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関連審決 不服2014-24620
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事件 平成 27年 (行ケ) 10111号 審決取消請求事件

原告 一般財団法人生涯学習開発財団
同訴訟代理人弁理士 西村雅子 田畑浩美 佐々木香織
被告特許庁長官
同 指定代理人清棲保美 井出英一郎 根岸克弘
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2015/11/19
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 特許庁が不服2014−24620号事件について平成27年4月21日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
請求
主文第1項と同旨
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯 ? 原告は,平成26年2月5日,別紙1本願商標目録記載の本願商標(以下「本願商標」という。)の登録出願(商願2014-007991号)をした(甲 1 4)。
? 原告は,同年9月9日付けで拒絶査定を受けた(甲7)ので,同年12月2日,これに対する不服の審判を請求した(甲8)。
? 特許庁は,これを,不服2014-24620号事件として審理し,平成27年4月21日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との別紙審決書(写し)記載の審決(以下「本件審決」という。)をし,同年5月12日,その謄本が原告に送達された。
? 原告は,同年6月9日,本件審決の取消しを求める本件審決取消訴訟を提起した。
2 本件審決の理由の要旨 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)のとおりである。要するに,本願商標は,別紙2引用商標目録記載の引用商標1ないし3(以下,これらを総称して「本件引用商標」という。)と類似する商標であり,かつ,本願商標の指定商品及び指定役務と引用商標の指定役務とは,同一又は類似するものであるから,商標法4条1項11号に該当し,商標登録を受けることができない,というものである。
3 取消事由 本願商標が商標法4条1項11号に該当するとした判断の誤り
当事者の主張
〔原告の主張〕 1 本願商標について ? 外観について 本願商標は,上段の「GLLC」の欧文字及び下段の「Global Life LearningCenter」の欧文字から構成されるものである。
上段の「GLLC」は,その構成中の「LL」が重なるように近接してデザインされているが,以下の理由により,欧文字3字の「GLC」ではなく,欧文字4字の「GLLC」として看取される。
2 ア 下段の「Global Life Learning Center」は,これを構成する各英単語の頭文字である「G」,「L」,「L」及び「C」がいずれも大文字であることから,上段のロゴは,下段の語の頭字語であり,デザイン上の理由で2つの「L」を重ねて表示したものと看取される。
特許庁の「特許情報プラットフォーム」(J-PlatPat)においても,本願商標の「商標(検索用)」の欄に,「§GLLC\Global Life Learning Center」と記載されており(甲9),これは,本願商標につき,上段及び下段の各欧文字が同時に目に入る構成であり,通常の注意力を有する需要者であれば,上段のロゴをもって,下段の語の頭字語,すなわち,「GLLC」と看取することの証左である。
イ 以下の事情によれば,本願商標の上段の欧文字「GLLC」の「LL」は「Life Learning」の略語として需要者に認知されており,この事実からも,本願商標の上段の欧文字は,「GLC」ではなく,「GLLC」として認識されるものということができる。
(ア)(ア) インターネット上で「ライフラーニング」をキーワードとして検索すると,原告,すなわち,一般財団法人生涯学習開発財団のサイトが最上位に表示され(甲21),このことから,「生涯学習」の意味で日本人に理解されやすい「ライフラーニング」の語が,原告の使用によって浸透していることが分かる。
(イ)(イ) 原告は,生涯学習の事業の一環として「博士号取得支援事業」を行っており,その告知のポスターにおいても,本願商標を構成する「GLLC」のロゴを表示している。
(ウ)(ウ) 「Life Learning」は,標準文字で登録されている原告の登録商標(商標登録第5541427号)であり,本願商標と同じく,第16類,第35類及び第41類の役務について登録されている。
? 称呼について 本願商標からは,その上段の欧文字から「ジイエルエルシイ」,その下段の欧文字から「グローバルライフラーニングセンター」,全体から「ジイエルエルシイグ 3 ローバルライフラーニングセンター」との称呼が生じる。
? 観念について 本願商標からは,下段の欧文字から「世界的な生涯学習センター」との観念が生じる。
? 本件審決の認定の誤りについて ア 本件審決は,本願商標の上段の欧文字につき,図案化してなる「GLC」の欧文字を大きく表したものと認定した上で,上段の欧文字と下段の欧文字の両者が相互に関連ある一体不可分のものとしてのみ看取,把握されると認めることはできないとして,上段の欧文字は,下段の「Global Life Learning Center」の英語と分離して観察され得るものであり,本願商標の自他商品又は自他役務の識別標識としての要部たり得るものであると判断した。そして,本願商標からは,その構成全体に相応して「ジイエルシイグローバルライフラーニングセンター」との称呼を生ずるほか,上段の欧文字部分に相応して「ジイエルシイ」との称呼をも生じ,特定の観念を生じないものと認定した。
イ しかしながら,本件審決が,上段の欧文字部分を「GLC」の3字の欧文字と認定し,「ジイエルシイ」との称呼を生じると認定した点は,前記?に加え,以下の理由により,誤りである。
すなわち,本願商標が2つの部分に分離され得るとしても,需要者は,一見して判読し難い上段の欧文字部分のロゴよりも,平易な英語である下段の欧文字部分に着目し,上記ロゴが下段の英語の頭字語であることを看取するというべきである。
すなわち,外観上は,本件審決認定のとおり,下段の「Global Life LearningCenter」に比して大きく顕著に表された上段の「GLLC」のロゴが,取引者,需要者に対し,強く支配的な印象を与えるとしても,称呼の特定については,平易な英語から成る下段の語が,上記ロゴは下段の語の頭字語である旨の情報を需要者に伝達しているということができる。
