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審判番号(事件番号) データベース 権利
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事件 平成 26年 (ワ) 7856号 特許権侵害差止等請求事件
東京都<以下略>
原告 株式会社データ・テック
同訴訟代理人弁護士 伊藤真 平井佑希
同訴訟代理人弁理士 鈴木正剛 藤掛宗則 東京都港区<以下略>
被告カヤバ工業株式会社
同訴訟代理人弁護士 松本司 井上裕史 佐合俊彦
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2015/02/24
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 原告の請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
1 被告は,別紙被告製品目録記載の製品(以下,同目録1〜3項記載の製品を 「被告機器」と,同目録4及び5項記載の製品を「被告ソフトウェア」とそれ ぞれ総称し,これらを併せて「被告製品」という。)を製造,販売,貸与し, 又は販売若しくは貸与の申出(販売若しくは貸与のための展示を含む。)をし てはならない。
2 被告は,その占有にかかる被告製品を廃棄せよ。
3 被告は,その占有にかかる被告製品を製造するための金型を廃棄せよ。
4 被告は,原告に対し,1億円及びこれに対する平成26年4月22日から支 払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は,発明の名称を「移動体の運行管理方法,システム及びその構成装置」 とする特許権(以下「本件特許権」という。)を有する原告が,被告による被 告機器の製造販売が本件特許権の侵害に,被告ソフトウェアの製造販売が特許 法101条4号及び5号所定の間接侵害に当たると主張して,@ 同法100 条1項に基づく被告製品の製造販売等の差止め,A 同条2項に基づく被告製 品及び金型の廃棄,B 不当利得に基づく利得金の一部である5000万円及 びこれに対する平成26年4月22日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで 民法704条前段所定の利息の支払,C 同法709条及び特許法102条2 項に基づく損害金の一部である5000万円並びにこれに対する不法行為の後 の日である同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の 支払を求めた事案である。
1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨に より容易に認められる事実。ただし,書証の枝番の記載は省略する。以下同 じ。) (1)ア 原告は,センサの応用技術の開発,製造,販売等を業とする株式会社 である。
イ 被告は,自動車用機器,鉄道車両用機器,その他各種輸送機器及びそれ らの装置,部品,付属品の製造,販売等を業とする株式会社である。
(2) 原告は,次の特許権(本件特許権)を有している。本件特許権について は,平成25年6月20日に確定した同月11日付け審決により訂正が認め られている。(甲4,15) 登録番号 第3592602号 発明の名称 移動体の運行管理方法,システム及びその構成装置 出 願 日 平成12年2月21日(特願2000-43633) 登 録 日 平成16年9月3日(3) 本件特許権の特許請求の範囲請求項4及び1の記載(いずれも訂正後の もの)は,次のとおりである(以下,請求項4の発明を「本件特許発明1」, 請求項1の発明を「本件特許発明2」といい,これらを併せて「本件各特許 発明」という。また,本件特許出願の願書に添付された明細書及び図面(訂 正後のもの)を「本件明細書」という。)。
ア 請求項4 「 管理対象となる移動体の運行状況を計測するセンサと,バッファと, 当該移動体を運転する運転者用に個性化された所定の不揮発性の記録媒 体を離脱自在に装着する媒体装着機構と,前記センサ,前記バッファ及 び前記媒体装着機構に装着された記録媒体の動作を制御する制御装置と を備え, 該制御装置は, 前記移動体の移動に伴って前記センサから出力される計測データを前 記バッファにエンドレスに展開するデータ展開手段と, 前記記録媒体に解析目的に応じて定められ,かつ,任意に書き換えが 可能な当該移動体の挙動の特徴である一般挙動特徴を表す一般挙動条件, 及び,前記一般挙動特徴から逸脱した前記挙動の特徴である特定挙動特 徴を表す特定挙動条件と前記バッファに展開されている計測データとを 比較して,前記一般挙動条件を満たす計測データを第1データ,前記特 定挙動条件を満たす計測データを第2データとして出力するとともに, 所定の終了条件を満たすかどうかを判定する判定手段と, 前記第1データを前記終了条件を満たすまで前記記録媒体の第1記録 領域に書き込み,前記第2データを前記終了条件を満たすまで前記記録 媒体の第2記録領域に書き込むデータ書込手段とを有することを特徴と する, データレコーダ。」 