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事件 平成 25年 (行ケ) 10260号 審決取消請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 知的財産高等裁判所 
判決言渡日 2014/06/25
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
判例全文
判例全文
平成26年6月25日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

平成25年(行ケ)第10260号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 平成26年6月4日

判 決

原 告 カスケード・マイクロテク・ゲゼル

シャフト・ミト・ベシュレンクテル・

ハフツング

訴訟代理人弁理士 江 崎 光 史

同 篠 原 淳 司

同 清 田 栄 章

被 告 特 許 庁 長 官

指 定 代 理 人 井 上 茂 夫

同 木 村 孔 一

同 相 崎 裕 恒

同 山 田 和 彦

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

3 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を3

0日と定める。

事実及び理由

第1 請求

特許庁が不服2012−225号事件について平成25年4月15日にした

審決を取り消す。

第2 事案の概要

1 特許庁における手続の経緯等




A 原告は,平成16年8月27日,発明の名称を「基板を検査する装置」と

する発明について特許出願(優先権主張日平成15年8月28日・平成16

年3月18日,優先権主張国独国,特願2004−249234号。以下「

本願」という。甲12)をした。

原告は,平成22年5月28日付けの拒絶理由通知を受けたため,同年1

2月17日付けで本願の特許請求の範囲について手続補正(甲9の2)をし

たが,平成23年8月10日付けの拒絶査定を受けた。

原告は,平成24年1月6日,拒絶査定不服審判を請求するとともに,同

日付けで本願の特許請求の範囲について手続補正(以下「本件補正」という。

甲7)をした。
B 特許庁は,上記請求を不服2012−225号事件として審理を行い,平

成25年4月15日,本件補正を却下した上で,「本件審判の請求は,成り

立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,同年5月27日,

その謄本が原告に送達された。
C 原告は,平成25年9月20日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提

起した。

2 特許請求の範囲の記載
A 本件補正前のもの

本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(平成22年12月17日付け手

続補正による補正後のもの)の記載は,次のとおりである(以下,同請求項

1に係る発明を「本願発明」という。甲9の2)。

「【請求項1】

基板を検査する装置にあって,この装置は,ハンドリングシステム(3),

基板マガジンステーション(7)及び整合ステーション(10)を有する

検査機を有する装置において,ハンドリングシステム,基板マガジンステー

ション及び整合ステーションに互いに作用的に接合されている少なくとも2




つの検査機(1;2;11;12;14;15)が提供されていること,

各検査機(1;2;11;12;14;15)は,独立したモジュールとし

て構成されていること,および,

各モジュールは,同じサイズの格子寸法であり,各モジュールは,互いに接

合され得ることを特徴とする装置。」
B 本件補正後のもの

本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである(以

下,同請求項1に係る発明を「本願補正発明」という。なお,下線部は,本

件補正による補正箇所である。甲7)。

「【請求項1】

基板を検査する装置にあって,この装置は,ハンドリングシステム(3),

基板マガジンステーション(7)及び整合ステーション(10)を有する検

査機を有する装置において,ハンドリングシステム,基板マガジンステーシ

ョン及び整合ステーションに互いに作用的に接合されている少なくとも2つ

の検査機(1;2;11;12;14;15)が提供されていること,

各検査機(1;2;11;12;14;15)は,独立したモジュールとし

て構成されていること,および,

各モジュールは,同じサイズの格子寸法であり,各モジュールは,互いに接

合され得ること,および,
各モジュールは,振動絶縁部,又は,位置制御されるプラットフォーム上に

配置されていることを特徴とする装置。」

3 本件審決の理由の要旨
A 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。要するに,

本願補正発明は,本願の優先日優先権主張日)前に頒布された刊行物であ

国際公開第01/80289号(原文甲3・訳文乙1。以下「刊行物1」

という。)に記載された発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易




に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により

特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり,平成18年

法律第55号による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法

126条5項の規定に違反するものであるとして,本件補正を却下した上で,

本願発明も,同様に,刊行物1に記載された発明及び周知の技術的事項に基

づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許を受け

ることができず,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願

は拒絶されるべきものであるというものである。
B 本件審決が認定した刊行物1に記載された発明(以下「引用発明」という。,


本願補正発明と引用発明の一致点及び相違点は,以下のとおりである。

ア 引用発明

「基板移送手段,基板容器インターフェース,基板整列用のステーション

及び測定装置を備える2個以上の測定室を有するモジュール式基板測定シ

ステムにおいて,基板移送手段は,基板を,基板容器インターフェース中

に設けられた基板容器から任意の測定室に移送することができ,測定室は

標準化された寸法を有する直方体であり,他の測定室に置換可能とすると

ともに機械式支持区域に支持され,さらに,複数の測定室が互いに平行に

基板操作室に対して接続された,モジュール式基板測定システム。」

イ 本願補正発明と引用発明の一致点

「基板を検査する装置にあって,この装置は,ハンドリングシステム,基

板マガジンステーション及び整合ステーションを有する検査機を有する装

置において,ハンドリングシステム,基板マガジンステーション及び整合

ステーションに互いに作用的に接合されている少なくとも2つの検査機が

提供されている,装置」である点。

ウ 本願補正発明と引用発明の相違点

(相違点1)




本願補正発明の装置が,各検査機は独立したモジュールとして構成され,

各モジュールは同じサイズの格子寸法であり,各モジュールは互いに接合

され得るのに対し,引用発明のモジュール式基板測定システムは,測定室

が標準化された寸法を有する直方体であり,他の測定室に置換可能とされ

ているものの,機械式支持区域に支持され,個々の測定室は互いに接合さ

れ得るとは特定されていない点。

(相違点2)

本願補正発明の装置が,各モジュールは,振動絶縁部,又は,位置制御

されるプラットフォーム上に配置されているのに対し,引用発明のモジュ

ール式基板測定システムは,振動を絶縁する手段を備えるとは特定されて

いない点。

第3 当事者の主張

1 原告の主張
A 取消事由1(一致点の認定の誤り)

本件審決が認定した本願補正発明と引用発明の一致点のうち,「基板を検

査する装置」,「検査機を有する装置」及び「少なくとも2つの検査機が提

供されている,装置」である点で一致すると認定した部分は,以下のとおり

誤りである。

ア 本願補正発明の「基板を検査する装置」は,例えば,基板に接触するプ

ローブを備えた「検査装置」である。

そして,半導体ウェハーの製造,生産の技術分野において,半導体製造

工程では,半導体ウェハーが完成する前の半導体処理工程中に,基板測定

装置により測定を行うこと,半導体ウェハーが完成した後にプローブを備

える基盤検査装置(プローブ検査装置)により電気的検査を行うこと(例

えば,乙4)は,いずれも技術常識である。

上記技術常識に照らすと,本願補正発明の「基板を検査する装置」は,




単に基板を測定するだけの「基板測定装置」とは異なるものである。

イ 一方で,刊行物1(甲3)には,「基板測定装置」の測定用モジュール

が記載されている。

しかしながら,刊行物3には,この測定用モジュールを「基盤検査装置」

の検査用モジュールに置き換え得ることについては記載も示唆もない。

そうすると,引用発明の「測定室及び測定装置」,「モジュール式基板

測定システム」が本願補正発明の「検査機」,「基板を検査する装置」及

び「装置」にそれぞれ相当するとした本件審決の認定は誤りであり,本件

審決が認定した本願補正発明と引用発明の一致点のうち,「基板を検査す

る装置」,「検査機を有する装置」及び「少なくとも2つの検査機が提供

されている,装置」である点で一致すると認定した部分も誤りである。

ウ 以上のとおり,本件審決は,本願補正発明と引用発明との一致点の認定

を誤り,相違点を看過したことにより,本願補正発明が独立特許要件を満

たさないとして本件補正を却下した判断の誤りがある。
B 取消事由2(相違点の認定及び判断の誤り)

