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関連審決 無効2012-800115
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事件 平成 26年 (行ケ) 10156号 審決取消請求事件

原告タイム技研株式会社
訴訟代理人弁護士植村元雄 土方周二 古澤健一 服部充裕 櫻林正己 弁理士木芳之 伊藤淳 渡邉泰宏
被告 株式会社テージーケー
訴訟代理人弁護士横井康真 弁理士森下賢樹 三木友由 松尾卓哉
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2015/04/21
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
特許庁が無効2012-800115号事件について平成26年5月30日にした審決を取り消す。
事案の概要
本件は,特許無効審判請求を不成立とした審決の取消訴訟であり,争点は,@進歩性についての判断の当否及びA特許請求の範囲の記載要件(サポート要件)についての判断の当否である。
1 特許庁における手続の経緯 被告は,平成14年2月28日,名称を「逆流防止装置」とする発明につき,特許出願をし,平成18年8月25日,設定登録を受けた(特許第3845031号
以下「本件特許」という。甲24。。
) 原告は,平成24年7月20日付けで本件特許について無効審判請求(無効2012-800115号)をしたところ,被告は,平成25年12月25日付け訂正請求書(甲26の1,2)により,特許請求の範囲及び発明の詳細な説明につき,訂正請求をした(以下「本件訂正請求」という。。
) 特許庁は,平成26年5月30日,本件訂正請求を認めた上で, 「本件審判の請求は,成り立たない」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同年6月9日,原告に送達された。
2 本件特許に係る発明の要旨 本件訂正請求が認められた後の本件特許に係る発明の要旨は,以下のとおりである(甲26の1,2)。
【請求項1】(以下「本件請求項1」という。) 給湯管から浴槽への配管の途中に設けられて前記浴槽から上水道への汚水の逆流を防止する逆流防止装置であって, 前記給湯管から前記浴槽へ向かう水の流れを開放または遮断する電磁弁と, 開弁方向に付勢するためのスプリングを有し,前記上水道の圧力低下に応動して前記電磁弁より前記浴槽の側の前記配管内の水を大気に放出するよう開閉動作する一方,前記上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つ大気開放弁と, を備えた逆流防止装置において, 前記大気開放弁から前記浴槽へ向かう前記配管内に一つのみ配置されて前記浴槽から前記大気開放弁の方向への流れを阻止する第1の逆止弁と, 前記電磁弁と前記大気開放弁との間に一つのみ配置され,前記大気開放弁が前記上水道の圧力低下に応動して大気開放したときに,前記大気開放弁を介して大気に放出される水および吸い込まれた大気が前記上水道の圧力低下によって前記電磁弁の方向に流れてしまうのを阻止する第2の逆止弁と, を備えていることを特徴とする逆流防止装置。
【請求項2】 前記電磁弁と前記給湯管との間に配置され,前記給湯管の側の配管内の負圧を感知して前記配管内に大気を導入する負圧破壊装置を備えていることを特徴とする請求項1記載の逆流防止装置。
(以下,各請求項に記載された発明を「本件発明1」及び「本件発明2」といい,両発明を併せて「本件発明」という。) 3 本件審決の理由の要点 ? 原告が主張した無効理由(ただし,審決取消事由に関するものに限る。) ア 本件発明1について (ア) 以下のとおり,本件発明1は,特許法29条2項により,特許を受けることができない。
a 無効理由7(甲8号証の1に記載された発明〔以下「甲8発明」という。〕と周知技術との組合せによる進歩性喪失事由) 当業者は,甲8発明に,大気開放弁(逆流防止装置)と浴槽との間に逆止弁を1つのみ配置するという周知技術(甲1,甲2,甲5)を適用することによって,又は,給湯回路には逆止弁を2つ設けるのが一般的である旨の社団法人日本水道協会(以下「日本水道協会」という。)の基準(技術標準。甲12参照)を加味することによって,本件発明1を容易に想到し得た。
b 無効理由9(甲1号証に記載された発明〔以下「甲1発明」という。〕と甲8発明との組合せによる進歩性喪失事由) 本件発明1は,当業者において,甲1発明と甲8発明とを組み合わせることによって,容易に想到し得る程度のものにすぎない。
c 無効理由11(甲2号証に記載された発明〔以下「甲2発明」という。〕と甲8発明との組合せによる進歩性喪失事由) 本件発明1は,当業者において,甲2発明と甲8発明とを組み合わせることによって,容易に想到し得る程度のものにすぎない。
(イ) 無効理由6(サポート要件違反) 本件請求項1の記載は,大気開放弁について,開弁方向に付勢するスプリングを有しながらも,上水道の圧力低下がない状態において閉じた状態が保たれるための構成が明確になっていないから,特許法36条6項1号に違反する。
イ 本件発明2について(無効理由13〔甲4号証に記載された発明(以下「甲4発明」という。〕による進歩性喪失事由) 当業者は,甲4発明に基づき,本件発明2を容易に想到し得る。
したがって,本件発明2は,特許法29条2項により,特許を受けることができない。
甲1号証 :実願平2-79045号(実開平4-36551号)のマイクロフィルム 甲2号証 :実願平2-71754号(実開平4-30393号)のマイクロフィルム 甲4号証 :実願平2-35916号(実開平3-124155号)のマイクロフィルム 甲5号証 :実願平3-83521号(実開平5-36243号)のCD-ROM 甲8号証の1:特開平7-103358号公報 甲12号証 :「給水装置に係わる器具等関係規程・規則および審査基準(昭和58年7月改正)」「追加事項3 (昭和62年4月〜昭和63年10月)」日本水道協会 (判決注:上記甲号証の番号は,本件訴訟における甲号証の番号に対応する。ただし,本件訴訟において提出されている甲1号証,甲2号証,甲4号証及び甲5号証は,いずれもマイクロフィルム又はCD-ROMの内容をプリントアウトした書証である。) ? 本件審決の判断(ただし,前記?記載の無効理由についての判断に限る。) ア 本件発明1について (ア) 以下のとおり,本件発明1につき,容易想到性は認められない。
a 無効理由7(甲8発明と周知技術との組合せによる進歩性喪失事由)について ? 甲8発明の認定(後出図D参照)「給水を加熱する給湯路10から浴槽Cへの連絡水路13の途中に設けられて前記浴槽Cから上流側水路13aへの汚水の逆流を防止する逆流防止機構であって, 前記給湯路10から前記浴槽Cへ向かう水の流れを開放または遮断する温水電磁弁と, 開弁方向付勢用スプリング43を有し,上流側水圧P1と逆流防止室23の内圧P2に応じて逆流防止室23内の汚水を大気開放口26から排出する一方,上流側水圧P1の低下がない状態においては大気開放口26は閉じた状態を保つ逆流防止装置Aと, を備えた逆流防止機構において, 前記逆流防止装置Aから前記浴槽Cへ向かう下流側水路13bに二つ配置されて前記浴槽Cから前記逆流防止装置Aの方向への流れを阻止する逆止弁と, 上流側水圧P1を伝達する検圧管分岐部と逆流防止室23の間に入れられ,逆流防止装置Aのダイヤフラムの両面に差圧を発生させる逆止弁と,を備えている逆流防止機構。」 ? 本件発明1と甲8発明との対比(一致点)「給湯管から浴槽への配管の途中に設けられて前記浴槽から上水道への汚水の逆流を防止する逆流防止装置であって, 前記給湯管から前記浴槽へ向かう水の流れを開放または遮断する電磁弁と, 開弁方向に付勢するためのスプリングを有し,前記上水道の圧力低下に応動して前記電磁弁より前記浴槽の側の前記配管内の水を大気に放出するよう開閉動作する一方,前記上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つ大気開放弁と, を備えた逆流防止装置において, 前記大気開放弁から前記浴槽へ向かう前記配管内に配置されて前記浴槽から前記大気開放弁の方向への流れを阻止する第1の逆止弁, 大気開放弁の上流側に配置される第2の逆止弁と, を備えている逆流防止装置。」(相違点)[相違点1] 本件発明1は,前記大気開放弁から前記浴槽へ向かう前記配管内に配置されて前 「記浴槽から前記大気開放弁の方向への流れを阻止する第1の逆止弁」が「一つのみ配置されて」「大気開放弁の上流側に配置される第2の逆止弁」が「前記電磁弁と ,前記大気開放弁との間に一つのみ配置され,前記大気開放弁が前記上水道の圧力低下に応動して大気開放したときに,前記大気開放弁を介して大気に放出される水お よび吸い込まれた大気が前記上水道の圧力低下によって前記電磁弁の方向に流れてしまうのを阻止する」のに対し,甲8発明は, 「第1の逆止弁」が2つ配置され, 「第2の逆止弁」が「上流側水圧P1を伝達する検圧管分岐部と逆流防止室23の間に入れられ,逆流防止装置Aのダイヤフラムの両面に差圧を発生させる」ものである点。
? 相違点1についての検討 以下の点を総合すると,相違点1に係る構成は,設計的事項ではなく,当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
@ 甲8発明は,ダイヤフラムの両面に差圧を発生させるための逆止弁の配置について,温水電磁弁の上流側又は下流側を区別していないということができる。
A 上記逆止弁を温水電磁弁の下流側に配置した場合,同逆止弁は,その配置位置からみて,本件発明1における第2の逆止弁に相当する。
しかしながら,第1の逆止弁についてみると,本件発明1においては1つのみ配置されているのに対し,甲8発明においては2つ配置されている。
甲8発明において第1の逆止弁が2つ配置されていることは,給湯回路の電磁弁より下流側の回路に逆止弁を2箇所以上設置しなければならないという日本水道協会の基準に整合しており,当業者は,特段の事情がない限り,第1の逆止弁を1つにすることはないといえる。
この点に関し,上記特段の事情は見当たらず,また,甲1発明,甲2発明及び甲5号証に記載された発明(以下「甲5発明」という。)において,大気開放弁から浴槽へ向かう配管内に逆止弁を1つ配置することが開示されているとしても,その配置は,それぞれの大気開放弁と関連した構成であり,逆止弁の配置のみを1つの技術思想として把握することはできないから,上記開示に係る点を甲8発明に適用する動機付けがあるともいえない。
B ダイヤフラムの両面に差圧を発生させるための逆止弁を温水電 磁弁の上流側に配置した場合,同逆止弁は,本件発明1を構成する第1の逆止弁及び第2の逆止弁とは,関係がないものということができる。
そこで,甲8発明において2つ設けられている第1の逆止弁の配置についてみると,これらの配置を問題とする記載は見出せず,当業者において,あえて大気開放弁(逆流防止装置A)よりも下流に配置された2つの逆止弁のうちの1つを大気開放弁(逆流防止装置A)と電磁弁(温水電磁弁)との間に設け,第2の逆止弁とする動機付けは,存在しない。もっとも,前記のとおり,ダイヤフラムの両面に差圧を発生させるための逆止弁は,既に温水電磁弁の上流側に配置されているから,更に差圧を発生させるための逆止弁を大気開放弁(逆流防止装置A)と電磁弁(温水電磁弁)との間に配置することは,あり得ない。
C 加えて,逆止弁が水密不良の状態になった場合においても浴槽内の汚水が上水道の側へ逆流するのを完全に防止するために,電磁弁と大気開放弁との間に逆止弁を1つ配置するという点は,いずれの証拠にも開示されていない。
D 他方,本件発明1は,相違点1に係る構成を採用することによって,コストの上昇を伴わずに,浴槽側に設けた逆止弁及び電磁弁と大気開放弁との間に設けた逆止弁が共に水密不良の状態になっても,汚水が給水側の方まで逆流しないという作用効果を奏するものである。
