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事件 平成 25年 (ワ) 10151号 損害賠償請求事件
愛知県豊川市〈以下略〉
原告大林精工株式会社
同訴訟代理人弁護士 大野聖二
同 井上義隆
同 小林英了
同 補佐人弁理士大谷寛 東京都港区〈以下略〉
被告株式会社東芝
同訴訟代理人弁護士 鮫島正洋
同 小栗久典 大韓民国ソウル特別市〈以下略〉
被告補助参加人エルジーディスプレイ カンパニーリミテッド
同訴訟代理人弁護士 古田啓昌
同 岩瀬吉和
同 ア地康文
同訴訟復代理人弁護士 山内真之
同訴訟代理人弁理士 重森一輝
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2014/12/25
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用(補助参加によって生じた費用を含む。)は原告の負担とす る 。
事実及び理由
請求
被告は,原告に対し,1億円及びこれに対する平成25年4月25日から 支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は,発明の名称を「液晶表示装置」とする特許権を有する原告が,被 告による後記被告製品の製造・販売が上記特許権の侵害に当たる旨主張して, 特許権侵害に基づく損害賠償金の支払を求める事案である。
1 前提事実(当事者間に争いがないか,弁論の全趣旨により容易に認定する ことができる事実) (1) 当事者 原告は,金型の設計・製造・販売,自動車用部品及び付属品の製造・販売 並びにプレス加工業等を業とする株式会社であり,A(以下「原告代表者」 という。)はその代表者である。
被告は,液晶テレビ,レコーダー及びノートパソコン等の製造・販売を業 とする株式会社である。
補助参加人は,ダイオード,トランジスタ及びこれらに類似する半導体の 製造等を業とする大韓民国の法人である。B及びCは,平成7年〜8年頃, 補助参加人に技術者として勤務していた。
(2) 原告の特許権 ア 原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,その特許を「本件特 許」という。また,その特許出願の願書に添付された明細書及び図面を 「本件明細書」という。図面の一部は別紙4「本件発明の図面」のとおり である。)の特許権者である。
特許番号 第3194127号 出 願 日 平成8年4月16日(特願平8-158741。以下「本 件出願日」といい,上記特願による出願を「本件出願」と いう。) 発 明 者 原告代表者(特許公報の記載によるもの) 登 録 日 平成13年6月1日イ 本件特許権に係る特許請求の範囲の請求項1(ただし,平成14年1 0月26日に確定した後記エの異議の決定による訂正後のもの)の記載 は,次のとおりである(以下,この発明を「本件発明」という。)。
「少なくとも一方が透明な一対の基板と前記基板間に挟まれた液晶組成物層と前記基板のいずれか一方の基板に向き合った表面にマトリックス状に配置された複数の走査線および映像信号配線と対をなす画素電極と前記画素電極,前記走査線および前記映像信号配線に接続されたアクティブ素子を備えた横電界方式液晶表示装置において,前記対をなす画素電極が短冊状の形状であり,その一方の電極の長辺方向が他方の電極の長辺方向とほぼ平行であって,かつ画素電極を構成している共通電極の一部が映像信号配線を両側から挟み込むように配置されており,前記映像信号配線と画素電極が液晶配向方向に対し±1度〜±30度の角度の範囲で1画素内で1回以上屈曲している構造配置になっているアクティブマトリックス基板と前記映像信号配線と同じ角度で屈曲している色フィルターとブラックマスクからなるカラーアクティブマトリックス型液晶表示装置」ウ 本件発明は,以下の構成要件に分説される(以下,それぞれの構成要件を「構成要件A」などという。)。
A 少なくとも一方が透明な一対の基板と前記基板間に挟まれた液晶組成 物層とB 前記基板のいずれか一方の基板に向き合った表面にマトリックス状に 配置された複数の走査線および映像信号配線とC 対をなす画素電極とD 前記画素電極,前記走査線および前記映像信号配線に接続されたアク ティブ素子 E を備えた横電界方式液晶表示装置において, F 前記対をなす画素電極が短冊状の形状であり, G その一方の電極の長辺方向が他方の電極の長辺方向とほぼ平行であっ て,かつ画素電極を構成している共通電極の一部が映像信号配線を両側 から挟み込むように配置されており, H 前記映像信号配線と画素電極が液晶配向方向に対し±1度〜±30度 の角度の範囲で1画素内で1回以上屈曲している構造配置になっている アクティブマトリックス基板と I 前記映像信号配線と同じ角度で屈曲している色フィルターとブラック マスク J からなるカラーアクティブマトリックス型液晶表示装置 エ 本件特許権については,平成14年1月に株式会社コーエンから特許異 議の申立てがされたが(以下,その手続を「別件異議手続」という。), 同年10月8日付けで,訂正を認め,特許を維持する旨の異議の決定がさ れた。
(3) 被告の行為 ア 被告は,別紙1被告製品目録記載の各製品(以下「被告製品」と総称す る。)中,4〜19の製品(以下「被告製品A」という。)の販売をした ことがあり,また,1〜3の製品(以下「被告製品B」という。)を製 造・販売している。
