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事件 平成 26年 (ネ) 10022号 損害賠償等請求控訴事件
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裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2014/09/11
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
判例全文
判例全文
平成26年9月11日判決言渡

平成26年(ネ)第10022号 損害賠償等請求控訴事件

(原審・東京地方裁判所平成21年(ワ)第32515号)

口頭弁論終結日 平成26年7月15日

判 決



控訴人兼被控訴人 株式会社クローバー・ネットワーク・コム

(以下「第1審原告」という。)



訴訟代理人弁護士 石 嵜 信 憲

同 山 中 健 児

同 柊 木 野 一 紀

同 林 康 司

補 佐 人 弁 理 士 坂 本 智 弘



被控訴人兼控訴人 株 式 会 社 ジ ン テ ッ ク

(以下「第1審被告」という。)



訴訟代理人弁護士 飯 塚 卓 也

同 田 中 浩 之

同 野 口 明 男

訴訟代理人弁理士 原 島 典 孝

主 文

1 第1審原告の控訴に基づき,原判決を次のとおり変更する。

第1審被告は,第1審原告に対し,3847万9779円及びこれに対す

る平成21年10月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払




え。

第1審原告のその余の請求をいずれも棄却する。

2 第1審被告の本件控訴を棄却する。

3 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを25分し,その2を第1審被告の負

担とし,その余は第1審原告の負担とする。



事 実 及 び 理 由

第1 当事者の求めた裁判

1 第1審原告

ア 原判決主文第2項及び第3項を取り消す。

イ 第1審被告は,原判決別紙物件目録2記載の装置(ただし,原判決別紙

別件訴訟物件目録記載のものを除く。)を製造し,使用してはならない。

ウ 第1審被告は,その占有に係る前項記載の装置を廃棄せよ。

エ 第1審被告は,第1審原告に対し,4億7251万4444円及びこれ

に対する平成21年10月9日から支払済みまで年5分の割合による金員

を支払え。

訴訟費用は,第1,2審とも,第1審被告の負担とする。

仮執行宣言

2 第1審被告

原判決中,第1審被告敗訴部分を取り消す。

上記部分につき,第1審原告の請求を棄却する。

訴訟費用は,第1,2審とも,第1審原告の負担とする。

第2 事案の概要

1 本件は,第1審原告が,第1審被告による原判決別紙物件目録2記載の装置

の製造及び使用が,第1審原告の有する特許権の侵害に当たる旨主張して,第

1審被告に対し,特許法100条1項及び2項に基づき,上記装置(ただし,




原判決別紙別件訴訟物件目録記載のものを除く。)の製造及び使用の差止め並

びに廃棄を求めるとともに,上記特許権侵害不法行為に基づく平成19年8

月17日から平成21年8月31日までの間の損害賠償金のうち5億円及びこ

れに対する不法行為後の日である平成21年10月9日から支払済みまで民法

所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

原審が,上記不法行為に基づく損害賠償金2748万5556円及びこれに

対する平成21年10月9日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金

の支払を命ずる限度で第1審原告の請求を認容し,その余の請求を棄却したた

め,第1審原告及び第1審被告の双方が敗訴部分につきそれぞれ控訴した。

2 前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,次のとおり原判決を補正

するほかは,原判決「事実及び理由」の第2の1ないし3記載のとおりである

から,これを引用する。

原判決6頁11行目冒頭から16行目末尾までを,次のとおり改める。

「2 争点

平成19年8月17日から平成21年8月31日までの間の第1審被

告装置(以下「損害賠償対象装置」という。)の構成

・ 第1審被告装置の構成

・ 第1審被告が,第1審被告装置につき,原判決別紙別件訴訟物件目

録記載のものと異なる構成を主張することは,信義則上許されないか

損害賠償対象装置が本件発明の技術的範囲に属するか

・ 第1審被告装置1〜5の文言侵害の成否

・ 第1審被告装置5の均等侵害の成否

差止め及び廃棄の可否

・ 第1審被告装置6の文言侵害の成否

・ 第1審被告装置6の均等侵害の成否

第1審被告が賠償すべき第1審原告の損害額




・ 特許法102条2項の規定の適用の可否

損害額の算定

・ 被告が得た利益額

・ 推定の覆滅事由及び本件発明の寄与度」

同6頁26行目の「被告装置であるから,」を「第1審被告装置であり,

第1審被告の後記主張も全く別異の装置というわけではなく,一定の共通性

を有するものであって,本件訴訟と別件訴訟とは高い関連性,密接性を有す

るのであるから,」と改める。