b 無効理由9(甲1発明と甲8発明との組合せによる進歩性喪失事由)について ? 甲1発明の認定(後出図F参照)「水路5から浴槽1への配管の途中に設けられて前記浴槽1から上水道への逆流を防止する装置であって, 前記水路5から前記浴槽1へ向かう水の流れを開放または遮断する電磁弁8と, 開弁方向に付勢するためのバネ32を有し,給湯を停止する時や給水源4が断水した時,前記電磁弁8より前記浴槽1の側のホッパー20内の水を大気に連通するよう開閉動作する大気開放弁と, を備えた装置において, 前記大気開放弁から前記浴槽1へ向かう下流側水路5bに一つ配置されて前記浴槽1から前記大気開放弁の方向への流れを阻止する逆止弁15と, 前記電磁弁8と前記大気開放弁との間の上流水路5aに一つ配置される一次圧限度設定弁25を備えている装置。」 ? 本件発明1と甲1発明との対比(一致点)「給湯管から浴槽への配管の途中に設けられて前記浴槽から上水道への汚水の逆流を防止する逆流防止装置であって, 前記給湯管から前記浴槽へ向かう水の流れを開放または遮断する電磁弁と, 開弁方向に付勢するためのスプリングを有し,前記上水道の圧力低下に応動して前記電磁弁より前記浴槽の側の水を大気に放出するよう開閉動作する大気開放弁と, を備えた逆流防止装置において, 前記大気開放弁から前記浴槽へ向かう配管内に一つのみ配置されて前記浴槽から前記大気開放弁の方向への流れを阻止する第1の逆止弁と, 前記電磁弁と前記大気開放弁との間に一つのみ配置される第2の逆止弁と, を備えている逆流防止装置。」(相違点)[相違点3]「大気開放弁」について,本件発明1は, 「開弁方向に付勢するためのスプリングを有し,前記上水道の圧力低下に応動して前記電磁弁より前記浴槽の側の前記配管内の水を大気に放出するよう開閉動作する一方,前記上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つ」のに対し,甲1発明は, 「開弁方向に付勢するためのバネ32を有し,給湯を停止する時や給水源4が断水した時,前記電磁弁8より前記浴槽1の側のホッパー20内の水を大気に連通するよう開閉動作する」点。
[相違点4] 「第2の逆止弁」について,本件発明1は, 「前記大気開放弁が前記上水道の圧力低下に応動して大気開放したときに,前記大気開放弁を介して大気に放出される水および吸い込まれた大気が前記上水道の圧力低下によって前記電磁弁の方向に流れてしまうのを阻止する」のに対し,甲1発明は,そのような動作をするか明らかでない点。
? 相違点についての検討 以下によれば,本件発明1は,甲1発明及び甲8発明に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
@ 相違点3について 甲1発明における大気開放弁は,給湯を停止するときにも開閉動作させることを目的として検圧部を電磁弁より下流側に配置したものであるから,上水道の圧力低下がない状態においては大気開放弁を閉じた状態を保つように,上記検圧部の配置位置を電磁弁より上流側に変更することは,あり得ない。また,甲1発明における大気開放弁の上記目的に鑑みると,甲8発明における大気開放弁を適用する動機付けはなく,阻害事由があるといえる。
以上によれば,当業者において,甲1発明を起点として相違点3に係る構成に至ることは,容易とはいえない。
A 相違点4について 甲1発明において,一次圧限度設定弁25は,大気開放弁が上水道の圧力低下に応動して大気開放したとき,バネに押されて弁体が作動し,逆止弁として作用するものであり,大気開放弁を介して大気に放出される水及び吸い込まれた大気が上水道の圧力低下によって電磁弁の方向に流れるのを阻止することは,明らかである。
したがって,甲1発明における第2の逆止弁(一次圧限度設定弁25)の動作は,本件発明1の動作と相違するものではなく,このことから,相違点4は,実質的な相違ではない。
c 無効理由11(甲2発明と甲8発明との組合せによる進歩性喪失事 由) ? 甲2発明の認定(後出図I及び図J参照)「浴槽8への給湯管路2に設けられて前記浴槽8から上水道側への汚水の逆流を防止する装置であって, 前記給湯管路2の前記浴槽8へ向かう水の流れを開放または遮断する電磁開閉弁4と, 開弁方向に付勢するための圧縮コイルばね44を有し,前記電磁開閉弁4を閉じると前記電磁開閉弁4と第2の逆止弁7の間の前記給湯管路2内の水を排水し空気を導入するよう開閉動作するバキュームブレーカ11と, を備えた装置において, 前記バキユームブレーカ11から前記浴槽8へ向かう前記給湯管路2に一つ配置されて前記浴槽8から前記バキュームブレーカ11の方向への流れを阻止する第2の逆止弁7と, 前記電磁開閉弁4と前記バキュームブレーカ11との間に一つ配置される第1の逆止弁5を備えている装置。」 ? 本件発明1と甲2発明との対比(一致点)「給湯管から浴槽への配管の途中に設けられて前記浴槽から上水道への汚水の逆流を防止する逆流防止装置であって, 前記給湯管から前記浴槽へ向かう水の流れを開放または遮断する電磁弁と, 開弁方向に付勢するためのスプリングを有し,前記電磁弁より前記浴槽の側の前記配管内の水を大気に放出するよう開閉動作する大気開放弁と, を備えた逆流防止装置において,前記大気開放弁から前記浴槽へ向かう前記配管内に一つのみ配置されて前記浴槽から前記大気開放弁の方向への流れを阻止する第1の逆止弁と, 前記電磁弁と前記大気開放弁との間に一つのみ配置される第2の逆止弁と, を備えている逆流防止装置。」(相違点)[相違点5]「大気開放弁」について,本件発明1は, 「開弁方向に付勢するためのスプリングを有し,前記上水道の圧力低下に応動して前記電磁弁より前記浴槽の側の前記配管内の水を大気に放出するよう開閉動作する一方,前記上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つ」のに対し,甲2発明は, 「開弁方向に付勢するための圧縮コイルばね44を有し,前記電磁開閉弁4を閉じると前記電磁開閉弁4と第2の逆止弁7の間の前記給湯管路2内の水を排水し空気を導入するよう開閉動作する」点。
[相違点6]「第2の逆止弁」について,本件発明1は, 「前記大気開放弁が前記上水道の圧力低下に応動して大気開放したときに,前記大気開放弁を介して大気に放出される水および吸い込まれた大気が前記上水道の圧力低下によって前記電磁弁の方向に流れてしまうのを阻止する」のに対し,甲2発明は,そのような動作をするか明らかでない点。
? 相違点についての検討 以下によれば,本件発明1は,甲2発明及び甲8発明に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
@ 相違点5について 本件発明1における大気開放弁は,上水道の圧力低下に応動して開閉動作する一方,上水道の圧力低下がない状態においては,閉じた状態を保つものである。
他方,甲2発明におけるバキュームブレーカ11(大気開放弁)は,電磁開閉弁4を閉じると,同弁より下流側の圧力が下がることによって,開閉動作するものであり,上水道の圧力低下がある場合には,電磁開閉弁4を閉じた場合と同様に流通路13の圧力が下がることになるから,開閉動作する。
しかしながら,バキュームブレーカ11は,上水道の圧力低下がない状態においても,電磁開閉弁4を閉じると開閉動作するものであり,本件発明1における大気開放弁のように閉じた状態を保つものではない。
この点に関し,甲8発明は,逆流防止装置という技術分野について甲2発明と共通するものの,甲2発明においては,前記のとおり電磁開閉弁4を閉じるとバキュームブレーカ11が開閉動作することに鑑みると,甲8発明の逆流防止装置(以下「甲8逆流防止装置」ともいう。 を甲2発明に適用する動機付けがあるとはいえな )い。
したがって,当業者において,甲2発明を起点とし,甲8逆流防止装置に基づいて相違点5に係る構成に至ることは,容易とはいえない。
A 相違点6について 甲2発明において,第1の逆止弁5は,バキュームブレーカ11が上水道の圧力低下に応動して大気開放したときに,逆止弁として作用し,バキュームブレーカ11を介して大気に放出される水及び吸い込まれた大気が,上水道の圧力低下によって電磁開閉弁4の方向に流れるのを阻止することは,明らかといえる。
したがって,甲2発明における(本件発明1における第2の逆止弁に相当する)第1の逆止弁5の動作は,本件発明1の動作と相違するものではないから,相違点6は,実質的な相違ではない。
(イ) 無効理由6(サポート要件違反)について a 本件請求項1に記載されている「大気開放弁」の発明特定事項は,発明の詳細な説明(本件訂正請求が認められた後の明細書〔甲26の2。以下「本件訂正後明細書」という。【0004】【0008】から【0010】 〕 , )及び図面に記載された事項又は自明の事項であると認められる。
b 本件発明は,逆止弁が異物の噛み込みなどで水密不良になっても浴 「槽内の汚水が上水道の側へ逆流するのを完全に防止する」甲26の2 ( 【0012】)ことを課題とした逆流防止装置に関する発明であり,同課題を解決するためには, 逆流防止装置を構成する大気開放弁が,断水などが発生して給水管1内に負圧が発 「生したときに」「上水道の1次圧の低下を感知して大気開放し,逆止弁9と逆止弁 ,10との間の配管内の水を大気に放出する」(同【0020】【0028】 , )ものであればよい旨を,当業者が認識できることは,明らかである。そのような大気開放弁については,本件請求項1記載の発明特定事項で足り,それ以上の限定を要しない。
c 以上によれば,本件請求項1の記載は,発明の詳細な説明において,当該発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲内のものであるから,特許法36条6項1号に反しない。
イ 本件発明2について(無効理由13〔甲4発明による進歩性喪失事由〕) 前記ア(ア)のとおり,本件発明1は,特許法29条2項に反するものではなく,また,以下によれば,本件発明1は,甲4発明に基づいても,当業者が容易に想到できたものとはいえないことから,本件発明1を引用する本件発明2は,特許法29条2項に反しない。
(ア) 甲4発明の認定「給湯管路7から浴槽1への配管の途中に設けられて前記浴槽1から給湯器側への逆流を防止する逆流防止装置であって, 前記給湯管路7から前記浴槽1へ向かう水の流れを開閉する電磁弁10と, 開弁方向に付勢するためのスプリング29を有し,給湯管路7内の圧力が負圧化したような場合,前記電磁弁10より前記浴槽1の側の第2作動室17内の水をオーバーフロー管24から排水する一方,第1の作動室16の圧力と第2の作動室17の圧力が等圧になるまでは閉じた状態を保つ負圧作動弁28と, を備えた逆流防止装置において, 前記負圧作動弁28から前記浴槽1へ向かう前記配管内に一つ配置されて前記浴槽1から前記負圧作動弁28の方向への流れを阻止する第2の逆止弁12と, 前記電磁弁10の上流側に一つ配置された第1の逆止弁13を備えている逆流防 止装置。」 (イ) 本件発明1と甲4発明との対比(一致点)「給湯管から浴槽への配管の途中に設けられて前記浴槽から上水道への汚水の逆流を防止する逆流防止装置であって, 前記給湯管から前記浴槽へ向かう水の流れを開放または遮断する電磁弁と, 開弁方向に付勢するためのスプリングを有し,前記上水道の圧力低下に応動して前記電磁弁より前記浴槽の側の前記配管内の水を大気に放出するよう開閉動作する一方,前記上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つ大気開放弁と, を備えた逆流防止装置において, 前記大気開放弁から前記浴槽へ向かう前記配管内に一つのみ配置されて前記浴槽から前記大気開放弁の方向への流れを阻止する第1の逆止弁と, 第2の逆止弁を備えている逆流防止装置。」(相違点)[相違点9]「第2の逆止弁」について,本件発明1は, 「前記電磁弁と前記大気開放弁との間に一つのみ配置され,前記大気開放弁が前記上水道の圧力低下に応動して大気開放したときに,前記大気開放弁を介して大気に放出される水および吸い込まれた大気が前記上水道の圧力低下によって前記電磁弁の方向に流れてしまうのを阻止する」のに対し,甲4発明は,前記電磁弁10の上流側に配置されたものであり,上記のような動作をするものではない点。
(ウ) 相違点についての検討 甲4発明において,電磁弁10(電磁弁)及びその上流側に配置された第1の逆止弁13(本件発明1の第2の逆止弁に相当する。)は,これらと第2の逆止弁12(本件発明1の第1の逆止弁に相当する。 とを備えて一体として把握される弁直列 )接続体の一部であるから,同接続体の各要素の配置関係が当該技術分野における技 術の特徴であることに鑑みると,第1の逆止弁13と電磁弁10の配置関係を異なるものとすることについては,当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって,甲4発明における第1の逆止弁13を電磁弁10の下流側に配置することは,その動機付けがない以上,当業者が容易に想到し得たことではなく,当業者において,甲4発明を起点とし,相違点9に係る構成に至ることは,容易とはいえない。
原告主張の審決取消事由
1 取消事由1(本件発明1の進歩性の欠如〔特許法29条2項〕に関する判断の誤り) ? 取消事由1-1(無効理由7〔甲8発明と周知技術との組合せによる進歩性喪失事由〕に係る判断の誤り) 本件審決は,本件発明1と甲8発明との間の「相違点1」に係る構成は,設計的事項ではなく,当業者が容易に想到し得たものとはいえない旨判断しているが,同判断は,誤りである。
