運営:アスタミューゼ株式会社
  • ポートフォリオ機能


追加

関連審決 不服2012-6234
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 26年 (行ケ) 10099号 審決取消請求事件

原告 アプライドマテリアルズ ゲーエムベーハー
訴訟代理人弁理士 安齋嘉章
被告 特許庁長官
指定代理人関根洋之
同 樋口信宏
同 窪田治彦
同 酒井伸芳
同 内山進
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2015/02/25
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2012-6234号事件について平成25年12月2日にし た審決を取り消す。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等(証拠の記載のない事実は当事者間に争いがな 1 い。) 原告は,発明の名称を「検査体の接触のための装置及び方法」とする発明 につき,平成15年11月14日を出願日とする特許出願(特願2004-5 52594号。パリ条約に基づく優先権主張 2002年11月18日(以下 「優先日」という。) ドイツ連邦共和国。以下「本願」という。)をした。
原告は,平成23年11月30日付けで拒絶査定を受けたので,平成24年 4月6日,拒絶査定に対する不服の審判(不服2012-6234号)を請求 するとともに,手続補正(甲3)をした。さらに,原告は,平成25年6月1 9日付けで拒絶理由通知を受けたので(甲4),同年9月24日,意見書(甲 5)を提出した。
特許庁は,平成25年12月2日,「本件審判の請求は,成り立たない。」と の審決をし,その謄本を,同月21日,原告に送達した(出訴期間90日附 加)。
原告は,平成26年4月16日,上記審決の取消しを求めて,本件訴えを提 起した。
2 特許請求の範囲の記載 平成24年4月6日付け手続補正後の本願の特許請求の範囲(請求項の数は 14である。)の請求項8の記載は,以下のとおりである(甲3。以下,同項 に係る発明を「本願発明」という。また,本願の明細書及び図面を併せて「本 願明細書」という。。
) 「基板(140)上の少なくとも1つの検査体(301)の検査のための接触 装置であり,検査のため検査装置(100)が用いられており,検査装置は光 学軸(102)と光学軸に対応した検査範囲を有しており, 少なくとも1つの検査体を備えた基板のためのホルダー(130)であって, ホルダーと光学軸は相互に移動可能であるホルダーと, ホルダーの移動ユニットと, 2 少なくとも1つの検査体と電気的に接触する移動可能な接触ユニット(15 0)を備え,前記接触ユニットと光学軸は,基板の検査の間,互いに移動可能 であり,前記接触ユニットはホルダーに対して独立しており,移動可能であり, 光学軸に直交する一方向において,ホルダーの寸法の実質的半分の最大寸法を 有している装置。」3 審決の理由 審決の理由は,別紙審決書写しのとおりである。その要旨は,本願発明は, 米国特許第4772846号明細書(甲1。以下「引用例」という。)に記載 された発明(以下「引用発明」という。)に基づいて当業者が容易に発明をす ることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受ける ことができない,というものである。
審決が認定した引用発明の内容,本願発明と引用発明との一致点及び相違点 は以下のとおりである。
引用発明の内容 「ウエハ2上の少なくとも1つのチップのテストのための接触装置であり, テストのため走査型電子顕微鏡が用いられており,走査型電子顕微鏡は電子 ビーム10が沿う軸と電子ビーム10が沿う軸に対応したテスト範囲を有し ており, 少なくとも1つのテストされるチップを備えたウエハ2のためのウエハを 保持するウエハ載置ブロック4であって,ウエハ載置ブロック4と電子ビー ム10が沿う軸は相互に移動可能であるウエハ載置ブロック4と, ウエハ載置ブロック4を移動するウエハ位置決めステージ12と, 少なくとも1つのテストされるチップと電気的に接触する移動可能なテス トプローブ42を備え,前記テストプローブ42と電子ビーム10が沿う軸 は,ウエハ2のテストの間,互いに移動可能であり,前記テストプローブ4 2はウエハ載置ブロック4に対して独立しており,移動可能である装置。」 3 一致点 「基板上の少なくとも1つの検査体の検査のための接触装置であり,検査の ため検査装置が用いられており,検査装置は光学軸と光学軸に対応した検査 範囲を有しており, 少なくとも1つの検査体を備えた基板のためのホルダーであって,ホルダ ーと光学軸は相互に移動可能であるホルダーと, ホルダーの移動ユニットと, 少なくとも1つの検査体と電気的に接触する移動可能な接触ユニットを備 え,前記接触ユニットと光学軸は,基板の検査の間,互いに移動可能であり, 前記接触ユニットはホルダーに対して独立しており,移動可能である装 置。」 相違点 「本願発明では,接触ユニットが,光学軸に直交する一方向において,ホル ダーの寸法の実質的半分の最大寸法を有しているのに対し,引用発明では, テストプローブ42が,電子ビーム10が沿う軸に直交する一方向において, ウエハ載置ブロック4の寸法の実質的半分の最大寸法を有しているか否かが 明らかでない点。」
原告の主張
審決には,引用発明の認定の誤り(取消事由1),引用発明と本願発明の対 比の誤り(取消事由2),及び,容易想到性の判断の誤り(取消事由3)があ り,これらの誤りは審決の結論に影響を及ぼすのであるから,審決は取り消さ れるべきである。
1 取消事由1(引用発明の認定の誤り) 審決は, 明の内容のうち,「テストのための接触装置であり,テストのため走査型電子 顕微鏡が用いられており」の部分について,認定に誤りがある。
4 すなわち,引用発明における走査型電子顕微鏡は,文字どおり「顕微鏡」で あるから,ウエハ表面の微細構造を観察することを目的とするものであり,接 触装置を用いたテストのために用いられるものではない。
引用例の記載(甲1,6欄50行目〜57行目)に照らすと,引用発明の上 記部分のうち前者のテストは,「テストプローブ42の一部を形成する電気接 触フィンガー44がウエハ2に接触していることにより,電力及びテスト信号 がウエハ2上のチップに供給される」ことによるチップのテスト(以下「第1 テスト」という。)であり,後者のテストは,「電子顕微鏡のビーム10の電子 の衝突の結果としてチップから放出される二次電子を検出する電位コントラス ト検出部72で観察される」ことによるテスト(以下「第2テスト」とい う。)であり,これらが同時に行われるものではあるが,両者は全く別個,独 立のテストである。
したがって,上記部分は,「第1テストのための接触装置であり,第2テス トのため走査型電子顕微鏡が用いられており」と認定されるべきである。
2 取消事由2(引用発明と本願発明の対比の誤り) 審決は, しかし,前記第2の2の本願発明における,「検査のための接触装置であ り,検査のため検査装置(100)が用いられており」の部分における「検 査のための接触装置」の「検査」(以下「検査1」という。)と,「検査のた め検査装置(100)」の「検査」(以下「検査2」という。)は同一のもの である。これを,本願発明の特許請求の範囲の記載及び本願明細書【006 5】ないし【0067】の記載に照らしてみると,本願発明における検査は 以下の内容を有するものであって,接触装置と検査装置を組み合わせて行う ものである。
