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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成26ネ10124 特許権侵害差止等請求控訴事件 判例 特許
平成26ワ25013 特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
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平成27ネ10080 特許権侵害差止等請求控訴事件 判例 特許
平成27ワ12748 特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
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事件 平成 27年 (ネ) 10076号 特許権侵害差止等請求控訴事件

控訴人株式会社日研工作所
同訴訟代理人弁護士 三山峻司 清原直己
同 弁理士 伊藤英彦 竹内直樹
被控訴人津田駒工業株式会社
同訴訟代理人弁護士 黒田健二 笹倉興基 門松慎治
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2015/11/12
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は,原判決別紙被告製品目録記載の装置を製造,販売,販売の申出をしてはならない。
3 被控訴人は,原判決別紙被告製品目録記載の装置を廃棄せよ。
4 被控訴人は,控訴人に対し,金3億8590万円及び内金7570万円に対する平成18年12月1日から,内金6050万円に対する平成19年12月1日から,内金6200万円に対する平成20年12月1日から,内金2370万円に対する平成21年12月1日から,内金3110万円に対する平成22年12月1日から,内金4390万円に対する平成23年12月1日から,内金5530万円に対する平成24年12月1日から,内金3370万円に対する平成25年9月1日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
6 この判決は,仮に執行することができる。
事案の概要
1 訴訟の概要(略称は,特に断らない限り,原判決の略称に従う。) ? 本件は,控訴人が,被控訴人に対し,原判決別紙被告製品目録記載の装置(被告製品)が控訴人の特許権(本件特許権)を侵害するとして,@特許法100条1項,2項に基づき,被告製品の製造等の差止め,廃棄を求めるとともに,A不法行為(民法709条)に基づき,平成17年9月頃から平成25年8月末までの特許法102条2項による損害の賠償の支払を求めた事案である。
? 原判決は,被告製品は本件特許発明技術的範囲に含まれず,被告製品の製造等が本件特許権の侵害に当たるとの控訴人の主張は理由がないとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。
控訴人は,原判決を不服として,控訴を提起した。
2 前提事実 原判決5頁目26行目末尾の後に,行を改めて以下のとおり付加するほかは,原判決の事実及び理由第2の2記載のとおりである。
「ウ 本件特許発明実施例である円テーブル装置の縦断面図(甲4【図1】)及び その増力機構の拡大縦断面図(甲4【図2】)は,別紙1のとおりである。」 3 争点 ? 文言侵害の成否(構成要件D及びE2の充足性の有無) ? 均等侵害の成否 ? 本件特許発明についての無効理由の存否 ? 控訴人の損害
当事者の主張
争点に関する当事者の主張は,後記1のとおり付加訂正し,後記2,3のとおり当審における当事者の主張を付加するほかは,原判決の事実及び理由第3の記載のとおりである。
1 原判決の付加訂正 ? 原判決13頁18行目「入力面ないし出力面である。」を,「第1段用テーパーカム面28が入力面,第2段用テーパーカム面29が出力面である。」と改める。
? 原判決13頁19行目「必須ではない」を, 「必須ではなく,回転軸芯と直角を成す面となる場合も含む」と改める。
? 原判決21頁7行目「有することである。」を,「有することは,立体的に見れば,回転軸芯を中心とした円錐状の形状を呈することになり,したがって,これらの角度を有する面は,テーパー面ということができる。」 ? 原判決21頁11行目「円錐」を「円錐状」と改める。
? 原判決21頁17行目「30°」の前に,「回転軸芯と直角な面に対して,」を付加する。
? 原判決21頁23行目「同様の」の後に,「説明がされている」を付加する。
? 原判決22頁下から10行目「限定」の前に「その意味を」を付加する。
? 原判決22頁下から3行目「第2増力部」を「第2段増力部」と改める。
? 原判決23頁6行目「D」を「E2」と改める。
? 原判決23頁6行目末尾の後に,行を改めて以下の図面を付加する。
図面@ ? 原判決23頁15行目「通知書」の前に, 「平成19年7月27日付け」を付加する。
2 争点?(文言侵害の成否〔構成要件D及びE2の充足性の有無〕)について〔当審における控訴人の主張〕 原判決は,本件特許発明構成要件E2の「テーパーカム面」の意義につき, 「テーパー」と「カム面」とに分けて考え,「テーパーカム面」は,「テーパー」である以上,α3=0°の場合を含まないと解しているが,以下のとおり,この判断は,誤りである。
? 「テーパーカム面」の意義につき,「テーパー」と「カム面」とに分けて考えることについて ア 本件特許請求の範囲請求項1において,「テーパーカム面」は,それ自体が1つの用語として使用されており,「カム面」という語は,カム作用を生じさせる面を意味するものとして使用されているが,「テーパー面」という用語は見られない。「テーパーカム」ではなく,「テーパー」のみを単独で使用する用語は,本件特許請求の範囲及び本件明細書のいずれにも,記載されていない。
以上の点に鑑みると,「テーパーカム面」につき,「テーパー」と「カム面」とに分けて考えること自体が不自然である。
イ 本件特許請求の範囲請求項1の記載によれば,本件特許発明構成要件E2の「可動側クランプ部材(21)の第2段用テーパーカム面(29)」につき,@ボール(26)を介してシリンダ形成部材(31)のテーパー面(40)に対向しているという位置関係及びA対向配置されたシリンダ形成部材(31)のテーパー面(40)と協働してカム作用による第2段の増力を行うという動作が明らかにされている。
すなわち,原判決(13頁25行目から16頁3行目まで)及び後記?のとおり,本件特許発明は,「第2段用テーパーカム面(29)」の傾斜角度であるα2とα3(甲5【0018】)の相対的な関係を円テーブル装置の増力の仕組みとして,ピストン側の面を,押圧力を入力する「第1段用テーパーカム面(28),出力側 」である可動側クランプ部材(21)に形成された面を「第2段用テーパーカム面(29)」と指称し,これらを「シリンダ形成部材(31)のテーパー面(40)」と対向してセットになる,カム作用を生じさせる面とした。この「第1段用テーパーカム面(28) , 」 「第2段用テーパーカム面(29)」及び「シリンダ形成部材(31)のテーパー面(40)」の3つの面を用いた増力機構において, 「テーパーカム面」は,「カム面」に「テーパー」という語を付加して意味を限定したものではなく,テーパー面とカム作用を利用した入力面及び出力面を表現したものである。
以上に鑑みると,本件特許請求の範囲請求項1の記載からは, 「テーパーカム面」について「テーパー」としての性格又は機能を有するものと限定解釈することはできない。
したがって,「テーパーカム面」をもって,「テーパー」と「カム面」のそれぞれの性格と機能を兼有する面と断定するのは,更に不自然な解釈である。
? 本件明細書中,「テーパーカム面29は,回転軸芯と直角な面に対して,30°以下の緩やかな傾斜角度α2,α3となっており」 【0018】 ( )の意義について 本件明細書【0018】には,「テーパーカム面」について,「テーパー」自体の 語義を説明する記載はなく,回転軸芯と直角な面に対して,「30°以下」という幅をもった「傾斜角度」を成す旨が記載されている。
「傾斜角度」という用語は,工作機器等の分野において一般的に使用されるものであるから,その意義については,本件特許出願時における技術常識又は当業者の一般的な理解を踏まえて解釈すべきであるところ,本件特許発明の当業者である円テーブル装置等の工作機器を取り扱う業者は,被控訴人も含め,「傾斜角度」につき,0°を含むものとして理解しており(甲24,甲26〜甲34),また,本件特許発明と共通の「国際特許分類サブクラスB23Q」が付与された本件特許出願前の特許文献においても,「傾斜角度」という用語が0°を含むものとして記載されている(甲35〜甲41) 加えて, 。 工作機器の分野に限らず, 「0°の傾斜角度」という概念は普通に用いられている(甲42〜甲44)。さらに,原審における控訴人の主張(原判決16頁4行目から14行目まで)のとおり,被告特許の特許公報(甲18)の記載によっても,本件特許発明構成要件E2の「第2段用テーパーカム面(29)」は,回転軸芯に直角な面を含むと解釈するのが,技術常識に照らしても普通の解釈であるということができる。
以上によれば,本件明細書【0018】 「緩やかな傾斜角度」 「α3=0°」 の は,の場合も含むというべきである。
? 本件特許発明構成要件E2の「第2段用テーパーカム面(29)」につき,「α3=0°」の場合のみを除くことについて 原判決は,「テーパーカム面」という用語から「テーパー」の語のみを分離,抽出してその辞書的な意義に拘泥し,傾斜角度の領域から「α3=0°」の場合のみを除いており,この解釈は不自然である。
