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事件 |
平成
24年
(ワ)
7971号
特許権移転登録手続等請求事件
平成 26年 (ワ) 16871号 損害賠償請求事件 |
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別紙当事者目録記載のとおり | |
裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 2015/04/24 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1 A事件原告の請求をいずれも棄却する。 2 B事件原告らの請求をいずれも棄却する。 3 A事件の訴訟費用はA事件原告の負担とする。 4 B事件の訴訟費用はB事件原告らの負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求の趣旨
1 A事件 (1) 主位的請求 ア A事件及びB事件被告加藤建設株式会社(以下「被告加藤建設」とい う。)は,A事件及びB事件原告アィ・ランドシステム株式会社(以下 「原告会社」という。)に対し,別紙特許権目録記載1及び2の特許権 (以下,それぞれ「本件特許権1」,「本件特許権2」といい,併せて 「本件各特許権」といい,またその特許に係る発明を,それぞれ「本件発 明1」,「本件発明2」という。)について,真正な登録名義の回復を原 因とする被告加藤建設から原告会社への特許権移転登録手続をせよ。 イ A事件被告株式会社アースアンドウォーター(以下「被告アースアンド ウォーター」といい,被告加藤建設と併せ「A事件被告ら」という。)は, 本件各特許権について,別紙登録目録1記載1及び2の各登録の抹消登録 手続をせよ。 ウ 訴訟費用はA事件被告らの負担とする。 (2) 主位的請求アの予備的請求 被告加藤建設は,本件各特許権について,別紙登録目録2記載1及び2 の各登録の抹消登録手続をせよ。 2 B事件 (1) 被告加藤建設,B事件被告E(以下「被告E」という。)及びB事件被告 D(以下「被告D」といい,同被告,被告加藤建設及び被告Eとを併せて 「B事件被告ら」といい,被告D,被告加藤建設,被告アースアンドウォー ター及び被告Eとを併せて「被告ら」という。)は,連帯して,原告会社に 対し,1億5000万円及びこれに対する平成23年11月3日から支払済 みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 被告E及び被告Dは,連帯して,B事件原告C(以下「原告C」といい, 原告会社と併せて「原告ら」という。)に対し,4640万1183円及び これに対する平成26年9月25日から支払済みまで年5分の割合による金 員を支払え。 (3) 訴訟費用はB事件被告らの負担とする。 (4) (1)及び(2)につき仮執行宣言 |
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A事件につき,主位的請求アの予備的請求に係る訴えについての被告加藤
建設の本案前の答弁 被告加藤建設に対する主位的請求アの予備的請求に係る訴えを却下する。 |
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請求の趣旨に対する答弁
1 A事件につき (1) 主位的請求に対し ア 原告会社の請求をいずれも棄却する。 イ 訴訟費用は原告会社の負担とする。 (2) 主位的請求アの予備的請求に対する本案についての答弁(被告加藤建設) ア 原告会社の請求を棄却する。 イ 訴訟費用は原告会社の負担とする。 2 B事件につき (1) 原告らの請求をいずれも棄却する。 (2) 訴訟費用は原告らの負担とする。 |
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事案の概要
1 A事件 原告会社は,かつて同社の代表者であった原告Cを発明者とする本件各特許 権についてそれぞれ特許出願をし,特許査定を経て,平成20年3月28日付 け(本件特許権1)及び同年9月19日付け(本件特許権2)でそれぞれ設定 登録を得ていたが,平成21年11月2日付けで,特定承継による本権の移転 を原因として,いずれも訴外エコライン株式会社(以下「エコライン」とい う。)に対し移転登録(以下「本件各移転登録」といい,本件各移転登録の原 因となる原告とエコラインとの間の本件各特許権の譲渡契約を「本件譲渡契 約」という。なお,本件譲渡契約の時期及び内容につき争いがある。)がされ, さらに,平成23年6月1日付けで,特定承継による本権の移転を原因として, 被告加藤建設に対して別紙登録目録2記載1及び2の各移転登録(以下「本件 各再移転登録」といい,本件各再移転登録の原因となるエコラインと被告加藤 建設との間の本件各特許権の譲渡契約を「本件再譲渡契約」という。)がされ た。そして,同年9月29日付けで,被告加藤建設から,別紙登録目録1記載 1及び2の内容で,被告アースアンドウォーターに対し,専用実施権の設定登 録(以下「本件各設定登録」という。)がされるに至った。原告会社は,エコ ラインへの本件各移転登録について,その原因たる原告会社とエコラインとの 平成21年10月20日付け特許権譲渡契約(原告の主張する本件譲渡契約) について,譲渡代金のうち3495万1021円の未払があるとし,債務不履行を原因として,平成23年10月31日付けで解除した(同年11月2日到達)とした。 これを前提として原告会社は,主位的に,(1)被告加藤建設は,本件譲渡契約について上記譲渡代金の未払があり,契約の解除原因があることを代表者の被告Dにおいて認識しながら,あえてエコラインから本件各特許権の譲渡を受けたものであるから,信義則上,契約解除前の第三者として登録の欠缺を主張することは許されず,(2)エコラインと被告加藤建設との間の本件再譲渡契約についても,契約の承認をしたエコラインの代表者であるFにつき,同人を代表取締役として選任した平成23年4月12日のエコラインの取締役会決議は不存在であり,本件再譲渡契約が代表権のない者によって締結されたことにつき,被告加藤建設の代表者である被告Dにおいてこれを十分認識していたから本件再譲渡契約は無効であり,また上記譲渡代金未払につき被告Dにおいて認識し加担していたから背信的悪意者である,被告アースアンドウォーターは,被告Dが設立した会社であり,上記(1)及び(2)の事情を十分認識しながら専用実施権の設定登録を受けた背信的悪意者であるとして,被告加藤建設に対し,真正な登録名義の回復を原因として被告加藤建設から原告会社への特許権移転登録手続をすることを(A事件主位的請求ア),被告アースアンドウォーターに対し,不実の登録であるとして,本件各設定登録の抹消登録手続をすることを(A事件主位的請求イ),それぞれ求め,予備的に,被告加藤建設に対し,上記本件譲渡契約の解除原因についての被告加藤建設の背信的悪意により,本件各特許権に基づく妨害排除請求として,エコラインから被告加藤建設への本件各再移転登録の抹消登録手続をすることを(A事件予備的請求),それぞれ求めた事案である。 2 B事件 被告Eは,原告会社との間で会計及び税務業務について準委任契約を締結してこれを担当し,他方でエコラインの監査役でもあったところ,原告会社につき不正な会計処理を行って原告会社の債権を犠牲にする債務不履行行為及び不法行為を行い,これらの行為はエコラインの監査役としての義務に反してエコラインに係る不正会計処理を通知しなかったことにも当たるから,原告会社の役員としてもその責任を負うものであり,また,被告Dは,エコラインの取締役でもあったところ,被告Eと共謀して上記不正な会計処理を行ったものであるから同社の取締役としての責任を負い,さらに,被告加藤建設は,その代表取締役である被告Dの上記不法行為につき会社法350条に基づく責任を負うものであるとして,原告会社は,被告E,被告D及び被告加藤建設の上記不法行為等により,本件各特許権につき本件譲渡契約等を締結したことによって逸失した利益に相当する額の損害を被り,また,平成16年11月30日から平成26年5月7日に退任するまで原告会社の代表取締役であった原告Cは,エコラインの破産により,エコラインに対して同社第6期(平成19年4月1日ないし平成20年3月31日)代表者勘定期首残高である4640万1183円の損害を被ったと主張して,(1)原告会社は,被告E,被告D及び被告加藤建設に対し,連帯して,逸失した利益相当額である3億9897万9763円の一部である1億5000万円及びこれに対する本件各特許権の譲渡契約が解除された日の翌日である平成23年11月3日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(B事件請求の趣旨第1項)を,(2)原告Cは,被告E及び被告Dに対し,連帯して,4640万1183円及びこれに対する被告E及び被告Dに対するB事件訴状送達の日の翌日である平成26年9月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(B事件請求の趣旨第2項)を,それぞれ求めた事案である。 3 前提となる事実等(証拠の摘示のない事実は当事者間に争いがない。)(1) A事件の当事者等 ア 原告会社は,昭和62年10月2日に原告Cにより設立された,秋田市 に本店を置く不動産の売買・仲介等に関する業務,建築の設計・施工・工 事監理等を主たる目的とする株式会社であり,原告Cが平成16年11月 30日から代表取締役を務めてきたほか,取締役としてG及び原告Cの姉 であるHが,監査役としてIがそれぞれ就任していた。なお,原告Cは, A事件訴え提起後の平成26年5月7日に原告会社の代表取締役を退任し, 同日,Oが代表取締役に就任した。〔甲1,弁論の全趣旨〕イ 被告加藤建設は,昭和39年10月20日に設立された秋田市に本店を 置く土木建築工事の設計等を主たる目的とした株式会社である。なお,平 成23年3月1日に,東京都千代田区の被告アースアンドウォーターの頭 書本店所在地と同一の場所に支店設置の登記をし,同日,平成18年7月 に設置した秋田県大仙市所在の唯一の支店を廃止した。〔甲4〕ウ 被告アースアンドウォーターは,平成23年3月4日に被告Dらにより 設立された節水・節電装置の製造等を主たる目的とする株式会社である。 〔甲5〕エ エコラインは,平成14年10月21日に設立されたヴィクトリー東北 有限会社を前身とする節水・節電装置の製造等を主たる目的とした株式会 社であり,平成16年8月18日に,同社を組織変更し資本金も1000 万円として,原告Cにより設立された。原告Cは,平成21年10月21 日に取締役に,平成22年7月30日に代表取締役に就任したが,いずれ も平成23年4月12日に退任ないし解任となっている。原告Cは,平成 22年3月末日決算時においては総株式の51%を占める102株の株主 であった。なお,エコラインについて報じる新聞等においては,平成21 年2月頃には,原告Cのことを同社の会長であるとして報じている。〔甲 6,36の1〕(2) B事件の当事者及び関係者等ア 原告Cは,昭和62年10月に,不動産会社である原告会社を設立し, 自身も宅地建物取引主任者であることから,宅地造成と仲介業務を行って きた。 イ J(以下「J」という。)は,原告Cの知り合いであって,平成14年 12月から平成22年5月26日まではエコラインの代表取締役であり, その後も取締役を務めている。〔乙72〕ウ Iは原告Cの姉である。平成16年8月にエコラインの取締役に就任し たが,平成23年4月12日にこれを解任され,係争中である。 エ K(以下「K」という。)は,かつてエコラインの会計担当部長であっ たところ,現在は後記アイランド株式会社の代表取締役となっている者で ある。〔乙25,121〕オ 被告Dは,平成元年当時,被告加藤建設の専務取締役であったところ, 仕事を通じて原告Cと知り合い,平成2年に原告会社が自社ビルを建設し た際には,被告加藤建設が受注をし,宅地開発等では原告会社と被告加藤 建設とで共同事業を行うなどして関係を強化してきた。平成16年8月に エコラインが増資した際には出資し,同社株式全体の20パーセントに当 たる40株の株主ともなったことから,被告Dもエコラインの社外取締役 に就任した。被告Dは,平成22年4月に自らを代表者として,訴外エコ サービス株式会社(以下「エコサービス」という。)を設立した。エコ サービスには原告Cも出資して取締役となり,被告D70パーセント,原 告C30パーセントの割合で株式を持ち合った。被告Dは,平成23年5 月6日まで被告アースアンドウォーターの代表取締役であったが,同日こ れを退任し,取締役も辞任した。 カ L(以下「L」という。)は,被告Dのかねてからの親友であるとして, 平成16年10月に,原告会社の事業資金の趣旨で原告C個人に2500 万円を信用で貸し付けるなどした。Lは被告アースアンドウォーターの取 締役である。〔甲5,36の1,10頁〕キ M(以下「M」という。)は,後記のとおり,平成20年1月にエコラ インに入社し,同社の従業員となったが,被告アースアンドウォーターの 取締役となり,平成23年5月6日に代表取締役に就任した。〔乙11 2〕ク F(以下「F」という。)は,後記のとおりエコラインの従業員(秋田 支店営業課長)であったが,平成23年4月12日に,エコラインの代表 取締役に就任する旨の登記がされている。〔甲6,22〕ケ N(以下「N」という。)は,エコラインの従業員(営業部長,開発部 長)であり,その後平成23年4月12日に取締役となったところ,同 年6月22日,エコラインの代表清算人に就任した。〔甲6,22〕コ 被告Eは,原告Cと同じ中学,高校を卒業した税理士であり,原告C から原告会社の顧問税理士への就任を依頼されて就任したが平成11年 頃までには辞任した。平成14年10月にエコラインが改組・設立され ると,原告Cからの要請で同社の監査役となり顧問税理士となった。ま た,被告Eは,エコラインの株主である株式会社E経営(以下「E経 営」という。)の代表者でもある。〔乙76〕(3) 本件各特許権 本件各特許権の内容は,別紙特許権目録記載1及び2のとおりであるほ か,その詳細は,それぞれ以下のア及びイのとおりであり,いずれも原告 Cが発明者である(甲2の2,甲2の3,甲3の2,甲3の3,乙100 の1,2)。 