「接触装置と検査装置の両方を用いた検査であって, @ 入力リードを介してディスプレイの画素の電極を電気的にチャージす 5 る検査であって,時間軸上の電位及びそのばらつきは,粒子ビームによ り計測され得る検査, A 画素の電荷は粒子ビームによりチャージされ,その結果の電位はまた 粒子ビームにより計測される検査であって,開始の条件及び境界線上の 条件は入力リードの制御により調節される検査,又は B 画素の電極は粒子ビームによりチャージされ,入力リードにおいて, その結果の電流が計測される検査。」 これに対し,引用発明におけるテストは前記1のとおりのものであり,二 つのテストを同時に行っているにすぎず,本願発明のように接触装置と走査 型電子顕微鏡とが組み合わされて使用されることに関しては,引用例には何 らの記載も示唆もない。したがって,引用発明における「テスト」は,本願 発明の「検査」に相当しない。
また,第1テストにおいては,テストのために走査型電子顕微鏡が用いら れておらず,引用発明における「走査型電子顕微鏡」は,本願発明における 「検査装置」に相当しない。
以上によれば,本願発明と引用発明との間には,発明の構成上,少なくと も以下の相違が存在する。
@ 引用発明における「走査型電子顕微鏡」は本願発明にける「検査装置」 に相当せず,引用例には本願発明における「検査装置」は記載されていな い。
A 本願発明では,接触ユニットが,光学軸に直交する一方向において,ホ ルダーの寸法の実質的半分の最大寸法を有しているのに対し,引用発明で はこのような構成が記載されていない。
3 取消事由3(容易想到性の判断の誤り) 審決は,本願明細書の発明の詳細な説明等の記載や検査の技術分野の技術 常識を考慮しても,接触ユニットの寸法を最大でもホルダーの寸法の実質的 6 半分とすることに格別の技術的意義は見出だせない旨認定判断した。
しかし,「接触ユニットの寸法を最大でもホルダーの寸法の実質的半分とすること」は,接触ユニットがホルダーの寸法の実質的半分の最大寸法を有している一方向に同一サイズの複数の検査体が配置された場合(判決注・本願明細書の図3a〜3d,4,6,7,8a〜8c,9,11a〜11d参照。これらの図面のうち図3a〜3dについては,後記第5の余については別紙参照。)に,「検査可能なあらゆるサイズの基板の検査に対して,常に接触ユニットがホルダーから外へはみ出ないで検査できる」ための臨界必要条件となっており,重要な技術的意義を有している。
なお,「臨界必要条件」とは,接触ユニットがホルダーの寸法の実質的半分の最大寸法を有している一方向に同一サイズの複数の検査体が配置された場合に,「検査可能なあらゆるサイズの基板の検査に対して,常に接触ユニットがホルダーから外へはみ出ないで検査できる」ならば,「接触ユニットがホルダーの寸法の実質的半分の最大寸法を有している」,すなわち,「接触ユニットは,ホルダーの寸法の実質的半分以下であり,ホルダーの寸法の実質的半分を超えることは無い。」が成立することである。例えば,「図4において最も右側の列にあるディスプレイ401を含めたすべてのディスプレイ401に対して,常に接触ユニットがホルダーから外へはみ出ないで検査できる」ならば,「接触ユニットは,ホルダーの寸法の半分を超えることは無い。」が成立する。 は,「十分条件」であり,「臨界必要条件」ではない。
したがって,本願発明において,接触ユニットの寸法を最大でもホルダーの寸法の実質的半分とすることは,当業者が容易になし得ることではない。
審決は,引用発明におけるテストプローブは,真空チャンバ内という限られたスペースに配置されて使用されるものであるから,テストプローブを小型化して,その寸法を小さくしようとすることは,当業者であれば容易に想 7 到し得ることである旨認定判断した。
しかし,本願発明がLCD基板のような大面積基板の検査を目的としているのと異なり,引用発明は,半導体ウエハ上のICチップのような比較的小さな面積の検査が検査対象となっている。
本願発明においては,本願明細書の図1において,ホルダー(サンプル支持体)130と接触ユニット150とコラム104のX方向の幅を比較すると,コラム104の幅よりもホルダー130及び接触ユニット150の幅は大きい。このため,ホルダー130及び接触ユニット150のサイズの大小によって,装置全体の設置面積や動作範囲が決定される。したがって,ホルダー130及び接触ユニット150のサイズに対して何らかの規定を設けることは,本装置の設置面積や動作範囲を規定する上で重要な技術的意義を持つ。
これに対し,引用例のFig.1では,ウエハ載置ブロック4,テストプローブ42及び電子顕微鏡の鏡筒部(図番無し)では,電子顕微鏡の鏡筒部の幅よりもウエハ載置ブロック4及びテストプローブ42の幅は小さいところ,ウエハ載置ブロック4及びテストプローブ42のサイズの大小は,装置全体の設置面積や動作範囲を決定するのではなく,むしろ電子顕微鏡の鏡筒部のサイズや他の部品のサイズが装置全体の設置面積や動作範囲を決定するのに支配的となるため,ウエハ載置ブロック4及びテストプローブ42のサイズに対して何らかの規定を設けることは,引用例の装置の設置面積や動作範囲を規定する上で重要な技術的意義を有していない。すなわち,引用例の装置において,ウエハ載置ブロック4及びテストプローブ42のサイズに対して何らかの規定を設けても,装置全体の設置面積や動作範囲の縮小,つまり装置の小型化にはつながらない。
したがって,引用発明においては,テストプローブを小型化することが装置全体の小型化にはつながらないため,テストプローブを小型化することに 8 よって,装置全体の寸法を小さくして,真空チャンバ内という限られたスペ ースにおける設置面積や可動範囲を小さくしようという動機付けは存在しな い。
よって,審決の上記認定判断は誤りである。
被告の反論
以下のとおり,審決の認定判断に誤りはない。
1 取消事由1(引用発明の認定の誤り)について 引用例の記載(甲1,4欄28行〜36行(訳文1頁16行〜20行)及び 6欄50行〜57行(訳文2頁11行〜14行)から,電気接触フィンガー4 4がウエハ2に接触した状態で,電位コントラスト電子顕微鏡によりウエハ上 のチップから放出される二次電子が検出され,チップのテストが行われている ことが読み取れるから,引用発明の「電気接触フィンガー44」は,チップの テストのための接触装置であり,また,「電位コントラスト電子顕微鏡」(走査 型電子顕微鏡)は,チップのテストのために用いられているということができ る。
仮に,原告が主張するように,引用発明において第1テストと第2テストが 行われているとしても,いずれのテストもチップのテストであるから,「電気 接触フィンガー44」は,チップのテストのための接触装置であり,また, 「電位コントラスト電子顕微鏡」(走査型電子顕微鏡)は,チップのテストの ために用いられているということができる。
したがって,審決における,「テストのための接触装置であり,テストのた め走査型電子顕微鏡が用いられており」という部分の引用発明の認定に誤りは ない。
2 取消事由2(引用発明と本願発明の対比の誤り)について 本願の請求項8における,「検査のための接触装置」の「検査」(検査1), 及び「検査のため検査装置(100)」の「検査」(検査2)には,検査体の検 9 査であれば,どのような検査であっても含まれることになる。
そして,引用発明におけるチップの「テスト」は,本願発明における検査体 の「検査」に相当するから,引用発明における「走査型電子顕微鏡」は,本願 発明における「検査装置」に相当する。
