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関連審決 訂正2010-390006
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事件 平成 27年 (ワ) 12480号 特許権侵害差止等請求事件

原告フルタ電機株式会社
同訴訟代理人弁護士 小南明也
被告 株式会社ニチモウワンマン
被告Y
被告ニチモウ株式会社
被告西部機販愛知有限会社
上 記4名訴訟代理人弁護士沖田哲義
同 道山智成
同訴訟復代理人弁護士 神邊健司
同 補佐人弁理士伊藤高英
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2016/06/30
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告株式会社ニチモウワンマンは,別紙物件目録1記載の「生海苔異物除去機」を,譲渡し,貸渡しし,輸出し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
2 被告西部機販愛知有限会社は,別紙物件目録1記載の「生海苔異物除去機」を,譲渡し,貸渡しし,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
13 被告株式会社ニチモウワンマン及び被告西部機販愛知有限会社は,別紙物件目録2記載の「固定リング」又は別紙物件目録3記載の「板状部材」を,譲渡し,貸渡しし,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
4 被告株式会社ニチモウワンマン及び被告西部機販愛知有限会社は,別紙物件目録1記載の「生海苔異物除去機」並びに別紙物件目録2記載の「固定リング」及び別紙物件目録3記載の「板状部材」を廃棄せよ。
5 被告株式会社ニチモウワンマン及び被告西部機販愛知有限会社は,別紙メンテナンス行為目録記載1の行為をしてはならない。
6 被告株式会社ニチモウワンマンは,原告に対し,1430万8500円及びこれに対する平成27年6月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
7 被告西部機販愛知有限会社は,原告に対し,92万4200円及びこれに対する平成27年5月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
8 原告の被告株式会社ニチモウワンマン及び被告西部機販愛知有限会社に対するその余の請求並びに被告ニチモウ株式会社及び被告Yに対する請求をいずれも棄却する。
9 訴訟費用は,原告に生じた費用の3分の2,被告株式会社ニチモウワンマンに生じた費用の5分の1及び被告西部機販愛知有限会社に生じた費用の10分の7並びに被告ニチモウ株式会社及び同Yに生じた費用の全部を原告の負担とし,原告に生じた費用の4分の1及び被告株式会社ニチモウワンマンに生じた費用の5分の4を被告株式会社ニチモウワンマンの負担とし,原告に生じた費用の12分の1及び被告西部機販愛知有限会社に生じた費用の10分の3を被告西部機販愛知有限会社の負担とする。
10 この判決は,第1項ないし第3項,第5項ないし第7項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
請求
1 被告ニチモウ株式会社(以下「被告ニチモウ」という。)及び被告株式会社ニ チモウワンマン(以下「被告ワンマン」といい,被告ニチモウと併せて「被告 ワンマンら」という。)は,別紙物件目録1記載の「生海苔異物除去機」を, 譲渡し,貸渡しし,輸出し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
2 被告西部機販愛知有限会社(以下「被告西部機販」という。)は,別紙物件目 録1記載の「生海苔異物除去機」を,譲渡し,貸渡しし,又は譲渡若しくは貸 渡しの申出をしてはならない。
3 被告ワンマンら及び被告西部機販は,別紙物件目録2記載の「固定リング」 又は別紙物件目録3記載の「板状部材」を,譲渡し,貸渡しし,又は譲渡若し くは貸渡しの申出をしてはならない。
4 被告ワンマンら及び被告西部機販は,別紙物件目録1記載の「生海苔異物除 去機」並びに別紙物件目録2記載の「固定リング」及び別紙物件目録3記載の 「板状部材」を廃棄せよ。
5 被告ワンマンら及び被告西部機販は,別紙メンテナンス行為目録記載の各行 為をしてはならない。
6 被告ワンマンらは,原告に対し,連帯して1430万8500円及びこれに 対する平成27年6月2日(被告ワンマンらのうち訴状送達の遅かった被告ワ ンマンに対する訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金 員を支払え。
7 被告西部機販は,原告に対し,92万4200円及びこれに対する平成27 年5月30日(同被告に対する訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分 の割合による金員を支払え。
8 被告らは,原告に対し,連帯して1425万6000円及びこれに対する平 成26年12月18日(不法行為後の日)から支払済みまで年5分の割合によ る金員を支払え。
3
事案の概要
1 事案の要旨 本件は,発明の名称を「生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防 止装置」とする発明についての特許権を有する原告が,被告らに対し,次の各 請求をする事案である。
(1) 原告は,被告ワンマンらによる別紙物件目録1記載の生海苔異物除去機 (以下「本件装置」という。)の譲渡,貸渡し,輸出又は譲渡若しくは貸渡し の申出が原告の特許権を侵害すると主張し,被告ワンマンらに対し,特許法 (以下「法」という。)100条1項に基づき,これらの行為の各差止めを求 める。(上記第1の1) (2) 原告は,被告西部機販による本件装置の譲渡,貸渡し又は譲渡若しくは 貸渡しの申出が原告の特許権を侵害すると主張し,被告西部機販に対し,法 100条1項に基づき,これらの行為の差止めを求める。(上記第1の2) (3) 原告は,別紙物件目録2記載の「固定リング」(以下「本件固定リング」 という。)及び同目録3記載の「板状部材」(以下「本件板状部材」といい, 本件固定リングと併せて「本件各部品」という。)がいずれも本件装置の生 産にのみ用いる物であり,被告ワンマンら及び被告西部機販によるその譲渡, 貸渡し又は譲渡若しくは貸渡しの申出が原告の特許権を侵害するものとみな されると主張し,被告ワンマンら及び被告西部機販に対し,法100条1項, 101条1号に基づき,これらの行為の各差止めを求める。(上記第1の3) (4) 原告は,上記(1)ないし(3)の請求をするに際し,被告ワンマンら及び被 告西部機販に対し,法100条2項に基づき,本件装置及び本件各部品の各 廃棄を求める。(上記第1の4) (5) 原告は,被告ワンマンら及び被告西部機販による別紙メンテナンス行為 目録記載1,2の各行為(以下,順に「本件メンテナンス行為1」,「本件 メンテナンス行為2」といい,これらを併せて「本件各メンテナンス行為」 4 という。)が原告の特許権を侵害すると主張し,被告ワンマンら及び同西部 機販に対し,法100条1項に基づき,上記各 行為の各差止めを求める。
(上記第1の5)(6) 原告は,被告ワンマンらによる本件装置86台(後記?記載の本件装置 6台は含まれない。)及び本件各部品の販売が原告の特許権を侵害する共同 不法行為(以下「本件共同不法行為1」という。)に当たり,又は被告ワンマ ンらが同販売によって不当に利得して原告に損失を及ぼしたと主張し,被告 ワンマンらに対し,共同不法行為に基づく損害賠償金4507万9593円 (又は不当利得金)の一部請求として1430万8500円及びこれに対す る不法行為後でかつ被告ワンマンらに対する最終の訴状送達日の翌日である 平成27年6月2日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損 害金の連帯支払を求める。(上記第1の6)? 原告は,被告西部機販による本件装置10台(後記?記載の本件装置6台 は含まれない。)及び本件各部品の販売が原告の特許権を侵害する不法行為 に当たり,又は被告西部機販が同販売によって不当に利得して原告に損失を 及ぼしたと主張し,被告西部機販に対し,不法行為に基づく損害賠償金55 0万4090円(又は不当利得金)の一部請求として92万4200円及び これに対する不法行為後でかつ訴状送達の日の翌日である平成27年5月3 0日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求 める。(上記第1の7)? 原告は,平成26年12月17日に鬼崎漁業協同組合(以下「鬼崎漁協」 という。)へ納品された本件装置6台(別紙物件目録記載1(3)のもの)につ いて,鬼崎漁協への納品に至るまでの被告らによる一連の行為が,原告に対 する故意の共同不法行為(以下「本件共同不法行為2」といい,本件共同不 法行為1と併せて「本件各共同不法行為」という。)に当たると主張し,被 告らに対し,共同不法行為に基づく損害賠償金1555万8800円の一部 5 請求として1425万6000円及びこれに対する不法行為日より後の日で ある平成26年12月18日から支払済みまで民法所定の年5分の割合によ る遅延損害金の連帯支払を求める。(上記第1の8)2 前提事実(当事者間に争いがないか弁論の全趣旨から容易に認定できる事実) (1) 当事者(弁論の全趣旨) ア 原告 原告は,産業機械器具及びその部分品の製造,販売,賃貸,修理等を目 的とする株式会社(昭和35年1月23日設立,資本金3200万円)で あり,海苔製造加工に必要な機械の製造販売を行っている。
イ 被告ら (ア) 被告ニチモウは,機械,器具,電機,計器,度量衡器,電子機器, 空気調整装置,公害防止装置,医療機器,救命器具の販売及び整備等を 目的とする株式会社(大正8年8月17日設立,資本金44億1166 万2672円)である。
(イ) 被告ワンマンは,海苔乾燥機及びそれに付随する資材,海苔養殖資 材の製造,販売等を目的とする株式会社(平成14年9月2日設立,資 本金2億4000万円)であり,被告ニチモウによって設立された被告 ニチモウの完全子会社である。
(ウ) 被告Yは,被告ワンマンの設立時から平成28年6月3日までの間, 被告ワンマンの代表取締役を務めていた。
(エ) 被告西部機販は,海苔製造機械,器具の販売及び保守,修理等を目 的とする特例有限会社(平成4年5月1日設立,資本金320万円)で ある。
(2) 原告の特許権 ア 原告は,発明の名称を「生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回 り防止装置」とする特許第3966527号(出願日・平成10年6月1 6 2日,登録日・平成19年6月8日,訂正審決日・平成22年2月25日。
以下「本件特許」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。) を有している。
なお,本件特許は,訂正審判事件(訂正2010-390006)にお ける平成22年2月25日付け審決(同年3月9日確定)により訂正が認 められており,同訂正後の本件特許に係る特許請求の範囲の請求項1,3 及び4の記載は,別紙特許審決公報(甲3)中の特許訂正 明細書(以下 「本件訂正明細書」という。)に各記載のとおりである(以下,請求項1, 3及び4に係る発明をそれぞれ「本件発明1」 「本件発明3」及び「本件 , 発明4」といい,これらを総称して「本件各発明」という。 。
)イ 本件各発明の構成要件(以下,分説した構成要件をそれぞれの符号に従 い「構成要件A1」のようにいう。) (ア) 本件発明1を構成要件に分説すると,次のとおりである。
A1 生海苔排出口を有する選別ケーシング, A2 (及び)回転板, A3 この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手 段, A4 (並びに)異物排出口 A5 をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液 槽を有する生海苔異物分離除去装置において, B 前記防止手段を, B1 突起・板体の突起物とし, B2 この突起物を,前記選別ケーシングの円周端面に設ける構成とし た C 生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置。
(イ) 本件発明3を構成要件に分説すると,次のとおりである。
