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関連審決 無効2014-800109
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事件 平成 27年 (行ケ) 10068号 審決取消請求事件

原告株式会社白山機工
同訴訟代理人弁理士 木森有平 橋爪慎哉
被告モスニック株式会社
同訴訟代理人弁理士 和田成則 小松秀彦
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2016/08/10
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が無効2014-800109号事件について平成27年3月16日にした審決を取り消す。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等 (1) 被告は,平成7年2月14日,発明の名称を「濾過装置」とする発明について特許出願(特願平7-24878号。甲23)をし,平成11年3月26日,設定の登録(特許第2904334号)を受けた(請求項の数8。以下,この特許 1 を「本件特許」という。甲24)。
(2) 原告は,平成26年6月25日,本件特許の請求項1ないし8に係る発明について特許無効審判を請求し,無効2014-800109号事件として係属した。
(3) 被告は,平成26年9月9日,本件特許に係る特許請求の範囲及び明細書を訂正明細書(甲25)記載のとおり訂正する旨の訂正請求をし,同年11月27日,訂正事項の一部を取り下げる旨補正した(以下,この補正後の訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。甲25,26の1・2)。
(4) 特許庁は,平成27年3月16日,「訂正明細書のとおりの訂正を認める。
本件審判の請求は,成り立たない。」との別紙審決書(写し)記載の審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同月27日,原告に送達された。
(5) 原告は,平成27年4月16日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。
2 特許請求の範囲の記載 (1) 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1ないし8の記載は,次のとおりである(甲24)。なお,「/」は,原文の改行部分を示す(以下同じ。。
) 【請求項1】産業機械において使用された後に,所定固形物と所定液体の混在する状態になった汚濁液から前記所定固形物を濾過して前記所定液体を再利用するために使用される濾過装置において,/前記所定液体を貯蔵する液曹と,前記汚濁液を一時的に貯蔵する貯蔵曹と,前記貯蔵曹内で回転駆動されるとともに外周面に濾過手段を備え,濾過後の前記所定液体を前記液曹中に側面開口部を介して流出する濾過ドラムと,前記濾過手段を洗浄する噴射手段と,前記汚濁液の投入口から下流側にかけて前記所定固形物を連続的に搬送して,排出口から落下させる掬上手段とを具備した濾過装置であって,/前記濾過ドラムが,前記貯蔵曹内において不動状態で固定される軸体と,/前記軸体により回転自在に軸支されるとともに前記外周面と前記側面開口部とを形成したドラム基部と,/前記側面開口部の環状縁部を液 2 密状態でシールするために弾性部材から成形されるシール手段と,/前記シール手段を固定するとともに前記軸体に挿通した後に前記軸体に固定されるシール固定部材とからなり,前記貯蔵曹に対して前記シール固定部材を固定することで,前記濾過ドラムを前記貯蔵曹内に交換可能に配設したことを特徴とする濾過装置。
【請求項2】前記軸体は中空管体から構成されてなり,前記噴射手段の所定液体を前記中空管体において案内し,前記濾過ドラムの内側から逆洗浄するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。
【請求項3】前記濾過ドラムは,側面が密閉状態にされ,かつ前記シール固定部材を前記側面開口部を形成した片側面に設け,前記シール固定部材により前記貯蔵曹内において片支持状態で固定することを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。
【請求項4】前記濾過ドラムは,両側面部位において前記シール固定部材を夫々設けてなり,前記シール固定部材により前記貯蔵曹内において両支持状態で固定されることを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。
【請求項5】前記濾過ドラムは長手方向に区分けする隔壁を設け,また濾過能力の異なる濾過手段を外周面に設けてなり,かつ両側面部位において前記シール固定部材を夫々設けてなり,該シール固定部材により前記貯蔵曹内において両支持状態で固定され,分別濾過することを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。
【請求項6】前記濾過ドラムは,前記シール固定部材と前記貯蔵曹の側壁との間に介在される弾性板部材を介して前記貯蔵曹内に固定されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の濾過装置。
【請求項7】前記濾過ドラムは,前記液面上を浮遊した切粉を沈降させる浮上固形物沈降手段を外周面に固設したことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の分別濾過装置。
【請求項8】前記産業機械は工作機械であり,前記所定固形物と所定液体の混在する状態になった汚濁液は切削または研削により発生する固形物と液剤の混在する状態になった汚濁液であり,固形物を外形または粒度に応じて前記液剤を再利用す 3 ることを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。
(2) 本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし8の記載は,次のとおりである(下線部は訂正部分である。。以下,本件訂正後の請求項1ないし8に記載さ )れた発明を,それぞれ「本件発明1」などといい,併せて「本件各発明」という。
また,本件訂正後の明細書(甲26の2)を,図面(甲24)を含めて「本件訂正後明細書」という。
【請求項1】産業機械において使用された後に,所定固形物と所定液体の混在する状態になった汚濁液から前記所定固形物を濾過して前記所定液体を再利用するために使用される濾過装置において,/前記所定液体を貯蔵する液曹と,/前記汚濁液を一時的に貯蔵する貯蔵曹と,/前記貯蔵曹内で回転駆動されるとともに外周面に濾過手段を備え,濾過後の前記所定液体を前記液曹中に側面開口部を介して流出する濾過ドラムと,/前記濾過手段を洗浄する噴射手段と,/前記汚濁液の投入口から下流側にかけて前記所定固形物を連続的に搬送して,排出口から落下させる掬上手段とを具備した濾過装置であって,/前記濾過ドラムの半完成品は,前記貯蔵曹内に収容され不動状態で固定される軸体と,前記軸体により回転自在に軸支されるとともに前記外周面と前記側面開口部とを形成したドラム基部と,前記側面開口部の環状縁部を液密状態でシールするために弾性部材から成形されるシール手段と,前記シール手段を固定するとともに前記軸体に挿通した後に前記軸体に固定され,かつ前記貯蔵曹を構成する側板の内側に着脱可能に配置される円盤部材とからなり,前記貯蔵曹内に前記円盤部材を固定することで,前記濾過ドラムの半完成品を前記貯蔵曹内に交換可能に配置したことを特徴とする濾過装置。
【請求項2】前記軸体は中空管体から構成されてなり,前記噴射手段の所定液体を前記中空管体において案内し,前記濾過ドラムの内側から逆洗浄するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。
【請求項3】前記濾過ドラムは,側面が密閉状態にされ,かつ前記濾過ドラムの半完成品が前記貯蔵曹内において片支持状態で固定されることを特徴とする請求項 4 1に記載の濾過装置。
【請求項4】前記濾過ドラムは,前記半完成品の濾過ドラムが前記貯蔵曹内において両支持状態で固定されることを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。
【請求項5】前記濾過ドラムは長手方向に区分けする隔壁を設け,また濾過能力の異なる濾過手段を外周面に設けてなり,かつ両側面部位において前記濾過ドラムの半完成品を夫々設けてなり,該濾過ドラムの半完成品により前記貯蔵曹内において両支持状態で固定され,分別濾過することを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。
【請求項6】前記濾過ドラムは,前記濾過ドラムの半完成品と前記貯蔵曹の側壁との間に介在される弾性板部材を介して前記貯蔵曹内に固定されることを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。
【請求項7】前記濾過ドラムは,前記液面上を浮遊した切粉を沈降させる浮上固形物沈降手段を外周面に固設したことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の分別濾過装置。
【請求項8】前記産業機械は工作機械であり,前記所定固形物と所定液体の混在する状態になった汚濁液は切削または研削により発生する固形物と液剤の混在する状態になった汚濁液であり,固形物を外形または粒度に応じて前記液剤を再利用することを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。
3 本件審決の理由の要旨 (1) 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)のとおりである。要するに,@本件訂正における訂正事項は,いずれも特許法134条の2第1項ただし書1号,2号又は3号に掲げる事項を目的とし,かつ同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するとして,本件訂正を認めた上,A本件各発明の特許請求の範囲の記載は,平成6年法律第116号による改正前の特許法36条4項(以下「旧4項」という。)に規定する要件及び同条5項2号(以下「旧5項2号」という。)に規定する要件を満たしており,B本件各発明は,下記の引用例に記載 5 された発明(以下「引用発明」という。)及び甲2ないし11,17ないし20に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから,特許法29条2項の規定に違反して特許されたものではない,というものである。
引用例:米国特許第5328611号明細書(甲1)(2) 本件発明1の構成要件の分説 本件審決は,本件発明1の構成要件(請求項1)を,以下のとおり分説した。
A.産業機械において使用された後に,所定固形物と所定液体の混在する状態になった汚濁液から前記所定固形物を濾過して前記所定液体を再利用するために使用される濾過装置において, B.前記所定液体を貯蔵する液曹と, C.前記汚濁液を一時的に貯蔵する貯蔵曹と, D.前記貯蔵曹内で回転駆動されるとともに外周面に濾過手段を備え, E.濾過後の前記所定液体を前記液曹中に側面開口部を介して流出する濾過ドラムと, F.前記濾過手段を洗浄する噴射手段と, G.前記汚濁液の投入口から下流側にかけて前記所定固形物を連続的に搬送して,排出口から落下させる掬上手段とを具備した濾過装置であって, HA.前記濾過ドラムの半完成品は, H1.前記貯蔵曹内において不動状態で固定される軸体と, H2.前記軸体により回転自在に軸支されるとともに前記外周面と前記側面開口部とを形成したドラム基部と, H3.前記側面開口部の環状縁部を液密状態でシールするために弾性部材から成形されるシール手段と, H4.前記シール手段を固定するとともに前記軸体に挿通した後に前記軸体に固定され,かつ前記貯蔵曹を構成する側板の内側に着脱可能に配置される円盤部材と 6 からなり, LA.前記貯蔵曹内に前記円盤部材を固定することで,前記濾過ドラムの半完成品を前記貯蔵曹内に交換可能に配設したこと M.を特徴とする濾過装置。
(3) 本件発明と引用発明の対比 ア 引用発明 本件審決が認定した引用発明は,以下のとおりである。
