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関連審決 不服2013-25225
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事件 平成 27年 (行ケ) 10044号 審決取消請求事件

原告X
被告特許庁長官
指定代理人住田秀弘
同 赤木啓二
同 小野忠悦
同 長馬望
同 田中敬規
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2015/12/21
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2013-25225号事件について平成27年1月20日にした審決を取り消す。
前提となる事実
1 特許庁における手続の経緯等 原告は,平成21年10月20日,発明の名称を「河川などに堆積した土砂の流下を促進させる方法。」とする特許出願(特願2009-240990号。平成23年5月6日出願公開(特開2011-89250号)。以下「本願」という。)をし,平成25年5月31日付けで拒絶理由の通知を受けたため,同年7月24日付けで 1 意見書を提出するとともに,特許請求の範囲変更を内容とする手続補正(以下「本件補正」という。)をしたが,同年10月8日付けで拒絶査定を受けたため,同年12月24日,拒絶査定に対する不服の審判を請求した。
特許庁は,原告の不服審判請求を不服2013-25225号事件として審理した結果,平成27年1月20日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は,同年2月11日,原告に送達された。
2 特許請求の範囲 本件補正後の特許請求の範囲の記載(請求項の数は1)は,以下のとおりである(甲4,8。以下,請求項1に係る発明を「本願発明」という。また,本願の明細書及び図面を併せて「本願明細書」という。。
) 「【請求項1】 水の流れの中に,硬質な資材からなる杭あるいは柱を,流れの方向に沿って連続して列柱状に設置固定することを特徴とする,土砂の流下を促進させる方法。」 3 審決の理由 審決の理由は,別紙審決書写しに記載のとおりである。その要旨は,本願発明は,本願出願日前に頒布された刊行物である特公昭33-3088号公報(甲1。以下「引用例」という。)に記載された発明(以下「引用発明」という。)及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから拒絶すべきものである,というものである。
(1) 審決が認定した引用発明 「河川の中央に,河床心堤3が設けられ,河川の水流の主力を河心に誘導して高速度を以って流下する自然の水流の掃流力を利用して河床心堤の両側に沿った河床を洗掘し,定水路6,7を建設し,水流を矯正する方法。」 (2) 審決が認定した本願発明と引用発明との一致点及び相違点は,以下のとおりである。
2 ア 一致点 「水の流れの中に,硬質な資材を,流れの方向に沿って連続して設置固定することで,土砂の流下を促進させる方法。」 イ 相違点 本願発明は,杭あるいは柱を,連続的に列柱状に設置固定したのに対し,引用発明はそのような特定について定かでない点。
原告主張の取消事由
1 取消事由1(本願発明と引用発明の一致点及び相違点の認定の誤り)について (1) 引用発明の河床心堤は,その設置場所を河心(河川の中央)にすることを必須条件としているところ,河川の流れにおいて,河川の中央や流れの中央の水の流れが最も早く,流心や河心が最も深いことは多くの人が承知しており,引用発明の河床心堤を設置してもしなくても,流心では周囲より土砂が多く流れ,流心付近が周囲より深くなるのはごく普通のことである。
引用発明の河床心堤では,河川中央の土砂がより多く流下する作用以外には,土砂流下における特別の作用は想定されていないと考えられる。土砂の流下を促進させる作用は,引用例にも記載がなく,引用発明において想定されていないし,そのような概念も存在しなかった。本願発明は,新しい考え方によって想起されたものであり, 「土砂の流下を促進させる」 その という作用も従来になかったものである。
したがって,引用発明は,上記の点で本願発明とは相違しているから,審決の一致点の認定は誤りである。本願発明は,「土砂の流下を促進させる方法」であるが,引用発明は,「土砂の流下を促進させる方法」とはいえない。
(2) 引用発明の河床心堤は,河心(河川の中央)に設置されることが必須条件とされているのに対し,本願発明では,その設置場所を河川の中央に限っておらず,流れのある場所ならどこにでも設置可能であるから,この点は相違点となる。
審決の認定した本願発明と引用発明の一致点には誤りがある。
3 (3) 審決が認定した相違点は,「本願発明は,杭あるいは柱を,連続的に列柱状に設置固定したのに対し,引用発明はそのような特定について定かでない点。 であ 」るが,引用発明がそのような特定について定かではないとしたのは,意味が不明である。引用発明の河床心堤は,杭あるいは柱でも設置可能であるとはいえず,本願発明のように連続して列柱状に設置した杭や柱と,河床心堤のように全く連続的である構造物とは大きく異なる。
(4) 以上のように,本願発明と引用発明とでは,その設置場所と構造が大きく異なっている。本願発明は,水流の中に,杭あるいは柱を,流れに沿って列柱状に設置固定するが,引用発明は,河川の中央に,塀状の河床心堤を,河心に沿って設置固定するものである。本願発明と引用発明の一致点及び相違点の認定には誤りがある。
