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関連審決 不服2012-20478
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事件 平成 26年 (行ケ) 10146号 審決取消請求事件

原告X
訴訟代理人弁理士 大野浩司
被告特許庁長官
指定代理人手島聖治 金子幸一 西山昇 相崎裕恒 堀内仁子
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2015/02/26
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告が求めた判決
特許庁が不服2012-20478号事件について平成26年5月7日にした審決を取り消す。
事案の概要
本件は,特許出願の拒絶査定不服審判請求に対する不成立審決の取消訴訟である。
争点は,進歩性についての判断の当否である。
1 特許庁における手続の経緯 原告は,平成22年6月22日,名称を「電子カルテの指示文書作成装置」とする発明につき,特許出願をした(特願2010-141607号,特開2012-8636号。甲3)が,平成24年7月31日付けで拒絶査定を受けたので,同年10月18日,これに対する不服の審判を請求する(不服2012-20478号)とともに手続補正をしたが,さらに,平成25年12月16日付けで拒絶理由の通知を受けた(甲4)ので,平成26年2月13日,手続補正をした(甲5の2。以下「本件補正」という。。
) 特許庁は,同年5月7日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同月20日,原告に送達された。
2 本願発明の要旨 本件補正後の請求項1の記載は,以下のとおりである(甲5の2)。
「医療上の指示文書を作成する電子カルテの指示文書作成装置であって,?(ア)患者ごとに定期的に実施すべき処置リスト及び前記処置リストの実施予定日を入力する日付条件指示入力手段,(イ)患者ごとに予め予見される症状を設定し,その症状を満たした場合に実行すべき処置リストを入力する症状条件指示入力手段のいずれかの指示入力手段を有し,? 前記日付条件指示入力手段ないし前記症状条件指示入力手段のいずれかによって入力された処置リストの中から実施すべき指示項目を選択する指示項目選択手段と,? 前記指示項目選択手段によって選択された指示項目を確定指示として発行する指示項目発行手段とを備え,? 前記指示入力手段にはアクセス権限を確認する機能が備えられ,前記指示項目発行手段によって発行される指示項目には,前記指示項目発行手段の実行者に関わらず,指示責任者の認証が付されていることを特徴とする電子カルテの指示文書作 成装置。」 3 本件審決の理由の要点 ? 引用発明 引用例1(X「病院情報システムの導入による効率化と安全性の向上について」医療とコンピュータ Vol.13 No.5 2002.5 株式会社日本電子出版〔平成14年5月20日発行〕19頁から24頁,乙1〔甲1と同一〕)には,以下の引用発明が記載されているものと認められる。
「医師指示簿から当日行うべきオーダーを抽出し,人手による転記と運搬作業を要していた紙のカルテを電子化することで,転記作業自体を院内から追放するネットカルテであって, 患者『A』に『2002年2月18日の火曜日』から『2002年2月24日の日曜日』まで毎日『00:00』に定期的に, 『術後,左股。イソジン液,ガーゼドレッシング』の処置をするオーダーの指示が,処置リストとして処置リストの実施予定日とともに権限のある医師によりなされ,認証が付され, 2月25日以降も必要な期間,同様の定期的に実施すべき処理の指示があり, 病棟には,その日に実行すべきオーダーが表示され,N3病棟には, 『2002年2月26日火曜日の00:00』 『◆処置 に 8392A 術後,左股,イソ・ ・』 ・と表示され,ナースなどのスタッフが患者『A』にオーダーされた指示の処置を実行する, ネットカルテ。」 ? 本願発明と引用発明との一致点と相違点【一致点】「医療上の指示文書を作成する電子カルテの指示文書作成装置であって, 患者ごとに定期的に実施すべき処置リスト及び処置リストの実施予定日を入力する日付条件指示入力手段を有し, 日付条件指示入力手段によって入力された処置リストの中から,日付の条件に合致して確定した指示項目をナースなどが実行し, 指示入力手段にはアクセス権限を確認する確認機能が備えられ,指示項目には,指示責任者の認証が付されている, 電子カルテの指示文書作成装置。」【相違点】(相違点1) 本願発明においては,条件に合致すると処置が確定する,ナースなどが実行する指示項目が, 「日付」を条件とするもの又は「予め予見される症状」を条件とするものかのいずれかであり,これらのいずれかの中から実施すべき指示項目を選択して確定指示を発行するのに対して,引用発明は, 「日付」を条件とするものであり,その中から条件に合致して実施すべきものが選択されて確定指示が発行される点。
