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関連審決 訂正2013-390119
無効2011-800009
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成26ワ19447 特許権侵害差止等請求権不存在確認等請求事件 判例 特許
平成25ワ33993 特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成26ワ3343 特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成25ネ10098特許権侵害差止等請求控訴事件 判例 特許
平成26ワ23512 差止請求事件 判例 特許
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 24年 (ワ) 15693号 特許権侵害差止等請求事件
東京都千代田区<以下略>
原告 日本ファイリング株式会社
同 訴訟代理人弁護士鮫島正洋
同 和田祐造
同 小栗久典 横浜市西区<以下略>
被告株式会社岡村製作所
同 訴訟代理人弁護士三村量一
同 中島慧
同 訴訟代理人弁理士堅田多恵子
同 補佐人弁理士小椋正幸
同 重信和男
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2015/01/23
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
1 被告は,別紙物件目録記載1及び2の図書保管管理装置を製造し,販売し, 使用し,販売の申出をしてはならない。
2 被告は,別紙物件目録記載1及び2の図書保管管理装置を廃棄せよ。
3 被告は,原告に対し,8250万円及びこれに対する平成24年6月8日か ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 仮執行宣言
事案の概要
1 本件は,名称を「図書保管管理装置」とする特許権を有する原告が,被告が 業として製造・販売する図書保管管理装置が上記特許権に係る特許発明の技術 的範囲に属すると主張して,被告に対し,同特許権に基づいて,上記装置の製 造・販売等の差止め及び廃棄を求めるとともに,特許権侵害を理由とする不法 行為に基づく損害賠償請求として,8250万円及びこれに対する平成24年 6月8日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合に よる遅延損害金の支払を求めた事案である。
2 前提事実 ( 証拠を掲げていない事実は当事者間に争いがない。 ) (1) 当事者 ア 原告は,物流・情報保管システムとして図書館等施設用設備を業として 製造し,販売している。
イ 被告は,オフィス家具等の図書館等施設用設備を業として製造し,販売 している。
(2) 原告の有する特許権 ア 原告は,次の特許権を有している(以下「本件特許権」といい,本件特許権 に係る特許を「本件特許」という。)。
発明の名称 図書保管管理装置 特許番号 第2851237号 出 願 日 平成6年4月20日 登 録 日 平成10年11月13日 イ 被告は,平成23年1月19日(差出日),特許庁に対し,本件特許の特許 請求の範囲の請求項1,2及び7に係る発明についての特許を無効にすること を求めて審判を請求し(無効2011-800009),原告は,同年5月1 6日付けで訂正請求書を提出し,特許請求の範囲減縮を目的とする特許請求 の範囲の訂正(以下,この訂正を「本件訂正」という。 の請求をしたところ, )特許庁は,同年12月21日,「訂正を認める。本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をした。被告は,これを不服として知的財産高等裁判所に上記審決の取消しを求める訴えを提起した(平成24年(行ケ)第10038号)。
同裁判所は,平成24年12月11日,上記審決を取り消すとの判決をし,この判決は確定した。
これを受けて特許庁は,平成25年4月23日,「訂正を認める。特許第2851237号の請求項1,2及び7に記載された発明についての特許を無効とする。」との審決をした。原告は,これを不服として知的財産高等裁判所に上記審決の取消しを求める訴えを提起し(平成25年(行ケ)第10153号),同年8月23日付けで本件特許の特許請求の範囲減縮を目的とする訂正審判請求をした(訂正2013-390119号。以下,この訂正を「本件再訂正」という。)。これを受けて同裁判所は,同年10月7日,事件を審判官に差し戻すため,平成23年法律第63号附則2条24項により,なお従前の例によることとされる改正前の特許法181条2項により,上記審決を取り消した。
原告は,同月23日付け訂正請求のための期間指定通知で指定された期間内に訂正請求をしなかったので,平成23年法律第63号附則2条18項,19項により,なお従前の例によることとされる改正前の特許法134条の3第5項により,当該期間の末日に,本件再訂正に係る審判請求書に添付された特許請求の範囲,明細書を援用した訂正請求がされたものとみなされた。
特許庁は,平成26年6月3日,「訂正を認める。特許第2851237号の請求項1,2及び7に記載された発明についての特許を無効とする。」との審決をした。原告は,これを不服として知的財産高等裁判所に上記審決の取消しを求める訴えを提起し(平成26年(行ケ)第10166号),同裁判所に係属中である。〔甲3,23,33,34,乙55,65,80,85〕 ウ 本件特許の特許請求の範囲,明細書及び図面の内容は,別紙特許公報(甲2) 記載のとおりである(ただし,本件訂正及び本件再訂正がされる前のもの。以 下,上記明細書及び図面を「本件明細書等」という。)。
エ 本件特許の特許請求の範囲 本件特許の特許請求の範囲における請求項の数は7であるが,そのうち請求 項1,5及び6の各記載はそれぞれ,別紙特許公報の特許請求の範囲【請求項 1】,【請求項5】及び【請求項6】記載のとおりである(以下,順に「本件 発明1」,「本件発明2」,「本件発明3」といい,これらを併せて「本件各 発明」という。)。
(3) 本件各発明の構成要件 ア 本件発明1 本件発明1を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,それぞれの 記号に従い,「構成要件1A」などという。)。
1A 図書の寸法別に分類された複数の棚領域を有する書庫と, 1B この書庫の各棚領域に収容されるもので,それぞれが収容された棚領 域に対応した寸法を有する複数の図書を収容する複数のコンテナと, 1C この複数のコンテナの前記書庫内における収容位置と,各コンテナに 収容された複数の図書の各図書コードとを対応させて記憶する記憶手 段と, 1D 取り出しが要求された図書の図書コードを入力することにより,前記 記憶手段の記憶内容に基づいて,該要求図書が収容されているコンテナ を前記書庫から取り出してステーションに搬送するとともに, 1E 返却が要求された図書の寸法情報を入力することにより,該返却図書 の寸法に対応する複数の前記コンテナの中から空きのあるコンテナを 前記書庫から取り出して前記ステーションに搬送する搬送手段と, 1F この搬送手段により前記ステーションに搬送されて,前記要求図書が 取り出されたコンテナまたは前記返却図書が返却されたコンテナに対 して,前記記憶手段の記憶内容を更新する更新手段とを具備し, 1G 前記書庫の複数の棚領域には,前記搬送手段によってコンテナを取り 出す間口に対して,奥行き方向に複数のコンテナが収容され,前記搬送 手段には,前記コンテナを取り出す間口に対して,手前側のコンテナを 取り出してから奥側のコンテナを取り出す移載手段が備えられている 1H ことを特徴とする図書保管管理装置。
イ 本件発明2 本件発明2を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,それぞれの 記号に従い,「構成要件2A」などという。)。
2A 前記搬送手段は,前記書庫に返却されるコンテナ内の図書の充填率を 検出して前記記憶手段に記憶させる充填率検出手段を備え, 2B 前記図書の返却が要求された状態で,前記記憶手段の記憶内容に基づ いて,該返却図書の寸法に対応する複数の前記コンテナの中で,図書充 填率の低いコンテナから取り出す 2C ことを特徴とする請求項1記載の図書保管管理装置。
ウ 本件発明3 本件発明3を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,それぞれの 記号に従い,「構成要件3A」などという。)。
3A 前記搬送手段は,前記書庫に返却されるコンテナ内の図書の充填率を 検出して前記記憶手段に記憶させる充填率検出手段を備え, 3B 前記図書の返却が要求された状態で,前記記憶手段の記憶内容に基づ いて,該返却図書の寸法に対応する前記コンテナの中で,図書充填率の 低い手前側のコンテナを優先して取り出す 3C ことを特徴とする請求項1記載の図書保管管理装置。
(4) 本件各訂正発明 ア 原告は,前記(2)イのとおり本件訂正をしたが(本件訂正後の請求項1, 5,6の各発明をそれぞれ「本件訂正発明1」,「本件訂正発明2」及び 「本件訂正発明3」といい,これらを併せて「本件各訂正発明」という。), 本件各訂正発明の内容は次のとおりである(下線部が訂正箇所)。〔甲3〕イ 本件訂正発明1 図書の寸法別に分類された幅及び高さがそれぞれ異なる複数の棚領域を 有する書庫と,この書庫の各棚領域に収容されるもので,それぞれが収容さ れた棚領域に対応した寸法を有する複数の図書を収容する複数のコンテナ と,この複数のコンテナの前記書庫内における収容位置と,各コンテナに収 容された複数の図書の各図書コードとを対応させて記憶する記憶手段と,取 り出しが要求された図書の図書コードを入力することにより,前記記憶手段 の記憶内容に基づいて,該要求図書が収容されているコンテナを前記書庫か ら取り出してステーションに搬送するとともに,返却が要求された図書の寸 法情報を入力することにより,該返却図書の寸法に対応する複数の前記コン テナの中から空きのあるコンテナを前記書庫から取り出して前記ステーシ ョンに搬送する搬送手段と,この搬送手段により前記ステーションに搬送さ れて,前記要求図書が取り出されたコンテナまたは前記返却図書が返却され たコンテナに対して,前記記憶手段の記憶内容を更新する更新手段とを具備 し,前記書庫の複数の棚領域には,前記搬送手段によってコンテナを取り出 す間口に対して,奥行き方向に複数のコンテナが収容され,前記搬送手段に は,前記コンテナを取り出す間口に対して,手前側のコンテナを取り出して から奥側のコンテナを取り出す移載手段が備えられていることを特徴とす る図書保管管理装置。
ウ 本件訂正発明2 前記搬送手段は,前記書庫に返却されるコンテナ内の図書の充填率を検出 して前記記憶手段に記憶させる充填率検出手段を備え,前記図書の返却が要 求された状態で,前記記憶手段の記憶内容に基づいて,該返却図書の寸法に 対応する複数の前記コンテナの中で,図書充填率の低いコンテナから取り出 すことを特徴とする請求項1記載の図書保管管理装置。
エ 本件訂正発明3 前記搬送手段は,前記書庫に返却されるコンテナ内の図書の充填率を検出 して前記記憶手段に記憶させる充填率検出手段を備え,前記図書の返却が要 求された状態で,前記記憶手段の記憶内容に基づいて,該返却図書の寸法に 対応する前記コンテナの中で,図書充填率の低い手前側のコンテナを優先し て取り出すことを特徴とする請求項1記載の図書保管管理装置。
(5) 本件各訂正発明の構成要件の分説 ア 本件訂正発明1 本件訂正発明1を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,それ ぞれの記号に従い,「構成要件1A」などという。)。
1A 図書の寸法別に分類された幅及び高さがそれぞれ異なる複数の棚領 域を有する書庫と, 1B この書庫の各棚領域に収容されるもので,それぞれが収容された棚領 域に対応した寸法を有する複数の図書を収容する複数のコンテナと, 1C この複数のコンテナの前記書庫内における収容位置と,各コンテナに 収容された複数の図書の各図書コードとを対応させて記憶する記憶手 段と, 1D 取り出しが要求された図書の図書コードを入力することにより,前記 記憶手段の記憶内容に基づいて,該要求図書が収容されているコンテナ を前記書庫から取り出してステーションに搬送するとともに, 1E 返却が要求された図書の寸法情報を入力することにより,該返却図書 の寸法に対応する複数の前記コンテナの中から空きのあるコンテナを 前記書庫から取り出して前記ステーションに搬送する搬送手段と, 1F この搬送手段により前記ステーションに搬送されて,前記要求図書が 取り出されたコンテナまたは前記返却図書が返却されたコンテナに対 して,前記記憶手段の記憶内容を更新する更新手段とを具備し, 1G 前記書庫の複数の棚領域には,前記搬送手段によってコンテナを取り 出す間口に対して,奥行き方向に複数のコンテナが収容され,前記搬送 手段には,前記コンテナを取り出す間口に対して,手前側のコンテナを 取り出してから奥側のコンテナを取り出す移載手段が備えられている 1H ことを特徴とする図書保管管理装置。
イ 本件訂正発明2 本件訂正発明2を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,それぞ れの記号に従い,「構成要件2A」などという。)。
2A 前記搬送手段は,前記書庫に返却されるコンテナ内の図書の充填率を 検出して前記記憶手段に記憶させる充填率検出手段を備え, 2B 前記図書の返却が要求された状態で,前記記憶手段の記憶内容に基づ いて,該返却図書の寸法に対応する複数の前記コンテナの中で,図書充 填率の低いコンテナから取り出す 2C ことを特徴とする請求項1記載の図書保管管理装置。
ウ 本件訂正発明3 本件訂正発明3を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,それぞ れの記号に従い,「構成要件3A」などという。)。
3A 前記搬送手段は,前記書庫に返却されるコンテナ内の図書の充填率を 検出して前記記憶手段に記憶させる充填率検出手段を備え, 3B 前記図書の返却が要求された状態で,前記記憶手段の記憶内容に基づ いて,該返却図書の寸法に対応する前記コンテナの中で,図書充填率の 低い手前側のコンテナを優先して取り出す 3C ことを特徴とする請求項1記載の図書保管管理装置。
(6) 本件各再訂正発明 ア 原告は,前記(2)イのとおり本件再訂正をしたが(本件再訂正後の請求項 1,5,6の各発明をそれぞれ「本件再訂正発明1」,「本件再訂正発明 2」及び「本件再訂正発明3」といい,これらを併せて「本件各再訂正発明」 という。),本件再訂正発明の内容は次のとおりである(下線部が訂正箇 所)。〔甲33〕 イ 本件再訂正発明1 図書の寸法別に分類された幅及び高さがそれぞれ異なる複数の棚領域を 有する書庫と,この書庫の各棚領域に収容されるもので,それぞれが収容さ れた棚領域に対応した寸法を有する複数の図書を収容する複数のコンテナ と,この複数のコンテナの前記書庫内における収容位置と,各コンテナに収 容された複数の図書の各図書コードとを対応させて記憶する記憶手段と,取 り出しが要求された図書の図書コードを入力することにより,前記記憶手段 の記憶内容に基づいて,該要求図書が収容されているコンテナを前記書庫か ら取り出してステーションに搬送するとともに,返却が要求された図書の寸 法情報を入力することにより,該返却図書の寸法に対応する複数の前記コン テナの中から空きのあるコンテナを前記書庫から取り出して前記ステーシ ョンに搬送する搬送手段と,この搬送手段により前記ステーションに搬送さ れて,前記要求図書が取り出されたコンテナまたは前記返却図書が返却され たコンテナに対して,前記記憶手段の記憶内容を更新する更新手段とを具備 し,前記書庫の複数の棚領域には,前記搬送手段によってコンテナを取り出 す間口に対して,奥行き方向に2個のコンテナが収容され,前記搬送手段に は,前記コンテナを取り出す間口に対して,手前側のコンテナを取り出して から奥側のコンテナを取り出す移載手段が備えられていることを特徴とし, 前記奥行き方向に2個収容されたコンテナのうち,手前側のコンテナを前記 空きのあるコンテナとして優先的に使用することを特徴とする図書保管管 理装置。
ウ 本件再訂正発明2 前記搬送手段は,前記書庫に返却されるコンテナ内の図書の充填率を検出 して前記記憶手段に記憶させる充填率検出手段を備え,前記図書の返却が要 求された状態で,前記記憶手段の記憶内容に基づいて,該返却図書の寸法に 対応する複数の前記コンテナの中で,図書充填率の低いコンテナから取り出 すことを特徴とする請求項1記載の図書保管管理装置。
エ 本件再訂正発明3 前記搬送手段は,前記書庫に返却されるコンテナ内の図書の充填率を検出 して前記記憶手段に記憶させる充填率検出手段を備え,前記図書の返却が要 求された状態で,前記記憶手段の記憶内容に基づいて,該返却図書の寸法に 対応する前記コンテナの中で,図書充填率の低い手前側のコンテナを優先し て取り出すことを特徴とする請求項1記載の図書保管管理装置。
(7) 本件各再訂正発明の構成要件の分説 本件各再訂正発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,そ れぞれの記号に従い,「構成要件A’」などという。)。
ア 本件再訂正発明1 1A’ 図書の寸法別に分類された幅及び高さがそれぞれ異なる複数の棚領 域を有する書庫と, 1B’ この書庫の各棚領域に収容されるもので,それぞれが収容された棚 領域に対応した寸法を有する複数の図書を収容する複数のコンテナ と, 1C’ この複数のコンテナの前記書庫内における収容位置と,各コンテナ に収容された複数の図書の各図書コードとを対応させて記憶する記 憶手段と, 1D’ 取り出しが要求された図書の図書コードを入力することにより,前 記記憶手段の記憶内容に基づいて,該要求図書が収容されているコン テナを前記書庫から取り出してステーションに搬送するとともに, 1E’ 返却が要求された図書の寸法情報を入力することにより,該返却図 書の寸法に対応する複数の前記コンテナの中から空きのあるコンテ ナを前記書庫から取り出して前記ステーションに搬送する搬送手段 と, 1F’ この搬送手段により前記ステーションに搬送されて,前記要求図書 が取り出されたコンテナまたは前記返却図書が返却されたコンテナ に対して,前記記憶手段の記憶内容を更新する更新手段とを具備し, 1G’ 前記書庫の複数の棚領域には,前記搬送手段によってコンテナを取 り出す間口に対して,奥行き方向に2個のコンテナが収容され,前記 搬送手段には,前記コンテナを取り出す間口に対して,手前側のコン テナを取り出してから奥側のコンテナを取り出す移載手段が備えら れていることを特徴とし,前記奥行き方向に2個収容されたコンテナ のうち,手前側のコンテナを前記空きのあるコンテナとして優先的に 使用する 1H’ ことを特徴とする図書保管管理装置。
イ 本件再訂正発明2 2A’ 前記搬送手段は,前記書庫に返却されるコンテナ内の図書の充填率 を検出して前記記憶手段に記憶させる充填率検出手段を備え, 2B’ 前記図書の返却が要求された状態で,前記記憶手段の記憶内容に基 づいて,該返却図書の寸法に対応する複数の前記コンテナの中で,図 書充填率の低いコンテナから取り出す 2C’ ことを特徴とする請求項1記載の図書保管管理装置。
ウ 本件再訂正発明3 3A’ 前記搬送手段は,前記書庫に返却されるコンテナ内の図書の充填率 を検出して前記記憶手段に記憶させる充填率検出手段を備え, 3B’ 前記図書の返却が要求された状態で,前記記憶手段の記憶内容に基 づいて,該返却図書の寸法に対応する前記コンテナの中で,図書充填 率の低い手前側のコンテナを優先して取り出す 3C’ ことを特徴とする請求項1記載の図書保管管理装置。
(8) 被告の行為 被告は,平成22年9月頃から,業として別紙物件目録記載1の装置(以 下「イ号物件」という。)及び別紙物件目録記載2の装置(以下「ロ号物件」 という。)の製造を受注し,前者を戸田・坂田建設共同企業体に,後者を西 松建設株式会社に対してそれぞれ販売した。
なお,具体的構成については充足論に必要な範囲において後述するが,ロ 号物件は,本件各発明及び本件各再訂正発明に対応する部分については,イ 号物件と同じ構成である。
(9) イ号物件及びロ号物件における本件各発明の構成要件充足性 イ号物件及びロ号物件は,本件各発明の構成要件1A,1Bを充足する。
(10) 本件各発明に先立つ公知技術 本件各発明に先立つ公知技術が記載された刊行物として,以下の文献が存 在する。
ア 特開平5-151233公報(公開日平成5年6月18日。乙12。以 下「乙12公報」といい,同公報に係る発明を「乙12発明」という。) イ 「プロジェクト仕様書 カリフォルニア州立大学オビアット図書館第U 期」(昭和62年11月16日作成。乙11の3。以下「乙11の3文献」 といい,同文献に係る発明を「乙11の3発明」という。) ウ 特開昭49-80780公報(公開日昭和49年8月3日。乙16。以 下「乙16公報」といい,同公報に記載された発明を「乙16発明」とい う。) エ 「L-20 自動化図書館システムのご紹介」(昭和51年2月発行。
乙42。以下「乙42文献」といい,同文献に記載された発明を「乙42 発明」という。) オ 実公昭63-12085公報(昭和63年4月7日公告。乙45。以下 「乙45公報」といい,同公報に記載された発明を「乙45発明」という。)3 争点 (1) イ号物件及びロ号物件が本件各発明の技術的範囲に属するか ア 構成要件1Cの充足性 イ 構成要件1DEの充足性 ウ 構成要件1Fの充足性 エ 構成要件2A,3Aの充足性 オ 構成要件2B,3Bにおける「充填率が低いコンテナから取り出(す)」 の充足性 カ 構成要件3Bにおける「手前側のコンテナを優先して取り出(す)」の 充足性 (2) 本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものか ア 本件訂正発明1につき (ア) 乙12公報を主引例とする進歩性欠如(特許法29条2項) (イ) 乙11の3文献を主引例とする進歩性欠如(同法29条2項) (ウ) 乙42文献を主引例とする進歩性欠如(同法29条2項) (エ) サポート要件(同法36条6項1号)違反 (オ) 明確性要件(同法36条6項2号)違反 イ 本件訂正発明2につき進歩性欠如(同法29条2項) ウ 本件訂正発明3につき進歩性欠如(同法29条2項) (3) 本件再訂正による対抗主張の成否 ア 本件発明1につき イ 本件発明2につき ウ 本件発明3につき (4) 損害発生の有無及びその額
争点に関する当事者の主張
1 争点(1)ア(構成要件1Cの充足性)について 〔原告の主張〕 イ号物件及びロ号物件は,それらに具備されている「図書書誌マスタ」が, 少なくとも,図書IDと,収容位置を示すコンテナ番号とを対応付けて記憶し ており,構成要件1Cを充足する。
〔被告の主張〕 本件発明1の構成要件1Cの「複数のコンテナの前記書庫内における収容位 置と,各コンテナに収容された複数の図書の各図書コードとを対応させて記憶 する記憶手段」を充足するには,コンテナ単位でその中に収容されている複数 の図書の図書IDを管理するものでなければならない。
これに対してイ号物件及びロ号物件の「図書書誌マスタ」は,図書IDごと に,コンテナ番号,前後情報,保管状態,書名等が記憶されているものであり, 図書単位で書名や収容されているコンテナ番号等の情報を管理するデータベー スにすぎず,コンテナ単位でコンテナに収容されている複数の図書の図書ID を管理するものではない。
したがって,イ号物件及びロ号物件はいずれも構成要件1Cを充足しない。
2 争点(1)イ(構成要件1DEの充足性)について 〔原告の主張〕 イ号物件及びロ号物件における図書を返却する手段である,「自動呼出入庫」 及び「コンテナ情報検索」はいずれも,構成要件1DEを充足する。
(1) 自動呼出入庫について ア 構成要件1DEにおいて,図書の寸法情報の入力の主体(図書館員であ るかどうか)や,対象(寸法情報がどこに入力されるか)については,特 に限定されていない。そして,「入力」とは,装置や回路,ソフトウェア, システムなどに信号やデータ,エネルギーなど何かを与えること全般を指 し,入力作業の主体については何ら限定されていない。したがって,構成 要件1DEの「入力」には,手作業による入力も,手作業でないコンピュ ータ指令による入力も当然に含まれていると解される。
また,本件発明1の実質に鑑みると,構成要件1DEは,返却が要求され た図書に係る寸法と同一寸法の図書が収容されているコンテナを呼び出す ことによって,サイズ別という図書収容方式を実現する点に関するものであ るから,寸法情報の入力は,「返却図書の寸法に対応する複数の前記コンテ ナの中から空きのあるコンテナを前記書庫から取り出して前記ステーショ ンに搬送する」搬送手段(コンテナの取り出しを司るシステム)によってさ れれば十分であり,それ以上の限定を加えるべき理由はない。
イ イ号物件及びロ号物件の「自動呼出入庫」による返却作業においては,図 書館員により入力された図書のIDに紐付けされた図書の高さ情報という 「寸法情報」を「コンテナの取り出しを司るシステム」に「入力」することに よって,「返却図書の寸法に対応する複数の前記コンテナの中から空きのあ るコンテナを前記書庫から取り出して前記ステーションに搬送」しているの であり,イ号物件及びロ号物件が構成要件1DEに該当することは明白であ る。
ウ 被告は,原告が本件特許に係る無効審判請求において,構成要件1DEに 関して,図書の寸法情報のみを入力することで空きのあるコンテナを取り出 す構成に限定される旨主張したと述べる。原告は,「本件発明1は図書の寸 法情報のみでコンテナを取り出すことが可能であり,」と主張したが,その 意味は,コンテナを取り出すためには,図書の寸法情報のみでもいいし,図 書の寸法情報に加えて何らかの情報を付加してもいいと解されるべきであ るから,被告の上記主張は失当である。
(2) コンテナ情報検索について 「コンテナ情報検索」による返却作業においては,図書館員が呼び出した いコンテナの条件を選択・入力しており,その検索キーとして「コンテナサ イズ(A4/B5/A5)」が存在する。この「コンテナサイズ(A4/B 5/A5)」は,図書の寸法情報であるから,イ号物件及びロ号物件は,構 成要件1Eの「返却が要求された図書の寸法情報を入力することにより,該 返却図書の寸法に対応する複数の前記コンテナの中から空きのあるコンテナ を前記書庫から取り出して前記ステーションに搬送する搬送手段と,」を充 足する。
〔被告の主張〕 イ号物件及びロ号物件において,図書を返却する手段は,「自動呼出入庫」 及び「コンテナ情報検索」の2種類が存在するが,いずれも構成要件1DEを 充足しない。
(1) 自動呼出入庫について ア 本件明細書等の段落【0049】及び段落【0054】の記載によれば, 構成要件1DEの「図書コードを入力」及び「図書の寸法情報を入力」と は,いずれも図書館員による入力行程を意味する。また,「入力」は,日 本工業規格(JIS X 0006)における用語として,システムの外 部からデータの受入れを行う処理のことをいう(これに対して,記憶装置 等のシステム内部からのデータの取得を「読取り」という。)。
そうすると,構成要件1DEの「入力」とは,図書館員が,「図書保管 管理装置」というシステムの外部から,寸法情報のデータを与えることを いうものと解するのが自然である。
イ イ号物件及びロ号物件の「自動呼出入庫」による返却作業においては, 図書に付されたICを読み取ることによって図書コードを取得した上で, 当該図書コードに基づいて図書書誌マスタから図書の寸法情報(A4,B 5,A5等)を取得しているから,「返却が要求された図書の寸法情報を 入力することによ」ってコンテナをステーションに搬送してはいない(図 書書誌マスタからの寸法情報の取得は,寸法情報の「入力」には該当しな い。)。
