• この表をプリントする
  • ポートフォリオ機能


追加

元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 26年 (行ケ) 10043号 審決取消請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2014/10/29
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
判例全文
判例全文
平成26年10月29日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

平成26年(行ケ)第10043号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 平成26年10月8日

判 決




原 告 レ フ ル ー エ ク ロ ッ
ム ェ ダ レ ト ニ ク

ゲゼルシャフト ミット ベシュ

レンクテル ハフツング




訴訟代理人弁理士 杉 村 憲 司

同 齋 藤 恭 一

同 小 松 靖 之

同 伊 藤 怜 愛



被 告 特 許 庁 長 官

指 定 代 理 人 島 田 信 一

同 森 川 元 嗣

同 窪 田 治 彦

同 根 岸 克 弘

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

3 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を3

0日と定める。




事実及び理由

第1 請求

特許庁が不服2012−17505号事件について平成25年9月24日に

した審決を取り消す。

第2 事案の概要

1 特許庁における手続の経緯等

原告は,発明の名称を「車両トランスミッションをシフトするためのシフ

ト装置」とする発明について,2006年(平成18年)12月15日(優

先権主張日2005年(平成17年)12月20日,優先権主張国ドイツ連

邦共和国)を国際出願日とする特許出願(特願2008−546118号。

以下「本願」という。)をした。

原告は,平成23年11月30日付けの拒絶理由通知(以下「本件拒絶理

由通知」という。甲7)を受けたため,平成24年3月7日付けで本願の特

請求の範囲について手続補正(甲8)をし,同日付け意見書(以下「本件

意見書」という。乙1)を提出したが,同年4月25日付けの拒絶査定(以

下「本件拒絶査定」という。甲9)を受けた。

原告は,同年9月7日,拒絶査定不服審判を請求するとともに,同日付け

で本願の特許請求の範囲について手続補正(以下「本件補正」という。甲1

0)をした。

特許庁は,上記請求を不服2012−17505号事件として審理を行い,

平成25年9月24日,本件補正を却下した上で,「本件審判の請求は,成

り立たない。」との審決(出訴期間の付加期間90日。以下「本件審決」と

いう。)をし,同年10月8日,その謄本が原告に送達された。

原告は,平成26年2月5日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起

した。

2 特許請求の範囲の記載




本件補正前のもの

本件補正前の特許請求の範囲(平成24年3月7日付け手続補正による補

正後のもの。以下同じ。)は,請求項1ないし15からなり,その請求項1

の記載は,次のとおりである(以下,請求項1に係る発明を「本願発明」と

いう。甲8)。

「【請求項1】

車両トランスミッションをシフトするためのシフト装置であって,

回転軸(5)を中心に異なるシフト位置(6,7,8,9)に回転可能な

操作素子(4)と,該操作素子(4)に結合されており,前記回転軸(5)

を中心に回転可能なシャフト(21)と,該シャフト(21)に結合された

回転角検出装置(32)と,アクチュエータ(22)と,前記回転角検出装

置(32)およびアクチュエータ(22)に接続された制御装置(38)と

を有し,

前記回転角検出装置(32)によって,前記操作素子(4)の前記回転軸

(5)を中心にする回転が検出され,

前記アクチュエータ(22)によって,トルクが前記シャフト(21)に

出力され,またはシャフト(21)の回転に対抗するトルクが出力され,

前記制御装置(38)によって前記アクチュエータ(22)から出力され

たトルク,または対抗するトルクが制御され,

前記車両トランスミッション(10)は,シフト位置(6,7,8,9)

に割り当てられたシフト状態(P,R,N,D)に切り替え可能である形式

のシフト装置において,

前記シャフト(21)は,前記回転角検出装置(32)と前記操作素子(

4)との間で回転軸(5)に沿って伸長しており,前記操作素子は回転ヘッ

ドまたは回転ノブとして構成されており,シャフト(21)の第1の端部(

28)に配置され,




前記回転角検出装置(32)は,前記シャフト(21)の第2の端部(2

9)に配置され,

前記回転角検出装置(32)は,少なくとも1つの磁界感応センサ(31)

と,該磁界感応センサに対して相対的に回転可能な少なくとも1つの磁石(

30)とを有し,

前記アクチュエータ(22)は,前記回転角検出装置(32)と前記操作

素子との間の前記シャフト(21)上に座し,

前記磁石(30)は前記シャフト(21)の前記第2の端部(29)に固

定されており,前記磁石(30)の磁化方向は前記回転軸(5)に対して直

角に配向されており,前記磁界感応センサ(31)は前記磁石(30)に対

し,前記回転軸(5)に沿ってずらして配置されている,

ことを特徴とするシフト装置。」

本件補正後のもの

本件補正後の特許請求の範囲は,請求項1ないし14からなり,その請求

項1の記載は,次のとおりである(以下,請求項1に係る発明を「本願補正

発明」という。なお,下線部は,本件補正による補正箇所である。甲10)。

「【請求項1】

車両トランスミッションをシフトするためのシフト装置であって,

回転軸(5)を中心に異なるシフト位置(6,7,8,9)に回転可能な

操作素子(4)と,該操作素子(4)に結合されており,前記回転軸(5)

を中心に回転可能なシャフト(21)と,該シャフト(21)に結合された

回転角検出装置(32)と,アクチュエータ(22)と,前記回転角検出装

置(32)およびアクチュエータ(22)に接続された制御装置(38)と

を有し,

前記回転角検出装置(32)によって,前記操作素子(4)の前記回転軸

(5)を中心にする回転が検出され,




前記アクチュエータ(22)によって,トルクが前記シャフト(21)に

出力され,またはシャフト(21)の回転に対抗するトルクが出力され,

前記制御装置(38)によって前記アクチュエータ(22)から出力され

たトルク,または対抗するトルクが制御され,

前記車両トランスミッション(10)は,シフト位置(6,7,8,9)

に割り当てられたシフト状態(P,R,N,D)に切り替え可能である形式

のシフト装置において,

前記シャフト(21)は,前記回転角検出装置(32)と前記操作素子(

4)との間で回転軸(5)に沿って伸長しており,前記操作素子は回転ヘッ

ドまたは回転ノブとして構成されており,シャフト(21)の第1の端部(

28)に配置され,

前記回転角検出装置(32)は,前記シャフト(21)の第2の端部(2

9)に配置され,

前記回転角検出装置(32)は,少なくとも1つの磁界感応センサ(31)

と,該磁界感応センサに対して相対的に回転可能な少なくとも1つの磁石(

30)とを有し,

前記アクチュエータ(22)は,前記回転角検出装置(32)と前記操作

素子との間の前記シャフト(21)上に座し,

前記磁石(30)は前記シャフト(21)の前記第2の端部(29)に固

定されており,前記磁石(30)の磁化方向は前記回転軸(5)に対して直

角に配向されており,前記磁界感応センサ(31)は前記磁石(30)に対

し,前記回転軸(5)に沿ってずらして配置され,

前記磁界感応センサ(31)は少なくとも2つのホール効果素子(33,

34)を有し,該ホール効果素子は強磁性ディスク(35)により部分的に

覆われている,

ことを特徴とするシフト装置。」




3 本件審決の理由の要旨

本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。要するに,

本願補正発明は,本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開20

02−189558号公報(以下「引用例1」という。甲1),特開200

3−162328号公報(以下「引用例2」という。甲2)及び特表200

1−518188号公報(以下「引用例3」という。甲3)に記載された発

明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであ

るから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受ける

ことができないものであり,平成18年法律第55号による改正前の特許法

17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するもの

であるとして,同法159条1項において準用する同法53条1項の規定に

より,本件補正を却下した上で,本願発明も,同様に,引用例1ないし3に

記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることがで

きたものであるから,特許を受けることができず,他の請求項に係る発明に

ついて検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものであるというもので

ある。

本件審決が認定した引用例1に記載された発明(以下「引用例1発明」と

いう。),本願補正発明と引用例1発明の一致点及び相違点は,以下のとお

りである。

ア 引用例1発明

「自動車のトランスミッション25のギアシフト装置であって,

回転可能なノブ3と,筐体に回転自在に保持され,一端にノブ3が固着

された操作軸2と,操作軸2の回転量及び回転方向を検知する検知手段4

と,ノブ3に外力を負荷する回転駆動形のアクチュエータ5と,操作軸2

とアクチュエータ5の駆動軸5aとの間の動力伝達を行う動力伝達部6

と,検知手段4およびアクチュエータ5に接続された制御部8とを有し,




前記アクチュエータ5によって,ノブ3に抵抗感や推力が付与され,

前記制御部8は,ノブ3の操作量及び操作方向や,変速制御装置の信号

ないし制御情報に基づいて,前記アクチュエータ5により付与される抵抗

感や推力を決定し,

前記トランスミッション25は,ノブ3の操作位置に応じた特定レンジ

に切替可能であるギアシフト装置において,

前記操作軸2は,前記アクチュエータ5と前記ノブ3との間で延びてお

り,

前記検知手段4は,操作軸2に固着されたコード板4aと,当該コード

板4aを介してその表面側及び裏面側に対向に配置された発光素子4b及

び受光素子4cとから構成されるロータリエンコーダからなるギアシフト

装置。」

イ 本願補正発明と引用例1発明の一致点

「車両トランスミッションをシフトするためのシフト装置であって,

回転軸を中心に異なるシフト位置に回転可能な操作素子と,該操作素子

に結合されており,前記回転軸を中心に回転可能なシャフトと,該シャフ

トに結合された回転角検出装置と,アクチュエータと,前記回転角検出装

置およびアクチュエータに接続された制御装置とを有し,

前記回転角検出装置によって,前記操作素子の前記回転軸を中心にする

回転が検出され,

前記アクチュエータによって,トルクが前記シャフトに出力され,また

はシャフトの回転に対抗するトルクが出力され,

前記制御装置によって前記アクチュエータから出力されたトルク,また

は対抗するトルクが制御され,

前記車両トランスミッションは,シフト位置に割り当てられたシフト状

態に切り替え可能である形式のシフト装置において,




前記操作素子は回転ヘッドまたは回転ノブとして構成されており,シャ

フトの第1の端部に配置されているシフト装置。」である点。

ウ 本願補正発明と引用例1発明の相違点

(相違点1)

本願補正発明は,

「前記シャフト(21)は,前記回転角検出装置(32)と前記操作素

子(4)との間で回転軸(5)に沿って伸長しており」,「前記回転角検

出装置(32)は,前記シャフト(21)の第2の端部(29)に配置さ

れ」,「前記アクチュエータ(22)は,前記回転角検出装置(32)と

前記操作素子との間の前記シャフト(21)上に座し」ているのに対し,

引用例1発明は,

「前記操作軸2は,前記アクチュエータ5と前記ノブ3との間で延びて」

いる点。

(相違点2)

本願補正発明は,

「前記回転角検出装置(32)は,少なくとも1つの磁界感応センサ(

31)と,該磁界感応センサに対して相対的に回転可能な少なくとも1つ

の磁石(30)とを有し」,

「前記磁石(30)は前記シャフト(21)の前記第2の端部(29)

に固定されており,前記磁石(30)の磁化方向は前記回転軸(5)に対

して直角に配向されており,前記磁界感応センサ(31)は前記磁石(3

0)に対し,前記回転軸(5)に沿ってずらして配置され,

前記磁界感応センサ(31)は少なくとも2つのホール効果素子(33,

34)を有し,該ホール効果素子は強磁性ディスク(35)により部分的

に覆われている」のに対し,

引用例1発明は,




「前記検知手段4は,操作軸2に固着されたコード板4aと,当該コー

ド板4aを介してその表面側及び裏面側に対向に配置された発光素子4b

及び受光素子4cとから構成されるロータリエンコーダからなる」点。

第3 当事者の主張

1 原告の主張

取消事由1(手続違背)

本件審決は,相違点2について,「少なくとも2つのホール素子に磁気収

束板を組み合わせたセンサ手段は,例えば,特開2004−317446号

公報(特に【0001】〜【0007】,【0021】〜【0025】),

国際公開03/081182号(特に第8ページ第11〜19行)に示され

ているように周知であり,一般に,引用例3のような「少なくとも2つのホ

ールセンサ」に磁気収束板を組み合わせることは適宜なし得る設計的事項に

すぎない。」として,「少なくとも2つのホール素子に磁気収束板を組み合

わせたセンサ手段」は周知技術であると認定した上で,本願補正発明は,引

用例1ないし3に加え,上記周知技術及び設計的事項に基づいて,容易想到

である旨判断した。

本件審決の上記判断は,以下のとおり,本件拒絶理由通知及び本件拒絶査

定で原告に示された拒絶理由とは異なる新たな拒絶理由に当たり,原告は,

上記拒絶理由について,拒絶理由通知を受けておらず,その反論の機会を与

えられていないから,本件審判手続には,特許法159条2項で準用する同

50条に違反する手続違背がある。

ア 相違点2に係る本願補正発明の構成は,以下のとおり,本件出願時の特

請求の範囲の請求項7(以下「当初請求項7」といい,これと同様に,

本件出願時の請求項を「当初請求項」という。甲6)に記載されていた構

成である。

「【請求項7】




請求項5または6記載のシフト装置において,

前記磁界感応センサ(31)は少なくとも2つのホール効果素子(33,

34)を有し,該ホール効果素子は強磁性ディスク(35)により部分的

に覆われている,ことを特徴とするシフト装置。」

イ 本件拒絶理由通知(甲7)には,当初請求項7に関し,次のとおりの記

載がある。

「・理由 3

・請求項 5−7

・引用文献等 1−3

・備考

磁界感応センサと磁石からなる回転角検出装置は,本願出願前に周知の

技術(例えば,引用文献3の第4ページ−第6ページ)である。」

本件拒絶理由通知の上記記載は,当初請求項7が拒絶理由(特許法29

条2項に係る「理由3」)の対象であること,磁界感応センサと磁石から

なる回転角検出装置は,本願出願前に周知の技術であったこと,当初請求

項7に係る発明が「引用文献1」(甲1。引用例1と同じ),「引用文献

2」(甲2。引用例2と同じ)及び「引用文献3」(甲3。引用例3と同

じ)に基づいて容易想到である旨を示すものである。

しかしながら,「引用文献1ないし3」(引用例1ないし3)には,当

初請求項7の発明特定事項について開示や示唆はなく,しかも,本件拒絶

理由通知には,当初請求項7に係る発明と引用文献記載の発明との一致点

及び相違点,当該相違点に係る構成の容易想到性に関して,具体的な指摘

がないばかりか,当初請求項7の発明特定事項周知技術やそれに伴う適

宜の設計的事項にすぎないことなどの判断すらしておらず,当初請求項7

に係る発明の進歩性を否定する具体的な論理付けが示されていない。

また,原告は,本件拒絶理由通知に対して,平成24年3月7日付け手




続補正をするとともに,同日付け意見書(本件意見書)を提出し,上記手

続補正により当初請求項7は本件補正前の請求項3となった後,本件拒絶

査定を受けた。

しかしながら,本件拒絶査定における本件補正前の請求項3に係る拒絶

理由は,本件拒絶理由通知と同様であり,本件補正前の請求項3に係る構

成の容易想到性についての具体的な判断は示されていない。

ウ 本件審決は,本願補正発明は引用例1ないし3に加え,周知技術及び設

計的事項に基づいて,容易想到である旨判断した。しかし,新たな周知文

献として「特開2004−317446号公報」(甲4)及び国際公開

3/081182号(甲5)を加え,一般に,引用例3のような「少なく

とも2つのホールセンサ」に磁気収束板を組み合わせることは設計的事項

であると判断したことは,本件拒絶理由通知及び本件拒絶査定に記載はな

く,本件審決で初めて示された新たな拒絶理由である。

しかるところ,原告は,本件審決で示された新たな拒絶理由に対して反

論の機会を与えられていないから,本件審判手続には,特許法159条

項で準用する同法50条に違反する手続違背がある。

エ 被告は,この点に関し,原告が,本件意見書において,当初請求項7に

係る発明の拒絶理由に不備があるとの異議を述べていないことを,本件審

判手続が適法であることの根拠として挙げている。

しかしながら,審査・審判手続の適法性は,拒絶理由通知の記載,その

後の拒絶査定及び審決の記載自体から判断されなければならず,原告が本

件意見書で異議を述べなかったことを,審査・審判手続が適法であること

の根拠や拒絶理由通知の記載に不備がないことの理由とすることはできな

い。

オ 以上によれば,原告は,本件拒絶査定の拒絶理由と異なる新たな拒絶理

由について意見書を提出する機会が与えられなかったから,本件審判手続




には特許法159条2項で準用する同法50条の規定に違反する手続違背

があるというべきであり,本件審決は取り消されるべきである。

取消事由2(本願補正発明の進歩性の判断の誤り)

ア 相違点の看過

本願補正発明の特許請求の範囲(請求項1)の「前記アクチュエータ

(22)は,…前記シャフト(21)上に座し」にいう「座し」との文

言,本願の願書に添付した明細書(以下,図面を含めて,「本願明細書」

という。甲6)の段落【0012】の「アクチュエータは回転軸から離

れて配置されており,伝動装置ないしはベルト駆動部を介してベルトと

接続することができる。しかし有利にはアクチュエータはシャフトに座

し,とりわけシャフトに固定されている。これにより回転軸はアクチュ

エータを貫通して伸長し,前記の伝動装置を省略することができる。」

との記載及び図3(別紙1参照)によれば,本願補正発明においては,

アクチュエータの軸とシャフト軸とが同軸である構成であることを理解

できる。

これに対し,引用例1発明は,「操作軸2とアクチュエータ5の駆動

軸5aとの間の動力伝達を行う動力伝達部6」を有し,「操作軸2」と

「アクチュエータ5の駆動軸5a」がずれており,両軸が同軸である構

成ではない。

したがって,本願補正発明と引用例1発明とは,本願補正発明は,ア

クチュエータの軸とシャフト軸との間に動力伝達部が存在せず,両軸は

同軸であるのに対し,引用例1発明は,操作軸2とアクチュエータ5の

駆動軸5aとの間に動力伝達部6を有し,両軸は同軸ではない点で相違

するといえるが,本件審決は,この相違点を認定せず,相違点を看過し

た誤りがある。

被告は,この点に関し,本願補正発明におけるアクチュエータはシャ




フト上に「座し」という構成の態様は,種々多様であって,一義的に,

アクチュエータの軸とシャフト軸とが同軸であること(軸がずれていな

いこと)を意味するものではなく,本願明細書の図15(「第2の実施

形態」)には,アクチュエータの軸とシャフト軸とが同軸でない例が示

されている旨主張する。

しかしながら,別紙1の図15に示す構成は,本願明細書の段落【0

012】における「アクチュエータは回転軸から離れて配置されており,

伝動装置ないしはベルト駆動部を介してベルトと接続する」例であって,

本願補正発明とは異なる構成であるから,被告の上記主張は失当である。

イ 相違点1の容易想到性の判断の誤り

本件審決は,相違点1について,引用例2(甲2)には,「バイワイヤ

方式の各種装置に適用されるハプティックコントローラであって,そのア

クチュエータ2の駆動軸2aの一端にロータリノブ3が固着され,駆動軸

2aの他端に位置センサ4が固着されており,ロータリノブ3の操作量及

び操作方向に応じた抵抗力や推力を付与するもの」が示されていると認定

し,引用例1発明に引用例2の上記事項(位置センサ等の配置構成)を適

用して,本願補正発明の相違点1に係る構成とすることは当業者が容易に

想到し得たものと認められる旨判断した。

しかしながら,引用例1及び引用例2のいずれにおいても,引用例1

発明に引用例2記載の位置センサ等の配置構成を適用することの示唆等

は存在せず,引用例1発明に引用例2記載の上記配置構成を適用する動

機付けはない。

すなわち,引用例1には,「手動入力装置とこれを用いた車載機器制

御装置」(段落【0001】)に関する技術分野の発明が開示され,一

方,引用例2には,「ハプティックコントローラ」(段落【0001】)

に関する技術分野の発明が開示されているから,引用例1と引用例2の




技術分野が異なっていることは明らかである。実施例を参照しても,引

用例2の発明の実施形態に記載されているのは,車載電気機器の機能調

整手段であって,「ラジオ局の選局」や「ラジオ音量の調整」等に用い

られるハプティックコントローラであるから,本件審決が引用例1発明

として認定した「ギアシフト装置」とは対象とする装置が明確に異なっ

ている。

引用例1発明と引用例2記載の発明とは,操作装置の操作性・信頼性

を向上させることを共通の技術的課題とするものであり,この共通の課

題の解決手段について,一方の技術的事項を他方に適用することは当業

者が想到し得るとしても,課題解決手段と無関係の事項について,一方

に記載の事項を他方に適用することは,何らの技術的な必然性もなく,

動機付けも存在しない。引用例1の図1(別紙2参照)に記載された手

動入力装置や,引用例2に従来技術として示された図9(別紙3参照)

