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関連審決 不服2015-271
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事件 平成 28年 (行ケ) 10060号 審決取消請求事件

原告 株式会社ドクター中松創研
訴訟代理人弁理士 鮫島信重
被告特許庁長官
指定代理人小野忠悦 中田誠 赤木啓二 山村浩 田中敬規
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2016/09/21
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の求めた裁判
特許庁が不服2015-271号事件について平成28年1月25日にした審決を取り消す。
事案の概要
本件は,特許出願の拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。争点は,@明確性要件(特許法36条6項2号)の充足の有無,A実施可能要件(特許法36条4項1号)の充足の有無及びB進歩性判断の是非である。
1 特許庁における手続の経緯 原告は,名称を「ソーラー農業システム」(特許出願時の名称:「ソーラー農業」)とする発明につき,平成24年7月12日,特許出願(特願2012-156313号,請求項の数1〔甲1〕。以下「本願」という。)をし,平成24年7月20日(乙7),平成25年4月12日(乙8)及び平成26年6月6日(甲4の2)に手続補正をしたが,同年7月11日付けで拒絶理由通知を受け(甲5),同年9月3日に手続補正をしたが(甲6の2),同月25日付けで,上記同月3日付け手続補正を却下されるとともに,拒絶査定を受けたので(甲7の1・2) 平成27年1月7日, ,拒絶査定不服審判請求(不服2015-271号)をするとともに(甲8の1),手続補正をしたが(甲8の2) 同年9月14日付けで拒絶理由通知を受けた , (甲9)。
特許庁は,平成28年1月25日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は,同年2月17日,原告に送達された。
2 本願発明の要旨 本願の平成27年1月7日付け手続補正後の請求項1に係る発明(本願発明)は,次のとおりである(甲8の2。以下,出願当初の明細書及び図面に,平成24年7月20日付け手続補正,平成25年4月12日付け手続補正及び平成26年6月6日付け手続補正がなされた後のもので,補正却下をされた同年9月3日付け手続補正を除き,平成27年1月7日付け手続補正が加わった明細書及び図面を「本願明細書」という。。
)「 ソーラーパネルをあぜ道を挟んで配置し,複数のソーラーパネルで日光を反射 させて他のソーラーパネル内の裏側に入射させ,且つ該ソーラーパネルで雨と風 を防いで農作物を栽培できるように該ソーラーパネルを地面に対して斜めに傾斜 させて取り付け,前記あぜ道からソーラーパネルと農作物を保守点検できるよう にしたことを特徴とするソーラー農業システムにおいて,日光を前記あぜ道に侵 入させ,その上にソーラーパネルを設け,更にあぜ道を飛び飛びに設けたことを 特徴とするソーラー農業システム。」 3 審決の理由の要点 平成27年9月14日付け拒絶理由は妥当なものと認められるので,本願は,この拒絶理由によって拒絶すべきものである。
なお,審決は上記拒絶理由をすべて引用したものと解されるところ,平成27年9月14日付け拒絶理由通知書の記載は,次のとおりである。
@ 明確性要件の非充足「 ア 請求項1に記載の『ソーラー農業システム』の発明は, 『物』の発明であると解されるところ,請求項1の記載からは,その構成要素(装置や部材等)が, 『ソーラーパネル』のみからなるのか,他の構成要素を含むのか明確でない。また, 『ソーラー農業システム』の発明が,農作物を栽培できるものであるとすると,そのための構成(装置や部材等)が不明である。
イ 請求項1における『ソーラーパネルで雨と風を防いで農作物を栽培できるように』との記載は, 『ソーラーパネル』の使用方法や作用効果(機能)を特定するとしても,その構造や取付態様を特定するものではない。したがって,上記記載で特定される『ソーラーパネル』の構成は明確でない。
ウ 請求項1における『前記あぜ道からソーラーパネルと農作物を保守点検できるようにしたこと』との記載は, 『ソーラーパネル』の使用方法や作用効果(機能)を特定するとしても,その構造や取付態様を特定するものではない。したがって,上記記載で特定される『ソーラーパネル』の構成は明確でない。なお,『農作物』は,『ソーラー農業システム』の発明 を構成するものではなく,保守点検の対象となるものでもない。