ア 甲第45号証記載の傾斜角度α3と増力比の関係を示したグラフによれば,α3が1°,0.5°,0.25°,0.1°,0.01°,0.001°の各場合とα3が0°の場合とは,技術的に等価である。すなわち,増力比は,小刻みに連続して変化しており,α3が,1°,0.5°,0.25°の各場合は,増力比の大きさ においてほとんど差がない。
このような傾斜角度の領域から「α3=0°」の場合のみを除くことは,不自然である。
イ そもそも「テーパー」は, 「先細り」を意味するところ,対向する二面とも勾配がついている場合のみならず,うち一面が0°である場合も他面に勾配がついていれば, 「先細り」になるから,第2段用テーパーカム面(29)の傾斜角度が0°であっても,対向するシリンダ形成部材(31)のテーパー面(40)に勾配がついていれば,「テーパー」に当たる。
? 図面Aのとおり,本件特許発明の第1段増力部における第1段の増力は,流体圧ピストン(25)とシリンダ形成部材(31)の2つの面の関係で行われ,第2段増力部における第2段の増力は,シリンダ形成部材(31)と可動側クランプ部材(21)の2つの関係で行われるという構成である。
本件特許発明の増力機構に関する被控訴人の主張は,訂正前の本件明細書等に基づく誤ったものである。
図面A 第1段の増力 第2段の増力 ? 被控訴人の主張に対する反論 ア 本件特許発明における増力の構成 本件特許発明における増力の構成は,まず,流体圧ピストン(25)の押圧力F1がF2に増力され,次に,径方向外方に向けられたF2が,ボール(26)からシリンダ形成部材(31)に伝達される過程において,図面Bのとおり,F2からF3に増力される。この反作用として,シリンダ形成部材(31)のテーパー面(40)からボール(26)を介して可動側クランプ部材(21)に対し,F3と同等の力が生じる。したがって,F2からF3への増力において問題となる角度はα2であり,α3ではない。α3が0°の場合,F1からF3への増力は最大となり,クランプ側(矢印A1側)への押圧力の総和は,F1+F3となる。この点に鑑みると,α3が0°の場合,P2において横方向への押圧力F2を受け取ることができないため,第2段増力部の意義を充たすことができない旨の被控訴人の主張は,誤りである。なお,被控訴人の主張は,訂正前の本件明細書等に基づくものであるところ,本件においては,訂正後の本件特許発明技術的範囲への属否が問題となっているのであるから,上記主張は,無意味である。
図面B イ α3が0°の場合を含まないという解釈が不自然であること 本件特許発明における増力に関わるα1ないしα3は可変数であるが,構成要件E2の「第2段用テーパーカム面(29)」が「テーパー」状であるか否かに影響するのは,α3のみである。
図面Cの増力F3’は,α1及びα2により決定され,α3=0°のとき,増力率は100%である。
α3=0°の場合 F3’=F1+F1×tan(90°-α1)×tan(90°-α2) =F1×(1+tan(90°-α1)×tan(90°-α2)) α3≧0°の場合 F3”=F1×(1+tan(90°-α1)×tan(90°-α2))×tanα2/(tanα2+tanα3) これらの数式によれば,α1及びα2によって増力F3’が,α3によって増力率が定められ,最終的に増力比(F3”/F1)が決定されるということができる。
したがって,α3が小さくなれば,すなわち,tanα3が小さくなれば,増力比は大きくなり,α3が大きくなれば,すなわち,tanα3が大きくなれば,増力比は小さくなる。
α3の角度の変化に対して,増力比は連続的に変化しており,α3が少しでも角度を有すると,第2段用テーパーカム面(29)は,回転軸芯に対して垂直にはならないものの,その場合の増力比は,α3が0°の場合とほとんど差がない。すなわち,α3が0°のときに増力比は最大となるところ,α3が0.1°, 01°, 0.0.001°のときの増力比も,α3が0°のときの増力比とほとんど差がない。
また,α3が1°のときでさえも,α3が0°のときと比べて,外観的に差異がなく,技術的にも等価である。
以上によれば,α3が0°の場合の1点のみを排除する解釈は,自然法則を利用した技術的思想を示す特許発明の解釈として,不自然である。
図面C ウ 傾斜角度の意義 本件明細書の【0018】には,α3について「傾斜角度」と記載されているところ,当業者は,通常,0°の場合を含む趣旨で「傾斜角度」という語を使用している。
したがって,傾斜角度であるα3は0°の場合を含むと解すること,すなわち,第2段用テーパーカム面(29)は,回転軸芯に直角な面を含むと解することは,技術常識にかなうものということができる。
出願経過に関して 被控訴人は,平成17年7月14日付け手続補正書(方式)(乙15)において,「構成要件Eのうち,クランプ機構の構成部材である可動側クランプ部材の端面を,増力機構のカム面として利用する構成は具備していない。 と記載されていることを 」もって,控訴人が可動側クランプ部材に形成されたカム面をテーパー状のものに限定した旨主張するが,上記記載は,その文脈等によれば,上記カム面を円テーブル装置のクランプ機構のカム面として利用する構成が示されていないということを意味するにすぎず,被控訴人が主張するような限定をする趣旨ではない。
〔当審における被控訴人の主張〕 原判決が,構成要件E2の「テーパーカム面(29)」は,それ自体が,「テーパ ー」としての性格又は機能と「カム」としての性格又は機能を有すると解し, 「テーパー」は,回転軸芯あるいは回転軸芯と直角な面を基準として傾斜角度(0°を含まない。)を有すると解したことに,誤りはない。
? 「テーパーカム面」の意義につき,「テーパー」と「カム面」とに分けて考えることについて 甲第13号証及び甲第14号証によれば,「テーパー」及び「カム」という技術用語が存在してそれぞれの意味を有しており,かつ,通常そのような意味で用いられているものである以上,「テーパーカム面」という用語について「テーパー」及び「カム」の性格又は機能を有する旨解釈することに,何ら不自然な点はない。
本件特許発明構成要件C5及び本件明細書(甲5【0007】)において,面28,29及び40は「カム面」であることが明記されており,そのうち面28及び面29は「テーパーカム面」とも呼ばれていることに鑑みれば,「テーパーカム面」の意義を「テーパー」の性格又は機能を有する「カム面」ないし「面」と解することは,自然な解釈である。
本件特許発明の増力機構のメカニズムは,本件明細書(甲4【0022】【00 ,23】)によれば,図面Dのとおりであるところ,控訴人の主張に係る増力の仕組みは,上記メカニズムとは異なるものである。
図面D ? 本件明細書中,「テーパーカム面29は,回転軸芯と直角な面に対して,30°以下の緩やかな傾斜角度α2,α3となっており」 【0018】 ( )の意義について ア 本件特許請求の範囲請求項1に記載された「テーパーカム面」という用語の意義につき,同語の普通の意味が,回転軸芯と直角ではない,すなわち,回転軸芯と直角な面に対する傾斜角度が0°ではないというものであるならば,別段の定義や本件明細書中に矛盾する記載がない限り,前記意味に基づく解釈が採用されるべきである。
この点につき,原判決が認定するとおり,@「テーパーカム面」は,「テーパー」の性格又は機能を有すること,A「テーパー」という用語の普通の意味(定義)は,「円錐状に直径が次第に減少している状態。また,その勾配」であることを前提とすれば,「テーパーカム面」という用語の普通の意味は,回転軸芯と直角ではない,すなわち,前記傾斜角度が0°の場合を含まないというものである。
本件明細書【0018】において,α2及びα3について「傾斜角度」,α1について「テーパー角」「傾斜角」という記載があることは,前述した「テーパー」と ,いう用語の普通の意味とは,何ら矛盾せず,その他に別段の定義付けないし解釈をする根拠もない。
したがって,「テーパーカム面」の意義は,前記普通の意味に基づいて解釈されるべきであり,原判決による同旨の解釈に誤りはない。
イ 控訴人において, 「傾斜角度」を0°を含むものと解釈する根拠として提出している文献には,本件特許発明と同様の,円テーブル装置の増力機構におけるクランプ部材の形状としての「傾斜角度」に関するものはなく,したがって,上記文献は,本件特許発明構成要件の解釈に関する技術常識を根拠付けるものではない。
しかも,同文献のうち,甲第40号証は, 「テーパー」が回転軸芯と直角を成す場合,すなわち,回転軸芯と直角な面に対する傾斜角度が0°の場合を含まないという原判決の認定に整合するものということができる。
さらに,「傾斜角度」という用語を,0°の場合を含まないという趣旨で用いる文献も数多く存在するところである。
ウ 控訴人は,原審において,本件明細書【0018】の記載を根拠として,α1及びα2につき,「傾斜角度」という用語を,0°の場合を含まないという趣旨で用いており,また,平成19年7月27日付けの被控訴人宛て通知書(乙6)において,「テーパーカム面」は,「テーパー」の普通の意味と同義,すなわち,0°ではない「傾斜」を有するものであるという解釈を明らかにしていた。
? 本件特許発明構成要件E2の「第2段用テーパーカム面(29)」につき,「α3=0°」の場合のみを除くことについて 控訴人の主張について争う。原判決の認定に不自然な点はない。
? 控訴人は,平成27年7月29日付け被控訴人準備書面?の受領から1か月以上もの期間を空け,しかも,同年9月10日の当審第1回口頭弁論期日の5営業日前に同月3日付け控訴人(第一審原告)第2準備書面を提出して,前記〔当審における控訴人の主張〕?の主張をしており,同主張は,時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきである。
前記?の増力機構のメカニズムは,訂正の前後で変わったところはなく,少なくとも,訂正前の本件特許発明構成要件を充足していなかった被告製品が,訂正後の本件特許発明構成要件を充足することにはならないはずである。
