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事件 平成 25年 (行ケ) 10276号 審決取消請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2014/09/11
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
判例全文
判例全文
平成26年9月11日判決言渡

平成25年(行ケ)第10276号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 平成26年7月15日

判 決



原 告 株 式 会 社 コ ネ ッ ト



訴訟代理人弁護士 上 山 浩

訴訟代理人弁護士 井 上 拓



被 告 エヌ・ティ・ティ・コミュニ

ケーションズ株式会社



訴訟代理人弁護士 升 永 英 俊

訴訟代理人弁理士 佐 藤 睦

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

特許庁が無効2011−800222号事件について平成25年9月3日にし

た審決を取り消す。

第2 前提となる事実

1 特許庁における手続の経緯(争いがない。)

原告は,平成12年3月6日に出願され,平成15年2月21日に設定登録され

た,発明の名称を「ポイント総合管理システム」とする特許第3401228号(以


1
下「本件特許」という。)の特許権者である。

被告は,平成23年11月1日,特許庁に対し,本件特許を無効にすることを求

めて審判の請求をした。特許庁は,上記請求を無効2011−800222号事件

として審理をした結果,平成25年9月3日,
「特許第3401228号の請求項1

ないし5に係る発明についての特許を無効とする。」との審決をし,その謄本を,同

月12日,原告に送達した。

2 特許請求の範囲の記載(甲9)

本件特許の特許請求の範囲(請求項の数は5である。)の請求項1ないし5の記

載は以下のとおりである(以下,請求項1ないし5に係る発明をそれぞれ「本件発

明1」「本件発明2」などといい,本件発明1ないし5を併せて「本件発明」とい


う。また,本件特許の明細書及び図面をまとめて「本件明細書」という。 。


「【請求項1】 第1のクライアント企業のポイントを共通ポイントに交換するた

めの交換レートを記憶する交換レート記憶手段と,

前記交換レートに基づいて前記第1のクライアント企業のポイントを共通ポイント

交換し共通ポイント記憶部に累積記憶する共通ポイント累積記憶制御手段と,

前記共通ポイント記憶部に記憶されている共通ポイントを第2のクライアント企業

のポイントとして精算するための精算レートを記憶する精算レート記憶手段と,

前記精算レートに基づいて前記共通ポイント記憶部に記憶されている共通ポイント

を前記第2のクライアント企業のポイントとして精算するポイント精算手段とを備

え,

前記交換レート及び前記精算レートを,それぞれ複数有することを特徴とするポイ

ント総合管理システム。

【請求項2】 第1のクライアント企業のポイントを共通ポイントに交換するため

のポイント交換情報を受付けるポイント交換情報受付手段と,

前記ポイント交換情報により特定されている前記第1のクライアント企業のポイン

トを共通ポイントに交換するための交換レートを記憶する交換レート記憶手段と,


2
前記交換レートに基づいて前記第1のクライアント企業のポイントを共通ポイント

交換し共通ポイント記憶部に累積記憶する共通ポイント累積記憶制御手段と,

前記共通ポイント記憶部に記憶されている共通ポイントを第2のクライアント企業

のポイントとして精算するためのポイント精算情報を受付けるポイント精算情報受

付手段と,

前記共通ポイント記憶部に記憶されている共通ポイントを前記ポイント精算情報に

より特定されている前記第2のクライアント企業のポイントとして精算するための

精算レートを記憶する精算レート記憶手段と,

前記精算レートに基づいて前記共通ポイント記憶部に記憶されている共通ポイント

を前記第2のクライアント企業のポイントとして精算し,前記第2のクライアント

企業のポイント管理装置に対してポイント精算情報を送信するポイント精算情報送

信手段とを備え,

前記交換レート及び前記精算レートを,それぞれ複数有することを特徴とするポイ

ント総合管理システム。

【請求項3】 前記ポイント交換情報には,共通ポイントに交換する交換要求ポイ

ント数が含まれており,前記共通ポイント累積記憶制御手段は,前記第1のクライ

アント企業のポイント管理装置に記憶されているポイント数が前記交換要求ポイン

ト数以上の場合に,前記第1のクライアント企業のポイントを共通ポイントに交換

することを特徴とする請求項2記載のポイント総合管理システム。

【請求項4】前記ポイント交換情報受付手段は,ポイント交換情報を通信媒体を

介して受付け,前記ポイント精算情報受付手段は,ポイント精算情報を通信媒体を

介して受付けることを特徴とする請求項2〜請求項3の何れか一項に記載のポイン

ト総合管理システム。

【請求項5】前記ポイント交換情報受付手段は,ポイント交換情報をデータ入力

装置を介して受付け,前記ポイント精算情報受付手段は,ポイント精算情報をデー

タ入力装置を介して受付けることを特徴とする請求項2〜請求項3の何れか一項に


3
記載のポイント総合管理システム。」

3 審決の理由

審決の理由は,別紙審決書写しに記載のとおりであるが,その要旨は,本件発明

1ないし5は,韓国公開特許第1999−0078768号公報(甲1。以下「甲

1公報」という。)に記載された発明(以下「甲1発明」という。)並びに「アメリ

カン航空の AAdvantage プログラムがヒルトン HHonors 特典交換に加盟」と題するビ

ジネスワイヤの平成11年6月7日付けの記事(甲2。以下「甲2刊行物」という。)

及び「ザ・オフィシャル・フリークエント・フライヤー・ガイドブック 第3版」

と題する刊行物(甲3。以下「甲3刊行物」という。)に示される周知技術(以下「本

件技術」という。 に基づいて当業者が容易に発明することができたというものであ


る。

審決が認定した甲1発明の内容,本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は,

以下のとおりである。

(1) 甲1発明の内容

「消費者が企業から商品を購入した場合に,購入額に対して一定の割合で企業か

ら提供され,所定の物品,サービス,金銭などをボーナスとしてもらうことができ

る点数であるボーナスポイントを,他の企業のボーナスポイント,又は,サイバー

空間において通用し,必要に応じて電子商取引で品物を購入する用途で使用され,

又は,現実社会の貨幣に交換することができる電子マネー,電子小切手,電子財布,

電子代金振込みなどのサイバーマネーに交換する方法であって,

自身が保持しているボーナスポイントをサイバーマネーに交換しようとする会員が,

売り渡すボーナスポイントの種類及び数量をインターネットなど通信網を介して又

は対面により入力する,あるいは,自身が保持しているサイバーマネーでボーナス

ポイントを購入しようとする会員が,買い受けるポイントの種類及び数量をインタ

ーネットなど通信網を介して又は対面により入力する注文受領段階と;

当該注文が売り渡し注文であるとき,会員が前記種類のボーナスポイントを前記数


4
量以上保有している場合には,保有数量から前記数量を控除した数量のボーナスポ

イント,及び,前記数量のボーナスポイントからその価値によって事前に定められ

た所定の交換/為替レートに基づいて算出されたサイバーマネーをポイント情報D

Bに格納し,

当該注文が買い受け注文であるときは,買い受けるボーナスポイントの種類及び数

量をその価値によって事前に定められた所定の交換/為替レートに基づいて算出し

たサイバーマネーに交換し,交換したサイバーマネーを会員が保有中のサイバーマ

ネーから控除したサイバーマネーの金額,及び,前記買い受けたボーナスポイント

の種類及び数量をポイント情報DBに格納する注文遂行段階と;

