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関連審決 不服2013-13751
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事件 平成 27年 (行ケ) 10020号 審決取消請求事件

原告 フォルストガルテンインターナショナルホールディング ゲーエムベーハー
訴訟代理人弁理士 庄司隆
同 資延由利子
同 大杉卓也
同 曽我亜紀
被告特許庁長官
指定代理人西村仁志
同 清水康司
同 大瀧真理
同 田中敬規
同 山村浩
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2016/01/14
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理のための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2013-13751号事件について平成26年9月25日にした審決を取り消す。
前提事実
1 特許庁における手続の経緯等(争いがない。) スイス メディカル テヒノロギー ゲーエムベーハーは,発明の名称を「非球面レンズを有する拡大ルーペ」とする発明につき,2008年(平成20年)2月26日(パリ条約による優先権主張・外国庁受理2007年〔平成19年〕3月15日,米国。以下「本願優先日」という。)を国際出願日とする特許出願(甲6。
特願2009-553033号。以下「本願」という。)をした。
原告は,平成24年6月1日付けで,スイス メディカル テヒノロギー ゲーエムベーハーから,本願に係る発明について特許を受ける権利の譲渡を受けた上,同月28日,特許庁長官に対し,出願人名義変更届を提出した(甲7)。
原告は,平成25年2月13日に手続補正をしたが,同年3月13日付けで拒絶査定を受けたので,同年7月18日,これに対する不服の審判を請求するとともに,特許請求の範囲変更を内容とする手続補正(甲6の2)をした。
特許庁は,上記請求を不服2013-13751号事件として審理を行った。
原告は,平成26年5月26日付けで拒絶理由通知を受けたので,同年8月15日付けで特許請求の範囲変更を内容とする手続補正(甲6の3。以下「本件補正」という。)をした。
特許庁は,同年9月25日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(出訴期間の付加期間90日)をし,同年10月7日,その謄本が原告に送達された。
2 特許請求の範囲の記載 本件補正後の本願の特許請求の範囲(請求項の数は18)の請求項1の記載は,以下のとおりである(甲6の3。以下,同請求項に記載された発明を「本願発明」という。また,本件補正後の本願の明細書及び図面を併せて「本願明細書」という。。
)「【請求項1】「(a)接眼レンズ系を支持する第1の開口を有する第1の端部,及び対物レンズ を支持する第2の開口を有する第2の端部を有するハウジングと, (b) 前記ハウジングの前記第1の端部内に配置される接眼レンズ系と, (c) 前記ハウジングの前記第2の端部内に配置される対物レンズ系と,を備え,前記対物レンズ系は,機械的損傷及び/又は化学的損傷から保護される少なくとも1つの非球面プラスチックレンズを備える,拡大ルーペであって, 前記対物レンズ系の両レンズが,一方の側面が平面であり,ハウジングの上端を平坦に設計可能であり,該両レンズの上部のみにおいてレンズの半径10〜60%が切除されており, 前記非球面プラスチックレンズは, (1) 前記対物レンズ系の一部である少なくとも1つのガラスレンズであって,該ガラスレンズは前記非球面レンズと前記ハウジングの前記第2の開口との間に位置決めされ,2つの平坦な表面を有している少なくとも1つのガラスレンズ,又は (2) 前記非球面レンズと前記ハウジングの前記第2の開口との間に位置決めされ,2つの平坦な表面を有している少なくとも1つの使い捨てプラスチックレンズ,によって保護される,拡大ルーペ。」 3 審決の理由 審決の理由は,別紙審決書写しのとおりである。要するに,本願発明は,本願優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である独国特許出願公開第19860432号明細書(甲4。以下「引用例」いう。)に記載された発明(以下「引用発明」という。,特開平1-263615号公報(甲1)及び特開昭63- )269137号公報(甲5)に記載された周知技術(以下「周知技術1」という。, )特開2007-47319号公報(甲2の1)及び特開2005-107250号公報(甲2の2)に記載された周知技術(以下「周知技術2」という。,実願昭5 )3-135123号(実開昭55-52122号)のマイクロフィルム(甲3の1。
以下「甲3の1文献」という。,実願昭54-14761号(実開昭55-116 ) 314号)のマイクロフィルム(甲3の2。以下「甲3の2文献」という。)及び特開2005-18068号公報(甲3の3。以下「甲3の3文献」という。)に記載された周知技術(以下「周知技術3」という。)に基づいて,当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,したがって,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである,というものである。
(1) 審決が認定した引用発明の内容 「例えば,手術の際の細かい作業の実施を補助するため,両眼鏡の構成で提供される拡大鏡であって, 接眼レンズ12,対物レンズ8,前記接眼レンズ12と一体となった筒18及び前記対物レンズ8と一体となった筒16を備え, 前記対物レンズ8及び接眼レンズ12は,熱可塑性ポリマー材料,特にポリメチルメタクリレート(PMMA)で射出成形され,非球面の表面を備えたものである, 拡大鏡。」 (2) 本願発明と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
ア 一致点 「(a) 接眼レンズ系を支持する第1の開口を有する第1の端部,及び対物レンズを支持する第2の開口を有する第2の端部を有するハウジングと, (b) 前記ハウジングの前記第1の端部内に配置される接眼レンズ系と, (c) 前記ハウジングの前記第2の端部内に配置される対物レンズ系と,を備え,前記対物レンズ系は,少なくとも1つの非球面プラスチックレンズを備える,拡大ルーペ。」 イ 相違点 (ア) 相違点1 前記「対物レンズ系」が, 本願発明では,「機械的損傷及び/又は化学的損傷から保護され」るものであり, その「非球面プラスチックレンズ」が,「(1)前記対物レンズ系の一部である少なくとも1つのガラスレンズであって,該ガラスレンズは前記非球面レンズと前記ハウジングの前記第2の開口との間に位置決めされ,2つの平坦な表面を有している少なくとも1つのガラスレンズ,又は(2)前記非球面レンズと前記ハウジングの前記第2の開口との間に位置決めされ,2つの平坦な表面を有している少なくとも1つの使い捨てプラスチックレンズ,によって保護され」るものであるのに対し, 引用発明では,そのような保護手段を備えない点。
