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関連審決 無効2012-800141
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事件 平成 26年 (行ケ) 10239号 審決取消請求事件

原告株式会社ミクニ
同訴訟代理人弁護士 小林幸夫
同 弁理士 國分孝悦
同 栗川典幸
同 関直方
同 佐久間邦郎
被告株式会社デンソー
同訴訟代理人弁理士 碓氷裕彦
同 中村広希
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2015/11/12
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が無効2012-800141号事件について平成26年9月30日にした審決を取り消す。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等 1 (1) 被告は,平成15年7月11日,発明の名称を「回転角検出装置」とする発明について特許出願(特願2003-273606号。以下「本件出願」という。
平成12年5月19日にした特許出願(優先権主張日:平成11年11月1日及び平成12年1月31日,日本国。特願2000-147238号)の分割出願)をし,平成18年8月25日,特許第3843969号(請求項の数1。以下「本件特許」という。)として特許権の設定登録を受けた(甲12,13)。
(2) 原告は,平成24年8月31日,本件特許について特許無効審判(無効2012-800141号事件)を請求し,被告は,同年11月30日付けで本件特許の特許請求の範囲減縮等を目的とする訂正請求(以下「第1次訂正」という。
)をした。特許庁は,平成25年5月20日,上記無効審判事件について,「訂正を認める。本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「第1次審決」という。)をし,その謄本は,同月30日,原告に送達された。
(3) 原告は,平成25年6月25日,第1次審決の取消しを求める訴訟を提起し,知的財産高等裁判所平成25年(行ケ)第10174号審決取消請求事件として係属し,同裁判所は,平成26年2月26日,第1次審決を取り消すとの判決をした。
(4) 特許庁は,さらに無効2012-800141号事件について審理したところ,被告から,同年5月22日,特許請求の範囲の訂正請求がされ(以下「本件訂正」という。なお,本件訂正がされたことから,特許法134条の2第6項の規定により,第1次訂正は取り下げられたものとみなされた。 ,同年9月30日, )「訂正を認める。本件審判の請求は,成り立たない。」との別紙審決書(写し)記載の審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同年10月9日,原告に送達された。
(5) 原告は,平成26年11月5日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。
2 特許請求の範囲の記載 2 本件訂正後の特許請求の範囲請求項1の記載は,次のとおりである。以下,請求項1に係る発明を「本件発明」という。また,本件発明に係る明細書(甲12)を,図面を含め,「本件明細書」という(なお,「/」は原文の改行部分を示す。以下同じ。。
) 磁石を有し,被検出物の回転に伴って回転するロータコアと,このロータコアの磁石の磁力を受けて前記被検出物の回転角度を検出し同じ配列の3つの端子を有し且つ同形状を有する複数の磁気検出素子と,2つは前記磁気検出素子の出力を外部に取り出し,また1つは前記磁気検出素子に電源電圧を外部から印加し,さらに1つは前記磁気検出素子を外部に接地するための,少なくとも4つの外部接続端子とを備えた非接触式の回転角度検出装置であって,/前記磁気検出素子の3つの端子は,電源電圧を印加する信号入力用,信号出力用,及び接地用の端子であり,前記複数の磁気検出素子は,並列に180度逆方向で配置されて3つの端子は前記磁気検出素子の同一面より引き出され,前記複数の磁気検出素子が夫々有する前記3つの端子の内の各磁気検出素子の同一位置に配置された端子の少なくとも2つの同一位置に配置された各端子であって前記信号入力用及び前記接地用の端子は各磁気検出素子の同一位置に配置された端子毎に同じ方向へ引き出されて前記外部接続端子のうち電源電圧を印加する信号入力用端子及び接地端子と接続されていることを特徴とする回転角度検出装置。
3 本件審決の理由の要旨 (1) 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)のとおりである。要するに,@本件特許の特許請求の範囲の記載は,特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであることとの要件に適合するものといえるから,本件特許は,特許法36条6項1号に規定する要件(以下「サポート要件」という。)を満たしている,A本件明細書の発明の詳細な説明は,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載しなければならないとの要件に適合するものといえるから,本件特許は,同法36条4項1号に規定する要件(以下「実施可能要件」とい 3 う。)を満たしている,B平成17年4月20日付けでした手続補正(以下「本件補正」という。)は,本件出願の願書に添付した特許請求の範囲及び明細書(以下「出願当初明細書」という。)の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものとはいえないから,本件特許は,同法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるとはいえない,C(a)本件発明は,下記アの引用例1に記載された発明(以下「引用発明1」という。)と実質的に同一であるとはいえず,(b)本件発明は,引用発明1及び下記イの引用例2に記載された発明(以下「引用発明2」という。)に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるともいえず,(c)本件発明は,引用発明1,引用発明2並びに下記オ及びカの周知例に記載された周知慣用技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるともいえず,(d)本件発明は,引用発明1並びに下記イの引用例2及び下記ウないしオの周知例に記載された周知慣用技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるともいえないことから,本件発明は,同法29条1項3号に該当するものであるとはいえず,また,同法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえない,などというものである。
ア 引用例1:特開平5-157506号公報(甲1) イ 引用例2:実願平1-61302号(実開平2-150585号)のマイクロフィルム(甲2) ウ 周知例1:特開平9-294060号公報(甲3) エ 周知例2:特開平8-135466号公報(甲4) オ 周知例3:子供の科学47巻5号(昭和59年5月1日発行)(甲5) カ 周知例4:子供の科学48巻7号(昭和60年7月1日発行)(甲6) (2) 本件審決が認定した引用発明1は,次のとおりである。
スロットルバルブの開度を検出するスロットルポジションセンサであって,/永久磁石15が固定され,スロットルバルブに連動して回動するロータ5と,/ 4 ロータ5の回転に伴い永久磁石15の磁界を感磁して,スロットルバルブの開度に応じた検出信号を発生する,2個のホール素子21,22と,/プリント基板に実装された4個のターミナル24を備え,/プリント基板27には,センサ回路として,ホール素子21用センサ回路50とホール素子22用センサ回路60とが形成され,上記4個のターミナル24の内,2つのターミナル24a,24bが,各センサ回路50,60からの検出信号出力端子として使用され,他の2つのターミナル24c,24dが,外部からの電源供給用端子,即ち電源電圧(Vcc)供給用の端子及び接地(Gnd)用の端子として使用され,/2つのホール素子21,22は同形状で,同じ配列の4つの端子(リード)を有し,4つの端子(リード)は,ホール素子21,22の同一面(プリント基板27と対向する面)を起点としてプリント基板27の方向に引き出され,2個のホール素子21,22は,プリント基板27に位置決め固定されるが,ホール素子21の4つの端子(リード)のうち2つの端子(リード)と,ホール素子22の4つの端子(リード)のうち2つの端子(リード)とは,それぞれ反対方向に折り曲げられてからプリント基板27に固定され,/ホール素子21の4つの端子(リード)は,ホール素子21用センサ回路50の駆動回路により定電流で駆動するための一対の端子(リード)及びホール素子21用センサ回路50により差動増幅されてセンサ回路50からの検出信号出力端子(ターミナル24a)の検出信号となる,一対の出力電圧端子(リード)であり,ホール素子22の4つの端子(リード)は,ホール素子22用センサ回路60の駆動回路により定電流で駆動するための一対の端子(リード)及びホール素子22用センサ回路60により差動増幅されてセンサ回路60からの検出信号出力端子(ターミナル24b)の検出信号となる,一対の出力電圧端子(リード)であり,/2個のホール素子21,22がロータ5の回転軸と直交する磁界を感磁して同レベルの検出信号が得られるように,各ホール素子21,22は,永久磁石15の中空部内にて,ロータ5の回転軸に沿った面に並行で,しかも回転軸を中心に対称な位置に配設される,/スロットルポジションセンサ。
5 (3) 本件発明と引用発明1との対比 本件審決が認定した本件発明と引用発明1との一致点及び相違点は,以下のとおりである。
ア 一致点 磁石を有し,被検出物の回転に伴って回転するロータコアと,このロータコアの磁石の磁力を受けて前記被検出物の回転角度を検出し同じ配列の3つ又は4つの端子を有し且つ同形状を有する複数の磁気検出素子と,2つは前記磁気検出素子の出力を外部に取り出し,また2つは磁気検出素子を駆動する電圧を得るための,1つは電源電圧を外部から印加し,さらに1つは外部に接地する,少なくとも4つの外部接続端子とを備えた非接触式の回転角度検出装置であって,前記磁気検出素子の3つ又は4つの端子は,磁気検出素子を駆動する電圧を印加する一対の端子,及び1つ又は差動増幅される2つの信号出力用端子であり,前記複数の磁気検出素子は,下面(磁気検出素子から端子を引き出す起点を有する面)が同じ方向(法線の方向)を向くように近接して配置されて3つ又は4つの端子は前記磁気検出素子の同一面より引き出され,前記複数の磁気検出素子が夫々有する前記3つ又は4つの端子の内の各磁気検出素子の同一位置に配置された端子の少なくとも2つの同一位置に配置された各端子であって前記磁気検出素子を駆動する電圧を印加する一対の端子は,引き出されて,磁気検出素子を駆動する電圧を得るための,1つは電源電圧を外部から印加し,さらに1つは外部に接地する,2つの外部接続端子と接続されていることを特徴とする回転角度検出装置。
イ 相違点 (ア) 相違点1 本件発明では,「少なくとも4つの外部接続端子」のうちの2つの「外部接続端子」は,「1つは前記磁気検出素子に電源電圧を外部から印加し,さらに1つは前記磁気検出素子を外部に接地するため」のものであるのに対し,引用発明1では,「4個のターミナル24」のうち「ターミナル24c,24d」が,「電源供給用 6 端子,即ち電源電圧(Vcc)供給用の端子及び接地(Gnd)用の端子として使用され」ているものの,ホール素子21は,「ホール素子21用センサ回路50の駆動回路により定電流で駆動」され,ホール素子22は,「ホール素子22用センサ回路60の駆動回路により定電流で駆動」されており,「ターミナル24c,24d」は,ホール素子21,22に電源電圧(Vcc)を外部から印加するものでも,ホール素子21,22を外部に接地(Gnd)するためのものでもない点。
(イ) 相違点2 本件発明では,「複数の磁気検出素子」が「同じ配列の3つの端子を有し」 「磁 ,気検出素子の3つの端子は,電源電圧を印加する信号入力用,信号出力用,及び接地用の端子であ」るのに対し,引用発明1では,「2個のホール素子21,22」が「同じ配列の4つの端子(リード)を有し」「ホール素子21の4つの端子(リ ,ード)は,ホール素子21用センサ回路50の駆動回路により定電流で駆動するための一対の端子(リード)及びホール素子21用センサ回路50により差動増幅されてセンサ回路50からの検出信号出力端子(ターミナル24a)の検出信号となる,一対の出力電圧端子(リード)であり,ホール素子22の4つの端子(リード)は,ホール素子22用センサ回路60の駆動回路により定電流で駆動するための一対の端子(リード)及びホール素子22用センサ回路60により差動増幅されてセンサ回路60からの検出信号出力端子(ターミナル24b)の検出信号となる,一対の出力電圧端子(リード)であ」る点。
(ウ) 相違点3 本件発明では,「前記複数の磁気検出素子は,並列に180度逆方向で配置されて3つの端子は前記磁気検出素子の同一面より引き出され」ているのに対し,引用発明1では,「端子(リード)は,ホール素子21,22の同一面(プリント基板27と対向する面)を起点としてプリント基板27の方向に引き出され」ているものの,端子(リード)の本数が「4つ」であることはともかくとして,「2個のホール素子21,22がロータ5の回転軸と直交する磁界を感磁して同レベルの検出 7 信号が得られるように,各ホール素子21,22は,永久磁石15の中空部内にて,ロータ5の回転軸に沿った面に並行で,しかも回転軸を中心に対称な位置に配設され」ることが示されているだけで,ホール素子21,22が,並列に180度逆方向で配置されていることは示されていない点。
(エ) 相違点4 本件発明では,「前記複数の磁気検出素子が夫々有する前記3つの端子の内の各磁気検出素子の同一位置に配置された端子の少なくとも2つの同一位置に配置された各端子であって前記信号入力用及び前記接地用の端子は各磁気検出素子の同一位置に配置された端子毎に同じ方向へ引き出されて前記外部接続端子のうち電源電圧を印加する信号入力用端子及び接地端子と接続されている」のに対し,引用発明1では,端子(リード)の本数が「4つ」であることはともかくとして,「端子(リード)は,ホール素子21,22の同一面(プリント基板27と対向する面)を起点としてプリント基板27の方向に引き出され」ているものの,ホール素子21の4つの端子(リード)のうち2つの端子(リード)と,ホール素子22の4つの端子(リード)のうち2つの端子(リード)とは,それぞれ反対方向に折り曲げられてからプリント基板27に固定されており,さらに,「ホール素子21」を「定電流で駆動するための一対の端子(リード)」は,「ホール素子21用センサ回路50の駆動回路」を介して「ターミナル24c」つまり「電源供給用端子,即ち電源電圧(Vcc)供給用の端子」と,「ターミナル24d」つまり「接地(Gnd)用の端子」に接続され,「ホール素子22」を「定電流で駆動するための一対の端子(リード)」は,「ホール素子22用センサ回路60の駆動回路」を介して「ターミナル24c」つまり「電源供給用端子,即ち電源電圧(Vcc)供給用の端子」と,「ターミナル24d」つまり「接地(Gnd)用の端子」に接続されている点。