a.金属チップや粒子で汚染された汚濁液から前記粒子等を濾過したクリーンな液体を工作機械,もしくは他の利用装置に供給する濾過装置10において, b.クリーンな液体を貯蔵するクリーンクーラントタンク40と, c.汚濁液を貯蔵する汚濁液貯蔵槽12と, d.前記汚濁液貯蔵槽12内で回転されるとともに外周面に濾過部材25を備え, e.濾過後の前記クリーンな液体を前記クリーンクーラントタンク40中に端壁22の出口開口62を介して流出する濾過ドラム20と, f.前記濾過部材25を洗浄するスプレーノズル45と, g.前記汚濁液の注入口17から下流側にかけて汚濁液中の重い屑を連続的に搬送して,開口部35から落下させるドラッグバー34と,を具備した回転式濾過ドラム付き濾過装置であって, ha.前記濾過ドラム20は, h1.前記汚濁液貯蔵槽12内において非回転状態で強固に固定される管50と, h2.回転可能に軸支されるとともに前記濾過部材25を備えた外周面と前記端壁22の出口開口62とを備え, l1.前記端壁22の出口開口62の周囲縁部に弾性的に圧接する環状のシーリングガスケット66と, l2.前記環状のシーリングガスケット66を比較的大きな円形のスリーブ65を介して固定するとともに,前記管50に挿通した後に前記管50に補強用カラー 7 52及びロッキングスクリュー53を用いて固定される,取り外し可能な側板15Aとを備え, l3.前記側板15Aを,汚濁液貯蔵槽12の側板15の外側に取り付けた, m.回転式濾過ドラム付き濾過装置。
イ 本件発明1と引用発明との一致点及び相違点 本件審決が認定した本件発明1と引用発明との一致点と相違点は,以下のとおりである。
(ア) 一致点 産業機械において使用された後に,所定固形物と所定液体の混在する状態になった汚濁液から前記所定固形物を濾過して前記所定液体を再利用するために使用される濾過装置において,/前記所定液体を貯蔵する液曹と,/前記汚濁液を一時的に貯蔵する貯蔵曹と,/前記貯蔵曹内で回転駆動されるとともに外周面に濾過手段を備え,/濾過後の前記所定液体を前記液曹中に側面開口部を介して流出する濾過ドラムと,/前記濾過手段を洗浄する噴射手段と,/前記汚濁液の投入口から下流側にかけて前記所定固形物を連続的に搬送して,排出口から落下させる掬上手段とを具備した濾過装置であって,/前記貯蔵曹内において不動状態で固定される軸体と,/前記軸体により回転自在に軸支されるとともに前記外周面と前記側面開口部とを形成したドラム基部と,/前記側面開口部の環状縁部を液密状態でシールするために弾性部材から成形されるシール手段と,/前記シール手段を固定するとともに前記軸体に挿通した後に前記軸体に固定され,かつ前記貯蔵曹を構成する側板に着脱可能に配置される固定部材とを備え,/前記貯蔵曹に前記固定部材を固定する/濾過装置。
(イ) 相違点1 本件発明1は,貯蔵曹に対して「円盤部材」(固定手段)を固定することで,「濾過ドラムの半完成品」を前記貯蔵曹内に交換可能に配設したものであるのに対し,引用発明は,汚濁液貯蔵槽12に対して「側板15A」(固定手段)を固定す 8 るものの,「濾過ドラム20,シーリングガスケット66及び側板15A」を一体のものとして前記汚濁液貯蔵槽12内に交換可能に配設したとは特定されていない点。
(ウ) 相違点2 「固定手段」が,本件発明1では,貯蔵曹の側板の「内側に配置される」「円盤部材」であるのに対し,引用発明では,汚濁液貯蔵槽12の側板の「外側に配置され」,その形状の特定がなされていない「側板15A」である点。
4 取消事由 (1) 本件訂正を認めた判断の誤り(取消事由1) (2) 旧4項に規定する要件に係る判断の誤り(取消事由2) (3) 旧5項2号に規定する要件に係る判断の誤り(取消事由3) (4) 進歩性に係る判断の誤り(取消事由4)
当事者の主張
1 取消事由1(本件訂正を認めた判断の誤り)について〔原告の主張〕(1) 請求項3について 請求項3に関する本件訂正は,「側面が密閉状態にされ,かつ前記シール固定部材を前記側面開口部を形成した片側面に設け,前記シール固定部材により前記貯蔵曹内において」との要件を削除するものである。ところで,請求項3は,請求項1の従属項として,濾過ドラムが片支持状態で固定される場合の適用例を具体的に記載するものであるところ,請求項3に関する本件訂正によって,濾過ドラムにシール固定部材を設ける位置について「片面側」という要件がなくなり,本件訂正後の請求項3は,「片支持状態」という実質的な意味しか残らない記載となる。そして,本件訂正後明細書では,「片支持状態」の定義が明確ではないから,請求項3に関する本件訂正は,特許請求の範囲減縮になっていない。
また,請求項3に関する本件訂正は,「シール固定部材」を「濾過ドラムの半完 9 成品」に訂正するものであるが,濾過ドラムの半完成品は,軸体,ドラム基部,シール手段,円盤部材を備えるものであるから,シール固定部材を上位概念変更するものであって,特許請求の範囲減縮になっていない。
(2) 請求項4について 請求項4に関する本件訂正は,「両側面部位において前記シール固定部材を夫々設けてなり,前記シール固定部材により前記貯蔵曹内において」との要件を削除するものである。そして,前記(1)と同じく,請求項4に関する本件訂正によって,本件訂正後の請求項4は,「両支持状態」という実質的な意味しか残らない記載となり,本件訂正後明細書では,その定義が明確でないから,請求項4に関する本件訂正は,特許請求の範囲減縮になっていない。
また,請求項4に関する本件訂正は,「シール固定部材」を「濾過ドラムの半完成品」へと上位概念変更するものであり,特許請求の範囲減縮になっていない。
(3) 請求項6について 請求項6に関する本件訂正は,「シール固定部材」を「濾過ドラムの半完成品」へと上位概念変更するものであり,特許請求の範囲減縮になっておらず,実質的拡張になっている。
(4) 小括 よって,本件訂正は,特許法134条の2第1項ただし書1号に違反するものを含むから,認められない。
〔被告の主張〕 (1) 請求項3及び4について 請求項3及び4は請求項1の従属項であるところ,請求項1に関する本件訂正は,訂正前の「シール固定部材」が明細書に記載されている「円盤部材」であることを明確化するとともに,当該「円盤部材」が「貯蔵曹を構成する側板の内側に着脱可能に配置されるもの」と付加したものである。さらに,訂正前の「前記濾過ドラム」を「前記濾過ドラムの半完成品」と訂正したことも,濾過ドラムの半完成品につい 10 ての明細書【0038】ないし【0042】の記載を踏まえて,記載を明確化したものである。したがって,請求項1に関する本件訂正は,「明瞭でない記載釈明」及び「特許請求の範囲減縮」を目的とするものである。
そして,請求項3及び4に関する本件訂正は,請求項1に関する本件訂正との整合を図るものであって,明細書に記載された事項(【0044】【0045】 , ,図1,4)又は同事項から自明な事項であり,さらに,本件訂正後の「濾過ドラムの半完成品」の用語は,請求項1で定義されており,本件訂正前の「シール固定部材」を上位概念化するものでもないから,請求項3及び4に関する本件訂正は,「明瞭でない記載釈明」を目的とするものである。なお,実質上特許請求の範囲拡張するものでもない。
(2) 請求項6について 請求項6に関する本件訂正は,請求項1に関する本件訂正との整合を図るものである。また,本件訂正後の「濾過ドラムの半完成品」の用語は,請求項1で定義されており,本件訂正前の「シール固定部材」を上位概念化するものでもない。
したがって,請求項6に関する本件訂正は,「明瞭でない記載釈明」を目的とするものである。なお,実質上特許請求の範囲拡張するものでもない。
(3) 小括 よって,本件訂正は,特許法134条の2第1項ただし書所定の事項を目的とするものであるから,認められるべきものである。
2 取消事由2(旧4項に規定する要件に係る判断の誤り)について〔原告の主張〕 本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)には,「前記濾過ドラムの半完成品を前記貯蔵曹内に交換可能に配置した」との記載がある。
しかし,濾過ドラムの半完成品を,上方又は左右のいずれから,貯蔵曹に着脱させるか不明であるほか,円盤部材を軸体に先に固定すると濾過ドラムの半完成品を貯蔵曹の側板に密着させることはできない。特に濾過ドラムが貯蔵曹内において両 11 支持状態で固定される場合(請求項1の従属項である請求項4に係る本件発明4)には,左右の円盤部材を,液漏れを防ぐために貯蔵曹の側板に各々密着させる必要があるところ,左右の円盤部材をボルトで軸体に先に固定してしまうと,その後,これらを貯蔵曹の側板に密着するような状態に配置することは困難になる。したがって,濾過ドラムの半完成品を交換する方法が不明瞭である。
また,濾過ドラムの半完成品の交換の際には噴射管45と管体46をそれぞれ回転させることなく接続する必要があるが,これらの接続のために,ニップルを含む各種管継手を用いることや,管継手を用いずに管同士を直接接続するためにネジ等の手段を使用することは,本件特許の出願前に周知の技術的事項ということはできず,仮にこれらの使用が周知の技術的事項であったとしても,本件訂正後明細書には,具体的な接続方法について説明されていない。したがって,濾過ドラムの半完成品の交換の際における噴射管45と管体46を接続する方法も不明瞭である。
なお,濾過ドラムの半完成品を不動状態の軸体45にどのように交換可能に取り付けるかについても不明である。
よって,本件訂正後明細書の発明の詳細な説明の記載は,本件発明1について,旧4項に規定する要件に違反する。
〔被告の主張〕 濾過ドラムの半完成品を,貯蔵曹の側板に密着して配置することは,右円盤部材51を軸体に固定した状態で貯蔵曹7内に挿入できるのであるから,当然に可能でる。また,濾過ドラムが貯蔵曹内において両支持状態で固定される場合であっても,濾過ドラム30は右側板3に対して弾性部材であるラバーシート33を介して着脱可能に固定されており(【0038】,図1,2),当該ラバーシートが,ある程度の隙間を埋め,かつ水密性を担保するから,濾過ドラムの半完成品を,貯蔵曹の側板に密着して配置することはできる。
また,噴射管45と管体46の接続は,周知の技術手段を用いれば容易に行うことができる。
12 なお,本件発明1は,濾過ドラムの半完成品を不動状態の軸体45に交換可能に配置したものではない。
よって,本件訂正後明細書の発明の詳細な説明の記載は,本件発明1について,旧4項に規定する要件に違反しない。
3 取消事由3(旧5項2号に規定する要件に係る判断の誤り)について〔原告の主張〕 本件発明1は濾過装置についての発明であるところ,特許請求の範囲(請求項1)には,円盤部材について,「前記軸体に挿通した後に前記軸体に固定され」と,取付方法が記載されている。
そして,この円盤部材の取付けにより,シール機能の精度が確保され,濾過ドラムの半完成品が成立するのであるから,請求項1の上記記載は,重要な構成要件というべきである。
したがって,本件発明1に係る特許請求の範囲(請求項1)の記載は,円盤部材について方法的に記載するものであるから,旧5項2号に規定する要件に適合しない。
〔被告の主張〕 本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)には,円盤部材について,「前記シール手段を固定するとともに前記軸体に挿通した後に前記軸体に固定され,かつ前記貯蔵曹を構成する側板の内側に着脱可能に配置される円盤部材とからなり」と記載されている。
そして,この記載は,「シール手段を固定する」機能及び「側板の内側に着脱可能に配置される」機能を有する「円盤部材」と,「シール手段」 「軸体」及び「貯 ,蔵曹を構成する側板」との接続状態を特定する記載である。したがって,円盤部材についての上記記載は,濾過装置という物の発明を不明確にする記載ではない。
したがって,本件発明1に係る特許請求の範囲(請求項1)の記載は,円盤部材について方法的に記載するものではなく,旧5項2号に規定する要件に違反しない。
13 4 取消事由4(進歩性に係る判断の誤り)について〔原告の主張〕(1) 本件発明1について ア 相違点1の容易想到性 (ア) 本件審決の判断 本件審決は,相違点1について,軸体,ドラム基部,シール手段及び円盤部材を一体として濾過ドラムの半完成品とすることは,甲8ないし11等に記載も示唆もされておらず,また,濾過ドラムの半完成品を構成する部材として,「シール手段を固定するとともに前記軸体に挿通した後に前記軸体に固定され,かつ前記貯蔵曹を構成する側板に着脱可能に配置される円盤部材」を選択することも容易想到ではないとして,引用発明において,相違点1に係る本件発明の構成を備えるようにすること,すなわち,濾過ドラム20,シーリングガスケット66及び側板15Aを一体のものとした半完成品を汚濁液貯蔵曹12内に交換可能に配置することは,当業者が容易に想到することができたものではない旨判断した。