前記ポイント情報DBへの格納とともに,ボーナスポイントの種類及び点数の変動

事項について,当該ボーナスポイントを提供する会員会社に直ちに伝達すること;

を含むボーナスポイントの交換方法。」

(2) 一致点

「第1のクライアント企業のポイントを共通ポイントに交換するための交換レー

トを記憶する交換レート記憶手段と,

前記交換レートに基づいて前記第1のクライアント企業のポイントを共通ポイ

ントに交換し共通ポイント記憶部に累積記憶する共通ポイント累積記憶制御手段と,

前記共通ポイント記憶部に記憶されている共通ポイントを第2のクライアント

企業のポイントとして精算するための精算レートを記憶する精算レート記憶手段と,

前記精算レートに基づいて前記共通ポイント記憶部に記憶されている共通ポイ

ントを前記第2のクライアント企業のポイントとして精算するポイント精算手段と

を備え,

るポイント総合管理システム。」

(3) 相違点

交換レート及び精算レートについて,本件発明1は,『それぞれ複数有する』

のに対し,甲1発明は,いずれも『事前に定められた所定の交換/為替レート』で


5
あって,当該レートをそれぞれ複数有することについて特段の特定がない点。」

第3 原告主張の取消事由

1 取消事由1(相違点を看過した誤り)について

(1) 前提となる訳語の選択について

審決は,
「??」を「為替レート」と「交換レート」のいずれと訳すべきかについ

て判断することなく,「交換/為替レート」と記載している(審決書6頁等)。しか

し,甲 1 公報では「??」と「??」が明確に使い分けられており,韓日辞典(甲

7)によれば,それぞれ「交換」「為替相場」と訳されている(甲8)
, 。そして,
「為

替相場」と「為替レート」は同義である(甲15)。したがって,甲1公報の「??」

は「為替レート」と訳すべきである。

この点は,甲1発明の発明者も,「??」は「Exchange rate」と翻訳するのが正

しいと回答し(甲21)「Exchange rate」が「為替レート」を意味すること(甲2


2)からも明らかである。

したがって,「??」は「為替レート」と訳すべきである。

(2) 相違点の看過(その1)

審決は,甲1発明が有する為替レートについて「複数有することについて特段の

特定がない」
(審決書12頁)と認定し,同レートが複数のものも甲 1 発明に含まれ

得ることを前提としている。しかし,為替レートは,会員会社が提供するボーナス

ポイントの価値によって適正かつ事前に定められるものであって,甲 1 発明の為替

レートは,一つである。為替レートが定められる時点における,当該ボーナスポイ

ントの価値のサイバーマネーの価値に対する比率は一つであるから,必然的に為替

レートは一つとなる。そのため,甲1発明においては,あるポイントをサイバーマ

ネーに換える場合とサイバーマネーをあるポイントに戻す場合とで,共に「??」

(為替レート)という一つのレートを適用する構成が開示されているのみである。

これに対し,本件発明1においては,企業ポイントを共通ポイントに交換する際

に適用されるレートと,逆に共通ポイントを企業ポイントに交換する際に適用され


6
るレートは,それぞれ「交換レート」と「精算レート」という異なるレートとなっ

ている。

本件発明1において交換レート及び精算レートが複数存在することは,本件特許

の出願過程からも明らかである。本件特許の出願当初明細書(甲23)では,交換

レート及び精算レートの個数を限定しない請求項(旧請求項1〜3)について,特

願2000−40005号(特開2001−229459号)
(以下「出願時引用発

明」という。)と同一であるとして拒絶理由が通知された(甲25)。出願時引用発

明の交換レートは一つであった(甲26)その後,
。 原告が旧請求項1〜3について,

交換レート及び精算レートを複数とする旧請求項4の内容を旧請求項1ないし3に

組み込む補正を行うことによって,新規性進歩性が肯定された。このように,出

願過程においても,本件発明1と出願時引用発明の相違点は交換レートの数である

(一つか複数か)と整理された上で,本件発明1の進歩性が肯定されている。審決

の認定は誤っている。

「甲1発明の『為替レート』は一つであるのに対し,本件発明1の交換レートは

複数である点」を相違点(相違点1)と認定すべきである。

(3) 相違点の看過(その2)

審決は,甲1発明の「サイバーマネー」は,本件発明 1 の「共通ポイント」に相

当すると認定し(審決書10頁),この点において相違点はないとする(審決書12

頁)。

しかし,甲 1 発明は,会員会社の「ボーナスポイント」を,ポイント管理システ

ムの外でも通用する「サイバーマネー」に交換し,会員は当該「サイバーマネー」

をそのまま利用するか,それをさらに別の会員会社の「ボーナスポイント」に交換

するかを選択できる方法を提案するものであり,
「サイバーマネー」はポイント管理

システムの外でも通用するもの(以下「通用ポイント」という。)に限定されている

(甲 1・1 頁)。これに対し,本件発明 1 の「共通ポイント」には,何らの制限がな

く,ポイント管理システムの外では通用しないもの(ポイント管理システム内での


7
ポイント交換を媒介するためだけに存在するもの, 「非通用ポイント」
以下 という。)

