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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成26ワ654損害賠償請求事件 判例 特許
平成26ワ23512 差止請求事件 判例 特許
平成26ワ3343 特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成23ワ35723 特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成25ワ4040 特許権侵害行為差止請求事件 判例 特許
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事件 平成 26年 (ワ) 23512号 差止請求事件
横浜市<以下略>
原告 株式会社チャフローズ・コーポレーション 栃木県那須塩原市<以下略>
被告 株式会社抗菌研究所
同訴訟代理人弁護士 椙山敬士 市川 穣
同訴訟代理人弁理士 加藤 勉
同補佐人弁理士 萼 経夫 東京都千代田区<以下略>
被告 菱江化学株式会社
同訴訟代理人弁護士 大越 徹 東京都港区<以下略>
被告 ヤフー株式会社
同訴訟代理人弁護士 千葉尚路 松山智恵 新間 祐一郎 尾西祥平 田中芳樹
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2015/03/24
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 原告の請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
1 被告株式会社抗菌研究所(以下「被告抗菌研究所」という。)は,別紙差止 対象製品目録1記載の各製品の製造,販売及び輸出をしてはならない。
2 被告菱江化学株式会社(以下「被告菱江化学」という。)は,別紙差止対象 製品目録2記載の製品の製造,販売及び輸出をしてはならない。
3 被告ヤフー株式会社(以下「被告ヤフー」という。)は,別紙差止対象製品 目録3記載の各製品の製造,販売及び輸出をしてはならない。
事案の概要
本件は,原告が,被告らに対し,被告らが別紙差止対象製品目録1〜3記載 の各製品(以下,これらの各目録記載の製品を目録ごとに目録の番号に応じて 「被告製品1」などと総称し,被告製品1〜3を併せて「被告各製品」とい う。)を販売するなどして原告の保有する特許権を侵害している旨主張して, 特許法100条1項に基づき上記販売等の差止めを求める事案である。
1 争いのない事実等(後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事 実を含む。) (1) 原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,本件特許権に係る特 許を「本件特許」という。)の特許権者である(本件特許の特許出願の願書 に添付された明細書及び図面を「本件明細書」という。)。(甲1,7) 登録番号 特許第4366672号 出願日 平成11年11月18日(特願平11-328694号) 登録日 平成21年9月4日 発明の名称 洗浄剤 (2) 本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである(以 下,この発明を「本件発明」という。)。(甲1) 「炭酸カルシウムの方解石型構造による結晶構造体を備えた貝殻を粉砕した 粉末からなる炭酸カルシウム粉末と該炭酸カルシウム粉末を焼成してなる酸 化カルシウム粉末とが混合されていることを特徴とする洗浄剤。」(3) 被告抗菌研究所は別紙被告製品名目録記載の各製品を製造販売し,被告 菱江化学はこれを販売している。これらの各製品は,ホタテ貝殻を約100 0℃で焼成し,その後に加水するなどして製造されている。(乙イ1,2)(4) ホタテ貝殻は主に炭酸カルシウムから成るところ,これを高温で焼成す ることにより酸化カルシウムが得られる。酸化カルシウムは空気中の二酸化 炭素と反応することにより炭酸カルシウムとなる。また,上記酸化カルシウ ムに加水することで水酸化カルシウムが得られるが,水酸化カルシウムは二 酸化炭素と反応することにより炭酸カルシウムを生ずる。
