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事件 平成 25年 (行ケ) 10131号 審決取消請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 知的財産高等裁判所 
判決言渡日 2014/02/05
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
判例全文
判例全文
平成26年2月5日判決言渡

平成25年(行ケ)第10131号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 平成26年1月22日

判 決



原 告 X

訴訟代理人弁理士 坂 本 智 弘

矢 田 歩

大 石 敏 弘



被 告 特 許 庁 長 官

指 定 代 理 人 仲 間 晃

田 中 秀 人

樋 口 信 宏

浜 岸 広 明

堀 内 仁 子



主 文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。



事 実 及 び 理 由

第1 原告の求めた判決

特許庁が不服2011−22685号事件について平成25年3月26日にした

審決を取り消す。





第2 事案の概要

本件は,特許出願に対する拒絶審決の取消訴訟である。争点は,審判手続におけ

拒絶理由通知の要否及び進歩性である。

1 特許庁における手続の経緯

原告は,平成18年1月5日,名称を「フィッシング詐欺防止システムにおける

本人確認迅速化補助システム」(平成20年9月1日付けで「フィッシング詐欺防

止システムおよびそのプログラム」と補正)とする発明につき特許出願(特願20

06−689号,平成19年7月19日出願公開,特開2007−183744号)

をしたが,平成23年7月13日付けで拒絶査定を受けたので(甲10),同年1

0月20日に不服の審判(不服2011−22685号)を請求するとともに(甲

11),同日付けで手続補正をした(本件補正,甲12)。特許庁は,平成25年

3月26日付けで,本件補正を却下した上,「本件審判の請求は,成り立たない。」

との審決をし,その謄本は,同年4月9日,原告に送達された。

2 本願発明の要旨

(1) 補正前発明

本件補正前の本願発明(補正前発明,平成23年6月30日付け手続補正書(甲

9)の請求項1)は,以下のとおりである。

「ユーザーパソコンに搭載されているIE(インターネットエクスプローラー)

のツールバーにWhois検索アイコン表示ボタンを設け,

表示中のWebサイトのURLからドメイン名を抽出し,前記Whois検索ア

イコン表示ボタン上に表示し,

このWhois検索アイコン表示ボタンのクリック操作により,インターネット

を介して前記ドメイン名をドメイン情報登録センタから検索し,

前記インターネットを介して検索結果のドメイン名およびその組織名を前記ユー

ザーパソコンのバッファ内に取り込と共に前記Webサイトの画面に表示すること

を特徴とするフィッシング詐欺防止システム。」





(2) 補正発明

本件補正後の本願発明(補正発明,平成23年10月20日付け手続補正書(甲

12)の請求項1)は,以下のとおりである。

「ユーザーパソコンに搭載されているIE(インターネットエクスプローラー)

のツールバーにWhois検索アイコン表示ボタンを設け,

ユーザーが閲覧中のWebサイトのURLからドメイン名を抽出し,前記Who

is検索アイコン表示ボタン上に表示し,

このWhois検索アイコン表示ボタンのクリック操作により,前記Webサイ

トを閲覧したままインターネットを介して前記ドメイン名をドメイン情報登録セン

タから検索し,

前記インターネットを介して検索結果のドメイン名およびその組織名を前記ユー

ザーパソコンのバッファ内に取り込と共に閲覧中の前記Webサイトと同一の画面

上に表示することを特徴とするフィッシング詐欺防止システム。」

3 審決の理由の要点

審決は,「補正発明は,『プロのツール連携ワザ20選,PC Japan,日

本,ソフトバンクパブリッシング株式会社,2003年11月1日,第8巻,第1

1号,p.121−p.130』(引用文献1,甲1)及び周知技術に基づいて,

当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定によ

り,特許出願の際独立して特許を受けることができない。」,「補正前発明も,同

様の理由により,当該引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をす

ることができたものである。」と判断した。

審決が上記判断の前提として認定した引用文献1に記載された発明(引用発明)

並びに補正発明と引用発明との一致点及び相違点は,以下のとおりである。

(1) 引用発明

「HotWhois」の機能が実現される,不正侵入を防ぐためのマシンとネッ

トワークよりなるシステムであって,





前記「HotWhois」は,Internet Explorerのツールバ

ーのボタンからワンクリックで表示中のWebページのサーバのWhois情報を

表示させるものであり,

前記Whois情報は,世界中のWhoisサーバから,指定ホストのWhoi

s情報を検索した結果である,システム。

(2) 引用発明との一致点及び相違点

(一致点)

ユーザーパソコンに搭載されているIE(インターネットエクスプローラー)の

ツールバーにWhois検索表示ボタンを設け,

このWhois検索表示ボタンのクリック操作により,インターネットを介して

Whois情報をWhois情報登録システムから検索し,

前記インターネットを介して検索結果のWhois情報を取り込み前記ユーザー

パソコンの画面上に表示する不正侵入防止システム。

(相違点1)

補正発明が「フィッシング詐欺防止システム」であるのに対し,引用発明は,「不

正侵入防止システム」である点。

(相違点2)

Whois検索表示ボタンに関し,補正発明が「Whois検索アイコン表示ボ

タン」であるのに対し,引用発明は,「ボタン」に「アイコン」を表示するかは明

りょうでない点。

(相違点3)

補正発明が,「ユーザーが閲覧中のWebサイトのURLからドメイン名を抽出

し,前記Whois検索アイコン表示ボタン上に表示」することとしているのに対

し,引用発明は,そのような構成になっていない点。

(相違点4)

Whois情報の検索に関し,補正発明が,「Webサイトを閲覧したまま」検





索を行っているのに対し,引用発明は,どのような状態で検索を行っているか言及

していない点。

(相違点5)

Whois情報の検索先に関し,補正発明が,「ドメイン名をドメイン情報登録

センタから検索」しているのに対し,引用発明は,そのような構成になっていない

点。

(相違点6)

表示するWhois情報に関し,補正発明が「検索結果のドメイン名およびその

組織名」としているのに対し,引用発明は,Whois情報の内容について具体的

に明示していない点。

(相違点7)

Whois情報の表示方法に関し,補正発明が「閲覧中の前記Webサイトと同

一の画面上に表示」しているのに対し,引用発明は,そのような構成になっていな

い点。

(相違点8)

表示するWhois情報の取扱いに関し,補正発明が「ユーザーパソコンのバッ

ファ内に取り込」んでいるのに対し,引用発明は,Whois情報をどのように取

り扱っているか明りょうでない点。



第3 原告主張の審決取消事由

1 取消事由1(手続違背)