(相違点2) 本願発明は, 「日付条件指示入力手段」又は「症状条件指示入力手段」のいずれかの「指示入力手段」を有し,これらのいずれかにより入力され,実施すべき指示項目を選択して確定するための「指示項目選択手段」及び「指示項目発行手段」を備えるのに対して,引用発明は, 「日付条件指示入力手段」である「指示入力手段」を有するにとどまる点。
(相違点3) 本願発明においては, 「指示項目発行手段によって発行される指示項目には,指示項目発行手段の実行者に関わらず,指示責任者の認証が付される」のに対して,引用発明においては,その点が明確ではない点。
? 相違点についての検討 ア 相違点1について (ア) 引用例2(特開2008-90400号公報〔甲2〕)には,「条件に合致すると処置が確定する,看護師などが実行する指示項目を『予め予見される症 状』を条件とする。」という発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。
(イ) 引用発明と甲2発明とを組み合わせることによって,条件に合致すると確定する,ナースなどが実行する指示項目につき, 「日付」を条件とするもの又は「予め予見される症状」を条件とするもののいずれかとすることは,当業者において適宜なし得たものである。
また,指示項目が条件に合致したとき,当該指示項目は,確定したものとしてナースなどが確実に実施しなければならないものであるから, 実施すべきものを選択 「して確定指示を発行する」よう構成するか(本願発明)「実施すべきものが選択さ ,れて確定指示が発行される」よう構成するか(引用発明)は,ナースなどの負担感などを勘案して適宜に決められるべきものである。
以上の点から,当業者は,相違点1に係る発明の構成を容易に想到することができたものといえる。
イ 相違点2について 複数の「条件指示入力手段」のいずれかの「指示入力手段」を有するよう構成し,これらのいずれかにより入力され,実施すべき指示項目を選択して確定するための「選択手段」及び「発行手段」を有するよう構成することは,必要に応じて適宜なし得る設計的事項である。
したがって,当業者は,相違点2に係る発明の構成を容易に想到することができたものといえる。
ウ 相違点3について 引用発明の指示入力手段には,アクセス権限を確認する確認機能が備えられ,指示項目には,指示責任者の認証が付されていることから, 「指示項目発行手段によって発行される指示項目」には, 「指示項目発行手段の実行者に関わらず,指示責任者の認証が付される」こととなるのは自明である。この点に鑑みると,相違点3に係る事項は,格別なものではない。
エ 小括 以上によれば,相違点1から3に係る発明特定事項は,当業者において,引用発明及び甲2発明から容易に想到することができたものといえる。
(4) 作用及び効果 本願発明の作用及び効果は,当業者が引用発明及び甲2発明から予測できる範囲のものにとどまる。
? 結論 当業者は,引用発明及び甲2発明に基づき,本願発明を容易に想到し得たものといえる。
原告主張の審決取消事由
原告は,以下のとおり,審決取消事由を主張しているものと解される。
1 相違点1に係る容易想到性の判断の誤り ? 相違点1の内容は,本願発明の本質に関わるものではなく,相違点1に係る容易想到性の有無は,本願発明の進歩性の有無に影響を及ぼすものではない。
? 後記4において後述するとおり,本願発明は,医師不在の場合等においても,医師以外のスタッフが医師による条件付指示に基づき臨機応変に対応し,実施した処置を即時にカルテに反映させることを可能にして,データの空白が生じる事態を防いで即時性を確保するという顕著な効果が得られるものであるところ,引用例1(甲1)及び引用例2(甲2)のいずれにも,上記事態を防いで即時性を確保する構成については,開示,示唆されておらず,これらを組み合わせる動機付けは存在しない。
すなわち,引用例1に示されている「医師が実施予定日などの条件付き指示文書をあらかじめ作成する」ことのみでは,カルテの空白を防止して即時性を確保することはできない。また,引用例2においては,システムを備忘録又はメモとして使用し,処置漏れを防ぐための技術が示されており,カルテの空白を防止するもので はない。
指示文書中から適切な指示を選択する「指示項目選択手段」及び選択された指示を確定指示として発行する「指示項目発行手段」並びに指示項目発行手段の実行者が誰であっても付される指示責任者の「認証」がなければ,当該指示に基づく処置をカルテに反映させることができず,カルテの即時性を確保できない。当該指示に基づく処置をカルテに反映させる手段は,引用例1及び引用例2のいずれにも,開示されていない。
以上によれば,当業者は,相違点1に係る発明の構成を容易に想到することができたものといえるという本件審決の判断は,誤りである。
