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事件 平成 25年 (ワ) 32721号 特許権移転登録手続等請求事件
三重県桑名市<以下略>
原告A 三重県桑名市<以下略>
原告 株式会社ISOエンジニアリング
上記両名訴訟代理人弁護士 川上明彦 川上敦子 原武之 岡部真記 鈴木猛 西脇健人 名古屋市<以下略>
被告中部資材株式会社
同訴訟代理人弁護士 異相武憲 村瀬俊高 田中伸一郎 松野仁彦
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2014/12/18
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 原告らの請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
請求
1 原告A 1 (1) 主位的請求 被告は,原告Aに対し,別紙特許目録記載の特許権の移転登録手続をせよ。
(2) 二次的請求 ア 被告は,別紙特許目録記載の特許権に基づいて,原告Aが別紙方法目録 記載の方法を用いてコンクリート製サイロビンの内壁の検査及び補修工事 をすることを差し止める権利を有しないことを確認する。
イ 被告は,原告Aに対し,平成22年7月2日から支払済みまで1年当た り4200万円及びこれに対する本訴状送達日の翌日から支払済みに至る まで年5分の割合による金員を支払え。
(3) 三次的請求 被告は,原告Aに対し,2億5500万円及びこれに対する平成22年7 月2日から支払済みに至るまで年6分の割合による金員を支払え。
2 原告株式会社ISOエンジニアリング 被告は,別紙特許目録記載の特許権に基づいて,原告株式会社ISOエンジ ニアリングが別紙方法目録記載の方法を用いてコンクリート製サイロビンの内 壁の検査及び補修工事をすることを差し止める権利を有しないことを確認する。
事案の概要
本件は,原告らにおいて,原告A(以下「原告A」という。)が「コンクリ ート製サイロビンの内壁の検査方法及び補修方法」に関する発明をしたところ, その発明に係る特許を受ける権利を被告に移転していないのに,被告が特許権 者として設定登録されているなどと主張して,@原告Aが,主位的に,被告に 対し,上記発明が原告Aの自由発明であることを理由に,平成23年法律第6 3号による改正後の特許法74条の類推適用又は不当利得返還請求権に基づき, 原告Aに対する別紙特許目録記載の特許権(以下「本件特許権」といい,本件 特許権に係る特許を「本件特許」という。)の移転登録手続を求め,二次的に, 本件特許権が冒認出願によるもので無効であることを理由に,原告Aが別紙方 2 法目録記載の方法を用いてコンクリート製サイロビンの内壁の検査及び補修工 事をすることを差し止める権利を有しないことの確認と,不当利得返還請求権 に基づき,本件特許権の設定登録の日である平成22年7月2日から支払済み まで独占の利益相当額として1年当たり4200万円及びこれに対する訴状送 達の日の翌日から支払済みに至るまで民法所定の年5分の割合による遅延損害 金の支払をそれぞれ求め,三次的に,上記発明が職務発明であり原告Aが特許 を受ける権利を被告に移転したことを理由に,相当な対価額の一部として2億 5500万円及びこれに対する平成22年7月2日から支払済みに至るまで商 事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求め,A原告株式会社IS Oエンジニアリング(以下「原告会社」という。)が,被告に対し,本件特許 権が冒認出願によるもので無効であることを理由に,原告会社が別紙方法目録 記載の方法を用いてコンクリート製サイロビンの内壁の検査及び補修工事をす ることを差し止める権利を有しないことの確認を求める事案である。
1 前提事実(当事者間に争いがないか,各項末尾掲記の証拠及び弁論の全趣旨 により容易に認められる事実) (1) 被告は,建築,土木工事,ビルメンテナンス,タンククリーニング業等 を業務の目的とする株式会社である。
