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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成25ネ10091特許権侵害差止等請求控訴事件 判例 特許
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事件 平成 25年 (ネ) 10017号 特許権侵害行為差止請求控訴,同附帯控訴事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 知的財産高等裁判所 
判決言渡日 2014/03/26
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
判例全文
判例全文
平成26年3月26日判決言渡

平成25年(ネ)第10017号,第10041号 特許権侵害行為差止請求控訴,

同附帯控訴事件(原審・東京地方裁判所平成21年(ワ)第23445号)

口頭弁論終結日 平成26年1月27日

判 決



控訴人(附帯被控訴人) エス・イー・エンジニアリング株式会社

(以下「被告」という。)


訴 訟 代 理 人 弁 護 士 高 橋 恭 司

枩 藤 朋 子

大 村 隆 平

福 田 智 洋

弁 理 士 足 立 勉

石 原 啓 策

竹 中 謙 史




被控訴人(附帯控訴人) 日環エンジニアリング株式会社

(以下「原告日環エンジニアリング」という。)




被 控 訴 人 キシエンジニアリング株式会社

(以下「原告キシエンジニアリング」という。)



両名訴訟代理人弁護士 寒 河 江 孝 允




補 佐 人 弁 理 士 保 科 敏 夫



主 文

1 被告の控訴に基づき,原判決中,原告日環エンジニアリング及び原告キシエ

ンジニアリングに関する部分を次のとおり変更する。

(1) 被告は,原告日環エンジニアリングに対し,353万8645円及びこれ

に対する平成21年8月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

(2) 原告日環エンジニアリングのその余の請求及び原告キシエンジニアリン

グの請求をいずれも棄却する。

2 本件附帯控訴を棄却する。

3 訴訟費用は,原告日環エンジニアリングと被告との間においては,第1,2

審を通じてこれを100分し,その93を原告日環エンジニアリングの,その余を

被告の負担とし,原告キシエンジニアリングと被告との間においては,第1,2審

を通じて,原告キシエンジニアリングの負担とする。

4 この判決は,主文第1項(1)に限り,仮に執行することができる。



事 実 及 び 理 由

第1 当事者の求めた判決

1 控訴の趣旨

(1) 原判決中被告敗訴部分を取り消す。

(2) 原告らの請求を棄却する。

2 附帯控訴の趣旨

(1) 原判決中原告日環エンジニアリング敗訴部分を取り消す。

(2) 被告は,原告日環エンジニアリングに対し,金2316万9514円及び

これに対する平成21年8月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払

え。




第2 事案の概要

1 請求及び原判決の概要

本件は,発明の名称を「オープン式発酵処理装置並びに発酵処理法」とする特許

第3452844号(以下,この特許を「本件特許1」,この特許権を「本件特許

権1」という。 の特許権者である原告キシエンジニアリング及び発明の名称を
) 「ロ

ータリー式撹拌機用パドル及びオープン式発酵処理装置」とする特許第36821

95号(以下,この特許を「本件特許2」,この特許権を「本件特許権2」という。

また,本件特許権1と本件特許権2を併せて「本件各特許権」という。)の特許権

者であるA(以下,原判決引用部分中,「原告A」をすべて「A」と読み替える。)

並びに上記両名から本件各特許権について独占的通常実施権の許諾を受けたと主張

する原告日環エンジニアリングが,原判決添付別紙物件目録1記載の装置(イ号装

置)及び同目録2記載の装置(ロ号装置)が本件各特許権の特許発明技術的範囲

に属する旨主張して,原告キシエンジニアリング及びAにおいては,被告に対し,

特許法100条1項に基づき,@イ号装置及びロ号装置の製造及び販売の差止めを,

原告ら及びAにおいては,被告に対し,A不法行為に基づく損害賠償(原告日環エ

ンジニアリング損害金元金5000万円,原告キシエンジニアリング及びAの損害

金元金各750万円,これらに対する附帯請求として不法行為の後である平成21

年8月5日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の支払を

求めた事案である。

原判決は,原告日環エンジニアリング及び原告キシエンジニアリングの本件特許

権1に係る請求に基づいて,上記@のイ号装置及びロ号装置の製造及び販売の差止

めを認め,上記Aについて,原告日環エンジニアリングの請求を,被告に対し18

03万4748円及び所定の遅延損害金の支払を求める限度で,原告キシエンジニ

アリングの請求を,被告に対し41万1428円及び所定の遅延損害金の支払を求

める限度で認容し,本件特許権2に係る請求部分について,イ号装置及びロ号装置




は,本件特許2に係る発明の構成要件を充足しないとして,Aの請求の全部及び原

告日環エンジニアリングの本件特許2に係る請求部分を棄却した。

これに対し,被告は,敗訴部分について控訴し,原告日環エンジニアリングは,

2316万9514円及びこれに対する平成21年8月5日から支払済みまで民法

所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めて一部附帯控訴をした(なお,A

の請求分については,控訴なく確定した。)。

ところで,Aが,本件特許2につき,平成23年10月31日,特許庁に対し訂

正審判請求をしたところ,特許庁は,平成23年法律第63号による改正前の特許

134条の3第5項により訂正請求とみなし,本件特許2に係る無効審判におい

て,訂正を適法と認めた上で,無効不成立の審決をなし,同審決は,原審口頭弁論

終結後に確定した(以下,この訂正を「本件訂正」という。)。そこで,原告日環

エンジニアリングは,当審において,本件特許権2に基づく請求を,本件訂正後の

特許発明に基づくものに変更した。



2 争いのない事実等(証拠の摘示のない事実は,争いのない事実又は弁論の全

趣旨により認められる事実である。)