ア 本件特許権1(登録番号第4100693号,発明の名称「流量制御 弁」) 出願日 平成16年9月7日 発明者 C(原告C) 審査請求日 平成16年11月11日 公開日 平成18年3月23日 特許査定日 平成20年3月3日 登録日 平成20年3月28日 イ 本件特許権2(登録番号第4189027号,発明の名称「弁体と流量 制御弁」) 出願日 平成20年6月2日 発明者 C(原告C) 審査請求日 平成20年6月10日 特許査定日 平成20年8月25日 登録日 平成20年9月19日(4) 関連訴訟 本件各特許権の帰属ないしエコラインの支配権等を巡っては,多数の民事 保全申立てないし訴訟提起がされており,このうち関連する訴訟の一部は以 下のとおりである。 ア 秋田地方裁判所平成22年(ワ)第683号新株発行無効確認請求事件 I,Jが原告となり,エコラインを被告として,(1)エコラインが平成 22年6月1日になした被告Dの引受申込みがあったときに同人に割り 当てることとされた普通株式508株について,被告Dの現物出資によ る払込みが欠訣しており手続に瑕疵があることを理由として,その新株 発行が不存在であることの確認(主位的)ないし,その発行を無効とす ること(予備的),(2)当該新株はエコラインの総株式の70%超を占め ることから,不存在である当該新株の議決権が行使された株主総会決議 である,エコラインの平成23年4月12日付け株主総会における原告 C,I,Jを取締役から解任し,F,Nを取締役に選任する決議の不存 在確認,及び,エコラインの同年6月22日付け株主総会における同社 の事業をアースアンドウォーターに譲渡し,同社を解散する,エコライ ンの特許権を加藤建設に対し移転したことを追認する決議の不存在確認 をそれぞれ請求した事件である。被告Dが,エコラインに補助参加した。 秋田地方裁判所は,平成26年1月17日,@平成16年10月頃か ら平成18年2月頃までの間に,L及び被告Dから原告Cに対し各25 00万円,合計5000万円の金員が交付され,これが実際にエコライ ンのために用いられ,交付と概ね整合する時期に貸主不明の5000万 円の短期貸付金が計上されていること,Aこれにつき,エコラインにも 返済義務を負担させる意図で,平成22年5月25日付けの被告Dとエ コラインによる,エコラインが被告Dに対する貸付日平成17年1月3 0日,貸付金額2000万円の金銭消費貸借による債務負担を承認する 旨記載された債務承認弁済契約書(本件甲18)が作成されたこと,こ れにより,エコラインは被告Dが原告Cに交付した2000万円の貸金 について債務引受けをしたと認められること,Bこれについて取締役会 決議が存しないことは重大な瑕疵とはいえないし通謀虚偽表示ないし無 権代理にも当たらない,Cこの債務引受による債権が現物出資債権と なっており,新株発行に不存在ないし無効事由はない,D新株発行に瑕 疵がないから株主総会決議の不存在事由があるとはいえないとして,原 告らの請求をいずれも棄却する旨の判決を言い渡した。〔乙93〕 これに対しI,Jが控訴した(仙台高裁秋田支部平成26年(ネ)第 19号)が,仙台高裁秋田支部は,平成26年7月30日,控訴棄却の 判決をした。〔乙110〕 IとJが上告受理申立てをした(平成26年(受)第2031号)が, 最高裁は,平成27年1月22日,不受理決定をした。〔乙122〕イ 秋田地方裁判所平成23年(ワ)第148号損害賠償等請求事件,平成 24年(ワ)第62号損害賠償請求反訴事件 当該事件の本訴原告(反訴被告):原告C,J,I,O。当該事件の 本訴被告(反訴原告):被告加藤建設,被告D。 ウ 秋田地方裁判所平成23年(ワ)第525号株主代表訴訟事件 当該事件の原告:原告C,J,I。当該事件の被告:被告D。〔乙1 01〕 エ 当庁平成24年(ワ)第31523号特許権侵害行為差止等請求事件 〔甲70〕 当該事件の原告:被告加藤建設,被告アースアンドウォーター。当該 事件の被告:原告会社,アイランド株式会社,原告C,K。 本件特許権1に基づく特許権侵害,及び,顧客らに対し本件特許権1 が原告被告らいずれにも帰属していないから実施してもよいなどと虚偽 の事実を告知等した不正競争防止法2条1項14号に基づき,節水装置 の輸入,生産,譲渡等差止め,損害賠償等を請求した事件である。 平成26年12月18日に,本件特許権1に基づく特許権侵害につい て一部製品につき均等侵害の成立を認め,不正競争防止法2条1項14 号の虚偽の事実の告知等の事実も認めて,原告会社らに損害の賠償等を 命ずる判決が言い渡された。〔乙121(判決)〕 これに対しては控訴が提起されている。〔当裁判所に顕著〕(5) 本件各特許権に関連する事実関係 ア 平成20年3月28日に本件特許1が日本において特許登録がされ,そ の後,原告会社とエコラインとの間で,本件特許権1につき使用許諾契約 が締結された。 また,同年9月19日に,本件特許2が特許登録されたが,上記使用許 諾の対象特許として,本件特許権2が追加された。 その後,平成21年11月2日付けで,本件各特許権につき,エコライ ンに対し,特定承継による本権の移転を原因として本件各移転登録がされ た。 イ 原告Cは,平成22年9月8日,エコラインの代表者として,株式会社三菱東京UFJ銀行(以下「三菱東京UFJ銀行」という。)との間で本件各特許権について根質権を設定する契約をした。同契約の第4条には,本件各特許権について,契約締結時点において,エコラインが唯一の特許権者であり完全な権利を有し,いかなる負担等も存しない旨をエコラインが保証する旨を定める「表明及び保証」条項(以下「本件表明保証」という。)が存する。〔乙87〕ウ エコラインは,平成22年11月1日,エコサービス株式会社(以下「エコサービス」という。)に対し,本件各特許権につき通常実施権を設定し,受付第007978号,同007979号としてその旨登録したが,通常実施権者,実施権の範囲等については全て非開示とした。〔甲2の1,甲3の1,甲59資料4〕エ エコラインは,平成23年5月31日,被告加藤建設に対し,本件各特許権を譲渡し,同年6月1付けで,特定承継による本権の移転を原因として本件各再移転登録がされた。 被告加藤建設は,同年9月29日,被告アースアンドウォーターに対し,本件各特許権につき専用実施権を設定した(本件各設定登録)。 オ 原告会社は,平成23年10月31日,代理人弁護士を通じ,エコライン(代表清算人N),被告加藤建設,被告アースアンドウォーター及びエコサービスに宛て,債務不履行を理由として譲渡契約を解除する旨の解除通知書(甲12の1)を送付した。そこには解除原因として,本件各特許権の譲渡代金は3000万円であるところ,そのうちの480万8551円(税別)しか支払われていないこと,被告Dは被告Eと共謀し,平成22年5月末頃,エコラインの第8期の決算書作成に当たり実際には存在しないエコラインの原告会社に対する3000万円の短期貸付金を不正に作出して平成22年3月31日に遡り本件各特許権の譲渡契約代金3000万円と相殺する処理をしていることが判明しているが,原告会社との関係 では背信的悪意者であること等が記載されている。〔甲12の1〕 また,原告会社は,上記解除通知書(甲12の1)によって,被告加藤 建設及び被告アースアンドウォーターに対し,原告会社に対する移転登録 及び本件専用実施権設定登録の抹消登録を請求した。〔甲12の1〜6〕 (6) 本件各訴えの提起等 原告Cは,原告会社の代表者として,平成24年3月19日,A事件に係 る訴えを当庁に提起した。訴訟係属中の平成26年5月7日に,原告Cは原 告会社の代表者を退任した。 原告らは,平成26年6月11日,秋田地方裁判所に,B事件に係る訴え を提起した。秋田地方裁判所は,同月17日,民訴法16条1項に基づきB 事件訴訟を当庁に移送する旨の決定をした。 |
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争点
1 A事件主位的請求につき (1) 本件譲渡契約の解除の可否 ア 譲渡代金未払の事実の有無(被告E及び被告Dによるエコラインの帳 簿改ざん等の事実の有無) イ 相殺合意に基づく会計処理の有無 ウ 各相殺合意は利益相反取引に当たり,原告会社の取締役会決議も存せ ず,エコラインがこれにつき悪意であるとして無効となるか エ 各相殺合意が利益相反取引に当たり取締役会決議を欠くとして無効と なるとしても,信義則に照らし原告会社がそれを主張することが許され ないか (2) 解除原因に関する被告加藤建設の悪意ないし背信的悪意の有無 (3) 本件再譲渡契約の無効原因の有無及び被告加藤建設の認識 (4) 被告アースアンドウォーターの背信的悪意の有無 (5) 真正な登録名義の回復の許否2 A事件予備的請求につき (1) A事件予備的請求は不適法か〔被告加藤建設の本案前の答弁〕 (2) A事件予備的請求の可否3 B事件につき (1) 争点1(1)アの事実が存したとした場合のB事件被告ら(被告E,被告D 及び被告加藤建設)の責任原因 (2) 損害発生の有無及びその額 |
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争点に関する当事者の主張
1 争点1(1)ア及びイ(譲渡代金未払の事実の有無〔被告E及び被告Dによる エコラインの帳簿改ざん等の事実の有無〕,相殺合意に基づく会計処理の有 無)について〔原告らの主張〕 (1) 本件各特許権の譲渡代金及びその代金未払の有無 本件各特許権の譲渡代金総額6000万円のうち,譲渡代金支払として 認められるのは,平成21年4月13日の1100万円の銀行振込送金 と,同年11月30日ないし平成22年5月31日に,平成21年10月 ないし平成22年4月販売分として支払われた合計504万8979円の 合計1604万8979円であり,4395万1021円が未払である。 譲渡代金等の支払については,原告会社からエコラインへの領収書等の 発行はされておらず,支払の証拠は関係仕訳としてしか存在していないも のであるが,下記のとおりその仕訳にも問題がある。 (2) 被告Eによる不正な会計操作 ア 本件に関連する一連の紛争は,被告加藤建設代表者の被告Dが,平成 16年10月頃から,原告会社が有する本件各特許権をエコラインに譲 渡移転させた上で,同社の節水事業を本件各特許権とともに被告加藤建 設又は同人が支配する他の会社に移転して,エコラインを破綻させるこ とを企てたことが背景にある。これを実現するため,被告Dは,顧問税 理士であった被告Eと通謀し,別紙@ないしBのとおりの不正会計仕訳 を行い,本件各特許権について,エコラインから原告会社に対し支払う こととされ,決算書類にも記載されている使用許諾金(以下「本件使用 許諾金」という。)や,本件各特許権について決算書類に譲渡代金と記 載されている金額(以下「本件譲渡代金」という。)の各支払について ,支払を仮装したものである。 被告Dと被告Eとの通謀による不正会計仕訳は,エコライン第4期( 平成17年4月〜平成18年3月31日)の決算処理から開始されてい るところ,具体的には以下のイ,ウのとおりである。 イ 代表者勘定の残高仮装について(別紙@,甲81の1,2) 被告Eは,別紙@の番号欄(1)〜(6)の各仕訳を行ったが,上記 各仕訳は,被告Eが代表者勘定残高の仮装を目的とした不正会計操作で あった(以下「本件各不正仕訳」という。)。 (ア) 被告Eは,エコラインの第4期の決算処理において,別紙Bのとお り,売掛金@(10件,1274万1750円),売掛金A(秋田組合 病院1件,1740万3750円),売掛金B(国土交通省等16件, 1348万9350円)の合計4363万4850円について,原告C からの短期借入金と相殺処理をした(甲71,81の1,2)。 ところが,別紙Bにあるとおり,上記売掛金Aについては,平成18 年5月31日に売掛先の秋田組合病院からエコライン・普通みずほ口座 への振込入金の方法で,上記売掛金Bの売掛先16件については,同年 4月中に,それぞれの売掛先からエコライン・普通秋田口座への振込送 金の方法で,それぞれ支払われた(甲72〔総勘定元帳〕)。 このように短期借入金と相殺処理された売掛金A・Bが回収されたの であるから,被告Eは,本来は,売掛金A・B/代表者勘定A・Bの仕訳で,売掛金A・Bを復活させた上,別紙@・仕訳番号(1)(2)・右欄(正しい仕訳欄)のとおり仕訳を行うべきであったにもかかわらず,同左欄(不正仕訳欄)のとおり,同復活仕訳をしないまま,普通みずほ/売掛金A,普通秋田B/売掛金Bの仕訳を行った(甲72)。 なお,エコラインは原告Cからの借入金については,従前から代表者勘定を用いてきたのであるから,原告Cからの短期借入金を復活させる場合には,代表者勘定が用いられるべきである。 この結果,貸方勘定に計上されるべき代表者勘定が未計上のまま放置された。 (イ) また,平成18年5月31日から同年7月31日にかけて,エコライン・普通みずほ銀行から5回に分けて合計1950万円が払い戻されてエコライン内に留保され,同払戻金が原告Cに交付された事実はなかった。そこで,被告Eは,別紙@・仕訳番号(3)・右欄(正しい仕訳欄)のとおり,本来は,現金1950万円/普通みずほ1950万円の仕訳を行うべきであったにもかかわらず,同左欄(不正仕訳欄)のとおり,あたかも上記払戻金が原告Cに交付されたかのように,代表者勘定1950万円/普通みずほ1950万円の仕訳を行った(甲72)。 この結果,本来計上されるべきでない代表者勘定1950万円が借方に計上されたままとなった。 (ウ) 被告Eは,別紙@仕訳番号(4)のとおり,借方勘定を現金又は普通秋田とする合計1780万円,貸方勘定を売上高とする合計1780万円を計上する仕訳をしているが(甲72),上記1780万円は,売上金として,現金又は口座送金されたものではない。 上記仕訳は,別紙@・仕訳番号(3)仕訳により,普通みずほ銀行口座払戻金を原告Cへの代表者勘定貸付とする仮装をした結果,簿外となった同払戻金1950万円の一部について,これを簿内資金とするた めに仮装したものであった。 (エ) 平成18年5月29日から同年7月21日までの5回に分けて,原 告会社からエコラインに対して,合計1500万円が,エコラインの普 通秋田口座に振込送金する方法で貸し付けられた。上記1500万円 は,原告会社の不動産仲介収入を原資としたものであって,原告Cがエ コラインに貸し付けたものではなかった。