したがって,審決に引用発明と本願発明の対比の誤りはない。
なお,本願明細書(【0031】〜【0080】)には,実施例として,検査 体に接触ユニットを接触させた状態で,電子ビームによって検査体を検査する 検査装置が記載されており,また,引用例には,テストされるチップにテスト プローブを接触させた状態で,電子ビームによってチップをテストする走査型 電子顕微鏡が記載されているから,実施例のレベルで引用発明と本願発明の対 比をしたとしても,引用発明における「走査型電子顕微鏡」は,本願発明にお ける電子ビームを利用した「検査装置」に相当する。
3 取消事由3(容易想到性の判断の誤り)について 本願明細書には,接触ユニットが光学軸に直交する一方向においてホルダ ーの寸法の実質的半分の最大寸法を有していることの技術的意義についての 記載はない。
原告の主張は,検査体の特定の配置を前提とするものであるが,本願発明 においては,基板上の検査体の配置は特定されていないから,上記主張によ り本願発明における上記の発明特定事項技術的意義が説明されるわけでは ない。
原告の主張する「臨界必要条件」についても,「同一サイズの複数列の検 査体が配置された場合」が前提となっている上に,接触ユニットがホルダー から外へはみ出ないで検査できるか否かは,接触ユニットの寸法だけでなく, 基板上における検査体の数や配置される位置,接触ユニットと検査体が接触 する位置,基板がホルダー上のどこに配置されるかなどにより,仮に,接触 ユニットがホルダーから外へはみ出ないとしても,装置を小型化できるか否 10 かは,接触ユニットの駆動装置の大小や具体的構造にもよるから,「臨界必要条件」なる条件を用いても,「接触ユニットの寸法が,光学軸と直交する一方向において,最大でもホルダーの寸法の実質的半分である」 ことの技術的意義が明らかになっているものとはいえない。
実際にも,本願明細書の図4においては,上記の発明特定事項を満たす接触ユニット150が最も右側の列にあるディスプレイ401に接触する場合には,接触ユニット150はホルダー130から外にはみ出すし,基板上の検査体の装置の配置が特定されていない場合にも,上記の発明特定事項を満たすからとからといって,接触ユニットがホルダーから外にはみ出ないで検査できるというわけではない。
したがって,本願発明において,接触ユニットが,光学軸に直交する一方向において,ホルダーの寸法の実質的半分の最大寸法を有していることに格別の技術的意義を見いだすことはできず,審決の認定判断に誤りはない。
本願発明においては,検査の目的がLCD基板のような大面積基板であることは特定されていない。
また,通常,特許文献の図面には実際の物の大きさが忠実に反映されているわけではないから,引用例のFig.1の記載をもって,「引用例の装置において,ウエハ載置ブロック4及びテストプローブ42のサイズに対して何らかの規定を設けても,装置全体の設置面積や動作範囲の縮小,つまり装置の小型化にはつながらない。」ということはできない。
そして,装置自体の小型化を図ることは,技術分野を問わず,一般的な課題・目的であり,特に,限られたスペースに配置されて使用される装置では,小型化が強く要請されることは明らかであるところ,引用発明におけるテストプローブは,真空チャンバ内という限られたスペースに配置されて使用される装置であるから,当該テストプローブを小型化しようとする動機は十分にあるということができる。
11 したがって,引用発明におけるテストプローブを小型化しようとする動機 付けはあるということができるから,審決の認定判断に誤りはない。
当裁判所の判断
当裁判所は,原告の各取消事由の主張にはいずれも理由がないから,審決に はこれを取り消すべき違法はないものと判断する。その理由は,以下のとおり である。
1 取消事由1(引用発明の認定の誤り)及び取消事由2(引用発明と本願発明 の対比の誤り)について 原告は,審決の引用発明の認定のうち,「テストのための接触装置であり, テストのため走査型電子顕微鏡が用いられており」との部分の認定に誤りがあ ることを前提に,審決の引用発明と本願発明の対比に誤りがあり,両発明の間 には審決の認定していない相違点が存在する旨主張している(前記第3の1, 2)。
そこで,上記部分に係る引用発明の内容及び同部分に対応する本願発明の内 容を検討し,その上で,審決の対比に誤りがあり,審決の認定していない両発 明の間の相違点が存在するかどうかを検討する。
本願発明の内容について ア 特許請求の範囲の記載について 本願発明の特許請求の範囲の記載は,前記第2の2のとおりであり, 「基板(140)上の少なくとも1つの検査体(301)の検査のための 接触装置であり,検査のため検査装置(100)が用いられており,検査 装置は光学軸(102)と光学軸に対応した検査範囲を有して」いること が発明特定事項とされている。そして,その文言上,「基板(140)上 の少なくとも1つの検査体(301)の検査のための接触装置」との発明 特定事項における「検査」(検査1)と,「検査装置は光学軸(102)と 光学軸に対応した検査範囲を有して」いるとの発明特定事項における「検 12 査」(検査2)とが含まれる。これらの文言上,接触装置による検査と検 査装置による検査が存在することが規定されていることは理解できるが, 両装置が組み合わせてなされる検査1と2が同一の内容のもののみを指す ものか,又は,両装置による検査が同時に行われることのみを意味し,し たがって,検査1と2の内容が異なる内容であるものも含むのかについて は,これを特定する記載はないし,いずれか一方が排除されると理解でき るような記載もない。
そうすると,「基板(140)上の少なくとも1つの検査体(301) の検査のための接触装置であり,検査のため検査装置(100)が用いら れており,検査装置は光学軸(102)と光学軸に対応した検査範囲を有 して」いるとの発明特定事項は,検査の内容につき,上記二種類の内容の ものをいずれも含むものというべきであり,このことは本願発明の特許請 求の範囲の記載から明確に理解できるものというべきである。
イ 本願明細書の記載について これに対し,原告は,本願明細書の記載に照らし,検査1及び2はいず この点につ き,本願明細書の記載を参照する。
本願明細書(誤訳訂正に関する平成21年8月24日付け補正後のも の)には,以下の記載がある(甲2。なお,明らかに誤記と認められる 部分は訂正した。)。
a 技術分野 「【0001】 本発明は,広い領域を検査することに関し,特に粒子ビームを用い る検査が検査方法として使用される。特に,本発明は検査体への接触 に関する。詳細には,本発明は,基板を位置決めして基板に接触する ための方法,基板を検査するための方法,検査のために少なくとも1 13 つの検査体を検査システムに接触せしめるための装置に関する。」b 背景技術 「【0002】 画像電子管を使用しない表示要素への要求が増加するにつれ,例え ば,薄膜トランジスタ(TFT)など,要素を制御する液晶表示(L CD)及び他の表示要素のための規格が増加する。これらの表示要素 は,マトリックス状に配列された画素を含む。
【0003】 また,他の分野において,ますます多くの要素が検査されなければ ならない。これは,例えば,マイクロエレクトロニック,及び/又は マイクロメカニック要素である。これらの要素は,例えば,薄膜トラ ンジスタ,チップの接続ネットワーク,トランジスタ,エミッタアレ イの電子エミッタ,ディスプレイのピクセル(画素)のための電極, アレイ又は他の要素のマイクロメカニックミラーである。これらは複 数の要素(100000〜数1000000)として存在し,各要素 は電気的に制御可能であることにおいて,識別できる。
