関連審決 | 無効2014-800089 |
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事件 |
平成
27年
(行ケ)
10028号
審決取消請求事件
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原告X 同訴訟代理人弁理士 谷口俊彦 同 坪内哲也 被告シャープ株式会社 同訴訟代理人弁理士 河野英仁 同 田中伸次 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2016/01/27 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求
特許庁が無効2014-800089号事件について平成27年1月5日にした審決を取り消す。 |
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事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等 (1) 被告は,平成19年7月2日,発明の名称を「照明装置」とする発明について特許出願(特願2007-174629号)をし,平成24年5月18日,設定の登録(特許第4996998号)を受けた(請求項の数3。以下,この特許を「本件特許」という。甲5)。 (2) 原告は,平成26年5月30日,本件特許の請求項1に係る発明について特許無効審判を請求し,無効2014-800089号事件として係属した。 (3) 特許庁は,平成27年1月5日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との別紙審決書(写し)記載の審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同月16日,原告に送達された。 (4) 原告は,平成27年2月13日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。 2 特許請求の範囲の記載 特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである。以下,この発明を「本件発明」という。また,その明細書(甲5)を,図面を含めて「本件明細書」という。 指向性のある複数の光源を装着した基板を一面に複数並べて備える照明装置において, 前記光源及び/又は前記基板は,前記基板が設けられる面において光が均一に発光されるように配置され, 前記光源からの光を拡散する拡散板を,前記光源から該拡散板までの距離が前記複数の光源間の距離より大きくなるように備え, 前記基板を前記一面に係止するための係止孔が,前記複数の光源の内で最外周にある光源の内側に位置する光源の間に配置されて前記基板に設けられていることを特徴とする照明装置。 3 本件審決の理由の要旨(1) 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。要するに,@本件発明は,下記アの先願明細書に記載された発明(以下「先願発明」という。)と同一ではないから,特許法29条の2の規定に違反して特許されたものではない,A本件発明は,下記イの引用例1に記載された発明(以下「引用発明」という。)及び下記ウないしソに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから,同法29条2項の規定に違反して特許されたものではない,というものである。 ア 先願明細書:特開2008-41546号公報(甲1)イ 引用例1:特開2005-339881号公報(甲2)ウ 引用例2:特開2007-148177号公報(甲4)エ 引用例3:特開2005-302484号公報(甲4の1)オ 引用例4:特開2003-68129号公報(甲4の2)カ 周知例1:特開2006-310319号公報(甲3)キ 周知例2:特開2007-73295号公報(甲3の1)ク 周知例3:特開2007-134430号公報(甲3の2)ケ 周知例4:特開2007-96290号公報(甲3の3)コ 周知例5:特開2007-163810号公報(甲3の4)サ 周知例6:特開2007-95386号公報(甲3の5)シ 周知例7:特開2007-121927号公報(甲3の6)ス 周知例8:特開2007-87900号公報(甲3の7)セ 周知例9:特開2007-95484号公報(甲3の8)ソ 周知例10:特開2007-134281号公報(甲3の9)(2) 本件発明と先願発明との対比ア 先願発明本件審決が認定した先願発明は,以下のとおりである。 液晶表示モジュール50の背面側に設けられるバックライト装置10において, 発光部を収容するバックライトフレーム11と,LEDチップ21を複数個,配列させた発光モジュール12とを備え, また,光学フィルムの積層体として,拡散板13と,プリズムシート14,15と拡散・反射型の輝度向上フィルム16とを備え, 液晶表示モジュール50の背面直下に光源を置く直下型のバックライト構造を採用し,液晶表示モジュール50の背面の全体に対してほぼ均等にLEDチップが配列され, バックライトフレーム11は,筐体構造を形成し,液晶表示モジュール50の大きさに対応して設けられる背面部と,この背面部の四隅を囲う側面部を備え, 各発光モジュール12は,それぞれ複数のネジ17によってバックライトフレーム11に固定され, 発光モジュール12は,複数のLEDチップ21を搭載するLED基板20を備え, LED基板20には,ネジ17の取り付け位置に対応する二つのネジ穴22が,複数のLEDチップ21の内で最外周にあるLEDチップ21の内側に位置するL マ マEDチップ21の間に貫通形成されている貫通形成されるバックライト装置10。 イ 本件発明と先願発明との一致点及び相違点 本件審決が認定した本件発明と先願発明との一致点及び相違点は,以下のとおりである。 (ア) 一致点 「指向性のある複数の光源を装着した基板を一面に複数並べて備える照明装置において,前記光源及び/又は前記基板は,前記基板が設けられる面において光が均一に発光されるように配置され,光源からの光を拡散する拡散板を備え,前記基板を前記一面に係止するための係止孔が,前記複数の光源の内で最外周にある光源の内側に位置する光源の間に配置されて前記基板に設けられている照明装置。」である点。 (イ) 相違点 本件発明では,光源から拡散板までの距離が複数の光源間の距離より大きくなるようにされているのに対し,先願発明では,そのような特定がされていない点。 (3) 本件発明と引用発明との対比ア 引用発明本件審決が認定した引用発明は,以下のとおりである。 液晶表示装置のバックライトとして使用し,複数の照明モジュール100を平面状に集合させて大面積化した照明装置において,各照明モジュールには,隣接する複数の照明モジュールと相互に接続する複数の電気的接続部が,各照明モジュールの辺に面して配置され,照明モジュール100内において,2行4列に合計8個のLED素子115が配置されるとともに,LED素子115が照明モジュール内でも照明モジュール間でもほぼ等間隔に配置され,照明モジュール100の基板として,アルミ金属板を用い,その上に,極薄の配線パターンを貼り付け,その上に直接,LED素子115が実装され,照明モジュール100は,その外形が長方形で,横縦比率が16:9となっており,対角サイズが100mmとなり,これに加えて,隣接照明モジュール間の距離 マ マを縦横それぞれ1mm程度され,背面格子フレーム121上に,平面的に並べられた照明モジュール100から平行に2cm程度離して,光散乱板124が設置されており,その上に光学フィルム125が配置され,そして,さらにその上に液晶パネル123が設置された照明装置。 イ 本件発明と引用発明との一致点及び相違点 本件審決が認定した本件発明と引用発明との一致点及び相違点は,以下のとおりである。 (ア) 一致点 「指向性のある複数の光源を装着した基板を一面に複数並べて備える照明装置において,前記光源及び/又は前記基板は,前記基板が設けられる面において光が均一に発光されるように配置され,光源からの光を拡散する拡散板を備え,照明装置。」である点。 (イ) 相違点a 相違点1 本件発明では,光源から拡散板までの距離が複数の光源間の距離より大きくなるようにされているのに対し,引用発明では,照明モジュール100上にLED素子115が22.0mmのピッチで配列され,また,背面格子フレーム121上に,平面的に並べられた照明モジュール100から平行に2cm程度離して,光散乱板124が設置されている点。 b 相違点2 本件発明では,基板を一面に係止するための係止孔が,複数の光源の内で最外周にある光源の内側に位置する光源の間に配置されて前記基板に設けられているのに対し,引用発明では,そのような特定がされていない点。 4 取消事由(1) 本件発明と先願発明の同一性判断の誤り(取消事由1)(2) 本件発明の進歩性判断の誤りア 相違点1に係る容易想到性判断の誤り(取消事由2-1)イ 相違点2に係る容易想到性判断の誤り(取消事由2-2) |
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当事者の主張
1 取消事由1(本件発明と先願発明の同一性判断の誤り)について〔原告の主張〕(1) 本件審決における判断 本件審決は,相違点について,先願明細書にLEDチップ21と拡散板13までの距離が複数個のLEDチップ21間の距離より大きいことが記載されているとはいえず,先願発明に係る照明装置において,光源から拡散板までの距離が複数の光源間の距離より大きくなるようにされていることが技術常識であるとはいえず,本件発明は,相違点に係る構成により,本件明細書に記載の効果を奏するものであるから,相違点は単なる設計事項あるいは設計上の微差であるともいえないとして,本件発明と先願発明とが同一であるとはいえない旨判断した。 しかし,本件審決における上記判断は,以下のとおり,誤りである。 (2) 先願明細書の記載 特許図面が寸法を正確に反映するものではないとしても,先願明細書の図1及び2には,「LEDチップ21と拡散板13までの距離」と「LEDチップ21間の距離」の大小関係が明確に反映されている。 (3) 相違点に係る構成が周知技術ないし技術常識であること 相違点に係る構成は,周知技術ないし技術常識(具体化手段における微差)にすぎず,新たな効果を奏するものではない。 LEDチップから出射される光を均一化すべきことは周知の課題であり,そのために拡散板を設けることも周知技術である(周知例1〜3,甲6〜6の4)。先願明細書の【0017】にも,先願発明がLEDチップから出射される光を均一化することを課題とするものであることが記載されている。 すなわち,「光源から拡散板までの距離が複数の光源間の距離より大きくすること」は,甲6ないし6の1にその構成自体が記載されており,また,甲6の2ないし4にも,光源から拡散板までの距離を大きくとればグレアが解消され輝度均斉度の良い照明が得られることが記載されていることからすれば,相違点に係る構成が技術常識ないし周知技術であることは明らかである。 また,本件明細書に記載された本件発明の効果(【0007】,【0034】,【0035】)は,甲6ないし6の4に記載された効果と変わらないものであり,拡散板というもの自体,光を拡散させて均一な照明にすることを目的とするものであることに照らせば,その効果も予測可能な範囲を超えるものではない。 なお,被告は,本件特許の出願経過において,周知例2について,光源から拡散板までの距離が横方向に並んだ複数の光源間の距離より大きい照明装置が記載されていること,すなわち,相違点に係る構成に特許性がないことを自認していた。 (4) 小括 以上のとおり,相違点に係る本件発明の構成は周知技術(技術常識)であり,その効果も従来技術における拡散板の効果と何ら変わりがないから,本件発明は,実質的に,先願発明と同一である。 〔被告の主張〕(1) 本件審決における判断について 本件発明と先願発明との相違点に係る構成は,以下のとおり,周知技術ないし慣用技術ではなく,これを先願発明に適用することにより,新たな効果を奏するものであって,課題解決のための具体化手段における微差であるとはいえないから,本件発明と先願発明とは実質的に同一であるとはいえない。 したがって,本件審決における判断に誤りはない。 (2) 先願明細書の記載について 原告は,先願明細書の図1及び2には,「LEDチップ21と拡散板13までの距離」と「LEDチップ21間の距離」の大小関係が明確に反映されている旨主張する。 しかし,大小関係が正確に反映されているとする根拠が示されておらず,失当である。 (3) 本件発明と先願発明との実質的同一性について ア 原告は,相違点に係る構成は周知技術ないし技術常識(具体化手段における微差)にすぎず,新たな効果を奏するものではない旨主張する。 イ 甲6ないし6の4について 原告の主張は,無効審判において提示していた引用例1や周知例1及び2に替えて,新たな公知文献である甲6ないし6の4により,相違点に係る本件発明の構成が周知技術であると主張するものであるから,無効審判において主張した無効理由とは異なる無効理由を主張するものにほかならない。原告の上記主張は,無効審判手続において審理判断されなかった公知事実との対比における無効原因を審決の取消理由として主張するものであり,甲6ないし6の4を証拠とすることは,本件取消訴訟の審理範囲を逸脱するものであって,許されないというべきである。 ウ 前記イの点を措いても,甲6ないし6の4は,いずれも相違点に係る本件発明の構成を記載又は示唆するものではない。 また,そもそも,先願発明はレンズ30によりLEDチップ21から出射される光の均一化を図るものである(【0023】)から,先願発明には,LEDチップ21から出射される光を均一化するという課題は存しない。先願明細書の図6から明らかであるように,先願発明では,隣り合うLEDチップ21間のピッチ長の方が,LED21から拡散板までの距離よりも大きいから,先願発明に甲6に記載された発明を適用することは,先願発明の技術思想に反するものであって,周知技術や慣用技術の付加,転換等にすぎないとはいえない。 さらに,本件特許の出願時,表示装置は薄型化が求められていたことから,LED21から拡散板までの距離を,隣り合うLEDチップ21間のピッチ長よりも大きくする構成,すなわち,先願発明において,相違点に係る本件発明の構成とすることは,当業者として妥当な判断ではない。 仮に,先願発明において,相違点に係る本件発明の構成を備えるようにした場合には,レンズ30により光の均一化を図っている先願発明において,さらなる光の均一化を図るという,新たな効果を奏することになる。 以上のとおり,先願発明において相違点に係る本件発明の構成を備えるようにすることは,周知技術や慣用技術の付加,転換等であるとはいえず,また,これにより新たな効果を奏するものであるから,上記構成が課題解決のための具体化手段における微差にすぎないとはいえない。 エ 原告の主張について (ア) 原告は,本件発明の効果は,甲6ないし6の4に記載された効果と変わらないものであり,拡散板を用いることにより生じる効果として予測可能な範囲を超えるものではない旨主張する。 しかし,甲6ないし6の4には,相違点に係る本件発明の構成は記載されていないから,これらが本件発明の効果を奏することはない。また,拡散板を用いたとしても,従来の構成ではグレアにより光が均一ではなかったのであり,本件発明の効果を拡散板自体の効果と同列に扱うのは不適切である。 (イ) 原告は,被告が本件特許の出願経過において,相違点に係る構成に特許性がないことを自認していた旨主張する。 しかし,被告は,本件特許の出願経過において,本件特許の出願時において相違点に係る本件発明の構成が技術常識であったなどと述べたことはない。そもそも,審査過程における出願人の申述を特許無効審判において考慮しなければならないというものでもない。 (4) 小括以上のとおり,本件発明が先願発明と実質的に同一であるとはいえない。 2 取消事由2-1(相違点1に係る容易想到性判断の誤り)について〔原告の主張〕(1) 本件審決における判断 本件審決は,引用例1や周知例1ないし10には,相違点1に係る本件発明の構成の記載はなく,さらに,液晶表示装置のバックライト装置は一般的に薄型化が求められることから,引用発明において,照明モジュール100から光散乱板124までの距離を大きく変更することは,当業者が容易に想到することができたことであるとはいえず,また,本件発明は相違点1に係る構成により,本件明細書に記載の効果を奏するものであるから,相違点1に係る構成が単なる設計事項あるいは設計上の微差であるということもできないとして,引用発明において,相違点1に係る本件発明の構成を備えることが容易に想到することができたことであるとはいえない旨判断した。 しかし,本件審決における上記判断は,以下のとおり,誤りである。 (2) 相違点1に係る本件発明の構成が周知技術ないし技術常識であることア 周知例4 周知例4の【0024】に記載された実施例3は,実施例1における第2の拡散部材を取り除いた構成であり(図3),拡散部材5と発光ダイオード4の距離は第1実施例と同じであると記載されているから30mmであり,上記発光ダイオードの間隔12mm(第1実施例と同じ)より大きい。 したがって,周知例4には,相違点1に係る本件発明の構成が記載されている。 イ 周知例5及び6 周知例5の「隣接する線状光源2の中心間の距離a」と「点状光源12(線状光源20)の中心と光拡散板11の光入射面との距離b」との関係には,相違点1に係る本件発明の構成に相当する組合せが含まれる。周知例6についても同様である。 ウ 周知例7 周知例7には,LEDから放射された光が拡散板を備えた液晶パネルに到達するまでの距離を十分に長く確保することにより発光される光の色ムラを防止することができることが記載されている。 したがって,光源から拡散板までの距離と複数の光源間の距離との関係についての記載はなくても,光源から拡散板までの距離を十分に長く確保(複数の光源間の距離よりも大きくなるように)することは,示唆されているといえる。 エ 周知例8 周知例8には,平面型光源から拡散板までの距離を大きくすることにより,バックライトシステムの発光面の発光を均一にすることができることが記載されている。 したがって,光源から拡散板までの距離と複数の光源間の距離との関係についての記載はなくても,光源から拡散板までの距離を大きく(複数の光源間の距離よりも大きくなるように)することは,示唆されているといえる。 オ 上記に加え,甲6ないし6の4にも,相違点1に係る本件発明の構成が記載又は示唆されている。 カ 以上のとおり,相違点1に係る本件発明の構成は,周知例1,甲6ないし6の1に開示されており,周知例2ないし10,甲6の2ないし4にも,その構成が示唆されているから,技術常識(周知技術)と評価すべきものである。 (3) バックライト装置の薄型化の課題について 本件審決は,液晶表示装置のバックライト装置は一般的に薄型化が求められることから,引用発明において,照明モジュール100から光散乱板124までの距離を大きく変更することは,当業者が容易に想到することができたことであるとはいえないとする。 しかし,どの程度の寸法であれば薄型化ということになるのか定義は存在しない。 また,光源から拡散板までの距離が,わずかでも複数の光源間の距離よりも大きくなれば薄型ではないなどとする根拠も存在しない。 周知例5の【0052】の記載によれば,引用発明において,光拡散板124と照明モジュール100との距離をLED素子のピッチ(22.0mm)よりも大きく変更したとしても薄型を維持できることになるのである。 (4) 小括 以上のとおり,相違点1に係る本件発明の構成は技術常識(周知技術)であり,上記構成が奏する効果も既に公知であるか,当該構成から予測できる範囲内のものであるから,引用発明において,相違点1に係る本件発明の構成を備えるようにすることは,当業者が容易に想到することができたことである。 〔被告の主張〕(1) 本件審決における判断について 引用発明では,拡散板(光拡散板124)と光源(照明モジュール100)との距離が光源間の距離よりも近く,本件発明とは距離の関係が反対の構成となっている。また,引用例1には,本件発明の課題に関する記載も示唆もない。 さらに,相違点1に係る本件発明の構成は,以下のとおり,技術常識であるとはいえず,この構成により奏される効果が周知の技術から予測できる範囲のものであるとはいえない。 以上によれば,引用発明において,相違点1に係る本件発明の構成を備えるようにすることが容易に想到することができたことであるとはいえない。 したがって,本件審決における判断に誤りはない。 (2) 相違点1に係る本件発明の構成について 原告は,相違点1に係る本件発明の構成は,技術常識(周知技術)と評価すべきものである旨主張する。 しかし,以下のとおり,原告が挙げる公知文献に相違点1に係る本件発明の構成が記載又は示唆されているとはいえず,同構成が本件特許の出願時において技術常識(周知技術)であったとはいえない。 ア 周知例4 周知例4の【0024】に記載された実施例3は,実施例1における第2拡散板部材6を取り除いた構成であり,それ以外の構成は実施例1と同様である。 【0020】及び図4の記載によれば,筐体底面の長辺方向における隣り合う発光ダイオード間の距離は12mmであるが,筐体底面の短辺方向における隣り合う発光ダイオード間の距離は12mmではない。【0020】には「短辺に沿って等間隔に3箇所…丸穴を開けた。」と記載され,図4には短辺方向(紙面上下方向)における隣り合う発光ダイオード間の間隔は78mmであることが示されている。 発光ダイオードと拡散板との距離が30mmであるとしても,短辺方向の発光ダイオード間の距離は78mmであるから,発光ダイオードと拡散板との距離よりも大きい。 したがって,周知例4には,相違点1に係る構成は記載されていない。 イ 周知例5及び6 周知例5の【0052】には「バックライト全体の厚さを薄くできる」と記載されているから,当業者は,距離bは「関係1」(【0049】)を満たす範囲で,できるだけ小さくすることを示唆するものと理解する。そして,距離bをできるだけ小さくした結果,距離bは距離aよりも小さくなる。したがって,周知例5には,距離bは距離aより小さくすることが記載されていると解すべきである。 仮に,異なる実施形態における距離aと距離bを比較するとすれば,記載された上限値と下限値に着目せざるを得ないから,距離aと距離bとの関係に相違点1に係る本件発明の構成に相当する組合せが含まれるとはいえない。 また,周知例6にも,距離hを間隔Lよりも大きくする例は示されていない。 ウ 周知例7 周知例7において,「LEDから放射された光が拡散板を備えた液晶パネルに到達するまでの距離を十分に長く確保する」という点において,距離の比較対象となっているのは,前記導電性部51の位置から直接前記液晶パネル1側に照射される光の路程であり,複数の光源間の距離ではない(【0019】)。 かえって,周知例7には,短間隔でLEDを設けることは,コスト高となることから,LEDの間隔は可能な限り広くすべきであることが,示唆されている(【0005】)。 エ 周知例8 周知例8には,「平面型光源」における複数の光源は記載されていないから,そもそも,「光源間の距離」についての示唆があるとはいえない。 オ 甲6ないし6の4 (ア) 新たな公知文献である甲6ないし6の4を証拠として相違点1に係る本件発明の構成が周知技術であると主張することは,前記1〔被告の主張〕(3)イと同様に,本件取消訴訟の審理範囲を逸脱するものであって,許されないというべきである。 (イ) 前記(ア)の点を措いても,甲6ないし6の4は,いずれも相違点1に係る本件発明の構成を記載又は示唆するものではない。 (3) バックライト装置の薄型化の課題について 光源と拡散板との間の距離を長くすることが薄型化の妨げになることは,本件特許の出願時において,当業者に周知の事項であった。薄型化が求められているからこそ,それに反する設計変更については,変更を必要とする明確な理由,動機付けが必要なのであり,そのような動機付けがなければ,当業者はあえて設計変更は行わない。引用発明には,照明モジュール100から光散乱板124までの距離を大きく変更することについての動機付けがない。 なお,周知例5には,前記(2)イのとおり,距離bは距離aより小さくすることが記載されていると解すべきであるから,周知例5の記載から,引用発明において,光拡散板124と照明モジュール100との距離をLED素子のピッチよりも大きく変更したとしても薄型を維持できるということはできない。 (4) 小括 以上のとおり,引用発明において,相違点1に係る本件発明の構成を備えるようにすることは,当業者が容易に想到することができたことであるとはいえない。 3 取消事由2-2(相違点2に係る容易想到性判断の誤り)について〔原告の主張〕(1) 本件審決における判断 本件審決は,本件発明はLED基板を並べて設置した場合の係止孔を用いた係止に係る課題を解決するものであるところ,引用例1には上記課題に係る記載はなく,また,引用例2及び4に記載されたものは,引用発明とは照明装置の基本的な構成が相違するものであるから,引用発明において,引用例2及び4に記載された発明を適用する動機付けがないなどとして,引用発明において,相違点2に係る本件発明の構成を備えるようにすることが容易に想到することができたことであるとはいえない旨判断した。 