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事件 平成 25年 (ワ) 2421号 特許権侵害損害賠償請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2014/11/26
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
判例全文
判例全文
平成26年11月26日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

平成25年(ワ)第2421号 特許権侵害損害賠償請求事件

口頭弁論終結日 平成26年8月25日

判 決

東京都大田区<以下略>

原 告 株式会社DAPリアライズ

東京都新宿区<以下略>

被 告 K D D I 株 式 会 社

(以下「被告KDDI」という。)

東京都港区<以下略>

被 告 ソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社

(以下「被告ソニーモバイル」といい,被告K

DDIと併せて「被告KDDIら」という。)

被告KDDIら訴訟代理人弁護士 熊 倉 禎 男

同 富 岡 英 次

同 渡 辺 光

同 補 佐 人 弁 理 士 山 崎 貴 明

同 工 藤 嘉 晃

東京都千代田区<以下略>

被 告 株 式 会 社 N T T ド コ モ

(以下「被告ドコモ」という。)

同 訴 訟 代 理 人 弁 護 士 大 野 聖 二

同 小 林 英 了

同 訴 訟 代 理 人 弁 理 士 鈴 木 守

主 文

1 原告の請求をいずれも棄却する。



1
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

1 被告ソニーモバイルは,原告に対し,2900万円及びこれに対する平成2

5年2月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2 被告ドコモは,原告に対し,800万円及びこれに対する平成25年2月7

日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3 被告KDDIは,原告に対し,300万円及びこれに対する平成25年2月

7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

1 本件は,名称を「タッチパネル手段を備える携帯情報処理装置及び該携帯情

報処理装置用プログラム」とする発明についての特許(特許第504473

1号。以下「本件特許」とい い,その特許権を「本件特許権」とい う。)を

有する原告が,被告らに対し,被告らが製造・販売する別紙物件目録記載の

製品(以下,「イ号製品」ないし「ヘ号製品」といい,これらを併せて「被

告製品」という。)が本件特許の特許請求の範囲(登録時のもの)の請求項

1に係る発明(以下「本件発明1」という。 )及び請求項3に係る発明(以

下「本件発明3」といい,これと本件発明1を併せて「本件発明」とい

う。)の技術的範囲に属すると主張して (なお,原告は,平成26年4月7

日の第6回弁論準備手続期日において, 請求項2に係る発明についての特許

に基づく請求を取り下げ,被告らは,これに同意した。 ),特許権侵害の不

法行為に基づく損害賠償(民法709条,特許法102条3項) の一部請求

として,被告ソニーモバイルに対し2900万円,被告ドコモに対し800

万円,被告KDDIに対し300万円及びそれぞれ に対する各訴状送達の日

の翌日である平成25年2月7日 から支払済みまで民法所定年5分の 割合に

よる遅延損害金の支払を求める事案である。



2
2 前提となる事実(当事者間に争いがない事実以外は,当事者の一部との間で

争いがない事実を含め,末尾に証拠等を掲記する。 )

(1) 当事者

ア 原告は,各種情報処理・通信システムの開発などを業とする株式会社で

ある(弁論の全趣旨)。

イ 被告ソニーモバイル(平成24年3月8日,旧商号「ソニー・エリクソ

ン・モバイルコミュニケーションズ株式会社」から現商号「ソニーモバイ

ルコミュニケーションズ株式会社」に商号変更 )は,情報通信機器メー

カーであり,スマートフォンをはじめとする携帯情報通信装置の企画・製

造・販売を行う株式会社である(弁論の全趣旨,記録上裁判所に顕著な事

実)。

ウ 被告KDDI及び被告ドコモ(平成25年10月1日,旧商号「株式会

社エヌ・ティ・ティ・ドコモ」から現商号「株式会社NTTドコモ」に商

変更)は,それぞれ,電気通信事業者であり,スマートフォンをはじめ

とする携帯情報通信装置の企画・販売及び携帯情報通信装置に対するサー

ビスの提供を行う株式会社である(弁論の全趣旨,記録上裁判所に顕著な

事実)。

(2) 本件特許権

原告は,次の内容の特許権(本件特許権)を保有しており,本件特許の特

請求の範囲(登録時)の各記載は,別紙特許公報の【特許請求の範囲】の

とおりである(甲1,2)。

特 許 番 号 特許第5044731号

発明の名称 タッチパネル手段を備える携帯情報処理装置及び該携

帯情報処理装置用プログラム

出 願 日 平成23年4月18日

優 先 日 平成22年4月19日(優先権主張番号:特願2010



3
−095910,優先権主張国:日本国)

登 録 日 平成24年7月27日

(3) 本件発明1

本件発明1を構成要件に分説すると 次のとおりである(小括弧内の記載

を含め,特許請求の範囲の記載のとおりとした 〔後記の訂正発明1でも同

様。〕。以下,分説に係る各構成を符号に対応して「構成要件A」などと

いう〔後記の本件発明3,訂正発明1,3でも同様。〕 。なお,構成要件

E0ないしE3を併せて「構成要件E」という。)。

A:後記信号処理制御手段から受信したデジタル表示信号に基づいて画像を

画面表示する表示機能と,画面表面への接触,押圧,入射光の遮蔽等のマ

ニュアル操作を検知し,「該マニュアル操作に対応した信号」(以下,

「マニュアル操作信号」と略記する)を生成して,後記信号処理制御手段

に送信する入力機能とを有するタッチパネル手段と;

B:後記信号処理制御手段を動作させるプログラムを格納する記憶手段と;

C:前記タッチパネル手段から受信したマニュアル操作信号と前記記憶手段

に格納されたプログラムに基づいてデジタル表示信号を生成して,前記

タッチパネル手段及び/又は後記外部出力インターフェース手段に送信す

る信号処理制御手段と;

D:ディスプレイ手段を備えるか又はディスプレイ手段を接続する外部装置

が接続され,該外部装置に対して,前記信号処理制御手段から受信したデ

ジタル表示信号に基づき,TMDS,デジタルRGB,LVDS,LDI,

GVIF,USB,DisplayPort,WirelessHD,WHDI,WiGig

のうちのいずれかの伝送方式で伝送されるデジタル外部表示信号を送信す

る外部出力インターフェース手段と;を備えた上で,

E0:前記信号処理制御手段は,

E1:前記タッチパネル手段から受信したマニュアル操作信号を処理して,



4
前記タッチパネル手段の「単独使用用の画面イメージ」のデジタル表示信

号を生成し,該デジタル表示信号を前記タッチパネル手段に送信する制御

モード1と;

E2:前記タッチパネル手段から受信したマニュアル操作信号を処理して,

前記タッチパネル手段の「単独使用用とは別種の画面イメージ」のデジタ

ル表示信号と,前記外部装置に備えられるか又は前記外部装置に接続され

るディスプレイ手段(以下,「外部ディスプレイ手段」と略記する)の画

面イメージのデジタル表示信号とを生成し,前者を前記タッチパネル手段

に送信し,後者を前記外部出力インターフェース手段に送信する制御モー

ド2と;

