• この表をプリントする
  • ポートフォリオ機能


追加

元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 25年 (ワ) 3480号 特許権侵害差止等請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2014/12/11
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
判例全文
判例全文
平成26年12月11日判決言渡 同日原本受領 裁判所書記官

平成25年(ワ)第3480号 特許権侵害差止等請求事件

口頭弁論終結日 平成26年7月1日

判 決



原告 P 1

被告 株式会社NTTドコモ

訴訟代理人弁護士 深井 俊至

補佐人弁理士 大塚 住江

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

被告は,原告に対し,992万5000円及びこれに対する平成25年5月22

日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

本件は,原告が,携帯電話事業でiコンシェル等のサービスを提供する被告のコ

ンピュータシステム(被告物件)が,原告の有する特許の技術的範囲に属すると主

張し,特許権侵害に基づく損害賠償の一部請求として,992万5000円及び遅

延損害金の支払を求めた事案である。

1 前提事実(争いのない事実及び証拠により容易に認定できる事実)

(1) 当事者

原告は,後記特許権の特許権者である。

被告は,電気通信事業等を目的とする株式会社である。

(2) 本件特許




原告は,次の特許(以下「本件特許」と総称し,請求項1から4の特許を個別

には「本件特許1」等という。本件特許にかかる発明を「本件特許発明」と総称

し,個別には「本件特許発明1」等という。本件特許の明細書及び図面を「本件

明細書」といい,登録に係る権利を「本件特許権」と総称する。)の特許権者で

ある。なお,本件特許については,訂正審判請求(訂正2013−390148)

がされ,平成26年1月15日付け審決において訂正が認められ(甲65),同

審決は確定した。

特許番号 第5131881号

発明の名称 コンテンツ提供システム

出願日 平成24年6月8日(特願2012−130504)

原出願日 平成10年4月14日

登録日 平成24年11月16日

分割の表示 特願2009−271949の分割

特許請求の範囲(訂正2013−390148による訂正後のもの)

【請求項1】

自律的なソフトウェアモジュールとしてのエージェントがユーザにマッチす

るコンテンツであるか否かを判断し,マッチするコンテンツを該ユーザに提供す

るコンテンツ提供システムであって,

コンテンツを提供する複数のコンテンツ提供業者とは異なる別の機関に設置

されたコンピュータを備え,

前記コンピュータは,

前記ユーザにマッチするコンテンツか否かを判断するのに必要となる当該ユ

ーザのプロフィール情報であって前記コンピュータへ送信されてきたプロフィ

ール情報を,受付けるプロフィール情報受付手段と,

前記コンテンツ提供業者によって提供されるコンテンツであって前記コンピ

ュータへ送信されてきたコンテンツを,受付けるコンテンツ受付手段と,




前記プロフィール情報受付手段により受付けられたユーザのプロフィール情

報に基づいて,前記コンテンツ受付手段により受付けられたコンテンツがユーザ

にマッチするコンテンツであるか否かのマッチング判断を行なうエージェント

とを含み,

前記エージェントは,ユーザと前記コンテンツ提供業者とを仲介して両者に代

わって仕事を実行するための中立性を有する第三者エージェントで構成され,前

記コンテンツ提供業者とは異なる別の機関に設置された前記コンピュータ内で

前記マッチング判断を行なうことにより,前記プロフィール情報受付手段により

受付けられたユーザのプロフィール情報を前記コンテンツ提供業者に提供する

ことなく前記マッチング判断を行なってその結果をユーザに提供する,コンテン

ツ提供システム。

【請求項2】

ユーザの指示を受付けて仕事をするユーザエージェントが受付けた指示内容

に基づいてコンテンツの検索を行って検索結果をユーザに提供する検索手段を

さらに備え,

前記検索手段は,前記別の機関に設置された前記コンピュータ以外のネットワ

ーク上のコンピュータにおいて記憶されている情報を検索するための制御機能

を有する,請求項1に記載のコンテンツ提供システム。

【請求項3】

前記ユーザエージェントは,機械学習機能を有していることを特徴とする,請

求項2に記載のコンテンツ提供システム。

【請求項4】

前記ユーザエージェントは,前記第三者エージェントと協働して仕事を行うマ

ルチエージェントで構成され,

前記第三者エージェントは,前記ユーザエージェントとの協働により前記マッ

チング判断を行なう,請求項2または請求項3に記載のコンテンツ提供システム。




(3) 構成要件の分説

本件特許発明は,次のとおり構成要件に分説できる。

【請求項1】

A 自律的なソフトウェアモジュールとしてのエージェントが(A−1)ユーザ

にマッチするコンテンツであるか否かを判断し(A−2),マッチするコンテ

ンツを該ユーザに提供するコンテンツ提供システムであって(A−3),

B コンテンツを提供する複数のコンテンツ提供業者(B−1)とは異なる別の

機関に設置されたコンピュータを備え(B−2),

C 前記コンピュータは,

C1 前記ユーザにマッチするコンテンツか否かを判断するのに必要となる当

該ユーザのプロフィール情報であって(C1−1)前記コンピュータへ送信さ

れてきたプロフィール情報を,受付けるプロフィール情報受付手段と(C1−

2),

C2 前記コンテンツ提供業者によって提供されるコンテンツであって(C2−

1)前記コンピュータへ送信されてきたコンテンツを,受付けるコンテンツ受

付手段(C2−2)と,

C3 前記プロフィール情報受付手段により受付けられたユーザのプロフィー

ル情報に基づいて,前記コンテンツ受付手段により受付けられたコンテンツが

ユーザにマッチするコンテンツであるか否かのマッチング判断(C3−1)を

行なうエージェントとを含み(C3−2),

D 前記エージェントは,ユーザと前記コンテンツ提供業者とを仲介して両者に

代わって仕事を実行するための中立性を有する第三者エージェントで構成さ

れ(D−1),前記コンテンツ提供業者とは異なる別の機関に設置された前記

コンピュータ内で前記マッチング判断を行なうことにより(D−2),前記プ

ロフィール情報受付手段により受付けられたユーザのプロフィール情報を前

記コンテンツ提供業者に提供することなく前記マッチング判断を行なって(D




−3)その結果をユーザに提供する(D−4),

E コンテンツ提供システム。

【請求項2】

F ユーザの指示を受付けて仕事をするユーザエージェントが受付けた指示内

容に基づいてコンテンツの検索を行って検索結果をユーザに提供する検索手

段をさらに備え,前記検索手段は,前記別の機関に設置された前記コンピュー

タ以外のネットワーク上のコンピュータにおいて記憶されている情報を検索

するための制御機能を有する,

G 請求項1に記載のコンテンツ提供システム。

【請求項3】

H 前記ユーザエージェントは,機械学習機能を有していることを特徴とする,

I 請求項2に記載のコンテンツ提供システム。

【請求項4】

J 前記ユーザエージェントは,前記第三者エージェントと協働して仕事を行う

マルチエージェントで構成され,前記第三者エージェントは,前記ユーザエー

ジェントとの協働により前記マッチング判断を行なう,

K 請求項2または請求項3に記載のコンテンツ提供システム。

(4) 被告の提供するサービスの概要

ア 被告は,その有するコンピュータシステム(被告の外部に存するが,被告が

使用するサーバー等を含む。以下「被告システム」という。)において,「iコ

ンシェル」というサービス,「しゃべってコンシェル」というサービス,及び

両者を連携させたサービス(以下「連携サービス」という。)を携帯電話やス

マートフォンのユーザーに提供している(後記被告物件イ−1ないし3は,被

告システムを,利用する機能や利用の態様により特定するものである。。


イ iコンシェルは,携帯電話のユーザーに適した情報を提供する有料のプッシ

ュ型情報配信サービスであり,被告からの情報に加え,他の企業からの情報も




配信するほか,スケジューラー機能その他を提供する。被告は,iコンシェル

の提供を平成20年11月に開始し,その後,オートGPS機能との連携など,

機能を拡張してきた(甲5,7,8,23,29)。

ウ しゃべってコンシェルは,スマートフォンに話しかけて情報を検索したり,

機器の操作をしたりすることができる機能であり,ユーザーには,スマートフ

ォンのアプリケーションとして無料で提供される。しゃべってコンシェルは,

平成24年3月1日に開始された(甲9)。

エ 連携サービスは,しゃべってコンシェルをiコンシェルと連携させたもので

あり,iコンシェルのユーザーがしゃべってコンシェルを利用する際に,ユー

ザー情報(よく使う鉄道路線等)を反映した回答を提供するというものである

(甲4,10)。連携サービスは,平成25年2月19日に開始された(弁論

の全趣旨)。

2 争点

(充足論)

(1) 被告物件イ−2(iコンシェルの単独利用)が,本件特許発明1の構成要件

充足するか。

(2) 被告物件イ−3(しゃべってコンシェルまたはiコンシェルの単独利用)が,

本件特許発明2の構成要件を充足するか。

(3) 被告物件イ−3が,本件特許発明3の構成要件を充足するか。

(4) 被告物件イ−1(連携サービスの利用)が,本件特許発明4の構成要件を充足

するか。

(無効論)

(5) 本件特許発明が乙4発明及び周知技術により新規性又は進歩性がないといえる



(6) 本件特許発明がロボット検索発明,乙18発明,乙19の1発明により新規性

又は進歩性がないといえるか




(7) 本件特許発明に課題の記載を欠くとの無効事由があるか

(8) 本件特許発明にサポート要件違反の無効理由があるか

(損害論)

(9) 原告の被った損害額

第3 争点に関する当事者の主張

1 争点(1)(被告物件イ−2が,本件特許発明1の構成要件を充足するか)について

【原告の主張】

(1) 被告物件イ−2の特定

被告物件イ−2(iコンシェル)は,次の構成を備えている。

a−1 ユーザに適した情報を配信する処理を行なうためのひとまとまりにな

ったプログラムであるエージェントエンジンが

a−2 ユーザにマッチするコンテンツ(終電時刻,鉄道運行情報,デパート等

のイベント更新情報等)であるか否かを判断し,

a−3 マッチするコンテンツをユーザのスマートフォンを通して該ユーザに

提供するコンピュータシステムであって,

b−1 終電時刻用情報や鉄道運行情報やデパートのイベント情報等のコンテ

ンツを提供する複数のコンテンツプロバイダ(株式会社駅探,ジェイアール

東日本企画,デパート等)

b−2 とは異なる別の機関である被告に設置された複数台のサーバ群および

ストレージサーバ群からなるiコンシェルサーバを備え,

c 前記iコンシェルサーバは,

c1−1 前記ユーザにマッチするコンテンツか否かを判断するのに必要とな

る当該ユーザのGPS位置情報,アドレス帳のデータ,スケジュール帳デー

タ,各種設定情報,電話帳等の情報

c1−2 であって前記iコンシェルサーバへ送信されてきたプロフィール情

報を,受付ける通信部と,




c2−1 前記コンテンツプロバイダによって提供されるコンテンツ(鉄道の終

電時刻用情報,鉄道運行情報,デパート等のイベント更新情報等)であって

c2−2 前記iコンシェルサーバへ送信されてきたコンテンツを,受付ける通

信部と,

c3−1 前記通信部により受付けられたユーザのプロフィール情報に基づい

て,前記通信部により受付けられたコンテンツがユーザにマッチするコンテ

ンツであるか否かのマッチング判断(ユーザの現在位置情報およびユーザが

利用している路線情報と終電時刻用情報とに基づいてユーザが利用してい

る路線上の駅のうちユーザの現在位置から近い駅についての終電時刻を選

び出す判断,ユーザが利用している路線情報と鉄道運行情報とに基づいてユ

ーザが利用している路線に関する鉄道運行情報を選び出す判断,或るデパー

トのイベント情報を以前ダウンロードしたユーザを割り出す判断等)