原告Aは,昭和50年4月に被告に入社して,平成8年2月にプラント事 業部営業部長,平成9年12月にプラント事業部部長になり,平成16年6 月に従業員兼務取締役に就任し,平成22年6月に常務取締役になり,平成 24年6月に任期満了により取締役の地位を喪失し,その後,原告会社を設 立した。
(2) 被告は,平成22年2月24日,原告Aを発明者として,本件特許に係 る特許出願(以下,この出願を「本件特許出願」という。)をし,同年7月 2日,特許権の設定の登録がされた。本件特許の特許請求の範囲の請求項1 の記載は,本判決添付の特許公報の該当項記載のとおりである(以下,この 3 発明を「本件発明」という。)。
(甲10) (3) 被告は,本件発明を実施しており,原告らに本件発明を実施する権原は ない旨主張している。
(4) 被告の平成22年2月1日付け社員就業規則15条は,「社員が,職務 に関する著作,発明,考案をした場合は,その著作権,特許権,実用新案権 等の無形財産権は,すべて会社に帰属するものとする。」旨定めている。
(甲6の1)2 争点及び当事者の主張 本件の主たる争点は,原告Aが本件発明の発明者かという点であり,これに関する当事者の主張は,以下のとおりである。
(原告らの主張) 原告Aは,昭和53年ころから平成22年にかけて,コンクリート製サイロビンの内壁の検査方法及び補修方法に関し,個人的に本件発明を行い,これを被告の事業に利用させていた。このことは,以下の各事実から明らかである。
(1) 原告Aの陳述内容 原告Aは,被告における職務に従事する過程で,取引先からコンクリート 製サイロビンの検査及び補修を効率的に行いたい旨の要望を受け,被告から 具体的な業務命令を受けることなく,昭和の終わりころ,コンクリート製サ イロビンの内壁に石鹸水を塗った状態で減圧し,泡によって要補修箇所を洩 れなく特定する方法を考えつき,自宅で食品保存用のタッパーを用いて実験 を行い,一級建築士のH(以下「H」という。)から,コンクリート製サイ ロビンはマイナス700mmAq程度までなら減圧に耐えられることなどの 技術的教示を受け,取引先のサイロビンでの実験等により最適な減圧レベル を試行錯誤で確かめ,マイナス450mmAq程度まで減圧するのが有効で あることを突き止めた。原告Aは,被告からの業務指示を受けずに,一人で 4 取引先現場における補修工事のなかで部分補修の有効性を確かめ,本件発明 を具体化する「サイロ気密補修工事 施工計画書」マニュアルを作成した。
(2) 本件特許出願の願書に記載した発明者の氏名 原告Aは,本件特許の発明者として特定されている。本件特許出願準備段 階において,被告が本件特許出願を依頼していた弁理士が当初願書の原案に 発明者として無関係な者の氏名を記載していたため,原告Aが発明者である 自らの名前を記載するよう指示した経緯がある。
(3) 発明者でなければ技術的説明が難しい事項 本件発明につき,@サイロビン下部に垂れ幕を設置した理由及びAサイロ ビン内壁を高圧水により洗浄する技術を開発した経緯は,発明者でなければ 説明できない事項であり,原告Aでなければこれを説明できない。すなわち, @については,原告Aが,減圧チェックによる補修工法を検討するなかで, サイロビン下部の大型の換気扇による排気の影響により,減圧チェックの際 に減圧の効果がプラスマイナスで相殺されてしまい,サイロビン下部の要補 修箇所の判定がうまくできないのではないかと考え,その対策として,サイ ロビン下部の垂れ幕を設置することとしたものである。また,Aについては, 原告Aが,補修の工程において,サイロビン内壁に付着した穀物ダストや油 分等を高圧洗浄によって確実に取ることができることを確認し,水量や乾燥 方法についてテストを重ねて洗浄技術を開発したものである。
(4) 被告の主張について 被告は,本件発明は被告が昭和55年以前に開発し継続的に実施してきた 工法である旨主張するが,被告が昭和55年にした特許出願に係る工法は, くん蒸用設備を用いた減圧方法その他作業内容等において,本件発明と大き く異なり,昭和55年の時点で本件発明が完成していたとはいえない。