イ 被告製品の構成は,別紙2「被告製品の構成」のとおりである。
2 争点 被告及び補助参加人(以下,両者を併せて「被告ら」という。)は,被告製品の構成要件Gの「画素電極を構成している共通電極の一部が映像信号配線を両側から挟み込むように配置されており」の充足性及び損害論を争うほか(上 記文言以外の構成要件の充足性は争いがない。),抗弁として,冒認による特許無効,拡大先願(特許法29条の2)違反又は進歩性欠如による無効並びに権利濫用を主張する。
したがって,本件の争点は,次のように整理することができる。
(1) 被告製品の構成要件Gの充足性 (2) 冒認による特許無効の成否 (3) 拡大先願違反又は進歩性欠如の有無 ア 乙1文献に基づく拡大先願違反 イ 乙9文献を主引例,乙10文献を副引例とする進歩性欠如 (4) 権利濫用の成否 (5) 損害論3 争点に関する当事者の主張 (1) 被告製品の構成要件Gの充足性 (原告の主張) 被告製品Aについて,映像信号配線(赤色),画素電極1(紫色。液晶 駆動電極ということがある。以下同じ。)及び画素電極2(共通電極という ことがある。以下同じ。)を一部に含む共通電極(橙色)を色分けして示す と,別紙3「被告製品の写真」の1(1)の写真のとおりである。同写真のと おり,画素電極1及び画素電極2は互いに長辺方向が平行であり,画素電 極2は共通電極の一部を構成し,隣接する画素の画素電極2が映像信号配 線を両側から挟み込むように配置されているから,被告製品Aは構成要件 Gを充足する。
被告製品Bについても,別紙3の2の写真のとおり,「共通電極の一 部」が映像信号配線の両側に配置されており,映像信号配線を中心に見れ ば,「共通電極の一部」が映像信号配線を両側から挟み込むように配置さ れているから,被告製品Bは構成要件Gを充足する。
(被告らの主張) 構成要件Gの「画素電極を構成している共通電極の一部が映像信号配線 を両側から挟み込むように配置されており」の文言は,別紙4の図12の とおり,画素電極を構成している共通電極の一部が映像信号配線の両側下 方に隣接して配置されることをいうと解すべきである。被告製品Aは,別 紙3の1(2)の写真のとおり,映像信号配線と画素電極2(共通電極の一 部)との間に,シールディング・パターン(黄色で表示)が存在しており, 共通電極と映像信号配線が上記のような位置関係にはないから,上記文言 を充足しない。また,被告製品Bは,別紙3の2の写真のとおり,共通電 極が映像信号配線を完全に覆うように配置されているから,上記文言を充 足しない。
(2) 冒認による特許無効の成否(被告らの主張) ア 本件発明には,@画素電極(液晶駆動電極)と共通電極という2種類 の画素電極を用い,これらをくの字形に屈曲させることにより,画素電 極に電圧が加えられた際に,単位画素内の液晶分子を,左回転と,右回 転の2方向に回転させる作用を有する構成(以下「第1の構成」とい う。),A映像信号配線を屈曲させるとともに,色フィルター及びブラ ックマスクも映像信号配線と同一の角度で屈曲させる構成(以下「第2 の構成」という。),B画素電極を構成する共通電極の一部が映像信号 配線を両側から挟み込むように配置されている構成(以 下「第3の構 成」という。)という,三つの特徴的部分が存在する。
原告は,第1の構成は,株式会社日立製作所(以下「日立製作所」と いう。)を出願人とする特開平7-134301号公報(甲7の添付資 料4。以下「日立公報」という。図面の一部は別紙5「日立公報の図 面」のとおりである。)に開示されており,本件発明の特徴的部分では ないと主張するが,@本件明細書によれば,第1の構成は,一つの製造 装置で横電界方式の液晶表示装置と縦電界方式の液晶表示装置を生産す るという本件発明の課題を解決するものであること,A日立公報は,そ もそも本件明細書に記載されておらず,また,原告は別件異議手続にお いて,日立公報には第1の構成が開示されていないと主張していたこと から,失当である。
イ 上記の三つの特徴的部分のうち,第1の構成については,本件出願時 に補助参加人に勤務していたCが,これを単独で着想して同僚のBに伝 えたと証言しているところ,@第1の構成はCの発明と同一のものであ ること,ACとBは,Cの発明が着想された平成8年3月頃,補助参加 人内の同一のチームに所属してIPS方式の液晶ディスプレイの研究を 行い,公私共に親密な間柄にあったこと,BBは平成7年5月〜平成9 年12月の間,ほぼ毎月日本に出張しており,本件出願日の直前である 平成8年3月22日〜29日の間も日本に滞在していたこと,CBと原 告代表者は,かつてソニー株式会社(以下「ソニー」という。)に勤め ていた頃の同僚であり,連絡を取り合うことも可能だったこと,D本件 明細書はBが単独で作成したものであること,E原告代表者には本件発 明を着想するだけの液晶ディスプレイに関する知識・経験はなく,特許 審査手続にも,Bが原告の従業員であると身分を偽ってまで同席してい ることに照らせば,Cの上記証言は信用することができるというべきで ある。このように,第1の構成の発明者はCであるから,少なくともC は本件発明の共同発明者である。
