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関連審決 無効2013-800007
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事件 平成 26年 (行ケ) 10107号 審決取消請求事件

原告 X1
原告 X2
被告 エヌイーシーショット コンポーネンツ株式会社
訴訟代理人弁理士 深見久郎
同 森田俊雄
同 吉田昌司
同 荒川伸夫
同 岡始
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2014/12/24
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 特許庁が無効2013−800007号事件について平成26年3月27日にした審決のうち,特許第3552539号の請求項1及び2に係る部分を取り消す。
2 原告らのその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は,これを2分し,その1を原告らの負担とし,その余は被告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が無効2013-800007号事件について平成26年3月27日 にした審決を取り消す。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等 被告は,平成10年6月19日,発明の名称を「抵抗付温度ヒューズ」と する発明について特許出願(特願平10-17362号。以下「本件出願」 という。)をし,平成16年5月14日,特許第3552539号(請求項 の数3。以下「本件特許」という。)として特許権の設定登録を受けた(甲 34)。
原告らは,平成25年1月7日,本件特許に対して特許無効審判を請求し た。
特許庁は,上記請求を無効2013-800007号事件として審理を行 い,同年8月28日付けで審決の予告(甲33)をした。
これに対し被告は,同年10月25日付けで,本件特許に係る特許請求の 範囲の減縮及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求 項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正請求(以下「本件 訂正」という。甲30,31)をした。原告らは,同年12月12日付けで, 本件訂正後の請求項に係る各発明が無効理由を有する旨の弁駁書(甲25) を提出した。
その後,特許庁は,平成26年3月27日,本件訂正を認めた上で,「本 件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。) をし,その謄本は,同年4月2日,原告らに送達された。
原告らは,平成26年4月26日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を 提起した。
2 特許請求の範囲の記載 設定登録時のもの 本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の請求項1ないし3の記載は,次のとおりである(甲1)。
「【請求項1】セラミック基板の片面に低融点合金体を,他面に発熱抵抗体を配置し,この発熱抵抗体に通電し前記セラミック基板を介して前記低融点合金体を加熱溶断して回路遮断する抵抗付温度ヒューズであって,前記低融点合金体は平板状で前記セラミック基板の片面に前記発熱抵抗体と対向する位置に配置され,その両端及び中間部が電極に接続され,前記発熱抵抗体は前記中間部の電極を介して通電される抵抗付温度ヒューズ。
【請求項2】前記低融点合金体の中間部は前記セラミック基板上に配置した良熱伝導体で支持させたことを特徴とする請求項1に記載の抵抗付温度ヒューズ。
【請求項3】請求項1または2に記載の抵抗付温度ヒューズの回路基板上での実装構造において,前記抵抗付温度ヒューズは,そのリード線を前記セラミック基板から突設させ,前記発熱抵抗体と前記回路基板との間に空隙を形成させることを特徴とする抵抗付温度ヒューズ。」 本件訂正後のもの 本件訂正後の請求項1ないし4の記載は,次のとおりである(以下,請求項の番号に応じて,本件訂正後の請求項1に係る発明を「本件発明1」,請求項2に係る発明を「本件発明2」などという。下線部は本件訂正による訂正箇所である。なお,本件特許の設定登録時の請求項3は,本件訂正により,請求項1又は2を引用する形式からこれらを引用しない独立形式請求項へ改められ,本件訂正後の請求項3及び4となった。甲31)。
「【請求項1】 セラミック基板の片面に低融点合金体を,他面に発熱抵抗体を配置し,こ の発熱抵抗体に通電し前記セラミック基板を介して前記低融点合金体を加熱溶断して回路遮断する抵抗付温度ヒューズであって,前記低融点合金体は平板状で前記セラミック基板の片面に前記発熱抵抗体と対向する位置に配置され,その両端及び中間部が電極に接続され,前記発熱抵抗体は前記中間部の電極を介して通電され,前記低融点合金体の周囲にフラックスが配置され,ケースが前記セラミック基板に対して気密に密着して前記フラックスを外気環境から保護する,抵抗付温度ヒューズ。
【請求項2】 セラミック基板の片面に低融点合金体を,他面に発熱抵抗体を配置し,この発熱抵抗体に通電し前記セラミック基板を介して前記低融点合金体を加熱溶断して回路遮断する抵抗付温度ヒューズであって,前記低融点合金体は平板状で前記セラミック基板の片面に前記発熱抵抗体と対向する位置に配置され,その両端及び中間部が電極に接続され,前記発熱抵抗体は前記中間部の電極を介して通電され,前記低融点合金体の中間部は前記セラミック基板上に配置した良熱伝導体で支持させたことを特徴とする抵抗付温度ヒューズ。
【請求項3】 セラミック基板の片面に低融点合金体を,他面に発熱抵抗体を配置し,この発熱抵抗体に通電し前記セラミック基板を介して前記低融点合金体を加熱溶断して回路遮断する抵抗付温度ヒューズであって,前記低融点合金体は平板状で前記セラミック基板の片面に前記発熱抵抗体と対向する位置に配置され,その両端及び中間部が電極に接続され,前記発熱抵抗体は前記中間部の電極を介して通電され,前記抵抗付温度ヒューズの回路基板上での実装構造において,前記抵抗付温度ヒューズは,そのリード線を前記セラミック基板から突設させ,前記発熱抵抗体と前記回路基板との間に空隙を形成させることを特徴とする抵抗付温度ヒューズ。
【請求項4】 セラミック基板の片面に低融点合金体を,他面に発熱抵抗体を配置し,こ の発熱抵抗体に通電し前記セラミック基板を介して前記低融点合金体を加熱 溶断して回路遮断する抵抗付温度ヒューズであって,前記低融点合金体は平 板状で前記セラミック基板の片面に前記発熱抵抗体と対向する位置に配置さ れ,その両端及び中間部が電極に接続され,前記発熱抵抗体は前記中間部の 電極を介して通電され,前記低融点合金体の中間部は前記セラミック基板上 に配置した良熱伝導体で支持させ,前記抵抗付温度ヒューズの回路基板上で の実装構造において,前記抵抗付温度ヒューズは,そのリード線を前記セラ ミック基板から突設させ,前記発熱抵抗体と前記回路基板との間に空隙を形 成させることを特徴とする抵抗付温度ヒューズ。 」3 本件審決の理由の要旨 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。要するに, @本件発明1は,本件出願の出願前に頒布された刊行物である甲2に記載さ れた発明と甲3,5,15ないし18に記載された事項に基づいて,当業者 が容易に発明をすることができたものとはいえない,A本件発明2は,甲2 に記載された発明と甲3及び甲5に記載された事項に基づいて,当業者が容 易に発明をすることができたものとはいえない,B本件発明3は,甲2に記 載された発明と甲3,4,6ないし8に記載された事項に基づいて,当業者 が容易に発明をすることができたものとはいえない,C本件発明4は,甲2 に記載された発明と甲3ないし8に記載された事項に基づいて,当業者が容 易に発明をすることができたものとはいえないから,本件特許には,特許法 29条2項違反の無効理由(同法123条1項2号)は認められないという ものである。
甲2ないし8,15ないし18は,以下のとおりである。
甲2 「実公平4-36027号公報」 甲3 「特開平7-153367号公報」 甲4 「実公平6-38351号公報」甲5 「実公平4-36021号公報」甲6 「特開昭60-37632号公報」甲7 「実願昭51-151505号(実開昭53-67425号)の マイクロフィルム」甲8 「実願平4-37269号(実開平5-90776号)のCD-R OM」甲15 「特開平8-161990号公報」甲16 「特開平9-17302号公報」甲17 「特開平9-231897号公報」甲18 「特開平7-230747号公報」 本件審決は,以下のとおり,甲2に記載された発明(以下「引用発明」という。),甲3に記載された発明(以下「甲3発明」という。),本件発明1と引用発明の一致点及び相違点,本件発明2と引用発明の一致点及び相違点,本件発明3と引用発明の一致点及び相違点,本件発明4と引用発明の一致点及び相違点を認定した。
なお,本件審決は,下記ウ記載の相違点1について,引用発明及び甲3発明に接した当業者であれば,引用発明に甲3発明の技術を適用して相違点1に係る本件発明1の発明特定事項とすることは容易に想到し得ることと認められると判断した。
ア 引用発明 「セラミック板からなる絶縁基板(1)の他面に膜状低融点金属体(6 1,62)を,片面に膜状抵抗体(31,32)を配置し,この膜状抵抗 体(31,32)に通電し前記絶縁基板(1)を介して前記膜状低融点金 属体(61,62)を加熱溶断して回路遮断する抵抗体付温度ヒユーズで あって,前記膜状低融点金属体(61,62)は膜状で前記絶縁基板(1) の他面に前記膜状抵抗体(31,32)と同じ位置に配置され,その両端が膜状導体(8)及び膜状補助導体(91,92)に接続され,前記膜状低融点金属体(61,62)の周囲にフラックス(71,72)が配置された,抵抗体付温度ヒユーズ。」イ 甲3発明 「発熱体と,発熱体の発熱により溶断する低融点金属とを有した保護素子により,電圧を検知して動作する保護素子を構成することを目的として,低融点金属の両端及び中間にヒューズ電極を設け,発熱体への通電を低融点金属を通って中間電極を介して行うことにより,低融点金属溶断後に発熱体への通電を確実に止め,過加熱を防止する保護素子。」ウ 本件発明1と引用発明の一致点及び相違点(一致点) 「セラミック基板の片面に低融点合金体を,他面に発熱抵抗体を配置し,この発熱抵抗体に通電し前記セラミック基板を介して前記低融点合金体を加熱溶断して回路遮断する抵抗付温度ヒューズであって,前記低融点合金体は平板状で前記セラミック基板の片面に前記発熱抵抗体と対向する位置に配置され,その両端が電極に接続され,前記低融点合金体の周囲にフラックスが配置された,抵抗付温度ヒューズ。」である点(以下「一致点1」という場合がある。)(相違点1) 本件発明1は,低融点合金体の「中間部が電極に接続され」,「発熱抵抗体は中間部の電極を介して通電される」ものであるのに対して,引用発明は,膜状低融点金属体の中間部に電極を有しておらず,膜状抵抗体への通電が膜状低融点金属体を介していない点。
(相違点2) 本件発明1は,「ケースがセラミック基板に対して気密に密着してフラ ックスを外気環境から保護する」との事項を有しているのに対して,引用発明は,そのような事項を有していない点。
エ 本件発明2と引用発明の一致点及び相違点(一致点) 「セラミック基板の片面に低融点合金体を,他面に発熱抵抗体を配置し,この発熱抵抗体に通電し前記セラミック基板を介して前記低融点合金体を加熱溶断して回路遮断する抵抗付温度ヒューズであって,前記低融点合金体は平板状で前記セラミック基板の片面に前記発熱抵抗体と対向する位置に配置され,その両端が電極に接続された,抵抗付温度ヒューズ。」である点(以下「一致点2」という場合がある。)(相違点1) 前記ウ記載の相違点1と同じ。
(相違点3) 本件発明2は,「低融点合金体の中間部はセラミック基板上に配置した良熱伝導体で支持させた」のに対して,引用発明は,そのように構成されていない点。
オ 本件発明3と引用発明の一致点及び相違点(一致点) 前記エ記載の一致点2と同じ。
(相違点1) 前記ウ記載の相違点1と同じ。
(相違点4) 本件発明3は,「抵抗付温度ヒューズの回路基板上での実装構造において,抵抗付温度ヒューズは,そのリード線をセラミック基板から突設させ,発熱抵抗体と回路基板との間に空隙を形成させる」ものであるのに対して,引用発明は,そのように構成されていない点。
カ 本件発明4と引用発明の一致点及び相違点 (一致点) 前記エ記載の一致点2と同じ。
(相違点1) 前記ウ記載の相違点1と同じ。
(相違点3) 前記エ記載の相違点3と同じ。
(相違点4) 前記オ記載の相違点4と同じ。
当事者の主張
1 原告らの主張 取消事由1(本件発明1の容易想到性の判断の誤り) 本件審決は,引用発明の膜状低融点金属体とその周囲に配置されたフラッ クスに甲15記載の外部ケースを適用しても相違点2に係る本件発明1の構 成とすることはできないし,また,引用発明の膜状低融点金属体に甲15記 載の外部ケースを適用する動機付けもないとして,引用発明と甲15記載の 事項に基づいて,当業者が相違点2に係る本件発明1の構成に容易に想到し 得るとはいえない旨判断した。
しかしながら,本件審決の判断は,以下のとおり誤りである。
ア 甲15の記載事項の認定の誤り 本件審決は,甲15には,低融点金属体を発熱体で溶融させることで作 動する保護素子において,発熱体(3)と低融点金属体(5)と固形フラ ックスからなる内側封止部(8)との外側を外部ケース(9)で覆う構成 が記載されているが,この外部ケースは,基板(2)に対して密着してい ると認められるものの,外部発熱体,低融点金属体及び内側封止部を完全 に密封するものではなく,場合によってはカバーの一部に穴を開けて暴発 を防ぐ構造となっていると理解するのが相当であるから,相違点2に係る本件発明1の構成のものとは異なる旨認定したが,以下に述べるとおり,本件審決の認定は誤りである。
本件発明1の「機密」の用語の意義 本件訂正後の明細書(以下,図面を含めて,「本件明細書」という。
甲1,31)には,本件発明1の「ケースがセラミック基板に対して気 密に密着してフラックスを外気環境から保護する」にいう「機密」につ いて,機密度を示す数値等の具体的な構成の記載はない。
かえって,本件発明1の抵抗付温度ヒューズの斜視図である図1a(別 紙1参照)には,セラミック基板11に突起又は窪みらしきものが設けられ ていることが示されており,この突起の周辺又は窪みに隙間が発生し,ケー ス14とセラミック基板11との間には隙間が形成されることになる。
そうすると,本件発明1にいう「機密」には,ケースの内側と外側とで 空気のやりとりがされない完全に密封されたもののほか,上記隙間を介し て,ケースの内側と外側とで,ある程度空気のやりとりを許容するものも包 含していると解すべきである。
甲15の外部ケースの構成 甲15の記載事項(段落【0021】ないし【0027】,【004 5】)によれば,甲15には,無機系基板(例えば,セラミック製)上に 低融点金属体を配設し,その低融点金属体を内側封止部(好ましくは固形フ ラックス)で封止し,さらにその外側を外部ケース(構成素材は4,6-ナ イロンあるいは液晶ポリマー等)で覆う(併せて接着する)保護素子が開示 されている。
しかるところ,甲15の段落【0026】には,「外側ケース9は,低 融点金属体5や内側封止部8が溶解した場合に,保護素子からそれらの 溶融物が流出することを防止するために設けられている。」との記載が ある。
そして,温度ヒューズの技術分野において,フラックスの劣化防止のためにフラックスを気密状態で保護する必要があることは,本件出願前から周知であった(例えば,甲35ないし37)。また,低融点金属体等の排出防止のために外部ケース内部を気密にする必要があることは,本件出願前から周知であった(例えば,甲38ないし41)。
甲15の段落【0026】の上記記載及び上記周知事項に鑑みると,甲15に接した当業者は,甲15の外部ケースは,低融点金属体等の溶融物が流出することを防止するとともに,フラックス(内側封止部)の劣化を防止するために,ケースの内側と外側とで気体の通過を遮断するように完全に密封して,低融点金属体及び内側封止部の外側を覆っていると認識するというべきである。
そうすると,本件審決が,甲15の外部ケースは,外部発熱体,低融点金属体及び内側封止部を完全に密封するものではなく,場合によってはカバーの一部に穴を開けて暴発を防ぐ構造となっていると理解するのが相当であると認定したのは誤りである。
そして,甲15の外部ケースは,「ケースがセラミック基板に対して気密に密着してフラックスを外気環境から保護する」構成(相違点2に係る本件発明の構成)を備えているといえるから,引用発明に甲15記載の外部ケースを適用しても相違点2に係る本件発明1の構成とすることはできないとした本件審決の判断も誤りである。
被告の主張についてa 被告は,甲15においては,絶縁膜4を用いて絶縁をするため,絶 縁膜4においてショートが発生した場合には,フラックス8が暴発し, ケース9に穴が存在しない場合にはケース9が暴発し,使用者が危険 な状態に曝されるから,甲15のケース9は,爆発の可能性がある気 密構造のケースを採用することはなく,穴が設けられている旨主張す る。
