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事件 平成 26年 (ワ) 15374号 損害賠償請求事件
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裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2014/08/29
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
判例全文
判例全文
平成26年8月29日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

平成26年(ワ)第15374号 損害賠償請求事件

口頭弁論終結日 平成26年7月28日

判 決

神奈川県相模原市<以下略>

原 告 株式会社イー・ピー・ルーム

東京都千代田区<以下略>

被 告 国

同 指 定 代 理 人 中 島 伸 一 郎

同 浅 原 陽 子

同 駒 ア 利 徳

同 平 川 千 鶴 子

同 古 閑 裕 人

主 文

1 本件訴えを却下する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

被告は,原告に対し,30万円及びこれに対する平成26年6月3日から支

払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

1 本 件 は , 原 告 が , 特 許 庁 が 平 成 1 3 年 7 月 4 日 に し た 異 議 の 決 定 ( 以下

「本件取消決定」という。)が国家賠償法上違法であるとして,被告に対し,

30万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成26年6月3日から

支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案で

ある。

1
2 前提となる事実(争いがないか,末尾に掲記した証拠等により容易に認めら

れる。)

(1) 本件取消決定に係る事実経過

ア 原告は,平成2年9月18日,発明の名称を「放電焼結装置」とする特

許出願(特願平2−23962)に最初に添付した明細書又は図面に記載

された発明に基づき国内優先権の主張をし,発明の名称を「加圧及び通電

装置」とする特許出願(特願平2−248085。以下「本件特許出

願」という。)をした(甲1,乙1)。

イ 原告は,平成7年3月14日,本件特許出願について,同日付け手続補

正書による補正をした(乙1。以下「本件補正」という。)。

ウ 特許庁は,平成9年5月2日,本件特許出願に係る特許(ただし,登録

時の発明の名称は「放電焼結装置」である。)につき設定登録をした(特

許第2640694号。甲2。以下「本件特許」という。)。

エ 住友石炭鉱業株式会社は,平成10年2月13日,本件特許について,

平成14年法律第24号による改正前の特許法に基づく異議申立てをした

(平成10年異議第70682号。以下「本件特許異議申立て」とい

う。)(甲3)。

オ 特許庁は,平成13年7月4日,本件特許異議申立てに基づき,本件特

許を取り消す決定(本件取消決定)をした(甲3)。

(2) 本件取消決定に係る訴訟の経緯

ア 原告は,本件取消決定の取消しを求める訴えを提起した(東京高等裁判

所平成13年(行ケ)第369号)が,東京高等裁判所は,平成15年4

月9日,原告の請求を棄却する判決をし,同判決は同年10月9日に確定

した(乙2・2頁)。

イ 原告は,本件取消決定の無効確認の訴えを提起した( 当庁平成26年

(行ウ)第98号)が,当庁は,平成26年5月27日,原告の請求を棄

2
却する判決をし(乙2),同判決は,同年6月13日の経過により確定し

た(弁論の全趣旨)。

ウ 原告は,本件特許異議申立て事件の審判官合議体担当審判官らが,異議

申立人の不利益になるような公報について,故意又は過失により審理する

ことなく本件取消決定をしたのは国家賠償法1条1項の違法行為に当たる

と主張して,本件被告(国。以下,単に「国」ということがある。)に

対し,本件特許が存続していたであれば得られたであろう利益15億円の

うち160万円等の支払を求める訴えを提起した(当庁平成16年(ワ)

第19959号)。当庁は,平成16年12月10日,原告の請求を棄却

する判決をした。

原告は控訴した(東京高等裁判所平成17年(ネ)第162号)が,東

京高等裁判所は,平成17年3月30日,原告の控訴を棄却する判決をし,

同判決は,同年4月15日の経過により確定した(乙1・5頁)。

エ 原告は,本件取消決定の違法を主張して,国及び審判合議体の審判長で

あったA@(以下「A@」という。)に対し,連帯して慰謝料20万円

等の支払を求める訴えを提起した(当庁平成23年(ワ)第9248号)。

当庁は,平成23年9月7日,原告の国に対する訴えを却下し,A@に対

する請求を棄却する判決をし,同判決は,同月21日の経過により確定し

た(乙1・5頁,乙3の1・3頁)。

オ 原告は,本件取消決定の違法を主張して,国及びA@に対し,連帯して

慰謝料40万円等の支払を求める訴えを提起した(当庁平成23年(ワ)