E3:を選択的に実現する,ことを特徴とする

F:携帯情報処理装置。

(4) 本件発明3

本件発明3を構成要件に分説すると次のとおりである。

I:「前記外部装置が,前記外部ディスプレイ手段が動作可能な状態で,前

記外部出力インターフェース手段に接続していること」を検知して,前記

信号処理制御手段に信号を送信する接続検知手段を備えた上で,

J:前記信号処理制御手段は,前記接続検知手段から「前記外部装置が,前

記外部ディスプレイ手段が動作可能な状態で,前記外部出力インター

フェース手段に接続している」旨の信号を受信した場合に,自動的に,又

は,前記タッチパネル手段からマニュアル操作信号を受信した上で,制御

モード2を選択する,ことを特徴とする,

K:請求項1又は2に記載の携帯情報処理装置。

(5) 本件無効審判及び訂正請求

被告らは,本件特許の請求項1ないし8に係る発明についての特許を無効

とすることについて,平成25年7月10日付けで特許無効審判を請求した



5
(乙A7。無効2013−800121。以下「本件無効審判」とい

う。)。

原告は,本件無効審判において,平成25年10月1日付けで,本件特許

の明細書及び特許請求の範囲を一群の請求項ごとに訂正することを請求した

(甲19,乙A19,20。以下「第1次訂正請求」という。 )が,その

後,平成26年4月3日付けで,改めて,本件特許の明細書及び特許請求の

範囲を一群の請求項ごとに訂正することを請求し(甲24,25。以下

「第2次訂正請求」という。 ),これに伴い,第1次訂正請求は,取り下

げられたものとみなされた(特許法134条の2第6項)。

(6) 訂正発明

第2次訂正請求に係る訂正後の請求項1に係る発明(以下「訂正発明

1」という。)を構成要件に分説すると,次のとおりである(下線部が 訂

正箇所である。なお,構成要件E0,E1,E2’a,E2’’b,E3

を併せて「構成要件E’’」という。 )。なお,同訂正後の請求項3は,

同訂正後の請求項1を引用しているが,請求項3の文言それ自体に変更はな

い(以下,同訂正後の請求項3に係る発明を「訂正発明3」とい い,これ

と訂正発明1を併せて「訂正発明」という。)。

A:後記信号処理制御手段から受信したデジタル表示信号に基づいて画像を

画面表示する表示機能と,画面表面への接触,押圧,入射光の遮蔽等のマ

ニュアル操作を検知し,「該マニュアル操作に対応した信号」(以下,

「マニュアル操作信号」と略記する)を生成して,後記信号処理制御手段

に送信する入力機能とを有するタッチパネル手段と;

B:後記信号処理制御手段を動作させるプログラムを格納する記憶手段と;

C:前記タッチパネル手段から受信したマニュアル操作信号と前記記憶手段

に格納されたプログラムに基づいてデジタル表示信号を生成して,前記

タッチパネル手段及び/又は後記外部出力インターフェース手段に送信す



6
る信号処理制御手段と;

D:ディスプレイ手段を備えるか又はディスプレイ手段を接続する外部装置

が接続され,該外部装置に対して,前記信号処理制御手段から受信したデ

ジタル表示信号に基づき,TMDS,デジタルRGB,LVDS,LDI,

GVIF,USB,DisplayPort,WirelessHD,WHDI,WiGig

のうちのいずれかの伝送方式で伝送されるデジタル外部表示信号を送信す

る外部出力インターフェース手段と;を備えた上で,

V’:前記記憶手段は,前記信号処理制御手段を動作させて「『撮像手段が

取得した画像をスルー表示して得られる動画』, 『保存された動画デー

タ』を再生して得られる動画』及び『受信した動画信号を復号して得られ

る動画』のいずれにも該当しない動画」 (以下,「生成動画」と略記す

る)を含む画面イメージ(以下,「生成動画を含む画面イメージ」を「生

成動画画面イメージ」と略記する)のデジタル表示信号を生成させるプロ

グラム(以下,「動画画面イメージ生成プログラム」と略記する)を格納

し,

E0:前記信号処理制御手段は,

E1:前記タッチパネル手段から受信したマニュアル操作信号を処理して,

前記タッチパネル手段の「単独使用用の画面イメージ」のデジタル表示信

号を生成し,該デジタル表示信号を前記タッチパネル手段に送信する制御

モード1と;

E2’a:前記タッチパネル手段から受信したマニュアル操作信号を処理し

て,前記タッチパネル手段の「単独使用用とは別種の画面イメージ」のデ

ジタル表示信号を生成し,該デジタル表示信号を前記タッチパネル手段に

送信するとともに,

E2’’b:前記タッチパネル手段から受信したマニュアル操作信号を前記

動画画面イメージ生成プログラムに基づいて処理して,前記外部装置に備



7
えられるか又は前記外部装置に接続されるディスプレイ手段(以下,「外

部ディスプレイ手段」と略記する)の生成動画画面イメージのデジタル表

示信号(以下,「外部デジタル生成動画画面イメージ信号」と略記する)

を生成し,該外部デジタル生成動画画面イメージ信号を前記外部出力イン

ターフェース手段に送信する制御モード2と;

E3:を選択的に実現する,ことを特徴とする

F:携帯情報処理装置。

(7) 被告らの行為

ア 被告ソニーモバイルは,被告製品を業として製造,販売している(イ号

製品ないしニ号製品については争いがない。ホ号製品,ヘ号製品について

は甲14,15,弁論の全趣旨)。

イ号製品ないしヘ号製品は,本件発明の構成要件AないしD,F,I,

Jを充足する。

イ 被告ドコモは,イ号製品ないしニ号製品を業として販売している。

ウ 被告KDDIは,ホ号製品及びヘ号製品を業として販売している(甲1

4,15,弁論の全趣旨)。

3 争点

(1) 被告製品の構成要件E充足性及び構成要件K充足性(争点1)

(2) 本件発明1の新規性進歩性の有無(争点2)

(3) 本件発明3の新規性進歩性の有無(争点3)

(4) 第2次訂正請求についての訂正要件違反の有無(争点4)

(5) 訂正発明についての記載要件違反の有無(争点5)

(6) 訂正発明の新規性進歩性の有無(争点6)

(7) 被告製品の構成要件V’充足性及び構成要件E’’充足性(争点7)

(8) 損害(争点8)

第3 争点に関する当事者の主張



8
1 争点1(被告製品の構成要件E充足性及び構成要件K充足性)について

(原告の主張)