3 争点?(均等侵害の成否)について〔当審における控訴人の主張〕 仮に,本件特許発明構成要件E2の「第2段用テーパーカム面(29)」は, 「テーパー」である以上,その傾斜角度は「α3>0°」であって, 「α3=0°」を含まないのに対し,被告製品の構成中,本件特許発明の「第2段用テーパーカム面(29)」に相当する面である「クランプリング8の鋼球10と当接する面」は,回転軸芯と直角,すなわち, 「α3=0°」である点において本件特許発明の「第2段用テーパーカム面(29)」と相違しており,これに文言上は含まれないとしても,本件 においては,以下のとおり均等侵害が成立する。
? 均等侵害の第1要件(非本質的部分) 特許発明の本質的部分とは,特許請求の範囲に記載された特許発明の構成のうちで,当該特許発明特有の課題解決手段を基礎付ける特徴的な部分,言い換えれば,同部分が他の構成に置き換えられるならば,全体として当該特許発明技術的思想とは別個のものと評価される部分をいう。
本件特許発明特有の課題解決手段を基礎付ける特徴的な部分は,円テーブル装置内に2段式増力機構を備え,さらに,リターンばね(30)によりブレーキディスク(15)と可動側クランプ部材(21)との隙間を確実に確保する,すなわち,確実なアンクランプを実現するように構成した点にあり(甲5【0002】〜【0007】,これが,本件特許発明の本質的部分である。
) 前記2段式増力機構の本質は,流体圧ピストン(25),可動側クランプ部材(21)及びシリンダ形成部材(31)の3つのカム面の間でボール(26)を介して力を伝達することによって,2段階にわたって増力作用を行うことにある(甲5【0023】。その増力の仕組みは,前記2〔当審における控訴人の主張〕?のとおり )であり,F2からF3への増力において問題となる角度はα2であり,α3ではない。したがって,本件特許発明構成要件E2の「第2段用テーパーカム面(29)」と被告製品の構成e2の「クランプリング8の鋼球10と当接する面」との間の,傾斜角度に関する前記相違は,前記2段式増力機構の本質とは関係ないものである。
以上によれば,前記相違は,本件特許発明の本質的部分に係るものではない。
? 均等侵害の第2要件(置換可能性) 本件特許発明は,2段式増力機構を備えることにより,低い作動圧下において高いクランプ力を実現する礎を築き,リターンばね(30)を備えることで確実なアンクランプを可能とし,高いクランプ力を実現しており,その効果は,強固かつ確実に回転軸を所定の回転角度で固定する,ワーク等の保持機能の向上とともに高圧用のシール機構及びシール部材が不要になることにより,部品コストの低減及びメ ンテナンスの容易化が実現されるというものである(甲5【0027】。
) 前記?のとおり,本件特許発明構成要件E2の「第2段用テーパーカム面(29)」と被告製品の構成e2の「クランプリング8の鋼球10と当接する面」との間の,傾斜角度に関する前記相違は,前記2段式増力機構の本質とは関係ないものである。そして,前記2段式増力機構における増力の仕組みは,前記2〔当審における控訴人の主張〕?のとおりであり, 「α3=0°」の場合に,F1からF3への増力は最大となるから,「第2段用テーパーカム面(29)」の「30°以下の緩やかな傾斜角度」,すなわち,「0°<α3≦30°」を「α3=0°」に置き換えても,増力を実現でき,かつ,低い作動圧下における高いクランプ力の実現,部品コストの低減,メンテナンスの容易化,駆動機構の潤滑性能の向上,コンパクト化,回転位置決め精度及び耐久性の向上という本件特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏する。
? 均等侵害の第3要件(置換容易性) 前記?の置換は, 「30°以下の緩やかな傾斜角度」を「α3=0°」とすることにすぎず,当業者であれば,被告製品の製造時点において容易に想到できたといえる。
? 均等侵害の第4要件(容易推考性の不存在) 控訴人が本件特許発明の特許出願をした時点においては,被告製品のような構成を有する円テーブルは存在していなかったことから,被告製品は,本件特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから上記出願時に容易に推考できたものとはいえない。
? 均等侵害の第5要件(意識的除外等の不存在) 本件特許発明出願経過に照らしても,被告製品が本件特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情はない。
〔当審における被控訴人の主張〕 争う。
? 時機に後れた攻撃防御方法について そもそも,控訴人は,本件の訴えを提起した平成26年1月6日から原審の口頭弁論が終結した平成27年1月30日までの間,弁論準備手続において,平成26年10月31日付け原告第4準備書面をもって充足論に関する主張を尽くすことを被控訴人との間で確認し,さらに,その後に提出した原告第5準備書面において新たな主張を追加したなどの経緯がありながら,均等侵害の主張をせず,控訴審において新たに同主張をしてきた。原審の弁論準備手続終結までに同主張を提出できなかった理由についての説明もないことにも鑑みると,控訴人には,民訴法157条1項の「故意又は重大な過失」が認められ,また,今後,均等侵害についての審理が行われるのであれば,上記主張により訴訟の完結を遅延させることになる。
以上によれば,控訴人による均等侵害の主張は,時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきである。
? 均等侵害の要件について 本件においては,少なくとも均等侵害の第1要件が充たされていないことは明らかであり,また,第4要件及び第5要件も充たされておらず,したがって,均等侵害は成立しない。
均等侵害の第1要件 本件特許発明における2段式増力機構及びその2段階目である構成要件E2の「可動側クランプ部材(21)の第2段用テーパーカム面(29)のカム作用による第2段増力部」 明らかに本件特許発明の本質的事項ということができ, は, 他方,被告製品の構成e2の「クランプリング8の鋼球10と当接する面」は,「α3=0°」であるから,「テーパー」ではなく,したがって,本件特許発明の本質的事項を欠く。
均等侵害の第4要件 本件特許発明の特許出願当時,被告製品と同様に,本件特許発明構成要件E2の「可動側クランプ部材(21)」に相当する部材が「テーパー」ではないものは, 公知技術であった。
均等侵害の第5要件 原審における被控訴人の主張(原判決23頁7行目から23行目まで)のとおり,控訴人は,本件特許発明の特許出願手続において,本件特許発明構成要件E2の「可動側クランプ部材(21)の第2段用テーパーカム面(29)」を, 「テーパー」を有するもの,すなわち,「α3>0°」のものに限定し,それ以外の構成を意識的に除外していた。
当裁判所の判断
1 本件特許発明について ? 本件特許発明の特許請求の範囲は,以下のとおりである(なお,文中の「/」は,原文の改行箇所を示す。。
)【請求項1】回転軸(5)の軸方向一端にワーク取付部を備え,駆動機構により回転軸(5)を回転させ,クランプ機構により所定回転角度で回転軸を固定する円テーブル装置において,/前記駆動機構は,回転軸(5)に設けたウォームホイール(11)と該ウォームホイール(11)に噛み合うウォーム軸(12)により構成されると共に,ウォーム軸(12)とウォームホイール(11)はオイルバス内に収納され,/前記クランプ機構は,前記ウォームホイール(11)に固着されたブレーキディスク(15)と,該ブレーキディスク(15)を軸方向の両側から解除可能に挟圧する固定側クランプ部材(20)及び可動側クランプ部材(21)と,可動側クランプ部材(21)を軸方向の固定側クランプ部材(20)側に加圧する流体圧ピストン(25)と,前記流体圧ピストン(25)を軸方向移動可能に嵌合させているシリンダ形成部材(31)と,該流体圧ピストン(25)と前記可動側クランプ部材(21)と前記シリンダ形成部材(31)との間に介在すると共に軸方向及び径方向に移動可能なボール(26)とカム面(28,29,40)よりなる増力機構とを,備え,/前記可動側クランプ部材(21)は,リターンばね(30)により,軸方向のアンクランプ側に付勢され,/前記増力機構は,ボール(2 6)を介してシリンダ形成部材(31)のテーパー面(40)に対向している流体圧ピストン(25)の第1段用テーパーカム面(28)のカム作用による第1段増力部と,ボール(26)を介してシリンダ形成部材(31)のテーパー面(40)に対向している可動側クランプ部材(21)の第2段用テーパーカム面(29)のカム作用による第2段増力部を有することを特徴とする円テーブル装置。
【請求項2】前記流体圧ピストンは,回転軸を取り囲む環状に形成されている請求項1記載の円テーブル装置。
? 本件明細書(甲4,甲5)の発明の詳細な説明には,おおむね,次の記載がある(下記記載中に引用する図面については,別紙1参照。。
) ア 技術分野 本件特許発明は,割り出し装置等各種円テーブル装置に関し,特に,回転軸を所定の回転角度で正確に停止保持するためのクランプ機構を有する円テーブル装置に関するものである(【0001】。
) イ 従来技術 この種のクランプ機構は,@回転軸に一体的に設けられたブレーキディスク,Aブレーキディスクを挟圧するクランプ部材及びBクランプ部材を加圧するための油圧ピストンを備えており,油圧ピストンで直接クランプ部材を加圧することによってクランプ部材間でブレーキディスクを挟圧し,回転軸を所定の回転角度で停止保持するという仕組みである。
円テーブル装置に保持されるワークは,フライス盤等の各種工作機械による切削又は研削作業に供されるので,工具からの加圧又は振動等に耐えられるようにワークをテーブル面に固定することが要求されるとともに,回転軸を停止保持するクランプ機構についても,上記作業時の加圧又は振動に対して,確実に所定の回転角度の位置を保つことのできるクランプ力が要求される。
