関連審決 | 無効2013-800062 |
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事件 |
平成
27年
(行ケ)
10098号
審決取消請求事件
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原告X 原告 日本知財開発株式会社 両名訴訟代理人弁護士 吉村俊信 被告鹿島建設株式会社 訴訟代理人弁護士小林幸夫 弓削田博 河部康弘 弁理士市東篤 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2016/02/08 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1 原告らの請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 |
事実及び理由 | |
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原告らの求めた裁判
特許庁が無効2013-800062号事件について平成27年4月8日にした審決を取り消す。 |
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事案の概要
本件は,被告の特許無効審判請求により原告らの特許を無効とした審決の取消訴訟である。争点は,@明確性要件違反の有無,A実施可能要件違反の有無,B新規性の有無,C進歩性の有無である。 1 特許庁における手続の経緯 原告X(以下「原告X」という。)及び原告日本知財開発株式会社(以下,併せて「原告ら」という。)は,原告Xが平成7年8月14日に出願した(特願平7-237509号。請求項の数1),登録時の発明の名称を「地盤強化工法」とする特許の特許権者である(平成18年4月21日設定登録。最初の特許権者は株式会社ジンム。特許第3793777号。甲3,25〈枝番号を含む。特に断らない限り,以下同じ。〉,32。以下,この特許を「本件特許」といい,この特許権を「本件特許権」という。)。 被告は,平成25年4月15日,本件特許につき特許無効審判請求をした(無効2013-800062号)ところ,特許庁は,平成27年4月8日,「特許第3793777号発明の特許を無効とする。」との審決をし,その謄本は,同月16日,原告らに送達された。 2 本件発明の要旨 本件特許の特許公報(甲3)によれば,本件発明は,以下のとおりのものである(以下,同公報に記載された明細書又は図面を「本件明細書」という。。 )「【請求項1】 鉄骨などの構造材で強化,形成されたテーブルを地盤上に設置し,前記テーブルの上部に,立設された建築物や道路,橋などの構造物,または,人工造成地を配置する地盤強化工法であって,前記テーブルと地盤の中間に介在する緩衝材を設け,前記テーブルが既存の地盤との関連を断って,地盤に起因する欠点に対応するようにしたことを特徴とする地盤強化工法。」(裁判所注:本件特許の特許公報には, 「前期テーブル」とあるが, 「前記テーブル」の誤記であることが明らかであるので,上記のとおり訂正したものを記載した。以下,同じ。) 3 審判における請求人(被告)の主張 (1) 無効理由@(新規性欠如) 本件発明は,甲1(特開平5-18141号公報)に記載された発明(以下「甲1発明」という。)であるから,平成11年法律第41号による改正前の特許法29条1項3号の規定により特許を受けることができない。 (2) 無効理由A(進歩性欠如) 本件発明は,甲1発明及び甲2(特開平2-232426号公報)に記載された発明(以下「甲2発明」という。)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 (3) 無効理由B(明確性要件違反) 本件発明の記載は,その発明特定事項のうち「地盤に起因する欠点」にいかなるものが含まれるのか把握することができず, 「緩衝材」の技術的意義を理解することもできず,特許を受けようとする発明が明確でないから,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。 (4) 無効理由C(実施可能要件違反) 本件発明の発明特定事項のうち「地盤に起因する欠点に対応する」 「緩衝材」について,本件明細書の発明の詳細な説明は, 「地盤に起因する欠点」として地震・地崩れ・液状化を記載しつつ,地崩れ・液状化に対応する具体的な「緩衝材」を記載しておらず,本件発明を当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載していないから,平成11年法律第160号による改正前の特許法36条4項に規定する要件を満たしていない。 4 審決の理由の要点 (1) 無効理由B(明確性要件違反)について ア 「地盤に起因する欠点」について 本件発明の「地盤に起因する欠点」という用語は,通常, 「地震,地崩れ,局所的な液状化」以外の欠点も含むと解されるところ,本件明細書においては通常の意義と異なる「地震,地崩れ,局所的な液状化」のみが記載されており,本件明細書全体を見ても,この「地震,地崩れ,局所的な液状化」以外の欠点を含むか否かが不明であるため,本件発明が不明確なものとなっている。 イ 「緩衝材」について 本件発明の「緩衝材」は, 「テーブルが既存の地盤との関連を断つ」という技術的意義を有しているが,本件明細書には「砕石,ゴム,発泡スチロール,砂などの緩衝材を介在させることによって耐震性を得る」 (【0012】 , )「地形が変動して平衡を欠いても,流動性を有する緩衝材を使用することによって,また緩衝材を低い箇所に補うことによって平準化が容易にできる」 (【0014】 と記載されているのみ )である。このうち前者の「耐震性」については,既存の地盤の振動がテーブルに直接伝わらないように関連を断つという技術的意義が導き出せるものの, 「平準化」については,どのようにして「テーブルが既存の地盤との関連を断つ」という働き・役割を果たすのか不明である。 【0014】の記載を普通に解釈すれば,地形が変動して平衡(水平)を欠いた部分に, 「緩衝材」を流動させて補填することによって平準化(水平)を回復すること,又は「緩衝材」を新たに補充することによって平準化(水平)を回復することが想定されるが,これらの平準化は「補填」や「補充」を行うための構成を必須とするものであって, 「緩衝材」だけで自然に生ずるものではなく,他の技術的手段を必要とすることは明らかである。 また,強制的に支持工事をすることや,本件発明がテーブルと緩衝材によって構成されていることをもってしても,緩衝材が平準化の回復にどのような働き・役割を果たすのか不明といわざるを得ない。 そうすると, 【0014】の流動性を有する緩衝材に注目すると,本件明細書の記載を参照しても,緩衝材のみで「テーブルが既存の地盤との関連を断」つ機能を生ずる,本件発明の「緩衝材」を想定することができないため,本件発明は,不明確といわざるを得ない。 したがって,本件特許の請求項1の記載は,特許を受けようとする発明が明確でないから,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしているとはいえない。 (2) 無効理由C(実施可能要件違反)について 本件発明は,テーブルと地盤との中間に「緩衝材」を介在させて「テーブルが既存の地盤との関連を断って,地盤に起因する欠点に対応する」ものであるところ,本件明細書の発明の詳細な説明には,「地盤に起因する欠点」の具体例として地震,地崩れ,局所的な液状化を記載する一方(【0005】, )「緩衝材」の具体例としては地震に対応する(耐震性を得る)ための砕石,ゴム,発泡スチロール,砂などが記載されているのみであって(【0012】,地崩れや液状化に対応するための「緩 )衝材」の具体例が記載されておらず,地崩れ・液状化に対応する「緩衝材」の有する作用及び効果が生ずる技術的根拠が,何ら具体的に記載されていない。 また,発明の詳細な説明には,地形が変動して平衡を欠いた場合に対応するため「流動性を有する緩衝材」を使用することも一応記載されているが,抽象的・機能的に記載されているだけで,具現すべき材料が不明である。被請求人(原告ら)は,答弁書において「流動性を有する緩衝材」として, 「砂」や「水」を挙げているものの, 「砂」や「水」が地崩れ・液状化に対してどのように作用して緩衝材としての効果を奏するのかについて具体的な説明がないため,本件発明の実施ができない。流動性を有する緩衝材にあっては,他の技術手段があって初めて発明の目的を達成し得るものであって,請求項記載の構成のみでは発明の目的を達成し得ない,すなわち,本件発明を実施し得ないものである。 よって,本件明細書の発明の詳細な説明には, 「地盤に起因する欠点」のうち地震に対応する実施の形態は記載されているものの, 「地盤に起因する欠点」に含まれる地崩れや液状化に対応する実施の形態については,当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に説明されていない。 したがって,本件特許は,平成11年法律第160号による改正前の特許法36条4項に規定する要件を満たしているとはいえない。 (3) 無効理由@(新規性欠如)及びA(進歩性欠如)について ア 引用発明について 甲1には,以下の甲1発明が記載されている。 「地盤に上方向に開放されたくぼみ部が設けられ,このくぼみ部の対向する一組の両側壁に支持台が設置され,これら支持台に載置部がそれぞれ設けられ,これら載置部は,断面L字状に形成されるとともに,平面コ字型に形成され,それぞれ対向して形成され,これら載置部に複数の振動減衰体が立てられた状態で,水平方向に一列に並べられ,これら振動減衰体上に平面H型形状をなす大梁等の人工地盤の両端部が載置されていて,この人工地盤には,上下面に振動減衰体が複数配列され,上面の振動減衰体上に建築構造物が載置されていて,複数の振動減衰体上に人工地盤が載置されているため,水平方向及び上下方向の振動を吸収することができ,地盤の振動を人工地盤に直接伝えることなく,地盤の振動を減衰して人工地盤に伝えることができる地震時の制振対策工法。」 イ 一致点及び相違点【一致点】「テーブルを地盤上に設置し,前記テーブルの上部に,立設された建築物や道路,橋などの構造物,または,人工造成地を配置する制振対策工法であって,前記テーブルと地盤の中間に介在する緩衝材を設け,前記テーブルが既存の地盤との関連を断つようにした制振対策工法。」【相違点1】 地盤上に設置するテーブルが,本件発明では鉄骨などの構造材で強化,形成されたテーブルであるのに対し,甲1発明では,平面H型形状をなす大梁等の人工地盤である点。 【相違点2】 本件発明では,テーブルが既存の地盤との関連を断って,地盤に起因する欠点に対応するようにしたのに対し,甲1発明では,人工地盤は,地盤の振動を直接伝えることなく,地盤の振動を減衰して伝える点。 【相違点3】 制振対策工法が,本件発明は「地盤強化工法」であるのに対し,甲1発明では「地震時の制振対策工法」である点。 ウ 無効理由@(新規性欠如)についての判断 以下のとおり,相違点1〜3は,実質的な相違点ではなく,本件発明は,甲1発明と同一であり,新規性を欠く。 (ア) 相違点1について 本件発明の「テーブル」は, 「卓」のようにその上に物体を載せる物を意味するものと解される。 甲1の「人工地盤」は,その上部に建築構造物を載せる機能において,テーブルに相当するものである。また,甲1発明の「大梁」は,その代表的態様として鉄骨が挙げられるものであり,構造材であることが自明であるので,甲1発明の「平面H型形状をなす大梁等の人工地盤」の形状が「平面H型形状」のものであっても,その構成及び機能において,本件発明の「鉄骨などの構造材で強化,形成されたテーブル」に相当するものであるから,本件発明の「鉄骨などの構造材で強化,形成されたテーブル」と,甲1発明の「平面H型形状をなす大梁等の人工地盤」は,表現上の差異が存在するにすぎず,相違点1は実質的な相違点ではない。 (イ) 相違点2について 甲1発明では,地盤の振動を減衰して人工地盤に伝えるのに対し,本件明細書の発明の詳細な説明の【0005】【0015】において「地盤に起因する欠点」と ,して「地震,地崩れ,局所的な液状化」が例示され,本件発明はこれらの例示に対応するものであるから,本件発明の「テーブルが既存の地盤との関連を断って地盤に起因する欠点に対応するようにしたこと」は,上記のような地盤の振動に対応するようにしたと理解されるものであって,技術的に甲1発明の「地盤の振動を減衰して人工地盤に伝える」ことと同じことと解される。そうすると,相違点2は実質的な相違点とはいえない。 (ウ) 相違点3について 甲1発明の「地震時の制振対策工法」は, 「水平方向及び上下方向の振動を吸収することができ,地盤の振動を人工地盤に直接伝えることなく,地盤の振動を減衰して人工地盤に伝えることができる」ものであり,一方,本件発明の「地盤強化工法」も,本件明細書の【0005】の「【作用】上記構成の地盤強化工法によれば,鉄骨などの構造材で強化され,テーブルを地盤上に形成し,前記テーブルの上部に,建築物や道路,橋,などの構造物,または,人工造成地を配置するようにしたので,テーブルが既存の地盤の関連を絶って,用地固有の欠点を解消することによって,地層,地形,地質,人工造成地に起因する地震,地崩れ,局所的な液状化から都市,街区,埋立地を改善できる。」ものである。そうすると,両者は,地震時における役割に差違はないから,その限りにおいて,甲1発明の「地震時の制振対策工法」と,本件発明の「地盤強化工法」とは,実質的な相違点とはいえない。 エ 無効理由C(進歩性欠如)についての判断 (ア) 仮に,本件発明と甲1発明とが,「地盤上に設置するテーブルが,本件発明では鉄骨などの構造材で強化,形成された『扁平な板状』のテーブルであるのに対し,甲1発明では,平面H型形状をなす大梁等の人工地盤である点。」(相違点1’)において相違したとしても,甲1に記載されていると考えられる「厚みのある矩形の板状の形状である人工地盤」の形状は,扁平な板状であってテーブル形状ということができるものであり,それは,甲1発明の「平面H型形状をなす大梁等の人工地盤」の例として,又は,対応するものとして甲1に記載されたものであるので,甲1発明において「厚みのある矩形の板状の形状である人工地盤」を採用して,本件発明の相違点1’に係る構成をすることは当業者が容易に想到し得たことである。 本件発明のテーブルが,鉄骨などの構造材で強化して,形成されたものであるとしても,建築分野において桁等の構造材による板材の補強が常套手段ともいえるものである以上,そのようにすることも,当業者が容易に想到し得たことである。 また,本件発明の作用効果は,甲1発明及び甲1に記載の技術事項から,当業者が容易に予測し得る程度のことである。 したがって,本件発明は,甲1発明及び甲1に記載の技術事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 (イ) 被請求人らは,本件発明が「都市,街区を保護する」ものであると審判答弁書等で主張しているが,特許請求の範囲の記載に基づかない主張であり,その前提において失当である。 また,仮に,本件発明が「都市,街区を保護する」ものと限定して解釈し, 「テーブルの上部に,本件発明は『立設された建築物や道路,橋などの構造物,または,人工造成地』を配置しているのに対し,甲1発明は『建築構造物』が載置される点。」(相違点ア)が相違点になるとしても,甲1では,「本発明は,各種建築構造物や土木構造物等が設置される人工地盤」と記載されているように,道路,橋などの土木構造物も対象とすることを想定しているといえるから,甲1発明の「建築構造物」に加えて土木構造物も対象とすると,建築構造物と土木構造物の集合体となり,また,それらの構造物を構築するための土地として人工造成地も必要とされることから,甲1発明の「建築構造物」に加えて甲1記載の土木構造物や人工造成地も対象として,本件発明の相違点アの構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。 |
