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事件 |
平成
25年
(ワ)
31341号
特許専用実施権侵害行為差止等請求事件
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裁判所のデータが存在しません。 | |
裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 2014/09/25 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
判例全文 | |
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判例全文
平成26年9月25日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 平成25年(ワ)第31341号 特許専用実施権侵害行為差止等請求事件 (口頭弁論の終結の日 平成26年7月24日) 判 決 埼玉県川口市〈以下略〉 原 告 有限会社ホール・ワークス 同訴訟代理人弁護士 牧 山 美 香 同訴訟代理人弁理士 佐 藤 英 昭 埼玉県川口市〈以下略〉 被 告 株 式 会 社 ス リ ー ス ト ン 同訴訟代理人弁護士 楠 純 一 同訴訟代理人弁理士 村 松 義 人 主 文 原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事 実 及 び 理 由 第1 請求 1 被告は,別紙1(被告製品目録)記載(1)〜(3)の製品(以下「被告製品」 と総称し,それぞれの製品を「被告製品(1)」などという。)を製造し,販売 してはならない。 2 被告は,被告製品を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,400万円及びこれに対する平成25年12月13 日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 本件は,発明の名称を「パチンコ台取付装置」とする特許権の専用実施権 者である原告が,被告による被告製品の製造・販売が上記専用実施権の侵害 に当たる旨主張して,特許法100条1項及び2項に基づき,被告製品の製 造・販売の差止め及び廃棄を求めるとともに,専用実施権侵害に基づく損害 賠償金の支払を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲の証拠及び弁論の全趣旨により 容易に認定することができる事実) (1) 当事者 原告は,遊技場の経営,パチンコ遊技機等の遊技機器及びその部品の製 造・販売等を業とする特例有限会社である。 被告は,遊技場用電気機械器具,娯楽遊技機の製造・販売等を業とする 株式会社である。 (2) 原告の専用実施権 ア 原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,その特許出願の願書 に添付された明細書を「本件明細書」という。)について,特許権者であ る宮本成容(原告代表者)から,地域を日本国全域,期間を平成25年7 月1日から平成39年12月21日までとする専用実施権の設定を受け, 平成25年8月16日付けでその登録を受けた。(甲1,2) 特許番号 特許第4910154号 出 願 日 平成19年12月21日(特願2007−330697) 登 録 日 平成24年1月27日 イ 本件特許権に係る特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりで ある(以下,この発明を「本件発明」という。)。 「パチンコ本体と,それをヒンジを介して組込んだ台枠とからなるパチンコ 台アセンブリを遊技場の島枠構造に取付けるに際し,前記パチンコ本体を 台枠から取外さずに,前記パチンコ台アセンブリの状態のまま前記島枠構 造に嵌め込み,その後にパチンコ本体をヒンジを介して開いて固定及び角 度調整させるパチンコ台取付装置であって,該パチンコ台取付装置は,島 上部枠構造に固定する左右一組の上部取付装置と,島下部枠構造の上面部 に固定する左右一組の下部取付装置とからなり,前記上部取付装置は,島 上部枠構造の後面にネジ留め固定させるスライドベースと,スライドベー スの固定用垂直面底部の底面中央開口の両側にリベット固定され島上部枠 構造の下面にネジ留め固定させる2枚のベースレールと,スライドベース の固定用垂直面の縦長小判穴とスライドボルト支持用垂直面に形成された 縦長穴にボルトハンガーで前後移動が規制され上下方向に移動可能に保持 したスライドボルトと,スライドボルトに螺合されスライドベースの底面 中央開口に吊下げ状態で取付けられスライドボルトの回転により前後に移 動可能なスライドタップと,スライドタップに溶接固定され,島上部枠構 造に挿入された台枠上板を上側から押さえるグリップベースと,グリップ ベースの下部に固定され,台枠上板を下側から押圧してグリップするグリ ップアーム及びそれを回動させるグリップ機構とから構成され,前記下部 取付装置は,島下部枠構造の上面にネジ留め固定させる固定ベースと,台 枠下板の後端と当接させ島下部枠構造へのはめ込み位置を調節するウェル ドボルトと,台枠下板を島下部枠構造へ押圧固定するプッシュアーム及び それを回動させるグリップ機構とから少なくとも構成され,上部取付装置 及び下部取付装置のグリップ機構をロックすることにより台枠が島枠構造 に固定された状態で,前記スライドボルトを回転させればスライドタップ が移動され台枠上板が前後することによりパチンコ台アセンブリの傾斜を 調整することができることを特徴とするパチンコ台取付装置。」 ウ 本件発明は,以下の構成要件に分説される(以下,それぞれの構成要件 を「構成要件A」などという。)。 A パチンコ本体と,それをヒンジを介して組込んだ台枠とからなるパ チンコ台アセンブリを遊技場の島枠構造に取付けるに際し,前記パチ ンコ本体を台枠から取外さずに,前記パチンコ台アセンブリの状態の まま前記島枠構造に嵌め込み,その後にパチンコ本体をヒンジを介し て開いて固定及び角度調整させるパチンコ台取付装置であって, B 該パチンコ台取付装置は,島上部枠構造に固定する左右一組の上部 取付装置と, C 島下部枠構造の上面部に固定する左右一組の下部取付装置とからな り, D 前記上部取付装置は, D1 島上部枠構造の後面にネジ留め固定させるスライドベースと, D2 スライドベースの固定用垂直面底部の底面中央開口の両側にリベ ット固定され島上部枠構造の下面にネジ留め固定させる2枚のベー スレールと, D3 スライドベースの固定用垂直面の縦長小判穴とスライドボルト支 持用垂直面に形成された縦長穴にボルトハンガーで前後移動が規制 され上下方向に移動可能に保持したスライドボルトと, D4 スライドボルトに螺合されスライドベースの底面中央開口に吊下 げ状態で取付けられスライドボルトの回転により前後に移動可能な スライドタップと, D5 スライドタップに溶接固定され,島上部枠構造に挿入された台枠 上板を上側から押さえるグリップベースと, D6 グリップベースの下部に固定され,台枠上板を下側から押圧して グリップするグリップアーム及びそれを回動させるグリップ機構と から構成され, E 前記下部取付装置は, E1 島下部枠構造の上面にネジ留め固定させる固定ベースと, E2 台枠下板の後端と当接させ島下部枠構造へのはめ込み位置を調節 するウェルドボルトと, E3 台枠下板を島下部枠構造へ押圧固定するプッシュアーム及びそれ を回動させるグリップ機構とから少なくとも構成され, F 上部取付装置及び下部取付装置のグリップ機構をロックすることに より台枠が島枠構造に固定された状態で,前記スライドボルトを回転 させればスライドタップが移動され台枠上板が前後することによりパ チンコ台アセンブリの傾斜を調整することができることを特徴とする パチンコ台取付装置。 (3) 被告の行為 ア 被告は,遅くとも平成25年末頃以降,被告製品を製造・販売している。 (甲3〜5,乙1) イ 被告製品の構成は,別紙2(被告物件目録)のとおりである。また,被 告製品の具体的な構成及び作用効果は,別紙3(物件説明書)記載のとお りである。 ウ 本件発明の構成要件と被告製品の構成とを対比すると,両者には,次の 相違点1〜5(以下「本件相違点」と総称する。)が存在する。 (ア) 構成要件D2について,本件発明では2枚のベースレールがスライ ドベースの固定用垂直面底部の底面中央開口の両側に「リベット固定」 されるのに対し,被告製品では2枚のベースレールがスライドベースの 固定用垂直面底部の底面中央開口の両側に「ネジ留め固定」されている 点。(相違点1) (イ) 構成要件D3について,本件発明ではスライドボルト支持用垂直面 が「スライドベース」に設けられるのに対し,被告製品ではスライドボ ルト支持用垂直面が「ベースレール」に設けられている点。(相違点 2) (ウ) 構成要件D3について,本件発明は,スライドベースの固定用垂直 面に縦長小判穴が設けられ,スライドボルト支持用垂直面に縦長穴が設 けられ,そこに保持されたスライドボルトが上下方向に移動可能に保持 されるのに対し,被告製品は,上下方向に移動不可能に軸支したスライ ド用ボルト114を備え,スライドタップ115が仕舞われたケース1 17がバネ117Cによる上向きの付勢力に抗した下向きの外力が与え られることにより下方に移動可能とされている点。(相違点3) (エ) 構成要件D4について,本件発明では「スライドタップ」がスライ ドベースの底面中央開口に吊下げ状態で取り付けられるのに対し,被告 製品では「スライドタップを収納したケース」がケース蓋117B下面 とスライドタップ115上面との間に配置されたバネ117Cを介して スライドベース部112Aと後板111Bとに囲まれた開口部に吊下げ 状態で取り付けられている点。(相違点4) (オ) 構成要件E2について,本件発明では下部取付装置の島下部枠構造 への嵌め込み位置を調節する調節機構が「ウェルドボルト」であるのに 対し,被告製品では「ラック(平歯車)式ラチェット方式」である点。 (相違点5) 2 争点 原告は本件相違点について均等侵害の要件の充足を主張するが,仮にその 充足性が全て肯定されても,更に下記(2)の構成要件D2の充足性が肯定され なければ,被告製品が本件発明の技術的範囲に属するということはできない (なお,被告は,その余の構成要件の充足性については積極的に争っていな い。)。したがって,本件の争点は,次のように整理することができる。 (1) 本件相違点についての均等侵害の要件の充足性 (2) 構成要件D2の「2枚のベースレール」及び「底面中央開口」の充足性 (3) 差止請求等の当否 (4) 損害論 3 争点に関する当事者の主張 (1) 本件相違点についての均等侵害の要件の充足性 (原告の主張) 本件相違点に係る被告製品の構成は,次のとおり,本件特許の特許請求 の範囲に記載された構成と均等なものとしてその技術的範囲に属するとい うべきである。 ア 相違点1について @スライドベースとベースレールとの固定方法は本件発明の本質的部 分ではなく,Aリベット固定をネジ留め固定に置き換えても,本件発明 の目的を達することができ,両部材を永久的に固定するという作用効果 も同じであり,Bその固定方法は設計事項であって当業者が容易に想到 することができたものである。 イ 相違点2について @スライドボルト支持用垂直面(被告製品の後板111Bに相当す る。)がスライドベースとベースレールのいずれに設けられるかは,本 件発明の本質的部分ではなく,Aスライドボルト支持用垂直面をベース レールに設けても本件発明の目的を達することができ,作用効果も同じ であり,Bこの点に関する構成の相違は設計事項であって当業者が容易 に想到することができたものである。 ウ 相違点3について @島枠構造の高さと台枠の高さの差の自動調整という効果は,グリッ プベースが台枠高さに応じて上下方向に可動であるという構成により得 られる効果であるから,その可動性が本件発明の本質的部分であって, スライドボルトの上下方向の可動性は本件発明の本質的部分ではなく, A外力を加えたときにスライド用ボルトではなくケースが下がるように する構成であっても,グリップベースが上下方向に可動であるという原 理ないし作用は本件発明と同一であり,Bこの点に関する構成の相違は 設計事項であって当業者が容易に想到することができたものである。 なお,上記Bの点に関し,当業者において,本件発明に被告製品の開 発時点で公知であった甲9文献(特開2011−24979号公報)記 載の技術を適用して「スライド用ボルトは固定であって,スライドタッ プを収納したケースだけが揺動自在に吊り下げられるようにする」構成 に置換することは容易であった。また,被告は,グリップベースが台枠 高さに応じて上下方向に可動であるという構成は乙6文献(特開平10 −80563号公報),乙7文献(特開2007−259961号公 報),乙14文献(特開平3−191977号公報)及び乙15文献 (「ぱちんこ台取付機『どんぴしゃ』Eタイプ新登場」と題する文書) により本件出願時に公知となっていたと主張しているのであるから,上 記の置換が容易であったことを自認しているというべきである。 エ 相違点4について @スライドベースの開口部に吊下げ状態で取り付けるのがスライドタ ップであるか,スライドタップを収納したケースであるかは,本件発明 の本質的部分ではなく,A前者の構成を後者の構成に置き換えても,島 枠構造の高さと台枠の高さの差の自動調整という効果を奏することがで き,Bこの点に関する構成の相違は設計事項であって当業者が容易に想 到することができたものである。 オ 相違点5について @相違点5に係る本件発明の本質的部分は「台枠下板の島枠構造への 嵌め込み位置の調節」という効果を奏する部分にあるから,下部取付装 置の嵌め込み位置調整機構をウェルドボルトにするか,ラチェット機構 にするかは,本件発明の本質的部分ではなく,Aウェルドボルトをラチ ェット機構に置き換えても,同じ作用効果を得ることができ,Bこのよ うな置換は設計事項であって当業者が容易に想到することができたもの である。 (被告の主張) 原告の主張は争う。本件相違点は,いずれも本件発明の本質的部分に関 するものであり,本件相違点につき被告製品の構成に置換した場合に本件 発明と同一の作用効果を奏するとはいえず,かつ,当業者においてそのよ うな置換に想到することが容易であったともいえないから,被告製品が本 件発明と均等なものとしてその技術的範囲に属するということはできない。 なお相違点1及び3について補足すれば,次のとおりである。 ア 相違点1について 本件発明の構成要件においては,ベースレールとスライドベースの固 定方法がリベット固定に特定されている(構成要件D2)一方で,「ヒ ンジを介して開いて固定」(構成要件A),「ネジ留め固定」(構成要 件D1,E1),「溶接固定」(構成要件D5),「グリップベースの 下部に固定」(構成要件D6)及び「押圧固定」(構成要件E3)とい う異なる表現も使い分けられているのであるから,特許権者は,ベース レールとスライドベースの固定の方法をあえてリベット固定に限定した ものと解され,ネジ留め固定の構成を本件発明の技術的範囲から意識的 に除外したものである。 イ 相違点3について パチンコ台取付装置の上部取付装置について,グリップベースが台枠 高さに応じて上下方向に可動であるという構成は,乙6文献,乙7文献, 乙14文献及び乙15文献によって,本件出願時に公知となっていたか ら,上記の可動性は本件発明の本質的部分ではなく,構成要件D3の縦 長小判穴と縦長穴とによりスライドボルトの両端をそれぞれ支持させる ことでスライドボルトを上下方向に移動可能に保持させるという構成を 採用したところに,本件発明の本質的部分が存する。したがって,相違 点3は本件発明の本質的部分に関するものである。 また,本件発明では,グリップベースが取付時に台枠に押し上げられ ることにより自動的に高さ調整がされるのに対し,被告製品においては, バネ117Cの上向きの付勢力に抗した下向きの外力が与えられること により下方向に移動可能とされるのであるから,高さの自動的な調整と いう効果も奏しておらず,同一の作用効果を奏するものではない。 