イ 請求項1 「 管理対象となる移動体に,この移動体の運行状況を計測するセンサ, バッファ,及び当該移動体を運転する運転者用に個性化された不揮発性 の記録媒体を有するデータレコーダを装着し, 前記移動体の移動に伴って前記センサから出力される計測データを前 記バッファにエンドレスに展開するとともに, 前記バッファに展開されている計測データのうち,予め前記記録媒体 に解析目的に応じて定められ,かつ,任意に書き換えが可能な当該移動 体の挙動の特徴である第1の挙動特徴に適合する加速度データを含む第 1データを所定の終了条件を満たすまで前記記録媒体の第1記録領域に 書き込み,前記第1の挙動特徴から逸脱した前記挙動の特徴である第2 の挙動特徴に適合する第2データを所定の終了条件を満たすまで前記記 録媒体の第2記録領域に書き込む処理を,前記記録媒体への書き込みが 許容される範囲で繰り返し,これにより前記記録媒体に書き込まれたデ ータを用いて前記移動体の運行時の挙動を解析することを特徴とする, 移動体の運行管理方法。」(4) 本件各特許発明構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,各 構成要件を「構成要件1A」などという。)。
ア 本件特許発明1 1A 管理対象となる移動体の運行状況を計測するセンサと,バッファと, 当該移動体を運転する運転者用に個性化された所定の不揮発性の記録 媒体を離脱自在に装着する媒体装着機構と,前記センサ,前記バッフ ァ及び前記媒体装着機構に装着された記録媒体の動作を制御する制御 装置とを備え, 1B 該制御装置は, 前記移動体の移動に伴って前記センサから出力される計測データを 前記バッファにエンドレスに展開するデータ展開手段と, 1C 前記記録媒体に解析目的に応じて定められ,かつ,任意に書き換え が可能な当該移動体の挙動の特徴である一般挙動特徴を表す一般挙動 条件,及び,前記一般挙動特徴から逸脱した前記挙動の特徴である特 定挙動特徴を表す特定挙動条件と前記バッファに展開されている計測 データとを比較して,前記一般挙動条件を満たす計測データを第1デ ータ,前記特定挙動条件を満たす計測データを第2データとして出力 するとともに,所定の終了条件を満たすかどうかを判定する判定手段 と, 1D 前記第1データを前記終了条件を満たすまで前記記録媒体の第1記 録領域に書き込み,前記第2データを前記終了条件を満たすまで前記 記録媒体の第2記録領域に書き込むデータ書込手段とを有することを 特徴とする, 1E データレコーダ。
イ 本件特許発明2 2A 管理対象となる移動体に,この移動体の運行状況を計測するセンサ, バッファ,及び当該移動体を運転する運転者用に個性化された不揮発 性の記録媒体を有するデータレコーダを装着し, 2B 前記移動体の移動に伴って前記センサから出力される計測データを 前記バッファにエンドレスに展開するとともに, 2C 前記バッファに展開されている計測データのうち,予め前記記録媒 体に解析目的に応じて定められ,かつ,任意に書き換えが可能な当該 移動体の挙動の特徴である第1の挙動特徴に適合する加速度データを 含む第1データを所定の終了条件を満たすまで前記記録媒体の第1記 録領域に書き込み, 2D 前記第1の挙動特徴から逸脱した前記挙動の特徴である第2の挙動 特徴に適合する第2データを所定の終了条件を満たすまで前記記録媒 体の第2記録領域に書き込む処理を,前記記録媒体への書き込みが許 容される範囲で繰り返し, 2E これにより前記記録媒体に書き込まれたデータを用いて前記移動体 の運行時の挙動を解析することを特徴とする, 2F 移動体の運行管理方法。
(5)ア 被告は,平成18年6月頃から,業として,被告製品の製造販売をし た。
被告機器は,車両に取り付けられ,車両運行時に加速度センサからの加 速度データ,CCDカメラからの画像データ等を記録するドライブレコー ダであり,専用の記録媒体(CFカード)を介して,@ 被告ソフトウェ アをインストールした管理者用のコンピュータによってデータや時刻を設 定され,A 上記データ等を上記コンピュータで表示,解析等することに より,当該車両の運行状況を管理するものである(以下,この被告機器等 による運行状況の管理方法を「被告運行管理方法」という。)。
(甲5〜7) イ 被告機器及び被告ソフトウェアの具体的な構成について,原告は別紙被 告機器・ソフトウェア説明書(原告の主張)1及び同2のとおりであると 主張し,被告は,上記各別紙の第1の2(5)A及びB(下線部を付した部 分)は別紙被告機器・ソフトウェア説明書(被告の主張)のA及びBのと おりであると主張している(その余の部分については当事者間に争いがな い。)。
