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関連審決 不服2014-22423
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事件 平成 27年 (行ケ) 10140号 審決取消請求事件

原告X
被告特許庁長官
指定代理人加藤友也
同 中村達之
同 梶本直樹
同 長馬望
同 田中敬規
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2016/03/31
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2014-22423号事件について平成27年6月23日にした審決を取り消す。
前提となる事実
1 特許庁における手続の経緯等(争いがない事実又は文中掲記の証拠により容易に認められる事実) 原告は,発明の名称を「エンジン及び回転体発電装置」とする発明について,平成25年10月1日を出願日とする特許出願(特願2013-246713号。以下「本願」という。)をしたが,平成26年9月5日付けで拒絶査定を受けたため, 同年10月16日付けで,これに対する不服の審判を請求した。
特許庁は,上記請求を不服2014-22423号事件として審理をした結果,平成27年6月23日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本を,同年7月15日,原告に送達した(乙1)。
2 特許請求の範囲本願の特許請求の範囲(請求項の数2)のうち,請求項1の記載は,以下のとおりである(甲4。以下,請求項1に係る発明を「本願発明」といい,本願の明細書及び図面を併せて「本願明細書」という。)。
「【請求項1】回転体の外側に燃焼室を取り付け回転体の外側だけに燃焼エネルギーを加えて,強力磁石の反発により回転体を浮かせて,回転しやすくした改良エンジンでハイブリットにも活用できるエンジン」3 審決の理由 審決の理由は,別紙審決書写しに記載のとおりである。その要旨は,本願発明は,特開昭58-180730号公報(甲1。以下「引用文献1」という。)に記載された発明(以下「引用発明」という。)と,特開2008-75488号公報(甲2。以下「引用文献2」という。)及び特表2013-510267号公報(甲3。以下「引用文献3」という。)に記載された技術(以下「引用技術」という。)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
審決が認定した引用発明,本願発明と引用発明との一致点及び相違点並びに引用技術は,以下のとおりである。
(1) 引用発明 「羽根車2の外側に燃焼シリンダ4をもうけ羽根車2の外側だけに点火爆発による高圧ガスを加えるタービン機関」(2) 本願発明と引用発明との一致点 「回転体の外側に燃焼室を取り付け回転体の外側だけに燃焼エネルギーを加えるエンジン」(3) 本願発明と引用発明との相違点(相違点1)本願発明においては,「強力磁石の反発により回転体を浮かせて,回転しやすくした改良エンジン」であるのに対し,引用発明においては,そのようなものではない点。
(相違点2)本願発明においては,「ハイブリットにも活用できるエンジン」であるのに対し,引用発明においては,そのようなものか不明な点。
(4) 引用技術「タービン機関において,回転体を磁気軸受により支持すること,即ちタービン機関において,回転体を磁石の反発力により浮かせて支持すること」
原告が主張する取消事由
1 取消事由1(引用文献1に関する主張)(1) 引用文献1に記載されたタービンは,特許法上,自然法則に反するものであるから,発明に該当しない。すなわち,同タービンは,タービンの中心部から排気する構造となっており,遠心力に反する構造である。エンジンが高速回転すればするほどタービンの遠心力は増加して,排気を困難にする。その上,引用文献1に記載されたタービンには排気圧調整弁23があり,そのような弁がついていること自体が排気を困難にする。引用文献1に記載されたタービンは,羽根車に排気ガスを当てると逆流をして中心部に流入しようとする排気ガスと,タービンの中に入る排気ガスの作用が逆になるから,自然法則に反して効果を悪化させる。
被告は,タービンの中心部から排気をする構造は周知であると主張して,証拠(乙2。以下「乙2文献」という。)を提出する。しかし,乙2文献に記載されているのは,ターボ(過給機)で,動力にしない構造の物であり,排気弁はなく,引 用文献1記載のものとはタービンの構造が異なる。
また,特別な理由がなく遠心力に反する構造は,良い結果を生むわけではなく,特許法に反する。
(2) 引用文献1の第2図には,寸法が記載されていないが,仮定して代入して計算すると,600ccの排気量の場合,シリンダ直径7cm,クランクシャフト円運動8.57cm,タービンの体積660cc,直径14.6cm,高さ4cmとなり,クランクシャフトが8.57cmの円運動をする間にタービンが1回転しないと回転スピード上の問題が発生する。しかし,図面上,クランクシャフトとタービン軸の連動歯車は,クランクシャフト軸の直径の二倍位に表示されており,ピストン運動とタービンの回転運動のパワーが同じと仮定しても,3.40723459倍(14.6×2÷8.57)の回転スピードの差が発生するように見え,ピストン運動に連動することにより,逆に回転スピードの悪化が考えられる。したがって,引用文献1記載のタービンは,ピストンの上下運動により,十分にタービンが回転できないから,役にたたないものである。
(3) 引用文献1記載の「ピストン式タービン」のエンジンは,実用化をして良い結果を出していないはずである。同エンジンは,二本のシリンダの排気ガスを一個のタービンに入れる構造であるため,タービンの体積は大きくなる。組合せ歯車はクランクシャフトに取り付けるとタービンを速く回転させることを難しくする。
