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事件 平成 25年 (ワ) 19912号 損害賠償請求事件

原告第一電気株式会社
同訴訟代理人弁護士 下村文彦
同 佐藤慎
同 松田一彦
同 水倉友理
同訴訟復代理人弁護士 斧原崇皓
被告 株式会社三井造船昭島研究所
同訴訟代理人弁護士 豊寿昌
同 伊藤献
同 西尾いづみ
同訴訟復代理人弁護士 野澤賢太郎
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2016/02/19
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 本訴請求中,被告が別紙目録記載1及び2の各出願について出願審査請求をしなかったことを内容とする債務不履行に基づく損害賠償請求の原因(数額の点は除く。)は理由がある。
事実及び理由
請求
被告は,原告に対し,2億円及びこれに対する平成25年8月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
1 1 本件は,別紙目録記載の各特許出願(以下,それぞれ「本件出願1」ないし「本件出願4」といい,これらを併せて「本件各出願」という。)の願書に添付した明細書(以下,それぞれ,図面と併せて「本件明細書1」ないし「本件明細書4」という。なお,本件各出願は,いずれも平成15年6月30日以前にされたものであるから,その明細書は,特許請求の範囲を含む〔平成14年法律第24号附則1条2号,3条1項,平成15年政令第214号〕。また,本判決において,特許要件に関して「特許法」の条項を示す場合,本件各出願の時点におけるものをいうことがある。)の特許請求の範囲に記載された発明(以下,それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明4」といい,これらを併せて「本件各発明」という。)について,平成14年11月26日に原被告間で共同出願契約(以下「本件契約」という。)が締結され,同目録記載の各出願日に本件各出願がされたところ,原告が,被告が本件契約上の義務に違反して,出願審査請求をしないまま審査請求期間を徒過し,原告の本件各発明について特許を受ける権利を失わせた旨主張して,被告に対し,債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求(以下「本件各請求」といい,本件各請求に係る権利を「本件各請求権」という。)として,2億円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成25年8月20日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。原告は,本件出願1に係る損害,本件出願2に係る損害,本件出願3に係る損害及び本件出願4に係る損害について,いずれも2億円を上回る旨主張しており,これら各損害の賠償請求は選択的併合の関係にあるとしている。
本判決は,本件各請求に関し,損害賠償額(損害額のほか,過失相殺及び損益相殺を含む。)を除く点について,当裁判所の判断を示すものである(後述のとおり民事訴訟法245条の中間判決となる。)。
2 前提事実(当事者間に争いのない事実,当裁判所に顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。なお,書証番号は,特記しない限り枝番の記載を省略する。) 2 (1) 当事者 ア 原告は,電気工事機械装置の製作設計並びに請負等を目的とする株式会社である。
イ 被告は,船舶・海洋関連分野その他の分野の流体力学・構造力学等に関する試験・計測技術,シミュレーション計算技術,制御技術などに関する試験研究業務,エンジニアリング業務並びに製品開発等の業務を目的とする株式会社である。
(2) 本件契約等 ア 本件各発明は平成13年頃にされたところ,少なくとも原告代表者である佐藤寛はその発明者であって,原告は,同人から,本件各発明について特許を受ける権利承継した(甲1の1ないし1の4)。
なお,被告も,原告と共に,本件各発明について共同出願し得る地位にあったことは当事者間に争いがない。
イ 原告と被告は,平成14年11月26日,本件各発明について共同出願することとし,次の内容を含む共同出願契約(本件契約)を締結した(甲2)。
(ア) 原告及び被告は,本件各発明についての特許を受ける権利及び本件各発明に基づいて得られる特許権を共有とし,その持分を原告・被告各2分の1とする(1条)。
(イ) 被告は,本件各発明の特許出願の手続,登録までの諸手続及び登録された場合の権利の維持保全に関する手続を行う。ただし,特許庁に対し諸書類を提出するときは,事前に原告と協議する(2条1項)。
(ウ) 前項に必要な費用のうち特許出願の手続及び登録までの諸手続にかかる費用は被告が負担し,登録された場合の権利の維持保全にかかる費用は原告,被告が折半して負担する(2条2項)。
(エ) 原告及び被告は,誠意をもって本件契約を履行し,原告又は被告が本件契約に違反して相手方に損害を与えた場合には,その損害賠償の責を免れない(10条)。
3 (3) 本件各出願等 ア A@・AA特許事務所(以下「本件特許事務所」という。)所属の弁理士であったA@及びAA(以下「AA弁理士」という。)は,共同出願人である原告及び被告の代理人として,特許庁長官に対し,平成14年10月31日に本件出願1を,同年11月13日に本件出願2を,同月29日に本件出願3を,同年12月17日に本件出願4を,それぞれした(甲1)。
イ 本件出願1については平成16年5月27日に,本件出願2については同年6月10日に,本件出願3については同月24日に,本件出願4については同年7月15日に,それぞれ出願公開がされた(甲1)。
(4) 本件各発明 ア 本件発明1について 本件明細書1の特許請求の範囲(以下「本件出願1に係る特許請求の範囲」ということがある。)は,別紙特開2004-150985号公報(甲1の1)の【特許請求の範囲】記載のとおりである。
(ア) 本件出願1に係る特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件発明1-1」という。)を構成要件に分説すると,次のとおりである。
1A 加圧状態にある供試体に加圧方向と同方向の振動を加える加圧加振 試験機において, 1B 加圧用液圧シリンダ機構の加圧室に定加圧を導入する加圧部を接続 するとともに 1C 加振用液圧シリンダ機構を有する加振部を接続し, 1D1 前記加振用液圧シリンダ機構はピストンロッドを共通にする複シ リンダ構成をなし, 2 各シリンダのロッド側液室には前記定加圧部による加圧力並びに これと平衡する圧力を導入しつつ 3a ヘッド側液室に加振液圧を導入して 4 3b 前記加圧部による負荷を無負荷状態にして加振できるようにし た 1E ことを特徴とする加圧加振試験機。
(イ) 本件出願1に係る特許請求の範囲の請求項2に係る発明(以下「本件発明1-2」という。)を構成要件に分説すると,次のとおりである。なお,構成要件1Hは,更に上記構成要件1Aないし1E(引用に係る請求項1に係る発明の構成要件)のとおり分説される。
1F1 前記加振用液圧シリンダ機構の各ロッド側液室の一方には加圧用 液圧シリンダ機構の加圧室を接続するとともに 2 他方にはアキュームレータを接続し,これら加圧室とアキューム レータとを開閉弁を介して接続してなり, 1G 前記加振用液圧シリンダ機構の各ヘッド側液室には両吐出型ポンプ を接続して閉回路内にて圧液の往復通流による加振を可能とした 1H ことを特徴とする請求項1記載の加圧加振試験機。
イ 本件発明2について 本件明細書2の特許請求の範囲(以下「本件出願2に係る特許請求の範囲」ということがある。)は,別紙特開2004-162803号公報(甲1の2)の【特許請求の範囲】記載のとおりである。
(ア) 本件出願2に係る特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件発明2-1」という。)を構成要件に分説すると,次のとおりである。
2A 供試体に垂直荷重を加えながら水平振動を付加する加振装置のスラ イド機構において, 2B1 加圧状態にある供試体下部で水平移動するスライダのスライド機 構を,ベースまたはスライダの少なくとも一方の摺動面に注油口を備 えた複数の凹陥部を設け, 2 他方の面は少なくとも注油口が開口した潤滑面とし, 5 2C 双方の注油口には圧油供給源を備えて成り,両者間の摺動面に油膜 を形成する 2D ことを特徴とする加振装置のスライド機構。
(イ) 本件出願2に係る特許請求の範囲の請求項2に係る発明(以下「本件発明2-2」という。)を構成要件に分説すると,次のとおりである。なお,構成要件2Fは,更に上記構成要件2Aないし2D(引用に係る請求項1に係る発明の構成要件)のとおり分説される。
2E 前記凹陥部形成部材には,摺動面に開口した油吸込口を設け,凹陥 部との間で油を循環させる 2F ことを特徴とする請求項1に記載の加振装置のスライド機構。
(ウ) 本件出願2に係る特許請求の範囲の請求項3に係る発明(以下「本件発明2-3」という。)を構成要件に分説すると,次のとおりである。なお,構成要件2Hは,更に上記構成要件2Aないし2D(引用に係る請求項1に係る発明の構成要件)又は2Aないし2E(引用に係る請求項2〔請求項1の引用を含む。〕に係る発明の構成要件)のとおり分説される。
2G 凹陥部は行列配置し,油吸込口を凹陥部の列間に配置した 2H ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の加振装置のスラ イド機構。
(エ) 本件出願2に係る特許請求の範囲の請求項4に係る発明(以下「本件発明2-4」という。)を構成要件に分説すると,次のとおりである。なお,構成要件2Jは,更に上記構成要件2Aないし2D(引用に係る請求項1に係る発明の構成要件),2Aないし2E(引用に係る請求項2〔請求項1の引用を含む。〕に係る発明の構成要件),2Aないし2D及び2G(引用に係る請求項3〔請求項1の引用を含む。〕に係る発明の構成要件)又は2Aないし2E及び2G(引用に係る請求項3〔請求項2の引用を含む。〕に係る発明の構成要件)のとおり分説される。
2I 凹陥部を備える摺動面を有する側の油供給源は,各凹陥部に絞りを 6 介して潤滑油を供給する 2J ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の加振 装置のスライド機構。
(オ) 本件出願2に係る特許請求の範囲の請求項5に係る発明(以下「本件発明2-5」という。)を構成要件に分説すると,次のとおりである。なお,構成要件2Jは,更に上記構成要件2Aないし2D(引用に係る請求項1に係る発明の構成要件),2Aないし2E(引用に係る請求項2〔請求項1の引用を含む。〕に係る発明の構成要件),2Aないし2D及び2G(引用に係る請求項3〔請求項1の引用を含む。〕に係る発明の構成要件)又は2Aないし2E及び2G(引用に係る請求項3〔請求項2の引用を含む。〕に係る発明の構成要件)のとおり分説される。
2K 凹陥部を備える摺動面を有する側の油供給源は,各凹陥部ごとに備 えられ,凹陥部に潤滑油を供給する 2J ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の加振 装置のスライド機構。
ウ 本件発明3について 本件明細書3の特許請求の範囲(以下「本件出願3に係る特許請求の範囲」ということがある。)は,別紙特開2004-177381号公報(甲1の3)の【特許請求の範囲】記載のとおりである。
(ア) 本件出願3に係る特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件発明3-1」という。)を構成要件に分説すると,次のとおりである。
3A 加圧状態にある試験片に加圧方向と交差する方向にアクチュエータ により振動させる多軸試験機において, 3B 前記アクチュエータを油圧シリンダ機構により構成し, 3C 当該油圧シリンダ機構の両油室に圧油を供給可能な両吐出型斜板ポ ンプを接続し, 3D この斜板ポンプの駆動モータとともに,斜板切り替え操作ユニット 7 により吐出流路方向を切り替え可能としてなる 3E ことを特徴とする多軸試験機。
(イ) 本件出願3に係る特許請求の範囲の請求項2に係る発明(以下「本件発明3-2」という。)を構成要件に分説すると,次のとおりである。なお,構成要件3Gは,更に上記構成要件3Aないし3E(引用に係る請求項1に係る発明の構成要件)のとおり分説される。
3F 前記駆動モータにはフライホイールを接続して慣性回転可能として なる 3G ことを特徴とする請求項1記載の多軸試験機。
(ウ) 本件出願3に係る特許請求の範囲の請求項3に係る発明(以下「本件発明3-3」という。)を構成要件に分説すると,次のとおりである。なお,構成要件3Gは,更に上記構成要件3Aないし3E(引用に係る請求項1に係る発明の構成要件)のとおり分説される。
3H 前記斜板切り替え操作ユニットは斜板操作用油圧シリンダ機構を用 い, 3I 当該斜板操作用油圧シリンダ機構の両油室にモータ駆動の両吐出型 ポンプを接続して斜板切り替えを可能としてなる 3G ことを特徴とする請求項1記載の多軸試験機。
エ 本件発明4について 本件明細書4の特許請求の範囲(以下「本件出願4に係る特許請求の範囲」ということがある。)は,別紙特開2004-198174号公報(甲1の4)の【特許請求の範囲】記載のとおりである。
(ア) 本件出願4に係る特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件発明4-1」という。)を構成要件に分説すると,次のとおりである。
4A 加圧手段によりベース面に向けて加圧されているスライダが前記 ベース面に沿って移動するスライド機構の前記ベースとの間の摩擦を 8 測定する方法において, 4B 前記加圧手段と前記スライダとの間に流体を供給して流体膜を形成 し, 4C 流体膜を介して前記スライダを加圧しつつ,前記摩擦を測定する 4D ことを特徴とするスライド機構の摩擦測定方法。
(イ) 本件出願4に係る特許請求の範囲の請求項2に係る発明(以下「本件発明4-2」という。)を構成要件に分説すると,次のとおりである。なお,構成要件4Fは,更に上記構成要件4Aないし4D(引用に係る請求項1に係る発明の構成要件)のとおり分説される。
4E 前記流体の供給は,複数箇所から行い,各供給箇所における流体供 給量を均一にする 4F ことを特徴とする請求項1に記載のスライド機構の摩擦測定方法。
(ウ) 本件出願4に係る特許請求の範囲の請求項3に係る発明(以下「本件発明4-3」という。)を構成要件に分説すると,次のとおりである。なお,構成要件4Hは,更に上記構成要件4Aないし4D(引用に係る請求項1に係る発明の構成要件)又は4Aないし4E(引用に係る請求項2〔請求項1の引用を含む。〕に係る発明の構成要件)のとおり分説される。
4G 前記加圧手段と前記スライダとの間に供給する流体は,流体膜形成 後に回収して循環させる 4H ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスライド機構の摩 擦測定方法。
(エ) 本件出願4に係る特許請求の範囲の請求項4に係る発明(以下「本件発明4-4」という。)を構成要件に分説すると,次のとおりである。
4I 加圧手段によりベース面に向けて加圧されているスライダが,前記 ベース面に沿って移動するスライド機構の前記ベースとの間の摩擦を 測定するスライド機構の摩擦測定装置であって, 9 4J 前記加圧手段に設けた加圧部と,この加圧部に対向させて前記スラ イダに設けた受圧部と,この受圧部と前記加圧部とのいずれか一方に 設けられ,両者の対向面間に流体を供給する流体供給機構と, 4K 前記スライド機構に設けられ,前記スライダに作用する前記ベース 面に沿った力を検出するセンサとを有する 4L ことを特徴とするスライド機構の摩擦測定装置。
(オ) 本件出願4に係る特許請求の範囲の請求項5に係る発明(以下「本件発明4-5」という。)を構成要件に分説すると,次のとおりである。なお,構成要件4Nは,更に上記構成要件4Iないし4L(引用に係る請求項4に係る発明の構成要件)のとおり分説される。
4M 前記流体供給機構は,前記受圧部又は前記加圧部の対向面のいずれ か一方に形成した複数の凹陥部と,これら各凹陥部内に形成した流体 吐出口と,これら各流体吐出口を介して前記対向面間に流体を供給す る流体吐出手段とを有する 4N ことを特徴とする請求項4に記載のスライド機構の摩擦測定装置。
(カ) 本件出願4に係る特許請求の範囲の請求項6に係る発明(以下「本件発明4-6」という。)を構成要件に分説すると,次のとおりである。なお,構成要件4Pは,更に上記構成要件4Iないし4M(引用に係る請求項5〔請求項4の引用を含む。〕に係る発明の構成要件)のとおり分説される。