2 取消事由2(相違点に関する判断の誤り)について (1) 特開昭57-205626号公報(甲2。以下「周知例1」という。)及び特開2003-321825号公報(甲3。以下「周知例2」という。)において,杭あるいは柱に相当するものが「抵抗ブロック」「半丸太」とされているが,河川 ,工事において,それぞれに柱が使用されていても,その目的も,その使用方法も,その形状も異なっており,当然,それぞれの考え方が異なっていることはいうまでもない。杭や柱を使用することが,河川等の工事技術において周知技術にすぎないことであるとしても,周知例1や周知例2の技術のそれぞれから本願発明を当業者が容易に想到し得たことであるとするのは明らかに誤りである。引用発明では,周知技術の方法で,杭あるいは柱を使用することができない。
また,引用発明,周知例1,周知例2のいずれもその目的は本願発明とは異なっており,また,それぞれの発明の作用もそれぞれに異なっている。本願発明は,新しい考え方によって想起されたものであって,その「土砂の流下を促進させる」という作用も従来になかったものである。
(2) 本願発明は,河川における自然現象を長年に亘り観察することによって発見 4 した法則を元に考案したものであり,従来にない新しい考え方に基づくものである。
大きな石や岩が周囲の土砂の流下を促進する現象は,水の流れる場所に大きさの異なる土砂があればどこにでも発生しており,水流が強ければ強いほど,土砂の大きさの差が大きければ大きいほどその作用は強くなる。それぞれの状況での現象は,従来から多くの人に知られていたが,それらが,水流がある場所に大きさが異なる土砂がある場合に共通して発生する自然現象であることは,今まで指摘されたことはなかったので,この現象は新しく発見された自然法則であるといえる。本願発明は,この現象を利用した発明であり,石や岩の代わりに,杭や柱を水底に固定することによって,この作用を継続的に発生させる。杭や柱であっても固定してその場所にあり続ければ,増水の時でも動かない石や岩と同じ働きをする。様々な土砂による磨滅を防ぐために杭や柱の資材を硬質なものに指定しており,また,流れの方向に杭や柱を連続させることによってその作用を増大化させている。上記現象を利用した発明である本願発明は,引用発明では想定されていなかった従来にはない考え方によるものであり,新しい概念であるといえる。
(3) 本願発明と引用発明とでは,その設置場所と構造が大きく異なっている。本願発明は,水流の中に,杭あるいは柱を,流れに沿って列柱状に設置固定するのに対し,引用発明は,河川の中央に,塀状の河床心堤を,河心に沿って設置固定する。
上記の違いが端的に表れているものとして,次の設置例が考えられる。
河口岸辺の片側や両側から海に向かって,導流堤が築かれていることが多くある。
浜辺の土砂を海岸線に沿って移動させているのは,海から浜へと打ち上げている波の力である。打ち寄せる波の方向が,陸に向かって真っ直ぐではなく,海岸線のどちらかの方向に偏っているときに,海底にあった土砂や波打ち際にあった土砂が,海岸線に沿って移動する。河口に設置された上記導流堤は,上記の土砂の移動作用を妨げてしまう。本願明細書の【発明の詳細な説明】 【0028】には,この点に関し, 「〜,河川最下流部の河口において,土砂が河口を塞ぐ場合にもこの構造物の設置は効果が期待できます。」との記載がある。本願明細書の【選択図】【図1】で, 5 右側の連続した列柱状の柱を河口の上流側に設置し,左側の間隔を開けて列柱状に連続した柱を河口の海側に設置すると,土砂を海岸線に沿って移動させる波が発生した時でも,海側に連続して設置された柱は,その間隔が開けてあるから,移動する土砂は柱と柱の間を通過していく。移動する土砂は斜めや横方向に打ち上げられる波によって,波打ち際を移動するから,間隔を開けて連続して設置した柱はその移動を妨げることが多くない。
上記事例を考慮すれば,河川の中央に塀状の河床心堤を河心に沿って設置固定することにより,河床心堤の両側に沿った河床を均等に洗掘して河心に沿って河川の定水路を自動的に建設するという内容の引用発明から,本願発明を当業者が容易に想到し得たことであるとするのはほとんど荒唐無稽だといえる。
(4) 審決は,真摯な態度をもって本願発明を審査したものではない。「本願は拒絶すべきものである」との結論が審査の前に決定されていて,それに沿うように論述を進めたものである。このような不正の発生は,原告が,個人で,特許を出願し,審査請求をし,審判請求をしたことと関連していると考えている。
知財高裁で訴訟を起こすのは,費用の問題,法律の知識が必要なこと,時間的余裕も十分にあることが必要であり,簡単なことではない。特許庁の審査官はこれらを十分に承知して,審決をしたのである。原告が知財高裁に訴訟を起こすことはないと確信していたのに違いない。
被告の主張
1 取消事由1(本願発明と引用発明の一致点及び相違点の認定の誤り)について (1) 引用例には,「水流の掃流力により土砂等の流下を促進させる作用がある」との直接的な記載はなく,引用発明の目的が河心を河川中央にとどめようとするものであるとしても,引用発明が「河川の水流の主力を河心に誘導して高速度を以って流下する自然の水流の掃流力を利用して河床心堤の両側に沿った河床を洗掘し,定水路6,7を建設」することからみて,河床心堤の両側に沿った河床の土砂の流 6 下を他の位置の土砂の流下よりも促進させていることに変わりはない。
そして,引用例の上記記載から,河床心堤を設けたことにより,土砂の流下が促進されたと解するのが文言上自然な解釈であり,技術常識からもそのように解するのが合理的であるといえるから,引用発明が「河川中央付近の定水路は水流が高速になるから,水流の掃流力により土砂等の流下を促進させる作用も有していることは明らかである。」との審決の認定に誤りはない。
原告は,土砂の流下を促進させる方法」 「 である点は一致していないと主張するが,上記のとおり,土砂の流下を促進させることに関して,審決の一致点の認定にも誤りはない。
(2) 本願発明における杭あるいは柱を設置する場所について,本願の特許請求の範囲の記載をみても, 「水の流れの中に」あるいは「流れの方向に沿って」との記載はあるものの,その水の流れの方向と直交する方向についての限定はないことから,本願発明は,柱あるいは杭の設置する場所を限定した発明ではなく,原告が,その設置場所を河川の中央に限っていない,流れのある場所ならどこでも設置可能であると主張するとおり,水流の中ではどこでも設置可能であるといえる。