同7頁11行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。

平成25年1月から同年2月(第1審被告が第2設計変更をしたと主張

する時期より後である。)に,日本政策金融公庫が「電話番号使用履歴参

照サービスの調達」の入札手続を実施したが,同手続における充足証明書

の内容や第1審被告が作成し提出した説明資料(乙240)の記載に照ら

しても,平成24年4月の第2設計変更の前後において,第1審被告装置

の調査対象は変わっていないし,上記入札の条件である「全ての電話番号

から成るデータベースについて過去3年以上のデータを蓄積しているこ

と」を第1審被告装置が満たしているとすると,第1審被告装置5の調査

対象の限定に係る第1審被告の主張も真実ではないこととなる。これらの

ことからも,第1設計変更に関する第1審被告の主張は虚偽というべきで

ある。」

同7頁22行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。

「 なお,第1審被告が主張する上記各構成はいずれも根拠のあるものである。

第1審原告は,日本政策金融公庫が行った公募手続の際に第1審被告が提出

した資料(乙240)等から,第1審被告の主張が虚偽であるなどと主張す

るが,上記資料には,サンプリングの手法によって使用中の電話番号につい

てはカバーできている旨の記載があるだけであり,第1審被告の主張が虚偽




であることを窺わせるものではない。」

同9頁3行目の「判決後に」から5行目末尾までを「別件控訴審判決後に

DVDドライブを取り外したからといって,「番号テーブルを作成しハード

ディスクに登録する手段」が機能した結果ないし効能(既存のデータ)が第

1審被告の製品から取り除かれていない以上,構成要件Aの充足性が否定さ

れるものではない。」と改める。

同10頁20行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。

「 なお,実施態様

番号を自動生成するプログラムはハ

ードディスクに登録されており,市外局番と市内局番について新たな総務省

からの割当てのたびに装置のハードディスクに手動で入力し,連続するあら

かじめ電話番号が存在すると想定される下4桁の番号を付加した電話番号を

一つずつハードディスクに自動生成するものであるから,「ハードディスク

に登録する手段」は本件発明と第1審被告装置5の相違点ではない。」

同18頁16行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。

「 特許法102条2項による推定の一部覆滅事由としての寄与割合を判断す

るに当たっては,需要者の選択購入の動機,侵害部分の顧客吸引力,侵害

分の製品全体に対する不可欠性,需要度等が考慮要素となるが,基軸的な判

断要素と解されるのは需要者の選択購入の動機である。本件装置の機能や用

途によるサービスの需要者は,銀行・信用金庫・農協,証券会社,クレジッ

ト会社など多岐にわたっているが,第1審原告と第1審被告との取引先や導

入実績は,上記の業種・業態にほぼ一致しており,両者が提供するサービス

はその市場において具体的かつ現実的な競合関係に立っている。したがって,

本件侵害行為とその役務を需要者が購入することとの因果関係は強いものと

いうべきである。

第1審被告は,自らの3件の特許発明実施していることのほか,後記の




とおり,顧客の6割以上が本件特許登録前からの取引先であること,同種サ

ービスが多数存在していること,本件発明と同様の調査データをとる方法と

して第1審被告装置5の実施態様 等の代替方法があることなどを主張する

が,いずれも第1審被告の利益に対して本件特許の寄与が低いことの根拠と

はならない。」

同20頁13行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。

「 なお,第1審被告の顧客は,特許侵害行為前からの顧客が多数を占めるこ

とは前記アのとおりであるが,第1審被告装置2〜4の使用期間に取引が開

始された新規の顧客について,その固定電話情報関連の売上げを合計してみ

ても,その固定電話情報関連の売上げに対する割合は8%程度にすぎない。」

第3 当裁判所の判断

1 当裁判所も, 第1審被告装置は,@ 平成18年3月から平成19年8

月末日まで,A 同年9月から同年11月末日まで,B 平成20年1月から

同年10月末日まで,C 同年11月から平成21年2月25日まで,D 同

月26日から同年8月31日(損害賠償請求の終期)までの各期間ごとに,原

判決別紙第1審 第1審

被告装置2〜4は本件発明の技術的範囲に属するが,第1審被告装置1及び5

は文言上本件発明の技術的範囲に属せず,第1審被告装置5は本件発明と均等

第1審被告装置6も文言上本件発明の技術的範囲

属せず,本件発明と均等なものともいえないから,差止め及び廃棄請求には理

第1審原告の損害賠償請求につ

いては,3847万9779円及びこれに対する平成21年10月9日から支

払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるも

のと判断する。その理由は,後記のとおり原判決を補正するほかは(掲記した証

拠のうち,枝番のあるものはそれを含む。),原判決「事実及び理由」の第3の

1ないし4記載のとおりであるからこれを引用する。