2 争点 (1) 被告機器及び被告運行管理方法の本件特許発明1及び本件特許発明2の 各技術的範囲への属否(ただし,以下の構成要件以外の充足性については争 いがない。) ア 被告機器及び被告運行管理方法がそれぞれ構成要件1C及び2Dの「第 2データ」に相当する構成を有しているか イ 被告機器及び被告運行管理方法がそれぞれ構成要件1D並びに2C及び 2Dの「第1記録領域」及び「第2記録領域」に相当する構成を有してい るか (2) 被告ソフトウェアについての間接侵害の成否 (3) 本件特許の無効理由の存否 (4) 利得及び損害の額3 争点に関する当事者の主張 (1) 争点(1)(被告機器及び被告運行管理方法の本件特許発明1及び本件特許 発明2の各技術的範囲への属否)について ア 被告機器及び被告運行管理方法がそれぞれ構成要件1C及び2Dの「第 2データ」に相当する構成を有しているかについて (原告の主張) 被告機器は,「トリガ判定閾値」と「事故判定閾値」という異なる閾値 を用いて,前者に適合する加速度データを「第1データ」,後者に適合す る加速度データを「第2データ」として記録媒体に書き込む。
被告機器は,事故判定閾値を超える加速度が検出されたか否かの判定に 先立ってトリガ判定閾値を超える加速度が検出されたことを判定している から,トリガ判定閾値を超えた加速度データは,事故判定閾値を超えたか 否かにかかわりなく記録媒体に書き込まれる。しかし,これは,記録され る加速度データの時間的な範囲を,トリガ判定閾値を超える加速度が検出 された時間を基準に定めているにすぎない。被告機器についての被告の主 張(別紙被告機器・ソフトウェア説明書(被告の主張)参照)によっても, 被告機器は,事故判定閾値を超える加速度が検出されなければ事故判定閾 値を超える加速度データが「hhmmssC.BLK」というファイル名 でCFカードに書き込まれることはないのであるから,被告機器及び被告 運行管理方法は,「第2データ」に相当する構成を有する。
(被告の主張) 本件各特許発明の「第1データ」とは,「第1閾値を超える加速度を検 出したことを条件」として出力し書き込まれるデータであり,「第2デー タ」とは,「第2閾値を超える加速度を検出したことを条件」として出力 し,「書き込まれる」データである。
これに対し,被告機器は,t0時点で「トリガ判定閾値を超えた加速度 を検出したことを条件」にt0前後30秒間の加速度データ等が出力され, CFカードのデータ記録領域に書き込まれる。これに対し,「事故判定閾 値を超える加速度の検出」は,上記t0前後30秒間の加速度データ等を 「上書き不能なファイルにする条件」であり,「事故判定閾値を超える加 速度データ等を出力し,書き込む条件」ではない。
したがって,被告機器及び被告運行管理方法において,「第2データ」 に相当する構成は存在しない。
イ 被告機器及び被告運行管理方法がそれぞれ構成要件1D並びに2C及び 2Dの「第1記録領域」及び「第2記録領域」に相当する構成を有してい るかについて(原告の主張) 情報処理の分野において「ファイル」はデータを入れるための領域とさ れ,「ファイル」という用語と,「記録領域」,「記憶領域」,「格納領 域」といった各用語は同義のものとして用いられている。したがって, 「第1データ」を書き込むための領域であるファイルが「第1記録領域」 に,「第2データ」を書き込むための領域であるファイルが「第2記録領域」に該当する。被告は後記のとおり「第1記録領域」と「第2記録領域」はパーティション分割されたものである旨主張するが,フラッシュメモリにおいてはパーティション分割はできず,当業者が本件各特許発明を被告主張のように解釈することはあり得ない。
また,本件各特許発明において第1記録領域と第2記録領域を区別する技術的意義は,異なる目的のために収集される第1データと第2データを区別して取り扱うためである。そのため,少なくとも記録する時点において各記録領域が形成されていれば足り,ファイルを「予め」形成しておいてデータを書き込む処理のほか,データを書き込む際にファイルを形成した上でデータを書き込む処理も,データ書込処理としては全く同一の処理であって,いずれも本件各特許発明技術的範囲に含まれる。特許請求の範囲の文言上も各記録領域を形成する時期について何ら限定はない。また,本件明細書においても,第1データと第2データを区別して記録するために各記録領域を形成することが記載されているにすぎず(段落【0009】,【0025】),これらの記載は時的な限定をする意図で記載されたものではない。他方,本件明細書に挙げられた運用形態において「第1記録領域」及び「第2記録領域」が現れるのはデータ書込みの段階(段落【0031】)であり,本件明細書は時的範囲を画する際には意図的に「予め」などの表現を用いている(請求項1,段落【0003】等)。
これに対し,被告機器の制御装置は,「トリガ判定閾値」を超える状態が「トリガ判定サンプリング数」以上連続したときの加速度データをCFカードに形成された当該データ用のファイルに書き込み,「事故判定閾値」を超える状態が「事故判定サンプリング数」以上連続したときの加速度データをCFカードに形成された当該データ用のファイル(上記トリガ判定に係るデータが書き込まれるファイルとは異なるファイル)に書き込む。
