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関連審決 不服2013-11499
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事件 平成 27年 (行ケ) 10056号 審決取消請求事件

原告X
被告特許庁長官
指定代理人石井茂和
同 木村貴俊
同 浜岸広明
同 富澤哲生
同 田中敬規
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2016/01/28
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2013-11499号事件について平成27年1月26日にした審決を取り消す。
前提となる事実
1 特許庁における手続の経緯等(争いがない事実又は文中掲記の証拠により容易に認定できる事実) 原告は,発明の名称を「器用さ獲得装置」とする発明について,平成22年10月22日を出願日とする特許出願(特願2010-251249号。以下「本願」という。)をした。原告は,平成24年12月6日付けで拒絶理由通知(乙4。以下 1 「本件拒絶理由通知」という。)を受け,平成25年1月31日付けで意見書を提出したが,同年3月18日付けで拒絶査定(乙6。以下「本件拒絶査定」という。)を受けたため,同年6月2日付けで本件拒絶査定に対する不服の審判を請求した。
特許庁は,上記請求を不服2013-11499号事件として審理した結果,平成27年1月26日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本を,同年2月18日,原告に送達した。
2 特許請求の範囲 本願の特許請求の範囲の記載(請求項の数は3)のうち,請求項1の記載は,以下のとおりである(以下,請求項1に係る発明を「本願発明」という。また,本願の明細書及び図面を併せて「本願明細書」という。 。
) 【請求項1】 本発明は,処理するデータ全てに快・不快指標値を付与して,デジタルデータ化してなり,処理要求(目的)を満たす学習データには,より大きい(高い,上位)快指標値を付与し直して,整理・統合した後,データ保存(記憶)してなり,最も大きい快指標値を持つデータを選択的に使用して,出力装置に指令を出す自律型学習システム,で動作することを特徴とする,器用さ獲得装置。
3 審決の理由 審決の理由は,別紙審決書写しに記載のとおりである。その要旨は,本願発明は,本願出願日前に頒布された刊行物である特開2009-230169号公報(乙1。
以下「引用文献1」という。)記載の発明(以下「引用発明」という。)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
(1) 審決が認定した引用発明 「提示された前提条件の下で,最適な操作パラメータセットを決定するパラメータ決定支援装置であって 任意の前提条件及び操作パラメータセットを対象装置の模擬器に設定して,該模 2 擬器を動作させる,あるいは,任意の操作パラメータセットを対象装置に設定して,該対象装置を動作させることで,操作パラメータセット及び結果評価を含む事例レコードを生成して事例レコード記録手段に出力し, 該事例レコード記録手段に記録されている全ての事例レコードが選択され, 該選択された各事例レコードに含まれている結果評価の属性と重み付けベクトルとの内積を一元化結果評価値として算出し,その一元化結果評価値を当該事例レコードに付加し, 一元化結果評価値が最も高い事例レコードを選択してその事例レコードに含まれている操作パラメータセットを推奨操作パラメータセットとする パラメータ決定支援装置。」 (2) 審決が認定した本願発明と引用発明との一致点及び相違点は,以下のとおりである。
ア 一致点 処理するデータ全てに快・不快指標値を付与して,デジタルデータ化してなり,処理要求(目的)を満たすデータには,より大きい(高い,上位)快指標値を付与して,データ保存(記憶)してなり,最も大きい快指標値を持つデータを選択的に使用して,出力装置に指令を出すシステム,で動作する器用さ獲得装置。
イ 相違点 (ア) 相違点1 本願発明は「自律型学習」システムで動作するものであり,その快指標値は付与し「直し」がされるものであり,これが付与されるデータは「学習」データである。
(これに対し,引用文献1には「自律型学習」を行う旨の直接的な言及や, 「一元化結果評価値」の付与し「直し」や「学習」を行うことについての直接的な言及はなされていない。) (イ) 相違点2 本願発明は,データを「整理・統合した後」にデータ保存(記憶)している。
3 (これに対し,引用文献1には,一元化結果評価値を付与する前に類似度に基づく事例レコードの選択をするものが開示されてはいるものの,一元化結果評価値が付与された事例レコードを「整理・統合した後」にデータ保存する旨の記載はない。。
)
原告主張の取消事由
1 取消事由1(裁量に関係しない事実認定の誤り及び事実認定の誤りに伴う審決の判断の誤り) 審決には,裁量に関係しない事実認定の誤り及び事実認定の誤りに伴う判断の誤りがある。本願発明の認定,引用刊行物例(引用公報)に記載された引用発明の認定,一致点・相違点の認定は裁量によってされるべきものではない。
(1) 本願発明は,処理するデータ全てに快 不快指標値を付与するものであって, ・快・不快の指標値の間に,快指標値をxとし,不快指標値をyとし,あらかじめ任意に設けてなる定数をCとすると,式x+y=Cが成り立ち,前記快指標値xと前記不快指標値yとは,二律背反的関係を持つことが主たる特徴になっている。
つまり,数字の「1」を,当該装置において, 「処理するデータ」として利用する場合にも,前記数字の「1」に,快・不快指標値を付与するという意味になる。本願明細書の図1からも一目瞭然である。
本願明細書の段落【0012】には, 「目標達成できる指標について,快と定義し」,「前記指標とは逆の,目的達成出来ない度は,不快と定義する」と記載されているのに対し,引用文献1には,「快」「不快」の文言や定義はなく, , 「快」「不快」の ,二律背反的関係や「不快」について全く言及できていから,審決には,一致点の認定に誤りがある。
(2) 本願発明では,処理するデータ全てに快・不快指標値を付与するから,処理するデータは,快・不快指標値を付与できるデータ構造の特徴を持つデータと快・不快指標値を付与できないデータ構造の特徴を持つデータの混在はできないのに対し,引用発明では,そのような考え方はないから,審決には,一致点の認定の誤りがある。
4 (3) 「不快」とは,回避に結びつく様々な反応を生起し,絶対に避けたい,最低限避けたいことを意味している。本願発明では, 「不快」を定義していることが明らかである。
本願発明では, 「目的の状態はあるが,前記目的に至るまでの方策が既知でない場合」において,「不快」の指標が必要であり,「不快指標値」を活用することで,異質の有効な効果を得ているのに対し,引用発明は, 「目的の状態はあるが,前記目的に至るまでの方策が既知でない場合」において,対応できないから,審決には,一致点の認定の誤りがある。つまり,引用発明では,事例レコードが無い場合は,いわゆる「何度でも同じ処理(解析)を繰り返す,対応停止(ダンマリ)状態」になるといえる。引用発明から,本願発明の作用に至るには明確に困難がある。また,被告が示す「頼光正典,「ロボット行動学習への事例ベースの適用」,情報処理学会研究報告 Vol.2000 No.66 IPSJ SIG Notes,社団法人情報処理学会,2000年7月19日,第2000巻, 85-90」 p. (乙2。
以下「引用文献2」という。)にも, 「不快指標値」活用の記載はなく, 「目的の状態はあるが,前記目的に至るまでの方策が既知でない場合」に対応できず,本願発明の作用に至るには明確に困難がある。
本願発明の上記構造がない引用例は,本願発明が解決すべき課題を有さないから,その進歩性を判断する際の先行技術とはならない。引用文献1と引用文献2には,本願発明に至る動機付けや「不快指標値」を活用することで,本願発明が異質の有効な効果を得ていることと同等の記載がなく,示唆もないから引用発明と引用文献2を組み合わせる阻害要因がある。
(4) 本願発明は,ノイマン型ではない装置であるから,引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものではない。