原告は,本願を平成18年1月5日付けで出願し,平成20年9月1日付けで出

願審査請求をするとともに特許請求の範囲を自発補正(以下,補正した発明を「当

初補正発明」という。)した。

当初補正発明は,審査段階において,平成23年5月31日付け拒絶理由通知

(甲7)により,引用文献1(甲1)及び引用文献2(甲2)を引用して,特許法





29条2項の規定により特許を受けることができないとされた。

これに対し,原告は,平成23年6月30日付けで意見書(甲8)を提出すると

ともに特許請求の範囲を補正して,補正前発明とした(甲9)。

補正前発明は,平成23年7月13日付けの拒絶査定(甲10)により,「上記

拒絶理由通知書に記載した理由によって,拒絶をすべきものである。」とされた。

これに対し,原告は,平成23年10月20日付けで拒絶査定不服審判を請求す

る(甲11)とともに特許請求の範囲を補正して,補正発明とした(甲12)。

補正発明について,平成23年12月28日付け審尋(甲13。平成23年11

月18日付け前置報告書添付)がなされ,原告は,意見があれば回答するように求

められた。その前置報告書には,特許査定できない理由が示され,拒絶査定で引用

された引用文献1(前置報告書では引用文献(1))及び引用文献2(同引用文献

(2))に加えて,新たに,参考文献1(甲3。前置報告書では参考文献(3))

及び参考文献2(甲4。同参考文献(4))が引用されていた。

そこで,原告は,平成24年2月29日付けで,新たな補正案を付した上で回答

書(甲14)を提出し,審判の合議体に対し補正の機会を付与するよう求めた。

しかし,原告が求めた反論,補正の機会を付与することなく,平成25年3月2

6日付けで審決がなされ,その中では,引用文献1,引用文献2,参考文献1及び

参考文献2に加えて,新たに,参考文献3(甲5)が引用された。そして,補正発

明は,特許法29条2項の規定により独立特許要件進歩性)を具備しないとされ,

当該補正について,却下の決定がなされた。

審決は,引用文献1及び2の記載の中から拒絶理由通知書及び拒絶査定で引用し

た箇所とは異なる箇所を引用し,また,拒絶理由通知書及び拒絶査定において引用

されていなかった参考文献1ないし3を引用している。後者の点については,参考

文献1及び2は審尋で初めて挙示されたものであって,審尋に対して補正できない

ことを鑑みれば十分な反論を行うことは困難であり,さらに,参考文献3は審決に

おいて初めて挙示されたものである。これらの点を考慮すると,本願について,原





告が審理手続を尽くすことができたものということはできない。

要するに,審決は,拒絶査定の理由と異なる拒絶の理由をもって補正発明の独立

特許要件(進歩性)を否定したもので,原告には,それに対する意見書を提出し補

正をする機会が与えられなかった。

したがって,審決は,特許法159条2項で準用する同法50条の規定に違反す

る審判手続によりなされたものであり,違法として取り消されるべきである。

2 取消事由2(一致点の認定誤り=相違点の看過)

審決は,補正発明と引用発明の一致点を,「ユーザーパソコンに搭載されている

IE(インターネットエクスプローラー)のツールバーにWhois検索表示ボタ

ンを設け,このWhois検索表示ボタンのクリック操作により,インターネット

を介してWhois情報をWhois情報登録システムから検索し,前記インター

ネットを介して検索結果のWhois情報を取り込み前記ユーザーパソコンの画面

上に表示する不正侵入防止システム。」であると認定した。

しかし,審決の判断は誤りである。

補正発明は「フィッシング詐欺防止システム」であって,「不正侵入防止システ

ム」ではない。

フィッシング詐欺は,詐欺の名が示すように,例えば,メールを送りつけて偽の

Webサイトにユーザーを誘導したり,真正のWebサイトに侵入して予め構築し

ておいたフィッシング用のポップアップ画面を経由してユーザーを誘導したりする

ことによって,ユーザーを欺罔して錯誤に陥れ,IDやパスワード,銀行口座番号

などをユーザーに入力させて,それらを盗みとろうとするものである。

これに対し,補正発明は,ユーザーがインターネット上であるWebサイトを閲

覧している際に,そのWebサイトがこのようなフィッシング詐欺のために構築さ

れた偽のものであるかどうかを確認し,それに引っ掛からないようにするためのシ

ステムを提供するものであって,ユーザーのパソコン又は当該Webサイトが一般

的な意味において不正侵入されることを防止するものではない。





よって,審決の一致点についての認定は誤りである。

3 取消事由3(相違点の判断の誤り)