このトリガ判定閾値を超えた加速度データを記録する「ファイル」と事故判定閾値を超えた加速度データを記録する「ファイル」は,互いに区別されて書き込まれるものであるから,前者は本件各特許発明の「第1記録領域」に相当し,後者は「第2記録領域」に相当する。
したがって,被告機器及び被告運行管理方法は,「第1記録領域」及び「第2記録領域」の構成を有する。
(被告の主張) 本件各特許発明の「記録領域」は,予め目的に合わせて,それぞれ固定の記録容量を持つ記録領域をいい,「第1記録領域」及び「第2記録領域」は,1個の記録媒体につきいわゆるメモリ分割(パーティション処理)がされて成るものとしか,当業者は理解できない。本件各特許発明は,第1記録領域に記録された第1データにより一般挙動の特徴を表すデータ解析をし,第2記録領域に記録された第2データにより交通事故の状況や車両の危険挙動の内容を詳細に分析するものであるから,前者については第1データのみを記録し,後者については第2データのみを記録することで,それぞれのデータ検索を容易にした方がよい。また,一方のデータに不具合が発生しても他方のデータには影響させない方がよいし,容量不足で一方のデータの記録が不能となっても他方のデータは記録可能とした方がよい。このように,第1記録領域と第2記録領域をメモリ分割により形成する構成は,本件各特許発明の課題,効果に関係するものである。
これに対し,被告機器は,CFカードのデータ記録領域につきメモリ分割,パーティション処理はされておらず,「上書き可能なファイル」も「上書き不能なファイル」も,CFカードの同じデータ記録領域に混在して記録される。
したがって,被告機器及び被告運行管理方法は,本件各特許発明の「第1記録領域」及び「第2記録領域」に相当する構成を有しない。
(2) 争点(2)(被告ソフトウェアについての間接侵害の成否)について(原告の主張) 被告ソフトウェアは,本件特許発明2の運行管理方法の使用のみ用いる ものであるから,被告が被告ソフトウェアを製造,販売することは特許法1 01条4号に該当する。
また,被告ソフトウェアは,データレコーダを交通事故時や交通事故を引 き起こす可能性があった場合の解析用にとどまらず,ヒヤリハットなどの解 析目的に応じて必要となる交通事故時以外の計測データを効率的に書き込ん で適切な運行管理を行うという本件特許発明2の課題の解決に不可欠なもの である。さらに,被告ソフトウェアは,市場において一般に入手可能な状態 にある規格品,普及品などではなく,被告はこれが本件特許発明2の実施に 用いられることを知っているから,被告が被告ソフトウェアを製造,販売す ることは同条5号に該当する。
(被告の主張) 争う。
(3) 争点(3)(本件特許の無効理由の存否)について(被告の主張) 本件各特許発明は,特開平7-249137号公報(甲11)に記載され た発明(以下「甲11発明」という。)に,特開平6-223249号公報 (甲12)に記載された発明(以下「甲12発明」という。)又は実開平4 -123472号公報(乙1)に記載された発明(以下「乙1発明」とい う。)を適用することで,当業者が容易に想到することができたものであり, 進歩性欠如の無効理由がある(特許法29条2項)。
(原告の主張) 甲11発明の技術分野と,甲12発明及び乙1発明の技術分野は同一では ない。また,甲12発明及び乙1発明は,いずれも本件各特許発明と甲11 発明の相違点の全てを網羅するものではない上,甲11発明に甲12発明又 は乙1発明の構成を適用すべき動機付けはなく,その組合せには阻害要因す らある。したがって,被告の主張する無効理由はない。
(4) 争点(4)(利得及び損害の額)について (原告の主張) 被告は,平成18年6月ころから,被告製品の製造販売等をしており,平 成23年3月までの間,被告機器を3万7021台,被告ソフトウェアを3 702個,同年4月から平成26年3月までの間,被告機器を2万2979 台,被告ソフトウェアを2298個売り上げた。
被告機器の平均単価は9万円,その平均利益額は少なくとも1万8000 円,実施料率は平均単価の5%である。また,被告ソフトウェアの平均単価 は26万円,配布用の記録媒体分を控除した平均利益額は少なくとも25万 9500円,実施料率は平均単価の30%である。
したがって,被告は,平成23年3月までの間に被告製品を販売したこと につき,法律上の原因なく合計4億5535万0200円の実施料率の支払 を免れたといえ,被告はこのことにつき悪意の受益者に該当する。また,被 告は,同年4月から平成26年3月までの間の被告製品の販売により,合計 10億0995万3000円の利益を得たものといえるから,特許法102 条2項により同金額が原告の損害と推定される。
(被告の主張) 争う。なお,被告は,平成22年7月1日をもって被告製品に関する事業 を他社に移管しており,同日以降被告製品の製造及び販売をしていない。