さらに,被告製品がケース117及びバネ117Cの構成を採用した ことにより,@グリップベース118及びグリップアーム119による 台枠上板301の挟持力に影響が出ず,その破損も生じなくなる,A台 枠を島構造体に入れ込むときに,グリップベースが台枠上板301に干 渉することがない,Bスライド用ボルト114が固定されるため,被告 製品(1)及び(2)のタイミングベルト122又は被告製品(3)のガイドワイ ヤ130を用いたスライド用ボルトの回転が可能になるという作用効果 を生ずる。したがって,相違点3は単なる設計事項ではなく,当業者が 被告製品の構成を容易に想到し得たとはいえない。 (2) 構成要件D2の「2枚のベースレール」及び「底面中央開口」の充足性 (原告の主張) ア 被告製品のベースレール部材111は,2本のベースレール部111 Aを備えているから(別紙3の構成ホ−1),構成要件D2の「2枚の ベースレール」を充足する。 イ 被告製品のスライドベース部112Aと後板111Bとによって囲ま れた開口部は,構成要件D2の「底面中央開口」を充足する。 (被告の主張) ア 構成要件D2の「2枚のベースレール」は,独立した2枚の部材で構 成されるものであるのに対し,被告製品の2本のベースレール部111 Aは,ベースレール部111Aから垂直に立ち上がった板状の後板11 1Bで接続されているから,上記「2枚のベースレール」を充足しない。 イ 構成要件D2の「底面中央開口」は,単体の部材で構成されるもので あるのに対し,被告製品の後板111Bは,スライドベース部材112 とは異なる部材であるベースレール部材111の一部であるから,これ らにより形成される開口部は,上記「底面中央開口」を充足しない。 (3) 差止請求等の当否 (原告の主張) 前記(1)及び(2)(原告の主張)のとおり,被告製品は本件発明の技術的 範囲に属するところ,被告は,被告製品を業として製造,販売している。 これらの行為は,原告の専用実施権の侵害に当たるから,原告は,被告に 対し,特許法100条1項及び2項に基づき,被告製品の製造・販売の差 止め及び被告製品の廃棄を求める。 (被告の主張) 争う。 (4) 損害論 (原告の主張) 被告は,遅くとも平成25年9月頃から同年11月27日までの間,被 告製品を少なくとも1000個販売した。原告が,被告の販売行為がなけ れば販売することのできた製品の利益の額は,1個当たり4000円であ るから,これに販売数量を乗じて得た400万円が原告が受けた損害額で ある(特許法102条1項)。よって,原告は,被告に対し,不法行為に よる損害賠償請求権に基づき400万円及び不法行為日以降の日である平 成25年12月13日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の 年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (被告の主張) 争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件相違点についての均等侵害の要件の充足性)のうち相違点3 及び4について まず,相違点3及び4についての均等侵害の要件の充足性について判断す る。 (1) 特許請求の範囲に記載された構成中に特許権侵害訴訟の対象とされた製 品と異なる部分が存する場合であっても,@上記部分が特許発明の本質的 部分ではなく(第1要件),A上記部分を当該製品におけるものと置き換え ても特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するもので あって(第2要件),Bそのように置き換えることに特許発明の属する技術 の分野における通常の知識を有する者(当業者)が当該製品の製造等の時 点においてかかる置換を容易に想到することができたものであり(第3要 件),C当該製品が特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業 者がこれから出願時に容易に推考できたものではなく(第4要件),かつ, D当該製品が特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外され たものに当たるなどの特段の事情もない(第5要件)ときは,当該製品は, 特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,特許発明の技術的 範囲に属するものと解すべきである(最高裁平成10年2月24日第三小 法廷判決・民集52巻1号113頁参照)。 原告は,相違点3及び4に係る第1要件及び第3要件の充足性について, グリップベースが台枠高さに応じて上下するという構成により島枠構造の 高さと台枠の高さの差の自動調整という効果が得られることが本件発明の 本質的部分であるから,相違点3及び4の構成の相違は,本件発明の本質 的部分ではなく,当業者が容易に想到することができる設計事項にすぎな いと主張する。 (2) そこでまず,第1要件の充足性について判断する。 ア 甲2及び乙7に弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。 (ア) 本件明細書の発明の詳細な説明には,次の趣旨の記載がある。 本件発明は,パチンコ台アセンブリを島枠構造に取り付ける際,ビ ス,釘を使うことなく,台枠寸法,厚みの違いに対応して傾斜角を調 節することが可能なパチンコ台取付装置に関するものである(段落 【0001】)。遊技場は,島と呼ばれる複数のパチンコ台を取り付 ける島枠構造が設けられており,パチンコ台を更新する場合,設置さ れていたパチンコ台を枠構造から外し,新たなパチンコ台を島枠構造 に取り付ける必要があるところ,台枠の高さや台枠を固定する島の枠 構造の高さ(以下,これらを併せて「台枠の高さ等」ということがあ る。)には,メーカーやホールによって数ミリ単位の相違がある。そ こで,上部取付装置は,取付け時に台枠の高さ等の相違があっても自 動的に高さを調整することができ,また,取付け後の傾斜角度の調整 を容易に行える構造を備えていることが求められていた(段落【00 02】,【0008】,【0009】,【0011】,【001 5】)。このような課題を解決するため,本件発明の上部取付装置は, スライドベースの固定用垂直面の縦長小判穴とスライドボルト支持用 垂直面の縦長穴にボルトハンガーで前後移動が規制され上下方向に移 動可能に保持したスライドボルトと,スライドボルトに螺合されスラ イドベースの底面中央開口に吊下げ状態で取り付けられスライドボル トの回転により前後に移動可能なスライドタップと,スライドタップ に溶接固定され,島上部枠構造に挿入された台枠上板を上側から押さ えるグリップベース等を備えることを特徴とする(段落【001 6】)。これにより,上部取付装置は,取付け時には,台枠の高さが グリップベースの吊り下げられた位置より高ければその高さまでグリ ップベースが台枠に押し上げられることで,グリップベースの高さが 台枠の高さに応じて自動的に調整されるとともに,取付け後は,パチ ンコ台の傾斜角度の調整を短時間で容易に行なうことができるという 効果を奏する(段落【0021】,【0043】,【0066】, 【0068】)。 (イ) 本件発明の上部取付装置は,一方において,島上部枠構造の後面 にスライドベースがネジ留め固定されるとともに,スライドベースに リベット固定されたベースレールが島上部枠構造の下面にネジ留め固 定される機構(構成要件D1及びD2)を有し,他方において,グリ ップベースとグリップアームとにより台枠上板が挟持される機構(構 成要件D5及びD6)を有し,これらの各機構が,上記(ア)の縦長小 判穴,縦長穴,スライドボルト及びスライドタップの構成(構成要件 D3及びD4)を介して係わり合うことによって,上記の自動的な高 さ調整及び傾斜角の調整が可能なようにパチンコ台アセンブリを島枠 構造に取り付けるという効果を奏するものである。 