2 争点及び争点に関する当事者の主張(1) 技術的範囲の属否について(原告の主張) ア 本件発明の技術的範囲に属するというためには,炭酸カルシウムと酸化 カルシウムが含まれていれば足り,その分量又は割合は技術的範囲の属否 に関わりがない。
本件特許の特許請求の範囲にいう「炭酸カルシウム粉末」は,ホタテ貝 殻を原材料としていれば足り,方解石型構造による結晶構造体を備えてい る必要はない。また,ホタテ貝殻を粉砕した粉末それ自体のみならず,こ れを焼成する,水を加えるなどの化学反応を経たものを含む。
イ 被告各製品は,ホタテ貝殻を使用した製品であり,その成分は,酸化カ ルシウム,炭酸カルシウム及び若干の水酸化カルシウムである。
未焼成のホタテ貝殻は炭酸カルシウムから構成されているところ,焼成 温度500℃までは炭酸カルシウムの単一相であるが,600℃から少量 の酸化カルシウムが現れ,700℃では酸化カルシウムが多くなるが,主 な結晶相は依然として炭酸カルシウムである。800℃では酸化カルシウ ムが主な結晶相となり,炭酸カルシウムは少量残る程度である。900℃, 1000℃では,完全に分解して酸化カルシウムの単一相となる。しかし, 酸化カルシウムは,空気に触れると大気中の二酸化炭素を吸収し,結合す るため,不定量ではあるが少量の炭酸カルシウムを生成する。
また,ホタテ貝殻を焼成したものに水を加えた場合には,酸化カルシウ ムは水酸化カルシウムに変化する。
ウ したがって,被告各製品は,本件発明の技術的範囲に属する。
エ 仮に被告各製品が炭酸カルシウム及び酸化カルシウムのほかに水酸化カ ルシウムを含むことから本件発明を文言上充足しないとしても,本件明細 書(段落【0008】)の記載によれば,置換を想到することが容易であ り,相違に係る部分は本質的なものではないので,均等の範囲内である。
(被告抗菌研究所及び被告菱江化学の主張) ア 本件特許請求の範囲には「貝殻を粉砕した粉末からなる炭酸カルシウム 粉末」と記載され,本件明細書の段落【0007】には,炭酸カルシウム 粉末はホタテ貝殻を天日乾燥してそのまま粉砕しただけの粉末であると説 明されている。したがって,「炭酸カルシウム粉末」は,焼成などの熱処 理を加えることなく単に粉砕するだけで仕上げられる粉末を意味する。
イ 被告製品1の製品名は正しくは別紙被告製品名目録記載のとおりである。
これらの各製品は,いずれも「スカローS」に炭酸カルシウム及び酸化カ ルシウム以外の物質を添加,混練又は配合したものである。
「スカローS」は,貝殻を電気炉で1000℃の温度で焼成した後,水 を加えて消化して得られた水酸化カルシウムを物理的な粉砕により微粉末 化したものであり,仮に,その中に微量の炭酸カルシウムが含まれていた としても,貝殻を単に粉砕した炭酸カルシウム粉末ではない。
したがって,被告製品1及び2は「貝殻を粉砕した粉末からなる炭酸カ ルシウム粉末と…混合され」を充足しない。
(2) 被告らによる被告各製品の販売等について (原告の主張) ア 被告抗菌研究所は被告製品1を製造販売し,被告菱江化学は被告製品2 を販売している。
イ 被告ヤフーはその運営するインターネット上のショッピングモールに被 告製品3を陳列しており,これは被告ヤフーによる譲渡等のための展示に 当たる。
被告ヤフーが運営するインターネット上のショッピングモールには,販 売者の名前はなく,一見して被告ヤフーが売主又はそれに準ずる立場にあ るような外観を備えている。利用者は被告ヤフーの名声と信用力を信頼し て取引をしているのが現状であり,これにより被告ヤフーは直接及び間接 の利益を得ている。被告ヤフーは,インターネット上のショッピングモー ルに展示された商品が法に触れる場合には直ちに調査し,違反している場 合には撤去すべきである。
以上によれば,被告ヤフーは,共同不法行為責任又は注意義務違反に基 づく責任を負う。また,被告ヤフーは外観法理により責任を負う(商法1 4条)。
(被告ヤフーの主張) 争う。
被告ヤフーは,商品の販売主体である法人又は個人事業主の出店者に対し, インターネット上の場を提供しているだけで,商品を陳列し,販売する主体 ではない。
当裁判所の判断
