーの種類の変更にとどまらず,錠全体の仕組みを大きく変えることとなり,これに伴って錠に対応する合鍵である鍵の構成も変更することになる。 よって,原告が主張するとおり引用発明3のタンブラーを揺動式のタンブラーとすることは,錠の合鍵としての引用発明3の内容を全体的に変えることとなるから,当業者が容易に行うことのできる設計変更の域にとどまるものではない。 原告は,本件発明において,係合突起はロータリーディスクタンブラーの内側である鍵挿通孔の開口端縁,解錠切欠はロータリーディスクタンブラーの外側端縁にあり,係合突起と解錠切欠との位置関係は,引用発明3と同じであるとして,上記位置関係の相違を理由の1つとして相違点8及び11が容易に想到できるものではないとした本件審決の判断は,誤りである旨主張する。 しかし,本件審決は,単に係合突起と解錠切欠がロータリーディスクタンブラーのどの部分に設けられているかを問題としているわけではなく,係合突起と解錠切欠それぞれの,ロータリーディスクタンブラーの揺動ないし回動の軸との位置関係の相違,すなわち,本件発明における支軸との位置関係及び引用発明3におけるロックシリンダー16の中心軸線との位置関係を捉えているものと解される。よって,原告の上記主張は,本件審決を正解したものではない。 原告は,本件審決が,原告において引用発明3に適用し得る周知技術の根拠の1つとして挙げた引用発明2の鍵につき,タンブラーに突設した係合突起と係合する窪みをブレードの平面部に形成したものではない旨認定し,これを理由の1つとして相違点8及び11が容易に想到できるものではないと判断したことは,誤りである旨主張する。 前記 のとおり,そもそも,引用例2(甲2)に開示された鍵の形状は,「刻みを,平板状のキー本体の両側辺に設けた」もののみであり,これをもって,窪みをブレードの平面部に形成したものということはできない。加えて,仮に,タンブラーに突設した係合突起と係合する窪みをブレードの平面部に形成した鍵が,本件特許出願当時において周知技術であったとしても,前記 のとおり,本件発明及び引用発明3は,動作機構を異にするそれぞれの錠に対応する合鍵としての発明であるから,引用発明3の鍵を,ブレードの平面部に窪みを形成した鍵に変更したとしても,本件発明における錠とは異なる動作機構を有する錠に対応する合鍵である限り,相違点8及び11に係る本件発明の構成には至らない。 ? 小括 以上によれば,原告主張の取消事由3は,理由がない。 5 結論 以上のとおり,原告主張の取消事由にはいずれも理由がなく,よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 |
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追加 | |
(別紙1)本件明細書(甲27)掲載の図面従来のレバータンブラー錠の一例を示す縦断面図【図1】の横断面図リテーナーの外観斜視図仕切板の正面図この発明の一実施例によるロータリーディスクタンブラー錠の横断面図でタンブラーを外した状態を示す。 この発明の一実施例によるロータリーディスクタンブラー錠の合鍵の平面図この発明の一実施例によるロータリーディスクタンブラー錠の合鍵の側面図この発明の一実施例によるロータリーディスクタンブラー錠の横断面図で,合鍵のブレードの平面部に当接する係合突起を設けたタンブラーを装着した状態を示す。 【図8】と同様のロータリーディスクタンブラー錠の横断面図で,鍵穴に合鍵が挿入された状態を示す。 (別紙2)引用例1(甲1)掲載の図面図1図4図5図6図7(別紙3)引用例2(甲2)掲載の図面【図1】リバーシブルキーの実施例を示す平面図【図2】【図1】のTT-TT線による拡大断面図【図3】【図1】のキーを差し込んだ状態におけるレバータンブラー錠の一例を示す縦断側面図【図4】【図3】のレバータンブラー錠からキーを抜き取った状態におけるTX-TX線における横断面図【図5】【図3】のレバータンブラー錠のX-X線における横断面図(別紙4)引用例3(甲5)掲載の図面図4作動メカニズムがロック状態にあるときの,ロック部品の組み立てられた関係を示す断面図図5図4の部分的破断図図6作動メカニズムがロック状態にあるときの,ロッキングディスクに対するロッキングバーの位置を示す側面断面図図7鍵のシャンク上の窪みを示す鍵の側面図 |
裁判長裁判官 | 部眞規子 |
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裁判官 | 古河謙一 |
裁判官 | 鈴木わかな |