7 A1〜5 (前記アのA1〜5と同じ) B’ (前記アのBと同じ) B’1 (前記アのB1と同じ) B’2 この突起物を回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設 ける構成とした C (前記アのCと同じ) (ウ) 本件発明4を構成要件に分説すると,次のとおりである。
A1〜5 (前記アのA1〜5と同じ) B” (前記アのBと同じ) B”1 (前記アのB1と同じ) B”2 この突起物を選別ケーシングと回転板で形成されるクリアラ ンスに設ける構成とした C (前記アのCと同じ)(3) 本件装置及び本件各部品 ア 本件装置について 本件装置は,渡邊機開工業株式会社(以下「渡邊機開」という。)が「渡 辺式異物除去機」又は「渡辺式異物除去洗浄機」との標章を付して製造, 販売する生海苔異物除去(洗浄)機であり,いずれも本件固定リング及び その内側に回転自在に遊嵌された回転円板を構成部品としている。なお, 本件装置が上記(2)イの各構成要件をいずれも充足することにつき,当事 者間に争いはない。
本件装置は,回転円板の個数(枚数)によって次のとおり区別できる。
(ア) 「WK-500」,「WK-550」(別紙物件目録1記載 (1), (2)) 回転円板(直径(φ):約190mm)が4枚のタイプ。「WK-50 0」には装置下部に貯留槽(洗浄槽)が設置されているが,「WK-5 8 50」にはこれが設置されていない。
(イ) 「WK-600」(別紙物件目録1記載(3)) 回転円板(直径(φ):約190mm)が6枚のタイプ。「WK-55 0」と同様,装置下部に貯留槽は設置されていない。
(ウ) 「WK-700」(別紙物件目録1記載(4)) 回転円板(直径(φ):約280mm)が6枚のタイプ。「WK-55 0」と同様に,装置下部に貯留槽は設置されていない。
イ 本件各部品について (ア) 本件固定リング 本件装置には,本件固定リングが4個又は6個付設されており,本件 装置を使用する海苔製造業者(ユーザー)は,本件固定リングを付設し た状態で海苔異物除去作業を行っている。本件装置においては,本件固 定リングとその内側に回転自在に遊嵌された回転円板との間の0.1〜 0.5mm 程度の極めて微少な環状隙間(クリアランス)を介して生海苔 を通過させる構成となっているため,回転円板の回転によって本件固定 リングの側面部分が摩耗しやすい。
そのため,本件固定リングは,本件装置の部品として取り外しが可能 となっており,渡邊機開は,被告ワンマンや被告西部機販を含む販売店 を介し,補充部品として本件固定リングをユーザーに供給するとともに, その交換作業も行っている。
(イ) 本件板状部材 本件固定リングの凹部にはめ込んで取り付けられる本件板状部材は, 本件固定リングの上部及び側面(クリアランス側)に突出するように設 置されるため,本件板状部材は,ユーザーの海苔異物除去作業における 本件装置の使用(回転円板の回転)により摩耗しやすい。
そのため,渡邊機開は,被告ワンマンや被告西部機販を含む販売店を 9 介し,補充部品として本件板状部材をユーザーに供給するとともに,そ の交換作業も行っている。
(4) 被告ワンマン及び被告西部機販の行為 ア 被告ワンマンの行為 (ア) 被告ワンマンは,もともと,海苔乾燥装置等の開発・製造・販売を 行うために被告ニチモウが設立した会社である。被告ワンマンは,渡邊 機開から本件装置を購入し,これを国内の顧客(被告西部機販を含む。) に販売し,また,海外の顧客に輸出している。
(イ) 被告ワンマンは,本件装置の販売先であるユーザーに対し,本件各 メンテナンス行為を行う場合もある。
イ 被告西部機販の行為 (ア) 被告西部機販は,渡邊機開から本件装置を購入し,日本国内の海苔 生産業者(個人ユーザー,漁業協同組合,漁業協同組合連合会など)に 対して販売している。
また,被告西部機販は,被告ワンマンの販売代理店(渡邊機開の二次 代理店)として,被告ワンマンが渡邊機開から仕入れた本件装置をさら に仕入れた上で,これを顧客に販売することもある。
(イ) 被告西部機販は,本件装置の販売先であるユーザーに対し,本件各 メンテナンス行為を行っている。
ウ 本件損害賠償請求の対象行為 (ア) 被告ワンマンは,渡邊機開から本件装置86台(後記(ウ)の6台を 含まない。以下「本件装置1」という。)を購入し,これを顧客に売却 した(そのうち10台は,被告西部機販に売却した。)。
なお,この行為について,被告ニチモウとの本件共同不法行為1が成 立するかについては,争いがある。
(イ) 被告西部機販は,被告ワンマンから購入した上記10台(以下「本 10 件装置2」という。)を顧客に売却した。
(ウ) 被告ワンマンは,平成26年12月17日に鬼崎漁協へ納品された 本件装置6台(別紙物件目録記載1(3)のもの。以下「本件装置3」と いう。)について,渡邊機開からこれを購入し,被告西部機販に売却し, 被告西部機販は,これを鬼崎漁協に売却した。
なお,この一連の行為について,被告らによる本件共同不法行為2が 成立するかについては,争いがある。
(5) 消滅時効援用(弁論の全趣旨) 被告らは,平成28年3月31日の第9回弁論準備手続期日において,平 成24年3月19日以前の本件装置の販売に係る原告の損害賠償請求権につ いて,消滅時効援用した。
3 争点 本件の争点は,以下のとおりである。
(1) 本件 各発明に係る特許が特許無効審判により無効とされるべきも の か (争点1) (2) 本件各共同不法行為の成否 ア 被告ワンマンによる本件装置1及び本件各部品の譲渡等につき,被告ニ チモウとの本件共同不法行為1が成立するか(争点2) イ 被告らについて,本件装置3に係る本件共同不法行為2が成立するか (争点3) (3) 差止請求権の存否及び範囲(争点4) (4) 損害額又は不当利得額(消滅時効の成否を含む。 (争点5) )4 争点に関する当事者の主張 (1) 争点1(本件各発明に係る特許が特許無効審判により無効とされるべき ものか)について [被告らの主張] 11 ア 拡大先願違反 (ア) 本件各発明は,以下のとおり,その出願日前の実用新案登録出願で あって,本件特許の出願日後に実用新案掲載公報の発行がされた実用新 案登録出願(実願平10-3304号)の願書に最初に添付された明細 書及び図面(甲22,乙1。以下「乙1文献」という。)に記載された 考案(先願考案。以下「乙1考案」という。)と同一である。
まず,本件各発明と乙1考案とは,いずれも特開平8-140637 号公報(甲24,乙4。以下「乙4文献」という。)に記載された異物 分離機構を備えた生海苔異物分離除去装置に係る発明(以下「乙4発明」 という。)の改良発明であって,その目的はいずれも乙4文献に記載さ れたクリアランスの目詰まりという課題を解決することにある。
次に,具体的な構成についてみるに,本件各発明の構成要件A1〜5 は,本件各発明の出願経過等から,乙1文献に実質的に記載されている ものと認められる。また,乙1考案における「凹部」と,本件各発明に おける「前記防止手段を,突起,板体の突起物とし, (構成要件B1, 」 B’1,B’’1)とは,異物は排出して生海苔は生海苔原料として取り出 すという全く同一の作用効果を発揮する上,例えば双方とも多数の凹凸 を全周に形成するとほぼ同一の構成となるのであるから,乙1考案にお ける「凹部」と本件各発明における「前記防止手段を,突起・板体の突 起物とし, (構成要件B1,B’1,B’’1)とは実質的に同一である。
」 さらに,乙1文献によれば,クリアランスを構成する第二環状固定板の 鉛直向きの内周面に凹部が(図2,3),水平向きの上面に凹部が(図 4)それぞれ形成された構成が開示されており,これは,「この突起物 を,前記選別ケーシングの円周端面に設ける構成とした」(構成要件B 2) 「この突起物を回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける , 構成とした」(構成要件B’2)及び「この突起物を選別ケーシングと回 12 転板で形成されるクリアランスに設ける構成とした」(構成要件B’’2) と実質的に同一である。
(イ) なお,乙1文献においては,凹部が第二環状固定板のみに設けられ, 対向する第二回転板には設けられていないが,本件特許の出願日よりも 前に頒布された刊行物である登録実用新案第3017060号公報(乙 2。以下「 乙2文献 」という。)及 び特 開平8-1 1208 1号公報 (乙3。以下「乙3文献」という。)によれば,海苔の異物を除去する ためのスリット(クリアランスに相当する。)を形成する対向面に対し て,@生海苔のスリットの通過量を制御する手段として凹凸部を設ける こと,A凹凸部を設ける場合にはスリットを形成する対向面の双方に設 けることは,いずれも,本件特許出願に係る出願当時において,当業者 にとって周知技術であったといえる。そして,同周知技術に基づくと, 凹部を第二回転板に設けることは,乙1文献に記載されているに等しい 事項である。
(ウ) そして,本件各発明の発明者は,先願考案の考案者と同一ではなく, 本件特許の出願時にその出願人と先願考案に係る実用新案登録出願の出 願人とが同一でもないから,本件各発明には法29条の2に違反する無 効理由がある。
進歩性欠如 (ア) 本件各発明と乙4発明との一致点及び相違点 本件各発明は,いずれも,本件特許の出願前に日本国内において頒布 された刊行物である乙4文献に記載された乙4発明の改良発明であるか ら,構成要件A1,A2,A4及びA5については,乙4文献にも実質 的に記載されているといえる。したがって,これらの点において,乙4 発明と本件各発明は一致する。
他方,構成要件A3,構成要件B1,B’1,B”1,構成要件B2, 13 B’2,B”2については,いずれも乙4文献には開示されていない。し たがって,これらの点において,乙4発明と本件 各発明とは相違する (なお,被告らは,構成要件B1,B’1,B”1について,一致点又は 相違点として明示的に主張しないが,主張全体からすると,相違点とし て主張するものと解される。 。
) (イ) 乙4発明に基づく容易想到性 本件特許の出願前に,「目づまり防止付」のシンワ式原草海苔異物除 去洗浄機CFW-36型の宣伝広告が,多数回にわたり全国的に実行さ れている(乙8〜13)。したがって,本件特許の出願時において,乙 4発明に係る生海苔異物除去装置には,@目詰まりという問題点が発生 していること,Aその問題点を解決すべき手法が開発されていること, Bその問題点を解決すべき手法を開発すべき動機付けが存在していたこ とは,当業者において周知の事項である。
そして,上記@の問題点を解決すべき手法を開発すべき動機付けが存 在していた以上,当業者にとって,目詰まりを防止するために乙2文献 及び乙3文献に開示されている周知技術(海苔の異物を除去するための スリット(クリアランスに相当する。)を形成する対向面に対して,<ア >生海苔のスリットの通過量を制御する手段として凹凸部を設けること, <イ>凹凸部を設ける場合にはスリットを形成する対向面の双方に設ける こと)を適用することは容易に想到することが可能である。この周知技 術を乙4発明に適用すると,本件各発明と構成も得られる作用効果も同 一となるので,本件各発明は進歩性を欠く。
[原告の主張] ア 拡大先願違反がないこと 被告らは,乙1考案における,クリアランスに詰まった異物の除去とい う課題と,本件各発明の課題である共回りの発生をなくし,かつクリアラ 14 ンスの目詰まりをなくすことが,実質的に同一であり,本件各発明におけ る技術的思想が,乙1考案と同一であると主張する。
たしかに,乙1文献においては,乙4発明を先行技術とした上で,目詰 まりを解消する必要があるという課題認識が示されており,単に,その点 において本件各発明と一部共通するが,乙1考案は,クリアランスの目詰 まりの原因となっている「茎部の付いている生海苔」を,他のクリアラン スよりも幅広にした部分にあえて通過させることによって,クリアランス の目詰まりを解消しようとしたものであるのに対し,本件各発明は,この ような「茎部の付いている生海苔」を異物として除去対象としようとする ものであるから,課題の認識及び課題解決の方向性が全く異なる。さらに, 乙1考案の出願者が,自らの後願(甲27の15の1)において,従来技 術につき,「生海苔異物を回転板と共回ししてクリアランスの幅広部にお いて通過させることによって詰まりを防止していた」としていることから も,乙1考案と本件各発明の「共回り」防止とが全く異なることは明らか である。
進歩性があること (ア) 被告らは,乙4発明と本件各発明の相違点に関し,本件特許出願時 において乙4発明の実施装置において目詰まりという問題点が発生し, それを解決すべき動機付けが存在していたと主張し,それが周知であっ たことの根拠として「目づまり防止付」のシンワ式原草海苔異物除去洗 浄機CFW-36型の宣伝広告の存在を指摘する。
