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審判番号(事件番号) データベース 権利
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平成25行ケ10172審決取消請求事件 判例 特許
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事件 平成 25年 (行ケ) 10249号 審決取消請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 知的財産高等裁判所 
判決言渡日 2014/04/24
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
判例全文
判例全文
平成26年4月24日判決言渡

平成25年(行ケ)第10249号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 平成26年4月8日

判 決



原 告 X

訴訟代理人弁理士 松 田 真

同 慶 田 晴 彦

同 太 田 恵 一



被 告 特許庁長官

指 定 代 理 人 仲 間 晃

同 浜 岸 広 明

同 稲 葉 和 生

同 小 林 大 介

同 内 山 進

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

3 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定

める。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

特許庁が不服2011−21850号事件について平成25年4月9日にし

た審決を取り消す。

第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等(争いがない。)

原告は,発明の名称を「ウェブ上の情報源およびサービスにアクセスする

方法および装置」とする発明につき,平成12年12月29日を国際出願日と

する特許出願(特願2001−550631号。パリ条約に基づく優先権

張・平成11年12月30日(以下「優先日」という。 ,フランス国。以下


「本願」という。)をした。原告は,平成22年9月13日付けで拒絶理由の

通知を受けたので,平成23年3月18日付けの手続補正書により,特許請求

の範囲の補正をした。原告は,同年5月31日付けで拒絶の査定を受け,同年

10月7日,拒絶査定に対する不服の審判(不服2011−21850号)を

請求するとともに,同日付けの手続補正書により,特許請求の範囲の補正をし

た(この補正後の明細書及び図面をまとめて「本件明細書」という。。


特許庁は,平成25年4月9日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との

審決をし,その謄本を,同年5月8日,原告に送達した。

2 特許請求の範囲の記載(甲8)

補正後の本願の特許請求の範囲(請求項の数11)の請求項1の記載は,以

下のとおりである(以下,同請求項に記載された発明を「本願発明」という。。


「通信ネットワークを介してインターネットに接続された通信装置からウェ

ブ上の情報源およびサービスにアクセスする方法であって:

−ツリー状メニュー構造の中に構築され前記通信装置の中にローカル的に予

め記憶された複数の選択ページ(各選択ページは1組のアイコンを有する)の

うちの一の選択ページを表示する一以上の段階と,

−表示中の選択ページ内の一のアイコンの選択に応じて,選択された当該ア

イコンに対応する情報源のアドレスを通信ネットワークに発信する段階,

とを包含し,

その特徴は,各選択ページ毎に,前記1組のアイコンは遠隔情報源に直接

アクセスするための一以上のアイコン,および,前記ツリー状メニュー構造の
中の他の選択ページにローカル的にアクセスするための一以上の選択用アイコ

ンを有し,

前記遠隔情報源は表示段階および選択段階の際にローカル的に生成されたア

ドレスを有することからなる方法。」

3 審決の理由

審決の理由は,別紙審決書写しのとおりである。要するに,本願発明は,特

開平11−259496号公報(甲1。以下「引用文献」という。)に記載さ

れた発明(以下「引用発明」という。)及び周知技術に基づいて,当業者が容

易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により

特許を受けることができない,というものである。

審決が認定した引用発明の内容,本願発明と引用発明との一致点及び相違点

は以下のとおりである。
A 引用発明の内容

「各ユーザ端末にセットアップされているブラウザから,LAN回線およ

びルータを経由しインターネット上のホームページに容易にアクセスする方

法であって,

ホームページのURLを登録したブックマークファイルをブラウザに表示

し,前記URLを呼び出してホームページにアクセスすることを含む,方

法。」
B 一致点

「通信ネットワークを介してインターネットに接続された通信装置からウ

ェブ上の情報源およびサービスにアクセスする方法であって:

−前記通信装置の中にローカル的に予め記憶された選択用表示情報(選択

用表示情報は1組の情報アクセスのための表示を有する)を表示する一以上

の段階と,

−表示中の選択用表示情報内の一の情報アクセスのための表示の選択に応
じて,選択された当該情報アクセスのための表示に対応する情報源のアドレ

スを通信ネットワークに発信する段階,

とを包含することからなる方法。」
C 相違点

ア 相違点1

「選択用表示情報について,本願発明が,「ツリー状メニュー構造の中

に構築」された「複数」の「選択ページ」としているのに対し,引用発明

は,「ブックマークファイル」に関し,そのような構成となっていない

点。」

イ 相違点2

「選択用表示情報の表示方法について,本願発明が,ツリー状メニュー

構造の中に構築された複数の選択ページの「うちの一」の選択ページを表

示することとしているのに対し,引用発明は,表示方法について明りょう

でない点。」

ウ 相違点3

「選択用表示情報中の情報アクセスのための表示について,本願発明が,

「アイコン」であるのに対し,引用発明は,具体的に言及されていない

点。」

エ 相違点4

「選択用表示情報の特徴について,本願発明が,各選択ページ毎に,

「前記1組のアイコンは遠隔情報源に直接アクセスするための一以上のア

イコン,および,前記ツリー状メニュー構造の中の他の選択ページにロー

カル的にアクセスするための一以上の選択用アイコンを有」することとし

ているのに対し,引用発明は,そのような構成となっていない点。」

オ 相違点5

「本願発明が「遠隔情報源は表示段階および選択段階の際にローカル的
に生成されたアドレスを有する」としているのに対し,引用発明は,その

ような構成になっていない点。」

第3 原告主張の取消事由

1 取消事由1(引用発明の認定の誤り)
A 特許庁審査基準の「第U部特許要件 第2章新規性進歩性」の「2.4

進歩性判断の基本的な考え方」のBには,「具体的には,請求項に係る発明

及び引用発明(一又は複数)を認定した後,論理付けに最も適した一の引用

発明を選び,」と記載されている。

しかし,審決は,引用文献【0003】に記載された「引用文献から見た

従来技術である発明」(審決において技術的事項Aとされたもの。)と引用文

献【0012】ないし【0014】に記載された「引用文献に記載の発明」

(審決において技術的事項Bとされたもの。)の,それぞれ異なる二つの発

明を混在させて引用発明の認定を行っており,このような認定は誤りである。
B 引用文献の図2(判決注・別紙参照)には,ユーザ端末1内のブラウザA

11のURL登録ファイルであるブックマークファイルである

Bookmark.htm ファイル,ユーザ端末2内のブラウザB12のURL登録フ

ァイルであるブックマークファイルすなわち Favorites ファイル,及び,図

2の中央部に記載されている共有ブックマークファイル17の3つが記載さ

れている。しかし,審決は,審決の用いる「ブックマークファイル」が上記

のいずれを指すのかを明示していない。
C 引用文献において,ブラウザに表示されるブックマークファイルは,共有

ブックマークファイル17であって, Bookmark.htm ファイルや Favorites

ファイルではないから,審決が,引用発明において,「ホームページのUR

Lを登録したブックマークファイルをブラウザに表示し,」と認定したブッ

クマークファイルは,【従来の技術】のブックマークファイルではなく,【発

明の実施の形態】のブックマークファイルである。そして,【従来の技術】
記載の発明に共有ブックマークファイル17は存在せず,審決は二つの発明

を混在させている。

2 取消事由2(一致点の認定の誤り)