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原告ら主張の審決取消事由
1 取消事由1(明確性要件の判断の誤り) (1) 「地盤に起因する欠点」について 審決は,特許請求の範囲にも,発明の詳細な説明にも,地盤の有する物理的な欠点,化学・生物的な欠点,地学的な欠点等,地盤に起因する他の欠点は何ら記載されていないことを理由に「地盤に起因する欠点」が明確ではないとするが,誤りである。 本件明細書の【発明の詳細な説明】には,「地盤に起因する欠点」に関して,「地層,地形,地質,人口造成地に問題があるとき」【0002】, ( )「その他の環境との干渉」【0010】, ( )「地形が変動」【0014】, ( )「不均衡な場合」【0014】, ( )「地盤の地層,地形,地質,造成による欠点」【0015】 ( )などの記載がある。これらの「地震,地崩れ,局所的な液状化」は, 「地盤に起因する欠点」の限定的な記載ではなく,例示的な記載であって, 「地盤に起因する欠点」の用語が通常有する「地盤の物理的な欠点,化学・生物的な欠点,地学的な欠点」の意義を含んでいると解すべきである。 また,「地盤に起因する欠点」の用語に,「地震,地崩れ,局所的な液状化」以外の欠点,すなわち「地盤の物理的な欠点,化学・生物的な欠点,地学的な欠点」を含むのは,公知の知見である。したがって,本件特許の特許請求の範囲や発明の詳細な説明に「地盤に起因する欠点」について例示されている「地震,地崩れ,局所的な液状化」以外の欠点の記載がないとの理由をもって,本件発明が不明確であると判断するのは,誤りである。 (2) 「緩衝材」について 審決は, 「平準化」については,どのようにして「テーブルが既存の地盤との関連を断つ」という働き・役割を果たすのか不明であるとする。しかし,これは,審決が,本件明細書の【0014】に記載されている「その他」「地形が変動して平衡 ,を欠いても,流動性を有する緩衝材を使用することによって,また緩衝材を低い箇所に補うことによって平準化が容易にできる。あるいは強制的に支持工事を,テーブルを対象にすることによってエリアの平準化が可能になる。との記載について誤 」解をしたことによるもので,このような問題設定は無意味である。 すなわち,本件特許の特許請求の範囲には, 「テーブル」と「緩衝材」との構成によって「地盤に起因する欠点に対応する」と記載されており, 「その他」「地形が変 ,動して平衡を欠いた」場合の対処は,応用例の一つであって,本件発明の技術的意義とは無関係であり,本来記載する必要のないものである。したがって,この記載に不備があったとしても,本件特許の請求項が不明確であると判断するのは誤りである。 付言すれば,当該記載そのものに不備はなく,当業者の常識によって十分に理解可能である。本件明細書記載の(イ) 「流動性を有する緩衝材を使用することによって」(ロ) , 「また緩衝材を低い箇所に補うことによって」(ハ) , 「強制的に支持工事を,テーブルを対象にすることによって」の技術的意義は,次のとおりである。 (イ) 「流動性を有する緩衝材を使用」すれば,非平衡が軽度の場合は,テーブルの重量負荷によって物理的に「流動性を有する緩衝材」の自然的作用で緩衝材の分布は均一となり,非平衡は改善される。 (ロ)緩衝材が流失している箇所があれば,加圧して補充することによって上記(イ)の流動性を有する緩衝材の自然的作用により,非平衡が改善される。 (ハ)また,テーブルを対象にジャッキなどで平準化し(イ)及び(ロ)の作用を補助すれば改善でき,こうしたことは当業者の常識であり,従来技術で可能であって,詳細を解説する必要はないものである。 以上により,本件特許の請求項が明確性を欠くとした審決の判断は,誤りである。 2 取消事由2(実施可能要件の判断の誤り) 審決は,地崩れ・液状化に対応するための「緩衝材」の具体例が記載されていないとするが, 【0012】に「砕石,ゴム,発泡スチロール,砂などの緩衝材」と記載されており,緩衝材として用いられるのは,砕石,ゴム,発泡スチロール,砂などのいずれでもよく,その併用でもよい。そして, 【0012】に「テーブルを設計して,砕石,ゴム,発泡スチロール,砂などの緩衝材を介在させることによって耐震性を得ることができ,」と記載されており,テーブルと緩衝材によって,耐震性を含め地崩れ・液状化に対応する作用・効果が生ずる技術的根拠が記載されている。 また,地形が変動して平衡を欠いた場合に対応するための作用は,緩衝材の砂のみによって得るのではなく, 【0012】に記載されているとおり,テーブルと砂の構成によって,本件発明の作用・効果を奏するものである。そして,地崩れや液状化に対応する実施に用いられる公知の技術は,本件発明に固有の技術ではないから,請求項や本件明細書の発明の詳細な説明にその記載がなくても,当業者が実施をすることができる。 したがって,実施可能要件を欠くとした審決の判断は,誤りである。 3 取消事由3(新規性判断の誤り) (1) 一致点の認定の誤り ア 審決は,本件発明は, 「テーブル上に建築物等の構造物を配置した構成も含んでいる」と解しているが,以下のとおり,誤っている。 本件発明の「建築物や道路,橋などの構造物,または,人口造成地」は,建築物,道路,橋などによって構成される都市,街区の意義であり,人口造成地は複数の住棟の設置を予定している。したがって, 「テーブルの上部に,立設された建築物や道路,橋などの構造物…・を配置する」との記載は,常識的には, 「立設された建築物や道路,橋などの構造物,または,人口造成地」を一体的に包摂するものであって,「都市,街区」を上置ないし配置するとの意義である。 一方, 1 発明は, 甲 落下が懸念される「人工地盤」を一点において回動可能にし,人工地盤の落下による破壊を防止することを目的としているのであって,このような不安定で脆弱な「人工地盤」は,液状化や活断層などの地盤の欠点に対応することもできず,また,都市,街区を上置ないし配置することはできない。 本件発明における「人工地盤」上に都市,街区を配置することや,液状化や活断層などの地盤の欠点に対応するとの技術的思想は, 1 発明の技術的思想と相違し, 甲発明の本質的部分が異なる。 審決の認定した一致点は,本件発明を局所的な「制震対策工法」と同一視している点において誤りであり,本件発明と甲 1 発明は実質的に相違するものである。 