(1) イ号製品の構成要件E充足性について

ア イ号製品の構成

イ号製品はスマートフォンであって,以下の構成要素を備えている。

(イ−e) イ号製品のモバイルプロセッサは,

(イ−e3) 標準のホーム画面アプリとTV launcherとを選択的に実行す

ることができ,

(イ−e1) 「標準のホーム画面アプリが実行されている状態」において

は,「イ号製品が単独で使用されることを想定して設計された前記タッチ

パネルの画面イメージ」のデジタル表示信号を生成して,該デジタル表示

信号を前記タッチパネルに送信し,

(イ−e2’’) 「TV launcherが実行されている状態」においては,前

記タッチパネルから受信したマニュアル操作信号を処理して,「イ号製品

が前記HDMI端子にテレビが接続されて使用されることを想定して設計

された前記タッチパネルの画面イメージ」のデジタル表示信号を生成し,

該デジタル表示信号を前記タッチパネルに送信するとともに,前記タッチ

パネルから受信したマニュアル操作信号をTV launcherに基づいて処理し

て,前記HDMI端子に接続されるテレビの画面に表示される動画画面イ

メージのデジタル表示信号を生成し,該外部デジタル動画画面イメージ信

号を前記HDMI用ICに送信する。

イ イ号製品の構成要件E1充足性

構成要件Dにおいて,外部出力インターフェース手段に「ディスプレイ

手段を備えるか又はディスプレイ手段を接続する外部装置」が接続される

ことが特定されていることを考慮すれば,構成要件E1における「単独使

用」という用語が「携帯情報処理装置を外部出力インターフェース手段に



9
外部装置を接続しないで使用すること」を意味することは,一義的に明確

である。さらに,一般に,「A用のB」という語句は「Aのために使用す

るB」を意味するから,構成要件E1における「タッチパネル手段の「単

独使用用の画面イメージ」」という語句は,「携帯情報処理装置を外部出

力インターフェース手段に外部装置を接続しないで使用するために,タッ

チパネル手段に表示される画面イメージ」を意味することは一義的に明確

に理解される。

そして,「標準のホーム画面アプリが実行されている状態」においては,

タッチパネルには「イ号製品をHDMI端子にテレビを接続しないで使用

するための画面イメージ」が表示されるが,これは「携帯情報処理装置を

外部出力インターフェース手段に外部装置を接続しないで使用するために,

タッチパネル手段に表示される画面イメージ」に該当するから,「標準の

ホーム画面アプリが実行されている状態」は構成要件E1の「制御モード

1」に該当する。

ウ イ号製品の構成要件E2充足性

構成要件E2における「タッチパネル手段の「単独使用用とは別種の画

面イメージ」」という語句は,構成要件E1において,制御モード1では

「タッチパネル手段の「単独使用用の画面イメージ」」のデジタル表示信

号が生成されると特定されており,また,上記の通り,「タッチパネル手

段の「単独使用用の画面イメージ」」という語句が「携帯情報処理装置を

外部出力インターフェース手段に外部装置を接続しないで使用するために,

タッチパネル手段に表示される画面イメージ」を意味することから,以下

の二重の意義を有するものと解釈される。

@ 制御モード1においてタッチパネル手段に表示される画面イメージとは

別種である画面イメージ

A タッチパネル手段の「単独使用用」ではない画面イメージ,すなわち,



10
携帯情報処理装置を外部出力インターフェース手段に外部装置を接続し

て使用するために,タッチパネル手段に表示される画面イメージ

そして,「TV launcherが実行されている状態」においては,タッチパ

ネルには「イ号製品をHDMI端子にテレビを接続して使用するための画

面イメージ」が表示され(上記Aに該当),この画面イメージは ,制御

モード1における「タッチパネル手段の「単独使用用の画面イメージ」」

(=「標準のホーム画面アプリが実行されている状態」においてタッチパ

ネルに表示される画面イメージ)とは別種であるから,「制御モード1に

おいてタッチパネル手段に表示される画面イメージとは別種である画面イ

メージ」に該当する (上記@に該当)。

したがって,「TV launcherが実行されている状態」は構成要件E2の

「制御モード2」に該当する。

エ イ号製品の構成要件E3充足性

上記のとおり,「標準のホーム画面アプリが実行されている状態」は

「 制 御 モ ー ド 1 」 に 該 当 し , 「 TV launcherが 実 行 さ れ て い る 状 態 」 は

「 制 御 モ ー ド 2 」 に 該 当 す る か ら , 「 標 準 の ホ ー ム 画 面 ア プ リ と TV

launcherとを選択的に実行する」ことは,「制御モード1と制御モード2

とを選択的に実現する」ことに該当する。

オ 以上から,イ号製品は,本件発明1の構成要件Eを充足するところ,同

製品が構成要件AないしD及びFを充足することは前記前提となる事実

(7)アのとおりであるから,同製品は,本件発明1の技術的範囲に属する。

(2) ロ号製品ないしヘ号製品の構成要件E充足性について

ロ号製品ないしヘ号製品は,いずれもスマートフォンであって,イ号製品

と同様に前記(1)アの構成要素を備えているから,本件発明1の構成要件

を充足するところ,ロ号製品ないしヘ号製品が構成要件AないしD及びFを

充足することは,前記前提となる事実(7)アのとおりであるから,ロ号製品



11
ないしヘ号製品は,いずれも本件発明1の技術的範囲に属する。

(3) 被告製品の構成要件K充足性について

以上のとおり,被告製品は,いずれも本件発明1の技術的範囲に属するか

ら,本件発明3の構成要件K(請求項1を引用する部分)を充足するところ,

被告製品がいずれも構成要件I及びJを充足することは,前記前提となる事

実(7)アのとおりであるから,被告製品は,いずれも本件発明3の技術的範

囲に属する。

(被告らの主張)