【0004】 例えば,表示要素の良好な画像品質を得るために,数百万画素の少 数のみが欠陥を有することが許される。コスト効率のよい生産を保証 するために,継続的にサイズが大きくなる表示要素にとって,インサ イチュ(その場で(in situ))で検査する方法において,大きな容 量を提供することは重要なことである。そのような検査は,例えば, EP523594の出願に開示されている。この検査方法により, 個々の画素は粒子ビームにより検査される。この粒子ビームは,供給 線を介して適用される電荷を検出するため,及び/又は,画素電極上 に電荷を荷電するための,いずれかのために用いられる。
14 【0005】 そのような検査方法のために,接触ユニットが用いられる。それは一方では,外部デバイスへの信号転送を可能とし,他方では,電子ビームによる走査を可能とする。これにより,現技術水準によれば,異なる解決法が存在する。
【0006】 ディスプレイが検査される場合,そのディスプレイに電気的に接触するフレームをディスプレイの領域の周りに配置することができる。
通常,1枚の基板上に,5〜6枚のディスプレイが配置されている。
電子ビームシステムの限られた検査範囲に鑑みると,1つのディスプレイのみが検査可能である。その理由は,更なるディスプレイの検査のためには,接触ユニットが上げられ,基板が動かされ,接触ユニットを次のディスプレイにセットするからである。しかしながら,このような構成を用いると,粒子ビームの走査が届き得る表面全体のディスプレイのみしか検査され得ない。
【0007】 更に,1枚のガラス基板の全てのディスプレイに同時に接触する接触フレームがある。他のディスプレイが検査される場合,そのような接触フレームが基板に配置される。
【0008】 そのような基板全体のための接触フレームの欠点は,ディスプレイのサイズが変化する場合,接触フレーム全体を交換する必要があることである。このため,そのシステムは処理枚数を変更する場合,一旦,大気に戻さなければならず,それは生産性を低くする。更に,必要に応じて適用するために,可変のディスプレイのタイプ及びディスプレイのサイズのために接触フレームを保存する必要がある。」 15 c 発明の開示 「【0009】 本発明の目的は,この先端技術の問題を少なくとも部分的に解決す るものである。特に,1つの装置により異なる面積の検査体を有する 異なる検査体を,一回の検査の間に,検査することが可能となる。
【0010】 これにより,本発明の中で検査体は,例えば,個々の回路,ディス プレイ,一群のディスプレイ,他のマイクロエレクロトニック又はマ イクロメカニックな要素のアレイであり,こららは,例えば,回路の 領域間でのショート及び接触不良が検査される。・・・ 【0012】 一特徴によれば,本発明の目的は,光学軸を有する検査装置によっ て,検査中に接触ユニットを位置決めするための方法によって解決さ れる。従って,いくつかの検査体を有する基板は,サンプル支持体, 即ち,基板ホルダー上に位置決めされる。この基板は光学軸に対し動 かされ,その結果,検査体の領域は検査装置の計測範囲になる。検査 体に接触するための接触ユニットが位置決めされ,これにより,その 検査ユニットの位置決めは,基板の位置決めに少なくとも部分的には 関係しない。接触ユニットの位置決めは,その接触ユニットが検査体 の1カ所で接触する配置,若しくは,いくつかの所で接触する配置と なるのに好適なものである。・・・ 【0017】 更なる特徴によれば,発明性のある目的は,検査システムのために 用いられる,接触のための装置によって解決される。このシステム は,位置決めユニットを備えたサンプルの支持体を含む。この位置決 めユニットは,検査装置の光学軸に垂直な2つの方向において移動 16 (変位)する範囲を有する。また,接触ユニットは,検査装置の光学軸に垂直な2つの方向において移動(変位)する範囲を有する。これにより,接触ユニットの少なくとも1つの移動(変位)の範囲がサンプル支持体の対応する移動(変位)の範囲より小さい。・・・ 【0019】 本発明の主要な特徴は,接触するための装置である。これは基板及び対応する移動(変位)ユニットのためのホルダーを含む。更に,移動(変位)可能な接触ユニットも存在し,これは粒子ビームテスターの光学軸に垂直な少なくとも1の方向を有し,これはその方向におけるホルダーの寸法の最大半分である。・・・ 【0021】 本発明の更なる特徴によれば,接触するための装置が開示されている。これは基板,及び,対応する移動(変位)ユニットのためのホルダーを含む。更に,粒子ビームの光学軸に垂直な,少なくとも1方向において,基板よりも小さいか,若しくは,この方向において基板の面積の最大半分の大きさを有する移動(変位)可能な接触ユニットも存在する。
【0022】 本発明により改善し得る装置は,基板よりも大きいホルダーを有することもできる。基板がホルダーよりも大きい場合,接触ユニット及びホルダーとの間の上述した相対的な大きさは,少なくとも検査されるべき基板との関係となる。これは,相対的大きさが基板に対する接触ユニットとして与えられることを意味する。
【0023】 これにより,接触ユニットが粒子ビームテスターの光学軸に垂直な2つの方向を有し,その方向におけるホルダの寸法が最大半分である 17 ことが特に好ましい。
【0024】 本発明は,次のようにも言い表せる。本発明の一特徴によれば,そ の目的は,検査システム内にある接触のための装置によって解決され る。検査システムはホルダーを含み,それは検査装置の光学軸に対し て移動(変位)可能である。また,接触ユニットを有し,それは前記 光学軸に対して移動(変位)可能である。この接触ユニットは,基板 の検査の間,基板に対しても移動(変位)可能である。」d 実施例 「【0031】 本発明はさまざまな検査方法のために用いられ得る。簡単化のため に,本発明は粒子ビームによりディスプレイを検査することにより, まず以下のように記述される。・・・ 【0035】 一般に,ディスプレイは,ディスプレイの機能を検査するために, 検査方法のために電気的に接触していなければならない。従って,接 触ユニット150はガラス基板の上に置かれる。この接触ユニット は,ディスプレイに対する電気的接触をもたらす。これにより,ディ スプレイは検査のために必要な外部デバイスに電気的に接続され得 る。・・・ 【0047】 図1は,検査システム10 0を図示する。この検査シス テムは,粒子ビームの手段に よって,ガラス基板140, 若しくは,他の基板上に設け 18 られた,例えばディスプレイのような検査対象を検査する。この検査システムは,例えばコラム104などの検査装置をその一部として含む。コラム内では,粒子線がエミッタ10において生成される。・・・ 【0049】 更に,図1は,穴12,偏向器14及びレンズ16を図示する。これらは光学軸102に沿って電子ビームをイメージ化するのに役立つ。移動(変位)ユニット132及び134は,検査チャンバ108に設けられる。サンプル支持体130は,移動(変位)ユニットとともにX方向及びY方向に移動(変位)され得る。図1において,これは相互に移動(変位)可能な2つの移動(変位)ユニットによって実現される。こうしてX方向における移動(変位)ユニットの移動(変位)に関しては,基板を備えたホルダーと同様,移動(変位)ユニット132がX方向に動かされる。それとは独立に,移動(変位)ユニット132はY方向におけるガラス基板140を備えたサンプル支持体134の移動(変位)のために制御される。これにより,基板を備えたサンプル支持体はX-Y平面内で動かされ得る。・・・ 【0051】 駆動機構152は,検査装置の光学軸102に対して,及び,サンプル支持体130に対して,接触ユニットの独立の動きのために供する。接触ユニット150の信号の接続は,接触接続154により生じる。更に,図1内で制御及び動作ユニット135,153,160,162,及び164が図示され,それらは検査システム100の使用に関連して,より詳細に説明される。・・・ 【0057】 基板上のディスプレイの検査の間,ディスプレイは外部の信号,若 19 しくは,信号が供給され,それらはディスプレイ内に生成され,計測されなければならず,また,評価ユニットに入力されなければならない。従って,ディスプレイは電気的に接続している。このため,接触ユニット150が用いられる。接触ユニットは,接触アセンブリ200(図2参照)に電気的接触を接触ピンでもたらす。接触アセンブリ200は,1つのディスプレイの接触のために供するか,若しくは,いくつかのディスプレイの接触のために供する。