(1) 当事者

ア 原告日環エンジニアリングは,産業廃棄物用機械装置・器具の製造販売

等を目的とする株式会社である。

原告キシエンジニアリングは,畜産・公害防止機器の製造及び販売等を目的とす

る株式会社である。

Aは,原告日環エンジニアリングの代表取締役である。

イ 被告は,畜産,農業関係の機械器具の製造販売等を目的とする株式会社

である。

(2) 特許庁における手続の経緯等

ア 本件特許権1




(ア) 原告キシエンジニアリングは,平成11年8月5日,本件特許1

に係る特許出願(特願平11−222212号。 「本件出願1」
以下 という。 をし,


平成15年7月18日,本件特許権1の設定登録(請求項の数3)を受けた。

(イ) 被告は,本件特許1について,原審の訴訟係属後の平成22年1

2月16日に特許無効審判請求(無効2010−800233号事件)をした。

特許庁は,平成23年7月29日,上記特許無効審判事件について,
「特許第34

52844号の請求項1〜3に係る発明についての特許を無効とする。」との審決

(以下「別件審決1−1」という。乙30)をした。

原告キシエンジニアリングは,同年9月6日,別件審決1−1の取消しを求める

審決取消訴訟(当庁平成23年(行ケ)第10284号事件)を提起した(甲39)。

当庁は,平成24年6月6日,別件審決1−1を取り消す旨の判決(甲60)を

し,同判決は,その後確定した。

特許庁は,上記特許無効審判事件について,平成25年3月4日,
「特許第345

2844号の請求項1〜3に係る発明についての特許を無効とする。 との審決
」 (以

下「別件審決1−2」という。乙63)をした。原告キシエンジニアリングは,同

年4月11日,別件審決1−2の取消しを求める審決取消訴訟(当庁平成25年(行

ケ)第10105号)をし,現在,当庁に係属中である。

イ 本件特許権2

(ア) Aは,平成12年1月18日,本件特許2に係る特許出願(特願

2000−8670号。 「本件出願2」
以下 という。 をし,
) 平成17年5月27日,

本件特許権2の設定登録(請求項の数3)を受けた。

(イ) 被告は,本件特許2について,原審の訴訟係属後の平成22年1

2月16日に特許無効審判請求(無効2010−800234号事件)をした。

特許庁は,平成23年8月3日,上記特許無効審判事件について,
「特許第368

2195号の請求項1〜3に係る発明についての特許を無効とする。 との審決
」 (以

下「別件審決2−1」という。乙31)をした。




Aは,同年9月6日,別件審決2−1の取消しを求める審決取消訴訟(当庁平成

23年(行ケ)第10285号事件)を提起した後,同年10月31日,本件特許

2の特許請求の範囲減縮等を目的とする訂正審判請求(訂正2011−3901

21号事件)をした(甲44の1,45,46)。

当庁は,平成24年1月10日,平成23年法律第63号による改正前の特許法

181条2項に基づき,別件審決2−1を取り消す旨の決定(甲51)をした。

特許庁は,上記決定を受けて,上記特許無効審判事件の審理を再開し,上記訂正

審判請求は,平成23年法律第63号による改正前の特許法134条の3第5項

より,訂正請求とみなされた(本件訂正)。

特許庁は,平成24年3月28日,本件訂正を適法と認めた上で,
「本件審判の請

求は,成り立たない。 との審決
」 (以下「別件審決2−2」という。甲58)をした。

被告は,同年4月25日,別件審決2−2の取消しを求める審決取消訴訟(当庁

平成24年(行ケ)第10148号事件)を提起した。

当庁は,平成25年2月7日,同訴訟における原告(本件の被告)の請求を棄却

し,同判決は確定した(甲65,66)。

ウ 本件改良発明

Aは,本件出願1の後であって本件出願2の前である平成11年9月14日,名

称を「オープン式発酵処理装置」とする発明について特許出願(特願平11―26

0846号)をし,平成13年3月27日に出願公開され,平成16年7月9日,

設定登録を受けた(特許第3574358号。以下,この発明を「本件改良発明

という。。


本件改良発明は,その特許明細書(以下「本件明細書3」という。乙64)の請

求項1に記載されたパドル(請求項1には「先端の板状の掬い上げ部材を所定角度

範囲回動自在に構成するとともに,該台車の往復動走行時に,正,逆回転する回転

軸に伴い正,逆回転する板状の掬い上げ部材により堆積物を掬い上げる際に,該板

状の掬い上げ部材の内側板部は外側板部より大きい堆積物の負荷を受けて該板状の




掬い上げ部材は,常に内側に向いて所定角度回動し堆積物の掬い上げが行われるよ

うにした回動式パドル」と記載されており,このパドルを「本件回動式パドル」と

いう。)に特徴を有する(乙64)。

(3) 発明の内容

ア 本件特許1

(ア) 本件特許1の特許請求の範囲は,請求項1〜3からなり,その請

求項1の記載は,次のとおりである(以下「本件発明1」という。。


「【請求項1】 有機質廃物を経時的に投入堆積発酵処理する長尺広幅の面域の長さ

方向の1側に長尺壁を設け,その他側は長尺壁のない長尺開放側面として成る大容

積のオープン式発酵槽を構成すると共に,該長尺壁の上端面にレールを敷設し,該

レール上を回転走行する車輪と該長尺開放側面側の床面上を該長尺開放側面に沿い

回転走行する車輪とを配設されて具備すると共に該オープン式発酵槽の長尺広幅の

面域の幅方向に延びる回転軸の全長に亘り且つその周面に多数本のパドルを配設し

て成り,且つ堆積物を往復動撹拌する正,逆回転自在のロータリー式撹拌機を具備

した台車を該オープン式発酵槽の長さ方向に往復動走行自在に設けると共に該オー

プン式発酵槽に対し,該長尺開放側面を介してその長さ方向の所望の個所から被処

理物の投入堆積と発酵済みの堆肥の取り出しを行うようにしたことを特徴とするオ

ープン式発酵処理装置。」

(イ) 本件発明1を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,各

構成要件を「構成要件A1」「構成要件B1」などという。)。


A1 有機質廃物を経時的に投入堆積発酵処理する長尺広幅の面域の長さ方向の1

側に長尺壁を設け,

B1 その他側は長尺壁のない長尺開放側面として成る大容積のオープン式発酵槽

を構成すると共に,

C1 該長尺壁の上端面にレールを敷設し,該レール上を回転走行する車輪と該長

尺開放側面側の床面上を該長尺開放側面に沿い回転走行する車輪とを配設され




て具備すると共に

D1 該オープン式発酵槽の長尺広幅の面域の幅方向に延びる回転軸の全長に亘り

且つその周面に多数本のパドルを配設して成り,

E1 且つ堆積物を往復動撹拌する正,逆回転自在のロータリー式撹拌機を具備し

た台車を該オープン式発酵槽の長さ方向に往復動走行自在に設けると共に

F1 該オープン式発酵槽に対し,該長尺開放側面を介してその長さ方向の所望の

個所から被処理物の投入堆積と発酵済みの堆肥の取り出しを行うようにしたこ



G1 を特徴とするオープン式発酵処理装置。

イ 本件特許2

(ア) 本件特許2の設定登録時の特許請求の範囲は,請求項1〜3から

なり,その請求項1及び2の記載は,次のとおりである(以下,設定登録時の請求

項2に係る発明を「本件発明2」という。。


「【請求項1】 長杆の先端に,2枚の板状の掬い上げ部材を前後に且つ前後方向に

対し傾斜させて配置し,その前側の傾斜板の外面は斜め1側前方を向き,その後側

の傾斜板の外面は斜め1側後方を向くように配向せしめて配設したことを特徴とす

るパドル。」

「【請求項2】 有機質廃物を経時的に投入堆積発酵処理する長尺広幅の面域の長さ

方向の1側に長尺壁を設け,その他側は長尺壁のない長尺開放側面として成る大容

積のオープン式発酵槽を構成すると共に,該長尺壁の上端面にレールを敷設し,該

レール上と該長尺開放側面側の面域上を転動走行する車輪を配設されて具備すると

共に堆積物を往復動撹拌する正,逆回転自在のロータリー式撹拌機を横設した台車

を該オープン式発酵槽の長さ方向に往復動走行自在に設け,更に該ロータリー式撹

拌機は,該台車の幅方向に水平に延びる回転軸と,該回転軸の周面に且つその軸方

向に配設された多数本の長杆の先端に板状の掬い上げ部材を具備するパドルとから

成るオープン式発酵処理装置において,これらのパドルのうち,該オープン式発酵




槽の該長尺開放側面側に位置する該回転軸の外端から少なくとも1本乃至数本のパ

ドルは,該長杆の先端に,前後一対の板状の掬い上げ部材が夫々台車の走行方向に

対し斜めに交叉し且つ内側に向けられて配設された請求項1に記載のパドルから成

り,その他の残る各パドルは,長杆の先端に,該台車の走行方向に対し直交して板

状の掬い上げ部材を取り付けた通常のパドルから成ることを特徴とするオープン式

発酵処理装置。」

(イ) 本件訂正後の本件特許2の特許請求の範囲は,請求項1〜3から

なり,その請求項1及び2の記載は,次のとおりである(以下,本件訂正後の請求

項2に係る発明を「本件訂正発明2」といい,訂正後の明細書(甲45)を「本件

訂正明細書2」という。下線部は訂正箇所である。。


「【請求項1】

有機質廃物を経時的に投入堆積発酵処理する長尺広幅の面域の長さ方向の1側に

長尺壁を設け,その他側は長尺壁のない長尺開放側面として成る大容積のオープン

式発酵槽を構成すると共に,該長尺壁の上端面にレールを敷設し,該レール上と該

長尺開放側面側の面域上を転動走行する車輪を配設されて具備すると共に堆積物を

往復動撹拌する正,逆回転自在のロータリー式撹拌機を横設した台車を該オープン

式発酵槽の長さ方向に往復動走行自在に設け,更に該ロータリー式撹拌機は,該台

車の幅方向に水平に延びる回転軸と,該回転軸の周面に且つその軸方向に配設され

た多数本の長杆の先端に板状の掬い上げ部材を具備するパドルとから成るオープン

式発酵処理装置において,

前記ロータリー式攪拌機用のパドルであって,長杆の先端に,2枚の板状の掬い

上げ部材を前後に且つ前後方向に対し傾斜させて配置し,その前側の傾斜板の外面

は斜め1側前方を向き,その後側の傾斜板の外面は斜め1側後方を向くように配向

せしめて配設したことを特徴とするパドル。

【請求項2】 有機質廃物を経時的に投入堆積発酵処理する長尺広幅の面域の長さ

方向の1側に長尺壁を設け,その他側は長尺壁のない長尺開放側面として成る大容




積のオープン式発酵槽を構成すると共に,該長尺壁の上端面にレールを敷設し,該

レール上と該長尺開放側面側の面域上を転動走行する車輪を配設されて具備すると

共に堆積物を往復動撹拌する正,逆回転自在のロータリー式撹拌機を横設した台車

を該オープン式発酵槽の長さ方向に往復動走行自在に設け,更に該ロータリー式撹

拌機は,該台車の幅方向に水平に延びる回転軸と,該回転軸の周面に且つその軸方

向に配設された多数本の長杆の先端に板状の掬い上げ部材を具備するパドルとから

成るオープン式発酵処理装置において,これらのパドルのうち,該オープン式発酵

槽の該長尺開放側面側に位置する該回転軸の外端から少なくとも1本乃至数本のパ

ドルは,該長杆の先端に,前後一対の板状の掬い上げ部材が夫々台車の走行方向に

対し斜めに交叉し且つ内側に向けられて配設された請求項1に記載のパドルからな

り,その他の残る各パドルは,長杆の先端に,該台車の走行方向に対し直交して板

状の掬い上げ部材を取り付けた通常のパドルから成ることを特徴とし,しかもまた,

次のX及びYの各特徴をさらに備えるオープン式発酵処理装置。

X 大容積のオープン式発酵槽は,日を改めて投入する有機質廃物について,少な

くとも複数日にわたるものをすでに投入したものとは別の空いた領域に経時的に投

入することができるだけの面域を備えること。

Y 前記ロータリー式撹拌機及び前記長尺壁は,前記有機質廃物の堆積高さを高温

発酵を確保するに足るだけの高さ構成を備えること。」

(ウ) 本件訂正発明2を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,

構成要件を「構成要件A2」「構成要件B2」などという。なお,本件発明2と


本件訂正発明2の分説は,A2〜H2までは同一である)。

A2 有機質廃物を経時的に投入堆積発酵処理する長尺広幅の面域の長さ方向の1

側に長尺壁を設け,

B2 その他側は長尺壁のない長尺開放側面として成る大容積のオープン式発酵槽

を構成すると共に,

C2 該長尺壁の上端面にレールを敷設し,該レール上と該長尺開放側面側の面域




上を転動走行する車輪を配設されて具備すると共に

D2 堆積物を往復動撹拌する正,逆回転自在のロータリー式撹拌機を横設した台

車を該オープン式発酵槽の長さ方向に往復動走行自在に設け,

E2 更に該ロータリー式撹拌機は,該台車の幅方向に水平に延びる回転軸と,該

回転軸の周面に且つその軸方向に配設された多数本の長杆の先端に板状の掬い

上げ部材を具備するパドルとから成るオープン式発酵処理装置において,

F2 これらのパドルのうち,該オープン式発酵槽の該長尺開放側面側に位置する

該回転軸の外端から少なくとも1本乃至数本のパドルは,該長杆の先端に,前

後一対の板状の掬い上げ部材が夫々台車の走行方向に対し斜めに交叉し且つ内

側に向けられて配設された請求項1に記載のパドルからなり,

G2 その他の残る各パドルは,長杆の先端に,該台車の走行方向に対し直交して

板状の掬い上げ部材を取り付けた通常のパドルから成ること

H2 を特徴とするオープン式発酵処理装置。

X 大容積のオープン式発酵槽は,日を改めて投入する有機質廃物について,少

なくとも複数日にわたるものを既に投入したものとは別の空いた領域に経時的

に投入することができるだけの面域を備えること。

Y 前記ロータリー式撹拌機及び前記長尺壁は,前記有機質廃物の堆積高さを高

温発酵を確保するに足るだけの高さ構成を備えること。

(4) 被告の行為等

ア 被告は,平成16年1月ころから,ロ号装置を製造し,販売している。

イ イ号装置は,原判決添付別紙物件目録1記載のとおりの構成を,ロ号装

置は,同目録2記載のとおりの構成をそれぞれ有する。

イ号装置とロ号装置とは,撹拌機105の回転軸105aの周面に設けられたパ

ドル105bの先端の掬い上げ部材が,イ号装置では,原判決添付別紙物件目録1

記載の図3に示す形状の掬い上げ部材105cから構成されるのに対し,ロ号装置

では,同様の形状(同目録2記載の図3)の掬い上げ部材105c又は同目録2記




載の図5に示す掬い上げ部材105dとから構成され,台車106の脚部113に

近い側には,掬い上げ部材105dが用いられ,その半円弧状部が,同目録2記載

の図4に示すように,長尺壁側を向くように取り付けられている点で構成が相違す

るが,その余の構成は一致する。

ウ イ号装置及びロ号装置は,いずれも本件発明1の構成要件A1,B1,

D1,F1及びG1を充足する。
~ ロ号装置は,本件発明2及び本件訂正発明2の構成要件A2,B2,

D2,E2,G2及びH2を充足し,さらに,本件訂正発明2の構成要件X及びY
を充足する。



3 争点及び当事者の主張

争点及び争点についての当事者の主張は,以下の(1)のとおり,原判決を補正し,

(2)のとおり,当審における当事者の主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」

の第2,3「争点」及び第3「争点に関する当事者の主張」記載のとおりである。

(1) 補正

ア 原判決11頁15行目「(2) ロ号装置」から16行目末尾までを次のと

おりに改める。

「(2) ロ号装置についての本件訂正発明2の技術的範囲の属否(争点2)

争点2−1 本件訂正発明2の文言侵害の成否(ロ号装置が構成要件C2及び

F2を充足するか。)

争点2−2 本件訂正発明2の均等侵害の成否」

イ 原判決11頁18行目末尾に改行の上,次のとおり加える。

「争点3−1 本件特許1についての無効理由の有無

争点3−2 本件特許2についての無効理由の有無」

ウ 原判決11頁20行目末尾に改行の上,次のとおり加える。

「(6) 時機に後れた攻撃防御方法の成否(争点6)




争点6−1 原告日環エンジニアリングによる均等侵害の主張が時機に後れた

攻撃防御方法となるか。

争点6−2 被告による損害に関する主張が時機に後れた攻撃防御方法となる

か。」

エ 原判決第3,2項中の「本件発明2」を「本件訂正発明2」と改め,
「本

件明細書2」を「本件訂正明細書2」と改める。

オ 原判決38頁23行目末尾に改行の上,次のとおり加える。

「別件審決2−2により,本件訂正は認められ,被告主張の無効理由については,

同審決により排斥され,その後,同審決の取消しを求める審決取消訴訟において,

被告(同訴訟における原告)の請求は棄却されており,この判決は確定している。」

(2) 当審における当事者の主張

ア イ号装置及びロ号装置についての本件発明1の技術的範囲の属否(争点

1)

(被告の主張)

構成要件C1の充足性について,
「床面上」には「床面に敷設されたレール上」を

も含むと判示して充足性を認めた原判決の認定は,誤りである。

本件出願1の出願経過において,平成14年11月13日付け拒絶理由通知(乙

4)により,2本のレールのうち1本を壁の上に設ける構造は周知技術であること

から,本件発明1は引用文献1に記載の発明から容易に想到し得るとの拒絶理由が

示されたのに対し,原告キシエンジニアリングは,平成15年1月20日付け意見

書(乙3)において,本件発明1の床面上を走行する車輪は,
「その他の構造」が不

要である点で公知技術とは異なると応答しているものである。しかも,上記拒絶理

由通知で指摘された引用文献2(乙5)の案内輪は,レール上を走行するものであ

る。これらの事情から,上記意見書において,原告キシエンジニアリングが「その

他の構造」と述べたものには,床面に敷設されたレールも含むと解するのが妥当で

ある。




そうすると,原告キシエンジニアリング自身が,本件発明1の床面上を走行する

車輪に「レール」が不要であるとしているものであるから,構成要件C1の「床面

上」には「床面に敷設されたレール上」をも含むものでない。

(原告らの主張)

上記の拒絶理由通知における各引用文献における走行は,円形あるいは楕円形の

走行形態,つまり曲がりのある走行であるのに対し,本件発明1における走行は,

「直線走行」であって,元々「案内輪や誘導車輪」が不要なものである。上記の意

見書における「案内輪や誘導車輪といったその他の構造」は,引用文献における曲

がりのある走行形態の場合に必要な,曲がりに応じる案内や誘導を行う車輪を意味

するから,直線走行における「床面に敷設されたレール」が,
「案内輪や誘導車輪と

いったその他の構造」に含まれることはない。

したがって,イ号装置及びロ号装置が,構成要件C1を充足することは明らかで

ある。

イ 本件訂正発明2の文言侵害の成否(ロ号装置が構成要件C2及びF2を

充足するか。(争点2−1)


(原告日環エンジニアリングの主張)

ロ号装置は,以下のとおり,本件特許2の構成要件F2を充足するものである。

本件特許2の「2枚の板状の部材を傾斜させて配置」するという技術的事項は,

以下の2つの技術的意義に対応する。

@ 掬い上げ部材は,往動時の放散を防ぐための部分(2枚の板状の部材の一方)

と,復動時の放散を防ぐための部材(2枚の板状の部材の他方)とを備え,しかも,

両部分は互いに対称的な配置あるいは構成である。

A 「傾斜」は放散を防止するための傾斜であり,その傾斜角度は,特定の傾斜角

度でなければならないというものではない。

これらの技術的意義の側面からすれば,ロ号装置の掬い上げ部105dは,本件

特許2の技術的意義の@及びAを充足している。




さらに,本件改良発明における本件回動式パドルを技術的に考慮すれば,本件訂

正発明2の「V字型」あるいは「ハの字型」の形状の掬い上げ部材と,ロ号装置の

「半円弧状の形状を有する1枚の部材から構成された」掬い上げ部材105dとは,

構造上及びその作用効果からみて,技術的には実質的に同じものである。

したがって,ロ号装置は,本件特許2の構成要件F2を充足する。

(被告の主張)

特許発明技術的範囲は,特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならな

いが(特許法70条1項),原告らの主張は,クレームに記載のない「技術的意義

によって特許発明技術的範囲を画定させようとする独自の見解であり失当である。

ウ 本件訂正発明2の均等侵害の成否(争点2−2)

(原告日環エンジニアリングの主張)

(ア) 本質的部分(第1要件)

ロ号装置は,本件訂正発明2の構成要件F2が規定する「2枚の板状の部材を傾

斜させて配置」を,
「半円弧状の形状を有する1枚の部材から構成されたもの」に置

換したものであり,両者は,この点が相違する。しかし,この相違点は,以下のと

おり,本件訂正発明2の本質的部分ではない。

本件訂正発明2は,長手方向の一方側面が開放されたオープン式発酵処理装置に

おいて,開放側面側への堆積物の放散を防止するため,ロータリー式撹拌機の回転

軸上のパドルのうち,開放側面側のパドルの一部を他のパドルと異なる構成 「長杆


の先端に,前後一対の板状の掬い上げ部材が夫々台車の走行方向に対し斜めに交叉

し且つ内側に向けられて配設された請求項1に記載のパドル」 以下,
。 この掬い上げ

部を「V字型掬い上げ部材」ともいう。)にすることにより,撹拌に伴う堆積物の放

散を防止し,有効な発酵を行うものである。その際,本件訂正発明2は,開放側面

側のV字型掬い上げ部材について,先行する改良発明である,掬い上げ部材が回動

する回動式のパドルを採用することなく,掬い上げ部材を固定にする固定式のパド

ルにするという考え方を基本とする。その基本となる考え方こそ,本件訂正発明2




の技術的本質部分である。

そうすると,上記相違点は,本件訂正発明2の本質的部分でないことは明らかで

ある。そして,本件訂正発明2におけるV字型あるいはハの字型などの掬い上げ部

材も,ロ号装置における「半円弧状の形状を有する1枚の部材から構成されたもの」

である掬い上げ部材105dも,両方ともに回動することがない固定式のものであ

る。

したがって,本件訂正発明2とロ号装置における相違部分が,発明の本質的部分

でないこと,という均等侵害第1要件を充足する。

(イ)置換可能性(第2要件)

a 本件訂正発明2におけるV字型掬い上げ部材も,ロ号装置における

「半円弧状の形状を有する1枚の部材から構成されたもの」である掬い上げ部材1

05dも,両方ともに,掬い上げ部材が回動しない固定式である点で共通し,また,

開放側面側への堆積物の放散を防止するという互いに同様の作用効果を有するもの

である。

この作用効果の点については,実験の結果(甲13,14,18〜21)から,

同一の作用効果を有することは明らかである。

そして,本件訂正発明2及びロ号装置の掬い上げ部材は,ともに長杆の先端で回

転するものであるから,V字状であろうが半円状であろうが,回転に伴う力に応じ

て,同様に前方の堆積物を少しずつ切り崩し,下方に落とすことになり,崩れて落

ちた被処理物は,進行方向とは反対の後方に回転する掬い上げ部材の掬い上げ作用

により,後方に放り投げられることになるから,本件訂正発明2の掬い上げ部材も,

ロ号装置の掬い上げ部材も同様の効果を奏する。

b 被告は,V字型掬い上げ部材とロ号装置の掬い上げ部材105dと

は,解決課題が異なり,奏する作用効果も異なると主張する。しかし,本件訂正発

明2の解決課題は,本件改良発明の不都合を解消することであり,第1には,パド

ルを固定式にすることにより,構成部品を少なくすること(本件訂正明細書2の段




落【0003】,第2には,撹拌に伴う堆積物の外方放散を防止すること(段落【0


002】)である。これに対し,ロ号装置の掬い上げ部材105dも固定式のパドル

を用いていることから,構成部品を少なくするという第1の解決課題は共通してお

り,被告が主張する「開放側のレール上へ被処理物が崩れ落ち,台車の走行に支障

を生じること」という解決課題は,まさに本件訂正発明2の第2の解決課題に相当

する。なお,被告は,ロ号装置の解決課題として,
「パドルと掬い上げ部材の接合部

が変形・破断すること」の防止を挙げているが,その種の課題は,所定の機械的強

度を得る上での一般的な設計事項であり,技術的思想である発明の解決課題には沿

わないものである。

以上によれば,置換しても同様の作用効果を奏するという置換可能性についての

第2要件を充足する。

(ウ) 置換容易性(第3要件)