しかしながら,ショートに備えてケースに穴を設ける前にショートが 発生し難い十分な厚さの絶縁膜とすることが先決であるから,気密構造の 構成としてフラックス等の耐環境性を高める一方で,フラックスの爆発を 未然に防止するために絶縁膜を十分厚くするという考え方もあり得る。
そうすると,絶縁膜でショートが発生した場合にフラックスが爆発する おそれがあるからといって直ちにケースに穴が設けられるわけではない といえるから,被告の上記主張は,ショートを発生し難くするという選択 肢を無視している点で失当である。
b また,被告は,甲15で公開された発明の出願人の製造する保護素 子(乙1)には,基板上にカバーが固定され,当該カバーの側面には, フラックスを保護するための穴が設けられているから,甲15のケース 9には,穴が設けられている旨主張する。
しかしながら,乙1記載の保護素子のカバーに穴が設けられているか どうか判断がつきかねるが,仮に穴が設けられているとしても,乙1記 載の保護素子は現在販売されている保護素子であって,本件出願前に製 造販売されていたものではない。また,仮に乙1記載の保護素子の低融 点金属体の素材及びフラックスの材質が穴が設けられたカバーでも溶融 したフラックスを保持できるのであれば,それは本件出願時と比べて,低 融点金属体の素材及びフラックスの材質が進歩したことによる可能性も ある。
そうすると,乙1記載の保護素子は本件出願時において甲15の外部ケ ースに穴を設け得ることを裏付けるものではないから,被告の上記主張 は,失当である。
イ 相違点2の容易想到性の判断の誤り 本件審決は,甲15には,外部ケースを発熱体をもたない保護素子にも適用することができる旨記載されているが,ここでいう,発熱体をもたない保護素子とは,従来の過電流防止用のチップ型ヒューズ,すなわち溶融金属の過電流により溶断するものを意図しており,引用発明のような,低融点金属体が設けられた絶縁基板の他面側に発熱体を有した保護素子にまで外部ケースを適用することを示唆したものではないとして,発熱体を有した保護素子である引用発明の低融点金属体に,甲15の外部ケースを適用する動機付けはないから,引用発明と甲15記載の事項に基づいて,当業者が相違点2に係る本件発明1の構成に容易に想到し得るとはいえない旨判断した。
しかしながら,引用発明の抵抗体付温度ヒューズと甲15記載の保護素子とは,セラミック板からなる絶縁基板(甲15の基板2に相当)の面上に膜状低融点金属体(甲15の低融点金属体5に相当)とフラックス(甲15の内部封止部8に相当)とが配置されている点で共通する。
一方で,甲15には,「外部ケース9は,低融点金属体5や内部封止部8が溶解した場合に,保護素子からそれらの溶融物が流出することを防止するために設けられている。」(段落【0026】),「液晶ポリマー(G-530,日石化学社製)を用いて成型された外側ケース9をエポキシ系接着剤で接着することにより,図2に示した態様の保護素子を作製した。」(段落【0045】)との記載が存在する。これらの記載に接した当業者においては,膜状低融点金属体及びフラックスの溶融物が流出することを防止するため,引用発明に対して甲15の外部ケースを適用するよう試みることは,通常の創作能力の発揮にすぎないから,引用発明の低融点金属体に,甲15の外部ケースを適用する動機付けはある。
そうすると,当業者は,引用発明と甲15の上記記載事項に基づいて,相違点2に係る本件発明1の構成を容易に想到することができたものとい える。
したがって,本件審決の上記判断は誤りである。
ウ 小括 以上によれば,引用発明と甲15記載の事項に基づいて,当業者が相違 点2に係る本件発明1の構成に容易に想到し得るとはいえないとした本件 審決の判断は誤りである。
また,本件審決は,引用発明に甲3発明の技術を適用して相違点1に係 る本件発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得ること と認められると判断している。
そうすると,本件発明1は,引用発明と甲3及び甲15記載の事項に基 づいて,当業者が容易に発明をすることができたといえるから,これと異 なる本件審決の判断は誤りである。
取消事由2(本件発明2の容易想到性の判断の誤り) 本件審決は,@引用発明に甲5記載の層状熱良伝導体を適用したとしても,本件発明2の目的を達成し得ないし,相違点3に係る本件発明2の構成となり得ない,A甲3には,低融点合金体の両端を基板上の電極に接続する構造が開示されているにすぎず,引用発明に甲3記載の事項を適用した際に低融点合金体の中間の電極を基板上に設けることが「必然的に」なされるとは認められないし,セラミック基板の他方の面に設けた発熱体からセラミック基板を伝達してきた熱を集めるための機能を求めて,電極を低融点合金体と基板との間に配置することは記載も開示もされていないとして,引用発明と甲3及び甲5記載の事項に基づいて,当業者が相違点3に係る本件発明2の構成を容易に想到し得るとはいえない旨判断した。
しかしながら,本件審決の判断は,以下のとおり誤りである。
ア 引用発明と甲5に基づく相違点3の容易想到性の判断の誤り 甲5の記載事項(2欄18行〜3欄21行,第1図A,第1図B,第 2図(別紙5参照))によれば,甲5には,第1図A及び第1図Bに示すように,層状抵抗体3が発熱すると,層状低融点金属体4を直下から加熱できること,すなわち,層状低融点金属体4を直下で支持している層状熱良伝導体5によって絶縁膜6を介して層状低融点金属体4を加熱できることが示されている。
また,甲5の第2図(別紙5参照)には,層状低融点金属体4を直下で支持している層状熱良伝導体5及び絶縁膜6を,第1図Aのそれらよりも長さを大幅に短く形成して,直上の層状低融点金属体4の中間部を集中的に加熱することが示されている。
そうすると,甲5には,層状低融点金属体4の中間部を,層状熱良伝導体5によって絶縁膜6を介して支持させて,直上の層状低融点金属体4の中間部に熱を集中的に与える構成が,当業者に容易に認識することができるように示されている。
そして,甲5の第2図の層状熱良伝導体5及び絶縁膜6は,中間部を集中的に加熱する点において,本件発明2の良熱伝導体と目的,作用が異なるものではない。
一方,甲2の記載事項(1欄1行〜2欄7行)によれば,甲2には,絶縁基板の片面に膜状抵抗体を,他面に膜状低融点金属体をそれぞれ設け,膜状抵抗体の熱が絶縁基板を熱伝導経路として膜状低融点金属体に与えられることが示されている。
そして,甲5には,「電極21′近傍の層状低融点金属体部分40′には抵抗体3′の発生熱が電極21′を熱伝導路としてよく伝導するので,その層状低融点金属体40′はよく加熱されるが,他の低融点金属体部分は加熱され難い。このため層状低融点金属体が不均一加熱となり,溶断が遅延し,作動性に問題がある。」との記載がある。
そうすると,甲2及び甲5に接した当業者においては,低融点金属体が不 均一加熱となり,溶断が遅延することを防止するため,引用発明の絶縁基板上に,甲5に示された層状低融点金属体の中間部を支持する層状熱良伝導体及び絶縁膜を設け,絶縁基板による熱が層状熱良伝導体によって絶縁膜を介して低融点金属体の中間部に集中的に与えられる構成を採用することは,何らの困難性はなく,通常の創作能力の発揮にすぎないから,引用発明と甲5の上記記載事項に基づいて,相違点3に係る本件発明2の構成を容易に想到することができたものといえる。
本件審決は,この点に対し,甲5の層状熱良伝導体は,層状抵抗体の一部が絶縁膜を介して層状低融点金属体に積層されるのに対して,本件発明2は,発熱抵抗体と低融点合金体とが絶縁層を介して積層する構造を回避するために,セラミック基板の片面に低融点合金体を,他面に発熱抵抗体を配置するものであり,引用発明に甲5記載の層状熱良伝導体に係る構造を適用しても,本件発明2の構成とはなりえないから,引用発明に甲5記載の事項を適用して,相違点3に係る本件発明2の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到し得るとはいえない旨判断した。
しかしながら,甲5の記載事項(3欄3行〜6行,18行〜21行)によれば,甲5において,絶縁膜を介して層状低融点金属体に積層されるのは,層状抵抗体の一部ではなく,層状熱良伝導体であるから,本件審決の上記判断は,その前提において誤りがある。
また,本件発明2は,発熱抵抗体と低融点合金体とが絶縁層を介して積層する構造のうちショートのおそれがあるものに対してその構造を回避しようとするものであるが(本件明細書の段落【0004】,図11(別紙1参照)),甲5の層状熱良伝導体と層状低融点金属体とは電極を介して電気的に接続されているため,ショートするものではない。しかも,引用発明に甲5記載の層状熱良伝導体を適用することは,引用発明の絶縁基板上 に層状熱良伝導体を設けることにほかならないから,層状熱良伝導体と膜 状低融点金属体はショートするものではない。
そうすると,引用発明に甲5記載の層状熱良伝導体に係る構造を適用 すると,相違点3に係る本件発明2の構成となるから,本件審決の上記 判断は,この点でも,その前提において誤りがある。
したがって,相違点3に係る本件発明2の発明特定事項とすることは 当業者が容易に想到し得るとはいえないとした本件審決の上記判断は誤 りである。
イ 引用発明と甲3に基づく相違点3の容易想到性の判断の誤り 本件発明2の特許請求の範囲(請求項2)の記載中の「低融点合金体 の中間部はセラミック基板上に配置した良熱伝導体で支持させた」との 記載は,本件発明2にいう「良熱伝導体」が,低融点合金体の中間部の 電極が良熱伝導体を兼ねるものを排除するものではない。
また,本件明細書の段落【0023】 【0034】 , 及び図3(a)(別 紙1参照)には,電極が良熱伝導体を兼ねるものが本件発明2にいう「良 熱伝導体」に含まれることを示唆する記載がある。
そうすると,本件発明2の「低融点合金体の中間部はセラミック基板 上に配置した良熱伝導体で支持させた」との構成(相違点3に係る本件 発明2の構成)には,「低融点合金体の中間部が良熱伝導体を兼ねる電 極によって支持されるもの」が含まれるものといえる。
甲3の記載事項(段落【0039】ないし【0041】,【0046 】等)によれば,甲3には,低融点金属の中間部に電極を設けるとともに その電極を介して発熱抵抗体へ接続する技術の実施例として,基板上に電極 を設け,その電極の上に低融点金属の中間部を載せることが明確に記載され ている。
また,引用発明に甲3に開示された「低融点金属の中間部に電極を設ける とともにその電極を介して発熱抵抗体へ接続する技術」を適用し,当業者が相違点1に係る本件発明3の構成とすることに容易に想到し得ることは本件審決が判断するとおりである。
さらに,基板の一方の面と他方の面とを配線によって接続するための具体的手段として,スルーホール(例えば,甲42ないし44)と基板の側面を経由するもの(例えば,甲44ないし46)があることは,本件出願前に周知・自明の事項である。
そうすると,甲2及び甲3に接した当業者は,引用発明に甲3に開示された「低融点金属の中間部に電極を設けるとともにその電極を介して発熱抵抗体へ接続する技術」を適用するに当たり,甲3の上記記載事項に基づいて,基板上に電極を設け,その電極の上に低融点合金体の中間部を載せることは,容易になし得ることである。
したがって,引用発明と甲3の上記記載事項に基づいて,当業者が相違点3に係る本件発明2の構成を容易に想到することができたものといえる。
本件審決は,この点に関し,甲3には,低融点合金体の両端を基板上の電極に接続する構造が開示されているにすぎず,「基板上に電極を設け,その電極の上に低融点合金体を設けるという手段」が周知技術であるとしても,基板の一方の面上に形成した素子から他方の面上に形成した素子の中間に配線を接続する際,他方の面の素子の中間へどのような配線の接続を行うのか,具体的な構造については何ら記載も示唆もされていないから,引用発明に甲3記載の事項を適用した際に,低融点合金体の中間の電極を基板上に設けることが「必然的に」なされるとは認められないし,セラミック基板の他方の面に設けた発熱体からセラミック基板を伝達してきた熱を集めるための機能を求めて,電極を低融点合金体と基板との間に配置することは記載も開示もされていないから,引用 発明に甲3記載の事項を適用して,相違点3に係る本件発明2の発明特 定事項とすることは,当業者が容易に想到し得るとはいえない旨判断し た。
,基板の一方の面と他方の面とを配線に よって接続するための具体的手段として,スルーホールと基板の側面を経由 するものがあることは,本件出願前に周知・自明の事項であるから,引用発 明に甲3に開示された「低融点金属の中間部に電極を設けるとともにその電 極を介して発熱抵抗体へ接続する技術」を適用する際に,上記周知・自明の 事項を適用して,相違点3に係る本件発明2の構成とすることは当業者が容 易に想到し得ることである。
したがって,本件審決の上記判断は誤りである。
ウ 小括 以上によれば,引用発明と甲3及び甲5記載の事項に基づいて,当業者が相違点3に係る本件発明2の構成に容易に想到し得るとはいえないとした本件審決の判断は誤りである。
また,本件審決は,引用発明に甲3発明の技術を適用して相違点1に係る本件発明2の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得ることと認められると判断している。
そうすると,本件発明2は,引用発明と甲3及び15記載の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたといえるから,これと異なる本件審決の判断は誤りである。
取消事由3(本件発明3の容易想到性の判断の誤り) 本件審決は,@甲4には,温度ヒューズがプリント配線板に実装されようとしている状態が記載されているが,温度ヒューズがプリント配線板上に実装された状態は示されておらず,両者の間,特に温度ヒューズのプリント配線板側の面の素子とプリント配線板との間に空隙が形成されることは明示さ れていないし,また,プリント配線板への熱の放散を抑制するための配置についても,何ら記載も示唆もされていない,A本件発明3の空隙は,発熱抵抗体の熱が回路基板へ放散することを抑制し,その熱を有効に低融点合金体の溶断に利用するために設けられるものであるのに対して,甲11ないし14から導かれる周知事項は,安全性の観点から空隙を設けるものであり,引用発明に,甲3記載の事項を適用しても,発熱抵抗体の熱が回路基板へ放散することを抑制し,その熱を有効に低融点合金体の溶断に利用するとの観点で,上記周知事項を採用する動機付けがないとして,引用発明と甲3ないし8に記載された事項に基づいて,相違点4に係る本件発明3の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得るとはいえないし,また,甲5と甲9ないし18記載の事項を検討しても,これと同様である旨判断した。
しかしながら,本件審決の判断は,以下のとおり誤りである。
ア 相違点4の容易想到性の判断の誤り 本件発明3の特許請求の範囲(請求項3)には,本件発明3にいう「空 隙」の目的を限定した記載はない。
そうすると,本件発明3は,安全性の観点から「空隙」を設けるもの を排除していない。
甲4の記載事項(3欄46行〜4欄23行,第4図(別紙4参照))によ れば,甲4には,チップ型の発熱性回路素子100付温度ヒューズBのプリ ント配線板上での実装構造において,温度ヒューズBは,そのリード線8を 絶縁基板1から突設させ,温度ヒューズBとプリント配線板との間に(少な くともプリント回路導体9の厚さに相当する)空隙を形成させることが開示 されている。
そして,甲4記載の温度ヒューズBは,絶縁基板1の片面に低融点可溶 金属体3を,他面に発熱性回路素子100をそれぞれ配置し,この発熱性回 路素子100に通電し絶縁基板1を介して低融点可溶金属体3を加熱溶断 して回路遮断するものである点において,引用発明と技術分野が共通するこ と,安全性の観点から発熱抵抗体と回路基板との間に空隙を形成させる必要 があることは,本件出願当時,周知であったこと(例えば,甲11ないし1 4)からすると,引用発明に係る抵抗付温度ヒューズの回路基板上での実装 構造において,抵抗付温度ヒューズのリード線をセラミック基板から突設さ せ,発熱抵抗体と回路基板との間に空隙を形成させるための動機付けがあ る。
そうすると,甲2及び甲4に接した当業者であれば,甲4に示された温度 ヒューズと同様に発熱体と低融点金属体とからなる温度ヒューズである引 用発明において,安全性の観点から,発熱抵抗体と回路基板との間に空隙を 形成させる構成を採用し,相違点4に係る本件発明3の発明特定事項とする ことは,容易に想到し得ることである。
イ 小括 以上によれば,当業者が相違点4に係る本件発明3の構成に容易に想到 し得るとはいえないした本件審決の判断は誤りである。
また,本件審決は,引用発明に甲3発明の技術を適用して相違点1に係 る本件発明3の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得ること と認められると判断している。
そうすると,本件発明3は,引用発明と甲3及び甲4記載の事項,甲1 1ないし14から導かれる周知事項に基づいて,当業者が容易に発明をす ることができたといえるから,これと異なる本件審決の判断は誤りである。
取消事由4(本件発明4の容易想到性の判断の誤り) 本件審決は,本件発明4は,本件発明1の構成から「前記低融点合金体の周囲にフラックスが配置され,ケースが前記セラミック基板に対して気密に密着して前記フラックスを外気環境から保護する」との事項を省いた構成のものに,「前記低融点合金体の中間部は前記セラミック基板上に配置した良 熱伝導体で支持させ」るとの事項(相違点3に係る本件発明4の構成) 「前 及び 記抵抗付温度ヒューズの回路基板上での実装構造において,前記抵抗付温度 ヒューズは,そのリード線を前記セラミック基板から突設させ,前記発熱抵 抗体と前記回路基板との間に空隙を形成させる」との事項(相違点4に係る 本件発明4の構成)を付加したものに相当するが,相違点3及び4の構成は いずれも当業者が容易に想到し得るとはいえないから,本件発明4は,甲2 に記載された発明と甲3ないし8に記載された事項に基づいて,当業者が容 易に発明をすることができたものとはいえない旨判断した。