2 相違点2に係る容易想到性の判断の誤り 従来の電子カルテにおいては,医療上の指示の入力及び発行のいずれもすべて医師が担当しており,本件審決が,相違点2に関し, 「必要に応じて適宜なし得る設計的事項」として掲げる「実施すべき指示項目を選択して確定するための『選択手段』及び 『発行手段』は, 」 いずれも医師が主体として操作するものを念頭に置いている。
しかしながら,本願発明においては,医療上の指示の入力者と発行者を分離して業務の簡素化及び円滑化を実現するために,実行主体を限定しない,すなわち,医師以外のスタッフも含め誰もが実行可能な指示項目の選択手段及び発行手段を採用しており,このような選択手段及び発行手段を設けることは,設計的事項ではない。
以上によれば,当業者は,相違点2に係る発明の構成を容易に想到することができたものといえるという本件審決の判断は,誤りである。
3 相違点3に係る容易想到性の判断の誤り 本願発明は,前記2のとおり,業務の簡素化及び円滑化を実現するために,誰もが実行可能な指示項目の選択手段及び発行手段を採用しているところ,このことによって指示権限の有無や責任の所在が不明になるのを防ぐために, 指示項目発行手 「 段によって発行される指示項目には,指示項目発行手段の実行者に関わらず,指示責任者の認証が付される」という構成要素を採用したものである。同構成要素は,指示権限の有無や責任の所在が不明になるという問題を解消し,業務を円滑に遂行するという,予期せぬ効果を実現したのであるから,同構成要素を「自明」とする本件審決の認定は,誤りである。
4 本願発明の顕著な作用,効果を看過した誤り 従前,医師が不在の夜間病棟において実施される,条件付指示,すなわち,発熱など一定の臨床状態が発生したときにのみ実施される医療上の指示については,実施記録をメモしておき,担当医の出勤をまって,事後的に医療上の指示文書を作成していたが,このような取扱には,当該指示に基づく措置を執ったことが即時にカルテに反映されず,最新の情報を反映することが強く要請されるカルテにおいて,データの空白が生じてしまうという問題があった。
本願発明は,前述したとおり,@医師に限らず,誰もが実行可能な指示項目の選択手段及び発行手段を設けるとともに,A同発行手段が誰によって実行されても,同発行手段によって発行される指示項目に指示責任者の認証が付されるという構成を備えている。そして,これによって,前記3のとおり,指示権限の有無や責任の所在が不明になるという問題を解消し,業務を円滑に遂行するという予期せぬ効果に加え,医師不在の場合等においても,医師以外のスタッフが医師による条件付指示に基づき臨機応変に対応し,実施した処置を即時にカルテに反映させることを可能にして,電子カルテにデータの空白が生じる事態を防ぎ,電子カルテの即時性及び信頼性を確保するという顕著な作用,効果を実現した。
本件審決は,上記の本願発明の顕著な作用,効果を看過した点において,誤りがある。
被告の反論
1 相違点1に係る容易想到性の判断の誤りについて ? 本件補正後の明細書(甲5の2。以下「本願明細書」という。)の段落【0003】及び【0004】によれば,従前,外来の日時や入院時の症状等があらかじめ確定しないことから,担当医において日時や症状等を特定した医療上の指示を事前に発行できず,そのために,カルテの記録の即時性が損なわれ,文書作成漏れ等の問題も生じ,カルテの信頼性が低下するという課題があった。本願発明は,この課題を,日時や臨床状態などの実施条件と医療上の指示とを対にした条件付き指 「示文書を保持し実施条件が満たされれば医療上の指示を発行」することにより解決するものであり,ひいては原告が主張する「電子カルテにデータの空白が生じる」という課題を解決するものと理解できる。
そして,本願明細書の段落【0011】によれば,上記「実施条件」は,実施条件を付した指示文書として発行してもよい。
以上によれば,本願発明においては, 「実施予定日などの条件付き指示文書をあらかじめ作成」することによって「電子カルテの空白」が防止されるといえる。
?ア 引用発明は,医師が「必要な期間,同様の定期的に実施すべき処理の指示をするもの」,すなわち,「医師が日付の条件付き指示文書をあらかじめ作成」するものであり,これによって「電子カルテの空白」が防止されることは,明らかである。
イ 甲2号証の段落【0006】によれば,看護師が,生体情報の変化を条件としたオーダーを記憶に頼って実施すると,処置の失念や不必要な処置の継続という問題が生じる。
この点に鑑みると,甲2発明は,医師において, 「あらかじめ予見される症状を条件とする指示」を,あらかじめ条件付処置オーダーとして設定し,生体情報が前記指示に係る「あらかじめ予見される症状の条件」を満たしたとき,看護師等が当該処置を実行することにより,処置記録とその根拠となる医師による指示との間のそごを防止するものと理解できる。