したがって,「自動呼出入庫」による返却作業は,構成要件1DEを充 足しない。
ウ さらに,原告は,本件特許に係る無効審判請求において,構成要件1D Eに関して,「図書の寸法情報のみを入力することで空きのあるコンテナ を取り出す構成に限定される」旨主張した。これに対して,イ号物件及び ロ号物件は,コンテナの特定は,図書館員が図書IDを入力して行われる が,この図書IDは各図書に対応付けられた数字と文字の組合せにすぎず, 図書の寸法情報を含んでいない。したがって,イ号物件及びロ号物件は, 構成要件1DEの「返却が要求された図書の寸法情報を入力することによ り」を充足しない。
(2) コンテナ情報検索について ア 本件発明1は,「返却が要求された図書の寸法情報を入力することによ り,該返却図書の寸法に対応する複数の前記コンテナの中から空きのある コンテナを前記書庫から取り出して前記ステーションに搬送する搬送手 段」を具備することを特徴とする「物の発明」であり,本件明細書等の段 落【0014】に記載されるとおり「自動化による図書の取り出し及び返 却作業の能率も効果的に向上させ得る極めて良好な図書保管管理装置」に 関するものである。
この点に関して,本件発明1の特許請求の範囲の記載をみると,人間が 関与する部分については,「図書コードを入力」,「寸法情報を入力」と されていて,人による関与が明確にされている。
したがって,本件発明1の「返却が要求された図書の寸法情報を入力す ることにより,該返却図書の寸法に対応する複数の前記コンテナの中から 空きのあるコンテナを前記書庫から取り出して前記ステーションに搬送す る搬送手段」 人間の判断及び操作が介在しないものをいうと解される。
は, イ イ号物件及びロ号物件の「コンテナ情報検索」による返却作業は,多様 な検索条件に適合する複数のコンテナが画面上に一覧表示され,当該表示 を見た図書館員がその中から任意のコンテナを選択した上で手動によりコ ンテナ選択操作及びコンテナ呼出操作を行うと,選択されたコンテナがス テーションに搬送されるというものである。
「コンテナ情報検索」による返却作業では,搬送の対象となるコンテナ を図書館員が判断した上で手動によりコンテナ選択操作・コンテナ呼出操 作を行っており,人間の判断及び操作が介在しているから,「返却が要求 された図書の寸法情報を入力することにより,該返却図書の寸法に対応す る複数の前記コンテナの中から空きのあるコンテナを前記書庫から取り出 して前記ステーションに搬送する」ものとはいえない。
したがって,「コンテナ情報検索」による返却作業は,構成要件1DE を充足しない。
3 争点(1)ウ(構成要件1Fの充足性)について〔原告の主張〕 (1) 返却処理について ア(ア) 構成要件1F 「この搬送手段により前記ステーションに搬送されて, ( 前記要求図書が取り出されたコンテナまたは前記返却図書が返却された コンテナに対して,前記記憶手段の記憶内容を更新する更新手段とを具 備し」)の技術的意義は,記憶手段の記憶内容(コンテナの書庫内におけ る収容位置と図書コードとの対応関係)を固定化することなく更新して, 図書の収容位置を任意に定めるフリーロケーション方式を実現すること にあり,返却作業の能率(出納効率)向上という作用効果を奏するものである。この点,記憶内容の更新のタイミングが搬送手段によりコンテナがステーションに搬送された後であろうが,前であろうが,図書の収容位置を任意に定める構成を実現できるし,上記の作用効果を奏することができる。
したがって,構成要件1Fにおいて,更新時期がコンテナがステーションに搬送された前か搬送された後かは問題とならない。そして,構成要件1Fは,「前記要求図書が取り出されたコンテナまたは前記返却図書が返却されたコンテナに対して,前記記憶手段の記憶内容を更新する更新手段」と規定されているから,「記憶内容の更新の対象となるコンテナ」と「取り出し/返却の対象となるコンテナ」とが一致する関係にあれば足りると考えるべきである。
これに対して被告は,構成要件1Fの更新手段は,搬送された後の図書が取り出されたコンテナ及び搬送手段によりステーションに搬送された後の図書が返却されたコンテナに関する記憶内容を更新するものであると主張する。
しかし,「搬送された後の」という限定は,特許請求の範囲に一切記載されていないし,本件明細書等の段落【0051】,【0052】,【0056】ないし【0059】をみても,更新時期が搬送された後でなければならないとする記載は一切存在しない。被告が主張する特許請求の範囲に記載された文言は,更新対象のコンテナを特定する意味にすぎず,特に時制的意味を持つものではないと解されるべきである。この点,被告は,本件明細書等の一実施例の記載を上記被告主張の根拠とするが,当該一実施例の記載は単なる一例にすぎないとみるべきであり,当該一実施例に限定されるべき理由はない。
(イ) また,本件発明1の構成要件1Fは,「前記要求図書が取り出されたコ ンテナまたは前記返却図書が返却されたコンテナ」と記載されており, 「前記要求図書が取り出されたコンテナ」と「前記返却図書が返却された コンテナ」のいずれかについて記憶手段の記憶内容を更新するものであれ ば,構成要件1Fを充足すると規定するものと解される。
イ ロ号物件に係る操作説明書(甲29)によれば,同物件では,出庫した図 書を返却する場合に使用する機能として,「コンテナを呼出してから入庫登 録を行う方法」があり,その方法は,コンテナがステーションに搬送された 後に記憶内容の更新を行うというものである。また,その方法における処理 フローには,「図書チェックに異常を検知した場合,未確認図書リスト画面 が表示されます。未確認図書リスト画面にて強制終了又は,再チェックボタ ンを選択します。」との記載があり,その場合には,何らかの登録修正が行 われるから,コンテナがステーションに搬送された後に記憶内容の更新が行 われることになる。
ロ号物件に係る通信フロー設計書(乙51)によれば,返却図書がコンテ ナに格納された後に,搬送書誌データ内の取り出し状態が【在庫】に更新さ れるから,記憶内容の更新は,コンテナがステーションに搬送された後にさ れている。
そして,イ号物件はロ号物件と本件発明との対比の関係では同じ構成であ る。
したがって,イ号物件及びロ号物件はいずれも,構成要件1Fを充足する。
仮に,イ号物件及びロ号物件が,被告の主張するように,先に記憶内容の 「更新」をし,その後にステーションにコンテナを「搬送」する構成である としても,構成要件1Fにおいて,更新時期はコンテナがステーションに搬 送された前か搬送された後かは問題とならないから,構成要件1Fを充足す る。
(2) 取り出し処理について ロ号物件に係る操作説明書(甲29)によれば,同説明書の「2-1.取 出し処理の流れ」における6番目の処理フローの内容から,同物件では,コン テナ到着後,すなわちコンテナのステーションへの搬送後に新たな出庫や入庫 ができるとされているから,コンテナ番号(収容位置)と図書との対応付けの 記憶内容の更新がステーションへの搬送後に行われていることは明らかであ る。また,8番目の処理フローの内容及び9番目の処理フローの内容からも, ステーションへの搬送後に記憶内容の更新が行われていることは明らかであ る。
また,ロ号物件に係る通信フロー設計書(乙51)によれば,[出納ステー ションパソコン] 搬送書誌データ内の取り出し状態を は, 【出庫済】に更新し, 取り出し予約データを【完了フラグ:完了】に更新し,搬送書誌の該当コンテ ナの情報を書誌マスタに反映させる,とあるから,記憶内容の更新時期は,コ ンテナから図書を取り出した後であることは明らかである。
そして,イ号物件はロ号物件と本件発明との対比の関係では同じ構成である から,イ号物件及びロ号物件はいずれも,構成要件1Fを充足する。
〔被告の主張〕 (1) 返却処理について ア(ア) 請求項1の記載「この搬送手段により前記ステーションに搬送されて, 前記要求図書が取り出されたコンテナ」,「この搬送手段により前記ス テーションに搬送されて,…前記返却図書が返却されたコンテナ」,及 び本件明細書等の段落【0051】,【0052】,【0056】ない し【0059】の記載によれば,構成要件1Fの更新手段は,搬送手段 によりステーションに搬送されて図書が取り出された後のコンテナ及び 搬送手段によりステーションに搬送された後の図書が返却されたコンテ ナに関する記憶内容を更新するものである。
この点に関して原告は,構成要件1Fにおいて,記憶内容の更新時期 はコンテナがステーションに搬送された前か搬送された後かは問題とな らないと主張する。
しかし,本件発明1は,構成要件1Fのように,記憶内容の更新のタ イミングをステーションに搬送した後に行うものとし,これによって返 却要求をしていない返却図書であっても,呼び出し済みのコンテナと同 一寸法の図書ならば,そのコンテナ内に任意に返却することが可能とな り,書庫と利用者カウンターとの相互間でコンテナを搬送する搬送機構 の稼働回数を少なくすることができるから,自動化による図書の取り出 し及び返却作業の能率を効果的に向上させることができる。これに対し て,イ号物件及びロ号物件のように,コンテナと図書との関連付けに関 する情報を,図書館員が図書IDを入力した時点で最新の状態に更新す る構成においては,かかる構成を採用することによって,図書の取出要 求や返却要求が連続してされた場合でも,常に記憶手段の記憶内容が最 新のものに更新された状態で,次の返却図書を収容するコンテナを特定 することができるから,その結果,その次に要求される図書の取出や返 却におけるコンテナの特定を,搬送中のコンテナの状態を踏まえて行う ことができる。このように,フリーロケーション方式の自動書庫という 点で共通しても,返却作業の能率の向上が全く異なる形で図られており, 記憶内容の更新のタイミングが相違するものは,構成を異にするものと いうべきである。
したがって,原告の上記主張は失当である。
(イ) また,原告は,構成要件1Fについて,「または」の文言が使用され ていることを根拠に,「前記要求図書が取り出されたコンテナ」と「前 記返却図書が返却されたコンテナ」のいずれか一方について記憶手段の 記憶内容を更新するものであれば,構成要件1Fを充足すると主張する。
しかし,同構成要件で「または」の文言が使用されているのは,貸出と 返却という同時に発生しない事象を並列に接続する趣旨にすぎないので あり,構成要件1Fを充足するには,「前記要求図書が取り出されたコ ンテナ」と「前記返却図書が返却されたコンテナ」の双方について記憶 手段の記憶内容を更新するものであることが必要と解される。この解釈 は,本件明細書等の段落【0010】の「図書の取り出しや返却が行わ れたコンテナ」との記載にも整合する。したがって,原告の上記主張は 失当である。
イ イ号物件及びロ号物件の「自動呼出入庫」による図書の返却時において は,図書館員がステーション上で返却対象の図書の図書IDをICタグ/ バーコードリーダで読み取ると,書庫管理機(サーバー機)が図書書誌マ スタに保存されている図書の情報を参照して,図書IDに対応する図書サ イズ(A4,A5,B5)と厚さ情報を算出し,収容するコンテナを特定 する。続いて,書庫管理機(サーバー機)は,算出した図書の厚さ情報に 基づき,コンテナマスタにおいて,引当した図書の厚さ分を「空きサイズ」 から減算した上で,図書書誌マスタにおいて,当該図書に係るコンテナ番 号の情報を更新する。その後,書庫管理機(サーバー機)は,収容される 図書が特定されたコンテナが書庫からステーションに搬送されるように処 理し,当該コンテナがステーションに搬送された後,図書館員が当該コン テナと関連付けられた図書をコンテナに返却する。
このように,書庫管理機(サーバー機)が返却される図書を収容するコ ンテナを特定した時点で,書誌マスタにおけるコンテナ番号に関する情報 は既に更新済みであり,コンテナがステーションに搬送された後のコンテ ナに対しては,情報の更新は行われない。
他方,「コンテナ情報検索」による返却作業の場合には,図書館員がス テーション上で任意のコンテナを選択すると,当該コンテナがステーショ ンに搬送される。その後,図書館員は,返却対象の図書の図書IDをIC タグ/バーコードリーダで読み取り,当該図書をコンテナに返却する。続 いて,コンテナが書庫に搬送されるように処理されると,書庫管理機(サ ーバー機)は,算出した図書の厚さ情報に基づき,コンテナマスタにおい て,引当した図書の厚さ分を「空きサイズ」に加算した上で,図書書誌マ スタにおいて,コンテナ番号の情報を更新する。
したがって,イ号物件及びロ号物件において,少なくとも「自動呼出入 庫」による返却作業の場合には,収容するコンテナを引き当てた時点で情 報の更新が行われているから,構成要件1Fを充足しない。
また,コンテナがステーションに搬送された後に新たな入庫をする場合 (以下「追加入庫」という。)には,追加で返却を行う図書の図書IDを ICタグ/バーコードリーダで読み取った後,図書書誌マスタに記憶され たコンテナ番号の更新が行われるため,図書書誌マスタに記憶されたコン テナ番号の更新は,コンテナが書庫からステーションに搬送された後に行 われることになる。しかし,追加入庫では,既にコンテナがステーション に搬送されており,構成要件1Eの「返却が要求された図書の寸法情報を 入力することにより,該返却図書の寸法に対応する複数の前記コンテナの 中から空きのあるコンテナを前記書庫から取り出して前記ステーションに 搬送する搬送手段」によってコンテナがステーションに搬送されるもので はない。したがって,追加入庫は「この搬送手段により前記ステーション に搬送されて…前記返却図書が返却されたコンテナに対して,前記記憶手 段の記憶内容を更新する」ものではないから,構成要件1Fを充足しない。
(2) 取り出し処理について イ号物件及びロ号物件において,図書の取出時には,取り出したい図書を 特定する情報を書庫管理機(サーバー機)に入力すると,書庫管理機(サー バー機)が当該図書が収容されているコンテナの番号を特定する。続いて, 書庫管理機(サーバー機)は,図書書誌マスタに保存されている図書の情報 から図書IDに対応する厚さ情報を算出し,コンテナマスタにおいて,引当 した図書の厚さ分を「空きサイズ」に加算する。その際,図書書誌マスタに おいて,コンテナ番号に関する情報の更新は行われず,図書IDとコンテナ 番号との対応情報は,その図書が返却されるまで更新されない。その後,書 庫管理機(サーバー機)は,取り出したい図書が収容されたコンテナが書庫 からステーションに搬送されるように処理を行い,当該コンテナがステーシ ョンに搬送された後,図書館員が当該図書をコンテナから取り出す。以上の とおり,図書の取出時には,図書書誌マスタに記憶されたコンテナ番号の更 新は行われないから,「取出図書が取り出されたコンテナに対して,前記記 憶手段の記憶内容を更新」するものではなく,構成要件1Fを充足しない。
コンテナがステーションへ搬送された後に,新たな出庫がされる場合(以 下「追加出庫」という。)においても,図書書誌マスタに記憶されたコンテ ナ番号は維持され,図書書誌マスタに記憶されたコンテナ番号の更新が行わ れることはない。また,追加出庫は,構成要件1Dの「取り出しが要求され た図書の図書コードを入力することにより,前記記憶手段の記憶内容に基づ いて,該要求図書が収容されているコンテナを前記書庫から取り出してステ ーションに搬送する」の構成を備えるものではないから,構成要件1Fの「こ の搬送手段により前記ステーションに搬送されて,前記要求図書が取り出さ れたコンテナ…に対して,前記記憶手段の記憶内容を更新する」に該当もの ではなく,構成要件1Fを充足しない。
4 争点(1)エ(構成要件2A,3Aの充足性)について〔原告の主張〕 イ号物件は,図書の返却の際,図書館員が,ステーション上で返却対象の図書 の図書IDをICタグ/バーコードリーダで読み取ると,書庫管理機(サーバー 機)が,当該図書に係る図書IDに対応する図書サイズ(A4,A5,B5)と 厚さ情報を算出し,収容するコンテナを特定した上で,算出した図書の厚さ情報 に基づいて,当該コンテナの図書の空き状況を算出し,コンテナマスタにおける 当該コンテナの空き状況に係る情報を更新する,という構成を採用しており,イ 号物件が図書の「厚さ情報」を用いて,各コンテナの「空き状況」を参照し,空 きのあるコンテナを取り出していることは明らかである。コンテナの「空き状況」, すなわち,当該コンテナがどの程度充填されるかは,図書の「厚さ情報」により 求められるコンテナ内に収容されている図書の厚さの総計から算出されると考 えられるから,当該「空き状況」は,構成要件2Aの「コンテナ内の図書の充填 率」に該当する。また,当該「空き状況」は書庫管理機(サーバー機)により算 出されるものであるから,この書庫管理機(サーバー機)は「充填率検出手段」 に該当する。さらに,この書庫管理機(サーバー機)は,返却図書の寸法に対応 する複数のコンテナの中から空きのあるコンテナを書庫から取り出すものであ るから,「搬送手段」に該当する。よって,イ号物件は,構成要件2A及び3A の「前記搬送手段は,前記書庫に返却されるコンテナ内の図書の充填率を検出し て前記記憶手段に記憶させる充填率検出手段を備え,」に該当する。
ロ号物件は,本件各発明との対比においてはイ号物件と同一の構成を備えるも のであるから,イ号物件とロ号物件はいずれも,構成要件2A及び3Aを充足す る。
〔被告の主張〕 本件明細書等の段落【0038】,【0039】の記載に加え,構成要件2 Aの文言からも明らかなとおり,「充填率検出手段」は搬送手段が備えるもの でなければならないことに鑑みれば,本件発明2にいう「充填率検出手段」と は,図書が返却されたコンテナを搬送する搬送コンベアのライン上に設置され た充填率を検出するためのセンサを意味するものと理解できる。
これに対してイ号物件及びロ号物件は,入力された図書IDに対応する「厚 さ情報」を図書書誌マスタから取得してコンテナを選択し,当該コンテナがス テーションに到達する前に当該コンテナの空きサイズが既に算出されているた め,図書が返却されたコンテナを搬送する搬送手段において充填率を検出する 必要がなく,いずれもコンテナの充填率を検出するセンサを一切備えていない。
したがって,イ号物件及びロ号物件が備える「搬送手段」に相当する構成が, 「充填率」 「検出」 を する手段を有していないから,イ号物件及びロ号物件は, 構成要件2Aを充足しない。
5 争点(1)オ(構成要件2B,3Bにおける「充填率が低いコンテナから取り出 (す)」の充足性)について〔原告の主張〕 イ号物件は,図書への返却が要求されると,記憶手段に記憶された空き状況と 返却する図書の厚さ情報に基づき,返却する図書の厚さを上回る長さの空きを有 するコンテナを特定して,当該コンテナを取り出す仕組みを採用しているから, 図書の寸法に対応する全てのコンテナの中から,空きのないコンテナより空きの ある,すなわち充填率の低いコンテナを取り出しており,構成要件2B及び3B の「前記図書の返却が要求された状態で,前記記憶手段の記憶内容に基づいて, 返却図書の寸法に対応する複数の前記コンテナの中で,図書充填率の低いコンテ ナから取り出す」に該当する。
ロ号物件は,本件各発明との対比においてはイ号物件と同一の構成を備えるも のであるから,イ号物件とロ号物件はいずれも,構成要件2B,3Bの上記文言 を充足する。
この点,ロ号物件は,その出納ステーションの端末画面に「%」表示がされ, 図書館員がその表示を見て取り出すコンテナを選択するものであり,上記「%」 表示がコンテナ内の図書の充填率に該当することは明らかである。そうすると, ロ号物件は,さらにイ号物件も,「図書充填率の低いコンテナから取り出す」構 成を備えている可能性が高い。
〔被告の主張〕 イ号物件及びロ号物件は,「自動呼出入庫」において,図書の図書IDをI Cタグ/バーコードリーダで読み取ることで,図書書誌マスタから図書IDに 対応する「厚さ情報」を取得し,この取得された返却図書に係る「厚さ情報」 に所定の厚さ(余裕を持たせたマージン分:例えば5cm)を加算した厚さ分 の空きサイズがあるコンテナをコンテナ全体の中から抽出し,これらの抽出さ れたコンテナの中から空きサイズが最も小さいコンテナ,すなわち,充填率が 最も高いコンテナを選択して取り出すという構成を採用している。
したがって,イ号物件及びロ号物件は,構成要件2B,3Bの「図書充填率 が低いコンテナから取り出(す)」に該当しない。
また,「コンテナ情報検索」においては,図書館員が任意のコンテナを選択 して,手動による入力操作でコンテナを取り出すものであるから,構成要件2 B,3Bの上記文言に該当しない。
6 争点(1)カ(構成要件3Bにおける「手前側のコンテナを優先して取り出(す)」 の充足性)について〔原告の主張〕 イ号物件は,同物件に係る「通信フロー設計書(イ)」(乙50)の記載に よれば,コンテナは手前側から引当するようにするとあり,返却処理において, 奥側と手前側では手前側のコンテナから優先的に引き当てられ,使用される構 成を備えているから,構成要件3Bの「前記奥行き方向に2個収容されたコン テナのうち,手前側のコンテナを前記空きのあるコンテナとして優先的に使用 する」に該当する。
また,ロ号物件も,同物件に係る「通信フロー設計書(ロ)」(乙51)に イ号物件と同じ記載があるから,同物件と同様に構成要件3Bの上記文言に該 当する。
よって,被告物件は,構成要件3Bを充足する。
〔被告の主張〕 イ号物件及びロ号物件は,使用されているプログラム(乙68,69)によ り,コンテナの取り出しが下記の管理方法で行われている。
記 @ 要求された図書サイズが入る空きサイズを有するコンテナをデータベース より選択する。
A 上記@で選択されたコンテナについて,空きサイズが少ない順(条件1) で並び替える。その後,空きサイズが同一のコンテナについては,ステーシ ョンから近い号機順で,「ロケーションの連(昇順),段(昇順),列(昇 順),手前奥(降順)」(条件2)で並び替える。
このように,イ号物件及びロ号物件においては,少なくとも手前側と奥側の コンテナの関係では,奥側のコンテナを優先して取り出しているから,構成要 件3Bの「手前側のコンテナを優先して取り出(す)」に該当しない。
したがって,イ号物件及びロ号物件は,この点からも,構成要件3Bを充足 しない。
7 争点(2)ア(ア) 本件訂正発明1につき乙12公報を主引例とする進歩性欠如) ( について〔被告の主張〕 (1) 本件特許の出願前に頒布された刊行物である乙12公報に記載された乙1 2発明を主引用例とし,これに副引用例である乙11の3文献に記載された 乙11の3発明及び乙16公報に記載された乙16発明並びに自動倉庫技術 等に関する周知技術を適用すれば,本件訂正発明1は当業者が容易に想到し 得るものである。
(2) 乙12発明 乙12発明の内容は,本件発明1の構成要件に対応させて分説して示すと, 次のとおりである。
a 書棚11を有する書庫と, b 書庫内に設置された書棚11に複数の図書33を(ケース13とともに) 収容する複数のコンテナ12と,c この複数のコンテナ内の図書33の前記書庫内における格納ロケーショ ンと各コンテナ12に収容された複数の図書に付されたバーコード35の データとを(ケース13のデータとともに)対応させて記憶するハードディ スク47と,d 貸し出しが要求された図書33のコードを入力することにより,前記ハー ドディスク47の記憶内容に基づいて,該要求図書33が(ケース13とと もに)収容されているコンテナ12を前記書庫から取り出してステーション (例えば,第10図の26,30,31)にスタッカークレーン75,搬送 コンベア77,搬送コンベア80,搬送コンベア82により搬送するととも に,e 返却が要求された際に複数の前記コンテナの中から任意の空きのあるコ ンテナを書庫から取り出してステーションに搬送し,返却が要求された図書 に付されたバーコード35のデータを(任意のケース13のデータととも に)入力することにより,前記返却図書が(ケース13とともに)収容され たコンテナを書棚11内における格納ロケーションにスタッカーク レーン 75,搬送コンベア77,搬送コンベア80,搬送コンベア82により搬送 する手段と,f この搬送する手段により前記ステーションに搬送されて,前記要求図書が 取り出されたコンテナまたは前記返却図書が返却されたコンテナに対して, 前記要求図書33に対する格納ロケーションや各コンテナ12に収容され たケースと図書のデータを対応させて記憶していた前記ハードディスクの 記憶内容を削除し,または,前記返却図書を収容したケース13の書棚11 内における格納ロケーションをハードディスク47へ新たに記憶させるこ とにより,前記ハードディスクの記憶内容を更新する手段とを具備するg 前記書庫の複数の棚領域には,搬送する手段によってコンテナを取り出す 間口に対して,奥行き方向に一つのコンテナが収容され,搬送する手段には, 前記コンテナを取り出す間口に対して,コンテナを取り出すスタッカークレ ーン75が備えられているh 図書入出庫管理装置。
(3) 乙12発明と本件訂正発明1の対比 乙12発明と本件訂正発明1を対比すると,一致点及び相違点は,次のとお りである。
ア 一致点 複数の棚領域を有する書庫と,この書庫の各棚領域に収容された複数の図 書を収容する複数のコンテナと,書庫内における収容位置と各コンテナに収 容された複数の図書の各図書コードとを対応させて記憶する記憶手段と,取 り出しが要求された図書の図書コードを入力することにより,前記記憶手段 の記憶内容に基づいて,該要求図書が収容されているコンテナを前記書庫か ら取り出してステーションに搬送するとともに,返却が要求された際に,返 却が要求された図書の情報を入力することにより,複数の前記コンテナの中 からコンテナを書庫から取り出してステーションに搬送する搬送手段と,こ の搬送手段により,前記ステーションに搬送されて,前記要求図書または前 記返却が要求された図書の情報を入力することにより,前記要求図書または 前記返却図書に関する前記記憶手段の記憶内容を更新する更新手段とを具 備する図書保管管理装置。
イ 相違点 (ア) 相違点1 書庫の複数の棚領域と複数の図書を収容する複数のコンテナに関して, 本件訂正発明1においては,「図書の寸法別に分類された幅及び高さがそ れぞれ異なる複数の棚領域を有する書庫」と「それぞれが収容された棚領 域に対応した寸法を有する複数の図書を収容する複数のコンテナ」とを採 用しているのに対し,乙12発明は,このような図書の寸法別に分類され た幅及び高さがそれぞれ異なる複数の棚領域や棚領域に対応した寸法を 有する複数の図書を収容するコンテナを用いていない点。
(イ) 相違点2 図書の返却時において入力されるべき情報に関して,本件訂正発明1は, 図書の返却に際しては「返却が要求された図書の寸法情報を入力すること により,該返却図書の寸法に対応する複数の前記コンテナの中から空きの あるコンテナを前記書庫から取り出して前記ステーションに取り出」すも のであるのに対し,乙12発明においては,図書の寸法情報の入力により 返却図書の寸法に対する複数の前記コンテナの中から空きのあるコンテ ナを取り出す構成を具備していない点。
(ウ) 相違点3 本件訂正発明1においては,「書庫の複数の棚領域には,搬送手段によ ってコンテナを取り出す間口に対して,奥行き方向に複数のコンテナが収 容され,前記搬送手段には,前記コンテナを取り出す間口に対して,手前 側のコンテナを取り出してから奥側のコンテナを取り出す移載手段が備 えられている」のに対し,乙12発明は,書庫の複数の棚領域から,スタ ッカークレーン75によって間口に対してコンテナを取り出すものでは あるが,奥行き方向に複数のコンテナを収容し,搬送手段には,コンテナ を取り出す間口に対して手前側のコンテナを取り出してから奥側のコン テナを取り出す移載手段を備えたものではない点。