ア 甲8発明の認定 (ア)a 甲8発明においては,大気開放弁のダイヤフラムの両面に差圧を発生させる方法として,検圧管分岐部と逆流防止室との間に逆止弁を入れる構成が開示されているところ(甲8の1【0064】から【0066】,同逆止弁を電磁 )弁の下流側に設置すること及び1つ配置することについては,これらを排除する技術常識はなく,少なくとも容易に推考できるから,甲8発明には,実質的に,電磁弁と大気開放弁との間に1つの逆止弁を配置することが開示されている。少なくとも,甲8発明から,同配置を容易に推考できる。
b すなわち,甲8発明に係る明細書においては,@検圧管分岐部と逆流防止室との間に逆止弁を入れること(甲8の1【0065】)及びA温水電磁弁よりも上流側から検圧を分岐させること(同【0066】)が記載されており,電磁弁 が逆流防止室よりも上流に配置されていることを併せ考えると,甲8発明には,逆止弁の配置位置につき,電磁弁より上流側にする場合及び下流側にする場合のいずれもが開示されている。
(イ) なお,本件発明1においては,逆止弁を構成する弁体と弁座との間に異物が噛み込まれていても,そのすき間がわずかなものであれば,当該逆止弁は,オリフィス(管路において,流路を絞っている部位を指す。)として機能することから,逆止弁の上流側が負圧になっても,同機能によって下流側の水に対する吸引力が弱められ,逆流を回避できる。この機能は,逆止弁の本来の構成に基づいて発揮される一般的な機能であり,本件発明1に特有のものではない。
容易想到性 本件審決は,日本水道協会の基準(技術標準)に照らせば,甲8発明において2つ配置されている第1の逆止弁の数を1つにすることはない旨判断しているが,以下のとおり,同判断は,誤りである。
(ア)a 日本水道協会のような業界団体の基準は,特定の政策等の目的のために人為的に定められるものであり,技術の限界を画するものではない。日本水道協会の基準が,給湯回路(電磁弁)と浴槽との間に逆止弁を最低2箇所以上設置することを定めているのは,逆止弁の1つが故障したときに備えてバックアップ用の逆止弁を要求する趣旨であり,技術的には,汚水の逆流を防止するための逆止弁は,1つで足りる。
したがって,このような日本水道協会の基準を進歩性の判断に持ち込む本件審決の判断手法自体,誤りである。
b? 上記のとおり人為的な基準である日本水道協会の基準を度外視して考えると,相違点1に係る構成,すなわち,甲8発明において2つ配置されている第1の逆止弁の数を1つにすることは,単なる設計事項にすぎない。
すなわち,逆止弁には,給水管からの水圧を低下させる(圧損)面もあるので,単位時間当たりの給水量の確保という観点からは,可能な限り設置数を少なくする ことが望ましく,それは,コスト低減にも資する。
甲8発明は,逆流防止に確実を期するために,あえて圧損及びコストに関するデメリットを甘受して第1の逆止弁を2つ設けたものである。この点に鑑みると,給水量の減少の回避及びコスト低減の点を重視した場合,逆流防止機能を多少落としても,2つ配置されている第1の逆止弁の数を1つにすることは,単なる設計事項にすぎない。
加えて,逆止弁を大気開放弁よりも上流側に設けた場合は,当該逆止弁も逆流防止機能を有するから,吸水量の確保及びコスト低減のために,2つ配置された第1の逆止弁を1つにするという設計変更についての強い動機付けが働くことは,明らかである。
? 甲1発明,甲2発明及び甲5発明のとおり,逆流防止装置と浴槽との間に逆止弁を1つのみ設けることは,周知技術でもある。
当業者は,甲8発明に上記周知技術を適用することによっても,本件発明1を想到する。
(イ)a 本件審決は,日本水道協会の基準の解釈を誤っている。
すなわち,同基準は,給湯回路(電磁弁)と浴槽との間に逆止弁を2箇所以上設置することを要求しており,逆流防止装置よりも下流側に2つの逆止弁を設けることを要求しているものではない。
しかしながら,本件審決は,日本水道協会の基準につき,逆流防止装置と浴槽との間に必ず2つの逆止弁を設けなければならないとの解釈を前提として,電磁弁と逆流防止装置との間に逆止弁が配置されている場合であっても,日本水道協会の基準に照らして,大気開放弁と浴槽との間に2つ以上の逆止弁を設けなければならないと判断し,日本水道協会の基準自体を誤認して甲8発明に適用している。
b 甲8発明は,電磁弁と大気開放弁との間に逆止弁を備えていることから,大気開放弁と浴槽との間に設置する逆止弁を1つとしても,給湯用電磁弁と浴槽との間に2つの逆止弁が設けられることになり,前述した正しい解釈による日 本水道協会の基準を満たしている。
? 取消事由1-2(無効理由9〔甲1発明と甲8発明との組合せによる進歩性喪失事由〕に係る判断の誤り) 本件審決は,甲1発明に甲8発明を適用する動機付けがなく,したがって,相違点3に係る構成について容易想到性が認められない旨判断しているが,以下のとおり,同判断は,誤りである。
ア 甲8発明は,甲1発明の逆流防止装置(以下「甲1逆流防止装置」ともいう。)の課題を解決した改良発明であるから(甲8の1【0002】【0 ,007】から【0012】 ,上記課題を解決するために,甲1 逆流防止装置を )甲8逆流防止装置に置き換えようとするのは自然なことといえ,上記置き換えについては,動機付けがあるものといえる。
イ 以下の点に鑑みれば,甲1逆流防止装置につき,電磁弁8,逆止弁15及び一次圧限度設定弁25以外の部分を,甲8逆流防止装置の構成に置き換えることによって,本件発明1の逆流防止装置と同じ形態になる(後出図F参照)。
(ア) すなわち,甲1逆流防止装置と甲8逆流防止装置とは,逆止弁の上流側と下流側の差圧により,逆流防止装置のダイアフラムを作動させ,排水用の弁を開閉動作させることによって逆流を防止するという点において,技術的に等価といえるから,置換容易である。
(イ) いずれの逆流防止装置も差圧式のものであることから,前述した置き換える対象には,検圧部位が含まれる。
(ウ) 甲1逆流防止装置と甲8逆流防止装置との間には,検圧部位が電磁弁の上流側か下流側かという相違はあるものの,いずれも,通水時,すなわち,電磁弁が開いているとき,逆流防止装置(大気開放弁)が閉弁状態を保持している。
非通水時,すなわち,電磁弁が閉じているときは,甲1逆流防止装置は,開弁し てドレインが生じるのに対し,甲8逆流防止装置は,閉弁状態を保持するのでドレインが生じないが,この相違は,前記置き換えを不可能にするものではない。
ウ 本件審決は,相違点3についての検討の際,甲1発明における大気開放弁につき,給湯を停止するときにも開閉動作させることを目的とする旨を述べるが,そのような目的は,甲1号証に記載されていない。
? 取消事由1-3(無効理由11〔甲2発明と甲8発明との組合せによる進歩性喪失事由〕に係る判断の誤り) 本件審決は,相違点5に関し,甲2発明における逆流防止装置(以下「甲2逆流防止装置」ともいう。 を甲8逆流防止装置に置き換える動機付けが存しない旨判断 )しているが,同判断は,誤りである。
ア 甲2発明と甲8発明とは,いずれも逆流防止の技術分野に属するものである。
また,甲2発明におけるバキュームブレーカは,電磁開閉弁が閉じられると,流通路の圧力の低下によって開放するものであるところ,上水道の圧力が低下する場合も,流通路の圧力の低下が生じることから,開放することになる。
したがって,甲2発明におけるバキュームブレーカと甲8逆流防止装置とは,上水道の圧力低下に伴って大気開放するという機能の点において共通する。
加えて,電磁弁の開閉に伴う大気開放弁からの漏水という現象の回避は,当業者において当然の課題である(甲3【0004】,甲8の1【0009】から【0012】など。。
) イ 以上に鑑みると,逆流防止装置の分野において,上水道の圧力低下時にに配管内の汚水を大気開放させるという中心的機能が共通する2つの大気開放弁につき,当業者がそれらを置き換える可能性を考えることは,不自然なことではない。
また,上記置換えにつき,逆流防止に関して技術上の障害を来すとも認められない。
さらに,前述した「当然の課題」を解決するためにも,甲2逆流防止装置を甲8 逆流防止装置に置き換える動機付けが存在するといえる。
ウ 以上によれば,当業者において,甲2逆流防止装置を甲8逆流防止装置に置き換える動機は十分にあるものといえ,甲2発明と甲8発明との組合せにより,相違点5に係る構成を容易に想到し得る。
2 取消事由2(無効理由6〔本件請求項1のサポート要件違反〕に係る判断の誤り) 以下によれば,本件請求項1の記載につき,サポート要件違反が認められる。
?ア 被告は,甲1発明及び甲2発明に係る先行技術を回避するために,本件訂正請求において,大気開放弁につき, 「上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つ」という構成を加え,これに伴って,本件発明1に, 「上水道の圧力低下がない状態では,電磁弁の開閉にかかわらず,水が大気開放弁から流出することを回避する」という新たな課題を導入した。
上記課題を達成するためには, 「開弁方向に付勢するためのスプリング」のばね力に打ち勝って大気開放弁を閉じる方向に作用する力が必要である。
イ この点に関し,本件請求項1においては,当初から,大気開放弁につき,ダイアフラム両面の圧力差に基づいて開閉動作をする形式のものであるということさえ特定されておらず,広範な方式を含む記載となっている。
また,上水道の圧力低下の有無を検知する方法及び場所も特定されておらず,このことから,同検知方法は,圧力センサーなど広範な方法を含むことになり,同検知場所は,第2の逆止弁よりも上流側であれば,どこでもよいことになる。
? 他方,本件訂正後明細書においては,前述した大気開放弁を閉じる方向に作用する力並びに上水道の圧力低下の有無を検知する方法及び場所に関し, 大気開 「放弁内に導入される上水道(熱交換器の上流)の元圧」が開示されているにとどまる。
? 以上によれば,上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つ 「 大気開放弁」という本件請求項1の記載は,大気開放弁の開閉方式並びに上水道の圧力低下の有無の検知方法及び検知場所が特定されていない広範な方式を含むものであり,前述した本件訂正後明細書の記載によってサポートされておらず,発明の詳細な説明の記載を超えるものであるから,特許法36条6項1号に反する。
3 取消事由3(本件発明2につき,無効理由13〔甲4発明による進歩性喪失事由〕に係る判断の誤り) ? 本件発明2は,本件発明1を引用するものであるところ,前記1及び2のとおり,本件発明1につき,無効理由が存在する。
?ア 本件発明2と本件発明1との間には,前者が「前記電磁弁と前記給湯管との間に配置され,前記給湯管の側の配管内の圧力を感知して前記配管内に大気を導入する負圧破壊装置を備えている」のに対し,後者は負圧破壊装置を備えていないという相違点が存在する。
しかしながら,甲4発明における「電磁弁10の上流側」,は,本件発明2における「電磁弁と給湯管との間」を含むものである。また,甲4発明における「給湯管路7の負圧」によること, 「給湯管路内に空気を送り込み大気開放するバキュームブレーカ14」 (甲4参照)は,それぞれ,本件発明2における「給湯管路の側の配管内の負圧を感知」すること,「配管内に大気を導入する負圧破壊装置」に相当する。
以上によれば,甲4発明においては,上記相違点が開示されている。
イ そして,本件発明1及び甲4発明のいずれも,浴槽側からの汚水の逆流を防止するためのものであるから,本件発明1に甲4発明を適用する動機付けがあり,したがって,当業者は,甲4発明に基づいて上記相違点に係る構成を容易に想到し得たといえる。
また,本件発明2の効果も,当業者において,本件発明1及び甲4発明から容易に予測し得る範囲内にとどまり,格別なものではない。
? 以上によれば,本件発明2は,無効である本件発明1及び甲4発明から, 当業者が容易に想到し得たものといえ,したがって,本件発明1と同様に,進歩性を欠くものといえる。
原告主張取消事由に対する被告の反論
1 取消事由1(本件発明1の進歩性の欠如〔特許法29条2項〕に関する判断の誤り)について ? 取消事由1-1(無効理由7〔甲8発明と周知技術との組合せによる進歩性喪失事由〕に係る判断の誤り)について ア 甲8発明の認定について (ア) 甲8発明においては,検圧管分岐部と逆流防止室との間に逆止弁を 「入れることができる」旨が開示されているにとどまり,電磁弁と大気開放弁との間に逆止弁を配置することは開示されていない。
本件審決も,甲8発明において上記逆止弁の具体的配置位置は開示されていないことを前提として,甲8発明は, 「第2の逆止弁」が「上流側水圧P1を伝達する検圧分岐部と逆流防止室23の間に入れられ,逆流防止装置Aのダイヤフラムの両面に差圧を発生させる」ものである点を,本件発明1との相違点(相違点1)として挙げた上,同逆止弁を温水電磁弁の上流側に配置する場合と下流側に配置する場合とで場合分けをして,本件発明1の進歩性の有無を判断している。
(イ) なお,本件発明1における逆止弁のオリフィスとしての機能は,逆止弁が異物の噛み込みなどによって完全に閉じられなくなり,すき間から水が逆流するという,逆止弁の本来的機能を失った状態をいわば逆手にとらえ,これを利用して,汚水が電磁弁よりも上流側に逆流することを阻止するものであり,逆止弁の一般的な機能ということはできない。