ウ 以上によれば, 「医師が日付の条件付き指示文書をあらかじめ作成」する引用発明及び「医師が症状の条件付き指示文書をあらかじめ作成」する甲2発明とは,いずれも実施された処置記録とその根拠となる医師による指示との間のそごを防止し,ひいては「電子カルテの空白」を防止するものであり,発明の課題,医師があらかじめ指示文書を作成する構成及び作用効果に共通性があることは,当業者にとって自明のことといえる。
このことから,当業者において,引用発明と甲2発明とを組み合わせようという動機付けが働くといえる。そして,両発明を組み合わせれば,前記?のとおり, 「実施予定日などの条件付き指示文書をあらかじめ作成」することによって「電子カルテの空白」を防止する本願発明に,容易に想到し得る。
? したがって,相違点1に係る構成の容易想到性を認めた本件審決の判断に,誤りはない。
2 相違点2に係る容易想到性の判断の誤りについて 本願発明に係る特許請求の範囲には,本願発明の「選択手段」及び「発行手段」の操作主体について直接的には記載されておらず,前記指示項目発行手段の実行者 「に関わらず」との文言によって,指示責任者である医師以外の者が操作する場合もあることが間接的に規定されているにとどまる。
本件審決は,本願発明に係る特許請求の範囲の記載に関する上記の点を前提として,指示責任者である医師以外の者が「選択手段」及び「発行手段」を操作する場合もあることにつき, 「前記指示項目発行手段の実行者に関わらず」という文言についての相違点3の判断として検討しており, 「選択手段」及び「発行手段」のいずれも医師が主体として操作するものを念頭に置いて判断したものではない。
したがって,原告の前記主張には,前提において誤りがある。相違点2に係る構成の容易想到性を認めた本件審決の判断に,誤りはない。
3 相違点3に係る容易想到性の判断の誤りについて 引用発明においても,@本願発明の「指示項目」に対応する「オーダーの指示」は,医師がスタッフに与える医療行為の指示である以上,その指示責任者である医師の認証が付されること,A医師が,病棟におけるオーダーの表示に先立って,アクセス権限の確認機能を備えた指示入力手段を用いてオーダーの指示を行う場合も,同指示にその責任者である医師の認証が付されることは,当然のことといえる。このことから,医師及びスタッフのいずれがオーダーの指示を表示しても,同指示には,常に医師の認証が付されることとなる。
本件審決は,本願発明及び引用発明のいずれも, 「指示入力手段にはアクセス権限を確認する確認機能が備えられている」ことを前提として,どのような「選択手段」及び「発行手段」を備えるとしても,また,病棟に表示されるオーダーの指示を選択して発行するのが誰であっても,当該「選択手段」及び「発行手段」が機能する以前から, 「指示項目」である「オーダーの指示」には指示責任者である医師の認証が付されることに鑑み, 「指示項目発行手段の実行者に関わらず,指示責任者の認証が付される」こととなるのは自明であるとしたものであり,その判断に誤りはない。
したがって,相違点3に係る構成の容易想到性を認めた本件審決の判断に,誤りはないといえる。
4 本願発明の顕著な作用,効果を看過した誤りについて 本願発明において,日付条件指示及び症状条件指示が記された処置リスト中から,実施すべき指示項目を確定指示して発行すること,すなわち, 「条件に合致した指示を発行」することは,発明特定事項とされるが,他方,その結果を電子カルテに反映すること,すなわち, 「医師が不在である夜間の病棟や多忙を極める外来受付においてもカルテを連続して正確に運用する」ための手段となる「実施された処置とその根拠となる医師の指示とが電子カルテ上に一対となって記録される」ことは,発明特定事項ではないものと整理される。
原告が主張する本願発明の顕著な作用,効果は,上記のとおり発明特定事項ではない「カルテへの記録」を前提とするものであるから,本願発明と引用発明との対比に当たり,考慮することはできない。
当裁判所の判断
1 前提事実 ? 本願発明 ア 本願明細書(甲3,甲5の2)によれば,本願発明は,前記第2の2のとおりと認められ,この点につき,当事者間に争いはない。
イ 本願明細書には,本願発明の実施例につき,概要,以下のとおり記載されている。
甲3号証の図3 (ア) 上図は,日時を実施条件とする処置リストの一例であり,コンピュータに入力された処置内容及び各処置内容の実施予定日に係る電子データを,実施予 定日順に並べたものである。上記電子データの入力は,キーボード,マウス等から構成される指示入力手段によって行われる(甲5の2【0010】【0011】。
, ) (イ) 本日,血液検査の指示(e2)及び単純Xp撮影指示(f2)がリストに加えられたとすると,本日を基準日として,実施間隔(i2)から次回実施予定日(j2)が計算されて表示される。
上記予定日又はこれに近い日に患者が来院し,同患者に対して指示を実施する際は, (e2)等の当該指示領域をクリックしてハイライトさせた後,確定ボタン(m2)をクリックする。