ロ号装置における「半円弧状の形状を有する1枚の部材から構成されたもの」で

ある掬い上げ部材105dについては,V字型あるいはハの字型などの掬い上げ部

材の設計変更の範囲内のものである。特に,溶接で一体とした2枚の板状の部材を

1枚の部材で構成することは,ごく一般的なことである。

しかも,本件回動式パドルの存在や,放散防止のための傾斜角度の範囲が10〜

80°であるという技術情報があるのだから,特許侵害時において,当業者であれ

ば,V字型あるいはハの字型などの掬い上げ部材を「半円弧状の形状を有する1枚

の部材から構成されたもの」であるロ号装置の掬い上げ部材105dに置き換え

ことは,容易に思いつくことである。さらに,被告もまた,乙44に関する主張部

分ではあるが,2枚の板状部材を一体物の構成にすることについて,当業者が必要

に応じて適宜なし得る程度の設計的事項にすぎないことを自認している。

したがって,置換容易性についての第3要件を充足する。

(エ) 容易推考性(第4要件)

ロ号装置は,本件訂正発明2と実質的に同一といえるものであり,本件訂正発明




2が有効な特許として存在することから,本件出願2の時に公知でないことは明ら

かである。しかもまた,その出願時の公知技術から当業者が容易に推考できたもの

でもない。

したがって,公知技術との同一性又は容易推考性のないこと,という第4要件を

充足する。

(オ) 意識的除外(第5要件)

本件訂正発明2は,掬い上げ部材が固定の固定式のパドルを用いつつ,開放側面

側における堆積物の放散を防止して,有効な発酵を行うものである。したがって,

固定式であり,放散を防止することができる同じ考え方のロ号装置を意識的に除外

する理由はない。

したがって,意識的除外等の特段の事情がないことについての第5要件を充足す

る。

(被告の主張)

(ア) 本質的部分(第1要件)

本件特許1によって生じる新たな課題に対応するために,本件改良発明の出願(特

願平11−260846)がなされ,本件改良発明によって更に生じた新たな課題

を解決するために出願されたのが,本件特許2であるから,本件訂正発明2の本質

的部分を検討するに当たっては,本件改良発明によって更に生じた「新たな課題(複

雑な組立て作業と構成を要すること) の解決と,
」 本件訂正発明2の構成とを併せ考

慮して検討しなければならない。

そこで,検討するに,本件訂正明細書2の段落【0004】には,【課題を解決


するための手段】本発明は,上記の先願のオープン式発酵処理装置の不都合を解消

し,上記の要望を満足するロータリー式撹拌機用パドルを提供するもので,長杆の

先端に,2枚の板状の掬い上げ部材を前後に且つ前後方向に対し傾斜させて配置し,

その前側の傾斜板の外面は斜め1側前方を向き,その後側の傾斜板の外面は斜め1

側後方を向くように配向せしめて配設したことを特徴とする。」と記載されており,




課題の解決と本件訂正発明2における掬い上げ部材の形状が一体として記述されて

おり,両者は表裏一体のものとされている。

本件改良発明に係る本件明細書3の図11には,本件改良発明の掬い上げ部材が

作用する状況が図示されている。図11は,台車が図の下方向に動く場合(a)と,

図の上方向に動く場合(b)の作用状況を示しているため,それぞれの動作に応じ

た作用面(被処理物を移動させる作用を発揮している面)を赤及び青で図示する。





次に,本件訂正明細書2の図11を使って,同様に赤と青で作用面を図示する。




図を見比べれば一目瞭然であるが,本件訂正発明2は,本件改良発明の掬い上げ

部材の作用状況(前記の赤と青の部分)を,より簡易な構成で実現するために,上

図の赤色部分に相当する板と同図の青色部分に相当する部分を別々の2枚の板を用

いて構成し,この2枚の板を固定してV字状に構成するという方法で課題を解決し

ているのである。すなわち,本件明細書3の図10を利用して説明すると,以下の

図10に記載された先願発明の「回動式パドル」のうち,作用時の状態を示す赤枠




部分を抜き出して固定式としたものが,本件訂正発明2の掬い上げ部材なのである。




このように,本件訂正発明2は,本件改良発明と全く同様の作用を,本件改良発

明よりも簡易な構成でこれを実現し,もって,本件改良発明の課題を解決しようと

した発明であり,本件訂正発明2のV字型掬い上げ部材の具体的形状は,本件訂正

発明2の本質的部分にほかならない。

以上のとおり,本件訂正発明2の「長杆の先端に,2枚の板状の掬い上げ部材を

前後に且つ前後方向に対し傾斜させて配置し,その前側の傾斜板の外面は斜め1側

前方を向き,その後側の傾斜板の外面は斜め1側後方を向くように配向せしめて配

設したこと」という具体的形状,すなわち,@部材が2枚であること,A2枚の部

材が板状であること(湾曲していないこと) B2枚の部材を傾斜させて配置するこ


とは,本件訂正発明2の本質的部分である。

他方,
「半円状に湾曲した1枚の板」で構成されるロ号装置の掬い上げ部材105

dは,本件発明2と本質的部分が異なるため,均等侵害は成立しない。

(イ) 置換可能性(第2要件)

本件訂正発明2の効果は,本件改良発明の作用効果と同様,ロータリー式撹拌機

が往復動撹拌をすることによって,堆積物が開放側に拡散し,堆積高が低くなると

いう課題に対し,開放側に位置する一本ないしは数本の回転式パドルの掬い上げ部




材が常に内側を向くことにより,開放側の堆積物を長尺壁側に掬い上げ,安定良好

な堆積高を維持する作用効果を有するものである。そして,本件訂正発明2は,柔

らかく崩れやすい形状の被処理物を保持・受け止めた上で,これを掬い上げるとい

う作用を行うため,作用面が少なくとも平らであることが必須である。

これに対し,ロ号装置は,以下の課題を解決するためのものであって,構成を異

にしており,奏する作用効果も当然に異なっている。

すなわち,ロ号装置は,開放面側の車輪が床面上のレール上を走行する点で,本

件訂正発明2と構成を異にしているため,開放面側のレール上に被処理物が崩れ落

ちレールが目詰まりすることによって,台車の走行に支障を来すとの不具合を解決

する必要あった。また,本件訂正発明2のV字型掬い上げ部材は,その接合部分付

近が変形し,破断するという不具合があったため,これを回避する必要があった。

そこで,ロ号装置の掬い上げ部材105dは,被処理物を掬い上げることによって,

パドル部分に負荷がかかることを回避するために,被処理物を掬い上げないように

あえて平面部分をなくし,被処理物を保持せず逃がすように,全体を湾曲させ,
「レ

ール周辺の被処理物を壁側に寄せる」という効果を奏するものとした。

よって,ロ号装置の掬い上げ部材105dは,
「開放側の堆積物を,壁側に掬い上

げ,堆積物の堆積高を維持する」という本件訂正発明2の作用効果を有するもので

ない

また,原告らが同一の作用効果を奏する根拠とする実験結果(甲19,20)は,

実験に用いた掬い上げ部材の形状がロ号装置の掬い上げ部材105dと異なり,V

字型掬い上げ部材と同様に,湾曲していない平らな部分が存在するものであり,そ

の結果「柔らかく崩れやすい被処理物を保持して放り投げる」という効果を奏する

ことができるものであり,ロ号装置による作用効果を示すものでない。

以上によれば,ロ号装置は,本件訂正発明2と同一の作用効果を奏するものでは

なく,置換可能性があるとはいえない。

(ウ) 置換容易性(第3要件)




ロ号装置の掬い上げ部材105dは,レールの目詰まりを回避し,被処理物から

受ける力を減少させ,掬い上げ部材の変形や破断を防ぐといった効果を得るため,

使用材料の肉厚や半円状の弧の大きさや長さを変え,試作実験を繰り返して開発さ

れたものであり,本件訂正発明2のV字型掬い上げ部材を半円状に置換することが,

自明であるとは認められない。

よって,均等侵害の第3要件である置換容易性は認められず,均等侵害が成立し

ないことは明らかである。

エ 本件特許1の無効理由の有無(争点3−1)

(被告の主張)

(ア) 無効理由1−1(新規性の欠如)について

a 原告日環エンジニアリングが,本件出願1の前に梨北農業協同組合

に販売し, 所在の「たかね有機センター」に納入設置された「K

Sコンポ醗酵ロータリーマシン KS7−12型」装置(以下「本件KS7−12」

といい,これに係る発明を「KS7−12発明」という。)は,発酵槽に撹拌機を備

え付けたオープン式撹拌機として製造 販売されたものであることは明らかであり,


KS7−12発明は,「投入堆積発酵処理」する面域を有し,「オープン式発酵槽」

に該当するものといえる。

このことは,本件KS7−12に係る「埼玉式KSコンポ取扱説明書」(乙24。

以下「本件取扱説明書」という。)において,「§1.発酵の手引き §1一2.作

業手順」に「発酵槽」との記載,「発酵状況を確認」「発酵状況の具合を見ながら」


との記載があり,また,「§1−3.堆肥取り出し」には,「1)発酵槽内の堆肥の

堆積高が・・・」「3)
, ・・・発酵基盤(種糞)を残しておくことによって次回以降

の[散布→発酵]を速やかに進めるためです」との記載があり,さらに,「§2−

1.特徴と仕様」に,「1)特徴 KSコンボオープン型は,ロータリー式撹拌機

を用いた,従来のエンドレス発酵槽方式と全く同じ性能を有しております。直線往

復型は,エンドレスタイプに比べ発酵槽の幅が半分程度となり,・・・」,「[ 主




な特徴 ]@ 発酵槽の両端で,・・・発酵槽内に糞を長期間滞留・・・A 好気

性発酵は・・・本装置は・・・好気性発酵を維持促進します。B 高温発酵による

処理と・・・」との記載があることからも明らかである。そして,本件取扱説明書

のタイトルは,「埼玉式KS『コンポ』取扱説明書」とされており,このコンポは,

コンポスト(compost)の略であって,元々は「堆肥」の英訳であるが,我が国にお

いては,生ゴミから堆肥を作る商品(バケツ状の形態であり,家庭において生ゴミ

を堆肥化するために用いられる。)の名称として広く用いられていることから明ら

かなとおり,発酵作用を利用して堆肥を製造する装置の名称としても一般化してい

ることにも裏付けられる。

b 本件訂正発明2の構成要件A2「経時的に」について,原判決のよ

うに「有機質廃物の投入堆積及び発酵処理がそれぞれ2日以上にわたって複数回に

分けて順次行われることを意味するものと解される。」と解釈した場合,被処理物

を「経時的」投入堆積発酵を可能とする装置の構成とは,「単一の発酵槽内を複数

の区画に概念的に区分けし,各概念的区画について,独立して投入堆積発酵ができ

る大きさを有する発酵槽を備えること」と解釈すべきである。そして,本件明細書

1の段落【0008】からすれば,KS7−12発明は,「日を改めた投入堆積発

酵処理」,すなわち「経時的に」処理することが可能な構成を有していることが明

らかである。また,本件取扱説明書の「§1−3.堆肥の取り出し」の「2)取り

出す時期になったら下図の仕上げ部分には生糞は散布しないでください。」との記

載や図を見れば,発酵槽における上記「取り出す堆肥」(取り出す時期になった堆

肥)が堆積された部分(撹拌機右側の斜線部分)が「仕上げ部分」であり,上記記

載が,仕上げ部分以外の部分に生糞を散布することを示唆していることは明らかで

ある。

したがって,KS7−12発明は,投入堆積を経時的に行うことが説明されてい

る。

c 原判決は,本件KS7−12の納入先である梨北農業協同組合が,




本件KS7−12において発酵処理をしていなかったことを理由として,本件KS

7−12が本件発明1の構成要件を充足しないと判断しているが,物の発明と引用

例が一致するか否かの認定は,当該発明の客観的構成と当該引用例の客観的構成が

一致するか否かによって行われなければならない。原判決の認定論理は,物の発明

における構成要件該当性を,引用例が完成されて譲渡された後における,利用者で

ある「たかね有機センター」での利用方法によって判断するというものであって,

およそ「物」の発明であることと矛盾する論理である。

さらに,原判決のように考えるのであれば,イ号装置及びロ号装置が,本件発明

1を充足しているというためには,イ号装置及びロ号装置において実際に発酵処理

をしていることが必要となるはずである。ところが,原判決は,これらの装置にお

ける発酵処理の有無について認定しないまま,イ号装置及びロ号装置が本件発明1

技術的範囲に属すると判示しており,論理が矛盾している。

(イ) 無効理由1−2(進歩性の欠如)について

a 原判決は,
「経時的に投入」可能な構成は,本件KS7−12に係る

発明における面域を広げることと同義であるとはいえないとするが,本件KS7−

12と本件発明1の客観的構成は同一であり,異なる点があるとすれば,面域の広

さとしか考えられない。また,原判決は,具体的にどのような客観的な構成が相違

点なのか明らかにしておらず,理由不備の違法がある。

b 乙62及び乙A17に示されるように,出願時,当業者にとって,

混合と発酵を同じ槽で行う方式は周知技術であった上,発酵の滞留日数を十分取る

ために発酵槽の長さを延長するといった手段も周知技術であった。

よって,本件KS7−12の面域をその長さ方向に拡張して,その拡張した面域

において糞尿等の発酵処理を行うことは,当業者にとって容易であったことは明ら

かである。

c 本件出願1の当時,当業者にとって,発酵処理装置に,経時的に被

処理物を投入堆積させて処理を行うことは周知技術であった上,本件取扱説明書に




は,経時的に投入堆積処理する使用方法が開示されている。

また,有機質廃物を経時的に投入堆積発酵処理する構成はもとより,所望の個所

から被処理物の投入堆積と発酵済みの堆肥の取り出しを行う構成についても,その

構成自体は本件出願1の前から周知である(例えば乙A17,18,21)。

したがって,このような構成が仮に本件KS7−12によって公知であるといえ

ないとしても,想到することに格別の困難性はない。

よって,本件KS7−12の面域において糞尿等を「経時的に投入堆積発酵処理」

することは,当業者にとって容易であったことは明らかである。

(原告らの主張)