容易想到性について (ア)a 日本水道協会の基準は,逆流防止を果たすための技術的要請を定めており,当時の技術を示すものといえ,当業者も,同基準を1つの技術的基準と して認識するといえる。
この点に鑑みると,進歩性の判断に日本水道協会の基準を持ち込むべきではないという原告の主張は,失当である。
b? 給湯装置において,上水道への逆流という事故は,絶対に起こしてはならないものであることから,同事故を回避するために,各メーカーは安全を期して浴槽側に逆止弁を2つ配置し,日本水道協会の基準も,電磁弁より下流側に少なくとも2つの逆止弁を設けるべきである旨を示している。
このような背景に鑑みると,甲8発明において,圧損を生じさせるための装置として逆止弁を1つ入れたことによって,逆流防止に確実を期する目的で2つ配置していた逆止弁をあえて1つにするということは,設計事項とはいえない。
? 逆流防止の手段には,バキュームブレーカ,大気開放弁,中間室など,負圧を破壊して排水するための装置の種類を含め,種々の選択肢があり,これらの組合せ及び配列によって効果が異なる。このことから,本件発明の技術分野においては,逆止弁等の配置及び負圧破壊 排水装置の選択に特許性があるといえ, ・タイプの異なる装置の既存の配列等を組み合わせたり,変更したりすることはできず,そのような組合せや変更に係る動機付けが容易に生じるものではない。
甲1発明,甲2発明及び甲5発明に係る逆流防止装置は,いずれも複数の逆止弁及び中間室を設け,非通水時には中間室を排水するというものであり,本件発明と同様に,大気開放弁及びその下流側に複数の逆止弁を設けるという甲8逆流防止装置とは,機構を異にする。したがって,甲1発明,甲2発明及び甲5発明における逆止弁の配置を,甲8発明に適用することはできない。
(イ) 原告は,本件審決が日本水道協会の基準を誤って解釈している旨主張するが,上記基準が対象とする逆流防止装置は,本件発明1の逆流防止装置及び甲8逆流防止装置とは,機構が異なるので,上記基準から直ちに,本件発明1において大気開放弁と浴槽との間に入れるべき逆止弁の数が導き出されるものではない。
本件審決は,逆流防止のために電磁弁よりも下流に必ず2つ以上の逆止弁を入れ るという技術常識が存在し,これを踏まえれば,逆流防止目的ではなく,圧損を生じさせるために逆止弁を入れたことをもって,あえて逆流防止目的で設けた2つの逆止弁のうちの1つを取り外すことは,通常はしない旨判断したものであり,同判断に誤りはない。
(ウ) 前述したとおり,本件発明の技術分野においては,逆止弁等の配置及び負圧破壊・排水装置の選択に特許性が存するところ,本件発明1は,2つの逆止弁のうち1つを電磁弁と大気開放弁との間に配置することによって,コストを上昇させることなく,従前よりも高い逆流防止機能を実現するという格別の効果を生じた。特に,逆止弁に噛み込みによる不具合が生じた場合,本件発明1においては,上記配置により,上記逆止弁が大気開放弁から吸い込まれる空気に対してオリフィスとして作用し,同作用によって,逆流する汚水を電磁弁まで到達させないという効果が生じる。
原告の主張は,差圧発生のために「検圧管分岐部と逆流防止室との間に逆止弁を入れることができる」とされる甲8逆流防止装置において,あえて,逆流防止室と電磁弁との間に逆止弁を入れるという選択をし,その上で,逆流防止のために浴槽側に2つ設けていた逆止弁につき,あえて,うち1つを取り除き,本件発明1に到達するというものであり,いわゆる後知恵というよりほかはない。
? 取消事由1-2(無効理由9〔甲1発明と甲8発明との組合せによる進歩性喪失事由〕に係る判断の誤り)について(後出図F参照) ア(ア) 前述したとおり,甲1逆流防止装置は,複数の逆止弁及び中間室を設けるタイプのものであり,圧力動作弁27が,@電磁弁8よりも下流側の圧力を検知し,また,A上流側水路(給水源)における圧力低下がなくとも,電磁弁8を閉じれば,開く構造を採用している。
他方,前述したとおり,本件発明1の逆流防止装置及び甲8逆流防止装置は,大気開放弁及びその下流側に複数の逆止弁を設けるタイプのものである。
したがって,甲1逆流防止装置と,本件発明1の逆流防止装置及び甲8逆流防止装置とは,大気開放機構(圧力作動弁)が全く異なる。
(イ) そして,甲1逆流防止装置において,圧力作動弁27は,一次圧限度設定弁25のバネ圧によって,動作を制御されており,圧力作動弁27と一次圧限度設定弁25とは,不可分一体の構成を成している。
(ウ) 以上によれば,甲1発明において,相違点3に係る構成を導入する場合,それに伴って,一次圧限度設定弁の技術的意義や圧力作動弁の動作等に変更が生じるなど相違点3に係る構成以外にまで影響が及び,これらを一連の技術思想としてとらえることが不可能となる。
この点に鑑みると,甲1発明において,相違点3に関して甲8発明における大気開放弁を適用することは,その動機付けがなく,阻害事由が存在するともいえる。
イ 甲1発明の仕組みは,給湯を停止する場合,電磁弁を閉じることによる水道圧低下を圧力作動弁27が検知し,弁体31(大気開放弁に相当するもの)がホッパー20の側孔23を開くというものである。
この点に関し,給湯を停止して電磁弁が閉じられたとき,これによる水道圧低下を検知するためには,検圧部である圧力作動弁27は,当然,電磁弁より下流側に接続されていなければならない。
本件審決は,上記の点を示すために,甲1発明における大気開放弁は, 「給湯を停止するときにも開閉動作させることを目的として検圧部を電磁弁より下流側に配置した」と表現したのであり,誤りはない。
ウ 以上によれば,本件発明1は,甲1発明及び甲8発明を組み合わせることによって容易に想到し得るものとはいえず,無効理由9についての本件審決の判断に誤りはない。
? 取消事由1-3(無効理由11〔甲2発明と甲8発明との組合せによる進歩性喪失事由〕に係る判断の誤り)について ア 甲2発明の技術思想は,電磁開閉弁を閉じた状態で,上水道と浴槽等とを空気で満たされた空間で縁切りすることによって,逆流を防止しようとするものである。このことから,甲2発明は,電磁開閉弁を閉じた状態においては,上水道側が正水圧状態又は負圧状態のいずれであっても,バキュームブレーカ内の水が放出され,空気で満たされた空間とすることを前提としているといえる。
以上によれば,甲2発明においては,電磁弁を閉じても大気開放弁から水が放出されないという事態は,避けるべきものである。
他方,甲8発明においては,電磁弁を閉状態にしても,大気連通口ないし大気開放口は開かれないため,上水道側と浴槽等との間に空間は形成されず,両者の間の縁切りはなされない。甲8発明は,余分なドレンの発生の防止を課題・目的としており,電磁弁が閉じるたびに管路内の水を排出することは,全く想定していない。
以上によれば,甲2発明と甲8発明とは,その課題及び目的が全く相違しており,これらを組み合わせることはできない。
イ したがって,本件発明1は,甲2発明と甲8発明とを組み合わせることによって容易に想到し得るものではなく,無効理由11についての本件審決の判断に誤りはない。
2 取消事由2(無効理由6〔本件請求項1のサポート要件違反〕に係る判断の誤り)について ? 原告は,上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つ大気開 「放弁」という本件請求項1の記載は,大気開放弁の開閉方式並びに上水道の圧力低下の有無の検知方法及び検知場所が特定されていない広範な方式を含むものであり,発明の詳細な説明の記載を超えるものであるから,特許法36条6項1号に反する旨主張する。
? 本件請求項1に記載されている「大気開放弁」の構造は,電磁弁の開閉等には左右されず,上水道側で負圧が発生するなど1次圧が異常に低下したときのみ 開弁し,その他の場合には閉弁状態を保持するタイプのものであり,従前から存在していた。本件発明1は,このように従前から存在していた大気開放弁を用いながら,逆止弁などその他のパーツの選択や配列を工夫することによって見出されたものである。
本件訂正請求は,本件請求項1の「大気開放弁」につき,「上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つ」という,従来の大気開放弁が有する機能を明示するとともに,従来の大気開放弁の機構として,「開弁方向に付勢するためのスプリングを有し」という構成を追加したにすぎない。
以上のとおり,本件請求項1の「大気開放弁」は,従前から存在するものであり,その構造は自明といえるので,原告が主張する「広範な方式を含むもの」ではない。
? 原告は,本件訂正後明細書においては,大気開放弁を閉じる方向に作用する力並びに上水道の圧力低下の有無を検知する方法及び場所に関し,大気開放弁内 「に導入される上水道(熱交換器の上流)の元圧」が開示されているにとどまる旨を主張する。
しかしながら,本件訂正後明細書に,1次圧の検知場所の具体例として熱交換器の上流側が記載されていることをもって,同検知場所がこれのみに限定されるとは,必ずしもいえない。
本件訂正後明細書の段落【0008】の記載によれば,1次圧は,電磁弁より下流側の2次圧と対比できる箇所,すなわち,電磁弁より上流側で検知すれば足りることが理解でき,1次圧の検知場所として熱交換器の上流側のみが開示されていると解するべきではない。
(4) 以上によれば,本件請求項1の記載につき,特許法36条6項1号に反しないとした本件審決の判断に誤りはない。
3 取消事由3(本件発明2につき,無効理由13〔甲4発明による進歩性喪失事由〕に係る判断の誤り)について 前記1及び2において前述したとおり,本件発明1について無効理由が存在しない以上,本件発明1に従属する本件発明2についても,無効理由は存在せず,この点に関する本件審決の判断に誤りはない。
当裁判所の判断
1 本件発明1について 本件発明は,給湯装置からの温水を浴槽に導く配管の途中に設けられて,浴槽の汚水が上水道へ逆流するのを防ぐ逆流防止装置に関するものであるところ(甲26の2【0001】,本件特許に係る特許公報(甲24)に掲載されている図面及び )本件訂正後明細書(甲26の2)によれば,従来の技術,本件発明が解決しようとする課題及び本件発明1の内容につき,以下のとおり認められる。
? 従来の技術 図A(甲24の図4) なお,この図は,浴槽110が上水道の給水管101の導入位置よりも高い位置 にあることを想定したものである(【0005】。
) ア 通常の給湯状況 (ア) 上水は,上水道の給水管である101から給水され,流量センサ102を通り,熱交換器103において加熱されて湯になるものと,水バイパス弁104を通るものとに分かれ,その後,混合する。
水バイパス弁104は,熱交換器103により加熱される上水の流量を制御することによって,湯水の混合比を変えて出湯温度を制御するものである。
上水は,上記制御により,上記混合時においては所望の温度にされ,さらに,水比例弁105によって出湯流量を制御された後,給湯管106から,台所の蛇口等に供給される(【0002】【0006】。
, ) (イ) 浴槽110に湯張りを行うときは,電磁弁108が開けられ,これによって,前記のとおり出湯温度及び出湯流量を制御された湯が,水比例弁105から,流量センサ107,電磁弁108及び逆止弁109を経て,浴槽110へ供給される(【0007】。
) イ 逆流防止装置 (ア) 電磁弁108,大気開放弁111及び直列に2つ配置された逆止弁109が,浴槽110から上水道への逆流を防ぐ逆流防止装置を構成しており,水比例弁105の下流側に設けられている(【0003】【0005】。
, ) (イ) 大気開放弁111は,電磁弁108と逆止弁109との間の配管に配置されており,そのボディ112は,配管の中継部を構成している。
ボディ112は,@電磁弁108からの配管に接続される接続部113,A逆止弁109が装着された配管に接続される接続部114及びBオーバフロー口115を有する。
ピストン116は,接続部114の開口中心と同軸上に配置され,軸線方向に進退自在であり,スプリング125によって,接続部113,114側の空間とオーバフロー口115との間の通路を開く方向に付勢するように構成されている。ピス トン116に嵌着された環状の弁体117は,ピストン116の進退移動によって,上記通路を開閉する。
ダイヤフラム118は,ピストン116の接続部113,114側と反対側に配置され,その中心部は,リテーナ119及びねじ120によって固定されており,その外周部は,ボディ121及び122によって挾持固定されている。
ボディ122の接続部124は,検圧管123を介して上水道の給水管101に接続されており,ボディ122とダイヤフラム118とによって形成される空間は,上水道の給水管101の元圧を検知する部屋を構成する【0003】 0004】。