しかしながら,上記「目づまり防止付」とは,回転板を回転軸に沿っ て上下動させることで,隙間に詰まった異物等を筒状混合液タンク側に 排出させるように構成したもの(甲27の5の1)をいうのであって, この回転板の上下動手段及び「目づまり防止付」との表現が公知であっ たとしても,そのこと自体から本件各発明の課題である「共回り」を想 15 起することはできない。被告は,単なる目詰まり防止と本件各発明の共 回り防止を同一視しており,失当である。
(イ) また,被告は,乙4発明において目詰まり防止手段を講ずる動機付 けが存在していたという主張を前提として,当該目詰まり防止のために 乙2文献及び乙3文献に開示された周知技術を適用することが容易であ ると主張する。
しかし,乙2文献及び乙3文献に記載された発明は従来型に関するも のであって,乙4発明における回転板方式に関するものではないから, 乙4文献に接した当業者において,乙4発明に共回りの課題があること は想起できない。また,乙4発明について,クリアランスに異物や生海 苔の詰まりが生じるという問題があるという課題を想起し得たとしても, 乙4発明に,異物分離除去に係る技術思想の異なる乙2文献又は乙3文 献に記載された発明を適用する動機付けがあるとはいえないし,仮に, 当業者において,乙4発明に乙2文献又は乙3文献に記載された発明の 適用を試みたとしても,乙4発明と本件各発明との相違点に係る構成を 容易に想到し得たとは認め難い。
(ウ) よって,被告の主張する進歩性欠如の主張は失当である。
(2) 争点2(被告ワンマンによる本件装置1及び本件各部品の譲渡等につき, 被告ニチモウとの本件共同不法行為1が成立するか)について[原告の主張] 前記のとおり,被告ワンマンが渡邊機開から本件装置86台(本件装置1) を購入し,これを顧客に売却したことについては,当事者間に争いがない。
一方,被告ニチモウが,自ら,渡邊機開から本件装置を購入したり,購入し た本件装置を第三者に販売したりした事実は存在しない。
しかしながら,被告ワンマンは,被告ニチモウの海洋事業のうち,被告ニ チモウが開発・製造した全自動乾海苔製造装置「ニチモウワンマン」等の海 16 苔機材又は海苔資材の製造・販売事業を担当する完全子会社である上,平成 28年1月8日現在,被告ワンマンの5名の役員中1名が被告ニチモウの役 員を兼務している。そうすると,被告ニチモウは,被告ワンマンを実質的に 支配し,被告ワンマンを自らの一事業部門として用いて事業を遂行している ものといえるから,被告ワンマンによる行為のうち,海苔機材又は海苔資材 の販売に該当する本件装置1及び本件各部品の販売等は,実質的に被告ニチ モウの行為と考えるべきである。
したがって,被告ワンマンの本件特許権の侵害行為は,被告ニチモウによ る本件特許権の侵害行為にも該当し,被告ニチモウには被告ワンマンとの共 同不法行為が成立する。
なお,被告ワンマンらは,原告の実施許諾を得ることなく無償で本件各発 明を実施し,これによりライセンス料相当額の支払を逃れることで不当に利 得を得て原告に損失を与えたから被告ワンマンらに不当利得が生じたことも 明らかである。
[被告ワンマンらの主張] 原告は,被告ワンマンの行為を被告ニチモウの行為と考えるべきである旨 主張するが,被告ワンマンらは,それぞれ法人格を有する別の権利義務主体 であり,グループ企業であるという一事をもって,両者を同一視することは できない。
(2) 争点3(被告らについて,本件装置3に係る本件共同不法行為2が成立 するか)について[原告の主張] ア 前記のとおり,被告ワンマンは,平成26年12月17日に鬼崎漁協へ 納品された本件装置6台(本件装置3)について,渡邊機開からこれを購 入し,被告西部機販に売却し,被告西部機販は,上記6台を鬼崎漁協に売 却したところ,この一連の行為については,以下の事情によれば,被告ら 17 による本件共同不法行為2が成立する。
なお,被告らは,上記一連の行為について,それぞれ自らが締結した契 約の履行にすぎない旨主張するが,全く筋違いである。また,原告の本件 装置3に係る損害の主張は,本件共同不法行為2に基づくものが全てであ る。
イ 被告西部機販は,被告ワンマンの協力の下,平成26年6月までに行わ れた鬼崎漁協の乾海苔生産機械の入札に参加して落札し,本件装置3を被 告ワンマンに発注した。これを受けて,被告ワンマンは,本件装置3を渡 邊機開に発注し,渡邊機開は,被告ワンマンから本件装置3の売買代金を 受領した後,本件装置3を自社の倉庫で保管していた。
原告は,平成26年2月26日,東京地方裁判所に対し,渡邊機開を債 務者として,本件装置の製造・販売・輸出及び販売の申出の差止め,本件 各部品の製造・販売及び販売の申出の差止め,本件装置及び本件各部品の 執行官保管を求める仮処分命令を申し立て(同裁判所平成26年(ヨ)第2 2019号特許権侵害差止等仮処分命令申立事件),同年10月31日, 同裁判所は,原告の申立てを認める仮処分決定(以下「別件仮処分決定」 という。)をしたが,渡邊機開は,別件仮処分決定に先立つ同月29日, 原告との和解交渉が決裂したことから,別件仮処分決定が発令されること を予想し,被告Yと相談した上で,本件装置3を被告ワンマンにおいて一 時的に保管することとして,同日から同月30日にかけて,これを山口県 下関市にある被告ワンマンの本店に運搬した。
渡邊機開は,その後,被告西部機販から,本件装置3を鬼崎漁協内の倉 庫へ搬入してほしいという要請を受け,同年12月17日までに本件装置 3を鬼崎漁協の倉庫へ搬入した。
ウ 上記イの一連の行為は,被告らが,債務不履行によって自らの信用が毀 損されたり損害賠償責任を負ったりすることを避ける目的で仕組んだ3段 18 階の譲渡行為から構成される故意(共謀)に基づく共同不法行為と評価で きる。
[被告らの主張] 被告ワンマンは,渡邊機開が別件仮処分決定を受ける前に,渡邊機開から 本件装置3の引渡しを受け,被告西部機販との契約に基づいて,本件装置3 を被告西部機販に引き渡し,被告西部機販は,被告ワンマンから引渡しを受 けた本件装置3を,鬼崎漁協との契約に基づいて同漁協に引き渡した。この ように,被告ワンマン及び被告西部機販による本件装置3の引渡しは,いず れも自らが締結した契約の履行にすぎないから,原告に対する共同不法行為 となる余地はない。
また,共同不法行為が成立するには,共同行為者とされる者それぞれの行 為の間に関連共同性がなければならないが,被告らの行為の間には関連共同 性がない。被告ワンマンは,自らの債務不履行を回避するため,渡邊機開か ら本件装置3の引渡しを受けたにすぎず,同時点において別件仮処分決定は 出ていなかったし,渡邊機開による被告ワンマンへの本件装置3の引渡行為 と,被告ワンマンによる被告西部機販への本件装置3の引渡行為との間に, 主観的・客観的関連共同性が認められないことも明白である。
(4) 争点4(差止請求権の存否及び範囲)について [原告の主張] ア 被告ワンマンについて 被告ワンマンが,渡邊機開から本件装置を購入して第三者に譲渡し,貸 渡しし,輸出し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をする行為は本件特許権 を侵害する。また,被告ワンマンが,渡邊機開から本件各部品を購入して 第三者に譲渡し,貸渡しし,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をする行為は 本件特許権を侵害する行為とみなされる(法101条1号)。
さらに,本件各メンテナンス行為は,本件装置のうち,製品寿命が来て 19 廃棄すべきものやそのままでは本件装置の本来の性能が発揮できず新規製 品に代替すべきものを蘇生させ,新たな本件装置を再生していると評価で きるから,本件装置の「生産」(法2条3項1号)に当たる。仮に,本件 各メンテナンス行為の一部又は全部を「生産」とは評価し得ない事情があ るとしても,本件各メンテナンス行為 は,各ユーザーによる本件装置の 「使用」(同条同項同号)を実質的に助長するから,本件各メンテナンス 行為を行った者は,不法行為者(特許権侵害者)を幇助した者(民法 719 条2項)として共同行為者とみなされる。
しかるに,被告ワンマンは,今後も本件装置について譲渡,貸渡し,輸 出,譲渡若しくは貸渡しの申出を継続し,また,本件各部品の譲渡,貸渡 し,譲渡若しくは貸渡しの申出を継続する蓋然性が極めて高い。さらに, 被告ワンマンが本件各メンテナンス行為を継続する蓋然性も極めて高い。
イ 被告ニチモウについて 上記(2)[原告の主張]のとおり,被告ワンマンの行為は実質的に被告 ニチモウの行為であることに加え,被告Y及び被告ニチモウのこれまでの 態度等に鑑みれば,被告ニチモウが自ら又は被告ワンマン以外の関連会社 等を通じて,本件装置の譲渡,貸渡し,輸出,譲渡若しくは貸渡しの申出 を継続し,また,本件各部品の譲渡,貸渡し,譲渡若しくは貸渡しの申出 を継続する蓋然性が高い。さらに,被告ニチモウが本件各メンテナンス行 為を継続する蓋然性も高い。
ウ 被告西部機販について 被告西部機販は,現在も本件装置の在庫品を所持し,今後も本件装置の 譲渡,貸渡し,譲渡若しくは貸渡しの申出を継続し,また,本件各部品の 譲渡,貸渡し,譲渡若しくは貸渡しの申出を継続する蓋然性が極めて高い。
さらに,被告西部機販が,本件各メンテナンス行為を継続する蓋然性も極 めて高い。
20 エ したがって,原告は,被告ワンマンら及び被告西部機販に対し,前記第 1の1〜3に係る本件装置及び本件各部品の譲渡等の各差止めに加え,前 記第1の5に係る本件各メンテナンス行為の各差止めを求めることができ る。
[被告ワンマンら及び被告西部機販の主張] 争う。
(5) 争点5(損害額又は不当利得額(消滅時効の成否を含む。 )について ) [原告の主張] ア 被告ワンマンらによる本件装置1及び本件各部品の販売に係る損害 (ア) 法102条2項に基づく主張(主位的主張) 被告ワンマンらが,本件装置の販売によって得た利益(税抜)は,売 上金額の合計(3億4669万7500円)と仕入金額の合計(3億0 345万4000円)の差額である4324万3500円であり,この うち本件装置3に係る販売利益(469万5000円)を控除した38 54万8500円が,被告ワンマンらによる本件装置1の販売によって 得た利益(税抜)となる。
また,被告ワンマンらが,本件固定リングの販売によって得た利益 (税抜)は,売上金額の合計(222万2400円)と仕入金額の合計 (184万5000円)の差額である37万7400円,本件板状部材 の販売によって得た利益(税抜)は,売上金額の合計(35万1084 円)と仕入金額の合計(24万8800円)の差額である10万228 4円である。
したがって,被告ワンマンらが本件装置1及び本件各部品の販売によ って得た利益(税込)は,次の計算式のとおり,4097万9593円 であり,同額が原告の損害と推定される。
計算式:(3854万8500円+37万7400円+10万228 21 4円)×1.05(消費税相当額の加算。なお,平成26年 4月分以降の取引も含めて一律に消費税率を5%として計算 する。) また,原告は,被告ワンマンらの共同不法行為によって本件訴訟提起 を余儀なくされたのであり,弁護士費用のうち410万円も同共同不法 行為と相当因果関係を有する損害である。
そこで,上記損害(4097万9593円)の一部である1300万 8500円に弁護士費用相当額(410万円)の一部である130万円 を加算した1430万8500円を,原告の損害額として主張する。
(イ) 法102条3項又は不当利得返還請求権に基づく主張(予備的主張) 本件装置1の販売に係る利益(税抜)は,上記(ア)のとおり,385 4万8500円であり,本件装置1の販売に係る本件各発明の実施料率 は販売利益の3%が相当であるから,本件装置1の販売についての実施 料相当額(税抜)は,115万6455円(計算式3854万8500 円×3%)となる。
また,上記(ア)のとおり,本件各部品の販売に係る利益(税抜)は, 本件固定リングについて37万7400円,本件板状部材について10 万2284円であり,本件各発明の実施料率はいずれも各販売利益の1 0%が相当であるから,本件各部品の販売についての実施料相当額(税 抜)は,本件固定リングについて3万7740円,本件板状部材につい て1万0228円(計算式は,それぞれ37万7400円×10%,1 0万2284円×10%)となる。
したがって,原告が,被告ワンマンらから本件各発明の実施に対して 受けるべき金銭の額に相当する額又は不当利得額(いずれも税込)は, 次の計算式のとおり,126万4644円であり,同額が原告の損害又 は被告ワンマンらの不当利得の額となる。
22 計算式:(115万6455円+3万7740円+1万0228円) ×1.05(消費税相当額の加算。なお,平成26年4月分 以降の取引も含めて一律に消費税率を5%として計算する。) また,原告は,被告ワンマンらの共同不法行為によって本件訴訟提起 を余儀なくされたのであり,弁護士費用のうち410万円も同共同不法 行為と相当因果関係を有する損害である。
