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事件 平成 25年 (行ケ) 10062号 審決取消請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 知的財産高等裁判所 
判決言渡日 2013/11/12
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
判例全文
判例全文
平成25年11月12日判決言渡

平成25年(行ケ)第10062号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 平成25年10月29日

判 決



原 告 たいまつ食品株式会社




原 告 マルシン食品株式会社




原 告 株 式 会 社 丸 一 オ ザ ワ



原告ら訴訟代理人弁護士 八 掛 俊 彦

八 掛 順 子

弁理士 岩 田 敏

岩 田 享 完



被 告 越 後 製 菓 株 式 会 社



訴訟代理人弁護士 高 橋 元 弘

末 吉 亙

弁理士 中 島 淳

清 武 史 郎

坂 手 英 博





小 田 富 士 雄

吉 井 雅 栄



主 文

原告らの請求を棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。



事 実 及 び 理 由

第1 原告らの求めた判決

特許庁が無効2012−800040号事件について平成25年1月29日に

した審決のうち特許請求の範囲請求項2にかかる部分を取り消す。



第2 事案の概要

本件は,特許無効不成立審決の取消訴訟である。争点は,@発明未完成,A実

施可能要件違反,B明確性要件違反である。

1 特許庁における手続の経緯

被告は,発明の名称を「餅」とする特許第4636616号(以下「本件特許」

という。特願2006−90684号(特願2002−318601号の分割出

願,原出願日:平成14年10月31日),登録日:平成22年12月3日)の

特許権者である(甲23)。

原告らは,平成24年3月30日,本件特許について無効審判を請求した(無

効2012−800040号)。

特許庁は,平成25年1月29日,「本件審判の請求は,成り立たない。」と

の審決をし,その謄本は,同年2月7日,原告らに送達された。

被告は,本訴提起後である平成25年5月31日,本件特許の特許請求の範囲





の請求項1と本件明細書の段落【0010】の削除を内容とする訂正審判を請求

した(訂正2013−390084,乙25の1)。特許庁は,同年7月2日,

訂正を認める旨の審決をした(乙25の2)。

2 本件発明の要旨

本件発明の要旨は,平成25年5月31日付け審判請求書添付の訂正特許請求

の範囲(乙25の1)に記載された下記のとおりである(F〜Jの分説記号は裁

判所が付した。)。

【請求項1】(削除)

【請求項2】

F焼き網に載置して焼き上げて食する輪郭形状が方形の小片餅体である切餅であ

って,

G この焼き網に載置する際に,最も面積の大きい対向する広大面の一方を載置

底面他方を上面とする高さ寸法が幅寸法及び奥行き寸法より短い薄平板状の偏平

方形体の切餅の,前記上下の広大面間の立直側面に,この上下の広大面間の立直

側面に沿う周方向に長さを有する一若しくは複数の切り込み部又は溝部を設け,

H この切り込み部又は溝部は,この立直側面に沿う周方向で且つ前記広大面と

平行な直線状であって,四辺の前記立直側面のうちの対向二側面である長辺部の

立直側面の双方に夫々長さいっぱいに形成した切り込み部又は溝部であり,刃板

に対して前記小片餅体を前記長辺部長さ方向に相対移動することで形成した切り

込み部又は溝部として,

I 焼き上げるに際し,前記立直側面の周方向に形成した前記切り込み部又は溝

部の上側が下側に対して持ち上がり,最中やサンドウイッチのように上下の焼板

状部の間に膨化した中身がサンドされている状態に膨化変形することで膨化によ

る外部への噴き出しを抑制するように構成したことを特徴とする

J 餅。





3 審判で主張された無効理由

審判で請求項2について主張された無効理由は,以下のとおりである。

(1) 無効理由1(発明未完成)

本件発明は,構成G及びHである「切り込み部又は溝部」(スリット)を設け

ることで,スリットの「上側が下側に対して持ち上がって,最中やサンドウイッ

チのように上下の焼板状部の間に,膨化した中身が,サンドされている状態に膨

化変形することで,膨化による外部への噴き出しを抑制する」という構成(構成

I)の技術内容が,当業者が反復実施して目的とする技術効果を挙げることがで

きる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されていないため,発明として

未完成のものである。

(2) 無効理由2の1(実施可能要件違反)

甲2及び3の実験結果及び報告書から,スリットの存在が必ずしも膨化に伴う

噴き出しの抑制に結び付かないといわざるを得ず,餅の焼き方や材質などについ

ての付帯条件が必要であるところ,本件明細書の発明の詳細な説明には,付帯条

件の記載がなく,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記

載されていない。

「膨化した中身」を餅としての実体を有する澱粉質のものと解釈した場合,「最

中やサンドウイッチのように上下の焼板状部の間に膨化した中身がサンドされて

いる状態に膨化変形する」ための具体的な技術が,本件明細書の発明の詳細な説

明には,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されて

いない。

(3) 無効理由2の2(明確性要件違反)

本件発明の「膨化した中身」及び「焼板状部」は,具体的に何を意味するか不

明であり,本件発明は明確でない。

4 審決の理由の要点





審決は,以下のとおり判断した。

(1) 無効理由1(発明未完成)について
本件発明は,スリットを設けることで,スリットの「上側が下側に対して持ち上

がって,最中やサンドウイッチのように上下の焼板状部の間に,膨化した中身が,

サンドされている状態に膨化変形することで,膨化による外部への噴き出しを抑制

する」という構成の技術内容が,当業者が反復実施して目的とする技術効果を挙げ

ることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されているといえ,未

完成発明であるとはいえず,本件特許は,特許法29条1項柱書の「発明」に該当

するから,特許法123条1項2号に該当し無効である,とすることはできない。

(2) 無効理由2の1(実施可能要件違反)について
本件明細書の発明の詳細な説明は,当業者が本件発明の実施をすることができる

程度に明確かつ十分に記載されているといえるから,本件特許は,特許法36条

項1号に規定する要件を満たしており,特許法123条1項4号に該当し無効であ

る,とすることはできない。

(3) 無効理由2の2(明確性要件違反)について

本件発明は明確であり,本件特許は,特許法36条6項2号に規定する要件を満

たしているから,特許法123条1項4号に該当し無効である,とすることはでき

ない。



第3 原告ら主張の審決取消事由

1 取消事由1(発明未完成に関する認定判断の誤り)

