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事件 |
平成
26年
(ワ)
9945号
特許権者確認等請求事件
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原告 P1 同訴訟代理人弁護士 辻口信良 同 岡村英祐 被告 P2 |
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裁判所 | 大阪地方裁判所 |
判決言渡日 | 2016/03/17 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1 被告は,原告に対し,別紙特許権目録記載の特許権の移転登録手続をせよ。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを5分し,その2を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求
1 主文第1項と同旨 2 被告は,原告に対し,100万円及びこれに対する平成26年11月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 |
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当事者の主張
1 請求原因 (1) 原告は,平成19年5月頃,特許第5025534号の特許(以下「本件特許」という。)に係る発明(以下「本件発明」という。)を発明し,その特許を受ける権利を取得した。 (2) 原告は,平成20年3月17日,本件発明に係る特許出願(以下「本件出願」という。)をした。 1 (3) 原告とP3社は,同年6月13日,本件発明に係る特許を受ける権利をP3社に譲渡する旨を合意し,その旨の出願人名義変更手続をした。 (4) 原告とP3社は,平成21年10月頃,本件発明に係る特許を受ける権利を原告に譲渡する旨の合意をした。 (5) 原告と被告は,同月頃,出願人名義だけを形式上被告とする旨を合意し,同月15日,特許庁に対し,本件出願の出願人を被告に変更する旨の出願人名義変更手続がされた。 (6) 本件出願については,特許査定がされ,平成24年6月29日,被告を特許権者として設定登録された(以下,本件特許に係る特許権を「本件特許権」といい,その特許を受ける権利と併せて「本件特許権等」という。 。 ) (7) 原告は,被告に対し,登録名義の変更を求めて,誠意をもって話合いをしようと3回にわたり書面を郵送するなど最善の努力をしたが,被告は,郵便の受領を拒否するなどして話合いを拒否した。 本件特許権については,具体的な製品製造に向け,有力な数社からオファーが入っており,原告は,その企業との関係でも毎日身の細る思いをしている。 被告の上記行為は,原告に対する不法行為を構成し,原告の精神的苦痛は100万円を下らない。 (8) よって,原告は,被告に対し,@不当利得返還請求権に基づき,本件特許権について移転登録手続を求めるとともに,A不法行為に基づき,100万円の損害賠償及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成26年11月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める。 2 請求原因に対する認否 (1) 請求原因(1)ないし同(4)は,いずれも不知。 (2) 請求原因(5)は否認する。被告は,本件特許権等につき,それを第三者に譲渡しない等の条件付きで,実際に譲渡を受けたものである。 (3) 請求原因(6)は不知。 2 (4) 請求原因(7)は,否認する。 3 被告の主張 被告は,P3社から請求原因(5)の出願人名義変更を受けるに当たり,P3社との間で,本件特許権等を第三者に譲渡しない旨及び譲渡したことが判明した場合は,P3社は被告に対して損害賠償を請求できる旨を約した。 したがって,P3社の承諾なく原告に登録名義を移転することはできない。 4 被告の主張に対する認否 被告が,P3社から請求原因(5)の出願人名義変更を受けるに当たり,P3社との間で,本件特許権等を第三者に譲渡しない旨を約したことは認め,P3社の承諾なく原告に登録名義を移転することはできないとの主張は争う。 P3社は,平成25年2月8日,本件特許権の登録名義を被告から原告に移転することを承諾した。 |