4O 前記流体供給機構は,前記吐出口と前記吐出手段とを接続する流路 に,各吐出口からの流体吐出量を均一にする絞りを有する 4P ことを特徴とする請求項5に記載のスライド機構の摩擦測定装置。
(キ) 本件出願4に係る特許請求の範囲の請求項7に係る発明(以下「本件発明4-7」という。)を構成要件に分説すると,次のとおりである。なお,構成要件4Pは,更に上記構成要件4Iないし4M(引用に係る請求項5〔請求項4の引用を含む。〕に係る発明の構成要件)のとおり分説される。
10 4Q 前記流体吐出手段は,前記各吐出口に対応して設けてある 4P ことを特徴とする請求項5に記載のスライド機構の摩擦測定装置。
(ク) 本件出願4に係る特許請求の範囲の請求項8に係る発明(以下「本件発明4-8」という。)を構成要件に分説すると,次のとおりである。なお,構成要件4Sは,更に上記構成要件4Iないし4M(引用に係る請求項5〔請求項4の引用を含む。〕に係る発明の構成要件),4Iないし4M及び4O(引用に係る請求項6〔請求項5の引用を含む。〕に係る発明の構成要件)又は4Iないし4M及び4Q(引用に係る請求項7〔請求項5の引用を含む。〕に係る発明の構成要件)のとおり分説される。
4R 前記流体供給機構は,前記吐出口から吐出された前記流体を前記流 体吐出手段に戻す循環路を有する 4S ことを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか1に記載のスラ イド機構の摩擦測定装置に関する。
(5) 審査請求期間の徒過 ア 本件出願1については,特許法48条の3第1項に規定されている出願審査の請求をすることができる期間(以下「審査請求期間」ということがある。)は平成17年10月31日までであったが,出願審査請求がされないまま,同日が経過したため,同条4項により,本件出願1は取り下げたものとみなされた。
イ 本件出願2については,審査請求期間は平成17年11月14日までであったが(特許法3条2項,行政機関の休日に関する法律1条1項1号参照),出願審査請求がされないまま,同日が経過したため,特許法48条の3第4項により,本件出願2は取り下げたものとみなされた。
ウ 本件出願3については,審査請求期間は平成17年11月29日までであったが,出願審査請求がされないまま,同日が経過したため,特許法48条の3第4項により,本件出願3は取り下げたものとみなされた。
エ 本件出願4については,審査請求期間は平成17年12月19日までであっ 11 たが(特許法3条2項,行政機関の休日に関する法律1条1項1号参照),出願審査請求がされないまま,同日が経過したため,特許法48条の3第4項により,本件出願4は取り下げたものとみなされた。
(6) 消滅時効援用の意思表示等 ア 原告は,平成24年9月28日,本件各出願に係る出願審査請求がされなかったことについて被告に損害賠償責任があるとして,被告を被申立人とする調停を日本知的財産仲裁センターに申し立てた(乙5の1)。この調停(以下「本件調停」という。)は,3回の期日が開かれたが,平成25年4月2日に不成立となった。
イ そこで,原告は,平成25年7月29日,被告を相手取って本件各請求権を訴訟物とする本件訴訟を提起した。
ウ 被告は,平成25年9月24日の第1回口頭弁論期日において,答弁書を陳述し,原告に対し,本件各請求権について消滅時効援用する旨の意思表示をした。
3 争点(損害賠償額に関する点を除く。) (1) 債務不履行又は不法行為の成否 本件各出願について審査請求期間内に出願審査請求がされなかったことに関し,被告の債務不履行又は不法行為があったか(争点1)。
(2) 特許権取得の蓋然性 本件各出願について審査請求期間内に出願審査請求がされていれば特許権の設定登録を受けることができた高度の蓋然性があったか(争点2。この争点は,前記(1)の債務不履行又は不法行為と損害の発生との間の因果関係の有無に関わる。)。
(3) 消滅時効の中断等 本件各請求権の消滅時効が被告の債務承認により中断したか。あるいは,被告による消滅時効援用信義則に反するか(争点3)。
12 4 争点に対する当事者の主張 (1) 争点1(債務不履行又は不法行為の成否)について 【原告の主張】 ア 本件各出願に関し出願審査請求をするか否かに関する本件特許事務所からの問い合わせに対し,原告は平成16年11月29日に出願審査請求するよう求める旨の回答を,被告は平成17年4月6日に出願審査請求をしないよう指示する旨の回答をした。このように双方からの回答内容が異なっていたため,本件特許事務所が,被告の担当者であったAB(以下「AB」という。)に対し,原告からの回答内容を伝え,確認したところ,ABは,本件特許事務所のAA弁理士に対し,「原告と被告との協議の結果,出願審査請求を行わないこととなった」旨の虚偽の内容を伝え,改めて本件各出願について出願審査請求をしないよう指示した。
イ 被告は,原告に対し,本件契約に基づき,本件各出願の審査請求期間内に出願審査請求をし,特許査定を受けた上で,特許登録されるまでの手続をすべき義務を負担していた。
ところが,被告は,原告の意思に反して,本件各出願の出願審査請求を懈怠し,上記義務に違反したものであるから,原告に対して債務不履行責任を負う。
なお,被告は,本件特許事務所(AA弁理士)に責任がある旨主張するが,本件特許事務所の弁理士は,被告が原告に対する上記義務を履行するために手続を委任した履行補助者であるから,その故意・過失は,原告との関係では,信義則上,被告の帰責事由と同視される。
ウ また,被告は,原告の意思に反することを知りながら,本件各出願について,前記アのとおり本件特許事務所のAA弁理士に虚偽の事実を述べて出願審査請求をしないよう指示し,原告の特許を受ける権利を失わさせたものであるから,原告に対して不法行為責任を負う。
【被告の主張】 ア ABが本件特許事務所に対し「原告と被告との協議の結果,出願審査請求を 13 行わないこととなった」旨の虚偽の内容を伝えたとの事実は否認する。
イ 本件各出願について審査請求期間内に出願審査請求がされなかったことについては,原告に直接意向の確認をしないまま出願審査請求を行わない旨判断した本件特許事務所(AA弁理士)に責任がある。
(2) 争点2(特許権取得の蓋然性)について 【原告の主張】 本件各出願は,以下のとおり,特許法49条各号所定の拒絶理由はなく,特許権の設定登録を受けることができた高度の蓋然性があった(なお,本件出願2及び3については,予備的に,仮に,拒絶理由通知が発せられた場合であっても,補正により拒絶理由を解消することができたことを主張するが,本件出願1及び4については,補正の主張はしない。)。
ア 特許要件の具備 (ア) 本件発明1について 本件発明1は,産業上利用することができる発明(自然法則を利用した技術的思想創作のうち高度のもの)である。
そして,本件発明1の構成要件1A・1Bは,本件出願1がされた日より前の平成11年2月2日に頒布された刊行物である特開平11-30576号公報(乙4の1。以下「乙4の1文献」といい,同文献に記載された発明を「乙4の1発明」という。他の公報等の文献及び当該文献に記載された発明についても書証番号を用いた同様の呼称を用いることがある。)に開示されていたものの,構成要件1C・1D・1F・1Gは,乙4の1文献その他の先行技術文献に開示されておらず,周知技術でもなかった。また,乙4の2文献及び乙16文献に記載された技術は,乙4の1発明とは技術分野・解決課題・技術的思想が全く異なり,乙4の1発明に同技術を組み合わせる動機付けもなかった。 以上は,乙4の1発明の代わりに,本件出願1がされた日より前の平成5年6月15日に頒布された刊行物である特開平5-149853号公報(乙22の1文献)に記載された発明(乙22の1 14 発明)を主引例とした場合も,同様である。
また,本件発明1の構成要件1A・1B・1C・1Dは,本件出願1がされた日より前の昭和40年2月27日に頒布された刊行物である実公昭40-6717号公報(乙22の2文献)には開示されていなかった。
さらに,本件発明1の構成要件1A・1B・1C・1F1は,本件出願1がされた日より前の昭和49年5月20日に頒布された刊行物である特公昭49-19830号公報(乙22の3文献)には開示されていなかった。
以上によると,本件発明1は,新規性及び進歩性を有し,特許法29条所定の特許要件を満たしていた。
なお,本件発明1は,同法29条の2所定の特許要件も満たしていた。
(イ) 本件発明2について a 本件発明2は,産業上利用することができる発明(自然法則を利用した技術的思想創作のうち高度のもの)である。
そして,本件発明2の構成要件2Aは,本件出願2がされた日より前の平成13年2月9日に頒布された刊行物である特開2001-33371号公報(乙4の3文献)に開示されていたものの,構成要件2B・2C・2E・2G・2I・2Kは,乙4の3文献その他の先行技術文献に開示されておらず,周知技術でもなかった。また,構成要件2Gは,単なる設計事項ではない上,乙17の1文献,乙18の2文献及び乙19文献に記載された技術とは技術思想が異なるから,当業者が容易に想到し得るものではなかった。
以上によると,本件発明2は,新規性及び進歩性を有し,特許法29条所定の特許要件を満たしていた。
b 本件発明2の構成要件2Aは,本件出願2がされた日より前の他の特許出願であって本件出願2より後に公開された特願2001-136102号の願書に最初に添付した明細書及び図面(特開2002-333392号公報〔乙23の1〕参照)に開示されていたものの,構成要件2B・2Cは,開示されていなかった。
15 したがって,本件発明2は,上記他の出願の願書に最初に添付した明細書及び図面に記載された発明(以下「先願発明」という。)と同一の発明ではなく,特許法29条の2所定の特許要件を満たしていた。
(ウ) 本件発明3について 本件発明3は,産業上利用することができる発明(自然法則を利用した技術的思想創作のうち高度のもの)である。
そして,本件発明3の構成要件3A・3Bは,本件出願3がされた日より前の平成13年2月16日に頒布された刊行物である特開 2001-41870号公報(乙4の8文献)に開示されていたものの,構成要件3C・3D・3F・3Iは,乙4の8文献その他の先行技術文献に開示されておらず,周知技術でもなかった。
また,乙4の9文献,乙4の10文献,乙10文献及び乙21文献に記載された技術は,乙4の8発明とは技術分野・解決課題・技術的思想が全く異なり,乙4の8発明に同技術を組み合わせる動機付けもなかった。
また,本件発明3の構成要件3A・3Bは,本件出願3がされた日より前の平成14年6月14日に頒布された刊行物である特開2002-168743号公報(乙24の3文献)に開示されていたとしても,構成要件3C・3D・3F・3Iは,乙24の3文献その他の先行技術文献に開示されておらず,周知技術でもなかった。
以上によると,本件発明3は,新規性及び進歩性を有し,特許法29条所定の特許要件を満たしていた。
なお,本件発明3は,同法29条の2所定の特許要件も満たしていた。
(エ) 本件発明4について a 本件発明4は,産業上利用することができる発明(自然法則を利用した技術的思想創作のうち高度のもの)である。
そして,本件発明4-1の構成要件4A・4B・4C及び本件発明4-4の構成要件4I・4J・4Kはいずれも,本件出願4がされた日より前の昭和52年11 16 月7日に頒布された刊行物である特開昭52-132888号公報(乙25の1 文献)には開示されていなかった。
したがって,本件発明4-1及び本件発明4-4は,乙25の1発明と同一の発明ではなく,本件発明4は,新規性を有し,特許法29条1項所定の特許要件を満たしていた。
b 本件発明4の構成要件4A・4Iは,本件出願4がされた日より前の平成4年8月5日に頒布された刊行物である特開平4-215039号公報(乙4の15文献)に開示されていたものの,構成要件4B・4C・4G・4J・4K・4M・4O・4Q・4Rは,乙4の15文献その他の先行技術文献に開示されておらず,周知技術でもなかった。また,乙4の15発明に乙4の4文献,乙4の5文献,乙4の6文献及び乙4の7文献に記載された技術を組み合わせる動機付けもなかった。
したがって,本件発明4は,進歩性を有し,特許法29条2項所定の特許要件を満たしていた。
なお,本件発明4は,同法29条の2所定の特許要件も満たしていた。
イ 出願要件の具備 本件各出願は,特許法36条ないし38条所定の出願要件を満たしていた。
ウ 補正の可能性(予備的主張) (ア) 本件発明2について 仮に,本件出願2について特許庁審査官から拒絶理由通知が発せられた場合には,本件出願2に係る特許請求の範囲の請求項1を,「供試体に垂直荷重を加えながら水平振動を付加する加振装置のスライド機構において,加圧状態にある供試体下部で水平移動するスライダのスライド機構を,ベースまたはスライダの少なくとも一方の摺動面に注油口を備えた複数の凹陥部を設け,他方の面は少なくとも注油口が開口した潤滑面とし,双方の注油口にはそれぞれ圧油供給源を備えて成り,両者間の摺動面に油膜を形成することを特徴とする加振装置のスライド機構。」(下 17 線部が補正箇所)と補正することにより,拒絶理由を解消することができた(この補正後の本件出願2に係る特許請求の範囲の請求項1記載の発明の構成要件を分説すると,別紙補正目録記載1のとおりである。)。
この補正は,特許法17条以下で規定されている補正要件を満たしており,同補正をすれば,本件出願2が特許査定される蓋然性は一層高いものとなる。
(イ) 本件発明3について 仮に,本件出願3について特許庁審査官から拒絶理由通知が発せられた場合には,本件出願3に係る特許請求の範囲の請求項3を削除した上,同請求項1を,「加圧状態にある試験片に加圧方向と交差する方向にアクチュエータにより振動させる多軸試験機であって,前記アクチュエータを油圧シリンダ機構により構成し,当該油圧シリンダ機構の両油室に圧油を供給可能な両吐出型斜板ポンプを接続し,この斜板ポンプの駆動モータとともに,斜板切り替え操作ユニットにより吐出流路方向を切り替え可能としてなる多軸試験機において,前記斜板切り替え操作ユニットは斜板操作用油圧シリンダ機構を用い,当該斜板操作用油圧シリンダ機構の両油室にモータ駆動の両吐出型ポンプを接続して斜板切り替えを可能としてなることを特徴とする多軸試験機。」(下線部が補正箇所)と補正することにより,拒絶理由を解消することができた(この補正後の本件出願3に係る特許請求の範囲の請求項1記載の発明の構成要件を分説すると,別紙補正目録記載2のとおりである。)。
この補正は,特許法17条以下で規定されている補正要件を満たしており,同補正をすれば,本件出願3が特許査定される蓋然性は一層高いものとなる。
エ 小括 以上によれば,本件各出願について審査請求期間内に出願審査請求がされていれば,いずれについても特許権の設定登録を受けることができた高度の蓋然性があったといえる。
【被告の主張】 ア 新規性若しくは進歩性の欠如又は拡大先願違反 18 (ア) 本件発明1について 本件発明1はいずれも,乙4の1発明又は乙22の1発明に,乙4の2文献,乙16文献,乙21の2文献,乙22の2文献,乙22の3文献及び乙22の4文献に記載された技術ないし周知技術を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができた。
また,本件発明1はいずれも,乙22の2発明又は乙22の3発明に,乙4の2文献に記載された技術を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができた。
したがって,本件発明1は,進歩性を欠いていた。
(イ) 本件発明2について a 本件発明2はいずれも,乙4の3発明に,乙4の4文献,乙4の5文献,乙4の6文献,乙4の7文献,乙17文献,乙18文献,乙19文献,乙20文献,乙23の2文献,乙23の3文献,乙23の4文献及び乙40文献に記載された技術ないし周知技術を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができた。
したがって,本件発明2は,進歩性を欠いていた。
b 本件発明2-1は,先願発明と実質的に同一の発明であった。そして,本件発明2-1の発明者は先願発明の発明者と同一の者ではなく,本件出願2がされた時にその出願人が先願発明に係る特許出願の出願人と同一の者でもなかったから,本件発明2-1は,特許法29条の2により,特許を受けることができなかった。
(ウ) 本件発明3について 本件発明3はいずれも,乙4の8発明又は乙24の3発明に,乙4の9文献,乙4の10文献,乙4の11文献,乙4の12文献,乙4の13文献,乙4の14文献,乙10文献,乙21文献及び乙24の2文献に記載された技術ないし周知技術を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができた。