(ア)無効理由1−1(新規性の欠如)に対し

本件発明1のロータリー式撹拌機は,槽あるいは面域の中を直線的に往復動する

撹拌機械であるところ,この直線的に移動する撹拌機械を用いて堆肥を製造する技

術として,本件出願1の前は,槽の長手方向の一方に投入口,反対側の他方に取出

口をそれぞれ配置することが専らであった。この技術背景の中において,本件発明

1は,a)長さ方向の1側に長尺壁があるが,その他側は開放した大容積のオープ

ン式発酵槽を用いることにより,開放側面の所望の個所から被処理物の投入と,発

酵済みの堆肥の取り出しを行うようにしたこと,b)発酵槽は,既に投入した堆積

物が面域に残っている状況で,その面域の他の部分に(すなわち,既に投入した堆

積物がない部分に)被処理物を投入することができるだけの大容積なものとし,複

数の面域部分で発酵処理を行うようにしたこと,に技術的特徴を備えるものである。

したがって,このような技術的特徴の有無を検討の上で,本件KS7−12の面域

は,本件発明1は,「オープン式発酵槽」に該当せず,「経時的に投入発酵堆積処理

する面域」に該当しないとした原判決は正当である。

(イ) 無効理由1−2(進歩性の欠如)に対し

KS7−12発明と本件発明1とが,面域の広さのみで相違するとの被告の主張

は,発明が技術的思想であることを忘れた論理であり,本件発明1には,上記a),




b)の技術的特徴があることから,相違点が上記にとどまるものではないことが明

らかである。

乙62及び乙A17を根拠とする被告の動機付けに関する主張は,槽の長さ方向

とは直交する方向にジグザグ移動するような,タイプが異なる攪拌機と無理に結び

付ける論理であり,失当である。

オ 原告らの損害の発生及び被告が賠償すべき原告らの損害額(争点5)

(原告らの主張)

(ア) 算定の基礎とすべき原告の利益額について

原判決は,原告日環エンジニアリングの納入実績12件のうち9件分を採用して,

特許法102条1項の算定の根拠としたが,除外された3件をも含めて算定の基礎

とすべきである。この3件分を入れると,以下のとおりとなる。

・9件分合計 金81,156,357円

・3件分(追加分)合計金57,860,728円

以上12件分合計 金139,017,085円

上記12件の平均利益額 金11,584,757円

以上をもとに,単位数量当たりの利益額に被告の実績台数2基を乗ずる。

金11,584,757円×2=23,169,514円となる。

(イ) 本件訂正発明2の侵害に基づく損害額について

後記の被告の主張(イ)は争う。

本件訂正発明2のV字状の掬い上げ部材及びロ号装置の半円状の掬い上げ部材は,

それぞれの物件において必須の構成,構造のものであり,これにより販売促進効果

が認められるものである。

(被告の主張)

(ア) 算定の基礎とすべき原告の利益額について

争う。

(イ) 本件訂正発明2の侵害に基づく損害額について




前記争点3−1において述べたとおり,本件特許1は無効である。そして,本件

発明1と本件訂正発明2の相違部分であるV字型掬い上げ部材については,原告日

環エンジニアリングのホームページ(乙68)に「撹拌爪の部分的な交換も可能」,

「異物混入により一本だけ損傷しても簡単に交換可能」と記載され,かつ,本件発

明1,本件改良発明及び本件訂正発明2に係る3種類の掬い上げ部材が併記されて

おり,本件訂正発明2は,本件発明1として完成したオープン式発酵装置について,

後日,一部の掬い上げ部材をV字型に変更することにより,本件訂正発明2になる

という関係がある。

したがって,本件特許1が無効とされる場合に,損害を算定するに当たっては,

以下の点を考慮すべきである。

a 特許法102条1項に基づく損害について

特許法102条1項の「その侵害の行為がなければ販売することができた物」と

は,上記のホームページの記載でいうところの,
「オープン式発酵撹拌機撹拌爪」で

あり,オープン式発酵装置全体ではない。したがって,ロ号装置による本件特許権

2の侵害による損害は,掬い上げ部材に関する部分に限定すべきである。

b 特許法102条2項に基づく損害について

乙66のとおり,増田牧場にロ号装置が納入された当初は,半円状の掬い上げ部

材がない状態で納入されており,その時点で取引は完了している。

当初納入されたロ号装置について見れば,本件特許権2の侵害は認められないた

め,本件特許1が無効であれば,当初の納入行為は何ら違法ではなく(特許権侵害

がない。,後から掬い上げ部材を交換したからといって,遡って当初の納入行為ま


で含めて損害額を算定することは許されない。

よって,増田牧場に納入されたロ号装置について,特許法102条2項により損

害額を推定する場合,掬い上げ部材の交換による被告の利益を推定額とすべきであ

る。

なお,被告は,半円状の掬い上げ部材1本当たり,約2000円の製作費用を要




したが(乙66),半円状の掬い上げ部材の交換それ自体で売上は上げていない。

c 寄与度について

上記のとおり,本件特許1が無効であれば,本件訂正発明2は,実質的にはV字

状の掬い上げ部材のみにかかる発明である。

特許部分が製品の一部である場合には,損害額の認定において,当該特許部分の

「寄与度」を勘案して損害額を認定すべきものであり,本件特許権2については,

寄与度を勘案するに当たり,以下の事情を考慮すべきである。

@ 半円状のロ号装置の掬い上げ部材105dは,ロータリー式撹拌機に不可欠な

構造ではなく,当該掬い上げ部材がなくとも(T字型掬い上げ部材のみ装着があっ

ても),完成品であり使用が可能であること(現に増田牧場には,半円状の掬い上げ

部材がない状態で納入され,使用されていた。。


A ロ号装置については,増田牧場へ納入後に,半円状に変更されているとの経緯

から,ロ号装置の掬い上げ部材105dへの変更は,当初の販売行為に何ら影響が

なく,販売促進効果が認められないこと。

B 原告日環エンジニアリングのホームページには,オープン式発酵装置の10大


特長」
(乙68)が記載されているが,そこには,掬い上げ部材の形状についての記

載はなく,本件特許権2によるロータリー式発酵処理装置の販売促進効果が認めら

れないこと。

C 増田牧場所在の物件の原価は426万2193円(乙35)であるところ,半

円状のロ号装置の掬い上げ部材105dの原価は2000円×5本の1万円であり,

掬い上げ部材交換後のロ号装置全体の原価において,当該掬い上げ部材が占める割

合は0.2%にすぎないこと。

D 大木牧場所在の物件の原価は448万1224円(乙第46号証)であるとこ

ろ,ロ号装置の掬い上げ部材105dの原価は2000円×5の1万円であり,ロ

号装置全体の原価において当該掬い上げ部材が占める割合は0.2%にすぎないこ

と。




上記諸事情を考慮すれば,仮にロ号装置について本件特許権2の侵害が認められ

るとしても,その損害額は寄与度を考慮して,装置全体に関する損害額から99.

8%を減額すべきものである。

カ 原告日環エンジニアリングによる均等侵害の主張が時機に後れた攻撃防

御方法となるか(争点6―1)

(被告の主張)

被告は,平成22年8月13日付け準備書面において,ロ号装置の掬い上げ部材

の形状が半円状であり,構成要件F2を充足しない旨を明らかにしたことから,ロ

号装置の掬い上げ部材105dの形状が構成要件F2を充足するか否かが争点とな

ることは明らかとなっており,原告日環エンジニアリングは,それ以降,平成24

年12月6日に結審するまでの約2年4カ月間,いつでも均等侵害の主張をするこ

とができた。したがって,原告日環エンジニアリングの均等侵害の主張が,原告日

環エンジニアリングの「重大な過失」によって後れたものであることは明らかであ

る。そして,原告日環エンジニアリングによる均等侵害の主張がなければ,当審の

審理は,平成25年5月23日の弁論期日で終結していたものであり,これにより,

訴訟の完結が遅延したものである。なお,本件で原審における訴訟手続が遅延した

のは,原告らが,請求原因を明確にせず,被告及び裁判所から1年間にわたり請求

原因の補充を促され続けたからであり,訴訟が不当に遅延している。

(原告日環エンジニアリングの主張)

被告の主張する時機に後れた攻撃防御方法としての却下の要件は,いずれも満た

さない。第2審における早い時期における均等侵害の主張は,しばしば実例が見受

けられるところであり,許されるものである。

キ 被告による損害に関する主張が時機に後れた攻撃防御方法となるか(争

点6−2)

(原告らの主張)

被告の損害論に関する反論は,平成25年10月4日付け準備書面(2)で主張され




たものであり,具体的証拠(書証,物証)の取調べを伴うから,本件訴訟の審理に

著しく影響することは明らかである。

本件訴訟は,上記主張の時点で,既に結審に近い段階であり,被告の損害論追加

主張は,控訴理由書にも全く言及されておらず,この段階での新たな主張は,明ら

かに時機後れの主張といえるものである。

(被告の主張)

原審において,本件特許2の文言侵害の成否が争われ,平成24年3月5日の弁

論準備手続期日において,本件特許2について,裁判所から,
「パドル先端部の形状

について,ロ号装置について『一対』
『二枚』
『板状』
『傾斜』が認められないため非

充足」との心証が示されている。

平成24年3月5日の弁論準備手続の次の期日から,損害論の主張立証がなされ

ているが,本件特許2については,文言侵害が成立しないことが明らかとなってい

たため,被告は,本件特許2についての損害論について,一切主張立証を行ってい

ない。被告が,上記準備書面において,本件特許2についての損害論を主張したの

は,原告日環エンジニアリングが,控訴審段階になって本件特許2についての均等

侵害を新たに主張したためである。

よって,被告の損害に関する主張が時機に後れた攻撃防御方法となることはない。



第3 当裁判所の判断

1 争点1(イ号装置及びロ号装置についての本件発明1の技術的範囲の属否)

について

原判決72頁11行目末尾に改行の上,以下を加えるほかは,原判決第4,1項

(49頁4行目から75頁5行目まで)記載のとおりである。

「さらに,被告は,原告キシエンジニアリングが,本件特許1についての平成1

4年11月13日付け拒絶理由通知(乙4)に対する平成15年1月20日付け意

見書(乙3)において,本件発明1の床面上を走行する車輪はその他の構造が不要




である点で引用文献2(乙5)及び3(乙6)とは異なると応答しているところ,

上記拒絶理由通知で指摘された引用文献2の案内輪は,レール上を走行するもので

あることに照らすと,上記意見書において,
「その他の構造」と述べたものには,レ

ールも含むと解するのが妥当であり,その結果,「床面上」には,「床面に敷設され

たレール上」を含まないと主張する。

しかし,前記のとおり,原告キシエンジニアリングは,上記拒絶理由通知に示さ

れた引用文献2及び3において,攪拌機は,外周壁の形状に沿って,長楕円状又は

円状に走行するため,外周壁の外面を走行する案内輪17(引用文献2)又は外壁

面に向かう誘導車輪5(引用文献3)を必要とするのに対し,本件発明1では,車

輪が長尺開放側面に沿って直線走行する走行形態のため,案内輪や誘導車輪が不要

であることを述べたものにすぎない。また,引用文献2によれば,案内輪は,案内

レールに沿って転動するものの,攪拌機を搭載して走行するものではなく,本件発

明1の攪拌機を具備した台車の「車輪」に相当するのは,レール上を走行せず,直

接床面上を走行する「走行輪」である。したがって,被告の上記主張は採用できな

い。」



2 争点2−1(本件訂正発明2の文言侵害の成否(ロ号装置が構成要件C2及

びF2を充足するか。)

原判決を以下の(1)のとおり補正し,(2)のとおり,当審における主張に対する判

断を付加するほかは,原判決第4,2項(1)
(75頁7行目から93頁14行目まで)

記載のとおりである。

(1) 補正

ア 原判決第4,2項(1)(75頁7行目から93頁14行目まで)中,「本

件発明2」を「本件訂正発明2」と改め,「本件明細書2」を「本件訂正明細書2」

と改める。

イ 原判決75頁9行目「及びH2」を「,H2,X及びY」と改める。




ウ 原判決75頁12行目「構成であるから」を「構成であり,本件訂正明

細書2には,前記の本件明細書1における摘記部分と同様の記載がなされているも

のであるから」と改める。

エ 原判決86頁12行目末尾に改行の上,次のとおり加える。

「(h) 『尚,該板状の掬い上げ部材5c1及び5c2の傾斜角度は,図示の例で

は,回転軸5aの中心軸線に対し20°傾斜せしめたものを示したが,一般に10°

〜80°の範囲が採用できる。(段落【0015】」
』 )

オ 原判決86頁13行目,90頁5行目「(h)」を「(i)」と改める。

(2) 当審における主張に対する判断

原告日環エンジニアリングは,本件訂正発明2のV字型掬い上げ部材における「2

枚の板状の部材を傾斜させて配置」するという技術的事項は,@掬い上げ部材は,

往動時の放散を防ぐための部分(2枚の板状の部材の一方)と,復動時の放散を防

ぐための部材(2枚の板状の部材の他方)とを備え,しかも,両部分は互いに対称

的な配置あるいは構成であること, 「傾斜」
A は放散を防止するための傾斜であり,

その傾斜角度は,特定の傾斜角度でなければならないというものではないこと,と

いう2つの技術的意義を有するところ,この側面からすれば,ロ号装置の掬い上げ

部材105dは,これらの技術的意義のいずれも充足しており,本件回動式パドル

を技術的に考慮すれば,「V字型」あるいは「ハの字型」の形状の掬い上げ部材と,

「半円弧状の形状を有する1枚の部材から構成された」掬い上げ部材105dとは,

構造上及びその作用効果からみて,技術的には実質的に同じものである旨主張する。

しかし,構成要件該当性は,特許請求の範囲に記載された発明特定事項に基づい

てなされるべきものであるところ,上記主張は,本件訂正発明2の特許請求の範囲

に記載された発明特定事項に基づくものではなく,技術的意義を考慮するという観

点から実質的にはこれを拡張するものであるから,採用することはできない。



3 争点2−2(本件訂正発明2の均等侵害の成否)について




前記のとおり,ロ号装置が,本件訂正発明2の構成要件A2,B2,D2,E2,

H2,X及びYを充足することは,当事者間に争いがなく,構成要件C2を充足す

ることは前記2において述べたとおりであるから,結局,構成要件F2のみを充足

しないことになる。

そこで,ロ号装置の構成が,本件訂正発明2と均等なものとして,本件訂正発明

2の技術的範囲に属するといえるかどうかについて,検討する。

その判断に当たっては,特許請求の範囲に記載された構成中に特許権侵害訴訟の

対象とされた製品と異なる部分が存する場合であっても, 上記部分が特許発明
@

本質的部分ではなく, 上記部分を当該製品におけるものと置き換えても特許発明
A

の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであって, そのように
B

置き換えることに当業者が当該製品の製造時点において容易に想到することができ

たものであり, 当該製品が特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当
C

業者がこれから出願時に容易に推考することができたものではなく,かつ, 当該
D

製品が特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たる

などの特段の事情もないときは,当該製品は,特許請求の範囲に記載された構成と

均等なものとして,特許発明技術的範囲に属するものと解すべきである(最高裁

平成6年(オ)第1083号平成10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号1

13頁参照)。

(1) 本質的部分(第1要件)について

ア 相違点について

本件訂正発明2は,訂正後の請求項1の従属項であって,請求項1を引用してい

るところ,本件訂正発明2の構成要件F2における「該長杆の先端に,前後一対の

板状の掬い上げ部材が夫々台車の走行方向に対し斜めに交叉し且つ内側に向けられ

て配設された請求項1に記載のパドル」にいう「前後一対の板状の掬い上げ部材」

は,「2枚の板状の掬い上げ部材」(請求項1)と同義であるから,構成要件F2の

「パドル」の「掬い上げ部材」は,2枚の板状の部材を構成に有するものである。




そして,2枚の板状の部材を構成に有する「掬い上げ部材」が「夫々台車の走行

方向に対し斜めに交叉し且つ内側に向けられて配設」された構成(構成要件F2)