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当裁判所の判断
1 認定事実 証拠(後掲のもの)及び弁論の全趣旨によると,次の事実を認めることができる。 (1) 原告は,特許第5025534号の特許(本件特許)に係る発明(本件発明)を発明した後,平成20年3月17日,出願人及び発明者を原告とし,発明の名称を「還元装置及び同装置を用いた磁気水製造方法」とし,P4特許事務所の弁理士を代理人として,本件発明に係る特許出願(本件出願)をした。 (甲1,2,15,原告本人2,3頁) P3社の代表取締役であるP5は,原告を同社の技術部長として給料を支払い,本件出願の費用を支払い,設備を借りて実験をするなど,本件特許に関する事業に協力していた。(甲2,乙7,9,証人P5・3,8頁,原告本人3頁) 原告は,P5とP3社を共同経営することとしたことから,P5の求めに応じて,本件特許の出願人の名義を原告からP3社に変更することとし,同年6月13日,出願人名義変更の届出をした。(甲1,原告本人2,3頁) 3 原告は,被告を含む事業上の仲間との間で,本件特許に関わる事業の立上げについて話し合っていた。(原告本人1,2,9頁,被告本人1頁) (2) その後,P3社の経営状態が悪化し,閉鎖することとなったため,原告は,自らが本件特許を利用した事業を続けようと考え,P5に対し,出願人の名義をP3社から再び原告に戻すことを提案し,P5はこれを了承した。その際,原告は,自己の負債等の問題があったため,出願人の名義を第三者名義にしておくこととし,被告に本件出願の名義人になってもらうこととした。 (甲22,証人P5・8,16頁,原告本人3,4,11,18ないし20頁,被告本人2,3頁) その際,P5は,それまで本件特許について相当な費用を支出するなどの応援をしてきたため,原告に対し,本件特許に関わる事業が成功した場合には,200万円を返済するよう求めるとともに,被告が本件特許を他の者に売るなどして,原告が権利を失うことのないようにすることを求めた。 (証人P5・8,11,14ないし16頁) そこで,原告は,念書の原案を作成し,さらにP5から指示を受け,本件出願を含む2件の出願に係る特許を受ける権利の譲渡につき,「(1)権利譲渡後利益が発生した場合。(2)政府系機関等より補助金を受け取った場合は,其の権利の代価を,お支払いします。一応最低価格として200万円以上とする。但し,これらの権利を第三者に譲渡する事は出来ない,もし譲渡したことが判明した場合は,A(注:P3社)はB(注:被告)に損害賠償を請求する事が出来る。」との文章として,P3社及び被告の名義による「念書」(乙1。以下「本件念書」という。)を作成し,P5に,P3社の代表取締役として押印をしてもらった。(乙1,6,証人P5・2,6頁,原告本人16,19,20頁) 被告は,平成21年9月11日頃,原告の求めに応じて本件念書に押印し,原告との間で本件念書とP5作成のP3社の譲渡証書を交換したが,その際,本件念書の趣旨については特段説明を受けなかった。また,本件念書の原本は,2通,作成されたが,被告は,その写しを受け取った。 (乙1,原告本人13,14頁,被告本 4人2,4,9,10頁) その後,同年10月15日,特許庁に対し,本件特許の出願人名義を被告に変更する旨の届出がなされた。この手続は被告が行い,手続費用も被告が負担した。 (甲1,被告本人3頁) (3) P3社は,P5が代表取締役に就いていたところ,P5は,P6から青森県における廃ビニールに関する事業への協力を求められ,同人が代表取締役となって会社を営むことを勧めた。そこで,平成22年11月,P3社の商号がP7社へ変更されるとともに,P5が代表取締役を辞任し,上記P6が代表取締役に就任し,同年12月,その旨の登記がされたが,その後も,P5は,同社の取締役を務めている。