処置項目をハイライトさせることによりその処置項目が選択され(指示選択手段),確定ボタン(m2)をクリックすることにより処置項目が発行される(指示発行手段)。
上記クリックによって,指示文書が当日の日付で発行され,ネットワークを介して医療スタッフに伝達される(甲5の2【0011】から【0014】。
) ? 引用発明 ア 乙1号証によれば,引用発明は,前記第2の3?のとおりと認められ,この点につき,当事者間に争いはない。
イ 乙1号証には,引用発明の実施例につき,以下のとおり,記載されている。
個々のアイコンとデータベースが対応付けられたネットカルテのシステムにおいて,医師によるオーダーは,個々の患者の「生涯カルテデータベース」 (乙1の図2)に,「生涯カルテデータベースアイコン」で入力されるが,確定されたオーダーは,関連部門のグループデータベースに同時にコピーされる。例えば,CTのオーダーは,放射線科及び病棟ナースの各グループデータベースに,点滴処方のオーダーは,薬剤及び病棟ナースの各グループデータベースにコピーされる。
ある病棟のグループデータベースには,その日に実行すべきすべてのオーダーが指定実行時刻順に表示されている(乙1の図4)。
指示を実行すると,当該スタッフは,実施報告作成ボタンをクリックし,指示文書に対して実施報告書を作成する。
乙1号証の図2及び図4 2 相違点1に係る容易想到性の判断の誤りについて ? 相違点1の認定 ア(ア) 前記1?イにおいて前述した本願発明の実施例によれば,本願発明の「処置リストの中から実施すべき指示項目を選択する指示項目選択手段」の「選択する」及び「選択された指示項目を確定指示として発行する指示項目発行手段」の「発行する」は,それぞれ,操作者,すなわち,当該手段の「実行者」が選択し,発行することを指すものと解される。
なお,前述したとおり,前記実施例において,指示発行手段に係る確定ボタン(m2)をクリックすることにより,処置項目についての指示文書が当日の日付で発行され,ネットワークを介して医療スタッフに伝達されることに鑑みると,本願発明における「発行」とは,実施すべきものとして選択されて確定した指示項目,すなわち,「確定指示」を医療スタッフに伝えることを意味するものと解される。
(イ) 他方,前記1?イにおいて前述した引用発明の実施例によれば,引用発明においては,医師によって個々の患者の「生涯カルテデータベース」に入力されたオーダーが,システムにおいて自動的に,病棟などの関連部門のグループデータベースにコピーされ,そのデータベースから,一定の日付に実行すべきオーダーが選択されて画面に一覧表示される。
したがって,引用発明においては,@医師によって入力されたオーダーから,一定の日付に実行すべきオーダーを「選択」すること,A同選択により当該日付に実行すべきものとして確定したオーダー,すなわち, 「確定指示」を,画面に一覧表示することによって,スタッフ等の関係者に伝えること,すなわち, 「発行」が,システムにおいて自動的に行われているということができる。
イ 以上の点に鑑みると,本願発明と引用発明との間には,@条件に合致すると処置が確定する,ナースなどが実行する指示項目が,本願発明においては, 「日付」を条件とするもの又は「予見される症状」を条件とするもののいずれかである のに対し,引用発明においては,前者のみであること,A実施すべき指示につき,本願発明においては,操作者が「選択」し,同選択されて確定した指示項目,すなわち,「確定指示」を,医療スタッフに伝える,すなわち,「発行」するのに対し,引用発明においては,システムにおいて自動的に「選択」され,同選択により確定したオーダー,すなわち, 「確定指示」が画面に一覧表示されてスタッフ等の関係者に伝えられる,すなわち, 「発行」されるという相違点が存在し,これは,本件審決が認定した「相違点1」(前記第2の3?)にほかならない。
? 甲2発明の認定 ア 甲2号証の「発明が解決しようとする課題」は,以下のとおりである。
すなわち,従前の在宅医療システムやナースコールシステムにおいては,患者の体温や血圧等の生体情報を計測し,異常を察知すると,その内容を医療機関又は医療従事者に通知することが提案されていたものの,生体情報の変化に伴って医師からの処置指示(オーダー)を実施,停止又は継続する通知をすることは提案されていなかったところ,生体情報の変化に伴う処置を,看護師の記憶のみを頼りに実施することについては,処置の失念や不要な処置の継続という事態を生じさせるおそれがあった。そこで,甲2発明は,そのような事態を防止し,上記処置の適切な実施を徹底させることを目的とした(【0005】から【0007】 。
) イ そして,甲2号証には,上記の課題に関し,以下のとおり記載されている。