(イ) 相違点2 前記「対物レンズ系」の「両レンズ」が, 本願発明では,「一方の側面が平面であり,ハウジングの上端を平坦に設計可能であり,該両レンズの上部のみにおいてレンズの半径10〜60%が切除されて」いるのに対し, 引用発明では,対物レンズ系は1枚のレンズであり,一方の側面が平面になっておらず,レンズの上部が切除されてもいない点。
原告主張の取消事由
1 取消事由1(周知技術3の認定の誤り) 審決は,周知技術3について,「本願優先日前において,外科用又は手術用の拡大鏡の対物レンズにおいて,対物レンズの上部を直線状又は円弧状にカットオフし非円形の形状を採用することは周知であった」と認定した。
しかし,甲3の1文献ないし甲3の3文献に記載された周知技術は,いずれも,メガネのような器具の下側部に拡大鏡が設置され,使用者が視線を下に向けたときちょうどルーペに視線の中心部がいき,使用者は,小さなルーペを透して対象物の拡大物をみることができる器具というものに限定される。また,対物レンズは,いずれも正面視で上下対称に非円形の形状にするという技術が示されてはいるが,甲3の3文献には,横からみた形状(横断面)において,上部及び/又は下部について,対物レンズの半径の一部が切除されることは開示されていない。甲3の1文献 ないし甲3の3文献からは,横からみた形状(横断面)において対物レンズの半径の一部が切除されるという技術は得られない。
本願発明と甲3の1文献に記載された事項との差異は,@本願発明は,メガネ全体がルーペである拡大鏡であるのに対し,甲3の1文献においては,ルーペ部は,メガネの下側部に設置された極小さな覗きルーペの形状であること,A本願発明は,視線を落とすことなく真っ直ぐ正視した状態で,視野は,ルーペを透してである形態であるのに対し,甲3の1文献においては,ルーペ部の対物レンズから視野は完全に外れる機能であること,B本願発明は,ルーペ部の対物レンズの上部のみの半径が一定割合で切除されており,上下非対称であるのに対し,甲3の1文献においては,ルーペ部の対物レンズは上下対称であり,レンズの半径が切除されていることの開示はないこと,という点に集約され,甲3の2文献及び甲3の3文献についても同様である。
甲3の1文献ないし甲3の3文献に記載された周知技術における対物レンズは,極めて小さく,しかも視線中心より下にあり,その対物レンズの上端部は,レンズの半径が一部切断(横断面からみて)されておらず,レンズの周辺端部として収束しており,実質的にルーペを透した視線で対象物をみても拡大効果は十分ではない。
一方,本願発明においては,視線中心は,対物レンズの範囲にあり,しかもその上端部は,レンズの半径が一部切断(横断面からみて)されており,その端部近くでさえ,十分な対象物の拡大効果を達成することができるという格別の効果がある。
したがって,審決の周知技術3の認定には誤りがある。
2 取消事由2(相違点2に関する判断の誤り) (1) 審決は,本願発明において,「対物レンズ系の両レンズが,一方の側面が平面であり,ハウジングの上端を平坦に設計可能であり,該両レンズの上部のみにおいてレンズの半径10〜60%が切除されて」いることによる作用効果は,ユーザが拡大ルーペ又は立体拡大ルーペ越しに見るために眼を上げると,視野が顕著に増大することであるところ,周知技術3も同様の作用効果を奏することは明らかであ る旨指摘する。
しかし,原告は,この指摘には同意できない。周知技術3と本願発明の効果の差異は,要約すると,@周知技術3で設置された拡大鏡は,いずれも視線中心より下にあり視線を下に落としたときのみ,拡大された対象をみることができるという極めて限定された小さな視野での拡大効果であるのに対し,本願発明の視線中心は拡大鏡のレンズ範囲内にあり,非常に大きな視野範囲で拡大された対象をみることができる,A周知技術3の拡大鏡のレンズは,上部も下部も,レンズの半径が一定割合で切除されたものでなく,その端部上側も下側も収束形状(徐々に細くなっていく形状)であり,その結果,拡大鏡を通してみる対象の拡大物は,その周辺端部付近では十分な拡大効果を確保できないのに対し,本願発明では,レンズの上側端部のみのレンズ半径が一定割合で切除されているので,その端部周辺でさえ,十分な拡大図の視野確保が可能である,ということである。
このように,周知技術3と本願発明は,拡大鏡内に視野があるときに格別の効果の差を生じており,審決はこの点を看過している。
また,本願発明は,「使用者が一旦目を上げて拡大ルーペ越しに見ると視野を増加させるという目的を達成するが,それは好都合なことに拡大ルーペの視野の減少をほんのわずかに留める。」という効果を奏するが(本願明細書の段落【0022】参照),その意味は,拡大ルーペを透して対象物をみたときに,その上端部周辺においてさえ十分な拡大ルーペの視野を確保できるということである。そのために必要な構成要素は,レンズの半径を上部のみ一定割合で切除することであり,当該効果は,引用発明に周知技術3を適用しても到底達成できない。
(2) 引用発明に周知技術3を適用したとしても,下記のCの場合は,引用発明と実質的に変わらず,Dのみが本願発明と比較態様となるが,Dによると,ルーペとしての使用時に,視線中心は,ルーペ部上端部より上にあり,その端部は,レンズの半径が切除されたものではなく,通常のレンズとしての収束形であることから,ルーペ部を通した対象物の拡大視野は,視野自体が小さく,さらに端部周辺では極 めて限定されてしまう。この結果,周知技術3を引用発明に適用しても,本願発明の作用効果は得られず,上記適用は不可能である。
そうすると,周知技術3を引用発明に適用する際に,レンズの上部のみをカットオフすることが,当業者が適宜なし得る程度のことであるとの審決の判断は完全に否定される。
(3) 甲3の1文献ないし甲3の3文献には,ルーペの対物レンズの半径の上部の一部を切除する内容が記載されておらず,また,視線を下げたときのみに拡大鏡として機能するという周知技術3の開示内容では,対物レンズの半径の上部のみを切除するという事項でさえ,ヒントすらもたらすものではないので,その切除割合をいくらにするかなど,周知技術3をもとにしては,到底当業者には及び得ない発明事項である。
(4) また,これに加えて,周知技術3の技術思想は,術者が視線を落としたときにのみ,視線が透る位置に小さなルーペを設置し,それによって拡大図を得ることのみであるから,引用発明に周知技術3を適用して,万が一,ルーペ部を切除するという思想を思いついたとしても,当業者が認識できる技術思想は,引用発明の「ルーペ部の下側部のみを残すようにレンズを切除する(つまり視線を下げたとき のみルーペ部を視線が透る)」という程度で,本願発明のレンズの上部のみにおいてレンズの半径10〜60%を切除する(つまり,視線をあげたときのみルーペ越しにものをみる)という技術思想をもたらすことはない。
(5) したがって,引用発明に周知技術3を適用しても,本願発明の相違点2に係る構成には容易に想到することができないから,審決の相違点2に関する判断には誤りがある。
被告の反論