【0058】 図2は,接触アセンブリ200の2つの例を示す。この接触アセンブリは,個々の接触パッド212を含む。これらは領域210上に配置される。接触パッド間の距離は,図2中に220及び222により示される。・・・ 【0065】 以下において,検査システム100による検査方法が電子ビームの方法により記述されるが,本発明はそれに制限されるものではない。
可能な検査方法は,例えば,入力リードを介してディスプレイの画素の電極を電気的にチャージすることである。時間軸上の電位及びそのばらつきは,粒子ビームにより計測され得る。これにより,寄生素子及びその幅を決定することができると共に,ショートした回路若しくは接触不良などの欠陥を検出することも可能である。
【0066】 他の方法において,画素の電荷は粒子ビームによりチャージされ,その結果の電位はまた粒子ビームにより計測される。開始の条件及び 20 境界線上の条件は,入力リードの制御により調整される。
【0067】 更なる方法において,画素の電極は粒子ビームによりチャージされ,入力リードにおいて,その結果の電流が計測される。
以下において,本発明の原理が図3a及び図3bに関して例示的に説明される。
【0068】 図3a及び図3b内のアセンブリ300は,その平面図においてガラス基板140を図示し,そのガラス基板はサンプル支持体130上に位置する。ディスプレイ301若しくはディスプレイ301の回路,本装置内で検査されるべき,はガラス基板上に設けられる。図3a及び図3bは同じアセンブリを示し,これによりガラス基板は示されたガイド350に対して動かされる。
【0069】 更に,図3a及び図3bは,接触ユニット150を図示する。接触ユニットはフレームの形を有する。このフレームは検査されるべきディスプレイの領域をカバーするのに十分でないサイズを有する。電子ビームにより検査され得る検査の範囲302は,図3中にグレーにより示される。検査範囲は,検査装置により検出され得る領域である。
検査範囲の外側は,電子ビームによって計測が行われることはできな 21 い。検査範囲内で,電子ビームは走査ユニットにより電子ビームを偏光させることにより計測を行う。これにより電子ビームは,走査ユニットによりX方向及びY方向に走査方向が偏光され,その結果,検査範囲302は電子ビームにより連続的に記録され得る。また,1方向にのみ電子ビームを偏光させることが可能であり,基板の移動(変位) により別の 方向において検査範囲を拡大することも可能で ある。・・・ 【0072】 ディスプレイの検査のために,接触ユニット350を伴った接触アセンブリが必要である。図3内において,接触ユニットはフレームの形を有している。より効果的には,このフレームは,ディスプレイ301の領域をカバーしないような十分な大きさのものである。
【0073】 この検査方法の間,まずディスプレイの第1の領域303は,それは検査範囲302内に位置するのであるが,検査される。これは,図3aに示されるとおり,ガラス基板140及び接触ユニット150の光学軸102に対する相対的な配置に対応する。光学軸102及び検査範囲302は(本方法のステップの如何なるものにおいても),それぞれに対して変動しない。この検査範囲302は,光学軸102からの電子ビームの偏光による結果である。これにより,検査範囲302のサイズは,例えば,光学軸102からの電子ビームの最大偏光値によって制限される。
【0074】 ディスプレイの領域303の検査の後,基板はXの負の方向において距離312だけ動かされる。これにより,ディスプレイ301の第2の領域304は,検査装置の検査範囲302において位置決めされ 22 る。こうして,ディスプレイの第2の領域304は検査され得る。接触ユニットによる接触は,ディスプレイ301の第2の領域304の検査のためにも必要である。従って,接触ユニットも移動(変位)される。これによりXの負の方向における移動(変位)は,基板の移動(変位)312と同等のものである。これにより,接触ユニット150は基板に沿って動かされ(移動(変位)312),その結果,接触がその時間の間,存在する。
【0075】 ガラス基板140及び接触ユニット150の移動(変位)の後,図3bに示される状態となる。第1のディスプレイの第2の領域304が検査される。基板140上の全てのディスプレイ301を検査するために,基板140は再び光学軸301に対して(及び,それにより検査範囲302に対して)動かされなければならない。この基板の移動(変位)は,矢印314により示される。この後,図3cに示される状態となる。
【0076】 図3bから図3cへの遷移は,更なるディスプレイの検査のためのステップを明確にする。まず,接触ユニット150が持ち上げられる。基板が接触ユニット(矢印314参照)に対して動かされる。これにより,接触ユニットは更なるディスプレイの上に位置決めされる。この後,接触ユニットは更なるディスプレイに接触する。検査範囲302若しくは電子ビームの光学軸に対する基板の移動(変位)はそれぞれに図3内にあ 23 り,ガイド350により付加的に説明される。
図3bにおいて,検査されるべき第2のディスプレイのための検査方法が適用され,それは図3aに説明された方法と類似するように行われる。まず,第2のディスプレイ301の第1の領域303が,電子ビーム検査装置の検査範囲302内に位置決めされる。1つ,若しくは,いくつかの検査方法が,接触ユニット150によるディスプレイへの接触により,第2のディスプレイ301が第1の領域303の適用範囲になり得る。この後,移動310及び312(図3aから図3b)に類似するように,接触ユニット150とともにガラス基板140が第2のディスプレイのために動かされる。これら2つの移動(変位)は,図3dに示されるような状態となる。これにより,第2のディスプレイの第2の領域304もまた,接触ユニット150を用いて検査され得る。
【0077】 上述のとおり,第1の領域303から第2の領域304へのディスプレイ301の検査のための切り替えを行うために,ガラス基板は,接触ユニットが同じ方向に同じ量だけ基本的に動くと同様に,ガラス基板もX方向の負の方向(312参照)に動かされる。・・・ 【0081】 図3a及び図3bに関して記載された実施例は,一般に次の発明性ある特徴があるとして説明され得る。