したがって,本件発明3は,進歩性を欠いていた。
19 (エ) 本件発明4について a 本件発明4-1及び本件発明4-4はいずれも,乙25の1発明と同一の発明であり,新規性を欠いていた。
b 本件発明4はいずれも,乙4の15発明に,乙4の4文献,乙4の5文献,乙4の6文献及び乙4の7文献に記載された技術を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができた。
また,本件発明4はいずれも,乙25の1発明に,乙4の7文献,乙17の1文献,乙17の2文献,乙17の3文献,乙18文献,乙19文献及び乙25の2文献に記載された技術ないし周知技術を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができた。
したがって,本件発明4は,進歩性を欠いていた。
イ 補正について 前記原告の主張ウの各補正がされたとしても,前記ア(イ)・(ウ)の特許要件欠如は完全には解消されない。
ウ 小括 以上によれば,@本件発明4-1及び4-4は,特許法29条1項3号により,いずれも特許を受けることができないものであり,A本件各発明は,同法29条2項により,いずれも特許を受けることができないものであり,B本件発明2-1は,同法29条の2により,特許を受けることができないものであった。
したがって,本件各出願について審査請求期間内に出願審査請求がされていたとしても特許権の設定登録を受けることができた蓋然性はなかった。
(3) 争点3(消滅時効の中断等)について 【被告の主張】 ア 本件各請求権のうち,債務不履行に基づく損害賠償請求権については,原告が本件各出願の審査請求期間の末日と主張する平成17年12月17日の5年後である平成22年12月17日の経過により,商法522条時効が完成した結果, 20 消滅した。
また,不法行為に基づく損害賠償請求権については,原告は,遅くとも平成18年7月6日までに損害及び加害者を知ったものであるから,平成21年7月6日の経過により,民法724条前段の時効が完成した結果,消滅した。
イ 後記原告の主張アについては,被告は,当時,株式会社ブリヂストン(以下「ブリヂストン」という。)に納品した製品の整備等について原告の協力を得る必要があったことから,原告に金員の支払等をしたものであって,原告に対する損害賠償債務を承認したことはないから,時効は中断していない。
また,後記原告の主張イについては,被告は,本件調停において,円満な解決を目指す上で,法的な主張を控えた部分があるほか,損害賠償責任を認めていたものではないから,本件訴訟における消滅時効援用信義則に反するということはない。
【原告の主張】 ア 被告は,原告に対し,本件各請求に関し,平成18年7月21日や平成19年8月29日に自らの責任を認めた上,平成20年3月17日,平成21年1月30日及び平成22年1月25日に損害賠償債務の一部を弁済するなど,債務の承認をした。したがって,少なくとも同日に,本件各請求権の消滅時効は中断(民法147条3号)したものである。
イ また,被告は,平成23年1月頃から,原告との間で,本件各請求に係る損害賠償額及び支払方法について継続的に協議を重ね,平成24年7月23日には,その損害賠償金として900万円の支払を申し出た。さらに,被告は,本件調停において,自らが原告に対し損害賠償債務を負うことを争っていなかった。それにもかかわらず被告が本件訴訟になってから本件各請求権の消滅時効援用することは,信義則に反し,許されない。
当裁判所の判断
1 争点1(債務不履行又は不法行為の成否)について 21 (1) 前記前提事実によると,@原告と被告は,平成14年11月26日,「被告は,本件各発明の特許出願の手続,登録までの諸手続及び登録された場合の権利の維持保全に関する手続を行う。」旨の約定(2条1項本文)を含む本件契約を締結したこと,A被告は,本件各出願後審査請求期間内に,本件各出願に係る出願審査請求の手続を行わなかったこと,Bその結果,原告は,本件各発明について特許を受ける権利を失ったことが認められる。
上記@によれば,被告が,原告に対し,本件契約に基づき,本件各発明について出願後審査請求期間内に出願審査請求の手続を行う債務を負っていたことは明らかであり,上記Aは,被告が同債務を履行しなかったことを示している。
したがって,被告は,原告に対し,上記の債務不履行による損害賠償責任を負うというほかはない。
(2) これに対し,被告は,本件各出願に係る出願審査請求がされなかったことについては,原告に直接意向確認をしないまま出願審査請求を行わない旨判断した本件特許事務所のAA弁理士に責任がある旨主張し,被告にはその責任がないかのように主張する。
しかしながら,弁論の全趣旨によれば,被告は,本件特許事務所のAA弁理士に対し,本件各発明の出願に関する手続を委任していたことが認められるところ,前記(1)で説示したとおり,原被告間においては,あくまで被告が原告に対して出願審査請求の手続を行う債務を負っていたのであるから,AA弁理士は,被告の原告に対する同債務に関しては,被告の履行補助者に当たるというべきである。そうすると,AA弁理士の故意・過失は,原告との関係では,信義則上,被告の帰責事由と同視されるから,被告の上記主張は採用することができない。
2 争点2(特許権取得の蓋然性)について (1) 本件出願1に係る特許権取得の蓋然性について ア 本件発明1について 前記前提事実並びに証拠(甲1の1)及び弁論の全趣旨によると,本件明細書1 22 の記載内容は,別紙特開2004-150985号公報(甲1の1)の【特許請求の範囲】,【発明の詳細な説明】,【図1】ないし【図4】等記載のとおりであったと認められる。
本件発明1の技術分野は,「一方向の加圧力を供試体に付加しつつさらに同方向の加振を加える加圧加振試験機」に関する(段落【0001】)。発明が解決しようとする課題としては,従前の加圧加振試験機による加圧加振では,モータ及びポンプが,定加圧分の圧力と加振加圧分の圧力を加減算した圧力を加えることができる出力のものでなければならず,加圧加振試験機の作動中,常に大出力のまま運転されることになるため,多大なランニングコストがかかるという問題があった(段落【0007】【0008】)。本件発明1は,上記課題を解決し,長時間のランニングコストを比較的安価に抑えることが可能な加圧加振試験機を提供するため,「加圧状態にある供試体に加圧方向と同方向の振動を加える加圧加振試験機において,加圧用液圧シリンダ機構の加圧室に定加圧を導入する加圧部を接続するとともに加振用液圧シリンダ機構を有する加振部を接続し,前記加振用液圧シリンダ機構はピストンロッドを共通にする複シリンダ構成をなし,各シリンダのロッド側液室には前記定加圧部による加圧力並びにこれと平衡する圧力を導入しつつヘッド側液室に加振液圧を導入して前記加圧部による負荷を無負荷状態にして加振できるようにしたこと」を特徴とし,「前記加振用液圧シリンダ機構の各ロッド側液室の一方には加圧用液圧シリンダ機構の加圧室を接続するとともに他方にはアキュームレータを接続し,これら加圧室とアキュームレータとを開閉弁を介して接続してなり,前記加振用液圧シリンダ機構の各ヘッド側液室には両吐出型ポンプを接続して閉回路内にて圧液の往復通流による加振ができるように構成 」したものである(段落【0009】【0010】)。
イ 乙4の1発明を主引例とする進歩性の検討 (ア) 乙4の1発明について 前記前提事実及び証拠(乙4の1)によると,本件出願1がされた日(平成14 23 年10月31日)に先立つ平成11年2月2日に頒布された刊行物である特開平11-30576号公報(乙4の1文献)には,材料試験機の技術分野に関し(段落【0001】),乙4の1発明として,「静的荷重を油圧式アクチュエータを介して試験体に負荷し,動的荷重を電磁力式アクチュエータを介して静的負荷に重畳させて負荷することを特徴とする材料試験機」 が開示されていたこと(【要約】の【課題】,【特許請求の範囲】の【請求項1】,【発明の詳細な説明】の段落【0003】【0007】)が認められる。
(イ) 本件発明1-1について a 本件発明1-1と乙4の1発明との対比 (a) 一致点 前記(ア)の認定事実に弁論の全趣旨を総合すると,@乙4の1発明の「試験体」は本件発明1-1の構成要件1Aの「供試体」に,A乙4の1発明の「静的荷重の負荷」は本件発明1-1の構成要件1Aの「加圧状態」ないし構成要件1Bの「定加圧」に,B乙4の1発明の「油圧式アクチュエータを介して」は本件発明1-1の構成要件1Bの「加圧用液圧シリンダ機構の加圧室に加圧部を接続」に,C乙4の1発明の「動的荷重の重畳負荷」は本件発明1-1の構成要件1Aの「加圧方向と同方向の振動」に,それぞれ相当するものと認められる。
そうすると,本件発明1-1と乙4の1発明とは,「加圧状態にある供試体に加圧方向と同方向の振動を加える加圧加振試験機」である点(構成要件1A・1E)及び「加圧用液圧シリンダ機構の加圧室に定加圧を導入する加圧部を接続する」点(構成要件1B)において一致しているというべきである。
(b) 相違点 本件発明1-1では,加振装置については,「加振用液圧シリンダ機構」によるものである(構成要件1C・1D)のに対し,乙4の1発明では,加振装置については,「電磁力式アクチュエータ」によるものであり,加振用液圧シリンダ機構を有しない点において,両発明は相違している。
24 b 本件発明1-1と乙4の1発明との相違点に関する検討 (a) 構成要件1D2について α 乙4の2文献の【図2】,【図3】及び【図5】には,ピストンロッドを共通にする複シリンダ構成の油圧アクチュエータが開示されているものと認められるが,これを乙4の1発明に適用しても,乙4の1発明において電磁力式アクチュエータに代えて油圧式複シリンダ構成アクチュエータを取り付けたものとなるにすぎず,乙4の1発明の定加圧用の油圧機構の加圧室と上記油圧式複シリンダ構成アクチュエータのロッド側油室とを接続するような技術事項を取り入れることを容易想到とする根拠は見当たらないから,乙4の1発明における定加圧部による加圧力及びこれと平衡する圧力を上記油圧式複シリンダ構成アクチュエータの液室に導入することを想到することが容易であったとはいえない。
なお,被告は,@乙4の2文献の【請求項6】には,装置の一用途として「試験機」が挙げられ,段落【0011】には,油圧振動子として「多くの機械や駆動作業に使用可能な駆動モジュールとして設計」との記載があることから,上記油圧式複シリンダ構成アクチュエータを部品として,そのシリンダチャンバ14・15(2つのシリンダの各ヘッド側液室)を別の定加圧部に接続して「加圧力並びにこれと平衡する圧力」を導入し,構成要件1D2の構成を採用することは,当業者であれば容易に想到し得たとか,A乙4の2文献の段落【0043】には,「加圧用圧力に加えて,中立位置も当然この装置により設定することができる。中立位置とは,蓄圧器8,9の圧力が中立化されるピストンロッド22の位置のことを意味する。」との記載により,上記構成と類似の構成が開示されており,同段落に「蓄圧器8,9の加圧用圧力はこのように変更することが可能である。弁23,24はこの場合,他の独立した圧力源により供給することも可能である。」との記載があることから,「蓄圧器による」加圧力の導入を「定加圧部(他の独立した圧力源)による」に置き換え構成要件1D2の構成とすることに困難性はなかった,B油圧の基本回路の一つとして「増圧回路」というものが存在し,アクチュエータのシリ 25 ンダの油室に増圧器(増圧シリンダ)の高圧側の油室を管路で接続して増加作用を行わせるということは,乙16文献及び乙21の2文献の記載内容に照らし,周知技術であったから,乙4の1発明の定加圧用アクチュエータのシリンダの油室と乙4の2文献に記載された油圧式複シリンダ構成アクチュエータ(油圧振動子)の油室とを接続することは,当業者であれば容易に想到し得た旨主張する。しかしながら,上記@のような抽象的な記載のみでは,乙4の1発明における定加圧部と上記油圧式複シリンダ構成アクチュエータの液室とを接続し同定加圧部による加圧力及びこれと平衡する圧力を同液室に導入することには到底結び付かない。上記Aの点については,本件発明1-1や乙4の1発明が,大きな静的荷重を印加する中で,当該静的荷重と同方向に動的な荷重を重畳して印加する油圧装置に関するのに対し,乙4の2発明は同じく油圧装置に関するものの,動的荷重のみを出力する装置についてのものであり,動的荷重としての往復運動のストローク数(往復動の回数)を高めるに当たって慣性による又は弁部における損失を低減することを目的とするものであって,技術の適用対象となる機構が相違し,それにともなう課題の認識も相違する。なるほど乙4の2発明では複シリンダ構成を採用し,その対称する液室対にそれぞれ蓄圧器を接続して平衡する圧力の導入も行っているが,これはあくまで動的荷重を出力すべく他の液室対に対する動的油圧の印加により動かされた複シリンダのロッドを自発的に復帰させ,さらには共振を生起させるために導入されているものであって,むしろ動的荷重を助力し,又はその主力となるべく印加されているものであり,本件発明1-1や乙4の1発明における静的荷重のように,動的荷重に重畳される静的荷重として外部出力されるためのものでも,重畳されるべき静的荷重を動的荷重発生機においてバランスさせるためのものでもない。したがって,被告主張のように「蓄圧器」を「定加圧部」に置き換える動機付けはない。上記Bについては,「増圧回路」が周知であったとしても,増圧器の油室とアクチュエータの油室とをどのように接続し,その際,乙4の2文献に記載された装置における蓄圧器(アキュムレータ)及びこれを利用した駆動原理をどのように維 26 持又は変更することになるのかなどの点については,乙16文献及び乙21の2文献を含む先行技術文献には開示がなく,また,自明でもないから,当業者であっても,乙4の1発明に乙4の2文献記載の技術を組み合わせて構成要件1D2の構成を容易に想到し得たということはできない。したがって,被告の上記各主張はいずれも採用することができない。
β なお,乙22の4文献には,岩盤グラウトの施工装置の技術分野に関し,「グラウト材を所定の注入圧力で圧送しながら,油圧サーボアクチュエータと容積型ポンプとからなる脈動圧発生ポンプによって脈動圧力を発生させ,注入圧力に脈動圧力を重畳的に付加する」技術が開示されているが(【請求項3】,段落【0001】【0016】,【図1】【図2】等),加振液圧は複シリンダを構成する一方のシリンダのロッド側とヘッド側とに印加されており,注入圧力を複シリンダの2つの液室間で平衡させる構成も有していないことから(【図1】【図2】),仮にこの技術を乙4の1発明に組み合わせても,構成要件1D2の構成には到達しない。
γ 他に,乙4の1発明に組み合わせて構成要件1D2に至るような副引例となる証拠は見当たらない。
そして,本件全証拠によっても,本件出願1前に,構成要件1D2の構成が周知であったとはうかがわれない。
δ そうすると,乙4の1発明において,加振用液圧シリンダ機構の「各シリンダのロッド側液室に定加圧部による加圧力及びこれと平衡する圧力を導入する」構成(構成要件1D2)とすることは,本件出願1前に,当業者が容易に想到し得たものということはできない。
(b) 構成要件1D3aについて 乙4の2文献に記載された装置においては,加振液圧が導入される油圧式複シリンダ構成アクチュエータの液室は,ロッド側液室であるが(【図2】【図3】【図5】等),これをヘッド側液室とすることを容易想到とする根拠はないから,乙4 27 の1発明に乙4の2文献に記載された技術(上記装置)を適用しても,加振用液圧シリンダ機構の各シリンダの「ヘッド側液室に加振液圧を導入」すること(構成要件1D3a)は,本件出願1前に,当業者が容易に想到し得たものということはできない。
(c) 構成要件1D3bについて 本件明細書1の段落【0009】,【0010】,【0018】等に照らすと,構成要件1D3bの「加圧部による負荷を無負荷状態にして加振できるようにした」という構成は,加振用複シリンダ機構の双方のシリンダの各ロッド側液室に定加圧部による加圧力及びこれと平衡する圧力を導入することで両者を平衡状態にすることが前提となる作用効果を機能的に表したものと解される。そうすると,前記(a)のとおり,構成要件1D2が容易想到でない以上,構成要件1D3bについても,本件出願1前に,当業者が容易に想到し得たものということはできない。
c 小括 以上によると,本件発明1-1は,本件出願1前に,乙4の1発明及び上述した公知技術ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなかったというべきである。
(ウ) 本件発明1-2について 本件発明1-2は,本件発明1-1の構成要件に加え,構成要件1F・1Gを付加したものであるから,構成要件1D2・1D3a・1D3bについて前記(イ)で説示したところからすると,本件出願1前に,乙4の1発明及び上述した公知技術ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなかったというべきである。