エ 請求項1に『日光を前記あぜ道に侵入させ,その上にソーラーパネルを設け,更にあ ぜ道を飛び飛びに設けたこと』と記載されているが, 『その上』の『その』が何を指すのか明 らかでなく,また,『あぜ道を飛び飛びに設けたこと』との記載が明確でないから(例えば, あぜ道を挟んで設けることや,あぜ道の上を間を挟んで設けること等が想定できるが,明ら かではない。, )『ソーラーパネル』がどのように配置され,取り付けられているのか明確でな い。」 A 実施可能要件の非充足「 請求項1に記載の『ソーラー農業システム』の発明は,…農作物を栽培するための構成(装 置や部材等)が不明ではあるが,請求項1に『ソーラーパネルで雨と風を防いで農作物を栽 培できる』と記載されているように,農作物を栽培することを特定しているとも解される。
しかしながら,発明の詳細な説明の記載からは,ソーラーパネルの下で農作物を栽培する ことができるのかどうか不明である。すなわち,ソーラーパネルの下では,農作物に(太陽) 光が十分に届かず,生育に支障があるものといえる。
よって,この出願の発明の詳細な説明は,当業者が請求項1に係る発明を実施することが できる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。」 B 進歩性欠如「 この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前日本国内又は外国において頒布された 下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基 いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発 明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けるこ とができない。
記 ・請求項1・引用文献等:1,2・備考 ア 本願発明は,…明確でないので,進歩性の判断に際しては,発明の詳細な説明の記 載を参酌して,ソーラーパネルがあぜ道を有する農地に設置されるものとして検討する。
なお,『あぜ道』は,『田の間に通ずる道である。(株式会社岩波書店広辞苑第六版)が, 』 ここでは畑に設けた人が通る道として検討する。
イ 引用文献1(特に段落【0001】 【0006】〜【0009】 【0012】 【001 3】 【0021】〜【0025】,及び図1,2を参照。)には,裏面に光反射面を有する太 陽光パネル(ソーラーパネル)を,栽培する植物を覆うように傾斜した状態で,畑とする 地面の上に複数並べた,太陽光発電および植物生育システムが記載されている。また,引 用文献1に記載の太陽光パネル(ソーラーパネル)は地面に対して傾斜して設けられてお り,農作物を風雨から守ることが可能であると認められる。さらに,引用文献1には,太 陽光が太陽光パネル(ソーラーパネル)により遮られるが,太陽光パネル(ソーラーパネ ル)の周囲から漏れる(供給される)ことも記載されている(段落【0025】。
) ウ そして,ソーラーパネルを畑(農地)に設置する際にどのように配置するかは,当 業者が適宜に決定し得る程度の設計的事項であるといえるところ,引用文献1には, 『太陽 光パネルにとっては,地上に設置されることで保守点検が容易になる』と記載されている ように(【0009】,簡単に触れる位置に太陽光パネルを配置する方が好ましいことが示 ) 唆されており,また,人が通る道(あぜ道)を設け,その道からソーラーパネルの保守点 検を行うようにすれば保守点検作業が容易なことは当業者にとって自明であるから, (農 畑 地)に従来から周知慣用(例えば,引用文献3の段落【0003】を参照。)である人が通 る道(あぜ道)を適宜設け,ソーラーパネルをそのあぜ道を挟んで配置することや,あぜ 道の上に配置することは,当業者が適宜になし得る程度のことである。
エ また,引用文献2(特に段落[0037] [0038],FIG.5を参照。)には,裏面 が反射層(reflective surface 8)となったソーラーパネル(solar panels 21)を,傾 斜させた状態で複数並べて温室の屋根(roof 12a of green house)に配置し,複数の ソーラーパネルの表面で反射させた太陽光(sunlight 90)を,隣合うソーラーパネルの 裏面の反射層に当てて下方へ反射させることにより,ソーラーパネルの下の植物栽培エリ ア(the dark planting area 10)に太陽光を届ける,温室用ソーラーモジュールが記載 されており,引用文献1に記載された発明と引用文献2に記載された技術は,太陽光パネ ルの下に配置した植物の光環境を改善するという共通の課題を有しているから(特に引用 文献1の段落【0025】,引用文献2の[0038]を参照。,植物がより多くの太陽光 ) を得られるようにするために,引用文献1に記載された発明に引用文献2に記載された技 術を適用して,太陽光パネルの表面で反射させた太陽光(日光)を,隣合う太陽光パネル の裏面に当てて下方へ反射させ,太陽光パネルの下に配置した植物に照射するように,ソ ーラーパネルを配置することは,当業者が容易に想到し得たことである。