しかし,以下のとおり,同判断は誤りである。
(イ) 半完成品を交換可能に配置することの示唆等 引用例の濾過装置は,ネジで側板15Aを側壁15の外側に取り付けているところ,側板15Aを側壁15の内側に取り付けることも可能であることから,濾過ドラム20,シーリングガスケット66及び側板15Aを一体なものとして交換することが示唆されている。
また,甲4に記載された濾過装置は,ドラムフィルタ22と環状の結合部63だけではなく,オイルシール69,ベアリング54,56,外周円筒部材53,フランジ48も半完成品として一体的に形成されており,この半完成品が第2側壁44に嵌め着けられていると考えることが妥当である。
また,甲10や甲11には,シール材の摩耗の回避や軸体の芯出しが難しいことから,軸体と一体の濾過ドラムを貯蔵槽に対して交換することが示唆されている。
14 さらに,甲2には,環状取付板25,27を中空軸3に嵌挿し,回転ドラム1を組み立てた後に,環状取付板25,27を濾過槽2に取り付けることが明記されている。
そもそも,相違点1に係る部材である軸体,ドラム基部,シール手段及び円盤部材の4部材は,引用例,甲2,4,10,11に記載された濾過装置において開示されているから,これらを組み合わせる動機付けがある。
(ウ) シール機能の精度の確保 本件発明1の作用効果に起因した最も大きな特徴は,貯蔵曹に固定されるシール手段のシール面の全面と濾過ドラム側の摺動面の全面の精度を確保したことである。
そして,上記精度を確保するためには,シール手段を有する円盤部材が軸体に挿通された後に固定されることが重要であるところ,引用例には,「環状のシーリングガスケット66を比較的大きな円形のスリーブ65を介して固定するとともに,前記管50に挿通した後に前記管50に補強カラー52及びロッキングスクリュー53を用いて固定される,取り外し可能な側板15Aとを備える」などの記載があり,シール手段を有する側板15Aが管50に挿通後に固定されることが開示されている。甲2,3等に記載された濾過装置においても,シール手段を有する円盤部材が軸体に挿通された後に固定されるという構成が開示されている。
さらに,上記精度を確保するためには,シール手段を備えたものが交換可能であれば足りるところ,引用例,甲4ないし6等に記載された濾過装置は,シール手段を備えたものが交換可能であるという構成を開示している。
(エ) 以上によれば,引用発明において,濾過ドラム20,シーリングガスケット66及び側板15Aを一体のものとした半完成品を汚濁液貯蔵曹12に交換可能に配置することは,当業者が容易に想到し得たものである。また,そもそも,本件発明1の最も大きな特徴である,貯蔵曹に固定されるシール手段のシール面の全面と濾過ドラム側の摺動面の全面の精度を確保する構成を採用することは,当業者が容易に想到することができたものである。
15 イ 相違点2の容易想到性 (ア) 本件審決は,相違点2について,汚濁液貯蔵曹12の側板15に対して外側配置した側板15Aを内側配置に変更することは,甲2,17,19,20に記載も示唆もされておらず,引用発明における側板15Aの配置を汚濁液貯蔵曹12の側板15の内側に変更する動機付けもない,また,側板15Aの形状を円盤状にすることについても動機付けはないとして,引用発明において,相違点2に係る本件発明の構成を備えるようにすること,すなわち側板15Aの配置を汚濁液貯蔵曹12の側板15の内側に変更し,その形状を円盤状とすることは,当業者が容易に想到することができたものではない旨判断した。
(イ) しかし,側板などが一体化された濾過ドラムを貯蔵曹にどのように取り付けるかは設計事項である。また,引用例の濾過装置は,ネジで側板15Aを側壁15の外側に取り付けているところ,これを内側に取り付けることも示唆されており,側板15Aを内側に取り付けても濾過ドラムは上方向から着脱できるから支障もない。さらに,濾過ドラムを貯蔵曹の内側に配置することは,甲4(【0012】,図2),甲5(【0009】,甲8(請求項1)等にも記載されている。
) そして,側板15Aを円盤状にすることも,引用例は否定するものではなく,むしろ円筒状のドラムを側方から挟み込むような部材を円盤状にすることは一般的であり,甲4の内周円筒部材40,外周円筒部材53,カバー58等も円盤状であることは明らかである。
(ウ) したがって,引用発明において,側板15Aの配置を汚濁液貯蔵曹12の側板15の内側に変更し,その形状を円盤状とすることは,当業者が容易に想到することができたものである。
ウ 小括 よって,本件審決における本件発明1に係る進歩性の判断は,誤りである。
(2) 本件発明2ないし8について 前記(1)のとおり,本件審決における本件発明1に係る進歩性判断は誤りである 16 から,本件発明2ないし8に係る進歩性判断も,いずれも誤りである。
〔被告の主張〕(1) 本件発明1について ア 相違点1の容易想到性(ア) 半完成品を交換可能に配置することの示唆等 本件発明1の濾過ドラムの半完成品は,軸体,ドラム基部,シール手段及び円盤部材を一体化したものである。
一方,引用例の濾過装置は,これらに相当する各部材が一体化されているものではなく,一体のものとして交換することも示唆されていない。
また,甲4に記載された濾過装置は,ベアリング54,56からのオイル漏れを防ぐ目的の濾過装置であって,本件発明1の目的と異なるだけではなく,外周円筒部材53は,貯蔵曹から外側へ突き出た状態で固定されており(図2),本件発明1における「軸体」のように貯蔵曹内において不動状態で固定されているものではないから,「軸体」に相当するものでもない。さらに,オイルシール69は,ベアリング54,56からのオイル漏れを防ぐものであって,本件発明1における「シール手段」はドラム基部の側面開口部をシールするためのものであるから,オイルシール69は「シール手段」に相当するものではなく,フランジ48も外周円筒部材53を介してオイルシール69を固定するためのものであるから,「円盤部材」に相当しない。
加えて,軸体と濾過ドラムのみならず,シール手段及び円盤部材も一体化した上で,貯蔵曹を構成する側板に着脱可能にすることについては,甲10や甲11に記載も示唆もされていない。
(イ) シール機能の精度の確保 本件発明1は,濾過ドラムの回転部分とシール部分とをあらかじめ組み立て,かかる濾過ドラムの半完成品を,貯蔵曹を構成する側板の内側に円盤部材を介して装置本体内に着脱可能に配置したものである。したがって,濾過ドラムの半完成品を 17 上方に取り出すだけでドラム交換ができるから,交換作業が容易であり,シール手段の全面と濾過ドラム側の摺動面の全面の精度も確保できる。
一方,引用例の濾過装置では,ドラムの交換作業は容易でなく,また,シール手段の全面と濾過ドラム側の摺動面の全面の精度を確保することも困難である。
(ウ) 以上によれば,引用発明において,濾過ドラム20,シーリングガスケット66及び側板15Aを一体のものとした半完成品を汚濁液貯蔵曹12内に交換可能に配置することは,当業者が容易に想到することができたものではない。
イ 相違点2の容易想到性 本件発明1は,貯蔵曹を構成する側板の内側に濾過ドラムの半完成品を構成する円盤部材を着脱可能にしたものであり,貯蔵曹の外側に円盤部材を配置することはできないから,側板15Aに相当する円盤部材を内側に配置することは,本件発明1にとって必須の構成である。そして,引用例の濾過装置において,開口の大きな側板15Aを側板15の内側に配置すると,濾過ドラムを側方に引き出せなくなる。
また,甲4,5及び8に,側板15Aを内側に配置することについての示唆はない。
したがって,引用発明において,側板15Aの配置を汚濁液貯蔵曹12の側板15の内側に変更することは,当業者が容易に想到することができたものではない。
ウ 小括 よって,本件審決における本件発明1に係る進歩性の判断に誤りはない。
(2) 本件発明2ないし8について 前記(1)のとおり,本件審決における本件発明1に係る進歩性判断に誤りはないから,本件発明2ないし8に係る進歩性判断にも誤りはない。
当裁判所の判断
1 本件各発明について (1) 本件訂正後明細書の記載 本件訂正後明細書(甲24,26の2)には,おおむね,次の記載がある(下記記載中に引用する図1ないし4については,別紙本件訂正後明細書図面目録を参 18 照。。
) ア 産業上の利用分野 【0001】本発明は濾過装置に係り,各種の産業機械において使用されて後に,液体と異なる粒度の固形物の混濁液を濾過して得るものであって,例えば,金属切削加工において使用されて切粉を含んだ状態になった切削油を,濾過工程を経て切粉と切削油に分離して切削油を得て再使用可能にする濾過装置に関する。
イ 従来の技術 【0002】従来より,金属切削加工の使用後に切粉を含んだ状態になった切削油を,切粉と切削油に分離して再使用可能にする切削油(以下,浄化切削油と言う)を得るための濾過装置が多く提案されている。
【0003】本願出願人は,このような濾過装置において,濾過後の切削油または所定液剤を貯蔵する液曹と,切削粉を含んだ汚濁液を一時的に貯蔵する貯蔵曹と,この貯蔵曹内で回転駆動されるとともに外周面において所定の番手のフィルターの濾過手段を備えており,濾過後の切削油を液曹中に流出する濾過ドラムと,濾過手段を洗浄する噴射手段と,汚濁液の投入口から下流側にかけて切削粉を連続的に搬送して,排出口から落下させる掬上手段とから構成される濾過装置を製造している。
ウ 発明が解決しようとする課題 【0005】しかしながら,上記の…濾過装置によれば,長時間に渡り濾過ドラムを貯蔵曹内に於いて回転駆動させる際に,汚濁液が濾過ドラム内に進入しないようにするシール手段が十分に機能せず汚濁液の一部が濾過ドラム内に進入することによる濾過精度の低下があることが判明した。
【0006】この原因として,貯蔵曹内においてフローティング状態で回転させる場合において,濾過ドラム側面と貯蔵曹の壁面の間をシールするために使用されるシール手段の取付け精度が十分に確保できないことに起因することが判明した。
特に,大型の濾過装置においてこのような不具合発生が見られることから,シール手段の取付け面精度と濾過ドラム側のシール摺動面の間において十分な精度が確保 19 できないことに起因することが判明した。
【0007】そこで,貯蔵曹内におけるシール手段の取付け精度と濾過ドラムの摺動面の仕上げ面精度に注意を払い完成するようにして対処していた結果,生産性を著しく低下させることになっていた。
【0008】したがって,本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,貯蔵曹内において回転駆動される濾過ドラムを備えた濾過装置において,予め濾過ドラムの回転部分とシール部分を組み立てることにより,貯蔵曹に固定されるシール手段のシール面の全面と濾過ドラム側の摺動面の全面の精度を確保して,濾過精度を低下させず,かつ生産性を大幅に向上することができる濾過装置の提供にある。
エ 解題を解決するための手段及び作用 【0009】上述の課題を解決し,目的を達成するために,本発明によれば,産業機械において使用された後に,所定固形物と所定液体の混在する状態になった汚濁液から前記所定固形物を濾過して前記所定液体を再利用するために使用される濾過装置において,前記所定液体を貯蔵する液曹と,前記汚濁液を一時的に貯蔵する貯蔵曹と,前記貯蔵曹内で回転駆動されるとともに外周面に濾過手段を備え,濾過後の前記所定液体を前記液曹中に側面開口部を介して流出する濾過ドラムと,前記濾過手段を洗浄する噴射手段と,前記汚濁液の投入口から下流側にかけて前記所定固形物を連続的に搬送して,排出口から落下させる掬上手段とを具備した濾過装置であって,/前記濾過ドラムの半完成品は,前記貯蔵曹内に収容され不動状態で固定される軸体と,前記軸体により回転自在に軸支されるとともに前記外周面と前記側面開口部とを形成したドラム基部と,前記側面開口部の環状縁部を液密状態でシールするために弾性部材から成形されるシール手段と,前記シール手段を固定するとともに前記軸体に挿通した後に前記軸体に固定され,かつ前記貯蔵曹を構成する側板の内側に着脱可能に配置される円盤部材とからなり,前記貯蔵曹内に前記円盤部材を固定することで,前記濾過ドラムの半完成品を前記貯蔵曹内に交換可能に配 20 置したことを特徴としている。
実施例 【0018】…図1は本発明の第1実施例に係る分別濾過装置の要部を示した外観斜視図である。