ウ また,原告代表者には第2の構成を着想するだけの液晶ディスプレイ に関する知識・経験がなかったことに照らすと,Bがその発明者という べきである。
エ さらに,第3の構成についても,原告代表者がその尋問において,画 素電極(液晶駆動電極)が映像信号配線と隣り合うパターンと,共通電 極が映像信号配線と隣り合うパターンとが比較検討されている技術論文 (丙4の添付書類1)について,これを読んだと供述しながら,その技 術的意味を説明できなかったこと,他方,Bは上記論文を読んで補助参 加人に対する平成7年11月2日付けの技術報告書(丙39)に引用し ていることに照らせば,Bがこれを発明したものというべきである。
オ したがって,本件出願は冒認出願であり,本件特許は特許無効審判に より無効にされるべきものである。
(原告の主張) ア 本件発明の特徴的部分は第2の構成に限られるべきである。なお,日 立公報の実施例8は,別紙5の図7(a)及び(b)をワンセットとするも のであるが,その請求項2の記載に照らし,一方の基板のみに上記図7 (b)の電極を設ける構成(電界を2方向にのみ印加する構成)も技術的 範囲に含むものと解すべきであるから,第1の構成は日立公報に開示さ れた公知の技術であり,本件発明の特徴的部分ではない。
イ 第1の構成に関する被告らの主張については,@Bは,Cと共同で研 究開発を行ったことはなく,Cの研究開発の内容を全く認識していなか ったこと,ABはそもそも補助参加人の常務取締役から研究開発を行う ことを禁止されていたことから,失当である。
ウ また,第2の構成については,原告代表者は,論文を検討するなどし て液晶技術に関する知識習得に努めていたところ,平成7年秋頃に開催 されたアジアディスプレイ95の学会(以下「本件学会」という。)に 出席し,そこで発表された日立製作所のIPS方式の液晶パネル及び日 立公報を基に,本件発明を着想したものである。すなわち,日立公報の 実施例8(別紙5の図7(b))は,画素電極(液晶駆動電極)及び共通 電極を1画素内で屈曲させる電極構成を開示しているものの,これに対 応する色フィルターとブラックマスク(及び映像信号配線)を屈曲させ る構成を開示していない。一方,日立公報の実施例13(別紙5の図 8)は,画素電極及び共通電極を屈曲させる構成を採用していないもの の,複数の画素を一体的に見た場合,映像信号配線及びカラーフィルタ ーを屈曲させる構成を開示している。そこで,原告代表者は,画素電極 及び共通電極を1画素内で屈曲させる電極構成(日立公報図7(b))に おいて映像信号配線をも屈曲させた上で,同一画素内でカラーフィルタ ー及びブラックマスクを屈曲させる構成を採用することで,開口率を上 げることのできる本件発明を完成させた。このように,本件発明は,原 告代表者が他の者の創作的な寄与なく完成させたものであるから,原告 代表者の単独発明である。
エ 第3の構成に関する被告らの主張は争う。
(3) 拡大先願違反又は進歩性欠如の有無(被告らの主張) ア 乙1文献に基づく拡大先願違反 本件発明は,本件出願日前である平成8年3月27日にされた特許出 願であって本件出願後に公開公報が発行された特開平9-258269 号公報(以下「乙1文献」という。)の出願当初の明細書等に記載され た発明と同一であるから,特許法29条の2に違反する無効理由を有す る。なお,映像信号配線及び走査信号配線と同じパターンでブラックマ スクを形成することは,上記明細書等に明示されていないものの,本件 出願当時,当業者にとって技術常識又は慣用技術であった(乙2〜7)。
イ 乙9文献を主引例,乙10文献を副引例とする進歩性欠如 本件発明は,本件特許の出願前に頒布された刊行物である特開平7- 36058号公報(以下「乙9文献」という。)記載の発明に実開平2 -33031号公報(以下「乙10文献」という。)記載の技術を適用 することで,当業者が容易に想到することができたものであるから,特 許法29条2項に違反する無効理由を有する。
すなわち,乙9文献には,@本件発明では,映像信号配線と画素電極 が液晶配向方向に対し,±1度〜±30度の角度の範囲で1画素内で1回 以上屈曲しているのに対し,乙9文献ではドレイン電極14,ソース電 極15及びコモン電極(共通電極)16が屈曲することが開示されてい ない(構成要件H),A本件発明では,色フィルター及びブラックマス クが映像信号配線と同じ角度で屈曲しているのに対し,乙9文献ではカ ラーフィルター507及び遮光用ブラックマトリックス512が屈曲す ることが開示されていない(構成要件I)という相違点がある点を除き, 本件発明と同一の発明(以下「乙9発明」という。)が開示されている。
他方,乙10文献には,カラー表示をする液晶表示装置において,横 線部分を有する任意の文字・図形等を単色表示させた場合の文字の横線 部分の見づらさを解決するために,映像信号配線と画素電極を液晶配向 方向に対して屈曲させる技術が開示されており,文字の表示を見やすく するという課題が共通するから,当業者において乙9発明に乙10文献 記載の技術を適用して本件発明を想到することは容易であった。
(原告の主張) ア 乙1文献に基づく拡大先願違反 原告が主張の根拠として挙げる文献(乙2〜7)は,いずれもブラッ クマスクが画素間等からの望ましくない光を遮断するものであることを 説明しているにすぎず,第2の構成が本件出願時における技術常識であ ったことは示されていない。