イ 被告は, 「建築物や道路,橋などの構造物,または,人口造成地」を, 「建築物や道路,橋などの構造物」と「人口造成地」とが選択的に並列されたものと主張するが,誤りである。 「建築物・・・・などの構造物」と「人工造成地」とは, 「または」で接続されているが,これは, 「都市」「街区」をどのような要素によって構成するかの設計の時 ,機の自由度を付加したもので,実際にも,各要素は時機を違えて順次配置されることが現実的であり,また「テーブル」を設置して「都市」「街区」がデザインされ ,ることもあるので, 「建築物・・・・などの構造物」と「人工造成地」との実際の技術的意義は同じであり,重複した説明をしたものである。 (2) 相違点1についての判断の誤り 本件発明は,液状化などにも対応し,都市,街区を保護し得るように「強化,形成」された「テーブル」としているのに対し,甲 1 発明の「人工地盤」の構造は,回転可能にしないと落下し,破壊されるような脆弱なものであって,ここで使われる「平面H型形状をなす大梁」も,構成としてはその程度の華著なものである。 また,本件発明の「テーブル」によって保護されるのは「都市,街区」であって,甲1発明の落下防止を目的とする発明とは機能において異なり,「目的」 「作用」 , ,「効果」において相違する。 したがって,本件発明と甲 1 発明は,実質的に相違する。 (3) 相違点2についての判断の誤り 審決は,本件発明は, 「技術的に甲 1 発明の『地盤の振動を減衰して人工地盤に伝える』ことと同じことと解される。」としているが,誤っている。 本件発明の「地盤に起因する欠点・・・」「地震,地崩れ,局所的な液状化・・・」 ,との記載は,「地盤の欠点」のすべてに対応するとの意義であって,「地震動」のみに対応することの技術的欠点を解決することを目的としている。他方, 1 発明は, 甲「地震動」のみを対象として,しかも,脆弱な「人工地盤」の破壊防止を目的にしたものである。 したがって,甲 1 発明の「制振対策」と本件発明の「地盤強化」は実質的に相違する。 (4) 相違点3についての判断の誤り 審決は, 「両者は,地震時における役割に差異はないから,その限りにおいて,甲1 発明の『地震時の制振対策工法』と本件発明の『地盤強化工法』とは実質的な相違点といえない。」としているが,誤っている。 甲 1 発明は, 「地震動」で「人工地盤」が落下して破壊されないことを目的とした「制振対策工法」であるが,本件発明は「地盤の欠点」から「都市,街区」を保護することを目的としたもので,地震動」 「 よりも,更に対応が困難な液状化や地崩れ,活断層に対応すべきであることを課題としている。 甲 1 発明と本件発明が「地震動」における役割に差異がないと解するのは誤りであって,「地震動」だけではなく,「液状化・地崩れなど」からも「都市,街区」を保護することを目的として,その作用・効果を果たす本件発明は,実質的に甲 1 発明と相違する。 本件発明は,甲1発明とは異なり,落下が懸念される「人工地盤」を保護するために「回動可能」にしたことを特徴とする発明ではなく, 「都市,街区」を「地盤の欠点」から保護することを特徴とする発明であって,甲1発明と本件発明は明らかに異なる発明である。 4 取消事由4(進歩性判断の誤り) (1) 本件発明の審査過程において引用された特開平4-269215号公報は,本件発明と同じく「都市,街区」を保護するものであるが,その明細書の中で,「甲 1 発明などの従来技術」では「軟弱地盤上に建築物を構築すれば,地震時に地盤が不同沈下することも考えられており」【0006】 ( )として,「甲1発明など」が前世代の発明であることが指摘されている。これが本件発明の出願時における当業者の常識である。 特開平4-269215号公報と本件発明は, 「甲 1 発明など」の前世代の技術の欠点を克服するために発明されたのであって,本件発明と「甲 1 発明など」では,本質的部分に関わる構成においても,また,目的,作用・効果においても相違し,本件発明を考案するときに「甲 1 発明など」から何らかのヒント(示唆)を得ることや,参考にすることなどはない。 (2) 審決は,本件発明の作用効果について,甲1発明及び甲1に記載の技術事項から当業者が容易に予測し得る程度のことであると認定しているが,甲1発明及び甲1に記載の技術事項から当業者が容易に予測し得ると断定するのは,いわゆる「後知恵」的な判断である。 |
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被告の反論
1 取消事由1に対し (1) 「地盤に起因する欠点」について 本件明細書には, 「地震,地崩れ,局所的な液状化」以外の「地盤に起因する欠点」は記載されていない。 原告らの指摘する【0002】及び【0015】の記載は,地震を,【0014】の記載は,地崩れを示唆するものであり,また, 【0010】の記載は,(周囲の建 「物)その他の環境との干渉」という地盤に起因しない欠点を示唆するものであるから,いずれも「地震,地崩れ,局所的な液状化」以外の地盤に起因する欠点を示唆するものとはいえない。審決は,上記各記載を看過したわけではなく,これらの記載を踏まえた上で, 「地震,地崩れ,局所的な液状化」以外の欠点は記載されていないと明快に認定しているのであるから,審決の認定は正当である。 (2) 「緩衝材」について 本件明細書の【0014】の記載からすれば,本件発明の「緩衝材」にテーブルの「平準化」のための緩衝材が含まれることは明らかであるところ,本件発明の特許請求の範囲には, 「緩衝材」に「テーブルが既存の地盤との関連を断つ」という働き・役割があると明記されているから, 「平準化」と「テーブルが既存の地盤との関連を断つ」という働き・役割とは関係がないとの原告らの主張は,特許請求の範囲の記載に反するものである。 原告らは, 「流動性を有する緩衝材」の備える均一化・平準化する性質によってテーブルの「平準化」が実現できると主張しているようであるが,テーブルと地盤の中間に「流動性を有する緩衝材」を介在させれば,地形の変形によってテーブルの平衡が欠けたときに,何らの外部作用を加えなくても「流動性を有する緩衝材」の自然的作用のみによってテーブルの「平準化」が自然に回復される等ということは,当業者でなくても通常の自然法則に反していると理解できることである。 また,原告らは,緩衝材の補填・補充は公知の技術的手段をもって行うことができるから,そのような技術的手段は特定する必要がないと主張しているようであるが,特許請求の範囲には特許出願人が発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならないのであり(特許法36条5項) 技術常識を考慮する ,と発明を特定するための事項が不足していることが明らかな場合には,特許請求の範囲の記載から発明を明確に把握することができなくなり,特許要件や技術的範囲を的確に判断することができなくなる。それゆえ,審決が,他の技術的手段を必要とすることが明らかであることを根拠として,本件発明は不明確であると判断したことは正当である。 2 取消事由2に対し 原告らの指摘する「砕石,ゴム,発泡スチロール,砂など」は,地震に対応する耐震性を得るための緩衝材として記載されたものであり(【0012】参照),地崩れ・液状化に対応する緩衝材として記載されたものではない。原告らは,地震に対応する緩衝材の記載が,地崩れ・液状化に対応する作用・効果を生ずる技術的根拠となると主張しているようであるが,地震と地崩れ及び液状化とはそれぞれ全く異なる地盤の現象であり,地震に対応するための緩衝材が同時に地崩れ・液状化に対応する緩衝材としての作用・効果も生じるなどということは,本件特許の出願時の通常の技術常識に反する。