は,2枚の板状の部材が「前後に且つ前後方向に対し傾斜させて配置し,その前側

の傾斜板の外面は斜め1側前方を向き,その後側の傾斜板の外面は斜め1側後方を

向くように配向せしめて配設」された構成(請求項1)と同義であるから,2枚の

板状の部材は傾斜させて配置され,それぞれの板状の部材(傾斜板)の外面が内側

を向くように配設されたものである。

一方,ロ号装置の掬い上げ部材105dは,原判決添付別紙物件目録2の図5の

とおり,半円弧状の形状を有する1枚の部材から構成されたものであって,2枚の

板状の部材を構成に有するものではない。

そうすると,本件訂正発明2のV字型掬い上げ部材が「2枚の板状の部材を傾斜

させて配置されるもの」であるのに対し,ロ号装置の掬い上げ部材105dは,
「半

円弧状の形状を有する1枚の部材から構成されたもの」である点が相違することに

なる。

イ 本件訂正発明2の本質的部分について

(ア) 本件訂正発明2について

本件訂正明細書2によれば,本件訂正発明2について,以下のとおり認められる。

本件発明1のオープン式発酵処理装置においては,そのロータリー式撹拌機5の

回転軸5aの周面にその軸方向に配設したすべてのパドル5b,5bを,その各長

杆5b1の先端に,該台車6の走行方向に対し直交して長矩形の板状の掬い上げ部

材5cを取り付けたパドルで構成したものであるので,台車6の往復動走行に伴い

ロータリー式撹拌機5を正転及び逆転させ,掬い上げ部材5c,5cを長尺開放側

面2に形成したオープン式発酵槽1内の有機質廃物の堆積物Tを往復動撹拌するの

に用いて,その往復動撹拌を繰り返す場合に,@オープン式発酵槽1の長尺開放側

面2側において堆積物Tの開放端面側が外方に拡散が増大するとともに堆積物Tの

高さが低くなる傾向があり,当初の好ましい高さで安定良好な高温発酵が得られな




い不都合を生じ,さらに,Aその堆積物Tの崩れは,長尺開放側面2側の床面を走

行する台車6の車輪4の軌道上にも達し,円滑な走行を阻害し,外方へ崩れた拡散

分を人手によりスコップなどで掬い上げ,堆積物の頂面へ積み上げる面倒な作業を

要するなどの不都合を生ずることが判明した。そこで,改良発明として,該オープ

ン式発酵槽の該長尺開放側面側に位置する該回転軸の外端から少なくとも1本ない

し数本のパドルは,その長杆の先端杆部を回動自在とし,その先端に内側と外側で

面積を異にする板状の掬い上げ部材を所定角度範囲回動自在に取り付け,該台車の

往復動走行時に,正又は逆回転する回転軸に伴い正又は逆回転する板状の掬い上げ

部材により堆積物を掬い上げる際に,該板状の掬い上げ部材の内側板部は外側板部

より大きい堆積物の負荷を受けて,該板状の掬い上げ部材は,常に内側に向いて所

定角度回動し,堆積物の掬い上げが行われるようにした本件回動式パドルに構成す

る一方,その他の残る各パドルは,本件特許1で用いたと同じ通常の固定式パドル

に構成したことを特徴とするオープン式発酵処理装置を提示した。しかし,本件改

良発明においても,回動式パドルとするため多くの組立て構成部材を要し,しかも,

比較的複雑な組立て作業と構成を要し,その製作が比較的面倒であり,かつ,製作

コストの増大をもたらすなどの問題を有することが判明した(段落【0002】。


そこで,本件訂正発明2は,構成部品を少なくし,通常の固定式パドルと同様に

構造が簡単で,かつ,製作コストを減少でき,軽量な固定式パドルの開発と,これ

を組み込んで軽量,かつ構造が簡単で製造コストの安価なロータリー式撹拌機を具

備し,前記改良発明の目的と同様の目的を達成するオープン式発酵処理装置を提供

することを目的とし,上記課題を解決するための手段として,ロータリー式発酵処

理装置のパドルのうち,該オープン式発酵槽の該長尺開放側面側に位置する該回転

軸の外端から少なくとも1本ないし数本のパドルは,前後一対の板状の掬い上げ部

材がそれぞれ台車の走行方向に対し斜めに交叉しかつ内側に向けられたパドル,す

なわち,長杆の先端に,2枚の板状の掬い上げ部材を前後にかつ前後方向に対し傾

斜させて配置し,その前側の傾斜板の外面は斜め1側前方を向き,その後側の傾斜




板の外面は斜め1側後方を向くように配向せしめて配設したパドルからなり,その

他の残る各パドルは,長杆の先端に,該台車の走行方向に対し直交して板状の掬い

上げ部材を取り付けたパドルからなる構成を採用した(段落【0003】【000


4】。


上記構成を採用したことにより,台車を往復動走行させ,該ロータリー式撹拌機

で堆積物を往復動撹拌とした場合,その堆積物の外端部に位置するパドルの掬い上

げ部材により,往動走行時にはその前側の傾斜板により,復動走行時には,その後

側の傾斜板により,常にそれぞれ対応する前方の堆積物を内側に向け掬い上げるこ

とができ,堆積物の外側への掬い上げ時の拡散,崩れなどの不都合を解消でき,ま

た,オープン式発酵処理装置に具備するロータリー式撹拌機に回動式パドルを用い

た場合に比し,容易かつ安価にかつ軽量に構成できるとともに,稼動時の消費電力

の低減をもたらすとの効果を奏するものである(段落【0009】,
【0010】,
【0

028】。


(イ) 本件訂正発明2の掬い上げ部材について

さらに,掬い上げ部材について,本件訂正明細書2には,
「尚,該板状の掬い上げ

部材5c1及び5c2の傾斜角度は,図示の例では,回転軸5aの中心軸線に対し

20°傾斜せしめたものを示したが,一般に10°〜80°の範囲が採用できる。」

(段落【0015】)と記載されているから,回転軸5aの中心軸線に対して10°

〜80°の傾斜があれば足り,その傾斜角は一定でなければならないものではない。

すなわち,回転軸5aの中心軸線に対する角度が小さくなればなるほど,走行方向

に対し直交する長矩形の板状で構成される従来の掬い上げ部材に近いものとなり,

掬い上げの効果は大きくなる一方,堆積物の外側への拡散が増大するが,回転軸5

aの中心軸に対する角度が大きくなると,掬い上げの効果は小さくなるが外側への

拡散を防止できることとなるものと推測されるところ,本件訂正発明2のV字型掬

い上げ部材において,これらの角度は適宜選択できるものとなっているから,V字

状のみに限定されず,より頂点への角度が緩やかな逆への字状のもの等も含まれる。




また,段落【0006】には,
「本発明のパドルの変形例として,図5に示すような

パドル5b″に構成しても良い。すなわち,先の実施例のそのV字状の傾斜板5c

1及び5c2の一端部を当接し,互いに直接溶接する代わりに,その両傾斜板5c

1及び5c2の一端部間を適当な距離離隔し,そのスペース内に板状などの補強梁

5jを介在させ,その両端部を傾斜板5c1及び5c2の一端部とを溶接し,その

前後一対の板状の掬い上げ板部5c1及び5c2はハの字状に対称的に傾斜した傾

斜板に構成しても良い。 との記載もあり,
」 必ずしもV字状の掬い上げ部材に限られ

るものではないことが明らかである。さらに,段落【0009】には,「また,そ

の本発明のパドル5b′の夫々の傾斜板5c1及び5C2は長矩形状とし,同一形

状,寸法であることが一般であり好ましく,また,通常のパドル5bの板状掬い上

げ部材5cと同一形状,寸法であることが一般であるが,これに限定する必要はな

い。また,その各傾斜板5c1及び5C2の長さ又は高さ寸法は所望に設定される。」

と記載され,しかも,本件発明1の掬い上げ部材について,本件明細書1の段落【0

005】に「その先端には堆積物を掬い上げる板状,爪状などの掬い上げ部材5c

を有し,その回転により堆積物の撹拌とその正転,逆転による往復動撹拌を行う作

用を有する。 と記載されているから,
」 堆積物を掬い上げるための形状も,平面な「板

状」に限られるものではない。

(ウ) 以上に照らせば,堆積物の外側への掬い上げ時の拡散,崩れなど

の不都合を解消するために,前後一対の板状の掬い上げ部材が,それぞれ回転軸の

軸方向に対し所定角度内側(オープン式発酵槽の長尺壁の方向)を向くようにし,

掬い上げ部材の内側に向いて傾斜した部材の外側が,その前方に堆積する堆積物の

長尺開放面側の外端堆積部に当接し,斜め内側に向けてこれを掬い上げるよう,傾

斜板を所定角度内側に向けて配置したことが,本件訂正発明2を基礎付ける特徴的

部分であると認められる。

そして,本件訂正発明2の攪拌機は,往復動走行に伴って正又は逆回転するもの

であることから,掬い上げ部が外端堆積部に当接する場合は,回転軸に直交する前




後方向のいずれの場合もあり得ることから,そのいずれの場合においても,堆積物

を掬い上げる必要があり,そのために,掬い上げ部材を前後にかつ前後方向に対し

傾斜させて配置し,その前側の傾斜板の外面は斜め1側前方を向き,その後側の傾

斜板の外面は斜め1側後方を向くように配向させて配設されたものと認められる。

そうすると,掬い上げ部材が前後の両方向に傾斜されて配置されるとの構成も,本

件訂正発明2を基礎付ける特徴的部分であるといえる。

これに対して,本件訂正明細書2には,掬い上げ部材が2枚であることの技術的

意義は,何ら記載されておらず,前記のとおり,傾斜板の外面が正又は逆回転時の

それぞれにおいて,外端堆積部に当接することが重要であるから,本件発明2の掬

い上げ部材が2枚で構成されることに格別の技術的意義があるとはいえず,本件訂

正明細書2に記載されるように2枚の部材を直接溶接してV字状を形成することと,

1枚の部材を折曲してV字状を形成することとの間に技術的相違はないから,この

点は本質的部分であるとはいえない。また,前記のとおり,前後に傾斜させる角度

が,回転軸5aの中心軸線に対して10°〜80°の角度であればよく,逆への字

状が含まれることや,掬い上げる部材としても,平面な板状に限定されず,外端堆

積部に当接して内側に掬い上げることができればよいことに照らすと,掬い上げ部

材が,平面な板状で構成されていることも,本質的部分であるとはいえない。

そうすると,上記アで述べた,本件訂正発明2のV字型掬い上げ部材が「2枚の

板状の部材を傾斜させて配置されるもの」に対し,ロ号装置の掬い上げ部材105

dは,
「半円弧状の形状を有する1枚の部材から構成されたもの」であるとの相違点

は,本質的部分に係るものであるということはできない。

(2) 置換可能性(第2要件)について

前記(1)に述べたことからすれば,本件訂正発明2は,パドルの先端に設けられた

前後一対の掬い上げ部材が,それぞれ所定角度内側(オープン式発酵槽の長尺壁の

方向)を向くように配設されるとの構成によって,往復動走行に伴って正又は逆回

転する場合のいずれであっても,外端堆積部に当接する側の掬い上げ部材の外面が




作用して,堆積物に当接して堆積物を常に内側(長尺壁側)に向かって掬い上げる

ことにより,堆積物の外側への掬い上げ時の拡散,崩れなどを防いで,床面を走行

する台車の車輪の軌道上に堆肥が達し,円滑な走行を阻害し,その外方へ崩れた拡

散分を人手によりスコップなどで掬い上げ,堆積物の頂面へ積み上げる面倒な作業

を要するなどの不都合を解消できるというものである。

他方,原判決添付別紙物件目録2によれば,ロ号装置は,台車106の脚部11

3に近い側に位置する撹拌機105の回転軸105aの周面に設けられたパドル1

05bの先端の掬い上げ部材105dが,同目録記載の図5に示すような半円弧状

の形状を有し,その半円弧状部が図4に示すように,円弧の開口部が長尺開放面側

を向くように取り付けられた構成を備えており,回転軸は一方向とその反対方向に

回転可能な構成,すなわち,回転軸に対して正又は逆回転可能な構成を備えている。

そして,この構成を採用したことにより,往復動走行に伴って正又は逆回転する場

合のいずれであっても,外端堆積部に当接する側の1/4円弧状部分の外面が作用

して,堆積物に当接して堆積物を常に内側(長尺壁側)に向かって掬い上げること

ができるものであり,被告が認めるとおり,堆積部に半円弧状部の外側が当接し,

長尺壁の側に堆肥を寄せ,レールへの堆肥の崩れ落ちを避けるという効果を有する

もの(乙66)であるから,本件訂正発明2と同様に,堆積物の外側への掬い上げ

時の拡散,崩れなどの不都合を解消するものである。また,オープン式発酵処理装

置が具備するロータリー式撹拌機に回動式パドルを用いた場合に比し,容易かつ安

価にかつ軽量に構成できるとともに,稼動時の消費電力の低減をもたらすという効

果が得られるものと認められる。

したがって,本件訂正発明2のV字型掬い上げ部材とロ号装置の掬い上げ部材1

05dとの作用効果は同一であると認められる。

これに対し,被告は,ロ号装置の掬い上げ部材105dは,被処理物を掬い上げ

ないようにあえて平面部分をなくし,被処理物を保持せず逃がすようにしたもので

あるから,被処理物を放り投げる本訂正発明2のV字型掬い上げ部材とは異なるも




のであると主張する。

しかし,本件訂正発明2の「掬い上げ」について,本件訂正発明2の請求項及び

本件訂正明細書2の「発明の詳細な説明」のいずれにおいても,堆積物を保持して

放り投げることまでの作用を有するものであるとの特定はなされていない。そして,

前記に述べたように,回転軸に対する傾斜板の角度として10°〜80°の範囲が