のハプティックコントローラについて,引用例1及び引用例2には,位

置センサの配置についての技術課題は何ら記載されておらず,位置セン

サの配置は,課題解決手段と無関係であるから,その配置等を改変しよ

うとする動機付けは生じ得ない。

したがって,引用例1発明に引用例2の位置センサの配置構成を適用

する動機付けはない。



2)は,前記回転角検出装置(32)と前記操作素子との間の前記シャ

フト(21)上に座し」とは,アクチュエータの軸とシャフトの軸とが

同軸である構成であること意味するが,本件審決は,引用例1発明から

動力伝達部6を除くこと及び引用例1発明の「操作軸2」と「アクチュ

エータ5の駆動軸5a」を同軸とすることの容易性について判断を行う

ことなく,引用例1発明において相違点1に係る本願補正発明の構成と




することは容易想到である旨判断した誤りがある。

被告は,この点に関し,仮に本願補正発明はアクチュエータの軸とシ

ャフトの軸とが同軸である構成であるとしても,動力伝達部を設けてア

クチュエータの軸とシャフト軸線をずらすか,アクチュエータの軸をシ

ャフトと同軸に配置するかという程度のことは,必要な伝達トルクを得

るための減速歯車の要否や,装置全体の所要空間の制限等の観点から適

宜,相互に代替・選択し得る設計的事項にすぎず,本件審決では,同旨

の判断をしている旨主張する。

しかしながら,本件審決は,「検知手段やアクチュエータ」自体の種

類を適宜選択し得ることを判断したにすぎず,動力伝達部を設けてアク

チュエータの軸とシャフト軸線をずらすか,アクチュエータをシャフト

と同軸に配置するかということについては,何ら判断していない。

また,引用例1と引用例2の記載事項を検討しても,引用例1発明は,

ノブ3と動力伝達部6との間に操作軸2が設けられ,アクチュエータ5

の軸が動力伝達部6とアクチュエータ本体の間のみに延在する構成を前

提としているから,センサの一部となるコード板4aはノブ3とアクチ

ュエータ5との間に配置されることとなるが,他方,引用例2の図1(

別紙3参照)には,アクチュエータ2の一端が筐体1に取り付けられた

構造が示されており,筐体1内に取り付け可能なコードホイール4aの

位置として,駆動軸2aのロータリノブ3と反対の側が選択されており,

その前提となる構造及びセンサの配置の変更について開示も示唆もな

い。

したがって,当業者は,両者の配置構成が,適宜,相互に代替・選択

し得るものであると理解することはできず,引用例2記載の位置センサ

等の配置構成を引用例1に適用する動機付けはないから,引用例1のア

クチュエータ5の軸と操作軸2とを同軸にすることは,設計的事項に当




たらない。

そうすると,引用例1及び引用例2の記載から,引用例1における動

力伝達部6を除き,アクチュエータ5の軸と操作軸2とを同軸にする構

成に想到することは,当業者にとって容易であるとはいえないから,被

告の上記主張は理由がない。

以上によれば,引用例1発明において相違点1に係る本願補正発明の

構成とすることは容易想到であるとした本件審決の判断は誤りである。

ウ 相違点2の容易想到性の判断の誤り

本件審決は,相違点2について,「引用例1発明の検知手段ないし引用

例2の位置センサとして引用例3の上記事項を適用することに格別の困難

性はない。」,「少なくとも2つのホール素子に磁気収束板を組み合わせ

たセンサ手段」は周知である,「一般に,引用例3のような『少なくとも

2つのホールセンサ』に磁気収束板を組み合わせることは適宜なし得る設

計的事項にすぎない。」との認定判断に基づいて,「以上のようにしたも

のは,実質的に,本願補正発明の相違点2に係る上記事項を具備している

ということができる。」として,引用例1発明において相違点2に係る本

願補正発明の構成とすることは容易想到である旨判断しているが,以下の

とおり,本件審決の判断は誤りである。

引用例3記載の事項を検知手段として適用することの判断の誤り

引用例3記載の特許請求の範囲の請求項1ないし3,引用例3の「こ

の場合の欠点は,この構造形態が付加的なインクリメントセンサのため

に広い所要スペースを必要とすることである。(4頁12行〜13行)
」 ,

「前記ローターの位置に依存してそのつど電気信号を送出するように構

成されて解決される。」(19行〜21行)との記載事項によれば,引

用例3に開示されている技術的思想は,「モータ構成要素のロータ」を

直径方向で磁化されているディスクとし,センサ(ホールセンサ)とと




もに,位置―電気信号の変換器(すなわち,回転角検出装置)を構成す

ることである。

また,引用例3には,モータ構成要素とは別の検知手段に,直径方向

で磁化されているディスクとホールセンサからなる構成を適用すること

の開示はない。

これに対して,本願補正発明においては,モータ構成要素に相当する

「アクチュエータ(22)」と「回転角検出装置(32)」とは,互い

に別の構成要素である。

したがって,引用例1発明と引用例3に開示されている技術的思想

基づいて,本願補正発明の回転角検出装置(32)の構成に想到するこ

とはできない。

また,引用例3の上記記載事項によれば,引用例3においては,「付

加的なインクリメントセンサのために広い所要スペースを必要とするこ

と」(12行〜13行)は従来技術の欠点として排除されているから,

引用例1発明の「検知手段」に引用例3の構造(直径方向で磁化されて

いるディスク)を適用することには,阻害要因がある。

以上によれば,本件審決における「引用例1発明の検知手段ないし引

用例2の位置センサとして引用例3の上記事項を適用することに格別の

困難性はない。」との判断は誤りであるから,上記認定に基づいた相違

点2の容易性の判断も誤りである。

周知技術の認定の誤り

本件審決は,「少なくとも2つのホール素子に磁気収束板を組み合わ

せたセンサ手段は,例えば,特開2004−317446号公報(特に

【0001】〜【0007】,【0021】〜【0025】),国際公

開03/081182号(特に第8ページ第11〜19行)に示されて

いるように周知」であると認定した。




しかしながら,本件審決は,相違点2として,本願補正発明の「前記

磁界感応センサ(31)は少なくとも2つのホール効果素子(33,3

4)を有し,該ホール効果素子は強磁性ディスク(35)により部分的

に覆われている」ことを挙げており,単に「少なくとも2つのホール素

子に磁気収束板を組み合わせたセンサ手段」が周知であるとしても,本

願補正発明の「ホール効果素子は強磁性ディスク(35)」により「部

分的に覆われている」との上記構成までもが周知であるとはいえない。

また,前記特開2004−317446号公報(甲4)には,「強磁性

体からなる磁気収束板と,該磁気収束板から漏洩する磁場を検知するた

めの磁電変換素子とからなる磁気センサにおいて,前記磁気収束板が,

前記磁電変換素子を含む基板上に形成された強磁性体粉末の成型体から

なることを特徴とする磁気センサ。」(請求項1)が記載されており,

磁気収束板と磁電変換素子が記載されているものの,当該磁気収束板1

は,磁電変換素子(ホール素子)4〜7がその一方の面に設けられた円

型板であるから(別紙5の図1参照),「該ホール効果素子は強磁性デ

ィスクにより部分的に覆われている」ことを開示するものではない。

さらに,本件審決が挙げた国際公開03/081182号(甲5)に

は,円形の磁気収束板MCの周辺端下部にホール素子HEを配置するこ

とが開示されているものの(別紙6の図2,図16A),甲5には「磁

場のX方向成分およびY方向成分を検出するため,少なくとも2対のホ

ール素子が必要である。本実施の形態では,X方向成分を検出するため

に4個,Y方向成分を検出するために4個のホール素子を備えている。」

(8頁12行〜15行)との記載がある。本願補正発明の「少なくとも

2つのホール効果素子」は,2つのホール効果素子で磁界検出が可能で

あるものであるが,甲5記載の角度検出装置は,少なくとも「2対」の

ホール素子が必要であるから,甲5は,「前記磁界感応センサ(31)




は少なくとも2つのホール効果素子(33,34)を有」することを開

示するものではない。

したがって,本件審決が挙げた甲4及び甲5を参照しても,相違点2

に係る本願補正発明の構成である「磁界感応センサは少なくとも2つの

ホール効果素子を有し,該ホール効果素子は強磁性ディスクにより部分

的に覆われている」ことが周知であるとはいえないから,本件審決にお

ける周知技術の認定には誤りがある。

「少なくとも2つのホールセンサ」に磁気収束板を組み合わせること

容易想到性の判断の誤り

引用例3(甲3)記載のセンサ構造は,プリント基板8にホールセン

サ9,10を設けたものである(別紙4の図1参照)が,平坦なプリン

ト基板に個別素子としてのホールセンサを配置した場合,一般にホール

センサが突出する構造となることは自明である。

これに対し,甲5には,角度検出器として,「Si基板上に,信号処

理回路とともに形成されたホール素子上に,円形の磁性体材料からなる

ディスク(磁気収束板)を貼り付ける」(22頁12行〜13行)もの

が例示され,別紙6の図16Bを参照すると,ホールセンサに磁気収束

板(強磁性ディスク)を組み合わせる場合,ホールセンサが設けられた

平坦な基板上に磁性体材料からなる円形ディスク(磁気収束板)を貼り

付けることが開示されている。

しかしながら,このような平坦な基板面に貼り付けた磁気収束板を,

引用例3のプ

とは極めて困難である。

また,甲4には,磁気収束板と磁電変換素子とからなる磁気センサが

開示されているものの,当該磁気収束板は,ホール素子よりも厚い円型

の成型体(別紙5の図1)であって,酸化雰囲気で焼成して形成された




ものであるから(段落[0023]),このような焼成が必要な厚い磁

気収束板を,引用例3のホールセンサと直ちに組み合わせることはでき

ない。

そうすると,甲4及び甲5に,少なくとも2つのホール素子に磁気収

束板を組み合わせたセンサ手段が記載されているとしても,引用例3の

ほか,甲4及び甲5には,引用例3記載のプリント基板上に設けられた

ホールセンサに,磁気収束板を組み合わせることについて,具体的な開

示や示唆がないから,引用例3記載の「少なくとも2つのホールセンサ」

に磁気収束板を組み合わせることは,当業者が適宜なし得る設計的事項

であるということはできない。

また,引用例3に係る発明は,モータ構成要素をコンパクトに構造化

するものであって,ホールセンサ9,10がモータ構成要素の巻回体下

部7に近接して設けられているが,ホールセンサに磁気収束板等の更な

る構成を付加することは,装置の小型化に反するものであり,阻害要因

となり得る。

したがって,本件審決における「一般に,引用例3のような「少なく

とも2つのホールセンサ」に磁気収束板を組み合わせることは適宜なし

得る設計的事項にすぎない。」との認定判断は誤りである。

判断の遺漏等

本件審決は,引用例1発明において,相違点2に係る本願補正発明の

「前記磁界感応センサ(31)は少なくとも2つのホール効果素子(3

3,34)を有し,該ホール効果素子は強磁性ディスク(35)により

部分的に覆われている」ことの構成を適用することの容易想到性につい

ての判断を行っていないから,本件審決には,判断の遺漏がある。

また,仮に本件審決に上記の判断の遺漏がないとしても,引用例1発

明から,相違点2に係る本願補正発明の構成を導くためには,引用例1




発明の検知手段4のコード板4aを引用例3の直径方向で磁化されてい

るディスク(磁石)に代えた上で,当該ディスク(磁石)をノブと反対

側のシャフトの端部に移設して固定し,さらに,引用例1発明の検知手

段4の発光素子4b及び受光素子4Cをホールセンサ(磁界感応センサ)

に代えた上で,ホールセンサを前記ディスク(磁石)に対し回転軸に沿

ってずらした配置とし,さらに,ホールセンサを部分的に覆う配置に強

磁性ディスクを追加するとの改変が必要である。これは,引用例1発明

に,引用例2記載の技術事項を適用し,その結果として得られた新たな

発明について,引用例1及び2に記載されていない技術課題を解決する

ため,引用例3記載の技術事項を適用して,更に新たな発明を創出し,

その新たな発明に対して更に他の文献に記載された技術事項を適用する

といった作業を繰り返すものであり,このように各引用例に記載も示唆

もない改変を繰り返すことで,引用例に記載された構成を多段階に改変

し,本願補正発明の構成に至ることは,当業者であっても極めて困難で

ある。

小括

以上によれば,引用例1発明において相違点2に係る本願補正発明の

構成とすることは容易想到であるとした本件審決の判断は誤りである。

エ まとめ

以上のとおり,本件審決は,相違点を看過し,相違点1及び相違点2の

容易想到性の判断を誤った結果,本願補正発明の進歩性の判断を誤り,本

願補正発明が独立特許要件を満たさないとして本件補正を却下した判断の

誤りがあり,本件審決は,違法であるから,取り消されるべきである。

2 被告の主張

取消事由1に対し

ア 本件拒絶理由通知(甲7)には,当初請求項7が拒絶理由(特許法29




条2項に係る「理由3」)の対象であること,当初請求項7に係る発明が

引用文献1ないし3(甲1ないし3)に基づいて容易想到である旨が明記

されている。

原告は,本件拒絶理由通知に対して,平成24年3月7日付け手続補正

をするとともに,本件意見書(乙1)を提出した。本件意見書には,「【

意見の内容】1.…この出願の請求項1−15に係る発明は,特許法第2

9条第2項の規定により特許を受けることができないと認定されました(

理由3)。出願人は,この意見書と同日付けで提出致します手続補正書に

おいてこの出願を補正し,この発明の要旨を一層明確にした上で,以下の

通り意見を申し述べます。」との記載があるが,当初請求項7に係る発明

の拒絶理由に何らかの不備があるなどの異議は述べていない。

イ 本件拒絶理由通知では,当初請求項5ないし7を括って備考欄で拒絶理

由の要点を指摘している。確かに,周知技術として例示されている「引用

文献3」(引用例3)には,直径方向に磁化されたロータからの磁束をホ

ールセンサ9,10で捕捉して回転角度を算出する角度センサが示されて

いるが,ホールセンサ9,10が強磁性ディスクにより部分的に覆われて

いることまでの開示はない。

しかしながら,磁気センサにおいて,磁石等から発生する磁束を効率良

く捕捉するために,導磁束,集磁束する「磁気収束板」あるいは「磁場コ

ンセントレータ」などと呼ばれる,当初請求項7に係る発明の「強磁性デ

ィスク」に相当する部材を設けることは,国際特許分類(IPC)のG0

1R33/02(G01「測定;試験」−サブクラスR「電気的変量の測

定;磁気的変量の測定」−メイングループ33「磁気的変量を測定する計

器または装置」−サブグループ02「磁界または磁束の方向または大きさ

の測定」 を細展開した国内分類としてFI
) 「G01R33/02 V 導

磁束,集磁束」が存在し(乙2),かつ,当該分類に属する特許文献も多




数(2005年(平成17年)以前で約60件)あること(乙3)から把

握できるように,常套手段である。

また,特に引用例3のように,磁気センサとして要所にのみ点在するホ

ールセンサ(引用例3の場合は90度間隔で2つ)を用いた場合には,局

所的に磁束を収束することが必要不可欠であり,ホールセンサに磁束が通

過するように磁気収束板を配置することも当然のことである。そして,回

転する磁石の磁束を磁気収束板で向きを変更しホール素子で捕捉する場合

に,磁束が該磁気収束板の端部付近に集中して流れることは,本件審決に

おいて例示している甲5の図16B(別紙6参照),特開2002−71

381号公報(乙4)の図2及び図4(磁場コンセントレータ3,ホール

効果素子2.1,2.4,磁力線13)(別紙7参照),特開2005−

98823号公報(乙5)の図10(磁気収束板1002,ホール素子9

02,904)(別紙8参照)に示されるように,技術常識である。

さらに,磁束を確実に捕捉するためには,ホールセンサの感度特性を考

慮しつつ,磁気収束板に対するホール素子の配置を決めるが,ホール素子

が磁気収束板により部分的に覆われていることも,甲5の図16A(別紙

6参照),乙5の図9(磁気収束板1002,ホール素子902,904)

(別紙8参照)に加え,特開2004−158668号公報(乙6)の段

落【0028】及び図1,図5(B)及び図7(磁気収束板4,化合物半

導体素子2)(別紙9参照)に示されているように普通の構造である。

本件拒絶理由通知では,当初請求項7において特定されているすべての

事項について逐一詳細な根拠を具体的に示しているわけではないが,それ

は,当該事項が単なる実施態様・具体例,あるいは周知事項の追加,それ

に伴う適宜の設計的事項にすぎないからであり,そのことは,当業者にと

って明らかである。

一方,本願明細書(甲6)の段落【0016】の記載は,当初請求項7




の「前記磁界感応センサ(31)」が「少なくとも2つのホール効果素子

(33,34)を有し」ているという事項及び「該ホール効果素子は強磁

性ディスク(35)により部分的に覆われている」という事項は,いずれ

も,当該センサの種類・構造等に関して,そのような事項が好適な設計的

事項にすぎないことを示すものであり,また,本願明細書には,上記事項

が,従来技術のある特定の課題を解決するものであるとか,従来技術に対

して格別の技術的意義を有するものであることについて特に説明はない。

ウ 以上によれば,原告は,本件拒絶理由通知を受け,当初請求項7に係る

発明の拒絶理由を認識しており,手続上の事由についても,実体上の事由

についても,意見があれば適時に反論し得たものといえる。

そして,当初請求項5ないし7において特定されている事項は,引用例

3に示されているような周知技術の追加及びそれに伴う適宜の設計的事項

であることは,本件拒絶理由通知,本件拒絶査定及び本件審決において少

なくとも趣旨は一貫して示しており,本件審決で示した判断は,原告が主

張するような本件拒絶査定の拒絶理由とは異なる新たな拒絶理由には該当

しない。

また,本件審決は,周知技術について新たな文献を例示しているとして

も,それは,当業者の知見・常識を確認し,原告の検討の便宜のためであ

り,新たな周知文献の追加的例示をもってそれだけで手続違背となるもの

ではない。

したがって,原告主張の取消事由1は理由がない。

取消事由2に対し

ア 相違点の看過に対し

本願補正発明の特許請求の範囲の請求項1には,「前記アクチュエー

タ(22)は,…前記シャフト(21)上に座し,」との記載があるが,

シャフトは回転軸とは異なり,幾何学的な線ではなく,アクチュエータ




と同様に物理的空間的な物体であるから,アクチュエータはシャフト上

に「座し」という構成の態様は,一般的な用語の理解として,種々多様

であって,一義的に,アクチュエータの軸とシャフト軸とが同軸である

こと(軸がずれていないこと)を意味するものではない。

一方,本願明細書には,アクチュエータがシャフトに座していること

は,一具体例,適宜の設計例として示されており(段落【0012】,

【0013】,【0045】),アクチュエータをシャフトに固定する

例に限定されるものではない。また,本願明細書の図15(別紙1参照)

には,「第2の実施形態」として,アクチュエータが回転軸から離れて

配置されており,伝動装置ないしはベルト駆動部を介してベルトと接続

する例が記載されており,アクチュエータの軸とシャフト軸とが同軸で

ない例が示されている。

したがって,本願補正発明におけるアクチュエータはシャフト上に「

座し」という構成の態様は,種々多様であって,一義的に,アクチュエ

ータの軸とシャフト軸とが同軸であること(軸がずれていないこと)を

意味するものではないから,アクチュエータの軸とシャフト軸とが同軸

であるかどうかは,本願補正発明と引用例1発明との相違点となるもの

ではない。

仮に本願補正発明におけるアクチュエータはシャフト上に「座し」と

いう構成は,アクチュエータの軸とシャフト軸とが同軸であることを意

味するとしても,本件審決は,本願補正発明は,「前記シャフト(21)