ア 相違点を2つに分離して認定及び判断したことの誤り

本願補正発明の各モジュールは,互いに接合されるからこそ,接合され

た各モジュールに合成された振動が生じ,その合成された振動を防ぐため

に,接合された各モジュールは,その接合された各モジュールに対応する

振動絶縁部上又はその接合された各モジュールに対応する位置制御される

プラットフォーム上に配置されるものであり,「各モジュールは,互いに

接合され得る」ことと「各モジュールは,振動絶縁部,又は,位置制御さ

れるプラットフォーム上に配置されている」ことは,互いに不可分な関係

を持つ一つのまとまった技術的事項であり,2つに分離することはできな

い。

また,本件補正後の特許請求の範囲の請求項5の「各モジュールは,そ




の他のモジュールから独立したプラットフォーム上に配置されていること

を特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。」との記載に

照らすと,この請求項5によって引用される請求項1に係る発明である本

願補正発明には,「各モジュールは,その他のモジュールから独立したプ

ラットフォーム上に配置されている」もののほかに,「各モジュールは,

ただ一つのプラットフォーム上に配置されている」ものも含まれると解す

べきである。この後者のものは,「同じサイズの格子寸法であり,互いに

接合され得る」各モジュールが,「ただ一つの振動絶縁部,又は,位置制

御されるプラットフォーム」上に配置される構成のものであり,上記技術

的事項を有機的に結合した分離不可能な一体のものとして把握する必要性

がなおのこと生じるといえる。

そうすると,本件審決が上記技術的事項を2つに分離し,本願補正発明

と引用発明との相違点を相違点1及び相違点2の2つに分離して認定した

ことは誤りである。

次に,本件審決は,相違点2について,「半導体ウエハを搬送する装置

に対して複数の検査装置を配置する際に,検査装置それぞれを防振機構上

に配すること」は,本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開

昭61−168236号公報(以下「刊行物2」という。甲4)に記載さ

れているように周知の技術的事項であり,引用発明及び周知の技術的事項

に基づいて,相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容

易に想到し得たものである旨判断したが,上記のとおり,本願補正発明の

各モジュールの構成を「各モジュールは,互いに接合され得る」ことと「

各モジュールは,振動絶縁部,又は,位置制御されるプラットフォーム上

に配置されている」ことの2つに分離できるものではないから,本件審決

が「各モジュールは,振動絶縁部,又は,位置制御されるプラットフォー

ム上に配置されている」ことのみを相違点2として認定し,その容易想到




性を単独で判断した本件審決の判断手法は誤りである。

なお,刊行物2には,第1図ないし第3図(別紙3参照)に,「半導体

ウエハを搬送する装置に対して複数の検査装置を配置する際に,検査装置

(右側検査装置と左側検査装置)は,それぞれ,(別の)防振機構上に配

される」こと,すなわち,接合されていない個々のモジュールが,それぞ

れ別々の振動絶縁部上に配されることが記載されているが,接合された各

モジュール(各検査機)が,その接合された各モジュールに対応する振動

絶縁部上又はその接合された各モジュールに対応する位置制御されるプラ

ットフォーム上に配置されることについての記載はないから,刊行物2か

ら上記の配置が周知であるとはいえない。また,基板検査装置の各モジュ

ールにおいて発生する機械的な振動をその他のモジュールに伝達させない

ために,各モジュールを振動絶縁部,又は,位置制御されるプラットフォ

ーム上に配置するのであるから,あえて基板検査装置の各モジュールを互

いに接合させ得るようにして,上記の配置構成とすることは,およそ当業

者が考え得るような通常の事項ではない。

イ 相違点1の容易想到性の判断の誤り

仮に本件審決が本願補正発明と引用発明との相違点を相違点1及び相違

点2として認定したことに誤りがないとしても,本件審決が,相違点1に

ついて,「複数のモジュール化された処理室を平行に配置して,基板を搬

送する共通する基板搬送室に対して連結するような場合,装置全体の設置

スペースを低減するために,処理室間の隙間を無くして接合し得るように

配置すること」は,本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開

2000−183129号公報(以下「刊行物3」という。甲5)に示さ

れているように,基板処理装置の技術分野において当業者が適宜採用する

配置手法であり,引用発明において,刊行物3に記載された上記の配置手

法のように,平行に配置された同一寸法のモジュール間の隙間をできる限




り減らして,互いに接合され得るように配置することは,当業者が容易に

想到し得たものである旨判断したことは,以下のとおり誤りである。
刊行物3の記載事項の認定の誤り

本願補正発明の「各モジュールは,互いに接合され得ること」の技術

的意味は,本願の願書に添付した明細書(以下,図面を含めて「本願明

細書」という。甲12)の段落【0017】に記載されているように,

「各モジュールが同じ基本格子設計であり,各モジュールが互いに接合

していること」から「一区画が,構成ブロック原理にしたがって構成さ

れ得る。構成が最小になる。」ことにある。

したがって,本願補正発明の各モジュールは,必要とされるその時々

の状況により,互いに接合されて「ブロック化」される可能性があるも

のであるから,「ブロック化」のために接合されようとあるいはその必

要がないときに接合されまいと,いずれの場合であるかに関わりなく,

モジュールのどこか一部に,互いを接合するための「接合用の構造」を

備えることは明らかであり,本願補正発明の「各モジュールは,互いに

接合され得る」こととは,このようにモジュールのどこか一部に,互い

を接合するための「接合用の構造」を備えることを意味する。

一方で,刊行物3(甲5)の段落【0072】及び図6(別紙4参照)

に,複数のモジュール化され,平行に配置された「処理室」(プラズマ

成膜処理等の処理を行うための真空処理用の「真空処理室73a〜73

e」)が記載されており,この記載は,複数のモジュール化された処理

室を平行に配置して,基板を搬送する共通する基板搬送室に対して連結

するような場合,装置全体の設置スペースを低減するために,「処理室

間の隙間を無くして配置する」ことを開示するものといえる。

しかしながら,真空処理室73a〜73eは,ゲート弁79を介して

共通搬送室71に取り付けられ,確実に固定されているから,単に隣接




するだけであり,互いに接合される必要性はなく,「ブロック化」され

るための「接合用の構造」を有していない。

したがって,刊行物3の段落【0072】及び図6は,「処理室間の

隙間を無くして接合し得るように配置する」ことを開示するものではな

く,刊行物3には,「処理室間の隙間を無くして接合し得るように配置

する」ことについての記載はない。

そうすると,刊行物3に「複数のモジュール化された処理室を平行に

配置して,基板を搬送する共通する基板搬送室に対して連結するような

場合,装置全体の設置スペースを低減するために,処理室間の隙間を無

くして接合し得るように配置する」ことが記載されているとはいえない

から,上記の配置が刊行物3に示されているように基板処理装置の技術

分野において当業者が適宜採用する配置手法であるとの本件審決の認定

は,その前提において誤りがある。

なお,被告が周知例として挙げる乙7(特開昭63−229836号

公報)及び乙8(特開平6−61326号公報)は,本願補正発明の「

各モジュールが互いに接合され得る」構成及びその技術的意味を開示す

るものではない。
~ 容易想到性の判断の誤り

引用発明は,正確な基板の測定を行うために,隣接するモジュールが

発する高温の影響や隣接するモジュールの作動装置による振動の影響を

避けることに注力を注がなければならないものであり,各測定用モジュ

ールは,刊行物1(甲3)の図3(別紙2参照)に示されているように,

その正確な測定のために,離れた位置に,わざわざ間隔をあけて互いに

平行に配置され,基板操作室に接続されているのであるから,引用発明

に刊行物3記載の「基板にプラズマ処理を施すための真空処理用の処理

装置」に関する「間隔をあけることなく互いに平行に配置する」技術的




事項を適用することを妨げる阻害要因がある。

また,「測定装置」に関する引用発明と「処理装置」に関する刊行物

3記載の技術的事項から,相違点1に係る本願補正発明の「検査機」の

構成を導出することはできない。すなわち,引用発明の平行に配置され

た同一寸法の測定室(「測定室35,36,37」)間の隙間をできる

限り減らしても,測定室を支持する支持区域55の幅(面積)を包含す

る広い幅(面積)の機械式支持区域54が存在する以上,測定室35,

36,37間の隙間は,依然として残るから,刊行物3に記載されてい

るように隙間を「ゼロ」にして,各測定室を接合され得る程度に近くに

並べることはできない。このように引用発明においては,測定室同士の

間に大きな隙間が残り,しかも,測定室35,36,37は基板操作室

7に強固に連結されている以上,引用発明に刊行物3に記載されている

ような技術を適用して,引用発明の隙間の残る測定室同士を「互いに接

合され得るように配置」することは当業者にとって可能であるとはいえ

ない。

さらに,刊行物1には,測定用各モジュールを検査装置の検査用モジ

ュールに置き換えること,各機械式支持区域の幅を各測定室の幅以下に

縮小し,できる限り各測定室を隣接させ得るようにすること及び測定室

同士を互いに接合され得るように配置することのいずれについても,記

載も示唆もない。

したがって,本件審決が引用発明において相違点1に係る本願補正発

明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たものである旨判断した

ことは,誤りである。

ウ 小括

以上のとおり,本件審決における相違点の認定及び判断に誤りがあり,

本願補正発明は,引用発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易




に発明をすることができたものとはいえないから,本件審決には,本願補

正発明が独立特許要件を満たさないとして本件補正を却下した判断の誤り

がある。
C まとめ

以上のとおり,本件審決は,本願発明と引用発明との一致点の認定,相違

点の認定及び判断を誤った結果,本願補正発明が独立特許要件を満たさない

として本件補正を却下した判断の誤りがあり,本件審決は,違法であるから,

取り消されるべきである。

2 被告の主張
A 取消事由1に対し

ア 「検査」は,「(基準に照らして)適不適や異状・不正の有無などをし

らべること。」を,「測定」は,「はかり定めること。ある量の大きさを,

装置・器械を用い,ある単位を基準として直接はかること。」をそれぞれ

意味するから(広辞苑第六版),「検査」と「測定」は,辞書上の意味に

おいては相違する。

しかしながら,本願補正発明の「検査」は,「半導体ウェハー,集積回

路,多重チップモジュール,プリント基板,フラットディスプレイ等のよ

うな電気的又は電気機械的特性を有する検査基板を生産中に検査する」(

本願明細書の段落【0002】)ことを前提にした検査であるから,生産

中の基板を測定した値と基準値(合格品とする値)を照らし合わせて生産

中の基板の適不適や異状・不正の有無などをしらべるための検査を意味す

る。このことは,本願明細書の段落【0004】の「完成した集積回路の

品質を確保するため,これらの集積回路を適切なプローブによって個別に

検査する必要がある。検査信号に対する過程で測定された応答が,先に規

定した基準と比較することによって個々の回路の特性に関する情報を供給

する。」との記載からも理解できる。




一方で,引用発明の「測定」は,例えば,刊行物1(甲3)の図4b及

び5a(別紙2参照)並びに乙3(特開2003−100840号公報)

の図1ないし3,5及び6に示されるような,半導体工場の半導体製造装

置によって生産される半導体ウェハーの検査における測定を意味する。

そして,半導体ウェハーの生産において,基板上に形成された配線等の

線幅や電気導通等を測定するのは,単に基板を測定するためではなく,半

導体ウェハーの生産中に基板に施した加工が適切であったかどうかを評価

し,次の加工段階に進めるかどうかを検査するためであることからすると,

本願補正発明の「検査」と引用発明における「測定」は,いずれも,「生

産中の半導体ウェハーを測定した値と基準値(合格品とする値)を照らし

合わせ,生産中の半導体ウェハーの適不適や異状・不正の有無などをしら

べること」を意味するものといえる。

このように本願補正発明の「検査」と引用発明の「測定」は,半導体ウ

ェハーの生産における同一の工程を,単に,異なる言葉で表現しているに

すぎない。

したがって,本件審決が,引用発明の「測定室及び測定装置」,「モジ

ュール式基板測定システム」が本願補正発明の「検査機」,「基板を検査

する装置」及び「装置」にそれぞれ相当すると認定した上で,本願補正発

明と引用発明が「基板を検査する装置」,「検査機を有する装置」及び「

少なくとも2つの検査機が提供されている,装置」である点で一致すると

認定したことに誤りはなく,原告主張の取消事由1は理由がない。

イ 原告は,これに対し,本願補正発明の「基板を検査する装置」は,例え

ば,基板に接触するプローブを備えた検査装置であり,引用発明の「基板

測定装置」とは相違する旨主張する。

しかしながら,本願補正発明の特許請求の範囲(請求項1)には,本願

補正発明の検査機が,「基板に接触するプローブ」を具備することについ




ての記載がない。検査機が,何らかのセンサ部(プローブ)を備えること

は自明であるが,半導体ウェハーを検査する装置のプローブとしては,基

板に接触するもの(例えば,プローブカード)に加えて,基板に接触しな

いもの(例えば,光や電子ビーム等のいわゆる「非接触プローブ」)が存

在することも自明であるから,本願補正発明の検査機を基板に接触するプ

ローブを備えたものに限定解釈することは,許されない。

したがって,原告の上記主張は理由がない。

また,仮に原告が主張するように,本願補正発明の検査機を,基板に接

触するプローブを備えた検査装置に限定解釈したとしても,半導体製造工

程では,半導体ウェハーが完成した後,プローブ検査装置により電気的検

査を行うことは技術常識であること(乙4(特開2000−77495号

公報)の図1の工程104)などからすると,刊行物1(甲3)の記載に

接した当業者は,引用発明の基板測定システムには,測定装置がプローブ

検査装置であるものも含まれると理解するものといえるから,引用発明の

「基板測定装置」が本願補正発明の「基板を検査する装置」と相違すると

の原告の主張は,理由がない。
B 取消事由2に対し

相違点の認定及び判断手法について
本願補正発明の特許請求の範囲(請求項1)記載の「各モジュールは,

互いに接合され得ること」(相違点1に係る構成)にいう「接合され得

る」については,接合することが可能であるが実際には接合していない

ことを意味するのか,接合自在である(接合,分離の機構を具備する)