(1) イ号製品の構成要件E充足性について

ア イ号製品の構成について

イ号製品の構成(イ−e)及び(イ−e3)は認める。

(イ−e1)中,標準のホーム画面アプリの画面イメージが「単独で使

用されることを想定して設計された」ことについては,単なる目的を述べ

たものにすぎず,構成要件充足性とは無関係であり,認否の必要性を認め

ない。その余については否認する。標準のホーム画面アプリの画面イメー

ジは,タッチパネルにも外部ディスプレイにも表示される画面イメージで

あり,「タッチパネルの画面イメージのデジタル表示信号」を生成しない。

(イ−e2’ )中,TV launcherの画面が「前記HDMI端子にテレビ


が接続されて使用されることを想定して設計された」ことについては,単

なる目的を述べたものに過ぎず,構成要件充足性とは無関係であり,認否

の必要性を認めない。その余については否認する。TV launcher実行中は,

タッチパネルから受信したマニュアル信号に基づいて ,TV launcherが画

面 イ メ ー ジ の デ ジ タ ル 表 示 信 号 を 生 成 す る 。 し か し , TV launcher が マ

ニュアル操作信号を処理して生成するのは「動画像」のデジタル表示信号

ではなく,さらに,生成される当該デジタル表示信号は1個であり(ただ

し,必要に応じて外部ディスプレイの画素数に合わせて画素数の変換は行



12
われる。 ,これがタッチパネル及びHDMI用ICの双方に送信され ,


タッチパネル及びテレビ画面の双方に表示される。

イ イ号製品の構成要件E1充足性について

(ア) 「制御モード1」及び「制御モード2」は,ユーザの入力にかかる

コンテンツ(画面に表示された内容自体がユーザにとっての興味,創作

ないし鑑賞等の対象となるものであって,ユーザがデータを入力するこ

とにより,ユーザが作成,創作変更等を行った結果として画面に表示

される情報)の処理を目的とするソフトウェアにおける画面表示の制御

に関するものであり ,1つの表示されるべき対象を表示する際の制御

モードであると解される。

(イ) これに対し,標準のホーム画面アプリは,登録されたプログラムを

アイコンで表示し,各プログラムを簡単に選択し起動させるための管理

用プログラムであり,TV launcher と同種のランチャーである。

両プログラムは,異なるプログラムであり,表示させる対象(コンテ

ンツ)も異なる。したがって,これらが実行されている状態を,それぞ

れ「制御モード1」,「制御モード2」として構成要件Eの充足性を判

断することは許されない。

(ウ) 標準のホーム画面アプリ及び TV launcher は,画面に表示された内

容自体がユーザにとっての興味,創作ないし鑑賞等の対象となるもので

はないから,「ユーザの入力にかかるコンテンツの処理を目的とするソ

フトウェア」に当たらない。

(エ) 原告は,標準のホーム画面アプリを実行することにより生成される

画面イメージについて,「テレビを接続しないで使用するための」と表

現し,目的にのみ基づいて構成要件とイ号製品の構成とを対比している。

しかし,ソフトウェアの設計目的自体からは,画面イメージの構成は不

明であって,かかる解釈は,発明がある目的を達成するための具体的な



13
手段であるという大原則を忘れた議論,すなわち,画面を表示させるソ

フトウェアの設計目的が同じであれば,当該画面の構成如何に関わらず,

構成要件を充足するというものであり,採用の余地はない。原告の主張

は,画面イメージの対比を,その画面イメージを表示するためのソフト

ウェアの設計目的の対比にすり替えようと試みるものであり,失当であ

る。

(オ) したがって,イ号製品は,構成要件E1を充足しない。

ウ イ号製品の構成要件E2充足性について

(ア) 制御モー ド2 における「 単独使 用 用とは別種 の画面 イ メージ」と

「外部ディスプレイ手段の画面イメージ」との関係

本件特許の特許請求の範囲及び明細書の記載によれば,本件発明の技

術的意義は,携帯端末を単独で使用する場合には,狭いスペースに操作

部と表示部とが同時に表示されるために効率良く操作入力ができなかっ

たところ,外部接続されたディスプレイを表示用とし,携帯端末を操作

入力用としてそれぞれ用いる(制御モード2を採用)ことにより,操作

入力の利便性を向上したところにある。つまり,制御モード2は,携帯

情報処理装置の表示部の役割を外部接続されたディスプレイに部分的に

負担させて,携帯情報処理装置の表示部の役割を減少させることにより,

携帯性に伴う不便を解消しようとするものである。この技術的意義に鑑

みると,構成要件E2の「単独使用用とは別種の画面イメージ」と

「ディスプレイ手段の画面イメージ」とは,異なる画面イメージである

ことが当然の前提となっている。また,両者を合わせることで制御モー

ド1の「単独使用用の画面イメージ」と同一内容となる。

これに対し,TV launcherは,一つの画面イメージを生成し,これを

タッチパネル手段及び外部ディスプレイ手段に供給するのであって ,

タッチパネル手段及び外部ディスプレイ手段に表示されるのは同一の画



14
面イメージである。また,これらの画面イメージを合わせたとしても,

標準のホーム画面アプリの生成する画面イメージと同一の内容にはなら

ない。

(イ) 原告は,TV launcherを実行することにより生成される画面イメージ

について,「テレビを接続して使用するための」と表現し,目的にのみ

基づいて構成要件とイ号製品の構成とを対比している。しかし,構成で

はなく,ソフトウェアの設計目的を根拠に構成要件該当性を判断してお

り,不当といわざるを得ない。「単独使用用」に関しては,ソフトウェ

アの設計目的ではなく,画面に現れた具体的な構成に基づいて判断され

るべきものである。

(ウ) 原告は,「別種」について,「タッチパネル手段の「単独使用用」で

はない画面イメージ」との意義を有するほか,「制御モード1において

タッチパネル手段に表示される画面イメージとは別種である画面イメー

ジ」の意義も有し,「二重」の意義を有すると主張する。

しかし,「別種」が「二重」の意義を有すると解するのは,同一の特

請求の範囲において,1個の文言を2様の意義を持つものとして用い

ることになるが,このような解釈が許されないことは論を待たない。原

告の解釈は,特許請求の範囲の記載の具体的な文言を無視し,恣意的に,

「前記単独使用用の画面イメージとは表示形態において別種の画面イ

メージであって,単独使用を目的として設計されたソフトウェアとは別

種の目的で設計されたソフトウェアの画面イメージ」と読み替えるもの

であり,許されない。

(エ) したがって,イ号製品は,構成要件E2を充足しない。

(2) ロ号製品ないしヘ号製品の構成要件E充足性について

ロ号製品ないしヘ号製品の構成についての認否は,イ号製品について前記

(1)アで述べたところと同様であり,ロ号製品ないしヘ号製品は,いずれも



15
構成要件E1及びE2を充足しない。

(3) 被告製品の構成要件K充足性について

以上のとおり,被告製品は,いずれも構成要件E1及びE2を充足せず,

本件発明1の技術的範囲に属さないから,本件発明3の構成要件Kを充足し

ない。

2 争点2(本件発明1の新規性進歩性の有無)について

(被告らの主張)

(1) 本件発明1は,乙A8に記載された発明と同一であるか,少なくとも,

乙A8に記載された発明並びに乙A11,12,15及び16に示された

周知技術又は公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができた

ものである。

(2) 本件発明1は,乙A9に記載された発明と同一である。

(3) 本件発明1は,乙A10に記載された発明及び乙A9に示された公知技

術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4) したがって,本件発明1についての特許は,特許法29条1項3号又は

同条2項の規定に違反してされたものであり,特許無効審判により無効 と

されるべきものである。

(原告の主張)

原告は第2次訂正請求をしているところ,訂正発明の構成要件V’,

E’’の構成は,乙A8ないし11のいずれにも記載されておらず,示唆も

されていない。

3 争点3(本件発明3の新規性進歩性の有無)について

(被告らの主張)

(1) 本件発明3は,乙A8に記載された発明と同一であるか,少なくとも,

乙A8に記載された発明並びに 乙A11ないし13及び16に示された周

知技術又は公知技術に基づいて 当業者が容易に発明をすることができたも



16
のである。

(2) 本件発明3は,乙A9に記載された発明及び乙A14に示された公知技

術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3) 本件発明3は,乙A10に記載された発明及び乙A9に示された公知技

術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4) したがって,本件発明3についての特許は,特許法29条1項3号又は

同条2項の規定に違反してされたものであり,特許無効審判により無効 と

されるべきものである。

(原告の主張)