は,前記回転角検出装置(32)と前記操作素子(4)との間で回転軸

(5)に沿って伸長しており」,「前記回転角検出装置(32)は,前

記シャフト(21)の第2の端部(29)に配置され」,「前記アクチ

ュエータ(22)は,前記回転角検出装置(32)と前記操作素子との

間の前記シャフト(21)上に座し」ているのに対し,引用例1発明は,




「前記操作軸2は,前記アクチュエータ5と前記ノブ3との間で延びて」

いる点を相違点1として認定し,引用例1発明に相違点1に係る本願補

正発明の構成を適用することの容易想到性の判断をしているから,原告

主張の相違点の看過はない。

イ 相違点1の容易想到性の判断の誤りに対し

原告は,引用例1発明に引用例2の位置センサ等の配置構成を適用す

る動機付けはない旨主張する。

しかしながら,引用例2の段落【0044】には,引用例2のハプテ

ィックコントローラをトランスミッションのギアシフト装置へ適用する

ことが明示されているので,引用例1発明と引用例2の記載事項とは,

技術分野が共通している。

また,引用例1の段落【0002】及び【0010】の記載と引用例

2の段落【0001】及び【0011】の記載に鑑みると,引用例1発

明と引用例2の記載事項とは,回転ノブ,回転に関与するアクチュエー

タ,回転位置のセンサ等を備えた操作装置において,操作性・信頼性等

を向上させるという技術的課題を解決する点においても共通している。

本件審決が,「引用例1発明の『操作軸2』は『前記アクチュエータ

5と前記ノブ3との間で延びて』いる。このように,『ノブ』,『検知

手段』,及び『アクチュエータ』が『操作軸2』に沿ってその順に並ぶ

配置構成は引用例1の図1等に示されているが,図1等は『実施形態例

』にすぎず,これに限られるものではない。」と述べているように,一

般にセンサの配置構成は,その機能を損なわない限り,検知手段に及ぼ

すノイズや塵等の発生源の有無や,アクチュエータに給電するためのケ

ーブルの取り回し,所用空間の制限等に応じて自由にレイアウトできる

ものであるから,引用例1及び引用例2に接した当業者であれば,位置

センサ等の配置構成は,適宜,相互に代替・選択し得る設計的事項にす




ぎないことを理解する。

このように,引用例1発明に引用例2の位置センサ等の配置構成を引

用例1発明に適用することに関し,引用例1及び2には示唆があるとい

えるから,引用例1発明に引用例2の位置センサ等の配置構成を適用す

ることについての動機付けは十分に認められ,引用例1発明において引

用例2の記載事項を適用して,回転角検出装置を操作軸(シャフト)の

端部の一方に固定することは,当業者が容易に想到することができたも

のといえる。

したがって,原告の上記主張は理由がない。

次に,原告は,本件審決は,引用例1発明から動力伝達部6を除くこ

と及び引用例1発明の「操作軸2」と「アクチュエータ5の駆動軸5a」

を同軸とすることの容易性について判断を行うことなく,引用例1発明

において相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは容易想到であ

る旨判断した誤りがある旨主張する。

しかしながら,前記アのとおり,本願補正発明におけるアクチュエー

タはシャフト上に「座し」という構成の態様は,種々多様であって,一

義的に,アクチュエータの軸とシャフト軸とが同軸であること(軸がず

れていないこと)を意味するものではない。

また,仮に本願補正発明におけるアクチュエータはシャフト上に「座

し」という構成は,アクチュエータの軸とシャフト軸とが同軸であるこ

とを意味するとしても,動力伝達部を設けてアクチュエータの軸とシャ

フト軸線をずらすか,アクチュエータの軸をシャフトと同軸に配置する

かという程度のことは,必要な伝達トルクを得るための減速歯車の要否

や,装置全体の所要空間の制限等の観点から適宜,相互に代替・選択し

得る設計的事項の程度にすぎないものであって,本件審決では,「所要

特定・要求仕様に応じて各種の検知手段やアクチュエータの性能・構造




・寸法等を考慮して適宜選択し得るものである」として同旨の判断をし

ている。

したがって,原告の上記主張は理由がない。

以上によれば,引用例1発明において相違点1に係る本願補正発明の

構成とすることは容易想到であるとした本件審決の判断に原告主張の誤

りはない。

ウ 相違点2の容易想到性の判断の誤りに対し

引用例3記載の事項を検知手段として適用することの判断の誤りに対



a 原告は,本件審決における「引用例1発明の検知手段ないし引用例

2の位置センサとして引用例3の上記事項を適用することに格別の困

難性はない。」との判断は誤りである旨主張する。

しかしながら,回転角検出装置として,光学的なものから磁気的な

回転角検出装置に変更することは,設計上の選択的事項にすぎないこ

とである。

また,回転軸(シャフト)の端部に磁石を装着し,磁気センサより

磁束を捕捉することで回転角度を検出する磁気的な回転角検出装置

は,本件審決で例示した甲5の図16A(別紙6参照)に加え,乙4

の図2(別紙7参照),特開昭62−237302号公報(乙7)の

第1図(出力軸2,マグネット部4,磁気センサ5)(別紙10参照),

特開平4−66813号公報(乙8)の第7図(回転軸2,永久磁石

5,磁気抵抗素子7)(別紙11参照)に示されるような,慣用技術

である。

そうすると,引用例1発明のロータリエンコーダの光学的な回転角

検出装置から磁気的な回転角検出装置に変更する際には,引用例1発

明のロータリエンコーダのコード板に代えて磁石を取り付ける構造に




変更することは自然なことである。

b 原告は,この点に関し,引用例3のローター(ロータ)はモータ構

成要素である等の点から,引用例1発明と引用例3の技術思想に基づ

いて,本願補正発明の回転角検出装置の構成に想到することはできな

い旨主張する。

しかしながら,一般に,刊行物には,その請求項に係る発明のほか,

従来技術,具体例等,多数の技術事項が開示されており,刊行物から

理解・把握される事項が当該刊行物の請求項に係る発明に限られるも

のではないし,また,その請求項に係る発明以外の技術事項の応用・

適用に当たり当該発明による思想的技術的制約を受けるものではな

く,他の分野・装置への応用・適用や更なる改良を目指すのは当業者

が普通に行う創作活動である。

そして,引用例3における「それ故に本発明の課題は,前述した公

知技術の欠点に鑑み,所要スペースが僅かで済むような相応の操作装

置を提供することである。前記課題は本発明により,変換器がモータ

構成要素のローターとセンサからなっており,該センサは前記ロータ

ーの位置に依存してそのつど電気信号を送出するように構成されて解

決される。モータ構成要素のロータは,さらに変換器の角度センサの

付加的な機能を充たす。それにより本発明によって得られる利点は,

変換器に対して付加的なセンサのみを必要とするだけで済むことであ

る。直径方向に磁化されたディスクとして構成されたロータは,ロー

タに対する簡単で安価な解決手段となる。少なくとも2つのホールセ

ンサとの結合において,直径方向に磁化されたディスクの磁界をホー

ルセンサに引き起こす電圧からは360°の範囲で正確な回転角度が

求められる。これに対しては2つのホールセンサで完全にまかなえ

る。」(4頁14行〜25行)との記載によれば,「直径方向に磁化




されたディスクとして構成された」「ロータ」がホールセンサに対す

る磁石に相当し,磁石とホールセンサとからなる回転角検出装置が開

示されていることは技術的に明らかである。ロータがモータ構成要素

であるのは,兼用してスペースを節減するためであって,このような

更なる創作・工夫を付加したからといって,そのような創作の付加さ

れていない単なる磁石とホールセンサとからなる検出装置という技術

事項が,当業者に開示されていないとはいえない。

また,一般に,主引用発明に副次的な発明・技術事項を適用する場

合,相互の構造や機能の調整・適応のために相応の合理的な構造変更

や改変を行うことは当然のことであり,それを考慮することなく,形

状・構造を原形状・原寸そのままとし,付随的要素・装置を取り付け

たままで,主引用発明の構成に組み合わせようとする当業者がいると

は通常考えられない。

c 以上によれば,本件審決が,「引用例1発明の検知手段ないし引用

例2の位置センサとして引用例3の上記事項を適用することに格別の

困難性はない。」として,引用例1発明に引用例3に開示されている

検出装置を適用することに格別の困難性はないと判断したことに誤り

はない。

周知技術の認定の誤りに対し

原告は,本件審決は,甲4及び甲5から,「少なくとも2つのホール

素子に磁気収束板を組み合わせたセンサ手段」が周知であると認定した

が,甲4及び甲5を参照しても,相違点2に係る本願補正発明の構成で

ある「磁界感応センサは少なくとも2つのホール効果素子を有し,該ホ

ール効果素子は強磁性ディスクにより部分的に覆われている」ことが周

知であるとはいえない旨主張する。

しかしながら,甲4には,磁気収束板11,13が,甲5には,磁気




収束板MCが,それぞれホール素子と組み合わされていることが開示さ

れている。

また,甲5には,別紙6の図2等に示すように,少なくとも2つのホ

ール素子が磁気収束板により部分的に覆われている構成が開示されてい

る。



覆われていることは,普通の構造である。

したがって,原告の上記主張は理由がない。

「少なくとも2つのホールセンサ」に磁気収束板を組み合わせること

容易想到性の判断の誤りに対し

a 原告は,本件審決における「一般に,引用例3のような『少なくと

も2つのホールセンサ』に磁気収束板を組み合わせることは適宜なし

得る設計的事項にすぎない。 との認定判断は誤りである旨主張する。




センサにおいて磁気収束板を用いることは常套手段であって,当然考

慮に入れるべき設計事項である。



われていることは,普通の構造であるから,当然考慮に入れるべき設

計事項である。



技術事項を適用する場合,相互の構造や機能の調整・適応のために相

応の合理的な構造変更や改変を行うことは当然のことであり,引用例

1発明に引用例3記載のホールセンサの構成をそのまま適用するもの

ではない。

したがって,原告の上記主張は理由がない。

b 原告は,この点に関し,引用例3に係る発明は,モータ構成要素を




コンパクトに構造化するものであって,ホールセンサ9,10がモー

タ構成要素の巻回体下部7に近接して設けられているが,ホールセン

サに磁気収束板等の更なる構成を付加することは,装置の小型化に反

するものであり,阻害要因となり得る旨主張する。

タな

いしセンサの省スペース化・小型化は,他の所要特性・要求仕様に関

係なく無条件に最優先されるものではなく,引用例3の上記記載は,

センサの感度向上等に寄与する「磁気収束板」等を例外なく絶対に設

けないという趣旨でないことは明らかである。

このような磁気収束板等を設けるかどうかは,センサの用途や使用

状況等に応じた所要の性能・特性に鑑み,適宜設計する事項であって,

引用例3の上記記載が,「磁気収束板」を設けることに対する無条件

の絶対的な阻害事由となるものではない。また,仮に引用例3におい

て「磁気収束板」を設けることが阻害的であるとしても,引用例1発

明において阻害的となるものではない。

したがって,原告の上記主張は理由がない。

判断の遺漏等に対し

a 原告は,本件審決は,引用例1発明において,相違点2に係る本願

補正発明の「前記磁界感応センサ(31)は少なくとも2つのホール

効果素子(33,34)を有し,該ホール効果素子は強磁性ディスク

(35)により部分的に覆われている」ことの構成を適用することの

容易想到性についての判断を行っていないから,本件審決には,判断

の遺漏がある旨主張する。

しかしながら,本願明細書の段落【0035】には,「ホール効果

素子は強磁性ディスク(35)により部分的に覆われている」という

事項に関し,「図5から分かるように,ホール効果素子33と34は




強磁性ディスク35により部分的に覆われている。この強磁性ディス

クは2つのホール効果素子33と34の間の間隔をバイパスしてい

る。」との記載があるが,これは,単にそのような構成にしたという

一例を記載しているにすぎず,本願明細書には,従来技術の課題や,

その事項により当該課題をどのようにして解決しているのかというよ

うなことは何も記載されていないから,単なる慣用技術の追加ないし

適宜の設計事項であるといわざるを得ない。



覆われていることは,普通の構造であるから,当然考慮に入れるべき

設計事項である。

そして,本件審決は,このような設計的事項の付加も含めて,「少

なくとも2つのホール素子に磁気収束板を組み合わせたセンサ手段は

…周知であり,一般に,引用例3のような『少なくとも2つのホール

センサ』に磁気収束板を組み合わせることは適宜なし得る設計的事項

にすぎない。以上のようにしたものは,実質的に,本願補正発明の相

違点2に係る上記事項を具備しているということができる。」として

同旨の判断をしたものである。

したがって,原告の上記主張は理由がない。

b 原告は,引用例1発明から,相違点2における本願補正発明の構成

を導くためには,引用例に記載された構成を多段階に改変し な け

れ ば な ら な い が ,各引 用 例 に 記 載 も 示唆も な い 改 変 を 繰 り 返 す

こ と で 本 願 補 正 発明の 構 成 に 至 る こ とは, 当 業 者 で あ っ て も 極

めて困難である旨主張する。

し か し な がら , 主引用発明に副次的な発明・技術事項を適用する

場合,相互の構造や機能の調整・適応のために相応の合理的な構造変

更や改変を行うこと,さらに,センサの選択等の好適な選択・設計変




更を行うことは当然のことであり,多段階に改変するという一事をも

って必然的に容易想到といえないことに帰するものではない。

したがって,原告の上記主張は理由がない。

小括

以上によれば,引用例1発明において相違点2に係る本願補正発明の

構成とすることは容易想到であるとした本件審決の判断に原告主張の誤

りはない。

エ まとめ

以上によれば,本願補正発明は,引用例1ないし3に記載された発明及

び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたも

のであるから,本願補正発明が独立特許要件を満たさないとして本件補正

を却下した本件審決の判断に誤りはない。

したがって,原告主張の取消事由2は理由がない。

第4 当裁判所の判断

1 取消事由1(手続違背)について

原告は,@相違点2に係る本願補正発明の構成は,本件出願時の特許請求

の範囲の請求項7(当初請求項7)に記載されていた構成であり,本件拒絶

理由通知には,当初請求項7が拒絶理由(特許法29条2項に係る「理由3」)

の対象であること,磁界感応センサと磁石からなる回転角検出装置は,本願

出願前に周知の技術であったこと,当初請求項7に係る発明は「引用文献1

ないし3」(引用例1ないし3)に基づいて容易想到である旨が示されてい

たが,「引用文献1ないし3」(引用例1ないし3)には,当初請求項7の

発明特定事項について開示や示唆はなく,しかも,本件拒絶理由通知には,

当初請求項7の発明特定事項周知技術やそれに伴う適宜の設計的事項にす

ぎないことなどの判断すらしておらず,当初請求項7に係る発明の進歩性

否定する具体的な論理付けが示されていなかった,A本件拒絶査定における




本件補正前の請求項3(当初請求項7に相当)に係る拒絶理由は,本件拒絶

理由通知と同様であり,本件補正前の請求項3に係る構成の容易想到性につ

いての具体的な判断は示されていなかった,B本件審決は,本願補正発明は

引用例1ないし3に加え,周知技術及び設計的事項に基づいて,容易想到で

ある旨判断したが,新たな周知文献として甲4及び甲5を加え,一般に引用

例3のような「少なくとも2つのホールセンサ」に磁気収束板を組み合わせ

ることは設計的事項である旨の判断は,本件拒絶理由通知及び本件拒絶査定

に記載はなく,本件審決で初めて示された新たな拒絶理由である,C原告は,

本件拒絶査定の拒絶理由とは異なる新たな拒絶理由に対して反論の機会を与

えられていないから,本件審判手続には,特許法159条2項で準用する同

50条に違反する手続違背がある旨主張するので,以下において判断する。

ア そこで検討するに,証拠(甲6,7,9,乙1)によれば,

@当初請求項7の特許請求の範囲の記載は,

「【請求項7】

請求項5または6記載のシフト装置において,

前記磁界感応センサ(31)は少なくとも2つのホール効果素子(33,

34)を有し,該ホール効果素子は強磁性ディスク(35)により部分的

に覆われている,ことを特徴とするシフト装置。」

(甲6)というものであり,当初請求項7は,相違点2に係る本願補正発

明の構成に相当すること,

A本件拒絶理由通知(甲7)には,

「3.この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は

外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回

線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明

の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をするこ

とができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受




けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)



・理由 3

・請求項 5−7

・引用文献等 1−3

・備考

磁界感応センサと磁石からなる回転角検出装置は,本願出願前に周知の

技術(例えば,引用文献3の第4ページ−第6ページ)である。」(1頁

〜2頁),

「 引 用 文 献 等 一 覧

1.特開2002−189558号公報

2.特開2003−162328号公報

3.特表2001−518188号公報…」(3頁)

との記載があること,

B原告は,本件拒絶理由通知に対して,平成24年3月7日付け手続補正

(乙1)をし,上記手続補正により,当初請求項7は本件補正前の請求項

3に補正されたこと,

C本件拒絶査定(甲9)には,

「この出願については,平成23年11月30日付け拒絶理由通知書に記

載した理由3(第29条第2項)によって,拒絶をすべきものです。

なお,意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが,拒絶理由を覆す

に足りる根拠が見いだせません。」(1頁),

「・請求項2−11について

上記の拒絶理由通知書の請求項4,7−15の備考欄を参照。」(2頁)

との記載があること




上記認定事実によれば,本件拒絶理由通知には,当初請求項5ないし7

に係る発明は,引用文献1(甲1),引用文献2(甲2)及び引用文献3

(甲3)と引用文献3に例示された本願出願前の周知技術(磁界感応セン

サと磁石からなる回転角検出装置)に基づいて当業者が容易に発明をする

ことができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受け

ることができないことが示されていること,本件拒絶査定における本件補

正前の請求項3(当初請求項7に相当)に係る拒絶理由は,本件拒絶理由

通知と同じであることが認められる。

イ これに対し,本件審決は,前記第2 本願補正発明は,

本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である引用例1(甲1),引用

例2(甲2)及び引用例3(甲3)に記載された発明及び周知事項に基づ

いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29

条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないと

して,本件補正を却下する旨判断したものであり,本件審決が認定した周

知技術は,「少なくとも2つのホール素子に磁気収束板を組み合わせたセ

ンサ手段」というものであり,その周知技術の例示として甲4及び甲5を

引用している。

ウ 前記ア及びイを前提に,本件拒絶理由通知における当初請求項7に係る

発明の拒絶理由と本件審決における本願補正発明に係る拒絶理由(本件補

正却下の理由)を対比すると,@両者は,同一の刊行物である引用文献1

ないし3(引用例1ないし3)と周知技術に基づいて当業者が容易に発明

をすることができたものであることを拒絶理由とするものである点で共通

すること,Aその周知技術が,本件拒絶理由通知では「磁界感応センサと

磁石からなる回転角検出装置」であるのに対し,本件審決では「少なくと

も2つのホール素子に磁気収束板を組み合わせたセンサ手段」である点で

差異があるが,「少なくとも2つのホール素子に磁気収束板を組み合わせ




たセンサ手段」は,「磁界感応センサと磁石からなる回転角検出装置」に

含まれるといえることからすると,本件審決における本願補正発明に係る

拒絶理由は,本件拒絶理由通知における当初請求項7に係る発明の拒絶理

由と実質的に同一であり,新たな拒絶理由に当たらないというべきである。

そして,本件拒絶査定における本件補正前の請求項3(当初請求項7に

相当)に係る拒絶理由は,本件拒絶理由通知と同じであるから,本件審決

における本願補正発明に係る拒絶理由は,本件拒絶査定における上記拒絶

理由と異なる新たな拒絶理由に当たらないというべきである。

エ 原告は,これに対し,本件拒絶理由通知には,当初請求項7の発明特定

事項について開示や示唆はなく,しかも,当初請求項7の発明特定事項

周知技術やそれに伴う適宜の設計的事項にすぎないことなどの判断すらし

ておらず,当初請求項7に係る発明の進歩性を否定する具体的な論理付け

が示されていなかったが,本件審決では,新たな周知文献として甲4及び

甲5を加え,一般に,引用例3のような「少なくとも2つのホールセンサ」

に磁気収束板を組み合わせることは設計的事項であると判断し,その論理

付けが示されているから,本件拒絶理由通知の拒絶理由と同様の本件拒絶

査定の拒絶理由とは異なる新たな拒絶理由に当たる旨主張する。

しかしながら,引用例1ないし3と周知技術に基づいて当業者が容易に

発明をすることができることの論理付けとして「設計的事項」であること

を示したからといって,それは,引用例や周知技術を追加又は変更するも

のではないから,新たな拒絶理由に該当するものとはいえない。

また,本件拒絶理由通知には,当初請求項7の発明特定事項周知技術

やそれに伴う適宜の設計的事項にすぎないことなどの具体的な理由は示さ

れていないが,原告は,本件拒絶理由通知に対し,平成24年3月7日付

け手続補正をするとともに,本件意見書を提出していることから明らかな

とおり,反論の機会が与えられており,しかも,本件意見書には,本件拒




絶理由通知の拒絶理由の記載に不備があるため,原告が拒絶理由を理解で

きなかったことをうかがわせる記載はない。

したがって,本件審決における本願補正発明に係る拒絶理由は,本件拒

絶理由通知で示された拒絶理由と同様の本件拒絶査定の拒絶理由と異なる

新たな拒絶理由に当たるものではなく,また,原告はその拒絶理由に対し

て反論の機会を与えられているから,原告の上記主張は理由がない。

以上によれば,本件審判手続に特許法159条2項で準用する同法50条

に違反する手続違背があるとの原告主張の取消事由1は,理由がない。

2 取消事由2(本願補正発明の進歩性の判断の誤り)について

本願明細書の記載事項等について



のとおりである。

イ 本願明細書(甲6)の「発明の詳細な説明」には,次のような記載があ

る(下記記載中に引用する図面については別紙1を参照)。

「【技術分野】

本発明は,車両トランスミッションをシフトするためのシフト装置に

関するものであり,このシフト装置は,回転軸を中心に異なるシフト位

置に回転可能な操作素子と,この操作素子に結合されており,前記回転

軸を中心に回転可能なシャフトと,このシャフトに結合された回転角検

出装置と,アクチュエータと,前記回転角検出装置およびアクチュエー

タに接続された制御装置とを有し,前記回転角検出装置によって,前記

操作素子の回転軸を中心にする回転が検出され,前記アクチュエータに

よって,トルクが前記シャフトに出力され,またはシャフトの回転に対

抗するトルクが出力され,前記制御装置によってアクチュエータから出

力されたトルク,または対抗するトルクが制御され,車両トランスミッ

ションはシフト位置に割り当てられたシフト状態に切り替え可能であ




る。さらに本発明は,このような車両トランスミッションをシフトする

ためのシフト装置の使用法に関する。」(段落【0001】)

「US 6 295 887 B1から,自動車のトランスミッションをシフトするた

めのシフト装置が公知であり,この装置は回転可能に支承されたシフト

エレメントを備え,このシフトエレメントは種々異なるシフト位置に回

転可能である。操作素子とは,制御部と接続されたポテンシオメータが

共働する。これにより車両を電子的に制御してシフトすることのできる

構成が得られる。さらにこの装置は機械的係止部を有し,この機械的係

止部はユーザにシフト位置間の切り替えの際にシフト感覚を通知する。

付加的に機械的係合輪郭が設けられており,この係合輪郭は所定のシフ

ト位置間の切り替えをブロックまたは解除することができる。」(段落

【0002】)

「車両モデルが異なれば,異なる数のシフト位置が所望されることが

ある。したがって種々異なる係止部と係合輪郭も形成しなければならな

い。したがって異なる車両モデルに対しては異なるシフト装置を提供す

べきであり,そのためこのシフト装置のバリエーション数が制限され

る。」(段落【0003】)