イ 乙9文献を主引例,乙10文献を副引例とする進歩性欠如 被告は,乙9発明に乙10文献記載の技術を適用することが容易に想 到できると主張するが,乙10文献には第2の構成が示されていないし, 液晶表示装置を構成するカラーフィルター基板においてブラックマスク が常に必要であることも示されていないから,被告らの主張は失当であ る。
(4) 権利濫用の成否(被告らの主張) 原告及びBと補助参加人との間で平成16年4月付けで締結された合意 書(丙1。以下「本件和解合意書」という。)において,原告及びBが本 件特許権を含む19件の特許権及びこれに対応する外国出願・登録特許一 切を補助参加人に無償で移転する旨が合意されている(以下,この合意を 「本件和解」という。)。
補助参加人は,原告及びBに対し,韓国において,本件和解に基づき本 件特許権等に係る特許権移転登録手続等を求める訴えを提起し,最終的に 上告審判決により,その請求を認容する判断が確定した。原告及びBは, 補助参加人に対し,本件を含む特許権の移転登録請求権の不存在の確認等 を求める訴訟(当庁平成22年(ワ)第28813号。以下「前訴」とい う。)を提起したが,これは,韓国における上記訴訟の蒸し返し訴訟であ る。前訴においては,確認の利益を欠く不適法な訴えであるとの判断が確 定したが,本件和解合意書が真正に成立したことは争われていなかった。
本件訴訟は,原告が補助参加人に対して有利な地位に立つために,本件 特許権の移転登録義務を負っているにもかかわらず,移転登録が未了であ ることを奇貨として,補助参加人の顧客を攻撃し,補助参加人を害する不 当な目的で提起されたものであるから,本件請求は権利の濫用に当たり許 されない。
(原告の主張) 本件和解合意書は,原告及びBと補助参加人との間で,対象となる特許 権のライセンス条件等をめぐる交渉中に,原告及びBが補助参加人に,補 助参加人から送付された条項の一部については応じられないとして,条項 案の頁の一部を省いて最終頁に署名押印したものをファックス送信したと ころ,その後1年半にわたるライセンス交渉が行き詰まった状況下におい て,補助参加人の知的財産センター長にすぎない担当者が,突如として, 上記の欠落した頁を無断で補充した上,補助参加人の署名欄に署名して完 成させたものである。したがって,本件和解合意書は真正に成立したもの ではなく,本件和解は成立していない。仮に本件和解が成立しているとし ても,上記の経緯に照らせば,本件和解は,錯誤により無効であるか,詐 欺により取り消されるべきものである。
(5) 損害論 (原告の主張) 被告は業として被告製品を製造・販売し,本件特許権を侵害していると ころ,本件特許権の設定登録日である平成13年6月1日から本件訴えの 提起日である平成25年4月18日までの間に販売された被告製品に対す る特許法102条3項に基づく実施料相当額は,1億円を下らない。よっ て,原告は,被告に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき1億円 及びこれに対する不法行為日以降の日である平成25年4月25日(訴状 送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害 金の支払を求める。
(被告らの主張) 争う。
当裁判所の判断
1 争点(2)(冒認による特許無効の成否)について 事案に鑑み,争点(2)から判断する。
(1) 前記前提事実に後掲証拠(なお,特に断らない限り,証拠の枝番号又は 添付資料等の番号の記載は省略する。以下同じ。)及び弁論の全趣旨を総合 すると,次の事実が認められる。
ア 日立公報の記載(甲7の添付資料4) 日立公報は,応答時間の短い液晶表示装置を提供することを課題とし (段落【0005】),その課題の解決手段として,@「少なくとも一 方が透明な一対の基板,該基板上に形成された電極,前記基板間に挾持 された液晶層と前記基板の外側に偏光板を有し,前記電極を介して液晶 層に電界を印加する電界印加手段を備えた液晶表示装置であって,前記 電極は少なくとも画素部において基板面に平行で,かつ,少なくとも2 方向に電界が印加できるよう構成されていることを特徴とする液晶表示 装置。」(請求項1),A「少なくとも画素部において基板面に平行で, かつ,少なくとも2方向に電界を印加できるよう構成されている電極が, 前記一対の基板のいずれか一方に設けられている請求項1に記載の液晶 表示装置。」(請求項2),B「前記電極は少なくとも画素部において 基板面に平行で,かつ,3方向に電界が印加できるよう構成され,前記 3方向のうちの1方向を基準として他の2方向のなす角度が40度〜5 0度と-40度〜-50度である請求項1〜4のいずれかに記載の液晶 表示装置。」(請求項6)等の発明を開示している。
その作用効果は,基板面に平行な面内で表示画素部の液晶層に対して 少なくとも2方向に電界を印加することによって,高速応答の表示素子 を得ること(段落【0017】),上記の二つの電界の方向のなす角度 を40度〜50度,好ましくは45度とすることによりコントラストを 向上させること(段落【0020】),基板に平行な面内で印加される 一つの電界方向に対し,他の二つの電界方向を40度〜50度と-50 度〜-40度,望ましくは45度と-45度に設定し,画素部の微小な 領域内で液晶の配向方向を反転させることにより,視野角を拡大し,そ の角度依存性の減少を可能にすること(同)などにある。