おける相違点3及び4の構成の容易想到性の判断は誤りであるから,本件審 決の上記判断も誤りである。
2 被告の主張 取消事由1(本件発明1の容易想到性の判断の誤り)に対し ア 甲15の記載事項の認定の誤りに対し 原告らは,本件明細書の図1(a)(別紙1参照)において,セラミッ ク基板11に突起又は窪みらしきものが設けられていることを根拠とし て挙げて,本件発明1にいう「気密」は,ある程度の気体のやりとりがあ るものを包含すると解すべきである旨主張する。
しかしながら,別紙1の図1(a)において,帯状に示される部分は気 密構造を維持できる程度の厚みの電極である。薄膜からなる電極のような 微小な凹凸がセラミック基板の表面に存在しても,接着剤を用いてカバー を基板に固定することで,何ら問題なく気体の通過を抑制できる気密構造 とすることができる。
また,原告らは,セラミック基板11に窪みらしきものが設けられてい る旨主張するが,原告らの憶測にすぎない。本件明細書に,「使用状態に おいてはこのケース14をセラミック基板11に対して気密に密着し て,」(段落【0016】),「使用状態においてはこのケース14をセラミック基板11に対して気密に密着して,」(段落【0036】)との記載があるように,気密性を確保しにくくするような構造を有していると解する余地はなく,基板の表面にあえて溝状の窪みを設けることは,特別に必要とされない限り通常はあり得ないことであり,技術常識にも反する。
したがって,原告らの上記主張は失当である。
甲15の図2(別紙6参照)には,発熱体3と低融点金属体5とが 絶縁膜4で絶縁されている保護素子1bが開示されている。
そして,甲15の段落【0026】及び【0027】の記載事項(特 に,段落【0026】の「外側ケース9は,低融点金属体5や内側封 止部8が溶解した場合に,保護素子からそれらの溶融物が流出するこ とを防止するために設けられている。」との記載)によれば,甲15 には,ケース9は保護素子から溶融物が流出することを防止するため に用いられるものであることは記載されているものの,気密構造とし て機能部分の対環境性を確実に高めることに関しては開示も示唆もな い。
一方で,本件明細書の段落【0007】の記載に照らすと,甲15 においては,発熱体3と低融点金属体5とが基板の片面に絶縁膜4を 介して配置され,絶縁膜4を用いて絶縁をするため,絶縁膜4におい てショートが発生した場合には,フラックス8が暴発し,ケース9に 穴が存在しない場合にはケース9が暴発し,使用者が危険な状態に曝 される。
そして,甲15の段落【0006】に「使用上の安全性の高いもの が求められている」ことが述べられていることからすると,甲15の ケース9は,爆発の可能性がある気密構造のケースを採用していると 当業者が理解することはない。
このように,甲15には,爆発の可能性があるため,気密構造のケ ースを採用することはあり得ず,本件発明1の気密構造の開示はない。
b 原告らは,これに対し,甲15の外部ケースは,カバーの一部に穴 を設けることはあり得ない旨主張する。
しかしながら,甲15で公開された発明の出願人であるデクセリア ルズ社(旧・ソニーケミカル株式会社)製の保護素子(品番SFH-1 212。乙1)には,基板上にカバーが固定され,当該カバーの側面に は,フラックスを保護するための穴が設けられており,フラックスが溶 融した場合であってもフラックスはカバー内に保持される。このように 甲15で公開された発明の出願人の製品でも,穴が設けられているこ とからすると,原告らの上記主張は失当である。
c 以上によれば,甲15の外部ケースは,外部発熱体,低融点金属体 及び内側封止部を完全に密封するものではなく,場合によってはカバ ーの一部に穴を開けて暴発を防ぐ構造となっていると理解するのが相 当であるとした本件審決の認定に誤りはない。
イ 相違点2の容易想到性の判断の誤りに対し 前記アのとおり,甲15には,機密構造を有するケースが開示されてい ないから,引用発明及び甲15の記載事項に基づいて,当業者が相違点2 に係る本件発明1の構成に容易に想到することはできない。
ウ 小括 以上によれば,本件審決における本件発明1の容易想到性の判断に誤り はないから,原告ら主張の取消事由1は理由がない。
取消事由2(本件発明2の容易想到性の判断に誤り)に対しア 引用発明と甲5に基づく相違点3の容易想到性の判断の誤りに対し 本件発明2では,セラミック基板の他面の発熱抵抗体で発生した熱は熱伝 導性の低いセラミック基板を経由して低融点合金体へ伝達されるが,低融点合金体の中間部(電極に接続される部分)はセラミック基板上に配置した良熱伝導体で支持され,これにより,電極に接続される中間部が優先的に溶融切断するため,電極からの電力の供給を確実に遮断することができる(本件明細書の段落【0033】,【0034】)。
これに対して,甲5の層状熱良伝導体は,層状低融点金属体と層状抵抗体とが電極を介して接続されているときに,電極を熱伝導路として層状抵抗体の発生熱が層状低融点金属体の電極側によく伝導するため不均一加熱となるとの問題点に対して,層状抵抗体の一方の電極に連結された層状熱良伝導体を,層状低融点金属体の直下に絶縁膜を介して設けることで均一加熱を図るものであり,本件発明2と目的及び作用が異なる。このように,本件発明2の良熱伝導体は発熱体からセラミック基板に伝わった熱を集めるためのものであるのに対して,甲5の層状熱良伝導体は発熱体から電極を介して直接伝わる熱を拡げるためのものであり,引用発明に甲5の層状熱良伝導体を適用したとしても,本件発明2の目的を達成し得ない。
さらに,甲5の層状熱良伝導体は,層状抵抗体の電極に接続され電極と同じものからなり,絶縁基板の一方の面に絶縁膜を介して層状低融点金属体とともに設けられるものであり,層状抵抗体の一部が絶縁膜を介して層状低融点金属体に積層されることになるのに対して,本件発明2は,発熱抵抗体と低融点合金体とが絶縁層を介して積層する構造を回避するために(本件明細書の段落【0004】,【0006】),セラミック基板の片面に低融点合金体を,他面に発熱抵抗体を配置するものである。このように,甲5では,発熱抵抗体と低融点合金体とが絶縁層を介して積層する構造を採用しており,これを引用発明に適用すると発熱抵抗体と低融点合金体とが絶縁層を介して積層する構造となるから,引用発明に甲5記載の層状熱良伝導体に係る構造を適用しても,本件発明2の構成とはなりえな い。
以上によれば,引用発明に甲5記載の事項を適用して,相違点3に係る 本件発明2の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到し得るとは いえない。
イ 引用発明と甲3に基づく相違点3の容易想到性の判断の誤りに対し 甲2ないし4には,セラミック基板の他方の面に設けた発熱体からセラミ ック基板を伝達してきた熱を集めるための機能を求めて,電極を低融点合金 体と基板との間に配置することについては,記載も示唆もない。
また,甲3には,発熱体5と低融点金属6を絶縁するための絶縁層4中に 熱伝導性の高い無機粉末を分散させることにより,発熱体5発熱時の熱を効 率的に低融点金属6に伝えることができ,低融点金属6を溶断させるための 発熱体5の消費電力を低下させることが可能であること(段落【0021】) が開示されているものの,本件発明2の良熱伝導体のように「発熱体からセ ラミック基板に伝達した熱を集めるためのもの」については記載も示唆もな い。
したがって,引用発明に甲3記載の事項を適用して,相違点3に係る本 件発明2の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到し得るとはい えないウ 小括 以上によれば,本件審決における本件発明2の容易想到性の判断に誤り はないから,原告ら主張の取消事由2は理由がない。
取消事由3(本件発明3の容易想到性の判断に誤り)に対し 甲4には,温度ヒューズBの絶縁基板裏面の電極7,7間に導電性接着剤によりチップ型の発熱性回路素子100が取り付けられる構成が開示されている(4欄4行〜7行,第4図(別紙4参照))。
しかしながら,空隙を設けて,「発熱抵抗体の熱が回路基板へ放散すること を抑制し,その熱を有効に低融点合金体の溶断に利用する」という技術思想は 本件発明3において初めて開示されたものであり,甲2及び甲4のいずれにお いても,回路基板への熱の放散が問題であるとの認識はない。
そうすると,空隙を設けることが周知であるとしても,引用発明に甲4記載 の事項を適用するに際し,発熱抵抗体の熱が回路基板へ放散することを抑制 し,その熱を有効に低融点合金体の溶断に利用するとの観点から,上記周知事 項を採用することの動機付けはない。
したがって,相違点4に係る本件発明3の構成を当業者が容易に想到し得 るとはいえないから,本件審決における本件発明3の容易想到性の判断に誤 りはなく,原告ら主張の取消事由3は理由がない。
取消事由4(本件発明4の容易想到性の判断に誤り)に対し 本件発明4は,相違点3に係る本件発明2の構成と同様の構成及び相違点 4に係る本件発明3の構成と同様の構成を含むものである。
で述べたのと同様の理由により,相違点3及び4に 係る本件発明4の構成を当業者が容易に想到し得るとはいえないから,本件 審決における本件発明4の容易想到性の判断に誤りはなく,原告ら主張の取 消事由4は理由がない。
当裁判所の判断
1 取消事由1(本件発明1の容易想到性の判断の誤り)について 本件明細書の記載事項等について ア 本件発明1ないし4の特許請求の範囲(請求項1ないし4)の記載は, イ 本件明細書(甲31)の「発明の詳細な説明」には,次のような記載が ある(下記記載中に引用する図面(甲1)については別紙1を参照)。
「【発明の属する技術分野】 この発明は抵抗付温度ヒューズに関するものであり,特に抵抗から発 生する熱が温度ヒューズである低融点合金体にいたる伝熱経路を最適化することにより,応答性がよく信頼性が高く,更に小型化を可能にする抵抗付温度ヒューズの構造に関するものである。」(段落【0001】) 「【従来の技術】 以下に,抵抗付温度ヒューズの従来の技術について説明する。従来の温度ヒューズは電子機器等の異常に基づく発熱を防止するため,周囲温度の上昇に伴ってその発熱に関する回路を遮断し,火災や電子機器の損傷を最小限に食い止める,また事前に防止することを目的としているものであった。」(段落【0002】) 「しかしながら近年電子機器や家庭電化製品等に関する安全性の要求が高まり,このような温度ヒューズの他に各種の状態をセンシングしてその電子機器等の回路を遮断する必要が生じてきている。例えばその代表的な例としては,バッテリーの充電器のようなものが考えられるが,バッテリーの充電器においては電圧が一定以上に高くなった場合には充電器やバッテリーの破損等を生じるため,電圧を検知して,電圧値が一定以上になった場合には回路を遮断する必要等が生じている。このようなものに抵抗付温度ヒューズが使われる。」(段落【0003】) 「また,その他抵抗付温度ヒューズの使用の例としては,結露のセンシングや磁界のセンシング,粘度のセンシングや重さのセンシング等,各種のものをセンシングし,センシングした結果その値が危険値に達している場合には,発熱体である抵抗に電流を流して温度ヒューズを溶断し,その問題となっている回路を遮断する仕組みになっているのである。
この種の抵抗付温度ヒューズの構造は,図11に示すようなものである。
図11(a)は基板181上に発熱抵抗体183と低融点合金体182とが積層配置された抵抗付温度ヒューズの断面を示すものである。抵抗付温度ヒューズと抵抗付温度ヒューズの発熱抵抗体183と低融点合金 体182とは図で示すように,絶縁層189を介して積層されている。
このように絶縁層を介して積層するのは両者の電気的ショートを防止するためである。しかしながら,このような積層は一般的に蒸着やスパッタ等の薄膜形成技術によってなされるため,その薄膜に欠陥がある場合には,発熱抵抗体と低融点合金体とのショートが生じるようなこともある。」(段落【0004】) 「また図11(b)に示すものは,基板181’の両側にそれぞれ片面に低融点合金体182’,他面に発熱抵抗体183’を配置したものである。この図11(b)に示すものの特徴点は,同図(a)に示すものと異なり,発熱抵抗体183’と低融点合金体182’とが基板181’の片面と他面に,すなわち異なる面に配置されている点にある。このように異なる面に配置された場合には,発熱抵抗体で発生した熱がセラミック基板を介して伝達するので,低融点合金体の溶断がバラツクというような場合もある。」(段落【0005】) 「【発明が解決しようとする課題】 以上に述べた従来の抵抗付温度ヒューズには,例えば図11(a)の場合,図12に示すような問題が生じる。すなわち図12に示すように,基板上に配置された発熱抵抗体と低融点合金体とのショート190が生じるのである。これは特に発熱抵抗体193と低融点合金体192との電位差が大きくなればなるほど生じやすくなり,また両者を隔てている絶縁薄膜の厚みが薄くなればなるほど生じやすい。」(段落【0006】) 「また一般に低融点合金体は周囲にフラックスを伴っているため,このようなショートが起こった場合には,そのスパークによってフラックスが爆発的に化学反応を起こし,大量のガスを発生して抵抗付温度ヒューズがケースごと暴発するというような問題も生じる。かかる観点から, 図には示さないが,これにカバーをして内部の低融点合金体乃至はその周囲に配置されたフラックスを外部の環境から完全に密封するということが困難になっており,場合によってはケースでこの低融点合金体や低融点合金体やその周囲のフラックスを覆うもののカバーの一部に穴を開けてそのような暴発を防ぐ構造を採用しているものもある。 (段落 」 【0007】) 「しかしながら,そのような構造を採用した場合には結果としてカバーによる機密性を保つことができず,低融点合金体乃至はその周囲に配置されるフラックスが周囲環境により劣化して抵抗付温度ヒューズ全体の信頼性を損なうというような問題もあった。」(段落【0008】) 「一方,図11(b)に示すような温度ヒューズの場合には,基板の片面と他面にそれぞれ低融点合金体と発熱抵抗体とが別個に配置されているため,両者間でショートが起こるというようなことはない。しかしながら同図(a)に示すものと比べて,発熱抵抗体と低融点合金体との距離がセラミック基板を介して隔たっているため,発熱抵抗体から発生する熱が低融点合金体に到達しにくく,また到達した場合であっても周囲環境によるセラミック基板の温度分布のバラツキ等によって,その溶断精度は大きな誤差が生じてくるのである。」(段落【0009】) 「本発明は以上のように,従来の抵抗付温度ヒューズで問題となっているショートや溶断精度のバラツキを完全に解決し,ショートが生じずかつ溶断精度も高い抵抗付温度ヒューズを提供することを目的としている。」(段落【0010】) 「【課題を解決するための手段】 これらの課題を解決するために本発明者等は以下のような解決手段を提供するものである。即ち,セラミック基板の片面に低融点合金体を,他面に発熱抵抗体を対向配置し,この発熱抵抗体に通電し前記セラミッ ク基板を介して前記低融点合金体を加熱し,これを溶断することで回路遮断をする抵抗付温度ヒューズであって,前記低融点合金体は平板状であって,前記セラミック基板の片面に前記発熱抵抗体と対向する位置に配置され,かつ,この低融点合金体は両端及び中間部が電極に接続され,前記発熱抵抗体は前記低融点合金体の中間部の電極を介して通電される抵抗付温度ヒューズを提供する。」(段落【0011】) 「また,本発明の抵抗付温度ヒューズの実装においては,抵抗付温度ヒューズは回路基板上に実装するためのリード線を具備し,このリード線はセラミック基板の片面もしくは他面に突設し,抵抗付温度ヒューズが回路基板上に配置された場合に,低融点合金体もしくは発熱抵抗体と回路基板との間に空隙が形成されるようにした抵抗付温度ヒューズを提供する。」(段落【0012】) 「更に,セラミック基板の片面に低融点合金体を,他面に発熱抵抗体を配置し,この発熱抵抗体に通電し前記セラミック基板を介して前記低融点合金体を加熱し,これを溶断することで回路遮断をする抵抗付温度ヒューズであって,前記低融点合金体は平板状であってその両端及び中間部が電極に接続され,前記セラミック基板の片面に発熱抵抗体と対向する位置に配置され,前記発熱抵抗体には前記低融点合金体の中間部電極を介して通電されると共にこの中間部はセラミック基板上に設けた良熱伝導体で支持される抵抗付温度ヒューズを提供する。」(段落【0013】) 「【発明の実施の形態】 本発明の抵抗付温度ヒューズは,セラミック基板の片面に低融点合金体を,他面に発熱抵抗体を配置し,この発熱抵抗体に通電し前記セラミック基板を介して前記低融点合金体を加熱し,これを溶断することで回路遮断をする抵抗付温度ヒューズであって,前記低融点合金体は平板状 であってその両端及び中間部が電極に接続され,前記セラミック基板の片面に前記発熱抵抗体と対向する位置に配置され,前記発熱抵抗体には前記低融点合金体の中間部電極を介して通電されると共にこの中間部は前記セラミック基板上に設けた良熱伝導体で支持される。以下,本発明の前提となる抵抗付温度ヒューズについて図面を参照しつつ説明すると,図1および図2はセラミック基板11の片面11aに低融点合金体12を他面11bに発熱抵抗体13を配置し,この発熱抵抗体に通電し,前記セラミック基板を介して前記低融点合金体を加熱し,これを溶断することで回路を遮断する抵抗付温度ヒューズであって,前記低融点合金体は平板状であって,前記セラミック基板の片面に対向配置されている抵抗付温度ヒューズである。」(段落【0014】) 「この温度ヒューズの特徴点は,実質的には低融点合金体12が平板状で発熱抵抗体13に対して対向配置されている点にある。このような構造をとることにより得られる効果としては,図11(a)に示した抵抗付温度ヒューズと異なり,低融点合金体12と発熱抵抗体13がセラミック基板11の異なる面11a,11bに配置されているため,両者間でショートが起こらないことの上に,従来図11(b)に示すように低融点合金体182の断面が円形で,いわゆる丸棒状のものが用いられていたのに対し,本発明ではこれを平板状とし,かつセラミック基板11の上に対向配置したので,発熱抵抗体から発生する熱を吸収する面積が広くなり,従って熱を効率良く低融点合金体12に取り込むことができ,セラミック基板11の温度分布のバラツキ等によっても動作精度が低下しにくいことにある。」(段落【0015】) 「なお,図1(a)に記載する斜視図においては,ケース14が分離して記載されているが,使用状態においてはこのケース14をセラミック基板11に対して気密に密着して,低融点合金体12乃至は図示しな いが低融点合金体の周囲に配置されるフラックスを外気環境から保護することができる。」(段落【0016】) 「これは前述のように,セラミック基板11の異なる面に低融点合金体12と発熱抵抗体13を配置しているため,両者間でショートが起こらないので,ショートによる暴発というような問題も生じないためである。」(段落【0017】) 「なお,図1(b)はこの抵抗付温度ヒューズの正面図で,セラミック基板の片面11aには低融点合金体12が配置され,この基板に対して対向する他面11bには発熱抵抗体13が形成配置され,それぞれ電極a,b間に遮断すべき回路の電流が,また電極c,d間に発熱抵抗体13への電流が通ずるようになっている。」(段落【0018】) 「一方,発熱抵抗体の方は,セラミック基板を介してその裏側に配置されており,c,dを通じて電流が流され,ジュール熱によって発熱して上記低融点合金体12を溶断するようになっている。また,本発明における平板状とは,必ずしも矩形状のものに限られることなく, (b) 図2や図2(c)に示すようなものであってもよいことは言うまでもない。