(1) 相違点1に係る構成の容易想到性の判断について

審決は,相違点1について,引用文献2の記載Dを引用して,「Webにおける

不正侵入としてフィッシング詐欺が課題であること,及びその対策としてWebサ

イトの不審点を見てチェックすることは,当業者にとって自明な事項」であると認

定し,「引用発明のシステムを,フィッシング詐欺防止のために用いることは,当

業者が容易に想到し得たことである。」と判断した。

しかし,審決の判断は誤りである。

上述したとおり,補正発明の「フィッシング詐欺防止システム」と,一般的な「不

正侵入防止システム」とは異なる。引用文献2の記載Dには,インターネット上で

のいわゆるなりすまし行為に対する一般的な事項が述べられているのみであり,補

正発明の構成については開示も示唆もされていないから,引用文献2の記載Dをも

って,「引用発明のシステムを,フィッシング詐欺防止のために用いることは,当

業者が容易に想到し得たことである。」と判断することはできない。

したがって,「Webにおける不正侵入としてフィッシング詐欺が課題であるこ

と,及びその対策としてWebサイトの不審点を見てチェックすることは,当業者

にとって自明な事項」であるからといって,これに基づいて,相違点1に係る構成

を容易想到と判断することはできない。

(2) 相違点2及び3に係る構成の容易想到性の判断について

審決は,相違点2及び3について,引用文献2の記載E,参考文献1の記載H及

び記載J,並びに引用文献2の記載F及び記載Gを引用して,「インターネット

クセスに通常用いられるブラウザのツールバー上に,現在表示しているページのア

ドレス情報を表示することは,本願出願時において周知であり,また,ブラウザ上

でクリックするボタン機能をアイコンやページに関する情報とともに表示させるこ

とや,ページに関する情報としてのドメイン名をURLより生成することは,いず





れも常套手段であることを考慮すれば,上記周知の表示技術をブラウザ上のボタン

表示に適用する際に,アイコンとページに関する情報としてのドメイン名の表示を,

ボタン表示に組み込むようにすることに格別困難性を認められない。」と認定し,

「引用発明のツールバーのボタン表示に,周知技術を採用し,「Whois検索ア

イコン表示ボタン」として「ユーザーが閲覧中のWebサイトのURLからドメイ

ン名を抽出し,前記Whois検索アイコン表示ボタン上に表示」するよう構成す

ることは,当業者が容易に想到し得たことである。」と判断した。

しかし,審決の判断は誤りである。

補正発明は,「ユーザーパソコンに搭載されているIE(インターネットエクス

プローラー)のツールバーにWhois検索アイコン表示ボタンを設け,ユーザー

が閲覧中のWebサイトのURLからドメイン名を抽出し,前記Whois検索ア

イコン表示ボタン上に表示」するものである。

一方,引用文献2の記載E,参考文献1の記載H及び記載J,並びに引用文献2

の記載F及び記載Gには,Whois検索アイコン表示ボタン上にドメイン名を表

示すること,ひいては上記のように構成することについて,一切開示も示唆もされ

ていない。

引用文献2の記載Eは,ツールバー上に現在表示しているページのアドレス情報

を表示する点を,記載F及び記載Gは,検索対象のURLを入力する点を記載して

いるにすぎず,Whois検索アイコン表示ボタンの表示としてドメイン名を用い

るという技術的な思想を開示も示唆もしていない。例えば,記載F及び記載Gには,

検索対象のURLを入力することが記載されてはいるが,アイコン表示ボタンの表

示としてURLを用いることが開示されているわけではなく,具体的に検索するた

めにURLを入力することとボタンの表示をどうするかということの間には関連性

がないと考えられ,両者を関連付ける言及もない。また,これらの記載から,表示

中のWebページのURLを検索対象とできるようにするために,アイコン表示ボ

タンの表示をURLから抽出したドメイン名にしなければならない必然性が導出さ





れるわけでもない。

さらに,参考文献1の記載H及び記載Jは,履歴という固定された表示のボタン

を開示しているだけであって,その表示としてドメイン名を用いるということを開

示も示唆もしていない。

このように,これら5つの記載は,いずれもWhois検索アイコン表示ボタン

とドメイン名を結びつけた上記構成を開示していないのであって,審決が,これら

5つの記載と,相違点2及び3に係る上記構成との差異を格別なものではないとい

う一言で済ませている点は,これら5つの記載を補正発明に事後分析的に強引に対

応させた結果であり,後知恵といわざるを得ない。

したがって,「インターネットアクセスに通常用いられるブラウザのツールバー

上に,現在表示しているページのアドレス情報を表示することは,本願出願時にお

いて周知であり,また,ブラウザ上でクリックするボタン機能をアイコンやページ

に関する情報とともに表示させることや,ページに関する情報としてのドメイン名

をURLより生成することは,いずれも常套手段であることを考慮すれば,上記周

知の表示技術をブラウザ上のボタン表示に適用する際に,アイコンとページに関す

る情報としてのドメイン名の表示を,ボタン表示に組み込むようにすることに格別

困難性を認められない。」との審決の認定は誤りであり,これに基づいて,相違点

2及び3に係る構成を容易想到とした審決の判断は誤りである。

(3) 相違点4ないし6に係る構成の容易想到性の判断について

審決は,相違点4ないし6について,相違点4は自明な事項であること,相違点

5は人為的取り決めであることを指摘し,相違点6は参考文献3の記載Lを引用し

て,「引用発明の「Whois情報」の「検索」は,「表示中のWebページ」に

対して検索開始後にも「表示中のWebページ」を表示中のままとすること,及び

検索開始後に表示中の「Webページ」が閲覧可能な状態であることは,当業者に

とって自明の事項であり,また,「Whois情報」の「検索」先の構成として,

「ドメイン情報登録センタ」を設けることは,インターネット上でのセキュリティ





を確保するための人為的取り決めに関する事項であり,また,当該「検索」項目を

どのように登録・設定するかは,必要により適宜決定する事項であり,技術上格別

の困難性は認められない。」と認定し,「引用発明におけるWhois情報の表示

のための検索を,「Webサイトを閲覧したまま」「ドメイン名をドメイン情報登

録センタから」行い,「検索結果のドメイン名およびその組織名」を取得すること

は,当業者が容易に想到し得たことである。」と判断した。

しかし,審決の判断は,相違点4及び6について,誤りである。

相違点4について,審決は,自明な事項であるとしているが,補正発明は,ある

Webサイトを閲覧している状態でWhois情報の検索を開始でき,Whois

情報の検索開始後も当該Webページをそのまま閲覧でき,かつ,閲覧したまま,

検索結果を同一画面に表示できるものである。そして,このことは,Whois情

報の検索そのものについて開示している引用発明から自明であるということはでき

ない。

相違点6について,審決は,参考文献3の記載Lを引用して,適宜決定する事項

であるとしている。そこには,「本方式では,あらかじめ表1に示されるような有

名サイト情報をシステム内に格納しておく。表1における特徴文字列とは,各有名

サイトのドメイン名を特徴付ける文字列(企業名部分等)をあらわし,組織名は,

そのドメイン名の所有者として登録されている企業のWHOISサービス上の名称

をあらわす。」と記載されている。

しかし,補正発明は,「インターネットを介して検索結果のドメイン名およびそ