(4) 相違点に係る構成は当業者が容易に想到できるものであること ア 自動倉庫技術を自動書庫に適用することが困難でないこと 「物流概論」(乙17。以下「乙17文献」という。)に記載されているよ うに,自動倉庫の技術分野では,1980年代には,棚管理の方法としてフ リーロケーション方式が利用され,コンピュータで管理される自動倉庫シス テムが運用されていた。自動書庫は自動倉庫から派生して生まれたものであ り,自動倉庫との違いは保管物が「図書」か一般的な収納物かという点にす ぎず,技術は本質的には同一である。また,自動倉庫を取り扱う事業者が自 動書庫の技術分野に進出して,書庫の技術開発者として又は書庫の設計者・ 施工者として携わっており,自動書庫技術分野と自動倉庫技術分野の当業者 は共通する。
したがって,自動倉庫の技術を自動書庫に適用することは,何ら困難なこ とではない。
この点,乙12発明は,それ自身が自動倉庫の技術を書庫の分野に応用し た発明であり,その発明における図書の保管・管理に関する技術は,自動倉 庫分野における技術であるから,乙12発明は,本質的に自動倉庫技術に関 する技術であるということができる。
イ 相違点1について (ア) 乙11の3文献には,図書入出庫管理装置において,図書の寸法別に分 類された高さが異なる複数種類のコンテナ(容器)を収容するための,図 書の寸法別に分類された高さが異なる複数の棚領域を有する書庫が記載 されている。
そして,乙12文献と乙11の3文献は,いずれも図書入出庫管理装置 に関するものであるから,乙12発明に乙11の3発明の構成を組み合わ せることが当業者にとって容易であることはいうまでもない。
(イ) 乙11の3文献には,「幅が異なる棚領域」について明示的な記載がな い。しかし,「幅が異なる棚領域」については,本件特許の出願時におけ る技術常識に照らせば,当業者が適宜採用し得る設計的事項にすぎないも のである。
図書にはA4,B5などの規格化された複数種類のサイズ(高さ)があ り,また,幅にも様々なものがあるが,そのことは,本件特許が出願され る遙か以前から常識であった。そして,図書館等において,多種・多量の 図書を保管する場合には,例えば百科事典や図鑑等といった大型図書を収 納するため幅や高さの大きな書棚と,文庫本のような小さな図書を収納す るための幅や高さの小さな書棚を組み合わせて用いるなど,無駄な空間を 省き空間を有効利用しようとすることは,誰もが当然のように行っていた。
加えて,自動倉庫の技術に関する特開昭59-182103号公報(乙 34。以下「乙34公報」という。 , ) 特開平04-256607号公報(乙 22。以下「乙22公報」という。 ,実願昭63-058087号(実開 ) 平01-162410号のマイクロフィルム写し)(乙26。以下「乙2 6公報」という。)にも記載されているとおり,それぞれ幅が異なる複数 種類のコンテナを設け,これに合わせてそれぞれ幅が異なる複数の棚領域 を設けることは,自動倉庫技術分野において従来周知の技術であった。
前記アのとおり当業者が自動倉庫技術を自動書庫技術に適用すること は何ら困難なことではなく,乙12発明が自動倉庫技術を応用したもので あるから,乙12発明に更に自動倉庫技術を応用することには,格別の動 機付けを要するものでもない。
そうすると,空間を有効利用しようとする周知の課題を解決するために, 図書の寸法別に分類されたそれぞれ高さが異なる複数の棚領域と,図書の 寸法別に分類された高さが異なる複数種類のコンテナとについて,高さの みならず,高さ及び幅寸法を図書に対応する寸法にそれぞれ適用すること は,乙11の3発明及び上記周知技術に基づいて当業者が適宜採用し得る 設計事項であり,当業者が容易に想到することができたものである。
(ウ) 以上のとおり,相違点1に係る本件訂正発明1の構成は,乙12発明に おけるその書庫の複数の棚領域と複数の図書を収容する複数のコンテナ につき,乙11の3発明及び周知技術を適用することにより,当業者が容 易に想到し得た事項ということができる。
ウ 相違点2について (ア) 乙11の3文献には,アイテム(書籍等)を収納する大きさの異なる寸 法別の容器を備え,アイテムに付されたバーコードナンバー(図書コード) を光学的にスキャンすることにより,自動的に要求されたアイテムを収納 する容器を書庫から取り出す自動保管取り出しシステム(ASRS),さ らに,図書入出庫管理装置において,自動保管取り出しシステム(ASR S)らに使用されるコンピュータシステムが,複数の容器に関する「容器 アドレス」,及び,複数の図書(アイテム)に関する「図書コード」(バー コードやサイズコード)等の情報を利用すること,以上が記載されている。
そして,上記AS/RS(自動保管取り出しシステム)に上述の図書の 取り出しや返却保管のための所定の動作を行わせるためには,空,部分的 にフル,及び,フルの状態にある複数のコンテナ,換言すれば,返却図書 を収容可能な空きスペースのあるコンテナが,書庫内の何処にあるかを示 す収容位置の情報のみならず,当該コンテナ内に収容されている図書等が 何かということを示す図書コードと当該コンテナとを関連付けた情報を, そのコンピュータシステムが記憶していることが必要であることは,当業 者にとって自明な事項である。
(イ) 乙11の3文献には,アイテムのサイズ(寸法)に適合した容器の取り 出しをどのような制御によって実現するのかについて,明示的な記載がな い。しかし,乙11の3文献には,ランダムロケーション保管アイテムは, サイズコード(例えば,A,BまたはC)を有すると記載されており,ア イテムのサイズ(寸法)に適合するサイズコードの容器でなければそのア イテムを収容できないことに鑑みれば,アイテムのサイズに適合するサイ ズコードの容器を取り出すため,アイテムのサイズ情報(サイズコード) を特定し,そのサイズ情報を有する容器を取り出していることは明らかで あり,乙11の3文献に記載された図書館では,システムが記憶するアイ テムのサイズ情報(寸法情報)を使って制御が行われているものと考えら れる。
(ウ) 図書管理システムにおいて,アイテム(図書等)のサイズ情報(寸法情 報)を特定する手段としては,特開平3-264396号公報(乙35。
以下「乙35公報」という。)に記載された,システム内に図書コード単 位で図書管理データを持たせ,図書管理データを参照して当該図書に関す るデータを特定する方法や,そのほかに,実願昭63-150289号(実 開平02-072225号)のマイクロフィルム写し(乙36。以下「乙 36公報」という。)に記載された,サイズ情報に対応する情報を直接入 力する方法が知られており,それらのうちいずれかの方法を,あるいは両 方の方法を採用するかは,当業者が,最終的に実現したいシステムを考慮 した上で選択する設計事項にすぎないというべきである。
そうすると,相違点2に係る本件訂正発明1の構成は,前記イで述べた ところの乙12発明に乙11の3文献に記載の寸法別のコンテナ等の構 成を適用するに際して,同じく乙11の3文献に記載の寸法別のコンテナ 等の構成を用いた要求図書の取り出し制御,返却図書の返却制御及び書庫 内における収容位置と各コンテナに収容された複数の図書の各図書コー ドとを対応させて記憶する手法を採用することにより,当業者が容易に想 到し得たものといえる。その際に,アイテムのサイズ(寸法)に適合した 容器を取り出す場合に,読み取った図書コードからシステム内の情報を参 照してサイズ情報を得るか,サイズ情報を直接入力するようにするか,あ るいは,両方の方式を可能とするかは,当業者が必要に応じて選択する設 計事項にすぎない。
(エ) したがって,相違点2に係る本件訂正発明1の構成は,乙12発明にお けるその書庫の複数の棚領域と複数の図書を収容する複数のコンテナに つき,乙11の3発明及び周知技術を適用することにより,当業者が容易 に想到し得た事項ということができる。
エ 相違点3について (ア) 相違点3は,要するに,棚の奥行き方向に複数のコンテナを収納し, 前のコンテナを取り出してから奥のコンテナを取り出すという手段を備 えているか否かに尽きる。このような手段は,そもそも書庫に限らず, 押入れ,クローゼット,本棚,食器棚,冷蔵庫などの物品の保管庫を利 用するに当たって,おしなべてごく当たり前に行われてきたことである。
相違点3は,このような当たり前の手段を,自動書庫において採用した ものにすぎない。
(イ) しかも,このような手段は自動倉庫分野では当たり前に実現されてき た構成である。乙16発明は,「倉庫の複数の棚領域には,搬送手段に よってコンテナを取り出す間口に対して,奥行き方向に複数のコンテナ が収容される倉庫」というものであるが,その当然の帰結として,奥側 のコンテナの取り出し方は,コンテナを取り出す間口に対して,間口を 塞いでいる手前側のコンテナを取り出してから奥側のコンテナを取り出 すという手段をとることになる。
また,乙16発明と同様の構成は,特開昭50-008270号公報 (乙37。以下「乙37公報」という。),特開昭49-134075 号公報(乙38。以下「乙38公報」という。),特開昭57-072 503号公報(乙30。以下「乙30公報」という。),特開昭56- 056402号公報(乙39。以下「乙39公報」という。),実願昭 47-112063号(実開昭49-067379号)のマイクロフィ ルム写し(乙21。以下「乙21公報」という。),実願平03-04 5857号(実開平05-019210号)(乙40。以下「乙40公 報」という。)等に記載されている周知慣用の技術事項であった。
さらに,平成3年に発行された「JIS(日本工業規格) 立体自動 倉庫用語 JIS B8941-1991」(乙32)には,立体自動 倉庫の格納方式に関する規格として,「シングルストレージ」は,棚奥 行き方向に1パレットを格納するラック格納方式であり,「ダブルスト レージ」は,棚奥行き方向に2パレットを格納するラック格納方式であ ることが規定されており,その「ダブルストレージ」方式が,本件特許 権の出願前に自動倉庫技術分野における周知慣用技術であったことは明 らかである。
(ウ) 相違点3に係る本件訂正発明1の構成は,本件特許権の出願時における 自動倉庫技術分野の周知慣用技術を,自動書庫に採用したものにすぎない。
この点,当業者が自動書庫技術に自動倉庫技術を適用することは何ら困難 なことではない。また,乙12発明自身が自動倉庫技術を書庫に応用した ものであるから,乙12発明に更に自動倉庫技術を応用することに,格別 の動機付けを要するものでもない。
そうすると,相違点3に係る本件訂正発明1の構成は,乙12発明と, 乙6発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができ たものである。
(5) 小括 そうすると,本件訂正発明1は進歩性を欠き,本件訂正発明1の特許は,特 許法123条1項2号,29条2項により,特許無効審判により無効にされる べきものである。
〔原告の主張〕 (1) 以下のとおり,乙12発明に乙11の3発明を適用しても,本件訂正発明 1と乙12発明との相違点を埋めることはできず,また乙12発明に乙16 発明ないし周知技術を適用する動機付けがないから,本件訂正発明1は出願 時に当業者が容易に発明することができたとはいえない。
(2) 被告は,乙12公報の記載から乙12発明の構成要件eが「返却が要求さ れた複数の前記コンテナの中から任意の空きのあるコンテナを書庫から取り出してステーションに搬送し,返却が要求された図書に付されたバーコード35のデータを(任意のケース13のデータとともに)入力することにより,前記返却図書が(ケース13のデータとともに)収容されたコンテナを書棚11内における格納ロケーションにスタッカークレーン75,搬送コンベア77,搬送コンベア80,搬送コンベア82により搬送する手段と,」であると主張する。
しかし,被告の上記主張は,乙12公報の記載に基づかない内容を含んでいる。したがって,被告の上記主張は,乙12発明の解釈に誤りがあり,失当である。
すなわち,乙12発明は,「ケース」と「コンテナ」との対応関係は固定的なものであって,この対応関係が更新されるものではない。この点,乙12公報の段落【0005】にある「ケース」と「コンテナ」に関する記載は,乙12発明とは別発明である従来技術が記載されているにすぎず,乙12発明において上記対応関係が更新されることを示すものではない。
そして,乙12公報の段落【0034】,【0038】ないし【0040】の記載によれば,乙12発明では,図書館員が格納ロケーションを設定すると,格納指令が出されて,当該格納ロケーションに対応付けられたコンテナが取り出されるから,「図書に付されたバーコード35のデータ」がいかなるデータであっても,取り出される「コンテナ」は当該データに応じて変わるものではない。「図書に付されたバーコード35のデータ」は,空きのあるコンテナを情報を選び出す情報として用いられるものではなく,単に格納ロケーションに対応付けて記憶しておくことで,当該返却処理を行った後の別の機会における取り出しの際に用いられるにすぎない。したがって,乙12発明では,バーコード35のデータが「入力されることにより」コンテナを取り出すという関係が成り立たない。
また,上記のとおり乙12発明では,図書館員が格納ロケーションを設定す ると,格納指令が出されて,当該格納ロケーションに対応付けられたコンテナ が取り出されるのであり,複数のコンテナの中から「任意の空きのあるコンテ ナ」を取り出すものではないから,乙12公報には,返却が要求された際に複 数のコンテナから「任意の空きのあるコンテナ」を取り出す旨の記載はない。
(3) 被告は,フリーロケーション方式が自動倉庫の分野で1980年代には運 用されていた旨主張するが,その立証がされていない。被告が主張する上記 のフリーロケーション方式は,本件訂正発明1で採用されているフリーロケ ーション方式とは異なるものである。本件訂正発明1で採用されているもの は,図書と図書を収容するコンテナとを対応させない方式であるが,被告が 主張するものは,保管品目と保管棚とを対応させないで保管する方法であり, 飽くまで保管品目において管理する技術であって,当該保管品目に該当する 個々の保管品について管理する技術ではない。
また,被告は,自動倉庫を取り扱う事業者が自動書庫の技術分野に進出し て,書庫の技術開発者として又は書庫の設計者 施工者として携わっており, ・ 自動書庫技術分野と自動倉庫技術分野の当業者は共通すると主張するが,そ れは単に一事業者が両技術分野を扱っていることを示すにすぎない。
さらに,被告は,乙12発明が本質的に自動倉庫に関する技術であると主 張するが,被告が主張する乙17文献に記載されたフリーロケーション方式 は,本件訂正発明1の方式と全く異なるものであり,被告の上記主張は失当 である。
(4) 相違点に係る構成は当業者が容易に想到できるものではないこと ア 相違点1について 乙11の3文献には,高さの異なる5種類のコンテナと,ランダム保管 アイテムが,サイズコード(例えば,A,B,またはC)を有することが 記載されているにすぎず,当該コンテナが「図書の寸法別に分類され」て いる点は一切示されていない。
この点に関して被告は,コンテナ及び書棚の高さ及び幅を図書に対応するそれぞれの寸法にする構成を具備することが ,当業者が適宜採用し得る設計的事項であると主張する。
本件訂正発明1のような図書保管管理装置では,課題の一つに収容効率が挙げられるところ,収容の対象を図書とする場合,その寸法は,A4,A5,B5などわずか数種類に規格化されている から,当該寸法に対応した数種類のサイズの収納容器(コンテナ)を設計し,内容を問わず同一の寸法の図書を当該寸法に対応したコンテナに収納し ,当該一定寸法のコンテナを所定の棚領域に集積すれば,最大の収容効率を実現することが可能である。
しかし,このことが可能となるのは,対象物の寸法がわずか数種類に規格化されているからであって,荷物を収納の対象とする場合には極めて多様な寸法を有するために前記構成を適用することはできない。仮に荷物について前記構成を適用するならば,極めて多くの寸法にかかるコンテナ,棚領域を設けることが必要となり,これができたとしても,同じ寸法にかかる荷物が多数存在するとは限らないから ,コンテナを満載状態にすることができずに収容効率の低下を招くことになる。また,荷物は寸法が規格化されておらず,一時に収容される荷物のサイズも区々であるため,寸法ごとに異なるコンテナを呼び出さなければ収容できないから出納効率の低下を招くことになる。したがって,倉庫の分野においては,その寸法に対応した,幅及び高さがそれぞれ異なる収納容器(コンテナ)や,当該収納容器のみを集積した「棚領域」という概念を観念することはできない。
したがって,自動倉庫の分野において,幅及び高さが異なる棚領域を設けることが周知であったとしても,それは,そこに収容する物品の寸 法に対応したものではないという点で ,本件訂正発明1とは異なる。
また,被告が引用した乙34公報,乙22公報,乙26公報のいずれ にも,コンテナや棚領域が「荷物の寸法別に分類された」の点は開示さ れておらず,書庫に用いる棚領域において,その幅及び高さがそれぞれ異 なるものであることまでが周知の技術であるとまではいえないから,乙1 2発明に倉庫の周知技術を適用できたとしても,相違点1のうち,「図 書の寸法別に分類された」の点を克服することができない。
イ 相違点2について 被告は,乙11の3発明の図書館につき,システムが記憶するアイテムの サイズ情報(寸法情報)を使って制御が行われているものと考えられると主 張する。
しかし,乙11の3文献には,アイテムのサイズ(寸法)に適合した容器 の取り出しをどのような制御によって実現するのかについて明示された記 載はない。
被告は,相違点2が,コンテナ取り出しに際し,本件訂正発明1では図書 の寸法情報を,乙12発明では図書コードを入力するという相違のみである ことを前提に,乙35発明,乙36発明を持ち出して,図書コードからサイ ズ情報を得るか,サイズ情報を直接入力するか,両方の方式を可能とするか は設計事項にすぎないと主張する。
しかし,乙12発明は,格納ロケーションを設定することで,当該ロケー ションに対応するコンテナを取り出しているのであって,図書コードを入力 することでコンテナを取り出すのではない。したがって,図書コードからサ イズ情報を得るという着想そのものが存在せず,乙35発明,乙36発明を 適用する前提を欠くから,図書コードからサイズ情報を得るか,サイズ情報 を直接入力するかが設計事項であるということはできない。
ウ 相違点3について 被告は,棚の奥行き方向に複数のコンテナを収納し,手前側のコンテナを 取り出してから奥側のコンテナを取り出すという手段については,自動倉庫 の分野の周知慣用技術であり,乙16発明も具備しており,これを自動書庫 に適用することは何ら困難なことではない旨主張する。
しかし,乙12発明では,コンテナの収納位置が決められているのに対し て,乙16発明では,「載荷パレット」の収納位置が決められていない。こ れは載荷パレット内の一つ一つを区別して管理する必要がないロット単位 の通貨物流主体の荷物系のシステムであり,一冊ごとに取り出しかつ返却 を要する図書系の物流とは大きく異なるもので あり,奥側のみ,あるい は手前側のみの載荷パレットの取り出し及び返却という処理 が必要とさ れず,かかる処理に関わる取り出し・返却の作業効率の向上(出納効率の 向上)という技術的課題を考慮する必要がない構成である。このような乙 16発明を,乙12発明に適用する動機付けは見当たらない。
しかも,乙12発明に乙16発明を適用すると,奥側のコンテナにつ いて,奥側にコンテナを格納する場合には,手前側のコンテナをいった ん取り出し,取り出し口以外の場所に仮置きした上で,奥側のコンテナ を格納し,仮置きした手前側のコンテナを元の位置に格納し直すことに なり,極めて煩雑となって,出納効率を著しく低下させることになり, 自動書庫として使い物にならないことになるから,このことが乙16発 明を乙12発明に適用するに当たり阻害要因となる。
8 争点(2)ア(イ)(本件訂正発明1につき乙11の3文献を主引例とする進歩性 欠如)について〔被告の主張〕 (1) 本件特許の出願前に頒布された刊行物である乙11の3文献に記載された 乙11の3発明を主引用例とし,これに乙16発明及び乙45公報に記載さ れた乙45発明並びに周知技術を適用すれば,本件訂正発明1は当業者が容 易に想到し得るものである。
(2) 乙11の3発明 乙11の3発明の内容は,本件発明1の構成要件に対応させて分説して示 すと,次のとおりである。
a 図書の寸法別に分類された高さのみが異なる複数の棚領域を有する書庫 と, b 書庫の各棚領域に収容されるもので,それぞれが収容された棚領域に高 さのみが異なる寸法を有する複数の図書を収容する複数の容器(コンテナ) と, c 図書の取り出しや返却保管のための所定の動作を行わせるために,自動 保管取り出しシステム(AS/RS)は,複数の容器に関する「容器アド レス」と複数の図書(アイテム)に関する図書のバーコードやサイズコー ドとを対応させて記憶し, d 取り出しが要求された図書(アイテム)のバーコードナンバーを入力す ることによってコンテナをステーションに取り出すとともに, e 返却が要求された図書をサイズグループに分類し,スキャンによって図 書の情報を図書館コンピュータシステムに入力することにより,返却図書 を収容する空きのある容器を通路端ワークステーションに搬送し, f 要求図書が取り出された容器に対しコンピュータシステムが記憶してい る収容位置の情報を更新し,返却図書(アイテム)が返却されたワークス テーションにある容器に対しコンピュータシステムが記憶している収容位 置の情報を更新し, g スタッカークレーンにより容器を引き出す機構を備える h 自動保管取り出しシステム(AS/RS)。
(3) 乙11の3発明と本件訂正発明1の対比 乙11の3発明と本件訂正発明1を対比すると,一致点及び相違点は,次の とおりである。
ア 一致点 図書の寸法別に分類された複数の棚領域を有する書庫と,この書庫の各棚 領域に収容されるもので,それぞれが収容された棚領域に対応した寸法を有 する複数の図書を収容する複数のコンテナと,書庫内における収容位置と各 コンテナに収容された複数の図書の各図書コードとを対応させて記憶する 記憶手段と,取り出しが要求された図書の図書コードを入力することにより, 前記記憶手段の記憶内容に基づいて,該要求図書が収容されているコンテナ を前記書庫から取り出してステーションに搬送するとともに,返却が要求さ れた際に,返却が要求された図書の情報を入力することにより,複数の前記 コンテナの中から空きのあるコンテナを前記書庫から取り出して前記ステ ーションに搬送する搬送手段と,この搬送手段により前記ステーションに搬 送されて,前記要求図書が取り出されたコンテナまたは前記返却図書が返却 されたコンテナに対して,前記記憶手段の記憶内容を更新する更新手段とを 具備し,前記搬送手段には,コンテナを取り出す移載手段が備えられている 図書保管管理装置。
イ 相違点 (ア) 相違点1 本件訂正発明1が「図書の寸法別に分類された幅及び高さがそれぞれ異 なる」複数の棚領域を有し,「それぞれが収容された棚領域に対応した寸 法を有する」複数のコンテナを有するのに対し,乙11の3発明が「図書 の寸法別に分類された高さのみが異なる」ものであり,「それぞれが収容 された棚領域に高さのみが異なる寸法を有する」複数のコンテナである点。
(イ) 相違点2 返却が要求された際に,返却が要求された図書の情報を入力することに より,複数の前記コンテナの中からコンテナを前記書庫から取り出して前 記ステーションに搬送する搬送手段に関し,本件訂正発明1は,入力する 図書の情報として寸法情報を採用しているのに対し,乙11の3発明は, 返却が要求された図書(アイテム)をサイズグループによって分類し,ス キャニングによって入力するものではあるが,入力する図書の情報として 寸法情報を入力しているものかどうか不明である点。
(ウ) 相違点3 本件訂正発明1は,「前記書庫の複数の棚領域には,前記搬送手段によ ってコンテナを取り出す間口に対して,奥行き方向に複数のコンテナが収 容され,前記搬送手段には,前記コンテナを取り出す間口に対して,手前 側のコンテナを取り出してから奥側のコンテナを取り出す移載手段が備 えられている」のに対し,乙11の3発明は,書庫の複数の棚領域から, 搬送手段によってコンテナを取り出すものではあるが,奥行き方向に複数 のコンテナを収容し,搬送手段には,コンテナを取り出す間口に対して手 前側のコンテナを取り出してから奥側のコンテナを取り出す移載手段を 備えたものであるかは不明である点。
(4) 相違点に係る構成は当業者が容易に想到できるものであること ア 相違点1について 乙11の3文献には,複数の図書を収容する複数のコンテナは,コンテ ナの幅は共通であるものの,図書の寸法別に分類された高さが異なる複数 種類のコンテナが記載されているところ,前記7〔被告の主張〕(4)イ(イ) のとおり,多種・多量の図書を書庫の棚領域に保管する場合には,図書の 寸法や形状が様々であるから,無駄な空間を省き空間を有効利用しようと することは周知の課題であり,その解決のために,棚領域の高さ寸法ばか りでなく幅寸法をも異ならせるようにすることが普通に行われている。
したがって,乙11の3発明に接した当業者にとって,コンテナの高さ のみではなく,棚領域を図書の寸法別に分類された幅及び高さがそれぞれ 異なるものとし,棚領域に収容するコンテナをその棚領域に対応した寸法 にすることは,容易に想到することができた事項である。
イ 相違点2について 乙11の3文献には,図書館に返却された図書(アイテム)は,手動で棚 載用台車に事前に格納され,図書(アイテム)に付されたサイズ/通路コー ドを使用して手動で事前仕分けし,図書(アイテム)の上端に記載されたサ イズグループで分類し,図書(アイテム)のバーコードラベルを光学的にス キャン又はバーコードナンバーをキーボードで入力し,アイテム返却トラン ザクションの送信を開始することが記載されている。その記載から, (ア 図書 イテム)のサイズ(寸法)に適合した容器を取り出すことが示唆されている といえるが,他方で,図書(アイテム)のサイズ(寸法)に適合した容器の 取り出しをどのような制御によって実現するのかは,明らかでない。
この点,前記7〔被告の主張〕(4)ウ(ウ)のとおり,図書管理システムにお いて,アイテム(図書等)のサイズ情報(寸法情報)を特定する手段として, 読み取った図書コードからシステム内の情報を参照してサイズ情報を得る か,サイズ情報を直接入力するようにするか,あるいは,両方の方式を可能 とするかは,当業者が,最終的に実現したいシステムを考慮した上で選択す る設計事項にすぎないというべきである。
そうすると,相違点2に係る本件訂正発明1の構成は,当業者が容易に想 到し得たものということができる。
ウ 相違点3について 乙11の3発明は,書庫内に設置された棚領域に複数の容器を備え,返却 された図書を任意の容器に収容して書庫に入庫することができ,貸出し及び 返却時の作業を行うことができる図書入出庫管理装置を提供することを目 的としている。
この点,収納効率の向上のために,棚の間口に対して,奥行き方向の手前 側と奥側の前後に二つのコンテナ等の容器を配置する点は,乙16公報に記 載されている。また,乙45公報には,乙45発明,すなわち,「図書館等 の複数の棚領域には,搬送手段によってコンテナを取り出す間口に対して, 奥行き方向に複数のコンテナが収容される書庫」という発明が記載されてい る。そして,図書館等の本棚においてもコンテナを取り出す間口に対して, 奥行き方向に複数のコンテナを配置し,間口を塞いでいる手前側の容器を取 り出してから奥側の容器を取り出すと,収容効率が向上することが知られて いた。
加えて,前記7〔被告の主張〕(4)エ(イ)のとおり,本件特許権の出願前に, 「ダブルストレージ」方式が自動倉庫技術分野における周知慣用技術であっ た。
したがって,相違点3に係る本件訂正発明1の構成は,乙11の3発明の 書庫の複数の棚領域から搬送手段によってコンテナを取り出すものにおい て,奥行き方向の手前側と奥側の前後に複数のコンテナを配置し,そのコン テナの取り出し方として周知の手段を採用したものにすぎないから,相違点 3に係る本件訂正発明1の構成は,乙11の3発明と,乙16及び乙45に 記載された発明ないし周知技術に基づいて,当業者が容易に想到することが できたものである。