引用文献1記載のピストンは,左右の上下運動が反対になっている。例えば左側のピストンが上下運動を一回すると,タービンも一回転しなくてはならない。タービンが半回転して右側のピストンから排気ガスが入るために,タービンが半回転で羽根車の内側まで排気ガスを送り込まないとならず,排気ができないとエンストをする。排気は,排気圧調整弁23を開けやすいようにしても,排気スピードが悪いとエンストをする(普通タービンに排気圧調整弁はない)。
(4) したがって,引用文献1に記載されたタービンは,特許法2条1項に反するから,同項の「発明」に該当しない。
2 取消事由2(引用文献2に関する主張)(1) 引用文献2の図1及び図6の作動媒体の入口と出口の位置は,図2と符合せず,また,引用文献2の図1及び図6上のタービンと発電機の配置は,同文献の文面(【0017】2行目)上に記載された配置とも一致しない。したがって,図1及び図6を実用化できるとはいえず,引用文献2記載の熱発電システムは,利用可能な発明ではない。
(2) また,引用文献2の図1及び図6の作動媒体の循環は,自然法則(重力)に反しているので効率が悪く,引用文献2記載の熱発電システムは,特許法上の発明に該当しない。
被告は,循環ポンプで作動流体を汲み上げて循環させることは,ごく一般的に行われていることであると主張して,証拠(乙4ないし6。以下それぞれ「乙4文献」ないし「乙6文献」という。)を提出する。しかし,乙4文献及び乙6文献は,太陽光発電と太陽熱温水器についてのものであり,水道水を使用して温水にするので循環ポンプを使用しても問題があるとはいえず,引用文献2とは,発明の内容が異なり,引用することには問題がある。また,乙5文献記載のものは,できる限り平行に配管及び配置をすることをしていないから,特別な理由なくして自然法則に反している。
被告は,循環ポンプで作動流体を汲み上げて循環させることによって,問題になるほど効率が悪くなるものではないとも主張する。しかし,一般的に太陽光発電のみの場合,タービンと発電機を使用しているものは見たことがない。データも,自然法則に反していないものがなければ役に立たないから,どのように比較すれば,問題になるほど効率が悪くなるものではないといえるのか不明であり,同主張は信用することができない。
3 取消事由3(引用文献3に関する主張)(1) 引用文献3記載のタービンは,タービンの中心部から排気する構造であり,遠心力に反する構造となっているから,特許法上の発明に該当しない。すなわち, 引用文献3の図面上のタービンの羽根は,先端が尖っており,また羽根に隙間があり,圧力が逃げる構造になっているから,自然法則に反し,効率や効果が良いとは思われない。本願発明のようにタービンの外側に排気した方が,遠心力に反しなくて良い。
(2) また,引用文献3記載の装置は,発電機とタービンを電気磁石で固定しているが,理由がなく,ボルトで固定した方がコストも安くて電気も必要としない。風力発電で発電した電気を使用して電気磁石でタービンを固定すると,風がない場合は,タービンの固定ができず,発電もできなくなり,その後風があっても発電ができなくなる。
さらに,引用文献3記載の装置を風力に使用した場合,鳥やゴミが入る危険がある。引用文献3には,同文献記載のものをポンプに使用できるとも書いてあるが,水もれや,水がタービン内に入ると重量バランス上の問題がある。地震・断線などの大事故の危険がある。
したがって,引用文献3記載の装置をポンプや風力に使用することには実用性がなく,発明に該当しない。
被告は,引用文献3に記載されたタービンをポンプに使用する場合には,当業者は防水構造等を用いると主張する。しかし,引用文献3記載のものは,磁石でタービンを浮かせており,隙間があるのに,どのように防水をするのか理解できない。
タービンをポンプに使用して水が入ると,磁石で浮いている部分が下がり,隙間が大きくなると考えられる。
被告の反論
1 取消事由1(引用文献1に関する主張)について(1) 引用文献1には,「羽根車(2)を収納した収納箱(1)の周囲に,対応する吸入シリンダ(3)をもうける。シリンダ3の上側に更に燃焼シリンダ(4)をもうける。燃焼シリンダ(4)の壁面には,排気孔(9)をもうけ,排気孔(9)は,燃焼シリンダ(4)の,ピストン(12)の運動により開閉する。収納 箱(1)は,排気口(21)をもうけ,排気口(21)に排気圧調整弁(23)をもうける。そして収納箱内の排気圧を一定に維持し,吸入シリンダ(3)で吸入し圧縮しながら燃焼シリンダ(4)に送り込み,燃焼シリンダ(4)で爆発燃焼させ,ピストン(12)が上昇し排気孔(9)が開き,排気孔(9)から高圧ガスを排出し,収納箱内の高圧ガスを仲介して,羽根車(2)に加え,羽根車(2)を回転させる。又は圧搾ポンプにより燃焼シリンダ(4)に混合気等気体を送り込む,吸燃複合機関」(3頁右下欄4行〜同欄末行)が記載されている。そして,燃焼シリンダ(4)で爆発燃焼させられるのは,燃料であることは技術常識からみて明らかである。
したがって,引用文献1に接した当業者は,引用発明において,タービン機関が,羽根車2を収納する収納箱1の外側に燃焼シリンダ4をもうけたものであって,燃焼シリンダ4内における点火爆発により燃料を燃焼させ,発生した高圧の排気ガスを収納箱1内に供給して,収納箱1内の羽根車2の外側だけに高圧の排気ガスを当てることにより,羽根車2を回転させるものであることを理解できる。