c3−2 を行なうエージェントエンジンとを含み,

d−1 エージェントエンジンは,インターネットを介してユーザとコンテンツ

提供業者とを仲介しているiコンシェルサーバにインストールされており,

コンテンツプロバイダ自身がコンテンツに適するユーザを選び出すのでは

なく,ユーザ自身が自分に適するコンテンツを選び出すのでもなく,両者に

代わって被告として独自に前記マッチング判断を行なうものであり,

d−2 被告に設置された複数台のサーバ群

d−3 へコンテンツを送信してもらって,ユーザのプロフィール情報を前記コ

ンテンツプロバイダに提供することなくそのiコンシェルサーバ内で前記

マッチング判断を行なって

d−4 その結果をユーザのスマートフォンに返信する(乗車駅と降車駅と終電

時刻とがユーザのスマートフォンに表示されるとともに,スマートフォンに

音声信号「終電まであと25分です」が送信されて音声で報知される,ユー

ザが利用している路線に関する鉄道運行情報がユーザのスマートフォンに




表示されかつ音声で報知される,全国有名寿司展開催!8/1〜8/3をユ

ーザのスマートフォンに表示する等),

e コンピュータシステム。

(2) 本件特許発明1の構成要件へのあてはめ

構成要件

a−1の「ユーザに適した情報を配信する処理を行なうためのひとまとまり

になったプログラムであるエージェントエンジン」が,構成要件Aの「自律的

なソフトウェアモジュールとしてのエージェント」に,a−2の「ユーザにマ

ッチするコンテンツ(終電時刻,鉄道運行情報,デパート等のイベント更新情

報等)であるか否かを判断し」が,同じく「ユーザにマッチするコンテンツで

あるか否かを判断する」に,a−3の「マッチするコンテンツをユーザのスマ

ートフォンを通して該ユーザに提供する」が,同じく「マッチするコンテンツ

を該ユーザに提供する」に,a−3の「コンピュータシステム」が,同じく「コ

ンテンツ提供システム」に,それぞれ該当する。

したがって,被告物件イ−1の構成aの各要素は,構成要件Aを充足する。

なお,本件特許発明構成要件Aにいう,「自律的なソフトウェアモジュー

ルとしてのエージェント」は,現時点でのエージェントの全てがこれに該当す

るものである。

構成要件

b−1の「終電時刻用情報や鉄道運行情報やデパートのイベント情報等のコ

ンテンツを提供する複数のコンテンツプロバイダ(株式会社駅探,ジェイアー

ル東日本企画,デパート等)」が,構成要件Bの「コンテンツを提供する複数

のコンテンツ提供業者」に,b−2の「とは異なる別の機関である被告」が,

同じく「とは異なる別の機関」に,b−2の「被告に設置された複数台のサー

バ群およびストレージサーバ群からなるiコンシェルサーバ」が,同じく「別

の機関に設置されたコンピュータ」にそれぞれ該当する。




したがって,被告物件イ−1の構成bの各要素は,構成要件Bを充足する。

構成要件

(ア) c1−1の「当該ユーザのGPS位置情報,アドレス帳のデータ,スケジ

ュール帳データ,各種設定情報,電話帳等の情報」が,構成要件C1の「当

該ユーザのプロフィール情報」に,c1−2の「iコンシェルサーバへ送信

されてきたプロフィール情報を,受付ける通信部」が,同じく「コンピュー

タへ送信されてきたプロフィール情報を,受付けるプロフィール情報受付手

段」に,

(イ) c2−1の「コンテンツプロバイダによって提供されるコンテンツ(鉄道

の終電時刻用情報,鉄道運行情報,デパート等のイベント更新情報等)」が,

構成要件C2の「コンテンツ提供業者によって提供されるコンテンツ」に,

c2−2の「iコンシェルサーバへ送信されてきたコンテンツを,受付ける

通信部」が,同じく「コンピュータへ送信されてきたコンテンツを,受付け

るコンテンツ受付手段」に,

(ウ) c3−1の「通信部により受付けられたユーザのプロフィール情報」が,

構成要件C3の「プロフィール情報受付手段により受付けられたユーザのプ

ロフィール情報」に,c3−1の「通信部により受付けられたコンテンツ」

が,同じく「コンテンツ受付手段により受付けられたコンテンツ」に,c3

−1の「ユーザにマッチするコンテンツであるか否かのマッチング判断(ユ

ーザの現在位置情報およびユーザが利用している路線情報と終電時刻用情

報とに基づいてユーザが利用している路線上の駅のうちユーザの現在位置

から近い駅についての終電時刻を選び出す判断,ユーザが利用している路線

情報と鉄道運行情報とに基づいてユーザが利用している路線に関する鉄道

運行情報を選び出す判断,或るデパートのイベント情報を以前ダウンロード

したユーザを割出す判断等)」が,同じく「ユーザにマッチするコンテンツ

であるか否かのマッチング判断」に,それぞれ該当する。




(エ) 以上のとおり,被告物件イー1の構成cの各要素は,構成要件Cを充足

する。

なお,被告自身が,上記のような「ユーザ側からの提供情報」と「コンテ

ンツプロバイダ側からの提供情報」とに基づいて,ユーザーに適する情報を

選び出すことを「マッチング」と表現している(甲8,15)。

構成要件

(ア) d−1の「エージェントエンジンがインターネットを介してユーザとコン

テンツ提供業者とを仲介しているiコンシェルサーバにインストールされ

ており」が,構成要件Dの「前記エージェントは,ユーザと前記コンテンツ

提供業者とを仲介して」に該当する。

すなわち,被告物件イ−2では,被告が運営する複数台のサーバ群および

ストレージサーバ群からなるiコンシェルサーバがネットワークを介して

ユーザとコンテンツ提供業者とを仲介している。そして,エージェントエン

ジンがそのiコンシェルサーバにインストールされている。その結果,エー

ジェントエンジンは,インターネットを介してユーザとコンテンツ提供業者

とを仲介しており,「ユーザと前記コンテンツ提供業者とを仲介して」に該

当する。

(イ) d−1の「コンテンツプロバイダ自身がコンテンツに適するユーザを選び

出すのではなく,ユーザ自身が自分に適するコンテンツを選び出すのでもな

く,両者に代わって」が,構成要件Dの「両者に代わって」に,d−1の「前

記マッチング判断を行なう」が,同じく「仕事を実行する」に,d−1の「被

告として独自に」が,同じく「中立性を有する」に該当する。

この点,被告物件イ−2では,実際にはユーザーにマッチしないコンテン

ツにも拘らず,コンテンツプロバイダから指名されたユーザーにそのコンテ

ンツを押し付けるという,中立性のない偏ったマッチングは行わないし,ユ

ーザー自らコンテンツプロバイダにアクセスして自分にマッチするコンテ




ンツを探し出すというようなユーザー側の能動的なアクションを求めるこ

となく,また,ユーザーのプロフィール情報を預かりユーザーに代ってiコ

ンシェルサーバ内で,最適なコンテンツをユーザーにマッチングさせるもの

である。

これによって,コンテンツプロバイダ自らがユーザーからのプロフィール

情報の提供を受けてユーザーにマッチする情報を提供することによるセキ

ュリティ上の負担やリスクを回避できるものである。

(ウ) d−2の「株式会社NTTドコモに設置された複数台のサーバ群」が,構

成要件Dの「前記コンテンツ提供業者とは異なる別の機関に設置された前記

コンピュータ」に,d−3の「iコンシェルサーバ内でマッチング判断を行

なって」が,同じく「前記コンピュータ内でマッチング判断を行なう」に,

d−3の「ユーザのプロフィール情報を前記コンテンツプロバイダに提供す

ることなく」が,同じく「プロフィール情報受付手段により受付けられたユ

ーザのプロフィール情報を前記コンテンツ提供業者に提供することなく」に,

d−3の「iコンシェルサーバ内でマッチング判断を行なって」が,同じく

「マッチング判断を行なって」に該当する。

なお,「ユーザのプロフィール情報を前記コンテンツ提供業者に提供する

こと」がないことは,被告自身が認めることである。(甲8,15)


(エ) d−4の「その結果をユーザのスマートフォンに返信する(乗車駅と降車

駅と終電時刻とがユーザのスマートフォンに表示されるとともに,スマート

フォンに音声信号「終電まであと25分です」が送信され音声で報知される,

ユーザが利用している路線に関する鉄道運行情報がユーザのスマートフォ

ンに表示されかつ音声で報知される,全国有名寿司展開催!8/1〜8/3

がユーザのスマートフォンに表示される等)」が,構成要件Dの「その結果

をユーザに提供する」に該当する。

(オ) 以上により,被告物件イー1の構成dの各要素は,構成要件Dを充足する。




【被告の主張】

(1) 被告物件イ−2の構成についての認否

ア 構成a

a−1につき,被告が運営するサーバ群が存在し,利用者のためにデータ処

理を実行するソフトウェアがインストールされている点は認め,これが「エー

ジェントエンジン」であるとの点は否認する。a−2は否認し,a−3につき,

コンテンツをユーザーのスマートフォンに送信するコンピュータシステムで

あることは認め,その余は否認する。被告物件イ−2のサーバ群及びストレー

ジサーバ群が,ユーザーのスマートフォンに,原告主張の終電時刻等を表示さ

せることに係る信号ないし音声信号を送信することはあるが,その内容が,そ

れら信号から理解される内容に合っているものかどうかの判断はしていない。

イ 構成b

被告物件イ−2が,b−1,b−2を備えることは認める。

ウ 構成c

被告物件イ−2が,c,c2−1,c2−2を備えること,c1―1,2の

うち,コンピュータシステムであること,スマートフォンから,その位置情報,

アドレス帳のデータ,スケジュール帳のデータ,各種設定情報,電話帳等の情

報が,被告物件イ−2に送られることがあり,これらの情報のなかにプロフィ

ール情報となる情報が含まれる場合があること,これらの情報を受付ける複数

台のサーバ群に通信部があることは認め,その余(c3−1,2を含む)は否

認する。

エ 構成d

被告物件イ−2が,iコンシェルのために使用される複数台のサーバ群を有

すること,
「利用者のためにデータ処理を実行するソフトウェア」を有する点,

ユーザーのスマートフォンに「乗車駅と降車駅と終電時刻」が表示されること

があること,スマートフォンに「終電まであと25分です」が表示されること




があること,「ユーザが利用している路線に関する鉄道運行情報」がユーザー

のスマートフォンに表示されることがあること,「全国有名寿司展開催!8/

1〜8/3」との表示がユーザーのスマートフォンに表示されることがあるこ

と,また,これらの表示内容が音声で読み上げられることがあることは認め,

その余,とりわけ,「マッチング判断を行うこと」 「その結果」の部分は否認


する。

(2) 語義の点からの上記認否の補足

ア 「エージェント」及び「エンジン」について

エージェント(agent)とは,元来,代理人という意味であり,コンピュータ

関連用語として使用された場合,「エージェント」は多義的である。「利用者の

代理または支援をするソフトウェア」(乙22,1頁) 「ユーザのためにサー


バと相互動作してデータにアクセスするよう特に設計されたプログラム」(乙

23)のような広い意味でも用いられている。

エンジン(engine)とは,元来,「種々のエネルギーを機械的力または運動に

変換する機械または装置」のことである。コンピュータ関連用語として使用さ

れた場合,「エンジン」は,「コンピュータで実質的にデータ処理を実行するた

めの機構」(乙24) 「入力を受け取ると決められた目的やルールに従って処


理を施し出力を返すシステムや,システムの中核に据えられる汎用的なソフト

ウェア」(乙25) 「プログラムが如何にデータ管理を監視し,処理するかを


決定するプログラムの部分。別名,プロセッサー」(乙26)のような意味で

用いられている。

以上により,被告システムを紹介する記事等において,それらサービスを提

供するシステムが「エージェント」を有するとか,「エージェントエンジン」

を有するとかの記述があったとしても,それは,同システムは,「ユーザ(利

用者)のためにデータ処理を実行するソフトウェア」を有していることを示す

にすぎない。




イ 「自律的な」について

本件特許の原出願日(平成10年4月14日)後に発行された文献であるが,

原出願日に近い平成10年7月20日に発行された甲19の9頁には,「自律

性」について,「エージェントは,人間や他システムからの直接的な干渉を受

けることなく行動する.このため,自己の行動や状況を制御する機構をもつ.」

との説明がされている。

また,同文献の20頁には,「自律的」という言葉について,
「周りの環境や

他のエージェントの状況が認識できる,与えられた目標と状況認識から,自分

の行動を決定することができる,状況の変化に対応して,自分の行動を適応さ

せていくことができる」というような特性を備えていることを指すと記載され

ている。

ウ 「モジュール」について

「モジュール」とは,コンピュータ関連用語としては,「ソフトウェアやハ

ードウェアを構成する部分のうち,独立性が高く,追加や交換が容易にできる

ように設計された部品」(乙27) 「プログラムにおいて,独自に機能するこ


とができる単位又はセクション」(乙28)を意味する。

(3) 被告物件イ−2は,本件特許発明1の構成要件を充足しないこと

構成要件A−1(自律的なソフトウェアモジュールとしてのエージェント)