本件審決は,本願商標の上段の欧文字部分の構成文字及び称呼の特定に当たり, 4 併記されている下段の欧文字部分を考慮することなく,上段の欧文字部分にのみ着目してその構成文字を「GLC」の3字の欧文字と,称呼を「ジイエルシイ」と認定した点において誤りがある。
2 引用商標1について ? 外観,称呼及び観念について 引用商標1の外観は,赤,緑及び青に着色された3本の矢印が回転するように円を描く図形とその下の「GLC」の欧文字から構成されている。
引用商標1からは,上記欧文字に相応した「ジイエルシイ」との称呼が生じ,造語として特定の観念は生じない。
? 本願商標との類否について 引用商標1は,3本の矢印から成る図形が顕著に表示された構成となっており,本願商標との外観上の差異は明白である。特に,引用商標1を構成する鮮やかに着色された図形は需要者の目を引くものであり,その情報伝達力は無視できるものではない。
称呼についても,本願商標からは,「ジイエルエルシイ」,「グローバルライフラーニングセンター」又は「ジイエルエルシイグローバルライフラーニングセンター」との称呼が生じるのに対し,引用商標1からは「ジイエルシイ」との称呼のみが生じ,両者は非類似である。
観念についても,本願商標からは,下段の欧文字から「世界的な生涯学習センター」との観念が生じるのに対し,引用商標1からは特定の観念が生じないので,比較することができない。
以上によれば,本願商標と引用商標1とは,非類似である。
3 引用商標2について ? 外観,称呼及び観念について 引用商標2の外観は,左側に,引用商標1と同一の図形及び欧文字,すなわち,赤,緑及び青に着色された3本の矢印が回転するように円を描く図形とその下に 5 「GLC」の欧文字を配し,右側に「経営承継」の漢字を大きく表示したものである。
引用商標2からは,上記欧文字及び漢字に相応して「ジイエルシイ」及び「ケイエイショウケイ」との称呼が生じる。
引用商標2からは,「経営承継」の語から,第35類の指定役務との関係につき,「経営承継に関するコンサルタント」との観念が生じる。
? 本願商標との類否について 本願商標と対比すると,引用商標2は,3本の矢印から成る図形が顕著であり,また,「経営承継」の語も大きく表示されており,全体として外観上の相違は明らかである。特に,引用商標2を構成する鮮やかに着色された図形は需要者の目を引くものであり,その情報伝達力は無視できるものではない。
称呼についても,本願商標からは,「ジイエルエルシイ」,「グローバルライフラーニングセンター」又は「ジイエルエルシイグローバルライフラーニングセンター」との称呼が生じるのに対し,引用商標2からは「ジイエルシイ」及び「ケイエイショウケイ」との称呼が生じ,両者は非類似である。
観念についても,本願商標からは,下段の欧文字から「世界的な生涯学習センター」との観念が生じるのに対し,引用商標2からは,「経営承継」の語から「経営承継に関するコンサルタント」との観念が生じ,両者は非類似である。
以上によれば,本願商標と引用商標2とは,非類似である。
4 引用商標3について ? 外観,称呼及び観念について 引用商標3は,欧文字「GLC」の標準文字から構成され,それに相応して「ジイエルシイ」との称呼が生じ,特定の観念は生じない。
? 本願商標との類否について 外観についてみると,本願商標の図形化された「GLLC」の文字のロゴは,「G」,2つの「L」及び「C」のいずれの文字も通常のフォントとは異なる特徴 6 的な書体であり,それぞれを単独で見る場合には,必ずしも「G」,「L」及び「C」の文字として理解されるものではないと考えられ,引用商標3を構成する標準文字の「GLC」とは外観において大きく相違し,両者を識別できることは明白である。
称呼についても,本願商標からは,「ジイエルエルシイ」,「グローバルライフラーニングセンター」又は「ジイエルエルシイグローバルライフラーニングセンター」との称呼が生じるのに対し,引用商標3からは「ジイエルシイ」との称呼のみが生じ,両者は非類似である。
観念についても,本願商標からは,下段の欧文字から「世界的な生涯学習センター」との観念が生じるのに対し,引用商標3からは特定の観念が生じないので比較することができない。
以上によれば,本願商標と引用商標3とは,非類似である。
5 取引の実情について ? 本願商標の取引の実情について 原告は,生涯学習に関する情報提供と支援を事業内容とする財団であり,遅くとも平成元年から本願商標の上段の欧文字と同一の「GLLC」のロゴを使用してきた。
原告は,上記「GLLC」のロゴを,「Global Life Learning Center」を意味することが明らかな態様で,すなわち,同語と一体のものとして使用している。
? 本件引用商標の取引の実情について ア 商標が,使用者の名称や使用者の役務を暗示する語の略語であることは,単に,当該商標が現在使用されている商品又は役務についてのみの特殊的,限定的な事情ではなく,指定商品又は指定役務全般についての一般的,恒常的な取引実情であるから,普遍的に勘案すべきものということができる。
イ この点に関し,引用商標1及び引用商標2を構成する「GLC」の欧文字は,これらの商標権者である株式会社グローバル・インクの英文名称「Global Link 7 Co., Ltd.」の略語として使用されているものとみられるところ,同社は,保険等のリスクマネジメントを業務としており,原告の業務との出所混同のおそれはない。
引 用 商標3を構成する「GLC」の欧文字は,その商標権者の サービス 名 称「Global Leadership Coaching」(商標登録第5627965号)の略語として使用されているところ,同社は,企業研修等の人材育成を事業としており,原告の業務との出所混同のおそれは低い。
6 本願商標の商標法4条1項11号該当性について ? 前記1から5によれば,本願商標は,本件引用商標のいずれとも類似するものということはできず,商標法4条1項11号に該当しない。
? 原告は,本願商標の出願と同時に,指定商品及び指定役務を本願商標と同じくし,かつ,本願商標の上段の欧文字と同一の図形化された「GLLC」のロゴと「生涯学習」の語とを結合した別紙3商標目録記載の商標(以下「別件商標」という。)の登録出願をしており,同商標は,本件引用商標との類似等を理由に拒絶されることなく,商標登録を受けている(商標登録第5683748号)。
別件商標の構成中,「生涯学習」の語は,第35類及び第41類の指定役務の役務内容を表す語であって識別力が低いものであるから,「GLLC」のロゴ部分が自他役務識別力を発揮するものと考えられるところ,本件引用商標とは非類似と判断されている。
したがって,本件審決は,「GLLC」のロゴを含む本願商標を本件引用商標と類似する旨認定して商標法4条1項11号に該当すると判断した点において,同一のロゴを含む別件商標についての前記判断との整合性を欠き,誤りである。