オ 以上のとおりであるから,本願発明は,当業者が引用文献1に記載された発明及び 引用文献2に記載された技術並びに周知技術に基いて容易に発明することができたもので ある。
引用文献等一覧 1. 登録実用新案第3168944号公報 2. 欧州特許出願公開第2471354号明細書 3. 特開2002-138452号公報(周知例) 」
原告主張の審決取消事由
1 取消事由1(明確性要件に関する判断の誤り) (1) 「ソーラー農業システム」について 審決は,「ソーラー農業システム」が明確でないと認定する。
しかしながら,本願明細書の【0010】【図5】【図10】から,本願発明が,農作地にソーラーパネル10を斜めに傾けて取り付け,あぜ道を介して対向する位置にある他のソーラーパネル10からの反射光をソーラーパネル10の裏面で受け て,その反射光を野菜等が栽培されている地面に照射するとの構成を有することは,明確である。
したがって,「ソーラー農業システム」は,明確である。
(2) 「ソーラーパネル」の構成について(その1) 審決は, 「ソーラーパネルで雨と風を防いで農作物を栽培できるように」と特定しても,「ソーラーパネル」の構成が明確にならないと認定する。
しかしながら,本願発明で用いるソーラーパネルは,本願出願時における標準的なソーラーパネルであって,特定の形状等に特化されたものではなく,その取付態様も,一般的なもので構わず,本願明細書の【図7】〜【図9】には,ソーラーパネルを取り付けるための指示フレームの構成とソーラーパネルの取付態様が示されてもいる。特許請求の範囲に,風向きまで考慮した記載をする必要性はない。
したがって,「ソーラーパネル」の構成は,明確である。
(3) 「ソーラーパネル」の構成について(その2) 審決は, 前記あぜ道からソーラーパネルと農作物を保守点検できるようにしたこ 「と」と特定しても,「ソーラーパネル」の構成が明確にならないと認定する。
しかしながら,上記(2)のとおり,「ソーラーパネル」の構成は,明確である。なお, 「農作物」が本願発明の構成要素ではなく,また,保守点検の対象となるものではないことは,いうまでもない。
(4) 「日光を前記あぜ道に侵入させ,その上にソーラーパネルを設け,更にあぜ道を飛び飛びに設けたこと」について 審決は, 「日光を前記あぜ道に侵入させ,その上にソーラーパネルを設け,更にあぜ道を飛び飛びに設けたこと」の趣旨が不明確であり, 「ソーラーパネル」の構成が明確ではないと認定する。
「その上に」の「その」は,本件明細書の【図6】のとおり,あぜ道とあぜ道との間に配置された農作地のことである。
「農作地」の意味は技術常識であり,農作地の上にソーラーパネルを設けると解釈しても,何ら無理はない。また, 「あぜ道を飛 び飛びに設けたこと」とは,上記図面のとおり,あぜ道を,農作地を挟んで交互に設けることである。ソーラーパネルの配置は,本件明細書の【図6】 【図10】 【図 〜12】に示されるように,あぜ道を挟んで農作地上に一定の位置決めにより配置されている。
したがって, 「日光を前記あぜ道に侵入させ,その上にソーラーパネルを設け,更にあぜ道を飛び飛びに設けたこと」は,明確である。
2 取消事由2(実施可能要件に関する判断の誤り) 審決は,本願明細書の発明の詳細な説明の記載からは,ソーラーパネルの下で農作物を栽培することができるのかどうか不明であると認定する。
しかしながら,@ランプの代わりに太陽光をソーラーパネルの裏面に照射して,その反射光を地面の作物の上に照射させれば,光合成を行わせることができることはいうまでもなく,また,Aソーラーパネルの下面に発光体を取り付けて農作物を育成する例もある(甲2の【0025】,甲10の[0038])。反射光を利用する場合,雨天や曇天により光量が少なくなることもあるが,通常は2日程度で天気は回復するので,そのまま放置してもよいし,雨天や曇天の日が続くなら,発光体を反射光と併用すればよい。
したがって,本願明細書の発明の詳細な説明の記載は,当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものである。
3 取消事由3(進歩性判断の誤り) (1) 甲2発明について 審決における引用文献1である登録実用新案第3168944号公報(甲2)に記載された発明(甲2発明)は,4本の支柱で支えた天井部に太陽光パネルを配置し,太陽光パネルの裏面に取り付けたランプで光をあてるようにして植物育成を行うものであり,あぜ道とは全く関係のない発明である。
(2) 甲10発明について 審決における引用文献2である欧州特許出願公開第2471354号明細書(甲10)に記載された発明(甲10発明)は,温室の屋根にソーラーパネルを配置し,光ランプで植物に光をあてるようにして植物育成を行うものであり,あぜ道とは全く関係のない発明である。また,システムは大がかりとなり,保守点検が容易ではない。