【0019】本図において,濾過装置は工作機械において,切削加工後に発生した粒度のことなる切粉と切削油の混在した被濾過切削油から切粉を濾過して浄化切削油を分別して得るための概略構成が示されている。… 【0020】さて,図1において,濾過装置には浄化切削油を貯留する複数のクリーン曹1であって,装置全体の基部をも兼ねる曹1が図示のように上流側の破線図示の投入口8から下流側の破線図示の切粉排出口4にかけて連続形成されている。
【0021】一方,切粉と切削油の混在した汚濁状態になっている被濾過切削油を一時的に貯蔵する貯蔵曹7内には,被濾過切削油の液面を,上流と下流側に2分割する濾過ドラム30が上流の投入口8から下流の切粉排出口4の略中間に設けられており,濾過ドラム30の開口部から流出される濾過された後の浄化切削油をクリーン曹1内に流出できるように構成されている。
【0022】一方,図示のように濾過ドラム30は予め完成したものを複数のボルト32を使用して固定するものであって,濾過ドラム30の外周面において所望の濾過能力を持つ番手の濾過フィルター44が交換自在に固定されている。
【0023】また,この濾過ドラム30の内部には後述のように回転軸体を兼ねる噴出管45が設けられており,濾過フィルター44を内面側(浄化切削油の流出側)から逆洗浄するように設けられている。このために,クリーン曹1内に貯蔵された浄化切削油をポンプ47を介して濾過ドラム30の内側から勢い良く噴射することで,濾過フィルター44面に付着残留した切粉を吹き飛ばすようにして,濾過フィルターの目づまり防止を効果的に行えるようにしている。
【0024】…以上の構成により,被濾過切削油中で沈降した切粉が下流側に向けて搬送され,やがて図示の傾斜部を,図中の矢印D2方向に上昇して切粉排出口 21 4において外部に排出するように構成されている。
【0025】以上の一連の動作により,クリーン曹1内には,濾過フィルター44の濾過能力に応じて浄化された浄化切削油が貯蔵されることになる。そこで,このようにして得られた浄化切削油を,精密切削加工などに必要に応じて使い分けるようにしている。
【0027】このように構成されるクリーン曹1間には,被濾過切削油を貯蔵しておくためにクリーン曹の底面と底面を一部共通にした被濾過切削の貯蔵曹7が構成されるが,このためにクリーン曹1の底面と前方壁面に連続して左側板2と,右側板3(一部を二点鎖線で示した)とが液密状態で溶接固定されており,以下に説明する各構成要素は概,これらの左右側板2,3を取り付け部としている。
【0029】また,左右側板2,3の最上流側はクリーン曹1の側壁と共有するとともに,左右側板2,3間において後述するように回動可能に保持される濾過ドラム30の上流側(装置の手前側)において,上方に開口した上記の投入口8を形成しており,この投入口8から被濾過切削油を被濾過切削油の貯蔵曹7内に適宜投入できるように構成されている。
【0034】…濾過ドラム30の外周面にはステンレス金網,化学繊維メッシュ,ウエッジワイヤ,パンチングメタル等からなり,例えば濾過能力が50ミクロンの濾過フィルター44が捲回状態にされて,交換可能に固定されており,被濾過切削油をこの濾過フィルター44を通過させて濾過して浄化切削油を得てから,クリーン曹1内に対して右側板3に穿設された半円形開口部6を介してクリーン曹1内に流出するように構成されている。
【0035】続いて,図1に図2の濾過ドラムの中心軸に沿う断面図をさらに参照して,濾過ドラム30内にはクリーン曹1の浄化切削油を濾過フィルター44に向けて噴出するためにポンプ47に配管された管体46に接続される噴射管45が設けられており,この噴射管45の端部45eを保持板60(図1に図示)において軽く支持し,蓋部材61により蓋をするように構成している。また,この噴射管 22 45にはノズル45aが所定間隔で複数本配設されており,所謂逆洗浄を濾過フィルター44に対して行うことで,濾過フィルター44の目づまりを解消して連続濾過動作を可能にしている。
【0038】次に,図2と図3の濾過ドラムを分解した様子を示した平面図を参照して本発明の最大の特徴である濾過ドラムの構成とその組立て手順に付いて述べる。ここで,図3において,…濾過ドラム30の構成について主に述べると,上述の右側板3の半円形開口部6の近傍には右円盤部材51に形成されたネジ孔51kに螺合させるためのボルト32を通過させるための貫通孔3aが穿設されており,弾性板部材であるゴムシート33に穿設された孔部33aにボルト32を夫々貫通させた状態で右側板3に対して着脱可能に固定できるようにしている。
【0039】一方,図3を参照して,濾過ドラム30の構成は,所定直径のガス管用の鋼管を…各側面がドラム回転中心に対して直交する面で構成されるようにして所望の全長に切断した基体55を得る。この後に,基体55の各切断面においてフランジ部材55x,55yを溶接してシール摺動面S1,S2を構成する。また,この基体の内部において,リブ55h,55kを溶接して左右ベアリングホルダー56,57に対する固定部を一体形成する。リブ55kには濾過ドラム内部において浄化された濾過液を外部に流出させるための開口部が設けられる一方,リブ55hは密閉状態に構成される。また,基体55には上記のフィルター44を設けるための開口部55aとフィルター固定用のネジ孔55bがさらに機械加工される。
【0040】また,図2において,左右ベアリングホルダー56,57内には液密状態で回転するシールベアリング70が夫々内蔵されており,ネジ29により上記の噴射管45に固定されている。これらのベアリングホルダー56,57はボルト32を用いて上記のリブ55h,55kに固定されている。
【0041】一方,上記の右円盤部材51には,俗称のVシール50であって,基部50aとリップ部50bからなり,環状部51aに対してやや開いた状態でセットされるシール体が固定されている。また,この右円盤部材51の反対側には, 23 Vシール50を環状部52aに対してやや開いた状態でセットした左円盤部材52が準備される。以上の準備の後に,各円盤の挿通孔部51b,52bを噴射管45の両端部位から挿通してから,固定ネジ53を各円盤部材のネジ孔51d,52dに対して締め付けることにより,Vシール50のリップ部50bが上述したフランジ部材55x,55yのシール摺動面S1,S2に対して均一に当接する状態で完成することができる。このために左右円盤部材51,52も濾過ドラムの基体55と同様に旋盤加工により構成すると良い。… 【0042】以上のようにして濾過ドラムの半完成品を得る。…この後に,図1,図2に示すように貯蔵曹(貯留曹7)内の半円形開口部6の近傍に穿設された貫通孔3aに対してボルト32をセットしてから,ゴムシート33に穿設された孔部33aに挿通してから,右円盤部51に形成されたネジ孔51kに対して夫々螺合固定することにより,右円盤部材51を貯蔵曹(貯留曹7)を構成する側板3の内側に固定する。この後,チェーンをセットし,カバー(不図示)を固定して完成する。
また,濾過ドラムの交換の際には,逆の手順で外すようにしてフィルター交換等を簡単に行えるようにする。
【0043】以上のように濾過ドラムを構成及び固定することにより,貯留曹7内において回転駆動される濾過ドラムの側面から汚濁液が進入することが効果的に防止できるので,長期に渡る使用の場合であっても濾過精度を低下させず,かつ組み付け作業等に要する時間が短縮でき生産性を向上できる。… 【0044】最後に,図4は上記濾過ドラムの構成例を示した模式図である。先ず,図4(a)において,濾過ドラム30は貯留曹7を構成する右側板3に対して片支持状態で固定されており,開口部6を介して浄化液が矢印W方向に流出されてクリーン曹1に流れ出るように構成されている。
【0045】次に,図4(b)において,濾過ドラム30は左右側板2,3において両支持状態で固定されており,左右の開口部5,6から浄化液が矢印W方向に流出されてクリーン曹1に流れ出るように構成されている。そして,図4(c)に 24 おいて,濾過ドラム30は隔壁25を設ける一方,濾過性能の異なる番手のフィルター44A,44Bを図示のように隔壁25により区分けするように設けており,左右側板2,3において両支持状態で固定されている。以上の構成において,左右の開口部5,6から異なる濾過を行われた浄化液が矢印W1,2方向に流出されて各クリーン曹1A,1Bに流れ出るように構成されている。したがって,この構成によれば,1個の共通濾過ドラムにより異なる分別濾過ができる。
カ 発明の効果 【0047】以上のように,本発明によれば貯蔵曹内において回転駆動される濾過ドラムを備えた濾過装置において,予め濾過ドラムの半完成品を得た後,貯蔵曹を構成する側板の内側に円盤部材を介して装置本体内に,濾過ドラムの半完成品を着脱可能に配置したものであるから,予め濾過ドラムの回転部分とシール部分とを組み立てることにより,貯蔵曹内に固定されているシール手段の全面と濾過ドラム側の摺動面の全面の精度を確保することが可能となるので,濾過精度が低下することなく,交換作業も容易となり,かつまた濾過装置の生産性を大幅に向上することができる濾過装置を提供できる。
(2) 本件発明1の特徴 本件発明1に係る特許請求の範囲(請求項1)の記載は,前記第2の2(2)【請求項1】のとおりであるところ,前記(1)によれば,本件発明1の特徴は,以下のとおりである。
ア 本件発明1は,液体と異なる粒度の固形物の混濁液を濾過する濾過装置に関するものである(【0001】。
) イ 従来,金属切削加工の使用後に切粉を含んだ状態になった切削油を,切粉と切削油に分離して再使用可能にする切削油を得るための濾過装置として,切削粉を含んだ汚濁液を一時的に貯蔵する貯蔵曹と,この貯蔵曹内で回転駆動されるとともに外周面に濾過手段を備え,濾過後の切削油を液曹中に流出する濾過ドラムとを有する濾過装置が製造されていた(【0002】【0003】。
, ) 25 しかし,このような濾過装置では,長時間にわたり濾過ドラムを貯蔵曹内で回転駆動しても汚濁液が濾過ドラム内へ進入しないように,シール手段の取付け精度と濾過ドラムの摺動面の仕上げ面精度に注意を払って装置を組み立てる必要があったため,生産性が著しく低下するという課題があった(【0005】〜【0007】 。
) ウ 本件発明1は,上記課題の解決手段として,特許請求の範囲(請求項1)に記載の構成を採用したものである(【0008】【0009】。
, ) 特に,あらかじめ濾過ドラムの回転部分,シール手段及びシール手段を固定する円盤部材を組み立てて,濾過ドラムの半完成品として一体化し,これを円盤部材を介して,貯蔵曹を構成する側板の内側に着脱可能に配置することで,濾過ドラムの半完成品を交換可能に濾過装置内に装着するという構成を採用することにより,貯蔵曹内に固定されているシール手段の全面と濾過ドラム側の摺動面の全面の精度を確保するようにしたものである(【0038】〜【0041】,図1〜3)。
エ 本件発明1は,貯蔵曹内に固定されているシール手段の全面と濾過ドラム側の摺動面の全面の精度を確保することが可能となるから,濾過精度が低下することはなく,交換作業も容易となり,また濾過装置の生産性を大幅に向上することができるという効果がある(【0047】。
) 2 取消事由1(本件訂正を認めた判断の誤り)について (1) 請求項3について ア 請求項3に関する本件訂正の訂正事項 請求項3に関する本件訂正は,「前記濾過ドラムは,側面が密閉状態にされ,かつ前記シール固定部材を前記側面開口部を形成した片側面に設け,前記シール固定部材により前記貯蔵曹内において片支持状態で固定することを特徴とする請求項1に記載の濾過装置」(本件訂正前の請求項3)を,「前記濾過ドラムは,側面が密閉状態にされ,かつ前記濾過ドラムの半完成品が前記貯蔵曹内において片支持状態で固定されることを特徴とする請求項1に記載の濾過装置」(本件訂正後の請求項3)と訂正するものである。
26 請求項3が引用する請求項1は,本件訂正前は,「前記濾過ドラムが,前記貯蔵曹内において不動状態で固定される軸体と,/前記軸体により回転自在に軸支されるとともに前記外周面と前記側面開口部とを形成したドラム基部と,/前記側面開口部の環状縁部を液密状態でシールするために弾性部材から成形されるシール手段と,/前記シール手段を固定するとともに前記軸体に挿通した後に前記軸体に固定されるシール固定部材とからなり,/前記貯蔵曹に対して前記シール固定部材を固定することで,前記濾過ドラムを前記貯蔵曹内に交換可能に配設したことを特徴とする濾過装置」であり,本件訂正後は,「前記濾過ドラムの半完成品は,前記貯蔵曹内に収容され不動状態で固定される軸体と,前記軸体により回転自在に軸支されるとともに前記外周面と前記側面開口部とを形成したドラム基部と,前記側面開口部の環状縁部を液密状態でシールするために弾性部材から成形されるシール手段と,前記シール手段を固定するとともに前記軸体に挿通した後に前記軸体に固定され,かつ前記貯蔵曹を構成する側板の内側に着脱可能に配置される円盤部材とからなり,/前記貯蔵曹内に前記円盤部材を固定することで,前記濾過ドラムの半完成品を前記貯蔵曹内に交換可能に配置したことを特徴とする濾過装置」である。