グリップベースの上下方向,左右方向及び前後方向の動き方は,次 のように規制されている。すなわち,スライドボルトが縦長小判穴及 び縦長穴に上下方向に移動可能に保持されること(構成要件D3)に より,上下方向には,縦長小判穴及び縦長穴の長径の範囲内でスライ ドボルトが揺動することに伴い,これに螺合されたスライドタップの 動きに追従してグリップベースもその範囲で揺動するのに対し,左右 方向には移動不可能である。また,前後方向には,スライドタップが スライドボルトの回転により前後移動可能とされていること(構成要 件D4)により,これに追従してグリップベースも前後に移動可能で ある。 (ウ) パチンコ台取付装置の技術分野において,本件特許の出願時に, グリップベースを上下方向に可動とすることで台枠の高さ等に差異が ある場合でも自動的にその高さを調整することができる公知技術が存 在していたと認めるに足りる証拠はない。 他方,スライドボルトの回転により,これに螺合されたスライドタ ップが前後に移動し,グリップベースの前後方向での位置が調整され る技術については,これに相当する構成が本件特許の出願日前に頒布 された刊行物である乙7文献に開示されていた。すなわち,乙7文献 には,手作業を不要とし,パチンコ台の傾斜角を自動で調整できると ともに,パチンコ島へパチンコ台を確実に取り付けることのできるパ チンコ台取付装置に係る発明が開示されているところ,グリップベー スに相当するつめ4は,スライドボルトに相当するねじ40の回転に 伴い前後方向に移動し,これによりパチンコ台の傾斜角の適正な調整 が可能とされている(乙7の発明の詳細な説明の段落【0089】〜 【0095】)。 イ 以上の事実によれば,本件発明の上部取付装置は,グリップベースを 上下方向に可動とすることで,台枠の高さ等に差異がある場合でも,自 動的にその高さが調整されるところに,発明の本質的部分があるものと 解される。なお,縦長小判穴,縦長穴,スライドボルト及びスライドタ ップの構成(構成要件D3及びD4)は,上記ア(イ)の二つの機構の係 わり合わせ方の一つにすぎず,その構成自体に本件発明の本質的部分が あると解することはできない。 ウ 被告製品の上部取付装置は,グリップベース118がベースレール部 材111及びスライドベース部材112により形成される開口部に吊下 げ状態で取り付けられ上下方向に可動とされているため,台枠の高さ等 に差異があっても,取付け時にグリップベース118の高さが自動的に 調整されることから(別紙2の構成d4,別紙3の構成ホ−26,2 9),本件発明の本質的部分と課題解決原理を同じくするものと解され る。相違点3及び4は,このような上下方向の自動的な高さ調整を可能 にするための構成の相違にすぎず,本件発明の本質的部分についてのも のではないから,被告製品は均等侵害の第1要件を充足するものと解す るのが相当である。 エ これに対し,被告は,上部取付装置のグリップベースが台枠高さに応 じて上下方向に可動な構成は乙6文献,乙7文献,乙14文献及び乙1 5文献によって本件出願時において公知技術となっていたと主張するが, これらの文献は,グリップベースを上下方向に可動とすることで台枠の 高さ等に応じて自動的に高さを調整する構成を開示するものとはいえな い。 まず,乙6文献には,側面視L字型の支持部材32にうがたれた縦長 の穴により上下方向の位置が調整されるという構成が開示されていると ころ,上記支持部材32は台枠上板に相当する部材にネジ留め固定され るもので,本件発明のグリップベースに相当する部材とはいえない上, 上記のネジ留め固定により自動的に高さ調整がされるものではなく,ネ ジ留め固定後に上記支持部材32の縦長の穴の前後に螺合されたナット を締める作業を伴うものと認められる(乙6文献の添付図面の図1・2 参照)。 また,乙7文献においては,本件発明の構成要件D1及びD2に相当 する機構並びに構成要件D5及びD6に相当する機構(上記ア(イ)参 照)がそれぞれ固定部及び挟持部と称され,両者を結合する部材である 関節7と固定部及び挟持部の接続部がそれぞれ第1接続部41及び第2 接続部42と称されている。しかるところ,乙7文献には,固定部を上 下方向に可動とすることにより,台枠高さに差があってもグリップベー スに相当するつめ4の高さが自動的に調整されるとの課題ないし課題解 決原理は記載されておらず,実施例及び添付図面をみても,関節7を上 下方向に可動としたり前後方向に揺動可能としたりすることによってつ め4の高さを自動的に調整することについては記載も示唆も見当たらな い。なお,乙7文献の請求項2及び発明の詳細な説明の段落【009 2】には,第1接続部と第2接続部との相対的な位置関係が変化する旨 の記載があるが,実施例である添付図面をみても,関節7が第1接続部 を支点として揺動するようには記載されておらず,上記の相対的な位置 関係の変化により固定部と挟持部との角度が調整される(請求項2)の は,第2接続部を支点として挟持部が揺動することによるものにすぎな いものと認められる(段落【0092】及び図8参照)。 次に,乙14文献に開示されているのは,島本体にあらかじめ取り付 けられた一対の固定装置基部にアームの挿通されたメインシャフトを取 り付け,アームの下端を遊戯台上部に設けられた上部ホルダの横長穴 (スロット)に取り付けることで,上部ホルダが滑動可能かつ回動可能 となるという構成であり,本件発明とは基本的構成を異にするものであ る。 さらに,乙15文献に開示されている構成についても,上記乙6文献 と同様に,ベース金具に差し込まれるワンタッチ固定金具のフック部は 本件発明のグリップベースに相当する部材とはいえない上,ベース金具 は上部シャフトのボルト部のナットを締めて固定する作業を伴うもので あるから,自動的に高さが調整されるものと認めることはできない。 よって,被告の主張は採用することができない。 (3) 次に,第3要件の充足性について判断する。 ア 前記(2)アの事実に弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。 (ア) 被告製品におけるグリップベース118の上下方向,左右方向及 び前後方向の動き方は,次のように規制されている。すなわち,被告 製品のスライド用ボルト114は,孔112B3と事実上円形の丸孔 113Xとによって上下方向及び左右方向に移動不可能に軸支されて おり(別紙2の構成d3,別紙3の構成ホ−15),スライド用ボル ト114に螺合されたスライドタップ115に内面が摺動するように ケース117が上下方向に移動可能とされていることから,ケース1 17に溶接固定されたグリップベース118も,これに追従して上下 方向に移動可能である(別紙2の構成d4,別紙3の構成ホ−26参 照)。また,左右方向については,スライドタップ115の左右の盛 り上げ部がケース本体117Aの内面に当接していることから,グリ ップベース118の左右方向の移動は制限されている(別紙3の構成 ホ−19参照)。さらに,前後方向については,スライド用ボルト1 14が回転してスライドタップ115が前後移動することに伴い,グ リップベース118の前後方向の位置調整が可能である(別紙2の構 成d4,別紙3の構成ホ−16,17)。 (イ) 被告製品においては,グリップベース118の上記のような動き 方を可能にするため,本件発明には存在しないケース117という新 たな構成を付加するとともに,スライドタップ115の形状を上記の 動き方の規制に適合するように設計している。すなわち,スライドタ ップ115の左右に盛り上げ部を設けることにより,ケース本体11 7Aの内面での摺動を可能にする設計をしているほか(別紙3の図 3),スライドタップ115の上部の盛り上げ部116に円形の固定 穴116Aを設け,この固定穴116Aとケース蓋117Bとの間に バネ117Cを圧縮された状態で収納している(別紙3の構成ホ−1 8,26)。