(3) 容易想到性について ア 後記相違点1について @ 本願発明の特徴は,飛び飛びに設けられたあぜ道に日光を侵入させ,その上にソーラーパネルを設けたことであり,このようにあぜ道を設けたことにより,1つのソーラーパネル単位で保守点検を行えることが可能となる。
保守点検を容易にするためだけの目的であるならば,1つのソーラーパネルから他のソーラーパネルまで歩いていけば足り,あぜ道は必要ないので,甲2発明のように畑の地面にソーラーパネルが複数並べられているにすぎないものから,本願発明のようにあぜ道を配置することを想到するのは容易ではない。また,相違点1の構成を想到するということは,ソーラーパネルの位置に合わせてあぜ道を造っていくことになるが,これは,本願発明とは,発想の順序が逆である。
A 本願発明は,元々あって,人の通行用にしか用いられていなかったあぜ道を,ソーラーパネルを設置するに際して利用することにより,このあぜ道を利用したソーラーパネルのレイアウトを決めることができるとするものである。これにより,ソーラーパネルを用いたソーラー農業システムが効率よく建造され,また,ソーラー農業システムの管理と野菜の管理が容易に行えるという優れた効果を奏する。
イ 後記相違点2について 本願発明は,複数のソーラーパネルで光を反射させて他のソーラーパネルの裏側に入射させているのに対し,甲2発明は,ソーラーパネルの周囲から漏れる光を植物栽培用の光として利用しているものであり,その構成が全く異なる。
したがって,甲2発明と甲10発明とが,太陽光パネルの下に配置した植物の光環境を改善するという共通の課題を有しているからといって,本願発明が容易に想到できるわけではない。
被告の反論
1 取消事由1に対して (1) 「ソーラー農業システム」について 原告は,本願明細書の【0010】【図5】【図10】から,本願発明が明確であると主張する。
しかしながら,請求項の記載の明確性は,請求項に記載された事項に基づいて判断されるべきものであり,発明の詳細な説明や図面に記載されている事項に基づいて請求項の記載が明確であると主張することはできない。いずれにせよ,上記記載からでは, 「ソーラー農業システム」が,複数の「ソーラーパネル」を組み合わせた構造のみからなるのか,それとも,他の構成要素(例えば,農作物を栽培するための構成(装置や部材,農作地等))をも含むものなのかが明確でなく,「ソーラー農業システム」がいかなる物を指し示す概念なのかが曖昧である。
(2) 「ソーラーパネル」の構成について(その1) 原告は, 「ソーラーパネルで雨と風を防いで農作物を栽培できるように」との特定が,「ソーラーパネル」の構成を不明確にするものではないと主張する。
しかしながら,上記記載では, 「ソーラーパネル」で「風」を防ぐ機能・作用の意味も,そのような機能・作用を有する具体的構造も曖昧であり,「ソーラーパネル」で防ぐ「風」が,一部のものなのか,あらゆるものなのか不明である(例えば,農業の分野では,風を防ぐために植物の周りを完全に覆う形態が知られている。。そ )うすると,風を防ぐ機能・作用を有する具体的構造と,その機能・作用を有さない具体的構造との違いが明確ではない。
(3) 「ソーラーパネル」構成について(その2) 原告は, 前記あぜ道からソーラーパネルと農作物を保守点検できるようにしたこ 「と」との特定が「ソーラーパネル」の構成を不明確にするものではないと主張する。
しかしながら,上記記載では,保守点検の機能・作用の意味も,そのような機能・作用を有する具体的構造も曖昧であり,あぜ道とソーラーパネルとの位置関係が不明である。そうすると,あぜ道からソーラーパネルを保守点検できるような機能・作用を有する具体的構造と,その機能・作用を有さない具体的構造との違いが明確でない。
(4) 「日光を前記あぜ道に侵入させ,その上にソーラーパネルを設け,更にあぜ道を飛び飛びに設けたこと」について 原告は, 「日光を前記あぜ道に侵入させ,その上にソーラーパネルを設け,更にあぜ道を飛び飛びに設けたこと」との特定は,明確であると主張する。
しかしながら,「その上に」の「その」が指し示すのは,「あぜ道」とも,「日光」とも,あるいは「農作物」とも解され得るから,その指示する内容は明確ではない。
なお,請求項1には,「農作地」との文言は存在しないのであるから,「その」が農作地であると解することはできないし,あぜ道と農作地とを交互に設けたことを「あぜ道を飛び飛びに設けたこと」と記載するのも,日本語として不明瞭である。
2 取消事由2に対して 原告は,本願明細書の発明の詳細な説明の記載は,ソーラーパネルの下で農作物を栽培できるできる程度に明確かつ十分に記載されたものであると主張する。