【課題を解決するための手段】【0008】看護を支援する処理装置は,患者の生体情報を受信する手段と,オーダーエントリシステムまたは電子カルテシステムから院内LAN等のネットワークを経由して医師の処置オーダーを受信する手段と,受信した処置オーダーを記憶部に保存する手段と,医療従事者に処置情報を表示する表示手段とを備え,処理装置が条件付処置オーダーを受信すると,入力された生体情報と条件付処置オーダーの条件を比較し, 生体情報が条件を満たしていると判断した場合は該当する処置を開始または継続するメッセージを表示部へ表示し,生体情報が条件を満たさないと判断した場合は該当する処置を中断または停止するメッセージを表示部へ表示する。
【0009】さらに,処理装置は,条件付処置オーダーを受信すると,入力された生体情報と条件付処置オーダーの条件を比較し,生体情報が条件を満たしていると判断した場合は該当する処置を開始または継続するメッセージを連動する薬剤管理システムへ通知して薬剤の支給を要求し,生体情報が条件を満たさないと判断した場合は該当する処置を停止するメッセージを薬剤管理システムへ送り,薬剤の支給を停止する通知を行う。
【発明の効果】【0010】本発明は,生体情報の変化に伴う処置をメッセージ表示することで看護師の記憶に頼ることを必要とせず,処置を忘れてしまったり,処置が必要なくなっても処置を継続してしまう看護ミスを無くす効果がある。また,看護師の精神的な負担を軽減する役割も果す。
ウ 甲2号証のいう「生体情報の変化に伴う処置」は, 「予見される症状を条件とする処置」を意味するものといえることから,甲2号証には,医師が事前に一定の「予見される症状」という条件が満たされれば実施するよう指示した処置,すなわち, 「予見される症状を条件とする処置」につき,処置の失念等のミス発生防止を目的の1つとして,当該症状が現れて条件が満たされ,実施すべき状況に至った処置などを自動的に選択し,同選択により確定した処置などを,表示して関係する医療従事者に伝えるという発明が記載されているものと認められる。
これは,本件審決が認定した甲2発明,すなわち, 「条件に合致すると処置が確定する,看護婦等が実行する指示項目を,『予見される症状』を条件とする発明」(前記第2の3?ア)に該当する。
? 容易想到性について ア 引用発明は,従前の紙カルテにおいては,患者別の医師指示簿から当日行うべきオーダーを抽出し,実施記録の記入に至るまでの間,かなりの量の人手による転記及び運搬作業を要し,その事務量の多さに加え,医療事故を招くミスを発生させるおそれがあり,また,医療チーム内の情報の共有化が困難であるなどの問題があったことから,それらを解決するために,医師が事前に一定の日付という条件が満たされれば実施するよう指示した処置,すなわち,「日付を条件とする処置」につき,条件が満たされ,看護師等が実施すべき状況に至ったものを自動的に選択し,同選択により確定した指示に係る処置を,画面に一覧表示してスタッフ等の関係者に伝えるネットカルテに係るものである(乙1号証)。
イ 甲2発明は,前述したとおり,処置の失念等の医療上のミス発生防止を目的の1つとしており,前述した引用発明の目的との間に共通性が認められる。また,甲2発明は,医師が事前に一定の「予見される症状」という条件が満たされれば実施するよう指示した処置,すなわち, 「予見される症状を条件とする処置」につき,当該症状が現れて条件が満たされ,実施すべき状況に至った処置などを自動的に表示し,関係する医療従事者に伝えるという発明であり,医師による事前の条件付指示につき,当該条件が満たされ,実施すべき状況に至った指示に係る処置を自動的に選択し,同選択により確定した指示に係る処置を,表示して医療に携わる関係者に伝えるという点において,引用発明と共通する。
ウ 以上に鑑みれば,当業者において,医療上のミス発生防止を更に徹底するために,引用発明につき,対象とする医師による事前の条件付指示の選択肢を増やすことを考えて甲2発明を適用する動機は,十分にあるものといえる。
そして,引用発明に甲2発明を適用すれば,対象とする医師による事前の条件付指示につき,引用発明に係る日付を条件とするもののみならず,予見される症状を条件とするものも選択できるようにすること,すなわち,相違点1のうち,前述した「@条件に合致すると処置が確定する,ナースなどが実行する指示項目が,本願 発明においては, 「日付」を条件とするもの又は「予見される症状」を条件とするもののいずれかであるのに対し,引用発明においては,前者のみであること」に係る構成に,容易に想到し得るものというべきである。
相違点1のうち,前述した「A実施すべき指示につき,本願発明においては,操作者が選択して確定指示を発行するのに対し,引用発明においては,システムにおいて自動的に選択されて確定指示が発行されること」については,当業者が必要に応じて適宜決定し得る設計的な事項といえる。
以上によれば,相違点1につき,容易想到性を認めた本件審決の判断に,誤りはない。
(4)ア 原告は,相違点1の内容は,本願発明の本質に関わるものではなく,相違点1に係る容易想到性の有無は,本願発明の進歩性の有無に影響を及ぼすものではない旨主張する。
しかしながら,相違点1は,本願発明の主要な構成要素に関わるものであり,その容易想到性の有無は,本願発明の進歩性の有無を左右するものといえるから,原告の前記主張は採用できない。