実施例としては,別紙5の図6に対応する実施例6(段落【004 9】〜【0055】),図7に対応する実施例8(段落【0058】, 【0059】),図8に対応する実施例12(段落【0064】〜【0 070】)等が記載されている。これらのうち,実施例8は,別紙5の 図7(a)及び(b)のような電極パターンで上下基板にそれぞれ1画素分 の電極を形成し,四つの電極に電圧を印加したところ,広い視野角で暗 状態と明状態の最大コントラストが80のものが得られたというもので ある(段落【0058】,【0059】)。
イ 本件明細書の記載(甲2) 本件明細書には,次の趣旨の記載がある。
従来の横電界方式の液晶表示装置の画素電極構造では,プレチルト角 の変化により視角特性が大きく変化することから,良好な視角特性を得 るために,プレチルト角の非常に小さな配向膜(プレチルト角は1度以 下が望ましい。)と液晶を組み合わせて用いる必要がある。他方,現在 最も多く量産されている縦電界方式の液晶表示装置に用いられている配 向膜と液晶のプレチルト角は3〜8度程度である。このような縦電界方 式の液晶表示装置に,プレチルト角1度の配向膜と液晶を用いると,映 像信号配線と画素電極の電界の影響で,リバースチルトドメインが発生 し,画像品位を著しく低下させてしまうことから,横電界方式の液晶表 示装置と縦電界方式の液晶表示装置で,同一の配向膜と液晶を使用する ことは困難である。そのため一つの製造装置で生産する場合,配向膜と 液晶を交換しなければならず,生産性の点で問題となっていた。本件発 明は,上記の問題を解決するものであり,その目的は,縦電界方式と横 電界方式にかかわらず,同一の配向膜と液晶を用いることで,生産性を 著しく向上させることにある(段落【0003】,【0004】)。
上記課題の解決手段として,本件発明の構成要件A〜Eの構成を備え る横電界方式液晶表示装置(正の誘電率異方性液晶(P型LC)を用い るもの)において,構成要件H及びIの構成を採用する(段落【000 6】,【0010】)。
上記の手段を用いることで,画素電極(液晶駆動電極と共通電極)内 で横電界が印加された場合,液晶分子は画素電極内部で左回転と右回転 の二通りの回転運動が発生し,プレチルト角が大きくても視野角の特性 に偏りが発生せず,視野角の広いカラー表示が可能となる。プレチルト 角の制限を受けないことは,従来の縦電界方式で用いていた配向膜や液 晶を使用できることを意味するから,製造ラインの変更をする必要がな く,生産性が低下しない(段落【0011】,【0012】)。
ウ 本件発明の出願及びその後の経緯(甲2,7,10,丙10,35, 36,48,証人B,原告代表者本人) (ア) 本件発明は,弁理士を代理人として付けることなく,原告代表者 を発明者,原告を出願人として,特許出願された。Bは,図面も含め て本件明細書を一人で作成し,本件特許の審査過程においても,原告 代表者の従業者との立場で,原告代表者と共に特許庁審査官との面接 に臨んだ。
また,原告は,別件異議手続で提出した特許異議意見書において, 「甲第2号証(特願平05-279243)(判決注・日立公報)の 画素電極構造は有効画素領域で2方向または3方向の電界を印加する ために4種類以上の電極数が必要となります。……甲第2号証には2 種類だけ画素電極を用いて液晶分子を左回転,右回転の2方向回転さ せる構造に関しては,まったく開示されていない。」と主張していた。
(イ) Bは,補助参加人に対し,早期にIPS方式の液晶パネルを開発 することの重要性を強調するため,「5MASK-ZIGZAG-I PS開発」と題する平成9年1月30日付けの技術報告書を提出した。
その液晶表示装置の構造は,本件発明とほぼ同様のものであるが,B は,その発明者が原告であることや,日本で出願中であることを報告 書中に記載していない。
エ 原告代表者及びBの液晶技術に関する知識・経験(甲7,8,10, 丙4,39,40,45,47,48,56〜75,証人B,原告代表 者本人) (ア) 原告代表者は,大学では機械工学を学び(液晶については学んで いない。),ソニーに入社したが,液晶パネルとは無関係の業務に従 事していた。原告代表者は,昭和56年頃にソニーを退職し,原告で 勤務するようになった。原告の主たる業務は,金型の設計・製造・販 売,自動車用部品及び付属品の製造・販売並びにプレス加工業であり, 液晶技術と直接関連のある業務は行っていない。
原告代表者は,液晶表示装置に関する技術を専門的に研究したり, 技術開発や部品製造等の業務に従事したりした経験はない。原告代表 者が出席したとする学会は本件学会1件のみであり,目を通した論文 は日経エレクトロニクス等の一般誌や新聞類のほか専門的論文である が,専門的論文も全部を理解する能力はない。
(イ) 他方,Bは,ソニー等において液晶パネルの開発業務に従事した 経験を有しており,補助参加人からTFT-LCD技術分野の高級技 術者として液晶パネルの製造工程に関する技術指導を受けたいとの打 診を受け,平成3年5月頃,補助参加人に入社した。Bは,その後, 補助参加人又はその関連会社において,韓国内の研究所や液晶パネル の製造工場で液晶パネルの生産ラインの管理及び改善等の業務に従事 し,参加人に対して種々の技術的提案をする多数の技術報告書を提出 した。