そうすると,引用発明が,河床心堤3が設けられる場所が,たとえ,河川の中央に限定されるものであったとしても,河川の流れのある場所に設けられていることに変わりはないから,本願発明の杭あるいは柱を「水の流れの中に」あるいは「流れの方向に沿って」設置することと,引用発明の河床心堤3を「河川の中央」に設けることとは,相違するものではなく,一致点といえる。
したがって,審決の一致点の認定に誤りはない。
(3) 引用例の発明の詳細な説明において,河床心堤3との記載は多数あるものの,その構造を説明した記載は見当たらず,引用発明の河床心堤3の構造に関する具体的な記載はない。つまり,引用例の記載からは,引用発明の河床心堤3の構造は明らかではない。
したがって,引用発明の河床心堤3は,本願発明のように,杭あるいは柱を,連 7 続的に列柱状に設置固定したものであるかは不明であるから,その旨の審決の相違点の認定に誤りはない。
(4) 以上によれば,審決の一致点及び相違点の認定に誤りはなく,取消事由1は理由がない。
2 取消事由2(相違点に関する判断の誤り)について (1) 相違点に関する判断について 審決において提示した周知例1及び周知例2に記載されたものは,原告が主張するように,杭等を浸食(洗掘)防止や水路用パネルに用いるものであり,その形態が抵抗ブロックや半丸太である。しかし,浸食を防止したり水路用パネルに用いることは,水流の方向を誘導もしくは制御しているといえる。また,抵抗ブロックや半丸太であるとしても,その形態の違いが,連続的に列柱状に配置して水流の方向を誘導もしくは制御することに関し,その効果が低下する等の影響は認められない。
つまり,周知例1及び周知例2の記載から,杭あるいは柱を,連続的に列柱状に設置し,水流を,誘導したり制御することが,河川等の工事技術において周知技術であることがわかる。
そして,引用例に河床心堤3の構造に関する具体的な記載がないことからしても,引用発明において,どのような形態で河床心堤3を構成するかについて適宜に決め得ることは,当業者が容易に理解できるから,上記周知技術を参考にして,当該河床心堤3を構成することは,当業者にとって格別困難なことではない。
原告は,本願発明が従来にない新しい考え方による新しい発明であると主張するが,本願発明の奏する作用・効果は,技術常識(河川の蛇行点,大きな石,橋脚,杭等の構造物の周囲に洗掘が起こることやそのような洗掘を利用すること)に照らせば,当業者が十分に予測できる範囲内のものであって格別なものではない。
つまり,上記のような技術常識を備えた当業者であれば,引用発明において河床心堤3に周知技術を適用すれば,杭あるいは柱の周囲に洗掘が起こり得ることや,土砂等の流下を促進させる引用発明においてそれが好適であることを十分に予測で 8 きるから,そのような作用・効果も期待して,河床心堤3に関し周知技術を採用することは容易になし得るというべきである。
したがって,周知技術の認定及び周知技術に基づいて,当業者が相違点に係る本願発明の特定事項とすることを容易に想到し得たとする審決の判断に誤りはない。
(2) 本願発明の根拠とする自然現象と本願発明について 河川の蛇行点や巨大な岩の周りに局所洗掘が発生することは,河川水理学の分野において,よく知られている事項である(乙1ないし3)橋梁の技術分野において, 。
橋脚の基礎部が局所洗掘されることも,よく知られている事項である(乙4,5)。
そして,流水中の杭等の構造物の根本に局所洗掘が起こることは,従来から一般的に良く知られ,かつ指摘された事項であることから(乙6,7),原告が主張するように,従来から指摘されたことがなかった新しく発見された自然法則には該当しない。
特に,岩や杭等によって,積極的に淵を形成させたり,洗掘を発生させて堆砂を防止すること,すなわち,積極的に特定位置の土砂を流れさせて排出することも,従来から知られていたことである(乙3,6)。
以上のとおり,本願発明は従来から指摘されることがなかった現象を利用したとの原告主張は誤りである。
(3) 本願発明と引用発明との違いについて 前記のとおり,本願発明は,杭あるいは柱を間隔を空けて連続したものに限定したものではなく,隙間なく連続したものも含む発明であるし,設置箇所が河口に限定されたものでもないから,本願発明が間隔を空けて連続して杭を設置することを前提として,河口の防潮堤(導流堤)との差異を主張することは,本願発明の特定事項に基づかないものであって,失当というべきである。なお,本願発明の特定の実施形態により原告主張の効果が期待できるとしても,技術常識から予測の範囲内のことである(乙6)。
(4) 不正について 9 本件の審判手続は,適正な手続によりなされており,原告が主張する不正などというものは存在しない。
(5) 以上によれば,取消事由2は理由がない。
当裁判所の判断
1 取消事由1(本願発明と引用発明の一致点及び相違点の認定の誤り)について (1) 本願発明について 本願明細書(甲4,8)の記載によれば,本願発明の概要は,次のとおりである(図1については,別紙本願発明図面目録を参照。 。
) 本願発明は,河川などに堆積した土砂の流下を促進させる方法に関するものである(【0001】。
) 土砂が川底,川岸,河川敷に多く堆積し,水の流下の妨げや,不必要な川床の上昇や,増水時の氾濫などを引き起こす原因となっていたので,従来,これらの土砂を取り除くために土木機械や船舶等による人工的機械力が多く用いられた【000 (2】。流れの中に構造物を設置する方法も考えられているが,本発明に比較して複 )雑な構造で,設置場所の自由度にも欠けるものとなっていた(【0003】。また, )本願発明による構造物に類似した例として,河川の流れの中に杭や柱などが打ち込まれた光景を見ることもあり,外見上,本願発明による方法と類似しているものの,本願発明による方法とは全く異なる意図を持つものであり,土砂の流下を促進させるためのものではなく,水流を制御して流れの力を弱くするためのものであった(【0004】。水の流れに杭や柱を打ち込む方法において,その目的が,河川の川 )底の床止めや,土砂の自然堆積にあるものもあった(【0008】。