( 【 , ) (ウ) 浴槽110に湯張りを行うときは,上水道の元圧(1次圧)が,検圧管123を介して大気開放弁111に導入される。
この1次圧は,通常は,電磁弁108から逆止弁109へ通過する配管内の通水圧(2次圧)よりも大きい。このことから,ピストン116は,弁体117を着座させる方向に付勢しており,接続部113,114側の空間とオーバフロー口115との間の通路は,閉じられている(【0008】。
) ウ 逆流防止装置の作動 (ア) 停電や断水等によって上水道の給水管101内に負圧が生じると,これによる1次圧の低下が検圧管123を介してボディ122の接続部124に伝わり,ダイヤフラム118が上記低下を検知して,ピストン116を弁開方向に付勢し,接続部113,114側の空間とオーバフロー口115との間の通路を開き,電磁弁108から逆止弁109へ至る配管内の水を,上記通路を通過させてオーバフロー口115から大気に放出する(【0009】。
) (イ) 上記負圧が生じた際,1次圧が低下して2次圧よりも小さくなると,浴槽110が上水道の給水管101の導入位置よりも高所にあることから,浴槽110内の汚水が,その水頭圧によって逆流してくる。
通常,上記汚水は,逆止弁109によってせき止められる。逆止弁109が異物の噛み込み等により水密不良の状態にあった場合,せき止められなかった汚水は, 逆止弁109を超えて接続部114に至り,大気開放弁111のボディ112内に入るものの,上記(ア)のとおり,接続部113,114側の空間とオーバフロー口115との間の通路が開いているので,上記汚水は,同通路を通過してオーバーフロー口115から大気に放出される。
したがって,浴槽110内の汚水が,給湯管106の方まで逆流することはない(【0010】。
) ? 本件発明が解決しようとする課題 前記?において前述した従来の技術には,以下の問題点があった。
すなわち,大気開放弁の上流側に設けられた電磁弁は,通常の給湯時においては,給湯管側から通水圧を受け,同通水圧によって配管を全閉状態に維持できるが,断水等により給湯管側が負圧となって通水圧を受けられなくなると,全閉状態を維持できず,このために,上記負圧の影響により,大気開放弁内の気圧が低下する。そして,同気圧が外部気圧よりも低くなると,その気圧差により,オーバーフロー口から勢いよく大気が吸い込まれる。そして,前述したとおり,断水等によって浴槽内の汚水が逆流すると,逆止弁が水密不良の状態にある場合,逆止弁によってせき止められなかった汚水は,最終的に,オーバーフロー口から放出されるものの,上記のとおり,オーバーフロー口から大気が吸い込まれているときは,上記汚水の一部がこの大気の流れに引っ張られ,大気と共に,全閉状態を維持していない電磁弁を通過して給湯管へ逆流してしまう。
本件発明は,逆止弁が水密不良になっても,浴槽内の汚水が上水道の側へ逆流するのを完全に防止することができる逆流防止装置の提供を目的とするものである(【0011】【0012】。
, ) ? 本件発明1の内容 ア 本件発明1の実施の形態 図B(甲24の図1) (ア) @通常の給湯状況における上水道の給水管1,流量センサ2,熱交換器3,水バイパス弁4,水比例弁5,給湯管6,流量センサ7及び電磁弁8の作動態様等並びにA大気開放弁12の構造及び断水等によって上水道の給水管 1 内に負圧が生じたときの作動態様等は,前記?ア,イ(イ)及び(ウ)並びにウのとおりである(【0015】から【0020】。
) (イ)a 大気開放弁12から浴槽11へ向かう配管内に配置される逆止弁10(「第1の逆止弁」)は,浴槽11から逆流してくる汚水を,大気開放弁12の手前でせき止める(【0013】。
) b 前記?ウ(イ)のとおり,逆止弁10が水密不良の状態にあった場合,せき止められなかった汚水の大半は,大気開放弁12のオーバーフロー口から大気に放出される。その余の汚水が,電磁弁8の方向に向かおうとしても,逆止弁9 「第 (2の逆止弁」)によって阻止される。
前記(2)のとおり,断水等により給湯管側が負圧になると,電磁弁8が全閉状態を維持できなくなる。
このとき,逆止弁9が正常に機能していれば,同負圧の影響が大気開放弁内に及ぶことはない。
逆止弁9が水密不良の状態にあるときは,上記負圧の影響によって大気開放弁内の気圧が低下し,外部気圧よりも低くなると,その気圧差により,オーバーフロー口から大気が吸い込まれるが,水密不良の状態にある逆止弁9が,「流れ絞り装置」(【0014】,開口面積の小さなオリフィス」 )「 (【0021】として機能するので, )オーバーフロー口から吸い込まれる大気の流量が少なくなり,同大気が汚水を吸引するまでに至らず,したがって,汚水が給湯管6まで逆流することはない(【0013】【0014】【0021】。
, , ) イ 本件発明1の効果 (ア) 本件発明1は,電磁弁と大気開放弁との間に逆止弁を配置する構成を採用しており,これによって,汚水が給水側の方まで逆流することがなくなった。
すなわち,上記逆止弁及び浴槽側に設けた逆止弁が共に水密不良の状態になって給水側の水圧が負圧になり,浴槽の汚水がその水頭圧により大気開放弁まで逆流してきたとしても,電磁弁と大気開放弁との間に設けた逆止弁がオリフィスのように機能するため,給水側の負圧が汚水を大気開放弁から給水側へ吸引する力が非常に弱まり,汚水が給水側の方まで逆流することがなくなった(【0031】。
) (イ) また,本件発明1は,従来,安全を期して浴槽側,すなわち,浴槽と大気開放弁との間に2個設けていた逆止弁のうちの1個を,電磁弁と大気開放弁との間に配置することにより,コスト上昇を伴うことなく,上記の逆流防止効果を実現できる(【0032】。
) ウ 以上によれば,本件発明1は,前記第2の2【請求項1】 (本件請求項1)のとおりであり,電磁弁と大気開放弁との間に逆止弁(「第2の逆止弁」)を配置することを特徴とする。
なお,本件請求項1の「上水道の圧力低下」は,上水道の元圧(1次圧)を指すものと解される。
2 取消事由1(本件発明1の進歩性の欠如〔特許法29条2項〕に関する判断の誤り)について ? 取消事由1-1(無効理由7〔甲8発明と周知技術との組合せによる進歩性喪失事由〕に係る判断の誤り)について ア 甲8発明の認定 甲8発明は,浴槽等から上水道等への逆流を防止する水路の逆流防止装置に関するものであるところ(甲8の1【0001】,証拠(甲1,甲8の1)及び弁論の )全趣旨によれば,以下のとおり認められる。
(ア) 甲8発明が解決しようとする課題 a 従来の逆流防止装置の一例 図C(甲8の1の図8) (判決注:赤の部分は, 当裁判所が付した。) なお,図Cのうち,後記のとおりダイヤフラム有効面積を表す「A1」の表示及び大気開放弁シール面積を表す「A2」の表示は,明らかに誤りであり,正しくは,図中「A1」の表示を「A2」とし,「A2」の表示を「A1」とすべきである。
? 従来,浴槽等から上水道等への逆流を防止する水路の逆流防止装置として,甲1発明(図Cの逆流防止装置G」)が存在するところ,これは,@水路50を上流側水路50aと下流側水路50bとに分離するホッパーからなる逆流防止室51,A逆流防止室51を,それぞれ,上流側水路50a,下流側水路50b, ドレン路54に接続する上孔52,下孔53及び側孔55,B圧力作動弁56及びC逆止弁63から構成される。
圧力作動弁56は,給水圧が掛かると側孔55を閉じ,給水圧がなくなると側孔55を開く。圧力作動弁56は,ダイヤフラム58で2室に区画されており,一方の室59は,上流側水路50aに接続されて水圧を受け,他方の室60は,大気に開放されている。ダイヤフラム58には,これを室59側に押圧するバネ62及びダイヤフラム58の変位と連動して側孔55を開閉する弁体61が取り付けられている。
逆止弁63は,上流側水路50aに配設されており,圧力作動弁56よりも高い圧力で開く(甲8の1【0002】から【0004】。
) ? 給湯停止時や断水時には,水道圧が掛からなくなることから,圧力作動弁56のバネ62がダイヤフラム58を室59側に押圧し,弁体61がダイヤフラム58の変位と連動して側孔55を開く。これによって,逆流防止室51内に溜まっていた湯のうち,側孔55以上の水位のものは,側孔55からドレン路54に流出し,逆流防止室51は大気と連通され,上流側水路50a への浴湯等の逆流を防止できる(同【0006】。
) b 従来の逆流防止装置の問題点 甲1逆流防止装置(逆流防止装置G)には,以下の問題点があった(同【0007】から【0011】。
) ? 断水等により,上流側水路50a側の圧力(以下「上流水圧」という。)P1が,逆流防止室51の内部圧力(以下「内部圧力」という。)P2より低下した場合,前記a?において前述した圧力作動弁56による大気開放を確実に行うためには,大気開放弁シール面積A2 をダイヤフラム有効面積A1 より大きめに設定して,開弁力F2( =A2×P2) > 閉弁力F1( =A1×P1) となるようにする必要があった。
しかしながら, 2>A1 とすると, A 通常の通水中,すなわち, 1> P2の場合も, P 開弁力F2<閉弁力F1 とならずに,したがって,側孔55が閉じないことから,逆流防止室51が大気開放されたままとなり,ドレンの発生が継続するという問題があった。
このような通水中のドレン発生は,上流側水路50aと逆流防止室51との間に圧損を設け,P1 ≫P2 となるようにすれば解決するが,その場合,下流側水路50bの通水流量が著しく減少することから,浴槽の湯張りに要する時間が長くなるなどの問題が生じる。
? さらに,上流側水路50aへの逆流の可能性が低い状態(例えば,P2>P1>0)及び高い状態(例えば,P1 (イ) 課題を解決するための手段及び作用 a? 甲8発明は,前記(ア)b?の課題を解決するために,上流水圧P1及び内部圧力P2のいずれも,1つの密閉面(下図D及びEのダイヤフラム28)に対して直接作用する構成を採用した。
すなわち, 1及びP2のいずれも, P 同一の密閉面に対して直接作用することから,@P1>P2の場合は,大気連通口を閉めることができ,AP 1 また,上記密閉面が小さな差圧でも移動可能であることにより,上流側水路と逆流防止室との間に圧損を設けてP1 ≫P2とする必要がなく,下流側水路の通水流量の減少を防止できる(同【0019】【0020】【0071】【0072】。
, , , ) ? 甲8発明は,前記(ア)b?の課題を解決するために,圧力変動応答性が早い大気連通口開閉手段と, 「縁きり効果が大きい」大気開放口開閉手段とを併用し,このことによって,上流側水路への逆流の可能性が低い場合(例えば,P2 >P1>0)には,大気連通口を開いて逆流を防止しつつ,ドレンの発生を最小限 に抑え,上流側水路への逆流の可能性が高い場合(例えば,P1 , ) b 甲8発明の実施例 図D(甲8の1の図1。ただし,赤字及び彩色部分は,当裁判所が付した。) ? 本実施例は,逆流防止装置Aを,いわゆる1缶2回路式給湯機に用いた場合である。
1缶2回路式給湯機は,実質的に,@加熱部Bの一端を給水源に,他端を蛇口等の給湯栓に接続して給水を加熱する給湯路10,A加熱部Bと浴槽Cとを,往路管11aと戻し管11bとで接続し,中途に設けた循環ポンプPによって浴湯を加熱する循環路11及びB給湯路10と循環路11とで共有する加熱フィン12(図中番号表示せず。)を具備する単一の熱交換器Dからなる。
逆流防止装置Aは,給湯路10と循環路11とを連絡する連絡水路13の中途に 設けられている(甲8の1【0027】から【0029】【0031】。
, ) 図Dにおいては,大気開閉弁32と浴槽Cとの間に,2つの逆止弁(逆止弁ア)が配置されている。
? 逆流防止装置Aの構成 @ 凹状の下部ケーシング20と平板状の上部ケーシング21とからなる逆流防止ケーシング22内に,逆流防止室23が形成されている。
上部ケーシング21には,連絡水路13の上流側水路13aと連通する筒状流入部24が設けられており,下部ケーシング20には,筒状流入部24の略直下をなす位置において,連絡水路13の下流側水路13bと連通する筒状流出部25が設けられている(同【0033】から【0035】。
) A 逆流防止ケーシング22の底板22aの一側隅部に,大気と連通する大径かつ筒状の大気開放口26が設けられており,その上方に,ダイヤフラム取付開口27が設けられている。
ダイヤフラム支持体37のダイヤフラム取付口27には,ダイヤフラム28が水密状態に装着されている(同【0036】。
) B ダイヤフラム28の上部には,上部ケーシング21の上面に取り付けた蓋体29によって圧力室30が形成されており,圧力室30は,圧力伝達水路31を介して,給湯路10と連絡している。
したがって,圧力室30内には,給湯路10の水圧,すなわち,上流水圧P1が伝達され,ダイヤフラム28の上面側密封面の全体にわたって作用する。
他方,逆流防止室22内に充満される水の水圧,すなわち,内部圧力P2は,ダイヤフラム28の下面側密封面の全体にわたって作用する。
