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事件 平成 24年 (行ケ) 10455号 審決取消請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 知的財産高等裁判所 
判決言渡日 2013/10/30
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
判例全文
判例全文
平成25年10月30日判決言渡

平成24年(行ケ)第10455号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 平成25年8月26日

判 決

原 告 株式会社DAPリアライズ

被 告 特 許 庁 長 官

指 定 代 理 人 石 井 研 一

同 山 中 実

同 田 部 元 史

同 堀 内 仁 子

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

特許庁が訂正2012−390058号事件について平成24年12月11日に

した審決を取り消す。

第2 前提となる事実

1 特許庁における手続の経緯

原告は,発明の名称を「携帯情報通信装置,携帯情報通信装置を使用したパーソ

ナルコンピュータシステム及び携帯情報通信装置用外部入出力ユニット」とする特

許第3872502号に係る特許(国内優先権主張 平成16年12月24日,平

成17年7月28日。以下「本件特許」という。)の特許権者である。本件特許は,

同年12月21日(以下「原出願日」という。)にされた出願(特願2005−3

67373)について,平成18年2月27日に分割出願されたものであり,同年

10月27日に設定登録された。(甲17)


1
平成23年2月28日,本件特許の請求項5記載の発明に係る特許について,無

効審判(以下「前審判」という。)が請求され,同審判手続において,原告は本件

特許の請求項3ないし5の特許請求の範囲の訂正を含む訂正請求を行い(以下「前

訂正」という。),特許庁は,同年9月29日,前訂正を認めた上,請求項5記載

の発明に係る特許を無効にするとの審決(以下「前審決」という。)をした(甲1

8)。前審決について,原告は,当庁に,審決取消訴訟を提起したが,平成24年

4月11日,請求棄却の判決が出され,前審決は確定した(甲22)。

原告は,同年5月1日,本件特許に係る特許請求の範囲の訂正を求める訂正審判

(以下「本件審判」という。)を請求し(甲14),同年7月19日,本件審判請

求の手続補正を行い(以下,同手続補正後の本件審判請求による訂正を「本件訂

正」という。),特許庁は,同年12月11日,請求不成立の審決(以下「本件審

決」又は「審決」という。)をし,同審決の謄本は同月21日,原告に送達された。

2 本件訂正の内容

本件訂正における訂正事項1ないし17は,いずれも特許請求の範囲減縮を目

的とするものであり,本件訂正後の請求項3,6ないし8及び24ないし32に係

る訂正である。

3 特許請求の範囲

本件訂正後の,本件特許に係る特許請求の範囲の請求項3,6ないし8及び24

ないし32は,次のとおりである(以下,本件訂正後の請求項3に係る発明を「訂

正発明」といい,請求項6ないし8及び24ないし32に係る発明を,請求項の番

号に従って「訂正発明6」などという。)(甲14,16)。

「【請求項3】ユーザーがマニュアル操作によって入力したデータを後記データ

処理手段に送信する入力手段と,

無線信号を受信してデジタル信号に変換の上,後記データ処理手段に送信するとと

もに,後記データ処理手段から受信したデジタル信号を無線信号に変換して送信す

る無線通信手段と,


2
後記データ処理手段を動作させるプログラムと後記データ処理手段で処理可能なデ

ータファイルとを格納する記憶手段と,

前記入力手段から送信されたデータ及び前記記憶手段に格納されたプログラムに基

づき,前記無線通信手段から受信したデジタル信号及び/又は前記記憶手段から読

み出したデータに必要な処理を行って,デジタル表示信号及びその他のデジタル信

号を生成して送信するデータ処理手段と,

画面を構成する各々の画素が駆動されることにより画像を表示するディスプレイパ

ネルAと,前記データ処理手段から受信したデジタル表示信号に基づき前記ディス

プレイパネルAの各々の画素を駆動するディスプレイ制御手段Aとから構成される

ディスプレイ手段と,

外部ディスプレイ手段を含む周辺装置,又は,外部ディスプレイ手段が接続される

周辺装置を接続し,該周辺装置に対して,前記データ処理手段から受信したデジタ

ル表示信号に基づき,TMDS方式で伝送されるデジタル外部表示信号を送信する

インターフェース手段A1と,

を備えるとともに,

前記データ処理手段と前記インターフェース手段A1とが相俟って,該インターフ

ェース手段A1から,高解像度デジタル外部表示信号を送信する機能を実現する携

帯情報通信装置であって,

前記無線通信手段と前記データ処理手段とが相俟って,

ユーザーエージェント情報を含みインターネットプロトコルに準拠した無線信号を

送信する機能と,

インターネットプロトコルに準拠した無線信号を受信することにより,インターネ

ットに接続したウェブサーバから画像データファイルを取得する機能と,

を実現するとともに,

前記データ処理手段は,前記画像データファイルの本来解像度が前記ディスプレイ

パネルAの画面解像度より大きい場合でも,前記画像データファイルを前記記憶手


3
段に一旦格納し,その後読み出した上で処理することによって,前記画像データフ

ァイルの本来画像の全体画像のデジタル表示信号を生成する機能を有することを特

徴とする携帯情報通信装置。

【請求項6】前記画像データファイルの本来解像度が前記ディスプレイパネルA

の画面解像度より大きい場合に,

前記データ処理手段と前記ディスプレイ制御手段Aとが相俟って,前記ディスプレ

イパネルAに,本来画像の対象全体をカバーする全体画像ではあるが,解像度は前

記ディスプレイパネルAの画面解像度を上回らない画像を表示する機能を実現する

とともに,

前記データ処理手段と前記インターフェース手段A1とが相俟って,該インターフ

ェース手段A1から,周辺装置における高解像度外部ディスプレイ手段がそれを受

信して適正に処理することにより,本来画像を表示することが可能であるような外

部表示信号を送信する機能を実現することを特徴とする,請求項3に記載の携帯情

報通信装置。

【請求項7】前記画像データファイル又は前記デジタル動画信号の本来解像度が

前記ディスプレイパネルAの画面解像度より大きい場合に,

前記データ処理手段と前記ディスプレイ制御手段Aとが相俟って,前記ディスプレ

イパネルAに,本来画像から前記ディスプレイパネルAの画面解像度に相当する部

分を切り出した部分画像を表示する機能を実現するとともに,

前記データ処理手段と前記インターフェース手段A1とが相俟って,該インターフ

ェース手段A1から,周辺装置における高解像度外部ディスプレイ手段がそれを受

信して適切に処理することにより,本来画像を表示することが可能であるような外

部表示信号を送信する機能を実現することを特徴とする,請求項3又は4に記載の

携帯情報通信装置。

【請求項8】前記データ処理手段と前記インターフェース手段A1とが相俟って,

該インターフェース手段A1から,周辺装置における高解像度外部ディスプレイ手


4
段がそれを受信して適切に処理することにより,本来画像に画素を補間することに

よって高解像度とした画像を表示することが可能であるような外部表示信号を送信

する機能を実現することを特徴とする,請求項3又は4に記載の携帯情報通信装置。

【請求項24】前記デジタル動画信号の本来解像度が前記ディスプレイパネルA

の画面解像度より大きい場合に,

前記データ処理手段と前記ディスプレイ制御手段Aとが相俟って,前記ディスプレ

イパネルAに,本来画像の対象全体をカバーする全体画像ではあるが,解像度は前

記ディスプレイパネルAの画面解像度を上回らない画像を表示する機能を実現する

とともに,

前記データ処理手段と前記インターフェース手段A1とが相俟って,該インターフ

ェース手段A1から,周辺装置における高解像度外部ディスプレイ手段がそれを受

信して適正に処理することにより,本来画像を表示することが可能であるような外

部表示信号を送信する機能を実現することを特徴とする,請求項4に記載の携帯情

報通信装置。

【請求項25】外部入力手段を含む周辺装置,又は,外部入力手段が接続される

周辺装置を接続し,該周辺装置における外部入力手段で入力されたデータ(以下,

外部入力データと略記する)を受信し,必要であれば変換を行った上で,前記デー

タ処理手段に送信するインターフェース手段A2を備え,前記データ処理手段は,

該インターフェース手段A2から受信したデータを処理する機能を有することを特

徴とする,請求項1乃至4のいずれか一項,請求項6乃至8のいずれか一項,又は,

請求項24に記載の携帯情報通信装置。

【請求項26】外部記憶手段を含む周辺装置,又は,外部記憶手段が接続される

周辺装置を接続し,該周辺装置における外部記憶手段との間でデータを授受するイ

ンターフェース手段A3を備え,前記データ処理手段は,該外部記憶装置にアクセ

スしてデータを書き込む機能及び/又はデータを読み出す機能を有することを特徴

とする,請求項1乃至4のいずれか一項,請求項6乃至8のいずれか一項,請求項


5
24,又は,請求項25に記載の携帯情報通信装置。

【請求項27】内蔵充電池と該内蔵充電池に充電するための充電用端子Aとを備

えたことを特徴とする,請求項1乃至4のいずれか一項,請求項6乃至8のいずれ

か一項,又は,請求項24乃至26のいずれか一項に記載の携帯情報通信装置。

【請求項28】請求項1乃至4のいずれか一項,請求項6乃至8のいずれか一項,

又は,請求項24乃至27のいずれか一項に記載の携帯情報通信装置と,

該携帯情報通信装置のインターフェース手段A1と接続され,該インターフェース

手段A1から外部表示信号を受信するインターフェース手段B1と,

外部ディスプレイ装置とのインターフェース手段C1と,

を備えた接続ユニットと,