) 本願発明は,従来,河川等に堆積した土砂を取り除くために大きな手間や費用がかかること,それらの工事は一時的な効果にとどまることを踏まえ,これらの問題を恒久的かつ安価な方法で改善することを目的として 【0010】, ( ) 水の流れの中に,硬質な資材からなる杭あるいは柱を,流れの方向に沿って連続して列柱状に設 10 置固定する,という手段を講じたものである(【0012】,図1)。
このため,構造物が水面より突出することを必要としないので,増水時であっても水の流れや土砂の流れを妨げることが少なく,水や土砂と共に流下してくる流木などの障害物に対してもその流下を妨げることが少ないし,構造物を自然の石や岩に模した外観にする事も可能なので,景観的にも周囲に違和感を与えることが少なく,極めて環境にやさしいといえる(【0024】。また,普通の水位の時の自然の )水流の作用を模倣したので,その効果が過大になることはなく,土砂を流下させたとしても,下流に急激に堆積させることはない(【0025】。土砂を流下させると )共にその場所を深くするので,河川の中に淵などを形成することも可能となるし(【0026】, ) 土砂を流下させると共にその場所を深くするので,水の流れの位置を制御するのに役に立つ(【0027】。水の流れと土,砂,石が有るところならど )こでもその効果があり(【0028】,構造が簡単であるので,その設置において柔 )軟性がある(【0029】。
) 本願発明は,硬質で質量のある石や岩は,その近くを流れる水の流れの強さを強化させ,強くなった水の流れは,その石や岩の上流やその場所にある土や砂や石をより早く流下させていく(【0015】)という自然現象を利用して,水の流れの中に,硬質な資材からなる杭あるいは柱を,流れの方向に沿って連続して列柱状に設置固定することにより,前記硬質な資材のそばの水の流れを促進させることで土砂の流下を促進させた点にその特徴があるものと認められる。
そして,本願発明の「杭あるいは柱」は, 「水の流れの中に」設置固定されるものであり,その設置固定される「水の流れ」の位置について,特に限定はされていないのであるから, 「杭あるいは柱」が河川の中央に設置される場合も本願発明に当然含まれるものと解される。
(2) 引用発明の内容について ア 引用例(甲1)の記載によれば,引用発明の内容は,次のとおりであると認められる(図面については,別紙引用例図面目録参照)。
11 引用発明は,河道を流下する水流蛇行を矯正することを目的としており, (河 河心川の中央)に沿って河床に河床心堤を設けて河川の水流の主力を河心に誘導して高速度で流下する自然の水流の掃流力を利用して河床心堤の両側に沿った河床を均等に洗掘して河心に沿って河川の定水路を自動的に建設することにより,蛇行する水流を矯正するものである(2頁左欄8行から同頁左欄16行)。
河床心堤の実施の状態を例示したのが別紙引用例図面目録記載の各図面であり,第1図は,河川に実施した河床心堤の状態を示す河道の平面図,第2図は,河川の両岸に設けた築堤の高さ及び洪水時において大規模に水底土砂の移動を促す低層水流の水位と洪水時における最高水位とを示す河道の断面図,第3図は,河心に沿って設けた河床心堤の作用によって,心堤の両側に沿った河床が,流下する自然の水流に洗掘されて自動的に出現した河川の定水路の状態を示す河道の断面図である。
蛇行は,水底を移動しながら土砂が成形する河床の凹凸面に起因しており,洪水時において大規模に水底土砂の移動を促す低層水流のみの交流を遮断してその上層水流は互に自由に交流する程度の高さを保った河床心堤を設けることにより,洪水時の水流は左右の河床に分れて流下し,互いに蛇行して河岸に衝突した場合の水流は各々反流するも心堤に衝突した場合の水流は,その低層水流が心堤に衝突して流向を変えて心堤に沿って流下するので,低層水流に促されて移動する水底土砂は心堤を超えて他側の河床に移動することがなく,また,その上層水流は既にその低層水流が流向を変えているので,水速は衰えて心堤を超えて他側の水流に衝突した場合に容易にこれと合流し,流向を変えて流下して水流の蛇行は矯正される(2頁左欄30行から同頁右欄3行)。
そして,流向を変えて心堤に沿って流下する上層水流は,心堤を超えて互いに集結して自由に交流しながら流下するので,水の集結力により低層水流を拘束して心堤を離脱して反流することなく,土砂を伴って流下する低層水流は心堤を間に挟んでその両側を水の附着力に依って心堤に添接して最高の水速をもって河川の主流となって全河川の水流を誘導して流下するので,全河川の水流の速度は河心において 12 最も高く,河岸に近づくに従って低い速度をもって流下して河心に沿って出現した定水路の河床を常に一定の深度を保って極めて平穏に流れ,水流の蛇行は自動的に矯正されて河床は隆起することなく,水底を移動する土砂は水速の緩い両岸に沿って沈堆して安定した高水敷となって河岸を強化することとなる(2頁右欄4行から同頁右欄24行)。
したがって,簡易な装置により,河川の水流の主力を河心に誘導して流下し,流下する自然の水流の掃流力を利用して河心に沿った定水路を自動的に建設し,在来,最も困難とされていた蛇行する水流を矯正し,蛇行水流の接岸によって起る水災を未然に防ぎ,河床が隆起するのを防ぐと共に洪水時の水流の掃流力を利用して河床に散在する河床の寄洲を潰流してその土砂を両岸に沈堆して安定した高水敷として河岸を強化して水災を未然に防ぎ,さらに両岸に沿って出現して広大の地積に及ぶ高水敷を,農地として使用可能とすることができるものである(2頁右欄25行から同欄36行)。