そこで,予備的に,上記損害額126万4644円に弁護士費用相当 額410万円を加算した536万4644円を原告の損害額として,上 記不当利得額126万4644円を被告ワンマンらの不当利得額として, それぞれ主張する。
イ 被告西部機販による本件装置2及び本件各部品の販売に係る損害 (ア) 法102条2項に基づく主張(主位的主張) 被告西部機販が,本件装置2の販売によって得た利益(税抜)は,売 上金額の合計(3890万円)と仕入金額の合計(3425万7000 円)の差額である464万3000円である。
また,被告西部機販が,本件固定リングの販売によって得た利益(税 抜)は,売上金額の合計(66万円)と仕入金額の合計(55万円)の 差額である11万円,本件板状部材の販売によって得た利益(税抜)は, 売上金額の合計(4万4600円)と仕入金額の合計(3万1800円) の差額である1万2800円である。
したがって,被告西部機販が本件装置2及び本件各部品の販売によっ て得た利益(税込)は,次の計算式のとおり,500万4090円であ り,同額が原告の損害と推定される。
計算式:(464万3000円+11万円+1万2800円)×1. 05(消費税相当額の加算。なお,平成26年4月分以降の 取引も含めて一律に消費税率を5%として計算する。) 23 また,原告は,被告西部機販の不法行為によって本件訴訟提起を余儀 なくされたのであり,弁護士費用のうち50万円も同不法行為と相当因 果関係を有する損害である。
そこで,原告は,上記損害(500万4090円)の一部である80 万4200円に弁護士費用相当額(50万円)の一部である12万円を 加算した92万4200円を,原告の損害額として主張する。
(イ) 法102条3項又は不当利得返還請求権に基づく主張(予備的主張) 本件装置2の販売に係る利益(税抜)は,上記(ア)のとおり,464 万3000円であり,本件装置2の販売に係る本件各発明の実施料率は 販売利益の3%が相当であるから,本件装置2の販売についての本件各 発明の実施料相当額(税抜)は,13万9290円(計算式464万3 000円×3%)となる。
また,上記(ア)のとおり,本件各部品の販売に係る利益(税抜)は, 本件固定リングについて11万円,本件板状部材について1万2800 円であり,本件各発明の実施料率はいずれも販売利益の10%が相当で あるから,本件各部品の販売についての本件各発明の実施料相当額(税 抜)は,本件固定リングについて1万1000円,本件板状部材につい て1280円(計算式は,それぞれ11万円×10%,1万2800円 ×10%)となる。
したがって,原告が,被告西部機販から本件各発明の実施に対して受 けるべき金銭の額に相当する額の損害又は不当利得の額(いずれも税込) は,次の計算式のとおり,15万9148円であり,同額が原告の損害 又は被告西部機販の不当利得の額となる。
計算式:(13万9290円+1万1000円+1280円)×1. 05(消費税相当額の加算。なお,平成26年4月分以降の 取引も含めて一律に消費税率を5%として計算する。) 24 また,原告は,被告西部機販の不法行為によって本件訴訟提起を余儀 なくされたのであり,弁護士費用のうち50万円も同不法行為と相当因 果関係を有する損害である。
そこで,原告は,予備的に,上記損害額15万9148円に弁護士費 用相当額50万円を加算した65万9148円を原告の損害額として, 上記不当利得額15万9148円を被告西部機販の不当利得額として, それぞれ主張する。
ウ 本件装置3に係る本件共同不法行為2による損害 原告の本件装置3に係る損害の主張は,以下の本件共同不法行為2に 基づく主張が全てである。
(ア) 逸失利益 原告は,被告らの本件共同不法行為2によって,本件装置3に係る 逸失利益に相当する損害を被った。
そして,原告の損害額は,法102条2項により,被告らが一連の 共同不法行為によって得た金額を合算した金額であると推定されると ころ,被告らが本件共同不法行為2に該当する一連の行為によって得 た金額は,次のとおり,本件装置3の販売によって被告ワンマンらの 得た利益(下記a)と被告西部機販の得た利益(下記b)を合算し, これに消費税額を加算した合計1415万8800円(計算式は(4 69万5000円+841万5000円)×1.08(消費税相当額 の加算))であるから,これが原告の逸失利益となる。
a 被告ワンマンらが得た利益 469万5000円 被告ワンマンは,渡邊機開から本件装置3を1台当たり331万 5000円で購入し,被告西部機販に1台当たり409万7500 円で販売したから,これにより被告ワンマンらが得た利益(税抜き) は,469万5000円(計算式は(409万7500円×6台) 25 -(331万5000円×6台))となる。
b 被告西部機販が得た利益 841万5000円 被告西部機販は,上記aのとおり,本件装置3を被告ワンマンか ら1台当たり409万7500円で購入し,鬼崎漁協に販売した。
被告西部機販は,本件装置3を鬼崎漁協に販売するに際し,他の機 械とセットで販売しているが,仕入値よりも安い金額で販売すると は通常考えられないから,本件装置の定価である1台当たり550 万円で転売したものとみるのが相当である。したがって,本件装置 3の販売により被告西部機販が得た利益(税抜き)は,841万5 000円(計算式は(550万円×6台)-(409万7500円 ×6台))となる。
(イ) 弁護士費用相当額 原告は,被告らの共同不法行為2によって上記(ア)の損害に係る損 害賠償請求訴訟の提起を余儀なくされ,これにより弁護士費用の支出 を余儀なくされたところ,本件訴訟の提起に要した弁護士費用のうち, 本件共同不法行為2と相当因果関係を有する弁護士費用は,140万 円を下らない。
(ウ) 本件共同不法行為2によって原告が受けた損害額は,上記(ア)及 び(イ)の合計額であるところ,原告は,1415万8800円(上記 (ア))及び9万7200円(上記(イ)の140万円の内金(ただし, 上記(ア)の損害額1415万8800円が減額される場合,その減額 部分相当額が130万2800円(=140万円-9万7200円) に満つるまでは,当該相当額と上記9万7200円を合算した金額) を合計した1425万6000円の損害賠償を求める。
エ 被告らの主張に対する反論 (ア) 販売利益から控除すべき経費が存在しないこと 26 本件装置の納品や設置はメーカーである渡邊機開が行い,送料は渡 邊機開又は最終消費者である顧客が負担している。また,被告ワンマ ンら及び被告西部機販は,顧客に対するメンテナンスや補修等の工賃 も別途顧客から徴収している。したがって,被告ワンマンら及び被告 西部機販には,本件装置の販売に際し,仕入代金以外の変動費は生じ ておらず,被告ワンマンら及び被告西部機販において,販売利益から 控除すべき経費は存在しない。
(イ) 本件装置の販売に対する本件各発明の寄与率について 本件装置の販売において,本件固定リングを通常の固定リングに変 更した場合には目詰まり防止の効果を奏することができず,顧客の要 求水準を満たすことができない。したがって,本件装置の販売に対す る本件各発明の寄与率は100%である。なお,仮に百歩譲って寄与 率をいくぶん減額するとしても,せいぜい30%の減額が限度である。
(ウ) 消滅時効の未完成 原告は,被告ワンマンが平成24年以前に本件装置を販売した事実 及び被告西部機販が平成21年又は22年に本件装置を販売した事実 を,いずれも全く知らなかった。原告が,被告ワンマン及び被告西部 機販における本件装置の販売事実を知ったのは,被告ワンマンについ ては平成26年11月ころ,被告西部機販については平成27年2月 4日であり,この時点で初めて,被告ワンマン及び被告西部機販によ って本件特許権が侵害され,これによって損害が発生したことを知っ たのである。したがって,原告の被告ワンマンに対する損害賠償請求 債権の消滅時効の起算日は平成26年11月,原告の被告西部機販に 対する損害賠償請求債権の消滅時効の起算日は平成27年2月4日で あり,原告が平成27年5月11日に本件訴えを提起したことによっ て消滅時効が中断したから,消滅時効は完成していない。
27 [被告らの主張]ア 被告ワンマン及び同ニチモウによる本件装置1及び本件各部品の販売に 係る損害 原告が主張する本件装置1及び本件各部品の各売上金額及び仕入金額は 認めるが,その余は争う。
(ア) 法102条2項に基づく主張(主位的主張)に対する反論 上記(2)[被告ワンマンらの主張]のとおり,被告ニチモウと被告ワ ンマンとは別の主体であり,グループ企業であるという一事をもって, 被告ニチモウが被告ワンマンの行為について共同不法行為責任を負うこ とはない。このほか,原告の主張に対する反論は,次のとおりである。
a 必要経費の控除について 被告ワンマンが,本件装置1及び本件各部品の売上金額の合計から 仕入金額の合計を控除した金額は3902万8184円(計算式は, 3854万8500円+37万7400円+10万2284円)であ るが,被告ワンマンが自ら顧客に本件装置を販売するのは全体の2割 程度であり,残りの8割程度は,メーカーからの一次販売店として, 海苔製造業者への販売を行う二次販売店に卸販売していた。
そして,被告ワンマンは,本件装置を顧客である海苔製造業者に自 ら販売する場合には下記費用のうち(a)〜?を,本件装置を二次販売 店に卸販売する場合には下記費用のうち(b)を,それぞれ支出してお り,被告ワンマンの利益を算出するに当たっては,これらの各費用を 控除すべきである。
したがって,被告ワンマンの受けた利益は,自ら顧客に販売したこ とによる利益額175万2818円(計算式は,(3902万818 4円-25万円×86台)×0.2×0.5)と,一次販売店として 卸販売したことによる利益額2778万2547円(計算式は,(3 28 902万8184円-5万円×86台)×0.8)を合計した2953万5365円を超えることはない。
記 (a) 納入・据付費 1台当たり約20万円 本件装置は,渡邊機開が顧客のもとまで輸送することもあった が,被告ワンマンが自ら顧客に本件装置を販売する場合には,基 本的に被告ワンマンの営業所まで輸送された後,被告ワンマンに おいて顧客のもとまで輸送しており,被告ワンマンには,各営業 所から顧客の事業所までの間の輸送費や設置予定場所に据え付け るためにレンタルしたユニックやリフトなどの重機に係るレンタ ル料(1台当たり約1万5000円)の費用が発生している。
また,被告ワンマンは,本件装置本体の設置に必要なホースや ホースバンド等の接続金 具,配線コードなどの組付部材の費用 (1台当たり約10万円)の他,納入・設置に係る人件費(1台 当たり約7万5000円)も負担している。さらに,これに加え て,雑費も生じている。
これらの費用を合計すると,本件装置1については,1台当た り平均20万円程度の納入・据付費がかかっている。
(b) 本件装置1の販売に要した受注活動費 1台当たり5万円 被告ワンマンは,自ら顧客に本件装置の購入を勧めたり一次販 売店として二次販売店に対して本件装置の購入を勧めたりする際, 従業員に顧客又は二次販売店を訪問させて販売促進活動を行うこ とがあり,平均すると1回当たり10万円(人件費7万円,宿泊 日当1万円,旅費2万円)をかけている。被告ワンマンがこのよ うな本件装置の販売促進活動を行うのは,販売台数全体のおよそ 半分程度であるから,1台当たり5万円(計算式は,10万円× 29 1/2)の受注活動費を支出しているといえる。
? メンテナンス等のアフターサービス費用 粗利益の2分の1 被告ワンマンが自ら顧客に本件装置を販売する場合には,販売 先である顧客の要望に応じて,販売後の一漁期の間に限り,本件 装置の点検や調整といったアフターサービスを無償で行っており, 販売によって得た粗利益の5割程度を,こうしたアフターサービ スのために費消している。
b 寄与率について 本件各発明は,本件装置1の販売促進にほとんど寄与しておらず, せいぜい本件特許を取得したという外形的事実を根拠に,目新しい機 能を備えた商品であるという限度においてのみ顧客を誘引することに 寄与するのであるから,本件装置1の販売についての本件各発明の寄 与率は被告ワンマンの利益の10%を超えるものではない。
c 推定覆滅事由について 原告は,被告ワンマンや被告西部機販のような販売店ではなく,製 造業者であるから,原告の製品が販売されることによって原告が受け る利益は,製造業者としての利益にとどまる。したがって,仮に被告 ワンマンによる本件装置1の販売が本件特許権を侵害するとしても, 被告ワンマンが販売店として得た利益を原告が稼ぎ出すことは不可能 である。