について

「自律的なソフトウェアモジュールとしてのエージェント」の意味は,「テ

レスクリプト等の通信用言語で記述され,依頼された特定の仕事を自らの判断

において行い,テレスクリプト・エンジン等によって提供される共通動作環境

であるプレース上で独立に動作するプログラム」のことであるが,原告は,
「自

律的」に該当する具体的な構成,「ソフトウェアモジュール」に該当する具体

的な構成を全く主張せず,「エージェントエンジン」がインストールされてい

ることを主張するにすぎないから,被告システムが,「自律的なソフトウェア




モジュールとしてのエージェント」に該当することの具体的な構成を全く主張

していない。

被告システムは,「ユーザのためにデータ処理を実行するソフトウェア」を

有しているにすぎず,被告物件イ−2が構成要件A−1を充足するとは認めら

れない。

構成要件A−2(ユーザにマッチするコンテンツであるか否かを判断し)に

ついて

被告システムでは,終電時刻の情報や鉄道運行情報をユーザーのスマートフ

ォンに送信することがあるが,被告システムは,それが本当に当該ユーザーの

欲する「終電時刻」であるのか否か,それが本当にユーザーの欲している「鉄

道運行情報」であるかの判断をしておらず,送信される情報の中身を見ていな

い。

「ユーザにマッチするコンテンツであるか否かを判断し」とは,「実際のコ

ンテンツ情報が本当にユーザが好むコンテンツであるか否かを判断すること」

であるが,被告システムはそのような判断をしていない。

したがって,被告物件イ−2は,構成要件A−2を充足しない。

構成要件A−3(マッチするコンテンツを該ユーザに提供するコンテンツ提

供システム)について

「マッチするコンテンツを該ユーザに提供する」とは,「実際のコンテンツ

情報が本当にユーザが好むコンテンツ情報であるか否かを判断し,該ユーザに

提供すること」であるが,被告システムはそのような判断をしておらず,ユー

ザーが好むものではない場合でもコンテンツが提供される。

したがって,被告物件イ−2は,構成要件A−3を充足しない。

構成要件A−2及びA−3について

A−2及びA−3の主体は,A−1の「自律的なソフトウェアモジュールと

してのエージェント」でなければならない。しかし,原告の主張自体,主体を




「複数台のサーバ群」としており,A−2の判断主体及びA−3のコンテンツ

提供主体を「ソフトウェアモジュール」とはしていないから,この点でも,被

告物件イ−2は,A−1,A−2,A−3を充足するとは認められない。

構成要件Cについて

被告システムは,「実際のコンテンツ情報が本当にユーザが好むコンテンツ

であるか否かを判断」せず,また,ユーザーのGPS位置情報ないしユーザー

の現在位置情報のように刻々と変化する情報は,「プロフィール情報」に該当

しない。

したがって,被告物件イ−2は,構成要件C1−1,C3−1を充足しない。

構成要件Dについて

(ア) 構成要件D−1(ユーザとコンテンツ提供業者とを仲介して両者に代わっ

て仕事を実行するための中立性を有する第三者エージェント)について

本件特許発明の「エージェント」の意義は前述のとおりであり,被告シス

テムはそのような構成を有していない。被告システムは,コンテンツの中身

を見ておらず,ユーザーに適するコンテンツを選び出す処理をしていない。

「中立性を有する第三者エージェント」とは,「当事者のみでは解決困難

なまたは解決不可能な中立性を要する仕事が発生した場合に,そのような特

定の仕事を当事者に代わって代理実行して解決するために設立された機関」

であって,「当事者エージェント同士が対立するというトラブルが発生した

場合の仲裁やどちらのエージェントが正しいかの判定,当事者エージェント

の一方または双方が本当に正しい当事者のエージェントであるかを立証す

るための第三者による証明等・・・当事者だけでは解決が困難または不可能

な中立性を要する仕事すべてを対象」として,仕事を行う機関に代わり,当

該機関が行うとされるこのような仕事を実行するエージェントである。被告

システムはそのような構成を有していない。

(イ) 構成要件D−2,D−3(マッチング判断)について




「マッチング判断」とは,「実際のコンテンツ情報が本当にユーザが好む

コンテンツであるか否かの判断」であるが,被告システムはそのような判断

をしていない。

よって,被告物件イ−2は,構成要件D−2,D−3を充足しない。

(ウ) 構成要件D−4(その結果をユーザに提供)について

「その結果」,とは「前記マッチング判断を行なった結果」であり,ユー

ザーが実際のコンテンツの提供を受けるか否かの判断の指標とするための,

実際のコンテンツの提供の前にユーザーに通知される,ユーザーのプロフィ

ール情報に基づきユーザーが好むであろうと推測される度合いを示した結

果である。しかし,被告システムでは,そのような「結果」はユーザーに提

供されない。

また,「ユーザにマッチするコンテンツであるか否かを判断し」「その結


果をユーザに提供する」ことが構成要件となっている。従って,「否」とい

う判断,すなわち,ユーザーにマッチするコンテンツではないと判断した場

合に,その結果がユーザーに提供されることが構成要件の内容となっている。

しかし,被告システムでは,ユーザーにマッチするコンテンツではないとの

判断結果がユーザーに提供されることはない。被告物件イ−2にも,ユーザ

ーにマッチするコンテンツではないという判断結果がユーザーに提供され

ることは全く記載されていない。

したがって,被告物件イ−2は構成要件D−4を充足しない。

2 争点(2) (被告物件イ−3が,本件特許発明2の構成要件を充足するか)について

【原告の主張】

(1) 被告物件イ−3(しゃべってコンシェルまたはiコンシェル)の特定

被告物件イ−3は,被告物件イ−2のうちa〜d(枝番を含む)の構成を備え,

かつ,次の構成を備えるものである(本件特許発明2に関係するのはgまで。 。


f−1 ユーザの音声による指示 「当事者主義とは?」
( 等のユーザの質問等)




を受付けて仕事をする音声エージェント(Amazon Web Services(以下「A

WS」という。 側のサーバ群にインストールされている音声エージェント)


を用いてユーザが指示した内容を検索する機能であって,音声エージェント

が音声認識エンジンと意図解釈エンジンとを含んでおり,

f−2 音声認識エンジンによる認識結果に基づいて意図解釈エンジンがユ

ーザの指示の意図を解釈したその解釈結果

f−3 に基づいて検索を行なった

f−4 検索結果をユーザに提供する検索提供機能をさらに備え,

f−5 検索提供機能は,社内データベースに検索対象の答えがない場合には,

Wikipedia や Twitter 等の,被告に設置されたコンピュータ以外のネットワ

ーク上のコンピュータに検索対象を送信し,該ネットワーク上のコンピュー

タにおいて記憶されている情報を検索するための制御機能を有する,

(g コンピュータシステム。)