から構成されることを特徴とするパーソナルコンピュータシステム。

【請求項29】請求項25又は26に記載の携帯情報通信装置と,

該携帯情報通信装置のインターフェース手段A1と接続され,該インターフェース

手段A1から外部表示信号を受信するインターフェース手段B1と,

該携帯情報通信装置のインターフェース手段A2と接続され,該インターフェース

手段A2に外部入力データを送信するインターフェース手段B2と,

外部ディスプレイ装置とのインターフェース手段C1と,

外部入力装置とのインターフェース手段C2と,

を備えた接続ユニットと,

から構成されることを特徴とするパーソナルコンピュータシステム。

【請求項30】請求項26に記載の携帯情報通信装置と,

後記インターフェース手段B3経由でデータの書き込み及び/又は読み出しが行わ

れる外部記憶手段Bと,

該携帯情報通信装置のインターフェース手段A1と接続され,該インターフェース

手段A1から外部表示信号を受信するインターフェース手段B1と,

該携帯情報通信装置のインターフェース手段A2と接続され,該インターフェース


6
手段A2に外部入力データを送信するインターフェース手段B2と,

該携帯情報通信装置のインターフェース手段A3と接続され,前記外部記憶手段B

との間でデータを授受するインターフェース手段B3と,

外部ディスプレイ装置とのインターフェース手段C1と,

外部入力装置とのインターフェース手段C2と,

を備えた接続ユニットと,

から構成されることを特徴とするパーソナルコンピュータシステム。

【請求項31】請求項27に記載の携帯情報通信装置と,

該携帯情報通信装置のインターフェース手段A1と接続され,該インターフェース

手段A1から外部表示信号を受信するインターフェース手段B1と,

外部ディスプレイ装置とのインターフェース手段C1と,

直流電力供給手段と,

前記充電用端子Aと接続され,前記直流電力供給手段からの直流電力を前記携帯情

報通信装置に備えられた内蔵充電池に供給する充電用端子Bと,

を備えた接続ユニットと,

から構成されることを特徴とするパーソナルコンピュータシステム。

【請求項32】前記接続ユニットは,インターフェース手段B1経由で外部表示

信号を受信し,インターフェース手段C1に接続された外部ディスプレイ装置の画

面解像度及び/又は走査方式に適合した表示信号に変換するスキャンコンバート手

段を備えたことを特徴とする,請求項28乃至31のいずれか一項に記載のパーソ

ナルコンピュータシステム。」

また,上記各請求項において引用されている請求項4の内容は,以下のとおりで

ある(請求項4は,本件訂正における訂正の対象とされていない。以下,同請求項

に係る発明を「本件発明4」という。)(甲17)。

「【請求項4】ユーザーがマニュアル操作によって入力したデータを後記データ

処理手段に送信する入力手段と,


7
無線信号を受信してデジタル信号に変換の上,後記データ処理手段に送信するとと

もに,後記データ処理手段から受信したデジタル信号を無線信号に変換して送信す

る無線通信手段と,

後記データ処理手段を動作させるプログラムと後記データ処理手段で処理可能なデ

ータファイルとを格納する記憶手段と,

前記入力手段から送信されたデータ及び前記記憶手段に格納されたプログラムに基

づき,前記無線通信手段から受信したデジタル信号及び/又は前記記憶手段から読

み出したデータに必要な処理を行って,デジタル表示信号及びその他のデジタル信

号を生成して送信するデータ処理手段と,

画面を構成する各々の画素が駆動されることにより画像を表示するディスプレイパ

ネルAと,前記データ処理手段から受信したデジタル表示信号に基づき前記ディス

プレイパネルAの各々の画素を駆動するディスプレイ制御手段Aとから構成される

ディスプレイ手段と,

外部ディスプレイ手段を含む周辺装置,又は,外部ディスプレイ手段が接続される

周辺装置を接続し,該周辺装置に対して,前記データ処理手段から受信したデジタ

ル表示信号に基づき,外部表示信号を送信するインターフェース手段A1と,

を備えるとともに,

前記データ処理手段と前記インターフェース手段A1とが相俟って,該インターフ

ェース手段A1から,高解像度外部表示信号を送信する機能を実現する携帯情報通

信装置であって,

前記無線通信手段は,アナログテレビ放送信号,デジタルテレビ放送信号,携帯テ

レビ電話信号,インターネットプロトコルに準拠した無線ストリーミング信号のう

ちの少なくとも1つの無線信号(以下,無線動画信号と略記する)を受信し,デジ

タル動画信号に変換の上,前記データ処理手段に転送する機能を有し,

前記データ処理手段は,前記デジタル動画信号の本来解像度が前記ディスプレイパ

ネルAの画面解像度より大きい場合でも,前記デジタル動画信号をリアルタイムで


8
処理することによって,及び/又は,前記デジタル動画信号を自らが処理可能な画

像データファイルとして前記記憶手段に一旦格納し,その後読み出した上で処理す

ることによって,前記デジタル動画信号の本来画像の全体画像のデジタル表示信号

を生成する機能を有することを特徴とする携帯情報通信装置。」

4 本件審決の理由

(1) 本件審決の理由は,別紙審決書写しに記載のとおりであり,その概要は以

下のとおりである。

本件訂正は,いずれも特許請求の範囲減縮を目的とするものであり,特許法1

26条1項ただし書1号に適合し,同条5項及び6項に適合する。

訂正発明は,特開2004−214766号公報(甲1。以下「引用例1」とい

う。)に記載された発明(以下「引用発明1」という。)及び特開2004−12

8587号公報(甲2。以下「引用例2」という。)に記載された発明(以下「引

用発明2」という。)並びに周知技術1及び2に基づいて,当業者が容易に発明

ることができたものであり,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

訂正事項2ないし17に係る本件訂正後の請求項6ないし8及び24ないし32

に係る発明も,引用発明1及び2,周知技術並びに技術常識に基づいて,当業者が

容易に発明をすることができたものであり,特許出願の際独立して特許を受けるこ

とができない。

(2) 本件審決が認定した引用発明1,2及び周知技術1,2の内容,訂正発明

と引用発明1との一致点及び相違点は,以下のとおりである。

ア 引用発明1の内容

「ダイヤルキーやブラウザ操作キー等を備えた入力デバイスである操作部14と,

CCDカメラやCMOSカメラから成る画像撮影手段である撮像部15と,

送信回路と受信回路を有して成り,アンテナを介して電波を送受信することで,基

地局との双方向通信を行う送受信部11と,

ROMやRAMから成る情報格納手段である記憶部16と,


9
CPU等から成り,装置全体の動作を制御する制御部10と,

液晶ディスプレイ等から成る情報表示手段である表示部12と,

入力された情報(静止画や動画,文字など)を外部表示装置2で読取可能な画像信

号形式(例えば,ビデオ信号形式)に変換して出力するインターフェイス部である

画像出力部17と,

を備えるとともに

制御部10は,送受信部11を介して指定サーバから所望のWebコンテンツ情報

を取得して画像出力部17に送出し,該情報を外部出力するように要求し,

該要求を受けた画像出力部17は,制御部10からの入力情報に所定の信号処理を

施して外部表示装置2に出力することによって,携帯電話機での閲覧が意図されて

いないWebコンテンツについても,表示部12のサイズや解像度に依存すること

なく正常に表示することが可能となる携帯電話機1」

イ 引用発明2の内容

「撮像素子によって被写体を撮影する撮像手段を有するデジタルカメラであって,

前記撮像素子から得られる画像を表示する表示手段と,

前記撮像素子から得られる画像を記録する記録手段と,

前記表示手段よりも高解像度の外部表示装置を接続可能な接続手段と,

前記撮像素子から得られる画像データに対して所定の解像度変換を行う解像度変換

部と,

を備え,

前記解像度変換部は,前記撮像手段の生成する画像データの本来解像度が前記表示

手段の画面解像度より大きい場合に,前記接続手段に対して前記外部表示装置が接

続された場合,前記外部表示装置の表示解像度に適合させて表示用画像データを生

成するように構成されるデジタルカメラ」

周知技術1の内容

「外部ディスプレイ装置に送信される外部表示信号をTMDS方式で伝送される


10
デジタル外部表示信号とすること」

周知技術2の内容

インターネットプロトコルに準拠した信号がユーザーエージェント情報を含む

こと」

オ 訂正発明と引用発明1の一致点

「ユーザーがマニュアル操作によって入力したデータを後記データ処理手段に送

信する入力手段と,

無線信号を受信してデジタル信号に変換の上,後記データ処理手段に送信するとと

もに,後記データ処理手段から受信したデジタル信号を無線信号に変換して送信す

る無線通信手段と,

後記データ処理手段を動作させるプログラムと後記データ処理手段で処理可能なデ

ータファイルとを格納する記憶手段と,

前記入力手段から送信されたデータ及び前記記憶手段に格納されたプログラムに基

づき,前記無線通信手段から受信したデジタル信号及び/又は前記記憶手段から読

み出したデータに必要な処理を行って,デジタル表示信号及びその他のデジタル信

号を生成して送信するデータ処理手段と,

画面を構成する各々の画素が駆動されることにより画像を表示するディスプレイパ

ネルAと,前記データ処理手段から受信したデジタル表示信号に基づき前記ディス

プレイパネルAの各々の画素を駆動するディスプレイ制御手段Aとから構成される

ディスプレイ手段と,

外部ディスプレイ手段を含む周辺装置,又は,外部ディスプレイ手段が接続される

周辺装置を接続し,該周辺装置に対して,前記データ処理手段から受信したデジタ

ル表示信号に基づき,外部表示信号を送信するインターフェース手段A1と,

を備えるとともに,

前記データ処理手段と前記インターフェース手段A1とが相俟って,該インターフ

ェース手段A1から,外部表示信号を送信する機能を実現する携帯情報通信装置で


11
あって,

前記無線通信手段と前記データ処理手段とが相俟って,

インターネットプロトコルに準拠した無線信号を送信する機能と,