【0082】 上述の発明性ある方法及び発明性ある接触ユニットは,例示的にデ 24 ィスプレイのために説明されていた。本方法は,他の検査体の検査の ためにも用いられ得る。検査体は,例えばディスプレイのような,本 発明内において理解され得るべきであり,ガイドの領域間でのショー トもしくは断線に関して検査されるような個々の回路と同様に,ディ スプレイ,一群のディスプレイ,他のマイクロエレクトロニクス,若 しくはマイクロメカニックな要素の配列であってもよい。」a 以上を前提に検討すると,確かに,本願明細書【0065】ないし 【0067】には,本願発明において粒子ビームを用いてディスプレ イを検査する実施例において,粒子ビームを用いる検査装置と接触装 置とを組み合わせて検査を行う方法が記載されており,これは検査1 と2とが同一のものを指すことを示すものであるといえる。
b しかし,他方で,本願明細書の記載によれば,本願発明における検 査体は,「薄膜トランジスタ,チップの接続ネットワーク,トランジ スタ,エミッタアレイの電子エミッタ,ディスプレイのピクセル(画 素)のための電極,アレイ又は他の要素のマイクロメカニックミラ ー」(【0003】)といったトランジスタ等が接続された回路や, 「他のマイクロエレクロトニック又はマイクロメカニックな要素のア レイ」(【0010】)といった他の電子的な回路をも含むものであ って,本願明細書【0065】ないし【0067】に記載された実施 例におけるディスプレイのみに限られるものではない。このことは, 本願明細書【0082】に,本願明細書【0031】ないし【008 1】に記載された実施例につき,例示的にディスプレイに関して説明 したもので,本願発明は,他の検査体の検査のためにも用いられ得る ものであって,他のマイクロエレクトロニクス,若しくはマイクロメ カニックな要素の配列であってもよい旨の記載があることからも明ら かである。
25 c また,本願発明は,粒子ビームを用いる方法以外にも様々な検査方 法のために用いられ得るものであり(【0031】),上記【006 5】ないし【0067】の記載も,「簡単化のために」粒子ビームに よりディスプレイを検査することを前提に(【0031】)記載され たものにすぎない。したがって,本願発明における検査の内容として は様々なものが想定され得るものといえる。
d 加えて,本願明細書の記載によれば,従来から,コスト効率のよい 生産を保証するために,継続的にサイズが大きくなる表示要素にとっ て,インサイチュ(その場で(in situ))で検査する方法におい て,粒子ビームによる検査が用いられているが(【0004】),そ のような検査のために外部デバイスへ信号転送を可能にしたり,電子 ビームによる走査を可能とする接触ユニットが用いられていた(【0 005】)。そして,ディスプレイが検査される場合には,ディスプ レイに電気的に接触するフレーム(接触ユニット)が配置され,一つ のディスプレイのみが検査され,別のディスプレイを検査するために は,接触ユニットが上げられ,基板が動かされ,接触ユニットを次の ディスプレイにセットすることとなるが,この場合,粒子ビームの走 査が届き得る表面全体のディスプレイのみしか検査され得ないという 問題(接触ユニットが粒子ビームに対して移動できないからであると 解される。)があり(【0006】),また,ガラス基板の全てのデ ィスプレイに同時に接触する接触フレーム(接触ユニット)があるが (【0007】),このような接触フレームはディスプレイのサイズ が変化すると接触フレーム全体を交換する必要があるという問題があ った(【0008】)。本願発明は,このような問題を解決するもの であり,(粒子ビームによる)検査装置の検査範囲となるように(粒 子ビームの)光学軸に対して検査体は動かされ,この検査体に接触す 26 るように接触ユニットが位置決めされる。すなわち,接触ユニットの 位置決めは,複数の検査体を有する基板の位置決めに関係せずに行な われることにより解決するものである(【0012】)。
以上の本願明細書の記載を踏まえると,本願発明における「前記接 触ユニットと光学軸は,基板の検査の間,互いに移動可能であり,前 記接触ユニットはホルダーに対して独立しており,移動可能であ」る との発明特定事項は,光学軸と基板が相対的に移動可能とすること で,光学軸を有する検査装置による検査範囲に基板の被検査範囲を置 くことができるようにし,さらに,接触ユニットは基板に対して独立 して動けるようにすることで,この基板に対して接触ユニットを検査 に必要な位置に配置できるようにして,基板上の検査対象である検査 体が光学軸を有する検査装置の検査範囲に置かれるようにしつつ,検 査体に接触装置が接触できるようにしたものであるといえる。
したがって,本願発明において行われる検査とは,検査対象である 検査体が光学軸を有する検査装置の検査範囲に配置されたときに,接 触装置が検査体の必要な箇所に接触するものであるというにとどまる というべきである。
e 以上によれば,本願明細書の記載を考慮しても,本願発明は,接触 装置による検査と検査装置による検査とを同時に行うことができるこ とを前提とするものであるとはいえるが,これらを組み合わせて同一 の検査を行うことのみに限定されるものとはいえず,したがって,検 査1と2が必ずしも同一の内容を指すものとはいえない。前記aの点 は,本願発明の実施例を示したものにすぎず,本願発明は,これらの 構成に限定されるものではないというべきである。
ウ 小括 前記ア及びイの説示からすれば,本願発明は,接触装置による検査と検 27 査装置による検査とが同時に行われることをいうにとどまり,したがっ て,検査1と2とは,組み合わせてなされる同一の内容の検査を指すもの に限られず,異なる内容の検査を指すものもあり,その双方を含むものと 認められ,このことは本願の特許請求の範囲の記載から明確に理解できる 上に,本願明細書の記載とも整合するものであるといえる。
エ 原告の主張について 原告は,検査1と2は同一のものであり,本願発明における検査は,接 触装置と検査装置を組み合わせて行うものである旨主張する(前記第3の しかし,前記アないしウにおいて説示したところに照らすと,原告の上 記主張は,本願の特許請求の範囲の記載や本願明細書の記載に基づかない ものというほかなく,同主張は採用することができない。
引用発明の内容についてア 引用例の記載について 引用例には以下の記載がある(甲1。翻訳は審決の「当審訳」による。
また,付した欄及び行は甲1の原文のものである。)。
「好ましい実施形態において,本発明は,半導体ウエハ用の位置決め ステージ,機械的な接触"フィンガー"を持つ電気テストプローブの第 2の位置決めステージと,2つの位置決めステージを接続するための電 磁クランプ配置を含み,これらは電位コントラスト走査型電子顕微鏡真 空チャンバシステムの一部を形成する。ウエハ位置決めステージは,水 平X-Y平面内でウェハを移動させるX及びYドライブによって駆動さ れる。プローブ位置決めステージは,X-Y平面に平行なX'-Y'平 面内で水平方向に移動できるようにトランスレーションベアリングを介 して真空チャンバの壁に結合され,かつ,真空システムの外へ導く機械 的フィードスルーの配置を通して,Z方向に上下に移動させられる。
28 プローブフィンガーは,ウエハ位置決めステージ上に搭載された半導体ウェハ上のICチップ上方に位置し,ICチップの接触パッドと整列する。プローブの垂直位置は,プローブのフィンガーがICチップ上の接触パッドに触れているように調整される。そうすると,電力及びテスト信号をテストチップに加えることができ,かつ電気的テストの結果の読み取りをプローブフィンガーの接触を介して行うことができる。クランプ装置は,2つの位置決めステージを接続するために使用することができるので,ウエハとプローブは,IC回路がプローブ接触フィンガを介して通電されている間,一体として一緒に移動する。