4 取消事由 (1) サポート要件及び実施可能要件についての判断の誤り(取消事由1) (2) 特許法17条の2第3項違反についての判断の誤り(取消事由2) 8 (3) 新規性判断の誤り(取消事由3) (4) 進歩性判断の誤り(取消事由4)
当事者の主張
1 取消事由1(サポート要件及び実施可能要件についての判断の誤り)について〔原告の主張〕 (1) サポート要件について ア 本件審決は,サポート要件について,おおむね,以下のとおり判断した。
本件明細書の第1実施例には,「磁気検出素子および外部接続端子の組み付けを簡単にすることのできる回転角度検出装置を提供」することを目的課題とし,「リードフレーム33を含めた2個のホールIC31,32の組み付けが簡単になる」効果を得るために,ホールIC31,32は同じ配列の3つのリード線を有し,かつ,同形状を有する2つのホールIC31,32を,並列に180度逆方向で配置し,複数のホールIC31,32がそれぞれ有する3つのリード線の内の各ホールIC31,32の同一位置に配置されたリード線の少なくとも2つの同一位置に配置された各リード線は各ホールIC31,32の同一位置に配置されたリード線毎に同じ方向へ引き出されてリードフレーム33のいずれかと接続されていること,及び上記「各ホールIC31,32の同一位置に配置されたリード線の少なくとも2つの同一位置に配置された各リード線」は,「電源電圧を印加する信号入力用のリード線」及び「接地用のリード線」であって,それぞれリードフレーム33の「信号入力(VDD)用端子40」及び「接地(GND)用端子43」に接続されることが開示されているから,本件特許の特許請求の範囲の記載は,特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであることとの要件に適合し,サポート要件を満たしている。
イ 本件発明の特許請求の範囲には,「前記信号入力用及び前記接地用の端子は…端子毎に同じ方向へ引き出されて」との記載があるところ,別紙1の参考資料2 9 のような構成が,上記要件を充足することは明らかである。このように,信号入力用端子と接地用端子が,それぞれ間に別の端子を挟まないような形でまとめられてそれぞれ別々の方向に引き出されるような引き出し方が,「前記信号入力用及び前記接地用の端子は…端子毎に同じ方向へ引き出されて」に該当すると解すべきである。
しかるに,本件明細書の第1実施例を斜視図で表したものが,別紙1の甲7の1であるが,2個の磁気検出素子を並列に180度逆方向で配置し,全ての端子をただ単に真っすぐに引き出したという構成にすぎず,信号入力用端子と接地用端子の端子毎の同じ方向への引き出しにはなっていないことから,第1実施例は,「前記信号入力用及び前記接地用の端子は…端子毎に同じ方向へ引き出されて」との構成を開示するものではなく,他に各磁気検出素子の接地用の端子(リード線)を,端子毎に引き出す構成は,本件明細書,図面には一切記載されていないし,当該構成によって何故「組み付けを簡単にする。」という効果と結び付くのかが,【0040】を含め本件明細書の記載及び技術常識をもってしても理解することができない。
むしろ,別紙1の参考資料2のような図面の場合や,斜めに同じ方向へ端子を引き出した場合などは,組付けは困難になるとも思える。
以上のとおり,第1実施例の構成は,特許請求の範囲の文言上,明らかに「端子毎の」引き出しには該当しないものであり,当該構成をサポートするものでもない。
したがって,本件発明は,発明の詳細な説明に記載されたものとはいえず,サポート要件に違反するものであって,本件審決の前記アの判断は誤りである。
ウ 被告は,この点について,別紙2の参考図2が本件発明に含まれる旨主張する。
しかし,被告は,本件特許に対する第1次審決の取消請求事件の平成25年11月12日の弁論準備手続期日において,第1次訂正後の請求項1に係る発明における「各磁気検出素子の同一位置に配置された端子の少なくとも2つの同一位置に配置された各端子…は各磁気検出素子の同一位置に配置された端子毎に同じ方向に引 10 き出されて」との構成は,第1実施例に示されているように「磁気検出素子31,32のそれぞれの3つの端子が何れも一方向に真っすぐ延びている構成」を意味するものであり,原告が主張する「まとめられた2種類の端子は同じ方向ではなく,別々の方向に引き出される構成」は含まないとの陳述を,被告代理人弁理士が,熟慮の上,裁判官の面前で行い,当該陳述は調書に残された(甲15)。これは,本件特許が無効にされるのを免れるべく,第1実施例により本件発明がサポートされていることを明らかにすべく行った被告の権利解釈を示すものである。したがって,以後の訴訟手続等において,被告がこれと矛盾する権利解釈を主張することは,禁反言の法理に照らし,許されない。
そうすると,別紙2の参考図2は,「磁気検出素子31,32のそれぞれの3つの端子が何れも一方向に真っすぐ延びている構成」ではないが,「信号入力用及び接地用の端子」の端子毎の同じ方向への引き出しに該当する旨の被告の上記主張は禁反言の法理に照らし許されない。
(2) 実施可能要件について ア 本件審決は,実施可能要件について,以下のとおり判断した。
前記(1)アのとおり,本件明細書の発明の詳細な説明の第1実施例は,本件発明の具体的な態様を記載しているから,本件明細書の発明の詳細な説明は,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に,記載しなければならない,との要件に適合し,実施可能要件を満たしている。
イ 前記(1)のとおり,第1実施例(図5〜図7)は,明らかに,「前記信号入力用及び前記接地用の端子は…端子毎に同じ方向へ引き出されて」との構成にはなっておらず,第1実施例の図面と,これに関する本件明細書の【0040】の記載のみからは,「前記信号入力用及び前記接地用の端子は…端子毎に同じ方向へ引き出されて」との構成や,その構成によって,「2個のホールICの組み付けが簡単になる」という効果が得られることを理解することは不可能である。
そして,前記(1)のとおり,端子毎の同じ方向への引き出しとは,端子の種類毎 11 にまとめて間に別の端子を挟まずに,かつ,それぞれ別々の方向へ引き出すことをいうものと解されるところ,第1実施例の接地用端子がそのような形態となっていないことは明らかである。
そうすると,当業者であっても,端子をどのような引き出し方とすれば「組み付けが簡単になる」という効果が得られるのか,本件明細書の記載からは理解することができない。
したがって,本件特許の発明の詳細な説明の記載は,当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえないから,実施可能要件に違反するものであって,本件審決の前記アの判断は誤りである。
〔被告の主張〕 (1) サポート要件について 本件発明が目的とする,磁気検出素子及び外部接続端子の組付けの簡単化は,磁気検出素子を外部接続端子に直接接続することにより達成され,この直接接続が本件発明の大きな特徴であり,その上で,本件発明は,2つの磁気検出素子が同じ配列の3つの端子を有し,かつ,同形状であること,及びこの2つの磁気検出素子を並列に180度逆方向で配置した際,3つの端子が磁気検出素子の同一面より引き出されることを利用して,外部接続端子を含めた磁気検出素子の組付けをより一層簡単にしている。
そして,本件発明の第1実施例は,左右に並んだホールIC31,32の下面から入力用端子(中央で左右に並んだ端子)と接地用端子が,それぞれ下方向に向けて引き出され,2個の磁気検出素子を並列に180度逆方向で配置することにより,リードフレーム33を含めた2個の磁気検出素子の組付けが簡単になる構成を開示しており,本件発明の特許請求の範囲が第1実施例によりサポートされていることは明らかである。さらに本件発明は第3実施例によってもサポートされている。
原告は,別紙1の参考資料2のように,信号入力用端子と接地用端子が,それぞれ間に別の端子を挟まないような形でまとめられてそれぞれ別々の方向に引き出さ 12 れる引き出し方が,「前記信号入力用及び前記接地用の端子は…端子毎に同じ方向へ引き出されて」に該当すると解すべきである旨主張するところ,この参考資料2の形態は本件明細書の第1実施例と同一ではないが,そもそも本件発明を参考資料2の形状に限定すべき根拠はない。なお,参考資料2は磁気検出素子のみの記載であり,外部接続端子との接続構造が不明であるため,属否は判断できないが,磁気検出素子が外部接続端子ではなくプリント基板に接続される構成であれば,本件発明には含まれない。
本件発明の典型的な例は第1実施例の形態であるが,本件発明が実施例の形態に限定されるべきものでないことはもちろんである。別紙2の参考図2は,複数の磁気検出素子が外部接続端子に直接接続される例であるが,この参考図2においても,2つの磁気検出素子の信号入力用及び接地用の端子は図中下面からそれぞれ下方に引き出されて,外部接続端子の信号入力用端子と接地用端子に接続しているのであって,本件発明の構成を全て備えるとともに,磁気検出素子及び外部接続端子の組み付けを簡単にするという本件発明の作用効果を奏することから,参考図2の形態は本件発明に含まれることとなる。
(2) 実施可能要件について 原告は,第1実施例が,端子の種類毎にまとめて間に別の種類の端子を挟まずに,かつ,それぞれ別々の方向へ引き出す例となっていないことから,本件発明には実施可能要件違反がある旨主張する。
しかし,本件発明を,原告主張の別紙1の参考資料2の形態に限定すべき根拠がないこと,及び本件発明の第1実施例,さらには第3実施例が本件発明をサポートしていることは,前記(1)のとおりである。
したがって,本件発明は,本件明細書の発明の詳細な説明において,当業者が実施可能な程度に明確かつ十分に説明されており,実施可能要件を充足する。
2 取消事由2(特許法17条の2第3項違反についての判断の誤り)について〔原告の主張〕 13 (1) 本件審決は,本件補正が特許法17条の2第3項に違反するか否かについて,おおむね,以下のとおり,判断した。
本件明細書と出願当初明細書の相違(補正箇所)は,特許請求の範囲,【0009】(特許請求の範囲に対応する記載)【0048】 , (第3実施例の記載箇所)及び【0095】(符号の説明)のみであって,第1実施例の記載箇所(【0010】〜【0042】及び図1〜7)は,補正されていない。そうすると,出願当初明細書に「各磁気検出素子の…少なくとも2つの同一位置に配置された各端子…は…端子毎に同じ方向へ引き出されて」との構成が記載されていると判断できることは,前記1〔原告の主張〕(1)と同様である。したがって,本件特許は,出願当初明細書の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入する補正をした特許出願に対してされたものとはいえず,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものではない。
(2) しかし,前記1〔原告の主張〕(1)イのとおり,第1実施例は,全ての端子がただ単に同一方向に真っすぐ引き出されているだけで,「各磁気検出素子の…少なくとも2つの同一位置に配置された各端子は…端子毎に同じ方向へ引き出されて」との構成になっておらず,特に接地用端子はそうなっていない。そうすると,第1実施例は,本件補正によって補正された請求項1の「各磁気検出素子の…少なくとも2つの同一位置に配置された各端子は…端子毎に同じ方向へ引き出されて」との構成を開示するものでないことは明らかである。
請求項1のように,各磁気検出素子の少なくとも2つの同一位置に配置された各端子を,端子毎に同じ方向に引き出す構成としているのは,本件明細書の第1実施例とは異なる,2個のホールIC31,32を直列に同方向で配置した図8の第2実施例(【0043】 【0044】 , )である。この図8の第2実施例の斜視図は,別紙1の参考資料3のとおりである。
したがって,本件補正は出願当初明細書の記載の範囲を超えるものであり,新規 14 事項の追加として特許法17条の2第3項に違反するから,本件審決の前記(1)の判断は誤りである。
〔被告の主張〕 本件出願は,特願2000-147238号の優先権を主張する分割出願であり,出願当初は第1実施例及び第3実施例に対応する複数の磁気検出素子を並列に180度逆方向で配置する発明を請求項1で記載し,第2実施例に対応する複数の磁気検出素子を直列に同方向で配置する発明を請求項2で記載していた。本件補正及び平成18年6月21日付け手続補正書による補正は,請求項2を削除する補正とそれに伴う明細書の補正であって,第1実施例に関しては補正されていない。
原告の主張は,請求項1の発明は別紙1の参考資料2のように解すべきであって,第1実施例を含んでいないとする独自の解釈に基づくものであって,同主張が誤りであることは,前記1〔被告の主張〕(1)のとおりである。
したがって,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしているとの本件審決の判断に誤りはない。
3 取消事由3(新規性の判断の誤り)について〔原告の主張〕 (1) 相違点1は実質的な相違点ではないこと 引用例1の【0020】の記載から明らかなように,引用発明1のターミナル24a,24bが本件特許の構成のうち「2つは前記磁気検出素子の出力を外部に取り出すための外部接続端子」に相当し,ターミナル24cが前記構成の「また1つは前記磁気検出素子に電源電圧を外部から印加するための外部接続端子」に相当し,ターミナル24dが前記構成の「さらに1つは前記磁気検出素子を外部に接地するための外部接続端子」に相当するものであり,本件審決が挙げる相違点1は実質的な相違点ではない。
(2) 相違点2は実質的な相違点ではないこと 引用発明1の各ホール素子21,22が有する端子は4つであるが,これは信号 15 入力用端子,接地用端子のほかに,信号出力用端子が2つあるからであり,本件発明と同様に信号入力用端子,接地用端子,信号出力用端子を有していることに変わりはなく,また,本件発明では「3つの端子を有し」となっていて4端子を排除していないから,この点は本件発明との相違にならない。したがって,本件審決が挙げる相違点2も実質的な相違点ではない。
(3) 相違点3は実質的な相違点ではないこと 本件明細書中には,本件発明の構成要件中「並列に180度逆方向」の明確な定義がなく,このような場合には,各語の一般的解釈からその意味を理解すべきである。そして,広辞苑によれば,「並列」は「並びつらなること」と,「逆」は「方向が反対であること」と,それぞれ解説されている。したがって,本件発明の「磁気検出素子は,並列に180度逆方向で配置され」は,2つの磁気検出素子を,並べて180度逆の向きに配置する構成を意味することになる。
ところで,引用例1の図1,3,5,6及び【0014】の記載から明らかなように,永久磁石15の中空部内にてロータ5の回転軸に沿った面に平行で,しかも回転軸を中心に対称な位置に配置されている2つのホール素子21,22の配置関係は,上記の2つの磁気検出素子を,並べて180度逆の向きに配置する構成に該当するから,ホール素子21,22は,並列に180度逆方向に配置されていることになる。