ダイヤフラム28と大気開放口26との間には,変動する上流水圧P1と内部圧力P2との相対関係によって上下するダイヤフラム28の動きに連動して,大気開放口26及び大気連通口34を開閉する大気開閉弁32が設けられている(同【0037】から【0040】。
) C 大気開閉弁32の構成は,以下のとおりである 【0041】 (同から【0047】。
) 図E(甲8の1の図6) 筒状の開放口開閉用弁体33は,大気開放口開放手段であり,その上端に,小径の大気連通口34が設けられている。開放口開閉用弁体33の下部周縁には,環状シール部35が設けられており,これは,通常使用状態において,大気開放口26を水密状態に閉塞している。
大気連通口34の上端には,大気連通口開閉手段である連通口開閉用弁体36が,当接状態に配設されている。
連通口開閉用弁体36とダイヤフラム支持体37との間には,閉弁方向付勢用スプリング38が,開放口開閉用弁体33とダイヤフラム支持体37との間には,中間スプリング受板39が,中間スプリング受板39と開放口開閉用弁体33との間には,開弁方向付勢用スプリング40が,それぞれ介設されている。開弁方向付勢用スプリング40は,連通口開閉用弁体36を開方向に付勢する大気連通口開付勢弾性体である。
開放口開閉用弁体33の上部外周面には,スプリング受け支持スリーブ41が一体的に取り付けられており,その上端に設けたフランジ42と底板22aとの間に は,大気開放口開付勢弾性体である開弁方向付勢用スプリング43が介設されている。
? 逆流防止装置Aの作動(同【0049】から【0054】) @ 給湯路10の圧力が正常な場合,上流水圧P1と内部圧力P2との関係は,P1>P2>0であるから,大気連通口34及び大気開放口26のいずれも,開かない。
A 断水又は他水栓使用により上流水圧P1が低下した場合,内部圧力P2と等しくなる付近で,開弁方向付勢用スプリング40の付勢力によって大気連通口34が開き,ドレンが流出する。P2>0であるから,大気開放口26は,開かない。
B 上流水圧P1は,他水栓使用によって低下している場合は,上記以上に低下することはない。そして,この間,内部圧力P2は,ドレン流出により低下しており,やがて上流水圧P1以下となるから,大気連通口34が閉じてドレン流出も終了する。
C 他方,上流水圧P1は,断水によって低下している場合は,更に低下し続け,そのために,大気連通口34が閉まらず,ドレン流出も続くことから,内部圧力P2も低下し続ける。P2=0 となる付近で,開弁方向付勢用スプリング43の付勢力によって,大気開放口26が開く。
大気開放口26が開くと,逆流防止室23内の汚水が大気開放口26から排出されるとともに,大気開放口26から吸引された大気が上流側水路13aに吸引されるため,上流側水路13aへの汚水の逆流は発生しない。
c ダイヤフラムの両面に差圧を発生させる方法としては,@検圧管分岐部と逆流防止室との間に逆止弁を入れて,その開弁圧で差圧を発生させる手段,A温水電磁弁よりも上流側から検圧を分岐させることにより,止水中に安定して大きな差圧を得る手段及びB給湯熱交換器よりも上流側で検圧を分岐させることにより,通水中に熱交換器の圧損を利用して差圧を得る手段がある(同【0063】か ら【0067】。
) (ウ) 小括 以上によれば,甲8発明は,本件審決が認定したとおり(前記第2の3?ア(ア)a?)である。
イ 本件発明1と甲8発明との一致点及び相違点 いずれも,本件審決が, 「一致点」及び「相違点1」として認定したとおり(前記第2の3?ア(ア)a?)と認められる。
ウ 相違点1に係る容易想到性の判断 (ア)a 本件発明1は,電磁弁と大気開放弁との間に第2の逆止弁を設け,同逆止弁が,@通常の逆止弁の機能により,第1の逆止弁が水密不良の状態にある場合,汚水の一部が電磁弁の方向に流れるのを阻止するのみならず,A第2の逆止弁が水密不良の状態にあるときも,オリフィスとしての機能により,オーバーフロー口から吸い込まれる大気の流量を減少させることによって,前記1(2)において前述した課題を解決するものである。
そして,第2の逆止弁がこれらの逆流防止機能を果たすためには,電磁弁と大気開放弁との間に配置されることを要するものといえる。
b 他方,甲8発明においては,前記ア(イ)b(a)のとおり,実施例(図D)において,浴槽と大気開放弁との間に,2つの逆止弁(以下「甲8発明における逆止弁」という。)が配置されており,これは,同配置位置の観点から,本件発明1における第1の逆止弁に相当するところ,さらに,検圧管分岐部と逆流防止室との間に逆止弁(以下「差圧発生用逆止弁」という。)を入れることが,ダイヤフラムの両面に差圧を発生させる方法の 1 つとして挙げられている。
(イ)a 本件発明1におけるオリフィスとしての機能は,逆止弁が異物の噛み込みなどにより水密不良になり,逆流をせき止めるという本来の役割を十分に果たし得ない状態,いわば,機能不全の状態にあることを活用し,配置位置において流路を絞ることによって,オーバーフロー口から吸い込まれる大気の流量を減少 させるというものである。このようなオリフィスとしての機能が,通常の逆止弁の機能とは全く異なるものであることは明らかといえ,逆止弁の機能として一般的なものとは認められず,また,甲8発明において,記載も示唆もされていない。
b そして,前記1において認定した事実によれば,本件発明1は,第2の逆止弁を,電磁弁と大気開放弁との間に配置することによって,オリフィスとして機能させ,以下のとおり,第1の逆止弁及び第2の逆止弁の両方が水密不良の状態にあっても,汚水の逆流を防止できる構成にしたものといえる。
(a) 上水道の元圧(1次圧),すなわち,上水道の電磁弁の上流側の水圧が低下し,2次圧,すなわち,上水道の電磁弁の下流側の水圧よりも小さくなると,浴槽内の汚水が逆流してくる。
(b) 通常,上記汚水は,大気開放弁と浴槽との間に設けられた第1の逆止弁により,せき止められる。
(c) 第1の逆止弁が水密不良の状態にある場合,せき止められなかった汚水の大半は,同逆止弁を超えて大気開放弁内に入るものの,オーバーフロー口から大気に放出される。その余の汚水が電磁弁の方向に向かおうとしても,第2の逆止弁によって阻止される。
(d) 断水等により給湯管側が負圧になった場合,第2の逆止弁が正常に機能していれば,同負圧の影響が大気開放弁内に及ぶことはない。
第2の逆止弁が水密不良の状態にあるときは,上記負圧の影響によって大気開放弁内の気圧が低下し,外部気圧よりも低くなると,その気圧差により,オーバーフロー口から大気が吸い込まれる。
このとき,水密不良の状態にある第2の逆止弁が,オリフィスとして機能し,配置位置の流路を絞って狭めることにより,オーバーフロー口から吸い込まれる大気の流量を減少させることによって,同大気が汚水を吸引するまでに至らなくさせ,汚水の逆流を防ぐ。
すなわち,第2の逆止弁は,電磁弁と大気開放弁との間において,逆流をせき止 める弁として正常に機能しているときのみならず,水密不良のために機能不全の状態にあるときも,オリフィスとして機能することによって, 「大気開放弁を介して大気に放出される水および吸い込まれた大気が上水道の圧力低下によって電磁弁の方向に流れてしまう」(相違点1)ことを阻止する役割を果たすことになる。
c 前述したとおり,オリフィスとしての機能は,逆止弁の機能として一般的なものとは認められず,また,甲8発明において,記載も示唆もされていないことに鑑みると,当業者において,甲8発明から,逆止弁のオリフィスという機能自体,想到するものとは考え難い。
したがって,第2の逆止弁を電磁弁と大気開放弁との間に配置することによって,オリフィスとしての機能を活用し,第2の逆止弁が「大気開放弁を介して大気に放出される水および吸い込まれた大気が上水道の圧力低下によって電磁弁の方向に流れてしまう」(相違点1)ことを阻止する役割を果たす構成とすることについても,当業者が,甲8発明から想到するものとは認められない。
(ウ) 以上によれば,相違点1に係る構成は,設計的事項ではなく,当業者が容易に想到し得たものとはいえない旨の本件審決の判断に,誤りはない。
エ(ア)a 原告は,甲8発明においては,差圧発生用逆止弁を電磁弁の下流側に設置すること及び1つ配置することについては,これらを排除する技術常識はなく,少なくとも,容易に推考できるから,甲8発明には,実質的に,電磁弁と大気開放弁との間に1つの逆止弁を配置することが開示されている,あるいは,甲8発明から,同配置を容易に推考できる旨主張する。
b? 逆止弁の位置に関し,日本水道協会の「給水装置に係わる器具等関係規程・規則および審査基準(昭和58年7月改正)「追加事項3 」 (昭和62年4月〜昭和63年10月)(甲12)には, 」 「自動給湯回路とふろ追焚き回路は,最低二箇所以上の逆止め弁を設置し,給湯回路に圧力がかからない構造とする。 と 」記載されており(以下「日本水道協会の逆止弁配置基準」という。,これは,浴槽 )からの汚水の逆流が給湯回路に至らないようにするために,浴槽と給湯回路との間 に最低限2つの逆止弁の設置を求めるものと解される。
もっとも,日本水道協会の逆止弁配置基準は,逆止弁の配置位置につき,上記を超える具体的特定はしていない。
? 甲8発明における逆止弁は,大気開放弁と浴槽との間に2つ配置されており,これは,日本水道協会の逆止弁配置基準に則したものといえるが,更に具体的な配置位置については,特定されておらず,何らかの示唆がされているとも認められない。
差圧発生用逆止弁の配置位置は,検圧管分岐部と逆流防止装置との間(図Dにおいては,検圧管〔圧力伝達水路31〕分岐部と逆流防止装置23との間を指す。水色部分に相当する。)とされているものの,それを超えた限定はされていない。甲8発明において,検圧管分岐部と逆流防止装置との間に電磁弁が設置されており,大気開放弁は逆流防止装置に含まれるものであるが(図Dの電磁弁イ及び大気開放弁A) 電磁弁と大気開放弁との間に限定して差圧発生用逆止弁を設けることは, , 甲8発明において,記載も示唆もされていない。
c 以上によれば,原告主張の配置が甲8発明に開示されているとも,甲8発明から容易に推考できるともいうことはできず,原告の前記主張は採用できない。
(イ) 原告は,オリフィスの機能は,逆止弁の本来の構成に基づいて発揮される一般的な機能であり,本件発明1に特有のものではない旨主張する。
しかしながら,前述したとおり,オリフィスの機能は,逆止弁が本来の役割を十分に果たし得ない,いわば機能不全の状態にあることを活用するものであり,通常の逆止弁の機能とは,全く異なるものであることは明らかといえるから,そのようなオリフィスの機能をもって一般的な機能とする原告の主張は,失当である。
(ウ)a 原告は,甲1発明,甲2発明及び甲5発明によれば,逆流防止装置と浴槽との間に逆止弁を1つのみ設けることは,周知技術であるから,当業者においてこれを甲8発明に適用すれば,本件発明1を想到する旨主張する。
b この点に関し,日本水道協会の逆止弁配置基準によれば,浴槽と給湯回路との間には,少なくとも2つの逆止弁を設置することが求められることから,逆流防止装置と浴槽との間に逆止弁を1つのみ設ける場合,給湯回路と逆流防止装置との間に少なくとも1つの逆止弁が設けられることとなり,配置位置に鑑みると,前者が本件発明1の「第1の逆止弁」,後者が本件発明1の「第2の逆止弁」に相当するものといえる。
そして,確かに,甲1発明,甲2発明及び甲5発明の実施例である,甲1号証の第2図(後出図F),甲2号証の第1図(後出図I)及び甲5号証の図1のいずれにおいても,逆流防止装置と浴槽との間に逆止弁が1つのみ設けられており 「第1の (逆止弁」,したがって,給湯回路と逆流防止装置との間に少なくとも1つの逆止弁 )が設けられる(「第2の逆止弁」)こととなる。
c しかしながら,甲1発明は,後記(2)ア(ア)のとおり, 「大気開放時にも排水が出ない水路の逆流防止装置の提供を目的とするもの」 甲2発明は, , 後記(3)ア(ア)のとおり, 「上水道を浴槽等の水槽に直結して給水する給水装置に用いる排水機構付きバキュームブレーカに関する」もの,甲5発明は, 「給湯水路から分岐する浴槽への注湯水路に,浴槽の温度がさめたとき,上記注湯水路を通し高温の湯を注湯可能にする所謂,高温差し湯機能付給湯機の改良に係わる」もの(甲5)であり,それぞれ,発明の内容を異にしている。
この点に鑑みれば,前述したとおり,各発明の実施例において「第1の逆止弁」及び「第2の逆止弁」に相当する位置に,逆止弁が配置されているとしても,各配置位置に係る技術的意義はそれぞれに異なるものというべきであるから,形式的に同配置位置のみを技術上の共通点として抽出し,周知技術と認めることはできない。
以上によれば,原告の前記主張は,採用できない。
? 取消事由1-2(無効理由9〔甲1発明と甲8発明との組合せによる進歩性喪失事由〕に係る判断の誤り)について ア 甲1発明の認定 (ア) 甲1発明は, 「大気開放時にも排水が出ない水路の逆流防止装置の提供を目的とするもの」である(甲1)。