当裁判所の判断
1 争点(1)イ(被告機器及び被告運行管理方法がそれぞれ構成要件1D並びに 2C及び2Dの「第1記録領域」及び「第2記録領域」に相当する構成を有し ているか)について (1) 証拠(甲4)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア 本件明細書の発明の詳細な説明の記載によれば,@ 本件各特許発明は, 車両等の移動体に取り付けられたデータレコーダにおいて,センサで計測し た車両等の挙動特徴に関する計測データを記録媒体に書き込み,この記録さ れたデータを基にその車両の挙動や運転者の運転傾向等を詳細に解析して運 行状況を適切に管理することができる運行管理システムに関するものであり (段落【0001】,【0002】),A このような計測データの解析は, 交通事故時や交通事故を引き起こす可能性があった場合の危険な運転操作の 検出等のために用いられるほか,運転者の運転傾向等を事前に把握するため にも用いられるところ,後者の場合には定点観測により日常的な運転中の挙 動を詳細に追っていくことが望ましいが,一方,このような定点観測のみを 重視すると危険な挙動を正確に観測できなくなるおそれがあることから(段 落【0003】,【0004】),B 移動体の挙動や操作傾向を適切に解 析する上で必要な全ての計測データを効率的に書き込んで適切な運行管理を 行うことができる運行管理方法及びシステムを提供することを主たる課題と して(段落【0005】),C 課題解決のための手段として特許請求の範 囲に記載の構成を採用し,運転者の運転傾向を把握するための日常的な運転 中の挙動(交差点での旋回時,停止時,ブレーキ操作時の挙動等)を測定し たデータを「第1データ」と,その挙動を逸脱した危険な挙動(事故を引き 起こしたり巻き込まれたりしたときの挙動等)を測定したデータを「第2デ ータ」として,これらをそれぞれ「第1記録領域」及び「第2記録領域」に 記録することにより(段落【0006】〜【0008】),D 移動体の操 作傾向を解析する上で必要なデータを目的に応じて任意に設定した条件に従 って記録媒体に書き込むことができるので,この書き込まれたデータを用い てきめ細やかな運行管理が可能になるという効果を奏するとされている(段 落【0075】)。
イ 本件明細書には,「記録領域」に関し,@ 装着される記録媒体は,第1 記録領域,第2記録領域及び解析目的に応じて定められ,かつ,任意に書換 えが可能な,データレコーダで計測されたデータを書き込むための条件が記 録された半導体メモリを有する(課題を解決するための手段。段落【000 9】),A メモリカードは半導体メモリをカード媒体に搭載したものであ り,半導体メモリには,第1データを書き込むための第1記録領域と,第2 データを書き込むための第2記録領域と,カード番号等を書き込むための管 理領域が形成されている(発明の実施の形態。段落【0025】),B 計 測データがバッファに展開されると,データレコーダは,一般挙動,特定挙 動を検知し,それぞれの挙動の特徴に適合するデータ(第1データ/第2デ ータ)を逐次メモリカード(第1記録領域/第2記録領域)に書き込んでい く(同。段落【0031】),C メモリカードの第1記録領域の書込可能 容量に達した場合,当然に第1データの書き込みが終了する(同。段落【0 050】),D メモリカードの第2記録領域の書込可能容量に達した場合, 当然に第2データの書き込みが終了する(同。段落【0059】),E メ モリカードに代えてICチップ搭載カードを用いることができ,ICチップ に第1記録領域又は第2記録領域の記録残量が一定値を超えたときに自動的 に警報を出力する機能を持たせる(変形例。段落【0073】)旨の記載が ある。
(2) 前記前提事実及び上記認定事実に基づき構成要件1D並びに2C及び2 Dにいう「第1記録領域」及び「第2記録領域」の意義についてみるに,ま ず,特許請求の範囲の「記録媒体の第1記録領域」及び「記録媒体の第2記 録領域」との記載によれば,第1記録領域及び第2記録領域は,記録媒体が 有する記録領域全体のうちそれぞれ一部分を占める領域であり,相互に区別 されて存在するものであることが明らかである。また,「第1データを・・ ・第1記録領域に書き込み」,「第2データを・・・第2記録領域に書き込 む」との記載によれば,データを書き込む際には,それが第1データである か第2データであるかに応じて,記録領域全体のうちどの領域に書き込まれ るのかが定まっているとみることができる。
このような特許請求の範囲の記載によれば,記録媒体の記録領域は,第1 記録領域及び第2記録領域(並びに管理領域その他の領域)に物理的に区分 されており,第1データが記録される第1記録領域に第2データが書き込ま れたり,第2データが記録される第2記録領域に第1データが書き込まれた りすることはないと解すべきものとなる。