h 前記音声エージェントの意図を解釈してタスク判定を行う部分等が機械

学習機能を有する

i コンピュータシステム

(2) 被告物件イ−3が,本件特許発明2の構成要件を充足すること

f−1の「当事者主義とは?」等のユーザーの質問が,構成要件Fの「ユーザ

の指示」に該当し,「を受付けて仕事をする音声エージェント(AWS側のサー

バ群にインストールされている音声エージェント,音声認識エンジンおよび意図

解釈エンジンを含む)」が,同じく「を受付けて仕事をするエージェント」に該

当する。

f−2の「音声認識エンジンによる認識結果に基づいて意図解釈エンジンがユ

ーザーの指示の意図を解釈したその解釈結果」が,構成要件Fの「受け付けた指

示内容」に該当し,f−3の「に基づいて」が,同じく「に基づいて検索を行っ

て」に該当する。




f−4の「検索結果をユーザに提供する検索機能」とは,具体的には,意図解

釈・応答が返信され,
「Wikipedia で調べます」が音声報知されるとともに,検索

結果・応答として「当事者主義とは,事案の解明や証拠の提出に関する主導権を

当事者に委ねる原則をいう。裁判・訴訟の分野における当事者主義に対立する概

念としては,裁判所による積極的な事案の解明や証拠の追究を認める職権主義が

ある」といった返信がスマートフォンの画面に表示されることであり,構成要件

Fの「検索結果をユーザに提供する検索手段」に該当する。

f−5の「社内データベースに検索対象の答えがない場合」とは,具体的には,

「当事者主義とは?」の質問に対する答えが社内データベースにない場合である

が,この場合,被告が運営する複数台のサーバ群は,インターネット経由で,検

索対象の「当事者主義」を他 Web サイトの Wikipedia や Twitter 等の,被告に設

置されたコンピュータ以外のネットワーク上のコンピュータに送信するが,これ

は,構成要件Fの「別の機関に設置された前記コンピュータ以外のネットワーク

上のコンピュータにおいて記憶されている情報を検索する」に該当する。

gのコンピュータシステムは,構成要件Gの「コンテンツ提供システム」に該

当する。

以上によれば,被告物件イ−3は,本件特許発明2の構成要件を充足する。

【被告の主張】

(1) 被告物件イ−3の構成についての認否

被告システムにおいて,「当事者主義とは?」等のユーザーの質問を音声信号

として受付けることがあること,AWS側のサーバ群に上記音声信号に関して処

理を実行するソフトウェアがインストールされていること,社内データベースに

検索対象の答えがない場合には,Wikipedia や twitter 等の,被告に設置された

コンピュータ以外のネット-ワーク上のコンピュータに検索対象を送信すること

があることは認め,その余は否認する。

(2) 属否の主張




ア 本件特許権において,請求項2は請求項1の従属項であり,被告システムが

請求項1を充足しないことは,既に述べたとおりである。

また,「当事者主義とは?」との質問をユーザーが音声で発した場合でも,

ユーザーのプロフィール情報に基づいてマッチング判断がされているわけで

はなく,被告物件イ−3は,構成要件Cを充足しない。

イ 本件特許発明2は,「ユーザエージェント」の存在が要件の一つとなってい

る。そして,本件明細書によると,ユーザエージェントは,ユーザーのパソコ

ン内で動作しているエージェントであって,コンテンツ提供業者のコンピュー

タへと移動するエージェントであるが,被告システムは,このようなユーザエ

ージェントを有しておらず,被告物件イ−3は,これに相当する構成を含まな

いから,本件特許発明2の構成要件を充足しない。

3 争点(3)(被告物件イ−3が,本件特許発明3の構成要件を充足するか)について

【原告の主張】

(1) 被告物件イ−3の構成

前記2の【原告の主張】(1)記載のとおりである。

(2) 被告物件イ−3が本件特許発明3の構成要件を充足すること

構成hの「音声エージェント」が,構成要件Hの「ユーザエージェント」に該

当し,「タスク判定を行う部分等が機械学習機能を有すること」が,同じく,「機

械学習機能」に該当する。

したがって,被告物件イ−3は,本件特許発明3の技術的範囲に属する。

【被告の主張】

(1) 認否

被告システムが,音声信号のデータ処理を実行するソフトウェアを有する点は

認め,その余は否認し,構成要件の充足は争う。

(2) 属否の主張

前記2の【被告の主張】(2)記載のとおりである。




4 争点(4)(被告物件イ−1が,本件特許発明4の構成要件を充足するか)について

【原告の主張】

(1) 被告物件イ−1(連携サービス)の構成

被告物件イ−1は,前記a〜f−5の構成またはa〜hの構成を有し,かつ次

の構成を備えるものである。

j−1 前記音声エージェントは,前記エージェントエンジンと交信しながら連

携して仕事を行ない,

j−2 前記エージェントエンジンは,音声エージェントから送られてきたユー

ザの指示内容に従って前記マッチング判断を行なう,

k コンピュータシステム。

(2) 被告物件イ−1が,本件特許発明4の構成要件を充足すること

ア j−1の「前記音声エージェント」が構成要件Jの「前記ユーザエージェン

ト」に該当し,「前記エージェントエンジンと交信しながら連携して」が,同

じく「前記第三者エージェントと協働して」に該当する。j−1の「仕事を行

い」が同じく「仕事を行うマルチエージェント」に該当する。

マルチエージェントは,複数の独立したソフトウェアが相互に交信しながら,

全体として何らかの処理を実現するソフトウェアであり,音声エージェントと

エージェントエンジンとが交信しながらユーザにマッチする終電時刻等を提

供する処理を行う被告物件イ−1の音声エージェントは,マルチエージェント

である。

イ j−2の「前記エージェントエンジン」が「前記第三者エージェント」に該

当し,「音声エージェントから送られてきたユーザの指示内容に従って前記マ

ッチング判断を行う」が同じく「ユーザエージェントとの協働により前記マッ

チング判断を行う」に該当する。j−2のマッチング判断は,音声エージェン

トから送られてきたユーザの指示内容に従って行われるものであり,音声エー

ジェント(ユーザエージェント)との協働により行われるものである。




ウ 構成kのコンピュータシステムが,構成要件Kの「コンテンツ提供システム」

に該当する。

エ したがって,被告物件イ−1は,本件特許発明4の構成要件を充足する。

【被告の主張】

(1) 認否

AWS側のサーバ群に,音声信号に関して処理を実行するソフトウェアがイン

ストールされていること,AWS側のサーバ群から被告の複数台のサーバ群に送

信されること,「終電まであと25分です」と表示させる信号をユーザーのスマ

ートフォンに送信する場合があること,ユーザーが利用している路線に関する鉄

道運行情報がユーザーのスマートフォンに送信されることがあることは認める。

その余は否認し,構成要件の充足は争う。

(2) 属否の主張

前記2【被告の主張】(2)記載のとおりである。

5 争点(5)(本件特許発明が乙4発明及び周知技術により新規性又は進歩性がないと

いえるか)について

【被告の主張】

(1) 原告の主張内容

原告は,ユーザーのプロフィール情報がiコンシェルサーバないし連携サービ

スのサーバに提供され,iコンシェルサーバないし連携サービスのシステムが,

当該ユーザーのプロフィール情報とコンテンツプロバイダの各種配信情報との

「マッチング」を行い,「マッチする」情報をユーザーに提供し,ユーザーのプ

ロフィール情報がコンテンツプロバイダに提供されないとの態様をもって,本件

特許の侵害態様としている。

(2) 乙4発明について

特開平9−204445号公報(乙4号証)には,次の発明(乙4発明)が開

示されている。




A ホストコンピュータのコンピュータプログラムが,ユーザに適する商品等の

情報(時計などの商品の情報,工業所有権の情報,釣り情報)であるか否かを

判断し,適する商品等の情報を該ユーザに提供する商品等の情報提供システム

であって,

B 情報を提供する複数の情報提供業者(日本全国または全世界のメーカーや流

通業者,小売店,データバンク,新聞,放送局,レストラン,旅行代理店,そ

の他の各種のサービス業者)とは異なるVAN業者に設置されたホストコンピ

ュータを備え,

C 前記ホストコンピュータは,

C1 前記ユーザに適する商品等の情報か否かを判断するのに必要となる当該

ユーザの個人情報であって前記ホストコンピュータへ送信されてきた個人情

報を,受付ける個人情報受付手段と,

C2 前記情報提供業者によって提供される商品等の情報であって前記ホスト

コンピュータへ送信されてきた商品等の情報を,受付ける商品等の情報受付手

段と,

C3 前記個人情報受付手段により受付けられたユーザの個人情報に基づいて,

前記商品等の情報受付手段により受付けられた商品等の情報がユーザに適す

る商品等の情報であるか否かの適合判断を行なうコンピュータプログラムと

を含み,

D 前記コンピュータプログラムは,ユーザと前記商品等の情報提供業者との間

で仕事を実行するコンピュータプログラムで構成され,前記商品等の情報提供

業者とは異なるVAN業者に設置された前記ホストコンピュータ内で前記適

合判断を行なうことにより,前記個人情報受付手段により受付けられたユーザ

の個人情報を前記商品等の提供業者に提供することなく前記適合判断を行な

って商品等の情報をユーザに提供する,

E 商品等の情報提供システム。




(3) 乙5発明について

特開平10−49469号公報(乙5号証)には,次の発明(乙5発明)が開

示されている。

A カスタマイザのコンピュータプログラムがユーザに合致する配送情報であ

るか否かを判断し,合致する配送情報を該ユーザに提供する配送情報提供シス

テムであって,

B 配送情報を提供する配送情報提供業者とは異なるカスタマイザを管理する

機関に設置されたカスタマイザを備え,

C 前記カスタマイザは,

C1 前記ユーザに合致する配送情報か否かを判断するのに必要となる当該ユ

ーザのユーザプロファイルであって前記カスタマイザへ送信されてきたユー

ザプロファイルを,受付けるユーザプロファイル情報受付手段と,

C2 前記配送情報提供業者によって提供される配送情報であって前記カスタ

マイザへ送信されてきた配送情報を,受付ける配送情報受付手段と,

C3 前記ユーザプロファイル受付手段により受付けられたユーザのユーザプ

ロファイルに基づいて,前記配送情報受付手段により受付けられた配送情報が

ユーザに合致する配送情報であるか否かの合致判断を行なうコンピュータプ

ログラムとを含み,

D 前記コンピュータプログラムは,ユーザと前記配送情報提供業者との間で仕

事を実行するコンピュータプログラムで構成され,前記配送情報提供業者とは

異なるカスタマイザを管理する機関に設置された前記カスタマイザ内で前記

合致判断を行なうことにより,前記ユーザプロファイル受付手段により受付け

られたユーザのユーザプロファイルを前記配送情報提供業者に提供すること

なく前記合致判断を行なって配送情報をユーザに提供する,

E 配送情報提供システム。

(4) 乙6発明について




特開平9−305514号公報(乙6号証)には,次の発明(乙6発明)が開

示されている。

A サーバ内のプログラムがユーザに適切である広告であるか否かを判断し,適

切である広告を該ユーザに提供する広告提供システムであって,

B 広告を提供する複数の広告提供業者(ファストフード店,パチンコ店等)と

は異なる別の機関に設置されたサーバを備え,

C 前記サーバは,

C1 前記ユーザに適する広告か否かを判断するのに必要となる当該ユーザの

使用する携帯情報端末のGPSによる位置情報であって前記サーバへ送信さ

れてきた位置情報を,受付ける位置情報受付手段と,

C2 前記広告提供業者によって提供される広告であって前記サーバへ送信さ

れてきた広告を,受付ける広告受付手段と,

C3 前記位置情報受付手段により受付けられたユーザの携帯情報端末の位置

情報に基づいて,前記広告受付手段により受付けられた広告がユーザに適する

広告であるか否かの適性判断を行なうプログラムとを含み,

D 前記プログラムは,前記広告提供業者とは異なる別の機関に設置された前記

サーバ内で前記適性判断を行なうことにより,前記位置情報受付手段により受

付けられたユーザの携帯情報端末の位置情報を前記広告提供業者に提供する

ことなく前記適性判断を行なって適切な広告をユーザに提供する,

E 広告提供システム。

(5) 原告主張の侵害態様は,乙4発明,乙5発明に相当する公知技術であること

上記(1)のとおりの原告主張の本件特許の侵害態様は,乙4発明又は乙5発明に

相当するもので,本件特許の原出願日前の公知技術にすぎない。したがって,本

特許発明が,原告主張のような侵害態様をその技術的範囲に含むものであると

すると,本件特許発明新規性欠如ないし進歩性欠如の無効理由を有する。

ア 乙4発明の「ホストコンピュータ」が,原告主張侵害態様の「iコンシェル




サーバ」ないし「iコンシェルサーバとしゃべってコンシェルの連携サービス」

に相当し,乙4発明の「情報提供業者」が,原告主張侵害態様の「コンテンツ

プロバイダ」に相当し,乙4発明の「商品等の情報」が,原告主張侵害態様の

「各種配信情報」に相当し,乙4発明の「VAN業者」が,原告主張侵害態様

の「ドコモ(被告)」に相当し,乙4発明の「ユーザの個人情報」が,原告主

侵害態様の「ユーザのプロフィール情報」に相当し,乙4発明の「適する」

ないし「適するか否かの判断(適合判断)」が,原告主張侵害態様の「マッチ」

ないし「マッチング判断」に相当する。また,乙4発明においても,ホストコ

ンピュータに送信されたユーザの個人情報が情報提供業者に提供されること

はない。

イ 乙5発明の「カスタマイザ」が,原告主張侵害態様の「iコンシェルサーバ」

ないし「iコンシェルサーバとしゃべってコンシェルの連携サービス」に相当

し,乙5発明の「配送情報提供業者」が,原告主張侵害態様の「コンテンツプ

ロバイダ」に相当し,乙5発明の「配送情報」が,原告主張侵害態様の「各種

配信情報」に相当し,乙5発明の「カスタマイザを管理する機関」が,原告主

侵害態様の「NTTドコモ(被告)」に相当し,乙5発明の「ユーザプロフ

ァイル情報」が,原告主張侵害態様の「ユーザのプロフィール情報」に相当し,

乙5発明の「合致する」ないし「合致判断」が,原告主張侵害態様の「マッチ」

ないし「マッチング判断」に相当する。また,乙5発明においても,カスタマ

イザに送信されたユーザプロファイル情報が配送情報提供業者に提供される

ことはない。

【原告の主張】

(1) 乙4発明について

被告は,乙4発明の構成要件Dの認定を誤っている。

乙4発明には,少なくとも「VAN業者がユーザの個人情報を自社のホストコ

ンピュータ内に格納して保護し,その個人情報を情報提供業者(小売店等のサー




ビス業者)に提供しないようにすること」という技術思想が存在しない。

(2) 乙5発明について

被告は,乙5発明の構成要件B,C2,Dの認定を誤っている。

乙5発明において,
「配送情報提供業者」及び「カスタマイザを管理する機関」

に相当する記載はなく,そもそも「配送情報を提供する主体」の記載及び「カス

タマイザを管理する主体」自体が存在しない。

したがって,構成要件C2,Dに記載される「配送情報提供業者」も存在しな

いことになる。

(3) 乙6発明について

被告は,乙6発明の構成要件Bの認定を誤っている。

被告は,乙6発明の構成要件Bについて,「広告を提供する複数の広告提供業

者(ファストフード店,パチンコ店等)とは異なる別の機関に設置されたサーバ

を備え」としているが,乙6発明には,「サーバを設置している機関」に相当す

るような記載が存在せず,そもそも「サーバを設置している主体の記載」自体が

存在しない。したがって,「異なる機関」である旨の主張は失当である。

6 争点(6)(本件特許発明がロボット検索発明,乙18発明,乙19の1発明により

新規性又は進歩性がないといえるか)

【被告の主張】

(1) ロボット検索技術(周知技術

本件特許の原出願日前,「Yahoo!」等のインターネットを利用した情報

検索サービスは,周知技術であり,公然実施されていた。そのうちの基礎的な技

術として,ロボット検索技術がある。同技術もまた,本件特許の出願日前に周知

技術であった(特開平10−91638公報(乙17),特開平9−15305

4(乙18)。


同技術を用いる発明(ロボット検索発明) 情報検索サービス提供事業者が,
は,

ロボットと呼ばれる機械的にネットワーク上で提供されている情報を収集する




ソフトウェアを使用し,インターネットで提供されている様々な情報(複数の事

業者が提供する様々なコンテンツも含まれる)を収集し,収集した情報をデータ

ベース化して蓄積し,ユーザーがそのコンピューターで情報検索サービスの提供

事業者に検索サイトにインターネットを通じてアクセスし,検索画面で所望の情

報に関連する検索ワードを入力して,検索要求をすると,サービス提供事業者の

サーバーは前記データベースから当該検索ワードに合致する情報を選択し,その

情報をユーザーに提供するというものである。

(2) ロボット検索発明の構成

ロボット検索発明において,検索情報が,検索者の趣味,すなわちプロフィー

ル情報に関する語句である場合は当然に想定される。ロボット検索発明において

「検索情報」が「プロフィール情報」である場合,本件特許の請求項1に係る発

明との対比で,ロボット検索技術の構成を説明すると,次のとおりとなる。これ

は,原告が本件訴訟で本件特許発明と主張するものに相当する。

A ソフトウェアがユーザーに適合するコンテンツであるか否かを判断し,適合

するコンテンツを該ユーザーに提供するコンテンツ提供システムであって,

B コンテンツを提供する複数のコンテンツ提供業者とは異なる別の機関であ

る検索サービス提供事業者に設置されたコンピュータを備え,

C 前記コンピュータは,

C1 前記ユーザーに適合するコンテンツか否かを判断するのに必要となる当

該ユーザーのプロフィール情報であって前記コンピュータへ送信されてきた

プロフィール情報を,受付けるプロフィール情報受付手段と,

C2 前記コンテンツ提供業者によって提供されるコンテンツであって前記コ

ンピュータへ送信されてきたコンテンツを,受付けるコンテンツ受付手段と,

C3 前記プロフィール情報受付手段により受付けられたユーザーのプロフィ

ール情報に基づいて,前記コンテンツ受付手段により受付けられたコンテンツ

がユーザーに適合するコンテンツであるか否かの適合判断を行なうソフトウ




ェアとを含み,

D 前記ソフトウェアは,ユーザーと前記コンテンツ提供業者との間で仕事を実

行するソフトウェアで構成され,前記コンテンツ提供業者とは異なる別の機関

である検索サービス提供事業者に設置された前記コンピュータ内で前記適合

判断を行なうことにより,前記プロフィール情報受付手段により受付けられた

ユーザーのプロフィール情報を前記コンテンツ提供業者に提供することなく

前記適合判断を行なってコンテンツをユーザーに提供する,

E コンテンツ提供システム。

(2) 特開平9−153054号に記載の発明(乙18発明)