要は,板状のものであってその主面が発熱抵抗体12が形成されているセラミック基板の裏側にベッタリくっついているような状態であればいいのである。」(段落【0019】) 「本発明は前述のようにセラミック基板の片面に低融点合金体を他面に発熱抵抗体を配置し,この発熱抵抗体に通電し前記セラミック基板を介して前記低融点合金体を加熱し,これを溶断することで回路遮断する抵抗付温度ヒューズであって,前記低融点合金体は平板状であり,その両端及び中間部が電極に接続され,前記発熱抵抗体は前記中間部の電極を介して通電される抵抗付温度ヒューズである。本発明の実施例は図3および図4に示され,参考として一般の回路図を図5に示す。本発明の 特徴は図3で説明すれば,要するに低融点合金体42の両端のみならず中間部に電極45が接続され,その電極45を介して前記発熱抵抗体43に通電される点にある。以下にこのようにして通電することの効果を説明する。」(段落【0020】) 「まず,図5に示すものは,従来の一般的な抵抗付温度ヒューズの配線である。たとえば充電器に用いる場合には,充電器側はa,バッテリー側はbとなり,温度ヒューズがa,b下に配され,ツェナーダイオード66とトランジスタ67を介して発熱抵抗体63が配置され,この発熱抵抗体はツェナーダイオードが一定以上の電圧によりトランジスタ67に通電することによって電流が流れて発熱し,低融点合金体が溶断するようになっている。この場合,低融点合金体が溶断すると,a,b間で温度ヒューズの部分の回路は遮断されるのであるが,発熱抵抗体はそのまま加熱しつづけることになるため,最終的にはこの発熱抵抗体によって2次的な電子機器への損傷が生じる場合がある。しかしながら,本発明の具体例である図3(b)に示すような回路をとった場合には,発熱抵抗体43’は低融点合金体42’の中間電極45’を介して通電されるため,発熱抵抗体43’の発熱により,低融点合金体42’が溶断した場合にはもはや発熱抵抗体43’に通電されなくなって,発熱抵抗体43’自身の発熱もとまることになる。」(段落【0021】) 「したがってこのような構造をとれば,前記のような2次的な電子機器等の損傷も防止することができる。また,本発明ではこのような中間部に電極を配置する低融点合金体の形式として図4(a) (b) (c) , ,に記載するようなものが考えられる。ここでいう中間電極55とは要するに低融点合金体52に接続される入力部と出力部の電極の間に設けられる電極という意味であり,図4(a)のような場合のみならず, (b) 図4のようなものもその中間部に存在するものは中間部の電極である。図 4(b)のような構成をとる場合には本発明の効果を得ることはもちろんのこと,低融点合金体52の全長を短くすることができるので,抵抗付温度ヒューズの全体の長さ乃至は幅を小さくすることが可能というメリットもある。」(段落【0022】) 「またこの中間部に電極を設けることとは図4(c)に描写するように,低融点合金体を2つに分け3つの電極にそれぞれ橋渡しをするような場合も考えられる。しかしながら図4(c)の場合には,中間部の電極部分で低融点合金のボリュームが一部欠落するので図4(a)のものに比べれば熱の吸収乃至は溶断に対して不利であることはいなめない。したがって,好ましくは,図3(a)に示すように,低融点合金体は一体のものであって,その一体の低融点合金体の中間部に電極を配置して,その電極でもって低融点合金体を支持するような構成にするのがよいであろう。」(段落【0023】) 「セラミック基板の片面には3つの電極が配置されており,真ん中の電極が中間部の電極45,その中間部の電極の真下には発熱抵抗体が配置されている。なお,この図においては配線等は省略されている。 (段 」落【0024】)「次に本発明の抵抗付温度ヒューズの回路基板上への実装においては,セラミック基板の片面に低融点合金体を,他面に発熱抵抗体を配置し,この発熱抵抗体に通電し前記セラミック基板を介して前記低融点合金体を加熱し,これを溶断することで回路遮断する抵抗付温度ヒューズは,そのリード線が前記セラミック基板に突設され,この抵抗付温度ヒューズが回路基板上に配置された場合に,発熱部と回路基板との間に空隙が形成される。」(段落【0025】) 「本発明の抵抗付温度ヒューズの実装構造を示したのが図6,図7および図8である。図6に示すように,この実施例の特徴点は,要するに この抵抗付温度ヒューズに用いられるリード線77,77’を利用することで発熱抵抗体73,73’と回路基板79,79’との間に隙間78,78’を形成するようにした点にある。このように隙間78,78’を形成することの趣旨は,発熱抵抗体の熱によって低融点合金体72,72’を精度よく溶断する点にある。発熱抵抗体73,73’の熱は望ましくは100%低融点合金体72,72’の溶断に用いられるのがよいのであるが,低融点合金体の溶断に用いられる熱はその一部であるのが実情である。これは熱の伝達経路を完全にはコントロールすることはできないので,発熱抵抗体から発生する熱はあらゆる方向に発散していくためである。その発散経路の一つとして発熱抵抗体が最も近接している,乃至は密着している回路基板79,79’への熱の放散がある。回路基板79,79’は一般的にはガラスエポキシ等で形成されるプリント基板であるが,非常に大きな熱容量をもっているため,発熱抵抗体からのここへの熱の放散量は多く,したがって発熱抵抗体で生じる熱が低融点合金体を溶断するために用いられる利用効率は非常に小さいものになっているのが実情のようである。しかしながらこの実施例のように,発熱抵抗体73,73’と回路基板79,79’の間に隙間78,78’を形成してやれば,この間の伝熱は熱放射が多くなるので,発熱抵抗体からの熱を有効に低融点合金体72,72’の溶断に利用することができるようになるのである。」(段落【0026】) 「また,この隙間78,78’を形成するためには,別途新たな材料を用意することなく,この抵抗付温度ヒューズのリード線77,77’を用いるのがよい。リード線は図6に示すように発熱抵抗体が生じている他面側に凸接して形成されるため,リード線77,77’によってこのセラミックス基板が回路基板から持ち上げられ,結果として発熱抵抗体と回路基板との間に一定の隙間78,78’が生じるのである。いう までもなくこの隙間は広ければ広いほど発熱抵抗体からの熱の有効利用が図られるのである。またこのようにリード線でもって発熱抵抗体をプリント基板から隔離する方法としてリード線を図6(a)のようにハの字状に形成することのほか,図6(b)のようにセラミック基板71’の下側で折り曲げることによって,隙間を設けるような方法もある。いずれの構造をとるかは設計的なものであるが,同図6(b)のような配置をとる場合にはリード線が余分に回路基板上の面積を占有することもないので,小型化が可能であるというメリットがある。また,この実施例において,他面側に突接されたリード線が他面側に植設されていることを意味するものではない。」(段落【0027】) 「例えば図7(a),(b)に示すような構造も含む趣旨である。図7(a),(b)はそれぞれリード線87,87’がハの字状乃至は折りたたまれてセラミック基板81,81’の下面側に配置される場合を示すものであるが,図6に示すものとの相違点はリード線の植設されている位置が発熱抵抗体83,83’が配置されている他面81b,81b’側である点である。このように他面側にリード線を配置しても,発熱抵抗体83,83’と回路基板89,89’との間に隙間88,88’を形成することには変わりないので十分な効果を発揮することができる。ただし,より好ましくは図6に記載されているようにリード線は他面側ではなく片面側,すなわち低融点合金体側に植接され他面側に突設されているような構成のものがよい。」(段落【0028】) 「なぜなら,リード線は一般的に金属材料で作られ,熱伝導率が高いのでこのようなものを発熱抵抗体の近傍に配設するよりはむしろできるだけ発熱抵抗体から隔離して配置した方が有利である。したがって,発熱抵抗体に近傍して配置せざるを得ない図7記載のような構成よりは発熱抵抗体が構成されている他面と異なる面であるか他面側にリード線が 植設された構成のものが伝熱の観点から有利である。」(段落【0029】) 「本発明は前述のように,セラミック基板の片面に低融点合金体を,他面に発熱抵抗体を配置し,この発熱抵抗体に通電し,前記セラミック基板を介して前記低融点合金体を加熱し,これを溶断することで回路遮断をする抵抗付温度ヒューズであって,この抵抗付温度ヒューズのリード線は前記片面側に突設され,この抵抗付温度ヒューズが回路基板上に配させれた場合に前期低融点合金体と回路基板との間に隙間が形成されるようにした抵抗付温度ヒューズである。」(段落【0030】)「図8に示す変形例においては,低融点合金体92a-dが回路基板側99a-dに発熱抵抗体93a-dがセラミック基板91a-dを介して回路基板99a-dとは逆側配置されるようにしている。このように発熱抵抗体を逆側に配置すれば近傍に回路基板があることもないので,発熱抵抗体から発生する熱は,なおさら低融点合金体を溶断するために利用されやすくなる。また低融点合金体もリード線でもって回路基板との間に隙間が形成されるようにされているので,低融点合金体から回路基板への伝熱も少なくなり,発熱抵抗体からの熱が有効に回路基板側に配置されている低融点合金体の溶断に使われるのである。」(段落【0031】) 「更に別の実施例として,前述のようにセラミック基板の片面に低融点合金体を他面に発熱抵抗体を配置し,この発熱抵抗体に通電し前記セラミック基板を介して前記低融点合金体を加熱し,これを溶断することで回路遮断をする抵抗付温度ヒューズであって,前記低融点合金体の中間部は前記セラミック基板上に配される良熱伝導体で支持される抵抗付温度ヒューズがある。この実施例の特徴点は,要するにセラミック基板上に配される良熱伝導体が低融点合金体の中間部を支持するようにして いる点にある。」(段落【0032】) 「このように良熱伝導体で低融点合金体の一部を支持することの趣旨は,その部分に発熱抵抗体からの熱を集中的に分配してやって低融点合金体の溶断をコントロールしてやることにある。即ち,図9に示すように発熱抵抗体の熱はセラミックス基板を介して低融点合金体102,102’に至るのであるが,低融点合金体がセラミックス基板101,101’上に配置されている場合はもちろんのこと,離隔して配置されている場合であっても低融点合金体のどの部分に集中して熱を与えられるということはなく,全体としてある一定のバラツキを持って低融点合金体が加熱されるのである。」(段落【0033】) 「しかしながら上述の実施例のように,セラミック基板上に良熱伝導体100,100’を配置して良熱伝導体の一部を低融点合金体に接触支持するようにしてやれば,セラミック基板を伝わってきた熱は空間に発散するよりはむしろその良熱伝導体の部分を通じて低融点合金体に与えられ,低融点合金体のかかる良熱伝導体で支持される部分が集中的に過熱されるようになるのである。したがって,このように良熱伝導体でもって低融点合金体へ流れる熱の経路を設計してやることができるので,低融点合金体の溶断個所を任意に決めることができる。本発明の場合には,そのばらつき等も考慮して,これを低融点合金体の中間部としているのである。ただし,中間部とは真ん中という意味ではなく,低融点合金体の両端の電極105,105’近傍を含まない広い中央部分を指すのである。また,良熱伝導体としては,金属材料例えば銅や鉄や金のようなものも考えられるが,図9(b)に示すようにセラミック基板の一部を突出させて,セラミック基板から良熱伝導体100’を形成し,その部分で低融点合金体を支持するような構造にしても良いのである。
例えば,このようなセラミック材料としては,熱伝導率が比較的良いア ルミナ,窒化アルミ,炭化シリコンのようなものが挙げられる。」(段 落【0034】) 「【発明の効果】 以上説明したように,本発明においてはセラミック基板の片面に平板 状の低融点合金体を,他面に発熱抵抗体を配置し,低融点合金体の両端 および中間部に電極を設置し,その中間部の電極を介して発熱抵抗体に 通電するように伝熱経路を設計し,熱の分配を確実に行えるようにした ので,低融点合金体の溶断タイミングを精度良く確保することが可能と なった。また,この種の抵抗付温度ヒューズの低融点合金体を含む部分 にケースでふたをし気密に封止した場合には,これらの機能部分の対環 境性を確実に高めることができ,かつ,ショート等によりフラックスが 暴発するということも無いので,信頼性の高い温度ヒューズを提供する ことができる。また,低融点合金体と発熱抵抗体をそれぞれ異なる基板 上に形成するタイプの抵抗付温度ヒューズにおいては,以上述べたよう な発明のメリットのほかに,カバーを特別に用意しなくても良く,材料 を 少 な く す る 抵抗 付温 度 ヒ ュ ー ズ を実 現す る こ と が で きる ので あ る。」(段落【0036】)ウ 前記ア及びイによれば,本件明細書には,本件発明1に関し,次のよう な開示があることが認められる。
電子機器等の回路の電圧等をセンシングし,その値が危険値に達して いる場合に,発熱抵抗体に通電して発熱させ,その熱を低融点合金体か らなる温度ヒューズに伝熱し,温度ヒューズを溶断し,当該回路を遮断 する仕組みの抵抗付温度ヒューズには,従来から,基板(181)の片 面に発熱抵抗体(183)と低融点合金体(182)とが絶縁層(18 9)を介して積層配置された構造のもの(別紙1の図11(a))と, 基板(181’)の片面に低融点合金体(182’)を,他面に発熱抵 抗体(183’)をそれぞれ配置した構造のもの(同図11(b))があった。
しかし,前者の構造のもの(別紙1の図11(a))は,絶縁層の薄膜に欠陥がある場合に発熱抵抗体と低融点合金体とのショートが生じるという問題があった。また,一般に低融点合金体は周囲にフラックスを伴っているため,このようなショートが起こった場合には,フラックスが爆発的に化学反応を起こし,大量のガスを発生して抵抗付温度ヒューズがケースごと暴発するというような問題が生じることから,ケースによるカバーで低融点合金体やその周囲のフラックスを外部の環境から完全に密封することが困難になっており,場合によってはカバーの一部に穴を開けてそのような暴発を防ぐ構造を採用しているものもあった。そのような構造を採用した場合には結果としてカバーによる機密性を保つことができず,低融点合金体ないしはその周囲に配置されるフラックスが周囲環境により劣化して抵抗付温度ヒューズ全体の信頼性を損なうという問題もあった。
一方で,後者の構造のもの(別紙1の図11(b))は,基板の片面と他面にそれぞれ低融点合金体と発熱抵抗体とが別個に配置されているため,両者間でショートが起こるというようなことはないが,前者の構造のもの(別紙1の図11(a))と比べて,発熱抵抗体と低融点合金体との距離がセラミック基板を介して隔たっているため,発熱抵抗体から発生する熱が低融点合金体に到達しにくく,また,到達した場合であっても周囲環境によるセラミック基板の温度分布のバラツキ等によって,その溶断精度は大きな誤差が生じてくるという問題があった。
