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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成27ネ10008 特許権侵害差止等請求控訴事件 判例 特許
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平成26ネ10108 特許権侵害行為差止等請求控訴事件 判例 特許
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事件 平成 26年 (ネ) 10111号 特許権侵害差止等請求控訴事件

控訴人株式会社松井製作所
同訴訟代理人弁護士 畑郁夫
同 平野惠稔
同 森本祐介
同訴訟代理人弁理士 河野登夫
同 河野英仁
同 野口富弘
被控訴人株式会社カワタ
同訴訟代理人弁護士 室谷和彦
同補佐人弁理士 鈴江正二
同 木村俊之
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2015/10/08
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は,原判決別紙イ号製品目録記載の製品を生産し,譲渡し又は譲渡の申出をしてはならない。
3 被控訴人は,原判決別紙ロ号製品目録記載の製品を生産し,譲渡し又は譲渡の申出をしてはならない。
4 被控訴人は,原判決別紙イ号製品目録記載の製品及びこれらの半製品を廃棄せよ。
5 被控訴人は,原判決別紙ロ号製品目録記載の製品及びこれらの半製品を廃棄せよ。
6 被控訴人は,控訴人に対し,8432万円及びこれに対する平成25年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要(略称は,審級により読み替えるほか,原判決に従う。)
1 本件は,控訴人が,被控訴人に対し,原判決別紙イ号製品目録記載の製品(イ号製品)及び原判決別紙ロ号製品目録記載の製品(ロ号製品)を製造,販売等する行為が,控訴人の有する発明の名称を「粉粒体の混合及び微粉除去方法並びにその装置」とする発明に係る特許(登録番号第3767993号。本件特許。)を侵害すると主張して,本件特許に係る特許権(本件特許権)に基づき,@イ号製品の生産,譲渡又は譲渡の申出の差止め,Aロ号製品の生産,譲渡又は譲渡の申出の差止め,Bイ号製品及びロ号製品並びにこれらの半製品の廃棄を求め,併せて,不法行為に基づき,Cイ号製品の製造販売による損害賠償(平成23年8月から平成25年3月まで)として8432万円(特許法102条2項)及びこれに対する不法行為の後である平成25年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
2 原判決は,@イ号製品は,本件特許の請求項2に係る発明(本件特許発明2)の構成要件2Eを充足しないから,本件特許発明2に係る特許権を侵害するものではなく,Aイ号製品の動作は,本件特許の請求項1に係る発明(本件特許発明1)の構成要件1Bを充足しないから,イ号製品に係る被控訴人の行為について,本件 特許発明1に係る特許権に対する特許法101条4号間接侵害は成立せず,Bロ号製品は,本件特許発明2の構成要件を充足しないから,本件特許発明2に係る特許権を侵害するものではなく,Cロ号製品の動作は,本件特許発明1の構成要件を充足しないから,ロ号製品に係る被控訴人の行為について,本件特許発明1に係る特許権に対する特許法101条4号間接侵害は成立しない旨判断して,控訴人の請求をいずれも棄却した。
そこで,原判決を不服として,控訴人が控訴したものである。
3 前提事実は,原判決「事実及び理由」の第2の1に記載のとおりであるから,これを引用する。
4 争点(1) イ号製品は,本件特許発明2の各構成要件を充足するか(2) イ号製品に係る被控訴人の行為について,本件特許発明1に係る特許権に対 する特許法101条4号間接侵害が成立するか(3) イ号製品について,本件各特許発明均等侵害が成立するか(4) ロ号製品は,本件特許発明2の各構成要件を充足するか(5) ロ号製品に係る被控訴人の行為について,本件特許発明1に係る特許権に対 する特許法101条4号間接侵害が成立するか(6) ロ号製品に係る侵害予防としての差止請求の可否(7) 損害額
争点に関する当事者の主張
1 争点(1)(イ号製品は,本件特許発明2の各構成要件を充足するか)について次のとおり,当審における当事者の主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」の第3の1に記載のとおりであるから,これを引用する。
〔控訴人の主張〕 (1) 本件各特許発明技術的意義について 本件各特許発明技術的意義は,充填レベルを検出するためのレベル計を「供給 管の横向き管における最下面の延長線の近傍位置または該延長線より上方位置」に設け,吸引輸送を「横向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方には材料が充填された状態」で開始することにより,その充填された材料をもって,吸引輸送される材料が一時貯留ホッパーへ落下することを阻止し,これにより,未混合のまま材料が一時貯留ホッパーへ落下するという問題を解消する点にある。
本件各特許発明の目的は,「横向き管の出口とレベル計の位置との間に空間ができる」ことを解消することではなく,未混合材料が一時貯留ホッパー内に落下することを防止することにある。出口下端とレベル計の間に一定範囲の空間がある場合であっても,それが巻き上げ可能な範囲であれば,混合済み材料により未混合材料の一時貯留ホッパー内への落下を防ぐことができるのであって,本件各特許発明は,そのような位置である「近傍」にレベル計を設けることにより,技術的課題を解決しようとするものである。
(2) 構成要件2Eの「横向き管における最下面の延長線」の意義について ア 原判決における「横向き管における最下面の延長線」の解釈は,以下のとおり誤りである。
(ア) 「横向き管における最下面の延長線」との文言は,横向き管が斜め管の場合,字義通り解釈する限り,水平方向と解釈する余地はない。原判決は,輸送開始時を定める充填レベルの基準は,混合済み材料の上表面によって示される必要があるとし,これを根拠として,「横向き管における最下面の延長線」とは,出口の下端から,水平方向に向かって延長した線を意味すると解釈しているが,本件明細書には,輸送開始時を定める充填レベルの基準が混合済み材料の上表面に限定されるような記載はない。
(イ) 原判決は,「横向き管における最下面の延長線」の解釈に当たり,横向き管が縦向き管に接する出口の下端よりも下方に充填レベルがあって,充填レベルと横向き管の出口の下端との間に空間が生じていると,輸送された材料が未混合のま ま一時貯留ホッパーへ落下するとして,これを前提にしている。
しかし,「横向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方には材料が充填された状態」とは,横向き管が縦向き管に接する出口の下端と,レベル計との間に,多少の空間が生じる場合も包含した記載であり,本件明細書の記載は,一時貯留ホッパーへの材料の落下を防ぐためには,材料の輸送が開始する時点で,横向き管が縦向き管に接する出口の下端に達するまで,混合済み材料が充填されている必要があることを前提にしていない。
(ウ) 原判決は,本件明細書の【0032】及び【0033】を引用して,レベル計は延長線より近傍又は上方の位置に設けているので,延長線より下方は常に満杯の状態になっており,吸引輸送される材料が未混合のままで一時貯留ホッパーへ落下するような現象は生じないとしている。
しかし,上記記載は,@横向き管が水平,下傾斜,上傾斜のそれぞれについて,レベル計を延長線の上方又は近傍(上側)に設けた場合,A横向き管が水平,下傾斜,上傾斜のそれぞれについて,レベル計を延長線上に設けた場合,B横向き管が水平,下傾斜,上傾斜のそれぞれについて,レベル計を近傍(下側)に設けた場合の9パターン全てを表現した記載ではないから,当該記載から直ちに,本件各特許発明が延長線より下方が常に満杯の状態になっていることを前提にしているとの結論は導けない。
例えば,横向き管が水平の場合,レベル計を近傍(下側)に設けた場合には(【0049】),たとえ「延長線」を原判決のように解釈したとしても,材料の輸送が開始する時点で,横向き管が縦向き管に接する出口に達するまで混合済み材料が充填されていることにはならない。
以上のとおり,原判決の解釈は,本件明細書の【0032】及び【0033】の記載とも整合しない。
(エ) 横向き管が上方に向けて縦向き管に接続されている場合,空気の流れが斜め上向きとなるため,投入される材料も,出口から斜め上向きに移動し縦向き管の 対向側面に衝突する。この衝突位置から,出口の下端を水平に延長した位置に至るまでの間にある空間は,気流の流れの下方にあることから気流が発生せず,又は空気の流れが弱くなるため,巻き上げ現象が弱くなり,当該空間には未混合材料が落下し滞留する物理的な可能性がある。
しかし,原判決の解釈によれば,出口の下端の水平線の延長線上,又はその近傍にレベル計がある場合を想定しており,この位置まで混合済み材料が降下するまで吸引輸送は開始されないことになるから,吸引の停止により流動ホッパーから降下する混合済み材料は上記空間に滞留する未混合材料の上に積み重なり,その結果,未混合材料は混合されないままに一時貯留ホッパーへと移動することになる。
本件明細書に記載された方法・装置において,本件各特許発明の作用効果を奏することができないような原判決の解釈は誤りである。
技術常識に則した「横向き管における最下面の延長線」の意義について (ア) 「巻き上げ現象」 本件各特許発明に係る混合装置における空気の管内吸引輸送においては,まず,空気源により吸引された空気は,投入管の下端面の延長線に沿って流れ込み,縦向き管の対向壁面に衝突後,一定の範囲で拡散するが,縦向き管の上方に空気が吸引されているため,拡散した空気は上向きに移動することになる。この気流の流れに沿って,当該延長線付近(延長線の下方を含む)の一定範囲の材料も舞い上がり,上方に吸い上げられることになる。
この吸い上げられる範囲は,風速により変化し,本件各特許発明に係る装置の場合,一般的な空気輸送であるから,採用される風速は20m/sから30m/sであるといわれており,上記風速の範囲内において「巻き上げ現象」が発生することは,当業者の技術常識である。
そして,本件各特許発明が,この「巻き上げ現象」を前提としていることは,【0049】の記載に加え,気力により材料の輸送及び混合を行う方法・装置において,「巻き上げ現象」は一般的に発生する現象であって,横向き管の最下面の延長線上 のみならず,一定の範囲内であれば,延長線の下方においても発生すること,本件各特許発明において,供給管の原則的な実施形態が,巻き上げ現象が必然的に発生することになる「T字形状」とされていること(【0028】,【0043】,【0046】)から明らかである。