(イ) 法102条3項又は不当利得返還請求権に基づく主張(予備的主張) に対する反論 原告は,本件各発明について,本件装置1に対する実施料率を3%, 本件各部品に対する実施料率を10%と主張するが,本件各発明に実質 的な効用はなく,本件装置1及び本件各部品の販売促進に寄与すること がほとんどない。したがって,本件各発明の相当な実施料率は,本件装 30 置1について1%,本件各部品について3%にそれぞれとどまる。
イ 被告西部機販による本件装置2及び本件各部品の販売に係る損害 原告が主張する本件装置2及び本件各部品の各売上金額及び仕入金額は 認めるが,その余は争う。
(ア) 法102条2項に基づく主張(主位的主張)に対する反論 a 必要経費の控除について 被告西部機販における本件装置2及び本件各部品の売上金額の合計 から仕入金額の合計を控除した金額は476万5800円であるとこ ろ(計算式は,464万3000円+11万円+1万2800円), 被告西部機販は専ら二次販売店として本件装置2を自ら顧客に販売し ていた。
そして,被告西部機販は,本件装置2を顧客に販売するに当たり, 上記ア(ア)a(a)と同じく,1台当たり平均して20万円程度の納 入・据付費を支出し,また,上記ア(ア)a?と同じく,販売によって 得た粗利益の5割程度のアフターサービス費用を負担していたから, 被告西部機販の利益額を算出するに当たっては,これらの費用を控除 する必要がある。
したがって,被告西部機販の受けた利益は,138万2900円 (計算式は,(476万5800円-20万円×10台)×0.5) を超えることがない。
b 寄与率について 上記ア(ア)bのとおり,本件各発明は,本件装置2の販売促進にほ とんど寄与しておらず,せいぜい本件特許を取得したという外形的事 実を根拠に,目新しい機能を備えた商品であるという限度においての み顧客を誘引することに寄与するのであるから,本件装置2の販売に ついての本件各発明の寄与率は被告西部機販の利益の10%を超える 31 ものではない。
c 推定覆滅事由について 上記ア(ア)cのとおり,原告は,販売店ではなく製造業者であるか ら,原告の製品が販売されることによって原告が受ける利益は,製造 業者としての利益にとどまる。したがって,仮に被告西部機販による 本件装置2の販売が本件特許権を侵害するとしても,被告西部機販が 販売店として得た利益を原告が稼ぎ出すことは不可能である。
(イ) 法102条3項又は不当利得返還請求権に基づく主張(予備的主張) に対する反論 上記ア(イ)のとおり,本件各発明に実質的な効用はなく,本件装置2 及び本件各部品の販売促進に寄与することはほとんどないから,本件各 発明の相当な実施料率は,本件装置2について1%,本件各部品につい て3%にそれぞれとどまる。
ウ 本件装置3に係る本件共同不法行為2による損害 原告は,被告ワンマン及び被告西部機販が本件装置3の販売によって 得た利益を合算した金額が原告の逸失利益であり,同額を被告らが連帯 して支払う義務があると主張する。
しかしながら,被告ワンマンは,本件装置3を二次販売店である被告 西部機販に販売するについて,上記ア(ア)a(b)のとおり,1台当たり 5万円の経費をかけており,また,被告ワンマンの得た利益についての 本件特許の寄与率は,上記ア(ア)bのとおり,10%を超えることがな く,上記ア(ア)cのとおり,推定覆滅事由がある。
そして,被告ワンマンの得た利益が439万5000円を超えること はないから,原告の逸失利益は,同額に寄与率(10%)を乗じた43 万9500円を超えることはない。
また,被告西部機販の鬼崎漁協に対する本件装置3の販売においては, 32 仕入金額よりも販売金額が低額となっているが,これは,入札金額が, 被告ワンマンと被告西部機販との間で合意した販売金額よりも低額とな ってしまったためであり,被告西部機販は,本件装置3とセットで販売 した他の機械の売上から得られる利益から損失をてん補することが可能 であると考えて,このような仕入価格を割り込む価格での入札に応じた のである。したがって,被告西部機販には,本件装置3の販売による利 益はそもそも出ていない。
エ 消滅時効の完成 (ア) 被告Yは,被告ワンマンの代表者として,平成22年6月16日 に原告代表者と面談している。この際に話し合われたのは,本件装置 ではなく,別の会社が製作した生海苔異物除去装置に関してであった が,原告は,この時点において,既に本件装置も本件特許権を侵害す るという認識を有していたから,被告Yに対し,本件装置を販売して いるか否かを確認することは容易であった。にもかかわらず,原告は, 敢えて本件装置の販売実態について確認しなかったのである。したが って,原告は同日の時点で,被告ワンマンが本件装置を販売し,原告 に損害が発生していることを認識し得た(あるいは十分に認識してい た)といえる。
(イ) 被告西部機販については,上記(ア)と異なり,原告との間で直接 交渉した事実は存在しない。しかしながら,原告は,被告西部機販が 原告以外のメーカーの製作に係る製品を取り扱っていることを認識し ていたはずであり,被告西部機販に対し,本件装置を販売しているか 否かを質問することは容易であった。にもかかわらず,原告は,敢え て本件装置の販売について確認しなかったのである。したがって,原 告は,被告ワンマンが本件装置を販売していることを認識し得た上記 (ア)の時点(平成22年6月16日)までには,被告西部機販による 33 本件装置の販売も認識し得たといえる。
(ウ) したがって,原告が訴え提起前6か月以内で,被告ワンマンに催 告をした日(平成27年3月19日)の3年前である平成24年3月 19日以前の期間に係る本件装置の販売についての損害賠償請求権に ついては,消滅時効が完成している。
当裁判所の判断
1 争点1(本件各発明に係る特許が特許無効審判により無効とされるべきもの か)について (1) 本件訂正明細書の記載 本件訂正明細書には,以下の記載がある。
ア 【発明の属する技術分野】として, 「本発明は,生海苔・海水混合液(生海苔混合液)から異物を分離除去 する生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置に関する。」 (段落【0001】) イ 【従来の技術】として, 「この異物分離機構を備えた生海苔異物分離除去装置としては,特開平 8-140637号の生海苔の異物分離除去装置がある。その構成は,筒 状混合液タンクの環状枠板部の内周縁内に回転板を略面一の状態で僅かな クリアランスを介して内嵌めし,この回転板を軸心を中心として適宜駆動 手段によって回転可能とするとともに,前記筒状混合液タンクに異物排出 口を設けたことにある。この発明は,比重差と遠心力を利用して効率よく 異物を分離除去できること,回転板が常時回転するので目詰まりが少ない こと,又は仮りに目詰まりしても,当該目詰まりの解消を簡易に行えるこ と,等の特徴があると開示されている。」(段落【0002】) ウ 【発明が解決しようとする課題】として, 「前記生海苔の異物分離除去装置,又は回転板とクリアランスを利用す 34 る生海苔異物分離除去装置においては,この回転板を高速回転することか ら,生海苔及び異物が,回転板とともに回り(回転し),クリアランスに 吸い込まれない現象,又は生海苔等が,クリアランスに喰込んだ状態で回 転板とともに回転し,クリアランスに吸い込まれない現象であり,究極的 には,クリアランスの目詰まり(クリアランスの閉塞)が発生する状況等 である。この状況を共回りとする。この共回りが発生すると,回転板の停 止,又は作業の停止となって,結果的に異物分離作業の能率低下,当該装 置の停止,海苔加工システム全体の停止等の如く,最悪の状況となること も考えられる。」(段落【0003】) 「前記共回りの発生のメカニズムは,本発明者の経験則では,1.生海 苔(原藻)に根,スケール等の原藻異物が存在し,生海苔の厚みが不均等 のとき,2.生海苔が束状,捩じれ,絡み付き等の異常な状態で,生海苔 が展開した状態でない,所謂,生海苔の動きが正常でないとき,3.生海 苔が異物を取り込んでいる状態,生海苔に異物が付着する等の状態であっ て,生海苔の厚みが不均等であるとき,等の生海苔の状態と考えられる。」 (段落【0004】)エ 【課題を解決するための手段】として, 「請求項1の発明は,共回りの発生を無くし,かつクリアランスの目詰 まりを無くすこと,又は効率的・連続的な異物分離(異物分離作業の能率 低下,当該装置の停止,海苔加工システム全体の停止等の回避)を図るこ とにある。またこの防止手段を,簡易かつ確実に適切な場所に設置するこ とを意図する。」(段落【0005】) 「請求項1は,生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,こ の回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並びに 異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合 液槽を有する生海苔異物分離除去装置において, 35 前記防止手段を,突起・板体の突起物とし,この突起物を,前記選別ケー シングの円周端面に設ける構成とした生海苔異物分離除去装置における生 海苔の共回り防止装置である。」(段落【0006】) 「請求項3の発明は,請求項1の目的を達成することと,またこの防止 手段を,簡易かつ確実に適切な場所に設置することを意図する。」(段落 【0009】) 「請求項3は,生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,こ の回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並びに 異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合 液槽を有する生海苔異物分離除去装置において, 前記防止手段を,突起・板体の突起物とし,この突起物を回転板及び/又 は選別ケーシングの円周面に設ける構成とした生海苔異物分離除去装置に おける生海苔の共回り防止装置である。」(段落【0010】) 「請求項4の発明は,請求項1の目的を達成することと,またこの防止 手段を,クリアランスへの容易な設置を図ることを意図する。 」(段落 【0011】) 「請求項4は,生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,こ の回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並びに 異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合 液槽を有する生海苔異物分離除去装置において, 前記防止手段を,突起・板体の突起物とし,この突起物を選別ケーシング と回転板で形成されるクリアランスに設ける構成とした生海苔異物分離除 去装置における生海苔の共回り防止装置である。」(段落【0012】)オ 【発明の実施の形態】として, 「本発明の生海苔混合液槽には,生海苔タンクから順次生海苔混合液が 導入される。この導入された生海苔混合液の生海苔は,回転板とともに回 36 転しつつ,順次吸込用ポンプにより回転板と選別ケーシングで形成される 異物分離機構のクリアランスに導かれる。この生海苔は,このクリアラン スを通過して分離処理される。この分離処理された生海苔及び海水は,選 別ケーシングのケーシング内底面より連結口を経由して良質タンクに導か れる。」(段落【0019】) 「このクリアランスに導かれる際に,生海苔の共回りが発生しても,本 発明では,防止手段に達した段階で解消される(防止効果)。尚,前記防 止手段は,単なる解消に留まらず,生海苔の動きを矯正し,効率的にクリ アランスに導く働きも備えている(矯正効果)。」(段落【0020】) 「以上のような操作により,生海苔の分離が,極めて効率的にかつトラ ブルもなく行われることと,当該回転板,又は当該装置の停止等は未然に 防止できる特徴がある。」(段落【0021】)カ 【実施例】として, 「1は異物分離除去装置で,この異物分離除去装置1は,生海苔混合液 をプールする生海苔混合液槽2と,この生海苔混合液槽2の内底面21に 設けた異物分離機構3と,異物排出口4と,前記異物分離機構3の回転板 34を回転する駆動装置5と,防止手段6を主構成要素とする。」(段落 【0023】) 「生海苔混合液槽2には,生海苔・海水を溜める生海苔タンク10と連 通する生海苔供給管11が開口しており,この生海苔供給管11には供給 用のポンプ12が設けられている。また分離処理された生海苔・海水をプ ールする良質タンク13を設ける。」(段落【0024】) 「異物分離機構3は,分離した生海苔・海水を吸い込む連結口31,及 び逆洗用の噴射口32を有する選別ケーシング33と,この選別ケーシン グ33に寸法差部Aを設けるようにして当該選別ケーシング33の噴射口 32の上方に設けられた回転板34と,この回転板34の円周面34aと 37 前記選別ケーシング33の円周面33aとで形成されるクリアランスSと, で構成されている。