甲1号証によれば,甲1発明の実施例及び効果につき,以下のとおり認められる。
a 甲1発明の実施例 5 水路(5a:上流側,5b:下流側) 8 電磁弁 15,19 逆止弁 18 ドレン路 20 ホッパー(21:上孔,22:下孔, 23:側孔) 25 一次圧限度設定弁 26 バネ 27 圧力作動弁(室29は,上流側水路 5aに接続されて水圧を受ける。室30は,図F(甲1の第2図) 大気開放。) 28 ダイヤフラム 31 弁体(ダイヤフラム28の変位と連 動し,側孔23を開閉する。) 32 バネ(ダイヤフラム28を29室側 へ押圧する。) b 甲1発明の作動状況 ? 給湯時 電磁弁8が開いて,上流側水路5aに水道圧が掛かり,圧力作動弁27が作動する。すなわち,圧力作動弁27の室29に掛かった水圧によってバネ32が押され て縮み,これによってダイヤフラム28が室30の方向に押され,連動して,弁体31がホッパー20の側孔23を閉じる。
次に,一次圧限度設定弁25が作動する。一次圧限度設定弁25は,圧力作動弁27のバネ32よりも若干強めのバネ圧を有するバネ26によって,通水方向と逆に押圧されている逆止弁であり,上記バネ圧の差は,圧力作動弁27の動作を確実にするためのものである。
水圧によって一次圧限度設定弁25が通水方向に押されて,湯が,上孔21からホッパー20内へ流れ,下孔22から下流側水路5bを通って浴槽に供給される。
前述したとおり,弁体31は閉じられているから,湯がドレン路18に流出することはない。
? 給湯停止時及び断水時 水道圧が掛からなくなるので,一次圧限度設定弁25は,バネ26によって通水方向と逆方向に,圧力作動弁27中のダイヤフラム28は,バネ32によって室29の方向に,それぞれ押され,ダイヤフラム28の動きに連動して,弁体31が作動し,側孔23を開く。これによって,湯の供給が停止されるとともに,ホッパー20内に溜まっていた湯のうち,側孔23以上の水位のものは,側孔23からドレン路18に流出し,ホッパー20は大気と連通される。
このとき,ドレン路18に流れ出した湯は,浴槽が下位にあれば,同浴槽へ流れていき,浴槽が上位にあれば,強制循環追焚回路のポンプ運転時に回路内に吸い込まれ,いずれにしても,器具外に流れ出すことはない。
c 甲1発明の効果 給湯停止時及び断水時に上流側水路への逆流が完全に防止され,また,逆流防止装置を大気開放しても,ドレン路から漏水することはない。
(イ) 前記(ア)によれば,甲1発明は,本件審決が認定したとおりであり(前記第2の3?ア(ア)b?),この点について当事者間に争いはない。
イ 本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点 いずれも,本件審決が, 「一致点」並びに「相違点3」及び「相違点4」として認定したとおりであり(前記第2の3?ア(ア)b?),この点について当事者間に争いはない。
上記相違点のうち,相違点4については,本件審決認定のとおり(前記第2の3?ア(ア)b?A),実質的な相違とはいえず,この点についても,当事者間に争いはない。
ウ 相違点3についての検討 (ア) 本件発明1において,大気開放弁は,「上水道の圧力低下」,すなわち,上水道の元圧の低下があるときは開閉動作し,同低下がないときは,閉じた状態を保つものである。
この点に関し,上水道の元圧の低下は,断水時には生じるが,給湯停止時には生じないといえるから,相違点3は,主として,大気開放弁が,本件発明1においては,断水時には開閉動作し,給湯停止時には閉じた状態を保つのに対し,甲1発明においては,断水時及び給湯停止時のいずれにおいても,開閉動作をする点にあるものというべきである。
(イ)a 前記アにおいて認定した事実によれば,甲1発明は,断水時及び給湯停止時のいずれにおいても大気開放する逆流防止装置につき,大気開放時に排水を出さないものの提供を目的としており,その目的のとおり,大気開放時にドレン路から漏水しないという効果を奏するものと認められる。
b 他方,甲8発明は,前記?ア(ア)bにおいて前述したとおり,甲1逆流防止装置が有していた2つの問題,すなわち,@通水中におけるドレン発生の継続に関する問題及びA上流側水路への逆流の可能性の高低にかかわらず,等しい量のドレンが発生していたという問題につき,前者については,上流水圧P1及び内部圧力P2のいずれも,1つの密閉面であるダイヤフラムに直接作用する構成を採用することによって,後者については,圧力変動応答性が早い大気連通口開閉手段と, 「縁きり効果が大きい」大気開放口開閉手段とを併用することによって,解決 するものである。
そして,甲8逆流防止装置は,上記併用により,上流水圧P1が,断水ではなく,他水栓使用によって低下している場合,すなわち,上流側水路への逆流の可能性が低い場合には,大気連通口のみが開き,大気開放口は開かない。上流水圧P1が断水によって低下している場合,すなわち,上流側水路への逆流の可能性が高いときは,大気連通口及び大気開放口のいずれも開く。
以上によれば,甲8発明は,甲1発明の課題を解決することを目的とし,同課題の解決のために前述したとおりの大気連通口開閉手段と大気開放口開閉手段とを併用したことによって,断水時及び給湯停止時のいずれにおいても大気開放するという甲1発明とは異なり,断水時には大気開放し,給湯停止時には大気開放しないという構成を備えるに至ったものと認められる。
c 以上に鑑みると,当業者において,甲1発明及び甲8発明に接した場合,甲1発明に替えて,その課題を解決するためにあえて大気開放に係る構成を替えた甲8発明を用いることは,当然に考えるとしても,甲1発明に甲8発明を適用すること,すなわち,後記エ(イ)のように甲1発明の構成の一部を甲8発明の構成の一部と置き換えることについての動機付けは乏しいといえる。
以上によれば,相違点3に係る構成の容易想到性を否定した本件審決の判断に,誤りはないというべきである。
エ(ア) 原告は,甲8発明は,甲1逆流防止装置の課題を解決した改良発明であるから,上記課題を解決するために,甲1逆流防止装置を甲8逆流防止装置に置き換えることにつき,動機付けがある旨主張する。
この点については,確かに,前述したとおり,当業者が,甲1発明に替えて甲8発明を用いること,すなわち,甲1逆流防止装置を甲8逆流防止装置に置き換えることには,格別の困難性がないものの,同置き換えをしても,前記(1)のとおり,当業者において,本件発明1と甲8発明との間の相違点1の構成を容易に想到し得たとはいえず,したがって,本件発明1を想到するとはいえない。
(イ) 原告は,甲1逆流防止装置につき,電磁弁8,逆止弁15及び一次圧限度設定弁25以外の部分を,甲8逆流防止装置の構成に置き換えることによって,本件発明1の逆流防止装置と同じ形態になる旨主張する。
a この点に関し,甲8発明は,前記?ア(イ)において前述したとおり,上流水圧P 1 及び内部圧力P 2 のいずれも,1つの密閉面(ダイヤフラム28)に対して直接作用する構成を採用し,上記密閉面が小さな差圧でも移動可能であることにより,上流側水路と逆流防止室との間に圧損を設けてP1≫P2とする必要がなく,下流側水路の通水流量の減少を防止できるようにしたものである。
他方,甲1発明における一次圧限度設定弁25は,バネ26によって通水方向と逆に押圧されている逆止弁であるから,上流側水路5aと逆流防止室に相当するホッパー20との間に設けられた圧損ということができる。
したがって,甲1逆流防止装置につき,圧損に該当する一次圧限度設定弁25を残しながら,前記ダイヤフラム等の構成を採用することによって圧損を設ける必要がないようにした甲8逆流防止装置の一部と置換することについては,動機付けを欠くというべきである。
b また,前述したとおり,甲1発明における一次圧限度設定弁25は,バネ圧が圧力作動弁27のバネ32より若干強めのバネ26によって通水方向と逆に押圧されている逆止弁であり,上記バネ圧の差は,圧力作動弁27の動作を確実にするためのものである。
この点に加え,前述した圧力作動弁27の作動状況にも鑑みると,一次圧限度設定弁25は,圧力作動弁27と共に,甲1逆流防止装置の大気開放弁としての役割を果たすものといえる。
この点に鑑みると,当業者において,甲1逆流防止装置の大気開放弁から一次圧限度設定弁25のみを除いた部分を一体の装置とみて,その部分のみを他の構成に置き換えることを想到するとは,認められない。
c 以上によれば,当業者において,原告主張に係る置き換えを想到するとは考え難く,したがって,原告の前記主張は採用できない。
(ウ) 原告は,本件審決は,甲1発明における大気開放弁につき,給湯を停止するときにも開閉動作させることを目的とする旨を述べるが,そのような目的は,甲1号証に記載されていない旨主張する。
確かに,本件審決は, 「甲1発明の大気開放弁は給湯を停止するときにも開閉動作させることを目的として検圧部を電磁弁の下流側に配置したものであるから,と述 」べるところ,上記目的については,甲1号証に記載されていないものの,給湯停止時に開閉動作をすることは技術上明らかであるから,この点は,相違点3に関する本件審決の判断の当否を左右するものではない。
? 取消事由1-3(無効理由11〔甲2発明と甲8発明との組合せによる進歩性喪失事由〕に係る判断の誤り)について ア 甲2発明の認定 (ア) 甲2発明は, 「上水道を浴槽等の水槽に直結して給水する給水装置に用いる排水機構付きバキュームブレーカに関する」ものである(甲2)。
甲2号証によれば,甲2発明の解決すべき課題,実施例及び効果につき,以下のとおり認められる。
a 解決すべき課題 ? 従来の技術 上水道を浴槽等の水槽に直結して給水する場合には,上水道の水圧が下がったときに水槽内の水が上水道内に逆流しないように,上水道と水槽との間に空間を構成することが,日本水道協会の定めた技術基準により義務付けられている。
上記空間を構成するために設けられていた従来のバキュームブレーカの構造は,以下のとおりである。
図G(甲2の第4図) 図H(甲2の第5図) @ 電磁開閉弁4を開くと,それによって,上水道管1から給湯管路2へ流入した水が熱交換器3で加熱されて湯となり,第1の逆止弁5及び第2の逆止弁7を開いて,浴槽8に流入する。
このとき,バキュームブレーカ6のボデイ60の中空には,液体出入孔62を通して上水道水の圧力が作用し,同圧力によって弁体63が押し上げられて空気流入孔61を閉塞している。
A 電磁開閉弁4を閉じると,上記の上水道水の圧力が掛からなくなり,また,給湯管路2内の湯のうち,電磁開閉弁4よりも下流側にあり,かつ,浴槽8の水面よりも上にあるものが,浴槽8の側に吸引されることから,バキュームブレーカのボデイ60の中空の圧力が下がる。同圧力が,大気圧と略同等又はそれ以下になると,弁体63が自重で段部65に当たるまで下がり,それによって,空気流入孔61が開き,大気に開放される。
すると,給湯管路2内の湯のうち,電磁開閉弁4よりも下流側にあり,かつ,浴槽8の水面よりも上にあるものが,浴槽8に流入する。これによって,電磁開閉弁から浴槽8までの間が空間となり,前記技術基準に適合した状態になる。
? 従来技術の問題点及び甲2発明の課題 バキュームブレーカ6が浴槽8の水面よりも下方にある場合,電磁開閉弁4を閉じ,上水道水の圧力が掛からなくなると,浴槽8内の湯圧が,液体出入孔62を通してボデイ60の中空に作用し,同圧力によって弁体63が押し上げられて空気流 入孔61を閉塞する。
すなわち,バキュームブレーカ6が浴槽8の水面よりも下方にあると,電磁開閉弁4を閉じて上水道の2次圧(電磁弁より下流側の水圧)が低下しても,浴槽8内の湯圧を受けてバキュームブレーカ6の空気流入孔61が開かず,空間が形成されない。したがって,上水道の2次圧の低下時に上記のとおり空間が構成されて前記技術基準に適合した状態になるためには,バキュームブレーカ6が浴槽8の水面よりも上方に設置されていなければならない。
このために,常にバキュームブレーカ6の位置を浴槽8の水面よりも高くするために,バキュームブレーカ6を含む給湯器ユニット9を浴槽8よりも高い位置に設置しなければならないという制約があった。
b 甲2発明の実施例 図I(甲2の第1図) 11 バキュームブレーカ 30 排水機構 図J(甲2の第2図) 流通路13(給湯管路2に接続) 上面側 バキュームブレーカ本来 : の機能を果たす構造 下面側:排水機構30 ? 電磁開閉弁4を開くと,湯が,逆止弁5及び7並びにバキューム ブレーカ11の流通路13を通って浴槽8に流れ込む。
このとき,流通路13内の上水道の2次圧は,液体出入口21を通して上部弁体23の受圧板24に作用してこれを押し上げ,それに伴って,受圧板24の上面外周部に装着された弾性リング28が,上部弁室20の上下方向の弁口17の弁座17aに押し付けられ,これによって,弁口17すなわち空気流入孔16は,閉じられた状態になる。