(イ) 「横向き管における最下面の延長線」の意義 「横向き管における最下面の延長線」のうち,「横向き管における最下面の」との表現は,その直後の「延長線」を修飾するものである。
そして,【0030】の「横向き管4Bにおける最下面5の延長線Lの近傍位置または該延長線Lより上方位置には,レベル計70が設けてある。」との記載及び【図1】には,横向き管4Bを上下平行な2つの線で表した場合に,上下平行な2つの線のうち下側の線(横向き管内面の最下母線)に符号5が付されており,符号5で示す線全体が「最下面5」であることが明記されている。
これらの記載によれば,「最下面」とは,横向き管全体の中で最も下の面全体を意味していることが明らかである。
そうすると,「横向き管における最下面の延長線」とは,横向き管の最下面という面全体をそのまま延長した線と解釈するのが自然である。
(ウ) 被控訴人の主張について 被控訴人は,「延長線」が水平方向で規定されなければ,上下関係の特定はできない旨主張する。
しかし,レベル計は延長線の途中(管内)に設けられる物ではないから,延長線の途中とレベル計の設置位置の上下関係を問題とするのは妥当ではなく,この上下関係は,横向き管の最下面の延長線と縦向き管との交差位置(横向き管に対向する縦向き管壁部分)に基づいて定義されていると解すべきである。
なお,横向き管が縦向き管と接する出口の下端も縦向き管壁部分であるが,当該出口の下端は,横向き管の「最下面」が交差する位置であって,「最下面の延長線」が交差する位置ではないから,当該出口の下端は排除される。
(3) 構成要件2Eの「延長線の近傍位置または該延長線より上方位置」の意義について ア 原判決における「延長線の近傍位置または該延長線より上方位置」の解釈は,以下のとおり誤りである。
本件明細書には,充填レベルの検知位置が,延長線上にある必要があることやレベル計の検知面の最上部が延長線上に接している必要があることを示す記載はない。
レベル計が測定対象物を検知する原理は,測定対象物に応じて種々のものが存在し,非接触で材料の充填レベルの検出が可能なものとしては,光学式,静電式及び磁気式が考えられる。しかし,光学式は検知を光ビームの投受光に依ることから,検出「面」というような広がりは概念し得ないし,静電式は測定対象に向き合う面は存在するが,静電式では,センサに内在する電極板と周辺の接地電位部(金属フランジなど)との間に介在する静電容量によって測定対象の在・不在を判定するから,原判決のいう「検知面」などという概念は存在しない。
本件明細書においては,材料の充填レベルとレベル計の位置とは同一のものとして扱われており,材料の充填レベルとレベル計の位置とが異なる場合は想定されていない。また,原判決の解釈は,【0032】の記載とも整合しない。
イ 「延長線の近傍位置または該延長線より上方位置」の意義 (ア) 「延長線の近傍位置」と「延長線より上方位置」が「または」という文言で接続され並列されていること,本件明細書の【0031】及び【0032】において,レベル計を延長線より上方位置に設けた場合と,延長線の近傍位置として延長線近くに設けた場合が並列されて記載され,これに続いて,【0033】には「上述のように,レベル計70は延長線Lより近傍又は上方の位置に設けているので,…」と記載されていることから,【0031】が【0033】の「レベル計70は延長線Lより…上方の位置」に当たり,【0032】が【0033】の「レベル計70は延長線Lより近傍…の位置」に対応していることは明らかであることからして,「延長線の近傍位置」又は「延長線より上方位置」にレベル計を設けることを 意味すると解すべきである。
そうすると,レベル計は「延長線の近傍位置」(近傍の最下点以上)に設置されていれば足りることになる。
(イ) 「近傍」とは,一般に,「近所。近辺。」という意味であるから,【0032】の「延長線L近く」が,延長線の下方を排除していないのと同様に,「延長線Lより近傍」も延長線の下方を排除していない。
そうすると,「近傍」とは,「材料が未混合のまま一時貯留ホッパーへ落下することなく流動ホッパー内に吸引輸送される」範囲を意味すると解すべきである 【0 (018】,【0049】)。
(ウ) 以上によれば,レベル計70は,延長線Lの「上方」と,延長線Lの(延長線Lの下方を含む)「近傍」のいずれかに設置されていればよいということになる。
【0049】の記載から,レベル計70の設置位置が,延長線Lの位置よりも下方位置であること(巻き上げ可能な範囲内であれば,横向き管の最下面の延長線より少しばかり下方位置であってもよいこと)が明示的に許容されていることは明らかである。
なお,本件各特許発明が,巻き上げ現象を前提としていることは前記(2)イのとおりであるが,巻き上げ現象を前提とする場合,レベル計の位置は,材料の巻き上げが可能な位置となり,その位置は気力の強さ,供給管の太さ,材料の重さ,横向き管の方向等の諸要因により異なるから,数値として一義的に確定することは困難であり,「近傍」といった幅のある文言とならざるを得ない。
(4) イ号製品の構成要件2Eの充足性について 以上のとおり,「延長線」とは,「横向き管の最下面という面全体をそのまま延長した線」を意味し,「近傍位置」とは,当該延長線に沿った気流が材料を巻き上げ可能な範囲により確定されるレベル計の位置を意味するところ,イ号製品において,当該延長線とレベル計とは,7.1mmしか離れておらず,材料が巻き上げら れて混合されることから,イ号製品は構成要件2Eを充足する。
〔被控訴人の主張〕 (1) 本件各特許発明技術的意義について ア 原判決における本件各特許発明技術的意義に係る認定 判断は正当である。
・ すなわち,本件明細書では,従来例の課題を吸引輸送の開始時に横向き管の出口とレベル計との間に空間ができることにあると説明され(【0005】),本件各特許発明では,従来例が持つ課題を解消すべく,延長線よりも下方を材料で充填することによって落下を阻止すると説明されている(【0016】〜【0018】)。
また,いずれの実施例も,延長線Lより下方に空間が生じない態様のものである 【図 (1】,【図3】,【図4】)。【0033】では,「…レベル計70は延長線Lより近傍又は上方の位置に設けているので,延長線Lより下方は常に満杯の状態になっており,吸引輸送される材料が未混合のままで一時貯留ホッパー6へ落下するような現象は生じない。」との説明がされている。
本件明細書における上記記載からすれば,本件各特許発明の技術思想は,輸送開始時に空間があるために落下するという従来例がもつ課題に対して,これを解決するために,単純に「空間がなければ落下しない」という発想から,一定の位置よりも下方を混合済み材料で充填することにより未混合材料の落下を防止するものであることが理解できる。
そうすると,本件各特許発明技術的意義は,横向き管が縦向き管に接する出口の下端より下方を混合済み材料で充填された状態で吸引輸送を開始することにより,当該出口の下端と充填レベルとの間に空間ができないようにし,輸送材料の落下を防止するというものであるといえる。
イ 控訴人の主張について 控訴人の主張は,本件各特許発明の技術思想は,@吸引輸送開始時に一定の位置よりも下方を材料で充填することにより,輸送材料の落下を防止するという点に加えて,A吸引開始後に,いったん空間に落下した材料が巻き上げられることにより, 一時貯留ホッパーへの落下を防止するという点を含んでいるとするものである。
確かに,空気の流れが粉粒体に当たると粉粒体が巻き上がる現象が生じることはあり得るが,「巻き上げ現象」は,空気の流速,材料の重さ・大きさ,配管の角度や太さなど,様々な要素により影響を受けるのであり,当然に生じるとはいえないし,かかる現象が生じる条件やその範囲は,技術常識に属する事柄ではない。
仮に,控訴人が主張するように,巻き上げ現象によって一時貯留ホッパーへの供給を防止することができれば,横向き管の出口よりも下方に充填レベルが降下してから材料の輸送を開始してもよく,また,レベル計も当該出口よりも下方位置であってもよいというのであれば,本件明細書には,巻き上げ現象が生じる条件(例えば,流速,材料の重さ・大きさ,横向き管の角度,横向き管と縦向き管の太さなど)について検討がされ,材料が巻き上げられる範囲についての記載がされているはずである(記載されていないなら,サポート要件違反である。)。しかし,本件明細書には,気流による「材料の巻き上げ」に関する記載は全くない。むしろ,横向き管が上向きでも下向きでも水平でも限定されないとしているのは 【0012】 , ( )様々な条件を考慮せずとも,輸送材料が落下しないこと,すなわち,横向き管の出口の下端よりも下方が混合済み材料で充填されていることを前提にしているからにほかならない。
そもそも,本件特許発明1における課題解決手段は,吸引輸送の開始時点を混合済み材料の充填レベルの位置により特定し(請求項1),本件特許発明2における課題解決手段は,吸引輸送開始時点における充填レベルを検出するためのレベル計の位置を特定するものであり(請求項2),いずれも吸引輸送開始時点における充填レベルに注目した技術思想であって,吸引輸送開始後に「延長線」よりも下方の材料が巻き上げられるか否かを問題とするものではない。
(2) 構成要件2Eの「横向き管における最下面の延長線」の意義について ア 原判決の認定・判断は正当であって,誤りはない。
イ 控訴人の主張について (ア) 本件明細書には,横向き管が水平の場合しか記載されておらず,「最下面」や「最下面の延長線」の定義については記載がない。
控訴人は,実施例の説明において「最下面5」と符号付きで説明されていること(【0030】及び【図1】)を根拠に,「最下面」とは,横向き管全体の中で最も下の面全体を意味している旨主張するが,【0030】及び【図1】は,横向き管が水平とされた実施例の説明にすぎず,当該説明を横向き管が斜めの場合にも妥当すると解すべき根拠はない。
(イ) 混合済み材料の充填レベルは,略水平であり,レベル計により混合済み材料が存在するか否かを検知されるのであるから,混合済み材料の上表面であることは明白である。
そして,本件各特許発明は,ともに,充填レベルの検知位置ないしレベル計の設置位置と「延長線」との上下の位置関係によって,発明を特定しているところ,充填レベルは,略水平に降下していく。また,レベル計も,縦向き管の側面に設置され,略水平に降下してくる充填レベルを検出する。したがって,「延長線」が水平方向で規定されなければ,上下関係での特定はできないが,仮に,控訴人が主張するように,横向き管が斜めの場合には「延長線」も斜めの線であるとするならば,充填レベル又はレベル計の設置位置が延長線と交差する範囲で上下関係を判断することができなくなる。
(ウ) 本件各特許発明の技術思想は,横向き管の出口の下端より下方を混合済み材料で充填された状態で吸引輸送を開始することにより,当該出口の下端と充填レベルとの間に空間ができないようにし,輸送材料の落下を防止するというものであるから,「延長線」は,横向き管が縦向き管と接する出口の下端から,水平方向に向かって延長した線を意味すると解すべきである。