そして,上記の解釈は,前記(1)イの本件明細書の記載,すなわち,半導 体メモリには第1記録領域と第2記録領域が形成されており,第1データの 書き込みは第1記録領域の書込可能容量に達した場合に終了し,第2データ の書き込みは第2記録領域の書込可能容量に達した場合に終了する旨の記載 に沿うものであって,本件明細書(甲4)の発明の詳細な説明及び図面に, これと異なる構成(第1データが記録されるべき領域への第2データの書き 込み又は第2データが記録されるべき領域への第1データの書き込みを許容 するような構成)を示唆する記載は見当たらない。
そうすると,第1記録領域及び第2記録領域は,記録媒体の記録領域を物 理的に区分して形成された別個の領域であると解するのが相当である。
(3) 一方,被告機器及び被告運行管理方法においては,センサから出力され, 一次記録領域に記録された加速度データを,トリガ判定閾値を超えるなどの 条件を満たすデータ(原告が第1データに当たると主張するもの。以下「甲 データ」という。)であるか,事故判定閾値を超えるなどの条件を満たすデ ータ(原告が第2データに当たると主張するもの。以下「乙データ」とい う。)であるかに応じて,記録媒体(CFカード)に形成された別個のファ イルに記録するとされている(別紙被告機器・ソフトウェア説明書(原告の 主張)1及び同2の各第1の2(5)A及びB参照。なお,被告は,別紙被告 機器・ソフトウェア説明書(被告の主張)のとおり,甲データと乙データが 異なるファイル名で書き込まれると主張するが,各データがファイルにより 区別して記録される点については争いがない。)。そして,原告の認めると おり,CFカードの記録領域は物理的に区分されておらず,甲データ又は乙 データに対応するファイルが記録領域全体のうちどの部分に形成されるかは 書き込みをする際に定まるというのであるから,CFカード中の空き領域に は甲データ及び乙データのいずれもが書き込まれ得るということができる。
以上によれば,被告機器及び被告運行管理方法は本件各特許発明の「第1 記録領域」及び「第2記録領域」に相当する構成を有していないと判断する のが相当である。
(4) これに対し,原告は,@ 「ファイル」の語が「記録領域」の意味で用い られること,A 2種類のデータを区別して取り扱うという技術的意義に照 らせば,第1記録領域と第2記録領域を区別するか,データ書き込みの際に 別々のファイルを形成するかに実質的な相違はないことを根拠に,被告機器 及び被告運行管理方法が前記各構成要件を充足する旨主張する。
そこで判断するに,@について,「ファイル」の語が原告主張の意味で用 いられることは確かであり(甲16〜22),データが書き込まれた,又は 書き込まれるべき一定の記録領域を「ファイル」と呼ぶことがあると認めら れる。しかし,ファイルには「ひとまとまりのデータ」という意味もあり (乙4〜6),後者であるとすれば,ファイルは,本件各特許発明における 「記録領域」ではなく,これに書き込まれる「データ」に相当することにな る。そうすると,本件各特許発明に接した当業者であれば当然に「ファイル」 が特許請求の範囲にいう「記録領域」に該当すると認識すると認めることは できない。
また,Aについて,前記(1)アの本件明細書の記載によれば,本件各特許 発明の技術的意義としては,きめ細やかな運行管理を行うためにデータを2 種類に分けて記録し,管理することがあると認めることができ,この技術的 意義との関係では,2種類のデータを第1記録領域と第2記録領域に分けて 記録するか(本件各特許発明),別個のファイルに記録するか(被告機器及 び被告運行管理方法)に実質的な相違はないとみることが可能である。しか し,本件各特許発明は,課題解決のための手段として記録領域を分ける構成 を採用したものであるから,これと異なる構成について,技術的意義が共通 することを根拠に,特許請求の範囲に記載された構成要件を文言上充足する といえないことは明らかである。
したがって,原告の上記主張を採用することはできない。
2 結論 以上によれば,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく,い ずれも理由がない。
追加
(別紙一部省略) (別紙)被告製品目録1KYBドライブレコーダーDRE-1002KYBドライブレコーダーDRE-1103KYBドライブレコーダーDRE-1204KURUMAME解析ツールver2.005KURUMAME解析ツールver3.00以上 (別紙)被告機器・ソフトウェア説明書(原告の主張)1被告機器1及び2と被告ソフトウェア1及び2を使用する場合の被告製品の構成について説明する。
第1被告機器1及び21型式DRE-100DRE-1102被告機器(ドライブレコーダー)の構成(1)被告機器1及び2は、それを搭載した車両の前後左右方向の加速度(G値)を検出する加速度センサを内蔵し、CFカードを格納するカードスロットを有するドライブレコーダー(データレコーダの一種)であり、例えば内蔵の加速度センサで、衝撃を検知したときに、衝撃前後の加速度データをCFカードに記録する。