そこで,被告Eは,別紙@・ 仕訳番号(5)・右欄(正しい仕訳欄)のとおり,本来は,普通秋田1 500万円/短期借入金1500万円の仕訳を行うべきであったにもか かわらず,同左欄(不正仕訳欄)のとおり,それがあたかも原告Cから の借入金であるかのように,普通秋田1500万円/代表者勘定150 0万円の仕訳をした(甲72)。 (オ) 被告Eは,別紙@・仕訳番号(6)・左欄(不正仕訳欄)のとお り,あたかも原告Cがエコラインから3回に分けて1031万5631 円を代表者勘定借入したかのように仕訳しているが(甲72),原告C は,同借入をした事実はないから,同仕訳は,同右欄(正しい仕訳欄) のとおり,削除されるべきである。 (カ) 別紙@・下欄「エコ社・第5期・代表者勘定・総括表」のうち,同 左欄(不正仕訳欄)は,被告E作成にかかるエコライン・第5期・代表 者勘定を総括したものであるところ,同右欄(正しい仕訳欄)は,これ を正しく修正した総括表である。 この総括表にあるとおり,被告E作成の代表者勘定は不正に操作さ れているため,第6期への繰越残高は借方69万2452円にすぎない のに対して,同不正操作を排除して正しい仕訳を行った場合には,上記 繰越残高は,借方4640万1183円に上る(エコラインの負債,原 告Cからの代表者勘定借入金)。 ウ 本件譲渡代金等の支払仮装(別紙A,甲73〜75,乙9の3,乙9の8,乙61,82) 被告Eは,エコラインの顧問税理士として,本件各特許権についての本件使用許諾金3000万円の支払債務の負担とその支払,本件譲渡代金3000万円の支払債務の負担とその支払につき,別紙Aの番号@〜Mの各仕訳を行った(以下,各番号に従い「番号@仕訳」などという。)。 上記番号@ないしMの各仕訳は,以下に述べるとおり,被告Eが,上記支払債務の支払を仮装することを目的とした不正会計操作であった(以下「本件各支払仕訳」という。)。 (ア) 本件使用許諾金債務3000万円は,番号@及びA仕訳で未払金計上 された後,被告Eがした番号BないしGの各仕訳によって既に支払わ れたものとされているが,これによる弁済の効力はない。すなわち, 上記番号B,D及びFの各仕訳は,本件使用許諾金支払債務とエコラ インの原告Cに対する代表者勘定上の貸付金債権とを相殺処理するも のであるが,同相殺処理が弁済の効力を有するには,原告Cの同意の みならず,利益相反取引として原告会社取締役会の承認決議を要する ところ,後記2〔原告らの主張〕のとおり,それらはいずれも存在し ないから,上記の相殺処理を行うことはできない。原告会社取締役会 の承認決議につき,以下同様である。 また,上記番号C及びEの仕訳は,エコラインの原告Cに対する現金 支払について,これを本件使用許諾金支払債務への弁済とみなすもの であるが,同支払が弁済効を有するためには,原告会社の同意を要す るところ,そのような同意は存在しない。 さらに,番号Gの仕訳は,平成21年4月13日になされたエコライ ン・普通秋田から原告会社への口座送金1100万円のうち434万 2957円を本件使用許諾金支払債務への弁済とするものであるが, 同口座送金は,別紙@・仕訳番号(5)による原告会社のエコライン に対する貸付金の返済に充当されるべきものであるから,同口座送金 が弁済効を有する余地はない。 (イ) 本件各特許権の譲渡代金債務3000万円は,番号HないしLの仕訳 によって計上されたエコラインの原告会社に対する短期貸付金300 0万円について,これを番号M仕訳による未払金との相殺によって支 払われたものとされているが,同相殺に弁済効はない。 すなわち,上記番号H及びKは,エコラインの原告Cに対する代表者 勘定上の貸付金債権を,原告会社に対する短期貸付金としたもので, 同会計処理を行うには,原告Cの同意のみならず,利益相反取引とし て原告会社取締役会の承認決議を要するが,いずれも存在しない。 また,番号Jの仕訳は,平成21年4月13日にされたエコライン・ 普通秋田から原告会社への口座送金1100万円のうち665万70 43円を原告会社に対する短期貸付金としたものであるが,同口座送 金は,別紙@・仕訳番号(5)による原告会社のエコラインに対する 貸付金の返済に充当されるべきものであるから,原告会社に対する短 期貸付金とする余地はない。 さらに,番号Lの仕訳は,第8期末のエコラインの使途不明現金13 30万円について,エコラインの原告会社に対する短期貸付けとみな したものであるが,原告会社がこのような債務負担を承諾した事実は ない。 (ウ) 上記番号B,D,F,H及びKの各仕訳は,本件使用許諾金債務と本 件各特許権の譲渡代金債務について,代表者勘定上の借方残高(エコ ラインの原告Cに対する貸付金債権)で相殺するものであるから,同 相殺をするには,同借方残高があることが前提となる。 しかし,別紙@の下欄総括表にあるとおり,第6期への繰越残高は, 左欄(不正仕訳欄)の借方69万2452円ではなく,右欄(正しい 仕訳欄)の借方4640万1183円が正しく,この場合には,その 後の代表者勘定の残高は,常に貸方(エコラインからみて負債)とな り,借方残高となる余地はない。 よって,上記番号B,D,F,H及びKの各仕訳による「相殺」処理 をすることはできない。 (3) 被告らの主張する相殺合意につき 被告らが主張する各相殺合意(平成20年5月15日付け,同年9月3 0日付け,平成21年5月17日付け,平成22年5月11日付け)はそ もそも存在しないし,被告らが各相殺合意の自動債権として主張するエコ ラインの代表者勘定残高も,上記(2)イのとおり存在しない。 (4) 被告らの主張する被告Eの決算処理につき エコラインの第8期決算における本件譲渡代金の支払処理について,被 告Eはエコラインの平成22年3月31日決算期(第8期)の税務申告と それの前提となる決算が,最終的には,同年5月末頃,被告Eと被告Dと の打ち合わせによって決定されたものであるとしている(乙101)。ま た,同人の陳述書でも,エコラインの第8期決算における本件譲渡代金の 相殺処理が被告Dとの協議の結果であると記載されている(甲35の1, 2)。しかし,原告CとJは,上記決算処理に関与していない。 〔被告らの主張〕(1) 本件各特許権の譲渡代金及びその代金未払の有無 原告会社は,本件各特許権の譲渡代金の会計帳簿上の処理につき,被告加 藤建設の代表者である被告Dと,エコラインの監査役かつ顧問税理士であっ た被告Eが,エコラインを乗っ取るべく共謀して,会計帳簿類を改ざんする などして不正な会計処理をした結果であるとし,改ざんの事実を前提にして 譲渡代金が完済されたかのように仮装されたものであると主張し,譲渡代金 の未払に基づく解除権の行使等を主張するが,以下のとおり,そもそも改ざ んの事実は存在しないし,代金未払の事実もないから,原告会社の解除は有 効ではない。 (2) エコラインの帳簿類につき エコラインの帳簿類は,同社の実質的な代表者であった原告Cのもと協議 して作成されたものである。原告らは,エコラインの帳簿が改ざんされた等 と主張しながら,本件各特許権の譲渡契約にかかる契約書につき,自ら偽造 されたものである「特許権譲渡契約書」と題する書面(甲11)を提出し, その一方で被告らが提出し,後に秋田県信用保証協会も同一のものを保管し ていたことが判明した回答書(乙24)など自らに不利な点については何ら 説明しておらず,原告らの主張には信用性がない。 そもそも被告Eは総勘定元帳を保管しておらず,原告会社の売掛金とエコ ラインの買掛金の整合性をチェックする業務をしていなかった。エコライン では,複式簿記に基づいて経理処理がされており,各勘定科目に相手方科目 がある。例えば,総勘定元帳の「普通みずほ銀行」(乙60)の平成18年 5月31日の取引である「共同リース 秋田組合病院」からの入金1732 万5000円の相手方科目は売掛金であって,売掛金が入金されたことで経 理上処理されている。この点に関して原告は,短期借入金の復活などと主張 するが,被告Eが改ざんしたという仮定に基づく主張でしかなく,失当であ る。 また,「普通みずほ」とあるみずほ銀行の普通預金口座(乙60)につい ては,平成18年5月31日に700万円が引き出されるなど,その後15 00万円が継続的に引き出され,相手科目はすべて代表者勘定で処理されて いる。これはみずほ銀行の普通預金口座から700万円が引き落とされて, 原告Cに渡ったことを示すものである。これが仮に700万円の現金として エコラインが保管等したのであれば,相手科目は「現金」となって,現金勘 定で処理されていたはずであるのに,「代表者勘定」で処理されている以 上,現金がエコラインに入金されていないことは明らかである。原告Cが, エコラインに現金を入金したのであれば,総勘定元帳の「代表者勘定」(乙 59)のうち相手方科目が「現金」とあって貸方に記載されている金額をみ れば足りる。現金での入金があれば,相手科目「現金」・「貸方」で処理さ れ代表者勘定の残高が増加するのである。 さらに,「普通秋田」にかかる勘定の内容も通帳の取引内容を正確に反映 しているものであって,確定申告,決算の際に金融機関から残高証明書を取 り寄せて確認するように精査されているものである。 以上のとおり,被告Eが帳簿類を改ざんしたり不正経理を行ったという証 拠はなく,この点に関する原告らの主張は憶測にすぎない。 (3) 被告Eと被告Dとの関係 被告Dと被告Eは顔を知っている程度の関係でしかなく,被告Dはエコラ インの代表取締役に就任した後,被告Eを顧問税理士から解任している。被 告Eは,被告Dが,エコラインを乗っ取ろうと疑いをかけ,被告Dを代表の 座から引きずり落とすべく,従来から親友以上に信頼しあっていた原告Cら とともに謀議謀略を謀っていたのである。 したがって,そもそも被告Dと被告Eが帳簿の改善を共謀するなどという ことはあり得ない。 (4) 相殺合意の成立及びこれに基づく会計処理 平成20年5月15日に原告C,J,売上金を管理するK,エコライン社 員で現金を管理するP(以下「P」という。),被告Eとの間で協議が行わ れ,その結果,原告C,Jらの間で以下の合意が成立した。 @ 前提となる債権債務関係は,以下のとおりである。 a)原告会社は,エコラインに対し,特許権の使用許諾等の対価とし て,特許保証金3000万円と個別のロイヤルティーの支払を求める 請求権があるところ,平成20年3月31日時点で特許使用保証金の 分割支払分は1000万円である(使用許諾契約書〔乙1,2〕)。 b)エコラインは,原告Cに対し,代表者勘定に基づく借入金(801 万5621円,乙9の2,乙59)及び同社のなくなった現金(19 8万4379円,乙9の3)の返還を求める請求権がある。 c)原告会社,エコライン,原告Cの三者は,原告会社が,原告Cがエ コラインに負うb)の債務を肩代わりすることに合意する。 A a)とb)の請求権を合意によって相殺する。 B Aの合意によって,エコラインの原告Cに対するb)の請求権は消滅 し,その代わり,エコラインが原告会社に対して負うa)の債務も対当 額で消滅する。 原告Cは,原告会社の代表取締役であって経営決定権者であり,エコラインの実質的な経営者で経営決定権者たる会長でもあること,エコラインから借入れをした当事者であることから,原告Cが自らの前記@b)の債務を免れるため,自らが経営決定権者である原告会社,エコラインの同意のもとにして上記相殺合意をしたことは,当事者の合理的意思解釈として相当である。 上記相殺合意に基づき,被告Eは,訂正した試算表を作成し(乙81),@特許使用保証金3000万円について未払金勘定をたて,Aなくなった現 金分 で あ る 1 98 万 43 7 9 円 に つき 現 金勘 定 に て 計 上し ( 乙9 の3),Bエコラインから原告Cに対する貸付金801万5621円を代表者勘定にたて(乙9の2,乙59),C上記AとBの合計1000万円を,@の未払金3000万円のうち1000万円を特許使用権として相殺し(乙9の1),D上記Cの弁済済みの1000万円の特許使用権を,同期の貸借対照表(乙10)の繰延資産の特許使用権に記載し,E上記@の残った2000万円につき,特許使用保証金として未払金に計上し,投資等の内訳書,買掛金(未払金,未払費用)の内訳書(乙10)に期末付け で記載した。 被告Eは,上記相殺合意に基づいた決算書,確定申告書を作成し,確定 申告書(乙10)の20頁目に,代表取締役J,I,監査役被告Eによる 平成20年5月16日付け報告書を添付して,平成20年5月27日エコ ラインの代表取締役であるJの署名押印を得て同日税務署に確定申告をし た(乙10)。 (5) その後の相殺合意及び会計処理 上記(4)と同様に,以下のとおり,平成20年9月30日,平成21年5 月17日,平成22年5月11日にも,原告C,J,K,P,被告Eとの 間で協議が行われた結果,合意に基づく相殺処理が行われた。 ア 平成20年9月30日には,原告C,Jらの間で,以下の合意が成立 した。 @ 前提となる債権債務関係は,以下のとおりである。 a)原告会社はエコラインに対し,特許権の使用許諾等の対価として 特許保証金3000万円のうち支払済みの1000万円を控除した 残額の2000万円及び個別のロイヤルティーを求める請求権があ る(使用許諾契約書〔乙1,2〕)。 b)エコラインは,原告Cに対し,代表者勘定に基づく借入金(57 8万3478円,乙9の4,乙59)及び同社のなくなった現金( 687万9922円,乙61)の返還を求める請求権がある。 c)原告会社,エコライン,原告Cの三者は,原告会社が,原告Cが エコラインに負うb)の債務を肩代わりすることに合意する。 A a)とb)の請求権を合意によって相殺する。 B Aの合意によって,エコラインの原告Cに対するb)の請求権は消 滅し,その代わり,エコラインが原告会社に対して負うa)の債務 も同額で消滅する。 上記相殺合意に基づき,被告Eは,会計処理として,@なくなった現 金分である687万9922円につき現金勘定にて計上し(乙61) ,Aエコラインから原告Cに対する貸付金578万3478円を代表 者勘定にたて(乙9の4,乙59),B上記@とAの合計1266万 3400円を,@a)の未払金の残高2000万円と平成20年9月 30日付けで相殺した(乙9の5)。 イ 平成21年5月17日には,原告C,Jらの間で,以下の合意が成立した。 (ア) 前提としての平成21年3月31日期(第7期)の決算の問題 平成21年3月31日期(第7期)において,エコラインの原告C に対する代表者勘定による貸付金は,平成21年3月31日時点で2 99万3643円と高額になった。