本件特許の出願時の通常の技術常識に基づけば,本件明細書中の地震に対応するための「緩衝材」の記載(【0012】)から地崩れ・液状化に対応する緩衝材の具体例を導き出すことはできず,そのような作用・効果を生ずる技術的根拠も導き出すことはできないから,審決の判断は正当である。 原告らは,テーブルと「砂」とを組み合わせた構成によれば,地形が変動して平衡を欠いた場合に対応する作用・効果が得られると主張しているようであるが,上述したように,テーブルと地盤の中間に「砂」を介在させ, 「砂」の自然的作用のみによってテーブルの「平準化」が自然に回復される等ということは,通常の自然法則に反する。 したがって,本件明細書の説明だけでは当業者が本件発明の実施ができないとの審決の認定は,正当である。 3 取消事由3に対し (1) 原告らの主張3(1)に対し 本件発明は, 「テーブル」の上部に配置する構成を都市ないし街区と記載しているわけではなく, 「建築物や道路,橋などの構造物,または,人工造成地」と記載している。そして, 「または」の字句は,選択的に段階なく並列された語句を接続する場合に用いるものであるから,本件発明は, 「テーブル」の上部に「建築物……などの構造物」と「人工造成地」とのいずれかを選択的に配置するものである。この特許請求の範囲(請求項1)の記載は十分明確であって,本件発明は請求項の記載に基づいて認定されなければならないから,本件発明を請求項の記載に基づき認定し,本件発明の「建築物……などの構造物」と甲1発明の「建築構造物」とが一致していると認定した審決は,正当である。 また,仮に,本件明細書の記載を参酌したとしても,地震,地崩れ,局所的な液状化から「都市,街区,埋立地を改善できる」【0005】 ( )と記載されている一方で, 「一戸の住宅用地であってもテーブルを造作して,その上部に庭を含む用地を確立する」【0009】 ( )とも記載しており,「テーブル」の上部に都市,街区を配置するだけでなく一戸の住宅用地を配置することも記載しているから, 「テーブル」の上部に都市,街区を配置する場合に限定して本件発明を解釈することはできない。 したがって,本件発明の「建築物……などの構造物」と甲1発明の「建築構造物」とが一致しているとした審決の認定に,何らの誤りはない。 (2) 原告らの主張3(2)に対し 前記(1)のとおり,本件発明を都市,街区を上部に配置するような「テーブル」に限定して解釈することはできないから,都市,街区を保護し得るように強化,形成された「テーブル」に限定して解釈することもできない。請求項の記載に基づけば,本件発明の「テーブル」は, 「建築物……などの構造物」を配置する場合を含んでおり,その機能において「建築構造物」を上部に配置する甲1発明の「人工地盤」との実質的な差異は存在しない。 また,同様に,請求項の記載に基づけば,本件発明の「鉄骨などの構造材で強化,形成されたテーブル」は,その構造において甲1発明の「大梁等の人工地盤」に相当しており,構造においても甲1発明の「人工地盤」との実質的な差異は見出せない。 (3) 原告らの主張3(3)に対し 地崩れ・液状化に対応する本件発明の構成が明確かつ十分に記載されていない以上,地崩れ・液状化について本件発明と甲1発明とにいかなる構成の差異があるのかが不明であって,そのような差異が実質的な相違点であるか否かを判断することもできない。 本件発明は,地崩れ・液状化に対応するものではなく,地震動に対応する実施の形態を含んでいるから,その限りにおいて,本件発明の「テーブルが既存の地盤との関連を断って,地盤に起因する欠点に対応する」ことと甲1発明の「地盤の振動を減衰して人工地盤に伝える」こととの差異を検討し,両者の差異は実質的な相違点とはいえないとした審決の判断は,正当である。 (4) 原告らの主張3(4)に対し 本件明細書に説明されている地震動に対応する実施の形態について,本件発明の「地盤強化工法」と甲1発明の「制振対策工法」とで地震時における役割に差異はないから,審決は,その限りにおいて,両者の差異は実質的な相違点ではないと判断しているのであり,誤りはない。 4 取消事由4に対し 原告らが指摘する特開平4-269215号公報は,甲1について何ら言及しておらず,前世代の技術とはいかなるものであるかについても何ら記載していない。 甲1発明が前世代の技術であることが同公報に指摘されているとの原告らの主張は,明らかに事実に反する。 また,原告らは,甲1中に本件発明を考案することに関するヒント(示唆)がないと主張しているが,特許法29条2項(進歩性要件)は,本件発明と対比すべき発明(引用発明)を,「前項各号に掲げる発明」,すなわち「特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明」等と規定しているのであって,本件発明の考案を示唆する発明等と規定しているわけではない。 さらに,原告らのいう本件発明の本質的部分とはいかなる部分であるのか不明であり,いかなる点で相違しているのかも不明である。前述したとおり,原告らは,液状化・地崩れなどの地盤の欠点を解消する作用効果を備えることで都市,街区を保護することが本件発明の本質的部分であるとも主張しているが,請求項の記載に基づかない主張である。 加えて,本件発明の作用効果について,甲1発明及び甲1に記載の技術事項から当業者が容易に予測し得る程度のことであると認定した審決の判断にも,誤りはない。 |
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当裁判所の判断
1 本件発明について (1) 本件明細書には,以下の記載がある。 【0001】【産業上の利用分野】本発明は,地盤強化工法に関し,特に,地震動や液状化から建築構造物などを保護するための地盤強化工法に関するものである。 【0002】【従来の技術】建築構造物の免震装置として,例えば,特開平2-285176号公報にその例が開示されており,この種の装置は,通常,局所的な強化にとどまっていた。 しかし,地層,地形,地質,人工造成地に問題がある時に,局所的な強化だけでなく,広い範囲で安定した地盤にすることが望まれる。そこで,例えば,特開平4-269215号公報には,地盤中に免震構造体を構築して,構造物が立設されている地域ごとの免震を行うことが提案されている。ところが,このような従来の免震地盤には,以下に説明する技術的な課題があった。 【0003】【発明が解決しようとする課題】すなわち,特開平4-269215号公報に開示されている免震地盤では,免震構造体の下端が開口されているので,直下型地震に対応することが困難な状況になっていた。 本発明は,このような従来の問題点に鑑みてなされたものであって,その目的とするところは,直下型地震に対しても有効に機能する安定した地盤が得られる地盤強化工法を提供することにある。 【0004】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために,本発明は,鉄骨などの構造材で強化され,前記テーブルの上部に,立設された建築物や道路,橋,などの構造物,または,人工造成地を配置する地盤強化工法であって,前記テーブルと地盤の中間に介在する緩衝材を設け,前記テーブルが既存の地盤の関連を断って地盤に起因する欠点に対応するようにしたことを特徴とする。 