(1) 最中サンドウイッチ要件の無視

審決は,「本件発明で,焼き網に垂れ落ちるほどの噴出しが抑制できるメカニ

ズムを考察すると,側面にスリットを入れた本件発明の餅は,主として上下方向

から加熱するのが通常であるオーブントースターで焼き上げた際に,直接放射熱





が当たる上面及び底面に比べて,放射熱が直接当たりにくい側面にスリットが設

けられているため,加熱に伴い餅内部の水が水蒸気となりかつ空気が膨張して,

餅を膨らませ,内部の圧力に餅の表面が耐えられなくなると,上下面よりも放射

熱が直接当たりにくいため焼けて固くなるのが遅いと考えられる側面に設けられ

たスリットが,割れの契機となって,そこから割れ,上側が下側に対して持ち上

がり,内部に空洞が生じ,結果的に外部への噴出力が減少して,焼き網に垂れ落

ちるほどの餅の噴出しが抑制されることは,本件明細書の記載及び自然法則から

極自然に考えられることである。」と認定した上で,「以上のとおり,本件明細

書及び図面の記載から,本件発明の餅は,焼き上げた際に,内部に空洞ができ外

部への噴出力が減少して,つまり,餅は最中やサンドウイッチ(やや片持ち状態

に持ち上がる場合が多い)のように上下の焼板状部の間に膨化した中身がサンド

されている状態に膨化変形し,焼き網に付着するほどの餅の噴出しを抑制できる

ものであることが理解できる。」としているが,「内部に空洞ができ外部への噴

出力が減少して」ということから,直ちに,「餅は最中やサンドウイッチ(やや

片持ち状態に持ち上がる場合が多い)のように上下の焼板状部の間に膨化した中

身がサンドされている状態に膨化し」というには論理の飛躍がある。

スリットの設定による効果は,単に「スリットの上側が持ち上がること」をも

って直ちに生じるものではなく,@切り込み部の上側が下側に対して持ち上がる,

A膨化した中身が上下の焼板状部の間にサンドされ,餅は最中やサンドウイッチ

のような形状に膨化変形する(最中サンドウイッチ要件),B(膨化をこのよう

導くことによって)餅の中身の外部への噴き出しを抑制する,のように,「最中」

「サンドウイッチ」形状に膨化変形する過程を経て初めて生じるものである。審

決は,本件特許請求の範囲に明確に記載され,しかも,本件特許の出願過程にお

いて強く主張された最中サンドウイッチ要件を無視し,上方への餅の「膨化」と

噴き出しの「抑制」という点だけしか考慮しておらず,「最中やサンドウイッチ





のような状態」を単なる「膨化」の修飾語的な意味にしか捉えていない。

したがって,審決は本件特許の構成Iの解釈を誤ったものである。

(2) 「片持ち」状態は本件特許請求の範囲に属さない

「最中やサンドウイッチのような形状」とは,「最中」「サンドウイッチ」い

ずれの場合も,2片の板状のもの(皮,薄く切ったパン)を合わせ,この両片の

間に,中身(餡,ハム・卵・野菜など)を詰めたり挟みこんだりする形状をいう

ので,「4側面切り込み」の場合は4側面の切り込み4つすべての上側が,「対

向2側面切り込み」の場合は2側面の切り込み両方の上側が,それぞれ持ち上が

り,その結果4側面全部が持ち上がらなければ「最中」「サンドウイッチ」形状

にはならない。本件明細書には,「最中」「サンドウイッチ」という他に「焼きは

まぐりができあがったようなやや片持ち状態に開いた貝のような形状」のものも

できるとの記載があるが,焼きはまぐりは蝶番(ちょうつがい)部分を支点とし

て口が開くのであって,支点である蝶番部分は常に閉鎖していて,開くことはな

いから,「片持ち状態」とは,「4側面切り込み」餅の場合は4か所(4側面)

のうちの1か所しか上側が持ち上がらない状態をいい(隣接2箇所も引き摺られ

て持ち上がりはするが),また,「対向2側面切り込み」餅の場合は2か所(2

側面)のうちの1か所しか上側が持ち上がるにすぎず,持ち上がった側の反対側

は持ち上がらず,そのような持ち上がり方をした形状は,「最中」「サンドウイ

ッチ」形状ではなく,このような形状のものは「最中」又は「サンドウイッチ」

という概念に含まれない。そのように焼き上がった餅は,被告が主張する「均一

な焼き上がり」「食べ易く,美味しい焼き上がり」という作用効果目的を達成で

きない。したがって,「片持ち形状」になる場合は,本件特許請求の範囲にから

外れるものであるから,本件特許の実施態様ということができない。

もともと,「片持ち形状」という膨化は,餅を焼けば常に発生する現象であり,

それは側面に切り込み部があるなしにかかわらない。餅を焼けば,そのほとんど





が「片持ち」状態になることは,本件特許の出願時においても公知の事実であっ

たのであるから,仮に,餅の膨化現象という観点から「片持ち状態」が「最中や

サンドウイッチのような状態」に含まれるという解釈があるとしても,特許請求

の範囲の解釈上,公知の事実は除外すべきであるので,「片持ち状態」の膨化変

形は本件発明の対象外である。

本件特許の出願過程をみても,本件特許出願時の特許請求の範囲には最中やサ

ンドウイッチ要件の記載はなかったところ(甲13),被告は,平成18年2月

27日にした審判請求に伴う2通の手続補正書(平成18年3月29日付)のう

ち,明細書の全文補正にかかる補正書(甲20)において,@最中やサンドウイ

ッチのような上下の焼板状部の間に膨化した中身がサンドされている状態,ある

いはA焼きはまぐりができあがりつつあるようなやや片持ち状態に開いた貝のよ

うな形状の膨化変形の状態のうち,@の状態のみを加えて構成を限定し,審判請

求の理由にかかる補正書(甲21)において,@のみを構成に加えることを明言

し,その結果,Aは構成にしないことが確定した。この補正に関する特許庁の審

尋において,被告は,平成19年1月4日付回答書(甲11)をもって,最中サ

ンドウイッチ要件をもって本件特許の請求範囲を減縮したことを明らかにした。

このように,被告は,「片持ち状態」を外して「最中やサンドウイッチ状態」に「特

定」しているのであるから,「片持ち状態」は独立して本件特許の要件たり得な

い。

本件特許において「片持ち状態」 「最中やサンドウイッチのような状態」
は (最

中やサンドウイッチの上下の皮やパンがほぼ平行状態で中身を挟む状態)という

概念の適用範囲内,すなわち,「最中」及び「サンドウイッチ」という概念の外延

内,になければならない。蝶番部の開口約60度を超えるようなものは「最中や

サンドウイッチのような状態」には含まれないというべきである。審決は,この

点については一切判断せず,したがって,「片持ち」はすべて「最中やサンドウ





イッチのような状態」に該当するということになるが,誤っている。

(3) 噴き出し部位の特定ということについて

審決は,本件明細書及び図面の記載から,「餅を焼いて食べる場合,加熱時の

膨化によって内部の餅が外部へ突然膨れ出て,焼き網に付着することが多い」と

いう問題があったが,「膨化による噴出し部位は特定できず制御することはでき

なかったことを課題として認識し,切り込み(スリット)の設定によって,噴出

し位置を特定でき,しかも焼き途中での膨化による噴出しを制御できる」ように

本件発明の構成を有する餅を創作したものであると認定し,「本件発明で,焼き

網に垂れ落ちるほどの噴出しが抑制できるメカニズムを考察すると,主として上

下方向から加熱するのが通常であるオーブントースターで焼き上げた際に,直接

放射熱が当たる上面及び底面に比べて,放射熱が直接当たりにくい側面にスリッ

トが設けられているため,加熱に伴い餅内部の水が水蒸気となりかつ空気が膨張

して,餅を膨らませ,内部の圧力に餅の表面が耐えられなくなると,上下面より

も放射熱が直接当たり焼けて固くなるのがおそいと考えられる側面に設けられた

スリットが,割れの契機となって,そこから割れ,上側が下側に対して持ち上が

り,内部に空洞が生じ,結果的に外部への噴出力が減少して,焼き網に垂れ落ち

るほどの餅の噴出しが抑制されることは本件明細書の記載及び自然法則から極自

然に考えられることである。」と判断しているが,具体的理論的な理由の説明が

ない。「餅の中身が噴き出す部位の特定」ということが何を意味しているのか不

明である。

本件発明の特徴に「噴き出しを抑制すること」(すなわち噴出をしないこと)