審決は,引用発明の「各ユーザ端末にセットアップされているブラウザから,

LAN回線およびルータを経由しインターネット上のホームページにアクセス

する方法」は,本願発明の「通信ネットワークを介してインターネットに接続

された通信装置からウェブ上の情報源およびサービスにアクセスする方法」に

相当する,と認定判断している。しかし,引用発明においてはブラウザが構成

要素とされているものの,本願発明においてはブラウザが構成要素として記載

されていない。

3 取消事由3(相違点の判断の誤り)
A 相違点1ないし4について

ア 引用発明における課題は,複数のブラウザが個々に格納した格納データ

共有利用することであるが,これは,引用発明の構成により,既に解決

済みである。したがって,引用発明に再公表特許第99/17229号公

報(甲2,以下「参考文献1」という。,欧州特許出願公開第84701


9号明細書(甲3,以下「参考文献2」という。 ,
) 「山田 祥平,山田祥

平のWebブラウザ活用術 第5回,インターネットASCII,日本,

株式会社アスキー ASCII Corporation,1999年10月1日,第 4 巻,

第10号,p.132」(甲4,以下「参考文献3」という。)及び特開平11

−212998号公報(甲5,以下「参考文献4」という。)に記載され

ている技術を適用しようとする動機付けが存在しない。

イ 引用文献に記載の発明から出発して,審決の論理付けに従って相違点1

ないし4に係る構成とするには,引用発明に対して,多くの引用文献に記

載されていない技術を非常に複雑に組み合わせることが必要となる。しか

し,このような複雑な組み合わせを,優先日時点の当業者が行うのは極め
て困難である。

ウ 審決は,「当該ツリー状構造であるブックマークの,各フォルダのリン

ク情報の表示において,・・・(2)上記リンク情報表示画面を,ホームペ

ージへのリンク表示に加えて,ツリー構造上の他のリンク情報表示画面へ

アクセスするリンク表示も有するよう構成すること・・・は,いずれも本

願の優先日前に周知構成と言えるものであり(例えば,・・・(2)につい

ては参考文献2の上記J及びKの記載,参考文献3の上記Lの記載・・・

をそれぞれ参照。」と認定している。


しかし,上記参考文献の記載は,いずれも「当該ツリー状構造であるブ

ックマークの,各フォルダのリンク情報の表示」に係る技術ではなく,上

記認定は誤っている。

また,参考文献3に記載されているのは,「お気に入りファイルをWe

bサーバ(通常,遠隔地にある)に置いておけば,どこからでもネットワ

ーク経由でそのお気に入りファイルを参照できる」という技術であって,

参考文献3の画面12に表示されているファイル群及びフォルダは,その

実体データは遠隔地であるWebサーバに存在するものであるから,本願

発明のように,ローカル側ではなくネットワーク側に存在するものである。

しかも,ローカル処理ではなくWebサーバへのアクセスが先に行われて

いることが必要であるから,引用発明のブラウザのブックマークとは使い

方が異なる。

エ 審決は,相違点2について,引用発明は,選択用表示方法の表示方法に

ついて明瞭でないとしているが,明瞭でない表示方法に基づいて,審決の

認定するような構成変更を行うのは,優先日時点の当業者にとって極めて

困難である。

オ 「CRAIG STINSON,CARL SIECHERT,Windows NT Works

tation Version4.0 オフィシャルマニュアル,株式会
社アスキー,1999年7月11日,第1版第9刷発行,pp.107-113」

(甲6,以下「参考文献5」という。)記載の技術はフォルダについての

技術であり,ブックマークファイルの表示についての技術ではないし,引

用発明においては,上記エ記載のとおり,表示方法も明瞭ではないから,

参考文献5記載の技術を引用文献に適用する動機付けがない。

また,仮に,参考文献5記載の技術を適用して,一の画面のみを表示す

るように構成を変更すると,ブラウザ上に表示されるブックマークの階層

関係がブラウザのユーザにとって分かりにくくなってしまう不都合がある

ので,あえて,ブックマークファイルの表示のための構成に,参考文献5

記載の技術を適用して,一の画面のみを表示するように構成を変更しよう

とする動機はない。

したがって,審決の,「一般に,コンピュータ装置上で情報にアクセス

するための,ツリー状構造にある複数の画面表示のうち,一の画面のみを

表示するようにすることは,普通に行われる事項(必要であれば,参考文

献5の上記N及びP参照)であるから,上記ブックマークの表示において

同様に構成することに格別困難性は認められない。」との認定は誤りであ

る。
B 相違点5について

ア 本願発明における「遠隔情報源は表示段階および選択段階の際にローカ

ル的に生成されたアドレスを有する」という記載は,遠隔情報源が,UR

Lアドレス等のアドレスを有しており,このアドレスが,本願発明に係る

方法における表示段階と選択段階の進行に伴いローカル的に(つまり,ネ

ットワークの向こうではなく手元の通信装置側で)生成されることを意味

する。

これに対し,審決は,引用発明において,ホームページのURL(情報

源のアドレスに相当)は,登録時に,ユーザ端末側のファイル中に生成さ
れていると認定しているが,この登録時とは,ネットワークにアクセス

ている時である。したがって,引用発明におけるホームページのURLの

生成はローカル的に行われていない。

そして,優先日時点の当業者が,引用発明において登録時に行われてい

るホームページのURLの生成を,登録時とは違うタイミングで生成する

ように構成変更しようとする動機付けは存在しないし,上記の構成変更

する必要性も不明である。

イ したがって,引用発明のブックマークファイルにおける,ホームページ

のURL(情報源のアドレスに相当)は,登録時に,ユーザ端末側のファ

イル中に生成されており,これは局地的に生成されているといえるもので

あるとの審決の認定判断,及び,当該アドレスをいずれの時点で生成する

かにおいて,技術上格別なる困難性が生じるものとは認められず,必要に

より適宜行う程度の事項であるので,相違点5は格別なものではない,と

の審決の認定判断は誤りである。

4 取消事由4(手続違背)
A 拒絶理由通知及び拒絶査定では,引用文献の【発明の実施の形態】の記載

に基づいて引用発明を認定している。したがって,仮に被告の主張するよう

に審決が引用文献の【0003】以前の従来技術の記載に基づき引用発明を

認定しているとすると,審決は,異なる発明に基づいて引用発明を認定して

拒絶をしていることとなる。よって,特許法159条2項の「拒絶査定不服

審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合」に該当するた

め,同項が準用する同法50条の規定に従い,審判合議体は,特許出願人

(原告)に対し,査定時に用いた発明ではなく,別の発明をもって引用発明

を新たに認定し直して行ったことを明示する新たな拒絶の理由を通知し,相

当の期間を指定して,特許出願人(原告)に意見書を提出する機会を与えな

ければならなかった。しかし,そのような新たな拒絶の理由が,審判段階に
おいて通知されていない。

よって,審決には特許法159条2項違反の手続上の違法がある。
B 審決は,査定時とは全く異なる本願発明と引用発明の一致点及び相違点の

認定に基づいて判断されている。よって,特許法159条2項の「拒絶査定

不服審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合」に該当す

るため,同項が準用する同法50条の規定に従い,審判合議体は,特許出願

人(原告)に対し,査定時に用いた発明ではなく,別の発明をもって引用発

明を新たに認定し直して行ったことを明示する新たな拒絶の理由を通知し,

相当の期間を指定して,特許出願人(原告)に意見書を提出する機会を与え

なければならなかった。しかし,そのような新たな拒絶の理由が,審判段階

において通知されていない。

5 取消事由5(判断の遺漏)