しかしながら,@地表に設けたソーラーパネルで十分な発電をすることと,ソーラーパネルからの反射光を農作物の日照不足解消に利用することとは,トレードオフの関係にあるところ,本願明細書には,発電量を確保しつつ,ソーラーパネルの反射光により,光合成を要する農作物をも育成できたとの実験結果は記載されていおらず,また,A請求項1には,発光体についての明記はなく, 「ソーラー農業システム」との用語が「発光体」を含むとの技術常識や定義もない。
結局,本願発明によって農作物の日照不足を解消することは困難である。
3 取消事由3に対して (1) 審決の認定判断の補足 審決の引用する平成27年9月14日付け拒絶理由を,本訴において補足して説明すると,次のとおりである。
ア 本願発明の認定 本願発明は,前記第2,2のとおりのものであるところ,以下,@「ソーラー農業システム」は, 「農作地」をも含む概念であること,A「該ソーラーパネルで雨と風を防いで農作物を栽培できるように」は, 「地面に対して斜めに傾斜させ」られた「ソーラーパネル」が「農作物」の上部に存在すれば足りること,B「前記あぜ道からソーラーパネル」 「を保守点検できるようにした」は, 「ソーラーパネル」が「あぜ道」から地面に沿った方向でみて,さほど離れていない状態となっていることを意味すること,C「その上に」の「その」は, 「農作物」を意味すること,D「あぜ道を飛び飛びに設けたこと」は,農作地に複数のあぜ道を相互に間隔をおいて設けたことを意味すること,E「複数のソーラーパネルで日光を反射させて他のソーラーパネル内の裏側に入射させ」た後に,当該「日光」が「農作物」に供給されることを前提とする。
引用発明の認定 (ア) 甲2発明 甲2には,次の甲2発明が記載されている(【0001】【0006】〜【0009】 【0011】 【0012】 【0013】 【0021】 【0025】 〜 【図1】 【図2】。
)「 裏面に光反射面を有する太陽光パネルを,栽培する植物を覆うように傾斜した 状態で,畑とする地面の上に複数並べた,太陽光発電及び植物成育システムであ って, 太陽光パネルは地面に対して傾斜して設けられており, 太陽光が,太陽光パネルにより遮られるが,太陽光パネルの周囲から漏れる, 太陽光発電及び植物成育システム。」 【図2】 1:太陽光発電及び植物生育システム 2:太陽光パネル 3:支柱 4:光発電素子 5:ランプ 6:光反射面 7:太陽光 8:植物 9:地面 (イ) 甲10発明 甲10(訳文は,乙1による。)には,次の甲10発明が記載されている([003 7][0038],図5)。
「 裏面が反射面となったソーラーパネルを,傾斜させた状態で複数並べて温室の 屋根に配置し,複数のソーラーパネルの表面で反射させた太陽光を,隣合うソー ラーパネルの裏面の反射面に当てて下方へ反射させることにより,ソーラーパネ ルの下の植物栽培エリアに太陽光を届ける,温室用ソーラーモジュール。」 図5 1:温室 3:スプリンクラーヘッド 5:栽培ランプ 7a:シャフト 8:反射面 10:日陰栽培エリア 11:周壁 12a:屋根 21:非透過型ソーラーパネル 22:透過型ソーラーパネル 90:太陽光線 91:陰生植物 ウ 一致点の認定 本願発明と甲2発明とは,次の点で一致する。
「 ソーラーパネルを配置し,該ソーラーパネルで雨と風を防いで農作物を栽培で きるように該ソーラーパネルを地面に対して斜めに傾斜させて取り付けた,ソー ラー農業システムにおいて,その上にソーラーパネルを設けたソーラー農業シス テム。」 エ 相違点の認定 本願発明と甲2発明と,次の点で相違する。
【相違点1】ソーラーパネルの配置について,本願発明では,「飛び飛びに設け」 られた「あぜ道を挟んで配置」され, 「前記あぜ道からソーラーパネルと農作物を保守点検できるように」配置されているのに対し,引用発明では,畑とする地面の上に複数並べられている点。
【相違点2】農作物へ供給される日光の経路について,本願発明では, 「複数のソーラーパネルで日光を反射させて他のソーラーパネル内の裏側に入射させ」ているとともに, 「日光を前記あぜ道に侵入させ」ているのに対し,引用発明では,太陽光が,太陽光パネルにより遮られるが,そのパネルの周囲から漏れる点。
相違点の判断 (ア) 相違点1について ソーラーパネルを畑(農地)に設置する際にどのように配置するかは,当業者が適宜に決定し得る程度の設計的事項であるといえるところ,甲2には, 「太陽光パネルにとっては,地上に設置されることで保守点検が容易になる。 と記載されている 」ように 【0009】, ( ) 簡単に触れる位置に太陽光パネルを配置する方が好ましいことが示唆されており,また,人が通る道(あぜ道)を設け,その道からソーラーパネルの保守点検を行うようにすれば保守点検作業が容易なことは,当業者にとって自明である。そうすると,畑(農地)に従来から周知慣用である人が通る道(あぜ道)を適宜設け,ソーラーパネルをそのあぜ道を挟んで配置することや,あぜ道の上に配置することは,当業者が適宜になし得る程度のことである。