したがって,請求項3に関する本件訂正は,@濾過ドラムはシール固定部材で貯蔵曹内に固定されるという構成を,濾過ドラムの半完成品は貯蔵曹内に固定されるという構成に訂正するものであり,Aシール固定部材を濾過ドラムの側面開口部を形成した片側面に設けるという構成を削除するものである。
訂正の目的 本件審決において,請求項3に関する本件訂正は,明瞭でない記載釈明を目的とするものであると判断されたところ,原告は,この点を特段争わずに,請求項3に関する本件訂正は,特許請求の範囲減縮になっていないから,特許法134条の2第1項ただし書1号に違反する旨主張する。
しかし,仮に,請求項3に関する本件訂正が,特許請求の範囲減縮を目的とするとするものではないとしても,少なくとも明瞭でない記載釈明を目的とするも 27 のであることについて争いはないから,請求項3に関する本件訂正が,特許法134条の2第1項ただし書1号に違反するものとして許されないということはできない。
したがって,特許法134条の2第1項ただし書1号違反をいう原告の主張は,失当である。
ウ 実質的拡張 原告は,請求項3に関する本件訂正は,特許請求の範囲減縮になっていないと主張するところ,同主張を善解すれば,原告は,請求項3に関する本件訂正は,特許法134条の2第9項において準用する同法126条6項にいう「実質上特許請求の範囲拡張」するものであるから許されないと主張しているとも解釈されるから,念のため,かかる主張を前提に,以下判断する。
(ア) 前記@の訂正について まず,本件訂正前の請求項3は本件訂正前の請求項1を,本件訂正後の請求項3は本件訂正後の請求項1を,それぞれ引用するものである。
そして,本件訂正前の請求項1には,「濾過ドラム」は濾過装置を構成するものであって,かつ,貯蔵曹内に配設される旨記載されているのに対し,本件訂正後の請求項1には,「濾過ドラム」は濾過装置を構成するものである一方,貯蔵曹内に配置されるものは「濾過ドラムの半完成品」である旨記載されている。そうすると,請求項1の本件訂正は,濾過装置に組み込まれていない単体の状態にある濾過ドラムを,「濾過ドラムの半完成品」と明確化したものということができる。また,本件訂正前の請求項1と本件訂正後の請求項1を比較すれば,請求項1の本件訂正は,「シール固定部材」を「円盤部材」へと表記を改めたものである。
そうすると,濾過ドラムはシール固定部材で貯蔵曹内に固定されるという構成は,濾過ドラムの半完成品は円盤部材で貯蔵曹内に固定されるという構成と同義である。
次に,本件訂正後の請求項1の記載によれば,「円盤部材」は「濾過ドラムの半完成品」の構成部材であって,当該「円盤部材」は「貯蔵曹を構成する側板の内側 28 に着脱可能に配置される」ものである。
そうすると,濾過ドラムの半完成品は円盤部材で貯蔵曹内に固定されるという構成は,濾過ドラムの半完成品は貯蔵曹内に固定されるという構成と同義である。
したがって,本件訂正前の請求項3における濾過ドラムはシール固定部材で貯蔵曹内に固定されているという構成と,本件訂正後の請求項3における濾過ドラムの半完成品は貯蔵曹内に固定されているという構成との間には実質的な相違はないものと認められる。
よって,請求項3に関する本件訂正のうち,前記@の訂正について,実質上特許請求の範囲拡張するものということはできない。
(イ) 前記Aの訂正について 前記アのとおり,請求項3に関する本件訂正により,Aシール固定部材を濾過ドラムの側面開口部を形成した片側面に設けるという構成は削除されている。
しかし,前記(ア)のとおり,本件訂正により「シール固定部材」は「円盤部材」へと表記を改められたものであって,円盤部材が,濾過ドラム(濾過ドラムの半完成品)の側面開口部を形成した側面に設けられることは,本件訂正後の請求項1に記載されている。
また,本件訂正後の請求項3は,濾過ドラム(濾過ドラムの半完成品)が貯蔵曹内に片支持状態で固定されるという構成を採用するところ,本件訂正後明細書には,「図4(a)において,濾過ドラム30は貯留曹7を構成する右側板3に対して片支持状態で固定されており,開口部6を介して浄化液が矢印W方向に流出されてクリーン曹1に流れ出るように構成されている。( 」【0044】)と記載されている。
そうすると,濾過ドラム(濾過ドラムの半完成品)が貯蔵曹内に片支持状態で固定されるという構成は,濾過ドラムの側面開口部が形成された片面側にシール固定部材(円盤部材)を設けるという構成を意味するものということができる。
したがって,請求項3に関する本件訂正により,シール固定部材を濾過ドラムの側面開口部を形成した片側面に設けるという構成は削除されているものの,当該構 29 成は本件訂正後の請求項3に実質的に記載されているものと認められる。
よって,請求項3に関する本件訂正のうち,前記Aの訂正について,実質上特許請求の範囲拡張するものということはできない。
(2) 請求項4について ア 請求項4に関する本件訂正の訂正事項 請求項4に関する本件訂正は,「前記濾過ドラムは,両側面部位において前記シール固定部材を夫々設けてなり,前記シール固定部材により前記貯蔵曹内において両支持状態で固定されることを特徴とする請求項1に記載の濾過装置」(本件訂正前の請求項4)を,「前記濾過ドラムは,前記半完成品の濾過ドラムが前記貯蔵曹内において両支持状態で固定されることを特徴とする請求項1に記載の濾過装置」(本件訂正後の請求項4)と訂正するものである。
また,請求項4が引用する請求項1に関する本件訂正は,前記(1)アのとおりである。
したがって,請求項4に関する本件訂正は,@濾過ドラムはシール固定部材で貯蔵曹内に固定されるという構成を,濾過ドラムの半完成品は貯蔵曹内に固定されるという構成に訂正するものであり,A両側面部位においてシール固定部材を夫々設けるという構成を削除するものである。
訂正の目的 前記(1)イにおける検討と同じく,特許法134条の2第1項ただし書1号違反をいう原告の主張は,失当である。
ウ 実質的拡張 原告の主張を善解すれば,原告は,請求項4に関する本件訂正は,特許法134条の2第9項において準用する同法126条6項にいう「実質上特許請求の範囲拡張」するものであるから許されないと主張しているとも解釈されるから,念のため,かかる主張を前提に,以下判断する。
(ア) 前記@の訂正について 30 前記(1)ウ(ア)における検討と同じく,本件訂正前の請求項4における濾過ドラムはシール固定部材で貯蔵曹内に固定されているという構成と,本件訂正後の請求項4における濾過ドラムの半完成品は貯蔵曹内に固定されているという構成との間には実質的な相違はないものと認められる。
よって,請求項4に関する本件訂正のうち,前記@の訂正について,実質上特許請求の範囲拡張するものということはできない。
(イ) 前記Aの訂正について 前記アのとおり,請求項4に関する本件訂正により,A両側面部位においてシール固定部材を夫々設けるという構成は削除されている。
しかし,前記(1)ウ(ア)のとおり,本件訂正により「シール固定部材」は「円盤部材」へと表記を改められたものであって,円盤部材が,濾過ドラム(濾過ドラムの半完成品)の側面開口部を形成した側面に設けられることは,本件訂正後の請求項1に記載されている。
また,本件訂正後の請求項4は,濾過ドラム(濾過ドラムの半完成品)が貯蔵曹内に両支持状態で固定されるという構成を採用するところ,本件訂正後明細書には,「図4(b)において,濾過ドラム30は左右側板2,3において両支持状態で固定されており,左右の開口部5,6から浄化液が矢印W方向に流出されてクリーン曹1に流れ出るように構成されている。( 」【0045】)と記載されている。そうすると,濾過ドラム(濾過ドラムの半完成品)が貯蔵曹内に両支持状態で固定されるという構成は,濾過ドラムの側面開口部が形成された両側面にシール固定部材(円盤部材)を設けるという構成を意味するものといえる。
したがって,請求項4に関する本件訂正により,両側面部位においてシール固定部材を夫々設けるという構成は削除されているものの,当該構成は本件訂正後の請求項4に実質的に記載されているものと認められる。
よって,請求項4に関する本件訂正のうち,前記Aの訂正について,実質上特許請求の範囲拡張するものということはできない。
31 (3) 請求項6について ア 請求項6に関する本件訂正の訂正事項 請求項6に関する本件訂正は,「前記濾過ドラムは,前記シール固定部材と前記貯蔵曹の側壁との間に介在される弾性板部材を介して前記貯蔵曹内に固定されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の濾過装置」(本件訂正前の請求項6)を,「前記濾過ドラムは,前記濾過ドラムの半完成品と前記貯蔵曹の側壁との間に介在される弾性板部材を介して前記貯蔵曹内に固定されることを特徴とする請求項1に記載の濾過装置」(本件訂正後の請求項6)と訂正するものである。
また,請求項6が引用する請求項1に関する本件訂正は,前記(1)アのとおりであり,請求項2から請求項5に関する本件訂正も,請求項1に関する本件訂正に伴いなされたものである(甲25)。
したがって,請求項6に関する本件訂正は,弾性板部材がシール固定部材と貯蔵曹の側壁の間に介在されるという構成を,弾性板部材が濾過ドラムの半完成品と貯蔵曹の側壁の間に介在されるという構成に訂正するものである。
訂正の目的 前記(1)イにおける検討と同じく,特許法134条の2第1項ただし書1号違反をいう原告の主張は失当である。
ウ 実質的拡張 原告は,請求項6に関する本件訂正について,実質的拡張になっているとも主張していることからすれば,原告は,請求項6に関する本件訂正は,特許法134条の2第9項において準用する同法126条6項にいう「実質上特許請求の範囲拡張」するものであるから許されないと主張しているとも解釈されるから,念のため,かかる主張を前提に,以下判断する。
まず,前記(1)ウ(ア)のとおり,「シール固定部材」は「円盤部材」へと表記が改められたものであるから,本件訂正前の請求項6の上記構成は,弾性板部材が円盤 32 部材と貯蔵曹の側壁の間に介在されるという構成と同義である。
そして,前記(1)ウ(ア)で説示したとおり,「円盤部材」は「濾過ドラムの半完成品」の構成部材であり,当該「円盤部材」は「貯蔵曹を構成する側板の内側に着脱可能に配置される」ものである。そうすると,円盤部材と貯蔵曹の側壁との位置関係は,円盤部材を構成部材とし,かつ,当該円盤部材を貯蔵曹の側板の内側に着脱可能に配置する構成を有する「濾過ドラムの半完成品」と貯蔵曹の側壁との位置関係と同じである。
したがって,弾性板部材がシール固定部材と貯蔵曹の側壁の間に介在されるという構成と,弾性板部材が濾過ドラムの半完成品と貯蔵曹の側壁の間に介在されるという構成との間には実質的な相違はないものと認められる。
よって,請求項6に関する本件訂正について,実質上特許請求の範囲拡張するものということはできない。
(4) 原告の主張について これに対し,原告は,請求項3及び4に関する本件訂正によって,濾過ドラムにシール固定部材を設ける位置について「片面側」や「両側面」という要件がなくなり,本件訂正後の請求項3及び4は,「片支持状態」や「両支持状態」という実質的な意味しか残らない記載となる,また,これらの用語の定義も明確ではないと主張する。
しかし,本件訂正後の請求項3の「片支持状態」という用語,同請求項4の「両支持状態」という用語の意義について,本件訂正後明細書の記載及び図面を考慮すれば,前記(1)ウ(イ),(2)ウ(イ)のとおり解釈できるから,原告の主張は結論を左右するものではない。
(5) 小括 以上のとおり,請求項3,4及び6に関する本件訂正は,そもそも明瞭でない記載釈明を目的とするものであることについて原告は争っておらず,さらに,実質上特許請求の範囲拡張するものでもないから,取消事由1は理由がない。
33 3 取消事由2(旧4項に規定する要件に係る判断の誤り)について (1) 旧4項は,「発明の詳細な説明には,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に,その発明の目的,構成及び効果を記載しなければならない。」と規定するところ,物の発明について旧4項に規定する要件を充足するためには,当業者が,明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて,過度の試行錯誤を要することなく,その物を製造し,使用することができる程度の記載があることを要する。