本件発明1は,従来の抵抗付温度ヒューズで問題となっているショートや溶断精度のバラツキを完全に解決し,ショートが生ぜず,かつ,溶断精度も高い抵抗付温度ヒューズを提供することを目的とするものであ り,これらの課題を解決するための手段として,セラミック基板の片面 に低融点合金体を,他面に発熱抵抗体を対向配置し,この発熱抵抗体に 通電し前記セラミック基板を介して前記低融点合金体を加熱し,これを 溶断することで回路遮断をする抵抗付温度ヒューズであって,前記低融 点合金体は平板状であって,前記セラミック基板の片面に前記発熱抵抗 体と対向する位置に配置され,かつ,この低融点合金体は両端及び中間 部が電極に接続され,前記発熱抵抗体は前記低融点合金体の中間部の電 極を介して通電される構成を採用し,さらには,前記低融点合金体の周 囲にフラックスが配置され,ケースが前記セラミック基板に対して気密 に密着して前記フラックスを外気環境から保護する構成を採用した。
本件発明1は,低融点合金体と発熱抵抗体とがセラミック基板の異な る面に配置されているため,両者間でショートが生じることがない上, 従来は,別紙1の図11(b)に示すように断面が円形で,いわゆる丸 棒状の低融点合金体が用いられていたのに対し,これを平板状とし,か つ,セラミック基板の上に対向配置したので,発熱抵抗体から発生する 熱を吸収する面積が広くなり,熱を効率良く低融点合金体に取り込むこ とができるので,低融点合金体の溶断タイミングを精度良く確保するこ とが可能となり,また,低融点合金体を含む部分にケースでふたをし気 密に密着して封止したことにより,低融点合金体やその周囲のフラック スを外気環境から保護し,これらの対環境性を確実に高めるという効果 を奏する。
甲2の記載事項について 甲2には,次のような記載がある(下記記載中に引用する図面については別紙2を参照)。
ア 「実用新案登録請求の範囲 絶縁基板の片面に複数個の膜状低融点金属体を設け,これらを膜状導体 で直列に接続し,同絶縁基板の他面に上記の複数箇の各膜状低融点金属体に対応して複数箇の膜状抵抗体を設けたことを特徴とする抵抗体付温度ヒユーズ。」(1欄1行〜6行)イ 「<産業上の利用分野> 本考案は基板型の抵抗体付温度ヒユーズの改良に関するものである。」(1欄8行〜10行)ウ 「<先行技術と問題点> 基板型の抵抗体付温度ヒユーズとして,絶縁基板の片面に膜状抵抗体を設け,同絶縁基板の他面に膜状低融点金属体を設けたものが公知である。
この抵抗体付温度ヒユーズの使用要領は,過電流による膜状抵抗体の発生熱を膜状低融点金属体に伝達して,この低融点金属体を溶断させ,この溶断によつて上記過電流を遮断することにある。しかしながら,膜状抵抗体の発生熱が絶縁基板の厚みを経て膜状低融点金属体に伝達する熱経路の熱伝達特性が悪いから,作動特性に劣るといつた不利がある。」(1欄11行〜22行)エ 「<考案の目的> 本考案の目的は,基板型の抵抗体付温度ヒユーズにおいて,熱伝達特性の改良により作動特性の向上を図ることにある。 (1欄23行〜26行) 」オ 「<考案の構成> 本考案に係る抵抗体付温度ヒユーズは,絶縁基板の片面に複数箇の膜状低融点金属体を設け,これらを膜状導体で直列に接続し,同絶縁基板の他面に上記の複数箇の各膜状低融点金属体に対応して複数箇の膜状抵抗体を設けたことを特徴とする構成である。」(2欄1行〜7行)カ 「<実施例の説明> 以下,図面により本考案を説明する。
第1図は本考案に係る抵抗体付温度ヒユーズを示す上面説明図,第2図 は同ヒユーズを示す背面説明図である。
図において,1は絶縁基板であり,例えばセラミツクス板を用いることができる。21,21並びに22,22は基板の片面に設けた膜状の対電極であり,絶縁基板1の中心線n-nに対し対称的に設けてある。31,32は各電極21,21,22,22間に設けた膜状抵抗体であり,両者の寸法,厚みは同一である。4,……は各対電極に対するリード導体,5は絶縁コートである。61,62は基板1の他面に設けた膜状低融点金属体体であり,上記の各膜状抵抗体31,32と同じ位置に設けてある。従つて,各膜状低融点金属体61,62は中心線n-nに対し対称的に存在している。71,72はフラツクスである。8は膜状低融点金属体61,62を直列に接続せる膜状導体である。91,92は各膜状低融点金属体61,62に対する膜状補助導体であり,終端ランド910,920中心線n-n上に存在している。10,10は各ランドに接続せるリード導体,11は絶縁コートである。
上記ヒユーズの作動においては,過電流による膜状抵抗体の発熱によつて膜状低融点金属体が溶断するが,膜状低融点金属体が2箇の膜状抵抗体により,すなわち,2箇の熱源により加熱されるから,その熱伝達効率が良好である。従つて, ヒユーズの作動迅速性をよく保証できる。
また,2箇の膜状抵抗体のそれぞれに対応して膜状低融点金属体を設けてあり,熱発生源並びに受熱体がヒユーズに対して左右対称的であり,各熱発生源に基づく熱分布が左右対称となつて,その重量熱分布が一様となるから,ヒートサイクルによりヒユーズに発生する歪を一様になし得る。
従つて,ヒユーズ作動時までの多回数ヒートサイクル中に,抵抗体付温度ヒユーズが早期破損するのをよく防止でき,苛酷なヒートサイクル下でも支障なく使用できる。」(2欄8行〜4欄1行)キ 「<考案の効果> このように,本考案に係る基板型の抵抗体付温度ヒユーズにおいては, 絶縁基板の両面にその基板の厚みを隔てて膜状抵抗体と膜状低融点金属体 とを設けたにもかかわらず,作動迅速性を充分に確保でき,しかも,ヒー トサイクル中での歪発生も均一に分散でき,苛酷なヒートサイクル下でも 安定性を保証できる。
なお,本考案においては,膜状低融点金属体の箇数並びにこれらに対応 する膜状抵抗体の箇数をそれぞれ3箇とすることも可能である。」(4欄 2行〜12行) 甲15の記載事項の認定の誤りの有無について 原告らは,本件審決は,甲15の外部ケースは,基板に対して密着していると認められるものの,外部発熱体,低融点金属体及び内側封止部を完全に密封するものではなく,場合によってはカバーの一部に穴を開けて暴発を防ぐ構造となっていると理解するのが相当であるから,相違点2に係る本件発明1の構成のものとは異なる旨認定したが,当業者は,甲15の外部ケースは,低融点金属体等の溶融物が流出することを防止するとともに,フラックス(内側封止部)の劣化を防止するために,ケースの内側と外側とで気体の通過を遮断するように完全に密封して,低融点金属体及び内側封止部の外側を覆っていると認識するというべきであるから,本件審決の認定は誤りである旨主張するので,以下において判断する。
ア 甲15には,次のような記載がある(下記記載中に引用する図面につい ては別紙6を参照)。
「【産業上の利用分野】本発明は,ヒューズ等の低融点金属体を使用 した保護素子に関する。特に,本発明は,所定電圧以上の過電圧を防止 するために有用な保護素子に関する。」(段落【0001】) 「【従来の技術】従来より,鉛,スズ,アンチモン等の低融点金属体 を使用した保護素子としては,過電流により溶断して電流を遮断する電 流ヒューズが広く使用されている。このヒューズの形態としては,短冊状の低融点金属体の両端につめをつけたつめ付きヒューズ,棒状の低融点金属体をガラス管内に封入した筒型ヒューズ,直方体形状の低融点金属体にリード端子を設けたチップ型ヒューズ等が知られている。この他,保護素子としては,所定温度を超えると溶断する温度ヒューズも使用されている。」(段落【0002】) 「【発明が解決しようとする課題】しかしながら,従来の保護素子には,いずれの態様のものについても,配線基板上に表面実装しにくいという問題がある。これに対しては,直方体形状の樹脂内にヒューズを埋め込んで封止し,その直方体形状の樹脂表面にヒューズのリード端子を形成したチップ型ヒューズが提案されている(特開平4-192237号)。しかし,単に樹脂内にヒューズを埋め込んで封止するだけでは,過電流が流れたときにヒューズが溶解はしても,必ずしも溶断には至らないので,安定的に保護素子として機能させることができないという問題がある。」(段落【0003】) 「また,市販されているチップ型ヒューズの大きさは,小さいものでも厚さ2.6×幅2.6×長さ6mm程度あり,基板に搭載する他の電子部品に比して大きい。特に,ICの厚みが一般に1mm程度であるのに対して,チップ型ヒューズの厚みが約2.6mm程度と著しく大きくなっている。そのため実装後の基板の高さがチップ型ヒューズで制約されることとなり,実装スペースの低減を妨げている。したがって,チップ型ヒューズの厚みも1mm程度に小型化させることが課題となっている。」(段落【0004】) 「また,近年の産業の発展に伴い,従来の電流ヒューズや温度ヒューズの他に,過電圧により動作する保護素子が求められるようになっている。」(段落【0005】) 「例えば,高エネルギー密度の二次電池として注目されているリチウムイオン電池では,過充電により電極表面にデンドライトが生成し,電池性能が大きく損なわれるので,充電時に電池が所定電圧以上に充電されることを防止することが必要となる。しかしながら,このような過電圧を防止するために有用な保護素子はこれまでに開発されていない。実際,リチウムイオン電池の保護機構としては,短絡等により規定値以上の電流が電池に流れた場合にPTCが発熱し,ヒューズが溶断するようにした保護機構は設けられているが,このような保護機構は過充電の防止のためには使用することができない。このため,過充電を防止するための新たな保護素子が求められており,特に,このような電池の充電時等に使用する保護素子として,発火等の危険がない,使用上の安全性の高いものが求められている。」(段落【0006】) 「本発明は以上のようなヒューズに関する従来技術の問題点を解決しようとするものであり,過電圧を防止することのできる新たな保護素子を提供することを第1の目的とする。また,従来の電流ヒューズも含めて,チップ型の保護素子を,安定的な動作を確保しつつ,より小型化させることを第2の目的とする。」(段落【0007】) 「【課題を解決するための手段】本発明者らは,無機系基板上に無機系材料からなる発熱体,絶縁層及び低融点金属体を順次積層した素子が過電圧を防止する保護素子として有用であることを見出し,第1の本発明を完成させるに至った。また,そのような過電圧防止用の保護素子だけでなく,従来の電流ヒューズも含めて,チップ型の保護素子を形成する場合に,基板上に低融点金属体を配設後,その低融点金属体よりも低融点又は低軟化点の材料で低融点金属体を封止し,さらにその外側を空隙を置いて外部ケースで覆うと,保護素子の機能を損なうことなく小型化できることを見出し,第2の本発明を完成させるに至った。」(段落 【0008】) 「すなわち,本発明は,第1の発明として,無機系基板上に配設された無機系材料からなる発熱体,該発熱体の表面を覆う絶縁層,及び該絶縁層上に配設された低融点金属体からなることを特徴とする保護素子を提供する。」(段落【0009】) 「また,本発明はこのような保護素子を用いた過電圧防止装置として,保護素子と電圧検知手段からなり,電圧検知手段が所定電圧以上の電圧を検知することにより保護素子の発熱体が通電され発熱されるようにしたことを特徴とする過電圧防止装置を提供する。」(段落【0010】) 「さらに本発明は,第2の発明として,基板上に配設した低融点金属体,該低融点金属体よりも低融点又は低軟化点材料からなり,該低融点金属体を封止する内側封止部,及び該内側封止部と空隙を置いて該内側封 止 部 を 覆 う 外側 ケー ス か ら な る 過電 流防 止 用 保 護 素 子を 提供 する。」(段落【0011】) 「以上のように,本発明の保護素子は,無機系基板2上に配設された無機系材料からなる発熱体3,絶縁層4,低融点金属体5から構成することができるが,さらに図2あるいは図3に示すように低融点金属体5を内側封止部8で封止し,さらにその外側を外部ケース又は外側封止部で覆うことが好ましい。」(段落【0021】) 「即ち,図2は,上述の図1の保護素子1aの低融点金属体5を,該低融点金属体5よりも低融点又は低軟化点を有する内側封止部8で封止し,さらにその内側封止部8を外側ケース9で覆った保護素子1bの断面図である。」(段落【0022】) 「低融点金属体5の表面が酸化されると,低融点金属体5が本来の溶融温度に加熱されても,その表面酸化部分が溶融せず,そのために低融点金属体5が溶断しない場合が生じるが,このように内側封止部8で低 融点金属体5を封止することにより,低融点金属体5の表面酸化を防止できるので,低融点金属体5が所定温度に加熱された場合の溶断を確実に生じさせることが可能となる。また,内側封止部8は,低融点金属体5よりも低融点又は低軟化点を有する材料から形成するので,この内側封止部8による低融点金属体5の封止により,低融点金属体5の溶断が阻害されることはない。」(段落【0023】) 「内側封止部8には,単に低融点金属体5の表面酸化を防止するだけでなく,表面に形成された金属酸化膜の除去作用をもたせることが好ましい。したがって,内側封止部8の封止材料としては,例えば,有機酸,無機酸等の金属酸化膜の除去作用を有する封止材料を使用することが好ましい。なかでも,主成分としてアビエチン酸を含有する非腐食性の固形フラックスが好ましい。これは,アビエチン酸は室温では固形で不活性であるが,約120℃以上に加熱されると溶融し,活性状態となって金属酸化物の除去作用を発揮するので,低融点金属体5が所定温度に加熱された場合の溶断を確実化できるだけでなく,保護素子の保存安定性も向上させることができるからである。また,固形フラックスを用いて内部封止部8を形成する方法としては,クレーター防止の点から,溶剤を使用することなく固形フラックスを加熱溶融させ,その溶融物を低融点金属体5上に塗布することが好ましい。」(段落【0024】) 「内側封止部8の厚さは,その封止材料の種類等にもよるが,通常は低融点金属体5の表面酸化の防止の点,あるいは表面酸化膜の除去能の点から,約10〜100μmとすることが好ましい。」(段落【0025】)「外側ケース9は,低融点金属体5や内側封止部8が溶解した場合に,保護素子からそれらの溶融物が流出することを防止するために設けられている。この外側ケース9は,図2に示したように内側封止部8と空隙 10を置いて配することが好ましく,この場合,空隙の垂直方向の大きさd1 は50〜500μm程度,水平方向の大きさd2 は0.2〜1.0mm程度とすることが好ましい。このような大きさの空隙10により,低融点金属体5や内側封止部8が溶融した場合に,溶融物が移動するスペースが確保されるので,確実に溶断を生じさせることが可能となる。」(段落【0026】) 「外側ケース9の構成素材については特に制限はないが,内側封止部8と空隙をあけたハウジング形状とする点,及び耐熱性,難燃性の点から,難燃剤が添加された4,6-ナイロンあるいは液晶ポリマー等を使用することが好ましい。」(段落【0027】) 「以上のように,低融点金属体5を内側封止部8で封止し,さらにその内側封止部8と空隙10をもたせて外側ケース9で覆うと,低融点金属体5の表面を保護し,低融点金属体5が所定温度に加熱された場合の溶断の確実性を確保し,かつ保護素子の全体としての厚みDを1mm程度以下にすることができる。したがって,このよう保護素子1bは,保護素子としての動作の信頼性と小型化の要請に応えた優れた保護素子となる。」(段落【0028】) 「なお,低融点金属体5を内側封止部8で封止し,さらにその内側封止部8に対して空隙10をもたせて外側ケース9で覆うという構成自体は,発熱体3をもたない保護素子にも適用することができる。即ち,図2に示した保護素子1bには,後述するように過電圧防止装置において機能させられるように発熱体3が設けてあるが,このような発熱体3をもたない従来の過電流防止用のチップ型ヒューズにおいても,その低融点金属体を内側封止部で封止し,さらにその外側を空隙を置いて外側ケースで覆うことは,保護素子としての動作の信頼性を向上させ,かつ素子の小型化を図る上で有用であり,これによりチップ型ヒューズの厚さ を従来の50%程度に低減させることができる。したがって,本発明は, 基板上に配設した低融点金属体,その低融点金属体よりも低融点又は低 軟化点材料からなり,その低融点金属体を封止する内側封止部,及びそ の内側封止部と空隙を置いて内側封止部を覆う外側ケースからなる過電 流防止用保護素子も包含する。」(段落【0029】) 「実施例2 実施例1で作製した保護素子の低融点金属体5上にペースト状フラック ス(HA・78・TS-M,タルチン社製)を約0.5mmの厚さに塗 布することにより内側封止部8を形成し,次いで液晶ポリマー(G-5 30,日石化学社製)を用いて成型された外側ケース9をエポキシ系接 着剤で接着することにより,図2に示した態様の保護素子を作製し た。」(段落【0045】) 「評価 実施例2及び実施例3の保護素子のそれぞれについて,低融点金属体用 端子7a,7bにデジタルマルチメーターを接続し,抵抗値を確認しな がら発熱体用端子6a,6b間に4Vの電圧を印加したところ,いずれ の保護素子においても60秒以内に低融点金属体5が溶断することが確 認された。このとき外側ケース9あるいは外側封止部11からの低融点 金属体の流出は観察されなかった。」(段落【0048】) 「【発明の効果】第1の本発明によれば,過電圧を防止することがで き,安全性にも優れた保護素子を得ることができる。また,第2の本発 明によれば,チップ型の保護素子を,安定的な動作を確保しつつ,より 小型化させることが可能となる。」(段落【0050】)イ 前記アによれば,甲15には,@別紙6の図2に示すように,基板2上 に配設された発熱体3,その表面を覆う絶縁層3及び当該絶縁層上に配設 された低融点金属体5から構成され,当該低融点金属体を内側封止部8で 封止し,さらにその内側封止部8を外側ケース9で覆っている保護素子(段落【0008】,【0021】),Aこの外側ケース9は,低融点金属体5や内側封止部8が溶解した場合に,保護素子からそれらの溶融物が流出することを防止するために設けられていること(段落【0008】),B内側封止部8の内側封止部8の封止材料としては,主成分としてアビエチン酸を含有する非腐食性の固形フラックスが好ましく(段落【0024】 , )また,外側ケース9の構成素材については特に制限はないが,難燃剤が添加された4,6-ナイロンあるいは液晶ポリマー等を使用することが好ましいこと(段落【0027】),Cこのように低融点金属体5を内側封止部8で封止し,さらにその内側封止部8と空隙10をもたせて外側ケース9で覆うと,低融点金属体5の表面を保護し,低融点金属体5が所定温度に加熱された場合の溶断の確実性を確保することができること(段落【0028】),D発熱体3をもたない従来の過電流防止用のチップ型ヒューズにおいても,その低融点金属体を内側封止部で封止し,さらにその外側を空隙を置いて外側ケースで覆うことは,保護素子としての動作の信頼性を向上させ,かつ,素子の小型化を図る上で有用であること(段落【0029】),E「実施例2」として,低融点金属体5上にペースト状フラックスを約0.5mmの厚さに塗布することにより内側封止部8を形成し,次いで液晶ポリマーを用いて成型された外側ケース9をエポキシ系接着剤で接着することにより,別紙6の図2の態様の保護素子を作製し,この保護素子に接続した発熱体用端子6a,6b間に4Vの電圧を印加したところ,60秒以内に低融点金属体5が溶断することが確認され,このとき外側ケース9あるいは外側封止部11からの低融点金属体の流出は観察されなかったこと(段落【0045】,【0046】)が開示されていることが認められる。