(イ) 相違点2について 甲2発明と甲10発明とは,太陽光パネルの下に配置した植物の光環境を改善するという共通の課題を有しているから(甲2の【0025】,甲10の[0038]を参照。,植物がより多くの太陽光を得られるようにするために,甲2発明に甲1 )0発明を適用して,太陽光パネルの表面で反射させた太陽光(日光)を,隣り合う太陽光パネルの裏面に当てて下方へ反射させ,太陽光パネルの下に配置した植物に照射するようにソーラーパネルを配置することは,当業者が容易に想到し得た。
カ 小括 以上から,本願発明は,当業者が,甲2発明と甲10発明及び周知技術に基いて容易に発明することができた。
(2) 原告の主張に対して ア 甲2発明について 原告は,甲2発明は,あぜ道とは全く関係のない発明であると主張する。
しかしながら,甲2に, 「畑とする地面にこの植物成育システムを複数個並べ,太陽光パネルの下となる地面に作物を栽培する。( 」【0011】)と記載されているように,甲2発明は,畑に作物を栽培するものである。そして,畑に作業道・あぜ道を設けることは普通のことであるから,甲2発明を実施するに当たっては,当業者は当然にあぜ道を考慮する。そうすると,甲2発明は,あぜ道と関係する発明である。
イ 甲10発明について 原告は,甲10発明は,あぜ道とは全く関係のない発明であり,システムも大がかりであって,保守点検は容易ではないと主張する。
しかしながら,甲10発明は,農作物へ供給される日光の経路に係る相違点2についての副引用例として引用されているにすぎず,上記の点は,甲2発明への適用の支障となるものではない。
容易想到性について (ア) 相違点1について @ 原告は,本願発明の特徴は,あぜ道を飛び飛びに設けたことにあると主張する。
しかしながら,ソーラーパネルを複数配置する際に,ソーラーパネル同士の間を空けて保守点検用の通路を飛び飛びに設けることは,技術常識にすぎず,そして,上記技術常識でいう通路が,あぜ道であることも格別のものではない。すなわち,甲2発明では,保守点検作業のために多数の太陽光パネルに対して地上からアクセスすることが想定されているといえ(【0009】 【0012】参照),そうである以 上,アクセスのための通路があることはおのずと明らかであり,太陽光パネルが多数ある以上,その通路,すなわち,あぜ道は,太陽光パネルを挟んで飛び飛びに設けられることになる。
A 原告は,本願発明は元々あるあぜ道を利用することによって優れた効果を奏するものであると主張する。
しかしながら,本願発明は,あぜ道が元々あった場合に限定されておらず,ソーラーパネル設置に際して新たにあぜ道を設けるものを対象としているから,原告の上記主張は,請求項の記載に基づかないものである。
(イ) 相違点2について 上記(1)オ(イ)のとおり。
当裁判所の判断
1 本願明細書について 本願明細書(甲1,4の2,8の2,乙7,8)には,次の記載がある。
(1) 技術分野「 本発明は採算のとれるソーラー農業システムに関する。【0001】 」 (2) 解決課題「 前述した従来の農地における農作物栽培や,ビニールハウスで栽培した野菜を販売しても十分な収入を得るには限度があった。一方,図2に示すソーラーシステムは,屋根6以外に大きな土地を得がたく,高い土地を借りて行うと採算が低下する。
本発明は,このような課題に鑑みてなされたものであって,農業の採算向上とソーラーパネルの土地獲得の一石二鳥のソーラー農業システムを提供することを目的としている。【0 」003】 【図2】 (3) 課題解決手段「 請求項 1 記載の発明は,ソーラーパネルをあぜ道を挟んで配置し,複数のソーラーパネル で日光を反射させて他のソーラーパネル内の裏側に入射させ,且つ該ソーラーパネルで雨と 風を防いで農作物を栽培できるように該ソーラーパネルを地面に対して斜めに傾斜させて取 り付け,前記あぜ道からソーラーパネルと農作物を保守点検できるようにしたことを特徴と するソーラー農業システムにおいて,日光を前記あぜ道に侵入させ,その上にソーラーパネ ルを設け,更にあぜ道を飛び飛びに設けたことを特徴とする。【0004】 」 (4) 発明の効果「 本発明によれば,農地にソーラーパネルを太陽と直交するように斜めに設置し,前記斜め の空間に農産物を栽培するようにしているので,農家はソーラーパネルで発電した電気を電 力会社に販売する収益を得,しかも野菜も従来通り栽培することができるので,農家の収入 が増え,採算がとれ,一方,ソーラーパネルの大きな設置と場所を安く得られるので,メガ ソーラ発電所を安価に建設することができる。本発明の効果を列挙すれば,以下のとおりで ある。
(1) ソーラーパネルの斜め下の空間を利用できるので,ソーラーコストが下がる。
(2) 現在は,農業は採算がとれないが,ソーラーパネルの下の空間で野菜栽培を行う本発 明を実施することで,採算がとれるようになり,農業が振興されることになる。