そして,原告は,本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)には,「前記濾過ドラムの半完成品を前記貯蔵曹内に交換可能に配置した」との記載があるところ,@濾過ドラムの半完成品を交換する方法,A同交換の際に噴射管45と管体46をそれぞれ回転させることなく接続する方法が不明瞭である旨主張する。
(2) 濾過ドラムの半完成品の交換方法について ア 本件訂正後明細書の記載 前記@の濾過ドラムの半完成品の交換方法について,本件訂正後明細書には,おおむね,次のとおり記載されている。
(ア) 濾過ドラム30内には…噴射管45が設けられており,この噴射管45の端部45eを保持板60(図1に図示)において軽く支持し,蓋部材61により蓋をするように構成している。【0035】 ( ) (イ) 以上のようにして濾過ドラムの半完成品を得る。…この後に,図1,図2に示すように貯蔵曹(貯留曹7)内の半円形開口部6の近傍に穿設された貫通孔3aに対してボルト32をセットしてから,ゴムシート33に穿設された孔部33aに挿通してから,右円盤部51に形成されたネジ孔51kに対して夫々螺合固定することにより,右円盤部材51を貯蔵曹(貯留曹7)を構成する側板3の内側に固定する。この後,チェーンをセットし,カバー(不図示)を固定して完成する。また,濾過ドラムの交換の際には,逆の手順で外すようにしてフィルター交換等を簡単に行えるようにする。【0042】 ( ) 34 (ウ) 図4は上記濾過ドラムの構成例を示した模式図である。先ず,図4(a)において,濾過ドラム30は貯留曹7を構成する右側板3に対して片支持状態で固定されており,開口部6を介して浄化液が矢印W方向に流出されてクリーン曹1に流れ出るように構成されている。【0044】 ( ) (エ) 次に,図4(b)において,濾過ドラム30は左右側板2,3において両支持状態で固定されており,左右の開口部5,6から浄化液が矢印W方向に流出されてクリーン曹1に流れ出るように構成されている。そして,図4(c)において,濾過ドラム30は隔壁25を設ける一方,濾過性能の異なる番手のフィルター44A,44Bを図示のように隔壁25により区分けするように設けており,左右側板2,3において両支持状態で固定されている。以上の構成において,左右の開口部5,6から異なる濾過を行われた浄化液が矢印W1,2方向に流出されて各クリーン曹1A,1Bに流れ出るように構成されている。したがって,この構成によれば,1個の共通濾過ドラムにより異なる分別濾過ができる。【0045】 ( ) イ 旧4項に規定する要件の判断 (ア) 濾過ドラムの半完成品の交換方法について,本件訂正後明細書の前記ア(ア)ないし(ウ)の各記載に基づけば,当業者は,濾過ドラム30内に設けられた噴射管45の端部45eを,貯蔵曹7の左側板2に設けられた保持板60において軽く支持し,蓋部材61により蓋をするとともに(【0035】 ,貯蔵曹7の右側板 )3に形成された半円形開口部6の近傍に穿設された貫通孔3aに対してボルト32をセットしてから,ゴムシート33に穿設された孔部33aに挿通して,右円盤部材51に形成されたネジ孔51kに対してそれぞれ螺合固定することにより,右円盤部材51を右側板3の内側に固定すること(【0042】)を理解できるものと認められ,当業者であれば,その際,貯蔵曹7の左右側板2,3間に濾過ドラム30を挿入できるように,左右側板2,3間の間隔を設定する必要があることも,当然の前提として理解すると認められる。
また,本件訂正後明細書の記載(【0042】)に基づけば,当業者であれば,濾 35 過ドラム30を交換する際には,上記と逆の手順で交換対象となる濾過ドラム30を外せばよいことも理解すると認められる。
(イ) また,両支持状態で貯蔵曹内に固定される濾過ドラムの半完成品の交換方法(本件発明4)についても,本件訂正後明細書の前記ア(エ)の記載に基づけば,当業者であれば,貯蔵曹7の左右側板2,3間に濾過ドラム30を挿入できるように,左右側板2,3間の間隔を設定することを当然の前提として,右円盤部材51及び左円盤部材52を前記(ア)の右円盤部材51と同様に固定すればよいことを理解すると認められる。
(3) 噴射管45と管体46の接続方法について 前記Aの噴射管45と管体46の接続方法については,上記2つの管同士を,それぞれ回転させることなく接続する手段として,ニップルなどの各種管継手を用いることや,管継手を用いずに管同士を直接接続するためにネジ等の手段を使用することを,当業者は当然に考慮するということができる。
したがって,当業者であれば,本件特許の出願時の技術常識に基づいて,噴射管45と管体46を,それぞれ回転させることなく接続することは当然に可能であったと認められる。
(4) 以上によれば,当業者であれば,本件訂正後明細書の記載及び本件特許の出願時の技術常識に基づいて,濾過ドラムの半完成品を貯蔵曹に交換可能に配置することは,過度の試行錯誤を要することなく可能であったということができる。
(5) 原告の主張について 原告は,濾過ドラムの半完成品を不動状態の軸体45にどのように交換可能に取り付けるか不明である旨主張するが,本件各発明は,濾過ドラムの半完成品を軸体45ではなく,貯蔵曹内に交換可能に取り付けるものであるから,同主張は失当である。
(6) 小括 以上のとおり,当業者であれば,本件訂正後明細書の記載及び本件特許の出願時 36 の技術常識に基づいて,過度の試行錯誤を要することなく本件各発明を実施することが可能であったと認められるから,取消事由2は理由がない。
4 取消事由3(旧5項2号に規定する要件に係る判断の誤り)について 原告は,本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)には,円盤部材について「前記シール手段を固定するとともに前記軸体に挿通した後に前記軸体に固定され」と,その取付方法が記載されていることから,当該特許請求の範囲の記載は旧5項2号に規定する要件に違反する旨主張する。
確かに,旧5項2号は,特許請求の範囲の記載は,「特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載した項に区分してあること」と規定しており,物の発明において技術的手段を方法的に記載することは原則として認められるものではない。
しかし,円盤部材について,「軸体に挿通した後に軸体に固定され」るという記載は,円盤部材が軸体に挿通された状態で当該軸体に固定されているという接続状態を表すもの(【0041】)であって,円盤部材について方法的に記載するものということはできない。
なお,原告は,円盤部材の取付方法は,本件発明1にとって重要である旨主張するものの,その趣旨は明らかではなく,また,円盤部材の取付方法が本件発明1において有する意義は,円盤部材についての前記記載が方法的であるか否かとの判断とは関係がないので,原告の同主張は失当である。
したがって,本件発明1の特許請求の範囲に,物の製造方法が記載されているとして,その記載が旧5項2号に規定する要件に違反するという原告の主張は理由がなく,本件発明2ないし8も同様であるから,取消事由3は理由がない。
5 取消事由4(進歩性に係る判断の誤り)について (1) 引用発明について ア 引用例(甲1)には,おおむね,次のような記載がある(下記記載中に引用する図1ないし3については,別紙引用例図面目録参照)。
37 (ア) 発明の要旨 本発明の目的は,貯蔵槽内に回転自在に支持された濾過ドラムを備えた上述の汎用タイプの濾過装置であって,より簡易的,より安価で,そして確実な方法によって,斬新,かつ改良された濾過装置を提供することである。
より詳細な本発明の目的は,前記ドラムに沿って延在し,貯蔵槽の壁に両端が確実に支持される1つの固定軸状部材に回転のために前記ドラムを支持することによって上述の目的を達成することである。
もうひとつの目的は,濾過スクリーンを洗い流すために濾過された液体(クリーンな液体)をスプレーノズルに供給し,濾過ドラムを支持する軸状部材を使用することであり,また,それによって,当該ドラム内に別の異なるパイプを設ける手間を省くことである。
また本発明の特徴は,濾過された液体が端壁を通ってドラムから軸方向に排出されることを可能とし,かつ軸状部材によってドラムを軸支することができるドラムの一端壁の放射軸状の構造にある。
これら本発明の目的や効果,その他の本発明の目的や効果は添付図面と併せて以下に述べる詳細な説明からより明らかになる。
(イ) 図面の簡単な説明 図1は,本発明独自の特徴が組み込まれた斬新で改良された濾過装置の斜視図であり,明瞭化のために前記装置の一部を切り欠いてある。
図2,3は濾過装置の横断面図である。
(ウ) 発明を実施するための形態 この発明は,汚濁液を濾過し,クリーンな液体の流れを形成するための装置10として具現化されている。前記液は,例えば,金属性チップや粒子で汚染された工作機械クーラントであってもよい。
濾過装置10は汚濁液貯蔵槽12を備え,汚濁液貯蔵槽12は底壁13(図3),左右に離間した一対の側壁14,15で形成され,汚濁液のプール16を含み,注 38 入口17経由で汚濁液貯蔵槽に投入される(図1,図2)。濾過ドラム20は,側壁14,15の間に位置し,汚濁液のプール16に一部浸されている。前記ドラムは,一般的には円筒形で左右に離間した端壁21,22を含み,前記端壁21,22は貯蔵槽の側壁14,15に対して各々離間対面配置され,さらに管状の濾過部材25(端壁21,22の間に伸長し,その外周に隣接している)を含む。ここで,前記濾過部材は微細目スクリーンベルトである。… 前記汚濁液のプール16内のより軽い屑や細かい粒子は,クーラントが前記濾過ベルトを介して上方に移動し,前記濾過ドラム20の内部へ流入することにより,濾過ベルト25によって濾過される。前記濾過ベルト25によって濾過されたクリーンなクーラントは,ドラムの片端から軸方向に流出し,クリーンクーラントタンク40内のプール38として集められる。クーラントタンク40内のポンプ41(図2)は,クリーンなクーラントをパイプ42を経由して工作機械,もしくは他の利用装置に供給する。
クリーンなクーラントの一部は,スプレーノズル45(ドラム20の内部に設けられ,濾過ベルト25の内側へ向けられている)へ汲み上げられる。前記ドラムが回転している間,前記ノズル45からのクリーンなクーラントは,濾過された粒子をその箇所から洗い流すため,連続的に前記ベルトを逆洗浄する。
そのような粒子は前記汚濁液貯蔵槽12の前記底壁13に溜まり,前記ドラッグバー34によって泥形状で搬出される。
本発明によれば,同じ汎用タイプの従来の濾過装置の場合よりも,簡易的かつ確実な方法で,前記濾過ドラム20は前記汚濁液貯蔵槽12内に支持される。さらに,前記濾過ドラム20は,前記濾過ベルト25を逆洗浄するためのクリーンクーラントをそのための専用の管を設けずに前記スプレーノズル45へ供給するやり方によって支持される。
具体的には,細長い軸状部材(好ましくは中空の管50の形状)によってドラムを回転のために軸支することで,上述の構造は達成できる。図3に明確に示すよう 39 に,管50(軸体)は汚濁液貯蔵槽12の側壁14,15間を側方にのびる。前記管(軸体)の一端部は側壁14の内面に溶接された補強用カラー51によって強固に非回転状態(不動状態)で支えられている。管(軸体)の他端部は同様に,側板15A(側壁15に着脱可能に固定され,そして比較的大きな開口をカバーしている)の内面に補強用カラー52によって支えられている。ロッキングスクリュー53は前記カラー52内に伸長しており,前記管(軸体)の縦方向の動きを防ぐため,管(軸体)と係合している。
本発明の実施の形態において,ドラム20は,固定された管50(軸体)にベアリング55,56によって回転状態で軸支される。前記ベアリング55は前記管(軸体)と前記濾過ドラムの端壁21の内面に取り付けられたハブ57の間に設けられ,前記端壁は前記管(軸体)を収容するための開口を除き,孔のない部材である。しかし,他端壁22は放射軸状の形状であり,中心部のハブ58(図1),角度方向に間隔が設けられ前記ハブから外方に向かって放射状に延びる4つのスポーク59,前記スポークの外端部の全周に延在する外側リム60を有する。前記ベアリング56は前記管(軸体)によって前記端壁22を軸支するために,前記管50(軸体)と前記ハブ58の間に設けられる。