「US 6 904 823 B2は車両用の触覚シフト装置を開示しており,この装

置は,2つの回転軸を中心に旋回可能に支承されたシフトレバーと,2

つのアクチュエータとを備え,2つのアクチュエータはベルト駆動部を

介してシフトレバーと結合されており,力をシフトレバーに及ぼすこと

ができる。さらにアクチュエータシャフトには光学的デコーダとして構

成さされたセンサが結合されており,このセンサによってシャフトの回

転を検出することができる。プロセッサが,センサから出力された信号

を読み出し,シフトレバーにより選択されたギヤを検出し,車両を制御

システムによってこのギヤにシフトすることができる。さらにプロセッ




サはセンサ信号から力を検出し,この力をアクチュエータによりシフト

レバーに送出することができる。とりわけこの力を介して,シフトレバ

ーに対する係止を共感することができる。ここで力プロフィールはメモ

リにファイルすることができる。」(段落【0004】)

「シフトレバーと2つのベルト駆動部を支承することは面倒であるの

で,このシフト装置の機構は比較的高価であり,純粋に機械的なシフト

装置と同じような大きさの構造となる。そのため,機械的に簡単に構成

することができ,必要空間が小さいシフト装置が所望される。」(段落

【0005】)

「本発明の課題は,冒頭に述べた形式のシフト装置を改善し,このシ

フト装置が種々異なる数のシフト状態に対して使用可能であり,同時に

必要空間が小さく,低コストで実現できるようにすることである。」(

段落【0008】)

「この課題は本発明により,請求項1記載のシフト装置によって,ま

た請求項15記載のシフト装置の使用法によって解決される。有利な改

善形態は従属請求項に記載されている。」(段落【0009】)

「本発明による車両トランスミッションをシフトするためのシフト装

置は,回転軸を中心に異なるシフト位置に回転可能な操作素子と,この

操作素子に結合されており,前記回転軸を中心に回転可能なシャフトと,

このシャフトに結合された回転角検出装置と,アクチュエータと,前記

回転角検出装置およびアクチュエータに接続された制御装置とを有し,

前記回転角検出装置によって,前記操作素子の回転軸を中心にする回

転が検出され,

前記アクチュエータによって,トルクが前記シャフトに出力され,ま

たはシャフトの回転に対抗するトルクが出力され,

前記制御装置によってアクチュエータから出力されたトルク,または




対抗するトルクが制御され,

車両トランスミッションは,シフト位置に割り当てられたシフト状態

に切り替え可能であり,

前記シャフトは,回転角検出装置と操作素子との間で回転軸に沿って

伸長しており,

前記操作素子は回転ヘッドまたは回転ノブとして構成されており,シ

ャフトの第1の端部に配置されている。」(段落【0010】)

「アクチュエータによって,シフトノブないしは回転ヘッドとして構

成された操作素子の回転の際に操作者に触覚的フィードバックを提供す

ることができ,したがって本発明のシフト装置は機械的係止部無しで使

用することができる。したがって本発明のシフト装置は,シフト位置の

数が種々異なっていても使用することができる。さらに本発明のシフト

装置はスペースを節約して実現可能である。なぜなら,操作素子,シャ

フトおよび回転角検出装置が回転軸に沿って配置されており,したがい

シャフトを回転角検出装置と結合するための伝動装置ないしはベルト駆

動部を省略することができるからである。本発明のシフト装置では,回

転角検出装置はシャフトに空間的に配置され,有利にはシャフトに固定

される。シャフトと固定的に結合された操作素子は別個の部材として構

成することができるか,またはシャフトの第1の端部を形成することが

できる。有利には操作素子は端面側でシャフトに接続される。さらに操

作素子は,シャフトとは反対側に自由端面を備える回転対称体として構

成することができ,この自由端面側を通って回転軸が伸長する。付加的

に回転軸の周囲で隆起部および/または凹部を操作素子に設けることが

でき,これによりグリップを改善することができる。」(段落【001

1】)

「アクチュエータは回転軸から離れて配置されており,伝動装置ない




しはベルト駆動部を介してベルトと接続することができる。しかし有利

にはアクチュエータはシャフトに座し,とりわけシャフトに固定されて

いる。これにより回転軸はアクチュエータを貫通して伸長し,前記の伝

動装置を省略することができる。これにより本発明のシフト装置に対す

る所要空間と必要コストが低減される。アクチュエータはステータと,

これと相対的に回転可能なロータを有することができ,ロータはシャフ

トを包囲するか,またはシャフトを形成し,回転軸を中心に回転可能で

ある。アクチュエータはとりわけ回転角検出装置と操作素子との間に配

置されており,シャフトは有利にはアクチュエータないしはステータを

通って伸長する。アクチュエータは駆動部として,とりわけ電気駆動部,

例えば電気モータとして構成することができる。しかしアクチュエータ

をブレーキとして構成し,このブレーキの制動特性を電気的に制御する

こともできる。」(段落【0012】)

「シャフトは回転角検出装置を通って伸長することができる。しかし

有利には回転角検出装置はシャフトの第2の端部に配置されるか,また

はシャフトを形成する。したがってシャフトはとりわけ完全に回転角検

出装置と操作素子との間に配置されている。」(段落【0013】)

「回転角検出装置は相対値発生器として構成することができる。しか

し有利には回転角検出装置は絶対値発生器として構成され,したがって

操作素子の絶対回転角を確実かつ精確に検出することができる。」(段

落【0014】)

「回転角検出装置は,例えばポテンシオメータまたは光学的インクリ

メント発生器として構成することができる。しかし有利には回転角検出

装置は少なくとも1つの磁界感応センサと,これに対して相対的に回転

可能な少なくとも1つの磁石を有する。磁石はとりわけ永久磁石として

構成されている。磁石はシャフトの第2の端部に,とりわけ端面側に固




定することができ,これに対し磁界感応センサはシャフトに間隔をおい

て配置されている。磁石はとりわけ回転軸に対して直角に磁化されてお

り,および/または磁界感応センサは磁石に対し,回転軸に沿ってずら

して配置されている。センサはとりわけ導体路基板に,磁石に対し間隔

をおいて固定的に配置されている。」(段落【0015】)

「磁界感応センサは例えばホール効果センサまたは磁気抵抗センサと

して構成することができる。しかし有利には磁界感応センサは少なくと

も2つのホール効果素子を有し,これらの素子は相互に間隔をおいて配

置されている。および/またはこれらの素子は強磁性ディスクにより,

有利には磁石に向いた側で部分的に覆うことができる。2つのホール効

果素子は,とりわけその感応面に関して相互に直角に配向することがで

きる。磁界感応センサのこの構成により,回転角の絶対値を高精度で検

出することができる。」(段落【0016】)

「アクチュエータは制御装置により,アクチュエータからシャフトに

出力されるトルクまたはシャフトの回転に対抗するトルクが,検出され

た操作素子の回転に依存して変化可能であるように制御される。ここで

はシフト位置ではトルクがシャフトに出力されないか,またはシャフト

の回転にトルクが対抗せず,これに対してシフト位置から外れている場

合,アクチュエータからトルクがシャフトに出力されるか,またはシャ

フトの回転に対抗するトルクが出力される。有利には制御装置はアクチ

ュエータを,操作素子の回転の際に係止が共感されるように制御するこ

とができる。機械的係止部とはここでは例えばシャフト輪郭であると理

解すべきであり,このシャフト輪郭に沿ってシャフトを弾性にプリロー

ドするスライド素子がスライドすることができる。スライド中に,この

スライド素子に接触する操作者に対して発生する感覚は,有利には本発

明のシフト装置により操作素子の回転時に共感することができ,その際




に機械的係止部は肉体的に存在しない。それでも機械的係止部を付加的

に設けることができる。同様に,制御装置によりアクチュエータを,操

作素子の回転の際に押しボタンが共感されるように制御することができ

る。」(段落【0018】)

「トルクを制御して変化することにより,操作素子を回転する操作者

に対して触覚的フィードバックを出力することができる。このためにト

ルク−回転角特性曲線を力−回転角テーブルの形態で,制御装置により

読み出し可能なメモリにファイルすることができる(表現,力とトルク

はここでは同義語として使用することができる)。アクチュエータから

シャフトに出力されるトルク,またはシャフトの回転に対抗するトルク

は特性曲線,すなわち力−回転角テーブルから,検出された操作素子の

回転に依存して求めることができ,シャフトに出力されるか,またはシ

ャフトの回転に対抗する。シフト位置には,とりわけ特性曲線のゼロ位

置が割り当てられる。ここで係止をシミュレートするために特性曲線は,

少なくとも領域的に周期的な経過を有することができる。シフト位置に

割り当てられたゼロ位置間には,少なくとも1つの別のゼロ位置があり,

このゼロ位置では2つの燐背得するシフト位置間でのトルク反転が行わ

れる。特性曲線は有利には,シフト位置に割り当てられたゼロ位置が操

作素子の安定した回転角位置を形成するような経過を有する。これに対

して,トルク反転に割り当てられた少なくとも1つのゼロ位置は不安定

な回転角位置を形成する。有利には特性曲線は,トルク反転の領域にヒ

ステリシスを有し,これにより不所望な大きなトルク跳躍を回避する。

さらに複数のトルク反転ヒステリシスまたはトルク反転ゼロ位置を特性

曲線に設けることができ,とりわけ2つの隣接する安定した回転角位置

の間に設けることができる。」(段落【0019】)

「アクチュエータないしは電動駆動部は,とりわけパルス幅変調信号




により制御装置によって制御される。特別の触覚効果を達成するために,

制御装置によりパルス幅変調信号に加えて周期的な信号を形成すること

ができる。パルス幅変調信号はこの周期的信号により変調され,周期的

信号により変調されたパルス幅変調信号がアクチュエータに供給され

る。この作用により,操作者に知覚可能な操作素子の振動が形成され,

とりわけ操作素子の(論理的)終端位置を知らせるために使用すること

ができる。」(段落【0020】)

「アクチュエータからシャフトの回転に対抗するトルク,またはシャ

フトにトルクを出力することができ,このトルクはとりわけ回転軸を中

心にしてシャフトに作用する。したがってトルクベクトルは有利には回

転軸上にある。さらにシャフトはアクチュエータにより,これが適切に

構成されていれば(例えば駆動部)回転軸を中心に回転することができ

る。したがって,制御装置によりアクチュエータを,シフト装置のシフ

トの際に操作素子が所定の位置に回転されるように制御することができ

る。この位置は例えば前もって決めておくことができ,メモリから読み

出されるか,または車両トランスミッションないしはそのトランスミッ

ション制御装置により問い合わされる。所定の位置にこのように入り込

むことは,操作素子に固定のマーキングが付されており,このマーキン

グが目下のシフト状態を指示する場合に意味がある。」(段落【002

5】)

「さらに本発明は,本発明のシフト装置と車両トランスミッションを

備える車両,とりわけ自動車に関するものであり,車両トランスミッシ

ョンは(場合によりトランスミッション制御装置を中間接続して)シフ

ト装置ととりわけ電気的に接続されている。ここでトランスミッション

はシフト装置により,操作素子の検出された回転角に依存して種々異な

るシフト状態へシフトすることができる。シフト装置は前に述べたすべ




ての構成にしたがってさらに改善することができる。」(段落【002

7】)

「図1から3には,本発明のシフト装置1の第1実施形態が示されて

おり,このシフト装置はケーシング2,このケーシングに取り付けられ

たカバー3,および回転ノブとして構成された操作素子4を有する。こ

の操作素子4は,ケーシング2とは反対の側でカバー3から突出してお

り,回転軸5を中心にケーシング2およびカバー3に対して回転するこ

とができる。操作素子4は回転軸5を中心に複数のシフト位置6,7,

8,9(図9参照)に回転することができ,この複数のシフト位置は,

自動車11(図6参照)のトランスミッション10(図6参照)のシフ

ト状態P,R,NおよびD(図9参照)に割り当てられる。さらに光学

的表示素子12,13,14,15がカバー3に設けられている。これ

らの光学的表示素子は円弧16の上に,回転軸5ないしは操作素子4の

周囲で配置されている。表示素子12,13,14,15はトランスミ

ッション10のシフト状態P,R,NおよびDに割り当てられる。ここ

で目下のシフト状態に割り当てられた表示素子は,そのシフト状態を他

の表示素子に対して例えば点灯により光学的に目立つようにする。ここ

で表示素子12,13,14,15は,直線17,18,19,20上

にあり,これらの直線は回転軸5と交差し,回転軸5に対して直角に配

向されている。ここで直線17,18,19,20は,操作素子4の回

転角位置を表し,この回転角位置はシフト位置6,7,8,9と一致し

ている。」(段落【0030】)

「操作素子14はシャフト21と固定的に結合されており,シャフト

は同時に駆動部22の駆動シャフトを形成する。駆動部22はここでは

電気モータとして構成されており,シャフト21に対する駆動部として

用いられる。したがって駆動部22はシャフト21を回転し,トルクを




シャフト21に与える。さらに駆動部22は,ケーシング2に固定され

たステータ23を有する。支承部24を介してカバー3に,またはケー

シング2に回転可能に支承されたシャフト21は駆動部22ないしはス

テータ23を貫通して伸長している。」(段落【0031】)

「操作素子4は,ケーシング2から引き出され,カバー3を貫通して

伸長するシャフト21の第1の端部28に固定されており,これと回動

不能に結合されている。シャフト21の第1の端部28に対向する第2

の端部21には永久磁石30が磁石ホルダ67によって固定されてい

る。この磁石ホルダ67はシャフト21と回動不能に結合されており,

磁界感応センサ31と共に回転角検出装置32を形成する。磁界感応セ

ンサ31は,導体路基板70(図14参照)を中間接続してケーシング

2に固定されており,回転軸5に沿って磁石30に対してずらして配置

されている。」(段落【0033】)

「図4には,回転角検出装置32の拡大概略図が示されており,磁石

30の磁化方向は回転軸5に対して直角に配向されていることが分か

る。このことは,永久磁石30のN極に対する符合Nと,S極に対する

Sにより示されている。磁界感応センサ31は,相互に間隔をおき,と

りわけ相互に直角に配向された2つのホール効果素子33と34を有す

る。これらのホール効果素子33と34によって,磁界感応センサ31

に対する磁石30の回転αを検出することができる。磁石30はシャフ

ト21と回動不能であり,シャフトはさらに操作素子4と回動不能に結

合しているから,角度αはケーシング2ないしはカバー3に対する操作

素子4の回転も表す。したがって回転角検出装置32により,ケーシン

グ2に対する操作素子4の回転角を検出することができる。」(段落【

0034】)

「図5から分かるように,ホール効果素子33と34は強磁性ディス




ク35により部分的に覆われている。この強磁性ディスクは2つのホー

ル効果素子33と34の間の間隔をバイパスしている。さらに2つのホ

ール効果素子33と34は1つの共通の基板36上に配置されており,

とりわけ強磁性ディスク35および基板36と共に1つの共通のセンサ

ケーシング37内に配置されている。これによりコンパクトなセンサ構

造が得られる。」(段落【0035】)

「図9には,操作素子4の複数の回転角位置と,これに割り当てられ

た,自動車トランスミッション10のシフト状態P,R,NおよびDが

概略的に示されている。ここでは180°の連続的角度領域が10ビッ

トにより離散的に分解される。したがって全部で1024の検出可能な

回転角度値が得られ,0°の回転角には値ゼロが,180°の回転角に

は値1023が割り当てられる。角度領域のこの量子化は,操作素子4

の回転角αを十分な精度で分解するのに十分に微細である。ここでシフ

ト状態Pに割り当てられたシフト位置6は値765により特徴付けられ

る。シフト状態Rに割り当てられたシフト位置7は値595により特徴

付けられる。シフト状態Nに割り当てられたシフト位置8は値425に

より特徴付けられる。そしてシフト状態Dに割り当てられたシフト位置

9は値255により特徴付けられる。さらに括弧内に示したトランスミ

ッション10のシフト状態Mは,ギヤの手動でのシフトアップおよびシ

フトダウンが付加的に設けられたキースイッチにより可能であることを

示す。このキースイッチは例えば自動車のステアリングに配置すること

ができる。シフト状態Mが括弧内に示されているのは,これが単にオプ

ションとして設けられているからである。」(段落【0038】)

「図10には,部分的トルク−回転角特性曲線が示されている。この

特性曲線はとりわけテーブルとしてメモリ40にファイルされている。

ここで電気モータ22からシャフト21に出力すべきトルクMは,操作




素子4ないしはシャフト21の回転角α上にプロットされている。この

部分的線図ではシフト状態N,RおよびPだけが考慮されている。図1

0に示したトルク経過によって,操作素子4を回転する操作者に対して

係止の感覚がシミュレートされる。とりわけ特性曲線はシフト位置6,

7および8にそれぞれゼロ位置41,42,43を有する。したがって

シフト位置6,7,8ではトルクが操作素子4に及ぼされない。とりわ

けシフト位置6,7,8は操作素子4の安定した回転角位置を形成する。

さらに特性曲線はシフト位置7と8の間,およびシフト位置6と7の間

にそれぞれゼロ位置44,45を有し,このゼロ位置は有利にはそれぞ

れのシフト位置の中央にある。例えば操作素子がシフト位置8からシフ

ト位置7に回転されると,このゼロ位置44までの回転運動は操作者に

より克服することのできるトルクに対抗する。ゼロ位置44の領域では

トルクがほぼ跳躍的にその符合を変化する。これによりトルクはシフト

位置7への回転方向で作用する。シフト位置7から出発して操作素子4

がシフト位置6の方向に回転されると,ゼロ位置42と45との間で,

この回転運動に対抗するトルクが操作素子4に作用する。ゼロ位置45

の領域ではトルクがほぼ跳躍的にその符合を変化する。したがってトル

クはシフト位置6への回転方向で作用する。相応する作用が,操作素子

4が比較的小さな角度αへ逆回転される際に発生する。したがって操作

者に対して,操作素子4の回転の際に機械的係止部を通過したかのよう

な印象が発生する。ここで,トルク反転点44と45との間のシフト位

置領域46はシフト位置7に割り当てられており,トルク反転点45と

ゼロ位置43との間のシフト位置領域47はシフト位置6に割り当てら

れており,トルク反転点44とゼロ位置41との間のシフト位置領域4

8はシフト位置8に割り当てられている。ここで考慮すべきことは,図

10は特性曲線の一部だけを示していることである。したがってシフト




位置8の左方の,αに対して比較的小さい値の方向には,別のトルク反

転点と別のゼロ位置を設けることができ,これらはシフト状態Dに対す

るシフト位置に相当する。この場合,領域48はこの図示しないトルク

反転点まで伸長することができる。」(段落【0039】)

「図15には本発明のシフト装置の第2の実施形態が示されている。

ここで第1の実施形態と同じ,または類似の構成には,第1の実施形態

と同じ参照符合が付してある。第2の実施形態は第1の実施形態とは,

駆動部22がシャフト21に固定されているのではなく,このシャフト

に対して間隔をおいてケーシング2に固定されている点で異なる。駆動

部22の駆動シャフトないしロータ63は,シャフト21と伝動装置6

4を介して接続されている。この伝動装置は,駆動シャフト63と回動

不能に結合された第1の端面ホイール65,およびシャフト21と回動

不能に結合された第2の端面ホイール66を有する。第2の端面ホイー

ル66は第1の端面ホイール65に係合している。」(段落【0045

】)

ウ 前記ア及びイの記載を総合すれば,本願明細書(甲6)には,次の点が

開示されていることが認められる。

従来から,車両を電子的に制御してシフトすることのできる自動車の

トランスミッションをシフトするためのシフト装置として,ユーザにシ

フト位置間の切り替えの際にシフト感覚を通知する機械的係止部を有

し,所定のシフト位置間の切り替えをブロック又は解除することができ

る機械的係合輪郭が付加的に設けられたシフト装置が知られているが,

このシフト装置には,車両モデルが異なれば,異なる数のシフト位置が

所望されるため,種々異なる係止部と係合輪郭も形成しなければならな

いという問題があった。

また,従来から,車両用の触覚シフト装置として,2つの回転軸を中




心に旋回可能に支承されたシフトレバーと,2つのアクチュエータとを

備え,2つのアクチュエータはベルト駆動部を介してシフトレバーと結

合され,さらに,アクチュエータシャフトには光学的デコーダとして構

成されたセンサが結合され,このセンサによってシャフトの回転を検出

することができるシフト装置が知られていた。このシフト装置において

は,プロセッサはセンサから出力されたセンサ信号から力を検出し,こ

の力をアクチュエータによりシフトレバーに送出することができ,この

力を介して,シフトレバーに対する係止を共感することができるが,こ

のシフト装置の機構は比較的高価であり,純粋に機械的なシフト装置と

同じような大きさの構造となるため,機械的に簡単に構成することがで

き,必要空間が小さいシフト装置が所望されていた。

「本発明」の課題は,シフト位置間の切り替えの際に操作者にシフト

感覚を通知したり,所定の切り替えをブロック又は解除する従来の形式

のシフト装置を改善し,このシフト装置が種々異なる数のシフト状態に

対して使用可能であり,同時に必要空間が小さく,低コストで実現でき

るようにすることにあった。上記課題を解決する手段として,「本発明」

は,「回転軸を中心に異なるシフト位置に回転可能な操作素子と,この

操作素子に結合されており,前記回転軸を中心に回転可能なシャフトと,

このシャフトに結合された回転角検出装置と,アクチュエータと,前記

回転角検出装置およびアクチュエータに接続された制御装置とを有し,

前記回転角検出装置によって,前記操作素子の回転軸を中心にする回転

が検出され,前記アクチュエータによって,トルクが前記シャフトに出

力され,またはシャフトの回転に対抗するトルクが出力され,前記制御

装置によってアクチュエータから出力されたトルク,または対抗するト

ルクが制御され,車両トランスミッションは,シフト位置に割り当てら

れたシフト状態に切り替え可能であり,前記シャフトは,回転角検出装




置と操作素子との間で回転軸に沿って伸長しており,前記操作素子は回

転ヘッドまたは回転ノブとして構成されており,シャフトの第1の端部

に配置されている」構成を採用した。

「本発明」のシフト装置は,シフトノブないしは回転ヘッドとして構

成された操作素子の回転の際に,アクチュエータからシャフトに出力さ

れるトルク又はシャフトの回転に対抗するトルクを制御することによっ

て操作者に触覚的フィードバックを提供することができるので,機械的

係止部なしで使用することができ,シフト位置の数が種々異なっていて

も使用することができる。

また,「本発明」のシフト装置は,操作素子,シャフト及び回転角検

出装置が回転軸に沿って配置され,シャフトを回転角検出装置と結合す

るための伝動装置ないしはベルト駆動部を省略することができるので,

スペースを節約して実現可能である。

相違点の看過の有無について

原告は,本願補正発明と引用例1発明とは,本願補正発明は,アクチュエ

ータの軸とシャフト軸との間に動力伝達部が存在せず,両軸は同軸であるの

に対し,引用例1発明は,操作軸2とアクチュエータ5の駆動軸5aとの間

に動力伝達部6を有し,両軸は同軸ではない点で相違するにもかかわらず,

本件審決は,この相違点を認定せず,相違点を看過した誤りがある旨主張す

るので,以下において判断する。

ア 引用例1の記載事項について

引用例1(甲1)には,次のような記載がある(下記記載中に図面につ

いては別紙2を参照)。

「【発明の属する技術分野】本発明は,フォースフィードバック機能

付きの手動入力装置とこれを用いた車載機器制御装置とに係り,特に,

ノブにフォースフィードバック用の外力を負荷するアクチュエータの制




御手段に関する。」(段落【0001】)