この構成により,グリップベース118は,常に上方向 に働く付勢力を受け,ベースレール部材111のベースレール部11 1Aの間に嵌まり込み,ベースレール部材111に下向きの外力が加 えられたときは下方向の移動が可能であり,また,斜め方向の外力が 加えられたときは前後方向への揺動が可能である(別紙3の構成ホ− 26,29)。 (ウ) このように,被告製品の構成は本件発明の構成よりも複雑化して いるが,その反面,被告製品(1)及び(2)においては,タイミングベル ト122が採用され,島枠構造の前面の一部を開放して,パチンコ台 アセンブリの前面からスライドタップ115を前後に移動することで パチンコ台の傾斜角を調整することができる(別紙3の構成ホ−36, 37)という付加的な効果が得られている。この構成は,スライド用 ボルト114を移動不可能に軸支しなければ採用することが困難であ る。 (エ) なお,パチンコ台取付装置を含む技術分野において,特定の部材 に固定されたケースにスライドタップが収納され,固定されたスライ ドボルトに当該スライドタップが螺合されて,当該ケースが上下方向 に可動である構成が,被告製品の製造の時点において公知技術になっ ていたことをうかがわせる証拠はない。 イ 被告製品は,スライド用ボルト114が移動不可能に軸支されている という点で本件発明とは基本的構成を異にするものであって,単に構成 要件D3及びD4の文言の一部を修正したり上位概念で置き換えたりす るだけでは,被告製品を充足するように本件特許の特許請求の範囲を構 成することは困難というべきである。 ウ 以上のとおり,@被告製品には本件発明に存在しない部材が用いられ, ケース117及びスライドタップ115の設計が必要となるが,Aその 反面,パチンコ台アセンブリの前面からスライドタップ115を前後に 移動することでパチンコ台の傾斜角を調整することができるという付加 的な効果が得られている。他方,Bパチンコ台取付装置を含む技術分野 において,相違点3及び4に係る技術が被告製品の製造の時点で公知で あったと認めることはできず,また,C単に本件発明の構成要件D3及 びD4の文言の一部を修正したり上位概念で置き換えたりするだけで, 被告製品を充足するように本件特許の特許請求の範囲を構成することは 困難である。 これらの事情によれば,構成要件D3及びD4の構成を被告製品のよ うに置換することに,当業者が被告製品の製造の時点において容易に想 到することができたと認めることはできないから,被告製品は,均等侵 害の第3要件を欠き,本件発明と均等なものとしてその技術的範囲に属 するということはできない。 エ これに対し,原告は,当業者は,本件発明に被告製品の開発時点にお いて公知であった甲9文献記載の技術を適用して,構成要件D3及びD 4の構成を被告製品のように置換することは容易であったと主張する。 しかしながら,甲9文献のパチンコ台取付装置において,腕木部材4 5(取付装置を台枠上板に固定する部材)の上下方向の可動性が確保さ れるのは,クサビ部材46の両側面にうがたれた長穴64と移動部材1 9の側面から突出した支点ピン63との係合によるものであって,本件 発明及び被告製品とは構成を異にする上,上記装置には被告製品のケー ス117及びバネ117Cに相当する部材も存在しない。したがって, 当業者において甲9文献記載の技術を適用して構成要件D3及びD4の 構成を被告製品のように置換することが容易であったということはでき ない。 なお,原告は,乙6文献等の文献にも言及するが,これらの文献に開 示された技術が本件発明と構成を異にすることは上記(2)エに判示したと おりであるから,原告の主張は理由がない。 (4) 以上のとおり,相違点3及び4に係る被告製品の構成は,均等侵害の第 1要件を充足するものの,第3要件を充足しないから,被告製品が本件特 許の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとしてその技術的範囲 に属するということはできない。 2 結論 以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はい ずれも理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官 長 谷 川 浩 二 裁判官 清 野 正 彦 裁判官 植 田 裕 紀 久 別紙1 被 告 製 品 目 録 (1) パチンコ台取付機 商品名:「どんぴしゃハーフ」 (幕板開閉島用。但し,ベルトケースが長いもの) (2) パチンコ台取付機 商品名:「どんぴしゃハーフ」 (幕板開閉島用。但し,ベルトケースが短いもの) (3) パチンコ台取付機 商品名:「どんぴしゃハーフ」(ダウン島用) 上記,被告製品(1),(2)及び(3)に共通する構成は,別紙被告物件目録記載のと おりである。 別紙2 被 告 物 件 目 録 a パチンコ本体と,それをヒンジを介して組込んだ台枠300とからなるパチ ンコ台アセンブリを遊技場の島枠構造400に取付けるに際し,前記パチンコ本 体を台枠300から取外さずに,前記パチンコ台アセンブリの状態のまま前記島 枠構造400に嵌め込み,その後にパチンコ本体をヒンジを介して開いて固定及 び角度調整させるパチンコ台取付装置であって, b 該パチンコ台取付装置は,島上部枠構造に固定する左右一組の上部取付装置 100と, c 島下部枠構造の上面部に固定する左右一組の下部取付装置200とからなり, d 前記上部取付装置100は, d1 島上部枠構造401の後面にネジS1留め固定させるスライドベース部材1 12と, d2 スライドベース部材112の前板112Bの底部のスライドベース部112 Aと後板111Bとに囲まれた開口部の両側にネジ留め固定され島上部枠構 造401の下面にネジS2留め固定させる2本のベースレール部111Aと, d3 スライドベース部材112の前板112Bの孔112B3と,押え板113 の長切欠き113A上部の半円形の部分とベースレール部材111の後板1 11Bの切欠き111B1とがなす事実上円形の丸孔113Xにより前後移 動が規制され且つ上下方向に移動不可能に軸支したスライド用ボルト114 と, d4 スライド用ボルト114に螺合するスライドタップ115が仕舞われ,スラ イドベース部材112の前板112Bの底部のスライドベース部112Aと 後板111Bとに囲まれた開口部に吊下げ状態で取付けられスライド用ボル ト114の回転により前後に移動可能なケース117であり,ケース蓋11 7B下面とスライドタップ115上面との間に配置されたバネ117Cによ って上向きに付勢力が与えられることにより,付勢力に抗した下向きの外力 を与えることにより下方向に移動可能とされ,且つ斜め方向の外力を与える ことにより前後方向に揺動できるようになっているものと, d5 ケース117Aの下面に溶接固定され,島上部枠構造401に挿入された台 枠上板301を上側から押さえるグリップベース118と, d6 グリップベース118の下部に固定され,台枠上板301を下側から押圧し てグリップするグリップアーム119及びそれを回動させるグリップ機構1 20とから構成され, e 前記下部取付装置は, e1 島下部枠構造402の上面にネジ留め固定させる固定ベース201と, e2 台枠下板302の後端と当接させ島下部枠構造402へのはめ込み位置を調 節するラチェット機構により構成されたアジャスタ機構202と, e3 台枠下板302を島下部枠構造402へ押圧固定するプッシュアーム203 及びそれを回動させるグリップ機構204とから少なくとも構成され, f 上部取付装置100のグリップ機構120及び下部取付装置200のグリッ プ機構204を操作することにより台枠300が島枠構造400に固定され た状態で,前記スライド用ボルト114を回転させればスライドタップ11 5が前後方向に移動し台枠上板301が前後することによりパチンコ台アセ ンブリの傾斜を調整することができるようになっているとともに,パチンコ 台アセンブリの傾斜により生じる台枠上板301の傾斜にもグリップベース 118及びグリップアーム119は,ケース117の揺動により追従するこ とができることを特徴とするパチンコ台取付装置。 