しかし,本件審決における上記判断は,以下のとおり,誤りである。 (2) 係止手段を適用する動機付け ア 引用例1には,本件発明と同様に,基板を一面に複数並べた構成が開示されている(【0027】,図2)。なお,コネクタ111,112は照明モジュール100同士を接続するものであり,照明モジュール100をフレーム(一面)に固定する機能はないから,照明モジュール100をフレームに係止する必要性がある。 また,本件明細書には「係止孔8をLED6間に設けることにより,係止孔8をLED基板7の両端部に余分に設ける必要がなくなり,LED基板7を複数並べてLED照明装置を構成した場合であっても,均一な面発光が可能となる。さらに,LED基板7の小型化も可能になる。」との記載(【0027】)があるところ,係止孔8をLED基板7の両端部に余分に設ける必要がなくなるという構成は,引用例1の図2にも記載されている。 したがって,引用例1には各照明モジュール100の背面格子フレーム121への係止に係る記載はないが,引用発明は,本件明細書の【0027】に記載された上記効果を奏している点において,本件発明と共通する。 イ そして,基板を一面に固定しなければならないことは技術常識であるから(基板が一面から脱落したり,不用意に移動したりすると,そもそも製品として成立しない。),引用発明において,基板を固定する手段として,引用例2ないし4に記載された係止手段を採用することに阻害要因はない。基板(モジュール)を係止することは当然に必要なことであり,このことは,単一の基板であるか,複数の基板であるかにかかわらない。また,基板をどの場所で係止するかも単なる設計事項にすぎない。 基板を一面に固定しなければならないことが技術常識であることは,甲7ないし7の2からも裏付けられる。また,甲7ないし7の2によれば,相違点2に係る本件発明の構成は,LED(光源)を装着した基板を一面に係止するための構成として,ごく一般的な技術である。 ウ 引用発明は,前記アのとおり,光の均一な照明装置を実現することを目的としており,係止孔をLED基板(照明モジュール)の両端部に余分に設けない構成とするために,それぞれの照明モジュールを係止するに際して,引用例2ないし4に記載された発明を適用することには十分な動機付けがある。 (3) 小括 以上のとおり,相違点2に係る本件発明の構成は,引用例2ないし4に記載されており,これを引用発明に適用する動機付けがあるから,引用発明において,相違点2に係る本件発明の構成を備えるようにすることは,当業者が容易に想到することができたことである。 〔被告の主張〕(1) 本件審決における判断について 相違点2に係る本件発明の構成は,以下のとおり,引用発明に引用例2ないし4に記載された発明を適用する動機付けはないから,引用発明において,同構成を備えるようにすることが容易に想到することができたことであるとはいえない。 したがって,本件審決における判断に誤りはない。 (2) 係止手段を適用する動機付けについて ア 原告は,係止孔8をLED基板7の両端部に余分に設ける必要がなくなる構成が引用例1に記載されている旨主張する。 しかし,引用発明は,照明モジュール100の4辺がコネクタ111,112により接続されることで(図1),照明モジュール100はバラバラになることはなく,照明モジュール100ごとの係止が不要な構成であることは明らかである。 また,そもそも,引用例1には係止孔自体の開示がない。 さらに,引用発明は,低コスト化を課題とするものであるから,照明モジュール100に係止孔をあけて係止手段によって係止するというコストアップにつながるような構成をあえて採用することには想到しない。 イ 原告は,基板を一面に固定しなければならないことは技術常識であるから,引用発明において,基板を固定する手段として,引用例2ないし4に記載された係止手段を採用することに阻害要因はない旨主張する。 (ア) しかし,前記アのとおり,引用発明においては,照明モジュール100の4辺がコネクタ111,112により接続され(図1),各照明モジュールを係止することは必要としない構成となっている。 (イ) また,引用発明において,照明モジュール100に係止孔を設けるのであれば,光散乱シート107に貫通孔を設ける必要があるが(【0042】,図5),貫通孔を設けたとしても,照明モジュール100をねじで係止する際に,回転するねじにより光散乱シート107が弛んだり,破れたりする可能性が高いから,照明モジュール100に係止孔を設けることには,阻害要因がある。 (ウ) なお,引用例3におけるネジ15による係止は,相違点2に係る本件発明の構成における係止とは,その性格が異なる。 また,引用例4は,ダウンライトのような照明器具を開示しており,引用発明とは属する技術分野が異なる上,LEDモジュール1と器具本体2との面とは離れており,一面から離した状態で落下しないように係止爪に掛かるようにしているにすぎないから,引用発明において引用例4に記載された発明を適用したとしても,相違点2に係る本件発明の構成とはならない。 ウ 甲7ないし7の2について (ア) 原告の主張は,相違点2に係る事項が一般的な技術であることを,無効審判手続において提示されなかった新たな公知文献により主張しようとするものであるから,無効審判において主張した無効理由とは異なる無効理由を主張するものにほかならない。原告の上記主張は,無効審判手続において審理判断されなかった公知事実との対比における無効原因を審決の取消理由として主張するものであり,甲7ないし7の2を証拠とすることは,本件取消訴訟の審理範囲を逸脱するものであって,許されないというべきである。 (イ) 前記(ア)の点を措いても,前記イのとおり,引用発明において,甲7ないし7の2に記載された発明を適用する動機付けはない。 (3) 小括 以上のとおり,引用発明において,相違点2に係る本件発明の構成を備えるようにすることは,当業者が容易に想到することができたことであるとはいえない。 |
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当裁判所の判断
1 本件発明について(1) 本件発明に係る特許請求の範囲は,前記第2の2記載のとおりであるところ,本件明細書(甲5)の発明の詳細な説明には,おおむね,次の記載がある(下記記載中に引用する図1〜4及び8については,別紙1本件明細書図面目録を参照。)。 ア 技術分野 【0001】本発明は,指向性のある光源を用いた照明装置において,照明する全面に渡って均一照明を行う照明装置に関する。 イ 背景技術 【0002】近年,従来の白熱電球や放電灯に加えて,発光ダイオード(以下,LEDという)を光源とした照明装置が用いられ始めている。照明装置は,室内及び室外の様々な場所に設置されており,設置される場所や照明装置の用途によっては十分な輝度が必要であり,LEDのような点光源を光源として採用した場合には,輝度を確保するために複数のLEDが必要となる。また,LEDを光源として採用した照明装置には,複数のLEDを実装した基板を1つのユニットとして,複数ユニットを組み合わせることにより照明装置を構成するものがある。 【0003】…,複数のLEDが実装されたカード型LED照明光源43(本願発明の基板に相当する)を1つのユニットとして,複数のユニットを備えたLED照明装置41が開示されている。カード型LED照明光源43は,複数のLEDベアチップ42が実装及び樹脂モールドされた基板と,LEDベアチップ42に対応した位置に反射面を有する孔(開口部)を有し基板に貼り合わされる光学反射板とからなり,カード型LED照明光源43に電気的に接続可能なコネクタを有するヒートシンクのスロットに挿入される(図8(a)参照)。 ウ 発明が解決しようとする課題 【0004】しかし,…従来のLED照明装置41は,以下のような問題があった。図8(b)に示すように,LED照明装置41の一面に,複数のカード型LED照明光源43がLEDベアチップ42間の距離より大きい距離を持って設けられているため,カード型LED照明光源間の発光がない部分44が他の発光のある部分に対して暗さが目立ってしまい,均一な面発光ができていなかった。特に,光源としてLEDが用いられている場合には,LEDは指向性が強いため,光源のグレア(眩しさ)を使用者に感じさせることになり,光源のある部分とない部分に対応して明るさが不均一になり,均一な面発光ができていなかった。 【0005】また,…カード型LED光源にコネクタ等の電子部品を設けた場合には,光源(LED)がない部分がより目立ち,均一な面発光ができないという問題があった。本願発明は,上記問題に鑑みてなされた発明であり,LEDといった指向性のある光源を用いた照明装置において,光源の指向性によるグレアを緩和して均一な面発光をするとともに,指向性のある複数の光源を装着した基板の小型化が可能となる照明装置を提供することを目的とする。 エ 課題を解決するための手段 【0007】本発明に係る照明装置は,指向性のある複数の光源を装着した基板を一面に複数並べて備える照明装置において,光源及び/又は基板は,基板が設けられる面において光が均一に発光されるように配置され,光源からの光を拡散する拡散板を,光源から拡散板までの距離が複数の光源間の距離より大きくなるように備え,基板を前記一面に係止するための係止孔が,複数の光源の内で最外周にある光源の内側に位置する光源の間に配置されて基板に設けられていることを特徴とする。本構成によれば,光源の指向性によるグレアを緩和して均一な面発光をすることが可能である。また,本構成によれば,指向性のある光源からの光が拡散板に到達する前に広がるので,拡散板にて光源の指向性によるグレアを更に解消した面発光が可能である。さらに,本構成によれば,複数の光源を装着した基板を係止するための係止孔を基板の最外周にある光源の内側に位置する光源の間に設けるので,係止孔を基板の端部に設ける必要がなく,基板の小型化が可能になる。 オ 発明の効果 【0013】本願発明の照明装置によれば,照明する全面に渡って,均一な照明とすることが可能であり,光源の指向性によるグレアを緩和して均一な面発光をするとともに,指向性のある複数の光源を装着した基板を小型化することが可能である。 カ 発明を実施するための最良の形態 【0014】以下,本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお,実施の形態の説明において,照明装置として,LEDを光源としたLED照明装置を例示して説明するが,これに限定されず他の光源を用いた照明装置であってもよく,特に指向性のある(強い)光源を用いた照明装置であれば,本発明は好適に適用できる。 (ア) 実施の形態1 【0015】図1は,本発明に係る実施の形態1のLED照明装置の斜視図である。図2は,本発明に係る実施の形態1のLED照明装置の要部分解斜視図である。 図3は,複数のLEDが装着されたLED基板の平面図である。図4は,放熱板に設けられた複数のLED基板の平面図である。 【0016】まず,図1及び図2を参照して,LED照明装置1の構成について説明する。LED照明装置1は,複数のLED6が装着されたLED基板7と,LED6に電源を供給する電源部(図示せず)と,LED基板7を取り付けLED6からの熱を放熱する放熱板5と,LED6からの光を拡散する拡散板4と,LED基板7と放熱板5と電源回路を収容する収容部材2と,収容部材2を固定するフレーム3とから構成される。 【0018】フレーム3は,フレーム3枠内に拡散板4を嵌装して保持し,収容部材2の底面2aの端部に形成された立ち上がり部2bを四方からフレーム3枠内に嵌めこみ,LED照明装置1の各部材を固定する。収容部材2及びフレーム3によりLED照明装置1の外枠が構成される。 【0019】拡散板4は,拡散剤が添加された乳白色の樹脂(例えば,アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂等)からなり,LED基板7(LED6)から一定の距離を保つように,フレーム3の枠内に嵌装されて保持される。拡散板4により,点光源である複数のLED6からの光が拡散され面発光させることでできる。しかし,LED6は指向性の強い光源である為,LED基板7から拡散板4の距離によって拡散板4を透過して見える光の見え方は異なる。拡散板4にて均一に面発光とするために,LED基板7までの距離をどのように設定して拡散板4を保持するかについては後述する。 【0023】…LED照明装置1からの光を均一に面発光させるためには,電源部がLED基板7の設けられる面よりも,LED基板7の設けられる面の裏面にある方が,電源部に対応した非発光部がないので好ましい。