1 取消事由1(周知技術3の認定の誤り)に対し (1) 原告は,審決の周知技術の認定判断には誤りがある旨主張する。しかし,その根拠は,いずれも,本願の特許請求の範囲の記載や本願明細書の記載,あるいは技術常識に基づくものではないから,原告の上記主張は失当である。
ア 原告は,上記主張の根拠として,本願発明は,メガネ全体がルーペである拡大鏡であるのに対し,周知技術3を示すために例示された甲3の1文献ないし甲3の3文献におけるルーペ部(拡大鏡)は,いずれもメガネの下側部に設置された極小さな覗きルーペの形状であり,相違することをあげる。
しかし,本願の請求項1の記載によれば,本願発明は,拡大ルーペの眼鏡への配置や,使用者の視線との位置関係を規定する事項を何ら含んでいない。
本願明細書の請求項12ないし16,【0001】ないし【0003】 【002 ,0】【0021】の各記載から,本願発明の拡大ルーペは,ハウジングが,フェイ ,スシールド,ヘッドバンド,及び眼鏡から成る群から選択される「ユーザ装着可能装置」に取り付けられる態様,特に,前記「ユーザ装着可能装置」の「透光性素子」に取り付けられる態様を含むものであって,本願発明が「メガネ全体がルーペである拡大鏡である」もののみを指していないことは明らかである。
したがって,原告の上記主張は,本願の特許請求の範囲の記載や本願明細書の記載に基づかない主張であり,失当である。
イ また,原告は,本願発明は,視線を落とすことなく真っ直ぐ正視した状態で, 視野は,ルーペ越しである形態であるのに対し,周知技術3を示すために例示された甲3の1文献ないし甲3の3文献においては,ルーペ部の対物レンズから視野は完全に外れる形態であり,相違することをあげる。
しかし,本願発明は,拡大ルーペの眼鏡への配置や,使用者の視線との位置関係を規定する事項を含んでいない。
本願発明の拡大ルーペは,本願明細書の記載によれば,拡大ルーペのハウジングが,フェイスシールド,ヘッドバンド,及び眼鏡から成る群から選択される「ユーザ装着可能装置」の「透光性素子」に取り付けられる態様を含むものであるところ,当該態様においては,拡大ルーペのハウジングが「ユーザ装着可能装置」の「透光性素子」に取り付けられる位置によって,視線を落とすことなく真っ直ぐ正視した状態で,視野がルーペ越しになることも,ならないこともある。
したがって,原告の上記主張は,本願の特許請求の範囲の記載や本願明細書の記載に基づかない主張であり,失当である。
ウ さらに,原告は,根拠として,本願発明は,ルーペ部の対物レンズの上部のみの半径が一定割合で切除されており,上下非対称であるのに対し,周知技術3を示すために例示された甲3の1文献ないし甲3の3文献には,ルーペ部の対物レンズは上下対称であり,レンズの半径が切除されていることの開示はないことをあげる。
甲3の1文献ないし甲3の3文献には,対物レンズを横からみたときの形状(横断面)が,レンズの半径が上部及び/又は下部で一部切除されているとの明記はない。しかし,対物レンズを前方(正面)から見てその上端部及び下端部が直線状又は円弧状であることは,甲3の1文献の第1図及び第4図,甲3の2文献の第1図及び第3図,甲3の3文献の図3A及び図3Bから見てとれる。
さらに,甲3の1文献ないし甲3の3文献全体の記載から,次に述べるとおり,同文献の対物レンズは,正面から見て真円形状で,かつ,光軸に対し回転対称であるレンズ(すなわち,光軸を含むどのような断面を採っても,その断面形状(曲率) が一致するレンズ)の上下をカットオフした形状のレンズであることを当業者であれば理解するものである。
甲3の1文献ないし甲3の3文献の上下対称な対物レンズが,光軸に対し回転対称のレンズをカットオフ(切除)して形成されたものではなく,光軸を含む断面の方向によって断面形状(曲率)が異なるレンズ(一例として,正面から見て左右方向(x方向)の断面と,同じく上下方向(y方向)の断面とで,曲率が異なる乱視矯正用のトロイダルレンズのようなもの)として形成されたものであるとすると,x方向とy方向とで倍率(曲率に依存する)が異なる値となり,正視の者(眼に近視,遠視,乱視等の屈折異常がない者)が見ると,乱視でない者が乱視矯正用の眼鏡をかけてみたときのように,当該対物レンズを透して見た像は歪んでしまって,手術に用いることが想定される甲3の1文献ないし甲3の3文献の拡大鏡としては使い物にならないこととなるのは当業者にとって明らかである。
したがって,甲3の1文献ないし甲3の3文献の対物レンズを横からみたときの形状(横断面)が,光軸に対し回転対称のレンズの半径が上部及び下部で一部をカットオフ(切除)された形状であることは,甲3の1文献ないし甲3の3文献全体の記載に鑑みて,当業者であれば理解できることである。
さらに,対物レンズを半径の上部及び下部において一部カット(切除)して,対物レンズを正面から見たときの上下長を短くすることにより,ルーペ越しの視界がルーペ・ハウジングにより遮られる部分の面積を減らしてルーペ越しに物体を見易くすることは,当業者には周知の事項である。
また,対物レンズの上部及び下部を共に切除した形状とすれば,上部のみを切除した形状とする場合に比べて当該対物レンズの上下長はより短くなり,その結果,ルーペ越しの視界がルーペ・ハウジングにより遮られる部分の面積はより狭くなるが,切除した形状とするための工程が増えることとなる。上下ともに削除してルーペ越しの視界をさらに広げようとすれば,工程の追加が必要となりコストアップとなるとともに,削除する程度によってルーペを透して見られる視野が減ることも当 業者には明らかである。
したがって,原告の上記主張は,拡大ルーペ用のレンズに係る技術常識に基づくものではなく,失当である。
(2) 甲3の1文献ないし甲3の3文献の対物レンズの上端部は,レンズの半径が(横断面からみて)一部カットオフ(切断)された形状であり,レンズの周辺端部として収束しているとはいえないから,周知技術3において拡大効果が十分ではないとの原告の主張もまた,その前提において失当である。
(3) 以上のとおり,取消事由1は理由がない 2 取消事由2(相違点2に関する判断の誤り)に対し (1)ア 原告は,周知技術3で設置された拡大鏡は,いずれも視線中心より下にあり視線を下に落としたときのみ,拡大された対象をみることができるという極めて限定された小さな視野での拡大効果であるのに対し,本願発明の視線中心は拡大鏡のレンズ範囲内にあり,非常に大きな視野範囲で拡大された対象をみることができる旨主張する。
しかし,本願発明は視野中心が拡大鏡のレンズの範囲内にある拡大ルーペのみを指していないことは明らかであるから,原告の上記主張は,その前提において失当である。
イ また,原告は,周知技術3の拡大鏡のレンズは,上部も下部も,レンズの半径が一定割合で切除されたものでなく,その端部上側も下側も収束形状(徐々に細くなっていく形状)であり,その結果,拡大鏡を通してみる対象の拡大物は,その周辺端部付近では十分な拡大効果を確保できないのに対し,本願発明では,レンズの上側端部のみのレンズ半径が一定割合で切除されているので,その端部周辺でさえ,十分な拡大図の視野確保が可能である旨主張する。