(5) したがって,審決には,裁量に関係しない事実認定の誤り及び事実認定の誤りに伴う判断の誤りがある。
2 取消事由2(変造) 5 本願の請求項1は,本発明は, 「 処理するデータ全てに快 不快指標値を付与して, ・デジタルデータ化してなり,処理要求(目的)を満たす学習データには,より大きい(高い,上位)快指標値を付与し直して,整理・統合した後,データ保存(記憶)してなり,最も大きい快指標値を持つデータを選択的に使用して,出力装置に指令を出す自律型学習システム,で動作することを特徴とする,器用さ獲得装置。」である。
一方,審決は, 「処理するデータ全てに快・不快指標値を付与して,デジタルデータ化してなり,処理要求(目的)を満たすデータには,より大きい(高い,上位)快指標値を付与して,データ保存(記憶)してなり,最も大きい快指標値を持つデータを選択的に使用して,出力装置に指令を出すシステム,で動作する器用さ獲得装置。」としている。
審決の認定は,原告が意図するところを正確に表す必要最小限の文言とは異なっており,変造がある。変造は禁じ手であって,審決は無効である。
3 取消事由3(本件拒絶査定に理由が付されていないこと) 特許法158条には,審査においてした手続は,拒絶査定不服審判において,その効力を有するとの規定があり,続審主義が採用されている。
特許法52条では査定は文書をもって行い,かつ,理由を付さなければならないとされる。しかし,本件拒絶査定には,方式的理由項が記載されていないし,平成25年3月18日時点での理由が具体的に記載されていない。つまり,本件拒絶査定には実質理由が記載されていない状態であるといえる。したがって,審決には,特許法52条違反があり,審決に重大な影響を与える瑕疵があるといえる。
「平成24年12月6日付け拒絶理由通知書に記載した理由」の文言は,原告にとって,拒絶理由通知書の部分的一致なのか,全て一致なのかを判読することが非常に困難である。審決に重大な影響を与える瑕疵であるといえる。なお,裁決の取消しの訴えの中で,原処分の違法(瑕疵)を主張することができ,裁決取消し時に,原処分は失効する。
6 4 取消事由4(審決の理由中の結論及びむすびの誤り) 取消事由1で主張するとおり,審決には,事実誤認に基づいた判断の誤りがあるから,その結論,まとめについても当然に無効となる。これは,手続上の誤り,事実の誤認であって,審決の判断に重大な影響を与える瑕疵である。
5 取消事由5(手続上の誤り,審決の理由中の請求人の主張についての誤り) 本件拒絶理由通知書及び本件拒絶査定には,審査官の記名はあるが,審査官等の署名・承認印はなく,真正に成立した文書であることの証明がないから,違法であるといえる。
被告の主張
1 取消事由1(裁量に関係しない事実認定の誤り及び事実認定の誤りに伴う審決の判断の誤り)について 審決に,原告のいう事実認定の誤りはなく,それに伴う判断の誤りもない。
(1) 原告が本願発明の主たる特徴であると主張する,快 不快の指標値の間に, 「 ・快指標値をxとし,不快指標値をyとし,あらかじめ任意に設けてなる定数をCとすると,式x+y=Cが成り立ち,前記快指標値xと前記不快指標値yとは,二律背反的関係を持つこと」は,本願の請求項2の発明特定事項である。
審決は,本件拒絶理由通知(乙4)によって,本願を拒絶すべきとした本件拒絶査定(乙6)の拒絶の理由のうち,請求項1に係る発明(本願発明)の進歩性に係る拒絶理由について判断したものであって,請求項2に係る発明についての判断を述べたものではない。
したがって,原告の主張は,審決を正解せず,当を得ないものであって審決を取り消すべき理由とはならない。
(2) 本願の請求項1には,原告が主張するような「不快指標値をyとし,あらかじめ任意に設けてなる定数をCとすると,式x+y=Cが成り立ち,前記快指標値xと前記不快指標値yとは,二律背反的関係を持つ」との特徴については,何ら記載されていない。
7 また,審決は,本願発明を請求項1に記載されたとおりの事項で特定されたものとした上で,先行技術を提示し,引用発明の認定において,提示した先行技術の一つである引用文献1(乙1)の記載事項から技術常識参酌して特定される引用発明を認定したもので,審決の本願発明の認定及び引用発明の認定に誤りはない。そして,審決の上記の認定に基づく本願発明と引用発明の一致点・相違点の認定・判断にも誤りはなく,審決の結論においても誤りはない。
なお,審決は, 「処理するデータ全てに快・不快指標値を付与」する点を含めて本願発明を認定しており,引用発明の「一元化結果評価値」に関する構成,本願発明の「快・不快指標値」に関連する本願明細書の記載も参照して,この点を本願発明と引用発明の共通点と認定しているから,審決には,原告のいう事実認定の誤りはない。
(3) また,本願明細書の記載(段落【0001】【0012】【0016】 , , )によれば,本願発明の特徴は,個別データ毎に「目標達成できる度」を持たせる点にあり,上記「目標達成できる度」を本願発明では「快・不快指標値」のうちの「快指標値」と呼び,これと逆の「目標達成できない度」を本願発明では「不快指標値」と呼ぶものと理解できる。しかし,本願明細書の記載全体を参照しても,本願発明が,「不快指標値を活用する」ことで,「不快」を回避するものであることは記載がない。
また,本願明細書には, 「不快指標値」を利用することで,段落【0021】に記載の実施例をどのように実施することができるのかについての記載はなく,さらに本願の請求項1には「最も大きい快指標値を持つデータ」を使用する記載はあるが,「不快指標値」を使用する記載はない。本願の請求項3,段落【0016】には,「階層化」により「快指標値」が大きい側の情報から参照するとうまく動作出来る旨の記載があり,この記載からはむしろ「不快指標値」の大きい情報は使わないことが望ましいと理解できる。よって,原告が主張する「異質の有効な効果」は,本願発明の効果とはいえない。
8 したがって, 「不快指標値」を活用することで,本願発明は異質の有効な効果を得ている旨の原告の主張についても,本願明細書の発明の詳細な説明に基づかない主張である。
また,原告は,引用発明及び引用文献では, 「何度でも同じ処理(解析)を繰り返す,対応停止(ダンマリ)状態」になる旨主張するが,本願の請求項1に,対応停止しないことの規定はない。
本願明細書の記載を参酌しても, 「不快指標値」を活用することで,対応停止(ダンマリ)状態にならないとはいえないものであり,むしろ本願明細書の段落【0019】から,本願発明でも異常値等を検出したら「即時の動作インターロック指令を出す」から,動作停止状態が想定されうるものであり,本願明細書の発明の詳細な説明に基づかない主張といえる。一方,引用文献2(乙2)には,対応する事例がなければ行動をランダムに決定することが記載されていること(88頁左欄18行から19行)を考慮すると,引用文献1及び引用文献2から導き出される技術において,対応停止(ダンマリ)状態になると断定することはできないことから,原告の主張は当を得ない。
なお,引用文献2は周知技術の例示であって,審決は,引用文献2との対比,組合せは検討していない。
そして,引用文献1には,段落【0033】に「一元化結果評価値」が結果評価の属性から算出されると記載され,段落【0012】に,結果評価の属性として「単位時間当たりの見つけた数」等が例示され, 「数多く見つけるモード」等を選択することが記載されているから, 「見つけた数」の大小は,数多く見つけるという目標の達成度を示すものであって,結果評価の属性から算出される一元化結果評価値の大小は,審決が認定したように,目標達成の成否を示す本願発明の「快・不快指標値」に相当するといえる。
(4) 仮に,「不快指標値」に関する事項が特定されたとしても,請求項1に記載された「快・不快指標値」を付与する発明と,格別な違いがあるとは認められない。
9 「快指標値」と「不快指標値」が「二律背反的関係」にあるような指標を利用するようなものであったとしても,快・不快のような指標は周知慣用技術であり(乙8ないし10) これらの周知慣用技術を採用して, , 当業者であれば適宜実施し得るものであるから,審決の結論は変わらない。
(5) したがって,原告が主張する取消事由1には理由がない。
2 取消事由2(変造)について 原告の主張は,審決を正解しないものである。