イ 原告は,本願発明には,医師不在の場合等においても,医師以外のスタッフが医師による条件付指示に基づいて臨機応変に対応し,さらに,実施した処置を即時にカルテに反映させることを可能にして,データの空白が生じる事態を防いで即時性を確保するという顕著な効果があるところ,同効果に係る構成は,引用例1(甲1)及び引用例(甲2)のいずれにおいても,開示,示唆されておらず,したがって,これらを組み合わせる動機付けは存在しない旨主張する。
しかしながら,カルテにデータの空白が生じる事態を防いでカルテの即時性を確保するという,原告主張に係る「顕著な効果」は,医師以外のスタッフが実施した処置を即時にデータとして電子カルテに記載することを不可欠の前提とするものと解されるところ,電子カルテへの記載の点は,本願発明の発明特定事項に含まれていないから,それが上記引用例のいずれにおいても開示,示唆されていないことを もって,上記引用例を組み合わせる動機付けが存在しないとは,いえない。
したがって,原告の前記主張は,採用できない。
3 相違点2に係る容易想到性の判断の誤りについて ? 相違点2の認定 本願発明は,相違点1のとおり,ナースなどが実行する指示項目につき, 「日付を条件とするもの」,すなわち,「日付条件指示」又は「予見される症状を条件とするもの」,すなわち,「症状条件指示」のいずれかを選択することができる。そして,前記1及び2によれば,本願発明は,当該指示を入力する「指示入力手段」に加え,操作者が実施すべき指示項目を選択して確定指示を発行するための「指示項目選択手段」及び「指示項目発行手段」を備えているものと認められる。
他方,引用発明は,相違点1のとおり,指示項目が「日付条件指示」に限られており,当該指示を入力する「指示入力手段」を備えるにとどまる点において,本願発明と相違しているところ,これは,本件審決が認定した「相違点2」 (前記第2の3?)にほかならない。
? 容易想到性について 相違点2のうち,@「指示入力手段」が,本願発明においては,「日付条件指示」又は「症状条件指示」のいずれかに係るものであるのに対し,引用発明においては,「日付条件指示」に係るもののみであるという点は,相違点1から必然的に生ずる相違である。
相違点2のうち,A本願発明は,「指示項目選択手段」及び「指示項目発行手段」を備えているのに対し,引用発明においては, 「指示入力手段」を備えるにとどまるという点も,前記2のとおり,実施すべき指示項目につき,本願発明においては,操作者が選択して確定指示を発行するのに対し,引用発明においては,システムにおいて自動的に選択されて確定指示が発行されるという相違点1から,必然的に生ずる相違といえる。
以上によれば,相違点2は,前記2のとおり容易想到性が認められる相違点1から必然的に生ずる相違であり,実質において,相違点1と同視し得るものといえるから,同様に,容易想到性を肯認できる。
したがって,相違点2の容易想到性を認めた本件審決の判断に,誤りはない。
? 原告は,本件審決は,実行すべき指示項目の「選択手段」及び「発行手段」のいずれについても医師が主体として操作するものを念頭に置き,本願発明が,医師以外のスタッフも含め誰もが実行可能な「選択手段」及び「発行手段」を設けた点につき,設計的事項にすぎないと判断しており,この点について誤りがある旨主張する。
しかしながら,本件審決において,本願発明につき, 「選択手段」 「発行手段」 及びのいずれについても医師が主体として操作するものに限定することをうかがわせる記載は,見られない。
また,後記4のとおり,当業者は,@引用発明において,操作者が選択して確定指示を発行する構成を,適宜採用することができ,それに伴って,操作に必要な「指示項目選択手段」及び「指示項目発行手段」を設けることになること,Aその際,これらの手段の操作者が医師に限定されず,誰が操作した場合であっても,当該指示の責任者である医師の認証が付される構成にすることを,自明のこととして想到するものといえることにも鑑みると,原告の前記主張は,採用できない。
4 相違点3に係る容易想到性の判断の誤りについて ?ア 前記1によれば,本願発明と引用発明との間には,本件審決が認定したとおりの相違点3,すなわち,本願発明においては, 「指示項目発行手段によって発行される指示項目には,指示項目発行手段の実行者に関わらず,指示責任者の認証が付される」のに対して,引用発明においては,その点が明確ではない点(前記第2の3?)が認められる。
この点に関し,前記1において認定したとおり,引用発明においては,日付に係 る医師の条件付指示が,処置リストとして処置リストの実施予定日とともに権限の 「ある医師によりなされ,認証が付され」ている。すなわち,引用発明においても,医師の条件付指示に当該指示責任者である医師の認証が付されていることは,明らかである。