次に,図3及び図4を参照して,LED基板7と,放熱板5におけるLED基板7の配置について詳細に説明する。 【0024】図3(a)はLED基板7のLED6が装着された面の平面図であり,図3(b)はLED基板7のLED6が装着された面の裏面の平面図である。 LED基板7には,複数のLED6がマトリクス状に均一の距離(ピッチ)を空けて装着(実装)されている。より具体的には,LED基板7の縦方向(X方向)に12個のLED6がLED間の距離を12mm,LED基板7端部からの距離を5mmとして一列に配置され,LED基板7の横方向(Y方向)にその12個のLED6を1列としてLED間の距離(列間の距離)を12mm,LED基板7端部からの距離を5mmとして配置されている。よって,一枚のLED基板7上に,72個のLED6が等距離(12mm)に,LED基板7の端部から一定の距離(5mm)を空けて,マトリクス状に装着されていることになる。 【0025】本実施の形態に採用されるLED6は,図に示すように直方体であって縦方向に長いが,LED6のほぼ中心にあるLED素子が実装されている発光部を基準として,各LED間の距離を定義すると,縦方向及び横方向の隣り合うLED間の距離は全て等しい。(以下の説明において,LED間の距離の定義は上記の通りとする。)よって,1つのLED基板7内においてもLED6が均一に面発光する。さらに,LED基板7を同じ方向に並べて配置する場合だけでなく,縦方向及び横方向に組み合わせて配置した場合においても,隣り合うLED基板7の近接して対向するLED6の距離は等しくなり,複数のLED基板7からなる面にて均一に面発光が可能となる。 【0026】また,LED6の配置はマトリクス状に限定されず,LED間の距離が等しく設定されていれば他の配置であってもよい。例えば,LED6を結ぶ線が正三角形を形成するような,千鳥状の配置も考えられる。千鳥状の配置であれば,LED間の距離をマトリクス状に配置した場合のLED間の距離を同じにすることを条件として,マトリクス状の配置に比べて単位面積あたりのLED6が少なくなる。よって,単位面積あたりの輝度自体は低下するが,より少ないLED6で均一な面発光が可能となり,LED照明装置1のコストを下げることが可能となる。 【0027】また,LED基板7のLED6間には,LED基板7を放熱板5及び収容部材2の突出面2cに係止するための装着部である係止孔8が設けられている。従来のLED基板では,係止孔がLED基板の両端等の端部に設置されており,LED基板を並べて設置した場合には,係止部が設けられた両端部ではLEDによる発光がなく,その部分のみが暗くなり,複数のLED基板からなる面にて均一な面発光ができなかった。従って,本実施の形態のように,係止孔8をLED6間に設けることにより,係止孔8をLED基板7の両端部に余分に設ける必要がなくなり,LED基板7を複数並べてLED照明装置を構成した場合であっても,均一な面発光が可能となる。さらに,LED基板7の小型化も可能になる。 【0028】また,係止孔8は,LED基板7に設けられた複数のLED6の内,最外周部のLED6とその1つ内側のLED6との間にLED基板7の四角に対応して4つ設けられている。LED基板7のできるだけ外周部において,かつLED基板7の四角に対応した4つの係止孔8にてLED基板7を係止することにより,LED6からの熱で反ろうとするLED基板7を安定的に固定することができる。 【0031】図4は,スクウェア型のLED照明装置の放熱板に配置される8枚のLED基板の平面図である。8枚のLED基板7はそれぞれ同じ方向を向けて一定の距離を空けて並べて設けられている。LED基板7の距離Qは,隣り合って並べられる複数のLED基板7の内,ある一方のLED基板7に設けられたLED6から,隣り合う他方のLED基板7に設けられたLED6までの距離Pが,一方の基板に設けられたLED間の距離Pと等しくなるように設定されている。 【0032】具体的に示すと,LED基板7の最外周部のLED6はLED基板7の端部から5mmの距離の位置に設けられ,LED基板7間の距離Qは2mmとなるように配置されている。よって,ある一方のLED基板7に設けられたLED6から,隣り合う他方のLED基板7に設けられたLED6までの距離は12mmとなり,LED基板内のLED間の距離P(12mm)と等しい。 【0033】また,上述したようにLED基板7の方向を縦と横の何れの方向に変えて並べてもLED間の距離は等しいので,複数の基板を縦と横の何れの方向を向けて並べても,LED基板7の距離Qを2mmとするように配置する限り,複数のLED基板7から構成される発光面は,均一に面発光する。以上,実施の形態1はスクウェア型のLED照明装置1であるので,正方形となるようにLED基板7を並べているが,LED照明装置はスクウェア型に限らず他の形状であっても,上記LED基板7の距離Qを一定とする限り,LED基板7の配列を変えるだけで,様々な形状の均一な面発光が可能なLED照明装置に対応が可能である。 【0034】次に,LED基板7から拡散板4までの距離とLED6間の距離Pの関係について説明する。LEDのような指向性が強い光源を照明装置に用いた場合は,LED基板から拡散板までの距離が小さい場合には,LED6からの光を十分に拡散することができないため,LEDのグレアが解消できず均一な面発光ができなかった。よって,本実施の形態では,拡散板4は,LED基板7に設けられるLED間の距離P(12mm)よりも大きい距離を,LED基板7から離して保持されている。よって,LED6からの光が拡散板4に到達する前に広がるので,拡散板4にてLED6のグレアを解消した面発光が可能である。 【0035】拡散板4とLED基板7との距離を離すほど,LED6からの光が拡散板4に到達する前に広がるので,拡散板4にて均一な面発光が可能となるが,LED照明装置の厚さが大きくなってしまう。しかし,様々な距離を空けて実験を行った結果,拡散板4とLED基板7との距離をLED間の距離Pに対して大きくすれば,上記効果はある程度得られることが分かった。よって,LED照明装置1の薄型化と面均一発光の為には,拡散板4とLED基板7との距離をLED基板7のLED間の距離Pと同じにすることが好ましい。 (イ) 実施の形態2 【0036】図5は,本発明に係る実施の形態1の変形例であって,電源部11をLED照明装置21の内部に設けたLED照明装置21の要部分解斜視図である。 実施の形態1との共通の部分に関しては図面に同一の符号を付して説明を省略し,実施の形態2の特徴部分について説明をする。 【0037】放熱板5の中央部に電源部11が設けられ,電源部11の周辺に電源部11を囲うようにLED基板7が配置されている。LED基板7は隣り合うLED基板7に対して一定の距離(2mm)を空けて配置されているので,縦方向と横方向のLED基板7が組み合わさっているが,上述したように隣り合うLED基板7間のLED6の距離と,LED基板7内のLED6間の距離は等しくなっている。よって,電源部11の周辺では均一な面発光が可能である。 【0038】また,図5では,電源部11が3つの部分に分けられた部分電源部12から構成されているが,これに限らず電源部11と,照射面の照度を計測する照度センサ部や人から発せられる赤外線を検知する人感センサ部等のセンサ部及び/又はセンサ部の検知結果に基づいてLEDのON/OFFや輝度を制御する駆動制御部とから構成されていてもよい。さらに,電源部11が設けられる位置は放熱板5の中央部に限らず,図1に示すように中央部にLED基板7を並べて配置し,その周辺に電源部11が配置されてもよい。 (ウ) 実施の形態3 【0039】実施の形態1及び2の照明装置はスクウェア型のLED照明装置であったが,照明装置の形状は他の形状であってもよく,実施の形態3の照明装置は,ストレート型のLED照明装置である。 【0040】図6は,本発明に係る実施の形態3のLED照明装置31の斜視図である。図7は,本発明に係る実施の形態3のLED照明装置31の要部分解斜視図である。実施の形態1又は2との共通の部分に関しては図面に同一の符号を付して説明を省略し,実施の形態3の特徴部分について説明をする。図6及び図7を参照して,LED照明装置31の構成について説明する。LED照明装置31は,複数のLEDが装着されたLED基板7と,LEDに電源を供給する電源部36と,LED基板7を取り付けLEDからの熱を放熱する放熱板35と,LEDからの光を拡散する拡散板34と,LED基板7と放熱板35と電源部36を収容する収容部材32と,収容部材と拡散板を固定するフレーム(第1のフレーム33a及び第2のフレーム33b)とから構成される。なお,第1のフレーム33aは電源部36を覆うカバーとしても機能する。 【0041】LED基板7は,実施の形態1又は2と同一のLED基板であり,放熱板35にLED基板7が縦方向に縦列に8枚配置されている。LED基板7間の距離は2mmとなるようにLED基板7を配置しており,実施の形態1で述べたように,隣り合うLED基板間のLED6の距離と,LED基板7内のLED6間の距離は等しくなっている。よって,ストレート型のLED照明装置31においても均一な面発光が可能である。以上,実施の形態1から3の説明において,LED基板に装着される複数のLEDは,隣り合うLEDが等距離に設けられている実施形態を例示したが,全てのLED間の距離が必ずしも等距離である必要が無く,LED基板間の距離が少なくともLED基板の最外周部のLED間の距離と等しくなるようにLED基板が配置されていれば,LED基板間の非発光部分が暗く目立つことなく,ほぼ均一な面発光が可能となる。 (2) 前記(1)の記載によれば,本件明細書には,本件発明に関し,以下の点が開示されていることが認められる。 ア 本件発明は,指向性のある光源を用いた照明装置において,照明する全面にわたって均一照明を行う照明装置に関する(【0001】)。 LEDを光源として採用した従来のLED照明装置においては,一面に複数のカード型LED照明光源がLEDベアチップ間の距離より大きい距離を持って設けられているため,カード型LED照明光源間の発光がない部分が,他の発光のある部分に対して暗さが目立ってしまい,均一な面発光ができないという問題があった。 光源としてLEDが用いられている場合,LEDは指向性が強いため,光源のグレア(眩しさ)を使用者に感じさせることになり,光源のある部分とない部分に対応して明るさが不均一になり,均一な面発光ができていなかった(【0003】,【0004】)。 イ 本件発明は,前記アの問題に鑑みてなされた発明であり,LEDといった指向性のある光源を用いた照明装置において,光源の指向性によるグレアを緩和して均一な面発光をするとともに,指向性のある複数の光源を装着した基板の小型化が可能となる照明装置を提供することを目的とし(【0005】),この課題の解決手段として,特許請求の範囲の請求項1に記載の構成を採用した(【0007】)。 ウ 本件発明の構成によれば,光源の指向性によるグレアを緩和して均一な面発光をすることが可能であり,また,指向性のある光源からの光が拡散板に到達する前に広がるので,拡散板にて光源の指向性によるグレアを更に解消した面発光が可能であり,さらに,複数の光源を装着した基板を係止するための係止孔を基板の最外周にある光源の内側に位置する光源の間に設けるので,係止孔を基板の端部に設ける必要がなく,基板の小型化が可能になる(【0007】)。 したがって,本件発明によれば,照明する全面にわたって,均一な照明とすることが可能であり,光源の指向性によるグレアを緩和して均一な面発光とするとともに,指向性のある複数の光源を装着した基板を小型化することが可能である,という効果を奏する(【0013】)。 2 取消事由1(本件発明と先願発明の同一性判断の誤り)について(1) 先願発明についてア 先願明細書(甲1)には,おおむね,次の記載がある(下記記載中に引用する図1〜3については,別紙2先願明細書図面目録を参照。)。 (ア) 特許請求の範囲 【請求項1】基板と,前記基板に実装される複数の固体発光素子と,光透過性を有し前記基板に実装される前記複数の固体発光素子を個別に覆う複数のカバーと,前記基板における前記複数の固体発光素子の実装位置に対応する複数の穴が形成され,当該複数の穴にはめ込まれた前記複数のカバーを前記基板との間に挟み込むことにより,当該基板に実装される前記複数の固体発光素子上に当該複数のカバーを位置決めする位置決め部材と,前記位置決め部材に形成された前記複数の穴の内壁に設けられる反射部材とを含む発光装置。 