しかし,甲3の1文献ないし甲3の3文献の拡大鏡の対物レンズは,上部も下部もレンズの半径が一定割合でカットオフ(切除)された形状であって,その端部上側も下側も「収束形状(徐々に細くなっていく形状)」ではない。仮に,原告が主 張するような「収束形状」であるとすると,乱視矯正用のトロイダルレンズのような形状となり,正視の者が見ると,乱視でない者が乱視矯正用の眼鏡をかけてみたときのように,当該対物レンズを透して見た像は歪んでしまうこととなり,手術に用いることが想定される拡大鏡としては,対物レンズを透して見た像が歪んでしまうものでは使い物にならないことは当業者には明らかである。
したがって,原告の上記主張は理由がない。
ウ 本願発明の「この除去によって,本発明の拡大ルーペ又は立体拡大ルーペの視野はわずかに低減するが,それによって,ユーザが拡大ルーペ又は立体拡大ルーペ越しに見るために眼を上げると,視野は顕著に増大する」(本願明細書の【0022】参照。)という効果は,引用発明に周知技術3を適用することにより奏する効果から予測することができた程度のものである。
したがって,この点に関する原告の主張についても理由がない。
(2) 原告は,周知技術3を引用発明に適用した場合,ルーペとしての使用時に,視線中心は,ルーペ部上端部より上にあり,その端部は,レンズの半径が切除されたものではなく,通常のレンズとしての収束形であることから,ルーペ部を通した対象物の拡大視野は,視野自体が小さく,さらに端部周辺では極めて限定されてしまう旨主張する。
しかし,周知技術3を引用発明に適用した場合の「端部」は,「レンズの半径が切除されたものではなく,通常のレンズとしての収束形である」ということはできない。
(3) 原告は,甲3の1文献ないし甲3の3文献には,ルーペの対物レンズの半径の上部の一部を切除する内容が記載されておらず,また,視線を下げたときのみに拡大鏡として機能するという周知技術3の開示内容では,対物レンズの半径の上部のみを切除するという事項でさえ,ヒントすらもたらすものではないので,その切除割合をいくらにするかなど,周知技術3をもとにしては,到底当業者には及び得ない発明事項である旨主張する。
しかし,対物レンズを半径の上部及び下部において一部カット(切除)して,対物レンズを正面から見たときの上下長を短くすることにより,ルーペ越しの視界がルーペ・ハウジングにより遮られる部分の面積を減らしてルーペ越しに物体を見易くすることは,当業者には周知の事項であり,引用発明において,拡大鏡のハウジングが邪魔にならないようにするために,周知技術3を採用することは,容易に想到し得る。
また,対物レンズの上部及び下部を共に切除した形状とすれば,上部のみを切除した形状とする場合に比べて当該対物レンズの上下長はより短くなり,その結果,ルーペ越しの視界がルーペ・ハウジングにより遮られる部分の面積はより狭くなるが,切除した形状とするための工程が増えることとなる。
上下ともに削除してルーペ越しの視界をさらに広げようとすれば,工程の追加が必要となりコストアップとなるとともに,削除する程度によってルーペを透して見られる視野が減ることも当業者には明らかであるから,引用発明に周知技術3を適用する際,工程の簡略化やコストを考慮して,対物レンズを切除する部分を設定することは,当業者が適宜なし得た程度のことである。
したがって,原告の上記主張は理由がない。
(4) 原告は,周知技術3は,本願発明の“レンズの上部のみにおいてレンズの半径10〜60%を切除する(つまり,視線をあげたときのみルーペ越しにものをみる)という技術思想をもたらすことはない旨主張する。
しかし,「対物レンズの上部のみにおいて,レンズの半径10〜60%を切除すること」を,引用発明において適用することは,周知技術2及び周知技術3の開示内容から容易想到であるし,また,本願発明が,引用発明並びに周知技術2及び周知技術3からみて,格別の効果を奏するものとはいえない。
したがって,原告の上記主張は理由がない。
(5) 以上によれば,相違点2に関する審決の容易想到性の判断に誤りはなく,取消事由2は理由がない。
当裁判所の判断
1 本願発明及び引用発明について (1) 本願発明の要旨 本願明細書によれば,本願発明は,光学機器に関し,特に,歯科医及び外科医が装着するもののような拡大ルーペ,立体拡大ルーペ及び拡大観察器に関するものである(段落【0001】。
) 拡大観察器は,一般的に眼鏡フレーム又はヘッドバンドに結合される1つ又は複数の光学ルーペを含むもので,医師が長時間にわたる外科手術,及び手作業の正確さを必要とする他の手技の間使用するため,軽量,快適であるとともに,高い解像度を提供しながら良好な明瞭性及び広い視界を提供することが重要である(段落【0002】 【0003】 。しかし,ガリレイ設計のものは,著しい色収差( , ) 「カラーリング」)を生じ,「エッジ間」明瞭性を欠き,像品質は悪い(段落【0004】。ケプラー設計のものは,プリズムを使用して「エッジ間」明瞭性を増強する )が,プリズムによって重量が増加する(段落【0006】。非球面レンズは,ガリ )レイ設計において通常使用される従来のレンズと比較してはるかに少ない色収差を呈するとともにともにより優れた「エッジ間」明瞭性を提供するが,非球面ガラスレンズは,今日でもなお研削及び研磨することが困難であるため高価であり,他方,非球面プラスチックレンズは,射出成型によって生成することができ,鋳型が利用可能になればすぐに非球面ガラスレンズよりもはるかに安価に製造されるが,機械的損傷,熱損傷又は科学的損傷を受けやすく,特に洗浄の間に容易にすり切れるか,すり減るか,有機溶媒の影響を受けるか,又は他の態様で損傷を受け,無菌状態を必要とする厳しい臨床環境において使用するには適していない(段落【0007】。
) そこで,本願発明は,軽量であると共に良好なエッジ間明瞭性を提供するものである(段落【0008】。
) 本願発明は,(a) 第1の開口を有する第1の端部及び第2の開口を有する第2の端部を有するハウジングと,(b)ハウジングの第1の端部内に配置される接眼レン ズ系と,(c)ハウジングの第2の端部内に配置される対物レンズ系とを備え,対物レンズ系は,少なくとも1つの非球面プラスチックレンズを備え,非球面プラスチックレンズは,(1)対物レンズ系の一部である少なくとも1つのガラスレンズであって,該ガラスレンズは非球面レンズとハウジングの第2の開口との間に位置決めされ,2つの平坦な表面を有している少なくとも1つのガラスレンズ,又は(2)非球面レンズとハウジングの第2の開口との間に位置決めされ,2つの平坦な表面を有している少なくとも1つの使い捨てプラスチックレンズ,によって機械的損傷及び/又は化学的損傷から保護されるものであり,この構成とすることで,軽量であると共に良好なエッジ間明瞭性を提供することができる(段落【0009】 【00 ,25】。
) また,本願発明は,対物レンズ系の両レンズが,一方の側面が平面であり,ハウジングの上端を平坦に設計可能であり,該両レンズの上部のみにおいてレンズの半径10〜60%が切除されるものであり,この構成とすることで,ハウジングの上部は,円形の設計を有する標準的な拡大ルーペよりはユーザの邪魔にならず,ユーザが拡大ルーペ越しに見るために眼を上げると,視野は顕著に増大する(段落【0022】。
) (2) 引用発明 ア 引用例(甲4。日本語訳)には,次のとおりの記載がある(図面については,別紙引用例図面目録参照)。