想定されているところ,回転軸に対する傾斜板の角度を80°とした場合には,掬

い上げ部の板状部分は,堆積部に対して正面から(走行方向に対して直交するよう

に)当接しないものとなるから,堆積物を保持するという効果は,その角度を10°

とした場合に比して相当弱まるものであると推測され,前記のとおり,本件訂正発

明2は,そのような場合をも包摂しているものである。また,当接した堆積物がど

の程度放り投げられるか,という点については,回転軸の回転速度や堆積物の状態

なども影響するものである。したがって,堆積物を保持して放り投げる効果を奏す

るか否かは,置換可能性についての判断を左右するものではない。

また,被告は,
「掬い上げ」のためには,掬い上げ部材の作用面が湾曲していない

平面であることが必要である旨主張する。

しかし,前記のとおり,本件訂正明細書2の段落【0009】には,掬い上げ部

材の形状,寸法が限定されるものでないことが記載され,本件明細書1の段落【0

005】には,掬い上げ部材の形状について,
「その先端には堆積物を掬い上げる板

状,爪状などの掬い上げ部材」として,堆積物を掬い上げるための形状として,
「板

状」に限られない旨記載されていることや,原告らによる実験(甲13,14,1

8〜21)によれば(当該実験によって用いられた半円弧状の部材がロ号装置の掬

い上げ部材105dと同一形状であるかどうかは措くとしても)少なくとも写真上,


湾曲していることが明らかな掬い上げ部材であれば,堆積物を掬い上げることがで

きると認められることに照らすと,被告の上記主張は採用できない。

(3) 置換容易性(第3要件)について

本件訂正発明2のV字型掬い上げ部材とロ号装置の掬い上げ部材105dとは,




前記のとおり,本件訂正発明2の掬い上げ部材が2枚の板状であるのに対して,ロ

号装置の掬い上げ部材が1枚の半円弧状である点で相違するものである。そして,

前記のとおり,掬い上げ部材が2枚であることに格別の技術的意義があるともいえ

ない。そうすると,本件訂正明細書2に開示される2枚の板状の部材を溶接してV

字型を構成する実施例に直面した当業者において,1枚の部材を折り曲げて構成す

ることは容易に着想することであり,さらに,本件訂正発明2における掬い上げ部

材の傾斜角度が広範なものであることに照らせば,1枚の板を折り曲げて湾曲させ,

V字状あるいは逆への字状等に代えて半円弧状とすることも,当業者であれば,必

要に応じて適宜なし得る設計変更にすぎない。

(4) 容易推考性(第4要件)及び意識的除外(第5要件)について

後記の判示のとおり,本件訂正発明2は,その出願時における公知技術から当業

者が容易に想到し得たものではないから,本件訂正発明2の2枚の板状からなるV

字型の掬い上げ部材を1枚の半円弧状にしたにすぎないロ号装置について,当業者

が容易に推考できたものとはいえない。

また,本件において,Aが,ロ号装置の掬い上げ部材105dの構成を意識的に

除外したという事情はない。

(5) 以上からすれば,本件訂正発明2の2枚の板状の掬い上げ部材をロ号装置

の掬い上げ部材105dの1枚の半円弧状に置換したとしても,ロ号装置の構成は,

本訂正発明2と均等なものとして,本件訂正発明2の技術的範囲に属すると認めら

れる。



4 争点3−1(本件特許1についての無効理由の有無)について

(1) 本件発明1について

本件明細書1によれば,本件発明1について,以下のとおり認められる。

ア 本件発明1は,含有水分を調整された畜糞,汚泥及びその他の所望の種

類の有機質廃物からなる被処理物を経時的に投入堆積発酵処理するためのオープン




式発酵処理装置並びに発酵処理法に関するものである(段落【0001】。


従来のピット式発酵処理法は,所望の長尺広幅を存して対向し,かつ,平行する

長尺壁を配設し,その平行する長尺壁間に被処理物を経時的に投入堆積するための

ピットを形成してなるもので,有機質廃物の投入毎に台車を移動させ,撹拌機によ

りピット内の堆積物をピットの奥の方に移動させるという煩わしく,非能率な作業

に伴い,電力消費量の増大,堆肥生産コストの更なる増大などの不都合をもたらし

ていた。しかも,堆積物は,投入の都度,撹拌移動されるため,発酵温度が低下し,

高温発酵が維持できず,その結果,殺菌,殺虫が不充分となり,良質の堆肥が得ら

れないという不都合が生じていた(段落【0002】【0003】。
, )

そこで,本件発明1は,容易かつ安価なオープン式発酵処理装置と経時的な投入

堆積発酵処理作業を容易にし,有機質廃物の高温発酵を保持しながら良好な発酵処

理を確保できるオープン式発酵処理法を提供することを目的とし(段落【0003】,


請求項1又は3に記載された構成とすることによって,@有機質廃物を,その長尺

開放側面の長さ方向におけるどの位置からでも発酵槽内に投入でき,従来のピット

式発酵槽の投入作業における煩わしさと非能率や,大きな消費電力を要するなどの

不都合を解消できる,A投入される被処理物を,所望の高さまで堆積することがで

きる,B堆積物のどこからでも必要な個所に水分調整材を長尺開放側面を介して直

ちに投入でき,その所望の個所の水分調整を行うことができる,C堆積物をその全

幅にわたり一挙に高能率に往復動撹拌を行うことができるとともに,発酵終了後の

堆肥は,その投入位置と同じ場所から該長尺開放側面を介して取り出すことができ,

その取り出した後の空所に新たな被処理物を直ちに投入できる便利をもたらす,D

従来のピット式発酵槽に比し,構築が容易かつ安価にできるという効果を奏する。

また,請求項2に記載された構成とすることによって,両端に堆積された堆積物の

崩れを防止できるという効果を奏する(段落【0023】。


イ そして,本件発明1の「大容積のオープン式発酵槽」は,
「有機質廃物を

経時的に投入堆積発酵処理する長尺広幅の面域の長さ方向の1側に長尺壁を設け」,




「その他側は長尺壁のない長尺開放側面として成」 「該長尺開放側面を介してそ
り,

の長さ方向の所望の個所から被処理物の投入堆積と発酵済みの堆肥の取り出しを行

うようにした」ものである。この「大容積のオープン式発酵槽」について,本件明

細書1には,
「本発明によれば,このようにオープン式発酵槽1を構成したので,そ

の全長100メートル,高さ1.5メートルにより囲まれた大容積の内部空間には,

極めて大量の各種の有機質廃物から成る被処理物を大量に毎日投入堆積し得られ,

その夫々の堆積物が長期間に亘り発酵処理するに足り,而もその長尺の開放側面を

介して,その長さ方向の所望の場所に,その被処理物をショベル車により搬送し,

投入とその発酵処理済みの堆積物,すなわち,堆肥の取り出しを行うことができる

ばかりでなく,また,発酵中の多数個所の堆積物のうち,例えば,その中間の所定

の個所の堆積物に水分調整材を投入することができるなどの便利をもたらす。(段


落【0014】,
)「長尺壁1の長さは,例えば,飼育する家畜の頭数や排出される家

畜の生糞を毎日投入堆積し,30日程度の長期間に亘りその堆積物を発酵処理し,

順次取り出し連続的に堆肥を生産するには100m以上でも差支えないが,一般に

30〜100mの範囲で足りる。
・・・また,長尺壁や両端壁の高さは,ショベル車

で被処理物を1〜2mの高さまで投入堆積し得られる1〜2mの範囲とし,一般に,

1.5m程度が好ましい。(段落【0008】
」 )と記載されている。

そうすると,本件発明1の「大容積のオープン式発酵槽」は,大量の各種の有機

質廃物からなる被処理物を大量に毎日投入堆積し得られ,そのそれぞれの堆積物が

長期間にわたり発酵処理するに足り,しかも,その長尺の開放側面を介して,その

長さ方向の所望の場所に,被処理物をショベル車により搬送し,投入とその発酵処

理済みの堆積物,すなわち,堆肥の取り出しを行うことができるものであり,既に

投入した堆積物が面域に残っている状況で,その面域の他の部分に(すなわち,既

に投入した堆積物がない部分に)被処理物を投入することができるだけの大容積な

ものとし,複数の面域部分で発酵処理を行うようにしたものであるといえる。

(2) 本件KS7−12の構成等について




証拠(甲52の1〜3,乙7〜11,23,24,28,梨北農業協同組合によ

る平成22年2月15日付け,同年5月14日付け,及び平成24年1月13日受

付の各調査嘱託結果)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が認められる。

ア 本件KS7−12は,原告日環エンジニアリングが平成9年5月30日

ころまでに梨北農業協同組合に対し売却し, 所在の「たかね有

機センター」に,本件取扱説明書とともに納入設置された「KSコンポ醗酵ロータ

リーマシン KS7−12型」装置である。たかね有機センターは,北杜市が所有

し,その管理を梨北農業協同組合に委託した施設である。

原告日環エンジニアリングと梨北農業協同組合との間には,梨北農業協同組合が

本件KS7−12の内容を第三者に開示してはならない旨の合意はされていない。

また,たかね有機センターを訪れた第三者が,本件KS7−12の設置箇所を見学

し,本件KS7−12が使用されている状況を認識することは可能であった。

イ 本件KS7−12に付されたプレートには,KSコンポ醗酵ロータリー


マシン 型式 KS7−12型 製造年月 平成9年3月 製造番号 No.80

8号」との記載があり,装置に付されたテープには,
「オープン式KS7−H120

0型日環エンジニアリング(株)」と記載されている(乙10)。

本件KS7−12の設置箇所には,長さ方向の長さ約15m,幅方向の長さ約7

mの面域があり,その長さ方向の一方の側に壁があり,その向かい側は,壁のない

開放側面となっている。槽の高さは,約1.3mで,ピットの高さとしては,上記

のとおり「H1200」,すなわち,1.2mのものと表示されている。(乙24添

付の組立図参照,乙28の写真1−1〜1−4)。

本件KS7−12は,上記面域の堆積物をパドルの回転(正転又は逆転)によっ

て撹拌を行うロータリー式撹拌機を横設した台車を備え,上記壁の上端面上に敷設

されたレール上を回転走行する車輪と上記開放側面の床面上を回転走行する車輪を

備え(乙28の写真1−1〜1−4) 上記面域の長さ方向に直線走行することがで


き,前進・後退を自在にすることができる。




本件KS7−12の設置箇所の面域に,その長さ方向の所望の箇所から開放側面

を介して糞尿等を投入堆積し,その投入場所と同じ場所からこれを取り出すことが

可能である。

(3) 本件取扱説明書の記載について

本件取扱説明書(乙24)には,以下の記載がある。

「§1−1.処理の概要

散布された生ふんは[攪拌機]によって均一な撹拌と切りかえしが行われ下部の発

酵機と混合されると同時に,微生物の繁殖に必要な酸素を補給します。

これによって散布された生ふんは発酵ふんから発生する発酵熱と自然エネルギー

(太陽熱,強制風等)によって予乾され,又生ふんと発酵ふんとの含水率の違いに

より水分調整が行われさらに,生糞のみでは不可能だった通気孔を保持させること

により微生物の繁殖条件を整えます。

§1−2.作業手順

1) あらかじめ使用開始前に種糞(オガクズ・モミガラ等)となるものを発酵槽

全面に約30〜40cm位敷つめる。

※ なおこの作業は使用開始時のみです。

2) 生糞を散布します。

3) 機械操作方法にしたがって動かして下さい。

4) 生糞を散布する場合は,既に堆積してある基盤の状態を必ず確認し,水分の

多い所には散布しないで下さい。

5) 撹拌は冬期(11月〜2月)で1日に2回,夏期は1日1回程度とし,気候,

発酵状況を確認して調整して下さい。

6)尿散布については時期によって量が変わります。

堆肥の発酵具合の状況を見ながら散布量 場所を決め,
・ 薄く広く散布して下さい。

撹拌時に堆肥にホコリが出る程度の水分量になれば散布可能になり最適です。
・・・

§1−3.堆肥取り出し




1) 発酵槽内の堆肥の堆積高がピットH770の場合,60〜65cm程度(ブ

ロック3段)になったら取り出し開始準備です。

ピットの高さによって堆積高は変わりますが,上面より20cm位の堆積高を一

応の目度として下さい。

2) 取り出す時期になったら下図の仕上げ部分には生糞は散布しないで下さい。




3) バケットローダー等で,槽の立上りピット側を50cm〜1m程度残して取

り出すことが望ましい。

これは発酵基盤(種糞)を残しておくことによって次回以降の[散布→発酵]を速

やかに進めるためです。





§2.機械の取扱い

§2−1.特長と仕様

1)特長

KSコンポオープン型は,ロータリー式攪拌機を用いた,従来のエンドレス発酵

槽方式と全く同じ性能を有しております。

直線往復型は,エンドレスタイプに比べ発酵槽の幅が半分程度となり,敷地面積

の小さな場所にも設置できます。しかも,パドル式攪拌により高堆積量の処理が可

能です。

[主な特長]

@ 発酵槽の両端で電気信号を与えることにより,所定の停止位置まで作動し直

線往復方式により,発酵槽内に糞を長期間滞留させることが可能であり,・・・

B 高温発酵(鶏……80℃前後,豚……70℃前後,搾乳牛……60℃前後)