ことを意味するのか,それ以外の意味なのか一義的に理解することがで

きない。

そこで,本願明細書を参酌すると,本願明細書の段落【0026】に

「第1検査機1及び第2検査機2が,図1中に示されているように設け




られている。これらの検査機の寸法が同じ格子寸法であり,この一般的

実施の形態では互いに同じであるように,これらの検査機はそれぞれ

モジュール式に構成されている。それ故に,これらの2つの検査機1,

2を互いに近くに並べてこれらの検査機を互いに接合することが可能に

なる。」との記載がある。

上記記載によれば,請求項1の「各モジュールは,互いに接合され得

ること」とは,「各モジュールが近くに並べられており,互いに接合す

ることが可能であること」を意味すると解するのが妥当である。このよ

うな解釈は,請求項1に「各モジュールは,同じサイズの格子寸法であ

り」との記載があることとも整合する。すなわち,同じサイズの格子寸

法であれば,近くに並べることができ,接合することも可能である。

また,本件補正後の特許請求の範囲及び本願明細書では,検査機とハ

ンドリングシステムの関係については「作用的に接合されている」と記

載され,モジュールとモジュールの関係については「接合され得る」と

記載され,「接合されている」と「接合され得る」が,使い分けて記載

されている。

したがって,本願補正発明の「各モジュールは,互いに接合され得る」

ものであるから,「各モジュールが近くに並べられており,互いに接合

することが可能である」としても,「接合されている」とはいえない。
~ 本願補正発明の特許請求の範囲(請求項1)記載の「各モジュールは,

振動絶縁部,又は,位置制御されるプラットフォーム上に配置されてい

る」構成(相違点2に係る構成)は,モジュールの下方(例えば,床)

からの振動を絶縁するために,モジュールの下に振動絶縁部を設ける構

成である。

一方で,本件補正後の特許請求の範囲及び本願明細書には,「モジュ

ール間の接合部に振動絶縁部を設ける構成」,すなわち,モジュール間




の接合を介して伝搬する振動を絶縁するために,モジュール間の接合部

に振動絶縁部を設ける構成についての記載はない。

また,そもそも,本願補正発明の各モジュールは,「接合され得る」

ものであるが,「接合されている」ものではないから,モジュール間の

接合部に振動絶縁部を設ける必要がない。

さらに,半導体ウェハーに形成される電子回路は,μmオーダーの精

度のものであり,検査機に対する各方からの振動を絶縁することは,技

術常識であることからすると,各モジュールが互いに近くに並べられて

いるか否か(「接合され得る」ものであるか否か)にかかわらず,モジ

ュールの下方からの振動を絶縁するために,各モジュールは,振動絶縁

部の上に配置されていることが必要である。
以上によれば,機械力学的にみて,@各モジュールが,「互いに接合

され得る」こと(近くに並べられていること)と,A各モジュールが「

振動絶縁部,又は,位置制御されるプラットフォーム上に配置されてい

る」ことに関連はないといえるから,これらを合わせて一つの技術的事

項として認定しなければならないものではない。

したがって,本件審決が,上記@の構成及びAの構成を合わせて一つ

の相違点として認定せずに,上記@の構成を相違点1,上記Aの構成を

相違点2と認定した上で,それぞれの容易想到性を個別に判断したこと

に誤りはない。
。 原告は,これに対し,本願補正発明の各モジュールは,互いに接合さ

れるからこそ,接合された各モジュールに合成された振動が生じ,その

合成された振動を防ぐために,接合された各モジュールは,接合された

各モジュールに対応する振動絶縁部上に配置されるものであるから,「

各モジュールは,互いに接合され得る」ことと「各モジュールは,振動

絶縁部,又は,位置制御されるプラットフォーム上に配置されている」




ことは,互いに不可分な関係を持つ一つのまとまった技術的事項であり,

2つに分離することはできないにもかかわらず,本件審決がこれを2つ

に分離し,相違点1及び相違点2として認定したことは誤りである旨主

張する。

しかしながら,本件補正後の特許請求の範囲の請求項5の記載及び本

願明細書の記載(段落【0020】,【0021】)によれば,一つ一

つのモジュールにおいて,他のモジュールからの振動に対処するととも

に他のモジュールに振動が伝わることを回避するという目的課題及び課

題解決手段が開示されているものといえるが,他方で,本件補正後の特

請求の範囲及び本願明細書には,各モジュールは,接合部に振動絶縁

部を設けることなく,互いに接合されており,一方のモジュールの振動

が他方のモジュールに伝わる結果,合成された振動が生じ,合成された

振動は,接合された各モジュールに対応する振動絶縁部上に配置するこ

とにより防止できるといった課題やその課題に対する解決手段について

は,記載も示唆もない。

また,接合された各モジュールの下に配置された振動絶縁部は,振動

絶縁部の下(例えば,床)からモジュールへ振動が伝わるのを絶縁する

ものであって,合成された振動を防ぐことを目的としたものではない。

したがって,原告の上記主張は,本件補正後の特許請求の範囲,本願

明細書の記載に基づかないばかりか,技術常識にも反するものであるか

ら,失当である。

イ 相違点1の容易想到性について
刊行物3(甲5)の段落【0072】の記載,別紙4の図4及び図6

に接した当業者であれば,図6記載の各処理室は,図4記載の各処理室

との比較において,「処理室間の隙間を無くして」いることを理解する。

また,上記段落【0072】の「スペースの無駄がない」という構成




及び「設置スペースの低減」という効果に接した当業者であれば,別紙

4の図6記載の各処理室は,処理室間の隙間をできる限り減らして,互

いに接合され得るように配置されるのが望ましいと理解する。
~ 引用発明の基板測定システムは,クリーンルーム等の清浄空間に設置

され,それらの設置空間が小さい方が望ましいことは当業者にとって自

明のことである。

そして,引用発明は,半導体ウェハーの生産中に基板に施した加工

適切であったかどうかを評価し,次の加工段階に進めるかどうかを検査

するための基板測定システムであるから,他の処理装置と同様に,モジ

ュール化し,高集積化することが必要不可欠であり,また,この点は,

刊行物3記載の技術においても同様である。この点において,「測定装

置」に関する引用発明と「処理装置」に関する刊行物3記載の技術は,

技術分野及び目的課題が同一であるといえる。

そうすると,基板処理装置の技術分野において適宜採用する配置手法

を知悉した当業者が,引用発明においても,平行に配置された同一寸法

のモジュール間の隙間をできる限り減らして,互いに接合され得るよう

に配置することは,容易に想到し得るものである。

したがって,本件審決における相違点1の容易想到性の判断に誤りは

ない。
仮に本願補正発明の各モジュールが「接合されている」ものであると

しても,測定装置同士を接合する構造は,周知の配置構造であること(

乙7,8)からすると,引用発明のモジュール間の隙間をできる限り減

らそうとする当業者であれば,引用発明に上記周知の配置構造を適用し

て各モジュールが互いに接合されている構成とすることを容易に想到

得るものである。

したがって,本件審決における相違点1の容易想到性の判断に誤りは




ない。

ウ 小括

以上によれば,本件審決における相違点の認定及び判断に誤りはないか

ら,原告主張の取消事由2は理由がない。
C まとめ

以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,本願補正発明

は,引用発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をするこ

とができたものであるから,本願補正発明が独立特許要件を満たさないとし

て本件補正を却下した本件審決の判断に誤りはない。さらに,本願発明は,

これと同様の理由により,当業者が容易に発明をすることができたものであ

るとした本件審決の判断にも誤りはない。

第4 当裁判所の判断

1 取消事由1(一致点の認定の誤り)について
A 本願明細書の記載事項等について

ア 本願補正発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載は,前記第2の2B

のとおりである。

イ 本願明細書(甲12)の「発明の詳細な説明」には,次のような記載が

ある(下記記載中に引用する図面については別紙1を参照)。
「【技術分野】

本発明は,基板を検査する装置に関する。この装置は,少なくともチ

ャック,チャックドライブ,制御電子機器,プローブ又はハンドリング

システム,基板マガジンステーション及び整合ステーションを有するプ

ローブボード保持手段から構成された検査機を有する。」(段落【00

01】)
~ 「【背景技術】

半導体ウェハー,集積回路,多重チップモジュール,プリント基板,




フラットディスプレイ等のような電気的又は電気機械的特性を有する検

査基板を生産中に検査することが必要である。この目的のため,プロー

ブを通じて基板に接触する検査装置が使用される。これらのプローブは,

検査信号を基板に送るため及び/又は検査信号に対する基板の応答を測

定するために使用される。」(段落【0002】)

「特にこのような装置は,半導体生産の分野で基板を検査するために

使用される。ここでは,用語「プローバー」が使用される。この場合,

公知のように,一般に組み込まれた半導体チップが,半導体ウェハー上

で半導体チップの組み立て中に検査される。ウェハーは,シリコン,G

aAs,InPh等の材料のような様々な材料から構成され,特に2″

〜12″の直径及び90〜500 μm のオーダーの厚さを有する。ウェハーの

体系化後に,こうして生産された半導体チップが検査される。次いで,

これらの半導体チップが,分離され,最終的に搭載されて完成した構成

要素になる。」(段落【0003】)

「完成した集積回路の品質を確保するため,これらの集積回路を適切

なプローブによって個別に検査する必要がある。検査信号に対する過程

で測定された応答が,先に規定した基準と比較することによって個々の

回路の特性に関する情報を供給する。」(段落【0004】)

「それ故に,個々のチップは,分離後は検査のために取り扱うことが

困難であり,最後の取り付け後にしか適切に検査が実施できないので,

分離前のウェハーの組み立て中の検査が好ましい。しかしながらこのこ

とは,要求される品質に見合わない少なからずの数のチップが最終的に

搭載されうることを意味する。」(段落【0005】)

「一般に半導体ウェハーは,ウェハーマガジン内に搭載され搬送され

る。この場合,一般に最大で25枚の半導体ウェハーが,互いに垂直方向

にウェハーマガジン内に保持される。」(段落【0006】)




「半導体ウェハーは,亀裂及びあらゆる不純物に対して敏感であるの

で,人の手が触れることは禁じられている。そのため,ハンドリングロ

ボットが一般に使用される。これらのハンドリングロボットは,半導体

ウェハーを1つの処理ステーションから別の処理ステーションへ搬送す

るか又は半導体ウェハーをウェハーマガジンの中若しくは外に搬送す

る。」(段落【0007】)