「本発明は,重量は軽いが十分な色収差補正が可能であり,さらに広い視野が得られるという,望遠鏡または拡大鏡に最適な光学システムを提供することを目的としている。
上記の目的は,本発明によれば,請求項1に記載の特徴を有する光学システムによって達成される。本発明の光学システムは,その接眼レンズ側の表面に画像回折構造が配されている1個の対物レンズを具備する。これにより,短い焦点距離と十分な色収差補正能の両方を備えた比較的薄いレンズを実現できる。
・・・ 対物レンズとしては平凸レンズを想定することが好ましく,この場合回折構造は平坦面に配置される。特に回折構造は非球面状にカーブした面の上に配される。このようなレンズ1枚を使うと,色収差補正だけでなく1/4波長収差と角度収差も強く補正できるようになる。
・・・ 対物レンズおよび接眼レンズは,同じ材料からできていることが好ましい。こうして作られた光学システムでは,この方法によって特に効率的な収差補正が可能となることが示されている。
材料としては,熱可塑性ポリマー,特にポリメチルメタクリレート(PMMA)を想定すると好都合であり,この材料は対物レンズ射出成形時に,対物レンズ上に回折構造を作ることを可能にする。別の好適実施例では,本発明は接眼レンズだけでなく対物レンズにも一体的にチューブが形成され,これらは連結して光学システム全体のハウジングを形作る。これにより,光学システムの特に経済的な製造が可能となる。」 「図1によれば,望遠鏡または拡大鏡4の光学レンズ2はそれぞれ光学システム6を具備しており,その光軸は,例えばドイツ国特許第DE3530649C2号に記載されている方法を用いて,眼鏡使用者の眼軸に合わせて調整されている。
光学システム6は,図2に描かれている実施例によると,対物レンズ8と,少なくとも回折性の凸面型の画像面10を有し,被写体の直立像を作り出す両凹型の接眼レンズ12を配したガリレイ望遠鏡である。
接眼レンズ12側の対物レンズ8の表面14は平面である。別の好適施態様では,表面14は,更に色収差を補正するため,特に球面収差を補正するために,わずかにカーブした非球面であってもよい。表面14には,図面には描かれていない回折構造が具備されており,これにより比較的薄いレンズでも短い焦点距離を可能にしている。
対物レンズ8および接眼レンズ12は熱可塑性材料からできており,特にプラスチック射出成形によって一つの作業工程で別々に作られる。対物レンズ8だけでなく接眼レンズ12にも,それぞれチューブ16ないし18が一体式に形作られており,それを使って対物レンズ8と接眼レンズ12は相互連結することができる。チューブ16,18はその表面を荒肌加工されており,同時に光学システム6のハウジングも形作っている。光学システム6は,クランピングリングの助けを借りて,光学レンズ2に作られた開口部に固定される。」 イ 引用発明の認定 引用例の上記記載によれば,引用発明は,前記第2の3(1)のとおりであると認められる。
2 取消事由1(周知技術3の認定の誤り)について (1) 審決の認定 審決は,外科用又は手術用の拡大鏡の対物レンズにおいて,該対物レンズの(正面視で)上部を直線上又は円弧状にカットオフしてなる非円形状の形状を採用することは周知である(周知技術3)と認定した。
(2) 甲3の1文献に記載された事項 ア 甲3の1文献(甲3の1)には,次の記載がある(図面については,別紙甲3の1文献図面目録参照)。
「本考案は神経外科,眼科,心臓外科,整形外科等に於て使用される手術用拡大眼鏡に関する。(1頁14行ないし同頁15行) 」 「外科医にとつては術野を有効に拡大できると同時に術野以外の視野をも平常時と同様に見え得る拡大眼鏡が必要とされる。(2頁2行ないし同頁4行) 」 「従来拡大鏡としては・・・眼鏡のフレームに固定レンズ前面に取りつけられる拡大鏡が考えられていた。しかしながら・・・眼鏡の前面に取付ける拡大鏡にかなりの重量があるため取付けた場合その重量がフレームにかかり,長時間にわたる手術の際眼鏡ごとすり落ちたり又眼鏡の前面に拡大鏡がくるので手術中の作業姿勢が どうしても前傾姿勢になつてしまい疲労を招きやすかつた。 (2頁5行ないし3頁 」6行) 「本考案は,・・・しかも重量の軽い手術用拡大眼鏡を提供することを目的とする。(3頁15行ないし3頁最終行) 」 「本考案の更に他の目的は接眼レンズを眼に可能な限り近づけることができるので視野が広くて使いやすく,拡大鏡以外の眼鏡部でも正常に物が見える拡大眼鏡を提供することにある。(4頁5行ないし同頁8行) 」 「第1図は本考案の一実施例を示す正面図,第2図はその側面図を,・・・第4図は鏡筒を分解した状態を示す図である。それらの図に於て鏡筒1は接眼レンズ2,対物レンズ3を有し拡大鏡のはたらきをする。(5頁1行ないし同頁6行) 」 「更に接近した対象物を捕える際に身体を無理に前傾しなくともよいように拡大鏡に傾斜角θ(第2図参照)を0≦θ<90の範囲で持たせてなる。このような構成を有する本考案の手術用拡大眼鏡によれば第1に軽量化が可能であり更に鏡筒の接眼レンズか眼に一層近つくので快適であり屈折異常者にとっては矯正用の眼鏡レンズを通じ拡大鏡以外の部分も使用することにより広い視野を得ることができ手術の作業能率を著しく高めることができる。 (5頁12行ないし6頁1行) 」 イ 甲3の1文献の上記記載によれば,甲3の1文献には,神経外科,眼科,心臓外科,整形外科等で使用される手術用拡大眼鏡において,対物レンズ3の上部及び下部を円形とせず直線状にするとともに鏡筒1の上部及び下部を円筒とせず平坦にして拡大鏡の上部及び下部を平坦にすることが記載されていると認められる。
(3) 甲3の2文献に記載された事項 ア 甲3の2文献(甲3の2)には,次の記載がある(図面については,別紙甲3の2文献図面目録参照)。
「この考案はメガネに関し,その目的とする処は,一つのメガネを着用した状態で,メガネのレンズを通すか又は裸眼で拡大鏡が邪魔にならずに見ることができると共にメガネを着用した状態のまま,目的物を拡大鏡によつて拡大して見ることが 出来,着用時にメガネがズレ落ちるといつた煩わしさを解消することが出来る軽量なメガネを提供せんとするものである。(1頁11行ないし同頁最終行) 」 「レンズに取り付けられている拡大鏡の筒体は金属で形成されていると共に,筒体は黒色に塗装され側面からの光を遮断していた。従つて,メガネ全体の重量は一般のメガネの重量に比して非常に重く,着用中にメガネが下方にズレ落ちるといつた不便があり,その都度メガネを上方に持ち上げたりしなければならず,非常に煩わしいものであつた。(2頁4行ないし同頁11行) 」 「拡大鏡(4)は,透明にして且つ軽量なる合成樹脂材で形成した筒体(5)と,その筒体(5)の前端面及び後端面又は前・後端面の何れか一方に取付けた凸レンズ(6)より構成してあり,筒体(5)をレンズ(2)の取付孔(3)に嵌め込み拡大鏡(4)をレンズ(2)に定着固定する。(4頁16行ないし5頁2行) 」 「拡大鏡(4)の筒体(5)は図面に示されるように前半部を後半部より大径ならしめた形態に限定されるものではなく,前部より後部に渉つて同一径の円筒体又は角筒体とするも勿論任意である。