そして,各ホール素子21,22のそれぞれの端子は,ホール素子21,22の同一面より,全て同じ方向(引用例1の図1,図5ではプリント基板27の方向)に引き出されてプリント基板27上で外部接続端子である電源電圧(Vcc)供給用の端子であるターミナル24c,接地(Gnd)用端子であるターミナル24d,検出信号出力端子であるターミナル24a,24bに接続されている。したがって,引用例1には,信号入力用,信号出力用,接地用の端子を有する複数の磁気検出素子を,並列に180度逆方向に配置し,かつ各端子を磁気検出素子の同一面より引き出すとともに,信号入力用及び接地用端子を信号入力用及び接地用の外部接続端 16 子に接続する構成が開示されている。
また,「並列に180度逆方向」の配置とは,本件発明の図6のような磁気検出素子の配置を意味するとしても,この配置と全く同じ配置が周知例1の2つのホール素子31,32の配置関係を示す図4に明確に開示され,また,周知例3及び4にも一般技術として記載されており,このような配置は周知・慣用技術にすぎない。
したがって,本件審決が挙げる相違点3も実質的な相違点ではない。
(4) 相違点4は実質的な相違点ではないこと 相違点4では,ホール素子21,22の4つの端子のうち2つの端子が,それぞれ反対方向に折り曲げられてから固定されていることを相違点としているが,端子毎の同じ方向への引き出しについて,本件発明の第1実施例のようなただ真っすぐに端子を引き出す構成が含まれるとすれば,実質的な相違点ではない。また,ホール素子21,22の端子が,センサ回路50,60の駆動回路を介してターミナルに接続されていることも相違点としているが,この点も実質的な相違点ではない。
(5) 作用効果に相違がないこと 引用発明1が2個のホール素子を備えることにより得られる効果は,本件発明の「一方のホールICが故障しても他方のホールICによりスロットル開度を検出できるようにするためと,一方のホールICの誤作動を検出できるようにする」との効果(本件明細書の【0042】)と全く同じであるし,2個のホール素子の組付けが簡単であるとの効果も同様である(同【0040】)から,作用効果上も,引用発明1の開示事項と,本件発明との間に相違はない。
(6) 小括 以上によれば,本件審決による相違点の認定及び本件発明が特許法29条1項3号に違反しないとの判断は,誤りである。
〔被告の主張〕 (1) 本件発明は磁気検出素子が直接外部接続端子に接続する構成であるのに対し,引用発明1はホール素子がプリント基板27に取り付けられる構成となってい 17 るので,本件審決は,この点を相違点1,相違点2及び相違点4として認定した。
また,本件発明は複数の磁気検出素子を外部接続端子に接続する上での,磁気検出素子の配置上の工夫点を規定しているのに対し,引用発明1にはそのような示唆がないことから,本件審決は,その点を相違点3として認定した。
本件発明は,複数の磁気検出素子を外部接続端子に直接接続することで組付けを簡単にするものであり,相違点1,相違点2及び相違点4はこの根幹に係る相違点であって,実質的な相違点である。
(2) 相違点2について 原告は,本件発明は4端子のホール素子を文言上除外していないと主張するが,本件審決もホール素子の端子の数のみで引用発明1と本件発明との差別化を図っているものではない。ホール素子の端子の数が問題となるのは,ホール素子21,22が外部接続端子に接続されるか,センサ回路50,60の駆動回路及び差動増幅回路に接続されるかという相違を認定した相違点2であるが,センサ回路50,60と接続する上ではホール素子21,22が4つの端子を持つことが必要となるのであって,相違点2においても本質的な相違は,端子の数ではなく,ホール素子21,22が外部接続端子に直接接続するのか,プリント基板27のセンサ回路50,60に接続するのかであって,この点は実質的な相違点である。
(3) 相違点3について 第1実施例と第2実施例との対比より,「並列に180度逆方向で配置」とは,ホールIC31の下面とホールIC32の下面とが左右に隣接して並べられ,かつ,ホールIC31の下面の扁平な台形とホールIC32の下面の扁平な台形との上下が逆さまとなる配置であり,また,本件明細書の【0021】【0041】の記載 ,を参照すれば,ホールIC31とホールIC32との感面の向きが磁界の方向に対し逆向きで,2つの磁気検出素子の下面それぞれにおける3つの端子の起点が一列に並ぶように配置されているものということができる。これに対して,引用発明1のホール素子21,22は,ロータ5の回転軸を中心に対称な位置に配置されてい 18 るものであって,本件発明の上記配置でないことは明らかである。したがって,相違点3を認定した本件審決に誤りはない。
4 取消事由4(進歩性の判断の誤り)について〔原告の主張〕 仮に相違点1ないし4を相違点と認めたとしても,以下のとおり,引用発明1に基づいて,本件発明に想到することは容易である。
(1) 本件発明は,引用発明1及び引用発明2から容易に発明できたものであること ア 本件審決の判断 本件審決は,本件発明が,引用発明1及び引用発明2から容易に発明できたものであるか否かについて,おおむね,以下のとおり,判断した。
引用発明2は,ホールIC4の3つの端子を有する面と,ホールIC5の3つの端子を有する面は,それぞれリードフレーム1のベース1aの表面側と裏面側にあるから,本件発明の「前記複数の磁気検出素子は,並列に180度逆方向で配置され」の要件を備えていない。
引用発明2は,一対のホールICの出力を共通接続して検出出力しているから,本件発明の「磁気検出素子の出力を外部に取り出す「2つ」の外部接続端子」を備えていない。
引用発明2のリードフレーム1に接続される「ワイヤ」は ,「ホールIC4,5」から上下別々の方向に引き出されているから,本件発明の「前記複数の磁気検出素子が夫々有する前記3つの端子の内の各磁気検出素子の同一位置に配置された端子の少なくとも2つの同一位置に配置された各端子であって前記信号入力用及び前記接地用の端子は各磁気検出素子の同一位置に配置された端子毎に同じ方向へ引き出されて前記外部接続端子のうち電源電圧を印加する信号入力用端子及び接地端子と接続されている」の要件を備えていない。
以上のとおりであるから,引用発明1と引用発明2とが「磁気検出素子を用いた 19 検知技術」という同じ技術分野に属するとしても,故障診断のために2つの素子を設けた引用発明1に,両方向(N極及びS極)を検出することを目的として一対のホールICの出力を共通接続して検出出力とするようにした引用発明2を適用すべき理由はなく,仮に,引用発明1に引用発明2を適用しても,相違点3及び相違点4の要件が導かれることにならない。
したがって,本件発明は引用発明1及び引用発明2に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。
イ 引用発明2の認定の誤り 引用発明2において,磁気検出素子であるホールIC4,5は互いに背中合わせの状態になるように並べられ,磁気検出素子(ホールIC4,5)から端子(ワイヤ)を引き出す起点を有する面は,ホールIC4と5で磁界に対する感面が磁界に対して互いに逆方向となっているから,引用発明2は,「前記複数の磁気検出素子は,並列に180度逆方向で配置され」との構成を開示している。
引用発明2では,ホールIC4,5の信号出力端子がリードフレーム3に共通に接続されているが,使用目的によって信号出力端子から別々に出力をとることは適宜なされることである。引用発明1との組合せに際して,引用発明1は出力を2つとるように構成されているから(ターミナル24a,24b),当然に引用発明2の信号出力端子は共通化することなく,ホールIC4,5のそれぞれの信号出力端子を外部接続端子であるリードフレームに接続することになる。したがって,引用発明2が,本件発明の「磁気検出素子の出力を外部に取り出す「2つ」の外部接続端子」を備えていない点は,本件発明との実質的な相違ではない。
引用発明2では,ホールIC4,5の信号入力用及び信号出力用の2つの端子は,リードフレーム2,リードフレーム3の方向に引き出されている。この点で,本件発明の「2つの同一位置に配置された端子は…端子毎に同じ方向へ引き出されて」との要件を具備している。確かに,引用発明2において,接地端子は,まず上下に引き出されているが,その後,共にリードフレーム1の方向に引き出されていると 20 いう点で,同一方向へ引き出されているということができる。また,この構成により磁気検出素子及び端子の組付けが簡単になるという本件発明の目的と同一の目的が達成できている。そして,同一方向に引き出されているのが信号出力端子か接地端子かの相違は,当業者がその目的に応じて設計する選択事項にすぎない。したがって,この点は実質的な相違点にはならない。
容易想到性の判断の誤り ホール素子に代えてホールICを用いることができること,ホール素子が4端子であるのに対して,ホールICが3端子であることや,それによって各端子の役割が異なることなどは,引用例2及び周知例1を参照するまでもなく,技術常識である。また,磁気検出素子として3端子のホールICを用いることは,引用例2に開示されている。したがって,引用例1の一対のホール素子を,引用例2や周知慣用技術に基づいて,一対のホールICで置き換えることは当業者にとって容易である。
そして,相違点1,2,4は,結局,ホール素子とホールICの違いに起因するもので,引用発明1の2個のホール素子を引用例2のホールICに置き換えれば,必然的に解消する相違点である。そして,2個のホール素子を2個のホールICで置き換えれば,同様の効果が得られることは技術常識であるから,これを置き換えることは当業者にとって容易である。
この点,引用発明1と引用発明2とは,いずれも本件発明と同様に磁気検出素子を用いた検知技術に関するものであって技術分野が共通し,かつ,2つの磁気検出素子を逆向きにして逆方向の磁界を検出するという目的も共通しているから,両者を組み合わせることに技術的困難性はなく,引用発明1の回転角度検出装置に,引用発明2を組み合わる動機付けがあり,これを組み合わせれば,本件発明の全ての構成が容易に得られる。
なお,引用発明2は,本件発明の実施例と同様にホールICであるから,引用例1のセンサ回路50,60はホールICに内蔵されているため不要になる。したがって,引用発明1と引用発明2を組み合わせれば,本件発明の図5〜7の第1実施 21 例と同じ構成が得られる。
以上より,本件発明は,引用発明1及び引用発明2から容易に発明できたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
(2) 本件発明は,引用発明1に周知例1を適用することで容易に発明できたものであること 本件審決は,引用発明1の「ホール素子21,22」の配置を,周知例1記載の技術のように,「それぞれ逆方向の磁束を検知しうるように」 「互いに並んで接触 ,するように逆向きに配設」したのでは,ホール素子21とホール素子22とで,ロータ回転角θ(deg)に対するホール素子出力VH(mV)が正負反対の値となってしまい,引用発明1の課題である「スロットルポジションセンサの故障診断を確実に行う」こととは相容れない変更となってしまうから,相違点3について,引用発明1に周知例1記載の技術を適用する動機付けがなく,相違点3は当業者が容易になし得たことではない旨判断した。
しかし,2つのホール素子の出力を比較して故障診断するには,出力の大きさを比較すれば足りるのであって,符号の正負は関係がなく,2つのホール素子の出力の符号が同じ構成の場合は両出力の差を計算し,2つのホール素子の出力の符合が異なる構成の場合は両出力の和を計算すれば,それぞれ故障診断ができる。このことは,本件明細書の【0041】【0042】からも明らかである。
, そうすると,引用発明1に周知例1を適用して,2つのホール素子の出力が正負反対になったとしても,引用発明1の課題である「確実に故障検知する」という効果を奏することができるから,引用発明1に周知例1を適用する動機付けがないとする本件審決の認定は誤りである。引用発明1も周知例1も本件発明と同様に磁気検出素子を用いた検知技術に関するものであって,技術分野が共通するから,これらを組み合わせることに技術的困難性はない。
また,本件審決は,周知例1には端子の引き出し方の具体的記載がない旨認定したが,本件発明の第1実施例の端子は,全ての端子を買ったときのまま真っすぐ引 22 き出しているだけで,何ら特徴のない引き出し方であり,引用発明1に周知例1を適用することで本件発明が構成されることは,当業者であれば容易に想到できる。
したがって,引用発明1に周知例1を適用することで,本件発明が構成されるから,本件発明に進歩性はない。
(3) 本件発明は,引用発明1に引用発明2や周知例3及び4記載の周知慣用技術を組み合わせれば,容易に発明できたものであること 2つの磁気検出素子を本件明細書の第1実施例の図6のごとく,「並列に180度逆方向」に配置する構成は,「リードフレーム33を含めた2個のホールIC31,32の組み付けが簡単になる」ためのものであるところ(【0040】 ,この )ような配置は周知例1の図4,周知例3及び4に開示されている周知慣用技術であるから,引用発明1にこの周知慣用技術を適用して,第1実施例の図6のごとくすることは容易である。
また,周知例3及び4は,周知慣用の2つの素子の組付け技術を示したものであり,本件発明や引用発明1のように,2つの磁気検出素子と端子の組付け技術が必要になるものに,やはり2つの素子の端子を含めた組付けを容易にする周知例3及び4の上記周知慣用技術を用いるのに何らの困難性もなく,また,組付けを容易にするという点で,周知例3及び4記載の周知慣用の技術は本発明と目的を共通するものであり,十分に適用の動機付けがある。
〔被告の主張〕 (1) 本件発明は引用発明1及び引用発明2から容易に発明できたものではないこと ア 本件審決の引用発明2の認定に誤りはないこと 本件審決は,引用発明2の一対のホールICが反転していることは認めており,並列配置を,磁気検出素子の同一面から引き出される3つの端子が横一列に並ぶような配置と捉え,かかる並列配置が引用発明2に開示されていないとしたのであって,この本件審決の認定に誤りはない。
23 引用発明2は,N極とS極との有無を検出する二方向磁界タイプとするために,磁電変換ICの電源入力及び出力をそれぞれリードフレームに共通接続し,その出力を共通出力して検出出力とするようにしたものであって,出力端子を1つにまとめて共通化することは,その課題達成のための主要構成であって,決して適宜選択するようなものではない。したがって,引用発明2は「2つ」の外部接続端子を備えないとした本件審決の認定に誤りはない。
引用発明2は,2つの磁気検出素子(ホールIC)を並列に配置したものではなく,外部接続端子(リードフレーム)信号出力用端子も共用するものであるから,そもそもワイヤの引き出しをホールICの同一面から行う必要も,信号入力用端子及び接地用端子を同じ方向へ引き出すニーズもない。したがって,引用発明2には,本件発明の「前記複数の磁気検出素子が夫々有する前記3つの端子の内の各磁気検出素子の同一位置に配置された端子の少なくとも2つの同一位置に配置された各端子であって前記信号入力用及び前記接地用の端子は各磁気検出素子の同一位置に配置された端子毎に同じ方向へ引き出されて前記外部接続端子のうち電源電圧を印加する信号入力用端子及び接地端子と接続されている」の要件が備わっていないとした本件審決の認定に誤りはない。