ウ 乙22の1発明を主引例とする進歩性の検討 (ア) 乙22の1発明について 前記前提事実及び証拠(乙22の1)によると,本件出願1がされた日(平成14年10月31日)に先立つ平成5年6月15日に頒布された刊行物である特開平 28 5-149853号公報(乙22の1文献)には,材料試験機の載荷制御方法及び装置の技術分野に関し(段落【0001】),乙22の1発明として,「大きな静的荷重を主アクチュエータ(電気-油圧サーボ弁と油圧シリンダ等を適宜用いたアクチュエータを含む。)によって供試体に載荷し,動的荷重を副アクチュエータ(電気-油圧サーボ弁と油圧シリンダ等を適宜用いたアクチュエータを含む。)によって静的負荷に重畳させて負荷することを特徴とする材料試験機」が開示されていたこと(【要約】の【目的】【課題】,【特許請求の範囲】の【請求項1】【請求項2】,【発明の詳細な説明】の段落【0005】【0008】)が認められる。
(イ) 本件発明1-1について a 本件発明1-1と乙22の1発明との対比 (a) 一致点 前記(ア)の認定事実に弁論の全趣旨を総合すると,@乙22の1発明の「静的荷重の載荷」は本件発明1-1の構成要件1Aの「加圧状態」ないし構成要件1Bの「定加圧」に,A乙22の1発明の「電気-油圧サーボ弁と油圧シリンダ等を適宜用いた主アクチュエータによって」は本件発明1-1の構成要件1Bの「加圧用液圧シリンダ機構の加圧室に加圧部を接続」に,B乙22の1発明の「動的荷重の重畳負荷」は本件発明1-1の構成要件1Aの「加圧方向と同方向の振動」に,C乙22の1発明の「電気-油圧サーボ弁と油圧シリンダ等を適宜用いた副アクチュエータによって」は本件発明1-1の構成要件1Cの「加振用液圧シリンダ機構を有する加振部を接続」に,それぞれ相当するものと認められる。
そうすると,本件発明1-1と乙22の1発明とは,「加圧状態にある供試体に加圧方向と同方向の振動を加える加圧加振試験機」である点(構成要件1 A・1E)及び「加圧用液圧シリンダ機構の加圧室に定加圧を導入する加圧部を接続するとともに振用液圧シリンダ機構を有する加振部を接続」する点(構成要件1B・1C)において一致しているというべきである。
29 (b) 相違点 本件発明1-1では,加振用液圧シリンダ機構が,「ピストンロッドを共通にする複シリンダ構成をなし,各シリンダのロッド側液室には前記定加圧部による加圧力並びにこれと平衡する圧力を導入しつつヘッド側液室に加振液圧を導入して前記加圧部による負荷を無負荷状態にして加振できるようにした」ものである(構成要件1D)のに対し,乙22の1発明は,副アクチュエータがそのような構成を有していない点で,両発明は相違している。
b 本件発明1-1と乙22の1発明との相違点に関する検討 乙22の1発明に乙4の2文献に記載された技術(装置)を適用しても,加振用液圧シリンダ機構の「各シリンダのロッド側液室に定加圧部による加圧力及びこれと平衡する圧力を導入しつつ」「ヘッド側液室に加振液圧を導入して」「加圧部による負荷を無負荷状態にして加振できるようにした」構成とすること(構成要件1D2,1D3a及び1D3b)には至らない。
前記イ(イ)bで説示したところからすれば,乙22の1発明において,副アクチュエータを上記構成とすることは,本件出願1前に,当業者が容易に想到し得たものということはできない。
c 小括 したがって,本件発明1-1は,本件出願1前に,乙22の1発明及び上述した公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなかったというべきである。
(ウ) 本件発明1-2について 本件発明1-2は,乙22の3発明とは構成要件1F1の構成の有無という点においても相違するが,この点について検討するまでもなく,本件発明1-2が本件発明1-1の構成要件に加え,構成要件1F・1Gを付加したものであるから,前記(イ)で説示したところからすると,本件出願1前に,乙22の1発明及び上述した公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなかったと 30 いうべきである。
エ 乙22の2発明を主引例とする進歩性の検討 (ア) 乙22の2発明について 前記前提事実及び証拠(乙22の2)によると,本件出願1がされた日(平成14年10月31日)に先立つ昭和40年2月27日に頒布された刊行物である実 公昭40-6717号公報(乙22の2文献)には,油圧式疲労試験機の脈動発生装置の技術分野に関し,乙22の2発明として,「シリンダ内に大ピストンと大ピストン内に嵌合出入可能の小ピストンとを納置してなる,脈動発生容量を随意に切替可能な脈動発生装置を有する油圧式疲労試験機」が開示されていたことが認められる。
(イ) 本件発明1-1について a 本件発明1-1と乙22の2発明との対比 (a) 一致点 前記(ア)の認定事実に弁論の全趣旨を総合すると,乙22の2発明の「脈動発生装置を有する疲労試験機」は,本件発明1-1の構成要件1A・1Eの「加振試験機」に相当するものと認められる。
そうすると,本件発明1-1と乙22の2発明とは,「供試体に振動を加える加振試験機」(構成要件1A・1E)である点及び「加振用液圧シリンダ機構を有する加振部」(構成要件1C)を有する点において一致しているというべきである。
(b) 相違点 本件発明1-1は,定加圧部がある 加圧加振試験機である(構成要件1A・1B・1D2・1E)のに対し,乙22の2発明は,定加圧部がない加振機である点において,両発明は相違している。
b 本件発明1-1と乙22の2発明との相違点に関する検討 乙22の2発明は,本件発明1-1とは定加圧部の有無という点で根本的に相違しており,「定加圧分の圧力と加振加圧分の圧力を加減算した圧力を加えられなけ 31 ればならず,出力が大きくなる」といった本件発明1-1の課題も全く共有していない。そして,この相違は周知・自明の技術事項ではなく,他に乙22の1発明と組み合わせて上記相違を補う副引例となる証拠も見当たらない。また,仮に前記相違を構成上埋める副引例が存在したとしても,上記前提構成の根本的な相違や課題の相違から,そうした副引例を組み合わせる動機付けを欠く。したがって,乙22の2発明に基づいて上記相違点に係る本件発明1-1の構成を容易に想到することはできないというほかはない。
c 小括 したがって,本件発明1-1は,本件出願1前に,乙22の2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなかったというべきである。
(ウ) 本件発明1-2について 本件発明1-2は,本件発明1-1の構成要件に加え,構成要件1F・1Gを付加したものであるから,前記(イ)で説示したところからすると,本件出願1前に,乙22の2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなかったというべきである。
オ 乙22の3発明を主引例とする進歩性の検討 (ア) 乙22の3発明について 前記前提事実及び証拠(乙22の3)によると,本件出願1がされた日(平成14年10月31日)に先立つ昭和49年5月20日に頒布された刊行物である特 公昭49-19830号公報(乙22の3文献)には,液圧式疲労試験機等の脈動液圧発生装置の技術分野に関し,乙22の3発明として,「試験片に,ポンプで発生し定荷重装置を経て引っ張りシリンダに供給される引っ張り液圧と,ポンプで発生し定荷重装置を経て 圧縮シリンダに供給される圧縮液圧との合力による一定荷重と,当該一定荷重に重畳させて振動荷重を与えるように,引っ張りシリンダに脈動液圧発生装置を連通させて,当該脈動液圧発生装置において正弦波脈動液圧を発生させて振動荷重を与える油圧式疲労試験機」が開示されていたことが認められる。
32 (イ) 本件発明1-1について a 本件発明1-1と乙22の3発明との対比 (a) 一致点 前記(ア)の認定事実に弁論の全趣旨を総合すると,乙22の3発明の「引っ張りシリンダ」及び「圧縮シリンダ」は本件発明1-1の構成要件1Bの「加圧用液圧シリンダ機構」に,乙22の3発明の「脈動発生装置」は本件発明1-1の構成要件1Cの「加振用液圧シリンダ機構」に,それぞれ相当するものと認められる。
そうすると,本件発明1-1と乙22の2発明とは,「供試体に振動を加える加振試験機」(構成要件1A・1E)である点,「加圧用液圧シリンダ機構」(構成要件1B)を有する点及び「加振用液圧シリンダ機構を有する加振部」(構成要件1C)を有する点において一致しているというべきである。
(b) 相違点1 乙22の3文献によると,乙22の3発明は,定加圧手段を備えてはいるが,試験片には,引っ張りシリンダに供給される定圧と圧縮シリンダに供給される定圧との差分である,ゼロ圧を中心とした上下等振幅の振動圧しか印加されないこと(第3図,第4図)から,両シリンダに供給される定圧がほぼ等しいとみられ,両定圧が等しい場合には,試験片には,引っ張り・圧縮いずれの方向にも定圧が印加されないことになる。この点,乙22の3文献には,「大きい不平衡部分がなく」との記載もある(1欄19行)。
そうすると,本件発明1-1は,供試体が加圧状態にある(構成要件1A)のに対し,乙22の3発明は,そのような特定がされていない点において,両発明は相違している。
(c) 相違点2 本件発明1-1は,加振用液圧シリンダ機構が,「ピストンロッドを共通にする複シリンダ構成をなし,各シリンダのロッド側液室には前記定加圧部による加圧力並びにこれと平衡する圧力を導入しつつヘッド側液室に加振液圧を導入して前記加 33 圧部による負荷を無負荷状態にして加振できるようにした」ものである(構成要件1D)のに対し,乙22の3発明は,脈動発生装置がそのような構成を有していない点において,両発明は相違している。
b 本件発明1-1と乙22の3発明との相違点2に関する検討 乙22の3発明に乙4の2文献に記載された技術(装置)を適用しても,加振用液圧シリンダ機構の「各シリンダのロッド側液室に定加圧部による加圧力及びこれと平衡する圧力を導入しつつ」「ヘッド側液室に加振液圧を導入して」「加圧部による負荷を無負荷状態にして加振できるようにした」構成とすること(構成要件1D2,1D3a及び1D3b)には至らない。
前記イ(イ)bで説示したところからすれば,乙22の3発明において,脈動発生装置を上記構成とすることが,本件出願1前に,当業者が容易に想到し得たものということはできない。
c 小括 したがって,前記相違点1に関して検討するまでもなく,本件発明1-1は,本件出願1前に,乙22の3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなかったというべきである。
(ウ) 本件発明1-2について 本件発明1-2は,乙22の3発明とは構成要件1F1の構成の有無という点においても相違するが,この点について検討するまでもなく,本件発明1-2が本件発明1-1の構成要件に加え,構成要件1F・1Gを付加したものであるから,前記(イ)で説示したところからすると,本件出願1前に,乙22の2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなかったというべきである。
カ 本件出願1に係る特許権取得の蓋然性についての結論 本件発明1が,産業上利用することができる発明(自然法則を利用した技術的思想創作のうち高度のもの)であることは明らかである。
前記イないしオで説示したところからすると,乙4の1発明,乙22の1発明, 34 乙22の2発明又は乙22の3発明を主引例として本件発明1の新規性及び進歩性を否定することはできず,他に本件発明1の新規性及び進歩性のいずれかを否定し得る公知技術は見当たらない(弁論の全趣旨)から,本件発明1は,特許法29条所定の要件を満たしていたというべきである。
なお,弁論の全趣旨によれば,本件発明1は,特許法29条の2,39条所定の要件も満たしていたものと認められる。
弁論の全趣旨によれば,本件出願1は,特許法36条ないし38条所定の出願要件を満たしていたことが認められ,他に手続違反と目すべき点は見当たらず,同法49条各号所定の拒絶理由があったとも認められない。
以上によれば,本件発明1について審査請求期間内に出願審査請求がされていれば特許権の設定登録を受けることができた高度の蓋然性があったというべきである。
(2) 本件出願2に係る特許権取得の蓋然性について ア 本件発明2について 前記前提事実並びに証拠(甲1の2)及び弁論の全趣旨によると,本件明細書2の記載内容は,別紙特開2004-162803号公報(甲1の2)の【特許請求の範囲】,【発明の詳細な説明】,【図1】ないし【図6】等記載のとおりであったと認められる。
本件発明2の技術分野は,「垂直方向に荷重を受けながら水平方向に運動する加振装置のスライド機構」に関する(段落【0001】)。発明が解決しようとする課題としては,従来のスライド機構では,大荷重・大震動を加える試験においてスライド機構に加えられる負担が大きく経年変化が激しいなどの問題があった(段落【0005】)。本件発明2は,上記課題を解決し,大型多軸試験機におけるスライドテーブルの水平運動用スライド機構の寿命を長期化し,経済的な加振装置のスライド機構を提供するため,「供試体に垂直荷重を加えながら水平振動を付加する加振装置のスライド機構において,加圧状態にある供試体下部で水平移動するスラ 35 イダのスライド機構を,ベースまたはスライダの少なくとも一方の摺動面に注油口を備えた複数の凹陥部を設け,他方の面は少なくとも注油口が開口した潤滑面とし,双方の注油口には圧油供給源を備えて成り,両者間の摺動面に油膜を形成すること」を特徴とするものである(段落【0006】【0007】)。
なお,本件明細書2には,本件発明2の実施形態における「加振装置のスライド機構は,スライダ50と,当該スライダ50の下部に位置してスライダ50が摺動する摺動面のベース54及び,潤滑油を吐出する圧油供給源である第1のポンプ60と第2のポンプ68とよりなる」ことが記載されている(段落【0011】)。
イ 乙4の3発明を主引例とする進歩性の検討 (ア) 乙4の3発明について 前記前提事実及び証拠(乙4の3)によると,本件出願2がされた日(平成14年11月13日)に先立つ平成13年2月9日に頒布された刊行物である特開2001-33371号公報(乙4の3文献)には,「供試体に対して第1の方向に一定荷重を加えた状態で,その供試体の端部に,第1の方向に交わる第2の方向に変動荷重を加えることによって供試体のせん断試験を行う2軸材料試験機」の技術分野に関し(段落【0001】),乙4の3発明として,「鉛直方向に一定の荷重が加えられた状態にある供試体の下端部に,同端部に装着された水平負荷治具を介して油圧アクチュエータによって水平方向への変動荷重を加える 2軸材料試験機であって,前記水平負荷治具はリニア軸受等によって構成され,摺動自在に支持されている2軸材料試験機」が開示されていたこと(【請求項1】【請求項2】,段落【0003】【0014】)が認められる。
(イ) 本件発明2-1について a 本件発明2-1と乙4の3発明との対比 (a) 一致点 本件発明2-1と乙4の3発明とは,「供試体に垂直荷重を加えながら水平振動を付加する加振装置のスライド機構」である点(構成要件2A・2D)において一 36 致しているというべきである。
(b) 相違点 本件発明2-1は,スライダ機構に関し,少なくとも一方の摺動面に注油口を備えた複数の凹陥部を設け(構成要件2B1),他方の面は少なくとも注油口が開口した潤滑面とし(構成要件2B2),双方の注油口には圧油供給源を備え,両者間の摺動面に油膜を形成する(構成要件2C)流体圧式のものであるのに対し,乙4の3発明は,摺動面にはリニア軸受を備え,流体圧式ではない点において,両発明は相違している。
b 本件発明2-1と乙4の3発明との相違点(構成要件2Cに係る相違点)に関する検討 (a) 乙4の4文献には,動電型加振機構において,一方の摺動面に注油口を備えた複数の凹陥部を設け,単一の油圧源から当該凹陥部に圧油を供給する技術が開示されており(〔実施例〕,第2図等),乙4の5文献には,「移動する第1の部材と第1の部材を案内する第2の部材の摺動面間に潤滑液を供給し,第1の部材を第2の部材に対して半浮上させた状態で駆動する工作機械における半浮上式スライド案内機構」において,一方の摺動面に注油口を備えた複数の凹陥部を設け,単一の潤滑油供給源から当該凹陥部に圧油を供給する技術が開示されている(【請求項1】,段落【0006】,【図5】等)。また,乙4の6文献には,スライダーをガイドレールに静圧軸受により支持したスライダー装置において,一方の摺動面であるスライダーの受面に注油口を備えない凹陥部を,当該受面に対向する他方の摺動面であるガイドバーの案内面には複数の注油口を開口させ,単一の加圧流体源から当該注油口を介して凹陥部内に噴出させる技術が開示されている(〔実施例〕,第1図等)。さらに,乙4の7文献には,摺動体の案内支持装置において,一方の摺動面に注油口を備えた複数の凹陥部を設け,単一又は複数の油圧ポンプから当該凹陥部に圧油を供給する技術が開示されている(【請求項1】,段落【0018】,【図1】【図2】等)。