同社の原告Cに対する貸付金が高 額になる原因は,原告Cが,飲食代や私事都合で費消する金員をエコ ラインの通帳から引き出したり,保管する現金から持ち出すことに あったところ,原告Cが引き出したり持ち出した金員については,同 社が,日常的,規則的に処理して代表者勘定に仕訳し,同社の原告C に対する代表者勘定による貸付金となった。 エコラインでは,現金出納帳を作成しておらず,原告C,Jも作成 を指示しておらず,同社に保管されている現金の詳細な動きは不明で あった。 そこで,平成21年4月中旬に,被告Eは,平成21年3月分の月 次試算表を作成した上で,同年5月1日に,エコラインを訪問し,エ コラインの実質的な経営者で経営決定権者である原告C,エコライン の代表取締役J,K,Pが同席のもと,3月分の試算表をもとに作成 した決算の試算表を配布した(乙82 )。被告Eは,原告Cらに対 し,同社から原告C個人に対する貸付金が,平成21年3月31日時 点で299万3643円あるところ,このような決算書類や元帳類を 金融機関が目にした場合,代表者への貸付金の高額さから杜撰な経営 体制であるとして信用を失うおそれが高いことなどを説明した。 その後,エコライン内において原告CとJ,K,Pで協議が行われ た。 (イ) そして,上記(ア)記載の事情を含めて平成21年5月17日に原告 C,J,K,P,被告Eとの間で協議が行われ,その結果,原告C,J らの間で以下の合意が成立した。 @ 前提となる債権債務関係は,以下のとおりである。 a)原告は,エコラインに対し,特許権の使用許諾等の対価として,特 許保証金3000万円から前記1000万円(平成20年3月31日 弁済済み)及び1266万3400円(平成20年9月30日弁済済 み)の残額である733万6600円と個別のロイヤルティーを求め る請求権がある(使用許諾契約書〔乙1,2〕)。 b)エコラインは,原告Cに対し,上記(ア)の代表者勘定に基づく借入 金(299万3643円,乙59)の返還を求める請求権がある。 c)原告会社,エコライン,原告Cの三者は,原告会社が,原告Cがエ コラインに負うb)の債務を肩代わりすることに合意する。 A a)とb)の請求権を合意によって相殺する。 B Aの合意によって,エコラインの原告Cに対するb)の請求権は消 滅し,その代わり,エコラインが原告会社に対して負うa)の債務も 同額で消滅する。 上記相殺合意に基づき,被告Eは,訂正した試算表を作成し(乙8 3),@特許使用保証金の残額について,3000万円から前記100 0万円(平成20年3月31日弁済済み)及び1266万3400円 (平成20年9月30日弁済済み)を控除した733万6600円につ いて未払金勘定をたて,Aエコラインから原告Cに対する貸付金299 万3643円を代表者勘定にたて(乙9の6,乙59),B上記Aの2 99万3643円を,@の未払金3000万円のうち前記1000万円 (平成20年3月31日弁済済み)及び1266万3400円(平成2 0年9月30日弁済済み)を控除した733万6600円と相殺し(乙 9の6),C上記Bの733万6400円からAの299万3643円 を控除し残った434万2957円につき,特許使用保証金として未払 金に計上し,買掛金(未払金,未払費用)の内訳書(乙11)に期末付 けで記載した。被告Eは,上記相殺合意に基づいた決算書,確定申告書 を作成し,平成20年5月29日にエコライン代表者であるJの署名押 印をもらい税務署に確定申告をした(乙10)。 ウ 平成22年5月11日にも,上記同様,以下のとおりの合意が行われ た。 (ア) 合意の前提として,以下の事実がある。 a 本件各特許権の譲渡代金等の振込みについて 平成21年4月13日に,エコラインから,原告会社に対して1 100万円が振込み送金された(乙9の8,乙67)。その一部で ある434万2957円が本件各特許権の譲渡代金に当てられ,こ れにより代金3000万円全額が弁済された(乙9の7)。残金の 665万7043円は,原告会社への短期貸付金として処理されて いる(乙9の9)。 b 平成22年3月31日期(第8期)の決算の成立 平成22年3月31日期においても,エコラインの原告Cに対す る代表者勘定による貸付金は,平成22年3月23日時点で679 万7282円と高額になった(乙59)。これらは前記のとおり原 告Cの飲食代等であったが,同金員については代表者勘定による貸 付金となった。これに加えて,代表者勘定で仕訳された以外にも, 各金融機関の残高等と照合した結果,期末にあるはずの現金も大量 になくなっており,これも原告Cが持ち出した現金であった。 平成22年4月中旬に,被告Eは,平成22年3月分の月次試算 表を作成した上,平成22年4月26日,エコラインを訪問し,原 告C,J,K,P同席のもと,3月分の試算表をもとに作成した決 算の試算表を配布した(乙85)。なお,試算表には,既に本件各 特許権がエコラインの貸借対照表に記載され,前記3000万円に つき減価償却や消費税を控除した残額が価値として記載されてい る。 以上の経緯により,平成21年4月13日に特許権の譲渡代金が 完済され,本件各特許権がエコラインに譲渡されたことにつき問題 とする者はいなかった。 (イ) 被告Eは,原告Cらに対し,エコラインの原告C個人に対する貸 付金が平成22年3月22日時点で679万7282円あること, 使途不明金が3000万円あること,このような決算書類や元帳類 を金融機関が目にした場合,前記同様,代表者への貸付金の高額 さ,保管されているはずの現金がなくなっていることから杜撰な経 営体制であるとして信用を失うおそれが高いことなどを説明した。 その後,エコラインにおいて,原告CとJ,K,Pで協議が行われ た。 (ウ) 平成22年5月11日,原告C,J,K,Pと被告Eとの間で協議 が行われ,同日,原告C,Jらの間で,以下の合意が成立した。 @ 本件各特許権の譲渡代金は完済され,エコラインが保有してい ることを確認する。 A 発明功績金等については,以下のとおりである。 a)原告会社は,エコラインに対し,平成21年10月26日付け 覚書(乙5)によって,特許権の発明功績金の対価として,30 00万円の支払を求める請求権がある。 b)エコラインは,原告Cに対し,代表者勘定に基づく借入金(6 79万7282円,乙59)及び同社のなくなった現金や原告会 社に対する貸付金があり,あわせて3000万円の返還を求める 請求権がある(乙12の1)。 c)原告会社,エコライン,原告Cの三者は,原告会社が,原告C がエコラインに負うb)の債務を肩代わりし,自らの債務を弁済 することに合意する。 B a)とb)の請求権を合意によって相殺する。 C Bの合意によってエコラインの原告Cに対するb)の請求権, 原告会社に対するb)の請求権はその範囲で消滅し,その代わ り,エコラインが原告会社に対して負うa)の債務も同額で消滅 する。 (エ) 上記相殺合意に基づき,被告Eは,訂正した試算表を作成し(乙8 6),@功績金の3000万円について未払金勘定をたて,Aエコラ インから原告Cに対する貸付金679万7282円を代表者勘定から 短期貸付金に振り替え(乙12の1,乙59),B短期貸付金として 累計額3824万8092円(平成22年3月31日現在)のうち, @の功績金の未払金3000万円と相殺する(乙12の1),C特許 権の価値については,特許使用許諾契約書(乙1),覚書(乙2)記 載の平成20年3月31日付け弁済の1000万円につき減価償却を 行った783万3334円と特許譲渡契約書(乙4)記載の特許使用 保証金1000万円と譲渡代金1000万円の合計2000万円につ き消費税を控除した残額である1904万7619円(2688万9 53円:平成22年度試算表に記載の金額。乙85)に,功績金30 00万円から消費税分を控除した2857万1428円を足した55 45万2381円(乙12の2)とし,D平成22年3月31日弁済 の功績金について,特許権譲渡ないし特許権相殺と記載したのは,決 算書類を金融機関が目にした際の見栄えが良いこと,特許使用保証金 2000万円,特許権譲渡代金1000万円,功績金3000万円 は,いずれも特許権価値の内容と被告Eが考えたことからそのように 記載したものである。 (6) 小括 これらにより本件各特許権に係る譲渡代金,使用許諾料等は完済されてお り,これは原告会社,原告Cの行動とも符合するものである。 2 争点1(1)ウ(各相殺合意は利益相反取引に当たり,原告会社の取締役会決議も存せず,エコラインがこれにつき悪意であるとして無効となるか)について〔原告らの主張〕 被告らが主張する各相殺合意は,いずれも原告会社との関係で,利益相反取引に当たる。仮に,各相殺合意が存在したとしても,A事件被告らの主張では,各相殺合意はエコラインと原告会社と原告C個人との三者合意であるから,同相殺合意をするにつき,少なくとも原告会社の取締役会の承認決議が必要である(会社法356条1項)。しかし,承認決議はされていない。したがって,各相殺合意は,原告会社と原告C個人間では直接取引として常に無効であり,原告会社とエコラインとの間でも間接取引とはいうものの,被告らの主張によればエコラインの実質的決定権者も原告Cであったというのであるから,エコラインは同決議不存在につき悪意であり無効ということになる。 〔被告らの主張〕 否認ないし争う。 原告会社と原告Cとの間で利益相反取引に当たるかは不明である。原告会社は代表取締役である原告Cに対し,報酬や発明者対価を支払わなければならないところ,その義務を免れるものであるから,利益相反取引に当たるかどうかは不明である。 また,そもそも取締役会決議が存しないかどうかも不明である。 3 争点1(1)エ(相殺合意が利益相反取引に当たり取締役会決議を欠くとして無効となるとしても,信義則に照らし原告会社がそれを主張することが許されないか)について〔被告らの主張〕 原告会社は,原告C一人が意思決定を行う会社であった。この点,原告Cが実質的な経営者であったエコラインにおいても取締役会はおよそ開催されておらず,同社の代表取締役であったJもそのことを認めている(乙72)。 このように原告会社内で取締役会を開催していなかったことは,原告Cが会社法の手続きを履行しなかったもので,原告会社及び原告Cの責めに帰すべき事由である。 しかも,前記各相殺合意において,原告Cは,自ら多額の債務を免れており,大きな利益を得ているほか,本件各特許権がエコラインに譲渡されたことを三菱東京UFJ銀行,秋田県信用保証協会に申告しており,これによりエコラインは2億円の振替債(以下「私募債」という。)を発行して多額の運転資金等も得ている。 かような原告C,関係者らが,自らの責めに帰すべき事由によって取締役会を開催せず,自ら及び関係者が大きな利益を得ながら,都合が悪くなれば取締役会決議の欠缺を主張することは信義則に反し許されない。 また,原告会社に取締役会の決議が欠けていたとしても,原告Cは,本件表明保証において,エコラインが本件各特許権の特許権者であることなどを表明し保証している。原告Cは,当時原告会社の代表者でもあって,仮に,原告会社の取締役会決議欠缺の無効原因があるのであれば,それを示さなければならないのに,あえて本件表明保証をしたことは,信義則上無効の主張を放棄したものであり,エコラインはもちろんのこと,代表者を共通にする原告会社においても,無効を主張することは禁反言の原則,信義則に照らし許されない。 しかも,被告加藤建設は,三菱東京UFJ銀行に連帯保証債務を履行し,本件根質権を代位した(乙100)ことによって,三菱東京UFJ銀行と同じ地位にあるのであって,原告Cを代表者としていた原告会社は,三菱東京UFJ銀行と同様に被告加藤建設に対しても,いかなる無効原因,取消原因等を主張できないものである。 加えて,原告会社の取締役・監査役は,いずれも原告Cの姉であって,家族が就任した名目的な取締役にすぎず,実態は原告C一人が経営判断をしていた。 かかる原告会社ではかような人的関係から取締役会など開催されておらず,自らに不都合なときだけ取締役会の欠缺を主張することは信義則に反する。 〔原告らの主張〕 否認ないし争う。 4 争点1(2)(解除原因に関する被告加藤建設の悪意ないし背信的悪意の有無)について〔原告会社の主張〕 被告Dと被告Eは,その協議に基づき,譲渡代金の未払金3000万円を 相殺処理するために,平成22年3月30日付けで短期貸付金678万72 82円,同月31日付けで短期貸付金1330万円をそれぞれ資産計上した が,これらが原告会社の承諾なく仮装計上したものであることは明らかであ る。 被告Dは,少なくとも,上記短期貸付金678万7282円,同1330 万円の資産計上が仮装であることを認識し,かつ,これらと上記譲渡代金の 未払金3000万円とを相殺処理し得ないことを認識していたにもかかわら ず,これを実行して仮装したものであり,その後,被告加藤建設の代表取締 役として,エコラインから本件各特許権を譲り受けたのであるから,被告加 藤建設は,契約解除に基づく本件各特許権の原告会社への復帰につき,背信 的悪意者であることを免れない。 よって,原告会社は,被告加藤建設に対して,本件各特許権を登録なくし て対抗できる。 〔A事件被告らの主張〕 否認ないし争う。 5 争点1(3)(本件再譲渡契約の無効原因の有無及び被告加藤建設の認識) について〔原告会社の主張〕 エコラインと被告加藤建設との間の平成23年5月31日付け本件各特許 の譲渡契約を締結したエコライン代表取締役,及びその譲渡契約の承認をし た取締役会を構成する取締役については,その選任の株主総会決議が存在し ない新株発行を受けた株主の議決権に基づき決議されたものであり,不存在 である。このことにつき,被告加藤建設の代表者である被告Dは十分認識し て本件再譲渡契約を締結したものであるから,エコラインと被告加藤建設と の間の本件再譲渡契約は,無効である。 〔A事件被告らの主張〕 否認ないし争う。 6 争点1(4)(被告アースアンドウォーターの背信的悪意の有無)について〔原告会社の主張〕 被告アースアンドウォーターは,被告Dが設立した会社であるから,前記 事情を十分認識しながら,被告加藤建設から本件各特許につき専用実施権の 設定を受けている。 したがって,現在の本件各特許権の登録名義人である被告加藤建設及び現 在の本件各特許権の専用実施権者である被告アースアンドウォーターは,背 信的悪意者または無権利者であり,平成23年6月1日受付けの特定承継に よる本件の移転登録(本件各再移転登録)は不実の登録であり,平成23年 9月29日受付けの専用実施権の設定登録(本件各設定登録)は不実の登録 である。 