「このようなハンドリングロボットは,ロボットドライブに連結され

ているロボットアームから構成され,垂直な自由度(z)及び2つの水

平な自由度(x,y)方向に移動し,垂直軸線の周りを回転する。ウェ

ハーホルダーが,ロボットアームの自由な前面に配置されている。この

ウェハーホルダーは,掴みアームを有する。これらの掴みアームは,真

空吸引ホルダーと共に回転する。これらの掴みアームは,半導体ウェハ

ーを掴むことができ,この半導体ウェハーを処理ステーション又はウェ

ハーマガジンの中又は外に移し,ロボットアームによってこのロボット

アームのウェハーホルダーを半導体ウェハーの下面又は背面の真下に位

置決めし,ロボットドライブによってこのウェハーホルダーを接触させ

る。その後にこれらの掴みアームは,半導体ウェハーを吸引する。その

結果,半導体ウェハーは,ウェハーホルダーの上面の真空開口部上で保

持され,1つの位置から別の位置へ搬送され得る。」(段落【0008

】)

「この種類のプローバーは,半導体工場内で使用される。これらのプ

ローバーは,ファブ(fab) ,プロダクションプローバー(production

prober) として公知である。この場合,このような多数の装置が設けら

れているので,これらのプロダクションプローバーは,広い領域を占有

する。これらのファブのコストに起因して,これらのプロダクションプ

ローバーによって占有される領域も非常にコストがかかる。これらの領




域のうちの大部分の領域が,プロダクションプローバー用に提供される。

自動検査システムに検査すべき半導体ウェハーを連続して供給するた

め,技術者又はオペレータが,これらの領域内で移動できる。」(段落

【0009】)

「全自動検査システムは,オペレータ又は技術者が初期の1回のセッ

ティングで幾つかのウェハーマガジンを設置し,全ての半導体ウェハー

が検査されるまで操作することを可能にする。この種類の全自動検査シ

ステムは,主にチャック,チャックドライバ,制御電子機器,プローブ

又はプローブボード及び適切な掴み手段及び連結手段から構成された実

際の検査装置に加えてウェハー自律調整用のパターン認識システム,C

CDカメラ,検査基板観察用の顕微鏡,モニター,ハンドリングシステ

ム,ウェハーマガジンステーションや整合ステーションを有する。」(

段落【0010】)
「【発明が解決しようとする課題】

本発明の課題は,生産過程で基板,特に半導体ウェハーの検査に起因

する必要な空間及びコストを低減することにある。」(段落【0011

】)
。 「【課題を解決するための手段】

この課題は,本発明により,ハンドリングシステム,基板マガジンス

テーション及び整合ステーションに互いに作用的に接合されている少な

くとも2つの検査機が提供されていることによって解決される。」(段

落【0012】)

「それ故に,ウェハーマガジンが,基板マガジンステーションによっ

て使用され得る。検査用の半導体ウェハーが,このウェハーマガジンに

よって全ての検査機に供給される。この場合,このハンドリングシステ

ムは,半導体ウェハーをウェハーマガジンから取り出し,このウェハー




を予備位置決めの目的で整合ステーション上に設置する。この半導体ウ

ェハーは,予備位置決め後に再び持ち上げられて検査機に送られる。」

(段落【0013】)

「このことは,多くの利点をもたらす。第一に,ハンドリングシステ

ム,基板マガジンステーション及び整合ステーションが,複数の検査機

に対して使用され得る。その一方で従来の技術では,この設備を各検査

機に設ける必要がある。このことは,検査機を製造する費用を削減する。

第二に,操作時間及び予備調整時間が検査時間に比べて短いので,上述

したステーションの性能が十分に活用され得る。第三に,オペレータ又

は技術者が基板を搬送する必要なしに,いろいろな検査方法,例えば高

温又は低温測定,高速測定及び高精度測定が,1台の装置及び同じ装置

実施され得る。一方では試験機自体に必要な空間が小さく,他方では

オペレータ又は技術者が検査機に近づくための領域が各検査機に対して

提供されていないので,検査機によって要求される空間がこの目的にし

たがって減少する。」(段落【0014】)

「本発明の1つの実施の形態では,各試験機が,独立した1つのモジ

ュールとして構成されている。基板検査機に直接接合されている全ての

要素が上の領域内に位置し,媒体供給部,制御装置等が下の領域内に位

置するように,このようなモジュールは適切に構成されている。」(段

落【0015】)

「さらに,ハンドリングシステム,基板マガジンステーション及び整

合ステーションが共通のモジュール内に配置されていることが好まし

い。これらの要素は,互いに近くで操作される関係にあるので,最適な

関係は,このようなモジュール設計で実現され得る。何故なら,このよ

うなモジュールは,独立して構成され設計されそして完全に現場で使用

され得るからである。」(段落【0016】)




「さらに,各モジュールが同じ基本格子設計であり,各モジュールが

互いに接合していることが有利である。したがって,一区画が,構成ブ

ロック原理にしたがって構成され得る。構成が最小になる。」(段落【

0017】)

「本発明のさらなる改良では,モジュールがその設置位置に移動され

固定されるように,モジュールが設計されている。したがって,保守や

修理に対して,検査機を一区画から取り出す一方で,この区画内のその

他の検査機を操作し続けることが可能である。例えば直立面のローラに

よって実施され得る移動能力の結果として,非常に簡単な移送が可能で

ある。その一方で設置位置内の不慮のずれは排除され得る。」(段落【

0018】)

「共通のハウジングが提供されることによって,装置を単一のサブア

センブリとして構成することが好ましい。検査機,ハンドリングシステ

ム,ウェハーマガジンシステム及び整合ステーションが,この共通のハ

ウジング内に組み込まれる。したがって,第一に,各サブアセンブリに

対する独立したハウジングが節約される。第二に,複数の検査機を有す

る装置全体を特定の気候や特定の環境条件にさらすことも可能である。

したがって,例えば共通の電気機械的な検査の可能性がある。」(段落

【0019】)

「各機械の動きが振動を起こすので,各モジュールを振動絶縁,特に

位置制御プラットフォーム上に配置することが有益である。第一に,こ

のことは,装置によって発生する機械的な振動がその他の装置に伝達し

ない条件によって実現される。第二に,このことは,監視に有害な影響

を有するあらゆる種類の機械的な振動又は検査中の検査結果が外部から

入らない条件を実現する。」(段落【0020】)

「この場合,各モジュールが,その他のモジュールから独立したプラ




ットフォーム上に配置されていることが特に好ましい。したがって,1

つの検査機からもう1つの検査機に伝わる振動を回避することも可能で

ある。」(段落【0021】)

「これらの検査機に届く能力を上げるため,移動距離を短くするため

には,全ての検査機が平面内に配置されて中央の自由空間を形成し,ハ

ンドリングシステム及び/又は整合ステーションが中央の自由空間内に

配置されていることが好ましい。」(段落【0022】)

「本発明のさらなる改良では,2台以上の検査機が提供される。3台

以上の検査機を取り外すことができる。このことは,検査操作中に1台

又はそれ以上の検査機を取り外し,例えば保守やその他の装置の性能を

上げる状況を実現する。」(段落【0023】)

「最後に本発明のさらなる改良では,追加の装置が少なくとも1つの

検査機に装備されている。この追加の装置は,ステレオ顕微鏡を含む顕

微鏡,高低温制御部を有するサーマルチャック,遮光カバー,電磁気室

又はガスシーリング室,レーザ切断装置,放射カメラ等でもよい。1台

又はそれ以上の検査機が,これらの装置によってそれぞれいろいろな目

的に対して構成され得る。」(段落【0024】)
。 「【発明を実施するための最良の形態】

第1検査機1及び第2検査機2が,図1中に示されているように設け

られている。これらの検査機の寸法が同じ格子寸法であり,この一般的

実施の形態では互いに同じであるように,これらの検査機はそれぞれ

モジュール式に構成されている。それ故に,これらの2つの検査機1,

2を互いに近くに並べてこれらの検査機を互いに接合することが可能に

なる。」(段落【0026】)

「ハンドリングシステム3が,検査機1,2の列の並んで横に配置さ

れている。このハンドリングシステム3は,ロボットアーム4を有する。




このロボットアーム4は,ロボットドライブ5に連結されている。ウェ

ハーホルダー6が,ロボットアーム4の自由な前面に配置されている。

図示しなかった半導体ウェハーの下面が,持ち上げられ真空手段によっ

て吸引されて吸着される。」(段落【0027】)

「ウェハーマガジンステーション7も設けられている。入力ウェハー

マガジン8及び出力ウェハーマガジン9が,このウェハーマガジンステ

ーション7内に挿入され得る。」(段落【0028】)

「整合ステーション10が,ウェハーマガジンステーション7とハン

ドリングシステム3との間に設けられている。」(段落【0029】)
「本発明の装置の機能を説明する。1枚の半導体ウェハーが,ウェハ

ーホルダー6によって入力ウェハーマガジン8から取り出され,一時的

に整合ステーション10上に搭載される。このとき,この半導体ウェハ

ーが,検査機1又は2のうちの1つの検査機に挿入され,検査機1又は

2内で精確に調整される必要があるときに,この半導体ウェハーが精確

な位置方向になるように,この半導体ウェハーの位置は,この整合ステ

ーション10内で調整される。次いでこれらの半導体ウェハーは,ロボ

ットアーム4及びロボットドライブの制御下で検査機1又は2のうちの

1つの検査機に搬送される。これらの検査機1又は2のうちのどの検査

機に装填されるかは,制御プログラムによって決定されている。」(段

落【0030】)

「図2中に示されているように,第3検査機11及び第4検査機12

が設けられている。これらの検査機は,中央の装置に対して対称に配置

されている。したがって,ハンドリングシステム3及び整合ステーショ

ン10及びウェハーマガジンステーション7が,図中の装置内の中央の

自由空間内に位置する。」(段落【0031】)

「図3中に示されているように,第5検査機14及び第6検査機15




が設けられている。この場合,中央の自由空間13がハンドリングシス

テム3及び整合ステーション10の配置に対して確保されているよう

に,全ての検査機1,2,11,12,14及び15が配置されている。」

(段落【0032】)

「この配置では,拡張モジュール16用の空間も設けられている。そ

こには,別の検査ステーションや別のモジュール,例えば中間貯蔵モジ

ュールや第2ウェハーマガジンステーションが配置され得る。」(段落

【0033】)

「図4中には,検査機1,2,11,12,14及び15を有する装

置が示されている。装置全体が,共通のハウジング17を有する。この

ハウジング17は,ウェハーマガジンステーション7側だけにハウジン

グのドア18を備える。図4中に特に図示しなかったウェハーマガジン

ステーション8,9が,このドア18を通じて操作され得る。オペレー

タの入口19が,この操作のためだけに設けられている。その他の自由

領域20は必要でない。その結果,どんな場合でも小さく要求される空

間は,さらに小さくできる。」(段落【0034】)