原告は第2次訂正請求をしているところ,訂正発明の構成要件V’,

E’’の構成は,乙A8ないし11のいずれにも記載 されておらず,示唆も

されていない。

4 争点4(第2次訂正請求についての訂正要件違反の有無)について

(原告の主張)

(1) 訂正発明1の構成要件V’は,本件特許の願書に添付した明細書,特許

請求の範囲又は図面(登録時のもの。以下,これらを併せて「本件明細

書」という。)の段落【0023】,【0041】及び【0064】の記

載に基づいて導き出される構成であるから,第2次訂正請求は 本件明細書

に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(2) 本件発明1の構成要件Bには「記憶手段がプログラムを格納すること」

が,構成要件Cには 「信号処理制御手段が前記記憶手段に格納されたプロ

グラムに基づいてデジタル表示信号を生成すること」が記載されているが,

このプログラムが単一のプログラムであることは特定されていない。逆に,

スマートフォンのような携帯情報処理装置においては,記憶手段が複数の

プログラムを格納し,信号処理手段がその各々のプログラムに基づいてデ

ジタル表示信号を生成することは通常のことである。したがって,構成要



17
件V’の「動画画面イメージ生成プログラム」は「信号処理制御手段を動

作させるプログラムのうちの1つ」として理解されるべきであり,「信 号

処理制御手段を動作させるプログラム」と「動画画面イメージ生成プログ

ラム」とは別個独立したプログラムであるとする被告らの解釈は失当であ

る。

「信号処理制御手段を動作させるプログラムのうちの1つ」として「動

画画面イメージ生成プログラム」が記憶手段に格納されていることは, 本

件明細書の記載から自明な事項であるから,第2次訂正請求は, 本件明細

書に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(被告らの主張)

(1) 第2次訂正請求は,構成要件V’の「前記記憶手段は,前記信号処理制

御手段を動作させて「『撮像手段が 取得した画像をスルー表示して得られ

る動画』,『保存された動画データを再生して得られる動画』及び『受信

した動画信号を復号して得られる動画』のいずれにも該当しない動画」

(以下,「生成動画」と略記する)を含む画面イメージ(以下 ,「生成動

画を含む画面イメージ」を「生成動画 画面イメージ」と略記する)のデジ

タル表示信号を生成させるプログラム(以下 ,「動画画面イメージ生成プ

ログラム」と略記する)を格納し」という構成を 登録時の請求項1に追加

するものである。しかし ,「動画画面イメージ生成プログラム」 ,すなわ

ち,「「『撮像手段が取得した画像をスルー表示して得られる動画』,

『保存された動画データを再生して得られる動画』及び『受信した動画信

号を復号して得られる動画』のいずれにも該当しない動画」を含む画面イ

メージのデジタル表示信号を生成させるプログラム」は ,本件明細書に記

載された事項の範囲内ではないから ,第2次訂正請求による構成要件V’

の追加は,いわゆる新規事項の追加であ って,特許法134条の2第9項

で準用する126条5項に規定された要件を満たしていない。



18
(2) 第2次訂正請求により,訂正後の請求項1は,構成要件Bの「信号処理

制御手段を動作させるプログラム」と,これとは異なる別個独立したプロ

グラムである構成要件V’の「動画画面イメージ生成プログラム」とを含

むに至った。しかし ,かかる構成は,本件明細書に記載した事項の範囲内

にないから,いわゆる新規事項の追加であって,特許法134条の2第9

項で準用する126条5項に規定された要件を満たしていない。

5 争点5(訂正発明についての記載要件違反の有無)について

(被告らの主張)

(1) 第2次訂正請求による訂正後の明細書(以下「訂正明細書」という。)

は,構成要件V’の「動画画面イメージ生成プロ グラムを格納し」という

構成について,一切開示しておらず,示唆もしていない。また,本件特許

優先日当時の技術常識に照らし,訂正明細書発明の詳細な説明に開示

された内容を,同訂正後の特許請求の範囲に記載された 発明の範囲まで,

拡張ないし一般化できるとはいえない。

したがって,上記構成は,発明の詳細な説明に記載したものではないから,

訂正発明は,特許法36条6項1号の規定により特許を受けることができな

い。

(2) 訂正明細書は,構成要件Bの「信号処理制御手段を動作させるプログラ

ム」と構成要件V’の「動画画面イメージ生 成プログラム」とが別個独立

したプログラムである構成について ,一切開示しておらず,示唆もしてい

ない。また,本件特許の優先日当時の技術常識に照らし ,訂正明細書の発

明の詳細な説明に開示された内容を ,同訂正後の特許請求の範囲に記載さ

れた発明の範囲まで,拡張ないし一般化できるとはいえない。

したがって,上記構成は,発明の詳細な説明に記載したものではないから,

訂正発明は,特許法36条6項1号の規定により特許を受けることができな

い。



19
(3) 原告は,訂正発明は,制御モード2においてタッチパネル手段に表示さ

れる「単独使用用とは別種の画面イメージ」と「外部ディスプレイ手段の

画面に表示される生成動画画面イメージ」とが同じである構成を含んでい

ると主張しているが,そのような構成は 訂正明細書発明の詳細な説明

記載したものではないから,訂正発明は,特許法36条6項1号の規定に

より特許を受けることができない。

(原告の主張)

(1) 訂正発明1の構成要件V’は,訂正明細書の段落【0023】,【00

41】及び【0064】の記載に基づいて導き出される構成であるから,

同明細書に記載されているに等しい事項であり,発明の詳細な説明に記載

された事項である。

(2) 「信号処理制御手段を動作させるプログラム」と「動画画面イメージ生

成プログラム」とは別個独立したプログラムであるとする被告らの解釈は

失当であるから,その解釈を前提とするサポート要件違反の主張も失当で

ある。

(3) 訂正明細書発明の詳細な説明に,「『タッチパネル手段に表示される

画面イメージ』と『外部ディスプレイ手段に表示される画面イメージ』と

が異なる構成」だけが記載され ,一方,訂正発明が「『タッチパネル手段

に表示される画面イメージ』と『外部ディスプレイ手段に表示される画面

イメージ』とが同じ構成」を含むとしても,これは,発明の詳細な説明

記載された一又は複数の具体例の「拡張ないし一般化」に該当するのであ

るから,被告らのサポート要件違反の主張は失当である。

6 争点6(訂正発明の新規性進歩性の有無)について

(被告らの主張)