スポーク59によって,角度方向に間隔を空けた4つの出口開口62(図1,図2)が端壁22に形成される。前記開口はドラム内の濾過されたクーラントが前記端壁22を通ってドラムから軸方向に排出されることを可能とする。前記出口開口62は,貯蔵槽12の側壁15の側板15Aに設けられた出口開口63に通じており,クーラントタンク40の真上に位置する。その結果,濾過されたクーラントは出口開口62,63を経由してドラムからタンク40に吐出される。
ドラム20の端壁22をシールするための手段は,プール16の汚濁液が出口開口を介してドラム内に入り込むこと,そして出口開口を経由して排出された濾過されたクーラントが汚濁プール内に漏れ出すことを防ぐために,出口開口62の半径方向外方で,貯蔵槽12の着脱可能な側板15Aに設けられる。ここで,それらの 40 手段は貯蔵槽12の側板15Aの内面に固着され,かつ内面から内向きに突出している比較的大きな円形のスリーブ65(図3)を含む。環状のシーリングガスケット66は,出口開口62の半径方向外方で前記スリーブ65の外周に固着され,そして,前記端壁22のリム60に対して弾性的に圧接し,そのように構成することで,汚濁プール16と前記出口開口62の間のクーラントの流入出を防ぐシール構造を確立できる。
さらに前記濾過ドラム20を支持する前記管50(軸体)は,管70,71を経由しポンプ41からクリーンクーラント管42と連通している。その結果,前記クーラントタンク40からのクリーンなクーラントの一部は管50(軸体)内に汲み上げられる。スプレーノズル45はパイプ73経由で管50(軸体)と接続,連通されている。従って,管50(軸体)内に汲み上げられたクーラントはスプレーノズル45から排出され,濾過ベルト25を逆洗浄するのに役に立つ。
以上により,本発明は斬新的,かつ改良された濾過装置10(前記スプレーノズル45にクリーンクーラントを供給する強固に支持された管50(軸体)に回転のため軸支された濾過ドラム20を備える)をもたらすことは明白であろう。
その結果,濾過ドラムのための取付構造は信頼性が高く,しかし比較的シンプルで低価な構造であり,逆洗浄のために他の管を有する濾過装置を設ける必要がない。
イ 前記アの記載によれば,引用例には,引用発明に関し,以下の点が開示されていることが認められる。
(ア) 引用発明は,貯蔵曹内に回転自在に支持された濾過ドラムを備えた濾過装置に関するものである。
(イ) 引用発明は,簡易かつ安価でありながら,確実な濾過装置を提供することを課題とし,この課題解決手段として,@汚濁液貯蔵曹12の側壁14,15間を側方に延びる管50によって濾過ドラム20が回転状態で軸支され,A濾過ドラム20内の濾過された液体が端壁22に形成された出口開口62から,貯蔵曹12の側壁15の側板15Aに設けられた出口開口63を経由して,タンク40に吐出さ 41 れ,B濾過ドラム20の濾過ベルト25を逆洗浄するために濾過された液体が管50内に汲み上げられるという構成を採用したものである。
さらに,引用発明は,汚濁プール16と濾過ドラム20の出口開口62の間の液体の流入出を防ぐシール構造を確立するために,C濾過ドラム20の端壁22をシールするための手段を,貯蔵槽12の着脱可能な側板15Aに設けたものであって,当該手段は,環状のシーリングガスケット66と,側板15Aの内面に固着され,かつ内面から内向きに突出している比較的大きな円形のスリーブ65から成り,環状のシーリングガスケット66が,スリーブ65の外周に固着され,そして,端壁22のリム60に対して弾性的に圧接されている。
(ウ) 引用発明は,これらの構成を採用することにより,比較的簡易で安価な濾過ドラムでありながら,その取付構造の信頼性を高め,また,逆洗浄のための管の設置を不要としたものである。
(2) 本件発明1と引用発明の対比 引用例(甲1)に前記第2の3(3)アの引用発明が記載されていること,本件発明1と引用発明とが前記第2の3(3)イ(イ)及び(ウ)のとおり,相違点1及び2において相違することは,当事者間に争いがない。
(3) 本件発明1について 前記1(2)ウのとおり,本件発明1は,あらかじめ濾過ドラムの回転部分とシール部分,及びシール部分に当接する円盤部材を組み立てて,濾過ドラムの半完成品として一体化し,これを円盤部材を介して,貯蔵曹を構成する側板の内側に着脱可能に配置することで,交換可能に濾過装置内に装着するという構成を採用することにより,貯蔵曹内に固定されているシール手段の全面と濾過ドラム側の摺動面の全面の精度を確保するようにしたものである。すなわち,本件発明1は,濾過装置のシール機能の精度を確保するために,シール手段と,これに当接する摺動面を有する部材を一体化した上で,これらを交換可能に濾過装置内に装着するという構成を採用したものということができる。
42 (4) 相違点1の容易想到性 ア 引用例等に開示された事項 (ア) 引用例(甲1) 前記(1)イのとおり,引用例には,引用発明に関し,貯蔵曹内に回転自在に支持された濾過ドラムを備えた濾過装置に関するものであって,汚濁プール16と濾過ドラム20の出口開口62の間の液体の流入出を防ぐためのシール機能を確保する構成が開示されている。
そして,その構成は,シーリングガスケット66を貯蔵曹12の側板15Aの内面に固着したスリーブ65の外周に固着し,これを濾過ドラム20の端壁22のリム60に弾性的に圧接するというものである。
一方,引用例(甲1)には,シール機能を確保するために,濾過ドラム20と,側板15Aにスリーブ65を通じて固着されたシーリングガスケット66を一体化した上で,交換可能に濾過装置内に装着するという技術的思想については,記載も示唆もされていない。
(イ) 実開平6-32840号公報(甲2。以下「甲2文献」という。) a 甲2文献には以下の記載がある(下記記載中に引用する図1,2は,別紙各文献図面目録記載甲2文献参照)。
【0017】回転ドラム1の一方の側面は円板状の側板6で密閉され,他方の側面は4つの連通孔をもった側板7で構成している。… 【0026】図1において,リップパッキン18は,通常のリップパッキン材と同じ合成ゴム製…であって,パッキン本体19とリップ部20とで断面ヘ字型を構成したリング体である。このパッキン本体19は断面矩形になっており,リップ部20は,この矩形短辺の一つからリング体の縮径方向に屈曲して延設している。また,リップ部20は,通常のリップ形状と同様,先細り状になっている。
【0027】そして,このリップ部20の屈曲基部内周に,半円状の切欠溝21を周設して,リップ部20が外力により容易に屈曲するようになっている。すなわ 43 ち,リップに柔軟性,屈曲性を与えている。
【0029】また,このリップパッキン18を圧着するシールプレート22は,濾過槽2の側面で連通孔13の外周に取付けられている。
【0030】そして,このリップパッキン18は2枚重ねで使用する。下段のリップパッキン18は,中空軸3と同心の円筒状ブラケット23の段部24に外嵌されている。この下段のリップパッキン18に上段のものが外嵌している。… 【0031】この円筒状ブラケット23は,第1の環状取付板25に溶着され,この第1の環状取付板25は,前記側板7にボルト26により取付けられている。
【0032】シールプレート22は,第2の環状取付板27に溶着されており,この第2の環状取付板27は濾過槽2の側面にボルト28により取付けられている。
この第2の環状取付板27は第1の環状取付板25と同形状になっている。
【0033】したがって,リップパッキン18は円筒状ブラケット23を介して,第1の環状取付板25に予め固着されており,シールプレート22は第2の環状取付板27に予め固着されている。
【0034】したがって,これらのリップパッキン18やシールプレート22は予め中空軸3に嵌挿していて,回転ドラム1を濾過槽2に組立てた後,これらの第1および第2の環状取付板25,27をボルト26,28により取付けるので,もし,リップ部20の先端がシールプレート22に対し圧着の過不足があれば,環状取付板25,27の取付面で挟むパッキンで調整すればよい。… b 前記aによれば,甲2文献には,@2枚重ねで使用されるリップパッキン18や,このリップパッキン18を圧着するシールプレート22を,予め中空軸3に嵌挿し,回転ドラム1を濾過槽2に組立てた後,A溶着された円筒状ブラケット23を介してリップパッキン18が装着された第1の環状取付板25,及び,シールプレート22が溶着された第2の環状取付板27を,それぞれ,ボルト26,28により,回転ドラム1の側板7,濾過槽2に取付ける濾過装置が記載されていると認められる。
44 しかし,甲2文献には,リップパッキン18とシールプレート22を一体化した上で,交換可能に濾過装置内に装着するという技術的思想については,記載も示唆もない。
(ウ) 米国特許第5167839号明細書(甲3。以下「甲3文献」という。) a 甲3文献には以下の記載がある(下記記載中に引用する図5は,別紙各文献図面目録記載甲3文献参照)。
図5にはさらに液体が開口42を通じて排出される回転ドラム24の側面に担持された環状のシール55が示されている。前記シール55は,固形物を含む液体が濾過面25を経由せずに前記ドラム内部に流入するのを防ぐ。(第9欄6〜10行) b 前記aによれば,甲3文献には,回転ドラムの側面に環状のシール55が担持される濾過装置が記載されていると認められる。
しかし,回転ドラム24の側面に担持された環状のシール55と,当該環状のシール55が当接して摺動する部材との接続状況は不明であり,甲3文献には,これらを一体化した上で,交換可能に濾過装置内に装着するという技術的思想については,記載も示唆もない。
(エ) 特開平5-293312号公報(甲4。以下「甲4文献」という。) a 甲4文献には以下の記載がある(下記記載中に引用する図2は,別紙各文献図面目録記載甲4文献参照)。
【0011】ドラムフィルタ22は…図2に詳しく示されるように,粗い網状の外周壁30および底壁32の外面一面に,ポリエステル素材の濾布34が取り付けられている。… 【0012】…図2において,第2側壁44の円形開口部46には,第2側壁44を挟んで外周円筒部材53のフランジ48と環状部材50とがボルト52により固定されることによって,外周円筒部材53が円形開口部46から外側へ突き出した状態で嵌め着けられている。外周円筒部材53の内側には,ベアリング54,56を介して内周円筒部材40が回転可能に支持されている。この内周円筒部材40 45 の第2側壁44の外側に突き出した一端部には環状のカバー58が複数のボルト60により一体的に固定され,第2側壁44の内側に突き出した他端部には外周フランジ部62が一体的に設けられている。そして,前記ドラムフィルタ22は,その環状の結合部63が環状スプロケット38および外周フランジ部62と複数のボルト64で固定されることにより,環状スプロケット38,内周円筒部材40,カバー58等と一体的に固定され,第2側壁44において片持状に回転可能に支持されている。ドラムフィルタ22の外周側から内周側へ向かって濾布34を通過させられる浄化済クーラントは内周円筒部材40の内側の流出口66から貯留槽12へ流出させられるようになっている。なお,67,68はベアリング54,56の移動を阻止するためのストップリング,69はベアリング54,56からの油漏れを防ぐオイルシールである。またドラムフィルタ22の内部には,その中心軸よりやや高い位置に,浄化済クーラントが気体を混合した状態で噴射される複数の穴70aを上方部分に有する洗浄ノズル70が挿入されており,濾布34によって浄化された浄化済クーラントによって濾布34がドラムフィルタ22の内側から濾過方向とは逆向きに洗浄されるようになっている。
b 前記aによれば,甲4文献には,第2側壁44に固定された外周円筒部材53の内側に,ベアリング54,56を介して内周円筒部材40が回転可能に支持されており,ベアリング54,56からの油漏れを防ぐために,オイルシール69を備える濾過装置が記載されていると認められる。
しかし,オイルシール69が浄化前後のクーラントの流入出を防ぐために設けられたものであるのか否かは明らかでなく,また,オイルシール69に当接する摺動面を有する部材の構造やオイルシール69と当該部材との接続関係も明らかではない。したがって,仮に,オイルシール69が浄化前後のクーラントの流入出を防ぐために設けられたものであったとしても,甲4文献には,オイルシール69と,これに当接する摺動面を有する部材を一体化した上で,交換可能に濾過装置内に装着するという技術的思想については,記載も示唆もない。
46 (オ) 実開平5-22007号公報(甲5。以下「甲5文献」という。) a 甲5文献には以下の記載がある(下記記載中に引用する図2,3は,別紙各文献図面目録記載甲5文献参照)。