2 原判決の補正

原判決20頁26行目末尾に,改行の上,「 第1審原告は,第1審被告

が第1審被告装置の構成について別件訴訟と異なる主張をすることは,正義

に反し,信義則上許されないと主張するので,まず,この点につき検討する。」

を,同21頁26行目末尾に「したがって,第1審原告の上記主張は採用す

ることができない。」を,それぞれ加える。

同 日

本政策金融公庫が実施した入札手続における充足証明書の内容や第1審被告

作成に係る説明資料の記載及び上記入札の条件に照らすと,第1設計変更

関する第1審被告の主張が真実とは認められないことなどから, と改める。


同22頁24行目から同頁25行目の「提出していることに照らすと,」

を「提出しており,これを覆すに足りる証拠もないこと,また,

は, 第1審被告装置5の構成における調査対象が同

装置の構成に関する認定と直接関係するものではなく,上記各文書の記載内

容も同装置の構成と直接関連するものではないことに照らすと, と改める。


同34頁19行目の「そのものであり,」の次に「「番号テーブルを作成

しハードディスクに登録する手段」が機能した結果ないし効能(既存のデー

タ)が第1審被告の製品から取り除かれていない以上,」を加える。

同35頁2行目末尾に「そして,設計変更後の装置に本件特許権を侵害

る第1審被告装置2〜4により得られたデータが残存していたとしても,本

件発明がこのようなデータそのものを発明の構成要素とするものではない以

上,構成要件充足性の判断に影響を及ぼすものではない。」を加える。

同38頁22行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。

「 なお,第1審原告は,実施態様 及び のいずれについても,「ハードデ

ィスクに登録する手段」は本件発明と第1審被告装置5の相違点ではないと

して種々主張するが, ハードディスクに登録された既




存のデータを利用することは,新たにハードディスクにデータを登録するも

のではない以上,「ハードディスクに登録する手段」には該当しないし,実

おいて,新たな総務省からの割当てのたびに手動で装置に入力さ

れる市外局番と市内局番が装置のハードディスクに入力されることや,一つ

ずつ自動生成される連続するあらかじめ電話番号が存在すると想定される下

4桁の番号を付加した電話番号がハードディスクに自動生成されることにつ

いては,これを認めるに足りる証拠もない以上,第1審原告の上記主張は採

用することができない。」

同38頁23行目の「そこで判断するに,」を「そこで,「番号テーブル」

の内容を備えていればその利用方法は当業者が適宜選択することで足りる旨

の第1審原告の前記主張について,更に判断するに,」と改める。

同39頁13行目の「発したこと,」の次に「上記引用例(乙180)の

発明の詳細な説明にはクリーニング処理しようとする電話番号リストをメモ

リに読む込む手段の開示があり,実施例には,クリーニングしようとする電

話番号リストが,フロッピーディスクに所定のフォーマットで記録されて与

えられ,そのディスクをフロッピーディスク装置にセットし,キーボードか

らリスト名を指定してクリーニングの指令を与えると,CPUが指定された

電話番号リストをフロッピーディスクから読み取ってメモリに格納し,クリ

ーニングを開始する技術が開示されていること,」を加える。

同43頁2行目の「239」の次に「,241」を加え,同頁20行目の

「着信音等」を「着呼音(呼び出し音)等(ただし, 説示のと

おり,本件特許の「接続信号」は可聴音に限定されるものではない。)」と

改める。

同44頁1行目末尾に「また,同期間における第1審被告の売上げにおい

て,これら本件特許の設定登録前からの顧客の占める割合(乙第241号証

に添付された計算表において,第1審被告装置2〜4についての「@既存」




の固定電話分の売上げの合計額を「@既存」,「A切替」及び「B新規」の

固定電話分の売上げの合計額で除したもの)は,81.5%であった。」を

加える。

同44頁10行目の「甲15,」の次に「33〜36,39〜41,43,

44,乙164,」を加え,同頁18行目冒頭から23行目末尾までを,次

のとおり改める。

「 第1審被告事業を含むサービスには,リアルタイムに特定の電話番号の利

用状況を発呼調査するものと,定期的に行った電話番号の利用状況の調査デ

ータと特定の電話番号を照合することにより利用状況を調査するものとがあ

る。これらの調査結果は,銀行,生命保険,クレジットカード会社,消費者

金融,証券会社,通信販売,小売りサービス等において,申込みの審査,ダ

イレクトメールや電話勧誘等に利用されているが,第1審原告と第1審被告

とは,取引先の多くが競合している(甲39,40)。

なお,上記のとおり,同種サービスを提供する業者も多数存在するが,定

期的に行った電話番号の利用状況の調査データと特定の電話番号を照合する

ことにより利用状況を調査するサービスを提供する業者は,第1審原告及び

第1審被告のほかには,証拠上,ほとんど見当たらない。」

同44頁24行目冒頭から45頁8行目末尾までを,次のとおり改める。

「イ 特許法102条2項は,特許権者における損害額の立証の困難性を軽減

する趣旨で設けられた規定であるが,損害の発生の事実を推定するもので