を主張しながら,「噴出部位の特定」を特徴とすることは相反する現象であって

矛盾している。審決は,矛盾した明細書の記載を何の疑問もなくそのまま本件発

明の課題と目的として認定し,これを基礎にしてスリットの有無による膨化の問

題を判断しているが,基礎をあいまいにしてなされた審決の判断は誤っている。





(4) 構成Iの技術内容を具体的に裏付ける証拠がない

審判手続において提出された餅の焼成実験結果は,ア(原告実験1,甲3,1

2),イ(被告実験1,甲24),ウ(原告実験2,甲18,19)及びエ(原

告実験3,甲8)の4つである。

審決は,これらの実験結果に関して,@ア及びイの実験結果は,オーブントー

スターがマイコン制御か否かにかかわらず,スリットが本件発明の構成と目的と

する作用効果の関係に一定の寄与があることを示している,Aウ及びエの実験結

果は,マイコン制御のオーブントースターでは,スリットが噴き出し抑制に必ず

しも寄与しないことを示しており,実験の条件により実験結果にバラツキが生じ

ている,と評価した上で,「実験結果を総合的にみて,スリットを設けることで,

スリットの「上側が下側に対して持ち上がって,最中やサンドウイッチのように

上下の焼板状部の間に,膨化した中身が,サンドされている状態に膨化変形する

ことで,膨化による外部への噴き出しを抑制する」という構成の技術内容が,当

業者が反復実施して目的とする技術効果を挙げることができる程度にまで具体的

・客観的なものとして構成されていることが(実験結果により)裏付けられたと

するのが相当である。」と判断した。

しかし,「スリットの上側が下側に対して持ち上がり,内部に空洞が生じ,結

果的に外部への噴出力が減少する」という理論は実際に常に発生するわけではな

く,逆にスリットがあるために餅の上方向及び横方向の両方に噴き出す場合も多

い。「上方向への膨化が大きい」ということと「(横方向への)噴き出しが抑制

される」ということとの間には相関関係がない。

被告実験1には,@マイコン制御の特殊なオーブントースターである「ET−

RU25」型を選択した点(マイコン制御によって加熱と切断が繰り返されるの

で,非マイコン型と比較して庫内温度が上がらず,餅内部の膨張圧が低いので,

異常膨張は抑制される。),A老化(ミセル化。膨らまない傾向に澱粉が変化す





る。)の安定した市販の餅を使わず,ミセル化の弱い出来立てのほやほやの餅を

使ったのではないかとの疑念が強い点,Bオーブントースター内の餅の置き方(説

明書の図面では「縦置き」になっているのに,被告実験1では「横置き」されて

おり,当然焼き上がり具合が異なる。置き位置についての説明もないが,庫内の

どの位置に置くかによって,切餅の焼成の具合は変わってくるはず。)の3点に

問題があり,試験結果が妥当であるということはできない。むしろ,原告実験1

及び2からは,餅の噴き出しには,スリットの有無ではなく,ミセル化(老化)

の程度が大きな影響を与えているといえる。

したがって,審決の上記認定は誤っている。

(5) スリットを入れることにより餅は過大膨化することの看過

餅にスリットを入れると,上方向への膨化が激しく,スリットの作用で「完全

に開いた焼きはまぐり」のようになってしまい,「最中やサンドウイッチのよう

な形状になって,従来にない非常に食べ易く,また食欲をそそり,また美味しく

食することができる焼き上がり形状となる。」という本件明細書の理論は現実に

は発生しない絵空事であることがわかる。これは,明細書の記載とは逆に,スリ

ットを入れることによって生じる欠陥というべきである。審決は,スリットを入

れることによる逆効果を看過している。

(6) 杵つき餅では本件発明の課題解決はできない

餅の膨化と水分との間には相関関係がなく,餅の膨化は,ほぼ気泡含量のみに

起因するということができるから,気泡の大きさが小さくかつ含量も少なく,も

ともと焼きダレなど発生する可能性が極めて低い杵つき餅が主流を占めている切

餅市場において,本件発明が,ミキサー調製の餅など気泡含量が多い餅にしか適

用できる余地のない焼きダレ防止の技術であるとするならば,当然その発明の対

象をミキサー餅や練り出しで作られた餅に限定しなければ,発明は完成していな

いというべきである。





(7) まとめ

以上のとおり,本件発明においてスリットを設けることで「スリットの上側が

下側に対して持ち上がって,最中やサンドウイッチのように上下の焼板状部の間

に,膨化した中身がサンドされている状態に膨化変形することで,膨化による外

部への噴き出しを抑制する」という構成の技術内容は,当業者が反復実施して目

的とする技術効果を挙げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして

構成されているということはできない。

したがって,本件発明は発明として未完成であるので,特許法29条1項柱書

にいう「発明」に該当しないものであり,本件特許は同法123条1項2号によ

り無効とされるべきところ,審決がこれを否定したのは誤りである。

2 取消事由2(実施可能要件違反)

本件発明において,スリットが餅の膨化に伴う噴き出しの抑制に寄与するとい

うためには,その具体的な技術内容が本件明細書の「発明の詳細な説明」に,当

業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていなければ

ならないところ,前記のとおり,それがない。

したがって,本件発明は,特許法36条4項1号の規定する要件を満たしてお

らず,本件特許は同法123条1項4号により無効とすべきであるところ,審決

がこれを否定したのは誤りである。

3 取消事由3(明確性要件違反)