〔被告の主張〕 1 本願商標について ? 外観について ア 上段部分について (ア)(ア) 上段部分は,本願商標の構成全体の大半を占めるように大きく顕著に 8 表されており,同じ太さの線を用い,高さと幅をそろえ,かつ,角を丸めて表すなど,同じデザイン化をされた3つの構成部分が,わずかな間隔を設けて横一列に配置されていると看取されるものである。
前記3つの構成部分のうち,左右に位置するものは,各外観的特徴に照らせば,それぞれ,「G」の欧文字,「C」の欧文字として容易に看取される態様から成る。
(イ)(イ) 前記3つの構成部分のうち,中央に位置するもの(以下「本願上段中央文字」という。)は,わずかな隙間をもって2本の線が「L」字状に平行して表され,かつ,内側の線が外側の線の内側にできる空間に収まるように両線の上端部及び右端部がそろって表されており,2本の線をもって「L」の欧文字の特徴を有するというべきものである。加えて,本願上段中央文字は,その高さ及び幅並びに角を丸めた表し方といったデザインにおいて,左右に位置する「G」の欧文字及び「C」の欧文字と同じである。なお,インターネット情報によれば,本願上段中央文字と同様のデザインにより,「L」の欧文字1字を表したものが使用されている実情も見受けられる(乙5〜乙7)。
以上によれば,本願上段中央文字は,一見して「L」の欧文字1字を表したものと認識されるものであり,「L」と「L」の欧文字2字を表したものとは理解されない。
イ 下段部分について 下 段部分は,上段部分に比べ極めて小さく表されており, 一般的な書 体 で「Global Life Learning Center」の欧文字を表したものである。
ウ 原告の主張について (ア)(ア) 以上に関し,原告は,特許庁の「特許情報プラットフォーム」(J-PlatPat)においても,本願商標の「商標(検索用)」の欄に,「§GLLC\GlobalLife Learning Center」と記載されており,これは,本願商標につき,通常の注意力を有する需要者であれば,上段のロゴをもって「GLLC」と看取することの証左である旨主張する。
9 しかしながら,「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」による検索の結果は,その標章の登録性の有無を直ちに意味するものではない。原告主張に係る検索用のキーワードも参考情報として提供されているにすぎず,それ自体,審査,審判における商標の構成文字,称呼等の認定(特定),判断を左右するものではない。加えて,本願商標を構成する「GLC」の欧文字から生じる「ジイエルシイ」の称呼も検索用のキーワードとされている。
以上によれば,原告の前記主張は採用できない。
(イ)(イ) この点に関し,原告は,本願商標の上段の欧文字「GLLC」の「LL」は「Life Learning」の略語として需要者に認知されており,この事実からも,本願商標の上段の欧文字は,「GLC」ではなく,「GLLC」として認識されるものということができる旨主張する。
しかしながら,原告主張のとおり「Life Learning」が「LL」と略称され,「生涯学習」の意味を表すものとして一般に知られていることの証左はない。加えて,前記?アのとおり,本願上段中央文字は,「L」の欧文字1字として認識されることから,本願商標に接する需要者は,その上段の欧文字について「GLC」の欧文字3字として認識するものというべきである。
? 分離観察の可否について 前記?のとおり,本願商標においては,上段部分と下段部分とが,著しい大小の差及び文字のデザインの相違をもって表示されていることから,両部分は,視覚上,分離して観察され得るものというのが相当である。
そして,上段部分を構成する「GLC」の欧文字は,既成の語ではなく,特定の意味合いを理解させる語として親しまれているものでもないのに対し,下段部分を構成する「Global Life Learning Center」の欧文字は,平易な英単語から構成されており,各語が有する語意により,「世界的な生命学習センター」ほどの意味合いを理解させるものであるから,この上段部分と下段部分とが合わさってまとまった特定の意味合いを看取させることはない。
10 また,本願商標は,その上段部分から「ジイエルシイ」との称呼を生じ,その下段部分から「グローバルライフラーニングセンター」との称呼を生じるといえるところ,両者を合わせた構成全体から生じる称呼は,23音(長音を含む。)と極めて冗長なものである。
以上によれば,本願商標は,その外観及び観念からみて,その構成全体が常に一つのまとまりあるものとしてのみ看取されるものとはいい難い上,その構成全体から生じる称呼も極めて冗長なものであるから,その構成中,下段部分に対して大きく顕著に表された上段部分に位置する「GLC」の欧文字が,商品及び役務の出所識別標識として,強く支配的な印象を与えるものであるということができ,したがって,本願商標の要部に該当する。
? 称呼及び観念について 本願商標は,全体的に観察すると,下段部分から「世界的な生命学習センター」ほどの観念が生じるものである。
また,要部である上段部分の欧文字に相応する「ジイエルシイ」の称呼をも生じ,これからは,特定の観念は生じない。
? 本件審決の認定の誤りについて ア 原告は,本件審決が,本願商標の上段の欧文字部分の構成文字及び称呼の特定に当たり,併記されている下段の欧文字部分を考慮することなく,上段の欧文字部分にのみ着目してその構成文字を「GLC」の3字と,称呼を「ジイエルシイ」と認定した点において誤りがある旨主張する。
イ しかしながら,本願商標の上段部分と下段部分とは,大きさにおいて顕著な差があり,また,小さく表された下段部分の「Global Life Learning Center」を構成する各語の頭文字が特に強調されて表されているともいえず,これらの点に鑑みると,前記上段部分が前記下段部分の略称を表したものと直ちに把握されるとはいい難い。加えて,略称については,省略する対象の語の頭文字を全て採択使用する必要性はないことに鑑みれば,本願商標の下段部分の欧文字が,上段部分の構成 11 の認定に影響を与えることはなく,上段部分から生じる称呼を,自然に生じるものとは異なる称呼に特定するともいえない。
よって,本願商標の上段部分は,その構成態様に照らして,「GLC」の欧文字を表したものと容易に看取されるものであって,「GLLC」の欧文字から成るものと看取されることはなく,「GLC」の欧文字に相応して,「ジイエルシイ」の自然な称呼が生じるものである。
以上によれば,原告の前記主張は,採用できない。
2 引用商標1について ? 分離観察の可否について 引用商標1の図形部分は,その構成態様からして,特定の称呼及び観念を生じるものとはいい難く,また,欧文字部分は,既成の語ではなく,特定の意味合いを理解させる語として親しまれたものでもないから,特定の観念を生じない。
以上によれば,引用商標1は,その構成全体をもって一体的なまとまりのあるものとして看取,把握されるとはいい難く,図形部分と「GLC」の欧文字部分とが分離して観察され得るものである。