(5) 小括 そうすると,本件訂正発明1は進歩性を欠き,本件訂正発明1の特許は,特 許法123条1項2号,29条2項により,特許無効審判により無効にされる べきものである。
〔原告の主張〕 (1) 被告の主張は,次のとおり,先行技術発明の認定を誤っている。
ア 乙11の3発明について (ア) 構成要件A及びBに対応する構成について 乙11の3文献には,図書入出庫管理装置において「図書の寸法別に 分類された図書に対応する寸法の」複数種類のコンテナ(容器)を用い ることは記載されていない。
(イ) 構成要件Cに対応する構成について 乙11の3文献には,自動保管取り出しシステム(AS/RS)に使 用される「コンピュータシステム」が,図書の「サイズコード」を利用 することは記載されていない。
また,同文献には,容器アドレスと図書コード(バーコード・サイズ コード)とを対比させて記憶することは記載されていない。
(ウ) 構成要件Dに対応する構成について 乙11の3文献には,利用者のアイテム要求トランザクションが受け 取られることは記載されているが,AS/RSがアイテムを取り出す際 に,アイテムバーコードナンバーによって要求を行う点については開示 がない。
(エ) 構成要件Eに対応する構成について 乙11の3文献によれば,AS/RSは,返却が要求された図書をサ イズグループに分類することはしない。
また,同文献には,図書の情報を図書館コンピュータシステムに「入 力することにより,」返却図書を収容する空きのある容器を通路端ワー クステーションに搬送することは記載されていない。
イ 乙16発明について 乙16公報には,「載荷パレット」の記載があるのみで,「コンテナ」 の記載はない。載荷パレットはコンテナではないから,乙16発明の載荷 パレットが本件訂正発明1のコンテナに相当するとはいえない。
ウ 乙45発明について 乙45発明は,「物品収納設備」に関する発明であり,「書庫」に関す る発明ではない。乙45発明は,乙45公報の「図書館等の本棚・・・に 応用できる」との記載のとおり,応用しなければ図書館等の本棚として用 いることができず,「本棚」の発明とはいえないのであり,「書庫」とい えるものでもない。
(2) 上記(1)に基づけば,次のとおり,本件訂正発明1と乙11の3発明との相 違点について,いずれも当業者が容易に想到し得たということはできない。
ア 相違点1について 乙11の3文献には,「図書の寸法別に分類された図書に対応する寸法 の」複数種類のコンテナ(容器)を用いることの記載がないから,高さ及 び幅寸法を図書に対応する寸法とした棚領域を備えることが当業者にとっ て自明であるとはいえない。
この点に関して被告は,乙11の3発明に接した当業者にとって,乙4 3発明および乙44発明に基づき,コンテナの高さのみではなく,棚領域 を図書の寸法別に分類された幅及び高さがそれぞれ異なるものとし,棚領 域に収容するコンテナをその棚領域に対応した寸法にすることは容易に想 到できた事項であると主張する。しかし,乙43発明は書棚の発明であり, 書庫の棚領域の開示は一切なく,乙44発明は収納棚の発明であり,書庫 の棚領域の開示は一切なく,いずれも「書庫に用いる棚領域において,そ の幅及び高さがそれぞれ異なるもの」は開示されていない。
したがって,乙43発明及び乙44発明をもってしても,「書庫に用い る棚領域において,その幅及び高さがそれぞれ異なるもの」に当業者が容 易に想到し得たとはいえない。
イ 相違点2について 乙11の3文献には,図書の情報を図書館コンピュータシステムに「入力 することにより,」返却図書を収容する空きのある容器を通路端ワークステ ーションに搬送することの記載はない。
この点に関して被告は,図書管理システムにおいて,アイテム(図書等) のサイズ情報(寸法情報)を特定する手段として,乙35公報や乙36公報 に記載されている技術を挙げ,図書コードを入力するか,サイズ情報を入力 するかは設計事項にすぎないと主張する。しかし,乙11の3文献には,空 きのある容器をワークステーションへの搬送に用いる際に図書の情報を利 用する技術の記載はなく,示唆もされていない。乙11の3発明には,図書 の情報を用いて空きのある容器をワークステーションに搬送するという技 術思想がないから,アイテム(図書等)のサイズ情報(寸法情報)を特定す べき必要性や必然性がない。そうすると,乙11の3発明に接した当業者が, 乙35発明や乙36発明に基づき,寸法情報を入力してコンテナを取り出す 発想に到達しようがないというほかない。
ウ 相違点3について 被告は,相違点3にかかる本件訂正発明1の構成は,乙11の3発明と, 乙16発明及び乙45発明ないし周知技術に基づき当業者が容易に想到で きたと主張する。しかし,乙16発明は,乙11の3発明とは違って,「載 荷パレット」の収納位置が決められていない 。そして,乙16発明は, 載荷パレット内の一つ一つを区別して管理する必要のないロット単位の 通過物流主体の荷物系のシステムであり ,一冊ごとに取り出しかつ返却 を要する図書系の物流とは違って,奥側のみ,あるいは手前側のみの載 荷パレットの取り出し及び返却という処理 をすべき必要性がなく,この ような取り出し・返却の作業効率の向上 (出納効率の向上)という技術的 課題を考慮する必要 がない構成である。このような乙16発明を ,収納 位置が決められている乙11の3発明に適用する動機付けが 見当たらな い。
この理は,乙45発明等にも通じる。乙45発明は,図書館の本棚に 応用できる旨の記載があるものの ,本質的には物品収納設備の発明であ って,取り出し・返却の作業効率の向上 (出納効率の向上)という技術的 課題を考慮する必要がない構成である。また,ダブルストレージ方式も, 自動倉庫に関する技術であり,自動書庫の分野でダブルコンテナ方式が周知 技術であるとする根拠にはならない。
エ その他の相違点について 乙11の3文献には,本件訂正発明1の構成要件1Cの「記憶手段」及び 構成要件1Fの「記憶手段の更新」は記載されておらず,収納位置と図書と の対応付けを記憶することについて明示されていないから,そのような対応 付けの記憶内容を更新するという発想に当業者が容易に想到し得るとはい えない。
9 争点(2)ア(ウ) 本件訂正発明1につき乙42文献を主引例とする進歩性欠如) ( について〔被告の主張〕 (1) 本件特許の出願前に頒布された刊行物である乙42文献に記載された乙4 2発明を主引用例とし,これに乙16発明及び乙45発明並びに周知技術を 適用すれば,本件訂正発明1は当業者が容易に想到し得るものである。
(2) 乙42発明 乙42発明の内容は,本件発明1の構成要件に対応させて分説して示すと, 次のとおりである。
a 図書のサイズ別に分類された幅及び高さがそれぞれ異なる複数のラック を有する書庫と, b この書庫の各ラックに収容されるもので,それぞれが収容されたラック に対応したサイズを有する複数の図書を収容する複数のコンテナと, c この複数のコンテナの書庫内における収容位置と,各コンテナに収容さ れた複数の図書の各請求番号とを対応させて記憶する磁気ディスクと, d 貸出しが請求された図書の請求番号を入力することにより,前記磁気デ ィスク内の記憶内容に基づいて,該請求図書が収容されているコンテナを 書庫から取り出して貸出窓口に搬送するとともに,e 返却が要求された図書の請求番号を入力することにより,該返却図書の 寸法に対応する複数のコンテナの中から空きのあるコンテナを書庫から取 り出して貸出窓口に搬送する搬送手段とを具備し,f 前記書庫の複数のラックには,クレーンによってコンテナを取り出す間 口に対して奥行き方向にコンテナが収容されるg 自動化図書館システム。
(3) 乙42発明と本件訂正発明1の対比 乙42発明と本件訂正発明1を対比すると,一致点及び相違点は,次のとお りである。
ア 一致点 図書の寸法別に分類された複数の棚領域を有する書庫と,この書庫の各棚 領域に収容されるもので,それぞれが収容された棚領域に対応した寸法を有 する複数の図書を収容する複数のコンテナと,書庫内における収容位置と各 コンテナに収容された複数の図書の各図書コードとを対応させて記憶する 記憶手段と,取り出しが要求された図書の図書コードを入力することにより, 前記記憶手段の記憶内容に基づいて,該要求図書が収容されているコンテナ を前記書庫から取り出してステーションに搬送するとともに,返却が要求さ れた際に,返却が要求された図書の情報を入力することにより,複数の前記 コンテナの中から空きのあるコンテナを前記書庫から取り出して前記ステ ーションに搬送する搬送手段と,前記搬送手段には,コンテナを取り出す移 載手段が備えられている図書保管管理装置。
イ 相違点 (ア) 相違点1 返却が要求された際に,返却が要求された図書の情報を入力すること により,複数の前記コンテナの中からコンテナを前記書庫から取り出し て前記ステーションに搬送する搬送手段に関し,本件訂正発明1は,入 力する図書の情報として寸法情報を採用しているのに対し,乙42発明 は,返却が要求された図書の情報であって,寸法情報を入力しているも のかどうか不明である点。
(イ) 相違点2 複数のコンテナの書庫内における収容位置と各コンテナに収容された 複数の図書の各図書コードとを対応させて記憶する記憶手段の記憶内容 を更新する更新手段に関し,本件訂正発明1は,搬送手段によりステー ションに搬送されて,要求図書が取り出されたコンテナまたは返却図書 が返却されたコンテナに対して,上記記憶手段の記憶内容を更新する更 新手段を具備しているのに対し,乙42発明は,このような更新手段を 具備しているのか不明である点。
(ウ) 相違点3 本件訂正発明1は,「前記書庫の複数の棚領域には,前記搬送手段に よってコンテナを取り出す間口に対して,奥行き方向に複数のコンテナ が収容され,前記搬送手段には,前記コンテナを取り出す間口に対して, 手前側のコンテナを取り出してから奥側のコンテナを取り出す移載手段 が備えられている」のに対し,乙42発明は,書庫の複数の棚領域から, 搬送手段によってコンテナを取り出すものではあるが,奥行き方向に複 数のコンテナを収容し,搬送手段には,コンテナを取り出す間口に対し て手前側のコンテナを取り出してから奥側のコンテナを取り出す移載手 段を備えたものであるかは不明である点。
(4) 相違点に係る構成は当業者が容易に想到できるものであること ア 相違点1について 乙42文献の記載から,乙42発明には,「A4」の図書サイズ用のレイ アウトの他に,図書のサイズが「B4」及び「B5」についても対応できる ように,「B4」の図書サイズ及び「B5」の図書サイズの「コンテナ」及 び「ラック」からなる書庫も備えていると解することができる。そして,乙 42発明は,図書のサイズに該当する空きコンテナを検索して搬送手段に対 して出庫を指示する構成を備えている。
また,前記7〔被告の主張〕(4)ウ(ウ)のとおり,図書管理システムにおい て,アイテム(図書等)のサイズ情報(寸法情報)を特定する手段としては, システム内に図書コード単位で図書管理データを持たせ,図書管理データを 参照して当該図書に関するデータを特定する方法のほかに,サイズ情報に対 応する情報を直接入力する方法が知られており,読み取った図書コードから システム内の情報を参照してサイズ情報を得るか,サイズ情報を直接入力す るようにするか,あるいは,両方の方式を可能とするかは,当業者が,最終 的に実現したいシステムを考慮した上で選択する設計事項にすぎないとい うべきである。
そうすると,相違点1に係る本件訂正発明1の構成は,当業者が容易に想 到し得たものということができる。
イ 相違点2について 乙11の3文献や乙12公報の記載によれば,搬送手段によりステーショ ンに搬送されて,要求図書が取り出されたコンテナ又は返却図書が返却され たコンテナに対して,記憶手段の記憶内容を更新することは,本件特許出願 前において周知の技術であった。
この点,棚管理の方法として,フリーロケーション方式ないしゾーンド・ フリー・ロケーション方式は,一般に広く利用されている管理方法であり, 本件特許出願前において周知の技術であり,いずれの方式も電子計算機(コ ンピュータ)で管理するものである。そして,それらの方式には,複数のコ ンテナの書庫内における収容位置と各コンテナに収容された複数の図書の 各図書コードとを対応させて記憶する記憶手段の記憶内容を更新する更新 手段を備えることが必要となる。
乙42発明も電子計算機を用いて管理するものであり,同発明において電 子計算機は,返却された図書が格納されるコンテナの位置(ロケーション) を自動的に検索して,そのコンテナの出庫をクレーンに対して指示できるも のである。
したがって,乙42発明において,周知技術であるフリーロケーション方 式ないしゾーンド・フリー・ロケーション方式を採用し,その際に,周知技 術である搬送手段によりステーションに搬送されて,要求図書が取り出され たコンテナ又は返却図書が返却されたコンテナに対して,記憶手段の記憶内 容を更新する構成を適用して,図書の請求番号とコンテナの収容位置との対 応関係をその都度更新するものとすることは,当業者が容易に想到すること ができた事項である。
ウ 相違点3について 乙42発明においても,書庫内に設置された棚領域に複数の容器を備え, 返却された図書を任意の容器に収容して書庫に入庫することができ,貸出し 及び返却時の作業を行うことができる自動化図書館システムを提供するこ とを目的としている。
この点,収納効率の向上のために,棚の間口に対して,奥行き方向の手前 側と奥側の前後に二つのコンテナ等の容器を配置する点は,乙16公報に記 載されている。また,乙45公報には,乙45発明,すなわち,「図書館等 の複数の棚領域には,搬送手段によってコンテナを取り出す間口に対して, 奥行き方向に複数のコンテナが収容される書庫」という発明が記載されてい る。そして,図書館等の本棚においてもコンテナを取り出す間口に対して, 奥行き方向に複数のコンテナを配置し,間口を塞いでいる手前側の容器を取 り出してから奥側の容器を取り出すと,収容効率が向上することが知られて いた。
加えて,前記7〔被告の主張〕(4)エ(イ)のとおり,本件特許権の出願前に, 「ダブルストレージ」方式が自動倉庫技術分野における周知慣用技術であっ た。
したがって,相違点3に係る本件訂正発明1の構成は,乙11の3発明の 書庫の複数の棚領域から搬送手段によってコンテナを取り出すものにおい て,奥行き方向の手前側と奥側の前後に複数のコンテナを配置し,そのコン テナの取り出し方として周知の手段を採用したものにすぎないから,相違点 3に係る本件訂正発明1の構成は,乙11の3発明と,乙16及び乙45に 記載された発明ないし周知技術に基づいて,当業者が容易に想到することが できたものである。
(5) 小括 そうすると,本件訂正発明1は進歩性を欠き,本件訂正発明1の特許は,特 許法123条1項2号,29条2項により,特許無効審判により無効にされる べきものである。
〔原告の主張〕 (1) 乙42文献は,被告自身が作成したものであり,第三者が入手したことが 立証されていないことや,ユーザ向けに作成したものであり,その他の者に 配布される類のものではないことから,頒布,公開されたものではなく,特 許法29条1項3号の「刊行物」に該当しない。
(2) 仮に乙24文献が特許法29条1項3号の「刊行物」に該当するとしても, 以下のとおり,被告の主張は失当である。
ア 被告は,以下のとおり乙42発明の認定を誤っている。
(ア) 乙42発明は,固定ロケーション方式に関する発明であり,乙42公 報には,「返却が要求された図書の寸法情報」を入力することにより, 「該返却図書の寸法に対応する複数の前記コンテナの中から空きのある コンテナ」を取り出す技術についての記載も示唆もない。
(イ) 乙42公報には,コンテナが「サイズ別」であることは記載されてい るが,棚領域が「サイズ別」であることは記載されていない。したがっ て,乙42発明は,「図書の寸法別に分類された幅及び高さがそれぞれ 異なる複数の棚領域」を備えているとはいえない。
また,乙42公報の「弊社のラックは,一枚の棚受けに数個のコンテ ナをのせる棚板方式をとっています。」との記載によれば,コンテナが 棚領域に対応した寸法を有していないことが明らかであるから,乙42 公報には,「それぞれが収容された棚領域に対応した寸法を有する複数 の図書を収容する複数のコンテナ」が記載されていない。
(ウ) 乙42公報には,磁気ディスクが請求番号とコンテナの収容位置とを 対応付けて記憶することは記載されていない。また,同公報には,電子 計算機によるコンテナ取り出しが請求番号とコンテナの収容位置との対 応付けの記憶内容に基づくものであることは記載されていない。
イ 上記アに基づけば,次のとおり,本件訂正発明1と乙42発明との相違 点について,いずれも当業者が容易に想到し得たということはできない。
(ア) 相違点1について 乙42公報には,図書の返却作業に際して,返却が要求された図書の 寸法情報を入力することによって複数のコンテナの中から空きのあるコ ンテナを取り出すことについて記載も示唆もされておらず,乙35発明 や乙36発明を適用する前提を欠くから,当業者であっても,構成要件 Eの「返却が要求された図書の寸法情報を入力することにより,該返却 図書の寸法に対応する複数の前記コンテナの中から空きのあるコンテナ を前記書庫から取り出して」の構成を容易に想到し得ない。
(イ) 相違点2について 乙11の3文献には,図書とコンテナとの対応付けに関する記憶内容 及び当該記憶内容の更新に関する記載はないから,乙42発明に接した 当業者が乙11の3に接したとしても,記憶手段の記憶内容を更新する 更新手段(構成要件1F)を容易に想到し得ない。
また,乙12発明は固定ロケーション方式に関する発明であり,フリ ーロケーション方式に関する構成が開示されていないから,乙42発明 に接した当業者が乙12発明を適用しても,相違点2を容易に想到し得 ない。
さらに,乙17発明は本件訂正発明1とは全く異なる方式のフリーロ ケーション方式であるから,乙42発明に接した当業者が乙17発明を 適用しても,相違点2を容易に想到し得ない。
(ウ) 相違点3について 前記8〔原告の主張〕(2)ウと同様の理由から,乙42発明に接した当 業者が相違点3を容易に想到し得るとはいえない。
(エ) その他の相違点について 乙42公報には「サイズ別」棚領域の記載がなく,このような乙42発 明に接した当業者が,「サイズ別」棚領域に容易に想到し得るものとはい えない。
10 争点(2)ア(エ)(本件訂正発明1につきサポート要件違反)について〔被告の主張〕 本件特許の請求項1には,「返却が要求された図書の寸法情報を入力すること により,該返却図書の寸法に対応する複数の前記コンテナの中から空きのあるコ ンテナを前記書庫から取り出して前記ステーションに搬送する搬送手段」と記載 されている。
この点,本件明細書等の発明の詳細な説明には,返却が要求された図書の寸法 情報を入力することにより,返却図書の寸法に対応する棚領域にある複数のコン テナの充填率を検出し,充填率を利用して空きのあるコンテナを前記書庫から取 り出すことは記載されている。
しかし,発明の詳細な説明には,検出したコンテナの充填率を利用せずに,空 きの部分があるコンテナを特定することについては,発明の詳細な説明には,何 ら記載されておらず,請求項に記載された発明は,発明の詳細な説明に記載され た発明の範囲を超えて特許を請求しており,サポートされていない。
そうすると,本件訂正発明1は,発明の詳細な説明に記載していない発明をも 含むものであり,本件特許は,特許法36条6項1号の要件を満たしていない出 願によりなされたものであるから,無効とされるべきものである。
〔原告の主張〕 本件明細書等の発明の詳細な説明には,請求項1に記載の「返却が要求された 図書の寸法情報を入力することにより,該返却図書の寸法に対応する複数の前記 コンテナの中から」,コンテナの充填率を検出し,充填率を利用して「空きのあ るコンテナを前記書庫から取り出」すことは記載されているから,本件特許は特 許法36条6項1号の要件を充足する。
11 争点(2)ア(オ)(本件訂正発明1につき明確性要件違反)について〔被告の主張〕 本件特許は,特許法36条6項2号の要件を満たしていない出願によりなされ たものであるから,無効とされるべきものである。
(1) 本件特許は,図書の収容効率を向上させることを課題とする発明であるとこ ろ,本件特許の請求項1には,「この書庫の各棚領域に収容されるもので,そ れぞれが収容された棚領域に対応した寸法を有する複数の図書を収容する複 数のコンテナと」と記載されているが,コンテナ内の図書の収容の仕方につい ては特定されていない。
この点,例えば,コンテナがA4版用,B5版用,A5版用というように棚 領域に対応した寸法に分類されていても,図書のA4版の幅と高さに対して, コンテナ内にどのようにして収納するかは特定されておらず,コンテナ内の図 書の収容の仕方によっては,図書の収容効率が上がらない場合も含むものであ る。
したがって,本件訂正発明1は,図書の収容効率を向上させることを課題と するための発明を特定するための事項を明確に記載していないから,発明が不 明確である。
(2) 本件訂正発明1は,「空きのあるコンテナ」について明確な定義付けがさ れておらず,どのような状態をいうのか不明確である。したがって,本件訂 正発明1は,「空きのあるコンテナ」の技術的意義が明確でない。
(3) 本件訂正発明1は,「手前側のコンテナを取り出してから奥側のコンテナ を取り出す」という構成がどのような意義を有するものか不明であり,本件 明細書等の記載を見ても,奥側のコンテナを取り出す際に,手前側のコンテ ナを取り出してから奥側を取り出すことを意味しているだけでなく,間口に 対して奥行き方向に複数のコンテナを収容させる際に,手前側のコンテナを 優先して取り出してから奥側のコンテナを取り出すという意味を含んでいる と解されるため,そのいずれを意味するのかが不明確である。また,手前側 のコンテナを優先して取り出す場合において,それは図書の返却時なのか, 取り出し時なのか,それとも両方の時なのか,いずれの時期におけるコンテ ナの取り出し条件を表現しているのか明らかにする必要があるが,その点も 明らかでない。
〔原告の主張〕 本件特許は,特許法36条6項2号の要件を充足する。
(1) 本件訂正発明1は,図書の収容効率を向上させることを課題とするための発 明特定事項は明確に特定されているから,特許を受けようとする発明が明確で あり,本件特許は,特許法36条6項3号の要件を充足する。
被告は,コンテナの図書の収容の仕方が特定されていないことを根拠に課題 解決の発明特定事項が不明確であると主張するが,そのような特定をしなくと も,既に定められた請求項1の「この書庫の各棚領域に収容されるもので,そ れぞれが収容された棚領域に対応した寸法を有する複数の図書を収容する複 数のコンテナ」さえ具備すれば,図書の収容効率を向上させることができるこ とは明白である。
したがって,本件訂正発明1の「空きのあるコンテナ」の技術的意義は明確 である。
(2) 返却図書が収容できる「空き」のあるコンテナを書庫から取り出すものであ ることは,請求項1の「返却が要求された図書の寸法情報を入力することによ り,該返却図書の寸法に対応する複数の前記コンテナの中から空きのあるコン テナを前記書庫から取り出し」との記載から明らかである。すなわち,コンテ ナに返却図書を収容できる「空き」がなければ,返却図書を当該コンテナを収 容できないものであり,これを「空きのあるコンテナ」と規定したにすぎない。
(3) 本件訂正発明1の「手前側のコンテナを取り出してから奥側のコンテナを取 り出す」の技術的意義は明確である。
被告は,同記載の解釈にあたり,「奥側のコンテナを取り出す際に,手前側 のコンテナを取り出してから奥側を取り出すこと」(解釈A)を意味している だけでなく,「間口に対して奥行き方向に複数のコンテナを収容させる際に, 手前側のコンテナを優先して取り出してから奥側のコンテナを取り出す」(解 釈B)という意味をも含んでいると解されると主張するが,「手前側のコンテ ナを優先」することの記載は請求項1にはなく,請求項6には別途「手前側の コンテナを優先して取り出す」と明確に規定していることからすれば,解釈B でなく解釈Aを意味することは明白である。
12 争点(2)イ(本件訂正発明2につき進歩性欠如)について〔被告の主張〕 (1) 搬送機構に設けられた検出機構を用いてコンテナの充填率を検出し,図書 を収容すべきコンテナを選定することは,乙36公報に示されているように, 周知の事項である。また,特開平2-70603号公報(乙60。以下「乙 60公報」という。 には, ) 図書館における図書等の保管管理装置において, 収容する書籍の寸法及び貯蔵所の利用し得る貯蔵容量(充満)に関するデー タに基づいて,図書の収容場所(コンテナ)を特定することが記載されてい る。
さらに,収容する書籍の寸法及び利用し得る貯蔵容量(充満)に関するデ ータに基づいて図書の収容場所(コンテナ)を特定する際に,どのような順 番でコンテナを取り出すかということは,設計事項にすぎず,より大きな空 きが残されている収容場所(コンテナ)を選択するほうが,図書を収容でき ない可能性が低くなるから,より簡便な方法ということができる。
(2) 本件訂正発明2のように,搬送手段が,書庫に返却されるコンテナ内の図 書の充填率を検出して記憶手段に記憶させる充填率検出手段を備えること, 図書の返却が要求された状態で,記憶手段の記憶内容に基づいて,該返却図 書の寸法に対応する複数の前記コンテナの中で,図書充填率の低いコンテナ から取り出すという構成は,乙12発明並びに乙11の3発明,乙16発明 及び前記の周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得るものである。ま た,本件訂正発明2の構成による作用効果も同構成から当然に導かれるもの にすぎない。
(3) そうすると,本件訂正発明2は進歩性を欠き,本件訂正発明2の特許は, 特許法123条1項2号,29条2項により,特許無効審判とより無効にさ れるべきものである。
〔原告の主張〕 乙36公報及び乙60公報のいずれにも,本件訂正発明2の「前記書庫に返 却されるコンテナ内の図書の充填率を検出して」の構成が記載されていない。
また,返却されるコンテナのうち,充填率の高低によって適切なコンテナを選 択するという本件訂正発明2の着想がなければ,「充填率」を検出する構成を 当業者が想到することはできない。したがって,上記の各公報をもってしても, 本件訂正発明2は当業者が容易に想到し得るものではない。
13 争点(2)ウ(本件訂正発明3につき進歩性欠如)について〔被告の主張〕 (1) 奥側にコンテナを格納する場合には,手前側のコンテナをいったん取り出 し,取り出し口以外の場所に仮置きした上で,奥側のコンテナを格納し,仮 置きした手前側のコンテナを元の位置に格納し直すという手間がかかるから, 奥側のコンテナは手前側のコンテナと比較して出納効率が低下することにな る。このことは当業者にとって技術常識であり,奥行き方向に複数のコンテ ナを収容した場合に,奥側のコンテナよりも手前側のコンテナを優先して取 り出すようにすることは,当業者にとって周知の事項である。
(2) 本件訂正発明3のように,搬送手段が,前記書庫に返却されるコンテナ内 の図書の充填率を検出して前記記憶手段に記憶させる充填率検出手段を備え, 前記図書の返却が要求された状態で,前記記憶手段の記憶内容に基づいて, 該返却図書の寸法に対応する前記コンテナの中で,図書充填率の低い手前側 のコンテナを優先して取り出すという構成は,乙12発明,乙11の3発明, 乙16発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得るものである。
また,本件訂正発明3の構成による作用効果も同構成から当然に導かれるも のにすぎない。
(3) そうすると,本件訂正発明3は進歩性を欠き,本件訂正発明3の特許は, 特許法123条1項2号,29条2項により,特許無効審判により無効にさ れるべきものである。
〔原告の主張〕 乙36公報及び乙60公報のいずれにも,本件訂正発明3の「前記書庫に返 却されるコンテナ内の図書の充填率を検出して」の構成が記載されていない。