の組織名を(前記ユーザーパソコンのバッファ内に取り込)」むのであって,これ

らの項目について,有名サイト情報のみをあらかじめシステム内に格納するもので

はない。

したがって,「引用発明の「Whois情報」の「検索」は,「表示中のWeb

ページ」に対して検索開始後にも「表示中のWebページ」を表示中のままとする

こと,及び検索開始後に表示中の「Webページ」が閲覧可能な状態であることは,





当業者にとって自明の事項であり,また,「Whois情報」の「検索」先の構成

として,「ドメイン情報登録センタ」を設けることは,インターネット上でのセキ

ュリティを確保するための人為的取り決めに関する事項であり,また,当該「検索」

項目をどのように登録・設定するかは,必要により適宜決定する事項であり,技術

上格別の困難性は認められない。」との審決の認定は誤りであり,これに基づいて,

相違点4及び6に係る構成を容易想到とした審決の判断は誤りである。

(4) 相違点7及び8に係る構成の容易想到性の判断について

審決は,相違点7及び8について,相違点7は参考文献1の記載J及び参考文献

2の記載Kを引用し,相違点8は常套手段であることを指摘して,「インターネッ

アクセスのためのブラウザの表示ページに関連する情報を,表示ページと同一画

面上において表示することは,周知技術であり,また,コンピュータ装置における

取得情報を表示する際に,取得した情報をバッファ等のメモリに取り込んで行うこ

とは常套手段である。」と認定し,「引用発明における検索結果であるWhois

情報の表示において,当該周知技術を適用し,「ユーザーパソコンのバッファ内に

取り込」み,「閲覧中の前記Webサイトと同一の画面上に表示」することは,当

業者が容易に想到し得たことである。」と判断した。

しかし,審決の判断は,相違点7について,誤りである。

補正発明は,「前記インターネットを介して検索結果のドメイン名およびその組

織名を前記ユーザーパソコンのバッファ内に取り込と共に閲覧中の前記Webサイ

トと同一の画面上に表示する」ものである。

一方,参考文献1の記載J及び参考文献2の記載Kには,インターネットを介し

て検索結果のドメイン名及びその組織名を閲覧中のWebサイトと同一の画面上に

表示するという上記構成について,開示も示唆もされていない。参考文献1の記載

J及び参考文献2の記載Kは,単に,画面構成について述べているにすぎず,補正

発明の構成に対応する内容を記載しているわけではない。

したがって,「インターネットアクセスのためのブラウザの表示ページに関連す





る情報を,表示ページと同一画面上において表示することは,周知技術であり,ま

た,コンピュータ装置における取得情報を表示する際に,取得した情報をバッファ

等のメモリに取り込んで行うことは常套手段である。」との審決の認定は誤りであ

り,これに基づいて,相違点7に係る構成を容易想到とした審決の判断は誤りであ

る。

以上述べたように,補正発明の構成は,引用発明並びに引用文献2及び参考文献

1ないし3を組み合わせても,達成することはできない。

(5) 効果

そして,かかる構成を備える補正発明のフィッシング詐欺防止システムは,ドメ

イン名の正式法人名(組織名)をWebサイト閲覧者が同一画面内において直接確

認することができ,企業名自体の本人確認の判断情報が直接表示提供されるので「な

りすまし(偽)判定」が正確に遂行でき,また,近年発生のなりすましHPの発見

が迅速・正確に実行でき,フィシング詐欺防止を一層確実にすることが可能となる。

さらに,ファーミング詐欺防止においても同様の効果を有することができる。この

ような効果は,引用発明並びに引用文献2及び参考文献1ないし3からは予測でき

ない優れた効果である。

(6) 補正発明についてのまとめ

よって,補正発明は,引用発明,引用文献1及び2,並びに参考文献1ないし3

に基づいて,当業者が容易に想到し得るとした審決の判断は誤りである。

4 補正前発明について

補正前発明についての審決の判断は,補正発明についてと同様に誤りである。



第4 被告の反論

1 取消事由1(手続違背)に対して

(1) 主位的主張

特許法29条2項の規定は拒絶の理由(49条2号)でもあるから,29条2項





の規定により独立特許要件を満たさないという補正却下の理由がある場合は,これ

に対応する拒絶の理由も存在する。したがって,仮に,この拒絶の理由が査定の理

由と異なる場合は159条2項で準用する50条本文の規定により本件補正後の発

明に対して拒絶の理由を通知しなければならず,また,159条1項で準用する5

3条1項の規定により本件補正を補正却下しなければならない状態となる。

そこで,159条2項において50条の規定をただし書も含めて準用し,また,

「この場合において」以下の読み替えの規定を追加して補正却下の規定が優先して

適用されることとし,再度拒絶理由を通知することにより審理がやり直されること

を回避することが規定された。審判は審査の続審であり,不適法な補正は却下して

拒絶査定の妥当性を審理することとなる。

審判合議体は法律に従って審理を進めたにすぎないから,違法でない。

(2) 予備的主張

拒絶査定の理由は,補正前発明は,当業者が,引用文献1に記載された発明に対

して,引用文献2に開示された技術及び周知技術を適用して容易に発明をすること

ができたというものである(甲7及び10)。これに対して,審決の補正却下の理

由は,補正発明は,当業者が,引用文献1に記載された発明に対して周知技術を適

用して容易に発明することができたというものである。

そうしてみると,拒絶査定の理由と補正却下の理由は,引用文献2に開示された

技術を,公知技術と評価するか周知技術の例示と評価するかの点において相違する

としても,引用文献1に記載された発明に基いて容易に発明できたとする判断の骨

子部分で重なっており,また,相違点に係る構成は周知技術等にかんがみれば格別

のものではないと評価する点においても,同趣旨のものである。

原告は,拒絶理由通知と審決で引用文献の引用箇所が異なると主張するが,審決

は,単に引用発明の背景や目的効果等も含めて摘記したにすぎず,引用発明の本質

的部分(Internet Explorerのツールバーのボタンからワンクリ

ックで表示中のWebページのサーバのWhois情報を表示させるシステム)に





変更はない。

原告はまた,補正の機会が与えられないまま新たな文献が追加されたと主張する

が,審決は,周知技術の例示として参考文献を示したにすぎない。

2 取消事由2(一致点の認定誤り=相違点の看過)に対して

審決は,念のために,「フィッシング詐欺防止システム」と「不正侵入防止シス

テム」について相違点1として取り上げているから,審決の結論に影響を及ぼすよ

うな一致点の認定の誤りは生じ得ない。

審判合議体は,引用発明が「不正侵入防止システム」という側面では補正発明と

共通するけれども,引用発明は「フィッシング詐欺防止システム」に特化したもの

とは限らないと考えたため,相違点1として取り上げたにすぎない。審決の理解に

混乱はない。

引用発明は,ファイアーウォールのように不正侵入を防止するものではなく,ユ

ーザが閲覧しているウェブサイトの出所を確認するだけのシステムである。引用文

献1は,このようなものも含めた広い概念で「不正侵入防止システム」と称してい

るのであるから,その記載に忠実に従った審決の認定に誤りはない。

フィッシング詐欺ではユーザを偽のサイトに導くことが通常であるところ,本件

出願時点では,@ユーザに電子メールを送りつけ偽のリンク先をクリックさせる方

法に加えて,Aユーザのコンピュータにウィルスを侵入させて偽のサイトに導く方