このことから,上記相違点は,前述したとおり,本願発明においては,操作者が,「指示項目選択手段」及び「指示項目発行手段」によって,「実施すべき指示項目」の中から,相当なものを選択して確定指示を発行するのに対し,引用発明においては,システムにおいて自動的に選択されて確定指示が発行されることから, 「指示項目選択手段」及び「指示項目発行手段」を備えていないこと,すなわち,相違点1及び相違点2に由来するものといえる。
イ 前述したとおり, 「実施すべき指示につき,本願発明においては,操作者が選択して確定指示を発行するのに対し,引用発明においては,システムにおいて自動的に選択されて確定指示が発行されること」については,当業者が必要に応じて適宜決定し得る設計的な事項といえる。
したがって,当業者は,引用発明において,操作者が選択して確定指示を発行する構成を,適宜採用することができ,それに伴って,操作に必要な「指示項目選択手段」及び「指示項目発行手段」を設けることになる。
この点に関し,前述したとおり,引用発明においても,医師の条件付指示に当該指示責任者である医師の認証が付されているところ,同認証は,当該指示の実行及びその後の記録に至るまで,責任の所在を明らかにするために,終始必要不可欠なものといえ,これは,医療の現場における常識として,当業者に自明のことというべきである。
このことに鑑みると,当業者は,前述したとおり, 「指示項目選択手段」及び「指示項目発行手段」を設けるに当たり,操作者にかかわらず,当該指示の責任者である医師の認証が付される構成にすることを,自明のこととして想到するものといえる。
以上によれば,相違点3についても容易想到性が認められ,同旨の本件審決の判断に,誤りはない。
? 原告は,本願発明は,指示項目発行手段によって発行される指示項目には, 「指示項目発行手段の実行者に関わらず,指示責任者の認証が付される」という構成要素を採用しており,同構成要素は,指示権限の有無や責任の所在が不明になるという問題を解消し,加えて,業務を円滑に遂行するという,予期せぬ効果を実現したのであるから,同構成要素を「自明」とする本件審決の認定は,誤りである旨主張する。
しかしながら,後記5のとおり,原告が主張する効果は,当業者が引用発明に甲2発明を組み合わせた構成から予測し得る範囲内のものにとどまるものといえ,予 「期せぬ効果」とはいい難い。
したがって,原告の前記主張は,前提を欠き,採用できない。
5 本願発明の顕著な作用,効果を看過した誤りについて ? 原告は,本願発明は,@指示権限の有無や責任の所在が不明になるという問題を解消し,業務を円滑に遂行するという予期せぬ効果に加え,A医師不在の場合等においても,医師以外のスタッフが医師による条件付指示に基づき臨機応変に対応し,実施した処置を即時にカルテに反映させることを可能にして,電子カルテにデータの空白が生じる事態を防ぎ,電子カルテの即時性及び信頼性を確保するという顕著な作用,効果を実現したにもかかわらず,本件審決には,これを看過した誤りがある旨主張する。
(2)ア 前記2から4において前述したとおり,当業者は,相違点1から相違点3に係る構成を容易に想到するものと認められ,この点に鑑みると,本願発明につき,その効果によって進歩性が肯定され得るのは,当該効果が,上記容易想到に係る構成を前提としても,当業者にとって予測し難い顕著なものである場合に限られるというべきである。
本件についてみると,前記2から4によれば,引用発明に,相違点1から相違点3に係る構成を採用すれば,医師の「日付条件指示」又は「症状条件指示」につき,操作者にかかわらず,指示責任者である医師の認証が付される「指示項目選択手段」及び「指示項目発行手段」が設けられ,これによって,原告が主張する効果のうち,指示権限の有無や責任の所在が不明になるという問題を解消し,業務の円滑な遂行に資するという効果が生じることは,明らかといえる。
したがって,原告が主張する上記効果は,当業者が引用発明に甲2発明を組み合わせた構成から予測し得る範囲内のものにとどまるというべきである。
イ 原告が主張する効果のうち,電子カルテの空白を防止するという点は,前記2のとおり,医師以外のスタッフが実施した処置を即時にデータとして電子カルテに記載することを不可欠の前提とするものと解されるところ,電子カルテへの記載の点は,本願発明の発明特定事項に含まれていない。この点に鑑みると,電子カルテの空白の防止という効果をもって,本願発明の効果ということはできない。
(3) 以上によれば,原告の前記主張は採用できず,本願発明は,当業者が引用発明及び甲2発明から予測できる範囲のものにとどまるという本件審決の結論に,誤りはない。
結論
以上によれば,原告主張の取消事由は,いずれも理由がなく,したがって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,よって,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 清水節
裁判官 新谷貴昭
裁判官 鈴木わかな