本件発明の特許請求の範囲に記載された「膨化した中身」及び「焼板状部」が

具体的に何を意味するのかに関する審決の判断は,誤っている。

したがって,本件発明は,特許法36条6項2号の規定する要件を満たしてお

らず,本件特許は同法123条1項4号により無効とすべきであるところ,審決

がこれを否定したのは誤りである。





第4 被告の反論

被告は,原告主張の取消事由1ないし3を一括して,以下のとおり反論する。

1 原告らは,構成Iの文言,本件明細書の記載,及び出願経過より,切り込

み部等の上側が下側に対して持ち上がるだけでは,最中やサンドウイッチのよう

な形状には膨化変形しない旨主張し,このことを無視した審決は誤りであると主

張する。

しかし,構成Iの文言,本件明細書の記載,及び出願経過を見ても,「焼き網

に載置して焼き上げて食する輪郭形状が方形の小片餅体である切餅であって、こ

の焼き網に載置する際に、最も面積の大きい対向する広大面の一方を載置底面他

方を上面とする高さ寸法が幅寸法及び奥行き寸法より短い薄平板状の偏平方形体

の切餅の、前記上下の広大面間の立直側面」(以下,被告の主張において「側周

表面」という。)の切り込み部等の上側が下側に対して持ち上がることで,最中

やサンドウイッチのような形状に膨化変形することが記載されており,切り込み

部等の上側が下側に対して持ち上がることに加えて,何らかの変化がないと,最

中やサンドウイッチのような形状に膨化変形することはないことは記載されてい

ない。

本件明細書【0020】,【0021】段落には,側周表面に設けられた切り

込み部等の上側が下側に対して持ち上がると,自動的に最中やサンドウイッチの

ような形状に膨化変形することが記載されている。

以上のとおり,原告らの主張は失当である。

2 原告らは,構成Iの「最中」や「サンドウイッチ」には「片持ち」状態は

含まれないとし,これを含むとする審決は誤りであると主張する。

しかし,片持ち状態のサンドウイッチも存在する。また,本件明細書【003

0】段落には,「中身がサンドされている状態(やや片持ち状態に持ち上がる場

合も多い)」と記載されており,図2には,本件発明の第一実施例(切餅に適用





した一実施例)を示す焼き上がり状態の斜視図として,片持ち状態に持ち上がる

場合が示されている。本件発明は,切餅の立直側面である側周表面に切り込み部

等を形成し,焼き上がり時に,上側が持ち上がることにより,外部への噴出力が

減少して,焼き網に垂れ落ちるほどの餅の噴き出しが抑制されるという作用効果

が生ずるものであり,片持ち状態においても,かかる作用効果が生じるのである

から,最中やサンドウイッチに片持ち状態が含まれないとする根拠はない。出願

経過を見ても,当初明細書においては,特許請求の範囲に,角形の切餅と丸形の

丸餅が共に記載されていたこともあり,発明の詳細な説明において,焼き上げる

に際して膨化した状態を表現するため,焼きはまぐり,サンドウイッチ又は最中

との語を用いて説明しており,かつ,最中やサンドウイッチについても片持ち状

態を含むと記載されていた。このような経緯を考慮すると,本件発明の特許請求

の範囲の請求項2の構成Iの記載部分は,角形の切餅に関し,焼き上げるに際し

て,均等膨化したもの,及び,不均一に膨化したものの両者を含むものとして特

定しているものと理解することができる。

したがって,構成Iの「最中」や「サンドウイッチ」には「片持ち」状態が含

まれることが明らかである。

3 原告らは,「本件発明の特徴に「噴き出しを抑制すること」(すなわち噴

出をしないこと)を主張しながら,「噴出部位の特定」を特徴とすることは相反

する現象を兼ね備えていることであって矛盾している。」と主張する。

しかし,本件発明は,この切り込み部等を側周表面に設けることで,割れの契

機となって,そこから割れ,上側が下側に対して持ち上がり,外部への噴出力が

減少して,焼き網に付着するほどの膨化による噴き出しが抑制できるのである。

上記の「噴出部位の特定」とは,この割れの契機となる切り込み部等のことを指

しているにすぎず,焼き網に付着するほどの膨化による外部への噴き出しが生じ

る部位のことを指しているものではない。原告らの主張はその前提において誤っ





ている。

4(1) 原告らは,構成Iの技術内容を具体的に裏付ける証拠がないと主張する。

しかし,本件発明は,切餅の側周表面に切り込み部等を形成し,焼き上がり時

に,上側が下側に対して持ち上がることにより,焼き網に付着するほどの膨化に

よる外部への噴き出しの抑制等の作用効果が生ずるものである。被告実験1(甲

24)は,本件発明において,側周表面に切り込み部を設けることによって,焼

き上げるに際して切り込み部の上側が下側に対して持ち上がり,最中やサンドウ

ィッチのように上下の焼板状部の間に膨化した中身がサンドされている状態に膨

化変形することによって,膨化による噴き出しを抑制していることを明確に示し

ており,構成Iの技術内容を具体的に裏付けている。別の被告による実験(被告

実験2,乙16)では,側周表面に切り込み部が設けられることによって,焼き

上げた後の切餅の厚さが厚くなること,加熱時の突発的な膨化による噴き出しの

可能性がより低くなることが検証されており,構成Iの技術内容が具体的に裏付

けられている。

また,切餅の側周表面に切り込み部等を形成し,焼き上がり時に,上側が持ち

上がり,焼き網に付着するほどの膨化による噴き出しを抑制する等の作用効果を

奏することは,同様の構成を有する切餅の商業的成功からも明らかであって,構

成Iの技術内容が明確に裏付けられている。

(2) 原告らは,原告たいまつ食品株式会社(以下「原告たいまつ」という。)