37 しかしながら,本件発明2-1では,双方の摺動面にそれぞれ注油口を備え(構成要件2B),これら双方の注油口にそれぞれ圧油供給源を備えた(構成要件2C)ものであるところ,乙4の4文献,乙4の5文献,乙4の6文献及び乙4の7文献に記載された上記各技術は,いずれも注油口及び圧油供給源が摺動面の片方の側に備えられているものしか開示されていないから,乙4の3発明に上記各技術を適用しても,本件発明2-1の上記構成要件2B・2Cには至らない。
(b) 乙17の1文献には,スライドテーブル装置において,テーブルガイドの中心部に給気通路を形成し,この給気通路から分岐してテーブルガイドの移動テーブルの被挟持板に対向する表面に開口する給気孔を形成すると共に前記移動テーブルの被挟持板表面に前記給気孔を形成し,かつ,前記移動テーブルの被挟持板表面に前記給気孔と対向させて,該給気孔の直径より僅かに広い幅で,移動テーブルの移動ストロールと同等あるいはこれより僅かに長い長さの溝を形成し,該溝と該溝内に開口する給気孔で連通する給気通路を被挟持板内部に形成し,この給気通路と連通する給気通路を挟持板内部に形成し,さらにこの(挟持板内部の)給気通路の数個所に該給気通路から分岐して挟持板内面に開口する給気孔を形成することにより,対向する一方の摺動面には空気供給孔が開口し,他方の摺動面には空気供給孔を備えた凹陥部を設け,単一の空気供給源から前記一方の摺動面の空気供給孔を介して前記他方の摺動面側の凹陥部に空気を供給する技術が開示されている(実用新案登録請求の範囲,産業上の利用分野,実施例,第2図,第7図等)。また,乙17の4文献には,静圧気体軸受において,対向する一方の摺動面に気体供給孔を開口し,他方の摺動面に気体供給孔を備えた凹陥部を設け,単一の空気供給源から当該凹陥部に空気を供給する技術が開示されている(段落【0012】【0013】【0014】,【図3】等)。しかしながら,これらにおいては,摺動面に油膜を形成することは開示されていない上,上記装置において,流体の供給源は,摺動面の片方の側にしか設けられていない(給気はベース側からしか行われておらず,スライドテーブルないしスライド体側の内部配管にはベースから摺動面を介して給気 38 が行われているにすぎない。)点で,構成要件2Cには当たらない。
また,乙17の2文献には,油静圧スライドテーブルにおいて,摺動面の一方に複数の注油口を,他方に注油口を備えた複数の凹陥部を設け,単一の静圧油供給源から当該凹陥部に圧油を供給する技術が開示されており(特許請求の範囲,実施例,第1図等),乙17の3文献にも,静圧スライドテーブル装置において,摺動面の一方複数の注油口を,他方に注油口を備えた複数の凹陥部を設け,単一の潤滑油供給源から当該凹陥部に圧油を供給する技術が開示されている(段落【0031】【0037】【0038】,【図1】【図3】等)。しかしながら,これらの装置においても,圧油供給源は,摺動面の片方の側にしか備えられていない(油はベース側からしか供給されていない。スライドテーブル側にも油配管があるが,そこに流れる油はベース側から摺動面を介して供給されるものである。)点で,構成要件2Cには当たらない。
なお,構成要件2Cの「圧油供給源」とは,単なる「油供給源」ではなく,「圧油供給源」であって,「潤滑油を吐出する」もの(例えば,「ポンプ」がこれに当たる。)とされていること(本件明細書2の段落【0011】)などに照らすと,能動的に圧油を加圧供給する手段を意味し,摺動面の相手側から加圧供給された流体を吸入して自らの内部配管を通じて摺動面の他部へ供給するような受動的な供給手段は含まないと解するのが相当である。
もっとも,被告は,双方の摺動面に圧油供給源を設ける点について,そのような構成を採っても,摺動面の片方の側のみに圧油供給源を設ける場合と比べて,特有の作用効果はなく,設計的事項にすぎない旨主張する。しかしながら,油圧軸受は,摺動面両面の表面構造及び油圧供給機構により軸受としての機能や特性が定まるものであるから,双方の摺動面に圧油供給源を設けるか摺動面の片方の側のみに圧油供給源を設けるかの違いによって,軸受としての機能・特性は異なるといわざるを得ず,具体的にどのような構成にするかによってその作用効果が全く変わらないと断言することはできない。したがって,双方の摺動面に注油口及び圧油供給源 39 を設けることについて,単なる冗長な構成であるとか設計的事項であるということはできず,被告の上記主張は採用することができない(なお,注油口及び圧油供給源を双方の摺動面に設けた装置が,一方の摺動面のみに設けた装置に比べて,事業に活用する上での有用性が乏しければ,それは,特許権の価値,ひいては本件の損害額には影響し得ると考えられるが,この点は,本中間判決後,損害賠償額の審理に際して検討するべき問題である。)。
以上によると,乙4の3発明に乙17の1文献,乙17の2文献,乙17の3文献及び乙17の4文献に記載された上記各技術を適用しても,本件発明2-1の上記構成要件2Cには至らない。
(c) 乙20の1文献には,第1の方向で加振しながら同方向と直角な第2の方向で加振する多自由度振動試験機における油圧式のスライド機構が開示されており(特許請求の範囲1,4欄44行ないし5欄3行,第1図,第2図等),乙20ののスライド機構が開示されている(【請求項1】,段落【0010】,【図1】)。また,乙23の2文献にも,2次元振動試験機における油圧式のスライド機構が開示されている(発明の詳細な説明,第2図,第3図)。
しかしながら,上記各装置において,圧油供給源(油圧源)は,摺動面の片方の側にしか備えられていない点で,構成要件2Cには当たらない。
したがって,乙4の3発明に乙20の1文献,乙20の2文献及び乙23の2文献に記載された上記各技術を適用しても,本件発明2-1の上記構成要件2Cには至らない。
(d) 乙23の3文献には,切削機,研削機等の工作機械や精密測定器に用いるエアースライダーの技術分野に関し,2つのエアーホースにより,スライダー本体とガイド(ベース)の双方に圧搾空気を供給する技術が開示されている(産業上の利用分野,実施例,第1図,第2図等)。しかしながら,この技術は,注油口及び圧油供給源を備えて摺動面に油膜を形成することが開示されていないから,これ自 40 体,構成要件2Cには当たらないし,乙4の3発明とは技術分野が異なるため,これに組み合わせる動機付けもない。
また,乙23の4文献には,偏心軸に関し,回転軸と円筒状軸受との間に,回転軸内の供給孔及び軸受内の供給孔の双方から圧力油を供給する技術が開示されているが(特許請求の範囲,2頁右下欄,3頁左上欄,第5図等),回転軸と円筒状軸受との間に圧力油を供給することは,水平移動するスライダとこれと平行する位置で対向するベースとの間の摺動面に圧油を供給して油膜を形成することとは異なる上,乙23の4発明では,軸受側の圧力油が供給される摺動面と,回転軸側の圧力油が供給される摺動面とは,相互間に油膜が形成されるべき対向した摺動面ではないから,構成要件2Cの「両者間の摺動面に油膜を形成する」には当たらない。なお,被告は,乙40文献の11ないし12頁に,「軸受には,回転案内と直線案内があるが,本質的な機能は回転案内も直線案内も同じである。」旨の解説されていることなどを援用するが,そのような一般論のみから直ちに,乙4の3発明に乙23の4文献に記載された上記技術を適用する動機付けとなるものではない。
(e) 他に,乙4の3発明に組み合わせて構成要件2Cに至るような副引例となる公知技術は見当たらない。
そして,本件出願2前に,構成要件2Cの構成が周知であったとはうかがわれない。
(f) そうすると,乙4の3発明において,双方の摺動面にそれぞれ注油口を備えた上で,これら双方の注油口にそれぞれ圧油供給源を備えた流体圧式の構成(構成要件2C)とすることは,本件出願2前に,当業者が容易に想到し得たものということはできない。
c 小括 以上によると,本件発明2-1は,本件出願2前に,乙4の3発明及び上述した公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなかったというべきである。
41 なお,被告は,基本的に,乙20の1文献及び乙20の2文献に記載された技術を副引例として援用しつつ,乙20の2文献に記載された発明は主引例となり得るとも主張しているが,以上説示したところからすれば,本件発明2-1が,本件出願2前に,乙20の2発明及び上述した公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなかったことは,乙4の3発明を主引例とする場合と同様というべきである。
(ウ) 本件発明2-2ないし本件発明2-5について 本件発明2-2は,本件発明2-1の構成要件に加え,構成要件2Eを付加したものであり,本件発明2-3は,本件発明2-1又は本件発明2-2の構成要件に加え,構成要件2Gを付加したものであり,本件発明2-4は,本件発明2-1,本件発明2-2又は本件発明2-3の構成要件に加え,構成要件2Iを付加したものであり,本件発明2-5は,本件発明2-1,本件発明2-2又は本件発明2-3の構成要件に加え,構成要件2Kを付加したものであるから,いずれも構成要件2Cを有するものである。
したがって,前記(イ)で説示したところからすると,本件発明2-2ないし本件発明2-5はいずれも,本件出願2前に,乙4の3発明又は乙20の2発明,及び上述した公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなかったというべきである。
ウ 拡大先願の検討 (ア) 先願発明について 前記前提事実及び証拠(乙23の1)によると,本件出願2がされた日より前の他の特許出願であって本件出願2より後に公開された特願2001-136102号の特許出願の願書に最初に添付した明細書及び図面(乙23の1参照)には,先願発明として,「可撓性部材に鉛直方向の圧縮力を加えながら水平方向に往復移動する力を加える加力試験装置において,支持面と被支持面との間の空間に流体(油)を供給する流体供給装置を備えることを特徴とする加力試験装置のスライド 42 機構」が開示されていたことが認められる(【請求項3】,段落【0007】【0010】【0018】,【図2】等)。
(イ) 本件発明2-1について しかしながら,本件発明2-1では,双方の摺動面にそれぞれ注油口を備え(構成要件2B),これら双方の注油口にそれぞれ圧油供給源を備えた(構成要件2C)ものであるところ,先願発明では,注油口及び圧油供給源が摺動面の片方の側に備えられているものである点において,両発明は相違している。
前記イ(イ)bで説示したところからすると,この相違点を等閑視して本件発明2-1と先願発明が実質的に同一であるなどということはできない。
したがって,本件発明2-1は,先願発明と同一の発明ではなく,弁論の全趣旨によれば,他に特許法29条の2又は39条の規定する要件が問題となるような出願があったとは認められないから,これらの要件を満たしていたというべきである。
エ 本件出願2に係る特許権取得の蓋然性についての結論 本件発明2が,産業上利用することができる発明(自然法則を利用した技術的思想創作のうち高度のもの)であることは明らかである。
前記イで説示したところからすると,乙4の3発明又は乙20の2発明を主引例として本件発明2の新規性及び進歩性を否定することはできず,他に本件発明2の新規性及び進歩性のいずれかを否定し得る公知技術は見当たらない(弁論の全趣旨)から,本件発明2は,原告主張の補正をするまでもなく,特許法29条所定の要件を満たしていたというべきである。
なお,弁論の全趣旨によれば,本件発明1は,特許法29条の2,39条所定の要件も満たしていたものと認められる。
また,前記ウで説示したとおり,本件発明2-1は,特許法29条の2,39条所定の要件も満たしていたものと認められ,本件発明2-2ないし本件発明2-5も,これらの要件を満たしてものと認められる。
43 弁論の全趣旨によれば,本件出願2は,特許法36条ないし38条所定の出願要件を満たしていたことが認められ,他に手続違反と目すべき点は見当たらず,同法49条各号所定の拒絶理由があったとも認められない。
以上によれば,本件発明2について審査請求期間内に出願審査請求がされていれば特許権の設定登録を受けることができた高度の蓋然性があったというべきである。
(3) 本件出願3に係る特許権取得の蓋然性について ア 本件発明3について 前記前提事実並びに証拠(甲1の3)及び弁論の全趣旨によると,本件明細書3の記載内容は,別紙特開2004-177381号(甲1の3)の,【特許請求の範囲】,【発明の詳細な説明】,【図1】ないし【図4】等記載のとおりであったと認められる。
本件発明3の技術分野は,「加圧状態にある試験片に加圧方向と交差する方向へアクチュエータにより振動させる多軸試験機」に係り,「特に高速道路等の橋桁の下部に備えられる免振ゴムの加圧加振試験に好適な多軸試験機」 に関する(段落【0001】)。発明が解決しようとする課題としては,従来技術では,@試験片を振動させない待機状態でも一方向吐出定容量形ポンプを駆動させて圧油を油圧回路に吐出させなければならない,A加圧された試験片を高速で振動させるには,アキュムレータの容量を大容量化する必要があり,B同アキュムレータで加圧する作動油を大量にタンクに貯蔵しなくてはならず,Cさらに,作動油タンクを冷却する装置も設置する必要があり,装置の設置面積が大きくなっていたという問題があった(段落【0005】)。本件発明3は,上記課題を解消し,使用する油量が極めて少なくても十分な振動試験を行わせることができる駆動モータの消費エネルギの小さい,かつ,設置面積を半減することのできる多軸試験機を提供するため,「加圧状態にある試験片に加圧方向と交差する方向にアクチュエータにより振動させる多軸試験機において,前記アクチュエータを油圧シリンダ機構により構成し,当該 44 油圧シリンダ機構の両油室に圧油を供給可能な両吐出型斜板ポンプを接続し,この斜板ポンプの駆動モータとともに,斜板切り替え操作ユニットにより吐出流路方向を切り替え可能としてなること」を特徴とするものである(段落【0006】【0007】)。
イ 乙4の8発明を主引例とする進歩性の検討 (ア) 乙4の8発明について 前記前提事実及び証拠(乙4の8)によると,本件出願3がされた日(平成14年11月29日)に先立つ平成13年2月16日に頒布された刊行物である特開2001-41870号公報(乙4の8文献)には,「免震ゴムのバネ特性の調査等に用いられる2軸免震ゴム試験機」の技術分野に関し(段落【0001】),乙4の8発明として,「鉛直方向に一定の圧縮負荷が加えられた供試免震ゴムに,油圧サーボ機構により制御される水平負荷用シリンダの駆動制御により水平方向に繰り返し負荷を加える2軸免震ゴム試験機」が開示されていたこと(【請求項1】,段落【0007】【0010】【0012】,【図1】)が認められる。
(イ) 本件発明3-1について a 本件発明3-1と乙4の8発明との対比 (a) 一致点 前記(ア)の認定事実に弁論の全趣旨を総合すると,乙4の8発明の「鉛直方向に一定の圧縮負荷が加えられた供試免震ゴム」は 本件発明3-1の構成要件3Aの「加圧状態にある試験片」に,乙4の8発明の「水平負荷用シリンダの駆動制御により水平方向に繰り返し負荷を加える2軸免震ゴム試験機」は本件発明3-1の構成要件3Aの「加圧方向と交差する方向にアクチュエータにより振動させる多軸試験機」に,乙4の8発明の「油圧サーボ機構により制御される水平負荷用シリンダ」は本件発明3-1の構成要件3Bの「前記アクチュエータを油圧シリンダ機構により構成し」に,それぞれ相当するものと認められる。
そうすると,本件発明3-1と乙4の8発明とは,「加圧状態にある試験片(供 45 試免震ゴム)に加圧方向と交差する方向にアクチュエータにより振動させる多軸試験機」である点(構成要件3A・3E)及び「前記アクチュエータを油圧シリンダ機構により構成」している点(構成要件3B)において一致しているというべきである。
(b) 相違点 本件発明3-1では,アクチュエータの具体的な油圧による往復駆動機構に関し,「油圧シリンダ機構の両油室に圧油を供給可能な両吐出型斜板ポンプを接続し,この斜板ポンプの駆動モータとともに,斜板切り替え操作ユニットにより吐出流路方向を切り替え可能としてなる」という構成を採ることが特定されているのに対し,乙4の8発明では,このような特定(構成要件3C・3D)がない点において,両発明は相違している。