そのために,通常は,上記のとおり油圧ピストンを使用し,高い作動圧(油圧)でクランプ部材を加圧している(【0002】〜【0004】。
) ウ 発明が解決しようとする課題 しかしながら,上記のように高い作動圧の油圧ピストンを備えた構造では,油漏れ対策のために高圧用のシール機構及びシール部材が必要となり,部品コストが掛かり,また,メンテナンスにも手間が掛かる(【0005】。
) エ 発明の目的 そこで,本件特許発明は,円テーブル装置において,空気圧のような低圧で使用する流体圧ピストンでも十分に回転軸をクランプすることができ,部品コスト及びメンテナンスコストを節約できるクランプ機構の提供を目的としたものである【0 (006】。
) オ 課題を解決するための手段 (ア) 特許請求の範囲請求項1に係る本件特許発明 特許請求の範囲請求項1に係る本件特許発明は,回転軸(5)の軸方向一端にワーク取付部を備え,駆動機構により回転軸(5)を回転させ,クランプ機構により所定の回転角度で回転軸を固定する円テーブル装置である。
前記駆動機構は,回転軸(5)に設けたウォームホイール(11)とこれに噛み合うウォーム軸(12)により構成され,これらのウォームホイール(11)及びウォーム軸(12)は,オイルバス内に収納されている。
前記クランプ機構は,@ウォームホイール(11)に固着されたブレーキディスク(15),Aブレーキディスク(15)を軸方向の両側から解除可能に挟圧する固定側クランプ部材(20)及び可動側クランプ部材(21),B可動側クランプ部材(21)を軸方向の固定側クランプ部材(20)側に加圧する流体圧ピストン(25)並びにC増力機構を備えている。
前記増力機構は,@流体圧ピストン(25)を軸方向移動可能に嵌合させているシリンダ形成部材(31),A流体圧ピストン(25),可動側クランプ部材(21)及びシリンダ形成部材(31)の間に介在し,軸方向及び径方向に移動可能なボール(26)並びにBカム面(28,29,40)から構成されている。
特許請求の範囲請求項1に係る本件特許発明は,@可動側クランプ部材(21)が,リターンばね(30)により,軸方向のアンクランプ側に付勢されること,A前記増力機構が,ボール(26)を介してシリンダ形成部材(31)のテーパー面(40)に対向している流体圧ピストン(25)の第1段用テーパーカム面(28)のカム作用による第1段増力部と,ボール(26)を介してシリンダ形成部材(31)のテーパー面(40)に対向している可動側クランプ部材(21)の第2段用テーパーカム面(29)のカム作用による第2段増力部を有することを特徴としている(【0007】【図1】【図2】。
, , ) (イ) 特許請求の範囲請求項2に係る本件特許発明は,特許請求の範囲請求項1に係る本件特許発明の円テーブル装置において,流体圧ピストンを,回転軸を取り囲む環状に形成したものである(【0008】。
) カ 発明の実施の形態 (ア) 装置本体1内には,回転軸5が回転自在に支持されている。回転軸5の軸方向の一端は,装置から外方へ突出しており,その突出端にはワーク取付部としてテーブル面7が形成されている(【0011】【図1】。
, ) (イ) 駆動機構 駆動機構は,オイルバス内に収納されたウォームホイール11及びウォーム軸12によって構成される。ウォームホイール11は,ボルト10により回転軸5に固着されており,駆動用ウォーム軸12に噛み合う。駆動用ウォーム軸12は,電動式回転アクチュエータ等に連結している(【0012】【図1】。
, ) (ウ) クランプ機構 クランプ機構は,回転軸5を所定の回転位置で停止保持するものであり,@回転軸5と一体に回転するブレーキディスク15,Aブレーキディスク15を軸方向両側から挟圧する一対の固定側クランプ部材20及び可動側クランプ部材21,B可動側のクランプ部材21を軸方向に加圧(押圧)する空圧ピストン25並びにCボール26及びカム面28,29を利用した増力機構等から構成されている。
ブレーキディスク15は,ウォームホイール11に固着されている。固定側クランプ部材20は,装置本体1と一体に形成されて軸方向移動不能となっており,可動側クランプ部材21は,装置本体1の内周面に軸方向移動可能に嵌合している。
リターンばね30が,これらの両クランプ部材の間に縮設されており,可動側クランプ部材21をアンクランプ側(矢印A2側)に付勢している。
可動側クランプ部材21よりも矢印A2側には,シリンダ形成部材31によってピストン室(シリンダ)が形成されており,その室内に,空圧ピストン25が軸方向移動可能に嵌合している。また,ピストン室内には,空圧ピストン25をクランプ側(矢印A1側)に移動させるためのクランプ用空気室32と,空圧ピストン25をアンクランプ側(矢印A2側)に移動させるためのアンクランプ用空気室33が形成されている(【0013】〜【0015】【図1】。
, ) (エ) クランプ機構を構成する増力機構 増力機構は,@ボール26を介してシリンダ形成部材31のテーパー面40に対向している流体圧ピストン25の第1段用テーパーカム面28のカム作用による第1段増力部と,Aボール26を介してシリンダ形成部材31のテーパー面40に対向している可動側クランプ部材21の第2段用テーパーカム面29のカム作用による第2段増力部とを有しており,2段構えで増力するようになっている。
シリンダ形成部材31の矢印A1側の端面には,径方向の外方に行くに従い矢印A1側に来るテーパー面40が形成されており,複数のボール26がテーパー面40の全周にわたって配置されている。ボール26の回転軸芯側の部分P1には空圧ピストン25のテーパーカム面28が当接し,ボール26の矢印A1側の部分P2には可動側クランプ部材21のテーパーカム面29が当接している。
シリンダ形成部材31のテーパー面40及び可動側クランプ部材21のテーパーカム面29は,回転軸芯と直角な面に対して,30°以下の緩やかな傾斜角度α2,α3となっており,また,空圧ピストン25のテーパーカム面28のテーパー角α1も,30°以下の緩やかな傾斜角となっている(【0016】〜【0018】【図 , 1】【図2】。
, ) キ 作用 (ア) 駆動 駆動用ウォーム軸12を回転させると,ウォームホイール11を介して回転軸5が回転し,これによって,テーブル面7上のワークの回転角度が変更される(【0019】【図1】。
, ) (イ) クランプ ピストン室内のクランプ用空気室32に空気を圧入するとともにアンクランプ用空気室33から空気を排出することにより,空圧ピストン25をクランプ側(矢印A1方向)に移動させる。
空圧ピストン25の上記移動により,シリンダ形成部材31のテーパー面40に当接しているボール26は,第1段用テーパーカム面28に押され,シリンダ形成部材31のテーパー面40に沿って,径方向の外方及び矢印A1方向に移動する。
これに伴って,可動側クランプ部材21が矢印A1方向に移動し,ブレーキディスク15を固定側クランプ部材20との間で挟圧する(【0020】【0021】【図 , ,1】【図2】。
, ) (ウ) クランプ時の増力 空圧ピストン25から可動側クランプ部材21へ動力を伝達する過程において,まず,第1段用テーパーカム面28とボール26との当接部P1において, (空 F1圧ピストン25の矢印A1方向の押圧力)が,ボール26を介してシリンダ形成部材31のテーパー面40に対向している第1段用テーパーカム面28のカム作用により,F2(径方向の外方に向く力)に増力されてボール26に伝達される(第1段の増力)。
次に,ボール26と可動側クランプ部材21との当接部P2において,F2が,ボール26を介してシリンダ形成部材31のテーパー面40に対向している第2段用テーパーカム面29のカム作用により,F3(矢印A1方向の押圧力)に増力さ れて可動側クランプ部材21に伝達される(第2段の増力)。
そして,可動側クランプ部材21は,F3により,ブレーキディスク15を固定側クランプ部材20との間で挟圧して保持する【0022】【0024】 図2】。
( 〜 【 , ) (エ) アンクランプ アンクランプ用空気室33に空気を圧入するとともにクランプ用空気室32から空気を排出することにより,空圧ピストン25を矢印A2方向に移動させ,両クランプ部材によるクランプを解除する。そのとき,可動側クランプ部材21は,リターンばね30により矢印A2方向に押され,ボール25(判決注:26の誤記と思料される。 は回転軸芯側へ戻り, ) 第1段用テーパーカム面28に当接した状態を保つ(【0025】【図1】【図2】。
, , ) ク 発明の効果(増力機構に関するもの) 流体圧ピストン,シリンダ形成部材及び可動側クランプ部材の間に,軸方向及び径方向に移動可能なボールとカム面から成る増力機構を介在させているので,低い作動圧でも,回転軸を強固かつ確実に所定の回転角度で固定することができ,ワーク等の保持機能が向上するとともに,作動圧の低い空圧ピストンの利用が可能になることから,高圧用のシール機構及びシール部材が不要になり,部品コストの低減及びメンテナンスの容易化も達成できる。
増力機構が,@ボールを介してシリンダ形成部材のテーパー面に対向している流体圧ピストンの第1段用テーパーカム面のカム作用による第1段増力部と,Aボールを介してシリンダ形成部材のテーパー面に対向している可動側クランプ部材の第2段用テーパーカム面のカム作用による第2段増力部を有していることから,増力機構のコンパクト性を維持しながらも,回転軸の保持力が一層向上する【0027】 (〜【0029】。
) ? 前記?によれば,本件明細書には,本件特許発明に関し,以下のとおり開示されていることが認められる。
本件特許発明は,回転軸を所定の回転角度で正確に停止保持するためのクランプ 機構を有する円テーブル装置に関するものである。
円テーブル装置に保持されるワークは,各種工作機械による切削又は研削作業に供されるので,クランプ機構には,作業時における工具からの加圧又は振動に対して,確実に所定の回転角度の位置を保つことのできるクランプ力が要求される。