(3) 電力と農作物の両方から利益を得ることができる。
(4) ソーラーパネルにより遮蔽される領域(タンジェント領域)をソーラーパネルの熱で 暖房することができる。
(5) ビニールハウスが不要になる。
(6) ソーラーパネルで風露水害から農作物を防護することができる。
(7) ソーラーパネルの反射光で光を供給して,農作物の生育に必要な光合成を行わせるこ とができる。
(8) LEDを使って夜間も光合成ができるので,多毛作が可能となる。
(9) 農地又は稲作放棄農地を安価に又は無償で借りられるので,ソーラー発電コストが安 くなる。
(10) ソーラーパネルを組み立てるに際し,普段は通り道としか使用しないあぜ道をソーラ ーパネルの設置場所として利用し,土地の有効利用を図ることができる。【0005】 」 (5) 実施形態「 図3は本発明の第 1 の実施例を示す側面図である。図 1 と同一のものは,同一の符号を付 して示す。図において,10は農地2上に設置されたソーラーパネルで,太陽4の光を最も 効率よく受けるような角度で,農地2に対して所定角度傾けて設置されている。3はソーラ ーパネル10により,太陽4の光が遮蔽された領域に栽培される農作物,例えば野菜である。
… 8はソーラーパネル10に照射される太陽光,9は農地に照射される太陽光である。9- 1は外界からソーラーパネル10下部に入射される光,9-2は太陽光の大地からの太陽光 9の反射光である。これらの入射光により,ソーラーパネル10の下で栽培されている野菜 には太陽光が照射され,生育のために必要な光合成を行なうことができる。
このような構成によれば,ソーラーパネル10から発生した熱はその下の野菜栽培領域を 暖め,ビニールハウスと同様の効果を生ぜしめる。しかも,ソーラーパネル10は風や雨か ら野菜を保護してくれる。そして,ソーラーパネル10で発生した電気は,電力会社に売る ことができるので,農家は野菜の収穫の収入に加えて,ソーラーパネル10で発生した電気 を売ることができるので,農家の収入は増加する。つまり,採算の合う農業を行うことができる。【0008】 」 【図3】「 図4は本発明の第2の実施例を示す側面図である。この実施例は,農地2をビニール11で遮蔽し,野菜生育環境をより温め,野菜の生育をより効果的になるようにしたものである。
このビニール11は,ソーラーパネル10の一方の高い方から農地2上に設置している。8はソーラーパネル10への入射光,9-2は外界からの入射光で,ソーラーパネル10の裏面12で反射されて野菜3を照射する。13はソーラーパネル10の裏面から照射される太陽光で,何れも外界からの太陽光の反射光であり,野菜の光合成に用いられる。【0009】 」 【図4】 「 図5は本発明の第3の実施例を示す側面図である。この実施例は,請求項1記載の発明を示している。ここでは,ソーラーパネルを複数設け,一方のソーラーパネル10からの反射光を他方のソーラー農業に利用するようにしたものである。太陽4からの光8-1は第1のソーラーパネル10に入射し,その反射光8-2は第2のソーラーパネル10に入射する。
このソーラーパネル10からの反射光8-3は野菜を照射し,野菜3に光合成を行なわせる。
8は第2のソーラーパネル10に入射する光である。従って,このような構成にすると,野菜の光合成を増進し,その生育を早めることができる。
なお,第1のソーラー農業と第2のソーラー農業との間はあぜ道14を利用することができる。あぜ道を利用するので,土地の有効利用が図れることになる。【0010】 」 【図5】「 図6は本発明の第3の実施例の平面図である。あぜ道と農作地をうまく利用してソーラー農業を実現している。ソーラーパネル10は農作地に設けられ,あぜ道を使用してソーラーパネル10の管理をしやすくしている。この時の太陽光Sは図に示す向きに入る。ソーラーパネルの裏側は,図示していないが,農作物(例えば野菜)が栽培されている。【0011】 」 【図6】「 図10は本発明の第4の実施例の平面図と側面図である。Aが平面図,Bが側面図である。
光は図の矢印Sの方向から入射する。ソーラーパネル10は農作地に設置され,あぜ道に挟 まれている。あぜ道を利用して,ソーラーパネル 10 の保守点検を行うことができる。【00 」 13】 【図10】 「 図11は太陽方向が斜めであぜ道を利用する本発明の第5の実施例を示す図である。あぜ道26と27との間にソーラーパネル10を縦属して配置し,土地の有効利用を図ったものである。【0013】 」 【図11】「 図12は太陽方向が農作地と斜め方向の場合の本発明の第6の実施例を示す図である。この例はソーラーパネル10を農作地とあぜ道に渡って取り付けている。太陽光は図の矢印S方向から入射する。このように配置して,あぜ道にできた領域29は足の踏み場であり,ソーラーパネル10の保守点検に利用する。【0013】 」 【図12】「 図13は本発明の大規模なシステムを示す第7の実施例を示す図である。ソーラーパネル 10を複数個設け,多くの野菜を栽培するようにしたものである。外界からの入射光9-1はソーラーパネル10の裏面で反射し,照射光9-2となって野菜3に照射され,野菜の光合成を促す。