による処理と,長期滞留によって二次発酵の恐れの無い良質な完熟堆肥を生産する

ことができ,有機質肥料として土壌回復に大変役立ちます。

・・・」

(4) 公知性について

前記(2)の認定事実によれば,本件KS7−12は,本件出願1の出願前の平成9

年5月30日ころまでに,原告日環エンジニアリングがその内容について秘密を保

持する義務を負わない梨北農業協同組合に販売し,山梨県北杜市が委託したたかね

有機センターに,本件取扱説明書とともに納入設置されたことが認められるから,

KS7−12発明は,上記販売及び納入設置により,本件出願1の出願前に公然知

られたものと認められる。

(5) 構成要件A1,B1及びF1該当性及び進歩性の有無について

本件KS7−12が,本件特許1のC1,D1及びE1の構成を有すること(た

だし,「長尺」「長尺広幅」「発酵槽」を除く。
, , )について,原告らは明らかに争う

ものでない。そこで,本件特許1の上記以外の構成を有するか否か,あるいは進歩




性を有するかについて検討する。

ア まず,本件KS7−12の設置箇所の面域には,その長さ方向の一方の

側に壁があり,その向かい側は,壁のない開放側面となっている。そして,本件明

細書1の段落【0003】には,従来技術であるピット式発酵槽に係る構成を示す

場合にも,「長尺壁」との文言が用いられていることに照らすと,「長尺」とは,単

に長方形における長手方向の辺を指すものとして用いられたにすぎないものと解さ

れるから,KS7−12発明は,「面域の長さ方向の1側に長尺壁を設け」(構成要

件A1)「その他側は長尺壁のない長尺開放側面として成る」
, (構成要件B1)もの

ということができる。

イ 次に,有機質廃物を経時的に投入堆積発酵処理する長尺広幅の面域」構
「 (

成要件A1)にいう「経時的に」については,
「経時」とは,一般的に,時間が経過

することを意味するものであり,本件明細書1の段落【0002】において,従来

技術であるピット式発酵槽について,
「所望の長尺広幅を存して対向し,かつ平行す

る長尺壁を配設し,その平行する長尺壁間に被処理物を経時的に投入堆積するため

のピットを形成して成る」とされており,
「経時的」に通常と異なる意義を付与して

いるものとは考え難い。そして,段落【0005】【0011】
, 【0015】の記載

を見れば,
「経時的に」とは「順次」といった意味合いで用いられているにすぎない

ものと解されることからすれば,
「経時的に投入堆積発酵処理する」とは,有機質廃

物の投入堆積及び発酵処理が順次行われることを意味するものと認められる。

ウ そこで,KS7−12発明が,
「経時的に投入堆積発酵処理する面域」を

有する「オープン式発酵処理装置」に該当するか否かについて検討する。

前記(3)のとおり,本件取扱説明書によれば,KS7−12発明は,高温発酵によ

る処理と長期滞留によって,二次発酵のおそれのない良質な完熟堆肥を生産するこ

とができるものであり,攪拌機を発酵槽の所定の停止位置まで作動し,直線往復方

式で発酵槽内に糞を長期間滞留させることができ,高堆積量の処理が可能であるこ

となどを特徴とするものであること,発酵槽内の堆肥高が,ピット上面より20c




m位の堆肥高となると,同書の「§1−3.堆肥取り出し」の2)の図面のハッチ

ングで示された仕上げ部分である堆肥を,開放側面からバケットローダー等で取り

出すというものであることが認められる。そして,§1−2.4)の「生糞を散布

する場合は,既に堆積してある基盤の状態を必ず確認し,水分の多い所には散布し

ないで下さい。」との記載,6)の尿散布について,「堆肥の発酵具合の状況を見な

がら散布量・場所を決め」との記載に加え,§1−3.
「堆肥取り出し」の「2) 取

り出す時期になったら下図の仕上げ部分には生糞は散布しないで下さい。との記載


及び図面において,取り出す堆肥の場所とは逆方向,すなわち,攪拌機の左側にス

ペースの存在が示されていることからすれば,発酵槽内の堆肥等の水分量や発酵状

況を見ながら,生糞や水分の散布場所を決定することや,堆肥の完成時期が発酵槽

の面域の位置によって異なるものであり,異なる時期に生糞や水分等を投入し,ま

た,異なる時期に開放側面から堆肥を取り出すことができること,すなわち,有機

質廃物の投入堆積及び発酵処理が順次行われることが理解できる。

さらに,上記図面及び§2[主な特長]@の記載に照らせば,攪拌機を所定の停止

位置までの間,作動させること,すなわち,発酵槽の面域の全体を攪拌することな

く,部分的な面域を利用して作動させることができることが理解できる。

そうすると,KS7−12発明は,発酵槽内で高温発酵させ堆肥を作るための装

置であると認められ,開放側面を介して,その長さ方向の所望の場所に,被処理物

の投入とその発酵処理済みの堆積物の取り出しを行うことができるものであり,発

酵槽は,既に投入した堆積物が面域に残っている状況で,その面域の他の部分に被

処理物を投入することができるだけの容積を有するものであって,複数の面域部分

で高温発酵処理を行うことが可能なものであると認められる。

以上によれば,KS7−12発明は,「経時的に投入堆積発酵処理する面域」(構

成要件A1)を有する「オープン式発酵処理装置」(構成要件G1)に該当し,「長

尺開放側面を介してその長さ方向の所望の個所から被処理物の投入堆積と発酵済み

の堆肥の取り出しを行うようにした」
構成要件F1)ものであると認められる。そ




うすると,KS7−12発明は,
「長尺広幅」「大容積」以外の点をすべて満たすこ


とになる。

エ KS7−12発明が,更に「長尺広幅」
構成要件A1,D1)の面域を

有するか否かについて,本件発明1の請求項には,「長尺広幅」がどの程度の長さ,

幅を有するものかについての特定はない。そして,本件明細書1の段落【0002】

において,従来のピット式発酵槽についても「長尺広幅」である旨が記載されてい

ることからすれば,単に,面域の形状について,長方形であることの特定と,発酵

槽としての機能を果たし得る程度の長さと幅(奥行き)を備える旨を述べたにすぎ

ないものとも解される。本件発明1の面域が「長尺広幅」であるのに対し,KS7

−12発明の面域が「長尺広幅」であるかについて特定がなされていないことをも

って,仮に両発明の相違点と捉えたとしても,長尺壁の長手方向とそれと直交する

方向の長さの問題にすぎないから,上記のとおり,両者の技術的意義が同様である

ことに照らすと,設計事項として適宜に選択し得たものと認められる。

また,「大容積」(構成要件B1)のオープン式発酵処理装置か否かについては,

本件発明1の「大容積」がどの程度の大きさのものを指すかは請求項に特定がなく,

前記(1)のとおり,段落【0008】に「一般に30〜100mの範囲で足りる」,

(高さが)「一般に,1.5m程度が好ましい。」と記載されているのみである。前

記のとおり,KS7−12発明においても,本件発明1と同様,既に投入した堆積

物が面域に残っている状況で,その面域の他の部分に被処理物を投入することがで

きるだけの容積を有するものであることは明らかであるが,それが「大」容積とい

えるか否かについては,KS7−12発明に特定はなく,この点が相違するものと

考えられる。しかし,KS7−12発明も,前記のとおり,開放側面を介して,そ

の長さ方向の所望の場所に,被処理物の投入とその発酵処理済みの堆積物の取り出

しを行うことができるものであり,発酵槽は,既に投入した堆積物が面域に残って

いる状況で,その面域の他の部分に被処理物を投入することができるだけの容積を

有するものであって,複数の面域部分で高温発酵処理を行うことが可能なものであ




る。そして,
「大容積」か否かは,結局,長尺面の面域の長さ,幅及び発酵槽の高さ

によって定まるものであることを考慮すると,KS7−12発明を「大容積」とす

ることも,適宜の設計事項として,当業者が容易に想到することができるものと認

められる。

(6) 原告らの主張について

ア 原告らは,KS7−12発明は,生糞,種糞及び尿を混合し,微生物の

繁殖条件を整えた調合物(コンパウンドあるいはコンポ)を得るための装置であり,

被処理物の調合工程のみを行うものであると主張し,1.2m程度の堆積高では,

発酵に必要な温度上昇及び温度維持が困難であり,発酵処理はできない旨主張する。

しかし,上記(2)の§2[主な特長]Bのとおり,本件取扱説明書には,高温発酵に

よる処理と,長期滞留によって二次発酵の恐れのない良質な完熟堆肥を生産するこ

とができる旨の記載があることからすれば,KS7−12発明が調合工程のみを行

うものであるとは考え難い。

また,本件明細書1の段落【0005】【0008】に,被処理物の高さが1〜


2mであれば,高温発酵させることができることが記載されていることからすれば,

原告らの主張する1.2mの堆肥高においても,高温発酵させることができるもの

と認められるから,高温発酵が不可能であるとの原告らの主張は採用できない。

イ 原告らは,本件取扱説明書に「あらかじめ使用開始前に種糞(オガクズ・

モミガラ等)となるものを発酵槽全面に約30〜40cm位敷つめる」と記載があ

ることから,KS7―12発明は,槽あるいは面域の全面を使用して調合物を得る

ための混合,切り返しを行うことを前提とする技術であることが理解できる旨主張

する。

しかし,当該記載部分の下には「※ なおこの作業は使用開始時のみです。」との

記載があり,槽の使用開始時における手順であることが記載されている上,生糞等

の撹拌について常に発酵槽全面を利用しなければならないことを示すものではない。

また,証拠(甲32〜34)によれば,本件発明1及び本件訂正発明2の実施品で




あると認められる「エコ・マックスせんだい」に納入されたオープン式KS8−1

800及び新潟県小千谷市に納入されたオープン式(直線往復式)KS8−180

0型に係る「埼玉式KSコンポ取扱説明書」(甲37,38)においても,「作業の

手順」欄に,あらかじめ使用開始前に種糞(オガクズ・モミガラ当等)となるもの

を発酵槽全面に敷き詰めることが記載されていることからして,原告らの主張する

上記記載部分をもって,KS7−12発明が,面域の全面を使用して堆積物を攪拌

するものであることを示す根拠と認めることはできない。

ウ 原告らは,梨北農業協同組合による平成24年1月13日受付の調査嘱

託回答書において,実際に納入されたたかね有機センターにおいて攪拌処理のみに

利用されている旨を主張する。しかし,納入された本件KS7−12が,実際には,

たかね有機センターにおいて攪拌処理のみに利用されていたとしても,本件KS7

−12は,前記のとおり,高温発酵させることのできるオープン式発酵槽として,

本件取扱説明書とともに納入されたものであり,上記のような技術的意義を有する

ものとして譲渡がなされたものと認められるから,上記の認定を左右するものでは

ない。

エ 原告らは,本件KS7−12は,本質的に撹拌(混合)のための混合機

であり,槽内で処理する被処理物の量は相対的に少なく,本件KS7−12が設置

された場所の面域は,
「面域の全体を一時に使用するような比較的に小さな容量」で

あることからすると,本件KS7−12に係る発明に接した当業者において,槽を

長尺方向に拡張することや,槽に投入できる堆肥材料の量を増やすことを考えたと

しても,槽の容量を大きくすることに想到することなどあり得ず,本件発明1は進

歩性を有する旨主張する。しかし,原告らの主張は,本件発明1とKS7−12発

明との技術的意義の相違を前提とするものであるところ,技術的意義の相違に係る

原告らの主張は上記のとおり採用できないから,その前提を欠くものである。

(7) まとめ

以上によれば,当業者が,本件KS7−12に係る発明に基づいて本件発明1を




容易に発明することができたものと認められる。

したがって,原告らは,特許法104条の3第1項の規定により,本件発明1に

係る本件特許権1を行使することができない。



5 争点3−2(本件特許2についての無効理由の有無)について

証拠(甲58,65,66)及び弁論の全趣旨によれば,被告が主張する無効理

由2―1〜5は,いずれも,別件審決2−2で排斥されているところ,これに対す

る取消を求める審決取消訴訟において,被告の請求は棄却され,同判決は確定した。

そして,被告は,当審において,上記の無効理由が排斥されたことについて争わず,

また,新たな無効主張も主張しない。

したがって,本件発明2は,新規性及び進歩性を欠くとはいえず,また,明確性

を欠くものとはいえないから,被告主張の無効理由2―1〜5は理由がない。

そして,本件発明2の構成要件をすべて含む本件訂正発明2も同様に,無効理由

は認められない。



6 争点4(差止めの必要性)について

前記のとおり,本件発明1に基づく権利行使はできないから,原告キシエンジニ

アリングによる差止請求には理由がない。



7 争点5(損害の発生及び被告が賠償すべき損害額)について

(1) 原告日環エンジニアリングによる損害賠償請求の可否等について

証拠(甲9の1,2)及び弁論の全趣旨によれば,原告日環エンジニアリングは,

平成17年5月27日,Aから,同日付け独占的通常実施権許諾契約書(甲9の1)

をもって,本件特許権2の全部につき,無償で,地域を日本国内,期間を本件特許

権2の存続期間が満了するまでの間とする独占的通常実施権(本件独占的通常実施

権2)の許諾を受けたことが認められる。




したがって,原告日環エンジニアリングは,本件特許権2について,本件独占的

通常実施権2を有するものである。そして,独占的通常実施権に基づいて不法行為

に基づく損害倍書請求ができること及び特許法102条1項又は2項の類推適用が

できることについては,原判決108頁18行目から109頁4行目まで記載のと

おりである。

(2) 特許法102条1項類推適用に基づく損害額について

ア 損害の発生について

被告が,鈴木建設株式会社に対し,ロ号装置を合計2基販売し,各1基が増田牧

場及び大木牧場に納品設置されたことは,当事者間に争いがない。そして,証拠(乙

35,36,44,45,66)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,増田牧場に

平成17年10月末ころまでに,大木牧場に平成18年10月ころに,ロ号製品の

納品を完了したものと認められる。

そうすると,原告日環エンジニアリングは,平成17年5月27日に本件独占的

通常実施権2の許諾を受けたものであるから,被告による上記の販売行為は,故意

又は過失により原告日環エンジニアリングの本件独占的通常実施権2を侵害するも

のとして不法行為を構成し,原告日環エンジニアリングは,被告の上記不法行為

より,本件訂正発明2の実施品等のロ号装置と代替可能性のある競合品の販売によ

る得べかりし利益相当の損害を被ったものと認められる。

なお,原告日環エンジニアリングは,被告が,平成16年1月1日から平成21

年6月30日までの間,イ号装置及びロ号装置を製造及び販売し,その販売数量

各5基を下らない旨主張するが,上記の2基以外に,本件独占的通常実施権2の許

諾後に,イ号装置及びロ号装置を販売したことを認めるに足りる証拠はない。

イ 原告日環エンジニアリングの単位数量当たりの利益額

(ア) 原告日環エンジニアリングは,附帯控訴状において,平成16年

2月25日から平成20年4月18日までの間,本件訂正発明2の実施品を合計1

2基販売し,その1基当たりの利益額は1158万4757円であり,同額が,
「侵




害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額」特許法


102条1項)である旨主張する。

(イ) 後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,原告日環エンジニアリン

グは,本件独占的通常実施権2の許諾後から平成20年4月ころまでの間に,次の

とおり,合計4基の発酵処理装置を販売したことが認められる。

@ KS8−1800型を用いた発酵処理装置1基, 所在の六角牛

堆肥生産利用組合の施設に納品設置(甲57の8,61の8,62。以下「六角牛

分」という。)