【請求項4】画像表示を行う表示パネルと,当該表示パネルの背面に向けられ当該表示パネルの背面側から光を照射するバックライトとを含む表示装置であって,前記バックライトは,基板と,前記基板に実装される固体発光素子と,光透過性を有し前記基板に実装される前記固体発光素子を覆うカバーと,前記基板に固定されることで当該基板に実装される前記固体発光素子上に前記カバーを固定する固定部材とを備え,前記固定部材は,前記カバーを介して前記固体発光素子から出射された光を前記表示パネルの背面側に向けて反射するリフレクタ部を有することを特徴とする表示装置。 【請求項7】基板に実装された複数の固体発光素子に対し,光透過性を有し当該複数の固体発光素子を個別に覆う複数のカバーを取り付けるのに用いられるカバー取付部材であって,前記基板における前記複数の固体発光素子の実装位置に対応して形成され,前記複数のカバーを個別に挿入および係止可能な複数の穴が形成されたベース部と,前記ベース部に設けられ,前記複数の穴に挿入された当該複数のカバーを介して当該複数の固体発光素子それぞれから出射された光を反射する反射部とを含むカバー取付部材。 (イ) 発明の詳細な説明 a 技術分野 【0001】本発明は,発光装置や表示装置等に係り,より詳しくは,固体発光素子を含んで構成される発光装置等に関する。 b 背景技術 【0002】近年,例えば液晶テレビや液晶モニタに代表される液晶表示装置などの表示装置では,表示パネルの背面や側面などから光を照射するために,発光装置としてバックライト装置が採用されている。このバックライト装置としては,液晶パネルの直下(背面)に平面上に光源を配置するいわゆる直下型が存在する。また,透明な樹脂製の導光板の二辺または一辺にのみ光源を設置し,導光板に入射させた光を導光板の裏面に設けた反射部によって反射させて液晶パネル面を照射させるいわゆるエッジライト型が存在する。ここで,直下型は,高輝度を確保できる点で優れている。また,エッジライト型は,直下型よりも薄くできる点で優れている。 【0003】…近年,固体発光素子の1つである発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を光源として使用するバックライト装置の技術開発が進められている。 【0004】ここで,バックライト装置では,例えばLEDから発せられた光を観測者の方へ反射させる反射板(リフレクタ)が設けられ,例えば側面方向の放出光をこのリフレクタで反射させ,上面から光を出射させている。また,LEDから発せられた光を集光させ,例えば配光特性の任意コントロールを行う目的でレンズが用いられる場合が多い。… c 発明が解決しようとする課題 【0006】ところで,LEDのような固体発光素子を用いた発光装置では,上述したようにLEDに対してレンズの装着が行われることが多い。そして,従来にあっては,例えばLEDが装着されるLEDパッケージケースに対し,スナップばめ,摩擦ばめ,熱かしめ,接着結合あるいは超音波溶接等を用いてレンズの装着が行われている。しかしながら,これらの手法を用いた場合,多くの作業工程が必要となり,製造コストの上昇が製品のコストアップを招くことになってしまう。… 【0007】また,LEDのような固体発光素子を用いた発光装置では,上述したようにリフレクタとレンズとを組み合わせて用いられる場合が多い。しかしながら,レンズ自身にリフレクタとしての機能を持たせた場合には,LEDから出射された光がレンズ内で反射することによって徐々にその光量が減衰し,表示パネル等の被照射物に対する光の照射効率が低減してしまうおそれがあった。なお,このような問題は,LEDのような固体発光素子から出射される光を屈折させるレンズを使用する場合だけでなく,例えば固体発光素子を覆うことで固体発光素子を保護するカバーを使用する場合においても,同様に生じ得る。 【0008】本発明は,かかる技術的課題を解決するためになされたものであって,その目的とするところは,固体発光素子に対するカバーの取り付けを容易なものとし,且つ,カバーが装着された固体発光素子から出射される光の照射効率を高めることにある。 d 発明の効果 【0015】本発明によれば,カバーを挟み込みによって装着することにより,固体発光素子に対するカバーの取り付けを容易なものとすることができる。また,本発明によれば,固体発光素子から出射された光をカバーの外側で反射するので,カバーが装着された固体発光素子から出射される光の照射効率を高めることができる。 e 発明を実施するための最良の形態 【0016】…図1は,本実施の形態が適用される液晶表示装置の全体構成を示す図である。本実施の形態が適用される液晶表示装置は,液晶表示モジュール50と,この液晶表示モジュール50の背面側(図1では下部側)に設けられるバックライト装置10とを備えている。なお,本実施の形態では,直下型のバックライト装置10が用いられる。 【0017】バックライト装置10は,発光部を収容するバックライトフレーム11と,発光ダイオード(以下の説明ではLEDという)を複数個,配列させた発光モジュール12とを備えている。また,バックライト装置10は,光学フィルムの積層体として,面全体を均一な明るさとするために光を散乱・拡散させる透明な板(またはフィルム)である拡散板13と,前方への集光効果を持たせた回折格子フィルムであるプリズムシート14,15とを備えている。また,輝度を向上させるための拡散・反射型の輝度向上フィルム16が備えられる。 【0020】図2は,バックライト装置10の一部の構造を説明するための図である。図2に示す例では,液晶表示モジュール50の背面直下に光源を置く直下型のバックライト構造を採用している。そして,このバックライト構造では,液晶表示モジュール50の背面の全体に対してほぼ均等にLEDチップが配列されている。 … 【0021】バックライトフレーム11は,例えばアルミニウムやマグネシウム,鉄,またはそれらを含む金属合金などで生成される筐体構造を形成している。そして,その筐体構造の内側に,例えば白色高反射の性能を有するポリエステルフィルムなどが貼られ,リフレクタとしても機能するようになっている。この筐体構造としては,液晶表示モジュール50の大きさに対応して設けられる背面部と,この背面部の四隅を囲う側面部を備えている。… 【0022】この図2に示す例では,発光装置の一種としての発光モジュール12が複数(図2の例では8枚)設けられ,各発光モジュール12は,それぞれ複数(図2の例では1枚の発光モジュール12に対して2本) のネジ17によってバックライトフレーム11に固定されている。各発光モジュール12上には,固体発光素子の一つとしての複数のLEDチップ21が配置されている。この複数のLEDチップ21は,赤色を発光する赤色LED,緑色を発光する緑色LED,および青色を発光する青色LEDからなり,これらの各色のLEDチップ21が一定の規則に従って配置されている。…そして,このバックライトフレーム11に複数の発光モジュール12が取り付けられることで,バックライト構造の全体として,各LEDチップ21が均等に配置される。バックライトフレーム11に存在するLEDチップ21の全体を用いることで,輝度および色度の均一性を実現したバックライト装置10を提供することが可能となる。なお,図2に示す例では,複数の発光モジュール12が設けられているが,バックライトの光源として用いられる全てのLEDチップ21を1つの基板にまとめた単独の発光モジュール12を用いることもできる。 【0023】また,発光モジュール12上に配置される個々のLEDチップ21には,レンズ30が設けられている。このレンズ30は,個々のLEDチップ21を覆うように固定されている。各レンズ30は,各LEDチップ21を保護するとともに,対応するLEDチップ21から出射される光を,液晶表示モジュール50(図1参照)に効率よく且つほぼ均一に導くための機能を有している。 【0024】図3は,発光モジュール12の構成を説明するための分解図を示している。発光モジュール12は,複数のLEDチップ21を搭載するLED基板20と,LEDチップ21の数に対応して設けられる複数のレンズ30と,LED基板20上の各LEDチップ21に対応するレンズ30を固定するのに用いられるレンズカバー40を備えている。 【0025】基板の一種であるLED基板20は,例えばガラスエポキシ樹脂をベースとしたプリント回路基板からなり,例えばはんだ付け等によってLEDチップ21を固定している。また,LED基板20には,各LEDチップ21を発光させるための回路等が内蔵される。さらに,LED基板20には,ネジ17の取り付け位置に対応する二つのネジ穴22が貫通形成される。さらにまた,LED基板20のLEDチップ21の装着部位近傍には,反射部23が形成されている。この反射部23は,例えば金メッキ,銀メッキあるいはアルミ蒸着等にて構成することができる。… 【0033】そして,カバー基板41に設けられたすべてのレンズ穴42にレンズ30が挿入および保持された後,LED基板20を用いて,レンズカバー40のカバー基板41の下部側から押さえを行う。このとき,LED基板20に設けられた各LEDチップ21が,各レンズ穴42に挿入された各レンズ30内に配置されるようにする。これにより,各レンズ30は,そのつば部32がレンズカバー40およびLED基板20に挟み込まれる。…さらに,場合によっては,レンズカバー40とLED基板20とを,ネジ17を用いてバックライトフレーム11に直接ネジ止めすることで,各レンズ30を固定することも考えられる。 【0036】では次に,このようにして作製された発光モジュール12による光の照射について詳細に説明する。LEDチップ21に所定の電流が流れると,LEDチップ21が発光する。そして,LEDチップ21から出射された光は各方向に広がっていく。出射された光のうち,例えばLEDチップ21からみて斜め上方より上側に照射された光は,レンズ30のドーム部31を通過した後,そのまま拡散板13に照射される。 【0040】以上説明したように,本実施の形態では,レンズカバー40を用いて,LED基板20上の各LEDチップ21に対する各レンズ30の位置決めおよび固定を行うようにした。このため,各LEDチップ21に対してレンズ30を1個ずつ装着していく態様と比較して,レンズ30の取り付け作業を容易なものとすることができる。… イ 先願明細書には,前記第2の3(2)アのとおりの先願発明が記載されていることは当事者間に争いがなく,前記アの記載によれば,先願明細書には,先願発明に関し,以下の点が開示されていることが認められる。 (ア) 先願発明は,固体発光素子を含んで構成される発光装置等に関する(【0001】)。 液晶表示装置などの表示装置では,表示パネルの背面や側面などから光を照射するために,発光装置としてバックライト装置が採用されているが,LEDを光源として使用するバックライト装置の技術開発が進められている(【0002】,【0003】)。従来の発光装置では,LEDに対してレンズの装着が行われることが多いが,例えばLEDが装着されるLEDパッケージケースに対し,スナップばめ,摩擦ばめ,熱かしめ,接着結合あるいは超音波溶接等を用いてレンズの装着が行われた場合,多くの作業工程が必要となり,製造コストの上昇が製品のコストアップを招くという課題があった(【0006】)。 (イ) 先願発明は,上記の課題を解決するため,固体発光素子に対するカバーの取り付けを容易なものとし,かつ,カバーが装着された固体発光素子から出射される光の照射効率を高めることを目的とし(【0008】),カバーを挟み込みによって装着することにより,固体発光素子に対するカバーの取り付けを容易なものとし,また,固体発光素子から出射された光をカバーの外側で反射することにより,カバーが装着された固体発光素子から出射される光の照射効率を高めることができる,という効果を奏するものである(【0015】)。 (ウ) そして,先願発明に係る実施例においては,バックライト装置10は,発光部を収容するバックライトフレーム11と,LEDを複数個配列させた発光モジュール12と,光学フィルムの積層体として,面全体を均一な明るさとするために光を散乱・拡散させる透明な板(又はフィルム)である拡散板13と,前方への集光効果を持たせた回折格子フィルムであるプリズムシート14,15とを備えている(【0017】)。このバックライトフレーム11に複数の発光モジュール12が取り付けられることで,バックライト構造の全体として,各LEDチップ21が均等に配置され,バックライトフレーム11に存在するLEDチップ21の全体を用いることで,輝度及び色度の均一性を実現したバックライト装置10を提供することが可能となる(【0022】)。