容易想到性の判断について 相違点1,2,4は,ホール素子とホールICの違いに起因するものではなく,引用発明1のようにホール素子をプリント基板のセンサ回路に接続するのか,本件発明の様に磁気検出素子を外部接続端子に接続するのかの違いに起因する,磁気検出素子の組付けの根幹に係る相違である。
引用発明1は,2つのホール素子をプリント基板のセンサ回路に接続するものであり,これに対して,引用発明2は2つのホールICを共通のリードフレームに接続して1つのセンサとして検出出力とするものである。したがって,いずれも2つの磁気検出素子を4つ(2つの出力,1つの入力,1つの接地)の外部接続端子に接続することについては開示も示唆もない。この引用発明1と引用発明2とを組み 24 合わせても本件発明を想到し得ないことは明らかである。
引用発明1は,出力信号からセンサの故障を検出できるようにすることを目的とするものであるため,2つの素子がそれぞれのセンサ回路を経て2つの検出信号を出力することが,引用発明1にとって必須の構成である。これに対して,引用発明2は,2方向磁界タイプのセンサ提供が目的であり,2つのホールICの出力は単一のリードフレームからまとめて検出出力とすることが求められている。この使い方の相違は,それぞれ引用発明1及び引用発明2にとって基本的な事項であり,単なる検出出力の用い方の相違ではない。したがって,引用発明1に引用発明2を適用すべき理由はない。
(2) 本件発明は引用発明1に周知例1を適用することにより容易に発明できたものではないこと 本件発明は,2つの磁気検出素子を4つの端子を備えた外部接続端子に直接接続するものである。これに対して,引用発明1は,ホール素子をプリント基板のセンサ回路に接続しており,相違点1,2,4が認められる。周知例1に関しても,ホール素子12,13はセンサ回路15に含まれているので,センサ回路15,定電圧回路16,表示出力回路17,保護回路18を構成するプリント基板に接続されると理解される。
したがって,ホール素子がプリント基板に接続される引用発明1に,同じくホール素子がプリント基板に接続される周知例1を組み合わせたとしても,2つの磁気検出素子を外部接続端子に直接接続する本件発明が得られるものではない。
しかも,周知例1は2つのホール素子12,13を1つにまとめて出力するものであるから,検出信号は1つの出力端子Voutから出力される。したがって,周知例1の外部接続端子は,入力Vcc(+)と,接地GNDと出力Voutの3つであり,本件発明のように4つの端子を備えるものでもない。
このように,周知例1は引用発明2と同様,ホール素子自体は2つ備えるもののセンサとしては1つの検出信号を出力するものである。引用発明1が,出力信号か 25 らセンサの故障を検出できるようにすることを目的とするものであるため,2つの素子がそれぞれのセンサ回路を経て2つの検出信号を出力することが必須の構成であることは,前記(1)イのとおりである。そのため,検出信号が1つである周知例1を組み合わせる動機付けがない。
(3) 本件発明は引用発明1に引用発明2や周知例3及び4記載の周知慣用技術を組み合わせても容易に発明できたものではないこと 周知例3及び4はいずれもトランジスタをプリント基板に接続する事例であり,外部接続端子と直接接続するものではない。しかも,本件発明の磁気検出素子は2つの素子が検出する磁気を同様とするため隣接配置されることが求められているのに対し,トランジスタではプリント基板のどこに配置されてもスイッチング機能に差が出るものでもない。したがって,トランジスタをプリント基板に接続する例からは,磁気検出素子の配置に関して何らの示唆も受けない。
しかも,引用発明1でホール素子21,22がセンサ回路50,60に接続されるのは,故障診断機能を奏するとの意味を持つものであるから,単なるトランジスタのプリント基板接続技術が引用発明1に組み合わされるものではない。
したがって,ホール素子をプリント基板のセンサ回路に接続する引用発明1に,トランジスタをプリント基板に接続する周知例3及び4の技術を組み合わせたとしても,2つの磁気検出素子を4つの端子を備えた外部接続端子に直接接続する本件発明が導かれるものではない。
当裁判所の判断
1 本件発明について (1) 本件発明に係る特許請求の範囲は,前記第2の2記載のとおりであるところ,本件明細書(甲12)の発明の詳細な説明には,おおむね,次の記載がある(下記記載中に引用する図のうち,図1,2,4〜8は別紙3を参照。) ア 技術分野【0001】本発明は,被検出物の回転角度を検出する非接触式の磁気検出素子を 26 ロータコアに設けられた磁石に対向して配置した回転角度検出装置に関するもので,例えば自動車の回転弁の回転角度を検出するホール素子,ホールIC等の非接触式の磁気検出素子を備えた回転角度検出装置に係わる。
イ 背景技術【0002】従来より,スロットル弁等の回転弁の回転角度を検出するスロットルポジションセンサとしては,特開昭62-182449号公報および特開平2-130403号公報に開示された構造のものがある。先ず,特開昭62-182449号公報で開示されたスロットルポジションセンサは,スロットル弁のシャフトの先端に可変抵抗体部を有する絶縁基板が固定されてスロットル弁のシャフトの回転に伴ってシャフトと一体的に回転し,センサケース側に固定された固定端子と接触することで,外部へ出力するものである(第1従来例)。
【0003】また,特開平2-130403号公報で開示されたスロットルポジションセンサは,スロットル弁のシャフトの先端に磁界発生源である永久磁石とヨークを保持部材を介して固定してスロットル弁のシャフトと一体的に回転するように構成され,スロットル弁のシャフトの回転角度を検出するホール素子と信号処理回路部は基板に配置され,リードフレームを介してコネクタに接続され,外部へ出力するものである(第2従来例)。
ウ 発明が解決しようとする課題【0004】ところが,第1従来例のスロットルポジションセンサのセンサケース側には,樹脂一体成形等で配設された入出力用のコネクタピンと樹脂成形後に何らかの機械的手段で固定された固定端子とが設けられているが,上記の絶縁基板との組み付けに関し,センサケース側に特別な工夫を施した構成を有していない。これにより,センサケース側の固定端子とスロットル弁のシャフトと一体的に回転する絶縁基板との位置関係がズレ易く,スロットル弁の開度の検出精度が低下するという問題があった。
【0005】一方,第2従来例のスロットルポジションセンサにおいて,基板,リ 27 ードフレーム,コネクタ等の電気部品は樹脂による一体成形でモジュール化され,スロットルボディにねじ固定される。このとき,スロットルボディ側にはモジュールの収容部の取り付け精度を上げるための機械加工が成されている。このような組み付けでは,スロットル弁のシャフトのスラストガタの影響が残るという問題や,種々の部品組み付けに先立つ加工の精度や加工工数が必要となるという問題がある。
【0008】本発明の目的は,磁気検出素子および外部接続端子の組み付けを簡単にすることのできる回転角度検出装置を提供することにある。
エ 課題を解決するための手段【0009】請求項1に記載の発明によれば,磁石の磁力を受けて被検出物の回転角度を検出し同じ配列の3つの端子を有し且つ同形状を有する磁気検出素子の3つの端子は,電源電圧を印加する信号入力用,信号出力用,及び接地用の端子であり,複数の磁気検出素子を,並列に180度逆方向で配置されて,3つの端子は磁気検出素子の同一面より引き出され,複数の磁気検出素子が夫々有する3つの端子の内の各磁気検出素子の同一位置に配置された端子の少なくとも2つの同一位置に配置された各端子であって信号入力用及び接地用の端子は各磁気検出素子の同一位置に配置された端子毎に同じ方向へ引き出されて外部接続端子のうち電源電圧を印加する信号入力用端子及び接地端子と接続することにより,外部接続端子を含めた磁気検出素子の組み付けが簡単になる。
オ 発明を実施するための最良の形態 (ア) 第1実施例の構成【0010】発明の実施の形態を実施例に基づき図面を参照して説明する。図1ないし図7は本発明の第1実施例を示したもので…ある。
【0011】本実施例の内燃機関用吸気制御装置は,内燃機関(エンジン)への吸気通路を形成するスロットルボディ(本発明のハウジングに相当する)1と,このスロットルボディ1内に回動自在に支持されたスロットル弁(スロットルバルブ)2と,このスロットル弁2のシャフト部であるスロットルバルブシャフト(以下シ 28 ャフトと略す)3と,シャフト3を回転駆動するアクチュエータ4と,このアクチュエータ4を電子制御するエンジン制御装置(以下「ECU」という。)とを備えている。
【0012】…また,内燃機関用吸気制御装置は,スロットル弁2の開度を電気信号(スロットル開度信号)に変換し,ECUへどれだけスロットル弁2が開いているかを出力する回転角度検出装置5を備えている。
【0014】スロットル弁2は,本発明の被検出物(回転体)に相当するもので,エンジンに吸入される空気量をコントロールするバタフライ形の回転弁で,シャフト3の外周にねじ等の締結具を用いて固定されている。…【0015】シャフト3は,被検出物(回転体)のシャフト部に相当するものである。このシャフト3の一端部には,樹脂ギヤ16をインサート成形したロータコア17がかしめ等の手段を用いて固定されている。…【0019】回転角度検出装置5は,所謂スロットルポジションセンサで,磁界発生源である円筒形状の永久磁石6と,樹脂成形品(センサカバー)7側に一体的に配置された2個のホールIC31,32と,これらのホールIC31,32と外部のECUとを電気的に接続するための導電性金属薄板よりなるリードフレーム(複数のターミナル)33と,2個のホールIC31,32への磁束を集中させる鉄系の金属(磁性材料)よりなる2分割されたステータコア34とから構成されている。
【0020】永久磁石6は,スロットル弁2およびそのシャフト3と一体的に回転する鉄系の金属(磁性材料)製のロータコア17の内周面に接着剤等を用いて固定され,あるいは樹脂と一体モールドにより固定され,回転角度検出装置5の磁気回路に磁束を与える部品である。本実施例の永久磁石6は,着磁方向が径方向(内周側がN極,外周側がS極)の半円弧形状の磁石部分と,着磁方向が径方向(内周側がS極,外周側がN極)の半円弧形状の磁石部分とから構成されている。…【0021】2個のホールIC31,32は,本発明の非接触式の磁気検出素子に相当するもので,永久磁石6の内周側に対向して配置され,感面にN極またはS極 29 の磁界が発生すると,その磁界に感応して起電力(N極の磁界が発生すると+電位が生じ,S極の磁界が発生すると-電位が生じる)を発生するように設けられている。本実施例では,図5および図6に示したように,2個のホールIC31,32を並列に180度逆方向で配置している。
【0022】リードフレーム33は,図5および図6に示したように,コネクトホルダー35およびセンサカバー7内に埋設されて位置決め保持されており,導電性金属(銅板等)よりなり,信号入力(VDD)用端子40,2枚の信号出力(OUT1,OUT2)用端子41,42および接地(GND)用端子43等から構成されている。信号入力用端子40は,電源電圧(例えば5Vのバッテリ電圧)を2個のホールIC61,62にそれぞれ印加する導電板である。
【0028】そして,センサカバー7の側面には,コネクタ49が一体的に設けられている。そのコネクタ49は,センサカバー7の側面に一体成形された絶縁樹脂製のコネクタシェル50,リードフレーム33の信号入力用端子40,信号出力用端子41,42および接地用端子43の先端部(コネクタピンを構成する)51〜54,およびモータ9のモータ用通電端子22の先端部(コネクタピンを構成する)55,56等から構成されている。
(イ) 第1実施例の組付方法【0030】導電性金属薄板をプレス成形することによって所定の形状のリードフレーム33を形成する。そして,図5および図7(a)に示したように,2個のホールIC31,32のリード線36,37と信号入力用端子40,信号出力用端子41,42および接地用端子43とを電気的に接続する。
【0031】そして,図7(b)に示したように,2個のホールIC31,32のリード線36,37,信号入力用端子40,信号出力用端子41,42および接地用端子43よりなる電気配線部品の一部(接続部分)を,例えばPBT樹脂による一体成形(射出成形)によって一体化する(1次成形工程)。…【0032】そして,図7(c)に示した2分割されたステータコア34を第1樹 30 脂成形品35の外周にそれぞれ嵌め合わせて固定する(組付工程)。…【0033】そして,図1に示したように,2個のホールIC31,32のリード線36,37,信号入力用端子40,信号出力用端子41,42および接地用端子43,ステータコア34,モータ用通電端子22を,例えばPBT樹脂による一体成形(射出成形)によって一体化する(2次成形工程)。… (ウ) 第1実施例の効果【0040】また,本実施例のスロットル弁2へ直接組み付ける構成の回転角度検出装置5では,図5および図6に示したように,2個のホールIC31,32を,並列に180度逆方向で配置することにより,リードフレーム33を含めた2個のホールIC31,32の組み付けが簡単になる。
【0042】ここで,2個のホールIC31,32を使用する理由は,一方のホールICが故障しても他方のホールICによりスロットル開度を検出できるようにするためと,一方のホールICの誤作動を検出できるようにするためである。
(エ) 第2実施例【0043】図8は本発明の第2実施例を示したもので,2個のホールICとリードフレームとの接続部分を示した図である。
【0044】本実施例では,2個のホールIC31,32を,直列に同方向で配置することにより,リードフレーム33を含めた2個のホールIC31,32の組み付けが簡単になる。
(オ) 変形例【0088】本実施例では,非接触式の磁気検出素子としてホールIC31,32,61,62,95を使用した例を説明したが,非接触式の磁気検出素子としてホール素子または磁気抵抗素子等を使用しても良い。… (2) 前記(1)の記載によれば,本件明細書には,本件発明に関し,以下の点が開示されていることが認められる。
本件発明は,被検出物の回転角度を検出するホール素子,ホールIC等の非接触 31 式の磁気検出素子をロータコアに設けられた磁石に対向して配置した回転角度検出装置に関する(【0001】。
) 本件発明は,同じ配列の3つの端子を有し,かつ,同形状を有する複数の磁気検出素子と,2つは磁気検出素子の出力を外部に取り出し,また1つは磁気検出素子に電源電圧を外部から印加し,さらに1つは磁気検出素子を外部に接地するための,少なくとも4つの外部接続端子とを備えた非接触式の回転角度検出装置において,磁気検出素子及び外部接続端子の組付けを簡単にすることを目的とする(【0008】【0009】。
, ) 本件発明は,@磁気検出素子の3つの端子は,電源電圧を印加する信号入力用,信号出力用,及び接地用の端子であり,A複数の磁気検出素子は,並列に180度逆方向で配置されて,3つの端子は磁気検出素子の同一面より引き出され,B複数の磁気検出素子がそれぞれ有する3つの端子のうちの各磁気検出素子の同一位置に配置された端子の少なくとも2つの同一位置に配置された各端子であって,信号入力用及び接地用の端子は,B-(a)各磁気検出素子の同一位置に配置された端子毎に同じ方向へ引き出されて,B-(b)外部接続端子のうち,磁気検出素子に電源電圧を外部から印加する信号入力用端子及び磁気検出素子を外部に接地するための接地端子と接続されている,ことを特徴とする回転角度検出装置であり,かかる構成とすることにより,上記目的を達成しようとするものである(【0009】。