また,返却されるコンテナのうち,充填率の高低によって適切なコンテナを選 択するという本件訂正発明3の着想がなければ,「充填率」を検出する構成を 当業者が想到することはできない。したがって,上記の各公報をもってしても, 本件訂正発明3は当業者が容易に想到し得るものではない。そうすると,本件 訂正による特許請求の範囲減縮をする前の発明である本件訂正発明3も進歩 性が認められることは明らかである。
14 争点(3)ア(本件訂正発明1につき本件再訂正による対抗主張の成否)につ いて〔原告の主張〕 (1) 本件再訂正発明1は,奥行き方向の収容コンテナの数を2個に限定し,「前 記奥行き方向に2個収容されたコンテナのうち,手前側のコンテナを前記空 きのあるコンテナとして優先的に使用する。 の限定を付加したものであり, 」 その追加訂正部分は特許請求の範囲減縮に該当するから,独立特許要件以 外の訂正要件を充足する。
(2) イ号物件及びロ号物件は,以下のとおり,本件再訂正発明1の技術的範囲 に属する。
ア イ号物件について イ号物件に係る「通信フロー設計書(イ)17頁」の記載によれば,イ 号物件は,返却処理において,奥側と手前側にあるコンテナのうち,手前 側のコンテナから優先的に引き当てられて使用されるから,「前記奥行き 方向に2個収容されたコンテナのうち,手前側のコンテナを前記空きのあ るコンテナとして優先的に使用する」に該当する。
したがって,イ号物件は,本件再訂正発明1の追加訂正部分の構成要件 を充足する。
そして,追加訂正部分以外の構成要件を充足することは,前記1ないし 6〔原告の主張〕のとおりであるから,イ号物件は,本件再訂正発明1の 技術的範囲に属する。
イ ロ号物件について ロ号物件に係る「通信フロー設計書(ロ)18頁」の記載によれば,ロ 号物件は,返却処理において,奥側と手前側にあるコンテナのうち,手前 側のコンテナから優先的に引き当てられて使用されるから,「前記奥行き 方向に2個収容されたコンテナのうち,手前側のコンテナを前記空きのあ るコンテナとして優先的に使用する」に該当する。
したがって,イ号物件は,本件再訂正発明1の追加訂正部分の構成要件 を充足する。
そして,追加訂正部分以外の構成要件を充足することは,前記1ないし 6〔原告の主張〕のとおりであるから,イ号物件は,本件再訂正発明1の 技術的範囲に属する。
(3) 以下のとおり,本件再訂正により本件訂正発明1に係る無効理由はいずれ も解消された。
ア 無効理由1(乙12発明を主引例とする進歩性欠如)について (ア) 乙12発明及び乙11の3発明において,奥行き方向に収容されるコ ンテナは1個であることから,「手前側のコンテナ」の概念が存在しな い。
また,乙16発明は,奥行き方向に2個のパレットが収納されている が,同発明は自動倉庫に関する発明であって,返却の概念が存在しない から,返却時の出納効率の向上という技術的課題が存在しない。また, 同発明は,ロット単位の通貨物流主体の荷物系のシステムに関する発明 であり,手前・奥のパレットを連続して搬入・搬出するものであるから, 本件再訂正発明1のようにコンテナの中から一冊単位で取り出し,さら に返却も必ず行うものではないのであり,奥側と手前側の載荷パレット を別個に取り出し,さらに元の収納位置に戻すという操作を行う概念が 存在しない。そのため,当該操作を前提とした作業効率の向上,すなわ ち出納効率の向上という技術的課題が存在しない。したがって,乙16 公報には,返却時において空きのあるコンテナの中から手前側のコンテ ナを優先的に使用することについて開示も示唆もされていない。
そうすると,乙12公報,乙11の3文献及び乙16公報にはいずれ も,本件再訂正の追加訂正部分について開示も示唆もなく,当該追加訂 正部分に当業者が容易に想到する動機付けとなるものが一切見当たらな い。
(イ) また,本件再訂正発明1は,本件再訂正の追加訂正部分を具備するこ とによって,奥行き方向に2個のコンテナを配するという図書系では全 く例を見ない方法で収容効率を上げるとともに,フリーロケーション方 式を適用した上に返却時における手前側コンテナを優先的に使用するこ とで出納効率を大幅に向上させている。このような作用効果は,乙12 公報,乙11の3文献及び乙16公報のいずれにもが開示も示唆もされ ていない。
(ウ) よって,乙12発明に乙11の3発明及び乙16発明を適用したとし ても,当業者が本件再訂正発明1を容易に想到することができたとはい えない。
イ 無効理由2(乙11の3発明を主引例とする進歩性欠如)について 乙11の3文献,乙16公報及び乙45公報のいずれにも,本件再訂正 の追加訂正部分が記載されていないから,乙11の3発明に乙16発明及 び乙45発明を適用したとしても,当業者が本件再訂正発明1を容易に想 到することができたとはいえない。
ウ 無効理由3(乙42発明を主引例とする進歩性欠如)について 乙42公報,乙16公報及び乙45公報のいずれにも,本件再訂正の追 加訂正部分が記載されていないから,乙42発明に乙16発明及び乙45 発明を適用したとしても,当業者が本件再訂正発明1を容易に想到するこ とができたとはいえない。
エ 被告の主張について 被告は,本件再訂正の追加訂正部分について,コンテナを選択する際に 手前側のコンテナを優先的に使用することは,設計事項にすぎないと主張 する。
しかし,乙11の3発明,乙16発明及び乙45発明ではいずれも,奥 行き方向に一つのコンテナしか配置されていないから,優先規則を定める という着想がない。また,本件再訂正の追加訂正部分のように手前側のコ ンテナを優先的に使用することによって,従来なかった異質な作用効果を 奏している。
そうすると,コンテナを選択する際に手前側のコンテナを優先的に使用 することは,設計事項であるとはいえないから,被告の上記主張は失当で ある。
(4) 小括 以上のとおり,本件再訂正は適法であり,これにより本件発明1に係る無 効理由が解消され,かつ,イ号物件及びロ号物件が本件再訂正発明1の技術 的範囲に属するから,原告は,被告に対し本件特許権を行使することができ る。
〔被告の主張〕 (1) 本件再訂正の追加訂正部分における,コンテナを選択する優先規則である 「2個収容されたコンテナのうち,手前側のコンテナを前記空きのあるコン テナとして優先的に使用する」という事項は,手前側の空きのあるコンテナ をどのように「優先的に使用する」のか,その具体的事項が何ら特定されて いない。そのため,「優先的」の文言がいかなる技術的意味を有するのか不 明確であり,何らの技術的事項も特定されていない。
したがって,本件再訂正発明1には,特許を受けようとする発明が明確で ないとして,特許法36条6項2号違反の無効理由が存在する。
(2) また,本件明細書等には,「優先的に手前側のコンテナを使用する」こと は記載されているが,「優先的に手前側のコンテナを使用する管理方法」の 全ての構成が開示されているものではない。本件再訂正の追加訂正部分にお ける,「空きのあるコンテナとして優先的に使用する」との文言は,本件再 訂正発明1の課題を解決するための手段を具体的に特定したものではなく, 明細書に記載された発明の範囲を逸脱するものであるから,本件再訂正発明 1には,特許法36条6項1号違反の無効理由が存在する。
(3) さらに,以下のとおり,本件再訂正は無効理由1ないし3を解消するもの ではない。
ア 無効理由1について (ア) 本件再訂正のうち,「図書の寸法別に分類された幅及び高さがそれぞ れ異なる複数の棚領域を有する書庫」との事項は,当業者が容易に想到 し得るものである。
また,本件再訂正のうち,「奥行き方向に2個のコンテナが収容され ること」との事項は,本件再訂正前の相違点2における「奥行き方向に 複数のコンテナが収容されること」を「奥行き方向に2個のコンテナが 収容されること」に減縮する訂正であるが,当業者が容易に想到し得る ものである。
(イ) 本件再訂正のうち,「前記奥行き方向に2個収容されたコンテナのう ち,手前側のコンテナを前記空きのあるコンテナとして優先的に使用す る」との事項は,次のとおり図書保管管理装置の技術分野における周知 慣用手段である。
乙39公報には,奥行き方向に複数のパレット(コンテナ)を収納し た倉庫内設備において,奥側に格納された荷物を棚から取り出すときに は,格納効率が悪くなること,また,奥側の荷物を出庫口へ卸した後に, 手前側の荷物を置き換え位置から元の棚区画へ戻すという残作業を行う必要があるため,直ちに次の荷物の取り出し作業や格納作業に向かうことができず,出納効率が低下する,ということが記載されている。
また,乙45公報には,コンテナを搬出する際には手前側のコンテナを取り出し,当該コンテナを収納する際には,既に格納されているコンテナを押し込んで収納棚の手前側に格納して,手前側のコンテナを優先して使用すれば,出納効率を向上させることができる,ということが記載ないし示唆されている。
以上の記載のように,奥行き方向に複数のコンテナを収容した収納設備において,奥側のコンテナを取り出すときには手前側のコンテナを取り出す場合と比較して出納効率が低下することは,当業者にとって技術常識である。そのため,間口を塞いでいる手前側の容器を奥側の容器よりも優先的に使用することは,図書保管管理装置の技術分野における周知慣用手段である。
(ウ) 追加訂正部分に係る本件再訂正発明1の構成は,乙12発明において, 乙11の3文献に記載された返却が要求された返却図書を収容するため に複数ある容器(コンテナ)のうち空きのある容器(コンテナ)を取り 出す際の方法として,乙16発明のように奥行き方向に2個収容された コンテナがある場合に,手前側のコンテナを空きのあるコンテナとして 優先的に使用するという,上記周知慣用手段を採用したものにすぎない。
奥行き方向に2個収容されたコンテナがある場合に,手前側のコンテ ナを空きのあるコンテナとして優先的に使用することは何ら困難なこと ではなく,また,それを阻害する特段の要因もないから,これらを組み 合わせることは,当業者であれば容易に想到し得ることである。
そして,本件再訂正発明1の構成による効果も,乙12発明,乙11 の3発明及び乙16発明並びに上記周知慣用手段による効果の総和にす ぎず,当業者が予測できないような格別のものとはいえない。
したがって,本件再訂正発明1において追加訂正部分の構成を採用す ることは,乙12発明,乙11の3発明及び乙16発明並びに上記周知 慣用手段により当業者が容易になし得たことであり,本件再訂正発明1 には依然として進歩性がない。
イ 無効理由2について 「前記奥行き方向に2個収容されたコンテナのうち,手前側のコンテナ を前記空きのあるコンテナとして優先的に使用する」との事項は,図書保 管管理装置の技術分野における周知慣用手段であり,これを乙11の3発 明において採用することは,当業者であれば容易に想到し得ることである。
したがって,本件再訂正発明1は,依然として,乙11の3発明,乙1 6発明及び乙45発明並びに周知技術から容易に想到することができたも のであり,無効理由2を有する。
ウ 無効理由3について 「前記奥行き方向に2個収容されたコンテナのうち,手前側のコンテナ を前記空きのあるコンテナとして優先的に使用する」ことは,図書保管管 理装置の技術分野における周知慣用手段であり,これを乙42発明におい て採用することは,当業者であれば容易に想到し得ることである。
したがって,本件再訂正発明1は,依然として,乙42発明,乙16発 明及び乙45発明並びに周知技術から容易に想到することができたもので あり,無効理由3を有する。
(4) 以上のとおりであるから,原告の訂正の対抗主張は理由がなく,原告は 被告に対し本件特許権を行使することができない。
15 争点(3)イ(本件発明2につき本件再訂正による対抗主張の成否)について〔原告の主張〕 本件再訂正発明2は,本件再訂正発明1の従属項である。本件再訂正発明1 が本件発明1に係る無効理由をいずれも解消しており,本件再訂正発明1と同 様に無効理由を有しない。
また,イ号物件及びロ号物件は,本件再訂正発明2の技術的範囲に属する。
〔被告の主張〕 本件再訂正発明1が無効理由を解消するものではないから,本件再訂正発明 2は無効理由を有しないとはいえない。
また,イ号物件及びロ号物件は,本件再訂正発明2の技術的範囲に属さない。
したがって,原告の訂正の対抗主張は理由がない。
16 争点(3)ウ(本件発明3につき本件再訂正による対抗主張の成否)について〔原告の主張〕 本件再訂正発明3は,本件再訂正発明1の従属項である。本件再訂正発明1 が本件発明1に係る無効理由をいずれも解消しており,本件再訂正発明1と同 様に無効理由を有しない。
また,イ号物件及びロ号物件は,本件再訂正発明3の技術的範囲に属する。
〔被告の主張〕 本件再訂正発明1が無効理由を解消するものではないから,本件再訂正発明 3は無効理由を有しないとはいえない。
また,イ号物件及びロ号物件は,本件再訂正発明3の技術的範囲に属さない。
したがって,原告の訂正の対抗主張は理由がない。
17 争点(4)(損害発生の有無及びその額)について〔原告の主張〕 (1) 消極損害 被告によるイ号物件の販売額は1億1000万円を,ロ号物件の販売額は1 億円をそれぞれ下るものではない。
また,イ号物件及びロ号物件の販売に係る利益率は,それぞれ35%を下る ものではない。
したがって,イ号物件及びロ号物件の販売により被告が得た利益は,イ号物 件については3850万円,ロ号物件については3500万円であり,合計7 350万円である。
(2) 積極損害 原告は,被告に対して本件特許権の侵害である旨を告知したが,被告が技術 的範囲に属しない旨回答したため,やむなく本件訴えを提起した。原告は弁護 士・弁理士費用を支出する必要が生じたが,その額は900万円を下るもので はない。
(3) まとめ 以上より,被告の特許権侵害行為によって原告に生じた損害は,8250万 円を下るものではない。
〔被告の主張〕 否認ないし争う。
当裁判所の判断
1 本件各発明の意義 本件明細書等の【発明の詳細な説明】の段落【0001】ないし【001 7】,【0022】,【0038】,【0040】,【0041】,【00 77】,【0079】,【図1】,【図11】によれば,従来,図書保管管 理装置における図書の収容効率及び図書の取り出しや返却作業の効率化につ いて,サイズ別フリーロケーション方式による図書の保管管理手段を採用す ることにより,書庫内における無駄な空間を極力削減して図書の収容効率を 向上させることができ,また,同一寸法の図書であればその寸法の図書を収 容するためのコンテナ内に任意に返却することが可能となるので,書庫と利 用者カウンターとの相互間でコンテナを搬送する搬送機構の稼働回数も必然 的に少なくすることができ,自動化による図書の取り出し及び返却作業の能 率を効果的に向上させることができるものの,書庫内における多量の図書の 収容効率をより一層向上させるとともに,取り出しや返却に要する作業のさ らなる効率向上を図る,という課題があったところ,本件各発明は,図書保 管管理装置において,図書の寸法別に分類された複数の棚領域を有する書庫と, この書庫の各棚領域に収容されるものでそれぞれが収容された棚領域に対応 した寸法を有する複数の図書を収容する複数のコンテナと,この複数のコンテ ナの書庫内における収容位置と各コンテナに収容された複数の図書の各図書 コードとを対応させて記憶する記憶手段と,取り出しが要求された図書の図書 コードを入力することにより記憶手段の記憶内容に基づいて該要求図書が収 容されているコンテナを書庫から取り出してステーションに搬送するととも に,返却が要求された図書の寸法情報を入力することにより該返却図書の寸法 に対応する複数のコンテナの中から空きのあるコンテナを書庫から取り出し てステーションに搬送する搬送手段と,この搬送手段によりステーションに搬 送されて要求図書が取り出されたコンテナまたは返却図書が返却されたコン テナに対して記憶手段の記憶内容を更新する更新手段とを備え,書庫の複数の 棚領域には搬送手段によってコンテナを取り出す間口に対して奥行き方向に 複数のコンテナが収容され,搬送手段にはコンテナを取り出す間口に対して手 前側のコンテナを取り出してから奥側のコンテナを取り出す移載手段が備え られる,との構成を採用することにより,サイズ別フリーロケーション方式を 採用した図書保管管理手段において,さらに,その書庫のコンテナを出し入れ するための間口に対して奥行き方向に,複数のコンテナを収容させることにし て,書庫内における図書の収容効率をより一層向上させるとともに,優先的に 手前側のコンテナを使用する管理手段を用いることにより,図書の取り出し及 び返却作業の能率を効果的に向上させる,との作用効果を奏する発明であると 認められる。
2 争点(1)ウ(構成要件1Fの充足性)について 事案に鑑み,まず,構成要件1Fの充足性について判断する。
(1) 本件明細書等には,次の記載がある。
・「この場合,各コンテナの書庫内における収容位置は固定され,各コンテ ナの番号と収容されている図書のコードとが対応付けられて記憶されてい る。そして,この記憶内容に基づいて必要なコンテナが利用者カウンター に取り出されるとともに,利用者カウンターで図書の取り出しや返却が行 なわれたコンテナが書庫に戻される際に,コンテナとそのコンテナに収容 されている図書とを対応付けた記憶内容が更新されるようになっている。」 (段落【0010】) ・「このようなサイズ別フリーロケーション方式による図書の保管管理手段 を採用することにより,書庫内における無駄な空間を極力削減し図書の収 容効率を向上させることができる。また,同一寸法の図書ならば,その寸 法の図書を収容するためのコンテナ内に任意に返却することが可能となる ので,書庫と利用者カウンターとの相互間でコンテナを搬送する搬送機構 の稼働回数も必然的に少なくすることができ,自動化による図書の取り出 し及び返却作業の能率を効果的に向上させることができる。」(段落【0 011】) ・「…図書館員がコンソール54を操作して返却完了の指示を中央処理装置 39に入力すると,中央処理装置39は,既に読み取られている返却図書 30のバーコードから得られたその図書固有の図書コードと,コンテナ排 出部20bに保持されているコンテナ12固有のコンテナ番号とを組み 合わせ,その組み合わせたデータを在庫ファイルとして例えば前記ハード ディスク47等に登録する。」(段落【0051】) ・「…図書館員がコンソール54を操作して取り出し完了の指示を中央処理 装置39に入力すると,中央処理装置39は,取り出した図書30のバー コードから得られたその図書固有の図書コードに基づいて,在庫ファイル の内容を更新する。」(段落【0058】) (2) 「前記要求図書が取り出されたコンテナまたは前記返却図書が返却された コンテナに対して」の意義について ア 「または」の意義について,原告は,本件発明1の構成要件1Fは, 「前記要求図書が取り出されたコンテナ」と「前記返却図書が返却された コンテナ」のいずれかについて記憶手段の記憶内容を更新するものであれ ば,構成要件1Fを充足すると解される旨主張するので,以下検討する。
構成要件1Fは,「この搬送手段により前記ステーションに搬送され て,前記要求図書が取り出されたコンテナまたは前記返却図書が返却さ れたコンテナに対して,前記記憶手段の記憶内容を更新する更新手段と を具備し,」と記載されているところ,構成要件1Dに「取り出しが要 求された図書の図書コードを入力することにより,前記記憶手段の記憶 内容に基づいて,該要求図書が収容されているコンテナを前記書庫から 取り出してステーションに搬送する」と,また,構成要件1Eに「返却 が要求された図書の寸法情報を入力することにより,該返却図書の寸法 に対応する複数の前記コンテナの中から空きのあるコンテナを前記書 庫から取り出して前記ステーションに搬送する」とそれぞれ記載されて おり,図書取り出しの場合と図書返却の場合とに分けて,それぞれを構 成要件1Dと1Eにおいて,個別にかつ並列的に規定されているとみる ことができる。
ウ また,前記の本件明細書等の段落【0010】には,「図書の取り出 しや返却が行われた」と,図書取り出しの場合と図書返却の場合とが並 記されており,そのような「図書の取り出しや返却が行われた」「コン テナ」について,記憶内容が更新されると記載されているから,本件発 明1は,図書取り出し時と図書返却時の双方において記憶内容が更新さ れる構成を前提とするものと理解することが相当である。
エ 加えて,仮に,「複数のコンテナの前記書庫内における収容位置と, 各コンテナに収容された複数の図書の図書コードとを対応さ せて記憶 する記憶手段の」記憶内容につき,要求図書が取り出されたコンテナに 対しては更新するが,返却図書が返却されたコンテナに対しては更新し ない構成とするとき,返却された図書がどのコンテナに返却されたのか 分からなくなって,当該図書の貸し出し要求があったときにそれを取り 出すことができなくなり,図書の貸し出し作業におけるより一層の能率 向上という作用効果を奏することができなくなるから,上記記憶手段を 備える実益を完全に損なうことになる。
オ そうすると,構成要件1Fの「または」の文言は,貸出しと返却とい う同時に発 生し得ない事象を並列的に 接続する趣旨で用いられている ものと解され,構成要件1Fを充足するためには,「前記要求図書が取 り出されたコンテナ」と「前記返却図書が返却されたコンテナ」の両方 に対して,記憶手段の記憶内容を更新するものであることが必要である と解するのが相当である。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(3) 「前記記憶手段の記憶内容」の更新時期について ア 原告は,構成要件1Fにおいて,更新時期がコンテナがステーションに 搬送された前か搬送された後かは問題ではなく,構成要件1Fが「前記要 求図書が取り出されたコンテナまたは前記返却図書が返却されたコンテ ナに対して,前記記憶手段の記憶内容を更新する更新手段」と規定されて いるから,構成要件1Fを充足するためには,「記憶内容の更新の対象と なるコンテナ」と「取り出し/返却の対象となるコンテナ」とが一致する 関係にあれば足りると主張するので,この点について検討する。
イ 本件発明が物の発明であることに鑑みると,構成要件1Fの「…ステ ーションに搬送されて,…要求図書が取り出されたコンテナまたは…返 却されたコンテナに対して…更新する」との文言から,上記更新手段は, ステーションに搬送された状態で,図書が取り出された状態のコンテナ又は図書が返却された状態のコンテナに対して,記憶手段の記憶内容を更新するという構成を示していると解するのが自然である。そして,本件明細書等には,「図書館員がコンソール54を操作して返却完了の指示を中央処理装置39に入力すると,図書コードと,…コンテナ番号とを組み合わせ,その組み合わせたデータを…前記ハードディスク47等に登録する。」(段落【0051】),「…図書館員がコンソール54を操作して取り出し完了の指示を中央処理装置39に入力すると,…更新する。」(段落【0058】)というように上記解釈を裏付ける記載はあるが,その一方で,本件明細書等には,ステーションに搬送されていない状態で,図書の取り出し又は返却の完了していない状態のコンテナに対して更新するものとする更新手段の構成については,記載されて いないし,かかる構成の示唆すらない。
さらに,前記の本件明細書等の記載には,「…図書の取り出しや返却が行われたコンテナが書庫に戻される際に,…記憶内容が更新される」(段落【0010】),「このようなサイズ別フリーロケーション方式による図書の保管管理手段を採用することにより,…同一寸法の図書ならば,その寸法の図書を収容するためのコンテナ内に任意に返却することが可能となるので,…自動化による図書の取り出し及び返却作業の能率を効果的に向上させることができる」(段落【0011】)と記載されており,これらの記載から,本件発明において前提とされるサイズ別フリーロケーション方式は,同一寸法の図書ならばコンテナ内に任意に返却することが可能な構成,すなわち,同一寸法の図書であればその寸法の図書を収容するためのコンテナ内に空きのある限り任意に収 容 することが可能な構成とされているものと理解することができる。そして,コンテナ内に空きのある限り図書を任意に収容するためには,図書の 取 り出しや返却が行われたコンテナが書庫に戻される際に,更新手段が記 憶内容を更新する,すなわち,図書の取り出しや返却が行われた状態に あるコンテナに対して記憶内容を更新することが必要であり,そのよう な構成が本件発明における サイズ別フリーロケーション方式 の前 提 と なっているものと解される。
ウ したがって,構成要件1Fの「…ステーションに搬送されて,…要求 図書が取り出されたコンテナまたは…返却されたコンテナに 対し て … 更新する更新手段」とは,ステーションに搬送された状態で図書が返却 された状態のコンテナに対して記憶内容を更新する 構成を具備す る 更 新手段をいうものと解するのが相当である。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(4) 以上の(1)ないし(3)を前提にイ号物件及びロ号物件について検討する。
ア イ号物件及びロ号物件の構成 証拠(甲29,乙49ないし51)及び弁論の全趣旨によれば,イ号 物件及びロ号物件について,以下のことが認められる。
(ア) イ号物件及びロ号物件が備えるデータベースには,「コンテナマス タ」と「図書書誌マスタ」がある。
「コンテナマスタ」には,コンテナの番号(これを「コンテナ番号」 という。),前後情報,コンテナサイズ,アサイン方式,空きサイズ (コンテナ内の空きスペースを示す数値)等といった情報がコンテナ 単位で記憶される。
「図書書誌マスタ」には,図書IDごとに,コンテナ番号,前後情 報,保管状態,書名,図書サイズ,厚さ等といった情報が図書単位で 記憶される。
(イ) イ号物件及びロ号物件における図書の取り出し処理の流れは次のと おりである。
まず,取り出したい図書を特定する情報を書庫管理機(サーバー機) に入力すると,当該書庫管理機(サーバー機)は,当該図書が収容さ れたコンテナ番号を特定し,さらに,図書書誌マスタに保存されてい る図書の情報から図書IDに対応する厚さ情報を算出し,コンテナマ スタにおいて,引当した図書の厚さ分を「空きサイズ」に加算する 。
その際に,書庫管理機(サーバー機)が図書書誌マスタにおいてコン テナ番号に関する情報の更新を行うことはなく,図書IDとコンテナ 番号との対応情報は,その図書が返却されるまで更新されな い(また, 追加出庫においても同様に,図書IDとコンテナ番号との対応情報は, その図書が返却されるまで更新されない)。そして,書庫管理機(サ ーバー機)は,取り出したい当該コンテナ番号に係るコンテナが書庫 からステーションに搬送されるように処理を行い,当該コンテナがス テーションに搬送された後,図書館員が当該図書を当該コンテナから 取り出す。
以上のように,図書の取り出し時においては,そもそも図書書誌マ スタに記憶されたコンテナ番号の更新は,一切行われない。
(ウ) イ号物件及びロ号物件における図書入庫の処理の流れは次のとおり である。
図書入庫の機能として,@「自動呼出入庫」,A「コンテナ情報検 索」,B「追加入庫」があり,@「自動呼出入庫」は,自動で入庫コ ンテナを呼び出す機能であり,A「コンテナ情報検索」は,入庫図書 の保管方式にあったコンテナを個別に選択し,入庫登録を行う機能で あり,B「追加入庫」は,コンテナがステーションに搬送された後に 新たに入庫登録を行う機能である。
「自動呼出入庫」においては,図書館員がステーション上で返却対 象の図書の図書IDを読み取らせると,書庫管理機(サーバー機)は, 図書書誌マスタに保存されている当該図書に関する情報を参照して, 図書IDに対応する図書サイズと厚さ情報を算出し,収容するコンテ ナを特定し,当該厚さ情報に基づき,コンテナマスタにおいて,引当 した当該図書の厚さ分を「空きサイズ」から減算して,図書書誌マス タにおいて,当該図書に係るコンテナ番号の情報を更新する。
そして,書庫管理機(サーバー機)は,上記特定されたコンテナが 書庫からステーションに搬送されるように処理し,当該コンテナがス テーションに搬送されると,図書館員が当該コンテナに関連づけられ た図書をコンテナに返却する。