別紙3 物 件 説 明 書 (1) 被告製品(1)の構成,作用 被告製品(1)の構成,作用は,次のように特定される。なお以下の記載に おける図面の番号は物件説明書に添付の図面の番号を示し,以下の記載にお ける符号は,物件説明書で用いた符号と同じ対象を指す。 イ. 被告製品(1)は,パチンコ本体(図示を省略)と,パチンコ本体がヒンジ を介して取付けられたパチンコ本体を囲む矩形の枠である台枠300と からなるパチンコ台アセンブリを,遊技場の島枠構造400に取付ける ために用いられるものであり,パチンコ本体を台枠300から取外さず に,パチンコ台アセンブリの状態のまま島枠構造400に嵌め込み,そ の後にパチンコ本体をヒンジを介して開いて固定及び角度調整させるパ チンコ台取付装置である。 ロ. 被告製品(1)は,左右一組で用いられる。 ハ. 被告製品(1)は,第1図〜第8図に示される,島上部枠構造401に固定 される左右一組の上部取付装置100を備えている。 ニ. 被告製品(1)は,第1図,及び第9図〜第12図に示される,島下部枠構 造402の上面部に固定される左右一組の下部取付装置200を備えて いる。 ホ−1. 被告製品(1)の上部取付装置100は,細い板状でありそれらの間に 幾らかの間を空けて平行に配された,板状の2本のベースレール部11 1Aと,2本のベースレール部111Aをその後端で接続する,2本の ベースレール部111Aから垂直に立ち上がった板状の後板111Bと, ベースレール部111Aの後端にその下面から当接する矩形の2つの下 面板111C1,後板111Bにその後面から当接する後板111Bと 同一形状の後面板111C2,及び下面板111C1と後面板111C 2とを接続する三角板111C3を有する,ベースレール部111Aと 後板111Bとの接続部分を下面,後面,及び側面から包み込んで補強 する補強部材111Cと,を有する,平面視した場合の形状が前方が開 放された略コの字型となっており,側面視した場合の形状が略L字型と なっている,ベースレール部材111を備えている(第1図〜第8図)。 ホ−2. 上部取付装置100のベースレール部材111の各ベースレール部1 11Aには,孔111A1が前後に2つ穿たれているとともに,各ベー スレール部111Aの前方よりの位置には,孔111A2が2つ設けら れている(特に第2図,第3図,第5図)。 ホ−3. 上部取付装置100の使用時において,ベースレール部材111は, ベースレール部111Aの前側部分の上面を島上部枠構造401の下面 に当接させた状態で,孔111A2のうちの適当なものを貫通させたネ ジS2を島上部枠構造401に上向きに打込むことにより,島上部枠構 造401の下面にネジ留め固定されるようになっている(第1図)。 ホ−4. 上部取付装置100は,ベースレール部111Aと略同じ幅を持つそ の前方に位置する前方部112AF,及びベースレール部111Aより も広い幅を持つその後方に位置する後方部112ARを有するとともに, 2本のベースレール部材111の外側の縁とその外側の縁とが一致する ようにされたベースレール部材111よりも短い前後方向の長さを持つ 2本の板状のスライドベース部112Aと,それらスライドベース部1 12Aの前端から垂直に立ち上がった前板112Bとを備えており,平 面視した場合の形状が後方が開放された略コの字型となっており,側面 視した場合の形状がベースレール部材111とは立上りが前後逆向きの 略L字型となっているスライドベース部材112を備えている(第1図 〜第7図)。 ホ−5. スライドベース部材112が有するスライドベース部112Aには, ベースレール部111Aに穿たれた2つの孔111A1に対応する位置 にそれぞれ,その内周面にネジ切りのされた孔112A1が穿たれてい るとともに,その上面の前端に,後述するネジ112Dのうち前方のも のの先端との干渉を避けるための孔を有する板状の補強板112Cが溶 接されている(第3図,第6図)。 ホ−6. スライドベース部材112とベースレール部材111は,スライドベ ース部112Aの下面をベースレール部111Aの上面に当接させ,且 つスライドベース部112Aの後端をベースレール部111Aの後端に 一致させた状態で,前方ではベースレール部111Aの孔111A1を 貫通させたネジ112Dの先端をスライドベース部112Aのその内周 面にネジ切りされた孔112A1と螺合させ,後方では補強部材111 Cの下面板111C1に設けられた孔(図示を省略)及びベースレール 部111Aの孔111A1を貫通させたネジ112Dの先端をスライド ベース部112Aのその内周面にネジ切りされた孔112A1と螺合さ せることによって固定されており,スライドベース部材112とベース レール部材111が固定された状態では,スライドベース部112Aの 前方部112AFの内側縁はベースレール部材111のベースレール部 111Aの内側縁に一致した状態となり,スライドベース部112Aの 後方部112ARの内側縁はベースレール部材111のベースレール部 111Aの内側縁から内側に更に食み出た状態となっている(特に,第 5図)。 ホ−7. スライドベース部材112の前板112Bの下方には,左右2つずつ 計4つの孔112B1が横並びに穿たれており,上部取付装置100の 使用時において,その孔112B1のうちの適当なものを貫通させたネ ジS1を島上部枠構造401に後ろから横向きに打込むことにより,ス ライドベース部材112は,島上部枠構造401の後面にネジ留めされ るようになっている(第1図〜第4図,ネジS2については第1図)。 ホ−8. ホ−7において,孔112B1を4つとしたのは,前板112Bの島 上部枠構造401への固定を確実に行えるようにするためであり,また, 前板112Bの両外側部分に半円形の張出し112B2を設けたのは, 4つの孔112B1のうちの外側に位置するものを配置するスペースを 前板112Bに設けるためであるが,半円形の張出し112B2が上部 取付装置100の島上部枠構造401への固定を行う際に邪魔になる場 合には,外側に位置する2つの孔112B1は,それが設けられている 半円形の張り出し112B2ごと前板112Bから切取られる場合があ る。 ホ−9. スライドベース部材112の前板112Bの下方には,円形の丸孔1 12B3が穿たれており,その周囲に同心円状にエンボス加工による僅 かな凹み112B4が設けられている(特に,第4図)。 ホ−10. ベースレール部材111の後板111Bの上端の幅方向の中央には, 半円形の切欠き111B1が設けられているとともに,2つの孔111 B2が穿たれている(特に,第8図)。 ホ−11. ベースレール部材111の後板111Bの前面には,その幅方向の 中心に,その下端から上方に向かい,その上端が切欠き111B1に略 対応する半円形状とされた細長い切欠きである長切欠き113Aを有す るとともに,ベースレール部材111の後板111Bの孔111B2に 対応する位置に設けられたその内周面にネジ切りのされた2つの孔11 3Bを有する,略台形形状であり板状の押え板113が取付けられてい る(特に,第2図,第3図,及び第8図)。 ホ−12. 押え板113とベースレール部材111の後板111Bと補強部材 111Cの背面板111C2とは,押え板113の孔113Bと,後板 111Bの孔111B2と,及び補強部材111Cの後面板111C2 に穿たれた孔(図示を省略)とを後面板111C2の側からまとめて貫 くネジ113Cの先端を,その内周面にネジ切りのされた押え板113 の孔113Bに螺合させることによって固定されている(特に第3図, 第8図)。 ホ−13. 押え板113がベースレール部材111の後板111Bに取付けら れた状態で,押え板113の長切欠き113A上端の半円形の部分と, ベースレール部材111の後板111Bの切欠き111B1は,前者が 上,後者が下の位置関係で一体となって事実上円形の孔である丸孔11 3Xをなす(特に第8図)。 ホ−14. 