上記開示事項及び別紙6の図2によれば,図2の保護素子の外部ケー ス(外側ケース9)は,基板に対して接着剤で接着し,溶断した低融点金属体及びフラックスが外部ケースの内部から外部に流出しないように構成されていることを理解することができる。
また,@甲35(実願昭60-180572号(実開昭62-88330号公報)のマイクロフィルム)には,「本考案に係わる温度ヒューズは,相対するリード線に可溶合金を溶着し,該リード線端部と前記可溶合金体上に可溶合金の融解移動を助勢する働きをするフラックス作用を有する樹脂を塗布せしめ,絶縁性ケース内に挿通し,前記絶縁性ケースの開口端を封口樹脂で封止してなる温度ヒューズにおいて,前記絶縁性ケース内にフラックス劣化防止剤を封入したことを特徴とする構成である。」(明細書の5頁2行〜10行),「第1図及び第2図は本考案の一実施例の動作前及び動作後の断面図である。1,1はリード線であり,銅線あるいは銀線さらには銅線上にスズメッキまたははんだメッキ等が施してある。2は電気的且つ機械的にリード線1,1に接続した導電性の可溶合金である。3はフラックス作用を有する樹脂であり,可溶合金2の表面に被着されている。4は可溶合金2を囲む絶縁性ケース,5,5は絶縁性ケース4の開口両端部とリード線1,1とに封止した樹脂等の接着剤である。6は吸湿剤または脱酸素剤から成るフラックス劣化防止剤であり,…フラックス作用を有する樹脂3中に均一に分散させてある。」(明細書の5頁13行〜6頁8行)との記載があること(第1図及び第2図については別紙7を参照),A甲36(特開平5-281867号公報)には,「図13は合金タイプの温度ヒューズの一例であり,(A)は平常時の縦断面図,(B)は動作時の縦断面図である。」(段落【0037】),「43は該温度ヒューズ9の外装セラミックケース,44は該ケース内に位置させて両端部にそれぞれ第1と第2のリード線32・34を溶接により接続した感温部材としての合金からなる導電性可溶体である。この可溶体44の外周はフラック ス45で覆われている。」(段落【0038】),「41・41はケース43内の気密性を保たせるためにケース43の両端開口部を閉塞させた封口樹脂部である。」(段落【0039】),「上述の感温ペレットタイプの温度ヒューズも,合金タイプの温度ヒューズも,上述したようにヒューズケース31 43内を封口樹脂41により気密性を保たせているもので, ・これはケース内を気密に保たないと,ケース内の感温ペレット40や可溶体44・フラックス45が経時的に変質してしまい,本来の動作温度以下で作動してしまったり,逆に動作温度に達しても作動しなかったりして信頼性が低下してしまうからである。」(段落【0042】),「従来はその封口樹脂41として,リード線32・34を曲げ処置する等の際に封口樹脂部に強い力が加わっても,はがれ・ひび・変形等して気密がやぶれないように,エポキシ樹脂等の,ある程度強度を持つ耐熱性非弾性材質の樹脂を用いている。」(段落【0043】)との記載があること(図13については別紙8を参照)によれば,本件出願当時,可溶合金体及びこれを被覆するフラックスを有する温度ヒューズにおいて,可溶合金体及びフラックスの劣化防止のため,温度ヒューズをケース内に入れてその開口端を封止し,可溶合金体及びフラックスを気密状態で保護することは周知であったことが認められる。
上記周知技術に鑑みると,甲15に接した当業者においては,別紙6の図2の保護素子の外部ケース(外側ケース9)が基板に対して接着剤で接着していることにより,外部ケースの内部と外部とで気体が流通しないように密閉された気密状態となっており,これにより低融点金属体及びフラックスが外部ケースの外側の外気環境から保護されていると理解するものと認められる。
もっとも,甲15には,図2の外部ケースが基板と接着していることにより外部ケースの内部と外部とで気体が流通しないように密閉された状態 となる構造となっていることについては,明示的な記載はないが,他方で, そのような構造となっていてないことをうかがわせる記載もないことに照 らすと,かかる明示的な記載がないことは,上記認定を妨げるものではな い。
そうすると,甲15の図2の保護素子は,その外部ケースが基板に対し て接着剤で接着していることにより気密に密着してフラックスを外気環境 から保護しているものと理解することができるから,甲15には,相違点 2に係る本件発明1の構成が開示されているものと認められる。
ウ この点に関し,本件審決は,甲15の外部ケースは,低融点金属体及び 内側封止部とともに発熱体を覆うものであるから,本件明細書の段落【0 007】,【0008】に従来技術として記載されているとおり,発熱体, 低融点金属体及び内側封止部を完全に密封するものではなく,場合によっ てはカバーの一部に穴を開けて暴発を防ぐ構造となっていると理解するの が相当であり,相違点2に係る本件発明1の構成のものとは異なる旨認定 した。
本件審決が引用する本件明細書の段落【0007】には,抵抗付温度ヒ ューズの従来の技術の説明として,基板(181)の片面に発熱抵抗体(1 83)と低融点合金体(182)とが絶縁層(189)を介して積層配置 された構造のもの(別紙1の図11(a))に関し,基板上に配置された 発熱抵抗体と低融点合金体とのショートが生じた場合,「また一般に低融 点合金体は周囲にフラックスを伴っているため,このようなショートが起 こった場合には,そのスパークによってフラックスが爆発的に化学反応を 起こし,大量のガスを発生して抵抗付温度ヒューズがケースごと暴発する というような問題も生じる。かかる観点から,図には示さないが,これに カバーをして内部の低融点合金体乃至はその周囲に配置されたフラックス を外部の環境から完全に密封するということが困難になっており,場合に よってはケースでこの低融点合金体や低融点合金体やその周囲のフラックスを覆うもののカバーの一部に穴を開けてそのような暴発を防ぐ構造を採用しているものもある。」との記載がある。
しかしながら,本件出願前に甲15に接した当業者は,本件出願後に公開された本件明細書の記載事項を参酌して甲15記載の保護素子の外部ケースの構造を理解することはない。
また,本件明細書に従来技術として記載されている事項は,本件出願の発明者が従来技術として認識していたことを意味するが,そのことから直ちに本件出願時の当業者も同様に従来技術として認識していたものと認めることはできない。
さらに,本件明細書には,「すなわち図12に示すように,基板上に配置された発熱抵抗体と低融点合金体とのショート190が生じるのである。これは特に発熱抵抗体193と低融点合金体192との電位差が大きくなればなるほど生じやすくなり,また両者を隔てている絶縁薄膜の厚みが薄くなればなるほど生じやすい。」(段落【0006】)との記載があることからすると,発熱抵抗体と低融点合金体とのショートが生じるかどうかは,発熱抵抗体と低融点合金体との電位差や,発熱抵抗体と低融点合金体との間の絶縁層の厚みにも影響されるものであり,これらを適宜調整することによりショートの発生を抑制することも可能であるものとうかがわれる。
そうすると,基板の片面に発熱抵抗体と低融点合金体とが絶縁層を介して積層配置され,かつ,低融点合金体の周囲にフラックスが配置され,さらにそのフラックスがケースのカバーで覆われた構造の抵抗付温度ヒューズであるからといって直ちに外部ケースの内部と外部とで気体が流通しないように密閉された気密状態とすることが困難であるとはいえないし,また,カバーの一部に穴を開けて暴発を防ぐ構造となっているものとはいえ ない。
以上によれば,本件審決の上記認定は誤りである。
エ 被告は,@甲15には,ケース9は保護素子から溶融物が流出すること を防止するために用いられるものであることは記載されているものの,気 密構造として機能部分の対環境性を確実に高めることに関しては開示も示 唆もないこと,A本件明細書の段落【0007】の記載に照らすと,甲1 5において,絶縁膜4を用いて絶縁をするため,絶縁膜4においてショー トが発生した場合には,フラックス8が暴発し,ケース9に穴が存在しな い場合にはケース9が暴発し,使用者が危険な状態に曝されること,B甲 15の段落【0006】に「使用上の安全性の高いものが求められている」 ことが述べられていること,C甲15で公開された発明の出願人の製品(乙 1)でも,基板上にカバーが固定され,当該カバーの側面には,フラックス を保護するための穴が設けられており,フラックスが溶融した場合であって もフラックスはカバー内に保持される構造となっていることからすると, 甲15の外部ケースは,外部発熱体,低融点金属体及び内側封止部を完全 に密封するものではなく,場合によってはカバーの一部に穴を開けて暴発 を防ぐ構造となっていると理解するのが相当であるから,前記ウの本件審 決の認定に誤りはない旨主張する。
しかしながら,前記イで述べたとおり,甲15の図2(別紙6参照)の 保護素子は,その外部ケース(外側ケース9)が基板に対して接着剤で接 着していることにより気密に密着してフラックスを外気環境から保護して いるものと理解することができるものであり,甲15において,図2の外 部ケースが基板と接着していることにより外部ケースの内部と外部とで気 体が流通しないように密閉された状態となる構造となっていることについ て明示的な記載がないことは上記認定の妨げとなるものではない。
また,前記ウで述べたとおり,本件明細書の段落【0007】の記載は, 本件審決の認定が正当であることの根拠となるものではない。
さらには,被告が指摘する乙1記載の製品は,甲15で公開された発明 の出願人が製造販売する製品であることはうかがわれるが,本件出願前に 製造販売されていたものではなく,甲15との関連性は不明であるといわざ るを得ない。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
相違点2の容易想到性について 原告らは,本件審決は,甲15には,外部ケースを発熱体をもたない保護素子にも適用することができる旨記載されているが,引用発明のような,低融点金属体が設けられた絶縁基板の他面側に発熱体を有した保護素子にまで外部ケースを適用することを示唆したものではないとして,引用発明の低融点金属体に,甲15の外部ケースを適用する動機付けはないから,引用発明と甲15記載の事項に基づいて,当業者が相違点2に係る本件発明1の構成に容易に想到し得るとはいえない旨判断したが,甲2及び甲15に接した当業者においては,引用発明に対して甲15の外部ケースを適用するよう試みることは,通常の創作能力の発揮にすぎず,引用発明の低融点金属体に甲15の外部ケースを適用する動機付けがあるから,本件審決の判断は誤りである旨主張するので,以下において判断する。
ア 甲2に,本件審決が認定した引用発明である「セラミック板からなる絶 縁基板(1)の他面に膜状低融点金属体(61,62)を,片面に膜状抵 抗体(31,32)を配置し,この膜状抵抗体(31,32)に通電し前 記絶縁基板(1)を介して前記膜状低融点金属体(61,62)を加熱溶 断して回路遮断する抵抗体付温度ヒユーズであって,前記膜状低融点金属 体(61,62)は膜状で前記絶縁基板(1)の他面に前記膜状抵抗体(3 1,32)と同じ位置に配置され,その両端が膜状導体(8)及び膜状補 助導体(91,92)に接続され,前記膜状低融点金属体(61,62) の周囲にフラックス(71,72)が配置された,抵抗体付温度ヒユーズ。」 が記載されていること,本件発明1と引用発明とが,「セラミック基板の 片面に低融点合金体を,他面に発熱抵抗体を配置し,この発熱抵抗体に通 電し前記セラミック基板を介して前記低融点合金体を加熱溶断して回路遮 断する抵抗付温度ヒューズであって,前記低融点合金体は平板状で前記セ ラミック基板の片面に前記発熱抵抗体と対向する位置に配置され,その両 端が電極に接続され,前記低融点合金体の周囲にフラックスが配置された, 抵抗付温度ヒューズ。」である点で一致すること(一致点1)は,争いが ない。
イ 抵抗体を設け,他面に膜状低融点金属体を設けた基板型の抵抗体付温度ヒ ューズが公知であり,この抵抗体付温度ヒューズは,過電流による膜状抵 抗体の発生熱を膜状低融点金属体に伝達して溶断させ,この溶断によつて 過電流を遮断するものであるが,膜状抵抗体の発生熱が絶縁基板の厚みを 経て膜状低融点金属体に伝達するため,熱経路の熱伝達特性が悪く,作動 は,基板型の抵抗体付温度ヒューズにおいて,熱伝達特性の改良により作 抗体付温度ヒユーズは,膜状低融点金属体が2箇の膜状抵抗体(熱発生源) により加熱されるから,その熱伝達効率が良好であり,ヒューズの作動迅 速性をよく保証でき,また,2箇の膜状抵抗体のそれぞれに対応して膜状 低融点金属体を設けてあるので,各熱発生源に基づく重量熱分布が一様と なり,ヒートサイクル中にヒューズに発生する歪発生を均一に分散でき, 苛酷なヒートサイクル下でも安定性を保証できる効果を奏すること(前記 部8で封止し,さらにその内側封止部8と空隙10をもたせて外側ケース 9で覆うと,低融点金属体5の表面を保護し,低融点金属体5が所定温度 に加熱された場合の溶断の確実性を確保することができることの開示があ ること(段落【0028】),A本件出願当時,可溶合金体及びこれを被 覆するフラックスを有する温度ヒューズにおいて,可溶合金体及びフラッ クスの劣化防止のため,温度ヒューズをケース内に入れてその開口端を封 止し,可溶合金体及びフラックスを気密状態で保護することは周知であっ たことからすると,甲2及び甲15に接した当業者においては,引用発明 の低融点合金体及びフラックスの劣化を防止するとともに,溶断物の流出 を防止することにより作動特性を向上させるため,引用発明の低融点金属 体に甲15の外部ケースを適用する動機付けがあるものと認められるか ら,相違点2に係る本件発明1の構成とすることを容易に想到することが できたものと認められる。
小括 以上によれば,当業者が引用発明と甲15記載の事項に基づいて相違点2 に係る本件発明1の構成に容易に想到し得るとはいえないとした本件審決の 判断は誤りである。
また,本件審決が,引用発明に甲3発明の技術を適用して相違点1に係る 本件発明1の構成(低融点合金体の「中間部が電極に接続され」,「発熱抵 抗体は中間部の電極を介して通電される」構成)を容易に想到し得るものと そうすると,本件発明1は,引用発明と甲3及び甲15記載の事項に基づ いて,当業者が容易に発明をすることができたといえるから,これと異なる 本件審決の判断は誤りである。
したがって,原告ら主張の取消事由1は理由がある。
2 取消事由2(本件発明2の容易想到性の判断の誤り)について 原告らは,引用発明と甲3及び甲5記載の事項に基づいて,当業者が相違点3に係る本件発明2の構成を容易に想到し得るとはいえないとした本件審決の判断が誤りであるとする理由について,引用発明と甲5に基づく相違点3の容易想到性の判断の誤り又は引用発明と甲3に基づく相違点3の容易想到性の判断の誤りを選択的に主張するので,まず,引用発明と甲5に基づく相違点3の容易想到性の判断の誤りの有無について検討する。
原告らは,本件審決は,@本件発明2の良熱伝導体は発熱体からセラミック基板に伝わった熱を集めるためのものであるのに対して,甲5の層状熱良伝導体は発熱体から電極を介して直接伝わる熱を拡げるためのものであるから,引用発明に甲5記載の層状熱良伝導体を適用したとしても,本件発明2の目的を達成し得ないし,また,A甲5では,発熱抵抗体と低融点合金体とが絶縁層を介して積層する構造を採用しており,これを引用発明に適用すると発熱抵抗体と低融点合金体とが絶縁層を介して積層する構造となるから,引用発明に甲5記載の層状熱良伝導体に係る構造を適用しても,本件発明2の構成とはなりえないから,引用発明に甲5記載の事項を適用して,相違点3に係る本件発明2の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到し得るとはいえない旨判断したのは誤りである旨主張するので,以下において判断する。
本件発明2について うな開示があることが認められる。