原告が変造があるとする審決の部分は,本願発明と引用発明との一致点をまとめた事項が記載されたものであり,そのため,本願発明を特定するために必要と出願人が認める事項の全てを記載したものではない。
したがって,審決は本願発明を変造したものではない。
よって,原告が主張する取消事由2は理由がない。
3 取消事由3(本件拒絶査定に理由が付されていないこと)について 原告は,本件拒絶査定が違法であるから,審決も違法であるという主張をしていると理解される。原告が指摘する特許法158条は,拒絶査定不服審判の審理は,審査段階の審理に基づいた審理を継続して,審査官の判断の当否を調査し,審査で行われた手続が審判でも効力を有するものと,審査と拒絶査定不服審判とが続審の関係にあることを規定したものである。一方,本件審決取消訴訟における審理の対象は,審決の違法性であり,仮に,本件拒絶査定に違法性があったとしても,そのことを理由に審決が違法性を有するとはいえないと解される。原告は,本件拒絶査定の瑕疵をもって本件審決の違法性を主張するものであるから,その前提において失当である。
また,原告は,本件拒絶査定に方式的理由項を記載していないなどと主張する。
しかし,本件拒絶査定は,特許法52条1項に規定される要件を満たしているものといえるから,原告の主張は失当である。
したがって,原告が主張する取消事由3には理由がない。
10 4 取消事由4(審決の理由中の結論及びむすびの誤り)について 原告が主張する取消事由1ないし取消事由3は理由がないから,取消事由4も理由があるとはいえない。
5 取消事由5(手続上の誤り,審決の理由中の請求人の主張についての誤り)について 原告が受領した書面は,審査官が作成した本件拒絶査定の謄本であると解され,拒絶査定に関して受領した文書の成立の真正についての主張は失当である。
当裁判所の判断
1 本願発明について (1) 本願明細書(乙3)には,次の記載がある(図面については,別紙本願発明図面目録を参照。。
) 「【技術分野】 【0001】 本発明は,人間が持つ特徴の一つである器用さ,と同様の機能を,人工的な装置で提供する自律型学習システムに関するものである。」 「【背景技術】 ・・・ 【0003】 これまでのコンピュータの標準的な構造は,ノイマン型と言われ,一般的に入力装置,記憶装置,制御装置,演算装置,出力装置を備えることとされている。論理演算による情報の処理が目的となっている。計算可能な問題については,論理演算で処理可能である。」 「【0006】 図2は従来のノイマン型コンピュータの一例を示すブロック図である。1は入力装置,2は記憶装置,3は制御装置,4は演算装置,5は出力装置である。
【0007】 11 図2に例示のように従来のノイマン型コンピュータは記憶装置にプログラムを読み込む内蔵方式で,プログラムの書き換えや入れ替えは容易にできる。制御装置の役割は次に実行する命令を記憶装置から読みだすことである。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0010】 従来のノイマン型コンピュータは高度な工夫を必要とする処理は不得手である。
高度な工夫に対応するには外部から人間がプログラムを書き換えるか,新たな設計を行って,新たな機能を追加する必要がある。新たな機能を追加する度に,開発コストがかさむという問題がある。
【0011】 本発明はこのような問題点を解決すべく為されたものであり,人間が持つ特徴の一つである器用さ,と同様の機能を得ることができる,器用さ獲得装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】 【0012】 本発明は人工的に器用さ獲得機能を可能とするため,各データについて,目的達成できる度がどの程度かを,個別データ毎に持たせることを特徴とする。目標達成できる指標について,快と定義し,前記快指標は指標値を設けてなり,目的達成できる度を階層化してなる。前記指標値を比較判定出来るように設けてなる。前記快指標とは逆の,目的達成出来ない度は,不快と定義する。
【0013】 処理するデータ全てに快・不快指標値を付与して,デジタルデータ化してなり,処理要求を満たす学習データには,より大きい(高い,上位)快指標値を付与し直してデータ保存(記憶)してなり,最も大きい快指標値を持つデータを使用して出力装置に指令を出す自律型学習システムとして動作する。機能として,シミュレーション機能,情報選択機能,リアルタイム補正機能,記憶機能を設けてなる形体で, 12 デジタル化された情報を整理・統合し,指令することを主要な特徴とする。
【発明の効果】 【0014】 請求項1,請求項2,請求項3の器用さ獲得装置によれば,高度な工夫を必要とする処理において,作業時間短縮を実現できる。繰り返しの作業でも,総作業時間を短縮することができ,結果として,産業生産性を高めることが出来る。
本発明を使用することで,1回の学習動作で器用さが改善し,さらに何回かの学習動作でさらに器用さが改善する。前記改善された動作を記憶しておくことで,長い間練習しなくても上手に動作を遂行出来る。このようにして,器用さを獲得できる。
脳損傷者の動作を補助する装置への活用も期待できる。」 「【発明を実施するための形態】 【0016】 シミュレーションや実動作学習で動作方法を変えられるようにするには,器用さを生みだす装置部分に,変化する性質,を持たせる必要がある。また,運動は時間軸上で起こり,動作順序や動作タイミング等の時間的な調節が必要である。本発明は,処理するデータ全てに快・不快指標値を付与して,デジタルデータ化してなり,処理要求(目的)を満たす学習データには,より大きい(高い,上位)快指標値を付与し直して,データ保存(記憶)してなり,最も大きい快指標値を持つデータを使用して出力装置に指令を出す自律型学習システムを特徴とする。快・不快の指標値は,快指標値をxとし,不快指標値をyとし,あらかじめ任意に設けた定数をCとすると,式x+y=Cが成り立ち,前記快指標値xと前記不快指標値yとは,二律背反的関係にあることが好適である。前記式において,例えばCをあらかじめ5として,xを3とすると,yは2となる。これは快指標が不快指標を上回っている,ことを意味している。この定数Cは本システム全体で共有するのが,好適である。
快・不快指標値を保存する配列は,図3の様にピラミッド形とし,学習した結果を 13 前記快・不快指標値を使用して,レベル(階層)化して,記憶蓄積し,前記ピラミッド形配列のレベルの高い(前記快指標値が大きい)階層側の情報から参照することで,次回の動作からは,わずかの学習量で,うまく動作出来るようになることを特徴とする。
【0017】 入力装置は人間やセンサーからの情報を受けつけて,制御装置や記憶装置にその内容を伝える装置である。・・・」 「【実施例】 【0019】 以下,本発明を図示実施例に従って説明する。図1は,処理するデータ全てに,快・不快指標値を付与する装置を設けてなる,器用さ獲得装置の一つの実施例である。従来のノイマン型コンピュータの5大機能である入力装置1と,記憶装置2と,制御装置3と,演算装置4と,出力装置5に加えて,新たに快・不快指標値付与専用処理装置6と,シミュレーション専用処理装置7と,リアルタイム補正専用処理装置8と,ガイドライン専用処理装置9と,動作手順専用処理装置10と,センサー情報専用処理装置11を設けている。・ ・ ・快・不快指標値付与専用処理装置6は,処理するデータ全てに快・不快指標値を付与したり,読み取って,他の装置に伝える役割を持つ。シミュレーション専用処理装置7は,学習効果を高めるため,制御装置3とは別に設けて,並列処理を行う。リアルタイム補正専用処理装置8は,制御装置3から出力装置5に指令が出たら,他の装置と協調して,リアルタイムでの動作補正指示を出す。ガイドライン専用処理装置9は望ましい基準や目安をあらかじめ設定しておき,異常値等を検出したら,即時の動作インターロック指令を出す。
動作手順専用処理装置10は,シミュレーションや動作学習の結果を基に,快指標値が高くなるように,動作モデルを組み上げる役割を持つ。センサー情報専用処理装置11は,シミュレーションや動作学習,リアルタイムでの動作補正等に必要な空間情報,状態情報等を収集する役割を持つ。
14 【0020】 このような,快・不快指標値付与機能を設けてなる器用さ獲得装置によれば,多くの装置群に分かれながらも,全体を1つのシステムとして,各装置が互いに協調し,同期を取りながら,器用さを獲得し,目的を達成できる。