〔被告アースアンドウォーターの主張〕 否認し,争う。 7 争点1(5)(真正な登録名義の回復の許否)について〔A事件被告らの主張〕 本件各特許権は,原告会社からエコライン,エコラインから被告加藤建設 に移転登録されており,解除された場合も,いわゆる復帰的物権変動類似の ものとして,被告加藤建設からエコライン,エコラインから原告会社に順次 移転登録されるべきものである。 したがって,中間省略に当たる真正な登録名義の回復は許されない。 〔原告会社の主張〕 中間省略に当たる真正な登録名義の回復は許されるべきである。 いわゆる復帰的物権変動類似の場合に,真正な登録名義の回復の方法によ ることを一般的に否定すべきものとは解されない。 8 争点2(1)(予備的請求は不適法か〔被告加藤建設の本案前の答弁〕)につ いて〔被告加藤建設の主張〕(1) 訴えの利益がないこと ア 予備的請求は,原告会社からエコラインに対する譲渡契約が解除され, 被告加藤建設が背信的悪意者であった場合に,本件特許権の真正なる登録 名義の回復を請求するものである。仮に解除権が無効でA事件主位的請求 の趣旨第1項が認容されない場合は,被告加藤建設が本件各特許権を保有 するのであるから,原告会社に本件各特許権は帰属しない。したがって, 原告会社は特許権者でない以上,妨害排除請求権を行使できない。仮に解 除が有効であるが,被告加藤建設が背信的悪意者でなかった場合,被告加 藤建設は法的に保護される第三者であって,適法な法的根拠に基づいて本 件各特許権の登録をしている以上,妨害に該当しないから,原告会社は, 被告加藤建設に対し,妨害排除請求権を行使できない。以上から,予備的 請求にはならない。 イ 原告会社は,予備的請求によって,エコラインから被告加藤建設に対す る移転登録の抹消を求めている。これが仮に認容されたとしても,本件各 特許権はエコラインに帰属するだけであるから,原告会社は特許権者にな るわけでもなく(特許法98条),その他権利を有するものではない以上, 原告会社に法的に保護されるべき利益はない。 また,エコラインは,破産手続き中であるところ,同社の財産は破産財 団を構成し,破産管財人の管理下にある。そして,破産管財人は,エコラ インと被告加藤建設間の譲渡を否認しており,否認権訴訟が秋田地方裁判 所に係属している。破産債権に関する訴訟は,破産法の手続きによらなけ ればならないという破産法の趣旨からすれば,原告会社の訴えの変更は, 破産管財人のみが行使できる否認権と実体的に同一であって,原告会社が 行使できるものではなく,法的保護に値する利益はない(破産法100条 参照)。 ウ 以上から,予備的請求には訴えの利益がない。 (2) 時機に後れた攻撃方法であること 予備的請求の訴訟物は,本件各特許権に基づく妨害排除請求権とするもの であって,新たな訴訟物の追加である以上,訴訟完結の著しい遅延を招くも のであって許されない。 〔原告会社の主張〕 否認し,争う。 予備的請求の訴訟物は,本件各特許権に基づく妨害排除請求権であり,主位的請求と同一であって,請求の基礎に変更はない。争点も,解除の有効性と被告加藤建設の背信的悪意として同一であり,訴訟の完結を遅延させるものではない。 9 争点2(2)(A事件予備的請求の可否)について〔原告会社の主張〕 前記8〔原告会社の主張〕のとおり,A事件予備的請求は,本件各特許権に基づく妨害排除請求権であり,主位的請求と同一であって,請求原因も被告加藤建設の悪意ないし背信的悪意に関する主張と同一である。 したがって,仮にA事件主位的請求が認められない場合でも,A事件予備的請求は認められるべきである。 〔被告加藤建設の主張〕 否認ないし争う。 解除原因について被告加藤建設は悪意ないし背信的悪意者ではない。 10 争点3(1)(被告E,被告D及び被告加藤建設の責任原因)について〔原告らの主張〕 (1) 被告Eの責任原因 被告Eは,原告会社との間で,同社の会計及び税務業務につき準委任契約 を締結して,これを担当していたのであるから,原告会社とエコラインとの 間の契約関係を処理する会計業務を行うにあたっては,原告会社,エコライ ンいずれの会社の利益も不当に害さないよう適切な会計処理を行う義務を負 っていた。それにもかかわらず,被告Eは,本件各不正仕訳及び本件各支払 仕訳を行い,原告会社の本件各代金債権を犠牲にして,エコラインにおいて その支払債務を免れさせようとしたものであるから,上記義務に違反する行 為をしたことは明らかである。 よって,被告Eは,原告C及び原告会社に対し,本件各不正仕訳及び本件各支払仕訳により被らせた損害につき,債務不履行及び不法行為に基づく賠償責任を負う(民法415条,709条)。 さらに,被告Eは,エコラインの監査役の地位にあって,会社法上,正しい会計処理がされるよう監査すべき義務を負っていたにもかかわらず,同義務に違反して,本件各不正仕訳及び本件各支払仕訳を行い,これを隠してエコラインに通知しなかったものであるから,本件各不正仕訳及び本件各支払仕訳によって,第三者である原告会社が被った損害につき賠償責任を負う(会社法429条)。 (2) 被告Dの責任原因 被告Dは,被告Eと共謀して,本件各不正仕訳と本件各支払仕訳を行ったものであって,原告C及び原告会社に対し,これによって被らせた損害につき,共同不法行為に基づく賠償責任を負う(民法719条)。 本件各不正仕訳及び本件各支払仕訳は,エコラインの取締役として正しい会計処理がされるよう監督する地位にある被告Dが,悪意をもってその職務に違反したものであるから,これにより第三者である原告会社に被らせた損害につき賠償責任を負う(会社法429条)。 (3) 被告加藤建設の責任原因(会社法350条) 前記のとおり,被告Dは,被告加藤建設の代表取締役として,原告会社が本件各特許権を取り戻す権利を有することを認識しながら,エコラインから本件各特許権を譲り受け,もって原告会社による本件各特許権の取り戻しを困難ないし不能にさせるとともに,原告会社からの本件各特許権の移転登録請求を拒否したものであって,同行為により原告会社が被った損害につき不法行為責任を負う。 被告Dは,上記行為を被告加藤建設の代表取締役としての職務として行ったものであるから,被告加藤建設は,同行為につき,会社法350条の責任 を負う。 (4) 被告D及び被告Eの主張に対する反論 被告D及び被告Eは,本件各不正仕訳及び本件各支払仕訳が,原告C及び Jの指示によって行われたものである旨主張するところ,仮にそうであった とすれば,本件各支払仕訳にかかる取引は,原告C個人のエコラインに対す る債務につき,原告会社の負担で消滅させようとするものであるから,会社 法356条の利益相反取引に該当し,原告会社取締役会の事前承認決議を要 するが,上記のとおり決議は存しない。 そして,原告会社への債務をエコラインの原告Cに対する債権で相殺等に よって消滅させることは,原告Cが原告会社の犠牲によって,自らの債務を 免れる利益を得るもので代表権限を濫用するものである。 さらに,Jと原告Cが,本件各契約に基づき成立する本件各債務を上記相殺 等によって消滅させることを前提として相殺合意をしたのであれば,原告C が原告会社の代表権限を濫用し,相手方であるJもそのことを認識しながら 行ったことになるから,民法93条1項ただし書が類推適用されて,無効と なるというべきである。 よって,上記場合は,原告Cは,原告会社の代表権限を濫用して各相殺合意 をしたものであって,そのことによって原告会社が被った損害を賠償する責 任がある。また,Jは,エコラインの代表取締役として,原告Cの上記権限 濫用を認識しつつ,相殺合意をしたのであるから,Jとエコラインは,原告 Cの共同不法行為者として,上記損害を賠償する責任がある。 被告D及び被告Eは,本件各不正仕訳及び本件各支払仕訳を行って,債務を エコラインの原告Cに対する債権で相殺等によって消滅させることを幇助し たものであって,同人らも共同不法行為責任を免れない。 〔B事件被告らの主張〕 否認ないし争う。J,原告Cの責任内容については不知。 11 争点3(2)(損害発生の有無及びその額)について〔原告らの主張〕(1) 原告会社の損害額 B事件被告らの共同不法行為によって原告会社が被った損害は,原告会社 が本件譲渡契約を締結したことによって逸失した利益,すなわち,本件譲渡 契約を締結しなかった場合に得られたであろう利益が,本件における損害額 となる。原告会社からエコラインに対する本件各特許権の使用許諾契約は, 平成20年3月31日付けで締結された。これ以前においては ,原告会社 は,エコラインに対し,エコラインの最終販売価格の30パーセントの価格 で,本件各特許の実施である製品(エコタッチ)を販売していたところ,そ の直接原価は,外注製造原価及び運送費等の諸経費を含め,同販売価格の1 5パーセントを超えることはなかった。 そこで,原告会社は,エコラインの平成21年4月1日以降の売上の15 パーセントに相当する利益を逸失したことになる。 そして,平成20年4月1日から平成26年3月31日のエコラインの売 上高は,第10期から第12期までは,第9期の売上高が維持されたとし て,26億5986万5087円となるから,15パーセントを乗じた3億 9897万9763円が原告会社が本件譲渡契約を締結したことによって逸 失した利益ということになる。 (2) 原告Cの損害額 原告Cは,エコラインに対して,第6期代表者勘定期首残高である464 0万1183円の返還請求権を有していたが,本件各不正仕訳及び本件各支 払仕訳によって同請求権の存在を認識できないでいたところ,エコラインの 破産によって回収不能となる損害を被った。 (3) 小括 よって,原告会社は,B事件被告らに対して,3億9897万9763円 のうち一部請求として1億5000万円及びこれに対する本件譲渡契約が解 除された日の翌日である平成23年11月3日から支払済みまで民法所定の 年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 また,原告Cは,被告E及び被告Dに対して,上記回収不能金4640万 1183円及びこれに対するB事件の訴状送達の日の翌日である平成26年 9月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支 払を求める。 〔被告らの主張〕 否認ないし争う。 |
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当裁判所の判断
1 証拠(甲1〜6,10,12〜85,乙1〜122,証人E,証人C,被 告加藤建設代表者兼被告D。なお,書証〔甲7〜9,11,乙1〜5〕の成 立の真正についての判断は後記のとおりである。)及び弁論の全趣旨によれ ば,以下の事実が認められ,同認定を覆すに足りる的確な証拠はない。 (1) 原告会社による本件特許1に係る発明の出願以降の経緯 ア 原告会社は,平成16年9月7日,本件特許1に係る発明の出願をし, 平成17年8月25日には,本件特許1と同内容の特許について,韓国 で特許出願をした。平成19年11月27日に,本件特許1と同内容の 発明につき韓国特許が成立し,平成20年3月3日に特許査定がされて 同月17日に1年分ないし3年分の特許料が納付され,同月28日に, 本件特許権1が日本において設定登録された。〔甲2の1,乙8〕 イ そして,同日(平成20年3月28日)付けで,原告会社とエコライ ンとの間で,本件特許権1に係る特許につき,これを製品化した製品に ついての独占的製造等を許諾する内容の使用許諾契約及びこれについて の覚書が締結された。同覚書において,上記特許の使用料については, 契約金及び使用パテント料とすることとされ(第1条),契約金として 平成20年3月分ないし平成22年3月分として各1000万円を支払 うこと(第2条),パテント料として販売個数1個当たり150円を支 払うこと(第3条)等が約された。〔乙1,2。なお甲7,8の成立の 真正についての判断は後記するとおりである。〕 ウ 被告Eは, 平成20年5月16日,エコラインに係る平成20年3月 31日現在とする貸借対照表(乙81)を作成し,原告Cらに提出した。 そして,平成20年3月末決算における会計処理として,J,原告Cら の合意の下,@エコラインによる本件各特許権の使用許諾等の対価の趣 旨として特許使用金及び保証金分3000万円について未払金勘定をた てることとし,A原告Cにより使途不明となっている現金分である19 8万4379円につき現金勘定にて計上し,Bエコラインから原告Cに 対する貸付金801万5621円を代表者勘定にたてた上で,C上記A とBの合計1000万円につき,@の未払金3000万円のうち100 0万円を特許使用権として相殺する処理を行い,D上記Cの弁済済みの 1000万円の特許使用権を,同期の貸借対照表の繰延資産の特許使用 権に記載し,E上記@の残った2000万円につき,保証金(以下「特 許使用保証金」という。)として未払金に計上して,確定申告書添付の 投資等の内訳書,買掛金(未払金,未払費用)の内訳書に期末現在高と して記載した。 エ Jは,平成20年5月27日,秋田南税務署長に対し,上記決算書類 に基づき,エコラインの平成19年4月1日から平成20年3月31日 までの事業年度分の確定申告を行った。なお,その時点で被告DはJに 次ぐ議決権を有する20%の議決権を有する株主であり,また,E経営 も10%の議決権を有していた。〔乙10〕(2) 本件特許権2の設定登録以降の経緯 ア その後,原告会社は,平成20年6月2日に本件特許2に係る発明に ついての出願を行った。〔甲3の1〕イ そして,同日付けで,原告会社(代表者原告C)とエコライン(代表 者J)との間において,上記使用許諾の対象特許として本件特許2を追 加し,パテント料,使用料についても上記平成20年3月28日付け覚 書において定めたとおりとする旨の「覚書」が作成されているところ, 同「覚書」は,平成21年4月16日付けエコラインから秋田県信用保 証協会に対する信用保証委託申込書に添付されて,同協会に提出され, 保管されてきた。なお,同「覚書」は,平成20年6月2日付けである にもかかわらず,同日出願された本件特許2の特許番号が記載されてい る。〔乙3,16。なお,甲9の成立の真正についての判断は後記す る。〕ウ 平成20年9月19日に,本件特許権2が特許登録された。〔甲3の 1〕エ 平成21年4月1日付けで,原告とエコラインとの間で,本件各特許 権についての譲渡契約(本件譲渡契約)が締結された。