インターネットプロトコルに準拠した無線信号を受信することにより,インターネ

ットに接続したウェブサーバから画像データファイルを取得する機能と,

を実現する携帯情報通信装置。」

カ 訂正発明と引用発明1の相違点

(ア) 相違点1

「インターフェース手段」から送信される「外部表示信号」に関し,

訂正発明では「TMDS方式で伝送されるデジタル外部表示信号」,「高解像度デ

ジタル外部表示信号」であるのに対し,

引用発明1では「外部表示装置2で読取可能な画像信号形式(例えば,ビデオ信号

形式)」の信号である点。

(イ) 相違点2

送信される「インターネットプロトコルに準拠した無線信号」に関し,

訂正発明では「ユーザーエージェント情報を含みインターネットプロトコルに準拠

した無線信号」であるのに対し,

引用発明1では,単に「指定サーバから所望のWebコンテンツ情報を取得」する

ための要求信号である点。

(ウ) 相違点3

訂正発明は,「前記データ処理手段は,前記画像データファイルの本来解像度が

前記ディスプレイパネルAの画面解像度より大きい場合でも,前記画像データファ

イルを前記記憶手段に一旦格納し,その後読み出した上で処理することによって,

前記画像データファイルの本来画像の全体画像のデジタル表示信号を生成する機

能」を有するのに対し,

引用発明1は,そのような構成要件はない点。


12
第3 取消事由に関する当事者の主張

1 原告の主張

本件審決は,相違点1の容易想到性の判断の誤り(取消事由1),相違点3の容

易想到性の判断の誤り(取消事由2),訂正発明6の容易想到性の判断の誤り(取

消事由3),訂正発明24の容易想到性の判断の誤り(取消事由4),訂正発明7

及び8の容易想到性の判断の誤り(取消事由5),訂正発明25ないし32の容易

想到性の判断の誤り(取消事由6),前審決と矛盾した審決を行ったことの誤り

(取消事由7)があり,本件審決の結論に影響を及ぼすから,違法であるとして取

り消されるべきである。

(1) 相違点1の容易想到性の判断の誤り(取消事由1)

相違点1は,二つの相違点からなる。

@ 相違点1−1

訂正発明では,インターフェース手段から「TMDS方式で伝送されるデジタル

外部表示信号」が送信されるのに対して,引用発明1では,「TMDS方式で伝送

されるデジタル」外部表示信号を出力することについて記載がない点。

A 相違点1−2

訂正発明では,インターフェース手段から「高解像度外部表示信号」が送信され

るのに対して,引用発明1では,「高解像度」外部表示信号を出力することについ

て記載がない点。

本件審決は,「一般に『外部ディスプレイ装置』の方が,携帯機器本体の有する

ディスプレイ手段よりも『高解像度』であるのも普通のことである」との一般的事

実から,相違点1−2が容易想到であると判断する。しかし,相違点1−2が容易

想到であるとした本件審決の判断には,誤りがある。すなわち,

ア 本件特許の優先日当時,「一般に『外部ディスプレイ装置』の画面解像度の

方が,携帯機器本体の有するディスプレイ手段の画面解像度よりも大きいのは普通

のこと」であったことについての立証はない。


13
イ 仮に,本件特許の優先日当時,「一般に『外部ディスプレイ装置』の方が,

携帯機器本体の有するディスプレイ手段よりも『高解像度』であるのも普通のこと

である」としても,以下のとおり,その一般的事実から相違点1−2が容易想到で

あるということはできない。

(ア) 本件訂正後の本件特許に係る明細書(以下「本件明細書」という。)及び

特許請求の範囲では,以下のとおり,3種類の「解像度」が明確に区別されており,

当業者は,この3種類の「解像度」が異なった対象の属性であることを,理解でき

る。

@ 本来解像度(本来の解像度)

画像データファイル,動画信号,表示信号,外部表示信号の属性

A 画面解像度

ディスプレイパネル,外部ディスプレイ手段の属性

B 表示画像の解像度

ディスプレイパネルに現実に表示される画像,外部ディスプレイ手段に現実に表

示される画像の属性

「本来解像度」は,本件明細書の段落【0032】に定義されているように,表

示信号,画像データファイル又は動画信号を,高解像度ディスプレイ手段又はデー

タ処理手段及び高解像度ディスプレイ手段が適切に処理することにより表示される

本来の解像度を意味する。また,本件明細書の段落【0079】【0080】【0

093】の記載から,「本来解像度」は「画像データファイル又は信号」の属性で

あって,XGA(1024×768)やQVGA(240×320)のような2次

元値で定義されうることが理解される。

また,「(ディスプレイ手段の)画面解像度」と「(ディスプレイ手段に現実に

表示される)画像の解像度」とは,ディスプレイ手段が情報機器本体に備わってい

る場合には通常一致するが,情報機器本体に接続する外部ディスプレイ手段である

場合には,必ずしも一致しないことは,当業者にとっては技術常識である。


14
本件審決のいう一般的事実は,ディスプレイ手段の属性である「画面解像度」に

係る事実である。これに対し,「高解像度」外部表示信号とは,本件明細書の段落

【0032】に定義されているように,「本来解像度が前記ディスプレイパネルA

の画面解像度より大きい外部表示信号」を意味し,上記のとおり「本来解像度」は

外部表示信号の属性であるから,相違点1−2は,(インターフェース手段から外

部表示手段に送信される)外部表示信号の属性に係る相違点である。このように,

本件審決のいう一般的事実と相違点1−2とでは「高解像度」の意味が異なる。

(イ) また,本件特許の優先日当時,「外部ディスプレイ装置の画面解像度」が

「携帯情報通信装置が備えているディスプレイ手段の画面解像度」よりも大きいと

しても,「外部ディスプレイ装置に表示される画像の解像度」が「携帯情報通信装

置が備えているディスプレイ手段に表示される画像の解像度」と同じであることは,

普通のことであった。なお,本件特許の優先日当時,当業者が「画像を外部ディス

プレイに表示する携帯電話機」を設計する場合,本体ディスプレイに加えて外部デ

ィスプレイにも画像を「付加的に」表示するとして設計するのが自然であり,その

ような場合,当業者は,外部ディスプレイ装置の表示能力を最大限発揮させる設計

は採用しない。そのような設計を行うことは,訂正発明の属する技術分野における

本件特許の優先日当時の技術常識ではない。

(ウ) 以上のとおり,上記の一般的事実から相違点1−2が容易想到であるとい

うことはできない。

(2) 相違点3の容易想到性の判断の誤り(取消事由2)

相違点3が容易想到であるとした本件審決の判断には,以下のとおり,誤りがあ

る。

ア 引用例2の記載によると,引用発明2の解像度変換部が解像度変換を行う対

象は,CCD撮像素子20から出力されるような「画素毎にRGBの色成分に光電

変換された画像信号」(以下「RGB画像信号」という。),又は,色補正部25

から出力されるような「画素毎にRGB色空間で表現されたカラー情報をYCrC


15
b色空間で表現されたカラー情報に変換した画像信号」(以下「YCrCb画像信

号」という。)である。一方,引用例1の記載によると,引用発明1の制御部10

がいかなるタイプの画像信号を処理するかは不明であり,引用例1には,制御部1

0が「RGB画像信号」や「YCrCb画像信号」を処理することを示唆する記載

はない。

したがって,当業者は,引用例1と引用例2の双方に接したとしても,「RGB

画像信号」や「YCrCb画像信号」に係る「引用発明2の解像度変換部が有する

解像度変換機能」が,「引用発明1の制御部10が元々有する画像信号処理機能」

に統合可能であるとは認識しない。

また,仮に,これが統合可能であると認識したとしても,「引用発明1の制御部

10が元々有する画像信号処理機能」については,「Webコンテンツ情報」の

「取得」「送出」「外部出力の要求」の3つしか特定されていないのであるから,

当業者が,引用例1の記載に基づいて,「引用発明1の制御部10が元々有する画

像信号処理機能」に対して「引用発明2の解像度変換部が有する解像度変換機能」

を統合した具体的な実施形態に想到することは不可能である。

このように,当業者が,引用発明1の制御部10に引用発明2の解像度変換機能

を統合することは,容易ではない。

イ 引用例1に接した当業者は,引用発明1の制御部10が取得する「Webコ

ンテンツ情報に含まれる画像データファイル」については,「RGB画像信号」や

「YCrCb画像信号」のような「非圧縮画像信号」ではなく,本件特許の優先日

当時から一般的であったJPEG(静止画)やMPEG(動画)の方式で圧縮変換

されたファイルであると理解する。信号のタイプが異なれば,適用される処理が異

なるから,当業者が,「RGB画像信号」や「YCrCb画像信号」のような「非

圧縮画像信号」に係る「引用発明2の解像度変換部が有する解像度変換機能」を,

「圧縮画像信号」に係る「引用発明1の制御部10が元々有する画像信号処理機

能」と統合することは,容易でない。


16
ウ 引用例1にも引用例2にも,引用発明1の制御部10又は引用発明2の解像

度変換部が,「相違点3」に係る「画像データファイルを記憶手段に一旦格納し,

その後読み出した上で処理することによってデジタル表示信号を生成する」との構

成を備えているとの記載も示唆もない。

「ウェブサーバから取得した画像データファイルを記憶手段に格納後,読み出し

処理する方法」が周知技術(以下「周知技術3」という。)であったとしても,引

用発明1の制御部10に引用発明2の解像度変換機能を統合した場合に,制御部1

0が解像度変換の処理を行う対象は,本件特許の優先日当時の技術常識から「非圧

縮画像信号」であると解されるが,引用発明1の制御部10に周知技術3を統合し

た場合には,制御部10は記憶手段から読み出した画像データファイルに解像度変

換処理をすることが必要となる。このように,両者の処理対象は異なるから,当業

者が,「引用発明1の制御部10に対し引用発明2の解像度変換機能を統合するこ

と」により,「引用発明1の制御部10に対し周知技術3を統合すること」に想到

することは容易でない。

(3) 訂正発明6の容易想到性の判断の誤り(取消事由3)