【0007】…ダーティタンクT1は,下フレーム1と,この下フレーム1に対して着脱可能に装着される上フレーム2とから成り… 【0008】…上フレーム2を取り外した状態で,ろ過ドラムDの下半部を下フレーム1に挿入して,その中心に通された固定軸16を,下フレーム1に固着された分割軸受14で支持し,この状態で上フレーム2をセットして,各分割軸受14を連結すると,固定軸16がダーティタンクT1の両側板17に水平に固定され,一対の軸受9a,9bを介してろ過ドラムDが固定軸16に回転可能に支持される。
… 【0009】ろ過ドラムDの開口側に設けられた前記平リング板11の外側面には,弾性変形可能な平リング状のシール材21が取付けられている。このシール材21は,その内周部が押え板22とボルト23を介して前記平リング板11に固着されている。シール材21の外径は,ろ過ドラムDの外径よりも大きいので,前記平リング板11に取付けた状態において,その外周部は,ろ過ドラムDの外周面から突出している。ろ過ドラムDの軸方向の両端部には,補強用の環体24が取付けられている。この環体24は,ろ過ドラムDの側面(平リング板11の外側面)から突出しており,前記シール材21における外周端に近い部分は,この環体24によってろ過ドラムDの内側から外側に向かって押し付けられて,その外半部は弾性変形している。これにより,シール材21の外周部の外側面は,ダーティタンクT1 の側板18の内側面に弾接して,ろ過ドラムDを介してダーティタンクT 1 とクリーンタンクT 2 とを接続している部分がシールされ,ダーティタンクT1 内のダーティクーラント液C1と,ろ過ドラムD及びクリーンタンクT2内のクリーンクーラント液C2とが混合しないようになっている。… b 前記aによれば,甲5文献には,下フレーム1と上フレーム2からなるダー 47 ティタンクT1のうち,上フレーム2を取り外した状態で,ろ過ドラムDを配置し,当該ろ過ドラムDには平リング板11を介してシール材21が固着され,シール材21の外周部の外側面がダーティタンクT1 の側板18の内側面に弾接するという濾過装置が記載されていると認められる。
しかし,甲5文献には,側板18とシール材21を一体化した上で,交換可能に濾過装置内に装着するという技術的思想については,記載も示唆もない。
(カ) 特開平6-205911号公報(甲6。以下「甲6文献」という。) a 甲6文献には以下の記載がある(下記記載中に引用する図3は,別紙各文献図面目録記載甲6文献参照)。
【0011】図3において明らかなように,回転ドラム3は一対の同軸の相対する円盤4からなり,それらの外周上を取り囲んで複数の孔を有するシート61が溶接されて配設されている。その上に,大きさの小さな孔を有するネット60が設けられている。
【0034】さらに,液体中に懸濁する固体の性質によって多少なりとも高い濾過度を得る異なる濾過面5を得るために回転ドラムに種々の大きさの孔を有するいくつかのネット60を取り付けることができる。
b 前記aによれば,甲6文献には,懸濁液の濾過に用いる回転ドラム3の構造が記載されていると認められるが,そもそも,本件発明1の「シール手段」に相当する部材についての記載は一切ない。
したがって,甲6文献には,シール手段と,これに当接する摺動面を有する部材を一体化した上で,交換可能に濾過装置内に装着するという技術的思想については,記載も示唆もない。
(キ) 特開平5-84407号公報(甲10。以下「甲10文献」という。) a 甲10文献には以下の記載がある(下記記載中に引用する図3は,別紙各文献図面目録記載甲10文献参照)。
【0008】…ドラム25の一方の側面に取付けられている外リング体27には, 48 リング状のシール材34が取付けられ,このシール材34がダーティタンクT1の側板16に弾接されて,この部分の水密が保持され,ダーティタンクT1内のダーティクーラント液C1と,クリーンタンクT2内のクリーンクーラント液C2とが混合しないようになっている。… 【0010】…スクレーパコンベア装置Sは第1駆動モータM1により,ろ過ドラム装置Dは第2駆動モータM2によりそれぞれ独立して駆動されている…ろ過ドラム装置Dを構成しているシール材34,軸受ユニット33などの交換を行う場合には・・・ろ過ドラム装置Dの全体をダーティタンクT1から容易に,しかも安全に取り出して,それらの交換作業を行える。
b 前記aによれば,甲10文献には,シール材34,軸受ユニット33などでろ過ドラムDが構成され,シール材34がダーティタンクT1の側板16に弾接される濾過装置が記載されていると認められる。
しかし,甲10文献には,ろ過ドラム装置Dを構成するシール材34,軸受ユニット33などの交換を行う場合には,ろ過ドラム装置Dの全体をダーティタンクT1 から取り出す旨記載されており,また,シール材34とこれに弾接される側板16を一体化した上で,交換可能に濾過装置内に装着するという技術的思想については,記載も示唆もない。
(ク) 特開平5-22008号公報(甲11。以下「甲11文献」という。) a 甲11文献には以下の記載がある(下記記載中に引用する図2は,別紙各文献図面目録記載甲11文献参照)。
【0008】…ろ過ドラムDの開口部側に設けられた前記リング板11の外面には,弾性変形可能なリング状のシール材22が取付けられ,ろ過ドラムDの軸方向の両端部に取付けられた環状部材23により前記シール材22は,前記側板18の内側面に弾接させられている。このため,ろ過ドラムDの回転時において,このシール材22は,側板18の内側に弾接した状態で摺動し,これによりこの部分の水密が保持されて,ダーティタンクT 1 内のダーティクーラント液C 1 と,ろ過ドラ 49 ムD及びクリーンタンクT 2内のクリーンクーラント液C 2 とが混合しないようになっている。
【0012】また,ろ過ドラムDの修理,或いはこれの構成部品の交換などのために,ろ過ドラムDをダーティタンクT1から取出す場合には,ボルト15を緩めて分割軸受14を分離可能にして上フレーム2を取外すと,固定軸16にろ過ドラムDが装着された状態で,このろ過ドラムDをダーティタンクT1 から取出すことができる。
b 前記aによれば,甲11文献には,ろ過ドラムDにシール材22が取り付けられ,これがダーティタンクT1の側板18の内側面に弾接される濾過装置が記載されていると認められる。
しかし,甲11文献には,ろ過ドラム装置Dの構成部品の交換などのために,ろ過ドラムDをダーティタンクT1から取り出す旨記載されており,また,シール材22とこれに弾接される側板18を一体化した上で,交換可能に濾過装置内に装着するという技術的思想については,記載も示唆もない。
容易想到性 以上のとおり,引用例には,濾過装置のシール機能を確保するために,シール手段と,これに当接する摺動面を有する部材を一体化した上で,交換可能に濾過装置内に装着するという技術的思想について,記載も示唆もない。
また,甲2ないし6,10及び11文献にも,上記技術的思想についての記載や示唆はないから,これらの文献に記載された濾過装置の構造をもって,濾過装置のシール機能を確保するために,シール手段と,これに当接する摺動面を有する部材を一体化した上で,交換可能に濾過装置内に装着するという構成には至らない。甲7ないし9,17ないし20の各文献についても同様である。
したがって,引用発明において,相違点1に係る本件発明の構成を備えるようにすること,すなわち,濾過ドラム20,シーリングガスケット66及び側板15Aを一体のものとした半完成品を汚濁液貯蔵曹12に交換可能に配置することは,当 50 業者が容易に想到することができたものということはできず,本件審決における本件発明1に係る進歩性の判断に誤りはない。
ウ 原告の主張について (ア) 半完成品を交換可能に配置することの示唆等 シール手段と,これに当接する摺動面を有する部材を一体化した上で,交換可能に濾過装置内に装着する濾過装置の構成について,原告は,@引用例の濾過装置は,ネジで側板15Aを側壁15の外側に取り付けているところ,側板15Aを側壁15の内側に取り付けることも可能であることから,濾過ドラム20,シーリングガスケット66及び側板15Aを一体なものとして交換することが示唆されている,A甲4文献に記載された濾過装置は,ドラムフィルタ22と環状の結合部63だけではなく,オイルシール69,ベアリング54,56,外周円筒部材53,フランジ48も半完成品として一体的に形成されており,この半完成品が第2側壁44に嵌め着けられていると考えることが妥当である,B甲10文献,甲11文献には,軸体と一体の濾過ドラムを貯蔵曹に対して交換することが示唆されている,C甲2文献には,環状取付板25,27を中空軸3に嵌挿し,回転ドラム1を組み立てた後に,環状取付板25,27を濾過槽2に取り付けることが明記されている,D引用例,甲2,4,10,11文献に記載された濾過装置は,相違点1に係る部材によって構成されており,これらを組み合わせる動機付けがあるなどと主張する。
しかし,@引用例の濾過装置における,側板15Aと側壁15との接続関係は,側板15Aと濾過ドラム20の接続関係に関係するものではないから,前者の接続関係をもって,側板15Aと濾過ドラム20を一体化することについての示唆があるということはできず,A前記ア(エ)bで検討したとおり,甲4文献に記載された濾過装置については,オイルシール69に当接する摺動面を有する部材の構造やオイルシール69と当該部材との接続関係も明らかではないから,ドラムフィルタ22と一体的に固定された内周円筒部材40と,オイルシール69,外周円筒部材53が一体化しているということはできない。また,B前記ア(キ)b,ア(ク)bで検 51 討したとおり,甲10,11文献に記載された濾過装置は,軸体と一体の濾過ドラムを貯蔵曹に対して交換可能にしたものと認められるものの,これをもって,シール手段と,これに当接する摺動面を有する部材を一体化した上で,濾過ドラムを交換可能にしたものということはできず,C前記ア(イ)bで検討したとおり,甲2文献は,リップパッキン18が装着された環状取付板25と,シールプレート22が溶着された環状取付板27が,それぞれ中空軸3に嵌挿された後に,濾過槽2に取り付ける濾過装置が記載されるにとどまり,リップパッキン18とシールプレート22が一体化しているということはできない。さらに,D引用例等に記載された濾過装置が,相違点1に係る部材で構成されていても,これをもって,シール手段と,これに当接する摺動面を有する部材を一体化することについて動機付けがあるといえるものでもない。
したがって,シール手段と,これに当接する摺動面を有する部材を一体化した上で,交換可能に濾過装置内に装着する濾過装置の構成について,引用例に示唆があるなどとする原告の主張は,いずれも採用することができない。
(イ) シール機能の精度の確保 原告の主張は判然としないものの,原告は,貯蔵曹に固定されるシール手段のシール面の全面と濾過ドラム側の摺動面の全面の精度を確保するためには,シール手段を有する円盤部材が軸体に挿通された後に固定されることが重要である,さらには,シール手段を備えたものが交換可能であれば足りることを前提として,引用例や甲2ないし6の各文献等に記載された濾過ドラムには,これらの構成が開示されている旨主張しているものと解される。
しかし,前記(3)のとおり,本件発明1は,シール機能の精度を確保するために,シール手段と,これに当接する摺動面を有する部材を一体化した上で,これらを交換可能に濾過装置内に装着するというものであって,シール手段を有する円盤部材を軸体に挿通した後に固定するというものや,さらには,シール手段を備えたものを交換可能にするというものにとどまるものではないから,これらを前提とする原 52 告の主張は,採用することができない。
(5) 本件発明2ないし8について 本件発明1が引用発明に基づき容易に発明をすることができたものであるとはいえないことは,前記(4)イのとおりであるから,本件発明1に限定を加えた本件発明2ないし8についても,引用発明に基づき容易に発明をすることができたものであるということはできない。
したがって,本件審決における本件発明2ないし8に係る進歩性の判断にも誤りはない。
(6) 小括 よって,相違点2の容易想到性の判断の誤りについて判断するまでもなく,取消事由4は理由がない。
6 結論 以上によれば,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 部眞規子
裁判官 柵木澄子
裁判官 片瀬亮
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