このような構成は,ソーラーパネル10による発電と,野菜3の栽培を大規模に行なうものであり,野菜の販売で得る収入とソーラーパネル10による電力の売却益が増大し,一種の工場と見ることができる。…」【0014】 【図13】 (6) 産業上の利用可能性「 平成25年3月31日農水省がこれまで農地転用にあたるとして認めなかった農地への太陽光パネルの設置を認める決定を行い,農業と太陽光発電を同時に行うことが可能になった。
本発明は,この農水省の認証を先取りした発明であって,ソーラシェアリング全てを含めたものが本発明の特許請求の範囲に含まれるものである。そして,農産物しか栽培していない農家にソーラーパネルを設置することができるようになり,TPPで競争力が必要な農業に収入を増し,採算が取れるようにした画期的な発明である。【0017】 」 2 取消事由1(明確性要件に関する判断の誤り)について 本願発明は,前記第2,2のとおりの次のものである(下線部は,本判決で付したものであり,以下,同部分を「本件特徴部分」といい,それより前の記載部分を一括して「本件おいて書き部分」という。。
)「 ソーラーパネルをあぜ道を挟んで配置し,複数のソーラーパネルで日光を反射 させて他のソーラーパネル内の裏側に入射させ,且つ該ソーラーパネルで雨と風 を防いで農作物を栽培できるように該ソーラーパネルを地面に対して斜めに傾斜 させて取り付け,前記あぜ道からソーラーパネルと農作物を保守点検できるよう にしたことを特徴とするソーラー農業システムにおいて,日光を前記あぜ道に侵 入させ,その上にソーラーパネルを設け,更にあぜ道を飛び飛びに設けたことを 特徴とするソーラー農業システム。」 審決は,上記記載のうち,本件特徴部分については,@「その上」の「その」が指示するものが不明確である,A「あぜ道を飛び飛びに設けたこと」が不明確である,Bしたがって, 「ソーラーパネル」の設置位置,設置態様が不明であると認定判断した。
そこで,まず,この点について,検討する。
(1) 検討 本件特徴部分の「その上」の「その」が指示するものは,文脈からいって,直前にある「前記あぜ道」というほかなく,そうすると,本件特徴部分は,ソーラーパネルをあぜ道の上に設置することを規定していることになる。一方で,本件おいて書き部分は, 「ソーラーパネルをあぜ道を挟んで配置し,「該ソーラーパネルで雨と 」風を防いで農作物を栽培できるように」あぜ道からソーラーパネルと農作物を保守 「点検できるように」と規定しているから,ソーラーパネルが設置されるのは,明らかに,あぜ道以外の場所であると規定している。したがって,本願発明の特許請求の範囲の記載は,ソーラーパネルの設置場所に関して規定するところが不整合であって,不明確である。
なお,本件特徴部分の「ソーラーパネル」と本件おいて書き部分の「ソーラーパ ネル」とが異なると解すれば,上記の不整合は生じないが,本願明細書をみても,本件おいて書き部分の「ソーラーパネル」と本件特徴部分の「ソーラーパネル」とが異なるソーラーパネルを指し示すものと解することは困難であり,原告もこの点を主張するものではない。
以上から,本願発明の内容は,不明確であるというべきである。
(2) 原告の主張について 原告は,本件特徴部分の「その上に」の「その」が指示するのは, 「農作地」であると主張する。
しかしながら, 「農作地」なる文言は,そもそも特許請求の範囲に記載されていないのであるから,本件特徴部分の「その上に」の「その」が,記載もされていない文言である農作地を指示し得るものではない。本願発明は, 「該ソーラーパネルで雨…を防いで農作物を栽培できるように」前記あぜ道からソーラーパネルと農作物を」 「と規定するものであるから,農作地の存在を前提とするものとはいえるが, 「そ 上記の」の位置と当該記載との文脈上の位置関係からみて,同「その」が農作地を指示すると理解することは,特許請求の範囲の記載上,無理な解釈である。そうすると,本願明細書の記載に接した当業者が,上記「その」が指示するのは,あぜ道ではなく農作地であると理解することはないといえる。
原告の上記主張は,採用することができない。
(3) 小括 以上のとおりであるから,本願発明の特許請求の範囲の記載は,明確性要件を充足せず,その余の点についての判断の当否にかかわらず,審決の結論には,誤りはないことになる。
結論
以上のとおり,取消事由1には理由がないから,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 清水節
裁判官 中村恭
裁判官 森岡礼子
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