【0005】【作用】上記構成の地盤強化工法によれば,鉄骨などの構造材で強化され,テーブルを地盤上に形成し,前記テーブルの上部に,建築物や道路,橋,などの構造物,または,人工造成地を配置するようにしたので,テーブルが既存の地盤の関連を絶って,用地固有の欠点を解消することによって,地層,地形,地質,人工造成地に起因する地震,地崩れ,局所的な液状化から都市,街区,埋立地を改善できる。 【0006】【発明を実施するための最良の形態】以下,本発明の好適な実施例について,添付図面を参照して詳細に説明する。図1は,本発明に係わる地盤強化工法の一実施例を示している。同図は,本発明の工法を適用して構築した地盤の縦断面図であり,地盤5中には,コンクリート構造のテーブル1,2が設けられている。テーブル1,2は,鉄骨などの構造材で強化,形成されている。 【0007】テーブル1の上部には,建築物7や立木8が配置され,共用トンネル9が設けられ,道路10も配置されている。この実施例ではテーブル1,2は,地盤中の上下方向に間隔を隔てて複数層状に形成されている。下方のテーブル2と地盤との間には,緩衝材4が配置されている。テーブル1,2間には,緩衝材3が配置されている。 【0008】施工手順としては,地盤5を掘削して,掘削面上に緩衝材4を配置し,その上部にテーブル2を配置して,テーブル2上に緩衝材3を配置し,その後に,緩衝材3上にテーブル1を配置し,しかる後に,テーブル1内に基礎6を設けて,建築物7を築造する。 【0009】テーブルは,造成地,街区,建築物の規模に制約されない限り,許容される最大範囲のサイズにすることができる。道路,橋,高架道路,地下道,鉄道や,上水道,下水道,ガス,電気,通信用パイプなどの設備を前提としてテーブルが造作されることが望ましく,最小の規模であっても,例えば一戸の住宅用地であってもテーブルを造作して,その上部に庭を含む用地を確立することがよい。 【0010】テーブルに側壁を設ける例においては,独立性を確保し,周囲の建築物,その他の環境との干渉による問題を解消する。 【0011】テーブルの付加的な施設として,共用トンネル9,緑化土壌,人口河川,人口湖水等を設けることもできる。 【0012】テーブルを設計して,砕石,ゴム,発泡スチロール,砂などの緩衝材を介在させることによって耐震性を得ることができ,テーブルを複葉にして,横揺れ,縦揺れなどに対応する緩衝材3,4を分離して使用し,分担することによって機能を重点的に強化することが可能である。 【0013】また複葉にすることによって,テーブルの破壊が防止できる。雨水などは人工河川によって処理する他,テーブルに排水口を設ける。耐震効果以外に,液状化現象に対してもテーブルによって,そのエリアを保護できる。 【0014】その他,地形が変動して平衡を欠いても,流動性を有する緩衝材を使用することによって,また緩衝材を低い箇所に補うことによって平準化が容易にできる。あるいは強制的に支持工事を,テーブルを対象にすることによってエリアの平準化が可能になる。最下葉のテーブルに対して固定施工をすることによって地崩れなどの地形変動に対応できる。造成地が削り,あるいは埋め足して形成された場合など不均質な場面にも対応できる。 【0015】【発明の効果】本発明に係わる地盤強化工法によれば,地盤の地層,地形,地質,造成による欠点,地震,地崩れによる危険から都市,街区,施設を保護することができる。 【図1】本発明に係わる地盤強化工法の施工完了状態例の縦断面図 1,2:テーブル 3,4:緩衝材 5:地盤 6:基礎 7:建築物 8:立木 9:共用トンネル 10:道 (2) 以上の記載によれば,本件発明につき,以下のことを認めることができる。 本件発明は,地盤強化工法に関し,特に,地震動や液状化から建築構造物などを保護するための地盤強化工法に関するものである(【0001】。 ) 地層,地形,地質,人工造成地に問題がある時に,局所的な強化だけでなく,広い範囲で安定した地盤にするため,従来,地盤中に免震構造体を構築して,構造物が立設されている地域ごとの免震を行うことが提案されている(例えば,特開平4-269215号公報)が,このような従来の免震地盤には,免震構造体の下端が開口されているため,直下型地震に対応することが困難であるという課題があった(【0003】【0004】。 , ) そこで,本件発明は,上記課題を解決し,直下型地震に対しても有効に機能する安定した地盤が得られる地盤強化工法を提供することを目的とし,上記目的を達成するための手段として,鉄骨などの構造材で強化されたテーブルの上部に,立設された建築物や道路,橋などの構造物,又は人工造成地を配置する地盤強化工法であって,上記テーブルと地盤の中間に介在する緩衝材を設け,上記テーブルが既存の地盤の関連を断って地盤に起因する欠点に対応するようにした構成を採用し,これにより,テーブルが既存の地盤の関連を絶って,用地固有の欠点を解消し,地盤の地層,地形,地質,人工造成地に起因する欠点,地震,地崩れ,局所的な液状化から都市,街区,埋立地を保護する効果を奏するものである 【0004】 ( , 【0005】,【0015】。 ) 2 取消事由1(明確性要件の判断の誤り)について (1) 「地盤に起因する欠点」について 審決は,本件発明の「地盤に起因する欠点」という用語は,通常「地震,地崩れ,局所的な液状化」以外の欠点も含むものと解されるところ,本件明細書においては通常の意義と異なる「地震,地崩れ,局所的な液状化」のみが記載されており,本件明細書全体をみてもこの「地震,地崩れ,局所的な液状化」以外の欠点を含むか否かが不明であるため,本件発明が不明確なものとなっていると認定した。 そこで,検討するに,本件特許の請求項1には, 「鉄骨などの構造材で強化,形成されたテーブルを地盤上に設置し, ・・・前記テーブルと地盤の中間に介在する緩衝材を設け,前記テーブルが既存の地盤との関連を断って,地盤に起因する欠点に対応するようにしたことを特徴とする地盤強化工法。と記載されていることからすれ 」ば, 「地盤に起因する欠点」とは,地盤を弱体化させテーブルに影響を及ぼす原因となり得る事由をいうものと推測できるものの,必ずしも明らかではない。そこで,本件明細書の記載を参酌すると,【産業上の利用分野】として,「本発明は,地盤強化工法に関し,特に,地震動や液状化から建築構造物などを保護するための地盤強化工法に関するものである。( 」【0001】, ) 「・・・テーブルが既存の地盤の関連を絶って,用地固有の欠点を解消することによって,地層,地形,地質,人工造成地に起因する地震,地崩れ,局所的な液状化から都市,街区,埋立地を改善できる。」(【0005】, )「地形が変動して平衡を欠いても」【0014】,【発明の効果】 ( )「本発明に係わる地盤強化工法によれば,地盤の地層,地形,地質,造成による欠点,地震,地崩れによる危険から都市,街区,施設を保護することができる。( 」【0015】)との各記載があり,これらによれば, 「地盤に起因する欠点」とは, 「地震,地崩れ,局所的な液状化」や「地形が変動して平衡を欠いた状態」をいうものと理解することができる。 したがって,請求項1の「地盤に起因する欠点」との記載が明確性要件を欠くと認めることはできない。 (2) 「緩衝材」について 審決は, 「緩衝材」について,耐震性に関しては,緩衝剤が既存の地盤の振動がテーブルに直接伝わらないように関連を断つという技術的意義が導き出せるものの,「地形が変動して平衡を欠いても,流動性を有する緩衝材を使用することによって,また緩衝材を低い箇所に補うことによって平準化が容易にできる」 (【0014】 こ )とについては,緩衝材のみで「テーブルが既存の地盤との関連を断」つ機能を生ずる,本件発明の「緩衝材」を想定することができないため,本件発明が不明確である旨認定した。 