前記寸法差部Aは,選別ケーシング33の円周端面3 3bと回転板34の円周端面34bとの間で形成する。」(段落【002 5】) 「防止手段6は,一例として寸法差部Aに設ける。図3,図4の例では, 選別ケーシング33の円周端面33bに突起・板体・ナイフ等の突起物を 1ケ所又は数ヶ所設ける。また図5の例は,生海苔混合液槽2の内底面2 1に1ケ所又は数ヶ所設ける。さらに他の図6の例は,回転板34の円周 面34a及び/又は選別ケーシング33の円周面33a(一点鎖線で示 す。)に切り溝,凹凸,ローレット等の突起物を1ケ所又は数ヶ所,或い は全周に設ける。また図7の例は,選別ケーシング33(枠板)の円周面 33a(内周端面)に回転板34の円周端面34bが内嵌めされた構成の クリアランスSでは,このクリアランスSに突起・板体・ナイフ等の突起 物の防止手段6を設ける。また図8の例では,回転板34の回転方向に傾 斜した突起・板体・ナイフ等の突起物の防止手段6を1ケ所又は数ヶ所設 ける。」(段落【0026】) 「尚,前記回転板34は,駆動装置5のモーター51に設けた回転軸5 2に昇降自在に設けられている。従って,逆洗槽14内の海水を,ホース 15及び逆洗用ポンプ16を介して噴射口32より噴射して,この回転板 34を押上げ,この押上げによりクリアランスSの寸法を拡げる構成とな っている。」(段落【0027】) 「図中17は連結口31に設けた分離された生海苔・海水を良質タンク 13に導くホース,18はホース17に設けた吸込用ポンプをそれぞれ示 す。」(段落【0028】)キ 【発明の効果】として, 「請求項1の発明は,生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転 38 板,回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,防止手段を,突起・板体の突起物とし,突起物を,選別ケーシングの円周端面に設ける生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置である。従って,この請求項1は,共回りの発生を無くし,かつクリアランスの目詰まりを無くすこと,又は効率的・連続的な異物分離(異物分離作業の能率低下,当該装置の停止,海苔加工システム全体の停止等の回避)が図れること,またこの防止手段を,簡易かつ確実に適切な場所に設置できること等の特徴がある。」(段落【0029】) 「請求項3の発明は,生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,防止手段を,突起・板体の突起物とし,突起物を回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置である。従って,請求項1の目的を達成できることと,またこの防止手段を,簡易かつ確実に適切な場所に設置できること等の特徴を有する。」(段落【0031】) 「請求項4の発明は,生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,防止手段を,突起・板体の突起物とし,突起物を選別ケーシングと回転板で形成されるクリアランスに設ける生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置である。従って,請求項1の目的を達成できることと,またこの防止手段を, 39 クリアランスへの容易な設置が図れること等の特徴を有する。」(段落 【0032】)(2) 本件各発明の概要 本件各発明の構成要件及び上記(1)で認定した本件訂正明細書の記載によ れば,本件各発明の概要は,以下のとおりと認められる。
ア 本件各発明は,生海苔・海水混合液(生海苔混合液)から異物を分離除 去する生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置に関する。
従来,筒状混合液タンクの環状枠板部の内周縁内に回転板を略面一の状 態で僅かなクリアランスを介して内嵌めし,この回転板を軸心を中心とし て適宜駆動手段によって回転可能とするとともに,前記筒状混合液タンク に異物排出口を設けた生海苔異物分離除去装置(乙4発明)がある。
この生海苔異物分離除去装置(又は,回転板とクリアランスを利用する 生海苔異物分離除去装置)においては,この回転板を高速回転することか ら,生海苔及び異物が回転板とともに回転し,クリアランスに吸い込まれ ない現象,又は,生海苔等がクリアランスに喰込んだ状態で回転板ととも に回転し,クリアランスに吸い込まれない現象が生じ,究極的には,クリ アランスの目詰まり(クリアランスの閉塞)が発生する。
このような「共回り」が発生すると,回転板の停止又は作業の停止とな って,結果的に異物分離作業の能率低下,当該装置の停止,海苔加工シス テム全体の停止等のごとく,最悪の状況となることも考えられる。
イ 本件各発明は,従来の生海苔異物分離除去装置(乙4発明)の有する前 記アの問題に鑑み,共回りの発生をなくし,かつクリアランスの目詰まり をなくすこと,又は 効率的・連続的な異 物分離を図ること等 を目的 に , 「生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,この回転板の回転 とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並びに異物排出口をそ れぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生 40 海苔異物分離除去装置」において,本件発明1では,前記防止手段を,突 起・板体の突起物とし,これを前記選別ケーシングの円周端面に設ける構 成とし,本件発明3では,前記防止手段を,突起・板体の突起物とし,こ れを回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける構成とし,本件発 明4では,前記防止手段を,突起・板体の突起物とし,これを選別ケーシ ングと回転板で形成されるクリアランスに設ける構成とした。
ウ 本件各発明によれば,共回りの発生をなくし,かつクリアランスの目詰 まりをなくすこと,又は,効率的・連続的な異物分離(異物分離作業の能 率低下,当該装置の停止,海苔加工システム全体の停止等の回避)が図れ ること,この防止手段を,簡易かつ確実に適切な場所に設置できること, この防止手段を,クリアランスへの容易な設置が図れること等の効果を奏 する。
(3) 無効理由2について 説示の便宜上,まず無効理由2から判断し,その後に無効理由1につい て判断することとする。
ア 乙4発明の概要 乙4文献の特許請求の範囲の請求項1ないし4の記載及び発明の詳細な 説明の段落【0001】ないし【0003】 【0005】 【0009】 , , , 【0028】 【0029】の各記載並びに【図4】によれば,乙4文献に , は,下記の発明(乙4発明)が記載されているものと認められる。
記 第一分離除去具は,第一回転板,第一回転板との間にクリアランスSを 形成する環状固定板と環状枠板で構成される環状枠板部,環状枠板を連設 するための周筒部,クリアランスSを通過した海苔混合液を連設タンクに 排出するガイド筒,及び,異物を排出するための管状の排出路及びそれに 続く排出管とで構成されており,筒状混合液タンクの底部周端縁に環状枠 41 板部の外周縁を連設し,この環状枠板部の内周縁内に第一回転板を略面一 の状態で僅かなクリアランスSを介して内嵌めし,この第一回転板を軸心 を中心として適宜駆動手段によって回転可能とするとともに前記タンクの 底隅部に異物排出口を設けたことを特徴とする生海苔の異物分離除去装置。
イ 本件各発明と乙4発明との一致点及び相違点 (ア) 一致点 生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,並びに異物排出 口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を 有する生海苔異物分離除去装置である点。
(イ) 相違点 本件各発明が,「防止手段を,突起・板体の突起物とし,この突起物 を,選別ケーシングの円周端面に設け(本件発明1),回転板及び/又 は選別ケーシングの円周面に設け(本件発明3),あるいは,選別ケー シングと回転板で形成されるクリアランスに設ける(本件発明4)構成 とした,回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段」 を具備するのに対して,乙4発明はかかる防止手段を具備していない点。
ウ 相違点の容易想到性について (ア) 乙2文献に記載された公知技術 乙2文献には以下の公知技術が記載されている。なお,被告らは乙2 文献に記載された公知技術周知技術であると主張するが,これを認め るに足る証拠はない。
a 乙2文献に記載された技術は,生海苔の異物(ゴミ,エビ,アミ糸 等)分離装置に関し,生海苔調合液(生海苔と塩水又は真水とを適宜 濃度に調合したもの)から異物を分離する際に使用されるものに関す る。(乙2文献の段落【0001】) b 従来におけるこの種の異物分離装置は,所要数のローラーをスリッ 42 トを介して並列に配置し,これらのスリットに,生海苔調合液を通過 させることによって,生海苔調合液中の異物を分離除去していたが, かかる従来の異物分離装置にあっては,スリットの上流側に分離除去 された異物が詰まりやすく,その結果,異物の分離除去の作業能率を 向上させにくいという不都合があった。そこで,乙2文献に記載され た技術は,かかる不都合を解消するために,所要数の回転ローラーを スリットを介して並列に配置し,これらのスリットに生海苔調合液を 通過させることによって,生海苔調合液中の異物を分離する生海苔の 異物分離装置において,回転ローラーの外周面にらせん溝を形成した ものである。(乙2文献の段落【0002】〜【0005】) c 乙2文献に記載された技術によれば,分離除去されてスリットの上 流側にとどまった異物は,らせん溝の回転に従ってローラーの軸方向 に沿って移動してスリットから除去され,当該スリットは常時空間を 確保す るこ とが でき るとい う作 用効 果を 奏する 。(乙 2文 献 の段落 【0007】)(イ) 乙3文献に記載された公知技術 乙3文献には以下の公知技術が記載されている。なお,被告らは乙3 文献に記載された公知技術周知技術であると主張するが,これについ ても,上記(ア)と同様,これを認めるに足る証拠はない。
a 乙3文 献 に記載 された技術 は,生海 苔のゴミ取 り装置に 関 す る 。
(乙3文献の段落【0001】) b 従来,乾燥海苔の製造に当たり,乾燥海苔には,生海苔に混入して いるゴミが付着している可能性があるため,ゴミ検出装置によりゴミ の検出を行い,ゴミが検出されたものはゴミ取り作業工程に回すよう にしていたが,同工程で,乾燥海苔に付着したゴミを手作業により取 り除いていたために,手間と労力を要して,作業効率が悪いという問 43 題があった。そこで,乙3文献に記載された技術は,所要の大きさに 切断した生海苔と塩水とを一定の重量割合で調合する調合部と,同調 合部により調合された生海苔と塩水との調合液を吸い込む吸込流路部 と,同吸込流路部に設けて調合液中のゴミをろ過するろ過部を具備し, ろ過部には一定の細幅のろ過用スリットを形成した生海苔のゴミ取り 装置を提供するものである。(乙3文献の段落【0002】〜【00 05】) c 乙3文献に記載された技術によれば,所要の大きさに切断した生海 苔と塩水とを,生海苔がろ過用スリット中を通過しやすい程度の重量 割合で調合して,同調合液を吸込流路部に吸い込むことにより,その 途中でろ過部のろ過用スリットにより調合液中のゴミを確実にろ過す ることができ,付着ゴミの検出や,手作業によるごみ取り作業の手間 を省くことができるという作用効果を奏する(乙3文献の段落【00 99】 。
)(ウ) 相違点の容易想到性について a 乙4文献の「発明の詳細な説明」(段落【0002】 【0003】 , , 【0005】 【0009】 【0028】 【0029】 , , , )の記載によれ ば,乙4発明は,従来の異物分離除去装置(特開平6-121660 号)が,分離ドラムの周壁に所要数の分離孔を設け,生海苔混合液を 回転する分離ドラム内に供給し,分離孔を通過させることによって, 生海苔混合液中の異物を分離ドラムの分離孔の周縁に引っ掛けて排出 口に流れるのを防止するという方式(以下「従来方式」という。)で あったため,分離孔の周縁に異物が蓄積し,目詰まりが発生するとい う課題を有するものであったことから,かかる課題を解決することを 目的とし,従来の異物分離除去装置における異物分離除去の方式を変 更して,固定部材(環状枠板部)とこの内周縁内に内嵌めされた回転 44 部材(第一回転板)との間のクリアランスに生海苔を導入しつつ,異物を,回転部材(第一回転板)の回転による遠心力によって,円周方向(クリアランスよりも環状枠板部側)に追いやり,生海苔のみを水とともにクリアランスを通過させるようにしたもの(以下「回転板方式」という。)であり,かかる方式を採用したことにより,異物がクリアランスに詰まりにくく,従来の異物分離除去装置のように,目詰まり洗浄装置等を別途設けることを不要としたものであると認められる。