(2) 引用発明において,羽根車2を回転させた高圧の排気ガスは,収納箱1内の圧力と排気圧調整弁23を押すバネとの圧力差によって,収納箱1内から排気されると理解されるし,収納箱1に導入される以上,高圧の排気ガスは収納箱1の何れの箇所からか排出されるものであり,引用発明のように排気口を羽根車2を収納する収納箱1の中心部に設けた場合には,中心部に設けられた排気口から排気される。すなわち,羽根車2が回転するときの遠心力は,羽根車の回転中心から外側に作用するが,引用発明において排気ガスの流れをみると,収納箱の外側にある燃焼シリンダ4から流れ込み羽根車2を回転させる高圧の排気ガスにより,収納箱内の排気ガスは中心部にある排気口に向かう流れが生じ中心部に設けられた排気口から排気される。実際,タービンの中心部から排気する構造は周知である(乙2)。
したがって,タービンの中心部から排気する構造であっても,遠心力にかかわらずガスを排気することができ,排気上の問題はないから,「タービンの中心部から 排気する構造が,遠心力に反する」から引用発明に排気上の問題がある旨の原告の主張は理由がない。
(3) また,引用文献1に記載された「ピストン式タービン」の排気圧調整弁23が開弁する開弁圧は,設計上,適宜設定可能であり,燃焼シリンダ4から流入する排気ガスの圧力よりも低い圧力を開弁圧として設定すれば,少なくとも排気圧調整弁23は開弁するから,排気圧調整弁23は,排気を困難にするほどのものではなく,排気圧調整弁23が付いていること自体が排気を困難にする旨の原告の主張は理由がない。
(4) 引用文献1の図面は,設計図ではなく,特許を受けようとする発明の内容を明らかにする説明図にとどまり,当業者に理解され得る程度に技術内容が明示されていれば足り,図面によって寸法等が特定されるものではない。引用発明は,羽根車2を収納する収納箱1の外側に燃焼シリンダ4をもうけたものであって,燃焼シリンダ4内における点火爆発により燃料を燃焼させ,発生した高圧の排気ガスを収納箱1内に供給して,収納箱1内の羽根車2の外側だけに高圧の排気ガスを当て羽根車2を回転させることにより,「機械的効率と燃料効率を高める事を目的と」(甲1の4頁左上欄7行〜8行)した発明であり,クランクシャフトやタービンの寸法に技術的意義がある発明ではない。そして,引用発明を実施する際には,当業者は,当然,各構成部材の寸法,材料及びクランクシャフトとタービンを連動させる歯車の組み合わせ等について,技術常識を駆使し,引用発明が適切に作動するように,また,必要な機械的効率と燃料効率が得られるように,設計するから,引用文献1の図面に寸法が記載されていないことは問題ではなく,当業者は,引用文献1の記載に基づき適切な作動を行うように設計することが可能である。したがって,引用文献1の第2図を前提とするとタービンが大きすぎ,ピストンの上下運動により,十分にタービンが回転できず,役に立たない旨の原告の主張は理由がない。
(5) 以上のとおり,引用発明において,羽根車2を収納する収納箱1の外側に 燃焼シリンダ4をもうけること,燃焼シリンダ4内における点火爆発により燃料を燃焼させること及び発生した高圧の排気ガスを収納箱1内に供給して,収納箱1内の羽根車2の外側だけに排気ガスを当てることにより羽根車2を回転させることは,いずれも自然法則に反するものではなく,引用発明は,自然法則を利用した技術的思想創作であり,特許法2条1項に反するものではない。
2 取消事由2(引用文献2に関する主張)について(1) 引用文献2には,「主軸7は磁気軸受やフォイル軸受などの非接触軸受22A〜22Cを介してユニットハウジング12に回転自在に支持される。…」(【0022】)と記載され,タービン5が嵌合される主軸7を磁気軸受で支持することが記載されている。そして,磁気軸受が,永久磁石または電磁石の磁気力によって,軸を非接触で浮上させて荷重を支持する軸受であることは技術常識であって(乙3),引用技術は自然法則に反するものではなく,自然法則を利用した技術的思想創作であって,特許法2条1項に反するものではないし,利用可能なものである。
(2) 引用文献2において,図1及び図6の作動媒体の入口と出口の位置が,図2と符合せず,段落【0017】2行目の記載と一致しないことは,引用技術の認定には直接関係しない。
その上,引用文献2の段落【0032】記載のとおり,図1及び図6は,いずれも熱発電システムの概略図であり,熱発電システムを構成する各構成部材の配置を示した図面にすぎない。したがって,図1及び図6の作動媒体の入口と出口の位置が,図2及び段落【0017】の記載と符合していないとしても,引用文献2に接した当業者は,図1及び図6は,単に熱発電システムの概略図を示したものであると認識し,タービンに対する作動媒体の入口と出口の位置を表した図であるとは認識しないから,何ら矛盾しない。
(3) 引用文献2において,図1及び図6が重力に逆らって循環ポンプで作動媒体を汲み上げて循環させていることは,引用技術として認定した「タービン機関に おいて,回転体を磁気軸受により支持すること,即ちタービン機関において,回転体を磁石の反発力により浮かせて支持すること」とは直接関係しない。
その上,引用文献2に記載された「熱発電システム」は,作動媒体として蒸気を使用するものであるが,作動媒体として蒸気を使用する熱発電システムにおいて,循環ポンプで作動流体を汲み上げて循環させることは,ごく一般的に行われていることであり(乙4ないし6),これによって,問題になるほど効率が悪くなるものでもないから,何ら,自然法則に反するものではない。
3 取消事由3(引用文献3に関する主張)について (1) 前記2(1)のとおり,磁気軸受が,永久磁石または電磁石の磁気力によって,軸を非接触で浮上させて荷重を支持する軸受であることは技術常識であって,引用技術は自然法則に反するものではなく,自然法則を利用した技術的思想創作であり,特許法2条1項に反するものではないし,利用可能なものである。