【0021】 本発明の器用さ獲得装置を使用して目的を達成する例を次に示す。電線を圧着端子に挿入する場合,正しく挿入終えた状態は図4である。これを人ではなく,ロボットに実施させる場合,前記図4の状態が目的になる。前記電線の心線が真っ直ぐの場合は,特に不都合は無く,容易に挿入できる。しかし,図5の様に,撚り線の先端がわずかに開いている場合は,前記電線を前記圧着端子に,単純に差し込んでも,前記撚り線の先端が前記圧着端子の穴形より大きい為に,前記電線が前記圧着端子入り口に当たって止まり,図4の様には,正しく挿入できない。本発明の器用さ獲得装置を使用すると,あらゆる空間情報や状態情報,単位系から選択的に学習することで,解決へ導くことができる。具体的には,センサー情報専用処理装置11で前記電線と前記圧着端子を認識し,制御装置3で挿入すると判断すると,動作手順専用処理装置10が動作をプログラムして,制御装置3にその実行を指示する。
制御装置3は挿入動作を行う為に,出力装置5に動作指令を出す。各装置の連携により,前記電線を前記圧着端子に向けて,1次元で動かすことから始め,出来ないと判定したら,2次元の動作へ高度化し,それでも出来ないと判定すると,さらに3次元へ高度化して学習を行う。最終的に,前記電線を前記圧着端子に向けて,斜めに傾けて前進し,前記電線が圧着端子の入り口に触れる位置で,一旦,停止して,前記電線の中心軸と前記圧着端子の中心軸が傾斜を保ったままの状態で,前記電線を回転させる。前記圧着端子の入り口部分がガイドの役割を生じることに依って,先端がわずかに開いていた撚り線は,図6の様に,前記圧着端子の入り口径より小さく整えられる。然る後に,前記電線の中心軸を前記圧着端子の中心軸に重なるように,傾きを戻す。前記電線を前記圧着端子へ,中心軸の重なりを保ったまま,前 15 進させて挿入すると,正しく作業を終えることができる。」 (2) 上記(1)によれば,本願発明の概要は以下のとおりであると認められる。
本願発明は,人間が持つ器用さと同様の機能を人工的な装置で提供する自律型学習システムに関するものである(【0001】。
) 従来のコンピュータの標準的な構造は,ノイマン型といわれ,一般的に入力装置,記憶装置,制御装置,演算装置及び出力装置を備えているが(【0003】,ノイマ )ン型コンピュータは,高度な工夫を必要とする処理は不得手であるため,そのために,外部から人間がプログラムを書き換えるか,新たな設計を行って,新たな機能を追加する必要があり,開発コストがかさむという問題があった(【0010】。
) そこで,本願発明は,このような問題を解決するために,人間が持つ器用さと同様の機能を得ることができる器用さ獲得装置を提供することを目的とし(【0011】,処理するデータ全てに快・不快指標値を付与して,デジタルデータ化してな )り,処理要求(目的)を満たす学習データには,より大きい(高い,上位)快指標値を付与し直して,整理・統合した後,データ保存(記憶)してなり,最も大きい快指標値を持つデータを選択的に使用して,出力装置に指令を出す自律型学習システムで動作するという構成を採用することで(請求項1) @高度な工夫を必要とす ,る処理において,作業時間短縮を実現できる,A繰り返し作業でも総作業時間を短縮することができ,結果として,産業生産性を高めることができる,B1回の学習動作で器用さが改善し,さらに何回かの学習動作でさらに器用さが改善する,C改善された動作を記憶しておくことで,長い間練習しなくても上手に動作を遂行でき,器用さを獲得できる,D脳損傷者の動作を補助する装置への活用も期待できるという効果(【0014】)を奏するものである。
2 引用発明について (1) 引用文献1(乙1)には,次の記載がある(図面については別紙引用例図面目録を参照。。
) 「【技術分野】 16 【0001】 この発明は,提示された前提条件の下で,最適な操作パラメータセットを決定するパラメータ決定支援装置に関するものである。
【背景技術】 【0002】 例えば,以下の特許文献1には,前提条件の属性群について,主成分分析によって次元削減を行った上で,類似検索により推奨の操作パラメータを決定しているパラメータ決定支援装置が開示されている。
前提条件の次元削減方法として,データベースに格納されたベクトルをランダムに選択し,直交化された基底ベクトルによって次元を削減する技術が存在する(例えば,特許文献2を参照) 」 。
「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 従来のパラメータ決定支援装置は以上のように構成されているので,主成分分析によって,前提条件の属性群の次元削減を行っているが,主成分分析では,属性数をサイズとする行列の固有値の求解過程を実施する必要がある。そのため,属性数が大量の場合には,多くの時間を要する課題があった。
また,主成分方向が多数の属性の重み付き和で表現されるため,その意味の解釈が困難である課題もあった。
【0005】 この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので,前提条件の属性数が大量の場合でも,短時間で次元削減を実施して,適正な操作パラメータセットを決定することができるパラメータ決定支援装置を得ることを目的とする。」 「【発明の効果】 【0007】 この発明によれば,事例レコード記録手段に記録されている複数の事例レコード 17 内の前提条件及び結果評価を用いて,その前提条件の空間の基底群である前提条件空間を構築する前提条件空間構築手段と,推奨対象の前提条件である推奨前提条件の座標を前提条件空間構築手段により構築された前提条件空間上の座標に変換する座標変換手段とを設け,推奨操作パラメータ決定手段が事例レコード記録手段に記録されている複数の事例レコードにおける前提条件空間上の座標と座標変換手段により変換された推奨前提条件の座標とを用いて,複数の事例レコードと推奨前提条件の類似度を算出し,その類似度を用いて,複数の事例レコード内の操作パラメータセットの中から,推奨の操作パラメータセットを決定するように構成したので,前提条件の属性数が大量の場合でも,短時間で次元削減を実施して,適正な操作パラメータセットを決定することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】 【0008】 実施の形態1. 図1はこの発明の実施の形態1によるパラメータ決定支援装置を示す構成図であり,図において,事例蓄積部1は動作を開始する前の対象装置の周囲の状態が表現されている前提条件,対象装置の動作内容を設定する複数の操作パラメータからなる操作パラメータセット及び動作を開始した後の対象装置の周囲の状態が表現されている結果評価を含む複数の事例レコードを記録している。なお,事例蓄積部1は事例レコード記録手段を構成している。・・・ 【0009】 前提条件空間変換部3はユーザにより指定された推奨対象の前提条件である推奨前提条件の座標を前提条件空間構築部2により構築された前提条件空間上の座標に変換する処理を実施する。・・・ 推奨パラメータ提示部4は事例蓄積部1に記録されている複数の事例レコードにおける前提条件空間上の座標と前提条件空間変換部3により変換された推奨前提条件の座標とを用いて,複数の事例レコードと推奨前提条件の類似度を算出し,その 18 類似度を用いて,複数の事例レコード内の操作パラメータセットの中から,推奨の操作パラメータセットを決定してユーザに提示する処理を実施する。・・・」 「【0010】 次に動作について説明する。
事例蓄積部1は,前提条件,操作パラメータセット及び結果評価を含む複数の事例レコードを記録しており,前提条件空間構築部2及び推奨パラメータ提示部4からの要求に応じて,該当する事例レコードを前提条件空間構築部2及び推奨パラメータ提示部4に提供する。
【0011】 ここで,図2は事例蓄積部1に記録されている事例レコードの種類を例示している説明図である。
図2(a)の模擬事例レコードは,対象装置の模擬器が入手可能な場合に得られる事例レコードであり,模擬器と連携を図ることで,事例レコードの蓄積の容易化を図るものである。
模擬事例レコードの属性は,図2(a)に示すように,前提条件,操作パラメータセット及び結果評価の3種類から構成されている。