(1) 訂正発明1について

ア 訂正発明1は,乙A8に記載された発明と同一であるか,少なくとも,



20
乙A8に記載された発明並びに乙A11,12,15及び16に示された

周知技術又は公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができた

ものである。

イ 訂正発明1は,乙A9に記載された発明と同一であるか,少なくとも,

乙A9に記載された発明に基づいて,又は乙A9に記載された発明及び乙

A11に示された公知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることが

できたものである。

ウ 訂正発明1は,乙A10に記載された発明並びに乙A9及び11に示さ

れた公知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたもので

ある。

なお,乙A10の【図6】には,ユーザの「ペン操作によりポインタ2

11が動く」動画を実行するためのプログラム,すなわち「動画画面イ

メージ生成プログラム」の開示がある。 また,乙A10の段落【005

8】には,「たとえば,ゲームのアプリケーションソフトウェアを起動さ

せた際に,PDA10自体を動かすことでそのゲームにおける操作を行う

ことができるようにしてもよい。」と記載されているように,「動画画面

イメージ生成プログラム」に相当するゲームのプログラムが記憶手段に格

納されている構成(構成要件V’)が開示されているか,少なくとも示唆

されている。

(2) 訂正発明3について

訂正発明3は,第2次訂正請求による訂正後の請求項1(訂正発明1)を

引用する同訂正後の請求項3に係る発明であるが,上記(1)及び前記3で述

べた理由により,新規性又は進歩性を欠く。

(原告の主張)

構成要件V’,E’’の構成は,乙A8 ないし11のいずれにも記載され

ておらず,示唆もされていない。乙A10の「ポインタが動く映像」は,通



21
常の技術常識では「動画」ではない。 したがって,被告らの新規性進歩性

違反の主張は失当である。

7 争点7(被告製品の構成要件V’充足性及び構成要件E’’充足性)につい



(原告の主張)

(1)ア イ号製品は,以下の構成要素を備えている。

(イ−v’) イ号製品のメモリは,モバイルプロセッサを動作させて,

動画を含む画面イメージのデジタル表示信号を生成させる動画画面イ

メージ生成プログラムであるTV launcherを格納する。

イ TV launcherは,タッチパネルに対してフリックなどの素早い 操作を行

うと,「『撮像手段が取得した画像をスルー表示して得られる動画』,

『保存された動画データを再生して得られる動画』及び『受信した動画信

号を復号して得られる動画』のいずれにも該当しない動画」を含む画面イ

メージを生成してディスプレイに表示するから,動画画面イメージ生成プ

ログラムである。

ウ したがって,イ号製品は構成要件V’を充足する。

(2) ロ号製品ないしヘ号製品は,いずれもイ号製品と同様に前記(1)アの構成

要素を備えているから,訂正発明1の構成要件V’を充足する。

(3) 被告製品がいずれも構成要件E’’を充足することは,前記1で構成要件

Eについて述べたのと同様である。

(被告らの主張)

(1) 原告は,「ポインタが動く映像」(乙A10)が動画に該当しないと主

張するが,その主張に従えば,被告製品におけるTV launcherもまた動画に

該当せず,「生成動画」(構成要件V’)の要件を満たさない。

(2) 「動画画面イメージ生成プログラム」は,ゲームのプログラムの場合を

除き,訂正明細書に記載がないのであるから, 結局,ゲームのプログラム



22
に限定して解釈されるべきものである。

し た が っ て, ゲ ー ムの プ ロ グ ラム で な い TV launcherは , 「動 画 画 面イ

メージ生成プログラム」ではない。

(3) したがって,TV launcherは「動画画面イメージ生成プログラム」(構

成要件V’)を有しておらず,また,かかるプログラムに基づいて,外部

ディスプレイ手段の生成動画画面イメージのデジタル表示信号を生成する

構成(構成要件E2’’)も有してい ないというべきであり,このことと,

前記1において主張したところによれば, 被告製品は,いずれも訂正発明

技術的範囲に属しない。

8 争点8(損害)について

(原告の主張)

(1) 被告ソニーモバイルに対する損害賠償請求

ア 被告ソニーモバイルは,本件特許権の登録日(平成24年7月27日)

から平成25年1月30日までの間に,イ号製品を,平均単価5万円で少

なくとも20万個販売した。実施料率は少なくとも5%が相当であり,原

告がその実施に対して受けるべき金銭の額は5億円を下らないが,そのう

ち220万円を請求する。

イ 被告ソニーモバイルは,遅くとも平成24年8月9日から平成25年1

月30日までの間に,ロ号製品を,平均単価5万円で少なくとも50万個

販売した。実施料率は少なくとも5%が相当であり,原告がその実施に対

して受けるべき金銭の額は12億5000万円を下らないが,そのうち5

60万円を請求する。

ウ 被告ソニーモバイルは,遅くとも平成24年8月10日から平成25年

1月30日までの間に,ハ号製品を,平均単価5万円で少なくとも40万個

販売した。実施料率は少なくとも5%が相当であり,原告がその実施に対

して受けるべき金銭の額は10億円を下らないが,そのうち450万円を



23
請求する。

エ 被告ソニーモバイルは,遅くとも平成24年11月16日から平成25年

1月30日までの間に,ニ号製品を,平均単価5万円で少なくとも70万個

販売した。実施料率は少なくとも5%が相当であり,原告がその実施に対

して受けるべき金銭の額は17億5000万円を下らないが,そのうち7

80万円を請求する。

オ 被告ソニーモバイルは,本件特許権の登録日(平成24年7月27日)