を含む。甲1発明の「サイバーマネー」は,本件発明 1 の「共通ポイント」に相当

すると認定した審決の判断は誤っている。

「甲1発明の『サイバーマネー』は通用ポイントに限定される(非通用ポイント

を含まない)のに対して,本件発明1の「共通ポイント」は通用ポイントに限定さ

れない点」を相違点(相違点2)と認定すべきである。

2 取消事由2(容易想到性判断の誤り−動機付けの欠如等)について

審決は,本件特許出願前に複数の交換レートを用いてポイント交換を行うこと

(甲2刊行物,甲3刊行物に示された本件技術)が周知技術となっており,甲1発

明に本件技術(周知技術)を組み合わせることにより,当業者は本件発明1を容易

に想到できると判断した(審決書13頁)。しかし,その判断は誤りである。

(1) 甲2刊行物,甲3刊行物は,本件発明1の前に,複数の交換レートを用いた

事例が1件(甲2刊行物と甲3刊行物は同じ事例について記載したものである。)存

在することを示すにすぎず,本件技術は周知技術とはいえない。

(2) 甲1発明の技術的課題は,ある企業から提供されるボーナスポイントと他の

企業のボーナスポイント等を自由かつ適切に交換することであるのに対し,本件技

術の課題は,アメリカン航空とヒルトンホテルという特定事業者間のポイントの交

換レートを所定の場合に異なるレートを適用可能とすることであり,その結果,甲

2刊行物においては特別期間内の顧客のポイント交換を促進することが記載されて

おり,甲3刊行物においては顧客が行うポイント交換の規模を大きくすることが記

載されている。両者の技術的課題は相違している。

(3) 交換レートが一つのみしか存在し得ない甲1発明から出発し,当該レートを

複数とすることを着想することは,発明の根本的な発想を変える(「為替」の概念か

ら飛び出す)必要があるため,極めて困難である。

交換レートを複数設けることを可能とするためには,交換レートが一つのみの場

合に比べてかなり複雑な処理が必要となる。例えば,
「換算レート記憶部46」 「ク



8
ライアント企業(A航空)に関しては,通常期間における換算レートと年末年始,

ゴールデンウイーク等の特別期間における換算レートが記憶」されるように構成し,

まず対象の期間が「通常期間」か「特別期間」かを判断した上で,
「通常期間にA航

空のクライアント企業ポイントを共通ポイントに交換する場合には,50ポイント

(A航空のクライアント企業ポイント)を1ポイント(共通ポイント)に交換する

ことができ,通常期間に共通ポイントをA航空のクライアント企業ポイントに交換

する場合には,1ポイント(共通ポイント)を50ポイント(A航空のクライアン

ト企業ポイント)に交換」(本件明細書の段落【0024】【図3】
, )し,特別期間

にA航空のクライアント企業ポイントを共通ポイントに交換する場合には,30ポ

イント(A航空のクライアント企業ポイント)を1ポイント(共通ポイント)に交

換することができ,特別期間に共通ポイントをA航空のクライアント企業ポイント

交換する場合には,1ポイント(共通ポイント)を30ポイント(A航空のクラ

イアント企業ポイント)に交換するというように,交換レートが一つのみの場合に

比べてかなり複雑な処理が必要となる。甲1発明の交換レートを複数とすることは

技術的な面でも容易ではない。

甲1公報のどこにも,交換レートが一つであることの不都合についての記載はな

いし,交換レートと精算レートという交換方向によって異なるルートを設定するこ

とのできる構成は,開示も示唆もされていない。

(4) 甲2刊行物,甲3刊行物のサービスは,甲2刊行物の連絡方法の記載から明

らかなとおり,電話連絡により対応されるサービスであり,プログラムにより実現

されている技術ではない。そのため,マイルとポイントの交換レートとして複数の

レートを適用し得るようにするための交換方法(情報システム又はプログラムによ

る実現手段)に関しては,一切開示がなく,示唆もない。したがって,甲1発明を

出発点として本件発明1の構成に至るべく甲2刊行物,甲3刊行物に開示された内

容を適用することを試みたであろうといえる余地はない。

(5) 以上によれば,甲1発明と本件技術は解決課題が異なっており,かつ,これ


9
らを組み合わせること(交換レートを複数とすること)は,そもそも着想すること

が容易でなく,さらに甲1公報には本件技術を組み合わせたはずであるという示唆

もないから,甲1発明に本件技術を組み合わせることが容易ではないことは,明ら

かである。

3 取消事由3(容易想到性判断の誤り−効果の顕著性)について

甲1発明の交換レートは一つ(=為替レート)であるが,本件発明1の交換レー

トは複数である。交換レートを複数とすることにより,キャンペーン期間などの期

間に応じた複数レート,交換ポイントの量に応じた複数レート,さらに一般会員と

ゴールド会員のように会員階層に応じた複数レートなど,様々な種類のレートでの

交換が可能となった。特定の期間のみ,又は一定量以上のポイントを保有する顧客

等を優遇することは,顧客吸引力が非常に大きいマーケット手法である。また,ポ

イントは企業の負債であり,利用を促すことは企業経営にとって好ましい効果をも

たらす。交換レートを複数とすることによってこのような効果を期待することがで

き,甲1発明から予測される範囲を超えた顕著な効果である。

本件発明1では,共通ポイントとして非通用ポイントを用いることができるから,

通用ポイントのみの場合と比較して,事前に十分な通用ポイントを購入して準備し

ておく必要がなく,システム管理者の経済的負担が生じない。また,非通用ポイン

トは,ポイント管理システム内部のみで通用するポイントであるから,必ず,ポイ

ント管理システムに加盟する企業のいずれかのポイントに交換され,当該ポイント

が用いられる。ポイント交換の媒介に非通用ポイントを使用できることの効果は,

甲1から予測される範囲を超えた顕著なものである。

4 取消事由4(本件発明2ないし5の容易想到性判断の誤り)について

審決は,本件発明1の容易想到性の判断を誤っているから,これを前提とする本

件発明2ないし5の容易想到性の判断も誤っている。

第4 被告の反論

1 取消事由1(相違点を看過した誤り)について


10
(1) 前提となる訳語の選択について

甲1公報の訳文の3頁下から4行ないし末行には,次の記載がある。

「本発明は,ボーナスポイント制度を実施している企業を選定してボーナスポイ

ント交換プール(Exchange Pool)を形成し,個別の企業から提供されるボーナスポ

イントを他の企業のボーナスポイント又はサイバーマネーに交換する方法を提供す

る。」

すなわち,甲1発明は,
「ボーナスポイント交換プール(Exchange Pool)」などと

いう,通貨と通貨との交換には存在しない概念を説明していることからも明らかな

とおり,専ら,ボーナスポイント間,又は,ボーナスポイントとサイバーマネーと

の間の交換を念頭に置いているのである。

このように,甲 1 発明では,通貨と通貨の交換など微塵も考慮されていないので

あるから,「??」を「交換レート」と訳すことに何ら誤りはない。

原告は,「Exchange rate」は為替レートを意味すると主張するが,甲1公報(訳

文5頁7〜9行)には,『交換レート(Exchange rate)
「 』とは,サイバーマネー1

単位にあたるサービスポイントの数,すなわち交換単位を指し,会員会社が提供す

るボーナスポイントの価値によって事前に定める。」と定義されている。すなわち,

交換レート(Exchange rate)の意味は,ある通貨と他の通貨の交換レート(すなわ

ち,為替レート)の意味に限定されるものでないことは, 「交換レート
上記 (Exchange

rate)」の用語の定義から明らかである。よって,
「Exchange rate」は為替レートを

意味するという原告の主張は失当である。

(2) 相違点の看過(その1)について

原告は,甲1発明の為替レートは一つであると主張するが,甲1発明は,専ら,

ボーナスポイント間,又は,ボーナスポイントとサイバーマネーとの間の交換を念

頭に置いたものであるから,甲1発明が為替レートであることを前提とする原告の