訂正発明は容易想到ではなく,本件訂正後の請求項3のみを引用する訂正後の請

求項6に係る発明(訂正発明6)も容易想到ではない。

(4) 訂正発明24の容易想到性の判断の誤り(取消事由4)

本件訂正後の請求項24は,本件訂正の対象ではない請求項4のみを引用する。

本件発明4と引用発明1との間には,次の相違点が存在する。

@ 相違点1’−2

本件発明4では,インターフェース手段から「高解像度デジタル外部表示信号」

が送信されるのに対して,引用発明1では,「高解像度」デジタル外部表示信号を

出力することについて記載がない点。

A 相違点3’

本件発明4は,「前記データ処理手段は,前記デジタル動画信号の本来解像度が


17
前記ディスプレイパネルAの画面解像度より大きい場合でも,前記デジタル動画信

号をリアルタイムで処理することによって,及び/又は,前記デジタル動画信号を

自らが処理可能な画像データファイルとして前記記憶手段に一旦格納し,その後読

み出した上で処理することによって,前記デジタル動画信号の本来画像の全体画像

のデジタル表示信号を生成する機能」を有するのに対し,引用発明1は,そのよう

構成要件はない点。

相違点1’−2は相違点1−2と同じであり,容易想到ではない。

引用発明1では,「前記デジタル動画信号の本来画像の全体画像のデジタル表示

信号を生成する機能」は特定されておらず,前記のとおり,「引用発明1の制御部

10に対し引用発明2の解像度変換機能を統合すること」は容易ではない。

したがって,本件発明4は容易想到ではなく,訂正発明24も容易想到ではない

から,これを容易であるとした審決の判断には誤りがある。

(5) 訂正発明7及び8の容易想到性の判断の誤り(取消事由5)

上記のとおり,訂正発明は容易想到ではなく,また本件発明4も容易想到ではな

いから,本件訂正後の請求項3及び本件訂正の対象でない請求項4を引用する本件

訂正後の請求項7及び8に係る発明(訂正発明7及び8)も容易想到ではない。

(6) 訂正発明25ないし32の容易想到性の判断の誤り(取消事由6)

本件訂正後の請求項25ないし32は,本件訂正後の請求項3と本件訂正の対象

でない請求項4に加えて,本件訂正の対象でない請求項1,2も引用する。上記請

求項1及び2につき,容易想到性の判断はない。また,上記のとおり,訂正発明は

容易想到ではなく,また本件発明4も容易想到ではないから,訂正発明25ないし

32も容易想到ではない。

(7) 前審決と矛盾した審決を行ったことの誤り(取消事由7)