引用発明は,河床心堤を河心(河川の中央)に設置して,低層水流により移動する水底土砂が心堤を超えて他側の河床に移動することがないようにして,低層水流が心堤を間に挟んでその両側を水の附着力によって心堤に接して最高の水速で河川の主流となって全河川の水流を誘導して流下させ,河心(河川の中央)に沿って出現した定水路の河床を常に一定の深度を保って平穏に流れるようにしたことを特徴とするものであると認められる。
イ 引用例の上記記載によれば,引用発明は,審決が認定するとおり, 「河川の中央に,河床心堤3が設けられ,河川の水流の主力を河心に誘導して高速度を以って流下する自然の水流の掃流力を利用して河床心堤の両側に沿った河床を洗掘し,定水路6,7を建設し,水流を矯正する方法。」であると認められる。
(3) 本願発明と引用発明の一致点及び相違点について ア 本願発明と引用発明の一致点について 審決は,本願発明と引用発明は, 「水の流れの中に,硬質な資材を,流れの方向に 13 沿って連続して設置固定することで,土砂の流下を促進させる方法。 である点で一 」致すると認定した。
前記認定によれば,引用発明の河床心堤は,河心(河川の中央)に設置することが必須の構成である。そして,本願発明の「杭あるいは柱」は,「水の流れの中に」設置固定されるものであり,その設置固定される「水の流れの中に」には河川の中央も含まれると解されることは前記のとおりである。したがって,引用発明の河床心堤も,河川の中央すなわち「水の流れの中に」設置されることとなるので,審決が本願発明と引用発明の一致点として「水の流れの中に」とした点に誤りはない。
また,本願発明において, 「水の流れの中に」杭あるいは柱を,連続的に列柱状に設置固定することは,土砂の流下を促進させるという作用効果を奏することを目的としたものであるのに対し,引用発明においては,河川の中央に「河床心堤」を設置する目的は,第1に,蛇行する水流を矯正するためのものである。
しかし,引用例(甲1)には, 「6,7は河床心堤の作用に依って心堤の両側に沿った河床が,流下する自然の水流に洗掘されて自働的に出現した河川の定水路」 (2頁左欄24行から同欄26行)「土砂を伴なって流下する低層水流は心堤を間に挟 ,んでその両側を水の附着力に依って心堤に添接して最高の水速を以って河川の主流となって全河川の水流を誘導して流下する」 (2頁右欄8行から同欄11行), 「全河川の水流の速度は河心において最も高く,河岸に近づくに従って低い速度を以って流下して河心に沿って出現した定水路の河床を常に一定の深度を保って極めて平穏に流れる」 (2頁右欄12行から同頁右欄15行)との記載があり,この引用例の記載によれば,引用発明においては,河床心堤を設けることで,河床心堤の両側において,水の附着力によって,心堤に接して水の流れが速くなり,土砂の流下を促進させて洗掘し,定水路を出現させているものと認められる。すなわち,引用発明の河床心堤は,これに接する水流を強化することにより,付近の土砂を流下させていることが認められるのであるから,引用発明も本願発明の作用効果である「土砂の流下を促進させる」作用効果を奏しているものと認められる。
14 そうすると,審決が本願発明と引用発明の一致点として「土砂の流下を促進させる方法」とした点に誤りはない。
さらに,引用発明における河床心堤は,その機能からみて硬質な資材から形成されていることは明らかであり,流れの方向に沿って連続して設置固定されているものと認められる。
したがって,本願発明と引用発明の一致点を「水の流れの中に,硬質な資材を,流れの方向に沿って連続して設置固定することで,土砂の流下を促進させる方法。」とした審決の認定に誤りはない。
イ 本願発明と引用発明の相違点について 審決は,本願発明は, 「 杭あるいは柱を,連続的に列柱状に設置固定したのに対し,引用発明はそのような特定について定かでない点。を本願発明と引用発明の相違点 」であると認定した。
引用例の前記記載に照らすと,引用発明における河床心堤は,低層水流に促されて移動する水底土砂が心堤を超えて他側の河床に移動することがないようにする機能を有することが認められ,また,引用例の「上層水流は互に自由に交流する程度の天端高を保って河心に沿った河床に直立固定し,延長して河床を左右に両分する様に設けた河床心堤」 (2頁左欄20行ないし23行)「河床に直立固定し,延長す ,る隔壁を1条或いは河道の状況に応じて重複して設けて」2頁左欄33行, ( 34行)との記載を総合すると,引用発明の河床心堤は,一定の厚さを有する硬質な資材からなる,河床に直立固定され,延長される隔壁により河床を左右に両分する機能を有する土木構造物であると認められる。また,河床心堤は,河川の流れに沿って一定の距離に渡って延長されて設置固定され,かつ河床に直立固定されるものであるから,複数の杭ないし柱によって河床に直立固定されているものである可能性,あるいは杭ないし柱以外にコンクリートその他の資材により隔壁を構成しているものである可能性はあるけれども,引用例にはこれらの具体的な構成についての記載はなく,その具体的構成は不明である。
15 したがって,本願発明と引用発明の相違点として, 本願発明は, 「 杭あるいは柱を,連続的に列柱状に設置固定したのに対し,引用発明における河床心堤は,一定の厚さを有する硬質な資材からなる,河床に直立固定され,延長される隔壁により河床を左右に両分する機能を有する土木構造物であるけれども,直立固定させるための具体的構成や隔壁の具体的構成は不明である」などと認定することは可能であったとはいえるものの,本願の請求項1における「杭あるいは柱を,流れの方向に沿って連続して列柱状に設置固定する」との構成に対応する部分については,引用発明の河床心堤の具体的構成は上記のとおり不明であるので,結局のところ, 「本願発明は,杭あるいは柱を,連続的に列柱状に設置固定したのに対し,引用発明はそのような特定について定かでない点。」とした審決の認定は,やや簡略であるけれども,その結論において誤りとなるわけではない(取消事由2において判断するとおり,本願発明と引用発明との相違点を上記のいずれで認定しても,容易想到性の判断に影響はない。。