(2)被告機器1及び2を使用する際には、トリガ判定閾値(X、Y。初期値は0.8G。)、トリガ後記録時間、キャプチャモード(多重トリガ/シングルトリガ)、事故判定閾値(X、Y。初期値は2.00G。)、トリガ判定サンプリング数(X、Y。初期値は3。)及び事故判定サンプリング数(X、Y。初期値は3。)が記録されているCFカードをカードスロットヘ挿入する。
CFカードヘの上記条件の記録は、被告ソフトウェア1及び2を用いて行われる。
(3)すなわち、被告機器1及び2の使用に先立ち、被告ソフトウェア1及び2を用いて、管理IDと関連付けてコンピュータ上に「号車」と「運転者」と を記録する号車管理を行うことで、特定の車両や運転者のCFカードであることが識別できるようになっている。
また、被告ソフトウェア1及び2で上記条件を設定し、設定したデータをCFカードへ記録する。
(4)上記条件のうちトリガ判定閾値及び事故判定閾値は「0.01〜10.00」の範囲で、トリガ判定サンプリング数、事故判定サンプリング数は「1〜999」の範囲で、解析目的に応じて定めることができる。
(5)被告機器1及び2が管理対象となる車両に搭載され、使用可能な状態になると、被告機器1及び2は、当該車両のデータ収集を開始する。
@被告機器1及び2は、車両の移動に伴って加速度センサから出力される加速度データを、一時記憶領域に、順次上書きを行いながらエンドレスに記録する。
A被告機器1及び2は、前記一時記憶領域に記憶されている加速度データとトリガ判定閾値及びトリガ判定サンプリング数を比較し、前記トリガ判定閾値を超えかつ前記トリガ判定サンプリング数以上連続する加速度データを、CFカード上に形成された当該データ用のファイルに記録する。
記録開始後、トリガ後記録時間が経過したかどうかを判定し、トリガ後記録時間が経過すると記録を終了する。
B被告機器1及び2は、前記一時記憶領域に記憶されている加速度データと事故判定閾値及び事故判定サンプリング数を比較し、前記事故判定閾値を超えかつ前記事故判定サンプリング数以上連続する加速度データを、CFカード上に形成された当該データ用のファイル(上記Aのファイルとは別のファイル。)に記録する。
記録開始後、トリガ後記録時間が経過したかどうかを判定し、トリガ後記録時間が経過すると記録を終了する。
第2被告ソフトウェア1ヴァージョンKURUMAME解析ツール(Ver.2)KURUMAME解析ツール(Ver.3)2被告ソフトウェア1及び2が実行する処理(1)コンピュータ上の設定処理管理IDと関連付けて、コンピュータ上に「号車」と「運転者」とを記録することができる。
(2)CFカードへの設定処理上記ドライブレコーダーを搭載した車両の加速度データを収集するための、トリガ判定閾値(X、Y。初期値は0.8G。)、トリガ後記録時間、キャプチャモード(多重トリガ/シングルトリガ)、事故判定閾値(X、Y。初期値は2.00G。)、トリガ判定サンプリング数(X、Y。初期値は3。)及び事故判定サンプリング数(X、Y。初期値は3。)を、CFカードに設定する。
(3)CFカードの記録情報を読み出す処理上記コンピュータ装置と接続されたCFカードに、CFカードが装着されているときに、そのCFカードに記録された情報を読み出す。
(4)読み出したCFカードの記録情報を用いた以下の解析処理ア時系列グラフの表示(甲第7号証の1の22頁。次頁図のF。甲第7号証の2の26頁も同様。)加速度データを時系列グラフに表示することにより、加減速や旋回などの車両の挙動を確認することができる。
イ危険度検索(甲第7号証の1の23頁、甲第7号証の2の27頁)CFカードに記録されたファイルの危険度(加速度)をもとに検索を行なう。危険度は、以下の4段階に分類される。
レベル1:加速度(G)の絶対値の最大値が1.5未満のファイルレベル2:加速度(G)の絶対値の最大値が1.5以上2.5未満のファイルレベル3:加速度(G)の絶対値の最大値が2.5以上4未満のファイルレベル4:加速度(G)の絶対値の最大値が4以上のファイル以上 (別紙)被告機器・ソフトウェア説明書(原告の主張)2被告機器3と被告ソフトウェア2を使用する場合の被告製品の構成について説明する。
第1被告機器31型式DRE-1202被告機器(1)被告機器3は、それを搭載した車両の前後左右方向の加速度(G値)を検出する加速度センサを内蔵し、CFカードを格納するカードスロットを有するドライブレコーダー(データレコーダの一種)であり、例えば内蔵の加速度センサで、衝撃を検知したときに、衝撃前後の加速度データをCFカードに記録する。
(2)被告機器3を使用する際には、トリガ判定閾値(X、Y。初期値は0.8G。)、トリガ後記録時間、キャプチャモード(多重トリガ/シングルトリガ)、事故判定閾値(X、Y。初期値は2.00G。)、トリガ判定サンプリング数(X、Y。初期値は3。)及び事故判定サンプリング数(X、Y。初期値は3。)が記録されているCFカードをカードスロットヘ挿入する。
CFカードヘの上記条件の記録は、被告ソフトウェア2を用いて行われる。