主張は失当である。

(3) 相違点の看過(その2)について


11
本件発明1の請求項には,
「共通ポイント」が「ポイント管理システムの外では通

用しないもの」を含むものであることなど何ら記載されていない。

仮に,原告の主張するとおり,本件発明1に通用性のあるポイントと通用性のな

いポイントの双方を含むとしても,本件発明1には,原告も認めるとおり,少なく

とも通用性のある「共通ポイント」が記載されているから,甲1発明との相違点が

あるとはいえない。

2 取消事由2(容易想到性判断の誤り−動機付けの欠如等)について

(1) 甲2刊行物,甲3刊行物は,世界的に著名なホテルグループであるヒルトン

グループのポイントプログラムに関するものであるから,そこに記載された事実が

業界に知れ渡っていることは明らかである。本件技術が周知技術でない旨の原告の

主張は失当である。

(2) 甲3刊行物には,
「HHonors ポイントを航空会社マイルに交換:」
(甲3抄訳

下から4行)と記載されているとおり,本件技術は,
「特定事業者間」のみに関する

ものではない。したがって,甲1発明と本件技術が技術的課題を異にするとする原

告の主張は,失当である。

(3) 甲1発明には,そもそも「為替」の概念など存在しないから,交換レートを

複数にするためには,
「為替」の概念から飛び出す必要があるとの原告の主張は失当

である。

原告が甲1発明の交換レートを複数とすることは技術的な面でも容易とはいえな

いとする主張は,本件明細書の段落【0024】及び【図3】の記載を根拠とする

ものである。しかし,上記段落【0024】及び【図3】には,当業者が甲2刊行

物,甲3刊行物に記載された本件技術を実施すれば,当然行われる程度の技術事項

しか記載されていないから,原告の主張は失当である。

原告は,また,甲1発明には,本件発明1における交換レートと精算レートとい

交換方向によって異なるレートを設定することのできる構成は,開示も示唆もさ

れていないと主張する。


12
しかし,本件発明1においては,第1のクライアント企業のポイントを共通ポイ

ントに交換するレートを交換レートと呼び,共通ポイントを第2のクライアントの

企業のポイントに交換する交換レートを精算レートと呼んでいるにすぎない。よっ

て,交換レートも精算レートも,ともにクライアントの企業のポイントと共通ポイ

ントとの間の交換のためのレートを意味している点で同一である。また,甲1公報

(訳文2頁下から14行〜9行,4頁下から6行〜5頁9行)の記載に接した当業

者は,本件発明1の交換レートと精算レートというクライアントの企業のポイント

と共通ポイントとの間の交換レートを異なるレートに設定し得ることを容易に理解

し得る。したがって,甲1発明には,本件発明1における交換レートと精算レート

という交換方向によって異なるレートを設定することのできる構成は,開示も示唆

もされていないとの原告の主張は,当たらない。

本件技術は周知技術であるから,甲1発明に本件技術を用いて交換レートを複数

にすることには,十分な動機付けが存在する。

(4) 前記のとおり,本件発明1の請求項の記載には,「共通ポイント」が「ポイ

ント管理システムの外では通用しないもの」を含むものであることは何ら規定され

ていない。

3 取消事由3(容易想到性判断の誤り−効果の顕著性)について

原告も「そして,交換レートを複数とすることにより,キャンペーン期間などの

期間に応じた複数レート(甲2),交換ポイントの量に応じた複数レート(甲

3) ・・・など,様々な種類のレートでの交換が可能となった。」と主張するとお

り,原告の主張する相違点1が奏する効果は,せいぜい甲2刊行物,甲3刊行物に

記載された周知技術が奏する程度のものにすぎない。

また,原告の主張する相違点2など存在しないから,相違点2が奏する効果につ

いての原告の主張は失当である。

4 取消事由4(本件発明2ないし5の容易想到性判断の誤り)について

本件発明1における容易想到性についての審決の判断に何ら誤りはない。


13
したがって,本件発明2ないし5の容易想到性についての審決の判断にも誤りは

ない。

第5 当裁判所の判断

当裁判所は,原告の各取消事由の主張にはいずれも理由がなく,その他,審決に

はこれを取り消すべき違法はないものと判断する。その理由は,以下のとおりであ

る。

1 取消事由1(相違点を看過した誤り)について

(1) 甲1発明の認定と本件発明1との相違点の認定

原告が,取消事由1で主張する,訳語の選択,相違点の看過(その1)(その2)

は,いずれも,甲1発明をどのような発明と認定するかに係ることであることから,

以下においては,まず,甲1発明の内容について検討する。

ア 甲1公報には,以下の記載がある。

「発明の目的

発明が属する技術及びその分野の従来技術

本発明は,個別の企業から提供されるボーナスポイントを他の企業のボーナスポ

イント又はサイバーマネー(Cyber Money;電子マネー)に交換する方法に関するも

のであって,詳しくは,各個別企業のボーナスポイントとサイバーマネーとの間に

適正な交換レート(exchange rate)を設定して各種のボーナスポイントが現実社会

又はサイバー空間において自由に売買若しくは交換されるようにする方法に関する

ものである。

現在,多くの産業分野において製品の生産技術が標準化,普遍化することにより,

製品の品質が均一化され製品の差別化が困難になるにつれて価格破壊を通じた激し

い価格競争及びサービス競争が生じている。すなわち,消費者は,製品の差別性が

微々たる購入市場において価格及びサービスを製品購入の重要な要素として認識す

るようになり,それ故に企業は,価格及びサービスを最も重要な競争手段として使

うようになった。このような競争的な市場環境において,企業は市場確保のために


14
競争的に価格を引き下げることで営業利益が減少し,さらには関係するあらゆる企

業が損失を被る現象が生じている。

これに対して企業は,値下げの代わりに販売を促進させることができる多様な手

段を見出すようになり,中でも顕著であったのが,消費者の感性及び記憶に自社又

は自社製品のイメージを刻み込ませる広告,並びに自社の製品を繰り返し購入する

場合,購入程度により所定の物品及び景品,金銭などを支給するボーナスポイント

(又はマイレージ)制度である。ボーナスポイント制度は,製品に対する忠誠度の

高い定期顧客にさらなる製品を販売するコストが新規顧客に販売するコストよりも

極めて低いという事実を積極的に活用したものある。しかしながら,多くの企業が

ボーナスポイント制度を実施することにより初期の衝動買いを誘発させるべく,少

量の購入にボーナスを支給した後に次のボーナスに対しては高いボーナスポイント

を求めるため,ボーナスポイント制度は定期顧客を確保するためではなく,単発顧

客が増えてしまうといった逆効果が生じるのも現実である。

実際に,購入者は一企業の製品をある一定金額以上購入しないと意味のあるボー

ナスがもらえないため,相当の期間その企業製品を繰り返し購入する努力及び忍耐

力が求められる。従って,通常,購入者は持続的な購入を諦めるようになるが,こ

れにより,購入者は現在の購入先を継続することを諦め,それ故に蓄積されたボー

ナスポイントを放棄することによる損失が生じ,企業の立場においても固定顧客を

確保するといった目論見に狂いが生じるのはもちろん,ボーナスポイント制度を実

施するために投資した費用の回収も不透明になる問題がある。

従って,購入者の購入先切換による機会損失を減らし,購入者の企業又はブラン

ドに対する忠誠度を増大させて,ボーナスポイント制度を実施することによる企業

の期待利益が実現できるように各種のボーナスポイントを自由かつ適切に交換又は

売買できるシステムが要求されている。(訳文2頁下から16行〜3頁22行)


「発明が解決しようとする技術的課題

本発明は,ボーナスポイント制度を実施している企業を選定してボーナスポイン


15
交換プール(Exchange Pool)を形成し,個別の企業から提供されるボーナスポイ

ントを他の企業のボーナスポイント又はサイバーマネーに交換する方法を提供す

る。(訳文3頁下から5行ないし末行)