「全ての検査機1,2,11,12,14及び15は,検査及び温度

の影響,高速検査,高精度検査又は用途及び使用範囲に応じた特定の環

境条件下の検査のような同じ機能又は異なる機能を実施できる。」(段

落【0035】)

ウ 前記ア及びイの記載を総合すれば,本願明細書(甲12)には,次の点

が開示されていることが認められる。
従来から,半導体ウェハー,集積回路,多重チップモジュール,プリ

ント基板,フラットディスプレイ等のような電気的又は電気機械的特性

を有する検査基板を生産中に検査する目的のために,プローブを通じて

基板に接触する検査装置が使用されており,特にこのような装置は半導




体生産の分野で使用されている。

従来の技術では,検査装置を構成するハンドリングシステム,基板マ

ガジンステーション及び整合ステーションの設備を各検査機に設ける必

要があった。
~ 「本発明」の課題は,生産過程で基板,特に半導体ウェハーの検査に

起因する必要な空間及びコストを低減することにあり,上記課題を解決

する手段として,本願補正発明は,「基板を検査する装置」において,

ハンドリングシステム,基板マガジンステーション及び整合ステーショ

ンに互いに作用的に接合されている少なくとも2つの検査機が提供さ

れ,各検査機は,独立したモジュールとして構成され,各モジュールは,

同じサイズの格子寸法であって,互いに接合され得るものであり,「振

動絶縁部,又は,位置制御されるプラットフォーム上」に配置されてい

る構成を採用した。

これにより,ハンドリングシステム,基板マガジンステーション及び

整合ステーションが,複数の検査機に対して使用され得るので,この設

備を各検査機に設ける必要がなくなり,検査機を製造する費用を削減

し,検査機自体に必要な空間を小さくし,オペレータ又は技術者が検査

機に近づくための領域が各検査機に対して提供されていないので,検査

機によって要求される空間が減少すること,独立した各モジュールが,

同じサイズの格子寸法であり,互いに接合され得る構成を採用している

ので,一区画が構成ブロック原理にしたがって構成され得るものであ

り,構成が最小になること,各モジュールが「振動絶縁部,又は,位置

制御されるプラットフォーム上」に配置されているので,装置によって

発生する機械的な振動を抑制できることなどの効果を奏する。
B 刊行物1の記載事項について

刊行物1(原文甲3・訳文乙1)には,次のような記載がある(下記記載




中に図面については別紙2を参照)。

ア 「従来技術

かかるクラスター器具はWO99/49500より知られ,これにおい

ては,包括的なサイクルタイムを減らすために,検査器具(例えば光学顕

微鏡)及びその他のレビュー器具(例えば,走査型電子顕微鏡及び/又は

原子間力顕微鏡)が,器具と基板容器インターフェースとの間のウェハー

の移送を扱う自動化プラットフォームにより結合される。クラスター器具

は,ある器具(例えば検査機)から出たものを別の器具(例えば,設けら

れたレビュー器具の一つ)に移送するに最適に設計されるが,製造及び器

具の一つの修理期間中のクラスターの融通性は低い。かかる場合は,全体

のクラスターが調子悪くなる。また,測定器具の全く単純な交換による種

々の形式のウェハーの解析のためのクラスター器具の構成に関する現場で

の柔軟性が小さい。」

発明の概要

測定器具及び含まれる基板移送手段のより柔軟な配列によりこれらの問

題の解決を提供することが本発明の目的である。」

「本発明は,請求項1の前文に定められた基板測定システムの組立体で

あって,第2の測定室が設けられ,これが前記第1の測定室と同じ寸法内

に適合しかつ前記第1の測定室と置換するための前記第1の測定室と同じ

インターフェースが設けられることを特徴とする。」(以上,訳文1頁〜

2頁)

イ 「本発明は,基板移送手段,標準化されたインターフェースを有しかつ

適合している基板容器を受け入れるように配列された少なくも1個の基板

容器インターフェース,及び測定装置を備えている測定室を受け入れるた

めの機械式インターフェースが設けられた中央基板操作室を備えた基板測

定システムを提供する。測定室は,標準化された寸法を有しかつ基板操作




室の対応するインターフェースと連結するために,標準化された機械式イ

ンターフェースが設けられる。測定室の標準化のため,モジュール式基板

測定システムは,ある測定室を別の室に単純に置換することにより,ある

特定の用途のための種々の形式の測定装置を用いて容易に構成することが

できる。」

「本発明の好ましい実施例により,中央基板操作室は,標準寸法の2個

以上の測定室を備え,標準の機械式インターフェースが設けられる。この

実施例においては,基板移送手段は,それぞれの測定室内部の2個以上の

測定装置及び基板容器インターフェースに割り当てられ,価格及び床空間

の節約をもたらす。更に,1個のウェハー上の2個以上の測定を時間遅延

なしに続けて行うことができる。この実施例においては,1個以上の基板

容器インターフェースを基板操作室に連結することができる。測定室は,

実質的に水平面上に分布させることができるが,これを実質的に垂直方向

に積み重ねることもできる。」(以上,訳文2頁)

ウ 「好ましい実施例の説明

図1は,ウェハー移送手段10が設けられかつ中央に取り付けられた基

板操作室7を備えた基板測定システムを示す。基板操作室には基板容器イ

ンターフェース1及び機械式インターフェース50が設けられ,これに測

定室30が連結される。基板容器インターフェース1は基板操作室7に連

結される。基板容器インターフェース1には基板容器8が取り付けられる。

基板容器インターフェース1は標準的な機械式インターフェースを提供

し,これに,基板容器8が,対応インターフェースの手段により連結され

る。」

「測定室30には,ある種の用途,例えばウェハー上の薄膜の厚さの測

定のための測定装置35が設けられる。基板操作室7及び測定室30の両

者は標準の機械式インターフェースを備える。基板操作室7に設けられた




機械式インターフェース50及び測定室30の機械式インターフェース5

1は標準化される。」

「機械式インターフェース50及び機械式インターフェース51の両者

は,測定室30を基板操作室7と結合させるために,それぞれ適合した結

合用部分52及び53を備える。この結合は,測定室30と基板操作室7

との間の気密封鎖可能な結合を提供する。この方法で,測定室30を,管

理された真空条件下で使うことができる。また,機械式インターフェース

50は,機械式インターフェース51の適合している支持区域55上で測

定室30を支持するための機械式支持区域54を提供する。支持区域54,

55は,実質的に水平な区域として,実質的に垂直な区域として,或いは

両者の組合せとして配列することができる。かかる機械式支持区域54と

適合支持区域55との適合は,本技術において知られる適宜の想像し得る

方法で提供することができる。」(以上,訳文4頁〜5頁)

エ 「そこで,上述のような機械式インターフェース50及び適合インター

フェース51の配列により,測定室30は,各が標準の機械式インターフ

ェース51及びそれぞれの希望の用途に特定された関係の測定装置41又

は42が設けられた39又は40のような別の測定室と容易に置換するこ

とができる。測定室の交換は,図1において矢印R1,R2,R3及びR

4により図式的に示される。」

「測定室30,39,40の容易な交換を許すため,及び実際に動かし

得る測定室とするために,測定室はその内容物を含んだ重量が15−30

キログラム以下であることが好ましく,また最大寸法は,長さ,幅及び高

さが約50センチメートルであることが好ましい。この方法で,測定室は

数分間以内に迅速に交換でき,非常に柔軟性のある測定手順が得られる。」

「ある特別の実施例においては,測定用インターフェース50及び51

は,SEMI標準E47.1によるフープ(FOUP)インターフェースとし




て設計され寸法を決めることができる。この設計においては,ポッドは,

ポッドの底部の3個の凹所に適合する3個の支持ピンによりプラットフォ

ーム上に支持される。これらすべての寸法は,前述の寸法内に決められる。」

(以上,訳文5頁)

オ 「図2は,基板測定システムの本発明による第2の実施例を示し,これ

においては,複数のステーションが,ウェハー移送手段10が設けられか

つ中央に取り付けられた基板操作室7の周りで実質的に水平面内に分布さ

れる。基板操作室は正六角形であるが,辺の数が異なる形及び/又は不等

辺多角形を含んだ別の形とすることもできる。それぞれ基板容器8及び9

が基板容器インターフェース1及び2に設置された2個の基板容器インタ

ーフェース1及び2が示される。各が基板操作室7に連結された4個の測

定室30,31,32,33が示される。測定室30,31,32,33

は,それぞれ各測定室の用途に特定された測定装置35,36,37,及

び38を備える。測定室30,31,32,33は,測定室30,31,

32又は33のどれもが適宜の位置の測定室30,31,32又は32と

交換可能に取り付け得るような方法で,標準寸法を有しかつ基板操作室7

の標準化されたインターフェース50に適合する標準機械式インターフェ

ース51を持つ。」

「基板移送手段は,基板を,基板容器インターフェース1,2に置かれ

た基板容器8,9のいずれからも,それらのインターフェース80,81

により,任意の数の測定室30,31,32,33に沿っていかなる要求

された順序においても移送することができ,更に基板を同じ基板容器か又

は別の基板容器のどちらにも戻すことができる。」

「測定室30,31,32,33の一つに置かれた測定装置35,36,

37,38のいずれにおける基板の測定中も,基板は,基板移送手段10

により支持される。しかし,基板が測定室35,36,37,38内の基




板支持手段(図示せず)上に支持され,基板移送手段10が測定室30,

31,32,33から後退させられることが最も好ましい。この方法で,

1測定装置における1基板の測定中に,別の基板を別の測定装置に出し入

れするために移送するように基板移送手段10を使うことができる。」

「基板操作室7には,本技術において知られるように,基板整列用又は

基板識別用のステーションも設けることができる。或いは,測定室の一つ

に基板整列用及び/又は基板識別用のステーションも設けることができ

る。2個以上の基板容器インターフェースが設けられるときは,基板容器

の一つを,容器において行われた測定結果に基づいて基板を排除するため

に使用することができる。」

「図2に実施例においては,各測定室30,31,32,33は,希望

の用途に特定されたそれぞれの測定装置41又は42が設けられた複数の

他の測定室39,40の一つと容易に置き換えることができる。」(以上,

訳文6頁〜7頁)