同契約において は,本件各特許権の譲渡の対価として1000万円を平成22年3月末 日までに現金で支払うこととするが,その対価とは,平成20年3月2 8日付け使用許諾契約書及び覚書に各規定した契約金の未払金相当であ ること(第3条),対価の支払をもって本件各特許権が原告会社からエ コラインに移転することに合意し,移転登録手続が完了するまでの間は 法律上有効に本件各特許権がエコラインに移転するものではないこと (第2条),本件各移転登録手続はエコラインが行うものとすること (第4条)等が定められた。〔乙4。なお,甲11の成立の真正につい ての判断は後記のとおりである。〕オ 平成21年4月13日,エコラインから原告会社に対し1100万円 が振込送金され,その内の434万2957円が本件各特許権の譲渡に ついての未払代金の支払に当てられた。〔乙9の7,8,乙67〕カ エコラインは,平成21年4月16日,秋田信用金庫本店から300 0万円の融資を受けるに当たり,秋田県信用保証協会に対し,信用保証 委託申込書を作成して提出した。同申込書中,借入れに関しての必要理 由として「当社の上場へ向けた会長が代取を努める会社よりの特許権取 得と当面の諸経費支払の為」と記載され,平成21年3月分の特許権取 得費用1000万円については自己資金にて支払済みと記載されている。 〔乙24〕キ 秋田信用金庫は,平成21年4月22日,エコラインに対し,300 0万円の融資を行った。〔乙84〕ク 平成21年5月1日現在としてエコラインが作成した同社の会社案内 には原告Cが会長として表示され,社長と表示されたJよりも上位に記 載されている。また,本件各特許権につき,本件各特許権の設定登録日 をもって「特許取得」として,同社の沿革に記載されている。 〔乙2 4〕ケ 被告Eは,平成21年3月末の決算として,同年5月,訂正した試算 表を作成した上で,平成20年9月30日におけるエコラインについて の会計処理として,J,原告Cの合意の下,@それまでに原告Cにより 使途不明となった現金分である687万9922円につき現金勘定で計 上し,Aエコラインから原告Cに対する貸付金578万3478円を代 表者勘定にたて,B上記@とAの合計1266万3400円を,特許保 証金の未払金の残高2000万円と平成20年9月30日付けで相殺し, これに基づく平成21年3月末での会計処理として,@特許使用保証金 の残額733万6600円(特許使用保証金3000万円から,平成2 0年3月末に弁済済みである1000万円,上記平成20年9月30日 に弁済済みとなる1266万3400円を控除した残額)について未払 金勘定をたて,Aエコラインから原告Cに対する貸付金299万364 3円を代表者勘定にたて,B上記Aの299万3643円を,@の73 3万6600円と相殺する会計処理を行い,Cその残り434万295 7円につき,特許使用保証金として未払金に計上して,確定申告書添付 の投資等の内訳書,買掛金(未払金,未払費用)の内訳書に期末現在高 として記載した。 コ Jは,平成21年5月29日,秋田南税務署長に対し,上記決算書類 に基づき,エコラインの平成20年4月1日から平成21年3月31日 までの事業年度分の確定申告を行った。この時点においても被告DはJ に次ぐ議決権を有する20%の議決権を有する株主であり,また,E経 営も10%の議決権を有していた。〔乙11〕サ 平成21年8月24日付けで,三菱東京UFJ銀行に対してエコライ ンが提出した「私募債2億円申し込みの資金内訳について」と題する書 面には,「エコライン株式会社 C」と表示されている。〔乙24〕シ 原告Cは,平成21年10月21日,エコラインの取締役に就任した。 〔甲6〕ス 平成21年10月26日に,原告会社とエコラインとの間で,覚書が 締結された。同契約書においては,頭書において「アィ・ランドシステ ム株式会社(以下「甲」という)とエコライン株式会社(以下「乙」と いう)は甲の保有する特許権を甲が乙に譲渡することに関し,平成21 年4月1日に締結した特許権譲渡契約書に基づき,当該特許権の特許庁 への移転登録手続きが完了したことを確認して,次のとおり覚書を締結 する。」とした上で,@特許権のエコラインへの移転日が平成21年1 0月26日であることを確認すること(第1条),A上記平成20年3 月28日付け使用許諾契約書及び覚書は,平成21年4月1日付け譲渡 契約書の締結に従い失効するものとすること(第2条),Bエコライン は,原告会社に対して功績金として3000万円を支払うこととするが, 特許権譲渡契約書を締結した平成21年4月1日からの本件各特許権の 実施品1個当たり150円の支払による分割払とし,3000万円に満 ちた時点で支払は終了するものとすること(第3条)等が定められた。 〔乙5〕 セ 平成21年11月2日,本件各特許権について,原告会社からエコラ インに対する本件各移転登録がされた。 ソ エコラインは,平成21年12月に,三菱東京UFJ銀行の私募債引 受けにより,2億円の資金を調達したが,このうち7250万円を,原 告Cは株式投資に充てた。 (3) 三菱東京UFJ銀行が引受行となった2億円の私募債に関するエコライ ンによる融資金の使途の問題等 ア 三菱東京UFJ銀行は,私募債に基づく2億円の融資金の一部による エコラインによる株式投資を融資金の目的外使用として重大な問題とし, 平成22年4月19日,エコラインに対し,直ちに購入した株式を現金 化し資金を回収するよう指示した。〔甲36の1,15頁,乙106, 14頁〕 イ 平成22年5月6日付けで,被告Dを債権者とし,原告Cを債務者と する平成17年1月30日貸付の2000万円の債務につき,平成22 年5月末日限り支払う旨の債務承認弁済契約書が作成された。〔甲1 6〕 ウ また,平成22年5月6日付けで,被告Dを債権者とし,原告Cを債 務者とする平成17年1月30日貸付の500万円の債務につき,平成 22年6月末日限り支払う旨の債務承認弁済契約書が作成された。〔甲 17〕 エ 被告Eは,平成22年3月での決算に関し,試算表を作成した上で, J,原告Cの合意の下,@功績金の3000万円について未払金勘定を たて,Aエコラインから原告Cに対する貸付金679万7282円を代 表者勘定から短期貸付金に振り替え,B短期貸付金として累計3824 万80092円のうち,@の功績金の未払金3000万円と相殺するこ ととし,これに基づく会計処理を行い,C特許権の価値について,特許 使用許諾契約書(乙1),覚書(乙2)記載の平成20年3月31日付 け弁済の1000万円につき減価償却を行った783万3334円と, 特許譲渡契約書(乙4)記載の特許使用保証金1000万円と譲渡代金 1000万円の合計2000万円につき消費税を控除した残額である1 904万7619円に,功績金3000万円から消費税分を控除した2 857万1428円を足した5545万2381円を科目「特許権」の 期末残高として計上し,確定申告書添付の投資等の内訳書,買掛金(未 払金,未払費用)の内訳書に期末帳簿価額として記載した。Jはエコラ インの代表取締役として,I及び原告Cはエコラインの取締役として, 上記確定申告書添付の決算書類等につき,平成22年5月14日付けで 「上記の通りご報告申し上げます。」とそれぞれ記載し,被告Eは,同 日付けで,「監査の結果,いずれも適正かつ正確であることを認めま す。」と記載した。〔乙13〕 オ 被告Eは,平成22年5月31日,秋田南税務署長に対し,Jの同月 14日付け税務代理委任契約に基づき,エコラインの平成21年4月1 日から平成22年3月31日までの事業年度分の確定申告を行った。こ の時点においては,原告Cが最大の議決権を有する株主であり,そのほ か被告加藤建設,E経営も株主として議決権を有していた。〔乙13〕(4) エコラインの代表者が被告Dに変更された以後の経緯 ア エコラインの代表者は,平成14年12月から平成22年5月26日 までJであったが,同日,被告Dが同社の代表者に就任した。〔甲6〕 なお,被告Dが代表者に就任する前日の平成22年5月25日付けで, 被告Dを債権者とし,エコラインを債務者とする,債務承認弁済契約書 が作成されている。〔甲18〕イ また,平成22年5月27日付けのエコライン代表者被告D名義のエ コラインの株主に対する提案書により,同年6月1日に資本金として2 540万円の払込みを受けて,被告Dに対し,普通株式508株を発行 し,その割当てを行う旨,株主総会の決議事項とする旨の提案がされた。 その「出資の目的たる財産」には,「債権者Dと債務者エコライン株式 会社との間における,平成17年1月30日付金銭消費貸借に基づく 『貸付金2,000万円及び貸付元金2,000万円に対する平成17 年1月30日から平成22年5月31日まで年5%の割合による利息金 540万円の合計金額2,540万円』の金銭債権」との記載がある。 〔甲13〕 これに関しては,被告D(甲14の1),J(甲14の2),I(甲 14の3),原告C(甲14の4),Q(甲14の5),R(甲14の 6),E経営〔代表者被告E〕(甲14の7)の各同意書が提出されて いる。このうちRの同意書(甲14の6)に関しては,公証人の面前で 真実であることを宣誓した平成23年2月15日付け陳述書により,同 意書の住所,氏名はいずれも同人の字ではなく,同意書の内容も株主総 会決議の内容も知らないとされている。なお,Rは,原告Cの妻である。 〔甲19の1,2,乙93,28頁〕ウ 平成22年5月31日に,エコラインの株主総会が開かれ,被告Dの 現物出資により新株508株を発行し,これを被告Dに割り当てる旨等 が決議された。〔甲15,42〕エ Kは,平成22年7月24日,原告Cに対し,「アイランド特許譲渡 契約書」と題するメールを送信した。同メールにおいては,「会長 添 付を確認ください K」として,エコラインと原告会社との間の平成2 2年7月28日付け「特許譲渡契約書」と題する書面の案,原告会社と エコラインとの覚書の案(2通)等がそれぞれ添付されているところ, 特許譲渡契約書の案では,エコラインを甲と,原告会社を乙とし,本件 各特許権を「保有する甲が,甲の創業者であり対象特許権を(判決注; ママ)発明者たるCの意向を無視して経済的対価の担保物として経営権 の移動,特許権の売却等による発明者への経済的不利益を阻止するため に保全的に乙と締結するものである。」(契約の目的),「甲は,甲の 保有する下記の特許権・・・を,乙に譲渡するものとする。」(第1条 (特許権の譲渡))とされ,エコラインが本件各特許権の権利者である ことが明記されているほか,「乙は目的に述べているような事態が回避 できたと判断したときには甲と協議し本契約を停止できるものとす る。」(第9条(特約))との特約が付されている。また,上記覚書 (2通)では,原告会社からエコラインへの本件各特許権の移転日が平 成21年10月26日であることが確認されている。〔乙32の1, 2〕オ 被告Dは,平成22年7月30日,エコラインの代表者を辞任し(な お,同日付けで一旦解任の登記がされ,同年8月11日にこれが抹消さ れるとともに,辞任の登記がされた),代わりに原告Cが同代表取締役 に就任した。〔甲6〕(5) 原告Cがエコラインの代表者に就任した後の事実経過等 ア 原告Cは,平成22年8月19日,エコライン代表者として,三菱東 京UFJ銀行に対し,「知財権状況報告書」と題する書面を提出した。 同書面においては,「当社は,下記年度の特許等知財権の状況を下記の とおり報告します。」として,本件各特許権のほか,実用新案権,商標 権等も列記した上で,「当社は貴行の事前の承諾なしに,『本件特許 権』を譲渡若しくは放棄し,又は『本件特許権』について新たな実施権 を設定し若しくはライセンスを付与許諾致しません。」と記載されてい る。〔乙14〕イ 原告Cは,平成22年9月8日,エコラインの代表者として,前記第 4,3(5)イの本件表明保証をした。 ウ 原告Cは,平成22年10月29日,エコラインの代表者として,エ コサービスの代表者である被告Dと,本件各特許権につき,非独占的通 常実施権を設定する契約を締結した。そして,同設定契約に基づき,同 年11月1日付けで,本件各特許権につき,通常実施権者や範囲等につ き非開示とする通常実施権の設定登録がされた。〔甲2の1,甲3の1, 甲45〕エ 原告Cと,被告Dは,両名がエコラインの発展のため協力すること等 を内容とする平成22年11月16日付け「覚書」を締結した。〔甲4 6〕オ エコラインは,平成22年12月6日,三菱東京UFJ銀行に対し, 本件各特許権に根質権を設定した。〔甲2の1,3の1〕。 カ エコラインは,平成22年12月21日,社内を混乱に陥れたとし て,当時の営業本部長であるMと,Fを懲戒解雇処分とした。〔乙7 7,22頁〕キ 被告Dは,エコラインの株主として,原告C,J及びIの善管注意義 務違反による取締役解任等の決議を目的とする同社の株主総会招集許可 を申し立てたが,平成23年2月14日,被告Dが保有するとする50 8株の株式について,これを保有している事実の疎明がないとして申立 てが却下された(甲20)。 ク 平成23年2月18日,エコラインにおいて,原告C,J,I,被告 D,被告Eの出席のもと,取締役会が開かれた。〔乙39〕ケ 本件各特許権及び登録第4495773号の特許権につき,平成22 年10月29日付け及び同年11月1日付けで通常実施権の各設定登録 がされていたところ,原告Cは,エコラインの代表者として,平成23 年3月11日付けで,被告Dが代表者を務めるエコサービスに対し,エ コサービスの代表者である被告Dが,エコラインの取締役を兼任してい たことを理由として,上記通常実施権設定契約は,会社法356条1項 2号の定める利益相反取引に該当し,取締役会における承認手続がされ ていないから無効であると主張して,上記実施権設定契約の無効確認及 び各通常実施権の設定登録の抹消登録手続をすることを求める訴えを当 庁に提起した。〔甲59,資料4〕コ 平成23年3月17日,エコラインでは,代表取締役の原告Cを委員 長とし,取締役としてJ,社員代表としてPが出席の上,Fについて従 業員から取締役らに宛てた嘆願書の作成を扇動するなどして社の秩序を 著しく損なう行為をしたなどとして懲戒解雇相当であるとの意見を述べ る旨の決議をした。