「発明の構成及び作用

前記目的を達成するための本発明は,自身が保持しているボーナスポイントをサ

イバーマネーに交換しようとする会員から売り渡すポイントの種類及び数量を入力

する,又は,自身が保持しているサイバーマネーでボーナスポイントを購入しよう

とする会員から買い受けるポイントの種類及び数量を入力する注文受領段階と;売

渡注文であるとき,入力されたポイントがどの会員会社から提供されるものなのか

及びその数量を,ポイント情報DBで前記会員が保有しているポイントを検索して

会員が前記種類のポイントを前記数量以上保有している場合には,保有数量から前

記数量を控除した数量及び前記数量のボーナスポイントが所定の交換レートに基づ

いて算出されたサイバーマネーをポイント情報DBに格納し;買受注文であるとき

は,買い受けるポイントの種類及び数量を前記ポイントに対し予め定められた所定

交換レートに基づいてサイバーマネーに交換し,ポイント情報DBで前記会員が

保有しているサイバーマネーを検索して保有したサイバーマネーが前記交換レート

に基づいて算出されたサイバーマネー以上であれば保有サイバーマネーから前記算

出されたサイバーマネーを控除した金額,並びに前記ポイントの種類及び数量をポ

イント情報DBに格納する注文遂行段階と;を含むボーナスポイント交換方法に関

するものである。(訳文4頁1行〜17行)


「本発明において使用される用語を定義する。

『ボーナスポイント制度』とは,企業が消費者を誘導するために,自社商品を購

入した場合,購入額に対して一定の割合で点数を提供し,所定の点数以上蓄積され

たら,所定の物品,サービス,金銭などをボーナスとしてもらえる制度を指し,こ

のとき,その点数をボーナスポイントという。
『サイバーマネー』とは,現実社会の

貨幣ではなくサイバー空間において通用し,必要に応じて電子商取引で品物を購入


16
する用途で使用され,又は,現実社会の貨幣に交換することができる電子マネー,

電子小切手,電子財布,電子代金振込みなどをいう。
『会員会社』とは,例えば,本

発明の方法によるポイントの交換を中継する取引センターがあったとき,前記取引

センターとの契約により自社が提供するサービスポイントを商品にすることができ

るように契約した企業をいい,
『会員』とは,会員会社が提供するサービスポイント

を貯めている者であって,前記取引センターを利用しようと契約した者をいう。
『交

換レート(Exchange Rate)』とは,サイバーマネー1単位にあたるサービスポイン

トの数,すなわち,交換単位を指し,会員会社が提供するボーナスポイントの価値

によって事前に定める。(訳文4頁下から6行〜5頁9行)


「本発明の方法において,各取引構成員間の情報伝達関係を図1に示した。ユー

ザプールにおいて特定会員が特定会員会社に物品又はサービスを購入すれば,会員

会社は購入金額に比例して一定のボーナスポイントを前記会員に提供し,このとき

提供されたポイントは直ちに取引センターのポイント情報DBに格納される。ボー

ナスポイント又はサイバーマネーを保有している会員は,本発明による取引センタ

ーに接続してボーナスポイントを売渡又は買い受けることができ,このとき変動し

たボーナスポイントの種類及び点数,サイバーマネーの金額は取引センターのポイ

ント情報DBに格納され,ボーナスポイントの種類及び点数の変動事項は前記ボー

ナスポイントを提供する会員会社に直ちに伝達される。一方,取引センターで買い

受けるか,又は,物品−サービス購入を通じて蓄積されたボーナスポイントを保有

している会員が前記ボーナスポイントを提供する会員会社にポイントを提示すれば,

会員会社は前記ポイントを受領すると同時に所定の物品,金額などのボーナスを会

員に提供し,前記会員がポイントを消費したことを即時取引センターに伝達する。

従って,取引構成員間のポイント及びサイバーマネーの変動事項は直ちに相互に伝

達され,取引センターのポイント情報DBに格納される。 (訳文5頁下から7行


〜6頁9行)

「多様な種類のポイントが売買されることにより,会員会社の立場においては自


17
身が実際に発行したボーナスポイント総量に対応するボーナスより多くのボーナス

を提供する場合とその反対の場合とが発生するようになる。従って,取引センター

は一定の期間ごとにボーナスポイント総量に対応するボーナスより少ないボーナス

を提供した会員会社から差を追徴し,より多くのボーナスを提供した会員会社には

補償するシステムを構築しておくことが好ましい。 訳文6頁10行ないし15行)



「取引関係者間のネットワークを図2に簡略的に示した。各ユーザと各会員会社

とはインターネット網及び電話網などを介して本発明の方法を運用するウェブサイ

トと連結しており,前記ウェブサーバーでは取引関係者の個人情報及びポイント情

報などに対する保護及び保安のために通常のファイアウォールを設置することがで

き,本発明による方法を運用するための応用プログラムなどを備えることができ,

会員会社に対する情報,交換レートに関する情報,費用精算に関する情報などを記

憶させる会員会社情報DB,会員の身上情報及びボーナスカード情報などを格納す

る会員情報DB,並びに会員のボーナスポイント及びサイバーマネーに関する情報

を格納するポイント情報DBなどを設けることができる。 (訳文6頁16行〜24


行)

「前記のようなシステム及びネットワークを備える本発明の方法を実施する際の

具体的なフローの一例を図3に示した。

まず,ユーザ(1)がインターネットなど通信網(4)を介して本発明の方法を

運用するウェブサイト(3)に接続すれば,ウェブサーバー(3)は会員か否か(段

階101)を確認する。会員の場合,新たに追加する種類のボーナスカードを保持

しているかを確認(段階102)し,追加するものがあればカード情報を入力/格納

(段階106)して段階102に戻る。追加するカードがなければポイントを売り

渡すか,又は,買い受けるかを確認(段階103)する。売渡の場合,売り渡すボ

ーナスポイントの種類及び数量を入力させ(段階104) ポイント情報DBに格納


されたポイント情報と比較して(段階105)売り渡す種類及び数量があるかを確

認(段階106)し,存在すればサイバーマネーに交換した後に関連情報をポイン


18
ト情報DBに格納し,その詳細を関連会員会社に伝達する(段階107) …
。 (中略)



段階103においてポイントの買受を選択した場合,買い受けるポイントの種類及

び数量を入力させ(段階110) ポイント情報DBに格納されている会員のサイバ


ーマネーを確認して(段階111) 前記ポイント数量に相当する会員会社のサイバ


ーマネーが存在するかを確認(段階112)し,十分であれば前記ポイントに交換

した後,その情報をポイント情報DBに格納してこれを会員会社に伝達する。以後,

段階108に戻る。会員のサイバーマネーが十分存在しない場合,段階103に戻

って買受の数量を調整するようにする。(訳文6頁25行〜7頁19行)


「発明の効果

本発明の方法によって,消費者は,多様な消費パターンの結果から得た少額多種

のボーナスポイントをサイバーマネー又は他の一種類のボーナスポイントに交換

ることができ,早期に実質的なボーナスの恩恵を受けることができ,会員の購入行

為が,できればポイント交換が可能な企業に集中されるため,会員会社に選定され

た企業は集団的な固定顧客,すなわち,会員の確保が可能となり,他の同種企業よ

りも優れた競争力を有することができるようになる。(7頁下から9行(空白行を


含む。)〜3行)