(2) 引用文献3に記載された「複合境界層タービン」において,タービンの中心部から排気する構造であることは,引用技術の認定には直接関係しない。
その上,引用文献3の段落【0013】によると,引用文献3に記載された「複合境界層タービン」において,タービン105の動力部122に入った作動流体は,タービンの上部128に取り付けられた排気管128から排気されると理解されるし,前記1(2)の主張と同様に,作動流体がタービン105の動力部122に導入される以上,作動流体はタービン105の動力部122の何れの箇所からか排出されるものであり,排気管を中心部に設けた場合には,中心部に設けられた排気管から排気されるものであり,実際,タービンの中心部から排気する構造は周知であることも踏まえると,引用文献3のタービンの中心部から排気する構造が遠心力に反する構造なので,特許法上の発明に該当しない旨の原告の主張は理由がない。
(3) 引用文献3に記載された「複合境界層タービン」を風力に使用する場合に,鳥やゴミが入る危険があり,そのため,性能が低く,実用性がないとしても,そのことは,引用技術の認定には直接関係しないことである。また,同タービンを 風力に使用する場合には,当業者は,当然,鳥やゴミが入らないように設計する。
引用文献3に記載された「複合境界層タービン」をポンプに使用する場合に,水もれや水がタービン内に入った場合の重量バランス上の問題等について,引用文献3に詳細には記載されておらず,そのため,実用性が低いとしても,同様にそのことは,引用技術の認定には直接関係せず,引用文献3に記載された技術的意義とも直接関係しない。また,同タービンをポンプに使用する場合には,当業者は,当然,ポンプに使用できるように防水構造等を用いて設計する。
引用文献3に記載された「複合境界層タービン」が,地震・断線などの大事故の危険があることも,引用技術の認定には直接関係しないことである。また,同タービンを実施する際には,当業者は,当然,法令,その他必要事情を考慮し,危険に備えて設計する。
したがって,引用文献3記載のタービンが発明に該当しない旨の原告の主張は理由がない。
当裁判所の判断
1 本願発明について本願明細書(甲4)の記載によれば,本願発明は,エンジンの改良及び回転体を利用した発電装置に関するものであり(【0001】),従来のロータリーエンジンには,@回転体の所で燃焼させていたため高温が発生する(【0003】),A回転体の重量が少しある(【0004】)という課題があったので,@回転体の外側で燃焼させることにより高温の発生を制御して高速での長時間回転を可能にする(【0005】,図1),A回転体及びカーバー底面部分にそれぞれ強力磁石を取り付け,磁石の反発作用を活用して回転体を浮かせることにより回転体の重さを軽減して燃費を向上させる(【0006】,図2)という手段(請求項1)を採用することで,エンジン及び発電の効率,効果を向上させるものである(【0007】)(図1及び図2については,別紙本願発明図面目録記載のとおり)。
2 取消事由1(引用文献1に関する主張)について (1) 引用文献1の記載引用文献1(甲1)には,以下の記載がある(第1図ないし第3図及び第8図は,別紙引用文献1図面目録記載のとおり。その他の図面は引用を省略した。なお,発明の詳細な説明及び第1図は,甲1の4頁に掲載された昭和57年7月26日付け手続補正書による補正後のものである。)。
発明の詳細な説明 この発明はピストンに羽根車を組合はせたタービン機関に関する。従来のピストンを用いた機関はクランク軸から出力を取出すため,機械的効率が悪く,又ガスタービンは強制燃焼方式のため,燃料効率が悪い。この発明はピストンと羽根車を組合はせ,機械的効率と燃料効率を高める事を目的とする。この発明の実施例を図面にもとづいて説明すれば次の通りである。第1図は上側から断面を示し収納箱1の周囲に対応する吸入シリンダ3をもうける。第3図に断面を示す,吸入シリンダ3の上側に更に燃焼シリンダ4をもうける。燃焼シリンダ4とピストン12はそれぞれ排気孔8と9をもうけ,ピストン12の運動で開閉する。つまりピストン12が上昇した場合排気孔8と9が一致し開孔する。吸入シリンダ3は吸入弁6をもうけ排気弁5は燃焼シリンダ4との間にもうける。排気弁5は通常バネで押え閉じてをき,吸入シリンダ3で吸入し圧縮する圧縮圧力で開く。ピストン12は通常下死点におく。そのため第7図に示すように,クランク軸をバネにて反対方向に引いておくそしてその時の容積は,吸入シリンダで吸入したものを通常圧縮する体積と等しくする。羽根車2は2図に示す排気孔13,14をもうける。収納箱1は排気口21をもうけ断熱板15,16をもうける。排気口21は排気管17を取付け排気管17に,排気圧調整弁23をもうける。排気圧調整弁23は,収納箱内に常に一定の排気ガスを封じ込め,爆発時の高圧排気ガスが,封じ込んだ高圧ガスを仲介して羽根車に加はるようにする。そのため第8図に示すように,通常バネで排気圧調整弁23を押し,排気口を閉じてをき一定以上の圧力に達つした時弁が開き排気される。又収納箱1は排気窓10をもうける従つて吸入シリンダ3で混合気を吸入し, 圧縮しながら燃焼シリンダ4に送り込み,点火栓18で点火爆発させると,ピストン12が上昇し排気孔8と9が一致し開孔する。そして排気孔から排出される高圧ガスが排気窓を通り羽根車に加はる。この運動を左右のシリンダで交互に行なはせる。羽根車の回転は傘歯車によりクランク軸に加はり,再びピストンに運動を加えるため回転が持続される」(4頁左上欄1行ないし左下欄3行)(2) 引用発明について 前記(1)によれば,引用文献1は,ピストンに羽根車を組み合わせたタービン機関に関するものであり,引用文献1には,審決が認定したとおり,「羽根車2の外側に燃焼シリンダ4をもうけ羽根車2の外側だけに点火爆発による高圧ガスを加えるタービン機関」(引用発明)が記載されていると認められる。