特開平9−153054号の公報には,GPS情報を利用する次の発明が開示

されている。乙18発明は,原告が,本件訴訟で本件特許発明として主張してい

る内容に相当する。

A ソフトウェアがユーザに合致する情報であるか否かを判断し,合致する情報

を該ユーザに提供する情報提供システムであって,

B 情報を提供する複数の情報提供業者とは異なる別の機関に設置された検索

サーバを備え,

C 前記検索サーバは,

C1 前記ユーザに合致する情報か否かを判断するのに必要となる当該ユーザ

の位置情報(GPSによる位置情報の場合を含む。,性別,年齢,職業などの


情報(以下この発明の説明において「ユーザ情報」という。)であって前記サ

ーバへ送信されてきたユーザ情報を,受付けるユーザ情報受付手段と,

C2 前記情報提供業者によって提供される情報であって前記サーバへ送信さ

れてきた情報を,受付ける情報受付手段と,

C3 前記ユーザ情報受付手段により受付けられたユーザのユーザ情報に基づ

いて,前記情報受付手段により受付けられた情報がユーザに合致する情報であ

るか否かの合致判断を行なうソフトウェアとを含み,




D 前記ソフトウェアは,ユーザと前記情報提供業者との間で仕事を実行するた

めのソフトウェアで構成され,前記情報提供業者とは異なる別の機関に設置さ

れた前記サーバ内で前記合致判断を行なうことにより,前記ユーザ情報受付手

段により受付けられたユーザのユーザ情報を前記情報提供業者に提供するこ

となく前記合致判断を行なって情報をユーザに提供する,

E 情報提供システム。

(3) 国際公開公報(WO97/22074)に記載の発明(乙19の1発明)

上記公報には,次の発明が開示されている。乙19の1発明は,原告が本件訴

訟で,本件特許発明として主張している内容に相当する。

A ソフトウェアが消費者に適合する広告であるか否かを判断し,適合する広告

を該消費者に提供する広告提供システムであって,

B 広告を提供する複数の広告提供業者とは異なる別の機関に設置された注意

介入サーバーを備え,

C 前記注意介入サーバーは,

C1 前記消費者に適合する広告か否かを判断するのに必要となる当該消費者

のプロフィール情報であって前記注意介入サーバーへ送信されてきたプロフ

ィール情報を,受付けるプロフィール情報受付手段と,

C2 前記広告提供業者によって提供される広告であって前記注意介入サーバ

ーへ送信されてきた広告を,受付ける広告受付手段と,

C3 前記プロフィール情報受付手段により受付けられた消費者のプロフィー

ル情報に基づいて,前記コンテンツ受付手段により受付けられたコンテンツが

消費者に適合するコンテンツであるか否かの適合判断を行なうソフトウェア

とを含み,

D 前記ソフトウェアは,消費者と前記広告提供業者との間で両者を仲介して仕

事を実行するためのソフトウェアで構成され,前記広告提供業者とは異なる別

の機関に設置された前記注意介入サーバー内で前記適合判断を行なうことに




より,前記プロフィール情報受付手段により受付けられた消費者のプロフィー

ル情報を前記広告提供業者に提供することなく前記適合判断を行なって広告

をユーザに提供する,

E 広告提供システム。

(4) まとめ

原告の主張する,本件特許発明技術的範囲についての極めて広い解釈による

と,上記の発明により(なお,請求項3についての「機械学習機能」についても,

本件特許の原出願日前に周知技術である。特開平5−233600(乙20),

特開平8−147289(乙21)参照),新規性欠如又は進歩性欠如の無効理

由を有する。

【原告の主張】

(1) ロボット検索技術について

被告の引用する2つ程度の特許公報では,到底周知技術ということはできない

し,インターネットを利用した一般的なロボット検索技術が本件特許の原出願日

前に周知であったとする証拠もない。

また,ロボット検索技術は,単にユーザーが入力した検索キーワードに合致す

る単語を含むウェブページを探し出すに過ぎず,この点において,検索語をユー

ザーのプロフィール情報として認識した上でコンテンツとのマッチング判断を

行う本件特許発明とは相違する。

(2) 乙18発明,乙19の1発明の認定誤り

乙18発明,乙19の1発明には,「ユーザのプロフィール情報をコンテンツ

プロバイダに提供しない」という技術思想が存在しない。

7 争点(7)(本件特許発明に課題の記載を欠くとの無効事由があるか)について

【被告の主張】

(1) 明細書においては,発明の詳細な説明の記載として,
「発明が解決しようとする

課題」が当業者に理解できる程度に明確かつ十分に記載されていなければならな




い(特許法36条4項,同法施行規則24条の2)。

(2) 本件明細書は,発明が解決しようとする課題に関し,次のとおり記載されてい

る。

「【背景技術】

【0002】

従来において,たとえば,中立的なネゴシエータを設けて,イニシエータとレス

ポンダの間の交渉の仲立ちをして提案及び提示を行う,交渉システムがあった

(非特許文献1)

先行技術文献】

【非特許文献】

【0003】

【非特許文献1】移動エージェントによる交渉システムの設計,情報処理学会ワ

ークショップ論文集,日本,社団法人情報処理学会,1997年7月,Vol.97,

No.2,pp.557-562

発明の概要

【発明が解決しようとする課題】

このシステムの発明の目的は,改良されたコンテンツ提供システムを提供するこ

とである。」

(3) 上記の記載では,「移動エージェントによる交渉システム」を背景技術として,

改良したコンテンツ提供システムを提供することを目的とすることしか理解で

きず,「発明が解決しようとする課題」が,当業者に理解できる程度に明細書に

記載されているといえず,本件特許は無効理由を有する。

【原告の主張】

(1) 課題の記載箇所は,
発明の詳細な説明」であって,【発明が解決しようとする


課題】の欄」ではない(同欄に限定されない)。

(2) 本件明細書の【0011】【0242】【0243】【0030】【0031】
, , , , ,




【0061】の記載からすると,本件特許発明が解決しようとする課題は,「ユ

ーザにマッチするコンテンツを提供するにおいて,コンテンツ提供業者のコンピ

ュータ内でユーザのプロフィール情報を用いたコンテンツ検索を行った場合に

は,そのプロフィール情報がコンテンツ提供業者に漏洩する虞がある。このプロ

フィール情報のコンテンツ提供業者への漏洩を極力防止しつつユーザにマッチ

するコンテンツを提供する必要がある」との課題が記載されている。

8 争点(8)(本件特許発明実施可能要件違反,サポート要件違反の無効理由がある

か)について

【被告の主張】

(1) 実施可能要件違反

ア 本件特許発明は,
「自律的なソフトウェアモジュールとしてのエージェント」

が,「ユーザにマッチするコンテンツであるか否かを判断し」,かつ「マッチす

るコンテンツを該ユーザに提供するコンテンツ提供システム」であるが,発明

の詳細な説明には,「自律的な・・エージェント」が「マッチするコンテンツ

を該ユーザに提供する」態様が記載されておらず,当業者はどのようにそれを

実施することができるのか,理解できない。

構成要件Dにいう「その結果」とは,「マッチング判断を行った結果」であ

り,ユーザーが実際のコンテンツの提供を受けるか否かの判断の指標とするた

めの,実際のコンテンツの提供の前にユーザーに通知される,ユーザーのプロ

フィール情報に基づくユーザーが好むであろうと推測される度合いを示した

結果である。

発明の詳細な説明には,いかにしてユーザーのプロフィール情報に基づくユ

ーザーが好むであろうと推測される度合いを判断できるのかについての具体

的手段が記載されておらず,当業者がこれを実施することができない。

ウ よって,本件明細書の発明の詳細な説明には,当業者が,本件特許発明を実

施できる程度に明確かつ十分に記載されているとは言えないから,本件特許は




無効理由(特許法36条4項)を有する。

(2) サポート要件違反

本件特許の特許請求の範囲の記載,本件明細書の説明,本件特許出願の最初の

原出願の明細書の説明,本件特許発明が前提とする背景技術の内容から,本件特

許発明は,自律的なソフトウェアモジュールであるモバイルエージェント等のエ

ージェント同士が協調して動作するマルチエージェントシステムを対象として

いると解される,「発明の詳細な説明」等における「実施例」等の記載から,自

律的なソフトウェアモジュールであるモバイルエージェント等のエージェント

同士が協調して動作するマルチエージェントシステムのみが開示されていると

解される。

しかし,原告は,本件特許発明技術的範囲について,自律的なソフトウェア

モジュールであるモバイルエージェント等のエージェント同士が協調して動作

するマルチエージェントシステムを超えて,きわめて広い発明の技術的範囲を主

張している。そのような解釈を採るならば,「特許請求の範囲」に,その技術的

事項を超えた広範な記述的範囲を含む記載がされていることになるので,サポー

ト要件(特許法36条6項1号)に違反することになる。

【原告の主張】

(1) 実施可能要件違反に対する反論

本件明細書の【0027】から【0032】まで,【0123】によると,「ユ

ーザの思考に合致した音楽情報や映画情報を検索するファイアフライ」が出願当

時(平成10年4月14日)に技術常識になっていた(甲45)。また,本件特

許発明の出願当時,「全文検索」の技術が技術常識となっていた(甲46)。

よって,ファイアフライのようなエージェントで「第三者機関エージェント」

を構成することにより,当業者であれば,「エージェントがユーザにマッチする

コンテンツであるか否かを判断し,マッチするコンテンツを該ユーザに提供する

こと」及び「プロフィール情報に基づいて,コンテンツがユーザにマッチするコ




ンテンツであるか否かのマッチング判断を行うエージェントを含み,前記エージ

ェントは,前記マッチング判断を行ってその結果をユーザに提供すること。」は

実施可能である。

(2) サポート要件違反に対する反論

本件明細書には,モバイルエージェントばかりでなく,マルチエージェント及

び知的エージェントの全てのエージェント機能が開示されている。

以上より,被告の主張は失当である。

(損害論)