? 称呼及び観念について 引用商標1は,その構成中の「GLC」の欧文字部分が役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであるから,引用商標1の要部となり得る。
したがって,引用商標1からは,要部である「GLC」の欧文字部分に相応する「ジイエルシイ」との称呼が生じるものであり,他方,特定の観念は生じない。
? 本願商標との類否について 本願商標と引用商標1とは,全体の外観は相違するものの,本願商標の要部である「GLC」の欧文字と,引用商標1の要部である「GLC」の欧文字とは,外観において,構成文字の綴りが同一であることから近似した印象を与えるものであり,いずれからも「ジイエルシイ」との称呼が生じ,また,観念において区別できるものでもない。
12 したがって,本願商標と引用商標1をそれぞれ同一又は類似の商品又は役務に使用するときは,両商標は,互いに紛らわしい類似する商標というべきである。
そして,本願商標の指定商品及び指定役務中,第16類の一部及び第35類の一部に係るものは,引用商標1の指定役務中,第35類に係るものと同一又は類似のものということができる。
3 引用商標2について ? 分離観察の可否について 引用商標2は,引用商標1と同一の構成態様から成る標章の右側に,「経営承継」の漢字を配して成るものであるところ,その構成中の「経営承継」の漢字部分は,企業等が行う事業(経済的活動)の運営を受け継ぐとの意味を表す語であるのに対し,引用商標1と同一の構成態様からなる標章部分については,前記2?のとおり,それを構成する図形部分及び「GLC」の欧文字部分のいずれからも,特定の観念は生じないものである。
また,「経営承継」の漢字部分は,その語意に照らせば,引用商標2の指定役務中の,特に「事業承継に関する指導及び助言」及び「経営の診断又は経営に関する助言」との関係において,自他役務の識別標識としての機能を有しないか又は同機能が極めて弱いものである。
以上によれば,引用商標2は,その構成全体をもって一体的なまとまりのあるものとして看取,把握されるとはいい難く,引用商標1と同一の構成態様から成る標章部分と「経営承継」の漢字部分とが分離して観察され得るものであり,さらに,その標章部分についても,前記2?のとおり,図形部分と「GLC」の欧文字部分とが分離して観察され得るものである。
? 称呼及び観念について 引用商標2は,その構成中の「GLC」の欧文字部分が役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであるから,引用商標2の要部となり得る。
したがって,引用商標2からは,要部である「GLC」の欧文字部分に相応する 13 「ジイエルシイ」との称呼も生じるものであり,他方,上記要部から特定の観念は生じない。
? 本願商標との類否について 本願商標と引用商標2とは,全体の外観は相違するものの,本願商標の要部である「GLC」の欧文字と,引用商標2の要部である「GLC」の欧文字とは,外観において,構成文字の綴りが同一であることから近似した印象を与えるものであり,いずれからも「ジイエルシイ」との称呼が生じ,また,観念において区別できるものでもない。
したがって,本願商標と引用商標2をそれぞれ同一又は類似の商品又は役務に使用するときは,両商標は,互いに紛らわしい類似する商標というべきである。
そして,本願商標の指定役務中,第35類の一部に係るものは,引用商標2の指定役務の一部と同一又は類似のものということができる。
4 引用商標3について ? 外観,称呼及び観念について 引用商標3は,「GLC」の欧文字を標準文字で表して成るものであり,「ジイエルシイ」との称呼が生じる。
前記欧文字は,既成の語ではなく,特定の意味合いを理解させる語として親しまれたものでもないことに鑑みると,引用商標3から特定の観念は生じない。
? 本願商標との類否について 本願商標と引用商標3とは,全体の外観は相違するものの,本願商標の要部である「GLC」の欧文字と,引用商標3を構成する「GLC」の欧文字とは,外観において,構成文字の綴りが同一であるから近似した印象を与えるものであり,いずれからも「ジイエルシイ」との称呼が生じ,また,観念において,区別できるものでもない。
したがって,本願商標と引用商標3をそれぞれ同一又は類似の商品又は役務に使用するときは,両商標は,互いに紛らわしい類似する商標というべきである。
14 そして,本願商標の指定役務中,第41類に係るものの一部は,引用商標3の指定役務の一部と同一又は類似のものということができる。
5 取引の実情について ? 本願商標の取引の実情について 原告は,本願商標の上段の欧文字と同一の「GLLC」のロゴを,「Global LifeLearning Center」を意味することが明らかな態様で使用している旨主張する。
しかしながら,原告が提出した証拠には,本願商標の上段の欧文字と同一の構成の欧文字のみが単独で使用されているもの,「Global Life Learning Center」の欧文字が「生涯学習開発財団」の英語名称として使用されているにすぎないものなどは見受けられるものの,本願商標の上段の欧文字と同一の構成の欧文字が「GlobalLife Learning Center」の欧文字の略称としての「GLLC」の欧文字を表したものであることを看取させる態様で使用されているものはない。
したがって,上記の使用状況をもって,本願商標に接する需要者が,本願商標の上段の欧文字を「Global Life Learning Center」の略称としての「GLLC」の欧文字であると認識するとはいえない。
また,たとえ,原告の主張のとおり,原告が「GLLC」の欧文字をデザイン化したものとして本願商標の上段の欧文字を採択したとしても,同欧文字は,前記1?アのとおり,一見して「GLC」の欧文字と看取されるものであり,「GLLC」の欧文字を表したものとして看取されるとはいえない。
以上によれば,原告の前記主張は,失当である。
? 本件引用商標の取引の実情について 原告は,本件引用商標は,商標権者の名称又はそのサービス名称の略語として使用されており,各商標権者の事業は原告の業務とは異なることから,出所混同のおそれはない又は低い旨主張する。
しかしながら,商標の類否判断に当たり考慮することのできる取引の実情とは,その指定商品又は指定役務全般についての一般的,恒常的な取引の実情であり,単 15 にその判断の対象となる商標が現在使用されている商品又は役務についてのみの特殊的,限定的な取引の実情ではない。そして,原告又は本件引用商標の商標権者が現に行っている事業は,それぞれの経営戦略等により,その内容が変わる場合も少なくないということができ,本願商標と本件引用商標において同一又は類似の指定商品及び指定役務は,広範にわたるものであるから,現在の事業内容が異なることをもって,出所混同のおそれがないという原告の主張は,失当である。