) (4) 原告の主張について ア 原告は,引用発明の河床心堤は,その設置場所を河心にすることを必須条件としており,河川の流れにおいて,河川の中央や流れの中央が最も早く,流心や河心が最も深いことは多くの人が承知しており,引用発明の河床心堤を設置してもしなくても,流心では周囲より土砂が多く流れ,流心付近が周囲より深くなるのはごく普通のことである,引用発明の河床心堤では,河川中央の土砂がより多く流下する作用以外には,土砂流下における特別の作用は想定されていないと考えられるので,審決の一致点の認定は誤りである旨主張する。
確かに,一般的に,まっすぐな河川の場合,河川の中央は,河川の端より流速が早く,川底が深くなるという機能を有するところ,引用発明における河川の場合も同様に,本来的に河川の中央の流速が早くなる構成を有するものであるといえる。
しかし,引用例(甲1)には, 「土砂を伴なって流下する低層水流は心堤を間に挟んでその両側を水の附着力に依って心堤に添接して最高の水速を以って河川の主流 16 となって全河川の水流を誘導して流下する」 (2頁右欄8から同頁右欄11行)などの記載があることからすると,引用発明の河床心堤は,これに接する水流を強化することにより,付近の土砂を流下させる作用があると認められるのは前記認定のとおりであり,引用発明も本願発明の作用効果である「土砂の流下を促進させる」作用を有しているものと認められる。
そして,この土砂の流下作用は,本来的に河川の中央が有している上記の機能とは別の,河床心堤を設けたことによる引用発明に特有の作用であるといえ,引用発明は,本願発明と同様に「土砂の流下を促進させる方法」であると認められる。
したがって,本願発明と引用発明の一致点として,土砂の流下を促進させる方法」 「とした審決の認定に誤りはないから,原告の上記主張は採用することができない。
イ 原告は,本願発明と引用発明の一致点の認定につき,引用発明の河床心堤は,河心(河川の中央)に設置されることが必須条件とされているのに対し,本願発明では,その設置場所を河川の中央に限っておらず,流れのある場所ならどこにでも設置可能であるから,この点は相違点となり,審決の一致点の認定には誤りがある旨主張する。
確かに,引用発明は,河床心堤が河川の中央に設けられていることを必須の構成とするものであるといえる。しかし,本願発明の「杭あるいは柱」は, 「水の流れの中に」設置固定されるものであり,その「水の流れの中」には河川の中央に設置される場合も含まれると解されることは前記のとおりである。したがって,引用発明の河床心堤は,河の中央すなわち「水の流れの中に」 (請求項1)設置されることとなるので,審決が本願発明と引用発明の一致点として「水の流れの中に」とした点に誤りはない。
このように,本願発明は,杭あるいは柱を河川の中央に設置するか否かとは関わりなく成立する発明であるから,引用発明が河床心堤の設置場所を河川の中央とする発明であることを理由に,一致点ではないとする原告の上記主張は,採用することができない。
17 ウ 原告は,審決が「本願発明は,杭あるいは柱を,連続的に列柱状に設置固定したのに対し,引用発明はそのような特定について定かでない点。 を本願発明と引 」用発明の相違点としたのは,意味が不明である,引用発明の河床心堤の構造が杭あるいは柱でも設置可能であるとはいえず,本願発明のように連続して列柱状に設置した杭や柱と,河床心堤のように全く連続的である構造物とは大きく異なるものであるなどと主張する。
しかし,引用発明の河床心堤の構造が杭あるいは柱でも設置可能であるか否かは,取消事由2において判断するとおりである。また,前記認定のとおり,河床心堤は,一定の厚さを有する硬質な資材からなる,河床に直立固定され,延長される隔壁により河床を左右に両分する機能を有する土木構造物であると認められるものの,引用発明の河床心堤の具体的な構造は不明であるので,結局のところ,審決の相違点の認定は意味が不明である,あるいは,引用発明においては,杭あるいは柱を連続的に列柱状に設置固定したものと大きく異なるものであるとの原告の主張も直ちには採用し得ない。
(5) 以上によれば,原告の主張する取消事由1は理由がない。
2 取消事由2(相違点に関する判断の誤り)について (1) 審決の相違点に関する判断 審決は,本願発明と引用発明の相違点について, 「引用発明の「河床心堤3」の製造方法は不明であるが,単体を一体的に形成することは規模的に不可能であるから,複数の資材を河川の方向に連続して設置することにより形成したと考えるのが現実的,技術的にみて自然である。そして,周知例1(甲2)には,杭に相当する抵抗ブロックを連続的に列柱設置することが開示され,また,周知例2(甲3)には,柱に相当する半丸太を連続的に列柱配置して側壁構成部材を形成することが開示されている。したがって,杭あるいは柱を,連続的に列柱状に設置固定し,水流を,誘導したり制御することは,河川等の工事技術において周知技術にすぎないことである。よって,引用発明において,河川等の周知技術を採用し,上記相違点に係る 18 本願発明の特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。と判断し 」た。
(2) 周知例について 上記のとおり,審決は,杭あるいは柱を,連続的に列柱状に設置固定し,水流を,誘導したり制御することは,河川等の工事技術において周知技術であるとし,その周知例として周知例1(甲2)を提示し,その中で,各実施例を引用している。
ア そこで,検討するに,周知例1(甲2)には,次の記載がある(図面については,別紙周知例1図面目録参照)。
「本発明は,地滑り,河床あるいは海浜等における浸蝕(洗掘)などの土砂流現象を防止する土砂流防止工法に関する。
従来,地滑りを防止する工法としては,多数本のくいを,地滑り方向とは直交する方向に単に隣接して打設するものがよく知られている。また従来,河床あるいは海浜等における浸蝕を防止する工法としては,多数の譲岸ブロックあるいは消波ブロックを河床あるいは海浜に敷設するものがよく知られている。