原告Aは,昭和50年に被告に入社し,港工場技術部技術課に配属され, 昭和53年ころから,港工場の工作工場において,コンクリート製サイロビ 5 ンのための材料の付着力や圧力について検討しており,コンクリート製のテ ストピースの内部をマイナス圧にしたときに水分が内部にしみ出る現象を発 見し,同様の方法でコンクリートの検査ができると考えて減圧の程度などを 実験してその結果を当時の上司であったBらに報告したもので,その後,被 告は,原告Aの発案と実験データをもとに,原告Aに説明をしないまま,四 港サイロ株式会社での上記特許出願に係る工法によるサイロビン補修工事や 上記特許出願をしたものと考えられる。
(被告の主張) 本件発明は,昭和50年ころ,当時の被告代表者であったCが基本的な内容を指示し,被告従業員であったBその他技術者が同指示に基づいて開発し,具体的に確定したものである。被告は,昭和55年以前に減圧チェックによるコンクリートサイロ気密補修工法をまとめ,大成建設株式会社(以下「大成建設」という。)の下請けとして,三重県四日市市千歳町所在の四港サイロ株式会社のサイロ補修工事をした際に,同工法を実施した。また,被告は,昭和55年8月26日,大成建設と連名で,本件特許に係る工法の中核をなす「減圧による空気もれ検査法」について,発明者をD及びBと特定して特許出願をした。
その後,被告は,今日に至るまで,本件発明を実施し,サイロの気密補修工事を施工してきた。
このように,本件発明は,被告が長年に亘って研究,開発してきた工法であるため,本件特許出願の準備段階において発明者の個人名を挙げることができなかったところ,原告Aは,本件特許出願当時,被告プラント部の部長であったことから,便宜的に発明者として願書に記載されたに過ぎない。すなわち,被告プラント部内では,当初サイロビンの補修業務を専門に担当していたE及びFを発明者とすることを提案したが,原告Aが自らを発明者として記載するように指示し,そのまま特許出願されたものである。
原告らは本件訴訟において本件発明の特定さえ誤っているのであって,原告 6 Aが本件発明の発明者であるはずがない。
当裁判所の判断
1 本件発明の特徴的部分について 証拠(甲10,乙8)によれば,本件発明は,「コンクリート製サイロビン の内壁の補修において,内壁の損傷箇所を特定できる検査方法を開発し,かつ その部分のみを重点的に補修できる方法を開発する。上記検査方法と補修方法 を密接にリンクさせて,最終的にコンクリート製サイロビンの気密状態を,築 造当初の等級に保持できるようにする。」(本件特許出願の願書に添付した明 細書の発明の詳細な説明の段落【0012】)という課題を解決するためのも のであって,サイロビンの内部を減圧して内壁の石鹸水の泡により重点補修箇 所を特定するためのステップ(同段落【0014】,【0018】ないし【0 020】。以下「減圧チェックステップ」という。),サイロビンの内壁の重 点補修箇所に気密補修を行うためのステップ(同段落【0015】。以下「気 密補修ステップ」という。),及び気密補修後に気密テストを行い,補修が完 全でない場合には減圧チェックステップに戻り,チェック洩れの箇所を重点的 に補修することができるようにするステップ(同段落【0016】,【002 1】ないし【0023】。以下「気密テストステップ」という。)を有し,そ れぞれのステップの具体的実施方法を詳細に開示していること(同段落【00 13】,【0017】)に特徴があるということができる。
2 原告Aの発明者性に関する原告らの主張について 原告らは,本件発明の発明者について,原告Aの自由発明であり,そうで ないとしても職務発明であるとして,原告Aが単独の発明者であると主張する 趣旨であると解される。
そこで,以下,原告らの主張の根拠である,ア 原告Aの陳述内容,イ 本件特許出願の願書に記載した発明者の氏名,ウ G(以下「G」という。) の陳述内容,エ 発明者でなければ技術的説明が難しい事項などについて検討 7 する。