【0012】 前提条件の属性としては,コントロール可能属性とコントロール不能属性がある。・・・ 操作パラメータセットの属性は,コントロール可能属性であって,推奨対象の属性である。・・・ 結果評価の属性は,動作開始後の模擬器の状態を示す情報や,その状態をある時間内で集計した情報などがある。・・・ 【0013】 図3は対象装置の模擬器から結果評価を収集して事例レコードを生成する場合のパラメータ決定支援装置の部分構成例を示す説明図である。
19 図において,環境設定部11は対象装置の模擬器である模擬部13に対して,任意の前提条件として,環境情報属性(模擬部13が動作する前の周囲の状況や,模擬部13自身の状況を記述している情報であり,実際に計測が可能な情報が該当する)を設定する処理を実施する。
操作パラメータ設定部12は対象装置の模擬器である模擬部13に対して,任意の操作パラメータセットを設定して,模擬部13の動作開始を指示する処理を実施する。・・・ 【0014】 模擬部13は環境設定部11により設定された前提条件の下で,操作パラメータ設定部12により設定された操作パラメータセットに対応する動作を開始する対象装置の模擬器である。
結果評価部14は模擬部13が動作を開始した後の模擬部13の周囲の状態,あるいは,その状態を時間内で集計したものを評価し,その結果評価と,環境設定部11により設定された前提条件と,操作パラメータ設定部12により設定された操作パラメータセットとを含む事例レコード(図2(a)を参照)を生成して,その事例レコードを図1の事例蓄積部1に出力する処理を実施する。・・・」 「【0015】 次に,図2(b)の実地事例レコードは,対象装置における動作状態を計測することが可能な場合に得られる事例レコードであり,実器と連携を図ることで,事例レコードの蓄積の容易化を図るものである。
実地事例レコードの属性は,図2(b)に示すように,環境情報(前提条件),操作パラメータセット及び結果情報(結果評価)の3種類から構成されている。
・・・ 【0016】 図4は対象装置(実器)から結果評価を収集して事例レコードを生成する場合のパラメータ決定支援装置の部分構成例を示す説明図である。
図において,環境計測部21は対象装置である機能部23が動作を開始する前の 20 機能部23の周囲の状況を示す環境情報を計測する処理を実施する。
操作パラメータ設定部22は機能部23に対して,任意の操作パラメータセットを設定するとともに,環境計測部21により計測された環境情報を前提条件として設定し,機能部23の動作開始を指示する処理を実施する。・・・ 【0017】 機能部23は操作パラメータ設定部22により設定された前提条件の下で,操作パラメータ設定部22により設定された操作パラメータセットに対応する動作を開始する対象装置である。
結果計測部24は機能部23が動作を開始した後の機能部23の周囲の状態,あるいは,その状態を時間内で集計したものを計測する処理を実施する。
結果評価部25は結果計測部24の計測結果を評価し,その結果評価と,操作パラメータ設定部22により設定された前提条件及び操作パラメータセットとを含む事例レコード(図2(b)を参照)を生成して,その事例レコードを図1の事例蓄積部1に出力する処理を実施する。・・・」 「【0019】 前提条件空間構築部2は,事例蓄積部1に記録されている複数の事例レコードを収集し,複数の事例レコードに含まれている前提条件及び結果評価を用いて,前提条件の空間の基底群である前提条件空間を構築する。
以下,前提条件空間構築部2の処理内容を具体的に説明する。図5は, ・・・フロー図である。
【0020】 前提条件空間構築部2は,ユーザから前提条件の選択指示や,前提条件の属性に対する数値化の指示を受けると,事例蓄積部1に記録されている複数の事例レコードの中から,選択対象の前提条件を収集(選択対象の前提条件のうち,属性が数値化可能な前提条件を収集)し,その前提条件の属性を数値化する(ステップST1)・・・ 。
21 【0021】 前提条件空間構築部2は,ユーザから結果評価の選択指示や,閾値の指示を受け付けると,事例蓄積部1に記録されている複数の事例レコードの中から,選択対象の結果評価を収集する(ステップST2)。
ただし,ユーザの指示を受け付けないように設定することが可能であり,ユーザの指示を受け付けない場合,あるいは,ユーザの指示がない場合には,事例蓄積部1から全ての結果評価を収集するようにする。・・・」 「【0033】 推奨パラメータ提示部4は,上記のようにして,事例コードを選択すると,ユーザから結果評価の属性群に対する重み付けベクトルの指示を受け付けるようにする。
推奨パラメータ提示部4は,選択した各事例コードに含まれている結果評価の属性と重み付けベクトルとの内積を一元化結果評価値として算出し,その一元化結果評価値を当該事例レコードに付加する・・・。
ただし,重み付けベクトルの指示をユーザから受け付けないように設定することが可能であり,ユーザの指示を受け付けない場合,あるいは,ユーザの指示がない場合には,デフォルト値を予め設定して,例えば,全ての重みを“1”として,一元化結果評価値を算出するようにしてもよい。」 「【0035】 推奨パラメータ提示部4は,ユーザから選択数の指示を受け付けると,一元化結果評価値が高い順に,その選択数分の事例レコードを選択し,その事例レコードに含まれている操作パラメータセットを推奨操作パラメータセットとしてユーザに提示する・・・。
例えば,選択数が“1”であれば,一元化結果評価値が最も高い事例レコードx2が選択され,選択数が“2”であれば,一元化結果評価値が最も高い事例レコードx2と,事例レコードx1が選択される。・・・」 (2) 上記(1)によれば,引用発明の特徴は,次のとおりである。
22 引用発明は,提示された前提条件の下で,最適な操作パラメータセットを決定するパラメータ決定支援装置に関するものである(【0001】。
) 従来,パラメータ決定支援装置は,前提条件の属性群について,主成分分析によって次元削減を行った上で,類似検索により推奨の操作パラメータを決定しており,前提条件の次元削減方法としては,データベースに格納されたベクトルをランダムに選択し,直交化された基底ベクトルによって次元を削減する技術が存在している(【0002】。
) しかし,このような従来のパラメータ決定支援装置は,主成分分析によって,前提条件の属性群の次元削減を行っているところ,主成分分析では,属性数をサイズとする行列の固有値の求解過程を実施する必要があるため,属性数が大量の場合には,多くの時間を要するという課題,また,主成分方向が多数の属性の重み付き和で表現されるため,その意味の解釈が困難である課題があった(【0004】。
) そこで,引用発明は,このような課題を解決するため,前提条件の属性数が大量の場合でも,短時間で次元削減を実施して,適正な操作パラメータセットを決定することができるパラメータ決定支援装置を得ることを目的としたものである【00 (05】。
) 3 取消事由1(裁量に関係しない事実認定の誤り及び事実認定の誤りに伴う審決の判断の誤り)について 原告の主張する取消事由1は,裁量に関係しない事実認定の誤り及び事実認定の誤りに伴う審決の判断の誤りがあるというものである。
上記事実認定の誤りとしては,本願発明の認定,引用刊行物例(引用文献1)に記載された引用発明の認定,本願発明と引用発明の一致点・相違点の認定に誤りがあるとの主張であり,また,事実認定の誤りに伴う審決の判断の誤りについては,その事実認定の誤りを前提として,審決の相違点に関する判断にも誤りがあると主張しているものと解される。
そこで,以上を前提に,審決の判断に誤りがあるかについて検討する。
23 (1) 本願発明の認定 前記認定の事実によれば,本願発明は, 「本発明は,処理するデータ全てに快・不快指標値を付与して,デジタルデータ化してなり,処理要求(目的)を満たす学習データには,より大きい(高い,上位)快指標値を付与し直して,整理・統合した後,データ保存(記憶)してなり,最も大きい快指標値を持つデータを選択的に使用して,出力装置に指令を出す自律型学習システム,で動作することを特徴とする,器用さ獲得装置。【請求項1】であることが認められる。
」 審決は,本願の請求項1のとおり,本願発明を認定しており,その認定に誤りはない。