(3) 原告の主張について 原告は,引用文献1に記載されたタービン機関は,自然法則に反するものであり,特許法2条1項の発明に該当しない旨主張する。同主張は,引用文献1の文面上,審決の認定した引用発明が記載されているとしても,同引用発明は,特許法2条1項の発明に該当しないから,本願発明の容易想到性を判断する上で適格性がない旨を主張するものと解される。
特許法2条1項は,「この法律で「発明」とは,自然法則を利用した技術的思想創作のうち高度のものをいう。」と規定している。しかし,同項は,発明が何らかの「自然法則を利用した」ものであることを要求し,もって,自然法則それ自体や,自然法則ではない社会科学上の原理や法則,人為的な取決め等のみを利用した技術的思想は発明には含まれない旨を定めるものであるが,同項でいう発明というためには,その奏する効果や効率が優れているものであることや,実用化されていることまでが求められるものではない。
また,容易想到性判断の基礎となる公知発明のうち,特許法29条1項3号に該当する「特許出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された発明」というためには,特許出願当時の技術水準を基礎として,当業者が当該刊行 物を見たときに,その技術的思想実施し得る程度に当該発明の技術的思想が開示されているものであることを要するが,発明の奏する効果や効率が優れているものであることや,実用化されていることまでが求められるものではない。
以下,上記を前提として原告の主張について判断する。
ア 原告は,引用文献1に記載されたタービンは,タービンの中心部から排気する構造が遠心力に反する構造であり,エンジンが高速回転すればするほどタービンの遠心力が増加して排気を困難にする,その上,排気圧調整弁が設けられているので排気上に問題があるから,自然法則に反するものであり,特許法上の発明に該当しないと主張する。
(ア) 確かに,羽根車に当てた排気ガスを羽根車の中心部から排気する構造のタービン,すなわち加速された流体が動翼外周側から動翼求心方向に入り,動翼内部で軸方向に転向し,動翼中心部から軸方向に出ていく半径方向流れを主体としたタービンは,その構造上,その作動流体に遠心力が作用し,また,エンジンが高速回転をすればタービンの遠心力は増加するものと認められる。しかし,そのような作動流体の排気構造のタービンは,例えば,エンジンからの排気ガスでタービンを回し,その出力でコンプレッサを駆動してエンジンに圧縮空気を供給するターボチャージャのタービンとして実用化されていることは,周知のとおりであり(乙2),このように実用化されている以上,回転する動翼体の中心部から排気する構造が自然法則に反するものではないことは明らかである。すなわち,そのような構造のタービンの作動流体は,遠心力の作用を受け,また動翼体が高速回転すればするほど遠心力が大きくなるとしても,動翼外周側から動翼求心方向に入った後は,自然法則に従って(自然な流れとして)動翼内部で軸方向に転向し,動翼中心部から軸方向に支障なく排気されるものと認められ,遠心力の作用を受けるからといって,排気が困難になるなどの不都合が生じるものとは認められない。したがって,引用発明においても,羽根車2の中心部から排気する構造であり,羽根車2が高速回転すればするほどその遠心力が大きくなるからといって,排気が困難になるとか,排 気ができない構造であるということはできず,自然法則に反するということはできない。
(イ) また,引用文献1には,引用発明の排気口21に取り付けた排気管17に排気圧調整弁23が設けられ,排気圧調整弁23は,通常はバネに押されて排気口21を閉じており,一定以上の圧力に達したときに開いて排気を行うことが記載されているところ(甲1の4頁右上欄6行ないし14行,第8図),この排気圧調整弁23は,原告が主張するとおり,排気を妨げる方向に作用すると認められる。
しかし,引用発明の羽根車2に加えられるのは点火爆発による高圧ガスであるから,羽根車2の収納箱1の内部の圧力は排気圧調整弁23の外部の圧力(大気圧)より相当高いと認められる。そして,当業者であれば,排気圧調整弁23を開けるための開弁圧は,設計上適宜設定可能であると理解する。そうすると,引用発明においては,開弁圧を適宜調整することにより,排気圧調整弁23の開弁圧が収納箱1の内部の圧力に比べて低く設定され,収納箱1の内部の高圧ガスは,排気圧調整弁23の開弁圧に抗して排気圧調整弁23を開け,気体は圧力が高い方から低い方へと流れるという自然法則に従って,収納箱1の内部(圧力が大気圧より高い)から外部(圧力が大気圧に等しい)へと支障なく排気されると解される。
したがって,引用発明の排気口21に排気圧調整弁23が設けられていることによって,排気が困難になるとか,排気ができない構造であるということはできず,自然法則に反するということはできない。
(ウ) 以上によれば,引用発明は自然法則を利用した発明であり,特許法2条1項の発明に該当しないものとは認められない。
以上に対し,原告は,乙2文献記載のターボチャージャのタービンは動力にしない構造であるし,排気弁もないから引用発明とは異なると主張する。しかし,ターボチャージャのタービンはコンプレッサの動力源であるし,引用発明の排気弁の存在は,動翼外周側から動翼求心方向に入った作動流体が,動翼内部で軸方向に転向するという排気の流れが遠心力にも関わらず生じること自体を妨げるものとは認め られないから,原告の主張は,前記判断を左右するものではない。