法も周知であった(乙1)から,この点からみても,補正発明と引用発明が「不正

侵入防止システム」の点で共通するとした審決の認定に誤りはない。

3 取消事由3(相違点の判断の誤り)に対して

(1) 相違点1の判断について

フィッシング対策として,Webサイトの不審点を見てチェックすることは当業

者に周知の事項であるところ,引用発明は,「Internet Explore

rのツールバーのボタンからワンクリックで表示中のWebページのサーバのWh

ois情報を表示させる」システムであるから,引用発明を,フィッシング対策と





してWebサイトの不審点を見てチェックするために用いることは,当然思いつく

ことである。

審決は,相違点1に係る構成が引用文献2に記載されているとしたのではなく,

あくまで上記周知の事項の例示として,引用文献2を引用したにすぎない。

(2) 相違点2及び3の判断について

引用発明の「Internet Explorerのツールバーのボタン」は,

「ワンクリックで表示中のWebページのサーバのWhois情報を表示させるも

の」であるから,そのボタンの表示は,ユーザが,「このボタンをクリックすると,

表示中のWebページのサーバのWhois情報を確認できる」と,一見して理解

できる表示内容とすべきである。また,ツールバー上にアドレス情報を表示するこ

と及びアイコンを表示することは,いずれも周知技術である(引用文献2,参考文

献1)。

そうすると,引用発明のボタン表示として,「HotWhois」であることを

示すアイコン及び表示中のWebページのサーバのドメイン名を表示させて,ユー

ザが,「このボタンをクリックすると,「HotWhois」によって表示中のW

ebページのサーバのWhois情報を確認できる」と一見して理解できるように

することは,当業者が容易に想到し得たことである。

(3) 相違点4及び6の判断について

引用発明は「Internet Explorerのツールバーのボタンからワ

ンクリックで表示中のWebページのサーバのWhois情報を表示させる」もの

であるところ,表示中のWebページを消したのでは,どのWebページの「Wh

ois情報」を検索・表示したのか判らなくなる。相違点4に係る構成は,引用発

明から自明である。

参考文献3は,引用文献1の図1の写真5で表示されているはずのWhois情

報が不鮮明で視認できなかったため,Whoisサービスで得られる情報としてド

メイン名及びその所有者の組織名が含まれること,及び,この情報がフィッシング





対策においても有効活用できることを例示したにすぎない。

(4) 相違点7について

引用発明は,「表示中のWebページのサーバのWhois情報を表示させる」

構成を具備するから,「Whois情報」の表示は,「表示中のWebページ」の

関連情報である。

そうしてみると,「Whois情報」を表示中のWebページの画面上に表示さ

せることによって,そのWebページの「Whois情報」を表示していることを

明示し,ユーザが「表示中のWebページ」と「Whois情報」を見比べて両者

の間に相違や矛盾等の不審点がないか判断しやすいよう配慮することは当然であ

る。

参考文献1及び2は,Webブラウザにおいて,表示中のWebページの画面上

に関連情報を表示する技術が周知慣用されていることを例示したにすぎない。

(5) 効果について

原告が主張する,補正発明はドメイン名の正式法人名(組織名)をWebサイト

閲覧者が同一画面内において直接確認することができるとの効果は,Whois情

報をWebブラウザと同一画面に表示することによりもたらされる効果であり,企

業名自体の本人確認の判断情報が直接表示提供されるので「なりすまし判定」が正

確に遂行できるとの効果はWhois情報として組織名を含むことによりもたらさ

れる効果であるから,前記(1)ないし(4)の容易推考において期待される予測可能な

効果にすぎない。また,なりすましHPの発見が迅速正確に実行でき,フィシング

詐欺防止を一層確実にすることが可能となるとの効果は,引用発明も奏する効果で

ある。

そうである以上,フィッシング詐欺の一種であるファーミング詐欺防止の効果も

顕著な効果ではない。

4 補正前発明について

上記1ないし3と同様である。





第5 当裁判所の判断

1 取消事由1(手続違背)について

(1) 原告は,審決は拒絶査定の理由と異なる拒絶の理由をもって補正発明の独

立特許要件(進歩性)を否定したものであり,原告は,それに対する意見書を提出

し補正をする機会が与えられなかったから,審決は特許法159条2項で準用する

同法50条の規定に違反する審判手続によりなされたものであり,違法として取り

消されるべきであると主張する。

審決は,補正発明は,平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前

の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項の規定により準用

する特許法126条5項の規定(独立特許要件)に違反するので,特許法159条

1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものと判

断した。特許法159条2項により読み替えて準用する同法50条ただし書には,

「ただし・・・第53条第1項の規定による却下の決定をするときは,この限りで

ない。」とあり,53条1項の規定により補正却下の決定をするときは,拒絶の理

由を通知することとはされていない。

そこで検討するに,平成18年法律第55号による改正前の特許法50条本文は,

拒絶査定をしようとする場合は,出願人に対し拒絶の理由を通知し,相当の期間を

指定して意見書を提出する機会を与えなければならないと規定し,同法17条の2

第1項1号に基づき,出願人には指定された期間内に補正をする機会が与えられ,

これらの規定は,同法159条2項により,拒絶査定不服審判において査定の理由

と異なる拒絶の理由を発見した場合にも準用される。この準用の趣旨は,審査段階

で示されなかった拒絶理由に基づいて直ちに請求不成立の審決を行うことは,審査

段階と異なりその後の補正の機会も設けられていない(もとより審決取消訴訟にお

いては補正をする余地はない。)以上,出願人である審判請求人にとって不意打ち

となり,過酷であるからである。そこで,手続保障の観点から,出願人に意見書の





提出の機会を与えて適正な審判の実現を図るとともに,補正の機会を与えることに

より,出願された特許発明の保護を図ったものと理解される。この適正な審判の実

現と特許発明の保護との調和は,拒絶査定不服審判において審判請求時の補正が行

われ,補正後の特許請求の範囲の記載について拒絶査定の理由と異なる拒絶の理由

を発見した場合にも当然妥当するものであって,その後の補正の機会のない審判請

求人の手続保障は,同様に重視されるべきものといえる。

以上の点を考慮すると,拒絶査定不服審判において,本件のように審判請求時の

補正として限定的減縮がなされ独立特許要件が判断される場合に,仮に査定の理由

と全く異なる拒絶の理由を発見したときには,審判請求人に対し拒絶の理由を通知

し,意見書の提出及び補正をする機会を与えなければならないと解される。これに

対し,当該補正が他の補正の要件を欠いているような場合は,当然,補正を却下す

べきであるし,当該補正が限定的減縮に該当するような場合であっても,当業者に

とっての周知の技術や技術常識を適用したような限定である場合には,査定の理由

と全く異なる拒絶の理由とはいえず,その周知技術技術常識に関して改めて意見