発光モジュール12の上に配置される個々のLEDチップ21には,レンズ30が設けられており,このレンズ30は,個々のLEDチップ21を覆うように固定され,各レンズ30は,各LEDチップ21を保護するとともに,対応するLEDチップ21から出射される光を,液晶表示モジュール50に効率よく,かつ,ほぼ均一に導くための機能を有している(【0023】)。発光モジュール12は,複数のLEDチップ21を搭載するLED基板20と,LEDチップ21の数に対応して設けられる複数のレンズ30と,LED基板20上の各LEDチップ21に対応するレンズ30を固定するのに用いられるレンズカバー40を備え,LED基板20には,ネジ17の取り付け位置に対応する二つのネジ穴22が貫通形成される(【0024】,【0025】)。カバー基板41に設けられた全てのレンズ穴42にレンズ30が挿入及び保持された後,LED基板20を用いて,レンズカバー40のカバー基板41の下部側から押さえを行うが,このとき,LED基板20に設けられた各LEDチップ21が,各レンズ穴42に挿入された各レンズ30内に配置されるようにすることで,各レンズ30は,そのつば部32がレンズカバー40及びLED基板20に挟み込まれる(【0033】)。 先願発明に係る実施例においては,出射された光のうち,例えばLEDチップ21からみて斜め上方より上側に照射された光は,レンズ30のドーム部31を通過した後,そのまま拡散板13に照射される(【0036】)。 先願発明に係る実施例においては,レンズカバー40を用いて,LED基板20上の各LEDチップ21に対する各レンズ30の位置決め及び固定を行うようにしたため,各LEDチップ21に対してレンズ30を1個ずつ装着していく態様と比較して,レンズ30の取り付け作業を容易なものとすることができる(【0040】)。 ウ 以上によれば,先願発明において,レンズ30は,LEDチップ21から出射された光を液晶モジュール50にほぼ均一に導く機能を有しており,また,拡散板13は,光を散乱・拡散させ,面全体を均一な明るさとする機能を有するものと認められる。 すなわち,先願発明は,レンズ30及び拡散板13により光の均一化を図るものである。 エ なお,原告は,先願明細書の図1及び2には,「LEDチップ21と拡散板13までの距離」と「LEDチップ21間の距離」の大小関係が明確に反映されている旨主張する。 しかし,願書に添付された図面は,発明を理解しやすくするための説明図にすぎず,寸法が正確に反映されたものであるとは必ずしもいえないものであって,先願明細書の記載を参酌しても,図1,2に「LEDチップ21と拡散板13までの距離」と「LEDチップ21間の距離」の大小関係が明確に反映されていると認めることはできない。 したがって,先願明細書に,上記大小関係が記載されているということはできない。 (2) 本件発明と先願発明との実質的同一性について ア 本件発明と先願発明とが,前記第2の3(2)イ(イ)記載の相違点において相違することは,当事者間に争いがない。 イ 相違点について 本件発明は,前記1(2)のとおり,LEDといった指向性のある光源を用いた照明装置において,光源の指向性によるグレアを緩和して均一な面発光をすることを課題とし,相違点に係る構成を採用すること,すなわち,光源から拡散板までの距離が複数の光源間の距離より大きくなるようにすることによって,指向性のある光源からの光が拡散板に到達する前に広がるので,拡散板にて光源の指向性によるグレアを更に解消した面発光が可能になるという効果を奏する。 これに対し,先願発明は,前記(1)イのとおり,LEDに対してレンズの装着が行われる発光装置において,レンズが,LEDから出射された光を液晶モジュールにほぼ均一に導く機能を有しており,また,拡散板は,光を散乱・拡散させ,面全体を均一な明るさとする機能を有するものであり,レンズ及び拡散板により光の均一化を図るものである。 一般に,光源と拡散板の距離を長くすることにより,光の均一性を高めることができるが(甲3の6・7,甲6の3),先願発明は,レンズ及び拡散板により既に光の均一化を図っているから,光源から拡散板までの距離を光源間の距離より大きくすることによって光の均一化を図ろうとする課題がない。したがって,先願発明において,相違点に係る本件発明の構成を付加する必要がない。また,仮に先願発明において,相違点に係る本件発明の構成を付加すると,光の均一化がより一層進むという新たな効果を奏することになる。 以上によれば,光源から拡散板までの距離が複数の光源間の距離より大きくなるようにすることが周知技術ないし慣用技術であるか否かにかかわらず,本件発明と先願発明との相違点が,課題解決のための具体化手段における微差であるということはできず,光源から拡散板までの距離が複数の光源間の距離より大きくなるようにすることが先願明細書に記載されているに等しいということはできない。 したがって,上記相違点は実質的な相違点であって,先願発明は本件発明と同一ではない。 (3) 小括 以上のとおり,先願発明は本件発明と同一ではないとした本件審決の判断に誤りはない。 よって,取消事由1は理由がない。 3 取消事由2-1(相違点1に係る容易想到性判断の誤り)について(1) 引用発明についてア 引用例1(甲2)には,おおむね,次の記載がある(下記記載中に引用する図1,2及び15については,別紙3引用例図面目録1を参照。)。 (ア) 特許請求の範囲【請求項1】複数の照明モジュールを平面状に集合させて大面積化した照明装置において,各照明モジュールには,隣接する複数の照明モジュールと相互に接続する複数の電気的接続部が,各照明モジュールの辺に面して配置されていることを特徴とする照明装置 【請求項9】請求項1ないし8に記載の照明装置において,各照明モジュールにおける光源部品はLED素子であり,中央部に配置する照明モジュールに使用するLED素子は,周辺部に配置する照明モジュールに使用するLED素子より,電力―輝度変換効率が高いことを特徴とする照明装置 【請求項12】請求項1ないし11に記載の照明装置において,各照明モジュールは外形が長方形であることを特徴とする照明装置 【請求項13】請求項12に記載の照明装置において,各照明モジュール外形の横縦比率が約16:9であることを特徴とする照明装置 【請求項16】請求項1ないし15に記載の照明装置をバックライトとして使用したことを特徴とする液晶表示装置 【請求項17】隣接する複数の照明モジュールと相互に接続する複数の電気的接続部を備えた照明モジュールにおいて,電気的接続部が照明モジュールの辺に面して配置され,複数の照明モジュールを電気的接続部で相互に接続して照明装置として使用することを特徴とする照明モジュール 【請求項24】請求項17ないし23に記載の照明モジュールにおいて,各照明モジュールは外形が長方形であることを特徴とする照明モジュール 【請求項25】請求項24に記載の照明モジュールにおいて,各照明モジュール外形の横縦比率が約16:9であることを特徴とする照明モジュール 【請求項28】請求項17ないし27に記載の照明モジュールを複数集めてバックライトとして使用したことを特徴とする液晶表示装置(イ) 発明の詳細な説明a 技術分野 【0001】本発明は,低コストで表示品質が良好な表示を実現するための照明装置,照明モジュール及びこれらを用いた液晶表示装置に関するものである。 b 背景技術 【0003】これまで,表示装置としては,CRTが主流であったが,近年はアクティブマトリクス型の液晶表示装置(以下,LCDという。)が普及しつつある。 LCDは,液晶の光透過性を利用した表示装置であり,自らは発光せず,背面にあるバックライトの光を,透過―遮断することで表示する。 【0004】このLCDのバックライトとしては,…近年,表示画像の色再現性の向上のために,発光ダイオード(以下,LED素子という。)をバックライトに使用した報告が…ある。 【0005】この文献に記載されているLED素子は,点光源に近いものであり,平面表示をする液晶表示装置のバックライトとして用いるには,複数のLED素子を集合させて,平面光源とする必要がある。 【0006】また,現在のLED素子は,電力―発光輝度効率が,これまで使用されてきた蛍光管より低く,さらに温度上昇により,この発光効率が低下する特徴が顕著である。 【0007】これらの課題を解決する方法として,放熱特性のすぐれた大型のLED素子を直線状に数行配置して構成した例…がある。 【0008】また,平面光源とする方法としては,LED素子のバックライトを複数の領域に分けて構成した例…があり,この平面光源に拡散シートを設けて,平面光源の境界部に生じる輝度ムラを低減させた例…がある。 c 発明が解決しようとする課題 【0009】しかしながら,上記…の例では,一般用途では使用しない特殊な大型LED素子チップを,やはり特殊な放熱構造の大型パッケージとして使用しており,非常にコストが高くなっている。 【0010】また,バックライトに配置する光源としての単位は,さらに,それらのLED素子パッケージを1列に多数搭載した大きな基板であり,これをバックライト内に配置する位置は,バックライトの大きさ毎に異なるため,設計や製造もバックライトの大きさ毎に異なり,量産による低コスト化の効果は少ない。 【0011】一方,…の例では,LED素子のバックライトを複数の領域に分けて構成し,領域間の発光輝度均一性を光拡散シートのみで確保している。 【0012】この光拡散シートのみによる光均一性の確保は,この例で用いられているようなカメラ一体型VTRなどのLCDとしては充分であるかもしれないが,大型の液晶TVやモニタ用途LCDでは不十分であり,さらなる対策が必要である。 【0013】本発明の目的は,このような問題,課題を解決するものである。すなわち,本発明の目的は,低コストで,光不均一性などの画質不良がなく高性能な照明装置や照明モジュール,及びそれを使用した高画質な液晶表示装置を提供することにある。 d 課題を解決するための手段 【0014】本発明では,上記目的を達成するために,複数の照明モジュールを平面状に集合させて大面積化した照明装置において,各照明モジュールの電気的接続部が,照明モジュールの辺に面して配置されており,その電気的接続部は,光源部品の最外周から照明モジュール各辺に垂線を下した場所以外の部分に面して主に配置されていて,相対する2辺に面して,前記2辺に垂直な方向上で同じ位置に,又は同じ照明モジュールを平面的に連続させて隣接させた場合に,相対するように配置されている。 【0015】前記照明モジュールに配置された光源部品の上部には,照明モジュール平面と平行な平面が形成されており,前記照明モジュールの外形は,長方形で横縦比率が約16:9又は約4:3であって,対角サイズが約1インチ(25mm(1インチ≒25.4mm))の整数倍であることが望ましい。 e 発明の効果 【0016】本発明に係る照明装置,照明モジュール及びそれらを用いた液晶表示装置では,複数の照明モジュールを平面状に集合させて大面積化するバックライトとして,照明モジュール外形をLCDの外形と相似とし,大きさも表示装置の対角サイズとしてよく使われるインチサイズの整数倍とすることで,サイズの異なるLCDのバックライトとして,照明モジュールの使用枚数を増減させて対応できることから,規格品として,大量生産が可能のため低コスト化することができる。 【0017】また,電気的接続部が,光源部品と照明モジュールの辺との間に入らないことにより,光源部品が照明モジュール間でもほぼ等間隔で配置できることから発光の均一性が高くなる。 【0018】以上のとおり,低コストで光均一性の高い照明装置,照明モジュールを使用した液晶表示装置は,低コストで,画質不良なく高画質とすることができる。 f 発明を実施するための最良の形態? 実施例1 【0020】図1に,本実施例における照明装置に使用する照明モジュールを示す。 【0021】本実施例における照明モジュール100は,その外形が長方形で,横縦比率が16:9となっており,対角サイズが約1インチ(25mm(1インチ≒25.4mm))の4倍である100mm(約4インチ)となっている。これに加えて,隣接照明モジュール間の距離を縦横それぞれ1mm程度とすると,対角方向の照明モジュール間隔は略4インチとなる。すなわち,照明モジュール100の対角サイズを4インチより約1.6mm少なめの100mmとすることによって,対角方向の照明モジュール間隔は略4インチとなる。 【0022】図2に示すように,この照明モジュール100を照明装置の背面基板上に縦横に8枚×8枚ならべて設置することで,対角32インチサイズの照明装置120を構成することができる。 【0023】各照明モジュール100間は,照明モジュール100の上下の辺に面した縦方向電気的接続部111と左右の辺に面した横方向電気的接続部112で接続されている。 【0026】しかし,本実施例の照明装置では,対角サイズが4インチ刻みでスケーラブルに設計可能であり,使用する照明モジュールは,すべてのサイズで共用できるため,大量生産が可能で低コスト化が可能である。 