(3) 構成要件2Eの「延長線の近傍位置または該延長線より上方位置」の意義についてア 原判決の認定判断は正当であって,誤りはない。
本件明細書の【0017】,【0018】では,レベル計が,@「延長線の線上に設けられている場合」と,A「延長線よりも上方位置に設けられている場合」の2つの場合について説明されているが,延長線よりも下方にレベル計を設けた場合についての記載はない。また,【0032】では,【図1】におけるレベル計70は,「延長線L近くに設けた場合」と明示されている。そうすると,【0049】の記載を加味しても,「近傍位置」に含まれるのは,原判決添付の別紙「延長線とレベル計との位置関係図」(本件位置関係図)の?ないし?であり,?はこれに含まれないと解すべきである。
なお,レベル計は,必ず一定の大きさ(上下方向の長さ)を有し,レベル計における充填レベルの検知位置をレベル計の上端に設定することも可能である。検知位置をレベル計の上端に設定した場合には,充填レベルの検知位置は延長線よりも上方に位置しても,レベル計自体は,延長線よりも少しばかり下方位置になり得るから,原判決が,「レベル計それ自体は「延長線」よりも下側に設置されてもよいが,充填レベルの検知位置が「延長線」上にある必要があり」と表現するのは,上記のような例外的な場合についての判示である。
イ 控訴人の主張について (ア) 本件特許発明2は本件特許発明1の方法を実施する装置であるところ 【0 (011】),請求項1には「…輸送は…充填レベルが供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方に降下する前に開始する」との記載がある。かかる記載によれば,輸送を開始するためには,充填レベルが検知されなければならないが,充填レベルが降下してくることを前提に,その検知される時点が「延長線の近傍または該延長線よりも下方に降下する前」である必要がある。
ここで,「延長線の近傍または該延長線よりも下方に降下する前」の意味を検討すると,「延長線の近傍」と「該延長線よりも下方」という文言があり,「延長線」が2回繰り返されていることから,「または」は「延長線の近傍」と「該延長線よりも下方」を接続していると読むのが自然である。
そうすると,@延長線の近傍に降下する前,又は,A延長線よりも下方に降下する前に充填レベルが検知されることになる。そして,検知されるのが,@延長線の近傍に降下する前ということは,検知位置は,延長線の近傍(上側の近傍)よりも上方でなければならない。また,検知されるのが,A延長線よりも下方に降下する前ということは,検知位置は,最低でも延長線上でなければならない。
以上のとおり,本件特許発明1では,充填レベルの検知位置が延長線上にある必要がある(延長線よりも下方にあってはいけない)。
(イ) 控訴人は,「気流により材料が巻き上げられる範囲」をもって「近傍」と解すべきである旨主張する。
しかし,本件明細書には,材料の巻き上げについての記載は全くない。本件各特許発明技術的意義からすれば,「近傍位置」を「気流により材料が巻き上げられる範囲」であると解釈することはできない。
仮に,控訴人が主張するように,「近傍」を「材料が未混合のまま一時貯留ホッパーヘ落下することなく流動ホッパー内に吸引輸送される」範囲を意味すると解すると,材料が巻き上げられるか否かは様々な要因により変化するから,どこまでが「近傍」で,どこからが「近傍」でないかが極めて不明確となり,第三者の予測可能性を害する。
(ウ) 本件明細書の【0049】における「近傍位置とはLより少しばかり下方位置であってもよいことを意味する。」との記載は,「あってもよい」とあるように,例外的な事象(検知位置をレベル計の上端に設定した場合に,充填レベルの検知位置は延長線よりも上方に位置しても,レベル計自体は,延長線よりも少しばかり下方位置になる場合)があることを示すにすぎない。かかる記載を根拠に,充填レベルの検知位置もレベル計の設置位置も「延長線よりも下方でもよい」と解することはできない。
(4) イ号製品の構成要件2Eの充足性以上によれば,イ号製品は,そのレベル計を最も高い位置に設定したとしても, 延長線(横向き管出口の下端から引いた水平線)とレベル計の検知面との上端とは28.2mmの間隔があり,レベル計は当該延長線と接していないから,構成要件2Eを充足しない。
なお,控訴人は,イ号製品のレベル計が,材料が未混合のまま一時貯留ホッパーヘ落下することなく流動ホッパー内に吸引輸送されるように設けられていることは明白である旨主張する。しかし,イ号製品は,その構造上,材料が一時貯留ホッパーヘ落下することを防止できるものではなく,落下を防止する必要がある場合には,排出バルブが装着されたものがオプションとして選択されることになる。
2 争点(2)(イ号製品に係る被控訴人の行為について,本件特許発明1に係る特許権に対する特許法101条4号間接侵害が成否するか)について 次のとおり,当審における当事者の主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」の第3の2に記載のとおりであるから,これを引用する。
〔控訴人の主張〕 原判決は,イ号製品を購入した顧客が,レベル計の位置を延伸部の最上部に設定した上で使用していることを認めるに足りる証拠はないとして,イ号製品に係る被控訴人の行為は,本件特許発明1に係る特許権に対する特許法101条4号間接侵害は成立しない旨判断した。
しかし,特許法101条4号の「その発明の実施にのみ使用する物」という要件は,もともと特許権の効力の不当な拡張とならない範囲でその効力の実効性を確保するという観点から,特許権侵害対象品を,それが生産,譲渡される場合には当該特許発明侵害行為を誘発する蓋然性が極めて高い物の生産,譲渡等に限定して拡張する趣旨に基づくものである。この趣旨からすれば,当該対象品が,当該特許発明実施する機能と実施しない機能の複数の機能を切り替えて使用することが可能な構造になっており,当該発明を実施しない使用方法が併存している場合であっても,当該特許発明実施しない機能だけを使用し続け,他方,当該特許発明実施する機能は全く使用しないというような使用形態が,当該対象品の経済的,商業的 又は実用的な使用形態としておよそ認め難いという場合には,当該対象品は,なお「その発明の実施にのみ使用する物」に当たると解するのが相当である。
よって,イ号製品においてレベル計の位置が延伸部の最上部に設定できるのであれば,控訴人は,イ号製品を購入した顧客が,レベル計の位置を上記のように設定した上で使用していることまで立証する必要はないというべきである。
〔被控訴人の主張〕本件特許発明1の構成要件1Bの「延長線の近傍または該延長線よりも下方に降下する前」とは,@延長線の近傍(延長線よりも上方の近傍)に降下する前,又はA延長線よりも下方に降下する前という意味である。
イ号製品において材料の吸引輸送が開始される時点は,混合済み材料の充填レベルが横向き管における延長線よりも下方に降下した後であるから,イ号製品の動作は,少なくとも構成要件1Bを充足せず,イ号製品について,本件特許発明1に係る特許権に対する特許法101条4号間接侵害は成立しない。
3 争点(3)(イ号製品について,本件各特許発明均等侵害が成立するか)について〔控訴人の主張〕(1) 本件特許発明2の均等侵害についてア 本件特許発明2とイ号製品との相違点について本件特許発明2の構成要件2Eは,「前記供給管の横向き管における最下面の延長線上の位置に,前記吸引空気源を停止する前に混合された混合済み材料の充填レベルを,該吸引空気源を停止している場合に検出するためのレベル計を設けてなることを特徴とする」と読み替えることができるから,本件特許発明2とイ号製品とは,本件特許発明2のレベル計は,供給管の横向き管における最下面の延長線上の位置に設けてあるのに対し,イ号製品のレベル計は,レベル計の上端が延長線よりも7.1mm下方に,あるいはレベル計の上端が延長線よりも28.2mm下方に設けられている点で異なる。
均等侵害の成立要件について 仮に,イ号製品が,本件特許発明2の構成要件2Eを充足しないとしても,以下のとおり,本件特許発明2の本質的部分は維持されており,かつイ号製品の構成に置き換えることは可能かつ容易であるから,イ号製品は本件特許発明2と均等であり,本件特許権の均等侵害を構成する。
(ア) 第1要件(非本質的部分) 本件特許発明2は,請求項2の記載及び本件明細書の【0017】,【0018】等の記載によれば,レベル計が延長線の線上に設けられている場合には,その延長線よりも上方は空の状態になっているので材料は何等の抵抗もなくスムーズに吸引輸送され,材料が未混合のまま一時貯留ホッパーへ落下することを防止するものである。
イ号製品のレベル計が,未混合の材料が横向き管から延伸部の方へ落下することを許容するような位置に設けられているとは考えられないから,イ号製品においても,レベル計の位置より上方は空の状態になっており材料は何らの抵抗もなくスムーズに吸引輸送され,材料が未混合のまま延伸部へ落下することが防止されている。
そうすると,イ号製品は,本件特許発明2の技術的思想の範囲内にあるということができ,両者の相違点は特許発明の本質的部分ではないと解される。
(イ) 第2要件(置換可能性) 本件特許発明2は,レベル計を延長線の線上に設けることにより,その延長線よりも上方は空の状態になっているので材料は何等の抵抗もなくスムーズに吸引輸送され,材料が未混合のまま一時貯留ホッパーへ落下することを防止するものである。
これに対し,イ号製品も,レベル計の位置より上方は空の状態になっており材料は何等の抵抗もなくスムーズに吸引輸送され,材料が未混合のまま延伸部へ落下しないような位置にレベル計を設けているものであり,課題解決原理ないし作用効果が同一であるから,置換可能性の要件を充足する。
(ウ) 第3要件(置換容易性) 本件特許発明2が,気力により材料を輸送するものである以上,レベル計を「前記供給管の横向き管における最下面の延長線」よりも下方に設置した場合であっても,巻き上げ可能な一定範囲においては一時貯留ホッパーに落下することなく,材料が流動ホッパー内に吸引輸送されることは当業者の技術常識であり,したがって,本件特許発明2と同一の作用効果を生じることは容易に想到するものである。
また,本件明細書の【0049】から,当業者が,その記載を参酌して,レベル計の位置を,供給管の横向き管における最下面の延長線上から,イ号製品のように,レベル計の上端が延長線よりも7.1mm下方に,あるいはレベル計の上端が延長線よりも28.2mm下方に設けるようにすることは,容易であるということができる。