b 本件発明3-1と乙4の8発明との相違点に関する検討 (a) 本件出願3がされた日(平成14年11月29日)に先立つ平成6年9月13日に頒布された刊行物である特開平6-257393号公報(乙4の10文献)には,「両傾転型の斜板型ピストンポンプ」などの可変容量型油圧ポンプと油圧シリンダなどの油圧式アクチュエータとで閉回路を構成し,上記「両傾転型の斜板型ピストンポンプ」(【図1】の5)には駆動モータを付けるほか,斜板の一端にこの傾転角を変更するための流動制御装置として,ピストンロッドを往復駆動するサーボシリンダ(【図1】の9)を接続し,上記油圧シリンダは対象部材を往復駆動する1基又は並列接続された2基の油圧シリンダ(【図1】の3・4)とし,その各油室に上記「両傾転型の斜板型ピストンポンプ」からの各圧油出力をそれぞれ接続する構成が開示され,「流動制御装置が油圧ポンプの斜板の傾転角を+側から-側にわたって変更させることによって,油圧ポンプの圧油の吐出口が圧油の吸込口に変わり,吐出方向が逆向きに変わるので,油圧シリンダへの圧油の供給方向が逆向きになって,ピストンの押し動作が引き動作に変更され」ることが開示されている(【特許請求の範囲】の【請求項2】,【発明の詳細な説明】の段落【001 46 3】【0015】【0019】【0043】,【図1】)。
また,平成2年2月7日に頒布された刊行物である特開平2-38020号公報(乙4の9文献)には,回転駆動源により回転される「両方向型液体圧ポンプ」ないし「両方向型可変容量ポンプ」からの液流でアクチュエータを駆動する技術が開示されている(特許請求の範囲(1),発明の詳細な説明の[課題を解決するための手段][実施例],第1図,第2図)。
さらに,昭和61年1月21日に頒布された刊行物である特開昭61-13133号公報(乙24の2文献)には,弾性供試体に圧縮変位を繰返し付与するための試験装置本来を駆動する油圧アクチュエータの伸び側圧力室(第1図の220)と縮み側圧力室(第1図の230)とを結ぶ油圧閉回路の途中に高圧大容量の「両振式可変流量ポンプ」 (第1図の310)を設け,当該流量ポンプの 斜軸又は「斜板」の傾転角を制御することによりポンプの吐出量及び吐出方向を制御する技術が開示されている(特許請求の範囲,発明の詳細な説明の〔実施例〕,第1図,第2図)。
加えて,平成3年1月30日に頒布された刊行物である特開平3-21536号公報(乙4の11文献)には,「両方向吐出可変容量形油圧ポンプ」の「斜板」を負側最大傾角から正側最大傾角まで変化させることにより,同ポンプの吐出し量を変化させる技術が開示され(発明の詳細な説明の<課題を解決するための手段>,<作用>,第1図,第2図),平成12年4月18日に頒布された刊行物である特開2000-110937号公報(乙4の12文献)には,「一方向に回転する動力源に連係するとともに,斜板の傾きに応じて吐出量及び吐出方向を変える可変容量形ポンプ」が開示されている(【特許請求の範囲】の【請求項1】)。
そして,証拠(乙4の10ないし4の13,21,24の2)及び弁論の全趣旨によれば,油圧ポンプには専ら容積式ポンプが用いられるところ,このうちピストンの往復運動に基づく容積変化を利用して液体の吸込みと吐出しを行うピストン ポンプには,1回転当たりの吐出し量(押しのけ容積)を運転中に変化させることが 47 できる可変容量形(可変吐出量型)のものがあり,その中でも,斜板式(斜板カムの傾斜により往復運動を起こす方式)のアキシアルピストンポンプは古くから存在すること,平成元年発行の社団法人日本油空圧学会編『新版油空圧便覧』(乙21の2文献)においては,「斜板式アキシアルピストンポンプは可変容量形ポンプとしてよく用いられる」旨記載され,「現在では斜板式の需要は閉回路用,開回路用を問わず,建設機械,車両,産業機械の分野に広がり,油圧ポンプの出荷額比率で第1位を占めるようになった。」と記載されていること,平成13年6月25日発行の油圧技術研究フォーラム編『これならわかる油圧の基礎技術』(乙21の3文献)においても,「ピストンポンプにはいくつかの種類があるが,斜板式アキシャルピストンポンプが最も一般的に用いられる」旨が記載され,「斜板式アキシャルピストンポンプは,効率のよさ,制御性のよさ,容量および圧力の範囲,圧力補償機構による省エネ効果などの理由から,自動機械,NC工作機械,特殊車両などの油圧源として広い分野で活躍している。」と記載されていること,したがって,本件出願3前に,「両方向型可変容量ポンプ」の中で「斜板」を用いたもの(「両吐出型斜板ポンプ」)は,油圧ポンプとしてはごく一般的なタイプのものであり慣用されていたことが認められる。
(b) 上記(a)に照らすと,機械を構成する部材を往復駆動させる機構において,駆動モータ及び斜板切り替え操作ユニットにより吐出流路方向を切り替え可能とした両吐出型斜板ポンプを,油圧シリンダの各油室に接続して当該油圧シリンダを往復駆動する技術は,本件出願3前に,周知であったと認められる。
したがって,乙4の8発明におけるアクチュエータを油圧シリンダ機構により構成する(具体化する)に際し,上記周知技術を適用して,「油圧シリンダ機構の両油室に圧油を供給可能な両吐出型斜板ポンプを接続し,この斜板ポンプの駆動モータとともに,斜板切り替え操作ユニットにより吐出流路方向を切り替え可能としてなる」という構成(構成要件3C・3D)とすることは,本件出願3前に,当業者が容易に想到し得たものというべきである。
48 (c) なお,原告は,本件発明3-1と前記(a)に挙げた各先行技術文献に記載された技術とは,技術思想や作用効果が異なるなどと縷々主張するが,前記(a),(b)で認定,説示したとおり,機械を構成する部材を往復駆動させる機構において,駆動モータ及び斜板切り替え操作ユニットにより吐出流路方向を切り替え可能とした両吐出型斜板ポンプを,油圧シリンダの各油室に接続して当該油圧シリンダを往復駆動する技術自体が周知技術であったと認められる以上は,前記(b)の容易想到性を否定することはできない。
c 小括 以上によると,本件発明3-1は,本件出願3前に頒布された刊行物に記載された乙4の8発明及び上述した周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,進歩性を欠くというべきである。
特許法49条,51条の規定等に照らせば,同法は,1つの特許出願に対し,拒絶査定か特許査定かのいずれかの行政処分をすべきことを定めており,1つの請求項に係る発明につき特許を受けることができないときは,当該特許出願を全体として拒絶すべきものと解される(最高裁平成19年(行ヒ)第318号同20年7月10日第一小法廷判決・民集62巻7号1905頁,知財高裁平成22年(行ケ)第10121号同23年3月10日判決,知財高裁平成18年(行ケ)第10150号同19年6月25日判決参照)から,本件発明3-2及び本件発明3-3について検討するまでもなく,本件出願3は,拒絶されるべきものであったといえるが,事案に鑑み,以下,これらの発明についても検討しておく。
(ウ) 本件発明3-2について a 本件発明3-2と乙4の8発明との対比 本件発明3-2は,本件発明3-1において,更に,構成要件3Fの「前記駆動モータにはフライホイールを接続して慣性回転可能としてなる」という特定を付加したものであり,この点も乙4の8発明との相違点となる。
b 上記相違点に関する検討 49 (a) 本件出願3がされた日(平成14年11月29日)に先立つ平成元年12月14日に頒布された刊行物である特開平1-309797号公報(乙4の13文献)には,メインモータにフライホイールを接続し,メインモータの回転をフラ イホイールよりクラッチブレーキ及び減速機を介して可変容量ポンプに伝達し,可変容量ポンプを回転駆動する技術が開示され,メインモータにより回転されるフライホイールの回転を一定に維持しながら可変容量ポンプの吐出量を変化させてスライドを駆動することにより,スライドストローク数が小さいときでもフライホイールに蓄積されたエネルギーは変化しないことが開示されている(発明の詳細な説明の〔課題を解決するための手段及び作用〕〔実施例〕,第1図)。
また,平成8年5月14日に頒布された刊行物である特開平8-118096号公報(乙4の14文献)には,メインモータにフライホイールを接続し,メインモータの回転エネルギがフライホイールに蓄積された上で両傾転型の斜軸式可変容量ピストンポンプを駆動する技術が開示されている(段落【0016】,【図1】)。
加えて,昭和49年5月20日に頒布された刊行物である特公昭49-19830号公報(乙22の3文献)には,往復回転翼式シリンダの駆動モータにフライホイールを設ける技術が開示されている(2欄23行ないし3頁4行,第5図等)。
(b) 上記(a)に照らすと,可変容量ポンプ駆動用のモータにフライホイールを接続し,当該モータから可変容量ポンプ(両吐出型ポンプ)への回転伝達機構中にフライホイールを介在させることは,周知の技術であったところ,そもそも,負荷が変動し得る中で一定速度での回転が要求される場合に,回転駆動手段の出力軸にフライホイールを取り付けることは,ごく一般的に慣用されている技術であって,本件発明3-2についてみても,振動試験の特性上,一定周期・振幅でシリンダを往復振動させるようにする必要があり,そのためには斜板ポンプにも一定周期・振動の駆動が要求され,そのためには当該斜板ポンプの駆動モータの安定回転が必要になることは自明であり,モータの安定回転用手段として常套的なフライホイールを採 50 用する条件を満たしているといえる。
そうすると,乙4の8発明において,「前記駆動モータにはフライホイールを接続して慣性回転可能としてなる」という構成(構成要件3F)を採ることは,本件出願3前に,当業者が容易に想到し得たものというべきである。
c 小括 以上を前記(イ)に総合すると,本件発明3-2は,本件出願3より前に頒布された刊行物に記載された乙4の8発明及び上述した周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,進歩性を欠くというべきである。
(エ) 本件発明3-3について a 本件発明3-3と乙4の8発明との対比 本件発明3-3は,本件発明3-1において,更に,構成要件3Hの「前記斜板切り替え操作ユニットは斜板操作用油圧シリンダ機構を用い」及び構成要件3Iの「当該斜板操作用油圧シリンダ機構の両油室にモータ駆動の両吐出型ポンプを接続して斜板切り替えを可能としてなる」という特定を付加したものであり,この点も乙4の8発明との相違点となる。
b 上記相違点に関する検討 前記(イ)b(a)のとおり,乙4の10文献には,@「両傾転型の斜板型ピストンポンプ」の斜板の一端に,この傾転角を変更するための流動制御装置として,ピストンロッドを往復駆動するサーボシリンダを接続する構成及びA1基又は並列接続された2基の油圧シリンダの各油室に「両傾転型の斜板型ピストンポンプ」からの各圧油出力をそれぞれ接続する構成が開示されていたものである。
上記@によると,乙4の10文献には,斜板切り替え操作ユニットとして斜板操作用の油圧シリンダ機構を用いること(構成要件3H)が直接開示されていたということができる。
他方,上記Aの「油圧シリンダ」の各油室に「両傾転型の斜板型ピストンポンプ」からの各圧油出力をそれぞれ接続する構成の「油圧シリンダ」は,斜板操作用 51 の油圧シリンダではない。しかしながら,構成要件3Iは,一度構成要件3Cで用いた「油圧シリンダ機構の両油室に圧油を供給可能な両吐出型斜板ポンプを接続」するという構成を,斜板操作用油圧シリンダ機構に対しても重ねて用いるというものであり,周知慣用の手段を順次選択し,またそれらの中で置き換えを行って到達した構成にすぎないから,当業者が乙4の10文献に記載された技術から容易に想到し得たものというべきである。
そうすると,乙4の8発明に,乙4の10発明を組み合わせて,あるいは「油圧シリンダ機構」や「両吐出型斜板ポンプ」に関する周知技術を適宜採用するなどして,「前記斜板切り替え操作ユニットは斜板操作用油圧シリンダ機構を用い,」「当該斜板操作用油圧シリンダ機構の両油室にモータ駆動の両吐出型ポンプを接続して斜板切り替えを可能としてなる」という構成(構成要件3H・3I)を採ることは,本件出願3前に,当業者が容易に想到し得たものというべきである。
c 小括 以上を前記(イ)に総合すると,本件発明3-3は,本件出願3前に頒布された刊行物に記載された乙4の8発明及び上述した公知技術ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,進歩性を欠くというべきである。
(オ) 補正について 原告が主張する別紙補正目録記載2の補正をすると,補正後の請求項1に係る発明は,本件発明3-3と同一のものとなり,補正後の請求項2に係る発明は,構成要件3Aないし3Iを全て組み合わせた発明となる。
しかしながら,前記(イ)ないし(エ)で説示したところによれば,補正後の請求項1に係る発明はもとより,補正後の請求項2に係る発明についても,進歩性を欠くことは明らかであり,上記補正によって進歩性の欠如は解消されない。
ウ 本件出願3に係る特許権取得の蓋然性についての結論 以上によれば,本件出願3について審査請求期間内に出願審査請求がされていた 52 としても,本件発明3は特許法29条2項により特許をすることができないものであるとして,同法49条2号により拒絶査定がされるべきものであったというべきであり,特許権の設定登録を受けることができた高度の蓋然性があったということはできない(なお,以上は乙4の8発明を主引例とする進歩性を検討した結果であるが,乙24の3発明を主引例としても,同様の結論を導くことができる。)。
(4) 本件出願4に係る特許権取得の蓋然性について ア 本件発明4について 前記前提事実並びに証拠(甲1の4)及び弁論の全趣旨によると,本件明細書4の記載内容は,別紙特開2004-198174号公報(甲1の4)の【特許請求の範囲】,【発明の詳細な説明】,【図1】ないし【図9】等記載のとおりであったと認められる。
本件発明4の技術分野は,「スライド機構の摩擦計測方法及び測定装置」に関する(段落【0001】)。発明が解決しようとする課題としては,二軸負荷試験機には従来,スライド機構の摩擦の影響を受けることなく水平付加荷重を測定可能とする付加荷重検出機があったが,この付加荷重検出機では,@一般に普及している二軸試験機に対応させる場合,多くの改造が必要であり,場合によっては試験機自体を交換しなくてはならず,このため,莫大な費用が掛かるとともに,板バネの疲労又は反力等により検出値が変化してしまう可能性がある,A垂直加圧を行う際に弾性部材を介して行うため,垂直付加荷重の測定が正確になされない可能性があるという問題があった(段落【0007】)。本件発明4は,上記課題を解決し,現在使用されている二軸試験機にも比較的安価で提供でき,かつ使用部材に疲労がないため長期使用が可能であり,供試体に付加した荷重を正確に知るために,スライド面の摩擦を正確に測定可能なスライド機構の摩擦測定方法及び摩擦測定装置を提供するため,「加圧手段によりベース面に向けて加圧されているスライダが前記ベース面に沿って移動するスライド機構の前記ベース面との間の摩擦を測定する方法において,前記加圧手段と前記スライダとの間に流体を供給して流体膜を形成 53 し,流体膜を介して前記スライダを加圧しつつ,前記摩擦を測定すること」を特徴とするものである(段落【0008】【0009】)。
イ 乙25の1発明を主引例とする新規性進歩性の検討 (ア) 乙25の1発明について 前記前提事実及び証拠(乙25の1)によると,本件出願4がされた日(平成14年12月17日)に先立つ昭和52年11月7日に頒布された刊行物である特開昭52-132888号公報(乙25の1文献)には,「摩耗試験機,特に円板試験片と平板試験片間の摩擦力を測定するための試験機」の技術分野に関し,乙25の1発明として,「重錘及びレバーにより下方にある円板試験片に向けて加圧されている平板試験片が,押し引きされて円板試験片及び土台に対してスライドする際の円板試験片との間の摩擦力を測定するための試験機において,上記レバーに固着される空気軸受装置の固定側部材と平板試験片の取付板との間に圧縮空気を供給して空気の薄膜を形成し,空気の薄膜を介して上記平板試験片を加圧しつつ,上記摩擦力を測定する方法」が開示されていたことが認められる(特許請求の範囲,発明の詳細な説明,第1図)。
(イ) 本件発明4-1について a 本件発明4-1と乙25の1発明との対比 (a) 前記(ア)の認定事実に証拠(甲4の1,乙25の1)及び弁論の全趣旨を総合すると,乙25の1発明の「円板試験片」は本件発明4-1の構成要件4Aの「ベース」に,乙25の1発明の「平板試験片」及びその「取付板」は本件発明4-1の構成要件4Aの「スライダ」に,乙25の1発明の「重錘」及び「レバー」は本件発明4-1の構成要件4Bの「加圧手段 」に,乙25の1発明の「圧縮空気」は本件発明4-1の構成要件4Bの「流体」に,乙25の1発明の「空気の薄膜」は本件発明4-1の構成要件4B・4Cの「流体膜」に,それぞれ相当するものと認められる。