第13780号)。当庁は,平成23年7月20日,原告の請求をいずれ

も棄却する判決をし,同判決は,同年8月5日の経過により確定した(乙

1・6頁)。

カ 原告は,本件取消決定の違法を主張して,国及びA@に対し,連帯して

慰謝料40万円等の支払を求める訴えを提起した(当庁平成23年(ワ)

3
第24887号)。当庁は,平成23年12月27日,原告の請求をいず

れも棄却する判決をし,同判決は,平成24年1月11日の経過により確

定した(乙1・6頁,乙3の1・3頁)。

キ 原告は,本件取消決定の違法を主張して,国及びA@に対し,連帯して

慰謝料40万円等の支払を求める訴えを提起した(当庁平成23年(ワ)

第30818号)。当庁は,平成24年1月26日,原告の請求をいずれ

も却下する判決をし(乙1),同判決は同年2月10日の経過により確定

した(弁論の全趣旨)。

ク 原告は,本件取消決定の違法を主張して,国に対し,慰謝料60万円等

の支払を求める訴えを提起した(当庁平成24年(ワ)第13372号)。

当庁は,平成24年7月30日,原告の訴えを却下する判決をし(乙3の

1・4頁),同判決は同年8月14日の経過により確定した(弁論の全趣

旨)。

ケ 原告は,本件取消決定の違法を主張して,国に対し,慰謝料200万円

等の支払を求める訴えを提起した(当庁平成25年(ワ)第22575

号)。当庁は,平成25年11月12日,原告の訴えを却下する判決をし

(乙3の1・4頁),同判決は同月28日の経過により確定した(弁論の

全趣旨)。

コ 原告は,本件取消決定の違法を主張して,国及びA@に対し,連帯して

200万円等の支払を求める訴えを提起した(当庁平成25年(ワ)第2

5651号)。当庁は,平成25年12月25日,原告の訴えを却下する

判決をし(乙3の1),同判決は平成26年1月9日の経過により確定し

た(弁論の全趣旨)。

サ 原告は,本件取消決定の違法を主張して,国及びA@に対し,連帯して

60万円等の支払を求める訴えを提起した(当庁平成25年(ワ)第29

155号)。当庁は,平成25年12月17日,原告の訴えを却下する判

4
決をし(乙3の2),同判決は平成26年1月8日の経過により確定した

(弁論の全趣旨)。

3 当事者の主張

(原告の主張)

本件取消決定は,本件補正は出願当初の明細書又は図面に記載されていない

から要旨変更に当たると認定したが,平成5年法律第26号による改正前の特

許法41条に反する。

よって,請求の趣旨記載のとおりの判決を求める。

(被告の主張)

(1) 本件訴訟は,「前提となる事実」(2)ウないしサの前訴の蒸し返しであっ

て,本件訴えは信義則に反し,許されない。

よって,本件訴えの却下を求める。

(2) 本件取消決定に関しては,「前提となる事実」(2)アの判決が確定したこ

とによって,処分要件とされたすべての要件を充足しており,一切の違法事

由のないことが既判力をもって確定している。

したがって,原告が,後訴である本件訴訟において本件取消決定の違法理

由を主張することは,既に確定した判決の既判力抵触し,許されない。

よって,仮に訴えが適法であるとしても,理由がなく棄却されるべきであ

る。

第3 当裁判所の判断

上記「前提となる事実」(2)ウないしサのとおり,原告は,本件取消決定の違

法を主張して本件被告(国)に対する損害賠償請求訴訟の提起を繰り返しており,

本件訴えも,これら前訴の実質的蒸し返しであり,信義則に反し,かつ,訴権の

濫用に当たる不適法なものであることが明らかである。

よって,本件訴えを却下することとし,主文のとおり判決する。



5
東京地方裁判所民事第29部




裁判長裁判官



嶋 末 和 秀




裁判官



西 村 康 夫




裁判官



石 神 有 吾




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