9 争点(9)(原告の被った損害額)について

【原告の主張】

(1) 特許法102条2項による損害

被告物件の利用者数は100万人と推定され,月額105円の利用料金からし

て,被告は,平成25年2月19日から,本訴訟を提起した平成25年4月6日

までの間に,被告物件を使用したサービスの提供により,少なくとも合計1億5

580万円の売上を得た。

上記に得た被告の利益は,利益率70パーセントを乗じた1億0906万円を

下らない。同金額は,原告の被った損害額と推定される。

原告は,上記損害の一部請求として,992万5000円及びこれに対する平

成25年5月22日(不法行為の後日である本訴状送達日の翌日)から支払済み

までの遅延損害金の支払を求める。

(2) 特許法102条3項による損害

被告の被告物件による売上は上記のとおりであるところ,原告が支払を受ける

べき実施料率5パーセントを乗じた779万円が,原告の被った損害と推定され

る。よって,予備的に,上記金額及びこれに対する遅延損害金の支払を求める。

【被告の主張】

原告の主張を争う。




第4 当裁判所の判断

1 当裁判所は,被告物件イ−1ないし3として特定される被告システムは,本件特

許の構成要件を充足せず,その技術的範囲に属しないから,原告の請求は理由がな

いものと思料する。以下その理由を述べる。

2 被告システム

証拠(甲4ないし10,22,23,27,50ないし52)及び弁論の全趣旨

(前記前提事実及び争いのない事実を含む。)によれば,被告システムについて,

以下の事実を認定することができる。

(1) 被告システムには,被告が運営するサーバー群が存在し,利用者のためにデー

タ処理を実行するソフトウェア群がインストールされている。

(2) iコンシェル(被告物件イ−2または3)は,被告が,携帯電話のユーザーに

提供する有料サービスであり,携帯電話が執事(コンシェルジュ)のようにユー

ザーに最適な情報を提供し,日常生活を支援することを目的とする。

ユーザーがiコンシェルを利用すると,被告システムは,ユーザー端末内のス

ケジュール帳データ,電話帳その他のデータの送信を受け,これを定期的に保存

する。また,被告システムは,オートGPS機能の利用により,ユーザー端末の

位置情報も保有している。

被告は,サーバー上に保存された前記情報のほか,被告が保持する契約者情報,

及びユーザーが入力した各種設定情報を元に,エリアや時間帯に合わせて,個々

のユーザーに適合した鉄道運行情報,道路交通情報,気象情報,イベント情報を

配信するほか,被告と契約し利用料を支払った他のコンテンツプロバイダ(航空

会社,スポーツチーム,ファストフード店,映画館,スーパーマーケット,レン

タルビデオ店等)の情報も配信する。この配信は,ユーザーのリクエストに応じ

て行われるプル型の配信ではなく,被告が行うプッシュ型の配信であり,コンテ

ンツプロバイダは,個別に情報を配信することはできない。

通勤時間帯に,ユーザーが普段利用する鉄道路線で遅延などが発生した場合,




ユーザー端末の画面上に鉄道運行情報が表示される。また,ユーザーがある店舗

のイベントのスケジュールをダウンロードし,iコンシェルのスケジュール帳に

登録すると,店舗のスケジュールが更新される都度ユーザーのスケジュール帳も

自動的に更新され,ユーザー端末の画面上に,その店舗の新たなイベントである

「全国有名寿司展開催8/1〜8/3」といった表示がされる。

(3) しゃべってコンシェル(被告物件イ−2)は,スマートフォンに話しかけるこ

とで,情報を検索したり,ユーザー端末を操作したりすることのできる機能であ

り,ユーザー端末の無償で提供されたアプリケーション及び被告システムのサー

バーにある音声認識エンジンと意図解釈エンジン等,これを処理する一群のソフ

トウェアによって実行される。

ユーザーがしゃべってコンシェルのアプリケーションを起動し,ユーザー端末

に「富士山の高さは?」「当事者主義とは?」と話しかけた場合,音声データが


被告システムのサーバーに送られ,音声認識エンジンがこれを言語として認識し,

意図解釈エンジンがこれを質問と理解すれば,被告システムは,被告が保有する

データベースのほか,外部の大手コンテンツプロバイダが提供するコンテンツの

中から質問に即した回答を検索し,ユーザーに回答する。

(4) 連携サービス(被告物件イ−1)は,ユーザーがしゃべってコンシェルを利用

する際に,iコンシェルにより被告が保有する前記情報を反映した回答を提供す

るものであり,「鉄道路線情報」 「道路渋滞情報」「終電アラーム」「雨雲アラ
, , ,

ーム」の4種類について利用が可能とされる。

ユーザーが,スマートフォンに「あと,どれくらいで雨が降る?」,あるいは,

「電車遅れてる?」と尋ねると,ユーザーの現在地やユーザーが普段利用する路

線といった情報を前提に,「現在地周辺では11時ころに降り出しそうです。」と

音声で回答し,気象ニュース会社の雨雲アラームを画面に表示したり,鉄道の運

行状況について回答したりする。

(5) 被告が収集したユーザーに係る上記情報は,被告システム内でのみ利用され,




コンテンツプロバイダには提供されない。

3 本件特許の成立経緯等

掲記の証拠及び弁論の全趣旨(前記前提事実及び争いのない事実を含む。)によ

れば,本件特許の成立経緯等について,以下の事実を認定することができる。

(1) 成立経緯の概要

ア 本件特許は,平成10年4月14日に特許出願された特願平10−1029

33号出願(乙2,以下「原出願」という。)を優先権の基礎とし,原出願か

ら4次目の分割出願によるものである。

すなわち,原出願の一部を分割して特願2004−29384号出願がされ,

同出願の一部を分割して特願2005−300427号出願がされ,同出願の

一部を分割して特願2009−271949号出願がされ,平成24年6月8

日,前記出願の一部を分割して,本件特許にかかる出願(特願2012−13

0504)がされ,同年11月16日に本件特許(特許第5131881号)

の登録がされたが,原告は,平成25年10月3日,本件特許について訂正審

判請求(訂正2013−390148)を行い,手続補正を経て,平成26年

1月15日付け審決により,本件特許の明細書,特許請求の範囲の訂正が認め

られた(甲61,65)。

イ 本件特許の出願に先立ち,原出願は,平成20年12月26日に特許第42

35717号(乙7特許)として登録され,特願2005−300427号出

願は,平成22年9月10日に特許第4583285号(乙9特許)として登

録された。

原出願から本件特許に至る系列とは別に,原出願の一部を分割して特願20

07−239904号出願もされており,同出願は,平成21年5月29日に

特許第4314336号(乙8特許)として登録された。

特願平10−102933(特許第4235717号・乙7)

├ 特願2004−29384




│ └ 特願2005−300427(特許第4583285号・乙9)

│ └特願2009−271949

│ └特願2012−130504(本願)

└ 特願2007−239904(特許第4314336号・乙8)