(ウ) 原告代表者とBは,ソニー勤務以来,交友関係にある。
(2) 以上の認定事実を基に,本件発明の発明者について判断する。
ア 原告は,原告代表者が,別紙5の図7(b)の画素電極及び共通電極を 1画素内で屈曲させる電極構成に,図8の複数の画素を一体的に見た場 合に映像信号配線及びカラーフィルターを屈曲させることになる構成を 組み合わせて,本件発明を完成させたと主張する。
しかしながら,原告の提出した原告代表者の陳述書,証言調書等の書 証及び原告代表者の本人尋問中には,上記主張のうち,原告代表者が上 記の図7(b)の電極構成を基に本件発明を完成させたとの陳述・供述は あるものの,上記証拠のいずれを検討しても,これに上記の図8の構成 を組み合わせたとの陳述・供述は見当たらない。なお,上記の図7(b) の電極構成に図8の構成を組み合わせて本件発明を完成させたとの主張 は,本件訴訟において尋問実施後に初めてされたものであって,それま で主張されたこともなかった(当裁判所に顕著である。)。
したがって,本件発明の完成に関する原告の主張は,証拠に基づかな いものであって,そもそも採用し難いものである。
イ 上記の点をおくとしても,仮に原告が主張するとおり,原告代表者が 日立公報に基づきこれを改良する形で本件発明を着想したということが 事実であるとすれば,原告代表者は,その改良点等(後記(ア)〜(オ)の 電極パターンの構成,画素電極の屈曲角度,映像信号配線の屈曲,ブラ ックマスクの屈曲及び色補償)につき,次のとおり,少なくとも当業者 に匹敵するほどの技術的能力を有していたことになる。
(ア) まず,日立公報の実施例8及び図7(b)の記載から本件発明を着 想するためには,少なくとも,図7(a)の電極パターンとは切り離し て同(b)の1画素分の電極のみで画素を構成した場合でも,画素部の 微小な領域内で液晶の配向方向を反転させることにより,図7(a)を 組み合わせた構成と同様に,視野角を拡大し,角度依存性を減少させ ることが可能であると予想できるだけの技術的能力を有していること が必要である。
すなわち,日立公報の実施例8は,図7(a)及び(b)の電極パター ンを上下基板にそれぞれ1画素分形成する構成で電極に電圧を印加し たところ視野角等において良好な結果が得られたとするものであり, 図7(a)の電極パターンから切り離して同(b)の1画素分の電極のみ で画素を構成した場合に同様の結果が得られることについては記載も 示唆もない。したがって,少なくとも液晶表示装置に関し当業者と同 水準の知識・経験を有しない者においてその結果を的確に予想するこ とは困難といわざるを得ない。そのことは,原告が別件異議手続にお いて,日立公報には液晶駆動電極と共通電極の2種類の画素電極のみ を用いて液晶分子を左回転,右回転の2方向に回転させる構造につい ては全く開示されていないと主張していたこと(前記(1)ウ(ア))から もうかがわれるところである。
なお,原告は,日立公報の請求項2の文言から,図7(b)のみを切 り離した構成が把握できる旨主張する。しかしながら,請求項2の発 明は,「……前記一対の基板のいずれか一方に設けられている請求項 1に記載の液晶表示装置。」とあるとおり,請求項1の一対の基板の 存在を必須の構成とするものであり(そのことは,請求項2の発明に 対応する実施例6及び12に関する説明中に対向基板ないし上下基板 についての言及があることからも明らかである。段落【0051】, 【0067】参照),その一方のみを切り離した電極パターンの作用 効果については記載も示唆もないから,少なくとも当業者と同水準の 知識・経験を有しない者においてこれを予想するのは困難といわざる を得ない。
(イ) 画素電極を液晶配向方向に対し1画素内で屈曲させる角度(液晶 配向方向に対するもの)について,日立公報の請求項6及び段落【0 020】には±40度〜±50度,望ましくは±45度と限定され,図 7(b)にも同様の構成が示されている(なお,請求項6には,電界を 印加する方向としての数値が記載されているが,それが上記の屈曲角 度と一致することは,図7(b)から明らかである。)。この記載に接 した当業者は,請求項において上記のような数値限定がある以上,そ の限定を外れた数値では一般的に良好な結果が得られないと予想する ものと考えられる。
他方,上記の屈曲角度につき,証拠(乙1,丙4の添付書類5)に よれば,@Cが平成8年3月頃に着想した発明においては±15度の 構成とされていること,A乙1文献(同月27日出願)の液晶表示装 置においても±0度〜±30度の構成が好ましいことを前提とする記載 がされていること(段落【0006】)が認められ,本件発明におけ る±1度〜±30度という数値限定には,液晶表示装置分野の当業者に おいて想到するだけの技術的意義があることが推認される。
そうすると,当業者と同水準の知識・経験を有しない者において± 1度〜±30度という屈曲角度を着想することは困難というべきであ る。
(ウ) 日立公報には,映像信号配線を屈曲させる構成は,実施例12 (別紙5の図8)にしか示されていないところ,これは1画素内にお いて画素電極を屈曲させる構成ではない。したがって,当業者と同水 準の知識・経験を有しない者において,画素電極を1画素内で屈曲さ せる構成と実施例12の構成を組み合わせることを着想し得たとは認 め難い。