しかし,【0012】の記載から,緩衝材は,「砕石,ゴム,発泡スチロール,砂など」からなることが明らかにされており,【0014】の記載からみて,「地形が変動して平衡を欠いた状態」において,流動性を持つ緩衝材を使用したり,低い箇所に緩衝材を補ったりすることが示されていることからすれば, 「緩衝材」は,これにより「平準化」することが実施可能であるかはともかく,前記技術思想を実現するための構成部材の一つとして把握される限りにおいて,その文言自体として明確性要件を欠くものではない。 (3) したがって,本件特許の請求項1の記載が明確性要件を欠くとした審決の判断には誤りがあり,原告らの取消事由1には理由がある。 3 取消事由3(新規性判断の誤り)について (1) 甲1発明について 甲1によれば,甲1発明について,以下のとおり認められる。 甲1発明は,各種建築構造物や土木構造物等が設置される人工地盤における,特に,地震時の制振対策として採用された場合に好適な制振人工地盤に関するものである( 【0001】。 ) 人工地盤上に構築された構造物の制振対策として,地盤振動に伴う構造物の振動は,構造物が設置された人工地盤を振動減衰装置により抑制している。この振動減衰装置を構造物等に設ける振動抑制の具体例としては,地盤とその上の人工地盤とに,ゴム積層構造,オイルダンパー,履歴ダンパー等の振動減衰装置を多数取り付けていた(【0002】。 ) しかし,地震時に振動減衰装置にねじり回転による力がかかると,振動減衰装置がねじり回転によってひきちぎられたり,人工地盤自身に応力が集中し,人工地盤が破壊されるおそれを生じるという問題があった 【0003】。 ( ) 甲1の請求項1記載の発明は,これを解決するため,地盤上に複数の振動減衰体が載置され,これら振動減衰体上に人工地盤が載置され,人工地盤の一軸線回りの回転を自在にする回転支持部材が地盤と人工地盤との間に取り付けられていることを特徴とするものである(【請求項1】【0005】。 , ) 甲1発明は,請求項1に係る発明の第2実施例を基礎とし,回転支持部材の構成を含まない,振動減衰体による振動抑制を技術思想とする制振人工地盤に関するものであり,具体的には, 「地盤に上方向に開放されたくぼみ部が設けられ,このくぼみ部の対向する一組の両側壁に支持台が設置され,これら支持台に載置部がそれぞれ設けられ,これら載置部は,断面L字状に形成されるとともに,平面コ字型に形成され,それぞれ対向して形成され,これら載置部に複数の振動減衰体が立てられた状態で,水平方向に一列に並べられ,これら振動減衰体上に平面H型形状をなす大梁等の人工地盤の両端部が載置されていて,この人工地盤には,上下面に振動減衰体が複数配列され,上面の振動減衰体上に建築構造物が載置されていて,複数の振動減衰体上に人工地盤が載置されているため,水平方向及び上下方向の振動を吸収することができ,地盤の振動を人工地盤に直接伝えることなく,地盤の振動を減衰して人工地盤に伝えることができる地震時の制振対策工法。 (図6参照)とする 」ものである。甲1発明の人工地盤には,上下面に振動減衰体が複数配列され,上面の振動減衰体上に建築構造物が載置されており,第1実施例と同様に,その震動減衰体は,水平方向及び上下方向の振動を吸収でき(【0016】,地震等により地盤 )2が振動した場合,すなわち,並進運動の振動の場合,地盤2から支持台6,6に振動が伝達し,この支持台6,6の振動が人工地盤25を支持する複数の振動減衰体8に伝達し,これら振動減衰体8では,内部に嵌合された円柱状鉛プラグにより振動が減衰され,これら振動減衰体8により減衰された振動が土木構造物からなる人工地盤25に伝わり,この土木構造物からなる人工地盤25の振動が振動減衰体8により更に減衰して建築構造物からなる人工地盤29に伝達することによって,地盤の振動を減衰して人工地盤に伝えることができるものである(【0021】。 )【図6】本発明の制振人工地盤の第二実施例の縦断面図 2:地盤 3:くぼみ部 4:両側壁 6:支持台 8:振動減衰体 23:制振人工地盤 24:載置部 25:人工地盤 26:側壁 27:弾性体 28:間隙 29:人工地盤(建 築構造物) 30:回転支持部材 (2) 原告らの主張3(1)(一致点の認定の誤り)について ア 原告らは,本件発明の「建築物や道路,橋などの構造物,または,人口造成地」との文言について, 「建築物や道路,橋などの構造物」 「人口造成地」 と は,一体的に包摂するものであって,いずれも「都市,街区」と同義を規定したものであり,本件発明のテーブルは,都市,街区を上置ないし配置するものであるのに対し,甲1発明の人工地盤は,これらを上置ないし配置することはできないから,この点において相違する旨主張する。 しかし,本件発明の「立設された建築物や道路,橋などの構造物,または,人工造成地」は,その文章の構造からみて, 「立設された建築物や道路,橋などの構造物」と「人工造成地」との語句が「または」の接続詞によって選択的に並列されたものであり,前者である「立設された建築物や道路,橋などの構造物」は, 「立設された建築物の構造物」か「道路の構造物」か「橋などの構造物」を意味すると解される。 したがって,「建築物や道路,橋などの構造物,または,人口造成地」を,建築物,道路,橋などによって構成される一体的な「都市,街区」のみを意味するものと限定して捉えることはできない。これは,本件明細書に, 「・・・最小の規模であっても,例えば一戸の住宅用地であってもテーブルを造作して,その上部に庭を含む用地を確立することがよい。( 」【0009】)と記載されており, 「一戸の住宅用地」もテーブルの上部に配置することを対象としていることにも裏付けられる。さらに,本件明細書の【課題を解決するための手段】における「前記テーブルの上部に,立設された建築物や道路,橋,などの構造物,または,人工造成地を配置する地盤強化工法」【0004】 ( )との記載,【作用】の欄における「前記テーブルの上部に,建築物や道路,橋,などの構造物,または,人工造成地を配置する」【0005】 ( )との記載からも, 「・・・構造物」は「人工造成地」と並列しており,これらが一体的にのみ把握され, 「都市,街区」のみを示すと解することはできない。加えて,原告ら自身が,訴状17頁において,本件発明がテーブル上に都市,街区を配置した構成に限られるものではなく,テーブル上に建築物等の構造物を配置した構成をも含んでいることを自認していたことからも,このような限定がなされるものではないことが明らかである。 したがって,原告らの上記主張は,本件発明のテーブルに載置される「建築物や道路,橋などの構造物,または,人口造成地」が,都市,街区に限られるとする点で,特許請求の範囲に基づかない主張であって,採用することはできない。 そして,甲1発明は,前記(1)に記載されたとおりのものであるところ,甲1発明における建築構造物29は,本件発明における「立設された建築物の構造物」に相当し,甲1発明において,人工地盤の上に設置されるものが, 「各種建築構造物や土木構造物等」(甲1の【0001】)であるので,この「各種建築構造物や土木構造物等」は,本件発明における「立設された建築物や道路,橋などの構造物」に相当するものと認められる。 そうすると,本件発明は,テーブルの上部に載置するものとして「建築構造物」や「土木構造物」を含む以上,甲1発明において,都市,街区を配置できるか否かにかかわらず,本件発明と甲1発明の一致点が, 「テーブルを地盤上に設置し,前記テーブルの上部に,立設された建築物や道路,橋などの構造物,または,人工造成地を配置する制振対策工法」とした審決の認定に誤りはない。 