(2) 原出願前の技術

ア 特開平9−204445号公報(乙4)には,ユーザーの個人情報を,VA

N(付加価値通信網)を介して端末からホストコンピュータに伝送し,ホスト

コンピュータに蓄えられている商品情報の中から個人情報に適合するものを

選択し,その選択結果を端末に返信して表示すること等を内容とする発明が開

示されている。

イ 特開平10−49469号公報(乙5)には,サーバーと端末間にカスタマ

イザを設け,端末からユーザプロファイルが登録されると,カスタマイザにお

いて当該ユーザプロファイルを蓄積し,サーバーから情報配送が行われた時に,

ユーザプロファイルを参照して,サーバーからの配送情報を配送すべき端末を

選択して配送すること等を内容とする発明が開示されている。

ウ 特開平9−305514号公報(乙6)には,ネットワークに接続し,ネッ

トワークから受信したデータを表示する情報処理装置について,情報処理装置

の位置情報を取得してこれをネットワークに送信し,位置情報に基づいたデー

タを取得すること等を内容とする発明が開示されている。

エ 特開平10−91638公報(乙17)には,ロボットと呼ばれる,ネット

ワーク上で提供される情報を機械的に収集するソフトウェアを用いた検索シ

ステムが多数存在することを前提に,データベース化の対象とすべきデータの

更新頻度の範囲をデータベース固有に割り当てること等を内容とする発明が

開示されている。

オ 特開平9−153054(乙18)には,ネットワークに接続されている情

報検索・発信端末装置において,ネットワークを介して情報を検索する際に,




前記端末装置の位置情報を検知する位置センサーを有し,前記位置情報を検索

コマンドの一部として検索を行うこと等を内容とする発明が開示されている。

国際公開公報(WO97/22074,乙19の1)には,消費者の代わり

に消費者の名義で実行するソフトウェアプロセスを含むソフトウェアエージ

ェントを消費者のコンピュータに設け,情報を検索して消費者コンピュータに

持ち帰るために,ソフトウェアエージェントが消費者コンピュータからサーバ

ーへ移動できるようにすること等を内容とする発明が開示されている。

(3) 原出願及び乙7特許

ア 平成10年4月14日の原出願の時点では,発明の名称は「マルチエージェ

ントシステム,エージェント提供装置,記録媒体,マルチエージェント運用方

法,およびモバイルエージェントシステム」であり,その特許請求の範囲の請

求項1の記載は以下のとおりであった(乙2,請求項1から12まで存するが,

請求項1から5のみを記載する。。


【請求項1】 それぞ(ママ)に独立の知識を持つエージェント同士が協調して動

作するマルチエージェントシステムであって,

当事者の一方または双方が行なうには不向きな中立性を要する特定の仕事が発

生したことを判定する特定仕事判定手段を含み,

該特定仕事判定手段が前記特定の仕事が発生した旨の判定を行なった場合に,

前記当事者双方に対し中立性を有する第三者エージェントが前記特定の仕事を

代理して実行することを特徴とする,マルチエージェントシステム。

【請求項2】 前記第三者エージェントは,前記特定の仕事を処理するために設

立された第三者機関により運用管理され,前記特定の仕事を行なうために開発

されたエージェントであることを特徴とする,請求項1に記載のマルチエージ

ェントシステム。

【請求項3】 前記特定仕事判定手段は,前記当事者のそれぞれの側のために働

く当事者エージェント同士が協調して動作しているときに,該当事者エージェ




ントでは自己の立場の方に有利となる利己的動作を行なうおそれのある場合に

前記特定の仕事が発生した旨の判定を行なうことを特徴とする,請求項1また

は請求項2に記載のマルチエージェントシステム。

【請求項4】有料コンテンツを格納しているコンテンツ格納手段をさらに含み,

前記当事者の一方は,前記コンテンツ格納手段内の格納コンテンツを提供する

コンテンツ提供者であり,

前記当事者の他方は,前記コンテンツ提供者が提供するコンテンツ内に入手し

たいコンテンツがあるか否かの検索を希望するユーザであり,

前記特定仕事判定手段は,前記当事者エージェントのうちのユーザ側エージェ

ントが前記コンテンツ格納手段に格納されている前記有料コンテンツの検索を

希望した場合に前記特定の仕事が発生したことを判定することを特徴とする,

請求項3に記載のマルチエージェントシステム。

【請求項5】 前記第三者エージェントは,依頼された仕事の実行を通して前記

当事者の一方または双方に違法性があるか否かを監視する監視機能を有するこ

とを特徴とする,請求項1?4のいずれかに記載のマルチエージェントシステ

ム。

イ 平成20年12月26日の登録時点では,乙7特許の発明の名称は「不正防

止システム,エージェント提供装置,および不正防止方法」とされ,その特許

請求の範囲の記載は以下のとおりであった。

【請求項1】

ユーザの仕事を代行する自律的なソフトウェアモジュールとしてのエージェ

ントを利用して売買を行なう際の不正防止システムであって,

販売業者と消費者であるユーザとからなる当事者双方に対し中立性を有する

第三者エージェントであって,前記販売業者の販売対象のコンテンツの中身を

検索するための第三者エージェントを格納している第三者機関コンピュータと,

該第三者機関コンピュータに格納されている前記第三者エージェントに対し,




前記販売業者の販売対象のコンテンツの中身の検索依頼を行なう検索依頼手段

と,

該検索依頼手段により検索依頼された前記第三者エージェントに対し,検索

に用いる前記ユーザのプロフィール情報を通知するプロフィール情報通知手段

とを含み,

前記第三者エージェントは,前記通知されたユーザのプロフィール情報に基

づいて前記販売業者の販売対象のコンテンツの中身の検索を行なって該検索結

果を通知する通知機能を有し,該通知機能は,前記コンテンツの中身の評価結

果を通知することを特徴とする,不正防止システム。

【請求項2】

前記検索依頼手段は,前記当事者のそれぞれの側のために働く当事者エージ

ェント同士が協調して動作しているときに,前記コンテンツの要約に基づいて

検索を行なう場合には前記ユーザ側のエージェント自身が当該検索を実行し,

前記コンテンツの中身に基づいて検索を行なう場合には前記第三者エージェン

トに対し前記検索依頼を行なうことを特徴とする,請求項1に記載の不正防止

システム。

【請求項3】

前記ユーザのプロフィール情報は,該プロフィール情報に基づいて前記第三

者エージェントが前記販売業者の販売対象のコンテンツの中身の検索を行なっ

た結果に対するユーザの反応に基づいて更新されることを特徴とする,請求項

1または請求項2に記載の不正防止システム。

【請求項4】

請求項1に記載した不正防止システムに用いられる第三者エージェントを提

供するためのエージェント提供装置であって,

複数種類の第三者エージェントを格納しているエージェント格納手段と,

前記検索依頼手段により検索依頼があった場合に,代理の対象となる前記当事




者エージェントに応じた種類の第三者エージェントを前記エージェント格納手

段が格納している前記第三者エージェントの中から検索して提供するエージェ

ント検索提供手段とを含むことを特徴とする,エージェント提供装置。

【請求項5】

ユーザの仕事を代行する自律的なソフトウェアモジュールとしてのエージェ

ントを利用して売買を行なう際の不正防止方法であって,

販売業者と消費者であるユーザとからなる当事者双方に対し中立性を有する

第三者エージェントであって,前記販売業者の販売対象のコンテンツの中身を

検索するための第三者エージェントに対し,前記販売業者の販売対象のコンテ

ンツの中身の検索依頼を行なう検索依頼ステップと,

該検索依頼手段により検索依頼された前記第三者エージェントに対し,検索

に用いる前記ユーザのプロフィール情報を通知するプロフィール情報通知ステ

ップとを含み,

前記第三者エージェントは,前記通知されたユーザのプロフィール情報に基

づいて前記販売業者の販売対象のコンテンツの中身の検索を行なって該検索結

果を通知する通知機能を有し,該通知機能は,前記コンテンツの中身の評価結

果を通知することを特徴とする,不正防止方法。

ウ 原出願に係る公開特許公報(乙2)の【発明の詳細な説明】の欄には,「発

明の属する技術分野」として,「本発明は,たとえば,ユーザの仕事を代行す

るエージェントと呼ばれる自律的なソフトウェアモジュールが動作するエー

ジェントシステムに関する」
【0001】との記載,
「従来の技術」として,
「こ

の種のエージェントシステムにおいて,従来から知られているものに,(引用

略)エージェント同士が協調して動作するマルチエージェントシステムがあっ

た」【0002】との記載,あるいは「これらの従来のマルチエージェントシ

ステムでは,それぞれに独立の知識を持ったエージェント同士が協調して仕事

を行ない,ある問題を効率的に解決できるように構成されていた」
【0003】




との記載,「発明が解決しようとする課題」として,「ところが,たとえば,ユ

ーザのために働くユーザ側エージェントとそのユーザの要求に応えて所定の

サービスを提供するサービス業者側エージェントとが協調してある仕事をす

る場合に,ユーザ側エージェントと業者側エージェントとからなる当事者エー

ジェントのみでは解決できない問題が生ずる場合がある」【0004】との記

載,あるいは「本発明は,かかる実情に鑑み考え出されたものであり,その目

的は,複数のエージェントが強調して動作する場合に,当事者がどうしても自

己の利益の都合を優先する傾向にあることに起因して生じる種々の不都合を

防止できるようにすることである」【0011】との記載,「課題を解決するた

めの手段」として,特許請求の範囲の記載と同旨の記載,
「発明の実施の形態」

として,「図2は,マルチエージェントシステムの構成を示す説明図である。

実施の形態においては,ゼネラルマジック(General Magic )社が開発した

通信用言語であるテレスクリプトによる自律ソフトウェアとしてのエージェ

ントを採用している。ユーザエージェント26は,モバイルエージェントで構

成されている。モバイルエージェントとは,分散コンピューティング環境にお

ける移動性を備えたエージェントのことであり,ネットワークを介してエージ

ェントがサーバーに転送・処理されること(リモート・プログラミング)が特

徴となっている。モバイルエージェントが,テレスクリプト・エンジンによっ

て提供される共通動作環境であるプレースに移動して,そのプレース上で他の

エージェントと協調して相互に動作して仕事を行ない問題を解決する」【00

35】との記載,あるいは「一方,第三者機関8のテレスクリプト・エンジン

22のプレース25には,第三者機関常駐エージェント28が常駐している。

データベース23内には,複数種類の第三者機関エージェントが機能別に分類

されて格納されている。この第三者機関8は,当事者(たとえばユーザとその

ユーザの要求に応えてサービスを提供するサービス業者)のみでは解決困難な

または解決不可能な中立性を要する仕事が発生した場合に,そのような特定の




仕事を当事者に代わって代理実行して解決するために設立された機関であり,

官庁等の公な機関あるいは半公共的な機関によって構成するのが望ましい」

【0038】との記載,さらに「第三者機関8のデータベース23に格納され

ている各種第三者機関エージェントは,この第三者機関8によって運用管理さ

れるものであり,前述した中立性を要する特定の仕事を中立性を守りながら実

行して解決するために開発された専用のエージェントである。そして,ユーザ

エージェント26には,(中略)種々の種類が存在する。そこでそのようなユ

ーザエージェント26の仕事を代理実行する第三者エージェントの方も,ユー

ザエージェント26の種類に合せて機能別に複数種類用意しておく必要があ

る」【0039】との記載がある。

エ 乙7特許の明細書の【発明の詳細な説明】の欄では,【0001】から【0

004】【0035】【0038】及び【0039】については前記ウと同じ
, ,

内容が記載されているが,【0011】については,「本発明は,かかる実情に

鑑み考え出されたものであり,その目的は,ユーザの仕事を代行する自律的な

ソフトウェアモジュールとしてのエージェントを利用して売買を行なう際に,

ユーザ側による販売業者の販売対象のコンテンツの盗窃や販売業者側による

虚偽報告等の不正を防止できるようにすることである。」との記載になってお

り,【課題を解決するための手段】の欄についても,前記アからイへの特許請

求の範囲の記載の変更に対応した記載となっている。

(4) 分割の経緯

ア 前記(1)によれば,平成10年の原出願(後の乙7特許)を親出願とした場合,

親出願の分割として特願2004−29384号と特願2007−2399

04号(後の乙8特許)の二つの子出願がされ,前者の分割として特願200

5−300427号(後の乙9特許)の孫出願がされ,その分割として特願2

009−271949号の曾孫出願がされたことになり,本件特許にかかる出

願は,曾孫出願のさらに分割として,平成24年6月8日にされたものである。




イ 特願2007−239904号の子出願(後の乙8特許)について,当時の

特許出願人は,平成21年2月16日付け手続補正書及び同日付け意見書(乙

10,11)を特許庁長官に提出し,要旨以下の内容を述べた。

(ア) 前記手続補正書により本願を補正し,乙7特許の登録クレームに記載され

た発明の特徴となる技術的思想を踏襲した上で,さらに新たな構成要件を付

加した内容にしたこと

(イ) 本願発明が踏襲した乙7特許のクレームの特徴的技術思想は,「当事者双

方に対し中立性を有する第三者エージェントが,複数のコンテンツ提供業者

の提供するコンテンツがユーザにマッチする内容であるか否かの判断を行

い,その判断結果を通知するようにし,コンテンツ提供業者が自らマッチン

グの判断を行うことによるコンテンツ提供業者側による虚偽の判断の通知

という不正行為のおそれを極力防止できるようにした点」(特徴点1),及び

「第三者エージェントがそのプロフィール情報に基づいてコンテンツのマ

ッチングの判断を行ってその判断結果を通知することにより,ユーザのプロ

フィール情報がコンテンツ提供業者側に漏洩してプライバシーの問題が発

生することを防止できつつも,ユーザのプロフィール情報に基づいたユーザ

にカスタマイズされた判断結果をユーザが得ることができるようにした点

(特徴点2)であること

(ウ) 本願発明は,上記特徴点1と同2とにさらに加えて,「ユーザのプロフィ

ール情報が複数のコンテンツ提供業者側に漏洩するというプライバシー問

題をより一層確実に防止できるようにするべく,ユーザのプロフィール情報

と複数のコンテンツ提供業者が提供するコンテンツとを第三者機関コンピ

ュータへ送信してもらい,第三者エージェントがその第三者機関コンピュー

タへ送信してもらい,第三者エージェントがその第三者コンピュータ内にお

いて,送信されてきたプロフィール情報に基づいてコンテンツがユーザにマ

ッチするか否かの判断を行えるようにした」点(特徴点3)を有すること




ウ 前述のとおり,本件特許にかかる出願は,原出願の曾孫出願をさらに分割し,

平成24年6月8日にされたものであるが,当時の特許出願人は,特許庁長官

宛に,同月22日付上申書(甲13)を提出し,本件特許の出願に係る発明に

ついて,要旨以下の説明をした。

(ア) 本出願の直近の原出願(特願2009−271949号,曾孫出願)の原

出願(特願2005−300427号,孫出願)は,乙9特許として設定登

録を受けているので,分割出願に係る審査の効率化を図る趣旨に鑑み,乙9

特許の明細書からの変更箇所を示す。

(イ) 本出願の乙9特許(孫出願)からの変更箇所は,同出願の明細書等に記載

された事項の範囲内であり,同明細書の記載に基づいている。

(ウ) 本出願にかかる発明と類似する発明としては,乙9特許と乙8特許とがあ

るが,以下に述べるとおり,これらと本出願にかかる発明とは同一ではない。

本出願にかかる発明と乙8特許に係る発明を対比すると,「第三者エージ

ェント」の構成が相違する。すなわち本出願にかかる発明では,第三者エー

ジェントが,「ユーザとコンテンツ提供業者とを仲介して両者に代わって仕

事を実行するための中立性を有する第三者エージェントによって運用管理

されるもの」に限定されているのに対し,乙8特許に係る発明では,同じプ

レース上で仕事をする他のエージェントにより第三者エージェントを構成

してもよいとされ,中立性の内容が限定されている。また,「マッチング」

の構成も相違し,本出願にかかる発明が,「ユーザのプロフィール情報を前

記コンテンツ提供業者に提供することなく前記マッチング判断」という限定

された内容になっているのに対し,乙8特許にかかる発明では,「コンテン

ツがユーザにマッチするコンテンツであるか否かの判断」という,より広い

上位概念になっている。

本出願にかかる発明と乙9特許にかかる発明を対比すると,前記同様,
「第

三者エージェント」の構成及び「マッチング」の構成が相違し,本出願にか




かる発明の定義が限定された内容になっているのに対し,乙9特許にかかる

発明では,より広い上位概念になっている。

(5) 登録及び訂正

ア 平成24年11月16日に,本件特許が登録された際の本件明細書の【発明

の詳細な説明】欄には,要旨以下の記載がある(甲2)。

(ア) 【技術分野】として,コンテンツ提供システムに関する発明であること,

【発明が解決しようとする課題】として,改良されたコンテンツ提供システ

ムを提供することであることが記載され,【課題を解決するための手段】と

して,特許請求の範囲の記載と同旨の記載がある。

(イ) 【発明の効果】として,「ユーザと複数のコンテンツ提供業者とからなる

当事者に代わって仕事を実行するための第三者エージェントが,ユーザにマ

ッチするコンテンツであるか否かを判断してくれるために,第三者エージェ

ントによりユーザにマッチするコンテンツの提供が可能となる。そのプロフ

ィール情報に基づいて第三者エージェントによる判断が,コンテンツ提供業

者とは異なる別の機関に設置されたコンピュータ内で行われるため,プロフ

ィール情報がコンテンツ提供業者に漏洩する不都合も極力防止できる。【0


011】との記載があり,【図面の簡単な説明】として,図1ないし24の

説明が記載されている。【0012】