「【従来の技術】従来より,ノブの操作フィーリングを良好にしてノ

ブの操作を確実なものにするため,ノブにその操作量及び操作方向に応

じた抵抗感や推力を付与するフォースフィードバック機能付きの手動入

力装置が知られている。」(段落【0002】)

「図17に,従来より知られているこの種の手動入力装置の一例を示

す。本例の手動入力装置は,ノブ101と,当該ノブ1の操作量及び操

作方向を検知する検知手段102と,ノブ101に外力を負荷するアク

チュエータ103と,検知手段102から出力される検知信号aを取り

込んでアクチュエータ103の制御信号cを生成する制御部104と,

制御部104から出力された制御信号cをD/A変換するD/A変換器

105と,D/A変換器105から出力されたアナログ信号cを増幅し

てアクチュエータ103の駆動電力を得る電力増幅器106とから構成

されている。制御部104は,CPU104aとメモリ104bとから

構成されており,メモリ104bには,検知信号aに応じた制御信号c

がテーブルの形で記憶されている。CPU104aは,検知手段102

からの検知信号aを取り込み,取り込まれた検知信号aに応じた制御信

号cをメモリ104bから読み出して,D/A変換器105に出力す

る。」(段落【0003】)

「これによってアクチュエータ103が駆動され,ノブ101にその操

作量及び操作方向に応じたフォースフィードバックを作用することがで

きるので,本例の手動入力装置は,ノブ101の操作フィーリングが良

好で,ノブ101の操作を確実なものにすることができる。」(段落【

0004】)

「この種の手動入力装置は,自動車におけるバイワイヤ方式のギアシ

フト装置や,車載された各種の電気機器,例えば,エアコン,ラジオ,




テレビ,CDプレーヤ,ナビゲーションシステム等の機能調整装置に適

用される。」(段落【0005】)

「ギアシフト装置として適用する場合,手動入力装置に備えられたフ

ォースフィードバック機能は,シフトレバーのレンジ切替にクリック感

を与えたり,例えばP(パーキング)レンジからR(リバース)レンジ,

D(ドライブ)レンジから2nd(セカンド)レンジなど,特定レンジ

から他の特定レンジへのシフトレバーの不正な操作を禁止するロック手

段などとして利用される。また,車載電気機器の機能調整装置として利

用する場合,手動入力装置に備えられたフォースフィードバック機能は,

ノブ101に適度な抵抗感を付与して機能の微調整を容易にしたり,ノ

ブ101に適度な推力を付与してノブ1の操作を軽快にするのに利用さ

れる。」(段落【0006】)

「【発明が解決しようとする課題】ところで,前記手動入力装置を自

動車のギアシフト装置に適用する場合,手動入力装置に備えられたフォ

ースフィードバック機能を用いて特定レンジから他の特定レンジへのシ

フトレバーの不正な操作を禁止する構成にすると,シフトレバーが特定

レンジに切り替えられている期間中,常時アクチュエータ103に電力

を供給し続けなくてはならないので,電力消費が大きくなる。かかる不

都合を回避するため,前記手動入力装置を自動車のギアシフト装置に適

用する場合においては,手動入力装置に備えられたフォースフィードバ

ック機能をシフトレバーのレンジ切替にクリック感を与えるためのみに

利用し,特定レンジから他の特定レンジへのシフトレバーの不正な操作

を禁止するロック手段については,機械的に構成するのが普通である。」

(段落【0007】)

「しかし,前記した従来の手動入力装置は,ノブ101の操作量及び

操作方向のみに基づいてアクチュエータ103を制御する構成であるの




で,ロック手段を機械的に構成すると,ロック手段が解除された後は,

手動入力装置に備えられたフォースフィードバック機能によってシフト

レバーのレンジ切替にクリック感が与えられるだけになり,例えば高速

走行中であってもDレンジからRレンジへのシフトレバーの切替やDレ

ンジから2ndレンジへのシフトレバーの切替が可能になる。高速走行

中にギアシフト装置がDレンジからRレンジに,又は,Dレンジから2

ndレンジに誤操作されても,自動車に搭載されたトランスミッション

がシンクロせず,ギアがドライブギアからリバースギアに切り替えられ

ることはないが,実際のギアのかみ合い状態とシフトレバーの切替位置

とが不一致になると,ギアシフト装置によるトランスミッションの操作

を的確に行えなくなるばかりでなく,トランスミッションが不時に切り

替えられて自動車が急停止或いは急減速する等の不測の動作を起こすお

それもある。」(段落【0008】)

「手動入力装置を車載電気機器の機能調整装置に適用する場合も同様

であって,前記した従来の手動入力装置は,機能を調整しようとする車

載電気機器の状態に関係なく,ノブ101の操作量及び操作方向のみに

基づいてアクチュエータ103を制御する構成であるので,車載電気機

器の状態に応じた適切な機能調整を行うことが難しく,使い勝手が必ず

しも良好ではないという問題がある。」(段落【0009】)

「本発明は,かかる従来技術の不備を解消するためになされたもので

あって,その課題とするところは,操作しようとする外部装置の状態に

応じて異なる操作フィーリングをノブに付与することができて操作性及

び信頼性に優れた手動入力装置を提供すること,及びこの種の手動入力

装置を備えた操作性及び信頼性に優れた車載機器制御装置を提供するこ

とにある。」(段落【0010】)

「【課題を解決するための手段】本発明は,前記の課題を解決するた




め,手動入力装置の構成に関しては,ノブと,当該ノブに外力を負荷す

るアクチュエータと,前記ノブの操作状態を検知する検知手段と,前記

ノブにより操作される外部装置との間で信号の送受信を行う入出力部と

を備え,前記アクチュエータを,少なくとも前記外部装置に接続された

外部検知手段から出力される外部信号に基づいて生成される制御信号に

より制御するという構成にした。」(段落【0011】)

「かように,ノブに外力を負荷するアクチュエータを,外部装置に接

続された外部検知手段から出力される外部信号に基づいて生成される制

御信号により制御すると,外部装置の状態に応じたきめ細かいアクチュ

エータの制御を行うことができるので,外部装置の駆動状態とノブの操

作状態との不一致を防止することができ,手動入力装置の操作性及び信

頼性を高めることができる。」(段落【0012】)

「一方,車載機器制御装置に関しては,各種の機能より機能調整を行

おうとする機能を選択する機能選択スイッチと,当該機能選択スイッチ

によって選択された機能を調整する手動入力装置とを有し,前記手動入

力装置として,ノブと,ノブに外力を負荷するアクチュエータと,ノブ

の操作状態を検知する検知手段と,ノブにより操作される電気機器との

間で信号の送受信を行う入出力部とを備え,前記アクチュエータを,少

なくとも前記電気機器に接続された外部検知手段から出力される外部信

号に基づいて生成される制御信号により制御するものを備えるという構

成にした。」(段落【0013】)

「かように,車載機器制御装置に備えられる手動入力装置として,少

なくとも外部装置に接続された外部検知手段から出力される外部信号に

基づいて生成される制御信号により制御するものを備えると,電気機器

の状態に応じたきめ細かいアクチュエータの制御を行うことができるの

で,電気機器の駆動状態とノブの操作状態との不一致を防止することが




でき,車載機器制御装置の操作性及び信頼性を高めることができる。」

(段落【0014】)

「【発明の実施の形態】まず,本発明に係る手動入力装置の実施形態

について説明する。」(段落【0015】)

「〈手動入力装置の第1例〉図1に,第1実施形態例に係る手動入力

装置1Aを示す。本例の手動入力装置1Aは,ロータリ形の手動入力装

置であって,図示しない筐体と,当該筐体に回転自在に保持された操作

軸2と,操作軸2の一端に固着されたノブ3と,操作軸2の回転量及び

回転方向を検知するロータリエンコーダやポテンショメータ等の検知手

段4と,ノブ3に外力を負荷するDCモータやステッピングモータ等の

回転駆動形のアクチュエータ5と,操作軸2とアクチュエータ5の駆動

軸5aとの間の動力伝達を行うギアや摩擦車等の動力伝達部6と,図示

しない外部装置との間で信号の送受信を行う入出力部7と,図示しない

外部装置に接続された外部検知手段から出力される外部信号b又は少な

くとも外部信号bに基づいて生成された制御情報eに基づいてアクチュ

エータ5の制御信号cを生成し出力する制御部8と,制御部8から出力

された制御信号cをD/A変換するD/A変換器9と,D/A変換器9

にてアナログ信号に変換された制御信号cを増幅してアクチュエータ5

の駆動電力を得る電力増幅器10とから構成されている。なお,アクチ

ュエータ5としてステッピングモータを用いる場合には,D/A変換器

9は省略することができる。」(段落【0016】)

「図1においては,検知手段4としてロータリエンコーダが備えられ

ており,本例のロータリエンコーダは,操作軸2に固着されたコード板

4aと,当該コード板4aを介してその表面側及び裏面側に対向に配置

された発光素子4b及び受光素子4cとから構成されている。なお,互

いに独立の別体に構成された発光素子4b及び受光素子4cを用いる構




成に代えて,これら発光素子4b及び受光素子4cを一体化してなるフ

ォトインタラプタを用いることも勿論可能である。」(段落【0017

】)

「入出力部7は,送信側インタフェース7aと受信側インタフェース

7bとをもって構成されており,送信側インタフェース7aからは検知

手段4から出力される検知信号aが図示しない外部装置に送信される。」

(段落【0018】)

「制御部8は,CPU8aとメモリ8bとから構成されており,メモ

リ8bには,前記外部信号b若しくは当該外部信号bに基づいて生成さ

れた制御情報eを解析するためのデータ及びプログラムと,アクチュエ

ータ5の駆動データ及び駆動プログラムが記憶されている。CPU8a

は,前記外部信号b若しくは制御情報eを取り込み,前記メモリ8bに

記憶されたデータ及びプログラムに基づいて前記外部信号b若しくは制

御情報eを解析し,前記メモリ8bに記憶されたデータ及びプログラム

に基づいて前記外部信号b若しくは制御情報eに対応する制御信号cを

決定し,D/A変換器9に出力する。」(段落【0019】)

「制御信号cは,ノブ3に付与される操作フィーリングに対応する信

号である。信号の種別としては,「振動の発生」,「衝撃力の発生」,

「作動力の変更」等がある。信号の種別が「振動の発生」である場合に

は,振動強度,振動の形,負荷時間,周波数などを表現する制御信号c

が構成される。また,信号の種別が「衝撃力の発生」である場合には,

衝撃強度,衝撃の形,負荷回数などを表現する制御信号cが構成される。

さらに,信号の種別が「作動力の変更」である場合には,作動力の強度,

作動力の発生方向,負荷時間などを表現する制御信号cが構成される。

また,制御信号eは,上記制御信号cの内容をコマンド化したものであ

る。さらに,「作動力の変更」をパターン化して行う場合には,パター




ンを表現するコマンドをもって制御情報eを構成することができる。そ

の他,制御情報eは,負荷量を示す値や前記検知信号a,それに外部装

置に入力される他の外部検知手段(図示省略)からの信号を取り込んで

構成することもできる。」(段落【0020】)

「本例の手動入力装置によれば,CPU8aに図示しない外部装置に

接続された外部検知手段から出力される外部信号b又は少なくとも外部

信号bに基づいて生成された制御信号eを取り込んでアクチュエータ5

の制御信号cを決定するので,外部装置の状態に応じたきめ細かいアク

チュエータ5の制御を行うことができる。したがって,外部装置の状態

によっては,ノブ3の操作を禁止するようにアクチュエータ5を駆動す

ることができるので,外部装置の駆動状態とノブの操作状態との不一致

を防止することができ,手動入力装置1Aの操作性及び信頼性を高める

ことができる。」(段落【0021】)

「〈手動入力装置の第2例〉図2に,第2実施形態例に係る手動入力

装置1Bを示す。本例の手動入力装置1Bは,検知手段4を回転モータ

5の駆動軸5aに設定したことを特徴とする。その他については,第1

実施形態例に係る手動入力装置1Aと同じであるので,図2の対応する

部分に図1と同一の符号を付して説明を省略する。本例の手動入力装置

1Bも,第1実施形態例に係る手動入力装置1Aと同様の効果を有す

る。」(段落【0022】)

「〈手動入力装置の第5例〉図5に,第5実施形態例に係る手動入力

装置1Eを示す。本例の手動入力装置1Eは,スライド形の手動入力装

置であって,図示しない筐体に摺動自在に保持されたラック11(動力

伝達部)の上面にノブ3を固着すると共に,当該ラック11と操作軸2

の先端部に固着されたピニオン12(動力伝達部)とをかみ合わせ,ノ

ブ3の駆動力がラック11及びピニオン12を介して操作軸2に伝達さ




れ,かつアクチュエータ5の駆動力がギア6,操作軸2,ピニオン12

及びラック11を介してノブ3に伝達されるようにしたことを特徴とす

る。その他については,第1実施形態例に係る手動入力装置1Aと同じ

であるので,図5の対応する部分に図1と同一の符号を付して説明を省

略する。本例の手動入力装置1Eは,第1実施形態例に係る手動入力装

置1Aと同様の効果を有するほか,筐体に摺動自在に保持されたラック

11にノブ3を固着したので,例えばオートマチック車におけるギアシ

フト装置のように,ノブが直線操作される装置への適用が可能になる。」

(段落【0025】)

「〈手動入力装置のその他の実施形態〉(1)前記各実施形態例にお

いては,外部装置に接続された外部検知手段から出力される外部信号b

又は少なくとも外部信号bに基づいて生成された制御情報eに基づいて

アクチュエータ5の制御信号cを生成したが,本発明の要旨はこれに限

定されるものではなく,前記検知信号a及び/又は外部信号bに外部装

置に接続されていない他の外部検知手段から出力される外部信号を加え

てアクチュエータ5の制御信号cを生成することもできる。」(段落【

0030】)

「(3)ノブ3の形状,筐体に対する操作軸2の配列,検知手段4の

種類,アクチュエータ5の種類については,前記各実施形態例に例示し

た組み合わせに限定されるものではなく,必要に応じて任意の組み合わ

せとすることができる。」(段落【0032】)

「〈手動入力装置の第1適用例〉以下,手動入力装置の第1適用例と

して,第5実施形態例に係るスライド形の手動入力装置1Eを適用した

オートマチック車の変速制御装置を,図9に基づいて説明する。」(段

落【0033】)

「この図から明らかなように,本例の変速制御装置は,手動入力装置




1Eの入出力部7に,外部装置として,トランスミッション制御装置2

1と,当該装置21によって制御されるソレノイドやリニアモータなど

のアクチュエータからなるフォーク駆動部22と,当該駆動部22の駆

動状態を検知するエンコーダやポテンショメータなどの外部装置検知手

段23と,前記駆動部22によって操作される切替フォーク24と,当

該切替フォーク24によってギアのかみ合いが切り換えられるトランス

ミッション25と,トランスミッション25の出力軸の回転数を検出す

る回転数センサ26とを接続することによって構成される。本例の場合,

手動入力装置1Eのノブ3は,車室内に備えられ,トランスミッション

25を切り替えるためのシフトノブとして使用される。」(段落【00

34】)

「トランスミッション制御装置21には,前記手動入力装置1Eに備

えられた入出力部7と接続される入出力部27と,前記外部装置検知手

段23から出力される外部信号b1並びに前記回転数センサ26から出

力される外部信号b2よりフォーク駆動部22の駆動信号dを生成して

出力する外部装置制御部28と,外部装置制御部28より出力された駆

動信号dをD/A変換するD/A変換器29と,D/A変換器29によ

りアナログ信号に変換された駆動信号dを増幅してフォーク駆動部22

の駆動電力を得る電力増幅器30とから構成されている。なお,フォー

ク駆動部22としてステッピングモータを用いる場合には,D/A変換

器29は省略することができる。」(段落【0035】)

「入出力部27には,手動入力装置1Eの入出力部7に備えられた送

信側インタフェース7aと接続される受信側インタフェース27bと,

手動入力装置1Eの入出力部7に備えられた受信側インタフェース7b

と接続される送信側インタフェース27aとが備えられている。外部装

置制御部28は,CPU28aとメモリ28bとから構成されており,




メモリ28bには,前記外部信号b1,b2を解析するためのデータ及

びプログラムと,フォーク駆動部22の駆動データ及び駆動プログラム

が記憶されている。CPU28aは,前記外部信号b1,b2を取り込

み,前記メモリ28bに記憶されたデータ及びプログラムに基づいてこ

れら前記外部信号b1,b2を解析し,前記メモリ28bに記憶された

データ及びプログラムに基づいてこれら前記外部信号b1,b2に対応

する駆動信号dを決定する。また,このCPU28aは,外部信号b1,

b2を,送信側インタフェース27b及び受信側インタフェース7bを

介して手動入力装置1Eの制御部8に送信する。」(段落【0036】)

「以下,前記のように構成された変速制御装置の動作について説明す

る。」(段落【0037】)

「ノブ3が操作されると,その操作量及び操作方向が検知手段4によ

って検知され,検知手段4からは,ノブ3の操作量及び操作方向に応じ

た検知信号aが出力される。この検知信号aは,送信側インタフェース

7a及び受信側インタフェース27aを介して外部装置制御部28に送

信される。一方,トランスミッション制御装置21に備えられたCPU

28aは,前記検知信号a及び外部信号b1,b2を解析し,メモリ2

8bに記憶されたデータ及びプログラムに基づいてこれらの各信号a,

b1,b2に対応する駆動信号dを決定し,D/A変換器29に出力す

る。D/A変換器29は,駆動信号dをアナログ信号に変換し,電力増

幅器30に出力する。電力増幅器30は,D/A変換器29から出力さ

れたアナログ信号を増幅し,フォーク駆動部22に印加する。これによ

って,フォーク24が駆動され,ノブ3の操作内容に応じてトランスミ

ッション25のギアのかみ合いが切り替えられる。外部装置制御部28

は,この検知信号aと前記外部装置検知手段23から出力される外部信

号b1と前記回転数センサ26から出力される外部信号b2とを,送信




側インタフェース27b及び受信側インタフェース7bを介して手動入

力装置1Eの制御部8に送信する。制御部8は,送信された外部信号b

1,b2を解析し,メモリ8bに記憶されたデータ及びプログラムに基

づいてこれらの各信号b1,b2に対応する制御信号cを決定し,D/

A変換器9に出力する。D/A変換器9は,制御信号cをアナログ信号

に変換し,電力増幅器10に出力する。電力増幅器10は,D/A変換

器9から出力されたアナログ信号を増幅し,アクチュエータ5に印加す

る。これによって,ノブ3に外部信号b1,b2に応じた外力が負荷さ

れ,ノブ3に所要の操作フィーリングが付与されるので,例えば,ノブ

3が1のシフト位置から他のシフト位置に切り替え操作されたとき,ア

クチュエータ5から操作軸2に軽い抵抗感を付与することによって,ノ

ブ3の操作にクリック感を付与することができる。また,トランスミッ

ション25の出力軸の回転数が高い場合において,ノブ3が例えばDレ

ンジからRレンジへの切替方向に操作された場合には,アクチュエータ

5から操作軸2に強い抵抗感を付与することによってノブ3の操作を禁

止し,ノブ3の誤操作を未然に防止することができる。」(段落【00

38】)

「本例の場合,制御部8を備えた手動入力装置1Eを用い,かつ外部

信号b1,b2を当該制御部8に入力する構成としたので,外部装置制

御部28を変更する必要がなく,外部装置であるトランスミッション制

御装置21に対する手動入力装置の適用を容易に行うことができる。」

(段落【0039】)