ア セラミック基板の片面に低融点合金体を他面に発熱抵抗体を配置し,こ の発熱抵抗体に通電し前記セラミック基板を介して前記低融点合金体を加 熱し,これを溶断することで回路遮断をする抵抗付温度ヒューズにおいて は,発熱抵抗体の熱は,セラミックス基板を介して低融点合金体に至るが, 低融点合金体のどの部分に集中して熱を与えられるということはなく,全 体としてある一定のバラツキを持って低融点合金体が加熱されるので,低 融点合金体の溶断はコントロールされない(段落【0032】,【003 3】)。
イ 本件発明2は,上記抵抗付温度ヒューズにおいて,セラミック基板上に 配される良熱伝導体が低融点合金体の中間部を支持する構成を採用したも のであり,これにより,良熱伝導体で支持される部分に発熱抵抗体からの 熱を集中的に分配し,加熱されるようになるので,良熱伝導体で低融点合 金体へ流れる伝熱経路を設計し,低融点合金体の溶断個所を任意に決める ことができるので,低融点合金体の溶断をコントロールすることができる という効果を奏する(段落【0034】,【0036】)。
甲5の記載事項についてア 甲5には,次のような記載がある(下記記載中に引用する図面について は別紙5を参照)。
「実用新案登録請求の範囲 絶縁基板上に異る位置において層状抵抗体と層状低融点金属体とを設 け,層状低融点金属体上に絶縁膜を介して層状熱良伝導体を設け,この 層状熱良伝導体と上記層状抵抗体とを熱伝導可能なように連結したこと を特徴とする抵抗・温度ヒユーズ結合体。」 「<産業上の利用分野> 本考案は抵抗・温度ヒユーズ結合体の改良に関するものである。」 「<先行技術と問題点> 温度ヒユーズを直列に付設した抵抗素子においては,抵抗体が過電流 により発熱するとその発熱により温度ヒユーズを溶断させて,抵抗体へ の通電を遮断することができ,抵抗体の異常発熱から回路を保護できる。
かかる温度ヒユーズ付きの抵抗素子として,第4図に示すように,絶 縁基板1′上に電極21′,22′並びに23′を設け,電極21′と 電極22′との間に層状抵抗体3′を設け,電極21′と電極23′と の間に層状低融点金属体4′を設け,絶縁基板1′上に絶縁層7′を設けたものが公知である。8′,8′はリード導体である。
しかしながら,この温度ヒユーズ付抵抗体における,電極21′近傍の層状低融点金属体部分40′には抵抗体3′の発生熱が電極21′を熱伝導路としてよく伝導するので,その層状低融点金属体部分40′はよく加熱されるが,他の低融点金属体部分は加熱され難い。このため層状低融点金属体が不均一加熱となり,溶断が遅延し,作動性に問題がある。」 「<考案の目的> 本考案の目的は,層状低融点金属体の均一加熱を図つて,作動性に秀れた基板型の抵抗・温度ヒユーズ結合体を提供することにある。」 「<考案の構成> 本考案に係る抵抗・温度ヒユーズ結合体は,絶縁基板上に異る位置において層状抵抗体と層状低融点金属体とを設け,層状低融点金属体上に絶縁膜を介して層状熱良伝導体を設け,この層状熱良伝導体と上記層状抵抗体とを熱伝導可能なように連結したことを特徴とする構成である。」 「 <実施例の説明> 以下,図面により本考案を説明する。
第1図Aは本考案に係る温度ヒユーズ付抵抗素子を示す説明図,第1図Bは第1図Aにおけるb-b断面図である。
第1図A並びに第1図Bにおいて,1は絶縁基板であり,セラミツク板,耐熱性プラスチツク板を用いることができる。21,22並びに23は箔状電極である。3は層状抵抗体であり,電極21と電極22との間に設けてある。4は層状低融点金属体(例えば,Pb-Sn合金系)であり,電極21と電極23との間に設けてある。5は層状熱良伝導体であり,その熱伝導性は層状低融点金属体4よりも一段と秀れ,層状低融点 金属体4の直下に絶縁膜6を介して設けてある。この層状熱良伝導体5は電極21に連結してあり,電極23とは分離してある。この層状熱伝導体5には電極23と同じものを用いることができる。7は絶縁基板上に設けた絶縁層,8,8はリード導体である。
上記において,過電流により層状抵抗体3が発熱すると,この発生熱が電極21を熱伝導路として層状熱良伝導体5に伝導され,層状低融点金属体4を電極21側の一端40からのみならず,直下からも加熱できるので,層状低融点金属体4をよく一様に加熱できる。
第2図は本考案の別実施例を示し,層状熱良伝導体5を層状低融点金属体4の中間部に交叉させてある。6は層状熱良伝導体5と層状低融点金属体4とを絶縁せる絶縁膜である。
第3図は本考案の別実施例に係る抵抗体付き温度ヒユーズを示し,3並びに4は互に独立の層状抵抗体並びに層状低融点金属体,5は層状抵抗体3に熱伝導可能なように連結した層状良熱伝導体であり,絶縁膜6を介して層状低融点金属体4に交叉させてある。81,81並びに82,82はそれぞれリード導体である。
この温度ヒユーズにおいては,層状抵抗体3を被保護回路に接続し,層状低融点金属体4を被保護回路のリレー回路に接続して,被保護回路の過電流により層状抵抗体3を発熱させ,この発熱により層状低融点金属体4を溶断させる。而るに,層状低融点金属体4がその直下から層状熱良伝導体5によつて加熱されるので,層状低融点金属体4を一様に加熱でき,層状低融点金属体4を円滑に溶断できる。従つて,被保護回路を良好に保護できる。」 「<考案の効果> 本考案に係る抵抗・温度ヒユーズ結合体においては,上述した通り,層状低融点金属体を一様に加熱できるので,作動特性に秀れている。ま た,層状抵抗体と層状低融点金属体とを別の位置に設けてあるので,通 常のヒートサイクル下では,低融点金属体を安定に保持できる。」イ 前記アによれば,甲5には,次の点が開示されていることが認められる。
絶縁基板上の異なる位置に層状抵抗体と層状低融点金属体とを設けた 温度ヒユーズ付抵抗素子として,別紙5の第4図に示すように,絶縁基 板1′上に電極21′,22′,23′を設け,電極21′と電極22 ′との間に層状抵抗体3′を設け,電極21′と電極23′との間に層 状低融点金属体4′を設け,絶縁基板1′上に絶縁層7′を設けたもの が公知である。この温度ヒユーズ付きの抵抗素子においては,電極21 ′近傍の層状低融点金属体部分40′には抵抗体3′の発生熱が電極2 1′を熱伝導路としてよく伝導するので,その層状低融点金属体部分4 0′はよく加熱されるのに対し,他の低融点金属体部分は加熱され難い ため層状低融点金属体が不均一加熱となり,溶断が遅延し,作動性に問 題があった。
「本考案」は,上記温度ヒユーズ付きの抵抗素子において,別紙5の 第1図A,第2図及び第3図に示すように,層状低融点金属体4又はそ の中間部の直下に絶縁膜6を介して層状熱良伝導体5を設ける構成を採 用したものであり,層状抵抗体3が発熱すると,この発熱が電極21を 熱伝導路として層状熱良伝導体5に伝導され,層状低融点金属体4を電 極21側の一端40からのみならず,層状熱良伝導体5で支持される部 分の直下からも加熱され,層状低融点金属体4を一様に加熱できるので, 作動特性に秀れているという効果を奏する。
ウ 前記イの開示事項によれば,甲5に接した当業者においては,絶縁基板 上の異なる位置に層状抵抗体と層状低融点金属体とを設けた温度ヒユーズ 付抵抗素子において,別紙5の第1図A,第2図及び第3図に示すように, 層状低融点金属体4又はその中間部の直下に絶縁膜6を介して層状熱良伝 導体5を設けることによって,層状抵抗体3の発熱の伝熱経路をコントロ ールし,層状低融点金属体4を電極21側の一端40からのみならず,層 状熱良伝導体5を設けた部分の直下からも加熱され,層状低融点金属体4 を一様に加熱することができ,その結果,溶断の遅延を回避し,作動特性 が向上することを理解するものと認められる。
このように甲5には,層状低融点金属体4又はその中間部の直下に絶縁 膜6を介して層状熱良伝導体5を設けることによって,層状抵抗体3の発 熱の伝熱経路をコントロールし,層状低融点金属体4を層状熱良伝導体5 を設けた部分の直下からも加熱されるように加熱箇所をコントロールする 技術が開示されており,この技術によって層状低融点金属体4を一様に加 熱することができ,その結果,溶断の遅延を回避し,作動特性が向上する ことが開示されているといえる。
相違点3の容易想到性についてア 本件審決が,引用発明に甲3発明(「発熱体と,発熱体の発熱により溶 断する低融点金属とを有した保護素子により,電圧を検知して動作する保 護素子を構成することを目的として,低融点金属の両端及び中間にヒュー ズ電極を設け,発熱体への通電を低融点金属を通って中間電極を介して行 うことにより,低融点金属溶断後に発熱体への通電を確実に止め,過加熱 を防止する保護素子。」)の技術を適用して相違点1に係る本件発明1の 構成(低融点合金体の「中間部が電極に接続され」,「発熱抵抗体は中間 部の電極を介して通電される」構成)を容易に想到し得るものと判断した @「【産業上の利用分野】本発明は,例えば充放電可能な二次電池などに 適用して好適なヒューズ抵抗器を有する保護素子,その製造方法,及びそ の素子を設けた回路基板に関する。」,「 【従来の技術及び発明が解決し ようとする課題】従来のヒューズ抵抗器としては,大きく分けて,過電流 により動作する電流ヒューズと,温度により動作する温度ヒューズとの2タイプが上げられる。しかしながら,近年の産業の発展にともない上記2点の動作源では,ヒューズ機能を満足しない場合が出てきている。 , 」 「充放電可能な二次電池などには,充電時の電池への過充電を防止するため,保護回路が内蔵される場合がある。また極端な過充電状態におちいった電池は,内部でガスを発生し,爆発の危険性をはらむため,ヒューズのようなもので電池としての機能を断つと言う考え方がある。」,「このようなケースでは,電圧を検知して動作するヒューズ抵抗器が要求されるが,従来のヒューズ抵抗器では対応することは難しかった。」,「例えば,特開平4-328279号には,低融点金属をPTCを熱源として溶断する構造のヒューズ抵抗器が明記されているが,これは低融点金属とPTCが電気的に直列に接続されたものである。これは,ストロボのフラッシュのような大電流が瞬間的に流れても作動せず,過放電により規定電流以上が電池に流れたときに,PTCが発熱してヒューズを溶断するものであり,前記の目的に使用できない。」,「本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり,電圧を検知して動作する保護素子,その製造方法,及びその保護素子を設けた回路基板を提供することを目的とする。」(段落【0001】〜【0006】),A「【作用】本発明の保護素子によれば,低融点金属6及び発熱体5と,検知素子9とから構成される保護素子であって,この低融点金属6とこの発熱体5とが絶縁層4を介して接触され,発熱体5が検知素子9により通電されるものとすることにより,任意の電圧条件で,ヒューズを切断することができる。」(段落【0017】)」,B「図4中の2cは,低融点金属の両端が接続されるヒューズ電極2a及び2bの中間に設けたヒューズ電極であり,ここにも低融点金属が接続される。材質としては,ヒューズ電極2aまたは2と同様のものが使用される。この他の構成は,上述実施例と同様である。」,「以下,実施例の詳 細を記載する。まず,25μm厚のポリイミドフィルム上に図5に示す導体パターンを形成し,ヒーター電極3a,3b間に,それぞれヒューズ電極2a,2b,及び2cにかからないように,カ-ボンペーストFC-403R(藤倉化成製,フェノール樹脂系)をスクリーン印刷法により塗布し,150℃x30分硬化させた。」,「次に,ヒューズ電極2a,2b,または2cにかからないようにかつカ-ボンペーストの全面を覆うように絶縁層をスクリーン印刷法により塗布し,150℃x30分硬化させた。
このとき用いた絶縁層の処方は上述実施例と同様である。」,「次に,ヒューズ電極2a,2b,2c間に,7mmx3mm,厚み100μmの低融点金属を熱プレスにより接続した。…」(段落【0038】〜【0041】),C「以上示したヒューズ抵抗器と電圧検知素子を組み込むことにより,図6Bの保護素子を得た。図5中のヒューズ電極2a側,2b側のどちらから発熱体に電気が供給されても,低融点金属を溶断後,発熱体への通電が止まり安全であることがわかり,電池の過充電防止用保護素子として用いることが可能である。」,「すなわち,最初の実施例で示した回路(図6A)は,中間電極を形成すること無く,発熱体と低融点金属を熱的に接触させ,ある一定電圧で発熱体に電流が流れるようにし,そのときの発熱によって低融点金属を溶断するようにした電圧検知システムである。この場合,電池が,充電器に接続されていたとすると,接続部eが電極a側若しくは電極c側のどちらに接続されていたとしても,低融点金属溶断後も,検知素子を通じての発熱体への通電が止まらず,発熱体は発熱し続け,やがて発火する危険性がある。」,「これに対して本例の回路では,保護素子は,発熱体への通電が電極f側及び電極h側いずれも,低融点金属を通って中間電極を介して行われるため,電池が充電器に接続されていたとしても,2箇所の低融点金属の溶断で,発熱体への通電を止めることが可能である。」(段落【0046】〜【0048】)との記載があ ると認定し,その上で,これらの記載と図面(「図4」ないし「図6」については,別紙3参照)から,甲3には,甲3発明が記載されていると認定している。
設け,他面に膜状低融点金属体を設けた基板型の抵抗体付温度ヒューズは,膜状抵抗体の発生熱が絶縁基板の厚みを経て膜状低融点金属体に伝達するため,熱経路の熱伝達特性が悪く,作動特性に劣るといった不利があったことから,「本考案」に係る抵抗体付温度ヒューズは,基板型の抵抗体付温度ヒューズにおいて,熱伝達特性を改良することにより作動特性の向上を図ることを目的とすることが開示されている。
,絶縁基板上の異なる位置に層状抵抗体と層状低融点金属体とを設けた温度ヒューズ付抵抗素子において,層状低融点金属体4又はその中間部の直下に絶縁膜6を介して層状熱良伝導体5を設けることによって,層状抵抗体3の発熱の伝熱経路をコントロールし,層状低融点金属体4を層状熱良伝導体5を設けた部分の直下からも加熱されるように加熱箇所をコントロールする技術が開示されており,この技術によって層状低融点金属体4を一様に加熱することができ,その結果,溶断の遅延を回避し,作動特性が向上することが開示されている。
しかるところ,引用発明は,絶縁基板の片面に膜状抵抗体を設け,他面に膜状低融点金属体を設けた基板型の抵抗体付温度ヒューズであるのに対し,甲5記載の温度ヒューズ付抵抗素子は,絶縁基板上の異なる位置に層状抵抗体と層状低融点金属体とを設けた温度ヒューズ付抵抗素子であり,両者は,絶縁基板に対する膜状抵抗体(層状抵抗体)と膜状低融点金属体(層状低融点金属体)との配置が異なるが,いずれも抵抗体付温度ヒューズである点で技術分野が共通し,また,膜状抵抗体の発生熱を膜状低融点金属体に伝達する伝熱経路の熱伝達特性を高め,作動特性を向上させることを 目的とする点で技術課題が共通するものと認められる。
そうすると,甲2,甲3及び甲5に接した当業者は,引用発明に甲3発 明の技術を適用して膜状低融点合金体の「中間部が電極に接続され」 「発 , 熱抵抗体は中間部の電極を介して通電される」構成とする際に,引用発明 の膜状抵抗体の発生熱を膜状低融点金属体に伝達する伝熱経路の熱伝達特 性を高め,溶断の遅延を回避し,作動特性を向上させるために,甲3に開 示された層状低融点金属体4の中間部の直下に層状熱良伝導体5を設ける 技術を適用することの動機付けがあるものと認められるから,相違点3に 係る本件発明2の構成(「低融点合金体の中間部はセラミック基板上に配 置した良熱伝導体で支持させた」構成)とすることを容易に想到すること ができたものと認められる。
イ 被告は,これに対し,@本件発明2の良熱伝導体は,電極に接続される 低融点合金体の中間部が優先的に溶融切断するため,発熱体からセラミック 基板に伝わった熱を集めるためのものであるのに対して,甲5の層状熱良伝 導体は,層状抵抗体の一方の電極に連結された層状熱良伝導体を層状低融点 金属体の直下に絶縁膜を介して設けることで,均一加熱を図り,発熱体であ る層状抵抗体から電極を介して直接伝わる熱を拡げるためのものであり,本 件発明2と甲5記載の層状熱良伝導体は,目的及び作用が異なるから,引用 発明に甲5の層状熱良伝導体を適用したとしても,本件発明2の目的を達成 し得ない,A本件発明2は,発熱抵抗体と低融点合金体とが絶縁層を介し て積層する構造を回避するために,セラミック基板の片面に低融点合金体 を,他面に発熱抵抗体を配置する構造を採用しているのに対し,甲5は, 層状熱良伝導体が絶縁基板の一方の面に絶縁膜を介して層状低融点金属体 とともに設けられ,層状抵抗体の一部が絶縁膜を介して層状低融点金属体 に積層される構造を採用しており,引用発明に甲5を適用すると発熱抵抗 体と低融点合金体とが絶縁層を介して積層する構造となるから,引用発明 に甲5記載の層状熱良伝導体に係る構造を適用しても,本件発明2の構成とはなりえないとして,引用発明に甲5記載の事項を適用して,相違点3に係る本件発明2の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到し得るとはいえない旨主張する。
本件明細書には,本件発明2は,セラミック基板の片面に低融点合金体を他面に発熱抵抗体を配置し,この発熱抵抗体に通電し前記セラミック基板を介して前記低融点合金体を加熱し,これを溶断することで回路遮断をする抵抗付温度ヒューズにおいて,セラミック基板上に配される良熱伝導体が低融点合金体の中間部を支持する構成を採用することにより,良熱伝導体で支持される部分に発熱抵抗体からの熱を集中的に分配し,加熱されるようになるので,良熱伝導体で低融点合金体へ流れる伝熱経路を設計し,低融点合金体の溶断個所を任意に決めることができるので,低融点合金体の溶断をコントロールすることができるという効果を奏することが開示されている。