(ウ) 【発明を実施するための形態】として,以下の記載がある。

「本実施の形態においては,ゼネラルマジック(General Magic )社が開

発した通信用言語であるテレスクリプトによる自律ソフトウェアとしての

エージェントを採用している。ユーザエージェント26は,モバイルエージ

ェントで構成されている。モバイルエージェントとは,分散コンピューティ

ング環境における移動性を備えたエージェントのことであり,ネットワーク

を介してエージェントがサーバーに転送・処理されること(リモート・プロ

グラミング)が特徴となっている。モバイルエージェントが,テレスクリプ




ト・エンジンによって提供される共通動作環境であるプレースに移動して,

そのプレース上で他のエージェントと協調して相互に動作して仕事を行な

い問題を解決する。【0023】


「ユーザのパソコン14内で動作しているユーザエージェントが,自己の

判断でまたはユーザの操作指令に応じてコンテンツを検索する場合には,図

2(a)で示すように,コンテンツ提供業者7のテレスクリプト・エンジン

18のプレース24に移動する。プレース24上に移動したユーザエージェ

ント26は,プレース24に常駐している移動先エージェント27と打合せ

(meeting )して,データベース19内のコンテンツを検索して希望するコ

ンテンツを見つけ出してパソコン14にまで持ち帰る(送信する) 」
。 【00

24】。

「一方,第三者機関8のテレスクリプト・エンジン22のプレース25に

は,第三者機関常駐エージェント28が常駐している。データベース23内

には,複数種類の第三者機関エージェントが機能別に分類されて格納されて

いる。この第三者機関8は,当事者(たとえばユーザとそのユーザの要求に

応えてサービスを提供するサービス業者)のみでは解決困難なまたは解決不

可能な中立性を要する仕事が発生した場合に,そのような特定の仕事を当事

者に代わって代理実行して解決するために設立された機関であり,官庁等の

公な機関あるいは半公共的な機関によって構成するのが望ましい。なお,図

中22aは,第三者機関8が運用管理するコンピュータである。」
【0026】

「第三者機関8のデータベース23に格納されている各種第三者機関エー

ジェントは,この第三者機関8によって運用管理されるものであり,前述し

た中立性を要する特定の仕事を中立性を守りながら実行して解決するため

に開発された専用のエージェントである。そして,ユーザエージェント26

には,たとえば,オンラインショッピングするためのショッピングエージェ

ント,ニュースソースからニュース記事を検索して必要なもののみを選び出




すニュースフィルタリングエージェント,必要な電子メールのみを選び出す

電子メールエージェント,ユーザの嗜好に合致した音楽情報や映画情報を検

索するファイアフライ等の情報収集エージェントなど,種々の種類が存在す

る。そこでそのようなユーザエージェント26の仕事を代理実行する第三者

エージェントの方も,ユーザエージェント26の種類に合せて機能別に複数

種類用意しておく必要がある。【0027】


「ユーザは,自己のユーザエージェント26を利用する場合には,たとえ

ばCD−ROM68bに記録されているユーザエージェントをCD−RO

Mリーダ68aで読取らせ,さらに自己が所有しているICカード65をパ

ソコン14のICカード挿入口50に挿入して,エージェント用知識データ

96を読取らせ,ユーザエージェント96にエージェント用知識データ96

を保有させた状態で,ユーザエージェント26を動作させる。このユーザの

プロフィール情報96は,転職や引っ越し等があればユーザが職業や住所等

を書換えて更新する操作を行なう。また,ユーザエージェント26は,ユー

ザのために仕事を行ないその結果をユーザに提供するのであり,その提供さ

れた結果に対するユーザの反応(満足するかまたは不満に思うか等)を観察

し,必要があればユーザエージェント26自身がユーザのプロフィール情報

96を更新したり補充したりする。その結果,ユーザエージェント26をユ

ーザが活用すればするほどユーザのプロフィール情報96がユーザに適し

た内容のものとなり,ユーザエージェント26を活用すればするほどユーザ

の満足のいく仕事を行なうものとなる。【0124】


「以下,実施例の内容をまとめて列挙する。

コンテンツ提供業者7とユーザ,または,CM制作者10とユーザにより,

当事者が構成されている。前記SA44,SA47により,当事者の一方ま

たは双方が行なうには不向きな中立性を要する特定の仕事が発生したこと

を判定する特定仕事判定手段が構成されている。第三者機関エージェント2




9,第三者機関常駐エージェント28により,前記当事者双方に対し中立性

を有する第三者エージェントが構成されている。この第三者エージェントは,

第三者機関8によって運用管理するエージェントに限定されるものではな

く,たとえば前記当事者のエージェントが仕事をするテレスクリプト・エン

ジン内のプレースと同じプレース上で仕事をしている他のエージェントに

よりこの第三者エージェントを構成してもよい。【0235】


「前記SA45,SA64またはSA49〜SA53またはSA60または

SA69,SA70により,前記特定仕事判定手段の判定結果に従って,前

記当事者双方に対し中立性を有する第三者エージェントに前記特定の仕事

を依頼する仕事依頼手段が構成されている。この仕事依頼手段により依頼さ

れた仕事を前記第三者エージェントが代理して実行する(図7,図8に示し

たフローチャート)。前記第三者機関8により,前記特定の仕事を処理する

ために設立された第三者機関が構成されている。そして前記第三者エージェ

ント(第三者機関エージェント29,第三者機関常駐エージェント28)は,

その第三者機関により運用管理され,前記特定の仕事を行なうために開発さ

れたエージェントである。【0236】


「前記ユーザエージェント26と移動先エージェント27とにより,前記

当事者のそれぞれの側のために働く当事者エージェントが構成されている。

前記特定仕事判定手段は,前記当事者エージェント同士が協調して動作して

いるときに,当該当事者エージェントでは自己の立場の方に有利となる利己

的動作(たとえば有料コンテンツの不法持ち帰りや有料コンテンツに対する

虚偽の評価)を行なうおそれのある場合に前記特定の仕事が発生した旨の判

定を行なう。【0237】


「ユーザエージェント26によりユーザ側のために働くエージェントであ

って,ネットワーク上を移動して動作するモバイルエージェントで構成され

たユーザ側エージェントが構成されている。コンテンツ提供業者7により,




前記ユーザの要求に応えるサービス業者が構成されている。移動先エージェ

ント27により,前記サービス業者側のために働く業者側エージェントが構

成されている。第三者機関8のプレース25を有するコンピュータ22aに

より,前記ユーザ側エージェントのワーキングエリアとして機能し,秘密の

漏洩が防止できる秘密保持用ワーキングエリアが構成されている。【024


2】

イ 原告の平成25年10月3日付け訂正審判請求により,平成26年1月15

日に審決が行われ,明細書の発明の詳細な説明が一部訂正され,また,特許請

求の範囲の記載のうち,請求項2及び4の記載が,前記前提事実記載の内容に

訂正された(甲61,65)。

4 争点(1)(被告物件イ−2が,本件特許発明1の構成要件を充足するか)について

(1) 被告の主張

被告物件イ−2は,被告システムにおけるiコンシェルの利用であるところ,

被告は,これが本件特許発明1の構成要件を充足しないことの主たる理由として,

被告システムは「自律的なソフトウェアモジュールとしてのエージェント」(構

成要件A−1)との構成を有しないこと,被告システムは「コンテンツがユーザ

にマッチするコンテンツであるかのマッチング判断」(同A−2)を行っていな

いこと,ユーザー端末の位置情報は「プロフィール情報」(同C1−1)にあた

らないことを主張する。

(2) 構成要件A−1の解釈

ア 原出願

本件特許の構成要件A−1「自律的なソフトウェアモジュールとしてのエー

ジェント」の意味内容について検討するに,前記3によれば,原出願は,発明

の名称を「マルチエージェントシステム,エージェント提供装置,記録媒体,

マルチエージェント運用方法,およびモバイルエージェントシステム」とする

ものであって,特許請求の範囲の記載は,請求項1に「独立の知識を持つエー




ジェント同士が協調して動作するマルチエージェントシステム」との文言を含

むものであり,以下の請求項は全てこれを引用するものである。

前記3によれば,原出願にかかる明細書には,エージェントとは自律的なソ

フトウェアモジュールであること,及びエージェント同士が協調して動作する

マルチエージェントシステムは従来技術であることを前提に,本発明は,ユー

ザ側エージェントと業者側エージェントとに解決できない問題が生ずる場合が

あり,かかる課題を解決するために,
「当事者の一方または双方が行なうには不

向きな中立性を要する特定の仕事が発生したことを判定する特定仕事判定手段

を含み,該特定仕事判定手段が前記特定の仕事が発生した旨の判定を行なった

場合に,前記当事者双方に対し中立性を有する第三者エージェントが前記特定

の仕事を代理して実行する」旨の発明であることが記載されており,実施例と

しても,マルチエージェントシステムの構成を示す説明図が示されている。

以上によれば,原出願の明細書においては,自律したエージェント同士が,

課題解決のために協調して動作するマルチエージェントシステムにかかる発明

が開示されているものと認められる。

イ 乙7特許

前記3によれば,原出願は,補正を経て乙7特許として登録され,発明の名

称は「不正防止システム,エージェント提供装置,および不正防止方法」とな

り,その特許請求の範囲の文言には,エージェント,第三者エージェント,当

事者エージェント,ユーザの仕事を代行する自律的なソフトウェアモジュール

としてのエージェントといった言葉は使用されているものの,マルチエージェ

ントという言葉は,直接には使用されていない。

しかしながら,乙7特許も,
「ユーザの仕事を代行する自律的なソフトウェア

モジュールとしてのエージェントを利用して売買を行なう」際のシステムに関

する発明なのであって,買主たるユーザのためのエージェント及び売主たる販

売業者のためのエージェントが存在することを前提に,これらに対する第三者




としての第三者エージェントが規定されているものと理解され,明細書の記載

からもそれ以外の構成が開示されているとは認められない。

ウ 本件特許

前記3のとおり,本件特許発明4(請求項4)が,いずれも請求項1の従属

項である請求項2または請求項3の発明に,
「前記ユーザエージェントは,前記

第三者エージェントと協働して仕事を行うマルチエージェントで構成されてい

る」との構成を付加していることから,本件特許発明1(請求項1)は,マル

チエージェントシステムの構成を前提とするものではないと解する余地がある。

しかしながら,本件特許発明1(請求項1)には,
「自律的なソフトウェアモ

ジュールとしてのエージェント」「コンテンツ提供手段」「プロフィール情報
, ,

受付手段」「マッチング判断を行うエージェント」「中立性を有する第三者エ
, ,

ージェント」「コンテンツ提供システム」といった構成が使用されており,単


に「マルチエージェント」の言葉が使用されていないことのみを理由として,

複数のエージェントが協働するマルチエージェントシステムの構成が開示され

ていないと即断することはできない。

むしろ,上記のとおり,原出願はマルチエージェントシステムの構成を前提

とするものであるから,その曾孫出願をさらに分割してされた本件特許が,複

数のエージェントの協働という限定のない,単にエージェントの存在のみを内

容とするシステムを権利内容とするとは考え難い(仮にそうであるとすると,

分割要件の問題となるほか,前記3(2)において認定した従来技術との関係にお

いて,新規性進歩性も問題となる。また,上記のとおり,本件明細書の発明

の詳細な説明には,マルチエージェントシステムを前提に課題を解決する発明

が開示されていると認められるが,請求項1に単なるエージェントの存在のみ

で構成される発明が記載されているものとした場合,サポート要件の点も問題

となる。。


また,前記3のとおり,原出願の明細書では,発明の実施の形態として,ゼ




ネラルマジック社が開発した通信用言語であるテレスクリプトによる自律ソフ

トウェアとしてのエージェントを採用することなどが記載されているが,その

前後の記載から,これがマルチエージェントシステムの採用を前提とする内容

であることは明らかであるところ,本件明細書にも,前述のとおり,発明の実

施の形態として,ゼネラルマジック社が開発した通信用言語であるテレスクリ

プトによる自律ソフトウェアとしてのエージェントを採用することが記載され

ており,これによれば,本件明細書は,原出願にかかる明細書同様,エージェ

ント同士が協調して動作するマルチエージェントシステムを利用することで課

題を解決するとの構成を開示するものと認められ,本件特許の特許請求の範囲

の文言についても,これを前提に理解すべきものである。

(3) あてはめ

以上によれば,本件特許の構成要件A−1の「自律的なソフトウェアモジュー

ルとしてのエージェント」については,他のソフトウェアモジュールとしてのエ

ージェントと,課題解決のために協調して動作するマルチエージェントシステム

の一部を意味するものと解するのが相当である。

被告システムについては,前記2で認定したところであるが,携帯電話等のユ

ーザー端末,被告が利用するサーバー群及びコンテンツ提供業者のそれぞれにソ

フトウェアがインストールされ,相互に情報のやり取りをする事実は認められる

ものの,被告システムのエージェントが,ユーザーのエージェントあるいはコン

テンツ提供業者のエージェントと,課題解決のために協調して動作するマルチエ

ージェントシステムが構成されている事実は,本件で提出された証拠によっては

認定することができない。

そうすると,被告物件イ−2(iコンシェル)は構成要件A−1を充足せず,

本件特許発明1の技術的範囲に属しないというべきである。

5 争点(2)(被告物件イ−3が本件特許発明2の構成要件を充足するか)について

(1) 被告の主張




被告物件イ−3は,被告システムにおけるしゃべってコンシェルまたはiコン

シェルの単独利用とされるが,被告は,これが本件特許発明2の構成要件を充足

しないことの主たる理由として,本件特許発明1と同旨の理由のほか,ユーザエ

ージェント(構成要件F)は,ユーザーのパソコン内からコンテンツ提供業者の

コンピュータで移動するエージェントであるところ,被告システムは,このよう

なエージェントを有していないことを主張する。

(2) 構成要件Fの解釈

ア 前記3のとおり,本件明細書には,発明を実施するための形態として,ユー

ザエージェントは,モバイルエージェントで構成されること,モバイルエージ

ェントとは,分散コンピューティング環境における移動性を備えたエージェン

トのことであり,ネットワークを介してエージェントがサーバーに転送・処理

されること(リモート・プログラミング)が特徴であること,モバイルエージ

ェントが,テレスクリプト・エンジンによって提供される共通動作環境である

プレースに移動して,そのプレース上で他のエージェントと協調して相互に動

作して仕事を行ない,問題を解決することが記載されている。

イ ユーザエージェントについては,原出願の明細書の説明も同様であり,本件

明細書にも,これ以外に,ユーザエージェントについての開示,説明はない。

本件特許発明2については,ユーザーの指示を受けて仕事をするユーザエー

ジェントが,受け付けた指示内容に基づいてコンテンツの検索を行い,検索結

果をユーザーに提供するとされる一方,ユーザーのプロフィール情報がコンテ

ンツ提供業者に漏洩する不都合を防止できることが発明の効果である旨記載

されているが,このことは,前記4で認定したとおり,本件特許が,複数のエ

ージェントが協調して動作するマルチエージェントシステムであること,及び,

ユーザー端末(パソコンやスマートフォン)内で動作するユーザエージェント

が,他のエージェントが処理を行う場所に移動し,そこで情報処理を行うこと

によって実現されるものと解される。




(3) あてはめ

以上によれば,構成要件Fのユーザエージェントは,単にユーザーが使用する

独立したソフトウェアの一種というだけでは足りず,ユーザー端末からネットワ

ークを介して他のサーバー等に移動し,そこで情報処理を行うものでなければな

らないと解されるが,被告システムについては,前記2で認定した事実を認定し

得るにとどまり,本件で提出された証拠によっては,被告システムを利用する者

のユーザー端末のエージェントが,被告のサーバーあるいはコンテンツ提供業者

のサーバーに移動し,そこで情報処理を行うといった事実を認定することはでき

ない。

そうすると,被告物件3(しゃべってコンシェル又はiコンシェル)は構成要

件Fを充足せず,本件特許発明2の技術的範囲に属しないというべきである。

6 争点(3)及び(4)について

争点(3)は,被告物件イ−3が,本件特許発明3(請求項3)の技術的範囲に属す

るかに関するものであるが,請求項3は請求項2の従属項であるから,被告物件イ

−3が請求項2の構成要件Fを充足しないとされた以上,請求項3についても同様

といわざるを得ない。

また,争点(4)は,被告物件イ−1(連携サービス)が,本件特許発明4(請求項

4)の技術的範囲に属するかに関するものであるが,請求項4は,請求項2または

3を引用する従属項であり,いずれも間接的に請求項1を引用するものであるから,

既に検討したとおり,被告システムが請求項1及び請求項2をいずれも充足しない

以上,請求項4についても充足しないことは明らかである。

第5 結論

以上によれば,被告物件イ−1ないし4として特定された被告システムは,本件

特許発明1ないし4の技術的範囲に属しないから,原告の請求は,その余の争点に

ついて検討するまでもなく,いずれも理由がない。





大阪地方裁判所第21民事部




裁判長裁判官



谷 有 恒




裁判官



田 原 美 奈 子




裁判官



松 阿 彌 隆






  • この表をプリントする