【0027】ここで一つ重要なことは,照明モジュール100上に配置されている光源部品であるLED素子115は,各照明モジュール100内,及び照明モジュール間においても,ほぼ等間隔で配置されていなければ,照明装置120としての光の均一性が悪くなり,これを使用したLCD上で画質不良となってしまうことである。 【0029】…カメラ一体型VTR用LCDにおいては,光の均一化要求が高くなく,また小型であるために,不均一性が目立たないかもしれないが,大型液晶TVにおいては,光均一性の要求性能が高く,また大型であるがゆえに,光散乱シートを挟んだだけでは,照明モジュール間の光の不均一性を要求性能レベルまで修正することはできない。 【0030】それゆえに,照明モジュール間においても照明モジュール100内とほぼ同じ間隔で光源部品であるLED素子115を配置する必要がある。 【0031】しかし,LED素子115を,照明モジュール間でも等間隔となるように照明モジュール100内に配置した場合,照明モジュール外周とLED素子115の間隔が非常に狭くなり,電気的接合部を配置することが困難となる。 【0033】本実施例では,この図3の網掛部分104以外の辺に面した場所に,縦方向電気的接合部111や横方向電気的接合部112を配置することで,LED素子115を,照明モジュール内でも照明モジュール間でもほぼ等間隔に配置することが可能である。これにより光均一性がよい照明装置とすることができる。 【0042】また,図5に示すように,本実施例においては,バックライトとしての構成上,さらに電力―発光輝度効率を向上させるために,LED素子115の上面に,照明モジュール100の基板平面と平行な平面116を設け,この平面116上に,各LED素子115に対応して複数の照明透過孔105を有する非常に反射率の高い光散乱シート107を貼り付けている。なお,この照明モジュール100内のLED素子115は2行3列に合計6個配置されている。 【0043】これにより,以後説明する図15に示すように,照明装置120から出射されたが,液晶パネルに反射されて戻ってきた光や,照明装置120内の散乱光などを,照明モジュール100の基板やLED素子115との隙間などに吸収させることなく,再度液晶パネルに出射することが可能となり,電力―発光輝度効率を向上することが可能である。 【0055】また,前記電気的接続部が,光源部品であるLED素子と辺との間になく,光源部品が照明モジュール内と照明モジュール間でほぼ等間隔に配置できることから,光均一性を良好にできる。 【0056】さらに,光源部品上に,照明モジュール平面と平行な平面を設置し反射率の高い光散乱シートを貼り付けていることで,電力―発光輝度効率を向上でき,LED素子の電力―発光輝度効率のランクによって作り分けた照明モジュールのうち,効率が良い照明モジュールを中央部配置することで,要求性能を満たしながら低コスト化が可能となった。 ? 実施例8 【0094】図15に,本実施例における照明モジュール100を集合させてバックライトとして使用した場合の液晶表示装置の断面図を示す。 【0095】背面格子フレーム121上に,平面的に並べられた照明モジュール100から平行に2cm程度離して,光散乱板124が設置されており,その上に光学フィルム125が配置されている。そして,さらにその上に液晶パネル123が設置されている。 【0096】照明モジュール100内の各LED素子115から出射した光は,まず,上面にある光散乱板124に当り,その内部で散乱して,一部の光は,そのまま液晶パネル123に向かうが,その他の光は,照明モジュール100方向に戻ってくる。 【0097】戻ってきた光は,照明モジュール100単位でLED素子115上に貼り付けた光散乱シート107で散乱反射されて,また,光散乱板124の方向に向かう。そして,その一部は液晶パネル123に向かうが,また戻ってくる光も存在する。 【0098】この繰り返しによって,LED素子115から出射された光は,等間隔なLED素子115の配置特性により,さらに均一化されるため,各照明モジュール100の境界の発光ムラは,さらに少なくなり,LED素子発光部の直上のみが明るいというムラも軽減される。 イ 引用例1には,前記第2の3(3)アのとおりの引用発明が記載されていることは当事者間に争いがなく,前記アの記載によれば,引用例1には,引用発明に関し,以下の点が開示されていることが認められる。 (ア) 引用発明は,低コストで表示品質が良好な表示を実現するための照明装置,照明モジュール及びこれらを用いた液晶表示装置に関する(【0001】)。従来の照明装置として放熱特性のすぐれた大型のLED素子を直線状に数行配置して構成したものでは,非常にコストが高くなり,LED素子のバックライトを複数の領域に分けて構成し,領域間の発光輝度均一性を光拡散シートのみで確保しているものでは,光均一性の確保が不十分であるという課題があった(【0003】〜【0012】)。 (イ) 引用発明は,上記の課題を解決するため,低コストで,光不均一性などの画質不良がなく高性能な照明装置や照明モジュール及びそれを使用した高画質な液晶表示装置を提供することを目的とし(【0013】),複数の照明モジュールを平面状に集合させて大面積化した照明装置において,各照明モジュールには,隣接する複数の照明モジュールと相互に接続する複数の電気的接続部が,各照明モジュールの辺に面して配置した(【0014】)。 (ウ) 引用発明は,複数の照明モジュールを平面状に集合させて大面積化するバックライトとして,照明モジュール外形をLCDの外形と相似とし,大きさも表示装置の対角サイズとしてよく使われるインチサイズの整数倍とすることで,サイズの異なるLCDのバックライトとして,照明モジュールの使用枚数を増減させて対応できることから,規格品として,大量生産が可能のため低コスト化することができる。また,電気的接続部が,光源部品と照明モジュールの辺との間に入らないことにより,光源部品が照明モジュール間でもほぼ等間隔で配置できることから発光の均一性が高くなる。これにより,低コストで光均一性の高い照明装置,照明モジュールを使用した液晶表示装置は,低コストで,画質不良なく高画質とすることができるという効果を奏するものである(【0016】〜【0018】)。 (エ) そして,引用発明に係る実施例においては,照明モジュール100は,その外形が長方形で,横縦比率が16:9となっており,対角サイズが約1インチ(25mm(1インチ≒25.4mm))の4倍である100mm(約4インチ)となっている。これに加えて,隣接照明モジュール間の距離を縦横それぞれ1mm程度とすると,対角方向の照明モジュール間隔は略4インチとなる。すなわち,照明モジュール100の対角サイズを4インチより約1.6mm少なめの100mmとすることによって,対角方向の照明モジュール間隔は略4インチとなる。この照明モジュール100を照明装置の背面基板上に縦横に8枚×8枚並べて設置することで,対角32インチサイズの照明装置120を構成することができる(【0021】,【0022】)。各照明モジュール100間は,照明モジュール100の上下の辺に面した縦方向電気的接続部111と左右の辺に面した横方向電気的接続部112で接続されている(【0023】)。この照明装置では,対角サイズが4インチ刻みでスケーラブルに設計可能であり,使用する照明モジュールは,全てのサイズで共用できる(【0026】)。照明モジュール100の上に配置されている光源部品であるLED素子115は,各照明モジュール100内及び照明モジュール間においても,ほぼ等間隔で配置されていなければ,照明装置120としての光の均一性が悪くなり,これを使用したLCD上で画質不良となってしまうが,大型液晶TVにおいては,光均一性の要求性能が高く,また大型であるため,光散乱シートを挟んだだけでは,照明モジュール間の光の不均一性を要求性能レベルまで修正することはできないから,照明モジュール間においても照明モジュール100内とほぼ同じ間隔で光源部品であるLED素子115を配置する必要がある(【0027】,【0029】,【0030】)。しかし,LED素子115を,照明モジュール間でも等間隔となるように照明モジュール100内に配置した場合,照明モジュール外周とLED素子115の間隔が非常に狭くなり,電気的接合部を配置することが困難となることから,図3の網掛部分104以外の辺に面した場所に,縦方向電気的接合部111や横方向電気的接合部112を配置することで,LED素子115を,照明モジュール内でも照明モジュール間でもほぼ等間隔に配置することが可能となり,これにより光均一性がよい照明装置とすることができる(【0031】,【0033】)。また,図5に示すように,本実施例においては,バックライトとしての構成上,さらに電力―発光輝度効率を向上させるために,LED素子115の上面に,照明モジュール100の基板平面と平行な平面116を設け,この平面116上に,各LED素子115に対応して複数の照明透過孔105を有する非常に反射率の高い光散乱シート107を貼り付けており,これにより,図15に示すように,照明装置120から出射されたが,液晶パネルに反射されて戻ってきた光や,照明装置120内の散乱光などを,照明モジュール100の基板やLED素子115との隙間などに吸収させることなく,再度液晶パネルに出射することが可能となり,電力―発光輝度効率を向上することが可能である(【0042】,【0043】)。図15に,本実施例における照明モジュール100を集合させてバックライトとして使用した場合の液晶表示装置の断面図を示す。背面格子フレーム121上に,平面的に並べられた照明モジュール100から平行に2cm程度離して,光散乱板124が設置されており,その上に光学フィルム125が配置されている。そして,さらにその上に液晶パネル123が設置されている。照明モジュール100内の各LED素子115から出射した光は,まず,上面にある光散乱板124に当り,その内部で散乱して,一部の光は,そのまま液晶パネル123に向かうが,その他の光は,照明モジュール100方向に戻ってくる。戻ってきた光は,照明モジュール100単位でLED素子115上に貼り付けた光散乱シート107で散乱反射されて,また,光散乱板124の方向に向かう。そして,その一部は液晶パネル123に向かうが,また戻ってくる光も存在する。この繰り返しによって,LED素子115から出射された光は,等間隔なLED素子115の配置特性により,さらに均一化されるため,各照明モジュール100の境界の発光ムラは,さらに少なくなり,LED素子発光部の直上のみが明るいというムラも軽減される(【0094】〜【0098】)。 ウ 以上によれば,引用発明は,LED素子の等間隔配置により光の均一性を高めるとともに,光拡散シートにより更に光均一性を高めたものと認められる。 (2) 周知例の記載等ア 周知例1ないし10 周知例1ないし3(甲3〜3の2)は,光源から拡散板までの距離と光源間の距離の大小関係について開示するものではない。 周知例4(甲3の3)は,実施例3を含め,短辺方向の発光ダイオード間の距離は78mm(図4)であり,発光ダイオードと拡散板との距離よりも大きいから,光源から拡散板までの距離が複数の光源間の距離より大きくなるようにする構成を開示するものではない。 周知例5及び6(甲3の4・5)は,光源の中心間の距離と光源の中心と光拡散板の反射板側の面との距離の好ましい数値範囲の傾向に鑑みると,光源の中心間の距離の方が光源の中心と光拡散板の反射板側の面との距離よりも大きいと解するべきであり,相違点1に係る本件発明の構成とは,両距離の大小関係が逆であると認められる。 周知例7(甲3の6)は,拡散板に到達するまでに光を広げるという技術的思想を開示しているものの,光源から拡散板までの距離が複数の光源間の距離より大きくなるようにする構成を開示するものではない。 周知例8(甲3の7)は,光源が一つであり,複数の光源に係るものではなく,前提技術が異なり,周知例9及び10(甲3の8・9)は,本件発明と同じ課題を有するものの,これを拡散板自体に工夫することで解決するものであって,光の均一化に係る解決手段が相違する。 以上によれば,周知例1ないし10は,いずれも相違点1に係る本件発明の構成,すなわち,光源から拡散板までの距離が複数の光源間の距離より大きくなるようにする構成を開示するものではない。 イ 甲6(特開2003-331604号公報) 甲6には,拡散板14と基板12との間隔H1と発光ダイオード13のX方向(横方向)の配置ピッチX1との大小関係について,間隔H1をX1と「同寸法もしくはそれよりも大きい寸法」としていること,すなわち「間隔H1≧X1」の関係が記載されている(【0030】〜【0032】)。 