原告は,審査及び審判時に,意見書及び審判請求書において,本願発明と,

引用文献に記載の発明とでは,発明の課題も,解決手段も,全く異なっている

ことを主張したが,審査官も審判合議体もこれを無視して拒絶査定及び審決を

行っている。したがって,審決は,課題及び解決手段が相違していることにつ

いての判断を遺漏しており,手続に違法がある。

第4 被告の反論

1 取消事由1(引用発明の認定の誤り)について
A 審決は,引用文献に【従来の技術】として記載される,端末内のブラウザ

に備えられたブックマーク等を用いてインターネットアクセスという,一

般的な従来技術をもって引用発明と認定したものである。そして,これにつ

いては,引用文献の全体的な記載を引用するものであるが,基本的には引用

文献【0003】以前の従来技術の記載を基に認定をしており,また図2に

もユーザ端末1,2内にはブラウザの備えるブックマーク等が示されており,

従来技術を含む構成が明示されている。また,ブックマークの表示に関して,
審決ではあくまで従来の技術である一般的なブックマークに対し,「URL

を呼び出すために,「ブックマークファイル」を「ブラウザ」に表示させる

ことは明かである」としたものであり,引用文献【0012】以降の引用は

あくまでその例示として引いたものであって,特定の共有ブックマークファ

イル等を認定したものではない。あえて対応させるならば,端末側に有する

Bookmark.htm ファイル及び Favorites ファイルがこれに当たる。
B 一般にブラウザのブックマークが,URLを容易に呼び出し,操作上イン

ターネットへのアクセスを容易にする機能を果たすものであることは技術常

識として明らかである。また,審決は,引用発明のこの点の認定をもって本

願発明との対比・判断を行っていないことから,当該認定は審決の結論に影

響を及ぼすものでもない。

2 取消事由2(一致点の認定の誤り)について

一般にブラウザを用いてインターネット上の情報又はサービスにアクセス

ることは技術常識であり,本願発明の請求項の記載もあえてブラウザを用いる

ことを排除しておらず,また本願明細書の記載をみてもブラウザを用いてイン

ターネットにアクセスする以外の方法を実施形態として記載もしていないので,

審決の認定に誤りはない。

3 取消事由3(相違点の判断の誤り)について
A 相違点1ないし4について

ア 引用発明は,「複数のブラウザが個々に格納した格納データを共有利用

すること」という課題を解決した発明ではなく,インターネットアクセス

技術における極めて一般的な課題を当然に有する一般的な従来技術である。

また,周知技術等が引用発明と同様のブックマークに関する技術分野に属

するものであるから,当業者であれば,ブックマークの表示の構成として

上記周知技術等を採用することは容易である。

イ 参考文献1ないし5はそれらの事項を例示するため挙げたもので,直接
引用発明と組み合わせることが容易に想到することができるとしたもので

はない。また,単に相違点や副引用例の参考文献が多いことをもって進歩

性があるとはいえず,審決は,相違点1ないし4となる事項は,技術的観

点からブックマークの表示に関するものとしていずれも容易に想到するこ

とができると判断している。

ウ 参考文献2は,各サブメニューにおいてブラウザを介してインターネッ

トを通じてHTMLページにアクセスするためのメニュー構造に関するも

ので,また図1からも明らかなようにメニュー構造はツリー状構造といえ,

これは審決で認定した周知の構成と同等の機能を果たすものであり,参考

文献3もツリー状構造であるといえる。

エ 参考文献5は,フォルダ表示に関する技術で,情報にアクセスするため

のツリー状構造にある複数の画面表示のうち,一の画面のみを表示するこ

とは周知であることを示すために例示したものであり,審決では,引用発

明と,参考文献5の技術とが,コンピュータ装置上で情報にアクセスする

ための画面表示に係る同じ技術に属するもので共通することから,適用す

ることに格別困難性はないとしたものである。
B 相違点5について

本願発明は,アドレスの生成をする情報処理が,表示段階及び選択段階の

際に,ローカルすなわち手前の通信装置側で行われていることを特定してい

るにとどまり,アドレスの生成に必要なデータが,いつの時点で,どこから

取得されたものであることまでを規定したものではない。引用発明も,一旦

端末内に事前に登録されたブックマークのデータから,本願発明と同様,表

示段階及び選択段階の際に端末側すなわちローカルでアドレスを生成(取

得)しており,このことを審決では,「引用発明のブックマークファイルに

おける,ホームページのURL(情報源のアドレスに相当)は,登録時に,

ユーザ端末側のファイル中に生成されており,「これは局地的に生成されて

いると言える」ことから,格別なものではないとしたものである。

本願発明は,表示段階及び選択段階の進行に併せてアドレスを通信装置側

において取得することを規定しているにすぎず,この点においては引用発明

と何ら変わるものではない。

4 取消事由4(手続違背)及び取消事由5(判断の遺漏)について

原告の主張はいずれも争う。

第5 当裁判所の判断

当裁判所は,原告の各取消事由の主張には理由がなく,その他,審決にはこ

れを取り消すべき違法はないものと判断する。その理由は,以下のとおりであ

る。

1 取消事由1(引用発明の認定の誤り)について
A 引用文献について

引用文献には以下の記載があることが認められる(甲1)。

ア 「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,複数の異なる形式の

ブラウザ間のブックマーク統一管理方法に関し,特に,インターネット

イントラネットシステムを開発・利用・運用管理する際に個々のユーザに

よって用いられる複数のブラウザ間のブックマーク統一管理方法に適用し

て有効な技術に関するものである。

【0002】【従来の技術】通常,インターネット・イントラネットシ

ステムを利用するにあたり,クライアントツールであるブラウザはユーザ

が自由に選択できる。現在使われているブラウザとしては,例えば,

Netscape 社の Netscape Navigator(Communicator)(以下,Netscape と

略す)と Microsoft 社の Internet Explorer(以下,IEと略す)が挙げ

られる。

【0003】それぞれのブラウザにおいて,頻繁に使用するホームペー

ジについては,URL(Uniform Resource Locator)を「ブックマーク」
(Netscape)や「お気に入り」(IE)として登録することにより,以後