(2) 本件特許発明1の均等侵害について ア 本件特許発明1とイ号製品との相違点について 本件特許発明1の構成要件1Bは,「流動ホッパーへの材料の吸引輸送は,吸引輸送の停止中に前回吸引輸送した混合済み材料が流動ホッパーから一時貯留ホッパーへと降下する際に,前記混合済み材料の充填レベルが供給管の横向き管における最下面の延長線よりも下方に降下する前に開始するようにすることを特徴とする」と読み替えることができるから,本件特許発明1の材料の吸引輸送が開始される時点は,混合済み材料の充填レベルが供給管の横向き管における最下面の延長線よりも下方に降下する前であるのに対し,イ号製品の材料の吸引輸送が開始される時点は,混合済み材料の充填レベルが供給管の横向き管における最下面の延長線よりも下方に降下した後である点で異なる。
均等侵害の成立要件について 仮に,イ号製品が,本件特許発明1の構成要件1Bを充足しないとしても,以下のとおり,本件特許発明1の本質的部分は維持されており,かつイ号製品の構成に置き換えることは可能かつ容易であるから,イ号製品は本件特許発明1と均等であり,本件特許権の均等侵害を構成する。
(ア) 第1要件(非本質的部分)本件特許発明1は,請求項1の記載及び本件明細書の【0015】,【0016】等の記載によれば,材料の吸引輸送が開始される時点の混合済み材料の充填レベルが延長線上である場合には,その延長線よりも下方は混合済み材料が充填された状態になっており,材料が未混合のまま一時貯留ホッパーへ落下することを防止するものである。
イ号製品のレベル計が,未混合の材料が横向き管から延伸部の方へ落下することを許容するような位置に設けられているとは考えられないから,イ号製品においても,材料の吸引輸送が開始される時点の混合済み材料の充填レベルは,材料が未混合のまま延伸部へ落下しないような位置に設けてあるといえる。
そうすると,イ号製品は,本件特許発明1の技術的思想の範囲内にあるということができ,前述の異なる部分は特許発明の本質的部分ではないと解される。
(イ) 第2要件(置換可能性)本件特許発明1は,材料の吸引輸送が開始される時点の混合済み材料の充填レベルを延長線の線上とすることにより,その延長線よりも下方は混合済み材料で充填された状態になっており,材料が未混合のまま一時貯留ホッパーへ落下することを防止するものである。
一方,イ号製品も,材料の吸引輸送が開始される時点の混合済み材料の充填レベルよりも下方が混合済み材料で充填されており,材料が未混合のまま延伸部へ落下しないような位置にレベル計を設けてあるものであり,課題解決原理ないし作用効果が同一であるから,置換可能性の要件を充足する。
(ウ) 第3要件(置換容易性)本件特許発明1が,気力により材料を輸送するものである以上,材料の吸引輸送が開始される時点が,混合済み材料の充填レベルが「最下面の延長線よりも下方」に降下した後となる場合であっても,巻き上げ可能な一定範囲においては一時貯留ホッパーに落下することなく,材料が流動ホッパー内に吸引輸送されることは当業 者の技術常識であり,したがって,本件特許発明1と同一の作用効果を生じることは容易に想到するものである。
また,当業者が,【0049】の記載を参酌して,レベル計の位置を,供給管の横向き管における最下面の延長線上から,イ号製品のように,レベル計の上端が延長線よりも7.1mm下方に,あるいはレベル計の上端が延長線よりも28.2mm下方に設け,材料の吸引輸送が開始される時点を,混合済み材料の充填レベルが「最下面の延長線よりも下方」に降下した後とすることは,容易であるということができる。
〔被控訴人の主張〕 (1) 控訴人の主張は,時機に後れた攻撃方法の提出として,民訴法157条1項に基づき却下されるべきである。
(2) 本件特許発明2の均等侵害について ア 本件特許発明2とイ号製品との相違点について 本件特許発明2においては,材料の充填レベルを検出するためのレベル計が, 「横向き管における最下面の延長線の近傍位置または該延長線より上方位置」に設けられているのに対し,イ号製品では,該延長線の下方に設けられており,延長線(横向き管の出口の下端から引いた水平線)と検知面との間隔は,73.5mm(検知面中央からの距離。なお,検知面上端からの距離は56.5mmである。)である点において相違する。
均等侵害の成立要件について イ号製品は,以下のとおり,均等侵害の第1ないし第3要件を満たさないから,本件特許発明2と均等ではなく,本件特許権の均等侵害を構成しない。
(ア) 第1要件(非本質的部分)について 本件特許発明2は,材料の充填レベルを検出するためのレベル計が,横向き管における最下面の延長線の近傍位置又は該延長線より上方位置に設けられていることを特徴とするものであり,レベル計が上記の位置に設けられていることにより,充 填レベルが横向き管における最下面の延長線の近傍又は該延長線よりも下方に落下する前に吸引輸送を開始することを可能ならしめ,横向き管における最下面の延長線の近傍又は該延長線よりも下方には材料が充填された状態になっているために,吸引輸送される材料はその充填された材料によって一時貯留ホッパーへの落下が阻止されるというものである。
したがって,本件特許発明2の本質的部分は,「材料の充填レベルを検出するためのレベル計が,横向き管における最下面の延長線の近傍位置または該延長線より上方位置に設けられている」という部分である。
イ号製品と本件特許発明2とは,本件特許発明2の上記本質的部分において相違しており,第1要件を満たさない。
なお,イ号製品においては,レベル計は横向き管の出口の下端よりも下方に設置されているので,吸引輸送の開始時点において,出口の下端と充填レベルの間に空間が生じており,輸送された材料がその空間に落下する。充填された材料によって落下が阻止されることはない。その結果,一時貯留ホッパーヘの落下防止という目的は達成されない。イ号製品の用途は,精度の高い微粉除去ではなく,大まかな粉・異物除去である。
(イ) 第2要件(置換可能性)について イ号製品では,レベル計が延長線の下方に設けられているため,吸引輸送開始は,充填レベルが供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍又は延長線よりも下方に降下した後であり,横向き管における最下面の延長線の近傍又は延長線よりも下方には材料が充填された状態になっておらず,空間が生じている。そして,その空間に,吸引輸送された材料は落下する。
控訴人は,巻き上げにより一時貯留ホッパーヘ落下しないことを主張するが,当然に材料の全てが巻き上げられるものではないし,材料を巻き上げられるかどうかには,種々の条件が関係しており,極めて限られた条件の下においてのみ,その全てを巻き上げることができるものである。
したがって,イ号製品においては,吸引輸送の際,下方を材料で充填して材料の落下を阻止するという本件特許発明2の作用効果を奏しておらず,その目的も達し得ないから,第2要件を満たさない。
(ウ) 第3要件(置換容易性)について置換可能でない以上,置換容易性も満たさない。
(3) 本件特許発明1の均等侵害についてア 本件特許発明1とイ号製品との相違点について本件特許発明1においては,吸引輸送が開始される時点が,混合済み材料の充填レベルが供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍又は該延長線よりも下方に降下する前であるのに対し,イ号製品では,後である点で相違する。
均等侵害の成立要件についてイ号製品は,以下のとおり,均等侵害の第1ないし第3要件を満たさないから,本件特許発明1と均等ではなく,本件特許権の均等侵害を構成しない。
(ア) 第1要件(非本質的部分)について本件特許発明1は,材料の吸引輸送が,混合済み材料の充填レベルが供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍又は該延長線よりも下方に降下する前に開始することを特徴とするものであり,また,横向き管における最下面の延長線の近傍又は該延長線よりも下方には材料が充填された状態になっているために,吸引輸送される材料はその充填された材料によって一時貯留ホッパーへの落下は阻止されるというものである。
したがって,本件特許発明1の本質的部分は,「吸引輸送が開始される時点が,混合済み材料の充填レベルが供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方に降下する前である」という部分である。
イ号製品は,本件特許発明1の本質的部分において相違しており,第1要件を満たさない。
(イ) 第2要件(置換可能性)について 本件特許発明1は,混合済み材料の充填レベルが供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍又は該延長線よりも下方に降下する前に吸引輸送されることから,横向き管における最下面の延長線の近傍又は該延長線よりも下方には材料が充填された状態になっており,したがって,吸引輸送される材料はその充填された材料によって一時貯留ホッパーへの落下が阻止されるという作用効果を有し,未混合のまま一時貯留ホッパーへ落下するのを防止するという目的を達成する。
これに対し,イ号製品では,吸引輸送開始は,充填レベルが供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍又は該延長線よりも下方に降下した後であるから,横向き管における最下面の延長線の近傍又は該延長線よりも下方には材料が充填された状態になっておらず,空間が生じている。そして,その空間に,吸引輸送された材料は,落下する。
したがって,イ号製品においては,吸引輸送の際,下方を材料で充填して材料の落下を阻止するという本件特許発明1の作用効果を奏していないから,第2要件を満たさない。
(ウ) 第3要件(置換容易性)について置換可能でない以上,置換容易性も満たさない。
4 争点(4)(ロ号製品は,本件特許発明2の各構成要件を充足するか)について原判決「事実及び理由」の第3の3に記載のとおりであるから,これを引用する。
5 争点(5)(ロ号製品に係る被控訴人の行為について,本件特許発明1に係る特許権に対する特許法101条4号間接侵害が成立するか)について原判決「事実及び理由」の第3の4に記載のとおりであるから,これを引用する。
6 争点(6)(ロ号製品に係る侵害予防としての差止請求の可否)について〔控訴人の主張〕原判決は,控訴人が請求しているロ号製品の差止請求につき,被控訴人がイ号製品を業として生産等していたのは平成25年3月までであり,ロ号製品は,イ号製品に別の装置を組み合わせたものであるから,被控訴人が,ロ号製品を,業として 生産等していたのも平成25年3月までであるとして,上記請求を棄却した。
確かに,ロ号製品の生産等は平成25年3月までであり,被控訴人は「特許権を侵害する者」には該当しないが,「特許権を侵害するおそれがある者」に該当する。
「特許権を侵害するおそれ」とは,客観的にみて侵害が発生する蓋然性があると認められる具体的な事実が存在することをいい,当該具体的な事実としては,過去に侵害行為を行ったこと,特許発明技術的範囲に属することを争っていること等のほか,侵害品の製造,販売等の能力があること等の事実を総合して認定判断すべきである。
したがって,原判決が,上記のとおり,被控訴人が特許権を侵害する者に該当するか否かという点のみを判断し,特許権を侵害するおそれがある者に該当するか否かという争点を看過したまま,控訴人の差止請求を棄却したのは誤りである。