前審決では,前訂正による訂正後の請求項3記載の発明は,独立特許要件に適合

すると判断しており,原告は,特段の事情のない限り,特許庁が,上記請求項3記

載の発明に係る特許について,無効の判断をすることはないと期待していた。とこ


18
ろが,本件訂正は前訂正後の請求項3の特許請求の範囲減縮を目的とするもので

あるところ,本件審決は,本件訂正後の請求項3記載の発明(訂正発明)は容易想

到であると判断したのであり,この判断は,前訂正後の請求項3記載の発明も容易

想到であることを意味する。したがって,本件審決は前審決と矛盾するものであり,

このような判断をすることについて,やむを得ない特段の事情は存在しない。

前訂正においても,引用例1は考慮されるべき刊行物であり,前訂正における訂

正後の請求項3記載の発明の容易想到性を判断するにおいて引用例1が考慮されて

いなかったのであれば,前審判では十分な審理がなされていなかったといわざるを

得ない。

特許法の目的を達するためには,特許の安定性が維持されなければならず,この

ように前審決と矛盾する審決を行うことは,特許の安定性を毀損するものであり,

しかも,不十分な審理の結果矛盾する審決を行うことになったのであるから,本件

審決は取り消されるべきである。

2 被告の反論

(1) 相違点1の容易想到性の判断の誤り(取消事由1)に対して

ア 原告は,相違点1を相違点1−1と相違点1−2に分けて主張するが,同主

張を前提とした場合,相違点1−2は以下のとおりとすべきである。

「相違点1−2

訂正発明では,インターフェース手段から「高解像度デジタル外部表示信号」が

送信されるのに対して,引用発明1では,「高解像度」デジタル外部表示信号を出

力することについて記載がない点。」

イ 原告が主張する3種類の解像度のうち,訂正発明の特許請求の範囲には,

「本来解像度」「画面解像度」の記載はあるが,「画像の解像度」の記載はない。

本件明細書には,「表示画像の解像度」「本来画像の解像度」などの表記もあり,

語句の表記は統一されておらず,当業者が他の2種類と混同する余地がある。また,

「本来解像度」と「画像の解像度」に含まれる「ディスプレイ(外部ディスプレイ


19
手段)に表示される画像」の解像度との差異も明確ではない。

原告は,「外部ディスプレイ装置に表示される画像の解像度」が「携帯情報通信

装置が備えているディスプレイ手段に表示される画像の解像度」と同じであること

は,普通のことであったと主張するが,引用発明2のように,2つの解像度が同じ

でない公知例もある。

ウ 「一般に『外部ディスプレイ装置』の画面解像度の方が,携帯機器本体の有

するディスプレイ手段の画面解像度よりも大きい」ことは,例えば引用例2や甲8

にも示されていることから,同証拠により認められる。そして,この事実から,外

部ディスプレイ装置を接続する場合に,その能力を発揮させようとするのは当然の

要求であるから,外部表示信号を「高解像度」のデジタル表示信号として外部出力

するのは容易であるとした本件審決の判断に誤りはない。

(2) 相違点3の容易想到性の判断の誤り(取消事由2)に対して

引用発明1において「制御部10」から「インターフェイス部である画像出力部

17」を介して「外部表示装置2」に出力されるのは,「指定サーバ」から取得し

た(画像データファイルを含む)「Webコンテンツ情報」であり,引用発明2に

おける,「解像度変換部」から「接続手段」を介して「外部表示手段」へ「表示用

画像データ」を出力する表示用画像データの解像度変換機能を,引用発明1の「W

ebコンテンツ情報」の「信号処理」に適用し,相違点3の構成に想到することは

容易である。

原告は,「撮像電子信号」と「ウェブ画像ファイル」とは処理対象が異なると主

張する。しかし,RGB画像信号もJPEG方式の画像ファイルも,広く知られた

画像データの形式であり,いずれの画像データの形式であっても,表示装置に表示

するには,表示用画像メモリに所定の解像度で格納される表示用画像データとして

変換処理されるのであるから,引用例2の解像度変換部の処理機能は,「ウェブ画

像ファイル」に,容易に適用し得る。

以上のとおり,引用発明1に引用発明2を適用して,相違点3が容易想到である


20
とした本件審決の判断に誤りはない。

(3) 訂正発明6の容易想到性の判断の誤り(取消事由3)に対して

本件訂正後の請求項6は本件訂正後の請求項3のみを引用するが,前記のとおり

訂正発明は容易想到であり,訂正発明6で付加されている構成は周知の慣用手段等

であるから,訂正発明6も容易想到である。

(4) 訂正発明24の容易想到性の判断の誤り(取消事由4)に対して

原告主張の相違点1’−2は,前記(1)のとおり容易想到である。

原告主張の相違点3’については,引用発明1は「動画」も例示するものであり,

引用例1には「ストリーミング」などの記載があることに照らすならば,引用発明

1を動画対応とすることは容易であるといえる。

また,訂正発明24で付加されている「前記データ処理手段と前記ディスプレイ

制御手段Aとが相俟って,前記ディスプレイパネルAに,本来画像の対象全体をカ

バーする全体画像ではあるが,解像度は前記ディスプレイパネルAの画面解像度を

上回らない画像を表示する機能」は,周知の慣用手段等である。

したがって,訂正発明24は容易想到である。

(5) 訂正発明7及び8の容易想到性の判断の誤り(取消事由5)に対して

本件訂正後の請求項7と8は本件訂正後の請求項3を引用するが,前記のとおり

訂正発明は容易想到であり,訂正発明7,8で付加されている構成は周知の慣用手

段等であるから,訂正発明7,8も容易想到である。

(6) 訂正発明25ないし32の容易想到性の判断の誤り(取消事由6)に対し



本件訂正後の請求項25ないし32は,本件訂正後の請求項3を引用するもので

あり,前記のとおり,訂正発明は容易想到である。また,訂正発明25ないし32

で付加されている構成は周知技術等であり,訂正発明25ないし32も容易想到で

ある。

(7) 前審決と矛盾した審決を行ったことの誤り(取消事由7)に対して


21
前審判事件における主引用例は本件審判事件における主引用例である引用例1と

は異なる。前審決と本件審決の判断が異なったとしても,引用例が異なる以上,矛

盾しているとはいえない。

第4 当裁判所の判断

当裁判所は,訂正発明は容易想到であり,特許出願の際独立して特許を受けるこ

とができないから,本件訂正後の請求項3に係る本件訂正は許されないものと判断

する。その理由は,以下のとおりである。

1 認定事実−−−本件明細書,引用例1及び引用例2の各記載

(1) 本件明細書の記載

本件明細書には,以下の記載がある(甲15)。

「【技術分野】【0001】本発明は,携帯電話機などの携帯情報通信装置,携

帯情報通信装置とともに用いる接続ユニット,及び携帯情報通信装置とともに用い

る外部入出力ユニットに関する。」

「【0004】・・・携帯電話機をはじめとする携帯情報通信装置においては,

その携帯性が重視されるため大きいサイズのディスプレイを付属させることができ

ない。このため,携帯電話機の場合,画面サイズは最大でも2.5インチ程度であ

り,また,画面解像度は最大でもQVGA・・・サイズ(携帯電話機においては,

通常,縦長画面であるため,水平画素数×垂直画素数=240×320画素)とな

っている。」

「【0013】・・・携帯情報通信装置の携帯性を損なわないために付属ディス

プレイのサイズを現状通りに維持したままで,しかもパソコンを併用することなく,

長文の電子メールやパソコン向けウェブページ,娯楽性の高いゲーム,さらにはテ

レビ番組の映像などを大きな画面で表示すること,特に,長文の電子メールについ

ては,垂直スクロールを繰り返すことなく読めること,パソコン向けウェブページ

については,パソコンでの画面イメージに近いレイアウトで表示し,しかも水平ス

クロールを繰り返すことなく閲覧できること,テレビ番組については,テレビ放送


22
における本来画像を全画面表示することが課題とされている。」

「【0020】この第三種の技術として既に実用化されているものに,いわゆる

「テレビ(TV)出力機能」又は「AV出力機能」を有する携帯電話機がある。こ

のような携帯電話機においては,携帯電話機とテレビモニタを,携帯電話機側は携

帯電話機に固有の接続端子とし,テレビモニタ側はビデオ端子とするケーブルで接

続することにより,該携帯電話機に付属するデジタルカメラ機能を用いて撮影した

静止画や動画,あるいは一部のゲームを,携帯電話機の付属ディスプレイよりも大

画面であるテレビモニタに表示することができる。しかし,その場合にテレビモニ

タに表示される画像の解像度は,付属ディスプレイの画面解像度(最大でもQVG

A)と同じであるため,該画像は,テレビモニタの中央部に小さく表示されるか,

画質の粗い拡大画像が全画面に表示されるかのいずれかである。」

「【発明の開示】【発明が解決しようとする課題】【0031】本発明はこのよ

うな事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,携帯電話機やP

DAをはじめとする携帯情報通信装置に大画面外部ディスプレイ装置を接続するこ

とにより,より一般的には,携帯情報通信装置に大画面ディスプレイ手段を含む周

辺装置,及び/又は,大画面ディスプレイ手段が接続される周辺装置を接続するこ

とにより,該大画面外部ディスプレイ手段において,付属ディスプレイの画面解像

度よりも解像度が大きい画像を表示すること,特に,長文の電子メールについては,

垂直スクロールを繰り返すことなく読めること,パソコン向けウェブページについ

ては,パソコンでの画面イメージに近いレイアウトで表示し,しかも水平スクロー

ルを繰り返すことなく閲覧できること,テレビ番組については,テレビ放送におけ

る本来画像を表示することを,該大画面外部ディスプレイ手段向けの専用の表示デ

ータ生成手段を,付属ディスプレイに画像を表示するためにもともと必要である表

示データ生成手段(以下,付属表示データ生成手段と略記する)とは別個に使用す

ることなく,大画面ディスプレイ手段を含む周辺装置,及び/又は,大画面ディス

プレイ手段が接続される周辺装置と間のインターフェース手段の追加と,付属表示


23
データ生成手段への若干の機能追加だけで実現する携帯情報通信装置を提供する点

にある。また,携帯情報通信装置及び大画面外部ディスプレイ装置とともに用いら

れ,該大画面外部ディスプレイ装置の画面に,付属ディスプレイの画面解像度より

も解像度が大きい画像を表示するための接続ユニットを提供する点にある。さらに,

携帯情報通信装置とともに用いられ,自らに付属する大画面外部ディスプレイパネ

ルに,該携帯情報通信装置の付属ディスプレイの画面解像度よりも解像度が大きい

画像を表示する外部入出力ユニットを提供する点にある。

【課題を解決するための手段】【0032】・・・

また,本「明細書」及び「特許請求の範囲」でいう「外部表示信号」とは,周辺

装置における高解像度外部ディスプレイ手段がそれを受信して適切に処理すること

により画像を表示することが可能であるような信号を意味する。そして,表示信号,

画像データファイル又は動画信号を「適切に処理する」とは,高解像度ディスプレ

イ手段,又は,データ処理手段及び高解像度ディスプレイ手段が,表示信号,画像

データファイル又は動画信号に含まれている画素ごとの論理的な色情報を,ディス

プレイ手段の画面を構成する物理的な画素の色表示として過不足なく現実化するこ

とを意味しており,より具体的には,物理的な現実化にあたって画素を間引いて表

示画像の解像度を小さくしたり,画素を補間して表示画像の解像度を大きくしたり

しないことを意味している。

さらに,本「明細書」及び「特許請求の範囲」でいう「高解像度外部表示信号」

とは,本来解像度が前記ディスプレイパネルAの画面解像度より大きい外部表示信

号を意味し,また,「高解像度外部ディスプレイ手段」とは,十分な大きさの画面

解像度(水平画素数 垂直画素数)を有する外部ディスプレイ手段を意味する。

また,本「明細書」及び「特許請求の範囲」でいう「本来解像度」とは,表示信号,

画像データファイル又は動画信号を,高解像度ディスプレイ手段,又は,データ処

理手段及び高解像度ディスプレイ手段が適切に処理することにより表示される本来

の解像度を意味する。そして,「本来画像」とは,表示信号,画像データファイル


24
又は動画信号を,高解像度ディスプレイ手段,又は,データ処理手段及び高解像度

ディスプレイ手段が適切に処理することにより表示される本来解像度を有する画像

を意味する。」

「【発明の効果】【0078】第1乃至第15の発明の携帯情報通信装置におい

ては,携帯情報通信装置のインターフェース手段A1に高解像度外部ディスプレイ

手段を含む周辺装置,及び/又は,外部ディスプレイ手段が接続される周辺装置を

接続して高解像度外部表示信号を送信することにより,該高解像度外部ディスプレ

イ手段の画面において,携帯情報通信装置に付属するディスプレイパネルの画面解

像度より大きい解像度を有する高解像度画像を表示することができる。これにより,

付属ディスプレイパネルにおいては,その画面解像度に相当する部分だけを切り出

した部分画像しか表示できなかったり,画素を間引くことによって画質を落とした

全体画像しか表示できなかったりしたような画像を,高解像度外部ディスプレイ手

段においては,その本来の解像度のままの全体画像として表示できるようにな

る。・・・

しかも,そのような高解像度外部表示信号の送信は,付属ディスプレイパネルに

おいて画像を表示するためにもともと必要であるデータ処理手段と,外部ディスプ

レイ手段を含む周辺装置,及び/又は,外部ディスプレイ手段が接続される周辺装

置を接続するために不可欠のインターフェース手段だけによって実現されている。

このため,従来の技術のように,携帯情報通信装置に備えられた表示データ処理手

段とは別に,外部ディスプレイ手段を含む周辺装置向けの専用の表示データ生成手

段を設ける必要はなく,「不合理な二重投資」や「非効率な資源利用」の問題は回

避できる。」

(2) 引用例1の記載

引用例1には,以下の記載がある。図1は,別紙引用例1図1のとおりである。

(甲1)