(5頁3行ないし同頁6行) 」 「本考案は以上の如く構成したので,物体の視認は3通り行なうことが出来ると共に,その視認行為はいちいちメガネを外ずしたり或いはズラしたりすることなく行なうことが出来る。即ち,レンズが半月状であるため,メガネは正常位置より稍々下向きに掛ければ,裸眼で見える範囲はレンズの上部より見え,メガネを必要とする範囲の物体を見る時は下目でレンズを通して見ると共に,更に小さな部分を拡大して見る時は拡大鏡を通して見ることが出来るものである。(5頁11行ない 」し6頁2行) 「レンズに取り付けた拡大鏡の筒体は透明体で形成したので,拡大鏡が取り付けられたからといつて重量増はほとんどなく,従つて着用時にメガネがズレ落ちるといつた不便がないと共に,疲労,負担も感じない優れたメガネを提供することが出来る。(6頁3行ないし同頁8行) 」 「依つて,・・・外科手術にたずさわる人等には非常に有益なメガネである。」 (6頁13行ないし同頁15行) 「図面は本考案の一実施例を示し,第1図は斜視図,第2図は縦断側面図・・・である。(6頁17行ないし同頁19行) 」 イ 甲3の2文献の上記記載によれば,甲3の2文献には,外科手術にたずさわる人等が使用するメガネにおいて,凸レンズ(6)の上部及び下部を円形とせず直線状にするとともに筒体(5)の上部及び下部を円筒とせず平坦にして拡大鏡(4)の上部及び下部を平坦にすることが記載されていると認められる。
(4) 甲3の3文献に記載された事項 ア 甲3の3文献(甲3の3)には,次の記載がある(図面については,別紙甲3の1文献図面目録参照)。
「【0001】 本発明は,一般に,光学機器に関し,より詳細には,外科医及び歯科医が着用するような拡大ビューア(magnification viewer)に関する。」 「【0010】 本発明の一態様においては,ルーペの対物レンズは,レンズの,向き合って位置する周囲縁の近接する対が,異なる長さの半径を有する弧によって定義される,非円形の形状をしている。非円形の形状は,視野に悪い影響を及ぼすことなくレンズ全 体 の寸法を縮小することによって,ルーペの重さを最小限にするのに 役 立つ。・・・」 「【0019】 次いで図2を参照すると,1つの眼鏡14の眼鏡レンズ要素18を貫通して取り付けられるように構成された本発明の例示的な拡大ルーペ50を備える,別の拡大ビューア10aが示されている。さらに図3B,6を参照すると,図2に示された例示的な拡大ルーペ50は,・・・第1端56に接眼レンズ要素58を支持する第1の開口54と,第2端62に2枚の対物レンズ要素64を支持する第2の開口60とを有するハウジング52を備える。・・・」 「【0026】 図・・・2及び・・・3Bに示した拡大ルーペ・・・は,図9に概略的に示すように,非円形の形状を有する対物レンズ・・・64を含む。具体的には,対物レンズ・・・64の,向き合って位置する第1の周囲縁70a,70bは,円形であり,レンズの中心C1から延びる共通半径Raによって画成される。対物レンズ・・・64の,向き合って位置する第2の周囲縁72a,72bは,第1の周囲縁70a,70bに隣接しており,第1の周囲縁70a,70bの半径Raによって画成されない弧を含む。・・・」 「【0027】 ・・・有利には,例示的な対物レンズ・・・64を非円形にすることによって,円形の対物レンズを備える拡大ルーペに匹敵する広さの視野を維持しつつ,光学ルーペ・・・50の重さを低減することができる。さらに,互いに向き合って位置する第2の周囲縁72a,72bを弧状にすることによって,拡大ルーペ・・・50の光学的な質を落とさずに対物レンズの寸法を縮小することができる。その結果,ルーペ・・・50の重さが軽くなり,従来の拡大ルーペを支持するフレームよりも全体的に小さく軽いデザインのフレームに取り付けることができるようになる。非円 形 の形状にすることによって,使用者は,必要に応じてルーペ・ハウ ジ ング・・・52越しに見ることで,実際の物体をより簡単に見ることもできる。」 イ 甲3の3文献の上記記載によれば,甲3の3文献には,外科医及び歯科医が使用する拡大ビューアにおいて,対物レンズ64の上部及び下部を円形とせず略直線状にするとともにハウジング52の上部及び下部を円筒とせず略平坦にして拡大ルーペの上部及び下部を略平坦にすることが記載されていると認められる。
(5) 周知技術3について 甲3の1文献ないし甲3の3文献の上記記載によれば,手術等で使用される拡大鏡において,対物レンズの上部及び下部を円形とせず直線状ないし略直線状にするとともに対物レンズを保持する筒の上部及び下部を円筒とせず平坦ないし略平坦に して拡大鏡の上部及び下部を平坦ないし略平坦にすることは,本願優先日前において周知の事項であったものと認められる。
しかし,甲3の1文献ないし甲3の3文献のいずれにも,対物レンズの上部及び下部をどのようにして直線状ないし略直線状にするのかについては記載されていないから,円形の対物レンズを作成した後,上部及び下部を切除(カットオフ)して直線状ないし略直線状に仕上げるのかなどについては明らかではないといわざるを得ない。
そうすると,審決が,甲3の1文献ないし甲3の3文献の各記載に基づいて,対物レンズの(正面視で)上部を直線状又は円弧状に「カットオフしてなる」非円形の形状を採用することを周知技術3として認定した点については,誤りがあるということになる。
もっとも,審決は,対物レンズの上部を直線上又は円弧状に「カットオフしてなる」ことについての容易想到性を判断していることから,周知技術3の上記認定の誤りが審決の結論に影響を及ぼすかどうかについて,取消事由2において検討することとする。
また,原告は,甲3の1文献ないし甲3の3文献に記載された周知技術における対物レンズは,極めて小さく,しかも視線中心より下にあり,その対物レンズの上端部は,レンズの半径が一部切断(横断面からみて)されておらず,レンズの周辺端部として収束しており,実質的にルーペを透した視線で対象物をみても拡大効果は十分ではないのに対し,本願発明においては,視線中心は,対物レンズの範囲にあり,しかもその上端部は,レンズの半径が一部切断(横断面からみて)されており,審決の周知技術3の認定には誤りがあると主張する。
しかし,審決は,周知技術3を「外科用又は手術用の拡大鏡の対物レンズにおいて,該対物レンズの(正面視で)上部を直線状又は円弧状とすること」と認定したのであり,視線中心と対物レンズとの関係を認定したものではない。原告の上記主張は,引用発明認定の誤りではなく,引用発明に周知技術3を適用することの容易 想到性に関する議論に関するものであると解されるので,取消事由2において,まとめて判断する。
3 取消事由2(相違点2に関する判断の誤り)について (1) 本願発明と引用発明との相違点2は,審決の認定(前記第2,3(2)イ(イ))のとおりである。すなわち,前記「対物レンズ系」の「両レンズ」が,本願発明では,「一方の側面が平面であり,ハウジングの上端を平坦に設計可能であり,該両レンズの上部のみにおいてレンズの半径10〜60%が切除されて」いるのに対し,引用発明では,対物レンズ系は1枚のレンズであり,一方の側面が平面になっておらず,レンズの上部が切除されてもいない点で相違する。