〔被控訴人の主張〕 (1) ロ号製品は,イ号製品に別の装置を組み合わせたものである。
イ号製品が本件各特許発明に係る特許権を侵害しない以上,ロ号製品についても,特許権侵害が成立することはない。
(2) 「特許権を侵害するおそれ」がないこと 被控訴人は,平成25年3月にイ号製品の製造,販売を終了し,同月26日及び同月27日に部品在庫を廃棄した。
そして,平成25年4月から,全く構成の異なる新型パワーリダクションホッパーの販売を開始している。
したがって,前記(1)の点を措いても,被控訴人がイ号製品及びロ号製品を製造,販売するおそれは存しない。
7 争点(7)(損害額)について 原判決「事実及び理由」の第3の5に記載のとおりであるから,これを引用する。
当裁判所の判断
当裁判所も,イ号製品及びロ号製品は,いずれも本件特許権を侵害しないから, 控訴人の被控訴人に対する請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は,以下のとおりである。
1 争点(1)(イ号製品は,本件特許発明2の各構成要件を充足するか)について (1) 本件各特許発明の特徴 ア 本件各特許発明の特許請求の範囲の記載は,次のとおりである(「/」は原文の改行箇所を示す。)。
【請求項1】流動ホッパーと一時貯留ホッパーとの間に縦向き管と横向き管からなる供給管を設け,前記流動ホッパーの出入口は,前記供給管のみと連通してあり,材料供給源からの材料を吸引空気源の気力により前記供給管を介して流動ホッパー内に吸引輸送するとともに混合し,その混合済み材料を前記一時貯留ホッパー内へ落下するようにする操作を繰り返しながら行なう粉粒体の混合及び微粉除去方法において,/流動ホッパーへの材料の吸引輸送は,吸引輸送の停止中に前回吸引輸送した混合済み材料が流動ホッパーから一時貯留ホッパーへと降下する際に,前記混合済み材料の充填レベルが供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方に降下する前に開始するようにすることを特徴とする粉粒体の混合及び微粉除去方法。
【請求項2】排気口にガス導管を介して吸引空気源を接続した流動ホッパーと,該流動ホッパーの出入口と縦方向に連通した縦向き管と,この縦向き管に横方向に連通され材料供給源からの材料が供給される横向き管とからなる供給管と,該供給管に接続された一時貯留ホッパーとからなり,/前記流動ホッパーの出入口は,前記供給管のみと連通してあり,/前記供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍位置または該延長線より上方位置に,前記吸引空気源を停止する前に混合された混合済み材料の充填レベルを,該吸引空気源を停止している場合に検出するためのレベル計を設けてなることを特徴とする粉粒体の混合及び微粉除去装置。
イ 本件明細書の発明の詳細な説明には,次のような記載がある(下記記載中に引用する図1については,別紙本件明細書図面目録を参照。)。
(ア) 発明の属する技術分野【0001】本発明は,プラスチック成形材料,医薬品材料,加工食品材料等の粉粒体(本明細書では単に材料とも言う。)を混合するとともに,該粉粒体に付着している微粉(ダストも含む広義のものをいう)を除去する,粉粒体の混合及び微粉除去方法とその装置に関する。
(イ) 従来の技術【0002】従来,この種の粉粒体の混合装置としては,実開平3ー32936号公報に記載されているようなものが知られている。
【0003】この従来の混合装置は,輸送管を介して材料供給源と接続した混合ホッパーに,ガス導管を介して吸引空気源を接続し,前記混合ホッパーの出入口に接続された材料の排出導通路には下方から上方に向けて上り勾配の輸送短管を接続するとともに,排出導通路の軸線と輸送短管の軸線とが交差する角を鋭角とし,さらに前記排出導通路の下端部には中程位置にレベル計を設けたチャージホッパー(一時貯留ホッパー)を接続している。このような構成によって,吸引空気源の気力により混合すべき材料を前記輸送短管を介して混合ホッパー内に吸引輸送するとともに混合し,その混合済み材料は前記チャージホッパー内へ落下するようにしてなるものである。
【0004】上記従来例では,輸送短管は混合ホッパーの材料の排出導通路に対して下方から上方に向けて上り勾配にして接続しているため,材料供給源からの材料は,吸引空気源の気力により輸送短管を介して前記混合ホッパー内へスムーズに輸送され,吸引空気源の気力により混合されるものであるから,機械的な攪拌手段や混合手段を設ける必要がない。そのため,混合材料を機械的に破損したりするのを防止できるなどの多くの利点を有していて,光ディスク用の装置としても用いることができる。
(ウ) 発明が解決しようとする課題【0005】しかしながら,前記従来例の混合装置によれば,(イ) 一時貯留ホ ッパー(チャージホッパー)には中程位置にレベル計を設けており,成形機が材料を消費して材料のレベルがレベル計の位置より下方に至れば混合ホッパーへの次回材料の輸送が開始されるようになっている。すなわち,次回材料が輸送される時には,輸送短管の出口とレベル計の位置との間には空間ができた状態になっている。
そのような状態で輸送が開始されると,材料の大部分は混合ホッパーへ吸引輸送されるものの,材料の一部は未混合のまま一時貯留ホッパーへ直接に落下してしまうという問題が生じていた。
【0006】(ロ)そして,吸引空気が停止すると,混合ホッパーにおいて混合中の材料は一時貯留ホッパーへ落下するようになっているが,輸送短管の出口とレベル計の位置との間に形成されている空間の容積を超える大きい容積の材料を吸引輸送した場合には,その超えた材料は,下方から上方に向けて上り勾配に設けられている前記輸送短管の方へ落下するという不都合が生じていた。/その不都合を解消するには,例えば,実開平3ー32936号公報の請求項2に記載のような弁を設けるとか,輸送短管の出口とレベル計の位置との間に形成される空間は十分に大きくしておくとかの手段を必要とした。そして,前記空間を大きく設ける場合には,一時貯留ホッパーの容積は2チャージ分程度の規模にする必要があり,装置の大形化を招く等の問題があった。
【0008】そこで,本出願の請求項1と2に記載の発明は,上記(イ)に記載の問題を解消するために提案された発明であって,材料が未混合のまま一時貯留ホッパーへ直接に送られるのを防止することを目的としている。… (エ) 課題を解決するための手段 【0010】上記目的を達成するため提案された請求項1記載の発明は,流動ホッパーと一時貯留ホッパーとの間に縦向き管と横向き管からなる供給管を設け,前記流動ホッパーの出入口は,前記供給管のみと連通してあり,材料供給源からの材料を吸引空気源の気力により前記供給管を介して流動ホッパー内に吸引輸送するとともに混合し,その混合済み材料を前記一時貯留ホッパー内へ落下するようにする 操作を繰り返しながら行なう粉粒体の混合及び微粉除去方法において,流動ホッパーへの材料の吸引輸送は,吸引輸送の停止中に前回吸引輸送した混合済み材料が流動ホッパーから一時貯留ホッパーへと降下する際に,前記混合済み材料の充填レベルが供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方に降下する前に開始するようにすることを特徴とする。
【0011】また,請求項2記載の発明は請求項1記載の方法を実施する装置であって,排気口にガス導管を介して吸引空気源を接続した流動ホッパーと,該流動ホッパーの出入口と縦方向に連通した縦向き管と,この縦向き管に横方向に連通され材料供給源からの材料が供給される横向き管とからなる供給管と,該供給管に接続された一時貯留ホッパーとからなり,前記流動ホッパーの出入口は,前記供給管のみと連通してあり,前記供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍位置または該延長線より上方位置に,前記吸引空気源を停止する前に混合された混合済み材料の充填レベルを,該吸引空気源を停止している場合に検出するためのレベル計を設けてなることを特徴としている。
【0012】なお,請求項1と請求項2記載の発明において,横向き管とは縦向き管に対して任意の角度で交差する管ということであり,上向き,下向き,水平等いづれの方向のものも含まれるものとし,交差する角度には限定されないものとする。また縦向き管とは略縦向き管ということであり,中を通る材料が上方から下方へ降下ないしは落下することが可能であればよく,垂直である必要はない。
(オ) 作用【0015】請求項1記載の方法によれば,材料は吸引空気源の吸引気力により流動ホッパー内へ吸引輸送されて混合され,吸引空気源が停止すると一時貯留ホッパーへ落下する。その際,第1回目の吸引輸送時には一時貯留ホッパー内は勿論のこと,横向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方の縦向き管は空の状態になっている。このため,材料の大部分は流動ホッパー内ヘ吸引輸送されるものの,材料の一部はその重力により空状態の一時貯留ホッパー内へ未混合 のまま落下する。
【0016】このようにして,一時貯留ホッパーの下方には未混合の材料が混じってしまうが,この第1回目の材料は後工程(成形機など)の調整運転用材料として消費され,次回の材料は第1回の材料のレベルが横向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方に落下する前に開始されるものであるから,第2回目以降の吸引輸送においては,横向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方には材料が充填された状態になっている。従って,吸引輸送される材料はその充填された材料によって一時貯留ホッパーへの落下は阻止され,未混合のまま一時貯留ホッパーへ落下するという問題が解消する。
【0017】請求項2記載の装置によれば,供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも上方位置には,材料の充填レベルを検出するためのレベル計が設けられている。すなわち,材料の吸引輸送を,充填レベルが横向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方に落下する前に開始する際のその開始時点は,該延長線よりも上方に設けられたレベル計によって正確に捉えることができるようになっている。従って,この装置では材料が未混合のまま一時貯留ホッパーへ落下するということはない。
【0018】そして,レベル計が前記延長線の線上に設けられている場合には,その延長線よりも上方は空の状態になっているので何等の抵抗もなくスムーズに吸引輸送される。また,レベル計が該延長線よりも上方位置に設けられている場合には,該延長線の位置とレベル計との間には材料が充填された状態になっているが,その充填層は吸引空気の気力により供給管からの材料と一緒に流動ホッパーへ吸引されるものであるから吸引輸送に支障を来すことはない。