原告は,中心部に流入しようとする排気ガスとタービンの中に入る排気ガスの作用が逆になるから自然法則に反して効果を悪化させる,特別な理由がなく遠心力に反する構造はタービンの効果を悪化させるなどとも主張する。しかし,排気が困難となるとまでは認められないことは前記のとおりであり,仮に遠心力等が作用するため,そうではない構造のタービンと比べて効率的な構造となっていないとしても,そのことが特許法2条1項の発明該当性を否定する理由とはならないことは,前記のとおりである。
したがって,原告の主張は理由がない。
イ 原告は,引用文献1の第2図を前提とすると,回転スピード上の問題が生じ,十分にピストンが回転できないから,引用文献1記載のタービンは役にたたないものである旨主張する。
しかし,引用文献1は公開特許公報であるところ,一般に,特許出願の願書に添付される図面は,明細書の記載内容を補完し,特許を受けようとする発明に係る技術内容を当業者に理解させるための説明図であるから,当該発明の技術内容を理解するために必要な程度の正確さを備えていれば足り,設計図面に要求されるような正確性をもって描かれているとは限らない。引用文献1についても同様であり,引用文献1に掲載された図によって寸法等が特定されるものではない。引用発明は,羽根車2を収納する収納箱1の外側に設けた燃焼シリンダ4内で点火爆発により燃料を燃焼させ,発生した高圧の排気ガスを収納箱1内に供給して羽根車2の外側だけに高圧の排気ガスを当てて羽根車2を回転させることにより「機械的効率と燃料効率を高める事を目的」(甲1の4頁左上欄7行)とする発明であり,クランクシャフトやタービン軸の寸法に技術的意義がある発明ではない。すなわち,引用文献1に接した当業者は,引用文献1に掲載された図面の寸法が設計図面に要求されるような正確性をもって描かれているものではないことを理解し,引用発明の技術的思想を踏まえた上で,引用発明が適切に作動し,必要な機械的効率と燃料効率が得 られるように,各構成部材の寸法,材料,クランクシャフトとタービン軸を連動させる歯車の組合せ等の具体的な事項について,技術常識を踏まえて設計するものと認められる。
したがって,引用文献1掲載の図面から仮定した寸法に基づいて,引用発明は特許法上の発明に該当しないとの原告の主張は,理由がない。
また,引用発明においてタービンの回転運動をピストン運動に連動させることで回転スピードが悪化することがあるとしても,技術常識を踏まえて設計した場合におよそタービンを回転させることができないような構造であるとは認められない。
発明の効率又は効果が優れていることが,特許法2条1項の発明該当性の要件ではないことは前記のとおりであるから,この点についての原告の主張も理由がない。
ウ 原告は,@引用文献1記載のタービンのエンジンは実用化がされていない,A同タービンの体積が大きい,B組合せ歯車はタービンを速く回転させることを難しくする,C左右のピストンが上下運動を一回するとタービンも一回転するから,タービンが半回転する間に排気ができないとエンストをする,D排気圧調整弁23を開けやすいようにしても排気スピードが悪いとエンストをする,したがって,引用文献1に記載されたタービンは発明に該当しない,とも主張する。
しかし,上記@の主張については,実用化されていることが発明該当性や引用発明の適格性の要件ではないことは前記のとおりである。
上記Aの主張は,二本のシリンダの排気ガスを一個のタービンに入れる構造である引用発明は,本願発明と比較して体積が大きくなるという趣旨をいうものと解される。しかし,本願発明は「回転体の外側だけに燃焼エネルギーを加え」るための構成として「回転体の外側に燃焼室を取り付け」ることを特定しているだけであるから,二本のシリンダの排気ガスを一個のタービンに入れる構造は,本願発明においても排除されておらず,引用発明のタービンが本願発明と比較して体積が大きいとはいえない上,引用発明がタービンの体積が大きいものであり,実用性が劣るものであるとしても,そのことが発明該当性を否定する理由とはならないことは前記 のとおりである。
上記B,C及びDの主張についても,当業者であれば,引用発明が適切に作動し,必要な機械的効率と燃料効率が得られるように,クランクシャフトとタービン軸を連動させる歯車の組合せ,排気圧調整弁の開弁圧等の具体的な事項について,技術常識を踏まえて設計するものと認められることは前記のとおりであり,遠心力の作用や排気圧調整弁23があるからといって,引用発明において,排気が困難になるとか,排気ができないとは認められないことは前記のとおりである。したがって,原告の主張は理由がない。
エ 以上によれば,原告の取消事由1は理由がない。
3 取消事由2(引用文献2に関する主張)について(1) 引用文献2の記載引用文献2(甲2)には,以下の記載がある(図1ないし3,6は,別紙引用文献2図面目録記載のとおり)。
「【発明を実施するための最良の形態】【0016】 この発明の第1の実施形態を図1ないし図3と共に説明する。図1は,この発明の熱発電システムの概略構成を示す。この熱発電システムは,熱エネルギーである太陽熱を電気エネルギーに変換して出力する太陽熱発電システムであって,太陽光を集光して太陽熱を吸収するコレクタ部1と,タービン5および発電機6を有するタービンユニット2と,コレクタ部1とタービン5の間で作動媒体3を循環させるクローズド経路の作動媒体経路4とを備える。
作動媒体経路4は,前記コレクタ部1で加熱された作動媒体3の蒸気を高圧蒸気として前記タービン5に噴出させタービン5を回転駆動するノズル8と,ノズル8から噴出してタービン5の回転に使用された作動媒体3の蒸気を液体に戻す復水器9と,液体に戻した作動媒体3をコレクタ部1に循環供給する循環ポンプ10とを有する。