(2) 甲3の3文献の前記記載(【0010】 【0027】 , )によれば,手術等で使用される拡大鏡において,対物レンズの上部及び下部を円形とせず直線状ないし略直線状にするとともに対物レンズを保持する筒の上部及び下部を円筒とせず平坦ないし略平坦にして拡大鏡の上部及び下部を平坦ないし略平坦にするとの周知技術3の構成を採用する目的は,拡大鏡を軽量化することにあると認められる。
また,拡大鏡を軽量化することについて明記はされていないものの,甲3の1文献及び甲3の2文献においても,拡大鏡の重量に関する記載があるなど,軽量化がその課題とされていることが認められることに照らすと,手術等で使用される拡大鏡において,周知技術3の構成を採用することの目的は,拡大鏡を軽量化することにあるものと理解することができる。
そして,拡大鏡の重量によって手術等での着用時にズレ落ちるといった煩わしさを解消するために拡大鏡の軽量化が欠かせないことは当業者にとって自明な技術的事項であり,拡大鏡の軽量化のために,当業者が,引用発明に周知技術3を適用する動機付けがあると認められる。さらに,引用発明及び周知技術3は,いずれも同一の技術分野に属するものと認められるから,引用発明に周知技術3を適用することついて阻害要因とすべき事情は認められない。
次に,引用発明に周知技術3を適用する場合に,相違点2に係る構成として周知 技術3をそのまま適用するか,あるいは,周知技術3の構成のうち対物レンズの上部に関する部分の技術のみを適用するか,下部に関する部分の技術のみを適用するかは,実現すべき軽量化の程度の問題にすぎないから,いずれを採用するかは,当業者が必要に応じて適宜選択し得る設計的事項であるといえる。
そして,甲3の1文献ないし甲3の3文献の前記各記載によれば,周知技術3のうちの上部に関する部分の技術(対物レンズの上部を円形とせず直線状ないし略直線状にするとともに対物レンズを保持する筒の上部を円筒とせず平坦ないし略平坦にして拡大鏡の上部を平坦ないし略平坦にすること)については,視野を拡大鏡から上方に移した場合,拡大鏡を通さない広い視野を得ることができるという優位な効果を奏するものであるといえる。甲3の1文献に「外科医にとつては術野を有効に拡大できると同時に術野以外の視野をも平常時と同様に見え得る拡大眼鏡が必要とされる。」と記載されているとおり,手術中において,拡大鏡を通じて拡大図を得るだけでなく,拡大鏡を通さない拡大鏡越しの視野を得ることも必要であることは,当業者にとって自明のことであるところ,このことは,技術分野が同一である引用発明においても妥当することであるから,拡大鏡越しの広い視野を得るために,当業者が,引用発明に,周知技術3のうち上部に関する部分の技術を適用することの動機付けもあると認められる。
そうすると,引用発明において,周知技術3を適用して,対物レンズ8の上部を直線状にするとともに対物レンズを保持する筒16の上部を平坦にして拡大鏡の上部を平坦にすることは,当業者が容易に想到し得たものであると認められる。
周知技術3は,本来的には対物レンズの上部を円形とするところを,直線状ないし略直線状にするという技術であり,これを引用発明のように円形の対物レンズに適用すれば,円形の対物レンズの上部は切除された状態になるのであるから,周知技術3は,対物レンズの上部を直線状ないし略直線状に切除するという技術に等しいものと認められる。なお,本願の請求項1には,「該両レンズの上部のみにおいてレンズの半径10〜60%が切除されており」と記載されているところ,この記 載は単に上記のとおり切除された状態を示しているものであり,その結果として,対物レンズ8の上部が平坦な状態となることが認められる。
以上によれば,引用発明に周知技術3を適用して,対物レンズ8の上部を直線状に切除する(その結果,対物レンズ8の上部は平面となる)とともに筒16の上部を平坦に切除して拡大鏡の上部を平坦にすることは,当業者が容易に想到し得たものと認められる。
イ また,対物レンズの切除する範囲(対物レンズ8の半径の何%とするか)については,拡大鏡の視野に影響を及ぼさない範囲で,拡大鏡越しの視野をどの程度確保する必要があるかに応じて適宜定め得る設計的事項であるといえる。
そうすると,「一方の側面が平面であり,ハウジングの上端を平坦に設計可能であり,レンズの上部のみにおいてレンズの半径10〜60%が切除されている」という本願発明の相違点2に係る構成は,引用発明及び周知技術3に基づいて,当業者が容易に想到し得たものと認められる。
ウ なお,審決は,拡大鏡において,対物レンズを単レンズでなく複数のレンズを組み合わせたレンズ系とすることを周知技術2と認定した上で,相違点2に係る本願発明の構成となすことは,当業者が周知技術2に基づいて容易になし得たことであると判断し,原告は,審決の周知技術2の認定および審決の上記判断について争っていない(引用発明において,対物レンズを単レンズとするか,複数のレンズ系を組み合わせたレンズ系とするかは,対物レンズの収差,焦点距離等の光学特性をどの範囲に設定するかに応じて適宜定めうる設計的事項であるから,審決の相違点2の上記判断自体に誤りはない。もっとも,本願の請求項1には「前記対物レンズ系は,・・・少なくとも1つの非球面プラスチックレンズを備える」との記載があり,本願発明には,単レンズも含まれることが認められるから,相違点2のうち上記部分はそもそも相違点であると認定する必要もなかったともいえるけれども,この点は審決の結論に影響を及ぼすものではない。。
) エ したがって,本願発明と引用発明の相違点2に係る構成は,引用発明と周知 技術2及び周知技術3に基づいて,当業者が容易に想到し得たものであると認められるから,この点に関する審決の判断に誤りはない。
(3) 原告の主張について ア(ア) 原告は,周知技術3で設置された拡大鏡は,いずれも視線中心より下にあり視線を下に落としたときのみ,拡大された対象をみることができるという極めて限定された小さな視野での拡大効果であるのに対し,本願発明の視線中心は拡大鏡のレンズ範囲内にあり,非常に大きな視野範囲で拡大された対象をみることができるということであるから,周知技術3と本願発明は,拡大鏡内に視野があるときに格別の効果の差を生じており,審決はこの点を看過している旨主張する(原告は,取消事由1においても同趣旨の主張をしているので,以下,まとめて判断する。 。
) しかし,本願発明である請求項1には,拡大ルーペの眼鏡への配置や拡大ルーペと使用者の視線との位置関係の記載はなく,本願発明において,拡大ルーペと使用者の視線の位置関係は特定されていないのであるから,原告の上記主張は,本願の請求項1の記載に基づかないものであり,採用し得ない。
なお,本願明細書の段落【0022】には,「・・・除去によって,本発明の拡大ルーペ又は立体拡大ルーペの視野はわずかに低減するが,それによって,ユーザが拡大ルーペ又は立体拡大ルーペ越しに見るために眼を上げると,視野は顕著に増大する。」との記載があるところ,その記載内容に照らすと,「眼を上げると」は,拡大ルーペに透していた視線を上方に移すという視線の相対変化を表した表現にすぎないものと解される。本願明細書の上記記載は,本願発明において使用者の視線とルーペレンズとの位置関係を特定することができることの根拠とはならず,本願明細書においても,上記に係る構成は特定されていないことが認められる。