書の提出及び補正をする機会を与えることなく進歩性を否定して補正を却下して

も,当業者である審判請求人に過酷とはいえず,手続保障の面で欠けることはない

といえよう。

そうすると,審判請求時の補正が独立特許要件を欠く場合には,拒絶理由通知

しなくとも常に補正を却下することができるとする被告の主位的主張は,上記の説

示に反する限度で採用することができない。

(2) 以上の点を踏まえて更に検討するに,本件において,拒絶査定の理由は,

「補正前発明は,当業者が,引用文献1に記載された発明に対して,引用文献2に

開示された技術及び周知技術を適用して容易に発明をすることができた」というも

のであるのに対し,審決の補正却下の理由は,「補正発明は,当業者が,引用文献

1に記載された発明に対して周知技術を適用して容易に発明することができた」と

いうものである。そうすると,両者の相違は,引用文献2に開示された技術につい





て,拒絶査定ではこれを公知技術としたのに対し,審決ではこれを周知技術と評価

して例示したのであって,審判請求人である原告にとって不意打ちとはいえないか

ら,審判段階の独立特許要件の判断において改めてこの点について意見書の提出及

び補正をする機会を与えなくとも,手続保障の面から審決に違背はないといえる。

この点について原告は,審決が,拒絶理由通知書及び拒絶査定において引用され

なかった参考文献1ないし3を引用しており,これらに対して補正できないことに

かんがみれば十分な反論を行うことは困難であり,審理手続を尽くすことができた

とはいえないと主張する。

しかし,参考文献1ないし3は,審決において周知技術や常套手段を示すものと

して引用されたものであり,後記3(2)及び(3)のとおり,いずれも実際に当業者に

とっての周知の技術や常套手段を示したものと認められるのであるから,これに対

する補正の機会が与えられなくとも(参考文献1及び2は,審判の審尋において示

されたものであり,原告からこれらに対する反論として回答書(甲14)が提出さ

れている。),当業者である審査請求人にとって格別の不利益はないものと解され,

原告の主張には理由がない。

また,原告は,審決が,引用文献1及び2の記載の中から拒絶理由通知書及び拒

絶査定で引用した箇所とは異なる箇所を引用しており,審理手続を尽くすことがで

きなかったと主張する。

しかし,拒絶理由通知書(甲7)及び拒絶査定(甲10)では,引用文献1の一

部を適示して,引用発明の本質的部分である「Internet Explore

rのツールバーのボタンからワンクリックで表示中のWebページのサーバのWh

ois情報を表示させるシステム」という技術事項が開示されていることを示した

のに対し,審決では,当該摘示箇所を示した上で,引用発明の背景や目的効果等を

示すために別途の箇所を摘記したもの認められるから,原告にとって不利益がない

ことは明らかであり,原告の主張には理由がない。

したがって,審決が,補正発明は独立特許要件を満たさないことを理由として,





審判段階で改めて拒絶理由通知をすることなく本件補正を却下したことに誤りはな

く,原告の主張する取消事由1は理由がない。

2 取消事由2(一致点の認定誤り=相違点の看過)について

(1) 補正発明

ア 本願明細書(甲6)には次の記載がある。
【背景技術】

【0002】

近年各企業は,商工会議所等公的機関が真正な HP であることを証明するため各種

安全マークをHP上に貼り付ける等,HPのなりすまし防止に努めている。さらに,

国内で多発化が予想されるフィシング詐欺防止のために一部企業において,その防止

対策として自社発信メール全てに企業認証証明書を添付し送信する企業も現れた(2

004年11月30日産経新聞朝刊)。いずれの手段も防止という目的においては,

詐欺者に対し一応警戒を促すことになるが安全マークを誰もが知っているかという

と疑問であり,企業認証においても同様である。さらに,詐欺団は,技術的にも長け

ており,これらのマークや証明書を巧妙にまねすることを得意としている。したがっ

て,この手段では,防止できないのが現状である。

【0003】

新聞報道から「YAHoo」と「YAFoo」の区別について一般の人はその相違

を見逃すことが多く,また,現実のフィッシング詐欺の脅威について,「ITmed

iaエンタープライズ:国内でも現実になったフィッシング詐欺の脅威」として,ネ

ット掲載され,その対策として,重要なデータを入力する際,アドレスバーのURL

表示を確認すべきであること,鍵アイコンの表示チェックし,SSLによる暗号化通

信の実行を確認すべきことが示唆されている。

・・・・・・

【発明が解決しようとする課題】

【0007】





・・・先行特許出願において,その本人確認をする場合に利用される「WHOISサ

ービス」の使用方法は,本人確認の際に,別途,この「WHOISサービス」を利用

して検索する場合,新たに「WHOISサービス」を呼び出し,呼び出された画面に

ドメイン名情報として,例えば「clovernetwork.co.jp」と入力

する作業が必要となるため,これらの「WHOISサービス」を呼び出しと「clo

vernetwork.co.jp」の入力作業を必要とし煩雑な作業を余儀なくさ

れ,また,一端,検索結果を別途記録しておき,その上で,本人確認の事前処理画面

に戻って,確認作業をしなければならなかった。このため,本人確認のための作業時

間が掛かると共に,処理作業が煩雑にならざるを得なかった。

このため,本人確認の事前処理画面において,本人確認の処理作業の煩雑さに基づ

き確認ミスの発生を生みやすい処理環境の改善が望まれ,また,「WHOISサービ

ス」を利用する本人確認処理時間を短縮できることが望まれていた。

・・・・・・

【課題を解決するための手段】

【0009】

本願発明のフィッシング詐欺防止システムは,ユーザーパソコンに搭載されている

IE(インターネットエクスプローラー)にプラグインされているソフトを呼び出し,

呼び出されたソフトに「Whois」のパラメータとしてドメイン名を付して「Jp

rs」に跳び,パラメータのドメイン名により「Whois」検索を実行し,jpr

s登録情報が得られた場合,「jprs」に登録されている属性をバッファ内に取り

込と共に検索結果のURLの属性を記録し,ユーザーパソコンのWebサイト画面に

表示するソフトを備え,検索結果,URL属性の画面に表示により,ドメイン名の正

式法人名(組織名)の正誤をWebサイトの表示画面から直接判断可能とする。

・・・・・・

【発明を実施するための最良の形態】

【0012】





図1は・・・表示画面D1 において,表示された「アドレス(D)」欄に「htt

p://www.google.co.jp/」を入力した場合・・・jprs「W

hois」検索アイコン表示ボタンBに表示の「google.co.jp」は,表

示しているURLから抽出するものであり,詳しくはユーザーパソコンに搭載されて

いるIE(Internet Explola)がツールバーに返すステータスに含

まれる情報を基に表示される。・・・

【0013】

図2は,表示画面D1において,その表示画面Aの・・・jprs「Whois」

検索アイコン表示ボタンBの操作によって,google.co.jpを検索した画

面上で,ソフトウェア「DocWall」(商標登録出願中)によりjprs「Wh

ois」検索が実行され,ドメイン情報「google.co.jp」の検索結果,

そのURLの属性情報の全部叉は一部が画面表示される。・・・

イ 上記記載によれば,補正発明に関しては,以下のとおりのことが認めら

れる。

近年各企業は,HPのなりすまし防止やフィシング詐欺防止のために各種安全マ