〔甲59資料8添付資料〕サ 原告Cは,エコラインの代表者として,平成23年3月24日付けで, 自らとの間で,特許取得に関する発明者対価支払契約を締結し,本件各 特許権につき,エコラインから原告Cへの発明者対価報酬としてエコラ インが販売したエコタッチの販売額の5パーセントを請求できるものと し,これを同契約締結以前の平成16年9月7日以降の販売額に対し 遡って請求できることなどを定め,その対価額は1億2434万346 6円であるなどと定めた。〔乙41,42〕シ 原告Cは,平成23年3月25日,同月28日に緊急取締役会を招集 する通知をした。〔乙30〕ス 平成23年3月28日に開かれたエコラインの取締役会には,代表者 原告C,J,I,被告D及び被告Eが出席したが,同取締役会において, 原告Cに対する発明者対価報酬支払の承認,エコラインについて民事再 生申立てを行うこと,同申立費用350万円のIからの借入れ,同借入 れに当たり本件各特許権等に質権を設定すること等が議題とされ,可決 されたが,被告D,被告Eは上記取締役会の議事録への押印を拒否した。 〔乙43の1〜6〕セ エコラインは,前同日,Iに対し,本件各特許権に質権を設定した。 〔甲2の1,3の1〕ソ エコラインは,平成23年3月29日に,秋田地方裁判所に対し民事 再生手続開始の申立てをした。〔甲55〕タ 被告Dは,被告加藤建設の代表者として,改めて原告C,J及びIの 善管注意義務違反による取締役解任等の決議を目的とするエコラインの 株主総会招集許可を申し立て,同申立ては同年4月5日付けで許可され た。〔甲21〕チ 秋田地方裁判所の決定により,平成23年4月7日,エコラインの監 督委員としてSが就任した。〔甲6〕ツ 原告Cは,エコラインの代表者として,平成23年4月8日,同月1 5日に,被告Dを取締役から,被告Eを監査役からそれぞれ解任するた めの臨時株主総会を招集する旨の通知をした。〔乙31〕テ また,原告Cは,平成23年4月8日付け再生債権者届出書において, エコラインに対する上記サの1億2434万円余りの発明者対価報酬請 求権につき,届出をしなかった。〔乙33,10頁〕ト 平成23年4月11日,訴外株式会社ベストライフから,秋田地方裁 判所に対し,再生債務者であるエコラインにつき,代金5000万円で 営業等を譲り受ける旨の営業等譲受意向表明書が提出されたところ,同 意向表明書においては,本件各特許権につき何らの負担なく承継できる ことが必須条件であり,譲受代金を三菱東京UFJ銀行の質権抹消費用 として使用することとされた。〔甲56〕 ナ 平成23年4月12日,被告Dによりエコラインの株主総会が開かれ, 同総会において,同社の取締役である原告C,J,Iを解任し,FとN を取締役に選任する旨の決議がされた。そして,原告Cがエコラインの 代表取締役を退任し,代わりにFが就任する旨の登記がされた。〔甲6, 23〕(6) 原告Cがエコラインの代表者を退任した後の事実経過等 ア 平成23年4月14日,エコラインにつき再生手続開始申立の取下書 が出された。〔甲57〕 イ エコラインの代表者Fは,原告Cに対し,平成23年4月15日付け で,「当社の『実印』,『銀行印』,『特許に関わる書類一式』」の返 還を求めた。〔乙19〕 ウ 原告Cは,エコライン代表者として,平成23年4月20日付けで, 債権者に対し「経過のご報告」と題する書面により,訴外株式会社ベス トライフから営業等譲受意向表明書を受領した旨を通知した。同書面に は,エコラインの代表者印が押されている。〔乙38〕 エ また,平成23年4月21日付けで,秋田地方裁判所に対し,F作成 の「エコライン株式会社の自立再生計画について」と題する書面が提出 された。〔甲58〕 オ エコラインの監督委員であるS弁護士は,平成23年4月25日,民 事再生手続開始申立ては会社再建という本来の民事再生の申立ての趣旨 と違う面があるとの金融機関の認識を示す報告書を提出した。〔甲6 0〕 カ また,原告Cは,前同日,エコラインの自立再生計画に対する反論書 を秋田地方裁判所に提出した。同書面において,原告Cは,自らをエコ ラインの代表取締役と表記し,同社の代表社印を押印している。また, 原告Cは,「エコサービス社がすでにエコライン社の特許商品を販売し ていることの確認できました(判決注;ママ)ので,エコサービス株式 会社に対し,通常実施権設定登録の抹消登録手続請求事件の訴えを起こ しました」と記載し,民事再生手続開始決定を求めた。〔甲59〕キ しかし,前同日,エコラインにつき再生手続開始申立の取り下げにつ いて裁判所の許可がされ,同日,登録の嘱託が行われた。〔甲6,5 7〕ク 平成23年5月6日,被告アースアンドウォーターの代表取締役が, 被告DからMに交代した。〔甲5〕ケ エコラインの代表者であったJは,同月16日付け当庁宛て陳述書に おいて,平成16年9月以降,エコラインは本件特許1を実施した節水 装置の製造等を開始したところ,エコラインも原告会社も会長である原 告Cが経営する会社であり,エコラインが権利者であることを前提とし て業務をしていたなどと述べた。〔乙79〕コ 原告Cは,エコラインに対し前記(5)サの平成23年3月24日付け 発明者対価支払契約に基づく請求権を有するとし,これを被保全権利と して,平成23年5月23日に本件各特許権についての仮差押えをした。 サ エコラインは,平成23年5月31日,被告加藤建設に対し,本件各 特許権を譲渡(平成23年6月1付けで特定承継による本権の移転登 録)した(本件各移転登録)。 シ エコラインは,平成23年6月22日,株主総会で解散を決議し,同 日,エコラインの代表清算人に,同社の取締役であったNが就任した。 〔甲6〕ス 被告加藤建設は,平成23年9月29日,被告アースアンドウォー ターに対し,本件各特許権につき専用実施権を設定した(本件各専用実 施権設定登録)。 セ 原告Cは,原告会社の代表者として,平成23年10月31日に,代 理人弁護士を通じ,エコライン(代表清算人N宛て),被告加藤建設, 被告アースアンドウォーター及びエコサービスに宛て,債務不履行を理 由として本件譲渡契約解除の意思表示をし,同年11月2日にその内容 証明郵便はエコラインに到達した。同内容証明郵便においては,本件各 特許権の譲渡代金は3000万円であるところ,そのうちの480万8 551円(税別)しか支払われていないこと,被告Dは被告Eと共謀し, 平成22年5月末頃,エコラインの第8期の決算書作成に当たり実際に は存在しないエコラインの原告会社に対する3000万円の短期貸付金 を不正に作出して平成22年3月31日に遡って本件各特許権の譲渡契 約代金3000万円と相殺する処理をしていることが判明しているが, 原告会社との関係で被告アースアンドウォーターらは背信的悪意者であ ること,等が記載されている。〔甲12の1,3〕 ソ 併せて,原告会社は,被告加藤建設及び被告アースアンドウォーター に対し,原告会社に対する移転登録及び本件専用実施権設定登録の抹消 登録を請求した。〔甲12の1,4,5〕 タ エコラインは,平成24年1月26日に,秋田地方裁判所により破産 手続開始決定を受けた。 チ 被告加藤建設は,平成24年2月27日の代位弁済により,三菱東京 UFJ銀行の本件各特許権に対する根質権について移転を受けた。 (7) 本件訴えの提起等 ア 原告Cは,原告会社の代表者として,平成24年3月19日,当庁 にA事件に係る訴えを提起した。 イ Iの本件各特許権に対する質権については,平成24年3月23日 債務弁済を原因として抹消登録がされた。〔乙100の1,2〕 ウ 原告会社は,平成26年2月24日,秋田地方裁判所に対し,本件 各特許権について,エコラインの監査役による詐欺により原告会社は 錯誤に陥り,譲渡契約を締結したとして,譲渡契約の取消しと,本件 特許権1に関して,主位的にエコラインが使用,実施により得た利益 として9億6374万8604円の不当利得返還請求権を,予備的に 原告会社が本件特許権1を実施したことにより得ることができたであ ろう利益8億2341万2599円の不法行為債権を破産債権として 届け出た。〔乙97〕 エ 原告Cは,原告会社の代表者として,平成24年3月19日,A事 件に係る訴えを当庁に提起したが,訴訟係属中の平成26年5月7日 に,原告会社の代表者を退任した。 オ 原告C,原告会社は,平成26年6月11日,秋田地方裁判所に, B事件に係る訴えを提起した。秋田地方裁判所は,同月17日,民訴 法16条1項に基づきB事件訴訟を当庁に移送する旨の決定をした。 (8) エコラインにおける会計処理の実情 ア 原告Cは,エコラインの実質的な代表者であり,Pを通じるなどして エコラインの銀行口座から現金を引き下ろすなどしており,そうした原 告Cが取得した現金は使途不明金となっていたが,これらは代表者貸付 として処理されていた。〔被告E尋問調書5頁,乙106,5〜6頁〕 イ 一方,エコラインの代表取締役であるJからの借入れについては,短 期借入金として処理されていた。〔乙49〕 ウ また,エコラインの会計処理においては,赤字にするなとの原告Cの 指示のもと,秋田組合病院などの,いったん短期借入金と売掛金で相殺 処理した売掛金が入金され,これが売上げで計上されているものについ ては,目標の売上げが達成していない場合に無理矢理売上げを立てるこ ととして行われていた。〔被告E尋問調書10頁〕 エ また,売掛金につき短期借入金で相殺する処理については,決算時に おいて無理に利益を出すため売掛金が膨らんだ年度があり,売上げの半 分が売掛金という異常な決算書になる可能性がある旨を被告Eが原告C に指摘したところ,売掛金を減らし,同じように負債も減らす処理をす ることによって,正常な決算書とすることも行われた。〔被告E尋問調 書10ないし11頁〕 オ エコラインにおいては現金出納帳が作成されておらず,毎年3月末の 時点で被告Eが月次試算表を作成し,その後に上記アの原告Cにより使 途不明となった金員の処理をどのようにするかの協議がされ,5月にお ける確定申告のための決算書類が作成されていた。 (9) 原告Cの証人(尋問当時)尋問の結果 原告Cは,被告Eとの間で,本件各特許権の使用料等について貸付金と の相殺処理について合意した旨を認めている。〔尋問調書22ないし23 頁〕(10) Pの陳述書の記載 Pは,平成18年4月1日にエコラインに入社して経理を担当するよう になった者であり,それ以前に「秋田ゴルフパーク」との名称の会社に勤 務していたが,同社は「アイランドビル」の一階で原告会社とフロアを共 用していた関係で遅くとも平成16年頃からエコラインと原告会社の現金 出納などの経理を手伝うようになったとするところ,「最近,アイランド ビルの2階のキャビネットにおいてあった私の個人所有のパソコンが見つ かったということで見せてもらいました。確かに,私が使用していたパソ コンで,私が当時弥生会計という会計ソフトで入力した,アイ社(判決注 ;原告会社)の第19期(判決注;平成17年10月1日ないし平成18 年9月30日)とエコ社(判決注;エコライン)の第4期(判決注;平成 17年4月1日ないし平成18年3月31日分)の会計データが入ってい ました。」,「上記パソコンから打ち出してもらったデータも見ましたが, これも当時私が入力した内容に間違いがないと思います。」,第4期分に 関しても「C会長からの入金は,代表者勘定で処理し,短期借入金という 勘定を用いたことはありませんでした。」と述べている。〔甲38の10 (平成25年3月23日付けPの陳述書)〕(11) 柘植一雄税理士の調査意見書の記載 柘植一雄税理士は,「そもそも,Cはエコ社の代表取締役ではなく,C とエコ社との貸借関係を代表者勘定で処理することはできない」と述べて いる。〔甲83(平成27年1月16日付け調査意見書)〕(12) 書証の成立の真正についての判断 ア 原告らは乙1(原告会社とエコラインとの間の平成20年3月28日 付け使用許諾契約書),乙2(原告会社とエコラインとの間の同日付け 覚書),乙3(原告会社とエコラインとの間の平成20年6月2日付け 覚書),乙4(原告会社とエコラインとの間の平成21年4月1日付け 特許権譲渡契約書)及び乙5(原告会社とエコラインとの間の平成21 年10月26日付け覚書)につきそれらの成立を否認するので,以下検 討する。 被告代理人による弁護士法23条の2第1項に基づく照会に対する秋 田県信用保証協会の平成24年9月19日付け回答によれば,同協会に おいて,エコラインから提出を受けたものとして保管されてきたもの (乙16)と乙1ないし5を比較すると,いずれも同一内容の文書(乙 1,3ないし5)か,あるいは同日付けの同趣旨の文書(乙2)であり, かつ,いずれも同一の印影が顕出されているものであることが認められ, そうすると,乙1ないし5は,いずれも真正に成立したことが認められ る。 この点に関して原告らは,乙1については,本件特許権1の登録日が 作成日であるにもかかわらず特許番号が入れられて作成されていること, 乙2については,乙16添付のものと一部条文が異なること,乙3につ いても,本件特許権2について出願日に特許取得した旨が記載されて特 許番号が記載されているのは不自然であることなどを主張するが,これ ら乙1ないし5は,いずれも原告Cらと被告Dらとの紛争が起こる以前 である平成21年4月16日付け秋田県信用保証協会に対する信用保証 委託申込書に添付されて同協会に提出されていた乙16添付の文書と, 原告Cの原告会社の代表者印及びJのエコラインの代表者印につき,い ずれも同一の印影が顕出されているものであるから,上記の事情は,そ れらの成立の真正に影響を与えるものではないというべきである。 イ 他方,原告らは,前記アの乙1ないし5に対し,甲7(原告会社とエ コラインとの間の平成20年3月31日付け使用許諾契約書),甲8 (原告会社とエコラインとの間の平成20年3月31日付け覚書),甲 9(原告会社とエコラインとの間の平成20年9月30日付け覚書)及 び甲11(原告会社とエコラインとの間の平成21年10月20日付け 特許権譲渡契約書)を提出するが,被告らはこれらの書類につき,原告 らにより偽造されたものであるとしてそれらの成立の申請を否認する。 そこで検討するに,甲7は乙1と,甲8は乙2と,甲9は乙3と,甲 11は乙4と,それぞれ両立し得ない文書であるところ,それらは,乙 1,3ないし5と日付け及び内容等で異なり,また,秋田県信用保証協 会に保管されてきた文書とは顕出された印影がいずれも異なるところ, 原告Cは乙号証の契約書を作成した事実はないと証言する(証人尋問調 書1頁)ものの,秋田県信用保証協会に保管されてきた文書は被告Dら との紛争以前の平成21年4月に同協会に提出されたものであるにもか かわらず,これらは被告Dの意を汲むものにより偽造された文書である (証人尋問調書12,13,21頁)などと著しく不合理な証言をする など,原告らはこの点につき何らの合理的説明を行い得ないものである ことからすれば,甲7ないし9,11は,原告Cがエコラインの代表者 を退任し,Fにおいて原告Cに対しエコラインの代表者印等の返還を求 めた時期頃に原告Cらにより作成されたものと推認され,いずれも真正 に成立したものとは認められないというべきである。 