そうすると,本願発明は,その請求項1の記載からしても,メガネ全体がルーペである拡大鏡であるとか,視線を落とすことなく真っ直ぐ正視した状態で,視野はルーペを透しているとか,使用者の視線中心は対物レンズの範囲にあるといった形態に限定されるものと解釈することができず,拡大ルーペが眼鏡の下方に配置され ることで視線を下げて拡大ルーペを見るような形態の場合も含まれるものといえる。
したがって,視線中心に対する対物レンズの位置及び視線の向きにおいて本願発明と周知技術3とに相違があるため,審決は,周知技術3と本願発明の効果の差異を看過している旨の原告の上記主張は,本願の請求項1及び本願明細書の記載に基づかないものであり,その前提において誤りがあるから,採用することができない。
(イ) 原告は,周知技術3の拡大鏡のレンズは,上部も下部も,レンズの半径が一定割合で切除されたものでなく,その端部上側も下側も収束形状(徐々に細くなっていく形状)であり,その結果,拡大鏡を通してみる対象の拡大物は,その周辺端部付近では十分な拡大効果を確保できないのに対し,本願発明では,レンズの上側端部のみのレンズ半径が一定割合で切除されているので,その端部周辺でさえ,十分な拡大図の視野確保が可能である,また,本願発明の効果は,「使用者が一旦目を上げて拡大ルーペ越しに見ると視野を増加させるという目的を達成するが,それは好都合なことに拡大ルーペの視野の減少をほんのわずかに留める。」ということ(本願明細書の段落【0022】参照),すなわち,拡大ルーペを透して対象物をみたときに,その上端部周辺においてさえ十分な拡大ルーペの視野を確保できるということにある,そのために必要な構成要素は,レンズの半径を上部のみ一定割合で切除することであり,当該効果は,引用発明に周知技術1ないし3を適用しても到底達成できない旨主張する。
しかし,原告は、甲3の1文献ないし甲3の3文献に記載されたレンズが収束レンズであることを前提として主張するけれども,同各文献に記載されたレンズが収束レンズであることを認めるに足りる証拠はない。また,そもそも引用発明の対物レンズは円形レンズであるから,この引用発明の円形レンズについて,周知技術3を適用して,その上部及び下部を直線状ないし略直線状にすれば,引用発明の円形の対物レンズの上部及び下部は,切除されることになるのであるから,引用発明に周知技術3を適用すれば,相違点2に係る構成を容易に想到し得るのである。上記の効果は,引用発明に周知技術3を適用することにより生じる技術的効果の域を出 るものではなく,当業者が容易に予測し得るものであるといえる。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
イ 原告は,引用発明に周知技術3を適用した場合,ルーペとしての使用時に,視線中心は,ルーペ部上端部より上にあり,その端部は,レンズの半径が切除されたものではなく,通常のレンズとしての収束形であることから,ルーペ部を通した対象物の拡大視野は,視野自体が小さく,さらに端部周辺では極めて限定されてしまい,この結果,周知技術3を引用発明に適用しても,本願発明の作用効果は得られず,上記適用は不可能であるから,周知技術3を引用発明に適用する際に,レンズの上部のみをカットオフすることが,当業者が適宜なし得る程度のことであるとの審決の判断は完全に否定される旨主張する。
しかし,引用発明の対物レンズが円形レンズであり,これに対物レンズの上部及び下部を直線状ないし略直線状とするとの周知技術3を適用することが容易であることは前記のとおりである。原告の主張は,この引用発明から容易に想到し得るものについて,その視線中心がルーペ部の上端部より上にあるとか,対物レンズが収束形であるとかの誤った前提にたった上でのものであり,その前提において採用することはできないことは明らかである。
したがって,引用発明に周知技術3を適用することが不可能であるなどとする原告の上記主張は採用することができない。
ウ 原告は,甲3の1文献ないし甲3の3文献にはルーペの対物レンズの半径の上部の一部を切除する内容は記載されておらず,視線を下げたときのみに拡大鏡として機能するという周知技術3の開示内容では,対物レンズの半径の上部のみを切除するという事項でさえ,ヒントすらもたらすものではないので,その切除割合をいくらにするかなど,当該周知技術3を基にしては,到底当業者には及びえない発明事項である旨主張し,また,これに加えて,周知技術3の技術思想は,術者が視線を落としたときにのみ,視線が透る位置に小さなルーペを設置し,それによって拡大図を得ることのみであるから,引用発明に周知技術3を適用して,万が一,ル ーペ部を切除するという思想を思いついたとしても,当業者が認識できる技術思想は,引用発明の「ルーペ部の下側部のみを残すようにレンズを切除する(つまり視線を下げたときのみルーペ部を視線が透る)」という程度で,本願発明のレンズの上部のみにおいてレンズの10〜60%を切除する(つまり,視線をあげたときのみルーペ越しにものをみる)という技術思想をもたらすことはない,とも主張する。
しかし,引用発明における対物レンズが円形レンズであり,これに対物レンズの上部及び下部を直線状ないし略直線状にするとの周知技術3を適用すれば,円形レンズの上部及び下部を切除することを容易に想到することは前記のとおりであり,また,その場合において,上部のみを切除することも単なる設計事項であり,さらに,その切除割合も,対物レンズの上部の切除によって拡大鏡の視野に影響を及ぼすことがないように,切除する量は常識的な範囲に制限されるべきであるといえ,レンズの半径の「10〜60%」というのはその常識的な範囲であると認められることも前記説示のとおりである。
また,原告の主張するように,ルーペ部の下部のみを残すようにレンズを切除する(つまり視線を下げたときのみルーペ部を視線が透る)というのは,技術常識を考慮すると,一般的には想定し得ないものであるといわざるを得ない。
よって,原告の上記主張は採用することができない。
(4) 以上のとおりであるから,当業者が,引用発明に周知技術2及び周知技術3を適用して,相違点2に係る本願発明の構成とすることは,容易になし得たことである,との審決の判断に誤りはない。
よって,審決の周知技術3の認定には誤りがあるものの,当該誤りは審決の結論を左右するものではないから,原告の主張する取消事由1及び2はいずれも理由がない。
4 まとめ 以上のとおり,原告主張の取消事由にはいずれも理由がなく,本願発明は,引用発明,周知技術1,周知技術2,周知技術3に基づいて当業者が容易に発明をする ことができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとした審決の結論に誤りはない。
結論
以上によれば,原告の各取消事由の主張はいずれも理由がなく,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 設樂一
裁判官 大寄麻代
裁判官 岡田慎吾
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