(1) 原告Aの陳述内容について 原告らは,原告Aの陳述については,陳述書(甲11,17)を提出して 書証の申出だけをするところ,そのうちの甲17については,審理の経過に 照らすと,時機に後れて提出したものということもできるが,この点を措く としても,上記陳述書の内容から原告Aが発明者であると認定することは到 底できない。
ア 陳述書(甲11)において,原告Aは,減圧チェックステップを発明し た経緯につき,昭和の終わりころ,被告プラント部の営業担当の職務に就 いていたとき,取引先の担当者の話を受けて,コンクリート製サイロビン の内壁に石鹸水を塗って内部を減圧した場合,要修正箇所から気泡が発生 するのではないかと考え,自宅で食品保存用のタッパーを用いて実験する などして要修理箇所を特定する新たな工法を見いだしたこと,Hからコン クリート製サイロビンはマイナス700mmAq程度までなら減圧に耐え られることなどの技術的教示を受け,取引先のサイロビンでの実験等によ り最適な減圧レベルを試行錯誤で確かめ,マイナス450mmAq程度ま で減圧するのが有効であることを突き止めたことなどを陳述する。また, 原告Aは,気密補修ステップを発明した経緯につき,被告からの業務指示 を受けずに,一人で取引先現場における補修工事のなかで部分補修の有効 性を確かめていったなどと陳述する(なお,原告Aは,気密テストステッ プを発明した経緯については何ら陳述しない。)。
しかしながら,証拠(乙8)によれば,減圧チェックステップについて は,被告及び大成建設が昭和55年8月26日にD及びBを発明者として 特許出願している事実が認められ,かかる発明者の特定は,Dが上記特許 出願に係る発明をした経過について所属する大成建設に対して報告した書 類(乙7)や本件発明の特徴的部分全体をほぼ実施する内容である被告の 8 昭和61年1月23日付け施工計画書において主任技術者がBと記載されていること(乙9)によって裏付けられているのであって,原告Aの上記陳述内容はこれらに反する。また,気密補修ステップについては,何ら具体的な補修方法に係る着想の経緯を陳述するものではない。
イ 原告らは,被告による上記ア記載の証拠の提出を受けて,原告Aの陳述書(甲17)を追加提出し,これにおいて,原告Aは,昭和50年に被告に入社し,港工場技術部技術課に配属されたが,昭和53年ころから,港工場の工作工場において,コンクリート製サイロビンのための材料の付着力や圧力について検討していて,コンクリート製のテストピースの内部をマイナス圧にしたときに水分が内部にしみ出る現象を発見し,同様の方法でコンクリートの検査ができると考えて減圧の程度などを実験してその結果を当時の上司であったBらに報告したところ,被告は,原告Aの発案と実験データをもとに,原告Aに説明をしないまま,四港サイロ株式会社でのサイロビン補修工事や特許出願をしたものと考えられるなどと陳述する。
しかしながら,原告らは,訴状において,平成2年ころから平成22年にかけて原告Aが個人的に本件発明をしたなどと主張していたにも関わらず,被告による証拠提出を受けて,原告Aの記憶違いであったなどとして,昭和53年ころに本件発明をしたと訂正するなどと主張を変遷させているのであって,原告Aが真の発明者であれば,昭和50年に被告に入社後,昭和53年ころに本件発明に係る減圧チェックステップを着想したのか,平成2年ころに本件発明の着想を得たのかという重要な点に関して記憶違いをするはずがないから,このような記憶違いをしていたなどとする原告Aの陳述内容は,採用することができない。さらに,原告Aが本件発明の単独発明者であるとしながら,原告Aの知らない間に,本件発明の減圧チェックステップが取引先で実施され,特許出願までされたという陳述内容は,あまりにも不自然である。