による原告実験1(甲3)から,側周表面に切り込み部を設けた切餅は,@70

%の割合で噴き出しを防げなかった,A上方向への膨化が大きいことと横方向へ

の噴き出しが抑制されることとは相関関係がない,として,側周表面に切り込み

部を設けた切餅は膨化による噴き出しを防止できない旨主張している。

しかし,原告実験1は,切餅の側周表面に切り込み部のない切餅として原告た

いまつ製造の切餅を,当該切り込み部のある切餅として被告製造の切餅を用いて





おり,例えば,含有されている水分量が異なれば,膨化による突発噴き出しの量

も異なるので,原告実験1では,切餅の立直側面である側周表面に切り込み部の

ない切餅と,当該切り込み部のある切餅との作用効果を比較することはできない。

また,原告たいまつが「軟化噴き出し」が生じているとする基準が適切ではない。

同実験における,長辺と短辺,高さの測定方法が不明であるばかりか,そもそも

長辺×短辺という2つの数値では,正確な面積ではないなど,その実験結果は信

用できない。

(3) 原告らは,被告実験1において用いたマイコン制御のオーブントースタ

ーは,切餅の焼成試験に適さないと主張する。

しかし,オーブントースターがマイコン制御であるか非マイコン制御であるか

によって,本件発明の作用効果に変わりはない。

(4) 原告らは,被告実験1に用いた切餅は,当該報告書に記載された条件の

切餅ではなく,「いわば出来たてほやほや餅を直ちに焼いた」ものだと主張する。

しかし,原告らの主張は単なる邪推であって,何ら根拠のない批判である。ま

た,餅質といった付帯条件は不要である。

原告らは,原告実験2(甲18)を根拠に,製造2か月後の切餅であると,側

周表面に切り込み部を設けたか否かで,餅の中身が2cm以上噴き出す割合に差

が見られず,当該切り込みが噴き出しを抑制していないと主張する。

しかし,同実験から理解されるのは,まず,原告たいまつ製造の切餅は膨化の

しにくい切餅であることであり,他方で,同実験結果を見ても,側周表面に切り

込み部を設けた切餅は,切り込み部の上側が下側に対して持ち上がっている様が

示されているだけではなく,当該切り込み部のない切餅と比較しても,上下への

膨化度合いが高い。側周表面に設けられた切り込み部によって,本件発明の作用

効果が生じることを裏付ける結果である。

また,原告実験2(甲19)は,「老化が安定しておらずミセル化の弱い餅」





を用いて,側周表面に切り込みを設けた餅と設けない餅をそれぞれ30個焼き上

げた実験であるとするが,サンプル数も少なく,しかも,「噴出し」「有」とす

るものが,特に切り込みを設けた餅について後半に3つ連続していることから,

信用できない。

(5) 原告らは,「横置き」で実験をした被告実験1の結果は妥当ではないと

主張する。

しかし,実験で用いられたオーブントースターの説明書は,単なる図,いわば

例示として「縦置き」となっているものであって,その他の説明文書を見ても「縦

置き」することを要求されていない。

したがって,「横置き」で実験したとしても,何ら不当なことはない。

(6) 原告らは,被告実験1を検証した甲38から,噴き出しがあれば,膨化

度も高いとして,上下方向に膨化することで,焼き網に付着するほどの膨化によ

る外部への噴き出しは抑制できない旨主張する。

しかし,側周表面に切り込み部を設けた切餅において,焼き網に付着するほど

の膨化による外部への噴き出しが生じてしまうのは,上下方向への膨化によって

も吸収しきれない圧力が生じるためである。そのため,側周表面に切り込み部を

設けた切餅において,焼き網に付着するほどの膨化による外部への噴き出しが生

じる場合には,最大限まで上下方向に膨化するとともに,かかる膨化により吸収

しきれない圧力が横方向に働き,面積が広くなることもあり得ることで,当該噴

き出しが生じていない切餅と比較して,上下への膨化度合いが高いことはむしろ

自然なことである。そのため,側周表面に切り込み部を設けた切餅において,当

該噴き出しが生じたものと生じなかったものを比較しても無意味である。

むしろ,側周表面に切り込み部を設けた切餅と設けない切餅とを比較して,上

下への膨化の度合いや面積を比較することで,本件発明の作用効果が生じること

を見るべきである。実際に,被告実験1でも,被告実験2でも,側周表面に切り





込み部を設けた切餅の高さは,切り込み部がない切餅の高さよりも高いが,その

面積は逆に小さいという結果となっており,上下への膨化が大きいほど,横方向

への噴き出す力は弱くなっていることが示されている。

5 原告らは,切餅の側周表面に切り込み部を設けることで,「完全に開いた

焼きはまぐり」のようになってしまうことから,「最中やサンドウイッチのよう

な形状になって,従来にない非常に食べ易く,また食欲をそそり,また美味しく

食することができる焼き上がり形状となる。」という本件明細書の理論は現実に

は発生しない絵空事であると主張する。

しかし,かかる原告らの主張は,「最中」「サンドウイッチ」という形状に関

する独自の解釈を前提とするものであって,これが誤りであることは,上記2で

述べたとおりである。



第5 当裁判所の判断

1 取消事由1(発明未完成)について

(1) 本件明細書の記載

ア 本件明細書(平成25年5月31日付け審判請求書添付の訂正明細書

乙25の1)には,餅の膨化による外部への噴き出し,及び餅の膨化変形に関し

て,概ね,以下のとおり記載されている。

従来,オーブントースターや電子レンジなどで餅を焼いて食べる場合,加熱時

の膨化によって内部の餅が外部へ突然噴き出して下方へ流れ落ち,焼き網に付着

してしまうことが多く(【0002】,【0003】),また,膨化による噴き

出し部位も特定できず,膨化による噴き出しを制御することができなかった 【0


005】)。

本件発明においては,切餅に切り込み部又は溝部(切り込み)を設けることに

より,噴き出し位置を特定することができ,また,切り込みを周方向に長さを有





するものとすることにより,膨化による噴出力(噴出圧)を小さくすることがで

きるため,焼き網へ垂れ落ちるほどの噴き出しを抑制できる(【0018】)。

切り込みを,少なくとも立直側面に沿う周方向に直線状にして対向二側面であ

る長辺部の立直側面の双方に夫々形成することで,膨化によって,切り込みの上

側が下側に対して持ち上がる。この持ち上がりにより,最中やサンドウィッチの

ような上下の焼板状部の間に膨化した中身がサンドされている状態(やや片持ち

状態に持ち上がる場合も多い。)に自動的に膨化変形する(【0019】〜【0

021】,【0030】)。

イ @オーブントースターは,通常,上下方向から加熱するものであるこ

と(甲5,甲6の1〜7),A餅を焼くと,餅の内部が軟化するとともに,餅の

内部に含まれる水分が蒸発して水蒸気となる等により,餅の内部空間の圧力が高

くなり,膨化すること(甲1)は,いずれも技術常識である。このような技術常

識を踏まえると,本件明細書の上記記載は,以下のように理解することができる。

オーブントースターで切餅を焼く場合,上下方向から加熱されるため,切餅の

上面及び載置底面は固化が進む(その結果,切餅の上下に焼板状部が形成され

る。)。一方,立直側面は遅れて固化すると考えられる。また,切餅の内部が軟

化するとともに,切餅の内部に含まれる水分が蒸発して水蒸気となる等により,

切餅の内部空間の圧力が高くなり,膨化する。その圧力が一定程度まで高くなる

と,その圧力に耐えられなくなった切餅の不特定の部位から,突然,内部の水蒸

気等が外部へ噴き出すとともに,その噴出力(噴出圧)が相当程度大きい場合に

は,内部の軟化した餅も外部へ噴き出して下方へ流れ落ち,焼き網に付着するこ

とになる。

本件発明は,切餅の立直側面に所定の切り込みを設けたものであるが,このよ