押え板113の長切欠き113A上部の半円形の部分と,ベースレ ール部材111の後板111Bの切欠き111B1とがなす事実上円形 の丸孔113Xの孔の中心と,スライドベース部材112の前板112 Bに穿たれた円形の丸孔112B3の中心のベースレール部111Aか らの高さは,等しくされている(第2図,第3図,第6図)。 ホ−15. 押え板113の長切欠き113A上端の半円形の部分と,ベースレ ール部材111の後板111Bの切欠き111B1とがなす事実上円形 の丸孔113Xは,その外周面にネジ切りのされたボルトにより構成さ れたスライド用ボルト114の後側の端部に設けられた,その径方向に わたるその内周面にネジ切りのされた貫通穴114A1を有する後軸1 14Aを,スライドベース部材112の前板112Bに穿たれた円形の 丸孔112B3は,スライド用ボルト114の前側の端部に設けられた 前軸114Bを,それぞれ回転可能に且つ上下方向に移動不可能に軸支 している(第2図,第3図,第7図)。 ホ−16. 後軸114Aのベースレール部材111の後板111Bの直後には, 後軸114Aよりも大径の円板であるボルトハンガー114Cが設けら れており,スライド用ボルト114は,その前後方向の移動が規制され ている(第3図,第7図)。 ホ−17. スライド用ボルト114には,スライド用ボルト114の外径に対 応した内径を持ち,スライド用ボルト114に螺合するようにその内周 面にネジ切りのされた,それを前後方向に貫く孔を有する直方体形状の スライドタップ115が,スライド用ボルト114の回転に応じて,ス ライドベース部材112のスライドベース部112Aの後方部112A Rに対応する範囲を,前後に移動可能にして,スライドベース部材11 2のスライドベース部112Aから浮いた状態で取付けられている(第 3図)。 ホ−18. スライドタップ115の上側には,その上面に円形の固定穴116 Aが穿たれた盛り上げ部116が設けられている(第3図)。 ホ−19. 盛り上げ部116を備えたスライドタップ115は,ケース117 に仕舞われた状態となっている(特に第3図)。 ホ−20. ケース117は,上面が開放された略直方体形状をしているケース 本体117Aと,ケース本体117Aの上に取付けられるケース蓋11 7Bとを備えている(特に第3図)。 ホ−21. ケース本体117Aの前面と後面には,スライド用ボルト114と, ケース本体117Aの前面及び後面との干渉を防ぐための切欠き117 A1が設けられており,ケース本体117Aはあたかもその前後の面を スライド用ボルト114に貫かれたような状態となっている(特に第3 図)。 ホ−22. ケース本体117Aの左右の面には,その内周面にネジ切りがされ た孔117A2が穿たれている(特に第3図)。 ホ−23. ケース蓋117Bは,前方から見た場合,断面略コの字型をしてお り,その左右の面が,ケース本体117Aの左右の面の外側に位置する ようにしてケース本体117Aに上側から蓋をするようになっている (特に第3図)。 ホ−24. ケース蓋117Bの左右の面には孔117B1が穿たれており,ケ ース蓋117Bは,ケース本体117Aに蓋をした状態で,孔117B 1を貫通しその先端をケース本体117Aの孔117A2に螺合させら れるネジによって,ケース蓋117Bと固定されている(特に第3図)。 ホ−25. ケース蓋117Bの上面には,パンチ孔117B2が穿たれており, ケース蓋117Bのパンチ孔117B2の下方の部分は,パンチ孔11 7B2の径に対応する内径を有する円筒形状に下方に突出する突出部 (図示せず)をなしている(特に第3図)。 ホ−26. ケース117の内部には,盛り上げ部116の固定穴116Aの内 周面にその下端を固定され,ケース蓋117Bのパンチ孔117B2の 下方の突出部にその上端を固定されたバネ117Cが圧縮された状態で 取付けられており,バネ117Cの弾性力によって,ケース蓋117B 及びそれと固定されたケース本体117Aからなるケース117は,常 に上方向に働く付勢力を受けるようになっているとともに,その付勢力 に抗した下向きの外力を与えることにより下方向に移動可能とされ,且 つ斜め方向の外力を加えることにより前後方向に揺動できるようになっ ている(特に第3図)。 ホ−27. ケース本体117Aの下端の幅は,スライドベース部材112の2 つのスライドベース部112Aの後方部112AR間の幅と略同じ程度 となっている(特に第3図)。 ホ−28. ケース本体117Aの下面には,スライドベース部材112の2つ のスライドベース部112Aの前方部112AF間の幅と略同じ程度の 幅を持ち,且つベースレール部材111のベースレール部111Aと略 同じ程度の長さを持つものであり,島上部枠構造401に挿入された台 枠上板301を上側から押さえる矩形の板状のグリップベース118が 溶接固定されている(第2図,第5図)。 ホ−29. ケース本体117Aは,バネ117Cの弾性力によって常に上向き に付勢されているので,ケース117を構成するケース本体117Aと 固定されているグリップベース118は,ベースレール部材111のベ ースレール部111Aの間に嵌り込み,且つその上面をベースレール部 材111のベースレール部111Aの内側から内側に更に食み出たスラ イドベース部112Aの島上部枠構造401の内側に当接させた状態と なるようになっている(第2図〜第5図)。 ホ−30. グリップベース118の下部には,グリップベース118との間で 台枠上板301を挟み込み,台枠上板301を下側から押圧してグリッ プするグリップアーム119及びそれを回動させるグリップ機構120 が設けられている(第2図,第3図,第5図,第6図)。 ホ−31. スライドベース部材112の前板112Bの丸孔112B3の上方 には,スライド用ボルト114を中心とした円弧の一部に対応する弓型 の孔である弓孔112B5が穿たれている(特に,第4図)。 ホ−32. スライド用ボルト114の前端側の所定の範囲では,その外周面 にネジ切りがなされておらず,スライド用ボルト114のそのネジ切り がなされていない部分には,その外周に歯を備えたプーリーである第1 プーリー114Dが取付けられている(第3図,第7図)。 ホ−33. スライドベース部材112の前板112Bの直後には,後面と下面 が開放された略直方体形状のベルトケース121が,その前側の板の下 端近くをスライド用ボルト114に貫通された状態で配されており,ベ ルトケース121の下端に第1プーリー114Dが位置するようになっ ているとともに,ベルトケース121はスライド用ボルト114を軸と して図2に回転という文字とともに矢示した方向に一定の角度範囲で左 右に回転できるようになっている(特に,第2図,第3図)。 ホ−34. ベルトケース121の前面をなす前面板121Aの,前板112B に設けられた弓孔112B5に対応する位置の上方には,その下方が弓 孔112B5の前面に位置するようにクランクされたクランク部材12 1A1が取付けられているとともに,クランク部材121A1の弓孔1 12B5に対応する位置にはその内周面にネジ切りのされた孔121A 2が,ベルトケース121の前面板121Aの弓孔112B5に対応す る位置には孔(図示を省略)がそれぞれ設けられており,前面板121 A側からネジを,前面板121Aの孔,弓孔112B5,孔121A2 を貫通させ,且つクランク部材121A1の孔121A2にネジ121 A3の先端を螺合させ,前面板121Aとクランク部材121A1で前 板112Bを挟持させることにより,所望の角度に回転させたベルトケ ース121を前板112Bに対して固定することができるようになって いる(第2図,第4図)。 ホ−35. ベルトケース121内部の上端近くにはその外周に歯を備えたプー リーである第2プーリー121Cが収められたプーリーケース121B が設けられているとともに,第2プーリー121Cの前側には,六角レ ンチの先端を挿入することができるようになっているレンチ穴121C 1が穿たれたプーリー軸121C2が設けられており,プーリー軸12 1C2はベルトケース121の前面板121Aに設けられた孔(図示を 省略)を貫通して前面板121Aの前面から露出している(第2図,第 6図)。 