【0017】 図2はタービンユニット2の拡大断面図を示し,図3は図2におけるV-V矢視断面図を示す。このタービンユニット2では,発電機6とタービン5とが上下に配置される。発電機6は,回転部分である一対の発電機ロータ6A,6Aと,静止部分である発電機ステータ部6Bとでなる。具体的には,発電機6はアキシャルギャップ型発電機であり,円筒状のユニットハウジング12の内周側に設けられた発電機ステータ部6Bに対して,垂直方向に向く姿勢とした主軸7に設けられた一対の発電機ロータ6A,6Aが上下に所定のギャップを介して対向配置されている。この発電機6での発電はコントローラ11(図1)によって制御される。」「【0019】 タービン5は,前記主軸7の下端部に嵌合し,主軸7の下端の雄ねじ部に螺合させたナット17で位置決めされる円盤状の動翼取付部材5aと,この動翼取付部材5aの外周部において周方向に列状に並べて設けられる複数の動翼5bとでなる。
動翼5bは,樹脂成形品や金属製品からなる。タービン5の外周には円筒状のノズル入口出口間部材18が設けられ,このノズル入口出口間部材18に動翼5bの翼列に向けて貫通する1個ないし複数個のノズル8が,図3のように周方向に分配して(ここでは2個のノズル8が180°の位相で)設けられている。これにより,タービン5の外周側のノズル8から,タービン5の径方向に向けて作動媒体3の蒸気が噴射され,その蒸気を動翼5bで受けてタービン5が回転駆動される。すなわち,この実施形態でのタービン5は,外径側から作動媒体3の蒸気が噴射される半径流タービンとされている。
【0020】 ユニットハウジング12の底壁部12aには,作動媒体経路4(図1)の上流部に繋がり,コレクタ部1で加熱されて蒸気となった作動媒体3をノズル入口出口間部材18の外周側のノズル入口側空間19に流入させる吸気口20が貫通して設けられている。ノズル入口側空間19は,前記ノズル入口出口間部材18と,このノ ズル入口出口間部材18の外周側にノズル入口出口間部材18と同心状に配置されてユニットハウジング12の一部を構成する円筒状のノズル入口部材12Aとで囲まれる円筒状の空間である。
また,ユニットハウジング12の底壁部12aにおける前記タービン8の配置部下位置には,タービン動翼5bを通過した作動媒体3を作動媒体経路4の下流部に排出する排気口21が貫通して設けられている。」「【0022】 主軸7は磁気軸受やフォイル軸受などの非接触軸受22A〜22Cを介してユニットハウジング12に回転自在に支持される。なお,主軸7の支持は,非接触軸受22A〜2Cによらず,接触式の軸受で行っても良い。
【0023】 上記構成による熱発電システムの動作を説明する。作動媒体経路4内の作動媒体3は循環ポンプ10によってコレクタ部1に送られる。コレクタ部1では太陽熱を吸収し,吸収した熱エネルギーを作動媒体3に与えることにより高圧蒸気とする。
作動媒体3の高圧蒸気はユニットハウジング12の吸気口20からノズル入口側空間19に流入し,ノズル8を介してタービン5の動翼5bに噴射され,これによりタービン5が回転駆動される。タービン5の回転によって発電機ロータ6Aが回転し,発電機ロータ6Aと対向して設けられた発電機ステータ部6Bで発電される。
この発電の制御はコントローラ11によって行われる。このようにして,タービン5の回転が電気エネルギーに変換される。タービン動翼5bの翼列を通過した作動媒体3の蒸気は排気口21から作動媒体経路3の復水器9へ送られて液化され,循環ポンプ10によって再度コレクタ部1まで送られる。」「【0029】 図6は,この発明のさらに他の実施形態を示す。この発明の熱発電システムは,図1に示す第1の実施形態における作動媒体経路4に代えて,コレクタ部1を循環する作動媒体3Aの作動媒体経路4Aと,タービン5を循環する作動媒体3Bの作 動媒体経路4Bとを別々に設け,コレクタ部1によって加熱された作動媒体3Aの熱エネルギーを,熱交換器24を介してタービン5側の作動媒体3Bに与える構成としたものである。タービンユニット2の構成は,図2および図3の構成のものに限らず図4や図5の実施形態の構成であっても良く,ここではその説明を省略する。」「【図面の簡単な説明】【0032】【図1】この発明の第1の実施形態にかかる熱発電システムの概略図である。
【図2】同発電システムにおけるタービンユニットの拡大断面図である。
【図3】図2におけるV-V矢視断面図である。・・・【図6】この発明のさらに他の実施形態にかかる熱発電システムの概略図である。」(2) 引用文献2に記載された技術の認定ア 前記(1)によれば,引用文献2には,太陽熱エネルギーを電気エネルギーに変換して出力する熱発電システムが記載されている(【0016】)。熱発電システムは,太陽熱を吸収するコレクタ部1と,タービン5及び発電機6を有するタービンユニット2と,コレクタ部1とタービン5との間で作動媒体3を循環させるクローズド経路の作動媒体経路4とを備える(【0016】,図1)。タービンユニット2では,タービン5と発電機6とが上下に配置される(【0017】,図2)。作動媒体経路4は,コレクタ部1で加熱された作動媒体3の高圧蒸気を噴出させてタービン5を回転駆動するノズル8と,タービン5の回転に使用された作動媒体3の蒸気を液体に戻す復水器9と,液体に戻した作動媒体3をコレクタ部1に循環供給する循環ポンプ10とを有する(【0016】,図1)。
発電機6は,円筒状のユニットハウジング12の内周側に設けられた静止部分である発電機ステータ部6Bに対して,垂直方向に伸びる主軸7に設けられた回転部分である一対の発電機ロータ6A,6Aが上下に所定のギャップを介して対向配置 されて構成され,コントローラ11によって発電が制御される(【0017】,図1,2)。