そのために,通常は,油圧ピストンを使用して高い作動圧(油圧)でクランプ部材を加圧するが,油圧ピストンの使用については,油漏れ対策のために高圧用のシール機構及びシール部材が必要となり,部品コストが掛かり,また,メンテナンスにも手間が掛かるという課題があった。
そこで,本件特許発明は,前記課題を解決するために,円テーブル装置において,空気圧のような低圧で使用する流体圧ピストンでも十分に回転軸をクランプすることができるクランプ機構の提供を目的とした。
本件特許発明は,回転軸(5)の軸方向一端にワーク取付部(テーブル面)を備え,駆動機構により回転軸(5)を回転させ,クランプ機構により回転軸を所定の回転角度で固定する円テーブル装置に係るものであるが,同クランプ機構が,@ウォームホイール(11)に固着されたブレーキディスク(15),Aブレーキディスク(15)を軸方向の両側から解除可能に挟圧する固定側クランプ部材(20)及び可動側クランプ部材(21)並びにB可動側クランプ部材(21)を軸方向の固定側クランプ部材(20)側に加圧する流体圧ピストン(25)に加え,C増力機構を備えている点に特徴がある。
前記増力機構は,第1段増力部及び第2段増力部を備えている。すなわち,クランプの際は,流体圧ピストン(25)をクランプ方向に移動させ,これによって,最終的に可動側クランプ部材(21)をクランプ方向に移動させて,ブレーキディスク(15)を固定側クランプ部材(20)との間で挟圧させるところ,流体圧ピストン(25)から可動側クランプ部材(21)へ動力を伝達する過程において,まず,第1段の増力として,流体圧ピストン(25)の第1段用テーパーカム面(28)とボール(26)との当接部P1において,F1(流体圧ピストン(25)の クランプ方向の押圧力)が,ボール(26)を介してシリンダ形成部材(31)のテーパー面(40)に対向している第1段用テーパーカム面(28)のカム作用により,F2(径方向の外方に向く力)に増力されてボール(26)に伝達される。
次に,第2段の増力として,ボール(26)と可動側クランプ部材(21)との当接部P2において,F2が,ボール(26)を介してシリンダ形成部材(31)のテーパー面40に対向している可動側クランプ部材(21)の第2段用テーパーカム面(29)のカム作用により,F3(クランプ方向の押圧力)に増力されて可動側クランプ部材(21)に伝達される。
このような増力機構を備えていることにより,低い作動圧でも,回転軸を強固かつ確実に所定の回転角度で固定することができ,作動圧の低い空圧ピストンの利用が可能になることから,高圧用のシール機構及びシール部材が不要になり,部品コストの低減及びメンテナンスの容易化も達成でき,本件特許発明の課題を解決することができる。
2 争点?(文言侵害の成否〔構成要件D及びE2の充足性の有無〕)について ? 被告製品の構成について 証拠(甲8,甲15〜甲17)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる(別紙2の図面参照。。
) ア 全体の構成 被告製品は,クランプ機構を有する円テーブル装置であり,クランプピストン9の回転軸芯方向力を機械的な増力機構で増力して,フレーム7とクランプリング8でクランプディスク6を挟圧し,円テーブル装置の回転軸を停止保持する装置である。その増力機構は,クランプピストン9,クランプシリンダ12,クランプリング8及びこれらの間に介在する鋼球10により構成されている。なお,クランプリング8が鋼球10と当接する面は,回転軸芯に対して直角を成している。
被告製品には,クランプリング8とクランプシリンダ12との間に,円環状の平板状の金属製ディスク(2枚重ね)である部材11が設置されており,部材11は, クランプリング8の軸方向下面部及びクランプシリンダ12の軸方向上面部に,ネジ通し穴を通じて交互にネジ留めされている。
イ クランプ クランプ時には,クランプピストン9が軸方向に前進し,鋼球10の動きにより,クランプシリンダ12に対向するクランプリング8が回転軸芯方向の正面部に前進して,フレーム7との間で主軸と一体的に回転するクランプディスク6を挟圧し,その回転を停止する。
このとき,前進するクランプリング8と動かないクランプシリンダ12との間に隙間ができるところ,部材11は,前記アのとおりクランプリング8及びクランプシリンダ12にネジ留めされていることから,クランプリング8にネジ留めされている部分は,クランプリング8の前進に伴って軸方向に引っ張られ,他方,クランプシリンダ12にネジ留めされている部分は動かないので,全体として交互に引っ張られて前記隙間に広がることになる。このような状態において,部材11には,金属の弾性により,元の平板な状態に戻ろうとする復元力を生じる。
ウ アンクランプ クランプピストン9が後退し,それに伴って鋼球10も後退する。鋼球10による加圧がなくなると,クランプリング8は,前記イの部材11の復元力によって回転軸芯方向の背面部に後退し,クランプディスク6が挟圧から解放される。
? 被告製品の構成と本件特許発明構成要件との対応関係について 前記1及び2?の事実によれば,被告製品のクランプディスク6,フレーム7,クランプリング8,クランプピストン9,鋼球10及びクランプシリンダ12は,それぞれ,本件特許発明構成要件中,ブレーキディスク(15),固定側クランプ部材(20) 可動側クランプ部材 , (21) 流体圧ピストン , (25) ボール , (26)及びシリンダ形成部材(31)に相当するものと認められる。
? 構成要件Dの充足性について ア 構成要件Dは,「前記可動側クランプ部材(21)は,リターンばね(30) により,軸方向のアンクランプ側に付勢され,」というものである。
控訴人は,被告製品の部材11が,クランプ時において,クランプリング8に対し,アンクランプの状態に戻そうとする力を掛けているとして,被告製品は,構成要件Dを充足する旨主張する。
これに対し,被控訴人は,本件特許発明のリターンばね(30)が,アンクランプ時において,常時,可動側クランプ部材(21)をアンクランプ方向に付勢し,ボール(26)が第1段用テーパーカム面(28)に当接した状態を保つ作用を有するものであることを前提に,被告製品の部材11は,少なくともアンクランプ時には本来の形状に戻った安定状態にあり,何ら付勢力を持たないから,上記作用を実現できないとして,被告製品は,構成要件Dを充足しない旨主張する。
イ 「リターンばね(30)」の意義 (ア) リターンばね(30)による付勢について 特許請求の範囲「前記可動側クランプ部材(21)は,リターンばね(30)により,軸方向のアンクランプ側に付勢され,(構成要件D)によれば,リターンば 」ね(30)は,可動側クランプ部材(21)を軸方向のアンクランプ側に付勢するものと解される。
(イ) リターンばね(30)の作用について 本件明細書には,「リターンばね(30)」が,クランプ部材20,21の間に縮設されており(【0014】,クランプを解除した際, ) 「可動側クランプ部材21はばね30により矢印A2方向に押され,ボール26は回転軸芯側へ戻り,第1段用テーパーカム面28に当接した状態を保つ。( 」【0025】)との記載がある。
しかしながら,これらの記載は, 【発明の実施の形態】【0011】以下)として (の図1(別紙1【図1】)の説明をしているものであり,本件特許発明の内容は,当該実施形態のみに限定されるものではない。
リターンばね(30)の設置場所についてみると,本件特許請求の範囲において特に限定されておらず,この点に鑑みれば,本件明細書【0014】記載の固定側 クランプ部材(20)と可動側クランプ部材(21)との間に限定されるとまで解することはできない。
リターンばね(30)が,アンクランプ時において,常時,可動側クランプ部材(21)をアンクランプ方向に付勢し,ボール(26)が第1段用テーパーカム面(28)に当接した状態を保つ作用を有するという点については,本件特許請求の範囲において,常時付勢する旨の記載はなく,上記作用についての記載もない。
また,前記1?のとおり,本件特許発明は,これまでの油圧ピストンを使用する円テーブル装置のクランプ機構においては,高圧用のシール機構及びシール部材が必要となり,部品コスト,メンテナンスの手間が掛かることから,空気圧のような低圧で使用する流体圧ピストンでも十分に回転軸をクランプすることができるクランプ機構の提供を目的としたものである。
そして,本件特許発明は,第1段増力部及び第2段増力部を備えた増力機構によって2段階の増力をすることにより,低い作動圧でも,回転軸を強固かつ確実に所定の回転角度で固定することができ,作動圧の低い空圧ピストンの利用が可能になるという効果を奏し,前記の課題を解決するものである。
この点に関し,前記1?オによれば,前記増力機構は,@シリンダ形成部材(31),A流体圧ピストン(25),可動側クランプ部材(21)及びシリンダ形成部材(31)の間に介在し,軸方向及び径方向に移動可能なボール(26)並びにBカム面(28,29,40)から構成されている。また,前記1?によれば,@第1段の増力として,流体圧ピストン(25)の第1段用テーパーカム面(28)とボール(26)との当接部P1において,F1(流体圧ピストン(25)のクランプ方向の押圧力)が,ボール(26)を介してシリンダ形成部材(31)のテーパー面(40)に対向している第1段用テーパーカム面(28)のカム作用により,F2(径方向の外方に向く力)に増力されてボール(26)に伝達され,A第2段の増力として,ボール(26)と可動側クランプ部材(21)との当接部P2において,F2が,ボール(26)を介してシリンダ形成部材(31)のテーパー面(4 0)に対向している可動側クランプ部材(21)の第2段用テーパーカム面(29)のカム作用により,F3(クランプ方向の押圧力)に増力されて可動側クランプ部材(21)に伝達される。