1 技術的範囲の属否(争点(1))について (1) 原告は,本件発明の「炭酸カルシウム粉末」は,ホタテ貝殻を原材料と していれば足り,方解石型構造による結晶構造体を備えている必要はなく, ホタテ貝殻を粉砕した粉末それ自体のみならず,焼成,加水などによる化学 反応を経たものを含むと主張する。
ア そこで検討するに,本件特許の特許請求の範囲の請求項1には,「炭酸 カルシウムの方解石型構造による結晶構造体を備えた貝殻を粉砕した粉末 からなる炭酸カルシウム粉末」と「該炭酸カルシウム粉末を焼成してなる 酸化カルシウム粉末」が混合されていることが記載されており,その文言 上,炭酸カルシウムは貝殻を粉砕した粉末それ自体であることを要すると 解するのが相当である。
イ これに加え,本件明細書(甲1)の発明の詳細な説明には次の趣旨の記 載があるが,「炭酸カルシウム粉末」を,貝殻の焼成により得られた酸化 カルシウムと空気等との化学反応により得ることを示唆する記載はない。
(ア) 発明の実施の形態として,@ 原材料であるホタテ貝殻を天日乾燥 の後粉砕して炭酸カルシウム粉末を得るが,その粒体は多孔性粒体とな っていること,A この多孔質性粒体からなる炭酸カルシウム粉末の一 部分を約1000℃で加熱して酸化カルシウム粉末を得ること,B A で得られた酸化カルシウム粉末と,@の炭酸カルシウム粉末とを混合し て本件発明に係る洗浄剤を得ること(段落【0007】),C 洗浄剤 中の炭酸カルシウム粉末分は,ホタテの貝殻粉末の独特な多孔質粒体か らなるもので,吸着効果が大であり,また,酸化カルシウム粉末分はア ルカリ性で殺菌性を示すので,この洗浄剤は,農薬などの化学物質を吸 着し,あるいは,手や物品の表面の化学物質や微細な汚染物質を多孔質 粒体が吸着し,アルカリ性の作用により細菌等を死滅させること(段落 【0008】)が記載されている。
(イ) 発明の効果として,野菜などの食品素材の洗浄や一般の汚れた物品 の洗浄に用いれば,表面に付着していた化学物質や微細な汚染物質を取 り除くようになるとともに,殺菌が行えること(段落【0009】)が 記載されている。
ウ 本件明細書の上記イの記載によれば,本件発明は,ホタテ等の貝殻を粉 砕した炭酸カルシウム粉末の粒体が多孔質粒体であり,多孔質粒体は吸着 効果が大きいことを利用して,洗浄する物品に付着した化学物質等を吸着 することを技術思想とする発明であると認められる。そうすると,本件発 明の「炭酸カルシウムの方解石型構造による結晶構造体を備えた貝殻を粉 砕した粉末からなる炭酸カルシウム粉末」とは,上記アのとおり,貝殻を 粉砕した粉末そのものであることを要するものであり,ホタテ貝殻を粉砕 した粉末を焼成して得られた酸化カルシウム粉末が化学反応を経て炭酸カ ルシウム粉末になったものは含まないものと解される。
(2) 原告は,これと異なる前提に立って,被告各製品がホタテ貝殻を使用し た製品であり,酸化カルシウム,炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムを含 むことから本件発明の技術的範囲に属すると主張し,被告各製品が,ホタテ 貝殻を粉砕した炭酸カルシウム粉末そのものを混合した構成であることを主 張立証しない。
したがって,原告の主張は,均等をいう部分を含めて採用できず,被告各 製品が本件発明の技術的範囲に属すると認めることはできない。
2 結論 以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はすべ て理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
追加
(別紙)差止対象製品目録11スカロー消臭スプレー2プレーン3ザ・親方(入門)4フリフリ・シューズパウダー 差止対象製品目録2ホタテ貝殻焼成抗菌剤(スカロー) 差止対象製品目録31ホタテの力くん海の野菜洗い90g2ホタテの力くん海の野菜・くだもの洗い3ホタテの力海の野菜・果物洗い90g4ホタテの力くん4個セット5ホタテの力くん海の野菜果物洗いパック6ホタテの力洗濯物の除菌・消臭90g7ホタテの力洗濯物の除菌・消臭30g8ホタテ貝殻焼成粉末―ほたての力9ホタテの力海のお洗濯洗濯物の除菌・消臭90g10ホタテの力くん海の野菜くだもの洗い90g×3個セット11ホタテの力くん除菌・消臭ホタテの霧(ミスト)500ml12ホタテの力くん除菌・消臭ミストホタテの霧500ml13ホタテの力くんホタテでお洗濯物除菌・消臭30g14ホタテの力くんホタテで洗浄野菜・くだものに1.2g×6包15天然素材で安心すっごい!