本発明は,これら従来の工法よりも土砂流防止効果が格段によいとともに,ごく簡単に実施することができる土砂流防止工法を提案したものである。(1頁左下欄 」9行から右下欄3行) 「次に,護岸を行う場合の実施例について第4〜6図を参照に説明すると,岸壁Cに沿って案内くい1・・・を地中に貫入したのち,各案内くい1について板状の抵抗ブロック4を貫装して自重により沈下させ,また前段の抵抗ブロック4の沈下にともない同じ抵抗ブロック4を順次つぎ足すものである。
各抵抗ブロック4は,左右両側面のうちの一方に,その上下全長にわたる三角形状の突部4aを形成するとともに,他方に,突部4aと同じ三角形の凹部4bを形成し,また中央に,案内くい1を貫通させる孔5を設けたものである。
しかして,抵抗ブロック4・・・は,隣り合う左右のものの突部4aと凹部4bとを嵌合させて沈下させるもので,左右に並んだ抵抗ブロック4・・・は互いに連 19 結されて全体として浸蝕(洗堀)を防止するとともに波浪を減勢する壁を形成するものである。(2頁左下欄8行から右下欄5行) 」 「さらに,第8,9図に示すように,潮流による海浜Eの浸蝕を防止するには,案内くい1・・・を海底(地中)に貫入したのち,各案内くい1について例えば円筒形の抵抗ブロック7・・・を順次貫装して海底に沈下させ,これによって浸蝕を防止し,また潮流の方向を変えればよいものである。
また,第10図に示すように河Fの水流の偏向による河床及び河岸の浸蝕を防止するには,案内くい1・・・を河床(地中)に貫入したのち,各案内くい1につき上記第8,9図の場合と同様に抵抗ブロック7・・・を順次貫装して河床に沈下させ,これによって浸蝕を防止しまた水流の方向を変えればよいものである。(2頁 」右下欄11行から3頁左上欄4行) イ 周知例1の図4ないし図6に係る各実施例は,護岸を行う場合のものであり,波浪の方向に対して直交するように抵抗ブロック4を互いに連結して設けて,全体として浸蝕(洗堀)を防止するとともに,波浪を減勢する壁を形成したものである。
そして,抵抗ブロック4は,本願発明のように,水の流れの方向に沿って設置固定したものではないものの,杭に相当し,複数のものを互いに連結して全体として壁状となるようにしたものであり,波浪の方向に対して直交するように連続的に列柱状に設置固定したものとみることができ,波浪である水流による浸蝕(洗堀)の防止を図ったものである。
したがって,周知例1の図4ないし図6に係る各実施例は,抵抗ブロック4により,波浪である水流に影響を与え,水流を制御することを目的としたものであると認められる。
また,周知例1の図8及び図9に係る各実施例は,潮流による海浜の浸蝕を防止するために,杭である抵抗ブロック7を設けて潮流の流れを変えたものであり,潮流である水流に影響を与え,水流を制御することを目的としたものであると認められる。
20 さらに,周知例1の図10に係る実施例は,河の水流の偏向による河床及び河岸の浸蝕を防止するために,杭である抵抗ブロック7を設けて,浸蝕を防止して,水流の方向を変えるものであり,河川の水流に影響を与え,水流を制御することを目的としたものであると認められる。
以上によれば,周知例1に記載された上記各実施例は,本願発明のように,硬質な資材のそばの水の流れを促進させることを目的としたものではないものの,水流に影響を与えて,水流を制御するために,杭あるいは柱を連続的に列柱状に設置固定するという手段を用いたものであり,河川等の工事の分野における周知技術であると認められる。
(3) 相違点に関する判断について 前記認定のとおり,河川等の工事の分野において,水流に影響を与えて,水流を制御するために,杭あるいは柱を連続的に列柱状に設置固定するという手段を用いることは,周知技術であると認められる。
そして,引用発明と周知技術は,いずれも河川工事の分野,その中でも水流を誘導及び制御するという同一の技術分野に属するものと認められるから,引用発明に周知技術を適用し,引用発明における河床心堤の構成を,杭あるいは柱を用いて連続して列柱状に構成することについて,これを阻害すべき要因は認められない。そして,引用発明における河床心堤の構成を杭あるいは柱を用いて連続して列柱状に構成したとしても,杭あるいは柱の列柱状の構成が引用発明の河床心堤と同一の機能を奏することは当業者にとって自明であるから,引用発明の河床心堤の構成として,杭あるいは柱を連続的に列柱状に設置固定するとの上記周知技術を適用することは,当業者であれば,必要に応じて適宜容易に想到し得たものと認められる(なお,本願発明と引用発明との相違点を前記1(3)イのとおり,「本願発明は,杭あるいは柱を,連続的に列柱状に設置固定したのに対し,引用発明における河床心堤は,一定の厚さを有する硬質な資材からなる,河床に直立固定され,延長される隔壁により河床を左右に両分する機能を有する土木構造物であるけれども,直立固定させ 21 るための具体的構成や隔壁の具体的構成は不明である」と認定したとしても,杭あるいは柱の列柱状の構成が引用発明の河床心堤と同一の機能を果たすことに変わりはないので,引用発明に上記周知技術を適用することが容易想到であるとの判断に変わりはない。。
) そうすると,本願発明と引用発明との相違点に係る構成は当業者が容易に想到し得たものと認められるとの審決の判断に誤りはない。
(4) 原告の主張について ア 原告は,周知例1及び周知例2において,杭あるいは柱に相当するものが「抵抗ブロック」「半丸太」とされているところ,河川工事においてそれぞれに柱が使 ,用されていても,その目的も,その使用方法も,その形状も異なっており,当然,それぞれの考え方が異なっていることはいうまでもない,杭や柱を使用することが,河川等の工事技術において周知技術にすぎないことであるとしても,引用発明では,周知技術の方法で,杭あるいは柱を使用することができないので,周知例1及び周知例2の技術のそれぞれから本願発明を当業者が容易に想到し得たことであるとするのは明らかに誤りである,引用発明,周知例1,周知例2のいずれもその目的は本願発明とは異なっており,それぞれの発明の作用もそれぞれに異なっている旨主張する。