容易に呼び出してアクセスが可能となる。また,IEにはブックマークの

インポート機能があり,インストール時には Netscape のブックマークを

取り込むこともできる。

【0004】【発明が解決しようとする課題】しかし,上述したブラウ

ザではURLのデータの格納形式が各々に違うため,それぞれ独立したデ

ータとして保持されており,相互間のデータのリンク付けが行えてないの

で,共有利用ができないという問題点があった。

【0005】このため,インストール時に他のブラウザの「ブックマー

ク」の格納データを取り込むことができるが,ブラウザの複数使用を続け

ている場合,例えばあるホームページを Netscape の「ブックマーク」に

追加したり,ホームページのURL変更にともない Netscape の「ブック

マーク」を編集した場合には,IEの「お気に入り」には反映されないた

め,IEで見たい時には直接URLを指定しなければならないのが現状で

ある。・・・

【0008】本発明は上記問題点を解決する為に成されたものであり,

その目的は複数のブラウザが個々に格納した格納データを共有利用するこ

とが可能な技術を提供することにある。」

イ 「【課題を解決するための手段】・・・

【0010】インターネット・イントラネットシステムにおける複数の

ブラウザ間のブックマーク統一管理方法であって,前記複数のブラウザで

共有利用するURLを格納する共有ブックマークファイルを設定し,前記

複数のブラウザで共有利用するURLを所定形式で前記共有ブックマーク

ファイルに格納し,前記共有ブックマークファイルに格納されたURLを

各ブラウザが利用する場合は,そのURLを各ブラウザに対応した形式に

変換して利用することにより,複数のブラウザのURL格納形式が異なる
場合でも,共通格納形式に変換してURLを保持しておくことで,複数の

ブラウザが個々に格納した格納データを共有利用することが可能となる。

【0011】【発明の実施の形態】・・・

【0012】図1は,本発明の一実施形態であるWWWブラウザ間のブ

ックマーク統一管理方法を実施するインターネット・イントラネットシス

テムの構成を示した例である。図1に示すように,本実施形態のインター

ネット・イントラネットシステムは,複数のユーザ端末1,2と,各ユー

ザ端末と接続するLAN回線14と,インターネット15と,それらLA

N回線14とインターネット15の接続を行うためのルータ16とから構

成される。

【0013】ユーザ端末1にはブラウザA11,ブラウザB12の複数

のブラウザと,各ブラウザのブックマークの統一管理を行うブックマーク

統一管理プログラム13とが格納され,ユーザ端末2ではブラウザA11

とブックマーク統一管理プログラム13とが格納されている。また,ユー

ザ端末1には共有ブックマークファイル17をハードディスク上に設定し,

ブラウザA11とブラウザB12の共有ファイルとしている。

【0014】そして,各ユーザ端末1,2にセットアップされているブ

ラウザA11あるいはブラウザB12から,LAN回線14およびルータ

16を経由しインターネット15上のホームページにアクセスする接続形

態となっている。

【0015】ユーザは複数のブラウザで頻繁に使いそうなホームページ

が見つかった時には,各ブラウザA11,B12の操作方法によってその

URLをブックマークに登録する操作を行うが,その情報はブラウザ起動

時にPlug−Inとして読み込まれるブックマーク統一管理プログラム

13により,共有ブックマークファイル17に登録される。そのブックマ

ークファイル17に登録された情報は,ブラウザA11,B12からは勿
論,ユーザ端末1,2のどちらからも参照・更新ができ,統一されたブッ

クマーク管理が可能となる。

【0016】次に,上述したブックマーク統一管理プログラム13と共

有ブックマークファイル17とについて図2を用いて説明する。なお,本

実施形態では,上述した二つのブラウザA11,B12を用いたものを取

り挙げ,それぞれブラウザA11のURL登録ファイルであるブックマー

クファイルは,HTMLリンク形式で示した Bookmark.htm ファイルを用

い,ブラウザB12ではインターネットのショートカット形式で示した

Favorites ファイルを用いるとして説明する。

【0017】ブックマーク統一管理プログラム13は,図2に示すよう

に,ブラウザを起動している間にバックグラウンドで起動され,ブラウザ

の独自のURL登録ファイル22,23内における,共有利用ブックマー

ク登録部21a,21bにURLが登録されるという指示を受けると,ブ

ラウザ独自のブックマークへの登録されたアクセスデータを,テキスト形

式など(このデータ形式は,テキスト形式に限らず,システム設計時に最

適な形式に決定する)へのデータ変換を行い,共有ブックマークファイル

17として登録する。

【0018】その共有ブックマークファイル17は,図2に示すように,

フォルダ別にテキスト形式でURLが格納される構成をとる。

【0019】各ブラウザA11,B12が共有利用ブックマーク登録部

21a,21bにアクセスする場合には,ブックマーク統一管理プログラ

ム13によりブラウザは独自のURL登録ファイル22,23にはアクセ

スされず,共有ブックマークファイル17へアクセスすることとなる。

【0020】共有ブックマークファイル17からURLを取得するとき

は,ブックマーク統一管理プログラム13により,各ブラウザA11,B

12の登録形式に変換し,各ブラウザA11,B12に表示する。例えば,
ブラウザA11の場合は,テキスト形式からHTMLリンク形式に変換さ

れる。この変換は,例えば図3に示すように,ブラウザ種別31と登録形

式32とから構成される変換テーブル30を設け,それを用いて行う。」

ウ 「【0030】【発明の効果】・・・

【0031】複数のブラウザのURL格納形式が異なる場合でも,共通

格納形式に変換してURLを格納しておくことで,複数のブラウザが個々

に格納した格納データを共有利用することが可能となる。」
B 引用発明の認定について

ア 上記A認定のとおり,引用文献の【従来の技術】【0002】及び【0


003】)には,ユーザがクライアントツールであるブラウザを自由に選

択でき,例えば,ブラウザとして Netscape やIEがあること,それぞれ,

頻繁に使用するホームページのURLをブックマークやお気に入りとして

登録することにより,以後容易に呼び出してアクセスが可能となることが

記載されている。

そうすると,上記記載からは,ブラウザのホームページのURLを登録

したブックマークから,URLを呼び出してホームページにアクセスする

方法が記載されていることを認識できる。

イ 他方,引用文献の上記部分には,クライアントツールであるそれぞれの

ブラウザのブックマークやお気に入りがクライアント端末(ユーザ端末)