(甲20,21,証人P5・3,4頁) (4) 本件出願については,平成24年6月5日,特許査定がされ,同月19日,1年分ないし3年分の特許料が納付され,同月29日,被告を特許権者とし,発明の名称を「還元装置及び同装置を用いた磁気水製造方法」として,設定登録がされた。(甲1,14,15) P4特許事務所の弁理士は,同年9月21日頃,本件特許権の登録名義を原告に移す手続をとるために,原告に対し,本件特許に係る移転登録申請に関する委任状の作成を依頼するとともに,被告に対し,本件特許に係る譲渡証書を送付し,同書への押印等をするよう求めた。(甲9,10の1,2) そして,原告が,被告に対して本件特許権の登録名義を原告に戻すよう依頼したところ,被告は,名義を移すと自らが本件念書に記載された損害賠償責任を負うことになるため,本件念書を返還してもらえなければ名義変更に応じられない旨回答した。(原告本人4,5頁) そこで,P5及び原告は,平成25年1月29日付けで,本件念書に付した条件を全て取り除いて本件特許権を原告に移転させることに同意し,この同意によって被告との間の契約,約束が存在しなくなったことを承認する旨のP5及び原告の名義の同意書(甲16)を作成した。これに対し,被告が名義の誤りや誤字を指摘し 5たため,P5及び原告は,改めて,同年2月8日付けで,P3社及び原告の名義により上記と同内容の同意書(甲17)を作成した。この当時,既にP3社の商号はP7社に変更され,P5は,代表取締役を辞任していたが,自分の会社という意識があり,P3社の代表取締役として押印をした。 (甲16,17,証人P5・15ないし17頁,原告本人5,6,17,18頁,被告本人8,9頁) (5) 原告は,被告に対し,平成25年2月12日,上記の同意書を示して,異議があるときは知らせるよう求めるとともに,原告がP5の所に出入り禁止となっている旨を伝え,P5の勤務先の住所及び電話番号を記載したファックスを送信したところ,被告は,P5との連絡を試みた。(乙5,被告本人6,7頁) また,被告は,P5に対し,同月20日,ファックスを送信し,その中で,原告から本件特許権を譲渡するよう依頼を受けた旨,本件念書の原本2通を返却してもらえれば譲渡証書を発行しようと考えていたが,本件念書の原本を紛失したのであれば,P5が紛失を自認する内容の公正証書を作成すれば,譲渡証書を発行する旨を述べた。さらに,被告は,P5から返答が得られなかったため,P5に対し,同月,同じ書面を郵送するとともに,原告に対し,同年3月,同書面の写しを宅急便で送ったが,P5からは返答がないままであった。 (乙6,8,被告本人7,14頁) 被告は,原告から弁護士に書面を送付するように言われ,同年5月21日頃,原告の「担当弁護士」に宛ててファックスを送信し,その中で,本件念書の原本の回収を希望し,回収が不可能である場合は,本件念書の内容を全て無効とする内容を記載し,署名,実印による押印をした上で,印鑑証明書を添付した「丙」 (P3社と思われる。)の自認書を提出するよう求めた。原告は,被告に対し,同月24日,同年6月の面会の日程調整を依頼する旨をファックスにより伝えた。(乙10,11,被告本人7頁) (6) 被告は,原告に対し,平成26年2月7日,本件特許権を譲渡する場合には本件念書の原本2通を被告に返還する約束になっている旨を記載した書面を郵送した。(乙15,原告本人6,7頁,被告本人12,13頁) 6 原告訴訟代理人弁護士は,平成26年6月,3回にわたり,被告の勤務先及び居住地に宛てて,P4特許事務所から受領した必要書類に署名押印等するよう被告に対して依頼する旨の内容証明郵便を送付したところ,同郵便は,保管期限経過により返却された。(甲11の1ないし13の2,原告本人7頁) (7) 原告は,平成26年10月16日,本件訴えを提起した。 2 本件特許権に係る移転登録手続請求について (1) 請求原因(1)ないし(3)について 認定事実(1)のとおり,原告は,遅くとも平成20年3月17日に本件出願をするまでに,本件発明を発明したと認められる。そして,本件発明に係る特許を受ける権利を取得しており,その限度で,請求原因(1)の事実が認められ,認定事実(1)からすると,請求原因(2)及び(3)の各事実が認められるから,同年6月13日の時点では,P3社が,本件発明に係る特許を受ける権利を有していたと認められる。 (2) 請求原因(4)ないし(6)について ア 認定事実(2)のとおり,原告とP3社(P5)は,P3社の経営状態が悪化し,閉鎖することとなったことから,原告が本件特許を利用した事業を続けるために本件特許の出願人の名義をP3社から原告に戻すこととしたのであるから,原告とP3社は,平成21年10月頃,本件発明に係る特許を受ける権利を原告に譲渡する旨の合意をしたと認められ,請求原因(4)の事実が認められる。 そして,認定事実(2)のとおり,原告は,自己の負債等の問題があったため,出願人の名義を第三者名義にしておくこととして,被告に本件出願の名義人になってもらうこととし,その際,被告に本件念書に押印をさせたことからすると,原告と被告は,同月頃,便宜上,本件出願の名義人を被告とする旨を合意したと認められる。また,認定事実(2)のとおり,同月15日,特許庁に対し,本件出願の出願人を被告に変更する旨の手続がされており,請求原因(5)の事実が認められる。 イ この点について,被告本人は,本件念書と譲渡証書を交換した以上は,実際に本件特許権等の譲渡を受け,完全な権利者となったと供述する(3頁)。 7 しかし,原告は本件発明の発明者であり,原告自身が事業を続けるために,P5との間で,出願人名義をP3社から原告に戻すことまで合意したにもかかわらず,事業上の仲間の一人であるにすぎない被告に対して,何らの対価の支払もなく,本件特許権等を譲渡するとは考え難いところである。また,本件念書において,被告が本件特許権等を第三者に譲渡することが制限されているのも,便宜上,出願人名義だけを被告に移したことから,被告が勝手に権利を処分することを防止するために定められたものとして,合理的に理解し得るものである。この点,認定事実(2)のとおり,被告は,自らが名義人を被告に変更するための手続を行い,手続費用を負担しているが,被告がそのような費用を支払ったとしても,本件特許の対価に相当する金員を支払ったとはいえない。 以上から,被告本人の上記供述は採用できない。 なお,原告本人は,出願人名義を被告にした理由について,被告から,出願人と発明者が同一人になる名義変更ができないと言われたからであると供述するが(4頁) 本件出願の当初では出願人も発明者も原告とされており, , 原告も当然そのことを認識していたはずであることからすると,被告のそのような言葉を原告が信じたとは考え難いから,原告の上記供述も採用できない。 ウ そして,認定事実(4)のとおり,本件出願について特許査定がされ,平成24年6月29日,被告を特許権者として設定登録がされており,請求原因(6)の事実が認められる。 (3) 原告の特許権移転登録請求権について 以上に認定した原告とP3社との合意内容(請求原因(4)の事実)及び原告と被告との合意内容(請求原因(5)の事実)によれば,出願人名義を被告に変更した当時,原告が本件発明に係る特許を受ける権利を有していたと認められ,その後,請求原因(6)のとおり,本件特許権は,本件出願について特許法所定の手続を経て,設定の登録がされたのであるから,本件特許権は,原告が有していた特許を受ける権利と連続性を有し,それが変形したものであると評価することができる。 8 そうすると,被告は,法律上の原因なくして,本件特許権を取得したという利益を得ているといえるから,原告は,被告に対し,不当利得返還請求権に基づいて,本件特許権について移転登録手続を請求することができる(最高裁判所平成13年6月12日判決・民集55巻4号793頁参照。なお,本件では,平成23年法律第63号による改正後の特許法74条は適用されない。 。 ) (4) 被告の主張について 被告は,P3社から請求原因(5)の出願人名義変更を受けるに当たり,P3社との間で,本件特許権等を第三者に譲渡しない旨及び譲渡したことが判明した場合は,P3社は被告に対して損害賠償を請求できる旨を約したため,P3社の承諾なく原告に登録名義を移転することはできないと主張する。そして,被告本人は,本件念書の「第三者」には原告も含まれ,原告に本件特許権等を譲渡したならば被告が本件念書に記載された債務や責任を負うおそれがあるため,本件念書の原本が返還されない限り,本件特許の名義人を原告に移すことに応じられない旨供述する(被告本人5,14頁)。 