これらの増力機構の構成及び2段の増力の仕組みによれば,増力機構が適切に作動するためには,クランプ終了後にクランプが確実に解除され, (次の)クランプ時にボール(26)が移動できる状態にする必要がある。もっとも,上記作動のために,クランプ解除後,ボール(26)が第1段用テーパーカム面(28)と当接することを要するとまではいえない。
(ウ) 小括 以上によれば,構成要件Dの「リターンばね(30) は, 」 可動側クランプ部材(21)を軸方向のアンクランプ側に付勢する作用を有すれば足り,同付勢により,ボール(26)が第1段用テーパーカム面(28)に当接した状態を保つことまでは要しないと解すべきである。
ウ 被告製品に係る充足性について 前記?によれば,被告製品の部材11は,アンクランプ時に,本件特許発明の可動側クランプ部材(21)に相当するクランプリング8を,回転軸芯方向,すなわち,アンクランプ側に付勢するものであるから,本件特許発明において可動側クランプ部材(21)を軸方向のアンクランプ側に付勢するリターンばね(30)に相当するものと認められる。
よって,被告製品は,構成要件Dを充足する。
? 構成要件E2の充足性について ア 構成要件E2は, 「ボール(26)を介してシリンダ形成部材(31)のテーパー面(40)に対向している可動側クランプ部材(21)の第2段用テーパーカム面(29)のカム作用による第2段増力部を有する」というものである。
控訴人は,「第2段用テーパーカム面(29)」は,回転軸芯と直角な面,すなわち,同面に対する傾斜角度であるα3が0°の場合を含み,したがって,被告製品 の回転軸芯に対して直角を成すクランプリング8の鋼球10との当接面が「第2段用テーパーカム面(29)」に相当するとして,被告製品は本件特許発明構成要件E2を充足する旨主張する。
これに対し,被控訴人は,「第2段用テーパーカム面(29)」は,回転軸芯と直角な面,すなわち,同面に対する傾斜角度であるα3が0°の場合を含まないとして,したがって,被告製品のクランプリング8の鋼球10との当接面は「第2段用テーパーカム面(29)」に相当せず,被告製品は本件特許発明構成要件E2を充足しない旨主張する。
イ 「テーパーカム面」の語義について (ア) 本件明細書には, 「テーパーカム面」の語義を説明する記載はなく,辞典類にもその語義を説明したものは見当たらない。
(イ) 「テーパー」については, 「大辞林 第二版 机上版(第一刷)(平成7年 」11月株式会社三省堂発行,乙4)において, 「taper 円錐状に先細りになっていること。また,その先細りの勾配。」と説明されており,「機械用語大辞典 初版1刷」(平成9年11月株式会社日刊工業新聞社発行,乙5)において,「taper 円すい体の広がりの度合をテーパという。特に,円すい体の場合に,この度合を角度で表したものをテーパ角度,比率で表したものをテーパ比という。⇒こう配」と説明されている。
したがって,「テーパー」は,一般用語及び機械用語のいずれにおいても,勾配,すなわち,一定の角度で傾斜したものを表す語として通常用いられているものということができる。
(ウ) また,「カム面」の語義に関し,「第3版 機械設計便覧(第2刷) (平成 」10年11月丸善株式会社発行,乙1)においては,「カム機構」につき,「特定の輪郭曲線をもつ原動節としてのカム,カムに直接接触する従動節,およびこれらの節を回転対偶または直進対偶で支持する静止節からなり,原動節の単純な回転運動または直線運動を任意の往復直線運動,揺動運動,間欠回転運動などに変換する機 構」と説明されており,中井英一「実用カム設計法」(昭和43年5月発行,乙3)においては,「カム装置」につき,「特殊な形状を持った節と,ナイフエッジ,ローラー,平面などの単純な形状の接触子を持った節との直接接触によって,従動体に所用の周期的運動を与える機構である。そしてその特殊な形状を持った節をカムといい,その形状をカム輪郭とよぶ。」と説明されている。
したがって, 「カム面」とは,おおむね,ある物体において他の物体と直接接触する面であり,この面を介して,上記ある物体の運動を変換し,他の物体に運動を与えるものを意味する機械用語であるものと解される。
(エ) 以上によれば, 「テーパーカム面」とは, 「カム面」,すなわち,ある物体において他の物体と直接接触する面であり,この面を介して,上記ある物体の運動を変換し,他の物体に運動を与えるものであって,「テーパー」,すなわち,一定の角度で傾斜したものと解するのが相当である。
ウ 第2段用テーパーカム面(29)の回転軸芯に対する傾斜角度について (ア) 特許請求の範囲には,「第2段用テーパーカム面(29)」の回転軸芯に対する角度に関する記載はない。
本件明細書(甲4,甲5)には,発明の実施の形態において「シリンダ形成部材31のテーパー面40及び可動側クランプ部材21のテーパーカム面29は,回転軸芯と直角な面に対して,30°以下の緩やかな傾斜角度α2,α3となっており,また,ピストン25のテーパーカム面28のテーパー角α1も,30°以下の緩やかな傾斜角となっている。( 」【0018】)との記載がある。同記載によれば,構成要件E2の「第2段用テーパーカム面(29)」は,回転軸芯と直角な面に対して,「30°以下の緩やかな傾斜角度α3」を成すものとされており,上記「30°以下」に「0°」が含まれるか否かが問題となる。
(イ) この点に関し,前記イ(イ)のとおり,「テーパー」は,一般用語及び機械用語のいずれにおいても,勾配,すなわち,一定の角度で傾斜したものを表す語として通常用いられているものであることに鑑みると,本件明細書の前記記載中, 「テー パー面40」 「テーパーカム面29」 及び が回転軸芯と直角な面に対して成すα2,α3についての「30°以下の緩やかな傾斜角度」の記載及び「テーパーカム面28のテーパー角α1」についての「30°以下の緩やかな傾斜角」の記載のいずれについても, 「30°以下」は, 「0°」,すなわち,傾斜していない場合を含まない趣旨と解するのが自然である。
(ウ) さらに,前記1?によれば,本件明細書において,構成要件E2の「第2段増力部」に関し,概要, 「ボール(26)と可動側クランプ部材(21)との当接部P2において,第1段増力部で増力されてボール(26)に伝達されたF2(径方向の外方に向く力)が,ボール(26)を介してシリンダ形成部材(31)のテーパー面40に対向している可動側クランプ部材(21)の第2段用テーパーカム面(29)のカム作用により,F3(クランプ方向の押圧力)に増力されて可動側クランプ部材(21)に伝達される」旨が記載されている(別紙1【図2】参照)。
この点に関し,仮に,α3=0°,すなわち,第2段用テーパーカム面(29)が回転軸芯と直角を成すものとすると,径方向の外方に向く力であるF2が,第2段用テーパーカム面(29)と完全に平行の状態になることから,F2がクランプ方向の押圧力であるF3に増力されることはあり得ず,したがって,第2段増力部」 「が増力機構として機能しなくなる。
この点に鑑みても,α3が0°の場合を含まないものと解するのが相当である。
エ 小括 以上によれば,構成要件E2の「第2段用テーパーカム面(29)」は,回転軸芯と直角な面,すなわち,同面に対する傾斜角度であるα3が0°の場合を含まないものと解するのが相当である。
オ 被告製品に係る充足性について 構成要件E2の「第2段用テーパーカム面(29)」は,可動側クランプ部材(21)の面であるところ,前記?及び?によれば,被告製品においては,クランプリング8が本件特許発明を構成する可動側クランプ部材(21)に相当し,クランプ リング8の鋼球10と当接する面は,増力機構の一部として,鋼球10を介し,クランプピストン9の前進による力をクランプリング8に伝達するものである。
したがって,本件特許発明を構成する可動側クランプ部材(21)に相当するクランプリング8の鋼球10と当接する面は,前記イ(ウ)のカム面としての性質を有しているということはできる。
しかしながら,前記?アのとおり,クランプリング8の鋼球10と当接する面は,回転軸芯に対して直角を成しており,したがって,回転軸芯と直角な面に対する傾斜角度が0°であるから,構成要件E2の「第2段用テーパーカム面(29)」に該当しない。ほかに,被告製品の構成中,「第2段用テーパーカム面(29)」に相当するものはない。
以上によれば,被告製品は,本件特許発明構成要件E2を充足しない。
カ 控訴人の主張について (ア) 控訴人は,特許請求の範囲請求項1において,「テーパーカム面」は,それ自体が1つの用語として使用されており, 「テーパー面」という用語は見られず,「テーパー」のみを単独で使用する用語は,特許請求の範囲及び本件明細書のいずれにも記載されていない点に鑑みると,「テーパーカム面」につき,「テーパー」と「カム面」とに分けて考えること自体が不自然である旨主張する。
しかしながら,前記イのとおり,本件明細書には, 「テーパーカム面」の語義を説明する記載はなく, 「テーパー」及び「カム面」とも一定の意義を有する機械用語であることに鑑みると, 「テーパーカム面」という語は, 「テーパー」,すなわち,一定の角度で傾斜した「カム面」と解するのが,自然である。
また,特許請求の範囲請求項1においては,構成要件C5に「カム面(28,29,40),構成要件E1に「テーパー面(40) 」 」及び「第1段用テーパーカム面(28), 」 構成要件E2に「テーパー面(40) 及び 」 「第2段用テーパーカム面(29)」と記載されており,本件明細書においても, 「カム面(28,29)( 」【0013】等)「テーパー面40」「第1段用テーパーカム面28」及び「第2段用テー , , パーカム面29」【0016】等)の記載が見られる。
( このように,本件明細書において, 「テーパーカム面」である第1段用テーパーカム面(28),第2段用テーパーカム面(29)は,「カム面」とも呼ばれており,また,符号40の面は,「カム面」とも「テーパー面」とも呼ばれている。