にどのように登録されているのか,また,ブックマークやお気に入りがブ

ラウザに表示されるのかどうかについて,明示的な記載はない。

しかし,前記 A認定のとおり,引用文献には,【発明が解決しようとす

る課題】として,【従来の技術】では,Netscape やIEのブラウザではU

RLのデータの格納形式が各々に違うため,それぞれ独立したデータとし

て保持されており,相互間のデータのリンク付けが行えていないので,共

有利用ができないという問題点があること(【0004】 ,その問題点を

解決するために複数のブラウザで共有利用するURLを格納する共有ブッ

クマークファイルを設定すること(【0010))
】,その【発明の実施の形

態】として,図2に,ユーザ端末1がブラウザAとURL登録ファイル2

2,ユーザ端末2がブラウザBとURL登録ファイル23を備え,それと

は別に,共有ブックマークファイル17を備えることにより,複数の異な

る形式のブラウザ間のブックマークを統一管理することが記載されている

(【0016】ないし【0020】。


以上によれば,引用文献に記載された,ブラウザAとURL登録ファイ

ル22を備えたユーザ端末1及びブラウザBとURL登録ファイル23を

備えたユーザ端末2は,いずれも【従来の技術】におけるブラウザ及びブ

ラウザのブックマークやお気に入りの構成が記載されたものと認められる。

そして,上記記載に照らすと,【従来の技術】におけるブラウザ及びブラ

ウザのブックマークやお気に入りは,それぞれユーザ端末1及びユーザ端

末2に独立して登録されていると認められる。

また,証拠(甲2(参考文献1)(10頁24行目ないし11頁1行目,

第1図),甲19(参考文献1に係る特許協力条約に基づいて公開された

国際出願)(明細書4頁12行目ないし同頁19行目,第1図),乙1(8

8頁))によれば,ブックマークやお気に入りがブラウザに表示されるこ

とは技術常識であると認められる。

さらに,上記A認定のとおり,引用文献においては,インターネット

イントラネットシステムは,複数のユーザ端末1,2と,各ユーザ端末と

接続するLAN回線14と,インターネット15と,それらLAN回線1

4とインターネット15の接続を行うためのルータ16とから構成される

(【0012】及び【0014】)ところ,引用文献における【従来の技

術】における問題点は,ブラウザ相互間のブックマークやお気に入りの共

有利用ができないことであって(【0004】及び【0005】,
)【発明の
実施の形態】では,共有ブックマークファイル17を備えることでその問

題点を解決しており,ユーザ端末がホームページにアクセスするためのL

AN回線及びルータを変更することにより問題点を解決したことは記載さ

れていない。そうすると,【発明の実施の形態】の図2におけるユーザ端

末1及びユーザ端末2がホームページにアクセスするためのLAN回線及

びルータは,【従来の技術】におけるユーザ端末も同様に備えているもの

と理解できる。

なお,上記の【従来の技術】の構成に照らすと,ブラウザからホームペ

ージに容易にアクセスできることは明らかである(もっとも,審決は,こ

の点について一致点でも相違点でも認定しておらず,いずれにしても審決

の結論に影響を及ぼすものではない。。


ウ 上記ア及びイにおいて認定したところに照らすと,引用文献の【従来の

技術】として記載された事項及び技術常識から前記第2の3A記載の引用

発明を認定することができる。

なお,上記イにおいて認定したところに照らすと,審決が引用文献のう

ち【発明の実施の形態】に記載された箇所を引用した部分は,引用発明認

定の基礎となる【従来の技術】と共通する事項を示したにすぎないものと

理解できる。

したがって,審決の引用発明の認定に誤りはない。
C 原告の主張について

ア 原告は,審決は,引用文献【0003】に記載された「引用文献から見

た従来技術である発明」(審決において技術的事項Aとされたもの。)と引

用文献【0012】ないし【0014】に記載された「引用文献に記載の

発明」(審決において技術的事項Bとされたもの。)の,それぞれ異なる二

つの発明を混在させて引用発明の認定を行っている旨主張する。

しかし,上記B認定のとおり,審決の認定した引用発明は,引用文献に
【従来の技術】として記載された事項及び技術常識により認定できるもの

であるので,原告の上記主張を採用することはできない。

イ 原告は,審決は,審決の用いる「ブックマークファイル」が

Bookmark.htm ファイル,Favorites ファイル又は共有ブックマークファイ

ル17のいずれを指すのかを明示していない旨主張する。

しかし,上記B認定のとおり,審決は,引用文献の【従来の技術】に基

づいて,引用発明を認定しているところ,引用発明におけるブックマーク

ファイルは,図2の共有ブックマークファイル17ではなく,ユーザ端末

が保持する Bookmark.htm ファイルや Favorites ファイルであると理解で

きる。

したがって,原告の上記主張を採用することはできない。

ウ 原告は,引用文献において,ブラウザに表示されるブックマークファイ

ルは,共有ブックマークファイル17であって, Bookmark.htm ファイル

や Favorites ファイルではないから,審決が,引用発明において,「ホー

ムページのURLを登録したブックマークファイルをブラウザに表示

し,」と認定したブックマークファイルは,【従来の技術】のブックマーク

ファイルではなく,【発明の実施の形態】のブックマークファイルである

旨主張する。

しかし,上記B認定のとおり,ブックマークやお気に入りがブラウザに

表示されることは技術常識であるので,原告の上記主張を採用することは

できない。
D 以上によれば,取消事由1に係る原告の主張は理由がない。

2 取消事由2(一致点の認定の誤り)について

原告は,引用発明においてはブラウザが構成要素とされているものの,本願