(3)すなわち、被告機器3の使用に先立ち、被告ソフトウェア2を用いて、
管理IDと関連付けてコンピュータ上に「号車」と「運転者」とを記録する号車管理を行うことで、特定の車両や運転者のCFカードであることが識別できるようになっている。
また、被告ソフトウェア2で上記条件を設定し、設定したデータをCFカードへ記録する。
(4)上記条件のうちトリガ判定閾値及び事故判定閾値は「0.01〜10.00」の範囲で、トリガ判定サンプリング数、事故判定サンプリング数は「1〜999」の範囲で、解析目的に応じて定めることができる。
(5)被告機器3が管理対象となる車両に搭載され、使用可能な状態になると、
被告機器3は、当該車両のデータ収集を開始する。
@被告機器3は、車両の移動に伴って加速度センサから出力される加速度データを、一時記憶領域に、順次上書きを行いながらエンドレスに記録する。
A被告機器3は、前記一時記憶領域に記憶されている加速度データとトリガ判定閾値及びトリガ判定サンプリング数を比較し、前記トリガ判定閾値を超えかつ前記トリガ判定サンプリング数以上連続する加速度データを、CFカード上に形成された当該データ用のファイルに記録する。
記録開始後、トリガ後記録時間が経過したかどうかを判定し、トリガ後記録時間が経過すると記録を終了する。
B被告機器3は、前記一時記憶領域に記憶されている加速度データと事故判定閾値及び事故判定サンプリング数を比較し、前記事故判定閾値を超えかつ前記事故判定サンプリング数以上連続する加速度データを、CFカード上に形成された当該データ用のファイル(上記Aのファイルとは別のファイル。)に記録する。
記録開始後、トリガ後記録時間が経過したかどうかを判定し、トリガ後記録時間が経過すると記録を終了する。
C被告機器3は、エンジンを始動してからの走行時間、走行距離、走行速度、加速度、GPSデータ、アイドリングデータをCFカードに常時 記録する。
第2被告ソフトウェア1ヴァージョンKURUMAME解析ツール(Ver.3)2被告ソフトウェア2が実行する処理(1)コンピュータ上の設定処理管理IDと関連付けて、コンピュータ上に「号車」と「運転者」とを記録することができる。
(2)CFカードへの設定処理上記ドライブレコーダーを搭載した車両の加速度データを収集するための、トリガ判定閾値(X、Y。初期値は0.8G。)、トリガ後記録時間、キャプチャモード(多重トリガ/シングルトリガ)、事故判定閾値(X、Y。初期値は2.00G。)、トリガ判定サンプリング数(X、Y。初期値は3。)及び事故判定サンプリング数(X、Y。初期値は3。)を、CFカードに設定する。
(3)CFカードの記録情報を読み出す処理上記コンピュータ装置と接続されたCFカードに、CFカードが装着されているときに、そのCFカードに記録された情報を読み出す。
(4)読み出したCFカードの記録情報を用いた以下の解析処理ア時系列グラフの表示(甲第7号証の2の26頁。下図のF。)加速度データを時系列グラフに表示することにより、加減速や旋回などの車両の挙動を確認することができる。
イ危険度検索(甲第7号証の2の27頁)CFカードに記録されたファイルの危険度(加速度)をもとに検索を行なう。危険度は、以下の4段階に分類される。
レベル1:加速度(G)の絶対値の最大値が1.5未満のファイルレベル2:加速度(G)の絶対値の最大値が1.5以上2.5未満のファイルレベル3:加速度(G)の絶対値の最大値が2.5以上4未満のファイルレベル4:加速度(G)の絶対値の最大値が4以上のファイル以上 (別紙)被告機器・ソフトウェア説明書(被告の主張)A加速度センサからの加速度データが,トリガ判定閾値を連続3回超過してサンプリングされた場合(t0地点)は,その後,10秒間経過(t2時点)するまで,加速度データ等のSDRAMへの記録を継続する。t2時点までに,加速度センサからの加速度データが,事故判定閾値を連続3回超過してサンプリング(10ms毎)されなかった場合は,SDRAMに一時記録されたt0前20秒間及びt0後10秒間(以下「t0前後30秒間」という。)の加速度データ等を「hhmmss.BLK」とのファイル名(t2時点の「hh」(時),「mm」(分),「ss」(秒))で,CFカードのデータ記録領域に書き込む。
B加速度センサからの加速度データが,トリガ判定閾値を連続3回超過してサンプリングされた場合(t0時点)は,その後,10秒間経過(t2時点)するまで,加速度データ等のSDRAMへの記録を継続する。t2時点までに,加速度センサからの加速度データが,事故判定閾値を連続3回超過してサンプリングされた場合(t1時点)は,SDRAMに一時記録された「t0前後30秒間」の加速度データ等を「hhmmssC.BLK」(上書き禁止処理がされたファイル。)とのファイル名(t2時点の「hh」(時),「mm」(分),「ss」(秒))で,CFカードのデータ記録領域に書き込む。
以上
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官 橋彩
裁判官 植田裕紀久