イ また,原告らは,甲1発明について,落下が懸念される「人工地盤」を一点において回動可能にし,人工地盤の落下による破壊を防止することを目的するもので,甲1発明の技術的思想と発明の本質的部分が異なっている旨主張する。 この点,原告らは,審決のした引用発明(甲1発明)の認定を認めていることから,必ずしも明らかではないものの,仮に,甲1に記載された発明が回動可能な構成を特徴としているにもかかわらず,甲1発明の認定においてこの点を考慮していないことを論難するものと解したとしても,以下のとおり,採用できない。 確かに,甲1の請求項1に記載された発明は,前記(1)に記載したとおり,地震時に振動減衰装置にねじり回転による力がかかると,振動減衰装置が破壊され,人工地盤が破壊されることから,これを解決するために,人工地盤の一軸線周りの回転を自在にする回転支持部材を設けたことを特徴とするものである。 しかし,特許法29条1項3号に規定されている「刊行物に記載された発明」は,特許出願人が特許を受けようとする発明の新規性,進歩性を判断する際に,考慮すべき一つの先行技術として位置付けられるものであって, 「刊行物」が特許公報等である場合に,必ず当該特許公報等の請求項における発明特定事項を認定しなければならないものではない。本件においては,前記のとおり,甲1からは,甲1発明の技術的思想が読み取れるものであるから,引用発明の認定に誤りはない。 そうすると,甲1発明においては,人工地盤を回転可能にする回転支持部材は,その構成に含まれていないから,この点において相違することを前提とした原告らの主張は,そもそも失当である。 (3) 原告らの主張3(2)(相違点1についての判断の誤り)について 原告らは,本件発明は,液状化などにも対応し都市,街区を保護し得るように「強化,形成」された「テーブル」としているのに対し,甲 1 発明の「人工地盤」の構造は,回転可能にしないと落下し,破壊されるような脆弱なものであって,ここで使われる「平面H型形状をなす大梁」も,構成としてはその程度の華著なものであるから,実質的に相違する旨主張する。 しかし,本件発明の「立設された建築物や道路,橋などの構造物,または,人工造成地」 都市, が, 街区に限られないことは,前記(2)において述べたとおりであり,原告らの主張は,その前提を欠いている。 また,本件発明の「テーブル」について,その請求項には, 「鉄骨などの構造材で強化,形成された」との特定がなされているにすぎないものである。一方,甲1発明の「人工地盤」は, 「平面H型形状をなす大梁等の人工地盤」であり,その「人工地盤」の上に「建築構造物」が載置される構成であるところ,建築構造物を支える部材を鉄骨とし,構造材で形成することは自明であると認められる。そうすると,本件発明について,そのテーブルの強度に関する特定がないことからすれば, 「鉄骨などの構造材」で形成される甲1発明に対し,強度の面で相違するものとは認められない。 したがって,甲1発明における「平面H型形状をなす大梁等の人工地盤25」は,本件発明における「鉄骨などの構造材で強化,形成されたテーブル」に相当するとし,相違点1は実質的なものではないとした審決の認定に誤りがあるとはいえない。 (4) 原告らの主張3(3)(相違点2についての判断の誤り)について 原告らは,本件発明の「地盤に起因する欠点・・・」「地震,地崩れ,局所的な ,液状化・・・」との記載は「地盤の欠点」のすべてに対応するとの意義であって,「地震動」のみに対応することの技術的欠点を解決することを目的としているが,甲 1 発明は, 「地震動」のみを対象として,しかも,脆弱な「人工地盤」の破壊防止を目的にしたものであるから,甲 1 発明の「制振対策」と本件発明の「地盤強化」は実質的に相違する旨主張する。 しかし,原告らも,本件発明の「地盤に起因する欠点」の一つに地震が含まれることは認めており,本件発明は,前記1に述べたとおり,従来の免震地盤には,免震構造体の下端が開口されているため,直下型地震に対応することが困難であるという課題があったことから,上記課題を解決し,直下型地震に対しても有効に機能する安定した地盤が得られる地盤強化工法を提供することを目的とするものであり,【0012】に「テーブルを設計して,砕石,ゴム,発泡スチロール,砂などの緩衝材を介在させることによって耐震性を得ることができ,テーブルを複葉にして,横揺れ,縦揺れなどに対応する緩衝材3,4を分離して使用し,分担することによって機能を重点的に強化することが可能である。 とあるように, 」 地盤と建築物等との間にテーブル及び緩衝材を設けることにより,地盤からの地震動を減衰させて建築物等へ伝えることにより耐震性を得るという,制震対策の機能を有するものである(このこと自体は原告らも争うものではないと解される。。 ) そうすると, 「地盤に起因する欠点」に地震が含まれる以上,本件発明と引用発明は,制震対策の点において一致しているものであるから,それ以外に本件発明が地震以外の地崩れ,液状化への対応を含むか否かは,本件発明と甲 1 発明が実質的に相違するか否かとは関わりがなく,原告らの上記主張は失当である。また,脆弱な「人工地盤」の破壊防止を目的にしているとの主張についても,前記のとおり, 「人工地盤」の強度において相違があるとはいえないので,採用することができない。 (5) 原告らの主張3(4)(相違点3についての判断の誤り)について 原告らは,甲 1 発明は, 「地震動」で「人工地盤」が落下して破壊されないことを目的とした「制振対策工法」であるが,本件発明は「地盤の欠点」から「都市,街区」を保護することを目的としたもので, 「地震動」よりも,更に対応が困難な液状化や地崩れ,活断層に対応すべきであることを課題としているから,実質的に相違する旨主張する。 しかし,前記(2)のとおり,本件発明を「都市,街区」のみを保護するものと限定できないものである上,本件発明が「地震動」よりも,更に対応が困難な液状化や地崩れ,活断層に対応すべきであることを課題としているから相違するとの点についても,前記(4)と同様の理由により,採用することはできない。 また,原告らは,本件発明は,甲1発明とは異なり,落下が懸念される「人工地盤」を保護するために「回動可能」にしたことを特徴とする発明ではなく, 「都市」,「街区」を「地盤の欠点」から保護することを特徴とする発明であって,甲1発明と本件発明は明らかに異なる発明である旨主張する。 しかし,この点についても,前記(2)に述べたとおりであって,甲1の請求項1の発明が,回動可能とする構成を備えていることは,本件発明と甲1発明との対比において意味を持つものではない。 (6) 以上によれば,相違点1ないし3は,実質的なものではないとした審決の判断に誤りがあるとはいえず,したがって,本件発明と甲1発明とが同一であるとした審決の判断に誤りがあるとはいえない。 原告らは,他にるる主張するが,いずれも採用できない。 4 以上によれば,本件発明が明確性要件を欠くとした審決の判断には誤りがあり,取消事由1には理由があるが,新規性欠如により本件発明が無効であるとした審決の判断には誤りはなく,取消事由3には理由がないから,その余の点について判断するまでもなく,本件特許は無効とされるべきものであり,原告らの請求には理由がない。 |
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結論
よって,原告らの請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 |