「コンテナ情報検索」においては,図書館員がステーション上でコ ンテナを任意で選択すると,当該コンテナがステーションに搬送され, 図書館員が当 該コン テナに返却対 象の図 書の図書ID を読み 取らせ て,当該図書を当該コンテナに格納する。そして,当該コンテナが書 庫に搬送されるように処理されると,書庫管理機(サーバー機)は, 算出した当該図書の厚さ情報に基づき,コンテナマスタにおいて,引 当した当該図書の厚さ分を「空きサイズ」に加算した上で,図書書誌 マスタにおいて,コンテナ番号の情報を更新する。
「追加入庫」においては,ステーションに搬送済みとなっているコ ンテナに,図書館員が追加で図書を格納するが,「コンテナ情報検索」 と同様に,図書館員が当該コンテナに当該図書の図書IDを読み取ら せた後で,図書書誌マスタに記憶されたコンテナ番号の情報を更新す る。
イ 図書の取り出しについて 前記ア(イ)によると,イ号物件及びロ号物件において,ある図書の図 書IDと当該図書が収容されているコンテナ番号との関連付けに関す る情報は,図書書誌マスタに記憶されているが,図書の取り出しでの一 連の処理のなかで,図書書誌マスタに記憶されたコンテナ番号の情報の 更新は,一切行われないことが認められる。
したがって,イ号物件及びロ号物件は,構成要件1Fの「この搬送手 段により前記ステーションに搬送されて,前記要求図書が取り出された コンテナ…に対して,前記記憶手段の記憶内容を更新する更新手段」を 備えていないものと認められる。
ウ 自動呼出入庫 前記ア(ウ)によると,イ号物件及びロ号物件において,「自動呼出入庫」による図書返却の処理では,収容するコンテナを引き当てた時点で当該情報を更新しており,ステーションに搬送されて図書が取り出されたコンテナに対し,又は返却図書が格納されたコンテナに対して図書書誌マ スタに記憶され たコンテナ番号の情 報を更新することは ないことが認められる。
したがって,「自動呼出入庫」による図書返却の処理は,構成要件1Fの「返却図書が返却されたコンテナに対して,前記記憶手段の記憶内容を更新する」ものではないと認められる。
エ コンテナ情報検索 前記(1)ないし(3)のとおり,構成要件1Fを充足するためには,「前記要求図書が取り出されたコンテナ」と「前記返却図書が返却されたコンテナ」の両方に対して,図書の取り出しや返却が行われたコンテナが書庫に戻される際に,記憶手段の記憶内容を更新するものであることが必要であると解されるところ,前記ア(ウ)によると,イ号物件及びロ号物件において,「コンテナ情報検索」による図書返却の処理では ,図書書誌マスタにおいてコンテナ番号の情報を更新する ものの,前記ア(イ)によると,図書の取り出し時について図書書誌マスタに記憶されたコンテナ番号の情報の更新が行われないことが認められるから,構成要件1 Fの「取出図書が取り出されたコンテナ…に対して,前記記憶手段の記 憶内容を更新する」ものではないと認められる。
オ 追加入庫 前記ア(ウ)によると,イ号物件及びロ号物件において,「追加入庫」 による図書返却の処理では,図書書誌マスタにおいてコンテナ番号の情 報の更新が行われ,図書書誌マスタに記憶されたコンテナ番号の更新は コンテナがステーションに搬送された後に行われることになるものの, 図書の取り出し時について図書書誌マスタに記憶されたコンテナ番号 の情報の更新が行われないことが認められるから,構成要件1Fの「取 出図書が取り出されたコンテナ…に対して,前記記憶手段の記憶内容を 更新する」ものではないと認められる。
(5) 小括 したがって,イ号物件及びロ号物件は,構成要件1Fを充足しない。
3 争点(1)オ(構成要件2B,3Bにおける「充填率が低いコンテナから取 り出(す)」の充足性)について (1) 原告は,イ号物件及びロ号物件がいずれも,図書への返却が要求される と,記憶手段に記憶された空き状況と返却する図書の厚さ情報に基づき, 返却する図書の厚さを上回る長さの空きを有するコンテナを特定して,当 該コンテナを取り出す仕組みを採用しており,図書の寸法に対応する全て のコンテナの中から,空きのないコンテナより空きのあるコンテナを取り 出しているから,構成要件2B,3Bの「前記図書の返却が要求された状 態で,前記記憶手段の記憶内容に基づいて,返却図書の寸法に対応する複 数の前記コンテナの中で,図書充填率の低いコンテナから取り出(す)」 に該当すると主張する。
(2) 構成要件2B,3Bは,「図書充填率の低いコンテナから取り出す」と いうものであるから,その文言によれば,図書充填率が低い順に優先して コンテナが自動的に選択されるのであって,コンテナが任意に選択される ものではないと解するのが相当である。
(3) 自動呼出入庫について そこでイ号物件及びロ号物件についてみると,証拠(甲27,29,乙 13,68ないし71)及び弁論の全趣旨によれば,イ号物件には「イ号 プログラム」(乙68)が,ロ号物件には「ロ号プログラム」(乙69) が搭載されており,自動呼出入庫の図書返却機能による場合,それらのプ ログラムに従い,返却される図書の図書IDをICタグないしバーコード リーダで読み取ることで,図書書誌マスタから図書IDに対応する厚さ情 報を取得し,その取得された返却図書の厚さに,余裕を持たせるために設 定したマージン分となる所定の厚さを加算した厚さ分を算出し,その厚さ 分の空きサイズがあるコンテナを抽出し,その中から空きサイズが最も小 さいコンテナを選択して,これを取り出すという構成を採用していること が認められる。
そうすると,イ号物件及びロ号物件はいずれも,自動呼出入庫による図 書返却において,算出した厚さ分の空きサイズがあるコンテナの中から充 填率が最も高いコンテナを選択して取り出すものであるから,構成要件2 B,3Bの「図書充填率が低いコンテナから取り出す」ものではないと認 められる。
(4) コンテナ情報検索について 証拠(甲27)によれば,イ号物件及びロ号物件では,コンテナ情報検 索の図書返却機能による場合,出納ステーションの端末画面に「%」が一 覧で表示され,図書館員がその「%」表示から任意のコンテナを選択して, 手動による入力で コンテナ選択操作とコンテナ呼出操作を行うものであ ることが認められる。このように,図書館員が任意にコンテナを選択でき る以上,図書充填率が低い順に優先してコンテナが自動的に選択されると はいえない。
したがって,イ号物件及びロ号物件はいずれも,コンテナ情報検索によ る図書返却においても,構成要件2B,3Bの「図書充填率 の低いコンテ ナから取り出す」ものではないと認められる。
(5) 小括 以上のとおり,イ号物件及びロ号物件は,構成要件2B,3Bを充足し ない。
4 争点(1)カ(構成要件3Bにおける「手前側のコンテナを優先して取り出 (す)」の充足性)について (1) 原告は,イ号物件は「通信フロー設計書(イ)」(乙50)に,ロ号物 件は「通信フロー設計書(ロ)」(乙51)に,コンテナが手前側から引 当するようにするとあることから,図書の返却処理において,奥側と手前 側では手前側のコンテナから優先的に引き当てられ,使用される構成を備 えているから,構成要件3Bの「前記奥行き方向に2個収容 されたコンテ ナのうち,手前側のコンテナを前記空きのあるコンテナとして優先的に使 用する」に該当すると主張する。
(2) しかし,証拠(乙68ないし71)によれば,イ号物件には「イ号プロ グラム」(乙68)が,ロ号物件には「ロ号プログラム」(乙69)が搭 載されており,それらのプログラムに採用されている,取り出すコンテナ を選択する管理方法は,@まず,返却図書の厚さに,余裕をもたせたマー ジン分の所定の厚さを加算し,算出した厚さ分以上の空きサイズを有する コンテナをコンテナ全体から抽出し,それらのコンテナを空きサイズが小 さい順に並べ替え,A次に,空きサイズが同一のものについては,ステー ションから近いスタッカークレーンの順に,連番号の小さい順(昇順), 段番号の小さい順(昇順),列番号の小さい順(昇順)に並び替え,さら に,手前と奥とでは,大きい順(降順)に並べ替える,というものである ことが認められる。
そうすると,イ号物件及びロ号物件は,手前側と奥側のコンテナの関係では, 奥側のコンテナを優先して取り出すとする管理方法が採用されていることが 認められる。
(3) これに対して原告は,「通信フロー設計書(イ)」(乙50)及び「通信フ ロー設計書(ロ)」(乙51)に原告の上記主張に沿う内容の記載があり,イ 号物件及びロ号物件の構成はそれらの証拠によって認定されるべきであると 主張する。
この点確かに,上記の各通信フロー設計書には,「⇒コンテナは,手前側か ら引当するようにする。」と記載されており,原告の上記主張に沿う記載があ る。しかし,証拠(乙50,51,70,72)によれば,上記の各通信フロ ー設計書は,飽くまで設計段階で作成されたものであって,原告の主張に沿う 上記記載も当初の設計案がそのまま記載されたものであって,実装段階のプロ グラムの記載内容そのものが示されたものではなく,また,上記の各通信フロ ー設計書の記載は,図書の返却処理における,コンテナの引当や返却図書の当 該コンテナへの格納,当該コンテナの搬送,図書書誌マスタの更新のタイミン グ等からなる一連の流れについて,大まかにかつ簡潔にまとめた記載にすぎず, 前記の各プログラムの記載内容のようにイ号物件及びロ号物件を実際に稼働 させるのに必要なプログラムに関する全ての要素が過不足なく記載されたも のではないことが認められる。
他方,証拠(乙68ないし79)によれば,前記の各プログラムは,そのプ ログラム開発担当者が,イ号物件及びロ号物件より先に納入した東京医科歯科 大学内の開架図書(自動出納書庫)のプログラムを基に,必要な箇所を改修し て作成したものであり,手前側と奥側のコンテナの関係で奥側のコンテナを優 先して取り出すとする管理方法については,実際の運用上問題がなかったこと から,上記プログラムを変更することなくそのまま前記の各プログラムに引き 継いだこと,実際,当該管理方法に関するプログラムの記載部分はイ号物件及びロ号物件が納入された時点からその内容に変更(更新)が行われていないことが認められ,同認定を覆すに足りる的確な証拠はない。
そうすると,イ号物件及びロ号物件に具備されたコンテナ選択に関する管理方法の内容は,前記の各プログラムの記載内容によって認定するのが相当である。
この点に関して原告は,被告が自ら,前記の各プログラムではなく上記の各通信フロー設計書を先に提出して,これを基にイ号物件及びロ号物件の構成について主張立証していたのであるから,イ号物件及びロ号物件に具備されたコンテナ選択に関する管理方法の内容は,前記の各プログラムではなく上記の各通信フロー設計書によって認定されるべきであると主張する。
確かに,被告は,当初,前記の各プログラムを直ちに提出することなく,イ号物件及びロ号物件の構造及び動作方法を示す資料として,先に上記の各通信フロー設計書を提出し,同設計書の記載内容を前提として自ら非充足の主張を展開していたにもかかわらず,その後,その内容を後に提出した前記の各プログラムをもって訂正する結果となっており,その立証態度は,具体的態様の明示義務を規定する特許法104条の2の趣旨に照らして遺憾というほかないが,そうであるからといって上記認定判断を左右するに足りるということはできない。
したがって,イ号物件及びロ号物件に実装されている前記の各プログラム(乙68.乙69)の記載によれば,手前側と奥側のコンテナの関係では,奥側のコンテナを優先して取り出すとする方法が採用されていることが明らかであり,同各プログラムにつき,事後の改変その他の理由により同各プログラムがイ号物件及びロ号物件に実装されていないことを疑わせる特段の事情もない以上,上記の各通信フロー設計書の上記記載をもって,イ号物件及びロ号物件に上記記載に沿ったコンテナ選択の論理構成が実装されていると認める ことはできないといわざるを得ない。
よって,原告の上記主張は採用することができない。
(4) 以上のとおりであるから,イ号物件及びロ号物件は,構成要件3Bの「前記 奥行き方向に2個収容されたコンテナのうち,手前側のコンテナを前記空き のあるコンテナとして優先的に使用する」ものではないと認められるから, この点においても,イ号物件及びロ号物件は構成要件3Bを充足しない。
5 争点(2)ア(ア)(本件訂正発明1につき乙12公報を主引例とする進歩性欠 如)について 後記6(2)ないし(10)のとおり本件再訂正発明1は進歩性を欠くと認めら れ,そうすると,本件再訂正による特許請求の範囲減縮をする前の発明であ る本件訂正発明1も進歩性を欠くと認められる(さらにいえば,本件訂正によ る特許請求の範囲減縮をする前の発明である本件発明1も進歩性を欠くと 認められる。)。
6 争点(3)ア(本件発明1につき本件再訂正による対抗主張の成否)につい て 事案に鑑み,以下,争点(3)アについて判断する。
(1) 訂正による対抗主張の要件について 訂正による対抗主張が成立するためには,訂正審判あるいは訂正請求が行 われること,当該訂正が訂正要件を充たしていること,当該訂正によって被 告が主張している無効理由が解消されること,及び被告の製品若しくは方法 が訂正後の特許発明技術的範囲に属することを要すると解すべきである。
以下,上記要件の充足の有無につき,順次検討する。
(2) 本件再訂正によって特許の無効理由が解消されるかについて 証拠(乙12,乙11の3,乙16)によれば,乙12公報,乙11の 3文献,乙16公報に,次の記載があることが認められる。
ア 乙12公報 ・「【産業上の利用分野】この発明は,例えば大型図書館等において多量 の図書の貸し出し及び返却の管理を容易に行なえるようにした図書入 出庫管理装置に関する。」(段落【0001】)・「そこで,従来では,例えば特公昭61-4723号公報に示されるよ うに,図書を1冊単位で規格化された大きさのケースに収容し,このケ ースを複数個コンテナに収容してコンテナ単位で自動入出庫させること が考えられている。このように,図書を1冊単位毎に自動でコンテナか ら取り出しあるいは返却する際にケースに入れることにより,ハンドリ ングやロケーションの管理が容易になり,個別にて搬送する際にも図書 を保護することができる。この場合,各ケースには,バーコードが付さ れており,どのケースがどのコンテナに収容されているかが全て記憶さ れている。」(段落【0003】)・「そして,図書の取り出しが要求されると,その図書の入ったケースを 収容するコンテナが書庫から自動出庫され,さらにそのコンテナから所 望の図書の入ったケースが自動出庫される。すると,図書館員は,自動 出庫されたケースから図書を取り出して利用者に渡し,ここに図書の貸 し出しが行なわれる。」(段落【0004】)・「また,図書が返却された場合,図書館員は,返却された図書を元のケ ースに収容し,そのケースを任意の空きのあるコンテナに自動入庫させ る。すると,コンテナの入庫時に,そのコンテナに収容された全てのケ ースのバーコードが読み取られ,ケースの位置(ロケーション)を示す 記憶内容が更新されて,ここに図書の返却が行なわれる。」(段落【0 005】)・「しかしながら,上記のような従来の入出庫管理システムでは,図書と ケースとが1対1に対応しているので,図書が返却される毎に大量の空 きケースの中からその図書を収容すべきケースを探さなければならず, 作業が非能率的になるという問題が生じている。すなわち,図書の貸し 出しには,館内貸し出し(当日貸し出し当日返却)と館外貸し出し(当 日貸し出し後日返却)とがあり,貸し出し件数が多いと空ケースも相当 数になる。このため,ケースと図書とが常に固定した対応関係にあると, 図書が返却された場合その相当数のケースの中から返却された図書に対 応するケースを探し出さなければならず作業の効率が悪くなるとともに, 多量の空ケースを常時カウンター付近に保管する必要も生じる。」(段 落【0006】)・「【発明が解決しようとする課題】以上のように,従来の入出庫管理シ ステムでは,図書とケースとの対応関係を保持する必要があり,そのた めにせっかく自動化を図りながらも,その利点を十分に活かしきれない という問題を有している。」(段落【0008】)・「そこで,この発明は上記事情を考慮してなされたもので,図書とケー スとの対応関係を固定的なものとせずに,返却された図書を任意のケー スに収容して書庫に入庫することができ,貸し出し及び返却時の作業を 容易化することができる極めて良好な図書入出庫管理装置を提供するこ とを目的とする。」(段落【0009】)・ 【課題を解決するための手段】 「 この発明に係る図書入出庫管理装置は, 識別情報の付された図書と,この図書を収容する識別情報の付された自 動搬送用のケースと,このケースを複数収容し得る書庫と,この書庫に 収容された図書に対する収容位置情報を含む図書情報を,図書に付され た識別情報と該図書が収容されるケースに付された識別情報とを組み合 わせた情報とともに記憶する記憶手段と,この記憶手段の記憶内容に基 づいて書庫から出庫すべき図書の収容されたケースを自動的に取り出し て出庫する自動搬出手段と,書庫に入庫すべき図書に付された識別情報 と該図書を収容し得る任意のケースに付された識別情報とを読み取って, 該図書に対する新たな図書情報を生成する生成手段と,この生成手段で 生成された図書情報に基づいて書庫に入庫すべき図書の収容されたケー スを自動的に書庫に入庫する自動搬入手段とを備えるようにしたもので ある。」(段落【0010】)・「【実施例】・・・図1は,この実施例で説明する図書入出庫管理シス テムの全体的な構成を示している。すなわち,図中11は例えば図書館 の3階の書庫内に設置された書棚で,複数のコンテナ12,12,…… が収容されている。これらコンテナ12,12,……には,それぞれ複 数個のケース13,13,……が収容されている。各ケース13,13, ……には,それぞれ1冊の図書が収容される。また,各ケース13,1 3,……は,規格化された一定の大きさのものが基準となっており,こ の基準の大きさに対して収納する図書の厚みによって幾種類かの厚みを 有するものが用意されている。」(段落【0012】)・「ここで,上記書棚11の前面には,レール14に案内されて走行する スタッカークレーン15が設置されている。このスタッカークレーン1 5は,図書の出庫時に,書棚11からコンテナ12を取り出して出庫用 ラックステーション16に移送するとともに,出庫用ラックステーショ ン16に置かれたコンテナ12を,書棚11の元の位置に移送して入庫 する動作を行なうものである。また,スタッカークレーン15は,図書 の入庫時に,書棚11からコンテナ12を取り出して入庫用ラックステ ーション17に移送するとともに,入庫用ラックステーション17に置 かれたコンテナ12を,書棚11の元の位置に移送して入庫する動作と を行なうものである。」(段落【0013】)・「これら出庫用及び入庫用ラックステーション16,17に沿って,エ ンドレスの搬送レール18が設置されている。この搬送レール18上に は,複数のピッキング装置19,19,……が走行自在に支持されてい る。これらピッキング装置19,19,……は,出庫用ラックステーシ ョン16に設置されたコンテナ12から所望のケース13を取り出し, 搬送レール18上を移動して2階向搬出口20及び1階向搬出口21の いずれかに移送する動作と,2階向搬入口22及び1階向搬入口23の いずれかに搬送されたケース13を,入庫用ラックステーション17に 置かれたコンテナ12の空きスペースに収容する動作とを行なうもので ある。」(段落【0014】)・「・・・カウンターステーション30では,図書館員によってケース1 3から図書が取り出されて利用者への貸し出しに供され,1階ステーシ ョン31では,図書館員によってケース13から図書が取り出され利用 者に渡されて閲覧に供される。この場合,空ケース13は,カウンター ステーション30及び1階ステーション31にそれぞれ保管される。」 (段落【0016】)・「また,返却された図書及び閲覧後の図書は,カウンターステーション 30及び1階ステーション31で図書館員によってケース13に収容さ れ,搬送コンベア29を介してケース搬出口32に移送された後,図示 しない垂直搬送機を介して3階の1階向搬入口23に移送され,出庫と 逆の過程によって書棚11へ返却される。」(段落【0017】)・「図2は,上記出庫用ラックステーション16に運ばれたコンテナ12 からピッキング装置19にケース13を取り出す状態を示している。す なわち,コンテナ12は,その図中前面及び上面の開放された略箱状に 形成されており,それぞれ図書33を収容した複数のケース13,13, ……が縦置きに配列されて収容されている。ここで,各ケース13,1 3,……は,図3に示すように,図中上面の開放された略箱状に形成さ れており,図書33を完全に覆うように形成されている。そして,各ケ ース13,13,……及び各図書33には,それぞれバーコード34, 35が付されている。・・・」(段落【0018】)・「また,上記中央処理装置39には,バスライン40を介して,シリア ルインターフェースアダプタ50を経て統括制御盤51と定置式検出器 52とが接続されている。この統括制御盤51は,詳細は後述するが, 前記スタッカークレーン15,ピッキング装置19,垂直搬送機及び搬 送コンベア25,29等の動作を統括的に制御するもので,ケース13 の位置を検出する定置式検出器52の検出結果に基づいて制御動作を行 なうものである。」(段落【0021】)・「上記のような構成となされた図書入出庫管理システムにおいて,以下, その動作を説明する。まず,図6は,図書33の貸し出し動作を説明す るためのフローチャートである。すなわち,図書33の貸し出し動作は, 利用者が貸し出しを要求する図書33を,カウンターステーション30 の図書館員に伝えることから開始(ステップS1)される。すると,カ ウンターステーション30の図書館員は,ステップS2で,コンソール 54を操作して要求された図書33のコードを入力する。」(段落【0 026】)・「要求図書33のコードが入力されると,中央処理装置39は,ステッ プS3で,ハードディスク47に記憶された図書情報から要求図書33 が書棚11に在庫しているか否か,つまり現在貸し出し中であるか否か を判別し,判別結果をディスプレイ55に表示する。そして,要求図書 33が書棚11に在庫していない(NO)旨の表示がディスプレイ55 になされると,図書館員は,ステップS4で,利用者に要求図書33が 在庫していないことを説明して終了(ステップS16)される。」(段 落【0027】)・「また,要求図書33が書棚11に在庫している(YES)場合には, 中央処理装置39は,ステップS5で,統括制御盤51に要求図書33 を書棚11から取り出すための搬出指令を発生する。すると,統括制御 盤51の制御によって,詳細な動作は後述するが,各スタッカークレー ン15,ピッキング装置19,垂直搬送機65及び搬送コンベア25, 29等が動作され,ステップS6で,要求図書33がケース13に収容 された状態で書棚11からカウンターステーション30まで搬出されて, カウンターステーション30内に設定された搬入口から図書館員の手元 に運ばれる。」(段落【0028】)・「そして,カウンターステーション30の図書館員は,ステップS7で, バーコードリーダ56により搬出されてきたケース13に付されたバー コード34を読み取る。すると,中央処理装置39は,ステップS8で, 読み取られたバーコード34が要求図書33のコードに対応しているか 否かを判別する。・・・」(段落【0029】)・「また,読み取られたケース13のバーコード34が要求図書33のコ ードに対応していれば(YES),図書館員は,ステップS11で,バ ーコードリーダ56により利用者の持つ利用者カードに付されたバーコ ードを読み取った後,ステップS12で,ケース13から図書33を取 り出しバーコードリーダ56によりその図書33に付されたバーコード 35を読み取る。すると,中央処理装置39は,ステップS13で,例 えばハードディスク47内に設定された図書貸し出しリスト記憶領域に, 利用者カードのバーコードデータと貸し出す図書33のバーコード35 データとを登録するとともに,その図書33に対してハードディスク4 7内に記憶されているロケーションやケース13と図書33との対応コ ード等の図書情報を削除する。」(段落【0030】)・「その後,図書館員は,ステップS14で,図書33と利用者カードと を利用者に渡し,ステップS15で空ケース13を所定場所に保管して, ここに,貸し出し動作が終了(ステップS16)される。」(段落【0 031】)・「次に,図7は,図書33の返却動作を説明するためのフローチャート である。すなわち,図書33の返却動作は,利用者が返却する図書33 と利用者カードとをカウンターステーション30に持ってくることから 開始(ステップS17)される。すると,カウンターステーション30 の図書館員は,ステップS18で,利用者の持ってきた図書33と利用 者カードとを受け取り,ステップS19で,コンソール54を操作して その図書33のコードを入力する。このコード入力がなされると,中央 処理装置39は,ハードディスク47内に設定された図書貸し出しリス ト記憶領域から,その図書33の貸し出し登録を削除する。 (段落 」 【0 032】)・「そして,図書館員は,ステップS20で利用者カードを利用者に返却 した後,ステップS21で,ケース保管場所から返却された図書33を 収容するのに相応しい任意のケース13を選んで取り出し,バーコード リーダ56によりそのケース13に付されたバーコード34と図書33 に付されたバーコード35とを読み取る。すると,中央処理装置39は, ステップS22で,ケース13から読み取ったバーコード34データと 図書33から読み取ったバーコード35データとを組み合わせて,ハー ドディスク47に格納登録する。」(段落【0033】)・「次に,図書館員は,ステップS23で,図書33をケース13に収容 しカウンターステーション30内に設定された搬出口にセットした後, ステップS24で,そのケース13の書棚11内における格納ロケーシ ョンを設定しハードディスク47に登録する。すると,中央処理装置3 9は,ステップS25で,統括制御盤51にケース13を書棚11に返 却するための格納指令を発生する。そして,統括制御盤51の制御によ って,詳細な動作は後述するが,各スタッカークレーン15,ピッキン グ装置19,垂直搬送機65及び搬送コンベア25,29等が動作され て,ステップS26で,図書33がケース13に収容された状態で所定 のコンテナ12に入れられ書棚11に入庫され,ここに,返却動作が終 了(ステップS27)される。」(段落【0034】)・「次に,図10は,上記実施例の入出庫管理システムに付加して好適す る,コンテナ12単位の入出庫管理システムを示している。すなわち, 書棚74からスタッカークレーン75によって出庫されたコンテナ12 は,出庫用ラックステーション76,搬送コンベア77,コンテナ搬出 口78及び図示しない垂直搬送機を介した後,2階向コンテナ搬入口7 9及び搬送コンベア80を介して2階ステーション26に搬送されると ともに,1階向コンテナ搬入口81及び搬送コンベア82を介してカウ ンターステーション30または1階ステーション31に搬送される。」 (段落【0042】)・「また,カウンターステーション30または1階ステーション31のコ ンテナ12は,搬送コンベア83を介して1階向コンテナ搬出口84に 搬送され,2階ステーション26のコンテナ12は,搬送コンベア85 を介して2階向コンテナ搬出口86に搬送される。そして,1階向コン テナ搬出口84または2階向コンテナ搬出口86に搬送されたコンテナ 12は,図示しない垂直搬送機を介して3階のコンテナ搬入口87に移 送され,搬送コンベア88を介して入庫用ラックステーション89に移 送された後,スタッカークレーン75により書棚74に入庫される。」 (段落【0043】)イ 乙11の3文献 乙11の3文献には,「プロジェクト仕様書 カリフォルニア州立大学 オビアット図書館第II期」(訳文1頁)との表題とともに,「図書館設 備-自動保管取り出しシステム(ASRS)」(訳文4頁2行)の見出し に続いて,次の事項が記載されている。