から平成25年1月30日までの間に,ホ号製品を,平均単価5万円で少

なくとも50万個販売した。実施料率は少なくとも5%が相当であり,原

告がその実施に対して受けるべき金銭の額は12億5000万円を下らな

いが,そのうち560万円を請求する。

カ 被告ソニーモバイルは,遅くとも平成24年11月2日から平成25年1

月30日までの間に,ヘ号製品を,平均単価5万円で少なくとも30万個販

売した。実施料率は少なくとも5%が相当であり,原告がその実施に対し

て受けるべき金銭の額は7億5000万円を下らないが,そのうち330

万円を請求する。

キ よって,原告は,被告ソニーモバイルに対し,民法709条,特許法1

02条3項に基づき,上記アないしカの実施料相当額合計65億円の一部

2900万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成25年2月

7日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求

める。

(2) 被告ドコモに対する損害賠償請求

ア 被告ドコモは,本件特許権の登録日(平成24年7月27日)から平成

25年1月30日までの間に,イ号製品を少なくとも20万個販売し,1

個当たり平均2万5000円の収入を得た。実施料率は少なくとも5%が

相当であり,原告がその実施に対して受けるべき金銭の額は2億5000



24
万円を下らないが,そのうち120万円を請求する。

イ 被告ドコモは,遅くとも平成24年8月9日から平成25年1月30日

までの間に,ロ号製品を少なくとも50万個販売し,1個当たり平均2万

5000円の収入を得た。実施料率は少なくとも5%が相当であり,原告

がその実施に対して受けるべき金銭の額は6億2500万円を下らないが,

そのうち290万円を請求する。

ウ 被告ドコモは,遅くとも平成24年8月10日から平成25年1月30

日までの間に,ハ号製品を少なくとも40万個販売し,1個当たり平均2

万5000円の収入を得た。実施料率は少なくとも5%が相当であり,原

告がその実施に対して受けるべき金銭の額は5億円を下らないが,そのう

ち230万円を請求する。

エ 被告ドコモは,遅くとも平成24年11月16日から平成25年1月30

日までの間に,ニ号製品を少なくとも70万個販売し,1個当たり平均1

万円の収入を得た。実施料率は少なくとも5%が相当であり,原告がその

実施に対して受けるべき金銭の額は3億5000万円を下らないが,その

うち160万円を請求する。

オ よって,原告は,被告ドコモに対し,民法709条,特許法102条

項に基づき,上記アないしエの実施料相当額合計17億2500万円の一

部800万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成25年2月

7日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求

める。

(3) 被告KDDIに対する損害賠償請求

ア 被告KDDIは,本件特許権の登録日(平成24年7月27日)から平

成25年1月30日までの間に,ホ号製品を少なくとも50万個販売し,

1個当たり平均2万5000円の収入を得た。実施料率は少なくとも5%

が相当であり,原告がその実施に対して受けるべき金銭の額は6億250



25
0万円を下らないが,そのうち240万円を請求する。

イ 被告KDDIは,遅くとも平成24年11月2日から平成25年1月30

日までの間に,ヘ号製品を少なくとも30万個販売し,1個当たり平均1

万円の収入を得た。実施料率は少なくとも5%が相当であり,原告がその

実施に対して受けるべき金銭の額は1億5000万円を下らないが,その

うち60万円を請求する。

ウ よって,原告は,被告KDDIに対し,民法709条,特許法102条

3項に基づき,上記ア,イの実施料相当額合計7億7500万円の一部3

00万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成25年2月7日

から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(被告らの主張)

争う。

第4 当裁判所の判断

1 争点2(本件発明1の新規性進歩性の有無)について

(1) 事案に鑑み,争点2(本件発明1の新規性進歩性の有無)について先

に判断する。

(2) 乙A8は,本件特許の優先日(平成22年4月19日)前に頒布された

刊行物(特開2008−166927 )であるが,乙A8には,本件発明

1の構成要件が全て開示されている ことが認められる(原告は,第2次訂

正請求により追加された構成要件V’及びE’’以外 に,乙A8に記載さ

れた発明と本件発明1との相違点を主張して いない〔被告KDDIら準備

書 面 (2)10〜 18 ,54 〜5 9頁, 原 告準備 書面 (第3 回 )13 〜1 5

頁〕。)。

(3) また,後記3において説示するところによれば,本件発明1は,本件特

許の優先日(平成22年4月19日)前に 頒布された刊行物(特開200

9−42967)である乙A10に記載された発明に基づいて,当業者が



26
容易に発明をすることができたものというべきである。

(4) したがって,その余の点について判断するまでもなく,本件発明1は,

新規性又は進歩性を欠き,特許無効審判により無効とされるべきものと認

められる(特許法104条の3123条1項2号29条1項3号,2

項,41条2項)。

2 争点3(本件発明3の新規性進歩性の有無)について

(1) 乙A8には,本件発明3の構成要件が全て開示されていることが認めら

れる(原告は,第2次訂正請求により追加された構成要件V’及びE’’

以外に,乙A8に開示された発明と本件発明 3との相違点を主張していな

い〔被告KDDIら準備書面(2)77〜79頁,原告準備書面(第5回)3

0頁〕。)。

(2) また,後記3において説示するところによれば,本件発明3は,乙A1

0に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたも

のというべきである。

(3) したがって,その余の点について判断するまでもなく,本件発明3は,

新規性又は進歩性を欠き,特許無効審判により無効とされるべきものと認

められる(特許法104条の3123条1項2号29条1項3号, 2

項,41条2項)。

3 争点6(訂正発明の新規性進歩性の有無)について

(1) 特許に無効理由が存在する場合であっても,@特許権者が適法な訂正請

求又は訂正審判請求を行い,Aその訂正により無効理由が解消され,かつ,

B被告製品が訂正後の発明の技術的範囲に属するものと認められる 場合に

は,訂正の再抗弁が成立し,特許法104条の3により特許権の行使が制

限されることはない (知財高裁平成21年8月25日判決・判時2059

号125頁)。

本件において,原告は,第2次訂正請求を行ったとして,訂正の再抗弁を



27
主張しているので,第2次訂正請求による訂正により,前記1及び2で説示

した新規性進歩性欠如の無効理由が解消されているか(上記Aの要件)に

ついて検討する。

(2) 訂正発明1について

ア 乙A10には,以下の発明(以下「乙A10発明」という。) が開示

されている。

(a):PDA10の本体正面に設けられた表示部であって,該表示部の

表面を押圧及びなぞることによって,操作入力が可能であるタッチパネ

ル式の表示部12と;

(b):処理を動作させるプログラムを格納するストレージ部103と;

(c):PDA10を制御する中央演算部101と;

(d ) 接続ケ ーブ ル31 を介 して 外 部 のヘッ ドマ ウン トデ ィスプ レイ


(以下「HMD」と略記する。)20に接続され,該HMD20に画像

の信号を出力する外部モニタ接続部15と;を備えた上で,

(v’ :前記ストレージ部103は,ポインタ221を移動させるアプリ


ケーションソフトウェアを格納し,

(e0):前記中央演算部101は,

(e1):前記PDA10が前記HMD20に接続されていない場合,ス

ケジュールデータ表示121aと手書き文字入力表示122aとを前記

表示部12に表示することと;

(e2’a):前記PDA10が前記HMD20に接続されている場合,

手書き文字入力表示122aを前記表示部12の表示領域全体に表示す

るための入力専用画像情報を生成し,前記入力専用画像情報を前記PD

A10の前記表示部12に表示し,

(e2’’b):PDA操作用ペン19の押圧によって得られる操作信号を

前記アプリケーションソフトウェアに基づいて処理して,スケジュール



28
データ表示121a上でポインタ211が動く画像を前記HMD20の

表示部22a,22bの表示領域全体に表示するための表示専用画像情

報を生成し,前記表示専用画像情報を前記HMD20の表示部22a,

22bに表示することと;

(e3):を選択的に実現する,ことを特徴とする

(f):PDA10。

イ 乙A10発明の構成(a)ないし(c),(f)は訂正発明1の構成要

件AないしC,Fに相当し,乙A10発明の構成(e0)(e1)(e’

2a)は訂正発明1の構成要件E0,E1,E’2aに相当する。

そうすると,乙A10発明と訂正発明1は,以下の点で相違し,その余

の点で一致する。

相違点1:訂正発明1においては,外部出力インターフェース手段が送信

するデジタル外部表示信号は,「TMDS,デジタルRGB,LVDS,

LDI,GVIF,USB,DisplayPort,WirelessHD,WHDI,

WiGigのうちのいずれかの伝送方式で伝送される」(構成要件D)