(エ) 日立公報には,映像信号配線と同じ角度でブラックマスクを屈曲 させる構成は開示されておらず,かえって,電極によって形成される 画素の形状が平行四辺形であるのに対し,ブラックマスク(遮光層) の形状が六角形である実施例が記載されている(別紙5の図6,段落 【0051】,【0067】)。また,証拠(丙4)によれば,Cが 平成8年3月頃に作成した補助参加人宛ての報告書(丙4の添付書類 5)においても,映像信号配線の屈曲に合わせてブラックマスクを屈 曲させる構成とはされていないことが認められる。さらに,原告が本 件において,1画素内で画素電極等が屈曲している場合にブラックマ スクを映像信号配線と同一の角度で屈曲させる第2の構成が本件出願 時における技術常識であったことは示されていないと主張しているこ とは,当裁判所に顕著である(前記第2の3(3)(原告の主張)ア参 照)。
したがって,当業者と同水準の知識・経験を有しない者において, 日立公報の記載を基に,図7(b)の記載からブラックマスクを映像信 号配線と同一の角度で屈曲させる構成を着想し得たとは認め難い。
(オ) 日立公報中に記載があるのは,視野角の拡大,角度依存性の減少 及びコントラストの向上という作用効果であって,色補償(液晶分子 を異なる方向から見ると色が異なって見えるが,1画素内で電極を屈 曲させることで,それが双方打ち消し合ってどこからでも同じ色に見 えること)についての記載はない。また,証拠(丙4の添付書類5・ 6,証人C)によれば,Cにおいても,具体的な液晶表示装置の試作 品を解析することで初めて色補償の課題を把握したことが認められる。
したがって,具体的なサンプル等に接することなく,日立公報の記 載から上記の色補償の課題を発見し,1画素内で電極を屈曲させる構 成(別紙5の図8の複数の画素を1画素とする構成)によりその課題 を解決できることを着想するためには(原告代表者は,本人尋問にお いて,そのことを着想したと供述する。),当業者と同水準かこれを 上回る程度の技術的能力を有している必要があるというべきである。
ウ 以上のとおり,仮に原告主張のとおり,原告代表者が日立公報を基に 本件発明を着想したとすれば,原告代表者は液晶表示装置に関する当業 者の知識・経験に優るとも劣らぬ技術的能力を有していたことになる。
しかるところ,前記(1)エ(ア)の認定事実によれば,原告代表者は,液 晶表示装置に関する技術を専門的に研究したり,技術開発や部品製造等 の業務に従事したりした経験はなく,原告代表者が本件出願日当時,液 晶表示装置について当業者に匹敵するほどの技術的能力を有していたと は到底認めることができない。このような原告代表者において,本件学 会に出席して日立公報や関連する論文,雑誌及び新聞の類に目を通して 本件発明を完成したとするのは不自然というほかはない。
加えて,原告代表者が日立公報を基に本件発明を着想したとする原告 の主張については,その裏付けとなる客観的証拠(例えば,当時入手し た特許公報等の資料,Bに説明した際に作成したとするメモ等)が全く 示されていない。また,本件における原告代表者の本人尋問の結果及び Bの証言からは,原告代表者が本件学会に出席して高視野角の拡大とい う技術に強い感銘を受け,これをBに伝えた経緯は強調されているもの の,原告代表者において,いかにすれば日立公報に開示された発明(原 告の主張によれば第1の構成を有するとされるもの)との差別化を図る ことができるかという,当然検討されてしかるべき中心的テーマについ て,原告がいかなる説明をしたのかも明らかではない。
以上のような不自然さは,本件発明が原告代表者以外の,少なくとも 当業者と同水準の知識・経験を有する者によって着想されたことを推認 させる事情ということができる。
エ 他方,前記(1)エ(イ)認定のBの液晶技術に関する経歴・経験及び補助 参加人に提出した技術報告書の記載内容等に照らせば,Bは,本件出願 日当時,液晶表示装置に関する技術や製造方法等に精通し,少なくとも 当業者と同水準の知識・経験を有していたものと認められる。
また,前記(1)ウ(ア),エ(ウ)のとおり,本件明細書は,原告代表者と 長年の付き合いのあったBが,図面も含めて全てを作成したものである。
そして,証拠(甲2,丙4の添付書類1,丙39)によれば,本件明 細書の図1,3及び7のいずれの図面においても,映像信号配線に隣接 する配線が画素電極(液晶駆動電極)ではなく共通電極とされていると ころ(第3の構成),Bは,画素電極が映像信号配線と隣り合うパター ンと,共通電極が映像信号配線と隣り合うパターンとが比較検討されて いる技術論文に基づき,後者の有利性を平成7年11月2日付けの技術 報告書に報告しており,第3の構成の有利性を認識していたことが認め られる。
さらに,前記(1)ウ(イ)のとおり,Bが補助参加人に平成9年1月30 日付けで提出した「5MASK-ZIGZAG-IPS開発」と題する 技術報告書(丙36,48)の内容は,ほぼ本件発明と同様のものであ るところ,Bは,同報告書中に,同発明が原告代表者において着想した ものであることや,日本で出願中であることを記載していない。このこ とは,Bにおいて本件発明の発明者が真に原告代表者と考えていたとす れば合理的な説明が困難なものである。
これらは,いずれも本件発明がBによって着想されたことを推認させ る事情ということができる。