イ 以上の記載によれば,甲1公報には,甲1発明として,

「個別の企業(会員会社)から提供されるボーナスポイント(消費者が自社商品

を購入した場合,企業が購入額に対して一定の割合で点数を提供し,所定の点数以

上蓄積されたら,所定の物品,サービス,金銭などをもらえるための点数)を他の

企業のボーナスポイント又はサイバーマネーに交換するための交換レートを設定し

てこれを記憶する取引センターのポイント情報DBと,

前記交換レートとは,サイバーマネー1単位にあたるサービスポイントの数,す

なわち交換単位を指し,この交換レートに基づいて,会員会社のボーナスポイント

をサイバーマネーに交換し,サイバーマネーの変動事項をその都度記憶するポイン


19
ト情報DBと,

ポイント情報DBに記憶されているサイバーマネーを会員会社のボーナスポイ

ントとして精算するためのポイント数量に相当するサイバーマネーが存在するかを

確認するポイント情報DBと,

サイバーマネーが十分であれば買い受けを希望されたサイバーマネーを会員会

社のポイントに交換しサイバーマネーの変動が格納されるポイント情報DBと,

前記ボーナスポイントからサーバーマネーへの交換レートと,サイバーマネーか

らポイントへの交換レートを有することを特徴とするボーナスポイントの交換

法」

が記載されている。

ウ 上記イで認定した甲1発明を本件発明1と対比すると,

甲1発明の「個別の企業(会員会社)から提供されるボーナスポイントを他の企

業のボーナスポイント又はサイバーマネーに交換するための交換レートを設定して

これを記憶する取引センターのポイント情報DBと」は,本件発明1の「第1のク

ライアント企業のポイントを共通ポイントに交換するための交換レートを記憶する

交換レート記憶手段と」に相当する。

甲1発明の「前記交換レートとは,サイバーマネー1単位にあたるサービスポイ

ントの数,すなわち交換単位を指し,この交換レートに基づいて,会員会社のボー

ナスポイントをサイバーマネーに交換し,サイバーマネーの変動事項をその都度記

憶するポイント情報DBと」は,本件発明1の「前記交換レートに基づいて前記第

1のクライアント企業のポイントを共通ポイントに交換し共通ポイント記憶部に累

積記憶する共通ポイント累積記憶制御手段と」に相当する。

甲1発明の「ポイント情報DBに記憶されているサイバーマネーを会員会社のボ

ーナスポイントとして精算するためのポイント数量に相当するサイバーマネーが存

在するかを確認するポイント情報DBと」は,本件発明1の「前記共通ポイント記

憶部に記憶されている共通ポイントを第2のクライアント企業のポイントとして精


20
算するための精算レートを記憶する精算レート記憶手段と」に相当する。

甲1発明の「サイバーマネーが十分であれば買い受けを希望されたサイバーマネ

ーを会員会社のポイントに交換しサイバーマネーの変動が格納されるポイント情報

DBと」は,本件発明1の「前記精算レートに基づいて前記共通ポイント記憶部に

記憶されている共通ポイントを前記第2のクライアント企業のポイントとして精算

する精算手段とを備え」に相当する。

甲1発明の「前記ボーナスポイントからサーバーマネーへの交換レートと,サイ

バーマネーからポイントへの交換レートを有することを特徴とするボーナスポイン

トの交換方法」は,本件発明1の「前記交換レート及び前記精算レートを,それぞ

れ複数有することを特徴とするポイント総合管理システム」のうちの,
「前記交換

ート及び前記精算レートを有することを特徴とするポイント総合管理システム」に

相当する。

したがって,交換レート及び精算レートについて,本件発明1は「それぞれ複数

有する」のに対し,甲1発明は,当該レートをそれぞれ複数有することについて特

段の特定がないとした審決の相違点についての認定に誤りはない。

(2) 原告の主張について

ア 前提となる訳語の選択及び相違点の看過(その1)の主張について

これらの主張は,「??」を「為替レート」と訳すべきことを前提として,

上記のとおり審決が,甲1発明は交換レート及び精算レートをそれぞれ複数有する

ことについて特段の特定がないとしたのを,甲1発明では為替レートは1つであり,

交換レート及び精算レートをそれぞれ複数有するとした本件発明とその点で相違す

ると認定すべきであるとの主張である。

(ア) 訳語の選択について

原告は,韓日辞典(甲7,8)の記載から,
「??」を「為替レート」と訳すべき

であると主張する。しかし,一般的な用語と技術的な用語が常に同じ意味で用いら

れるわけではない。


21
原告は,甲1発明の発明者が,「??」を「Exchange rate」と翻訳するのが正し

いと回答し,
「Exchange rate」が為替レートを意味することから,
「??」を「為替

レート」と訳するのが正しいと主張し,これは技術的見地からも「??」を「為替

レート」と訳することが正しいと主張するものと解される。

しかし,JST科学技術用語日英対訳辞書(乙1)によれば,「exchange rate」

の訳としては,第1に「交換率,交換レート」が挙げられており,併せて為替レー

トとの訳も挙げられているものの,技術的見地からは,一義的に為替レートと訳す

べきものでないことは明らかである。

そこで,甲1公報の記載等も参酌しながら,「??」の訳語について検討する。

前記(1)イによれば,甲1発明は,「個別の企業から提供されるボーナスポイント

を他の企業のボーナスポイント又はサイバーマネー(Cyber Money;電子マネー)に

交換する方法に関するもの」「各個別企業のボーナスポイントとサイバーマネーと


の間に適正な交換レート(exchange rate)を設定して各種のボーナスポイントが現

実社会又はサイバー空間において自由に売買若しくは交換されるようにする方法に

関するもの」である。

また,前記甲1発明における用語の定義によれば,交換レート(Exchange Rate)