しかし,周知例2に記載された内容を検討するまでもなく,前記のとおり,周知例1の記載によれば,河川等の工事の分野において,水流に影響を与えて,水流を制御するために,杭あるいは柱を連続的に列柱状に設置固定するという手段を用いることは周知技術であることは前記認定のとおりである。
また,周知例1の前記各実施例自体は,本願発明のように,硬質な資材の側の水の流れを促進させることを目的としたものではないものの,河川等の工事の分野において,水流に影響を与えたり,水流を誘導及び制御するための部材として,硬質な資材からなる杭あるいは柱を用いて連続して列柱状に設置固定することは,周知技術であるといえる。
22 そして,引用発明と周知技術は,いずれも河川工事の分野,その中でも水流を誘導及び制御するという同一の技術分野に属するものと認められるから,引用発明に周知技術を適用し,引用発明における河床心堤の構成として,杭あるいは柱を用いて連続して列柱状に構成することについて,これを阻害すべき要因は認められず,当業者であれば,必要に応じて適宜容易に想到し得たものと認められることは前記のとおりである。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
イ 原告は,本願発明は,河川における自然現象を長年に亘り観察することによって発見した法則を元に考案したものであり,従来にない新しい考え方に基づくもので,その「土砂の流下を促進させる」という作用も従来から指摘されることがなかった自然現象を利用したものであるなどと主張する。
しかし,証拠(乙1ないし7)及び弁論の全趣旨によれば,河川の蛇行点,大きな石,橋脚,杭等の構造物の周囲に洗掘が起こること,そのような洗掘が利用されていることが認められ,水の流れの中に硬質な構造物を置けば,当該構造物付近の流れにより,洗掘が生じる(土砂が流下する)ことは,従来から知られていたことであると認められる。
したがって,本願発明は,従来から指摘されることがなかった自然現象を利用したものである旨の原告の上記主張は採用することができない。
ウ 原告は,本願発明と引用発明とでは,その設置場所とその構造が大きく異なっている,本願発明は,水流の中に,杭あるいは柱を,流れに沿って列柱状に設置固定するのに対し,引用発明では,河川の中央に,塀状の河床心堤を,河心に沿って設置固定するものである,具体例としては,本願明細書の【発明の詳細な説明】【0028】に, 「〜,河川最下流部の河口において,土砂が河口を塞ぐ場合にもこの構造物の設置は効果が期待できます。 との記載があるように, 」 連続した列柱状の柱を河口の上流側に設置し,左側の間隔を開けて列柱状に連続した柱を河口の海側に設置することがあげられるから,引用発明から,本願発明を当業者が容易に想到 23 し得たことであるとするのはほとんど荒唐無稽だといえる旨主張する。
しかし,本願発明の「水の流れの中に」には,河川の中央も含まれることは前記のとおりであり,また,引用発明の河床心堤の構成について,周知技術を適用して,杭あるいは柱を用いて連続して列柱状に構成することが容易想到であることも前記のとおりである。
さらに,本願の請求項1には, 「杭あるいは柱を,流れの方向に沿って連続して列柱状に設置固定する」と記載され,本願明細書【0032】には, 「これらの柱は全体として連続している必要がありますが部分的に間隔があっても問題ありません。」と記載されていることからしても,本願発明は,杭あるいは柱の設置について,間隔を空けて連続したもののみならず,隙間なく連続したものをも含む発明であり,隙間なく連続して杭あるいは柱を設置する構成を含むものであることは明らかである。そして,本願発明の杭あるいは柱の設置箇所が河口に限定されたものでもないことも、請求項1から明らかである。
したがって,本願発明が,間隔を空けて連続して杭あるいは柱を設置することなどを前提とする原告の上記主張は,本願発明の発明特定事項に基づかないものであり,採用することができない。
エ 原告は,審決は,真摯な態度をもって本願発明を審査したものではない, 「本願は拒絶すべきものである」との結論が審査の前に決定されていて,それに沿うように論述を進めたものである,このような不正の発生は,原告が,個人で,特許を出願し,審査請求をし,審判請求をしたことと関連していると考えている,知財高裁で訴訟を起こすのは,費用の問題,法律の知識が必要なこと,時間的余裕も十分に必要であることがあり,簡単なことではなく,特許庁の審査官はこれらを十分に承知して,審決をしていたのであるなどと,審決が不正な決定である旨主張する。
しかし,審決の認定判断に誤りがないことは前記認定のとおりであり,審決に取り消すべき違法があったということはできないし,審決の判断が不正なものであることを認めるに足りる証拠もない。
24 したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(5) 以上によれば,原告の主張する取消事由2は理由がない。
結論
以上のとおり,原告の主張する取消事由は,いずれも理由がなく,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
追加
25 本願発明図面目録図11:列柱状の構造物5:水の流れの方向6:通常時の水面7:増水後の川底8:土砂が流下した後の川底26 引用例図面目録第1図1,2:築堤3:河床心堤4,5:河床27 第2図第3図28 周知例1図面目録第4図C:岸壁1:案内くい4:抵抗ブロック5:孔第5図第6図29 第8図第9図第10図E:海浜F:河1:案内くい7:抵抗ブロック30
裁判長裁判官 設樂一
裁判官 大寄麻代
裁判官 岡田慎吾
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