タービン5は,主軸7の下端部に嵌合する円盤状の動翼取付部材5aと,動翼取付部材5aの外周部に周方向に列状に並ぶ複数の動翼5bとで構成される。タービン5の外周に設けられた円筒状のノズル入口出口間部材18には,動翼5bの翼列に向けて貫通する複数個のノズル8が周方向に分配して設けられる。タービン5は半径流タービンであり,外周側のノズル8からタービン5の径方向に向けて噴射される作動媒体3の高圧蒸気を動翼5bで受けて回転する(【0019】,図2,図3)。主軸7は,磁気軸受などの非接触軸受22Aないし22Cを介してユニットハウジング12に回転自在に支持される(【0022】,図2)。
イ 以上によれば,引用文献2には,噴射される作動媒体3の高圧蒸気を受けて回転する半径流タービン5の主軸7を,磁気軸受などの非接触軸受22Aないし22Cを介して回転自在に支持する構成が開示されているから,「タービン機関において,回転体を磁気軸受により支持すること,即ちタービン機関において,回転体を磁石の反発力により浮かせて支持すること」(引用技術)が記載されていると認められる。
(3) 原告の主張についてア 原告は,引用文献2の図1及び図6の作動媒体の入口と出口の位置が図2と符合せず,また,図1と図6のタービンと発電機の配置は,引用文献2の文面(【0017】)の配置と符合しないから,図1と図6に示された熱発電システムを実用化できるとはいえず,引用文献2記載のものは利用可能な発明ではない旨主張する。
確かに,引用文献2の図1及び図6では,作動媒体の入口及び出口がそれぞれタービン5の上下に描かれており,また,タービンと発電機は左右の配置となっているのに対し,図2では作動媒体の入口(吸気口20)及び出口(排気口21)が両方ともタービン5の下側に描かれており,また,段落【0017】には,「この タービンユニット2では,発電機6とタービン5とが上下に配置される」という記載がある。
しかし,引用文献2は公開特許公報であるところ,前記のとおり,公開特許公報に掲載された発明は,設計図面に要求されるような正確性をもって描かれているとは限らない上,引用文献2の【0032】には,「【図1】この発明の第1の実施形態にかかる熱発電システムの概略図である。」,「【図6】この発明のさらに他の実施形態にかかる熱発電システムの概略図である。」との記載があり,図1及び図6は,いずれも熱発電システムの概略図であることが明記されている。そうすると,引用文献2に接した当業者は,図1及び図6は,熱発電システムの構成部材相互の接続関係を概略的に示すものにすぎず,実際の熱発電システムのタービン5における作動媒体の入口及び出口の位置やタービンと発電機の位置関係を正確に表す図であるとは認識しない。そして,段落【0017】及び【0020】の記載並びに図2から,引用文献2記載の発明はタービンと発電機が上下に配置されており,作動媒体ユニットハウジング12の底壁部12aに,作動媒体経路4と繋がる吸気口20と排気口21とが設けられて,タービンにおける作動媒体3の入口及び出口となることを理解するものと認められる。
したがって,引用文献2の図1及び図6を根拠として,引用文献2記載の発明が利用可能な発明ではないということはできず,原告の主張は採用することができない。
イ 原告は,引用文献2の図1及び図6の作動媒体の循環は,自然法則(重力)に反しているので効率が悪く,引用文献2記載の熱発電システムは,特許法上の発明に該当しないと主張する。
原告の主張は,引用文献2の図1ではコレクタ部1が上に,循環ポンプ10が下に図示され,図6では熱交換器24が上に,循環ポンプ10が下に図示されていることから,引用文献2に記載された熱発電システムは循環ポンプ10で作動媒体を重力に逆らって循環させるものであり,効率が悪い旨を主張するものと解される。
しかし,そもそも,これらのコレクタ部1又は熱交換器24と循環ポンプ10との位置関係は,タービン5の構造とは無関係であるから,原告の主張は,引用文献2に引用技術が記載されているとの前記認定を左右するものでもない。
また,引用文献2の図1及び図6は,熱発電システムの構成部材相互の接続関係を概略的に示す概略図にすぎないことは前記のとおりであり,当業者は,図1及び図6が実際の熱発電システムにおけるコレクタ部1又は熱交換器24と循環ポンプ10との位置関係を正確に表す図であるとは認識しないから,これらの図面上の配置にとらわれることなく,作動媒体3の循環効率も考慮して,実際の熱発電システムにおけるコレクタ部1又は熱交換器24に対する循環ポンプ10の配置を設計するものと認められ,原告の主張は理由がない。仮に原告が主張するとおり,引用文献2に記載された熱発電システムが,循環ポンプ10で作動媒体を重力に逆らって下から上へと循環させるものであり,平行に配管及び配置をしたものと比べて効率が悪いとしても,ポンプで作動媒体を汲み上げて循環させる構造において,およそ作動媒体が循環しないものとは認められないし(乙4ないし6),単に効率が悪いというだけで,特許法上の発明該当性が否定されるものではないことは前記のとおりである。
ウ 以上によれば,取消事由2の主張は理由がない。
4 以上のとおり,審決の引用発明及び引用文献2に基づく引用技術の認定に誤りはない。そして,引用発明は,タービン機関において,回転体である「羽根車2」を何らかの手段により支持するものであるから,引用発明において,上記引用技術を適用し,その際に,磁石を強力なものにすることによって,強力磁石の反転により回転体である「羽根車2」を浮かせ,回転しやすく改良することによって,相違点 1 に係る本願発明の構成とすることは,当業者であれば容易に想到し得たことである。よって,このような審決の判断には誤りがないから,取消事由3については判断するまでもなく,審決は取り消すべきものとは認められない。
結論
以上のとおり,本件請求は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 設樂一
裁判官 大寄麻代
裁判官 岡田慎吾
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