チップ回路が給電されている間,電位コントラスト電子顕微鏡の視野内のICチップの一部分を見ることができるので,チップの動作をテストすることができる。チップは,接触しているプローブフィンガーと一緒に,チップの所望の領域を調べるために,顕微鏡の視野内で移動することができる。ウエハ上の残りのチップは,2つの位置決めステージを分離するために電磁クランプへの通電を止め,ウェハとプローブを再度位置決め,調整し,別のICチップの接触パッドに触れるようにプローブフィンガーを下げ,再度,クランプ装置の電磁石に通電することにより,同様に,テストすることができる。」(甲1,4欄4行〜46行) 「図1を参照すると,本発明の好ましい実施形態の断面図を見ることができる。半導体ウエハ2は,真空チャンバ8内のX-Yステージ天板6上のウエハ載 29 置ブロック4に載せられている。ウエハ2は,所定の位置にウェハを保持するためのばねクリップなどの従来装置(図示せず)を用いて載置ブロック4に載せられている。走査型電子顕微鏡の電子ビーム10は,ウエハ上に向けられる。
ウエハ位置決めステージ12は,天板6,リニアXトランスレーションベアリング14a,14bの組,中間プレート16及びリニアYトランスレーションベアリング18a,18bの組を備えている。」(甲1,4欄47行〜59行) 「天板6は,電子ビーム10に対して実質的に垂直である。(中略)天板6は,X駆動モータ20に応答して,図1の左右に動く。」(甲1,5欄5行〜13行) 「金属製の接触フィンガー44の組を持つテストプローブ42は,プローブ位置決めステージ46に取り付けられている。(中略)プローブ載置部47は,X-Yステージ天板に平行なX'-Y'平面内で移動できる・・」(甲1,5欄33行〜49行) 「X'及びY'ベアリングにより,プローブ位置決めステージ46とウエハ位置決めステージ12が一緒にクランプされるときに,テストプローブ42は,ウエハ2と一体として移動できる。電磁コイル56が励磁されていないとき,ウエハ位置決めステージ12は,電気テストプローブ42と独立して移動できる。」(甲1,6欄5行〜10行) 「図1に示すように,テストプローブ42の一部を形成する電気接触フィンガー44がウエハ2に接触していることにより,電力及びテスト信号がウエハ2上のチップに供給される。チップがテストされ,同時に,電子顕微鏡のビーム10の電子の衝突の結果としてチップから放出される二次電子を検出する電位コントラスト検出部72で観察される。」(甲1,6欄50行〜57行) 30 「図1,2,3,4(判決注・図4は省略)を再び参照すると,ICチップのテストにおけるイベントのシーケンスは次のようになる。チップ回路が設けられたウエハ2が,真空チャンバ8内にある板6のウエハ載置ブロック4上に置かれる。テストされるICチップに合う接触フィンガー44のカードが,テストプローブ42に設置され,ウエハ2のほぼ上方に配置されるが,ウェハとは接触していない。そして,ウエハ2は,互いに垂直なトランスレーションベアリング14及び18上の水平面内でウエハ2を移動させる上述したような駆動装置で,電気プローブ42に対して相対的に整列させられる。ウエハ2に対するテストプローブ42の垂直方向や角度方向の精密な調整は,上述した垂直方向と角度方向のたわみ構造で行うことができる。
調整ができたら,テストプローブ接触フィンガー44は,ウエハ2に接触するまで降下する。このとき,ウエハ位置決めステージ12にプローブ位置決めステージ46をクランプするために,電磁石のコイル56に電流が流される。クランプが行われた後のウエハ2の動きは,X'及びY'のトランスレーションベアリングのセットにより調整される。電位コントラスト走査型電子顕微鏡の視野内にある,テストプローブ接触フィンガー44が接触するチップの位置は,X駆動モータ20及びY駆動モータ34によって制御することができる。特定のチップの異なる領 31 域を検査することができ,そして,ウェハ上の全チップを順次検査する ことができる。」(甲1,7欄32行〜61行)イ 引用発明の認定について 以上によれば,引用発明においては,「テストプローブ42の一部を形 成する電気接触フィンガー44がウエハ2に接触していることにより,電 力及びテスト信号がウエハ2上のチップに供給される」ことによるテスト (原告主張の第1テスト)と,「チップがテストされ,同時に,電子顕微 鏡のビーム10の電子の衝突の結果としてチップから放出される二次電子 を検出する電位コントラスト検出部72で観察される」とのテスト(原告 主張の第2テスト)とが同時に行われているのであるから,引用発明につ き,審決が「ウエハ2上の少なくとも1つのチップのテストのための接触 装置であり,テストのため走査型電子顕微鏡が用いられており」と認定し たこと自体に誤りはない。
また,前記アの引用例の記載に照らすと,上記部分以外の審決による前 。
本願発明と引用発明の対比についてア とおり,本願発明は,接触装置による検査と検 査装置による検査とが同時に行われるものであるが,検査1と2とは,組 み合わせてなされる同一の内容の検査を指すものも,異なる内容の検査を 指すものもいずれも含むものである。
説示のとおり,引用発明においても,「ウエハ2上の少 なくとも1つのチップのテストのための接触装置」と「テストのため走査 型電子顕微鏡」がそれぞれ用いられているところ,「走査型電子顕微鏡」 は本願発明における「検査装置」に相当し,かつ,両装置を用いたテスト の内容が異なるものであるとしても,これらのテストが同時に行われるも のである。
32 そうすると,引用発明における第1テスト及び第2テストは,それぞれ 本願発明における検査1及び2に相当するものということができる。
したがって,審決が,本願発明と引用発明とは,「基板上の少なくとも 1つの検査体の検査のための接触装置であり,検査のため検査装置が用い られており」との点で一致するとした点に誤りはない。
審決の一致点の認定 にも誤りはない。
イ 原告の主張について これに対し,原告は,検査1と2は同一のものであり,本願発明におけ る検査は,接触装置と検査装置を組み合わせて行うものである一方,引用 発明では,二つのテストを同時に行っているにすぎず,本願発明のように 接触装置と走査型電子顕微鏡とが組み合わされて使用されることに関して は,何らの記載も示唆もないから,引用発明における「テスト」は,本願 発明の「検査」に相当しない,引用発明の第1テストにおいては,テスト のために走査型電子顕微鏡が用いられておらず,引用発明における「走査 型電子顕微鏡」は,本願発明における「検査装置」に相当しないとし,し たがって,本願発明と引用発明との間には,「引用発明における「走査型 電子顕微鏡」は本願発明における「検査装置」には相当せず,引用例には 本願発明における「検査装置」は記載されていない」との相違点がある旨 )。
しかし,本願発明が,接触装置と検査装置が組み合わせてなされる,検 査1と2とが同一の内容のものを指すもの いて説示したとおりであるから,原告の上記主張はその前提を欠くもので ある。
そして,審決の引用発明の認定に誤りがなく,本願発明と引用発明の間 には審決の認定したとおりの一致点が存在することは,前記 33 において説示したとおりである。
よって,原告の上記主張は採用することができない。