これに対し,本件各発明は,前記1(1)のとおり,乙4発明を従来技術とし,その有する課題の解決を目的として発明されたものであって,回転板方式による異物分離除去装置である乙4発明には,「共回り」の課題があることを見いだし,これを克服するために,回転板方式による異物分離除去装置において,回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段を設けたものである。
そうすると,乙4発明は,回転板方式を前提とする発明である点で本件各発明と共通するものであるが,乙4文献には,本件各発明の課題である「共回り」,すなわち,「回転板を高速回転することから,生海苔及び異物が,回転板とともに回り(回転し),クリアランスに吸い込まれない現象,又は生海苔等が,クリアランスに喰込んだ状態で回転板とともに回転し,クリアランスに吸い込まれない現象であり,究極的には,クリアランスの目詰まり(クリアランスの閉塞)が発生する状況等」(本件訂正明細書等の段落【0003】)についての記載はない。また,被告らが指摘する乙8ないし13の記載等を見ても,回転板方式を採用した異物分離除去装置において,前記「共回り」の現象が生じることが自明であることを認めることはできず,他にこれを認めるに足る証拠もない。
45 したがって,乙4文献に接した当業者において,回転板方式による 異物分離除去装置である乙4発明に前記「共回り」の課題があること を想起し得たと認めることはできない。
b また,乙4発明は本件各発明と同じく,固定部材と回転部材との間 のクリアランスに生海苔を導入しつつ,異物を回転部材による遠心力 により円周方向に追いやり,生海苔のみがクリアランスを通過するよ うにした回転板方式を前提とするものであるのに対し,乙2文献及び 乙3文献の異物分離除去装置は,これとは異なり,スリットに生海苔 調合液を通過させることによって生海苔調合液中の異物を分離すると いう方式によるものであって,乙4発明と乙2文献及び乙3文献に開 示された技術とでは,その前提とする異物分離除去に係る技術的思想 (方式)が異なるから,仮に,乙4文献に接した当業者において,乙 4発明について,クリアランスに異物や生海苔の詰まりが生じるとい う問題があるという課題を想起し得たとしても,乙4発明に,それと は前提とする異物分離除去に係る技術的思想の異なる乙2文献及び乙 3文献を適用する動機付けがあるとは認められない。
さらに,仮に,当業者において,乙4発明に乙2文献及び乙3文献 に記載された公知技術を適用することを試みたとしても,乙4発明に おいて,乙4発明とは異物分離除去の仕組みが異なる乙2文献及び乙 3文献に記載された発明をどのように適用するのか想定することはで きない上,乙2文献及び乙3文献には突起物の構成は何ら開示されて いないのであるから,乙4発明に乙2文献及び乙3文献で開示された 技術を組み合わせたとしても,本件各発明の構成に至ることはできな いというべきである。
エ 以上によれば,被告らの無効理由2の主張は理由がない。
(4) 無効理由1について 46 被告らは,本件各発明が,乙1考案と同一であると主張するので,以下検討する。
ア 乙1考案の概要 乙1文献の実用新案登録請求の範囲の請求項1の記載及び考案の詳細な 説明の段落【0001】ないし【0005】 【0023】 【0024】の , , 各記載並びに【図2】ないし【図4】によれば,乙1文献には,「混合液 タンクの底部周端縁に環状枠板部の外周縁を連設し,この環状枠板部の内 側に回転板を設置するとともにこの回転板と前記環状枠板部との間にクリ アランスを形成し,前記回転板を軸心を中心として適宜回転駆動手段によ って回転可能とするとともに前記タンクの底部に異物排出口を設けた生海 苔の異物分離除去装置において,前記環状枠板部の内周縁に所要数の凹部 を形成するとともにこの凹部における前記クリアランスを他の部分よりも 広幅とすることによって,クリアランスに詰まる異物の大部分を占める茎 部の付いている生海苔が前記回転板によって引きずられ上記凹部の位置に 達した際に同凹部におけるクリアランスを通過することができることを特 徴とする生海苔の異物分離除去装置」が開示されていると認めることがで きる。
イ 本件各発明と乙1考案の対比 (ア) 上記アのとおり,乙1考案は,環状枠固定部の内周縁に凹部を設け ることによってクリアランスを部分的に幅広として,当該幅広としたク リアランスから生海苔異物の大部分を占める茎部の付いた生海苔を通過 させ,これによってクリアランスの目詰まりという課題を解消するとい うものであって,本件各発明のように,突起・板体の突起物をクリアラ ンス又は回転板の円周面若しくは選別ケーシングの円周面や円周端面に 設け,同突起物が,生海苔混合液がクリアランスに導かれる際に発生し た生海苔の共回りを解消するとともに(防止効果),生海苔の動きを矯 47 正し,効率的にクリアランスに導く(矯正効果)ことによって,共回り の発生をなくし,クリアランスの目詰まりをなくすという技術思想は記 載されていない。
そうすると,乙1考案に設けられる「凹部」は,本件各発明の「突 起・板体の突起物」(構成要件B1,B ’1,B”1)とは異なるもので あって,乙1考案は,構成要件A3の「防止手段」の構成を備えていな い点において,本件各発明と相違するものと認められる。
(イ) これに対し,被告らは,@共回り現象が生じると生海苔及び異物が クリアランスに吸い込まれないため,究極的にはクリアランスの目詰ま りが発生すること(本件訂正明細書の段落【0003】 ,乙1考案の出 ) 願人が乙1考案の出願より前に「目づまり防止付」の海苔異物除去機の 宣伝広告を行っていたこと(乙8〜11)からすれば,乙1考案の課題 と本件各発明の課題は実質的に同一である旨,A乙1考案において,ク リアランスに詰まった生海苔異物は,回転板によって引きずられ,凹部 の位置に達した際に通過し,適正な生海苔原料として取り出されるから, 凹部から成る防止手段は本件各発明の防止手段と同一の作用効果を発揮 しており,乙1考案における凹部と本件各発明の「突起物」が実質的に 同一であるし,乙2文献及び乙3文献によれば,凹部を回転板に設ける ことは本件各発明の出願時において周知技術であったことが明らかであ る旨主張する。
しかしながら,@については,乙1考案には共回りの発生原因や解決 手段はもちろん共回りの課題についての記載は一切なく,また,上記 (3)ウ(ウ)aのとおり,乙8〜11によっても乙1考案の出願時におい て共回りの課題が当業者に周知となっていたとは認め難い。
また,Aについても,本件各発明が防止手段として規定する「突起物」 は所定の面あるいはクリアランスに突き出たものと解されるから,部分 48 的にクリアランスの幅を広げるものである乙1考案における凹部がこれ に該当するということはできない。また,乙1考案における凹部は,環 状枠板部の内周縁に設けられるもので,凹部を回転板に設ける旨の記載 は乙1文献には見当たらないし,被告らが凹部を回転板に設けることが 周知技術であった根拠として指摘する乙2文献及び乙3文献は,回転板 方式ではない従来方式の生海苔異物分離装置に係るものであって,これ らをもって凹部を回転板方式における回転板に設けることが周知技術で あったとは到底認められない。
したがって,被告らの主張はいずれも採用することができない。
ウ 以上によれば,本件各発明が乙1考案との関係で拡大先願違反であると いうことはできず,被告らの無効理由1の主張も理由がない。
2 争点2(被告ワンマンによる本件装置1及び本件各部品の譲渡等につき,被 告ニチモウとの本件共同不法行為1が成立するか)について 被告ワンマンが渡邊機開から本件装置86台(本件装置1)を購入し,これ を顧客に売却したこと,及び,本件装置が本件各発明の技術的範囲に属するこ とに争いはなく(前記第2の2(3)ア),また,上記1のとおり,本件特許に無 効事由が存在するとは認められないのであるから,被告ワンマンの上記行為は 本件特許権侵害に当たるところ,原告は,被告ワンマンの本件特許権侵害行為 が,被告ニチモウによる本件特許権侵害行為にも該当し,被告ニチモウには被 告ワンマンとの共同不法行為が成立すると主張する。
しかしながら,被告ワンマンの行為が本件特許権を侵害するとしても,被告 ワンマンとは別の法人である被告ニチモウについて,直ちに被告ワンマンとの 共同不法行為が成立するとはいえないし,他にその成立を認定するに足る事実 をうかがわせる証拠もない(なお,被告ニチモウが自ら本件各発明を実施して いないことは当事者間に争いがない。)。
そうすると,本件共同不法行為1が成立するとは認められない(なお,被告 49 ワンマンの本件特許権侵害行為により被告ニチモウに利得が生じたとも認め難 い。)。
これに対し,原告は,@被告ワンマンが,被告ニチモウにおいて開発・製造 した全自動乾海苔製造装置「ニチモウワンマン」をはじめとする海苔機資材の 製造・販売を行う被告ニチモウの完全子会社であること,A平成28年1月8 日現在,被告ワンマンの5名の役員のうち1名が被告ニチモウの役員を兼任し ていることを指摘し,これらの事情によれば,被告ニチモウが被告ワンマンを 実質的に支配し,被告ワンマンをその一事業部門として用いて自らの事業を遂 行しているといえる旨主張する。しかしながら,原告の指摘する上記各事情は, いずれも原告の上記主張を裏付けるに足るものとは認められず,原告の上記主 張は採用することができない。
3 争点3(被告らについて,本件装置3に係る本件共同不法行為2が成立する か)について 被告ワンマンが渡邊機開から本件装置3を購入し,これを被告西部機販に売 却し,被告西部機販がこれを鬼崎漁協に売却したことについては,当事者間に 争いがないところ,原告は,被告西部機販が本件装置3を被告ワンマンに発注 し,被告ワンマンが同装置を渡邊機開に再発注したところ,渡邊機開は,被告 Yと相談して,自社の倉庫で保管していた本件装置3をいったん被告ワンマン の本店に運搬し,その後,本件装置3を鬼崎漁協の倉庫へ搬入したなどとして, これらの一連の行為が,渡邊機開と被告らとの共謀に基づく共同不法行為に当 たると主張するものと解される(なお,原告は,上記一連の行為についてそれ ぞれ自らが締結した契約の履行にすぎない旨の被告の主張は全く筋違いである としている。)。
しかしながら,原告の主張する「一連の行為」のうち,被告西部機販が被告 ワンマンに本件装置3を発注し,被告ワンマンが渡邊機開にこれを再発注した 行為は,いずれも正当な取引行為と認められ,これが原告に対する不法行為を 50 構成するとは評価できない。また,被告ワンマンが,後日,渡邊機開から納入 された本件装置3を被告西部機販に納入し,被告西部機販が同装置を鬼崎漁協 に納入した行為については,いずれも自らの義務の履行として行われたもので あって,これが原告に対する不法行為を構成するとは認められない。さらに, 被告ワンマンの行為を被告ニチモウの行為と同一視することができないことは 上記2のとおりであり,また,原告の主張に係る被告Yの行為(渡邊機開が, 自社の倉庫で保管していた本件装置3を被告ワンマンの本店に運搬するに際し て相談に応じたこと)も原告に対する不法行為を構成するものとは認め難い。
したがって,被告らについて,本件共同不法行為2が成立するとは認めるこ とができない。
この点,原告は,被告ワンマンと被告西部機販が,渡邊機開との間で,渡邊 機開が別件仮処分決定の執行を逃れることを共謀し,そのような意図を持って 本件装置3の占有を渡邊機開から形式的に移転した旨を主張するものとも解さ れるが,本件で提出された全証拠を子細に検討しても,原告主張に係る事実関 係を認めることはできないし,かえって,証拠(甲17の1)によれば,別件 仮処分決定に先立ち,渡邊機開から被告ワンマンに本件装置3が売却され,そ の代金決済も完了していることが明らかであって,原告の上記主張は採用でき ない。
4 争点4(差止請求権の存否及び範囲)について (1) 本件装置及び本件各部品の譲渡等の差止め及び廃棄について 本件装置が本件各発明の技術的範囲に属することに争いはなく(前記第2 の2(3)ア),また,上記1のとおり,本件特許に無効事由が存在するとは認 められない。そして,証拠(甲8(枝番を含む。 ,10,30)及び弁論の ) 全趣旨によれば,本件装置においては,本件固定リングが本件各発明の選別 ケーシング(枠板)の一部に当たり,その表面に本件板状部材を取り付ける ための凹部が形成されており,その凹部にはめ込まれてボルトで固定された 51 本件板状部材が,本件各発明における「共回りを防止する防止手段」として 機能しているものと認められるから,本件固定リング及び本件板状部材は, いずれも,本件各発明の実施品に当たる本件装置の生産にのみ用いる物(法 101条1号)ということができる。