うな切り込みは,切餅の内部空間を囲む餅の外側部分(固化する部分)の厚みを

小さくするものであり,また,立直側面は,上面及び載置底面と比べて固化が遅





いことから,切り込みが存在する部分の強度は,その他の部分と比べて低いと考

えられる。

このような相対的に強度が低い部分(切り込みが存在する部分)では,一定程

度の圧力がかかると,噴き出しが生じやすいといえる。すなわち,切り込みを設

けることにより,噴き出し位置を特定することができる。また,その際,切り込

みを周方向に長さを有するものとすれば,噴き出しの生じる部分の面積を大きく

することが可能であり,それにより,膨化による噴出力(噴出圧)を小さくする

ことができるため,内部の水蒸気等が外部へ噴き出したり,あるいは,さらに内

部の軟化した餅も外部へ噴き出したりするとしても,焼き網へ垂れ落ちるほどの

噴き出しは抑制できる。

また,相対的に強度が低い部分(切り込みが存在する部分)は,一定程度の圧

力がかかると,変形して伸びやすいともいえる。切餅の内部空間の圧力は,切り

込みが存在する部分に限らず,全方向,例えば上下方向にもかかるから,切り込

みが存在する部分が変形して伸びることにより,切り込みの上側が下側に対して

持ち上がることになる。その持ち上がりにより,最中やサンドウィッチのような

上下の焼板状部の間に膨化した中身がサンドされている状態(上下の焼板状部が

平行に近い対称な状態で持ち上がる場合もあるが,非平行な片持ち状態に持ち上

がる場合も多い。)に自動的に膨化変形する。

このような膨化変形によれば,切餅の内部空間の体積は大きくなり,その分だ

け圧力が高くなるのを抑えられること,また,それにより,膨化による噴出力(噴

出圧)が大きくなるのも抑えられることは明らかであるから,上記のように膨化

変形することでも,焼き網へ垂れ落ちるほどの噴き出しを一定程度抑制できるこ

とは,当業者にとって明らかといえる。

ウ 以上によれば,本件発明における「焼き上げるに際し,前記立直側面

の周方向に形成した前記切り込み部又は溝部の上側が下側に対して持ち上がり,





最中やサンドウイッチのように上下の焼板状部の間に膨化した中身がサンドされ

ている状態に膨化変形することで膨化による外部への噴き出しを抑制する」につ

いて,以下のとおり認めることができる。

立直側面に所定の切り込みを設けた切餅をオーブントースターで焼くと,切餅

の内部が軟化するとともに,切餅の内部に含まれる水分が蒸発して水蒸気となる

等により,切餅の内部空間の圧力が高くなり,膨化するが,その圧力によって切

り込みが存在する部分が変形して伸びることにより,切り込みの上側が下側に対

して持ち上がる。その持ち上がりにより,最中やサンドウィッチのような上下の

焼板状部の間に膨化した中身がサンドされている状態(やや片持ち状態に持ち上

がる場合も多い。以下同じ。)に自動的に膨化変形する。切餅の立直側面に所定

の切り込みを設けたことにより,膨化による噴出力(噴出圧)を小さくすること

ができるため,上記切り込みを設けない場合と比べて,焼き網へ垂れ落ちるほど

の噴き出しを抑制できるが,上記のように膨化変形することでも,膨化による噴

出力(噴出圧)が大きくなるのを抑えられるため,上記切り込みを設けない場合

と比べて,焼き網へ垂れ落ちるほどの噴き出しを一定程度抑制できる。

(2) 試験結果について

ア 原告実験1における「包装餅焼き試験結果報告書」(甲3)は,「膨

化比較試験一覧」及び添付の写真(甲2)に基づく分析報告書である。包装餅焼

き試験は,被告製造のスリット(切り込み)のある餅と,原告たいまつ製造のス

リットのない餅を,オーブントースターで焼き,餅の状態等を確認したものであ

り,添付の写真は,その焼いた餅を撮影したものである。

原告実験3における「噴出し確認テスト」(甲8)は,被告製造のスリットの

ある餅と,原告たいまつ製造のスリットのない餅を,オーブントースターで焼き,

餅の噴き出しの有無を確認したものであり,また,原告実験2における「スリッ

ト有無による噴出し確認テスト」(甲18)は,原告たいまつ製造のスリットの





ない餅と,同餅の側面にスリットを入れた餅を,オーブントースターで焼き,餅

の噴き出しの有無を確認したものである。各実験においてそれぞれに示される写

真は,その焼いた餅を撮影したものである。

これらの写真によれば,側面にスリットのある餅では,そのほとんどが,スリ

ット部分(赤い線が引かれている部分)で上下に割れていることが認められる。

以上によれば,立直側面に所定の切り込みを設けた切餅をオーブントースター

で焼くことにより,切り込みの部分で上下に割れる,すなわち,切り込みの上側

が下側に対して持ち上がることが認められる。

イ 原告実験1(甲3)には,オーブントースターで焼いた餅の形状につ

いて,側面にスリットのある餅では,「サンドウイッチ/もなか」,「適正 片

持ちはまぐり」,「許容 片持ちはまぐり」と評価されたものが,全体の74%

(4%+27%+43%)であることが示されている 「@−2形状
( (その2 全

体評価結果)」)。

同実験では,「片持ちはまぐり」とは,切餅の側面四方のうち,片方の側面が

持ち上がらず,反対の側面から膨化する現象を意味し,その解放角度により,「適

正」(0〜30度),「許容」(31〜60度),「異常」(61度以上)と判

断される。

そうすると,上記結果は,原告らの評価を前提としても,側面にスリットのあ

る餅のうち,少なくとも74%が,本件発明でいう,最中やサンドウィッチのよ

うな上下の焼板状部の間に膨化した中身がサンドされている状態と評価されたこ

とを示すものといえる。

また,各原告実験において示される写真によれば,側面にスリットのある餅で

は,その多くが,最中やサンドウィッチのような上下の焼板状部の間に膨化した

中身がサンドされている状態に膨化変形していると認められる。

各実験において,一部の餅には,膨化の程度が大きすぎる等,形状に異常がみ





られるものもあるが,このような異常は,餅の状態にバラツキがあり,餅によっ

ては,オーブントースターで焼く際の条件(熱源に対する餅の位置,温度,時間

等)が一定でなかったために生じたものと考えられる。オーブントースターで餅

を焼く際に,様子を見ながら条件を調節することは,通常のことであり(甲6の

1「調理時間の目安」,「使い方 タイマー調理機能 つづき」,甲6の2「4

調理のポイント」),それにより,上記のような異常が生じないように餅を焼く

ことができることは技術上明らかである。一部の餅に,上記のような異常がみら

れるとしても,オーブントースターで餅を焼けば,通常は,最中やサンドウィッ

チのような上下の焼板状部の間に膨化した中身がサンドされている状態に膨化変

形することが最も一般的であると考えられる。

ウ 上記イのように所定の状態に膨化変形することでも,焼き網へ垂れ落

ちるほどの噴き出しを一定程度抑制できることが当業者にとって明らかであるこ

とは,上記(1)イに判示したとおりである。

そして,実際に,立直側面に所定の切り込みを設けた切餅をオーブントースタ

ーで焼く場合,上記切り込みを設けない場合と比べて,焼き網へ垂れ落ちるほど

の噴き出しを抑制できることは,以下のとおりである。

(ア)被告実験1における「切餅に付す側面切り込みの有無による効果を

比較した試験結果」(甲24)は,被告製造の市販用製品である切餅(切り込み

なし)と,同切餅の側面の全周に切り込みを一本入れた切餅を,マイコン制御の

「ET−RU25」型オーブントースターで焼き,切餅の膨化量と,切餅の平坦

上面及び載置底面から見た投影面積を測定したものであり,そこに示される写真

は,その焼いた切餅を撮影したものである。

焼き網へ垂れ落ちるほどの噴き出しは,上記(1)イのとおり,その噴出力(噴出

圧)が相当程度大きいために生じるものであるから,その大きな噴出力(噴出圧)