ークをHP上に貼り付けたり,自社発信メールすべてに企業認証証明書を添付し送

信するなどしているが,これらのマークや証明書では,防止できないのが現状であ

る。そして,「YAHoo」と「YAFoo」の区別について一般の人はその相違

を見逃すことが多いこと,また,フィッシング詐欺の脅威の対策として,重要なデ

ータを入力する際,アドレスバーのURL表示を確認すべきであることなどが知ら

れている。

フィッシング詐欺防止のためには,「WHOISサービス」が使用されるが,本

人確認の際に,この「WHOISサービス」を利用して検索する場合,新たに「W

HOISサービス」を呼び出し,呼び出された画面にドメイン名情報を入力する作

業が必要となる。また,検索結果を別途記録しておき,その上で,本人確認の事前

処理画面に戻って,確認作業をしなければならず,本人確認のための作業時間がか





かるとともに,処理作業が煩雑にならざるを得なかった。

補正発明は,IE(インターネットエクスプローラー)にプラグインされている

ソフトを呼び出し,「Whois」のパラメータとしてドメイン名を付して「Wh

ois」検索を実行し,検索結果のURLの属性を記録し,ユーザーパソコンのW

ebサイト画面に表示するソフトを備え,検索結果,URL属性を画面に表示する

ことにより,ドメイン名の正式法人名(組織名)の正誤をWebサイトの表示画面

から直接判断可能とするものである。

その実施形態として,アドレス欄に「http://www.google.c

o.jp/」を入力した場合,ツールバーの表示しているURLから抽出してjp

rs「Whois」検索アイコン表示ボタンBにURLが表示され,その表示ボタ

ンBの操作によって,google.co.jpを検索した画面上で,jprs「W

hois」検索が実行され,ドメイン情報「google.co.jp」の検索結

果,そのURLの属性情報の全部又は一部が画面表示される。

(2) 引用発明

ア 引用刊行物(甲1)には次の記載がある。
「まずはネットワークのセキュリティに役立つツールを見ていこう。セキュリティ

というとウイルス対策が真っ先に思い浮かぶが,ことウイルス対策に関しては,1本

のアンチウイルスソフトを導入して,定義ファイルをきちんと更新するのがもっとも

効果的であり,複数のアンチウイルスソフトを導入する意味はほとんどない。そこで

ここでは,不正侵入(アタック)から身を守るのに有効なファイアウォールソフトと

組み合わせて使いたいツールを取り上げる(p.121 図1)。

ファイアウォールは基本的に許可されていない外部からのアクセスはすべて不正

アクセスとみなし,シャットアウトする。必要なアクセスでも,設定が不十分な場

合などにはシャットアウトしてしまうこともあるわけだ。このような場合,多くのフ

ァイアウォールソフトは,具体的なIPアドレスを示して,そこからアクセス要請が

来ているが受け入れてよいかとユーザに問い合わせる。よく分からない場合はとりあ





えず却下するべきだが,先にも触れたように実は不正ではないアクセスの可能性もあ

る。

そこで,IPアドレスを頼りに相手が信用できる者かどうか,悪意を持って不正侵

入を仕掛けているのかどうかを調べてみよう。」(121頁右欄1行〜122頁左欄

20行)

「より手軽にWhois検索を行いたいなら,「HotWhois」が便利だ。世

界中の88か所のWhoisサーバに接続し,指定ホストのWhois情報を検索す

る。Magic NetTraceと同様に,Internet Explorer

の「ツール」メニューから呼び出せ,ツールバーのボタンからはワンクリックで表示

中のWebページのサーバのWhois情報を表示できる。」(122頁中欄25行

〜右欄3行)

「自分のマシンだけでなく,LAN全体のセキュリティ強化に役立つツールも紹介

しておこう(図2)。」(122頁右欄22行〜24行)

イ 審決が認定した引用発明

上記引用文献1の記載から審決が認定した引用発明は,当事者間に争いがない。

ウ 補正発明と引用発明との対比

審決は,「補正発明における「フィッシング詐欺」とは,ユーザのコンピュータ

に不正に侵入し偽サイト情報を提示するものであるから,上位概念において不正侵

入であると言え,よって,引用発明の「不正侵入を防ぐためのマシンとネットワー

クよりなるシステム」と,補正発明の「フィッシング詐欺防止システム」とは,と

もに,“不正侵入防止システム”である点で共通すると言える。」と認定し,一致

点として「不正侵入防止システム」を挙げている。

補正発明は,フィッシング詐欺を防止するための本人確認迅速化補助システムで

あるが,補正発明が防止しようとする「フィッシング詐欺」は,本願明細書の記載

からみて,原告のいうように「例えば,メールを送りつけて偽のWebサイトにユ

ーザーを誘導したり,真正のWebサイトに侵入して予め構築しておいたフィッシ





ング用のポップアップ画面を経由してユーザーを誘導したりすることによって,ユ

ーザーを欺罔して錯誤に陥れ,IDやパスワード,銀行口座番号などをユーザーに

入力させて,それらを盗みとろうとするもの」である。すると,フィッシング詐欺

は,ネットワークのセキュリティの問題ということはできるが,引用発明のファイ

アウォールソフトが防止する「許可されていない外部からのアクセス」と同様な意

味で,「ユーザのコンピュータに不正に侵入」するものとはいえない。したがって,

審決が,引用発明と補正発明とは,「不正侵入防止システム」である点で共通する

との審決の認定は誤りである。

被告は,本願出願時点では,フィッシング詐欺は,@ユーザに電子メールを送り

つけ偽のリンク先をクリックさせる方法に加えて,Aユーザのコンピュータにウィ

ルスを侵入させて偽のサイトに導く方法も周知であった(乙1)から,補正発明と

引用発明が「不正侵入防止システム」の点で共通するとした審決の認定に誤りはな

いと主張する。しかし,フィッシング詐欺に上記@及びAの両者が含まれるとして

も,補正発明が上記Aのウィルスの侵入による「フィッシング詐欺」を対象とする

ものとはいえないことは,本願明細書の記載からみて明らかであるから,被告の主

張は理由がない。

エ 審決の一致点の認定の誤りの審決の結論への影響

審決は,「一致点」として「不正侵入防止システム」を挙げつつも,他方で「相

違点1」として,「補正発明が「フィッシング詐欺防止システム」であるのに対し,

引用発明は,「不正侵入防止システム」である点。」を認定し,両者を相違したも

のと扱った上で,「相違点1」の容易想到性を判断している。

したがって,上記一致点についての認定の誤りは,審決の結論に影響を及ぼすも

のではない。

3 取消事由3(相違点の判断の誤り)について

(1) 相違点1について

引用文献2(甲2)には,関連する図とともに,以下の技術的事項が記載されて





いる。
「フィッシング詐欺はメールを使ってユーザーを偽サイトへおびき寄せ,カード情

報や個人情報などを入力させて情報を盗む行為である。

・・・・・・

こうした手口には,ユーザーがメールやWebサイトに不審な点がないかをチェッ

クすることが肝心だ。」(57頁中欄4行〜右欄8行)

・・・・・・

「DNSの応答後にデータベースに接続

これらの機能をオンにしてWebサイトへアクセスする際の流れを図5に示した。

一般的にURLを入力すると,・・・

DNSサーバーで名前解決後,ウイルスバスター2006はトレンドマイクロのデ

ータベースに接続してWebサイトの評価情報を取得する。評価情報とは,ドメイン

名,IPアドレス,Webサイトのカテゴリ,信頼性情報(信頼サイト,フィッシン

グ詐欺サイト,未登録サイト)の四つ。」(58頁中欄15行〜右欄14行)