(カ) 発明の実施の形態1【0028】縦向き管4Aと横向き管4Bとは,T字形を横倒しした形状にして一体に形成してあり,前記縦向き管4Aの上端部は流動ホッパー2の出入口2aと中間管3を介して間接に接続するとともに,下端部は一時貯留ホッパー6に接続し てある。…【0029】…流動ホッパー2より垂設された縦向き管4Aの軸線と横向き管4Bの軸線とが交差する角が90度となるように,つまり横向き管4Bが水平となるように形成してあるが,角度は材料が詰まらない範囲であれば傾いていてもよい。
【0030】横向き管4Bから供給される粉粒体(材料)Mの充填量(供給量)を検出するため,横向き管4Bにおける最下面5の延長線Lの近傍位置または該延長線Lより上方位置には,レベル計70が設けてある。
【0031】レベル計70を図1の実線で示した70の位置(つまり中間管3の上部)位置に設けた場合は,材料の充填レベルがレベル計70の位置まで降下すると,次回材料の吸引輸送が開始され,吸引輸送される材料は延長線Lとレベル計70との間にある材料と一緒に流動ホッパー2に送られ混合される。そして,混合された材料は吸引が停止すると,残っている前回材料の上に落下して積み増しされ,流動ホッパー2の下方にも貯留された状態になる。貯留された材料は一時貯留ホッパー6の下方から成形機等に順次送られて消費され,材料の充填レベルがレベル計70の位置まで落下すると次回の吸引輸送が開始されるようになっており,これが繰り返される。
【0032】レベル計70を図1の延長線L近くに設けた場合にも,材料の充填レベルがレベル計70の位置まで降下すると,次回材料の吸引輸送が開始される。
この場合は,延長線Lの上方に材料がない状態で開始される。そして,前記中間管3の位置に設けた場合と同様に,混合された材料は吸引が停止すると,残っている前回材料の上に落下して積み増しされ,流動ホッパー2の下方にも貯留された状態になる。貯留された材料は一時貯留ホッパー6の下方から成形機等に順次送られて消費され,材料の充填レベルがレベル計70の位置まで降下すると次回の吸引輸送が開始されるようになっており,これが繰り返される。
【0033】上述のようにレベル計70は延長線Lより近傍又は上方の位置に設けているので,延長線Lより下方は常に満杯の状態になっており,吸引輸送される 材料が未混合のままで一時貯留ホッパー6へ落下するような現象は生じない。… (キ) その他の変形例 【0049】レベル計70は,横向き管4Bにおける最下面5の延長線Lの近傍位置が好ましいものであり,その近傍位置とはLより少しばかり下方位置であってもよいことを意味する。
(ク) 発明の効果 【0053】請求項1記載の発明によれば,材料の吸引輸送は第1回目の材料の充填レベルが横向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方に降下する前に開始されるものであるから,横向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方には材料が充填された状態になっていて,吸引輸送される材料はその充填された材料によって一時貯留ホッパーへの落下が阻止されるものであり,未混合のまま一時貯留ホッパーへ落下するという問題は解消する。
【0054】請求項2記載の発明によれば,供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも上方位置には,材料の充填レベルを検出するためのレベル計が設けられているものであるから,材料を吸引輸送する際の開始はレベル計からの信号によって正確に捉えることができ,材料のレベルが横向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方に降下する前に開始することができるようになっているので,材料が未混合のまま一時貯留ホッパーへ落下するという現象を防止した装置が提供できる。
ウ 前記ア及びイによれば,本件各特許発明の特徴は,以下のとおりであると認められる。
(ア) 本件各特許発明は,粉粒体(材料)を混合するとともに,該粉粒体に付着している微粉を除去する,粉粒体の混合及び微粉除去方法とその装置に関する 【0 (001】)。
この種の従来の混合装置は,輸送管を介して材料供給源と接続した混合ホッパーに,ガス導管を介して吸引空気源を接続し,前記混合ホッパーの出入口に接続され た材料の排出導通路には下方から上方に向けて上り勾配の輸送短管を接続するとともに,排出導通路の軸線と輸送短管の軸線とが交差する角を鋭角とし,さらに前記排出導通路の下端部には中程位置にレベル計を設けた一時貯留ホッパーを接続しているという構成によるものであるが(【0002】,【0003】),一時貯留ホッパーには中程位置にレベル計を設けており,次回材料が輸送される時には,輸送短管の出口とレベル計の位置との間には空間ができた状態になっているため,このような状態で輸送が開始されると,材料の大部分は混合ホッパーへ吸引輸送されるものの,材料の一部は未混合のまま一時貯留ホッパーへ直接に落下してしまうという問題があった(【0005】)。
(イ) 本件各特許発明は,前記(ア)記載の問題,すなわち,材料が未混合のまま一時貯留ホッパーへ直接に送られるのを防止することを目的とするものである 【0 (008】)。
上記課題を解決するために,本件特許発明1では,流動ホッパーへの材料の吸引輸送は,吸引輸送の停止中に前回吸引輸送した混合済み材料が流動ホッパーから一時貯留ホッパーへと降下する際に,前記混合済み材料の充填レベルが供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍又は該延長線よりも下方に降下する前に開始するようにし(【0010】),また,本件特許発明1を実施する装置である本件特許発明2では,供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍位置又は該延長線より上方位置に,混合済み材料の充填レベルを検出するためのレベル計を設けるようにし(【0011】),かかる構成を有することにより,第1回目の吸引輸送時には横向き管における最下面の延長線の近傍又は該延長線よりも下方の縦向き管は空の状態になっているため,材料の一部は,その重力により空状態の一時貯留ホッパー内へ未混合のまま落下するが(【0015】),第2回目以降の吸引輸送においては,横向き管における最下面の延長線の近傍又は該延長線よりも下方には材料が充填された状態になっているため,吸引輸送される材料は,その充填された材料によって,一時貯留ホッパーへの落下が阻止される 【0016】 【0017】 。
( , ) なお,本件各特許発明において,レベル計が前記延長線の線上に設けられている場合には,その延長線よりも上方は空の状態になっているので何等の抵抗もなくスムーズに吸引輸送され,レベル計が該延長線よりも上方位置に設けられている場合には,該延長線の位置とレベル計との間には材料が充填された状態になっているが,その充填層は吸引空気の気力により供給管からの材料と一緒に流動ホッパーへ吸引されるものであるから吸引輸送に支障を来すことはない(【0018】)。
(ウ) 本件各特許発明によれば,吸引輸送される材料は,その充填された混合済み材料によって一時貯留ホッパーへの落下が阻止されるため,未混合のまま一時貯留ホッパーへ落下するという問題が解消するという効果を奏する(【0053】,【0054】)。
(2) 構成要件2E(「横向き管における最下面の延長線の近傍位置」)の意義について ア 特許請求の範囲(請求項2)の記載からは,本件特許発明2において,「横向き管における最下面の延長線の近傍位置」が縦向き管のいかなる位置を意味するものか,一義的に明らかであるとはいえない。
イ 「横向き管における最下面の延長線」について (ア) 本件明細書の記載を参酌すると,本件明細書には,「横向き管における最下面の延長線」を定義した記載は見当たらないが,「最下面の延長線」との文言,「請求項1と請求項2記載の発明において,横向き管とは縦向き管に対して任意の角度で交差する管ということであり,上向き,下向き,水平等いづれの方向のものも含まれるものとし,交差する角度には限定されないものとする。 ( 」 【0012】)とされていること,本件各特許発明実施例についての【0030】及び【図1】の記載(図中において,横向き管内面の最下線に「最下面5」との符号が付されていること)に照らせば,「横向き管における最下面の延長線」とは,横向き管の最下面を形成する線を縦向き管に向けて延長した線を意味するものと解すべきである。
(イ) なお,被控訴人は,「横向き管における最下面の延長線」とは,横向き管 が縦向き管と接する出口の下端から,水平方向に向かって延長した線を意味すると解すべきである旨主張する。
しかし,かかる解釈は,横向き管が縦向き管と接する出口の下端,すなわち「最下点」を通る線を縦向き管に向けて「水平に」延長した線とするのに等しいものであり,特許請求の範囲の「最下面の延長線」との文言からかけ離れている。このことに加え,本件明細書には「横向き管とは縦向き管に対して任意の角度で交差する管ということであり,上向き,下向き,水平等いづれの方向のものも含まれる」 【0 (012】)と明記されており,横向き管の最下面の向きも,上向き,下向き,水平等いずれの方向のものも含まれると普通に理解されるにもかかわらず,本件明細書中には,「最下面の延長線」が「水平」方向のものに限られることについて何ら記載がないことからも,上記解釈は相当とはいえない。
ウ 「近傍位置」について (ア) 本件明細書の【0049】には,「近傍位置」に関し,「レベル計70は,横向き管4Bにおける最下面5の延長線Lの近傍位置が好ましいものであり,その近傍位置とはLより少しばかり下方位置であってもよいことを意味する。」との記載がある。
(イ) ここで,本件各特許発明は,前記(1)ウ記載のとおり,吸引輸送される材料が未混合のまま一時貯留ホッパーへ直接に送られるのを防止することを目的として,流動ホッパーへの材料の吸引輸送が,前回吸引輸送した混合済み材料が流動ホッパーから一時貯留ホッパーへと降下する際に,前記混合済み材料の充填レベルが供給管の「横向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方」に降下する前に開始するようにするため,供給管の「横向き管における最下面の延長線の近傍位置または該延長線より上方位置」に,混合済み材料の充填レベルを検出するためのレベル計を設けるようにしたものであり,これにより,吸引輸送される材料は,その充填された混合済み材料によって,一時貯留ホッパーへの落下が阻止されるため,未混合のまま一時貯留ホッパーへ落下することはないというものである。