発明においてはブラウザが構成要素として記載されていないので,この点を一

致点とした審決の認定には誤りがある旨主張する。
確かに,本願発明にはブラウザが構成要素として記載されていない。

しかし,本願発明の特許請求の範囲の請求項1は,「通信ネットワークを介

してインターネットに接続された通信装置からウェブ上の情報源およびサービ

スにアクセスする方法」と規定しているにすぎない上に,ウェブ上の情報源及

びサービスにアクセスする際に,ブラウザを用いないことを特定しているわけ

でもない。加えて,本願明細書【0025】には,「ユーザが,次に,アイコ

ン ADn2“サポーターズクラブ”を選択し,このアイコンをアクティブにする

と,このサイトのウェルカムページの完全なアドレス(非限定的な例として

http://site.com./-/-/-/-.htm)が生成される(II)」と記載されており,本


願発明の【発明の実施の形態】として,ウェブサーバとウェブブラウザ間のプ

ロトコルであるHTTPプロトコルを用いていることも併せ考えると,本願発

明がブラウザを用いる構成を排除するものとは認められない。

そして,引用発明において,ブラウザを用いることにより,本願発明のよう

に,通信ネットワーク(LAN回線及びルータ)を介してインターネットに接

続された通信装置(ユーザ端末)からウェブ上の情報源及びサービス(ホーム

ページ)にアクセスできることは明らかである。

したがって,審決が,前記第2の3B記載の事項を一致点と認定したこと自

体には誤りはなく,取消事由2に係る原告の主張は理由がない。

3 取消事由3(相違点の判断の誤り)について
A 相違点1ないし4の判断について

ア 相違点1について

引用文献の図2の記載によれば,ブラウザが備えるURL登録ファイル

23である Favorites ファイルがツリー状メニュー構造に形成され,

Favorites フォルダ中に,ホームページのURLを格納する複数のフォル

ダ(フォルダ1,フォルダ2,フォルダ3)や,複数のホームページのU

RL(E社,F社,G社)を格納しており,ユーザはそれぞれ選択するこ
とができることが理解できるから, Favorites ファイルをブラウザに表

示し,フォルダを選択した場合,上記ツリー状メニュー構造の Favorites

ファイルは,複数の選択ページを表示できる構成であるといえる。

そうすると,引用文献には本願発明との相違点1に係る構成が記載され

ていることが認められる。そして,上記構成は,同一の技術分野に関する

ものであるし,同一の文献に記載されたものである以上,当業者において,

上記構成を採用し,相違点1に係る構成とすることは容易に想到すること

ができたものと認められる。

イ 相違点2について

証拠(甲6)及び弁論の全趣旨によれば,参考文献5には,コンピュー

タシステムの管理を行うために,フォルダをツリー状構造にして(109

頁),フォルダの中にファイルやその他のフォルダを格納し(110頁),

フォルダウィンドウを表示する場合,新しいフォルダウィンドウを作るこ

となく,別のフォルダを開くこと,すなわち,複数のフォルダウィンドウ

を開くことなく,複数のフォルダウィンドウの「うちの一」のフォルダウ

ィンドウを開くことが記載されており,コンピュータシステムにおいて,

フォルダの表示を行う際に,このような表示制御を行うことは周知技術

あると認められる。

そして,ブラウザはコンピュータシステムで使用されるものであるから,

ブラウザに関する技術の当業者であれば,コンピュータシステムに関する

上記表示制御に関する技術的な知識を有しているものと解される。

そうすると,引用発明において,上記周知技術を採用し,相違点2に係

る構成とすることは,当業者において容易に想到することができたものと

認められる。

ウ 相違点3について

証拠(甲2(参考文献1)(20頁28行目ないし22頁8行目),甲5
(参考文献4)【0029】【0031】
( , ,図4),甲19(18頁1行目

ないし20頁10行目))に照らすと,ホームページのURLをアイコン

で表示することは,ブラウザの技術分野において周知技術であると認めら

れる。

そうすると,引用発明において,同一の技術分野における上記周知技術

を採用し,相違点3に係る構成とすることは,当業者において容易に想到

することができたものと認められる。

エ 相違点4について

前記ア認定のとおり,引用文献の図2には,ブラウザが備えるURL登

録ファイル23である Favorites ファイルがツリー状メニュー構造に形成

され,Favorites フォルダ中に,ホームページのURLを格納する複数の

フォルダ(フォルダ1,フォルダ2,フォルダ3)や,複数のホームペー

ジのURL(E社,F社,G社)を格納しており,それぞれ選択すること

ができることが記載されている。そして,証拠(甲4(参考文献3),乙

1(88頁))によれば,フォルダと,ホームページのURLに対応する

アイコンを表示することは周知技術であると認められる。

そうすると,引用発明において,同一の技術分野に関するもので,かつ,

同一の文献に記載された上記の構成及び同一の技術分野に関する周知技術

を採用し,相違点4に係る構成とすることは,当業者において容易に想到

することができたものと認められる。

オ 原告の主張について
原告は,引用発明における課題は,複数のブラウザが個々に格納した

格納データを共有利用することであるが,これは,引用発明の構成によ

り既に解決済みであるので,引用発明に参考文献1ないし4に記載され

ている技術を適用しようとする動機付けが存在しない旨主張する。

しかし,前記1認定のとおり,引用文献から審決が認定した引用発明
は,引用文献において【従来の技術】として記載された事項及び技術常

識から認定されたものである。したがって,原告の上記主張は,その前

提を欠き採用することができない。

かえって,証拠(甲2(参考文献1),5(参考文献4),乙1,3)