「【発明の効果】本発明の手動入力装置は,ノブに外力を負荷するア

クチュエータを,検知手段から出力される検知信号と外部装置に接続さ

れた外部検知手段から出力される外部信号に基づいて生成される制御信

号により制御するので,外部装置の状態に応じたきめ細かいアクチュエ




ータの制御を行うことができ,外部装置の駆動状態とノブの操作状態と

の不一致を防止することができて,手動入力装置の操作性及び信頼性を

高めることができる。」(段落【0064】)

「また,本発明の車載機器制御装置は,1つの筐体に車載電気機器の

選択スイッチと,選択された車載電気機器の機能選択スイッチと,機能

調整手段としての手動入力装置を備えたので,複数の車載電気機器を集

中的に制御することができて各車載電気機器の機能調整を容易に行うこ

とができ,自動車の安全運転性を高めることができる。また,手動入力

装置として,検知手段から出力される検知信号と外部検知手段から出力

される外部信号に基づいてアクチュエータの制御信号を生成するものを

用いたので,調整しようとする車載電気機器の状態に合わせたノブの操

作フィーリングを得ることができてノブの操作性を改善することがで

き,当該車載機器制御装置を用いて実行しようとする電気機器の機能調

整を容易かつ確実に行うことができる。」(段落【0065】)

イ 検討

引用例1に,

「自動車のトランスミッション25のギアシフト装置であって,

回転可能なノブ3と,筐体に回転自在に保持され,一端にノブ3が固

着された操作軸2と,操作軸2の回転量及び回転方向を検知する検知手

段4と,ノブ3に外力を負荷する回転駆動形のアクチュエータ5と,操

作軸2とアクチュエータ5の駆動軸5aとの間の動力伝達を行う動力伝

達部6と,検知手段4およびアクチュエータ5に接続された制御部8と

を有し,

前記アクチュエータ5によって,ノブ3に抵抗感や推力が付与され,

前記制御部8は,ノブ3の操作量及び操作方向や,変速制御装置の信

号ないし制御情報に基づいて,前記アクチュエータ5により付与される




抵抗感や推力を決定し,

前記トランスミッション25は,ノブ3の操作位置に応じた特定レン

ジに切替可能であるギアシフト装置において,

前記操作軸2は,前記アクチュエータ5と前記ノブ3との間で延びて

おり,

前記検知手段4は,操作軸2に固着されたコード板4aと,当該コー

ド板4aを介してその表面側及び裏面側に対向に配置された発光素子4

b及び受光素子4cとから構成されるロータリエンコーダからなるギア

シフト装置。」(引用例1発明)が記載されていることは,当事者間に

争いがない。

前記アの記載事項及び別紙2の図1によれば,引用例1記載のギアシ

フト装置(引用例1発明)は,一端にノブ3が固着された操作軸2と,

ノブ3に外力を負荷する回転駆動形のアクチュエータ5の駆動軸5aと

は,同じ軸上にはなく,軸がずれており,操作軸2とアクチュエータ5

の駆動軸5aとの間の動力伝達を行う動力伝達部6を有していることが

認められる。

一方で,本願補正発明の特許請求の範囲(請求項1)の「前記アクチ

ュエータ(22)は,前記回転角検出装置(32)と前記操作素子との

間の前記シャフト(21)上に座し」にいう「座し」との文言,本願明

細書の段落【0012】の「アクチュエータは回転軸から離れて配置さ

れており,伝動装置ないしはベルト駆動部を介してベルトと接続するこ

とができる。しかし有利にはアクチュエータはシャフトに座し,とりわ

けシャフトに固定されている。これにより回転軸はアクチュエータを貫

通して伸長し,前記の伝動装置を省略することができる。」との記載及

び図3(別紙1参照)によれば,本願補正発明の「前記アクチュエータ

(22)は,前記回転角検出装置(32)と前記操作素子との間の前記




シャフト(21)上に座し」との構成は,アクチュエータの軸とシャフ

ト軸とが同軸である構成であることを理解できる。

被告は,この点に関し,本願補正発明におけるアクチュエータはシャ

フト上に「座し」という構成の態様は,種々多様であって,一義的に,

アクチュエータの軸とシャフト軸とが同軸であること(軸がずれていな

いこと)を意味するものではなく,本願明細書の別紙1の図15(「第

2の実施形態」)には,アクチュエータの軸とシャフト軸とが同軸でな

い例が示されている旨主張する。

しかしながら,別紙1の図15に示す構成は,本願明細書の段落【0

012】における「アクチュエータは回転軸から離れて配置されており,

伝動装置ないしはベルト駆動部を介してベルトと接続する」例であるの

に対し,本願補正発明は,上記段落【0012】における「有利にはア

クチュエータはシャフトに座し,とりわけシャフトに固定」され,「こ

れにより回転軸はアクチュエータを貫通して伸長し,前記の伝動装置を

省略することができる」構成であって,本願補正発明の実施形態とはい

えないから,被告の上記主張は失当である。

そうすると,本願補正発明と引用例1発明とは,本願補正発明は,ア

クチュエータの軸とシャフト軸との間に動力伝達部が存在せず,両軸は

同軸であるのに対し,引用例1発明は,操作軸2とアクチュエータ5の

駆動軸5aとの間に動力伝達部6を有し,両軸は同軸ではない点で相違

するといえる。

しかるところ,本件審決は,本願補正発明は,「前記シャフト(21)

は,前記回転角検出装置(32)と前記操作素子(4)との間で回転軸

(5)に沿って伸長しており」,「前記回転角検出装置(32)は,前

記シャフト(21)の第2の端部(29)に配置され」,「前記アクチ

ュエータ(22)は,前記回転角検出装置(32)と前記操作素子との




間の前記シャフト(21)上に座し」ているのに対し,引用例1発明は,

「前記操作軸2は,前記アクチュエータ5と前記ノブ3との間で延びて」

いる点を本願補正発明と引用例1発明の相違点1として認定している

が,引用例1発明の構成として,操作軸2とアクチュエータ5の駆動軸

5aとの間に動力伝達部6を有し,両軸は同軸ではない点を明示してい

ない。

しかしながら,本件審決が認定した相違点1においても,本願補正発

明は,「前記シャフト(21)は,前記回転角検出装置(32)と前記

操作素子(4)との間で回転軸(5)に沿って伸長しており」,「前記

回転角検出装置(32)は,前記シャフト(21)の第2の端部(29)

に配置され」,「前記アクチュエータ(22)は,前記回転角検出装置

(32)と前記操作素子との間の前記シャフト(21)上に座し」との

構成を有しているのに対し,引用例1発明は,「前記操作軸2は,前記

アクチュエータ5と前記ノブ3との間で延びて」おり,上記構成を備え

ていない点で相違することを示しており,本件審決がこのように相違点

1を認定した趣旨は,両軸が同軸であるか否かの点を含めて,上記相違

点に係る本願補正発明の構成を容易に想到することができるかどうかを

判断するためのものと解されるから,本件審決が,引用例1発明の構成

として,操作軸2とアクチュエータ5の駆動軸5aとの間に動力伝達部

6を有し,両軸は同軸ではない点を明示していないからといって,その

ことが本件審決の結論に影響を及ぼすものではない。

したがって,本件審決に相違点を看過した誤りがあるとの原告の主張

は,採用することができない。

相違点1の容易想到性の判断の誤りの有無について

原告は,本件審決は,相違点1について,引用例2(甲2)には,「バイ

ワイヤ方式の各種装置に適用されるハプティックコントローラであって,そ




のアクチュエータ2の駆動軸2aの一端にロータリノブ3が固着され,駆動

軸2aの他端に位置センサ4が固着されており,ロータリノブ3の操作量及

び操作方向に応じた抵抗力や推力を付与するもの」が示されていると認定し,

引用例1発明に引用例2の上記事項(配置構成)を適用して,本願補正発明

の相違点1に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得たものと認めら

れる旨判断したが,引用例1及び引用例2のいずれにおいても,引用例1発

明に引用例2記載の上記配置構成を適用することの示唆等は存在せず,引用

例1発明に引用例2記載の上記配置構成を適用する動機付けはないから,本

件審決の上記判断は誤りである旨主張するので,以下において判断する。

ア 引用例2の記載事項について

引用例2(甲2)には,次のような記載がある(下記記載中に図面につ

いては別紙3を参照)。

「【発明の属する技術分野】本発明は,バイワイヤ方式の各種装置に

適用されるハプティックコントローラに係り,特に,操作性及び信頼性

の改善手段に関する。」(段落【0001】)

「【従来の技術】従来より,操作部の操作フィーリングを良好にして

操作部の操作を確実なものにするため,操作部にその操作量や操作方向

等の操作状態に応じたクリック感触や抵抗感又は推力等を付与するフォ

ースフィードバック機能付きのハプティックコントローラが知られてい

る。」(段落【0002】)

「図9に,従来より知られているこの種のハプティックコントローラ

の一例を示す。本例のハプティックコントローラは,操作部であるロー

タリノブ101と,当該ロータリノブ101の回転量及び回転方向を検

知する位置センサであるロータリエンコーダ102と,ロータリノブ1

01に外力を負荷するアクチュエータ103と,ロータリエンコーダ1

02より出力される位置信号aを取り込んでアクチュエータ103の制




御信号cを出力する制御部104と,制御部104より出力された制御

信号cをD/A変換するD/A変換器105と,D/A変換器105に

よりアナログ信号に変換された制御信号dを増幅してアクチュエータ1

03の駆動信号eを得る信号増幅器106とから構成されている。制御

部104は,CPU104aと記憶部104bとから構成されており,

記憶部104bには,位置信号a対応する制御信号cが記憶されている。

CPU104aは,ロータリエンコーダ102からの位置信号aを取り

込み,取り込まれた位置信号aに応じた制御信号cを記憶部104bか

ら読み出して,D/A変換器105に出力する。」(段落【0003】)

「このように構成された従来のハプティックコントローラは,位置セ

ンサであるロータリエンコーダ102より出力される位置信号aに基づ

いてアクチュエータ103の駆動を制御するので,ロータリノブ101

にその操作量及び操作方向に応じた抵抗力や推力を付与することがで

き,ロータリノブ101の操作に所要の操作フィーリングを付与するこ

とができる。」(段落【0004】)

「この種の手動入力装置は,自動車におけるバイワイヤ方式のハンド

ル装置や,車載された各種の電気機器,例えばエアコン,ラジオ,テレ

ビ,CDプレーヤ,ナビゲーションシステム等の機能調整装置として適

用される。」(段落【0005】)

「【発明が解決しようとする課題】ところで,前記アクチュエータ1

03によってロータリノブ101に付与される抵抗力や推力は,位置信

号aに応じて設定され付与されるものであるので,位置信号aによって

は,抵抗力や推力がロータリノブ101に付与され続けるというもので

あった。」(段落【0006】)

「このようなロータリノブ101の操作量及び操作方向に応じた抵抗

力や推力をロータリノブ101に付与し続けるハプティックコントロー




ラにおいては,ロータリノブ101に手が添えらえていることを想定し

た大きさの力を付与しているため,ロータリノブ101を回転操作中に

操作者がロータリノブ101から急に手を離した場合に,ロータリノブ

101に過大な力を付与してしまう結果となり,ロータリノブ101が

手を離した位置に停止されず,アクチュエータ103より付与される外

力によってその外力の方向に移動してしまうという問題があった。」(

段落【0007】)

「また,例えばセンター復帰形のハプティックコントローラのように,

手を離した後に予め定められた所定の位置にロータリノブ101を自動

的に停止させるハプティックコントローラにおいても,前記第1の問題

と同様に付与する力が大きすぎること,及び,制御部104の動作に遅

れがあるために,所要の停止位置にロータリノブ101を速やかに停止

させることが難しく,ロータリノブ101がセンター位置等の所要の停

止位置を中心として長時間振動してしまうという問題があった。」(段

落【0008】)

「前記第1の問題は,ロータリノブ101にタッチセンサを付設し,

ロータリノブ101から手が離れたときにこれをタッチセンサで検知し

て,アクチュエータ103の駆動を停止するようにすれば解消すること

ができる。しかしながら,タッチセンサを備えると,ハプティックコン

トローラの構成が複雑化して,ハプティックコントローラが高コスト化

するばかりでなく,例えばロータリノブ101をラジオの選局つまみと

して利用する場合のように,ロータリノブ101を特定の回転方向位置

に停止させる必要がある場合においても,前記特定の回転方向位置に関

係なく,ロータリノブ101から手を離すと,その位置でロータリノブ

101を停止してしまうため,電気機器等の正確な機能調整を行うこと

ができないという問題を生じる。」(段落【0009】)




「本発明は,かかる従来技術の不備を解消するためになされたもので

あって,その課題とするところは,所要の目標位置に操作部を正確かつ

迅速に停止することができ,操作性及び信頼性に優れたハプティックコ

ントローラを提供することにある。」(段落【0011】)

「【課題を解決するための手段】本発明は,前記の課題を解決するた

め,第1に,操作部と,当該操作部の位置を検出する位置センサと,前

記操作部に外力を与えるアクチュエータと,前記位置センサより出力さ

れる位置信号に基づいて前記アクチュエータの駆動を制御する制御部と

を有し,前記制御部は,前記操作部の位置に対応する前記アクチュエー

タの基本出力値を求めると共に,前記操作部の速度に対応し,前記基本

出力値とは逆の符号を有する前記基本出力値の補正値を求め,これら基

本出力値と補正値との加算値である制御信号を出力して前記アクチュエ

ータの駆動を制御するという構成にした。」(段落【0012】)

「このように,位置センサより出力される位置信号に対応する基本出

力値のみに基づいてアクチュエータの駆動を制御するのではなく,操作

部の速度に対応しかつ基本出力値とは逆の符号を有する補正値を加味し

てアクチュエータの駆動を制御すると,制御部の動作遅れにより操作者

が手を離した後にアクチュエータからの外力を受けて操作部が移動を開

始した場合にも,その移動方向とは逆向きでその移動速度に対応した大

きさの外力がアクチュエータより操作部に付与されるので,不正な操作

部の移動が防止され,操作部が手を離した位置に安定に保持される。し

たがって,タッチセンサ等の手段を追加することなく操作部を所要の位

置に保持することができ,例えば操作部をラジオの選局つまみとして利

用する場合のように,操作部を操作方向の特定の位置に停止させる必要

がある場合に対応することができる。同様に,例えばセンター復帰形の

ハプティックコントローラのように,手を離した後に予め定められた所




定の位置に操作部を自動的に停止させるハプティックコントローラにお

いても,操作部が所定の位置まで移動されるときに,当該操作部の移動

方向とは逆向きで当該操作部の移動速度に対応した大きさの外力が常に

アクチュエータより操作部に付与されるので,操作部への余分な力の出

力が抑制される結果,振動等の好ましくない動きが防止され,操作部を

速やかに所要の停止位置に停止させることができる。」(段落【001

3】)

「【発明の実施の形態】以下,本発明に係るハプティックコントロー

ラの第1例を,車載電気機器の機能調整手段として適用した場合を例に

とって説明する。」(段落【0018】)

「図1に示すように,本例のハプティックコントローラは,筐体1と,

当該筐体1の内部に設置されたアクチュエータ2と,前記筐体1より外

部に突出された前記アクチュエータ2の駆動軸2aの一端に固着された

ロータリノブ3と,前記アクチュエータ2の駆動軸2aの他端に固着さ

れたコードホイール4a及び前記筐体1に設置されたフォトインタラプ

タ4bとからなる位置センサ4と,スイッチ5と,前記アクチュエータ

2及びスイッチ5を含むシステム全体を制御する制御部6とから主に構

成されている。」(段落【0019】)

「筐体1は自動車のダッシュボード或いはコンソールボックス等を構

成するパネル7の内部に設置され,ロータリノブ3は当該パネル7の外

部に配置される。」(段落【0020】)

「アクチュエータ2としては,ロータリノブ3に所要の外力を負荷可

能なものであれば,回転モータ,リニアモータ又はソレノイドなど,公

知に属する任意のアクチュエータを用いることができる。なお,図1に

は,回転モータを用いた場合が例示されている。」(段落【0021】)

「ロータリノブ3は,車載電気機器の調整つまみとして使用されるも




のであって,プラスチックの成形品をもって所要の形状に形成される。」

(段落【0022】)

「位置センサ4としては,ロータリノブ3の操作方向及び操作量を検

知可能なものであれば,エンコーダ又は可変抵抗器など,公知に属する

任意の位置信号検出器を用いることができる。なお,図1には,アクチ

ュエータ2の駆動軸2aに固着されたコードホイール4aと筐体1に設

置されたフォトインタラプタ4bとからなる光学式のロータリエンコー

ダが例示されている。」(段落【0023】)

「スイッチ5は,ロータリノブ3を操作することによって調整しよう

とする車載電気機器の機能を選択するためのものであって,本例の手動

入力装置においては,「ラジオ局の選局」を選択するための押釦スイッ

チ5aと,「ラジオ音量の調整」を選択するための押釦スイッチ5bと,

「カーナビゲーションシステムにおける地図画面のスクロール」を選択

するための押釦スイッチ5cとが備えられている。」(段落【0024

】)

「制御部6は,位置センサ4より出力される位置信号a及びスイッチ

5より出力されるスイッチ信号bを取り込む入力部61と,位置信号a

の値及び変化方向(ロータリノブ3の操作量及び操作方向)に応じたア

クチュエータ2の制御信号の基本出力値が記憶された基本出力値記憶部

62と,位置信号aの変化速度(ロータリノブ3の操作速度)に応じた

アクチュエータ2の制御信号の補正値が記憶された補正値記憶部63

と,押釦スイッチ5a〜5cを操作することにより選択される各電気機

器の機能に応じた目標位置が記憶された目標位置記憶部64と,前記基

本出力値記憶部62より読み出される基本出力値と前記補正値記憶部6

3より読み出される補正値とを加算すると共に,前記目標位置記憶部6

4より読み出される目標位置とロータリノブ3の現在位置とを比較し,




所要のアクチュエータ2の制御信号dを生成する演算処理部65と,当

該演算処理部65より出力されたアクチュエータ2の制御信号dを入力

し,アクチュエータ2の駆動信号eを生成するドライバ回路66と,出

力部67とから主に構成されている。なお,前記ドライバ回路66は,

演算処理部65より出力された制御信号dをD/A変換するD/A変換

器と,D/A変換された信号を増幅する信号増幅器とから構成される。」

(段落【0025】)

「図2に,補正値記憶部63に記憶される補正値とロータリノブ3の

操作速度との関係を示す。このグラフ図から明らかなように,本実施

態例においては,ロータリノブ3の操作速度に比例して補正値の値を増

加する構成になっている。この補正値は,基本出力値とは逆の符号を有

し,演算処理部65で加算されたとき,基本出力値の絶対値を減少する。」

(段落【0026】)

「【発明の効果】以上説明したように,本発明によれば,位置センサ

より出力される位置信号に対応する基本出力値のみに基づいてアクチュ

エータの駆動を制御するのではなく,操作部の速度に対応しかつ基本出

力値とは逆の符号を有する補正値を加味してアクチュエータの駆動を制

御するので,付与する力が大きすぎること,及び,制御部の動作遅れに

より操作者が手を離した後にアクチュエータからの外力を受けて操作部

が移動を開始した場合にも,その移動方向とは逆向きでその移動速度に

対応した大きさの外力がアクチュエータより操作部に付与され,不正な

操作部の移動が防止される。したがって,タッチセンサ等の手段を追加

することなく操作部を操作後の位置に保持することができ,ハプティッ

クコントローラの操作性及び信頼性を高めることができる。また,手を

離した後に予め定められた所定の位置に操作部を自動的に停止させるハ

プティックコントローラにおいても,操作部が所定の位置まで移動され




るとき,当該操作部の移動方向とは逆向きで当該操作部の移動速度に対

応した大きさの外力が常にアクチュエータより操作部に付与されるの

で,操作部への余分な力の出力が抑制される結果,振動等の好ましくな

い動きが防止され,操作部を速やかに所要の停止位置に停止させること

ができる。」(段落【0046】)