そして,特許請求の範囲(請求項2)には,横向き管の向きや縦向き管との交差角度を規定する記載は存しないところ,本件明細書の【0012】に「請求項1と請求項2記載の発明において,横向き管とは縦向き管に対して任意の角度で交差する管ということであり,上向き,下向き,水平等いづれの方向のものも含まれるものとし,交差する角度には限定されないものとする。」との記載があることからすれば,本件特許発明2は,横向き管の向き(上向き,下向き,水平等)や縦向き管との交差角度に関わらず,吸引輸送される材料は,その充填された混合済み材料によって,一時貯留ホッパーへの落下が阻止されるという作用効果を奏するものであることが理解される。
そうすると,横向き管の向き(上向き,下向き,水平等)や縦向き管との交差角度に関わらず,吸引輸送される材料が,充填された混合済み材料によって落下が阻止されるためには,横向き管の最下面を形成する線を縦向き管に向けて延長した線のうち縦向き管内の最も高い位置より下方が,充填された混合済み材料によって満たされている必要があると理解される。したがって,本件特許発明2において「近傍位置」とは,横向き管の最下面を形成する線を縦向き管に向けて延長した線のうち縦向き管内の最も高い位置より下方が,その充填された混合済み材料によって満杯の状態になる位置より少しばかり上か下の位置を意味するものと解すべきである。
上記解釈は,本件明細書の【0033】に「レベル計70は延長線Lより近傍又は上方の位置に設けているので,延長線Lより下方は常に満杯の状態になっており,吸引輸送される材料が未混合のままで一時貯留ホッパー6へ落下するような現象は生じない。」と記載されていることとも整合する。
(ウ) 控訴人の主張について 控訴人は,吸引気力を利用した本件各特許発明のような吸引輸送において,材料の「巻き上げ現象」が生じることは当業者の技術常識であるから,「近傍位置」も,かかる現象が生じることを前提に解釈されるべきである旨主張する。
しかし,前記(1)ウ記載のとおり,本件各特許発明は,吸引輸送される材料の一時 貯留ホッパーへの落下を,「縦向き管に充填された混合済み材料」によって阻止することを課題解決手段とする発明であって,「吸引気力により生じる巻き上げ現象」の作用によって阻止するものではない。それにもかかわらず,控訴人が主張するように,「近傍位置」を,「材料が未混合のまま一時貯留ホッパーへ落下することなく流動ホッパー内に吸引輸送される」範囲,言い換えれば,吸引気力による巻き上げ現象が生じる範囲であれば近傍位置に含まれると解釈することは,「吸引気力により生じる巻き上げ現象」の作用を本件各特許発明の課題解決手段に含めるに等しいことになる。しかし,本件明細書中には,「巻き上げ現象」に関する記載は全くなく,かかる現象をその課題解決手段としているものとは解し難い。
また,本件特許発明2は,前記(イ)のとおり,横向き管の向き(上向き,下向き,水平等)や縦向き管との交差角度に関わらず,吸引輸送される材料の一時貯留ホッパーへの落下が阻止されるという効果を奏する発明であるところ,「巻き上げ現象」が生じる範囲は,吸引気力の風速(気圧),横向き管や縦向き管の径の大きさ,材料の粒径の大きさや比重など種々の条件によって一様でないにもかかわらず(この点については,前記第3の1〔控訴人の主張〕(3)イ(ウ)のとおり,控訴人も,「巻き上げ現象を前提とする場合,レベル計の位置は,材料の巻き上げが可能な位置となるが,その位置は気力の強さ,供給管の太さ,材料の重さ,横向き管の方向等の諸要因により異なる」とするところである。),本件明細書中には,「巻き上げ現象」が生じる条件や範囲についても何ら記載がない。
以上に照らせば,本件各特許発明が,かかる「巻き上げ現象」が生じることを前提として,その発明特定事項を規定したものであると解することはできない。
仮に,本件各特許発明が,控訴人が主張するように「巻き上げ現象」が生じることを前提にして,吸引輸送される材料が一時貯留ホッパーに落下しない範囲にレベル計があることを規定しているとすれば,従来技術のレベル計の位置を「巻き上げ現象」という技術常識を前提に,この現象が生じる範囲内で上昇させたというにすぎないことになり,従来技術と比較した場合の本件各特許発明の特徴点すら見いだ し難いことになる。
以上のとおり,控訴人の上記主張は理由がない。
(3) イ号製品の構成要件2Eの充足性 イ号製品の横向き管は,原判決別紙イ号製品説明書(原告主張)及び同イ号製品説明書(被告主張)のいずれによっても,縦向き管に対して下向きとなっているから,イ号製品における「横向き管の最下面を形成する線を縦向き管に向けて延長した線のうち縦向き管内の最も高い位置」は,横向き管が縦向き管と接する出口の下端である。
そして,イ号製品においては,控訴人の主張を前提に,レベル計の位置を最も高い位置にしたとしても,横向き管が縦向き管と接する出口の下端とレベル計の最上面との距離が28.2mm存する。
ところで,甲16によれば,イ号製品の全長は561.5mm,イ号製品の縦向き管(原判決別紙イ号製品説明書(原告主張)の図1の符号「4A」)の直径(内径)は57.5mm,延伸部(同図1の符号「47」)の直径(内径)は60.5mm,縦向き管(4A)と延伸部(47)を合わせた部分の長さは,約280mm程度であると認められる。
そうすると,横向き管の最下面を形成する線を縦向き管に向けて延長した線のうち縦向き管内の最も高い位置より下方には,相当の空間が存するといえ,イ号製品におけるレベル計が,充填された混合済み材料によって満杯の状態になる位置より少しばかり下に設けられているとは認められない。
したがって,イ号製品は,構成要件2Eを充足しない。
(4) 小括 以上のとおり,イ号製品は,少なくとも本件特許発明2の構成要件2Eを充足しない。
2 争点(2)(イ号製品に係る被控訴人の行為について,本件特許発明1に係る特許権に対する特許法101条4号間接侵害が成立するか)について (1) 構成要件1Bの意義について 本件特許発明1は,前記1(1)ウのとおり,従来の混合装置は,レベル計を設けている位置が一時貯留ホッパーの中程位置という下方であったため,次回材料の輸送時には,輸送短管の出口とレベル計の位置との間に空間ができた状態になっており,このような状態で輸送が開始されると,材料の一部は未混合のまま一時貯留ホッパーへ直接に落下してしまうという問題があったことから,これを防止することを目的とするものであり,本件特許発明1を実施する装置である本件特許発明2では,供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍位置又は該延長線より上方位置に,混合済み材料の充填レベルを検出するためのレベル計を設けるようにしている 【0 (011】)。
したがって,構成要件1Bの「混合済み材料の充填レベル」は,粉粒体の混合及び微粉除去装置に設けられたレベル計により検出される充填レベルを意味するものと認められる。また,本件特許発明2におけるレベル計が,「供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍位置または該延長線より上方位置」に設けられていることに対応して,本件特許発明1では,流動ホッパーへの材料の吸引輸送は,レベル計により検出される混合済み材料の充填レベルが「供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方」に降下する前に開始するようにされていると認められる。そして,構成要件1Bの「横向き管における最下面の延長線」は,本件特許発明2の構成要件2Eと同じく,横向き管の最下面を形成する線を縦向き管に向けて延長した線を意味し,同様に,「近傍」は,横向き管の最下面を形成する線を縦向き管に向けて延長した線のうち縦向き管内の最も高い位置より下方が,その充填された混合済み材料によって満杯の状態になる位置より少しばかり上か下を意味するものと解される。
そうすると,構成要件1Bは,流動ホッパーへの材料の吸引輸送が,最も遅くても,混合済み材料の充填レベルが「横向き管における最下面の延長線の少しばかり下」,すなわち,「横向き管の最下面を形成する線を縦向き管に向けて延長した線 のうち縦向き管内の最も高い位置より下方が,その充填された混合済み材料によって満杯の状態になる位置より少しばかり下」よりも下方に降下する前に開始されるようにすることを意味するものと解される。
(2) イ号製品の構成要件1Bの充足性 イ号製品は,前記1(3)のとおり,控訴人の主張を前提に,レベル計の位置を最も高い位置にしたとしても,横向き管が縦向き管と接する出口の下端とレベル計の最上面との距離が28.2mm存するから,イ号製品におけるレベル計が充填レベルを検出するのは,最も早くて,混合済み材料の充填レベルが,横向き管が縦向き管と接する出口の下端から28.2mm下に降下したときということになる。これは,「横向き管の最下面を形成する線を縦向き管に向けて延長した線のうち縦向き管内の最も高い位置より下方が,その充填された混合済み材料によって満杯の状態になる位置より少しばかり下」よりも下方に降下する前に,流動ホッパーへの材料の吸引輸送を開始しているとは認められないから,イ号製品の動作は,本件特許発明1の構成要件1Bを充足しない。
(3) 小括 イ号製品の動作は,少なくとも構成要件1Bを充足しないから,本件特許発明1に係る特許権の間接侵害を構成しない。
3 争点(3)(イ号製品について,本件各特許発明均等侵害が成立するか)について (1) 時機に後れた攻撃方法との主張について 被控訴人は,控訴人が,当審において,新たにイ号製品は本件各特許発明均等侵害を構成する旨の主張を予備的に追加したのに対し,上記主張は,時機に後れた攻撃方法の提出として,民訴法157条1項に基づき却下されるべきである旨主張する。
控訴人は,平成25年6月3日に本件訴訟を提起し,平成26年9月25日に原判決が言い渡されると,同年10月8日に控訴を提起したが,均等侵害に係る主張 は,控訴状にも,同年12月16日提出に係る控訴理由書にも記載されておらず,平成27年2月14日提出に係る第1準備書面において初めて,その主張の骨子が記載されたものである。
第1審における争点は,専ら構成要件2E及び1Bの充足性であったこと,控訴状には控訴理由の記載がなく,控訴理由書には,控訴理由は,前記第3の1(「横向き管における最下面の延長線」,「延長線の近傍位置または該延長線より上方位置」の意義),第3の2及び第3の6の4点である旨記載をしながら,均等侵害に係る主張を記載せず,主張の予告もなかったこと,控訴人の第1準備書面が提出されたのは,同月19日の当審第1回口頭弁論期日のわずか5日前であったことなど,本件審理の経過に照らせば,控訴人の均等侵害に係る主張は,時機に後れたものといわざるを得ない。しかしながら,被控訴人も上記主張に対する認否,反論をしたことに鑑み,均等侵害の成否について以下において判断する。