カ 「図3は,第3の実施例によるモジュール式基板測定システムを示し,

このシステムにおいては,基板容器インターフェース1,2,3及び測定

室30,31,32が,長い基板操作室7の周りの直線状アレイにグルー

プ化される。基板操作室と測定室との間に,前述実施例において説明され

たように機械式インターフェース50及び51が設けられる。基板容器イ

ンターフェース1,2,3上に基板容器8,9,11が取り付けられる。

基板移送手段10は,矢印T1及びT2で示されるように,基板操作室7

の実質的に長手方向で直線状に移送するための手段を備える。」

「図3の実施例においては,標準化された機械式インターフェース50

及び51により,各測定室30,31,32は,希望の用途に特定された

それぞれの測定装置41又は42が設けられた複数の他の測定室39,4

0の一方と容易に置換することができる。また,標準化された機械式イン




ターフェース50及び51のため,測定室30,31,32は,適宜の選

ばれた方法で互いに交換することができる。」(以上,訳文7頁〜8頁)

キ 「図4a及び4bの実施例においては,各測定室30,31,32,3

3は,標準化された機械式インターフェース50及び51のため,各に希

望の用途に特定されたそれぞれの測定装置41又は42が設けられた複数

の他の測定室39,40(図示せず)の1個と容易に置換できる。また,

標準化された機械式インターフェース50及び51のため,測定室30,

31,32,33を,適宜の選ばれた方法で相互に交換することもできる。」

(訳文9頁)

ク 「この方法で,ウェハーのマッピングを許すための測定室の外側寸法は,

基板の寸法より僅かに大きいことしか必要ない。基板が直径300mm又

はそれ以上の円形である場合は,測定室は,基板直径より最大で100m

m大きい最小寸法の水平方向正方形又は長方形内に適合できる。システム

の小型化のために,基板操作室に対して取り付けられる側がこの最小寸法

を持つことが有利である。」(以上,訳文13頁〜14頁)

ケ 「特許請求の範囲

1.第1の測定室(30),及び基板移送手段(10)と基板容器(8)

を受け入れるための基板容器インターフェース(1)とを有する基板操

作室(7)を備え,前記基板操作室(7)は第1の測定室と連結するた

めの第1の機械式インターフェース(50)が設けられ,前記第1の測

定室は測定装置を備えかつ前記基板操作室(7)に連結するために第2

の機械式インターフェース(51)が設けられ,そして前記基板移送手

段(10)が,基板を,前記基板容器(8)と前記第1の測定室(30)

との間を前記基板操作室(7)を経て移送するように配置されている基

板測定システムの組立体であって,

第2の測定室(39)が設けられ,これが前記第1の測定室(30)と




同じ寸法内に適合し,そして前記第1の測定室(30)と置換するため

に前記第1の測定室(30)と同一の第2の機械式インターフェース(

51)が設けられる

ことを特徴とする基板測定システムの組立体。」(訳文14頁)
C 一致点の認定の誤りについて

原告は,本願補正発明の「基板を検査する装置」は,単に基板を測定する

だけの「基板測定装置」とは異なるものであり,引用発明の「測定室及び測

定装置」,「モジュール式基板測定システム」が本願補正発明の「検査機」,

「基板を検査する装置」及び「装置」にそれぞれ相当するとした本件審決の

認定は誤りであり,本件審決が認定した本願補正発明と引用発明の一致点の

うち,「基板を検査する装置」,「検査機を有する装置」及び「少なくとも

2つの検査機が提供されている,装置」である点で一致すると認定した部分

も誤りである旨主張する。

ア 本願補正発明の特許請求の範囲(請求項1)には,本願補正発明の「基

板を検査する装置」にいう「基板」の「検査」の意義について,特に規定

する記載はなく,検査の対象となる基板の種類,検査の内容,方法等を限

定する記載もない。

本願明細書(甲12)には,「基板」の「検査」に関し,「背景技術」

として,「半導体ウェハー,集積回路,多重チップモジュール,プリント

基板,フラットディスプレイ等のような電気的又は電気機械的特性を有す

る検査基板を生産中に検査することが必要である。この目的のため,プロ

ーブを通じて基板に接触する検査装置が使用される。これらのプローブは,

検査信号を基板に送るため及び/又は検査信号に対する基板の応答を測定

するために使用される。」(段落【0002】),「特にこのような装置

は,半導体生産の分野で基板を検査するために使用される。…この場合,

公知のように,一般に組み込まれた半導体チップが,半導体ウェハー上で




半導体チップの組み立て中に検査される。ウェハーは,シリコン,GaA

s,InPh等の材料のような様々な材料から構成され,特に2″〜12″

の直径及び90〜500 μm のオーダーの厚さを有する。ウェハーの体系化後

に,こうして生産された半導体チップが検査される。次いで,これらの半

導体チップが,分離され,最終的に搭載されて完成した構成要素になる。」

(段落【0003】),「完成した集積回路の品質を確保するため,これ

らの集積回路を適切なプローブによって個別に検査する必要がある。検査

信号に対する過程で測定された応答が,先に規定した基準と比較すること

によって個々の回路の特性に関する情報を供給する。」(段落【0004

】),「それ故に,個々のチップは,分離後は検査のために取り扱うこと

が困難であり,最後の取り付け後にしか適切に検査が実施できないので,

分離前のウェハーの組み立て中の検査が好ましい。…」(段落【0005

】)との記載がある。

上記記載によれば,本願明細書には,「基板」の「検査」に関する背景

技術として,電気的又は電気機械的特性を有する検査基板を生産中に検査

する目的のために,プローブを通じて基板に接触する検査装置を使用する

例が挙げられており,具体的には,検査基板である半導体ウェハー上で半

導体チップの組み立て中に個々のチップを検査するものであり,その検査

は,検査信号を基板に送り,検査信号に対する基板の応答を測定し,測定

した応答を先に規定した基準と比較することによって個々の回路の特性に

関する情報を得るというものである。

一方で,本願明細書には,本願補正発明の「検査」の内容,方法等を上

記背景技術の例に限定する旨の記載はない。

以上を総合すれば,本願補正発明の「基板」の「検査」には,「基板」

について一定の測定を行い,その測定値を一定の基準値と比較することに

よって評価し,その情報を得ることが含まれるものと解される。




イ 刊行物1(原文甲3・訳文乙1)に前記第2の3Bアのとおりの引用発

明が記載されていることは,当事者間に争いがない。

また,前記B認定の刊行物1の記載事項によれば,刊行物1には,@従

来,検査器具(例えば光学顕微鏡)及びその他のレビュー器具(例えば,

走査型電子顕微鏡及び/又は原子間力顕微鏡)が,器具と基板容器インタ

ーフェースとの間のウェハーの移送を扱う自動化プラットフォームにより

結合されるクラスター器具においては,製造及び器具の一つの修理期間中

のクラスターの融通性が低く,全体のクラスターが調子悪くなり,また,

測定器具の全く単純な交換による種々の形式のウェハーの解析のためのク

ラスター器具の構成に関する現場での柔軟性が小さいという問題があった

こと,A「本発明」は,測定器具及び含まれる基板移送手段のより柔軟な

配列により,これらの問題の解決を提供することを目的とし,基板移送手

段,標準化されたインターフェースを有しかつ適合している基板容器を受

け入れるように配列された少なくも1個の基板容器インターフェース,及

び測定装置を備えている測定室を受け入れるための機械式インターフェー

スが設けられた中央基板操作室を備えた,モジュール式基板測定システム

を提供するものであり,ある測定室を別の室に単純に置換することにより,

ある特定の用途のための種々の形式の測定装置を用いることができるこ

と,B測定室には,「ある種の用途,例えばウェハー上の薄膜の厚さの測

定のための測定装置」(前記Bウ)が設けられ,また,各測定室は,「希

望の用途に特定されたそれぞれの測定装置」(前記Bオ,キ)が設けられ

ていることが開示されていることが認められる。

上記開示事項によれば,引用発明のモジュール式基板測定システムの「

測定装置」が行う「測定」は,例えばウェハー上の薄膜の厚さの測定であ

るが,これに限定されるものではなく,「ある種の用途」あるいは「希望

の用途」の測定でよいことを理解できる。




そして,引用発明のモジュール式基板測定システムにおいて,ウェハー

上の薄膜の厚さ等の「測定」を行うのは,測定により求めた測定値を一定

の基準値と比較して評価することを目的とするものであることは自明であ

るから,上記の「測定」は測定値についての上記の評価を伴うものであり,

本願補正発明の「基板」の「検査」に含まれるものと解される。

そうすると,引用発明の「測定室及び測定装置」,「モジュール式基板

測定システム」が本願補正発明の「検査機」,「基板を検査する装置」及

び「装置」にそれぞれ相当するものといえるから,本願補正発明と引用発

明が,「基板を検査する装置」,「検査機を有する装置」及び「少なくと

も2つの検査機が提供されている,装置」である点で一致するとした本件

審決の認定に誤りはない。

ウ 原告は,これに対し,半導体製造工程では,半導体ウェハーが完成する

前の半導体処理工程中に,基板測定装置により測定を行うこと,半導体ウ

ェハーが完成した後にプローブを備える基盤検査装置(プローブ検査装置)

により電気的検査を行うことは,いずれも技術常識であり,この技術常識

に照らすと,本願補正発明の「基板を検査する装置」は,「基板測定装置」

とは異なるものであるから,引用発明の「測定室及び測定装置」,「モジ

ュール式基板測定システム」は本願補正発明の「検査機」,「基板を検査

する装置」及び「装置」に相当するものではない旨主張する。

しかしながら,前記アのとおり,本願補正発明の特許請求の範囲(請求

項1)には,本願補正発明の「基板」の「検査」について,検査の対象と

なる基板の種類,検査の内容,方法等を限定する記載はなく,また,本願

明細書には,半導体ウェハー上で半導体チップの組み立て中に個々のチッ

プについて,プローブを通じて基板に接触する検査装置を使用して検査す

る例が挙げられているが,本願補正発明の「検査」の内容,方法等を上記

の例に限定する旨の記載はない。




そして,半導体処理工程中に,基板測定装置により測定を行うのは,測

定により求めた測定値を一定の基準値と比較して評価し,次の段階の処理

工程に進むことができるかどうかを判断するためのものであり,この測定

は,測定値についての上記の評価を伴うものであるから,本願補正発明の

「基板」の「検査」に含まれるものと解される。

したがって,原告の上記主張は採用することができない。
D 小括

以上によれば,本件審決における一致点の認定に原告主張の誤りはないか

ら,原告主張の取消事由1は理由がない。

2 取消事由2(相違点の認定及び判断の誤り)について
A 刊行物2及び3の記載事項について

ア 刊行物2の記載事項について

刊行物2(甲4)には,次のような記載がある(下記記載中に図面につ

いては別紙3を参照)。
「(発明の技術分野)

本発明は半導体ウェハを検査するウェハ検査装置に関する。

(発明の背景)

従来,ウェハ検査装置を2台並べ,1台のテスター装置により各ウェ

ハ検査を装置を制御することは知られている。しかしながら上述した各

ウェハ検査装置は,ウェハを検査する為にファインアライメント可能な

ステージ機構の他に,該ステージ機構ヘウェハを導びく為のローディン

グ機構をそれぞれ備えていたので,設置床面積が非常に大きくなるとい

う欠点があった。

(発明の目的)