「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,携帯電話機(通信機能搭載


25
のパームトップPCやPDA[PersonalDigital/Data Assistant]などの携帯電子

機器を含む)に関するものである。

【0002】【従来の技術】従来より,携帯電話機の多くは,各種情報(静止画

や動画,文字など)を表示する手段として,数インチの表示部(液晶ディスプレイ

など)を有して成る。」

「【0004】【発明が解決しようとする課題】確かに,上記構成から成る携帯

電話機は,アドレス帳や電子メールの内容,或いは携帯電話機での閲覧を目的とし

て作成されたWebコンテンツ等を表示部に出力することができるので,ユーザに

とって非常に便利である。

【0005】しかしながら,上記構成から成る携帯電話機では,本体の携帯性を

考慮して表示部の設置面積を大きくとれないため,表示内容の視認性や臨場感が乏

しい上,ユーザの視力低下を招くおそれがあった。また,携帯電話機での閲覧が意

図されていないWebコンテンツについては,正常に表示することすらできなかっ

た。」

「【0007】本発明は,上記の問題点に鑑み,本体の携帯性を損なうことなく,

表示内容の視認性や臨場感を向上させることが可能な携帯電話機の提供を第1の目

的とし,ハンズフリーマイクやヘッドホンを用いることなく,表示内容を見ながら

良好な音声通話を行うことが可能な携帯電話機の提供を第2の目的とする。

【0008】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために,本発明

に係る携帯電話機は,入力された情報を外部表示装置で読取可能な画像信号形式に

変換して出力する画像出力部を有して成り,前記外部表示装置への情報出力を行う

構成としている。このような構成とすることにより,本体の携帯性を損なうことな

く,表示内容の視認性や臨場感を向上させることが可能となる。」

「【0012】また,上記構成から成る携帯電話機において,前記外部表示装置

に出力される情報は,サーバから取得されたWebコンテンツ情報とすればよい。

このような構成とすることにより,外部表示装置には,閲覧中のWebコンテンツ


26
情報が表示されることになるので,携帯電話機本体の携帯性を損なうことなく,表

示内容の視認性を向上させることが可能となる上,携帯電話機での閲覧が意図され

ていないWebコンテンツについても,正常に表示することが可能となる。また,

ユーザは,外部表示装置を通してWebコンテンツ情報を閲覧しながら,携帯電話

機本体で良好な音声通話を行うことが可能となる。

【0013】また,上記構成から成る携帯電話機において,前記外部表示装置に

出力される情報は,サーバから取得されたストリーミング情報に含まれる画像情報

とすればよい。このような構成とすることにより,外部表示装置には,再生中のス

トリーミング画像が表示されることになるので,携帯電話機本体の携帯性を損なう

ことなく,表示内容の視認性及び臨場感を向上させることが可能となる。また,ユ

ーザは,外部表示装置を通して再生中のストリーミング画像を見ながら,携帯電話

機本体で良好な音声通話を行うことが可能となる。」

「【0015】【発明の実施の形態】図1は本発明に係る携帯電話機の要部構成

を示すブロック図である。本図に示すように,本発明に係る携帯電話機1は,制御

部10と,送受信部11と,表示部12と,音声部13と,操作部14と,撮像部

15と,記憶部16と,画像出力部17と,を有して成る。

【0016】制御部10は,CPU[Central Processing Unit]等から成り,

上記各部11〜17を含む装置全体の動作を制御する。送受信部11は,送信回路

と受信回路を有して成り,アンテナ11aを介して電波を送受信することで,基地

局(不図示)との双方向通信を行う。なお,アンテナ11aとしては,携帯性や格

納性に優れたロッドアンテナを用いるとよい。表示部12は,液晶ディスプレイ等

から成る情報表示手段である。音声部13は,マイク13aやスピーカ13bを制

御する音声入出力手段である。操作部14は,ダイヤルキーやブラウザ操作キー等

を備えた入力デバイスである。撮像部15は,CCDカメラやCMOSカメラから

成る画像撮影手段である。記憶部16は,ROMやRAMから成る情報格納手段で

ある。本発明の特徴部分である画像出力部17は,入力された情報(静止画や動画,


27
文字など)を外部表示装置2で読取可能な画像信号形式(例えば,ビデオ信号形

式)に変換して出力するインターフェイス部である。」

「【0020】第3の具体例は,閲覧中のWebコンテンツ情報を外部表示装置

2に出力する場合である。この場合,制御部10は,送受信部11を介して指定サ

ーバから所望のWebコンテンツ情報を取得して画像出力部17に送出し,該情報

を外部出力するように要求する。該要求を受けた画像出力部17は,制御部10か

らの入力情報に所定の信号処理を施して外部表示装置2に出力する。このような動

作により,外部表示装置2には,閲覧中のWebコンテンツ情報が表示されること

になる。従って,外部表示装置2として表示部12より大型のモニタ装置を用いれ

ば,携帯電話機1本体の携帯性を損なうことなく,表示内容の視認性を向上させる

ことが可能となる。また,携帯電話機での閲覧が意図されていないWebコンテン

ツについても,表示部12のサイズや解像度に依存することなく正常に表示するこ

とが可能となる。」

(3) 引用例2の記載

引用例2には,以下の記載がある。図5は別紙引用例2図5のとおりである。

(甲2)