ホ−36. 第1プーリー114Dと第2プーリー121Cの外側には,両者の 外周に設けられた歯と噛み合う歯をその内周面に備えた無端のベルトで あるタイミングベルト122が嵌められている(第3図,第6図)。 ホ−37. 島の前面の一部を開放してそこから六角レンチの先端をレンチ穴1 21C1に挿入し,六角レンチを回転させると,プーリー軸121C2 と一体となった第2プーリー121Cが回転し,その回転がタイミング ベルト122を介して第1プーリー114Dに伝わることにより,第1 プーリー114Dと固定されたスライド用ボルト114が回転するよう になっており,結果として,レンチ穴121C1にその先端を挿入した 六角レンチを回転させることにより,スライド用ボルト114に固定さ れたスライドタップ115を前後に移動させることができるようになっ ている。 ホ−38. ベースレール部材111のベースレール部111Aの下面には,台 枠上板301に巻き付けて上部取付装置100と,台枠上板301とを 固定することにより,台枠300の転倒を防止するためのケーブル15 0Aを含むケーブル固定具150が取付けられる場合があるが,上部取 付装置100によってはケーブル固定具150を備えない場合もある (第2図〜第6図)。 へ−1. 下部取付装置200は,島下部枠構造402の上面にネジ留め固定さ れるようにされた板状の固定ベース201を備えており,固定ベース2 01の前側の端部には固定ベース201から垂直に立ち上がる板である 前方板201Aが設けられている(第9図〜第12図)。 へ−2. 固定ベース201には,台枠下板302の後端と当接させ台枠下板3 02の島下部枠構造402へのはめ込み位置を調節するアジャスタ機構 202が設けられている(第9図〜第12図)。 へ−3. アジャスタ機構202は,ラチェット機構により構成されており,そ の下端が固定ベース201に,その前側の端部が前方板201Aにそれ ぞれ接続された,互いに平行で且つ側面視で略矩形とされた2枚の支持 板202Aと,これら2枚の支持板202Aに挟まれており,支持板2 02Aの前後方向に食み出た,その上面にラチェット歯202B1を有 する細長いアジャスタ板202Bであって,その前端側が,前方板20 1Aに設けられた切欠き(図示を省略)を通って前方板201Aの前方 に位置するとともに,その前端に台枠下板302の後端に当接させるこ とが予定された当接板202B2が設けられたものと,支持板202A の上方,後端部分に設けられた,その中程でアジャスタ板202Bに揺 動可能に接続され,且つその前端にラチェット歯202B1と噛み合う ラチェット爪202C1を備えた開放レバー202Cと,開放レバー2 02Cの前端に常に下方に向けた付勢力を与える付勢バネ202Dと, を有している(第12図)。 へ−4. アジャスタ機構202における,ラチェット爪202C1を備える開 放レバー202Cの前端は付勢バネ202Dにより常に下方に付勢され ているので,通常の状態では,ラチェット歯202B1がラチェット爪 202C1に係合した状態となっており,その状態のアジャスタ板20 2Bは,前方への移動は許容されるものの後方への移動が許容されない 状態となるとともに,開放レバー202Cの後端を押し下げることによ り付勢バネ202Dが与える下向きの付勢力に抗して開放レバー202 Cの前端が持ち上げられることにより,ラチェット歯202B1とラチ ェット爪202C1の係合が解除されたときには,アジャスタ板202 Bは,前後のいずれの方向への移動も許容された状態となる,ようにな っている。 へ−5. 下部取付装置200は,台枠下板302を島下部枠構造402へ押圧 固定するプッシュアーム203を備えている(第9図〜第11図)。 へ−6. 下部取付装置200は,プッシュアーム203を回動させるグリップ 機構204を備えている(第9図〜第11図)。 へ−7. 固定ベース201の上面には,台枠下板302に巻き付けて下部取付 装置200と,台枠下板302とを固定することにより,台枠下板30 2の後端が下部取付装置200の当接板202B2から離れることを防 止するためのケーブル250Aを含むケーブル固定具250が取付けら れる場合があるが,下部取付装置200によってはケーブル固定具25 0を備えない場合もある(第9図〜第11図)。 ト. 被告製品(1)は,上部取付装置100のグリップ機構120を操作するこ とにより台枠上板301をグリップベース118とグリップアーム11 9の間で挟み込むとともに,下部取付装置200のグリップ機構204 を操作することによりプッシュアーム203と島下部枠構造402との 間で台枠下板302を挟み込み,台枠300が島枠構造400に固定さ れた状態で,スライド用ボルト114を回転させればスライドタップ1 15が前後方向に移動し,それにより台枠上板301が前後することに よりパチンコ台アセンブリの傾斜を調整することができるとともに,パ チンコ台アセンブリの傾斜により生じる台枠上板301の傾斜にも,グ リップベース118,及びグリップアーム119は,ケース117の揺 動により追従することができるから,グリップベース118及びグリッ プアーム119による台枠上板301の挟持力に影響がでないし,グリ ップベース118及びグリップアーム119の破損も生じない。 (2) 被告製品(2)の構成,作用 被告製品(2)の構成,作用は,被告製品(1)と同様に特定される。 被告製品(2)と被告製品(1)の違いは,ベルトケース121の長さのみである。 ただし,タイミングベルト122の長さも被告製品(2)の方が短い(第13図, 第14図)。 ベルトケース121の長さの異なる被告製品(1)と被告製品(2)を被告が製造販 売するのは,島を開放して六角レンチで操作を行うときに便利な位置が島の構造 によって異なるためである。 (3) 被告製品(3)の構成,作用 被告製品(3)の構成,作用は,基本的には,被告製品(1)と同様に特定され る。 ただし,被告製品(3)は,被告製品(1)におけるホ−32〜ホ−37を持たない。 その代わりに,被告製品(3)は,以下のホ−39以降の構成と作用を持つ。 被告製品(1)におけるホ−32〜ホ−37は,被告製品(1)におけるスライド用 ボルト114を回転させるための構成及びその作用である。被告製品(3)は,そ れを持たず,その代わりに,スライド用ボルト114を回転させるための以下の 構成及びその作用を持つのである。 ホ−39. 全体として柔軟に構成されており,一端側から他端側に回転を伝え る伝達ワイヤ(図示を省略)と,伝達ワイヤの全長を覆う樹脂製のカバ ー131とを有するガイドワイヤ130を備えている(第15図〜第1 9図)。 ホ−40. ガイドワイヤ130の一端側には伝達ワイヤの一端側と接続され, その正面に六角レンチを挿入可能なレンチ穴132Aを備えた略円筒形 状の金具である第1金具132が設けられている(第15図,第16 図)。 ホ−41. ガイドワイヤ130の他端側には伝達ワイヤの一端側と接続され, その正面に,被告製品(3)のスライド用ボルト114の後軸114Aを差 込むことのできる孔である挿入孔133Aが設けられた第2金具133 が設けられている(第15図,第17図)。 ホ−42. 第2金具133には,その軸と直交する方向に孔133Bが設けら れており,後軸114Aを第2金具133の挿入孔133Aに挿入した 状態で,孔133Bと,貫通孔114A1とをまとめて貫かせたボルト 134の先端を貫通孔114A1に螺合させることで,ガイドワイヤ1 30の他端側はスライド用ボルト114の後軸114Aに固定されてい る(第15図,第19図)。 ホ−43. 第1金具132のレンチ穴132Aに六角レンチの先端を挿入して 軸周りに回転させると,その回転は伝達ワイヤを介して第2金具133 に伝わり,第2金具133と固定されたスライド用ボルト114を回転 させるので,結果として,レンチ穴132Aにその先端を挿入した六角 レンチを回転させることにより,スライド用ボルト114に固定された スライドタップ115を前後に移動させることができるようになってい る。 (図省略) |