なお,原告は,本願商標と本件引用商標との間における出所混同のおそれがないこと又は低いことを認めるに足りる立証をしていない。
6 本願商標の商標法4条1項11号該当性について ? 前記1から5によれば,本願商標は,本件引用商標のいずれとも類似するものであり,商標法4条1項11号に該当する。
? この点に関し,原告は,本件審決が,「GLLC」のロゴを含む本願商標を本件引用商標と類似する旨認定して商標法4条1項11号に該当すると判断した点において,同一のロゴを含む別件商標は本件引用商標と非類似である旨判断したこととの整合性を欠き,誤りである旨主張する。
しかしながら,別件商標は,本願商標の上段と同一の欧文字と「生涯学習」の漢字とを結合し,「GLC生涯学習」と横一連に表して成るものであるところ,各構成文字は,同じ大きさで等間隔にまとまりよく表されており,看者をして構成全体が一体不可分のものと認識させるものということができる。
したがって,別件商標は,前記1?のとおり分離観察が可能な本願商標とは,具体的構成において相違するものということができるから,原告の前記主張は,誤りである。
当裁判所の判断
1 取消事由(本願商標が商標法4条1項11号に該当するとした判断の誤り)について ? 商標の類否判断 16 商標法4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に観察すべきであり,かつ,その商品の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。
この点に関し,複数の構成部分を組み合わせた結合商標については,商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められる場合において,その構成部分の一部を抽出し,この部分のみを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,原則として許されない。他方,商標の構成部分の一部が取引者,需要者に対して商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などには,商標の構成部分の一部のみを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも,許されるものということができる(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁,最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)。
そこで,以上の見地から,本願商標と本件引用商標との類否について検討する。
? 本願商標について ア 外観について(甲4) 本願商標は,別紙1本願商標目録記載のとおりの外観であって,上段の文字部分と下段の文字部分を組み合わせた結合商標である。
(ア)(ア) 上段の文字部分について 上段の文字部分のうち,左端の文字及び右端の文字は,それぞれ,アルファベッ 17 ト大文字の「G」及び「C」をデフォルメしたものと認められる。
上段の文字部分のうち,上記「G」及び「C」に挟まれた本願上段中央文字についてみると,同文字は,ほぼ同じ太さを有する2本のL字状の線から成り,これらの線は,間隔を空けて平行に配置されている。
(イ)(イ) 下段の文字部分について 下段の文字部分は,「Global」 「Life」 「Learning」及び「Center」の4語の英 , ,単語と同一の文字が,上記の順番で各英単語間に間隔を空けて一般的なアルファベットの書体で表されており,各英単語の頭文字である「G」「L」「L」及び「C」 , ,はいずれも大文字,その余は小文字である。
(ウ)(ウ) 本願商標全体の外観について 本願商標のうち,上段の文字部分は,左端から,アルファベットの大文字「G」,2本のL字状の線から成る本願上段中央文字及びアルファベットの大文字「C」を,各文字の角を丸め,「G」及び「C」の各文字については,通常の書体においては弧を成す上下の部分を直線で表すなどのデフォルメをして黒い太字で表したものであり,本願商標全体の面積の大半を占めている。
他方,下段の文字部分は,全体として,上段の文字部分に比べてかなり小さい。
すなわち,下段の文字部分を構成するアルファベット24字のうち,大文字で表されている「G」「L」「L」及び「C」の4字でさえも,上段の文字部分のうちア , ,ルファベットの大文字「G」及び「C」であることが明らかな両端の各文字と比べると,高さ,幅共に約4分の1程度である。下段の文字部分を構成するその余の20字は全て小文字であり,前記の「G」「L」「L」及び「C」の大文字よりも更 , ,に小さい。しかも,下段の文字部分は,上段の文字部分よりも明らかに細い黒線で表されている。
イ 上下段の各文字部分の称呼及び観念について(ア)(ア) 下段の文字部分について 下段の文字部分は,前記ア(イ)(イ)のとおり「Global」「Life」「Learning」及 , , 18 び「Center」の4語の英単語と同一の文字から成り,「グローバルライフラーニングセンター」との称呼が生じ,各英単語の訳語から「世界的な生涯学習センター」(甲21,乙1〜乙4)との観念が生じる。
(イ)(イ) 上段の文字部分について 上段の文字部分は,前記ア(ア)(ア)のとおりデフォルメされたアルファベットの大文字「G」及び「C」並びに2本のL字状の線から成る本願上段中央文字によって構成されている。
称呼に関し,@下段の文字部分の両端は,上段の文字部分の両端とそろっていること,A前記ア(ウ)(ウ)のとおり,下段の文字部分は,全体として,上段の文字部分に比べてかなり小さいこと,B上段の文字部分のデフォルメされたアルファベットの大文字「G」の真下に,下段の文字部分の「Global」の頭文字「G」が配置され,同じく上段の文字部分のデフォルメされたアルファベットの大文字「C」の斜め下に下段の文字部分の「Center」の頭文字「C」が配置されていることから,本願上段中央文字についても,その2本のL字状の線から成る形態と相まって,下段の文字部分の「Life」「Learning」の各頭文字「L」「L」を連想させることに鑑 , ,みると,下段の文字部分は,見る者に,あたかも上段の文字部分のルビとして付されたものという印象を与えるということができる。
以上に加え,複数の単語から構成される英語の熟語や名称については,その略称として,各単語の頭文字の大文字を並べたものを用いることが多いことに鑑みると,上段の文字部分は,下段の文字部分を構成する各英単語の頭文字である「G」「L」「L」「C」を意味するものとして認識されるというべきである。
以上によれば,上段の文字部分は,アルファベットの大文字「G」「L」「L」 , ,及び「C」の4文字に相応した「ジイエルエルシイ」との称呼を生ずるものと認められる。なお,特定の観念は生じない。