(2) 引用発明の認定 前記のとおり,引用文献1(乙1)には, 「この発明は,提示された前提条件の下で,最適な操作パラメータセットを決定するパラメータ決定支援装置に関するものである。( 」【0001】, )「・・・環境設定部11は対象装置の模擬器である模擬部13に対して,任意の前提条件として,環境情報属性・・・を設定する処理を実施する。操作パラメータ設定部12は対象装置の模擬器である模擬部13に対して,任意の操作パラメータセットを設定して,模擬部13の動作開始を指示する処理を実施する。( 」【0013】, )「結果評価部14は模擬部13が動作を開始した後の模擬部13の周囲の状態,あるいは,その状態を時間内で集計したものを評価し,その結果評価と,環境設定部11により設定された前提条件と,操作パラメータ設定部12により設定された操作パラメータセットとを含む事例レコード・・・を生成して,その事例レコードを図1の事例蓄積部1に出力する処理を実施する。 【00 」 (14】, )「操作パラメータ設定部22は機能部23に対して,任意の操作パラメータセットを設定するとともに,環境計測部21により計測された環境情報を前提条件として設定し,機能部23の動作開始を指示する処理を実施する。( 」【0016】, )「結果評価部25は結果計測部24の計測結果を評価し,その結果評価と,操作パラメータ設定部22により設定された前提条件及び操作パラメータセットとを含む 24 事例レコード・・・を生成して,その事例レコードを図1の事例蓄積部1に出力する処理を実施する。( 」【0017】, )「前提条件空間構築部2は,ユーザから結果評価の選択指示や,閾値の指示を受け付けると,事例蓄積部1に記録されている複数の事例レコードの中から,選択対象の結果評価を収集する・・・。ただし,ユーザの指示を受け付けないように設定することが可能であり,ユーザの指示を受け付けない場合,あるいは,ユーザの指示がない場合には,事例蓄積部1から全ての結果評価を収集するようにする。( 」【0021】, )「推奨パラメータ提示部4は,選択した各事例コードに含まれている結果評価の属性と重み付けベクトルとの内積を一元化結果評価値として算出し,その一元化結果評価値を当該事例レコードに付加する・・・)」【0033】, 。( )「推奨パラメータ提示部4は,ユーザから選択数の指示を受け付けると,一元化結果評価値が高い順に,その選択数分の事例レコードを選択し,その事例レコードに含まれている操作パラメータセットを推奨操作パラメータセットとしてユーザに提示する・・・。例えば,選択数が“1”であれば,一元化結果評価値が最も高い事例レコードx2が選択され,選択数が“2”であれば,一元化結果評価値が最も高い事例レコードx2と,事例レコードx1が選択される。」(【0035】)と記載されている。
引用文献1の上記記載によれば,引用発明は,前記第2,3(1)のとおりであると認められる。
審決は,引用文献1の記載に基づき,上記と同旨の引用発明を認定しており,その認定に誤りはない。
(3) 本願発明と引用発明の一致点の認定 ア 審決の認定 審決は,本願発明と引用発明の一致点を, 「処理するデータ全てに快・不快指標値を付与して,デジタルデータ化してなり,処理要求(目的)を満たすデータには,より大きい(高い,上位)快指標値を付与して,データ保存(記憶)してなり,最も大きい快指標値を持つデータを選択的に使用して,出力装置に指令を出すシステ 25 ム,で動作する器用さ獲得装置。」と認定した。
イ 引用発明の「一元化結果評価値」と本願発明の「快・不快指標値」について 審決が,引用発明における「一元化結果評価値」は,本願発明における「快・不快指標値」に対応付けられるものであり,したがって,引用発明における「一元化結果評価値」も「快・不快指標値」といえるものであると認定したことについて,原告は,本願発明は,快・不快の指標値の間に,快指標値をxとし,不快指標値をyとし,あらかじめ任意に設けてなる定数をCとすると,式x+y=Cが成り立ち,快指標値xと不快指標値yとは,二律背反的関係を持つことが主たる特徴になっているのに対し,引用文献1には, 「快」及び「不快」の文言や定義はないから,審決には,一致点の認定の誤りがあると主張するので,以下,検討する。
(ア) 本願発明の「快指標値」及び「不快指標値」の意義 本願の請求項1には,「処理するデータ全てに快・不快指標値を付与して,」と記載されているところ,この「快・不快指標値」とは, 「快指標値」及び「不快指標値」のことを示すものであると認められる。
しかし,「快指標値」及び「不快指標値」とは,一般的な技術用語ではないから,本願発明において, 「快指標値」及び「不快指標値」とは,具体的にどのようなものであるのか,一義的に明確に理解することはできない。そこで,本願明細書(乙3)の記載(【0012】【0013】 , )を参酌すると, 「快指標値」とは,処理するデータが,どの程度目的を達成できるかを指標値として表したものであるといえ, 「不快指標値」とは,処理するデータが,どの程度目的を達成できないかを指標値として表したものであるということができる。
(イ) 引用発明の「一元化結果評価値」 引用文献1の前記記載によれば, 「一元化結果評価値」は,各「事例レコード」に含まれている「結果評価の属性」と,ユーザから受け付けた「重み付けベクトル」との内積により算出され,その「一元化結果評価値」は, 「事例レコード」に付加されるものである(【0033】。
)「事例レコード」は,例えば,センサシステムで処 26 理するデータであって,センサの位置等の「前提条件の属性」,数多く見つけるモード等の「操作パラメータセットの属性」及び単位時間当たりの見つけた数等の「結果評価の属性」から構成されるものであると認められる( (【0008】 0012】。
【 , ) そうすると,複数の「事例レコード」のうち, 「操作パラメータセットの属性」として,数多く見つけるモードを選択することは,センサが検知するものをより多く見つけたいという目的のためであって, 「一元化結果評価値」は,その目的がどの程度達成できるか,あるいは,どの程度達成できないかを表すために,ユーザから「重み付けベクトル」を受け付け,単位時間当たりの見つけた数である「結果評価の属性」と前記「重み付けベクトル」との内積を算出した指標値であると認められる。
(ウ) まとめ 以上によれば,引用発明の「一元化結果評価値」は,本願発明の「快指標値」及び「不快指標値」に相当すると認められる。
(エ) 原告の主張について 原告は,上記のとおり,本願発明は,快・不快の指標値の間に,快指標値をxとし,不快指標値をyとし,あらかじめ任意に設けてなる定数をCとすると,式x+y=Cが成り立ち,快指標値xと不快指標値yとは,二律背反的関係を持つことが主たる特徴になっているのに対し,引用文献1には, 「快」及び「不快」の文言や定義はないから,審決には,一致点の認定の誤りがある旨主張する。
しかし,本願の請求項2は, 「快・不快の指標値の間に,快指標値をxとし,不快指標値をyとし,あらかじめ任意に設けてなる定数をCとすると,式x+y=Cが成り立ち,前記快指標値xと前記不快指標値yとは,二律背反的関係にあることを特徴とする請求項1に記載の器用さ獲得装置。」であり,原告が主張する「二律背反的関係」についての記載があるものの,本願の請求項1においては,本願発明を特定する事項として,快指標値及び不快指標値について,原告が主張する「二律背反的関係」は何ら特定されていない。
そうすると,本願の請求項1には,快指標値及び不快指標値について,請求項2 27 で特定された二律背反的関係以外のものも含むのであるから,本願発明の快指標値及び不快指標値を原告が主張する二律背反的関係に限定して解釈することは相当ではない。原告の上記主張は,本願の請求項2の発明をいうものである。
そして,引用発明の「一元化結果評価値」が,本願発明の「快指標値」及び「不快指標値」に相当するものであることは,前記認定のとおりである。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
ウ その他の一致点について (ア) 引用発明では, 「選択された各事例レコード」に, 「一元化結果評価値」が付与されており,当該「選択された各事例レコード」は, 「事例レコード記録手段に記録されている全ての事例レコード」であって,処理するデータ全て」 「 といえるから,引用発明は,本願発明の「処理するデータ全てに快・不快指標値を付与」することに相当する発明特定事項を備えているということができる。