) そして,第1実施例は,非接触式の磁気検出素子に相当する2個のホールIC31,32が,永久磁石6の内周側に対向して配置され,感面にN極又はS極の磁界が発生すると,その磁界に感応して起電力を発生するように設けられ,図5及び図6のとおり,2個のホールIC31,32を並列に180度逆方向で配置し,リードフレーム33が,導電性金属(銅板等)よりなり,信号入力用端子40,2枚の信号出力用端子41,42及び接地用端子43等から構成され,図5及び図7(a)のとおり,2個のホールIC31,32のリード線36,37と信号入力用端子40,信号出力用端子41,42及び接地用端子43とを電気的に接続する 32 (【0021】 【0022】 【0030】〜【0033】 。そして,2個のホール , , )IC31,32を使用する理由は,一方のホールICが故障しても他方のホールICによりスロットル開度を検出できるようにするためと,一方のホールICの誤作動を検出できるようにするためであって,第1実施例においては,2個のホールIC31,32を,並列に180度逆方向で配置することにより,リードフレーム33を含めた2個のホールIC31,32の組付けが簡単になるとの効果を奏する(【0040】【0042】。
, ) 2 取消事由1(サポート要件及び実施可能要件についての判断の誤り)について (1) サポート要件について ア 特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
イ 原告は,本件発明の「前記信号入力用及び前記接地用の端子は…端子毎に同じ方向へ引き出されて」とは,別紙1の参考資料2のように,信号入力用端子と接地用端子が,それぞれ間に別の端子を挟まないような形でまとめられてそれぞれ別々の方向に引き出されるような態様を意味するものと解すべきところ,かかる引き出しの態様について,第1実施例はかかる構成を開示するものではなく,そのほか本件明細書には一切記載されていない上,当該構成によって何故「組み付けを簡単にする」という効果と結び付くのかが理解できないことから,本件発明は,発明の詳細な説明に記載されたものとはいえず,サポート要件に違反する旨主張する。
ウ そこで,検討するに,特許請求の範囲の「前記信号入力用及び前記接地用の 33 端子は各磁気検出素子の同一位置に配置された端子毎に同じ方向へ引き出されて」とは,各磁気検出素子の信号入力用の端子は同じ方向へ引き出され,また,各磁気検出素子の接地用の端子は同じ方向へ引き出されるという意味であることは,文言上,明らかである。
したがって,本件発明の「前記信号入力用及び前記接地用の端子は各磁気検出素子の同一位置に配置された端子毎に同じ方向へ引き出されて」には,@各磁気検出素子の信号入力用の端子の引き出し方向と,接地用の端子の引き出し方向とが同じであるために,各磁気検出素子の信号入力用の端子と接地用の端子がいずれも同じ方向へ引き出される態様(以下,この引き出し態様を「同方向引き出し態様」という。)と,A各磁気検出素子の信号入力用の端子の引き出し方向と,接地用の端子の引き出し方向とが異なるために,各磁気検出素子の信号入力用の端子と接地用の端子が別々の方向へ引き出される態様(以下,この引き出し態様を「別方向引き出し態様」という。)とが含まれることになる。
原告は,この点について,本件発明の「前記信号入力用及び前記接地用の端子は…端子毎に同じ方向へ引き出されて」とは,別紙1の参考資料2のように,信号入力用端子と接地用端子が,それぞれ間に別の端子を挟まないような形でまとめられてそれぞれ別々の方向に引き出されるような態様,すなわち,別方向引き出し態様に限定される旨主張するけれども,特許請求の範囲の文言上も,本件明細書の記載からも,このように限定解釈すべき理由はない。
そして,同方向引き出し態様が,第1実施例として本件明細書の発明の詳細な説明に記載されていることについては,当事者間に争いがないから,別方向引き出し態様が発明の詳細な説明に記載され又は記載されているに等しいか否かについて検討する。
エ 前記1(1)オ(ア)ないし(ウ)において摘示した本件明細書の第1実施例に関する記載中には,別方向引き出し態様についての記載はない。
ところで,第1実施例は,2個のホールIC31,32を,並列に180度逆方 34 向で配置することにより,リードフレーム33を含めた2個のホールIC31,32の組付けが簡単になる構成であるところ(【0040】 ,当該構成とは異なり, )請求項1の実施例ではないものの,本件明細書は,第2実施例として,2個のホールIC31,32を,直列に同方向で配置することにより,リードフレーム33を含めた2個のホールIC31,32の組付けが簡単になる構成を,【図8】(別紙3の【図8】)とともに開示している(【0043】【0044】。上記【図8】によ , )れば,第2実施例には,各磁気検出素子の信号入力用の端子と接地用の端子が別々の方向へ引き出される別方向引き出し態様が記載されていることが認められる。
確かに,第2実施例は,請求項1が「複数の磁気検出素子は,並列に180度逆方向で配置され」と記載されているのに対して,「複数の磁気検出素子は,直列に同方向で配置され」と記載されていること以外は,発明特定事項を共通にする請求項2の実施例として記載されたものであり,請求項2は,本件補正により補正され,平成18年6月21日付け手続補正書による補正によって削除されたものの,第2実施例の記載は本件明細書にそのまま残されたものであって(甲8,11),第2実施例自体は,本件発明に係る請求項1の実施例ではない。
しかし,第2実施例は,ホールIC31,32の配置態様が請求項1とは異なるものの,組付けが簡単になる効果を奏する構成を提示するものであり(【0044】,第2実施例においても第1実施例のように同方向引き出し態様を採用するこ )とに何らの技術的困難性がないにもかかわらず,あえて別方向引き出し態様を記載していることからすれば,当業者であれば,第2実施例の別方向引き出し態様は,第1実施例の同方向引き出し態様の別例として示され,同様に組付けが簡単になる効果を奏するものと理解するというべきである。このように,本件明細書において,別方向引き出し態様は,第2実施例のホールIC31,32の配置態様(第1実施例のように並列に180度逆方向で配置するのではなく,直列に同方向で配置すること)とは区別して理解し得る技術的事項であるから,当業者であれば,第2実施例の別方向引き出し態様を,第1実施例のホールIC31,32の配置態様に適用 35 することは,容易に理解し得る技術的事項であるということができる。
したがって,本件明細書の全体をみれば,本件発明に関しても,別方向引き出し態様が記載されているに等しいと認められる。
オ そうすると,本件発明は,前記ウのとおり,同方向引き出し態様及び別方向引き出し態様のいずれをも含むものであるところ,本件明細書の発明の詳細な説明には,同方向引き出し態様が記載されているのみならず,別方向引き出し態様も記載されているに等しいということができ,かつ,これらの引き出し態様によって,組付けが簡単になるという本件発明の課題を解決できることが認識できるから,本件発明は,サポート要件を充足するというべきである。
カ 原告の主張について 原告は,被告が,本件特許に対する第1次審決の取消請求事件の平成25年11月12日の弁論準備手続期日において,第1次訂正後の請求項1に係る発明は,同方向引き出し態様を意味し,別方向引き出し態様を含まない旨陳述したことから,以後の訴訟手続等において,請求項1が別方向引き出し態様を含むとして,上記陳述と矛盾する権利解釈を主張することは,禁反言の法理に照らし,許されない旨主張する。
しかし,前記ウないしオのとおり,特許請求の範囲請求項1は,文言上,同方向引き出し態様のみならず別方向引き出し態様をも含むと解され,本件明細書の発明の詳細な説明においても,同方向引き出し態様のほか別方向引き出し態様がサポートされており,別方向引き出し態様を除外する記載及び示唆は見当たらない以上,被告の第1次審決の取消請求事件の平成25年11月12日の弁論準備手続期日における上記陳述内容は,客観的にみて,特許請求の範囲請求項1の文言解釈として,当裁判所において採用することができないものである。よって,直ちに禁反言の問題は生じない。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
(2) 実施可能要件について 36 ア 原告は,本件発明の「前記信号入力用及び前記接地用の端子は…端子毎に同じ方向へ引き出されて」とは,別方向引き出し態様に限定されるところ,第1実施例は,同方向引き出し態様を開示するにすぎず,第1実施例からは,別方向引き出し態様の構成や,その構成によって,組付けが簡単になるという効果が得られることを理解することは不可能であるから,当業者であっても,端子をどのような引き出し方とすれば組付けが簡単になるという効果が得られるのかを理解できず,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,実施可能要件に違反する旨主張する。
イ しかし,前記(1)のとおり,本件発明は同方向引き出し態様のみならず別方向引き出し態様をも含むものであるから,原告の上記主張は,その主張の前提において失当である。
そして,前記1(1)のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明には,発明を実施するための最良の形態として,第1実施例の構成(【0010】〜【0012】,【0014】【0015】【0019】〜【0022】【0028】,第1実施例 , , , )の組付方法(【0030】〜【0033】,第1実施例の効果( ) 【0040】【00 ,42】)が記載され,さらに,前記(1)エのとおり,第2実施例において,別方向引き出し態様が開示され(【0043】 【0044】 【図8】 ,これにより,請求項 , , )1に関しても,別方向引き出し態様が本件明細書に記載されているに等しいと認められる。
そうすると,当業者であれば,かかる本件明細書の記載及び本件特許の優先権主張日当時の技術常識に基づいて,本件発明を実施することが可能であったというべきである。したがって,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,実施可能要件を充足する。
(3) 小括 以上によれば,本件発明は,サポート要件及び実施可能要件に違反するものではないから,取消事由1は理由がない。
3 取消事由2(特許法17条の2第3項違反についての判断の誤り)について 37 (1) 本件補正は,次のとおり,下記アの本件出願当初の請求項1について,下記イのとおり補正したものである(甲8,9)。
ア 本件出願当初の請求項1 磁石を有し,被検出物の回転に伴って回転するロータコアと,このロータコアの磁石の磁力を受けて前記被検出物の回転角度を検出する複数の磁気検出素子と,この磁気検出素子の出力を外部に取り出すための外部接続端子とを備えた非接触式の回転角度検出装置であって,/前記複数の磁気検出素子は,並列に180度逆方向で配置されていることを特徴とする回転角度検出装置。
イ 本件補正後の請求項1 磁石を有し,被検出物の回転に伴って回転するロータコアと,このロータコアの磁石の磁力を受けて前記被検出物の回転角度を検出し同じ配列の3つの端子を有し且つ同形状を有する複数の磁気検出素子と,少なくとも1つは前記磁気検出素子の出力を外部に取り出し,または1つは前記磁気検出素子に電源電圧を外部から印加し,さらに1つは前記磁気検出素子を外部に接地するための3つの外部接続端子とを備えた非接触式の回転角度検出装置であって,/前記複数の磁気検出素子は,並列に180度逆方向で配置され,前記複数の磁気検出素子が夫々有する前記3つの端子の内の各磁気検出素子の同一位置に配置された端子の少なくとも2つの同一位置に配置された各端子は各磁気検出素子の同一位置に配置された端子毎に同じ方向へ引き出されて前記3つの外部端子のいずれかと接続されていることを特徴とする回転角度検出装置。(下線部は,本件補正による補正箇所である。) (2) 原告は,本件補正により,請求項1には「各磁気検出素子の…少なくとも2つの同一位置に配置された各端子は…端子毎に同じ方向へ引き出されて」との構成が付加されたが,出願当初明細書の第1実施例は,全ての端子がただ単に同一方向に真っすぐ引き出されているだけで,「各磁気検出素子の…少なくとも2つの同一位置に配置された各端子は…端子毎に同じ方向へ引き出されて」との構成になっておらず,第1実施例は,本件補正によって補正された請求項1の上記構成を開示 38 するものではないから,本件補正は,出願当初明細書の記載の範囲を超えるものであり,新規事項の追加として特許法17条の2第3項に違反する旨主張する。
しかし,出願当初明細書と本件明細書との相違(補正箇所)は,特許請求の範囲,【0009】(特許請求の範囲に対応する記載)【0048】 , (第3実施例の記載箇所)及び【0095】(符号の説明)のみであって,第1実施例の記載箇所(【0010】〜【0042】 【図1】〜【図7】 , )及び第2実施例の記載箇所(【0043】【0044】【図8】 , , )は,補正されていない(弁論の全趣旨)。
そして,本件補正により,請求項1に付加された「各磁気検出素子の…少なくとも2つの同一位置に配置された各端子は…端子毎に同じ方向へ引き出されて」との構成は,同方向引き出し態様及び別方向引き出し態様のいずれをも含むものであって,本件明細書には,第1実施例において同方向引き出し態様が記載され,第2実施例の開示によって,別方向引き出し態様が記載されているに等しいと認められることは,前記2(1)のとおりであるから,いずれの引き出し態様も,同じく,出願当初明細書に開示された技術事項であったということができる。
したがって,本件補正は,出願当初明細書の記載の範囲を超えるものということはできず,特許法17条の2第3項に違反しない。原告の上記主張は,採用することができない。
(3) 小括 以上によれば,取消事由2は理由がない。
4 取消事由3(新規性判断の誤り)について (1) 引用例1(甲1)には,おおむね,次の記載がある(下記記載中に引用する図のうち,図1,2,5,6,8は別紙4を参照。。
) ア 特許請求の範囲【請求項1】内燃機関のスロットルバルブの開度を検出するスロットルポジションセンサであって,/上記スロットルバルブに連動して回転するロータと,/該ロータの先端に固定され,該ロータの回転軸と直交する磁路を形成する磁石と,/該磁 39 石により形成された磁路に配設され,該磁路での磁界方向を検出する2個の磁電変換素子と,/各磁電変換素子により得られた検出信号を各々処理して外部に出力する2個の信号処理回路と,/上記各部を収納するハウジングと,/を備えたことを特徴とするスロットルポジションセンサ。
【請求項3】上記2個の磁電変換素子がホール素子であり,各ホール素子を,上記ロータの回転軸に沿った面に平行且つ該回転軸を中心に対称に配設してなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスロットルポジションセンサ。