ウ 本願商標の外観,称呼及び観念について (ア)(ア) 前記アのとおり,上段の文字部分は,下段の文字部分に比べてかなり 19 大きく,より太い黒線で表わされており,本願商標全体の面積の大半を占めていることから,下段の文字部分に比べて相当に目立つものということができる。そして,前記イ(イ)(イ)のとおり,上段の文字部分は,アルファベットの大文字「G」,「L」「L」及び「C」の4文字がいずれも通常の書体とは異なり,デフォルメさ ,れている。すなわち,前記アのとおり,各文字の角を丸め,うち「G」及び「C」については,通常の書体においては弧を成す上下の部分を直線で表すなどしている。
また,2つの「L」の文字は,左側の「L」の文字が,右側の「L」の文字よりも一回り大きく,右側の「L」の文字を抱えているような印象を与える。このように,上段の文字部分の外観は,デザイン化された特徴的なものということができる。
また,前記イ(イ)(イ)のとおり,上段の文字部分からは,「ジイエルエルシイ」との称呼が生ずる。
(イ)(イ) 他方,下段の文字部分の外観は,前記アのとおり,「Global」「Life」 , ,「Learning」及び「Center」の4語を一般的なアルファベットの書体で表したものである。
そして,下段の「Global Life Learning Center」の語から,「グローバルライフラーニングセンター」という称呼及び「世界的な生涯学習センター」という観念が生じることは,前記イ(ア)(ア)のとおりである。
(ウ)(ウ) 以上によれば,本願商標の外観上,上段の文字部分は,下段の文字部分に比して,明らかにより強い印象を見る者に与え,その注意をより強く引くものということができる。
そして,前記イ(イ)(イ)において前述した下段の文字部分の外観,称呼及び観念を併せ考えれば,上段の文字部分は,取引者,需要者に対し,本願商標の指定商品及び指定役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。
エ 小括 以上に鑑みると,本願商標のうち,上段の文字部分と下段の文字部分を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているものとい 20 うことはできず,本願商標からは,「ジイエルエルシイ」 「グローバルライフラー ,ニングセンター」又は「ジイエルエルシイグローバルライフラーニングセンター」との称呼が生じ,「世界的な生涯学習センター」との観念が生じる。
? 本願商標と本件引用商標との類否について ア 引用商標1について (ア)(ア) 外観,称呼及び観念について 引用商標1は,別紙2引用商標目録1記載のとおりの外観であって,中央付近が弧を描くようにデフォルメされた赤色,緑色及び青色の3本の矢印が時計回りに回転するような円を描く図形と,その下方に配置された「GLC」の欧文字とを組み合わせた結合商標である。
上記図形の外観は,上記の色彩及び形状により,かなり目立つものということができるが,上記図形からは,特定の称呼も観念も生じない。
他方,上記欧文字の外観は,アルファベットの大文字「G」「L」及び「C」が ,等間隔で横一列に並んでいる。これらの欧文字は,いずれも太めの黒い線で表されており,前記のとおり赤色,緑色及び青色の3本の矢印によって構成される上記図形との対象において,際立った印象を与える。これらの欧文字からは,その文字に相応した「ジイエルシイ」との称呼が生じ,特定の観念は生じない。
以上によれば,引用商標1を構成する図形及び欧文字は,これらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているものということはできず,引用商標1からは,「ジイエルシイ」との称呼が生じ,特定の観念は生じない。
(イ)(イ) 本願商標との類否について 前記?のとおり,本願商標からは,「ジイエルエルシイ」 「グローバルライフラ ,ーニングセンター」及び「ジイエルエルシイグローバルライフラーニングセンター」との称呼が生じる。また,「世界的な生涯学習センター」との観念が生じる。
他方,引用商標1からは,欧文字部分から「ジイエルシイ」との称呼が生じ,特 21 定の観念は生じない。
また,本願商標と引用商標1とは,その全体の外観構成において相違しており,本願商標の上段の文字部分と引用商標1の欧文字部分とを比較してみても,本願商標の上段の文字部分は,アルファベットの大文字「G」「L」「L」及び「C」の , ,4文字をデフォルメしたものであるのに対し,引用商標1の欧文字部分は,アルファベットの大文字「G」「L」及び「C」の3文字から成り,外観上,字数及び文 ,字の綴りが異なる。
以上によれば,本願商標と引用商標1は,その外観,称呼及び観念において異なり,類似するものではない。
イ 引用商標2について (ア)(ア) 外観,称呼及び観念について 引用商標2は,別紙2引用商標目録2記載のとおりの外観であって,左側に引用商標1と同一の構成から成る標章と,その右方に配置された「経営承継」の文字とを組み合わせた結合商標である。
「経営承継」の文字は,同じ大きさの4文字の漢字から構成されており,各漢字は,黒い線で表され,その縦横の幅は,上記標章中の「GLC」の部分を構成する各欧文字の約2倍である。上記標章と「経営承継」の文字との間には,同文字の字間よりも明らかに広い間隔が設けられている。
また,「経営承継」の文字からは,「ケイエイショウケイ」との称呼が生じ,企業等の事業の運営を受け継ぐとの観念が生じる。
他方,左側の上記標章からは,「GLC」の欧文字から「ジイエルシイ」との称呼が生じ,特定の観念は生じない。
以上に鑑みれば,引用商標2の左側の上記標章と右側の「経営承継」の文字は,これらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているものということはできず,引用商標2からは,「ジイエルシイ」 「ケイエ ,イショウケイ」及び「ジイエルシイケイエイショウケイ」との称呼が生じ,企業等 22 の事業の運営を受け継ぐとの観念が生じる。
(イ)(イ) 本願商標との類否について 前記?のとおり,本願商標からは,「ジイエルエルシイ」 「グローバルライフラ ,ーニングセンター」及び「ジイエルエルシイグローバルライフラーニングセンター」との称呼が生じる。また,「世界的な生涯学習センター」との観念が生じる。
他方,引用商標2からは,「ジイエルシイ」 「ケイエイショウケイ」及び「ジイ ,エルシイケイエイショウケイ」との称呼が生じ,企業等の事業の運営を受け継ぐとの観念が生じる。
また,本願商標と引用商標2とは,その全体の外観構成において相違しており,本願商標の上段の文字部分と引用商標2を構成する上記標章の欧文字部分とを比較してみても,本願商標の上段の文字部分は,アルファベットの大文字「G」「L」 , ,「L」及び「C」の4文字をデフォルメしたものであるのに対し,上記欧文字部分は,アルファベットの大文字「G」「L」及び「C」の3文字から成り,外観上, ,字数及び文字の綴りが異なる。