はないから,同規定を適用するためには,特許権者において損害発生の事

実が認められることが必要であるところ,同規定が置かれた趣旨に照らす

と,特許権者に,侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得

られたであろうという事情が存在することをもって,損害発生の事実があ

るものとして,同規定の適用が認められるものと解される。

そこで検討すると,第1審原告は,電話番号の調査を必要とする顧客に




対し,第1審原告装置を使用して蓄積された電話番号の利用状況履歴デー

タベースを提供している ,第1審原告装置は電話番号の一

部を調査対象から除外するものであるから,それ自体は構成要件Aを構成

要素とする本件発明の実施品には当たらないとしても,本件発明の実施

を使用したサービスと競合するサービスの提供をしているものであるこ

と,第1審被告は本件発明を実施して顧客にサービスを提供していること

,第1審原告と第1審被告とは市場において同種の事業を

行っており,取引先も競合していること などの事情を勘案す

ると,第1審原告によるサービスの提供が本件発明を実施して得られたデ

ータに基づかないものであるとしても,本件において,第1審原告には,

侵害者による侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事

情があるものと認めるのが相当である。」

同45頁16行目の「@については,」の次に「すでに説示したとおり,

本件発明の実施には当たらないとしても,」を,同頁19行目の「(後記

参照),」の次に,「上記説示のとおり,第1審原告が市場において第1審

被告と競合する同種の事業を行っているところ,他方で」を,それぞれ加え

る。

同48頁26行目冒頭から49頁20行目末尾までを,次のとおり改める。

「 特許法102条2項の規定により損害の額を算定するに当たっては,第

1審被告が得た利益のうちに当該特許発明実施以外の要因により生じた

ものと認められる部分があるときは,同項による推定を一部覆滅する事情

があるものとして,その分の額を損害の額から減ずるのが相当である。

これを本件についてみると,第1審被告 aで

認定したとおりであるが,第1審被告は本件特許の登録前から同種サービ

スを提供しており ,第1審被告装置1は本件特許を侵害

第1審被告は保有する3




件の特許権に係る特許発明実施しており,その提供するサービスについ

て,能率と費用の面でより効果的なものとしている

本件発明と同様の調査データを取得し得る方法として,本件特許の侵害

ならない方法によることが困難なものとは認められないこと(例えば,被

告装置5の実施態様(b)。 c, )などからすると,本件発明

技術的意義はさほど高いものではなく,第1審被告事業による利益に対

する本件特許の寄与は,相当限定的な範囲にとどまるものと認めるのが相

当である。

加えて,特許権侵害期間における第1審被告の顧客55社のうち35社

(約63%)が本件特許権の特許登録前からの顧客であり,また,固定電

話分の売上げの約8割がこれらの顧客によるものであるところ(前記 ア

c),第1審被告による本件発明の実施の影響が新規顧客のみに限定さ

れるものではないとしても,本件発明の実施に対応して需要者が何らかの

具体的な選択をしたことをうかがわせるような証拠もないことに照らす

と,上記の顧客の状況については,第1審被告事業の利益に対する本件発

明の寄与を更に限定する要素と認めざるを得ない。

第1審原告は,寄与割合を判断するに当たっては,需要者の選択購入の

動機が基軸的な要素として重視されるべきであると主張するが,上記のと

おり,その主張を認めるに足りる証拠はなく,本件においては,第1審原

告の上記主張は採用することができない。

また,本件においては,市場に同種のサービスを提供する業者の存在が



調査データと特定の電話番号を照合することにより利用状況を調査するサ

ービスに関しては,第1審原告と第1審被告のほかにサービスを提供する

上記の点は,

推定を覆滅する要素として重視することはできない。




以上の各事情に加え,第1審原告及び第1審被告の主張に照らし,本件

の証拠上認められる一切の事情について検討すると,上記第1審被告の利

益が特許権侵害による第1審原告の損害額であるとの推定を一部覆滅する

事情があると認められ,その割合は65%と認めるのが相当である。

そうすると,特許法102条2項の規定に基づいて算定される損害額は,

前記 において認定した利益額9994万2225円に35%を乗じた3

497万9779円となり,第1審原告がこれを上回る損害を被ったこと

を認めるに足りる証拠はない。

次に,第1審被告の本件不法行為相当因果関係のある弁護士費用につ

いては,第1審原告の損害額,本件事案の難易度,審理の内容,その他本

件に現れた一切の事情を考慮すると,350万円と認めるのが相当であ

る。」

第4 結論

以上によれば,第1審原告の請求は,損害賠償請求につき主文掲記の限度で

理由があり,その余は理由がないから,これに反する原判決を主文の限度で変

更することとし,また,第1審被告の控訴は理由がないから,これを棄却する

こととし,主文のとおり判決する。



知的財産高等裁判所第3部




裁判長裁判官 石 井 忠 雄





裁判官 西 理 香




裁判官 神 谷 厚 毅