この点に鑑みると,特許請求の範囲及び本件明細書において,「テーパーカム面」という語は, 「カム面」としての性質及び「テーパー」としての性質を兼ね備えたもの,すなわち,一定の角度で傾斜した「カム面」を意味するものとして使用されているとみるのが相当である。
以上によれば,控訴人の前記主張は採用できない。
(イ) 控訴人は,本件特許発明は,「第2段用テーパーカム面(29)」の傾斜角度であるα2とα3の相対的な関係を円テーブル装置の増力の仕組みとして,ピストン側の面を,押圧力を入力する「第1段用テーパーカム面(28),出力側で 」ある可動側クランプ部材(21)に形成された面を「第2段用テーパーカム面(29)」と指称し,これらを「シリンダ形成部材(31)のテーパー面(40)と対向してセットになる,カム作用を生じさせる面」とした,この「第1段用テーパーカム面(28) , 」 「第2段用テーパーカム面(29)」及び「シリンダ形成部材(31)のテーパー面(40)」の3つの面を用いた増力機構において, 「テーパーカム面」は,「カム面」に「テーパー」という語を付加して意味を限定したものではなく,テーパー面とカム作用を利用した入力面及び出力面を表現したものである,として,特許請求の範囲請求項1の記載からは,「テーパーカム面」について「テーパー」としての性格又は機能を有するものと限定解釈することはできない旨主張する。
この点に関し,本件特許発明における増力の仕組みは,前記1?のとおり,@第1段の増力として,第1段用テーパーカム面(28)とボール(26)との当接部P1において,F1(流体圧ピストン(25)のクランプ方向の押圧力)が,ボール(26)を介してシリンダ形成部材(31)のテーパー面(40)に対向している第1段用テーパーカム面(28)のカム作用により,F2(径方向の外方に向く 力)に増力されてボール(26)に伝達され,A次に,第2段の増力として,ボール(26)と可動側クランプ部材(21)との当接部P2において,F2が,ボール(26)を介してシリンダ形成部材(31)のテーパー面(40)に対向している第2段用テーパーカム面(29)のカム作用により,F3(クランプ方向の押圧力)に増力されて可動側クランプ部材(21)に伝達されるというものである(甲5【0022】【0023】 , ,別紙1【図2】。
) すなわち,第1段の増力は,流体圧ピストン(25)の第1段用テーパーカム面(28)のカム作用によってF1がF2に増力され,第2段の増力は,可動側クランプ部材(21)の第2段用テーパーカム面(29)のカム作用によってF2がF3に増力されるというものである。
これに対し,控訴人の前記主張は,第2段の増力につき,F2がシリンダ形成部材(31)のテーパー面(40)においてF3に増力され,この反作用として,テーパー面(40)からボール(26)を介して可動側クランプ部材(21)に対してF3と同等の力が生じ,したがって,前記増力については,回転軸芯と直角な面に対するテーパー面(40)の傾斜角度であるα2が問題となるとし,このような増力の仕組みを前提とするものである。
しかしながら,特許請求の範囲にも本件明細書の発明の詳細な説明にも,控訴人が主張する増力の仕組みは記載されておらず,したがって,同仕組みは,本件明細書の記載に基づかないものといわざるを得ない。
以上によれば,控訴人の前記主張は,前提において誤りがあり,採用できない。
(ウ) 控訴人は,本件明細書中, 「テーパーカム面29は,回転軸芯と直角な面に対して,30°以下の緩やかな傾斜角度α2,α3となっており」【0018】 ( )の意義に関し,本件特許発明の当業者である円テーブル装置等の工作機器を取り扱う業者等は,被控訴人も含め, 「傾斜角度」につき,0°を含むものとして理解していることを根拠として,「緩やかな傾斜角度」は,「α3=0°」の場合も含むというべきである旨主張する。
しかしながら,控訴人において,本件特許発明の当業者が「傾斜角度」につき0°を含むものと理解している根拠として掲げる文献のうち,甲第24号証,甲第26号証から甲第34号証は,いずれも円テーブル装置自体の傾斜角度について0°を含む趣旨が記載されているものであり,同記載をもって,当業者が円テーブル装置の一部位である「テーパーカム面」の回転軸芯と直角な面に対する傾斜角度も0°を含むと理解しているということはできない。
また,甲第35号証から甲第44号証は,ビックフィード制御方法に係るもの(甲35),ジョイスティック信号処理装置に係るもの(甲36)など,いずれも円テーブル装置ではない工作機器等の発明に係る特許公報又は実用新案公報であるから,これらの文献において傾斜角度という語が0°を含むものとして使用されていることをもって,前記「テーパーカム面」の傾斜角度も0°を含むと解することもできない。なお,シャッタプレートを有する開閉装置に係る発明の特許公報(乙44),運動案内装置及びその製造方法に係る発明の特許公報(乙45)などにおいては,傾斜角度という語が明らかに0°を含まないものとして使用されていることに鑑みると,工作機器等の分野において一般に傾斜角度という語が0°を含むものとして慣用されているということもできない。
なお,被控訴人を特許権者とする「インデックステーブルのクランプ装置の増力装置」という名称の発明に係る特許公報(被告特許の特許公報。甲18)においては,背景技術として本件特許の特許公報(甲4)が掲げられており,同特許公報記載のクランプ装置の増力装置を示すものとして図9が掲載されている【0004】 ( ,【0011】。そして,図9においては,本件特許発明の可動側クランプ部材(2 )1)に相当する中間部材37が,回転軸の軸線44と直角を成すもの,すなわち,回転軸芯と直角な面に対する傾斜角度が0°のものとして示されている。
しかしながら,前記1によれば,本件特許発明の増力機構においては,流体圧ピストン(25)の第1段用テーパーカム面(28)のカム作用による第1段の増力及び可動側クランプ部材(21)の第2段用テーパーカム面(29)のカム作用に よる第2段の増力がなされるものとされているところ,被告特許の特許公報においては,@本件特許発明の流体圧ピストン(25)に相当する移動部材31が作用する力F0が,移動部材31の第1の案内面32(本件特許発明の第1段用テーパーカム面(28)に相当するもの)の斜面作用によりF1に増力され,AF1が,中間部材37を介して被挟持部材36(本件特許発明のブレーキディスク(15)に相当するもの)に作用する力F2と,案内部材33(本件特許発明のシリンダ形成部材(31)に相当するもの)の第2の案内面34(本件特許発明のテーパー面(40)に相当するもの)に作用する力F3に分けられる旨が記載されており,前述したとおり本件特許発明の可動側クランプ部材(21)に相当する中間部材37の面による増力については何ら触れられていない(【0004】〜【0007】。
) 以上によれば,被告特許の特許公報においては,本件特許発明の増力機構の仕組みを正しくとらえていないものというほかない。そもそも,本件特許発明の意義を被告特許の特許公報に基づいて解釈すべきものではないが,被告特許の特許公報の図9の内容をもって,本件明細書【0018】の「緩やかな傾斜角度」が「α3=0°」の場合も含むということはできない。
(エ) 控訴人は,本件特許発明における増力の仕組みが前記第3の2〔当審における控訴人の主張〕?ア記載のとおりであるところ,増力比は,小刻みに連続して変化しており,α3が,1°,0.5°,0.25°の各場合は,増力比の大きさにおいてほとんど差がなく,このような傾斜角度の領域から「α3=0°」の場合のみを除くことは,不自然である旨主張する。
控訴人が主張する増力の仕組みは,前記(イ)のとおり,本件明細書の記載に基づかないものといわざるを得ない。加えて,前記(イ)及び(ウ)によれば,控訴人主張に係るα3と増力比との関係を前提としても,α3が0°の場合を含まないものと解することにつき,不自然,不合理な点はなく,したがって,控訴人の前記主張は採用できない。
(オ) 控訴人は,「テーパー」は,「先細り」を意味するところ,対向する二面と も勾配がついている場合のみならず,うち一面が0°である場合も他面に勾配がついていれば, 「先細り」になるから,第2段用テーパーカム面(29)の傾斜角度が0°であっても,対向するシリンダ形成部材(31)のテーパー面(40)に勾配がついていれば,「テーパー」に当たる旨主張する。
しかし,本件明細書の記載によれば,第2段用テーパーカム面(29)及びテーパー面(40)の「テーパー」,すなわち,傾斜は,いずれも回転軸芯に直角な面に対するものであることは明らかといえるから(甲5【0018】,別紙1【図2】, )上記主張は採用できない。
(カ) 控訴人は,本件特許発明の第1段増力部における第1段の増力は,ピストンとシリンダ形成部材の2つの面の関係で行われ,第2段増力部における第2段の増力は,シリンダ形成部材と可動側クランプ部材の2つの関係で行われるという構成である旨主張する。
しかし,前記(イ)のとおり,本件特許発明の増力の仕組みは,第1段の増力は,流体圧ピストン(25)の第1段用テーパーカム面(28)のカム作用によってF2に増力され,第2段の増力は,可動側クランプ部材(21)の第2段用テーパーカム面(29)のカム作用によってF2がF3に増力されるというものであり,控訴人が主張する増力の構成は,特許請求の範囲及び本件明細書の発明の詳細な説明のいずれにも記載されていない。
したがって,控訴人が主張する増力の構成は,本件明細書の記載に基づかないものというべきであり,控訴人の前記主張は採用できない。
なお,被控訴人は,控訴人の前記主張は時機に後れたものであり却下されるべきである旨主張する。
しかしながら,控訴人の前記主張は,原審において陳述した平成26年7月4日付け準備書面の主張内容に関連するものであり,平成27年9月10日の当審第1回口頭弁論期日において陳述された同月3日付け準備書面に記載されており,既に提出済みの証拠に基づき判断可能なものであった。そして,当裁判所は,上記第1 回口頭弁論期日において口頭弁論を終結した。