による噴き出しの一つの目安として,平坦上面及び載置底面の写真のいずれかに,





餅の辺部分(角とみえる部分を結んだ直線)から2cm以上の飛び出しがみられ

るものについて,その個数を数えると,切り込みを入れた切餅では21個,切り

込みのない切餅では51個である(審決の示すとおりである。)。この結果によ

れば,切り込みを入れた切餅のほうが,切り込みのない切餅よりも,焼き網へ垂

れ落ちるほどの噴き出しが抑制されると認められる。

(イ)被告実験2における「「サトウの切り餅」の側周表面に2本の切り

込みを付した比較試験報告書」(乙16)は,市販されている側面切り込みのな

い「サトウの切り餅」と,同切り餅の長辺側面に平行する切り込みを2本入れた

切餅を,非マイコン制御の「NT−T40」型オーブントースターで焼き,切餅

の膨化量と,切餅の平坦上面及び載置底面から見た投影面積を測定したものであ

る。また,平坦上面及び載置底面の写真のいずれかに,焼き上げ後の切餅の辺部

分(角とみえる部分を結んだ直線)から2cm以上の飛び出しがみられるものの

個数を数えるとともに,実際に側面からの噴き出しが焼き網に付着しているもの

の個数を数えたものである。そこに示される写真は,その焼いた切餅を撮影した

ものである。

同実験では,平坦上面及び載置底面の写真のいずれかに,焼き上げ後の切餅の

辺部分(角とみえる部分を結んだ直線)から2cm以上の飛び出しがみられるも

のの個数が,切り込みを入れた切餅では9個,切り込みのない切餅では18個で

あること,また,実際に側面からの噴き出しが焼き網に付着しているものの個数

が,切り込みを入れた切餅では12個,切り込みのない切餅では39個であるこ

とが示されている。これらの結果によれば,切り込みを入れた切餅のほうが,切

り込みのない切餅よりも,焼き網へ垂れ落ちるほどの噴き出しが抑制されると認

められる。

(3) まとめ

以上のとおりであるから,立直側面に所定の切り込みを設けた切餅をオーブン





トースターで焼くことにより,「焼き上げるに際し,前記立直側面の周方向に形

成した前記切り込み部又は溝部の上側が下側に対して持ち上がり,最中やサンド

ウイッチのように上下の焼板状部の間に膨化した中身がサンドされている状態に

膨化変形」し,そのような状態に膨化変形することで「膨化による外部への噴き

出しを抑制する」ことができるといえる。

したがって,本件発明の技術内容は,当業者が反復実施して目的とする技術効

果を挙げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されている

といえる。

よって,本件発明が未完成で,特許法29条1項柱書にいう「発明」に該当し

ないものということはできない。

(4) 原告らの主張について

ア 原告らは,審決は,「最中やサンドウイッチのように上下の焼板状部

の間に膨化した中身がサンドされている状態に膨化変形する」との要件を無視し,

単に,切り込みの上側が下側に対して持ち上がり,切餅の内部に空洞ができるこ

とを,「最中やサンドウイッチのように上下の焼板状部の間に膨化した中身がサ

ンドされている状態に膨化変形する」ことと解釈しているが,このような解釈は,

「最中やサンドウイッチのような状態」を単なる「膨化」の修飾語的な意味にし

か捉えておらず,誤りであると主張する。

しかし,本件明細書の記載によれば,上記(1)ウのとおり,切り込みの上側が下

側に対して持ち上がることにより,自動的に,最中やサンドウイッチのように上

下の焼板状部の間に膨化した中身がサンドされている状態に膨化変形するもので

あるから,審決の解釈が誤りであるとはいえず,原告らの主張は採用できない。

イ 原告らは,「片持ち形状」は,本件発明における「最中やサンドウイ

ッチのように上下の焼板状部の間に膨化した中身がサンドされている状態」とは

別の概念であることなどを根拠として,本件発明においては,例えば,対向2側





面切り込みの場合は,2側面両方の上側が持ち上がらなければならず,2側面の

うちの1側面のみの上側が持ち上がる「片持ち状態」は,本件発明には属さない

と主張する。

しかし,本件発明は,特許請求の範囲の記載からみて,全ての上側(例えば,

対向2側面切り込みの場合は,2側面両方の上側)が持ち上がることを要件とし

ているとはいえず,「前記切り込み部又は溝部の上側が下側に対して持ち上が」

れば足りると解される。しかも,本件明細書には,「最中やサンドウィッチのよ

うな上下の焼板状部間に膨化した中身がサンドされている状態(やや片持ち状態

に持ち上がる場合も多い)となり」(【0030】)と記載されており,これら

に基づく技術解釈は前記(1)イのとおりであるから,本件発明における「最中やサ

ンドウィッチのように上下の焼板状部の間に膨化した中身がサンドされている状

態」に,「片持ち状態」も含まれることは明らかであり,原告らの主張は採用で

きない。

ウ 原告らは,「片持ち状態」に焼き上がった餅では,「均一な焼き上が

り」,「食べ易く,美味しい焼き上がり」という作用効果目的を達成できないと

主張する。

しかし,上記イのとおり,本件発明における「最中やサンドウィッチのように

上下の焼板状部の間に膨化した中身がサンドされている状態」には,「片持ち状

態」も含まれ,このような状態に自動的に膨化変形した餅は,「従来にない非常

に食べ易く,食欲をそそり,美味しく食することができる」焼き上がり形状とな

り,また,「ほぼ均一に焼き上げる」ことが可能となるものとされる(本件明細

書【0021】)。本件発明の奏する上記の作用効果を否定すべき根拠はなく,

原告らの主張は採用できない。

エ 原告らは,側面に切り込み部があるなしにかかわらず,餅を焼けば,

そのほとんどが「片持ち状態」になることは,本件特許の出願時においても公知





の事実であるが,特許請求の範囲の解釈上,公知の事実は除外すべきであるので,

「片持ち状態」の膨化変形は,本件発明の対象外であると主張する。

しかし,立直側面に所定の切り込みが設けられていない切餅は,焼いたときに

「片持ち状態」になる場合があるとしても,切り込みが設けられていない以上,

本件発明に含まれないことは明らかである。膨化変形の状態のみを取り上げて,

本件発明から除外すべき理由はないから,原告らの主張は採用できない。

オ 原告らは,本件明細書の記載からみて,例えば,蝶番部の開口が約6

0度を超えるようなものは「最中やサンドウイッチのような状態」には含まれな

いと主張する。

しかし,立直側面に所定の切り込みを設けた切餅を複数個焼いた場合に,その

一部の餅に,原告らが主張するような,形状に異常がみられるものがあるとして

も,そのことにより,本件発明の技術内容が,当業者が反復実施して目的とする

技術効果を挙げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成され

ていないということはできない。

カ 原告らは,審決は,スリット(切り込み)により餅の中身の噴き出し

部位を特定することによって,噴き出しを抑制するという,矛盾した本件明細書

の記載をそのまま本件発明の課題と目的として認定し,これを基礎にしてスリッ

トの有無による膨化の問題を判断していると主張する。

しかし,本件明細書には,「即ち、従来は加熱途中で突然どこからか内部の膨

化した餅が噴き出し(膨れ出し)、焼き網に付着してしまうが、切り込み3を設

けていることで、先ずこれまで制御不能だったこの噴き出し位置を特定すること

ができ、しかもこの切り込み3を周方向に長さを有するものとすることで、膨化

による噴出力(噴出圧)を小さくすることができるため、焼き網へ垂れ落ちるほ

ど噴き出し(膨れ出)たりすることを確実に抑制できることとなる。」(【00

18】)と記載されている。





この記載によれば,「切り込みを設けることにより,噴き出し位置を特定でき

る」という場合における「噴き出し」は,その切り込みが所定の長さを有するも

のであるため,膨化による噴出力(噴出圧)が小さいものであり,焼き網へ垂れ

落ちるほどの噴き出しとは異なるものであることが理解できる。このような「噴

き出し」が,餅内部の水蒸気等が噴き出すものや,このような水蒸気等の噴き出

しとともに,内部の軟化した餅もわずかに噴き出すものであることは,当業者に

とって明らかである(上記(1)イ)。

これに対して,本件発明において「噴き出しを抑制する」という場合における

「噴き出し」が,「焼き網へ垂れ落ちるほどの噴き出し」であることは,上記(1)