「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,デジタルカメラにおいて画

像の表示処理を行う際の画像表示技術に関する。

【0002】【従来の技術】一般に市販されているデジタルカメラには,外部表

示装置を接続するための接続端子が設けられているものが多く存在する。この種の

デジタルカメラは,電子ビューファインダ(EVF)や表示用の液晶表示部に表示

される画像を,外部表示装置にも表示することができるように構成されており,接

続端子から外部表示装置に対して映像信号(例えばNTSC信号等)が出力され

る。」

「【0006】【発明が解決しようとする課題】しかしながら,上記従来のデジ

タルテレビ対応デジタルカメラでは,以下のような課題があった。


28
【0007】まず,撮影待機状態におけるライブビュー表示においては,デジタ

ルカメラからデジタルテレビに対して従来の映像フォーマットに変換した上で映像

出力されるため,依然としてデジタルテレビの表示解像度を活かした高精細な画像

表示を行うことができないという問題があった。」

「【0010】そこで,本発明は,上記課題に鑑みてなされたものであって,デ

ジタルカメラがデジタルテレビにおいて最適な画像表示を行うことを可能にする技

術の提供を目的とする。

【0011】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために,請求項

1に記載の発明は,撮像素子に蓄積された電荷を読み出すことにより,画像データ

を取得するデジタルカメラであって,表示装置に対してライブビュー表示を行う表

示画像出力手段と,前記表示装置の表示解像度を検知し,前記表示解像度に応じて

前記撮像素子の読み出し方式を変更する制御手段と,を備えて構成される。」

「【0017】<1.第1の実施の形態>

<1−1.撮影システム>

図1は本実施形態にかかる撮影システム100の構成例を示す図である。図1に

示すように撮影システム100は,デジタルカメラ1と,デジタルテレビ等によっ

て構成される高精細な画像表示が可能な表示装置2とが,データ送信用のケーブル

3によって接続された構成となっており,デジタルカメラ1において取得される画

像が表示装置2に対して表示可能なように構成される。

【0018】表示装置2は,その映像フォーマット(表示解像度)を変更可能な

ように構成されており,例えば,525i,525p,750p,1125i,1

125pの5種類の映像フォーマットのうちから一の映像フォーマットを選択設定

して画像表示動作を行うように構成される。例えば525i又は525pの映像フ

ォーマットが選択されている場合には,表示装置2における表示解像度は横720

×縦480となる。」

「【0025】デジタルカメラ1の背面には,撮影動作前の撮影待機状態におけ


29
るライブビュー表示,撮影動作後のアフタービュー表示,及び,記録画像の再生表

示等を行うための,電子ビューファインダ(以下,EVFという。)4と,LCD

(判決注:液晶表示部)5とが設けられている。EVF4及びLCD5では,それ

ぞれカラー画像の表示が行われる。なお,以下の説明においてはEVF4及びLC

D5は横320×縦240の表示画素数を有する場合を例示する。」

「【0029】次に,デジタルカメラ1の内部構成について説明する。図5は,

デジタルカメラ1の内部機能を示すブロック図である。」

「【0045】画像メモリ44は,S2状態に応答して行われる撮影動作によっ

てCCD撮像素子20で取得され,各種画像処理が施された画像データを一時的に

記憶するメモリである。画像メモリ44は,少なくとも1フレーム分の記憶容量を

有している。そして撮影動作後に画像のアフタービュー表示が行われる場合には,

画像メモリ44に格納された画像データからアフタービュー用の画像データが生成

され,撮影画像を確認するための画像表示が行われる。また,ユーザによって記録

指示が与えられた場合には,画像メモリ44に格納された画像データから,撮影画

像とサムネイル画像とを含む画像ファイルが作成され,メモリカード90に転送さ

れて,画像ファイルの記録保存が行われる。」

「【0050】まず,撮影モードに移行すると,デジタルカメラ1ではライブビ

ュー表示のための処理(ステップS10)が行われる。ライブビュー表示処理の詳

細は図8及び図9に示すフローチャートである。」

「【0052】デジタルカメラ1に表示装置が接続されている場合,全体制御部

30は表示装置2の映像フォーマットを確認する(ステップS103)。そして表

示装置2の映像フォーマットが1125i又は1125pである場合には,CCD

読出モードがフルフレームモードに設定される(ステップS104)。また,表示

装置2の映像フォーマットが750pである場合には,CCD読出モードが2倍速

モードに設定され(ステップS105),525i又は525pである場合は,8

倍速モードに設定される(ステップS106)。また,デジタルカメラ1に表示装


30
置2が接続されていない場合も,ステップS106においてCCD読出モードが8

倍速モードに設定される。

【0053】そしてステップS107に進み,全体制御部30は解像度変換部2

6における処理内容を決定する。

【0054】CCD読出モードとしてフルフレームモードが設定された場合には,

1960ライン分の画像データがCCD撮像素子20から出力され,このうち19

20ライン分が表示用に用いられる。このため,解像度変換処理において,横25

60×縦1920の画像を,横1440×縦1080の画素数を有する画像に変換

するための処理内容が決定される。

【0055】また,CCD読出モードとして2倍速モードが設定された場合には,

980ライン分の画像データがCCD撮像素子20から出力され,このうち960

ライン分の画像データが表示用に用いられる。このため,解像度変換処理において,

横2560×縦960の画像を,横960×縦720の画素数を有する画像に変換

するための処理内容が決定される。

【0056】また,表示装置2が接続され,CCD読出モードとして8倍速モー

ドが設定された場合には,245ラインの画像データがCCD撮像素子20から出

力され,このうち240ライン分が表示用に用いられる。このため,解像度変換処

理において,横2560×縦240の画像を,横640×縦480の画素数を有す

る画像に変換するために,垂直方向には2倍に拡大するための解像度変換処理(補

間処理)が決定され,水平方向には1/4倍に縮小するための解像度変換処理が決

定される。」

「【0060】そしてデジタルカメラ1では,ステップS104〜S106のい

ずれかにおいて設定されたCCD読出モードでライブビュー表示用の画像撮影が行

われる(ステップS109)。ここで得られた画像データは解像度変換部26に与

えられ,ステップS107で決定された解像度変換処理が実行される。」

「【0062】このようにして得られる表示用画像は,表示用画像メモリ43に


31
格納される(ステップS111)。これにより,解像度変換によって生成される表

示用画像は,EVF4,LCD5又は表示装置2における表示対象画像(ライブビ

ュー画像)となる。」

「【0064】また,表示装置2が接続されている場合,表示用画像メモリ43

に格納されている表示用画像が表示装置2に出力され,デジタルカメラ1の外部に

設けられた表示装置2でライブビュー表示が行われることになる(ステップS11

3)。このとき,表示装置2に表示される画像は,表示装置2の映像フォーマット

に応じて生成され,表示装置2の表示解像度に適合した画像となっているので,表

示装置2において高精細なライブビュー表示を行うことが可能である。なお,表示

装置2の表示解像度が高くなるにつれて,表示フレームレートは低下することにな

る。」

「【0085】そして全体制御部30は,画像メモリ44に格納された撮影画像

に基づいてアフタービュー表示を行う(ステップS127)。アフタービュー表示

の詳細は図11に示すフローチャートである。

【0086】アフタビュー表示が開始されると,デジタルカメラ1に表示装置2

が接続されているか否かを判断し(ステップS140),表示装置2が接続されて

いる場合は表示装置2に対してアフタービュー表示を行うべく,ステップS141

に進む。また,表示装置2が接続されていない場合には,デジタルカメラ1に設け

られたEVF4又はLCD5に対してアフタービュー表示を行うべく,ステップS

147に進む。

【0087】表示装置2が接続されている場合,全体制御部30はまず表示装置

2の映像フォーマット(表示解像度)を確認する(ステップS141)。また,画

像メモリ44に格納された撮影画像の画像サイズを確認し,全体制御部30は,撮

影画像サイズが表示装置2の表示解像度よりも小さいか否かを判断する(ステップ

S142)。そして撮影画像サイズが表示装置2の表示解像度よりも小さい場合に

は,撮影画像を拡大処理して表示解像度に適合させ,それを表示用画像メモリ43


32
に格納する。そして表示切替部48及び通信回路49の機能によって,表示用画像

メモリ43に格納された撮影画像を表示用画像として表示装置2に出力することに

よりアフタービュー表示を行う(ステップS143)。

【0088】ステップS142にてNOと判断された場合には,撮影画像サイズ

が表示装置2の表示解像度に等しいか否かを判断する(ステップS144)。そし

て撮影画像サイズが表示装置2の表示解像度に等しい場合には,撮影画像をそのま

ま表示用画像メモリ43に格納する。そして表示切替部48及び通信回路49の機

能によって,表示用画像メモリ43に格納された撮影画像を表示用画像として表示

装置2に出力することによりアフタービュー表示を行う(ステップS145)。

【0089】さらにステップS144にてNOと判断された場合には,撮影画像

サイズが表示装置2の表示解像度よりも大きいこととなるため,全体制御部30は,

撮影画像を縮小処理して表示解像度に適合させ,それを表示用画像メモリ43に格

納する。そして表示切替部48及び通信回路49の機能によって,表示用画像メモ

リ43に格納された撮影画像を表示用画像として表示装置2に出力することにより

アフタービュー表示を行う(ステップS146)。

【0090】一方,デジタルカメラ1に表示装置2が接続されていない場合には,

画像メモリ44に格納された撮影画像から横320×縦240の画像サイズを有す

る縮小画像を生成し,それを表示用画像メモリ43に格納する。そして表示切替部

48の機能によって,表示用画像メモリ43に格納された縮小画像を表示用画像と

してEVF4又はLCD5に出力することによりアフタービュー表示を行う(ステ

ップS147)。」

2 訂正発明,引用発明1及び引用発明2の解決課題及び解決手段等について

(1) 訂正発明の解決課題及び解決手段等

訂正発明の解決課題は,次の点にあった。すなわち,携帯電話機をはじめとする

携帯情報通信装置においては,その携帯性を損なわないために,文字や映像を含む

画像を表示するためのディスプレイの大きさに制限があり,パソコン向けウェブペ


33
ージやテレビ番組の画像等の本来の解像度を有する画像全体を表示することができ

ないという問題があり,また,従来は,携帯情報通信装置に,携帯情報通信装置の

付属ディスプレイよりも画面が大きい外部ディスプレイ装置(以下「大画面外部デ

ィスプレイ装置」という。)を接続し,大画面外部ディスプレイ装置に画像を表示

するという技術があったが,大画面外部ディスプレイ装置に表示される画像の解像

度は,付属ディスプレイの画面解像度と同じであるため,画像は,大画面外部ディ

スプレイ装置の中央部に小さく表示されるか,画質の粗い拡大画像が全画面に表示

されるかのいずれかであったとの問題があった。

そこで,訂正発明は,携帯情報通信装置の携帯性を損なわないために付属ディス

プレイのサイズを現状通りに維持したままで,しかもパソコンを併用することなく,

パソコン向けウェブページ等の本来の解像度による全体画像を表示できるようにす

ることを目的とした。訂正発明は,その解決手段として,携帯情報通信装置に十分

な大きさの画面解像度を有する高解像度外部ディスプレイ手段を接続し,データ処

理手段は,取得した画像データファイルの本来解像度が付属ディスプレイの画面解

像度より大きい場合でも,画像データファイルをそのまま記憶手段にいったん格納

し,その後読み出した上で,インターフェース手段によって高解像度外部ディスプ

レイ手段に送信するという構成を採用したものであり,これにより,高解像度外部

ディスプレイに画像データファイルの本来画像の全体画像を表示することができ,

しかも,付属ディスプレイに画像を表示するためにもともと必要である表示データ

生成手段とは別個に,外部ディスプレイ手段向けの専用の表示データ生成手段を使

用することなく,外部ディスプレイ手段を含む周辺装置等を接続するためのインタ

ーフェース手段の追加と,付属表示データ生成手段への若干の機能追加だけで,こ

れを実現することができるという効果を有する。

この点で,本件明細書の段落【0032】を参酌すると,訂正発明における「本

来画像」とは,画像データファイル等を高解像度ディスプレイ手段等が適切に処理

することにより表示される本来解像度を有する画像を意味するものであり,上記


34
「適切に処理する」とは,高解像度ディスプレイ手段等が画像データファイル等に

含まれている画素ごとの論理的な色情報を,ディスプレイ手段の画面を構成する物