9 ウ 原告らは,原告Aの陳述内容を裏付ける証拠として,Hの陳述書(甲1 4)を提出するが,Hは,本件特許の関係で原告Aにコンクリート製サイ ロビンの減圧に関する助言を行った状況についてはっきりとした記憶はな いが,原告Aから昭和の終わりころから平成の初めころ,コンクリート製 サイロビンの設計や構造に関する質問を受けて助言をしたことがあった旨 述べるにとどまり,これをもって原告Aが本件発明の発明者であることの 裏付けとすることはできない。かえって,被告において昭和55年ころに は減圧チェックステップが実施されていたと認められることに照らすと, 原告AがHの助言を受けて減圧チェックステップを発明したというのは, Hの陳述内容,特に原告Aに対する助言をした時期に照らして不自然であ る。なお,原告Aは,Hから助言を受けた時期が昭和61年以降であると も述べる(甲17)が,そうであるとすれば,原告Aは,コンクリート製 サイロビンの構造や強度に関する専門的知識はなかった(甲11)という のであるから,この点においても,原告Aが減圧チェックステップを発明 したとは考え難い。
また,原告らは,原告Aの陳述内容を裏付ける証拠として,「サイロ気 密補修工事 施工計画書」(甲8)を提出し,これは原告Aが被告の事業 に本件発明を利用可能なように作成させた施工計画書である旨主張するが, これを認めるに足りる証拠はない上,同施工計画書はその作成時期ですら 不明であり(もっとも,表紙の記載によれば,平成元年以降に作成された ものであると考えられるから,乙9より後に作成されたものであると考え られる。),原告Aが発明者であることの根拠となるものではない。
エ そうであるから,原告Aの陳述内容は,採用することができない。
(2) 本件特許出願の願書に記載した発明者の氏名について 証拠(乙6ないし9)によれば,本件発明のうち減圧チェックステップに ついては昭和55年以前に発明され,本件発明の特徴的部分全体についても 10 昭和61年ころには被告においてほぼ実施されていたと認めることができる ところ,本件特許出願は平成22年であり,昭和61年ころから25年間程 度経過していることとなる。原告Aは,本件特許出願当時,被告プラント部 の部長であったもので,便宜的に発明者として願書に記載されたに過ぎない との被告の主張は,上記約25年間の期間の経過に鑑みれば,合理的である し,減圧チェックステップに係る昭和55年の特許出願の発明者がD及びB と特定されていたこと(乙8),及び本件特許出願時において被告プラント 部内でサイロビンの補修業務を専門に担当していたE及びFを発明者とする ことを検討した経過が認められること(乙1)によって一応裏付けられてい る。そうであるから,本件においては,本件特許出願の願書に記載された発 明者が原告Aと特定されていたことをもって,原告Aが本件発明の発明者で あると認めることはできない。
(3) Gの陳述内容について 原告らは,Gの陳述についても,陳述書(甲16)を提出して書証の申出 だけをするところ,これは,審理の経過に照らすと,時機に後れて提出した ものということもできるが,この点を措いて,念のためその内容について検 討する。
Gは,担当が違うことから,減圧チェック工法がいつ頃開発されたのか良 く分からず,開発経緯の詳細は知らないが,原告Aが入社当初からコンクリ ート製の実験マスを用いて気密補修に用いる材料の強度や劣化状況に関する テストを実施していたことや減圧チェックに関する技術開発や営業拡販のほ とんどを主として担当していたことは知っていたし,原告Aが主となって減 圧チェック工法を開発したと聞いている旨陳述するが,原告Aが本件発明を したことに関する立証としては極めてあいまいな内容であって,採用するこ とができない。なお,Gは,被告が取得した特許権で発明者が実際の発明者 と異なるということは聞いたことがないとも陳述するが,前記 (2)の認定, 11 特に減圧チェックステップに関する昭和55年の特許出願の発明者がD及び Bと特定されていたことに照らすと,上記陳述内容も原告Aが本件発明の発 明者であることの根拠となるものではない。
(4) 発明者でなければ技術的説明が難しい事項について 原告らは,@サイロビン下部に垂れ幕を設置した理由及びA高圧水洗浄技 術を開発した経緯は,発明者でなければ説明できない事項であると主張する。