ホタテ貝パワー(90g)16洗濯補助剤ホタテパワーEX-SS30洗濯槽クリーナー17ホタパ(焼成)1kg(焼成ホタテパウダー100%)18ホタパ(焼成)1.2kg(焼成パウダー100%)【除菌・鮮度保持】19ホタパ&ホタパ水20ホタパ水50ml21ホタパの野菜洗い120g22野菜リフレッシュほたてパワー100g23野菜リフレッシュほたてパワー6個セット24ほたてdeキレイ野菜洗浄用50g25ほたてdeキレイ洗濯用(4個セット) 26ほたてdeキレイ野菜洗浄用90g27海の野菜果物洗い3個セット28とっても爽快200ml29安心村3g×30包30洗濯槽快ドラム洗濯機用50g31洗濯槽快ネット付30g×2個32洗濯槽快/専用ネット付2個パック33洗濯槽快30g×3袋34洗濯槽快2包組ネットつき35洗濯槽快6袋(専用ネット付き)10×10.5cm36洗濯槽快30g×2個37洗濯槽快30g38洗濯槽快2個組ネット付39洗濯槽快2個組ネット付ホタテ貝の貝殻でできた天然成分100%でスッキリ洗濯!40ホタテコ溶液ケストルスプレー500ml41ホタテコ溶液ケストル詰替用42ホタテコ1s43ホタテコ君200g44シェルミラックエコランドリー30g×4包45シェルミラックエコランドリー120g46日の出PRODUCTSホタテ貝殻の粉47におわーず370ml48家庭用洗剤抗菌剤スカロー49スカロー消臭&抗菌スプレー150ml50スカローお試しパック(40g) 51スカロー足指消臭トゥリング花柄52スカロー消臭つま先インソール53スカローフリフリシューズパウダー80g54家庭用洗剤抗菌剤スカロー100g55天然エコ洗剤「クリホーグ」800グラム入り56貝洗美4g×30包57ホタパ(焼成)1kg(焼成パウダー100%)【除菌・鮮度保持】58ホタパ(焼成)1.2kg59ホタパ(焼成)500g(焼成パウダー100%)【除菌・鮮度保持】60ホタパ(焼成)150g(焼成パウダー100%)【除菌・鮮度保持】61ホタパ(焼成)600g(焼成パウダー100%)【除菌・鮮度保持】62ホタパ&ホタパ水63ホタパ水500ml64ホタパ水50ml65ホタパ水300ml66ホタパ水詰替用2?67ホタパ水詰替用4?68ホタテの力150g69エコランドリーパウダー70ほたてスペシャル1Kg71ほたてスペシャル80gミニボトル入り2本セット72安心やさい1g×50包73ホタテのおくりもの計量スプーン付き550g74ホタテのおくりもの詰替え用1s75フードウォッシャー食材革命90g76材用洗浄パウダー『食材革命』90g(約90回分) 77泡プッシュくん300mL78泡プッシュくん300ml詰替用79野菜リフレッシュほたてパワー100g80野菜の洗浄剤5包入り81ホタテパワーEX-WS300消臭・除菌剤82ホタテパワーEX-YS30「スティックタイプ30本入り」83ホタテパワーEX-SF90洗濯層クリーナー84環境ケアリーナ300g85ホタテ貝殻から生まれた天然素材100%の野菜洗浄剤「ベジフルクリーン」180g86シェルクリーンα87シェルクリーンα*380MLスプレー88ピースママウイルスブロック300ml89ホタテの雫500ml90液パッとくん500ml91液パッとくんつめかえ用500ml92胡粉美人パウダーフェイスパウダー93「胡粉美人水おしろい」94男の為の石鹸Ki:Re男(キレオ)95除菌消臭剤キレイッシュ・パウダー100gホタテ貝殻焼成カルシウムパウダー96歯垢を落とすではなく分解ピッカピカーデンタジェル50g97除菌粉ゆきちゃん98シェルホワイトニング&ウォッシングパウダー99シェルミラックバスパウダー250g入浴剤 100シェルパウダーインソール(使い捨てタイプ)101お風呂用枕マシュマロピロー102洗える抗菌枕103お風呂用枕ふんわりバスクッションポコ (別紙)被告製品名目録1製品名「スカローうぉっしゃあ」2製品名「手づくり石けんぷれーん」3製品名「スカロー石鹸ザ・親方」4製品名「スカローフリ・フリシューズパウダー」
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官 清野正彦
裁判官 橋彩