イ 相違点の容易想到性について



開示されていることが認められる。

a 従来より,ノブの操作フィーリングを良好にしてノブの操作を確実

なものにするため,ノブにその操作量及び操作方向に応じた抵抗感や

推力を付与するフォースフィードバック機能付き「手動入力装置」が

知られており,この手動入力装置は,自動車におけるバイワイヤ方式

のギアシフト装置や,車載された各種の電気機器(例えば,エアコン,

ラジオ等)の機能調整装置に適用されていた。

この手動入力装置をギアシフト装置として適用する場合,フォース

フィードバック機能は,シフトレバーのレンジ切替にクリック感を与

えたり,特定レンジから他の特定レンジへのシフトレバーの不正な操

作を禁止するロック手段などとして利用されるが,従来の手動入力装

置では,ノブの操作量及び操作方向のみに基づいてノブに外力を負荷

するアクチュエータを制御する構成であるので,実際のトランスミッ

ションのギアのかみ合い状態とシフトレバーの切替位置とが不一致に

なると,ギアシフト装置によるトランスミッションの操作を的確に行

えなくなるばかりでなく,トランスミッションが不時に切り替えられ

て自動車が急停止あるいは急減速する等の不測の動作を起こすおそれ

もあった。

また,従来の手動入力装置を車載電気機器の機能調整装置に適用す




る場合も同様であり,機能を調整しようとする車載電気機器の状態に

関係なく,ノブの操作量及び操作方向のみに基づいてノブに外力を負

荷するアクチュエータを制御する構成であるので,車載電気機器の状

態に応じた適切な機能調整を行うことが難しく,使い勝手が必ずしも

良好ではないという問題があった。

b 「本発明」は,従来技術の不備を解消し,操作しようとする外部装

置の状態に応じて異なる操作フィーリングをノブに付与することがで

きて操作性及び信頼性に優れた手動入力装置を提供することを課題と

するものであり,その課題を解決するための手段として,手動入力装

置の構成として,「ノブと,当該ノブに外力を負荷するアクチュエー

タと,前記ノブの操作状態を検知する検知手段と,前記ノブにより操

作される外部装置との間で信号の送受信を行う入出力部とを備え,前

記アクチュエータを,少なくとも前記外部装置に接続された外部検知

手段から出力される外部信号に基づいて生成される制御信号により制

御するという」構成を採用した。

「本発明」の手動入力装置は,ノブに外力を負荷するアクチュエー

タを,検知手段から出力される検知信号と外部装置に接続された外部

検知手段から出力される外部信号に基づいて生成される制御信号によ

って制御し,外部装置の状態に応じたきめ細かいアクチュエータの制

御を行うことができるので,外部装置の駆動状態とノブの操作状態と

の不一致を防止し,手動入力装置の操作性及び信頼性を高めることが

でき,また,調整しようとする車載電気機器の状態に合わせたノブの

操作フィーリングを得ることができるので,ノブの操作性を改善し,

当該車載機器制御装置を用いて実行しようとする電気機器の機能調整

を容易かつ確実に行うことができるという効果を奏する。

c 「本発明」の手動入力装置におけるノブの形状,筐体に対する操作




軸の配列,検知手段の種類,アクチュエータの種類については,各実

施形態例に例示した組み合わせに限定されるものではなく,必要に応

じて任意の組合せとすることができる(段落【0032】)。

前記アの引用例2の記載事項によれば,引用例2には,次の事項が開

示されていることが認められる。

a 従来より,操作部の操作フィーリングを良好にして操作部の操作を

確実なものにするため,操作部にその操作量や操作方向等の操作状態

に応じたクリック感触や抵抗感又は推力等を付与するフォースフィー

ドバック機能付き「ハプティックコントローラ」が知られており,こ

の種の手動入力装置は,自動車におけるバイワイヤ方式のハンドル装

置や,車載された各種の電気機器(例えば,エアコン,ラジオ等)の

機能調整装置として適用されていた。

このハプティックコントローラにおいては,ロータリノブに手が添

えらえていることを想定した大きさの力を付与しているため,操作者

がロータリノブを回転操作中にロータリノブから急に手を離した場合

に,ロータリノブに過大な力を付与してしまう結果となり,ロータリ

ノブが手を離した位置に停止されず,アクチュエータより付与される

外力によってその外力の方向に移動してしまうという問題があり,ま

た,この問題を解消するために,ロータリノブにタッチセンサを付設

し,ロータリノブから手が離れたときにタッチセンサで検知して,ア

クチュエータの駆動を停止する構成を採用することは,ハプティック

コントローラの構成が複雑化して,ハプティックコントローラが高コ

スト化するばかりでなく,例えば,ロータリノブをラジオの選局つま

みとして利用する場合のように特定の回転方向位置に停止させる必要

がある場合においても,ロータリノブから手を離すと,その位置でロ

ータリノブを停止してしまうため,電気機器等の正確な機能調整を行




うことができないという問題があった。

さらに,例えば,センター復帰形のハプティックコントローラのよ

うに,手を離した後に予め定められた所定の位置にロータリノブを自

動的に停止させるハプティックコントローラにおいても,所要の停止

位置にロータリノブを速やかに停止させることが難しく,ロータリノ

ブがセンター位置等の所要の停止位置を中心として長時間振動してし

まうという問題があった。

b 「本発明」は,従来技術の不備を解消し,所要の目標位置に操作部

を正確かつ迅速に停止することができ,操作性及び信頼性に優れたハ

プティックコントローラを提供することを課題とするものであり,そ

の課題を解決するための手段として,ハプティックコントローラの構

成として,「操作部と,当該操作部の位置を検出する位置センサと,

前記操作部に外力を与えるアクチュエータと,前記位置センサより出

力される位置信号に基づいて前記アクチュエータの駆動を制御する制

御部とを有し,前記制御部は,前記操作部の位置に対応する前記アク

チュエータの基本出力値を求めると共に,前記操作部の速度に対応し,

前記基本出力値とは逆の符号を有する前記基本出力値の補正値を求

め,これら基本出力値と補正値との加算値である制御信号を出力して

前記アクチュエータの駆動を制御するという」構成を採用した。

「本発明」のハプティックコントローラは,位置センサより出力さ

れる位置信号に対応する基本出力値のみに基づいてアクチュエータの

駆動を制御するのではなく,操作部の速度に対応しかつ基本出力値と

は逆の符号を有する補正値を加味してアクチュエータの駆動を制御す

るので,付与する力が大きすぎたり,制御部の動作遅れにより操作者

が手を離した後にアクチュエータからの外力を受けて操作部が移動を

開始した場合にも,その移動方向とは逆向きでその移動速度に対応し




た大きさの外力がアクチュエータより操作部に付与され,不正な操作

部の移動が防止されるため,タッチセンサ等の手段を追加することな

く操作部を操作後の位置に保持し,ハプティックコントローラの操作

性及び信頼性を高めることができ,また,手を離した後に予め定めら

れた所定の位置に操作部を自動的に停止させるハプティックコントロ

ーラにおいても,操作部への余分な力の出力が抑制される結果,振動

等の好ましくない動きが防止され,操作部を速やかに所要の停止位置

に停止させることができるという効果を奏する。

c 「本発明」のアクチュエータとしては,ロータリノブに所要の外力

を負荷可能なものであれば,回転モータ,リニアモータ又はソレノイ

ドなど,公知に属する任意のアクチュエータを用いることができる(

段落【0021】)。

また,「本発明」の位置センサとしては,ロータリノブの操作方向

及び操作量を検知可能なものであれば,エンコーダ又は可変抵抗器な

ど,公知に属する任意の位置信号検出器を用いることができる(段落

【0023】)。



には,「バイワイヤ方式の各種装置に適用されるハプティックコントロ

ーラであって,そのアクチュエータ2の駆動軸2aの一端にロータリノ

ブ3が固着され,駆動軸2aの他端に位置センサ4が固着されており,

ロータリノブ3の操作量及び操作方向に応じた抵抗力や推力を付与する

もの」が記載されていることが認められる。このハプティックコントロ

ーラは,アクチュエータ2の駆動軸2aの一端にロータリノブ3を配置

し,駆動軸2aの他端にロータリノブ3の操作量及び操作方向(回転方

向)を検知する位置センサ4を配置し,その間の駆動軸2a上にアクチ

ュエータ2を配置したものであり,ロータリノブ3,アクチュエータ2




及び位置センサ4がその順にアクチュエータ2の駆動軸2a上に配置さ

れ,駆動軸2aがアクチュエータ2の軸とロータリノブ3を回転操作す

るシャフト軸を兼用し,両軸が同軸である構成であるといえる。

そうすると,引用例2記載のハプティックコントローラにおける位置

センサ4等の配置構成は,アクチュエータ2の駆動軸2aが位置センサ

4とロータリノブ3との間で回転軸に沿って伸張し,ロータリノブ3が

駆動軸2aの一方の端部に,位置センサ4が駆動軸2aの他方の端部に

それぞれ配置され,アクチュエータ2が位置センサ4とロータリノブ3

との間の駆動軸2a上に座している配置構成であるといえるから,相違

点1に係る本願補正発明の構成に相当するものである。



のハプティックコントローラは,@ノブの操作フィーリングを良好にし

てノブの操作を確実なものにするため,ノブにその操作量及び操作方向

に応じた抵抗感や推力を付与するフォースフィードバック機能付き手動

入力装置であって,自動車におけるバイワイヤ方式のハンドル装置やト

ランスミッションのギアシフト装置,車載された各種の電気機器(例え

ば,エアコン,ラジオ等)の機能調整装置として適用される点で技術分

野が共通すること,A従来技術として挙げた手動入力装置の具体的構成

が共通し(引用例1につき別紙2の図17,引用例2につき別紙3の図

9),その技術的課題も,ノブに外力を負荷するアクチュエータの制御

を検知手段又は位置センサから出力される検知信号のみに基づいて行う

ことによって生じる問題点を解決し,手動入力装置の操作性及び信頼性

を高める点において共通することが認められる。

そして,一般に,センサとアクチュエータ等との配置構成は,検知手

段に及ぼすノイズ等の発生源の有無,アクチュエータに給電するための

ケーブルの取り回し,所用空間の制限等の設計仕様に応じて適宜選択す




る設計的事項であるといえる。また,引用例1記載の手動入力装置のよ

うに,動力伝達部を設けてアクチュエータの軸とシャフト軸線をずらす

か,引用例2記載のハプティックコントローラのように,アクチュエー

タをシャフトと同軸に配置するかは,必要な伝達トルクを得るための減

速歯車の要否や,装置全体の所要空間の制限等の観点から適宜,相互に

代替,選択し得る設計的事項であるといえる。

動入力装

置におけるノブの形状,筐体に対する操作軸の配列,検知手段の種類,

アクチュエータの種類については,各実施形態例に例示した組合せに限

定されるものではなく,必要に応じて任意の組合せとすることができる



のアクチュエータとしては,公知に属する任意のアクチュエータを用い

ることができる旨の示唆がある。

以上によれば,引用例1及び引用例2に接した当業者においては,手

動入力装置の設計仕様に応じて,引用例1発明に引用例2記載の位置セ

)を適用する動機付けがあることが認められ

る。

そうすると,引用例1及び引用例2に接した当業者は,引用例1発明

に引用例2記載の位置センサ等の上記配置構成を適用して,引用例1発

明において,一端にノブを配置した操作軸であるシャフトの他端に回転

角検出装置を配置し,その間のシャフト上にアクチュエータを配置し,

ノブ,アクチュエータ及び回転角検出装置がその順にシャフト上に配置

され,アクチュエータの軸とシャフト軸が同軸である構成(相違点1に

係る本願補正発明の構成)とすることを容易に想到することができたも

のと認められる。

ウ 原告の主張について




原告は,引用例1と引用例2の技術分野が異なり,対象とする装置が,

引用例1発明はギアシフト装置であるのに対し,引用例2は「ラジオ局

の選局」等に用いられるハプティックコントローラである点で異なる,

引用例1及び引用例2には,位置センサの配置についての技術課題は何

ら記載されておらず,位置センサの配置は,操作装置の操作性・信頼性

を向上させるという技術課題に対する課題解決手段と無関係であるか

ら,その配置等を改変しようとする動機付けは生じ得ないとして,引用

例1発明に引用例2記載の位置センサ等の配置構成を適用する動機付け

はない旨主張する。



引用例2記載のハプティックコントローラは,いずれもフォースフィー

ドバック機能付き手動入力装置である点で共通し,自動車におけるバイ

ワイヤ方式のハンドル装置やトランスミッションのギアシフト装置,車

載された各種の電気機器の機能調整装置として適用される点でも技術分

野が共通すること,A一般に,センサとアクチュエータ等との配置構成

は設計的事項であること,B引用例1には,「本発明」の手動入力装置

におけるノブの形状,筐体に対する操作軸の配列,検知手段の種類,ア

クチュエータの種類は,必要に応じて任意の組合せとすることができる

旨の示唆があり,また,引用例2には,「本発明」のアクチュエータと

しては,公知に属する任意のアクチュエータを用いることができる旨の

示唆があることによれば,引用例1及び引用例2に接した当業者におい

ては,手動入力装置の設計仕様に応じて,引用例1発明に引用例2記載

の位置センサ等の配置構成を適用する動機付けがあることが認められる

から,原告の上記主張は理由がない。

原告は,本願補正発明の「前記アクチュエータ(22)は,前記回転

角検出装置(32)と前記操作素子との間の前記シャフト(21)上に




座し」とは,アクチュエータの軸とシャフトの軸とが同軸である構成で

あること意味するが,本件審決は,引用例1発明から動力伝達部6を除

くこと及び引用例1発明の「操作軸2」と「アクチュエータ5の駆動軸

5a」を同軸とすることの容易性について判断を行うことなく,引用例

1発明において相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは容易想

到であると判断した誤りがある旨主張する。



トローラは,ロータリノブ3,アクチュエータ2及び位置センサ4がそ

の順にアクチュエータ2の駆動軸2a上に配置され,駆動軸2aがアク

チュエータ2の軸とロータリノブ3を回転操作するシャフト軸を兼用

し,両軸が同軸である構成であって,本件審決は,引用例1発明に引用

例2記載のハプティックコントローラにおける位置センサ等の上記配置

構成を適用することが容易想到であることを判断しているから,本件審

決は,引用例1発明から動力伝達部6を除くこと及び引用例1発明の「

操作軸2」と「アクチュエータ5の駆動軸5a」を同軸とすることの容

易性について実質的に判断したものといえる。

したがって,原告の上記主張は理由がない。

エ 小括

以上によれば,引用例1発明において相違点1に係る本願補正発明の構

成とすることは容易想到であるとした本件審決の判断に誤りはない。

相違点2の容易想到性の判断の誤りの有無について

原告は,本件審決は,相違点2について,「引用例1発明の検知手段ない

し引用例2の位置センサとして引用例3の上記事項を適用することに格別の

困難性はない。」,「少なくとも2つのホール素子に磁気収束板を組み合わ

せたセンサ手段」は周知である,「一般に,引用例3のような「少なくとも

2つのホールセンサ」に磁気収束板を組み合わせることは適宜なし得る設計




的事項にすぎない。」との認定判断に基づいて,「以上のようにしたものは,

実質的に,本願補正発明の相違点2に係る上記事項を具備しているというこ

とができる。」として,引用例1発明において相違点2に係る本願補正発明

の構成とすることは容易想到である旨判断しているが,本件審決の判断は誤

りである旨主張するので,以下において判断する。

ア 引用例3の記載事項について

引用例3(甲3)には,次のような記載がある(下記記載中に図面につ

いては別紙4を参照)。

「【特許請求の範囲

1. 機器における情報の手動入力のための操作装置であって,

調整部材を有しており,前記調整部材の位置は,操作力の作用のもと

で可変であり,前記調整部材は該調整部材の位置を特徴付ける電気信号

生成のための変換器と接続されており,

前記調整部材に接続されたモータ構成要素を有しており,前記構成要

素は電気信号の制御のもとで調整部材に応力を実行し,その大きさと方

向は,前記調整部材の位置および/または入力される情報に依存してい

る形式のものにおいて,

前記変換器がモータ構成要素のローター(3)とセンサ(9,10)

からなっており,該センサは前記ローターの位置に依存してそのつど電

気信号を送出することを特徴とする操作装置。

2. 前記ロータ(3)は,直径方向で磁化されているディスクからなる,

請求項1記載の操作装置。

3. 前記センサ(9,10)は,ホールセンサである,請求項1または

2記載の操作装置。」(2頁),

「 操作装置

本発明は,機器における情報の手動入力のための操作装置であって,




調整部材を有しており,前記調整部材の位置は,操作力の作用のもとで

可変であり,前記調整部材は該調整部材の位置を特徴付ける電気信号生

成のための変換器と接続されており,前記調整部材に接続されたモータ

構成要素を有しており,前記構成要素は電気信号の制御のもとで調整部

材に応力を実行し,その大きさと方向は,前記調整部材の位置および/

または入力される情報に依存する,操作装置に関する。従来技術からは,

インクリメントセンサの形態でシャフトを介して調整部材を変換器に接

続させ,さらなるシャフトを介してモータに接続させることが公知であ

る。

この場合の欠点は,この構造形態が付加的なインクリメントセンサの

ために広い所要スペースを必要とすることである。

それ故に本発明の課題は,前述した公知技術の欠点に鑑み,所要スペ

ースが僅かで済むような相応の操作装置を提供することである。

前記課題は本発明により,変換器がモータ構成要素のローターとセン

サからなっており,該センサは前記ローターの位置に依存してそのつど

電気信号を送出するように構成されて解決される。モータ構成要素のロ

ータは,さらに変換器の角度センサの付加的な機能を充たす。それによ

り本発明によって得られる利点は,変換器に対して付加的なセンサのみ

を必要とするだけで済むことである。直径方向に磁化されたディスクと

して構成されたロータは,ロータに対する簡単で安価な解決手段となる。

少なくとも2つのホールセンサとの結合において,直径方向に磁化され

たディスクの磁界をホールセンサに引き起こす電圧からは360°の範

囲で正確な回転角度が求められる。これに対しては2つのホールセンサ

で完全にまかなえる。

2つのホールセンサが半径方向では同じ間隔で,90°だけずらされ

て配置されているならば,ロータの調整は,特に簡単に算出できる。




クロスコイル対の適用によっては,モータ構成要素が非常にコンパク

トに構造化できる。さらに2つのコイルのそれぞれ異なる制御によって,

それぞれ所望の回転トルク特性が所望の角度毎に得られる。この回転ト

ルク特性と角度は,制御の変更によって相応に任意に調節可能である。

所望のモーメント特性曲線は,メモリにファイルされそこから読出し可

能である。それにより,どのデータが読出されるかに応じて種々異なる

回転トルクが生成される。これにより例えば音量の調節の際に相応のモ

ーメント経過によって係止位置がシミュレートされ得る。それに対して

機器における個々のスピーカの音量の調節(バランス,フェーダ)の際

には,速度に比例した摩擦がシミュレータされる。

これは操作装置を使用する使用者に歩添書メータの調節間隔を伝える。」

(4頁2行〜5頁9行)

「図1の操作装置1は,回転ノブの形態の調整部材1を有している。

これは,シャフト2を介してロータ3と直径方向に磁化されたディスク

の形態で結合されている。ロータ3はコイル4,5内に生成される磁界

と共に作用し,それによって回転移動または回転トルクを生成する。コ

イル4,5は,それぞれ2つの半部に分割され,巻回体上部6と巻回体

下部7からなる巻回体に巻回されている。巻回体6,7は,次のように

構成されている。すなわちロータ3が完全に囲繞されるように構成され

ている。プリント基板8上にはホールセンサ9,10が次のように配設

されている。すなわちロータ3の回転軸からは半径方向で同じ間隔で9

0度だけずらされて配置されている。」(6頁6行〜14行)

「ロータ3の磁界によってホールセンサ9,10内に生成される電圧

から,ロータ3と回転ノブ1の回転角度が評価装置11において算出さ

れる。符号12の装置においては,ロータ3と,コイル4,5を通る電

流の相互作用による所望の回転トルクを生成するのに,コイル4,5に




必要とされる電圧が生成される。このことは算出された回転角度および/

または送出された情報に依存して行われる。」(6頁15行〜19行)

イ 本件審決認定の周知事項に係る文献

甲4

甲4(特開2004−317446号公報)には,次のような記載が

ある(下記記載中に図面については別紙5を参照)。

a 「【特許請求の範囲

【請求項1】強磁性体からなる磁気収束板と,該磁気収束板から漏洩

する磁場を検知するための磁電変換素子とからなる磁気センサにおい

て,前記磁気収束板が,前記磁電変換素子を含む基板上に形成された

強磁性体粉末の成型体からなることを特徴とする磁気センサ。」(2

頁)

b 「【発明の属する技術分野】

本発明は,磁気センサに関し,より詳細には,強磁性体粉末の成型体

からなる磁気収束板と,この磁気収束板から漏洩する磁場を検出する

ための磁電変換素子とからなる磁気センサに関する。」(段落【00

01】)

c 「【従来の技術】

磁場を高精度に検知する磁気センサとしては,一般にホール素子がよ

く用いられるが,例えば,増幅回路等との集積化が容易なシリコンを

用いた場合,磁気感度が十分では無いため,増幅回路の設計が困難と

なり,必ずしも使い勝手は良くない。このような問題に対して,軟磁

性材料で作成した磁気収束板をホール素子と組み合わせることで,磁

場を高感度に検出することが可能になることが知られている。」(段

落【0002】)

「例えば,空隙を介して配置された2個の磁気収束板からなる磁気




収束板対と,この空隙の外側に配置され,磁気収束板対より漏洩する

磁場を検知するホール素子とからなる構造によって,高感度を有する

磁気センサを得ることができる(例えば,特許文献1参照)。」(段

落【0003】)

「また,円型の磁気収束板1個と,この磁気収束板より漏洩する磁

場を検知するホール素子とからなる構造によって,高感度を有する2

次元磁気センサを得ることもできる(例えば,特許文献2参照)。」

(段落【0004】)

「さらに,特願2003−51929号には,円型の磁気収束板1

個と,複数の角柱型の磁気収束板と,この磁気収束板より漏洩する磁

場を検知するホール素子とからなる構造によって,高感度を有する3

次元磁気センサを得ることが開示されている。」(段落【0005】)

「【特許文献1】

米国特許第6,184,679号明細書」(段落【0006】)

「【特許文献2】

特開2002 −71381号公報」(段落【0007】)

d 「【発明が解決しようとする課題】

しかしながら,磁気収束板を作成するにあたっては,強磁性体材料を

所望の形に加工しなければならないが,強磁性材料,特に軟磁性材料

である非晶質金属は高硬度を有するため,非常に加工性に乏しく,幅,

長さ及び厚みなどの形状の制御が困難であり,結果として優れた磁気

特性を有する実用的な磁気センサの実現は困難であった。」(段落【

0008】)