によれば,引用発明は,本願の出願日(優先日)以前に既に周知技術

あった,ブラウザにブックマークやお気に入りを表示する一般的技術で

あると認められる。

そして,上記のようなブラウザについて,上記アないしエにおいて認

定した引用文献に記載された事項や同じ技術分野の周知技術等を適用し

て設計変更をすることは,当業者であれば適宜行い得ることであるとい

え,引用発明に上記アないしエにおいて認定したように引用文献に記載

された事項や周知技術等を適用して相違点1ないし4に係る構成とする

動機付けが存在するものと認められる。

よって,原告の上記主張を採用することはできない。
~ 原告は,引用文献に記載の発明から出発して,審決の論理付けに従っ

て相違点1ないし4に係る構成とするには,引用発明に対して多くの引

用文献に記載されていない技術を非常に複雑に組み合わせることが必要

となるが,このような複雑な組み合わせを,優先日時点での当業者が行

うのは極めて困難である旨主張する。

しかし,上記認定のとおり,引用発明は,優先日以前に既に周知技

術であった,ブラウザにブックマークやお気に入りを表示する一般的技

術にすぎない。そして,相違点1及び4に係る構成は,いずれも引用文

献に記載されたものであるし,相違点2及び3に係る構成は,いずれも

周知技術を適用したものにすぎない。しかも,それぞれの相違点に係る

構成を他の構成と関連付けることなく別個に適用でき,相違点に係るあ

る構成を適用しそれを前提としてさらに他の構成を適用するなどといっ
た組み合わせが要求されるものではないので,引用文献に相違点1ない

し4に係る周知技術等を組み合わせることが困難であるともいえない。

よって,原告の上記主張を採用することはできない。
原告は,審決は,「当該ツリー状構造であるブックマークの,各フォ

ルダのリンク情報の表示において,・・・(2)上記リンク情報表示画面

を,ホームページへのリンク表示に加えて,ツリー構造上の他のリンク

情報表示画面へアクセスするリンク表示も有するよう構成するこ

と・・・は,いずれも本願の優先日前に周知構成と言えるものであり

(例えば,・・・(2)については参考文献2の上記J及びKの記載,参

考文献3の上記Lの記載・・・をそれぞれ参照。」と認定しているとこ


ろ,上記参考文献の記載は,いずれも「当該ツリー状構造であるブック

マークの,各フォルダのリンク情報の表示に係る技術」ではない旨主張

する。

確かに,参考文献2にはブラウザのブックマークに関する記載はない。

しかし,フォルダと,ホームページのURLに対応するアイコンを表示

することが周知技術であることは前記エ認定のとおりであり,原告の上

記主張は審決の結論に影響を及ぼすものではない。

また,原告は,参考文献3は,「お気に入りファイルをWebサーバ

(通常,遠隔地にある)に置いておけば,どこからでもネットワーク経

由でそのお気に入りファイルを参照できる」という技術であって,参考

文献3の画面12に表示されているファイル群及びフォルダは,その実

体データは遠隔地であるWebサーバに存在するものであるから,本願

発明のように,ローカル側ではなくネットワーク側に存在するものであ

り,しかも,ローカル処理ではなくWebサーバへのアクセスが先に行

われていることが必要であるから,引用発明のブラウザのブックマーク

とは使い方が異なると主張する。
しかし,参考文献3は,「複数台のパソコンのお気に入りを同一の状

態に保つのは,けっこうたいへんな作業ではある」という課題を,「自

分のお気に入りを,自分のWebサイトに登録」することにより解決す

るものであるから(甲4),前提として,画面12に表示するための実

体データは自分の,すなわちローカル側のパソコンに登録可能なもので

あると解される。

そうすると,参考文献3に記載された技術につき,引用発明のユーザ

端末において本願発明同様の使い方が可能であることは明らかであるか

ら,原告の上記主張を採用することはできない。
。 原告は,審決は,相違点2について,引用発明は,選択用表示方法の

表示方法について明瞭でないとしているが,明瞭でない表示方法に基づ

いて,審決の認定するような構成変更を行うのは,優先日時点の当業者

にとっては極めて困難である旨主張する。

しかし,審決の記載内容及び前記イ認定の周知技術の存在に照らすと,

審決が明瞭でないと認定したのは,ブックマークファイルの性格上,こ

れが表示されることは明らかであることを前提に,その表示方法は明示

されていないというにすぎないものと解される。そして,当業者におい

て相違点2に係る構成を採用することは容易であることは前記イ認定の

とおりである。

よって,原告の上記主張を採用することはできない。
。 原告は,参考文献5記載の技術はフォルダについての技術であり,ブ

ックマークファイルの表示についての技術ではないし,引用発明におい

ては,上記。記載のとおり,表示方法も明瞭ではないので,参考文献5

記載の技術を引用文献に適用する動機付けがない,仮に,参考文献5記

載の技術を適用して,一の画面のみを表示するように構成を変更すると,

ブラウザ上に表示されるブックマークの階層関係がブラウザのユーザに
とって分かりにくくなってしまう不都合があるので,あえて,ブックマ

ークファイルの表示のための構成に,参考文献5記載の技術を適用して,

一の画面のみを表示するように構成を変更しようとする動機はない旨主

張する。

しかし,前記イに認定したところに加え,参考文献5記載の技術が周

知技術であることからすれば,一の画面のみを表示することがユーザに

とって必ずしも不都合であるとも認め難いことも併せ考えると,原告の

上記主張を採用することはできない。
B 相違点5について

ア 本願の特許請求の範囲の請求項1の記載によれば,相違点5に係る本願

発明の構成である「遠隔情報源は表示段階および選択段階の際にローカル

的に生成されたアドレスを有する」につき,「表示段階」は「−ツリー状

メニュー構造の中に構築され前記通信装置の中にローカル的に予め記憶さ

れた複数の選択ページ(各選択ページは1組のアイコンを有する)のうち

の一の選択ページを表示する一以上の段階」と,「選択段階」は「−表示

中の選択ページ内の一のアイコンの選択に応じて,選択された当該アイコ

ンに対応する情報源のアドレスを通信ネットワークに発信する段階」と,

それぞれ規定されている。

そうすると,「遠隔情報源は表示段階および選択段階の際にローカル的

に生成されたアドレスを有する」といえるためには,上記の表示段階を経

た選択段階において,選択された当該アイコンに対応する情報源のアドレ

スを通信ネットワークに発信する際に,ローカル的,すなわち本願発明を