イ 産業上の利用分野【0001】本発明は,内燃機関のスロットルバルブの回転軸に取り付けられ,スロットルバルブ開度を検出するスロットルポジションセンサに関する。
ウ 従来の技術【0002】従来より,内燃機関のスロットルバルブの開度を検出するスロットルポジションセンサとして,例えば,…特開平2-298802号公報に開示されている磁気検知方式による非接触型のスロットルポジションセンサが知られている。
エ 発明が解決しようとする課題【0004】…磁気検知方式によるスロットルポジションセンサは,非接触型であるため,耐久性が非常に高く,可変抵抗器型のような問題はないが,磁電変換素子からの検出信号に対して増幅等の処理を施す信号処理回路が設けられているため,センサ内で磁電変換素子や回路素子の故障或は断線等の異常が発生しても,何等かの信号が出力されることとなり,その出力信号から故障診断を行うことができずに,スロットルバルブ開度を誤検出してしまうことがあった。…【0005】本発明はこうした問題を解決するためになされたもので,磁電変換素子を使用した非接触型のスロットルポジションセンサにおいて,その出力信号からセンサの故障を容易に検出できるようにすることを目的としてなされた。
オ 課題を解決するための手段【0006】即ち,上記目的を達成するためになされた本発明は,内燃機関のスロ 40 ットルバルブの開度を検出するスロットルポジションセンサであって,上記スロットルバルブに連動して回転するロータと,該ロータの先端に固定され,該ロータの回転軸と直交する磁路を形成する磁石と,該磁石により形成された磁路に配設され,該磁路での磁界方向を検出する2個の磁電変換素子と,各磁電変換素子により得られた検出信号を各々処理して外部に出力する2個の信号処理回路と,上記各部を収納するハウジングと,を備えたことを特徴とするスロットルポジションセンサを要旨としている。
実施例【0009】図1〜図4に示す如く,本実施例のスロットルポジションセンサは,樹脂製で中空のハウジング1を備えている。ハウジング1の中心部には,ベアリング3が埋設されており,このベアリング3には,磁性材からなる中空のロータ5が回転自在に設けられている。…【0012】またロータ5の内周部には,同心円筒状で,ロータ5の回転軸と直交する方向に着磁された,Nd-Fe-B系等の希土類からなる永久磁石15が,磁力及び接着により固定されている。次に永久磁石15の図1における上方には,…ケース20が配設されている。またこのケース20の更に上方には,ホール素子21,22,各種回路素子23,及び4個のターミナル24が実装され,且つホール素子21,22を収納しているホルダ25が固定されたプリント基板27が配設されている。…【0014】…本実施例では,ホール素子21,22がロータ5の回転軸と直交する磁界を感磁して同レベルの検出信号が得られるように,各ホール素子21,22は,永久磁石15の中空部内にて,ロータ5の回転軸に沿った面に平行で,しかも回転軸を中心に対称な位置に配設されている。
【0017】このように構成された本実施例のスロットルポジションセンサにおいては,レバー7がスロットルバルブの回転軸に連結され,その回転に伴いロータ5が回転する。するとこの回転に伴い永久磁石15が,ホール素子21,22の周り 41 を回転するため,ホール素子21,22の感磁面に対する磁界方向が図6に示すように変化する。
【0019】次にこうした出力特性が得られるホール素子21,22を動作させて,検出信号を取り出すためのセンサ回路は,プリント基板27に形成された回路パターンとプリント基板に実装された回路素子23とにより,図8に示す如く構成されている。
【0020】図に示す如く,プリント基板27には,センサ回路として,ホール素子21用センサ回路50とホール素子22用センサ回路60とが各々独立して形成されており,上記4個のターミナル24の内,2つのターミナル24a,24bが,各センサ回路50,60からの検出信号出力端子として使用され,他の2つのターミナル24c,24dが,電源供給用端子,即ち電源電圧(Vcc)供給用の端子及び接地(Gnd)用の端子として使用される。
【0021】そしてこの電源供給用端子となるターミナル24c,24dからの電源供給ライン,即ちVccライン及びGndラインは,プリント基板27上で回路素子に接続される前に2つに分割され,上記各センサ回路50,60に個別に電源供給を行なうようにされている。…【0022】次に上記各センサ回路50,60は,夫々,以下のように構成されている。即ち,まずホール素子21用センサ回路50は,正の温度特性を有する感温抵抗器R1と抵抗器R2〜R6とからなり,ホール素子21駆動のための基準電圧V11を発生する温度補償回路51,演算増幅器OP1と抵抗器R7とからなり,温度補償回路51からの基準電圧V11に基づきホール素子21を定電流駆動する駆動回路52,演算増幅器OP2,OP3と抵抗器R8〜R10とからなり,ホール素子21の各出力端子電圧を通過させるバッファ回路53,演算増幅器OP4とトランジスタTR1と抵抗器R11〜R17とからなり,バッファ回路53を通過してきた各出力端子電圧を差動増幅する差動増幅回路54,演算増幅器OP5と抵抗器R18,R19とからなり,抵抗器R18,R19により電源電圧VCCを分 42 圧した基準電圧V12により差動増幅回路54の増幅出力電位を増加させる基準電圧生成回路55,及び,コンデンサC2と抵抗器R20,R21とからなり,差動増幅回路54からの増幅出力をスロットルバルブの開度を表す検出信号V1(負荷抵抗RL1両端の電圧)として外部に出力するフィルタ回路56により構成されている。
【0023】またホール素子22用センサ回路60は,ホール素子21用センサ回路50と同様,正の温度特性を有する感温抵抗器R31と抵抗器R32〜R36とからなり基準電圧V21を発生する温度補償回路61,演算増幅器OP11と抵抗器R37とからなり基準電圧V21に基づきホール素子22を定電流駆動する駆動回路62,演算増幅器OP12,OP13と抵抗器R38〜R40とからなるバッファ回路63,演算増幅器OP14とトランジスタTR11と抵抗器R41〜R47とからなる差動増幅回路64,演算増幅器OP15と抵抗器R48,R49とからなり基準電圧V22を生成して差動増幅回路64の増幅出力電位を増加させる基準電圧生成回路65,及び,コンデンサC12と抵抗器R50,R51とからなり,差動増幅回路64からの増幅出力をスロットルバルブの開度を表す検出信号V2(負荷抵抗RL2両端の電圧)として外部に出力するフィルタ回路66により構成されている。
【0026】以上説明したように本実施例のスロットルポジションセンサにおいては,ハウジング1内に2個のホール素子21,22と,各ホール素子21,22を夫々動作させて検出信号を出力する2個のセンサ回路50,60とを組み込み,スロットルバルブ開度に対応した2つの検出信号V1,V2を出力するようにされている。
【0027】このため本実施例のスロットルポジションセンサからの検出信号V1,V2に基づきエンジン制御等を行なう制御装置側では,これら各検出信号V1,V2を比較することにより,スロットルポジションセンサの故障診断を行なうことが可能となる。
43 【0033】また本実施例では,磁電変換素子にホール素子21,22を使用し,各ホール素子21,22を,ロータ5の回転軸に沿った面に平行且つ回転軸を中心に対称な位置に配設しているため,ホール素子21,22の各感磁面に印加される磁界強度を常に等しくすることができる。このため各センサ回路50,60から出力される検出信号V1,V2を等しくすることができ,故障診断を高精度に行うことが可能となる。
キ 発明の効果【0038】以上説明したように,本発明のスロットルポジションセンサにおいては,2個の磁電変換素子と,各磁電変換素子からの検出信号を処理して外部に出力する2個の信号処理回路とを備え,各信号処理回路から2つの検出信号を出力するようにされている。このため本発明のスロットルポジションセンサにおいては,各信号処理回路から出力される2つの検出信号に基づき,スロットルポジションセンサの故障診断を,簡単且つ正確に行うことが可能となる。
(2) そして,引用例1には,前記第2の3(2)のとおりの引用発明1が記載されていると認められることは,当事者間に争いがない。
原告は,前記第2の3(3)イ記載の本件発明と引用発明1との相違点1ないし4が実質的相違点には当たらず,作用効果上も,引用発明1の開示事項と本件発明との間に相違はないことから,本件審決による相違点の認定及び本件発明が特許法29条1項3号に違反しないとの判断は誤りである旨主張することから,以下,検討する。
(3) 相違点1について 前記(1)の引用例1の【0020】〜【0023】の記載及び【図8】によれば,引用発明1においては,電源電圧(Vcc)供給用の端子であるターミナル24cは,ホール素子21用センサ回路50及びホール素子22用センサ回路60内の電源供給ラインを介してホール素子21,22のそれぞれ4つの端子のうちの1つの端子と接続されて,ホール素子21,22に電源電圧(Vcc)を外部から印加す 44 るとともに,接地(Gnd)用の端子であるターミナル24dは,ホール素子21用センサ回路50及びホール素子22用センサ回路60内の接地ラインを介してホール素子21,22のそれぞれ4つの端子のうちの別の1つの端子と接続されて,ホール素子21,22を外部に接地(Gnd)し,また,検出信号出力端子であるターミナル24aは,ホール素子21用センサ回路50内の検出信号ラインを介してホール素子21の4つの端子のうちの残り2つの端子と接続されて,ホール素子21の出力を外部に取り出し,さらに,検出信号出力端子であるターミナル24bは,ホール素子22用センサ回路60内の検出信号ラインを介してホール素子22の4つの端子のうちの残り2つの端子と接続されて,ホール素子22の出力を外部に取り出す構成とされていることが認められる。
本件審決は,この点について,「ホール素子21は,ホール素子21用センサ回路50の駆動回路により定電流で駆動され,ホール素子22は,ホール素子22用センサ回路60の駆動回路により定電流で駆動されており,ターミナル24c,24dは,ホール素子21,22に電源電圧(Vcc)を外部から印加するものでも,ホール素子21,22を外部に接地(Gnd)するためのものでもない」と認定した。
しかし,ホール素子21用センサ回路50及びホール素子22用センサ回路60は,ターミナル24cと接続されて,電源電圧(Vcc)が印加され,これをホール素子21,22に印加するとともに,ターミナル24dと接続されて,ホール素子21,22を外部に接地(Gnd)するものであり,ホール素子21用センサ回路50及びホール素子22用センサ回路60自体がホール素子21,22への電源電圧(Vcc)の印加及びホール素子21,22の接地(Gnd)を行うものではない。ホール素子21,22への電源電圧(Vcc)の印加及びホール素子21,22の接地(Gnd)については,ホール素子21用センサ回路50及びホール素子22用センサ回路60は,電源電圧(Vcc)供給用の端子であるターミナル24c及び接地(Gnd)用の端子である24dと,ホール素子21及び22とを電 45 気的に接続する中継手段にすぎない。
したがって,引用発明1においても,4つのターミナル24aないし24dのうちの2つのターミナル24c,24dは,1つ(ターミナル24c)はホール素子21,22に電源電圧(Vcc)を外部から印加し,さらに1つ(ターミナル24d)はホール素子21,22を外部に接地(Gnd)するためのものであると認められる。本件審決の上記認定には誤りがある。
したがって,本件発明の外部接続端子と引用発明1のターミナル24c,24dとは,磁気検出素子に電源電圧を外部から印加し,さらに磁気検出素子を外部に接地するためのものであるとの目的及び機能において,同じ構成と認められるから,相違点1は実質的な相違点ではない。
(4) 相違点2について ア 本件発明の特許請求の範囲において,磁気検出素子については,「3つの」端子を有する複数の磁気検出素子であると特定されているのに対して,外部接続端子については,「少なくとも4つの」外部接続端子であるとして,文言を区別して特定されていることからすれば,本件発明の「3つの端子を有…する複数の磁気検出素子」とは,端子数が3つの磁気検出素子,すなわち3端子の磁気検出素子を意味するものと解するのが相当である。
ところで,本件明細書の【0001】【0088】には,磁気検出素子には,ホ ,ールICのほか,ホール素子が含まれる旨の記載がある。しかし,ホール素子については,乙1(特開平2-130403号公報)に,「ホール素子は,周知のように4端子の磁束検出素子で,一方の端子対に電源とアースが接続され,これにより他方の端子対から磁束密度に対応したホール電圧信号が出力される」旨記載されているように,信号入力用及び接地用の端子がそれぞれ1つ,信号出力用の端子が2つの合計4端子であること,これに対して,ホールICは,信号入力用,接地用及び信号出力用の端子がそれぞれ1つの合計3端子であることは,本件特許の優先日当時,周知の技術事項であったということができる。そうすると,3端子の磁気検 46 出素子として特定されている本件発明の「磁気検出素子」に,ホール素子が含まれる余地はないというべきである。
したがって,本件発明の「磁気検出素子」とは,ホールICを意味し,ホール素子を含まないと解される。
イ 前記第2の3(2)のとおり,引用発明1のホール素子21,22のそれぞれ4つの端子は,ホール素子21用センサ回路50又はホール素子22用センサ回路60の駆動回路により定電流で駆動するための一対の端子及びホール素子21用センサ回路50又はホール素子22用センサ回路60により差動増幅されてセンサ回路50又はセンサ回路60からの検出信号出力端子(ターミナル24a又はターミナル24b)の検出信号となる一対の出力電圧端子である。
そして,前記(3)のとおり,引用発明1においては,ホール素子21,22のそれぞれ4つの端子のうちの一対の端子は,ホール素子21,22に電源電圧(Vcc)を外部から印加するために,ホール素子21用センサ回路50及びホール素子22用センサ回路60内の電源供給ラインを介して電源供給用端子であるターミナル24cと接続されるとともに,ホール素子21,22を外部に接地(Gnd)するために,ホール素子21用センサ回路50及びホール素子22用センサ回路60内の接地ラインを介して接地用端子であるターミナル24dと接続され,また,ホール素子21の4つの端子のうちの一対の出力電圧端子は,ホール素子21の出力を外部に取り出すために,ホール素子21用センサ回路50内の検出信号ラインを介してターミナル24aと接続され,さらに,ホール素子22の4つの端子のうちの一対の出力電圧端子は,ホール素子22の出力を外部に取り出すために,ホール素子22用センサ回路60内の検出信号ラインを介してターミナル24bと接続されている。
このように,引用発明1において,ホール素子の端子は,電源電圧を印加する信号入力用の端子,接地用の端子及び信号出力用の端子の3種類ではあるが,その端子の数は4つである。そうすると,前記アのとおり,本件発明の磁気検出素子は3 47 端子を意味するところ,引用発明1の4端子であるホール素子21,22とは端子数が異なるから,相違点2は実質的な相違点というべきである。