理的な画素の色表示として過不足なく現実化すること,具体的には,物理的な現実

化にあたって画素を間引いて表示画像の解像度を小さくしたり,画素を補間して表

示画像の解像度を大きくしたりしないことを意味すると解される。また,訂正発明

における「本来解像度」とは,画像データファイル等を高解像度ディスプレイ手段

等が適切に処理することによって表示される本来の解像度を意味すると解される。

したがって,訂正発明における「前記データ処理手段は,前記画像データファイ

ルの本来解像度が前記ディスプレイパネルAの画面解像度より大きい場合でも,前

記画像データファイルを前記記憶手段に一旦格納し,その後読み出した上で処理す

ることによって,前記画像データファイルの本来画像の全体画像のデジタル表示信

号を生成する」とは,画像データファイルの本来の解像度が付属ディスプレイの画

面解像度より大きい場合でも,画像データファイルを,画素を間引いて表示画像の

解像度を小さくしたり,画素を補間して表示画像の解像度を大きくしたりすること

なくそのまま記憶手段にいったん格納し,その後読み出した上で処理することによ

って,画素を間引いて表示画像の解像度を小さくしたり,画素を補間して表示画像

の解像度を大きくしたりすることなく,画像データファイルをインターフェース手

段によって外部ディスプレイに送信することにより,高解像度外部ディスプレイに

画像データファイル全体が,画像データファイルの本来の解像度を有する画像の状

態で表示されることを意味すると解される。

(2) 引用発明1の解決課題及び解決手段等

引用発明1は,従来,携帯電話機の多くは表示部を有しているが,表示部は大き

くないため,表示内容の視認性や臨場感が乏しく,携帯電話機での閲覧が意図され

ていないWebコンテンツについては,正常に表示することすらできなかったこと

から,本体の携帯性を損なうことなく,表示内容の視認性や臨場感を向上させるこ

とが可能な携帯電話機を提供すること等を課題とした発明であり,課題解決手段と


35
して,携帯電話機は,入力された情報を外部表示装置で読取可能な画像信号形式に

変換して出力する画像出力部を有しており,これによって外部表示装置への情報出

力を行うとの構成を採用したものである。そして,具体的には,制御部が所望のW

ebコンテンツ情報を取得して,画面出力部に送出し,画面出力部は,制御部から

の入力情報に所定の信号処理をして,外部表示装置へ出力することにより,表示部

より大型の外部表示装置に,Webコンテンツ情報が表示されることとなる。

(3) 引用発明2の解決課題及び解決手段等

引用発明2は,デジタルカメラには,電子ビューファインダ(EVF)や表示用

の液晶表示部に表示される画像が,外部表示装置にも表示することができるような

構成となっているものが多いが,従来のデジタルテレビ対応デジタルカメラでは,

撮影待機状態におけるライブビュー表示において,デジタルカメラからデジタルテ

レビに対して従来の映像フォーマットに変換した上で映像出力されるため,デジタ

ルテレビの表示解像度を活かした高精細な画像表示を行うことができないという問

題があったことから,デジタルカメラがデジタルテレビにおいて最適な画像表示を

行うことを可能にすることを課題とした発明である。引用発明2では,上記課題の

解決手段として,外部表示装置が接続された場合に,表示装置の画面解像度を検知

し,「前記外部表示装置の表示解像度に適合させて表示用画像データを生成する」

との構成を採用したものである。そして,引用例2には,ライブビュー表示におい

て,解像度変換部が,外部表示装置の表示解像度に適合させて表示用画像データを

生成するとの構成が開示されている。

3 相違点1の容易想到性の判断の誤り(取消事由1)について

当裁判所は,相違点1について容易に想到できるとした審決の判断に誤りはない

と解する。

原告主張に係る相違点1−1に係る構成が引用発明1に周知技術を適用すること

により容易に想到し得る点については,当事者間に争いがない。そこで,原告主張

に係る相違点1−2に係る構成の容易想到性について判断する。


36
(1) 相違点1−2の容易想到性について

引用発明1は,表示内容の視認性や臨場感を向上させるために外部表示装置を設

け,携帯電話機から外部表示装置へ情報を出力するとの構成を採用したものである。

引用発明2は,外部表示装置の表示解像度に適合させた表示用画像データが生成

されるとの構成を有するデジタルカメラに関する発明である。前記のとおり,引用

例2には,実施例の一つとして,デジタルカメラと,デジタルテレビ等によって構

成される高精細な画像表示が可能な表示装置とが,データ送信用のケーブルによっ

て接続された撮影システムにおいて,デジタルカメラに設けられた電子ビューファ

インダ(EVF)と液晶表示部(LCD)の表示画素数が横320×縦240であ

るのに対し,表示装置の表示解像度は横720×縦480以上と高解像度であり,

ライブビュー表示において,インターフェース手段から,表示装置の表示解像度に

適合した高解像度のデジタル外部表示信号が送信されることが記載されている。

引用発明1は,上記のとおり,表示内容の視認性や臨場感を向上させるために外

部表示装置を設け,携帯電話機から外部表示装置へ情報を出力するとの構成を採用

したものであり,引用発明1の課題は,高解像度の外部表示装置に最適な画面表示

を行うとの引用発明2の課題と共通する。そうすると,当業者が,引用発明1に,

外部に設けられた表示装置において最適な画像表示を行うことを課題とした引用発

明2の構成を組み合わせ,インターフェース手段から高解像度のデジタル外部表示

信号を送信するとの構成を採用することに困難な点はないと解される。

この点,原告は,「外部ディスプレイ装置」が,携帯機器本体の有するディスプ

レイ手段よりも「高解像度」であるとしても,外部表示信号が「高解像度」である

とはいえないと主張する。

しかし,引用例2には,デジタルカメラの外部に設けられた表示装置がデジタル

カメラ自体に設けられた電子ビューファインダや液晶表示部よりも高解像度である

ことが示されているのみならず,表示装置の表示解像度に適合した高解像度のデジ

タル外部表示信号が送信される(例えば,横640×縦480の画素数を有する表


37
示用画像が出力される。)ことが示されている点に照らすならば,原告の主張を採

用することはできない。

(2) 小括

以上のとおり,相違点1−2は容易想到であると認められることから,相違点1

について容易想到であるとした審決の判断に誤りはない。

4 相違点3の容易想到性の判断の誤り(取消事由2)について

(1) 相違点3の容易想到性

ア 引用例1には,「入力された情報(静止画や動画,文字など)を外部表示装

置2で読取可能な画像信号形式(例えば,ビデオ信号形式)に変換して出力するイ

ンターフェイス部である画像出力部17」,すなわち,取得した情報を外部表示装

置により読み取り可能な画像信号の形式に変換するとの構成が示されている。

引用例2には,画像メモリ44にCCD撮像素子20で取得された画像データを

一時的に記憶させ,アフタービュー表示を行う場合には,画像メモリ44に格納さ

れた画像データを読み出し,画像処理を行って,アフタービュー用の画像データを

生成する構成が記載されている(段落【0045】,【0085】ないし【009

0】)。

そうすると,当業者は,引用発明1の画像信号処理について,引用例2に記載さ

れた上記構成を適用することにより,引用発明1において,取得した画像データを

いったん記憶手段に格納し,その後読み出して処理するとの構成に至ることに困難

性はないといえる。また,これをデータ処理手段で行うことは,当業者において周

知である。

また,携帯電話機やデジタルカメラに設けられた表示部は小さく,取得した画像

データを適切に表示できなかったことに鑑みると,画面解像度の高い外部表示装置

を設け,高解像度の表示信号を出力して表示することは,携帯電話やデジタルカメ

ラ等のデジタル表示信号を表示するに当たっての,一般的な解決課題であったとい

える。


38
そして,高解像度の表示信号を出力するため,十分に高解像度である表示画面を

接続させた上で,取得した高解像度の画像データについて解像度を変換させること

なく記憶させ,出力することは,当業者において適宜なし得たことである。

イ 以上によれば,「前記画像データファイルを前記記憶手段に一旦格納し,そ

の後読み出した上で処理する」こと,このような処理をデータ処理手段で行うこと,

画像データを解像度を変換させることなく記憶させ,出力することによって,「前

記画像データファイルの本来画像の全体画像のデジタル表示信号を生成する」こと

は,いずれも当業者が容易になし得ることであるから,相違点3に係る構成に至る

のは容易である。

(2) 原告の主張に対して

原告は,@引用例1には,制御部10が,引用発明2の解像度変換部が解像度変

換を行う対象である「RGB画像信号」や「YCrCb画像信号」を処理すること

の示唆はないことから,当業者は,「引用発明2の解像度変換部が有する解像度変

換機能」が,「引用発明1の制御部10が元々有する画像信号処理機能」に統合可

能であるとは認識しない,A仮に認識したとしても,当業者が,引用例1の「引用

発明1の制御部10が元々有する画像信号処理機能」に関する記載に基づいて,

「引用発明1の制御部10が元々有する画像信号処理機能」に対して「引用発明2

の解像度変換部が有する解像度変換機能」を統合した具体的な実施形態に想到する

ことは不可能である,Bまた,引用発明1の制御部10が処理する対象であるJP

EG方式の画像データファイル等と,引用発明2の解像度変換部が処理するRGB

画像信号とでは信号のタイプが異なることから,当業者が「引用発明2の解像度変

換部が有する解像度変換機能」を,「圧縮画像信号」に係る「引用発明1の制御部

10が元々有する画像信号処理機能」と統合することは,容易でないと主張する。

しかし,原告の主張は,いずれも失当である。

すなわち,引用発明1においては,「入力された情報(静止画や動画,文字な

ど)を外部表示装置2で読取可能な画像信号形式(例えば,ビデオ信号形式)に変


39
換して出力するインターフェイス部である画像出力部17」「該要求を受けた画像

出力部17は,制御部10からの入力情報に所定の信号処理を施して外部表示装置

2に出力する」とされているとおり,画像信号の処理を行うのは制御部10ではな

く,画面出力部17であり,画面出力部17は,取得した情報を外部表示装置で読

み取り可能な画像信号の形式に変換する機能を有しているといえる。

また,原告が,引用例1におけるデータ処理の対象であると主張するJPEG方

式の画像ファイル等も,引用例2におけるデータ処理の対象であると主張するRG

B画像信号等も,広く知られた画像データの形式であり,画像データの形式が異な

ることは,引用発明1と引用例2に記載された発明とを組み合わせて,画像データ

をいったん記憶手段に格納し,その後読み出して処理するとの構成を採用すること

を阻害するものではない。さらに,RGB画像信号等はビデオ信号であるから,引

用発明1において入力されたデータがRGB画像信号等であったとしても,ビデオ

信号形式への変換を行うことなく外部表示装置に出力することは,極めて自然の技

術的手段であるから,引用発明1において,RGB画像信号等を入力して記憶手段

に格納し,その後読み出して出力することに困難性はない。

(3) 小括

上記のとおり,訂正発明は,相違点1も3も容易想到であり,相違点2が容易想

到であることは当事者間に争いがないから,訂正発明は容易想到であるといえる。

5 本件審決の判断は,前審決と矛盾するとの主張(取消事由7)について

前審決においては,前訂正後の請求項3に係る発明が容易想到ではないと判断し

ているが(甲18),前審決と本件審決とで請求項3に係る発明の容易想到性につ

いての判断が異なっているとしても,そのことをもって,本件審決が違法であると

いうことはできない。よって,その点に関する原告の主張は失当である。

6 本件訂正の可否について

上記のとおり,訂正発明は容易想到であるから,本件訂正後の請求項3に係る訂

正は,特許出願の際独立して特許を受けることができない。本件訂正後の請求項6


40
ないし8は本件訂正後の請求項3を,本件訂正後の請求項25ないし28はいずれ

も本件訂正後の請求項3,8及び24を,本件訂正後の請求項29は本件訂正後の

25及び26を,本件訂正後の請求項30は本件訂正後の請求項26を,本件訂正

後の31は本件訂正後の27を,本件訂正後の請求項32は本件訂正後の請求項2

8ないし31をいずれも引用しているため,本件訂正後の請求項3を引用するか,

又は請求項3を引用した請求項を更に引用している本件訂正後の請求項6ないし8

及び25ないし32に係る本件訂正,並びに本件訂正後の請求項25ないし28に

おいて,本件訂正後の請求項3や8と共に引用されている本件訂正後の請求項24

に係る本件訂正も,全て認められない。

7 結論

上記のとおりであるから,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求

は理由がないので,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。



知的財産高等裁判所第1部




裁判長裁判官

飯 村 敏 明




裁判官

八 木 貴 美 子


41
裁判官

小 田 真 治




42
別紙 引用例1図1




43
別紙 引用例2図5




44