本発明はこのような欠点を解決し,複数のステージ機構によりウェハ

を検査できるとともに設置床面積の小さなウェハ検査装置を提供するこ




とを目的とする。」(1頁左欄10行〜右欄6行)
~ 「(実施例)

以下本発明の一実施例を添付図面に基づいて詳述する。

第1図はケーシング内のウェハ検査装置を上から見た場合の概略的平

面図,第2図はケーシング内のウェハ検査装置の特にステージ部分を示

す正面図,第3図はウェハ検査装置のローディング機構を示すA−A矢

視図,第4図はマイクロコンピュータの動作を表わすフローチャートで

ある。

第2図において1は架台部,2及び3は架台部1上にそれぞれ別個独

立に設けられた防振機構である。ベース4は防振機構2上に固定されて

いる。」(1頁右欄7行〜18行)
「本実施例では以上述べた要素4〜7,9〜11,13にて右側検査

部が構成されている。ベース14,XYステージ15,Zステージ16,

θ回転ステージ17,プローブカード19,支持台20,顕微鏡21,

センサ22はそれぞれ右側検査部の要素4〜7,9〜11,13と同様

に構成されており,左側検査部を構成している。18はθ回転ステージ

上に配置されたウェハを示している。上述した右側検査部と左側検査部

とは架台部1上に独立して設けられた防振機構2,3にそれぞれ支持さ

れており,この防振機構2,3により相互に振動が伝達されないよう構

成されている。」(2頁右上欄5行〜17行)
。 「ウェハのプリアライメントを行なう為のステージ45はモータ44

によって回転(自転)可能である。」(2頁右下欄10行〜12行)
。 「(発明の効果)

以上詳述した如く本発明はウェハ検査を行なう為の複数のステージ機

構を有するとともに各ステージ機構へ単一のローディング機構によりウ

ェハを振り分けるので,ローディング機構を共用でき,設置面積の小さ




なウェハ検査装置を得ることができる。」(6頁左欄13行〜19行)

イ 刊行物3の記載事項について

刊行物3(甲5)には,次のような記載がある(下記記載中に図面につ

いては別紙4を参照)。
「【発明の属する技術分野】本発明は被処理基板を真空雰囲気内で処

理するための真空処理システムに関し,例えばガラス基板の表面に対し

て,プラズマを用いて,プラズマCVD(Chemical Vapor

Deposition),スパッタリング,ドライエッチング等のプラ

ズマ処理を施すための真空処理システム内に関する。」(段落【000

1】)
~ 「【従来の技術】従来,プラズマCVD,スパッタリング,ドライエ

ッチング等のプラズマ処理を施すための真空処理システム内において,

ガラス基板を真空処理室に対して出し入れを行なう場合,基板を基板ホ

ルダ(トレイ)に固定し,該ホルダを基板と一緒に搬送する方法,即ち

「トレイ基板搬送方式」が一般的に採用されている。」(段落【000

2】)

「図1は従来のプラズマ処理装置を示す斜視図である。」(段落【0

003】)

「図1図示の如く,このプラズマ処理は,基板Sを処理するための処

理室を形成する真空容器11を有する。真空容器11の開閉自在の扉1

2には電極13が配設される。真空容器11内に単数若しくは複数の基

板Sを収容するため,基板ホルダ(トレイ)15が使用される。ホルダ

15は基板Sを取付けた状態で,真空容器11内の上部に配設された基

板搬送部材16に吊り下げられる。真空容器11の中央には基板Sを加

熱するためのヒータ17が配設される。」(段落【0004】)

「基板S及びホルダ15は,移動装置(図示せず)によって搬送部材




16と共に移動される。搬送部材16に吊り下げられたホルダ15がヒ

ータ17と電極13との間へ移動され,ここに停止配置される。この状

態で,基板Sの表面に対してプラズマ処理が施される。」(段落【00

05】)
「【発明が解決しようとする課題】上記従来技術に係るプラズマ処理

装置においては,処理用ホルダ15に起因して,種々の問題(基板セッ

ト用の複雑なロボット,加熱冷却速度低下,基板割れ,不純物汚染)を

伴うだけでなく,高いスループットを得ることが難しいという問題があ

る。」(段落【0006】)
。 「図4図示の如く,処理システム50は,図2図示の搬送装置20か

らなる3つの搬送装置20a,20b,20cを使用する。処理システ

ム50は,中央に,被処理体を支持した状態の搬送装置20a,20b,

20cが内部を移動可能な共通搬送室51を有する。共通搬送室51の

床52の上には,搬送装置20a,20b,20cが移動するための一

例としてレール29(図2参照)が敷設される。共通搬送室51は予備

真空空間を形成するためのロードロック室として構成される。ここで,

ロードロック室とは,窒素等の不活性ガスの供給部材と,同室内を排気

する排気部材とを有し,不活性ガスによる内部雰囲気の置換,減圧,加

圧を独立して行える室を意味する。」(段落【0040】)
。 「図6図示の如く,処理システム70は,図2図示の搬送装置20か

らなる3つの搬送装置20e,20f,20gを使用する。処理システ

ム70は,中央に,被処理体を支持した状態の搬送装置20e,20f,

20gが内部を移動可能な共通搬送室71を有する。共通搬送室71の

床72の上には,搬送装置20e,20f,20gが移動するための一

例としてレール29(図2参照)が敷設される。共通搬送室71は予備

真空空間を形成するためのロードロック室として構成される。 (段落





【0066】)

「共通搬送室71は矩形形状を有し,図6図示の例では5室からなる

真空処理室73a〜73eは,共通搬送室71の一側面に沿って共通搬

送室71の長手方向中心軸に対して平行に配列される。また,ロード室

74,アンロード室75,及び台車室76は,真空処理室73a〜73

eと対向する他側面に沿って共通搬送室71の長手方向中心軸に対し

て平行に配列される。」(段落【0069】)

「このため,共通搬送室71は,上記一側面の5個所及び上記他側面

の3箇所にゲート弁79を装着するための開口及び取付け座が形成さ

れる。全ての開口及び取付け座は同一寸法に設定され,いずれの取付け

座にも,同一寸法及び同一規格のゲート弁79を介して室73a〜73

e,74,75,76を選択的に取付けることができる。」(段落【0

070】)

「共通搬送室71の床72上に配設された移動手段の一例としてのレ

ール29(図2参照)は,搬送装置20e,20f,20gがX及びY

方向へ移動することができるように設計される。即ち,搬送装置20e,

20f,20gは,図4及び図5図示の如く,θ方向に回転されること

なく,X及びY方向へ直線的に移動されることにより,各室73a〜7

3e,74,75,76への搬送ラインへ合致するよう操作される。」

(段落【0071】)

「図6図示の処理システム70によれば,図4図示の処理システム5

0で得られる効果に加え,搬送装置の回転の動作が不要であるため,共

通搬送室71の大きさを,搬送装置がX及びY方向への移動を行うに必

要な最小限のもとのすることができる。また,図4図示の放射状の配置

に比べ,真空処理室73a〜73e間のスペースの無駄がないため,設

置スペースの低減が可能となる。」(段落【0072】)