ウ 原告は,この点について,引用発明1の各ホール素子21,22が有する端子は4つであるが,これは信号入力用端子,接地用端子のほかに,信号出力用端子が2つあるからであり,本件発明と同様に信号入力用端子,接地用端子,信号出力用端子を有していることに変わりはなく,また,本件発明では「3つの端子を有し」となっていて4端子を排除していないから,この点は本件発明との相違点にならない旨主張する。
しかし,前記アのとおり,本件発明の磁気検出素子は3端子を意味し,本件発明の「前記磁気検出素子の3つの端子は,電源電圧を印加する信号入力用,信号出力用,及び接地用の端子であり」とは,電源電圧を印加する信号入力用,信号出力用,接地用の端子がそれぞれ1つの合計3端子であることを意味するのであって,電源電圧を印加する信号入力用の端子,信号出力用の端子及び接地用の端子の3種類の端子を有するという意味ではない。また,本件発明の磁気検出素子は3端子に限定されるのであるから,4端子のものを排除することは明らかである。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
(5) 相違点3について ア 引用発明1においても,ホール素子21,22のそれぞれ4つの端子は同一面より引き出されているから,当該構成は,本件発明の「端子は前記磁気検出素子の同一面より引き出され」との構成と一致する。そうすると,相違点3は,本件発明では,「前記複数の磁気検出素子は,並列に180度逆方向で配置され」るのに対し,引用発明1では,「2個のホール素子21,22は,…ロータ5の回転軸に沿った面に並行で,しかも回転軸を中心に対称な位置に配設され」る点をいうものと解される。
イ ところで,本件発明は,「前記複数の磁気検出素子は,並列に180度逆方向で配置され」と規定し,本件明細書において,本件発明の実施例である第1実施 48 例においては,ホールIC31とホールIC32とがそれぞれ幅の狭い面を相隣接させて並べられ,ホールIC31の下面の3つの端子の起点とホールIC32の下面の3つの端子の起点とが横一列に並んでいる配置態様(【図6】)をもって,「並列」と表記している(【0040】。これに対して,前記2(1)エのとおり,請求項 )1が「複数の磁気検出素子は,並列に180度逆方向で配置され」と記載されているのに対して,「複数の磁気検出素子は,直列に同方向で配置され」と記載されていること以外は,発明特定事項を共通にする請求項2の実施例として記載された第2実施例は,平成18年6月21日付け手続補正書による補正によって請求項2が削除された後も本件明細書にそのまま残されたものであるが,この第2実施例においては,ホールIC31とホールIC32とがそれぞれ幅の広い面を相隣接させて並べられ,ホールIC31の下面の3つの端子の起点とホールIC32の下面の3つの端子の起点とが前後二列に並んでいる配置態様(【図8】)をもって,「直列」と表記している(【0044】。
) そうすると,本件発明の「前記複数の磁気検出素子は,並列に180度逆方向で配置され」とは,2つの磁気検出素子が,180度逆方向で,それぞれ幅の狭い面を相隣接させ,それぞれの3つの端子の起点が横一列になるように並べて配置するものを意味すると解するのが相当である。
ウ これに対して,引用発明1においては,ホール素子21,22は,ロータ5の回転軸に沿った面に並行で,しかも回転軸を中心に対称な位置に配設されるとされ(【0014】 ,ホール素子21,22が,ロータ5の回転軸を中心として18 )0度逆方向で,それぞれ幅の広い面を相隣接させて並べられ,ホール素子21の下面の4つの端子の起点とホール素子22の下面の4つの端子の起点とが前後二列に並んでいる配置とされている(【図5】【図6】。
, ) そうすると,引用発明1のホール素子21,22の配置態様は,本件発明における「並列」に該当するものではなく,本件発明の実施例ではない,第2実施例の「直列」に該当するものというべきである。
49 したがって,相違点3は実質的な相違点というべきである。
エ 原告は,この点について,本件明細書中には,本件発明の構成要件中「並列に180度逆方向」の明確な定義がなく,このような場合には,各語の一般的解釈からその意味を理解すべきであるところ,広辞苑によれば,「並列」は「並びつらなること」と,「逆」は「方向が反対であること」と,それぞれ解説されていることから,本件発明の「磁気検出素子は,並列に180度逆方向で配置され」は,2つの磁気検出素子を,並べて180度逆の向きに配置する構成を意味し,引用発明1のホール素子21,22の配置態様はこれに該当する旨主張する。
しかし,本件明細書においては,磁気検出素子の配置態様について,「並列」と「直列」とを,前記イのとおりの各配置態様を意味する語として明らかに使い分けているのであるから,請求項1の「並列に180度逆方向で配置され」との解釈においても,本件明細書のかかる用語例をしんしゃくすべきことは当然である。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
(6) 相違点4について ア 相違点4には,その技術的観点から,以下の2つの相違点が含まれていると解することができる。
@ 相違点4-1 本件発明では,「前記複数の磁気検出素子が夫々有する前記3つの端子の内の各磁気検出素子の同一位置に配置された端子の少なくとも2つの同一位置に配置された各端子であって前記信号入力用及び前記接地用の端子は各磁気検出素子の同一位置に配置された端子毎に同じ方向へ引き出されて…いる」のに対し,引用発明1では,「端子(リード)の本数が「4つ」であることはともかくとして,「端子(リード)は,ホール素子21,22の同一面(プリント基板27と対向する面)を起点としてプリント基板27の方向に引き出され」ているものの,ホール素子21の4つの端子(リード)のうち2つの端子(リード)と,ホール素子22の4つの端子(リード)のうち2つの端子(リード)とは,それぞれ反対方向に折り曲げられて 50 からプリント基板27に固定されて…いる」点(以下,この相違点を「相違点4-1」という。。
) A 相違点4-2 本件発明では,「前記複数の磁気検出素子が夫々有する前記3つの端子の内の各磁気検出素子の同一位置に配置された端子の少なくとも2つの同一位置に配置された各端子であって前記信号入力用及び前記接地用の端子は…前記外部接続端子のうち電源電圧を印加する信号入力用端子及び接地端子と接続されている」のに対し,引用発明1では,「ホール素子21」を「定電流で駆動するための一対の端子(リード)」は,「ホール素子21用センサ回路50の駆動回路」を介して「ターミナル24c」つまり「電源供給用端子,即ち電源電圧(Vcc)供給用の端子」と,「ターミナル24d」つまり「接地(Gnd)用の端子」に接続され,「ホール素子22」を「定電流で駆動するための一対の端子(リード)」は,「ホール素子22用センサ回路60の駆動回路」を介して「ターミナル24c」つまり「電源供給用端子,即ち電源電圧(Vcc)供給用の端子」と,「ターミナル24d」つまり「接地(Gnd)用の端子」に接続されている点(以下,この相違点を「相違点4-2」という。。
) イ 相違点4-1について 相違点4-1に係る本件発明の「前記信号入力用及び前記接地用の端子は各磁気検出素子の同一位置に配置された端子毎に同じ方向へ引き出されて」との構成は,前記2(1)ウのとおり,電源電圧を印加する信号入力用の端子,信号出力用の端子及び接地用の端子の全ての端子が単に同じ方向へ引き出された態様を含み得るものであるところ,引用発明1のホール素子21,22のそれぞれ4つの端子も,同様に,ホール素子21,22の同一面(プリント基板27と対向する面)を基点として,プリント基板27の方向へと引き出されている。
相違点4-1に係る本件発明の構成は,磁気検出素子の同一面からの各端子の引き出し方向を特定するものであるところ,引用発明1においては,上記のとおり, 51 各端子の同一面からの引き出し方向は同じプリント基板27方向であって,このように同じ方向へ引き出された後に,端子の先端部が折り曲げられているからといって,前記構成を満たしていることが覆るものではない。
このように,引用発明1は,ホール素子21,22のそれぞれ4つの端子が同じ方向に引き出されている点において,本件発明の「前記複数の磁気検出素子が夫々有する前記3つの端子の内の各磁気検出素子の同一位置に配置された端子の少なくとも2つの同一位置に配置された各端子であって前記信号入力用及び前記接地用の端子は各磁気検出素子の同一位置に配置された端子毎に同じ方向へ引き出されて」との構成と一致している。
したがって,相違点4-1は実質的な相違点ではない。
ウ 相違点4-2について (ア) ホール素子は,ホール素子(のチップ)のみを端子の一端部とともにパッケージしたものであって,信号処理回路がパッケージされていないため,ホール素子を使用するに当たっては,増幅回路等の信号処理回路に別途接続することが必要であるのに対し,ホールICは,ホール素子(のチップ)と信号処理回路を端子の一端部とともにパッケージしたものであることから,外部接続端子と直接に接続されるものであることは,本件特許の優先日当時,周知の技術事項である(甲2,17,乙2,弁論の全趣旨)。
そして,前記(4)アのとおり,本件発明の「磁気検出素子」とは,ホールICを意味し,ホール素子を含まないと解される以上,本件発明の「前記複数の磁気検出素子が夫々有する3つの端子の内の…前記信号入力用及び前記接地用の端子は…前記外部接続端子のうち電源電圧を印加する信号入力用端子及び接地端子と接続されている」の「接続」とは,その記載から,直接に接続することを意味すると解するのが相当である。
また,本件明細書には,ホールIC31,32の各3つの端子と外部接続端子40ないし43とが直接に接続されている形態しか開示されていない(【0019】, 52 【0022】【0030】。ここで,本件発明の目的は,磁気検出素子及び外部接 , )続端子の組付けを簡単にすることのできる回転角度検出装置を提供することにあるところ(【0008】 ,上記課題は,ホール素子と信号処理回路部が基板に配置さ )れ,リードフレームを介してコネクタに接続されて外部へ出力する構成である従来例の場合,種々の部品組み付けに先立つ加工の精度や加工工数が必要となるなどの問題があったこと(【0003】【0005】 , )に対応して設定されたものであることが認められる。したがって,本件発明においては,磁気検出素子と外部接続端子とを直接に接続することによって,磁気検出素子及び外部接続端子の組み付けを簡単にするとの効果を生じさせているものということができる。さらに,「2個のホールIC31,32を,並列に180度逆方向で配置することにより,リードフレーム33を含めた2個のホールIC31,32の組み付けが簡単になる。 ( 」 【0040】)との記載によれば,本件発明においては,複数の磁気検出素子と外部接続端子とを直接に接続するに際して,複数の磁気検出素子を並列に180度逆方向で配置することにより,磁気検出素子の端子毎にまとめやすくすることで,より組付けが簡単になるとの効果を生じさせているものということができる。
以上のとおり,特許請求の範囲の記載からも,本件明細書の記載からも,本件発明の「前記複数の磁気検出素子が夫々有する3つの端子の内の…前記信号入力用及び前記接地用の端子は…前記外部接続端子のうち電源電圧を印加する信号入力用端子及び接地端子と接続されている」の「接続」とは,直接に接続することを意味すると解するのが相当である。
(イ) これに対して,引用発明1においては,前記(4)イのとおり,ホール素子21,22のそれぞれ一対の端子は,信号入力用の外部接続端子に相当するターミナル24c及び接地用の外部接続端子に相当するターミナル24dとセンサ回路50,60を介して接続されていることから,磁気検出素子と外部接続端子とが直接に接続されていない。このように,本件発明と引用発明1とは,磁気検出素子の端子と外部接続端子との接続態様が直接に接続されているか否かの点で相違する。
53 したがって,相違点4-2は実質的な相違点というべきである。
(7) 作用効果について 原告は,引用発明1が2個のホール素子を備えることにより得られる効果は,本件発明の「一方のホールICが故障しても他方のホールICによりスロットル開度を検出できるようにするためと,一方のホールICの誤作動を検出できるようにする」との効果(本件明細書の【0042】)と全く同じであるし,2個のホール素子の組付けが簡単であるとの効果(【0040】)も同様であるから,作用効果上も引用発明1の開示事項と本件発明との間に相違点はない旨主張する。
たしかに,引用例1には,ホール素子21,22をロータ5の回転軸に沿った面に平行かつ回転軸を中心に対称な位置に配設することにより,検出信号V1,V2を等しくすることができ,これら各検出信号V1,V2を比較することにより,スロットルポジションセンサの故障診断を高精度に行うことが可能となる旨記載されており(【0027】 【0033】 ,本件発明の「一方のホールICが故障しても , )他方のホールICによりスロットル開度を検出できるようにするためと,一方のホールICの誤作動を検出できるようにする」という上記効果との間に相違はない。
しかし,引用例1には,2個のホール素子の組付けが簡単であるとの効果の記載はない。本件発明において,磁気検出素子の組付けが簡単になるのは,前記(6)ウ(ア)のとおり,磁気検出素子と外部接続端子とを直接に接続すること,及び,その際に,複数の磁気検出素子を並列に180度逆方向で配置することにより,磁気検出素子の端子毎にまとめやすくすることに基づく効果である。これに対して,引用発明1においては,2個のホール素子21,22と外部接続端子であるターミナル24aないし24dとは,センサ回路50,60を介して接続されており,これは,前記(6)ウ(イ)のとおり,本件明細書の【0003】 【0005】において従来例 ,として記載された,ホール素子と信号処理回路部が基板に配置され,リードフレームを介してコネクタに接続されて外部へ出力する構成と同じであって,かかる構成を採用する引用発明1においては,2個のホール素子21,22の組付けが簡単で 54 あるとの効果を奏することはない。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
(8) 小括 以上によれば,本件発明と引用発明1との間の相違点のうち,相違点1及び4-1は実質的相違点ではないものの,その余の相違点2,3及び4-2は実質的な相違点というべきであるから,本件発明は引用発明1と同一であるということはできない。
したがって,取消事由3は理由がない。
5 取消事由4(進歩性判断の誤り)について (1) 引用発明1及び引用発明2に基づく容易想到性について ア 引用発明2について (ア) 引用例(甲2)には,おおむね,次の記載がある(下記記載中に引用する図のうち,第1,2,4図は別紙5を参照。 。
) a 実用新案登録請求の範囲 一対の磁電変換ICと,前記一対の磁電変換ICが夫々取付方向を反転させて両面に取付けられたリードフレームと,を有し, 前記磁電変換ICの電源入力及び出力が共通接続されて夫々リードフレームに接続され,2方向の磁界を検出するようにしたことを特徴とする磁電変換素子。
b 考案の分野 本考案はN極及びS極を検出する磁電変換素子に関するものである。
c 課題を解決するための手段 本考案はN極及びS極を検出する磁電変換素子であって,一対の磁電変換ICと,一対の磁電変換ICが夫々取付方向を反転させて両面に取付けられたリードフレームと,を有し,磁電変換ICの電源入力及び出力が共通接続されて夫々リードフレームに接続され,2方向の磁界を検出するようにしたことを特徴とするものである。