しかしながら,@については,その主張の趣旨が判然としないし,Aについ ては,本件特許出願の願書に添付した明細書の記載等に照らして,発明者で なければ技術的説明が難しい事項であるとは認められない。原告らの主張は, 採用することができない。
(5) 原告らのその余の主張について さらに,原告らは,昭和55年ころないし昭和61年ころの時点では本件 発明は完成していなかったなどと縷々主張し,弁理士の意見書(甲15)や 原告Aの陳述書(甲17)を提出するが,いずれの主張も,本件発明(特許 請求の範囲)の特定事項について述べるものでないか,又は明細書の記載等 に照らして本件発明の発明者でなければ技術的説明が難しい事項であるとは 認められない。なお,原告らの主張が,原告Aは本件発明に係る具体的工法 の技術改善に関与したとの趣旨をいうものであると解するとしても,前記 (1)記載のとおり,これに係る原告Aの陳述内容が採用できない以上,この ような事実を認めるに足りる証拠がない。原告らの主張は,採用することが できない。
(6) そうすると,上記の諸点から原告Aが本件発明の発明者であると認める ことはできず,他にこれを認めるに足りる的確な証拠もない。
3 以上のとおりであるから,原告らの請求は,全て前提を欠き,その余の点に つき判断するまでもなく理由がない。
よって,原告らの請求をいずれも棄却することとして,主文のとおり判決す 12 る。
追加
13 (別紙)特許目録特許番号特許第4540131号発明の名称コンクリート製サイロビンの内壁の検査方法及び補修方法出願日平成22年2月24日登録日平成22年7月2日以上14 (別紙)方法目録@サイロビンの減圧チェックを行うための事前準備・サイロビンの内部を空にする。
・サイロビン上に足場を仮置きする。
・サイロビン下マンホールの開放・サイロビン下排出シュート(気密ゲート含む)の取り外し,サイロビン下コンベヤシュート部に養生をする。
・サイロビン上投入シュート(テレスコ)縁切りする。
・サイロビン上マンホール取り外す。
・サイロビンの上に足場投入用ウインチ・架台を段取りする。
・サイロビンの作業用足場の設置を行う。
・足場仮設完了後,サイロビン下シュート部にダスト飛散防止用養生を行う。
・サイロビン下マンホール口を利用して排気用ファンを取り付け,ダクトを屋外まで伸ばす。
・サイロビンの内壁に付着している穀物・ダストを清掃する。
・サイロビンの内壁を高圧水で洗浄する。
Aサイロビンの気密補修前に気密テストを行う。
・サイロビン上マンホール・シュート口・燻蒸バルブを閉とする。
・サイロビン下マンホール・排出口を閉とする。
・サイロビンの燻蒸設備を使用して気密テスト実施,サイロビンのサイロ下バルブ開及び大気取入れバルブ開とする。
・サイロビン下の燻蒸配管にマノメーターを取り付ける。
・燻蒸ブロアーを運転し,サイロビンの内部をマノメータで+500mmAq以上15 まで加圧されるまでブロアーを運転する。
・サイロビン内圧が+500mmAqに下がるのを待って20分間でどこまで下がるか記録を取り,サイロビンの老朽化状態を把握する。
減圧チェック(サイロビンの内部を減圧して重点補修箇所をチェック)の実施・サイロビン下マンホール・サイロビン下排出口を閉鎖する。
・サイロビン上投入口目クラ取付。
・サイロビン下燻蒸バルブ閉。
・サイロビン上燻蒸バルブ閉。
・大気放出口バルブ閉。
・大気取入れバルブ閉。
・補修サイロビンの上か下の燻蒸配管にマノメーターを設置する。
・サイロビン上マンホールから作業者がサイロビンの内部に入場。石鹸水段取りする。
・入場後サイロビン上マンホールは仮置きにて閉とする。
・施工外のサイロビンを循環できるようにバルブ操作をする。
・燻蒸ブロアー運転開始。
・サイロビンのバルブを操作してサイロビンの内部を減圧して水マノメータで水柱高が-200〜-600の間の値(400mmAq〜450mmAq)にする。
・サイロビンの内壁に石鹸水を塗布し,損傷箇所をマーキングする。
・マーキングした破損箇所を測定して写真,図面により記録を作成する。
B減圧チェックの測定結果をもとに補修仕様を決定し,マーキング箇所に重点補修を実施する。