ウ認定のとおりであり,また,本件明細書の上記記載からも明らかである。

以上のとおりであるから,本件明細書の記載には,原告らが主張するような矛

盾はない。

キ 原告らは,原告実験1(甲3,12)によれば,噴き出しを防ぐこと

ができない(すなわち,噴き出しが生じる)頻度は,スリット餅で70%,スリ

ット無し餅で84%であり,スリット餅では,70%もの割合で噴き出しを防ぐ

ことができなかったから,スリットは,噴き出しの抑制に役立たないと主張する。

しかし,同実験は,切り込みを設けた餅として被告製造の餅を用いる一方,切

り込みを設けない餅として原告たいまつ製造の餅を用いるものである。製造元が

異なれば,通常,その製造された餅の特性も異なるから,このような異なる特性

の餅を比較しても,切り込みを設けたことによる作用効果の有無を評価すること

ができないことは明らかである。原告らの主張は,前提において失当である。こ

のことは,原告実験3(甲8)についても同様である(なお,仮に原告らの主張

を前提にしても,切り込みを設けた餅のほうが,切り込みを設けない餅よりも,

噴き出しが生じる頻度は低くなっているから,切り込みが噴き出しの抑制に役立

たないとはいえない。)。





ク 原告らは,原告実験2において,ミセル化の弱い餅(製造直後の餅。

甲19)であっても,ミセル化の強い餅(製造2か月後の餅。甲18)であって

も,スリットの有無で,噴き出しの発生数(発生率)に差異はないと主張する。

しかし,甲19の実験は,製造直後の餅を用いるものであるが,一般に市販さ

れている切餅は,通常,製造から一定程度の期間が経過したものである(甲15)

から,製造直後の餅を用いる甲19の実験の結果により,通常の切餅における切

り込みの有無による噴き出しの発生数(発生率)の差異について評価することは,

相当でない。しかも,甲18の実験でも,わずかではあるが,切り込みを設けた

餅のほうが,切り込みを設けない餅よりも,噴き出しの発生数(発生率)は低く

なっているから,差異がないとはいえない。

ケ 原告らは,被告実験1(甲24)に使用されたマイコン制御の「ET

−RU25」型オーブントースターは,一般のオーブントースターとは異なる特

殊なものであり,切餅の焼成試験には適さないと主張する。

しかし,本件明細書には,オーブントースターで切餅を焼くことが記載されて

いる(【0003】,【0025】)ところ,オーブントースターとして,マイ

コン制御のものも非マイコン制御のものも,いずれも市販されている通常のもの

であり(甲6の1〜7),また,マイコン制御の「ET−RU25」型オーブン

トースター(甲6の1)でも,切餅を焼くことが予定されているから,同オーブ

ントースターが,一般のオーブントースターとは異なる特殊なものであるという

ことはできない。

コ 原告らは,@被告実験1では,切餅を横置きにしているが,オーブン

トースター説明書(甲6の1)の図面では,餅は縦置きになっており,切餅を縦

置きすることが求められていることは明らかであり,他の機種の説明書(甲5,

甲6の2〜7)にも,縦置きを求める図面が提示されていることが多いから,横

置きは一般的とはいえず,また,縦置きと横置きとでは,焼き上がり具合が異な





ること,A同実験では,切餅の置き位置についての説明がないが,置き位置によ

って切餅の焼成の具合は変わること,を根拠として,同実験結果が妥当なもので

はないと主張する。

しかし,甲6の1の説明書には,「使い方 タイマー調理機能」の欄に,一般

的な説明として「調理物を焼き網の中央に均等に載せる」と記載されており,そ

の上で,「使い方 タイマー調理機能 つづき」の欄に,「もちを焼く場合」に

ついて,「市販のパックもちの置き方」として,4個の場合について縦置きする

ことが図示されている一方,甲6の3の説明書には,「使い方」の欄に,「焼き

網の中央に置く」と記載されており,その上で,「パックもち4個の場合」につ

いて,2列に横置きするものが示されているから,切餅を焼く場合に,必ずしも,

縦置きすることが求められているとはいえず,横置きが一般的ではないともいえ

ない。

しかも,いずれの説明書にも,被告実験1のように2個の切餅を置く場合につ

いては,記載がない。オーブントースターの焼き網に2個の切餅を置く場合,縦

置きとするか,横置きとするかは,切餅の大きさと焼き網の大きさ等を考慮して,

焼く者が適宜決定する事項と解される。

したがって,原告ら主張の事項を根拠として,同実験結果が妥当でないという

ことはできない。

サ 原告らは,切餅は杵つき餅が主流であるところ,杵つき餅はほとんど

焼きダレが生じないから,焼きダレが発生するミキサー餅や練り出しで作られた

餅に限定しなければ,本件発明は完成していないと主張する。

しかし,杵つき餅でも,一定程度の割合で,焼き網へ垂れ落ちるほどの噴き出

しが生じることは,被告実験1及び2の実験結果からも明らかである。原告らの

主張は,前提において失当である。

なお,杵つき餅が,焼き網へ垂れ落ちるほどの噴き出しが生じる可能性が低い





としても,立直側面に所定の切り込みを設けることにより,焼き網へ垂れ落ちる

ほどの噴き出しを抑制することができないわけではない。

したがって,原告らの主張は採用できない。

(5) 小括

以上によれば,原告ら主張の取消事由1には理由がない。

2 取消事由2(実施可能要件違反)について

原告らは,本件発明において,スリットが餅の膨化に伴う噴き出しの抑制に寄

与するというためには,その具体的な技術内容が,本件明細書の発明の詳細な説

明に,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されてい

なければならないところ,取消事由1について縷々述べたところから明らかなよ

うに,当該技術内容は記載されていないと主張する。

しかし,取消事由1について判示したとおり,本件明細書の発明の詳細な説明

には,本件発明について,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ

十分に記載されていないということはできないから,原告ら主張の取消事由2に

は理由がない。

3 取消事由3(明確性要件違反)について

原告らは,本件発明の特許請求の範囲に記載された「膨化した中身」及び「焼

板状部」が,具体的に何を意味するのか不明であると主張する。

しかし,取消事由1について判示したとおり,「膨化した中身」が,切餅内部

の軟化した餅と,切餅の内部に含まれる水分が蒸発した水蒸気等で形成された,

内部空間を有する部分であること,また,「焼板状部」が,オーブントースター

で切餅を焼くことで,切餅の平坦上面及び載置底面で固化が進んだ結果,切餅の

上下に形成される部分であることは,明らかであるから,原告ら主張の取消事由

3には理由がない。





第6 結論

以上によれば,原告ら主張の取消事由はいずれも理由がない。よって,原告ら

の請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。



知的財産高等裁判所第2部




裁判長裁判官

清 水 節




裁判官

池 下 朗




裁判官

新 谷 貴 昭