2 取消事由3(容易想到性の判断の誤り)について 小型化の動機付けについて ア の引用例の記載及び引用発明の内容に照らすと,引用発明 は,チップのテストを行う装置であり,テストプローブ42は,ウエハ載 置ブロック4上に保持されたウエハ2に備えられた少なくとも一つのチッ プのテストを行うものであるから,一つのチップの一方向の寸法がウエハ 載置ブロック4の一方向の寸法の半分より小さいことは当然想定されるも のであるし,ウエハ2上に備えられるチップの数や配置の方法についても 様々なものが想定され得るものである。そうすると,そのようなチップに 接触してテストするためのテストプローブ42の寸法についても,テスト の対象となるチップの大きさや数,配置等に合わせて適宜設計すべき事項 であると解される。
しかも,引用発明において,テストプローブ42は,ウエハ載置ブロッ ク4等と共に真空チャンバ8内に配置されて使用されるものであると認め られる。そして,検査対象であるウエハ上のチップに異物や不純物が付着 することを防ぐために,真空チャンバ8の内部に異物や不純物となるよう な物質が混入しないようにする必要があるところ,この状態を維持するた めには,真空チャンバ8内の空間が小さい方がより効率が良いものといえ る。そうすると,真空チャンバ8内の空間を小さくするために,真空チャ ンバ8内の各部材を小さくすることは当業者であれば容易に想到し得た事 項であるといえる。このことは,真空チャンバ8内の部材であるテストプ ローブ42についても同様であると解される。そして,テストプローブ4 2は,ウエハ載置ブロック4をはみ出すことがない程度にまで小型化でき れば,それ以上小さくしても真空チャンバ8の小型化には寄与しないこと 34 から,テストプローブ42はウエハ載置ブロック4をはみ出すことがない 程度にまで小型化することは当業者にとって容易に想到し得た事項であ る。そして,この場合には,テストの対象となるチップの大きさに照らす と,チップを一つずつテストする場合には,テストプローブ42が,電子 ビーム10が沿う軸に直交する一方向において,ウエハ載置ブロック4の 寸法の半分以下の寸法となることが明らかである。
イ 原告の主張について 原告は,本願発明がLCD基板のような大面積基板の検査を目的として いるのに対し,引用発明は,半導体ウエハ上のICチップのような比較的 小さな面積の検査が検査対象となっているため,本願発明においては,ホ ルダー130及び接触ユニット150のサイズに対して何らかの規定を設 けることは,本装置の設置面積や動作範囲を規定する上で重要な技術的意 義を持つが,引用発明では,ウエハ載置ブロック4及びテストプローブ4 2のサイズの大小は,装置全体の設置面積や動作範囲を決定するのではな く,むしろ電子顕微鏡の鏡筒部のサイズや他の部品のサイズが装置全体の 設置面積や動作範囲を決定するのに支配的となるため,ウエハ載置ブロッ ク4及びテストプローブ42のサイズに対して何らかの規定を設けること は,引用例の装置の設置面積や動作範囲を規定する上で重要な技術的意義 を有しておらず,引用発明において,ウエハ載置ブロック4及びテストプ ローブ42のサイズに対して何らかの規定を設けても,装置全体の設置面 積や動作範囲の縮小,つまり装置の小型化にはつながらないから,引用発 明において,ウエハ載置ブロック4及びテストプローブ42を小型化する しかし,引用発明において,ウエハ載置ブロック4に対するテストプロ ーブ42の寸法を適宜設計できることは前記アにおいて説示したとおりで ある。また,電子顕微鏡の鏡筒部のサイズや他の部品のサイズが装置全体 35 の設置面積等を決定するのに支配的となるとしても,前記ア説示のとおり,真空チャンバ8内の空間を小型化するという観点で見た場合,テストプローブ42を小型化することによる真空チャンバ8の小型化もなし得ることであり,他の部品のサイズと比較して,小型化に対する貢献度が小さいというだけで直ちに,テストプローブ42を小さくするという動機付けが存在しないといえるわけではない。
なお,本願発明の検査の対象が,LCD基板のような大面積基板のみとかである。
よって,原告の上記主張は採用することができない。
「接触ユニットの寸法を最大でもホルダーの寸法の実質的半分とすること」の技術的意義について原告は,「接触ユニットの寸法を最大でもホルダーの寸法の実質的半分とすること」は,接触ユニットがホルダーの寸法の実質的半分の最大寸法を有している一方向に同一サイズの複数の検査体が配置された場合(本願明細書の図3a〜3d,4,6,7,8a〜8c,9,11a〜11d参照)に,「検査可能なあらゆるサイズの基板の検査に対して,常に接触ユニットがホルダーから外へはみ出ないで検査できる」ための臨界必要条件となっており,重要な技術的意義を有している旨主張するので(前記第3の3 ),本願発明の上記発明特定事項が原告の主張するような格別の技術的意義を有するものであるか検討する。
原告の上記主張は,接触ユニットがホルダーの寸法の実質的半分の最大寸法を有している一方向に同一サイズの複数の検査体が配置された場合を前提とするものである。しかし,前記第2の2のとおり,本願発明の特許請求の範囲の記載において,配置される検査体の数や配置の位置等については何ら特定されていない。そうすると,仮に,原告の主張の前提となる接触ユニッ 36 トがホルダーの寸法の実質的半分の最大寸法を有している一方向に同一サイズの複数の検査体が配置された場合に,原告の主張するような技術的意義が存在するとしても,そのことをもって直ちに,本願発明の技術的意義が明らかになっているものとはいえない。実際に,本願発明は,一方向に検査体が単数(すなわち一つ)しか配置されない場合も含むものと解するべきところ,このような場合には,接触ユニットの寸法を最大でもホルダーの寸法の実質的半分としなくても,すなわち,接触ユニットの寸法がホルダーの寸法の実質的半分より長くても,常に接触ユニットがホルダーから外へはみ出ないで検査できることとなる。したがって,このような場合に,上記発明特定事項には格別の技術的意義はない。
また,原告の主張するような,接触ユニットがホルダーの寸法の実質的半分の最大寸法を有している一方向に同一サイズの複数の検査体が配置された場合を前提とした場合であっても,複数の検査体を配置することは,接触ユニットがホルダーの寸法の実質的半分の最大寸法を有している一方向に二つ以上の検査体を配置することを意味するものである。他方で,検査体の大きさに合わせて接触ユニットの大きさを設定することは普通に行われているものであると解されるところ(本願明細書【0006】 〜【0008】参照),複数配置された同一サイズの検査体を検査する場合に,検査体の大きさに合わせて接触ユニットの大きさを設定すれば,接触ユニットの寸法は,一方向においてホルダーの寸法の半分かそれよりも小さなものとなること,また,この場合に接触ユニットがホルダー外にはみ出ることがないことはそれぞれ自明なことである。そして,特許請求の範囲の記載に照らすと,本願発明は,上記構成も含むものと認められる以上,原告の主張するような配置を前提としたとしても,上記発明特定事項に格別の技術的意義があると認めることはできない。
以上によれば,引用発明において,本願発明との相違点に係る構成とする 37 ことは,当業者において容易に想到することができるものというべきであ り,審決の判断に誤りはない。
3 まとめ 以上によれば,原告の各取消事由の主張はいずれも理由がなく,審決の結論 に誤りはない。
結論
よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとお り判決する。
裁判長裁判官 石井忠雄
裁判官 西理香
裁判官 神谷厚毅