(2) 本件特許発明2の均等侵害について ア 本件特許発明2とイ号製品との相違点について 前記1において説示したとおり,イ号製品は,本件特許発明2の構成要件2Eを充足しないから,本件特許発明2とイ号製品とは,少なくとも構成要件2E,すなわち,本件特許発明2においては,レベル計が,供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍位置又は該延長線より上方位置に設けられているのに対し,イ号製品においては,レベル計の位置を最も高い位置にしたとしても,横向き管が縦向き管と接する出口の下端とレベル計の最上面との距離が28.2mm存し,レベル計が,横向き管の最下面を形成する線を縦向き管に向けて延長した線のうち縦向き管内の最も高い位置より下方が,その充填された混合済み材料によって満杯の状態になる位置より少しばかり下に設けられているとは認められない点において相違する。
均等侵害の成立要件について (ア) 作用効果の同一性(第2要件)について 本件特許発明2は,前記1(1)ウのとおり,吸引輸送される材料が未混合のまま一 時貯留ホッパーへ直接に送られるのを防止することを目的として,流動ホッパーへの材料の吸引輸送は,前回吸引輸送した混合済み材料が流動ホッパーから一時貯留ホッパーへと降下する際に,前記混合済み材料の充填レベルが供給管の「横向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方」に降下する前に開始するようにするため,供給管の「横向き管における最下面の延長線の近傍位置または該延長線より上方位置」に,混合済み材料の充填レベルを検出するためのレベル計を設けるようにしたものであり,これにより,吸引輸送される材料は,その充填された混合済み材料によって,一時貯留ホッパーへの落下が阻止されるため,未混合のまま一時貯留ホッパーへ落下することはないという作用効果を奏するものである。
これに対し,イ号製品においては,前記1(3)のとおり,レベル計の位置を最も高い位置にしたとしても,横向き管が縦向き管と接する出口の下端とレベル計の最上面との距離が28.2mmあって,横向き管が縦向き管と接する出口の下端とレベル計の最上面との間に相当の空間が存し,当該空間は,充填された混合済み材料によって満たされた状態とはなっていないから,吸引輸送される材料が,充填された混合済み材料によって,一時貯留ホッパーへの落下が阻止され,未混合のまま一時貯留ホッパーへ落下することはないという作用効果を奏しない。
したがって,イ号製品は,均等の第2要件を充足しない。
(イ) 非本質的部分(第1要件)について 本件特許発明2の本質的部分,すなわち,技術思想の中核的部分は,前記1(1)ウによれば,構成要件2Eの「供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍位置または該延長線より上方位置に」レベル計を設けることにより,流動ホッパーへの材料の吸引輸送は,前回吸引輸送した混合済み材料の充填レベルが供給管の「横向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方」に降下する前に開始されるため,吸引輸送される材料が,その充填された混合済み材料によって,一時貯留ホッパーへの落下が阻止されるという作用効果を奏する点にあるものと認められる。
これに対し,イ号製品は,構成要件2Eの「供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍位置または該延長線より上方位置に」レベル計を設けたものではないから,レベル計の位置を最も高い位置にしたとしても,横向き管が縦向き管と接する出口の下端とレベル計の最上面との距離が28.2mmあって,横向き管が縦向き管と接する出口の下端とレベル計の最上面との間に相当の空間が存し,吸引輸送される材料が,充填された混合済み材料によって,一時貯留ホッパーへの落下が阻止されるという作用効果を奏せず,課題の解決手段を異にする。
そうすると,本件特許発明2とイ号製品との前記アの相違点が,本件特許発明2の本質的部分でないということはできない。
したがって,イ号製品は,均等の第1要件も充足しない。
ウ よって,その余の要件について検討するまでもなく,イ号製品について,本件特許発明2の均等侵害は成立しない。
(3) 本件特許発明1の均等侵害について ア 本件特許発明1とイ号製品の動作との相違点について 前記2において説示したとおり,イ号製品の動作は,本件特許発明1の構成要件1Bを充足しないから,本件特許発明1とイ号製品の動作とは,少なくとも構成要件1B,すなわち,本件特許発明1においては,流動ホッパーへの材料の吸引輸送は,混合済み材料の充填レベルが供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍又は該延長線よりも下方に降下する前に開始するようにするのに対し,イ号製品においては,レベル計の位置を最も高い位置にしたとしても,横向き管が縦向き管と接する出口の下端とレベル計の最上面との距離が28.2mm存し,イ号製品のレベル計が充填レベルを検出するのは,最も早くて,混合済み材料の充填レベルが,横向き管が縦向き管と接する出口の下端から28.2mm下に降下したときであるから,横向き管の最下面を形成する線を縦向き管に向けて延長した線のうち縦向き管内の最も高い位置より下方が,その充填された混合済み材料によって満杯の状態になる位置より少しばかり下よりも下方に降下する前に,流動ホッパーへの材料の 吸引輸送を開始しているとは認められない点において相違する。
均等侵害の成立要件について (ア) 作用効果の同一性(第2要件)について 本件特許発明1は,前記1(1)ウのとおり,吸引輸送される材料が未混合のまま一時貯留ホッパーへ直接に送られるのを防止することを目的として,流動ホッパーへの材料の吸引輸送は,前回吸引輸送した混合済み材料が流動ホッパーから一時貯留ホッパーへと降下する際に,前記混合済み材料の充填レベルが供給管の「横向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方」に降下する前に開始するようにしたものであり,これにより,吸引輸送される材料は,その充填された混合済み材料によって,一時貯留ホッパーへの落下が阻止されるため,未混合のまま一時貯留ホッパーへ落下することはないという作用効果を奏するものである。
これに対し,イ号製品においては,前記第1(3)のとおり,レベル計の位置を最も高い位置にしたとしても,横向き管が縦向き管と接する出口の下端とレベル計の最上面との距離が28.2mmあるから,イ号製品におけるレベル計が充填レベルを検出するのは,最も早くて,混合済み材料の充填レベルが,横向き管が縦向き管と接する出口の下端から28.2mm下に降下したときであり,流動ホッパーへの材料の吸引輸送が開始されるときには,横向き管が縦向き管と接する出口の下端とレベル計の最上面との間の空間は,充填された混合済み材料によって満たされた状態とはなっていないから,吸引輸送される材料が,充填された混合済み材料によって,一時貯留ホッパーへの落下が阻止されるという作用効果を奏しない。
したがって,イ号製品の動作は,均等の第2要件を充足しない。
(イ) 非本質的部分(第1要件)について 本件特許発明1の本質的部分,すなわち,技術思想の中核的部分は,前記1(1)ウによれば,構成要件1Bの流動ホッパーへの材料の吸引輸送は,「混合済み材料の充填レベルが供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方」に降下する前に開始するようにすることにより,吸引輸送される材料が, その充填された混合済み材料によって,一時貯留ホッパーへの落下が阻止されるという作用効果を奏する点にあるものと認められる。
これに対し,イ号製品は,構成要件1Bの流動ホッパーへの材料の吸引輸送は,「混合済み材料の充填レベルが供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方」に降下する前に開始するようにしたものではないから,レベル計の位置を最も高い位置にしたとしても,横向き管が縦向き管と接する出口の下端とレベル計の最上面との距離が28.2mmあって,流動ホッパーへの材料の吸引輸送が開始されるときに,横向き管が縦向き管と接する出口の下端とレベル計の最上面との間に相当の空間が存し,吸引輸送される材料が,充填された混合済み材料によって,一時貯留ホッパーへの落下が阻止されるという作用効果を奏せず,課題の解決手段を異にする。
そうすると,本件特許発明1とイ号製品の動作との前記アの相違点が,本件特許発明1の本質的部分でないということはできない。
したがって,イ号製品の動作は,均等の第1要件も充足しない。
ウ よって,その余の要件について検討するまでもなく,イ号製品の動作について,本件特許発明1の均等侵害は成立しない。
(4) 小括 以上によれば,イ号製品について,本件各特許発明の文言侵害及び均等侵害は成立しないから,イ号製品は,本件各特許発明技術的範囲に属しない。
4 争点(4)(ロ号製品は,本件特許発明2の各構成要件を充足するか)について 原判決別紙ロ号製品目録によれば,ロ号製品は,そのホッパー装置がイ号製品により構成され,これとホッパー装置への材料供給装置とから構成されるものである。
ロ号製品のホッパー装置,すなわち,イ号製品は,前記1のとおり,少なくとも構成要件2Eを充足しないから,ロ号製品は,本件特許発明2の技術的範囲に属しない。
5 争点(5)(ロ号製品に係る被控訴人の行為について,本件特許発明1に係る特 許権に対する特許法101条4号間接侵害が成立するか)について ロ号製品のホッパー装置,すなわち,イ号製品の動作は,前記2のとおり,少なくとも構成要件1Bを充足しないから,ロ号製品について,本件特許発明1に係る特許権の間接侵害(特許法101条4号)は成立しない。
6 争点(6)(ロ号製品に係る侵害予防としての差止請求の可否)について控訴人は,被控訴人が「特許権を侵害する者」には該当しないとしても,「特許権を侵害するおそれがある者」に該当するとして,ロ号製品に係る侵害予防としてロ号製品の生産,譲渡等の差止請求が認められるべきである旨主張する。
しかし,ロ号製品は,本件各特許発明技術的範囲に属しないから,ロ号製品を生産,譲渡等する行為は,本件特許権を侵害する行為には当たらない。
また,本件各特許発明技術的範囲に属しないロ号製品を,被控訴人が過去に販売していたという事実をもって,被控訴人が本件特許権を侵害するおそれがあると認めることができないことは明らかであり,本件において,他に,被控訴人が本件特許権を侵害するおそれがあることを認めるに足りる証拠はない。
したがって,被控訴人が本件特許権を侵害するおそれがある者であるとは認められないから,控訴人の上記主張は理由がない。
7 結論 以上によれば,控訴人の被控訴人に対する本訴請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がないことに帰する。
よって,控訴人の請求をいずれも棄却した原判決は,結論において正当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 部眞規子
裁判官 柵木澄子
裁判官 鈴木わかな
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