以上によれば,本願商標と引用商標2は,その外観,称呼及び観念において異なり,類似するものではない。
ウ 引用商標3について (ア)(ア) 外観,称呼及び観念について 引用商標3は,別紙2引用商標目録3記載のとおり,標準文字のアルファベットの大文字「GLC」の3文字から成る。引用商標3からは,これらの文字に相応した「ジイエルシイ」との称呼が生じ,特定の観念は生じない。
(イ)(イ) 本願商標との類否について 前記?のとおり,本願商標からは,「ジイエルエルシイ」 「グローバルライフラ ,ーニングセンター」及び「ジイエルエルシイグローバルライフラーニングセンター」との称呼が生じる。また,「世界的な生涯学習センター」との観念が生じる。
他方,引用商標3からは,前記のとおり,「ジイエルシイ」との称呼が生じ,特 23 定の観念は生じない。
また,本願商標と引用商標3とは,その全体の外観構成において相違しており,本願商標の上段の文字部分と引用商標3とを比較してみても,本願商標の上段の文字部分は,アルファベットの大文字「G」「L」「L」及び「C」の4文字をデフ , ,ォルメしたものであるのに対し,引用商標3は,アルファベットの大文字「G」,「L」及び「C」の3文字から成り,外観上,字数及び文字の綴りが異なる。
以上によれば,本願商標と引用商標3は,その外観,称呼及び観念において異なり,類似するものではない。
エ 小括 以上のとおり,本願商標は,本件引用商標のいずれとも類似するものとはいえない。
? 被告の主張について ア 被告は,本願上段中央文字は,その外観等から,一見して「L」の欧文字1字を表したものと認識され,「L」と「L」の欧文字2字を表したものとは理解されず,上段の文字部分は「GLC」の欧文字と看取される旨主張する。
しかしながら,本願上段中央文字は,前記?ア(ア)(ア)のとおり,ほぼ同じ太さを有する2本のL字状の線から成り,これらの線は,間隔を空けて平行に配置されており,接するところはなく,1本の線ではなく,2本の線であることが明確に看取できる。
確かに,両線のうち,内側(右側)の線は,L字状を構成する縦線及び横線共に外側(左側)の線よりも短く,外側の線よりも一回り小さいL字状を成しており,両線の各上端部及び各右端部はいずれもそろっているものの,これらは,前記?ウのとおり,左側の「L」の文字が,右側の「L」の文字を抱えているような印象を与えるともいうことができる。また,本願上段中央文字全体の高さ及び幅はいずれも,その左右に位置する「G」及び「C」の各文字の高さ及び幅とほぼ等しいものの,本願上段中央文字は,同じ文字の連続である「LL」の2文字を,前記のとお 24 り一方を他方よりも一回り小さくし,大きい方が小さい方を抱えているような印象を与えるものとして1文字分のスペースに収めたデザインとしたものとみることができる。そして,前記?イのとおり,下段の文字部分が,見る者にあたかも上段の文字部分のルビとして付されたものという印象を与えることに加え,複数の単語から構成される英語の熟語や名称については,その略称として,各単語の頭文字の大文字を並べたものを用いることが多いことに照らし,上段の文字部分は,「GLLC」の欧文字を表したものとして看取される。
なお,被告は,本願上段中央文字と同様のデザインにより,「L」の欧文字1文字を表したものが使用されている実情を立証する証拠として,本願上段中央文字に似た文字が,二重線で表された「L」1文字を意味するものとして使用されている実例に係る乙第5号証から乙第7号証を提出する。
しかしながら,乙第5号証は,上記文字が電気製品等の量販店の看板に使用されているもの,乙第6号証は,上記文字が細穴放電加工機等の機械を製作する会社の社名に用いられているもの,乙第7号証は,上記文字がジムやゴルフ等のスポーツ関連の事業を営む企業の名称として用いられているものであり,いずれも,本願商標の指定商品及び指定役務とは関連のない商品ないし役務の提供に関する実例であるから,これらの証拠は,本願上段中央文字をアルファベットの大文字「L」2文字,すなわち,「L」「L」を意味するものとして認識されるという前記?イの認定を揺るがすものではない。
以上によれば,本願上段中央文字は,「L」の欧文字1文字を表したものと認識され,「L」と「L」の欧文字2文字を表したものとは理解されないとはいい難く,被告の前記主張は,採用できない。
イ 被告は,@本願商標の上段部分と下段部分とは,大きさにおいて顕著な差があり,また,下段部分を構成する各語の頭文字が特に強調されて表されているともいえず,前記上段部分が前記下段部分の略称を表したものと直ちに把握されるとはいい難い,A略称については,省略する対象の語の頭文字を全て採択使用する必要 25 性はないことに鑑みれば,本願商標の下段部分の欧文字が,上段部分の構成の認定に影響を与えることはなく,上段部分から生じる称呼を,自然に生じるものとは異なる称呼に特定するともいえない旨主張する。
しかしながら,前記?イ(イ)(イ)のとおり,本願商標の外観によれば,下段の文字部分は,見る者にあたかも上段の文字部分のルビとして付されたものという印象を与えるということができ,上段の文字部分の構成の認定に影響を与えることがないとはいえない。また,略称については,省略する対象の語の頭文字を全て採択使用する必要性がないとしても,上記頭文字の一部のみを使用することが原則であるということもできない。
以上によれば,被告の前記主張は,採用できない。
ウ また,被告は,特許庁の「特許情報プラットフォーム」(J-PlatPat)において,本願商標を構成する「GLC」の欧文字から生じる「ジイエルシイ」の称呼が検索用のキーワードとされていることを指摘する。
確かに,特許庁の「特許情報プラットフォーム」(J-PlatPat)において本願商標を検索すると,「称呼(参考情報)」の欄には,「ジイエルエルシイ」「ジイエル ,エルシイグローバルライフラーニングセンター」などと共に,「ジイエルシイ」なども記載されている(甲9)。
しかしながら,特許情報プラットフォームの検索結果は,「発明や意匠,標章が特許性や登録性を持つかどうかを直ちに意味するものではありません。」とされていること(乙9)に鑑みると,需要者,取引者が必ずしも同記載のとおり看取,認識するものということはできない。しかも,本願商標の「商標(検索用)」の欄には,「§GLLC\Global Life Learning Center」と記載されている(甲9)。
したがって,被告が指摘する前記の点は,本願商標の上段の文字部分は,アルファベットの大文字「G」「L」「L」及び「C」の4文字から成り,各文字に相応 , ,した「ジイエルエルシイ」との称呼を生ずるものとした前記?イ(イ)(イ)の認定を揺るがすものではない。
26 以上によれば,被告の前記主張は,採用できない。
? 小括 以上のとおり,本願商標は,本件引用商標のいずれとも類似するとはいえないから,商標法4条1項11号に該当するものではない。