(ア) 「パート1一般」(訳文4頁3行)の章のうち「1.01業務の内容」 (訳文4頁5行)の項目中には,下記の記載がある。
記「A.含まれる業務機器供給者は,1.6基のミニロードスタッカクレーン。スタッカクレーンは,…容器挿入/引き出し機構を備えなければならない。…2.棚の構造は,全部で13,260個の容器の収容位置を含む6通路分から構成される。…5.仕切り,容器アドレス,及びセクターラベルを含む容器。…7.6つのAS/RS通路端ワークステーション。…9.コンピュータシステム,コントローラ,周辺機器,及びソフトウエアを含む,在庫チェック(インベントリ)コントロール,コンベアコントロール,及び図書館コンピュータシステムとのインターフェースを供給するためのASRSコントローラ。…からなる,自動保管取り出しシステム(AS/RS)を設計,製作,据付するための,全ての必要なエンジニアリングサービス,労務,材料及び機器を供給しなければならない。」(訳文4頁8行〜5頁17行),「C.本章の用語の定義1.本仕様書で文字「LCS」が用いられる場合は常に,LCSは「図書館コンピュータシステム」を意味すると理解されなければならない。
2.本仕様書で文字「ASRS」が用いられる場合は常に,ASRSは「自動保管取り出しシステム」を意味すると理解されなければならない。
3.本仕様書で文字「EAWS」が用いられる場合は常に,EAWSは「通路端ワークステーション」を意味すると理解されなければならない。」(訳文6頁9〜18行) (イ) 「パート2 製品…」(訳文8頁12行)の章のうち「2.02 AS RSシステムの一般的記載」(訳文11頁1行)の項目中には,下記の記 載がある。
記 「A.AS/RSシステムのパラメータ… 6.標準システム構成… c.段の数:34段 段の高さ:容器の深さ+次の容器の底面まで最大 1.0インチ 7.24インチ×48インチの容器(内側寸法)の底面図を用いる。容 器の要求数の分配は下記のようになる。
容器サイズ 要求個数 24インチ幅×48インチ長× 6.0インチ深さ 390 24インチ幅×48インチ長×10.0インチ深さ 7020 24インチ幅×48インチ長×12.0インチ深さ 5070 24インチ幅×48インチ長×15.0インチ深さ 390 24インチ幅×48インチ長×18.0インチ深さ 390 前容器数 13260… 10.システムに保管される標準的なマテリアル:本,雑誌,印刷物… といった図書館マテリアル… 12.保管されるパートの数 形式 全個数 個数/容器 容器の高さ 1.本と雑誌 950,000 96 10インチ 64 12インチ 64 15インチ 3.児童向図書 8,115 140 12及び 15インチ 4.テキスト 17,095 60 12インチ…」(訳文11頁2行〜12頁21行),「B.マテリアルフロー…1.…AS/RSアイテムの要求が,図書館コンピュータシステム(LCS)になされたとき,オーダー要求入力手順が,6つのAS/RSワークステーションの1つで開始される。
2.ワークステーションのオペレータは,要求されたアイテムを,自動的に取り出された容器から取り出し,もし,要求されたアイテムがランダムに保管される場合には,ASRSへ返却するアイテムをインプットする。…3.要求が入力されたときには,…アイテムのバーコードナンバー…といった情報を含んだスリップが作られる。このスリップに印刷された情報を用いて,オペレータはETV配送車上のコンテナの中に,取り出されたアイテムを入れ,この配送車を図書館内の様々な届け先へ送り出す。
4.通常の要求と返却オペレーションに加えて,LCSとASRSとの間のアイテムの移送が可能である。…5.ASRSアイテムがサーキュレイションエリアで図書館へ返却されるとき,それらのアイテムは,AS/RSワークステーションへ返却するため,サイズのカテゴリーごとに(例えば,ランダム保管アイテム)…,手動で棚載用台車に事前に格納される。次に,アイテムは,要求が入力されたとき,…AS/RS保管容器に返却される。」(訳文13頁4行〜14頁8行)「C.AS/RSアイテムの識別…ASRSに保管される全てのアイテムは,各種レベルにおける識別手段として,下記を用いる。…b.バーコードナンバー バーコードナンバーは,下記のように,14桁の番号のキーフィールドである。
3 0700 1014742 0…1.このバーコードナンバーは,個々のアイテムを一意的に識別するため,LCSシステムによっても,ASRSシステムによっても両方に用いられる。このバーコードナンバーのラベルは,アイテムの内側カバー上に位置する。……c.サイズ/通路コード サイズコード,または通路コードが,各々のアイテムの上端にマークされる。ランダム保管アイテムは,サイズコード(例えば,A,B,またはC)を有し,一方不変ロケーションアイテムは,通路コード…を有する。
サイズ/通路コードは,保管のためAS/RSへ返却する前に,図書館マテリアルを手動で事前仕分けするために用いられる。
d.バーコードの最後の2桁 サイズコード,または通路コードに加えて,アイテムバーコードの最後の2桁が,各々のアイテムの上端にマークされる。これらの2桁は,ASRSオペレータが,マテリアルを容器から出すオーダーをするのを容易にするために提供される。」(訳文14頁下3行〜17頁6行),「D.フルの容器とフルのセクターの定義…2.最も低いレベルの保管の階層は,セクターである。次に高い保管の階層は,容器である。例えば,複数のセクターが容器を構成する。
3.セクターは「フル」,「フルでない」,または「空」の3つの状態 のうち,1つの状態をとることができる。
4.オペレータが,例えば,キーボードを打って,セクターがフルであると宣言したときは,ASRSは,このセクターが「フル」であると判断する。ランダムロケーション保管においては,オペレータによってセクターがフルであると宣言されるまで,ASRSは,返却アイテムを,「フルではない」状態のセクターへ割り当てるようにする。…7.容器の全てのセクターがフルであるとき,ASRSは,容器が「フル」であると判断する。この定義によれば,「部分的にフル」の容器は,少なくとも1つの「フルでない」または「空」のセクターを有し,「空」の容器は,容器のセクターが全て空になっている。
8.ランダムロケーション保管においては,ASRSによって,以下の優先規則が用いられる。
a.「フルでない」セクターは,「空」のセクターよりも高い優先順位を有する。
b.同じ容器の中の全ての「フルでない」セクターは,同等の優先順位を有する。
c.「部分的にフル」の容器は,「空」の容器よりも,高い優先順位を有する。
d.「空」のセクターの数が少ない「部分的にフル」の容器は,「空」のセクターの数が多い「部分的にフル」の容器よりも,高い優先順位を有する。
e.「空」のセクターの数が同じである「部分的にフル」の容器は,同等の優先順位を有する。
9.要求されたアイテムがセクターから取り出されたときには,いつでも,要求されたアイテムが取り出される前は,「フル」と宣言されていたとしても,システムは,代わりのランダム保管アイテムを,このセク ターへ入れることを許容する。」(17頁7行〜18頁下8行),(ウ) 前同章の「2.03 ソフトウエアの仕様」(訳文18頁下4行)の項 目中には,下記の記載がある。
記 「A.コントロールシステムの所掌範囲… 2.機能概要線図… 15頁(注:訳文20頁)の線図CSUN-1は,ASRSの機能性の 概要と共にLCSに関して目的とするシステム構成を表す。」(19頁 5〜8行) 「B.ソフトウエア… 1.本章では,AS/RSコントロールシステム(ASRS)のための 機能仕様を記載する。ASRSは,専用のコンピュータシステムであっ て,…その機能は,6つのAS/RSワークステーションにおけるオペ レーションコントロール:つまり,オーダーの書き込みを要求,アイテ ムの返却,アイテムの移送,在庫チェック,及びセキュリティである。
このシステムは,図書館のコンピュータシステム(LCS)とインター フェイスを取るようになっている。」(訳文22頁下10〜下1行) 「C.要求手順… …1.オンライン公共アクセスカタログ(OLPAC)を用いる利用者 は,貸し出しのため,ASRSにロケーションがあるアイテムを要求す ることができる。全ての要求は,ASRSターミナルターミナルを通し て要求される非LCSアイテムを除いて,LCSを通して生じる。LC Sは,借り手のIDナンバーを入力させて,利用者の要求を確認する。
…確認プロセスが完了すると,アイテム要求のトランザクションが,イ ンターフェイスを介して,ASRSへ送信される。… 2.オーダー入力手順… …a.LCS要求に対するAS/RSの応答 何れかのAS/RSに関して,確認された利用者のアイテム要求トランザクションを,インターフェイスを介して受け取ると,直ちに,AS/RSは,要求されたアイテムを伴う容器の取り出しを自動的に開始する。
…3.要求された容器の配送…a.通路端ワークステーション(EAWS)において,中に入った1以上の要求アイテムを伴って容器が配送される。…4.要求アイテムの選択…a.EAWSオペレータは,アイテムを識別するため,アイテムナンバーの最後の2桁(各アイテムの上端にマークされている)を用いて,アイテムを容器から取り出す。…」(訳文23頁9行〜25頁17行),「D.マテリアル返却手順…1.EAWSにおける返却アイテムのスキャニングa.AS/RSへの返却は,アイテムの光学的スキャニングで開始され,…ランダムに保管されるアイテムは,サイズグループ(例えば,A,B,またはC)によって分類され,…サイズグループは,アイテムナンバーの最後の2桁と共に,アイテムの上端に記載される。
…b.同様なスキャニングによって,インターフェイスを介する,LCSへのアイテム返却トランザクションの送信が開始される。…3.ランダムロケーションの割り当て……a.インターフェイスを介したアイテム返却トランザクションの送信の開始と共に,同じスキャニング(第2.03.D.1章)によって,現在,EAWSにいる容器に対して,正しいサイズグループのランダム に保管されるアイテムを,アイテムがちょうど取り出された容器セクタ ーに自動的に割り当てることを開始する。… …c.オペレータがアイテムを挿入した後,ASRSは,オペレータに その容器をその保管ロケーションへ返却するように促す。… …e.オペレータのオプションとして,容器が配送されたときに,アイ テムを取り出さないで,アイテムをAS/RSへ返却することができる。
この場合には,システムは,第2.02.D章に記載された優先順位を 用いて,収容スペースが利用可能な(フルでない)容器を取り出す。」 (訳文28頁2行〜29頁下1行)。
(エ) また,乙11の3の原文58頁の次頁に,「カリフォルニア州立大学, ノースリッジAS/RS-オビアット図書館の典型的な通路端ワークス テーション」が,図面として記載されている。
ウ 乙16公報 ・「また載荷パレットの搬出を行なう場合は,まず第9図に示すように, 伸縮フォーク3を伸長したのち荷台7と共に上昇移動することにより, 前部棚空間4A内の載荷パレット1Aを伸縮フォーク3に載置して伸縮 フォーク3を短縮し,次いで棚積リフト2に移動して,載荷パレット1 Aを所定の場所に向かって搬送する。次に棚積リフトを再び元の前部棚 空間4Aに対向する位置に戻して,伸縮フォーク3を伸長したのち上昇 または下降移動することにより,伸縮フォーク3の先端部にある保持部 5を載荷パレット1Bの前部にある係合部6に嵌合連結し,次いで第1 0図に示すように,伸縮フォーク3を短縮することにより載荷パレット 1Bを前方に牽引して前部棚空間4Aのパレット支持台8Aに載置し, 次に伸縮フォーク3を上昇または下降移動して,伸縮フォーク3におけ る保持部5を載荷パレット1Bにおける係止部6から外したのち,第1 1図に示すように,伸縮フォーク3を載荷パレット1Bの下方において 伸長し,次いで伸縮フォーク3を荷台7と共に上昇移動して載荷パレッ ト1Bを伸縮フォーク3に載置し,続いて伸縮フォーク3を短縮したの ち棚積リフト2を移動して,載荷パレット1Bを所定の場所に向かって 搬送する。」(第2頁左下欄第7行〜同右下欄第10行) ・「前後2重棚における前部棚空間4Aおよび後部棚空間4Bに対して, 載荷パレット1A,1Bの搬入および搬出を容易に行うことができ,し たがってリフト通路の両側にある多段積層棚の奥行き寸法を倍増させて 荷物の収容量をも倍増させることができるので,倉庫や工場等のスペー スを有効に利用できる効果が得られる。」(第3頁右上欄第5行〜同第 12行)(3) 前記(2)アで認定した乙12公報の記載によれば,乙12公報には以下 の発明が記載されていると認められる。
「書棚11を有する書庫と,書庫内に設置された書棚11に複数の図書3 3をケース13とともに収容する複数のコンテナ12と,この複数のコンテ ナ内の図書33の前記書庫内における格納ロケーションと,各コンテナ12 に収容された複数の図書に付されたバーコード35のデータとをケース13 のデータとともに対応させて記憶するハードディスク47と,貸し出しが要 求された図書33のコードを入力することにより,前記ハードディスク47 の記憶内容に基づいて,該要求図書33がケース13とともに収容されてい るコンテナ12を前記書庫から取り出してステーション(例えば,図10の 26,30,31)にスタッカークレーン75,搬送コンベア77,搬送コ ンベア80,搬送コンベア82により搬送するとともに,返却が要求された 際に複数の前記コンテナの中から所望のコンテナを書庫から取り出してステ ーションに搬送し,返却が要求された図書に付されたバーコード35のデー タとを任意のケース13のデータとともに入力することにより,前記返却図 書がケース13とともに収容されたコンテナを書棚11内における格納ロケ ーションにスタッカークレーン75,搬送コンベア77,搬送コンベア80,搬送コンベア82により搬送する手段と,この搬送する手段により前記ステーションに搬送されて,前記要求図書33に対する格納ロケーションや各コンテナ12に収容されたケースと図書のデータを対応させて記憶していた前記ハードディスクの記憶内容を削除し,または,前記返却図書を収容したケース13の書棚11内における格納ロケーションをハードディスク47へ新たに記憶させることにより,前記ハードディスクの記憶内容を更新する手段とを具備する図書入出庫管理装置。」 なお,原告は,乙12発明が,ケースとコンテナ(格納ロケーション)との対応関係が固定的なものであって,対応関係を更新するものではない旨主張する。しかし,乙12公報を精査しても,ケースとコンテナとの対応関係が固定的である旨の記載はない。むしろ,その段落【0005】には,「図書が返却された場合、図書館員は、返却された図書を元のケースに収容し、そのケースを任意の空きのあるコンテナに自動入庫させる。すると、コンテナの入庫時に、そのコンテナに収容された全てのケースのバーコードが読み取られ、ケースの位置(ロケーション)を示す記憶内容が更新されて、ここに図書の返却が行なわれる。」とあるように,図書の返却時に,コンテナとケースの位置(ロケーション)との対応関係を示す記憶内容を更新して,その対応関係を固定的とはしないものとすることが記載されている。
原告は上記記載について,乙12発明とは別発明である従来技術が記載されているにすぎないと主張する。しかし,乙12発明は,段落【0005】に記載されている従来技術における「図書」と「ケース」との対応関係が固定されていることによる作業の非効率性を解決するために,「図書」と「ケース」の対応関係を固定的とはしないことを特徴とする発明であって,上記従来技術で課題とされていない「ケース」と「コンテナ」の対応関係が固定 的としなかったものをあえて固定的にする発明であると解すべき合理的理由 はないから,原告の上記主張は採用できない。
また,原告が主張するように,「ケース」と「コンテナ」との対応関係が 固定的であるならば,段落【0034】に「ケース13の書棚11内におけ る格納ロケーションを設定しハードディスク47に登録する。」とあるよう に,わざわざ,ケースの書棚内におけるコンテナ(格納ロケーション)を設定 しハードディスクに登録する必要はないと解されるから,この点からも,「ケ ース」と「コンテナ」との対応関係が固定的なものであるとの原告の上記主 張は採用できない。
(4) 対比 上記(3)で認定した乙12発明と本件再訂正発明1とを対比すると,以 下のとおりである。
ア 乙12発明における「格納ロケーション」,「図書に付されたバーコー ド35」,「ハードディスク47」,「貸し出し」及び「図書入出庫管理 装置」は,本件再訂正発明1における「収容位置」,「図書コード」,「記 憶手段」,「取り出し」及び「図書保管管理装置」にそれぞれ相当すると 認められる。
イ 乙12発明における「この複数のコンテナ内の図書33の前記書庫内に おける格納ロケーションと各コンテナ12に収容された複数の図書に付さ れたバーコード35のデータとをケース13のデータとともに対応させて 記憶するハードディスク47」は,「書庫内における収容位置と各コンテ ナに収容された複数の図書の各図書コードとを対応させて記憶する記憶手 段」という限りにおいて,本件再訂正発明1の構成要件1Cにおける「こ の複数のコンテナの前記書庫内における収容位置と,各コンテナに収容さ れた複数の図書の各図書コードとを対応させて記憶する記憶手段」に相当 すると認められる。
ウ 乙12発明における「貸し出しが要求された図書33のコードを入力す ることにより,前記ハードディスク47の記憶内容に基づいて,該要求図 書33がケース13とともに収容されているコンテナ12を前記書庫から 取り出してステーション(例えば,第10図の26,30,31) にスタ ッカークレーン75,搬送コンベア77,搬送コンベア80,搬送コンベ ア82により搬送するとともに,」は,「取り出しが要求された図書の図 書コードを入力することにより,前記記憶手段の記憶内容に基づいて,該 要求図書が収容されているコンテナを前記書庫から取り出してステーショ ンに搬送するとともに,」という限りにおいて,本件再訂正発明1におけ る「取り出しが要求された図書の図書コードを入力することにより,前記 記憶手段の記憶内容に基づいて,該要求図書が収容されているコンテナを 前記書庫から取り出してステーションに搬送するとともに,」に相当する と認められる。
エ 乙12発明における「返却が要求された際に複数の前記コンテナの中か ら所望のコンテナを書庫から取り出してステーションに搬送し,返却が要 求された図書に付されたバーコード35のデータを任意のケース13のデ ータとともに入力することにより,前記返却図書がケース13とともに収 容されたコンテナを書棚11内における格納ロケーションにスタッカーク レーン75,搬送コンベア77,搬送コンベア80,搬送コンベア82に より搬送する手段」は,「返却が要求された際に,返却が要求された図書 の情報を入力することにより,複数の前記コンテナの中からコンテナを前 記書庫から取り出して前記ステーションに搬送する搬送手段」という限り において,本件再訂正発明1における「返却が要求された図書の寸法情報 を入力することにより,該返却図書の寸法に対応する複数の前記コンテナ の中から空きのあるコンテナを前記書庫から取り出して前記ステーション に搬送する搬送手段」に相当すると認められる。
オ また,乙12発明における「この搬送する手段により前記ステーション に搬送されて,前記要求図書33に対する格納ロケーションや各コンテナ 12に収容されたケースと図書のデータを対応させて記憶していた前記ハ ードディスクの記憶内容を削除し,または,前記返却図書を収容したケー ス13の書棚11内における格納ロケーションをハードディスク47へ新 たに記憶させることにより,前記ハードディスクの記憶内容を更新する手 段」については,本件再訂正発明1の記憶内容の更新が,取り出しが要求 された図書(要求図書)又は返却が要求された図書(返却図書)の図書情 報の入力によって行われるものであることを考え併せると,「この搬送手 段により前記ステーションに搬送されて,前記要求図書または返却が要求 された図書の情報を入力することにより,前記要求図書または前記返却図 書に関する前記記憶手段の記憶内容を更新する更新手段」という限りにお いて,本件再訂正発明1における「この搬送手段により前記ステーション に搬送されて,前記要求図書が取り出されたコンテナまたは前記返却図書 が返却されたコンテナに対して,前記記憶手段の記憶内容を更新する更新 手段」に相当すると認められる。
(5) 一致点及び相違点 上記(4)によれば,本件再訂正発明1と乙12発明とは,「複数の棚領域を 有する書庫と,この書庫の各棚領域に収容された複数の図書を収容する複数 のコンテナと,書庫内における収容位置と各コンテナに収容された複数の図 書の各図書コードとを対応させて記憶する記憶手段と,取り出しが要求され た図書の図書コードを入力することにより,前記記憶手段の記憶内容に基づ いて,該要求図書が収容されているコンテナを前記書庫から取り出してステ ーションに搬送するとともに,返却が要求された際に,返却が要求された図 書の情報を入力することにより,複数の前記コンテナの中からコンテナを書 庫から取り出してステーションに搬送する搬送手段と,この搬送手段により, 前記ステーションに搬送されて,前記要求図書または前記返却が要求された図書の情報を入力することにより,前記要求図書または前記返却図書に関する前記記憶手段の記憶内容を更新する更新手段とを具備する図書保管管理装置」である点で一致し,次の4点で相違すると認められる。
ア 書庫の複数の棚領域と複数の図書を収容する複数のコンテナに関して, 本件再訂正発明1においては,「図書の寸法別に分類された幅及び高さが それぞれ異なる複数の棚領域を有する書庫」と「それぞれが収容された棚 領域に対応した寸法を有する複数の図書を収容する複数のコンテナ」とを 採用しているのに対し,乙12発明においては,このような図書の寸法別 に分類された幅及び高さがそれぞれ異なる複数の棚領域や棚領域に対応し た寸法を有する複数の図書を収容する複数のコンテナを用いていない点 (以下「相違点1」という。)。
イ 要求図書の取り出し搬送や返却図書の返却搬送と書庫内における収容位 置と各コンテナに収容された複数の図書の各図書コードとを対応させて記 憶する記憶手段に関して,本件再訂正発明1においては,要求図書の取り 出しに際しては「要求図書が取り出されたコンテナに対する記憶手段の記 憶内容を更新する」とともに,返却図書の返却に際しては「返却が要求さ れた図書の寸法情報を入力することにより,該返却図書の寸法に対応する 複数のコンテナの中から空きのあるコンテナを書庫から取り出してステー ションに搬送し,前記返却図書が収容されたコンテナに対する記憶手段の 記憶内容を更新する」ものであるのに対し,乙12発明においては,この ような図書の寸法情報の入力により返却図書の寸法に対応する複数のコン テナの中から空きのあるコンテナを書庫から取り出す構成と図書の寸法に 対応するコンテナに対する記憶手段の記憶内容を更新する構成とを具備し ていない点(以下「相違点2」という。)。
ウ 本件再訂正発明1においては,「書庫の複数の棚領域には,搬送手段に よってコンテナを取り出す間口に対して,奥行き方向に2個のコンテナが 収容され,前記搬送手段には,前記コンテナを取り出す間口に対して,手 前側のコンテナを取り出してから奥側のコンテナを取り出す移載手段が備 えられている」のに対して,乙12発明においては,書庫の複数の棚領域 から,搬送手段によってコンテナを取り出すものではあるが,奥行き方向 に複数のコンテナを収容し,搬送手段には,コンテナを取り出す間口に対 して手前側のコンテナを取り出してから奥側のコンテナを取り出す移載手 段を備えたものであるかは不明である点(以下「相違点3」という。)。
エ 返却時の空きのあるコンテナ使用の優先規則について,本件再訂正発明 1においては,「前記奥行き方向に2個収容されたコンテナのうち,手前 側のコンテナを前記空きのあるコンテナとして優先的に使用する」のに対 して,甲4発明においては,優先規則が不明である点(以下「相違点4」 という。)。
(6) 相違点1について そこで,相違点1から順に検討する。
ア 被告が周知技術を示すものとして提出する乙22公報,乙26公報,特 開昭59-172306号公報(乙23。以下「乙23公報」という。), 実願昭58-161944号(実開昭60-072405号)のマイクロ フィルム写し(乙27。以下「乙27公報」という。)にはそれぞれ,以 下の記載がある。
イ 乙22公報 (ア) 乙22公報には,次の記載がある。
「【産業上の利用分野】本発明は,棚に沿って水平に走行可能な荷移載 装置付き自走台車の走行経路が上下複数段に設けられ,前記走行経路の 端に隣接して,前記各段走行経路上の前記自走台車との間で荷を受渡し する荷搬入搬出用昇降装置が設けられた自動倉庫装置に関するものであ る。」(段落【0001】) 「【実施例】以下,本発明の一実施例を添付の例示図に基づいて説明す ると,図1及び図2に於いて,1A,1Bは間隔を隔てて立設された立 本棚であり,夫々上下方向4段の大横巾荷収納区画2を備えた下側ゾー ン3と,上下方向3段の小横巾荷収納区画4を備えた上側ゾーン5とを 備えている。6A〜6Dは,立体棚1A,1Bの下側ゾーン3に於ける 大横巾荷収納区画2の各段に対応して立体棚1A,1B間に設定された 上下方向4段の自走台車走行経路であって,各走行経路6A〜6Dには, 大横巾荷WLを搬送する自走台車7が左右一対のガイドレール8を介し て支持されている。9A〜9Cは,立体棚1A,1Bの上側ゾーン5に 於ける小横巾荷収納区画4の各段に対応して,立体棚1A,1B間に設 定された上下方向3段の自走台車走行経路であって,各走行経路9A〜 9Cには,小横巾荷WSを搬送する自走台車10が左右一対のガイドレ ール11を介して支持されている。」(段落【0005】) (イ) 上記記載によれば,乙22公報には,自動倉庫の分野で幅が異なる棚 領域を設けることが記載されていると認められる。
ウ 乙26公報 (ア) 乙26公報には,次の記載がある。
「この考案は,倉庫などにおける物品の収納保管および検索取出しを自 動的に行えるようにした自動保管検索装置およびその棚構造に関する。」 (第2ページ第2ないし4行) 「第11図は,その自動保管検索装置の概略構成を示す正面図であって, 収納エリア1は,幅寸法の広い広幅棚2が配列されたエリア1aと幅寸 法の狭い狭幅棚3が配列されたエリア1bとからなっている。収納エリ ア1の前方は,その収納エリア1の棚開放側に沿って移動自在にコラム 4が設けられ,そのコラム4には昇降自在に支持台5が設けられている。
そして,この支持台5上には各棚2,3との間でコンテナ6,7の出し 入れを行う図示しないピッカーが設けられており,広幅棚2はこれに対 応する幅寸法の広いコンテナ6の収納場所に専用し,また狭幅棚3はこ れに対応する幅寸法の狭いコンテナ7の収納場所に専用するように構成 されている」。(第2ページ第11行ないし第3ページ第4行) (イ) 上記記載によれば,乙26公報には,自動倉庫の分野で幅が異なる棚 領域を設けることが記載されていると認められる。
エ 乙23公報 (ア) 乙23公報には,次の記載がある。
「本発明は,自動倉庫に用いられる入出庫クレーンに関するものであっ て小幅の荷と,大幅の荷の何れでも左右-対のガイドにより案内させ乍 ら安全良好に移載させることが出来,しかも従来のように荷の幅に応じ て間隔を変更する可動式ガイドを必要としない構造簡単な自動倉庫用入 出庫クレーンを提供するものである。