そうすると,乙25の1発明は,本件発明4-1の構成要件である「加圧手段 54 によりベース面に向けて加圧されているスライダが前記ベース面に沿って移動するスライド機構の前記ベース面との間の摩擦を測定する方法において,前記加圧手段と前記スライダとの間に流体を供給して流体膜を形成し,流体膜を介して前記スライダを加圧しつつ,前記摩擦を測定すること」(構成要件AないしD)に当たり,本件発明4-1は,乙25の1発明と同一の発明を含むものというべきである。
(b) なお,原告は,乙25の1発明には「スライド機構」が存在せず,「流体膜を介してスライダを加圧する」という技術思想も含まれていない旨主張するが,前記(ア)で認定したとおり,平板試験片が,押し引きされて,円板試験片と接しなが ら , 円 板 試 験 片 及 び 土 台 に 対 し て い く ら か ス ラ イ ド す る こ と 自 体 は 自 明 であり,前記(a)で説示したとおり,本件発明4-1に対応する各構成自体は乙25の1文献に開示されている以上,新規性を欠くことは明らかである。
b 小括 したがって,本件発明4-1は,本件出願4より前に頒布された刊行物に記載された乙25の1発明と同一の発明として,新規性を欠くといわざるを得ない。
前記のとおり,1つの請求項に係る発明につき特許を受けることができないときは,当該特許出願を全体として拒絶すべきものと解されるから,本件発明4-2ないし本件発明4-8について検討するまでもなく,本件出願4は,拒絶されるべきものであったといえるが,事案に鑑み,以下,これらの発明についても検討しておく。
(ウ) 本件発明4-2について a 本件発明4-2と乙25の1発明との対比 (a) 一致点 前記(イ)aで認定,説示したところからすると,本件発明4-2と乙25の1発明とは,「加圧手段によりベース面に向けて加圧されているスライダが前記ベース面に沿って移動するスライド機構の前記ベース面との間の摩擦を測定する方法にお 55 いて,前記加圧手段と前記スライダとの間に流体を供給して流体膜を形成し,流体膜を介して前記スライダを加圧しつつ,前記摩擦を測定すること」(構成要件AないしD)において一致している。
(b) 相違点 本件発明4-2では,「流体の供給は,複数箇所から行い,各供給箇所における流体供給量を均一にする」ものであることが特定されているのに対し,乙25の1発明では,このような特定(構成要件4E)がない点において,両発明は相違している。
b 本件発明4-2と乙25の1発明との相違点に関する検討 (a) 本件出願4がされた日(平成14年12月17日)に先立つ平成6年1月11日に頒布された刊行物である特開平6-735号公報(乙4の7文献)には,摺動体の案内支持装置において,摺動体側の摺動面に注油口を備えた複数の軸受ポケット(凹陥部)を設け,油圧ポンプとレリーフ弁と減圧弁とから構成される圧力供給手段から各軸受ポケットを通じて圧油の供給を行い,その際,油圧ポンプから吐出する圧力をレリーフ弁により一定圧に制御した上,減圧弁により当該圧力を手動によって調整して各軸受ポケットに供給する技術が開示されている(【請求項1】,段落【0010】,【図1】【図2】等)。
また,昭和63年4月2日に頒布された刊行物である特開昭63-72380号公報(乙4の4文献)には,軸受ハウジング側の摺動面に注油口を備えた複数のポケット(凹陥部)を設け,油圧源から各ポケット内に各絞りを介して圧油を供給する技術が開示されており(〔実施例〕,第2図),平成14年8月28日に頒布された刊行物である特開2002-239859号公報(乙4の5文献)には,摺動面に注油口を備えた複数の潤滑油ポケット(凹陥部)を設け,潤滑油供給源から各潤滑油ポケットに各絞り弁を介して潤滑油を供給する技術が開示されている(段落【0006】【0010】,【図5】)。
そして,弁論の全趣旨によると,上記 レリーフ弁及び減圧弁ないし絞り(絞り 56 弁)によって,各供給箇所における流体供給量を均一にすることができるものと認められる。
なお,原告も,平成27年4月27日付け準備書面8において,乙4の7発明に「流体の供給が複数箇所」「各供給箇所における流体供給量を均一」が開示されていることを認めている。
(b) 上記(a)に照らすと,流体圧式の軸受において,流体の供給を複数箇所から行い,各供給箇所における流体供給量を均一にする技術は,本件出願4前に,周知であったと認められる。
したがって,乙25の1発明に,上記周知技術を適用して,「流体の供給は,複数箇所から行い,各供給箇所における流体供給量を均一にする」もの(構成要件4E)とすることは,本件出願4前に,当業者が容易に想到し得たものというべきである。
c 小括 以上によると,本件発明4-2は,本件出願4より前に頒布された刊行物に記載された乙25の1発明及び上述した周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,進歩性を欠くというべきである。
(エ) 本件発明4-3について a 本件発明4-3と乙25の1発明との対比 本件発明4-3は,本件発明4-1又は本件発明4-2において,更に,構成要件4Gの「加圧手段とスライダとの間に供給する流体は,流体膜形成後に回収して循環させる」という特定を付加したものであり,この点も,前記(ウ)a(b)のほかに乙25の1発明との相違点となる。
b 上記相違点に関する検討 (a) 本件出願4がされた日(平成14年12月17日)に先立つ平成12年12月12日に頒布された刊行物である特開2000-346072号公報(乙18の1文献)には,液体静圧軸受装置の従来の技術として,軸受に複数の静圧ポケット 57 を形成し,各静圧ポケットに各供給口から潤滑油を加圧状態で供給し,同潤滑油を排出口から回収して循環させる技術が開示されており(段落【0002】,【図2】),平成10年6月23日に頒布された刊行物である特開平10-169609号公報(乙18の3文献)には,油圧サーボシリンダの従来の技術として,作動油タンク及び作動油ポンプから油溜に作動油を供給し,軸と軸受との間に油膜を形成して両者の間を潤滑し,このように潤滑をした作動油を別の油溜から油排出路を介して作動油タンクに戻す技術が開示されている(段落【0002】【0010】ないし【0014】,【図2】【図3】)。また,平成14年7月2日に頒布された刊行物である特開2002-187033号公報(乙18の2文献)にも,静圧軸受において,オイルポンプから供給用ホース及びガイドブッシュを介して複数の油溜り部に潤滑油を供給し,同潤滑油を複数の排出穴から排水用ホースを介してタンクに回収し,これをまたオイルポンプにより汲み上げてガイドブッシュを介して油溜り部に供給する技術が開示されている(段落【0033】【0034】,【図6】)。
さらに,乙4の5文献には,発明の実施形態について,「潤滑油源の潤滑油をガイド板スライド面と摺動材スライド面の間に供給した後,回収し,油水分離とフィルタ濾過を実施した後潤滑油源に戻す,循環供給系を構成している」との記載がある(段落【0010】)。
(b) 乙25の1発明においては流体軸受における流体として空気が用いられているが,証拠(乙40)及び弁論の全趣旨によると,流体圧式の軸受(流体軸受)においてはかねてより広く潤滑油が慣用されており,流体軸受における流体として空気と潤滑油のいずれを用いるかは当業者が適宜選択し得るものであると認められるところ,潤滑油を流体として用いる際には,上記(a)に照らすと,当該流体を,流体膜形成後に回収して循環させる技術は,本件出願4前に,周知であったと認められる。
したがって,乙25の1発明に,上記周知技術を適用して,「加圧手段とスライ 58 ダとの間に供給する流体は,流体膜形成後に回収して循環させる」もの(構成要件4G)とすることは,本件出願4前に,当業者が容易に想到し得たものというべきである。
(c) これに対し,原告は,乙18の1文献,乙18の2文献及び乙18の3文献に記載された技術が,直線軸受ではなく回転軸受における流体の循環である点を指摘するが,この点は,上記(b)の判断を左右するものではない。
c 小括 以上によると,本件発明4-3は,本件出願4より前に頒布された刊行物に記載された乙25の1発明及び上述した周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,進歩性を欠くというべきである。
(オ) 本件発明4-4について a 本件発明4-4と乙25の1発明との対比 証拠(乙25の1)及び弁論の全趣旨によると,乙25の1文献には,「摩耗試験機,特に円板試験片と平板試験片間の摩擦力を測定するための試験機」の技術分野に関し,乙25の1発明として,「重錘及びレバーにより下方にある円板試験片に向けて加圧されている平板試験片が,押し引きされて円板試験片及び土台に対してスライドする際の円板試験片との間の摩擦力を測定するための試験機であって,上記レバーに固着される空気軸受装置の固定側部材と,この固定側部材に対向させて上記平板試験片に設けた取付板と,両者の対向面間に圧縮空気を供給する機構を備えた空気軸受装置と,上記平板試験片の取付板の端面に当接するように設けられた検出棒(荷重検出器)とを有する摩擦力測定試験機」が開示されていたことが認められる(特許請求の範囲,発明の詳細な説明,第1図)。
前記(ア)の認定事実に証拠(甲4の1,乙25の1)及び弁論の全趣旨を総合すると,乙25の1発明の「円板試験片」は本件発明4-4の構成要件4Iの「ベース」に,乙25の1発明の「平板試験片」は本件発明4-4の構成要件4Iの「スライダ」に,乙25の1発明の「重錘」及び「レバー」は本件発明4-4の構成要 59 件4Iの「加圧手段」に,乙25の1発明の「空気軸受装置の固定側部材」は本件発明4-4の構成要件4Jの「加圧部」に,乙25の1発明の「平板試験片の取付板」は本件発明4-4の構成要件4Jの「受圧部」に,乙25の1発明の「圧縮空気」は本件発明4-4の構成要件4Jの「流体」に,乙25の1発明の「圧縮空気を供給する機構」は本件発明4-4の構成要件4Jの「流体供給機構」に,乙25の1発明の「検出棒」(荷重検出器)は本件発明4-4の構成要件4Kの「センサ」に,それぞれ相当するものと認められる。
そうすると,乙25の1発明は,本件発明4-4の構成要件である「加圧手段によりベース面に向けて加圧されているスライダが,前記ベース面に沿って移動するスライド機構の前記ベース面との間の摩擦を測定するスライド機構の摩擦測定装置であって,前記加圧手段に設けた加圧部と,この加圧部に対向させて前記スライダに設けた受圧部と,この受圧部と前記加圧部とのいずれか一方に設けられ,両者の対向面間に流体を供給する流体供給機構と,前記スライド機構に設けられ,前記スライダに作用する前記ベース面に沿った力を検出するセンサとを有することを特徴とするスライド機構の摩擦測定 装置」(構成要件IないしL)に当たり,本件発明4-4は,乙25の1発明と同一の発明を含むものというべきである。
b 小括 したがって,本件発明4-4は,本件出願4より前に頒布された刊行物に記載された乙25の1発明と同一の発明として,新規性を欠くといわざるを得ない。
(カ) 本件発明4-5について a 本件発明4-5と乙25の1発明との対比 (a) 一致点 前記(オ)aで認定,説示したところからすると,本件発明4-5と乙25の1発明とは,「加圧手段によりベース面に向けて加圧されているスライダが,前記ベース面に沿って移動するスライド機構の前記ベース面との間の摩擦を測定するスライ 60 ド機構の摩擦測定装置であって,前記加圧手段に設けた加圧部と,この加圧部に対向させて前記スライダに設けた受圧部と,この受圧部と前記加圧部とのいずれか一方に設けられ,両者の対向面間に流体を供給する流体供給機構と,前記スライド機構に設けられ,前記スライダに作用する前記ベース面に沿った力を検出するセンサとを有することを特徴とするスライド機構の摩擦測定装置」(構成要件IないしL)において一致している。
(b) 相違点 本件発明4-5では,流体供給機構について,「受圧部又は加圧部の対向面のいずれか一方に形成した複数の凹陥部と,これら各凹陥部内に形成した流体吐出口と,これら各流体吐出口を介して前記対向面間に流体を供給する流体吐出手段とを有する」という構成が特定されているのに対し,乙25の1発明では,このような特定(構成要件4M)がない点において,両発明は相違している。
b 本件発明4-5と乙25の1発明との相違点に関する検討 (a) 乙4の7文献には,摺動体側の摺動面に形成した複数の軸受ポケット(凹陥部)と,これら各軸受ポケット内に形成した注油口と,これら各軸受ポケットの各注油口を介して上記摺動面に圧油を供給する圧力供給手段とを有する圧油供給機構が開示されており(段落【0010】【0018】,【図1】【図2】),乙4の4文献には,軸受ハウジング側の摺動面に形成した複数のポケット(凹陥部)と,これら各ポケット内に形成した注油口と,これら各ポケットの各注油口を介して上記摺動面に圧油を供給する圧油供給手段とを有する圧油供給機構が開示されており(〔実施例〕,第2図),乙4の5文献には,摺動面に形成した複数の潤滑油ポケット(凹陥部)と,これら各潤滑油ポケット内に形成した注油口と,これら各潤滑油ポケットの各注油口を介して上記摺動面に潤滑油を供給する潤滑油供給手段とを有する潤滑油供給機構が開示されている(【請求項1】,段落【0006】【0009】【0010】,【図5】)。
(b) 前記(エ)b(b)のとおり,流体軸受における流体として空気と潤滑油のいずれを 61 用いるかは当業者が適宜選択し得るものであると認められるところ,潤滑油を流体として用いる際には,上記(a)に照らすと,当該流体の供給機構について,「受圧部又は加圧部の対向面のいずれか一方に形成した複数の凹陥部と,これら各凹陥部内に形成した流体吐出口と,これら各流体吐出口を介して前記対向面間に流体を供給する流体吐出手段とを有する」という構成は,本件出願4前に,周知であったと認められる。
したがって,乙25の1発明に,上記周知技術を適用して,「流体供給機構は,受圧部又は加圧部の対向面のいずれか一方に形成した複数の凹陥部と,これら各凹陥部内に形成した流体吐出口と,これら各流体吐出口を介して前記対向面間に流体を供給する流体吐出手段とを有する」という構成(構成要件4M)を採ることは,本件出願4前に,当業者が容易に想到し得たものというべきである。
c 小括 以上によると,本件発明4-5は,本件出願4より前に頒布された刊行物に記載された乙25の1発明及び上述した周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,進歩性を欠くというべきである。
(キ) 本件発明4-6について a 本件発明4-6と乙25の1発明との対比 本件発明4-6は,本件発明4-5において,更に,構成要件4Oの「流体供給機構は,吐出口と吐出手段とを接続する流路に,各吐出口からの流体吐出量を均一にする絞りを有する」という特定を付加したものであり,この点も乙25の1発明との相違点となる。
b 上記相違点に関する検討 前記(ウ)b(a)で認定,説示したところによると,流体圧式の軸受にお ける流体供給機構について,「吐出口と吐出手段とを接続する流路に,各吐出口からの流体吐出量を均一にする絞りを有する」という構成は,本件出願4前に,周知であったと認められる。
62 したがって,乙25の1発明に,上記周知技術を適用して,「流体供給機構は,吐出口と吐出手段とを接続する流路に,各吐出口からの流体吐出量を均一にする絞りを有する」という構成(構成要件4O)を採ることは,本件出願4前に,当業者が容易に想到し得たものというべきである。
c 小括 以上によると,本件発明4-6は,本件出願4より前に頒布された刊行物に記載された乙25の1発明及び上述した周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,進歩性を欠くというべきである。
(ク) 本件発明4-7について a 本件発明4-7と乙25の1発明との対比 本件発明4-7は,本件発明4-5において,更に,構成要件4Qの「流体吐出手段は,各吐出口に対応して設けてある」という特定を付加したものであり,この点も乙25の1発明との相違点となる。
b 上記相違点に関する検討 (a) 乙4の7文献には,「軸受ポケット毎に圧力供給手段を設け,個別に調整された圧油を各軸受ポケットに供給してもよい」旨の記載がある(段落【0018】)。
また,前記(ウ)b(a)で認定,説示したとおり,乙4の4文献には,それぞれ注油口を備えた複数のポケットごとに対応して,圧油の供給量を調整する手段である絞りを設けるという構成が開示されており,乙4の5文献にも,それぞれ注油口を備えた複数の潤滑油ポケットごとに対応して,潤滑油の供給量を調整する絞り弁を設けるという構成が開示されている(前記(ウ)b(a))。