2 結論 以上によれば,原告主張の取消事由は理由があるから,本件審決は取消しを免れない。
よって,原告の請求を認容することとし,主文のとおり判決する。
追加
27 (別紙1)本願商標目録商標の構成:指定商品:第16類「印刷物,書籍,定期刊行物,紙製包装用容器,紙類,文房具類」指定役務:第35類「セミナーへの講師のあっせん,生涯学習の全国組織網の運営,社会奉仕団体に対して財政的援助・事業の企画及び管理を行う者の利益を図るために行う経営の指導,広告業,経営の診断又は経営に関する助言,職業のあっせん,広告用具の貸与,求人情報の提供,文書又は磁気テープのファイリング,コンピュータデータベースへの情報編集」第41類「資格付与のための資格試験の実施及び資格の認定・資格の付与,技芸・スポーツ又は知識の教授,文化教室・専門学校・学習塾に関する情報の提供,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,書籍の制作,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,人・企業又は地域間の交流会の企画・運営及び開催,教育・文化・娯楽に関するイベント・講習会・興行の企画・運営又は情報の提供,セミナー・シンポジウムのための施設の提供」以上28 (別紙2)引用商標目録1引用商標1(甲1)商標登録番号:第5579632号商標の構成:出願日:平成24年9月27日設定登録日:平成25年5月2日指定役務:第35類「広告業,企業のリスクマネジメントに関するコンサルティング,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,文書又は磁気テープのファイリング,コンピュータデータベースへの情報編集,広告用具の貸与,求人情報の提供,電子出版物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」第36類「預金の受入れ(債券の発行により代える場合を含む。)及び定期積金の受入れ,資金の貸付け及び手形の割引,内国為替取引,債務の保証及び手形の引受け,有価証券の貸付け,金銭債権の取得及び譲渡,有価証券・貴金属その他の物品の保護預かり,両替,金融先物取引の受託,金銭・有価証券・金銭債権・動産・土地若しくはその定着物又は地上権若しくは土地の賃借権の信託の引受け,債券の募29 集の受託,外国為替取引,信用状に関する業務,信用購入あっせん,有価証券の売買,有価証券指数等先物取引,有価証券オプション取引,外国市場証券先物取引,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券市場における有価証券の売買取引・有価証券指数等先物取引及び有価証券オプション取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,外国有価証券市場における有価証券の売買取引及び外国市場証券先物取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券先渡取引・有価証券店頭指数等先渡取引・有価証券店頭オプション取引若しくは有価証券店頭指数等スワップ取引又はこれらの取引の媒介・取次ぎ若しくは代理,有価証券等精算取次ぎ,有価証券の引受け,有価証券の売出し,有価証券の募集又は売出しの取扱い,株式市況に関する情報の提供,損害保険及び生命保険に関する情報の提供及びコンサルティング,生命保険契約の締結の媒介,生命保険の引受け,損害保険契約の締結の代理,損害保険に係る損害の査定,損害保険の引受け,保険料率の算出,建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供,企業の信用に関する調査,税務相談・税務代理に関する情報の提供」30 2引用商標2(甲2)商標登録番号:第5638892号商標の構成:出願日:平成25年5月21日設定登録日:平成25年12月20日指定役務:第35類「広告業,事業承継に関する指導及び助言,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,文書又は磁気テープのファイリング,コンピュータデータベースへの情報編集,広告用具の貸与,求人情報の提供,ダウンロード可能な映像又は画像の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,録画済み記録媒体の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」31 3引用商標3(甲3)商標登録番号:第5654962号商標の構成:(標準文字)GLC出願日:平成25年6月7日設定登録日:平成26年3月7日指定役務:第41類「人材育成のための知識の教授及びこれに関する情報の提供,管理者に対する教育研修,経営者育成のための教育研修,企業・団体の組織構成員に対する教育研修,その他の技芸・スポーツ又は知識の教授,人材育成に関する研修会の企画・運営または開催,その他のセミナー・シンポジウム・会議・講演会・研修会の企画・運営・開催及びこれらに関する情報の提供,セミナー・教育研修・講座・人材開発のテキストの制作,教育研修用テキスト及び指導マニュアル書の制作,その他の書籍の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。,人材育成に関するイベントの企画・運営又は開催,)その他の興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。」)以上32 別紙3商標目録別件商標商標登録番号:第5683748号商標の構成:出願日:平成26年2月5日設定登録日:平成26年7月4日指定商品:第16類「印刷物,書籍,定期刊行物,紙製包装用容器,紙類,文房具類」指定役務:第35類「セミナーへの講師のあっせん,生涯学習の全国組織網の運営,社会奉仕団体に対して財政的援助・事業の企画及び管理を行う者の利益を図るために行う経営の指導,広告業,経営の診断又は経営に関する助言,職業のあっせん,広告用具の貸与,求人情報の提供,文書又は磁気テープのファイリング,コンピュータデータベースへの情報編集」第41類「資格付与のための資格試験の実施及び資格の認定・資格の付与,技芸・スポーツ又は知識の教授,文化教室・専門学校・学習塾に関する情報の提供,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,書籍の制作,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,人・企業又は地域間の交流会の企画・運営及び開催,教育・文化・娯楽に関するイベント・講33 習会・興行の企画・運営又は情報の提供,セミナー・シンポジウムのための施設の提供」以上34
裁判長裁判官 部眞規子
裁判官 田中芳樹
裁判官 鈴木わかな