実施する手元の通信装置内に(原告平成25年10月16日付け準備書面

24頁5行目ないし同頁6行目参照)アドレスが生成されていれば足りる。

これに対し,前記1認定のとおり,引用発明は,各ユーザ端末にセット

アップされているブラウザから,LAN回線及びルータを経由しインター
ネット上のホームページに容易にアクセスする方法であって,ホームペー

ジのURLを登録したブックマークファイルをブラウザに表示し,上記U

RLを呼び出してホームページにアクセスすることを含むものである。そ

うすると,ユーザ端末のブラウザでは,ホームページにアクセスする際に,

ブックマークファイルから選択されたURLが,LAN回線及びルータを

経由しインターネットへ発信するために生成されているといえる。

したがって,引用発明も,ユーザ端末において,すなわち,ローカル的

に,アドレス(URL)の選択に応じて,選択された情報源(ホームペー

ジ)のアドレスを通信ネットワーク(LAN回線及びルータを経由しイン

ターネット)に発信しているものといえ,相違点5に係る構成を有してい

ると認められる。

以上によれば,本願発明と引用発明との間に相違点5が存在するとした

審決の認定は誤りである。

もっとも,審決は,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当

業者が容易に発明をすることができたものであると判断しているので,上

記の誤りは審決の結論に影響を及ぼすものではない。

イ 原告は,審決は,引用発明において,ホームページのURL(情報源の

アドレスに相当)は,登録時に,ユーザ端末側のファイル中に生成されて

いると認定しているが,この登録時とは,ネットワークにアクセスしてい

る時であり,引用発明におけるホームページのURLの生成はローカル的

に行われていない旨主張する。

しかし,上記アにおいて認定したところに照らすと,原告の上記主張は,

取消事由の主張たり得ず,これを採用することはできない。
C そして,上記A及びBにおいて認定したところに照らすと,本願発明の奏

する効果は,引用発明に周知技術等を組み合わせた構成が奏する効果から予

想される範囲内のものにすぎないものと認められる。
D 以上によれば,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が

容易に発明をすることができたものであると認定判断した審決の結論に誤り

はない。

よって,取消事由3に係る原告の主張は理由がない。

4 取消事由4(手続違背)について
A 原告は,拒絶理由通知及び拒絶査定では,引用文献の【発明の実施の形

態】の記載に基づいて引用発明を認定しており,審決は,異なる発明に基づ

いて引用発明を認定して拒絶をしている旨主張する。

しかし,拒絶理由通知書(甲12)には,「引用文献1には,「ブラウザの

ブ ッ ク マ ー ク フ ァ イ ル と し て , Favorites フ ァ イ ル が 用 い ら れ , 該

Favorites ファイルは,複数のフォルダおよびインターネットのショートカ

ットからなる階層構造によって構成され,フォルダは他のフォルダ及びイン

ターネットのショートカットファイルを含むことができる」ことが記載され

ている(特に,図2等を参照のこと。 。
) 」との記載があるほか,拒絶査定

(甲15)には,「平成22年9月13日付け拒絶理由通知書において引用

した引用文献1(図2等参照のこと。)における「E社等のインターネット

ショートカット」「フォルダ1等のフォルダ」」との記載があるにとどまり,

引用文献に記載された【従来の技術】における課題に対応する共有ブックマ

ークファイル17についての記載はない。むしろ,上記各記載に照らすと,

拒絶理由通知及び拒絶査定においては,引用文献におけるURL登録ファイ

ル23の Favorites ファイルについて言及しているものと認められる。そし

て,前記1において認定したところを併せ考えると,拒絶理由通知書及び拒

絶査定における引用文献の記載事項の認定も,審決同様,引用文献の【従来

の技術】に記載された事項によりなされているものというべきである。

よって,原告の上記主張を採用することはできない。
B 原告は,審決は,査定時とは全く異なる本願発明と引用発明の一致点及び
相違点の認定に基づいて判断している旨主張する。

しかし,前記1及び上記A認定のとおり,査定時と審決時において同一の

引用文献の記載事項に基づき発明の認定がなされている上に,適用条文も同

一である以上,査定時と審決時において本願発明と引用発明の一致点及び相

違点の認定に異なる部分があったとしても,拒絶の理由が異なるものとはい

えない。

よって,原告の上記主張を採用することはできない。
C 以上によれば,取消事由4に係る原告の主張は理由がない。

5 取消事由5(判断の遺漏)について

原告は,審査及び審判時に,意見書及び審判請求書において,本願発明と引

用文献に記載された発明とでは,発明の課題も,解決手段も,全く異なってい

ることを主張したが,審査官も審判合議体もこれを無視して拒絶査定及び審決

を行っているので,審決は,「課題及び解決手段が相違していること」につい

ての判断を遺漏しており,手続に違法がある旨主張する。

しかし,容易想到性の判断は,本願発明と引用発明の課題及び解決手段の共

通性の有無のみではなく,技術分野の関連性や作用・機能の共通性など,種々

の要素を考慮して行うことが可能なものであり,審決においてもそれらの要素

の全てに言及することが求められるものではない。審決が原告の主張に対して

応答していなかったからといって,当該主張に係る事項が審決の結論に影響を

及ぼすものではないのであれば,審決が直ちに違法となることはない。したが

って,審決に原告の上記主張に係る「課題及び解決手段が相違していること」

に対する認定判断が記載されていないからといって,そのことが直ちに審決の

違法を基礎付けるものとはいえない。

そして,審決の判断の結論に誤りがないことは,前記1ないし3認定のとお

りである。

よって,取消事由5に係る原告の主張は理由がない。
6 まとめ

以上のとおり,原告主張の各取消事由はいずれも理由がない。また,他に審

決に取り消すべき違法もない。

第6 結論

よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとお

り判決する。



知的財産高等裁判所第3部




裁判長裁判官 設 樂 z 一




裁判官 西 理 香




裁判官 神 谷 厚 毅
別紙

図2

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