(イ) 引用発明において,「選択された各事例レコード」が「デジタルデータ化」されていることは明らかである。
そして,引用発明における「推奨操作パラメータセット」は, 「一元化結果評価値が最も高い事例レコード」に含まれている「操作パラメータセット」であるから,引用発明は,本願発明の「処理要求(目的)を満たすデータには,より大きい(高い,上位)快指標値」を付与することに相当する発明特定事項を有するものである。
また,引用発明において,「事例レコード」は,「事例レコード記録手段に記録されている」ものであり, 「一元化結果評価値」を「事例レコードに付加」することは,「一元化結果評価値」が付加された「事例レコード」を「事例レコード記録手段」等の記憶手段に「データ保存(記憶)」しているといえる。
したがって,引用発明は,本願発明の「デジタルデータ化してなり,処理要求(目的)を満たすデータには,より大きい(高い,上位)快指標値を付与して,データ保存(記憶)」する発明特定事項を備えているということができる。
(ウ) 引用発明は,「一元化結果評価値が最も高い事例レコードを選択してその事 28 例レコードに含まれている操作パラメータセットを推奨操作パラメータセットとする」ものであって, 「推奨操作パラメータセット」が何らかの出力装置に出力されることは明らかであるから,本願発明の「最も大きい快指標値を持つデータを選択的に使用して,出力装置に指令を出すシステム,で動作する」ことに相当する発明特定事項を備えているといえる。
(エ) 引用発明の「パラメータ決定支援装置」は,「任意の前提条件及び操作パラメータセットを対象装置の模擬器に設定して,該模擬器を動作させる,あるいは,任意の操作パラメータセットを対象装置に設定して,該対象装置を動作させること」で生成される「事例レコード」を基に, 「推奨操作パラメータセット」を決定するものであり,本願発明における「器用さ」を「獲得」する「器用さ獲得装置」に相当するということができる。
エ したがって,本願発明と引用発明との一致点を, 「処理するデータ全てに快・不快指標値を付与して,デジタルデータ化してなり,処理要求(目的)を満たすデータには,より大きい(高い,上位)快指標値を付与して,データ保存(記憶)してなり,最も大きい快指標値を持つデータを選択的に使用して,出力装置に指令を出すシステム,で動作する器用さ獲得装置。」とした審決の認定に誤りはない。
オ 原告の主張について (ア) 原告は,本願発明では,処理するデータ全てに快・不快指標値を付与するから,処理するデータは,快・不快指標値を付与できるデータ構造の特徴を持つデータと快・不快指標値を付与できないデータ構造の特徴を持つデータの混在はできないのに対し,引用発明では,そのような考え方はないから,審決には,一致点の認定の誤りがある旨主張する。
しかし,引用文献1の【0033】の前段には, 「推奨パラメータ提示部4は,上記のようにして,事例コードを選択すると,ユーザから結果評価の属性群に対する重み付けベクトルの指示を受け付けるようにする。推奨パラメータ提示部4は,選択した各事例コードに含まれている結果評価の属性と重み付けベクトルとの内積を 29 一元化結果評価値として算出し,その一元化結果評価値を当該事例レコードに付加する・・・。」と記載され,それに引き続き, 【0033】の後段には, 「ただし,重み付けベクトルの指示をユーザから受け付けないように設定することが可能であり,ユーザの指示を受け付けない場合,あるいは,ユーザの指示がない場合には,デフォルト値を予め設定して,例えば,全ての重みを“1”として,一元化結果評価値を算出するようにしてもよい。」と記載されていることから,前段に記載された「一元化結果評価値」は,「事例レコード」すべてについて付加されるもの,すなわち,引用発明の「事例レコード」は,すべて,快・不快指標値を付与できるデータ構造の特徴を持つデータであって,快・不快指標値を付与できないデータ構造の特徴を持つデータはなく,原告が主張するようなデータの混在はないと認められる。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(イ) 原告は,本願発明では,「目的の状態はあるが,前記目的に至るまでの方策が既知でない場合」において,「不快」の指標が必要であり,「不快指標値」を活用することで,異質の有効な効果を得ているのに対し,引用発明は, 「目的の状態はあるが,前記目的に至るまでの方策が既知でない場合」において,対応できないから,審決には,一致点の認定の誤りがある旨主張する。
しかし,本願の請求項1では, 「快指標値」を付与し直したり,最も大きい「快指標値」を持つデータを選択的に使用することは特定されているものの,不快指標値」 「を活用することは特定されていない。
したがって,原告の上記主張は,本願発明の発明特定事項に基づくものではなく,採用することができない。
(4) 本願発明と引用発明の相違点 本願発明と引用発明の相違点は,前記第2,3(2)イのとおりであるから,審決の認定に誤りはない(原告も積極的に争わない。 。
) (5) 相違点に関する判断について ア 相違点1について 30 本願発明と引用発明の相違点1は,前記のとおり, 「本願発明は「自律型学習」システムで動作するものであり,その快指標値は付与し「直し」がされるものであり,これが付与されるデータは「学習」データである。
(これに対し,引用文献1には「自律型学習」を行う旨の直接的な言及や, 「一元化結果評価値」の付与し「直し」 「学 や習」を行うことについての直接的な言及はなされていない。 」との点である。
) 引用発明のパラメータ決定支援装置は,最適な操作パラメータセットを決定するために,一元化結果評価値が最も高い事例レコードを選択しているところ,一元化結果評価値は, 「重み付けベクトル」を用いて算出されているから,この「重み付けベクトル」は,パラメータ決定支援装置を制御するための制御パラメータの一種であるということができる。
そして,本願出願時において,あるシステムに記憶されている制御パラメータを自動的に変更・修正する学習制御は,周知技術であったと認められる(乙11,12)。
そうすると,引用発明のパラメータ決定支援装置において,前記周知技術を採用し,ユーザが入力した重み付けベクトルを学習制御により自動的に変更・修正し,それに伴い,一元化結果評価値を付与し直すように構成すること,すなわち,相違点1の構成とすることは,当業者であれば容易に想到し得るものである。
イ 相違点2について 本願発明と引用発明の相違点2は,前記のとおり, 「本願発明は,データを「整理・統合した後」にデータ保存(記憶)している。
(これに対し,引用文献1には,一元化結果評価値を付与する前に類似度に基づく事例レコードの選択をするものが開示されてはいるものの,一元化結果評価値が付与された事例レコードを「整理・統合した後」にデータ保存する旨の記載はない。 」との点である。
) 引用文献2(乙2)には,「事例の個数を制限するには,「事例べースの事例個数を制限」 「制限個数内で,より良い事例との入れ替え」 「不要事例の消去機能」 「事例の適用範囲の動的変更」による対応が考えられる。 (87頁左欄36行から同頁右 」 31 欄1行)「その為,あまり有効でない事例は,消去されるべきである。本システム ,では,その事例を適用したが,ロボットの行動評価が悪い場合(効果が有効でない場合)には,その事例が消去されるようにしている。事例に対して,その行動評価により,正負の評価点を与え,その累積和がある値以下になると事例は消去される。」(88頁右欄26行から同33行)との記載がある。
そうすると,引用発明において,引用文献2に記載された上記技術を適用し, 「事例レコード」を整理・統合した後,データ保存(記憶)するように構成することは,当業者であれば容易に想到し得るものである。
ウ 以上によれば,本願発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたとの審決の判断に誤りはない。
エ 原告の主張について (ア) 原告は,本願発明は,ノイマン型ではない(非ノイマン型)装置であるから,引用発明に基づいて,当業者が容易に想到し得るものではない旨主張する。
しかし,本願発明は,ノイマン型コンピュータであることや,非ノイマン型コンピュータであることは何ら特定されていないから,原告の上記主張は,本願発明の発明特定事項に基づくものではない。