そうすると,@被告ワンマンが,本件装置を譲渡し,貸渡しし,輸出し, 又は譲渡若しくは貸渡しの申出をすること,A被告ワンマンが本件各部品を 譲渡し,貸渡しし,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をすること及びB被告西 部機販が,本件装置又は本件各部品を譲渡し,貸渡しし,又は譲渡若しくは 貸渡しの申出をすることは,いずれも本件特許権の侵害行為又は侵害とみな される行為に当たる。
したがって,原告は,法100条1項に基づき,被告ワンマンに対し,上 記@及びAの各行為の差止めを,被告西部機販に対し,上記Bの行為の差止 めを,それぞれ求めることができ,また,同条2項に基づき,被告ワンマン 及び被告西部機販に対し,本件装置及び本件各部品の廃棄を求めることがで きる。
(2) 本件メンテナンス行為1の差止めについて 原告は,被告ワンマン及び被告西部機販に対し,本件メンテナンス行為1 の差止めを求めるところ,製品について加工や部材の交換をする行為であっ ても,当該製品の属性,特許発明の内容,加工及び部材の交換の態様のほか, 取引の実情等も総合考慮して,その行為によって特許製品を新たに作り出す ものと認められるときは,特許製品の「生産」(法2条3項1号)として, 侵害行為に当たると解するのが相当である。
本件各発明は,前記1(2)のとおり,生海苔混合液槽の選別ケーシングの 円周面と回転板の円周面との間に設けられた僅かなクリアランスを利用して, 生海苔・海水混合液から異物を分離除去する回転板方式の生海苔異物分離除 去装置において,クリアランスの目詰まりが発生する状況が生じ,回転板の 52 停止又は作業の停止を招いて,結果的に異物分離作業の能率低下等を招いて しまうとの課題を解決するために,突起・板体の突起物を選別ケーシングの 円周端面に設け(本件発明1),回転板及び/又は選別ケーシングの円周面 に設け(本件発明3),あるいは,クリアランスに設けること(本件発明4) によって,共回りの発生をなくし,クリアランスの目詰まりの発生を防ぐと いうものである。そして,本件板状部材は,本件固定リングに形成された凹 部に嵌め込むように取り付けられて固定されることにより,本件各発明の 「共回りを防止する防止手段」(構成要件A3)に該当する「表面側の突出 部」,「側面側の突出部」を形成するものであること(当事者間に争いがな い)からすると,本件固定リング及び本件板状部材は,被告装置の使用(回 転円板の回転)に伴って摩耗するものと認められるのであって,このような 摩耗によって上記突出部を失い,共回り,目詰まり防止の効果を喪失した被 告装置は,本件各発明の「共回りを防止する防止手段」を欠き,もはや「共 回り防止装置」には該当しないと解される。
そうすると,「表面側の突出部」,「側面側の突出部」を失った被告装置 について,新しい本件固定リング及び本件板状部材の両方,あるいは,いず れか一方を交換することにより,新たに「表面側の突出部」,「側面側の突 出部」を設ける行為は,本件各発明の「共回りを防止する防止手段」を備え た「共回り防止装置」を新たに作り出す行為というべきであり,法2条3項 1号の「生産」に該当すると評価することができるから,原告は,被告らに 対し,法100条1項に基づき,上記(1)の差止めに加えて,本件メンテナ ンス行為1の差止めを求めることができる。
(3) 本件メンテナンス行為2の差止めについて 本件メンテナンス行為2は,法2条3項1号の「生産」に当たるとは認め られない(なお,原告も別件訴訟において,本件メンテナンス行為2が「生 産」に当たらないことを自認している(甲30の54頁)。)。また,原告 53 は,本件メンテナンス行為2が,各ユーザーによる本件装置の「使用」とい う本件特許権侵害行為を幇助すると主張するが,仮に本件メンテナンス行為 2が,各ユーザーによる被告装置の使用という実施行為の幇助と評価される 余地があるとしても,幇助行為の差止めを認める規定は存在しないのである から,原告の主張を採用することはできない。
したがって,原告の本件メンテナンス行為2に係る差止請求は理由がない。
5 争点5(損害額又は不当利得額(消滅時効の成否を含む。 )について ) (1) 次の各事実については,当事者間に争いがない。
ア 被告ワンマンによる本件装置1及び本件各部品の販売に係る利益額 (ア) 被告ワンマンは,本件装置1を合計2億8356万4000円(税 抜)で仕入れ,これを合計3億2211万2500円(税抜)で販売し た。したがって,被告ワンマンによる本件装置1の売上から仕入代金を 控除した額は,3854万8500円(税抜)となる。
(イ) 被告ワンマンは,本件各部品を合計209万3800円(本件固定 リングにつき184万5000円,本件板状部材につき24万8800 円。いずれも税抜)で仕入れ,これを合計257万3484円(本件固 定リングにつき222万2400円,本件板状部材につき35万108 4円。いずれも税抜)で販売した。したがって,被告ワンマンによる本 件各部品の売上から仕入代金を控除した額は,47万9684円(税抜) となる。
イ 被告西部機販による本件装置2及び本件各部品の販売に係る利益額 (ア) 被告西部機販は,本件装置2を合計3425万7000円(税抜) で仕入れ,これを合計3890万円(税抜)で販売した。したがって, 被告ワンマンによる本件装置2の売上から仕入代金を控除した額は,4 64万3000円(税抜)となる。
(イ) 被告西部機販は,本件各部品を合計58万1800円(本件固定リ 54 ングにつき55万円,本件板状部材につき3万1800円。いずれも税 抜)で仕入れ,これを合計70万4600円(本件固定リングにつき6 6万円,本件板状部材につき4万4600円。いずれも税抜)で販売し た。したがって,被告西部機販による本件各部品の売上から仕入代金を 控除した額は合計12万2800円(税抜)となる。
(2) 上記(1)のとおり,本件装置1及び本件各部品の販売によって被告ワンマ ンが得た利益(税込)は4097万9593円(計算式は,(3854万8 500円+47万9684円)×1.05。なお,原告の主張するとおり, 平成26年4月分以降の取引も含めて一律に消費税率を5%として計算する。
以下同じ),本件装置2及び本件各部品の販売によって被告西部機販が得た 利益(税込)は500万4090円(計算式は,(464万3000円+1 2万2800円)×1.05)とそれぞれ認められ,上記各利益の額が,原 告が受けた損害の額と推定されるところ(法102条2項),これを覆すに 足る具体的事情の存在はうかがわれない。したがって,原告は,被告ワンマ ンによる本件装置1及び本件各部品の販売により,4097万9593円の 損害を,被告西部機販による本件装置2及び本件各部品の販売により,50 0万4090円の損害を,それぞれ受けたものと認められる。
また,被告ワンマンによる本件装置1及び本件各部品の販売と因果関係の ある弁護士費用としては410万円を,被告西部機販による本件装置2及び 本件各部品の販売と因果関係のある弁護士費用としては50万円を,それぞ れ認めることが相当である。
(3) これに対し,被告ワンマン及び被告西部機販は,要旨,@本件装置1及 び2の仕入代金以外に必要経費が生じているから,これらについても被告ワ ンマン及び被告西部機販の利益から控除すべきである,A本件特許は本件装 置1及び2の販売にほとんど寄与しておらず,本件装置1及び2の売上への 寄与率が10%を超えることはない,B被告ワンマン及び被告西部機販が本 55 件装置1及び2の販売によって得た利益を原告の損害と推定することについ ての推定覆滅事由があるなどと主張する。
しかしながら,上記@について,必要経費として控除できるのは,本件装 置1及び2の販売に直接関連して追加的に必要になった経費に限られるもの と解すべきところ,被告ワンマン及び被告西部機販の主張する経費が本件装 置1及び2の販売に直接関連して追加的に必要になったものと認められない のはもちろん,そもそも同経費が現実に生じたこと自体を認めるに足る証拠 が一切なく,その算定根拠も判然としない。また,上記Aについて,本件各 発明は,生海苔異物除去装置の構造の中心的部分に関するものである一方, 本件各発明が本件装置1及び2に寄与する割合を減ずべきであるとする被告 ワンマン及び被告西部機販の主張の根拠は判然としないことに照らせば,本 件各発明が本件装置1及び本件各部品の販売に寄与する割合を減ずることは 相当でない。さらに,上記Bについて,被告が主張するのは,単に,原告が 販売店ではなく製造業者であるという事実にとどまるところ,同事実のみか ら,本件各発明の実施品が有する顧客吸引力にもかかわらず,原告がその取 引先への販売の機会を持ち得なかったということはできないし,ほかに原告 が取引の機会を奪われたとはいえない特段の事情もないから,法102条2 項による推定を覆滅するには足りないというほかない。
(4) さらに,被告らは,平成22年6月16日の時点において,原告が被告 ワンマン及び被告西部機販による本件特許権の侵害及びこれにより原告に損 害が発生したことを認識することができた(あるいは十分に認識していた) から,同日が民法724条前段の消滅時効の起算点となる旨主張する。
しかしながら,民法724条前段の消滅時効の起算点は,被害者等が「損 害及び加害者を知った時」であって,損害及び加害者を現実に了知した時点 であるところ,原告が,本件訴訟の提起日の3年前の時点において,被告ワ ンマン及び被告西部機販による本件特許権侵害及びこれにより原告に損害が 56 生じたことを現実に了知していたと認めるに足る証拠はないから,被告らの 上記主張を採用することはできない。
(5) したがって,原告は,被告ワンマンによる本件特許権の侵害行為により 4507万9593円(計算式は,4097万9593円+410万円)の, 被告西部機販による本件特許権の侵害行為により550万4090円(計算 式は,500万4090円+50万円)の各損害を被ったものと推定される。
そして,原告は,本件特許権の侵害を理由とする損害賠償請求権につき, 主位的請求(一部請求)として,被告ワンマンに対し,1430万8500 円及びこれに対する平成27年6月2日から支払済みまで民法所定の年5分 の割合による遅延損害金の支払を,被告西部機販に対し,92万4200円 及びこれに対する平成27年5月30日から支払済みまで民法所定の年5分 の割合による遅延損害金の支払を求めるから,原告の被告ワンマン及び被告 西部機販に対する主位的請求は,その全額を認容すべきである。
なお,被告ワンマン及び被告西部機販については主位的請求を全額認容す るので,予備的請求について判断する必要はない。他方,被告ニチモウに対 する請求については,上記2のとおり,そもそも被告ニチモウが本件各発明 を実施しているとは認められないから,主位的請求のみならず予備的請求も 認めることができない。また,原告が本件装置3に係る損害として主張する のは,本件共同不法行為2に基づく損害が全てであるところ,前記3のとお り,本件共同不法行為2の成立は認められないから,本件装置3に係る損害 についても判断する必要はない。
6 結論 以上によれば,原告の請求は,主文1ないし7項の限度で理由があるからこ れらを認容し,その余の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却すること として主文のとおり判決する。
追加
57 裁判長裁判官沖中康人裁判官矢口俊哉裁判官廣瀬達人58 (別紙)物件目録1下記の型名の「生海苔異物除去機」記(1)型名「WK-500」(2)型名「WK-550」(3)型名「WK-600」(4)型名「WK-700」以上59 (別紙)物件目録2物件目録1記載の「生海苔異物除去機」のいずれかに用いる「固定リング」(別紙図面(1)及び(2)記載の4(環状固定板))以上60 (別紙)物件目録3物件目録2記載の「固定リング」の凹部に取り付け可能な「板状部材」(別紙図面(1)及び(2)記載の8(板状部材))以上61 (別紙)以上62 (別紙)メンテナンス行為目録1物件目録1記載の「生海苔異物除去機」のいずれかに対して,物件目録2記載の「固定リング」又は物件目録3記載の「板状部材」を取り付ける行為(ただし,部品の交換としての行為に限る。)2物件目録1記載の「生海苔異物除去機」のいずれかに対して行う下記の行為。
ただし,上記1の行為を除く。
記(1)点検(2)整備(3)部品の交換(4)修理以上63
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