のに対し,乙A10発明において外部モニタ接続部15が送信するデジ

タル外部表示信号の伝送方式は明らかでない点

相違点2:訂正発明1においては,記憶手段は「『撮像手段が取得した画

像をスルー表示して得られる動画』,『保存された動画データ』を再生

して得られる動画』及び『受信した動画信号を復号して得られる動画』

のいずれにも該当しない動画」を含む画面イメージのデジタル表示信号

を生成させるプログラム(動画画面イメージ生成プログラム)を格納し

構成要件V’),該動画画面イメージ生成プログラムに基づいて生成

動画画面イメージのデジタル信号を生成して外部出力インターフェース

手段に送信する(構成要件E2’’b)のに対し,乙A10発明のスト

レージ部103がそのような動画画面イメージ生成プログラムを格納し,



29
これに基づく生成動画画面イメージのデジタル信号を生成して送信する

かは明らかでない点

ウ 相違点1(伝送方式)について

乙A10発明において伝送方式を限定する記載はなく (段落【005

6】には,「赤外線を利用した無線通信や,電波を利用した無線通信に

よってPDA10とHMD20とを接続するように構成してもよい。」と

ある。),当業者は優先日時点において公知の伝送方式を適宜採用し得る

ところ,優先日前の公知文献である乙A9には,携帯端末からPC用ディ

スプレイに信号を伝送する方式としてデジタルRGB方式を使用すること

が開示されている。

そうすると,当業者は,乙A10発明に乙A9の伝送方式を組み合わせ

ることによって,相違点1に係る構成を容易に想到できるものと認められ

る。

エ 相違点2(動画画面イメージ生成プログラム)について

(ア) 乙A10の段落【0058】には,「変形例」として,「上述した

第2の実施の形態では,PDA10をHMD20の操作部材の一部とし

て扱っているが,たとえば,PDA10に加速度センサなどを設けて,

PDA10自体の動きを検出することで,アプリケーションソフトウェ

アにおける操作を行うようにしてもよい。たとえば ,ゲームのアプリ

ケーションソフトウェアを起動させた際に,PDA10自体を動かすこ

とでそのゲームにおける操作を行うことができるようにしてもよい。」

との記載があり,乙A10の「第2の実施の形態」において,「ゲーム

のアプリケーションソフトウェア」を起動させる構成が開示されている。

(イ) この点,「第2の実施の形態」においては,「たとえば動画再生用

のアプリケーションソフトウェアのプログラム」は,HMD20のスト

レージ部206に記憶されている(段落【0043】)から,上記変形



30
例における「ゲームのアプリケーションソフトウェア」も,HMD20

のストレージ部206に格納され,PDA10のストレージ部103に

は格納されないものと認められる。

(ウ) しかし,乙A10の段落【0063】には,「上述した各実施の形

態および変形例は,それぞれ組み合わせてもよい。」との記載があるか

ら,上記で乙A10発明として特定した「第1の実施の形態」に上記変

形例を組み合わせて「ゲームのアプリケーションソフトウェア」を起動

させる構成も,乙A10に開示されているものと認められる。

この構成においては,「ゲームのアプリケーションソフトウェア」は,

PDA10のストレージ部103に格納されることは,乙A10の「第

1の実施の形態」の記載(段落【0013】)から明らかである。この

構成において,PDA10がHMD20に接続されていない場合,起動

された「ゲームのアプリケーションソフトウェア」による処理の結果が

表示部12に表示されることは,乙A10の「第1の実施の形態」の記

載(段落【0016】)から明らかである。この構成において,PDA

10がHMD20に接続されている場合,PDA10の表示部12には,

「ユーザによる文字などの入力のためのグラフィカルユーザインター

フェースだけ」(乙A10の【請求項1】でいう「ユーザの操作入力の

受け付けに関する画面」)が表示されることは,乙A10の「第1の実

施の形態」の記載(段落【0020】)から明らかである。また,PD

A10がHMD20に接続されている場合,HMD20の表示部22a,

22bには,「ゲームのアプリケーションソフトウェア」によるデータ

だけ(乙A10の【請求項1】でいう「前記情報端末の入力部で受け付

けたユーザの操作入力に応じ」た画面表示)が表示されることは,乙A

10の「第1の実施の形態」の記載(段落【0020】)から明らかで

ある。



31
(エ) 上記「ゲームのアプリケーションソフトウェア」で生成されるデー

タがどのようなものか,乙A10には明示されていないが,携帯情報装

置において実行される「ゲームのアプリケーションソフトウェア」が,

「『撮像手段が取得した画像をスルー表示して得られる動画』,『保存

された動画データ』を再生して得られる動画』及び『受信した動画信号

を復号して得られる動画』のいずれにも該当しない動画」を生成するこ

とは,本件特許権の優先日時点において当業者の技術常識であったと認

められる(例えば,乙A25の段落【0020】)。

(オ) 以上によれば,相違点2は,乙A10自体から(その「変形例」と

「第1の実施の形態」とを組み合わせることにより),当業者が容易に

想到できるものと認められる。

(カ) 原告は,乙A10の「第2の実施の形態」と「第1の実施の形態」

との間には,画像情報の生成処理をPDA10側で行うかHMD20側

で行うかという本質的な相違点があるから,「第1の実施の形態」と

「第2の実施の形態」とを組み合わせるこ とには阻害要因が存在し,

「第2の実施の形態」に係る記載(段落【0041】〜【0064】)

は考慮する必要がない,と主張する。

しかし,「第2の実施の形態」の変形例である【0058】の構成を

「第1の実施の形態」と組み合わせることについて【0063】で開示

があることは上記のとおりであり,また,【0058】の変形例を「第

1の実施の形態」と組み合わせることに技術的困難性は存在しない。し

たがって,それらを組み合わせることに阻害要因が存在するとの原告の

主張は失当である。

オ 以上によれば,相違点1及び2はいずれも当業者が容易に想到できる構

成であるから,訂正発明1は,乙A10発明に基づいて当業者が容易に発

明をすることができたものというべきである。



32
(3) 訂正発明3について

訂正発明3は,訂正発明1に構成要件I,Jの構成を付加したものである

が,乙A10には,構成要件I,Jに相当する構成が開示されている(段落

【0013】,【0014】,【0020】及び【0021】)と認められ

る(原告も,訂正発明3につき,訂正発明1と別個に相違点の主張はしてい

ない〔被告KDDIら準備書面(2)37,83〜85頁,原告準備書面(第

5回)30頁〕。)。

したがって,訂正発明3は,乙A10発明に基づいて当業者が容易に発明

をすることができたものというべきである。

(4) 小括

そうすると,第2次訂正請求による訂正は,前記1及び2で説示した無効

理由を解消するものとはいえないから,その余の点について判断するまでも

なく,原告による訂正の再抗弁は理由がないことに帰する。

4 以上によれば,本件発明はいずれも新規性又は進歩性を欠くから,同発明に

ついての特許は特許無効審判により無効とされるべきものと認められ ,訂正

の再抗弁は成立しないから,特許法104条の3により,本件特許権に基づ

く権利行使は許されない。

よって,原告の請求 はいずれも理由がないから,これらを 棄却することと

し,主文のとおり判決する。



東京地方裁判所民事第29部




裁判長裁判官



嶋 末 和 秀



33
裁判官



西 村 康 夫



裁 判官 石神有吾 は,転 補の ため署名 押印す るこ とができ ない。



裁判長裁判官



嶋 末 和 秀




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35