とは,サイバーマネー1単位にあたるサービスポイントの数,すなわち,交換単位

を指し,会員会社が提供するボーナスポイントの価値によって事前に定める。 と記


載されている。

そうすると,甲1発明は,ボーナスポイントとボーナスポイントを交換するもの

であり,また,ボーナスポイントとサイバーマネーを交換するものであるから,ボ

ーナスポイントとサイバーマネーの交換単位である Exchange Rate は,ボーナスポ

イントとサイバーマネーの「交換レート」ということができる。

原告は,用語上の意味以外に,甲1公報における「??」を為替レートと訳すべ

きであるとする根拠を明示的に主張するものではないが,念のために検討するに,

サイバーマネーが通貨と同様であることを根拠とするものであるとすれば,上記の


22
とおり,ボーナスポイントとサイバーマネーが交換されるのであって,サイバーマ

ネー同士が交換されるわけではないから,これを通貨と通貨を交換することに用い

られる為替レートと訳すべきことの根拠となるものではない。仮に,原告が,交換

レートが事前に定められていることをもって為替レートというべきであるとするの

であるとしても,交換レートが事前に定められていることをもって,あえて為替レ

ートと訳すべき根拠としては十分ではない。

むしろ,原告は,後の(イ)でみる,為替レートが一つであるとの主張,つまりレ

ートの単一性を強調するために為替レートの訳語を用いるべきであるとしていると

もみられるが,レートが単一であることが「為替」との用語を用いることの根拠と

なるものでもない。

いずれにせよ,
「??」を為替レートと訳すべきであるとの原告の主張を採用する

ことはできない。

(イ) 交換レートの個数について

原告は,甲1発明の交換レートの個数を問題とし,甲1発明の交換レートは為替

レートであって,その個数は一つであると主張する。

しかし,甲1発明の「??」を為替レートと訳すべきであるとの原告の主張に理

由がないことは前記(ア)のとおりであるから,原告の主張はその前提を欠いている。

前記(1)アのとおり,甲1発明の目的は,競争的な市場環境の中で,企業が値下

げの代わりに販売促進手段とするボーナスポイント制度を運用するに当たり,企業

一社のみでボーナスポイント制度を運用した場合には,一定金額以上購入しないと

意味のあるボーナスがもらえないため,購入者が購入先を切り換えてしまい,ボー

ナスポイント制度を実施することによる企業の期待利益が実現できなくなってしま

うことから,各種のボーナスポイントを自由かつ適切に交換又は売買できるシステ

ムを作ろうとするものである。

そして,そのための課題解決手段として,ボーナスポイント制度を実施している

企業を選定してボーナスポイント交換プールを形成し,個別の企業から提供される


23
ボーナスポイントを他の企業のボーナスポイント又はサイバーマネーに交換する方

法を提供するものである。

このような甲1発明の目的及び課題解決手段に照らしてみれば,甲1発明は販売

促進手段としてのボーナスポイント制度が一企業内の制度にとどまることなく,交

換プールを形成する企業間で自由かつ適切に交換又は売買できるシステムを作るこ

とに特徴のある発明であり,交換レートは,競争的な市場環境の中で,企業の期待

利益を実現するという目的に沿う,自由かつ適切な交換又は売買を実現できるよう

なものであれば足り,特段,単一のレートでなければならないという根拠はないも

のというべきである。

そうすると,交換レートが単一のものでなければならないとの原告の主張も理由

がない。

原告は,本件発明1においては企業ポイントを共通ポイントに交換する際の「交

換レート」と共通ポイントを企業ポイントに交換する際の「精算レート」とが異な

るレートとなっているのに対し,甲1発明では上記いずれの方向でも同一の為替レ

ートが適用される点で両発明は異なっていると主張する。

本件発明1の請求項1の記載からは,交換レートと精算レートとの関係は必ずし

も明らかでないことから,本件明細書の記載を参照すると,本件明細書の段落【0

024】には,
「換算レート記憶部46には,クライアント企業ポイントを共通ポイ

ントに換算(交換)するためのレート及び共通ポイントをクライアント企業ポイン

トに換算(精算)するためのレートが記憶されている(図3参照)」との記載があ


る。そして,図3をみると,A航空について,通常期間については,A航空50ポ

イントが1共通ポイントに換算され,逆に1共通ポイントがA航空50ポイントに

換算されることが示されている。また,特別期間においては,A航空30ポイント

が1共通ポイントに換算され,逆に1共通ポイントがA航空30ポイントに換算さ

れることが示されている。このように,交換レートと精算レートの換算率が同一で

あることは図3に示されたBカード,Cストアについても同様である。


24
そうすると,本件発明1においても,同一企業に関する限り交換レートと精算レ

ートの換算率は同一であり,別企業間でポイント交換する場合に両レートの換算率

が異なるにすぎないと解するのが相当である。そして,この点は甲1発明の為替レ

ートについても同様と考えられる。そうすると,本件発明1において「交換レート」

と「精算レート」という別の表現が用いられていることをもって,本件発明1の共

通ポイントと甲1発明の為替レートが異なるとする原告の主張を採用することはで

きない。

原告は,また,出願経過に関して主張する。原告が主張するとおり,本件発明1

はその出願経過中の補正において交換レート及び精算レートをそれぞれ複数有する

とされたものである(甲27の1,2)。しかし,それに先立つ拒絶理由通知で挙げ

られた引用文献は,特願2000−40005号(特開2001−229459号)