58頁の図4には,「Internet Explorer」のツールバーにつ

いて表示するとともに,当該ツールバーの「アドレス」バーの横にブラウザに表示

中のページのアドレス情報が表示された態様が示され,当該「アドレス」バーに関

連して,下段のURL表示に関する説明として,「実際に入力したURLを表示(異

なるサイトにリダイレクトされたかどうかをアドレスバーと比較できる)」と記載

されている。

また,58頁の図5左図には,ユーザ端末からWebサイトへアクセスするため

に,トレンドマイクロのデータベースにおいてサイト評価を行った後,Webサー

バーからコンテンツを受け取る仕組みが示されており,図中下方のユーザ端末から,

DNSサーバーにURLを送信して(A)名前解決を行った後,トレンドマイクロ

のデータベースに「ドメイン情報」を送信し(C),ドメイン名を含むサイト評価

情報が返される(D)態様が示されている。





上記のとおり,引用文献2には,メールを使ってユーザーを偽サイトへおびき寄

せ,カード情報や個人情報などを入力させて情報を盗む態様によるフィッシング詐

欺を防ぐには,ユーザーがメールやWebサイトに不審な点がないかをチェックす

る必要があることが記載され,さらに,実際に入力したURLを表示することによ

り,異なるサイトにリダイレクトされたかどうかをアドレスバーと比較できること

などが記載されているから,フィッシング詐欺を防ぐことを目的として,Webサ

イトに不審な点がないかをチェックするためには,URLやIPアドレスを確認す

ることが有効であることは明らかである。

すると,引用文献2に接した当業者は,不正侵入を防ぐためにIPアドレスに基

づいて相手が信用できる者かどうかを調べる引用発明を,Webサイトに不審な点

がないかをチェックすることにより,フィッシング詐欺を防ぐために用いることを

容易に想到し得るといえる。

よって,審決の相違点1の判断に誤りはない。

(2) 相違点2,3について

ア 引用文献2の上記(1)の記載によれば,「インターネットアクセスに通常

用いられるブラウザのツールバー上に,現在表示しているページのアドレス情報を

表示する」ことが周知技術であることが認められる。

イ 参考文献1(甲3)には,以下の記載がある。
「「履歴」の一覧を表示するには,時計の形をした「履歴」ボタンをクリックしま

す(図4)。するとウインドウの左側に日付順にまとまって表示されるので,そのペ

ージをいつ見たかを思い出してその日のアイコンをクリックします(図5@)。する

と,過去に見たホームページがサイトごとに表示されます。サイト名をクリックする

と(図5A),今度はページ単位で表示されるので,見たいページを選んでクリック

すれば(図5B),ウインドウの右側にそのページが表示されます(図6)。」(8

4頁第3段目右から15行〜85頁第1段目右から7行)

85頁の図「5」には,ブラウザのページ表示画面が示されており,右側にペー





ジの表示画面が,左側に履歴の一覧表示画面が,同一画面において表示され,また,

左側の履歴一覧表示では,ページ単位で表示された履歴が,クリック可能な状態で,

アイコン及び対応するアドレス情報の表示とともに表示された態様が示されてい

る。

上記の記載等によれば,「ブラウザ上でクリックするボタン機能をアイコンやペ

ージに関する情報とともに表示させること」が常套手段であることが認められる(常

套手段1)。

ウ 引用文献2の上記(1)の記載によれば,「ページに関する情報としてのド

メイン名をURLより生成すること」が常套手段であることが認められる(常套手

段2)。

エ 引用発明の「ツールバーのボタン」に,上記常套手段1,2の存在を前

提として,上記周知技術を適用すると,@「ツールバーのボタン」は,クリックす

ることにより,「HotWhois」の機能を実現するボタンといえるから,「W

hois検索アイコン表示ボタン」とすること,A「アイコンやページに関する情

報」としての「ドメイン名」を表示すること,B表示する「ドメイン名」を「ユー

ザーが閲覧中のWebサイトのURLから抽出する」ことは,いずれも当業者が容

易に想到し得るといえるから,相違点2,3について容易想到との審決の判断に誤

りはない。

オ 原告は,引用文献2及び参考文献1には,Whois検索アイコン表示

ボタンとドメイン名を結びつけた上記構成を開示されていないとするが,審決は,

そのような構成が開示されていると認定したものではなく,引用文献2及び参考文

献1の記載を例示して,上記周知技術,及び常套手段1,2の存在を示した上で,

引用発明に周知技術を適用することにより,相違点2,3に関する構成が容易に想

到し得ると判断したものである。上記のとおり,その判断に誤りはないから,原告

の主張には理由がない。

(3) 相違点4〜8について





原告は,補正発明は,「インターネットを介して検索結果のドメイン名およびそ

の組織名を(前記ユーザーパソコンのバッファ内に取り込)」むのであって,参考

文献1のように,これらの項目について,有名サイト情報のみをあらかじめシステ

ム内に格納するものではない。また,参考文献1及び参考文献2(甲4)には,イ

ンターネットを介して検索結果のドメイン名およびその組織名を閲覧中のWebサ

イトと同一の画面上に表示するという上記構成について,開示も示唆もされていな

いと主張する。

しかし,参考文献1,2は,上記常套手段1及び周知技術(「・・・ブラウザの

表示ページに関する情報を,表示ページと同一画面上において表示すること」)の

存在を例示するために提示されたものであって,Whois情報の検索に関して示

されたものではない。

そして,引用発明の「Whois情報」は,世界中のWhoisサーバから,指

定ホストのWhois情報を検索した結果であるから,この点において補正発明と

異なるものではなく,原告の主張には理由がない。

(4) 効果について

原告は,補正発明のフィッシング詐欺防止システムは,ドメイン名の正式法人名

(組織名)をWebサイト閲覧者が同一画面内において直接確認することができ,

企業名自体の本人確認の判断情報が直接表示提供されるので,「なりすまし(偽)

判定」が正確に遂行でき,また,近年発生のなりすましHPの発見が迅速・正確に

実行でき,フィッシング詐欺防止を一層確実にすることが可能となり,また,ファ

ーミング詐欺防止においても同様の効果を有することができると主張する。

しかし,上記(1)〜(3)のとおり,引用発明を相違点1ないし8の構成とすること

は,当業者が容易に想到し得たことである。そして,そのような構成とした場合に

は,原告の主張する効果を奏することは明らかであるから,補正発明の奏する効果

は,引用発明及び周知技術等の奏する効果から予想される範囲内のものである。

すると,補正発明の効果についての審決の判断に誤りはなく,原告の主張には理





由がない。



第6 結論

以上によれば,原告の主張する取消事由にはいずれも理由がなく,原告の請求に

は理由がない。よって,主文のとおり判決する。



知的財産高等裁判所第2部




裁判長裁判官

清 水 節




裁判官

池 下 朗




裁判官

新 谷 貴 昭






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