【補修箇所の下地処理の実施】・マーキング部分についてジャンカ部分・鉄筋の錆による爆裂部分・クラック部16 分についてハツリ・Vカット・ケレンを施工する(クラック部分はクラックの深さによりVカットの深さ・幅を決める。)。
・ホッパー取り付け部のコンクリート部に浮きがないかを打診で再度確認をする。
・ジャンカ部分はハツリ・鉄筋錆ケレン・清掃。
・下地処理した補修箇所にサンダー掛けを実施して,面処理する。
・補修箇所下地処理完了後,サイロビンの内部の水洗いを実施する。
・サイロビン内壁面乾燥のため,サイロビン上下のマンホールを開けて煙突効果で乾燥させる。
【補修箇所の下地施工】・ジャンカ部分はまず鉄筋部分の防錆剤塗布を施工し,壁面の施工範囲に下地処理プライマー樹脂を塗布(乾燥後深さが7cm以上ある場合はポリマーセメントを使用して埋戻しを行う。深さによりたれ防止(ピン,ガラスクロスを使用する場合もある)を検討して塗回数・材料は変更する。)埋戻し後,補修範囲が広い場合,ハツリ部が深い場合,現場で必要と判断した時には,全面処理の前に壁面のケレンをしてプライマーを塗り,エポキシ樹脂(弾性)塗り,ガラスクロス貼り付け,その上にエポキシ樹脂を塗る面補修を行う。
・クラック部分はVカット・清掃を行い,エポキシ樹脂(弾性)を塗布して施工する。この場合にもVカットの幅,深さ,長さ等の判断で,全面処理の前に壁面のケレンをしてプライマーを塗り,エポキシ樹脂(弾性)塗り,ガラスクロス貼り付け,その上にエポキシ樹脂を塗る面補修を行う。
・ピンホール及び内部にジャンカ,空洞があり,ハツリ過ぎると躯体の強度を損なう場合は,エポキシ樹脂の注入充填を行う。
・マンホールなど金物周りについては躯体からのクラック,鉄部錆によるクラック17 かを判断して,躯体からの場合はクラック処理の方法を施工する。又錆による場合は,埋め込み金具を確認してハツリを行い鉄部錆落し後,防錆処理をして埋戻しの施工方法で施工する。全面処理の前に壁面のケレンをしてプライマーを塗り,エポキシ樹脂(弾性)塗り,ガラスクロス貼り付け,その上にエポキシ樹脂を塗り面補修を行う。
・ホッパーの取り付け部,コーナー部分は,下地施工の後,内面仕上げ前にプライマーを塗り,エポキシ樹脂(弾性)塗り,ガラスクロス貼り付け,その上にエポキシ樹脂を塗る面補修を行う。
【サイロビン内面仕上げ施工】・壁面処理は全面サンダー掛けを行い,下地処理,表面ライニング(エポキシ樹脂))を使用して1層,2層と施工する。
・サイロビンの内壁の全面を高圧水により洗浄する・サイロビンの内部を乾燥させるC重点補修後にサイロビンの気密テストを実施する・サイロビン上マンホール・シュート口・燻蒸バルブ,サイロビン下マンホール・排出口を閉めて,サイロビンを密閉する。
・サイロビン燻蒸設備を使用して気密テスト実施サイロビンのサイロビン下バルブ開及び大気取入れバルブ開とする。
・テストサイロ下の燻蒸配管にマノメーターを取り付ける。
・燻蒸ブロアーを運転し,サイロビン内部が+500mmAq以上になるまでブロアーを運転する。
・ブロアー運転停止後から+500mmAqになった時点から20分間圧力測定をして記録を取る。
18 ・顧客からの要求内容(特A級・A級)の基準以上あるかを確認し,サイロビンの内部の圧力が基準以上(原則,400mmAq以上)に保持された場合には次のステップに進む。圧力が基準以下の場合には,減圧チェックのステップに戻り,重点補修を再度実施する。
D気密テストに合格した後の作業・作業用足場と養生を撤去する。
・サイロビン下ゲート取り付ける。
・サイロビンの付属品を取り付け,内部を清掃する。
・再度気密テストを実施し,顧客からの要求内容(特A級・A級)の基準以上あるかを確認し,サイロビンの内部の圧力が基準以上(原則,400mmAq以上)に保持された場合には次のステップに進む。圧力が基準以下の場合には,減圧チェックのステップに戻り,重点補修を再度実施する。
・合格後引渡しとなる。
以上(別添特許公報は省略)19
裁判長裁判官 高野輝久
裁判官 三井大有
裁判官 宇野遥子
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