d 作用 55 このような特徴を有する本考案によれば,リードフレームの保持面の両面に夫々検知方向が反転するように磁電変換ICを取付け,その出力を共通接続して検出出力とするようにしている。こうすれば磁石のN極とS極とを表面又は裏面のいずれかの磁電変換ICによって検出して出力するようにしている。
e 考案の効果 そのため本考案によれば,極めて簡単な構成でN極とS極とを検出することが可能となる。従って専用のICを設計する場合に比べて大幅に価格を低減することができ,又専用ICを用いず外付け回路で二方向磁界タイプとする場合に比べ大幅に小型化することが可能となる。
f 実施例の説明 …第1図(a)(b)は本考案の一実施例による磁電変換素子の夫々異なる方向 ,からの斜視図である。この磁電変換素子はリードフレーム1〜3を有し,リードフレーム1のベース1a上には後述する構造を有するホールIC4が取付けられ,その3つの端子が夫々リードフレーム1〜3にワイヤボンディングにより接続されている。そしてこのリードフレーム1のベース1aの裏面にも同様の構造を有するホールIC5が取付けられ,その各端子はリードフレーム1〜3にワイヤボンディングによって接続される。… 第2図はこのホールIC4,5とリードフレームとの接続を示す回路図である。
本図に示すようにホールIC4,5は夫々定電圧回路4a,5aを有しており,定電圧がホール素子4b,5bに供給される。ホール素子4b,5bは相異なる方向の磁界の強さを検出するものであり,その出力は夫々増幅回路4c,5cを介してシュミットトリガ回路4d,5dに与えられる。シュミットトリガ回路4d,5dは所定の閾値で増幅出力を弁別し出力トランジスタ4e,5eを介して外部に出力するものである。さてリードフレーム2(判決注:第2図では「3」と記載されている。)にはこの出力トランジスタ4e,5eのコレクタ端が共通に接続されており,ホールIC4,5の電源の正及び負の入力端が夫々共通接続されてリードフレ 56 ーム3(判決注:第2図では「2」と記載されている。)及び1に接続されている。
このように構成された磁電変換素子においては,…第4図(a)に示すような出力が得られることとなる。このように2つのホール素子をリードフレームの両面に設けることによってN極とS極との双方に対して感度を持つ磁電変換素子とすることができる。
(イ) 前記(ア)の記載によれば,引用例2には,以下の引用発明2が開示されていることが認められる。
一対のホールICが夫々取り付け方向を反転させて両面に取り付けられたリードフレーム1〜3を有し,/リードフレーム1のベース1a上にはホールIC4が取り付けられ,その3つの端子が夫々リードフレーム1〜3にワイヤボンディングにより接続され,このリードフレーム1のベース1aの裏面にも同様の構造を有するホールIC5が取り付けられ,その各端子はリードフレーム1〜3にワイヤボンディングにより接続され,こうしてリードフレーム1のベース1aの両面にホールIC4,5を取り付けた電磁変換素子であって,/ホールIC4,5の電源の正及び負の入力端が各々共通に接続されてリードフレーム3及び1に接続され,ホールIC4,5の出力トランジスタ4e,5eのコレクタ端が共通にリードフレーム2に接続されて,/磁石のN極とS極とを表面又は裏面のいずれかのホールICによって検出し,N極とS極との双方に対して感度を持ち,磁石の回転角に応じたオンオフを出力する,電磁変換素子。
イ 原告は,引用発明2において,磁気検出素子であるホールIC4,5は互いに背中合わせの状態になるように並べられ,磁気検出素子(ホールIC4,5)から端子(ワイヤ)を引き出す起点を有する面は,ホールIC4と5で磁界に対する感面が磁界に対して互いに逆方向となっているから,引用発明2は,「前記複数の磁気検出素子は,並列に180度逆方向で配置され」との構成を開示している旨主張する。
しかし,前記4(5)イのとおり,本件発明の「前記複数の磁気検出素子は,並列 57 に180度逆方向で配置され」とは,2つの磁気検出素子が,180度逆方向で,それぞれ幅の狭い面を相隣接させ,それぞれの3つの端子の起点が横一列になるように並べて配置するものを意味すると解される。
これに対して,引用発明2においては,ホールIC4,5は,リードフレーム1のベース1aを挟んでそれぞれ幅の広い面を対向させて配置されている。したがって,引用発明2のホールIC4,5の配置態様は,本件発明における「並列」に該当するものではなく,「直列」に該当するものというべきである。
そうすると,引用発明2は,本件発明の「前記複数の磁気検出素子は,並列に180度逆方向で配置され」ている構成を開示するものであるとはいうことはできず,原告の上記主張は,採用することができない。
ウ そこで,引用発明1及び引用発明2に基づいて,本件発明と引用発明1との相違点に係る本件発明の構成に至ることが容易であるか否かについて検討する。
(ア) 引用発明1は,前記4(7)のとおり,2つのホール素子21,22をロータ5の回転軸に沿った面に平行かつ回転軸を中心に対称な位置に配設することにより,ホール素子21からの検出信号V1とホール素子22からの検出信号V2とが等しくなる環境を作り,これら2つの磁気検出素子がそれぞれのセンサ回路50及び60を経て検出信号V1,V2を各出力し,この2つの検出信号を比較することにより,スロットルポジションセンサの故障診断を行うことを目的とするものである。
これに対して,引用発明2は,前記アのとおり,2つのホールIC4,5を反転させて対向配置した上で,ホールIC4,5の出力トランジスタ4e,5eのコレクタ端をリードフレーム2に共通接続して,各ホールIC4,5の検出信号を統合することにより,N極とS極の双方に対して感度を持つ1つの磁電変換素子(磁気検出素子)とすることを目的とするものである。
このように,引用発明1と引用発明2とは,「磁気検出素子を用いた検知技術」という同じ技術分野に属するものではあるものの,発明の目的及び効果を異にする 58 ものであって,故障診断のために2つの磁気検出素子を設ける引用発明1に,N極及びS極の双方向に対して感度を持つことを目的として,一対のホールICの出力を共通接続して1つの磁気検出素子として検出出力するようにした引用発明2を適用すべき動機付けがないというべきである。
(イ) また,この点を措いても,前記イのとおり,引用発明2は,本件発明と引用発明1との相違点3に係る本件発明の構成を開示するものではないから,仮に引用発明1に引用発明2を適用したとしても,少なくとも相違点3に係る本件発明の構成に想到することはできないというべきである。
エ 小括 したがって,本件発明は,引用発明1及び引用発明2から容易に発明できたものであるということはできない。
(2) 引用発明1に周知例1を適用することによる容易想到性について ア 周知例1について 周知例1(甲3)によれば,周知例1には,次の技術が開示されていることが認められる(下記記載中に引用する図のうち,図1,2,4は別紙6を参照。。
) それぞれ逆方向の磁束を検知し得るように,互いに逆向きに配設された2つのホール素子と,これら2つのホール素子に駆動電圧を印加する電源回路と,ホール素子に作用する磁束の変化による,ホール素子の出力電流の変化に基づいてホール素子が磁束を検知した場合,検出信号を出力する検出回路とを含んでいることを特徴とする無接点型磁気スイッチの発明であって(【請求項1】 ,2つのホール素子1 )2,13を互いに逆向きに配置した上で,各ホール素子の出力端子12a,13aを1つにまとめ,各ホール素子の検出信号を統合することにより,検出すべきマグネットの磁気極性がいずれの方向であっても,確実に位置検出が行われ得るようにすることを目的とするものであり,2つのホール素子を互いに背中合わせに接触させて配置する態様(引用発明1のホール素子21,22の配置態様に相当するもの。)と,2つのホール素子を互いに並んで接触するように逆向きに配置する態様 59 (本件発明の「並列に180度逆方向で配置」する態様に相当するもの。)とは,相互に置換可能なものである(【0011】〜【0013】 【0015】 【001 , ,7】【0024】【図1】 【図2】【図4】 。
, , , , ) イ そこで,引用発明1に周知例1記載の技術を適用することにより,本件発明と引用発明1との相違点に係る本件発明の構成に至ることが容易であるか否かについて検討する。
(ア) 引用発明1は,前記4(7)のとおり,2つのホール素子21,22をロータ5の回転軸に沿った面に平行かつ回転軸を中心に対称な位置に配設することにより,ホール素子21からの検出信号V1とホール素子22からの検出信号V2とが等しくなる環境を作り,これら2つの磁気検出素子がそれぞれのセンサ回路50及び60を経て検出信号V1,V2を各出力し,この2つの検出信号を比較することにより,スロットルポジションセンサの故障診断を行うことを目的とするものである。
これに対して,周知例1記載の技術は,2つのホール素子12,13を互いに逆向きに配置した上で,各ホール素子の出力端子12a,13aを1つにまとめ,各ホール素子の検出信号を統合することにより,検出すべきマグネットの磁気極性がいずれの方向であっても,確実に位置検出が行われ得るようにすることを目的とするものである。
このように,引用発明1と周知例1記載の技術は,「磁気検出素子を用いた検知技術」という同じ技術分野に属するとしても,発明の目的及び効果を異にするものであって,故障診断のために2つの磁気検出素子を設け,検出信号を各出力して比較する引用発明1に,検出すべきマグネットの磁気極性がいずれの方向であっても,確実に位置検出が行われ得るようにすることを目的として,2つのホール素子の出力端子を1つにまとめて検出出力するようにした周知例1記載の技術を適用すべき動機付けがないというべきである。
(イ) 上記の点を措いても,周知例1記載の技術における磁気検出素子はホール 60 素子であるところ,前記4(4)アのとおり,ホール素子が4端子であることは,本件特許の優先日当時,周知の技術事項であったから,周知例1記載の技術は,相違点2に係る本件発明の「複数の磁気検出素子」が「同じ配列の3つの端子を有し」,「磁気検出素子の3つの端子は,電源電圧を印加する信号入力用,信号出力用,及び接地用の端子であ」るとの構成を開示するものではない。
また,周知例1記載の技術の磁気検出素子はホール素子であるから,前記4(6)ウ(ア)のとおり,これを使用するに当たっては増幅回路等の信号処理回路に別途接続する必要があるのであって,実際にも,周知例1の【0016】の記載及び【図2】によれば,2つのホール素子は,センサ回路15,定電圧回路16,表示出力回路17,保護回路18を介して外部接続端子である信号入力用端子(図中のVcc(+)端子),信号出力用端子(図中のVout端子)及び接地端子(図中のGND端子)と接続されている。このように,周知例1記載の技術においては,2つのホール素子の端子は,各回路を介して外部接続端子と接続されるものであり,外部接続端子と直接に接続するものではない。そうすると,周知例1記載の技術は,相違点4-2に係る本件発明の「前記複数の磁気検出素子が夫々有する前記3つの端子の内の各磁気検出素子の同一位置に配置された端子の少なくとも2つの同一位置に配置された各端子であって前記信号入力用及び前記接地用の端子は…前記外部接続端子のうち電源電圧を印加する信号入力用端子及び接地端子と接続されている」構成を開示するものではない。
そうすると,仮に引用発明1に周知例1記載の技術を適用したとしても,少なくとも相違点2及び4-2に係る本件発明の構成に想到することはできないというべきである。
ウ 小括 したがって,本件発明は,引用発明1に周知例1記載の技術を適用することによって容易に発明できたものであるということはできない。
(3) 引用発明1に引用発明2,周知例3及び4記載の周知慣用技術を組み合わ 61 せることによる容易想到性について ア 引用発明1に引用発明2を適用する動機付けはなく,仮に引用発明1に引用発明2を適用したとしても,少なくとも相違点3に係る本件発明の構成に想到することはできないから,本件発明は,引用発明1及び引用発明2に基づいて容易に発明できたものであるということができないことは,前記(1)のとおりである。
イ 周知例3及び4(甲5,6)には,2つのトランジスタが互いに逆向きで一直線上に配置され,両トランジスタのエミッタ端子が端子板のピンに共通して接続する配線構造が記載されている。そして,トランジスタは電子回路を構成する基本的な部品であり,引用発明1及び引用発明2の「磁気検出素子を用いた検知技術」という技術分野における当業者であれば,当然に接する技術であるということができる。
しかし,引用発明1においては,ホール素子21,22は,ロータ5の回転軸と直交する磁界を感磁して,同レベルの検出信号を得られるようにするものであるから,ロータ5の回転に伴う磁石からの磁界の変化を精度良く検出できるよう,磁気検出素子の配置に関しては,その向き(感磁面の方向)が重要な要素となる。これに対して,トランジスタは,そもそも素子の向きが問題とならないのであって,周知例3及び4に,2つのトランジスタを互いに並列に逆向きで配置し,両トランジスタのエミッタ端子を,端子板のピンに共通して接続する配線構造が記載されているからといって,当該技術を適用することによって,引用発明1の「ロータ5の回転軸と直交する磁界を感磁して同レベルの検出信号が得られるように,各ホール素子21,22は,永久磁石15の中空部内にて,ロータ5の回転軸に沿った面に並行で,しかも回転軸を中心に対称な位置に配設される」「2個のホール素子21,22」の配置を,本件発明のように「並列に180度逆方向で配置」するように変更する動機付けがない。
また,本件発明において,2個の磁気検出素子を使用する理由は,一方の磁気検出素子が故障しても他方の磁気検出素子によりスロットル開度を検出できるように 62 するためと,一方の磁気検出素子の誤作動を検出できるようにするためであり(本件明細書【0042】 ,2つの磁気検出素子が,180度逆方向で,それぞれ幅の )狭い面を相隣接させ,それぞれの3つの端子の起点が横一列になるように並べて配置するとの相違点3に係る構成を採用することによって,感磁する磁界強度を常に等しくして各磁気検出素子からの検出信号が等しくなる環境としているものと解される。しかるに,周知例3及び4においては,2つのトランジスタは,端子板のピン間隔によって離間した配置となっており,この配置態様をもって「相隣接させ」たものということはできないから,相違点3に係る本件発明の構成を開示するものではない。
そうすると,仮に引用発明1及び引用発明2に周知例3及び4記載の技術を適用したとしても,少なくとも相違点3に係る本件発明の構成に想到することはできないというべきである。
ウ 小括 以上によれば,本件発明は,引用発明1に引用発明2や周知例3及び4記載の技術を組み合わせることにより容易に発明できたものであるということはできない。
(4) 前記(1)ないし(3)によれば,取消事由4は理由がない。
6 結論 以上によれば,原告主張に係る取消事由は全て理由がないから,原告の本訴請求は棄却を免れない。
よって,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 部眞規子
裁判官 田中芳樹
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