以下,本発明の一実施例を添付の例示図に基づいて説明すると,1は 自動倉庫用入出庫クレーンの一定走行経路脇に立設された棚であって, 大幅の荷2を収容する区画3と小幅の荷4を収納する区画5とを有し, 各区画3,5は,夫々前後一対の支柱6間に架設された左右一対の荷受 具7a,7bと,後側の支柱6に取付けられた左右一対のストッパー8 a,8bとを備えている。前記入出庫クレーンは,支柱9に昇降可能に 支持されたキャレッジ10を備え,このキャレッジ10上には,前記棚 1の収納区画3,5に対して遠近方向に移動可能で且つ昇降自在な荷押 し引き移載手段11が設けられ,更にこの移載手段11の移動経路の左 右両側に小幅の荷4を支持する左右一対の下側支持面12と,この下側 支持面12よりも高い位置に於て大幅の荷2を支持する左右一対の上側 支持面13と,上下両支持面12,13間に位置し且つ小幅の荷4の左 右両側を案内する左右一対の下側ガイド14と,上側支持面13よりも 高い位置にあって且つ大幅の荷2の左右両側を案内する左右一対の上側 ガイド15とが設けられている。尚,前記移載手段11は周知のもので あるから,その支持構造と駆動構造の図示及び説明は省略するが,この 実施例では,前後一対の係止片16a,16bの内,図示棚1側に位置 する係止片16aのみが使用される。」(第1ページ左下欄第17行な いし第2ページ左上欄第9行) また,乙23公報の第1図には,大幅の荷2を収容する区画3と小幅 の荷4を収納する区画5は,各荷に対してその幅だけでなく高さがそれ ぞれ異なることが示されている。
(イ) 上記記載によれば,乙23公報には,自動倉庫の分野で幅及び高さが それぞれ異なる棚領域を設けることが記載されていると認められる。
オ 乙27公報 (ア) 乙27公報には,次の記載がある。
「各種の部品を自動倉庫に格納する場合には,それらの部品を容器に収 納するのが普通である。その際,様々な寸法の部品を同一寸法の容器に 収納するのでは,ある容器は満杯であっても,ある容器は空間が多いと いう状態が生じ,したがって倉庫全体のスペース効率が悪化してしまう。
この欠点は,扱う部品の形状や寸法に応じて,幅寸法の異なる大小二種 類の容器を使い分けるとともに,倉庫内の格納棚を大容器専用の部分と 小容器専用の部分とに分けることで,或る程度解消できる。」(第1ペ ージ最下行ないし第2ページ9行) 「第1図は本考案による搬送台を用いた自動倉庫の概略構成を示してい る。棚装置1は多数の幅広格納棚2と多数の幅狭格納棚3とを有してい る。この棚装置1の前方には左右方向4で移動させられるコラム5が設 けられている。コラム5には上下方向6で移動させられる搬送台7が備 えられている。かくして搬送台7は格納棚2,3の前面に沿って上下左 右に移動し,そして棚装置1やコラム5に設けたマークを読み取ること で所望の格納棚に対応した位置に停止し,その格納棚に対し容器8又は 9の出し入れを行なう。ここで容器8は幅広格納棚2に格納される幅広 容器であり,一方,容器9は幅狭格納棚3に格納される幅狭容器である。」 (第4ページ第10行ないし第5ページ第3行) (イ) 上記記載によれば,乙27公報には,自動倉庫の分野で幅が異なる棚 領域を設けることが記載されていると認められる。
カ 以上のイないしオによれば,乙22公報,乙26公報,乙23公報,乙 27公報には,自動倉庫の分野で幅が異なる棚領域を設けること,又は, 自動倉庫の分野で幅及び高さがそれぞれ異なる棚領域を設けることが記載 されており,これらのことが従来周知の技術的事項であると認められる。
また,乙26公報及び乙27公報に記載されているように,自動倉庫に 格納される収容物がコンテナ又は容器に収納した状態で格納されることは, 周知の事項であり,乙27公報に記載されているように,収容物の寸法に 応じて大きさの異なる容器を使い分けることも,従来から一般的に行われ ていることであると認められる。そして,このコンテナ又は容器が収容さ れる棚領域が,収容物の大きさ(寸法)に対応したものとなることは自明 の事項である。
以上によれば,前記イないしオから,「収容物の寸法別に分類された幅 及び高さがそれぞれ異なる複数の棚領域を有する倉庫とそれぞれが収容さ れた棚領域に対応した寸法を有する複数の収容物を収容する複数のコンテ ナを備えた自動公庫」との事項が周知技術であると認められる。
キ そして,乙12発明と上記カで認定した周知技術は,コンテナ等に収容 物を収容し,このコンテナを,棚等を有する収容場所に格納するものであ るという点で共通するから,乙12発明に上記周知技術を適用することは, 当業者が容易になし得たことであると認められる。
したがって,乙12発明に上記周知技術を適用すれば,相違点1につき, 当業者が本件再訂正発明1の構成に容易に想到し得ると認められる。
ク(ア) この点に関して原告は,倉庫の分野においては,その寸法に対応した 幅及び高さがそれぞれ異なる収納容器(コンテナ)や,当該収納容器の みを集積した棚領域を観念することはできないと主張する。
しかし,前記カで判示したとおり,自動倉庫に格納される収容物がコ ンテナ又は容器に収納された状態で格納されることは,周知の事項であ り,収容物の寸法に応じて大きさの異なる容器を使い分けることも,従 来から一般的に行われていることであり,収容容器が収容される棚領域 は収容物の大きさ(寸法)に対応したものとなるから,自動倉庫の技術 分野において,その寸法に対応した,幅及び高さがそれぞれ異なる収納 容器や,当該収納容器のみを集積した棚領域を観念することができない との原告の上記主張は採用することができない。
(イ) また原告は,原告が挙げる倉庫に関する技術は,出納効率の向上の点 から適さないものであると主張する。
確かに,図書については,出入庫が一冊単位でされるとともに,一つ の図書について複数回繰り返し要求され,しかも,出庫には必ず返却作 業が伴っており,荷物系と比べて,収容対象物の動きの複雑さや入出庫 の回数で大きく異なるとみることができる。
しかし,収容物の出納効率の観点からみると,前記カの周知技術は, 収容物の種類ごとに収容容器を用いるものではなく,収容物の寸法等に 応じて収容容器を使い分けるものであるから,複数種類の収容物を収容 する場合であっても,当該収容物が同一の収容容器に収容されるもので あるならば,当該収容容器を用いれば足りることになる。また,収容物 の種類に応じて,収容容器の種類を増やせば空間の利用効率が向上する が,必ずしも収容物の種類に対応して収容容器の種類を増やさければな らないものではなく,乙22公報及び乙27公報の記載のように収容容 器を大小二種類とするなど,適宜選択されるべき事項である。
加えて,出納効率を向上させることとともに,収容効率を向上させる ことは,書棚と倉庫の両分野において共通する周知の課題であるから(乙 19,20),出納効率の点において多少の差異があるとしても,上記 周知技術を適用することの阻害要因となるものではない。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(7) 相違点2について ア 乙11の3発明について (ア) 乙11の3発明は,図書入出庫管理装置(図書館設備-自動保管取り 出しシステム(AS/RS))に関する発明であり,本件再訂正発明1 とは同一の技術分野に属するところ,乙11の3発明の具体的内容につ いてみるに,乙11の3文献には,高さの異なる5種類のコンテナが用 いられていて,本と雑誌等の複数の図書が,それらのコンテナにそれぞ れ保管されることが記載されているほか,「ランダム保管アイテムは, サイズコード(例えば,A,B,またはC)を有し,」(16頁24行 〜25行),「ランダムに保管されるアイテムは,サイズグループ(例 えば,A,B,またはC)によって分類され,」(28頁8行〜9行) との記載から,複数の図書のうちの「ランダム保管アイテム」と称され る図書がその寸法(サイズコード,例えば,A,B,またはC)によっ て分類されることが記載されているから,乙11の3文献には,図書入 出庫管理装置において,図書の寸法別に分類された図書に対応する寸法 の複数種類のコンテナ(容器)を用いることが記載されていると認めら れる。
また,乙11の3文献には,「2.棚の構造は,全部で13,260 個の容器の収容位置を含む6通路分から構成される。」(4頁14行〜15行),「段の数:34段 段の高さ:容器の深さ+次の容器の底面まで最大1.0インチ」(11頁17行〜18行)との記載から,容器の寸法別に分類された複数の段が複数の棚領域を構成しており,かかる棚領域の集合体としての書庫が記載されている。
そうすると,乙11の3文献には,図書入出庫管理装置において,図書の寸法別に分類された図書に対応する寸法の複数種類のコンテナ(容器)を収容するための,図書の寸法別に分類された複数の棚領域を有する書庫が記載されているといえる。
さらに,乙11の3文献には,自動保管取り出しシステム(AS/RS)がコンピュータシステムからなること(4頁6行),容器が「容器(コンテナ)アドレス」を有すること(4頁21行,24頁14行,27頁2行),アイテム(図書)がバーコードナンバーやサイズコードを有すること(13頁16行〜17行,14頁下3行〜15頁下5行,16頁下5行〜17頁1行,24頁14行及び第28ページ第8及び9行),アイテムに付されたバーコードナンバー(図書コード)を光学的にスキャンすること(28頁3行〜15行)が記載されており,また,ランダムロケーション保管においては,空,部分的にフル,及び,フルのコンテナ(容器)取り出しの優先規則があること(18頁3行〜15行),自動保管取り出しシステム(AS/RS)は,要求された図書(アイテム)を伴うコンテナ(容器)の取り出しを自動的に開始すること(24頁1行〜4行),ランダムに返却保管される図書(アイテム)を,図書がちょうど取り出された容器セクターに自動的に割り当てること(28ページ下1行〜29頁5行)等が記載され,ほかに,オペレータのオプションとして,アイテムを取り出さないで返却する場合に,上記優先順位を用いて適切な容器を取り出すこと(29頁下5行〜下1行)が記載 されている。
そうすると,乙11の3文献には,図書入出庫管理装置において,自 動保管取り出しシステム(AS/RS)らに使用されるコンピュータシ ステムが,複数の容器に関する「容器アドレス」,及び,複数の図書(ア イテム)に関する「図書コード」(バーコードやサイズコード)等の情 報を利用することが記載されているといえる。
そして,自動保管取り出しシステム(AS/RS)に前述した図書の 取り出しや返却保管のための所定の動作を行わせるためには,空,部分 的にフル,及び,フルの状態にある複数のコンテナ,言い換えれば,返 却図書を収容可能な空きスペースのあるコンテナについて,当該コンテ ナが書庫内のどこにあるかを示すものである,収容位置の情報のみなら ず,当該収容位置のコンテナ内に収容されている図書が何かを示すもの である,図書コードと当該コンテナとを対応させた情報をも,そのコン ピュータシステムが記憶していることが必要であることは,当業者にと って自明な技術的事項である。
したがって,乙11の3文献には,要求図書の取り出し制御,返却図 書の返却制御,並びに書庫内における収容位置と各コンテナに収容され た複数の図書の各図書コードとを対応させて記憶する技術的事項が記載 されているといえる。
(イ) 上記(ア)によれば,乙11の3発明は,「アイテム(図書)を収納する 大きさの異なる寸法別の容器を備え,アイテムに付されたバーコードナ ンバー(図書コード)を光学的にスキャンすることにより,自動的に要 求されたアイテムを収納する容器を書庫から取り出す自動保管取り出し システム(AS/RS)」であると認めることができる。
そして,ランダムロケーション保管においては,空,部分的にフル, 及びフルと,容器の取り出しに係る優先規則が設けられており,オプシ ョンである図書返却のみのためにコンテナを取り出す場合には,上記優 先規則を用いて適切な容器を取り出すとされているところである。
この点確かに,乙11の3文献の記載からは,アイテムのサイズ(寸 法)に適合した容器の取り出しをどのような制御によって実現するのか は,明らかでない。しかし,証拠(乙35,乙36)によれば,図書管 理装置の技術分野において,図書の寸法情報を使って図書管理のための 制御を行うことは,乙35公報及び乙36公報にみられるように,本件 特許の優先日当時において既に周知技術であったことが認められる。こ の点,乙11の3文献においても,ランダムロケーション保管アイテム は,サイズコード(例えば,A,B又はC)を有するとされているとこ ろである。そうすると,乙11の3発明においても,アイテムのサイズ 情報(寸法情報)を使って制御を行うものと解するべきである。
イ そして,図書管理システムにおいて,アイテムのサイズ情報(寸法情報) を特定する手段としては,乙35公報に記載された,システム内に図書コ ード単位で図書管理データをもたせ,図書管理データを参照して当該図書 に関するデータを特定する方法と,乙36公報に記載された,サイズ情報 に対応する情報を直接入力する方法とが知られており,読み取った図書コ ードからシステム内の情報を参照してサイズ情報を得るか,サイズ情報を 直接入力するか,あるいは,両方の方式を可能とするかは,当業者が必要 に応じて選択する設計事項にすぎないというべきである。
そして,乙12発明及び乙11の3発明並びに前記周知技術は,いずれ もコンテナ等(容器)に収容物を収容し,このコンテナを,棚等を有する 収容場所に格納するものである点で共通する。
ウ そうすると,乙12発明に乙11の3発明と前記周知技術である寸法別 のコンテナ等の構成を適用して,相違点2につき,当業者が本件再訂正発 明1の構成に容易に想到し得ると認められる。
(8) 相違点3について ア 前記(2)ウで認定した乙16公報の記載によれば,乙16公報には,「多 段積層棚の複数の棚空間には,搬送手段によってコンテナを取り出す間口 に対して,奥行き方向に複数のコンテナが収容される倉庫。」との発明が 記載されていることが認められる。
イ 乙12発明と乙16発明とは,コンテナ等を用いて収容物を棚空間に収 容する発明である点で共通している。
この点,両発明は,乙12発明における収容物が図書であるのに対して, 乙16発明における収容物が一般的な荷物である点において相違するが, 前記(6)のとおり,書棚や倉庫の技術分野においては,出納効率を向上させ ることとともに収容効率を向上させることは周知の課題である。
したがって,乙12発明において,収容効率を向上させるために,乙1 6発明を適用することは,当業者が容易になし得たことであると認められ る。
また,物品等を載置するパレット等の容器を取り出す間口に対して奥行 き方向に複数の容器が収容されている場合において,容器の取り出し方は, 容器を取り出す間口に対して,まず間口を塞いでいる手前側の容器を取り 出してから,奥側の容器を取り出すという方法が,乙16公報に記載され ている。さらに,上記方法は,特開昭49-080780号公報(乙21) に「・・・荷受渡し03を,該荷受渡し具03の荷載置面長さlに対して 2倍またはその整数倍に構成した荷受部17A,17Bに対応させること により,該荷受渡し具13をして1つの区画収納空間2に対して複数の荷 12の取扱いが行えるのであるが,このとき先行して収納させた荷受部1 7B上の荷12は,後続して収納させた荷受部17A上の荷12を取り出 したのち初めて取出しが可能となる。」と,特開昭57-72503号公 報(乙30)に「…シングルフォーク3が物品Aの手前の棚に入っている 物品Bのパレット6をピックしてシングルフォーク用キャレッジ8内に 取り込む。…MRF5が物品Aが乗っているパレット6をピックしてダブ ルフォーク用キャレッジ9内に取り込む。…シングルフォーク4が物品B をキャレッジ8内からもとの棚にもどす。」と,実願平03-04585 7号(実開平05-019210号)のCD-ROM(乙40)に「…ワ ーク搬送手段3を作動させてそのフォーク部3aを,手前側の被格納物 (非対象物B)のパレットに差し込んで引き出し,非対象物Bを…「空」 の格納棚4(空棚C)に移し替えておき,次いで,ワーク搬送手段3の作 動によって奥行側の被格納物X(対象物A)を,…引き出して出庫する」 などと記載されているように,倉庫の技術分野では慣用的に行われている 従来周知の技術的事項であると認められる。
上記のとおり,乙12発明と乙16発明とは,コンテナ等を用いて収容 物を棚空間に収容する発明である点で共通するから,上記周知の技術的事 項を乙12発明に適用することは,当業者が容易になし得たことであると 認められる。
以上のとおりであるから,乙12発明に乙16発明と上記周知の技術的 事項を適用して,相違点3につき,当業者が本件再訂正発明1の構成に容 易に想到し得ると認められる。
ウ この点に関して原告は,乙12発明の書庫はコンテナの収納位置が決め られているのに対して,乙16発明の倉庫は載荷パレットの収納位置が決 められていない点で相違しており,乙12発明に乙16発明及び周知技術 を適用すべき動機付けが見い出せないと主張する。
しかし,乙12発明について,ケースとコンテナとの対応関係が固定的 なものであるとの主張が採用できないことは,前記5(3)に説示したとおり である。また,乙16発明については,乙16公報を精査しても,載荷パ レットの収納位置に関して,これを元の収容位置に戻す必要があるとも, そうでないとも記載されていないから,収納位置が決められていない倉庫 の技術であると特定することはできず,原告の上記主張は前提を誤るもの である。そして,乙12発明に乙16発明と周知技術を適用して,当業者 が本件再訂正発明1の構成に容易に想到し得ると認められるのは前記説示 のとおりであるから,原告の上記主張は採用することができない。
(9) 相違点4について ア 乙20公報,乙39公報,乙40公報及び乙45公報には,次の記載が ある。
(ア) 乙20公報 ・「各棚小間の奥行寸法をコンテナの前後方向寸法の約2倍または3倍 にし,各棚小間にそれぞれコンテナを2個または3個奥行方向に収納 するものもあつたが,このようなものでは,奥側に格納されているコ ンテナを搬出しあるいは奥側にコンテナを搬入するために,コンテナ 搬出入のためのフォークのリーチが通常の1個格納のものに比べて2 倍または3倍となり,その結果,フォークを裏迄に延長する時間が長 くなり,搬出入時間が長くなり,・・・また間口側のコンテナが搬出 された後も,奥行側のコンテナはそのまゝ残つているため,フォーク を往復させる距離が長く,その結果フォークの伸縮に要する時間が長 くなつて搬出入効率が悪かった。」(1頁目右下欄6行〜2頁左上欄 1行) ・「搬出入頻度の高いものが棚間口側に同頻度の低いものが棚奥行棚に 収納され,かくしてコンテナの搬出入効率が高い。」(2頁目右上欄 下6行〜下4行) (イ) 乙39公報 ・「倉庫内の棚へ荷を格納する際,棚の手前と奥側とに荷を格納する場 合がある。このような場合,奥側に格納された荷を棚から取り出す時 に手前側に格納されている荷が邪魔となる。したがって,従来,この ような格納様式において,奥側の荷を取り出す場合には,倉庫用荷役 装置であるスタッカークレーンを荷の有る棚区画に位置合わせし,ま ず手前側の荷をスタッカークレーンのフォークですくい取って,空い ている棚区画に移し変えて置き,その後奥側の荷をフォークですくい 取って出庫口へ運搬する。移し変えられていた手前側の荷は格納位置 が変わらぬようスタッカークレーンで再度元の棚区画間手前側に格納 される。・・・この従来例によると,手前の荷を移し変え置くための 空の棚区画を常に設定しておかなければならないから,格納効率が悪 くなる。・・・また,奥側の荷を出庫口へ卸した後に,手前側の荷を 置き換え位置から元の棚区画へ戻すという残作業を行う必要性から, すぐに次の荷の取出し作業,あるいは格納作業に向かうことができず 効率が悪い。以上のことがらは荷を奥側の棚区画に格納する場合につ いても云えることであって,スタッカークレーンを含む倉庫内設備の 運用効率が悪い。」(1頁目右下欄8行〜2頁目右上欄2行)(ウ) 乙40公報 ・「そして,格納棚4の奥行側の被格納物Xを出庫して,手前側の被格 納物Xをそのまま残す必要がある場合には,「空」の格納棚4が存在 していることを前提として出庫が行われる。例えば,ワーク搬送手段 3を作動させてそのフォーク部3aを,手前側の被格納物X(非対象 物B)のパレットに差し込んで引き出し,非対称物Bを・・・「空」 の格納棚4(空棚C)に移し替えておき,次いで,ワーク搬送手段3 の作動によって奥行側の被格納物X(対象物A)を,・・・引き出し て出庫する手順によって実施される。」(段落【0003】) ・「【考案が解決しようとする課題】 しかし,対象物Aが格納棚4の奥行側に格納されている場合には, 出庫作業に時間がかかる・・・」(段落【0004】)(エ) 乙45公報 ・「本考案は図書館等の本棚,工具入れ等に応用できる物品収納設備に関 するものである。」(1頁左下欄14行〜15行) ・「本考案は前記従来の欠点を解消するために提案されたもので,複数の コンテナを収納する棚を設けた物品収納設備において,同棚はコンテナ を複数個収納でき,かつ取出側に向かって傾斜した傾斜棚にすると共に, 同棚にはローラを設けた傾斜レールを備え,前記コンテナは同傾斜レー ルに平行で,同レール上を滑る下底と,荷物を水平に保つよう同下底上 に設けられた水平の上底とを有し,かつ同上下底間の空間に挿入してコ ンテナを持上げて取出すことが可能なフォークを有する運搬機器を,上 下左右に移動可能に設けることにより,倉庫が縮少でき,かつ簡便にコ ンテナを搬出入できる物品収納設備を提供せんとするものである。 (1 」 頁右欄11行〜2頁左欄8行) ・「また各収納棚及び傾斜レール1の搬出入口には,ストッパー9が突設 されており,傾斜レール1及びローラ4上のコンテナ2のうち,最も搬 出入口に近い(最前部の)ものの下端がこれに引掛かっている。従って 最前部のコンテナ2を搬出するには,運搬機器3のフォーク5を前記く さび状空間8に挿入した後,フォーク5でコンテナ2を若干(ストッパ ー9の高さHをクリアできる高さ)持上げた後,フォークを縮めれば搬 出することができる。」(2頁左欄23行〜32行) ・「なお,最前部のコンテナ2が搬出されたら,その奥にあったコンテナ 2が自重により,ローラ上を滑って自動的に最前部に位置するようにな る。また前面には磁気カード10でコンテナ番号が付番されており,運 搬機器3が持上げた時に読み込まれ,格納位置を記憶するようになって いる。11は操作盤で,運搬機器3を操作するもので,コンテナ番号を 指示すると,自動的に搬出するようになっている。また12は棚枠であ る。」(2頁左欄33行〜右欄7行) ・「次に作用を説明すると,先ず搬出入扉を開け荷物をコンテナ2に入れ る。次いで操作盤11で格納の指示をすると,自動的に空いている棚ま で前記コンテナを運び,既に格納されているコンテナを押し込んで格納 する。次に搬出は,格納時にコンテナ番号と位置を記憶しているので, 操作盤のコンテナ番号を指示すると自動的に運び出してくる。押し込ま れたコンテナを運び出す場合は,取出側にあるコンテナを他の空いた棚 に移動したのち,運び出す。」(2頁左欄8行〜17行)イ 上記アの記載によると,乙20公報には,奥行方向に2個収容されたコン テナ格納装置において,奥側のコンテナの取り出しは手前側のコンテナを取 り出す場合に比べて時間がかかること,手前側に搬出入頻度の高いものを収 容し,奥側に同頻度が低いものを収納すると,コンテナの搬出入能率が向上 することが記載されており,他に,乙39公報や乙40公報にも,奥側のコ ンテナの取り出しが手前側のコンテナの取り出しに比べて出庫作業に時間が かかり,効率が悪くなることが開示されている。また,乙45公報には,奥 行方向に複数個収容されたコンテナに収容する対象として,再搬入や返却が 想定される図書や工具が例示されている物品収納設備が開示されている。
そうすると,棚の奥行方向に複数の収容部を備えた収納設備において,奥 側の収容部からの収容物の取り出しが出納効率の低下をもたらすことは,当 業者に周知の技術的課題であり,そのような収容部にも図書等のように再搬 入(返却)が想定される収容物を収容することは当業者に周知の技術的事項 であるということができる。
そして,前記ア(ア)の記載によれば,出納効率の低下をもたらさないため には,手前側の収容部を優先的に利用する構成とすればよいことが示唆され ている。
以上によると,乙12発明に乙16発明の「奥行き方向に2個のコンテナが収容され,前記搬送手段には,前記コンテナを取り出す間口に対して,手前側のコンテナを取り出してから奥側のコンテナを取り出す移載手段が備えられている」事項を適用するとともに,乙11の3発明を適用する際に,前記周知の技術的課題に基づいて,手前側の収容部を優先的に利用する構成,すなわち手前側のコンテナを空きのあるコンテナとして取り出す構成として,相違点4につき,当業者が本件再訂正発明1の構成に容易に想到し得ると認められる。
なお,原告は,本件再訂正発明は,本件再訂正の追加訂正部分の具備,すなわち,Wコンテナ方式を採用した図書館において,フリーロケーション方式と手前側優先の方式とを組み合わせることにより,奥行き方向に2個のコンテナを配置(Wコンテナ方式)とすることによって,図書系では全く例を見ない方法で収納効率を大幅に向上させ,かつ,手前側コンテナに優先して返却することによって,返却にかかる出納効率を向上させたもの,すなわち,収納効率と出納効率双方の大幅な向上を図るという二律背反の目的を同時に達成したものであって,従来技術から予測される範囲を超えた顕著な効果を奏するものである旨主張する。
しかし,本件明細書には,収納効率の向上と出納効率の向上とが二律背反の関係にある課題であるとの記載はなく,収納効率を向上させるためにWコンテナ方式を採用した図書館において,フリーロケーション方式を採用することにより犠牲になる,返却に係る出納効率を向上させるために手前優先方式を採用する発明であるとの記載もない。
また,Wコンテナ方式を採用した物品の収納設備において,奥側のコンテナの搬出入が出納効率を低下させることは,先に述べたとおり種々の公知文献に示されていて,Wコンテナ方式固有の課題ということができ,フリーロケーション方式を採用しない出納方法においても生じ得る課題であるから, 手前優先方式を採用することによる効果は,Wコンテナ方式にフリーロケー ション方式を加えて採用するときであっても,当業者にとって従来技術から 予測可能な範囲のものにすぎないといえる。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(10) 小括 以上のとおり,本件再訂正発明1は,進歩性が欠如し,無効理由があると認 められるから,本件再訂正によって特許の無効理由が解消されるとは認められ ない。
(11) イ号物件及びロ号物件が本件再訂正発明1の技術的範囲に属するかにつ いて ア 本件再訂正発明1の構成要件1F’は,「この搬送手段により前記ステ ーションに搬送されて,前記要求図書が取り出されたコンテナまたは前記 返却図書が返却されたコンテナに対して,前記記憶手段の記憶内容を更新 する更新手段とを具備し,」というものであるところ,本件再訂正前のも のから訂正を加えるものではないから,前記2の説示により,イ号物件及 びロ号物件は,構成要件1F’を充足しない。
イ 本件再訂正発明1の構成要件1G’ 「前記書庫の複数の棚領域には, は, 前記搬送手段によってコンテナを取り出す間口に対して,奥行き方向に2 個のコンテナが収容され,前記搬送手段には,前記コンテナを取り出す間 口に対して,手前側のコンテナを取り出してから奥側のコンテナを取り出 す移載手段が備えられていることを特徴とし,前記奥行き方向に2個収容 されたコンテナのうち,手前側のコンテナを前記空きのあるコンテナとし て優先的に使用する」というものであり,下線を付した部分が本件再訂正 により訂正されたものであるところ,前記4の説示のとおり,イ号物件及 びロ号物件は,「手前側のコンテナを…優先的に使用する」ものではない から,構成要件1G’を充足しない。
ウ したがって,イ号物件及びロ号物件は,本件再訂正発明1の技術的範囲 に属するものではなく,訂正による対抗主張の要件を充たさない。
(12) 小括 よって,原告は,特許法104条の3に基づき,被告に対し本件特許権を 行使することができない。
7 結論 以上のとおり,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は理由 がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 東海林保
裁判官 今井弘晃
裁判官 実本滋
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