一方で,抵抗体と層状低融点金属体とを設けた温度ヒューズ付抵抗素子において,層状低融点金属体4又はその中間部の直下に絶縁膜6を介して層状熱良伝導体5を設けることによって,層状抵抗体3の発熱の伝熱経路をコントロールし,層状低融点金属体4を層状熱良伝導体5を設けた部分の直下からも加熱されるように加熱箇所をコントロールする技術が開示されており,この技術によって層状低融点金属体4を一様に加熱することができ,その結果,溶断の遅延を回避し,作動特性が向上することが開示されている。
しかるところ,本件発明2の良熱伝導体と甲5記載の層状熱良伝導体5は,前提とする抵抗付温度ヒューズ(温度ヒユーズ付抵抗素子)におけるセラミック基板(絶縁基板)に対する低融点合金体(層状抵抗体)及び発 熱抵抗体(層状低融点金属体)の配置等の構成が異なるが,いずれも低融点合金体の中間部の直下に良熱伝導体を設けることによって,発熱抵抗体の発熱の伝熱経路をコントロールし,低融点合金体の中間部を低融点合金体を設けた部分の直下から加熱されるように加熱箇所をコントロールするという点において,その目的及び作用において異なるところはない。
また,両者の効果についてみると,甲5には,本件明細書に開示された,良熱伝導体で支持される部分に発熱抵抗体からの熱を集中的に分配し,低融点合金体の溶断個所を任意に決めることができるので,低融点合金体の溶断をコントロールすることができるという本件発明2の効果についての明示の記載はないが,甲5の温度ヒユーズ付抵抗素子においても,層状低融点金属体4の中間部の直下に良熱伝導体を設けること(別紙5の第2図及び第3図参照)によって,層状低融点金属体4の層状熱良伝導体5を設けた部分の直下は,層状低融点金属体4の他の部分と比べて層状抵抗体3の発熱を集中的に分配することができることは自明であるから,結果的に,本件発明2の上記効果と同様の効果を奏するものと理解することができる。
したがって,被告の上記@の主張は,採用することできない。
次に,被告の上記Aの主張について検討するに,甲5の温度ヒューズ付抵抗素子は,上記のとおり,絶縁基板上の異なる位置に層状抵抗体と層状低融点金属体とを設けた温度ヒューズ付抵抗素子であって(別紙5の第1図A,第2図及び第3図参照),層状抵抗体の一部が絶縁膜を介して層状低融点金属体に積層される構造のものではないから,この点において上記Aの主張は,その前提を欠いている。
また,一般に,主たる引用発明に他の引用発明や技術事項を適用する場合,その引用発明又は技術事項に示された形状・構造をそのまま組み合わせるのではなく,必要に応じて合理的な構造変更や機能の調整・適応のた めの改変を行うことは当然のことであり,引用発明に甲5記載の技術を適 用する場合においても,引用発明の構成を前提に,引用発明の低融点合金 体の中間部の直下に層状熱良伝導体の構成を組み合わせることになるか ら,この点においても被告の上記Aの主張は,失当である。
したがって,被告の上記Aの主張も,採用することができない。
小括 以上によれば,当業者が引用発明と甲5記載の事項に基づいて相違点3に 係る本件発明2の構成に容易に想到し得るとはいえないとした本件審決の判 断には誤りがあり,また,本件審決によれば,引用発明に甲3発明の技術を 適用して相違点1に係る本件発明2の構成を容易に想到し得るというのであ るから,本件発明2は,引用発明と甲3及び甲5記載の事項に基づいて,当 業者が容易に発明をすることができたといえるから,これと異なる本件審決 の判断は誤りである。
したがって,原告ら主張の取消事由2は理由がある。
3 取消事由3(本件発明3の容易想到性の判断の誤り)について 原告らは,本件審決は,@甲4には,温度ヒューズがプリント配線板上に実装された状態は示されておらず,両者の間,特に温度ヒューズのプリント配線板側の面の素子とプリント配線板との間に空隙が形成されることは明示されていないし,また,プリント配線板への熱の放散を抑制するための配置についても,記載も示唆もない,A本件発明3の空隙は,発熱抵抗体の熱が回路基板へ放散することを抑制し,その熱を有効に低融点合金体の溶断に利用するために設けられるものであるのに対して,甲11ないし14から導かれる周知事項は,安全性の観点から空隙を設けるものであり,引用発明に,甲3記載の事項を適用しても,発熱抵抗体の熱が回路基板へ放散することを抑制し,その熱を有効に低融点合金体の溶断に利用するとの観点で,上記周知事項を採用する動機付けがないとして,引用発明と甲3ないし8に記載された事項に基づいて,相違 点4に係る本件発明3の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得るとはいえないし,また,甲5と甲9ないし18記載の事項を検討しても,これと同様である旨判断したが,本件発明3は,安全性の観点から「空隙」を設けるものを排除していないし,甲4には,温度ヒューズのリード線を絶縁基板から突設させ,温度ヒューズとプリント配線板との間に(少なくともプリント回路導体9の厚さに相当する)空隙を形成させることが開示されており,引用発明に係る抵抗付温度ヒューズの回路基板上での実装構造において,相違点4に係る本件発明3の構成を採用する動機付けがあるから,本件審決の判断は誤りである旨主張するので,以下において判断する。
本件発明3について うな開示があることが認められる。
ア セラミック基板の片面に低融点合金体を他面に発熱抵抗体を配置し,こ の発熱抵抗体に通電し前記セラミック基板を介して前記低融点合金体を加 熱し,これを溶断することで回路遮断をする抵抗付温度ヒューズにおいて は,発熱抵抗体の熱は望ましくは100%低融点合金体の溶断に用いられ るのがよいが,発熱抵抗体から発生する熱はあらゆる方向に発散し,熱の 伝達経路を完全にはコントロールすることはできないので,低融点合金体 の溶断に用いられる熱はその一部であるのが実情であり,また,発熱抵抗 体から発生する熱の発散経路の一つとして発熱抵抗体が最も近接ないし密 着している回路基板(プリント基板)への熱の放散があり,その放散量が 多いため,発熱抵抗体から発生する熱が低融点合金体を溶断するために用 いられる利用効率は非常に小さいものになっているのが実情のようであ る(段落【0026】)。
イ 本件発明3は,上記抵抗付温度ヒューズの実装構造において,別紙1の 図6ないし8に示すように,抵抗付温度ヒューズは回路基板上に実装する ためのリード線を具備し,そのリード線をセラミック基板から突設させ, 抵抗付温度ヒューズが回路基板上に配置された場合に,発熱抵抗体と回路 基板との間に空隙が形成させる構成を採用したことにより,別途新たな材 料を用意することなく,発熱抵抗体からの熱を有効に低融点合金体の溶断 に利用することができるようになるという効果を奏する(段落【0012 】,【0026】)。
相違点4の容易想到性についてア 甲4には,次のような記載がある(下記記載中に引用する図面について は別紙4を参照)。
「【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】絶縁基板の片面に一対の電極を設け,各電極にリード線を 接続し,同電極間に低融点可溶金属体を設け,この金属体並びに上記の 電極を覆うように絶縁被覆を設けた基板型温度ヒューズの上記絶縁基板 の他面に,チップ型発熱性回路素子の取付用電極を設け,該電極に上記 リード線とは別のリード線を接続したことを特徴とする温度ヒュー ズ。」(1欄) 「〈産業上の利用分野〉本考案は温度ヒューズの改良に関するもので ある。」(1欄) 「〈先行技術と問題点〉温度ヒューズの使用方法の一つとして,発熱 性回路素子,例えば,抵抗素子に近接して温度ヒューズを配設し,過電 流による発熱性素子の発熱で温度ヒューズを作動させて回路を発熱性回 路素子の異常発熱から保護することがある。かかる温度ヒューズの一つ として,絶縁基板の片面に一対の電極を設け,これら電極間に低融点可 溶金属体を設け,該低融点可溶金属体にフラックスを被覆し,これらの 金属体並びに上記の電極を覆うように絶縁基板の片面に絶縁被覆を設け たものが,所謂,基板型温度ヒューズとして公知である。
ところで,近来,プリント配線基板に実装する回路素子には,実装密度の高密度化のために,リード線を有していないチップ型回路素子を使用することが急増している。このチップ型回路素子においては,両端にキャップ状端子を固着してあり,当該素子をプリント配線基板に密接させ,端子が基板の導体にハンダ付けされる。
而るに,チップ型回路素子が抵抗素子のように発熱性素子である場合,チップ型回路素子に温度ヒューズを熱的に密接して取り付けることが要求される。
従来,発熱性回路素子に温度ヒューズを熱的に密接に取り付けるのに,良熱伝導性金属の結合体を使用することが公知である。(実開昭53-67425号) しかしながら,上記した基板型温度ヒューズにおいては,低融点可溶金属体の溶断時に発生するアークの熱によってフラックスが熱膨張すると,絶縁基板と絶縁被覆との間からこの膨張フラックスと共に溶融金属が流出し,この流出溶融金属が金属製結合体に付着し,温度ヒューズのリード線とこの金属製結合体とが電気的に導通され,温度ヒューズのリード線間が金属製結合体で短絡されてしまい,回路を確実に通電遮断し得ないことがある。
本考案の目的は,上記基板型温度ヒューズの絶縁基板の裏面をチップ型発熱性回路素子の取付けに利用し,結合体を使用することなく温度ヒューズとチップ型発熱性回路素子とを熱的に密接に結合することを可能にする。」(1欄〜3欄) 「〈考案の構成〉本考案の温度ヒューズは絶縁基板の片面に一対の電極を設け,各電極にリード線を接続し,同電極間に低融点可溶金属体を設け,この金属体並びに上記の電極を覆うように絶縁被覆を設けた基板型温度ヒューズの上記絶縁基板の他面に,チップ型発熱性回路素子の取 付用電極を設け,該電極に上記リード線とは別のリード線を接続したことを特徴とする構成である。」(3欄) 「〈実施例の説明〉以下,図面により本考案を説明する。第1図Aは本考案に係る温度ヒユーズを示す一部欠截上面図,第1図Bは同温度ヒユーズを示す裏面図である。
第1図A並びに第1図Bにおいて,1は絶縁基板,例えばセラミツク板である。2・2は絶縁基板1の片面に設けた箔状電極,3は電極間に橋設した低融点可溶金属層,4は低融点可溶金属層3上に被覆したフラツクス層,5は絶縁基板1の片面全体に被覆した絶縁層である。6,6は各電極2・2に接続せるリード線である。7,7は絶縁基板1の他面に設けた箔状電極,8,8は各電極7,7に接続したリード線である。
第2図Aは本考案の別実施例を示す一部欠截上面図,第2図Bは同別実施例の裏面図である。
第3図Aは本考案の他の実施例を示す一部欠截上面図,第3図Bは同実施例の裏面図である。
第2図A,第2図B,第3図A,第3図Bにおいて,第1図A並びに第1図Bと同一符号の構成部分は第1図A,第1図Bにおける構成部分と技術的に実質上同一である。
第4図は本考案に係る温度ヒューズの使用状態を示している。
第4図において,Aはプリント配線板を示し,9はプリント回路導体,101,102,…はプリント回路導体の所定位置に接続(ハンダ付け)したチツプ型回路素子である。Bは本考案に係る温度ヒューズである。100はプリント回路導体9のラウンド91,91間に接続すべきチツプ型の発熱性回路素子であり,温度ヒューズBの絶縁基板裏面の電極7,7間に導電性接着剤により取付け,各電極7,7のリード線8,8をプリント回路導体9の各ラウンド91,91にハンダ付けしてある。温度ヒューズBの低融点可溶金属体 3に対するリード線6,6はプリント回路に直列に接続してある。
上記において,チップ型発熱性回路素子100が発熱すると,その熱が電 極7→温度ヒューズBの絶縁基板1→同ヒューズBの低融点可溶金属体 3の経路で低融点可溶金属体3に伝達され,電極7の良熱伝導性のため に電極7がチップ型発熱性回路素子100の発熱温度とほぼ同温度となっ て,実質上,チップ型発熱性回路素子100と温度ヒューズBの絶縁基板と の熱的接触面積をかなり大きくできるから,チップ型発熱性回路素子10 0の発生熱を基板型温度ヒューズBに熱効率良く伝達でき,チップ型発熱 性回路素子100の発熱で基板型温度ヒューズの低融点可溶金属体を迅速 に溶断して回路の通電を速やかに遮断できる。」(3欄〜4欄) 「〈考案の効果〉本考案の温度ヒューズは上述した通りの構成であり, 絶縁基板の他面の電極にチップ型発熱性回路素子を取付け,その電極の リード線をチップマウント方式のプリント配線板の導体に接続すること により,温度ヒューズを取り付けたチップ型発熱性回路素子をチップマ ウント方式のプリント配線板に容易に実装できる。また,チップ型発熱 性回路素子の取付用電極を感熱板として,チップ型発熱性回路素子の発 生熱を基板型温度ヒューズに熱効率よく伝達でき,その発熱性回路素子 の過電流発熱で基板型温度ヒューズの低融点可溶金属体を迅速に溶断で きる。更に,金属製結合体を必要としないので,基板型温度ヒューズの 作動時,低融点可溶金属体の溶融金属が周囲に流出しても,温度ヒュー ズのリード線間の導通が起こり得ない。」(4欄)イ 前記アによれば,甲4には,絶縁基板の片面に一対の電極を設け,各電 極にリード線を接続し,同電極間に低融点可溶金属体を設け,この金属体 及び上記の電極を覆うように絶縁被覆を設けた基板型温度ヒューズにおい て,絶縁基板の他面に,チップ型発熱性回路素子の取付用電極を設け,該 電極に上記リード線とは別のリード線を接続した構成を採用したことによ り,温度ヒューズを取り付けたチップ型発熱性回路素子をプリント配線板 に容易に実装でき,また,チップ型発熱性回路素子の取付用電極を感熱板 として,チップ型発熱性回路素子の発生熱を基板型温度ヒューズに熱効率 よく伝達でき,その発熱性回路素子の過電流発熱で基板型温度ヒューズの 低融点可溶金属体を迅速に溶断できるという効果を奏することが開示され ていることが認められる。
しかしながら,甲4には,温度ヒューズがプリント配線板上に実装され た状態は示されておらず,温度ヒューズのプリント配線板側の面の素子と プリント配線板との間に空隙が形成されることについての明示的な記載は なく,ましてや,「抵抗付温度ヒューズの回路基板上での実装構造におい て,抵抗付温度ヒューズは,そのリード線をセラミック基板から突設させ, 発熱抵抗体と回路基板との間に空隙を形成させる」構成(相違点4に係る 本件発明3の構成)についての記載も示唆もない。
そうすると,甲2及び甲4に接した当業者が,引用発明に係る抵抗付温度 ヒューズの回路基板上での実装構造において,相違点4に係る本件発明3の 構成を採用することに想到することは困難である。
しかるところ,本件審決における相違点4に係る本件発明3の構成の陽 性の判断の誤りをいう原告らの主張は,甲4に,温度ヒューズのリード線を 絶縁基板から突設させ,温度ヒューズとプリント配線板との間に空隙を形成さ せることが開示されていることを前提とするものであるが,上記のとおりその 前提を欠くものであるから,理由がない。
小括 以上によれば,本件審決における相違点4の構成の容易想到性の判断に誤 りはないから,原告ら主張の取消事由3は理由がない。
4 取消事由4(本件発明4の容易想到性の判断の誤り)について 原告らは,本件審決は,本件発明4は,本件発明1の構成から「前記低融点 合金体の周囲にフラックスが配置され,ケースが前記セラミック基板に対して気密に密着して前記フラックスを外気環境から保護する」との事項を省いた構成のものに,「前記低融点合金体の中間部は前記セラミック基板上に配置した良熱伝導体で支持させ」るとの事項(相違点3に係る本件発明4の構成) 「前 及び記抵抗付温度ヒューズの回路基板上での実装構造において,前記抵抗付温度ヒューズは,そのリード線を前記セラミック基板から突設させ,前記発熱抵抗体と前記回路基板との間に空隙を形成させる」との事項(相違点4に係る本件発明4の構成)を付加したものに相当するが,相違点3及び4の構成はいずれも当業者が容易に想到し得るとはいえないから,本件発明4は,甲2に記載された発明と甲3ないし8に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない旨判断したが,本件審決における相違点3及び4の構成の容易想到性の判断は誤りであるから,本件審決の上記判断も誤りである旨主張する。
しかしながら,前記3のとおり,本件審決における相違点4の構成の容易想到性の判断に誤りはないから,原告らの上記主張は理由がない。
したがって,原告ら主張の取消事由4は,その前提を欠くものであり,理由がない。
5 結論 以上の次第であるから,原告ら主張の取消事由1及び2は理由があるが,取消事由3及び4は理由ががない。
したがって,本件審決のうち,特許第3552539号の請求項1及び2に係る部分を取り消し,原告らのその余の請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。
追加
裁判長裁判官富田善範裁判官大鷹一郎裁判官柵木澄子 (別紙1)本件明細書図面【図1】【図2】【図3】【図4】【図5】 【図6】【図7】【図8】【図9】 【図11】【図12】 (別紙2)甲2図面【第1図】【第2図】 (別紙3)甲3図面【図4】【図5】【図6】 (別紙4)甲4図面【第1図A】【第1図B】【第2図A】【第2図B】 【第3図A】【第3図B】【第4図】 (別紙5)甲5図面【第1図A】【第1図B】【第2図】【第3図】 【第4図】 (別紙6)甲15図面【図1】【図2】【図3】 (別紙7)甲35図面 (別紙8)甲36図面【図13】
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