A 「オープン式KS6−2000型」(昇降式)を用いた発酵処理装置1基,

所在の「湯沢市役所循環型農業推進センター」に納品設置(甲57の9,

61の9,62。以下「湯沢分」という。)

B 「オープン式KS8−2000型」を用いた発酵処理装置1基,

所在の「小岩井農場」に納品設置(甲57の10,61の10,62,63。以

下「小岩井分」という。)

C 「オープン式KS8−2000型」を用いた発酵処理装置1基,

所在の「由利本荘SPF豚センター」に納品設置(甲57の11,61の1

1,62。以下「由利本荘分」という。)

(ウ) 証拠(甲32〜38,57,61)及び弁論の全趣旨を総合すれ

ば,六角牛分の1基(前記@)は,KS8−1800型を用いた発酵処理装置であ

り,本件訂正発明2の実施品であること,小岩井分及び由利本荘分の2基(前記B,

C)は,
「オープン式KS6−1800型」「オープン式KS10−2000型」又


は「オープン式KS8−2000型」を用いた発酵処理装置であり,本件訂正発明

2の実施品又はこれと同種の機能を有する装置であることが認められる。

したがって,上記の合計3基の発酵処理装置は,ロ号装置と代替可能性のある競

合品であり,「侵害の行為がなければ販売することができた物」(特許法102条

項)に該当するものと認められる。




他方で,湯沢分1基(前記A)については,原告日環エンジニアリング作成の本

件訂正発明2の実施品における利益率等に関する書面(甲62)には,
「OP式KS

6−2000型(昇降式)」との記載があり,また,完成収支報告書(甲57の9)

にも,「攪拌機(オープン昇降式)」が用いられている旨の記載があるところ,その

「昇降式」の意味するところが本件証拠上定かではなく,その結果,各発酵処理装

置の構成自体も不明であるといわざるを得ないから,ロ号装置と代替可能性のある

競合品であると認めるに足りない。

この点,原告日環エンジニアリングは,附帯控訴をし,原判決が原告日環エンジ

ニアリングの「単位数量当たりの利益額」について原告日環エンジニアリングの納

入実績12件のうち9件分を採用して,本条の算定の根拠としたが,除外された3

件も本条の根拠とすべきであるとして,上記湯沢分をも算定の根拠とすべき旨主張

する。しかし,当審において,
「昇降式」の意味について具体的に明らかにすること

もなく,新たな証拠の提出もないから,湯沢分1基がロ号装置と代替可能性のある

競合品であると認めるに足りない。

(エ) そこで,これらの3基の販売実績を前提に,原告日環エンジニア

リングの「単位数量当たりの利益額」(特許法102条1項)について検討するに,

前掲の各証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,上記3基の各利益額は,それぞれ次

のとおりと認めるのが相当である。

六角牛分(甲57の8)

@ 売上高 1902万8300円

A 経費(仕入高) 972万4059円

B 値引分 43万4587円

C 利益額 886万9654円

@の「売上高」及びAの「経費(仕入高)」の内訳は,原判決添付別表の(g)の「売

上高」欄及び「仕入高」欄にそれぞれ記載のとおりである(なお,甲61の8には,

手書きで,
「売上高」及び「仕入高」のそれぞれに「諸経費 10%」の記載がある




が,元の完成収支報告書である甲57の8にはそもそも「諸経費」の金額の記載が

ないので,上記「売上高」及び「仕入高」には上記手書き部分の「諸経費」を含め

ない。。


Bの「値引分」は,発酵処理装置を含む工事全体の売上高2333万2900円

(値引前),その値引額53万2900円(57の8)を前提に,上記工事全体の売

上高に対する@の「売上高」の割合に応じて算出したものである。
〔計算式 53万

2900円×1902万8300円÷2333万2900円=43万4587円〕

小岩井分(甲57の10,61の10)
@ 売上高 1059万3000円

A 経費(仕入高) 428万8239円

B 利益額 630万4761円

@の「売上高」及びAの「経費(仕入高)」の内訳は,原判決添付別表の(h)の

「売上高」欄及び「仕入高」欄にそれぞれ記載のとおりである。

なお,甲63中には,甲61の10の完成収支報告書に「材料費・制作費」の項

目が記入漏れとなっており,売上・仕入ともに追加加算される旨の記載部分がある

が,これを客観的に裏付ける証拠の提出がなく,上記記載部分は採用しない。

由利本荘分(甲57の11)

@ 売上高 2651万8118円

A 経費(仕入高) 1039万9282円

B 値引分 475万3411円

C 利益額 1136万5425円

@の「売上高」及びAの「経費(仕入高)」の内訳は,原判決添付別表の(i)の「売

上高」欄及び「仕入高」欄にそれぞれ記載のとおりである(なお,甲61の11に

は,手書きで「売上高」及び「仕入高」のそれぞれに「諸経費 10%」の記載が

あるが,元の完成収支報告書である甲57の11にはそもそも「諸経費」の金額の

記載がないので,上記「売上高」及び「仕入高」には上記手書き部分の「諸経費」




を含めない。。


Bの「値引分」 発酵処理装置を含む工事全体の売上高3046万円
は, (値引前),

その値引額546万円(甲57の11)を前提に,上記工事全体の売上高に対する

@の「売上高」の割合に応じて算出したものである。
〔計算式 546万円×265
1万8118円÷3046万円=475万3411円〕

(オ) 前記(ウ)を前提に,1基当たりの平均販売利益を算定すると,

884万6613円となり,同額をもって,原告日環エンジニアリングの単位数量

当たりの利益額と認めるのが相当である。
〔計算式 (886万9654円+630万4761円+1136万5425円)

÷3=884万6613円

(カ) 小括

以上によれば,特許法102条1項の類推適用により算出される原告日環エンジ

ニアリングの損害額は,ロ号装置の販売数量2基に原告日環エンジニアリングの単

位数量当たりの利益額884万6613円を乗じて得られた額である1769万3

226円となる。

ウ 被告の主張について

被告は,本件特許1は無効であることからすれば,特許法102条1項の「その

侵害の行為がなければ販売することができた物」とは,
「オープン式発酵撹拌機撹拌

爪」であり,オープン式発酵装置全体ではないから,ロ号装置による本件特許権2

侵害による損害は,掬い上げ部材に関する部分に限定すべきであると主張する。

しかし,本件特許1が無効であるとしても,本件特許2が有効であることは前記

のとおりであって,被告によるロ号装置の販売納品は,本件特許権2を侵害するも

のと認められる。そして,本件訂正発明2における掬い上げ部材が,損傷した場合

交換可能なものである(乙68)としても,これはメンテナンスとしての交換

あり,掬い上げ部材が独立して取引の対象として販売されているものではないこと

も考え合わせると,
「その侵害の行為がなければ販売することができた物」は,オー




プン式発酵装置全体をいうものと解するのが相当である。

(3) 特許法102条1項ただし書類推による損害減額について

もっとも,本件訂正発明2は,本件発明1の改良発明であって,発明を基礎付

ける特徴的部分は,V字型掬い上げ部材であり,それ以外のオープン式発酵装置の

構成については,前記のとおり,本件発明1がKS7−12発明との対比において

進歩性を欠き無効とされる以上,進歩性を有するものでないことからすれば,かか

る事情は,特許法102条1項ただし書の「販売することができないとする事情」

として考慮すべきものである。

そこで,検討するに,本件訂正発明2のV字型掬い上げ部材に係る構成以外の構

成については,進歩性を有するものではなく,発明を基礎づける特徴的部分は,当

該掬い上げ部材に限局されており,しかも,当該掬い上げ部材は,回転軸の周面に,

その軸方向に配設された多数本の長杆からなるパドルのうち,長尺開放側面側に位

置する該回転軸の外端から少なくとも1本ないし数本のパドルについて用いられる

ものにすぎない。さらに,掬い上げ部材に関する原価は,オープン式発酵装置の原

価に比して,ごくわずかであることは明らかである。被告のパンフレット(甲5),

原告日環エンジニアリングのホームページ(乙12の1〜3,68),製品カタログ

(甲15)において,長尺開放側面への堆積物の拡散を防げるような掬い上げ部材

を採用したことが特徴であることを示す記載はなく,需要者に対する購入動機とし

て,掬い上げ部材の形状が大きく寄与したということはできない。

しかし,前記において述べたとおり,本件訂正発明2は,堆積物の外側への掬い

上げ時の拡散,崩れなどを防いで,床面を走行する台車の車輪の軌道上に堆肥が達

し,円滑な走行を阻害し,その外方へ崩れた拡散分を人手によりスコップなどで掬

い上げ,堆積物の頂面へ積み上げる面倒な作業を要するなどの不都合を解消できる

という効果を奏するものである。そのための構成として,長尺開放側面側に位置す

る該回転軸の外端から少なくとも1本ないし数本のパドルについて,本件訂正発明

2のV字型掬い上げ部材を採用したもので,オープン式発酵装置が,平行する長尺




壁を設けその長尺壁間に被処理物を投入堆積させるピット式発酵槽を採用せず,一

方を長尺壁とし,他方を長尺開放側面としたことにより,攪拌機の往復動に伴って

長尺開放側側面に堆積物が拡散することになるのは必然であることからすれば,本

件訂正発明2のV字型掬い上げ部材は,これを防ぐための構成として重要なもので

ある。そして,現に,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,原告日環エンジニア

リングが製造し,荏原製作所に販売し,同社によって 所在の「堆

肥センター」に納入設置された「オープン式KS5−H1200型混合機」
(本件混

合機)について,平成12年3月ころに納入後の試運転が行われたが,それから間

もない同年5月8日に三角爪(V字型掬い上げ部材)と無償での交換がなされてい

ること(甲12の7,乙15,16),被告が鈴木建設に販売したロ号装置において

も,増田牧場に納入した分については,納入後2か月以内に無償で掬い上げ部材1

05dへと交換がなされ,その後の大木牧場への納入の際には,当初から掬い上げ

部材105dが装着されていたこと(甲6,7,乙66),本件特許2の実施品とし

ては,上記に認定した原告日環エンジニアリングが本件独占的実施権2に基づいて

製作した3件に限られず,「エコ・マックスせんだい」, 所在の堆肥製

造施設, 所在の「おおえ朝日堆肥セン

ター」, 所在の「浪江町共同有機堆肥センター」, 所在の

「鮭川村堆肥センター」, 所在の「なかよしゆうきセ

ンター」に納品設置されたオープン式発酵装置においても,V字型掬い上げ部材が

用いられたこと(甲32〜38,57,61),及び本件訂正明細書2に記載された

本件訂正発明2の開発動機,経緯を考慮すると,本件訂正発明2のV字型掬い上げ

部材の採用は,オープン式の発酵槽を採用したことに伴う,必須の改良事項であっ

たものと推測できる。

以上の事情を総合考慮すれば,ロ号装置の販売数量の80%については,原告日

環エンジニアリングが販売することができないとする事情があったと認めるのが相

当である。




そうすると,特許法102条1項に基づく損害額は353万8645円(=17

69万3226円×0.2。1円未満切捨て)となる。

これに対し,被告は,掬い上げ部材105dの原価が,被告が販売したロ号装置

全体の原価において占める割合は0.2%にすぎないことなどを理由として,装置

全体から99.2%減額すべきであると主張する。しかし,前記に述べた掬い上げ

部材105dの効果に照らすと,それがオープン式発酵装置の全体の価値を高める

効果を有することは明らかであり,原価における比較に合理性があるとは解されな

い。

(4) 特許法102条2項の類推適用に基づく損害額

原判決118頁20行目,21〜22行目「イ号装置及びロ号装置」を「ロ号装

置」と改め,同頁26行目「あり,」から末尾までを「ある。」と改めるほかは,原

判決118頁19行目から119頁9行目記載のとおりである。

もっとも,推定覆滅事情として,上記(3)と同様に,80%の減額を認めるのが相

当であるから,特許法102条2項に基づく損害額は99万4173円(=497

万0869円×0.2。1円未満切捨て)と認められる。
(5) まとめ

以上のとおり,特許法102条1項類推適用に基づく損害額は353万8645

円と算出され,同条2項に基づく損害額は99万4173円と算出されるが,予備

的請求である同条2項に基づく損害額は,同条1項に基づく損害額を上回らないか

ら,原告日環エンジニアリングの損害額としては,353万8645円と認められ

る。



8 争点6−1(原告日環エンジニアリングによる均等侵害の主張が時機に後れ

た攻撃防御方法となるか(争点6―1)について

原告日環エンジニアリングによる均等侵害の主張は,原判決において本件発明2

の文言侵害が認められなかったことを受けて,平成25年5月23日に行われた当




審の第1回口頭弁論期日以前に提出された同年4月30日付けの附帯控訴状におい

均等侵害に該当する旨が記載され,同年5月16日付け準備書面において均等

害の5要件に関する主張が記載されていたものであり,その内容は,新たな証拠調

べを要することなく判断可能なものであり,訴訟の完結を遅延させるものとはいえ

ない。

したがって,上記主張を時機に後れた攻撃防御方法として却下はしない。なお,

被告が,原告らが,原審において,請求原因を明確にせず,被告及び裁判所から1

年間にわたり請求原因の補充を促され続けたことにより遅延した旨主張する部分に

ついては,仮にそのような事実があったとしても,上記判断を左右するものでない。



9 争点6−2(被告による損害の主張が時機に後れた攻撃防御方法となるか)

について

原告らは,結審に近い段階での損害論の主張の追加は,時機に後れた攻撃防御方

法として却下されるべきと主張する。

しかし,被告の損害論の主張の追加は,原告日環エンジニアリングが本件特許2

均等侵害に基づく主張をしたことから,これに対応した反論を記載した平成25

年10月4日付け準備書面の中で同時に主張されたものであり,もっぱら法律的な

主張として,概ね,既に提出済みの証拠を根拠として主張するものにすぎないから,

訴訟の完結を遅延させるものとはいえない。

したがって,被告の損害に関する追加主張を,時機に後れた攻撃防御方法として

却下はしない。



第4 結論

以上によれば,原告日環エンジニアリングの本訴請求は,被告に対し,金353

万8645円及びこれに対する平成21年8月1日から支払済みまで民法所定年5

分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが,その余は理由がな




く,原告キシエンジニアリングの本訴請求には理由がない。よって,これと一部異

なる原判決を上記のとおり変更することとし,原告日環エンジニアリングの附帯控

訴には理由がないから,これを棄却することして,主文のとおり判決する。




知的財産高等裁判所第2部




裁判長裁判官

清 水 節




裁判官
中 村 恭




裁判官

中 武 由 紀






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