(b) 上記(a)に照らすと,流体圧式軸受の流体供給機構において,流体吐出手段を各凹陥部内に形成した各吐出口に対応して設けるという構成は,本件出願4前に,周知であったと認められる。また,流体吐出手段を1個とするか,各吐出口に対応して設けるかは,当業者が適宜なし得た設計事項ということもできる。
63 したがって,乙25の1発明において,「流体吐出手段は,各吐出口に対応して設けてある」という構成(構成要件4Q)を採ることは,本件出願4前に,当業者が容易に想到し得たものというべきである。
c 小括 以上によると,本件発明4-7は,本件出願4より前に頒布された刊行物に記載された乙25の1発明及び上述した周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,進歩性を欠くというべきである。
(ケ) 本件発明4-8について a 本件発明4-8と乙25の1発明との対比 本件発明4-8は,本件発明4-5ないし本件発明4-7において,更に,構成要件4Rの「流体供給機構は,吐出口から吐出された流体を流体吐出手段に戻す循環路を有する」という特定を付加したものであり,この点も乙25の1発明との相違点となる。
b 上記相違点に関する検討 前記(エ)b(a)で認定,説示したところによると,流体圧式の軸受における流体供給機構について,「吐出口から吐出された流体を流体吐出手段に戻す循環路を有する」という構成は,本件出願4前に,周知であったと認められる。
したがって,乙25の1発明に,上記周知技術を適用して,「流体供給機構は,吐出口から吐出された流体を流体吐出手段に戻す循環路を有する」という構成( 構成要件4R)を採ることは,本件出願4前に,当業者が容易に想到し得たものというべきである。
c 小括 以上によると,本件発明4-8は,本件出願4より前に頒布された刊行物に記載された乙25の1発明及び上述した周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,進歩性を欠くというべきである。
ウ 本件出願4に係る特許権取得の蓋然性についての結論 64 以上によれば,本件出願4について審査請求期間内に出願審査請求がされていたとしても,本件発明4のうち,本件発明4-1及び本件発明4-4は特許法29条1項により,その余の各発明は同条2項により,いずれも特許を受けることができないものであるとして,同法49条2号により拒絶査定がされた可能性が高かったというべきであり,特許権の設定登録を受けることができた高度の蓋然性があったということはできない。
(5) 因果関係の有無について 以上のとおり,本件出願1及び本件出願2については,審査請求期間内に出願審査請求がされていれば特許権の設定登録を受けられた高度の蓋然性があったということができるが,本件出願3及び本件出願4については,審査請求期間内に出願審査請求がされていたとしても特許権の設定登録を受けられた高度の蓋然性があったということはできない。
したがって,本件出願1及び本件出願2については,前記2で説示した被告の債務不履行と損害の発生との間の因果関係を肯認することができるが,本件出願3及び本件出願4については,被告の債務不履行又は不法行為と損害の発生との間の因果関係を肯認することはできない。
3 争点3(消滅時効の中断等)について (1) 前記1,2で説示したところによれば,被告が本件出願1及び本件出願2について審査請求期間内に出願審査請求をしなかったことについて,原告は,被告に対し,平成17年10月31日(本件出願1の審査請求期間の末日)を経過した時点及び同年11月14日を経過した時点(本件出願2の審査請求期間の末日)でそれぞれ,債務不履行に基づく損害賠償請求権を取得したということができる。
もっとも,被告は,これら各損害賠償請求権について,商法522条所定の5年の消滅時効が完成した旨主張し,これを援用するので,以下検討する。
(2) 前記前提事実に掲記の証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。
65 ア 本件各出願の取下げ擬制の発覚後の協議 (ア) 原告は,平成18年7月6日頃,本件特許事務所から,本件各出願についてはいずれも出願審査請求をしておらず取り下げられたものとみなされていることを知らされた(甲4,弁論の全趣旨)。
(イ) 原告は,被告が本件各出願に係る出願審査請求がされなかったことについて損害賠償責任を負う旨主張して,被告に対しその趣旨で金員の支払を求め,この問題をどう解決するかについて幾度か被告との間で協議した。平成18年7月12日の協議において,被告代表者が「こちらに落ち度があったことは間違いありませんから,それは申し訳ない。」と発言するなどしたものの,被告は,直ちには原告の求める損害賠償金の支払には応じなかった(甲9,29,31,弁論の全趣旨)。
イ 覚書の締結 原告と被告は,上記ア(イ)の協議を経て,平成19年10月1日,次の(ア)ないし(カ)の内容を含む「DDVC試験機の維持管理に関する覚書」と題する合意書(以下「本件覚書」という。)を取り交わした(甲10)。
(ア) 原告と被告は,被告が原告のDDVC試験機の維持管理について本件覚書を交わす(前文。なお,「DDVC」とは,「Direct Drive Volume Control」の略で,高速二軸試験機の駆動・制御方式につき,「制御性を持ったポンプによるシリンダー内容積の直接制御」をする方式を指す〔甲6〕。)。
(イ) 本件覚書の対象となるDDVC試験機は以下のとおりである(1項)。
@ ブリヂストン殿向け高速2軸試験機 A ブリヂストン殿向け45KN型フェンダー試験機 B ブリヂストン殿向け80KN型フェンダー試験機 C シバタ工業殿向け50KN型フェンダー試験機 (ウ) 原告,被告ともにDDVC試験機に関する技術資料を維持管理するとともに,技術水準の維持および技術の研鑽に努める(3項)。
(エ) DDVC試験機のトラブルあるいはバージョンアップに対して,原告は被告 66 の要請に基づき,速やかに(1週間程度)対応策,見積書,技術資料などを提出し,原告,被告共に客先の信頼を損なわないよう,誠意ある対応をする(4項)。
(オ) 被告は,原告におけるDDVC試験機/維持管理体制の整備費用として,原告に250万円を支払う。また,被告は,原告における維持管理体制の維持費用として,原告に次年度以降3年間にわたり,毎年50万円を支払う。ただし,支払方法については,別途協議する(5項。以下,これら「整備費用」及び「維持費用」との名目で支払うとされた金員を「本件金員」と総称する。)。
(カ) 本件覚書の有効期間は,本件覚書成立から3年間とする。ただし,本覚書の有効期間が終了した後,再度協議し,必要に応じ新たに覚書を交わすこととする(8項)。
ウ 本件金員の支払 (ア) 被告は,平成20年3月17日,原告に対し,本件覚書5項第1文に基づく金員として250万円,同項第2文に基づく金員として50万円を支払った(甲14の1)。
(イ) 被告は,平成21年1月30日,本件覚書5項第2文に基づく金員として,50万円を支払った(甲14の2)。
(ウ) 被告は,平成22年1月25日,本件覚書5項第2文に基づく金員として,50万円を支払った(甲14の3)。
エ 被告からの提案 原告と被告は,平成24年7月4日に協議をし,被告は,その結果を踏まえて,同月13日,新たに次の(ア)ないし(ウ)の内容を含む「DDVC試験機等の維持管理に関する覚書」と題する合意書を同年8月1日付けで取り交わすことを提案したが,原告は,この提案を拒否した。そこで,被告は,同月23日,原告に対し,下記(ウ)の「300万円」を「500万円」に,「60万円」を「80万円」に増額して再度提案をしたが,原告は,この提案も拒否した(甲11,乙5の6,7ないし9,弁論の全趣旨)。
67 (ア) 本覚書は,原被告間において平成19年10月1日付にて締結され,平成22年9月30日を以て終了した「DDVC試験機の維持管理に関する覚書」に関し,原告・被告が次条に規定するDDVC試験機等の維持管理を協力して被告の納入先に提供する必要があることを確認し,新たに原告において維持管理に必要な体制の構築,整備及び維持を行なうために必要な条件を規定するものである(1項)。
(イ) 原告,被告ともにDDVC試験機等の維持管理に必要な社内の体制(以下「社内体制」という。)を構築,整備し,それを維持する。ただし,DDVC試験機等の維持管理に必要な「社内体制」には,以下の要件が含まれる(4項)。
@ 人材,技術,設備の確保 A 完成時の図書(完成図書,図面,プログラム記述書,プログラムソース コード等)及びトラブル,点検,改造等に関する図書の保管・管理 B 構成部品の供給確保 (ウ) 被告は,原告における社内体制を構築,整備するための費用として,本覚書締結後6ヶ月以内に,原告に300万円を支払う。また,被告は,原告における社内体制を維持するための費用として,本年度より5年間にわたり,毎年原告に60万円を支払う(5項)。
オ 本件調停の経過 (ア) 原告は,平成24年9月28日,被告を被申立人として,日本知的財産仲裁センターに本件調停を申し立てた。原告は,本件調停の申立書において,本件各出願に係る出願審査請求がされなかったことについて被告に損害賠償責任がある旨主張して,「被申立人は申立人に対し和解金として金2億円を支払う」との解決を求めた(乙5の1)。
(イ) 被告は,本件調停において提出した平成24年11月27日付け答弁書において,「申立人が指摘しているように,被申立人は甲5《判決注:調停事件での証拠番号。本件訴訟の証拠番号では甲10》の約定に従って既に申立人に対して40 68 0万円の支払を行っている。甲5における支払の名目は「DDVC試験機の整備費用」「同維持費用」であるが,実際には被申立人は,申立外ブリヂストン等に納品した製品の整備時にはその都度申立人に整備費用を支払っているため,上記支払名目は内実に乏しい。被申立人において,申立人が本件調停にかかる紛争により,申立外ブリヂストン等に納品した製品の整備等に協力しない事態が生じることを避けたいがために,上記支払名目において支払を行ったものであり,実際には本件紛争に係る迷惑料的な性質を有していたものである。従って,仮に被申立人において申立人に対して本件調停にかかる支払義務が観念される場合には,上記の400万円の既払金について控除されるべきである。」と記述した(乙5の2)。
また,被告は,本件調停において,本件調停に係る紛争は,@本件各発明に係る特許出願審査請求がなされなかった点につき,被告に過失が存在するか,仮に被告に過失が存在するとしても,本件特許事務所の対応及び原告自身の対応との関係から,被告に全面的な責任が負わされるべきか,A仮に審査請求が行われたとして,本件各発明について最終的に特許権を取得できる可能性がどの程度存在したか,B仮に本件各発明について特許権を取得できたものとして,その価値はどの程度のものであったかという3つの論点がある旨整理した上で,「円満な解決」を志向する観点から,その段階で上記@の論点についての議論は差し控え,まずは上記ABの論点について主張した上で,調停人の判断を仰ぎたいとの意向を示した(乙5の2,弁論の全趣旨)。
(ウ) 本件調停において,調停人は,本件各発明について最終的に特許権を取得できる可能性がなかったということはできないとの意見を示した上,原告に対し,被告が原告に2000万円を支払う旨の調停案を提示したが,原告がこれを拒絶したため,被告に同調停案が提示されることもなく,本件調停は平成25年4月2日に不成立となった(甲13,弁論の全趣旨)。
カ 本件訴訟の経緯 (ア) 原告は,平成25年7月29日,被告を相手取って本件各請求権を訴訟物と 69 する本件訴訟を提起した。
(イ) 被告は,平成25年9月24日の第1回口頭弁論期日において,答弁書を陳述し,原告に対し,本件各請求権について消滅時効援用する旨の意思表示をした。
(3) 上記(2)に認定した事実経過,とりわけ,原告が,本件各出願に係る出願審査請求がされなかったことについて被告が損害賠償責任を負う旨主張して被告に対し損害賠償金の支払を求め,この点が原被告間において問題となる中,被告は,本件原告との間で覚書を締結し,これに基づき,平成20年3月17日から平成22年1月25日にかけて本件金員として合計400万円を原告に支払ったこと,これについて,被告自身が,上記の損害賠償金の実質を有する和解金の支払を求められた本件調停において,本件調停に係る「支払義務」が観念される場合には上記400万円の既払金はそこから控除されるべき金員である旨述べたことに照らせば,被告は,平成22年1月25日に,前記(1)の各債務不履行に基づく損害賠償債務について,民法147条3号にいう「承認」をしたものというべきである。
そうすると,上記各損害賠償請求権の発生日から5年後の平成22年10月31日及び同年11月14日より前である平成22年1月25日に,同各請求権の消滅時効は中断したということができる。
これに対し,被告は,当時,ブリヂストンに納品した製品の整備等について原告の協力を得る必要があったことから,本件金員の支払をしたものであって,原告に対する損害賠償債務を承認したことはないから,時効は中断していない旨主張する。しかしながら,上記のとおり,被告は,本件各出願に係る出願審査請求がされなかったことについての損害賠償金の実質を有する和解金の支払を求められた本件調停において,本件調停に係る「支払義務」が観念される場合には既払いの本件金員はそこから控除されるべき金員である旨述べたことから,被告自身が,上記損害賠償金の支払義務がある場合に本件金員はそこから控除されるべき金員である旨自認したとみられるのであって,この点と前記(2)の事実経過に照らすと,被告の上 70 記主張を採用することはできない。
(4) 以上によると,本件出願1及び本件出願2について審査請求期間内に出願審査請求をしなかったことに係る各債務不履行に基づく損害賠償請求権の時効は,平成22年1月25日に中断し,その後,平成25年7月29日の本件訴訟提起により再度中断し,同年9月24日の援用時までに時効は完成していないから,上記各請求権が時効により消滅したということはできない。
結論
以上の次第で,本訴請求中,被告が本件出願1及び本件出願2について審査請求期間内に出願審査請求をしなかったことを内容とする債務不履行に基づく損害賠償請求の原因(損害賠償額の点を除く。)は理由がある(なお,これらとそれぞれ選択的併合の関係にある不法行為に基づく損害賠償請求については,ここでは判断する必要がない。)が,本件出願3及び本件出願4に係る債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求は理由がない。
よって,民事訴訟法245条に基づき,請求の原因について争いがある場合におけるその原因について中間判決をすることとして,主文のとおり判決する。
追加
笹本哲朗裁判官天野研司72 (別紙)目録1加圧加振試験機出願番号特願2002-317476出願日平成14年10月31日特許出願公開番号特開2004-150985公開日平成16年5月27日2加振装置のスライド機構出願番号特願2002-329210出願日平成14年11月13日特許出願公開番号特開2004-162803公開日平成16年6月10日3多軸試験機出願番号特願2002-347293出願日平成14年11月29日特許出願公開番号特開2004-177381公開日平成16年6月24日4スライド機構の摩擦測定方法及び摩擦測定装置出願番号特願2002-364941出願日平成14年12月17日特許出願公開番号特開2004-198174公開日平成16年7月15日73 (別紙)補正目録1原告の主張する補正後の本件出願2に係る特許請求の範囲の請求項1記載の発明の分説(下線部は補正個所である。)2A供試体に垂直荷重を加えながら水平振動を付加する加振装置のスライド機構において,2B1加圧状態にある供試体下部で水平移動するスライダのスライド機構を,ベースまたはスライダの少なくとも一方の摺動面に注油口を備えた複数の凹陥部を設け,2他方の面は少なくとも注油口が開口した潤滑面とし,2C’双方の注油口にはそれぞれ圧油供給源を備えて成り,両者間の摺動面に油膜を形成する2Dことを特徴とする加振装置のスライド機構。
2原告の主張する補正後の本件出願3に係る特許請求の範囲の請求項1記載の発明の分説(下線部は補正個所である。)3A加圧状態にある試験片に加圧方向と交差する方向にアクチュエータにより振動させる多軸試験機であって,3B前記アクチュエータを油圧シリンダ機構により構成し,3C当該油圧シリンダ機構の両油室に圧油を供給可能な両吐出型斜板ポンプを接続し,3Dこの斜板ポンプの駆動モータとともに,斜板切り替え操作ユニットにより吐出流路方向を切り替え可能としてなる多軸試験機において,3H前記斜板切り替え操作ユニットは斜板操作用油圧シリンダ機構を用い,74 3I当該斜板操作用油圧シリンダ機構の両油室にモータ駆動の両吐出型ポンプを接続して斜板切り替えを可能としてなる3Eことを特徴とする多軸試験機。
75
裁判長裁判官 嶋末和秀
裁判官 71
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