「【発明の効果】本発明に係る真空処理システムによれば,複数の真

空処理室のために共通搬送室が配設されると共に,該共通搬送室にロー

ド室,アンロード室,及び台車室が接続される。そして,被処理基板は,

台車室を待機位置とする台車型の搬送装置によりこれらの室間で搬送さ

れる。従って,スループット(処理速度)を向上させると共に,処理室

間のクロスコンタミネーションを低減し,プロセスの信頼性を向上させ

ることができる。」(段落【0074】)
B 相違点の認定及び判断手法について

原告は,本願補正発明の各モジュールは,互いに接合されるからこそ,接

合された各モジュールに合成された振動が生じ,その合成された振動を防ぐ

ために,接合された各モジュールは,その接合された各モジュールに対応す

る振動絶縁部上又はその接合された各モジュールに対応する位置制御される

プラットフォーム上に配置されるものであり,「各モジュールは,互いに接

合され得る」ことと「各モジュールは,振動絶縁部,又は,位置制御される

プラットフォーム上に配置されている」ことは,互いに不可分な関係を持つ

一つのまとまった技術的事項であり,2つに分離することはできないから,

本件審決が上記技術的事項を2つに分離し,本願補正発明と引用発明との相

違点を相違点1及び相違点2の2つに分離して認定したことは誤りであり,

また,本件審決が「各モジュールは,振動絶縁部,又は,位置制御されるプ

ラットフォーム上に配置されている」ことのみを相違点2として認定し,そ

容易想到性を単独で判断した判断手法も誤りである旨主張する。

そこで検討するに,原告は,本願補正発明と引用発明との相違点を相違点

1及び相違点2の2つに分離して認定したことが誤りであることの根拠とし

て,本願補正発明の各モジュールは,互いに接合されるからこそ,接合され

た各モジュールに合成された振動が生じ,その合成された振動を防ぐために,

接合された各モジュールは,その接合された各モジュールに対応する振動絶




縁部上又はその接合された各モジュールに対応する位置制御されるプラット

フォーム上に配置されるものであることを挙げるが,本願明細書には,原告

の挙げる根拠を裏付ける記載はない。

すなわち,本願明細書(甲12)には,「各モジュールは,互いに接合さ

れ得る」ことに関しては,「さらに,各モジュールが同じ基本格子設計であ

り,各モジュールが互いに接合していることが有利である。したがって,一

区画が,構成ブロック原理にしたがって構成され得る。構成が最小になる。」

(段落【0017】),「第1検査機1及び第2検査機2が,図1中に示さ

れているように設けられている。これらの検査機の寸法が同じ格子寸法であ

り,この一般的な実施の形態では互いに同じであるように,これらの検査機

はそれぞれモジュール式に構成されている。それ故に,これらの2つの検査

機1,2を互いに近くに並べてこれらの検査機を互いに接合することが可能

になる。」(段落【0026】)との記載があり,一方,「各モジュールは,

振動絶縁部,又は,位置制御されるプラットフォーム上に配置されている」

ことに関しては,「各機械の動きが振動を起こすので,各モジュールを振動

絶縁,特に位置制御プラットフォーム上に配置することが有益である。第一

に,このことは,装置によって発生する機械的な振動がその他の装置に伝達

しない条件によって実現される。第二に,このことは,監視に有害な影響を

有するあらゆる種類の機械的な振動又は検査中の検査結果が外部から入らな

い条件を実現する。」(段落【0020】)との記載があるが,「各モジュ

ールは,互いに接合され得る」ことと「各モジュールは,振動絶縁部,又は,

位置制御されるプラットフォーム上に配置されている」こととが,これらを

組み合わせることによって一定の効果を生じるなど,互いに不可分な関係を

持つ一つのまとまった技術的事項であることをうかがわせる記載はない。か

えって,段落【0020】の記載は,「各モジュールは,振動絶縁部,又は,

位置制御されるプラットフォーム上に配置されている」構成が有益であるの




は,「装置によって発生する機械的な振動がその他の装置に伝達しない条件」

によって実現されることを示すものといえるが,各モジュールが接合されて

いる場合には,各モジュールの機械的な振動が互いに伝達しやすくなるので,

上記の条件を満たすことは難しくなるものとうかがわれる。

したがって,本件審決における相違点1及び相違点2の認定の誤りをいう

原告の上記主張は,本願明細書の記載に基づかないものであって,理由がな

い。

また,本件審決が相違点2の容易想到性を単独で判断した判断手法の誤り

をいう原告の上記主張は,その前提において理由がない。

なお,付言すると,前記Aアの刊行物2の記載事項によれば,本願の優先

権主張日当時,半導体ウェハーを搬送する装置に対して複数の検査装置を配

置する際に,検査装置それぞれを防振機構上に配することは周知であったこ

とが認められ,また,半導体ウェハー等の基板を測定装置により測定する際

に,測定装置が振動を拾ってしまうと正確な測定ができないことは自明であ

るから,引用発明において,基板の測定を正確に行うため,上記周知の技術

的事項を適用して相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が

容易に想到することができたものと認められる。
C 相違点1の容易想到性について

原告は,本件審決が,相違点1について,「複数のモジュール化された処

理室を平行に配置して,基板を搬送する共通する基板搬送室に対して連結す

るような場合,装置全体の設置スペースを低減するために,処理室間の隙間

を無くして接合し得るように配置すること」は,刊行物3に示されているよ

うに,基板処理装置の技術分野において当業者が適宜採用する配置手法であ

り,引用発明において,刊行物3に記載された上記の配置手法のように,平

行に配置された同一寸法のモジュール間の隙間をできる限り減らして,互い

に接合され得るように配置することは,当業者が容易に想到し得たものであ




る旨判断したことは,誤りである旨主張する。

ア 刊行物3の記載事項の認定について

原告は,本願明細書の段落【0017】の記載によれば,本願補正発明

の「各モジュールは,互いに接合され得る」こととは,各モジュールが「

ブロック化」のために接合されようとあるいはその必要がないときに接合

されまいと,いずれの場合であるかに関わりなく,モジュールのどこか一

部に,互いを接合するための「接合用の構造」を備えることを意味するも

のであるが,刊行物3(甲5)には,複数のモジュール化された処理室を

平行に配置して,基板を搬送する共通する基板搬送室に対して連結するよ

うな場合,装置全体の設置スペースを低減するために,「処理室間の隙間

を無くして配置する」ことの開示があるが,刊行物3の真空処理室73a

〜73eは,ゲート弁79を介して共通搬送室71に取り付けられ,確実

に固定されているから,単に隣接するだけであり,互いに接合される必要

性はなく,「ブロック化」されるための「接合用の構造」を有していない

から,「各モジュールは,互いに接合され得る」ものではなく,刊行物3

には,「処理室間の隙間を無くして接合し得るように配置する」ことの記

載はない旨主張する。
本願補正発明の特許請求の範囲(請求項1)には,本願補正発明の「

各モジュールは,互いに接合され得る」にいう「互いに接合され得る」

の意義について,特に規定する記載はない。「互いに接合され得る」に

いう「得る」の文言に照らすと,「互いに接合され得る」とは,互いに

接合されることが「可能であること」を意味すると理解するのが自然で

ある。

そうすると,本願補正発明の「各モジュールは,互いに接合され得る」

ものには,各モジュールが,現に互いに接合されている構成のもののほ

かに,互いに接合されることが可能である構成のものが含まれるものと




理解できる。

また,本願明細書(甲12)には,「各モジュールは,互いに接合さ

れ得る」ことに関し,「さらに,各モジュールが同じ基本格子設計であ

り,各モジュールが互いに接合していることが有利である。したがって,

一区画が,構成ブロック原理にしたがって構成され得る。構成が最小に

なる。」(段落【0017】),「第1検査機1及び第2検査機2が,

図1中に示されているように設けられている。これらの検査機の寸法が

同じ格子寸法であり,この一般的な実施の形態では互いに同じであるよ

うに,これらの検査機はそれぞれモジュール式に構成されている。それ

故に,これらの2つの検査機1,2を互いに近くに並べてこれらの検査

機を互いに接合することが可能になる。」(段落【0026】)との記

載がある。

上記記載及び別紙1の図1によれば,本願明細書には,本願補正発明

の「各モジュールは,互いに接合され得る」にいう「互いに接合され得

る」の構成には,「2つの検査機」を「互いに近くに並べてこれらの検

査機を互いに接合することが可能になる」ものが含まれることが開示さ

れているものと認められる。

一方で,本願明細書には,各モジュールが「互いに接合され得る」の

に必要な具体的な部材,構造等を示した記載はなく,原告が主張するよ

うな「ブロック化」されるための「接合用の構造」に関する記載もない。
~ 前記Aイの刊行物3の記載事項によれば,別紙4の図6記載の真空処

理室73a〜73eは,それぞれが同一形状の区画として形成されモジ

ュール化されており,共通搬送室71の長手方向に沿って互いに隙間な

く平行に配置されていること,このような各処理室の配置は,別紙4の

図4記載の放射状の配置に比べてスペースの無駄がないため,設置スペ

ースの低減が可能となることを理解できる。




そして,別紙4の図6記載の真空処理室73a〜73eは,互いに隙

間なく配置されたものであり,互いに近くに並べて隣り合う各処理室が

接合することが可能になるものといえるから,本願補正発明の「互いに

接合され得る」ものに含まれるものと認められる。

したがって,刊行物3には,「複数のモジュール化された処理室を平

行に配置して,基板を搬送する共通する基板搬送室に対して連結するよ

うな場合,装置全体の設置スペースを低減するために,処理室間の隙間

を無くして接合し得るように配置すること」が記載されているものと認

められる。

そうすると,刊行物3には,「処理室間の隙間を無くして接合し得る

ように配置する」ことの記載はないとの原告の主張は,理由がない。

容易想到性について
前記1Cイのとおり,刊行物1(原文甲3・訳文乙1)には,引用発

明は,製造及び器具の一つの修理期間中のクラスターの融通性が低く,

全体のクラスターが調子悪くなり,また,測定器具の全く単純な交換

よる種々の形式のウェハーの解析のためのクラスター器具の構成に関す

る現場での柔軟性が小さいという問題を解決するため,測定器具及び含

まれる基板移送手段のより柔軟な配列を提供することを目的とすること

の記載がある。

一般的に,複数の装置及び器具から構成される各種機械装置やシステ

ムにおいて,その構成する装置及び器具をどのように配置するかは,作

業及び生産の効率や設置場所,設置空間の利用効率等を考慮して,当業

者が適宜に決定し得ることである。

そして,基板を処理する装置や検査装置は,一般にクリーンルーム等

の清浄空間に設置され,それらの設置空間が小さい方が望ましいことは,

当業者にとって自明であり,引用発明の基板測定システムについても,




このことが当てはまる。

そして,刊行物3に,「複数のモジュール化された処理室を平行に配

置して,基板を搬送する共通する基板搬送室に対して連結するような場

合,装置全体の設置スペースを低減するために,処理室間の隙間を無く

して接合し得るように配置すること」が記載されていることは,前記ア
~認定のとおりである。

以上によれば,引用発明の基板移送手段を設けた基板操作室に2個以

上の測定室を互いに平行に接続したモジュール式基板測定システムにお

いて,モジュール式基板測定システムの設置空間を減らそうとすること

は,当業者であればごく普通に着想することであり,刊行物3に記載さ

れた配置手法のように,平行に配置された同一寸法の測定室(モジュー

ル)間の隙間をできる限り減らして,互いに接合され得るように配置す

ること(相違点1に係る本願補正発明の構成)は,当業者が容易に想到

することができたものと認められる。
~ 原告は,これに対し,引用発明は,正確な基板の測定を行うために,

隣接するモジュールが発する高温の影響や隣接するモジュールの作動装

置による振動の影響を避けることに注力を注がなければならないもので

あり,各測定用モジュールは,刊行物1の図3(別紙2参照)に示され

ているように,その正確な測定のために,離れた位置に,わざわざ間隔

をあけて互いに平行に配置され,基板操作室に接続されているのである

から,引用発明に刊行物3記載の「基板にプラズマ処理を施すための真

空処理用の処理装置」に関する「間隔をあけることなく互いに平行に配

置する」技術的事項を適用することを妨げる阻害要因がある旨主張する。

しかしながら,刊行物1には,原告が主張するような事項の記載はな

く,また,別紙2の図3は,模式図であって,図3の記載のみから,各

測定用モジュールがその正確な測定のために,離れた位置に,わざわざ




間隔をあけて互いに平行に配置されているものと理解することはできな

い。

したがって,原告の上記主張は採用することができない。
また,原告は,引用発明の平行に配置された同一寸法の測定室(測定

室35,36,37)間の隙間をできる限り減らしても,測定室を支持

する支持区域55の幅(面積)を包含する広い幅(面積)の機械式支持

区域54が存在する以上,測定室35,36,37間の隙間は,依然と

して残るから,刊行物3に記載されているように隙間を「ゼロ」にして,

各測定室を接合され得る程度に近くに並べることはできないので,引用

発明に刊行物3に記載されているような技術を適用して,引用発明の隙

間の残る測定室同士を「互いに接合され得るように配置」することは当

業者にとって可能であるとはいえないなどと主張する。

しかしながら,前記のとおり,複数の装置及び器具から構成される

各種機械装置やシステムにおいて,その構成する装置及び器具をどのよ

うに配置するかは,作業及び生産の効率や設置場所,設置空間の利用効

率等を考慮して,当業者が適宜に決定し得ることであって,引用発明に

おいて,平行に配置された同一寸法のモジュール(測定室)間の隙間を

できる限り減らして,互いに接合され得るように配置する場合には,測

定室を支持する機械式支持区域の幅や面積についても,上記配置に適し

た構成とすることは当業者が適宜に決定し得ることであるから,原告の

上記主張は採用することができない。
。 以上によれば,本件審決における相違点1の容易想到性の判断に誤り

はない。
D 小括

以上によれば,本件審決における相違点の認定及び判断に誤りはないから,

原告主張の取消事由2は理由がない。




3 結論

以上の次第であるから,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,本件審

決にこれを取り消すべき違法は認められない。

したがって,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文

のとおり判決する。



知的財産高等裁判所第4部



裁判長裁判官 富 田 善 範




裁判官 大 鷹 一 郎




裁判官 平 田 晃 史





(別紙1)





(別紙2)





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(別紙3)





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(別紙4)





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