オ 以上の事情を総合考慮すれば,第1の構成及び第3の構成が本件発明 の特徴的部分といえるかはさておき,原告代表者が第1〜第3の構成を 着想したとはいえず,少なくとも第2の構成及び第3の構成を着想した のはBと認めるのが相当である。
よって,本件特許は,その発明について特許を受ける権利を有しない 者の特許出願に対してされたものと認められる。
(3) なお,被告らは,第1の構成も本件発明の特徴的部分であるところ,そ の発明者はCであって,Cの発明がBに伝えられ,それが本件発明として 特許されたのであるから,Cは少なくとも本件発明の共同発明者であると 主張する。
しかしながら,本件において少なくとも第2の構成が本件発明の特徴的 部分であることは争いがないところ,上記(2)のとおり,その構成の発明者 は原告代表者ではなくBと認めるべきであるから,それ以上に,第1の構 成が本件発明の特徴的部分に当たるか否か,これを着想したのがCである か否かは本件の結論に影響しないと解される。
(4) 以上のとおり,原告代表者は本件発明の発明者ではないと認められ,本 件特許は,その発明について特許を受ける権利を有しない者の特許出願に 対してされたものとして,無効理由を有し,原告は被告に対し本件特許権 に基づく権利行使をすることができないと判断するのが相当である(特許 法104条の3第1項,123条1項6号)。
2 結論 よって,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は理由がな いから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
追加
(別紙1)被告製品目録1REGZA形名「55Z7」2REGZA形名「47Z7」3REGZA形名「42Z7」4REGZA形名「47ZT3」5REGZA形名「42ZT3」6REGZA形名「42ZP3」7REGZA形名「37ZP3」8REGZA形名「32ZP2」9REGZA形名「26ZP2」10REGZA形名「26B3」11REGZA形名「32HB2」12REGZA形名「32R3」13REGZA形名「32RE2」14REGZA形名「26R3」15REGZA形名「22R3」16REGZA形名「19RE2」17REGZA形名「19RS2」18REGZA形名「32RB2」19REGZA形名「26RB2」 (別紙2)被告製品の構成a被告製品は,IPS(In-PlaneSwitching)方式を採用する液晶テレビである。液晶パネルの駆動方式の一つであるIPS方式は,横電界により液晶分子をガラス基板に対して常に水平面内で回転させる方式である。同方式は,液晶分子が斜めに立ち上がることがないため,視野角による光学特性の変化が少なく広視野角が得られることを一特徴とする。
b被告製品は,色フィルター基板とTFT基板の間に液晶組成物を挟んだ液晶モジュールを備える。
c被告製品の色フィルター基板は,各画素に,くの字形の赤(R),緑(G)又は青(B)のいずれかの色フィルターが設けられ,色フィルターと同じ角度でくの字形に折れ曲がったブラックマスクを有する。
d被告製品のTFT基板は,色フィルター基板と向き合う側に,画素電極1(液晶駆動電極。以下同じ。)及び画素電極2(共通電極。以下同じ。)からなる一対の画素電極,走査線,映像信号配線及びTFTが形成されており,走査線及び映像信号配線は複数,規則的に配置されている(別紙3の1(1)(2)の写真)。画素電極1はTFTのドレイン電極,走査線はゲート電極,映像信号配線はソース電極と接続されている。
e被告製品のTFT基板に形成された画素電極1及び画素電極2は,それぞれ短冊状の形状であって一対の電極をなしており,互いに長辺方向が並行である。画素電極2は,共通電極の一部を構成し,画素の画素電極2が映像信号配線の両側に配置されている。
f被告製品のTFT基板に形成された画素電極1及び画素電極2並びに映像信号配線は,各画素内でくの字形に折れ曲がった形状をしており,画素の長さ方向に対する傾斜角は約±15度である。
(別紙3)被告製品の写真1被告製品Aの平面写真(1)画素電極2(共通電極の一部)隣接画素の画素電極2映像信号配線画素電極1(2) 2被告製品Bの断面写真共通電極の一部共通電極の一部 (別紙4)本件発明の図面【図12】2映像信号配線5画素電極(液晶駆動電極)6画素電極(共通電極の一部)12カラーフィルターのブラックマスクl共通電極の幅,画素電極の幅W映像信号配線の幅L画素電極間のギャップBMカラーフィルターのブラックマスクの幅 (別紙5)日立公報の図面1,2,3,4…電極,5…液晶分子,6…ガラス基板,7,7a,7b…ドレイン電極,8,8a,8b…ゲート電極,9,9a,9b,9c,9d…ソース電極,10,10a,10b,10c,10d…薄膜トランジスタ,11…コモン電極,12a…アモルファスシリコン,12b…オーミック接合部,13…ゲート絶縁膜,14…保護膜,15…絶縁層,16a…上基板側の偏光板の偏光軸の方向,16b…下基板側の偏光板の偏光軸の方向,17…遮光層。
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官 清野正彦
裁判官 植田裕紀久
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