であり,甲1公報とは異なるものである(甲25)。したがって,そのような出願経

過から,本件発明1が拒絶理由通知で挙げられた上記引用文献の記載によって交換

レート及び精算レートを複数とするものに補正されたことが認められるからといっ

て,そのことから甲1発明の為替レートが1つであることが基礎付けられるもので

はない。したがって,出願経過を理由として甲1発明の為替レートは1つであると

する原告の主張を採用することはできない。

イ 相違点の看過(その2)について

原告は,甲1発明のサイバーマネーがポイント管理システムの外でそのまま利用

できることをもって,サイバーマネーがポイント管理システムの外でも通用するも

の(通用ポイント)に限定されていると主張する。

前記(1)アによれば,甲1発明のサイバーマネーが原告の主張する通用ポイント

として利用されることは認められる。

しかし,甲1発明を本件発明 1 と対比するに当たっては,甲1発明のサイバーマ

ネーが本件発明 1 の共通ポイントに相当するかを検討するのであるから,本件発明

1の共通ポイントの技術的意義を明らかにした上で,甲1発明のサイバーマネーが


25
共通ポイントに相当するかを検討すべきであり,本件発明1の共通ポイントの意義

と関係づけることなく,甲1発明のサイバーマネーの意義を単独で検討しても意味

はない。

そこで,本件発明1の共通ポイントの技術的意義について検討するに,本件特許

の請求項1の記載によれば,第1のクライアント企業のポイントが交換レートに基

づいて共通ポイントに交換され,その共通ポイントが第2のクライアント企業のポ

イントとして精算レートに基づいて精算されるものである。

そうすると,共通ポイントとは,第1のクライアント企業のポイントと第2のク

ライアント企業のポイントを交換するに当たり,その仲立ちをするものであり,企

業ポイントとの間で設定された交換レート又は精算レートに基づいて,企業ポイン

トとの間で交換されるものである。

次に,甲1発明の内容をみるに,前記(1)アによれば,売渡注文の場合は,売渡

注文のボーナスポイントの数量を注文者のポイント情報DBに保有されている数量

から控除するとともに,所定の交換レートに基づいて算出されたサイバーマネーと

してこれを注文者のポイント情報DBに格納して交換し,買受注文の場合は,買い

受けるポイントに対して所定の交換レートに基づいて注文者がポイント情報DBに

保有するサイバーマネーを控除するとともに,買い受けたボーナスポイントの数量

を注文者のポイント情報DBに格納して交換するものである。

そうすると,甲1発明のサイバーマネーは,売渡注文と買受注文を連続的に観察

した場合には,A企業のポイントとB企業のポイントを交換する当たり,その仲立

ちをするものであり,企業ポイントとの間で設定された所定の交換レートに基づい

て,企業ポイントとの間で交換されるものである。そして,甲1公報の発明の効果

欄の記載によれば,消費者は少額多種のボーナスポイントを他の一種類のボーナス

ポイントに交換することができるというのであるから,甲1発明は売渡注文と買受

注文が連続的に行われる場合を予定しているものというべきである。

以上によれば,甲1発明のサイバーマネーは,本件発明1の共通ポイントに相当


26
するものということができる。

原告が主張するように,甲1発明のサイバーマネーが原告の主張する通用ポイン

トとして利用されることがあるとしても,それは,甲1発明のサイバーマネーが共

通ポイントと同一の機能を果たすことを妨げるものではないから,甲1発明のサイ

バーマネーが本件発明1の共通ポイントに相当するとした審決の判断に誤りはない。

2 取消事由2(容易想到性判断の誤り−動機付けの欠如等)について

(1) 甲2刊行物,甲3刊行物に示された本件技術が周知技術といえるか

甲2刊行物は,前記のとおり,ビジネスワイヤの平成11年6月7日付けの記事

であり,「アメリカン航空の AAdvantage プログラムがヒルトン HHonors 特典交換

加盟」との表題の下に「この新たなアライアンスを祝して,ジョイントプログラム

メンバーは,1999年8月31日まで,マイルからポイントへの全ての交換につ

いて,通常の倍の HHonors ポイントを受け取ります。5,000AAdvantage マイルを交

換する毎に,旅行者は,通常の 5,000HHonors ポイントに代えて,10,000HHonors ポ

イントを受け取ります。」との記事が記載されている。

甲3刊行物は,前記のとおり,「ザ・オフィシャル・フリークエント・フライヤ

ー・ガイドブック第3版」
(平成7年7月第3版発行)という書籍であり,その39

6頁には,「HHonors ポイントを航空会社マイルに交換:10,000HHonors ポイント=

1,500 航 空 会 社 マ イ ル 20,000HHonors ポ イ ン ト = 3,500 航 空 会 社 マ イ ル

50,000HHonors ポイント=10,000 航空会社マイル」との記載がある。

以上によれば,アメリカにおいて,本件特許の出願日である平成12年3月6日

より4年半余り前に,世界的に著名なホテルグループであるヒルトン(公知の事実

である。)において,顧客がヒルトンで得たポイントが高いほど,航空会社のマイル

への換算率が高くなるというサービスを提供していたこと,本件特許の出願日より

約9か月前に,世界的に著名なアメリカン航空(公知の事実である。)がヒルトンの

ポイント交換システムに加盟し,その交換レートが,一定期間内において通常の交

換レートの2倍であるサービスを提供していたことが認められる。これらの交換


27
ステムは,ポイント交換において,いずれも複数の交換レートを使用するサービス

を提供していたものである。

甲2刊行物,甲3刊行物で示されているのは,ヒルトンと不特定の航空会社との

ポイント交換システム及びアメリカン航空とヒルトンとの間のポイント交換システ

ムであるが,前記のとおりヒルトン及びアメリカン航空がいずれも世界的に著名な

企業であり,かつ,これらの航空会社とホテルは,その業態からみて,いずれも我

が国における一般的な企業の従業員がその企業活動(出張等)の際に頻繁に利用す

るものであることが認められ,ポイント交換において,複数の交換レートを使用す

るサービスは,我が国における当業者にとって周知であったと認めることができる。

(2) 甲1発明と本件技術の技術的課題の相違の有無

原告は,甲1発明の技術的課題は,ある企業から提供されるボーナスポイントと

他の企業のボーナスポイント等を自由かつ適切に交換することであるのに対し,本

件技術は,アメリカン航空とヒルトンホテルという特定の事業者間のポイントの交

換レートを所定の場合に異なるレートに適用可能とするというものであって,甲1

発明と技術的課題を異にすると主張する。

しかし,甲2刊行物の表題に「アメリカン航空の AAdvantage プログラムがヒル

トンの HHonors 特典交換に加盟」とあるとおり,交換システムはヒルトングループ

が運営するものであり,甲2刊行物ではアメリカン航空の AAdvantage マイルが通常

交換レートと特典のある交換レートという複数のレートで HHonors ポイントに交

換され,甲3刊行物では HHonors ポイントが不特定の航空会社のマイルに複数の交

換レートで交換されているところからみて,当業者は,ヒルトングループの運営す

るシステムにおいて HHonors ポイントが各社のポイントとの間に設定された一定の

交換レートで交換されていることを理解することができる。そうすると,甲1発明

におけるサイバーマネーのポイント交換における機能とヒルトングループのポイン

交換システムにおける HHonors ポイントの機能は共通するから,その課題は共通

するものというべきであり,甲2刊行物,甲3刊行物が特定の事業者間のポイント


28
交換であることを前提として課題が共通しないとする原告の主張は採用すること

ができない。

(3) 複数の交換レートを設けることの技術的困難性等について

原告は,甲1発明から出発して交換レートを複数とするためには,為替レートの

概念から飛び出す必要があり,そのことは極めて困難であると主張するが,前記の

とおり,甲1発明が為替レートの概念を有するとの前提自体を採用できないから,

原告の主張には理由がない。

また,原告は,甲1発明において交換レートを複数設けることの技術的困難性を

主張するが,技術的にやや複雑な面があるとしても,ソフトウエアのプログラミン

グにより解決の容易なレベルの問題であって,原告の主張を採用することはできな

い。

さらに,原告は,甲2刊行物,甲3刊行物のサービスは電話連絡により対応され

るサービスであり,プログラムにより実現されている技術ではないから,甲1発明

に非技術文献である甲2刊行物,甲3刊行物に開示された内容を適用する動機付け

はないとも主張する。しかし,複数の交換レートを設けるということは一つの技術

であるから,甲2刊行物,甲3刊行物に示されている内容が非技術的なものである

とはいえないし,また,甲1発明の目的が前記1(1)アのとおり,「企業の期待利益

が実現できるように各種のボーナスポイントを自由かつ適切に交換又は売買できる

システム」を構築することにあることに照らせば,ボーナスポイントに複数の交換

レートを設けて自由かつ適切に交換又は売買し,企業の期待利益を実現することに

ついての動機付けは存在するものというべきである。

(4) 以上によれば,いずれもある企業から提供されるポイントを他の企業から提

供されるポイントに交換する技術という共通点をもつ甲1発明と本件技術(周知技

術)を組み合わせる動機付けはあるということができ,取消事由2に係る原告の主

張を採用することはできない。

3 取消事由3(容易想到性判断の誤り−効果の顕著性)について


29
原告は,甲1発明の交換レートが一つ(為替レート)であること及び本件発明で

は甲1発明と異なり非通用ポイントを用いることができることを前提として効果の

顕著性を主張するが,その前提自体を採用できないことは取消事由1で述べたとお

りである。

甲1発明に複数の交換レートを設けることにより,「季節毎等の期間毎に異なる

レートでポイント交換,ポイント精算を行うことができる。(本件明細書【004


2】 という顧客吸引力の増大や負債の減少,
) システム管理者の経済的負担の減少と

いう原告が主張する効果が得られるとしても,それらは当業者が予測できる範囲の

効果であって,顕著な効果ということはできない。

そうすると,効果の顕著性に関する原告の主張も採用することはできない。

4 取消事由4(本件発明2ないし5の容易想到性判断の誤り)について

以上のとおり,審決の本件発明1についての容易想到性の判断に誤りはないから,

これを前提として本件発明2ないし5の容易想到性判断の誤りを主張する原告の主

張には理由がない。

そして,他に本件発明2ないし5について容易想到性を否定すべき事情は見当た

らない。

5 まとめ

以上のとおり,原告主張の各取消事由はいずれも理由がない。

第6 結論

よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判

決する。

知的財産高等裁判所第1部




裁判長裁判官 設 樂 一




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裁判官 大 須 賀 滋




裁判官 大 寄 麻 代




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