しかし,証人P5は,本件念書において上記のように被告が本件特許権等を第三者に譲渡しない旨を記載した趣旨は,被告がその権利を勝手に譲渡することがないようにして,原告の権利を保全する趣旨である旨を証言しており(証人P5・14,15頁),この証言は,当時,本件念書の作成に関与したP3社の代表者の証言として合理的で信用できる。そうすると,本件念書の「第三者」に原告は含まれず,被告が原告に本件特許権の登録名義を移転することは制限されず,移転してもP3社が被告に対して損害賠償請求をすることはできないと認めるのが相当である。そして,証人P5が,その場合に被告に対して損害賠償を請求することはないと明言しているのは(15頁),そのことを裏付けるものである。 したがって,被告の上記の主張によっても,本件の移転登録請求は何ら阻止されるものではない。 (5) まとめ 9以上によれば,原告は,被告に対し,不当利得返還請求権に基づいて,本件特許権について移転登録手続を請求することができる。 なお,被告は,本件の口頭弁論終結後に2016年2月15日付けの「準備書面」を提出するが,その記載を考慮しても,上記判断は左右されない。 3 不法行為に基づく損害賠償請求について確かに,認定事実(4)ないし(6)のとおり,原告は,被告に対し,書類を送付するなどして,本件特許の登録名義の変更を求めてきており,原告訴訟代理人弁護士が平成26年6月に3回にわたって内容証明郵便を送付したところ,保管期限経過により返送された事実が認められる。 しかし,認定事実(4)ないし(6)のとおり,被告は,原告が名義変更を求めた当初から,本件念書によって損害賠償を請求されることの懸念を伝え,本件念書の原本の返還を求めていた事実が認められる。確かに,先に述べたところからすると,被告のその懸念は杞憂にすぎなかったわけであるが,被告が,本件念書を作成する際にその内容について特段説明を受けていないことからすると,その文言どおり,被告が原告に本件特許権の登録名義を移転した場合に損害賠償を請求されるおそれがあると考えたことにも相応の理由があるというべきである。そして,原告は,自ら本件念書を作成し,被告に押印させたにもかかわらず,その原本の返還ができないことから,P5に依頼して,本件念書に係る約束が存在しなくなった旨のP3社名義の同意書(甲17)を得ているが,そこにはP3社の印鑑証明書が添付されておらず,P5と面識のない被告(証人P5・5頁)にとっては,それだけではP5の意思確認の担保が十分でないと考えたのも無理からぬところである。そして,被告は,自ら直接にP5の意思を確認すべく,P5に対して数回にわたり連絡をとろうとしたが,P5の側がそれに対応しなかったのであり,結局,原告側は,本件訴訟提起後になって初めて,P5の印鑑証明書(甲23)を添付した平成27年6月25日付けの陳述書(甲22)を提出できるに至ったにとどまる(それでも,上記の同意書及び陳述書の作成時点では,P3社はP7社と商号変更し,P5も代表取締 10役でなくなっていたのであり,P5による同意の効力自体,問題がないわけではない。 。 ) これらの経緯からすると,被告としても,自らP5への連絡を試み,P5及び原告に対して書類を送付するなどして,本件特許の名義変更に関する原告からの要望に対し,被告の見解や要望を伝える努力を果たしてきており,被告が原告との話合いを拒否したとは認められず,その過程で被告が内容証明郵便を受け取らないことがあったからといって,被告の行為が原告に対する不法行為を構成すると認めることはできない。 したがって,原告の被告に対する不法行為に基づく損害賠償請求は,理由がない。 |
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結論
よって,原告の請求は主文第1項の限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 松宏之 |
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裁判官 | 田原美奈子 |
裁判官 | 11 |