また,甲6には,拡散板14と基板12との間隔H1と発光ダイオード13のY方向(縦方向)の配置ピッチY1との大小関係を示す明示的記載はないが,【0032】には,発光ダイオード13を配置した基板12に,発光ダイオードの配置ピッチと同寸法若しくは大きい寸法の位置に,拡散板14を配置するので,発光ダイオード13を光源とする光が拡散板14で適正に拡散できることが記載されていることから,実質的に「間隔H1≧Y1」の関係も記載されていると理解される。 したがって,甲6には,光源から拡散板までの距離を光源間の距離より大きくすること及びこれにより均斉度を向上させることが開示されているといえる。 ウ 甲6の1(特開2006-107850号公報) 甲6の1には,光源から拡散板までの距離を光源間の距離より大きくすること及びこれにより均一な輝度を実現できることが記載されている(【0012】,【0013】,【0023】〜【0025】)。 エ 以上によれば,本件特許の出願時において,光源から拡散板までの距離を光源間の距離より大きくすること及びこれにより光の均一化という効果を奏することは,周知技術であったと認められる。 オ 被告の主張について (ア) 被告は,甲6ないし6の4に基づく主張をすることは,本件取消訴訟の審理範囲を逸脱するものであって,許されない旨主張する。 (イ) 本件審判手続の経過は次のとおりである。 すなわち,原告は,審判請求書において,「本件発明は,引用例1,引用例2ないし4に基づいて,あるいは,引用例1,周知技術(周知例1ないし3),引用例2ないし4に基づいて,当業者が容易に発明することができたものである。」旨主張していた(甲10)。その後,原告は,平成26年10月7日付け口頭審理陳述要領書において,本件発明の「前記光源からの光を拡散する拡散板を,前記光源から該拡散板までの距離が前記複数の光源間の距離より大きくなるように備え,」との発明特定事項に係る構成が周知技術である旨主張し,新たに周知例4ないし10を証拠として追加提出した上で,「本件発明は,引用例1,引用例2ないし4及び周知技術(周知例1ないし10)に基づいて,当業者が容易に発明できたものである。」旨主張した(甲14)。そして,平成26年11月4日の第1回口頭審理において,原告が新たに追加提出した周知例4ないし10を含め書証が取り調べられ(甲17),本件審判においても,本件発明の上記発明特定事項に係る構成が周知技術であると認められるか否かについて判断されている(本件審決37頁)。 (ウ) 以上の審判手続における審理経過に照らせば,引用例1に基づく進歩性の欠如との無効理由に関し,本件発明の「前記光源からの光を拡散する拡散板を,前記光源から該拡散板までの距離が前記複数の光源間の距離より大きくなるように備え,」との発明特定事項に係る構成が周知技術であることを理由とする無効理由について審理判断されているものと認められる。 そして,原告は,甲6ないし6の4を,上記周知技術の立証のために新たな周知文献を提出したものであるから,これらを証拠として判断の基礎とすることができるというべきである(最高裁昭和54年(行ツ)第2号同55年1月24日第一小法廷判決・民集34巻1号80頁参照)。 (エ) したがって,被告の上記主張は理由がない。 (3) 相違点1の容易想到性について 引用発明は,前記(1)のとおり,低コストで,光不均一性などの画質不良がなく,高性能な照明装置を提供することを課題とするものである。 一般に,光源と拡散板の距離を長くすることにより,光の均一性を高めることができることは,技術常識であるといえるが(周知例7【0019】,周知例8【0046】,甲6の3【0007】),他方で,光源と拡散板の距離を長くすれば,装置の厚さが厚くなり,表示装置の薄型化の要請にそぐわないことも,当業者であれば,当然に理解する事項である。したがって,当業者であれば,光の均一化と装置の薄型化の双方の要請を,当然に比較考慮するといえる。そして,前記(2)のとおり,本件特許の出願時において,光源から拡散板までの距離を光源間の距離より大きくすること及びこれにより光の均一化という効果を奏することは,周知技術であったと認められる。 そうすると,上記のとおり,光不均一性などの画質不良がなく,高性能な照明装置を提供することを課題とする引用発明において,光の均一化と装置の薄型化の要請を比較考慮の上で,上記周知技術を適用し,相違点1に係る本件発明の構成を備えるようにすることは容易に想到することができたことである。 (4) 小括 よって,取消事由2-1は理由がある。 4 取消事由2-2(相違点2に係る容易想到性判断の誤り)について (1) 引用発明について 引用発明は,前記3(1)のとおり,照明装置,照明モジュール及び液晶表示装置に係るものであり,多数の照明モジュール100により照明装置120を構成すること(図2),大型液晶TVに使用されることが想定されることから,照明モジュール100を何らかの方法で背面格子フレーム121に係止する必要がある(図15)と推認することができる。 しかし,引用例1には,照明モジュール100と背面格子フレーム121との係止構造に関する記載が一切存せず,したがって,照明モジュール100に係る係止孔に関する記載もない。 係止するためには,ネジ等係止孔を用いる方法や接着等係止孔を用いない方法があるが,引用発明は,照明モジュール100の4辺がコネクタ111,112で接続されていること(図1)に照らすと,少なくとも一つ一つの照明モジュールが全て係止孔を用いた方法により背面格子フレーム121に係止されている必要はないものと認められる。 また,仮に,引用発明において,照明モジュール100に係止孔を設けるのであれば,光散乱シート107にも貫通孔を設けるか,又は光散乱シート107に影響がないように何らかの手段により照明モジュール100に係止孔を設ける必要があるが,引用例1には,これらに関連する具体的手段についての記載も示唆もない。 以上によれば,引用発明においては,照明モジュール100に係止孔を設けることは必ずしも不可能ではないものの,必ず係止孔を設けなければならない理由もない。 (2) 公知文献の記載ア 引用例2(特開2007-148177号公報。甲4) LEDの基板は,何らかの手段によりシャーシに係止されているものと認められるが,引用例2の記載からは,具体的な係止構造を認識することはできない。また,引用例2の請求項1に係る発明において,貫通孔23は,反射板24,光源配置基板25,シャーシ26を貫通させたもので,導光体21の係合部32を嵌合することにより,導光体21を光源配置基板25に立設させるためのものであり(【0060】,図3),導光体21は,光源配置基板25をシャーシ26に係止状態にすることに寄与することとなるが,引用例2の従来技術(図29)においても,基板が何らかの手段でシャーシに係止されていると推認できることを踏まえると,貫通孔23が,基板を一面に係止するための係止孔であると認めることはできない(別紙4引用例図面目録2参照)。 さらに,光源配置基板25は,単数であり,引用例2は,基板を一面に複数並べて備える照明装置に係るものでもない。 イ 引用例3(特開2005-302484号公報。甲4の1) 引用例3における結合ネジ15は,基板3と放熱体2を結合するためのものであり,基板3自体は,充填材7の硬化によりカバーケース5に固着させるものであるから(【0012】〜【0016】),結合ネジ15が通る基板の孔は,本件発明における係止孔には当たらないというべきである(別紙4引用例図面目録2参照)。 なお,原告は,本件審判手続において,引用例3のうち,「基板3の表面にLED1が2列に配設,基板3の表から挿入されるネジ15によって基板3に放熱体2が結合一体化される。」(【0015】,図2及び図5等)という記載から把握される発明に基づく無効理由を主張し,本件審決において当該理由について判断されたものであるから(甲10),本件訴訟において,新たに引用例3のうち【0002】及び図8の記載から把握される発明(引用例3において従来技術とされている発明)に基づく無効理由を主張することは,無効理由の趣旨を変更するものであり,許されない。 ウ 引用例4(特開2003-68129号公報。甲4の2) 引用例4のLEDモジュール1の取付けは,嵌合穴11をモジュール保持部材5である係止爪に通すことにより係止爪がたわんで爪先がLEDモジュール1の前面に引っ掛かるようにするもの(【0028】,図7〜9),すなわち,LEDモジュール1の落下をモジュール保持部材5である係止爪で引っ掛けて係止しているものであると認められる。 LEDモジュール1と器具本体2間にはバネ7があることでLEDモジュール1と器具本体2は接していないため(図8),「基板を一面に係止する」ものではない(別紙4引用例図面目録2参照)。また,LEDモジュール1は,単数であり,引用例4は,基板を一面に複数並べて備える照明装置に係るものでもない。 (3) 相違点2の容易想到性について ア 前記(1)のとおり,引用発明には,照明モジュール100に必ず係止孔を設けなければならない理由はないから,引用発明において,照明モジュール100に係止孔を設ける積極的な動機付けがない。 イ 仮に,引用発明において,照明モジュール100に係止孔を設ける動機付けがあったとしても,本件発明は,前記1(2)のとおり,係止孔を基板の端部ではなく,複数の光源の内で最外周にある光源の内側に位置する光源の間に配置したことにより,係止孔を基板の両端部に余分に設ける必要がなくなり,LED基板を複数並べてLED照明装置を構成した場合であっても,均一な面発光と基板の小型化を可能にしたものであり,基板を一面に複数並べて備える照明装置であるのに対し,引用例2及び4は,それぞれ光源配置基板25及びLEDモジュール1が単一であり,引用発明と引用例2及び4とでは,照明装置としての基本構成が相違するので,引用発明に引用例2に記載された「貫通孔23」及び引用例4に記載された「嵌合穴11」を組み合わせても,相違点2に係る本件発明の構成とはならない。 また,引用例3に記載された「結合ネジ15が通基板の孔」は,基板と放熱体を結合するためのものであり,引用例3には,基板を一面に係止するための係止孔がないので,引用発明に引用例3に記載された発明を組み合わせることはできない。 ウ 以上によれば,引用発明において,引用例2ないし4に記載された発明を組み合わせることにより,当業者が相違点2に係る本件発明の構成に容易に想到することができたとはいえない。 (4) 原告の主張について ア 原告は,相違点2に係る本件発明の構成は,引用発明と甲7ないし7の2に記載された一般的な技術であるLEDを装着した基板を一面に係止するための構成を組み合わせることにより容易に想到できる旨主張する。 しかし,原告が審判手続において主張した無効理由は,「本件発明は,引用例1,引用例2ないし4及び周知技術(周知例1ないし10)に基づいて,当業者が容易に発明できたものである。」というものであり,相違点2については,同構成が引用例2ないし4に記載されていることを主張していたものであって,引用例1に引用例2ないし4を組み合わせることによる容易想到性を主張していたものと認められる(甲10,14)。 そうすると,原告の上記主張のうち,相違点2に係る本件発明の構成がLEDを装着した基板を一面に係止するための構成として一般的な技術であることを甲7ないし7の2に基づいて主張することは,本件訴訟において,引用発明に組み合わせる新たな公知技術を引用するものにほかならないから,上記主張は採用の限りでない。 イ なお,仮に,甲7ないし7の2から,基板を一面に固定しなければならないことが技術常識であることがいえるとしても,前記(3)イのとおり,引用発明に引用例2ないし4に記載された発明を組み合わせても,相違点2に係る本件発明の構成には至らない。 (5) 小括 よって,取消事由2-2は理由がない。 5 結論 以上のとおり,本件発明は先願発明と同一ではないから,特許法29条の2の規定に違反して特許されたものではなく,また,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから,同法29条2項の規定に違反して特許されたものでもない。 したがって,本件審決における本件発明と引用発明との相違点1に係る容易想到性の判断の誤り(取消事由2-1)は,本件審決の結論に影響しないものであり,本件審決にこれを取り消すべき違法は認められない。 以上の次第であるから,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 部眞規子 |
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裁判官 | 柵木澄子 |
裁判官 | 鈴木わかな |