なお,原告らは,本件各移転登録の際の添付書類として甲11の特許 権譲渡契約書の提示を受けたとするTの陳述書(甲64)を提出するが, 同陳述書は不動文字で記載されて同人が署名押印したものにすぎず,何 者がこの本文を記載したものかも不明である上,陳述書の内容的にも, 甲11と乙4とを比較対照した上で確認を行ったものでもなく,信用す ることができない。 2 争点1(1)ア及びイ(譲渡代金未払の事実の有無〔被告E及び被告Dによるエ コラインの帳簿改ざん等の事実の有無,相殺合意に基づく会計処理の有無〕) について (1) 上記1で認定した事実を基に判断する。 上記1で認定した事実によれば,本件各特許権については,原告会社とエ コラインとの間で平成21年4月1日付けで本件譲渡契約が締結され,その ための特許権取得費用等の融資も受けていること,同年5月1日現在のエコ ラインの会社沿革には本件各特許権をエコラインのものとして表示している こと,同年10月26日付け覚書により,本件各特許権が同日エコラインに 移転したことが原告とエコラインとの間で確認され,その際には本件各特許 権についての未払譲渡代金については何ら触れられるところがなく,かえっ て新たに発明功績の対価として販売個数に対応した使用料の趣旨の取り決め がされていること,同年11月2日付けで上記覚書の内容を反映して本件各 移転登録がされていること,原告Cは,平成22年9月8日に,当時原告会 社の代表者でもあったところ,エコラインの代表者として,三菱東京UFJ 銀行に対し本件各特許権につきエコラインが完全な権利を有する旨の本件表明保証をしていること,原告Cは,被告Dらとの紛争が生じた後の同年7月24日に,Kとの間で,本件各特許権が被告Dらの支配下に入るのを免れる目的で,原告C,Kらの支配下にある原告会社に対し特許権を譲渡することを企てているところ,そこでは当然のことながらエコラインが本件各特許権を有することが前提とされていること,原告Cは,平成23年3月24日付けでエコラインとの間で1億円以上にのぼる発明者対価報酬の支払契約を締結して,これに基づき,同年5月に本件各特許権のエコラインへの帰属を前提とした仮差押えをしていること,原告Cはエコラインの取締役に就任する平成21年10月以前から同社の設立者であり会長として紹介され,同社の役職にあるものでないにもかかわらず現金を同社の代表者勘定でやりとりした上,相当額を使途不明としていること,エコラインの代表者であるJの承認のもと,平成20年5月ないし平成22年5月までに作成された確定申告書類においては,本件各特許権の移転等に係る金員についての会計上の処理は終了していること,原告Cも証人尋問において,相殺勘定による処理がされていた事実を認めていること,原告会社ないし原告Cが本件各特許権についての未払譲渡代金があるとの主張を始めたのは,原告Cらが申し立てたエコラインに対する民事再生申立てが功を奏さず取り下げにより終了した後,本件再譲渡契約がされ,エコラインが株式総会で解散を決議するなどした後であること,以上の事実が認められる。 以上の事実によれば,本件各特許権の譲渡に伴う契約金等の名目での全ての代金債務の清算については,各相殺合意等により,平成21年4月末までにその処理は終了し未払の代金債務等は存しないものと認めるのが相当である。これは,平成21年10月26日付け覚書の記載内容や,平成22年8月19日に原告Cがエコラインの代表者として三菱東京UFJ銀行に対し提出した「知財権状況報告書」の記載や,同年9月8日にされた本件表明保証の内容とも整合するものである。 そうすると,原告会社からエコラインに対してされた本件各特許権につい ての本件各移転登録について,未払代金債務はなく,原告会社によりされた 平成23年10月31日付け内容証明郵便による契約解除は有効なものとは 認められない。 (2) 原告会社の主張に対する判断 この点に関して原告会社は,本件各特許権の譲渡代金の支払は,被告Eに より仮装された不正な会計処理である別紙@,Bの本件各不正仕訳,別紙A の本件各支払仕訳によるものである旨主張するところ,この点については, 後記4で判断するとおり,原告の上記主張は採用することができない。 3 争点1(1)ウ及びエ(各相殺合意は利益相反取引に当たり,原告会社の取締役 会決議も存せず,エコラインがこれにつき悪意であるとして無効となるか,信 義則に照らし原告会社がそれを主張することが許されないか)について (1) 上記1で認定したとおり,本件各移転登録に関し,前提となる本件譲渡契 約についての代金債務の一部とみられる特許保証金等につき,原告Cに対す る貸付金債権との相殺処理等がされているところ,原告会社は,この処理は 利益相反取引に当たり,原告会社における取締役会決議は存せず,エコライ ンはこれにつき悪意であるから各相殺合意は無効である旨主張し,A事件被 告らは,本件の事実関係に照らせば原告会社が相殺合意の無効を主張するの は信義則に反する旨主張するので,以下この点につき検討する。 上記1で認定した事実によれば,本件譲渡契約の代金債務の一部とみられ る特許保証金等について原告Cに対するエコラインの貸付金債権等との相殺 合意につき,原告会社との関係で利益相反取引に当たるものが含まれ得ると みられるところ,平成20年5月ないし平成22年5月までの間においては, 原告Cは,原告会社の代表者であるとともにエコラインの会長などとして同 社の実質的な経営者であり,エコラインの代表者ではない時期から代表者勘 定を利用して上記相殺処理の前提となる使途不明金を作出した者であること, 原告会社は,本件A事件の訴え提起時においても原告Cが代表者であったほ か,その他の取締役も原告Cの姉などであり,前記1(10)のPの陳述書にみ られるとおり,原告会社の社員でもエコラインの社員でもないPが平成16 年頃から原告会社の現金出納を行うようになったとするなど原告会社は実体 に乏しく,これは本件A事件訴え提起に至るまで同様とみられること等から すれば,原告Cの合意の下に行われた各相殺合意につき,原告会社において, 同社の取締役会決議が存しないことを理由にその無効を主張するのは,仮に 原告会社における取締役会決議が存しないものとしても,信義則に反し許さ れないものというべきであり,原告会社はその無効を主張することはできな いというべきである。 (2) 小括 以上によれば,A事件主位的請求については,その余の点について判断す るまでもなく理由がない。 4 争点2(1)及び(2)(A事件予備的請求は不適法か〔被告加藤建設の本案前の答弁〕及びA事件予備的請求の可否)について A事件予備的請求は,被告加藤建設に対し,妨害排除請求権に基づき別紙登録目録2記載1及び2の登録の抹消登録手続をすることを求めるものであるところ,訴えの利益がないものとはいえず,また,予備的請求の追加の時点における当事者双方の主張立証の状況等に照らすと,必ずしも時機に後れたものとまで認められないから,被告加藤建設の本案前の答弁は理由がない。 しかし,前記2のとおり,本件各移転登録に関し,前提となる本件譲渡契約についての未払代金債務はなく,原告会社によりされた平成23年10月31日付け内容証明郵便による契約解除は有効なものとは認められないから,その余の点について判断するまでもなく,A事件予備的請求も理由がない。 5 争点3(1)(被告E,被告D及び被告加藤建設の責任原因)について(1) 原告らは,被告E,被告Dは,不正な会計処理である別紙@,Bの本件各 不正仕訳,別紙Aの本件各支払仕訳を行い,これにより原告会社及び原告C に損失を与えたものである旨主張する。 しかし,そもそもこれらの前提となる帳簿処理は,いずれも税務署への確 定申告の前提として,代表者であるJのほか,取締役として決算報告を行う 以前からエコラインの会長であるとしてエコラインの実質的経営者であった 原告Cらにおいても,これらが適正であることを確認し,承認しているもの と認められる上,原告らが本件各不正仕訳,本件各支払仕訳として主張する 帳簿処理の根拠は,いずれも原告C,Jが作成した検討資料やPのパソコン に入力されていた資料が正確であることを前提とするものであるが,前記1 のとおり,原告Cにより代表者勘定を利用してされたエコラインにおける使 途不明金の存在と,これを前提としたエコラインの会計処理の状況,Pのパ ソコンが発見されたとする状況等からすれば,Pのパソコンの情報が正確な ものであるとは到底認められないこと,Jは平成26年9月20日付け陳述 書(甲78)において,被告Eから決算に当たって貸借対照表について話さ れることはほとんどなく総勘定元帳についても説明を受けたことは全くない などとしながら,エコラインの第4期の平成18年3月末決済において,被 告Eから,試験的工事(モニター工事)に基づく売掛金について原告Cに対 する短期借入金約4363万円と相殺して処理するとの提案があったなどと 詳細を記憶しているとするのは不合理であり措信できないこと,原告Cは, 甲1以下の文書を被告Dとの紛争が生じた後に日付けを遡って作成して書証 として提出していると認められること等からすると,原告らが主張する本件 各不正仕訳,本件各支払仕訳の事実があったと認めることはできない。 したがって,原告らの上記主張には理由がない。 (2) 原告らの主張に対する判断 ア 原告らは,被告E及び被告Dは,平成16年10月頃から,エコラインを 破綻させることを企てて不正な会計処理をしたものである旨主張する。 しかし,被告Eらによる不正な会計処理の事実が認められないことについ ては上記(1)のとおりであるのに加えて,本件各特許権がエコラインに移転 した前後の時期を含む少なくとも平成20年3月末ないし平成22年3月 末の時点において,被告Eの経営するE経営及び被告Dはエコラインにお いて相当の議決権を有する有力な株主であることからすれば,エコライン を破綻させることは被告E及び被告Dにも多大な損失をもたらすものであ ると認められるから,被告E及び被告Dにはそのような動機はそもそも存 しないものというべきである。 したがって,原告らの主張は採用することができない。 イ また,原告らは,原告C及びJの指示と共同不法行為責任についてとし て,被告ら主張の各相殺合意がされたのであれば,かかる取引は,原告C 個人のエコラインに対する債務につき,原告会社の負担で消滅させようと するものであるから,原告Cが原告会社の犠牲によって,自らの債務を免 れる利益を得るものであって代表権限を濫用するものであり,エコライン のJもそのことを認識しながらこれを行ったものであるから,民法93条 1項ただし書が類推適用され無効となるところ,原告Cは,原告会社の代 表権限を濫用して各相殺合意をしたものであって,そのことによって原告 会社が被った損害を賠償する責任があり,Jも,エコラインの代表取締役 として,原告Cの上記権限濫用を認識しつつ行ったのであるから,Jとエ コラインは,原告Cの共同不法行為者として,上記損害を賠償する責任が あると主張し,その上で,被告D及び被告Eは,各債務をエコラインの原 告Cに対する債権で相殺等によって消滅させることを幇助したものであっ て,同人らも共同不法行為責任を免れない旨主張する。原告らの上記主張 の趣旨は必ずしも明確ではないが,いずれにしても,上記権限濫用の主張 と被告D及び被告Eらの幇助責任との関係は明らかであるとはいえないか ら,上記主張によって原告会社において原告Cの責任を単独で別途追及す るのであれば格別,被告Dや被告Eらにおいて,それらの幇助をしたと認 めることはできないというべきである。 したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 6 結論 以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,A事件についての原告会社の主位的及び予備的請求並びにB事件についての原告らの請求は,いずれも理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 |
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東海林保(別紙)当事者目録秋田市<以下略>A事件及びB事件原告アィ・ランドシステム株式会社秋田市<以下略>B事件原告C原告ら訴訟代理人弁護士丸山健同大森孝参同脇田敬志A事件原告訴訟代理人弁護士三浦太郎秋田市<以下略>A事件及びB事件被告加藤建設株式会社東京都千代田区<以下略>A事件被告株式会社アースアンドウォーター秋田市<以下略>B事件被告D秋田市<以下略>B事件被告E被告ら訴訟代理人弁護士高橋邦明(別紙)特許権目録1特許登録番号第4100693号登録名義人加藤建設株式会社(被告加藤建設)登録年月日平成20年3月28日発明の名称流量制御弁2特許登録番号第4189027号登録名義人加藤建設株式会社(被告加藤建設)登録年月日平成20年9月19日発明の名称弁体と流量制御弁(別紙)登録目録11特許登録番号第4100693号原因専用実施権の設定受付年月日平成23年9月29日受付番号007824専用実施権者東京都千代田区<以下略>株式会社アースアンドウォーター(被告アースアンドウォーター)2特許登録番号第4189027号原因専用実施権の設定受付年月日平成23年9月29日受付番号007825専用実施権者東京都千代田区<以下略>株式会社アースアンドウォーター(被告アースアンドウォーター)(別紙)登録目録21特許登録番号第4100693号原因特定承継による本件の移転受付年月日平成23年6月1日受付番号004630特許権者秋田市<以下略>加藤建設株式会社(被告加藤建設)2特許登録番号第4189027号原因特定承継による本件の移転受付年月日平成23年6月1日受付番号004630特許権者秋田市<以下略>加藤建設株式会社(被告加藤建設)別紙@ないしB省略 |
裁判長裁判官 | 東海林保 |
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裁判官 | 今井弘晃 |
裁判官 | 足立拓人 |