「本発明は,このような問題に鑑みてなされたもので,その目的と

するところは,大量生産可能で,かつ優れた磁気特性を有する磁気セ

ンサを提供することにある。」(段落【0009】)




e 「【課題を解決するための手段】

本発明では,このような目的を達成するために,強磁性体粉末(以下,

本発明でいう粉末とは,球状粉,楕円球状粉,箔状粉,角柱状粉,針

状粉,あるいはこれらの形状を組み合わせた形状粉など,形状に依存

しない粉末を示す。)を成型することで,所望の磁気収束板を実現す

着想を得るに至った。」(段落【0010】)

f 「【発明の実施の形態】

以下,図面を参照して本発明の実施例について説明する。

実施例1]

図1は,本発明に係る磁気センサの第1実施例を説明するための構成

図で,図中符号1は円型の磁気収束板,4,5,6,7は磁電変換素

子であるホール素子を示している。」(段落【0021】)

「本発明の磁気センサは,強磁性体粉末の成型体からなる円型の磁

気収束板1と,この磁気収束板1から漏洩する磁場を検知するための

複数の磁電変換素子であるホール素子4,5,6,7から構成されて

いる。このホール素子4,5,6,7は,X軸上に一方の対のホール

素子4と6が相対して設けられ,Y軸上に他方の対のホール素子5と

7が相対するように配置されている。なお,このホール素子の数やそ

の配置については,この実施例に限定されることはなく,種々の数及

びその配置が考えられる。」(段落【0022】)

「磁気収束板1は,平均長さ1μm平均軸径100nmのコバルト

−鉄非晶質合金針状粉末をビニル系樹脂中に分散させた後,さらに,

エポキシ系樹脂を加えたものを塗布液とし,次いで,コバルト−鉄非

晶質合金針状粉末を分散させた塗布液を,磁電変換素子を含む基板上

に,スクリーン印刷機を用いて磁気収束板の形状に定着させ,最後に,

磁電変換素子を含む基板を,酸化雰囲気400℃で焼成することで得




ることができる。」(段落【0023】)

「また,同様の塗布液を,磁電変換素子を含む基板上に,インクジ

ェット印刷機を用いて磁気収束板の形状に定着させ,最後に,磁電変

換素子を含む基板を,酸化雰囲気400℃で焼成することで得ること

もできる。」(段落【0024】)

「強磁性体粉末については,磁化が容易な磁化容易軸を有すること

が望ましいが,この磁化容易軸を有さない強磁性体粉末が混在してい

ても構わない。」(段落【0025】)

甲5

甲5(国際公開03/081182号)には,次のような記載がある

(下記記載中に図面については別紙6を参照)。

a 「図1は,本発明を適用した角度検出装置の主要部分を示した回路

図である。

本図において,HEはホール素子であり,磁気センサとして用いる。

磁場のX方向成分およびY方向成分を検出するため,少なくとも2対

のホール素子が必要である。本実施の形態では,X方向成分を検出す

るために4個,Y方向成分を検出するために4個のホール素子を備え

ている。

これらのホール素子HEは,図2に示すように,円形の磁気収束板

MCの周辺端下部に配置してある。なお,磁気収束板MCによって,

米国特許第5,942,895号にも記載されているように,ホール

素子近傍の磁界は収束され,ホール素子の感磁面の磁束密度を大きく

することができる。」(8頁10行〜18行)

b 「図16Aおよび図16Bは,本発明を適用した角度検出部におけ

るコアの一例である。本図では,Si基板上に,信号処理回路ととも

に形成されたホ一ル素子上に,円形の磁性体材料からなるディスク(




磁気収束板)を貼り付ける。ここで,図16Aは,このコアの様子と,

このコアの好適な磁石の形状を示している。また図16Bは,その時

の磁力線の分布を模式的に示している。右から入力された横方向の磁

力線は,磁気収束板によって収束され,増幅されると同時に,垂直方

向の磁場に変換される。この磁場の方向は,S側のホール素子とN側

のホール素子で逆の方向となる。DDAに入力信号を供給する際は,

極性を逆にするよう注意を要する。一例では,200ミクロンφの磁

気収束板で, 約2倍の増幅率を得ることが可能である。」(22頁1

1行〜20行)

ウ 相違点の容易想到性について

前記アの引用例3の記載事項及び別紙4の図1によれば,引用例3に

は,「回転ノブと,少なくとも2つのホールセンサと,該ホールセンサ

に対して相対的に回転可能なロータと,回転ノブ及びロータが結合され

るシャフトとを備え,ロータは直径方向に磁化されたディスクとして構

成されており,ロータとホールセンサにより回転ノブの位置が検出され

る操作装置」が記載されていることが認められる。この操作装置は,回

転ノブが結合されたシャフトに結合され,直径方向に磁化されたロータ

(「磁石」)と,ロータの回転軸から軸方向に離れた位置に配され,半

径方向に同じ間隔で90°だけずらして配置された少なくとも2つのホ

ールセンサからなる磁気センサ(「磁界感応センサ」)とで構成された

回転角検出装置であるといえる。

したがって,引用例3の回転角検出装置の構成は,相違点2に係る本

願補正発明の構成のうち,「前記回転角検出装置(32)は,少なくと

も1つの磁界感応センサ(31)と,該磁界感応センサに対して相対的

に回転可能な少なくとも1つの磁石(30)とを有し」,「前記磁石(

30)は前記シャフト(21)の前記第2の端部(29)に固定されて




おり,前記磁石(30)の磁化方向は前記回転軸(5)に対して直角に

配向されており,前記磁界感応センサ(31)は前記磁石(30)に対

し,前記回転軸(5)に沿ってずらして配置され,前記磁界感応センサ

(31)は少なくとも2つのホール効果素子(33,34)を有し」の

構成部分に相当するものと認められる。

次に,@甲4には,「従来の技術」として,「磁気収束板をホール素

子と組み合わせることで,磁場を高感度に検出することが可能になるこ



c),別紙5の図1に磁気収束板をホール素子と組み合わせた構成が示

されていること,A甲5には,「磁気収束板MCによって,米国特許第

5,942,895号にも記載されているように,ホール素子近傍の磁

界は収束され,ホール素子の感磁面の磁束密度を大きくすることができ



16Bに磁気収束板とホール素子を組み合わせた構成が示されているこ

と,B国際特許分類(IPC)のG01R33/02(G01「測定;

試験」−サブクラスR「電気的変量の測定;磁気的変量の測定」−メイ

ングループ33「磁気的変量を測定する計器または装置」−サブグルー

プ02「磁界または磁束の方向または大きさの測定」)を細展開した国

内分類としてFI「G01R33/02 V 導磁束,集磁束」が存在

すること(乙2),C別紙7の乙4(特開2002−71381号公報)

の図2及び図4(磁場コンセントレータ3,ホール効果素子2.1,2.

4,磁力線13),別紙8の乙5(特開2005−98823号公報)

の図9及び図10(磁気収束板1002,ホール素子902,904),

別紙9の乙6(特開2004−158668号公報)の図1,図5(B)

及び図7(磁気収束板4,化合物半導体素子2)によれば,磁気センサ

において,磁石等から発生する磁束を効率良く捕捉するために,導磁束,




集磁束手段として「磁気収束板」を設けることは,本願の優先権主張日

(平成17年12月20日)当時,普通に行われていた常套手段であっ

たことが認められる。

さらには,ホール素子が磁気収束板により部分的に覆われている構成

は,別紙6の甲5の図2及び図16A,別紙8の乙5の図9,別紙9の

乙6の図1,図5(B)及び図7に示されているように,本願の優先権

主張日当時,普通の構造であったことが認められる。

そうすると,相違点2に係る本願補正発明の構成のうち,「前記磁界

感応センサ(31)は少なくとも2つのホール効果素子(33,34)

を有し,該ホール効果素子は強磁性ディスク(35)により部分的に覆

われている」との構成部分は,本願の優先権主張日当時,周知であった

ことが認められる。

そして,@回転角検出装置として,光学式センサ又は磁気センサのい

ずれかを選択し,あるいは光学式センサから磁気センサに変更すること

は,要求精度,コスト,接続回路等を考慮して,適宜決定する設計的事



発明」の手動入力装置におけるノブの形状,筐体に対する操作軸の配列,

検知手段の種類,アクチュエータの種類については,各実施形態例に例

示した組合せに限定されるものではなく,必要に応じて任意の組合せと



例2には,「本発明」の位置センサとしては,ロータリノブの操作方向

及び操作量を検知可能なものであれば,エンコーダ又は可変抵抗器など,

公知に属する任意の位置信号検出器を用いることができる旨の示唆があ

ることからすると,引用例1ないし引用例3に接した当業者においては,

引用例1発明に引用例2の位置センサ等の配置構成を適用して,操作軸

であるシャフトの一端にノブを配置し,シャフトの他端に回転角検出装




置を配置する配置構成とする際に,手動入力装置の設計仕様に応じて,

回転角検出装置を光学式センサである引用例1記載のロータリエンコー

ダの構成から磁気センサである引用例3記載の回転角検出装置の構成(



角検出装置の構成として,本件出願の優先権主張日当時に周知であった

「少なくとも2つのホール効果素子を有し,該ホール効果素子は強磁性



付けがあることが認められる。

そうすると,引用例1ないし引用例3に接した当業者は,引用例1な

いし引用例3の記載事項及び上記周知技術に基づいて,相違点2に係る

本願補正発明の構成を容易に想到することができたものと認められる。

エ 原告の主張について

引用例3記載の事項を検知手段として適用することの判断の誤りにつ

いて

原告は,@引用例3記載の特許請求の範囲の請求項1ないし3,引用

例3の記載事項(4頁12行〜13行,19行〜21行)によれば,引

用例3に開示されている技術的思想は,「モータ構成要素のロータ」を

直径方向で磁化されているディスクとし,センサ(ホールセンサ)とと

もに,位置―電気信号の変換器(すなわち,回転角検出装置)を構成す

ることであるのに対し,本願補正発明は,モータ構成要素に相当する「

アクチュエータ(22)」と「回転角検出装置(32)」とは,互いに

別の構成要素であるから,引用例1発明と引用例3に開示されている技

術的思想に基づいて,本願補正発明の回転角検出装置(32)の構成に

想到することはできない,A引用例3においては,「付加的なインクリ

メントセンサのために広い所要スペースを必要とすること」は従来技術

の欠点として排除されているから,引用例1発明の「検知手段」に引用




例3の構造(直径方向で磁化されているディスク)を適用することには,

阻害要因があるとして,本件審決における「引用例1発明の検知手段な

いし引用例2の位置センサとして引用例3の上記事項を適用することに

格別の困難性はない。」との判断は誤りであるから,上記認定に基づい

た相違点2の容易性の判断も誤りである旨主張する。

しかしながら,原告の主張は,引用例1発明に引用例3記載の回転角

検出装置の構成を適用するに当たり,モータ構成要素のロータを「変換

器」(回転角検出装置)の構成の一部(直径方向に磁化されたディスク)

と兼用させた引用例3記載の回転角検出装置の形状・構造をそのまま組

み合わせることを前提とするものといえるが,一般に,主たる引用発明

に他の引用発明や技術事項を適用する場合,その引用発明又は技術事項

に示された形状・構造をそのまま組み合わせるのではなく,必要に応じ

て合理的な構造変更や機能の調整・適応のための改変を行うことは当然

のことであるから,原告の上記主張は,まず,その前提において採用す

ることができない。



ンサに変更することは,要求精度,コスト,接続回路等を考慮して,適

宜決定する設計的事項であり,引用例1には,「本発明」の手動入力装

置におけるノブの形状,筐体に対する操作軸の配列,検知手段の種類,

アクチュエータの種類については,各実施形態例に例示した組合せに限

定されるものではなく,必要に応じて任意の組み合わせとすることがで

きる旨の示唆があることからすると,当業者においては,手動入力装置

の設計仕様に応じて,回転角検出装置を光学式センサである引用例1記

載のロータリエンコーダの構成から磁気センサである引用例3記載の回



そして,回転軸の端部に磁石を装着し,磁気センサによって磁束を捕




捉することで回転角度を検出する回転角検出装置は,本件出願の優先権

主張日当時,慣用技術であったものと認められること(例えば,別紙6

の甲5の図16A,別紙7の乙4の図2等)からすると,引用例1記載

のロータリエンコーダの構成から磁気センサである引用例3記載の回転

角検出装置の構成に変更する際に,引用例1記載のロータリエンコーダ

のコード板に代えて磁石を取り付ける構造に変更することは自然なこと

である。

したがって,引用例1発明の検知手段として引用例3の上記事項(前



の困難性はないとした本件審決の判断に誤りはなく,原告の上記主張は

理由がない。

周知技術の認定の誤りについて

原告は,@本件審決は,甲4及び甲5の記載事項に基づいて,「少な

くとも2つのホール素子に磁気収束板を組み合わせたセンサ手段」は,

周知であると認定したが,本件審決は,相違点2として,本願補正発明

の「前記磁界感応センサ(31)は少なくとも2つのホール効果素子(

33,34)を有し,該ホール効果素子は強磁性ディスク(35)によ

り部分的に覆われている」ことを挙げており,単に「少なくとも2つの

ホール素子に磁気収束板を組み合わせたセンサ手段」が周知であるとし

ても,本願補正発明の「ホール効果素子は強磁性ディスク(35)」に

より「部分的に覆われている」との上記構成までもが周知であるとはい

えない,A本件審決が挙げた甲4及び甲5を参照しても,相違点2に係

る本願補正発明の構成である「磁界感応センサは少なくとも2つのホー

ル効果素子を有し,該ホール効果素子は強磁性ディスクにより部分的に

覆われている」ことが周知であるとはいえないから,本件審決の周知技

術の認定には誤りがある旨主張する。




磁気収束板をホール素子と組み合わせた構成が示されており,また,甲

5には,別紙6の図2及び図16Aに示すように,少なくとも2つのホ

ール素子が磁気収束板により部分的に覆われている構成が開示されてい

ること,さらには,ホール素子が磁気収束板により部分的に覆われてい

構成は,本願の優先権主張日当時,普通の構造であったことからすると,

相違点2に係る本願補正発明の構成のうち,「前記磁界感応センサ(3

1)は少なくとも2つのホール効果素子(33,34)を有し,該ホー

ル効果素子は強磁性ディスク(35)により部分的に覆われている」と

の構成部分は,本願の優先権主張日当時,周知であったことが認められ

るから,原告の上記主張は,理由がない。

「少なくとも2つのホールセンサ」に磁気収束板を組み合わせること

容易想到性の判断の誤りについて

原告は,本件審決は,「一般に,引用例3のような「少なくとも2つ

のホールセンサ」に磁気収束板を組み合わせることは適宜なし得る設計

的事項にすぎない。」と判断したが,@甲4及び甲5に,少なくとも2

つのホール素子に磁気収束板を組み合わせたセンサ手段が記載されてい

るとしても,引用例3,甲4及び甲5には,引用例3記載のプリント基

板上に設けられたホールセンサに,磁気収束板を組み合わせることにつ

いて,具体的な開示や示唆がないから,引用例3記載の「少なくとも2

つのホールセンサ」に磁気収束板を組み合わせることは,当業者が適宜

なし得る設計的事項であるということはできない,A引用例3に係る発

明は,モータ構成要素をコンパクトに構造化するものであって,ホール

センサ9,10がモータ構成要素の巻回体下部7に近接して設けられて

いるが,ホールセンサに磁気収束板等の更なる構成を付加することは,

装置の小型化に反するものであり,阻害要因となり得るとして,本件審




決の上記判断は誤りである旨主張する。



のうち,「前記磁界感応センサ(31)は少なくとも2つのホール効果

素子(33,34)を有し,該ホール効果素子は強磁性ディスク(35)

により部分的に覆われている」との構成部分は,本願の優先権主張日当

時,周知であったことが認められる。

また,本件審決は,引用例1発明において,回転角検出装置を光学式

センサである引用例1記載のロータリエンコーダの構成から磁気センサ

である引用例3記載の回転角検出装置の構成に変更する際に,「少なく

とも2つのホールセンサ」に磁気収束板を組み合わせることが設計的事

項にすぎないと判断しているのであり,引用例3記載の回転角検出装置

そのものに磁気収束板を組み合わせることの容易想到性を判断している

ものではない。

したがって,引用例3,甲4及び甲5には,引用例3記載のプリント

基板上に設けられたホールセンサに,磁気収束板を組み合わせることに

ついて,具体的な開示や示唆があるかどうか,引用例3記載の回転角検

出装置そのものに磁気収束板を組み合わせることに阻害要因があるかど

うかは,「少なくとも2つのホールセンサ」に磁気収束板を組み合わせ

ることは設計的事項にすぎないとした本件審決の上記判断を左右するも

のではないから,原告の上記主張は,理由がない。

判断の遺漏等の有無について

a 原告は,本件審決は,引用例1発明において,相違点2に係る本願

補正発明の「前記磁界感応センサ(31)は少なくとも2つのホール

効果素子(33,34)を有し,該ホール効果素子は強磁性ディスク

(35)により部分的に覆われている」ことの構成を適用することの

容易想到性についての判断を行っていないから,本件審決には,判断




の遺漏がある旨主張する。

しかしながら,本件審決が周知技術の例示として挙げた甲5には,

別紙6の図2及び図16Aに示すように,少なくとも2つのホール素

子が磁気収束板により部分的に覆われている構成が開示されているこ



点2に係る本願補正発明の「前記磁界感応センサ(31)は少なくと

も2つのホール効果素子(33,34)を有し,該ホール効果素子は

強磁性ディスク(35)により部分的に覆われている」ことの構成を

適用することの容易想到性についての判断を実質的に行っているもの

といえるから,原告の上記主張は理由がない。

b 原告は,仮に本件審決に上記の判断の遺漏がないとしても,引用例

1発明から,相違点2における本願補正発明の構成を導くためには,

引用例1発明の検知手段4のコード板4aを引用例3の直径方向で磁

化されているディスク(磁石)に代えた上で,当該ディスク(磁石)

をノブと反対側のシャフトの端部に移設して固定し,さらに,引用例

1発明の検知手段4の発光素子4b及び受光素子4Cをホールセンサ

(磁界感応センサ)に代えた上で,ホールセンサを前記ディスク(磁

石)に対し回転軸に沿ってずらした配置とし,さらに,ホールセンサ

を部分的に覆う配置に強磁性ディスクを追加するとの改変が必要であ

る,これは,引用例1発明に,引用例2記載の技術事項を適用し,そ

の結果として得られた新たな発明について,引用例1及び2に記載さ

れていない技術課題を解決するため,引用例3記載の技術事項を適用

して,更に新たな発明を創出し,その新たな発明に対して更に他の文

献に記載された技術事項を適用するといった作業を繰り返すものであ

り,このように各引用例に記載も示唆もない改変を繰り返すことで,

引用例に記載された構成を多段階に改変し,本願補正発明の構成に至




ることは,当業者であっても極めて困難である旨主張する。



クチュエータ等との配置構成は,検知手段に及ぼすノイズ等の発生源

の有無,アクチュエータに給電するためのケーブルの取り回し,所用

空間の制限等の設計仕様に応じて適宜選択する設計的事項であるとい

えるから,引用例1発明に相違点1に係る本願補正発明の構成を適用



うに,相違点2に係る本願補正発明の構成は,回転角検出装置の磁気

センサの構成として周知であり,引用例1発明に上記周知の磁気セン

サの構成を適用することは,複数段階の改変に当たるとしても,設計

的事項にすぎないことからすると,当業者においては,引用例1ない

し3の記載事項及び周知技術に基づいて本願補正発明の構成に想到す

ることに格別の困難はないものと認められる。

したがって,原告の上記主張は,理由がない。

オ 小括

以上によれば,引用例1発明において相違点2に係る本願補正発明の構

成とすることは容易想到であるとした本件審決の判断は誤りであるとの原

告の主張は,理由がない。

まとめ

以上によれば,本願補正発明は,引用例1ないし3に記載された発明及び

周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたもので

あるから,本願補正発明が独立特許要件を満たさないとして本件補正を却下

した本件審決の判断に誤りはない。

したがって,原告主張の取消事由2は理由がない。

なお,本願発明は,上記と同様の理由により,当業者が容易に発明をする

ことができたものであるとした本件審決の判断にも誤りはない。




3 結論

以上の次第であるから,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,本件審

決にこれを取り消すべき違法は認められない。

したがって,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文

のとおり判決する。



知的財産高等裁判所第4部



裁判長裁判官 富 田 善 範




裁判官 大 鷹 一 郎




裁判官 柵 木 澄 子





(別紙1) 明細書図面


【図1】




【図2】





【図3】




【図4】 【図5】





【図6】




【図9】




【図10】





【図14】




【図15】





(別紙2) 甲1図面


【図1】




【図2】





【図5】




【図9】





【図17】





(別紙3) 甲2図面


【図1】




【図2】





【図9】





(別紙4) 甲3図面


【図1】





(別紙5) 甲4図面


【図1】





(別紙6) 甲5図面


【図1】 【図2】




【図16A】 【図16B】





(別紙7) 乙4図面


【図2】




【図4】





(別紙8) 乙5図面


【図9】




【図10】





(別紙9) 乙6図面


【図1】




【図5】




【図7】





(別紙10) 乙7図面


第1図





(別紙11) 乙8図面


第7図






  • この表をプリントする