以上によれば,控訴人の前記主張が,「訴訟の完結を遅延させる」(民訴法157条1項)ものとまでは認められず,したがって,時機に後れたものとして却下すべきものとはいえない。
? 小括 以上のとおり,被告製品は,構成要件E2を充足しない。
3 争点?(均等侵害の成否)について ? 控訴人は,仮に,本件特許発明構成要件E2の「第2段用テーパーカム面(29)」は,「テーパー」である以上,その傾斜角度は「α3>0°」であって,「α3=0°」を含まないのに対し,被告製品の構成中,本件特許発明の「第2段用テーパーカム面(29)」に相当する面である「クランプリング8の鋼球10と当接する面」は,回転軸芯と直角,すなわち, 「α3=0°」である点において本件特許発明の「第2段用テーパーカム面(29)」と相違しており,これに文言上は含まれないとしても,本件においては,均等侵害が成立する旨主張する。
? 均等の要件について 特許請求の範囲請求項1に記載された構成中に被告製品と異なる部分が存する場合であっても,@上記部分が本件特許発明の本質的部分ではなく,A上記部分を被告製品におけるものと置き換えても,本件特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであって,B上記のように置き換えることに,本件特許発明の属する技術の分野における通常の知識を有する当業者が,被告製品の製造等の時点において容易に想到することができたものであり,C被告製品が,本件特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから上記出願時に容易に推考できたものではなく,かつ,D被告製品が本件特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないときは,被告製品は,特許請求の範囲請求項1に記載された構成と均等なものとして,本件特許発明技術的範囲に属するものと解するのが相当である(最高裁平成 6年(オ)第1083号平成10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁参照)。
? 前記?Aの要件について ア 前記1?によれば,円テーブル装置のクランプ機構においては,作業時における工具からの加圧又は振動に対して,確実に所定の回転角度の位置を保つことのできるクランプ力を得るために,油圧ピストンを使用して高い作動圧(油圧)でクランプ部材を加圧していたが,油圧ピストンの使用には,部品コストが掛かり,メンテナンスにも手間が掛かるという課題があったことから,本件特許発明は,円テーブル装置において,空気圧のような低圧で使用する流体圧ピストンでも十分に回転軸をクランプすることができるクランプ機構の提供を目的としたものである。
そして,本件特許発明は,クランプ機構を構成する増力機構につき,第1段増力部及び第2段増力部を備えたものとし,流体圧ピストン(25)から可動側クランプ部材(21)に働くクランプ方向の力を2段階にわたり増力することによって,空圧ピストンのように低い作動圧のピストンでも十分に回転軸をクランプすることができるようにして,前記課題を解決するものである。
イ この点に関し,前記1?のとおり,本件明細書には,前記増力機構における2段階にわたる増力について,以下のとおり開示されている(別紙1【図2】参照)。
すなわち,@流体圧ピストン(25)の第1段用テーパーカム面(28)とボール(26)との当接部P1において,F1(流体圧ピストン(25)のクランプ方向の押圧力)が,ボール(26)を介してシリンダ形成部材(31)のテーパー面(40)に対向している流体圧ピストン(25)の第1段用テーパーカム面(28)のカム作用により,F2(径方向の外方に向く力)に増力されてボール(26)に伝達される(第1段の増力)。
次に,Aボール(26)と可動側クランプ部材(21)との当接部P2において,F2が,ボール(26)を介してシリンダ形成部材(31)のテーパー面(40)に対向している可動側クランプ部材(21)の第2段用テーパーカム面(29)の カム作用により,F3(クランプ方向の押圧力)に増力されて可動側クランプ部材(21)に伝達される(第2段の増力)。
ウ 第2段の増力に関し,前記2?ウ(ウ)のとおり,仮に,α3=0°,すなわち,第2段用テーパーカム面(29)が回転軸芯と直角を成すものとすると,径方向の外方に向く力であるF2が,第2段用テーパーカム面(29)と完全に平行の状態になることから,F2がクランプ方向の押圧力であるF3に増力されることはなく,「第2段増力部」が増力機構として機能しなくなる。
したがって,第2段用テーパーカム面(29)が回転軸芯と直角,すなわち,傾斜角度が「α3=0°」の場合を含まないという構成を, 「α3=0°」の構成に置き換えれば,2段階にわたる増力により空圧ピストンのように低い作動圧のピストンでも十分に回転軸をクランプすることができるようにするという本件特許発明と同一の目的を達することも同一の作用効果を奏することもできなくなることは,明らかというべきである。
エ 控訴人は,本件特許発明における2段式増力機構における増力の仕組みは,前記第3の2〔当審における控訴人の主張〕?のとおりであり, 「α3=0°」の場合に,F1からF3への増力は最大となるから, 「第2段用テーパーカム面(29)」の「30°以下の緩やかな傾斜角度」,すなわち,「0°<α3≦30°」を「α3=0°」に置き換えても,増力を実現でき,かつ,低い作動圧下における高いクランプ力の実現等の本件特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏する旨主張する。
しかし,控訴人の主張は,第2段の増力につき,F2がシリンダ形成部材(31)のテーパー面(40)においてF3に増力され,この反作用として,テーパー面(40)からボール(26)を介して可動側クランプ部材(21)に対してF3と同等の力が生じることを前提とするものであるところ,前記2?カ(イ)のとおり,特許請求の範囲にも本件明細書の発明の詳細な説明にも,控訴人主張に係る増力の仕組みは記載されておらず,したがって,同仕組みは,本件明細書の記載に基づかない ものといわざるを得ない。
なお,控訴人の役員が作成した甲第15号証には,被告製品のクランプ機構の動作につき,「『クランプピストン』が正面部に動き,『鋼球』を『クランプシリンダ』のテーパー面にそって動かし,『クランプシリンダ』のテーパー面に対向している『クランプピストン』のカム作用と,『鋼球』を介して,『クランプシリンダ』のテーパー面に対向している『クランプリング』のカム作用による増力された力が『クランプリング』に加わることになります。」と記載されているが,同記載によっても,本件特許発明のように2段階の増力が行われているかは不明であり,増力の測定値等の客観的な裏付けもない以上,被告製品において2段階にわたる増力がされていると認めるに足りないというべきである。
オ 以上によれば,被告製品は,前記?Aの要件を充たすものではない。
? 前記?@の要件について ア 前記?によれば,本件特許発明に係る円テーブル装置のクランプ機構が,2段階にわたり増力する増力機構を備えることは,前記課題解決に不可欠な構成といえ,本件特許発明を特徴付けるものということができるところ,第2段用テーパーカム面(29)が回転軸芯と直角を成すものではないこと,すなわち,傾斜角度が「α3=0°」の場合を含まないことは,上記増力機構を構成する「第2段増力部」における第2段の増力のために不可欠なものである。
この点に鑑みると,本件特許発明構成要件E2の「第2段用テーパーカム面(29)」は,傾斜角度が「α3=0°」の場合を含まないのに対し,被告製品の構成中,「クランプリング8の鋼球10と当接する面」は,回転軸芯と直角,すなわち, 「α3=0°」であるという相違部分が,本件特許発明の本質的部分でないということはできない。
イ 控訴人は,F2からF3への増力において問題となる角度はα2であり,α3ではないとして, 「α3=0°」に係る相違部分は,本件特許発明の本質的部分ではない旨主張するが,控訴人の主張は,前記?のとおり,本件明細書の記載に基づ かない増力の仕組みを前提とするものであるから,採用できない。
ウ したがって,被告製品は,前記?@の要件を充たすものともいえない。
? 以上によれば,控訴人の前記主張は,採用できない。
なお,被控訴人は,控訴人の前記主張は時機に後れたものであり却下されるべきである旨主張する。
しかしながら,控訴人の前記主張は,控訴理由を記載した平成27年6月29日付け準備書面に記載されており,被控訴人も認否反論を行い,既に提出済みの証拠に基づいて判断可能なものであった。そして,当裁判所は,平成27年9月10日の当審第1回口頭弁論期日において口頭弁論を終結した。
以上によれば,控訴人の前記主張が,「訴訟の完結を遅延させる」(民訴法157条1項)ものとまでは認められず,したがって,時機に後れたものとして却下すべきものとはいえない。
4 結論 以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,控訴人の請求はいずれも理由がないから,これらを棄却した原判決は相当である。
よって,本件控訴を棄却することとし,主文のとおり判決する。
追加
別紙1(本件特許の特許公報(甲4)に掲載されている図面)【図1】(ただし,右に90°回転させたもの) 【図2】1:装置本体5:回転軸7:テーブル面(ワーク取付部)15:ブレーキディスク20:固定側のクランプ部材21:可動側のクランプ部材25:空圧ピストン26:ボール28:第1段用テーパーカム面29:第2段用テーパーカム面32,33:空気室 別紙2(被告製品の構成)1:回転軸2:ワーク取付部3:ウォームホイール4:駆動用ウォーム軸5:オイルバス6:クランプディスク7:フレーム8:クランプリング9:クランプピストン10:鋼球(ボール)11:部材12:クランプシリンダ
裁判長裁判官 部眞規子
裁判官 田中芳樹
裁判官 鈴木わかな