また,上水道の2次圧は,下部弁体39及び流通路13の下面に開口された装置孔31の口縁に張設されたダイヤフラム38の上面にも作用し,ダイヤフラム38と下板32との間に装着された圧縮コイルばね44を弾縮するとともに,ダイヤフラム38を弾性変形させながら,ダイヤフラム38の弁体取付部42に嵌着された下部弁体39を下動させる。同下動により,ダイヤフラム38の弁体取付部42の下面外周部が,下部弁室33の弁口36の弁座36aに押し付けられ,これによって,その上下方向の弁口36,すなわち,下面に開口した排水孔35は,閉じられている。
(b) 給湯停止に当たり,電磁開閉弁4を閉じると,流通路13内の上水道の2次圧が下がる。
したがって,前述したダイヤフラム38の上面に作用する上水道の2次圧が弱まることから,圧縮コイルばね44の復元弾力によって,下部弁体39に,開弁方向である上方への移動力が付勢される。これによって,下部弁室33の糸口すなわち排水孔35が開き,給湯管路2の湯のうち,電磁開閉弁4と第2の逆止弁7との間の部分にあるものが,ダイヤフラム38の下面において下部弁室33と連通する排水路46を通って,排水孔35側へ吸引される。これとともに,前述したとおり上部弁体23の受圧板24を押し上げていた上水道の2次圧が弱まったことから,上部弁体23は,自重により下がる。
上部弁体23が上部弁室20の底面に当たると,弁口17が開いて空気流入孔16から空気が流入し,順に,流通空間25a,26a,液体出入孔21を通って流 通路13に流入する。
上記流入によって,給湯管路2の湯のうち,電磁開閉弁4と第2の逆止弁7との間の部分にあるものが,排水路46から下部弁体39の開口41を通って排水孔35から排出される。そして,上記部分に空気が流入して空間となり,前述した技術基準が満たされる。
(イ) 以上によれば,甲2発明は,本件審決が認定したとおりであり(前記第2の3?ア(ア)c?),この点について当事者間に争いはない。
イ 本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点 いずれも,本件審決が, 「一致点」並びに「相違点5」及び「相違点6」として認定したとおりであり(前記第2の3?ア(ア)c?),この点について当事者間に争いはない。なお,相違点5における「上水道の圧力低下」は,上水道の元圧の低下を意味するものと解される。
上記相違点のうち,相違点6については,本件審決認定のとおり(前記第2の3?ア(ア)c?A),実質的な相違とはいえず,この点についても,当事者間に争いはない。
ウ 相違点5についての検討 (ア)a 甲2発明は,以上によれば,バキュームブレーカが浴槽の水面よりも下方にある場合,電磁開閉弁4を閉じると,上水道の2次圧が低下し,浴槽内の湯圧によってバキュームブレーカの空気流入孔61が開かず,前記技術基準が求める上水道と浴槽との間の空間を構成できないという課題を解決するために,電磁開閉弁を閉じたときは,上水道の元圧の低下の有無にかかわらず,バキュームブレーカの空気流入孔が開き,電磁開閉弁4と第2の逆止弁7の間の前記給湯管路2内 「の水を排水」し, 「空気を導入」するもの,すなわち,バキュームブレーカを確実に大気開放して内部の湯を排出するというものであり,これによって,前述した技術基準が満たされる。
この点に鑑みると,前記課題を解決するためには,電磁開閉弁を閉じたときに, 上水道の元圧の低下の有無にかかわらず,バキュームブレーカが作動して大気開放及び排水を行うことが必要不可欠であり,この点は,甲2発明の主要部分というべきである。
b 他方,本件発明1は,大気開放弁が,@上水道の元圧低下時には,開閉動作して排水するが,A上水道の元圧低下がないときは,閉じたままであり,排水しない。
(イ) したがって,相違点5に係る構成,すなわち,大気開放弁が,上水道の元圧低下時のみ開閉動作して排水するということは,甲2発明の主要な部分,すなわち,電磁開閉弁を閉じたときは,上水道の元圧低下の有無にかかわらず,バキュームブレーカが作動して排水及び空気の導入を行うことに,明らかに反するものといえる。
この点に鑑みると,当業者において,甲2発明から,相違点5に係る構成を想到することは困難といえ,同旨の判断をした本件審決に誤りはない。
エ 原告は,@甲2発明のバキュームブレーカと甲8逆流防止装置とは,上水道の圧力低下に伴って大気開放するという機能の点において共通すること,A電磁弁の開閉に伴う大気開放弁からの漏水という現象の回避は,当業者において当然の課題であることを前提として,当業者が甲2発明における大気開放弁(バキュームブレーカ)を甲8逆流防止装置の大気開放弁に置き換える可能性を考えることは,不自然なことではなく,同置き換えにつき,逆流防止に関して技術上の障害を来すとも認められない, 「当然の課題」を解決するためにも,甲2逆流防止装置を甲8逆流防止装置に置き換える動機付けが存在するといえる旨主張する。
(ア) 確かに,原告が主張するとおり,甲2発明のバキュームブレーカ及び甲8逆流防止装置のいずれも,逆流防止装置の技術分野に属するものである。
(イ) しかしながら,前述したとおり,甲2発明は,電磁開閉弁を閉じるとバキュームブレーカが大気開放され,給湯管路内の湯が浴槽側に流入し,電磁開閉弁から浴槽までの間が空間となり,前記技術基準に適合した状態になるという従 来の技術において,バキュームブレーカが浴槽の水面よりも下方にある場合,電磁開閉弁を閉じると,上水道の元圧が低下して浴槽内の湯圧によってバキュームブレーカが大気開放せず,前記技術基準が求める上水道と浴槽との間の空間を構成できないという課題を解決するために,電磁開閉弁を閉じたときは,上水道の元圧の低下の有無にかかわらず,バキュームブレーカを確実に大気開放して内部の湯を排出し,これによって,前述した技術基準が満たされるというものである。
この点に鑑みると,バキュームブレーカが浴槽の水面よりも下方にある場合,従来の装置は,電磁開閉弁を閉じて通水を停止したときに給湯管路内の湯が浴槽側に吸引されることから,ドレインを生じなかったものであるが,甲2発明は,電磁開閉弁を閉じたときは,給湯管路内の湯を確実に排出する,すなわち,ドレインを確実に発生させることにより,上記課題を解決するものということができる。
したがって,甲2発明におけるドレインの発生は,従来の装置の課題を解決するために採用した手段であるといえるから,一般にドレインの発生が好ましくないとされていたとしても,当業者において,甲2発明におけるドレインの発生を,回避すべき課題として認識するとは考えられない。
(ウ) 以上によれば,原告主張に係る置き換えについては,動機付けを欠くものといわざるを得ず,したがって,原告の前記主張は採用できない。
3 取消事由2(無効理由6〔本件請求項1のサポート要件違反〕に係る判断の誤り)について ? 原告は,大気開放弁に関する本件請求項1の記載は,発明の詳細な説明の記載を超えるものであるから,特許法36条6項1号に反する旨主張する。
?ア 本件請求項1においては,大気開放弁につき, 「開弁方向に付勢するためのスプリングを有し,前記上水道の圧力低下に応動して前記電磁弁より前記浴槽の側の前記配管内の水を大気に放出するよう開閉動作する一方,前記上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つ大気開放弁」と特定している。
イ 他方,本件訂正後明細書(甲26の2)においては,本件発明1に係る大気開放弁の構成につき,前記1?イ及びウのとおり,環状の弁体117を嵌着されたピストン116が,スプリング125によって,接続部113,114側の空間とオーバフロー口115との間の通路を開く方向に付勢するように構成されている旨記載されており(【0004】【0017】,これは, , ) 「開弁方向に付勢するためのスプリングを有し,」という本件請求項1の記載に対応する。
また,本件訂正後明細書には,本件発明1に係る大気開放弁の作動に関し,前記1?ウのとおり,「浴槽110に湯張りを行うときは,上水道の元圧(1次圧)が,検圧管123を介して大気開放弁111に導入される。この1次圧は,通常は,電磁弁108から逆止弁109へ通過する配管内の通水圧(2次圧)よりも大きい。
このことから,ピストン116は,弁体117を着座させる方向に付勢しており,接続部113,114側の空間とオーバフロー口115との間の通路は,閉じられている。( 」【0008】, )「停電や断水等によって上水道の給水管101内に負圧が生じると,これによる1次圧の低下が検圧管123を介してボディ122の接続部124に伝わり,ダイヤフラム118が上記低下を検知して,ピストン116を弁開方向に付勢し,接続部113,114側の空間とオーバフロー口115との間の通路を開き,電磁弁108から逆止弁109へ至る配管内の水を,上記通路を通過させてオーバフロー口115から大気に放出する。( 」【0009】)旨記載されており,これは, 「前記上水道の圧力低下に応動して前記電磁弁より前記浴槽の側の前記配管内の水を大気に放出するよう開閉動作する一方,前記上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つ」という本件請求項1の記載に対応する。
ウ 以上によれば,大気開放弁を特定する本件請求項1の記載は,本件訂正後明細書における発明の詳細な説明によって十分に裏付けられ,開示されているものといえるから,特許法36条6項1号に反しないとした本件審決の判断に,誤りはない。
?ア 原告は,上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つ大気 「 開放弁」という本件請求項1の記載は,大気開放弁の開閉方式並びに上水道の圧力低下の有無の検知方法及び検知場所が特定されていない広範な方式を含むものであり,発明の詳細な説明の記載を超えるものであるから,特許法36条6項1号に反する旨主張する。
イ(ア) しかしながら,前記1のとおり,本件発明は,@従来の技術においては,大気開放弁の上流側に設けられた電磁弁は,断水等の際に給湯管側が負圧となって通水圧を受けられなくなると,全閉状態を維持できなくなり,これによって,大気開放弁内の気圧が低下し,外部気圧よりも低下すると,オーバーフロー口から勢いよく大気が吸い込まれるところ,浴槽内の汚水が逆流した場合,電磁弁と浴槽との間に配置されている逆止弁が水密不良の状態にあると,逆止弁によってせき止められなかった汚水の一部が,オーバーフロー口から吸い込まれる大気の流れに引っ張られて,給湯管へ逆流してしまうという課題を,A電磁弁と大気開放弁との間に1個の逆止弁(第2の逆止弁)を配置することによって解決するというものである。
すなわち,本件発明は,上記課題のとおりの問題を有する大気開放弁を前提として,これを第2の逆止弁の配置によって解決しようとするものである。大気開放弁自体は,同課題を生じさせるものではあるが,同課題の解決手段として用いられているものではない。
(イ) 以上の点に鑑みると,本件発明1における大気開放弁は,上記の課題のとおり,給湯管側が負圧になったとき,オーバーフロー口から大気を吸い込むものであることが特定されていることを要し,かつ,それで足りると解される。
この点に関し,本件請求項1において, 「前記上水道の圧力低下に応動して前記電磁弁より前記浴槽の側の前記配管内の水を大気に放出するよう開閉動作する一方,前記上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つ大気開放弁」「前記 ,大気開放弁が前記上水道の圧力低下に応動して大気開放したときに,前記大気開放弁を介して大気に放出される水および吸い込まれた大気」と記載されており, 「上水 道の圧力低下」は,上水道の元圧低下を指すものと解されるところ,給湯管側が負圧になるのは,上水道の元圧低下時であるから,上記記載をもって,本件請求項1における大気開放弁につき,給湯管側が負圧になったとき,オーバーフロー口から大気を吸い込むものであることが特定されているものというべきである。
他方,原告主張に係る大気開放弁の開閉方式並びに上水道の圧力低下の有無の検知方法及び検知場所は,上記特定を要する事項と関連性を有すると認めるに足りない。
以上によれば,原告の前記主張は採用できない。
4 取消事由3(本件発明2につき,無効理由13〔甲4発明による進歩性喪失事由〕に係る判断の誤り)について 原告は,本件発明1が取消事由1及び2により無効であることを前提として,当業者は,無効である本件発明1に加え,本件発明1と本件発明2との間の相違点に係る構成が示されているという甲4発明から,本件発明2を想到し得るとして,本件発明2も,本件発明1と同様に,進歩性を欠き,無効である旨主張する。
しかしながら,前記2及び3のとおり,本件発明1は,取消事由1及び2のいずれによっても無効とは認められないことから,原告の上記主張によっては,本件発明2が進歩性を欠いて無効ということはできない。
結論
以上によれば,原告の請求は,理由がないから棄却することとし,よって,主文のとおり,判決する。
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