そして,本願明細書にも,本願発明が,ノイマン型コンピュータではなく,非ノイマン型コンピュータであることの記載はなく,原告の上記主張は,本願明細書の記載に基づくものでもない。むしろ,本願明細書には,本願発明の実施例について,「従来のノイマン型コンピュータの5大機能である入力装置1と,記憶装置2と,制御装置3と,演算装置4と,出力装置5に加えて,新たに快・不快指標値付与専用処理装置6と,シミュレーション専用処理装置7と,リアルタイム補正専用処理装置8と,ガイドライン専用処理装置9と,動作手順専用処理装置10と,センサー情報専用処理装置11を設けている。( 」【0019】【図1】 , )と記載されているから,本願発明は,従来のノイマン型コンピュータを前提としたものであることが理解できる。
32 そうすると,本願発明の「器用さ獲得装置」は,ノイマン型コンピュータの5大機能を前提とし,それに加えて,各種処理装置を設けることにより構成されているから,従来のノイマン型コンピュータの構成を維持しており,ノイマン型コンピュータではないものになったということはできない。
一方,引用発明の「パラメータ決定支援装置」は,コンピュータで動作していることは明らかであり,一般的なコンピュータは,ノイマン型コンピュータであることからすると,本願発明の「器用さ獲得装置」が前提とするノイマン型コンピュータと異なるものとはいえない。
したがって,本願発明が「非ノイマン型コンピュータ」であることを前提とする原告の上記主張は,採用することができない。
(イ) 原告は,本願発明では,「目的の状態はあるが,前記目的に至るまでの方策が既知でない場合」において,「不快」の指標が必要であり,「不快指標値」を活用することで,異質の有効な効果を得ているのに対し,本願発明の上記構造がない引用例は,本願発明が解決すべき課題を有さないから,その進歩性を判断する際の先行技術とはならない,引用文献1と引用文献2には,本願発明に至る動機付けや「不快指標値」を活用することで,本願発明が異質の有効な効果を得ていることと同等の記載がなく,示唆もないから引用発明と引用文献2を組み合わせる阻害要因がある旨主張する。
しかし,本願発明は, 「快指標値」を付与し直したり,最も大きい「快指標値」を持つデータを選択的に使用することは特定されているものの, 「不快指標値」を活用することは特定されていないことは前記のとおりである。
したがって,原告の上記主張は,その前提を欠くものであり,採用することができない。
(6) 以上のとおり,審決の認定判断には誤りがないから,取消事由1は理由がない。
4 取消事由2(変造)について 33 原告は, 「処理するデータ全てに快・不快指標値を付与して,デジタルデータ化してなり,処理要求(目的)を満たすデータには,より大きい(高い,上位)快指標値を付与して,データ保存(記憶)してなり,最も大きい快指標値を持つデータを選択的に使用して,出力装置に指令を出すシステム,で動作する器用さ獲得装置。」との審決の記載が,原告が意図するところを正確に表している必要最小限の文言である本願発明とは異なっており,変造がある,変造は禁じ手であって,審決は無効である旨主張する。
しかし,審決の上記記載は,本願発明と引用発明を対比した結果,その一致点を記載したものであり,本願発明を記載したものではないから,原告の主張はその前提を欠くものである。
そして,本願発明と引用発明に相違点がある場合,本願発明と一致点は同一となることはなく,審決においても,相違点1及び相違点2を認定しているから,本願発明と一致点の記載が異なるとしても,原告が主張する変造があったということはできない。審決の一致点の認定に誤りがないことは前記のとおりである。
したがって,原告の上記主張は採用することができず,取消事由2は理由がない。
5 取消事由3(本件拒絶査定に理由が付されていないこと)について 原告は,特許法52条では査定は文書をもって行い,かつ,理由を付さなければならないとされる,しかし,本件拒絶査定には,方式的理由項が記載されていないし,平成25年3月18日時点での理由が具体的に記載されておらず,本件拒絶査定には実質理由が記載されていない状態である,したがって,審決には,特許法52条違反があり,審決に重大な影響を与える瑕疵があるといえる,また, 「平成24年12月6日付け拒絶理由通知書に記載した理由A」の文言は,原告にとって,拒絶理由通知書の部分的一致なのか,全て一致なのかを判読することが非常に困難であるから,審決に重大な影響を与える瑕疵であるといえる旨主張する。
しかし,本件拒絶査定については,以下のとおり瑕疵はない。
特許法52条は,「査定は,文書をもって行い,かつ,理由を付さなければなら 34 ない。」旨規定するところ,査定には理由が付されていれば足り,拒絶査定に「理由」という項目名が記載されなければならないことが規定されているものではない。
したがって,本件拒絶査定に「理由」の項目名の記載がないことをもって,特許法52条違反があるということはできない。
そして,本件拒絶査定(乙6)には,冒頭において,本件出願については,平成24年12月6日付け拒絶理由通知書(乙4。本件拒絶理由通知書)に記載した理由によって拒絶すべきものである旨記載されており,本件拒絶理由通知書には, 「この出願は,次の理由によって拒絶すべきものです。これについて意見がありましたら,この通知書の発送の日から60日以内に意見書を提出してください。 との記載 」とともに,理由A及びBの具体的な内容について記載されていたことが認められるから,本件拒絶査定には理由が付されているものと認められる(本件拒絶理由通知書に記載の理由と,本件拒絶査定の理由とが直接的な関係にあることは,原告にも容易に理解できるものと解される。。また,本件拒絶査定に本件拒絶理由通知書記 )載の理由が引用されて記載されていたからといって,本件拒絶査定の理由が,本件拒絶理由通知書に記載された理由の一部であるのか全部であるのか判読することが困難であるとはいえない。
したがって,原告の上記主張は採用することができず,取消事由3は理由がない。
6 取消事由4(審決の理由中の結論及びむすびの誤り)について 原告は,取消事由1で主張したとおり,審決には事実誤認に基づいた判断の誤りがあるから,その結論,まとめは当然に無効であり,これは手続上の誤り,事実の誤認であって,審決に重大な影響を与える瑕疵があるといえる旨主張する。
しかし,取消事由1ないし取消事由3のいずれにも理由がないことは,前記のとおりであるから,原告の上記主張は採用することができない。
したがって,原告の主張する取消事由4は理由がない。
7 取消事由5(手続上の誤り,審決の理由中の請求人の主張についての誤り)について 35 原告は,本件拒絶理由通知書及び本件拒絶査定には,審査官の記名はあるが,署名や承認印がなく,真正に成立した文書であることの証明がないから,違法である旨主張する。
本件拒絶査定は,工業所有権に関する手続等の特例に関する法律4条1項の規定により,電子情報処理組織(同法2条1項に規定された,特許庁の使用に係る電子計算機と,手続をする者又は代理人の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織)を使用してされたこと,その際に,査定をした審査官が記名押印しなければならないところ(特許法施行規則35条柱書) 本件拒絶査定は, ,工業所有権に関する手続等の特例に関する法律施行規則23条の3の規定により,記名押印に代えて,特許庁長官が指定する職員が交付した識別カードを挿入し,あらかじめファイルに記録した暗証番号を入力することで,審査官を明らかにする措置を講じたものであることが認められる(弁論の全趣旨)。
そうすると,本件拒絶理由通知書及び本件拒絶査定について,審査官の署名・押印がないことをもって,真正に成立した文書であることの証明がないものということはできない。なお,原告が送達を受けた本件拒絶査定の謄本には,当然,査定をした審査官の押印はない。
したがって,審決に違法があるということはできないから,原告の上記主張は採用することができない。
結論
以上のとおり,原告の主張する取消事由はいずれも理由がなく,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 設樂一
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